【少女終末旅行ss】「愛」 (7)

ユーリ「ねえちーちゃん」

チト「ダメ。レーションはさっき食べただろ」

ユーリ「違うよ~。ちょっと聞きたいことがあって」

チト「何?」

ユーリ「愛ってなに?」

チト「…………」

ユーリ「…………」

チト「…………」

ユーリ「…………」

チト「…………」

ユーリ「ちーちゃん?」

チト「……ごめん、ユー」

ユーリ「なんで謝るの?」

チト「いや、急に妙なこと聞いてくるから、私がユーのこと叩きすぎたせいかもって」

ユーリ「ひどいなぁ。そんなんじゃないって」

チト「じゃあ何?」

ユーリ「こないださ、『えいが』って言うの見たじゃん? 大昔のやつ」

チト「……ああ。あにめってやつか」

ユーリ「そこで言ってたじゃん。主人公の女の子が。愛は『絶望よりも深く、希望よりも熱いもの』だって」


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チト「よく覚えてたな。てっきり忘れてると思ってたのに」

ユーリ「なんか気になって。大好きっていうのとは違うの?」

チト「そうだなぁ……。うーん」

ユーリ「ちーちゃんにもわかんないかぁ。本ばっか読んでるのにダメだなぁ~」

チト「うるさい。……ユーはさ、レーション見つけたらうれしい?」

ユーリ「うれしくないわけないが」

チト「じゃあさ、レーションがあると思ってたのに実はなかったってなったらどう思う?」

ユーリ「絶望だー!」

チト「それはさ、ユーがレーションを愛してるってことなんだよ、きっと」

ユーリ「……はて?」

チト「あったらすごくうれしい。あると思ったら希望がある。でも無くなってしまったら悲しいし、絶望してしまう。ただの『大好き』とはちょっと違う。同じ一つのものなのに、こんなにも感情が動くだろ? そういうのを全部ひっくるめて、『愛』って呼んだんじゃないか?」

ユーリ「なるほど……」

チト「これでいい?」

ユーリ「なんかわかったよーな……。わからなかったよーな」

チト「ユーには難しかったかもな」

ユーリ「あ! でも一個わかったのはあるよ!」

チト「なに?」


ユーリ「私がちーちゃんをあいしてるってこと」

チト「…………。は?」

ユーリ「だってさ、あったらうれしくて無くなったら悲しいんでしょ。私、ちーちゃんと一緒にいたらうれしいし、いなくなっちゃったら悲しいからさ」

チト「あ、あのなぁ、ユー。そういうことはあんまり言っちゃいけないんだぞ!」

ユーリ「なんで?」

チト「なんでって……。昔の人は、大事な人に、それも大切な時に言ったんだ。それを」

ユーリ「私はちーちゃんが一番大切で、今が一番大事だけど?」

チト「う……」

ユーリ「ちーちゃんはどう? 何を愛してるの?」

チト「う、わ、私は……」

ユーリ「?」

チト「……ユー」

ユーリ「なんて?」

チト「お、ユーだよ! 私も、その……、ユーを、あいしてる……」

ユーリ「あ、でも石像もあいしてるかも! あったらうれしいし、無かったら悲しいし」

チト「は?」

ユーリ「レーションもあいしてるけど、やっぱりさかなもあいしてるなー。もう一回食べたいなー、さかな」

チト「おい、ユー」

ユーリ「ちーちゃんもあいしてるでしょ? さかな」

チト「…………。私がバカだった。説明が足りなかった」

ユーリ「ん?」

チト「なんでもない」

ユーリ「え、なんで怒ってるの?」

チト「怒ってない」

ユーリ「怒ってるでしょ?」

チト「怒ってない」

以上です。終末旅行SSが増えてきてうれしい。

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