アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ3 (1000)

前々スレ「アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ」
アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1506749807/))
前スレ「アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ2」
アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1508996136/))
の続きです。

このSSは残酷な描写があります。
けものフレンズが好きな方は勿論、アライさんが苦手な方もご不快に感じる方がいらっしゃるかと思われます。
そのような方は無理をせず、プラウザバックを何卒お願いします。
また、所謂R18G描写が苦手な方にも閲覧をお勧めいたしません。

SS初心者の自分には「力加減」が分かりかねるところがありますので転載や拡散はご配慮お願いします。

世界観・設定は原作アニメや他の名作SSを参考にしながら、自分でも埋め合わせ、調整、推測、創作等を行っています。
また、「書き物」の常として自分の主観等が混じり「こんなのけもフレじゃない」と怒られてしまわないかビクビクしています。

どうか不出来な二次創作をご宥恕頂ければ幸いです。

1スレ及び2スレ目の簡単なあらすじ

サンドスター大噴出現象をきっかけとした人類衰退期。それを打ち破った世界再建戦争から30年が経過した。
人類はフレンズとの『共存・共栄』を基本理念としながら、文明の復興を推し進めている。

日本のとある地方にある蛇張村も40年にわたった避難対象区域指定が解除され、官民一体となった帰還運動がようやく実現しようとしていた。


しかし、住民が避難している間に蛇張村とその周辺の山林地帯は、特定有害フレンズ『アライさん』の住処となってしまっていた。


アライさんの追い出しと住民の安全生活圏奪取のため、県兵出動が着手され、
アライさんに厳しい態度をとるTTT会等の『アラ虐』と、保護・共存の道を探ろうとする『アラ信』、
旧村復興を望む村民達、そしてアライさんらの思惑が交差する。
(なお、『アラ虐』、『アラ信』はどちらかと言うと非難のニュアンスがある他称に近い使われ方をしている。勿論、自称する場合もある)

(あらすじの続き)

そんななか、当初はアライさんに厳しい態度を取っていた蛇張村青年団長達は、
『ある出来事』をきっかけに態度を徐々に変化させ、あくまで『郷土復興』を優先させながらも、
アライさん達や野生動物・野生フレンズの痛みにも思いをはせるようになる。

他方、セルリアンとの戦争から月日が経つにつれ、生活習慣や文化、身体能力・発達傾向の違いなどから人間・フレンズ間の軋轢も徐々に表面化しつつあった。


フレンズの生殖能力の安定化やその基礎能力を不安視する者。
人間とそれ以外の生物の境目が揺らぐことに憂慮の念を抱く者。
かつての『戦争』の置き土産である社会の不条理。

それらが静かに軋みを上げつつある―ようにも感じられる。

人間からの根滅圧力・帰還運動によるプレッシャーを背景に、かつて『廃墟アライさん』と呼ばれたアライさんは、
自身を『大母アライさん』、幹部を『姉アライさん』とする『擬制的母系・母権家族集団』を形成。

付近のアライさんを配下に地盤固めをしつつ、県兵到着直前に村落部居住アライさんの疎開を成功させる。

対して、人間側は先行索敵行為を県兵と子孫陸自アライさんらで終え、いよいよ村民の生活・農耕エリア確保のため作戦を実行しようとしていた。



ビビりなTTT会現地組の明日はどっちだ?!

ゴトゴトゴト

細い山道を、いかにもなピックアップトラックが排気ガスを噴き上げながら登っていく。
恐れ知らずにもグリルガードを後付け加工してある。

保険代が恐くないのか?

ブルーシートで覆われた大きな箱のような物が荷台に紐と金具で厳重に固定されている。

TTT会員B「それにしても、すごい悪路ですね」

TTT会員A「ここからもっと狭くなる。車でなんとか行けるのは蛇張村境手前10㎞まで。そこからは歩くしかない!」

TTT会員C「猟銃とあれを担いでですか?」

そう言って、TTT会員Cは、後ろの荷物にチラリと視線をやる。

TTT会現地リーダー男「勿論そうだ。

二人掛かりで時代劇の『駕籠かき』のようにあれを―『アライさんが入ったケージ』を運び、
その側で俺は猟銃を持って備える。

前後も猟銃を持ってこの隊形を維持しつつ、蛇張村村域まで山中を進む。

村境に到着し次第、荷物のアライさんを虐り、素早く車まで戻って撤収する。

皆!安全第一だ!!!救急医療セットもある安心してくれ!」

TTT会現地組は、上から発破をかけられていることもあり、アライさんを蛇張村に駆除に行く。

ただ、表道は警察と県兵が封鎖済みの為、やむなく一度、隣県に越境した上で大回りし、けものみち同然の旧道側からの侵入を試みている。


村内でアライさんを一々捕まえるのは困難と言う理由で、あらかじめ、よそで手に入れた個体
―この前火炙りにしたアライさんの姉妹らしい―を持ち込み、あたかもそこで捕まえたような顔をして駆除する。

TTT会員A「(正に竜頭蛇尾を絵に描いたよう。

まあ、仕方ない。

自分達が捕まったら困るのは本当だし、クマも怖い。
例の巨大クマが出たらピンチだ。

あいつらは銃で撃っても、致命傷になる箇所が小さく、手負いに成ったら、ますます粗ぶって突っ込むらしいし)」


心配そうな顔をしている現地リーダーやTTT会員Aと違って、TTT会員Dは、本日、上機嫌だ。

自分の処刑プランが受け入れられたから、らしい。

TTT会員D「((* ̄▽ ̄)フフフッ♪。今回の処刑方法を具申するときはなかなか自分も苦労した…。

何しろ、慎重居士の現地リーダーが『山火事の危険が有るから火を使わず、
血の臭いがクマや他のけものを刺激するといけないから、出血も控えめで、
時間もさほど掛からず、かつ、明らかに酷刑と分かる方法』と言うから。

山の中だから、大量の水や電気を使うのも難しい。

出血条件と時間制限がなければ、凌遅刑を提案するところなんだが…)」

TTT会員D「(『人様の野菜を食い散らかし、汚物を撒き散らかしたゴミパンダめ!
命果てるまで、許しを請い続けろ!ギルティ!凌遅一千刀!!!』

『許して欲しいのだ!人間さんお願いなのだ!もう泥棒は止めるのだ!』ビェェーン!ビェェーン!

しかし、無情にも死刑執行人TTT会員Dの手は、籤が入った小箱に入れられる。

今から籤に掛かれている体の個所を一箇所づつ切り取っていくのだ!

余りの残酷さを憐れんだ古の人々は、処刑人に賄賂を贈り、少しでも早く致命的な場所が出るように取り計らうこともあったそうだが―


ゴミパンダを憐れむものなどいない!!!

ペラ!

『右腿』

そこで私は刀を持ち上げる。

『お願いなのだ~。ごめんなさいなのだ~。フェネック!!!』ビェェェーン!ビェェェーン!

ブスリ!ゴリゴリ!

『あぎゃあがやぎゃぁぁ!いだいのだー!あらいざんはわるぐないのにー!どうじでこんなめにあわなぎゃいげないのだー!!!』


『くっくっくっ!本性を現したかゴミパンダ!

お前の反省は所詮口だけ!

この世界に存在することが許されない汚物!汚点!そのことを自覚したなら、自分はゴミです、と言ってみろ!

心臓を切ってやるかもしれんぞ!』

『あ、アライさんはゴミなのだ!でも、まだ死にたく…』

ペラ!

『左目』

ブスリ!ゴリゴリ!

『あぎゃあがやぎゃぁぁ!アライざんのお目めがー!!!うぞづぎぃぃぃぃぃー!!!うそつきー!!!』

『くっくっくっ!私は助けるとも、楽にしてやるとも言っていないぞ。嘘は言わん主義だからな。さあ…』」

ブツブツブツ…

ポンポン!

楽しい妄想モードに入っているTTT会員Dを隣に座っているTTT会員Cが現実世界に引き戻す。

TTT会員C「ちょっと!怖いよ!!!何その『世界残酷物語』」

TTT会員B「なんか悩みが有るのか?相談に乗るぞ!!!一緒に心の病と向き合っていこう!!!」

TTT会員D「あ…、失敬。別に悩みは、まあ、生きてればありますけど。病気ではない…と思いますよ」

TTT会員A「思うだけかよ!!!一回診断受けろって!!!
医師には守秘義務があるから最悪、この会の活動のことだって話せば…、ダメかな…」

守秘義務には一定の例外規定が有ることを思い出し、どっちだったか思案し始めるTTT会員A。

TTT会員D「それは、まあ、どっちでも良いですよ。

それでですね。

今回は『腰砕きの刑』をやろうと思って現地リーダーさんからも了解を得たんです!!!」

TTT会員Dは、珍しくキラキラした表情をしている。

TTT会員Aは、一瞬運転中の現地リーダーに視線をやった後、話を促す。

TTT会員A「『腰砕きの刑』とは?」

TTT会員D「ふっ!ご説明しましょう!!!」

何が、『ふっ!』なのか。

TTT会員D「我が国のお隣さん。中国には古来『腰斬の刑』と言うものがありました。

その名の通り、大きな斧や後代には特殊な器具で、受刑者の腰部を切断するのです。

当然、受刑者はすぐには死ねず、腸をはみ出し引きずりながら長時間苦しみ、やがて出血死するのです」

TTT会員A「へー(嬉々として語るなよ)」
TTT会員B「ほー(やっぱ、無理にでも病院に行かせよう)」
TTT会員C「ふーん(きっと人生に疲れているんだ)」

TTT会員D「さて、時代は下って元代―所謂、大元大蒙古ウルスの時代。
当時の中国の支配層、モンゴルの人達は血を流すことを嫌いました。

家畜を屠るときも、大地に血が零れることがないように気を付けますし、
『貴族の処刑』方法が皮袋に受刑者を入れ、馬の大群で蹴り殺すことだったそうです」

TTT会員A「ああ。チンギス=ハーンの好敵手、ジャムカの例だな。昔、マンガ世界の歴史で読んだ」

TTT会員D「はい。そんなわけで、元代の中国では、腰斬の刑を腰砕きの刑に…、

要は受刑者の骨盤を粉々に砕く刑に変えてたらしいんですよ。
この前、図書館で世界拷問処刑辞典読んだらそう書いてありました。

外見上は、血が零れないものの、勿論、激しく内出血し、元の刑に負けず劣らず苦痛を与えることが出来るんだとか」


TTT会員A「へー(もしかしてこの会の活動が悪影響を…)」
TTT会員B「ほー(今すぐ、車の向きを変えて入院させてあげるべきじゃ…)」
TTT会員C「ふーん(躁うつ病、いや、パーソナリティー障害。あるいはサイコパスかも。
自分は精神医学に詳しくないから、軽はずみなことは言えないが…。早く治療とリハビリを始めれば引き返せるはず)」

TTT会員D「この方法で、後ろの害獣を屠り、もって万代への戒めとしましょう」

そう言って、TTT会員Dは最近の彼には珍しくニッコリ微笑む。

一旦ここまでです。なお、『世界拷問処刑辞典』の署名自体は架空であるものの、他の記述は確かに自分が図書館で目にした内容です。


細かな記憶違い等が有れば、申し訳ありません。

取り合えず、溜めれた分だけ書き込めます。

ゴトゴトゴト

細いけものみちを、両脇の木や藪に擦られながら、ピックアップトラックの前進は続く。

ピーン!
カランカラン!

TTT会現地リーダー男「うん…」

グッ!

TTT会現地リーダーは急ブレーキをかける。

ザッッ!ザザッ!

TTT会員A「何を?」

TTT会現地リーダー男「鳴子だ!!!」

鳴子とは、兵法やサバイバル術などで、森林などの障害物が多いところで木などに紐やピアノ線、ワイヤーなどを張り、
そこに木の板などをかけておき、何かが来た時にそれらがはずれて音を出すような仕掛けのことである。

車を運転していたTTT会現地リーダーは車が何かに引っ掛かり、それが音を上げたことをゴトゴト煩い走行音の中、
勘づいたのだ。

さすが、ビビり、もとい慎重居士!

TTT会員A「猟銃を!TTT会員Bは俺と一緒に!!!」

二人のTTT会員が車から飛び出し、付近を調べる。

TTT会員A「(これは…。確かに鳴子だ。

けものみちが一旦狭くなるところを狙って、木と木の間に…。車にひかれて今では紐がちぎれたようだが)」

それだけ確かめると、TTT会員AはTTT会員Bに合図して素早く車に乗りこむ。

TTT会員A「確かに鳴子でした。地元の方が害獣対策に仕掛けたのでしょうか?
あるいは、キャンプやサバイバルクラブの外し忘れか…」

TTT会現地リーダー「もしくは…。県兵らによるアライさん捕獲・追い出し作戦を良く思わないアラ信・エコテロリストの仕業と言うことも考えられる!」


TTT会員B「なら…。車を止めるのはまずい!
頭がイカレたアラ信が物陰から突っ込んでくるかも。いや…、警察に連絡が…」

TTT会現地リーダーは、後ろを振り向きながら、急いでピックアップトラックをバックさせ始める。

TTT会員D「???」

TTT会現地リーダー男「ここは狭い。最低でも何とか方向転換が出来る道幅のところまでバックで下がろう。

皆、警察が来たら、『アライさん駆除中でした。後ろの個体は今日捕まえたものです』と言うように」

TTT会員A・TTT会員B・TTT会員C・TTT会員D「「「はい!」」」

アラ信・エコテロリスト・警察というワードを聞き、久しぶりに息が合った返事をするTTT会員たち。

その返事を聞きながら、現地リーダーは普段のビビりぶりが嘘のようなハンドルさばきを見せつつ、
悪路のけものみちを慎重にバック走行し続ける。

TTT会現地リーダー「エコテロリストは頭がおかしい奴がいる。

銃弾ぐらい打ち込んでくるかもしれん!この車は頑丈だが、皆くれぐれも油断するな!」

ゴトゴトゴト

TTT会現地リーダーは、時間をかけて何とか方向転換がギリギリ出来そうな場所に来ると車をUターンさせる。

TTT会員A「(つまり、これ以上の前進は一旦保留…。『相手』や警察を待つ構えか)」

TTT会現地リーダー「いいか皆!俺たちは『地元の環境保全アウトドアサークル』。

今日はアライさんの獣害被害に心を痛め、隣の県まで駆除に来た。

アライさん防除許可・講習は受けている!後ろの奴は『これから防除するつもりだった』。

警察が来たらそう言うんだ!!!」

TTT会メンバー一同「「「はい!!!」」」


40分経過後

TTT会現地リーダー男「遅い!!!なぜ警察は来ないー!!! 一体どうなってるんだーー!!!」

TTT会員B「不法侵入(?)がバレた筈なのに!!遅すぎるぞォォーーーー!!!」

TTT会員C「早く・・・ 来るなら来てくれ・・・ 言い訳もばっちりなんだ・・・」

『とても恐ろしい 集団心理(?)である・・・』

TTT会現地リーダー男「パトカー!!パトカーはまだかーー!!!」

TTT会員B「なぜ来ないー!!! 一体どうなってるんだーー!!!」

TTT会員C「警察が!!遅すぎるぞォォーーーー!!!」

TTT会現地リーダー男「早く・・・ 来るなら来てくれ・・・ 俺の気力が・・・」

『なぜなら!!!もうお分かりだろう!!!』

『誰も・・・ 警察に通報などしていないのである!!!』

TTT会員B「早く!! 来るなら早く来てくれーー!! 来ないなら来ない!はっきりしてくれーー!!」

『誰も!! 通報する人がいないのである!!』

TTT会員A「おかしい・・・ これは 何かが おかしいです・・・」

TTT会現地リーダー男・TTT会員B・TTT会員C「「「えっ??」」」

TTT会員A「日本の警察は大変に優秀で、本来は通報から5分~遅くても15分以内には到着するように設定されている、

と学研マンガで読んだことが有ります」

TTT会現地リーダー男・TTT会員B・TTT会員C「「「え?? そんなに早く?」」」

TTT会員A「はい。110番通報から現場までほんの少しでも早く到着できるように、
警察署・交番・派出所・駐在所というものは、本当に点々と!配置されているそうです!!
なのに、いまだにサイレンすら聞こえないとは・・・これは、絶対におかしい・・・」

TTT会現地リーダー男「何かが、あったに・・・ 違いない・・・」

TTT会員B・TTT会員C「「一体 何が・・・」」

『そう、もうお分かりだろう・・・』

『誰も!! 警察を呼んでいないのである!!!』

こいつらが勝手な心配(と言うか妄想)している人々

地元の住民も!

アラ信も!

エコテロリストも!

誰も警察など呼んでいないのである!!!

TTT会員D「あの…。多分、誰も警察に通報してはいないんじゃないですか?」

TTT会現地リーダー男・TTT会員A ・TTT会員B・TTT会員C ビクッ

TTT会現地リーダー男「(こ…こいつ!!!)」
TTT会員A「(さっきから、そろそろ皆が思い始めて、でも口にできなかったことを…)
TTT会員B「(空気も読まずに…こいつ、頭アライさんか!?)」
TTT会員C「(でも…。俺らも、ほら!このまま固まっている訳にも…)」

TTT会員Dは、何時ものメンバーの反応を半ば、呆れるように…。

そして、もう半分は愛おしむ様に眺める。

自分の掛け替えのない『普通』の仲間達。

自分が望んでも恐らく一生、実感できないもの。

良心とか愛情とか常識とかなんかそう言う物を理詰め、損得勘定ではなく肌感覚で、当然に共有できていて―
かつ、自分のような異物とも友達付き合いをしてくれる貴重な人達。

TTT会員Dは自分が『変な奴』である自覚が有る。

保育園から今までで一番ハマった遊びは蟻イジメ・蟻潰しである。

小学校低学年の頃から『自殺』に異常な興味を持ち、毎日、どんな方法で『死んでみようか』妄想にふけり続けたこともある。

小学校中学年の頃からは興味は魔女狩り、そして中近世以降の拷問・処刑・虐殺の歴史へと徐々にシフトしていった。


異性を強姦したり、拷問にかけたりしたい願望もある。

というか、そう言う感情を強く感じすぎて、『自分は異常者かもしれない。家族に迷惑をかける前に自分で命を絶つしかない』とまで、思い詰めて実行しかけたことすらある。

自分と他者を連続性のある存在と上手く実感できない。

『共感性』が薄いのだ。

無いわけではなく、家族やこうした心胆照らした仲間なら、いわば『自分と言う存在の一部』として、大事に思えるのだが…。


TTT会員D「(自分は動物心理学・行動学を修めた人間ではない。

だから、これはただの勘だが…。

この中の誰よりも自分は『アライさんに近い』はず。他の会員は違う。

皆、異常者ではない。『社会的使命感』や『アライさんへの憤り』が強すぎる普通の人間)」

TTT会員D「(現地リーダーは、アラ逆に『正義』を見出しているものの、
彼なりにアライさんへの一抹の同情心も持ってるし、メンバーやその家族の身命・社会的地位への慮り、
近隣住民への配慮もある。

TTT会員Aは、所謂、『社会派アラ虐』。
無論、アライさんはムカつくし大嫌いだろうが、それ以上に、そうした獣害に真剣に取り組まない社会自体に憤りが有る。

アラ虐は鬱憤を晴らし、決起を呼び掛けるための『手段』と見なしている節がある。

TTT会員BとTTT会員Cは差し詰め、その真ん中あたりをフラフラしている『普通の善人(アラ虐)』)」

TTT会員Dは口を開く。

TTT会員D「多分まだ、警察は呼ばれていないんじゃないでしょうか。
これだけ待っても来ないんです。多分あの鳴子は、本当に害獣除けだったのでしょう…」

そして、こう言い添える。

TTT会員D「ただ、これ以上の前進を留保した現地リーダーさんの判断は多分正しい…。

自分も嫌な感じを受けました。

この場で『後ろの荷物』を手早く〆て、画像を『蛇張村撮影』と言うことに偽装し、可能な限り素早くここから立ち去るべきです」


いつもの―『アラ虐第一』のTTT会員Dとは思えない―、しかし、真剣な表情の提案を皆は固唾をのんで聞く。

TTT会員D「自分がこんなことを言うのは変ですが、TTT会は『アライさん虐待サークル』ではなく、政治結社。

次善の手段でも目的を果たし、メンバーと組織自体の損害を避けるべきです」

自分でも似合わないな、そう思いながら最後に付け加える。

TTT会員D「碧き神聖な山河のために」

いったん書き込みは以上です。また、溜められ次第続きを。

続きを書き込みます。

えっほ!えっほ!

TTT会員BとTTT会員Cは二人がかりでビニールシートに包まれた大きなケージをピックアップトラックから降ろす。

ビニールシートをゆっくり捲り上げると、汚らしい害獣が体を丸め、涎をだらだら流しながら、すやすや寝ている。

パチクリ!

と思ったら、シートを開けた途端目を覚ました!

アライさん「あ…、アライさんは…。そうだ!おねーしゃん!!!お姉さんと妹達はどこなのだぁ!!!」

キョロキョロしながら、金切り声を上げるうんこのフレンズを見下ろしながら、TTT会員Dは声を掛ける。

TTT会員D「大丈夫だよ。アライさん。すぐにお兄さんたちが姉妹に会わせてあげるよ!」

アライさん「嘘なのだ!!!お前達はアライさん達に意地悪したのだ!!!
赤いつぶつぶを食べてる途中に犬に追い詰めさせて…。

降参すればさいばんしてあげるっていうから…。

闘って、引き裂いてやればよかったのだ!!!」

TTT会員D「アライさーん~」

TTT会員Dは、目を細めながらアライさんを見つめる。

TTT会員D「後悔先に立たずだね!人間以外に人権はないから裁判はないんだよ。
次、生まれ変わるときは要注意だね!」

TTT会現地リーダー男「まあまあ。それでも『約束は約束』。

裁判してやろう。裁判長は、TTT会現地リーダーこと自分。検察役はTTT会員A、弁護士役はTTT会員D!」

そう宣告し、裁判ごっこをこの場で始めるTTT会現地組。

実際の裁判のように、『裁判長』を前、両側に対峙するように『検察役』と『弁護士役』、真ん中にケージに入ったアライさん。

アライさんは目を白黒させている。

アライさん「これがさいばん…。

待つのだ!

アライさんが人間のお家で、てれびで見たのと違うのだ!!!お姉さんと妹達はどうしたのだ!!!」

TTT会現地リーダー男「被告害獣は静粛に! TTT会員B懲罰を!」

『裁判長』の合図とともにTTT会員Bは、長い棒状のスタンガンをケージの中のアライさんに押し付ける。

アライさん「あぎゃあがやぎゃぁぁ!いだぁいのだぁぁ!」ビリビリビリ

スタンガンの電圧は『痛いのだ』で済むレベルに、今のところは調整されている。

ちなみにTTT会員Cは、録画作業中である。

と、ここでTTT会員Dは笑いを堪えながら手を挙げる。

TTT会員D「裁判長!異議あり!!!この糞害獣の言うことは遺憾ながら一理あります。

本来裁判は、一つの機関が、逮捕・起訴・弁護・判決をまるまる行うことを想定していません。

糞害獣に対する明らかな人権侵害です!」

TTT会現地リーダー男「弁護人の異議を却下します。

害獣には神も人権も存在しません。従って、人権侵害など起こりようもないのです」

アライさん「…。じゃ…あ。何でこんなことを…。殺さず公平に裁判するって…。お前らはそう言ったのだ…」

TTT会現地リーダー男「被告害獣!不規則発言は慎みなさい。懲罰!」

アライさん「あぎゃあがやぎゃぁぁ!あぎゃあがぁあぁぁぁ!うぇぇぇー!」ビリビリビリ

じりじり電圧を上げながら、スタンガンを押し付けられるアライさん。

ゲロゲロゲロ…

腹部にスタンガンを押し付けられたのが効いたのか、アライさんは腹の中のものをぶちまける!

ほとんど胃液だ!まともにものを食べたのはもう、3日前…。

TTT会現地リーダー男「これは公平な裁判です。

そもそも、人権とは『人間』に限られた権利、『特権』。
今は恩典として、人類文明に参画する意思を明らかにしたフレンズに特別に『擬制的』に波及させているにすぎないのです。


それ以外の物、特に害獣には『公平に権利が存在しない』。

環境・生物に対する罰則・制限は『全て人間同士の約束事』。

被告害獣自身がそれらの規定を援用ないし、主張することなどできないのです」

アライさん「…。じゃあ…。アライさんは…。最初から…」

ぷぷぷぷぷ…。

TTT会員Dは、笑いを堪えながら『裁判長』に手を挙げる。

TTT会員D「裁判長!ここは慈悲と言うもの。

これ以上糞害獣も生き恥を晒すに忍びないでしょう。

スパッッと判決を読み上げてあげてはいかがでしょうか?」

アライさん「まって…。アライさんは…」

TTT会員A「弁護人。そうはいきません。

この糞害獣が犯した罪。

つまり、訴状だけでもお知らせしておかないと、視聴者の方が糞害獣に間違った同情の念を抱きかねません!」

TTT会現地リーダー男「なるほど!では、『検察役』どうぞ!!!」

TTT会員A「え~、まず、先程この糞害獣自身が自白した『家屋不法侵入』及び『テレビの違法視聴』…、
まあ、これは私も今日初めて知ったものですが、余罪ですね」

TTT会員A「あ…、よく考えったら、もう一つの方も、こいつ自身が自白していた…。

バカだなあ…。

一番大きい被害を与えた罪はこの糞害獣含む4匹の姉妹でイチゴ畑を荒らし、一晩で一筆の畑を壊滅させたものです」


TTT会員A「では、こちらの再現映像をどうぞ!」

そう言って、TTT会員Aは、ノートパソコンを起動させ、録画映像を流し始める。


『隣町近郊に農園を営むAさん夫婦の農園。

農園主のAさんは、昨年、がんと診断され、余命幾ばくもない身でありながらも、
夫婦助け合って農作業に精を出し、イチゴの収穫が出来たら孫に送ろうと楽しみにしていました。

今年がワシにとって最後のイチゴづくりかも、知れんのう…。

そんな、言葉を漏らしつつも日々を真面目に過ごす、Aさん。

しかし、悲劇のカウントダウンは始まっていたのです』

映像の場面が変わって夜になる。

毎度、お馴染み。

畑を跋扈する少女並みの大きさの『ゴキブリ』!

『「フハハハハハ この畑はアライさんが見つけたのだ!つぶつぶは全部アライさんのものなのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

「お姉さん!アライさんにもお零れを分けるのだ」ゲシゲシ!シッポフリフリ!

「あまあまつぶつぶ、おいちーのだ。あ~うんこしたくなってきたのだ」ブリュブリュブリュブリブリブリブリュブリュブッブー

「あ~!!!先に食べ始めるなんてずるいのだ!ガイジなのだ!!!これはアライさんのものなのだ!
ため糞してマーキングなのだ!!!」ゲシ!バシ!ブリュブリュブリュブリブリブリブリュブリュフ』

アライさん「嘘なのだーーーー!!!!」

アライさんは、大声を上げる!!!

突然の反応に一同は一瞬声をなくす。

アライさん「アライさんは、餌を食べるとき、あんな風にペチャクチャ喋ったりしないのだ!!!

敵に見つかるのだ!!!ガイジなのだ!!!

お姉さんや妹とも巣立ってからも、それなりに上手くやってたのだ!

最近は餌が手に入りにくいから、姉妹助け合って…」

TTT会員A「姉妹仲良く助け合って…、畑荒らしをしていたと!!!語るに落ちたとはこのことですね!!!」

TTT会員A「確かに、本画像は『一部編集』されています。視聴者の方に分かりやすいように!
ですが、それを持って本罪を免れることなどできないのです」ビシッ!

普段は割と冷静な抑え役を自認しているTTT会員A。

しかし、裁判ごっこをやっている内に役に熱が入ってきた。

TTT会員D「異議あり!偽造された証拠は無効です!!!」

TTT会員Dもノリノリである。いい年した大人が何をやっているのか…。

TTT会現地リーダー男「異議を却下します。

糞害獣は生存すること、生きたいと思うこと自体が罪!!!

人間の裁判時のような厳密な証拠能力の審査など元より不要なのです。

刑務官!不規則発言をした被告害獣に特大の懲罰を!!!」

TTT会員Bは頷き、度重なる『懲罰』でグッタリし始めているアライさんにスタンガンを押し付ける。
お前、『刑務官役』だったのか…。

アライさん「あぎゃあがやぎゃぁぁ!あぎゃあがぁあぁぁぁ!がぁあぁぁああああー!う…う…あぎゃあやあぁあぁああああ!!!」


今度の通電は長い!
電圧もこのスタンガンが出せる最大レベルだ!!

しかし、アライさんにとっての地獄はまだ終わらない。

TTT会員Bはケージの中に厚い手袋をした手を入れ、気絶したアライさんの尻尾を持ち上げる。

そして、うんこのフレンズに相応しく汚らしいお尻を露わにすると
タイツ状の『毛皮』の上から一息に肛門らしい場所に棒状スタンガンを突き刺す。

ビクン!!!

気を失っていたアライさんが跳ね起き、弱弱しい声で懇願する。

アライさん「どうか…やめ…」

スイッチオン!

アライさん「あぎゃあやあぁあぁああああ!!!う…う…あぎゃあやあぁあぁああああ!!!はぁ…。あぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

ゲロゲロゲロゲロ!!!

ブリュブリュブリュブリブリブリブリュブリュブッブー!!!

ジョロジョロジョロジョロジョロジョロロー!!!

胃液・糞尿を垂れ流しながら、アライさんは完全に沈黙する。

TTT会現地リーダー男「ふむ。被告害獣は自業自得にも卒倒したか。

しかし、裁判は遅滞なく行おう。 検察官!求刑は!!!」

TTT会員A「はい。被告害獣は人家・農園に姉妹で甚大な被害を与えたのみならず、
裁判中も悪戯に自己の弁護に終始し、反省の色、微塵も伺うことが出来ませんでした。

酷刑をもってその命の尽きるまで罪を償うほかないと思います。『腰砕きの刑』を求刑します」

TTT会現地リーダー男「弁護人は被告害獣に代わって何か最後に申し開きは有るか?」

TTT会員D「はい。被告害獣らアライグマのフレンズは、

昔、人間によってこの地に強制連行されてきた経緯があり、

また、現在の法制度上、自ら生計の手段を確立して、自活していくことが実質不可能な現状があります」

ぷぷぷぷ

TTT会員Dは吹き出しそうになる。

まだだ、まだ笑うな…。

まさか、自分が真面目ぶって、『アライさんの弁護士』役などやるとは!

なかなか、様になったものだろう!

TTT会員D「裁判中の不規則発言は、ある種の拘禁反応であり、必ずしも反省の念とは一致しかねます。

そうした一切の情状を考慮し、言わば、人間様の度量をもって速やかな形で処刑を行ってやるのが慈悲かと存じます」


TTT会現地リーダー男「でででーん」

自分で効果音を発する『裁判長』。

さっきまで、やれ『警察だ!クマだ!アラ信だ!エコテロリストだ!』と心配していたのがうそのようである。

このTTT会現地組の『役の入りよう』、有名な心理学実験を彷彿とさせる…。

TTT会現地リーダー男「それでは、判決を申し渡す。被告害獣は起立…、は無理か…」

ゴホン!

TTT会現地リーダー男「判決…」

一旦、ここまでといたします。

続きを書き込みます。

TTT会現地リーダー男「判決!碧き神聖な山河のために!被告害獣アライさんには…」

TTT会現地リーダーはそこで改めて、ケージの中のアライさんを見る。
胃液と糞尿に塗れて弱弱しく蠢くハエガイジを。

気持ち悪い!

汚い!

『可哀想』でも『もっと懲らしめてやろう』でもない。

ゴキブリを捕らえたとして、わざわざそれが蠢き足掻くさまなど見ただろうか…。

そう思うと先程からの変なテンションがスゥーと引いていくのを感じる

臭い!

この汚物に人生の時間を割り当てるのが惜しい!

TTT会現地リーダー男「『腰砕きの刑』を恩赦で罪一等を減じ、銃殺刑とします」

そう申し渡しながら、TTT会員Dと視線を交わす。

意外なことに何時ものような異論はない様だ…。

どういう心境の変化だろう…。それなりに付き合いが有るはずだが、彼は今一、読み切れないところが有る…。

TTT会員D「現地リーダーさん」

相手に呼び掛けられて、ハッとする。

TTT会員D「『判決』が出たなら、さっさと〆ましょう。長居するだけ危険です。
パフォーマンスもこれだけやれば十分でしょう…」

TTT会現地リーダー男「あ…、ああ!」

アライさん「う…。う、う…」

未だ意識が回復しないアライさんをピックアップトラックの脇にある太い大樹にグルグルロープで縛りつける。

TTT会員B「うぉ…。ばっちい!アライさんのうんこが着いた!」

TTT会員C「俺もだ。おい!ウエットティッシュを…」

その時―

彼らは思い出すことになる…

グウォォォォォー!!!

TTT会現地リーダー男・TTT会員A・TTT会員B・TTT会員C・TTT会員D
「「「「!!!!」」」」ビクッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!

自分達には恐れていたものがあったのだ!自分は…人は…山では絶対の強者などではない!!!

けものみちの藪の陰。

何か黒い塊が、山の奥から転がるように、転がるように!

自分達の方に向かってくる!!!

凄い勢いで!!!!

TTT会現地リーダー男「クマだー!!!」
TTT会員A「皆!!!車に乗り込め!!!」

バンッ!

アライさん「ぐぇ…。ゴフゥ…」ビチャッ!!!

銃声が一発轟く!

TTT会員Dが引き金を引いたのだ!!

動き、迫るクマではなく―本来殺すべき、そして縛られ確実に殺せる害獣アライさんを!

アライさん「うえ…。はあ…。アライさんの姉妹は?」

アライさんは肝臓付近を撃ち抜かれながら、目を覚まし、TTT会員Dを睨みつける。

TTT会員D「焼き殺したよ!お前もすぐ会える!!!」

今度は頭を狙う!流石に自分も驚いて手元が狂った!

ぐぃぃぃー!

TTT会現地リーダー男「馬鹿野郎!!!早く車に乗るんだ!!!!!」

バンッ!

現地リーダーが渾身の力でTTT会員Dを引きずった反動で弾はアライさんを逸れる。

キーーーーン

TTT会員Dは激しい耳鳴りに襲われる。まだ銃にはもう一発弾が…。

TTT会現地リーダー男「たかがアライさんだ!!!もう、あれで死んだ!お前の命は一度きりだ!!!」

ぐぃぃぃー!

現地リーダーはそう言って、TTT会員Dの体をまるで担ぎ上げるように車まで引っ張り上げる。

この慎重居士の腕はこんなに太かったのだろうか!?今日まで気が付かなかった!!!

バンッ!バンッ!

他のメンバーもTTT会員Dが車に乗り込む時間を稼ぐため、あの巨大な黒い化け物に向け、果敢に銃口を開く。

TTT会員Dは、それを見た瞬間に自分が遠い幼い日に忘れてきた何かにようやく出会えたような…。
そんな気持ちに包まれる。

まだ、今日の自分は…、『その時』では無かったんだ…。

バンッッ!!!

ブロロロロロォー!!!

ピックアップトラック扉を、TTT会員Dが、壊れるほどに強く閉じた瞬間に車は排ガスを巻き上げながら勢い良く発進する。


未だ勢い衰えず、迫って来る山の化け物を遥か後ろに引き離しながら―

アライさん「あ…あ…」ビクビクビク

撃ち抜かれた個所から血を垂れ流しながら、アライさんは自分の死神がそばまで近寄って来ることを感じる。
しびれた手足でこの硬いロープを千切ることは出来ないだろう…。

仮にできたとしてもこの傷では…。

いやそれ以前に…。

ガサッ!ガサッ!ガサッ!

アライさん「あ…。あ…。食べないで…欲しいのだぁ…」

目の前の黒い塊にそう懇願する。

喰われたくない、全ての生き物の根源的な願いに―

???「けものが自分を憐れんでどうするのだ?」

その化け物はそう応じた―

今日の書き込みは以上です。

続きを書き込みます。

ゴトゴトゴト

ピーン!カランカラン!

見張り子分アライさん1「…」ビクッ

グッ!

ザッッ!ザザッ!

見張り子分アライさん1「(聞こえたのだ?)
見張り子分アライさん2「(聞こえたのだ!)コスリコ

グッ!!!

『何時もの』癖でハエガイジムーブを始めそうになる見張り子分アライさん2の手を、見張り子分アライさん1は握り止める。

見張り子分アライさん1「(作戦中は無駄に空気を震わせる行動は一切禁止なのだ!
お前は伝令を!!!アライさんは監視を続けるのだ)」

手の合図と最低限のコソコソ声で、見張り子分アライさん1は『姉妹』に告げる。


???A「何を?」
???リーダー「鳴子だ!!!」


見張り子分アライさん2「(大吉なのだ!!!)」

カサカサカサ

忍びやかな葉擦れの音と共に、見張り子分アライさん2は、けものみちの脇林を駆けていく。

見張り子分アライさん1「(『家族』の誓いと警戒線の設置、こうしてみると間に合って良かったのだ。

突然、うんこの仕方を指示されたり、『家族の縄張り』の外側のけものみちまで見張れと言われたときは、ビックリしたのだけど…)」


見張り子分アライさん1は、ごつくて大きいピックアップトラックを見つめる。
無論、細かい車種まで一般アライさんは知らないことは多いが…。
それでも、こいつは何年も人間の淘汰圧力に晒されてきた『生き残りエリート』アライさん。

流石に自動車が何なのか―人間が乗って動かす『お宝』でけものより速く走れて、ぶつかると危ない物である―と言うくらいは分かる。


じゃないともっと早くアライさんは滅んでいる!

見張り子分アライさん1「(人間!何しに来たのだ!!!)」コソッ

見張り子分アライさん1は、ひっそり、けものみちの向こう側の脇林に視線をやる。
左右、できるだけ対称・一体で動けるよう向かい側にも、見張り子分アライさんが二匹居る。

???A「猟銃を!TTT会員Bは俺と一緒に!!!」
二人の人間が車から飛び出し、付近を調べている。

ビクッ!!!

見張り子分アライさん1は、地に伏して体の全ての動きを止める。

バクバク心臓の音だけが響く…。
流石にこれまでは止められない。

そして、徐々に自分の鼻先とケモ耳先に神経を集中させていく。

見張り子分アライさん1「(なるこを調べている(?)のだ…。

!!!!!

あいつらの車の後ろの荷台、アライさんが乗ってるのだ!!!『家族』のアライさんの臭いではないのだけど…!)」


二人の人間は合図し合って、素早く車に乗りこんだ。

車の鉄の扉を通して、大気の震える波をアライさんのケモ耳が掴み取っていく…。

???A「確か・鳴子・・た。地元の方・害獣対策・仕掛けた・・しょうか?あるい・、キャンプ・サバイバルクラブ・・・忘れか…」
???リーダー「も・・は…。県兵ら・・るアライさん捕獲・・・・・作戦を良・・・ないアラ信・エコテロリストの・・・言うことも考えられる!」
???B「なら・。車を止・・・・まずい!頭がイカレたアラ信が・・・・突っ込んでくるかも。・・…、警察に連絡・・」


見張り子分アライさん1「(『地元の人間』『アラ信』『えこてろりすと?』『警察』をこいつらは恐れている!!!

正式な兵隊じゃないのだ!!!地元の人間でもない。

アラ信…アライさんに餌を撒いたり、保護とか言って閉じ込めたり・去勢したりする奴でもない…。

何よりこいつらは『他の人間』に見つかることを恐れている?!)」

ピックアップトラックは、けものみちにしては急速にバックし始める。

見張り子分アライさん1「…」ピクピクピク

カサカサカサ

けものみちの向かい側から、微かに葉擦れの音の音がする。今の情報を追加で大母さん達に伝えに行ったのだ!

見張り子分アライさん1「(つまり、残りの見張りはアライさんと向側で一匹ずつ…)」

そう思い、覚悟を固めたとき。

ヨチヨチヨチヨチ

ビクッ!

見張り子分アライさん1は後ろを振り向く!

見張り子分アライさん5「(追加で応援に来たのだ!向こう側にも来てるのだ。それとこれ!念のためなのだ!!!)」コソッ!


見張り子分アライさん5は、自分の分以外にもう一本持ってきた60センチほどの竹やりを手渡す。

見張り子分アライさん5「(大母アライさんから『匍匐訓練が間に合わなかった以上仕方ないのだ。
ハイハイとヨチヨチ歩き、距離が有るなら走って見つからないよう追うのだ!

追跡中止の際はまた、連絡するけど、決してこちらから攻撃してはいけないのだ!!

もし見つかりそうなら、現場の判断で中止しても許すのだ』と)」コソッ!

見張り子分アライさん1は、ブルブルブルっと一震えしながら、竹やりを受け取る。
覚悟はしていたけど…。もしかしたら、今日が人間との『戦争』の始まりかもしれないのだ…。

あ、あいつら…、鉄砲を持っていたのだ…。

見張り子分アライさん1「(お…、落ち着くのだ。奴らも怯えていたのだ…。

それに『アライさんにとっての対絶滅戦争』はもう、ご先祖の頃から、ずっと続いてきたのだ!!!)」

ヨチヨチヨチ

ヨチヨチヨチヨチ

二匹のアライさんは決死の覚悟を固め、大真面目な顔でヨチヨチ歩きを開始する。


ゴトゴトゴト

ヨチヨチヨチヨチ

カサカサカサカサカサ

ヨチヨチヨチヨチヨチ


バッ!ペッタン!

???リーダーは、時間をかけて何とか方向転換がギリギリ出来そうな場所に来ると車をUターンさせる。

???リーダー「いいか皆!俺たちは『地元の環境・・アウ・・・・ークル』。今日・アライさんの・・害に心を痛め、隣・・・で駆除に来た。アライさん防除許可・講・・受けている!後ろ・・は『これから防除するつもりだった』。警察が来たらそう言うんだ!!!」

???メンバー一同「「「はい!!!」」」



見張り子分アライさん1「(警察!!!警察が来るのか!本当なのか…。『防除』!

これから後ろのアライさんを殺すつもりなのか!)」

40分経過後(その間、???な人間達は『クマがー』『アラ信がー』『警察がー』『エコテロリストがー』と騒ぎ続けた)



見張り子分アライさん1「(こいつら…。何しに来たのだ??)」
見張り子分アライさん2「(ガイジなのだ…。意味不明なのだ…)」

ちなみに、見張り子分アライさん2は前回と合わせて、伝令をたっぷり二往復もする羽目になった。

見張り子分アライさん5「(人間がガイジなのはアライさんにとっては良いことなのだ…)」
見張り子分アライさん7「(疲れてきたのだ…)」
見張り子分アライさん9「(うんこしたくなってきたのだ…)」

ピン!ピン!ピン!ピン!ピン!

流石に少し緊張が解けて来た見張りアライさん達を、後から合流してきた中姉アライさんはデコピンして気を引き締め直す。

片手には竹やり、腰には腰刀、背中には何やら風呂敷に『お宝』を包んでいる。

中姉アライさん「(緊張するのだ…。

大母さんから『アライさんの基本は人間を、避ける・隠れる・逃げる!

合図が有るまで攻撃は一切厳禁!極力監視に徹するのだ!こいつらを皆殺せても、報復の代償の方が大きいのだ』と言われてるけど…)」


中姉アライさん「(それでも…、あいつら次第では…。

今、アライさん達『家族』は片側6匹ずつで、けものみちに挟撃体制を敷いているのだ。

こっちは、アライさん!向こう側は山姉アライさんが指揮を。

洞姉アライさんはここから結構、奥で投石と投げ槍の用意を…。

大母さんは『森の中では、ほぼ効果はないけど、それでもいくつかでも頭上から降ってくれば、相手の士気を挫ける』って言ってたけど…。


投石は兎も角、投げ槍はぶっつけ本番に近いのだ。間違ってアライさんの頭に当たるかも…)」

中姉アライさん「(大母さんは全体の指揮が有るし、大姉さんは大母さんに何かあった時、唯一代理が効く立場だから前には出れないのだ…。

小姉アライさんは『チビ達』を守らなきゃだし…)」

中姉アライさんは、やや頼りなげに手元の竹やりを見つめる。
一応、今回の挟撃・監視班は精鋭を選んでは来たのだが…。

ピクピクピク!

中姉アライさん「(人間が車の中で、何か騒いでるのだ!)」

???リーダー「なぜ警察は来ないー!!! 一体どうなってるんだーー!!!」
???B「不法侵入(?)がバレた筈なのに!!遅すぎるぞォォーーーー!!!
???C「早く・・・ 来るなら来てくれ・・・ 言い訳もばっちりなんだ・・・」
『とても恐ろしい 集団心理(?)である・・・』


中姉アライさん「(???)」


???リーダー「パトカー!!パトカーはまだかーー!!!
???B「なぜ来ないー!!! 一体どうなってるんだーー!!!」
???C「警察が!!遅すぎるぞォォーーーー!!!」
???リーダー「早く・・・ 来るなら来てくれ・・・ 俺の気力が・・・」


中姉アライさん「(警察は来てない…。いや、それ以上にこいつら…、何をやってるのだ?)」

『なぜなら!!!もうお分かりだろう!!!』
『誰も・・・ 警察に通報などしていないのである!!!』
???B「早く!! 来るなら早く来てくれーー!! 来ないなら来ない!はっきりしてくれーー!!」
『誰も!! 通報する人がいないのである!!』


中姉アライさん「(ここにはこいつらだけ!!!援軍はなし!!!)」


???A「おかしい・・・ これは 何かが おかしいです・・・」
???リーダー男・???B・???C「「「えっ??」」」
???A「日本の警察は大変に優秀で、本来は通報から5分~遅くても15分以内には到着するように設定されている、と学研マンガで読んだことが有ります」
???リーダー男・???B・???C「「「え?? そんなに早く?」」」
???A「はい。110番通報から現場までほんの少しでも早く到着できるように、
警察署・交番・派出所・駐在所というものは、本当に点々と!配置されているそうです!!
なのに、いまだにサイレンすら聞こえないとは・・・これは、絶対におかしい・・・」


中姉アライさん「(そうだったのだ!!!
大母さんにもお伝えして、アライさんの『家族』で知識を共有するのだ!また、『家族』が賢くなったのだ!!!)」

~中略~

中姉アライさん「(見張り子分アライさん2!今の状況を大母さんに報告なのだ!!!)」

見張り子分アライさん2「(大吉なのだ!!!)」

ヨチヨチヨチ
カサカサカサカサ

???D「あの…。多分、誰も警察に通報してはいないんじゃないですか?」


中姉アライさん「(うん?動きが有るのだ!?荷台のアライさんを…!あいつら!!!何をやってるのだ!!!)」

アライさん「あ…、アライさんは…。そうだ!おねーしゃん!!!お姉さんと妹達はどこなのだぁ!!!」

金切り声を上げる同族を目にし、見張り子分アライさん1の胸は奇妙な苦しさを感じる。


本来、アライさんは群れるけものではない。

人間の根滅圧力への『適応』として『家族』を結成した今でも、それ以外のアライさんは云わば敵。

同情する義理など微塵もない!自分達も『家族』を結成するとき、先見性がないガイジを弾いてきた!

大母さんも言っていたではないか!
『弱いアライさん・ガイジなアライさんは人間に弾かせながら、自分達はより強く賢く、蛇蝎の如く生きよ』と。

もし、生き抜くためにそれが避けられないなら『家族』の中の『最も弱ったもの』を喰らっても生き抜くべきだ、と。

見張り子分アライさん1「(今日があいつの『順番だった』のだ…。ガイジの報いなのだ…)」

そう思おうとしても、見張り子分アライさん1の心は―『そうか、これがアライさんのココロなのか』―晴れない。

自分達アライさん同士のぶつかり合い・共喰いとは違う。

こと人間にアライさんが殺される出来事と言うものは、それほどまでに身近でアライさんにとって脅威で『共感性のある』―



???D「大丈夫だよ。アライさん。すぐにお兄さんたちが姉妹に会わせてあげるよ!」

アライさん「嘘なのだ!!!お前達はアライさん達に意地悪したのだ!!!
赤いつぶつぶを食べてる途中に犬に追い詰めさせて…。

降参すればさいばんしてあげるっていうから…。闘って、引き裂いてやればよかったのだ!!!」


―『共感性のある痛みなのだ』―そう言うものがないと言われているアライさん達に人間が植え付けて覚えさせてしまったもの。

見張り子分アライさん1「(さいばん…『裁判』!!!

あいつらは降伏条件を偽ったのだ!!!異種族間の闘争でそれだけは、絶対にやってはいけない禁忌を!!!)」

見張り子分アライさん1の胸の中で、脳髄の中で何かがカッと熱く暗く燃え出す―


???D「アライさーん~」

人間は、目を細めながらアライさんを見つめる。

人間「後悔先に立たずだね!人間以外に人権はないから裁判はないんだよ。次、生まれ変わるときは要注意だね!」



見張り子分アライさん2「(けものは…!!!胎から生まれれば、土に還るだけなのだ!!!
生まれ変わりなどしないのだ!!!)」

人間「まあまあ。それでも『約束は約束』。裁判してやろう。裁判長は、TTT会現地リーダーこと自分。
検察役はTTT会員A、弁護士役はTTT会員D!」

そう宣告し、裁判ごっこをこの場で始める人間達。


目を白黒させているアライさんをしり目に。まるで智者は自分達だけとでもいうように…。

かつて、『フレンズ』の戦力を何の領土も富も独立的自治権も確保せず、
口約束の『共存・共栄・共生・(まあ、心がけ程度の)平等』を信じて売り飛ばした『かばんさん等一行』や他のアニマルガール達もこんな目で見られていたのか…。



アライさん「これがさいばん…。待つのだ!アライさんが人間のお家で、てれびで見たのと違うのだ!!!お姉さんと妹達はどうしたのだ!!!」

人間「被告害獣は静粛に!TTT会員B懲罰を!」

『裁判長』の合図とともに人間は、長い棒状のスタンガンをケージの中のアライさんに押し付ける。

アライさん「あぎゃあがやぎゃぁぁ!いだぁいのだぁぁ!」ビリビリビリ

山に森にアライさんの鳴き声が響く。
人間には聞こえないのだろうか。

この場のアライさん達が、血が滲むほどに拳を握り固めていることに…。

人間は笑いを堪えながら手を挙げる。

人間「裁判長!異議あり!!!この糞害獣の言うことは遺憾ながら一理あります。
本来裁判は、一つの機関が、逮捕・起訴・弁護・判決をまるまる行うことを想定していません。
糞害獣に対する明らかな人権侵害です!」

人間「弁護人の異議を却下します。害獣には神も人権も存在しません。
従って、人権侵害など起こりようもないのです」



山姉アライさん「(けものに人間と共有できる神はいない。本当の意味での人権もない。

それがない以上、本質的な意味での共生も…、投降や休戦の約束さえ気分次第では破ると、お前達はそう言うのだ!!!だったら!!!)」

アライさん「…。じゃ…あ。何でこんなことを…。殺さず公平に裁判するって…。お前らはそう言ったのだ…」

TTT会現地リーダー男「被告害獣!不規則発言は慎みなさい。懲罰!」

アライさん「あぎゃあがやぎゃぁぁ!あぎゃあがぁあぁぁぁ!うぇぇぇー!」ビリビリビリ

アライさんの泣き声がゆっくり森に沁みわたっていく。

この森にはアライさん以外にも野生動物が勿論、居るし、
あるいは野生暮らしのフレンズやひょっとしたら外来種由来のフレンズさえいるかもしれない。

彼らは忘れてしまったのか?
自分達の立場を。

確かに日本の在来種はアライさんとは競合関係、他のフレンズとアライさんもそこまで親しくはない。

ただそれは、彼ら彼女らが『アライさんより人間を好きでいる』理由付けにはならない!

各々の種族、フレンズの種類、各個体ごとに人間に脅威を感じ・憎しみを宿す限りにおいては、そこに何の不義理もないことに!!!

じりじり電圧を上げながら、スタンガンを押し付けられるアライさん。

ゲロゲロゲロ…

アライさんは腹の中のものをぶちまける!ほとんど胃液だ!まともにものも食べさせてもらってはいない!

