【モバマス】木村夏樹「だりーが地獄の特訓に連れて行かれた」 (29)



みく「最近姿を見ないと思ったらそんな事になっていたのかにゃ」

夏樹「一向に上達しないギターの腕にPが業を煮やしてな……」

夏樹「マストレさんと付きっ切りで朝から晩までみっちり人里離れた山奥で特訓するらしい」

みく「うわぁ……」



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みく「りーなちゃん大丈夫かにゃ?泣きべそかいてないといいけど……」

夏樹「大丈夫だろ。あれでも根性あるやつだし」

夏樹「それに地獄の特訓から帰ってきたらさすがにギターの腕も上がってるだろ」

みく「そうだけど……やっぱり心配にゃ」

夏樹「おいおい、だりーのことを信じてやれよ……」





みく「いや、りーなちゃんのにわかロックが本当に治るのかどうかが心配にゃ」

夏樹「いや、大丈夫。さすがに治るだろ……治るよな?」






あたしはみくの発言に一抹の不安を覚えた。

果たして地獄の特訓を経てだりーのギターは本当に上達するのか?

ちゃんとこのプロダクションに戻ってくることができるのか?

そんな不安をよそにだりーは突然戻ってきた。



李衣菜「ただいまー!」

みく「りーなちゃん!?本物かにゃ!?」

李衣菜「失礼だな……ちゃんと本物の多田李衣菜だよ!」

みく「よ、よかった!帰って来れたんだね!!」

李衣菜「まあ、だいぶシゴかれて参ったけどね」

李衣菜「正直何度逃げ出そうと思ったことか……」

夏樹「でも無事に戻ってきたってことは……」

李衣菜「もちろん!二人に見せてあげるよ、新しいロックを掴んだ私の姿を!!」



驚いたよ。

だりーのテクニックはあたしの想像を遥かに超えていたんだ。

いや、テクニックだけじゃない。

もっと根源的な……魂が熱くなるような感覚。

あたしが理想とするロックそのものがそこにはあったんだ。



ただ……だからこそどうしても気になることがあった



李衣菜「ふぅ……どうかな?」

みく「す、すごい……あのにわかロックがここまで立派になるなんて」ホロリ

李衣菜「にわかロックってなにさ!!」

夏樹「でも、驚いたよ。ここまで上達するなんて……あたしが教えれることはもうないな」

李衣菜「な、なつきち……」

夏樹「ただ……ちょっと聞いてもいいか?」

李衣菜「へ……なに?」



夏樹「その……いま着てるTシャツのことなんだが……」

李衣菜「あ、気付いちゃった?」

李衣菜「いや~私もこの特訓で地獄を見てきたからね!」

李衣菜「もうロックの精神じゃなくて地獄を胸に掲げた方がいいと思ってね!」

李衣菜「特注して作ったんだ!このヘルズTシャツ!!」

みく「…………」

夏樹「…………」

李衣菜「あれ?どうしたの二人とも?」



みく「いや、その……言いにくいんだけど……」

李衣菜「なに?みくちゃんもこのTシャツ欲しいの?」

李衣菜「ダメだよ?これは地獄を見てきた選ばれしものだけが着れるヘルズTシャツなんだから」

みく「いや……そうじゃなくて……」

李衣菜「?」

夏樹「言いにくいんだけどさ、それ間違ってるんだよ」

李衣菜「………へ?」

夏樹「ヘルズじゃなくて……ヘルスって書いてる」

みく「“Health”……うん、ヘルスって書いてるにゃ」



李衣菜「な、なに言ってんのさ!地獄の!Hellの!複数形なんだからこれでいいの!」

李衣菜「ほらよく見てみなよ、ヘ・ル・ズ!合ってるでしょ!」

みく「いやHellの複数形なら綴りはHellsになるはずにゃ」

夏樹「Healthだと意味は健康になるな」

みく「地獄とは意味が遠い言葉にゃ」ケラケラケラ

李衣菜「…………」プルプルプル



李衣菜「じ、地獄を見てきたんだもん!特訓してきたんだもん!」

夏樹「特訓ってどんなことしてきたんだよ」

李衣菜「えっと朝6時に起きて、軽くジョギングでしょ。そのあと朝ごはんを食べて……」

夏樹「健康だな」

みく「健康にゃ」

李衣菜「そのあとは緑の木々に囲まれながらヴォイストレーニングとダンスレッスン」

夏樹「健康だ」

みく「Healthにゃ」



李衣菜「そ、そのあとマストレさんが自作したドリンクとお昼ご飯を食べて……」プルプルプル

夏樹「マストレさんのドリンク……これはHellだな」

李衣菜「本当!?」

みく「でも栄養はあるからHealthでもあるにゃ」

夏樹「そうかじゃあプラマイゼロだな」

李衣菜「…………」



みく「それで、そのあとはどうしたんだにゃ?」

李衣菜「マストレさんにギターと勉強をみてもらいました」

李衣菜「そのあと山で採れた新鮮な山菜を食べてお風呂に入り」

李衣菜「夜の10時にはあったかいお布団で眠りにつきました」

夏樹「どっからどう見ても健康的じゃねえか」

みく「地獄のじの字もないにゃ」



夏樹「ん?ってことはそのTシャツのHealthの文字はあながち間違いじゃないな」

みく「確かに……むしろそんな規則正しい生活を地獄扱いする方が失礼にゃ」

李衣菜「うるさい!うるさい!誰がなんと言おうとこのTシャツの文字は地獄なの!!」

李衣菜「あの地獄のような日々が私を変えたんだ!」

李衣菜「これからの私はにわかロックじゃない!ヘルズ李衣菜なんだ!」

「ほ~う……ヘルズ李衣菜か……」

夏樹「げぇ!?」

みく「その声は!?」



マストレ「随分と生意気なことを言ってるじゃないか」

李衣菜「げ、マストレさん!?」

マストレ「あの生活が地獄か……私は悲しいぞ」

李衣菜「」



マストレ「それになんだそのシャツは?」

マストレ「私の目にはHellsではなくHealthと書いているように見えるが……どういうことだ?」

李衣菜「いやそのちょっと間違えたというか……」ダラダラ

マストレ「間違えた……か」

マストレ「私が直々にギターだけではなく勉強も見てやったというのに……」

マストレ「そんなしょうもない間違いをするなんてな。私の教えが甘かったということか?」

李衣菜「これはジョークグッズというか……その」

マストレ「いや、みなまで言わんでいい。そんなに見たいなら見せてやろう」



マストレ「本物の地獄の特訓というやつをな……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

李衣菜「」

夏樹(あ、終わったな……)

みく(マストレさんの頭にツノが見えるにゃ……!!)



マストレ「さあ、善は急げだ!こんどはもっと厳しいぞ!」

李衣菜「ちょ、待って!」

マストレ「いや、待たん!お前には一度本物の地獄を見せてやる!」

李衣菜「やだーーーー!!!」ズルズルズル



夏樹「……連れて行かれてしまったな」

みく「……こんどは戻ってこれるかにゃ?」

夏樹「わからん」

夏樹「本物の地獄の特訓に連れて行かれたからな」



今度こそだりーは地獄を見ることになるだろう。

果たして地獄を見ただりーはどんなロックを魅せてくれるのか。

叶うのならばあたしはそれを確かめたい。

そんな想いを込め、地獄へと引きずられていくだりーに向かって言葉を投げかけた。




夏樹「だりーーー!!!」

李衣菜「!!?」

夏樹「ゴーートゥーーヘェェエエル!!!!」

李衣菜「シャレになってないってば!!!」ズルズルズル



終わりです。

意味も分からず英語のTシャツ着てると恥ずかしいよねって話。

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