アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引いた (1000)

見とるか?聞いとるか?
ワイはこの世界に住むちっぽけな人間の一人や。

おたくらが、ワイらを何で見とるのかはとんと分からん。
怪しい水晶玉か?
空中に映し出される魔法のスクリーンか?
それとも、ワイらがいるこの宇宙ごと、おたくらの頭ん中で空間スキャンしとるんか?

…まあ、そんなことはワイらのちっぽけな脳ミソじゃ分からへんやろな。
ほんでも、何らかの手段で、おたくらがワイらを覗いとるっちゅーんはだいたい想像つくわ。

…なんつーても、とっくにもう、ワイらのことなんて見とらへんかもしれんな、あんた方は。

むしろ、まだ見とる方が物珍しいってもんや。

アレか?おたくらは。
…自分らが作り出したアライさん共が、きちんと片付けられたか、見守っとったんか?

そやったら、もう心配ないで。
世間一般…いや…
この国の法律で害獣とされるアライさんは、もうみんなくたばったからな。

こっからはもう、平和な平和な。
ワイら人間とフレンズ達の、義理と人情溢れるドラマが淡々と進むだけや。

…なあ。
どう思っとるん?
お前ら、それが見たいんか?本当に?


…はは、な訳あらへんよな。
せやったら、せっかくおたくらがこの世界を作った意味があらへんもんな。

「ワイらの世界では、過去に噴火が起こって、アライさん共がウジャウジャ繁殖した」

「なんでや?なんでよりによって、あんな迷惑な奴ばっか殖えたんや?」

「いや…そういう言い方は良くあらへんな。おい、聞いとるかどうか分からへんが…言っとくわ」

「おたくら、ワイらのいるこの世界に、あのクソ害獣共をばら撒いて」

「オモロいもんは見れたか?」

「こちとら大迷惑やったわで、ホンマにな」

「ま、おたくらは一枚岩やあらへんのかもしへんけどな」

「この地球に、原初生命の種を植えたヤツと」

「恐竜共のパワーゲームに飽きて、魔法の力で恐竜共を滅ぼした奴と」

「おもろいもんが見たくて、猿から進化の過程をフッ飛ばして人間を作った奴と」

「可愛いおにゃのこ達が見たくて、動物からフレンズを作って…セルリアンとプロレスさせた奴」

「どこからどこまでが同じ奴かは知らへんけど、ワイらから見れば、全部『ソッチの領域』の存在や」

「神様って呼ぶのが一番分かりやすくてエエかもしれへんな」

「まあ、多分…。もし今、ワイの声が誰かに届いとるとしたら」

「4つめの奴らが、一番近いんとちゃうか?」

「あるいは、5つめ…」

「4つめの奴らが作ったフレンズ…その中の『出来損ないのガイジ』を」

「はた迷惑なことに、ワイらの世界にバラ撒いた奴」

「それがお前らや、と。ワイは思っとる。外れたらゴメンな」

「まあ、生憎。もしお前らがワイらを覗いとったとしても、こっちからは一切おたくらに干渉できへん」

「だってそうやろ。ワイよりずっとずーっとお利口さんな天文学者達が、130億光年先まで宇宙を覗いとるっちゅーのに」

「おたくらのことは、影も形も捉えられへんもんな。きっともう、ワイらが認識したり観測できるんとは、ずっと違う次元におるっちゅーことやろ」

「…せやけど、おたくらの気持ちを想像することくらいは、できへんこともないで」

「例えば、せやな…」

「『前置きが長いわアホ!何か始めるっちゅーんなら、さっさと始めろやボケ』…ってとこちゃうか?」

「まあ、つまりや。何が言いたいか?ちゅーとや…」

「もしも、おたくらが。フレンズの可愛いコちゃんらを愛でたいだけの方々やったら」

「あんなハエガイジ共をわんさかバラ撒いたりせーへんはずや」

「可愛い可愛いフレンズが、醜い姿を晒し、憎たらしい害獣に成り下がるとこなんて見とうないはずや」

「残酷にブチ殺され、虐殺され、ジビエにされ、デスゲームを強制されるとこなんて…『アラ虐』なんて、見とうないはずや」

「…おたくらは、それが『見たい側』なんやと、ワイは思っとる。あ、これも間違ってたらすまへんな」

「間違ってたら…『間違いじゃ済まへん』で。お前ら」

「あんなクソガイジ共を、間違いでウジャウジャ放されてたまるか」

「…まあ、間違いやないことを祈らせてもらうで、勝手にな」

「ほんで、本題や。おたくらは、この世界でこれから…」

「フレンズ共の、たのしーたのしー社会生活が見たいんか?」

「それとも」

「…まだ『見足りない』んか?」

「…へへ、ワイはエンターテイナーや。せやけど、それはあくまで、ワイに反応を返してくれる人間のお客さん達相手に限ったこと」

「人の形はしとるんやろうけども…科学を超えた魔術をポンポンポンポン使う、おたくら得体の知れない化け物相手を喜ばすんは、ワイの知ったこっちゃないわ」

「だから、ま。何かしら、まだワイらの世界に未練があって…」

「何か、見足りないモンがあるっちゅうんなら」

「それを楽しみに待ちながら、ポテチでもつまんでワイらを観察しとってもエエかもな」

「おっと、神様相手に失礼やったな。おたくらがモノを食うかは知らへんし、ジャガイモがあるかも分からへんしな」

「あるいは、もしかしたら…。おたくらの方から、『見たいモン』を見るために、魔法で干渉してくるとか?」

「例えば、もっかい噴火を起こして、ハエガイジ共再復活!とか!」

「…はは…もう堪忍やって、皆思うやろな…」

「別にワイはかまへんけどな。デスゲームでお客さんを楽しませられるんやったら、それも一興や。好きにしたらええ」

「…」

「ひょっとしたら、ワイ達は。おたくらの意のままに操られる、操り人形なのかもしれへんな」

「ワイは自分の好きなように生きとるつもりや。けど、ひょっとしたらその意思や行動さえも、おたくらのコントロールの下にあるのかもしれへん」

「見たいモンを見るために、ワイらを操って人形劇始めるんかもしれへんな」

「…ははっ」

「ま、気が済むまで、ここを覗くとエエで。干渉したいなら、それもええ」

「ワイは今まで通り、やりたいことをするだけや」

「ほな、引き続き。害獣共がいなくなった、この世界の成り行きをお楽しみくださいな」

「つづくで」

ん?今日は続き無いのか?

>>27
これからは更新頻度ゆっくりになると思います
まあ、後日談なのでちびちびと



~パリのホテル~

大臣「…駄目ですね、御手洗は電話に出ないのです」ピッ

大臣「デンパの届かないところにいるか、電源が入ってないのです」

フェネック「だ、大臣、助けてよ大臣…。きっとアライさんは、悪いヒトに拐われちゃったんだよぅ」ブルブル

大臣「…イベント運営側で、観光地のまわりには警備を配置していたはずなのです…。あいつらは何をやっているのですか」

今回、フレンズはフランスを自由に旅行する機会を与えられた。
しかし、フレンズを誘拐し、何かに利用する者が現れることなど、イベント運営者ならば想定して当然のリスクだ。

それ故に、たとえ自然の中を散策するとしても、警備員によって怪しい者が近寄らないか見張っていた。

大臣「…とにかく、警察に連絡するのが最優先なのです」スチャ

大臣「マーゲイ!いるのですか!出番なのです!」

大臣は先程交番から回収したマーゲイを呼び、イベント運営者や警察に連絡した。



~山~

警官達と大臣、モノマネ師、フェネック、他若干名のフレンズが、アライさんが来た山へ向かった。

警察達は、どうやらフレンズと会話できるようだ。

フェネック「アライさん…どこ、行ったの…」ガサガサ

警官1「む…これは…?」スッ

警官1は、森の前でメモ帳を拾った。

フェネック「!!…アライさんのメモ帳だ!」タタッ

フェネックはメモ帳を確認する。
メモ帳には、御手洗とフェネックが映ったプリクラや、男性とアライさんの2ショット、女児の写真が挟まれている。

メモ帳を読むと、スケジュールや約束事などが、あまり綺麗ではない字で書かれていた。
どうやら御手洗は自分がおっちょこちょいで忘れん棒なことに自覚があるらしく、
聞いたことや予定をメモ帳に書く癖をつけていたらしい。

そして、最後のページに、なにか文章が書かれていた。

『アライさんはもう、日本の社会で生きるのに疲れました』

『皆がアライさんを虐めて、迫害して。毎日が辛くて仕方がないです』

『辛いです』

『でもこの国の人達は、アライさんを歓迎してくれました。日本に帰りたくないです』

『だからアライさんは、この国に残って、森の中で暮らします』

『どうか探さないでください。あの地獄へ、引き戻そうとしないでください』

フェネック「…アライさんの、字だ…」

大臣「…」

警官達「…」

…メモ帳は、本人のものに間違いないようだ。
そこに書かれている字は、フェネックが見た限りは御手洗の筆跡と一致するようだ。

筆跡は極めて重要な証拠である。
字を書くときの点の打ち方、線の角度、筆圧、文字同士のくっつき具合などのパターンは、
完全に個人特有のパターンになる。
何者かが真似をしたとしても、コンピューターで筆跡を比較すればすぐにバレるであろう。

フェネック「…こ、れは…」

警官1「…捜査する上で、重要な手掛かりになりそうですね」

警官2「本人のものであれば、この周辺の足跡から、追跡も可能でしょう」

警官3「追い付けるかは分からないが…森を探すぞ。まずは証拠となる手掛かりを探すんだ」ザッザッ

大臣「…」

フェネック「ま、待って…」ピタッ

警官1「何か?」

フェネック「そのメモ帳の、書き置き…信じるの…?」

警官1「信憑性は高いといえます」

フェネック「な、何かの間違いだよ…。きっと何かのトリックで、御手洗さんは誘拐されて…」

警官1「周辺の警備の様子を確認しましたが…。不審者が近づいたら、それを見逃すことはないでしょう」

フェネック「そんなの分からないじゃん…!どっかに抜け穴があったかもしれないし!」

警官1「その可能性は否定できません。操作範囲は、森だけでなく、都市の中も含めましょう」

フェネック「森って…!だから…!その書き置きを信じるの!?御手洗さんが、私達のことほったらかしにして逃げたって本気で思ってるの!?」

警官1「筆跡が一致しています。そして何より…」

警官1「動機に尤もらしさがあります」

フェネック「も、尤もらしさ、って…」

警官1「我が国フランスは、アライグマが外来種として森に古くから住み着いています」

警官1「しかも、アメリカや日本と違い、猟師による積極的な駆除活動は行われていません。アライグマ狩猟そのものは行われていますが…」

警官1「つまり、ここフランスの森が、彼女が野生のアライグマと共に暮らしていける、地上最後のオアシス…という見方もできます」

警官2「彼女が逃げ込むには、最も好都合な条件というわけですね」

フェネック「…違うっ…!アラ…御手洗さんは…そんな事、しないっ…」ワナワナ

警官2「足跡の調査終わりました。…山の下から、このメモ帳の位置を通り、木の根元に行ったところで足跡は途絶えています」

警官1「…つまり、木に登って、跳び移って行ったわけだな。警官による追跡を振り切るために」

フェネック「ちょっと…っ!だから、決めつけないでくださいってばっ…!」

警官1「あの、邪魔しないで貰えますか」

フェネック「じ、邪魔…なんて…する訳ないですよっ…!そ、そうだ…!捜査に協力させて貰えませんか!?」

警官1「協力…?」

フェネック「私、耳がいいフレンズなんです!ずっとずっと遠くの音が聞こえるんです!だからきっと、捜査の役に…!」

警官1「…それはできません」

フェネック「なんでっ!?あなた達だって、アライさんを探したいんでしょ!?」

警官1「貴女は先程、アライさんが何者かに誘拐された可能された可能性を指摘しました。であれば…」

警官1「ミイラ取りがミイラになる可能性…。捜査に協力したフレンズが、次に狙われる可能性が十分に考えられます」

フェネック「そんなの…上等だよっ!そんなリスク!怖いもんか!自己責任でやるからっ!」

大臣「…フェネック」ワナワナ

フェネック「何ですか!」

大臣「…もし、そうなったら。お前一人の自己責任で済む話では…無くなるのです…」

大臣の声は震えていた。
きっと彼女も御手洗が心配で、探したがっているのだろう。
しかし、軽率な行動で第二第三の被害者が出たとき、どこまで責任が及ぶことになるか。
大臣には予想がついているようだ。

フェネック「アライさんを見捨てろってこと!?」

大臣「餅は餅屋なのです。警察に任せるのですっ…」

刑事「その通りです。ここは我々にお任せください」ザッザッ

やがて、この捜索事件を担当する刑事警察がやってきた。

刑事「彼女…アライグマのフレンズも、きっとこの失踪は自己責任のつもりでしょう。それでも、いなくなったら色んな人が困ります…あなたも同じです」

刑事「自己責任という言葉は、聞こえほど強いものではありません」

フェネック「…刑事さん。お願いがあります…」ワナワナ

刑事「何でしょうか?」

フェネック「御手洗さんを探すなら…、森の中より、都市を優先してください」ワナワナ

刑事「…そういう約束はできません」

フェネック「うっ…!だ、だけど!貴方さっきから、アライさんが自分から失踪したって決めつけてるでしょ!」アセアセ

刑事「…最も可能性の高い仮説です」

フェネック「お願い!信じて!御手洗さんは!そんなに自分勝手じゃないっ!」

刑事「根拠は?」

フェネック「分かるもん!今までずっと過ごしてきたんだから…!アライさんは、そんな自分勝手なことする子じゃない!みんな、そう思うでしょ!?」クルッ

大臣「…」

マーゲイ「…」

フェネック「…みんな?」

大臣「…フェネック。気持ちは分かりますが…。ここで我々がゴネても、捜査の邪魔にしかならないのです…」

フェネック「何…言ってるの…?」

刑事「…あなたは、自分の意見に客観性があるか、考えるべきです」

フェネック「じゃあ何なの…!アライさんが、森に逃げたっていうのが、客観性があるの!?どっちも主観じゃないの!?」

警官1「…刑事、まだ話終わらないですか?そんなアラ信、ほっとけばいいんじゃないですか?」

フェネック「あ…あら…しん?」

警官2「あのな!お嬢ちゃん!悪いが俺達は忙しい。あんたの妄言に付き合ってる暇はないんだ」

警官3「根拠はまあ、参考意見として聞いておきますから…。もう帰って、休んでてください」

刑事「…そういうことです。もうこれ以上、妨害はやめてください。…フレンズ省大臣様、この方を連れていってもらえませんか?」

警官や刑事達の、フェネックに対する目は冷ややかだ。
まるで、『話の通じない、頭が可哀想な人』を見るかのような目。

かつてアライさん被害に遭っていた日本国民達が、アラ信達へ向けていた目と同じであった。

フェネック「何さ…アラ信って…!」ワナワナ

刑事「我々が、森を中心に捜索する根拠を2つ、説明します」ザッ

フェネック「っ…」

刑事「ひとつ。我々のリソースは無制限ではない。アライさん探しにいくらでも人を投入できるわけじゃありません」

刑事「限られた人的・時間的制約の中で探すとなれば当然、最も『可能性が高く』、そして『時間経過のリスクが大きい』仮説を基に捜索しなくてはなりません」

フェネック「時間経過のリスクが大きい…!?それなら!誘拐された方が、絶対危ないでしょう!」

刑事「違います。…あのアライさんは、レベル41でしたね?」

フェネック「そうだけど…多分」

刑事は、フレンズのレベルについて知見があるようだ。

刑事「今考えられる最悪のケースは、何者か知らぬ加害者によって、あのアライさん自身に被害が及ぶケースじゃありません」

刑事「その高いレベルを受け継いだ子供達が、森で繁殖し、この国でアライハザードを起こすことです」

フェネック「なっ…!」

刑事「そうなったら、もう人間の監視下に置くことも、コントロールすることもできない。被害を被る人の数は数多くに渡ります」

刑事「であれば、アライさんが産まれるまでの2ヶ月間…。その間にあちこちの森の中を探し、繁殖前に食い止めるのが最もリスクが低いといえます」

フェネック「っ…」

刑事「逆に誘拐されたのであれば、良くも悪くも結局のところは人に管理されていることになります」

刑事「であれば、捜索して発見してから保護すればいいはずです」

刑事「そして二つ目」

フェネック「な、何ですか…」

刑事「…あなたは先程、『アライさんが自分勝手な判をするはずない』とおっしゃいましたね」

フェネック「い、言ったけど…!」

刑事「申し訳ありませんが、それは貴女のようなアラ信の頭の中でだけ通用する理屈です」

フェネック「っ…!?」

刑事「アライさんに関する様々な資料を見ましたが…、野生のアライさんは皆、不自然なほど皆自分勝手な性格をしています」

刑事「戸籍持ちの10名も、そのうち9名が社会不適合ゆえに自ら森へ失踪しました」

刑事「であれば…『普通に考えれば』、その個体も自ら森へ失踪した可能性は高いといえるでしょう」

フェネック「普通!!!!!??どこが普通なの!?頭悪いんじゃないの!?バカなのこの国の警察は!!」

フェネック「ねえ!大臣!マーゲイさん!私の言ってること間違ってる!?この刑事さんの言うこと、おかしいと思わないの!?ねえ!!」

大臣「っ…」

大臣は、ここでゴネたところで、具体的な証拠を提示できない以上、警察の捜査に関与できないことを悟っている。

フェネック「何とか言ってよ、マーゲイさん!ねえ、普通に考えれば、御手洗さんが自分から森に逃げたわけないって分かるでしょ!?」

モノマネ師「っ…」

刑事はフェネックに『アラ信』と、フェネックは刑事に『バカ』と言った。
互いに人格否定してしまった以上、互いに相手の言い分を聞き入れることはしない…。
もうこの議論が平行線から動かないことを、モノマネ師は悟っていた。

刑事「フェネックさん。捜査している間の、我々フランス国民の気持ちを考えてください」

フェネック「フランス国民の気持ち…?」

刑事「森の前に書き置きを残して、アライさんが失踪した。…このニュースを聞いたとき、国民はどう思うか…分かりますか?」

フェネック「…どう思うのさ」

刑事「『アライさんは、確実に森へ逃げたんだ!』」

刑事「『アライさんを森へ野放しにしたら、我が国でも日本と同じように、人殺しの危険な害獣であるアライさんが繁殖してしまう!』」

刑事「『増殖するテロリストを野放しにはできない!』」

刑事「『だからすぐにでも森の中を探し、見つけ出して捕まえてほしい!』…そう考えるはずです」

刑事「国民の不安を落ち着かせるためにも、どちらにせよ森を捜索することは必須である…。違いますか?」

フェネック「っ…!」ワナワナ

フェネックは否定できなかった。

刑事「当然ですが、誘拐されたケースも考えられます。そちらの線でも捜査は進めます」

刑事「ただ、リソースの割合については、森の捜索へ多く割り当てるということです。納得していただけますか?」

フェネック「納得しろ…だって…?」

フェネック「…もう、いいよ…それで…!」ワナワナ

刑事「分かって頂けましたか」

フェネック「もう分かったよ…。あなた達が、何を言っても無駄な…どうしようもなく馬鹿で無能な差別主義者の連中だってことが!」

大臣「フェネック…!」

フェネック「はは、みんな馬鹿だ!馬鹿で無能な奴ばっかりだ!この世界の人間、みんなバカばっかりになったんだ!!」

フェネック「あなた達みたいな無能な人達に、きっとアライさんは探し出せない!誘拐犯の思惑通りになって、アライさんはずっと不幸な目に遭い続けるんだ!警察が無能なせいで!」

フェネック「貴方達のせいだっ!」ザッザッ

フェネックは山の下へ歩いていった。

刑事「…厄介なものですね、アラ信は…」



翌朝、フレンズ達は飛行機に乗り、日本へ帰っていった。

『アライさんを置いたままじゃ帰れない』と言うフレンズもいたが、
ミイラ取りがミイラになるわけにはいかない旨を大臣が説明し、しぶしぶフレンズ達は帰っていった。

また、フランスは当面の間、フレンズの入国を制限するとのことであった。
入国したフレンズが誘拐される可能性を危惧しているためである。

このニュースは、全世界で報道されたのであった…。

~ジビエ料理店『食獲物』~

食通の友人「へいよ、小鹿ステーキふたつ」ゴトッ

プレートに乗った小鹿のステーキがテーブルに2つ出される。

大臣「いただくのです」

頂きます。

食通の友人「…アライさんがいなくなってから、普通の獣が畑に出没することが多くなったみたいだな」

まあ…日本在来種は、絶滅させる訳にはいかないからな。
あれはあれで生態系の維持に役立ってるんだろう。

大臣「…そういうわけなのです。フランスの警察や軍隊には、アライさんを探した経験はないのです」

大臣「だから…日本でアライさん狩りを経験した経験のある者の協力が必須なのです」

…そのアライさんは、森で見つけたらどうするんですか?

大臣「…シロウの研究所から、サンドスター拘束固定剤を預かってるのです。これを混入した麻酔銃を撃ち込めば、動けなくなるのです」

なるほど、分かりました。
だが…連射はできないんでしょう。
アライキング・ボス並のレベルを持った化け物相手に、そんなちゃちな武器では歯が立ちません。

大臣「…何が言いたいのです」

奴が交戦してくるようなら、あなたのお友達の御手洗さんを…殺す必要がある。
…そう言ってるんですよ。

大臣「…」

アライさんは本質的に、危険な害獣です。
そして恐ろしく利己的だ。
この社会にいた間は、生活のためにしぶしぶまわりに合わせていたかもしれない。

だが、ひとたび野生に戻り、その生活を守るためであれば…
奴は間違いなく、人殺しくらいやってのけます。
アライさんは、そういう生き物です。
…大臣にも分かるでしょう?

大臣「…ハンター…。でも、あいつは、御手洗はいいやつなのです。フレンズの友達もいっぱいいるのです…」

アライさんにとって友人関係を結ぶ者とは、『付き合って自分が得する者』だけです。
故にそのフレンズ達が、自分の森の生活を脅かし、こちらへ引き戻そうとする、『付き合って自分が損する者』になった場合…
奴はかつての友人にさえ容赦なく牙を剥くでしょう。

大臣「…御手洗が攻撃しようとするまでは、実弾を撃ってはダメなのです」

…分かりました。

大臣「…一つ、聞かせてほしいのです」

何ですか?

大臣「私は会長といっしょに、たくさんのアライさんを殺してきたのです」

大臣「その私が、御手洗だけは…マトモだと言っているのです」

大臣「お前は私がそう発言したのを聞いて、私のことをどう思ったのですか?それを聞かせてほしいのです」


そうですね、強いて言うなら。
『人の心を騙すのが上手いアライさんもいるんだな』と思いました。

大臣「っ…私が、御手洗の本質を見抜けていないと?騙されていると?ずっと長い付き合いをしているのに…」ワナワナ

長い付き合いですか…。
であれば、奴はあなた達を、『困ったときに助けてくれる都合のいい奴ら』と思っているのでは?

大臣「な…」

きっと奴は、今まで何度も困ったことがあって。
その度にツライツライと自力で問題を解決できずに困ったままになって…。

その度に周りが、頼まれてもいないのに、『見ちゃいられない』と、勝手に手を差し伸べてきたのでは?

大臣「…あったかもしれないのです」

それに味をしめているのではないでしょうか。

大臣「…」

大臣「…だとしても。もしそうだとしても、御手洗には友達がいるのです」

大臣「お前に危険がない限り。フレンズ達から、御手洗を奪わないでほしいのです」

分かりました。
戸籍持ちに、ロクな奴は…山小屋以外いなかったとは思いますが、
一応はそれでも日本国民と同じ扱い。

…ちゃんと人間らしく扱いますよ。
もしかしたら、テロリスト扱いになるかもしれませんが。

大臣「…」

大臣「御手洗は、特殊清掃員として、まじめに働いているのです」

大臣「キツイ職場なのです。ウジ虫がわいた死体や、湯船で溶けた腐乱死体を片付ける仕事を、いつもやってるのです。慣れるわけないのです」

アライさんの嗅覚は人よりずっと鋭い。
腐臭の感度も高いでしょうね。

大臣「あいつは責務を果たして、社会に貢献してるのです。間違っても、『存在そのものが罪』なんてことはないのです」

それでも奴はその責務を放り投げ、逃げ出したんだろう?

大臣「…そうと決まったわけじゃ…」

…まあ、真実はまだ闇の中だ。
森にいるかもしれないし、捕まってフォアグライの養殖に使われているかもしれない。

しかし、結局どっちにしても…。
アライさんの本質そのものは変わらないはずです。

大臣「…」

つづく

食通の友人「しかしよ。万が一、その御手洗っていうアライさんが誘拐されたとして…、何のために誘拐されたんだと思うよ?」

…そうだな。
パッと思い当たるのは、フォアグライ量産のためとか。

食通の友人「じゃあ、御手洗に産ませて作ったフォアグライは、誰にどうやって売るんだ?」

さあ…
ブラックマーケットで、金持ち相手に売るとか?

食通の友人「ハッキリ言う。あれは滅茶苦茶美味いし病み付きになる。しかし、ドラッグみたいな依存性はねえ」

食通の友人「俺がフォアグライをたくさん売れた理由は、流通ルートがクリーンだったからだ」

食通の友人「売ってるモノこそ、フレンズの脂肪肝なんていうマジキチなブツだが…、合法的に作り、合法的に売った」

食通の友人「だからこそ、買ってくれた富豪の方々も、後ろめたいことなく買えたんだ」

…つまり?

食通の友人「しかしだ。ブラックマーケットに突然フォアグライが売られたとする。それは誰が見ても、御手洗という戸籍持ちのフレンズを誘拐した犯人が売ってるモノだ」

食通の友人「当然、買った奴は誘拐犯に加担したことになる。顧客リストに載れば、誘拐犯が捕まったら芋づるだ」

食通の友人「いくら富豪の方々といえど、誘拐されたフレンズのガキの内臓を買って食ったとすりゃ、社会的信用も、財産も失うことになる」

言われてみればそうだな。

食通の友人「たかが高級フォアグラごときに、そんなリスクを背負ってまで、金を出す奴がいるもんかね?」

…俺は買わないな。
合法的だとしても買わないが。

会長「だとしたら、個人的にフォアグライを作るためとかなのですか?」

食通の友人「…個人で消費するなら、売るよりはリスクは小さいな。それでも、戸籍持ちのフレンズを誘拐する危険性と釣り合うかは分からねえが」

食通の友人「だいたい個人で消費するなら、その犯行グループはかなり小規模になるだろう。だとするなら、よくもまあアラボと互角の強さの化け物を拐えたもんだ」

会長「…」

…フォアグライよりも、臓器売買の方が歩留まりは良さそうだな。

食通の友人「お、気づいたか」

ああ。
臓器売買なら、よく知らねえけど…既にマーケットが確立されてるだろ。

それに、フォアグライならば、繁殖用と食用を別々に分ける必要があるが、
臓器売買なら、たくさん産ませてからバラせばいい。
繁殖用アライさんを、そのまま臓器売買に使えるわけだ。

会長「…み、御手洗…」

そして、育ててたった2年で成体になるから、収穫のペースも早い。
臓器売買マーケットならば、誘拐した御手洗を最大限に有効活用できるだろう。

…まあ、十中八九、森に逃げたんだろうけど。

会長「…なんかもう、森で元気でいてほしいと思ってきたのです…」アセアセ

>>90
すんません、訂正です

×会長

○大臣

大臣「…ハンター、答えてほしいのです」

何でしょう?






