男「さーてJKを殺すとするか!」 (32)

男「ふんふふんふふーん、おお、いたいた」

JK「……」

男「さてさて、今日も頼むぜ俺のバット君」スタスタスタ

JK「……あ」クルッ

男「おうらっ!」ヒュゥン ボゴォッ

JK「ぐえぴっ」ゴロン ゴロンクビゴロン

男「んーあんま飛ばなかったな。最近JKになったばっかかな?」

男「まあよし、どんどん行こ」

JK「あ……あ……」ゴロン   ゴロン

男「一時期を思うと随分減ったな」キョロキョロ

男「ってもまだまだいるか。そりゃそうか」

JK「……あ?」クテン

男「ははっ、お前可愛いな。どっかにぶつけて首折れたのか?」

JK「……あ?」

男「よしよし、俺がその首をぶっ飛ばしてやる。新記録出るかなー」

JK「……あ?」スタスタ

男「いっせーのっせえええええっ!」ボゴォッ!

JK「あびゅっ」ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

男「おお飛んだ飛んだ。よお飛んでるわ」

JK体「……」ユラ   ユラユラリ

男「誰かに165分割してもらうんだぞー」

JK体「……」ユラ   ユラユラ

男「んー、今日も随分とJKの顔面をぶっ飛ばした気がするなあ」

男「おっ、この声は……」

「がっふ……あ、あ、あ、あ、あ、あああああああ、が、っふええええええ」

男「またあいつか?」スタスタスタ

男「やっぱお前か。またやってんのかよ」

金髪「やっほー男じゃんかー」パンパンパン

男「まーたお前はレイプしてんのか」

金髪「いやっはっは、一日に一回はしないと溜まっちゃってさー」ズパンパン
オゴエオオアオオゴエオゴエオオゴオアアアアアアオオオアオ
男「楽しいか? それレイプして」

金髪「楽しいよー。なんかJKが唯一感情を見せる時って感じがして、愛着沸く感じ?」パンパン
オウグググウウオアアアッアツアッアアオオオオオ
男「悪趣味だな……後で殺すんだろ?」

金髪「殺すどころか再殺するよー。ごちそうさま、ってね」ズパンパン
ゴオオオオアオオアオオエエアオオオゴオオオオグユウウウアアアッ

男「お前みたいなの変態って言うんだ」

金髪「あっはっは、JKの顔面で飛距離競ってる男に言われたくないね」パンパン
アアウアオアオゴゴアオアオアオゴオアオガオエオオアオアオア
男「お前よりマシでありたいな。まあなにしてたっていいけどよ、食われんなよ?」

金髪「心配してくれてんの? やったね」パンパン

男「いやお前がいなくなったら俺の仕事増えるし」

金髪「嘘でも心配してるって言えよなー、お、イキそ」ズパンパン
ゴウアアアアオッガウアオアアガッガアウアッオガオオアオオオアオ
男「お前のイキ顔みたくないし、行くわ」

金髪「うん、またねー。うあっ」パンパン ドピュルルル
ウゴコゲオアカガアアアオゴオアアオゴアオッゴアアッゲエアアア

男「んー……狂ってんなー。まあ仕方ないか」

ある日なんの前触れもなく十五歳から十七歳までの女の子が死んだ。
数時間後、前触れもなく死んだ女の子達は突拍子もなく生き返った。

彼女達は言葉を忘れていた。
しかし意味があるのかどうかはさておき、生態を震わす個体が殆どだ。

彼女達は人を食べた。
特に家族や恋人、友人から優先的に食べた。
誰かが皮肉った。

奴らは大切な者から喰らっていく。
あの食事は愛なんだ。

だからどうした、俺達人間は食い殺されたくないやつが大半だ。
現に皮肉を言った隊員は彼女達に捕まり食われる最中「助けて」と悲壮に溢れていた。

彼女達に新たな名前が与えられることは明白だった。
一度死んで生き返り、睡眠も食事も不必要な別次元の個体。
コミュニケーション手段が喰らうことだけ。
彼女達は人間じゃない。

