ソーニャ「やすなが私を捕まえる?」 (26)


「居たぞ」

「ちっ」

見つかったか。まあいい。

ここに爆弾は仕掛けたからな

刺客が追って来ていた。

刺客が2人迫ってくるのを確認した私は

タイミングを見計らい、素早くその場を離れるのだった。

「残念だったな、刺客」

「なっ…!」

どーんと爆発が起こったあと、刺客は2人ともその場に倒れた。

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今日も終わりか

見たところ、この前追って来た刺客と同じ所属の奴らみたいだな。

今回は2人で来たか


倒れている刺客の後始末をしようとしたとき、

1人手を震わせながら、ふと口にした。

「我らを倒しても……また…お前を追っ手が倒しに行く」

「お前は…我らから……逃げることなど…できない」



朝だ。

私は制服を着て学び舎へと向かっていた。

昨日の刺客を相手にして、これで同じ刺客から追われるのは3件目だった。

偶に同じ刺客から狙われることはあったものの、

そう何度も同じ刺客を相手にすることはなかった。

今朝、本部から寄せられた指令書にも

昨日私を狙った所属に関するものの情報が載っていた。

「今日も気が抜けないな。幸い、私の身元はバレていないみたいだが」


私は殺し屋でありながらも、普段は学生の姿をしている。

私のような殺し屋が、学生であるとはあまり思わないだろうから

あまり私を狙う刺客は多くはないかもしれないが

だからと言って気は抜けないな

いつなんどき、刺客に狙われているか分からない

例えば後ろから…

「ソーニャちゃん!」

背後に何か気配を感じた私は、とっさにその気を振り払った。


「あいたたた…。ひどいよ、肩叩こうとしただけなのに」

そこには、私が向かう学び舎と同じ制服を着た生徒が

手をふるふると震わせていた。

「なんだお前か」

「もう。毎日同じことしてるんだから、そろそろ覚えてよね」

「お前こそ、毎朝同じことされてるんだから学習しろ」

私が向かう学び舎には、いつも私に関わろうとしてくる生徒がいる。

いつも関わってくるのだが、よく分からないやつだ

「ソーニャちゃん。これ、何か分かる?」

「りんごに見えるが、それがどうかしたのか」

「今日はお昼食べたあと、りんごを食べようと思うの」

「そうか」

「でも、私1人じゃ食べきれないからソーニャちゃんにも食べて欲しいの」

「別にいいが、よく学校にりんごまるまる一個持ってこようと思うな」

「それは、沢山食べたいからだよ」

「せめて切ってから持って来い」


昼休み、食事を終えると私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「ソーニャちゃん」

「何だ」

「何って、ソーニャちゃんが食べたがってたりんごだよ」

「別に食べたいわけではないが」

「はい。一つ分けてあげる」

生徒はりんごを何個もパクパクと口を開けては食べている。

「おいしい」

りんごを食べていると、生徒はふと口にするのだった。

「ソーニャちゃん、喉乾いてない?」

「乾いてないが」

「え~。本当は乾いてるんでしょ。私喉が渇いてるよ」

「それはお前が何個もりんごを食べるからだ」

「そういうことで、ソーニャちゃん。ジュースちょうだい」

「何でだ。自分で買えばいい」

「えぇ。私はりんごをわけてあげたのに、ソーニャちゃんは何もしないなんて」

「お前が1人で食べられないから食べてって言ったんだろ」

「くそう…ソーニャちゃんはケチですね。まっ、りんごなら家に沢山余ってるからいいけど」

「おいっ」



まったく、でたらめな奴だな。

こいつといると調子がくるう

今日は刺客とまた戦わなければならないというのに

「ソーニャちゃん、どこ行くの。まだ昼休みだから遊ぼう?」

「私はいい。今日は用事がある」

「用事ってなに?」

「お前には関係ない」

「まさか用事って、良くないものなのでは」

そいつは私の前に立ちふさがって、手を広げた。

「人に会うだけだ」

「むむむ…」

そいつは私の前からどこうとしない

私はとっさに嘘をついた

「残ってるりんごを余さず食べたら、話してやってもいい。ジュースだって奢ってやる」

「ほんとに!?」

そいつは席にもどるとりんごを食べ始める。

ふん、単純な奴だ

私はその場を離れるのだった。


「あぎり…いるか?」

空き部屋には誰も居らず、静かだった。

部屋はしんとしていたが、ふと天井から声がする。

「はぁい。ソーニャ、どうしたんですか?」

「指令だ。今日も例の所属の奴らとやり合うらしい」

「聞いてますよー。最近、よく見ますねー」

「そうか。今日はどうする」

「今日は、私もソーニャと合流しようと思いまーす」

「分かった。じゃあ、放課後にまたここに来る」

「はーい。それじゃあ、気をつけて」


私は空き部屋を後にした。

今日はあぎりと一緒か

それなら、そんなに苦労はしないかもな

でも、あぎりも来るのか

それほど厄介な相手なのかもしれない

今から準備をしておくか

「ソーニャちゃん」

「ん?」

前を見ると、そこにはさっきまでりんごを食べていた生徒が立っていた。


「お前、もう食べたのか」

早いやつだ

そういえば、さっきりんごを余さず食べたら話すと言ってしまった

まさか、本当に全部食べてしまうとは

「りんご?…りんごなら食べたよ」

「何だ、ジュースか。悪いがあれは」

「…ふふ」

生徒は不敵な笑みを浮かべながら私に近寄って来る

「何だ…元々お前に話すような話じゃない」

「そう。なら、聞かないとね」

「…っ!」

お腹に激痛が走った

お腹には生徒の拳が突きつけられていた

「…何をするっ」

「ソーニャちゃん。教えてよ」

「き…きさま?お前、やすなじゃないな」

生徒の声色が変わり、ふふっと笑った

「ふふ。そうか、あいつの名前はやすなというのか」

「誰だ。刺客か?」

「ほう…刺客か。いかにも、私はお前を追って来た刺客。昨日はよくもやってくれたな」

「昨日?」

「お前が我が部下を始末したのを見たあと、お前のあとを追った」

「……っ」

「まさか殺し屋がお前のような学生の姿をした小娘だとは思わなかったが、その反応を見るに、ターゲットはお前で間違いないみたいだな」

「あの女ならここには来ないから心配するな。まだりんごをむしゃむしゃと食べているんじゃないか」

「ちっ…何を企んでいる。今すぐあぎりに…」

「いかせるか」

刺客は素早く回し蹴りを放った

「ぐっ…」

バタバタと物が倒れる

「お前がさっきいた空き部屋の女にも追っ手が向かっている。助けは来ない」

あぎりの所にもか…こんな学び舎に刺客がぬけぬけと入っているとは

だが、甘い…

「いいのか。私はこの通り、制服でもナイフも銃も身につけている。お前に対抗する武器はない。」

「ふふ…」

刺客は不敵は笑みを浮かべていた

「何がおかしい…ぐっ!」

後ろに衝撃が走る

くっ…背中が

「別にお前を1人で狩ろうとは思わない」

振り返ると、刺客と思える姿をした奴が立っていた。

その後ろにも同じ姿をした者が2人居た。

「全部で4人もか…っ!」

前から蹴りが入る

受け止めるんだ……っ!

そう思ったが、私は片腕を後ろにいた刺客に掴まれていた

「身動きが取れないなら何もできないだろう」

「ぐぅ…っ」


「はっはっはっ。これでお前も終わりだ」

「くっ…」

だめだ、4人も相手などできない

そう思ったとき、私の視界が暗くなる

目の前から拳が向かって来る

私はその拳を蹴り上げていた

「……殺し屋をなめるな…っ!」

屋上では、制服の姿をした者が、狙っていた刺客を4人を縛っていた。

刺客は、もくもぐとうずくまっていた

「…小娘のくせに…我らを…」

「……」

「ふふ…喋らないのか」

「……」

「ふふ…はっはっ…その目だよ。その目は殺し屋そのもの。お前もただの女子高生じゃないんだな」

「ごふっ…」

頭に拳が入った

「分かったよ。お前が学生かどうかなど関係ない。」

刺客は言った

「でもいいのか。お前といつも一緒にいる女。お前は、あいつと一緒に居ていいのか。あいつは、お前とは違うただの学生だ」

「……っ」

「お前…あいつが人質にとられたらどうする。お前には関係ないか、お前はただの殺し屋か。はっはっはっはっ…」


朝だ。

昨日刺客を捕まえたあと、無事だったあぎりと合流し、刺客達を本部に送った。

本部は、何度も狙われていた所属の情報を刺客達から聞き出すらしい

これで最近私を狙っていた刺客達に今後狙われることは無くなっていくだろう

歩いていると、後ろから何か気配を感じた私は

とっさにその気を振り払っていた

「ソーニャちゃん!……あいたたた、ひどいよ」

「なんだお前か」

「毎日呼んでるんだから覚えてよ」

「お前こそ、毎朝同じことを繰り返しているんだから学習しろ」

「ほらっ。今日は喉が渇いてもいいようにジュース持って来たよ。これで沢山食べられるね!」

「お前も懲りない奴だな」

いつものように学び舎に向かっていると、ふと生徒は言うのだった

「そういえばソーニャちゃん。昨日どこに行ってたの?」

「んっ。何のことだ」

「とぼけないでよ、昨日お昼休みの後授業に戻って来なかったでしょ」

「さぁ…覚えてない」

「あっ、ソーニャちゃん。待って!」

昨日は刺客と争っていたんだ

お前のように呑気にしてはいられない

「ええい。しつこいやつめ。お前には関係ない」

「しつこくないよ」

生徒は口にした。

「ソーニャちゃんが何をしてるか知らないし、何をしようとソーニャちゃんの勝手かもしれない。でも、悪いことするなら私だって黙ってはいないし、ソーニャちゃんを捕まえるよ」

「なっ…」

生徒にしてはいつもよりも真面目な顔をしていた

何を言う

捕まえるなどとこいつは私を…

「なぁ…やすな」

「………えっ?」

私はふと口にしていた

「お前は私の友達だよな」

「うん……そうだよ。」

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