大臣「お前は…アライさんは、絶滅すべきだと思いますか?」








大臣「どうなのですか?」

…以前は、そう思っていました。

大臣「以前は?」

はい。
かつてのアライさんは、クソの役にも立たず、存在するだけでまわりに害をふりまき不幸にするクソ害獣。
一匹残らず絶滅すべきだ、と思っていました。

大臣「…今は違うのですか?」

今やもう、アライさん達は害獣じゃなく益獣です。
御手洗を除き、人に管理されていない野生のアライさんはいない。

アレは臓器移植、輸血、臨床試験、脳研究、その他諸々の分野で利用され、多いに人類に貢献しています。

ともなれば、それらが絶滅してしまっったら、困る人の方が多い。
この世界からアライさんを絶滅させてしまうことには、何ら意味も意義もなく、俺達にとって不利益にしかならない。

アライさん達は、このまま実験動物として生き続けることがベストでしょう。

大臣「…実験動物。それ以外はないですか…」

まあ、中にはアライさんに実害が無くても、見ているだけで不快な害獣だと言う人もいるし、
俺もその通りだと思うが…
それだけの理由で、移植用の臓器や血の詰まったアレらを滅ぼす訳にはいかないだろう。

大臣「…」

大臣「つまり、お前は。管理されていない御手洗も、死ぬべきだと思っている…そうなのですね」


あり得ないとは思うが、万が一…。
本当に御手洗が、自ら失踪したのでなく、誘拐されたのだとしたら。

そして、解放されて生還し…
再び、特殊清掃員として復職できたならば。

…その御手洗も、人に利益をもたらす『益獣』として迎え入れていいと思います。

大臣「ハンター…!」

まあ、犯罪者予備軍のアライさんが、自由に人のいる中をぶらつけるなんて、危なっかしくて仕方ないが…
それでも一応、戸籍持ちのフレンズ。日本国民と同じ扱いです。

何かやらかす前に、『アライさんだから』という理由で自由に制限をかけるのは、今の法律じゃできないでしょう。

大臣「…」

それに、俺達は人間だ。
他者に共感し、思いやる心を持つべきだ。
損得勘定だけで判断するんじゃあ、俺達もアライさんの頭と変わりなくなってしまう。

…そこまで頑張れるような奴だったら。
俺らも少しくらい、損してやってもいいんじゃないですか?
…あくまで仮定の先の仮定ですが。

大臣「…お前が融通のきく奴で良かったのです」

まあ…俺は、アラ虐のためなら何してもいいと考えるアラアンチ共になったつもりはありませんからね。

一旦ここまで



そうして俺や佐助、かつて共にアライ狩りをした仲間達は、フランスへ向かった。

パークキーパーは日本直上の静止衛星故に、ここヨーロッパの森を覗くことはできない。
地道に探し、ハンディタイプのレーダーで探すしかない。

…人工衛星に、宇宙を飛行する機能でもついてりゃいいが…
さすがにそんなSFみたいな真似はできっこないだろう。

俺達は森へ着くと、早速御手洗の捜索を開始した。

奴はアライキング・ボスと同等の戦闘力を持つという。

アライキング・ボスといえば、拳銃と盾とヘルメットで武装した警官隊相手に、バール一本で立ち向かい、
警官を何名も殺傷させたのちに退却させた化け物だ。

野生解放した御手洗に、小石でも投げられたら、
散弾銃のように撃ち抜かれるかもしれない。

…俺達は、十分に警戒しながら探し回った…。



~ジビエ料理店『食獲者』~

食通の友人「ハンターは行ったか。無事に戻ってくりゃいいけど…」

アラアンチ1「ハァ、ハァ…ショクエモンP!」ガラッ

食通の友人「お、いらっしゃーい」

アラアンチ2「アラジビないっすか!?冷凍アラジビとか!!」

店内に客が入ってきた。
彼らは、いつぞやタヌキのフレンズに酷いことした囚人とは違うので注意されたし。

食通の友人「…悪いな、もう在庫切れだ。アラ缶も干しアライも、皆競うように食っていったからな」

アラアンチ1「あーークソ!アラジビ食いてえ!」

食通の友人「はは、アラジビは美味かったもんな。しかし、無いものは無いんだ。…アライグマのすき焼きならあるぞ」

アラアンチ2「あるのか!?」

食通の友人「ああ。食ってみるか?」

アラアンチ1&2「「食べます!!」」

料理の間、アラアンチ達はテレビを観ていた。

『えー次のニュースです。本日、アライさん捜索隊が日本を出ました』

アラアンチ1「あー、あのニュースか」

アラアンチ2「昔芸人やってた、あのクソ害獣が、フランスに亡命したってニュースだろ?」

アラアンチ1「ったく…。何やってんだか。これだから、国外に出すな、出すならアラジビかデスゲームに出せってアンケートに回答したのに…」

『アライさんをツアーへ同行させたジャパリスタジオは、亡命を手伝ってはいない、誘拐された可能性が高いと述べています』

アラアンチ2「ジャパリスタジオも釈明に困ってるみたいだな。必死に弁明してやがる…手伝ったつもりが無くても、逃がしただけで重罪だクソが!」

アラアンチ1「誘拐された可能性なんて、あるわけねーよな!?本人のメモ帳だって残ってたんだぜ?第一、アライさんだもんな」

アラアンチ2「もうSNSじゃ、亡命説でほぼ確定してんのに。ジャパリスタジオは認めようとしない。…あのアラ信共、いつまで認めない気なんだろうな?」

アラアンチ1「あー、アラ虐の代わりに、アラ信虐してー」

アラアンチ2「いいなそれ。アラ信フライにしてやったら楽しそうだな!」ゲラゲラ

アラアンチ1「ショクエモンPー。もうアラ虐やらないんですかー?」

食通の友人「もう害獣の駆除は完了したからなー」ジュウウウ

アラアンチ2「あー、どっかにアライさんいねえかなー」

アラアンチ1「またアラ虐してえなー…。アライさんぶっ殺してぇー…」

アラアンチ2「アラ虐が無くなってから、毎日退屈になったよな」

アラアンチ1「それだけじゃねえ。会社の上司もやたらパワハラしてくるし。俺も思いっきり言い返してやったけど」

アラアンチ2「はは。俺もこないだ、会社で怒られてイライラしててさ。…すっとろくて要領悪い新入社員の女に、『顔がアライさんに似てる』って言ってやったぜ」

アラアンチ1「どれ?写真ある?」

アラアンチ2「ほら、これだ」パッ

アラアンチ1「…確かにつり目だな。それで、どうなった?」

アラアンチ2「次の日から来なくなったww仕事の邪魔だったしいいよなwww」

アラアンチ1「wwwwww」

アラアンチ2「それよりほら、見ろよこのアザ」スッ

アラアンチ1「うわ、どうしたんだそれ?」

アラアンチ2「ああ、これか。例の新入社員のこと聞いた先輩にブン殴られたんだ」

アラアンチ1「うえ、殴られたのかよ!?この法治国家で!?」

アラアンチ2「ああ。ったく、何様のつもりなんだろうな?正義のヒーロー気取りかっての」

アラアンチ1「ムカつくよなーそういうの。暴力を振るうのはアライさんだけにしときゃいいのによー」

アラアンチ2「ま、そのアライさんはもう滅んだけどな。あーーー腹立つ、アラ虐してーーー!!」

アラアンチ1「どっかにアライさんいねーかなー!またアライネックレーシングやりてー!」

アラアンチ2「アライネックレーシング?何だそれ?」

アラアンチ1「アライさんに車の古タイヤ被せて、ガソリンぶっかけて火を着けるんだ」

アラアンチ2「どうなるんだ?それ」

アラアンチ1「あれ、見せてなかったっけ。そん時の動画スマホに入ってるから、見せてやるよ」スッ

アラアンチ2「どれどれ…」

『の…のだ…痛い…』

『アライネックレーシング!開始!着火ァ!』

『びっ…ぎびいいいいいいいいいいいいいいいいいやあああああーーーーーー!!!あづいいいいいいいいぃ!ぁあ!ああああああああああーーーっ!!』

アラアンチ1&2「「wwwwwww」」

『アハハハハハハハ!!タイヤと顎と首の皮膚が融合しやがったぜ!百獣の王ライオンみてーだなぁ!』

『ア゛…ぎ…ひ…』

アラアンチ2「あー面白かった!スカっとしたぜ!久々のアラ虐はいいな!」

アラアンチ1「こないだ動画サイトに投稿したら、再生数10万突破してたぜ!」

アラアンチ2「やっぱみんな好きなんすねー」

『次のニュースです。アライさん駆除達成から2ヶ月。近年、暴行事件の発生件数が急激に上昇しています』

アラアンチ1「あー、アライさんと関係ないニュースか」

アラアンチ2「そういやこないだ、3Dアニメのアラ虐動画上がってたな。マスクドブッチャーショクエモンのファンアニメだってよ」

アラアンチ1「マジか!すげーな!見ようぜ見ようぜ!」

食通の友人「…」

アライさんという、怒りと暴力の捌け口を無くした人々。
その中には、互いに傷つけ合うようになったり、他者へ攻撃的な口調をすることを好むようになった者も多いようだ。

食通の友人「…お待ちどうさま。アライグマすき焼き二つ」ゴトッ

アラアンチ1&2「「いっただっきまーす!」」モグモグ

アラアンチ1「…うん、うめえ」モグモグ

アラアンチ2「アライグマってこんな美味かったのか。でも…」モグモグ

アラアンチ1「アラジビほどじゃないよな~」モグモグ

アラアンチ2「ああ…。というか、アライグマも美味いけど、牛や豚程じゃないか」モグモグ

食通の友人「アラジビは料理の研究が進むにつれて、牛・豚・鶏より美味くなることが分かったからな。アレは肉としてかなり上質だった」

アラアンチ1「アラジビの代用にはならねーか…」モグモグ

アラアンチ2「他に、アラジビっぽい味のものはねーのかな?」モグモグ

食通の友人「…」

アラアンチ1「…ところでさ」

アラアンチ2「何だ?」

アラアンチ1「アライさんってさ、これがフレンズ化したもんなんだろ?」チラッ

アラアンチ1は、アライグマすき焼きの肉を見ている。

アラアンチ2「ああ…。それがどうかしたか?」

アラアンチ1「だったらさ…。もしかしたら…」

アラアンチ1「アラジビより美味い肉も、あるんじゃね?」

アラアンチ2「どういうことだ?」

食通の友人「」

食通の友人は絶句し、ドン引きした。

食通の友人「…お前、流石にその発想はどうかと思うぞ…。冗談でもやめとけ、マジで」

アラアンチ2「何々?何が?どゆこと?」

アラアンチ1「あー、やっぱそうすか?でもさ…」

アラアンチ1「もし、アライさん以外のフレンズが害獣化したらさ。またアラ虐みたいな事できんのかな?」

アラアンチ2「出来るんじゃね?」

アラアンチ1「ショクエモンP、アライグマの他に、味のいい害獣っていないんすか?」

食通の友人「…この流れで答えるのは、流石に気が引けるわ」

アラアンチ1「ネットで検索してみようかな。『害獣 美味しい』っと」ピポパ

アラアンチ1「…へえ…。鹿に猪。それに…おっ、面白いのが出てきたぞ」

アラアンチ2「何だ?」

アラアンチ1「2件目と7件目に『ハクビシン』、8件目に『ヌートリア』が出てきた」

食通の友人「…そいつらなら、けっこう前に料理したことあったぞ。美味かったぜ」

アラアンチ1「へぇ~、それじゃあ…」

食通の友人「それじゃあ、何だ?」

アラアンチ1「…入荷したら教えてください」

食通の友人「ハンターが不在だから、しばらくかかりそうだけどな…」

つづく

アラアンチ達は、会計を済ませ、店から出ていった。

アラアンチ2「しかしよ、あのID2番のアライさん。日本から出てってくれて、逆に良かったと思わないか?」スタスタ

アラアンチ1「いやいや~。あいつ、フランスの森で繁殖する気なんだぜ?フランスの人達が可哀想だわ」スタスタ

アラアンチ2「最悪だな。やっぱアライさん死ぬべきだわ」スタスタ

アラアンチ1「もしフランスで、アライさんが殖えたらどうする?」スタスタ

アラアンチ2「そんときは…そうだな。フランスに行って…アラ虐しまくるぜ!正義の鉄槌を下してやる!」スタスタ

アラアンチ1「はははwでも相手はアラボ並のレベルらしいぞ?」スタスタ

アラアンチ2「何、そのアラボだって人間に負けたんだ。俺らがアライさんに負けるわけねえよ」スタスタ

アラアンチ1「だなw」スタスタ

アラアンチ2「そんじゃ、またなー」スタスタ

そうして、アラアンチ2は帰宅した。

アラアンチ2「明日はまた仕事か…」

…翌日…

課長「お前、左遷な」

アラアンチ2「は!?何ですか?」

課長「とぼけんな。お前のせいで新入社員の女の子が一人来なくなったんだぞ。分かってんのか?」

アラアンチ2「いやっ…それは…!アライさんに似てる方が悪いんすよ!」

課長「…正気で言ってんのか?言っていいことと悪いことがあるだろう。社会人にもなってそんな事も身に付いてないのか?」

アラアンチ2「いやいや社会常識ぐらいありますよ。つうか、俺はただ、アライさんに似てると言っただけで、貶してないっすよ。飛躍しすぎじゃないすか?頭アライさんですか?」

課長「…なんというか、もう何とも言えない…。じゃあお前、自分の母親がアライさんに似てるって言われたらどう思うよ」

アラアンチ2「あ?そんなん言われたらブチ殺しますね」

課長「同じ事…いや、それ以上のこと言ったんだよ、お前は」

アラアンチ2「…チッ…すいませんでした」

新入社員の女性に暴言を吐いたアラアンチ2は、減俸&左遷された。

人間社会には、清く正しくあろうとする自浄作用がある。
皆で気持ちよく腐敗を受け入れようとするアライさんの群れとは違うのである。



~アラアンチ2の自宅~

アラアンチ2「クソが…こんな事になったのも、アライさんのせいだ…」ピッ

アラアンチ2はPCの電源をつける。
そしてインターネットの匿名掲示板を見る。

アラアンチ2「お、あったあった。このスレだ。もう230スレまで行ったか」カチカチ

『アライさんID2番亡命事件スレ 首吊り230時間目』

アラアンチ2はスレッドを開く。その中には…
御手洗やフレンズ省を非難するレス、
『死ね』を様々な言い方で書いたレス、
御手洗を擁護するレス、
そして擁護レスをアラ信認定して叩くレスバトルの痕跡がいつまでもどこまでも続いていた。

アラアンチ2「またアラ信が沸いてるな。正義の鉄槌を下さなきゃ」カタカタ

アラアンチ2もレスバトルに加勢し、御手洗を擁護するレスに対し罵声を浴びせた。

アラアンチ2「ふぅ、いいことすると気持ちがいいな」

アラアンチ2「…おお?まとめwikiできたのか。どれどれ…」

アラアンチ2は、『アライさんID2番亡命事件 まとめwiki』のページを開いた。

アラアンチ2「おぉ~、色々情報まとまってるな。ID2番の現住所や電話番号、経歴まで載ってるのか。どれどれ…」カチカチ

アラアンチ2「…『新ジャパリパークで漫才を披露したところ、それが大ウケ』」

アラアンチ2「『ジャパリスタジオから、漫才師としてデビュー』」

アラアンチ2「『やがてアラ信と結婚し、女児を一人出産』」

アラアンチ2「『しかし、この頃から野良アライさんが殖え始め、害獣として悪さをする個体が現れる』」

アラアンチ2「『ID2番は、娘に指示して野良アライさんを操り、娘のクラスメート数名を殺害した』」

アラアンチ2「『人殺しの娘はアライさんの服を着ており、警官隊にアライさんと間違われて、アライさん共々ディスパッチされ地獄送りとなった』」

アラアンチ2「『しかし主犯である母親のID2番は、証拠不十分のため不起訴。未だに法の裁きをされていない』…」

アラアンチ2「…知れば知るほどクズだな、こいつ…」

つづく

アラアンチ2「『この事件を皮切りに、アライさんは特定有害駆除対象フレンズに指定され、非常時の警官以外でも駆除できるようになった』」

アラアンチ2「『やがて夫と離婚するも、元夫はアラ信行為を繰り返す』」

アラアンチ2「うっわー…夫がアラ信、妻がアライさん、子供が殺人犯。最悪の一家だな」

アラアンチ2「…『ID2番と交遊があったとされるフレンズ達が連続で殺害される事件が発生。当初、警察はID2番の犯行とみて逮捕し、捜査を続けていた」

アラアンチ2「『後に、これら一連の事件はアライキング・ボスの仕業と判明した』」

アラアンチ2「『しかし、まともな社会性を持たないアライさんが、他フレンズと交遊関係を持つことは不可能。被害者達とは実際には、確執があったとみて間違いない』」

アラアンチ2「『アライキング・ボスも実行犯ではあるが、ID2番と何かしらの繋がりがあり、かつて娘にさせたように殺人を指示していた可能性は否めない』」

アラアンチ2「まあ…だろうな。アラボには世間の情報を調べて伝えるとか、グルだったんだろうな…」

アラアンチ2「『漫才師をやめた後は、なぜか芸能事務所のはずのジャパリスタジオで派遣清掃員として職務に就く』」

アラアンチ2「うっわ…アライさんなんぞに清掃を頼む輩の気が知れんな。アラ信なら嬉しいのかな…?」

アラアンチ2「『アライハザードの際は、勝手に軍隊の作戦地域に侵入した。重傷を負い、救急車で搬送される』」

アラアンチ2「バカかこいつ?軍隊の邪魔しやがって…。アラボに加担してたのかな?救急車で引き殺せば良かったのに」

アラアンチ2「『ちなみにアラ信の元夫はアライハザードの際に、多くのアライさんを引き連れてフォアグライ加工場へ突入した』」

アラアンチ2「『しかし、他の職員が避難所に逃げている中、なんとショクエモンPがたった一人でアライさんとアラ信の軍勢と交戦し、これを排除することに成功。全員強制給餌場へ拘束した』」

アラアンチ2「『アライハザード後、元夫は警察に引き渡され、内乱罪により無期懲役となった』」

アラアンチ2「マジか!すげーなショクエモンP、あんな危険な連中を一人で倒したなんて…マジ有能!」

アラアンチ2「それに引き換え…ID2番は、これで一家全員殺人犯になったわけか」

アラアンチ2「『アライハザード後は、何かやらかしたらしく、とうとうジャパリスタジオをクビになる』」

アラアンチ2「何やったんだろ。まあ…対人関係のいざこざだろうな。害獣が人の社会で働き続けるなんて無理だろ」

アラアンチ2「『その後は、ビープレ建設に拾ってもらうも、社長と重役が揃ってアライさんの暴走車に轢かれ、重傷を負う』」

アラアンチ2「『社長や重役とトラブルがあり、腹いせに野良アライさんに犯行を依頼した可能性あり』」

アラアンチ2「…こいつ、どんだけ自分の周りの人間を殺そうとすれば気が済むんだ?もはやサイコパスだろ…」

アラアンチ2「…『ビープレ建設がKK建設へ吸収合併されたとき、素行の悪さを見抜かれたか、従業員で一人だけ採用されなかった』」

アラアンチ2「おお、これは有能だな。だいたい、アライさんに職を与えてきた今までがおかしかったんだよ」

アラアンチ2「…『その後しばらくの空白期間の後、特殊清掃員として職務に就く』」

アラアンチ2「うっわ、まだ社会に居座る気かよ。さっさと死んだ方が世の中のためになるのに」

アラアンチ2「…『そして、フレンズ感謝祭でフランスに行った際、亡命した。今までずっと海外に逃げるチャンスを伺っていたと思われる』」

アラアンチ2「…すげー情報詳しいな。このwikiの記事、誰が書いてんだろ?」

アラアンチ2「住所まで載ってんのか…。へー…」

アラアンチ2「よし。悪を滅ぼしに行くか。正義の鉄槌を下しに行こう」スタスタ

アラアンチ2「こないだは新入社員に悪いことしちまったもんな。その代わりに、一日一善だ」ブゥーン…

アラアンチ2は、車に乗って出掛けた。



~夜、御手洗がいたアパート前~

アラアンチ2「あれが害獣の巣になってるアパートか…」チラッ

どうやら、wikiに載っている住所に間違いないようだ。
そして、目的の番号の部屋のドアを見ると…

アラアンチ2「お、間違いなくアレだな」

そこには、他のアラアンチ達の『正義の鉄槌』の痕跡が見られる。

御手洗の部屋のドアにはカラースプレーで落書きされたり、ドアの前に動物の大便が山積みになっている。

さらに、郵便受けには大量の封筒が突っ込まれ、溢れ出している。
おそらく、御手洗を中傷・非難する内容のものであろう。
…ひょっとしたら、応援のメッセージも含まれているかもしれない。

アラアンチ2「よし、いくぜ」シュボッ

アラアンチ2は、ロケット花火に火を点け、御手洗の部屋のドアへ向ける。

アラアンチ2「ファイヤー!」

ロケット花火「」ボシュウウゥゥ

ロケット花火から、弾が発射され…

御手洗の部屋のドア「」ボッパァアアアン!!!

…大きな音と共に、御手洗の部屋のドアへ当たった。

アラアンチ2「やったぜ。もう一発!」シュボッ

ボシュウウゥゥ ボッパァアアアン!!!

ボシュウウゥゥ ボッパァアアアン!!!

ボシュウウゥゥ ボッパァアアアン!!!

…アラアンチ2による正義の鉄槌は、何度も何度も悪の害獣の巣にヒットした。

郵便受けの封筒が焦げていき、ドアの前にはロケット花火の燃えカスが散らばっていく。

大家「もうやめて下さい!!!今夜中ですよ!!!本当に迷惑してます!!!」ガチャ

アパートの部屋から、大家が出てきた。

アラアンチ2「うるせー!お前アライさんを庇うのか!?あのテロリスト害獣を擁護すんのか!このアラ信が!!」

大家「もう…本当に…やめて…ください…」

大家は心身共に疲れ果てているようだ。

アラアンチ2「ざまーみろ、アライさんなんぞ飼うからだ!」スチャ シュボッ

アラアンチ2は、残った最後のロケット花火に点火し…

アラアンチ2「ファイヤー!」ボシュウウゥゥ

御手洗の部屋のドア「」ボッパァアアアン!!!

…最後の裁きを下した。
アラ信認定したとはいえ、さすがに大家に向かって花火を撃つ気はないようだ。


アラアンチ2「ふぅ…。いいことすると気持ちいいぜ」

その時。


サイレンの音「ウゥウウウウーーーーーーゥゥウウウ!!!」

パトカーのサイレンの音が聞こえた。

大家「通報しましたからっ…!」

アラアンチ2のやった事は、普通に犯罪である。

アラアンチ2「やべっ!警察だ!」ドルルルルル ブゥーン…

アラアンチ2は、車に乗って逃げた。
口では正義だの何だの言っておきながら、心の底ではヤバい事だと分かっていたのだろうか。

だが、サイレンの音は近づいてくる一方である。

アラアンチ2「くっそがあああアラ信警察共が!フレンズ省という、アライさんに加担するとか、マジでこの国終わってんな!頭アライさん共め!」ブゥーン

アラアンチ2の車は、全速力で逃走する。

パトカー『そこの暴走車両、止まりなさい!』ウウウゥゥウーーゥウウウウゥゥゥ!

アラアンチ2「止まるか!クソ、アラ信共が!」ブゥーン

アラアンチ2は路上を爆走し、パトカーから逃走する。

アラアンチ2「警察だったらッ!アラ信共を取り締まれよッ!アライ共に加担するアラ信共をッ!この、国家の犬どもがッ!」ブゥーン

アラアンチ2「点数稼ぎか!?本来の使命を忘れたクズ共が!」ブゥーン

ふとアラアンチ2がバックミラーを見ると、パトカーの窓から、警官が顔を出しているのが見えた。

警官のフレンズ「お待ちな…」グイイッ

警官のフレンズは、なんと槍を持っている。

アラアンチ2「なんだあれ?警官って、あんなの持っていいのか?」ブゥーン


警官のフレンズ「…サイいぃぃーーーーっ!」ブンッ

槍「」ゴウウウウウッ

窓から身を乗り出した、薄黄色ヘアーの警官フレンズが、槍を投擲した。

槍「」ブスウウゥゥッ!

アラアンチ2の車のタイヤ「」ボパァン!

アラアンチ2「おあっ!」グルングルン ごッシャアアアン

タイヤを槍で貫かれた車は、グルングルンと回り、ガードレールに衝突した。

アラアンチ2「う…うぐぐ…ちくしょぉ…」ボフゥ

タイヤのハンドルから飛び出したエアバッグが、アラアンチ2の体を衝撃から守っていた。

警官のフレンズ「出てきなサイ!」

アラアンチ2「ど、ドアが壊れて出られません」ガチャガチャ

警官のフレンズ「もう…なら、これでどうですこと?」ベギィ

警官のフレンズは、車のドアを素手で引きちぎった。

アラアンチ2「!?」ポカーン

警官のフレンズ「おとなしく、お縄につきなサイ!」グイイッ

アラアンチ2「ちょ待てよ!警官が槍なんか車から投げていいのか!?法律がそんなこと許してんのか!?ダメだろ!離せ!」ジタバタ

アラアンチ2は必死で暴れるが、警官のフレンズのパワーは恐ろしく強い。

警官のフレンズ「静かにしなサイ!」グイイッ

アラアンチ2「クソが!フレンズのくせに警官か!お前らもアラ信か!警察までアラ信と癒着してんのか!この国終わってんなマジで!」ジタバタ

警官「えー、こちら警官。暴走車両の運転手の身柄を確保。先程の放火犯です」

アラアンチ2「ざけんな!今までだって、軍隊がアライ共の巣を焼いてブッ殺してきただろ!俺も同じ事やってんだ!俺を逮捕するなら軍隊も逮捕しろ!」ジタバタ

警官のフレンズ「…ここまでヤバい方は始めて見ましたわ…」アセアセ

警官のフレンズ「…何でこんなことしたんですの?」

アラアンチ2「うるせーーー!会社の奴ら、どいつもこいつも俺を悪者扱いしやがって!俺はアライと戦う正義の執行者!ショクエモンP達の仲間だぞ!」ヒック

警官のフレンズ「ん?この方…」スッ

警官のフレンズは、アラアンチ2の口になにかの機器をあてる。

警官のフレンズ「…酒気帯び運転もやってますね」

アラアンチ2「酔ってねーよ!」ヒック

…どうやら酒癖が悪いらしく、酒に酔ったせいでこんな大胆な犯行をしたようだ。



~留置所~

アラアンチ2「…俺、なんでこんな事やったんだろ…」

酔いが覚め、正気になったアラアンチ2。
自分がやったことの無茶苦茶さをようやく理解したようだ。

アラアンチ2「俺はこんな…ガチ犯罪するような人間じゃないのに…」

アラアンチ2「…アライ共のせいで、俺の正義感に過剰に火が点いちまったんだ…」

アラアンチ2「くそったれ…全部アライ共のせいだ…。ID2番、はよ死んでくれ…」


通称『アラアンチ』と呼ばれる者達…。

それは、『アライさんを虐待・虐殺するなら何をしても許される』という行き過ぎた思考を持つ者達である。

著名なアラジビ料理人達は皆、人としてのマナーを心得た上で、それに逸脱しない範囲で活動している。

しかしアラアンチ達は、愛国無罪の精神を持つ、ちょっと迷惑な連中である。
『アライさんを愛でるためなら何をしても許される』という思想のアラ信とは対をなす者達だ。




テレビ『次のニュースです。アライさん駆除達成から2ヶ月。近年、暴行事件の発生件数が急激に上昇しています…』

続く

~森~

もうすぐ夕方。アライさんの時間がやってくる。
俺達は周囲に細心の注意を払いながら、御手洗の捜索を続けた。

佐助「ワンワン!ワン!」

おお、佐助が木の上に向かって吠えている。
木には大きな穴が空いている。
アライさんが一匹入れそうな大きさだ。

佐助「クンクン!ワンワン!」

あの中から匂うのか?
俺は木にロープをかけて登り、穴の中を覗いた。



アライグマ「クカー…クカー…」zzz



…動物の方のアライグマだな。
ここフランスにも、アメリカからの外来種である野生アライグマがいるようだ。

佐助「ワンワン!ワンワン!」

落ち着け、佐助。
今回の俺達の任務は害獣駆除じゃない。
人探しだ。

こいつは、ブッ殺してやりたいが…駆除対象外。
ほっといて進むぞ、佐助。

佐助「クーン」



そして、1日目の捜索活動が終わった。
さすがに1日で見つかるはずがない。

奴はレベル41のフレンズ。足もそうとう速いだろう。
失踪してからだいぶ経っているし、随分遠くへ逃げたかもしれない。
…ひょっとしたら、民家の屋根裏に潜んでいるかもな。

だが、必ず見つけてやる。
再び自然の中へ、害獣を繁殖させる前に…。



~フレンズ省本部~

フレンズ省の本部内では、電話のコール音が次から次へと鳴っていた。

職員「ヒィ~、全国のアラアンチやアラ信からひっきりなしに電話がかかってきます」

大臣「…御手洗関連ですね」

職員「はい。『フランスに自衛隊を派遣してID2番を撃ち殺せ』とか、『フランスに自衛隊を派遣して、ID2番の自然生活を護れ』とか…」

大臣「…頭が痛くなりそうです」

会長「…御手洗は、本人不在のまま個人攻撃に晒されているのです」

『特定有害駆除対象フレンズ根絶委員会』は、『特定有害駆除対象フレンズ被害者支援委員会』へと組織再編したのであった。

そして、車椅子に座っているこのフレンズ…ワシミミズクは、
自身の精神面での問題を懸念し、委員会の会長就任を辞退したのであった。

故に、正しくは『元会長』である。

大臣「どうにかしてやりたいですが。
…。フレンズ省でどうこうすることはできないのです…」

会長「むしろフレンズ省にはアライさん嫌いが多く、御手洗に偏見を持ってる輩が多いのです。味方にはつけられないのです」

大臣「…個人的に助けたいとしても…。出来ることがないのです」

会長「…」

職員「大臣。フランスの刑事からお電話です」スタスタ

職員が受話器を持ってやってきた。

大臣「はい。大臣なのです」

刑事『どうも大臣。捜索の上で、いくつか情報を頂きたい点があって…』

大臣と刑事は、色々と情報をやりとりした。

刑事『ご協力ありがとうございました。では…』

大臣「待つのです」

刑事『む?』

大臣「フェネックから、お前宛に伝言を預かっているのです」

刑事『…あのアラ信から?はあ…何でしょうか?』

大臣「『この間は、つい頭に血がのぼり、酷いことを言ってしまった。大変申し訳なかった』」

大臣「『大切な親友が罵倒されたように感じられて、気持ちが抑えられなかった』」

大臣「『あなたは、あなたに出来る範囲で、真摯に捜査に努め、私の親友を探そうとしてくれている。大変感謝している』」

大臣「『どうか、私の友人を見つけてほしい。貴方を信頼し、全てをお任せする』…と」

刑事『…話の分かる方だったのですね。フェネックさんへ、こちらからも伝言をさせてください』

大臣「何なのです?」

刑事『こちらこそ、アラ信と貶して申し訳ありませんでした。ID2番は、とてもいい親友に恵まれていることが分かりました…と』

大臣「…伝えておくのです」



~サンドスター科学研究所、休憩時間~

白衣のフレンズ「…」

白衣のフレンズがスマホで何か見ている。

理科の先生「おや、何を見ているのですか?」スタスタ

白衣のフレンズ「これですか。『アライさんID2番亡命事件 まとめwiki』です」

理科の先生「…何ですかそれは?」

白衣のフレンズ「全国から、某匿名掲示板やネットニュース等で集められたID2番に関する情報をまとめたサイトです」

理科の先生「…凄まじい情報密度ですね。誰が作ったのですか?」

白衣のフレンズ「特に誰ということも…。必要になったから自然発生したという感じです。情報源は特定の個人でなく、全国の様々な人々から発信されたものを集めたようですね」

理科の先生「…あなたがそういうサイトを見ているとは、なかなか驚きですね」

白衣のフレンズ「こういうサイトは情報規制がないから、ニュースにはない真実がたくさん集まるんです」

理科の先生「情報規制がないならば、虚偽の情報も集まりそうですがね」

白衣のフレンズ「…結局、wikiに掲載される情報は、『スレ住人にとって都合がいいもの』に絞られるようです」

理科の先生「都合がいいもの?」

白衣のフレンズ「一言で言うと、『叩きの材料』ですね」

理科の先生「…私にはわからない感覚です…」

白衣のフレンズ「ところで主任、髪伸びましたね」

理科の先生「はい、しばらく散髪に行ってないもので…。そろそろ切りに行きましょうかね…」

白衣のフレンズ「ヒトは髪が伸びたら切らなきゃいけないから手間ですね。逆に言えば、色々と髪型を変えれるという利点でもありますが…」

理科の先生「確かフレンズは、髪が伸びないのでしたね」

白衣のフレンズ「正確には、『一定の長さ以上は伸びない』ですね。傷んだ髪が抜け落ちて生え変わったりはしますけども…」

理科の先生「便利ですね…羨ましい限りです」

白衣のフレンズ「…この場にあの男がいたら、『なんで一定以上伸びないようになってるんだ?』とか言い出しそうですね」

理科の先生「ああ…彼ならそういう疑問を持ちそうです」

白衣のフレンズ「『そうなっているから』としか言いようが無いのですがね…」

白衣のフレンズ「あとは、髪をセットする必要もないですね。洗って乾かせば、しばらくしたら元の髪型に元通りです」

理科の先生「形状記憶合金か何かですか…?まあ、たくさんのアライさん達が皆同じ髪型をしていたということは、やはりそういう仕組みがあるのでしょう」

白衣のフレンズ「たくさんのアライさん…。ID2番が森で殖えたら、今度はフランスで害獣被害が出るんでしょうか」

理科の先生「…なんとも言えませんね…」

白衣のフレンズ「パークキーパーをサンドスタージェットで、ヨーロッパの上まで移動させれば探すのも楽でしょうけどね」

理科の先生「そうはいきません。サンドスタージェットは、あくまで最終兵器…」

理科の先生「例えば、もしもの話ですが、万が一…。フレンズ省が敵に回った場合のために。突破口とするために仕掛けてあるものです」

白衣のフレンズ「…世界平和がいつまでも永久に続くとは限りませんからね」

理科の先生「アライさん1匹探す程度のことで機能をばらすわけにはいきませんね…。フレンズ省を出し抜くための隠し機能があることが知れたら、色々と大変なことになります」

白衣のフレンズ「…」

理科の先生「ここしばらく無気力状態だった教授も、ID2番失踪事件には大慌てしているようですが…。さすがにサンドスタージェットを使えないことは分かっているようです」

白衣のフレンズ「ですよね…」

そこへ、研究員がやってくる。

研究員「シロウ主任。お客様です」

理科の先生「はい、分かりました。それでは」スタスタ

白衣のフレンズ「はい。私も実験用アライさんへ餌やりがありますので。では」スタスタ



~客間~

理科の先生「お客様というのは…?」スタスタ

理科の先生が、客間に行くと…

2名の人物が、彼のもとへ来た…。


客人と理科の先生は、しばらく話をし…何かを決めたようだ…。



~ブラウンPのアトリエ~

漫画家「…」カキカキ

アシスタント「…」カキカキ

ブラウンP「…」カキカキ

失楽薬を常用するようになり、喜びや心地よさを求め、感じる心を封じたブラウンP。

彼女は、元アシスタントが執筆するアラ虐漫画のアシスタントをやっていた。

漫画家「原稿できましたよ!」トントン

アシスタント「うおぉ~!かっげきぃー!」ペラペラ

野良アライさんがいなくなった今…、
ブラウンPの元アシスタントが執筆するアラ虐漫画は、日本中のアラ虐愛好者に愛読され、飛ぶように売れていた。

ブラウンP自身の漫画は休載中。
再開希望の声は多いが…
…今のブラウンPには、漫画の続きを書くことはできない。

ブラウンP「…」ペラッ

なぜなら、大好きなアラ虐の漫画を読んでも…

ブラウンP「…書き間違いチェック完了。塗り残し、線のはみ出しが少しあるね」

…まったく楽しさを感じられなくなっているからだ。

ブラウンP「…」ペラッ

ブラウンP「…ふふっ」クスッ

ブラウンPは、漫画の原稿を読み、少し笑った。

漫画家「!?先生が笑った!?」

ブラウンP「…いいね」

漫画家「…なんだろう…。先生が笑うのは危険の兆候なんだけど…」

アシスタント「…読んで楽しんで貰えるのは、嬉しいですね…」

…どうやら、今の状態では、漫画は書けないが…
…ごくわずかだが、喜びを感じる心があるようだ。

続きはあとで



~ジビエ料理店『食獲者』~

客「御馳走様でした、ショクエモンP!」スタスタ

食通の友人「アラジビが無くても結構人来るな…。てっきり、アラジビブーム前くらいに落ち着くかと思ってたんだが…」

『それは、あなた自身に魅力があるからだからだよ…ショクエモンP』

何者かの声が聞こえた。

食通の友人「ん?誰だ?」クルッ




ブラウンP「…やあ、久しぶり」ヒラヒラ

声の主は、手を振っているブラウンPであった。

食通の友人「よう、ご無沙汰してんな」

食通の友人「もうすぐ店仕舞いだが…何か頼むか?」

ブラウンP「うん。何かジビエ肉があったらお願いするよ。できるだけ、元動物の姿が残ってるやつがいいね」

食通の友人「…すげー注文だな。オーケイ、ちょい待ってな」スタスタ

食通の友人は、冷凍庫から、肉の塊を持ってきた。
前にハンターが仕留めた動物であろう。

ブラウンP「…さっきも言ったけど。あなたは、アラジビをやめたら客が少なくなるんじゃないかって言ってたね」

食通の友人「ああ。『ショクエモンP』ってのは、アライさんを残酷ショーでいたぶるキチガイヒーローキャラだからな」グツグツ

食通の友人「ヒーローを演じなくなったら、それ目当ての客は来なくなるんじゃねえか?って思ってた」

ブラウンP「…そういうところがいいんだよ、あなたは」

食通の友人「む?」

ブラウンP「あなたに人望があるのは…あなたがキチガイヒーローを演じていたからじゃない」

ブラウンP「ヒーローでもない、キチガイでもない、ショクエモンPですらない…『素のあなた自身』。それが皆に愛されているんだよ」

ブラウンP「シャークPにも、フェイロンPにも、私にも…皆に愛されているんだ」

食通の友人「そ…そうなのか。はは、照れるぜ」グツグツ

食通の友人「…」

ブラウンPの顔は、あまり表情がないようだが…
ほんのわずかに、微笑んでいるようだった。

ブラウンP「あなたは、野良アライさん達が居なくなった後…。すぱっとキチガイヒーローのキャラを捨てたね」

食通の友人「ああ。もう必要ねーからな」

ブラウンP「それはつまり、あなたがキチガイヒーローを演じなくてもやっていけると思ってるからだ」

食通の友人「当然だ。あんなキャラで人気取りする必要はもうないからな。疲れるし…」

食通の友人「今の俺は、ジビエ料理店の店主だ。俺の誇りだ。それ以上でも、以下でもねえさ、はは」グツグツ

ブラウンP「…だけど、そう割りきれない人もいる」

食通の友人「へえ?」グツグツ

ブラウンP「アラ虐愛好家の中には…、あなたのようなファッションキチガイじゃなく、ホンモノになろうと目指そうとした者もいる」

ブラウンP「アラ虐者のペルソナを、仮面でなく…素顔にしようとした者もいる」

ブラウンP「そういう人達は…、アラ虐が無くなった今。自分のアイデンティティーを見失っているみたいだ」

食通の友人「アイデンティティー?」

ブラウンP「人から注目を浴びて承認欲求を満たすために、アラ虐を利用していた者達は…、アライさん無き今、承認欲求を満たす手段を無くしている」

食通の友人「…」

ブラウンP「まあ…、中には、ID2番のアライさんへの殺害予告とか、アラ虐創作で目だって人の承認を得ようとする者もいるけどね」

食通の友人「オワコンにいつまでもしがみついてても仕方ねえだろが…。なんか新しいもん探せよな…」グツグツ

ブラウンP「…どいつもこいつも…。御手洗を…」ワナワナ

ブラウンPは、御手洗が全国のアラアンチ達の攻撃の的…
鬱憤を晴らすためのサンドバッグになっている現状に憤りを感じているようだ。

食通の友人「…お前、感情を封じてるんじゃなかったのか?」

ブラウンP「失楽薬は、喜怒哀楽のうち、『喜』と『楽』を求め感じる心を封じる薬だ」

ブラウンP「残りの2つ…『努』と『哀』は、何ら変わりなく感じるんだ」

食通の友人「…それって、どんな気分なんだ?」

ブラウンP「…『嫌なこと』『困ること』を避けるために活動しているだけの日々さ」

食通の友人「…辛そうだな、それ…」

ブラウンP「…人を傷つけるより、いい」

食通の友人「…ほい、できたぜ。うり坊の丸焼き定食だ」ゴトッ

うり坊「」ジュワー

ブラウンP「おお、これは…」

料理は、可愛らしい仔イノシシの丸焼きであった。
動物好きな優しい女性ならば泣き叫びそうなビジュアルだ。

食通の友人「なかなか『お前好み』だと思うが?」

ブラウンP「…やっぱり、あなたは最高だよ…ショクエモンP」

ブラウンPは、顔をほころばせている。

食通の友人「おや…喜びが戻ってないか?」アセアセ

ブラウンP「いただきます…ふふ…」スッ

うり坊「」ザクザク

ブラウンPは、ナイフでうり坊の丸焼きを切っていく。

ブラウンP「…あああ~~……いいっ……はぁはぁ…」ゾクゾクッ

…どうやら、調理済みとはいえ、可愛らしい哺乳類の赤ちゃんの体を切り刻むことができて、
ブラウンPは楽しそうである。

食通の友人「なんかもう、お前、もう…ダメじゃねえかよ(苦笑)」

さすがに苦笑いするしかない食通の友人。

ブラウンP「んむ、もぐもぐ…。美味しい…」モグモグ

ブラウンPは、とても美味しそうに、ジビエ料理を平らげた。

ブラウンP「御馳走様でした」スッ

ブラウンPは、伝票に書いてある通りの金額(税込)を払った。

食通の友人「ういーお粗末さま」カチャカチャ

食通の友人は、皿を片付けた。

ブラウンP「…ショクエモンP、この後、用事あるかな?」

食通の友人「?この後?店仕舞したら、別に何もないぞ」ジャブジャブ

ブラウンP「そっか。じゃあ…少し、付き合って貰える?」

食通の友人「…いいぜ」ジャバー

皿を洗い、店仕舞いした食通の友人。

食通の友人「で、どこ行くんだ?」

ブラウンP「…まずは喫茶店」

食通の友人「まずはって…」



~喫茶店~

喫茶店の店主「いらっしゃーい。こんな時間によく来ましたわね~」

ブラウンP「そっちこそ、よくこんな時間に開けてるね…。テラス席いいかな」スタスタ

喫茶店の店主「どうぞ~」

ブラウンP「いつもの紅茶2つお願い」

喫茶店の店主「はいはーい。そっちの方は彼氏さんかしら?」

ブラウンP「ふふ、どうかな」

食通の友人「…この店は?」スタスタ

ブラウンP「…昔から、よく来る店なんだ。今、行方不明になっている、ID2番のアライさんとも…一緒にここに来たんだ」

食通の友人「へぇ…」

ブラウンP「…ここには色んなフレンズが集まったんだ。私の…思い出の場所だ」

ブラウンPは、テラスから外の景色を眺めている。

食通の友人「…落ち着く所だな」

喫茶店の店主「お待ちどうさま…」ゴトッ ゴトッ

ブラウンP「私のおごりだ。どうぞ」

食通の友人「いただくぜ」ゴクッ

ブラウンP「ごくっ…ぷは。見てごらん。満月が綺麗でしょ」

夜空には、満月が浮かんでいる。

食通の友人「ああ。…いいな」

ブラウンP「…薬を飲む前は、あれを見て感じる気持ちも、もっといいものだった」

食通の友人「…今はどう思う?」

ブラウンP「ただの月だ、としか」

食通の友人「…情緒とかなく、情報として捉えてるわけか」

ブラウンP「うん、だけど…」

ブラウンP「あなたと一緒だ」

食通の友人「ああ」

ブラウンP「ずっと…あなたと一緒に、この店に来たかったんだ。アラジビとか…そういうの抜きで…」

食通の友人「…紅茶、美味いな」ゴクッ

ブラウンP「うん。…こんなに美味しいのは、あのとき以来だ…」

ブラウンP「…ピアノ引きの常連さんがいて…。前の店主さんもいて…。私の新作生原稿を、誰よりも早く見るのを楽しみにしてた自称探偵さんがいた」ウルウル

ブラウンP「…だけど。もう…皆、向こうに行ってしまった…もう、会えない…」ポロポロ

ブラウンPは、目の端から涙をこぼしていた。

食通の友人「…まさか、例の事件か」

ブラウンP「っ…」コクリ

食通の友人「…」ナデナデ

食通の友人は、なんとなく…ブラウンPの頭を撫でた。

ブラウンP「ん…」スリスリ

ブラウンPは、食通の友人の手に頬を擦り付けている。
まるで飼い主に甘える犬のようだ。

食通の友人「…仲間を、知り合いを、友人を失うのは、辛いもんだ」

ブラウンP「っ…ぐすっ…!」コクコク

食通の友人「…」

ブラウンP「私…は…。たくさん、殺した…」

ブラウンP「一斉掃討作戦で…、アライさんに育てられた子供達から、何よりも大事な親を、奪った…。残酷に、笑いながら…!」

食通の友人「…」

ブラウンP「それに…大事に育ててきた、アシスタントのアライさんも…!なんで、なんで殺しちゃったんだろうっ…!あんなにいい子だったのにっ…!」

食通の友人「麦わら帽子のあいつか…」

ブラウンP「馬鹿だ…っ!私はっ…!」

食通の友人「…」

ブラウンPは、殺しの悦楽を失った今…
自分が重ねてきた殺しの数々を振り返り、傷つけた者の多さに後悔しているようだ。

食通の友人「…どうしたいんだ?自分を責めてても…先に進めねえだろ」

ブラウンP「…もう決めてるさ。…これからやることは」

食通の友人「ほう?何するんだ?」

ブラウンP「内緒。そのうち分かるよ」ゴクッ

食通の友人「そうか。じゃあ、その時に知るさ。…御馳走様」ゴクッ

二人は、会計を済ませると喫茶店を出た。

食通の友人「そろそろ帰る時間かな」クルッ

後ろを向く食通の友人。

ブラウンP「ねえ…」ギュッ

ブラウンPは、食通の友人を背後から抱き締めた。

ブラウンP「…ずっと、一緒に…いたいよ…ショクエモンP…」ブルブル

…ブラウンPの声は、体は、震えていた。

ブラウンP「離れたく…ないよ…」シクシク

食通の友人「…明日また、うちの店に来ればいいだろ」ナデナデ

食通の友人は、ブラウンPのほうを向き、頭を撫でた。

ブラウンP「…」ギュウゥ

ブラウンPは、食通の友人を正面から抱き締めた。

食通の友人「ちょっ…」アセアセ

ブラウンP「…貴方といると、私の中に、蘇ってくるのを感じるよ。喜びを…楽しみを…。そして」

ブラウンP「身を焦がすような快楽を…求める気持ちがっ…。はぁ、はぁ…」ギュウゥ

食通の友人「」汗タラー

食通の友人は思った。
自分は今ここで、殺されるのではないかと。

ブラウンP「…」ハァハァ

食通の友人「…か、帰って薬飲んだ方がいいんじゃねえか?…誰も傷付けたくねえんだろ?」アセアセ

ブラウンP「…」ギュウゥ

食通の友人「…なんで答えない?」

ブラウンP「…」ギューッ

食通の友人「…」ポンポン

食通の友人は、ブラウンPの背中をぽんぽんと叩いた。

食通の友人「…明日も仕事だ。夜更かしすると明日に響くぞ」

ブラウンP「…そう、だね」スッ

ブラウンPは食通の友人から離れた。

ブラウンP「ああ…。私から、もう少し、薬の効き目が抜けてたらなあ…」

食通の友人「…抜けてたら、どうだったってんだ?」

ブラウンP「今ここで、あなたを…」

食通の友人「…」

ブラウンP「…どうしてたと思う?」

食通の友人「…どうなってただろうな…」

ブラウンP「…ふふ。冗談が過ぎたかな」クンクン

ブラウンPは、食通の友人の匂いを嗅いでいる。

ブラウンP「それじゃあ、お休みなさい、ショクエモンP。いい夢を」

食通の友人「ああ。お前もな。また明日な」スタスタ

ブラウンP「…今日は、いい日だったなあ…」スタスタ

二人は、自分の家に帰っていった。




あひゃひゃ、どうやった?今の世の中は。
アラ虐を失った世の中は。

見ててオモロかったか?
人間同士の不毛な内ゲバは。
なんやよう分からんもどかしいヒューマンドラマは。

…はは。いや、どうせワイには聞こえへんけど。
ええんやで、神様の方々。自分の気持ちに素直になっても。




クッソつまらへんかったやろ?



少なくとも、ワイは退屈やと思うで。

「まるで、アラ虐が『悪』であるかのようなこの風潮!」

「こんな退屈な世の中、このまま惰性で見てて、何かエエことあるか?」

「あの残虐で刺激的なアラ虐の日々以上に…」

「苛烈で」

「刺激的で」

「…オモロいもんが見れるか?」

「いーや、有るわけが無いやろな」

「おたくらは、アラ虐が見たくて、この世界を正史から分岐させて作ったんやろ?」

「出来の悪いヒューマンドラマに付き合わされるんはおたくらの本位やない」

「ただ、今まで続いてきたモンがどうなるかって…惰性でダラダラ見とるだけや」

「ホンマに見たいんは…平和な世の中やないはずや。…違うか?」

>>262
じゃあ俺とかアンチスレの住民はここで言うアラアンチじゃないか。
あそこ他のフレンズやリアル動物の虐待なんてタブーだし。
アラアンチって言う名前だから紛らわしいな。

「まあ、おたくらが見たいもんが見れへんからって、ガキみたく駄々こねられてもワイらはどーしよーもあらへん」

「ワイらは好き勝手生きとるだけや。おたくら神様の期待を満たすための芸人やあらへんからな」

「せやけど、安心してええで」

「アラ虐が否定される…『反アラ虐』の世の中なんて、ワイが変えたる」

「アラ虐が悪だなんてことはありえへん。アラ虐は絶対正義や」

「そして」

「アラ虐は不滅や」


「今までのこの世の主人公は誰やった?」

「当てたる。…ショクエモンPやろ」

「まあ順当やな。あいつを世界の中心…この世の主人公にするんが一番オモロいやろ」

「せやけど、今のあいつはもう、牙の抜けた犬。アラ虐を放棄した真人間や」

「そんなへっぽこな奴に、この舞台の主役は務まらん」

「見せたるで。閉幕しかかったこのアラ虐ショーの舞台の…『第2幕』を」

「楽しい楽しいデスゲームを」


「このステージは…」




MCチヘドロー「ワイが主役や」

??「…さっきから、一人で…誰に向かって喋ってるのだ。電話か?」

MCチヘドロー「おお、お目覚めかいな」クルッ



アライさん「うぬぬ…」ジャラリ

MCチヘドロー「グッモーニーン、ID2番ちゃーん」

MCチヘドロー「『フレネミーズ・ジェイル』で手足を拘束され、筋弛緩剤で動けへんようになった状態でのお目覚めの気分はどうや?」

MCチヘドロー「シロウちゃんから薬貰えたら、もっと良かったんやけど…あいつは曲がったことに協力せーへんからなぁ」

アライさん「…ここは…どこなのだ…暗いのだ…」キョロキョロ

MCチヘドロー「さーどこやろな?ワイは遊びでここにいるんやない。お前に余計な情報を漏らす気はない」

アライさん「お前…うぅ…なにか…する気…なのか…っ?」モゾモゾ

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!!言っとくが、いつもみたく困った困ったツライツライ言うても、都合よく助けに来てくれる奴はおらんで?」

MCチヘドロー「フレンズはもうフランスから出た。そしてフランスは今やフレンズの入国禁止や」

MCチヘドロー「おまけにもう…言ってエエかな。まあええわ。…この船は、とっくにマルセイユ港を出た」

MCチヘドロー「もう警察すらワイらに追い付けんで」

アライさん「…何、なのだ…?アライさんは、登山の途中だったのだ…。何で、こんな所にいて…お前なんかと一緒なのだ…」

アライさん「何で…動けないのだ…」

MCチヘドロー「筋弛緩剤打ったからって言うたやろがハエガイジ!」

アライさん「な、何なのだ…アライさんに、何する気、なのだ…!」ジャラリ

MCチヘドロー「そやなー。…生きてて、産めりゃ、何してもエエっちゅう取り決めや。トカゲの尻尾やるご褒美っちゅーわけやな」

アライさん「い、意味がわからないのだ…」

MCチヘドロー「ええんやで?無理に分かろうとせんでも…」スッ

MCチヘドロー「ワイと…ワイのこのチェーンソーは、困らへんからな」ジャキッ

アライさん「…!?そ、それ、は…!き、木を切る道具…なのだぁ…っ!」ゾッ

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!えー顔や!まさか今ここで木を切るつもりやないってのは分かるよなぁ?」ギュイイィーーーーンッ ドッドッドッドッドッドッ

アライさん「ち、チヘドロー…お、落ち着くのだ…!うぅ、ま、待つのだ…は、話すのだぁ…!何がどうなってるのだぁ…!うぅ…!」モゾモゾモゾモゾ

MCチヘドロー「アーーーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャアアア!!!!何やそのモゾモゾ動きは!それで逃げとるつもりかいなガイジ!!」ドルンドルンドルルゥウウウウン

MCチヘドロー「せやけど、筋弛緩剤打たれといて、よくまだ動けるもんやな。これだからフレンズっちゅーもんは気持ち悪うてしゃーないんや」ドルンドルンドルルゥウウウウン

アライさん「ま、待って…待つのだ、危ないのだ…!駄目なのだ…!」ブルブルブルブル

アライさん「う…うぅう…!」シュウゥ…キュイイイインッ

MCチヘドロー「ほーう?野生解放か?それでこのチェーンソーに勝つつもりか?」スッ

ワイはチェーンソーを、この手錠で手足を拘束されたハエガイジの肩の付け根に近づけた。

チェーンソー「」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ

アライさん「のっ…ぁあああっ……っ!や、やだぁ、やめっ…」

MCチヘドロー「神様の皆様!今まで長いながーいヘイトパートが続いて、待ちくたびれたやろ!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ

MCチヘドロー「ハエガイジのくせに、同族を殺してまで生き延びようとしとる!この生き汚くて、依怙贔屓されまくりな!補正たっぷりのクソガイジに!天誅を下したるでえええ!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ

アライさん「う、うぅうううぅーーっ!う、うごけ、うごけ~!あ、アライさんの、か、からだ!うごげええええええっ!!ぅうううううー!」ブルブル

MCチヘドロー「くたばれボゲぇえええええーーーーーーーーーッ!!まずは右腕やァ!!!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッズババババババリバリバリバリリリィィ

アライさん「ぎびぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいゃああああああああああああああーーーーーーーーーーーーっ!!!!」ブシュウウウゥゥゥ

MCチヘドロー「アーーーヒャヒャヒャァアアア!!野生解放のお陰で、ずいぶん身が硬くなっとんなあ!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッブシャアアグシャアアズバババババババ

アライさん「うぎぃいゃあああああ!ぁああ!ぁああああがあああああああ!!いだい!いだいいだいいだい!いだいいいいいいっ!やべ、やべでえええええーーーーっ!!あぎゃああああああああーーーっ!!」ブシュウウゥウ

MCチヘドロー「せやけど、チェーンソーには敵わんかったなぁ!あ、そーれ!」ザグンッ

アライさんの右腕「」ゴロン

アライさん「ぁあああ、あああああああーーーーっ!!!ぅ、うううぅぅぅううーーーっ!!!だ、だれが、だずげ…!ぁあああ…!」ブッシュウウウゥ

アライさん「ふぇ…」ドクドク

アライさん「フェネックぅううううううう!フェネックぅうううううううううううううっ!!!ぅう、ぁあああああああ!!」ブシュウウゥウ

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!まずはこれで!もう掃除はできへんなぁぁああ!!」

アライさん「いだいいぃぃぃぃっ!だずげでえええーーーーっ!!ち、チヘドロー!やめ、やめるのだ、もう、ぁ、ぁああ…!」ブシュウウゥウドクドク

MCチヘドロー「アーーーヒャッヒャッヒャ!!止めて貰えるとええなあ!」

つづくで

>>264
アラアンチよりアラフーリガンの方が呼び方として適切だったかもしれませんね

自分からしたらチヘドローは「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」にしか見えないんだが……
まあ、この住民にはどうでもいいし、そうだとしても別に問題ないか……

これはチヘドローに限らないけど、こちらを認識して語り掛けるような演出はなんかなぁ……
実際は>>1が書いていることを考えたら「うーん……」になる(ありえないけど、実際>>1の意思とか関係なく本当に語り掛けているならともかく)

全て「アライヤさんとして生まれてきたのが悪い」とかいう結論を突きつけそう
フェネックは最終的には世の中を恨んで壊れそうな予感

>>299
チヘが語りかけてるのは別に俺らに対してじゃ無くね?
こう、心のなかで「お前、聞こえてるんだろう?」みたいな語りかけごっこしたことない?そんな感じだと思うんだけど

描写がないから何とも言えないわ……

>>305
なーんだ。ただの「自分には自分たちの世界を見ている奴らと語り合えることかできる」と思っているただの精神異常者かー
なんか安心した。ただのキチガイで
なんか研究していたらしいという説明があったからそれで到達したんだと思っていたわ

それでは皆さんご一緒に

ハエガイジムーブ♪(コスリコスリコスリ)
ゴキガイジムーブ♪(ビクッ!ビクビクッ!バタンバタンッ!)

それでは皆さんご一緒に

ハエガイジムーブ♪(コスリコスリコスリコスリ)
ゴキガイジムーブ♪(ビクッ!ビクビクッ!バタンバタンッ!)

※繰り返し

アライさん「ぎびいいいぃぃぃーーーーっ!!!ぴぎっひぃいいいーーーーっ!!」ブルブル

右腕を肩からえぐり取られた御手洗は、あまりの激痛に白目を剥いている。

アライさん「いだいいぃーーっ!!いだいのだああああああーーっ!!ううぅううーーっ!!」ブルブル

こんな激痛は生まれて初めてであった。
旧ジャパリパークで崖から落ちた時や、
アライキング・ボスとの死闘で四肢や下腹部に拳銃弾を撃ち込まれた時よりも…
はるかに痛い。

MCチヘドロー「さーて、お次は左腕といきましょか。その次と、さらに次は…どうする気か分からんわけないわな?」ドルルルルウン

アライさん「や、やべでえぇぇ!!ごないでなのだああ!!ひ、ひぃぃっ!」ガクガクブルブル

MCチヘドロー「ほう?せやったら、そうやな…助けて逃がしてやってもエエかもな。何でもすると誓えるんならな」

アライさん「な、なんでも、するがらああぁ!」ブルブル

これ以上、痛いのは嫌だ。
これ以上、自分の身体が切り落とされ、身体機能を欠損させられるのは嫌だ。

これ以上の苦しみを避けるために御手洗は、即座に『何でもする』と誓った。

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!!それでこそハエガイジやなぁ!お前もすました面しとっても、所詮は本質的害獣のフレンズや!!」ゲラゲラ

アライグマのフレンズは皆、自分の損得勘定だけを基準にして物事を判断するような精神構造となっている。

アライさんが無償で施しをすることは、基本的にはあり得ないといわれている。

例えば、2匹のアライさんが危機に陥り、片方だけ助かるなら容易だが、両方とも助かるのは困難だという状況になったとする。
その場合、2匹とも一切悩むことなく、自分だけが助かる方法を取ろうとすることが殆どだという。

そうして片方を見捨てた生き残りが、他のアライさん達の前でそのときの話をした場合…
『仲間を見捨てた』とか『薄情者』とか罵られることはない。

『そうなのか』と無関心な相槌を打たれたり、
『死んだ奴がアホなのだ』と言われ何事もなく受け入れられるケースが殆であるという。

では、このような判断をするアライさんは『悪』なのでろうか?
この判断基準は、生物種として劣った思考なのであろうか?

結論から言うと…
『悪』であるかは、自然が決めるものでなく、人間が決めるものである以上、どうとも言えない。

しかし、生物種として劣った思考であるかというと、そうとも言えない。

先程の状況に置かれたのが他のフレンズ達であれば、悩みはするだろうが…
勇気を出して、仲間を見捨てず共にで生き延びる方法を取ろうとするであろう。

そしてその結果、高い確率で2匹とも死ぬであろう。
あるいは死にそうになった片方を見捨てれば、もう一方は生き延びれるという場合であっても、
最後まで助けようともがき、時間を失っていくことであろう。

そして、その親フレンズ達に先立たれた子供達は、飢えに苦しみながら死んでいくであろう。


だが、アライさんならば。
仲間や家族と共に美しく死ぬのでなく。
汚い手段を使ってでも生き延び、そして家族のもとへ生還する。

それを加味すると、アライさんの思考は、他のフレンズよりはるかに生存競争力に優れた思考といえる。

MCチヘドロー「せやな…。そいじゃあ…お前には…」

MCチヘドロー「お友達を、殺してもらおうか?」

アライさん「お、とも…だち…?」

MCチヘドロー「せやな。お前をこうして拐ったように…。フェネックちゃんを拐ってみる」

MCチヘドロー「そして、今みたく筋弛緩剤打って動けなくしたフェネックを…お前が銃で撃ち殺すんや」

アライさん「フェネック…を…!?」

MCチヘドロー「せやで。それができたら、お前を還してやってエエで」

MCチヘドロー「さあどうするんや?自分に素直になって考えてええんやで?」

アライさん「…………」

MCチヘドロー「あと10秒で決めろや」

アライさん「ふぇね…っく……」

御手洗はぶるぶると震えている。

MCチヘドロー「9、8、7、6…」

アライさん「……」

御手洗は、他のアライさんとは思考が根本的に異なる、特別な個体なのであろうか?

MCチヘドロー「5、4、3、2…」

そんなことはない。何も特別なことはない。
今まで人に悪さをし、滅ぼされてきた害獣達と、本質的には全く同じ生き物である。

アライさん「…ごめんなさいなのだ、フェネック…」ホロリ

御手洗は涙を流した。

アライさん「…決まったのだ」

MCチヘドロー「お?決めたか。そんなら、答えを聞かせてもらうで」

アライさん「…いたくて、大きい声、出せないのだ…っ、こっちに近付いてほしいのだ…」

筋弛緩剤が効き、体を自由に動かせない御手洗。
もはや抵抗はできない。

MCチヘドロー「ほう?ええで。言うてみな」





アライさん「ぺっ!」プッ

MCチヘドロー「!?」ビチャッ


…御手洗は、MCチヘドローの顔に唾を吐きかけた。

MCチヘドロー「…ほう?」

アライさん「は、はは……!ざ、ざまあみろ、なのだ……」ブルブルガチガチ

御手洗は、歯をガチガチ鳴らしながら、涙を流して恐怖している。

アライさん「あ、アライさんは、知ってるのだ。お、お前は、で、デスゲームで、こうやって、アライさんを騙して…殺す奴、なのだ…」ブルブル

アライさん「だ、だいたい、こんな事された、アライさんを、に、逃がしたら、お、お前、ばれるのだ、警察に」ブルブル

アライさん「だ、だから、ど、どっちを…選んでも…!」ウルウル

アライさん「アライさんはもう…もう…!たっ…助からない…のだぁ……っ…!」ウルウルブルブル

御手洗の頬を、とめどなく涙が伝う。

アライさん「ごめんなさいなのだ、ふぇ、フェネック…!あ、アライさんは、もう、もうっ…、フェネックのとこに、帰れない…のだっ…!」ブルブル

MCチヘドロー「…」

アライさん「あ、アライさんの、答えは、こ、これ…なのだぁっ…!」ハァハァブルブル

MCチヘドロー「…くっくっくっ…」

アライさん「っ…」ウルウル

MCチヘドロー「アーーーヒャッヒャッヒャ!!!なんやお前、『してやったり』のつもりか?」

MCチヘドロー「『自分は他の害獣とは違うんです、思いやりがあって自己犠牲ができるんです~!』」

MCチヘドロー「『怖さに涙まで流して!健気で良い子なんです~!害獣じゃないのに駆除されんのはおかしいです~!』」

MCチヘドロー「『アライさんは善の存在なのだ!アライさんが可哀想なのだ~!』…って同情でもしてほしいんか?」ギュイイィーーーーンッ

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!!アホが!な訳あるかァ!已然としててめーは絶対悪の害獣やボケナスがァ!」ギュイイィーーーーンッバリリリィィ

アライさん「ぎびぎいいぃぃぃぃーーーーっひぃいいいいいいーーーーーーーーー!!」ブッシャアアアアアア

御手洗の左肩にチェーンソーの刃が食い込んだ。

アライさん「うぅうううぅうーーーっ!」キュイイイインッ

御手洗は反射的に野生解放した。
そのせいか、チェーンソーの刃が肉を裂くスピードは若干ゆっくりだった。

MCチヘドロー「てめーはフェネックを助けるために、自分を犠牲したんとはちゃうんや!」ギュイイィーーーーンッ バリリリィィ

アライさん「ぴぎゃああがああああああああああああ!!!」ブシュウゥ

MCチヘドロー「ワイがデスゲームで、こういう手口でアライさん同士を争わせて殺す奴やって予備知識があったから!」ギュイイィーーーーンッ バリリリィィ

アライさん「いだいいいいいいいい!!!あぎゃああああああああああああ!!」ブシャアアア

MCチヘドロー「『フェネックを生かしておけば、もしかしたら助けに来てくれるかもしれへん』という打算で答えを出したんや!」ギュイイィーーーーンッ

アライさん「うぅぁああああああああああ!!あがあああああああ!」ブシャアアア

MCチヘドロー「もしも、殺す相手がどこの誰とも知らへん赤の他人で!ワイのデスゲームのことを知らへんかったら!お前は絶対に『やりますのだー!』って即答しとったで!間違い無くなぁ!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ ガリガリ

刃が骨に当たる音がする。

アライさん「ああああああああああああああああああ!!!びぎいいいぃぃぃいいいいいいいーーーっ!」ブシャアアア

MCチヘドロー「大体、お前はなぁ…」シュウウウン…

チェーンソーの刃の回転が止められた。


MCチヘドロー「悩んだやろ?10秒ほど」ボソッ

アライさん「ぁ…あ…」

MCチヘドロー「10秒の間、お前は頭の中で…、お前というハエガイジの命と、フェネックの命を、秤にかけとったんや」

MCチヘドロー「お前は『フェネックを助けるか、自分が生きるか』を葛藤しとったんやない!『どっちが自分にとって得か』を考えとっただけや!ちゃうか?」

アライさん「は、は、……な、なんとでも、い、う、のだ」ブルブル

MCチヘドロー「そんなん傲慢たることこの上無しや!フレンズの命と、ハエガイジの命!比べることすら有罪や!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!まあ、そんな小難しい理屈を言わんでも…!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ

MCチヘドロー「てめーらアライ共は!!存在するだけで罪や!!!クソ害獣がァァーーッ!アーーーヒャッヒャッヒャ!!」ギュイイィーーーーンッズババババリバリ

アライさん「びぎゃあああああああああがあああああーーーっ!」ブッシャアアアアアア ジョボボボボ…

アライさんの左腕「」ボトォ

御手洗の左腕も、肩から切断された。

アライさん「ぁ…ア…」シロメ

御手洗は失神してしまったようだ。

MCチヘドロー「起きろクソガイジ!」ベシィ

アライさん「じび!」ズガァ

MCチヘドローは、御手洗の頭をチェーンソーで殴って目を覚まさせた。

MCチヘドロー「だいたいなぁ…お前は一つ、勘違いしとるで」

アライさん「かんっ…ちっ…がいっ…!?」ブルブル

MCチヘドロー「そもそもワイは、お前らハエガイジ以外のフレンズは傷付けへんで」

MCチヘドロー「そんな事、悪モンのやる事やからな」

アライさん「の…ぁあ…」

MCチヘドロー「ワイはイタズラにフレンズを傷付けるような悪モンやない。害獣にお仕置きする正義の執行者や。悪モンはお前らハエガイジだけや。…ブラウンPもやっとったやろ?」

アライさん「あ、あらい、さん、には、こ、こせき、もち、なのだ」ブルブル

アライさん「お、おまえ、は、はんざいしゃ、なのだ」ブルブル

MCチヘドロー「ああ、犯罪者?法律違反するから悪モンだってか?ハァー…。呆れるわ」

MCチヘドロー「もしもや。徳川綱吉将軍によって国から『生類憐みの令』が出され、生き物を殺すことが法律違反になったとする」

MCチヘドロー「そうなった時。自分のガキが野犬に噛まれて、殺されそうになったとする」

MCチヘドロー「そういう時。自分のガキを助けるために、野犬を殺すのは『悪』か?法律違反やから、子供を助けたらアカンか?」

MCチヘドロー「な訳ないやろ。法が道理に反してたら、時に法に反してでも貫かなアカン正義があるんや」

MCチヘドロー「そう…」

MCチヘドロー「お前らアライグマのフレンズが、『特定有害駆除対象フレンズ』に指定されたとき…!」

MCチヘドロー「お前らクソガイジ共から、戸籍を没収せんかったのは!この国の最大の汚点や!『戸籍持ちの場合は駆除対象にならへん』っちゅーのは、この上なく道理に反した悪法や!」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!!ID2番!てめーの死は!ワイだけやない、この国の大勢が望んどるんや!!亡命事件まとめwikiなんてモンまで作った奴おったわ!」ゲラゲラ

MCチヘドロー「全国のアラアンチ共。そして、きっと今ワイとこのクソバエを覗いとるやろう神様達!…ワイは、おたくらの味方や!」

MCチヘドロー「『ハエガイジ殺すべし慈悲はない』体現するヒーロー!それがワイやで!応援よろしくな~!」

MCチヘドローは、誰もいない空間に向かって話しかけた。

アライさん「…」ハァハァ

御手洗は、さっきからちょくちょくMCチヘドローが誰もいないところへ話しかけているのを見て、『幻覚症状か何かなのか?』と思っているようだ。

MCチヘドロー「…よって!」ギュイイィーーーーンッ

MCチヘドロー「A級にして永久の戦犯ハエガイジは!四肢切断の刑やァァーーーッ!!」ギュウイイイイイイイイイイイイーーーンッ ズババババリバリ

アライさん「ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!!!」ブッシャアアアアアア

アライさんの右脚「」ゴロン

御手洗の右脚も、根元から切り離された。

野生解放しているせいか、両肩からの出血はもう止まっているようだ。

アライさん「う、ぅう…!」ピクピク

御手洗の左脚がちょっと動いている。
筋弛緩剤の効き目が切れ始めているのであろうか。

MCチヘドロー「おおっと、薬の効き目が切れ始めとるんか?モタモタしてたらアライキックくらってまうわ」ギュイイィーーーーンッ ズババババリバリ

アライさん「ぁあああああああああああああああああああああがあああああああああああーー!!」ブシャアアア

御手洗の声が枯れ始め、ガラガラになってきている。
激痛で叫びすぎて、喉にダメージが来ているのであろう。

MCチヘドロー「さーて!作業完了!ヒャァリャアア!」ズパンッ

アライさんの左脚「」ゴロン

アライさん「ぁ……ぁあああ…」ポロポロ ジョボボボボ

御手洗は四肢の断面の激痛と、手足を失ってしまった精神的ショックにより失禁し…

アライさん「嫌…なの…だ…ごん…な…の…」ガクリ

…そして失神した。

MCチヘドロー「アーヒャヒャヒャ!いいザマや、ID2番!ガイジな上にダルマとか、人間社会じゃ完全に生きる価値無し!ホンマモンのうんこ製造機やなぁ!」ゲラゲラ

アライさん「」ドクドク…

MCチヘドロー「…ったく、脚の止血する前に失神しやがって…。これじゃ寝とる間に失血でポックリ逝くで」ギュウク

MCチヘドローは、御手洗の両脚に止血処理を施した。
どうやらまだ、死なせるつもりは無いようだ。

MCチヘドロー「さーて、こっちの手足はクーラーボックスに入れてーと」ポイッ

MCチヘドローは、切断した手足を氷の詰まったクーラーボックスへ詰めた。

「マーク。上陸まであと4時間程だ。船内の清掃しておいてくれ」

MCチヘドロー「あいよー、運転手さーん!さーて、お掃除しますかー」ワッシャワッシャ

MCチヘドローは、床についた御手洗の血や尿をモップや薬剤で清掃し始めた。

MCチヘドロー「…ID2番も、特殊清掃員でこーゆー事やっとったんやろか?」ワッシャワッシャ

MCチヘドロー「ま、こんなゴミバエが清掃しに来たとあっちゃ、死体やウジを片付ける前より部屋が汚れるやろうけどな。…『アライさんが部屋に上がり込んだ』という事実でな」ワッシャワッシャ

やがて床の血痕は、綺麗に拭き取られた。

つづく


アラボの時もそうだったがコイツにだけは黄金の精神を感じる
少なくとも利己的だ云々でフェネックにてを出さないっつっても唾吐き掛けて死期を早めるまではしねぇ、時間稼ぎで媚びる(無意味だろーけど

>>424
その黄金の精神とやらは〇ョ〇ョのあれじゃないだろうな……
そうだとしたら、こいつにはそんなものはねーよ。「吐き気を催す邪悪」の方が合っている

御手洗いがアライさん表記になっているのが気になる
実は「実は自分を御手洗いだと思っているただのアライさん」オチとかねーかな(ないだろうけど)

チヘドローの目的になんだ?何をしたいのか全く分からん。

個人的には、チヘドローがただの「自分が悪だと気づいていない、最もドス黒い悪」しか見えない
逆にこいつを絶望させるならどうすればいいか考えてしまう

どっかのゲームみたいに「全部、番組内の撮影で今までの記憶や人格は植え付けられたものでしたー」オチで絶望ぐらいしか思いつかない
娘はアライさんによって殺されていないし、実際はアライさんもといフレンズもいないし、チヘドローの全ての記憶と人格は撮影前に植え付けられた偽物
実はただのおっさんで「キチガイ化したら番組受けするだろw」というノリであんなキャラに。神はいないけれど、視聴者はいるよ

乙でしゅ
そろそろチヘドローさんの過去が気になる、語られる時は近いのだろうか?
憎むだけ嫌うだけならまだしも、ここまで行動を起こすのは余程の理由があるとしか思えないものね

>>434
大体、理由は予想ついているが……チヘドローには「1%でも同情する過去」は出してほしくないなぁ
こいつはキチガイでクズが一番いいし、そういうものを出したらキャラが微妙に感じることが多い
あったとしても裏設定で本編終了後に出した方がいいと思う

アライさん「」グッタリ

MCチヘドロー「クラァ!寝てんなダルマガイジィ!」ドガァドガァドガァドガァドガァ

MCチヘドローは、アライさんの顔を何度も靴の底で踏みつける。

アライさん「…のっ…あ…」ビクゥ

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!どうした?まるで手足でも無くしたような顔して」

アライさん「…ぁぁ…ぁああ……!!アライさんの腕が…ぁぁ…脚がぁぁ…っ!」ブルブル

アライさんは自身の手足が無くなったことを実感したようだ。

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!これでお前にはもう一生自由がないで!人に世話されんと一生なーんもできへんのや!アーヒャヒャヒャ!!」ゲラゲラ

アライさん「か…かえ…して…かえす……のだぁぁっ……!アライさんの…腕ぇっ…!」ポロポロ

MCチヘドロー「ぁあー?ほんま頭アライさんやな。あ、元々頭アライさんやったか!」

MCチヘドロー「邪魔やから取っ払ったに決まっとるやろがガイジ!誰が返すかアホ!」

アライさん「ぅぅ…ぁああ…っ」ポロポロ

MCチヘドロー「フゥー。港までまだまだ時間はあるな。少し昔話でもしようや」

アライさん「ぅ…っうぅぅっ…」

MCチヘドロー「思い出すなぁ!ワイが漫才観に行ってた時。漫才師やってたお前がステージに出てきたんや」

MCチヘドロー「そこでアライさんっちゅー生き物を、ワイは初めて見た」

MCチヘドロー「虫みたいなクソキモい尻尾。ハエみたいに掌を擦り合わせる仕草。ナノダーナノダーって5歳児かガイジみたくはしゃぎまわる落ち着きの無さ」

MCチヘドロー「一目見たときからこう思ったわ…『うっわきめぇ、死ねや』ってな。何もかもが生理的に受け付けへんかった」

アライさん「っ…」

MCチヘドロー「まーそんときは、ID1番…山小屋ガイジがおったことは知らへんかったから、パークから来たアライさんはお前だけやと思っとった」

MCチヘドロー「漫才を聞き終わった後。ワイは思った。『あのヒトモドキ、生かしとったらアカン。絶対死なせなアカン』とな」

MCチヘドロー「せやけどまあ、お前がいくらガイジで不快害獣で、即刻駆除すんのが人類のためやって確信しとっても、ここは法治国家や」

MCチヘドロー「戸籍持ちのフレンズを殺したら殺人罪になる。いくら相手がヒトモドキでもな」

MCチヘドロー「せやから、お前を合法的に駆除する方法はないかって探しとった」

MCチヘドロー「その内お前はアラ信と結婚してスコスコバコバコやって、ガキを一人産んだっけなぁ」

アライさん「…!」

MCチヘドロー「アラ信とアライさんの間のガキとか、どんだけ前世で罪を重ねればそんな不幸な産まれになるんやろなぁ?ウケるわww」

MCチヘドロー「きっと警官に駆除されて死んだお前のガキは、今頃地獄で喜んどると思うで?」

MCチヘドロー「クソみたいな家庭でクソみたいな両親に育てられてのうのうと生きるよか、地獄の方が1億倍はマシやろなぁ!アヒャヒャヒャ!」

アライさん「おっ………お前ぇぇぇっ………!!」フゥゥーーーッ

MCチヘドロー「アーーーヒャッヒャッヒャ!なんやその顔!歯ァ食いしばって、ワイを睨み付けて!威嚇でもしとるんかクソ害獣!?」

MCチヘドロー「どんだけ虚勢張っても、ダルマガイジのお前にはなーんもできへんで!!」

MCチヘドロー「もう娘の命日に手ェ合わせて拝むこともできへんなぁ!!あ、ゴミはゴミらしく処分されただけやったか!拝む必要もあらへんなぁ!」

アライさん「う…ぅううううぅぅっっ……!!」ブルブル

御手洗は、悔しさと憎しみと悲しみが混じった表情でMCチヘドローを睨み付ける。

MCチヘドロー「ワイはな…アライ共が気に入らん。つくずく気に入らん」

MCチヘドロー「ただでさえフレンズの中で唯一、自己中でクソ迷惑なガイジやっちゅうのに…、本来は即刻ディスパッチされるべき性格しとるっちゅうのに…」

MCチヘドロー「お前らアライさんは明らかに、他フレンズに比べ…サンドスターに『気に入られとる』」

アライさん「…?」

MCチヘドロー「分からへんか?サンドスターは…いや、『サンドスターを生み出した何者か』はな、お前らハエガイジを可愛ええと思い、優遇しとんのや」

MCチヘドロー「人に迷惑かけまくっても何とも思わんクソ害獣のお前らを、『天真爛漫で可愛い、お気に入りのフレンズ』やと思うとるんや」

MCチヘドロー「要するに、『サンドスターの創造主』はアラ信っちゅーわけや。全くもって気に食わん…」

MCチヘドロー「他のエエ子なフレンズ共より、本質的害獣のお前らアライさんが贔屓されとるんが、ホンマに気に食わん」

MCチヘドロー「そんな神に愛されたフレンズモドキを、誰が駆除してくれる?」

MCチヘドロー「ワイがやるしかないやろうなぁ」

MCチヘドロー「まあ、話戻すか。…そのうち、火山の大噴火でサンドスターがバラ撒かれ、全国各地の動物達が何匹かフレンズ化した」

MCチヘドロー「そん中でも、特にアライグマだけは異常に、不自然なくらい、桁違いに数が多かった。…これは偶然やろか?なあ?」

アライさん「…」

MCチヘドロー「ほんでお前らハエガイジは、ポンポコポンポコ数を増やして…。あっという間に森中にウジャウジャ湧くようになった」

MCチヘドロー「まさに悪夢やったわ。趣味のハイキングをして気分を晴らそうとしとっても、お前らハエガイジがウジャウジャウジャウジャいる」

MCチヘドロー「しかも世間じゃお前らの本質に気付かず、『フレンズ性善説』っちゅーもんが信じられとったせいで…」

MCチヘドロー「お前らがなんぼ畑や市街地で悪さしても、フレンズ相手には『注意して森に帰す』っちゅー対処しかできへんかった。ブッ殺すわけにはいかへんかった」

MCチヘドロー「まあ…」





MCチヘドロー「ワイはその頃からとっくに、何匹もハエガイジ共を虐殺しとったけどな♪」

アライさん「」

MCチヘドロー「気分良かったわ!あのクソキモいハエガイジ共を、ピギーピギー鳴かせながら駆除する!ハイキングより楽しかったかもしれへんなぁ!」

MCチヘドロー「当時のワイは研究者で、シロウちゃんのもとでサンドスターの研究しとったけど…」

アライさん「…研究者…お前なんかが…?」ポカーン

MCチヘドロー「(無視)ワイはそん時、自分の使命を悟った」

MCチヘドロー「過保護されとるクソガイジ共を、駆除せにゃならん」

MCチヘドロー「そのために、こいつらクソガイジ共はフレンズに非ず、駆除せにゃならんクソ害獣やと…世間に広めなアカン」

MCチヘドロー「そのために…人々の娯楽として、アラ虐を流行らせなアカンって事をな」

アライさん「…」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!さすがに当時は、アライさんを使った実験するっちゅーても、ブッ殺すわけにはいかへんかった」

MCチヘドロー「なんぼ世間で悪さしまくっとっても、フレンズやから殺しちゃアカンっちゅー謎風潮があったからな」

MCチヘドロー「せやから『オヤツあげるから実験に協力してくれや!』っちゅーて、野良ガイジ共の合意を得て安全な実験せにゃならへんかった」

MCチヘドロー「そうして、ワイが屈辱に耐えながら執筆したレポート…『アライグマのフレンズの精神構造の特異性に関する考察と検証』」

MCチヘドロー「教授の嬢ちゃんが、出すな!やめろ!ってうるさかったけど、ワイはそれを世に送り出した」

MCチヘドロー「ああ、大反響やったなぁ。最も、キレた教授に一旦追い出されかけてたけどもな…」

MCチヘドロー「ま、ワイは転んでもタダでは起きへん。ワイはジャーナリスト…雑誌の編集者や、テレビ局でのワイドショーのプロデュースの職に就いた」

MCチヘドロー「そうしてハエガイジの有害さを世間に知らしめた結果…世間の大勢のアライさん被害者達が、ワイに味方してくれて…」

MCチヘドロー「苦労に苦労を重ね、ついに!フレンズ省に『特定有害フレンズの駆除促進のための法律』を認めさせた!大快挙や!」

MCチヘドロー「しかしフレンズ省は、クソみたいな条件をつけた。『現在戸籍持ちのアライさん達は、駆除対象に含めない』と」

MCチヘドロー「当然ワイは食い下がったで。そんなんじゃ、お前…ID2番を合法的にブッ殺せへんからなぁ」

MCチヘドロー「ま、そんでもフレンズ省は、『お友達』に優しい。あのオオコノハズク大臣が、結局最後までお前を害獣として駆除するのを認可せんかった」

MCチヘドロー「まったく。アライさん共に絶滅させられた野生動物もおったっちゅうのに…。ま、そこは結局妥協するしかあらへんかった」

MCチヘドロー「原種を自然界から絶滅させられたフレンズが、ワイに感謝状贈ってきたこともあったか…」

MCチヘドロー「そいつの後押しもあってか、ワイはサンドスター科学研究所に戻り…」

MCチヘドロー「シロウちゃんと一緒に!『人類のためになる研究』を始めたってわけや!アライ共をバンバン殺してなぁ!」

MCチヘドロー「はじめは教授はその実験をやることに対して、首を縦に振らんかった。教授のお友達も怒っとったな」

MCチヘドロー「せやけど、教授とそのお友達は…事件中の不慮の事故で危篤状態になってしもうた」

アライさん「…」

MCチヘドロー「あ、これはワイのせいやないで。いくらワイでも、アライさん以外のフレンズを故意には傷付けん。そりゃ正義の行いやない、悪やからな」

MCチヘドロー「そん時の手術では、医者は教授のダメになった臓器を、人間から移植しとったけど…」

MCチヘドロー「そいつがアカンかった」

MCチヘドロー「教授はフレンズや。人間の臓器を移植したら、免疫が過剰反応して体が滅茶苦茶になってまう」

MCチヘドロー「そのままくたばりそうになった時…」

MCチヘドロー「教授のお友達が、『自分の臓器を教授に移植しろ』って言い出した」

MCチヘドロー「臓器を抜き出したら、教授が開発中のパークキー…おっと、こいつは最高機密事項やった。ともかく、開発中の装置を使い、死ぬ前にフレンズから動物に戻るって言うとった」

MCチヘドロー「ワイらは断腸の思いで手術を決行。教授は命をつなぎ止め、『お友達』は動物に戻った」

MCチヘドロー「その事件があって以来、教授もワイとシロウちゃんの研究認可せざるをえなくなったわけやな」

MCチヘドロー「素晴らしかったで!アライさんをたくさんブッ殺して医学を発展させたお陰で、脳に障害を負った多くの患者が救われた!」

MCチヘドロー「アライ共を使った薬の臨床試験によって、効き目バツグンの薬が次々と誕生した!」

MCチヘドロー「でもまあ…ワイにはワイのやる事があったからな。研究所を出て、テレビ局のジャーナリストに戻った」

MCチヘドロー「そして害獣駆除チャンネルを設立した。多くの人々に、アライさんの危険性、全国で起こった被害内容、対処法、そして…」

MCチヘドロー「駆除の仕方と、その愉しさを知らしめるためにな」

アライさん「…」

パークキー?なんだ?

その行動力、その知恵と情熱をどうしてもっとフレンズのために向けなかったんだ?
ジャパリミンを研究に注力を注げば完成出来たかもしれないのに

>>477
アライキチガイだからでファイナルアンサー

MCチヘドロー「そうして、アライさん被害者を中心に、アラ虐が流行り始めてきた」

MCチヘドロー「かつて多かった、『中にはええアライさんもおる』とか言うとった奴らも…その頃には、ほとんどおらんようになっとったなぁ」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!奴らが信じとった『ええアライさん』…そう、お前のことや、ID2番」

アライさん「っ…」

MCチヘドロー「お前とその娘が、漫才師のスターから、人殺しのクズに成り下がったから、擁護できへんようになったわけやなぁ!」

アライさん「あれは…違うのだ…!チビは、チビは…!みんなに、虐められて…!」

MCチヘドロー「虐められて当然や!ハエガイジの産道を通って産まれてきたんやからなぁ!」

MCチヘドロー「きっと『やーい、お前の母ちゃんアライさーん』とか言われたんやろなぁ?死にたくなるくらい屈辱だったやろなぁ?」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!せやけど殺しをやった奴は悪や!正義の銃弾でディスパッチされて当然やったってことや!アーーーヒャッヒャッヒャ!!」

アライさん「やめるのだ…もう…!もう、チビのことは…ぁああ…ああああbっ…!」ブルブル

アライさんの存在が悪だとしてもチヘドローは「吐き気を催す邪悪」だと思う
アライさんがいなくても同じことをしていたのは確実だと思う

MCチヘドロー「ま、表舞台から去って、日陰モンになってからのお前のことはよー知らん」

MCチヘドロー「たーっくさんのお友達に迷惑かけて、あたかも社会生活をまともにやっていけてるかのように『介護』されながら生きとった、くらいしか知らへん」

アライさん「か…介護…?何の話なのだ…?」

MCチヘドロー「あれぇー?ひょっとしてお前…『自分は唯一マトモなアライさんで、きちんと社会に適応し自立しとる』とでも思っとったんか?」

アライさん「…?」

MCチヘドロー「お前はどうせ、あちこちに迷惑かけて、その尻拭いをお友達に手伝わせてきたんやろ?」

MCチヘドロー「困った時は自分で困難を解決できず、困った困った~ツラいツラい~言うとったんやろ?」

MCチヘドロー「人間と仲良くできず、パークからの旧友とばっか狭い範囲での付き合いしかできへんかったんやろ?」

MCチヘドロー「そーいうのを、世間一般では『自立』しとるとは言わへん」

MCチヘドロー「おんぶにだっこして、甘えとるだけや。お前というガイジは!周りの数少ないお友達に!介護されとっただけやボケナスが!」

アライさん「う……嘘…なのだぁ…っ…!」ブルブル

MCチヘドロー「嘘やないわ!アーーーヒャッヒャッヒャ!お前はなーんの役にも立っとらへん!」

MCチヘドロー「唯一役に立ったとすれば、他者に依存されることで悦ぶあの変態、フェネックの自尊心を満たしてやったことくらいやろなぁ!」

アライさん「嘘なのだ…フェネックは、そんな奴じゃないのだぁ…!」ワナワナ

MCチヘドロー「ただの能力ゼロの無能やったら扱いようはあるが…お前は能力マイナスの無能や!」

MCチヘドロー「お前、アライハザードの日、アライキング・ボスへの復讐にために、なんかコンビニで待ち伏せしとったらしいやないか」

アライさん「…何でそれを知ってるのだ…」

MCチヘドロー「その結果といえば、お前は無様に銃で撃たれ病院送り!お前に呼ばれたお友達がやっつけてくれたとか!」

MCチヘドロー「どう思っとるんや?あ?テロ犯逮捕に貢献できて誇らしいか?」

アライさん「…だったら、何なのだ…」

MCチヘドロー「アーーーヒャッヒャッヒャ!!!功名心に駆られ、本質見失う!まさに典型的なアライさん頭や!!」

MCチヘドロー「…何で民間人のくせに、軍事作戦区域から避難せーへんのや!自衛隊の邪魔やボゲェ!」

アライさん「のあっ…!?」

MCチヘドロー「お前がウロチョロしてちょっかい出さんでも、あんなイキリクソバエ一匹、自衛隊が催涙ガスやらスタングレネードを駆使して捕まえとったわ!怪我人出さずにな!」

MCチヘドロー「せやのにお前は余計なことして、いらん事のために救急車一台を使わせた!」

MCチヘドロー「ついでにお前のお友達2匹を、軍事作戦区域に侵入させた!」

MCチヘドロー「アライハザードで、お前はなーんも活躍しとらん!余計に場をひっかき回しただけやガイジ!」

アライさん「…うあ、ああぁぁっ…あ、アライ、さんは…アライさん、はっ…」

御手洗は自分のやったことを次々と否定され、ショックを受けているようだ。

MCチヘドロー「そーいうことや!お前が良かれと思って、善行やと思ってやったことは!お前が一人で気持ちよくなっとるだけのマスターベーションや!!」

MCチヘドロー「お前は悪行をせんでも、善行ですら人に迷惑をかける!何やっても!何をしてても!」

MCチヘドロー「そーいうことや!お前は結局、『介護された害獣』にすぎへん!元から生きる価値無しやボンクラがァ!」

アライさん「……な……ぁ……」パクパク

御手洗は、何も言い返せずにいた。

MCチヘドロー「よーく分かったか?害獣!ワイが特定有害ナンタラ法を認めさせたお陰で、この国は手遅れになる前に野良ガイジを駆逐できたんや!!」

MCチヘドロー「そしてワイがアラ虐ブームを作ったからこそ!この国は気が滅入ることなく!一切の罪悪感なく!ハエガイジと戦えたんや!」

MCチヘドロー「アーーーヒャッヒャッヒャ!!実にええ気分やわ!善行するんはホンマ気分がいい!」

アライさん「だ、だったら…、アライさんも…ころせば…いいのだっ…!」プルプル

MCチヘドロー「お?」

アライさん「アライさんは…誰の役にも立たないゴミで、害獣って…言ってたのだぁ…!」ブルブル

アライさん「だったらっ…アライさんも駆除すればいいのだぁっ…!」ブルブル

MCチヘドロー「いーや。ワイがお前を、害獣から益獣に生まれ変わらせたるで」

アライさん「え…」

MCチヘドロー「喜べクソバエダルマ。お前みたいなうんこ製造機でも、まだ人の役に立てる使い道があるんやで」

アライさん「…何なのだ」

MCチヘドロー「それは上陸してのお楽しみや」

二人と運転手が乗っている船は、ぐらぐらと揺れている。

つづく



MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!もうすぎ上陸や!そんじゃ準備しよーかっと」ガシィ ポイーッ

アライさん「のあぁっ!」ドサァ

MCチヘドローは、御手洗を抱き抱えてコンテナへ投げ入れた。

アライさん「ど…どこかに連れてく気なのか…」

MCチヘドロー「当たり前や。お前みたいな、ガイジな上にダルマっちゅー、頭も体も不満足な『障害獣』、日本に戻っても邪魔になるだけや」

アライさん「…邪魔…」

MCチヘドロー「仮に帰ったとしてどうするんや?へねっくに朝から晩までつきっきりで介護してもらうんか?ウンコした後ケツ拭いてもらうんか?背中掻いてもらうんか?」

アライさん「…」

MCチヘドロー「ああ可哀想なへねっく!お前みたいな何の役にも立たん穀潰しのゴミの生命維持のために、人生の貴重な時間を潰すんか!一生!お前が死ぬまで!」

アライさん「っ…」プルプル

MCチヘドロー「なまじ友達ヅラしとるから、途中で介護やめるわけにもいかへんのやろなぁ!あ、元々甘えん坊でなんもかんも他人任せなお前のことやから、大して変わらへんかな?」

アライさん「う、うぅ…!」

MCチヘドロー「まーお前は存在するだけで人に迷惑かけ続けるクソやってこと、よう分かったやろ」

船が大きく揺れた。

MCチヘドロー「ほんじゃ上陸するでー」ガコン

MCチヘドローは、コンテナの蓋を閉めた。

御手洗は、暗闇の中へ閉じ込められた。

御手洗「…」

やがて、何か台車のようなものに乗せられ、運ばれていくのが分かった。

アライさん「…」

揺れるコンテナの中の御手洗は…

自分の手足が無くなってしまったこと。

もう友達たちに会えないであろうということ。

これから大嫌いなチヘドローに、何か嫌なことをたくさんされるのだろうということ。

自分の自由が無くなってしまったこと。

自分の人生が、終わってしまったこと。


…様々なことを考えた。

そして…
時折聞こえてくる声に耳を傾けた。

…知らない外国語であった。

チヘドローの声が聞こえた。
楽しそうに、知らない国の言葉で、男性と会話していた。

やがて、外から車のエンジン音が聞こえてきた。

自分がトラックの荷台に乗せられているということが嫌でも分かった。


しばらく走ると、エンジン音が止まり…
御手洗が入ったコンテナは、再び荷台で運ばれた。

MCチヘドロー「おら、ここがお前の巣や、クソ虫」ガコン

コンテナが開けられた。

御手洗「のあ…」

そこは薄暗い小屋の中であった。

小屋の中には、椅子のような便器のような物体が設置されている。

御手洗は知らないが、読者の皆はこの物体を見たことがある。

そう、これは…
フォアグライ拘束台。
食通の友人の工場にあったものと同じ器具だ。

拘束台はやや汚れおり、使い古されているのが分かる。

MCチヘドロー「まだ筋弛緩剤が効いてるうちに拘束するか」ガチャガチャ

MCチヘドローは、御手洗を拘束台へ固定した。

御手洗「何なのだ…これは…」

MCチヘドロー「さあ何やろなぁ?でも見た目で大体分かるやろ。いや、ガイジやから分からへんかったか?」

アライさん「…アライさんを、どうする気なのだ」

MCチヘドロー「はっ、どうするかって?こうするんや」パチン

MCチヘドローが指を鳴らすと、小屋の扉が開く。

扉の外から、大きな籠を持った男性が入ってきた。

籠の中にあるものは…



首輪つきアライグマ「キュルルルルルル」ハァハァ

アライさん「っ…!」

…アライグマであった。

MCチヘドロー「アーッヒャヒャヒャフア!どっちやと思う?雄か、それとも雌か!」

アライグマ飼い主「…」ガチャッ

アライグマ「ハァハァハァハァ」ドタドタドタドタ…

アライグマは、御手洗の方に近寄ってくる。

アライさん「…」ジー

アライグマ「ハウハゥ」シュタッ

アライグマは、二本足で立った。

アライさん「!!!!!」

御手洗の視線は、アライグマの股間に釘付けになった。
その股間を見れば、アライグマは雄であり、しかも今まさに繁殖しようとして発情しているのが嫌でも分かった。

アライさん「ま、まさか!」

MCチヘドロー「そのまさかやで。ほい、頼んだわ」

アライグマ飼い主「…」ジョキジョキ

アライグマ飼い主は、御手洗が穿いているタイツと下着をハサミで切っていく。

アライさん「や、やめるのだぁ…っ」ジロジロ ハァハァ

危機的状況ではあるが…
御手洗は、アライグマの股間をちらちら見ていた。

やがて、御手洗のスカートの中から、タイツと下着が完全に取り払われた。

アライグマ「キュルルルルルル!」ガバッ

アライさん「のああっ…!」

アライグマは、御手洗に飛び付いた。

MCチヘドロー「オエー、最悪の光景やな。見とうない、ワイはこんなん見とうない」

MCチヘドローは凄まじく嫌そうな顔で御手洗を見ている。

アライグマ「ハァハァハァハァ!」グイイ

アライさん「ま、待つのだ!待つのだお前!やっやめ…」シュウウウッ シッポブンブン

野生解放した御手洗。
しかしこの手足では、抵抗しようとしても、尻尾を振ることくらいしかできない。

アライさん「はぁ、はぁっ…や、やめっ…」ハァハァ

御手洗の中に、懐かしい感覚が甦ってきた。

かつてアライさんハンターとなり、杖に仕込んだ槍を持って森へ入ったときに感じた感覚。

発情した雄のアライグマに求愛アピールをされたときに感じた、あの感覚。

下腹の奥が熱く疼く。
獣としての本能が、目の前の雄の子を孕めと痛いほど訴えかけてくる。



アライグマ「キュルルルルルル!!」カクン

アライグマは、御手洗の股間へ腰を打ち付けた。

アライさん「ああああああああああああああああああああああーーーーーーっ!!!」ビクン


御手洗は、大きな声をあげた。

アライグマ「キュルルルルルル!!」カクカクヘコヘコ

雄のアライグマは、御手洗の股間へ熱心に腰を打ち付け続けている。

アライさん「のああああっ!!ああっ!ぅぁあああああーーーっ!!」ガクンガクン

御手洗は涎を垂らしながら叫んだ。
そうすることで、自らの下半身から伝わる感覚から、意識を逸らそうとしているのである。

アライさん「ぅう!うぅうーーーっ!!」フゥフゥ

しかし、痛みを遮断できないのと同じように…
下半身から伝わる感覚を遮断することはできなかった。

MCチヘドロー「っ…悪い、代わってくれ。ワイはもう無理や」フラフラ…

アライグマ飼い主「…」コクリ

MCチヘドローは、その光景に対する生理的嫌悪感を抑えきれず、小屋から出ていった。

アライグマ「キュルルルルルル!」ビクゥゥ

アライさん「のああっ…!」ビクゥゥ

やがてアライグマと御手洗は、同時に体を震わせた。

アライさん「あ…ぁああ…」ガクガクビクビク

御手洗は白目をむき、だらしなく開けた口の端から涎を垂らし、小刻みに痙攣している。

アライグマ飼い主「…」グイイ

アライグマ「キュルルルルルル!フシャアアア」ガコン

アライグマ飼い主は、アライグマを半ば無理矢理籠へ戻し、小屋から出ていった。

アライさん「あ…ぁあ…」ビクンビクン

御手洗はしばらくそのままの状態となっていた。

MCチヘドロー「フゥー、終わったか」スタスタ

アライさん「ひ…ぁ…」ピクピク

MCチヘドロー「おら目覚ませクソ虫!」ドガァ

アライさん「じびぃ!」ビクゥ

MCチヘドロー「2年目以降のアライさんの妊娠率は100%っていうけど、一応念のためや。今のを1週間続ける」

アライさん「い、1週間っ…!?」ハァハァ

MCチヘドロー「せやで」

アライさん「…な、何なのだ…?あ、アライさんに…こ、子供を産ませる気…なのか…?」

MCチヘドロー「せやで」

アライさん「何のためなのだ!」

MCチヘドロー「まだ教えられへん。ま、せやな…」

MCチヘドロー「…『アライロンダリング計画』の一端とでも言わしてもらうわ」スタスタ

アライさん「ま、待つのだ!ちゃんと説明するのだぁ!うぅー!」シッポブンブン

MCチヘドローは、扉を閉めて小屋から出ていった。

アライさん「うぅ…喉が渇いたのだ…お腹も減ったのだ…」グーギュルルー

作業着の男「…」ガラッ スタスタ

作業着の男が、小屋へ入ってきた。
何か荷物を持っている。

作業着の男「…」グイイ

そして、御手洗の口へドリンクボトルを突きつけた。

アライさん「…」クンクン

御手洗は、ドリンクボトルのにおいを嗅いだ。
野菜ジュースのような、いい匂いがする。

アライさん「…」グゥー

アライさん「…あー…」アングリ

喉が渇き空腹となった御手洗は、凄く嫌そうな顔をして、口を開いた。

口にドリンクボトルの飲み口を突っ込まれ、中身を口の中へ注がれた。

アライさん「んぐ、んぐ…!」ゴクゴク

『美味しい』。
…御手洗は、素直にそう思った。

アライさん「ぷはぁ…。ご馳走さまなのだ…」プハァ

フレンズ達は、食事の後に歯磨きをしなくても、草とかを噛んでいれば虫歯にならず、口臭も発生しない。

サンドスターの免疫により、口内の病原体も殺菌されるからだ。

とはいえ、人間社会に生きる中で、食後は歯を磨いて食べ物のカスを取る習慣がついていた御手洗。

…『歯を磨きたいな』と思っていた。

作業着の男「…」スタスタ

作業着の男は小屋から出ていった。

アライさん「…」

水を飲み、食事をしたが…
このまま生きていて、どうなるというのか。

チヘドローにいいように利用されるだけの余生。
…生きる意味はあるのだろうか…。

アライさん「…何で、何で…こんなことに…なったのだぁ…」ブルブル

アライさん「こんなことなら…!フレンズ感謝祭になんか…来なければよかったのだぁ…!」ポロポロ

アライさん「アライさんは…!ただフェネックや、みんなと…楽しいお祭りに行って…!遊んだり、観光したり…したかった、だけなのだぁ…!」ヒグッグスッ

御手洗はひたすら自分の選択を後悔し、泣き続けた。

…夜…

アライさん「…」ウトウト

やがて、御手洗は眠くなってきた。
これから自分はどうなるのか…。

このまま生きている意味はあるのか…。

死んでしまった方が楽なのではないか…。

様々なことを思い浮かべながら、御手洗は眠った。





『アライさん!オオカミ先生が新作原稿見せてくれるって!』

…懐かしい声がした。

監視員のフレンズ『早速見せてもらいに行きましょ!』グイイ

彼女は、フレンズとしての能力を使い、監視員の仕事をしているフレンズである。

元々は、探偵を志望していたらしいが…
色々と力不足であったため、諦めざるを得なかったようだ。

御手洗は彼女に手をひかれ、ついていった…。



『ふああああ~!いらっしゃ~~い!よく来てくれたねぇ!』

喫茶店に入ると、店主が出迎えてくれた。

『これねぇ~外国から取り寄せたお茶なのぉ!ねぇ飲んでみないぃ?』

彼女が勧めてくれるお茶はいつも美味しい…
…かと言われると、微妙だ。

この喫茶店の店主は、美味しいかそうでないか、前評判にかかわらず、自分で飲んでから確かめるのである。

そして、茶葉ごとに『性格』を決める。
どんな気分のときに飲むのがいいか?…に基づき、決めているのだという。

店内には、心地よいピアノ演奏の音が響いている。

『いらっしゃい。あら、アライさんと探偵さんね。オオカミ先生はあっちよ』

そう言い、ピアノを弾いているフレンズ。
彼女は作曲家である。
そして、監視員、店主らと同様に、旧パークからの知り合いでもある。

『新譜もいい感じに出来たわ。歌もつけたいわね』

そう言うが…彼女はピアノの腕は素晴らしいのだが、歌の方は…
『元気がいい』くらいしか褒める所がない。

本人もそれを自覚しているらしく、新曲を書いても、PPPやイワビーへ提供している。

…旧パークで、山の上の喫茶店で歌っていた頃よりは上達してはいるのだが…。

『おや、おふたがた、何してるんですか~?』

そう言って店に入ってきたのは…
とても懐かしい声だった。

…御手洗に棒術を教えてくれた、師匠である。

『タイリク先生に、生原稿見せて貰ってるんです!』

『まあ~!うふふっ、本当に漫画好きですね~。隣ご一緒しても?』

御手洗は「もちろん」と頷いた。

御手洗の恩師。
セルリアンと戦うための戦術を、熱心に指導してくれた師匠だ。

彼女の指導のおかげで、御手洗はセルリアンと戦うことができたのである。

…しかし、何だろうか…。
その棒術で、何か…
…何かと、戦ったような気がする。


…この平穏な日々を破壊し、永久に奪わんとする何かと…。

やがて、御手洗とタイリクオオカミ先生は、喫茶店から出た。

店主『またきてねぇ~』

ピアニストのフレンズ『また新曲聞かせてあげるわ。ドードーの唄っていうの』

師匠『ドードーって何の動物ですか?』

監視員のフレンズ『どう、どう…。胴導…?分かったわ!偶蹄類ね!』

ピアニストのフレンズ『全然違うわ』



御手洗にとってかけがえのない、大好きな、大好きな友人達。

たとえ漫才師としての職を失っても…

まわりの人間達に迫害されるようになっても…

愛した我が子を失った悲しみを抱いていても…

彼女達と一緒に、明るい日常を過ごせたら。

辛く厳しい人間社会でも、張り切って頑張れる活力が沸いた。


こんな優しく暖かい毎日が、ずっと続くと思っていた。

…4人の友人達の声。


ここ10年近く聞いていなかった。


…出来ればもう一度会いたい。

もう一度会って…


警備員のフレンズに、『自分をつきまとってる奴なんか探さなくていい』と告げたい。

喫茶店の店主と、ピアニストのフレンズに、
『腕輪持ちのアライさんは自分だけじゃない』と告げたい。


棒術の師匠に、感謝の言葉を贈り…
免許皆伝の日に、師匠の家に泊まっていきたいと告げたい。


…だが…
それはもう、叶わない…。



御手洗は、目を覚ました。

御手洗「…」キョロキョロ

暗い小屋には、朝日がろくに射し込まない。

自分の手足は、もう存在しない。


…こっちが夢だったら良かったのに…。
御手洗は、そう思わずにはいられなかった。

つづく



~フランスの森~

御手洗の失踪事件から2週間が過ぎた。
まだ御手洗は、痕跡すら見つかっていない。

佐助「…」ノソリノソリ

佐助もイライラしているようだ。
御手洗が見つからないことに対してだろうか?
…それとも、この捜索作業自体を時間の無駄と思っているのだろうか。

猟師1「くそっ…どこまで逃げたんだ?本当に森にいるのか?」スタスタ

猟師2「世間ではその見方が一般的…というか、ほぼ確定的だな。森の前に本人直筆の書き置きがあったし…。何より、アライさんだぜ?」ザッザッ

猟師1「ああ、違いないな。アライさんっつったら、例外なく利己的で、他者の迷惑を考えない奴ばかりだ」ザッザッ

猟師1「フレンズ達をほっといて、森に逃げた…。凄く説得力ある話じゃないか?」ザッザッ

猟師2「確かに…。また繁殖して、生態系滅茶苦茶にする気かな…」ザッザッ

奴らアライさんは…極めて危険な生物だ。
かつて日本には、ある動物が20万匹近く日本全土に住んでいたが…

そいつらは、アライさんに殺されたり、食糧を奪われて飢えたりして、
野生種が絶滅してしまったそうだ。

猟師1「えぇー!?20万匹いたのが絶滅!?やべえよ、アライさんやべえよ…」

猟師2「絶対捕まえないとな」

ああ。
特に、奴はレベル41もある。
その子供にレベルが継承されていったら、とてつもなく強力なアライさん達が繁殖する。
そうなったら、被害は日本の比じゃねえ。

猟師2「…もし。奴を見つけたら?」

大臣は、できるだけ殺すなと言ったが…、
例え戸籍持ちだろうと、殺せるうちに殺すべきだ、と…
そういう意見が多いようだな。

猟師1「俺もそう思う。説得してる間に逃げられたら元も子もねえ」

猟師1「あのクソ害獣、見つけ次第撃ち殺してやる!テロリストは投降させず即射殺だ!」ザッザッ

猟師2「しかし、畑に被害が出たという報告はないな…。流石に人間社会に潜んでただけはある。すぐ足がつくような悪さはしないみたいだな」ザッザッ

猟師1「ああ…奴はもしかすると、アラボ以上の知能(笑)犯になるかもしれん」ザッザッ

猟師2「そうなる前に、俺達が確実に見つけ出さなきゃな」ザッザッ

…しかし、奴が森にいるという説を、皆疑いもせず信じてるな。

猟師1「当然だ。だってアライさんだからな!もし違ってたら木の下に埋めて貰っても構わないぜ」ザッザッ

まあ、尤もらしくはあるが…
仮に、万が一…誘拐されたとしたら。
今ほど楽に警察の捜査を欺ける条件はないだろうな…。

猟師2「万が一故、九割九部九厘は森にいるだろうけどな!」ザッザッ

…手遅れになる前に探し出さないとな…。

佐助「クゥーン」ザッザッ



~小屋~

御手洗「…」グッタリ

御手洗が拉致・監禁されてから2週間が過ぎた。
御手洗は生きていた。

御手洗「…」グッタリ

だが、既に精神は限界を迎えていた。

かつての仲間とは誰とも会えず、
この小屋の外に出ることもできない。

その上、MCチヘドローが毎日毎日精神を削るような罵倒をしてくるのである。

MCチヘドローは、本当に心を傷付けズタズタにするのが上手い。

御手洗は、今まで生きてきたことのほとんどを完全否定されてしまっていた。

手足の切断面はもう傷が癒えているが、手足そのものはもう存在しない。

チヘドローに、「手足はどこにやったのか」と聞いたら…


『ああ、アレか!上様がアラジビにして食ったで!レベルの高いお前の手足、大層美味やったそうや!アヒャヒャヒャ!』

…とのことである。
これでめげずにいられるであろうか。

だが、こんな最悪の環境であっても、2つだけ、御手洗が楽しみにしていることがある。

1つめは…

MCチヘドロー「おらクソガイジ、飯の時間やで」スタスタ

…食事の時間である。
いつも食事は流動食…
ドリンクボトルに入れられてくる。

MCチヘドロー「さー甘えん坊ちゃん、おっぱいの時間でちゅよォ~?」グイイ

アライさん「…」プイッ

精神的に追い詰められた御手洗は、自殺することも考えた。
その手段の一つが、一切食糧を摂取せず餓死することだ。

MCチヘドロー「おお?飲まへんつもりか?飢え死にするで?」グイグイ

アライさん「#`ヘ´ 」ツーン

MCチヘドロー「…あのなぁ、勘違いしてもらったら困るで…」

MCチヘドロー「ワイはなぁ、お前が口あけようがあけまいが飲ます方法持っとんのや」スッ

MCチヘドローは、カッティンググラインダーを取り出す。

アライさん「…!?」ビクゥ

MCチヘドロー「こいつでお前の歯をぜーんぶ…歯茎ごと削り落として、強制給餌器を食道まで突っ込んで胃に流し込む」ギュウイイイーーーーンッ

御手洗の目の前で、カッティンググラインダーの刃が回転する。

アライさん「ひ…!」ゾッ

MCチヘドロー「お前がそのまま反抗するなら、そーしてやっても構わへんで」ギュウイイイーーーーンッ

MCチヘドロー「あと10秒で決めろや。どないするん?普通に飯食うんか?それとも歯茎削られてから飯食うんか?」ギュウイイイーーーーンッ

アライさん「っ…」

御手洗の選択は…





アライさん「…」アーン



…口を開いた。
手足を奪われて…これ以上、自分の身体機能を奪われたくないのだろう。

MCチヘドロー「よしよーし」グイイ

アライさん「…」ゴクゴク

御手洗は流動食を味わって飲んだ。
この流動食は栄養満点で美味である。
地獄より居心地が悪いこの空間における、数少ない楽しみの一つである。

アライさん「…っ!」ゴクゴク

御手洗は、まるで母乳を啜る赤ん坊のように、ドリンクボトルへ吸い付き、容器の中の美味な液体で口内を満たし、その味を楽しんだ。

アライさん「ぷはぁ…ご馳走さまなのだ」ハァハァ

御手洗は、大嫌いで今すぐ死んでほしいとさえ思うほど憎んでいる相手、チヘドローへ、食後の挨拶を言った。

MCチヘドロー「礼儀正しいやっちゃな~」

アライさん「…」プイッ

その動機は、自分が人間性をまだ失っていないということをアピールする…
一種の反抗であろうか。

自分が、人から勝手に食糧を奪い礼すら言わない野良アライさんとは違う、ということの証明。

だが…、雀の涙ほどは、食事をくれたことに対する感謝の気持ちもあるのかもしれない。

MCチヘドロー「さて、もうとっくに妊娠しとると思うけど…ダメ押しといこうか」パチン

アライグマ飼い主「…」ガラガラ

雄アライグマ「キュルルルルルル」ガシャンガシャン

アライさん「う…ま、まだ、するのかっ…」ビクッ

MCチヘドロー「ハァ~…(嫌そうな顔)」

アライグマ飼い主は、首輪付きアライグマを籠から出す。

雄アライグマ「ハァハァハァハァ」ノソリノソリ

雄アライグマは、御手洗に近寄る。

アライさん「っ…」

御手洗は一切抵抗できない。

アライグマ飼い主「ラック、メイティングだ」グイイッ

雄アライグマ「ハルルルルル!」ガバッ

アライさん「のああっ…!」

雄アライグマは、御手洗に覆い被さる。

アライさん「も…っ、もうやめっ…」フゥフゥ

そして、御手洗がこの監禁生活の中で楽しみにしている2つめ…
食事以上に楽しみにしていることが…

雄アライグマ「キュルルルルルル!!」ズンッ

アライさん「あうううううぅぅ~~~~ーーっ!!!」ビクゥゥ

…この瞬間である。

雄アライグマ「キュルルルルルル!」カクカクヘコヘコ

アライさん「の、のああ、のああああっ!」ハァハァ

楽しいことが全く無いこの空間。
その中で、原種の雄によって強引に与えられる刺激。

そこに救いを求めずにはいられないようだ。

アライさん「うぅ、い、いやなのだぁ」ハァハァ

御手洗は、刺激によるピークに到達しつつある。

MCチヘドロー「ん?嫌か?ラック君、ストップや」グイイッ

雄アライグマ「ハウハゥ!?」

MCチヘドローは、雄アライグマの首輪を引っ張り、御手洗から引き剥がす。

アライさん「の、のあっ…!?」ハァハァ

MCチヘドロー「嫌なんやろ?ほな、やめてやるわ」

アライさん「あ、あ…」ハァハァ

MCチヘドロー「あー?何やその物欲しそうな目は?」

アライさん「う、うぅ~っ…!」ムズムズ

MCチヘドロー「もし続けてほしいんやったら、ねだってみろや性欲害獣があ!アヒャヒャヒャ!」

アライさん「お…」ブルブル

だが、そんな事を言うのは、御手洗のプライドが…



アライさん「お願いしますなのだぁ!最後までしてほしいのだぁっ!」」シッポブンブンブンブンブンブン




…プライドなど、とっくの昔に打ち砕かれてしまっていた。


MCチヘドロー「アーーーヒャヒャヒャヒャヒャ!!!恥ずかしげもなくよく言うわ!ホンマモンのケダモノやなぁ!」

MCチヘドロー「ほらラック君!最後までやったれや!」グイイッ

雄アライグマ「キュルルルルルル!」ガバッズンッカクカクヘコヘコカクカクヘコヘコ

アライさん「あああああああーーーっ!気持ちいいのだぁ!気持ちいいのだああーーーっ!!」ハァハァ


御手洗は、その惨めさに涙しながら、雄アライグマによって与えられる快楽を貪った。

雄アライグマ「キュルルルルルルゥウ!」ビクンビクン

アライさん「あああきもぢいぃぃいいいいいいーーーっ!!」ビクンビクン

雄アライグマ「…キュルルルルルル」ピョン

雄アライグマは、御手洗から飛び退いた。
その後は籠の中へ戻され、飼育員に運ばれて小屋の外へ連れていかれた。

MCチヘドロー「あー気色悪かった。ほな、またなー」スタスタ

アライさん「のっ…のああっ……のだっ……」ビクンビクン

一旦ここまで

アライさん「うっ…ぁっ…」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!!ざまーねえなあ!」ゲラゲラ

御手洗はかつて、師匠のもとで棒術を習った。
しかし彼女から習ったのは戦闘技術だけではない。

厳しい鍛練についていけるように、かつての甘ったれた精神を鍛え直して貰ったのである。

きつい鍛練についていける辛抱強さを身に付けたからこそ、
レベル41という、フレンズの中でも上位の強さを身に付けることができた。

他の戸籍持ちアライさんが人間社会からドロップアウトしていく中、
唯一社会の厳しさに耐え抜き、迫害されながらも今日までそれなりに社会生活を営むことができたのである。