誰がどう見ても彼女達は人間じゃなかったが、世界的に名が与えられる必要があった。
なにせ彼女達を再び殺すには――再殺するには、165分割にする必要がある。
考えてみよう、最愛の者を165分割にする様子。
考えてみよう、他人であろうと可愛らしい少女を165分割にする自衛隊員の心境。

そして彼女達に名前が与えられた。
人間でなくなった彼女達の新しい名前は"ステーシー"。 

だけど俺はその呼び方が好きじゃない。
自分の精神を守るために名付けるなんてふざけた話だと思わないか?
だから俺は彼女達をJKと呼ぶ。

実際、女子高校生が多く制服を着てる子が多いから間違ってはないだろう。
そして人間として殺していく。
だから再殺なんて俺はしない。

彼女達はJKなんだ。

男「ふふーん」ブンブン

男「今日の最初は君だな」スッ

JK「……」クルッ

男「へえ……こりゃ綺麗なもんだわ。ここまでの美人は初めて見た。セーラー服なのもおっさんには好感度高いよ」

JK「……」バリボリ バリボリ

男「人間の頭をふがしみたいに食べてなければ交際を申込みたいぐらいだな」スタスタ

男「美味いか? その頭。俺には頭の違いなんてわからんが……いや、脳みそってのは美味だって話だっけ」

JK「……」バリボリ

男「けど知ってるか? 脳みそには予想だにしない寄生虫がいるんだって……って、お前たちなら問題ないか」スタスタ

JK「……」バリボリ

男「最後の言葉はあるか? なんてな」

JK「この頭、まずいです」ペッ

男「……は?」カランコロン

JK「……? どうしました?」

男「お、おいおい、なに喋ってるんだよ」

JK「喋る? そりゃ喋りますよ。だって私、ただの女子高生ですもん」

男「ただの女子高生はもうこの世にいないんだよ!ってか……そう、ただの女子高生は人の頭食わないだろ」

JK「そうなんですか? そうなんですかね……。
私達は一度死んで生き返って、そして肉を食べるようになった。
ただそれだけじゃないですか?」

男「そんな、そんなわけがないだろ……っ!」

JK「……? じゃあ私達はなんなんですか?」

男「お前……お前達は」

なんのために自分が彼女達をJKと呼称していたのかを思い出す。
人間だと思うためだったということを思い出して、自分が中途半端な臆病物だと知った。

男「……ステーシーだ」

そして俺は彼女達が人間じゃないことを認めた。

JK「ステー……シー?」

男「そうだよ。お前達のことを人間ではなくステーシーって呼ぶよう世界が決めた」

JK「ステーシー……どういう意味です?」

男「詳しくは知らんが……どっかの誰かは"stay city"が元じゃないかっつってたな。
俗訳で"その場に居続ける者"だと言っていたが……
そいつはかなり頭がイカれてた。毎日ノイズミュージックに酔ってたぐらいだからな」

JK「ノイズミュージック……?」

男「なんだ、最近の子供は歌謡曲しか聞かないのか?
一度聞いてみるといい、ノイズミュージック。人によっては啓蒙するだろう」

JK「ふふ……それは無理ですよ」

男「ふうん? ステーシーは音楽を理解できないか?」

JK「違います。私はこれから貴方に殺されるんですよね? そのバットで」

地面に転がったままのバットを指し示されて俺は慌ててバットを拾った。
馬鹿だ、今まで俺は無防備でステーシーと会話していたのだ。

男「なあ、教えてほしいんだが……」

JK「はい?」

男「どうして人を食べる?」

JK「その質問はこう言い換えることができますね。
どうして人は酸素を吸うのか」

男「生きるために必要ってことか?」

JK「違いますよ。私達JKは……いや、ステーシーですっけ。
ステーシーは生きるために食事を必要としません」

男「じゃあ酸素とは違うじゃないか」

JK「そうですか? 私はこうも思います。
人は生きるために酸素を吸っているのではなくて、ただ無意識に吸ってしまっているのだと。
現に死にたいって一日中部屋で引きこもっている人達がいるじゃないですか。
でも彼らは酸素を吸ってしまう……人にとって酸素って、その程度の物じゃないですか?」

男「……暴論だ」

JK「かもしれません」

JK「なんにしたって私達は肉を食べますよ。
生きるためではなく、本能みたいなもので。
どこか遠い星から流れてくる電波に任せて。
レティクル座だったかな……忘れちゃった」

男「……お前も食べ続けるのか」

JK「もちろん食べ続けますよ」

男「お前は死ぬ前のことを覚えているか?」

JK「なにも覚えてないですね」

男「お前は人が人を食べてはいけないということを覚えているか?」

JK「ルールというものはその時いた種族で成立しているものです。
だから私達新たな種族を数えないルールに意味はありません」

男「お前は……」

JK「……いいんですよ?」

男「え?」

苦しまなくたっていいんですよ。いっぱいいっぱい殺してください。
貴方はなにも悪くないんです。だから私たちを殺してください。
貴方達のおかげで私たちは転生できます。そういうことにしておきましょう?

私達は貴方達を食べます。特に愛する人達から順番に食べます。
だって一人は寂しいです。だからこれからも食べ続けます。
私達は貴方達の天敵です。

天敵に対して身を守る行為は自然界でも普通のことです。
だから正々堂々と殺してください。
貴方の手で殺してください。

殺しづらいのなら黙っていますよ。
殺しづらいのなら目をつぶっていますよ。
だから私達を殺してください。

自殺願望なんかじゃありません。
ただ生きている意味がないだけです。
でも死にたいわけでもありません。
だから貴方達を食べ続けます。

JK「なにをしたって許されるんですよ。貴方は私となにがしたいですか?」

男「俺……俺は……」

JK「セックスしますか? 胸は綺麗ですよ? ここも綺麗ですよ?
でもごめんなさい、食べちゃうのでフェラはできません」

男「君は……どうして、そんな風なんだ」

JK「生きる意味がないからですよ。死ぬ意味もないからですよ。
私達は自由な操り人形なんです」

どうして俺は躊躇っているのだろう。
目の前のステーシーを、食人鬼を、化物を殺すことを。
今殺さなければこのステーシーは新たなに人を食すだろう。
それは俺かもしれないし金髪かもしれない。

男「ぐ……うぅ……」ポタポタ

JK「可哀想に。貴方は悪くないのに。
いいこいいこですよ、泣かないでください」

男「どうして喋った! 喋らなければ、喋らなければお前らなんか!」

JK「不思議なことを言いますね」

JK「牛が痛いって言えば食べませんでしたか?
豚が恐いって言えば食べませんでしたか?
鳥が苦しいって言えば食べませんでしたか?
違うでしょう? だから私達は貴方を食べられますし、貴方達は私達を殺せるはずです」

男「そんなの……身勝手だっ」

JK「身勝手でいいじゃないですか。この世界は大方そういう風に作られていますよ。
必要もなく死んで、無意味に生き返って、邪魔だと殺されていく。
私達は世界の縮図ですね。でもそれでいいんですよ、世界はそれで」

JK「貴方一人が悩まなくていいんです。世界に身を任せましょう?
どこかで世界と対立するヒーローが産まれても、貴方はその風に吹かれればいいんです。
そうすれば私を、私達を――殺せますから」

JK「いつまでもいつまでも殺し続けてください。
未来永劫、命が果てるまで。
貴方は私達を殺し続けてください」

俺は不確かな愛情をステーシーに抱き、だからこそ余計に、臆病なままに殺せなかった。

初めてステーシーを殺した時を思い出す。
再殺した時を思い出す。
あの時は殺し方がわからなくて、泣きながら殺していた。
どうすれば殺せるかわからなくて、泣きながら殺していた。

でも殺さないと彼女は俺の両親を食べ終えて、その次に俺を食べてしまうから。
彼女は大切な大切な、目に入れても痛くない妹だったから。

「これでいいのか? ごめんな、痛かったか?
ここでいいのか? ごめんな、痛かったか?
わかった、ここだな? ごめんな、痛かったか?
大丈夫、大丈夫だから、お兄ちゃんがちゃんと殺してやるから!」

包丁で指を叩き切って、ハンマーで足を叩き折って、糸ノコギリで首を落としていった。
俺はちゃんと殺せただろうか。

JK「そう、そこです。できるなら綺麗に165分割していただけると嬉しいです」
ギコギコギコギコギコ
JK「我侭を聞いてもらえるなら……首から上をそのまま残してほしいなー、なんて」
ギコギコギコギコギコ
JK「えへへ……ダメですかね?」
ギコギコギコギコギコブシュッ
JK「ああ、すみません、血が飛んでしまいました。ハンカチ持ってるんで、拭きますね?」
ギコギコギコギコギコ
JK「はあ……こうしてアスファルトに寝転んで空を見上げる機会なんてありませんでした。
でも、空はとっても広くて気持ちいいですねー」
ギコギコギコギコギコギコ
JK「あの空のずっと向こうにある星……神様もあそこにいるのかな」
ギコギコギコギコギコ
JK「もし、神様に会うことができたら、一つだけ文句が言いたいんです、私」
ギコギコギコギコギコギコ
JK「どうして我慢の効かない口にしたんだ、って。だって――」


好きな人とキスできないんですもん。


ギコギコギコギコギコギコブシュゥゥゥゥウウウッ

JK「それで最後ですね」

JK「それを切断したら165分割達成です」

JK「ありがとうございます」

JK「殺してくれるのが貴方でよかった。だって、こんなに楽しく殺されたステーシー、きっと私だけだから」

男「……」

JK「どうしました?」

男「」スッ

JK「私の生首持ち上げてどうするんですか……もしかしてスイカ割りですか?
うう……できれば綺麗なままがいいんですが、我侭ばかりじゃいけませんもんね」

持ち上げた生首。
綺麗な生首。
引き寄せた。

JK「……あ」チュッ

どうしてキスをしたのかと聞かれても答えられない。
それは贖罪であった気がするし、ただの欲望だったかもしれないから。
一つだけわかったことがある。

それは俺が彼女の口内に舌を入れた時に知った。
舌と舌が絡み合い、一瞬、恋人同士のキスをした時に知った。

JK「あ……っぐッ」ガブ ブチィッ

男「ご……ぉ……」ブッシャァアアアア

JK「ん……んん……」クチャクチャクチャ ムチャムチャ

JK「ああ……美味しい」

俺を捉える視線は餌に対するソレだった。
俺は知った。
どれだけ心を通わそうと、会話しようと。
彼女は化物で――俺は餌だってことを。

JK「あ、すみません、キスしてくれたのに」エヘヘ

照れ臭そうに自分の失敗を笑う彼女の顔が俺にとって最後になった。

ころころと転がる生首があった。
自分はどうして未だに生きているんだろうと考える生首があった。
生首はたまに人を食べた。
そしてころころと転がり続けていた。

少女が生首をなんとなく拾った。
生首はこんにちわと声をかけた。
少女はうごごごごおおと声帯を震わせた。

少女は訳も分からずに生首を食べた。
生首になにか不思議な魅力があったのかもしれない。
最初の一齧り目で生首は死んだ。
165分割されてようやく死んだ。

そして少女は生首を食べ終わり、辺りを見回した。

「あれ、ここはどこだろう?」

少女は後にモモと呼ばれた。




おわり

仲間を食うと元に戻るんです?

>>31
本編では特にそういった設定はなかったです
男の死亡が全くの無意味で終わるのは嫌だなと思って
あと確か彼女達は共食いをしませんね

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