ミリP「よし、千早と初詣に行くぞ!」 (66)

美咲「あ、プロデューサーさん! えへへへ、明けましておめでとうございます!」

P「明けましておめでとうございます、青羽さん。今年もよろしくお願いします」

美咲「はい、よろしくお願いします! それで早速なんですけど……。
   じゃーんっ! 社長さんからお年玉を預かってます!」

P「本当ですか! おお、すごい! こんなにたくさん……!」

美咲「普段がんばってくれてるから、って言ってましたよ!」

P「あはは、ありがたいですね。あとで社長にお礼を言っておかないと。
 青羽さんも、ありがとうございます」

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美咲「いえいえ、私は預かったものをお渡ししただけですから!」

P「あ、そうだ。ところで青羽さん、千早はもう事務所には来てますか?」

美咲「千早ちゃんですか? はい、少し前に来て、今はレッスンルームだと思いますよ」

P「そうですか、ありがとうございます!
 それじゃ、ちょっと千早のところに行ってきますね!」

美咲「あっ、はい! いってらっしゃーい」

美咲(プロデューサーさん、千早ちゃんとお仕事の話かなぁ?
  レッスンのあとは確かオフって言ってたけど……お正月から仕事熱心だなぁ。
  私も頑張らなきゃ!)




劇場、廊下

P「……」

P(いよいよだ……遂にこの時がやってきたぞ! 念願の、千早と初詣に行く時が!
 担当アイドルと一緒に初詣に行くのが俺の夢だったんだ!
 そして千早の隣で、神様にお願いするんだ……。
  『俺の願いはいいから、千早の願いを二倍叶えてください』ってな……!)

P「ふふふ……そのためにスケジュールはばっちり調節したし、
 単純計算で少なくとも180回は初詣に行くチャンスがあるはず。
 まぁ、180回も使わなくても普通に誘えば行けるだろうけど……」

P(っと、独り言が過ぎたな。いかんいかん。
 さて、もうすぐレッスンルームに……)

P「……ん? あれは……」

エミリー「日本の冬も寒いですが、ジュニオールさんは暖かそうですね!」

星梨花「えへへっ、そうなんです!
   ジュニオールは雪の中でも元気いっぱいなんですよ!」

P「エミリーと星梨花か……。この寒い中、外で何をしているんだ?」

星梨花「こーやってぎゅーって抱きついたら、とってもふかふかなんです!」

エミリー「Wow! とっても気持ちよさそうです!」

星梨花「えへへっ。もし良かったらエミリーちゃんも……」

P「おーい、二人ともそんなところで何をしてるんだ?」

エミリー「仕掛け人さま! 明けましておめでとうございます!」

星梨花「明けましておめでとうございます、プロデューサーさん!」

P「ああ、明けましておめでとう。それより、外に居たら寒くないか?
 ジュニオールも一緒に中に入った方がいいと思うけど……」

星梨花「いえ、平気です! ジュニオールはとっても暖かいですから。
   今から私とエミリーちゃんで、ジュニオールにぎゅーってしようとしてたんです!」

エミリー「えっ? わ、私もいいんですか?」

星梨花「もちろんです! ジュニオールはふかふかで気持ちいいって、
   エミリーちゃんにも知って貰いたいですから! ジュニオールも喜んでくれます!」

エミリー「そ、そうですか? でしたら……ジュニオールさん、失礼しますね」ギュッ

エミリー「ふぁぁ……ふかふかでしゅ……」

P「おお……これは確かに気持ち良さそうだ……」

星梨花「良かったらプロデューサーさんもどうですか?
   とっても気持ちいいですよ!」

P「え? いやでも俺は今から千早と……」

エミリー「ふかふかでしゅ……極楽でしゅぅ……」

P「……ごくり……」




P「……」

P(くっ……! なんてことだ、俺としたことが小一時間も
 ジュニオールのふかふかを堪能してしまった……!)

P「千早のレッスンはもう終わってるよな……。
 じゃあ今はどこに……」

奈緒「あっ、プロデューサーさんや!」

P「! 奈緒じゃないか……って、どうしたんだその格好」

奈緒「えへへっ、似合ってるやろ?
  せっかくのお正月やから、着物着てみたんです!」

P「わざわざか? すごいな、大変だったんじゃないか?」

奈緒「そーなんです! もうメッチャ大変で!
  でも、こうしてプロデューサーさんに会えたんやったら、
  大変な思いした甲斐もあったかもなぁ」

P「うん? それはどういう……」

奈緒「プロデューサーさん、今から初詣行きましょう!
  そのあとは屋台の食べ歩きや!」

P「え!? い、いや俺は千早と……」




奈緒「とりゃあーっ!!」ガランガランガラン

奈緒「よっしゃ! メッチャ音鳴ったし、神様も気づいてくれたはずやんな♪」

P(結局一緒に来てしまった……)

奈緒「もっと鳴らしたいけど、今日はこのぐらいにしとこ。
  今年もいいコトたくさんありますように!」

P(でもまぁ……アイドルが楽しそうな顔をしてるんだ。
 それだけでもよしとしないとな)

P「……って、『今日はこのぐらいに』?」

奈緒「ふー、メッチャお願いしてもうたわー。
  お待たせしました、プロデューサーさん!」

P「いや、それはいいんだけど。奈緒、お前もしかして明日も……」

奈緒「さ、次は屋台や! 行くでプロデューサーさん!」

P「えっ、お、おい奈緒! そんな格好で走ったら危ないぞ!」

奈緒「ほんならプロデューサーさんが私のことエスコートしたってや♪ なーんてな!
  あっ、あそこ、たこ焼きや! お好み焼きもある!」

P「こら奈緒、待てって! おーい!」




P「……」

P(なんやかんやでめちゃくちゃ楽しんでしまった……。
 本当の目的は千早との初詣だったはずなのに……)

P「くそっ、とにかく千早を探さないと!
 しかしレッスンはとっくに終わってるし、一度控え室に戻って……」

響「あっ、プロデューサー! はいさーい!」

P「響!?」

響「あけましておめでとう、プロデューサー! 今年もよろしくね!」

P「あ、あぁよろしくな」

響「それにしても、すごく良いタイミングだぞ!
 自分、ちょうどプロデューサーを探してたんだ!」

P「え? お、俺をか?」

P(嫌な予感しかしない……!)

響「ねぇプロデューサー! 今から水族館に行こうよ!
 お正月キャンペーンで、今行くと色々いいことがあるんだ!」

P「す、水族館!? いや、俺は千早と初詣に……!」




響「見て見て、プロデューサー! この子、人懐っこくてめちゃくちゃカワイイぞ!」

P(結局断れずに来てしまった……)

響「自分のこと、すっごく見てくるんだけど……もしかして劇場に遊びに来たいのか!?
 よーしよし、いつでもおいで~、クマ作っ!」

P「いや、劇場にシロクマを呼ぶわけには……って、もう名前をつけたのか」

響「もちろんさー! 仲良くなった動物は名前で呼んであげたいしね!」

P「そうか。まぁ、響に友達ができたみたいで良かったよ」

響「ちょっとー! その言い方だと、自分に友達が居ないみたいでしょ!」

P「あはは、ごめんごめん。それよりほら、他の水槽は回らなくていいのか?」

響「もちろん回るさー! 自分、今日は全部の生き物に名前を付けるんだ!
 プロデューサーも手伝ってよね!」

P「えっ、俺もか?」

響「うん! 自分の友達はプロデューサーの友達だからね!」

P「そ、そうか。よし、じゃあがんばって名前考えないとな!」




P「……」

P(普通に楽しんでしまった……こんなことしてる場合じゃないのに……。
 まずいぞ。このままじゃ日が暮れてしまう)

P「夜に参拝に行くのは良くないって言うし、
 流石にそろそろ千早を見つけないと明日以降になってしまうぞ……」

P(……っていうか、千早はもう春香あたりと初詣行っちゃってる気も……)

P「い、いや、でも諦めないぞ! まだまだ……」

雪歩「ひうっ!? プ、プロデューサー……!」

P「雪歩!?」

雪歩「び、びっくりしました。
  独り言いってると思ったら、急に大声を出したから……」

P「あ、あぁ、すまない。後ろに居たなんて全然気付かなくて……。
 どうしたんだ、何か俺に用事だったか?」

雪歩「あっ、はい。えっと、その……へ、変なことを言うかもしれないんですけど……。
  プ、プロデューサーに、お願いがあるんです」

P「変なこと? よく分からないけど、何だ?」

雪歩「その、わ、私と、今から……ク、クリスマスパーティをしてくださいっ!」

P「え?」

P「ク、クリスマス? えっと、でも今日は……」

雪歩「うぅ、やっぱり変ですよね……お正月にクリスマスパーティなんて……」

P「変というか……まあ普通はしないよな……。
 しかし一体どうしてなんだ? 何か理由があるんだよな?」

雪歩「は、はい、あの……。今年の……あっ、もう去年ですけど……。
  劇場でのクリスマスパーティの時、プロデューサーが居なかったから……」

P「ああ……あの時は事務所でずっと仕事してたんだよな確か」

P(まぁ千早のスケジュール調整のためなんだけど……)

雪歩「それで、プロデューサーはきっとクリスマス気分を全然味わえなかったと思うから……。
  私とプロデューサーが両方オフの時に、
  ちょっとでも、クリスマス気分を味わってもらいたいなって思って……。
  そ、そしたら、お正月になっちゃって……」

P「そうだったのか……」

雪歩「でも……や、やっぱり迷惑ですよね……うぅ。
  私なんかがそんな、プロデューサーに楽しい気分になってもらおうだなんて、
  余計なお世話っていうか、おこがましいっていうか……。
  ぐすっ、私、もう、もう……穴掘って埋まってますぅ~!」

P「うわっ! ま、待て雪歩! そんなことはないぞ! すごく嬉しい!」

雪歩「ぐすっ……ほ、本当ですか?」

P「ああ本当だとも! だから劇場の床に穴を掘るのはやめよう!
 そんなことより、クリスマスパーティの準備だ!」

雪歩「プロデューサー……はい!
  でも実はもう準備してて……あとは私がサンタさんの格好をすれば完成なんですぅ」

P「そ、そうか。じゃあ会場まで案内してくれ。そこで雪歩の着替えを待つよ」

雪歩「えへへっ、わかりました! プロデューサー、今日は楽しんでくださいね!
  クリスマスケーキと、特製のお茶でたっぷりおもてなししちゃいますぅ!」

P「ああ、ありがとうな、雪歩!」




翌日

P(クリスマスパーティは普通に楽しかった……。楽しかったけど……)

P「き、今日こそリベンジだ。大丈夫、まだ元旦が終わっただけ。
 今日も千早のスケジュールに十分空きはあるし、
 初詣に誘うチャンスはまだまだ残っているはず……」

P(確かこの時間も千早はレッスンだったよな。
 よし、今からレッスンルームに……)

ジュリア「よっ、プロデューサー。あけましておめでとう」

P「ジュリア!?」

ジュリア「あん? なんだよその反応。妖怪でも出たような顔しやがって」

P「い、いや、すまん。そんなつもりはなかったんだがつい驚いて……」

ジュリア「ふーん……? ま、いいや。それより、ちょうど良かったよ。
    あんたを探してたところなんだ」

P「え? お、俺を? どうしたんだ? すぐ終わる用事か?」

ジュリア「すぐ終わるかは分からないが、大事な話だよ。
    今後のあたしの、アイドルとしての方向性でちょっと相談があってね」

P(めちゃくちゃ大事な話じゃないか! 絶対すぐ終わらないやつだこれ!)




ジュリア「ギターさえあれば、世界のすべてはあたしの足元にひざまずく……なんてな!」

P「……」

ジュリア「さあ、音楽の魔法で、みんなまとめてあたしの作った
    最高の世界へ連れていくよ。……覚悟しな!」

P「……」

ジュリア「……どうだ、プロデューサー。こういう感じもいいんじゃないかって翼に言われてさ。
    まぁひざまずくだとかそういうのはちょっとどうかと思うんだけど……」

P「なるほど……。いや、いいんじゃないか?
 ジュリアのかっこいい部分が前面に押し出されて、悪くないと思うぞ」

ジュリア「そ、そうかな?
    実はあたしもさ、こういう方向性の方がいいんじゃないかって……」

P「ただ、この方向性で固定するつもりは俺にはないよ。
 ジュリアは、もっと多くの可能性も持ったアイドルだと思うんだ」

ジュリア「! プロデューサー……」

P「さっきみたいなかっこいいのもジュリアだけど、
 仲間のボケにツッこむコミカルな一面も持ってるだろ? それに、可愛らしさもな」

ジュリア「なっ……か、可愛いとか軽く言ってんじゃねぇよバカP!」

P「あはは、そうやって照れるところも、ジュリアの魅力の一つだよ」

P「さっきチラッと言ってたけど、
 ジュリアはこういう方向性で行きたいって思ってるんだよな?」

ジュリア「あ……あぁ、まぁな。これならなんていうか……結構やりやすいからさ」

P「でも、俺は、ジュリアには『やりやすさ』を理由に方向性を決めて欲しくないと思ってる。
 だからさっき言ったコミカルさやキュートさも、
 自分の一部分だと思って、アピールポイントに組み入れていって欲しいんだ。
 どうだ、ジュリア。そういうやり方で、行ってくれるか?」

ジュリア「……ちぇっ、なんだよ。
    からかってんのかと思えば、真剣な顔しちゃってさ。
    そんな顔して言われたら、断れっこないだろ」

P「おいおい、俺はいつだってプロデュースに関しては真剣なつもりだよ」

ジュリア「はッ……そうだな、あんたはそういう奴だ。
    わかった、あんたがそう言うなら、そういうことにしといてやるよ。
    コミカルもキュートも、あたしの一部なんだってな」

P「まぁでも、せっかく相談に来てくれたんだ。
 次のライブは、今言ってくれた感じの演出にしてみよう」

ジュリア「おっ、いいねぇ!
    よし、じゃあ早速その辺りを考えていこうぜプロデューサー!
    あたしが信じて付いてくんだ。しっかり頼むぞ!」

P「ああ、もちろんだ!」




P「……」

P(いや今のは仕方ない……。あれ真剣に応じないのはプロデューサー失格だし……。
 千早のレッスンとっくに終わってても仕方ない……)

P「しかしどうする……。また千早を見失ってしまったぞ。
 もうこうなったら電話をかけるしかないか……」

 ピピピーピピピピ♪

P「ってうわあっ! な、なんてタイミングでかかってくるんだ! 一体誰……え?」

歩『プ、プロデューサー! ヘルプミー! 助けてー!』




歩『プロデューサー、本当にこっちでいいの!? 道あってる!?』

P「ああ、大丈夫だ。そのまま太陽に向かって歩いてれば森を抜けるよ」

歩『! な、なんか、今動いて……わぁっ!?
 プロデューサー、ヘビ! ヘビがいるっ!』

P「ヘビ? その辺りに生息してるのはかなり小さいヘビのはずだけど。怖いのか?」

歩『い、いや、違うんだって!
 怖いんじゃなくて、噛んだりしたら危ないだろって……わ、わーーーっ!!?』




歩『いやー、ほんっとゴメン! 頼れるのがプロデューサーしか居なくてさ!』

P「いや、頼ってくれるのはいいんだが、まさかロケ中に迷子になるとは……」

歩『だ、だってしょうがないだろ!
 あんな木が多い森の中、そりゃあ逸れるって!
 いつの間にか誰も居ないし、変な鳴き声は聞こえるし、めちゃくちゃ不安だったんだよ!』

P「だからって電話で何時間も道案内をさせられるとは思いも寄らなかったよ」

歩『うぅ~、だから謝ってるじゃんかぁ!
 そっちに戻ったら何か奢るからさ、ね! それで許してよ!』

P「まったく……。まぁ、何事もなくて良かったけどな」

P「改めて確認するけど、どこも怪我はしてないよな?」

歩『えっ? あ、あぁ、うん。それは大丈夫』

P「そうか。とにかく、今後はしっかりスタッフに付いていくこと。
 今回は俺にすぐ連絡がついたけど、いつでも助けてやれるとは限らないんだから。
 まあ、歩に付いていかなかった俺にも責任はあるけど……」

歩『い、いや、そんなことないって!
 プロデューサーは千早のプロデューサーなんだから付いてこれなくてもしょうがない……
 って、そうか、ごめん! もしかしてアタシ、仕事の邪魔しちゃってた!?』

P「いいや、俺も千早も今はオフだよ。だからそこは気にしなくていい。
 それに、アイドルの安全が最優先だからな」

歩『プロデューサー……。あ、ありがとう。それじゃ、アタシもう切るね! また劇場で!』




P「……」

P(いやこれもしょうがない……。アイドルに何かあったら大変だし……)

P「し、しかしまずい、思った以上に時間を取られてしまった……。
 もう日が暮れるまで時間がないぞ。
 これを逃せばまた明日に持ち越しになってしまう……」

P(こうなればやっぱり千早に直接電話するしかないな。
 えっと、千早の番号は……)

奈緒「あっ、プロデューサーさーん!」

P「え!?」

奈緒「もー、プロデューサーさんどこにおったんですか?
  メッチャ探したんですよ!」

P「あ、あぁ、ちょっと歩と電話を……。
 っていうか奈緒、どうして今日も着物を……?」

奈緒「えへへっ。せっかくやし、三が日はずっと着とこと思うて!
  で、せっかくついでやから……プロデューサーさん!
  今日も初詣行きましょう!」

P「ええっ!? 今日も初詣って、二回目じゃないか!
 それはもう初詣とは……」

奈緒「細かいことはえぇからえぇから! ほな、行っくでー!」




奈緒「ふー。今日もまたたくさんお祈りしてもうたわー」

P「そ、そうか。昨日と同じことをお願いしたのか?」

奈緒「はい! その方が叶う確率高いかなー思うて!
  あっ、何お願いしたかは内緒ですよ! 人に喋ってしもたら叶わへんって言いますし!」

P「はは、大丈夫、無理に聞き出したりなんかしないって」

奈緒「ところでプロデューサーさんはお参りせーへんのですか?
  昨日も今日も、見てただけでしたけど」

P「あ、あぁ、俺はいいよ」

奈緒「せっかくやし、何かお願いしたらえぇのに。
  ま、プロデューサーさんがえぇならえぇか。
  さて、この後はまた食べ歩きやでー! 行きましょ、プロデューサーさん♪」




P「……」

P(結局また普通に楽しんでしまった……)

P「くっ……。なぜこんなことに……。
 担当の千早と行かずになぜ奈緒と二回も……」

P(い、いや、まだ三が日が終わるまで一日ある。
 明日行けばいいんだ、そう、明日行けば……。
 明日は早起きして、レッスンが始まる前に千早に会いに行こう!)




翌朝

P(よし、今日はばっちり早起きしたぞ!
 今から劇場に行けば、レッスン前に千早に会えるはずだ!)

P「誘うチャンスは今日の夕方まで……。
 夕方以降からはもうずっと先までスケジュールが埋まってしまっている……。
 だから夕方までには絶対に……ん?」

未来「……」

P「あれは……未来? あんなところで何をボーッと立ってるんだ……?」

P「おーい、未来、どうしたんだ?」

未来「あっ、プロデューサーさん! あけましておめでとうございます!」

P「ああ、おめでとう。それで、何かあったのか?
 そんなところで立ち止まって何を見て……」

未来「えへへっ、ちょっと懐かしい気持ちになっちゃってました」

P「これは……39プロジェクトのポスターか」

未来「はいっ! 何ヶ月か前には、アイドル募集のポスターもいっぱいあって……。
  そう言えばここにも貼ってあったなって思ったら、
  オーディションを受けに行くときの気持ちを思い出しちゃって」

未来「合格してアイドルになったら、きっと、
  素敵なことがたくさん起こる気がするんだ、って……。
  そうやって私、わくわくしてたんです」

P「そうか……。それで、素敵なことは起こったか?」

未来「はい! 初めてステージに立った時や、初めてセンターになった時……。
  そのほかにもたくさん、たーっくさん!
  アイドルになってから、素敵なことばっかりです!」

P「あはは、それは良かったよ」

未来「劇場のみんなに会えたことも、それに……プロデューサーさんに会えたことも。
  私にとって、素敵なことです! でへへ~♪」

P「ああ、俺もだ。アイドル達との日々は、素敵なことばっかりだ!
 そう言えば未来と初めて会った時は……」




P「……」

P(いや確かに素敵なことばっかりなんだけど……。
 何をしているんだ俺は。レッスン前に間に合うよう劇場に行くんじゃなかったのか……)

P「くそっ、未来につられて思い出に浸ってしまっていた……。
 千早は……今はレッスン中だよな。
 ま、まぁいい、居場所は分かってるんだから、今からレッスンルームに行けば……」

環「あっ、おやぶーん!」

P「環!?」

環「おやぶん、あけましておめでとーっ!」

P「あ、あぁ、おめでとう。それより環、その格好は……?」

環「レースクイーンの衣装だぞ!
 すっごくカッコイイでしょ? くふふ……♪
 たまきも、今からお仕事するから見てて!」

P「え? お仕事? レースクイーンの仕事なんて入ってなかったと思うけど……」

環「車のレースじゃないけど、マラソン大会の応援するんだ!
 この近くでやってるんだって、美咲が言ってた!」

P「マラソン大会って……まさか、駅伝か!?」

環「環、走ってるみんなのこと一生懸命応援するぞ!
 ね、おやぶんも一緒に行こ! レッツゴー!」

P「い、いや、俺は今から千早に……」




環「みんなーがんばれー! フレー、フレー、みーんーなー!」

P(結局来てしまった……)

環「あっ、あの人すっごく苦しそうな顔してる!
 がんばれー! がんばれー!」

P(……あはは。これじゃレースクイーンじゃなくてチアガールだな。
 でも、選手達は環の応援を聞いて気合が入ってるようだ。
 環も一生懸命でいい笑顔だし……これはこれでいいかもな)

環「ねぇおやぶん、応援するって楽しいね! あっ、もしかして、
 たまき達のことを応援してくれてるファンのみんなもこんな気持ちなのかな?」

P「そうかもな。頑張ってる人は応援したくなるし、
 アイドルをすごく頑張ってる環を応援するっていうのは、同じくらい楽しいことだと思うぞ」

環「そっか……じゃあたまき、これからもいーっぱい、アイドル頑張らないとだね!」

P「ああ、そういうことだ!」

環「あっ、でも応援するのも好きだから、たまき、またレースクイーンのお仕事やりたいぞ!
 おやぶん、またこのお仕事させてくれる?」

P「あはは、だったら今度はチアガールか応援団の仕事でも取ってくるよ。
 そうすればレースクイーンよりもいっぱい応援できるぞ」

環「本当!? わーい、ありがとうおやぶん! おやぶん大好き!」




P「……」

P(しょうがないだろこれも……。あんな無邪気な笑顔で来られたら……)

P「しかし……くそっ! また千早のレッスン時間を逃してしまった。
 まさか駅伝があんなに長いとは……せっかく早起きしたのに時間が……!」

P(い、いや、大丈夫。大丈夫だ。今からでも千早に電話すれば……)

育「あっ、プロデューサーさん!」

P「育!?」

育「? どうしたのプロデューサーさん、そんなにびっくりして」

P「い、いや、なんでもない。ちょっと考え事をしてただけだから」

育「なんでもないならいいんだけど……。
 あっ、そうだ。ちゃんと挨拶しなきゃ!
 プロデューサーさん、明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」

P「あ、あぁ、あけましておめでとう。今年もよろしく」

育「えへへっ……。ねぇプロデューサーさん、今お仕事じゃないよね?」

P「え? あぁ、うん、まぁ仕事ではないけど……や、やっぱり何か俺に用事か?」

育「うん! わたしね、この前おかあさんにサラダのつくり方教えてもらったの。
 それで、今度は一人でつくるからプロデューサーさんに食べて欲しいんだ!」




育「見て見て、プロデューサーさん!
 おかあさんが教えてくれたサラダ、じょうずにできたよ!」

P「へぇ、すごいじゃないか。野菜も上手に切れてるし、盛りつけも綺麗だ」

育「えへへっ、すっごくおいしそうでしょ? テーブルに運んでおくね♪」

P「あぁ、俺が運ぶよ。作ってもらったんだし、そのくらいは……」

育「大丈夫、ちゃんと運べるよ! だからプロデューサーさんは座ってて!」

P「そ、そうか。ありがとうな」

育「さぁどうぞプロデューサーさん、召し上がれ♪」

P「ああ、いただきます。……うん、これは美味しいぞ!
 ゆで卵の火の通り具合もちょうどいい。
 単純なサラダに見えて、立派な料理だ!」

育「本当!? えへへっ、良かったぁ」

P「でも、味見は俺で良かったのか?
 どうせなら料理が得意な響とか美奈子に見てもらった方が良かったんじゃ……」

育「だってプロデューサーさん、普段はあんまり野菜とか食べてないって言ってたでしょ?
 だから、プロデューサーさんに食べてもらいたかったの」

P「え? じゃあもしかして、味見じゃなくて元々俺のために……?」

育「そうだよ! プロデューサーさんには、
 今年もちゃんと元気にお仕事してもらわないとね!」

P「育……。そうか、ありがとう。
 こんなに美味しいサラダを作ってもらったんだ。一年間、しっかり頑張らなきゃな!」

育「あ、でも無理はしちゃダメだよ?
 体調管理もお仕事のうちだって、桃子ちゃんも言ってたし!」

P「ああ、もちろんだ。よし、じゃあまずはこのサラダを完食させてもらおう!
 しっかり栄養を取らないとな!」

育「えへへっ……。うん! よくかんで食べてね!」




P「……」

P(美味かったけど……確かにサラダは美味かったけど……。
 育の優しさも嬉しかったけど……)

P「なんだってこんなタイミングなんだ……!
 くそっ、もう日暮れまで時間がないぞ!
 今日の夕方から千早のスケジュールはびっしりだし、今すぐ千早に電話しなければ……!」

奈緒「あっ、おったおった! プロデューサーさーん!」

P「三回目!?」

奈緒「うん? なんや、まだ何も言うてへんけど、わかってもうた?」

P「ってことはやっぱり……!」

奈緒「そのとーり! さ、プロデューサーさん! 三回目の初詣、行きましょ!」

P「いやいや、流石に三回は多いだろ! しかも同じ相手とって!」

奈緒「まーまー固いこと言わんと。何回行ってもえぇもんやで♪
  仕事少ないんは私も今日までやし、今年最後と思うてプロデューサーさんと……」

P「お……俺は千早と一緒に行きたいんだよ!
 なんで奈緒と三回も行かないといけないんだ!」

奈緒「へっ……?」

P(はっ! し、しまった、つい本音を……!)

奈緒「千早と……そ、そっか、そやんな。
  プロデューサーさんは千早の担当なんやし、担当アイドルと行きたいやんな……」

P「い、いや、今のは……」

奈緒「あ……なんや、分かってしもたわ。
  昨日も一昨日も、プロデューサーさん見てるだけでお願いせーへんかったのって……。
  お願いは、千早と一緒に、するつもりやったんやな……」

P「っ……」

奈緒「……あははっ! すみません、プロデューサーさん!
  私、一人で浮かれてしもうて……あかん、メッチャ恥ずかしいわ!
  プロデューサーさんの気持ちも考えんと、わ、私一人で楽しんで……!」

P(何を……何をしているんだ俺は!
 自分の我侭のためにアイドルにこんな顔をさせて……!)

奈緒「ホンマ、すみません! 私、今日は家で大人しくしときます!」

P「奈緒……!」

奈緒「プ、プロデューサーさんは千早と初詣行ってください!
  ほな、また明日劇場で……!」

P「待ってくれ、奈緒!」

奈緒「! プ、プロデューサーさん……?」

P「すまない……俺が悪かった。さっきの言葉は忘れてくれ。
 今から一緒に、初詣に行こう!」

奈緒「で、でも……。プロデューサーさんは、千早と一緒に行きたいんやろ?
  無理して私に付き合うてくれへんでも……」

P「無理なんかしてないよ。一緒に行こう、奈緒」

奈緒「む……無理ですよ! 私が無理なんです!
  だって私もう、知ってもうたんやで!?
  プロデューサーさんが楽しんでへんって……!
  せやのに、そんなんで一緒に行ったってなんも…!」

P「違うんだ、奈緒。楽しかったんだ……。
 奈緒との初詣、昨日も一昨日も、すごく楽しかったんだよ!」

奈緒「え……?」

P「でも、だからだろうな……。多分、怖かったんだ。
 奈緒との時間が楽しすぎて、担当である千早のことを忘れてしまいそうになるのが……」

奈緒「プロデューサーさん……」

P「でも、奈緒のおかげで思い出したよ。確かに俺は千早をメインにプロデュースしてるけど、
 765プロ全員のプロデューサーでもあるんだ……。
 仕事の量に差はあるかも知れないけど、その他には何も、差なんてなかったんだ。
 千早を理由に他のアイドル達を蔑ろにしていい理由なんて、どこにもなかったんだ!」

奈緒「ホ……ホンマに、ええんですか……?
  差はない言うんやったら、それこそ私と三回も行かんと千早と行った方が……」

P「千早にはまだ初詣の話すらしてないからな。
 誘ってくれた奈緒と一緒に行くのは当然だよ。だから、もう気にしないでくれ」

奈緒「っ……も、もう。ここまで言われて私が断ったら、逆にアカン感じやないですか……。
  わかりました、一緒に行きましょう! 私は目一杯楽しませてもらいます!
  せやからプロデューサーさんも今までで一番楽しまなアカンで!」

P「もちろんだ! 三回目の初詣、どっちが楽しむか勝負だぞ!」




P(そうして俺と奈緒はようやく本当の意味で、二人での初詣を終えた。
 昨日と一昨日はただ見ていた俺だが、今日は奈緒の隣で、一緒にお願いをした。
 三回目の初詣で見せた奈緒の笑顔は、一度目よりも二度目よりもずっと輝いて見えた。
 奈緒には感謝しなければいけない。俺がこの笑顔を曇らせるような、
 そんな駄目なプロデューサーになってしまうのを、止めてくれたのだから)

P「さて……これで連続して取れたオフも終わりだ。
 また千早のプロデュース、頑張ってやっていこう!」

千早「……プロデューサー?」

P「うわっ! ち、千早、いつからそこに!」

千早「今来たところです。それより……少し、独り言が大きいかと。
  気持ちは嬉しいのですが、独り言で名前を出されるのは、恥ずかしいです」

P「す、すまない、次から気をつけるよ」

千早「そうしていただければと」

P「あ……そう言えば、メールでは言ったけど直接言うのはまだだったよな。
 千早、あけましておめでとう。今年もよろしくな!」

千早「はい。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

P「よし、新年の挨拶も終わったところで早速仕事に……って、千早? どうかしたか?」

千早「あ……いえ、その……」

P「? どうした、何か言いたいことがあるのか?」

千早「言いたいことというか……。実は少し前に、横山さんに会って……」

P「え?」

千早「その時に、聞きました。
  この三日間、初詣に行くためにプロデューサーが私を探してくれていたのだと」

P「ええっ! そ、そうなのか?」

千早「……すみません、プロデューサー。私、そうとも知らずに……。
  その、言いにくいのですが、実はもう、春香たちと……」

P「あぁ、やっぱり……」

千早「プロデューサーにも声をおかけしようかとは思ったのですが、
  せっかくのオフに私用に付き合わせるわけにはいかないと思ってしまって……。
  プロデューサーも私を探していたのだと知っていれば……すみません」

P「い、いや、千早が謝ることは何もないよ。
 今年はタイミングが悪かったんだ。また来年、行けばいいさ」

千早「……来年でないと、駄目でしょうか」

P「え?」

千早「三が日は、確かに終わってしまいましたが、
  15日までに行けばいいという考えや……
  そもそも初詣に期限はないという考えもあるそうなんです」

P「そ、そうなのか? それは知らなかったな……」

千早「ですから、何も来年まで先延ばしにする必要はないかと。
  それに、春香たちとは行きましたが、『プロデューサーとの初詣』は、まだですから……」

P「! それじゃあ……」

千早「私は、プロデューサーに声をかけていただければ、いつでも……。
  あ、あくまで、プロデューサーがまだそのつもりなら、ですが」

P「千早……」

P「あ、あぁもちろん、俺の気持ちは変わってないぞ!
 いつになるかは分からないが、次のオフに必ず行こう!」

千早「! ええ、私も、楽しみに待ってます」

P「よし、気合も入ったところで仕事に行くか……!
 改めて今年もよろしくな、千早!」

千早「ふふっ……はい。よろしくお願いします、プロデューサー」

P(そう、何も焦る必要なんてなかったんだ。
 この時期に千早と初詣に行けなかったからって、
 何も千早のプロデュースが終わるわけじゃない……。
 初詣はいつか必ず行ける。
 これからもずっと、俺は千早のプロデューサーなんだからな!)



  おしまい

実話です。
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした。

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