人間「これは公平な裁判です。そもそも、人権とは『人間』に限られた権利、『特権』。
今は恩典として、人類文明に参画する意思を明らかにしたフレンズに特別に『擬制的』に波及させているにすぎないのです。

それ以外の物、特に害獣には『公平に権利が存在しない』。
環境・生物に対する罰則・制限は『全て人間同士の約束事』。
被告害獣自身がそれらの規定を援用ないし、主張することなどできないのです」

アライさん「…。じゃあ…。アライさんは…。最初から…」

ぷぷぷぷぷ…。



クスクスクス

クスクスクスクス

アライさんには、この地に住まうけものには、
その笑い声がまるで天から降り注ぐように何倍にも増幅されて降り注ぐ。

中姉アライさん「(『特権』、『そもそも公平に存在しない』。
今、貰えている奴らも特別にお目こぼししてやっているだけ…。つまり、こっちの気分・方針一つで…。

お前らが言っていることはつまりはそう言うことなのだ!!!)」

―???A「では、こちらの再現映像をどうぞ!」

そう言って、TTT会員Aは、ノートパソコンを起動させ、録画映像を流し始める。
『隣町近郊に農園を営むAさん夫婦の農園。
農園主のAさんは、昨年、がんと診断され、余命幾ばくもない身でありながらも、夫婦助け合って農作業に精を出し―



『家族』アライさん達「(その畑も、ニホンオオカミさんや二ホンカワウソさんらを皆殺しながら手に入れたものなのだ!!!

あいつらはせっかくフレンズとして蘇ったのに、よくヘラヘラ愛想笑いをしながら人間と付き合えるものなのだ。

きっと、裏で牙を研いでいるのだ…。

アライさん達を勝手に連れて来て、耕す土地も与えず、耕法も教えずに放逐した末に何を言っているのだ―

『「フハハハハハ この畑はアライさんが見つけたのだ!つぶつぶは全部アライさんのものなのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
「お姉さん!アライさんにもお零れを分けるのだ」ゲシゲシ!シッポフリフリ!
「あまあまつぶつぶ、おいちーのだ。あ~うんこしたくなってきたのだ」ブリュブリュブリュブリブリブリブリュブリュブッブー
「あ~!!!先に食べ始めるなんてずるいのだ!ガイジなのだ!!!これはアライさんのものなのだ!ため糞してマーキングなのだ!!!」ゲシ!バシ!ブリュブリュブリュブリブリブリブリュブリュフ』


アライさん「嘘なのだーーーー!!!!」


中姉アライさん「(もういいのだ…。止めるのだ…)」



アライさん「アライさんは、餌を食べるとき、あんな風にペチャクチャ喋ったりしないのだ!!!
敵に見つかるのだ!!!ガイジなのだ!!!お姉さんや妹とも巣立ってからも、それなりに上手くやってたのだ!
最近は餌が手に入りにくいから、姉妹助け合って…」



山姉アライさん「(何を言っても無駄なのだ…。アライさんはこの地ののけもの。
人間にとっては、都合の良い非虐待キャラ!静かにしないと余計に―)」

人間「不規則発言をした被告害獣に特大の懲罰を!!!」

アライさん「あぎゃあがやぎゃぁぁ!あぎゃあがぁあぁぁぁ!がぁあぁぁああああー!う…う…あぎゃあやあぁあぁああああ!!!」



見張り子分アライさん1「(中姉さん…。アライさんは!もう我慢できなくなったのだ!!!)」

中姉アライさん「(静まるのだ!大母さんにくれぐれも止められているのだ!!!)」



人間はほぼ、無抵抗のアライさんの尻尾を持ち上げ、今度は肛門に棒状スタンガンを突き刺す。

アライさん「どうか…やめ…」

アライさん「あぎゃあやあぁあぁああああ!!!う…う…あぎゃあやあぁあぁああああ!!!はぁ…。あぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」


アライさんの魂全体から搾りだされた声が一面に響く―。
どこまでも、森を超え、野を超え、山を越え、谷さえ超えるように―

ゲロゲロゲロゲロ!!!
ブリュブリュブリュブリブリブリブリュブリュブッブー!!!
ジョロジョロジョロジョロジョロジョロロー!!!

胃液・糞尿を垂れ流しながら、アライさんは完全に沈黙する。

TTT会現地リーダー男「ふむ。被告害獣は自業自得にも卒倒したか。しかし、裁判は遅滞なく行おう。
検察官!求刑は!!!」



『家族』アライさん達「(ハア!ハア!ハア!ハア!)」

ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!ハア!

ふと、『家族』アライさんは気づく…。目に見えない誰かが…、この森全体が事の成り行きを注視している。

自分達と同じように、目を付けられないように息を殺しながら―

TTT会現地リーダー男「『腰砕きの刑』を恩赦で罪一等を減じ、銃殺刑とします」

人間はそう宣告する。ぐったり言葉もないアライさんに―

車の脇の太い大樹にグルグルとロープで縛りつけていく。



山姉アライさん「(もうお終いなのだ…。ずっと見ていたのに…。アライさん達は結局―)」

中姉アライさん「(仕方がなかったのだ…。あいつは『家族』じゃないのだ…。こうするしかな…)」

カサカサカサ

見張り子分アライさん2「(伝令!伝令なのだ!!!)」

ビクッ!!!!!!!

その場の空気が震え立つ!!!

その時が来たのか!!!

それで良い!!!

ここで闘えないようならアライさん達はきっと―

見張り子分アライさん2「(いや!違うのだ!!!大母さんが…)

『家族』アライさん達「「「「「「!!!!!!!!!!???????????」」」」」」」



TTT会員B「うぉ…。ばっちい!アライさんのうんこが着いた!」

TTT会員C「俺もだ。おい!ウエットティッシュを…」

グウォォォォォー!!!

グウオオオォォォォォォォォォォー!!!!!!

人間達「「「「!!!!」」」」ビクッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサガサガサガサ!!!!!!!

中姉アライさん・山姉アライさん「「(あれは大母さん!!!)」」

大クマの毛皮をその身に纏い、緑の山野を、『厳しい緑の砂漠』を転がり下りながら、大母アライさんは絶叫する。


かつて、この地の人間が崇め奉り、やがては引きずり下ろしていった神々をその背に負うように―

振り下ろした天槌を砕かれたセルリアンの、その割れた槌の柄を再び引き上げるように―

人間がかつて、恐れていたもの!人間は…ヒトは…この地の専制者などである筈がないと!!!

けものみちの藪の陰。

何か黒い塊が、山の奥から転がるように、転がるように!

自分達の方に向かってくる!!!

凄い勢いで!!!!

人間「クマだー!!!」
人間「皆!!!車に乗り込め!!!」

バンッ!

アライさん「ぐぇ…。ゴフゥ…」ビチャッ!!!

銃声が一発轟く!

人間が引き金を引いたのだ!!

迫りくる大敵ではなく―自分達でも好きに虐め殺せる―そう思い込んでいる、縛らた害獣アライさんを!!!

アライさん「うえ…。はあ…。アライさんの姉妹は?」

アライさんは肝臓付近を撃ち抜かれながら、目を覚まし、人間を睨みつける。

人間「焼き殺したよ!お前もすぐ会える!!!」

人間は、今度は頭を狙う!

その場の全アライさん達が体を起こす!!!

この場で奴を殺し、車の中の人間を殺し、里に下り下って、自分達がハチの巣になり、その息の根が絶えるまで―
赤子と言わず、老人と言わず、女子供、不具者―勿論、男―悉く殺す!!!

大母さんと一緒に!!!

カサカサカサカサ―

子分アライさん13「(伝令なのだ!!!大母さんの厳命なのだ!!!自分が仮に殺されても手出し無用とのことなのだ!!!)」


『家族』アライさん達「「「「!!!!?????」」」」


人間「馬鹿野郎!!!早く車に乗るんだ!!!!!」

バンッ!

人間が渾身の力で、もう一人の人間を引きずった反動で弾は縛られたアライさんを逸れる。

キーーーーン

その場の人間とアライさん達に耳鳴りが襲う―

人間「たかがアライさんだ!!!もう、あれで死んだ!お前の命は一度きりだ!!!」

ぐぃぃぃー!

人間はそう言って、銃を最初に撃った人間の体をまるで担ぎ上げるように車まで引っ張り上げる。

バンッ!バンッ!

他の人間は、巨大な黒い『生き神』に向け、無謀にも銃口を開く。

銃弾に身をさらしながら、荒ぶる大母は留まることなく、車に突っ込んで行く!!!

ブロロロロロォー!!!

けたたましい音と共に鉄の獣どもは尻尾を撒いて逃げていく!!!

あれほど騒がしかった森は急速に静けさを取り戻していく―

中姉アライさん「(奴らを追うのだ!!!ちゃんと山を下りたか確認したらすぐ戻ってくるのだ!!!)」

見張り子分アライさん1・見張り子分アライさん2「「大吉なのだ!!!」」

アライさん「あ…あ…」ビクビクビク

撃ち抜かれた個所から血を垂れ流しながら、アライさんは自分の死神がそばまで近寄って来ることを感じる。
しびれた手足でこの硬いロープを千切ることは出来ないだろう…。

仮にできたとしてもこの傷では…。いやそれ以前に…。

ガサッ!ガサッ!ガサッ!

アライさん「あ…。あ…。食べないで…欲しいのだぁ…」

目の前の黒い塊にそう懇願する。喰われたくない、全ての生き物の根源的な願いに―

大母アライさん「けものが自分を憐れんでどうするのだ?」

その化け物はそう応じ、バサッと重い装いを脱ぎ捨てる。

大母アライさん「ふん!!!」

一瞬、虹色の光―あるいは刀のきらめきか―が光るや、あの固いロープを切り裂き、アライさんをその枷から解放する。


大母アライさんは死にかけの『マヌケ』をジロリと見ると問いかける。

大母アライさん「それで?お前はどうしたいのだ?生きたいのか、楽になりたいのか?」

そう不遜な、似つかわしい態度の体格の良いアライさんに、撃たれたアライさんは赤子が母に縋るように答える。

アライさん「生きたいのだ」

今日の書き込みはここまでです。

続きを書き込みます。

ゴトゴトゴト

山から一目散に逃げ下る鉄の獣!

あのピックアップトラックである!

車内ではまた、TTT会現地リーダーの心配性が炸裂する!!!

TTT会現地リーダー男「早く警察に通報しないと!!!」

TTT会員A「はぁ?」
TTT会員B「はぁ?」 
TTT会員C「はぁ?」
TTT会員D「???」

他のメンバーは一瞬、意図を掴みかねる…。

せっかく今、虎口を脱したばかりではないか?

TTT会員A「え~と…。自首なさるおつもりですか?」

TTT会員B「!!!」 
TTT会員C「!!!」
TTT会員D「???」

TTT会現地リーダー男「違う!捕まったらお終いだろう!!!自分の人生も!それに義挙にも加われなくなる!」

ゴトゴトゴト

車を運転しながら、TTT会現地リーダーは大声を上げる。

TTT会現地リーダー男「そうじゃなくてクマだよ!!!見ただろう!!!あんなに大きいの!!!

もしあれが里に下りたら、現地の住民の方が大変なご苦労をされることに…。

直近の目撃者は自分達なんだから、何としてもその情報を警察と地元自治体にお知らせして、注意喚起をして頂かないと!!!」

なるほど!
それはもっともなことだ!
ある一点を除けば…。

TTT会員B「でも…。俺たちは『義挙』…、世間的には非合法活動の直後。警察に電話なんて…」

TTT会現地リーダー男「人命には代えられん!が…、どうしよう…。俺が一人で全部やったことにして…」

TTT会員A「リーダー落ち着いて…。流石にそこまで薄情ではありませんよ」

TTT会員Aの声に、他のメンバーたちもやや躊躇いながらではあるが頷く。

TTT会員B「(そうだ!俺たちは別に責められるようなことはしていない!)」 
TTT会員C「(害獣を滅し、世間に決起を促すのは正義!最高裁まで闘ってやる!)」
TTT会員D「(???というか、最初からある程度、捕まるの覚悟だろう?リーダーには今日、恩が出来たし…)」

TTT会現地リーダー男「皆…」

TTT会現地リーダーは変な感動をしているが、まあそれはそれとして、TTT会員Aは副案を提示する。

あくまで、さっきのは原則論。逮捕・発覚を免れるように行動するのがまず大事だ。

TTT会員A「『飛ばし携帯』を一つ持ってきています。アジトにはもう少しあったのですが…。

まず、この飛ばし携帯で110番通報をして、クマ害の恐れをお伝えし、それが終わった瞬間に携帯を解約。

その後、携帯電話は車で踏みつぶして破壊しましょう」

TTT会員B「匿名で…」

TTT会員A「勿論!日本の警察は優秀です。本気の捜査ならこれでも十分危ない。

ですが、流石に善意の通報一つに、そこまでの勘繰りをしないでしょう。

ただ、『飛ばし携帯』はあくまで今回のような緊急事態のためのもの。使い捨てで行きます」

TTT会員D「地元自治体への報告は?使い捨てられる携帯は一つなのでは?」

TTT会員A「今から、一番に目についた民家に固定電話をお借りしましょう。

家主に直接、巨大グマの注意をお伝え出来ますし。

自治体へのお知らせなら、すぐさま刑事事件にされることもないでしょう。当然、通話代相当のお代はお支払いしましょう」


TTT会現地リーダー男「よし!その方向で行こう!!!まずはTTT会員A。

変声機を使いながら、警察に通報するんだ!

TTT会員Bは車の運転を代わってくれ。

俺が上に状況を伝えて、携帯の解約手続きを進められるところまで進めてもらう!」

TTT会員A・TTT会員B「「はい!」」

TTT会員A「…、はい。立ち入りご遠慮の件は。はい…。誠に遺憾に思っております。

ただ、あくまで強制力のない『ご遠慮』と言うことでしたので、環境保全サークルとして野生生物の見回りを…。

はい…。

とにかく、例の巨大グマ!確かにお伝えした箇所で目撃いたしましたので!住民の方への万全のご配慮をどうかよろしくお願いします」


プッ!


TTT会員A「煩いお巡りさんが説教してきた…。兎も角、警察への連絡、完了です」


TTT会現地リーダー男「よし!」

TTT会現地リーダーはそれを聞くと、『自分の真上』、TTT会現地地域マネージャーにメールを打つ。
『お饅頭は一個目食べきりました』

TTT会現地リーダー男「(これで『飛ばし携帯』の解約は大丈夫のはず!あとは…)」

険しい旧道を更に下っていく。

けものみち同然の道も、けものみちなりに開けてきた。

ピックアップトラックの車窓からやや、真新しい印象を受けるこじんまりとした家が映る。

TTT会現地リーダー男「あの家でお電話をお借りしよう」

ザザッザッ!

砂利道を派手に鳴らしながら車は停車する。

TTT会現地リーダー男「皆!万が一のことがあるかもしれない!
家の住民をお守りするためにも猟銃は持っていくんだ」

TTT会員A「ただ、暴発すれば大変なご迷惑になる!弾は一応抜いておこう。
巨大クマなり、イノシシなり、アライさんが現れたら、素早く装填するんだ!」

TTT会員B・ TTT会員C・TTT会員D「「「はい」」」


TTT会現地リーダー男「(こんな山奥にやや真新しいお家。珍しいな…。
こじんまりとしているが、門構えは結構立派だ)」

ワン!ワン!ワン!

門の内側から犬の大きな鳴き声が聞こえる。
恐がらせてしまったか…。

そんなことを思案しながら、現地リーダー男は声を上げる。

TTT会現地リーダー男「お忙しいところ恐縮です!私たちは怪しいものではありません!

隣の県から環境保護活動に来た者です。お電話をお貸ししていただけませんでしょうか!!!

それと、お伝えしたい件がございます」

ギィ~
門がゆっくり半分開く―

良かった。余計なご心配をおかけすることなく―

TTT会現地リーダーは遠慮しながら半身を門に入れる。

TTT会現地リーダー男「どうも突然…」

ガブッ!!!

真っ白い紀州犬がTTT会現地リーダーの足に噛みつく!

老婆「めーん」

スコーン!!!

ドテ!ゴローン!

そして、中から繰り出された竹製の簡易薙刀が綺麗に極まり、現地リーダーは一撃で門前に伸びてしまう―

TTT会員A ・TTT会員B・ TTT会員C・TTT会員D「「「「り…、リーダーさーん!!!!」」」」

老婆「…」ギロリ

TTT会員A ・TTT会員B・ TTT会員C・TTT会員D「「「「…」」」」ビクッ

老婆「あんたら何ね!!!そげなあぶなーもんもって!!!強盗かいね!!??」

老婆「いやー!ほんとーにすまねーことでした!」

老婆は畳の上で、丁寧に頭を下げる。

TTT会現地リーダーは足を消毒し、包帯を巻かれており、頭は氷で冷やして腫れが引くのを待っているところだ。

老婆「隣の県から、わざわざ自警団の方が見回りに来てくださっていたなんて…。

山暮らしのもんにとっては、本当にありがたい話です」

TTT会員A「ああ、いえ…。自警団ではなく、環境保全アウトドアサークルなのですが…」

老婆「???」

老婆は小首をかしげる。

どうやら耳が少し遠いらしい。

TTT会員A「あ…。自警団でいいです。そんな様なもんなので…。

お電話をお貸しいただき、此方こそありがとうございます。

自治体の方からも改めて、ご連絡が有ろうかと思いますが、くれぐれもクマ害、鳥獣害にご用心ください」

老婆「ここらは昔から、クマにタヌキにシカにイノシシに、後にはアライさんに、たまにサルやらキツネやら。

本当たくさん出て困ります。仲よう住み分け付き合っていきたいと思ってますが…」

TTT会員A ・TTT会員B・ TTT会員C「…」ビクッ!

『アライさん』というワードを聞き、少し反応してしまうメンバー達。

幸い老婆には感づかれていない。

そして、こんな時にも平然と出されたお茶を啜っているTTT会員D。

老婆「現地リーダーさん。本当にすまんことでした。申し訳がない…。

わざわざ、お声を掛けに立ち寄って下さったのに。頭は大丈夫ですか?

救急車をお呼び致しなくて本当にいいんですか?」

TTT会現地リーダー男「いえ…。こちらこそ突然、お邪魔して、お騒がせしてしまい恐縮の至り…。

お電話の件、本当にありがとうございます。

頭は多分大丈夫です。これでも県兵予備の時、衛生兵の講習を受けてまして…。

くも膜下出血とか、そう言う兆候もなさそうですし、帰りは別のものに運転は任せて、下山次第MRIを取ったりしますから…」


老婆「まあ…。ほいじゃあ…」

老婆は金庫を開け、病院代を出そうとするが、それをTTT会現地リーダーやメンバーは引き止める。

一同に一抹の心苦しさが訪れる。

TTT会員A「(別に『大きな意味での嘘』はついていない。この家に寄ったのも善意に基づいてのこと。しかし―)」

TTT会員B「(細やかに暮らす老婆に『聞かれない範囲では答えてないこと』がある。

それを聞けば、この方はどう思われるだろう。

怒るか・悲しむか・それとも田舎の方は案外ドライで気になさらないか…)」

TTT会員C「(俺たちは良いことをしている。法律上は兎も角、概ねは…。
ただ、この付近をお騒がせしてしまった。

アライさんは『共感性』が欠けてるってよく聞くし、群れないけものだから、まさか、さっき防除した奴の報復とかには来ないはずだが…)」


その場に少し気まずい空気が流れる。

しかし、そういうことに鈍いのがTTT会員D。

相変わらず空気を読まず言葉を発する。

ただ、彼なりに真剣に―

TTT会員D「お婆さん。この辺りは正直危ないよ。少なくともお年寄りに暮らしやすい環境ではない。

無論、福祉サービスや地元の方同士の助け合いで頑張っているんだろうけど…。

クマも出る。イノシシもアライさんも。あのワンちゃんは頼りになるかもだけど…。

ここで細々と農業をやりながら暮らすのは…」

老婆「…。年寄の最後の我儘だでぇ。許してぇーな。この家はわしの棺桶だでぇ…。じいさんと建て直した…」

TTT会員D「…」

TTT会員Dは老婆の語りをじっと聞く。

その場の皆も…。

老婆「セルリアンがぎょおさん暴れたとき。わしらは皆、この辺りから立ち退かされてしまって。

息子も戦死してまって。遠くの孫が大学を出て就職できたと聞いたときは本当に…」

老婆は遠い目をする。

当時の人がどんな思いで郷里を離れ、離散の苦しみや戦中・戦後を生きたのか。

この世界の日本人同士でも世代・地域ごとに感情面で齟齬があることは否めない。

老婆「運よくわしらの地域は、県境を跨いだお隣の…。
ほら、最近やっと戻れるって言う蛇張村より早く規制が解かれて。

じいさんと『どうせ死ぬなら最後は…』と言って、この家を建てたん。

建ててすぐにじいさんは、のうなってしまったが。最後は男子一国一城の主として、この家で逝かせてやれた」

老婆はTTT会員Dの目をじっと見つめる。

―そう言う事情で家が新しそうに感じたのか―

老婆「この家はわしの棺桶。じいさんと一緒に建てた…。

クマに喰われても、イノシシに撥ねられても、アライさんに絞殺されても…。わしはここを動かん!」

シーンと場が静まり返るが、それをものともしないのがTTT会員D!

どうやら彼の中で、この老婆は『自分の存在の一部として大事にする認定』が下りたらしい。

TTT会員D「じゃあ、お婆ちゃん。俺らで家の周り、鳴子を張っとくよ。

材料ある?

あと、田舎だからって油断せずに絶対施錠はしっかりして!

ワンちゃんが吠えたり、鳴子が鳴ろうものなら、すぐに110番通報をするんだよ!」

TTT会現地リーダー男・TTT会員A ・TTT会員B・ TTT会員C「「「「うん!うん!」」」」

TTT会員A「日本の警察は大変に優秀で、本来は通報から5分~遅くても15分以内には到着するように設定されている、
と学研マンガで読んだことが有ります。

仮に通報が『空振り』に終わった場合でも『何にもないことが一番。何かあれば躊躇せず、また、110番してください』そうおっしゃる警察官の方がほとんど。


しっかり、皆で鳴子を張っておくのでどうかお気を付けて」


老婆「…」パチクリ!

TTT会メンバーたちは頭を氷で冷やしているリーダーの指揮のもと、
車と老婆の家にあった資材から、鳴子を作り、家の敷地に警戒線を張り出す。

TTT会現地リーダー「ご自分やワンちゃん、ご近所さん(と言ってもちょっと遠いけど)、
ご訪問される自治体職員や福祉職員の方が間違って引っかからないよう!くれぐれもご用心を!

あくまでこれは簡易の物。ご心配が大きければ専門の業者さんや地元の見回りの方ともご相談ください」

老婆「ほんにまあ…」パチクリ!

紀州犬「くぅぅーん…」

『正義感(自己中心的)』で一生懸命になるのがTTT会員達。

老婆の一応の許可のもとあっと言う間に、クマ・イノシシ・アライさん用の鳴子警戒線を作る。

耳が遠い老婆の為、やや音は大きく鳴る素材を使っている。

勇敢なイノシシキラー『紀州犬(天然記念物)』も居る。

これでしばらくは大丈夫だろう…。

TTT会現地リーダー男「これ。唐辛子スプレーです。間違って噴射しないように気を付けてください。
クマにもアライさんにも使えますが、くれぐれも自分から闘いに行ったりはしないで下さい」

TTT会員A「自分達も『環境保護活動』で近くに来る際には、極力、ご様子を伺いにまいりますので…」

老婆「本当に今日はありがとうございました!」

紀州犬「くぅぅぅーーーん!!!!」

TTT会メンバー達が現金の受け取りを拒んだため、
老婆は「それじゃあ!」と大量のお野菜・果物をメンバーに押し付けていった。

彼らはそれを困惑しながらも丁寧に受け取ると、手を振る老婆に黙礼しながら、排ガスと共に因縁の山を立ち去っていった。

一旦以上です。

多分今日はここまでかと思います。

続きを書き込みます。

アライさん「生きたいのだ」

大母アライさんは『マヌケ』の返事を聞き、一つ頷く。

大母アライさんの周りには、『敵』の敗走を確認した中姉アライさん、山姉アライさん、見張り子分アライさん達が寄って来る。


大母アライさんは顎をしゃくる。

それを合図に中姉アライさんは、大きな風呂敷を背中から降ろして解き始める。

一方、山姉アライさんは大母アライさんの下に近づいて、小声で話しかける。

山姉アライさん「…。大母さん。アライさんも叶うことならこいつを助けてやりたいのだ…」

そう言いながら、山姉アライさんは、撃たれたアライさんをチラリと見やる。

アライさん「うっ…あ…」

アライさんは、子分アライさんに介助されながら体を横たえている。

山姉アライさん「でも…。こいつは鉄砲で撃たれて…。きっと内蔵にも傷がついているのだ…。
弾は抜けたようなのだけれど。肝の辺りを。致命傷なのだ。だから…」


大母アライさんは山姉アライさんの訴えかけ、『介錯の助言』を敢えて無視し、撃たれたアライさんに近寄る。

大母アライさん「中姉アライさん。準備は!!??」

中姉アライさん「出来たのだ!!!」

山姉アライさん「(うん!??そう言えばあの風呂敷には何が入って…)」

山姉アライさんは広げられた風呂敷を見つめる。

風呂敷の中には、いくつかのサイズが異なる鋭利な刃物や針、縫い糸や針金、小ぶりな鋸やペンチ、拡張器、
ピンセット等と人間の分厚い書籍が入っていた。

山姉アライさん「(あれは―きっと村の引き上げの時に持ち出した『お宝』。

あの紙の束―本―はアライさんも戦果確認で前に見たのだ。

中は人間の解剖図やお腹や体の中身の写真や絵でいっぱいだったのだ。

大姉さんが『きっとこれは人間のお医者さんやその学生が読んで勉強するものなのだ』って言ってたのだ…)」

山姉アライさんがそんなことを考えている間にも事態は進んで行く。

中姉アライさんは、今から使う刃物をお酒―これも人間の所から手に入れた『お宝』―で清める。

大母アライさんは手で合図をし、子分アライさん4匹に、撃たれたアライさんの両手足を押さえさせる。
胴体の両脇にはもう一匹ずつ配置させる。

そして、撃たれたアライさんの口に布を加えさせ―

パァン!

思いっきりビンタをする!

アライさん「…」クワァッ!

大母アライさん「…」ギロリ!

撃たれたアライさんの眼を、大母アライさんは見据えると手短く伝える。

大母アライさん「お前は生きたいと言ったのだ!!!

じゃあ、眠ってはダメなのだ!

寝たら死ぬのだ!これから始めることはお前の気力の勝負なのだ!!!」

バサッ!

そう言うが早いか、大母アライさんは手拭いを撃たれたアライさんの両目にかけ、視界を塞ぐ。

大母アライさん「ゆっくり息を吸えるだけ吸うのだ!」

アライさん「う…う…」

スゥーーー!

大母アライさん「止めるのだ!痛いのだ!我慢するのだ!!!」

サクッ!スゥゥゥー!ギチギチギチ!

アライさん「????!!!!!」ジタバタバタ

グゥゥゥゥー!!!

撃たれたアライさんの両手足を押さえつける子分アライさんの手に力が入る!

大母アライさんはこれ以上の内臓の損壊に注意しながら、
中姉アライさんが開く人体解剖図のページを横目に、アライさんの負傷箇所付近15㎝程度を切開する。

鋭利なメスのようなナイフで!

大母アライさんが、切開が終わった瞬間に目配せすると、両脇のアライさんが切り開いた腹の皮・肉を持ち上げ固定する。

アライさん「う…う…う…う…」ボロボロボロボロ

撃たれたアライさんは余りの痛みと苦しさに涙を流す。

パァン!

それを大母さんがまた、思いっきりビンタをする!

大母アライさん「シッカリするのだ!!!これからが本番なのだ!

お前達!こいつの両手を中に…!傷ついた肝に当てるのだ!!!」

アライさん「!!!!!!」

撃たれたアライさんの反応に構わず、
両手を固定していた子分アライさん二匹はアライさんの手を開かれた腹腔内に押し込む。

アライさん「…」ボロボロボロボロ

パァン!

大母アライさん「コスコスするのだ!!!

自分の手で直接、臓器を!!!

お前の手じゃなきゃダメなのだ!指先をピクピクさせるだけでも!!!」

大母アライさんは両脇のアライさんにも告げる。

大母アライさん「この『マヌケ』のコスコスを手伝うのだ!!!

手を前後に揺らしてやって少しでも!!!

時間との勝負なのだ!こいつの臓器の出血が止まるのが先か!死ぬのが先か!!!」

大母アライさんがこの一見『人間の手術のおままごと』のような処置を思いついたのはある素朴な発想からだ。

当時、まだ『廃屋アライさん』だった頃、大母アライさんは、アライさんなりに思索を重ねていた。

廃屋アライさん「(アライさんは生命力が強いけもの。

自己回復スキルが有り、コスコスすることで傷を治したり、
はがれた爪や抜けた歯だって、元の骨さえあれば生やすことが出来るのだ)」

しかし―

廃屋アライさん「(その割には人間に銃殺されるアライさんが多いのだ…。
アライさんのお母さんのように―。

コスコスすればもっと助かりそうなものなのに…)」

廃屋アライさん「(理由の一つ目は分かるのだ。

『スキル』と人間が呼ぶ―まあ、けものとしての貫目というか経験値―やそいつの血筋・能力・生命力。

何より、生きたいと言う意思。やっぱりそれが大きいはずなのだ…)」

もう一つは―

そんなことを考えているうちに何時しか冬も迫り、大母アライさん自身も人里までゴミ漁りに下ることがあった。

―うん?窓の向こうの人間が騒がしいのだ…―

廃墟アライさん「!!!」ビクッ!

『箱の中の人間の絵』「それでいくら出せるんだ」

『箱の中の人間の絵』「僕たちのお母さんの形見。家にはこれしかないんだ…。だけど、必ず大きく成って…」

『箱の中の人間の絵』「ちぇんちぇい!!!お願い!!!」

『箱の中の人間の絵』「患者は死なない!!!なぜなら…、私が助けるからだ!!!」

『箱の中の人間の絵』「オペ開始!」


人間が夢中になっている箱の中の劇―要は医療アニメ―を見て、大母アライさんの疑問の答えが見つかる。

廃屋アライさん「(そうか!その手が有ったのだ!)」ポン

廃屋アライさん「(臓器や頭の中をやられたら、皮の上からコスコスしても遅いのだ…。

コスコスの効果が皮や肉の下の一番危ない傷口に沁みわたる前にアライさんの命が尽きてしまう。

だから、鉄砲で臓器をやられたら、『直接臓器をコスコスすれば』いいのだ)」

廃屋アライさん「(アライさんはフレンズ。しかも、自己回復能力持ち。

だから、細菌やうぃるす(?)、寄生虫とかに強いと人間が話しているところを聞いたことが有るのだ。

だから、しゅじゅつ(?)に付き物の感染症やふくまくえん(?)とかを心配する必要は余りない!

兎も角、その場を乗り切れれば体が勝手に直してくれるのだ!

臓器の捻転も、もしやってしまったとしても、生き残ってお腹をコスコスし続ければ治るのだ!)」

廃屋アライさん「だから、問題は気力と体力、スキルのつり合いなのだ。

あと…、最悪、一匹でも、やるしかないけど、本当は何匹かでやった方が良いのだ…。

群れないアライさんには無理な話だけど…。

交尾してチビが出来て、その一匹が深手を負ったら、他のチビとアライさんでやるとかなら、有りなのか?)」

パァン!

大母アライさん「もう、ちょっとで肝の傷がふさがるのだ!気合を入れるのだ!!!」

アライさん「う…う…う…」ボロボロボロボロ

ズル!コスリ!ズル!コスリ!

大母アライさん「この大マヌケめ!!!

人間にぬけぬけと掴まって、『家族』の庭先を騒がし、アライさんの手を煩わして!!!

これで死んだら大損なのだ!死ぬまでこき使ってやるから、気合を入れ直すのだ!!!」

大母アライさんはその場の子分アライさんを一瞥する。

大母アライさん「お前達も何をやっているのだ!!!

ボッサッと立って居るくらいなら、こいつに声を掛けて励ますのだ!!!」

大母アライさんの声にその場の子分アライさん達が呼応する。

子分アライさん1「撃たれたアライさん!頑張るのだ!」

子分アライさん2「せっかく、大母さん自ら助けて頂けたのだ。これで死ぬ奴はガイジなのだ!!」

子分アライさん3「大母さん自ら『子分になれ』なんて言ってもらえて羨ましいのだ!

アライさんなんて、ケモ耳ネックレスした姉アライさんに『はいはい』言うだけで、『儀式』までそのままだったのだ!!!」


子分アライさん4「お前は大母さんから直接、恩寵を頂いたのだ!ふいにするのはガイジなのだ!!!」

大母アライさんは子分アライさん達の声を聞き流しながら、肝の様子を目視し、
必死にコスリ続けたアライさんの手を一旦止める。

アライさん「う…う…?」

そろそろ良いだろう―

大母アライさんの合図と共に胴体に突っ込んでいた手を両脇の子分アライさんが体外に引っ張り出す。

アライさん「!!!」

ズルッ!

チクチクチクチク!

そして、人間の手術などと比べれば遥かに簡易、粗雑ではあるものの、
それなりに丁寧に切開した腹の皮を縫い合わせていく。

スッ

縫い合わせた胴体の上にアライさんの両手を置く。

大母アライさん「コスコスするのだ!!!」

コスリ…コスリ…コスリ…コスリ…

パァン!

大母アライさん「気合を入れるのだ!痛いのは生きている証拠なのだ!

今から背中の処置をするのだ!

お前が自分で背中の開口部も擦らないといけないのだ!」

アライさん「う…う…」

ジロリ

大母アライさん「出来るのだ?!」

アライさん「…」コクリ

大母アライさんの合図と共に子分アライさんは慎重に撃たれたアライさんをひっくり返す。

子分アライさん達「わっせ!わっせ!」

アライさん「う…う…う…う…」ボロボロボロボロ

子分アライさん達「「「わっせ!わっせ!」」」

『手術』が終わった後、撃たれたアライさんは担架に乗せられ蛇張村の本拠地近くまで移動していく。

担架隊の指揮は山姉アライさんが取っている。

大母アライさんは経過を見ながら、ゆっくり隣を歩き、
中姉アライさんは器具を洗った後、残りのアライさんを率いて殿をしている。

山姉アライさん「(もっと、ゆっくりさせてやりたいところなのだけど、人間の再来襲の恐れが有るのだ…。

アライさんが、アライさんのお母さんのお母さんが自衛隊員の見様見真似で覚えたと言う簡易担架術を憶えていて良かったのだ。

『家族』で共有するのだ…)」

山姉アライさんは真っ青な顔をした、担架の上のアライさんの顔を見つめる。

目は比較的しゃっきりしている。

虚ろになるたびに大母さんがビンタするのだから当然だ。

コスリ…コスリ…コスリ…

傷口をゆっくりではあるが擦り続けている。

山姉アライさん「(きっと、今夜が山なのだ…)」

蛇張村の村境手前。

かなり、けものみちも険しくなったところに、出迎えの人影ならぬ『アライ影』が見える。

山姉アライさん「大姉さん!洞姉アライさんも!」

大姉アライさん・洞姉アライさん「大母さん!ご戦勝おめでとうござい…」

ギロリ!!!

大母アライさんは祝意を表する子分アライさんを一睨みで黙らせると、宣言する。

大母アライさん「今日はここで夜を明かすのだ。

見張りと備えを間断なく!

中姉アライさんが鳴子は張り直したうえで後から引き上げてくるのだ。

他の『家族』アライさんも出来るだけこの宿営地に寄せて、連絡の途切れないようにするのだ」

大姉アライさん・山姉アライさん・洞姉アライさん「「「大吉なのだ!!!」」」

降ろされた担架の上から、アライさんはそばに寄ってきた大母アライさんに声を掛ける。

アライさん「今日は…、ここに泊まるのだ?」

大母アライさんは頷く。

アライさん「『マヌケ』なアライさんのために…?」ボロボロボロ

大母アライさん「フン!前から『手術』を試してみたいと思っていたのだ!

良い実験材料が手に入って幸運だったのだ!!!」

大母アライさんの言葉に嘘はない。

まさか自分で実験するわけにもいかないし、
こんな手間をかけてまで『他のアライさん』を助ける必要性など今まではなかった。

その点、こいつは丁度良かった。

死んでもともと。助かれば儲けもの。子分アライさんの手前もある。

―まあ、人間に一泡吹かせてやりたいという思いや、出来れば『同族』を助けたいと言う気持ちも、
脳内を本当に少しだけ掠めたことは事実ではあるが―

そのわずかな『情け』を、撃たれたアライさんは殊更に大事に感じているようだ。

アライさん「ありがとうなのだ…。ありがとうなのだ…」

大母アライさんは興味なさそうに頷くと、目をじっと覗き込みながら告げる。

大母アライさん「今夜がお前の峠なのだ。

寝たら死ぬのだ。

傷口を擦り続けるのだ…。

アライさんも手を支えて手伝ってやるのだ。

朝日が上がり、お前が大きく息を吸うまでは、張り倒してでも起こし続けるのだ」

アライさんの醜く吊り上がった目から一筋涙が零れ落ちる。

アライさん「ありがとうなのだ…」

パアン!

コスリ…コスリ…コスリ


パアン!

コスリ…コスリ…コスリ

月明かりの下、何か下膨れたものが張られる音と、気持ち悪いハエガイジムーブの音が断続的に響く。

子分アライさん達「…」

山姉アライさん「…」

中姉アライさん「…」

この場のアライさんはその音をじっと聞く。

パアン!

コスリ…コスリ…


アライさん「大母さん…」

大母アライさん「何なのだ?」

アライさん「大母さんには…、姉妹はいるのだ?」

フン!

大母アライさんは鼻を不遜に鳴らす。

大母アライさん「いたけど、ゴミクズと『大マヌケ』以外皆死んだのだ!」

アライさん「ゴミクズ…?『大マヌケ』…?」

アライさんの問いに吐き捨てるように大母アライさんは答える。

大母アライさん「ゴミクズは人間に降伏して、奴隷に成り下がったのだ!

今は生きているやら、死んでいるやら!

フン!

どうせ奴隷になったのなら、這いつくばってでも命を繋いで居ればいいのだ!一族の面汚しの出来損ないめ!!!」

アライさん「(それは生きていて欲しい…と言うことなのだ。侮辱し、嫌い、憎悪しながらも…)」

大母アライさん「もう一匹の『大マヌケ』はアライさんのまんまるを盗み食いしておいて、

抜け抜け勝手に妹分を名乗り始めたのだ。

捨て置いたら、やれ、『群れ』だの『王様』だの…。今は、『娘分』なのだ…」

ふぅ…。

大母アライさん「アライさんは、妹だの『子分』だのに引っ張り回され通しなのだ」

アライさん「従姉妹アライさんや又従姉妹アライさんは?」

大母アライさん「アライさんはこの付近の産なのだ。

『家族』アライさんの中にはそう言う血筋の奴も結構いるのだ。アライさんは子沢山なのだから…」

アライさん「羨ましいのだ…。『家族』がいっぱい。

アライさん本来の性質ではないかも知れないのだけれど。アライさんの姉妹は皆人間に…」

大母アライさんは、煌々と輝く星空を振り仰ぐ。

そして、じっと、死にぞこないのアライさんを睨みつける。

大母アライさん「けものは胎から生まれれば土に還る定め。

その死に順番は有っても尊卑優劣はなく、原因は有っても理由などないのだ」

ギロリ!

じっっ

視線が交わる―

大母アライさん「お前の『その時』は今日ではなかったのだ!

どうせ死に損なったなら、姉妹の分も繁殖すればいいのだ!!」

大母アライさんなりに『慰めている』らしい。

この傲岸不遜を絵に描いたようなけものが珍しいこともある。

アライさん「…」コクリ

ツー―

また一滴、雫が垂れる。

これが、汚らしい害獣ではなく、美少女同士のやり取りなら、さぞ絵になった事だろう―

パアン!

パアン!パアン!


大姉アライさん「(おね…、大母さん…)」
別の場所の子分アライさん達「…」

アライさんは耳が良い。こと野生のけものなら―


パアン!

パアン!パアン!


小姉アライさん「(生きるのだ…)」
保母アライさん達「…」


伝令からも事情を聴いているし、それ以上に『これ』が何を意味するのか、肌で知っている―

ちゅん!ちゅん!ちゅん!


アライさん「ま…、眩しいのだ…」

フン!

大母アライさん「それはそれは…。

あれほど張っ倒したのに最後にはぐーぐら寝ていたのだから、さぞ、眩しいのだ?」

ギロリ!

大母アライさんが一睨みして、周りを睥睨すると、
周囲の姉アライさん、子分アライさん達が急いで隊伍を整え始める。

大母アライさん「それで?気分はどうなのだ?」

ズリズリシッポフリフリ!

ズリズリズリズリシッポフリフリフリ!

大母アライさんが下品なガニ股で『凱旋』すると、子分アライさん達がその左右に分かれ、
両手を地に付け、大地に頭を擦り付け、尻尾を振りながら出迎える。

のっし!のっし!のっし!

大母アライさん「(その『土下座ポーズ』は好きではないと何度言えば理解するのだ…)」

担架隊や殿のアライさん達も次々と跪いていく。

中姉アライさん「大母さん。ご戦勝改めておめでとうございますなのだ!」ズリズリシッポフリフリ

中姉アライさんが口火を切ると、それに山姉アライさん、洞アライさんも続く。

山姉アライさん「あ…、アライさんは…。正直、大母さんを誤解していたのだ…。

ごめんなさいなのだぁ!心底より、常しえに忠誠をお誓い申し上げますのだ!!!」ズリズリシッポフリフリ

洞姉アライさん「右に同じくなのだ!心底より、常しえに忠誠をお誓い申し上げますのだ!!!」ズリズリシッポフリフリ

一同子分アライさん達「「「「「心底より、常しえに忠誠をお誓い申し上げますのだ!!!」」」」」ズリズリズリズリシッポフリフリフリ


はあぁ~

大母アライさんは特大のため息をつく。

大母アライさん「お前たち勘弁なのだ…。もう昨日から、ビンタし過ぎてパン!パン!出来ないのだ。
一旦、顔を上げるのだ」

皆が、なかなか顔を上げないのを見ると、やや声を激してもう一度告げる。

大母アライさん「話しずらいのだ!顔を上げよ!!!!」

サァァァー

その場のアライさん達が波が広がるように顔を上げていく。

その波が落ち着くのを待ち、大母アライさんは語りかける。

大母アライさん「一度しか言わないのだ…。けものに永遠も常しえも存在しないのだ!
日月山河すら形を変え行くものなのだ!!!」

ザワザワ

ザワザワザワ

子分アライさん達は動揺する。
自分達の気持ちを信じてもらえないのか―

大母アライさん「けものにはただ、『今が在る』のみ。
今の、今日のお前たちの気持ちを確かに受け取っておくのだ!さあ!これでいいのだ?」

はぁ~
良かったのだ…。
安堵の空気がその場を支配する。

大母アライさん「良し!じゃあ、大母さんはもう寝るのだ。

流石に昨日から疲れたのだ…。

お前達は交代で餌探しや罠や鳴子の設置、見張りその他をしているのだ…」

ハァァ~

大あくびを始める大母アライさんに待ったをかけるアライさんが居る!

大姉アライさん「大母さん!!!その前に一言、お願いしますなのだ!!!」

大母アライさん「なんなのだ~」

大姉アライさんは息を一度、吸い込むと口を開く。

大姉アライさん「今回の『旧道上の戦い』危ない橋だったのだ!」

シーーン

場が凍り付く。

ジロリ

大母アライさんは黙って、大姉アライさんを睨む。
なんか文句があるなら、ササッと言うのだ!眠いのだ!

大姉アライさん「『玉』は討たれてはいけないのだ…。昨日までは兎も角、今日からは…」

じっっ!

両手を地に付けたまま真剣なまなざしで、子分アライさん達は自分達の『共通の母』を見上げる。

大姉アライさん「アライさん達子分がその任を負うのだ!火も水も鉄砲も恐れないのだ!!!」

一同アライさん「「「「おそれないのだぁぁぁぁぁ~~~~~!!!!!!」」」」」

大母アライさん「やかましいのだ!!!!!」

子分アライさん達の宣言を一括して黙らせる。

大声を出すなと何回言わせるのだ。

これだから人間に頭アライさんと言われるのだ…。

大母アライさん「火も水も鉄砲も恐れないけものに価値などないのだ!!!恐れ、かつ立ち向かうのだ!」

コクリ

コクリ!コクリ!コクリ!

コクリ!コクリ!コクリ!コクリ!コクリ!コクリ!

頷きが静かに広がっていく―

大母アライさん「もういいのだ?じゃあ今度こそ寝るのだ…。

ああ、それとそこの『死に損ないのマヌケ』。せいぜい介抱してやるのだ…」

そう言い置くと今度こそ、大母アライさんはゴロゴロ寝始める。

お供のアライさんはそっとそばに控える。

うん?

ヨジヨジヨジ

何かを感じた大姉アライさんは近くの木に登って周りを見張る。

大姉アライさん「(山の空気が変わっているのだ…。

『誰が』と聞かれても困るのだけど、アライさん達の勝利を『皆』が知っている…。

あの用心深い大母さんのごろ寝は控えめな今回の戦いの勝利宣言だったのか…)」

そして、大姉アライさんは足元の子分アライさん達が、
大母アライさんが瞼を閉じた後も整然と姉アライさん達の指示の下、駆け足で各仕事に取り組み始める様子を見下ろす。


大姉アライさん「(アライさんは…。アライグマのフレンズは、もともと『群れるけもの』ではないのだ。

言わばこの『家族』は後天的な環境への『適応』。

人間の根滅圧力によって、輪郭線が形作られ、大母アライさんの個人的力量と恐怖政治で纏められたもの…。

だけれども…)」

大姉アライさん「(未だに大母アライさんのカリスマ頼りではあるものの、

『家族』に対して、恐怖以外の感情が―それが『忠誠心』なのか、『親愛の情』なのか、『同志意識』なのか、

あるいは人間で言うところの『民族意識』に近いものなのか―何かそう言う『絆』が芽生え始めているようなのだ…。


大母さんへの畏敬の念を支柱に。

今回の戦いは人間側の意味不明な行動による行き当たりばったりなもの。

大母さんは最後まで人間の報復を恐れて、攻撃命令は出さなかったのだ。

そして、最後までアライさん以外の仕業に見せかけ続けた…)

大姉アライさん「(でも、その成果はとても大きいのだ!

『人間に勝った』と言う自信・誇り。
『家族』内の大母さんの権威(権力ではなく)の確立。
鉄砲を持った相手への貴重な実戦経験値の獲得。
この戦いを影で見聞きしていただろう『森のけもの』への宣伝効果、等々。

『手術』の効果が分かったのはおまけのような物なのだ)」

スルスルスルスル

木から下りながら大姉アライさんはニヤニヤ、ムカつく笑顔を浮かべる。

大姉アライさん「300点満点なのだ」

今日の書き込みはここまでです。

大姉アライさんが『王』ではなく『玉』と言っているのは、大母アライさん自身が一度『王』を拒否していること、
このアライさん『家族』にとって大母アライさんが単なる権力機構の『王』以上に貴重なお宝(玉)であることを暗示したものです。

分かりにくくて、申し訳ありません。

続きを書き込みます。

212さんのご指摘はごもっともで、実際、現在の大母アライさんの『プロト大母アライさん』は、数十年生きた歴戦アライさんにする予定がありました。

そして、『群れ・家族』はそのアライさんの直系子孫のみで構成されているというもの―

ただ、その線で物語を構想した際に、ある『文明の発展論上』不都合が生じることに気が付き、

また、『アライちゃん・アライしゃんの段階で、アライさんSSのアライさんは同年齢の人間比では極めて、学習能力が高く、精神成長が早い。
その線で考えると、こいつらはひょっとして幼年期から若年期にかけ、相当濃度が高い人生(?)を送り、実は凄い可能性を秘めているのでは?』

とも思い今の感じになりました。

大母アライさんの年齢設定は、ガッチリ固めては有りませんが、214さんのおっしゃるように、だいたい3~5歳をイメージしています。
今の『血縁上のチビ』が初産で、このアライさんが相当用心深い、ということを考慮してもまあ、このぐらいのラインです。

カチャ!

アパートの一室でテレビの中継映像を見入る男が一人。

NHK地方局アナウンサー「県兵の蛇張村安全エリア確保作戦が本日、未明から開始されました。
中継が繋がっています。現地リポーターさん!」

NHK現地リポーター「はい。私は、今、蛇張村と隣町の境界付近にいます。
現在、こちらには県兵の装甲車が5台留まっていますが、村落内には10台ほどが乗り入れ、
アライさん及び鳥害獣の追い出し作戦に従事しています。

ご覧ください!

この装甲車の車体上部には大型拡声器が備え付けられています」

NHK地方局アナウンサー「その大型拡声器から流す音声で野生動物を追い出すわけですね!」

NHK現地リポーター「はい。

すでに作戦は開始されており、3日後の午前5時まで間断なく、

大音量の肉食獣、機会音声、人間の話し声、金属音等を流し続けるとのことです。

すでに先遣派遣隊の調査は実施され、
その結果『想定よりはアライさんを始めとした野生動物の生息数は多くない可能性が高い』という報告は有るものの、

安全柵―所謂、電気柵―の工事終了までは現地の県兵の隊員の皆さん、そして地域住民の方々にとって気が抜けない日々が続きそうです」


NHK地方局アナウンサー「ありがとうございます。ここからはフレンズ生態学ご専門の東京大学…」

ブチッ!

アパート男「ふう…。やっと作戦が始まったか…」

自宅の一室で報道を確認した後、この前出席したシンポジウムのことをぼんやり思い出す。

そう言えば、あの時あったボランティアの先輩お二人、大学生と名乗っておられたが―

アパート男「『内定』って言う言葉と今の季節を考えると、正確には元大学生っていう意味だろうな…。
今頃、名実ともに働き始めていらっしゃるんだろうな…」

それに引き換え、自分はどうだろう…。

鬱々と勉強と読者に励む日々。

それが悪いとは思わないが…。

蛇張村復興の記録を付けたり、経過観察・研究も進めてはいるのだが、やっぱり軍隊の作戦と言うのは敷居が高い。
素人の自分には何が何やら…。

青年団の方たちとも定期的に情報交換をしているが、作戦が終わらないことには動きにくそうになされている。

県兵・自衛隊には、聞き取り調査を試みて、変な活動家と勘違いされてつまみ出されてしまったし…。

アパート男「うーん。困った。ちっとも社会貢献してない気がする。

せっかく、アライさん問題に興味を持ったのだから、フレンズやアライさんの生態についても調べたいけど、
俺は理系じゃないから生物学が分からん。

社会問題的なアプローチで行こうとするなら、『フレンズ差別問題』とかがお手頃なのか…」


公益社団法人『日本フレンズ協会』にアンケートなりインタビューを図るか…。
そう言えば以前、『アライさん保護隊』のフェネックさんとも連絡先を交換したんだから、そっちの方面もありか?


アパート男「あ~!そう言う真面目なのも良いけど!!!良いんだけど…。アラ虐して~!!!」

そう言いながら、アパート男はニ●ニコ静画やpi●ivで、アライさんの画像を漁る。

と言うかそんなに嫌いなのに見てどうする?

アパート男「あ~、怖気がする…。鳥肌が立つ…。イライラが募るーーー!!!

『美化ガイジ』を見るたびに!!!

目つきや顔の輪郭の嫌らしさ、手足、身体つきの気持ち悪さをふんわりオブラートに包んで上手く糊塗している!!!


何よりあの極悪な言動を悉くハエガイジにとって優しく解釈してやる動機は何なんだ…。

アライさんが親族姉妹でもない限り理解不能だ…」

アパート男「あと、一緒に描かれることが多いフェネックが、
何故か『頭の中アライさんしかない』アホの子にされたり、同性愛設定になっているのも変な感じだ…。

フェネックの中にもアライさんが嫌いな獣はいるだろうし、仮に友達でもそれぞれの社会生活があるはず。

それにフェネックのオスと交尾しないと子供が作れないだろうに…。何か見ていて彼女達が気の毒になって来る…」

それもこれも諸悪の根源はアライさんの存在。

自分は子供の時に『ジャパかリパーク冒険記』をアニメで見たときからあのガイジが嫌いだった。

おっと…、これは私憤か…。

少なくとも公憤とが言い難いな。

アラート男はカチカチ、ネットサーフィンを続ける。

アパート男「アライさんの気持ち悪い尻尾。雑巾絞りしてみたい。

『あ…、アライさんの自慢の尻尾が…。尻尾がぁぁぁぁぁ!!!動かないのだぁぁぁ!!!』

いや、ダメか…。あいつら回復スキルあるし」

うん?

『TTT会の生ぬるさを凶弾する義人サイト』

何だこれ。

カチ!

サイトを開くと日記記事がいくつも上がっている。

動画が埋め込まれたやつも結構あるようだ。

カチ!

動画が流れ出す。

動画『え~と。常連の皆さまはこんにちは。お初にご覧になる方は初めまして。
私は当サイトの管理者であり、動画投稿者、殺アライPです』

アパート男「『殺アライP』。そのまんまなネーミングだな。もうひとひねり欲しい」

変な評論を始めるアパート男。

動画『ここをご覧になる皆さまはTTT会をご存知のことと思います。
そう、トラブルを生む、トラッシュパンダを、とっちめる会。私はその元会員です』

ふむふむ。

アパート男もTTT会のことは知っている。

所謂、アラ虐サークルの最大手で前に勧誘を受けたことがある。

一応、彼ら自身は政治結社を名乗り、アライさん害の廃絶と在来生物の保護、
農家・地方居住者(特に限界集落居住者)の生活再建の応援、里山の手入れ活動の推進等を訴えている。

アパート男「それと、フレンズ・人間の調和と分別のとれた日本社会の発展。
『麗しい国 碧き神聖な山河』を取り戻すことが最終目標だとか…。

ちょっと、アレな宗教臭い所が気になって自分は勧誘を断ったけど」

また、『フレンズ排斥派、人間・フレンズ分離主義』を掲げる諸勢力、
所謂『アニマルヘイト団体』とも関係が近いと噂される。

そう言う支持者を基盤に持つ政治家やフレンズの力を人間の都合が良い『戦力』としてのみ利用したい軍部がバックにいるとも聞く。

アパート男「(この人はそこを批判したいのかな?)」

しかし、殺アライPの批判はアパート男の予想の斜め上を行く!

殺アライP『TTT会は自分達の本分を忘れ、やれ逮捕が恐いだ、世間のご迷惑だ、自分達は政治結社だ、
そんなことばっかり言って!!!アラ虐を言うほど熱心にやっていないのです!!!』

アパート男「(え…。そこなの…)」

殺アライP『自分はもっと純粋にアラ虐を楽しみたい!

TTT会に参加した時はそう思って楽しみにしていたのに…。

彼らときたら、自分達を政党サポーターかNPO団体とでも思っているようなのです!!!』

アパート男「(まあ、政治結社ってそう言うもんだし…)」

殺アライP『画面の向こうのあなた!

まあ、政治結社ってそう言うもんだし。そう思ったでしょう!

私は!そう言うノリにはうんざりなんです!だから、TTT会も抜けました。今はソロでアラ虐やってます』

恐れ知らずな。

消されるぞ…。

殺アライP『では、前置きはこのくらいにして、今日も新鮮なアラ虐動画をお送りいたします』

カメラはそこで向きを変え、いかにもな打ちっぱなしのコンクリートの部屋を映す。

アパート男「(拷問部屋と言う概念をそのまま具現化したかのようだ!)」


アライちゃん「にんげんしゃん!おねがいなのりゃ…。もう、おうちにかえしてほしいのりゃ…」

部屋の中央のベッド、というかまな板の上に丸々としたアライちゃんが辛そうな顔で乗せられている。

うつ伏せでベルトで固定され、口元は唾液と吐瀉物で汚らしく汚れている。

殺アライP「アライちゃん。ダメじゃないか。せっかくのご飯を戻したりしたら…。
ちゃんと食べないと大きく成れないよ!」

アライちゃん「う…。だって!だってぇ…」

カメラはまな板ベットの前方、先程視界に入らなかった部屋の先を映す。


アパート男「(げぇ…。ちょっとこれは日本人的に受け付けない…)」


アライちゃん「おねーしゃんたちをたべることなんて…。できないのりゃ!!!」

アライちゃんの視界の前方にはアジの開きのようになり、所々バラバラになったアライちゃん
―恐らく今、うつ伏せで固定されているアライちゃんの姉2~3匹の屍が天井から吊るされていた。


アパート男「(血の臭いが漂ってくるようだ…。

海外のグロ動画で鍛えられた俺でもこれはキツい。

害獣駆除を世間に呼び掛けるなら、かえって逆効果じゃないか…)」

殺アライP「フンッッッ!!!!」

アライちゃん「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!あらいしゃんのしっぽォォォォォ!!!!」

ギュゥゥゥゥゥ!!!!

殺アライPは、まな板の足元に行くとアライちゃんのフサフサ―実はゴワゴワした手触りらしい―尻尾を両手で絞り上げて、雑巾のように捻じり上げる。


アライちゃん「ううううぁぁあっぁぁぁっぁああああああああああ!!!!!」

ギュゥゥゥゥゥ!!!ブチッン!

やがて、何か致命的な物が捻じ切れる音が聞こえ、殺アライPは尻尾から手を放す。

アライちゃん「あ…あ…。しっぽ。あらいしゃんのじまんの…」

殺アライP「フン!」

ボコォ!!!

アライちゃん「ゴェェ!!!」

ビチャビチャ!

殺アライPはアライちゃんの背中に渾身の拳をぶち込む!

その衝撃でアライちゃんは腹の中の物を胃液ごと吹き出す。

ビチャビチャビチャ!

殺アライP「偽善言ってんじゃねえ!!!」

ボコォ!!!

アライちゃん「グフゥ!!!」

ビチャビチャビチャビチャ!!


殺アライP「てめーら姉妹。たった5日絶食させたら自分の母アライさんでさえ食ったじゃないか!!!」

ボコォ!!!

アライちゃん「…」ピクピク

ビチャビチャビチャ!


殺アライP「親が食えて姉妹が食えねえ道理があるか!!!

てめーらどうせ、いざとなったら共喰い上等の癖に!!!

そうやっていかにも辛そうな顔すりゃ助けてもらえる…」

ボコォ!!!

アライちゃん「…」ピクピクピク

ビチャビチャ!

だんだんアライちゃんは吐く物がなくなってきたようだ。


殺アライP「そう教わったから悲しいフリしているだけだろう?

アライさんは感情がないバケモノ!

もう俺達はみんな知ってるんだぜ。無駄だ」

グイ!

ゲテモノ臭い変色っぷりで有名なアライちゃんの髪を掴み、顔を引き上げ、その視線をカメラに向ける。

苦痛と絶望に歪み、紫色に変色しつつある顔。

虚ろで充血し、見開かれた瞳…。


アパート男「(こいつ!まさか、隠れアラ信じゃないだろうな…。

逆効果だろう!

これを見たら、実際に被害にあった人でさえ、アライさんを庇いだすぞ!!!)」


殺アライP「あ…。いかん!今から、体中に釘を打ち込む予定だったのに。こいつ死にそうだ…。仕方ない!!!」

アパート男「(一旦、休ませるのか?)」

バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

殺アライPは、足元に寝かせてあったハンマーでアライちゃんの頭を叩き潰す。

カメラの画面まで血や炸裂した脳漿が吹きかかる。

アライちゃん「…」ビクビクビッタンビッタンビクビクビッタン!!!

殺アライP「いや~。アラ虐のシメはやっぱり特大のゴキガイジムーブですよね!
何か楽に逝かせたようで腹立ちますけど。

加減間違えたな…。

あーー!

腹立つな!アライさんは!!!」


バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

殺アライPは既に致命傷を与え、ゴキガイジムーブをしているアライちゃんの背中・手足・尻尾。
見境なく何度もハンマーを振り下ろす。

アパート男「…」

アパート男、これにはドン引きである。

こいつはマジもんにやばい。

何というか最低である。死んでほしい、そう思うほどの嫌悪感が喉元までせりあがってくるのを感じる。

所謂、強者が弱者を一方的にいたぶる様を目にした時、『正常な一般人』が感じる強い感情
―同情心や『義憤の念』。

損得でも正否でもない!

社会全体とか歴史的な背景とか関係なしに少なくとも!
画面の向こうの『この場』で誰が悪者なのかは、はっきりしている!!!

アパート男「(こいつはクズだ!アライさんと『比べて』ではなく、『絶対的』に。
少なくともこの日本や近現代の人類文明の方向性に照らし、こいつは『悪』。

牢屋にぶち込まなきゃ、いけないゴミだ!)」

バァァァン!!!!

グチャァッ!ビチャッ!

殺アライP「今日は正直しくじりました。今度はもっとスマートなのをお届けしますよ!」

そう画面の向こう側の男は微笑む―

今日の書き込みはここまでです。

遅くなりました。続きを書き込みます。

243さん。ご指摘ありがとうございます。日本語は難しいですね。生まれたときから聞いているはずなのに。

チュパチュパ

チュパチュパ

ウジャウジャヨチヨチヨチ

ウジャウジャヨジヨジ

チュパチュパ!チュパチュパ!

大母アライさん「チビ達は本当にかわいーのだぁ」ウットリ

大母アライちゃん2「…」チュパチュパ!

大母アライちゃん3「…」チュパチュパ!

久しぶりにお届けする最高にキモイシーンである。

大母アライさんは、あの『旧道上の戦い』の後、ひと眠りして、
大姉アライさん、洞姉アライさん、『死に損ないのマヌケ』アライさんと共に、小姉アライさんと『家族』アライちゃん達の下に合流している。


本隊の指揮は中姉アライさんが取っている。

大姉アライさん「本当にチビはアイドルみたいなのだぁ」ウットリ

大姉アライちゃん1「…」チュパチュパ!

大姉アライちゃん2「…」チュパチュパ!

洞姉アライさん「こんな可愛いチビを持てて、アライさんは三国一の果報者なのだぁ」ウットリ

洞姉子アライグマ♂1「…」チュパチュパ!

洞姉子アライグマ♂2「…」チュパチュパ!


小姉アライさんは、普段、『家族』の運営に忙しい、大母・姉アライさん達の貴重な家族タイムが一段落するのを辛抱強く待つ。

『家族』アライちゃん・子アライグマ♂は、基本、小姉アライさん率いる保母アライさん達が面倒を看ている。

小姉アライさんは、言わば『家族』の『代母』。

小姉アライさんは、チビを預かり、養育・教導し、人質として見張り、
―戦時には保母アライさん達と共に隠れ守り、いざという時には、生き残りと共に落ち延びるのが務め。

ただ、『代母』は『実母』あってのもの。
幹部のアライさんに限らず、一般子分アライさん達も交代で、自分達の実の子の下に授乳を始めとした『家族の時間』を取りに来ている。


大母アライさんは、猛々しい性格や振る舞いが、ともすれば目立つ。

しかし、この出来立てのアライさん『家族』が、『擬制的な母権・母系関係』を基に成り立っていることを良く弁えてもいる。


『母祖・姉・妹、そして子孫』、この絆を蔑ろしてしまうことは、家族の基を崩すことだと知っているのだ。

チュバ…チュパ…。

家族タイムが、少し落ち着いてきたようだ。

そろそろ、いいだろう…。

小姉アライさんは口を開く。

小姉アライさん「大母さん。改めて、ご戦勝おめでとうございますなのだ!
人間を見事蹴散らされたのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

保母アライさん達「「おめでとうございますなのだ!!!お見事なのだ!!!」」コスリコスリシッポフリフリ

『家族』アライちゃん達「「「おおかあしゃんはすっごーいのりゃ!!!てんかとれるのりゃー!!!」」」ヨチヨチヨチコスリコスリシッポフリフリ



大母アライさんは、手をフリフリ軽く振って、子分アライさん達の祝意に応えるが―

ジロリ!

その場の皆を睨みつけて、口を一旦閉ざさせ、静かに告げる。

大母アライさん「今回のことは、あくまで例外なのだ。

人間とアライさんの『闘い』は種族の生存をかけた鎬の削り合い。

『家族』が生き延びること、より強く・賢くなっていくことが肝要なのだ。

人間が大好きな『戦争』形式の戦いは本来、アライさんにとって下策なのだ」

シーン

大母アライさん「だが、いくつか戦果もあった。分かりやすいのがこの『死に損ない』アライさん!」


ザァッ!

皆の視線が『死に損ない』アライさんに集まる。

『死に損ない』アライさんは、ビクッと恐縮する。

小姉アライさん「このアライさんがその…」

大母アライさん「鉄砲で撃たれて生き残ったアライさんなのだ。

もうお前にも伝令が伝えているはずなのだが、『手術』は有効なのだ!

アライさん達は工夫次第で生存率を高めることが出来るのだ」


『家族』アライちゃん1「…。しゅごいのりゃ!」コスリコスリシッポフリフリ

『家族』アライちゃん2「かんどーなのりゃ!あらいしゃんはふじみなのりゃ!」コスリコスリシッポフリフリ

パン!

大母アライさんはアホなことをほざく、『家族』アライちゃんを張り倒す!

『家族』アライちゃん2「い…、いたいのりゃ~~!!!」ビェェェーン!ビェェェーン!


大母アライさん「ガイジなのか!不死身なわけがないのだ!

最初の一発が心臓だったら?脳幹を潰されたら?どうなるのだ!!!

『手術』が終わるまでにそいつの血や気力が尽きたら!!??」

ジロリ

大母アライさんは、張り倒した『家族』アライちゃん2を睨みつける。

大母アライさん「さあ、どうなるのだ?」

『家族』アライちゃん2「あ…、あらいしゃんはしんじゃうのりゃ…」ビクビク

大母アライさんはぐるっと周りの全子分アライさん達を見渡す。

大母アライさん「分かっているようで安心なのだ!

鉄砲で撃たれないようにするのが…、そもそも怪我をしないようにするのが一番大事。

けものなら当然のことなのだ。今回分かったことはその上でのこと。

ただ―」

『死に損ない』アライさんを見つめる。

視線が合うと、『死に損ない』は痛む体を必死に動かして会釈しようとする。

それを片手で制しながら、大母アライさんは言葉を続ける。

大母アライさん「それでも傷を負った時、本人の気力と『家族』の協力が有れば、
生き残り、戦線復帰可能な途があることが分かったのは大きいのだ。

それと、もう一つ、マヌケ!

お前が人間に捕まった時のことを手短にチビ達に言うのだ!」

突然話を振られて、『死に損ない』アライさんは驚くが、ややあって、自分に向けられる小さな視線に丁寧に向き合う。

『死に損ない』アライさん「アライさんは…。アライさんと姉妹アライさんは人間と犬に追い詰められたのだ。

犬を切り裂いて逃げる手段もあったのだけど…。

人間が『降伏したら、公平な裁判にかけてやる。罪を償ったら仲間にしてやる』そう言ったから…だから…」

う…う…う…

『死に損ない』アライさんはその時のことが余程悔やまれるのか泣き出してしまう。

ウルウルウル

『家族』アライちゃんももらい泣きを始める。

『共感性』に乏しいアライさんもその程度の機微は理解できるのか…。
あるいは短期間に凄まじい淘汰圧を乗り越え、『家族』としての適応を図るうちに、
アライさん達に変化が生じ始めているのか…。

まあ、どちらにしろ―

大母アライさん「けものが自分を憐れむな!!!!見苦しいのだ!!!」

下らない感傷を大母アライさんは打ち切らせる!

大母アライさん「今回のことで皆が弁えなければいけないことは―人間は、人間とその一味のフレンズ達は―、

平気で詐術を行うと言うことなのだ!

それも日常的な餌の取り合い時等の駆け引きではない!

いわば種族の『未来、生殺与奪の権』そのものである『降伏条件』を平然と!!!」

ジロリ!!!

子分アライさん達を厳しく見つめながら、『死に損ない』の目線を感じながら、大母アライさんは言葉を続ける。

大母アライさん「人間とその奴隷は、きっとお前達に様々なことを吹き込むのだ。

『戦いが終わったらノーサイド、仲良く友達になろう』

『このバスに乗って行けば、住民権・国民権が貰えるよ』

『今降伏すれば、離れ小島を大負けでプレゼントだ!そこで王国を建てなよ』」

ガッ!

子分アライさん達「…」ビクッ!!!

大母アライさんは足を大きく踏み鳴らす。

大母アライさん「基本、全部嘘か一時の気紛れなのだ!!!信じるに値しない戯言なのだ!!!

そして、そう言う『大罪』を―単なる闘争の結果としての殺しや縄張りの取り合いを遥かに超える『禁忌』を犯すものは―」


大母アライさん「厳罰なのだ!!!人間同士でもそうなのだ!

『普通の戦争による殺害・略奪』は許されても、『降伏条件の偽装とそれを信じて下った者への殺戮行為』は全く重みが違うのだ!!!


それが種族を跨げば猶更なのだ!!!」


ゴクリ!!!


子分アライさん達は息をのむ。

そんな中、大姉アライさんは躊躇いながらも問い返す。

大姉アライさん「でも…。『厳罰』といっても人間を殺すのは報復の大きさ上、つり合いが取れないのだ。

確かに、『降伏条件』等の約定違反・偽装は許されない、
それを見逃したらアライさん達は将来の休戦・停戦・捕虜の交換も全くできなくなるのだから、大母さんの言うことはもっともではあるのだけど…」


大母アライさん「だから、人間の一個下を狙うのだ!」

大姉アライさん「一個下?」コスリコスリシッポフリフリ

大母アライさん「例えば人間が使役している犬や軍馬。人間の家畜、奴隷に成り下がり片棒を担いでいるフレンズ。

そう言う『一個下』の存在を見せしめに、徹底的に八つ裂きにするのだ。

そして、死骸を投げ込む!奴らが約定破りをするたびに!」

大母アライさんはギラギラした目を皆に向ける。

その中で暗く燃える炎をゆっくり移していくように―

大母アライさん「『アライさーん。このバスに乗れば、人間さんとも他のフレンズとも仲好しだよー』とか宣うデカ耳狐とか、もし、いたら格好の標的なのだ。


首を胴体から引っこ抜き、手足体を奴が約定破りをして屠ったアライさんの数だけ切り刻み…。晒すのだ!!!」


洞姉アライさんがおずおずと問う。

洞姉アライさん「キツネはずる賢いけものなのだ?」

大母アライさんは答える。

大母アライさん「その代わり、アライさんは元種的にもキツネより力が強いのだ!

特にあのフェネックとか言う、勝手に人間が『アライさん係』と思い込んでいるキツネ…。
元の種は相当小さいらしいのだ。

不意打ちが得意らしいからそれだけは注意なのだ…。

振り向きざまに鼻先を狙ってパンチをすると以前、聞いたことがあるのだ…。

お得意の不意打ちパンチをした瞬間に腕を齧り取られたら、さぞかし面白い顔をするはずなのだ!!!」

クックック

大母アライさんが忍び笑いをすると、その笑いが周りに伝わっていく。

クックック

クックック!クックック!

クックック!クックック!クックック!

子分アライさん「(ああ!可笑しいのだ!奴らが約定破りをするごとに―)」

『死に損ない』アライさん「(『人間の走狗』。文字通りの猟犬・警察犬・軍用犬。
そして奴隷に成り下がった上、アライさんに牙をむくフレンズ―いや、アニマルガール―が八つ裂きに!)」

大姉アライさん「(勿論、あくまで『降伏条件の偽装』等の違反を抗議・警告するものだから、
それが理由で更なる事態の悪化にならないように、『手加減』をしなければいけないのだけれど…。

確かに愉快な話なのだ!)」

笑いの波が収まったところで、今度は小姉アライさんが質問する。

小姉アライさん「『約定の偽装』を許さない、と言うことは…。
逆に言うと『偽装されてない約定』は将来的に取り結ぶ気は有るのだ?」

シーン

そう言えばそう言う観点も大事だったのだ!

大母アライさんは皆をじっと見返すと口を開く。

大母アライさん「有るのだ。まあ、将来的に『公認され、公開され、公証された』約定ならば…。

つまり『人間側』にその気が有れば!

そう言う意味では、いずれかの段階でアライさんの『家族』を―指揮・命令系統が存在する集団があることを―
人間に示す必要が有るのだ。

まあ、これは後ろ倒しにできる限りはした方が良いし、逆にばれたら『計算通り』位のつもりでいるのだ…。

先のことは分からないのだけれど、大母さんは、遅くても3~5年以内にはバレると思っているのだ」

小姉アライさん「『公認され、公開され、公証された』とは何なのだ?」

大母アライさんは、『物知りな』大姉アライさんに視線を向ける。

大姉アライさん「そうなのだな…。

少なくとも、日本―この地の人間の群れにして統治機関―の国内法の制定・変更。
―法律ってわかるのだ?人間同士の『掟』のことなのだ。
もし、アライさんが『約定』を人間と交わしたら、アライさんもその『掟』に服することになるのだ―

あるいは憲法―この地で一番強い『掟』―の改正。

最高裁―さいばんする機関の一番偉い奴なのだ―の判断。

天皇の玉璽の押印・公証―『天皇』と言うのはこの地にずっと古くから続く最高位の権威なのだ―

及び、国内・国外への宣言。この辺りが『公認され、公開され、公証された』と言える基準なのだと思うのだ。

逆に、一役人・一軍人・一大臣の勝手な約束は、それが『わざとかどうか』はさて置き、信用ならないものなのだ」

アライちゃんからも声が上がる。

大母アライちゃん3だ。

大母アライちゃん3「やくじょうのじょうけんはかんがえてあるのりゃ?」

大母アライさんは皆に伝える。

大母アライさん「『約定の条件』はその時のアライさんと人間の間の総合的な力関係で変わり得るものなのだ。

もし、『もしこの場で大母アライさんがアライさんと言う種族の代表として交渉官をするのであるならば』

①人間が過去のアライさんのご先祖の強制連行や虐殺行為に謝罪の意を公で表明し、
それと同時にアライさん達も『生き延びるうえでやむなくした振る舞い』に関して遺憾の意を表明するのだ。

②人間は過去の行いの『和解代』として、
相応の耕地・居住地・『お宝』・生活再建手当てをアライさんに渡すのだ。
アライさんはそれを受け取って以後の『止むを得ない行為』は自制するのだ。

③一種の人口割当制度を双方に課すのだ。つまり出生頭数規制。
すでに一億人以上いる人間は例えば3人目以上の子供の出産に罰則を設け、
アライさんも『人間の数と比較して著しく不平等にならない範囲』で子作りを自制するのだ。

④アライさんの就業・起業・公職就任権・地方及び国政への参政権を認め、
それを妨害する人間に厳罰を科すのだ。
その代わりアライさんは『アライさんの社会参加を前提に諸法・諸規定が改正変更された後』は、
それを尊重するのだ。

―公職就任権は役人や警察や軍人になれる権利、参政権は政治家―人間の群れのボス達―を選んだり、
自分が成ったりする権利なのだ―

⑤特定有害フレンズ防止法は廃止。というかこれは前提なのだ!
あと、特定外来種防止法に例外規定を入れて改正。
『アライさんの伴侶アライグマ。アライさんの子供として生まれたアライグマ及びそれらの子孫の生存権』を認めるのだ。


―特定有害フレンズ防止法はアライさんを皆殺すと言う人間の『掟』、
特定外来種防止法は『遅れてこの地にやってきたけもの等』を皆殺すという内容の人間の『掟』なのだ―


⑥アライさんが平穏・かつ公然と社会で意見を述べ、請願を行い、
人間と少なくとも同レベルの裁判を受ける権利を認めること。
アライさんはその決定や判決が人間と比べて差別的でないなら受け入れることなのだ。

―請願ってわかるのだ?お願い事をすることなのだ。
そして、お願い事をすること自体を邪魔されたり、お願いしたことを理由に殺されたりしないようにしてくれ、ってことなのだ。


⑦アライさんの『家族』ないし『群れ』を人間社会でも自治の単位として公認することなのだ。
アライさんに関する公の決定をする際には、え~と『しんぎいん』『ひょうぎいん』って言うのだ?
そう言う存在を『家族』から人間の決定機関に送り、参加させるのだ。

⑧人間とアライさんは『雑居』することが条件なのだ!
小島に閉じ込められたら、人間の判断一つで皆殺しにされるのだ。!そう言う道を選ぶ奴はガイジなのだ!

『雑居』していれば、逃げ場もあるし、人間がアライさんを弾圧し始めたときアライさんにも『報復』の機会がある。


アライさんのそう言う行動への恐れが人間の『約定破り』への抑止力になるのだ!


取り合えず、ぱーと思いつく範囲での『条件』はこんなもんなのだ。もし漏れが有ったら随時見直すのだ!!!」

大母アライさんは一気にまくしたてる。

聞いている子分アライさん達は、―どこまで意味が分かっているのかは知らないが―完全に圧倒されている。

ギロリ!

そして、大母アライさんはやや、呆けている子分アライさん達に気合を入れ直すように強い口調で話す。

大母アライさん「以上は、『人間にその気が有れば』のお話。

何時も言っているように、けものは今を生きるもの。

捕らぬ狸の皮算用は、まあ、ほどほどにしながら、今日を!蛇蝎の如く生きるのだ!!!

それに今回の戦いの戦果はまだ有るのだ!それは―」

今日の書き込みは以上です。

乙!
まぁ『その気』はないでしょうな、害獣行為を止めるって出したところで害獣が何言ってんだ信じられるか[ピーーー]ぃ!くらいにしか思わないだろう
人間は子供産むのやめろっつっても知るか、俺達は人間だ子供産む、お前らこそ産めないように手術だボケ!だろうな


ただ…『降伏条件の偽装』等は難しい所かな、真実がどうこう言われる前の真珠湾攻撃と同じような物だし
罪の無い家畜が殺されるのは大問題だけど

乙でしゅ
人間以外を殺しても報復があるリスクは承知だろうけど、士気を高めるためでかな?

それにしても3年はバレないでいるとは大した自信だな、無論絶対はないとは思っていると思うけど
これだけ大所帯だと3年どころか半年内でも情報漏らす阿呆が出ても不思議じゃないとは思うが、果たして・・・

>>269
遅くても、だからもっと早く見つかるって考えなんじゃない?無駄に希望的観測をしない
バレたら逆に『計画通り』くらいに考えてるっぽい

なんやかんやアライさん達の主人公補正ガンガン使って
アライさん、フレンズ、アライさん派人間vsフレンズ反対派、アラ虐派になって反対派アラ虐派完全敗北からのソンチョ-スルノダ-なアライさん勝利エンドしか見えない

>>282
流石にそれは無い、大母さんは人間と人間に味方するフレンズかなり嫌ってるし
仮に一致団結したらしたで向こうが『本気の戦い』をしてくると思う、そうなると勝ち目が無い

続きを書き込みます。

感想は読者の方に一任します。

大母アライさんの『投降・和解条件考察』はISISよりは、南アフリカやフツ・ツチ族間紛争などの和解事業を参考にしています。
『自分がもしその立場なら、通るかどうかは兎も角、最低テーブルに一度は上げたい条件』とは何か考え挙げてみたのですがどうでしょう?

ガサッガサッ

タヌキちゃん「お母さん…。今日も行くの?」

森の中、人間9歳ぐらいの可愛らしい女の子が巣穴の中でお母さんを見上げる。

お母さんは少し寂しそうに頷くと我が子に声を掛ける。

タヌキのフレンズ(以下、便宜的に『タヌキさん』と記す。『さん』付はアライさんを想起させるため可愛らしい日本の仲間タヌキのフレンズには申し訳ないが…)


タヌキさん「うん…。お母さんが忘れたら、お父さんが本当にいなくなっちゃう気がするの。
何時もの『お見舞い』に行ったら、木の実を集めて帰って来るから…」

そう言うと、タヌキさんは我が子に小学校3年生の教科書を差し出す。

タヌキさん「帰ってくるまで、タヌキちゃんはしっかり勉強すること、良いね!」

タヌキちゃん「はい…。気を付けて」

ガサッガサッ

ガサッガサッガサッガサッ

ガサッガサッガサッガサッガサッ

タヌキさんは森を一旦抜けて、その外側を掠める県道の縁まで方に歩み寄る。ここは蛇張村に接した県隣の自治体。
蛇張村は県最北端で三県と接しているため、TTT会現地組が来た県とは別の自治体だ。

ブーーーーン!!!

今日も6年前のように、時折、車が山道を法定速度を余裕で超えながら走り抜けていく。

このタヌキさんは森で生まれたフレンズではない。

かつて、『かばんさん一行』らの人間との『お話合い』の後、
その檄に応じて対セルリアン戦に加わった日本生まれのタヌキのフレンズ達の子孫で―保護施設で生を受けた。

人間の『友達』になった在来種等のフレンズ達。
ただ、その戦後の境遇はそこまで恵まれたものではなかった。

人間側―世界再建戦争直後の日本政府―は、一応、国際的な批判の恐れや戦時の戦友意識の高揚もあり、
極力、タヌキのフレンズら『日本在来種由来のフレンズ』達を自分達の社会に迎え入れようとはした。

しかし、戦争直後の物心ともに乏しいなか、
人間基準では、学歴・職歴皆無、生活習慣文化も異なる『異種族』を社会に同化すると言う行為は困難を極めた。

タヌキさん達にも責められるべき点はある。

まず、彼女たちは、かばんさん一行の到来前、アライさん程あからさまでは無いものの、害獣行為をしていた。
現実のタヌキやイノシシ、クマらがアライグマ同様に害獣行為をするように。

タヌキ等はフレンズ化により心が優しくなる―所謂、『ヒト化現象』と言われる―傾向がアライさんより強い。
その為、『肉食忌避』の傾向がある。

精肉加工された物なら兎も角、自分で生きたけものの命を己が牙や爪で喰らい殺すことに嫌悪の念が生じるようになってしまった。


その為、ますます非動物食を求める必要が生じ―彼女らが望まなくとも、嫌でも畑を狙わなければ立ち行かなくなった。


無論、極力避けようとはしていたようなのだが…。

そしてこれも、アライさんとは異なり、『人間』は、『日本人』は彼女ら在来種由来のフレンズには比較的優しかった。


人間そっくりで日本語を話す女の子。しかも、元々はこの列島に住まう仲間。
人間側にもそう言う意識が有り、小規模な衝突・誤殺こそ互いに合ったものの、種族丸ごとの根滅政策は免れていた。


そのため、ある意味では―彼女たちは甘やかされていた。

アライさんのように激しい淘汰圧を潜ることも、死に物狂いで、自分達の『雄敵』の知識を学ぼうとする姿勢も欠けていた。


日本政府は、『かばんさん一行』との約束もあり、彼女たちを小学校に入学させたり、
単純作業的な現業業務の仕事を斡旋したりしたが…。

定着率はかなり低かった。

まあ、当たり前な話ではある。

仮にもし、一般日本人が異星なり、異世界なりに飛ばされて、
そこが、『言葉だけは何とか通じた』場所だったとしても―上手くやっていける人の方が少数だろう。

少なくても、作者は野垂れ死にする自信がある!
かの名作『十二国記』の陽子は本当にすごい!!!

それと規模は違うが、同種の出来事がこの地で起きたのである。

やがて、多くの『ジャパリ組(とその子孫)』以外のフレンズは、社会のお荷物扱いされていくようになる。

かつての戦功と本人の努力、そして何より運により、警察や公務員、自衛隊や特殊技能を生かせる民間会社に滑り込めたものを別として。

多くのフレンズは、『自らの境遇を言い訳にして、社会保障費を食い荒らす害獣』。
人間達から、そう言う心ない視線にも晒されるようになり―

あるものは、一度は離れた森や山に逃げ帰っていった。しかし、そこは楽園などではない。

過酷な野生の原理が働く世界。

サンドスターによる『ヒト化現象』により、心まで人間に中途半端に近くなったけものにとっては途轍もなく厳しい世界。


しかも、一旦人間と約定を結んだ以上、もうかつてのような緊急避難的害獣行為も行うことは出来ない…。


あるものは、人間の白眼視に耐えながら、所謂『社会の負け組的ポジション』に落とし込まれ、

恩給や生活保護等の社会保障給付と低賃金労働で糊口をしのぐ日々を送る。

発達傾向や性向、コミュニケーションの所作の違いは有るものの。

人間と同等以上の知能と遥かに優れた身体能力・スキルを持っていながら『人間中心文明』により、

有利な点を全て奪われ、社会の弱者に叩き落されてしまった。

もし、もしあの時、『人間と共にセルリアンと戦う』そう決めたとき。

もっと賢い立ち振る舞いをしていれば!!!

『かばんさん一行』と『ジャパリ組に騙された』!!!

そう感じるフレンズの怨嗟が漂い始めている。

そして、それが分からぬほどに人間も愚かではないから、ますます、警戒心と不満を高め…。

タヌキさん「(もう10年前。他の同族たちが次々と学校からドロップアウトするなか、

私は必死に肌に合わない人間の文化の中で大学を卒業した。

でも、そこまで。

企業も自治体も『大卒資格者』として自分を採用してくれるところはなかった。

私よりずっと成績が悪く、勉強も不熱心だった人間の同級生たちは次々内定を取っていく)」


グッと手を握る。今日は少し寒い。


タヌキさん「(ある時は面と向かって告げられた。『フレンズを雇うと管理が面倒臭い』と。

ハローワークで、紹介されるお仕事は小学校卒でも出来そうなものばかり)」

ハローワーク職員『でも、フレンズによって得意なことは違いますから!

自分の生かせる力を生かせる場所で働くのが一番ですよ。

きっとどんな仕事でも、たっのしーーい!!!ことはいっぱいあります!!!』

まるで、大人が幼児を―子供をあやす様に―甘ったるい声で諭してきた時のことが今でも忘れられない!!!

タヌキ「ふざけるな!!!フレンズが『笑顔』に見えるのはそう言う顔付をしているだけだ!

怒るときも憎むときも悲しむこともある!!!

お前らはいつ私たちの親になった!!!

私もお前らのように偉くなりたい!お金も欲しい!出来るなら楽もしたい!そう思うことがそんなにおかしいのか!!!」

ブーーーン!!!

そんなタヌキのつぶやきを撥ね飛ばす様にまた車が走り去っていく。

タヌキ「(みすぼらしい『フレンズシェルター』で、私を産んですぐ息を引き取った母に合わせる顔がない…)」

だから、もう我慢できず森に向かっていった。

交尾の相手だって探したかった。

人間と一緒に暮らしていては見つけることなどできない。

体の火照るまま、必死に夫を…。

あの子の父親を見つけ孕み。暫くの間は幸せだった。

タヌキちゃんが3歳の時。この場所で夫がトラックに轢き殺されるまでは…。

ゴォン!!!

怒りの赴くまま、生まれて初めて『野生開放』を行いトラックに体当たりをかました!

トラック運転手『ひぃぃぃ~!』

バキバキバキィ!

運転席の側のドアをこじ開け、運転手を道路に引きずり出す!

トラック運転手『わ…、悪かった!!!ワザとじゃないんだ!信じてくれ!!!』

メシメシメシ!!!

トラック運転手を締め上げていく。

トラック運転手『車の進行方向に…、逃げるから。俺だって避けようと…』

トラック運転手『あんた母親だろう!ここで俺を殺せば、牢屋行きだろう!!!こ…、子供はどう…するんだ?!!』


タヌキさん『はあ…はあ…』

トラック運転手『お…、俺も警察に出頭するから!だから、お互い冷静になろう!!!』

結局、夫を殺したトラック運転手は、『スピード違反』で点数を引かれただけだった…。

フレンズの『擬制的人権』は本人ならぬ本獣までしか適応されない。

自分は、仇をとる機会を永遠に逃してしまった…。


タヌキちゃんが5歳になる頃。
意を決して、もう一度、人里に向かった。せめてタヌキちゃんには『人並みの教育』を受けさせたかった。

社会も何時かは変わるかもしれない。その時にタヌキちゃんが無学では可哀想だ。

生活保護とパート、内職をしながらタヌキちゃんを学校に通わせた。

自分に似て成績が良かった。

なのに…。

ある時からドンドン、テストの点が落ちていった…。

タヌキちゃん「お願い!私のランドセル返して!!!」

子供1「カチカチ山!」
子供2「カチカチ山!」
子供3「お婆さん殺し!」
子供4「タヌキ汁!タヌキ汁!タヌキ汁!」

子供1「タヌキ汁!!タヌキ汁!!タヌキ汁!!」
子供2「タヌキ汁!!!タヌキ汁!!!タヌキ汁!!!」
子供3「タヌキ汁!!!!タヌキ汁!!!!タヌキ汁!!!!」

子供1「…」カチャ!

タヌキちゃん「熱い!!!」

子供1はタヌキちゃんの背中にチャッカマンの火を押し付けた。

タヌキちゃんのせっかくのお洋服が黒く焦げる…。

子供2「あ~!唐辛子も持ってくればよかった!」
子供3「タヌキはアライグマと同じ害獣なんだぞ!優等生面して生意気だ!!」
子供4「おまえのかーちゃん。せいかつほごじきゅーしゃなんだろう!社会の害獣なんだぞ!!!」

タヌキちゃん「う…う…。がいじゅうじゃ…ないよう!」ウルウル

子供1「嘘つけ!が・い・じゅう!が・い・じゅう!が・い・じゅう!」
子供2「が・い・じゅう!!が・い・じゅう!!が・い・じゅう!!」
子供3「が・い・じゅう!!!が・い・じゅう!!!が・い・じゅう!!!」
子供4「が・い・じゅう!!!が・い・じゅう!!!が・い・じゅう!!!」

タヌキちゃん「う…。うわぁーん!」

タッタッタッ!!!

溜まらず駆け出すタヌキちゃん!

その後姿をざまあみろ!とでも言いたげに見る四人のクソガキどもは、後ろから忍び寄るけものの気配にも気づかない!

人間の耳と鼻では感じられるわけがない!!!

ポキ!

ボキ!

ボキ!ボキ!

ボキ!

まるで木の枝を折るような音と共に四人の子供たちの腕が一本づつへし折られて行く。

子供1「うわぁぁぁーん!うわぁぁぁーん!」
子供2「うえぇぇぇぇーん!がいじゅうぅぅぅー!」
子供3「け…、けいさつにいってやるぞぉぉぉー!しゃさつされるぞっぉぉ!」
子供4「しけぇぇぇぇーだぁぁー!うわぁぁぁーん!」

泣きわめきながら、逃げ出す餓鬼どもをタヌキさんは睨みながら呟く。

タヌキさん「死刑にはならないさ。せいぜい暴行罪!その時は今回の件も含めてお前らの父母も道連れだ!!!」

子持ちのけものは、仮に優しい動物であっても我が子を傷つけられそうになれば大変気性が荒くなる―

タヌキさん「もっとも…。人間に偉そうに裁かれるのはうんざりだ!この町ともこれまで。あの子と共に夫のそばで暮らしていく」

ブーーーン

また車が通り過ぎていく。

そろそろ、餌探しに行かないと!
二匹分の餌を探し、確保するのは大変だ!

ガサッガサッ

ガサッガサッガサッガサッ

ガサッガサッガサッガサッガサッ


バァン!

ブシュゥウゥゥー―

タヌキさん「(え…。なに)」

ガク!ボタボタボタ…

ゴグフゥ!ビチャビチャ!

タヌキさん「(あ…あ…。なんで…。巣には子供が…)」

不意の銃撃。
野生開放も加速スキルも発現が間に合わなかった…。

バァン!

ブシュゥウゥゥー―

バタン!

猟師「良し!あれが例の巨大クマかな!まさか県境を越えてうちの県まで来るとは…。
とは言え、三県を騒がせた奴も遂に年貢の納め時だ!」

ガチャ!

念のため次の弾を込める。

ガサッガサッ

ガサッガサッガサッ

そして、ゆっくり倒した獲物に近づいていく―

今日の書き込みは以上です。

書き忘れました!

自分には生活保護受給者を始めとした社会保障制度を受けている方々を揶揄する意図は決してありません。

今回のようなSS内の人間の言動はあくまで『無理解な発言』として描いています。

ただ、もしこのSSが、『じゃあ適切な社会保障とは何ぞや』と考えるきっかけにもしなるのなら、分を過ぎた光栄に存じます。

続きを書き込みます。

うおっ!いっぱい埋まっている!


これは、今書くのはネタバレのようで嫌なのですが、読者さんの中に戸惑われている方がいらっしゃるようなので、
ご参考までにこのSSの初期プロット(の一部)をお知らせしておきます。このSSがどういう方向性だったのかどうかご参考にしてください。

なお、あくまで原案なので、この通りにお話を今後進めるかはまだ、決めていないことも申し添えておきます。

(続き)
『セルリアンと人間・フレンズ陣営と戦いが終わった後の復興期。

故郷の『復興村』に帰還した父子親子(母他界)はある夜、道端で震える『ネコのようなフレンズ』を保護する。
当初は、ネコ、後にはタヌキのフレンズと考えていた親子であったが、
やがて奴は人類の敵『アライさん』である事を悟る。

しかし、家族として一旦、受け入れたアライさんを無下にする気にはならず、
人間として生きられるよう厳しい躾けと人間並みの教育を施す。

その甲斐あって、アライさんは、親子と村民と言う極限られた『疑似家族』の中では一定の社会性を身に着け、
その器用な能力を生かして地域社会に貢献し始めるまでになる。

しかし、籠の中の平和はやがては破られるもの。

官憲に摘発され、親子の抗議も虚しく、アライさんは保健所に連れられて行く。

次々と安楽死されて行く『同族』の姿を見つめ、自分が暮らしていた世界は偽りの平和であることを知るアライさん―


保健所職員の隙を突き、同族と共に抜柵を試み、警察の猛追を、親子から施された教育を生かして躱しながら、
アライさんは、一部の人間の仕打ち『アラ虐』や『フレンズ差別』の実態を目撃していくことになる。

山林地帯に逃げ込み、毎年のように繁殖を繰り返しながら、人間仕込みの知識で、
ある種の『母権制社会集団』『氏族国家』をやがて形成していくアライさん。

人間の力量を知っているため、極力直接対決は避ける方針ではあったのだが―

人間文明の最底辺、『不可触獣』扱いされていたアライさんの小さな反乱は、
やがて他の人間と潜在的な対立関係にあったフレンズ、人間恭順派フレンズ、人間内のフレンズ融和派・強硬派を巻き込んだ大掛かりな社会現象となっていく。


そんな中、未だアライさんを家族と信じる父子親子(成長済み)は、双方の対立の火花の中、必死に共生への道を模索するのだが―』


と言った具合でした。

なおナレーションは今とさほど変わらず、お話自体は『アラ虐成分増しまし』の想定。

(続き)
このナレーションが気になる方をいらっしゃるようですが、
『人間・日本人』である作者達は、仮にアライさん(というか現実のアライグマ)に一抹の同情を抱いたとしても、
あるいは嫌ったとしても、

どこまでも人間の立場・視線『アライさんは生きていること自体、困った存在なのだ(in 日本)』からは逃れられない、と言うことを示す物でもあります。


もっとも、自分が他のアライさんSSの愛読者で結構、こういう気風の語り口を面白がっている面は正直ありますが…。


自分自身はアニメのアライさんも、良い子キャラではないトリックスター(超好意的解釈)なのに、
やたら『素直』『良い子』『幼児キャラ』『頭の中がお宝・天下じゃなくてフェネック・かばんさんでいっぱい』として扱われることにも正直違和感を感じる系のアニメファンだったりします。


不遜で太々しく、無駄に堂々として野心・野望に溢れているのがアライさんのキャラだろうに、
と言う思いが逆に大母アライさんのキャラ属性に極端に跳ね返っているのかな、とも。

それと、アライさんがあんまりバカで弱いと『それに一度は跋扈を許し、その後延々と虐め続ける作中日本人はもっとアホで性格悪いことになってしまうかも』と言う懸念を抱いたことは、かつて記した通りです。

(続き)
また、一部の読者さんが触れていらっしゃるように、
(それが全部ではないものの)人間が他の知的生命体であるアニマルガールを本当に『珍獣』ではなく、
『友達』として受け入れることなんてできるのか。

フレンズになること(≒擬人化されること)がけものにとって幸せなことなのかという思考実験の跡のような面もあります。


勿論、『けもフレ』批判と言う意味で書いているわけではないことも明記しておきます。


思えば1スレ目から、少し、長くなってきたので振り返りがてら、この世界の用語説明を『再度』、張り付けてみます。


アライさんの『適応発展』や蛇張村村民たちの状況変化を追うこともできますし…。

少し、議論になっているところと関係しそうなところにのみ、波線を引いておきます。

なお、アライさんを始めとした各フレンズ、そして何より人類は『状況に合わせて適応』するので、この用語説明がこの世界で永久固定された状況と言うわけでもないことも記しておきます。


まあ、それは当たり前と言えば当たり前ですが…。

(続き)

波線が消えてしまう…。仕方がないので『』でくくることにします。

用語「世界再建戦争」
セルリアンにより分断圧迫され、崩壊の危機に瀕していた人類社会がジャパリパークから渡来したフレンズ・ラッキービースト、かばんらとともに生存圏を奪還し、一定の社会基盤を再確保した一連の武力紛争及び社会運動の総称。

各国、国際機関の復興は地域により多少のばらつきがあるものの、おおむね順調に進み21世紀初頭程度には回復している。未だに出現する「はぐれセルリアン」との部分的な衝突は続いている。


用語「フレンズ」
サンドスターの接触により、人間の女の子のような形態になった動物・けもの(及びその一部・遺骸等)。
アニマルガール。
人生ならぬ獣生においてどのような経験値を積んできたか、どの程度サンドスターを体内に取り込んだかで同じ種類のフレンズでも差異がみられる場合がある。

サンドスターに当たって変化した世代(第一世代)は体内サンドスターの消耗や「フレンズとしての死」により、元の動物等に戻る。

しかし、受精確率は低いものの、親がフレンズの状態で元の種の動物と交尾するなどにより子が生まれた場合(第二世代以降)は、オスの子供は「元種のオス」に、メスは「元種のフレンズ」となる。

第二世代以降のフレンズは死亡した場合、亡骸は元の動物に戻るといったことはなく他の生物同様のプロセスで自然界に分解されていくことになる。

『ほとんどのフレンズは、かばん達の働き掛けもあり「世界再建戦争」に参加し、戦後も人類と友好関係にある。ただし、所謂、ジャパリパーク由来のフレンズとその子孫(ジャパリパーク組)と人類衰退期以降にパーク外で生まれたフレンズ達には対人類感情、フレンズ間の関係、「自然」という概念の捉え方等に温度差が存在する。』

フレンズの生息地を統治する国家・機構により、その扱いは異なるが、おおむね①人間社会で生きる道、②野生動物として生きる道、③動物園、研究施設で管理される道の3パターンの獣生を送るものが多い。

(続き)
用語「アライさん」
アライグマのフレンズの通称。

アライグマは北米原産の動物であるが周知の通り日本において繁殖し、大きな社会問題となっていた。

サンドスター大量放出が発生した人類衰退期以降、その一部が断続的にサンドスターに触れ、
フレンズ化するとともに旺盛な繁殖力で各個体が生息数を拡大、「セルリアン以上に厄介」と言われる存在となっている。


特定有害フレンズ指定されている。

アライグマのフレンズは、『元種であるアライグマ由来の比較的高い知能と学習能力、環境に対する適応力を有する。
雑食性で基本何でも食べる。視覚がやや弱いが手先は非常に器用で嗅覚も優れている。体力も低くはなく、
木登り、立体行動も得意で泳ぐことも可能、成体は猟犬をも返り討ちにする場合がある。』

その最大の特徴はフレンズとしては(動物としても)旺盛な繁殖力である。生後2年で成熟し、
以降妊娠率は100%とされる。
春に3匹~6匹子供を産み、繁殖に失敗した場合でも再度発情し、その場合は夏ごろ出産する。
寿命は飼育下で50年ほど(経験値や取り込んだサンドスター量によって延びる場合もある)。

各個体は極めて微弱ながら単体回復の能力を持ち、病傷部を手で擦ることにより自己治癒を行う。
経験値を十分積んだ個体は「マジカルウォーターハンド」と通称される超回復が可能な場合もある。

成体は身長140cmほどになる。
俗称として出産直後から身長20‐30㎝程度までの幼獣を「アライちゃん」、
それ以後から成獣までの間の個体を「アライしゃん」と呼称されることもある。

なお、アライさん自身は自らを「アライさん」、自身の子供を「チビ」と呼ぶケースが多い。

非常に有名なことだが語尾は「なのだ」をつける。

警戒心が非常に強く、幼少期は人に懐くが、成獣になるときわめて気性が荒くなる。

『高い知能と学習能力は自身とその子孫の生存繁栄に全フリされており、「社会全体への配慮」や「(血縁関係にない)他者への同情や共感の念」は欠如している(未確定ながら、幼い頃から共に暮らす限られた少数のグループを「群れの仲間」ないし「家族に準じた存在」と認識するケースも稀にあるとされる)。』


また、自分の獲物に対する執着心はとても強い。

農家は勿論、一般国民にとってもやっかいな嫌われ者である。しかし、『元種のアライグマがそうであったようにその外見を可愛いと感じ、また殺処分に対する嫌悪感からアライさんに同情的な人たちもいる(アラ信)。』


また、特に世界再建戦争期の世代の人は、かばんさんとともに人類に加勢した「ジャパリパークのアライさん」の思い出が根強い人たちもいる。

なお、「ジャパリパークのアライさん」とその子孫は人類及び日本の功労者として特定有害フレンズ防止法の特記事項により国賓として指定生活区域や動物園等に優先入所し、獣生を送っている。

ちなみに、『他の一般アライさんはその自己中な本性を露わにし、世界再建戦争では人類陣営に加わらないばかりか、「漁夫の利を狙うのだ」「天下を取るのだ」などと言っていたという証言がある。』

(続き)
用語「特定有害フレンズによる生態系等に係る被害の防止に関する法律」
「特定有害フレンズ防止法」と略される。

日本在来の生物を捕食したり、これらと競合したりして、生態系を損ねたり、
人の生命・身体、農林水産業に被害を与えたりする、あるいはそうするおそれのある外来生物が元になったフレンズによる被害を防止するために、


それらを「特定有害フレンズ」として指定し、その飼養、保管、運搬、輸入等について規制を行うとともに、
「鳥獣保護法」「動物愛護法」「フレンズ共同参画社会基本法」等の規定を一部ないし全部適用外とし、
必要に応じて国や自治体・各不動産管理責任者、講習後登録を終えた一般有志者等が野外等の外来生物由来のフレンズの防除を行うことを定める。


※特定有害フレンズの指定は、そのフレンズの元種がただ単に外来種であるという点のみにより指定されると理解されてはならず、

動物愛護・フレンズとの共生理念に基づきコミュニケーション、教育、矯正による人類社会との共存の可能性、及び『それに要する社会的コストを総合的に勘案してなされなければならない。』


用語「人類衰退期」
サンドスター、サンドスター・ロウのジャパリパーク外地域における大量放出により、
人類社会に大きな混乱が起こっていた時期の総称。

ジャパリパーク閉園直後以降のイメージ。

セルリアンの大量発生により、大陸間交通・通信が著しく制限・断絶し、
ユーラシア大陸やアフリカ大陸等で人類安全生存圏の極端な縮小が起こった。

『資源の不足や社会不安により人類同士の衝突も多発した「暗黒時代」。
半面、ジャパリパーク外で生まれたフレンズにとっては後年「セルリアンにさえ気を付ければ自分の力で生きていけた」懐かしい時代ともされる。』


用語「フレンズ人権訴訟事件」
世界再建戦争期、日本国においてフレンズ達に日本国憲法が保障する基本的人権が適用されるかが争われた裁判。

『原告敗訴に終わった』ものの傍論、判決理由において『動物愛護の精神と公序良俗及び市民感情と児童教育への配慮、
人類の普遍的同情と共感の念、世界再建へのフレンズ達の貢献』を理由として、『「法律の範囲内で可能な限り」』フレンズにも「擬制的人権」を認める判断を示したもの。


その後の日本のフレンズ政策の基本方針となる。



では、そんなところでストーリーの続きをどうぞ。

コツ!コツ!コツ!

大理石でできた階段を登るスーツを着た男性の姿が見える。
真新しいスーツは、ひょろっとした姿には余りに合わず、就活中の大学生のような印象を周囲に与えている。

まあ、就活は兎も角、大学生であることは間違いないのだが…。

アパート男「だ…、ダメもとでアポイントメントを取ったら、えらい人物とお会いできることに…」

冷や汗だらだらである。

アパート男「う~…。緊張する―。

日本フレンズ協会の役員の方がまさか直々にインタビューに応じて下さるなんて…。

こんなことなら、もっとしっかり下調べをしてから、ご連絡を差し上げるべきだった…」

この日、アパート男は、公益社団法人日本フレンズ協会を訪問していた。

まだ、蛇張村では安全エリア確保作戦が続いている。

今は、電気柵の構築が終わりかけている頃だろうか…。

公益社団法人日本フレンズ協会は、文字通り、日本に暮らすフレンズ達のための公認団体である。

フレンズ間の相互親睦・交流。生活・お悩み相談や就業応援、生活サポート。野生フレンズの保護。
フレンズ・人間間差別の是正等を行っている。

言わば、日本のフレンズ達の代表機関。
かばんさん一行等の『ジャパリ組』が人間と約定を取り交わしたときに設立された。

―ジャパリパークの『群れの長』であったコノハ博士やミミちゃん助手は、
公益社団法人ではなく正式な拒否権のある自治組織、ないし官公庁の内の一つとして『群れ』を参画させたがったが、人間中心の復興を目指す日本政府が折れることはなかった―

その代わり、と言っては変だが『ジャパリ組』はかなりの優遇を受けている。

一般の人間社会でもそうだが、日本フレンズ協会でも役員を始めとした上級職員はほとんどが『ジャパリ組』かその子孫だ。


『ジャパリパーク由来のフレンズ』をフレンズ全体を管理・統治するうえでの『中間支配階層』と位置付ける。
かばんさん一行と接触後の日本・人類陣営の言わば不文律である。

『分離して・統治せよ』。ローマの古から続く『異物』の取り扱いノウハウである。

アパート男「(勿論、『ジャパリ組』や他のフレンズもそんなことはある時期からはお見通しだ。
それが、人間への不信感や反感の要因ともなっているらしい…)」

とは言え―日本政府側を単純な悪役にすればいいのかと言うとそうでもない。

アパート男「(何らかのフレンズ代表機関は結局作らなければならなかっただろうし…。

フレンズよりも、少なくとも現在では、人間の方が多数派なのだから、それが
ある種の『上下服属関係』的な物になるのはやむを得ない面がある―人間の立場としては、だが。

そして、じゃあ誰にその『中間支配階層』を据えるのかと言えば、
やっぱり、出パーク後に人類と接触、友好関係構築を試み、かばんさんに率いられた―ある意味では人類にとって最も都合が良いロールモデルである―『ジャパリパーク組』になるのは仕方がないことなんだ…)」


コツ!コツ!コツ!

壮麗な階段を登ると、赤い絨毯が自動扉の向こうまで続いている。

フカフカの感触を暫し楽しみながら進んで行く。

スッ―

音もなく、自動扉が開かれ、ついにアパート男は、日本のフレンズの総本山に足を踏み入れていく。

警備員に荷物を見せ、金属探知機を潜る。

二人とも人間・日本人だ。

ビシッ!

丁寧に敬礼する二人の警備員に、アパート男はおっかなびっくりしながら、左胸に右手を当てて答礼する。

アパート男「(お辞儀の方が良かったかな?この場合どっちなんだろう?まあ、気持ちが大事だ…)」

受付の女性「いらっしゃいませ!本日のご用件を伺ってもよろしいでしょうか?」

アパート男「は…はい!本日3時から面会予定のアパート男と申します。本日はお忙しい中…」

そう言葉を話しながら、チラリチラリと、失礼にならない程度にアパート男は受付の女性に目をやる。

アパート男「(人間の!女性だ!

考えてみれば当然のこと…。フレンズ協会とはいっても、日本の公益社団法人。

働いている職員に日本人が多いのは当たり前。

『フレンズ共生』とは、時に『フレンズが上、人間が下』の関係になることをも許容すること。

各々の持った才能やスキル、身体能力や学歴・技能に基づいて)」


しかし―


アパート男「(普段、『人間に導かれ、教えを乞うフレンズ』、
『人間の上司の下、農林水産業や現業的労働―所謂、3K労働―に従事するフレンズ』を見慣れ、
刷り込まれ過ぎていた。

そんなに差別意識を持っているつもりはなかったのに…)」

訪問者用紙に氏名と住所、要件を記入しながらアパート男は一つ頷く。

アパート男「(場合によっては―フレンズの社長、フレンズの将軍、フレンズの総理大臣。

そのもとで、人間が働き・生き、時には命を投げ出す可能性をも許容することが、
『真の平等・共存・共生』の在り方。

勿論、今のような『事実上の半従属的関係』が共生ではないとは言わないが…。

これは一筋縄では行かないぞ!!!)」

受付の女性「ご記入ありがとうございます。それではどうぞこちらへ…」

今日の書き込みは以上です。

続きを書き込みます。

アパート男は吹き抜けになっているエレベーターホールに案内される。

その空間に入った者は一面に描かれている壮大は壁画を目にすることになる。

アパート男「(こ…、これは…。『出ジャパリパーク記』(出パーク記とも)のハイライトか!!??)」


中央には一面の波高い大海を割り進む大きな桶とバスで出来た船。
イルカやクジラ、そのフレンズ達の大軍団がまるで先導し、護送船団を組む様にその周りを多数泳いでいる。

ネコ型バスの頭部から身を乗り出して、『サモトラケのニケ』のように屹立する少女は、
二つの鮮やかな飾り羽がついた大きな帽子を被り、その大志を包み込むようにパンパンに膨らんだカバンを背負っている。

片手首には、輝く水晶のような半円形のガラスを嵌め、遥かな未来をその双眸で見つめている。

ネコ型バスの胴体部からは、彼女の半身たる大耳のネコ科のフレンズが彼女を見守り、
寄り添うように天井部から上半身を出している。

『モナリザ』のような優しく、不可思議な笑みを浮かべ、両手を天に振り仰ぐように広げている。
『ここに運命の方はおわします』

ネコ型バスの中には、様々な獣とそのフレンズがまるで『ノアの箱舟』のように賑やかに、楽し気に相乗りしている。


楽者たる各種のペンギン、賢者たるフクロウ・ミミズク、肉食獣の王者ライオン、森の護りヘラジカ、及びその眷属たち。


這うものの王キングコブラ、不思議な砂漠の大耳キツネ、困った害獣、島を守りこれより世界を守りに行くヒグマ・リカオン・キンシコウ。


存在すら不明なはずのツチノコ達UMA、はるか以前に絶滅したはずのトキら蘇りしけもの達…。

その他、数えきれないけもの、フレンズ達が―


天空では、向かって左上から中央に向けて人間の軍勢が―戦闘機、艦船、戦車、
そして煌めく銃刀を手にした勇者たちが勢いよく『邪悪な勢力』に向かって突き進むさまが描写されている。
アメリカ、日本、ヨーロッパ各国、豪州、中国、ロシア等万国の精鋭たちが―

中央から向かって右手にかけては、その勇者たちと『渡来せし、けもの達』によって、
暗黒の勢力セルリアンが天空から地の底に徐々に叩き落され、地下世界に再び追い立てられ封じ込められていくさまが描かれている。

アパート男「(『全体で見ると『ヴィーナスの誕生』と『レオ1世とアッティラの会見』をドッキングしたような感じだな。


それにしても良く描き込まれた絵だ。

『この人は誰それ』、『この描写はこういう意味が有る』、みたいな蘊蓄だけで数時間語れそうな感じだ―)」


アパート男が巨大な壁画に見入っているのに気が付いたのだろう。
受付の女性はごく簡単な解説をしてくれる。

受付の女性「『出ジャパリパーク記』のハイライト部分です。

かばんさん達一行が、当時、日米豪政府等が心血を注いでも発見できていなかった『太平洋安全連絡横断航路』を辿り、

遂に日本のモグラ輸送船団(潜水艦物資輸送艦隊)と接触した場面をその後の総反抗作戦の顛末も織り込みながら劇的に描写しています。


あくまで象徴的な絵画ですので、ジャパリバスの中にはその場に実際には搭乗していなかったフレンズの方もいらっしゃいます」


アパート男「…」コクリ

受付の女性「日本を始めとした私達人間の間では、かばんさん達の愉快で無邪気な物語
『ジャパリパーク冒険記』が人気で何度もアニメ化・書籍化しています。

しかし、フレンズの間では―特に『ジャパリパーク組』のフレンズにとっては―、『その後の物語』の方が…。

所謂、『出パーク記』の方が重い意味を帯びています。本当に大事な意味を―」

チーン!

エレベーターが下りてくる音が聞こえる。

受付の女性は、扉を清潔な白い手袋をした手で押さえながら、アパート男を静かに促す。

丁寧にお辞儀して下さる受付の女性。
エレベーターはその頭が最も綺麗な角度で下がった瞬間に閉じ、上に上にと上昇して行く。

チーン!

コツ!コツ!コツ!

アパート男は、待ち合わせの階でエレベータを降り、高級そうな木の扉の前に立つ。

アパート男「(ふむ。この階は建物のちょうど真ん中ら辺の高さ。
この扉も高級そうではあるが、『最上級』と言った印象ではない。下~中クラスの来客用のお部屋かな?)」

とは言え、別にそれで気を悪くすることもない。

むしろ、突然のアポに応えて下さったこと自体が望外のこと。
自分は無役・無冠の一学生、これでも丁寧すぎるくらいだ。

アパート男「(時間だ…。ちょー緊張する!)」

コン!コン!コン!

???「どうぞ!?」

アパート男「失礼します。先日ご連絡を致しました、アパート男です!」

ペコリ

一礼して、頭を上げていくと―

ふわふわのコートを着た小柄な身体つきの二人の少女が視界に入る!!!

片方は白や灰色、もう片方は茶色をベースとしている!!!

アパート男「は…『博士』!!!『助手』!!!」

ズコッ!!!

あまりの『超大物』の登場にアパート男は腰を抜かす!文字通りの意味で…。

『博士?』「落ち着くのです。アパート男さん」
『助手?』「落ち着くですよ。我々は落ち着いているので」

そう言うと、二人は軽く会釈をして、座り込んだアパート男に歩み寄り、手を差し出す。

『博士?』「立つのです。一緒に座っていろいろお話するのです」
『助手?』「お話するのですよ。きっとお話することがたくさんあるので」

アパート男は、ハッとして礼儀上、差し出された手を軽く握り、同時に自分の二本足でえいやッと立ち上がる。
あんまり、無様なさまを晒せば、人間の沽券に傷がつく!!!

もう少しついているのは内緒だ。

アパート男「貴重なお時間を頂き大変恐縮です。自分も様々なことを伺い、お話するために参りました」

すくっと立つアパート男を見つめると、二人の少女―のようなフレンズ―は頷き合う。

アパート男「いや~!ビックリしました!子孫コノハズクさんと子孫ワシミミズクさんでしたか!!!」

一人と二羽は応接室のフカフカのソファーに腰を降ろしている。
テーブルには美味しそうな珈琲と茶菓子。

アパート男は二羽が、伝説のかばんさん一行の直接のメンバーでないことを知り少し砕けた話し方になる。

『子孫博士』「私は平役員なのです。私はまだ若輩者なので」
『子孫助手』「私はその補佐官なのですよ。我々はまだ若輩者なので」

アニメの『ジャパリパーク冒険記』で見た親(?)の『博士』『助手』より、若干謙虚だ。
やはり、別人ならぬ別鳥なのは本当らしい。

アパート男「(おっと、流石に今の態度は失礼千万だった…。
さっきの反作用とは言え、一社会団体の役員と補佐官に自分は何ということを…)」

アパート男は慌ててペコリと頭を下げる。

それを『子孫博士』達は制しながら、伝える。

子孫博士「頭を上げるのですよ。我々も少し意地悪をしました」

アパート男「???」

子孫助手「時たまこうやって人間をはかる(謀る・計る)ことが有るのです。
一方的にフレンズを侮られないために。ビックリさせてすまなかったのです」

アパート男「…」パチクリ

驚いた…。フレンズも『意地悪』することが有るのか―。

いや、こういうハッタリや騙し(と言うかトリック)ぐらい人間は互いに幾らでもやり合っているではないか。
他の生物相手にも…。

『フレンズは皆良い子』『フレンズ性善説』は終始人間にとって都合が良い虚像、そう思い知らされる。

アパート男「(勿論、その上で『フレンズは相手を信じやすく、善意に基づいて行動しやすい』傾向は有るらしい…。

それでよく詐欺被害にあうケースが多いとか。嘆かわしいことだ!!!)」

子孫博士「お詫びに、と言うわけでもありませんが、この場では無礼講で行きたいと思います」
子孫助手「無礼講なのですよ。我々は寛大なので」

アパート男「本日、私は自身の研究『蛇張村復興事例(仮)』と『人間・フレンズ共同参画社会論考(仮)』のご参考にさせて頂ければと門戸を叩いた次第です。


もし、お二人のお許しが頂ければ、この場の会話を録音させていただきたく存じます。

録音した会話は純粋な学術研究のみに使用し、ここで知った情報も含め、
お二人の許可なく他の私的活動ないし営利活動に利用しないこと、
公的令状を示された場合を除き他に漏らさないこと。管理に万全を期すことをご誓約いたします」


二羽は頷き合う。

子孫博士「結構なのです。隠し撮りなどをしないところは好印象なのです」
子孫助手「好印象なのですよ。我々も誓約しましょう。この場に隠しカメラや盗聴器は存在しないのですよ。
我々は誠実なので」

カチャッ!!!

録音が始まる―

アパート男「まず、嫌な話題から。これは自分の研究とは別件ですが―」

アパート男は黒いビジネスバック―と言うか就活バック―からノートパソコンを取り出す。
警備員に持ち込みをOKしてもらえて良かった。

パソコンを立ち上げネットに繋ぐ。

子孫博士「何を我々に見せるのですか?」

アパート男「『ある犯罪動画』です。

恐らく性質上、日本フレンズ協会の方にご報告するべき事案だろうと思いまして…。
先にお伝えしておきます。とても気分が悪い動画です」

カチカチ!

おどろおどろしいバックミュージックと共に悪趣味な動画が再生されて行く―

殺アライP『常連の皆さまはこんにちは。お初にご覧になる方は初めまして。

私は当サイトの管理者であり、動画投稿者、殺アライPです。私はTTT会の元会員です。

会のあまりの生ぬるさに業を煮やし、今は一人で義挙を執り行っています』

カメラはそこで向きを変え、打ちっぱなしのコンクリートの部屋と一匹のアライさん
―右手足を切断された死にかけのアライさん―を映す。


アライさん『あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!いだいのだぁぁっぁぁ!!!!
アライさんのお手々と足を返すのだぁぁぁぁあぁ!!!』

アライさんは首輪と手錠で壁に固定されている。
どうやら右手足の切断からはさほど間が立ってないらしい。

聞いたものが当分忘れることが出来ないような悲鳴を上げ続けている。

殺アライP『切った手足を返してどうなるのぉ???』

そう言って、殺アライPはアライさんの切り取られた手足を映す。

ゴロン!

切断面を拡大して映す!

鋭利な刃物で切り取られたものではない!!!

恐らく鋸などでワザと苦痛と負担を与えながら、時間をかけて切り取ったものだ!

あのグチャクチャの切断面がそう告げている!!!

アライさん『あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!がえせぇぇぇぇー!!!
がえずのだぁぁぁぁぁーーー!!!!!』

殺アライP『ああああ!!!!うぜーなー!!!

そうかぁ!お前ら鬱陶しい回復スキルが有るからな!

今からでも、お手々をコスコスするのだぁ、なんて考えてるんだろうが!!??残念でした!!!』

殺アライP『スラムッダーンク!!!』

殺アライPは大きな金属バケツに二本の手足を叩き込む。

ガァン!!!

殺アライP『アンド!ミキサー!!!』

グッィィィーン!!!

ドリルのような音声が動画中を覆いつくす。

アライさん『やべてっぇぇぇぇぇぇー!!!かえしでぇぇぇぇぇー!!!
アライさんのおててとあんよぉぉぉぉぉーーーーー!!!!』

グッィィィーン!!!

グチャァッ!ビチャッ!

グチャグチャグチャ!!!

アライさんは壁にはりつけにされたまま、自分の右手足がその回復スキルをもってしてもどうにもならないほど、
粉々グチャグチャになる様子を無理やり見せつけられる。

涙を流し続けるアライさんの右頬に殺アライPはドリルの切っ先を押し付ける!

グッィィィーン!!!

グチャグチャグチャ!!!

アライさん『あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

アライさんの下膨れな頬はその片方が弾け飛び、中の歯、舌まで砕け巻き込まれる。

殺アライP『おいおい!!まだ、おねんねは早すぎるぜ!!!

せっかくのアライミートボールが出来たんだ。骨粉交じり!!!栄養満点!!!

てめーの糞ウゼー餓鬼、5日絶食させてヒイヒイ言ってる。さぞ喜ぶだろうよ!これぞ母の究極の愛だな!!!』


『餓鬼』と言う言葉を聞き、アライさんは血塗れの顔面の中、うっすら目を開く。

アライさん『あ…、あらいひゃんのひぃびぃ?』

殺アライP『会わせてやるぜぇぇ!今から!!!

目の前で!【おかーしゃん】の旨そうな肉を何分我慢できるか、かけようかぁぁぁ???!!!この畜生ォォォォォ!!!』


グッィィィーン!!!

グチャグチャグチャ!!!

アライさん『あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

今度は左頬…。

アライさんの絶叫をかき消すように、殺アライPも叫び出す。

殺アライP『てめーらは!!!この列島に居ちゃいけねー存在なんだよぉぉぉ!!!

日本から出ていけぇぇぇぇぇ!!!害獣がっぁぁぁぁ!!!』

カチッ!!!

もう十分だろう―

そう判断し、アパート男は動画の画面を消す。

目の前の二羽に視線を向ける。

表向き二羽は顔色を変えない。

ただ、身に纏った雰囲気が先ほどとは打って変わっていることは、アパート男からの目にも明らかだ。

子孫博士「アフリカオオコノハズクも…。この地には元々はいなかったけものなのですよ」

そう、ぼそっと呟く。

子孫助手「これは?」

子孫助手がアパート男に視線を向ける。
不思議なほど平静な視線を…。

アパート男はそれに軽く気押されながらも、出来るだけ冷静に応える。

アパート男「『TTT会の生ぬるさを凶弾する義人サイト』です。URLは画面の通り…。
彼らアライさん母子はまあ、いつも通りゴミ漁りした帰り道に捕らえられたとか…」

アパート男はやや身を乗り出しながら告げる。

アパート男「偽善者ぶっても仕方ありません。

私は、はっきり言ってアライさんが嫌いだし、日本にとって迷惑な存在、
居なくなってくれるならそれに越したことはないけもの、そう思っています。

今まで、自分がアライさんをイジメて鬱憤を晴らすシーンを何度も想像し、
近所でアライちゃんを見かけたときは、駆除を試みたことさえあります。失敗しましたが…」

二羽はアパート男をじっと見つめる。

アパート男「ただ、この男…―目出し帽をかぶっているので正確には女の可能性もありますが、
まあ、声からして男でしょう―の行為。

流石に目に余ります。

一線を越えていると言うか、我が国の文化・風土・道徳意識、何より私自身の倫理観にそぐわない!!!

こういう行為をする人間を現実に野放しにすることは!!!脳内の妄想ならともかく!!!」

アパート男「そう思い、警察にも通報しました。
お忙しい中、どこまで対処して下さるかは民間人の自分には判断しかねますが…。

自分の研究インタビューとは関係なしにフレンズ協会にも一報を入れるべきと思い、この場をお借りいたしました」


アパート男は一気に話しきる。

子孫博士・子孫助手は、アパート男のひょろっとした病弱そうな体をゆっくり上から下に見定める。

子孫博士「お前は…、本当に正直なおとこなのですね」
子孫助手「正直なおとこなのです。アホかもしれないけど正直者なのです」

男、雄、漢どれだろう?

二羽のフレンズは、敢えて『正直なヒト』とは言わなかった。

それが彼らなりの『共感・同意・敬意』を示すかのように―

本日の書き込みはここまでです。

続きを書き込みます。

432さん。フレンズの寿命は各種で、その中でも各個体間の経験値等で異なっている設定です。

その内、作中で描写されるかもしれませんが『概ね人並み』と今は思っていただければ差し支えないかと思います。

TTT会現地リーダー男「は~困った…」

TTT会現地リーダーは大げさにため息をつく。
それを目の当たりにし、何時もの4人のメンバーは顔を見合わせる。

一応、礼儀上聞かないといけないか…。

そう思ったTTT会員Aは、皆を代表して質問する。

TTT会員A「リーダーさん。何に困っているんですか?」

続いて他のメンバーも尋ねる。

TTT会員B「俺達。この前の『義挙』の祝勝会を開いているんですよね?」

そう!あの散々な『討ち入り』は彼ら目線では一応成功になっているのである!

蛇張村に見事討ち入り(嘘)、そこで捕らえたアライさん(捏造)に正義の裁きを下し、
地域住民の方に細やかなお力添えをして帰還した!

現地リーダーの頭部の打撲も検査の結果問題なし。

ネットに『義挙』動画のアップをし、『上』に(ちょっと臨機応変な対応をしたことも含め)報告も終了した。

そんなわけで、彼らは『討ち入り』後の初会合で能天気にアジトで飲み会である。

軽くお酒を出し、『アラ殺』した肉をつまみにしている。

一応、一会合一アラ虐が目標だ!

まあ、このお肉は業者から買ったものなのだが…。

TTT会員C「例の巨大クマも心配してニュースを見ていますが、里に下りたという情報は有りません。

隣の県でクマと間違えて、タヌキさんを誤殺したアホが書類送検されて、ちょっと話題になったくらいです」

TTT会現地リーダー男「ああ。その件は俺も新聞で…。不幸な話だ!

野生フレンズの誤殺はちょくちょく起こっている。

『麗しい国』を取り戻すためにも怪我をした野生のけものを見かけたら、保護・報告しないとな!」

TTT会員Aは頷く。
それはとても大事だ。

国立保護区を造るなり、ナショナルトラスト運動をするなりしないといけないのに…。

これではけものと人間の間の不幸な摩擦が増えるばかりだ。

きちんとした住み分けと一線を引くことが肝心だ。

TTT会員A「そのことを憂いていたのですか?」

現地リーダーは頭を振る。

TTT会現地リーダー男「いや…。それも無いわけではないが…。その…。上がちょっと怒っていて…」

怒るっていると―

TTT会員D「怒るっていると…。この前の『義挙』が今一ぱっとしなかったことを?」

ピクッ!

TTT会員B「(こ…、こいつ!」

TTT会員C「(言ってはならないことを!!!)」

TTT会員A「(頭アライさんか!?)」

TTT会現地リーダー男「ちっがーう!!!

先日の『討ち入り』は『上』から、62点だ!、というお褒めの言葉を頂いている!!!」


それって、褒められているのか!!??


TTT会現地リーダー男「そうではなくて!例の殺アライPだよ!!!

何か知っている情報はないか、と散々聞かれた!知るわけないだろう!支部が違うから!」


何だその件か。


TTT会員A「(ビックリした…。そっちか。しかし…)」

TTT会員B「(俺らも全く知らん。
そもそもTTT会自体が『真上』と『真下』以外、横の繋がりが希薄な組織形態だし)」

TTT会員C「(ああ云う心得違いが出ると困るんだよなぁ。組織のブランドイメージに傷がつく。
世間の共感と同意が得られて初めて、『義挙』は意味が有るのに…)」

TTT会員D「(あの動画。今一な出来だった。

勢い任せで粗雑!組織の半端を断罪するなんて言いながら全く稚拙…。

焼き土下座を先ずはやらせるところから、初めて、それから…)」


TTT会現地リーダー男「おーい!TTT会員D!いったん戻ってこい!」

何やら危なげな妄想を始めた顔をした『同志』に呼び掛ける。
最近、やっとこいつの内心が少しは読めるようになった…。

いや、心を開いてくれた、のか?


シュッ!シュッ!

TTT会員Aはスマホを操作して殺アライPの動画を一つ流す。

アライちゃん1『う…う…。にんげんしゃん…。おかーしゃんのおにく、いやなのりゃ…』

アライちゃん2『たべられないのりゃ…。おねがいなのりゃ!別の…』

TTT会員B「おい!!!酒の席だぞ!グロ動画は勘弁だ!!!」

グィ!

カーン!

TTT会員Bは、恐らく会合前に見た動画を思い出したのであろう。
不機嫌そうに手元のウィスキーをあおり、コップをテーブルに叩き付ける。

TTT会員A「あ…。いや済まない。俺としたことが配慮不足だった…」

そう言って、慌てて動画を止めるTTT会員A。

TTT会員Bもすぐに、はっとした顔になると申し訳なさそうに頭を下げる。


その様を見ながら、TTT会員Dは軽く『分析』を行う。

自分のような『異常者』が世間並みに生きる為、常に『分析』で周囲との差を意識し、
微調整し続けることが大事だ。

でないと、自分は『異常者』から『犯罪者』に早変わり!

まあ、正確には既に犯罪者なのだが…。

TTT会員D「(ふむ。これが『善人』の反応…。

仮に相手が害獣であったとしても『やり過ぎ』には反感を持ち、『被害者』に同情を寄せる。

仮に本人がアラ虐やアライさん駆除に加わっていても、
心の中に『自分は止むを得ず悪行に手を染めている』
『全体の正義のために敢えて我が手を汚している』と言う意識が有るから。

猶のこと『自らの快楽のため』、虐を行うものを憎む)」

TTT会員D「(例として適切化は分からないが…。

過去の歴史では、同じ兵士同士、場合によっては味方の兵士でさえ、
狙撃手(スナイパー)・機関銃兵を嫌う場合があったと聞く。

イメージ的にはそれに近いものが有るのか…。

それに日本では、仏教・神道、穢れ忌避の観念等が複合し、
長きにわたり四足のけもの(陸生哺乳動物等)を食べたり、殺したりする文化が希薄だった。

その為、西洋の『動物愛護・動物の権利』とは別の起源ではあるが、
生き物を殺すことに距離を取ろうとする精神風土がある、と言われる。

殺アライPの行いはそうした国民感情を逆なでする行い…)」

そこまで考えた上で、TTT会員Dは、TTT会員Aの顔をまじまじと見つめる。

TTT会員A「うん?どうした?」

TTT会員D「いえ…。何時も俺が制止された理由が少しは理解できました。

被害の『鬱憤』とその『昇華』のバランス!そして、何より世論の動向を考えていらしたのですね!!!」

そう勢い良く言われると戸惑ってしまう…。

TTT会員A「ああ…。天誅のことか!?そうだな。後、費用とか逮捕のリスクとか…」

TTT会員D「分かりました。リーダーや皆にストップが掛かるところまでで、止めるように今後は気を付けます!」

TTT会員A「お…、おう!」

TTT会現地リーダー男「良し!皆の『虐』への理解が深まったところでお願いがある!

『上』からの通達だそうだ…。今後もアラ逆に邁進するとともに『離反者』への対処もしないといけない。

どんな些細な情報でも耳にしたら、リーダーの俺に報告してくれ!

会の上層部が殺アライPのような奴を見つけ出して警察に突き出すなりしたいようなんだ!」

TTT会員A・TTT会員B・TTT会員C・TTT会員D「「「はい!!!」」」

グィ!

TTT会現地リーダーは盃を煽ると、焼き肉プレートに肉を並べだす。

アライホルモン・アライ腿肉・アライカルビ・アライタン・アライサーロイン・アライ肩肉・アライ耳肉―

TTT会員D「(そこはアライさんなり、アライちゃんを生きたまま焼肉にするところだろうに…。

アライさん『ああああぁぁぁぁぁあっぁあ!!!あついのだだだぁあっぁあ!!!!たずげでぇぇぇ!!!
おねがいぃぃぃなのだぁぁぁぁ!!!』

私『じゃあ、アライさーん。焼き土下座してみなよー』

アライさん『や…、やきどげじゃ???』

私『そうだよ。や・き・ど・げ・ざ。アライさんはさー。生きてること自体が罪なんだから、ちゃんと謝りなよー』

アライさん『はあ…。はあ…』

メリッ!メリッ!

焼けただれた肉を鉄板から無理やり剥がす嫌な音が、私の鼓膜を心地よく震わす!

私『頑張れ!頑張れ!』

アライさんは、運動神経が焼け始め、自由が利かなくなり始めた手足で…)」

TTT会員A「こら!そこまで!みんなで唱和をするところだぞ!!!」

( ゚д゚)ハッ!!!!

TTT会員D「(いかんいかん。そう言う『やり過ぎ』を注意しようと決めたばかりじゃないか!)」

TTT会現地リーダーは、焼き肉を裏返すと、ゴホンと咳ばらいを一つして本日の唱和を始める。
今日は無礼講。仰々しいのは先に住ませて後は楽しく過ごそう!

TTT会現地リーダー男「麗しい国を取り戻すために」

TTT会員一同「「「麗しい国を取り戻すために」」」

TTT会現地リーダー男「アライさんに死を」

TTT会員一同「「「アライさんに死を」」」

TTT会現地リーダー男「害獣に苦痛を。美化するもの、手を差し伸べようとする者への見せしめのために」

TTT会員一同「「「害獣に苦痛を。美化するもの、手を差し伸べようとする者への見せしめのために」」」

TTT会現地リーダー男「碧き神聖な山河のために」

TTT会員一同「「「碧き神聖な山河のために」」」

そして、TTT会現地リーダー男はそっと言い添える。

TTT会現地リーダー男「今日、俺達にご飯として我が身を捧げてくれたアライさん達に感謝を!」

TTT会員一同「???」

クエスチョンマークを頭に浮かべる一同を現地リーダーはじっと見つめる。

TTT会現地リーダー男「お米の一粒一粒。イースト菌の一菌一菌まで感謝の気持ちを忘れないのが『麗しい国』日本。

俺らが守り子孫に伝えていきたいと願う国柄・精神。

米がどう実り、命を捧げてくれたのかということ、イースト菌が一生懸命パンを膨らませてくれたから、
今日の俺たちの命があること。

正常な日本人なら、『彼らのこと』を知り・覚え・そして忘れず、忙しい中でも頭の片隅で感謝を続ける。

肉も…、その肉が、例え生前害獣であっても同じことだ!!!」

TTT会員達は顔を見合わせ、一つ頷く。

まあ、TTT会員Dは感覚と言うよりは理屈で頷いているだけだが。

他の『善人』たちは伝えたい理想の『群れ』の形がある!

TTT会員一同「「「今日、俺達にご飯として我が身を捧げてくれたアライさん達に感謝を!」」」


一旦以上です。

あ…。誤字見つけました。

441は『適切化は分からないが』×
   『適切かは、分からないが』○です。

・大母アライちゃん3
・ジェニファー
・『死に損ない』アライさん

この辺キャラが被ってる気がするの俺だけ?

・開始時点で何もできない幼児
・九死に一生を得る(死亡フラグを回避)
・母と姉妹を殺される(大母アライちゃん3以外)
・将来強キャラになりそうはフラグ

大母アライちゃん3の『姉妹の中で一番根性ある』
設定は最後まで回収されなさそうだなあ…

続きを少し書き込みます。

子孫博士「お前は…、本当に正直なおとこなのですね」
子孫助手「正直なおとこなのです。アホかもしれないけど正直者なのです」

その誉め言葉を聞き、アパート男は少しホッとする。
無駄に高評価過ぎず、また『誠実である』と信用してもらえることは研究者として大事なことである。

子孫博士「報告を感謝するのです。日本フレンズ協会としても対策を取りたいと思います」

その言葉を聞いてアパート男は一安心する。

アパート男「アライさんの話題が出たついでに、少し突っ込んだことを伺ってもよろしいでしょうか。
もし、必要なら録音を一時停止します」

子孫博士と子孫助手は一旦アイコンタクトをとると声を上げる。

子孫博士「どうぞ。聞くのです。一時停止するべきタイミングがあったらその時言うのです」
子孫助手「言うですよ。聞かなければ、始めらないのです」

アパート男「では、お言葉に甘えて『まず、フレンズの皆さんはアライさんのことをどうお考えですか?』

フレンズ(アニマルガール)の『仲間』なのか、それとも害獣・自分達の存在を脅かす敵なのか。

自分の研究テーマとも密接に関わる問題です。滅多にない機会なので不躾ながら、どうかお願いいたします」

少しの間、沈黙が続く。
子孫博士は考えをまとめているらしい。

ややあって、口を開きかける子孫博士を子孫助手は制しながら、答え始める。
補佐官として、『役員』の立場を慮ったのだろうか?

子孫助手「まず、『フレンズの皆さん』のお気持ち・お考えはけものそれぞれなのです。各けもので異なります。

アライさんに同情する個体も有れば、農林水産業に従事しているフレンズの中には嫌うけものもいるのです。

野生のけものに至っては、競合相手。そこはそう簡単に線引きなどできない…、要は人間と同じなのです」


子孫助手「ただ、それでも云わば『フレンズ化』を経験したけもの同士、『人類中心文明に身を置く者同士』。

ある種の『同族意識や被害者連合的意識』はある、と言っても良いのかも知れないのです」

少し気まずい空気が流れる。

アパート男「(『人類中心文明』『被害者連合』。

ある程度覚悟していた言葉だが、日本フレンズ協会の上層部から、公式の声明ではないとは言え耳にすると、
やはり重みが違う…。

確かに今の日本社会が『人類中心に営まれていること』。
それにうまく適応できなかったフレンズの皆さんを社会の底辺・周縁部に追いやっている面があることは事実)」


しかし―

アパート男「私は人類代表などと言う身分ではありません…。

しかし、貴女方の『誠実な友』としてお言葉を返させて頂きたく思います。

この地は、日本・地球は確かに人類の独占物ではない。
人類やフレンズを含めた全ての生き物の共有物、『コモンズ』でしょう」


二羽は目の前の人間を見つめる。


アパート男「しかし、その共有物の上で、各生物はある種平等に生存競争を繰り広げ―。

その結果人類は、ご先祖の血の滲む様な歴史的経緯の末に今のポジションに就き、文明圏を築き上げた。

ならば、人間はその恩恵を―
『所有権』とは言わないまでも『既得権・先取特権』を主張するぐらい許されても良いのではないでしょうか?

『途中参加組』に対して『先輩の顔も立てておくれよ』と言うくらいは…」


アパート男は顔が上気してくるのを感じる。

二羽はまだじっとアパート男を見つめたままだ。

アパート男は残りの言葉を一気に吐き出す。

この際だ!!!

自分の旗色を明かしておこう!!!

アパート男「人類は確かに多くの過ちを犯してきました。同族同士の陰惨で残虐な歴史だけではありません。

マンモスを、ナウマンゾウを、陸生オオナマケモノを、モアを、ドードーを、ステラーカイギュウを、
リュウコウバトを、トキを、ニホンオオカミを、二ホンカワウソを絶滅に追いやって来ました。

蘇ったそれらのフレンズの方たちのご心中を考えると、胸が痛むこともあります。

しかし、それは当時の人間が、絶対の強者で左うちわで胡坐をかいていたと言うわけではない!

ほんの最近まで、人間も貧しく、人々にとり死は間近な物でした。
女性が飢饉の度に身売りをし、生まれた子供が10人いれば大人になって子孫を残せるのは半分以下。

そう言う時代がほんの少し前まで続いてきたのです。
そして、先進工業国以外の世界ではそうした地域が今なお存在する。

それに、人間ほど大規模でなくても今生きている生物は、
大なり小なり他の生物を進化の過程で蹴落としてきたはずです。

仮に『サルの子ら』ではなく、『恐竜人間』や『イルカ』が地球の支配者になっても同じようなことは起きた筈!!!」


アパート男はぐっと二羽の『非人類型知的生命体』の目を覗き込む。

人間の美少女のようなその表情から感情を読み取ることは、まだ自分には難しい。

アパート男「だから私は『人類こそ地球にとって最大の害獣』等と言う人は大嫌いです!

『非国民』とさえ思う。

自分達子孫がそんな戯言を温かい部屋の中、美味しいものを飲み食いしつつ言えるのは!!!

氷河期の厳しい寒さの中、マンモスを狩り殺し、ナウマンゾウを蹴落とし、
がむしゃらに生き延びてくれたご先祖様が存在したから!!!

今の豊かな暮らしが有るのは大航海時代、おが屑で水増ししたカビだらけのパンを齧り、
壊血病に悩まされながら、モアやドードーを殺しながら、人類世界を一つに繋いだ先人たちの功績があってこそ!!!


フレンズやけもの達から見れば傲慢そのものでしょうが…。

自分がご先祖の犠牲と挺身に乗っかっていることを殊更に無視して、
そう言う放言をすることは私には許しがたく感じられるのです!!!」

ハア!ハア!

アパート男「(い…、言っちゃった…。さあ、どうなる?どうなる!煮るなり焼くなりすきにしてくれ~)」

パチクリ!

賢者の娘らは視線を交わした後、アパート男に声を掛ける。

子孫博士「アパート男さんの気持ちは良く分かりました。しかし、本題から少し脱線が過ぎるようなのです」
子孫助手「脱線が過ぎるのですよ。熱くなりすぎです。『被害者連盟』と言うのはあくまで例えと言うか、
言葉の綾なのです」

特に気を悪くした様子もなく、二羽のフレンズはアパート男に言葉をかける。

ハア!ハアー!

はあ~~

アパート男「(あれ…。怒ってない?
俺は今、『異種族』から見れば相当『自種族中心史観』的な見解を述べてしまったのに)」

呆気にとられているアパート男に子孫助手は視線を向ける。

―そろそろ、先を話しても良いのですか?―

アパート男は頷く。

子孫助手「次に『公益社団法人日本フレンズ協会』としてアライさんをどう考えているのか。

これに関しても、協会内で統一したコンセンサスが有るわけではなく、
世論の動向や政府の要請次第でも大きく判断は左右されますが…。

概ね『局外中立的立場を堅持したい』という意向が強いと私は感じているのです」


アパート男「(『私(子孫助手)は感じている』か…。慎重な言い回しだな)」

アパート男「そこでいう『局外中立』とは?戦時国際法上の規定に準じたものですか?」

子孫助手は頭を振る。

子孫助手「いえ、違うのです。あくまで例え。

そもそも日本フレンズ協会は日本国内法に基づき公認されている『公益社団法人』。

厳密な意味での中立などはないのです。

アライさんは害獣、特定有害フレンズ。それが日本政府の判断なら、それをどうこう言う立場にはありません」

そこで言葉を区切ると、子孫助手はじ~とアパート男の顔を見つめる。

子孫助手「『局外中立的立場を堅持したい』と述べたのは、

フレンズ協会自体が機関としてアライさんの根滅政策に動員されることは、
協会の規定・設立目的からも有り得ないと言う意味です。

協会員の各個別のフレンズが、
例えば自衛官・警察官・農業従事者等としてアライさん防除活動に従事する分には特に嘴をさしはさむ理由はないし、

各フレンズが経済活動をして納めた税金の一部がアライさん防除予算に使われることも特に異存はないのです」

それまで黙っていた子孫博士はここで口を開く。

子孫博士「逆に言うならば、日本国のアライさん政策を巡り、

例えば一自衛官フレンズが『良心的軍役拒否』を行い、
あるいは一社会人フレンズが『良心的納税拒否』を行った場合。

彼らは勿論、国法、内規、租税法などで制裁を受けるのでしょうが―
日本フレンズ協会はその設立目的と内部規定に基づき日本の法規を遵守した上で彼らを全力でサポートします。

何らかの内部告発が行われた場合、異種族間で結ばれた協定を片側が一方的かつ悪質に破約したことを発見した場合も同様なのです」


アパート男「(「ふ~む。なるほど。アライさん害に憤りを覚える一市民としてはもどかしいが…。

フレンズ協会さんとしては、まあ、仕方ない…)」

子孫博士「ここからはオフレコでお願いします」

ふん。ふん。

えっ!!!

アパート男「お…オフレコ!!!」

子孫助手「や…役員!!!」

一旦ここまでです。

けちつけるようで悪いが
ここのアライさんの文化レベルと
人間がアライさんに感じている脅威度に違和感を感じる
人間に似た姿・人間と同等の知能を持っているのだから
人間社会にまぎれて生活し、事件を起こすアライさんが発生するはずだ
都市部だったらいくらでも紛れ込めるだろうし
フレンズの力で暴れられたら相当脅威になる
イメージとしては仮面ライダークウガのグロンギみたいなもの?で
人類としても本格的に根絶を目指しているとおもう
例えば『人間にばけたアライさんが食い逃げして
逃げる途中人を負傷させた』とかいかにもありそうじゃない?

続きを書き込みます。

480さん。遅くなり申し訳ありません。お時間が出来たときにご覧になって下されば光栄です。

最近少し、体調が悪化傾向なので頻度や書き込み量が少なくなるかもしれないことをご報告しておきます。

ガチャ!

アパート男「い…、一旦録音機を御止めしましたが…」

アパート男は心配半分、期待半分と言った面持ちで子孫博士の話を待つ。

アパート男「(一体どんなお話を?多分アライさん関係…のはずだが)」

向側の子孫助手は、自分の上司にして大事な『相棒』を心配そうに眺める。
それに子孫博士は軽く頷くと言葉を続ける。

子孫博士「先ずこれからお話することは、一平役員である私の個人的見解なのです。

日本フレンズ協会の公式な姿勢でもないし、
さらに言えば私自身の『公』的な身の振り方とも一致しない部分があるのです。

その上で、話す言葉を『字面通り』と言うよりは『斟酌』しつつ聞いて欲しいのです」

アパート男「…」コクリ

アパート男は黙って頷く。
子孫助手は相変わらず心配そうだ。
止める瞬間を伺っているのが自分にも伝わって来る。

子孫博士「かつての邂逅と共闘以来、人類とフレンズは『共存・共栄・共生・(可能な限りの)平等』を
目標とした『フレンズ共同参画社会』の実現を目指しているのです。

ただ、その共存・共栄・共生・平等とは誠に曲者なのです。

アパート男さんが先ほど述べられたような人類側の感情・言い分も存在するのです」

アパート男「それは…。分かります。

各国でもフレンズを…、その…。『家畜・動物園の展示動物の上位互換的存在として人間社会に受け入れれば良い』
という自種族中心主義者が『アニマルヘイト』運動を起こして物議を隠していると。

わが国でも『住み分け』と言う言葉を用いた一種の『分離主義』や、
さらに過激な『アニマルヘイト』を唱える人たちも少なからずいらっしゃるとか」

アパート男「(『共存・共栄・共生・平等』のうち、とくに『平等』が曲者だ。

どうしても俺たちは『人間が優位な平等』をイメージしてしまう。

『気が優しく力持ちの、ちょっとお頭が弱いフレンズを、
賢い人間が教え・導き・指示を与え調和のとれた社会を築きましょう』。

フレンズから見れば我慢のできない話だろう。
ガラスの天井どころか、鉄塊の天井のもと、被隷属種族の待遇を半永久的に強いられる…。

そう思ってしまうけものが出ても無理はない。それを避けるためには…)」

子孫博士「そう言ったことを具体的に改善する方法の是非の議論はまた後なのですよ。

今は、アライさんの話題なのです。

私自身は、アライさんを私達フレンズ全体のリトマス試験紙兼調整弁ぐらいに思っているのです」

子孫助手「や…役員!!!そのへんにするのです!!!」

子孫助手の制止を子孫博士は逆に抑え込む。

子孫博士「『上』の方はもう皆悟っていることなのですよ!人間側だってバカじゃないのです!!!」
子孫助手「でも!!!だからと言って!なぜ!!!」
子孫博士「『仲間』が、あるいは『理解者』が要るのです。そう言った働きかけを折に触れ…」

アパート男「(『リトマス試験紙兼調整弁』…。アライさんが?う~む)」

息がぴったりな様子だった二羽が少しもめているが…、
恐らく子孫博士は研究者の卵と言う自分の社会的立場に期待をして、
少しの『本音』を観測気球として上げてみようと思ったのだろう。

アパート男「(良し!ならば!!!)」

アパート男「役員さん、補佐官さん。私は個人的には様々な思いや思想が有りますが、
それ以上に今は研究者としてこの場に身を置かせて頂いています。

どうかお話しできるところまででいいので続きをお聞かせ願えないでしょうか?」

子孫博士は子孫助手と一度視線を交わした後。アパート男に再び体を向ける。

子孫博士「お見苦しいところを見せたのです」
子孫助手「お見せしたのですよ…。我々はまだ未熟者なので」

もう息をぴったり合わせる。

そして今度は、『役員』の立場を慮り、子孫助手が続きを打ち明けてくれた。

子孫助手「フレンズには様々な立場のけもの達が存在するのです。

各種族、『ジャパリ組』、『現地フレンズ化組』、再建戦争後に移民ならぬ『移獣』してきたもの。

ただそれぞれのけものは共通して、ある恐れを心の中に抱き続けているのです。

『人間が異種族の自分達を迫害し、家畜化し、さらには民族浄化ならぬ『種族浄化』ジェノサイドを

『何時か』行うのではないか、と」


子孫博士「我々フレンズは、人間との間に子供を産むことが―将来の生殖医療の発展可能性を除けば―不可能です。

その為、人間側から見れば、人口の数%~将来のフレンズの出生能力の安定・向上化によっては、
数十%もの『異種族』を。血統的に絶対『同化』出来ない異邦人を社会に抱え込むことになるのです。

それは、双方にとって強いストレス要因となる…、と言うかすでになっているのです」

子孫助手「特にフレンズの中では、日本の特定外来生物由来のフレンズが、
殆んどノイローゼ寸前の個体も出るほどストレスを感じているようなのです。

一々種族名を上げると長くなりますが、例えば、キョンやヌートリア、ハリネズミ、カミツキガメのフレンズは
アライさん問題や『フレンズ化していない同族』がテレビで取り上げられ『駆除』と言う言葉を聞くだけで、
泣き出してしまうものまでいるのです。

だから、アライさんは―日本のアライさん政策は、私たちのリトマス試験紙。
その色の変化を我々は常に注視しているのですよ」

アパート男「…」ゴクン

アパート男「(そこまで悲観しなくても…。と思ってしまうのは、自分が多数派・強者の立場だからか…。

人間の歴史でジェノサイドだの、強制移住だの、奴隷化だの、民族浄化だのと言ったことは何度もあった。

『人間同士でもそんなことをするなら自分達はなお危ない』、そう思われてしまうのもしたかないか…)」

アパート男「では、調整弁と言うのは?」

子孫博士が口を開きかける前に、子孫助手が話し出す。

子孫助手「文字通りの意味なのです。アライさんはフレンズであってフレンズでない特殊な存在。

この日本では唯一人間の体制下に組み込まれていないけものなのです。

それは、『人間フレンズ双方にとって都合がいい』面が有るのです。特にフレンズ側には…」

アパート男「???」

子孫助手「例えば、一部の人間が持っているフレンズに対するヘイト意識
―恐れ、異物感、不気味さ、敵意、差別意識等―をアライさんにぶつけさせることで、
他のフレンズはある程度、その直撃を免れている面もあるのです。

また逆に私たちフレンズは日本法体制に完全に組み込まれ、独自の武力機構を持っていません。

人間から『酷いこと』をされれば勿論、それを訴えますが、訴えた先の機関の支配者も人間。

これでは人間に侮られてしまいかねないのです」

子孫博士「その点、アライさんは『自由』が効くのです。つり合いが取れないほどのリスクの上での自由ですが。

日本国に庇護されないばかりが、その存在自体を否定されているアライさんが、

日々の生き残りのために、畑を荒らし、時に猟犬猟師を返り討ちにすることは、

けものからしてみれば、何の不義理もないのです。

あなたたち人間にとっては不愉快千万なことなのでしょうが…。

私たちフレンズは、アライさんが畑を荒らすたびに、猟犬を返り討ちにするたびに思うのです。

『これで人間は少しは分際をわきまえるだろう。もし、アライさんどころか我らフレンズ全てを敵に回せば、
犠牲はそんなものじゃすまないぞ!そこを良く考え忘れるな』と」

アパート男「つまり、フレンズ全体のためにアライさんを人間のサンドバックとして差し出し、

同時にフレンズ全体のための部分闘争をさせている、と…。アライさんはフレンズにとって『独立遊撃隊』?」

子孫博士「本人ならぬ本獣にそんな自覚はないのです。

アライさんはそもそも群れないけものですし、人間に『屈服した』我々を見下しているはずなのですよ」

子孫助手「見下しているはずなのです。

今、アパート男さんにお話したことは、あくまで全体を俯瞰すればそう言う面がある、と言うことなのです。

誰かがそう仕向けているとか『黒幕』がいると言う話でもないのですよ」

そう話したうえで、子孫博士はキッとアパート男さんを見据える。

子孫博士「日本フレンズ協会は日本のアライさん政策については『局外中立的立場』を堅持したいのです。

ただ、それと同時に…、『種族浄化』の前例がこの地にできてしまうことも望ましいことだとは、
『私』は思っていないのです。

アライさん以外の怯えるけもの達に火の手が回ろうとしたとき。

あるいはアライさん問題にしても、日本政府が恥も外聞も捨てた普通ならやらないような強硬手段で
一気呵成に短絡的に問題を解決しようとしたとき、我々は…」

ジロリ!

子孫博士はアパート男の双眸を覗き込み口を閉じる。

アパート男「(『我々は…』なんだ…?)」

じー。子孫博士を見る。博士はそのままだ。

困ったように子孫助手を見る。

子孫助手もそのままだ。

アパート男「『忖度』してねってことですね!?」

その反応を見て、二羽はニッコリ微笑む。

子孫博士「さあ。もう録音を再開しても良いのですよ」

今日はここまでです。

今日はお休みです。

500、501さんご愛読ありがとうございます。

ご質問には、今後のネタバレになってしまう要素もあるかもしれないので全てはお答えできません。

ただ、ご質問のいくつかは、すでに物語で開示されている部分、ほのめかされている部分もございますので、もしよろしければ、
ウォーリーを探す様に見つけていただけると幸いです。

また、薄学の身としては502さんのようにふんわりと読んでくださっても、自分としては気が楽ですし、503さんがおっしゃるように雑談スレも有効活用していただければと思います。

続きを書き込みます。

大母アライさん「―それに今回の戦いの戦果はまだ有るのだ!それは…」

ピクッ!

…カラン

シーン


大母アライさんはサッと周りのアライさん達に目を配る。

大母アライさん「(お前達!聞こえたのだ?)」

ピクッ!ピクッ!ピクピク!

周囲のアライさん達は一斉にケモ耳を動かし始める。

小姉アライさんは、保母アライさんと子供らを率いて動き出し、『死に損ない』アライさんは必死に身を起こし、
大姉アライさん以下の成獣アライさんは腰刀や竹槍に手を伸ばす。

ダッ!

大母アライさんのお供アライさんは、二匹でワンペアになると物見に駆け出していくが…。

視界から消えてすぐに、一匹が別の子分アライさんと共に戻って来る。

大母アライさん「何事なのだ?」

子分アライさん「敵襲にあらずなのだ!!!

『家族』の縄張りの向こうから、余所者アライさん達が来て、大母アライさんに会見を申し込んできているのだ!!!

今は、山姉アライさん達が見張っているのだ!」

大母アライさん「『達』とは何匹程度なのだ?」

子分アライさん「ええっと…」コスリコス…

パチン!

ビクッ!

大母アライさんは、ハエガイジムーブを始める子分アライさんの手を叩く。
『水中戦と傷口の回復以外その所作は不要!無駄に空気を動かすな!』

大母アライさん「…」ギロリ!

子分アライさん「う…う…」ビクビク

大母アライさん「何匹なのだ!!!」

子分アライさん「ろ…6匹なのだ…」

大母アライさんは、それを聞くや顎をしゃくり、目線で合図する。

『小姉アライさんは、保母アライさん達とチビ達を守り、そのまま身を潜めるのだ!』

『大姉アライさんと洞姉アライさんは、お供アライさん・子分アライさんらと共についてくるのだ』

ササッ!

皆が素早く動き出す中、一匹のアライさんが一拍遅れて、やや不自由そうについてくる。

『死に損ない』アライさんだ。


ザッ!

大母アライさん「足手まといなのだ!そこらで寝てればいいのだ!!!」

一瞥もくれずに大母アライさんは前に進んで行く。

その背中に向け、『死に損ない』アライさんは必死に声を掛ける。

『死に損ない』アライさん「そうはいかないのだ!アライさんは、大母アライさんに命を救われたのだ!!!
だから恩を返さないと…」


大母アライさんは、余計なことを言っている『マヌケ』を無視する。
このタイミングで会見したいアライさんが寄って来るとは!餌を分けてくれとでも、言うつもりか?


大母アライさん「(ガイジが!『家族』でもないのに助ける義理はないのだ!

そんな寝言を口にした瞬間に、奴らがこっちの餌なのだ!)」

釣れない態度を取り続ける大母アライさんに『死に損ない』アライさんは、声を掛け続ける。

『恩を返したい』!!!アライさんにあるまじき言葉だ!

少なくとも、旧来のアライさん像とは大きく異なる。

単独ないし、子連れで生きるアライさんが『相手』を意識した言葉を発するとは!!!

『適応』や『家族』の形成・その接触の中で、アライさん達にも変化が生じるものなのか…。
あるいは、『変化が生じ始めたからこそ』このタイミングでこういう動きが―


『死に損ない』アライさん「肉の壁にでも、鉄砲玉にでもしてくれれば良いのだ!
アライさんには、もう姉妹が…。

家族がいない!

大母さん達が居なければ銃で死んでいた『鉄砲玉アライさん』なのだ!!!だから―」


『死に損ない』アライさん「(だから、アライさんを必要として欲しいのだ…。

どうか『群れの仲間』として認識して…)」

パン!

ドサッ!

大姉アライさん・洞姉アライさん・お供・子分アライさん「「「!!!」」」ビクッ

大母アライさんが、しつこく声を掛け続けた『死に損ない』アライさんに業を煮やして張り倒す。

大母アライさん「やかましいのだ!!!敵なのか味方なのか分からない連中が間近に迫っているのに、
詰まらないことをぐずぐずと!!!ガイジなのか!!!」

キシャァァァー!!!

『死に損ない』アライさん「…」ウルウルシクシク

流石に言い過ぎなのだ…。手下の手前もある。

大姉アライさん「お…。大母さん―」

取りなそうと、大姉アライさんが口を開くより早く、大母アライさんは半身で振り向き『死に損ない』に告げる。

大母アライさん「それと!『鉄砲玉』は流石にゲンが悪いから、『鏃(やじり)』にしておくのだ!
『鏃アライさん』、そんなにお望みなら、以後『軍馬の役を以って奉仕する』のだ!!!」

『死に損ない』アライさん改め、『鏃アライさん』「…」パチクリ!!!

それだけ告げると今度こそ、大母アライさんは振り向かず、その余所者アライさん達の下に向かう。

お供アライさん達が、クマの大きな毛皮とケモ耳ネックレスを持ってくる。

バサッ!!!

それを羽織り、首にかけ、如何にも根拠不明な不遜さで胸を張り、下品に歩き続ける背中に向け、
さっきまでの『死に損ない』は声を張る。

鏃アライさん「はい!!!じゃなくて…大吉なのだぁー!!!」

コスリコスリコスリシッポフリフリ!!!

タッタッタッ!!!

鏃アライさんが痛む体に鞭打ち、傷口を必死に撫で擦りながら後ろを追いかけてくる音を耳にし、
『家族』アライさん達一同はほんの少しだけ、歩調を合わせてくれる。

大母アライさん「(まあ、忠実な『肉の盾』『番犬役』はお供に一匹居ても良いのだ…。
相手方次第では早速出番かも知れないのだし―)」

大母アライさん「それで…。お前たちはいったい何なのだ?!」

大母アライさんは古い切り株の上に腰を降ろして、目の前で胡坐をかく6匹のアライさん達を見下ろす。
どのアライさんも普通のアライさんより毛並みが良く、立派な体格だ。

大母アライさん「(飢えて食い物を乞いに来たと言うわけではなさそうなのだ…。
臭い的に、親子アライさん2組と姉妹アライさん1組。皆成獣なのだ)」

大母アライさんはチラリと周囲に目を配る。

大母アライさんの向かって右には中姉アライさんが、左にはさっき改名した鏃アライさんが立って居る。
やや後ろにはお供アライさん達が。大姉アライさんは中姉アライさんに代わって全体の指揮を執りに行った。

洞姉アライさんが後ろを見張り、それまで見張り役をやっていた山姉アライさん達が側面から計12匹ほどで監視を続けている。

余所者アライさん達は、大母アライさんに問いかけられて、困った顔をする。

どうやら、デカいクマの毛皮とケモ耳ネックレスにビビっているらしい。

山姉アライさん「(これは恒例行事のような物なのだ。まずは侮られないことが大事!
アライさんも幹部として段々理解が進んできたのだ!)」ピカピカガイジガオ

やがて、6匹のアライさんの中で一番年長そうなアライさんがおずおずと声を上げる。

余所者アライさん1「お…、大母アライさん。
人間との戦い、ご戦勝おめでとうございますなのだ!」コスリコスリシッポフリフリ

その傍らのアライさんも声を上げる。余所者アライさん1の一旦巣立った後の娘だろう。

余所者アライさん2「アライさん達は、そのご活躍を遠目に目の当たりにし…。
あるいは伝え聞いて居ても立ってもいられずに馳せ参じたアライさん達なのだ!!!

アライさん親子は、大母アライさん達の『家族』の縄張り
―人間達が『蛇張村』と読んでいる地方―の少し北側に暮らすアライさんなのだ。
そこでちょっとした顔役(?)的なことをやっているのだ」コスリコスリシッポフリフリ

山姉アライさん「(大母さんの『家族』に加わる前のアライさんみたいなのだ。

そうか!!!

この前の『戦い』は人間の群れの単位『しちょーそん(?)』『けん(?)』を跨いだ辺りでやり合っていたのだ!

『じゃぱりむら』は『けんの最北端』!3つのけん(?)と隣り合わせだと聞いたことが有るのだ!
と、言うことは…)」


余所者アライさん3「アライさんと、この隣のアライさんは姉妹なのだ!」
余所者アライさん4「その妹のアライさんなのだ!
アライさん達姉妹は、ここから少しだけ西側の顔役をしているのだ!

ご戦勝をお祝いいたすとともに虐待に曝されていた同族を仇敵から奪還した義侠心に惚れ込んできたのだ!」コスリコスリシッポフリフリ


そう言って余所者アライさん4は、大母アライさんの傍らに立つ鏃アライさんを見上げる。

大母アライさん「(ほう!肉壁以外にも早速役に立っているのだ!)」

鏃アライさんは少し照れくさそうな困った顔をしている。

アライさん達は『群れないけもの』としてこれまで生きて来た。

だから、『相手』とのコミュニケーションが上手とは言えない面がある。

同族でさえこの調子なのだから、他のフレンズとはもっと難しいだろう。

まして人間相手となると―。

人間の側の工夫と根気が無ければ無理な相談だ。いや、だった、になりつつあるのか?


余所者アライさん5「アライさんも右に同じなのだ!あ…、ちなみに住処はここから少し東なのだ!

こいつは娘で、巣立っていたのだけど、因果を含めて連れてきたのだ!」コスリコスリシッポフリフリ


余所者アライさん6「お母さんから、お噂を聞いてここに参ったのだ!

アライさんが『群れる』なんて最初は変だと思ったのだけど…。

確かに人間から生き残るためには、そう言うことも大事になってくることは分かるのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ


余所者アライさん6匹は口々に話始め、言い終えると少し気まずい間が空く。

大母アライさんは北・東・西から来たと言うアライさん達をジーっと見つめ続ける。

やがて、口を開いて一つずつ問いただしていく。

大母アライさん「先ずは遠い所からわざわざご苦労なのだ!幾つか問いたいことが有るのだ!

初めにまず、お前達は、つまり『家族』に参加しに来た、と言う認識でよいのだ?」


余所者アライさん達「「「はいなのだ!!!」」」コスリコスリシッポフリフリ


余所者アライさん達は元気よく答えるが、周囲のアライさん達は何か違和感を感じたような顔になる。


中姉アライさん「(そうか…。いつもここは『大吉なのだ!』と言うようになっているのだ…。
すっかり当たり前になっていたのだ!後でこいつらにも教えとかないといけないのだ!)」

洞姉アライさん「(大母さんとこいつらを後ろから見て思ったのだけど、

無意味にコスコスすると威厳が無く見えるのだ…。

大母さんは偉大なのだ!

『姉』号を持つ身として気を付けないといけないのだ!

よく考えたら、元種のアライグマだって必要ある時しかコスコスしないのだ!!!)」

山姉アライさん「(アライさん達はこれまで、『相手』を考えて思いを表現する必要はあまりなかったのだ。

せいぜい親子・姉妹、あとは隣近所のけもの同士や人間との唸り合い・睨み合い・化かし合い…。

だけれども、これからは『相手』を考えて威厳を見せたり、砕けた態度を取ったり、
その真ん中を選んだり…しないといけないのだ。

大母さんは意識してそれをしていると言うよりは、ただ『無駄が嫌い』なだけかも知れないのだけど。

大きな発見なのだ!

子分アライさん達は兎も角、大母さんや姉アライさん同士ではこのことを共有して置かないと!!!)」

姉アライさん達が頭の中を整理している間にも、大母アライさんと余所者アライさん達との問答は続く。

大母アライさん「お前達は『顔役』を名乗ったのだ!具体的に何匹づつくらい影響力が有るのだ?」ジロリ

余所者アライさん1「アライさんと娘アライさんの方は合わせて20匹ぐらいなのだ!」コスリコスリシッポフリフリ

余所者アライさん3「アライさん達姉妹の方は合わせて25匹くらいなのだ!」コスリコスリシッポフリフリピカピカガイジスマイル

余所者アライさん5「アライさん達親子は会わせて15匹くらいなのだ…」ションボリコスリコスリシッポフリフリ

ハエガイジムーブしながら答えていく、北・東・西のアライさん達。


それを見ながら、『姉』号持ちのアライさん達はまた、思案を始める。


中姉アライさん「(こいつらガイジか!

大母アライさんの反応を見る限り、今回はそんなつもりはなさそうなのだけど…。

まだ帰順条件の交渉の最中なのにペラペラと。

『やっぱ止めるのだ。お前らは皆殺しなのだ!』となった場合に備えて、
そう言った情報は秘匿しなければいけないのだ!)」


洞姉アライさん「(いや!こいつらは自らの旗色を明かしに来たのだ!
なら変な小細工をせず、いっそのこと包み隠さず自分達の身を委ねるのもありなのだ?!)」


山姉アライさん「(ただし、それは最低限の確約を貰ってからの話なのだ!

大母さんはまだ、『帰順に来たのか』と確かめただけで、『受け入れる』とは一言も伝えていないのだ。

勿論、こいつらを監視していたアライさん自身もそんなこと言ってないのだ!

万事がこの調子なら、人間から『バカ』の同義語として『頭アライさん』と言われるのも納得なのだ…)」

大母アライさんの問答は個別の論点に移る。

大母アライさん「余所者アライさん4!お前は大母さんの義侠心を随分買ってくれているようなのだ!
成程、確かに大母さんとて同族が人間に害され、虐げられるのは愉快なことではないのだ!しかし―」


大母アライさんはチラリと傍らの鏃アライさんに目をやると言葉を続ける。


大母アライさん「今回のことはあくまで例外!アライさんの『家族』は今を生きるけものの『適応』の結果!

アライさん同士でも争うし、時に喰らい合う!

それに人間との闘いは本来、もっと静かな形で地味に地道に行われるのが望ましいもの。

派手な『戦争』を期待していると当面、肩透かしを食らうことになるのかもしれないけど大丈夫なのだ?」


余所者アライさん4「大丈夫なのだ!!!流石にそこは承知なのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

中姉アライさん「『大吉なのだ!』」

思わず、中姉アライさんは口を挟む。

余所者アライさん4「???」

小首をかしげる余所者アライさん4に中姉アライさんが諭す。

中姉アライさん「この『家族』では、『はい』、『承知しました』、『Go』、『万歳!』という時、
代わりに『大吉なのだ』と言うのだ!!!儀式や作戦中も使う大事な言葉だから、今のうちに覚えるのだ!!!」

余所者アライさん4「だ…、大吉なのだぁぁぁー!!!」コスリコスリシッポフリフリ


中姉アライさん「(ちょっと頼りないのだ…。いや、少し前のアライさん達もそうだったのだ!

アライさん達はご先祖から受け継いだ適応力・学習能力が強み!!!

これからもドンドン適応し、学ぶのだ!『学習する群れであり続けること』が生き残る活路なのだ!!!)」

大母アライさん「次に余所者アライさん6!

確かにアライさんは群れないけものだった!それはご先祖にとって群れない方が利点があったからなのだ。

でも、一旦、群れて『家族』になったら最後、『裏切り』は許さないのだ!!!」


ギロリ!!!


余所者アライさん6「…」ゴクッ!

大母アライさんは、余所者アライさん6の目を見つめ、その後、他の5匹の目も順番に見つめて行く。


大母アライさん「『群れる』ことには利点と欠点があるのだ。

それに『家族』になれば絶対に安全と言うわけでもないのだ。

もし、避けられないのならば『家族』内で一番弱ったアライさんを喰らうことさえ十分にあり得るのだ!!!

それが自分かも知れないのだ!!!」


ビクッ!

グッ!


6匹のアライさんは一瞬身を固くする!

周囲を固めている子分アライさん達は獲物を握る手に瞬時に力を籠める!

6匹のアライさんの中で一番年長である―間違いなく大母アライさんよりは年上であるだろう―
余所者アライさん1は、静かに問いかける。

余所者アライさん1「それは、けものの定め…。承知のことなのだ!
ただ、そこまでアライさん達に強く覚悟を求めるならば、大母アライさんにも一つ問いを許して欲しいのだ!」

いつの間にか周囲には不思議な静寂とピンと張った空気が漲っている―

中姉アライさん「(何なのだ!何を問うのだ?)」

大母アライさん「フン!」

手を振って促す。『なんだ?』

余所者アライさん1「先祖の例から外れ『群れ』て、時には『喰らい合って』。
その先にアライさん達は何を目指すのだ?」

じーっ!!!

真剣な面持ちで余所者アライさん1は問いかけるが、大母アライさんは吹き出してしまう。

フフフッフ!

フフフフッフ!

大母アライさんが笑い出すのを見て、余所者アライさん達は心外そうな顔をする。

大母アライさん「(何か同じ質問に何度も答えて来た気がするのだ…。

まあ、皆、そこは気になるのだ?たいがいアライさん達も人間かぶれして来ているのだ!

けものは今を生きるもの!『先』など在りはしないし、考える必要はないと言うのに!!!)」

とは言えとりあえず答えておこう!聞かれたのだし!

そう言う生きる気力の源のような物は『家族』を運営するうえで大事になるのかもしれない…。

大母アライさん「日月山河すら形を変え行くもの―。アライさんはそう聞いているのだ。
そして、けものは胎から生まれ土に何時かは帰る定め」

大母アライさんは、余所者と古参を一緒に見つめながらゆっくりと話していく。

大母アライさん「人間は感覚として、空の上に天国が、地の下に地獄があると信じているらしいのだ。
でも、アライさん達は違う。アライさんにとり地獄は常の住処なのだ!」

特定有害フレンズとしてこの地に生きるアライさんは、産声を上げた瞬間に地獄は定まったもの。
いや、程度の差は有れけものにとって生きると言うことは―

中姉アライさん「(うん…?)」
洞姉アライさん「(大母さんが弱気?)」
山姉アライさん「(???)」

大母アライさん「…」ジロリ

暫し、皆を見つめ…。
その後、ニッタリ笑って見せる!!!本当にムカつく顔で!!!

大母アライさん「ならば、その地獄で!!!天下取ろうとしなきゃ、嘘なのだ!!!」カッッ!!!

クワッと目を見開くや、その眼光を問いを投げた余所者アライさん1に叩き付ける。

余所者アライさん1「天下を…とる…?」

如何にもアライさんらしい―

余所者アライさん達「「「(日月山河すら形を変え行く。けものは胎から生まれ土に帰る定め)」」」

姉アライさん達・子分アライさん達「「「(アライさんにとり地獄は常の住処。ならば―)」」」

一同アライさん達「「「「「その地獄で!!!天下取ろうとしなきゃ、嘘なのだ!!!」」」」」コスリコスリコスリコスリシッポフリフリフリ


何やら感極まって結局、新参古参そろってハエガイジムーブ!!!
やっぱりアライさんは、まだまだ頭アライさんらしい―

鏃アライさん「(天下を取る?天下を取るって!?
大母さんは超長期的には人間との和平も有り得ると言ってたのに矛盾するのだ?)」

そう思い咄嗟に大母アライさんの方を向くと、大母アライさんも鏃アライさんを見つめている。
―ちゃんと、意味、分かっているのだ?―

鏃アライさん「(???)」

鏃アライさんの困った顔を見ると大母アライさんはプイっとそっぽを向いてしまう。

それくらい自分で考えるのだ!

武力で政府を倒そうとか、そう言う意味で言っている訳じゃないくらい分からなきゃダメなのだ!!!

大母アライさん「(天下を取るって言うのは、この広い天地の間で!己が才覚と小さな体を頼りに!
自らの運命を切り開く気概を指しているのだ!!!

嫌なことを嫌と言えるように!マスコットでもガイジでもなく、アライさんとして!

結局アライさん達が目指すことはそこに尽きるのだ)」

もし、大母アライさんが人間の小難しい言葉をもう少し知っていれば
『自己決定権の獲得をその最終目標としている』、そう言っただろう。

生きるに足る理由と死ぬ覚悟を自らの価値判断で決める!

益獣にも、害獣にも、人間と同格な知的生命体にも、自分で選んで生きていけるように!

人間が生まれや育ちや環境に翻弄されながらも、悪人にも善人にも自分で成っていくように。
富貴尊卑を己が掌で掴もうとするように!!!


大母アライさん「(泣き言をぼやく害獣など悪役にさえなれないのだ!!!

しょんぼりボソボソ『ツライのだ~』、虫唾が走るのだ!!!
『害獣』など人間の勝手な都合!!!そう突っ張る気があるなら猶更なのだ!!!)」

大母アライさんは皆にもう一度視線を向ける。

大母アライさん「まあ、それは自分と子孫が生き残ることが前提の話なのだ!!!

その為に皆の死力を結集する。『家族』が目指しているのはそんなところなのだ!これで答えになったのだ?」

余所者アライさん1は暫し吟味すると、深く頷き、大母アライさんの目を見つめ返した。

今日の書き込みはここまでです。

続きを書き込みます。

バシャバシャ!バシャバシャ!

蛇張村から隣町に向けて流れる蛇張川を、薄汚いドブネズミ共が四匹遡上してくる。

そのうちの一匹が、背中の2つの瘤に声を掛ける。

???「ハァ!…。ハァ…。チビ!シッカリするのだ!!!」バシャバシャ!

???「おかーしゃん!!!ちゅめたいのりゃー」ブルブルブル

???「いもーとが、ながされたのりゃ!!!あらいしゃんも、もうてにちかりゃがはいらないのりゃ!」ブルブルブル


大きなドブネズミどもの正体はご存知アライさん。

四匹のアライさんがそれぞれ自分の子供2~3匹を、『仲好しおんぶ』しながら川を上流に向かって泳いできたのだ!

川沿いを歩くのではなく、わざわざ水中を泳いできたのは少しでも人の目を欺くため…。

『へーたい』が『けんもん』をしているのだ!!!

アライさん1「頑張るのだ!チビ達!!!もうすぐ新天地なのだ!
町の意地悪な人間どもの魔の手を逃れるのだ!!!」バシャバシャ!

アライさん2「息を大きく吸うのだ!潜水して一気に『そんきょう』を抜けるのだ」バシャバシャ!

泳ぎが達者なアライさんのなかでも、さらに泳ぎに精通していた自分達姉妹の母アライさん。
もう人間に虐め殺されてしまったが…。

その秘伝の技である。

四匹のアライさんとそのチビ達は、ケモ耳を伏せて川底に腹を擦りながら遂に村境を突破していく。人間に追われることのない楽園がそこにあると信じて―

バシャバシャ!バシャ…

アライさん1「チビ達…」ギュー
アライちゃん1「…。おかあしゃん」ギュー

アライさん1母子は村内に入ると川から上がり、親子で抱き合い温もりを分け合う。
もう一匹のアライちゃんは、あと一歩と言うところで力尽き流されてしまった。

アライさん1「…」ギュー

アライさんは生き残ったチビを抱きしめながら、自分の3匹の姉妹アライさんを見つめる。

アライさん2「…」ギュー
アライちゃん2「…」ギュー
アライちゃん3「…」ギュー

アライさん3「良くチビだけでも…。良かったのだ…」ウルウルギュー
アライちゃん4「おかーしゃん…。おねーしゃんが…。いもうとが…。きょーだいが!!!」ビェェーンビェェーン

最後の一匹のアライさんは虚ろな目をしている。

アライさん4「アライさんのチビ…。さっきまで…、さっきまで!!!背中に居たのだ!!!なのに何で…。う…う…う…」ポタポタポタ

このアライさん達は、姉妹とその子供からなる小規模な親族グループである。

蛇張村よりやや遠い街中で、空き家を拠点にゴミ漁りなどをして生き抜いてきた。

アライさんは人間に見た目がそっくり!
ケモ耳はフードや帽子で隠せるし、尻尾も丈の長いスカートや、ゆったりとしたズボンを履けばごまかせる。

特徴のある釣り目も『女は化粧次第』、廃品や最悪盗みで物は手に入る。
一時的なものなら、無理やりテーピングで『ツライ顔』になれば遠目は何とかなる…。

いざとなったら、ドブ川を泳いで渡るのもお手の物なのだ!!!


アライさん1「(そうやって、頑張ってきたのだ!なのに…)」ブルブル

ある日、お母さんが―今腕の中で震えているチビにとってはお祖母さんなのだけれど―
ゴミ漁り当番から帰ってこなかった。

何日たっても…。

姉妹で相談の上、一旦、抱えられるチビだけでも連れて家を出たその日の晩に―


TTT会町中組1「リーダー!突入準備完了です!」

TTT会町中組2「近所の住民の目撃情報から裏が取れました!
見た目がそっくりな少女達がゴミ漁りをしながら住み着いているって!!!」

TTT会町中組3「4日前に捕まえたアライさんを、根気よく拷問し続けた甲斐があったというものです!!!」


TTT会町中組リーダー「良し!!!みんな聞いてくれ!俺たちがやっていることは動物虐待ではない!!!

今からやることは家屋不法侵入ではない!!!

俺たちの『麗しい国』を守り、取り戻すための正当な戦争行動である!!!」


TTT会町中組1・TTT会町中組2・TTT会町中組3「「「碧き神聖な山河のために!!!」」」

TTT会町中組リーダー「突入!!!」

強烈な正義感に基づき、堂々と法律ごと空き家の扉をぶち抜くTTT会町中組!!!

その後の惨劇に言及するまでも無いだろう―

『おかーしゃん!!!おかーしゃん!!!どこなの…ギビィィー!!!』

グチャ!!!

ビッタンビタンビクビクビッタン!!!


タタタタタッ!

『クルルルルゥ??!!クルルルルゥ―!!!』

ガツン!!!グチャ!!!

ビッタンビッタンビクビクビクビク!!!


『おねーしゃん!!!なんでなのりゃー!!!おかーしゃん!!!おいでがないで』

バリバリバリ!!!

ブリュブリュブリブリブリブリュブッブー

ジョロロロロジョロロロー

アライさん1「(あの夜、アライさん達は全てを奪われたのだ…。
住み慣れたお家も、連れて行くことが出来なかったチビ達も…)」ウルウル

アライさん2「(皆人間に殺されてしまったのだ!!!悲鳴とうんこやおしっこ、血汁が飛び散る音と臭いだけが、
そばに潜み隠れていたアライさん達の下まで届いてきたのだ)」ダッコギュー

アライさん3「(残ったチビを連れて、アライさん達はお母さんのお母さん達が繁殖したという
『じゃぱりむら』に向かったのだ…。

そこはセルリアンが偶にうろつくものの、人間が逃げて行ってだれも住んでいない素敵な的な場所。
そして、さらに前のご先祖達が人間の奴隷施設から逃げ込んで住み着いたと聞かされていたのだ)」ペロペロダイスキ

アライさん4「…。チビ…。せっかく人間の目を掻い潜ってきたのに…」

アライさん4は呆然としている。
打たれ強いアライさんとは言え、『また産めばいいのだ!』になるまではもう少し時間が要りそうだ。


アライちゃん1「おかあしゃん…。げんきだすのりゃ!!!」ジィー

アライちゃん1は母アライさん達を勇気づけるように見上げる。

アライさん1「…」ギュー


アライちゃん2「おたからをさがすのりゃ!!!てんかをとりゅのりゃ!!!」ギュー

アライさん2「…」ギュー


アライちゃん4「きょーだいはまたうんであげればいいのりゃ!!!それがしぜんのせちゅりなのりゃ!!!」

アライさん3「チビは…。本当に可愛いのだぁ…。愛おしいのだぁ…」ウルウル


テクテク!

アライちゃん3は叔母アライさんを見上げる。

アライさん4「…」ボーゼン

アライちゃん3「おばしゃん!!!すたんどあっぷなのりゃ!!!にんげんにめにものみせりゅのりゃ!!!
あらいさんのしっぽのだんすみてげんきだすのりゃ!!!」シッポフリフリシッポフリフリ

アライちゃん1・アライちゃん2・アライちゃん4も母アライさん達を励まそうと尻尾のダンスに加わりだす。

シッポフリフリ!シッポフリフリ!シッポフリフリ!シッポフリフリ!

アライちゃん1・アライちゃん2・アライちゃん3・アライちゃん4
「「「「なのりゃー!!!!」」」」シッポフリフリフリフリフリ


ゾクッ!

人間が見たら怖気がする非常に気持ち悪い光景である。

同じアライさんでも、大母アライさん達『家族』なら、『無駄なことはするな!』と一喝されるところである。

しかし―

アライさん1「チビ…」ポタポタ
アライさん2「こんなに立派に育ってくれて…」ウルウル
アライさん3「あ…、アライさんは、うれしいのだぁー」ダキシメ
アライさん4「ありがとうなのだ…。アライさんは…、生きるのだ!!!」ガッツポーズ

何やら、こいつらは感性が違うようだ…。

テクテクテク!
テクテクテク!!
テクテクテク!!!
テクテクテク!!!!

ヨチヨチヨチ!
ヨチヨチヨチ!!
ヨチヨチヨチ!!!
ヨチヨチヨチ!!!!

4匹のアライさんと4匹のアライちゃんは蛇張村村内を闊歩する。

アライさん1「すごいのだ!本当に人間がいないのだ!」
アライさん2「村の入口辺りには、兵隊がいっぱいいたのに…。不思議なのだ」
アライさん3「きっとセルリアン対策用の『ふーさせん』なのだ。
ご先祖の頃はそう言うのが敷かれていたと聞いたのだ!」
アライさん4「でも、他のアライさんの気配がないのだ…。アライさんたちの遠い親戚筋に当たるアライさん達…。
てっきりここで繁殖していて、争いになることも覚悟していたのに」

アライちゃん1「おなかへったのりゃ」ヨチヨチヨチ
アライちゃん2「いとこあらいしゃん!がまんなのりゃ」ヨチヨチヨチ
アライちゃん3「でもこまったのりゃ…。おかーしゃん!どこにむかうのりゃ?!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん4「このままじゃ、にんげんからにげられても、はらぺこにころされるのりゃ」ヨチヨチヨチ


ヒョコ!ヒョコ!ヒョコ!ヒョコ!

親アライさん達はチビを抱きかかえる。

アライちゃん1「のりゃ?」シッポフリフリ

アライさん1は姉妹とチビらを見渡して告げる。

アライさん「兎も角、丈夫で立派な建物を見つけるのだ!
そこを巣にして、アライさん達は最悪、草の根でも木の皮でも何でも食べれるだけ食べて、
出せるだけのおっぱいをチビ達に飲ませるのだ!」ギュー

アライちゃん1「おかーしゃん」グスン

弱気になる我が子を母アライさんは優しく見つめる。

さっきはチビ達に励まされたのだ!
次は『おかーしゃんたち』の番。

アライさん1「大丈夫!きっと上手くいくのだ!!!」

テクテクテクテク!!!!

足取り軽くアライさん達は進む!

タタタッ!コケコケ!
走り去る影!

アライさん2「(あれはニワトリ!?町ではゴミ漁りで見つけた絵本の中だけでしか見たことなかったのだ!
野生化して、きっと前は住み着いていたはずのアライさんの牙をも掻い潜って、生きていたのだ!!!)」
アライさん3「(すごいのだ!じゅるり!捕まえるのは大変そうだけど、行く行くはきっと…)」

ポン!

アライさん4が姉であるアライさん3の肩を叩く!

そして、し~、と口元に指を立てた後、一方を指さす。

アライさん3「うん…。あ…、あれは!!!」ビク!

アライさん1「動いちゃダメなのだ!!!そのままじっとするのだ!!!」コソコソ

少し視力が弱いアライさん達からも見える距離に、ぬ~と黒い影が地を這いながらこちらを伺っているのが分かる。

『そいつ』と目が合う!

アライさん2「(あれは…。イノシシ?いや、昔ここに住んでいた人間のブタが離されて先祖返りしたのだ?)」

アライさん3「(どっちにしても刺激しちゃダメなのだ!!!イノシシは強健なけもの!!!
アライさん達はチビを連れているのだ!!!)」

じ~!

じ~~!!

両者は暫く睨み合っていたが、やがてイノシシの側から目線を逸らすし、サガサガサッと駆けていく。

アライさん1「?」

カサカサカサッ!!!

その後ろを何匹かのウリ坊が追いかけて行く―

アライさん4「あいつも…子連れだったのだ…」

アライさん4はギューッと今、自分が抱く姪アライさんを強く抱きしめる。

アライさん1は軽く頷くと歩調を少し早める。
この辺りは野生のけものが多そうだ!!!急いで巣を確保しないと!!!

ギィ~!ガタッガタッ!!!

アライさん1「ちょうど良いお家があったのだ!!!」

アライちゃん1「だいじょうかくなのりゃ!ひっろーいのりゃー!!!」ヨチヨチヨチヨチ


アライさん達は村の一角にある大きな建物に忍び込んでいた。

漢字が読めないこのアライサン達は知る由もないのだが、この建物は『蛇張村立蛇張小学校』。
かつて明治時代に、この地域の人達がお金を出し合って建造した半木造家屋で、村の自慢、誇りだった。

村民たちは半ば諦めていたのだが、3棟あった建物のうち1棟が焼け残っていることが分かり、
村長・村議会が県兵に『可能なら損害を出さないで欲しい』と頼んでいた。

アライさん2「お…、お姉さん!!!見るのだ!食べ物なのだ!!!」コスリコスリコスリ

アライちゃん1「た…、たべもの!!!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん2「ほちーのりゃー!!!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん3「あらいしゃんのものなのりゃー!!!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん4「どくのぉりゃーー!!!」ヨチヨチヨチヨチ


アライさん2「チビ達!落ち着くのだ!!!大丈夫なのだ!!!
これは堅そうだから、まずアライさん達が食べてお乳に変えてから、あげるのだ!!!」アセアセ


アライちゃん1「じゅるいのりゃー!!!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん2「おっぱいまてないのりゃ!!!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん3「おねがいなのりゃ!うえじにしそうなのりゃ!!!」ヨチヨチヨチ
アライちゃん4「おばしゃん!!!いじわるちないでぇー」ヨチヨチヨチヨチ


アライさん3「これは…。乾パンなのだ…。砕いて、水に溶かせば多分チビ達でも口にできるはずなのだ!!!」

母アライさん達は視線を交わし合い、一つ頷くとチビらに声を掛ける。

アライさん1「チビ達!水を持ってくるまでは我慢するのだ!」コスリコスリ

アライちゃん1「げぷぅ」ヨジヨジヨジ

アライちゃん2「げっっぷう」ヨジヨジヨジ

アライちゃん3「げっぷげっぷう」ヨジヨジヨジ

アライちゃん4「けっぷぅ」ヨジヨジヨジ

アライちゃん達が、げっぷ勝負をしている。


アライさん1「あああぁぁぁ」ブリュブリュブリブリブリ

アライさん2「うぉぉぉう」ブリュブリュブリブリブリブリブリ

アライさん3「気持ちィィ―のだぁぁー」ジョロロロロー

アライさん4「う…う…ん。うぅお…。ため糞するのだぁぁー」ブリュブリュブリブリブリ

母アライさん達は母アライサン達で、四方八方に糞尿をまき散らしている。マーキングのつもりなのか…。
この小学校は村民のものだし、こいつらが食い散らかした乾パンはボランティアの人達が持ち込んだもの。
―置き忘れたのか、また来るときの為だったのかは知らないが―

ただ、そんなことをハエガイジ達が知る由もないことではある。

アライさん1「う~!いっぱい食べて、出してスッキリしたのだ!!!」コスリコスリ
アライさん2「皆、そろそろおねんねなのだ!エネルギーを節約することはけものの基本なのだ!!!」シッポフリフリ


アライちゃん1「はいなのりゃ」ウツラウツラ
アライちゃん2「おかーしゃん。しゅきしゅきなのりゃ」ウトウトウト
アライちゃん3「こわいにんげんはだいじょうぶなのりゃ?」モゾモゾモゾ
アライちゃん4「しんぱいなのりゃ」ウツラウツラ


アライさん3「大丈夫なのだ!お母さん達が代わり番こに見張りに着くのだ!!!」コスリコスリ

こいつらは知らない―

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー


多少の見張りなどでは対処できない相手がすぐそばまで迫っていることを!!!

アライさん4「チビ達は安心して『お母さん』を信じるのだ!!!」


アライちゃん1「…」グーグラグーグラ
アライちゃん2「しゅきしゅき。いもーと…。グスン」ウトウトウツラウツラ
アライちゃん3「おかーしゃんたち。ありがとーなのりゃ…。
さっきはわがままいってごめんなさいなのりゃ…」ウツラウツラ
アライちゃん4「…」グーグーグー



カッカッカッッ!!!

子孫陸自アライさんA「まだまだちょっと物足りないのだ」
子孫陸自アライさんB「いっぱいキルキルして上官殿に褒めてもらうつもりだったのに」
子孫陸自アライさんC「このまま帰ったら、下士官フェネック殿が叱られてしまうかもしれないのだ!」
子孫陸自アライさんD「皆落ち着くのだ!『武は戈を止める』と書くのだ」
子孫陸自アライさんE「大過なく任務が終わればそれに越したことはないのだ」
子孫陸自アライさんF「変事が起きると言うことは味方が危機にさらされていると言うことなのだ!
望ましくないのだ!!!」
子孫陸自アライさんG「そうなのだ!アライさん達は『国家の爪牙』。
粛々と上官殿と下士官フェネック殿の仰るように難事に当たればいいのだ!!!」
子孫陸自アライさんH「機会はまだ、あるはずなのだ!それまで朝に夕べに只管、武を練るのみなのだ!」


自分達のご先祖が村を離れている間の変化を!

なぜ、遠縁の同族がこの地を離れざるを得なかったのか、その訳を!!!

今日はここまでです。

続きを書き込みます。

県兵装甲車から流れる音は、スピーカーから流れる野生動物追い払い用の『人間の声・肉食獣の吠え声・金属音・その他の大音響不協和音』です。

ガサガサッ!ガサッ!

余所者アライさん1、余所者アライさん3、余所者アライさん5は一先ず、自分達の影響圏内へと戻っていく。
それぞれ、ケモ耳ネックレスを首から下げた『軍使アライさん』1匹とその護衛アライさん2~3匹がセットだ。

中姉アライさん「(もう見慣れた光景なのだ。
『軍使アライさん』―これまでは『姉』号持ちのアライさんがすることが多かったのだけど―は偵察役兼務。
『敵』の数や構成、配置を確認して帰って来るのだ…。)」

洞姉アライさん「(そして、旗色を明らかにしたアライさんのチビ達を後続のアライさんが素早く保護・監視下
に置く。そして、一度目の勧告で首を縦に振らなかったアライさんを悉く―)」

山姉アライさんは傍らの大母アライさんに向き合うと尋ねる。

山姉アライさん「そう言えば、大母さんはいつも『勧告』を先立って行われているのだ。
何か理由がお在りなのだ?」

大母アライさん「特に理由はないのだ。いや、無いと言うことはないのだけれど…。
まあ、そこは自分等でも考えて、分からなければもう一度聞くのだ!」

大母アライさん「一応、『自分ルール』として、半敵対者・『家族』内の不届き者に対しても、
最低一度は、降伏・改心の機会を与えることにしているのだ。

これは必ずそうすると言うよりは『心掛け』程度なのだけど…。お前達も参考にするのだ」コスリコスリ


そう言いながら、鳴子が成って以来、初めて手をコスコスする。
『もう楽にしていいのだ』の合図だ!!!

山姉アライさん「ふわぁ~。緊張したのだぁ~」コスリコスリシッポフリフリ

肩の力を抜いて一服する山姉アライさん。
余所者アライさん達が来てから、ずっと監視をするのは疲れるのだ!

それに対し、洞姉アライさんは少し心配そうに大母アライさんに話しかける。

洞姉アライさん「大母さん。『家族』が大きく成ることはとっても嬉しいことなのだ…。
でも、大母さんご自身が言っていたようにそれには利点・欠点がある…。
大きく成り過ぎたら人間に見つかる可能性も増えるし、餌が足りなくなるかもしれないのだ!」

大母アライさん「フン!百も承知のことなのだ!
大母さんとしても『家族の第一次拡大』はこの辺りが区切りと思っているのだ!!!」コスリコスリ

洞姉アライさん「『第一次拡大』?一次があるなら二次、三次もあるのだ?」コスリコスリ

はぁ~

大母アライさんはまた、ため息をつく。

大母アライさん「当然…。とういうか最初からそう言う話だったのだ!!!お前ら忘れたのか!!!
『子供群れ』『孫群れ』を分岐させていくのが当初からの目標だったのだ!!!」

パチクリ!!!

洞姉アライさん「(そう言えばそうだったのだ…。
チビ達の中で一部は手元に残し、『他のチビ+後見役アライさん』を新天地に続々と送り出す。
こういう流れになった以上、この手法は一旦傘下に入ったアライさん達を新たに『小家族』として暖簾分けする際にも使っていくべきなのだ!!!)」コスリコスリ


中姉アライさん「『第一次拡大』の区切りをここに持ってきた理由は何なのだ?」コスリコスリ

大母アライさんは視線を山姉アライさんに投げる。
『お前!さっき気づいただろう!知らせてやれ!!!』

山姉アライさん「は…はいなのだ!!!」ゴソゴソ

中姉アライさん「???」コスリコスリ

山姉アライさんは、後ろの風呂敷からお宝『日本地図帳』を取り出す。
先に余所者アライさんと接触した際の『じじょーちょーしゅ』で軽く使用したのだ。

ペラペラとページを捲る。

中姉アライさん「(何度見ても綺麗な絵なのだ!)」

洞姉アライさん「(パズルみたいで面白いのだ!暇があると見ているのだ!
もう、『道』『鉄道』『山』『川』『海』『都市』の配置はバッチリなのだ!俯瞰図でしか分からないのだけど)」


山姉アライサさんは、日本地図の上、蛇張村の辺りを指し示す。

山姉アライさん「アライさんは無学だけど、流石にこの辺りを人間が『蛇張村』と呼んでいること。
それが全国地図ではこの辺りであることは分かるのだ。先祖の口伝と自分の好奇心に感謝なのだ!!!」コスリコスリ

そう言って、山姉アライさんは、この物語の主な舞台になってきた県の北端の尖がりを指でべたべた触る。

山姉アライさん「あいつらは、余所者アライさん達は、
人間の『そんきょう』と『けんきょう』を跨いでやって来たのだ。
北の県の南端と、東の県の西端と、西の県の東端から…。

あいつらの勢力を抱え込むと言うことは3県の出入り口を抑えることになるのだ!
無論、人間が普段使わないけもの用の道を!!!」


パチクリ!!!

洞姉アライさん「それは凄い…のだ?でも、けものにとっては人間の境などあんまり関係ないのだ?」コスリコスリ

ポン!

中姉アライさんは、ハッと手を打つと鈍い『妹分』を叱り付ける!

中姉アライさん「お前はガイジか!!!自分達の『雄敵』の境が関係ないわけがないのだ!!!」

キッ!!!

厳しい視線を洞姉アライさんに向け、その後、大母アライさんと山姉アライさんを見つめる。

大母アライさんは頷く。
『先を!教えてやれ!』


中姉アライさん「アライさんも細かい仕組みは理解していないのだけど、
『物知りな』大姉アライさんが教えてくれたのだ…。

人間の『国』と言う群れにはその下に『県』と言う群れがあり、さらにその下に『市町村』と言う群れ、
さらにその下に『学区やら町内会やら部署』と言う群れがある…。

そして大抵その群れ同士は仲が悪く、
境を超えると自分の力『かんかつ?』『けんげん?』をその向こうに及ぼすことが難しくなるのだ!!!」


洞姉アライさん「そうなのだ!?」

大母アライさんは頷くと補足する。

大母アライさん「そうらしいのだ!無論、それでも人間同士。『大きな群れの仲間同士』。
協力する方法や連絡手段自体は在るのだろうけど…。
でも、境を超えると著しく協調性が悪くなるのは経験則上確かなのだ!!!」

洞姉アライさん「そう言えば、ご先祖の教えで
『もし人間に追われたら意識的に川や道や山を越えるのだ』というものがあるのだ。
それはこういう原理だったのだ…」コスリコスリ

それを聞いて皆が頷く。

子分アライさん1「(その教えは、アライさんも聞いたのだ…)」
子分アライさん2「(あと、大きな看板の向こう側に行くといいとも聞いたのだ…。気休め程度の効果なのだけど…)」

ギロリ!!!

大母アライさんは声の届く範囲のアライさん達に告げる。


大母アライさん「今日来た新たなる『家族』を迎え入れ、
アライさん達は4県の―市町村の数ならもっと多い―境を抑えることになるのだ!
しかも、人間が普段容易に利用しない山がち、森がちな境を!

従って、もし人間が一方ないし、複数の方向から来ても『境の向こう』にグルグル逃げ回る、
と言う手段も視野に入れることが出来るのだ!!!
無論人間が『境を超えてくることもある』、と用心しながらのお話なのだけど!」


はぁぁ~

大母アライさんは息を吐きだす。
今度はどちらかと言うと安堵の意味合いが強い。


大母アライさん「『この山を要塞化し、罠を張り巡らし、闘い、チビ・子分を一匹でも逃し、
そして、ダメなら玉砕』内心そんな覚悟もしていたのだ。

無論、鳴子や落とし穴や網罠等が無駄になるわけでもないのだけど…。
これでほんのちょーぴり活路が見えてきたのだ…」コスリコスリシッポフリフリ

キョロキョロキョロ!

大母アライさん他姉アライさん達がそんな会話を交わしている頃―

居残りを命じられた、余所者アライさん2、余所者アライさん4、余所者アライさん6
―要は帰参組の娘・妹アライさん達―は気まずい顔をしている。

大母アライさんから『今日から大母さんのお供に加わるのだ』と告げられたためだ。


余所者アライさん2「あ…、アライさんは…。もしかして…、人質なのだ?」ブルブル
余所者アライさん4「お…、落ち着くのだ…。貫目が知れるのだ…」ブルブル
余所者アライさん6「でも…。怖いのだ!!!クマもアライさんも平気で殺すアライさん達なのだ…」ブルブル

そんな新参アライさん達に鏃アライさんは近寄り声を掛ける。

鏃アライさん「そんなに怖がらなくても良いのだ!新参同士仲良くしようなのだ!」

パサッ!

鏃アライさんは『毛皮』を捲ると真新しい鉄砲傷と手術傷を晒す。

余所者アライさん達「「「…」」」ゴクリ

鏃アライさん「アライさん達は、大母さんのすぐお側で、直接『恩寵』を受けることが出来る…、
云わば『恩寵を有するアライさん』なのだ!!!」コスリコスリ

そう目の前のアライさん達を鼓舞しながら、また傷口をコスコスして自己回復スキルを発動する。

早ければ、今夜にも槍働きをしてみせるのだ!!!

そんな鏃アライさんの意気込みを以前からのお供アライさん達も頼もし気に見つめる。


余所者アライさん2「(この臭い…。鏃アライさん以外のお供アライさん達は、
ひょっとして大母さんや他の姉アライさんの近親アライさんなのだ?)」コスリコスリ


鏃アライさん「だから!その境遇を単なる人質にするか、
『家族』の基幹、『姉候補・精鋭アライさん』とするかは自分達次第。
勿論アライさんは後者が良いのだ!!!お前達もきっとそうなのだ!!!」


パチ!パチ!

余所者アライさん達は目を瞬いていたが、すぐに元気よく返事をする。

余所者アライさん達改め『恩寵アライさん達』
「「「大吉なのだァぁぁー!!!」」」コスリコスリコスリコスリシッポフリフリフリ

今日はここまでです。

この世界って売春婦のアライさんおらんの?

・見た目は耳と尻尾以外美幼女
・病気に感染しない(感染させない)
・人間と交尾しても妊娠しない
・怪我を治せる(多少ハードなプレイも可&処女膜も治せる?)

売春アライさん「おにーさん…取引なのだ、アライさんの体を好きにしていいから食べ物寄越すのだ」とか
売春アライさん「アライさんはおにーさんが始めてだったのだ(ウソ)。責任を取って養うのだ!」とか
一部のロリコンオッサンとか狂喜しそうだけどな

しかし動物側の種でしか妊娠できないとなると
馬のフレンズとかパンサーカメレオンちゃんとかかなり大変そうだな

>>598
見た目が美少女っていう記述、SSのどこかにあったっけ?

>>598
種を遺せない以上無意味かつ人間の奴隷の地位に甘んじなければならない
そういうのは精神的にランド行きのツライさん辺りだろう、尤も去勢されてるけどな

>>600
「売春が低俗」ってイメージは人間固有のものじゃね?
獣からしたら「本能のまま気持ち良いことしたら子供ができた」って程度だろうし
アライさんからしても「気持ち良いうえご飯も貰える」
ってなれば進んで売春始めるだろ
あいつらに絶対モラルとかないよ

>>599
確かにないけどアニメとかゲーム基準なら美人かな?って思ってた
まあ多少不細工でもヤれればどうでも良いって需要もあるし

続きを書き込みます。

595さん。
一応『大吉なのだ!』の元ネタは、古代中国後漢に勃発した『黄巾の乱』のスローガン『蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉』からとっています。

ただ、元ネタ通りの用法と言うよりは『ジークジオン』『ジークカイザー』みたいな掛け声とご理解いただければ。

大母アライさんが、良く動物の内臓を引きずり出して吉凶を占うパフォーマンスをしている元ネタは、古代オリエント辺りで牛などの家畜を屠り、その内臓の色や形・配置で占いをしていた、と本で読んだ記憶があったためです。

ブロロロロォォォォォォ!!!!!

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

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県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー



アライさん1「うるさいのだ!!!」ビクッ!
アライさん2「やかましいのだ!!!」バタン!
アライさん3「何なのだ!!!」ガバッ!
アライさん4「敵襲なのだ?!」サッ!!!

その日の未明。
校舎に潜むアライさん達は一斉に叩き起こされる!!!

見張り役など必要もない。
人間側から全力で侵攻を知らせてきているのだから!

アライちゃん1「ひぇぇぇー!!!こわいのりゃー!!!」ビェェーン!ビェェーン!
アライちゃん2「にんげんが、またあらいしゃんたちをいじめにきたのりゃー!!!」ビェェーン!ビェェーン!
アライちゃん3「たしゅけてー!!!おかーしゃん!!!おかーしゃん!!!」ビェェーン!ビェェーン!
アライちゃん4「しぇっかく『らくえん』にきたのにー!!!あんまりなのりゃー!!!」ビェェーン!ビェェーン!

母アライさんが起こす間もなく、アライちゃん達は目覚めると一斉に泣き出しパニックに陥る。

アライさん1「お…、落ち着くのだ!」ダッコギュー
アライさん2「まだ、アライさんが標的と決まったわけじゃないのだ!」ペロペロダイスキ
アライさん3「ていきじゅんかいかも!あるいはセルリアンが相手かもしれないのだ…」ギュギュダッコギュ
アライさん4「こんな音を出すなんて!きっと、こけおどしに決まってるのだ!
そうじゃなければ、アライさんは、チビは…。一体何のために…」アッタカダッコ

家族・親族で温もりを分け合い、『大好きポカポカ』をするアライさん達。

しかし、その壁一枚向こうの暗闇では、鋼鉄の獣が大きな吠え声を上げながら、村内を駆け回る。


ブロロロロォォォォォォ!!!!!

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

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ブロロロロォォォォォォ!!!!!

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野生化したニワトリ達「コケコケコケ!」テッテッテテクテクバサバサ
野生化したブタ・イノシシ達「フゴォ?フゴォフゴォ!」ガサガサガサガサッ
クマ・シカ・ヤギその他のけもの達「???」バタバタノッシノッシノッシ

野生の、あるいは野生化したけもの達は突然の『珍客』の到来に驚き、方々に駆け、あるいは隠れていく!

少しでもあの恐い吠え声から遠くに!!!

ブロロロロォォォォォォ!!!!!

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

県兵装甲車「♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!!」ブロロロロォー

ブロロロロォォォォォォ!!!!!

サァーー
明るい朝日が優しく校舎に差し込んでいく。

まだ村が平和で賑やかな頃は、こんな光に迎えられながら子供たちは小さな胸を大きく膨らませ、
学び舎の門を潜ったのだろう。

アライさん1「…」ゲッソリ
アライさん2「…」ヘナヘナ
アライさん3「…」ウツラウツラ
アライさん4「…」クッタリ

アライさん達は完全に萎んでいる。
憔悴の極みだ。
『楽園』『先祖の故地』を頼りにここまで来たのに…
虎口に飛び込む形になってしまった!

アライちゃん1「…」ヘニャヘニャ
アライちゃん2「…」ピクピク
アライちゃん3「しっかり…しゅるのりゃ…」フラフラ
アライちゃん4「…」ヒイヒイ

アライちゃん達も泣き疲れ、この村にたどり着くまでのストレスも加わってグッタリしている。

県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー

しかも奴らの車は、間断なく大音量を上げながら走り続けている。
建屋から追い出されたら最後、待ってましたとばかりに殺されるかも―


アライさん1「進退…極まったのだ…」フラフラ
アライさん2「こうなったら…。奴らの隙をついて山に逃げ込むのだ…」ハアハア

アライさん達は相談を始める。

アライさん3「でも、山は他のアライさんやけものの縄張りになっているかも…」クラクラ
アライさん4「…。まず…。チビは諦めなければいけないのだ…。
連れて行っても体力が持ちそうにないのだ…」ゼーハー

極真っ当な…。しかし、この場のアライさん達にとって、最も残酷な指摘をアライさん4はする。

アライちゃん1「ぴぎぃぃぃー!おばしゃん!やめてなのりゃ!」ビェェーン!ビェェーン!
アライちゃん2「おねがいなのりゃ…。みしゅてないで!いいこにすりゅから」ビェェーン!ビェェーン!
アライちゃん3「しっぽのだんしゅみて…。げんきをだしゅのりゃ…。
おかーしゃん。おばしゃん。しゅきしゅきなのりゃ…」シッポフリフリ…フリ
アライちゃん4「…」


アライちゃん達は、最後の力を振り絞るように泣き懇願していく…。

アライさん1「チビ…」

そんな中、一番弱っていそうなアライちゃん4が意外なことを言い出す。

アライちゃん4「もし…、みしゅてるなら…。ちゃんとたべていってほしいのりゃ…」ハァハァ

アライさん3「ち…チビ!何を言い出すのだ!」コスリコスリナデナデ
実母アライさんにとって、その言葉は衝撃だったのだろう。
アライさん3は盛んにアライちゃん4の体を撫でさする。
比較的、人間の側で、長年潜伏していたことが『アライ心理』にも影響を与えたのか?

アライちゃん4「しょれが、しぜんのせちゅりだと…。ころされたおばあしゃんはいっていたのりゃ…。
なら、おかあしゃんのちにくになってから、つちにかえるべきなのりゃ…」


けものは死ねば土に還る―
生まれ変わりも別の世界に行くこともない―
だからこそ、『地獄』を懸命に生き、一匹でも多くの『種子』を飛ばせ―

先祖の『教え』。アライさんにとって普遍の原理を―

アライさん1「アライさん達は『帰ってきた』のだ!ここより他に逃げる先なんてないのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

アライさん2「ご先祖は…。間違っていたのだ!アライさんがあの夜、奪われたのは!
お母さんでも、住処でも、チビでもない!立ち向かう勇気なのだ!」コスリコスリシッポフリフリ

アライさん3「アライさんは俎板の上の鯉!見捨てて逃げてまた見捨てて、
その先にあるものなんて知れているのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

アライさん4「チビの敵を討つのだ!!!アライさんはもう失うものはない身なのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ


この姉妹は破ることにしたようだ―
無論、極力原則に沿った形で…。

今日はここまでです。

続きを書き込みます。

クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン

県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー

クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン

子孫陸自アライさん達は、ゴキブリを思わせるフォームで地面に這いつくばり、
喧しい鋼鉄の獣の傍らで臭いを嗅ぎまわり続けている。

けものとして、聴覚が人よりも敏感なため、『ヒト耳』にはヘッドホンをし、
『ケモ耳』は頭にペッタンと伏せている。

テクテクテク

8匹の陸自アライさんのやや後方を子孫陸自フェネックが護衛の県兵と共について回る。
陸自アライさん達と同じようにヘッドホンと『耳伏せ』で周囲の音をシャットアウトしている。

子孫陸自フェネック「(本当はけもの・フレンズにとって聴覚は武器。
自分の手足を縛っているようで良くないよーな。でも、音響攻撃で自分が先にへばっちゃうのはもっと良くない。
私たちには鼻もあるし)」

子孫陸自アライさんA「!!!」クンクンクン
子孫陸自アライさんB「皆!!!」クンクンクン

陸自アライさん二匹が何かの臭いを嗅ぎ当てた!
そこに向けて、ウジャウジャ他の陸自アライさんも集まっていく。

子孫陸自アライさんC「!」クンクンクン
子孫陸自アライさんD「…」クンクンクン
子孫陸自アライさんE「(これは…)」クンクンクン

陸自フェネックはアライさんの反応を見て急いで駆け寄って来る。

子孫陸自フェネック「アライさん!接敵?!」

バッ!

周囲の県兵が、素早く手にした自動小銃を向けながら周囲を警戒する。
―しかし―

子孫陸自アライさんA「この近くには居ないのだ!
でも、先行作戦の時には嗅がなかった新しい臭いなのだ!」コスリコスリ

一番最初に気づいたアライさんは陸自フェネックに告げる。
それを陸自アライさんBが補足する。

子孫陸自アライさんB「この臭いはアライさんなのだ!
恐らく成獣幼獣合わせて10匹以下。きっと家族なのだ!」コスリコスリ

コクリ!

陸自フェネックは頷きながら素早く無線で報告する。

子孫陸自フェネック「現地司令部。現地司令部。こちら、索敵・偵察行動中の陸自アライさん隊です。
先行偵察時に確認されていない新規個体群の臭いを陸自アライさんが感知しました。
成獣幼獣計10匹以下。恐らく家族であろうとのこと。どうぞ!」

現地司令部は無線で陸自フェネックに応答する。

現地司令部「こちら現地司令部。新規個体群の追跡は可能ですか?どうぞ」

子孫陸自フェネック「アライさん!追える?」

クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン

ヨチヨチヨチヨチ
ヨチヨチヨチヨチ
ヨチヨチヨチヨチ
ヨチヨチヨチヨチ

暫く、陸自アライさん達は周囲の臭いを嗅いで回るが、やがて首を振る。

子孫陸自アライさんF「ダメなのだ!臭いが足りてないのだ…。
せめて、うんこかおしっこしてくれてれば、ましだったのだ…」コスリコスリ

子孫陸自アライさんG「もういろんな臭いが混ざってしまったのだ…。
特に装甲車が臭いをかき混ぜてしまって上手く追えないのだ…」コスリコスリ

まあ、そこは当初からの作戦なのだから仕方ない。

子孫陸自フェネック「現地司令部。新規個体群追跡、現状では困難です。
装甲車の走行によって臭いが掻き回されていることも一因とのこと。
一時、音響作戦を中止し、敵性勢力の追尾に注力することを進言いたします」

現地司令部より往信がある。

現地司令部「報告ご苦労様です。しかし、音響作戦続行による野生動物追い出しを優先します。
引き続き追える範囲でいいので索敵の続行を!作戦参加者全員に敵性個体群出没注意を喚起します!!!」

現地司令部から追加の無線が全員に入る。

現地司令部「敵性個体群出没注意!!!新規個体群が検知されました!
敵性個体群―アライさん若しくはその群れ―には発砲許可が下りています。
しかし、他の野生フレンズないし、無許可立ち入りをした文民の可能性もあります!
発砲前に司令部に報告を厳命します。無許可発砲は禁止です!
また、国から『物理的に可能な範囲で安楽死を心掛けるよう』指針を受けています。
無用な苦痛を与えることが無いよう注意を!」


一般県兵A「(大変だな…。注文が細かい!)」
一般県兵B「(いやこれぐらいで調度良い。むしろ、雑じゃないかと心配になるくらいだ!
日本にはフレンズの自衛官も野生のフレンズもいる。
頭がちょっとあれで、行っちゃダメだと言うところに行っちゃう人も…。しかし―)」

一般県兵C「(皆守るべき『国民』『県民』。俺らが発砲が間に合わなくて10人死ぬことよりも、
無実の国民・フレンズが一個体死ぬことの方がずっと意味が重たい…)」

一般県兵D「(人間社会で暮らしている一般フレンズや…。
こうして一緒に作戦に参加している戦友フレンズを不安な気持ちにさせないためにも、
害獣とは言え極力、人道的対処をする。大事なことだ…)」

県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー


ブロロロロォー

装甲車を運転中の一般県兵Jは傍らの一般県兵Kに声を掛ける。

一般県兵J「今の無線聞いたか?」ブロロロロォー
一般県兵K「聞いた…。いよいよか…。嫌だなぁ。セルリアン以外に鉛玉打ち込むのは!」ブロロロロォー

この世界の日本人の一般的な『戦争観』は平成時代の日本人のものとは異なる。
平成時代の人にとって『先の大戦』とは第二次世界大戦のことだが、この世界の日本人にとっては、
セルリアンとの戦い―世界再建戦争―のことを指す。

セルリアンの跋扈による事実上の半海上封鎖やホットスポットの国内出現で、国民生活は苦しかった。
しかし、意思を持たない侵略攻撃体との『戦争』は、ある意味では人間相手のような『後腐れ』が少ない。

例えるなら、この世界の日本人のご先祖も見ただろうアニメ『ストライク●ィッチーズ』の一般人版のような…。

勿論、人類文明全体が危機に陥る中、『ヒト対ヒト』の醜い対立や殺し合いも続発したのだが、
日本は比較的同質性が高い国。いや、同質性が高い国『だった』。

そのおかげで、あの苦しい時代にも、深刻な国内不安だけは、何とか回避して『外敵』だけを睨んでいれば良かった。


『軍隊』『兵隊』はかっこいいもの、『戦争=英雄物語』、『悪者だけを倒す』。

この世界の人達も頭が悪いわけではない。そんなに単純なものではないと知っているからそう口にはしない。
―しかし―

やはり漠然としたイメージはある。
この世界の住民が血気盛んな傾向があるからこそ―

一般県兵J「しっかりしろよ!俺らは兵隊!しかも志願した身だ。
外見が少女そっくりでも撃ち殺し、轢き殺すんだぞ!」ブロロロロォー


そう言う一般県兵J自体も、そこまでしっかりした覚悟があるのか…。
いや、いざと成れば引き金が引けるはず!そう言う訓練を受けた!
小学校の頃から、やらされてきた銃剣術の出番かも知れないじゃないか!!!


装甲車の前方、40メートル先をイノシシがウリ坊を連れながら駆け出している。さっきはクマも見た。

一般県兵J「(逃げろ!逃げろ!意地悪な人間さんが来る前に…。ひっそり山で生きるんだ!
そうすればこっちから意地悪する気はないんだ…。『上』次第だけど…。ビックリさせてごめんよー)」


♪🎶🎶♬♪!!!ガォォォォー!!!キィィッィー!!!ホンジツハセイテンナリ!!!♪🎶🎶♬♪!!! ブロロロロォー



そんな気持ちを乗せていることは悟られないよう、鋼鉄の獣は無慈悲な仮面をかぶって乾いた村道を走り続ける!



今日はここまでです。

続きを書き込みます。

637さん。飛んでいるアルファベットの人達、もう登場済みですよ。今回は別の場所・順番だったんです。

クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン

ヨチヨチヨチヨチ
ヨチヨチヨチヨチ
ヨチヨチヨチヨチ
ヨチヨチヨチヨチ

3日後の午前、4時30分。
陸自アライさん達は爆音を上げ続ける装甲車の片側でなおも真剣に新規個体群を追跡している。

一般県兵A「(合間合間におやつ休憩を挟んでいるとはいえ、熱心だな…。しかし―)
一般県兵B「(そろそろタイムオーバーだ。5時に追い出し作戦が終わる。そろそろ装甲車も引き返し始めている)」
一般県兵C「(そこからはいよいよ歩兵の出番だ。安全エリアを制圧して、『クリア』な状態で工兵を迎える。
新規個体群とやらも逃げ出してくれていると手間が省けるが…)」

陸自フェネックは時刻を確認すると、無線を入れる。

子孫陸自フェネック「現地司令部。現地司令部。現時刻を以って、索敵活動を終了。撤収いたします。
新規個体群発見ならず。当エリア内に、猶留まっているのか不明です」

現地司令部「こちら現地司令部。撤収了解」

子孫陸自アライさんH「ま…、待って欲しいのだ!!!」
傍らで通話を聞いていた陸自アライさんが声を上げる。

子孫陸自アライさんH「まだ、30分あるのだ…。もう一箇所だけ!アライさん達にチャンスを!!!」シッポビクビク

子孫陸自アライさんA「…」コクリ
子孫陸自アライさんB「…」コクリ
子孫陸自アライさんC「…」コクリ
子孫陸自アライさんD「…」コクリ
子孫陸自アライさんE「…」コクリ
子孫陸自アライさんF「…」コクリ
子孫陸自アライさんG「…」コクリ

まだ、陸自アライさん達はやる気満々だ!

子孫陸自フェネック「(今回のことを『失敗』だと思い込んでいるのかな。よくやってくれていると思うのに。
私や陸自幹部さんに迷惑が掛かると心配してるのかな…)」

―アライさんで『軍隊』をつくる。その上で最も困難な課題であったのが『帰属意識形成』である。
アライさんは群れる習性を持つけものではない。
しかし、戦友を戦友と認識してくれなければ『軍隊』など夢のまた夢。
この世界の陸自は様々な試行錯誤をした。
その一つが―

子孫陸自フェネック「(隊長である陸自幹部を『兄』。下士官である私を『姉』。自分達アライさんは『姉妹』。
家族で『任務』を乗り越える。そう叩き込んだんだよね。いや、私や陸自幹部殿も含めて、叩き込まれたのかな)」


陸自フェネックは、8匹の『妹達』の真剣な瞳を見つめ返す。

そして、口を開く。

子孫陸自フェネック「私達1人と9匹は運命共同体。互いに頼り、互いに庇い、互いに助け合う!
1個体が10個体の為に、10個体が1人の為に。『隊』は兄妹! 『隊』は家族!」

陸自フェネックの合言葉に陸自アライさんは声を合わせて答える。

子孫陸自アライさん全員「「「「己の猜疑を跳ね返すのだ!!!『家族』の力で無理を成し遂げるのだ!!!
他者の『無能』も『怯懦』も『虚偽』も『杜撰』も全てを!!!『無謀』は戦場の花嫁!乗り越えてこその―」」」」コスコスコスコスコスコスコスリコスリ


子孫陸自アライさんA「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんB「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんC「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんD「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんE「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんF「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんG「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ
子孫陸自アライさんH「『陸自アライさん隊』なのだぁ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

陸自フェネックは護衛の県兵達に視線を送る。
それに対して、県兵達も熱心そうな顔で頷く。

疲れ知らずな陸自アライさん達の熱気が感染したのだろうか。

子孫陸自フェネック「現地司令部。アライさん隊、未だ意気軒高。
時間にまだ若干の猶予があるため、もう一箇所のみ可能性が高いポイントを確認したいと思います。
宜しいでしょうか?」

現地司令部「現場の判断に今回は同意します。索敵を続行してください。向かうポイントは何処ですか?」

陸自フェネックはアライさんに視線を投げる。子孫陸自アライさんHは元気よく応じる!

子孫陸自アライさんH「残った場所で、巡回が比較的少なかった場所は『蛇張村立蛇張小学校』なのだ!!!
あそこは歴史的建造物で、前の捜索の時も建物の損壊を気にして、外からの探索しかしていないのだ!!!
今回も傷を付けないように、装甲車は周りを重点的に走ってるけど、扉をぶち抜いてはいないのだ!!!」

タッタッタッタッ!!!

トテトテトテトテ!!!

朝の光の染まりつつある旧校舎に陸自アライさんと護衛の県兵らが集結する!

既に装甲車の音響作戦は終了間近。
周囲には朝の静けさが戻りつつある。
夜に生きるものは今から暫しの安らぎを―
昼生きるものはこれからの躍動の準備を―

では、ここに集った者たちは何なのだろう。

ピョコ!
ピョコピョコピョコ!!!

陸自アライさんは耳栓を抜き、次々と伏せていたケモ耳を上げていく!

子孫陸自アライさん達「「「「(そんなことは決まっているのだ…。アライさん達は―)」」」」

ピン!ピン!

陸自フェネックも自慢の大耳を綺麗に張り上げる。

子孫陸自フェネック「(戦場に生きるけものだ!!!)」

陸自フェネックの目がギラギラと光を帯びる。
『ジャパリパーク冒険記』の気だるげで愛らしい『珍獣』のものではない。
砂漠を剽悍に生き抜いてきた肉食獣の瞳。

子孫陸自フェネック「(アライさん…。ここなの?)」ボソボソ

クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン

ピク!ピク!ピク!ピク!

暫し周囲の様子をうかがうアライさん達。
やがて傷んだ校舎に走る一本の細い亀裂を指さす。建物のやや下部。板で封鎖された窓の下側だ。

子孫陸自アライさんA「(あの亀裂!アライさんなら忍び込めるのだ!
校舎の出入り口は一応封鎖されているから、もし入るなら、ああいう隙間からのはずなのだ)」ボソボソ

子孫陸自フェネック「(まだ、入っちゃダメだよ!あの隙間に最近付けられた痕跡…。
臭いとかが無いか嗅いできて!)」ボソボソ

陸自アライさんAは頷き、陸自アライさんBとペアになって、『侵入予想箇所』に向かっていく。

陸自フェネックは手で合図をする。
それに応え、県兵A、Bと県兵C、Dはそれぞれ念のため、出入り口に張り付いて突入準備をする。

陸自フェネックも自動小銃を構えて、陸自アライさんの援護姿勢をとる。
もっとも、取るだけで発砲は出来ないのだが…。

クンクンクンクン
クンクンク!!!!

陸自アライさんA「皆!!!離れるのだ!!!」バッ!

二匹のアライさんが飛び退くと同時!!!
板で封鎖されていた窓を突き破って、学習机が飛び出してくる!!!

バアーン!!!
メリメリガラーン!!!
ゴッ!ガッターン!!!

窓を突き破った学習机が地面に転がり落ちた刹那!

ヒュン!

暗い校舎の中から何か赤く輝く物が投げ出されてくる!

バリーン!

ガラスが叩き割れる音!
そして―

メラメラメラ!

燃え上がる炎!!!

子孫陸自フェネック「火炎瓶だ!!!アライさん!!!」

子孫陸自アライさんA「…」タッタッタッ
子孫陸自アライさんB「…」タッタッタッ

背中や下半身に火が付きながらも、陸自アライさん2匹は味方の方に急ぎ戻ろうとする!

ヒュン!
バリーン!
メラメラメラ!

子孫陸自フェネック「ちぃぃぃー!!!」バッ!
陸自アライさんC、D「「フェネック!!!」」ガバッ!

何らかの簡易的な投石具でも用いたのか、
火炎瓶は相当な飛距離を稼ぐと援護姿勢を取っていた陸自フェネックの近くで割れる。
そばの陸自アライさんC、Dは上官を守ろうと肉の盾になり、前に出る。

子孫陸自フェネック「現地司令部!やられました!ここです!!!火炎瓶を武器に立てこもっています。
陸自アライさん二匹負傷!!!救護班と消火班を!!!」

現地司令部「火炎瓶!!!けものが火炎瓶?人間―エコテロリストではないのですか?」

ヒュン!
バリーン!
メラメラメラ!

陸自フェネックは手で合図を出しながら、県兵と陸自アライさん達を一旦校舎から、100メートル以上下がらせる!!!

ゴロゴロゴロゴロ!!!

火炎瓶で負傷した陸自アライさんA、Bは地面に転がりながら必死で体に纏わりついた炎を消している。

子孫陸自フェネック「アライさん!答えられる?!」

子孫陸自アライさんA「投げたのは成獣のアライさんなのだ!!!使い古された灯油の臭いがしたのだ!!!」ゴロゴロ

子孫陸自アライさんB「古いと言っても何十年も前のものではないのだ!
多分、近年、ボランティアが持ち込んで、忘れて行った簡易ストーブか何かの流用品なのだ!!!」ゴロゴロ

子孫陸自フェネック「現地司令部。投げたのはアライさんで間違いない様です。
ドローンで上空を見張ることを進言いたします。火炎瓶の中身は灯油。
恐らくボランティアの使い古しの流用品とのことです!」

現地司令部「現在救護班と消火班を急行させています!アライさんの火傷の程度は?
校舎や森林部への延焼は有りますか?」

子孫陸自フェネック「陸自アライさん2匹はⅡ度程度の火傷。
意識ははっきりしており、直ぐに手当てをすれば命に別状はないはずです。校舎・森への延焼は今のところなし。
火炎瓶が割れた周辺は今も炎上中です」

ブロロロロォー
ブロロロロォー
ブロロロロォー
ブロロロロォー

装甲車が続々と集まり、遠巻きに校舎を囲みだす。

ブゥゥゥゥゥゥーン

上空では、県兵の軍用ドローンが旋回を始めている。
この村の主が交代する瞬間が刻一刻と迫りつつある―

クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン
クンクンクンクン

アライさん2「おねーさん!奴隷アライさん達が来たのだ!!!」バッ!

妹アライさんの声に頷くとアライさん1は、自分達の4匹の娘たちに、
小さく薄い巻物状の紙を渡しながら因果を含める。

アライさん1「チビ達…。お別れなのだ!三日間粘ったけど、遂に逃げ出すチャンスは来なかったのだ…。
だから、お母さん達が作るのだ。一瞬、きっと一瞬、敵が下がるタイミングが来る…。
その時に、4匹が別々の方向に逃げ、山林地帯に行くのだ!」

アライさん4「この村に遠縁アライさんが居なかったのは、きっとこの日を予見して先に逃げたからなのだ。
山に行けばそいつらが居るかも…。親族の縁を頼りに何とか保護してもらうのだ」

アライちゃん1「こわいのりゃ…」ビェェーンビェェーン
アライちゃん2「おかーしゃん!いっしょにきてほちいのりゃ!」ビェェーンビェェーン
アライちゃん3「あらいしゃんはよちよちあるきしかできないのりゃ!」ビェェーンビェェーン
アライちゃん4「とおいけつえんだからってたしゅけてくれるわけないのりゃ」ビェェーンビェェーン

パチン!パチン!パチン!パチン!

アライさん1「やかましいのだ!!!泣くな!!!けものの子なのだ!お前達は!!!」

アライさん1「怖がっていいのだ!その感覚は生きる助けなのだ!お母さん達は行けないのだ…。
体が大きいから絶対見つかる!
アライちゃん3!犬も猫も四つん這いなのだ!お前達はそこらのネコよりもう大きい!自信を持つのだ!
アライちゃん4その紙が…」

アライさん2「おねーさん!!!来る!!!」

―奴隷アライさん達が校舎に向かってくる。きっとこれが最後のチャンスだろう―

ヒョコ!ヒョコ!ヒョコ!ヒョコ!

アライさん1とアライさん4は両脇にチビを抱え、一箇所ずつ周囲の死角になっているところにスタンバらせていく。

そして、チビ達一匹ずつに囁き掛ける。

アライさん1「その巻紙はお母さん達の生きた証。お宝なのだ。遠縁アライさんに保護を頼む代償に差し出すのだ。
人間に手渡してはいけないのだ。もしもの時は、死ぬ前に破って飲み込むのだ!」

バアーン!!!
メリメリガラーン!!!
ゴッ!ガッターン!!!

妹アライさん達二匹が窓板を引きはがし、学習机を投擲しながら戦闘に突入する!

ペロ!

アライさん1はアライちゃん1の頭を一舐めする。

アライちゃん1「おかーしゃん…」
アライさん「ペロペロは大好きの証なのだ」


タタタッ!!!

アライさん1は校舎の中庭に躍り出る。
もう、チビ達は必死のヨチヨチ歩きを開始している頃だろう。
敵の奴隷アライさん達が火炎瓶に驚いて下がった一瞬が最後のチャンス。
ガイジ共が置き忘れて行った灯油はそんなに量はない…。

ブゥゥゥゥゥゥーン!!!

アライさん1「(あれは…!!!)」

旋回しつつあるドローンが校舎に向かってくるのを見上げる。
チビ達は一応隠れながら進んでいるはずだが、やはり目障りだ。

アライさん1「はぁぁぁー」

ブンブンブンブンブン!!!

ロープで結んだボーリング玉程度の石を勢いよく回転させる!
砲丸投げの選手のように!!!

ブゥゥゥゥゥゥーン!!!

アライさん1「はぁ!!!」

ヒュゥゥーン!!!

ガッ!!!

ヒュゥゥゥー―

ガコ、メキィ―

現地司令部「墜落したドローンと陸自アライさんの情報から、敵性個体がアライさんであることが確認されました。
中庭に一匹!火炎瓶投擲箇所付近に推定2~3匹!発砲を許可します!!!」

県兵現地幹部「了解!!!此方ではすでに交戦が始まっています!!!
校舎から飛び出してきたアライさん二匹が火炎瓶や石を次々投擲。
包囲線は前回連絡時より50メートル後退しています!!!」

現地司令部「発砲を!!!陸自アライさんには軍用ナイフ使用許可を!!!ただし校舎の炎上だけは極力回避を!
県や国指定の建造物です!!!」

県兵現地幹部「了解!!!」


ヒュン!
バリーン!
メラメラメラ!

一般県兵D・E「あっちっっ!!!」ゴロゴロゴロ

県兵現地幹部「発砲許可発令!!!校舎外で投擲している二匹に!!!」

パパパパパパン!!!

アライさん2「ぎびぃ!」ビクビクバッタンバッタンビクビク!
アライさん3「ぐびぃ!」バッタンバッタンビクビクビクバッタン!

胴体・頭部を次々と貫通され、あっけなくゴキガイジムーブを晒すアライさん達。

タッタッタッタ!

一般県兵F「二匹の敵性生物の絶命を確認!!!」


県兵現地幹部「良し!催涙弾と閃光弾を校舎に打ち込んだ後突入しよう!!!」

ザッザッザッ!!!

県兵現地幹部は無線で校舎内制圧開始の指示を仰ごうとするが、それに待ったをかけるものが居る!

子孫陸自フェネック「お待ちください!!!」

県兵現地幹部「???」

子孫陸自フェネック「校舎内で火炎瓶を投げられれば、その損壊は免れません。そして、建物は大きい。
一撃で無力化できるかは不明です!」

県兵現地幹部「消防班も待機している。問題ない」

子孫陸自フェネック「存じています。ただ、アライさんは狭い所にも隠れ、不意を衝くのが上手い。
接近戦になるかもしれません」

県兵現地幹部は陸自フェネックの後ろで猶、闘志を燃やしている子孫陸自アライさん6匹に目を遣る。

―二匹は怪我で後送済みだ―

県兵現地幹部「そこで同族のアライさんと言うわけか!嫌いだな!そう言う『分断統治ごっこ』は!
ここはブリテンじゃない!日本だ!!!」

子孫陸自アライさんC「ここが日本だと言うことはアライさんも知っているのだ!!!」コスリコスリ
子孫陸自アライさんD「ジャパリパーク無き今。子孫アライさんが生きて、土に還るべき場所なのだ!!!」コスリコスリ
子孫陸自アライさんE「忠誠を示す機会を取り上げないで欲しいのだ!!!」コスリコスリ

県兵現地幹部は一瞬、ウジャウジャ詰め寄ってきたアライさん達に気押されそうになる。
胸の中に沸いていた意固地な気持ちがスゥーっと下がるような―

自分はこの場の指揮官なのに、想定外の武器と負傷者の続出で頭アライさんになっていた!

県兵現地幹部は陸自フェネックに告げる。

県兵現地幹部「負傷者…。いや、負傷個体をこれ以上出したくない。まず、催涙弾と閃光弾。
陸自アライさん隊突入は県兵の援護の下。この内容で現地司令部に上申する」

子孫陸自フェネック「催涙弾はどうか使用しないで下さい。陸自アライさんの感覚にも影響が出ます!」

県兵現地幹部「分かった!それで行こう。そうお伝えする!!!」

子孫陸自アライさん達「「「「!!!!!!」」」」コスリコスリシッポフリフリ

県兵現地幹部「(そのハエガイジムーブ。やはりまだ見慣れんな…)」


閃光弾を補充・負傷者の簡易手当てを済ませると、人間達は一気に畳みかけて来る!

バン!バン!バン!バン!

県兵達は閃光弾を校舎中に打ち込んで行く!
その眩い光と感覚を麻痺させるほどの音響が各部屋に一斉に轟く。

県兵現地幹部「…」サッ!

ゴォン!!!

旧校舎の表口と裏口から、扉をぶち抜いた突入班が校舎に侵入。
それに先行して陸自アライさんは2匹ずつ3班に分かれながら、窓を封鎖する板をその強い腕力で引きはがしながら侵入を開始!


県兵現地幹部に早速、無線が入る。

一般県兵A「こちら表口突入班。廊下に学習机や椅子を利用した簡易バリケードが築かれています。
撤去しながら進みます」

一般県兵H「こちら裏口突入班。同じく簡易バリケードを確認。一重ではなく、少なくとも3重程度はある模様」


県兵現地幹部「了解!警戒を厳にしろ。屋根裏や壁の隙間からの攻撃に要注意だ!
恐らく、机の脚などを利用した簡易的な槍なども利用してくるはず。投擲武器に要注意しろ!」

全県兵「了解!!!」

県兵現地幹部「(やはり、こうなってくるとアライさんの鼻が頼りか…。
この辺りはかつてのサンドスター大噴出の影響で未だに電子機器に不具合が出ることも有る。
熱源探知機も一応持ってこさせているのだが…)」

県兵現地幹部「熱源探知は上手くいっているか?」

一般県兵F「…。最初に投擲攻撃が行われた教室にはもういないようです。どうもノイズが多い。
きっと、昔の大災害発生時に紛れ込んだサンドスター・ロウが埃に付着しているのでは…。あっ…!」

県兵現地幹部「どうした!?」


陸自アライさん達は、校舎内で声を発せず手でサインを送りあう。

子孫陸自アライさんC「…」(そこら中にうんこの臭いがするのだ)
子孫陸自アライさんD「…」(惑わされちゃダメなのだ!動くけものの臭いを追うのだ!)

子孫陸自アライさんE「…」(姿勢を低くするのだ。何を投げてくるか分からないのだ)
子孫陸自アライさんF「…」(灯油の臭い…。この量なら、残りの火炎瓶はほぼないはずなのだ)

子孫陸自アライさんG「…」(どこにいるのだ…。トイレの隅で震えているのか)
子孫陸自アライさんH「…」(あるいは…。屋根裏。壁裏に潜み、見敵必殺の機会を待っているのか)

奇妙なかくれんぼは、不思議な緊張と均衡のなか行われる。
プレイヤーの誰もがこの不思議な静けさは一瞬で破られるものだと知っているのだ。

一般県兵F「熱源感知…」ザッ!

ヒュッ!

砂っぽい無線の音が入った瞬間に、何か黒い投擲物が陸自アライさんCの頭上を掠める。

ダッッッ!!!
ダッッッ!!!

それを合図にしたかのように陸自アライさんC・Dは投げ槍の投擲元に駆け出す!
ゴキブリのように、クモのように廊下を這うような形で!!!

アライさん4「…」ダッ!!!

ガシッ!!!

アライさん4は更に遅滞戦術を続行しようと屋根裏に潜ろうとするが、それを陸自アライさんCは許さない。
飛び上がった下半身にしがみ付くと地面に引きずり下ろす。

バタン!!!

ゴキリ!!!

アライさん4の背が地面に叩き付けられるとほぼ同時に陸自アライさんDは、その首を掴むや一気に回転させる。

ビクビクビッタンビッタンビクビクビッタン!

ゴキガイジムーブと共にアライさん姉妹の末女がその命を終えた。

ボゥ!
メラメラメラ!!!

炎が校舎の一室から上がったのは、
アライさん4のゴキガイジムーブの波動が床越しに姉アライさんに届いた直後だった。
マナーが成っていないボランティア気取りの廃墟漁り達が残した灯油全てに火をつけたアライさん1。

交戦を諦めてしまったのか―

そうではない。
これは遅滞戦術の一部。

アライさん達は人間の兵器の凄さを知っている。この建物くらい本気ならとうに吹っ飛ばしていることも。
それが出来ない理由が―アライさんには理解できない類のものだが―あることも!

この3日間で悟っている!!!

アライさん1「(この火を消せるものなら消してみるのだ!あとは…)」

・・・・・
・・・・・

音もなく忍び寄る二匹のけもの。
人間のものではない!
奴らだ!!!種族の裏切者!!!奴隷兵士たち!!!

アライさん1「キシャァァァー!!!」ダッ!

長机の脚をもぎ取り、ガラス片を穂先に結び付けた簡易槍を振りかざしながらアライさん1は自ら選び取った死地へと向かう!

子孫陸自アライさんG「…」シュパッ!

シャァァ―ザクッ!ブシュゥゥー!!!

アライさん1が繰り出した槍を紙一重で躱しながら、陸自アライさんGは敵の槍の柄に軍用ナイフを滑らせ、
獲物を握る指を何本も切り落とす。

ムンズ!ブシュゥゥゥゥゥー!!!

しかし、アライさん1がその痛みを感じる暇さえなかっただろう。
背後に回り込んだ陸自アライさんHがほぼ同時にその首を掻き切っていたのだから…。


メラメラメラ―

旧校舎の火は30分後には鎮火され、村民の大事な遺産はほぼ守られた。
県兵側の軽傷者4名。陸自アライさんの重傷獣2名。死亡者なし。

敵対アライさん成獣4匹を防除(前段階の先行索敵を加えれば成獣5匹、幼獣3匹、アライグマの幼獣3匹の計11匹)。

その後の工兵による電気柵工事も順調に進み、安全エリア確保作戦は一応の成功に終わった。

今日はここまでです。

連絡が遅れてすみません。今日はお休みです。

そもそも今の群れは大母アライさんのカリスマで持っているようなものだから
暖簾分けした群れの指揮を取れる奴がいないわな
山ボスアライさんの説明を見ても↓程度の存在だし


>>一匹は山ボスアライさん。アライさんは群れないけもの。つまり、ボスも何もない。
>>しかし、ともあれ『フレンズ化』により、人語と言うコミュニケーションツールを手に入れ、互いの縄張りがある以上、ある種の『顔役』というか、
>>その地の『有力個体』とでもいえる存在はいる。
>>
>>それがこの山ではこの『山ボスアライさん』である。

続きを書き込みます。

キュルルルル……グウッ……

タヌキちゃん「お母さん…。今日も帰ってこないの?」

森の中、人間なら9歳ぐらいの可愛らしい女の子が巣穴の中で帰らない母を待ち続けている。
ここのところ餌を食べていないのか、すっかりぐったりしている。
手元には母タヌキさんから、譲られた中学生の国語の教科書と補助教材として渡された学研マンガ。

タヌキちゃん「(『蛍雪の功』…。お母さんが大好きなお話だったな…)」

苦学して身を立て、世のため自分の為になれるけものになりなさい。
きっとタヌキさんも自分にそう言い聞かせながら、恵まれない環境の中を懸命に生きていたのだろう。
その努力が報われることは遂になかったが―

中学受験で特待生として良い学校に娘タヌキちゃんを入れてあげたい。
そうすれば、もうちょっと理解のある同級生の中で学校生活を楽しめるはず―。

そう信じて、森の中までわざわざ自分のお古の教材まで持ち込み、時に中学・高校の内容まで『お母さん先生』をしていたのだ。

タヌキちゃん「(もう、お母さんは帰ってこない…)」

聡いタヌキちゃんはずっと前に気づいている。
優しい母が自分を置いてけぼりにして、フラフラしているはずがない。
帰ってこれないのだ…。数日前に遥か遠く響いた銃声はきっと―。

人里に下りれば、きっと一時保護はしてもらえる。
ほんの少しの間は皆、『可哀想だね。辛かったね』と言ってくれるだろう。
そして…、それっきりだ。もう知っていることだ。

タヌキちゃんは、お母さんから譲られた本の温もりを噛み締めるかのように、そっと抱き、
体を丸めながら目を瞑る。

タヌキちゃん「(このまま天国のお母さんが迎えに来るまで。ずっと待ってる)」ギュー


そんなタヌキちゃんが―

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!

???「投降勧告が思ったより捗ったのだ!」コスリコスリ

???「ちょっと捗りすぎかもしれないのだ…。まあ、不心得者も居たのだけれど。
あと、新参アライさん!!!水中戦と怪我の回復以外はコスコスあんまりしちゃダメなのだ!
『お役目中』なのだ!!!」

???「ごめんなさいなのだ」


ザッ!クンクン!


彼らに出会ったのは、天命か母のご加護か―

???「何か、他のけものの臭いがするのだ」シッポフリフリ


ガサッ!ガサッ!ガサッ!

あるいは悪魔の気紛れだったのか―


…カラン

ボコン!!!

ビクビクッ!

…カラン

バサッ!

ジタバタッ!


大母アライさん「またか…」

大母アライさんは些かうんざりした顔で周囲を睨む。
そばにいる恩寵アライさん達と中姉アライさんは身を竦ませる。

昨日の夜遅くから、今までずっと。『家族』がこの山の仕掛け続けた罠に獣が掛かり続けているのだ。
無論原因は、はっきりしている。

県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー
県兵装甲車「♪♬🎶」ブロロロロォー

大母アライさん「(派手に始めたものなのだ…)」

自分達が退去させられた『領土』。ふもとの村落部で、人間が逃げそびれた獣を追い立て続けているのだ。
彼らは止む無く山に向かうのだが、其処にはすでに―

中姉アライさん「でも…。けものがたくさん捕れて大漁なのだ!いっぱいお肉が食べれるのだ?!」

中姉アライさんは、不機嫌な大母アライさんを気遣うように声を掛ける。

しかし―

大母アライさん「ガイジか!!!大漁の後には必ず不漁が来るものなのだ!!!
鳴子が鳴り過ぎたら人間に気づかれるかもしれないのだ!!!」

中姉アライさん「…」ショボン

この場に居ない大姉アライさん他の姉アライさん達は、子分アライさんを連れて後始末に向かっている。
仕掛け過ぎた鳴子の数を整理し、罠に掛かった獣を一部は山林に放す。

勿論、憐れみや利他的な気持ちからではない。将来自分達が飢えないためだ。


中姉アライさん「(それに壊れた罠の再整備もしているのだ…。大変なのだ!)」

チィィ!!!

大母アライさんは舌打ちをする!

大母アライさん「山野に伏すけものは賢いのだ。罠の仕掛けを覚えられれば困ったことになる!
『逃がすのはマヌケそうな奴にするのだ!聡そうな奴は今回、殺して食べるのだ!』」とは言ってあるのだが…」


ガサッガサッガサッッ!

そんなことを話している時、藪影からヌッと何者かが姿を現す。

ジタバタジタバタ!!!

大姉アライさんと子分アライさん数匹だ。

ノッシノッシシッシ!!!

大姉アライさんは剽悍そうな鳥を逆さに持っている。
子分アライさん達は何か地を力強く這おうとするけものを紐で引きずりながら連れて来る。

大姉アライさん「大母さん!今、一時戻りましたのだ!!!」

ジタバタジタバタ!!!

大母アライさんは一先ず頷くと尋ねる。

大母アライさん「それで…。その騒がしい奴らは何なのだ?」
中姉アライさん「…」パチクリ!

ノッシノッシシッシ!!!

大姉アライさん「こいつらはニワトリとイノシシ―と言うか野生化したブタ―の子供なのだ!!!
他にヤギも見つけたのだ!!!」

ジタバタ!!!コッコッコ!!!

大母アライさんは頷いて先を促す。
そんなことは一目瞭然!
大母アライさんは『こいつらをわざわざ連れて来て如何したいのか聞いているのだ!!!』

大姉アライさんはその場の皆を見渡して告げる。

大姉アライさん「アライさんは―大母さんに―、これを機に『養鶏』『畜産』を始めることを提案いたしますのだ!!!」

中姉アライさん「…」!!!
鏃アライさん・恩寵アライさん達「「「…」」」!!!
大母アライさん「…」ジロリ

鏃アライさん「(『ようけい』『ちくさん』って言うと…。人間がいっぱいニワトリを飼って卵やお肉を取ったり、
豚や牛やヤギや羊を飼って、お乳やお肉や毛を取ることなのだ!?
前にアライさんも鶏小屋に忍び込んだことが有るのだ…。それをアライさん達もやるのだ?)」

大母アライさんの側に控える鏃アライさんは心底ビックリした顔で大姉アライさんの顔を見つめる。


やがて、沈黙を守っていた大母アライさんが口を開く。

大母アライさん「正気なのだ?畜産はスペースを取ると聞くのだ?それに家畜の餌はどうするのだ?
モノになる前に『家族』が飢えることになるかも知れないのだ!」

それに対して大姉アライさんが答える。

大姉アライさん「こいつらは一度は人に見捨てられ、山に帰ったけもの達。山道・粗食に慣れている筈なのだ!
アライさん達とあまり競合しない種類の草を食わせ、時にはアライさん達のうんこも餌にすれば良いのだ!!!」

大母アライさんは続けて問う。

大母アライさん「飼いならせるのだ?鳴き声が人間を呼び寄せないか?
野生化したけものは手ごわいはずなのだ!!!」ジロ

大姉アライさんは淀みなくこたえる。

大姉アライさん「ダメで元々なのだ!モノにならないと思った個体は、その時に潰して食えばいいのだ!!!
仮に逃げ出されたり、多少声が漏れたとしても元々野生化したけものだから不審がられる要素は少ないはずなのだ!!!

アライさん達は人間から没却した書籍や漫画があるから、その絵や図や写真も参考にできるはずなのだ!!!」


ジーッと大姉アライさんは『家族』の大母を見上げる。大母アライさんは暫く考え込んでいたが、ややあって頷く。


大母アライさん「分かったのだ!!!餌の入手方法の多角化が必要とは感じていたところだったのだ…。
今、罠を確認して回っている山姉アライさんと洞姉アライさんにも
『家畜化の見込みがある獣は、殺さず、傷つけず、持ち帰るよう』伝えるのだ!!!」コスリコスリ


バッ!!!

そばに付いていた恩寵アライさんから2匹が飛び出し、駆け出す。

今の言葉を伝令で伝えるためだ!!!

大母アライさん「有用な忠言。大義なのだ!」コスリコスリ

大姉アライさん「大吉なのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

大姉アライさんは、自分の上申が受け入れられて心底嬉しそうにしている。
それを見ながら、やや蚊帳の外に置かれていた中姉アライさんに大母アライさんから突然声がかかる!!!

大母アライさん「では、その『ようけい』『ちくさん』担当の姉アライさんは一先ず、中姉アライさんにするのだ!」


ビクッ!!!


中姉アライさん「へっ!!!アライさん!!??何でなのだ!!??」

中姉アライさんは驚いて大母アライさんを見つめ返す!
大姉アライさんも不思議そうな顔をしている。
てっきり面倒な役割は言い出しっぺの法則が適応されると思っていたのだが…。

はぁぁ~

そんな『娘分』達の顔を見ながら、大母アライさんは理由を伝える。
と言うか、そろそろ自分らでも考えるのだ!!!

大母アライさん「もし『ようけい』『ちくさん』がモノになれば、それは『家族』の大きな財産。
それを司るアライさんは云わば『家族』の『大蔵大臣』なのだ!出来れば、古参から選びたい処なのだ…。
別に新参を差別するわけではないのだけど。
うち、大姉アライさんは全体の副リーダー、小姉アライさんはチビの世話、なら残ったアライさんはお前なのだ!!!」コスリコスリ


パチクリ!!!

中姉アライさん「そ…、そう言われてみれば…」コスリバチ!

中姉アライさんは、無意識にハエガイジムーブしそうになる手を自分で叩いて止める。大事なお話の最中だ!!!

大母アライさん「続けて良いのだ?」

コクン

中姉アライさんは頷く。

大母アライさん「お前は、少なくとも狡すっからい奴じゃないのだ。よく言えば『聞く耳を持てる』アライさん。
『群れを創ろう』なんて誘いに真っ先に乗っただけはあるのだ…。
だから、こうしたアライさん達の新しい取り組みを大姉アライさん他周りのアライさん達の意見を受け入れながら
柔軟にこなせるはずなのだ。

そして、お前はこれまで多くの首級を挙げてきた『姉』号持ち。
お前とお前が選んだ配下の子分アライさんから、物を盗もうなんてアライさんは『家族』に居ないのだ」ジロ

大母アライさん「(ついでに言うと、大それた企みや裏切り、横領も出来そうにないってことなのだけど。
まあ、これは言わなくて良いことなのだ)」

うん?

ブルブルブルッ!

何か中姉アライさんが震えている。
何なのだ?

大母アライさん「何か不服で…」
中姉アライさん「大母さん!!!!」

ビクッ!!!

大母アライさんは珍しく気押されながら、中姉アライさんに問い返す。

大母アライさん「何なのだ!?急に大声を!!!」
ガイジかこいつ!!!

中姉アライさん「感動なのだ!!!アライさんをそんなに買ってくれていたなんて!!!
見事『養鶏』『畜産』を成功させて見せますのだ!!!」ウルウル

はぁ~

大母アライさんは溜息をつきながら、声を掛ける。

大母アライさん「まあ、ダメ元なのだ…。せめて、ヤギやニワトリくらいはとも思うのだけど。
大姉アライさんら『物知りな』アライさんと協力して頑張るのだ。あと、手下を後で選抜するのだ」コスリコスリ

大姉アライさん・中姉アライさん「「大吉なのだ!!!」」シッポフリフリフリ

良く分からん取り組みに手を出し始めた『娘分』達は一旦置いておき、
大母アライさんは恩寵アライさん達と共に蛇張村村境付近に再移動し始める。

さっき伝令に行った2匹も帰ってきている。そろそろ、軍使アライさん達が帰ってくる頃だ。

北側の軍使アライさんに追加の指示を伝令させる。
『追加で子分アライさんを送った!今回はチビ達ごと新しい家族アライさんを連れてくるのだ!!!』

バサッ!

大母アライさんが胡坐をかくや否や、鏃アライさんは素早くその両肩にクマの毛皮をまとわせる。

大母アライさんはまるで暇つぶしのようにお供の『恩寵組』のうち、新参のものに問いかける。

大母アライさん「そう言えば、新たにお供アライさん―お前達は『恩寵を有するアライさん』と呼んでいるのだ―
に加わった三匹のアライさん。
お前達はいつも何を食べているのだ?この村・山のアライさんと同じものなのだ?
よく人間の畑やゴミ箱に行くのだ?」コスリコスリ

新たに『恩寵組』に加わったアライさんのうち、北から加わったアライさんが答える。

恩寵アライさん1「アライさんは何でも食べますのだ!
だから、それがこの山・この村と同じものかは分かりませんのだ!
ただ、アライさん親子はドングリをたくさんたくさん集めますのだ!!!」コスリコスリ

大母アライさん「ほう!!!」コスリコスリ
クイっと顎をしゃくる。『詳しく聞かせろ』

恩寵アライさん1「大吉なのだ!
アライさんはアライさんのお母さんの母さんのお母さんの…多分もっと上のお母さんの頃から、
ドングリを拾っては壺や樽、樹の器に詰めて地中に埋めてきたのだ。
どうしても、餌がなくなった時は前に埋めたドングリを掘り起こして食べたりするのだ!

たまに前埋めた器から芽が出てきたりすることが有るから、大きく成るのを楽しみにしているのだ!」コスリコスリシッポフリフリフリ

大母アライさん「!!!…。植林!お前らアライさん親子は、ドングリの植林をしていたのか!!!」バッ!!!

大母アライさんは驚いて身を乗り出す。

恩寵アライさん1は驚いて半身引く。

恩寵アライさん1「うわっ!!!驚いたのだ…。そんな大げさな物じゃないのだ。
余ったドングリを代々溜めて、たまに芽が出たら、それを大事にしているだけなのだ」コスリコスリ

大母アライさん「(こいつ!自分達が如何に『アライさんらしくないこと』を成し遂げたのか理解していない?!)」


大母アライさんは視線を横に動かす。
目が合った恩寵アライさん2―確か西から来た―はおっかなびっくり喋り出す。

恩寵アライさん2「アライさん達姉妹も何でも食べますのだ!
勿論人間の畑にも行くのだけど、巣が川の近くだから釣りをしますのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

大母アライさん「『釣り』?ザリガニ取りのことなのだ??!!」コスリコスリ

恩寵アライさん2「ザリガニも勿論食べますのだ!!!でも、アライさんが今言った釣りは、こう…。
人間がやるような糸や針や餌を使ったものなのだ」コスリコスリ

そう言いながら、恩寵アライさん2は、釣竿を使ったり、川石で囲い罠漁法をしたり、
ガッチン漁法をするジェスチャーを演じる。

大母アライさんはそれを目を丸くしながら見つめる。

大母アライさん「…。お前達は。それを誰かから学んだのだ?」

もう手を擦っている場合じゃない。

恩寵アライさん2「お母さんから。その上は多分、大分上のお母さん達からなのだ。
アライさん達の住処の下流の方では人間が良くお魚を釣っているから、きっと真似しながら学んでいったのだ!」コスリコスリシッポフリフリ


お前は!お前はどうなのだ?

大母アライさんは視線を恩寵アライさん3に向ける。
こいつは確か東だった。

恩寵アライさん3はションボリする。

恩寵アライさん3「アライさんは…。アライさん達親子は特に土産話が無いのだ。
偶にクラクラジュースを飲むくらいなのだ」ションボリ

大母アライさん「クラクラジュースって何なのだ?」ジロリ

恩寵アライさん3「アライさん達のお母さんのお母さん達が、人間から取ってきたブドウや山葡萄を
樹洞に潰して入れてほっといたら、何か酸っぱくてクラクラするジュースになったのだ。
それを偶にペロペロするのが楽しみなのだ。
でも、ペロペロし過ぎたら隙が出来るからダメだとお母さんに言われているのだ!!!」ションボリコスリコスリ

大母アライさんは完全に言葉を失っている。

鏃アライさん・恩寵アライさん「「「「????」」」」シッポフリフリフリフリ
そんな大母アライさんの様子を周囲のアライさん達は不思議そうに眺める。

アライさんは、決してけもの・フレンズの中で頭が悪い方ではない。
むしろ、好奇心と学習能力に長けたずる賢い生き物。

ただ、群れるけものではないので、各個体・各血統が獲得した知識は子孫に『教え』として口伝されるのみ。
幾ら賢い個体や個体群があったとしても、体系的な教育を受けたわけではなく、
断片的な『お婆ちゃんの知恵袋(ただし、サバイバル要素満点・生活密着型)』が頭に入っているだけ。

それが―

大母アライさん「(こうして、地域間統一を成し遂げたことによってアライさん同士の知識の交流。
『かがくはんのう』のような…、そう言ったことが起こり始めている!!??)」

考えを手早くまとめると、大母アライさんは『恩寵組』に告げる。

大母アライさん「改めて、『娘達』よ。ようこそ大母さんの『家族』へ!!!」コスリコスリ

大母アライさんの声に『恩寵組』は元気よく答える。

恩寵組アライさん達一同「「「「「「大吉なのだぁぁぁぁー!!!!!」」」」」」コスリコスリシッポフリフリフリ

今日はここまでです。

続きを書き込みます。

タッタッタッ!!!

野良山アライさん1は必死になって自分の巣に駆け戻る。
チビ達の下に!!!そっちから嫌な臭いがする!

遂さっき、変な奴らが来たばっかりなのだ!!!
突然、アライさんのお庭に土足で―

ザッ!ピタッ

野良山アライさん1「…」ハッ!!!

野良山アライさん1の目の中が真っ赤に染まる…
アライさんは本来色の識別が苦手だ―
それでもその『色』が何を意味するか…、本能が告げている―

アライちゃんの下膨れな頭が一個、二個、三個。
頭を叩き潰されたアライグマの子供の屍が一個、二個、三個。
ボトボトボトボト…
ゴロゴロ…
コロコロ…
胴体が、手足が、指が一面に転がっている…
自分の、『アライさんの可愛いチビ』が巣穴の前で全員バラバラに…。

糞尿と血が混じった臭いが辺り一面に―

ヒュゥゥゥ―――ザクッッッ!!!

そこで足を止めたのが最大の誤り

野良山アライさん1「…。へっ?なんな…」ゴブッ!!!

ビチャッ!!!ゴフッッ!!!ビチャッ!!!

あ…アライさんの!!!自分の体から!!!木が生えている??!!

ヒュゥゥゥゥ―ブシャッ!!!
ヒュゥ―ザクシュッ!!!
グシャッ!!!

ビクビクバッタンビクビクバッタンビクビク!!!

森奥より飛来した多数の投げ槍により、
野良山アライさん1は頭と言わず胴と言わず手足と言わず串刺しになって肉塊と化す!!!

野良山アライさん1「」シーン

野良山アライさん2「鬱陶しい余所者はやっと帰ったのだ…。突然来て無礼な奴なのだ!!!」コスリコスリ

野良山アライさん2はしゃがみ込んで『スカート状の毛皮』を捲り上げる。

パサッ!ジョロジョローー!!!

野良山アライさん2「きぃもちぃ~のだ~」ジョボボボ…

ヒュゥゥ―ザク!!!
ビシャ!!!

ビッタンビッタンビクビクビッタン!!!

野良山アライさん2は放尿の続きを地獄でする羽目になった。

ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!

ゴキガイジムーブを続ける体に猶、槍を突き刺すのは昨日までの隣人ならぬ隣アライさん。

『家族』に加わることを明言したアライさん達だ!!!
忠誠の証にしつこいほど突き刺す!
返り血そのものが『家族』としての洗礼に必要だから―

野良山アライさん達の巣穴を『家族』アライさん達は次々と掃討する。

野良山アライちゃん1「やめて…!!!おねがいなの…」ザクッ!!!
野良山子アライグマ♂1「クゥル…!!!」コキッ!!!
野良山アライちゃん2「おかあしゃん!!!どこなの…」グチャッ!!!
野良山子アライグマ♂2「キュル…」メシッ!!!

それでも苦痛の痛みを口に出来ただけ、彼ら彼女らはましだっただろう―

ザク!ザク!ザク!ザク!

ビクビクビッタンビッタン!
ビクビクビッタンビッタン!

ビクビクビッタンビッタン!

ビクビクビッタンビッタン!

ザク!ビクビクビッタンビッタン!

声すら上げる間もなく命の火をかき消されるアライさんのゴキガイジムーブの音と―

ザクッ!ザクッ!ビチャビチャ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ビチャビチャ!
ザクッ!ザクッ!ザクッ!ビチャビチャ!ザクッ!ザクッ!ビチャビチャ!
ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ビチャビチャ!ザクッ!ビチャビチャ!
ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ビチャビチャ!ビチャビチャ!

それを執拗に突き刺す『新参家族アライさん達』の刺突音のみが暗い森に響く―

ブン!!!ビチャビチャ!!!

大母アライさん「済んだのだ?!」

槍状態にしたマタギ刀の血を払い落としながら、
大母アライさんは軍使アライさんと『ドングリ姉アライさん』に尋ねる。

ドングリ姉アライさん「大吉なのだ!!!10家族の敵対アライさん・アライグマ全員の絶命を確認しましたのだ!!!」


大母アライさん「フン!!!」

チラリ

大母アライさんはその報告を聞きながら、ドングリ姉アライさん、共に加わった北のアライさん達、
お供の恩寵アライさん達を眺める。こちらの死亡アライさんはなし。

そして、全員が『敵』の返り血を浴びている―

大母アライさん「(上出来なのだ…)」

鏃アライさん「…」ニッタリピカピカガイジガオ!

少し、体を痛そうにしながらも最初に投げ槍を命中させた鏃アライさんはピカピカガイジスマイルをしている。
その能天気な顔に少し呆れながら大母アライさんは腕を振って指示をする。

『半分はここで、土地の占拠と片づけを!』
『もう半分は、村境に一旦取って返すのだ!』
『成功!と伝令を!!!』

ダッ!!!

恩寵アライさん2匹が走り出す。

『軍使アライさん』・余所者アライさん1「「今から裏切りアライさんの襲撃を行う??!!」」ビクビク

突然の大母アライさんの言葉に二匹のアライさんは言葉を失う。
大熊の毛皮をまとった大母アライさんは、周囲を恩寵アライさん達に囲まれながら傲然と胸を張る。

大母アライさん「追加で子分アライさん達を送り、今、ここにチビらを回収して、
お前たち『北側の新規加入アライさん家族』とも合流したのだ」ジロリ

そう言いながら、大母アライさんは新たに加わった少し北のアライさん達を見つめる。
足元にはそのアライちゃんや子アライグマ♂等がウジャウジャと戯れている。

総勢25家族!

想定よりはやや多い。
対して、『家族』への加入を拒んだ『マヌケ』は10家族らしい―

追加で集めた子分アライさんに一時の子守兼人質の見張り役を任せるとして―

大母アライさん「(それプラスお供の『恩寵組』が総勢15匹揃っている)」

『恩寵組』―大母アライさんのお供や伝令、側仕えをしている親衛隊。
『家族』結成の最初期から、居ることは居たのだが、他の『家族』アライさんは
これまでさほどその存在を重視していなかった。

『何か大母さんのお側に何時もいるアライさんが決まっているのだ』位の印象。

ただ、大母アライさんはその『お供』の選別に密かに気を使ってきた。
『恩寵組』のアライさんは原則、大母アライさんや姉号持ちアライさんの近親アライさん(同父・異父姉妹、従姉妹、又従姉妹等)のうち、体格が立派で賢そうなアライさんを選抜してきた。


血縁はだいたい臭いで分かる!!!

大母アライさん「(こいつらは姉アライさん達への『人質』であり、
『家族の未来の姉候補』兼『群れの精鋭部隊』。側仕えをさせながら『幹部教育』を施す。
いや、学び続ける『家族』の在り方としては、一緒に勉強していくと言った方が正しいのだ?
『家族』の大きさの拡大縮小、大母さん・姉アライさんのチビ・妹達の成長に合わせて、
その規模は調整して行けばいいのだ)」

大母アライさんはチラリと側に控える鏃アライさんに目を向ける。
こいつはその『忠誠心』を買って例外としてお供に加えた。

アライさんと言う現金な種族にとり、それは大事な才能。
ただ、まさか『恩寵組』(恩寵を有するアライさん)と勝手に名前まで付けるとは予想外だった。

まあ、かっこいいのでそのまま行くのだ―

ザワザワザワッ

パンッ!

小さく手を打って大母アライさんは周囲を注目させる。

大母アライさん「すでに投降勧告は終わっているのだ!
そして、ここにいるアライさんのうち、チビの護衛を差し引いても、新規加入アライさん25匹と『恩寵組』15匹、
そして大母さん、計41匹。
10家族の敵対アライさん達を悉く平らげるのに十分!!!何の問題もないのだ!!!」ギロリ

平らげる(たいらげる)―
その断固とした響きに辺りのアライさん達は押し黙る。

―まだ、心の準備が出来てないのだ―

キョロキョロ

『軍使役』を務めた子分アライさんが恐る恐る大母アライさんに尋ねる。

軍使アライさん「それは承知のことなのだ…。でも、珍しいのだ!
いつもは『儀式』をしてから襲撃をかけていたのに…」

ジロリ!!!

大母アライさんは、大マヌケな問いを発する子分を睨みつける!

大母アライさん「この麓には人間の兵隊がウヨウヨしているのだ!
お前!一体どこで『儀式』をするつもりなのだ!!!」

軍使アライさん「…」ハッ!!!
恩寵アライさん達「「「…」」」ハッ!!!
新規加入アライさん達「「「「「…」」」」」ハッ!!!

ギロリ!!!ジロリ!!!

大母アライさんはその場の全アライさん達を睨みながら告げる。

大母アライさん「兵士が引くまでこの山で『儀式』を行うことは危険なのだ!!!!一旦は越境しないと!!!
もっと言うと、小姉アライさん達『保母・チビアライさん隊』を一刻も早く安全圏に移動させないといけないのだ!
だから、三方のうち、一番早く軍使アライさんが帰還した場所に電撃的に攻め込むことは最初から確定していたのだ!!!」


大母アライさんは新規加入アライさん達に視線を投げる!

大母アライさん「今この段階で『家族』に加わることを躊躇するアライさんが居たら正直に名乗り出るのだ!!!
機密の為にそのまま逃がすことは出来ないのだけど…。その場合は度胸に免じて、一騎打ちに応じてやるのだ!!!

さもなくば、これから行う襲撃に全員参加するのだ!!!」

ガッ!!!

大母アライさんの前に鏃アライさんが飛び出す!!!

鏃アライさん「大母さんと一騎打ちする前にこの死に損ないと勝負なのだ!!!
もしその気がなく『家族』になることを望むなら、一旦両手を地に付けるのだ」ゲシゲシ!!!

キシャァァァー!!!

鏃アライさんは牙を剝き出しにして、新規加入アライさん達を睨む!!!

余所者アライさん1「(人間に一度は殺されかけたとは思えない気迫!!!これが全ての答えか…)」

ペタッペタッ…

蛇張村山林地帯のすぐ北で顔役をしていたと言う余所者アライさん1は素直に両手を地面に付け、
敵対心のないことを表す。

ペタッペタッ

ペタッペタッペタッペタッ

ペタッペタッペタッペタッペタッペタッ

25家族のアライさんアライちゃん達もそれに倣って両手を地面に付けていく―

ザクッ!!!ピトピトッ!!!

余所者アライさん1「…」ビクッ!

大母アライさんは、自分の右掌を左手の爪で傷つけ血を流すと、そこにむき出しにした乳房からお乳を垂らす。

大母アライさん「今回は簡易的なものなのだけど…。
この血は大母さんが『お前を産むときに股から流した血。この乳はお前を育むときに吸わせた乳』なのだ」

余所者アライさん1「…」ジー

ペロペロペロ

その言葉の意味するところを察した余所者アライさん1は大母アライさんの血に濡れた右掌を赤子のように舐める。

それを見つめながら、大母アライさんは声を掛ける。

大母アライさん「お前の娘から聞いたのだ!お前はドングリを集め、溜め、時に芽を出させて育てるのが上手いと!
よって、今後『家族』では『ドングリ姉アライさん』を名乗るが良いのだ!!!」

余所者アライさん1改め『ドングリ姉アライさん』「大吉なのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

クィッ!!!

大母アライさんが顎で合図を送ると、残る25匹のアライさん達も一匹ずつ丁重に前に進んでは、
自らの『大母さん』の血とおっぱいの味を噛み締めていく―

コスリコスリ

最後の一匹が舐め終わるとともに、大母アライさんは両手をこすり合わせて傷口を塞ぐ。
虹色の光が一瞬、両手に輝くように周囲には映った…。

大母アライさん「後で改めて皆に紹介するのだけど、今、確かにアライさん達の『母子姉妹の誓い』はなった!!!」コスリコスリ


ドングリ姉アライさん「大吉なのだ!!!」ヒソッ!
新参家族アライさん達「「「大吉なのだ!!!」」」ヒソヒソ!
古参子分アライさん達「「「大吉なのだ!!!」」」ヒソヒソ!
恩寵アライさん達「「「大吉なのだ!!!」」」ヒソヒソ!

いつもの『儀式』の大絶叫とは異なり、ここでは息を潜めた誓約が行われる。
麓には人間、そして北には―服わぬ(まつろわぬ)アライさん達!!!

大母アライさん「悉く殺すのだ!その血を以って家族の縁を寄り固めるのだ!!!」ギロリ

その場の全アライさん達「「「「「大吉なのだぁぁぁぁぁぁー」」」」ヒソッヒソッヒソッ!!!

タタタタタタッ!!!!

その返事が終わるや否や!
パチンコ玉が弾き出されるように、殺戮のけもの達は黒い森を真っ赤に染めに駆け出していった―

今日はここまでです。

ネタバレするけど
2年にわたる連載の末、人間が大母アライさんを打ち倒すけど
実は大母アライさんの正体はかつて多くの人間たちを屠ってきた
アライ五忠神の一匹『剣王アライさん』で、
舞台をアメリカに変えて『喧王アライさん』、『堅王アライさん』、
『拳王アライさん』、『賢王アライさん』、
そしてその上に君臨する『大帝アライさん』と戦うため
陸自アライさんズが旅に出る展開になるよ

続きを書き込みます。

カチャッ!

子孫博士の『さあ。もう録音を再開しても良いのですよ』の声の余韻が消えた頃に、
アパート男は録音機のスイッチを入れる。

二羽のフレンズは品の良い応接室の中で息を合わせたように、アパート男をじっと見つめている。

アパート男はインタビュワーとして、研究者として次の質問を考える。
限られた面会時間で、聞くべき大事なこと。
やがて、意を決すると慎重に言葉を選びながら尋ねる。

アパート男「子孫博士さん。子孫助手さん。
どうかわたしを偏狭な『種族分離主義者』とお感じにならないで下さい。
フレンズの方たちの正直な気持ちを知りたいのです。
フレンズの皆さんは『ジャパリパークへの帰還』を望みますか?」

子孫博士・子孫助手「「…」」ピクッ!

人間・フレンズ間の不幸な摩擦―事故・事件・差別・アラ虐・害獣化等―が起こるたびに吹き出す意見である。
主に人間から―

動物は動物園に
フレンズはパークに
元居た在りかに戻すべき!!!

元のジャパリパーク―フレンズの楽園―は残念ながら荒廃・破壊され、生物の暮らせる環境ではなくなっている。

世界再建戦争においてフレンズ達が島外に次々と助っ人ならぬ『助っけもの』になって出て本拠地が手薄になる中、
最悪のタイミングで超大型S級セルリアンがパークのお山をぶち抜くように姿を現したのである。
無数の巨大セルリアン、中型・小型セルリアンを従えながら―

人類再建戦争のうち、太平洋戦線のハイライトである。
結果のみを記すと、島に取り残されていたけもの達は日本の潜水輸送船団がセルリアンの猛攻を掻い潜りながら
日本まで無事脱出させ『(ノア作戦)』、
その後、日米豪中心の環太平洋連合軍+フレンズ達の働きによりセルリアン殲滅とサンドスターフィルター設置は成功した。


ただし、激戦地となり核兵器の使用まで行われた旧『ジャパリパーク』はその歴史的役割を終えたのだ…

アパート男「ただ、旧ジャパリパークを復興―テラフォメーション(?)―して、
フレンズ特区にしようと言う意見は、人間の中では根強いです。
無論、それを『単なる隔離主義』『厄介払いの極み』『けものたちをゲットーに閉じ込め、行く行くはジェノサイドする下準備では』と批判するフレンズ融和派の方達の意見も一理あるかとも思います」


アパート男は、二羽のフレンズを見つめる。
彼女達は『同胞(日本人)』?
それとも『異物(怪獣)』?
どちらだろうか。
いや、自分が彼女たちにとって何者になりたいか、と言う思いの方が大切なはず!!!

アパート男「(でも。俺はもう無邪気に人とフレンズは『友達』なんて…)」

そんなアパート男の顔をしげしげと見つめながら、子孫博士は口を開く。

子孫博士「まず、根本的なところから。『ジャパリパークフレンズ特区案』は物理的に不可能なのです」

子孫博士はピシャリと言い放つ!

子孫助手「不可能なのですよ。ジャパリ組でさえ、『出パーク』後、子供や子孫が出来て数が増えています。
私たちも『日本生まれ』。いわば故郷はこの島国なのです。
まして、島外の現地フレンズ化組とその家族まで含めたら…。ジャパリパークが破綻するのは目に見えているのですよ」

コクリ

アパート男は頷く。
日本に暮らす『国民登録フレンズ』『住民登録フレンズ』『野生フレンズ』総計は資料によってまちまちだか、
野生フレンズを除いて国民人口の3%前後と言われている。

3パーセントと言うと少なく聞こえるが―

アパート男「(日本は人口が多い方。要は300~400万人…匹?…頭?のフレンズが居ると言うこと。
アライさんの人口増殖力だけに目が生きがちだが、小型哺乳類が元種のフレンズは、『ヒト化現象』で多少マイルドにはなっているものの、やはり子沢山な傾向がある。)」

子孫博士はやや熱を帯びた視線をアパート男に向けると言葉を続ける。

子孫博士「そして、何より私は『ジャパリパーク』が壊れてくれて良かった、そう内心では思っているのですよ!!!」


アパート男「(うん?フレンズの楽園が『壊れて良かった』?)」

子孫助手「や…役員」アセアセ

子孫助手は、気が強い相棒兼上司を止めに掛かるが、子孫博士は止まることを知らない!!!

子孫博士「『卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。

  我らが雛で、卵は世界だ。

  世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。

  世界の殻を破壊せよ。世界を革命するために!』」

静かに、しかし強い感情をこめて詩吟する子孫博士にアパート男は答える。

アパート男「ヘルマン=ヘッセの『デミアン』ですか?」

子孫博士は頷くと、一心同体の相棒に目線を向ける。

子孫助手はやれやれと言った風を装いながらもしっかりとした語調で話を引き受ける。

子孫助手「この引用。少し変えて見るのです。聞くのですよ。

『パークの殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。

 フレンズが雛で、卵は箱庭(ジャパリパークシステム)だ。

 箱庭の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。

 世界の殻を破壊せよ。世界を革命するために!』」


何とも言えない顔をしているアパート男。

それに静かに子孫博士は語りかける。

子孫博士「ジャパリパークは『フレンズの楽園』なんかじゃなかったのです。
人間と言う絶対強者が造り整備した箱庭。パークを訪れる『お客様』に優しい世界の幻影を見せるための。
『ジャパリまん』のおかげで肉食獣も草食獣も皆仲好し。
フレンズにのけものは居ない。
ボスと言うパークキーパーのおかげで自分が見えない檻の中にいることも、見世物になっていることすら、
ひょっとしたら生涯気づかない天国のような―監獄なのです!!!
そこで人の置き土産であるラッキービーストに全面介護を受けながら、
己が朽ち果てるまで、来ない『お客様』を待つのです。そのことさえ知らされずに!!!」

子孫助手「時折、私達は、もしあのまま『出パーク』が起きなければどうなったか考えるのです。
『優しい時間』がいつまでも続き、そして不意に終わる。
ラッキービーストに何時か自己回復不能なバグが生じたとき。
あるいは、世界を貪りつくしたセルリアンが最後の空き地に一斉侵攻をかけてきた時。
見えない檻の中、来るはずのない『お客様』を待つばかりの身には―それすら知り得ない身としては―、
どうすることもできなかったでしょう」

スゥー
品よく余計な音を立てず、子孫博士はテーブルの上の紅茶を一口飲む。

そしてアパート男にも、茶菓子を勧めながら口を開く。

子孫博士「だから、かばんさんには本当に感謝しているのです。
私たちを『緩慢な自殺』から救い出してくれたことを。
そして、勿論、互いの損得勘定の上ではありますが、
フレンズを受け入れてくれた日本を始めとした人間文明にもそれなりの好意を抱いているのです」

アパート男「(『それなりの好意』。結構、辛らつだな。
いや、彼女らにすれば、生まれる前から『閉じ込められ』『生きる方向性・見世物としての役割』を押し付けられていたわけだ。

当時自覚はしていなかったにしろ。
そして、人類文明と邂逅したら大小の摩擦。『感謝しろ』なんて、人間側からは言えないな)」


アパート男は、次の質問を考える。
『パーク帰還は論外』。自分達はせっかく壊した卵の殻の中に戻る気はない、そう彼女たちは言う。

アパート男「では、人間・フレンズ間の摩擦は結局どう解消されて行くのでしょうか?」

子孫博士の目がギラリと輝く。
ほんの一瞬見落としてしまうほどの―。

そして、峻厳な言葉を紡ぐ!

子孫博士「万物は相争いながら、己が座を占めているのです。
優しい世界が箱庭に過ぎなかったと種明かしがされてしまったのなら、
後は自分達で生きる道しるべを踏み分けるのみなのです」ギロリ

アパート男「(野生開放…。いや、違うか。でも気圧されそう!!!)」ビクビクッ!

隣から、子孫助手がもっと穏当な表現で相棒の発言を補足する。

子孫助手「別に役員の発言は、『人間・フレンズ皆でバトルロワイヤルしよう!!!』という意味ではないのですよ。

人間同士も自分の人生を切り開くために、受験勉強や就職活動、商工業などで鎬を削って、
『自分の生きる席』を確保するのです。

野生のけもの達は、言うまでもないこと。

それらにフレンズも参加して、『皆で』一緒に試行錯誤しながら、
落ち着くべき場所を模索しようと言うことなのです。

優しい世界を用意してもらうのではなく、自分達で世界を優しくしていくのですよ。

時に利他的に時に利己的に振舞いながら。

神の見えざる手によって調度良い処に落ち着くまで」

アパート男「ああ…。そう言う意味でしたか…。良かった…」

一瞬、フレンズ対ヒトの第三次世界大戦勃発か!!!と身構えてしまった。

そんなアパート男を見つめながら、まるで祈りを託すように優しい声で子孫博士は続ける。

子孫博士「エデンの園から、追われたからこそ、ヒトはここまで強く大きく成ったのです。
人がエデンに今更帰れないように、我々フレンズも『今の故郷』で生きるのです」
子孫助手「初めて、アフリカから踏み出したヒトはきっと怖くて苦しかったはずなのです。
邪王の軍勢に追われながら、割られた大海を必死に息を殺しながら渡り切った者達も。怯えていたはずなのです。
しかし、彼らは為すべきことを成した。この世界がその成果なのです」

ならば―

子孫博士・子孫助手「「フレンズ達も、きっと負けず劣らず成し遂げることが出来るはずなのです」」

息がぴったりどころか、ハモり始めた二羽の賢者をアパート男はまじまじと見返す。

コクン

そして一度頷く。

その『成し遂げられた』先を共有できることを願いながら―

今日はここまでです。

すみません。今日はお休みです。

続きを書き込みます。

ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!

藪をかき分けながら、軍使アライさんは進んで行く!

直ぐ後ろには、西から来た余所者アライさん3。
その後ろには、護衛の子分アライさん3匹。

途中で見つけた『お宝』を風呂敷で包んでドッシリ背負い込んでいる。
持ち切れなかった分は、後で取って来れるように隠しておいた。

因みに軍使アライさん自身は風呂敷は持ってない。その代わりに『此奴』を負ぶっている。

その場で食っても良かったのだが―

軍使アライさん「(『此奴』。巣の中だけでなく、近くの岩穴、土の中に埋めたバックや金庫の中まで大量に
『お宝』を隠してやがったのだ。
アライさんには金庫の開け方が分からないから、息の根を止めるわけにもいかない…)」

チィィー!

軍使アライさんは忌々しそうに背中で弱弱しく息をしている『此奴』、タヌキちゃんに舌打ちする。

ガイジが!!!
アライさん達に見つけられるや、此奴は逃げも隠れをせず、
『お母さんの処に送ってください』等とほざきやがったのだ!!!
けものの矜持もないクズなのだ!!!

軍使アライさん「(大母さんの所に連れて行って、金庫の開け方を吐かせたら、望み通り、
出来損ないの母親の処に送ってやるのだ!!!
気概のない奴!
奴隷ですら鞭打たれれば悲鳴を上げ、家畜でさえ、屠られる前は足を突っ張ると聞くのに!!!)」

ガサッ!ガサッ!ガサッ!

もうすぐ村境なのだ!!!

大母さんに西の投降勧告の『成果』とこの『お宝』を示せば、きっと喜んでいただけるのだ!

軍使アライさん「…」ビクッ!クンクン!

向こうから、微かに漂ってくる同種の血臭を軍使アライさんは嗅ぎ当てる!

良かったのだ!!!

仲間の、『家族』ものではない!!!

―と言うことは―

軍使アライさん「(もう、一戦済ませたのだ!?大母さんは電光石火の如しなのだ!!!)」

トクトクトク!

自らの『家族』の長に対する忠心を新たにしたタイミングで、背中のけものの小さな鼓動の音を感じる。

軍使アライさん「(この鼓動の音はチビとそう変わりないのだ…。今日がお前の『順番』だった。
お前がマヌケだった。それだけなのだ…)」

『気まずさ』という言葉の意味を知る機会も、余裕もなく生きて来たこのアライさんには、
自分が背中の『お荷物』に対して感じた気持ちを表す術がなかった―

軍使アライさんの報告を受けた大母アライさんは、お供の恩寵組と一部合流した新参『家族』アライさん、
西の軍使アライさん一行と共に小さく円陣をつくってタヌキちゃんと戦利品の『お宝』を囲む。

ここのところ、ずっと飲まず食わずだったタヌキちゃんは顔色も悪くフラフラしている。

大母アライさん「(このままほっとけば遠からず…、と言ったところなのだ)」ジロリ

大母アライさんは口を開く。

大母アライさん「『異なるけものの子』よ。我が縄張りにようこそなのだ。
アライさん達は強者の権利として、お前の持ち物を奪い取り、お前を喰らわんとしているのだ!」

タヌキちゃんはうつらうつらと大母アライさんの話を聞く。

タヌキちゃん「母の蔵書は残らず差し上げます。私にはもう使いようのないものです。
母の処に出来るだけ苦痛の少ないように送ってください」

大母アライさんは心底不思議そうにタヌキちゃんに尋ねる。

大母アライさん「お前は人里に下りれば、人間に保護してもらえたはずなのだ。
母の無念を晴らそうと思うなら、ヒトの情けや憐れみを利用して生き延び繁殖する手もあったはずなのだ。
母親の死を腹に据えかねるなら、成長してから仇を八つ裂きにしに行っても良い…。
そうしなかったのは何故なのだ?人間への恨みの為なのだ?情けを乞うことを良しとしなかったのだ?」コスリコスリ

タヌキちゃんはキッと顔を上げると大母アライさんを睨み返す!

タヌキちゃん「私は人間に恩は有っても恨みは有りません。母の死は故意のない事故。
撃った人は罰を受けるでしょうが、それは私には関わりのないことです。
天命を生き切った母に無念など残っている筈が有りません。私がこのようになったのは自らの不徳によるものです」

教育を受けたけものに相応しく、幼いながら姿勢を正して最後まで言い切ると、静かに目を閉じる。
飢えた体は何か伽藍洞になったようだ。

最後に何か―母の最期の名誉のような物を示せただろうか―

大母アライさんは一つ周囲に頷くと、胡坐を解いて立ち上がり、のっそりタヌキちゃんに近づいていく。

ノッシ!ノッシ!

ビクッ!ビクッ!

周囲の空気が震えているのがタヌキちゃんにも分かる。

いよいよか…。
ふと、自分をイジメていた人間の子供たちのことが目に浮かぶ。
―お母さん。腕の骨を折ったら『暴行罪』じゃなくて『傷害罪』だよ―
―あれに懲りて、もうイジメたりイジメられたりしてないといいな―

ピトッ!

タヌキちゃん「…」!!!

パチクリ!

自分の唇に当てられた不思議な感覚に驚いてタヌキちゃんは目を開ける。

目の前には肌色。

口元には…

大母アライさん―そう名乗るクマの毛皮を纏い、ケモ耳イヤリングを首にかけた体格の良い賢そうなアライさん―
の柔らかそうな乳首が当てられている。


鏃アライさん「大母さん!!!危ないのだ!!!」

忠臣アライさんの驚きを片手で制しながら、大母アライさんは促す。

大母アライさん「マヌケが!!!母の仇共にさえ恩を感じると言うのか!!!
そんなけものはけものなどではない!!!利己的でないけものなど縫い包みにも劣る存在!!!
死ぬとか生きるとか、殺されるとか、口にすることさえ烏滸がましいのだ!!!」ギロリ

キシャァァァー!!!

大母アライさんは周囲のアライさんを睨みつける。

恩寵アライさん達は『大母さん』の言葉を唱和する。

恩寵アライさん達「「「利己的でないけものなど縫い包みにも劣る存在!!!
生死を語る資格すらないのだ!!!」」」コスリコスリシッポフリフリフリ


タヌキちゃんは目を白黒させている。
何かのパフォーマンスか?
自分を嬲っているのか?

大母アライさん「だが!!!」ギロリ

ビクッビクッビクッ!!!

大母アライさん「その糞度胸は気に入ったのだ!!!『我が四女』。養女に迎えるに相応しい!!!」

周囲のアライさん達・タヌキちゃん「「「????養女????」」」

ピト!ピト!ピト!

小首をかしげ続けているタヌキちゃんを小ぶりな両乳房でぺちぺちビンタしながら、大母アライさんは促す。

大母アライさん「この乳を吸って生き延び『我が直子』となるのだ!!!『異なるけものの子』よ。
お前は生まれてすらいないのだ!タヌキ『アライちゃん』!!!」

そう告げた後、周囲のアライさん達を見渡す。

大母アライさん「『母の仇共の恩』さえ忘れられないこの大マヌケに恩を施し、
『家族』に加えてやれば、どれだけ骨折りをしてくれるのだ!?」

周囲のアライさん達「「「…」」」ポンッ!!!

周りのアライさんは合点がいったと言うように手を打って応える。

タヌキちゃん―いや、タヌキアライちゃん―は、しばらく言葉の意味を理解しかねていたようであった。

しかし、元々、群を抜いて賢い子。

直ぐに大母アライさん―自分の『年下の新しいお母さん』―の言葉の悟ると少しの躊躇の後、
勢い良く乳房から、おっぱいを吸い出す!!!

チュパ!チュパ!チュパ!

暗い森にお乳をしゃぶる音だけが遠くまで響いていた。

一旦ここまでです。

続きを書き込みます。

アライさん「助けるのだぁーーー!!!アライさんは何にも悪い事してないのだぁぁぁぁー!!!!」ジタバタジタバタ


とある川原。
一匹のアライさんが後ろ手に縛られ、両足首をそれぞれ自動車に繋がれている。
自動車はそれぞれ反対側を向いており、『良―いドン』すれば―。
つまりそう言うことだ。

アライさん「お願いなのだぁぁぁー!!!アライさんは悪い事なんて…」

TTT会員B「あーーーー!!!!もう!!!うるさいなあー。でっ、リーダー!こいつの罪状は!!!」

余りの泣き声に耳を半ば塞ぎながらTTT会員Bは尋ねる。
こいつ本当にうるさい!!!

TTT会員Bの後ろでTTT会員Cもかなりウンザリした顔をしている。
アラ虐道は一日にしてならず。

TTT会現地リーダーはTTT会員Aに視線を送る。

それに応えて、TTT会員Aはノートパソコンで映像を流しながら『罪状説明』を始める。

TTT会員A「このアライさんは…」

アライさん「無実なのだぁぁぁぁー!!!!」

TTT会員A「あ~~~~もう!!!うるさいなーー!!!」

バチ!バチ!バチ!バチ!

アライさん「あぎゃぁあぁぁぁぁあぁぁ!!!!」ジタバタブリブリブリブッリジョロジョロジョロ

話が進まないので、仕方なく棒状スタンガンでアライさんの意識を飛ばすが、
何時も通り、筋肉が弛緩した瞬間に肛門、尿道から糞尿が溢れ出す。

TTT会現地リーダー男「(相変わらず臭い害獣だ。しかし『麗しい国』を取り戻すため。我慢、我慢だ!!!)」

決意を新たに再び、TTT会員Aを目線で促す。

TTT会員A「え~、このアライさんは町中住まいのアライさん。
例によって例の如く、民家に住み着いて溜糞したり、ゴミ漁りしたりと害獣らしく暮らしていました」

TTT会員B「ギルティだな!!!」
TTT会員C「ギルティだ!!!何でこいつ無罪だなんて強調してたんだ?」

TTT会員A「えーと、それはこれから。このアライさん。町暮らしが長くなるに連れ、余計な知恵を付け始めます。
『どうやら人間はお金というキラキラピカピカで買い物をするのだ』と。
そして、自動販売機の下などに落ちた小銭などを拾い集め、八百屋さんに買い物に行きます。
勿論、どっかから入手した古着のフードでケモ耳・尻尾を隠した上で…。バレバレだったようですが!」

TTT会現地リーダー男「ギルティだな!占有離脱物横領は立派な犯罪行為だ!!!まあ、少額なら可罰性なし、
と判断されるケースが多いらしいが…。(子供の頃に自分もやった事あるし)」

TTT会員A「こいつの場合、話はここで終わりません。
その八百屋さん、下手な仏心を出して、アライさんを見逃したばかりか、
『嬢ちゃん。これじゃあお野菜は買えないよ。もうちょっと拾ってきたら、この500円玉に両替してあげるから、
それで買いな』などと言ったそうです」

その時の再現映像がノートパソコンで流れ出す。


TTT会員B「は~~。こりゃ、『悪気の無い教唆犯』だな…」
TTT会員C「本人が優しい人な分、始末に困るぜー。それで、結果は?スリでもしたんですか?」

TTT会員A「いや。こいつが学習したのは『落ちたものを拾ったら、自分のモノにして買い物に来ても良い』と言う
間違った知識。
だから、このアライさんは落ちていた財布を拾って、その八百屋にピカピカガイジスマイルで買い物に来たそうです。

万札とクレジットカードと、無論、こいつの大好きなピカピカキラキラの500円玉がぎっしり入った…。
それで御用!」


TTT会現地リーダー男「あちゃー!」
TTT現地リーダーは頭を抱える。
その八百屋さんも罪なことを…。
もう少し善導してあげれば何かが変わったかも知れないのに。


TTT会現地リーダー男「(いや、こいつはアライさん!無理だったはずだ!余計な憐れみを、雑念を捨てろ!
目の前のアラ虐に専念するんだ!!!)」

TTT会員Dは、そんな皆のやり取りを少し興味なさそうに見ている。
こいつがアライさんと言うだけで、『罪』と『死』は確定しているのに。
何を真面目に…。

TTT会員D「(いけない!大義名分、パフォーマンスの加減の大切さはこの前学んだばかりじゃないか!!!)」

そう、殺アライPの下手糞な動画を思い出しながら、心を改める。

第一、今回は珍しく自分の提案が通って、処刑方法は憧れの『車裂き』だ!
ちょっと、ワクワクしている。
もっとも、本当は古式ゆかしく牛車か馬車でやりたかったのだが―
そんな理由で馬や牛を貸してくれるところなどないのだから仕方ない。

フンフンフン♪

TTT会員Dは、手に持った斧を軽く振ってみる。
これでアライさんの股間付近の筋を断ち切り、それと同時に車をGO!

車裂きは如何に真っ二つにするかが腕の見せ所だ!!!

バチ!バチ!バチ!バチ!

TTT会現地リーダーは、念には念を入れてアライさんに通電する。
刑の最中に意識を取り戻したりしないように―

ビクビクバッタンバッタンバッタンビクビク!!!

まだ死んでも居ないのにゴキガイジムーブし、白目を見開きながら、糞尿を垂れ流し続けるアライさん…。

やがて、TTT会現地リーダーは右手を挙げながら、唱和を開始する。

TTT会員B・Cは既に車に乗り込み、
TTT会員Dは返り血防止の全身エプロンを着て、アライさんの股間付近で斧を高く振り上げる!!!

TTT会現地リーダー男「麗しい国を取り戻すために!」

少しの間があった。

TTT会現地リーダー男「アライさんに死を!!!」
TTT会現地リーダー男「害獣に苦痛を。美化するもの、手を差し伸べようとする者への見せしめのために―」

その瞬間にサッと右手が振り下ろされる!!!

ドッ!!!グッシャァァァァー!!!

TTT会員Dが振り下ろした斧がアライさんの股間部を切り裂くと言うよりは叩き潰す!!!

アライさん「…」ビクッ!ビクッ!

TTT会現地リーダー男「碧き神聖な山河のために」

ブロロロロォー!!!
ブロロロロォー!!!

メキメキ!メシメシッ!ベキベキベキ!!!ドバッドバッ!ビチャビチャビチャ!!!ミキメキミシミシベチャベチャ!!!


TTT会員Dの切れ込みの入れ方が良かったのか、アライさんは左右の車が引っ張るにつれて、
割ときれいに裂けていく!

両手足が双方に引きずられて行き、腹の表皮が避けて、臓物がどろどろとぶちまけられていく!!!

ゴロン!!!

最後に力をなくした下膨れの気持ち悪い首が地面に転がっていき、アライさんにとっての今回の処刑は終わった。

ビチャ!ビチャ!ビチャッ!!!

TTT会員B「うおっ!!!くせぇ!!!気持ちわるぅぅー!!!」

人間にとってのアライさん処刑はむしろここからが本番。

皆で飛び散った肉片を拾い集めてゴミ袋に回収していく。
ご近所さんに迷惑をかけるわけには行かないのだ!!!

TTT会員C「例えとしては、失礼この上ありませんが、列車事故の所謂『マグロ拾い』や特殊清掃員のお仕事が
こんな感じかもしれませんね…」

TTT会現地リーダーは頷く。

TTT会現地リーダー男「ふむ。陰に日向に、多くの方のご尽力により、この麗しい国の姿が保たれている。
常日頃から感謝しないとな!!!」

そんなやり取りを聞き流しながら、TTT会員Dは黙々と一番たくさんの肉片をゴミ袋に詰めていく。
まあ、楽しいことをしたら、後片付けもしないと。
面倒だけど…。

TTT会員Dにとっては、自分の家族やこのメンバーのような親しい人以外は割とどうでも良いのだが、
その皆が『ご近所さんの迷惑、ダメ!絶対!!!』と言うのなら仕方ない。

ただ、ふと気になることが出来てTTT会員Dは現地リーダーに尋ねる。
そう言えば今日、変なことを葛藤なされていたな…。

TTT会員D「リーダー。一つ、伺ってもよろしいですか?」

TTT会現地リーダー男「うん?」
珍しい。どうしたのだろう?

TTT会現地リーダー男「なんだ?本物の牛や馬は多分使えないぞ!?」

TTT会員D「あ、いえ。それは残念ですが。そのことではなく、仮に、もし仮に
『突然変異的に善良なアライさん』がこの国に生まれ育ったら、皆はどうするのかな?と思って」

TTT会員A「…」ビクッ!
TTT会員B「…」ビクッ!
TTT会員C「…」ビクッ!

TTT会員D「???」

TTT会員Dは首を傾げる。
何を皆、困った顔をしているのか。大した疑問ではない。
良くある想定ではないか。
今日もリーダーはちょっと、困っていたがそんなもの答えは決まっている。

寧ろ―

TTT会員D「(『何にも悪くない』アライさんを『生まれたこと自体罪』といびり倒しながら、
嬲り殺すのは、それはそれで―)」

TTT会現地リーダー男「まず、有り得んことだが。もしそんな個体と出会ったら…」

TTT会現地リーダーは決然と答える。

TTT会現地リーダー男「全力で守り、助け、場合によっては逃がしてやらないとな!!!」

TTT会員A「…」!!!
TTT会員B「…」!!!
TTT会員C「…」!!!

他のメンバーはハッとする。
それに対し、TTT会員Dは頭に文字通りクエッションマークを浮かべて聞き返す。

TTT会員D「アライさんですよ???」

TTT会現地リーダー男「もし『突然変異的に善良なアライさん』が存在したなら、『彼女』は害獣ではない!!!
一個の知的哺乳生命体!!!法律が何て言おうと殺害して良いはずがない!!!
俺たちは『麗しい国』日本の国民!杉原千畝を産んだ国の子孫だぞ!!!」

TTT会現地リーダーはメンバーの皆を見回す。

TTT会現地リーダー男「もし、殺されかけていたら、席を蹴って助けに向かうべきだ!!!大丈夫(注:立派な男子の意)ならば!!!

もし行き場に困っていたら、ビザ・パスポートの偽造でも何でもして逃がしてやるべき!!!」

TTT会員D「(あ…、これ!何時ものリーダーだ…。何か安心する)」

TTT会員A「(いかにも正義党なTTT会員らしい…。しかし…)」
TTT会員A「しかし、アライさんの根滅はいわば国家目標!法律違反ですよ!!!」

もっともな疑問にも、TTT会現地リーダーは断固として答える。

TTT会現地リーダー男「例え国法と言えども『上位の法』を犯すことは出来ない!!!
古代の人が『神の法』や『自然法』等と呼び、近現代では『人道法』とか呼ばれるような…。
ホロコーストさえ当時は合法だった!!!東部戦線の双方の陣営の行為も、『上』の命令!!!
それが後世どう評価されたか、俺たちは知っている!
当時『国賊』扱いされながらも、いわれなき罪人に手を差し伸べた方々がいらしたことも…」

TTT会員D「(まあ、厳密に言うと俺らはもう、法律違反しまくっているんだが、良いか!)」

TTT会員BとCも互いに頷き合う。

TTT会員B「そうですよねー。法律だからって盲目的になったらダメです。
そんなこと言ったら『生類憐みの令』さえ、当時は合法。犬に正当防衛しただけで打ち首ですよ」
TTT会員C「あ…、それデマ!!!実際は、よっぽど悪質でないと処刑はなかったそうですよ!
最近は徳川綱吉の政策は、捨て子対策や高齢者・病傷者対策を広く含んだ『総合福祉政策』として、再評価されているらしいです。

まあ、収支のバランス取りに失敗してたらしいですけど」


何か、アライ肉を拾いながら、歴史談義を始めるTTT会員達。

TTT会員Aもそれに混ざる。
TTT会員A「いや!徳川綱吉公は偉大な方だぞ。確かに、バランス感覚は悪かったそうだが…。
戦国の荒々しい風潮を一変させ、『現代日本人』の原型のそのまた原型をお創りになったと言う声もある…」

TTT会員B「それはさすがに過大評価でしょう…。明治のころまでは…」

パン!パン!

TTT会現地リーダーは手を打って皆を注目させる。

TTT会現地リーダー男「まあ、そう言う話はアジトに帰ってから!!!今は警察にばれる前に後片付けに集中!!!
それから、TTT会員D!
万に一つも無い筈だし、実際俺らは『有罪』のアライさんしか見聞きしていないが…。
こと俺のグループの方針はこうだ!!!」

そう胸を張りつつ、慎重居士なリーダーの視線は心配そうだ…。
納得してくれた?
大丈夫?

そんなTTT会リーダーに、TTT会員Dは意外と素直に頷き返す。

正直、TTT会員Dにとって、『虐る』アライさんが『善良』だろうと『悪辣』だろうとどうでも良いのだ。
『自分の存在の一部』認定した身近な人が、嫌がるなら、『例外個体』は逃がしても助けても良い。
そう言うのを痛めつけるのもおもしろそうだと思ったが、まあ誤差の範疇。

他に嬲る対象は多いのだし―

TTT会員D「(それにしても臭いアライさんだ。さっさとこの汚物をかたずけてアジトでシャワーを浴びよう!!!)」


ガサッガサッ!!!
ゴミ袋に汚物を詰める音は続く!!!

今日はここまでです。

ご報告が遅れて申し訳ありません。今日はお休みです。

続きを書き込みます

ザワッ!ザワッ!

ザワッ!ザワッ!ザワッ!!

ザワッ!ザワッ!ザワッ!ザワッ!!!

『家族』アライさん達は一斉に『新領土』―村・県境の北側―に越境!

新参『家族』アライさん達やこれから、『母子姉妹の誓い』に臨む予定のアライさん達とも合流して、
三重の円陣を作っている。

今回は珍しく小姉アライさん以下保母アライさん、チビ達―アライちゃんや子アライグマ♂―も一緒である。
彼ら彼女らは保護の必要性や体の大きさの都合もあり、円陣の最前列。

円陣の真ん中には、大イノシシ。
今回の儀式の生贄であり、県兵の音響作戦で追い立てられたところを『家族』の仕掛けていた罠に掛かってしまった『マヌケ』である。


大イノシシのすぐ横には、大母アライさんの座が設けられており、その周囲を親衛隊『恩寵アライさん』達と
『珍客』タヌキちゃんが守るように取り囲み、その外側に各姉号持ちアライさんが席次に従って控えている。

万一に備えて、四方八方には偵察アライさんが散って『家族』の耳目となっている。

もっとも、今ここに、大母アライさんは居ない。
大姉アライさんが重要なお話があるからと言うので、お供に鏃アライさんのみを連れて、席を中座しているのだ。

ザワッ!ザワッ!

新規加盟予定アライさん1「(あ…、あんな大イノシシを…!すごいのだ!!!)」コスリコスリ
新規加盟予定アライさん2「どうやって!!!イノシシは強いけものなのだ!!!
野生開放ってやつを使ったのだ???」コスリコスリ

ザワッ!ザワッ!
ザワッ!ザワッ!ザワッ!!

古参『家族』アライさん1「(あのアライさんの鳴り損ないのようなけものは、何なのだ?)」コスリコスリ
古参『家族』アライさん2「(あれはタヌキなのだ!何でここにいるのだ?奴隷なのだ?)」コスリコスリ
古参『家族』アライさん3「(奴隷って…)」コスリコスリ
古参『家族』アライさん4「(いや、アライさんは大母さんが『直子の養女』にしたと聞いたのだ…。
それも正直不思議なのだけど…)」コスリコスリ

タヌキ『アライ』ちゃんは皆の視線を浴びつつも、泰然とした風を装っている。

―1回は死んだ身。後は野となれ山となれ―
そう心に決めながらも、やはり気持ちはソワソワする。
早く『養母』に―お母さんに―帰ってきて欲しい。

そう思いながら、目線を少し泳がすと、最前列の良い座席に座っている利口そうなアライちゃんと視線が合う。

大母アライちゃん3「…」パチクリ!!!パチクリ!!!

タヌキ『アライ』ちゃんを元気づける様に盛んに瞬きをしてくれている…。

タヌキ『アライ』ちゃん「(あの子が私の『年下なる姉』か…。良い子そうで良かった…)」

その隣に座っている大母アライちゃん1、2も『年上なる妹』に気づくと手を振って各々の気持ちを伝えてきた―


ガサッ!ガサッ!ガサッ!

藪の中で二匹のアライさんが向かい合って話している。
一匹は大変逞しそうな印象を周囲に放っている―

息を潜めながら、大母アライさんは目の前の大姉アライさんに問う。
鏃アライさんは少し離れた場所で盗み聞きするものが居ないか見張っている。

大母アライさん「儀式の前の大事な時間に改まって一体何なのだ?」ジロリ

今は寸刻が金より重いと言うのに!!!

大母アライさん「『家畜』の試みの報告なのだ?それとも子タヌキの件なのだ?」

そう尋ねる大母アライさんに大姉アライさんは首を振りながら答える。

大姉アライさん「どちらでもないのだ。『家畜化』はまあまあに進んでいるのだ…。
中姉アライサンと一緒に、捕まえた分だけ境付近に勾留してあるのだし、簡易ながら鶏小屋も立てたのだ」コスリコスリ

大母アライさん「(ほう!流石にやることが早いのだ…)」

大母アライさんは一番上位の娘分をまじまじと見つめる。

大姉アライさん「子タヌキのことも問題ないのだ…。元々、アライさんは群れる習性のあるけものではない。
云わば『アライさん家族』は極めて擬制的後天的な組織集団なのだ。
それは逆に言えば『大母アライさんの家族』と言う自己認識を共有し、『誓いの儀』を経れば、
他種族の出身者・出身獣を無意味な差別意識を持つことなく登用できると言うことでもあるのだ!

例えばこの先、他のけもの集団や極論すれば人間の組織を傘下にした時、
その長を『大母さんの直子格』なり、『姉号持ちアライさん格』として、
一般成員を『○○アライさん格』として順次『家族』に組み込める可能性もあるのだ。
今回のタヌキの件はその先鞭と言う意味もあるのだ?」


大母アライさん「(何だ!一応理解しているのだ?)」
大母アライさん「その理解で今は合格点なのだ。『儀式』では仕込み通りにするのだ!」コスリコスリ

大姉アライさん「大吉なのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

元気よく返事をしながら、ハエガイジムーブする『娘分』を横目に大母アライさんは考える。

大母アライさん「(『家畜化』は順次進行中。タヌキのことでもない。とするとこいつは何の用なのだ?)」

大母アライさんの視線を受け、大姉アライさんが用件を切り出す。

大姉アライさん「端的に申し上げますのだ。
最近、各アライさんの『家族』内での個性と言うか…、存在感が少なくなっているのだ…」

大母アライさんはまだ口を開かない。
『娘分』の話が終わるのをじっと待っている。

大姉アライさん「十人十色と言う言葉があるのだ…。各々の存在には個性がある。
『家族』加入時には各アライさんに少なからずそれを感じてたような気がするのに…。何か最近…。それで―」


大母アライさん「それで―不満が高まってきたのだ?」

キョトン
大姉アライさんは不意を突かれたような顔を一瞬した後、ブンブン首を振る。
アライさん自身は少なくとも、不満など感じていないのだ!!!

はぁぁぁぁ~~~~~
そんな『娘分』を横目に見ながら、大母アライさんは特大のため息を吐く。
一子分アライさんなら兎も角、『大姉』たるものがこれでは…。
いや、流石にそのことに気づかれる時が来た、と言うべきなのだ?

大母アライさん「お前は相変わらず、『物知り』だけど、知恵が無い奴なのだ!
1から10まで説明を受けて、念のために20まで聞きたがる!!!本当に困った奴なのだ!!!」

大姉アライさん「…のだ!!??」
前も同じような趣旨で叱られたことを思い出して、大姉アライさんはドッキとなる。

大母アライさん「まあ…。良いのだ。分かったフリだけされてるよりもずっと良い…。
お前に答えるとそれは、大きく3つの理由があるのだ!!!」

大姉アライさん「み…。3つ???」
大母アライさん「一つ!!!」ギロリ

目を白黒させている大姉アライさんにお構いなく、大母アライさんは語りだす。

大母アライさん「単純に『家族』の規模が大きく成って来たのだ。
十人十色が百人百色になれば、相対的に各色が目立ちにくくなるのは当然のことなのだ。
別に、各アライさんが長所を殺すことはないし、
寧ろ、各々の『教え』や『知恵』を『家族』に合流させていくことが肝要ではあるのだけど。
『無理をして』目立とうとする必要もないのだ!!!」


大姉アライさん「…」コクコク

首を縦に振りだす大姉アライさんに被せる様に大母アライさんは解説を続ける。

大母アライさん「二つ!!!『家族』の運営が一先ず順調に進んである故なのだ。
個々のキャラが立つ局面何て言うのは…、要は危機を事前に回避できなかった場面なのだ!!!
日々の営みが各姉アライさんの下、淡々と役割に従って進んで行くならば―、
まあ、個々ののアライさんの存在感は埋没するのだ!!!全過程に大母さんが顔を出せるわけでもなし!!!」

ギロリ!!!

大姉アライさんを睨みつけた後―

ニッタリ!!!

気持ち悪い口元を嫌らしく吊り上げながら、大母アライさんは言葉を続ける。

大母アライさん「『英雄的に目立ちたい』なんて言う物好きなアライさんが居れば、
ちょっと物足りないのだ?」ニタニタニタ

ブンブンブン!!!

大姉アライさんは首を振りつつ答える。

大姉アライさん「冗談じゃないのだ!!!危ない橋は渡らないのが一番!!!
アライさんは人間の根滅対象なのだから、当然のことなのだ!!!」コスリコスリ

そう答えながらも大姉アライさんは不思議がる。

大姉アライさん「(そう言われてみればそうなのだけど、でも…)」

大母アライさん「三つ!!!これがお前が一番聞きたかったことなのだ!!??
大母さんが『家族内で集権化を密かに進めてきた故』なのだ!!!」ジロリ

スッー!
大姉アライさんの背中を冷や汗が流れる。
瞬時に空気が凍り付いているのが分かる…

大姉アライさん「しゅ…、集権化…って。中央集権化のことなのだ???
あのお供アライさん達、『恩寵組』を整備したりとか…」

コクン

大母アライさんは頷く。

大母アライさん「まったく!!!どっかのマヌケが『恩寵を有するアライさん』何て名付けるから
明るみに出てしまったのだ!まあ、そろそろとは思っていたのだ…。
あの親衛隊兼家政機関!!!静かに揃えて自然に『家族』に馴染ませるのに苦労したのだ!!!
あ…、お前の異父姉妹アライさんも中にいるのだ!!!」

大姉アライさん「…のだ!!??」ビクビクッ!!!

そうだったのだ…!?

大母アライさん「まあ、それだけが集権化と言うわけではないのだ…。
こうしてお前と心胆相照らしてお話することも、中姉アライさんを『家畜』担当に任じたのも
立派な集権化の一部なのだ…」

そう言いつつ大母アライさんはグッと体を前に進め、大姉アライさんの肩を掴む。

ガシッ!!!

大姉アライさん「(おね…大母さん!!!)」
大母アライさん「安心するのだ!!!」

ジロリ

二匹のアライさんの視線が合う。

少し怯えたような顔色をした『元妹分』に大母アライさんは力強く声を掛ける。

大母アライさん「お前が、多分、今ちょびっと考えたようなこと…。
『家族内の粛正準備』として大母さんはこうしたことを行って来たわけではないのだ!!!
むしろ逆、各アライさん、各姉アライさんが独自に派閥を形成して『家族内』で『抗争ごっこ』を始めることを
事前抑止するために打った手なのだ」ジー!

大姉アライさん「内部粛清をしない?」コスリコスリ

大母アライさんは頷く。

大母アライさん「勿論、個々に罰は下すのだ!
『家族に故意または重過失により損害を与える裏切り行為』には厳罰を以って報いるつもりなのだ!!!
ただ、そこまで至らないケースは改心の情を示す限り、挽回の機会を与えるつもりなのだ!」

大姉アライさんの目を覗き込み続ける大母アライさんの表情は不思議な凄みを帯びている。

下膨れのマヌケな顔でどうやったら、こんな表情を出せるのか!?

大母アライさん「『家族』の『アライさん・アライさんとして生きることを誓った諸族』、
及び友好を誓った種族に対しては極力寛大に振るまい物惜しみなく報賞を与えることを第一とし、
かつ、降服を拒むけものや反逆するけものに対しては容赦無く殲滅すべく敵に対しては妥協のない処置に望むこと。

同種と言えども『家族』に非ずんば生き胆を抜き、
一旦『誓い』を立てて加わったものは他種と言えども決して奴婢とはせず、
飢えや渇きを、耐えられる瞬間までは共にし、
天地の理が示す通り、避け難ければ、その時に『最も弱ったもの』を喰らって『家族』の命脈を残す。

これが大母さんの今のところの方針なのだ!!!」


大母アライさん「(まあ、『容赦無く、妥協無く、殲滅』と言う部分は人間の勢力に囲まれている以上、
ある種の加減はしていかないといけないのだ。それに超長期的に他種族、人間と和議が成る可能性も絶無ではないと信じたい処ではあるし…)」

大姉アライさんはゆっくり大母アライさんの言葉を斟酌して、やがて頷く。

大姉アライさん「大吉なのだ!!!
その方針を貫徹するためには、各姉号持ちアライさんが変に『キャラ立ち』と言うか、独自性を示されたり、
子分アライさんが『やれ新参だ!古参だ!○○出身だ!』と騒いだりすると困るのだ…。
勿論、『家族運営』の上では密かにそう言う配慮もするのだけれども。
その為の、大母さんの『集権化』!!!
恩寵組を整えたのは将来の姉アライさんを『機関として』再生産可能にし、大母さん直属の武力を増し、
個性が強すぎる姉アライさんを将来問題を起こす前に『姉アライさん1、2、3』程度に抑え込むためなのだ!?」

ペロペロペロ!!!

大姉アライさん「のだ…!!??」

大母アライさんは大姉アライさんの顔をそのまま舐め出す。

ペロペロペロ!!!

大母アライさん「ペロペロは…?」コスリコスリ

その問いかけに大姉アライさんは少し涙ぐみながら答える。

大姉アライさん「お母さんの大好きの証なのだ!!!」ウルウルウルウル

大母アライさんは一つ頷くと大姉アライさんに締めくくりの言葉をかける。

大母アライさん「『家族』には『長姉』が。頼れるナンバー2が不可欠なのだ!!!
いよいよ頼りにしているのだ!!!」ジロリ!!!

大姉アライさん「大吉なのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

裏表のない『娘分』の返事を聞き入れた後、大母アライさんは手をヒラヒラさせ、
控えている鏃アライさんに合図を送る。

『話は済んだ!これより儀式に向かう!!!』

コクン!!!

鏃アライさんは頷くや手に持った竹槍を高く掲げ、大母さんと大姉さんの前途を守らんとする!!!

一旦ここまでです。

続きを書き込みます。

ノッシ!ノッシ!ノッシ!

下品な蟹股歩きをしながら、三重の円陣を割って、大母アライさん等3匹は進んで行く。

ペタペタッ!

ペタペタペタッ!!

ペタペタペタペタッ!!!

どのアライさんからと言うでもなく、その場のアライさん、アライちゃんが両手を手に付けていく。

子アライグマ♂達「「「クルルルルゥー!!!」」」ペタペタペタッ!

フレンズ化していないアライグマの子すらそれに倣う。


大母アライさん「…」ノッシッ!ドッカッ!!!

大母アライさんは生贄の大イノシシの横の座に就く。

大姉アライさん「…」スッ!

大姉アライさんは姉号持ちアライさんの最上座。

鏃アライさん「…」ピタッ!

鏃アライさんは大母アライさんの左やや後方に侍する。


周囲の空気が静まり切るのを待ち、やがて大母アライさんは口を開く。

大母アライさん「良し!揃ったのだ!!!では、今宵の『儀式』を執り行うのだ」


大母アライさんは予め、言い含めていた通り、『珍客』タヌキちゃんに向けて手招きをする。

大母アライさんの手招きに応じて、タヌキちゃんが静々と大母アライさんの側に寄る。

大母アライさん「お前達の中には、既に聞き知っているものも居ようと思うのだが…。
この『異なるけものの子』。
タヌキちゃんに今日、大母さんは自らの乳を分け与え、『直子』養女としたのだ!!!」


ザワッザワザワっ!!!

何と!
噂は本当だったのだ!!??
一体何故なのだ???

サッ!

大母アライさんはその場のざわめきを手刀で払い落とすかのように黙らせる。

大母アライさん「今は大事な儀式の場。言いたいことが有れば堂々と言うが良いのだ!!!
例えば…、山姉アライさん!!!何か意見があるのではないのだ?」ジロリ

大母アライさんから指名を受けた山姉アライさんに一同の注目が集中する。

それを受けて、山姉アライさんは畏まりながら答える。

山姉アライさん「大母さんのなさることに異を唱える等、恐れ多いのだ。
ただ、『異なるけものの子』を傘下に収めるにしろ、直子ではなく…。例えば奴隷にしても良い様には感じたのだ」


大母アライさんは視線を皆に投げかける。

それに応じる様に何匹かの古参アライさんは声を上げる。

古参アライさん1「『異なるけもの』を降した時は奴隷にすべきなのだ!」コスリコスリシッポフリフリ
古参アライさん2「人間や他のけものフレンズに対する人質ならぬ獣質として扱うべきなのだ!」コスリコスリシッポフリフリ

ザワッザワッ!!!

トクトクトク

タヌキちゃんは自分の心臓が早鐘のように高鳴るのを感じる。
一度は惜しくもないと感じた筈の命が―

タヌキちゃんは、自分の新しい母を名乗ったアライさんを見つめる。

そのアライさん―大母アライさん―は少しも動じることはなく、議題を小姉アライさんに振る。
『家族』のチビ達の面倒を看ているアライさんで、群れの多くのアライさんと血縁関係にあるらしい。


大母アライさん「小姉アライさん!!!我が『家族』の代母よ。お前はどう思うのだ!!??」ジロリ

小姉アライさんは大母アライさんの問いに応じる。

小姉アライさん「愚娘が存じ上げますに、凡そ、奴隷として育てられたものが奴隷以上に成ることは甚だ少なく、
人質とあからさまに呼びあしらわれて育てられた子が『家族』に忠心を抱くことなどまず無いと言えますのだ!!!」コスリコスリ


ザワッザワッザワッ!!!

小姉アライさん「古より『猟師窮鳥を殺さず』と聞きますのだ。
この『異なるけものの子』を、もし『獲物』としてではなく『窮鳥』と大母さんがお考えなら、
奴隷だの人質だのと言った中途半端なことをするより、
いっその事、あたかも親鳥が雛鳥を育むかの如く養い育てるべきなのだ!
そうしてこそ、『窮鳥』は『図南の翼』ともなりましょうのだ!!!」


姉号持ちのアライさんなら兎も角、一般子分アライさんに『図南の翼』の意味が分かるのだろうか?

別に分からなくてもこの場では問題ない!!!

何か古参の姉アライさんが凄いことを言っているらしいのだ!

そう伝われば今は十分!!!

大母アライさんは大姉アライさんに視線を向ける。

大母アライさん「『家族』の長女よ。子分アライさんの要。お前はどう思うのだ?」


ぎゅぅぅぅー

タヌキちゃんは気が付けば自分が手を握りしめながら、必死になってその場の成り行きを窺っていることに気が付く。


タヌキちゃん「(私はこんなに―生きたかったんだ。尊厳を持って!!!
カチカチ山で退治される『害獣・悪役』でもなく、人類文明のお零れを拾い集める『可哀想な子』でもなく、
勿論、奴隷でもなく―)」


大姉アライさんは大母アライさんと家族の問いかけに応じる。

大姉アライさん「アライさんは少しばかり人間の歴史に詳しいのだ。
NHKのラジオを盗み聞いたり、人間の学校に忍び込んで教室のお話を聞くのが大好きだったのだ」コスリコスリ

大母アライさん「(まったく…。そんなことばかりしているから、
スイカを盗み食いしなければいけなくなるほどになるのだ)」

大母アライさんは半ば呆れながら先を促す。
因みにそのスイカは大母アライさんが盗んできたものなのだから、
人間の目から見ればどっちも大した違いなどない。


そんなことはうっちゃり、大姉アライさんは『家族』全体を見渡し、自らの―そして―大母アライさんの見解を述べ伝える!!!

大姉アライさん「かつて、漢の武帝は、勇戦奮闘した後に止む無く敵の虜囚となった将軍李陵を罰し、
彼を弁護した司馬遷に辱めを与えて万代に汚名を残したのだ。
一方、李陵を虜とした匈奴はその忠勇を称えて右校王に封じ、その後数々の武勲を挙げさせているのだ!」

大姉アライさん「時代は下り、蒙古のチンギス=ハーンが金の首都を落とし耶律楚材を虜としたとき。
彼は恩着せがましくも、己が虜に『先祖の仇を討ってやった』と告げたのだが、彼の人はそれに肯かず
『主君に恩は有っても恨みはない』そう答えたのだ!!!」


そう話しながら大姉アライさんはタヌキちゃんの双眼を見つめる。

ブルブルっ!!

タヌキちゃんは武者震いする。

大姉アライさん「この『異なるけものの子』が大母さんに返したと言う答えは、
その気骨ある問答を彷彿とさせるのだ!!!
蒙古はその後、耶律楚材を始めとした異族出身の者らを積極的に用いながら
『地果て海尽きるところまで』版図を伸ばしていったのだ。
また、チンギスは己が仇敵タタル部の忘れ子シギ・クトクを養子として迎え入れ、
彼の力を群れの力に加えているのだ!!!」

シーーーン

気が付けば騒めいていた円陣に静けさが戻っている。

大姉アライさん「アライさんにとり、人間は『学ぶべき雄敵』!!!
愚例を退け、賢例こそ『家族』が進むべき道を照らしてくれるのだ!!!
先祖の『教え』と『雄敵』の先賢を燈火とし、アライさん自身の身を島として、
生き難い世界を生き抜くべきなのだ!!!」


大母アライさんが大姉アライさんの結論部分を唱える。

大母アライさん「先祖の『教え』と『雄敵』の先賢を燈火とし、アライさん自身の身を島として進むべきなのだ!!!」


周りの恩寵アライさんもそれに唱和する。

恩寵アライさん達「「「先祖の『教え』と『雄敵』の先賢を燈火とし、
アライさん自身の身を島として進むべきなのだ!!!」」」コスリコスリコスリシッポフリフリフリ


姉号持ちアライさん達も応じていく―

各姉アライさん「「「「先祖の『教え』と『雄敵』の先賢を燈火とし、
アライさん自身の身を島として進むべきなのだ!!!」」」」コスリコスリコスリシッポフリフリフリ


姉アライさんに続けと言わんばかりに円陣のアライちゃん・アライさんは一斉に口を開く!!!

『家族』アライさん・アライちゃん
「「「「「先祖の『教え』と『雄敵』の先賢を燈火とし、アライさん自身の身を島として進むべきなのだ!!!」」」」」コスリコスリコスリコスリコスリコスリシッポフリフリフリシッポフリフリフリ

大母アライさんは興奮の頂点を見極めつつ、自分自身のチビ達にも声を掛ける。

大母アライさん「我が子、チビ達!!!
この『年上なる妹』、タヌキ『アライ』ちゃんを己が姉妹として受け入れるのだ?
あたかもテムジンの子らがクトク・ノヤンを愛し敬ったかの如く!!!
飢えと渇きによって、天地の理により何れかを喰らわねば成らなくなる瞬間まで」

大母アライちゃん1・2・3「「「あたかも、てむじんのこらが、くとく・のやんをあいしうやまったかのごとく!!!

『としうえなるいもうとあらいしゃん』をうけいれるのりゃ!!!
てんちのことわりにより、あらいしゃんしまいのいずれかがくわれなければ、たちゆかなくなるときまで!!!」」」コスリコスリコスリシッポフリフリ


タヌキ『アライ』ちゃん「わた…アライさんも!!!誓います…のだ!!!」コスリコス…

一同アライさん達「「「「「大吉なのだァぁぁぁぁぁーーー!!!!」」」コスリコスリコスリコスリコスリコスリシッポフリフリフリシッポフリフリフリ


ブリュブリュブリブリブリブリブリ
ジョロジョロジョロジョロロー

新参のアライさんやアライちゃんは興奮のあまり、脱糞・放尿するものが続出する。

洞姉アライさん「(ちょっと前のアライさん自身を思い出すのだ…)」

コスリコスリ

ピタッ!

タヌキ『アライ』ちゃんが行う下手糞なハエガイジムーブを大母アライさんは止めさせる。

―無理してやられると目障りなのだ。『なのだ語』も儀式の場以外では使わなくて良し。無駄なことは嫌いなのだ―

大母アライさんは、自分の新しい『チビ』に目線でそう命じる。

コクリ

タヌキ『アライ』ちゃんは頷くと小声で、どうしても言いたくて、『儀式』まで言いそびれていた言葉を紡ぐ。

タヌキ『アライ』ちゃん「お義母さん。ありがとう…」

大母アライさん「フン!!!」

大母アライさんは素っ気なく鼻を鳴らして答えるが、タヌキ『アライ』ちゃんは気を悪くしない。
何と無くこれが、このけものの流儀だと悟ったようだ。

やがて―

円陣が静けさと落ち着きを取り戻しかけた頃。

山姉アライさんが思い出したように尋ねる。

山姉アライさん「そう言えば、え~とそのタヌキ『アライ』ちゃんは何か得意なのだ?
さっき大姉さんのお話に出た『りりょう』は強い将軍。
『やりつそざい』『しぎ・くとく』は賢い大臣だったと聞いているのだ」

大母アライさんは顎をタヌキ『アライ』ちゃんに向けてしゃくる。
『自分で答えるのだ』

タヌキ『アライ』ちゃん「わた…アライさんは人間の学校に通っていたから―文字の読み書きができます…のだ。
平仮名・カタカナ、漢字、ローマ字。
お母さんが…、『血縁上』のお母さんが教育熱心だったおかげで中学生くらいまでの漢字の読み書きは出来ます…のだ!!!」

ガバッ!!!

中姉アライさん「漢字!お前漢字が読み書きできるのか!!!
じゃあ、『こくごじてん』や『かんじじてん』や『わえいじてん』『えいわじてん』の引き方も分かるのだ??!!」コスリコスリ


勢い込んで中姉アライさんが尋ねたのには訳がある。
この前の人間との闘い―TTT会との戦闘―での一番の収穫はマンガについてのことだった。

TTT会員が不用心にも、人間が『学研マンガ』から知識を吸収していることを車の中で絶叫していたのだ!!!

アライさん達『家族』は、タヌキ『アライ』ちゃんの母タヌキさんの蔵書も含め、書籍を大量に保有している。
村からの引き上げ時に『お宝』として持ってきたのだ。
無論、その中には、かつて村人が使っていたであろう教育書籍や教育用・娯楽用のマンガも多い。

特に所謂『学研マンガ』は元から子供から大人までの幅広い層を購読者とした綺麗な絵付き・写真付きの本。
人間社会の情報からどうしても隔絶されがちなアライさん達にとっては、何としても読破・吸収したいものだった。

中姉アライさん「(でもダメだったのだ。
大母アライさんや大姉アライさんは部分的に平仮名やカタカナが読めるようなのだけど。それだけでは流石に。
絵だけ眺めているだけでも勉強になるから今日まではそうしていたのだけど…)」

タヌキ『アライ』ちゃん「辞書の引き方は分かります。
後は算数・理科・社会・英語が多分、同学年の子よりかは…。
中学受験対策で結構上の学年まで森の中で勉強していたので…」


早速『なのだ』を忘れるタヌキ『アライ』ちゃん。
だが、特にそれを咎めるアライさんは居ない―


中姉アライさん「他は???家畜の飼い方は分かるのだ?」コスリコスリ

タヌキ『アライ』ちゃん「家畜の飼い方は流石に…。それについて書かれた本を読むことは出来ます…のだが。
後はお習字に算盤に…」


『家族』アライさん1「算盤って、昔の人間が使っていた計算機のことなのだ!!??」コスリコスリ
『家族』アライさん2「すごいのだ!!!百人力なのだ!!!これで天下取れるのだぁぁぁ」コスリコスリシッポフリフリ


大母アライさん「とれるか!!!お前らガイジか!!!」カッ!!!

大母アライさんは調子に乗る『家族』にピシャリと言い放つ。

大母アライさん「寧ろここは『雄敵』を恐れるべきところなのだ…。
このチビ以上に賢い人間がこの山の麓から八島が海に至るまでウジャウジャ居ると言うことなのだ!!!」

ションボリ…

肩の力を落とす『家族』とタヌキ『アライ』ちゃんに大母アライさんは、少し穏やかな口調で付け加える。

大母アライさん「だが、百人力までは正しいのだ。
チビ!
以後、平時には大母さんの傍ら恩寵アライさんの中に侍し、
あるいは小姉アライさんの下、保母アライさんに混じり『家族のアライさん・チビ』と向き合い、
己が知識を伝授するのだ!!!」

タヌキ『アライ』ちゃん「…」ハッ!

大母アライさん「各新参アライさんも!!!勿論古参も!!!
自分と自分の血脈が伝えし『知識』を『家族』で共有し合い、互いに磨き上げて『知恵』に昇華させるのだ!!!」

恩寵アライさん達「「「互いの知識を共有し、磨き上げて知恵となすのだ!!!」」」コスリコスリシッポフリフリ

『家族』アライさん「「「「「互いの知識を共有し、磨き上げて…」」」」

『家族』が輪唱を始めるのを横目に大母アライさんは生贄の大イノシシの頭をマタギ刀で一刀両断する。

大母アライさん「フン!!!」

ザクッッ!!!

ドバッ!!!ゴロン!!!

生贄の頭部に自身の母乳を注ぎ込むと、唸るように告げる。

大母アライさん「この血は大母さんがお前らを産むときに股から流した血、
この乳はお前達チビを育てるときに与えた乳なのだ!!!」


そう宣言すると、最上席の大姉アライさんにその首を手渡す。

ペロペロ

大姉アライさん「我等チビを産むときに大母さんが流された血と乳を確かに噛みしめましたのだ!!!」シッポフリフリ

それを合図にイノシシの頭が円陣を回り始める。

大母アライさん「フン!!!」

ザクッッ!!!ザクッッ!!!ザクッッ!!!ザクッッ!!!ザクッッ!!!

ドバッ!!!ゴロン!!!ゴロン!!!ゴロン!!!ゴロン!!!ゴロン!!!

時間短縮のために大イノシシの四肢、尻尾も切断され、乳を振りかけられるや円陣に回されて行く。

その場の全アライさんが『母子姉妹の誓い』に参加するなかで、新たな姉アライさんも任命される。

大母アライさん「西より来たアライさん。余所者アライさん3よ。
お前のチビから、魚釣りが上手と聞いているのだ!今日よりお前は『釣り姉アライさん』なのだ!!!」

余所者アライさん3改め『釣り姉アライさん』「大吉なのだ!!!」シッポフリフリ


大母アライさん「東から来た余所者アライさん5よ。ワインもどきを良く作ったものなのだ…。
今日よりお前は『酒造アライさん』なのだ!!!」

余所者アライさん5改め『酒造アライさん』「大吉なのだ!!!」シッポフリフリ


やがて、大イノシシの頭、両手足、尻尾が大母アライさんの下に戻って来る。

ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ!!!

クチャクチャクチャクチャクチャ!!!

その生贄の6部をぐちゃぐちゃにした後、敢えて思いっきりクチャラーしながら皆の前で呑み込んで見せる。

その姿と音が皆に伝わるように―


大母アライさん「今、確かに『家族』の『誓い』はなったのだ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

恩寵アライさん達「「「母子姉妹の誓いがなったのだぁぁぁぁぁぁ」」」コスリコスリシッポフリフリ
鏃アライさん・タヌキ『アライ』ちゃん「「母子姉妹の誓いがなったのだぁぁー!!!」」コスリコスリシッポフリフリ
姉アライさん達「「「「「母子姉妹の誓いがなったのだぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」コスリコスリシッポフリフリ
アライちゃん達「「「「「ぼししまいのちかいがなっちゃのりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」コスリコスリシッポフリフリ


全『家族』アライさん「「「「「「「母子姉妹の誓いがなったのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」コスリコスリコスリコスリコスリコスリシッポフリフリフリシッポフリフリフリブリュブリュブリブリブリブリブリ
ジョロジョロジョロジョロロー

大母アライさんは静かに皆の興奮の波が引き、満場を静かな緊張感が覆う瞬間を待つ。

場の空気が興奮から、弛緩、そして緊張に移る刹那―

大母アライさん「せっかくの機会をふいにし、『家族』に加わらなかった不届きアライさんが居るのを
お前達は知っていることと思うのだ」コスリコスリ

ギョロ!!!

新姉アライさんである釣り姉アライさん、酒造姉アライさんに視線を向ける。

大母アライさん「どう思うのだ?」

ゴクリッ!

釣り姉アライさん・酒造姉アライさん「「悉く…滅するべきなのだ!!!」」

新しく加わった姉アライさん二匹はそう答える。
忠誠を―心底より―

大母アライさんは一つ頷き、大イノシシの腹を裂く!!!

ザバッ!!!

ブンッ!!!

ドバッビチャビチャ!!!

掴み出され放り投げられたイノシシの長い腸が、周囲に血色の文様を描く―

朝日と共に二つの地で行われる『敵対アライさん』の運命をこの場で示す様に!!!

大母アライさんは敢えて、この夜は自分では『腸占い』の結果を口にしなかった。

そんなことをせずとも『家族』が自らの赴く先を自身の決意と共に言い放っていたからだ。

『家族』アライサン達「「「「「大吉なのだ!!!!」」」」

『戦い』に臨むにあたって、掛け声は力強く、短く、余計な動作は伴わず!

殺戮のけもの達は、守りと二手の攻め手。
三班に分かれて、夜闇の中を駆け下って行った―

今日はここまでです。

粗探しをするようで悪いがいくつか気になった点があったので書かせてもらう。

■アライグマの性質について
 大母アライさんが親と子、姉と妹の関係で組織の結束を図っているが、

 ・野生のアライグマの場合、親子の関係とは未熟な子供を母親が育てる関係のことであり、
  成獣となった場合は独り立ちするため、義親子の関係で組織を作るのはアライグマらしくない。

 ・姉妹という概念自体基本1回の妊娠で一人しか生まない人間の概念ではないか?
  野生動物の姉妹=同時に出産された子のため上下関係が無い。人間と違いアライグマが再度妊娠するころには
  子供は独り立ちしているため人間のように年齢の違う姉妹はいない。

■自衛隊について
 ・県を跨いで管轄がかわるのは警察(地方公務員)であり、自衛隊(国家公務員)は県を跨ごうが関係ない。
  厳密には陸上自衛隊にも地域わけはあるが、九州エリア、関東エリア、東北エリア等地方レベルで管轄が異なる。
  具体的には警察で言えば○○県警等、県単位で所轄が分かれるが、
  陸上自衛隊の場合、九州にある駐屯地は全て西部方面隊の一部(隷下)となる。

 ・『自衛隊が害虫駆除のため派遣された』という前例はあるが、それは自衛隊でなければ対処できない場合
  (重火器が必要な場合等)であり、騒音流して追い立てる程度であれば専門の業者を雇えば済む話。
  逆に言えばこの世界でそれだけアライさんが脅威になっているということなのか?とも思うが
  その割りに人間サイドに危機感が全く感じられない。

■タヌキアライさんについて
 ・「直子ではなく…。例えば奴隷にしても良い様には感じたのだ」これはアライさんサイドに言わせるべきでなかった。
  この発言のせいでアライさん達は奴隷にすべきと思っていたが、大母アライさんの命令だから自分達の意見を曲げたようにしか見えない。
  人間の歴史を知らない一般アライさん達が大姉アライさんの説明を理解できるはずが無い。
  例えばタヌキちゃんに「私を奴隷にしないのですか?」とか言わせて適当なアライさんに否定させておけば
  アライさんという種族の統一見解ということにできた。

 ・「奴隷として育てられたものが奴隷以上に成ることは甚だ少なく」この発言自体も疑問であるが、
  そもそもアライさんサイドにタヌキちゃんを奴隷以上にする必要があるのか?むしろ人間サンドバックにして
  不満の捌け口にした方が良いのではないか?そもそもアライさん達の中で虐めとかないの?
  もし母子の誓いで虐めを無くせるんだったら人間サイドも真似したらいいんじゃないか?ww

 ・耶律楚材のことはよく知らないけど発言の意図として『国は滅ぼされたけど個人としては良い待遇を受けた』って意味だっけ?
  人間から冷遇された描写しかないタヌキちゃんが発言すると違和感しかない。
  それに、耶律楚材が『主君に恩は有っても恨みはない』と言ったとして、
  『主君に恩は有っても恨みはない』と言った者が耶律楚材見ないになれるわけではないし、
  異部族を取り入れて成長した蒙古に習うくらいなら異部族を奴隷にして発展したアメリカを真似したほうが良いんじゃないですかね?

 ・タヌキちゃんの意思を確認する前に「養子にする」って言っちゃったけどタヌキちゃんがそれを拒否したら赤っ恥かいてたぞ。
  この辺の意思確認が端折ってあるからタヌキちゃんが状況に流されているようにしか見えない。
  これって先に人間に保護されてたら人間サイドについてたんでしょ?

 ・百歩譲ってタヌキちゃんをアライさん達と同等に扱う、というのはアリだとしても養子扱いするということは
  他のアライさん達より立場が上にならない?そもそも養子って言葉自体、実の子と群れの一員を区別するってことになって
  母子の誓い(笑)になってしまう。

今日はお休みです。

熱心な読者さんがいらっしゃるようなので一応、ご回答を。

とは言っても、大半がSS内で既に触れてあるものなのですが。

■アライグマの性質について→たびたび、しつこいほどこの『家族』は擬制的な物だ!と登場アライさんに言わせているのに今更これは…。
あっそうだ。現実のアライグマでも、独り立ちした後の個体が、母親の比較的側で『あたかも群れのように』暮らすケースはあるようですよ。明確な『群れ』とは異なりますが。

■自衛隊について→『自衛隊が害虫駆除のため派遣された』という前例はあるが、それは自衛隊でなければ対処できない場合』とほぼ、同じセリフを登場キャカラが既に述べていますよ。お暇があればご確認を。今回の作戦はもともと『県兵』主導だったところに自衛隊が無理に…と言うお話ですし。
管轄の話も、アライさんが『どうやら人間はそう言う性質が有るらしいから、利用できる範囲では利用しよう」としか、作中で言っていなかったはずですが。

■タヌキアライさんについて
・前半の部分は個人の感想なので、まあ、受け取り方はお任せします。ただ、だいたいの疑問の回答に当たるものがSS内で触れられているのを見るとなんだかなあと言った感じです。作者としての力量が無いのかな。


 



 

続きを書き込みます。

野良アライさんの朝は早い。

早くチビ達にお乳を飲ませて、自分もいっぱい寝なければいけないからなのだ。

野良アライちゃん4「おかーしゃん。はやくはやくなのりゃー」ヨチヨチヨチ

西野良アライさん1「はいはいなのだ。チビは全くもう!」コスリコスリ

そう言いながらも、西野良アライさん1は甲斐甲斐しく、野良アライちゃん4を抱き上げ、
自分のおっぱいを吸わせる。

野良アライちゃん4「う…。うう…ん」チュパチュパチュパ

西野良アライさん1「お前は大事なチビなのだぁー。イタチや蛇や野犬から守りながら、
ずっとずっと大事に守ってきた…」

西野良アライさん1は、自分の巣穴の奥に視線をやる。

野良アライちゃん1「…」ムニャムニャ
野良アライちゃん2「…」スピースピー
野良アライちゃん3「…」グーグラグーグラ
野良子アライグマ♂1「…」クークー
野良子アライグマ♂2「…」グーグー

西野良アライさん1「(皆。大きく成って来たのだ…)」ウルウル

雄のチビは兎も角、『ちゃん』の方は少し肩の荷が下り始めたのだ。
ここまで生き抜けば、『チビ達』はそこらの野良ネコより体が大きい…。
いざと成れば姉妹で、ちょっとした『狩りごっこ』程度、やってのけるだろう。

このお山のそばを流れる川は、下流の方に行けば人間がよく釣りに来る。
しかし、その上に上がってくる狩人の数など知れているのだ。

西野良アライさん1「チビ…」ナデナデ

野良アライちゃん4「のりゃ?」チュパチュパ

母アライさんは自分を見上げる大きな瞳を見つめる。
アライさん特有の吊り上がった気持ち悪い目つき。
下膨れの頬っぺたは、『ちゃん』の方がよりはっきり目立つ。
何て―

何て愛らしいのだ!
アライさんの子は!

西野良アライさん1「木登りの訓練がだんだん上手くなってお母さんはとっても嬉しいのだ!
チビが立つ日が待ちきれないのだ!
手を土から上げれるようになったら、『釣り』って言う魚とりも教えてやるのだ」コスリコスリ

野良アライちゃん4「なのりゃ!!!」コスリコスリシッポフリフリ

母の気持ちに応える様に、野良アライちゃん4は縞々極太の尻尾でダンスをして見せる。
芋虫のようによく動く尻尾は、きっとこの子が優れた資質を持っている証なのだ!!!

胸元をゴキブリのように蠢く我が子を見ながら、母アライさんが感慨に浸って居る刹那―


西野良アライさん1「…」ピクピクピクピク

ダッ!!!

西野良アライさん1は、乳首を咥える我が子を、そのまま抱きかかえ、巣穴から転げだす。

ヨジヨジヨジヨジ

そして、巣穴の側の木に必死によじ登って難を避けようとするが、もう遅い。


ヒュンヒュン!

ヒュンヒュンヒュン!!!

ケモ耳が僅かに捉える風切り音―

それが何なのか―投げ槍状の投擲物なのか―

背中に目がついていない西野良アライさん1に分かるはずもない。

ドスッ!ズバッ!ドスッドスッ!!!

ゴバッ!ビチャビチャビチャ!!

胴体から何本もの木の棒を生やす西野良アライさん1。

口からは、胃液と胆汁と血液が汚らしく止めどなく流れ出すが、それは些細なことだ。

西野良アライさん1「チ…ビ…」プルプルプル

西野良アライさん1は、胸に抱えたチビを二股に分かれた太い枝にそっと添える。

野良アライちゃん4「お…。おかーしゃん…」

西野良アライさん1「…」クラッ

母アライさんが白目を剥きながら、木から落ちていくのを、野良アライちゃん4は呆然と見ているしかない。

ドスン!

木の上まで伝わって来る鈍い落下音―

野良アライちゃん4「え…え…。なんでなのりゃぁぁぁぁ!!??」プルプルプル

さっきまで、あらいしゃんはあんなにしあわせだったのに…
おかーしゃんのおっぱいをのみおわったりゃ、いっぱいおねんねして。
おきたらおねーしゃんたちと『かりごっこ』して、あしょんで―

野良アライちゃん4は知らない。
昨日、アライ『さん』同士で、どんなやり取りがなされたのか
―自分の母アライさんが最初で最後の『機会』を素気無く断ってしまったことも…。

ヒュンヒュン!

自分目掛けて、追加の投げ槍が放たれていることも―

ドスドスドス!!!

釣り姉アライさん他、西の新規『家族』加入アライさんは、
木から転がり落ちて来たアライさん親子を竹やりで突き刺し回す。

すぐ傍の巣穴の中も、上半身を潜り込ませた『家族』アライさんにより、すぐに真っ赤に染まる。

ドス!
「のりゃ…」ビクビクバッタンバッタン
ザバッ!
「やなの…」ブリュブリュビクビクドッタンバッタン
コキ!
「…」ビクビクジョロジョロバッタンバジョボジョボ―

釣り姉アライさん「(ガイジが!くたばったのだ!)」ドスドスドス


昨日、『儀式』が終わった後、『家族』は3班に分かれた。

一班目。
小姉アライさん率いる居残り組は、チビ達を守り、元の陣地である蛇張村にも斥候を出しながら、
帰りを待っている。
中姉アライさんは、『かちく?』を守りつつ、仕掛けた罠に更に、人間に追われたけもの
―特に野生化した家禽―が掛かってないか目を光らせている。
『物知り』な大姉アライさんによれば『ニワトリ、イノシシの子供、ヤギ』辺りが有望だそうなのだ。

二班目、三班は丁度左右対称に展開している。
『不届きアライさん』は西に8家族、東に11家族。


釣り姉アライさん「(アライさんは西の『二班』だったのだ)」

西野良アライさん1「…」チーン

傍らの屍。自分の昨日までの『顔見知りアライさん』であり、
もしかしたら、先祖の血を同じくしたかもしれない『敵』を見下ろす。

釣り姉アライさん「(同種と言えども『家族』に非ずんば生き胆を抜き、
一旦『誓い』を立てて加わったものは他種と言えども飢え・渇きを共にする。
人間に抗しながら、アライさん達が、大母アライさん家を中心とした諸族・諸けものの集合体として、
根滅を免れるために。
こいつはその最初の踏み絵を踏めなかったマヌケなのだ!!!)」


今回の襲撃も戦法は到ってシンプルだ。

軍使アライさんが投降勧告を兼ねて行った偵察場所に向け、熟練度の高い古参アライさんが先駆けを行う。
もしかしたら、木に登り・あるいは地に伏せて、待ち伏せを行ったり、
『家族』が行うように罠を仕掛けているアライさんが居るかもしれない為だ。

その後ろを、やや古参のアライさんが駆ける!
風下から主攻を掛ける為に。

比較的新参のアライさんは最後。『止め係』であり、『忠誠の証』を示すために向かう。
置いてかれないように必死に走る!

それとは別に、『作戦』地帯を大きく取り囲むように、他のアライさん達が討ち漏らしの首を撥ね飛ばそうと展開中だ。


『敵』と比べ、此方には数の余裕がずっとある。

因みに西の総大将は大姉アライさん。東は山姉アライさん。
大母さんは東のやや後方で、全体を総覧しているのだ!

『恩寵組』は大母アライさんの側に半分。
もう半分は、各組の間を伝令して回っているらしい。

ヒュンヒュン!

ヒュンヒュンヒュン!!!

ドスッドスッドスッ!!!

また、逃げそこないに投げ槍が注がれている。

タタタタタッ!

釣り姉アライさんは、他の新規加入アライさんと共に駆け寄ろうとするが―


ノソッ!

西野良アライさん2「チビは…。誰にも…。はぁぁぁぁーーー!!!!」ダッ!

キラリ!

何か手に光るものを持ちながら、串刺しにされた『死に損ない』が向かってくる!!!

西野良アライさん2「たぁぁぁーー!!!」

ザクッ!

釣り姉アライさん「…」!!!

胴体に投げ槍を二本も食らった西野良アライさん2は、なおも立ち上がると、
隠し持っていた『お宝』野良包丁で、釣り姉アライさんを突き刺した!!!

釣り姉アライさん「ゴハァッ!お前ぇ!!!」ハアハア
西野良アライさん2「あ…アライさんは!ごんなどごろで!!チビが…待って…」

ブン!!

ザクリ!ゴロン!!

西野良アライさん2は、待っていると言うチビとは二度と会えない。

変事に気が付いた大姉アライさんが飛んできて、後ろからその首を飛ばしたからだ。

しかし、釣り姉アライさんはそれどころではない。

釣り姉アライさん「あ…あ…あ…、血が…」

釣り姉アライさんは自分の腹に突き刺さった野良包丁を見て呆然としかけるが―


バアン!!!

駆けつけた大姉アライさんに、下膨れ頬っぺを猛ビンタされる!

大姉アライさん「言わんこっちゃないのだ!!!作戦中にぼーっとしてるからなのだ!!!」チィィー

そう叱り飛ばしながら、未熟な新幹部に気合を入れつつ、サッと目配せをする。

古参が指揮を引き継ぎながら、『敵』の掃討を続けていく。

走って来た二匹の恩寵組が素早く釣り姉アライさんの両手足を抑え込む。

大姉アライさん「釣り姉アライさん!ここで死んだらマヌケの仲間入りなのだ!
今からこの包丁を引き抜く。
血が溢れ出すのだけど、お前は構わず素早く傷口に自分の手を差し込んで、傷ついた臓物をコスコスするのだ!!!」


釣り姉アライさんは目を白黒させている。

大姉アライさん「素早く!でも、しっかりコスコスしないと助からないのだ。
姉号持ちから死亡アライさんを出したら、大姉さんも大目玉なのだ!一、二の!はい!!!」

ズバ!

ビチャ!!

ズリズリコスコス!!!

西の山地で生死のコントラストが盛大に繰り広げられている。

それに対して、東は淡々と進んでいる。

此方の方が、『不届きアライさん』の数も多く、それ故にこそ大母アライさん自身も向かっていたのだが―

山姉アライさん「(ちょっと楽勝過ぎなのだ…。いや良いことなのだけど…)」ドスドスドス

東野良アライさん「…」ビクビクバッタンバッタン

山姉アライさんは、足元に転がる肉塊を見下ろす。

すぐ後ろでは、酒造姉アライさん等新参が、元気よくズバズバドスドスしている。

山姉アライさん「(周到な準備。圧倒的な兵力差。そして、大母さんの目があると言う士気。
負ける要素が無いのは当たり前…)」

そこまで、考えた後、山姉アライさんはハタと気づく。
『印鑑遠からず』
自分がかつて大母さんに諭された言葉を…。

山姉アライさん「(この戦いは『縮図』。今日は『家族』アライさん対『不届き』アライさんだった…。
でも、人間から見れば、両方とも害獣。野良の…生きてる事自体罪な存在―)」

タタタタッ!

伝令の恩寵組が駆けよって来る。

山姉アライさん「こっちは済んだのだ。あっちは?」

恩寵アライさん1「西は釣り姉アライさんが重傷…。ただ、命に別状はないとのことなのだ!
それと、大母さんから『西で人間の刃物を持ったアライさんが確認されたのだ。退路に十分注意するとともに、
殺したアライさんの巣を念入りに調べて使えそうなお宝・餌があれば、余さず持ち帰るのだ』と」コスリコスリ

恩寵アライさんが、手をコスコスしているのは勝利が確定したから。
しかし、自分に『勝った』とまだ伝えないのは、退路で気を抜かないようにするため。

山姉アライさん「(その上、戦利品の注意勧告!
大母さんは抜け目が無いと言うか、転んでもただでは起きないアライさんなのだ…)」

ダッ!

恩寵アライさん1は、要件を済ませるや直ぐに大母アライさんの下に駆け戻っていく。

山姉アライさんはそちらを何と無く見上げる。

『縮図』を乗り切るには、やはりこれが正しい。

タヌキ『アライ』ちゃん達、異族の投降獣のことも含めて…。
アライさん達はもっともっと強く賢くならないと!!!

今日はここまでです。

今日から2、3日お休みします。

916さん。それはいずれ物語で触れていくところになると思うので、お待ちいただければ。

922さん。ご熱読ありがとうございます。SSに反応を返していただけるのは、とても嬉しいのですが、もし長くなるようなら、雑談スレでワイワイするのも趣旨に合うかもしれませんね。

926さん。それは残念違います。

さて、一つ一つお答えします。

最初のアライグマの習性に関しては、是非、googleなり、youtubeで『アライグマ 群れ』で検索を。
暫し、『群体』となっているように見えるものもあり、『群れ』という表現を使われる媒体もあります。
ただ、元種が原則単独行動なのはSSでも触れている通りです。
ただ、これが、フレンズ化で知能が上がっているという要素もあると、さてさて…。

人間がチンパンジーの性質や、ホモ・サピエンスの本能だけで生きているわけではないように、
『擬人化したけもの』が居ると言う世界で、その在りかは何ぞや?
ご一緒に想像するのは楽しいことだと思います。

あ…、後、溜糞ですが『アライランド』でも『家族』でも、原則修正させられていますよ。
もしお時間があれば、ご覧ください。

縄張りに関しては、まあ、今後の展開をご覧いただきながらお考え下さい。
ただ、人間には『縛り』があることを不十分ながらアライさんが理解しているとしておきます。


自衛隊の件はシンポジュウムシーンでも相当詳しく触れていますが。
『補完性原理』のお話など、正に、民業圧迫の懸念があると、登場キャラ自身が堂々と話しています。

この世界は基本は現在の日本国の行政組織と近いものの、各県に『県兵』があり、
また、『フレンズ協会』も存在するなど、少しづつ様相を異にします。

後は、その気があれば読み直してくださいとしか。
地方の要請は作中で行われているし、割り込んできたと言うのは、自衛隊県兵相互の調整の過程で実験部隊の参加が急に決まったと言うこと。

他の市町村云々に関しても『補完性原理』の部分でお話済み。
蛇張村が、セルリアンとの災害による復興と言う、目立つ国民的イベントだからこその例外的措置とこれまた言及してあります。

陸自アライさんは、この手のお話に良くある『実験極秘部隊』。
試験運用の機会を待っていた(お気になされている予算も恐らく確保した上で)ところ、いよいよ今回…。
と言う風に描いてきたつもりだったのですが。

『アライさんの脅威は、ツキノワグマ位は有る。
世間が思うような、おっちょこちょいで対処しやすい害獣ではない』と複数のキャラに語らせており、
今のところ、この世界のちょっとアライさんに詳しい人の認識はこれぐらいです。


それと『テロリスト並みの脅威』と言いますが、テロリストの意味は多義的で難しいのでなので、
ポンポンお使いにはならない方が良いかも知れません。
少なくとも、狭い意味のテロを行ったアライさんはまだ、物語に登場していないのではないかな。

ところでアライさん達が群れることについて、メリットよりデメリット云々はこの先、物語内で触れるでしょう。

926さん。ありがとうございます。

922さん。あまり埋めるわけには行かないので、どうかこの辺りのご回答でご勘弁を。

感想が長くなるようなら、雑談スレも盛り上げて下されば。

あと、モンゴル帝国好きとして一つ。耶律楚材が下った時、金はまだ滅んでいませんよ。
昔の立派な人は筋を通しながらもドライです。もしかしたら、この世界のフレンズもそうかもしれませんね。

931のところ。

929さんにお礼をお伝えしようとしたのに、打ち間違えてしまいました。

どうも今日は本調子ではないようです。また、2,3日後に!

誤読の自由とか論壇では30年以上前に通り過ぎた場所なんだよなあ
作家からすれば明らかな理解力不足からテキトーな読み方して駄作と酷評するのも自由なんてたまったもんじゃない、という立場から積極的に反論して、結果評論家ってやつらの権威の失墜につながったゾ
現在の「読者様」はシねって風潮の源流だな

>>955
>>949の「作家からすれば明らかな理解力不足からテキトーな読み方して駄作と酷評するのも自由なんてたまったもんじゃない、という立場から積極的に反論して」に対するレスなのに何言ってるんだ?
嫌と思う可能性がある人に読ますなって言ってるんだから嫌なら読むなは関係無くね?

>>960
読むのは自由だが的外れな評論でバカ晒す前に勉強してもっと読み込めって話なんだけど理解できなかったかな
的外れな(同時に誤読の自由論争の時からしばしば見られた)意見出す前に当時の論争のこともっと掘り下げてきてくれない?

続きを書き込みます

公益社団法人『日本フレンズ協会』におけるアパート男のインタビューも佳境に入っている。

子孫博士「アパート男さん。そろそろ時間が迫っているのです。
今回の訪問で最後にお話したいことが有ったら今のうちに言うのです」
子孫助手「言うのですよ。急かしたくはないのですが、我々もこのあと少し予定があるので…」

二人の…二羽の、誠実な対応にアパート男は頭が下がる。

では、最後に自分自身の気持ちを真直ぐ打ち明け、意見を交わしたいテーマがある。
人間とフレンズの今後の世界の在り方についてのことだ。

アパート男「今日は、私の為にお時間を割いて頂き本当に感謝しています。最後に一つ…。
私はフレンズの皆さんの人間文明との差別や摩擦に心を痛めています。
私は害獣であるアライさんは嫌いですが…、少なくとも駆除と虐待を分ける程度の分別はあるつもりです。
アライさんに限りませんが、『虐めたい』とか『気味が悪いから排除したい』と思うことと、
本当にそれを実行してしまうことの差についても理解しています」

二羽の視線がその先の言葉を待つ。

アパート男「しかし、こんなことをフレンズの皆さんに言うことは心苦しいのですが…。
人間としては、社会の構成員として、フレンズにも『じっと耐えて我慢すること』『忍従』を身に着けて欲しい。
そう言う気持ちも正直あるのです」

二羽の奥に光が宿る。それに怖じずにアパート男は言葉を続ける。

アパート男「人間もフレンズも、自分の感情のままに素直に生きていて良いわけではない。
忍耐しなくてはならない時もあります。『けものはいても、のけものはいない』世界なんて存在しません。
『けものになったら』、人間文明では、『のけもの』にされます」

アパート男「人間がフレンズを『けものだから』と、大目に見ていられることには、限度があります。
『みんな自由に生きている。飾らなくて大丈夫』なんてことは人同士ですらないのです!!!」

アパート男は息を一度、大きく吸い込む。

アパート男「皆が自由に生きたら、皆が不自由になってしまいます。
フレンズがけものであればこそ、飾らなくてはならない面もあるのではないでしょうか?」

子孫博士と子孫助手は一度見つめ合い頷き合う。

子孫博士「つまり、お前はフレンズ差別や人間フレンズ間の摩擦はフレンズの側にも責任があると言いたいのですね。
まるで『虐めはイジメられる方にも原因がある論』のようなのです」
子孫助手「アパート男。お前の言うことも良く分かるのです。
しかし、お前の言う『じっと耐えて我慢すること』の強制はある種の、と言うか紛れもない暴力なのです。
お前は、今、被害者に泣き寝入りを勧めているのですよ」

グッ!!!

子孫助手は体を前に乗り出す。

子孫助手「例えば、『じっと耐えて我慢する』のが、トータルで人間・フレンズ間、人間・人間間、
フレンズ・フレンズ間で全て五分五分なら、それは確かにお前の言う通りでしょう。
しかし、もしそれが片方ばかりに一方的な不利益と忍従を強いることの言い訳なら、
それは『忍耐の美徳』等ではないのです。『一方に対する他方の暴力の肯定』。
差別構造の称賛を意味するのですよ」

子孫博士「私達『ジャパリ組』は相当優遇されていますが、他のフレンズの中には、
苦しい生活を送るけものも居ます。
どんなに人間に迫害されても、それこそ子供を殺されたり、家族を害されても、じっと耐えて我慢したけもの達が…」

クワッ!!!

子孫博士「私はそれを…見習うべき模範とは捉えていないのです!!!
『忍耐の美徳』と『奴隷根性』をはき違え、真に闘うべき時に戦うべき相手と向き合うことが出来ず、
結果『権利の上に泣き寝入り』してしまっだけなのです」

アパート男「…」ビクビク

子孫助手「無論、『けものも飾らなければいけない』という指摘は正しいのです。
学歴、技術、言論術、法学知識等。様々な装いを私たちフレンズも身に着けて行かなければなりません。
『一方的な忍従』を受け入れる為ではなく、よりスマート正しくに相手に感情を伝え、より自由に生きる為に。
そして、『じっと耐えて我慢する』ことを一方的かつ悪質に強制してくる輩を特定し、最も効率の良い方法で
『勝利する』ために」

アパート男「(勝利って言うのは…)」ビクビク

子孫博士「ああ、闘いとか勝利って言うのは、あくまで合法的な範疇のモノのことですよ」

アパート男「はい。それはよく承知しております…」

流石にこれだけやり取りすれば、この団体『日本フレンズ協会』が『合法闘争路線』なのは明らかだ。今のところは…。

ゴクゴクゴク!

程よい温度となったお茶がおいしい。

アパート男「(神経と頭を使うお話が続いたからな…)」

子孫助手「お代わりは要らないのですか?」

アパート男が手に持つカップが空くのを見て、子孫助手にアパート男は勧める。

アパート男「いえ…」

幾ら何でも大きな組織の『上』の方の人に…もとい、けものに遠慮なしと言うわけには行かない。

そんなアパート男の配慮を知ってか知らずか、子孫博士はもう一度促す。

子孫博士「お代わりを勧めるのですよ。お前は顔色が悪いのです。ちゃんと食べているのですか?」

アパート男「(そう言えば最近食欲がなかったかもしれないな…)」

アパート男「生来、小食気味で…。勿論、食べるときは食べます」

トクトクトク…

子孫助手は、そんなアパート男のカップに並々とお代わりを注ぎ、まだ手に付けていない茶菓子を差し出す。

子孫助手「美味しいものを食べてこその人生なのです。今度は我々もお代わりを待っているのですよ…友人として」

アパート男は、その茶菓子を袋から取り出すとパックっと頬張る。

パクパク

口の中に甘い味が広がったところで、新しいお茶をすする。

ズズズゥズー

アパート男「(美味しい。『友人として…』か。またお会いしましょうと仰ってくれたんだ…。
激しい主張のぶつかり合いさえしていたのに…。今度は、俺もおいしいお茶菓子を持って来よう!)」

アパート男は丁寧に部屋を辞す。

今日の聞き取り調査は、様々な知見を自分に与えてくれたように思う。
文に起こし、どう生かせるか考えなければ…・。

チーン

エレベーターが一回につく。

ふと、『お知らせ』の掲示板に『博愛会員募集中』のチラシが見える。

アパート男「これは…?」

案内の職員「これはフレンズ会員募集のお知らせですね」

案内の職員が丁寧に教えてくれる。

案内の職員「公益社団法人『日本フレンズ協会』は、日本国内の野生フレンズ以外の全フレンズを
一般会員としています。それに加えて『人間フレンズ間の平等・共生・共栄、共同参画社会実現の理想を同じくする
人間の方』を『博愛会員(フレンズ会員)』としているのです」

アパート男「所謂、準会員のような物ですね」

案内の職員「イメージとしてはそれに近いかと…」

アパート男「ありがとうございます。今日は、本当に勉強になりました」

そう言って頭を下げるアパート男に職員も声を掛ける。

案内の職員「またのお越しを。人類フレンズ共同参画社会の為に」


今日は短めですみません。ここまでです。

>>976


286: ◆19vndrf8Aw [saga]
黒衣のフレンズ「…」

大臣「御手洗を見習うのです。御手洗は、どんなに人間に迫害されても、じっと耐えて我慢した。子供を殺されても、です」

アライさん「っ…」ブルブル

大臣「人間もフレンズも、自分の感情のままに素直に生きていていいわけではない。忍耐しなくてはならないのです」

大臣「『けものはいても、のけものはいない』世界なんてないのです」

大臣「『けものになったら、のけものにされる』のです」

大臣「『けものですもの大目に見ててね、みんな自由に生きている。飾らなくて大丈夫』なんてあり得ない」

大臣「みんな自由に生きたら、みんな不自由になるのです。けものであれば、飾らなくてはならないのです」

黒衣のフレンズ「…」

大臣「ムショに行ったら、我慢強さを磨くのです。きっちりシゴかれてくるのです」

黒衣のフレンズ「…はい」
2017/12/24(日) 12:39:25.35


アラスコをパクるんじゃねーよ盗作野郎
晒しage

確かに前々から黙ってやってるね
相手の作者がどう思ってるかは知らんけど

256 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします[sage] 投稿日:2017/12/19(火) 14:09:23.20 ID:1GVNFUEK0
アラ虐作者同士で地味に展開しているレスバトルが面白い。

脳天「タイリクオオカミがアラ虐するよ!」→タイリクオオカミはアバズレ
脳天「動画配信アラ虐P!」→こんな奴日本にふさわしくない
脳天「生類憐れみの令!」→あ、それ間違ってますんで
わたアラ「アライさんと劉備の比較!」→あ、うちは黄巾党です

すみません。今日はお休みです。

このスレが埋まってしまったら、また自分で新スレを建てるので…。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年04月30日 (月) 18:12:58   ID: RdATYgTT

続きが読みたい…

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