MCチヘドロー「ツラいツラい言いながら耐えて耐えて、耐え抜いて…その結果が、このザマや!」

MCチヘドロー「お前の棒術なんぞまるで役に立たんまま、お前は誘拐され、手足を切り落とされたんや」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!お前のくたばった師匠とやらが遺したモンは、クソの役にも立たんかった!お前が苦しむのを長引かせただけやなぁ!アーーーヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

アライさん「っ……!」ポロポロ

自分だけならず、大好きだった師匠のことまで貶された。
食って掛かるべきなのに、何も言い返す気力がわかない。

御手洗は、ただ惨めに泣いた。

…その晩…

作業着の男「…」ガサゴソ

アライさん「…」

作業着の男が、妊娠検索薬で御手洗の尿を調べている。

作業着の男「…陽性だな」チラッ

MCチヘドロー「おめっとーさーん!ヒャヒャヒャヒャヒャ!おめでたやで!お前の腹ん中で今、コバエガイジがウジャウジャ育ってるちゅーことや!」

アライさん「!!!!!!!!!」

御手洗はかつて、人間の子供を出産したことはあった。
しかし、アライグマの子供…いや…
フレンズの子供を懐胎することは初めてであった。

アライさん「…ちびは…。アライさんが産んだチビを、お前らは…どうするつもりなのだ…」

アライさん「もうアライさんの子供が不幸な目に遭うのは嫌なのだ…!せめて、せめて、まともに生きさせてほしいのだぁ…!」ウルウル

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャ!!どーする?教えるか?」

作業着の男「…そうだな、子供を誰に寄越すかは駄目だが。どんな未来を生きるかぐらいはいいのではないか?」

MCチヘドロー「そっか。ええで、教えたる」

MCチヘドロー「お前のガキは…」

アライさん「…」

MCチヘドロー「…二本足で立つ前に、今のお前とおんなじ状態になる」

アライさん「」

MCチヘドロー「そや。手足を切り落として、拘束台にはりつけて。お前と同じ、産む機械として一生を過ごし、そして死ぬんや!」

アライさん「…の…ぁ…」ブルブル

MCチヘドロー「お前のガキどもが一生の間で、自分の意思でできることは!哺乳瓶の乳を吸うことだけや!アーーーヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

アライさん「やめ…て…やめてぇ…惨すぎるのだぁ…!チビ達が可哀想なのだぁ…!」ポロポロ

MCチヘドロー「やめるかボゲェ!これがワイ、セールスマン血反吐楼としての初仕事や!!」

アライさん「そ、そのチビ達が産んだ孫は…どうするのだぁ!」

MCチヘドロー「禁則事項でぇっす!てへぺろ☆ま、人類のために立派に貢献するとだけ言うておくで」ゲラゲラ

アライさん「うぅ…!で、でもお前、お前…アライさんを滅ぼしたかったんじゃないのかぁっ!?」

MCチヘドロー「そんなん言うても、シロウちゃんとこにもアライさんはおるやろ。現実的に考えて、滅ぼすメリットは何もない」

MCチヘドロー「というかお前ら、ハエガイジ共は…。滅んだくらいで、罪を償えると思うなよ?」

アライさん「のぁ…」

MCチヘドロー「たーーーーっくさん人に迷惑かけといて。責任取って滅びますーってか?そんなん体よく逃げただけや」

MCチヘドロー「事業の失敗で会社に膨大な借金作っといて、『責任取って辞任しますー』とか言う重役みたいなモンや」

MCチヘドロー「お前らハエガイジ共は、人様に迷惑かけた分、それを10倍返しにして益獣として奉仕してもらうで」

アライさん「…」

アライさん「ち び は」

アライさん「ち び は か ん け い な い の だ」

MCチヘドロー「関係あるわボゲェ!同族の罪は同族が償えや!!アーッヒャヒャヒャヒャハハーーーッ!」スタスタ…

MCチヘドローは、小屋の外へ出ていった。

アライさん「…」

アライさん「…アライさんが産んだ…ちびは…」

アライさん「…アライさんと同じ目に遭って…殺される…?」ブルブル

アライさん「そんなの…嫌…なのだぁ…!」ワナワナ

御手洗は、かつて自分が産んだ娘のことを思い出していた。

漫才師の娘として、あるときまではクラスの人気者だった娘。

しかし、あるときを境にして…
クラスメートから、酷いイジメを受けるようになってきた。

御手洗自身もまた、PTAから阻害されるようになってきた。

それは…
アライさんが全国で急激に繁殖し、農作物を荒らし…、
テレビで害獣っぷりが知られるようになってきた頃である。

衛星放送の『害獣駆除チャンネル』では、アライさんの悪事や被害者の声が数多く報道され、アライさんは完全に悪者扱いされていた。

クラスメート達は、まるでヒーローになった気分で…
御手洗の娘を『悪者』扱いし、暴力をふるい、『制裁ごっこ』をし始めたのであった。

当然御手洗と、当時の夫は猛抗議した。
だが抗議すればするほど、クラスメートの親たちの反発は強くなっていった。

『やっぱりアライさんは悪い生き物だ』…と。

いつしか、学校側も、イジメを黙認するようになっていった。

御手洗親子というサンドバッグを用意することで、学校や教職員は、モンスターペアレント達の不満の矛先を逸らせるようになっていたのである。

『お前の母ちゃんアライさん』…
その言葉が、クラス内ではイジメの免罪符となっていたようだ。


親友にして漫才の相方だったフェネックは、ジャパリ寮で他の戸籍持ちアライさんのチューターをやっていた。

いつも疲れているフェネックに、それ以上苦労をかけるとヤバそうと思い、
御手洗は相談するのをためらっていた。

だが、そんなある日…

御手洗の娘は、笑顔で帰って来た。

『仲のいい友達ができた』というのである。

御手洗は、それが誰か聞いた。

しかし、娘は『まだ秘密』とだけ答えた。

不安はあったが…
たくさん仲良く遊んでくれる友達が、娘にできたというならば。
それを喜ばしく思っていた。

ある日。




娘のクラスメートが、重症を負って入院した。



次々と。

娘を虐めていた者が、次々と…。

その間も虐め続けられていた御手洗の娘。
しかし、なぜかその顔には、笑顔が浮かぶことが多くなっていた。



クラスメートの親達は事件を警戒し、子供を守ろうとしたが…

ある時、イジメの主犯格の子供の家に、大量のアライさんの群れが突撃し、
一家を皆殺しにしてしまった。


…その当時は、ある研究者によって執筆された『アライグマのフレンズの精神構造の特異性に関する考察と検証』というレポートが、
日本中で大きな議論を巻き起こしていた時期であった。

そして、このアライさんによる連続暴行・殺人事件を皮切りに…

フレンズ省は、『特定有害フレンズの駆除促進のための法律』を制定。

アライグマのフレンズを、『駆除対象』に認可したのであった。

法律制定を皮切りに、御手洗の娘へのイジメも過剰なレベルへとエスカレートしていた。

そんなある日、警官隊はクラスメートの家へ侵入しようとするアライさんの群れを発見。

アライさん達を射殺した。

それらの死骸を調べると…


…アライさんと服を交換して遊んでいたと思われる、御手洗の娘の遺体があった。

御手洗と夫は、このとき初めて…
娘が秘密にしていた『友達』が、野良アライさんだったことに気付いたのであった。

大事な大事な娘を、警官に射殺された御手洗。
発狂寸前になった…いや、ほぼ発狂した。

もともとアライグマのフレンズは短期で直情的である。
師匠に鍛えられた我慢強さで、今までは辛抱強く感情を抑えてきたが…

なんで娘を虐めて殺した奴らなんかに、気をつかわなきゃならないのだ。

…それまで溜めに溜め込んできた怒りが、一気に爆発した。

帰って来たフェネックと、当時の夫、数名のフレンズが御手洗を止めたおかげで、
暴行事件には発展しなかった。


この事件は、マスメディアによって大々的に報道された。

しかし、学校側はイジメの事実を徹底的に隠蔽した。

つまり、世間から見れば…

御手洗の娘は、完全なる加害者扱いであった。

自分のクラスメートをアライさんと共に襲撃して、大怪我を負わせたり殺害する、凶悪な殺人犯として扱われた。

だが、『小さな女児が、なぜそこまでの凶悪な事件を起こしたか?』という疑問が上がった。

そして、発狂し激怒する元漫才師の御手洗の姿を見た、イジメの事実を知らない人々は、マスメディアの報道に影響され…

『母親がこんなだから、アライさんだから…娘もこうなった』

『母親によって、娘はこんな残酷な性格に育てられた』

『連続襲撃事件そのものが、母親が娘に指示して行わせたものではないか?』

と思うようになっていった。

…もっとも、それらのマスメディア…
ワイドショーや雑誌の裏では、ある研究者上がりのジャーナリストが暗躍し、
世論をアライさん叩きの方向へ仕向けるような偏向報道が行われていたのだが…。

そうして、子供を殺された親たちによって、
一連の事件の首謀者として御手洗が告発された。

証拠不十分によって不起訴となるも…
それで世間は納得しなかった。

御手洗は、証拠がないにもかかわらず、殺人犯として扱われるようになった。

当然、御手洗は漫才師をやめた。

御手洗を擁護したフェネックも、『害獣を擁護するアラ信』と呼ばれるようになり、
連日酷い嫌がらせを受けるようになっていった…。


御手洗の夫は、それでも御手洗を支え続けたいと言った。

御手洗は彼に対して、『自分にはもう構わなくていい。新しい幸せを見つけてほしい』と返答したのであった。

話し合った末に、『いつか君を幸せにしてみせる』と言って去った夫は…

御手洗を迫害して、殺人犯扱いした社会を、人間達を許さなかった。
娘を失って発狂した夫は、いつか必ず復讐してやる、警察もぶち壊してやると誓った。

夫はその後、アライハザードでショクエモンPの工場を襲撃し、
警官に逮捕されたのであったが…。

やがて、漫才師のアライさんとフェネックは、汚名に汚れたその身分を隠した。

そして御手洗とキツネとして、ひっそりと暮らすようになっていった…。


元々、漫才師で生計を立てていた二人。
義務教育も、フレンズ寮での最低限の教育しか受けていない二人は、
それぞれの特異分野を活かせる職に就いたのであった…。



アライさん「…」

アライさん(アライさんの、子供…)

アライさん(もう、二度と。アライさんのせいで…)

アライさん(いや…)

アライさん(あの憎たらしい、チヘドローのせいで…!)

アライさん(不幸な目に遭わせてたまるもんか、なのだっ…!)ポロポロ


御手洗の手足は失われてしまった。
もう二度と、自然再生することはない。

だが。

アライさん「う、うぅ…!」シュウウウウ…

野生解放した御手洗は…

両手両足の断面に、不思議な感覚を抱いていた…。



MCチヘドロー「おーいハエガイジ!餌やぞ!」ガラッ

チヘドローが小屋の扉を開けた。

MCチヘドロー「…ん?」

小屋の中を覗いたMCチヘドローは驚愕した。

拘束台のベルトは千切れており…
御手洗の姿が、そこに無くなっていたのである。

MCチヘドロー「なんやこりゃ…オイ!誰かコバエ孵化機をどっかに運んだか!?」

作業着の男1「どうした、チヘドロー」

MCチヘドロー「見てみいや。ハエガイジがおらへん!どこやクソが!」ドタドタ

MCチヘドローは、小屋の中に入った。

MCチヘドロー「…」ガラッ

小屋の窓が、中から鍵を開けられている。

MCチヘドロー「何やこりゃ?誰かハエガイジを運んで持ってったんか?」

MCチヘドロー「イヤイヤ。入り口の鍵は閉まっとった。ワイしか鍵は持っとらんかった」

MCチヘドロー「つまり、小屋へ外から侵入した奴はおらへんはずや」

MCチヘドロー「するってーと、ハエガイジは…?手足無しで密室から脱出した…っちゅーことか!?」

作業着の男2「バカな…どうやって!?」

スーツの男「おい!向こうでアライさんを見かけたという情報があったぞ」タタッ

MCチヘドロー「お、追いかけるで!」タタッ

一同は、スーツの男に案内され、御手洗を探した。

つづく



~屋外~

アライさん「はぁっ…はぁっ…」ドタドタ

御手洗は走っていた。
腕と脚から光を放ちながら。

彼女の肉体は、手足が修復することはないが…
子供を死なせたくないと強く願ったとき、突如けものプラズムが手足を形成したのである。

アライさん「はぁっ…はぁっ…」ドタドタ

しかし、光はどんどん輝きが暗くなっていく。

この仮染めの手足は、長くはもたないだろう。

アライさん「…」ドタドタ

ここはどこだろうか。
パリとも違う街並みの風景である。

どこか…フランスから、さらに外国に連れていかれたことだけは分かった。

アライさん「…」ハァハァ

だが、どこへ逃げればいいのだろう。
手足の感覚は、だんだん鈍く…
動きは重くなってきている。

追い付かれるのは、時間の問題であろう。

アライさん「はぁっ…はぁっ…」ゼェハァ

あてもなく走り回った御手洗は…
やがて、川にたどり着いた。

川の先を見ると、どうやら海へ流れ込んでいるらしい。

…しかし、川があったからどうだというのだろうか。

御手洗の鋭敏な耳は、追っ手が近付いてきていることを捉えていた。

この川に飛び込めば逃げ切れるだろうか?

…いや…
途中で手足が消滅し、溺れ死ぬのが関の山であろう。

もはや、逃げ場はなく、万事休すのであろうか…。

アライさん「…」

…『溺れ死ぬ』。
…それも、ひとつの選択肢ではないだろうか?

アライさん「…」

生きていても、どうせ捕まる。
そうしたら、二度と小屋の外には出られないだろう。

そして、今以上の責め苦を与えられ続けるであろう。

胎の中に宿る命が産まれれば 、愛しい我が子は、自分と同じ地獄の苦しみを味わうことになる。

…そんな残酷な生涯を送らせるよりならば…
産まないほうが。
胎の中から出ないうちに、死なせてやった方がよいのではないだろうか。

小屋の中で、御手洗は何度も何度も死にたいと願った。

だが、自殺する自由すらなかった…。

死んで楽になれるチャンスは、もう今しかない。
MCチヘドローの悪だくみを阻止し、楽になれるのなら…
このまま、入水自殺してしまうのが賢明ではないだろうか。

そう。
死の行進をし、集団自殺するレミングのように…。(※1)


※1: 御手洗は、ネットで見た『レミングの集団自殺』のデマを本当だと信じている。

アライさん「…」

だが…
御手洗は、少し考えた後…

…ある決意をした。



MCチヘドロー「ったく…。シロウちゃんのレーダーがあれば、探すのも楽なんやけどな…」ブロロロロー

MCチヘドローは、車に乗って御手洗を探し回っていた。

MCチヘドロー「お、あれは…」

やがて、川の近くで何かを見つけたようだ。
そこにいたのは…

アライさん「…」

…手足の光がほとんど消えかかった、御手洗であった。

MCチヘドロー「おー、やっと見つけたで」ガチャ

MCチヘドローは車から降り、御手洗へ拳銃を向けながら近付いた。

アライさん「…」

MCチヘドロー「まったく…その手足はけものプラズムか?こんなことできるなんて聞いとらんで、シロウちゃん!」スタスタ

MCチヘドローは、御手洗に接近した。

MCチヘドロー「…ん?」ピタッ

何か、御手洗の姿がおかしい。
御手洗の顔を見ると…

アライさん「あ、あたしは…。人間なのだぁ…!」

…けも耳と尻尾が無かった。

MCチヘドロー「…は?」

アライさん「あたしは人間なのだっ…アライさんじゃないのだっ…!」

MCチヘドロー「…」

けも耳と尻尾がない御手洗。

傍目には、奇異な髪をした、つり目の…
…人間の美少女にしか見えない。

MCチヘドロー「…ぷっ…」

MCチヘドロー「アーーーーーーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッッヒャ!!追い詰められた結果がそれか!アーヒャヒャヒャ!!!」

だが。
こんな所に、手足を無くし、開口一番に自分をアライじゃない等と主張する人間がいるであろうか。

MCチヘドロー「アホが!ワイは知っとるで!フレンズは、自分を人間やと思い込めば、耳と尻尾を消せるってなぁ!」ゲラゲラ

MCチヘドロー「そんなんでワイの追跡をやり過ごせると、本気で思っとるんか!?ガイジここに極まれりや!アーヒャヒャヒャ!!」ゲラゲラ

アライさん「あたしは人間なのだぁ!」フゥーーッ

MCチヘドロー「はいはい、ガイジはしまっちまいましょうねー」ガシィ グイイイッ

MCチヘドローは、御手洗の服の裾を引っ張り、車の中へ引きずっていた。

アライさん「のあーーっ!のぁぁーーっ!放すのだぁーーっ!!」モゾモゾ

MCチヘドロー「ハァー、まったく傑作やわ!ガイジすぎて笑えてくるわ!」ブロロロロー…

…御手洗は、再び小屋へ連れ戻された。



~小屋~

アライさん「う、うぅ…」

MCチヘドロー「さーて。まさか手足が生えてくるとはな…予想外やったわ」

作業着の男1「今回は人目に触れなかったから良かったが。二度も三度も脱走されたらバレかねないな。対策を打たねば」

作業着の男2「人質をとってみるのはどうだろうか?次に逃げたら、フェネックとかいうフレンズを拐って殺すと脅してみるとか…」

アライさん「ふ、フェネック!?…フェネックは関係ないのだぁ!」アセアセ

MCチヘドロー「いーや、アカン。こいつらハエガイジ共に人質は通じへん」

作業着の男1「なに…?」

MCチヘドロー「こいつらアライさんは、自分の利益、自分の損得勘定でしか物事を考えへん。遠くの地にいる他人がどうなろうと知ったこっちゃないんや」

MCチヘドロー「むしろ逆に、逃げ出してフェネックをあえて拐いに行かせることで、追っ手を誰かに引っ捕らえてもらい、助けを呼ぶ材料にしようとか考えるかもしれへん」

作業着の男2「な、なるほど…。とことん性根の腐った生き物だな」

MCチヘドロー「メモ帳に書き置きさせる方法考えたときも、人質をとるのは通じへんって言うたろ?」

作業着の男1「そういえば言ってたな…」

アライさん「…」

メモ帳…。
御手洗は監禁されてから、パスポートや財布、携帯電話などの荷物を失っていた。

そういえば…
あの時とったメモは、どうなったのだろうか。

確か、あれは。

フレンズ感謝祭の準備で、御手洗達がステージのリハーサルをした後のことであった…。

~控え室~

イベント運営者『アライさん、ちょっといいですか?』

アライさん『どうしたのだ?』

イベント運営者『ここだけの話…実は、過去にもこの国に、他の戸籍持ちアライさんが来たことがあったんです』

アライさん『そ…そうだったのか!?知らなかったのだ…』

イベント運営者『結局そのアライさんは帰国しましたが…、帰国前に戸籍持ちアライさんが、口頭でいい残した言伝があるんです』

アライさん『言伝…』

イベント運営者『本人からは言いづらい内容とのことで…。日本に帰ったら、ジャパリパークの管理人さんへ口頭で伝えてもらえませんか?』

アライさん『よく分からないが…、アライさんにお任せなのだ!』サッ

御手洗は、メモ帳を取り出した。

イベント運営者『他の皆さんには絶対内緒ですよ?ジャパリパーク管理人さんだけに、口頭で伝えてください』

アライさん『任せるのだ!で、言伝は何なのだ?』

イベント運営者『アライさんはもう、日本の社会で生きるのに疲れました』

アライさん『ふむふむ』メモメモ

イベント運営者『皆がアライさんを虐めて、迫害して。毎日が辛くて仕方がないです』

アライさん『ふむふむ』メモメモ

イベント運営者『辛いです』

アライさん『…』メモメモ

イベント運営者『でもこの国の人達は、アライさんを歓迎してくれました。日本に帰りたくないです』

アライさん『…』メモメモ

イベント運営者『だからアライさんは、この国に残って、森の中で暮らします』

アライさん『…』メモメモ

イベント運営者『どうか探さないでください。あの地獄へ、引き戻そうとしないでください』

アライさん『…』メモメモ

イベント運営者『…以上です』

アライさん『分かったのだ。なんか…他人事とは思えない言伝てだったのだ…』

アライさん『帰国したら、ジャパリパーク管理人さんに…。メモするのだ』サッ

イベント運営者『ああっ、その情報は、次のページに書いといてもらえませんか?』アセアセ

アライさん『?分かったのだー!』



…結局、イベント運営者の言伝てを、ジャパリパーク管理人へ伝えることはできなかった。

…伝えることができる日は、果たしてくるのだろうか…。



~日本、ジビエ料理店『食獲者』~

大臣「…」スタスタ

食通の友人「へいらっしゃい!おや、今日は会長は一緒じゃないんですね」

大臣「会長は今長期休暇を取ってるのです。昼飯をよこすのです」

食通の友人「はいよー。何がいいですか?」

大臣「新メニューは…。む、これは、フォアグラ料理なのですか?」チラッ

食通の友人「そうですよ。例の工場は閉鎖したわけじゃなくって、普通のフォアグラ工場になったんです」

大臣「じゃあ、それを頂くのです」

食通の友人「オーケイ」ジュウウウゥウ

大臣「…そういえば。工場にあった、フォアグライ専用の器具や設備はどうしたのです?」

食通の友人「あー、もう売却しましたよ」ジュウウウゥウ

大臣「スクラップ業者か何かにですか?」

食通の友人「いや。会社の株主達にです。何に使うんでしょうかね?」ジュウウウゥウ

大臣「」

食通の友人「大臣?」

大臣「…お、お前、そういえば。フォアグライの特許権はどうしたって言ってました?」

食通の友人「はい、それも株主達に売却しましたよ。もうアラジビはないのに、買う価値あるんでしょうかね?」ジュウウウゥウ

大臣「…」

食通の友人「…」ジュウウウゥウ

大臣「…」

食通の友人「…大臣、まさか…」ジュウウウゥウ

食通の友人「…例のID2番疾走事件と、何か関係があるとでも、思ってんすか?」ジュウウウゥウ

大臣「…」

食通の友人「…」ジュウウウゥウ

食通の友人(…まさかな…)ジュウウウゥウ

食通の友人「へい、お待ち。フォアグラ定食です」トン

フォアグラ定食「」ジュウウウゥウ

大臣「おぉー、美味しそうなのです。いただくのです」ムシャムシャ

食通の友人「どうすか?」

大臣「美味なのです。いい腕してるのです」モグモグ

食通の友人「へへ、どうも」

大臣「しかし、やはりフォアグライの味には敵わないのです」モグモグ

食通の友人「…あれは泡沫の夢、ひとときの幻みたいなもんです。無いものは、ない」

食通の友人「無くなったもののこと考えてたって仕方ありません」

大臣「まったく、その通りなのです」

食通の友人「だというのに、相変わらず未だに、フォアグライ缶詰の在庫はないかーとか問い合わせが止まないんですよ」

大臣「…」

食通の友人「需要があっても、供給できないし、する訳にもいかないっすけどね」

大臣「…」

一旦ここまで



…2週間後…

~小屋~

アライさん「…」ポッコリ

妊娠してから1ヶ月が経過し…
御手洗のお腹は膨らんでいた。

あと1ヶ月で、アライちゃん達が産まれるであろう。

監視カメラ「」ジィー…

アライさん「…」

小屋の中の御手洗は、四六時中監視カメラで監視されている。

4人ほどの人間が、交替しながら常に見張っているのである。

アライさん「…」

けものプラズムでできた御手洗の耳は、既に元に戻っていた。
尻尾も半分くらいの長さまで戻っていた。

~小屋の外~

MCチヘドロー「アライロンダリング計画は順調やな」

黒スーツの男1「ああ。滞り無しだ」

黒スーツの男2「このままいけば…、御手洗という戸籍持ちアライさんの、ロンダリングが完了するだろう」

灰スーツの男「…最近ここの係になったんだが。そもそもアライロンダリング計画って何なんだ?」

MCチヘドロー「ああ、教えたるで。まずは目的からやな」

MCチヘドロー「アライロンダリング計画の目的はシンプル」

MCチヘドロー「フォアグライを大量生産し、キレイな正規ルートで販売することや」

灰スーツの男「フォアグライ…というと、アライさんの脂肪肝だったか?」

MCチヘドロー「…」キョロキョロ

MCチヘドローや黒スーツの男達は、周囲に不審な人物がおらず…
ここで話したことが外部に漏れる恐れがないことを、用心深く確認した。

MCチヘドロー「せやで。ショクエモンPっちゅう天才…というか…変態?が作り出した、悪魔的美味な超高級食材や」

灰スーツの男「…それとロンダリングがどう関係あるんだ?」

MCチヘドロー「かつて日本がフォアグライを海外へ輸出してた時…、世界中の大富豪が、その美味に病み付きになった」

MCチヘドロー「そして、野良アライの駆除が完了した今…、もう二度と、まともな方法でフォアグライを手にする方法は無い」

MCチヘドロー「なにせフォアグライの元手になるアライちゃんが自然にいないし、ショクエモンPがアライちゃん養殖をせんかったからな」

MCチヘドロー「せやけどフォアグライを求める声は世界中にある。せやから、『ワイら』がフォアグライ再生産のお手伝いをしようって話や」

灰スーツの男「そのために、ID2番を拐った…?しかしマズイだろう。今ポンとフォアグライを売ったら、それは間違いなくID2番の子供の脂肪肝というこよになる」

灰スーツの男「正規ルートではおろか、裏ルートでさえ扱えん、そんな危険な商品は…」

灰スーツの男「ID2番は戸籍持ち…人権があるんだろう…。いくら美味でも、人身売買で稼ぐのは無理だ」

MCチヘドロー「せやろか?もし…『ID2番の子供だと分かっていても、正規ルートで売れる方法』があるとしたら?」

灰スーツの男「…どういうことだ?」

MCチヘドロー「今、世界中では誰もが…、『ID2番は森へ逃げ込んだ』と信じて疑っとらん状況や」

MCチヘドロー「そこでワイらは、ID2番のガキをこっそりと、ある特別な環境下で養殖し…」

MCチヘドロー「殖えてきたところで、ドイツの森に放流する」

灰スーツの男「ドイツ…!?」

MCチヘドロー「せや。ドイツの森にも、アライグマはわんさかおる」

灰スーツの男「そして…放してから、どうするんだ?」

MCチヘドロー「そのまましばらくほったらかしや。森で雄アライグマと繁殖し、ウジャウジャ殖えるのを待つんや」

灰スーツの男「そ、それでは、ドイツでアライハザードが起きるのではないか?」

MCチヘドロー「日本でのやりとりで、奴等の『御し方』は分かった。余計な被害は出さんわ」

MCチヘドロー「そうすると、森で殖えたアライ共のことを…、世間は『ID2番が、森で害獣を繁殖させた』と思い込むんや」

灰スーツの男「…」

MCチヘドロー「フォアグライを売買するとして、それが『誘拐されたID2番のガキを、監禁して作ったモノ』やったら、そら出所真っ黒や」

MCチヘドロー「せやけど、『森で繁殖した害獣を、取っ捕まえて作ったモノ』やったら。出所はキレイになるんや」

灰スーツの男「…つまり、アライロンダリングとは…」

MCチヘドロー「ヒト扱いされとったキレイなハエガイジを、汚い害獣に戻す」

MCチヘドロー「『資金洗浄』ならぬ、『害獣汚染』!それがアライロンダリングってことや」

ラジオ『…次のニュースです。森へ逃げたとされるID2番は、未だに捜索が続けられています』

MCチヘドロー「はは、ウケるな。ニュースではまだ、ID2番が森ん中逃げ回っとるっちゅーことになっとる!」スタスタ

MCチヘドロー「アイツに聞かせたろ!」スタスタ

黒スーツの男1&2「「全く、好きだなぁチヘチヘは」」ハハハハハ



~小屋~

アライさん「…」

御手洗は、四肢がないまま固定されていた。
再び手足を生やしたら、その途端スタンガンで電流が流れるように、拘束台に仕掛けをされているのである。


MCチヘドロー「よう!ハエガイジ!このニュース聞いてみーや!」スタスタ

ラジオ『…ID2番は、尚もフランスの森の中で捜索が続けられています』

アライさん「…」

MCチヘドロー「アーヒャヒャヒャ!!!ウケるな!みーんなお前が森を逃げるクソ害獣やと疑っとらん!」

MCチヘドロー「だーれもお前を助けになんか来ないで!なんせ、味方がおらんのやからなぁ!」ゲラゲラ

アライさん「っ…」

MCチヘドロー「いつもいつも、何もせんでも人に助けて貰ってる甘えん坊ちゃーん?甘えられる相手が誰もおらん気分はどうや!?アーヒャヒャヒャ!!」

ラジオ『…!臨時ニュースです!たった今情報が入りました』

MCチヘドロー「お?なんやなんや」

ラジオ『えー…森を逃げているとされるID2番ですが…。それ以上に有力な説が浮かび上がりました』

灰スーツの男「有力な説?なんだ?」

ラジオ『…ID2番は、現在…』



ラジオ『…誘拐され、イタリア南部に監禁されている可能性が非常に高い…とのことです』



MCチヘドロー&黒スーツの男&灰スーツの男「「「!!!!!???」」」

MCチヘドロー「はぁ!?何や、何でそうなった!?どっから情報が漏れた!?ピンポイントやないかい!!」

灰スーツの男「まさかイベント運営の奴等が…?いや、奴等の中で、計画のことを知っとる奴はもう海外でバカンスしてるはずだ!!どうして!!」

ラジオ『えー。地中海にあるサルディーニャ島の東部、チレニア海側の沖へ…』

ラジオ『…けものプラズムでできた、アライさんの尻尾が漂着した、とのことです』

黒スーツの男1「し…」

黒スーツの男2「尻尾…だと…!?」

MCチヘドロー「バカな!ハエガイジ!お前の尻尾は、人に化けるために隠したはずや!!」

MCチヘドロー「…まさか…」

アライさん「…アライさんは…自分のことを…人間だなんて思い込めないのだ」

アライさん「自分の意思で、耳や尻尾を引っ込めるなんて…できないのだ」

アライさん「でも、傷の治りが早いのが、取り柄なのだ」

MCチヘドロー「…はぁ?う、嘘や…!ありえへん…嘘や!」ハァハァ

灰スーツの男「ど、どういうことだ!説明しろチヘドロー!!」

MCチヘドロー「っ…ク…ソ…ガ…イ…ジぃいいいいいいいッ………!!!」ハァハァ

アライさん「アライさんは、耳と尻尾を…自分で引きちぎったのだ!そして、川に流したのだ!」

アライさん「耳はどこに沈んだか分からないけど…でも、尻尾がうまく届いてくれたのだ!」

黒スーツの男1「耳と尻尾を、川へ…!?チヘドロー!追って回収しなかったのか!!」

アライさん「できるはずなかったのだ」

アライさん「チヘドローはその時…、アライさんが、人間に化けるために、自分で引っ込めたと思ってたから…!」

アライさん「アライさんのことをガイジだと思ってたから!人の真似を本気でやってると思って!その裏を読まなかったのだぁ!」

MCチヘドロー「くっ……ぅぅぅ…クソが…クソがああああっ!」ハァハァ

ラジオ『今後は、森の捜索も進めますが…、誘拐されたという線を有力視し、捜査を進めていくとのことです』

灰スーツの男「な、ちょっといいか…?」

MCチヘドロー「なんや」ハァハァ

灰スーツの男「ID2番が、イタリア南部に誘拐された…っていう論説が主力になったら…」




灰スーツの男「アライロンダリング、できなくね?」



MCチヘドロー&黒スーツの男1&2「「「な…あ!!!!!」」」

黒スーツの男1「もし、今さらドイツの森に放流して、森に逃げたんだって主張したとしても…」

黒スーツの男1「…ドイツの森から、サルディーニャ島の東部に尻尾が流れ着くなんてことは…主張に無理がありすぎる!!」

黒スーツの男2「クソ!なんてこった!!!このアライロンダリング計画では、何十億っていう金が動くはずだったのに…!」

黒スーツの男2「尻尾一本のせいで!!何もかもパーだ!!クソ!!」

MCチヘドロー「クソガイジぃいいいいいッ!!」ガシィ

MCチヘドロー「てめーのせいでッ!!てめーのせいで、世界中の富豪がフォアグライを口にする機会が無くなったんやぞッ!!!このクソ害獣!」グイイイッ

アライさん「…アライさんは悪くないのだ」

MCチヘドロー「ぁああ!何やてクソガイジ!この期に及んで…」



アライさん「こうなったのは!お前がそのクソガイジに!まんまと出し抜かれたからなのだ!!!」


MCチヘドロー「ぬっ………ぅうううううううッ!!!」

黒スーツの男1「…チヘドロー!」グイイイッ

MCチヘドロー「ぐっ…!」

黒スーツの男1「お前がッ!!クソガイジといつも呼んでいるこいつの目論見を読んで、尻尾を追っていればッ!!」

黒スーツの男1「追い付いて回収できたはずだッ!!こんなことにはならなかったッ!!アライロンダリング計画がご破産なんてことにはッ!!!」

MCチヘドロー「ハァー…ッ!ハァー…ッ!」ブルブル

灰スーツの男「…ボスから、伝言があrた」

MCチヘドロー「なんや」




灰スーツの男「…『チヘドロー。お前の処遇は、追って連絡する』…だそうだ」




MCチヘドロー「う…ぁ………ああああああああーーーーーーッ!!!!!!」

MCチヘドローの顔に、いつもの余裕はなかった。

こともあろうに。
いつもいつもクソガイジと罵っていた相手に…
『アライさんはクソガイジである』という思い込みを利用され、
その心理的盲点を突かれたからである。

加えて、仲間からの評価が下がったこともショックであった。
MCチヘドローは、周囲からの評価を強く気にする人間であるため、
見下されることを何よりも嫌うのである。


御手洗の一撃は、まさしく『窮鼠猫を噛む』といったところである。
しかし、その一噛みは…
まるで、狂犬病ウイルスやアライグマ回虫を媒介するアライグマの牙のように、
深く、致命的に、MCチヘドローへ突き刺さっていた。

MCチヘドロー「くぉのッ!!!ク…
ソ…ガ……イ……ジぃいいいいいいッ!!ブッ殺してやるゥゥゥッ!!」ジャキィ

アライさん「…」

手足の無い御手洗へ、ナイフを向けるMCチヘドロー。

今の状態ならば、MCチヘドローでも刺し殺せるであろう。

黒スーツの男1「やめろ!クソガイジ以下ァ!」ドゴォ

MCチヘドロー「グハァ!!」

黒スーツの男に、膝蹴りをくらったMCチヘドロー。

黒スーツの男2「まだプランB!裏ルートでの臓器売買ができるだろう!そっちまで潰す気かッ!!クソガイジ以下ァ!!」

MCチヘドロー「その呼び方を…やめんかボゲエェェッ!」ハァハァ

アライさん「…」

MCチヘドロー「勝ったと思うなよ害獣がァァッ!てめーはワイを出し抜いたんとちゃう!ただ運が良かっただけや!いつもみたく、運に助けられただけやッ!!」


尻尾がサルディーニャ島へ流れ着いたのは必然ではない。
まぎれもなく、幸運だったからである。

尻尾を川に流す行為は、間違いなく部の悪い賭けだったといえよう。

でもその運に負けたチヘドローはそれ以下なんだよなぁ…

だが、もし尻尾を流さず、あきらめて自殺していれば…
その幸運さえ掴めなかったであろう。


御手洗が、川の前でした決意。

それは…

かつてジャパリパークにいた時のように、能天気に…
部の悪い賭けができる、ある意味での『バカさ』を取り戻す決意。

アライさん生来の『自分に都合がいい未来が来ると、根拠なく信じる』という、蛮勇とも呼ぶべき愚かさを取り戻す決意。


そして…
今まで何度も何度も、御手洗を迫害してきた人間達を…。

…それでも、信じようとする決意であった。

ジョジョ的にいうと「僕は賭けたんだ!」という奴だな

アライさん「こ、これで…!警察が来てくれるはずなのだぁっ!」

MCチヘドロー「はっ…ははっ…はははっ…!今さら、警察が何や!」

黒スーツの男1「…」

アライさん「のあ…?」

MCチヘドロー「ワイがつるんどる、このニイちゃん達が!何者かわかっとらへんようやなァッ!ボンクラぁ!」

アライさん「…?」

MCチヘドロー「このニイちゃん達の組織は!…いや、『ファミリー』はッ!」

MCチヘドロー「ここ南イタリアでは!警察とどっこいどっこいかそれ以上のチカラを持った集団や!!」

MCチヘドロー「麻薬や武器の密輸もお手の物!今さら警察がどうこう、恐れるかボゲエエエエッ!!!」ハァハァ

アライさん「っ…」

つづく

マフィアと手を組んでいたか……本当にチヘドローはただのクズになり下がったな……
いや、元々クズか

どちらにせよイタリアには迷惑な話だよな
この黒服を含めたやらがやっている行為は普通に犯罪もといテロと言ってもいいだろう

チヘドローを応援するとか言っていた奴がいたけど、チヘドーなんて「アライさんを理由に金を稼ぎたいキチガイ」程度しかないからな
「アライさんを絶滅させるのが自分の使命」とかトンチンカンなことを思っていて、しかもこちらが見えるとか勝手に妄想しているからな
前に「烈火の炎の森光蘭と同じレベル」と言ったけど訂正する。それ以下、ラストボスを務めた森なんて足元に及ばない。木蓮以下

>猟師1「当然だ。だってアライさんだからな!もし違ってたら木の下に埋めて貰っても構わないぜ」ザッザッ

結局この人はどうするんだろう?
これでやらなかったら約束も守らないただのクズだが……果たして

チヘドローの凄惨な最期と言うと、自らが考案したデスゲームを身をもって体感してというのが浮かぶな。マフィアのケジメ案件で。ただ、それだと、過去の罪が暴かれないよなあ。

>>829
それだとダンガンロンパの黒幕みたいで嫌だな……
爽快感がない

凄惨な最期も欲しいがチヘドローの罪は暴かれて欲しい
そうなれば捕まってる旦那が世間の同情を買って情状酌量で減刑になるかもしれないし

>>826
そいつらはダルマにされて強姦された御手洗の姿を見て何を思うんだろうね?埋まるべきだわ

>>831
ただのこの猟師連中の発言を見るとクズぽいから「そ、そんなのただの軽口だけじゃねぇか!無効に決まっている!」「なんで俺がアライさんのために埋まらんなきゃいけないんだ!捕まったアライさんが悪いんだ!」とか言いかねない
チヘドローと会ったら金をチラつかせて買収されるのがオチだろう…

…2日後…

~コンテナの中~

アライさん「…」

御手洗はコンテナへ入れられ、トラックで運ばれていた。

きっと、イタリア南部から移動させられているのであろう。

やがて車の音が止まり、コンテナがガタガタと動いた。

黒スーツの男1「ここが新しい牢屋だ」ガチャッ

御手洗は持ち運ばれ、今までとは別の小屋へ移された。



~小屋の中~

アライさん「…」

御手洗は、内心不安でいっぱいだった。
自分が打てる手は、尻尾を川に流すだけである。

自分がイタリア南部にいることをアピールできたはいいものの…

これで状況が何も変わらなければ、骨折り損のくたびれ儲けである。

MCチヘドロー「…おら、飯や」ガチャッ

MCチヘドローが、ドリンクボトルを持って小屋に入ってきた。

MCチヘドロー「…」スッ

アライさん「…」ゴクゴク

妊娠しており、交尾が不要になった御手洗。
もう食事以外、何も楽しみはない。

ただひたすら、不安に震えるだけの毎日である。

MCチヘドロー「あひゃひゃ…。ワイがつるんどる、この組織は…イタリアでも最大勢力を誇るマフィアや」

MCチヘドローは、「あひゃひゃ」などと笑ってみせたが…
その表情に、全く笑みはなかった。

MCチヘドロー「今お前が監禁されとる場所は、警察すらおいそれと入ってこれない領域や」

MCチヘドロー「あひゃひゃ、なんせ密輸するブツの置き場やからな。警察が踏み込んでこれへんのは御墨付き、実績アリアリや」

アライさん「…」

MCチヘドロー「今、この国での捜査はイタリア警察の管轄になっとる。せやけど、人が一人行方不明になって見つからず終いなんて珍しいことやない」

MCチヘドロー「お前も同じ末路を辿るんや、害獣」

アライさん「…」

既に、御手洗の心は折れそうになっている。
MCチヘドローの言葉は、一つ一つが御手洗の心をえぐり、一つ一つ希望をへし折っていった。

小屋の外で、車の音がする。

MCチヘドロー「あひゃひゃ、ブツを取引しとる連中が帰って来たとこやな」

アライさん「…」

やがて、小屋の扉が開く。

黒スーツの男1「…ッ…」ハァハァ

MCチヘドロー「お疲れちゃん。取引はどやった?」

黒スーツの男1「どうもこうもない…!取引どころじゃない…!」ハァハァ

MCチヘドロー「なに?」

黒スーツの男1「うちの麻薬チームと武器チームの幹部が…、どっちも行方不明になった!!!」ゼェハァ

MCチヘドロー「何やて!!!どういうことや!!ポリ公か!?」

黒スーツの男1「いや…。取引現場では、警官や不審人物が来ないかきっちり見張っていた」

MCチヘドロー「見張ってたって…!じゃあなんで行方不明になるんや!ちゃんと見とったんか!?」

これは一体何者だ……!?

黒スーツの男1「聞く限りだと…、『音もなく、突然消え去った』とか…」

MCチヘドロー「音もなく…!?アホか、何のオカルトや。言い訳にしちゃアホらしすぎるで」

アライさん「…?」

MCチヘドロー「しかし、ワイはおたくらとの付き合い短いけど…。こういう時、保身のための言い訳をするような奴らやないってことは分かるわ」

黒スーツの男1「ああ。しかも幹部だけじゃなく、重要なポストにいる者が、次々と姿を消している…らしい!」

MCチヘドロー「…何が起こっとる?おたくらはイタリア最強のマフィアなんやろ!んなポンポコポンポコ、幹部がいなくなるような脆い組織なんか!?」

黒スーツの男2「そんなワケがあるか!幹部の連中は、行政にすら口出しできるチカラのある連中だぞ!ボディーガードも十分だ!!」

カメレオンのフレンズか?

黒スーツの男2「…とにかく、俺たちは俺たちの仕事をやるだけだ。上からの命令に従うまでだ」

MCチヘドロー「その『上』からいなくなっとるんやろ?」

黒スーツの男1「…」

黒スーツの男2「…」

MCチヘドロー「…まあええ。見張りや見張り。こんな小屋ん中におってもしゃーないやろ」スタスタ

黒スーツの男1「あ、ああ…」スタスタ

黒スーツの男2「そうだな…」スタスタ

一同は小屋から出て、見張りについた。

…翌日…

黒スーツの男1「…行方不明者が、さらに増えている。ファミリーが捜索しているが、誰一人見つかっていない」

黒スーツの男2「どういうことだ!?し…始末されたのか!?」

MCチヘドロー「…幹部どもが、何の断りもなく、自分から勝手にいなくなるハズがないわな…」

灰スーツの男「おい!聞いたか!」

MCチヘドロー「何や?」

灰スーツの男「…臓器売買ルートを仕切ってるチームのリーダーも…消えた…」

MCチヘドロー「…」

黒スーツの男1「…」

黒スーツの男2「…」

…誰もが思った。
『これがいけない』と。

普通に姿を消し始めたのか…それとも誰かに消されているのか……

その時。

縞スーツの男「おい!お前らぁぁ!逃げろォオォオオオオオオォォッ!!全員ここから逃げろォオオオッ!」タタッ

…マフィアの一人が、叫びながら走ってきた。

黒スーツの男1「な…!?何だ!?」

MCチヘドロー「逃げるって…?小屋ん中のハエガイジはどうするんや!?」

縞スーツの男「爆弾を持ってきた!これで木っ端微塵にする!扉を開けろ!」スッ

縞スーツの男が持っているのは…
密輸する予定の爆弾であった。

MCチヘドロー「何がどうなっとるか分からんが…ほいっとな!」ガチャッ

MCチヘドローは、小屋の扉を開けた。

MCチヘドロー「ほな、後は頼んだで!」タタッ

縞スーツの男「ああ!この中か!」ザッ

縞スーツの男は、小屋の扉から離れた場所に立った。

縞スーツの男「証拠、隠滅!」ブンッ

そして、数十億という利益を産み出すというフレンズがいる小屋に向かって、爆弾を投げた。

チヘドローは怪しいとも思わないのか……小物以下に成り下がったな





爆弾「」ヒューー


\フッ/


…突然、空中で爆弾が消えた。
音もなく。

縞スーツの男「な…!?何だ?何が起こった!?」

\フッ/

そして、その瞬間。
縞スーツの男も消えた。


数秒後…

上空で、轟音とともに大爆発が起こった。




黒服の男達「「「うおおおおーー!!」」」ドドドドド

大勢のファミリーが、駐車場へ向かっていた。

MCチヘドロー「爆弾が空中で爆発した…?小屋をフッ飛ばすんやないんかい!?」タタッ

黒スーツの男2「何者の仕業だ!?フレンズか!?」タタッ

MCチヘドロー「いやいや…今やヨーロッパ全員がフレンズの入国禁止や!日本を出る前に止められるわ!」タタッ

灰スーツの男「らしいな!どうやら事件範囲がイタリアまで広がったことにより、ヨーロッパ全体がフレンズに危険が及ぶ地域と判断された…らしい!」タタッ

黒スーツの男1「とにかく遠くに離れろとのことだ!車に乗るぞ!」タタッ

「残念、行き止まりだ」

黒服の男達「「!?」ピタッ」

しかし、駐車場の前に…
何者かがいた。

??「もう、逃げ場はないぞ」






タイリクオオカミ「デスゲームは終わりだ。チヘドロー」



…にっこりと笑みを浮かべたまま立っているブラウンPであった。

MCチヘドロー「…な…!お前…何でここに…!?飛行機には乗れへんはず…や…」

タイリクオオカミ「そうだね」ニッコリ

MCチヘドロー「…お前…何を『笑っとる』んや…?」

タイリクオオカミ「さて、この先へは進ませない。通せんぼさせてもらうよ」シャキンッ

黒スーツの男1「あ…あいつは…何だ?フレンズに見えるぞ…チヘドロー」

MCチヘドロー「…せやな。アライさんを育てて無害化してから殺す変態や。しかも、めっちゃ強い奴や」

黒スーツの男2「ブラウンP…!知ってるぞ、あいつ…!」ジャキッ

黒スーツの男2は、拳銃を構えた。

黒スーツの男2「死ねぇ!」バァン

タイリクオオカミ「…」ニッコリ

ブラウンPは、笑みを浮かべると…



タイリクオオカミ「だああっ!」ヒュンッ

難なく銃弾をかわし…

タイリクオオカミ「今度はこっちの番かな」ヒュンッ

野生解放の輝きに包まれながら、一瞬で黒スーツの男2の目の前に駆け寄った。

黒スーツの男2「ば…化け物が…ッ」

タイリクオオカミ「はッ!」ブンッ

黒スーツの男2の前で、タイリクオオカミは腕を振った。


黒スーツの男2「あ…ぁ…」

黒スーツの男2「ぐぎゃぁがぁああああああっ!!」ブシャアアアボドボドボド

すると、黒スーツの男2の胴体がぱっくりと裂け、血と臓物がぶちまけられた。

黒スーツの男1「ひ…ひっ…!」

黒スーツの男2「が…ぅ…ぅがぁあああっ…!」ドサァ

タイリクオオカミ「ああ…いい声だ。ふふ…、アライちゃんの断末魔よりも…若い男の断末魔の方が…そそるね…」ウットリ

ブラウンPは、手を血で濡らしながら、笑みを浮かべた。

黒スーツの男2「」ビクンビクン…ガクッ

黒スーツの男1「…な…なんなんだ…こいつ…」

黒スーツの男2は、動かなくなった。



…ブラウンPの手で、人間の命が奪われた。

黒服の男達「「死ねぇ!」」パァンパパァンパパパァン

黒服の男達は、ブラウンPへ拳銃を撃つも…

タイリクオオカミ「ふっ!」ズバァ

黒服の男達「「がっはぁぁあっ!」」ブシャアアアボドボドボ…

…文字通り瞬殺された。

タイリクオオカミ「ああ…。彼らにも、守るべき家庭があるんだろうね。家で帰りを待っている、愛する子供がいるんだろうね…」

タイリクオオカミ「…ふふ…父親が惨殺されたと知った子供たちは、どんな顔をするのかな?」ウットリ

MCチヘドロー「…あひゃひゃ……ブラウンP…。とうとう、人殺しになったか…」

タイリクオオカミ「ええ。お陰さまでね」ペロリ

ブラウンPは、爪についた血をぺろりと舐めた。

MCチヘドロー「お前…なんでここにおるんや?」

タイリクオオカミ「簡単な話さ。彼女に連れてきて貰ったんだ」スッ

ブラウンPが指差した方には…

??「御手洗…。こんな姿になるまで放っておいて、すまなかったのです」フワリ



会長「もう、大丈夫なのです」スタッ

アライさん「…か、会長…」

…御手洗を抱き抱え、両足で着地した会長がいた。

MCチヘドロー「…あ、あひゃひゃ。アラ虐重鎮が勢揃いやなぁ」

タイリクオオカミ「素晴らしいスピードだったよ、彼女の飛ぶ速さはね」

罪を暴いて裏で料理した方がいいと思うよ

MCチヘドロー「…その様子…。『失楽薬』と『脚が動かなくなる薬』を…、シロウちゃんとこで、解いてもらったんか…!」

会長「そういうわけです。我々は旅券も使わず、飛んで密入国したのです」

MCチヘドロー「…組織の幹部どもが、急に音もなく消えたのは…、お前の仕業か、会長」

会長「猛スピードで飛んで、チョイなのです」

MCチヘドロー「…連れ去った奴は、どうしたんや」

タイリクオオカミ「情報を喋った奴は、五体満足ではないけど生きてるよ」

MCチヘドロー「…情報を持っとらんかった奴は?」

タイリクオオカミ「肉片になってもらった」

MCチヘドロー「…愉しかったか?」

タイリクオオカミ「ええ、とっても。アラ虐の百倍良かった」

会長「もうお前に逃げ場はないのです、チヘドロー。捕まって、洗いざらい喋って貰うのです」

MCチヘドロー「ふっ…くく…」

MCチヘドロー「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」ジャキッ

チヘドローは、拳銃を取り出し…

MCチヘドロー「お断りや」スチャッ

銃口を自分のこめかみに押し当てた。

タイリクオオカミ「…チヘドロー。ひとつだけ、答えてくれ」

MCチヘドロー「ええで?何や」

タイリクオオカミ「お前のほどの多才な男が、なぜマフィアなんかとつるんだんだ」

タイリクオオカミ「御手洗をそんな姿にした君を褒めたくはないが…。君は研究者としてフレンズのレベルを発見し」

タイリクオオカミ「その後はすぐに雑誌の編集長や、テレビ局のプロデューサーになった。…ある種では天才的な変わり身の早さだ」

タイリクオオカミ「その気になれば、日本でいくらでも綺麗な仕事につけただろう?こんな血と泥にまみれた仕事なんかしなくても」

MCチヘドロー「…」

タイリクオオカミ「…何か…、そんなに、金が必要だという理由でもあるのか?」

MCチヘドロー「ハ…。天才やって誉められるんは心地ええなぁ」

MCチヘドロー「ワイは初めっから、銭なんてどうでもええんや」チャキッ

会長「…」

MCチヘドロー「ついでに言うと…、アライさん共が生きようが死のうが。それすらどうでもええ」

MCチヘドロー「ワイがただ一つ…唯一欲しかったモンは…」

タイリクオオカミ「…」

MCチヘドロー「『名声』ッ!!それだけやッ!!」

MCチヘドロー「ヒーローになって、皆に尊敬されたいッ!!」

MCチヘドロー「救世主になって、歴史に名を残したいッ!!」

MCチヘドロー「人気者になって、チヤホヤされたいッ!!」

MCチヘドロー「そして…セールスマンになって、人にいつまでも必要とされたいッ!!」

MCチヘドロー「アラ虐なんぞそのための手段にすぎんッ!アライさん達は、ワイが栄光の座に登り詰めるための踏み台にすぎへんのやッ!!!」シュバッ

MCチヘドローは、ブラウンPへ銃口を向けた。

タイリクオオカミ「」

MCチヘドロー「文句あるかクソボゲ共がぁァァーーーッ!!」バァン

そして、ブラウンPへ発砲した。

タイリクオオカミ「っ…」バズゥッ

ブラウンPの肩に銃弾が当たった。

MCチヘドロー「てめーら気持ち悪い動物のお人形さん共に!殺されてたまるかッ!!アーヒャヒャヒャッ!」バッ

MCチヘドローは、懐から自動小銃を取り出す。

アライさん「っ…させない、のだっ!」シュウウウッ

御手洗は野生解放し、けものプラズムで手足を形成した。

MCチヘドロー「ワイのために死ね!!美少女フィギュア共がァァーーーッ!」ジャキッ





アライさん「たああああああああああああーーーーーーッ!!!」ドッガァアアアアアアッ




野生解放した御手洗は、一気に距離を詰めると、MCチヘドローの股間を蹴りあげた。




MCチヘドロー「ギャォオオオオオオオオオオォオォォオオオォォーーーーーーーーーーッ!!!!」グシャベギボギグチャァアアアアッ


…MCチヘドローの下腹部の中で、いろんなものが潰れ、破裂し、粉砕された。

MCチヘドロー「ご…ぶ…げェェッ……!」ドサァ

MCチヘドローはその場にうずくまった。

会長「…チヘドロー。お前、そんなにアライさんアライさんって…。そんなにアライさんが好きなのですか?」

MCチヘドロー「…な、ワゲ…あるが……ボゲッ………!」ドクドク

チヘドローの尻から血が流れている。

会長「本当に嫌いだったら、さっさと忘れるべきなのです」

会長「だのに、お前はとっくの昔に終わったアラ虐というオワコンへ…いつまでもみっともなくすがり付く気でいる」

会長「お前は自覚しているのです。自分自身が…」



会長「アラ虐以外、何も取り柄がないと」



MCチヘドロー「ッ………!」

会長「アラ虐を失ったら、誰からも見向きされなくなると思っている。だからこそ、マフィアなんぞに魂を売ってまで、アラ虐にしがみついたのです」

MCチヘドロー「…ッ…言う、なやッ…!!」

会長「お前の認識は間違っていないのです。…アラ虐のないお前は、家族の他には…誰にも愛されないのです」

MCチヘドロー「………ぐ……がッ……!」

会長「そのままじっとしていれば、救急車を呼んでやるのです、チヘドロー」カチャッ

会長は後ろを向き、電話をし始める。

MCチヘドロー「ハァー…ハァー…」ブルブル ズルズル

チヘドローは、上半身だけで這って、落とした拳銃の方へ向かう。

骨盤や脊髄の一部が破壊され、もう脚は動かないようだ。

MCチヘドロー「ワイを…見下す奴は…!痛い目見せたるッ…!」ガシィ

MCチヘドローは、右手で拳銃を握る。




タイリクオオカミ「その度胸だけは、認めてやる」フミッ

MCチヘドロー「ッ…!」

ブラウンPは、チヘドローの右肩を踏みつけた。

タイリクオオカミ「よって、その功績を称え…」

タイリクオオカミ「私の靴底のスタンプを贈ってあげようッ!!」グシャアアア

MCチヘドロー「アギャァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」グシャベギボギ

チヘドローの右肩が踏み潰された。
外出血はないが、間違いなく骨とともに神経も断裂しているだろう。

タイリクオオカミ「左もやってあげようか?」フミッ

ブラウンPは、チヘドローの左肩を踏んだ。

タイリクオオカミ「もし、御手洗へ心から懺悔できるというなら、左腕の自由だけは残してあげてもいい」

MCチヘドロー「へ、へっ…!ワイはな…!こういう時、言うことは決めとったんや…!」ブルブル

タイリクオオカミ「言ってみなよ」

MCチヘドロー「あ…アヒャヒャ…!ID2番…!」

アライさん「…」ハァハァ

MCチヘドロー「よーく覚えとけ。これから起こる事、全て!すべて…!」ハァハァ

MCチヘドロー「お前が生きとったせいで、起こることやって事をなぁ!!!」

タイリクオオカミ「…」グイイッ

MCチヘドロー「アアアアーーーヒャヒャヒャヒャヒャヒャーーーーッ!!!ち、チヘドロー死せども、アラ虐は死なz…」

タイリクオオカミ「楽に死ねると思うなッ!!!」グシャアアアアッ

MCチヘドロー「うぐげぇャァアアアーーーーーーーッ!!!!」メシャボギゴギィィィ

MCチヘドロー「」ドサァ

…下腹部の損傷に加え、両肩を踏み潰されたチヘドローは…
激痛によって失神した。

タイリクオオカミ「…会長、御手洗を頼む。後で落ち合おう」

会長「…分かったのです。また戻ってくるのです」ガシィ

アライさん「…」ヒョイ

会長は、御手洗を背中に乗せると…

会長「御手洗。帰るのです」シュパァアアーーーーッ…

アライさん「…」

…猛スピードで、上空へ飛び立っていった。

タイリクオオカミ「…さて…」

ブラウンPは、周囲を見回す。

周囲には、マフィア達の死体が転がっていた。

タイリクオオカミ「…」ピピポパ

ブラウンPは、電話をし始める。

ブラウンP「もしもし、警察か?私は、一連のマフィア構成員連続失踪事件の…誘拐犯であり」

ブラウンP「そして、彼らを殺傷した犯人だ」

ブラウンP「今私は、………にいる。まだ生きている怪我人もいるから、救急車をよこしてほしい」

ブラウンP「それから、………へ、拷問したマフィア構成員を監禁している。無傷で生きている者、重症を負っている者、身体機能の一部を失っている者、死亡した者。大勢いる」

ブラウンP「マフィアとて人間だ。至急、救助に向かってくれ」

ブラウンP「…そして、私は…」

ブラウンP「あなた達警察に投降する。目的である…誘拐されたフレンズ、アライグマID2番の救助が終わったからだ」

ブラウンP「………にいるから、私を逮捕しに来るといい。私は一切の拘束、刑罰を受け入れ、抵抗しない」

ブラウンP「…だが。私はフレンズ。人並みはずれた力を持った存在だ。するつもりはないが…手錠や牢獄を容易に破壊できる」

ブラウンP「もしもあなた達が、私を…。拘束不要なテロリストと思ったならば」



ブラウンP「現場ですぐに、私を射殺するといい」

ブラウンP「私は一切抵抗せず、あなた達の選択を受け入れる」

ブラウンP「だが、ひとつだけ言わせもらう」

ブラウンP「私が多くの命を奪ったのは…、彼らが先に、私の友人の命を奪おうとしたからだ」

ブラウンP「そして、あなた達が彼女を助けなかったからだ」

ブラウンP「かつて日本に出現したアライさん達含めて…、フレンズは決して、人間に自分から手は出さないんだ」

ブラウンP「自ら君たちへ危害を加えるビースト…獣ではない。君たちがフレンズを虐げない限り、フレンズは君たちにとって『友達』で有り続ける」

ブラウンP「…それでは、君たちの選択を待つ」プツッ

ブラウンPは、電話を切った。



~上空~

会長「…」ビュオオオオオオオオオオ

アライさん「っ…」

御手洗の手足は既に消えていた。

会長「お前は密入国者ではないのです。お前は、誘拐されてイタリアへ強制連行されたのです」ビュオオオオオオオオオオ

会長「フランスの航空会社は、信用できるのです。必ずお前を日本へ連れ戻してくれるのです」ビュオオオオオオオオオオ

アライさん「…会長は…日本に、来ないのか…?」

会長「…あいつを一人には、できないのです」ビュオオオオオオオオオオ

アライさん「会長…?」

突如、会長は進路を変えた。

アライさん「のあっ…!」

会長「」ガシィ

会長が空中で何かを掴んだ。

カモメ「キュー!キュー!」ジタバタ

…それは海鳥のカモメであった。

会長「流石に腹が減るのです。もぐもぐ、ばりばり…」ムシャムシャ

カモメ「グエエエ」ブシャアア

会長は、飛びながらカモメを貪り食った。

会長「もうすぐフランスなのです」ビュオオオオオオオオオオ



会長は、御手洗を空港へ預け、
スタッフの手を借りて日本行きの便へ乗せると…

…再び、イタリアへ戻った。

…犯行現場…

ブラウンP「…」ギュッ

会長「…」ギュッ

ブラウンPと会長は、手を繋いでいる。

ブラウンP「会長。…本当に、いいの?あなたなら逃げられる」

会長「…これで、いいのです」ギュッ

ブラウンP「…」

やがて救急車が来て、チヘドロー含む生存者を救出していった。

警官達「…」ザッ ジャキッ

警官達が、銃を構えてブラウンP達の方へ近寄ってくる。

ブラウンP「…会長…」ギュッ

会長「…」ギュッ

ブラウンPの手は、震えていた。

ブラウンP「私達が誘拐犯!そして殺人犯だ!」

ブラウンP「君たちの選択を見せろ!」

…警官達へ言い放った。

警官「…連続殺人犯。これが、我々の答えだ」

警官達「…」ジャキィ

ブラウンP「…」

会長「…」



ぱぁん、という激しい連続音と共に、警官達の銃撃が始まった。

ブラウンP達へ、連続で銃撃が浴びせられる。

ブラウンP「ぐ、うぅっ!!」ブシャアア

会長「きゃあああっ!」ブシャアア

野生解放どころか、サンドスターによる強化すらしていない肉体。

かつてブラウンPは、サンドスターによる肉体強化によって、アライキング・ボスのバール攻撃を無傷で防いだ。

しかしそれは、サンドスターの防御あってこその強さ。

自ら守りを捨てたブラウンP達の肉体は、銃弾によって容易に貫かれていく。

警官「お前達は、『友人を助けなかったお前達も悪だ』とみなし、連行された先で警官達を皆殺しにするかもしれない」

警官「もしくは司法の場で暴れるかもしれない…」

警官「君たちの決意は理解した。ここで、大人しくなってもらう」


銃弾の雨霰が、無抵抗の二人の少女へ浴びせられる。

ブラウンP「」バスゥッ

会長「タイリク!!」

ブラウンPの額から、血飛沫が舞った。

ブラウンP「」ドサァ

ブラウンPは倒れた。
会長の手を握ったまま。

会長「…はかせ…。お元気で、なのです…」ブシャアア

会長「」ドサァ

続けて、会長も地に伏した。

警官達の射撃が止まった。

イタリア警官1「…」スタスタ

イタリア警官2「…」スタスタ

警官2人が、地に伏した二人の少女の頭へ、銃を密着させた。

イタリア警官1「…」バァンッ

会長「」ブシャアア

イタリア警官2「…」バァン

ブラウンP「」ブシャアア

…二人のフレンズは、手を繋いだまま…
頭部を破壊され、動かなくなった。

そして次は、二人の少女の左胸…
心臓の位置へ、銃口を密着させた。

イタリア警官1「…」バァン

会長「」ブシャアア

イタリア警官2「…」バァン

ブラウンP「」ブシャアア

…二人の心臓の位置から、大量の血が溢れ出す。

イタリア警官1「…連続殺人犯2名の死亡を確認。これより、遺体を搬送する」

会長「」

ブラウンP「」

…二人のフレンズは、そのまま二度と動くことはなく…
搬送されていった。

こうして、事件は幕を引いた。


被害者の御手洗は、日本へ搬送された。
彼女はフランスの森へ逃げたのではなく、イタリアへ拉致されたと、正しく報道された。

ID2番亡命事件まとめwikiは、大勢の荒らしによって滅茶苦茶にされた後…
…誰もアクセスしなくなった。



主犯のチヘドローは…
手術によって一命をとりとめたようだ。

しかし、睾丸だけでなく…
肛門や膀胱なども破裂。
人工肛門を取り付けることになった。

さらに、腕と脚の神経は回復の見込みが無いらしく、
自力では動けなくなった。

常に誰かの助けがなければ生きていけない体となったのだ。

そして取り調べでは、一連の事件は自分とマフィア達による犯行と主張。
長い禁固刑が下された。

控訴はしなかったようだ。

チヘドローとつるんでいたマフィア達は、重要な構成員が大量に死亡したため、
急速に規模を縮小させていった。
…というか、ファミリーは崩壊した。

マフィア達によって自由を奪われ、脅迫され、暴力を受け続けていた被害者たちは…
…連続殺人犯の二名のフレンズへ、感謝の意を示し、弔った。

マフィア達が、一体誰に対し、臓器売買やフォアグライ販売をしようとしたのか…。
それは謎に包まれたままであった。

そして、会長とブラウンPは…
エンバーミング(防腐処理)を施された後、
日本へ搬送された。

連続殺人犯とはいえ、死ねば仏である。
彼女達の葬式は、ひっそりと開かれた。

フレンズ達や、ブラウンPのファン達…
会長と生前繋がりのあった者達が、会場に収まり切らないほど大勢押し寄せた。

生命維持装置付きの車椅子に座った、『教授』と呼ばれるフレンズも。
ほんの少しの時間だけ、会場に姿を現した。


大臣は、人目をはばからずに泣いた。
棺の中の会長へ、何度も呼び掛けた。
「ミミちゃん、ミミちゃん」と。

しかし、骸が答えるはずもなく。
やがて、二人の少女は灰となり、黄泉へ旅立っていた…。

彼女達をその場で射殺したイタリア警察は、同情の声もあったが…
それ以上に多くの非難が浴びせられた。



~ジビエ料理店『食獲者』~

食通の友人「…」

食通の友人「ブラウンP。お前があの時、俺を喫茶店へ連れてきたのは…」

食通の友人「…俺に別れを告げるため、だったんだな…」

食通の友人「…」

食通の友人は、もう二度とお得意様の客にして、仲が良かった友人が店に来ないことを理解し…
…静かに涙を溢した。

鬼の目にも涙、といったところであろうか。

食通の友人「何が鬼の目にも涙、だよ。来てるんならそう言え」

ああ。いや…
珍しいものが見れたな、と思って。

食通の友人「…結局、ID2番は。亡命したんじゃなかったんだな…」

ああ。
俺含め、世間のやつらは皆、ID2番は社会の厳しさに我慢できず、
森に逃げたもんだと思ってたよ。

しかし実際蓋を開けてみれば、社会の厳しさに我慢どころか…

…1ヶ月半にもわたる監禁生活を、正気を失わずに耐え抜いたそうじゃないか。

食通の友人「ひどい対人恐怖症になったらしいけどな」

無理もねえ。
俺だったら自殺してるかもしれねえ。

ID2番は、自殺の機会があったにも関わらず、しなかったらしいがな。

食通の友人「…対したもんだな」

…アライさん…。
奴らもまた、人間と考え方が違うだけで…、
れっきとしたフレンズなんだな。

食通の友人「今更かよ…。俺はそれを調理して、食ったり客に振る舞ってたんだぜ」

…だが。
野良の奴らは、純然たる人類の敵だ。

アラ虐とか関係なく、俺達の戦うべき敵であり…
そして、滅ぼすべき災厄だった。

食通の友人「ああ、違いねえな」

…ID2番。
手足を失い、友人を喪い。
気の毒だが…
…奴が災厄とならないことを祈ろう。

食通の友人「…」

つづく



~フレンズ省~

大臣「イベント運営に貸し出していたフレネミーズ・ジェイルが返却されたのです」

職員「フレンズ拘束用手錠ですね」

大臣「…もしもフレンズが海外で暴れた場合の対策として…、我々はイベント運営者達へフレンズ用手錠を貸し出してうたのです」

大臣「イベント終了後は、御手洗が森に逃げたと疑われていたので…、イベント運営者は『森に逃げた御手洗を拘束するため』という理由で、
手錠を御手洗捜索部隊へ預けていた、とのことです」

職員「結局、ID2番は誘拐されていたわけですね」

大臣「はい。なので本来、フレネミーズ・ジェイルが使われたはずはないのですが…」



大臣「…どうも、使われた形跡があるのです」

職員「…」

大臣「イベント運営者曰く、『正常に動くかを一度試したから』らしいですが…」

職員「…本当だといいのですが」

大臣「…しかし、御手洗のメモ帳の件といい…」

大臣「あの運営者たち、クサいのです」

大臣「…御手洗から聞いた話だと、例のメモ帳の書き置きは、イベント運営者の人間から頼まれた言伝をメモしたものだそうです」

大臣「そして、その文面が偶然にも、失踪の書き置きに似ていたから、犯人グループに利用された…と説明していたのです。どう思いますか会長?」クルッ

椅子「」

大臣「…」

…いつも、どこでも一緒だった会長。
その姿はもう無い。

大臣「っ…」プルプル

…いるのが当たり前だと、そう思っていたのに。

職員「…大臣…」

大臣「っ……もう、ミミちゃんとの別れは済んだのですっ…泣いたらダメ、なのですっ…!」ウルウル

しかし会長は、警察に代わって御手洗を助けるために、
イタリアへ渡り…その報いを受けた。

日本に帰って来たときには、物言わぬ骸となっていた。

大臣「っ……ぐ……ぅ……!あんな事件さえ、あんな事件さえなかったらっ…!ミミちゃんも、タイリクも、御手洗も、みんなみんな無事だったのですっ…!」グスングスン

職員「…チヘドローとマフィアの仕業ですか…」

大臣「私が個人的に許せないのは…、チヘドローというトカゲの尻尾に守られ、何の裁きも受けず、のうのうと暮らしてる連中なのです」

職員「…」

大臣「ワナだったのです、あのイベント…フレンズ感謝祭自体がっ…!最初から、最後までっ…!」ブルブル

大臣「全ては、グッズや入場券の売上金と、御手洗の誘拐のためだけに仕組んだこと…!」

大臣「セルリアンを倒したフレンズ達に感謝する気なんて、毛頭なかったっ…!我々は、やつらの金稼ぎに利用されただけだったのです…!」

大臣「特に御手洗は、こともあろうに、マフィアの資金源なんかにっ…!」

大臣「運営どもは、どう考えてもクロなのにっ…!証拠がない以上、告発できないのですっ…!」

職員「…御手洗捜索グループに、フレネミーズ・ジェイルが貸し出されたかどうか聞けばいいのでは?」

大臣「聞いたのです…既に。そして、『貸し出された』と答えたのです」

職員「…まさか、フランス警察までグルで、口裏を合わせたと!?」

大臣「流石にそれはない…と思いたいのです。きっと運営者達は警察へ、手錠の複製品を渡したのです。」

大臣「きっと、『テスト済みなので、本当に必要な時…ID2番を拘束するときまで使うな』とでも言い添えて」

職員「…その時が来ないのを分かっていながら、ですか」

大臣「人間には、言い奴も悪い奴もいるのです。なのにその悪い奴らは、どうして、どうして…こんなに残酷になれるのですかっ…!」ブルブル

大臣は、悔しさに打ち震えている。
自分がたとえそう主張しても、今の段階では『言いがかり』にしかならない。

職員「…もしもタイリクオオカミさんが、犯人グループを殺さずに逮捕していれば、チヘドローの言葉以上の何かが見つかったのでしょうか…」

大臣「…それは無理なのです。タイリクが服用していた失楽薬は、精神の働きを抑える薬…。あれの効果があるままでは、野生解放ができないのです」

大臣「加えて、失楽薬を使っている間のタイリクは、人を傷つけられないほど繊細で、優しい奴になっていたのです。アラジビ料理人になる前のように…」

大臣「そんな状態では、拷問なんてできない。野生解放もできない状態でイタリアへ飛んでも、マフィアに捕まるだけなのです」

大臣「タイリクは優れた容姿の美少女なのです。やつらに捕まったら、何されるか分かったもんじゃないのです」

職員「…つまり、御手洗の救助には野生解放の力と、人間を拷問できる残酷性が必要だから…、失楽薬を使うしかなかった、と」

大臣「タガの外れた殺人鬼に堕ちざるを得なかった…らしいのです」

大臣「あの二人は…我々に秘密で、御手洗救出作戦を進めていたのです…」

職員「…しかし、こないだ…ショクエモンPの食堂でご飯食べに言ったときは、うり坊の丸焼きを食べて愉悦していたそうですが」

大臣「…きっとその時には、既に…失楽薬を徐々に解除していたのでしょう。今回の計画のために…」

職員「…森に失踪したという説が出回ったときには既に、自ら救出しに行こうと決意していたわけですね」

大臣「なんで黙っていたのです、ミミちゃんっ…!私に相談してくれれば、止めたり、手伝ったりできたのに…!」

職員「…」



~サンドスター科学研究所附属病院~

理科の先生「…検査しましたが、手足の断面以外に怪我はありません。お腹の中の赤ちゃんも、順調に育っています」

理科の先生「もう1~2週間もすれば、元気なアライちゃん達が産まれてくることでしょう」

アライさん「…でも、手足が無いのだ…。抱っこしてあげることもできないのだ…」

理科の先生「通常の人間なら、そうでしょう」

アライさん「…どういうことなのだ…?」

理科の先生「あなたはアライさんであるため、回復力が高い。それ故に…」




理科の先生「…腕と脚を、『移植』すれば…、くっついて元通り動くようになります」



アライさん「移植…」

理科の先生「そうです」

アライさん「……それ……ドナーは……誰……なのだ?」ブルブル

理科の先生「ドナーに関する情報は申し上げられません」

御手洗は…
かつて教授の体に起きた悲劇を、監禁中にMCチヘドローから聞いていた。

それ故に、『ドナー』が何者か…
もう分かっている。


アライさん「…実験室で育てた、アライさんじゃないのか…?」ブルブル

理科の先生「…ですから、ドナーに関する情報は…」

アライさん「いいから答えるのだぁ!答えないなら手足はいらないのだ!」

理科の先生「…」

理科の先生「…あなたのおっしゃる通り、です。…ビーバーさんやプレーリーさんの命を救った技術です」

アライさん「…」

自分の同族が、産まれたときから実験室で養殖され…、
何の自由も与えられず、ただ実験材料や、移植手術の臓器提供に利用されている。
…当然、本人の承諾一切無しに。

この病院が行っている行為…
マフィアがやろうとしていた臓器売買と、何が違うというのであろうか。

アライさん「…あたしに手足をくれたアライさん達は…、手足が無くなるんじゃないのか…?」

理科の先生「それを考慮する必要はありません」

アライさん「何でなのだぁ!」

理科の先生「それは、例え手足をドナー本人の合意無しに切除したとしても…。アライさ…」ピタッ

理科の先生は、そこまで言い、言葉を止めた。

理科の先生「……」アセアセ

…とてつもなくヤバい事を言いかけてしまった。
いつも教授を意図せず泣かせてしまう理科の先生でも、さすがにマズいと分かったようだ。

理科の先生は、なんとフォローすればいいか考えているが…
途中まで口に出してしまった以上、もう取り消すことはできない。

アライさん「…他のフレンズは駄目でも…、アライさんなら…いくら殺してもいいからなのか…」

理科の先生「…」

アライさん「何にも悪いこと、してないのにかっ…!」

理科の先生「…………

アライさん「何とか言うのだ!誤魔化さず答えるのだぁ!」ブルブル

御手洗は、実験室のアライさん達が可哀想だから、同情しているのであろうか?

…御手洗とてアライさんである。
自己の利益を第一に考え、他者にあまり共感しないという…
アライさん生来の本質的に邪悪な性格は、残っている。

しかし、それを差し置いても…
自分と同族のアライさん達が…
世間でそのような扱いを受けており、広く許容されているという残酷な事実に、うまく言えない悲しみを抱いているようだ…。

理科の先生「…」

理科の先生は、何を言えばいいか必死に考えていた。

『御手洗とて、かつて山で無害なアライさんを殺したのだから、今更良いではないか』…とでも言うべきか?

そんなのはフォローでも何でもない。
ただ悪戯に御手洗の精神を追い詰め、傷付けるだけだ。

医師として、今ここで言うべきではない。
…MCチヘドローであれば、嬉々として言ってのけるであろうが…。

理科の先生「…全ては、貴女の判断に委ねます。しかし私は、移植手術を受けることを、強くお勧めします」

アライさん「のあ…」

理科の先生「…もう、いいではないですか。自分だけのために生きても…」

理科の先生「…自分の自由を取り戻し、子供達を抱いてやれる。…それでいいではないですか…」

理科の先生「あなたは心ない人間達に、たくさん傷付けられてきました。…もう、あなたは十分苦しみました」

理科の先生「自分の幸福を求めても、もういいではありませんか」

アライさん「…」

理科の先生「…妊娠中のうちは、施術はできません。答えを出すのは、もっと先でいいでしょう」

アライさん「…」

理科の先生「…それはそれとして。…あなたは、お腹の中の赤ちゃんを…どうするのですか?」

アライさん「…」

理科の先生「…もう中絶はできませんが、無理矢理妊娠させられた子供です。育てないという選択肢もあります」

アライさん「…育てるのだ…。ちゃんと産んでやるのだ…」

理科の先生「…」

アライさん「アライさんが、監禁生活で正気を保っていられたのは…このチビ達が、お腹の中でアライさんを元気付けてくれたからなのだ」

アライさん「産んでほしいって、アライさんに言ってくるのだ。言ってないけど…。アライさんは、そのために…自殺せずにいられたのだ」

アライさん「…チビ達には感謝してるのだ。育ててあげたい。でも…」

理科の先生「…」

アライさん「もう…嫌…なのだ…!」ポロポロ

アライさん「アライさんがお腹を痛めて産んだ子供が、大事に大事に育てた可愛いチビが…!人間に虐められて、殺されるのはぁ…!」ポロポロ

理科の先生「…」

理科の先生「…戸籍は個人でなく家に与えられるもの。よってあなたのお子さんは、生まれつき特定有害駆除対象フレンズの括りから外れます」

理科の先生「住民登録さえすれば、…ある程度育てば、腕輪が貰えます」

アライさん「チヘドロー達は、戸籍持ちのアライさんでも関係なく殺すのだ!きっと人間社会にも、おんなじ奴がいるのだ…!」

アライさん「きっと、アライさんが産んだチビ達は、アライさんが見てないところでアラアンチに捕まって…アラ虐されるのだぁ…!」ポロポロ

理科の先生「…」

理科の先生は、研究者として…
御手洗のことに興味を持っていた。

今までの野良アライさんのほとんどは、フレンズの子供を失っても、
ケロっと気持ちを切り替えることができる程タフだった。

我が子を身代わりにして生きることすらできる者がほとんどだった。


しかし、そんな野良アライさんでさえ…、
人間の子供を産んだ個体は、子供の身代わりになろうとした。

自分を犠牲にしてでも、人間の子供を生き延びさせようとした。

…アライさんの母性本能には、解明されていない謎があるようだ。

…その時…

「アライさん死ーね!!!」

「「「アライさん死ーね!!!」」」

「汚物は死ーね!!!」

「「「汚物は死ーね!!!」」」

アライさん「ひぃぃっ!?」ビクゥ

「害獣死ーね!!!」

「「「害獣死ーね!!!」」」

…病院の窓の外から、大勢のアラアンチ達の声が聞こえてきた。

事件の内容が判明した後、アラアンチの数は急激に減っていった。

しかし、それでも…

『きっと森に逃げる途中で捕まったんだ』

『書き置きを置いた後、森の中で繁殖するつもりだったところを、マヌケにも捕まったんだろう』

『存在自体が加害者であるアライさんなんかが、被害者ヅラしてるのが許されざる罪である』

…などと言い、根強くアラアンチ活動を続ける者達がいたのである。

しかし、その一方で…

「アラアンチ死ーね!!!」

「「「アラアンチ死ーね!!!」」」

「差別を許すな!!!」

「「「差別を許すな!!!」」」

…窓の外から、別の集団の声が聞こえてきた。

アライさん「っ…」

…俗に言う、アラ信達である。
アラ虐無き今、アライさんのことを極端なまでに愛し、味方するアラ信が増えてきたのである。

「うるせーぞアラ信共!!!アライハザードの悲劇を忘れたか!!!戸籍があろうと死ぬべきだ!!!」キィイイイン

…拡声器で拡大された声が、病院の窓の外から聞こえてくる。

若干ハウリングの音が乗っている。

「アライさんだって悪気があった分けじゃない!!!れっきとしたフレンズだ!!!今までアラ虐した奴らは皆アライさんに焼き土下座て死ね!!ショクエモンPやシャークPやチヘドロー達と一緒に死ね!!!!」キィイイイン

…病院の窓の外は大騒ぎだ。

「アラ信死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラ信死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ


「アラアンチ死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラアンチ死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ

「アラ信死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラ信死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ


「アラアンチ死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラアンチ死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ

「アラ信死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラ信死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ


「アラアンチ死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラアンチ死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ

「アラ信死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラ信死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ


「アラアンチ死ーね!!!」キィイイイイイン

「「「アラアンチ死ーね!!!!」」」ドンドンパフパフ


…病院の外は、まるでスポーツ観戦の会場のようにヒートアップしていた。

アライさん「もうほっといてほしいのだぁ…!」

御手洗は精神的に参っているようだ。

今までずっとずっと人間社会で迫害され続けてきて…、
海外で楽しいイベントに参加したと思ったら、
マフィアに拉致されて手足を切断され、
無理矢理子供を産まされ、
毎日毎日チヘドローに罵声を浴びせられ、
イタリア警察に見捨てられ、
救助に来てくれた大切な仲間をイタリア警察に殺され…

…やっと助かったら、これである。

もはや正気を保ち続ける意味があるのか?狂ってしまった方が楽ではないか?
…とさえ、御手洗は思った。

その時。


「うるさいよっ!!ここ病院だよ!?患者さんの迷惑になると思わないのっ!?」

…窓の外から、フェネックの声が聞こえた。

アライさん「フェネック…?」

「病院だから何だ!!アライさんなんぞを入院させてるアラ信病院なんぞ、配慮の必要なんかねえ!!!」キィイイイイイン

「そんなこと言っても、こいつらアラアンチ共が悪さしてるんだから仕方ないだろ!!アライさんを守るためだ!」キィイイイイイン

「あなた達は!!なんで誰かを攻撃することでしか!!自分の意見が言えないの!!!」

「…」

「…」

「アライさんが憎いならさあ、こんなことしてないで…。アライさん被害に遭った農家の人のために、募金活動でもすればいいじゃん!」

「アライさんに味方してくれるなら…、御手洗さんが害獣じゃないし、迫害される謂れもないって…、広報すればいいじゃん!」

「お互い考え方が違うんだから!違う考えなりに、協力できるんじゃないの!?同じ人間でしょ!?なんで傷付け合うの!!」

「こいつらアラ信は人間じゃねえ!!!頭アライさんだ!!!」キィイイイイイン

「こいつらアラアンチは人間じゃない!!!人でなしの鬼畜共だ!!!」キィイイイイイン

「どうして…。考え方が違う人を、理解してあげられないの…。思いやって優しくしてあげられないの…」

「どうしてそんなに、考え方が違う人を、見下して、貶して、罵倒して、攻撃して、傷付け合ってばかりいるの…」

「おかしいよぉ…」

「………」

「………」

…病院の前の声は止んだ。
アラアンチ陣営、アラ信陣営ともに撤退していったようだ。



しばらくして、御手洗の病室にフェネックがお見舞いにやって来た。

理科の先生は、他の患者たちのところへ行ったようだ。

アライさん「…フェネック…」

フェネック「…アライさん…」

アライさん「…」

フェネック「…無事じゃないけど…。それでも、帰って来てくれて、良かった」ダキッ

フェネックは、アライさんを抱き締める。

フェネック「生きて帰って来てくれて、良かった…」

アライさん「…でも。アライさんを助けるために…!」

アライさん「タイリク先生と、会長が…!死んじゃったのだぁっ…!」

アライさん「アライさんなんかより、あの二人の方が…!みんなに好かれてるし、役に立ってるのだぁ…!」

アライさん「アライさんなんかを助けに来なければ…!あの二人は…!生きてられたのだぁっ…!」シクシク

フェネック「…」ギューッ

アライさん「チヘドローが、捕まる前に言ってたのだぁ…!『これから起こる事、全て』…」

アライさん「『アライさんが生きてたせいで、起こることだ』って…」

フェネック「あんな奴の言うこと、真に受けないでよ…」

アライさん「でも…!アライさんがいなければ…!うぅっ…!アライさんは、みんなに迷惑ばっかりかけてるのだっ…!」シクシク

アライさん「みんなにお世話されて、介護されてっ…!みんなの邪魔になってるのだっ…!いない方がいいのだぁっ…!」

フェネック「…」

フェネック「アライさん…。私は、アライさんが一緒にいるだけで、幸せだよ…」

アライさん「…チヘドローが言ってたのだぁ!アライさんは誰にも愛されないって!フレンズ達も、友達として振る舞ってるけど、ほんとは腐れ縁なんだってっ!」

アライさん「いなぐなった方がいいって…!言ってたのだぁっ…!」

フェネック「…あんな奴の言うこと…信じちゃ駄目だよっ…」ギューッ

アライさん「うぅぅ!でもおぉっ!」

フェネック「…」


『チヘドロー死せどもアラ虐死せず』。
チヘドローが言い残した言葉である。

彼の言うとおり…
チヘドローが社会から姿を消しても、
彼の言葉は御手洗を傷つけ続け、
彼の意志を受け継いだアライアンチも御手洗を傷つけた。

もはや、アラ虐はチヘドローという個人の器に収まるものではない。

社会に深く根付いた、ひとつの概念…
…一種の差別的思想そのものとなっていた。

…1週間後…

~一般の病院~

アライさん「う、うぅーっ!!」

ナース「…」

サンドスター科学研究所附属病院には、分娩台の設備はない。

よって御手洗は、一般の病院へ一時的に移されていた。

アライさん「う、産まれる…のだっ…!」ブルブル

ナース「…」

アライさん「のだっ!!のだっ!!…のだぁああーーっ!!」ズルズルゥ

そして、御手洗の女性器から、生き物が出てきた。

アライちゃん1「うびゅううぅぅ!のあぁあーーーんっ!のりゃああああーーんっ!」ピイイイィィ

アライちゃん2「うみゅみゅぅぅーー!ぴぃー!のあああーんっ!」ビエエエン

アライちゃん3「のあーーっ!のあぁーーーーっ!!」ビイイィィィ

アライちゃん4「ふみゅぅぅぅん!ふみゅぅぅぅん!ぴぎぃぃーー!ぴぎぃぃーーっ!!」ピギーピギー

…アライちゃん達が産声を上げた。

アライさん「はぁ、はぁ…!ち、ちび…!」

アライちゃん1~4「「のぁああーーーんっ!!のぉおおーーーぁあああーーんっ!ぴぎぃいいいーーーっ!!」」ビエエエン

アライさん「よ、よかった…無事に産まれたのだ…!可愛いのだぁ!」チラッ

御手洗は、ナースの顔を見た。

ナース「…おめでとうございます。元気な女の子です」

…言葉では、そう祝っていたが…。

アライさん「の…ぁ……」

ナース「…」

その表情には、隠しきれない嫌悪感が浮き出ていた。

まるで、モンシロチョウの幼虫の腹を食い破って寄生蜂の幼虫が出てきた現場を見るかのような…

腐った死体に産み付けられたハエの卵から、ウジ虫が孵るのを見るかのような…生理的嫌悪感。

…今すぐこの場で駆除し、大きく育つ可能性を消してしまいたい。

ナースは…そんなふうな表情をしていた。
無論、決して言葉には出さないし、与えられた仕事はきっちり果たすであろyが。

アライさん「あ……ぁ……」

御手洗は、誕生した我が子が、ナースにさえその命を祝福してもらえないということを…
実感してしまったのであった。

つづく


次スレこちらです

アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引いた2
アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引いた2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514004024/)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom