モバP「檸檬の薫り」 (28)

モバマスSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1507731295

事務所

志希「キミは記憶力は良い方?」

P「どうだろうな。それなりだとは思うけど」

志希「ま。まだ若いもんね」

P「志希に言われると何だか複雑な気分だな」

志希「誰かと比べる物じゃないからね」

P「まぁ、覚えられなかった手帳にでも書いておけば言い訳だし」

志希「書いてたことを忘れなければいいけどね」クスクス

つかさ「もっといい方法があるぜ」

志希「ん? やっぱり社長となると一家言あるの?」

つかさ「いや、目に留まるとこにポストイット貼っとくとかはするな」

つかさ「それでも忘れるならシンプルに手に書く」

時子「自分の物に名前を書く小学生みたいね」

つかさ「まぁ、忘れて大目玉喰らうよりはマシだろ」

時子「それに関しては同感ね」

P「時子が何か忘れることってあるのか」

時子「……」

P「どうした?」

時子「失礼。貴方の名前を忘れてしまったわ」

つかさ「そりゃ大変だ。腕に名前でも書いとくか?マジックあるぜ?」

志希「なんだか。プロデューサーの持ち物みたいだね」

つかさ「うわ。なんかそれアレだな背徳的な雰囲気がビリビリするな」

時子「下らない。流石に名前を忘れる訳ないでしょう」

つかさ「そらな。時子が忘れる訳がないな」

時子「……何か含みがあるわね」

つかさ「考えすぎだろ」アハハ

時子「チッ」

P「そういや志希は記憶力に自信あるのか?」

志希「んーん。そこまで」

P「意外だな」

つかさ「てっきり見た物は忘れないとか言い出すかと思ったぜ」

志希「そういうのはアタシじゃないね」

志希「どーにもそういうのは頭の使い方が違うみたい」

P「そうなのか」

時子「でも、流石に豚共よりはマシでしょ?」

P「豚って頭良いらしいぞ?」

時子「チンパンジー並らしいわね。貴方はそれで満足?」

志希「あははー。まぁ、記憶力は人並だよ。きっと、多分、メイビー」

ガチャ

蓮実「こんにちはー」

P「お疲れ様」

志希「おっつー」

つかさ「お疲れー」

時子「おかえりなさい」

志希「ん?蓮実ちゃんなんか持ってる?」クンクン

P「どういうことだ?」

志希「いや、いつもいい匂いするんだけど。今日はまた違う匂いがするんだよね」

蓮実「あ、コレですかね?」

P「ん?」

蓮実「凄いですね志希さん」

蓮実「これ皆さんにあげますね」

志希「おー。ありがとー」

つかさ「いい匂いするなコレ。気分転換になりそう」

時子「……ポプリね」

蓮実「はい♪そんな感じです。時子さんなら知ってると思いました」

時子「時子様。たまたまね」

蓮実「まぁ、そこまで本格的にやってないんでポプリもどきですけど……」

P(俺には……?)

蓮実「あ、男の人ってこういうのどうなのかなーって思って……」

志希「にゃはは。フラれちゃったね」

つかさ「ま。確かにお前には縁がなさそうだ。不満なら自分の行いを反省しないとな」

時子「滑稽ね」

蓮実「あ、いや、今度持ってきますからっ」

P「無理しなくていいからな」

蓮実「はい」

志希「しっかし、どうしたのコレ?」

蓮実「ちょっと作ってみようかなーって感じで作ってみました」

志希「ふーん……これで全部?」

蓮実「はい。そうですけど?」

志希「そっかー……女の子っぽいね」

つかさ「はー。女の子だねー」

時子「貴方も似たようなものでしょう」

つかさ「少なくとも糠漬けは女の子っぽくないと思うぜ?」

志希「それに関してはどうかーん♪」

車内

志希「今日の仕事は楽しそう?」

P「収録だからな。退屈はしないだろうな」

志希「ふーん。それなら良かった」

蓮実「もしどこか行っても志希ちゃんよろしく匂いで追跡しますね」

志希「むむっ。紐付けされちゃった?」

志希「それを上回るのがシキちゃんなのでした」

P「いや、そこは大人しくしておいてくれよ」

志希「首輪でも付けてみる?」

志希「退屈しないし、ドキドキするし名案だと思うけど」

P「アイドルがそんなこと言うなって」

蓮実「あはは……」

志希「しっかしアレだね。蓮実ちゃんがPさんの分だけ準備しないって珍しいね」

蓮実「ま、まぁ、たまには……」

P「あんまりイメージないもんな」

蓮実「あはは」

志希「それとも別に用意してて皆が居なくなったら渡すタイプ?」

蓮実「え?」

志希「いや、ほら少女漫画とかであるじゃん。そういうの」

P「少女漫画なんて読むのか?」

志希「この間蓮実ちゃんに借りたー」

P「あ、そうなのか」

蓮実「はい。貸しました」

志希「調べてみたら結構人気らしいね」

志希「主人公が想い人に対して素直になれないシーンとかね」

P「なんとなく名シーンっぽいな」

志希「そそ。主人公は優しいから色々考えちゃってねー」

志希「それでも諦めきれない辺りがいいなーって」

P「志希はないのかそういうの」

志希「どうだろ。蓮実ちゃんは?」

蓮実「わ、私ですか?」

蓮実「まぁ、人並に……」ポリポリ

事務所
つかさ「なぁ時子」

時子「なに?」

つかさ「蓮実って一番アイドルっぽいよな」

時子「誰と比べて?」

つかさ「あたしら」

時子「そうね。そこは認めるわ」

つかさ「『恐れられ、讃えられ、崇められてこそのアイドル』ってのとは対極にありそうだよな」

時子「そうかしら?」

つかさ「流石にアタシはそう思うけど。蓮実が時子みたいだったら嫌だな」

時子「誰かの理想を表現することに変わりはないわ」

時子「共に誰かが描いた理想を投影することにおいてはね」

つかさ「ふーん……」

時子「なにかしら」

つかさ「意外とアイドルらしいこと考えてるなって」

時子「当たり前のことを言わないでくれる? 頭が痛くなるわ」ハァ

つかさ「それは悪かった」

つかさ「あ、分かった」

時子「ん?」

つかさ「似てるかどうかは置いとくけどちょっとだけ似てる所見つけたかも」

時子「どこかしら。答えによっては私は貴方を躾ける必要があるのだけど」

つかさ「口を削ぎ落とすのは勘弁して欲しいな」

時子「それは貴女の回答次第ね」

つかさ「二人共アイドルだと思ってな。ファンとの距離感の取り方が」

時子「……当然ね」

スタジオ

志希「ふぅ。どうだった?」

P「流石だな」

志希「いえい★」

蓮実「流石です」

P「蓮実も良かったぞ」

蓮実「あ、ありがとうございます」

志希「キミに首輪を付けて貰わなくて済みそうだよ」

P「それは残念だな」

蓮実「そういうのが好きなんですか……?」

P「いや、そういう訳じゃないけど」

志希「ドキドキしてるね。匂いが震えてるよ」

蓮実「匂いって震えますか?」

志希「実はアメリカで行われている最新の研究で……」

蓮実「志希さんは凄いですね」

P「嘘だぞ多分」

蓮実「えっ」

志希「ま。ウソだけどね。流石にテキトーなこと言い過ぎちゃった」

P「それじゃ、そろそろ帰るか。送ってくよ」

蓮実「ありがとうございます」

志希「おー、それじゃウチ上がってく?」

P「俺は事務所に帰るぞ」

志希「釣れないね」フゥ

蓮実「……」

車内

志希「いい匂いだね。心が豊かになりそう」

蓮実「それは良かったです」

志希「匂いのテーマとかあるの?」

蓮実「これは私の好きな匂いを集めてみたんです」

志希「ふーん。だから蓮実ちゃんっぽい感じがするんだね」

蓮実「分かりますか?」

志希「言われたらってレベルだけど、意思は感じるよ」

蓮実「嬉しいです」ニコ

志希「……ちょいちょい」

蓮実「なんですか?」

志希「ちょっと耳貸して」

蓮実「はい?」

志希「――、――?」

蓮実「え、あ、いや、それはっ!」

志希「ふふーん。その反応はそういうことね」

P「どうした?」

志希「いやね、今日観たいテレビがあったからアタシを早く送ってくれないかなぁって交渉を」

P「珍しいな志希がそんなこと言うなんて」

志希「まぁアタシもそういうお年頃だからねー」

P「ちなみにどんなテレビだ?」

志希「ヒミツ。乙女の秘密は聞くだけ野暮だよ」

P「それは悪いな」

志希「うんうん。そういうこと。だから蓮実ちゃんは後回し」

P「それでいいか?」

蓮実「え? あ、はい。大丈夫です。私は今日観たいテレビありませんから!」

志希「それじゃ、コーヒー飲んでく?」

P「いや、大丈夫だありがとう」

志希「そっかそっか。それじゃ、また明日」

蓮実「お疲れ様でした」

車内

P「遅くなって悪いな」

蓮実「いえ、全然大丈夫です」

蓮実「それよりいつも送ってくれてありがとうございます」

P「プロデューサーだからな」

蓮実「プロデューサーの鏡ですね」

P「蓮実はアイドルの鏡だな」

蓮実「私なんてまだまだですよ」

蓮実「…まだまだ」

蓮実「Pさんは嘘を吐いたことがありますか?」

P「そりゃないこともない」

蓮実「ふふ。そうですか」

P「そこまで出来た人間じゃないしな。取引先に上手いこと言って話通す時とかもな」

蓮実「意外ですね」

P「後から本当にしちゃえば問題ないからな」

蓮実「なんだか不思議ですね」

P「ただの方便だけどな」

蓮実「……実は私嘘を吐きました」

P「どうした?」

蓮実「ちゃんとPさんにもあります…ポプリ」

P「そうなのか。ありがとな」

蓮実「あんまり皆さんの前で渡すのもどうかと思いまして……」

P「まぁ、男に渡すのは変か」

蓮実「あ、いえ、そういう訳ではなくてですね」

P「ん?」

蓮実「あ、いや、なんでもないです」

P「お、志希達に渡してたのとちょっと違う気がするな」

蓮実「そ、そうですね」

P「レモンの匂いがするな」

蓮実「そうなんです!」

蓮実「お仕事に疲れた時とかに嗅いで貰えると嬉しいなって」

蓮実「こう…いつもお仕事頑張って貰ってるのでなんとか力になれたらって」

蓮実「そんな想いも詰め込んでみました!」

蓮実「深呼吸してみたら心地よい気持ちになると思いますよっ!」

P「なるほど……」

蓮実「あ、すみません。そのちょっとホッとしたというか肩の荷が下りたというか……」

蓮実「こう…自分の好きなことに相手が興味を持ってくれると嬉しくてお話したくなっちゃいませんか?」

P「確かにな」

蓮実「ですよねっ!」

P「でも、こういうのって結構作るの時間掛かりそうだな」

蓮実「いえいえ!Pさんのこと考えて作ったらあっという間でした♪」

P「そうかありがとな」

蓮実「あっ!えっとですね。母が教えてくれたんです!」

蓮実「大切な人に送ったらしくて……ってそういう話じゃなくて」

蓮実「えっと…そう!Pさんには笑顔が似合いますからだから匂い嗅いでリフレッシュです!」

蓮実(勢いに乗って随分凄いこと言っちゃったかも……)

P「ありがとな。大切に使うよ」

P「しかし、レモンの匂いか」

蓮実「何か思い出がありましたか?」

P「いや、よく言わないか? ファーストキスはレモンの味って」

蓮実「言いますね。甘酸っぱくて切なくて」

蓮実「Pさんにもそんな思い出が?」

P「さぁな」

蓮実「……む」

蓮実「私……」

P「ん?」

蓮実「Pさんの思い出がどういうものか分かりませんけど」

蓮実「レモンの匂いを嗅いで思い出すのは私のことにしてみます…!」

蓮実「人を元気にするのがアイドルです。私はPさんにも元気になって貰いたいですから」

P「ありがとな」

蓮実「ん、んふふ。キミがそう言ってくれるだけで、は、ハスミちゃん的にもオッケーなんだよね」

P「んん?」

蓮実「志希ちゃんの…真似です。匂い繋がりで……ダメでした?」

P「いや、驚いただけだよ」

蓮実「ふふっ。Pさんのジョビ器官を制圧です♪」

事務所

P「ただいま戻りました」

時子「随分と遅い帰りね。油でも売っていたのかしら」

P「あぁ、二人を送ってた」

時子「そ。殊勝な心がけね」

P「まぁ、何かあってからじゃ遅いからな」

時子「……」

P「どうした?」

時子「香水…違うわね。何かレモンの香りがするけれど」

P「あぁちょっとな」

時子「あぁ、そういうこと」

P「何がそういうことだ?」

時子「いい匂いね。嫌いじゃないわ」

P「俺も好きだな」

時子「蓮実が好きと言っていた匂いね」

P「そうだっけか」

時子「えぇ。爽やかで甘酸っぱい初恋の匂いですって」

P「ロマンチックだな」

時子「夢を見せるアイドルにだって夢を見る権利はあるもの」

P「時子も意外とロマンチストだな」

時子「その舌引っこ抜くわよ」

時子「しかしまぁ、匂いってのは強いわね」

P「なにがだ?」

時子「匂いと記憶は密接な繋がりがあるわ。こういうのはあの子の本分でしょうけど」

P「あぁ、プルースト効果か」

時子「豚にしては博識だこと」

P「たまたまな」

時子「そう。なんにせよその匂いを嗅ぐ度に蓮実のことを思い出すのね」

P「そういうことになるな」

時子「滑稽ね。豚ではなく犬だったようね」クスクス

P「そうかもな」

時子「……」

時子「……チッ」

P「どうした?」

時子「別に。あぁ、特別にこのアタシが珈琲でも淹れてあげるわ」

時子「当然飲むわよね?」

P「まぁ、頂けるなら」

時子「滂沱の涙を流して感謝しなさい。地獄のように濃いコーヒーを淹れてあげるわ」クス

読んで下さった方ありがとうございます。

余談ですが、『ジョビ器官』は『鋤鼻器官』と掻き、フェロモンを感じる器官です。

失礼いたしました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom