提督「やっぱチキン南蛮弁当だよな」 (35)


長門「ほう、いい趣味だな」

提督「おっ、長門も唐揚げか」

長門「ああ、私は塩胡椒だけだがな」

提督「プレーンも旨いよな」

長門「うむ、弁当は唐揚げに限る」


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提督「よく食べるのか」

長門「好物でな、十個くらい食べる」

提督「十個!?それは多すぎだろ」

長門「そうか?いつもそんなものだぞ」

提督「いやいや、いくら旨くても十個は多い。 五つくらいにしろよ」

長門「五つなど食べた内に入らんだろう」

提督「じゃあ間を取って七つにしよう。 ビッグセブンな」

長門「ふむ……まあ、そこまで言うならそうするか」

長門「しかしそうなると三つ余るな」

提督「そのくらいなら俺が食べてやろう」

長門「む?そんなに食べられるのか。 自分のもあるだろうに」

提督「唐揚げは好物だからな、ドンと来い」ウェルカム!

長門「お前、自分が食べたかっただけじゃないのか」

提督「いやいや」


長門「まあいい、それじゃあ三つ食べてくれ」ドサッ

提督「はっ!?」

長門「陸奥の特製だからな。 味は保証付きだ」

提督「えっ、いや、ちょっと」

長門「それじゃあまたな。 後で感想を聞かせてくれ」スタスタ

提督「三つって……」

提督「唐揚げじゃなくて、弁当が三つかよ!?」






金剛「いい天気デース!」

比叡「絶好のピクニック日和ですね!」

榛名「早速お弁当にしましょう」

霧島「さあ、司令。 どうぞこちらに」

提督「金剛達はサンドイッチか。 さすが英国帰りだな」


比叡「ツナハムタマゴ、チーズにトマト。 色とりどりです」

榛名「ジャムやマーマレードの甘いのもありますよ」

提督「これは華やかだな」

金剛「全部榛名が作ってくれマシタ」

榛名「榛名、頑張りました」

提督「流石は榛名、嫁にしたいな」

榛名「えっ、ええっ?そんな…… ///」

金剛「もうっ、提督ぅー!浮気はNO!なんだからネ!」


霧島「司令、紅茶もどうぞ」

提督「ああ、ありがとう。……あれ?やけに熱々だな」

比叡「超高性能の保温ボトルです」

金剛「カッシーとバリーの特別製デース」

提督「普通のと違うのか」

霧島「軍用ですから。 市販の物とは桁違いの性能です」

霧島「温度だけでなく、香りや風味まで完全に維持します」

提督「それはすごいな」


榛名「このボックスタイプにはご飯も入れられるんですよ」

榛名「こちらも同じく長時間、炊きたての味が楽しめます」

提督「うむ、素晴らしい性能だな」

比叡「そしてこれがその機能を活かして持ってきたカレーです!」ドン!

提督「」

比叡「司令の分です!どうぞ!」

提督「」

比叡「おかわりもあります!」

提督「……お弁当にカレーは、ちょっとおかしいんじゃないかなー…」

比叡「え、でも熱々ですよ」

提督「うん、そうだけどね」

比叡「美味しさも出来たてそのままです」

提督「そっかー、そのままかー」


提督「悪い、比叡。 今ちょっと胸がいっぱいでな」

比叡「えー、せっかく作ってきたのに」

提督「すまない、長門から貰った弁当があるんだ」

比叡「む~……先約があるなら仕方ないですね」

提督「ああ、順番だからな。 いやー残念だなー」

比叡「分かりました。 ではまた別の機会に召し上がって下さい」

提督「ああ、そうさせてもらうよ。 ゴメンな比叡」


提督(長門、ありがとう長門)






山城「……」ソワソワ

山城「……」キョロキョロ

提督「よう」

山城「……!」キタ!

扶桑「提督、こんにちは」

山城「なっ、何ですか、今から姉さまとご飯なんだから邪魔しないで」

扶桑「山城」

山城「ふ、ふんっ」プイッ!

提督(通常営業だな)



山城「あー不幸だわ、不幸だわ」

提督「ん?」

山城「ホントに不幸、全く不幸、ああ不幸」

提督「何だ、どうした山城」

山城「お弁当を作り過ぎちゃったわ。 どうしましょう」

山城「こんなに食べ切れないし、捨てるのは勿体ないし」

提督「何だそんな事か。 よし、それなら俺が食べてやろう」

山城「何で提督にあげないといけないんですか」

提督「だって余ってるんだろ」

山城「だからってあげませんよ」

山城「まあ、へりくだって頭を下げるなら、考えてあげてもいいですけど」

提督「じゃあ、いらねー」

山城「……!」

山城「……」シュン


扶桑「提督」ヒソヒソ

扶桑「あれは提督の為に作ってきたお弁当です」

扶桑「余り物でも、間違って作った物でもありません」

扶桑「昨日から一所懸命、寝ずに作っていました」

提督「む……」

扶桑「不器用ですが、本当にいい子です」

扶桑「どうか山城の気持ちを酌んでは頂けませんか」

提督「……」


提督「あー……」

提督「お腹すいたなー、お腹ペコペコだなー。 何か食べたいなー」

提督「山城の弁当食べたいなー」

山城「……」チラ

山城「な、何よ。 お腹空いてるの」

山城「ど、どうしてもって頭下げるなら別に分けてあげても……」

扶桑「山城」

山城「……っ!」

扶桑「……」

山城「……」

山城「あの、提督」

山城「お弁当、よかったら、その」

山城「……食べてもらえますか」

提督「山城ー!」ダキーッ!

山城「ちょっ、は、はあっ?何よ、離してっ!」

提督「ありがたく頂くよ」ギュゥー!

山城「ば、馬鹿っ、もうっ!離してってば ///」

扶桑「……」ニコニコ



提督「松花堂かー」

提督「見た目も綺麗だし、味もとびきりだな」

山城「そ、そう……?残り物なんですけど」

山城「おかずだって全然適当に詰めただけだし」

提督「おっ、唐揚げも入ってる。 俺大好きなんだよな」

山城「ぐ、ぐ、偶然ね」

山城「まあ、大人なんだから不味くても残しちゃ駄目ですよ」

提督「残すなんてとんでもない、おかわりしたいくらいだよ」

山城「ふ、ふんっ ///」



提督「ごちそうさま。 旨かったよ」

山城「食べたら早くどこかに行ってください」

山城「今から姉さまと水辺に行くんだから」

提督「ああ、スマンスマン。 邪魔したな」

提督「また食べさせてくれよな」

山城「だ、誰がわざわざ作るもんですか」プイッ!

山城「……でも」

山城「また余ったら……差し上げます」

山城「捨てるのは勿体ないですから、仕方なしにですから」

提督「ああ、楽しみにしておくよ」






提督「日向」

日向「む、提督か」

提督「随分大きな握り飯だな」

日向「ああ、我ながら色気が無いな」

提督「いやいや、旨そうじゃないか」

提督「けど……」

日向「ん?」

提督「おかずは無いのか?漬物だけか」

日向「ふむ」


日向「昔な」

日向「この姿でいる前だ」

提督「ああ」

日向「貧しく、いつも飢えていた」

日向「嘆いていても仕方がない。 そういうものだと分かっていたし、確かに慣れてもいたんだが」

日向「それでもやはり腹は減る」

日向「芋の切れ端をかじりながら思っていたんだ」

日向「米を食べたいなぁ、と」

日向「いつか腹いっぱい、真っ白な米の飯を食べたいな、と」

提督「……」


日向「いい時代になった。 考えられない事だ」

日向「清潔な住まいに温かな食事、柔らかな寝床」

日向「酒や甘味まで、望めばすぐに手に入る」

日向「生き死にの日々に変わりはないが、同じ地獄でも景色が違う」

日向「空はこんなにも青かったのだと、今にしてようやく知ったよ」

日向「……全て君のおかげだ」

日向「ありがとう。 改めて礼を言う」

提督「いやいや、待て待て待て」

提督「全然違うから、全然俺じゃないから。 そんな大それたものじゃないから」

日向「謙遜するな」

提督「いやいやいや、偉いのはお前らだからね?俺なんて何もしてないから」


提督「毎日セクハラとガンプラだから。 ちゃらんぽらんだから」

日向「普段はふざけた態度だが、執務においては実に真摯だ」

日向「信念に基づき行動し、人の見ていない所でこそ力を尽くす」

日向「そんな姿勢だからこそ、艦隊の皆が惹かれ付き従うんだ」

提督「だーかーらー、違うっての。 人がいない所じゃサボってばっかりよ」

提督「駄目駄目、お前見る目なし。 騙されてるよ」

日向「フッ、まあそういう事にしておこうか」

提督「全くもう」


日向「それはそうと……どれ、ひとつ つまんでみないか」

提督「おっ、いいのか」

日向「沢山あるからな」

提督「それなら頂こうか」

日向「手作りだからな、味は保証せん」

提督「というかデカいな。 こんなに食べられるかな」

日向「これくらいで情けない事を言うな、ほら」ヒョイ

提督「ぬおおおっ!?」ズシン!

提督「何だこの重さっ?砲丸か!」

日向「釜の飯をあるだけ握って持ってきた」(80,640馬力)

提督「しかも硬ええっ!?マジで鉄球かよ!」

日向「だらしないな、このくらいで」

提督「戦艦パネェ」

提督「日向スマン、俺には無理だ」


伊勢「実はちょっとだけおかずもあります」ヒョコ

提督「おお、伊勢」

伊勢「簡単なものだけどね」

提督「玉子焼きにウインナーか。 いやいや、最強コンビだろ」

伊勢「おひとつどうぞ」

提督「ん、甘いな」

伊勢「あ、しょっぱい方が好みだった?」

提督「いや、甘いの好きだぞ」

伊勢「良かった。 日向と一緒だね」

日向「む」

提督「そうなのか」

伊勢「甘くないとヤダって駄々こねるからさー」

提督「ほほう」

日向「おいおい、伊勢」


日向「さっき、ちょっといい話っぽいのをしてた所なんだがな」

伊勢「いいじゃない、本当の事だし」

日向「いやまあそうだが……やれやれ参ったな」

提督「いいじゃないか。 俺も甘いの好きだぞ」

日向「出汁巻きは甘くない方がいいんだけどな」

提督「お、いいねえ。 辛味大根も付けようか」

日向「うむ、やはり出汁巻きは大根おろしと醤油に限る」

提督「ふむふむ、なら目玉焼きも醤油派か?」

日向「目玉焼きか?そうだなぁ……」






提督「大和は幕の内か」

大和「はい。 大和は洋風で、武蔵のは和風です」

提督「随分と豪勢だな。 幕の内というよりおせちのようだ」

大和「三段重ねです」エッヘン

提督「これ、大和が作ったのか」

大和「はい!頑張りました」

大和「……と、言いたい所ですが、実は妖精さんに助けてもらいました」

提督「なるほど、大和ホテルに武蔵御殿か」

提督「一流のシェフと板前が揃い踏みだな。 そりゃ豪華だわ」

大和「あ、でもでも、大和も少し手伝ったんですよ」

提督「ほう」

大和「この大和煮とかは私が作りました。 おひとつどうぞ」

提督「どれどれ……おっ、これは旨いな」

大和「えへへー」ニコー


大和「提督のお弁当は」

提督「俺はこれだな。 チキン南蛮」

提督「好物でな、弁当はいつもこれだ」

大和「おかず、それだけですか」

提督「好きなのをガッツリ食べたいんだ」

武蔵「子供か」

大和「長門さんみたいですね」

提督「ちなみに長門の弁当はこれだ」スッ

大和「唐揚げですね」

武蔵「似た者同士だな」

提督「まあ、ガッツリのレベルは違うがな」


提督「で、お前ら良かったらこれを食べて貰えないか」

大和「えっ?長門さんのお弁当ですよね」

提督「三つあるんだ、同じのが」

提督「ちなみに長門は、あと七個持っている」

武蔵「何やってんだお前ら」

提督「流石にこんなには食べ切れん」

提督「一つは俺が食べるから、お前ら一つずつ食べてくれ」

武蔵「それは構わんが……」

大和「長門さんに悪くないですか」

提督「長門には俺が後から言っておく」

大和「まあ、そういう事なら」

武蔵「しかし好物とはいえ、よくこんなに同じものばかり食べられるな」

提督「唐揚げは最強だからな」

大和「栄養や彩りが偏りますよ」

提督「いいんだよ、弁当の時は。 楽しいイベントなんだから」

武蔵「やれやれ、本当に子供だな」


提督「子供か……」

武蔵「ん?」

提督「なあ、武蔵ってどんな子供だった」

武蔵「何だ、藪から棒に」

提督「いや、何となくな。 好奇心だ」

武蔵「ふむ。 そりゃあ可愛かったぞ」

提督「そうなのか」

武蔵「容姿端麗、天真爛漫。 末は天女か姫君かと」

提督「マジかー」

武蔵「まあ言うだけならタダだしな」

提督「何だ、冗談か」

武蔵「フッ、私は変わらんよ。 無口で無骨な乱暴者だ」

提督「む」

武蔵「鼠や兎は虎にはならん。 虎は生まれた時から虎なんだ」

武蔵「昔も今も、私は変わらぬ武蔵だよ」

提督「ふむ」


武蔵「提督はどうだ」

武蔵「提督だって、私と同じ虎だろう」

提督「馬鹿な。 俺はそんな大層なものじゃない」

提督「せいぜいが威を借りる狐だよ」

武蔵「狐、か」フッ

武蔵「いいじゃないか、今は狐で」

武蔵「力をつけて、いずれ虎へと化ければいい」

武蔵「元が虎でないのなら、虎以上にも成れるだろう」

大和「提督ならきっとなれます」

提督「おいおい、お前ら買い被りすぎ」

大和「大丈夫ですよ、絶対!この大和が保証します」

武蔵「はははっ、しっかり頼むぞ!提督」




◇◇◇



提督「ただいまー」

提督「やれやれ、やっと帰ってきたぞ」

提督「ピクニックなのに食べてばっかりだったな」

大淀「あ、おかえりなさい提督」

提督「ああ、ただいま大淀」

提督「留守中に何か変わった事は」

大淀「いえ、特には」

大淀「ピクニックはいかがでした」

提督「うん、良かったよ。 いい気分転換になった」

大淀「それは何よりです」



大淀「あの、提督。 夕飯はもう食べられましたか」

提督「ん、いやまだだが」

大淀「そうですか、良かった」

大淀「実は先ほど比叡さんがお見えになって、お弁当を置いていかれました」

提督「は?弁当」

大淀「最新技術搭載で、何時間経っても美味しさキープとの事です」

提督「」

大淀「ここで召し上がりますか、それとも食堂で」

提督「……いや、あの、胸がいっぱいで」

大淀「順番がどうとか、約束がどうとか言ってました」

提督「」

大淀「『感想、聞かせてください!』との事です。 笑顔でした」

提督「」


提督「……医療班は」

大淀「別室に明石が待機してます」

大淀「指揮官代理は長門さんに、補佐を陸奥さんにお願いしました」

提督「大淀、ホント優秀な」

大淀「お家に帰るまでがピクニックですよ」

提督「帰れそうにないんですがそれは」

大淀「武運長久をお祈り致します」ニッコリ




おしまい。

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