アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く2 (1000)

ジビエ料理店『食獲者』。
本日は休業だというのに、その店へ向かう車がある。

車は店の裏の駐車場へ停まった。

どこのどいつだ?
休業日と知っているのに、店を訪ねる奴は。


俺だ。
俺は店に裏口から入っていく。

奥へ入っていくと、リビングへ着いた。

リビングでは店主がテレビを見ている。
よう。

食通の友人「よ、ハンター」

なに観てるんだ?
テレビにはアライさん達が映っているようだが。

食通の友人「知らないか?衛星放送でやってる、『アライデスゲームTV』だ」

聞いたことがある。
とびきり悪趣味な番組だとな。

食通の友人「まあそう言うな、あれでなかなか経済を回してるんだぜ」

食通の友人「よく漫画や映画で、『デスゲーム』ってのあるだろ?人が命をかけてゲームするやつ」

ああ、最近の流行りだな。

食通の友人「当たり前だが、あれを実際にやるわけにはいかない。人が死ぬわけだからな」

当然だ。

食通の友人「だが、それをやっちゃおうっていうのがこの番組だ。捕獲したアライさん達に、デスゲームをさせるって番組だ。視聴率はパないぜ」

はぁ…。
何が面白いかさっぱり分からん。

駆除するなら、さっさと殺してしまえばいいんじゃないか?

食通の友人「分かってねーな。ここの番組のアライさんは、保健所から例のサービスで買ったやつだ」

食通の友人「テレビ局はそれで儲かるし、アライさんを売った金で国家財政も潤う。そうなりゃアライさん駆除予算も増額。いいことじゃねえか」

はぁ…うまいこと考えるもんだな。

食通の友人「ただ一つ、この番組には問題があってな…」

問題だらけだと思うが…一応聞いておこう。何だ?

食通の友人「みんなバカ過ぎて、頭脳戦も駆け引きもねえんだ!!!」

なるほど。
観てる感覚としては、初めてのお使いやご長寿クイズに近いんだな。

~前スレ~

アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く
アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1501852007/)



フレンズ達の戦いにより、セルリアンの脅威から救われた人類。
彼らはフレンズと共存し、社会を復興していった。

そんな中、新たな敵が現れた。
敵はセルリアンではなく、なんとフレンズの一種、アライグマである。

異常繁殖し、農作物や経済を荒らしに荒らすアライさん達。
痺れを切らした人類は、アライさん駆除作戦を開始した…。

しかし、その予算は雀の涙だ。
果たして人類は、アライさんの脅威を排除できるのか!?

実写版デスノート(藤原竜也版じゃないやつ)かな?

~登場人物~


・俺(♂)
猟師であり、アライさんを仕留めによく山へ行く。
仕留めたアライさんは、保健所へ持っていく他、ジビエ料理店『食獲者』への売却もしている。

・食通の友人(♂)
ジビエ料理店『食獲者』の店主。
アライさんを料理して客に出している。
ネットでは『ショクエモンP』のハンドルネームで支持を集めている。

・大臣(フレンズ)
フレンズ省の大臣。
アライさん駆除活動の資金集めに今日も頭を悩ます。
驚くと体がシュっと細くなる。

・ブラウンP(フレンズ)
アライさんジビエ料理人の一人。
食通の友人をライバル視している。
恐怖や苦痛、絶望や嗜虐の表情の写真を取るのが趣味らしい。

>>10
・俺(CV浪川大輔)
・食通の友人(CV吉野裕行)
・大臣(CV三上詩織)
・ブラウンP(CV伊藤かな恵)

このキャスティングでドラマCDで聴いてみたい

それで、次のフェスは近いんだろ、準備はどうなんだ?

食通の友人「ばっちりだ。丁度食べごろだぜ」

食べごろ?どういうことだ。
アラジビってのは、捕まえたアライさんを料理するんだろ。
食べごろも何もないんじゃないか?
もしかして旬があるとか…?

食通の友人「まあ、楽しみにしてろよ」

まあ別に俺は食わないけど…

食通の友人「今回から予算増額するらしくてさ、会場もでかくなるし、海外からも客がくるんだと」

海外…?海外にまでモノ好きがいるんだな。

食通の友人「なんとフランスの大使が来るんだと。今回は、勝ったな」

何が勝ちなんだか…。
まあ、俺も稼ぎ時ではある。
当日は食肉ブースへアライさんを持っていくよ。



アラジビフェス当日。

オープニングイベントの、人気アイドルグループのライブは大盛況であった。

そしてあちこちのブースで、アラジビ料理が販売されていた。

アラジビ初心者「うわー…すごいな…」

店主1「いらっしゃーい!アラ汁だよー、塩味のきいたアラ汁だよー」

店主2「ヒャッハー!ライブキッチンだァ!超新鮮なアライさんホルモン焼き肉だぜエェ!!」

アライさん1「あ…あらいさんの…おなか…いだいのだ…だずげで…」ピクピク

ショクエモンPの影響だろうか。
彼のような、過激なパフォーマンスを好む料理人も増えている。

そして例のライブキッチンが始まった。
今回、ショクエモンPとブラウンPのクッキング対決は本イベントの目玉として、順番としては最後であった。

最後のライブキッチンは、17時前後。夕飯時である。

それまでは、若手料理人や、ベテランの料理人が、それぞれの料理を振る舞うのだ。

>>26訂正

× ライブキッチン
○ ステージクッキング

そして例のステージクッキングが始まった。
今回、ショクエモンPとブラウンPのクッキング対決は本イベントの目玉として、順番としては最後であった。

最後のステージクッキングは、17時前後。夕飯時である。

それまでは、若手料理人や、ベテランの料理人が、それぞれの料理を振る舞うのだ。

ステージクッキングでは、様々な料理が披露された。

血抜き済みの新鮮なアライ肉を、ショウガ醤油でいただく「アラ刺し」。

アライさんの肉を使った「アライソテー」。

煙でいぶしながら焼いた「ローストアライ」。

…どれも精肉済みのアライ肉を使った、『まともな料理』である。
食通の友人がやるような虐殺ショー…いわゆるライブキッチンは、ごくごく少数派なのだ。

中には 、アライちゃんの内臓を引きずり出し、ソーセージを詰めて焼く「ホットアライ」のようなゲテモノもあったが…。

そしてメインイベント。

ついにクッキングバトルが開始される。

司会「お待たせしました~!次は皆様おまちかねの、クッキング対決です!」

ブラウンP「やあみんな。ブラウンPだ。よろしく」

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHH!!』ワーワー!キャーキャー!

客席から黄色い悲鳴が聞こえる。

彼女、ブラウンPは「かっこいい女性」という印象を持たれている。
女性ファンも男性ファンも多い。

司会「挑戦を受けるのは!我らがレジェンド・オブ・キチガイ!ショクエモンPでございます!」

ショクエモンP「ヒャッハー!ついに俺の秘密兵器を披露するときがきたか!」

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!』

ショクエモンPこと食通の友人は、圧倒的な男性人気がある。

彼の冒涜的で暴力的で嗜虐的なライブキッチンはもはや伝説。

日本中、いや世界中のサディストどもの心と胃袋を鷲掴みにしている。

女性ファンもいることはいるが…
大概の場合、女性は「隠れファン」であることが多く、自ら名乗り出る者は多くない。



ブラウンP「さて、早速始めようか。おいで、おちびちゃん」パチン

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

観客『オォー!』パチパチパチパチ

司会「ブラウンP、この子達はどうやって入手したのですか?」

ブラウンP「森で罠にかかっていたところを、罠を外して連れてきたんだ」

アライちゃん1「そうなのだ!ぶらうんおねーしゃんは、あらいしゃんたちのいのちのおんじんなのらぁ!」

アライちゃん2「おかーしゃんにおいてかれて、おなかぺこぺこでしにそうだったとこを、たすけてくれたのだ!」

司会「へぇ~。アライちゃん達、ブラウンお姉さんのことは好きかい?」

アライちゃん1「だいしゅきなのだぁ~!おかーしゃんよりだいしゅきなのだ!」キャッキャッ

アライちゃん2「まいにちおいしーごはんくれるのだ!スキスキなのだ!」キャッキャッ

司会「んん…?ブラウンP、イベント前の食事は…?」

ブラウンP「飴玉とミルク、野菜ジュースだけを与えてある。胃や腸に残るものは与えてないね」

観客『パチパチパチパチパチパチ…』

司会「しかし、ブラウンPもライブキッチンにデビューするのですか?」

アライちゃん1「らいぶ?ぺぱぷらいぶなのか?」

アライちゃん2「さっきもぶらうんおねーしゃんといっしょにぺぱぷらいぶみたのだ!たのちかったのらー!」キャッキャッ

ブラウンP「ああ、そうだ…。ショクエモンP、あなたは私の憧れだ」

食通の友人「ふむ?」

ブラウンP「恐怖、絶望、混沌…それら全てが歓喜の渦となって客の心を鷲掴みにする。同じくホラーを表現する者として、あなたには感心するばかりだ」

ブラウンP「そう…ショクエモンP。君の料理は、客の胃袋だけでなく心を満たす」

ブラウンP「なればこそ、私とてその道で生きる人間。人の心を動かすことに、フィクション作品も料理も通じるんだ」

ブラウンP「ショクエモンP!私は君の背中ばかり追いかけてきた!今日この日、私は歓喜と恐怖の表現者として!キミを超える」

女性ファン『キャヤヤヤヤッヤアァァァアアーーーー!!!』

司会「それではさっそく、ブラウンPの料理、行ってみましょう!どうぞ!」

ブラウンP「それじゃあみんな、練習通り、一緒に頑張ろうか」

アライちゃん1「わかったのだー!」

アライちゃん2「いっしょにごはん、ちゅくるのらー!」

ブラウンP「さ、それじゃあ、お洋服脱ぎ脱ぎしようか」

アライちゃん1「ぬぐのらー!」ヌギヌギ パサッ

アライちゃん2「はだかんぼなのらー!」ヌギヌギ パサッ

アライちゃん達は、キッチンで全裸になった。
その姿は、普通の人間の少女とほとんど変わらない。
アライちゃん達がヒトの姿を得たけもの、フレンズであることが今一層観客へ実感を持たせた。

つづく

ちょっとだけ続きかきます

ブラウンP「料理の前に、例のお洋服に着替えようか。はい」スッ

そう言うと、ブラウンPはアライちゃん達に、透明な物体を渡す。

それは透明なエプロン。
丁寧なフリルが形どられた、
飴細工のエプロンである。

アライちゃん1の飴エプロンには、透明をベースに桃色のラインが入っている。

アライちゃん2の飴エプロンには、青色のラインがある。

アライちゃん1「これであらいしゃんたち、こっくしゃんなのだ!」スチャ

アライちゃん2「おりょーりしゅりゅのら!」スチャ

飴エプロンは透明だ。
アライちゃん達の肌が透けて見えているが、
局部と乳首の部分は桃と青のラインが入って隠れている。

司会「え、えええ!?何ですかこれ!!凄い!凄いです!飴のエプロンです!これ単体で売れますよ!」

女性ファン1「欲しいーーー!」

女性ファン2「売ってーーーーー!」

女性ファン3「振り込めない詐欺wwwwwww」

ブラウンP「この飴細工エプロンは私の手作りだ。今日、この日のために作ったんだ」

観客「パチパチパチパチパチパチパチパチ…」

食通の友人「…す…っげぇ…」

アライちゃん1「それでは、あらいしゃんたちの、あらいくっきんぐー!」クルリン

アライちゃん2「はっじまっるのっだー♪」クルリン

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHHH!!!』

観客1「ああ!?なんだこの茶番はァ!俺は血と絶望が見てえんだアァァ!」

観客2「いーじゃねーか面白そうだ!」

観客3「さっさと殺せー!」

観客4「まあまあ、ブラウンPの初ライブキッチンだ。どんなクッキングになるかわくわくするぜ!」

ブラウンP「さあ、ステージはここだよ」スッ

ブラウンPは、ガスコンロに大きなフライパンを置く。
そしてフライパンの上に野菜を置く。

アライちゃん1「すてーじなのだ!」ピョン

アライちゃん2「ここでおりょーりするのら!」ピョン

アライちゃん達が、自らフライパンの上に飛び乗った。
火はついていない。

司会「おおー、しかしこのアライちゃん達、ニ本足で歩くの上手ですねー!」

そう。
このくらいの大きさのアライちゃん達は、大抵みんなノダノダヨチヨチと四本足で歩く。
こいつらがステージへ入場してきたときのように。

ブラウンP「特訓したのさ。二足歩行の練習をね」

観客『どよどよ…ざわざわ…』

ブラウンP「さあ二人とも、材料と道具だよ」スッ

ブラウンPはフライパンの上に、いくらかの野菜と、2つのミニナイフを置いた。

ブラウンP「そして、ステージも完成だ」カチャッ

ブラウンPは、アライちゃん達が乗るフライパンへ、透明なガラスの円柱を取り付けた。
フライパンの縁に、透明なガラスが壁を作っている。

アライちゃん1「くっきんぐすたーとなのだ!」スッ

アライちゃん2「おやさいをきるのらー!」トントントン

アライちゃん達は、ミニナイフを使い、野菜を切っていく。

アライちゃん1「おやさいーのうたー♪」トントントン

アライちゃん2「おやさいーのおうたー♪」サクサク

アライちゃん1「にんじんさんを、とんとんとん♪」トントントン

アライちゃん2「いんげまめを、だんだんだん!」サクサク

アライちゃん1「とうもろこしは、そ~のまま♪」

アライちゃん2「たまねぎさんを、とんとんとん♪」ザクザク

アライちゃん2は、カット済み玉葱をさらに細かく切る。
包丁の使い方は下手くそだが、今ここで驚くべきは、
アライちゃん達が目の前の野菜をこの場で食べずに、ちゃんと料理らしいことをやっている、という点だ。

いったい、アライちゃん達とブラウンPとどんな日々を過ごしたのだろうか?

アライちゃん1「ぐすっ…めがいちゃいのだああ!」ビエエエン

アライちゃん2「なみだでるのらああああ!」ビエエエン

観客『アハハハハハハハハ』

アライちゃん1「すんっ…もうへーきなのだ…」

アライちゃん2「いまのなんだったのら?」キョトン

ブラウンP「アライちゃん達、続きだよ、続き」

アライちゃん1「そうなのだー!えーと、ぱぷりかさんを、とんとんとん♪」トントン

アライちゃん2「おりょうり、おりょーり、たのちーのら♪」

アライちゃん1&2「「できあがり!おやさいさらだなのだー♪」」

ガラスの壁に包まれたフライパンの上には、2匹のドヤ顔のアライちゃんと、
乱雑にカットされた野菜が散らばっていた。

観客1「えぇ…」

観客2「なにこれ…」

ブラウンP「………」タラー

ブラウンPは、アライちゃん達いるフライパンの上に、サラダ油を注いだ。

ブラウンP「…」カチッ

ガスコンロの火「」シュボッ

そして、なんということだ。
一生懸命料理しているアライちゃん達が乗るフライパンを、
ガスコンロの強火で熱し始めた。

観客『Yeahhhhhhhh!!!』

アライちゃん1「なんなのだこれ?ぬるぬるするのだー」ベトベト

アライちゃん2「ぬるぬるでおもしろいのだー♪」キャッキャッ

アライちゃん1「そうだ、ぶらうんおねーしゃん!おやさいだらだ、できたのだぁ!」

アライちゃん2「ぶらうんおねーしゃん!いつもおいしいごはん、ありがとうなのだ!みんなでいっしょにたべるのだ!」

ブラウンP「いや、ご飯はまだだな。もう一品、作るものが残ってる」

アライちゃん1「そうなのか?…ふぅ~、にほんあしでたつのつかれたのだ…すわるのだ…。ん?」ペタン

アライちゃん2「あらいしゃんもすわるのだー…。あれ?」ペタン

アライちゃん1「なんか、おしりがあったかいのだ…」

アライちゃん2「すてーじがあったかくなってるのら…」

まだ十分な筋力のない体で長時間二足歩行をしていたせいで、疲れて座るアライちゃん達。

アライちゃん1「んん!…なんだ、あつくなってきたのだ」

アライちゃん2「おねーしゃん、おりょーりおわったのだ、すてーじかたずけて?」グイグイ

ブラウンP「いいや…まだ、料理は…終わっていないよ」

アライちゃん2は、フライパンに取り付けられた透明なガラスの壁を押す。
だが、ガラスの壁はびくともしない。

アライちゃん1「ぶらうんおねーしゃん!あしもとが、あっついのだ!これ、どけてなのだ!」グイグイ

アライちゃん2「はやくどけるのだ!いっしょにごはんたべるのら!」グイグイ

ガラスの壁はびくともしない。

アライちゃん1「おねーしゃん!はやく!はずしゅのだぁ!」ドンドンドン

アライちゃん2「あづいっ!あしがあづいのらあああ!」ドンドン

アライちゃん1「お、おやさいのうえにひなんなのだぁ!」ヨチヨチ

アライちゃん2「うえーん!あしがあちゅいのらぁ!」ヨチヨチ

アライちゃん達は、カットした野菜の上へ乗る。

アライちゃん達の側でサラダ油が、ジュー、バチバチと、音を立てて跳ねる。

アライちゃん1「おねーしゃん!おやさいもあちゅいのだぁ!だしてええっ!」

アライちゃん2「なんでだしてくれないのりゃああっっ!」

ブラウンP「…」ガシッ グイッ

ブラウンPは、アライちゃん2匹が乗ったフライパンを片手で持ち上げる。

アライちゃん1「のぁっ!?」

アライちゃん2「そ、そうなのだ!おねーしゃんがたしゅけてくれるのら!」

ブラウンP「野菜も肉も、一面だけじゃなく、こんがりまんべんなく焼こうね」ブンッ

ブラウンPは、フライパンを振る。
中の野菜やアライちゃん達が宙を舞う。

アライちゃん1「のあぁっ!」ビターン

アライちゃん2「ぎゃああああああああああっ!あじゅいのらああああああああっ!」ビターン ジュワアアアアアア

アライちゃん1「お、おねーしゃん!こんなのおがじいのら!ぶらうんおねーしゃんはすごくやさしいのだだいしゅきなのだあらいしゃんたちをたしゅけてくれりゅのらぁ!」ピョンピョン

アライちゃん1は、必死で跳ねている。

アライちゃん2「ぶらうんおねーしゃんもあらいしゃんたちがだいしゅきだっていってたのらぁ!かぞくだっていってくれたのらああああっ!」ピョンピョン

ブラウンP「ふふ…」スッ

ブラウンPは、アライちゃん達の顔にケータイを向ける。

ブラウンP「いい顔、頂き」パシャッ

そして写真を撮影した。

パシャッパシャッパシャパシャパシャッ。

観客席からも、一斉にたくさんのシャッター音が鳴り響く。

アライちゃん1「もうちゅかれてはねられないのらぁ…!」ジュウゥ

アライちゃん2「おねーしゃん!えぷろんをしたにして、ねっころがるのだ!」ゴロン

アライちゃん1「それがいいのだ!」ゴロン

アライちゃん達は、うつ伏せになった。
飴エプロンが体とフライパンの間に挟まれ、熱を防いでくれる。

アライちゃん1「おねーしゃん!ぶらうんおねーしゃんっ!こ、このままじゃ、しんじゃう、しんじゃうのだ!あしももうあつくていたくてひりひりしてだめなのだぁぁ!」

アライちゃん2「だずげでええぇぇっ!なんでだじゅげでぐれないのりゃあああああっ!」ビエエエン

しかし。
飴でこの熱を防ぐなど、甘い考えである。

アライちゃん1「あぢゅいっ!」ドロォ

アライちゃん2「ぴぎいぃぃっ!?お、およーふぐがどげであぢゅいのらぁぁっ!」ピョンピョン

なんと、アライちゃん達が着ていた可愛らしい飴細工のエプロンが溶け始めた。

融点170℃の溶けた飴が、容赦なくアライちゃん達の体表を焼く。

アライちゃん1「あぎぎぃぃゃぁああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」ジュウウウゥ

アライちゃん2「ぎびぃいいぃいーーーーっ!!!」ジュウウウゥ

アライちゃん達は起き上がろうとしたが。
披露と火傷のダメージが溜まった足は、もう動かなかった。

アライちゃん1「あ、あじがああああ!あじがうごがないのらああああああああっ!!!」ドンドン

アライちゃん2「ぶらうんおねーしゃん!だじでっ!だじでえぇぇっ!!!!」ドンドン

ブラウンP「なんでこんな目に遭っているか、理解できないかい?」

アライちゃん1「わがんないのだ!だじゅげでえぇぇっ!!」

ブラウンP「昔から、童話でよく言うだろう?」スッ

ブラウンPは帽子を脱ぐ。

ブラウンP「ふふ…」ピョコッ

ブラウンPの頭から、大きなけもみみが生えてくる。

アライちゃん1「!!?」

尻からは尻尾も生えてきた。
今までは、けものプラズムを消し、人に化けていたのだ。

「狼は、人を騙して、食べるって」



「そう…」


タイリクオオカミ「私はフレンズ。童話の悪者、オオカミのフレンズなんだよ」

ブラウンPは、ステージの上で己の正体を明かした。

アライちゃん1「お、おおかみ…!」ガクガクブルブル

アライちゃん2「おおかみなのだあああああああぁぁっ!!!!」ジュウゥ

アライグマが日本で大繁殖した理由。
それは、他国と異なり、天敵がいないためである。

そう、他国ではアライグマを補食し、繁殖を抑えていた肉食獣がいる。

たとえフレンズとなったアライさんあっても、DNAから伝わる絶対的恐怖がある。

それこそが、狼である。

タイリクオオカミ「ふふ…いい顔、頂き」パシャッ

今までずっと信じてきた者。
愛し愛されていたと信じて疑わない者。

そんな相手が、恐怖の絶対的補食者であった。

それに気付いた瞬間の顔を、タイリクオオカミは見事に写真に収めた。

タイリクオオカミ「だけど私は、獣であっても鬼じゃない。脱出のチャンスをあげよう」

タイリクオオカミ「そこに料理に使ったナイフがあるだろう?」

フライパンの上にナイフが転がっている。

タイリクオオカミ「それで姉妹を刺し殺しなさい」

タイリクオオカミ「生き残った方を、脱出させてあげよう」

アライちゃん1「あぁあああああっ!」ガシッ

アライちゃん2「あらいしゃんはしにだぐないのりゃあああっ!」ガシッ

タイリクオオカミ『アライ料理の~歌ー♪』

アライちゃん1「ぁあああ!」バッ

一瞬早く、アライちゃん1が血を分けた姉妹に向かってナイフを突き立てる。
そこには一瞬の躊躇もない。

タイリクオオカミ『アライ料理の~お歌~♪』

アライちゃん2「ぎびいいいっぃっ!」ブシュウゥウ

アライちゃん1「しぬのだ!しぬのだ!しぬのだああ!はやくしぬのだああああっ!!!」ザグッザグッザグッ

アライちゃん2「いぢゃいぃぃのぁああああ!やめぅのあぁぁああ!!」

タイリクオオカミ『かわいい妹を、とんとんとん♪』

アライちゃん1「ぅぅぅぁあああ!」ヨジヨジ

アライちゃん1は、刺して倒した妹の上に乗り、足場にした。

アライちゃん2「ぎびぃいいぃいーーーーゃぁあああーーーーーっ!!!あぢゅいのだああーーーーーっ!!!」ジュウウウゥ

タイリクオオカミ『自分のために、だんだんだん♪』

アライちゃん1「ぶらうんおねーしゃん!ぜぇ、はぁ、みるのだ!あ、あらいしゃん、いうとおりにしたのら!だからたしゅけるのらあぁあっ!」ゼェハァ

アライちゃん2「」ジュワアアアアアア

アライちゃん2は、姉にのしかかられたまま、何も言葉を発さず、ピクリとも動かない。

タイリクオオカミ『命乞いしても、そ~のまま♪』

やがて下敷きにしている妹の体も、ジュージューグツグツと熱くなった。

アライちゃん1「ぎぴぃ!あしばがあついのらぁ!はやぐ!はやぐううぅっ!!」

どっちかを生かすわけねぇだろ、このコバエガイジがW

タイリクオオカミ『~♪』スッ

タイリクオオカミは、ようやくフライパンを覆うガラスの壁を外した。

アライちゃん1「よ、ようやくたしゅかったのらぁ!」

タイリクオオカミ「…♪」ガシッ

タイリクオオカミは、手に鍋つかみを装着し、左手でアライちゃんの体を鷲掴みにする。

アライちゃん1「はぁっ…はぁっ…た、たしゅかったぁ…」ゼェハァ

タイリクオオカミ「…」スッ

タイリクオオカミの右手には、包丁が光っていた。

タイリクオオカミ『お腹を切って、とんとんとん♪』スパァ

アライちゃん1「ぎびっ!?」

アライちゃん1の腹部を、逆T字に裂く。

アライちゃん1「あ…ぁ…」ツー…

傷口から、少量の血が垂れる。

アライちゃん1「いぢゃいのりゃあぁあああーーーー!!!!!」ボビュブギュギュブ

逆T字の傷口から、臓物がこぼれ出す。

タイリクオオカミ『お料理、お料理、楽しいなー♪』ブンッ

アライちゃん1「あぢゅいのだああーーーーーっ!!!」ドチャッ ジュワアアアアアア

フライパンの上にうつ伏せに叩きつけられたアライちゃん1は、フライパンの上に内臓をぶちまけた。

タイリクオオカミ『~♪』パッパッ

タイリクオオカミは、アライちゃん姉妹の上に、ワインを垂らした後、塩胡椒を振りかける。

タイリクオオカミ『ひっくり返してジュージュージュー♪』クルッ

タイリクオオカミは、菜箸で姉妹をひっくり返す。
その顔は苦悶に満ちた表情のまま、こんがりと焼けめがついていた。

そして、そのままジュージューと焼いていく。

タイリクオオカミ「できました。アライカラメルソテーです」

タイリクオオカミが皿に盛った、アライカラメルソテー。

乱雑にカットされた野菜の隣に、絶望の表情のまま焼けたアライちゃん姉妹が横たわっており、
溶けた飴細工のエプロンがカラメルソースとなって腹部を被っていた。


タイリクオオカミ「ブラウンPのライブキッチン、これにて閉幕でございます」


観客は、誰もが絶句していた。

司会「あ…ぁ………」ガクガクブルブル

いくつものアラジビ料理を見てきた司会も、発する言葉が見つからなかった。

観客1「うっ…うおぉぇええええっ…!げええぇっ…!」タパタパ

観客の一人が、ビニール袋の中に吐いた。

食通の友人「…はは、すげえ、すげえよ…」ガチガチ

食通の友人も、挑戦者が全力で披露したライブキッチンに、武者震いするばかりだった。

観客2「信じらんねえ…あんな飴細工のエプロン作って…、あのガイジどもに料理の真似事や、歌まで覚えさせて…」

観客3「いったいどんだけの…労力かけたんだ…?」ブルブル

歓声はすぐには沸かなかった。
何故か。
簡単だ。
恐怖していたからだ。

数々のアライさんが無惨に殺される姿を目の当たりにしてきた観客達でさえ、
ブラウンPの常軌を逸したライブキッチンに、本能レベルでの恐怖を感じ、震え上がった。


肉食獣のフレンズの底知れぬ残虐性は、観客達のキャパオーバーであった。


タイリクオオカミは、観客席へケータイを向ける。

タイリクオオカミ「うん。いい顔、頂き」パシャッ

>>99
よく分からないけど、日本にある店でアライグマのすき焼きを売ってる店があるみたい。
なんでもアライグマの肉はイノシシやシカの10倍美味しいとか...



試食コーナーに並ぶ客達。
彼らは、料理の美味さに舌堤を打った。

それと同時に、彼らは感じた。
ブラウンPは、単にアライちゃん達を料理したのではない。

アライちゃん達と、心を通わせた思い出を。

アライちゃん達が自分に向けてくれた愛を。

アライちゃん達が、二足歩行するために一生懸命積み重ねてきた研鑽の日々を。

アライちゃん達が頑張って覚えた、歌や踊りや料理の技術を。

それら全ての、『アライさんと心を通わせ、共に生きていけるかもしれない可能性』を。

タイリクオオカミは、たった一度のライブキッチンのために、料理してしまったのだ。



ブラウンPを愛し、共に笑ったアライちゃん達は、物言わぬ料理となった。

アライカラメルソテーは、愛と裏切りのライブキッチンによって、絶望と恐怖の苦いスパイスを加えられ、客達の口へ運ばれていった。

ザワザワ…

食通の友人「…成る程、流石肉食獣のフレンズ。発想が化け物染みてやがる」

食通の友人「こりゃあ、アライちゃんバーグなんてショボい料理じゃなくて正解だったな………」グイイッ

食通の友人は、手綱を引っ張る。
手綱の先には首輪があり、2匹のアライさんへ装着されていた。

デブアライさん1「うぅっ…」ヨタヨタ

デブアライさん2「くるひいのら…」ヨタヨタ

食通の友人「だが勝てない相手じゃないな」

食通の友人「今度は俺のターンだ…見せてやるぜ。俺の秘密兵器を」

つづく

>>102
これですかね
http://imgur.com/pEs1yzk.jpg
http://imgur.com/aMyRO0w.jpg

司会「続きまして、ショクエモンPのステージクッキングです!」

ブラウンPがステージから降り、食通の友人が登場する。

食通の友人「えーどうも、ショクエモンPです。本日は、俺のとっておきの秘蔵の品をご用意しました」

観客『オォオォオォ!?』

食通の友人「えーまずは、こちらの写真をご覧ください」

ステージの上の巨大スクリーンに、籠に入った5匹のアライちゃんの写真が映して出される。

食通の友人「こいつらは2年前、俺の家庭菜園を荒らしに荒らした害獣どもです」

観客達『ブーブー!』

観客1「害獣がー!」

観客2「消えてなくなれー!」

食通の友人「こいつらの話を聞くとですね、どうやら3日も何も食べてなかったらしく。捕まえた後もこんなんじゃ足りない、お腹いっぱいになるまでもっと食わせろって言いやがったんです」

観客1「ふてぇ奴らだー!」

食通の友人「まあそんなわけで。いつもなら即ブッ殺しもんですが。たまにはこいつらの望みを叶えてやろうかと考えましてね」

食通の友人「お腹いっぱいになるまで、食事を延々と与えてみました。2年程ね」

観客1「なんとな…」

食通の友人「それで、そいつらがどうなったか?皆さん気になりませんか?」

観客1「どうなったって…」ザワザワ

観客2「横暴になったとか?」

食通の友人「ご覧ください、どうぞ」グイイッ

食通の友人が、足下のロープを引っ張る。

「のああああ!」

「ぐるじいのあ!」

食通の友人「いいから早く来いやアァァ!」グイイッ

デブアライさん1「のああっ引っ張らないでほしいのあぁ!」ブヨンブヨン

デブアライさん2「おおっふううぅぅ」ブヨンブヨン

観客達『アッハハハハッハハハハハハハッハアハハハ』ゲラゲラ

食通の友人「ご覧くださいこの醜態!お望み通りにしてやったぜェ!」

デブアライさん1「ふーっ…ふーっ…!」ゼェハァ

デブアライさん2「お前が…無理矢理…食わせたから、なのらぁ…!」ゼェハァ

食通の友人「おお?憎いか?憎いのかこの俺が!?憎たらしいか肉達磨ァ!」

観客『アハハハハハハハハ』

デブアライさん1「にぐいのだぁ!ころじでやりだいのらぁ!」

食通の友人「ならチャンスをやるぜ、こいつを受け取りな」シュシュッ

包丁×2「」カランカラン…

食通の友人「今この場で、復讐のチャンスをやるぜ!俺をブッ殺せたら、この地獄から解放してやるぜ!」

デブアライさん2「フー…フー…!こ、ころして、やるのら…!」

観客『ザワザワザワ…』

食通の友人「皆様!スクリーンの写真をご覧ください!あんな可愛らしいお子様が!こんな醜い姿に変貌し、今この場で復讐を果たそうとしております!」

デブアライさん1「復讐してやるのら…!」ゼェハァ

食通の友人「復讐!?…バカ言え!お望み通りに腹の肉いっぱいになるまで食えたんだ!満足だろオォー!?」

デブアライさん2「やがまじいのだ!この包丁をみるのだ!アライさんの方がづよいのだあぁ!」ゼェハァ

食通の友人「しかしお前、俺を倒した後はどうするつもりだぁ?」

デブアライさん1「どうするって…森に帰って…」

デブアライさん2「美味しいものたくさん食べ…ウッ!」

デブアライさん1「もうやなのだ…もう何も食べたくないのだ…!」ウプッ

食通の友人「じゃあ、ここで死ぬかい?」

デブアライさん1「うるさいのだ!とにかく、やまにかえるのだあぁ!」

食通の友人「おやおや~。2年間お仕置きしても、腐った性根は直らないようだな!まさに遺伝子に刻まれた害獣のサガだ!」

食通の友人「どうやら…馬鹿は死ななきゃ治らねえらしいなぁ!」

司会「あ、あの、これ、ステージクッキングですよね?」

食通の友人「そうだぜ。今からこいつらを料理してやるさ」

司会「えーっと、それでは…料理!開始ィィ!」

司会は、金属のボウルをおたまで叩いて鳴らす。
料理のゴングが鳴った。

デブアライさん1「ごーろーじーでーやるのだー!」ドスンドスンドスン

デブアライさん2「た~~~あ~~~!」ドスンドスンドスン

2匹のアライさんが、包丁を持って食通の友人へ飛びかかってきた。

食通の友人「うお!逃げ場がねェ!」ダンッ

壁に背をつく食通の友人。

デブアライさん1「追い詰めたのだああああああ!」ドスンドスンドスン

デブアライさん2「串刺しにしてやるのだああああああああああああ!!!」ドスンドスンドスン

食通の友人「あーやばい!壁に追い詰めた!このまま真っ直ぐ突っ込まれたら刺されてしまうー!」

観客1「おい、やばいって!」ザワザワ

観客2「ショクエモンにげろー!」ザワザワ

食通の友人「あーやば…ところでお前ら、自分に首輪ついてんの覚えてるか?」

アライさん達の首には首輪がついている。
そこに繋がったロープは、先程から食通の友人が握ったままだ。

食通の友人「ライトオン」シュボッ

食通の友人は、ライターでロープへ火をつけ、手を離した。
すると即座にロープが燃えた。
火はロープの先から、アライさんの首もとへ向かって走っていく。

デブアライさん1「のぉぁ!?」ドスンドスンドスン

デブアライさん2「なんなのだこれ!?」ドスンドスンドスン

炎はアライさんの首輪を燃やす。

デブアライさん1「あああづいのだああ!」ボウウゥ

デブアライさん2「うぬぉぁあぁ!?」メラメラ

包丁を持ちドスドスと突撃していたアライさん達は、そりゃもう驚いた。
食通の友人はその一瞬をつき…

食通の友人「どうやらてめーらの湿気った復讐の炎より!」ドガァ

2匹の足下へスライディング・タックルをかました。

デブアライさん1「ぎゃああぁ!」ゴチーン

デブアライさん2「のぎゃああぁ!」ゴチーン

2匹はそのままの勢いのまま、頭から壁へ激突する。

食通の友人「オイルの炎の方が強いみたいだなぁ!」

金属の首輪に染み込んでいた油は少量だったせいか、すぐに火は消えた。

デブアライさん1「いだい!いだいのだあぁぁ!」ゴロンゴロン

デブアライさん2「あだまがあぁ!あしがあぁ!いだいのだああぁ!」ゴロンゴロン

食通の友人「おいおいどうした、その程度かぁ?」カチャッ カチャッ

食通の友人は、転がる2匹のアライさん達の首輪のロープを繋げた。
ロープは燃え尽きたわけではないようだ。

食通の友人「そんだけ大きく育ったんだ。もっと根性見せろや!」スチャ

そのロープへ、ステージの上から下りてきたフックを繋げる。

食通の友人「スタンドアァーーップ!!!」グルングルン

食通の友人がハンドルをグルグルと回すと、フックが上に上がっていく。

デブアライさん1「のああぁぁ!?」ガクン

デブアライさん2「ひ、ひっぱられるのああぁ!」グイイッ

フックはどんどん上がっていき、2匹の首輪を持ち上げていく。

デブアライさん1「た、たつのだ!」スクッ

デブアライさん2「んぐぐ…」スクッ

フックはどんどん上がり、2匹が爪先立ちしなくては首が絞まる高さへ上がった。

デブアライさん1「んぎぎぎぎ…!もう爪先立ちできないのだ…」プルプル ガクン

2匹のロープはフックの上で繋がっている。
デブアライさん1が爪先立ちをやめた瞬間、2匹の首は締まった。

デブアライさん2「ぐええええええ!!ぐるじいのだああぁ!」ブルブル

デブアライさん1「んぎいぃぃ!!」ブルブル

食通の友人「ヘイヘーイ、どうした?俺を刺さないのか?」クイクイ

食通の友人はハンドルから手を離し、デブアライさん1の前に立つ。

デブアライさん1「ご、ごろすのだあぁ!」ブンッ

食通の友人「はい回収」バシィ

食通の友人は、真っ直ぐにつきだされた手をはたき、包丁を叩き落とした。

デブアライさん1「のあああぁ!?」

食通の友人「重いだろ?その腹、軽くしてやるよ!」ドズゥ

デブアライさん1「ぐぶええぇ!?」

食通の友人は、デブアライさん1の腹へ包丁を突き刺した。

観客『Yeahhhhhhhh!!!』

食通の友人「ダイエットだァ!」ザグザグウゥ

食通の友人は、腹を真一文字に切り開く。

デブアライさん1「いぎびいぃぃいいぃいぃい!!!」ダラーッ

傷口から血液がだらっと垂れてくる。
しかし出血はそれほど多くない。
皮膚と皮下脂肪を切り裂いたからである。

食通の友人「おいおい、てめーはどうした?」チョイチョイ

デブアライさん2「だ、だず、げ…ゆる、じで…」ガクガク

デブアライさん2は既に包丁を床に落としていた。
首輪のロープがついた側を喉のほうへ回すことで、
首が後ろから吊られるようにし、なんとか気道が絞まるのを免れているようだ。

吊られているデブアライさん2の体勢は、上を見ながら大きく背中を仰け反らせ、両手で首輪を握りしめている状態である。

食通の友人「器用なやっちゃな…。そしてありがたいな。腹をそうやって突きだしてくれるなんて」キランッ

食通の友人「かっさばきやすくて、助かるぜ!」ザグザグウゥ

デブアライさん2「ぎびいいいっぃーーーーーー!!!」ブシュウゥゥ

食通の友人は、デブアライさん2の腹を縦に裂いていく。
皮膚、皮下脂肪、腹筋を切り裂いた。

デブアライさん2「ぐぎぃいぃぃぃぃ!!!」

食通の友人「それではご開帳オォォ!アライの解剖だあ!」グイイイッ

食通の友人が腹の裂け目を拡げると、アライさん2の内臓が露出した。

デブアライさん2「ぎひゃいぃぃぃぃぃぃ!だずげでええぇぇえ!」ビグンビグン

食通の友人「助けてだと?てめーさっき…」ムキイィ

食通の友人は袖をまくり、腕に力を込める。
彼の腕の筋肉はまるでプロレスラーのように太く、その腕力は常人の比ではないことが見て分かる。

食通の友人「俺を殺そうとしてたんだろうがァ!」ドゴォ

食通の友人は、デブアライさん2の腹の裂け目へ正拳突きを叩き込み、腸を打った。

デブアライさん2「ごびゃいいいいっ!!!」ビグンビグン

食通の友人「これが本当の腹パンだぜ」

食通の友人「そして…ムゥン!」ガシィ

食通の友人は、デブアライさん2の腹の中で、何かを掴む。

食通の友人「これが、今回のメイン食材だあァ!」メリメリ…

デブアライさん2「のぎゃあああああァァアアアアアアアアアアいぎゃいいぎゃいいだいいだいいだいいひっぱるのやめるのだああああああああああ!!!」

観客『おぉ…?』ザワザワ

食通の友人「ッらああぁ!!」グイイイッ

デブアライさん2「のだあぁっ!!」

食通の友人は、デブアライさん2の腹から、臓器を1つ引っ張っている。
脂肪がついてブヨブヨである。

食通の友人「さーて、食材を収穫するぜ」ピトッ

食通の友人は、臓器からデブアライさん2の腹へ伸びる様々な管へ、包丁の刃を当てる。

デブアライさん2「ぎひいぃっ!や、やべるのだ、ぎ、ぎらないでえぇ!!!」ジタバタ

デブアライさん1「ひぃ!に、にげるのだああぁ!」ダッ

自分のすぐ隣で、姉妹が腹を裂かれ、臓物を切り取られそうになっていることろを見たデブアライさん1。
逃げ出そうとして走り出すが…

姉妹の首には、ロープという絆が結ばれていた。

デブアライさん1は首輪に引っ張られる。

デブアライさん1「ぐびいぃぃ!?」ズデーン

走り出してこけたデブアライさん1に引っ張られ、デブアライさん2の首も絞まる。

デブアライさん2「ぐぶぇっ!」キュッ

食通の友人「な~あアライさんよォ、これまで2年も一緒に過ごしてきて、色々あったよなァ?」

デブアライさん2「ぎ…び…」ブルブル

食通の友人「飯食って、クソして、寝て。飯食って、クソして、寝て。飯食ってクソして寝て。…色々もなにも、それしかねえか!」

観客『ハハハハハッハ!』ゲラゲラ

食通の友人「これまでずーっと言い聞かせて来たよなぁ?最後にてめーに、復讐のチャンスをやるって。それを生きがいしにして、今日まで狂わずに生きてきたんだろォ?」ピトッ

包丁をトントンと臓器の管に当てる。

食通の友人「2年間一緒に過ごしてきた俺に、何か言うことねえかぁ?ああ?」ツー…

デブアライさん2「…も、もう、さからわないのだ、なんでもいうごどぎぐのだ、だがら、だずげで…」プルプル

食通の友人「安心しろ、殺さねえよ」

デブアライさん2「え」

食通の友人「肝臓を1個、貰うだけだああああああぁぁぁぁっ!!!」ザグザグブヂイィィィッ

デブアライさん2「いぎぎゃぁがぁあああーーーーーーーーーっ!!!」ブッシュウウウウゥウーーーッ

観客『ワアアアァーーーーーーーーッ!!!』パチパチパチパチパチパチ

デブアライさん1「ひ、ひぃぃいぃぃーーーっ!!!だ、だじ、だずげ!だずげるのだあぁーーーっ!」グイグイ

デブアライさん1は必死で首輪をはずそうとするが、外れる気配はない。
デブアライさんの裂かれた腹からはまだ血が垂れているが、徐々に止血されつつあるようだ。

デブアライさん2「ぎひーっ、いぁ、ああああああああ!あ゛ーーーーーっ!!」ブシュウゥゥドボドボ

肝臓を切除されて尚、即死には至らないデブアライさん2。

食通の友人「さーて、まだ1匹無事な奴が残ってますが!お待たせしました!この食材を使って、料理を始めたいと思います!」ブラーン

食通の友人「このブヨブヨの脂肪肝…これを使った料理です。何だか分かりますかね?」

デブアライさん2「がえじでぇぇ…あらいざんのないぞう、がえぜぇぇぇ…」ガクガクビグビグッ

食通の友人「そうだ、確か今日は、会場に来ていらっしゃいますよねー…。フランスからのお客様が!」

観客『オォオォオォ!?』ザワザワ

フランス大使「…いかにも。ここでしかと拝見しておりますよ~日本の若きシェフ殿」スッ

観客席で、外国人が流暢な日本語で答えた。

食通の友人「今日はわざわざお越し頂き誠に光栄です。しかし、なぜアラジビフェスにご興味を?」

フランス大使「えぇ、私の国フランスでは、かつてアライグマのジビエが作られ、貴族へ振る舞われておりました。最近はジビエブームが再燃焼しつつあり、アライグマも食べられております」

観客『オォー!』

食通の友人「ほほう、それはそれは。ところで、フランスの方は皆、ある祝日に決まって珍味を食べるとか…」

フランス大使「よくご存知ですねぇ。いかにも…」

フランス大使「その通り。我々は、ガチョウの脂肪肝…。フォアグラが、大変お気に入りでございます」

食通の友人は、既にフライパンをガスコンロの火で熱し始めていた。
サラダ油がバチバチと音を立てている。

食通の友人「それでは是非、お召し上がりください!アライさんジビエの最高峰!」スッ

食通の友人が、デブアライさん2の臓器をフライパンの上でぶら下げる。

デブアライさん2「がえずのらあぁ…あらいざんに、がえずのらああぁ…!」

食通の友人「本日のお品書き!『フォアグライ』でございます!」ボトッ

脂肪肝「」ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!

デブアライさん2から摘出した脂肪肝は、フライパンの上で焼かれた。

デブアライさん2「のだああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

つづく

食通の友人「おおっと、そうだ」スッ

食通の友人は、ちょっと焼けた脂肪肝をフライパンから出した。

デブアライさん2「ぁ…ァ…がえ…じで…」ハァハァ

デブアライさん2は肝動脈を切断されたことによる失血性ショックで、意識が朦朧としているようだ。
ほとばしるような大量出血。単体回復スキルがあろうとも、止まるものではない。

デブアライさん2「がえ…ずのだ…」ハァハァ

食通の友人「返してどうなるんだ?まさか一度切除した内臓が、中に戻せばくっつくと思ってねえよなぁ?」

デブアライさん2「いい…がら…がえ…じで…」ゴボッ

デブアライさん2は医学など知らない。取り出した内臓がまたくっつくのか、くっつかないのか。そんなことは知らない。
ただ、生き延びたいのだ。
生きて山に帰ることを諦めたくないの
だ。
理屈は知らねど、少しでも生きのびる可能性を手にするため、自分の内臓を取り返したいのである。

食通の友人「こんだけどでかい脂肪肝だ。丸焼きじゃ中まで火が通るまい」

デブアライさん2「もう…やいちゃ…だめ…なのだぁ…」ゼェハァ

食通の友人「だから…よく火が通るように!」ソッ

脂肪肝をまな板の上に乗せる。

食通の友人「カットしないとなあぁ!」ダンダンダンッ

そして、いい感じの厚みにスライスした。

デブアライさん2「ぅ゛ぁ゛あああああああーーーー!!!!!いやだあぁ!」

観客『Yeahhhhhhhh!!!』


そして、食通の友人は、調味料を加えながら、脂肪肝のスライスを焼いていく。

食通の友人「さーて完成だぜ!フォアグライのソテーだ!」

観客『オォー…!』

司会「なんと!部位は違えど、ショクエモンPもソテーを作ったアァァー!」

ブラウンP「ほぉ…」

食通の友人「どれ、てめーの肝臓、美味しく調理したぜ。試食してみるか?」グイッ

デブアライさん2「」グッタリ

食通の友人「おやぁ?反応がねーな。おーい!」ペシペシ

デブアライさん2「」ダラーン

デブアライさん1「ひ、ひっ…し、しまる゛っ…お、おろ、じでっ…ぜひゅ、ひゅっ…」ブルブル

食通の友人「…なんてこった。殺すつもりはなかったんだが…」

食通の友人「止血も無しに肝臓ブン取ったら、そりゃ死ぬよなああァァ!!」

観客『アハハハハハハハハ』

司会「もう一匹は調理しないんですか?」

デブアライさん1「だ…だず…げで…」プルプル

食通の友人「あー、それがさ。今回の大会は重量2400g制限があるだろ?元々は600g制限だったけど、4倍になったとかで」

食通の友人「今計ってみたら…これだけで2400gいってたわ」

司会「脂肪肝1個で2400g!?重いですねぇ!!」

食通の友人「焼いて水分がちょっち抜けたから、その前はもっと重かったことになるな」

食通の友人「あ、そうだ。このデブアライさん2、血抜き済みで脂身たっぷりです。料理に使いたい方はどうぞ」

料理人1「くれー!」

料理人2「ほしいー!」

観客『アハハハハハハハハ』

司会「それでは試食タイム、いってみましょう!…まずは、フランス大使様。いってみますか?」

フランス大使「ではお言葉に甘えて。ですが、ガチョウ以外の動物の脂肪肝は大してどれも美味しくないのが相場です」

フランス大使「誇りあるフォアグラの名をつけたからには、それ相応の味でなければ…ただの焼き脂肪肝にすぎないということ、お忘れなく」

食通の友人「御意に」

フランス大使「それではフォアグラの本番フランスで、数々の最上級レストランの至高のフォアグラ料理を食べ比べたこの私めが、品評をさせて頂きます」カツンカツン

フランス大使「それでは参ります…あむ…んぐんぐ…」モグモグ

フランス大使は、ソースの乗ったフォアグライソテーを口に運んだ。

フランス大使「…!!!こ、これは!!」

司会「いかがですか!?」

フランス大使「っ…!」ボロボロ

司会「な、泣いている!?」

フランス大使「ああ、神様…。ぐすっ…我が歴史ある偉大な祖国フランスの先人達よ…。この私を、今この場に巡り会わせて下さったことに、深く、深く感謝します」グスグス

司会「ど、どうしたんですか…?」

フランス大使「…歴史が、塗り代わりました」

司会「歴史…?」

フランス大使「世界中の一流レストランでフォアグラ料理を作っているシェフの方々に、この私が責任と覚悟を以て言いたい」

司会「…ど、どうぞ」

フランス大使「…今、ここにあるフォアグラ。いえ、フォアグライ。これこそが」

フランス大使「史上最高にして、世界最高…珠玉のフォアグラ、その頂点でございます」ペコリ

観客『オォオォオォォオーーーーーーー!!!?』パチパチパチパチパチパチ

司会「い、言ったからには取り消せませんよ!?今あなたは確かに、世界中のどのフォアグラよりも美味いと!言いましたね!?」

フランス大使「この親善大使、フラン・スゴ・ワッカラーヌの味覚と名誉にかけて、責任をもって保証しましょう」

食通の友人「そ…そこまでベタ褒め…!?いや家で試食した俺もヤバいとは思ってたけど…そこまで…!?」

司会「な、なんと…。どうしましょう?いきなりフォアグラ料理界の頂点に立ってしまいましたよ?ショクエモンP」

食通の友人「は、はは…参りましたね…」

フランス大使「しかぁし!慢心してはなりませんよショクエモンP様」

食通の友人「ぬ!?」

フランス大使「私が褒めているのは、あくまでも素材の味のみ…。このフォアグライソテーは、素材の味あってこその美味なのです」

フランス大使「あなた自身のフォアグラ料理の腕前は、可もなく不可もなく…といった程度!私が認めた世界最高のフォアグラ料理の座は、食材の助けあってこそのものッ!」

食通の友人「ぐ、ぐっわああああー!!?」ガクッ

司会「ショクエモンP!?」

フランス大使「精進なさい、ショクエモンP。フォアグライに頼らずとも、ガチョウで一人前のフォアグラを作れるようになりなさい。その時こそ、あなたは真にフォアグラ料理人として頂点に立てるのです」カツンカツン

食通の友人「は、ははぁーーッ!」ペコォ

観客『パチパチパチパチパチパチ…』

司会「え、えー、では!本番フランスの美食家からお墨付きを頂いたところで!試食タイム開始です!こちらへ列を作ってお並びください!」

観客達『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォオォォォォォォォ!!!!!!』ズドドドドドド

司会「な、なんと!一瞬にして長蛇の列が出来上がったァー!」

…そして…

観客1「う゛ま゛すぎる゛う゛ぅ゛ーーっ!!」モグモグ

…会場は…

観客2「ァアーー!!!こんなの!!試食コーナーで出ていい味じゃねえ!これひと欠片で万は出せるぜ!!!」

…歓喜の渦に包まれた…

初老の観客「ぬ゛ぅ!?な、なんじゃこれは…美味すぎるウゥ!人生でこんな美味いもの食ったことないわい!」モグモグ



司会「それでは投票結果、発表しましょう!勝利の女神は、どちらへ微笑むのか!?」

デブアライさん1「ゼェ…はぁ…どっちにも微笑まなくてもいいから、はやぐだずげるのだぁ!」ブルブル

食通の友人「黙ってろ!」ドゴォ

デブアライさん1「タコス!」ドシャ

ドラムロール「デドデドデドデドデドデドデドデド…」

司会「復讐のバトルを征し、フォアグライを披露したショクエモンPか!?」

ショクエモンP「勝ったな」フン

司会「はたまた、愛に包まれた関係から一転、地獄のソテーを生み出したブラウンPか!?」

ブラウンP「く…」

ドラムロール「デドデドデドデドデドデドデドデド…」


司会「判定はッ!」


シンバル「」ジャーン!


ショクエモンP「…」ゴクリ

ブラウンP「…」汗タラー

フランス大使「…」ニコリ

初老の観客「っ…」ヌヌゥ

続きはCMのあとです


司会「判定はッ!」


シンバル「」ジャーン!


ショクエモンP「…」ゴクリ

ブラウンP「…」汗タラー

フランス大使「…」ニコリ

初老の観客「っ…」ヌヌゥ


司会「勝者はッ!」

司会「ショクエモンPィィーーーーッ!!!!!」

観客『オオー!』パチパチパチパチパチパチ…

ブラウンP「っ…」

食通の友人「オッシャイ!」

司会「試食者からの得票数ですが…ブラウンPが70票!ショクエモンPが230票となっております!3倍近い圧勝です!」

ブラウンP「ば、ばかな…」ガクッ

食通の友人「やったぜ!サンキューお前ら!」

ブラウンP「…ふ、ふふ。私のショーは、どうやら受け入れられなかったようだね…。それに、料理の味も完敗だ…」プルプル

食通の友人「…」

ブラウンP「私もそれなりに仕込みはしてきたが…、君は2年も前から仕込みをしていた。…やはり素晴らしいよ、あなたは」

食通の友人「…ブラウンP…」

「待たれい!待たれぇーーーいっ!!」

観客『!?』ドヨッ

司会「…?」

初老の観客「この勝負!待たれいぃーッ!」ヅカヅカ

司会「おぉーっと!?物言いです!観客席から、勝負に物言いが入りました!?」

観客1「なんだてめーは!」

観客2「水を差すなー!」ブーブー

観客3「もう勝負はついたんだ!引っ込めー!」

初老の観客「お待ちくだされ…その判定、お待ちくだされ!!」

観客1「引っ込めジジィー!」ブーブー

食通の友人「あなたは、まさか…」

ブラウンP「ショクエモンP、彼を知っているのか?」

食通の友人「ああ。…司会のあんたも知ってるだろ?あの方を」

司会「…オホン!えー皆様、只今壇上に乱入してきましたのは、アラジビ中華料理人のパイオニアとして名高い、フェイロンPです!」

初老の観客「あ、オホン。ども、ご紹介にあずかりまして、フェイロンPです」ペコリ

観客2「フェイロンP!?あのフェイロンPか!」

観客3「顔は知らなかったが…」

司会「彼はアラジビ料理人である以前に、持ち前の中華料理の腕前が既に天下一品!5番ブースで彼が販売するアライ小籠包とアライ水餃子は絶品です!皆様、是非一度お試しください!」

観客『オォーーー!』パチパチパチパチ

食通の友人「ちゃっかり宣伝してやがる…やり手だな…」

観客『フェイロン!フェイロン!フェイロン!フェイロン!フェイロン!』

ブラウンP「な…い、いきなり掌を返したな…」

食通の友人「そりゃそうさ。彼は俺より上のアラジビシェフランカーだ」

ブラウンP「なに…!?」

食通の友人「彼は俺のような派手なパフォーマンスや小細工を必要としない。本物の料理人だ」

ブラウンP「なるほど…覚えておこう」

司会「そ…それで物言いとは?」

フェイロンP「ショクエモンP!確かにお主の料理は絶品じゃった。わしの中華料理でさえ、超えることはかなわぬかもしれん…」

食通の友人「そこまでベタ褒めされると不気味っすね」

フェイロンP「だが…。このイベントは、一体何ぞや?言ってみろ」

食通の友人「アラジビフェス。アライさんジビエ料理のフェスティバル。ですけど…」

フェイロンP「そうじゃ。お主のフォアグライ、確かにアライ料理としては素晴らしい…」

フェイロンP「じゃが、しかぁし!ハッキリと言わせてもらうッ!!」




フェイロンP「お主の料理は、アライ料理ではあってもッ!!!」


フェイロンP「断じてッ!!!『ジビエ料理』では、無ぅぁぁああーーーいッ!!!!!」

食通の友人「な、なにーーーーーッ!!??」

観客『!!?』ドヨッ

続きはあとで

観客1「いーじゃねーか!そんな細かいことくらい!」

観客2「揚げ足とりだー!嫉妬かフェイロン!?」

観客3「それの何が悪いんだよ!」ブーブー

フェイロンP「…よいか?そもそもアラジビ料理とは、経済破壊者であるアライさんを駆除する『ついで』に、資源として有効活用しよう、という試みなのじゃ」

フェイロンP「いわば、アライさんによってもたらされた経済損失の、『穴埋め』さえできればそれでいい…。そういうもんなのじゃ」

観客1「そうなのか?」

観客2「さぁ…」

フェイロンP「アライさんが絶滅するまでは死体を有効活用して経済損失を抑え、アライさんが絶滅したらハイお仕舞い。…と、アラジビ料理の終着点はそこなのじゃ」

フェイロンP「いわば、物好きどものB級グルメ。…そんな立ち位置で、好きなもの同士で身内っぽいノリでやるもんなのじゃ」

観客3「…?」ポカーン

ブラウンP「お言葉ですが…それが何故『物言い』に繋がるのですか?私は敗北しましたが、彼の料理は本当に素晴らしく、価値あるものですよ」

司会「大会規定では、『繁殖させたアライさんは禁止(というか違法)』とだけあります。2年も食事を与えたとはいえ、繁殖させてないなら違反ではありません」

フェイロンP「わからぬか!…ショクエモンPは、アライさんに…いいや!『デブアライさんの脂肪肝』へ!最高級食材としての価値を与えてしまったのじゃ!」

司会「…あの、それが何か?」

会場の客は皆、ポカーンとしている。

フェイロンP「わからぬか。あのフランス大使は、帰国したら嬉々としてフォアグライの美味を語るじゃろう」

フェイロンP「そして世界史の誰もが、やがて高級食材であるフォアグライを食いたがるじゃろう」

司会「…?アラジビ料理が評価されるのならば、良いことでは?」

フェイロンP「違う。需要があるのは、『赤ん坊の頃から肥やされたデブアライさん』だけじゃ。野良アライさんのジビエ料理の需要は伸びぬ」

ブラウンP「それだけアライさんの駆除が進むということでしょう」

フェイロンP「進まぬ。何故なら他国の者共は、アライさんの駆除を望まなくなるからじゃ」

ブラウンP「あ…」

フェイロンP「アライさんに、農作物の経済損失におつりがくるほどの価値がもたらされたとき…それでも尚、アライさんを絶滅させようとするならば」

フェイロンP「わしらの立場は逆転する。真の経済破壊者は、アライさんどもでなく、それを滅ぼそうとするわしらの方となる」

観客達『………』

司会「そんな突拍子もない…飛躍しすぎですよ」

観客1「でも、なんか…あのジィさんの言うこと、分かる気がするぞ!」ザワザワ

観客2「確かに…いや!ただ単に迫力に気圧されて、わかった気になっただけかも」

観客3「よくよく考えると、あのジィさんの言ってること、曖昧なことばっかで具体性がねーぞ!」ドヨドヨ

会場はどよめき立っている。
あちこちで議論だか何だかわからない話が始まった。

司会「で、ではどうしろというのですか?」

フェイロンP「この試合、勝者は無しじゃ。フォアグライは悪魔の魅力を持つ食材。この場で永遠に封印し、お蔵入りとするしかないのう」

フランス大使「そうはいきませんよ?これだけ素晴らしい食材が見つかったのです。世界中に発信せねばバチ当たりですなぁ」

フェイロンP「ぬぅ…!」

会場は大混乱。
もはや司会がどう仕切っても、収拾はつかないだろう。

食通の友人「どうすんだこれ…」

ブラウンP「…」

「お前達、頭を冷やすのです」

そこへ、何者かの声が聞こえた。

食通の友人「…?誰だ?」

「シンプルに、考えるのです」

声の主は、空から飛んでやってきた。

頭に生えた翼を羽ばたかせ、一人の少女がステージへ舞い降り、着地した。

観客達『…!?』

??「…少し落ち着くのです」

アライちゃん1「はなちてー!」ジタバタ

アライちゃん2「はなすのらー!」ジタバタ

空から来た少女は両手に1匹ずつ、アライちゃんを握っている。

フェイロンP「誰じゃお主…?フレンズ省の大臣に似ておるが、色が違うの。それに、あやつより落ち着きがある」

ブラウンP「…あなたは…。お久し振りですね」

食通の友人「…まさか…。『特定有害駆除対象フレンズ根絶委員会』の…『会長』…ですか…?」

会長「そうなのです。私は会長です。偉いのです」バッサバッサ

司会「か、会長…!」

フェイロンP「…そうか、あんたが…」

『特定有害駆除対象フレンズ撲滅委員会』。

それは、特定有害駆除対象フレンズ撲滅のための活動を考え、運用する組織である。

アラジビフェスも、この委員会により支援・運営されているのだ。

アライちゃん1「はなしてー!」ジタバタ

アライちゃん2「やなのだー!おかーしゃんのとこかえるのだー!」ジタバタ

フェイロンP「な、なんじゃ…?わしの言うことに、間違いがあるか…?」

会長「大有りなのです」スッ

そう言うと会長は、フェイロンPに右手に握るアライちゃん1を見せる。

会長「アライさんの肉は、美味しいのです」ギュウ

アライちゃん1「ぐ、ぐるじいのら!」ジタバタ

会長「森にいくらでもいて、効率化すればたくさん捕まるのです」アーン

会長は大口を空ける。

会長「あぐっ」ガブゥ

アライちゃん1「ぐびっ…!」ブシュウゥウ

観客『!?』ドヨッ

なんと、会長と名乗ったその少女は。
魚肉ソーセージでも頬張るかのように、アライちゃん1を丸かじりにした。

流れ落ちる血で、口が汚れ、服が汚れ、手が汚れ、床が汚れる。

会長は、美味しそうにアライちゃん1の肉を咀嚼している。

アライちゃん2「ひ、ひいいいぃぃぃっ!だ、だじゅげでぇーーーっ!」ジタバタジタバタ

目の前で、姉妹が丸かじりにされたのだ。
暴れないわけがない。

ブラウンP「うっ…わっ………」

食通の友人「ヤベぇ…」

フェイロンP「!?!?な、な…う、嘘じゃろ…?」

会長「うん、美味なのです」サクサク

アライちゃん1「」ビグビグッビグビグッバタババタッガグガグビッグッ

観客1「ひ、ひえええええええっ!!」

観客2「うわああああっ!く、食った!丸かじりにしたッ!!」

会長「何がおかしいのですか?んむんむ…お前達も食ってるのです、同じなのです。あぐっ」ガブブチィ

会長は、アライちゃん1の肉を強靭な顎で噛み千切り、咀嚼し、飲み込む。
口のまわりは血で染まっており、まるで映画のヴァンパイアか…、サバンナで獲物を狩る猛獣だ。

会長「うん。とても美味なのです」ゴクン

食通の友人「…よ、よく、丸かじりなんてできますね…」ゴクリ

会長「主食なのです」

食通の友人「しゅ、主食ゥ!?」

会長「1日3アライなのです」

食通の友人がアラジビ料理を振る舞うのは、常日頃からのことではない。
ハンターが仕留めたときに告知する程度である。
自身が食する機会は、新メニュー考案の時や、たまに食いたくなった時くらいだ。

間違っても主食になど、したりはしない。

フェイロンP「ひ、ひ…」ブルブル

会長「そんなに調理のための創意工夫が悪いなら…」ズイッ

アライちゃん2「ぴぃっ!?」

片手に握るアライちゃん2を突き出す。

会長「あなたも丸かじり、するといいのです」ズイイッ

アライちゃん2「ひ、ひぃぃ…お、おねがい…た、たべないで…ほじいのだ…ぐすっ…」シクシク

フェイロンP「ひ、ひいっぃぃぃいいーーーーっ!!!うわああぁーーーーーっ!!!!!」

完全にビビっているフェイロンP。

会長「美味しい肉を、美味しく料理することは、いいことなのです」

会長「だからどんどん捕まえて、どんどん殺して、どんどん食べる。それを楽しみ、盛り上げる。ただ、それだけなのです」

会長「そこに理念とか、小難しい理屈はいらないのです」

フェイロンP「し、しかし…、アライさんが絶滅したら…膨れ上がったビジネスは崩壊するんじゃぞ………」ブルブル

会長「そもそも今のままじゃ農業が崩壊するのです。滅ぼした後の心配は滅ぼした後でするのです」

会長「まだ何かあるのですか?」

食通の友人「……」

誰も、何も、言い返せなかった。

あまりにも、考えがブッ飛びすぎていて。
それでいてピュアであり、スマートな結論である。

会長のことを知らない者であっても、会場の誰もが瞬時に理解した。

ステージで花形となったブラウンPも、ショクエモンPも、所詮は仕事人にすぎないのだと。

彼女…会長こそが、この国のアラジビ食の親玉。
すべてのアラジビの流れを作り、支配する『王』なのだと。

彼女の動機は極めてシンプルであった。
『美味しいからたくさん食べたい。』
『だからたくさん捕まえる。』
『滅んでも別にいい。だって害獣だから』

会長は、姿はヒトのようであっても。
思考は完全に肉食獣そのものなのである。

彼女は、はなからアライさんを滅ぼすために食っているのではない。

アライさんを食うことそれ自体が目的であり。
滅ぶまで乱獲した後のことを考えていない。
ただそれだけの食欲が動機なのである。

会長「皆さん、アラジビは美味しいですか?」

観客『……』シーン

どう答えていいか分からなかった。

会長「美味しいアラジビを食べたいですか?」

観客1「た…食べたい!」

観客2「食べたいぞ!」

観客3「おーいしー!」

会長「では、アライさんをたくさん捕まえて、美味しく食べるのです。我々は、それを心から応援し、後押しするのです」

会長「…では、さらばなのですあーん、がぶっ」ガブウゥ

アライちゃん2「ぐびっ」ブシュウウゥウ

会長はアライちゃん2を丸かじりにすると、飛び去っていった。

フェイロンP「…」ゼェハァ

食通の友人「…キチガイだ。俺みたいなファッションキチとは違う。ありゃマジモンだ」

ブラウンP「彼女…あんなだったかな…?いやいや…昔はあんなじゃなかったはずだが…」ウーム

司会「…というわけで、し、仕切り直し!」

司会「勝者はショクエモンPーッ!皆様、盛大な拍手をーーーッ!」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

観客『ショックエモン!ショックエモン!ショックエモン!』

司会「そして素晴らしいステージクッキングを披露してくれた、ブラウンPにも拍手をお願いします!」

観客『ブラウン!ブラウン!ブラウン!!』パチパチパチパチ

観客1「俺はあんたの方が好きだぞーッ!」パチパチパチパチ

観客2「ショーではあんたが勝ってたぞーッ!」パチパチパチパチ

観客3「いつかまたリベンジしてくれーッ!」パチパチパチパチ





先程の混沌とした雰囲気とは一変。
会場は、温かい拍手に包まれた。





デブアライさん1「だからそんなことしてないで!アライさんをたすけるのだーーッ!!!」ジタバタ



メインイベントのステージクッキングは終了。
20:30の閉会まで、客達はあちこちでアラジビ料理を楽しんでいた。

5番ブースでは、長蛇の列ができており、水餃子や小籠包がたくさん売れていた。
隣のブースでは、デブアライさん1と2が仲良くアライトロ焼肉となっていた。
勿論、デブアライさん1の肝臓は食通の友人が自分のブースへ持っていった。


夜も賑わう屋台の傍らで。
ステージの上にぶちまけられた血と肉片を、清掃員が片付けていた。

清掃員「…」サッサッ

客「…彼女、随分手際いいですね」

スタッフ「ああ。彼女は凄いぞ、血の跡も、孤独死した老人の死体も、なんだって綺麗に清掃しちまうんだ」

客「へぇ~…」

スタッフ「なんでも、ジャパリスタジオっていうフレンズの芸能事務所のスタッフなんだとか。いつもはペパプライブの前後で清掃をやってるらしい」

客「ああ、そういえば…。オープニングで出てましたね」

スタッフ「まあ、清掃員を眺めるより、アライさん料理でも眺めてはいかがですか?」

スタッフが5番ブースの隣を指差す。

デブアライさん1「あが…ぁっ…」ブラン

シャークP「ヒャッハー!そーうら、またその腹の脂肪を削ぎ取って!焼いてやるぜえぇ!」ザグザグ

客達「Yeahhhhhhhh!!」



~後日、ブラウンPの家~

ブラウンP「…私の負け、か」

ブラウンP「独創性を加えてみたとはいえ、虐殺ライブキッチン自体がショクエモンPの二番煎じだからな…」

ブラウンP「料理好きの素人が、踏み込む世界じゃなかったかな…」

ジャパリパーレェー♪

ブラウンPの携帯電話へ、SNSのメッセージ受信の音声が流れる。

食通の友人『よう、お疲れ様』

ブラウンP「やあ、ショクエモンP。…どうしたんだい?」

食通の友人『どうしてるかなって思ってさ』

ブラウンP「…あれから本職の漫画の方の筆が進まないよ。なぜ3倍近くも、君に差をつけられたんだどうな…」

食通の友人『…』

ブラウンP「なぜと言っても仕方ない。私のライブキッチンの方が劣っていたと、そういうことなんだろう」

食通の友人『それはどうかな?動画サイトを見てみろ。アラジビフェス2017 夏大会でぐぐれ』

ブラウンP「…?」カタカタ

ブラウンP「な…!こ、これは…?」

食通の友人と、ブラウンPのライブキッチンが、別々に動画に上がっていたが。
その再生数の差は歴然。

ブラウンPの動画の再生数は、食通の友人の100倍程もあった。

ブラウンP「この差は…いったい?」

ブラウンP「投票ではあんなに差があったのに…!」

食通の友人『理由は単純だ。1つは、料理の味の差。だが実は、重要なのはそこじゃない』

食通の友人『あんたのライブキッチンはホラーとしては満点だ。だが、客はホラーを求めてはいない』

ブラウンP「なに…」

食通の友人『英雄症候群って言葉、知ってるかい?』

ブラウンP「…ああ、知っている。人は自身の価値を見失いかけた時、他者を見下し虐げることで、相対的に自身の価値を高く見ようとする。『下には下がいる』ってことだね」

ブラウンP「ただ、善人を虐げるのは価値ある者のやることじゃない。だから、虐げやすく見下しやすい『ワルモノ』を探し、攻撃する。…その心理が、英雄症候群だ」

食通の友人『そう。そして、俺のライブキッチンが求めるのは、それだ』

食通の友人『アライさんという分かりやすいワルモノを登場させ、それをみんなの応援で見下し、虐げる。いわば、俺がやってるのはヒーローショーだ』

ブラウンP「…悪を倒す正義のヒーロー、ショクエモンPの勧善懲悪ストーリーってことか…」

食通の友人『ステージを観ることで、観客達はワルモノ退治の当事者になれる。観ている皆がショクエモンになれる。だから一体感と、スカッとする気持ちがあるんだ』

ブラウンP「…それじゃあ、私のは?」

食通の友人『あんたのは、一見無害化された…見方によっては愛らしくもある子供達を、最も残酷な形で苦しめ、傷つけ、殺した。倫理観に反した、本物の殺戮ショーだ』

食通の友人『どちらかというと、感覚は動物虐待やスナッフに近いな。そして観客達は、その場に立ち会うことで、否応なく当事者となった』

食通の友人『観客達の多くは、そこに胸糞悪さを感じたんだろう。正義にはなりたくとも、悪にはなりたくない。あんたほど真のサディストじゃあない、ニワカ達だってことさ』

ブラウンP「…だが、この再生数は、どういうことだろうか?」

食通の友人『単純な話だ。画面の向こうで起こってることだから。視聴者が、当事者じゃないからさ』

ブラウンP「…」

食通の友人『ステージを見守る観客達は当事者だが、画面越しに見る視聴者達は部外者。そこで俺らのショーは、見方が180°変わる』

食通の友人『動画の視聴者は当事者になれない。だから俺の勧善懲悪ショーは、"どっかの誰か達がワルモノをやっつけてるだけ"の、つまらん茶番劇に変わるのさ』

ブラウンP「…私のは?」

食通の友人『よく言うだろ?人の不幸は蜜の味ってさ。人は、どっかの誰かさん…自分と無関係な人間の不幸を見ることで、スリルと快感を味わう。あんたのそれは、あまりにも鮮烈で、美しすぎた』

食通の友人『あんたのライブキッチンは、動画になることで、"作品"として完成されたのさ』

ブラウンP「…作品。これが、作品か…」

食通の友人『これからもよろしく頼むぜ?善きライバルよ』

ブラウンP「ああ。…はは、久しぶりに、私もホラー漫画じゃなく、勧善懲悪のヒーロー漫画でも描いてみようかな…」

食通の友人『どんな漫画だ?』

ブラウンP「世界を滅ぼそうとするアライさん達を、捕まえてその場で料理する。正義のブッチャー、ショクエモン仮面…ってのはどうだい?」

食通の友人『結局ホラー漫画じゃねえか!!!』



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報告書3
~フレンズの胚~

フレンズ(アニマルガール)の卵は、母体の使用済みサンドスターを含有する物体である。
受ける精細胞が、それが人間のものであるならば、
卵は分裂し、生育し、人間の胎児へと成長するだろう。
実際の例として、アニマルガールが出産した子供は人間としての側面にカバーされる。
では使用済みサンドスターはどこへ行くのか?
母親の胎盤に再吸収されたか。あるいは、子供の体内に蓄積されるか。道は2分岐である。
では動物と交配した場合はどうか。
検証の結果、フレンズの胚は擬似サンドスターとしての役目を果たし、
精細胞を胎内でフレンズ化させた。
アライグマのアニマルガールは、生後1週間で誰に教わらずとも人語を話し、2年で母親と同じ姿へ成長した。
その寿命はヒトと同じく50~80年と予想される。
アニマルガールを元の動物と会わせることは、バイオハザードを引き起こす要因となり得るだろう。
くれぐれも害ある動物の原種とアニマルガールを近寄らせてはいけない。
例えアニマルガールを排除することになったとしても。

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つづく



後日、食通の友人のブログには問い合わせが殺到した。
ほとんどが『フォアグライ食べさせてください!』という旨のものであった。

普段アラジビ料理を店に出す際は、あらかじめブログで告知をするのだが…
連日客が殺到し、フォアグライがあるかを聞いてくるのだ。

食通の友人も、さすがに参った。
…というのも、地下にはまだ2匹のデブアライさんがいるのだ。

それらをいつ料理すべきか?
…食通の友人は、決めあぐねていた。

そんな中…

電話「プルルルルルル」

食通の友人「はい、こちらジビエ料理店食獲者です」ガチャ

??『ど~ぅもショクエモンP、ご無沙汰しております。私です、フランス大使のフランです』

食通の友人「ああ、ども」

フランス大使『要件…は、おおむね予想がついていますかね?』

食通の友人「…フォアグライが食いたいってとこすか?」

フランス大使『ご明察。僭越ながら私、料理の品評にはブルジョワの方々から多大な信頼を得ておりまして』

フランス『祖国フランスでブルジョワの方々に話したら、大層ご興味を持たれましてねぇ。いくら金を出してでも食べたい…という方々が大勢いるのです』

食通の友人「…それで?」

フランス大使『取らぬ狸の皮算用…いえ、この場合はアライグマ算用ですかな?ともかく、大変勝手ではありますが。もしもフォアグライを食べれるとしたら、いくら出すか?…という、いわば優先権オークションをさせて頂きました』

食通の友人「…なんて勝手な!」

フランス大使『…実際、どれくらい残ってるんです?』

食通の友人「…2匹分だ。1匹につき2400gと期待すると、計4800g。それで全部だ」

フランス大使『4800gですか』

食通の友人「…話は終わりか?」

フランス大使『またまたご冗談を。そのフォアグライ、プラチナより高い価格で買いたがっている客が大勢おります』

フランス大使『ショクエモンP様も、最も高く売れる相手を探していたのではありませんかね?』

食通の友人「…もて余していたってのは本当だ」

フランス大使『ならば、私こそが、この世界で最も高く売れる相手をご紹介できますよ?』

食通の友人「…もし売るとしたら、いくらで買い取るつもりだ?」

フランス大使『4800gでしたら…。そうですね…』







フランス大使『…2000万はくだらないでしょう』




食通の友人「ハアアァァァァァアァ!!!!??いやいやいやいやいや!!!!!!!!!」

食通の友人「ウソでしょ、冷静になれよお前ら!こんなクソ害獣どもの脂肪肝だぞ!!!もっと金の使い道考えろよ!!!」

フランス大使『いえいえ。これでもまだまだ、入札は締め切っておりませんよ?ご返答がいただけていませんからねぇ』

フランス大使『もしもOKの2文字を返していただければ、その倍額になるでしょうねぇ』

食通の友人「…まてまて、冷静になれって。フォアグラって別に、そこまで高い食材でもないだろ?」

食通の友人「1人200gで計算しても、24人分…。1皿あたり90万円は出すことになるぞ?正気かてめぇ!」

フランス大使『世の中のあらゆる美食にすら飽きたブルジョワ達は、新たな味覚を望んでいるのですよ。そのためなら、この程度の支出は彼らにとって痛くも痒くもないでしょう』

食通の友人「金銭感覚がブッ飛んでやがる…」

フランス大使『どうなさいますか?ショクエモンP』

食通の友人「…断ったら?」

フランス大使『我々は、また2年待つことになりますね』

食通の友人「…子アライを捕まえて、俺の真似して肥やすってことか」

フランス大使『既にフランスではビジネスが動き始めていますよ。日本のアライさん駆除業者へ交渉し、子供のアライさんを集めてフォアグライ大量生産する計画も立っています』

食通の友人「…」

フランス大使『ただし、それまで待てないという方はごまんとおります。是非とも、あなたの産み出した美食を全世界に届けて頂きたいぞ存じますがね』

食通の友人「……それだけか?」

フランス大使『それだけですよ?まあ…申し訳ないが、私聞いてしまいましたがね。あなたの地下に、まだ2匹いると』

食通の友人「…………」

フランス大使『別にそれを秘匿する義務は私にはありません』

食通の友人「………………」

食通の友人「あんたら、あれか…いわゆる、権力者…ってやつか?」

フランス大使『明かせませんねぇ顧客の情報は』

フランス大使『ですが、たかだか200gのフォアグラ料理一皿に、100万円もポンと出せるような方々が、社会を動かす力を持たないはずがない…というのは気付いていらっしゃることでしょう?』

食通の友人「…まあな」

フランス大使『この話、断るメリットはあなたに無いでしょう?』

食通の友人「…なあ、冷静になれよ」

食通の友人「フォアグライはな…アライさんの…フレンズの肝臓なんだぞ!?」

食通の友人「フレンズだぞ!分かってるだろ、フレンズは人間の少女の姿をしてるんだ!!」

食通の友人「あんたらはそれを分かってるのか!?俺が言うのもなんだが、抵抗はないのかよ!!」

フランス大使『では、逆に言いますが…。あなた方は、たかがヒトの形をした動物の肝臓ごときが、世界の富豪美食家の食欲を遮るとでも?』

食通の友人「!!?」

フランス大使『言いたいことはわかりますよ。カニバリズムに抵抗があるのではないか、というご質問でしょう?』

食通の友人「…ああ」

フランス大使『抵抗があったら、何故に100万円近い金を出して食べようとするのでしょうか?』

食通の友人「…今更議論しても遅いってか?」

フランス大使『…彼らはそれが極上の美味であり、世界に4800gしかないと分かれば、ヒトでさえ食うかもしれませんねぇ』

食通の友人「…」

フランス大使『…』

食通の友人「…狂ってるよ、そいつら」

フランス大使『ショクエモンP様にそう仰って頂けることは、何よりもの名誉でありましょうな』

食通の友人「………」

フランス大使『どうします?』

食通の友人「…明日まで待てるか?」

フランス大使『明日までなら』

食通の友人「…明日のこの時間、またかけてくれ」

フランス大使『いいお返事を期待しておりますよ。互いにwin-winのいい取引をしようじゃありませんか』

食通の友人「…では、失礼」ガチャ

食通の友人「…誰に相談すりゃいいかな…」

食通の友人「………」ピピポパピポ

食通の友人「…もしもし、会長。俺だ、ショクエモンPだ」

会長『何ですか?まさかフォアグライがまだ残っているのですか?』

食通の友人「…」

会長『食わすのです私に。残ってるフォアグライ全部。全部です。今から車で行きま…』

食通の友人「」プツッ ツー ツー ツー

食通の友人「…真っ先に相談すべき相手が、一番相談相手にならなかった…」

食通の友人「…」ピピポパピポ

食通の友人「もしもし、俺だ。ショクエモンPだ」

大臣『ショクエモンPですか。えらいことになったのです』

食通の友人「どうした」

大臣『あちこちから、去勢してないアライさんを買い取らせろ、輸出制限を解除しろ、養殖を許可しろとせわしなく要求がくるのです』

食通の友人「うわぁ…どうするんだ?」

大臣『もちろん全てお断りです。奴らは交尾してから2ヶ月で子を2~3匹産み、2年で成体に育ち、そのまま40年も生きて子を産み続けるバケモノです』

大臣『この島国の中に留まっているやつらが世界中に拡散し、どこの誰とも知らぬ輩が大陸の森に逃がしたら、人類は終わりなのです』

食通の友人「さすが、分かってるな。それで…かくかくしかじか」

大臣『なるほどなのです。お前はどうしたいのですか?』

食通の友人「…分からねえ…」

大臣『では、お前は特許を取るのです』

食通の友人「特許?フォアグライのか」

大臣『そうなのです。もはやフォアグライが世界に広まるのは時間の問題。そうなれば、もはや歯止めが効かなくなるのです』

大臣『そうなる前に、お前がフォアグライの特許を取り、法人化するのです。そうすれば制御が効きます』

食通の友人「だけど…もう特許なんてどっかの誰かが申請しちまってんじゃねえか?俺はもう出遅れたかもしれない」

大臣『そのために、お前は地下の2匹のデブどもを交渉のカードに使うのです』

食通の友人「…!」

大臣『フランス大使は言ったのですね?ブルジョワ達が駆除業者と交渉し、フォアグライ大量生産を計画していると』

食通の友人「ああ」

大臣『その交渉してる奴らは、ほぼ間違いなく、お前からフォアグライを買いたいと言ってるブルジョワどもなのです』

大臣『奴らからすれば、フォアグライ生産業者なんて、誰でもいいのです。それっぽい実績があり、金で動く奴であれば誰でもいいのです』

食通の友人「そうかもな…」

大臣『ただし、海外にアライさんを持ち出せない以上、特許は日本国内で取るしかない。つまり、ブルジョワどもは交渉相手の日本企業に、特許を取らせるはずなのです』

食通の友人「…だったらどうしろっていうんだ…」

大臣『だからこそ、お前が持つデブアライさんどもが、ブルジョワ達への最強の交渉カードとなり得るのです』

大臣『お前はデブアライさんを、たかが2000万円のあぶく銭を稼ぐためじゃなく、もっと有益な交渉に使うのです』

大臣『お前はやつらに、こう要求するのです』

大臣『フォアグライを食わせてやる代わりに、フォアグライ生産の特許を誰よりも優先して俺に寄越せ、と』

大臣『全世界のフォアグライ生産の権利を、全てこれから俺が作る会社に独占させろと。そう言うのです』

食通の友人「会社…?」

大臣『そうなのです。お前は会社を起こし、すべてのフォアグライ生産を管理する責任者となるのです。実際の仕事は他の奴に任せてもいいですが、お前のハンコ無しにそれができないようにするのです』

食通の友人「随分思いきったこと言いますね…」

大臣『じゃあ、どこの誰かとも知らない怪しい業者に特許を譲ってもいいのですか?奴らがお前と同じく、キチンとアライさんを滅ぼしてくれると信用できるのですか?』

食通の友人「駄目だな。金に目がくらみ、密流通させたりしかねない」

大臣『…覚悟を決めるのです、ショクエモンP。お前はパンドラの箱を開けてしまった責任があるのです』

大臣『唯一手元に残った希望を手離したら、もはや絶望を封じ込める術は無くなるのです』

食通の友人「…ありがとうな、大臣。それでいくよ」

大臣『ショクエモンP…お前は、なぜフォアグライを作ったのですか?』

ショクエモンP「あー、ライブキッチンのための一発ネタだよ。美味いかどうかなんてちっとも考えてなかったね」

ショクエモンP「あのクソガイジゴキバエどもを、ひたすら食わせまくって太らせる拷問したら面白そうだなって。ただ、それだけだ」

ショクエモンP「アライさんの脂肪肝なんて、別にクソまずくても、それはそれで良かった。いつもの残虐ショーの一発ネタにして…それで終わりで良かったんだ」

大臣『…そんなバカなことを思い付くお前が、偶然産み出してしまった悪魔の食材…』

大臣『…悪魔に呑まれてはいけないのです、ショクエモンP』

ショクエモンP「ああ。俺が生み出したフォアグライは、アライさんどもを滅ぼすと同時に、俺が終わらせる。…そrが、俺のけじめです」

大臣『…フォアグライを作り出したのが、お前でよかったのです』



食通の友人「さて、明日を待つか。交渉の日を…」

ドア「」ドンドンドン

食通の友人「ん?はーい、誰だ?」ガチャ

アライさん1「お宝をよこすのだ!」ドドドドドド
アライさん2「天下を取るのだ!」ドドドドドド
アライさん3「ここにお宝があるって聞いたのだ!」ドドドドドド
アライさん4「なのだー!」ドドドドドド

食通の友人「ぶべら!」ドゴァ

なんということだろうか。
ドアを開けた瞬間、大量のアライさんが店に雪崩れ込んできた。

食通の友人「な、なんだこいつら!?一体なぜ…どこから!」

アライさん5「ここにお宝があるって聞いたのだ!」ゾロゾロ

アライさん6「探すのだ!ふはははっはは!」ドンガラガッチャン

アライさん7「うまそうな匂いがいっぱいするのだ!きっとお宝は食べ物なのだ!」ガサゴソ

アライさん8「ちび達が喜ぶのだー!」ガチャガチャ

食通の友人「やめろ!ああ食器を壊すなてめぇら!やめろ!」ガシッ

食通の友人は包丁を握る。

アライさん9「ここがお宝の家なのか?」ゾロゾロ

アライさん10「戸籍を取りに行った奴等には出遅れたけど、こっちのお宝があるのだ!」ズカズカ

アライさん11「見付けたのだ!干されたニンジンなのだ!美味しそうなのだ!ふはははは!」ガジガジ

食通の友人「てめえ!俺の朝鮮人参を食うんじゃねえ!」

食通の友人「くたばれクソガイジ!」ザグッ

アライさん12「いだいのだあぁあ!」ブシュウウゥウ

アライさん13「な!あいつ、武器を持ってるのだ!」

アライさん1「こっちも武器を探して戦うのだ!」ガサゴソ

アライさん2「ふはははは!刀があったのだ!かっこいいのだ!」キラン

食通の友人「それは、俺の出刃包丁…!」

アライさん3「すごいのだ!それはきっといにしえの名刀か、呪われし妖刀なのだ!もってかえって使うのだ!」

食通の友人「13匹か…骨が折れそうだ…が、やるしかねえ!」ダッ

アライさん3「刃物持ってるのだ!逃げるのだ!」ササーッ

食通の友人「隠れても無駄だ!」バッ

アライさん4「たあ~」ドガッ

食通の友人「いでっ!」

アライさん4は、食通の友人の後頭部をフライパンで殴った。

食通の友人「てめぇブッ殺す!だらぁ!」ドゴォ

アライさん4「ガードするのだぁ!」カキィン

フライパン「」ベゴン

食通の友人が放った正拳突きは、フライパンにガードされた。
あわれフライパンの底は拳の鋳型をとったかのように凹んでしまった。

食通の友人「くっ…そのフライパンお気に入りだったのに…」

食通の友人は、刃物を持ってアライさん達を牽制している。

いい時間稼ぎだ。
おかげでエアチャージが完了した。

見せてやるぜ、この新兵器の威力をな。

俺は店の外から小窓へ身を乗り出し、アライさんの群れ目掛けて発砲した。

アライさん1「ごぎゃああぁ!」ブシュゥ

アライさん2「のだあぁ!?」ブシュゥ

アライさん3「がびいぃ!!」ブシュウウゥウ

アライさん4「いぎゃいぃぃ!」ブシャアァ

アライさん5「あろぇっ」グチャアァ

食通の友人「!?」

アライさん6「な…なんなのだお前ら、なんで怪我してるのだ!?」アセアセ

俺は窓の下へ身を隠す。…効果てきめんだ。
いいな、この新兵器は。仕事が捗って最高だ。

12連射式エアライフル。
クッソ高かったが、それでも元が取れる活躍だ。
俺は弾と空気をチャージしながら、別の小窓の下へ移動する。

アライさん6「な、何なのだ!?」

アライさん7「あっちの窓からシュパシュパって音がしたのだ…!」アセアセ

アライさん8「何か飛んできたのか!?危ないのだ、近づいちゃまずいのだ」テクテク

俺がさっきまでいた小窓を警戒しているようだ。
だが、こっちの方向からは狙いやすいな。

俺は小窓の外から、アライさん達向かって12連射を放った。

アライさん6「ぎびぃっ!?」グシャアァ

アライさん7「あぐえぇぇっ!?」ドブシャ

アライさん8「な、なんぎゃあぁああ!!」ドシャアァ

食通の友人「これは、空気銃…まさか、ハンターか!?」

この雑魚どもは陽動だ!狙われてるのは地下室のブツだ!
警察には通報しといた、お前は地下へ行け!

食通の友人「わ…わかった!」タタッ



~地下室~

不審者1「きっとここだぞ…扉は、鍵かかってるな」コンコン

不審者2「丸ノコで切ってやる!」ブイイイィィイン

扉は鍵を建ちきられてしまった。

不審者1「開けるぞ!」ガチャ

デブアライさん4「…う………」

デブアライさん5「ヒト…なのだ…」

不審者1「うわぁ、こんなに太らされて、可哀想に…大丈夫かい?」

不審者2「こっちに車があるから、来て!僕らは君たちを助けにきたんだ!」グイグイ

デブアライさん4「たす…け…?」

不審者2人とデブアライさん4&5は、地下室を出ようとしている。
地上への階段を上ろうとしていた。

デブアライさん4「ぜぇ…はぁ…もう、はしれないのだ…」ヨタヨタ

デブアライさん5「やすませて…ほしいのだ…」モタモタ

不審者1「あとちょっとだぞ!頑張れ!急げ!」

デブアライさん4「休憩するのだ…」ノソリ

デブアライさん5「もう走れないのだ…」ズシリ

デブアライさん姉妹は、その場に座り込んでしまった。

不審者2「座っちゃダメだ!走ってってば!」グイグイ

すると、階段の上から…

食通の友人「ハーーーローーーーゲーーーーーーン!!!!!」ドゴォ

唐突に、食通の友人が飛んできて、ダブルラリアットをキメた。

不審者1「ぐげぇーッ!」ドサァ

不審者2「ぐえっ!」ドゴォ

不審者1「」ピクピク

不審者2「」ピクピク

食通の友人「やべぇ…思わずアライさんをブッ倒す感覚で殴っちまった。大丈夫かな?」

食通の友人「とりあえず縛っておくか…」



やがて警察がやってきた。
不審者2名は連行され、店内を通りすぎていく。

警官「オラとっとと歩きなさい!」

不審者1「うぅ……」

不審者2「なぜ僕達が捕まる側なんだ…捕まえるべきは、アライさん達を殺すショクエモンじゃないのか!?」

警官「不法侵入に窃盗未遂!こんだけやらかしてなにいってんですか」

アライさん1の死骸「」ドクドク

アライさん2の死骸「」グチャグチャ

不審者1「うっ…あぁ…酷い…!見てよおまわりさん!アライさんが殺されてる!」

不審者2「酷すぎる…このアライさん達とは、友達になれたのに!心を通わせられたのに!おまわりさん!これは殺人だよ!」

警官「うるせえ!パトカーに乗れ!」

ピーポーピーポー…

食通の友人「…助かったぜ、ハンター」

ああ…
お前がフェスやたら儲けたっていう、フォアグライだな。

あれを狙ってくる強盗がいるかもしれねえと、踏んでいたんだ。
まさか、アライさんを囮にするなんて予想してなかったけどな。

食通の友人「そういう割にはエアライフル持ってんだな。すげーなそれ、セミオートか?」

ああ。
強盗相手に、丸腰じゃ話にならんだろ。
さすがに人に向けて撃つのはまずいが、殺されるよりマシだ。

食通の友人「…お前、いつから潜んでた?仕事は大丈夫なのか?」

心配すんな。

…にしても、あのコソドロ、何者だろうな。

食通の友人「ああ、あいつらはただのアラ信だろうが…、それでも、俺の家に直接突撃してくるようなバカは初めて見た」

アラ信ってのは、よく知らんが…
アライさん達を陽動に使えるような連中なのか?

食通の友人「知らねえ…が、可能性はあるな。奴ら、森でアライさん達に餌をやってるって話だぜ。仲良くなるためなのか、単に愛でてるだけなのか」

クソが。
害獣も害獣だが、それを愛でる奴らも頭がおかしいぞ。

食通の友人「ただ…どうもおかしい。アラ信は口がでかいだけで行動が伴わない連中ばっかだったはずだ」

行動が伴われてたまるか。

食通の友人「少なくとも、こんな過激なことをしでかすのは稀だったんだが……」

…何かに支援され、指示されてるのかもしれねえな。
今回の犯行も、『何者か』が計画し、奴等に指示したのかも。

食通の友人「デブアライさん姉妹を奪うためにか…」

あれを交渉に使うなら、さっさとやれよ。
なるべく早くな。

食通の友人「ああ…わかった」

…翌日…

食通の友人「…以上が俺からの要求だ。どうだ?」

フランス大使『……誰に相談したのです?』

食通の友人「誰でもいいだろ。どうすんだよ」

フランス大使『…あなたは、いい知り合いを持ちましたね。交渉条件の追加とあらば、ひとまず持ち帰って検討します。1時間後にかけ直しま…え?必要ない?OK?…えーと、その交渉条件でよい、とのことです』

食通の友人「マジか…ほんとに通っちまった」

フランス大使『すみません、ちょっとお電話を替わります』

食通の友人「え」

中年女性の声『ボンジュール、ムッシュー・ショクエモン!あなたって最高だわ!』

食通の友人「む…?」

中年女性の声『あなたのこと、動画でばかり追いかけてたけど。こうやって直接電話できるなんて夢みたい!キャー!』

食通の友人「…はは、どうも」

中年女性の声『ただのショー役者だと思ってたけど、そんなステキなアイディアを持ちかけてくれるなんて、あなたって本当に最高だワ!』

食通の友人「そんなにステキですか…?」

中年女性の声『ええ。だって、あなたがフォアグライを牛耳るってことは…』




中年女性の声『これからいつでも、貴方のライブキッチンを見せてくれるってことでしょ?』



食通の友人「…は、はい?」

中年女性の声『正直、これまで考えていたアイデアじゃつまらなかったワ。アライさん達を、ただのフォアグライ材料にしちゃうなんテ』

中年女性の声『でもそれじゃつまらない。アライさん達には、肝臓以外にもたーっぷり魅力が詰まってるワ!絶望の悲鳴も、恐怖に染まる顔も、とってもチャーミング!』

中年女性の声『アナタもそう思って、あのコ達をできるだけたくさん苦しめて、絶望する顔を見ながら殺すために、フォアグライの管理者になるんでショ?』

食通の友人「…」

中年女性の声『ああステキ!そうよ、アライさん達へ死の恐怖を与えるタナトスであるアナタこそが、フォアグライの支配者に相応しい!キャーステキ!』

食通の友人「…」

中年女性の声『何にせよ、頑張ってネ。今後も気持ちいいライブキッチン動画の配信よろしクン♪』

食通の友人「…ど、どうも」

中年女性の声『それじゃあネ!アビヤント♪』

食通の友人「…」

フランス大使『…』

食通の友人「…」

フランス大使『…なにとぞ、彼女の期待に応えて差し上げてくださいますようお願いします』

食通の友人「…善処するよ」

そして、電話は切れた。
これで正式に、食通の友人はフォアグライ加工会社の経営を始めることになったのだ。

つい先程まで、フォアグライに似た何かの特許が、いくつもの日本企業から出願中であったらしい。

しかし電話の後しばらくすると、それら全ての出願が取り下げられたという。

~地下室~

デブアライさん4「うぅ…結局また、ここに戻されたのだ…」

デブアライさん5「いいヒト達が助けに来てくれたのに…。正義のヒーロー達はやられてしまったのだ…」

デブアライさん4「この世には神も仏もいないのか…」

食通の友人「ちーっす」ガラッ

デブアライさん4「うぅっ……」

デブアライさん5「ま、また、アライさん達に無理矢理ごはんを食べさせにきたのか…?」

食通の友人「いいや、もうそんな事しないさ。ただ、ちょっとお腹を軽くしてやろうと思ってさ」

デブアライさん4「お腹を軽く…?」ブヨン

デブアライさん5「痩せられるのか?」ブヨン

食通の友人「ああそうだ。脂肪を落とすんだよ」

デブアライさん4「苦しくなぐなるのが?」

食通の友人「ああ。この世のあらゆる苦しみから解放されるぜ」

デブアライさん5「ほんとうか、はやくやるのだ!」

食通の友人「ああ、やってやるぜ。…ん?こりゃ何だ?」チラッ

食通の友人は、扉の側に転がる道具を見た。

デブアライさん4「ああ、それは正義のヒーローがアライさん達を助けるために、ドアを壊してくれた動画なのだ」

食通の友人「へえ、そうか。これで鍵を壊しやがったのか。それじゃあ………」

食通の友人「この丸ノコ、使っちゃおうかなああぁ」ブイイイィィイン

デブアライさん4「…?」

デブアライさん5「何に使うのだ?」ブヨンブヨン

食通の友人「知りたいかい?秘密だとしても…どうしても?」ブイイイィィイン

デブアライさん4「教えるのだ!」

食通の友人「それじゃあ!腹を割って!話そうかああああァァアーーーーーッ!!」ブイイイィィインブグシャアアアアア

デブアライさん4「うぎびいいぃぃいぃぃぃぃぃっ!!!!?」ブッシュウウウウゥゥ

デブアライさん5「ひいぃ!?」ビクゥ



デブアライさん4の脂肪肝「」ブルン

デブアライさん5の脂肪肝「」ブヨン

デブアライさん4「あっ…ご…えええぇ…」ブッッシュウウウゥ

デブアライさん5「が…がええぇ…ぜええぇぇ…」ドクドク

食通の友人「こいつを冷凍して配送すりゃいいわけだな」

食通の友人「…にしても」

食通の友人「わかってたが。欲しいのは脂肪肝だけか。料理は向こうのベテランフォアグラ料理人にやらせるのか…」

食通の友人「…なんかちょっと、くやしい」

デブアライさん4「うぅぅ………」ドボドボ

デブアライさん5「ぎびぃいぃ……」ブシュゥー…

こうして、食通の友人は多額のカネを得た。
だが、そのカネは豪遊するために使うものではない。
フォアグライ加工会社を設立するための運用資金に使うのだ。

…もっとも、食通の友人は料理店の経営はともかく、会社の経営のことなどあまり興味がない。
料理人やってた方が楽しいので、経営は信頼できる人物へ任せておき、彼自身は権利書を持ってハンコ押すだけの役に就いたのであった。

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報告書6
~フレンズのレベル~

アニマルガールにはレベルという概念的な数値が備わっていると仮説を立てる。
これにより、殺した生き物の数や強さに応じて、サンドスター励起の出力が向上していく仕組みを説明するアプローチが増える。
では、殺す対象は生き物でなくてはいけないのか?
我々は、アライグマのフレンズへ小物資運搬用人工細胞械を4機ほど破壊させてみた。
人工細胞械が形象崩壊する度に、単体回復スキル向上とサンドスター霊光子放射の振幅上昇が確認された。
このことから、生物あるいは自らへ害をなす機械等を破壊することで、レベルが向上しているものと考えられる。
ではなぜ破壊がレベル向上に繋がるのか?まだ解明はできていない。
まだ仮説段階だが、破壊は輝きを奪う行為とみることができる。
輝きを奪うことで成長するのは、人工細胞械と同様の性質だが、プロセスに大きな差があるため憶測をもとに結びつけることは難しい。

本稿は個体のレベル上昇の性質のみ取り扱う。
繁殖に伴うレベル継承実験の成果は別文献にて報告する。

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つづく



フォアグライのパテントを独占した食通の友人は、会議へ出席していた。
当然、フランスの株主達も出席している。

食通の友人「俺がやったことをそのまま同じようにやるなら、出荷は2年後になります」

株主1「遅すぎるな…もっと早くならないかね?」

株主2「本番のガチョウのフォアグラは、子供ではなく成体になってから、2週間の強制餌付けを経て完成します」

株主3「アライさんの成体を使ったフォアグライ生産はできないだろうか?」

食通の友人「可能だと思いますが…サンプルを作ってみないと、味の方はどうとも言えませんね」

株主1「やってみる価値はあるか。成体のアライさんへ、強制餌付けを続けてみよう」

程なくして、仮設加工場へ成体のアライさんと、アライちゃんが数匹届いた。
どれも籠へ入れられている。

アライさん1「この箱から出すのだぁ!アライさんは、畑でおいしいゴハンを食べるとこだったのだぁ!」ガシャンガシャン

アライさん2「お腹すいたのだ!さっさと出すのだぁ!」ガシャンガシャン

アライちゃん1「おかーしゃーん!」ビエエエエン

アライちゃん2「おながしゅいだのだー!」ビエエエエン

株主2「…これがアライさんですか。一応姿は写真や動画で知ってはいたが、こうして実際に見ると人間と変わらないですね」

食通の友人「はい。ただ、アライちゃんのような姿は人間ではあり得ませんね。赤ん坊でなく、少女を頭ごと小さくしたような…動くミニチュア人形のような姿だ。こいつらは、成長すると頭蓋骨ごと大きくなります」

株主3「頭も大きくなるのか…」

株主1「結構かわいらしい顔してるじゃあないか。この子達を食うだなんて、よくそんなことができるもんだな」

食通の友人「実際抵抗ある人は多いですよ。俺らはマイノリティ側です」

アライさん1「おいこら!人間たち!アライさんを閉じ込めてどうするつもりなのだ!」ガシャンガシャン

アライさん2「食い物よこすのだ!アライさんも腹へったけど、森でちび達がもっと腹すかして待ってるのだぁ!」ガシャンガシャン

アライちゃん1「おなかしゅいたのらー!」

アライちゃん2「おまんまー!」

株主1「しかし、保健所に問い合わせたが、子供アライちゃんの捕獲数は成体アライさんの20分の1以下のようだな」

食通の友人「そっすね。畑や人里に出向くアライさんはほとんどが成体ですから。子供は森の中でも巣に隠れることが多いですね」

株主2「一日に与える餌の数を増やしてはどうだろうか?君がやったときは、つきっきりという訳じゃなかったんだろう?」

食通の友人「はい。強制給餌(ガバージュ)の機械なんて無かったですからね」

株主3「そうだな…この国の法律では、アライさん無しで存続できない事業は禁止なのだろう?日本のフォアグラ生産場から、強制給餌機などの施設を間借りさせてもらおう」

食通の友人「間借りってどのくらい?」

株主3「9割」

食通の友人「実質ほぼ買収っすね」

アライさん1「こらー無視するなぁ!アライさんを無視するなぁ!」ガシャンガシャン

アライさん2「今すぐ食べ物をよこして、この箱から出すのだぁ!」ガシャンガシャン

食通の友人「…」

食通の友人「…どうします?こいつらの言うこと…聞いてやりますか?」

株主1「そうだな…善は急げだ。有り合わせのものを使っていいから、まずはサンプルを作ろう。量産設備はその後で決めればいい」

株主2「育成法によって味にばらつきが出るかもしれない。サンプルの試食会にも、我がフランスの友人をお招きしてみよう」

食通の友人「わかりました。じゃあ…おい、アライさん達。良かったな、その籠から出して、食い物をたくさんやるぞ」

アライさん1「やっと聞いてくれたのだ」

アライさん2「さっさとするのだ!」

アライちゃん1「ごはんなのらー!」キャッキャッ

アライちゃん2「たのしみなのらー!」ワクワク



食通の友人「ヒャッハーーーー!これが強制給餌機だァーーーーッ!!!!お望み通り、たらふく食いやがれェーーーーーッ!!!」ブシュウウゥウ

アライさん1「ごぼぉおーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!」

食通の友人は、アライさん1の食道へ筒を突っ込み、ポンプで送られるペースト状の餌を流し込む。
アライさん1は手足を固定されており、まさに食事と排泄しかできない状態だ。

食通の友人「おら食えやァーーーーッ!」ブシュウウゥウ

アライさん2「もご!おごごもごもごお!」ジタバタ

食通の友人「たくさん食べて大きくなろう!」ドシュウウゥ

アライちゃん1「ぎびいぃいいーーーーーーっ!!!!!」

アライちゃん2「ぐるひぃのりゃあああーーーーーっ!!」

…2週間後…

デブアライちゃん1「ぐ…ぎ…ぐるひぃ…のぁ………」ピクピク

デブアライちゃん2「ひん…ぎゃう…のぁ…」ピクピク

研究者1「500g近い脂肪肝が形成されてますが、内臓を圧迫していますね。今のペースだと、4日もすれば死ぬでしょう」

研究者2「子供には負担が大きすぎるようです」

デブアライさん1「う…ぷっ…」ブヨンブヨン

デブアライさん2「もう…はべひゃふないのだ…」ブヨンブヨン

研究者1「こっちも…脂肪肝サイズは1kgはありますね」

食通の友人「さすがにガチョウより時間がかかりますね」

株主2「2週間後あたり、試食できそうですね」

デブアライさん1「だ…だずげ…で…」ゼェハァ

デブアライさん2「うぷっ!おええええっ!!」ゲボゲボ

食通の友人「吐くんじゃねえゴラァ!てめぇらのゲロや糞の始末するのも楽じゃねーんだぞ!」ドゴォ

デブアライさん2「うげぇ!ぜひー、ぜひー…おねがいなのだ、もう森に帰してほしいのだぁ!」ゼェハァ

デブアライさん1「なんでアライさん達をいじめるのだぁ!」ハァハァ

食通の友人「うるせぇ!強制給餌開始ィ!」ズボォ

デブアライさん1「もごぉごぉーーーっ!」

デブアライちゃん1「うぎ…ひ…」ピクピク

デブアライちゃん2「ぅ…ぅ…」ピクピク

食通の友人「こっちはどうします?」

研究者1「…正直なところ、ここまで脂肪肝が発達しては、手の施しようがありません」

食通の友人「じゃあ、これはこれでもう食っちゃっていいか」

株主2「1匹、試食に出してみましょう」

食通の友人「良かったなちび、もう無理矢理食わされることはないぞ」ヒョイ

デブアライちゃん1「ひぃ…ひぃ…よがったのだ…」ゼェハァ

デブアライちゃん1の体は、吐いた餌や排泄物で汚れ、悪臭を放っている。
一応、尻の下には水洗式の排水溝があり、排泄された糞尿を流せるようにはなっているが、
それでも量が量なだけに、尻の回りが汚れている。

株主1「…ヒトの姿をしたフレンズが、こんな尊厳もへったくれもない姿になるとはなぁ…」

…調理場…

食通の友人「…」ザァー

デブアライちゃん1「はぁはぁ、きれーにあらってもらって、きもちいいのだあぁ」ジャバジャバ

食通の友人「…試食品の料理は、俺がやっていいんすか?」

株主1「ああ。君に任せる」

食通の友人「俺のフォアグラ料理の腕は、可もなく不可もないらしいですけど」

株主2「構いませんよ。むしろ上手すぎたら、食材の味を正統に評価できないでしょう?」

食通の友人「…なるほど、逆に適任ってわけか」

株主3「そう卑屈になりなさんな、ショクエモンP」

食通の友人「さて、洗浄完了」

デブアライちゃん1「ぴかぴかなのらー…。うぅ…お腹がくるしいのら………」ゼェハァ

食通の友人「じゃあ、いっちょ捌きますよ」ソッ

デブアライちゃん1が、まな板の上に仰向けで寝せられる。

デブアライちゃん1「ああ~…こうやって、おててとあんよをのばしてゆっくりねるの、ひさびさなのだ…」ウットリ

デブアライちゃん1は、リラックスしているようだ。

デブアライちゃん1「…こうしてると、おかーしゃんとのはらでおひるねしてたの…おもいだしゅのら…」ウトウト

食通の友人「そうか」

デブアライちゃん1「おかーしゃんに…あいたい…のら…むにゃ…」ウトウト

デブアライちゃん1「すぴー…すぴー…」zzz

食通の友人「えぇ…(困惑)」

なんと、デブアライちゃん1は、こんな状況だというのに、すやすやと寝息を立てて眠ってしまった。

デブアライちゃん1「ふごごごご…ふごごごご…」zzz

寝息は不自然であり、脂肪肝が肺を圧迫していることが音を聞くだけで分かる。

食通の友人は、包丁をデブアライちゃん1の腹へ押し当てて…

デブアライちゃん1「すぴー…すぴー…」zzz

…突き刺さず、離した。

株主1「…おや、殺さないのかね?」

食通の友人「いやぁ…別にこれ、虐殺ライブキッチンじゃないんでしょう?肝臓といえど、血抜きした方が絶対おいしくなりますよ」

株主2「では、それでお願いしよう」

食通の友人「承知」ガシッ グイッ

デブアライちゃん1「すぴー…すぴー…」ブラン

食通の友人は、デブアライちゃん1を逆さ吊りにして持ち上げる。

そして足を縛り、フックへ引っかけた。

デブアライちゃん1「ふごー…ふごー…」zzz

そして、デブアライちゃん1の右の首筋に包丁を突き付け…

食通の友人「フンッ!」ドズゥ

デブアライちゃん1「びっ!!!」ビグゥ

奥まで深く突き刺した。

デブアライちゃん1「ぎびいいぃぃいぃっ!ぎぃーーっ!」ブシュウウゥウドボドボ

逆さ吊りにされて頭部へ血圧を集中させられ、頸動脈を切断されたデブアライちゃん1。
身体中の血液が、首の傷口から一気に噴出する。

デブアライちゃん1「いぎゃぃいぃいーーーーっ!ぎぃぃーーっ!びいぃぃーーーーーっ!!!」ジタバタ

株主1「まさに地獄の光景だな…」

株主2「ハハハハハハ!!素晴らしいよショクエモンP!」パチパチ

株主3「ライブキッチンではないと言っていたが、なかなか楽しい見せ物だ!」パチパチ

株主達は、デブアライちゃん1が血抜きされ、苦痛に絶叫する姿を見て楽しんでいる。

食通の友人「…」

デブアライちゃん1「な…の…あぁ…」ピクピク

デブアライちゃん1「…の…だぁ…」ガクッ

デブアライちゃん1「」ブラン

株主2&3「オォーッ」パチパチパチパチ

株主1「まるで屠畜場の豚のようだな」

食通の友人「…まあ、楽しんでるようで何より」



そして完成した、フォアグライソテー。

株主1「ふむ…素晴らしい。見た目はいいな」

株主2「ああ…。君がフランスへ配送してくれたフォアグライは、現地の料理人に調理させたが、絶品だったよ」

株主3「私は運がいい。あれからたった2~3週間で、再びフォアグライを食べることができるのだから」

株主1「はむっ…」

株主2「んぐんぐ…」モグモグ

株主3「…」モグモグ

食通の友人(…今更だが、こいつらもアラジビ食に抵抗ないんだな…)

食通の友人「俺も食うか」モグモグ

株主1「…ふむ。美味いな。悪くない」モグモグ

株主2「ああ。さっぱり気味だが、柔らかくて食べやすい」モグモグ

株主3「ガチョウとはまた違った美味さがあるな。うん…まあ、売れるんじゃないか?」

食通の友人「…でもやっぱ、薄味ですね。フォアグラとしては及第点でも、フォアグライとしてはまだまだですかね」

株主3「ふむ…」

食通の友人「どうしますかね?」

株主1「君のフォアグライには遠いが…『ベビーフォアグライ』という別製品にして売ったらどうだろうか?」

株主2「うむ。名案だ」

株主3「それでいこう」

こうして、捕獲した子供のアライちゃんへ2週間の強制給餌を行って作る『ベビーフォアグライ』の量産計画がスタートした。

量産は下請け会社に担当させ、食通の友人と株主たちは商品開発を続けた。

ただし、量産計画は頓挫することになった。

食通の友人「寄越せるアライちゃんが足りない!?」

保健所職員「はい。大人の方ならたくさんいるんですが、子供は基本森の巣穴で親を待ってるだけですからね~…。生きてるものは大人の20分の1程しか来ないんですよ」

食通の友人「なんてこった…まあ、当然っちゃ当然か…安定した量産は無理だな」

食通の友人「それじゃあ、大人のアライさんを使ったフォアグライも試食してみるか」

…大人アライさんフォアグライの試食会…

デブアライさん1「」ピクピク

食通の友人「…」モグモグ

株主1「…」モグモグ

株主2「…まあ、なかなか美味だな」モグモグ

株主3「ああ。だが、これは…フォアグラというより…」モグモグ



食通の友人&株主1&2&3「レバーだ!」



株主1「これはフォアグラじゃなくて…脂っこい…レバーだ!」モグモグ

株主2「大人になってから急速に肥やすと、こうなるのか…」モグモグ

株主3「美味ではあるが、新しい会社を興してまで売る程かは微妙だ。手詰まりか…?」モグモグ

株主1「参ったな…。子供のアライちゃんでは、味に深みやコクが足りず…」

株主2「大人のアライさんだと、肝臓がかたくなってレバーになる」

株主3「両極端だな…。やはり、本家フォアグラのように2~4週間で生産するのは無理なのか…?」

研究者1「あの、それじゃあ、こんなのはどうでしょう?」ガチャ

アライしゃん「だすのだ!ここからだすのだぁ!」ジタバタ

食通の友人「お…」

株主1「これは…」

アライしゃん「お、おねがいなのだ、ヒトしゃん、おやさいをわけてほしいのだ。おかーしゃんがかえってこなくて、このままじゃいもーとたちがうえじにしてしまうのだ…!」

株主2「…子供と大人の中間か。それならば…」

アライしゃん「いちばんおーきいおねーしゃんのあらいしゃんが、たべものをもってかえらないと…いもーとたちのききなのだぁ!」

株主3「…子供の味と、大人の味の中間になりそうだな…」

アライしゃん「はやくだすのだ!あらいしゃんはこんなところにいるわけにはいかないのだ!はやくはたけにいってたべものをもってかえらないといけないのだぁ!」ガシャンガシャン

食通の友人「…これくらいの奴って、保健所にいます?」

保健所職員「以前はあまりいませんでしたが、アラジビ食が活性化し、駆除・捕獲されるアライさんの数が多くなってからは増えましたね。まあ、アライちゃんよりは多いです」

アライしゃん「おとなりのすは、ははおやがかえってこなくて、こどもたちがみんなしんじゃったのだ…あらいさんのいもーとを、おなじめにあわせるわけにはいかないのだぁ!」ガシャンガシャン

食通の友人「…これベースでやってみましょうか?」

アライしゃん「こら!むしするな!あらいしゃんのおはなしをきくのだ!あらいしゃんがかわいそうなのだぁ!」ガシャガシャ

株主1「…やってみよう」

…強制給餌場…

食通の友人「さて、どうなるか」グイッ

アライしゃん「こ、ここは…?なんなのだ、おそとじゃないのか?」

食通の友人「はい手足固定!」ガチャ

アライしゃん「な!なにするのだぁ!」ジタバタ

食通の友人「なあ、腹減ってるか?」

アライしゃん「おなかぺこぺこなのだ!あらいしゃんだけじゃなく、いもーとたちもみんなぺこぺこなのだ!」

食通の友人「そうかいそうかい、はい強制給餌パイプ挿入!」ズボオォ

アライしゃん「ぐむむぐぅ!?」

食通の友人は、パイプを喉の奥へ突っ込み、食通の奥、胃の中まで挿入した。

食通の友人「機作動ォォォオォ!」ゴウンゴウン

アライしゃん「むぐうぅぐむむもももごもごも!!?」

アライしゃんの胃袋へ、パイプから強制的にペースト餌を流し込む。

アライしゃんの腹はパンパンになった。

食通の友人「はーい停止」ズボオォ

アライしゃん「んぐっ…げっほごほ!がはーっ、がはーっ…」ヒィヒィ

アライしゃん「こ、ここでのゴハンの食べ方は、こんなにくるしいのか?おまえたちもこんなたべかたしてるのか」ゼェハァ

アライしゃん「ゴハンありがとうなのだ…でも、おやさいやにわとりを、ふつうにたべたほうが、くるしくないのだ…おまえたちも、ふつうにたべたほうがいいのだ」ハァハァ

アライしゃん「そ、それに、たべすぎでくるしいのだぁ…うぷっ…」

食通の友人「じゃ、後は研究員の人に任せますか」スタスタ

株主1「はい」スタスタ

アライしゃん「ま、まつのだ!あらいしゃんだけがおなかいっぱいになってもいみないのだ!いもーとたちのききなのだぁ!」ガシャガシャ

食通の友人「…妹?どこにいるんだ」

アライしゃん「は、はなしてくれたら、すまであんないするのだ。だからたべものもってきてほしいのだぁ」ハァハァ

食通の友人「…どうします?」

株主1「いいじゃないか。不足していたアライしゃんが手に入るのならば」

~森~

それで、このチビの妹を捕ま…オホン、連れにきたってわけか。

食通の友人「そうだ。な?」

アライしゃん「そうなのだ。このヒトしゃんは、アライしゃんにゴハンをくれたのた。すっっっっっごくくるしかったけども、それがこのヒトたちのゴハンのたべかたなのだ。きっとわるぎはないのだ」

そうなのか?

食通の友人「いや、まあ、ハハハ…」

アライしゃん「ヒトにすあなをおしえるのはこわいのだ。だけど、このヒトはきっといいやつなのだ。アライしゃんとともだちになれるのだ。なかよくなれるのだ」

へぇ~、そりゃあすごい。

アライしゃん「そうなのだ、ヒトにもいいやつがいるって、アライしゃんしってのるのだ!おかーしゃんはもりのなかで、ヒトしゃんにゴハンをもらったことあるっていってたのだ!」

…餌付け?アラ信の仕業か?

食通の友人「だろうな」

佐助「フゥーッフゥーッ…」フゥフゥ

佐助が、目の前を歩くアライしゃんに今にも飛びかかりそうになっている。
…よしよし、利口な犬だ。よーしいいぞ、よく我慢できている。
頼むからそのままお利口さんなままでいてくれよ、佐助。

しかし、よく巣穴まで案内してくれるもんだな。

食通の友人「まあな。ホラ、見ろこの大荷物。こんだけのものをアライしゃん一人に運ばせらんないだろ」

食通の友人「ここか」

アライしゃん「ここなのだ」

木に穴が空いている。

食通の友人「ほれ、腹すかしてんだろ。食わせてやれ。揚げパンだ」スッ

アライしゃん「かんしゃするのだ。おーい、いもうとたち!やさしいヒトしゃんがゴハンをもってきてくれたのだ!」パチパチ

アライしゃんが木に空いた穴の前で手を叩く。

アライちゃん1「なのだー!」ヨジヨジ

アライちゃん2「おねーしゃんなのだー」ヨジヨジ

アライちゃん3「おかーしゃんがかえってきたのだー」ヨジヨジ

アライちゃん4「ひぐっ…ぐすっ…いもーとが…いもーとがあぁ…!」ヨジヨジ

アライちゃん5「おなかぺこぺこなのだー」ヨジヨジ

アライちゃん6「おまんまー」ヨジヨジ

アライちゃんがぞろぞろと、巣穴から出て、木を下りてくる。

アライしゃん「なんなのだ?なんでないてるのだ?」

アライちゃん3「おかーしゃん、ちっちゃいいもうとふたりが…」グスグス

アライしゃん「おかーしゃんじゃなくおねーしゃんだっていつもいってるのだ!なにかあったのか?」

アライちゃん4「うぅ…」

アライしゃん「まさか…」ヨジヨジ

アライしゃんが、巣穴の中を覗く。

アライしゃん「…」ヨジヨジ

乳児アライちゃん1の死骸「」グッタリ

乳児アライちゃん2の死骸「」グッタリ

アライしゃん「おかーしゃん…やっぱりかえってきてなかったのか…うぅっ」グスグス

アライちゃん3「おかーしゃんがはやくきておっぱいあげてたらしななかったのだぁ!」

アライしゃん「だからアライしゃんはおねーしゃんなのだぁ!」

どうやら乳児が2匹くたばったらしい。

アライしゃん「うぅ…可哀想なのだ…遠くに埋めてあげるのだ…」ノソノソ

乳児の死骸を2匹持ち、向こうに行くアライしゃん。

アライちゃん1「なのだー」ヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー」ヨチヨチ

アライちゃん3「ぐすぐす…」ヨチヨチ

そして、その後を四足歩行で追うアライちゃん達。

アライさん達が死骸を埋めるのはなぜか?
ヒトのように、死者を哀しみ悼むからであろうか。

アライしゃん「うめおわったのだ」トテトテ

アライちゃん1「もうくしゃくないのだー」ヨチヨチ

アライちゃん2「すがきれいになったのだー」ヨチヨチ

アライちゃん3「きっとてんごくにいくのだー」ヨチヨチ

違う。
理由の一つは巣の衛生のため。

もう一つは、死骸を巣の近くに放置すると、野生の獣がそのにおいを嗅ぎ付け、巣の位置が知られてしまうからだ。

結局は己の身を守るためにすぎず、死んだ後は綺麗さっぱり忘れてしまう。

悲しんでいるように見えるのは、自分が同じ目にあうのを想像して怖がっているためだ。

こいつらに母や子の死を悼むことはあるが、姉妹の死を本当の意味で悼むことは決してない。

なぜなら姉妹であれど将来は食糧を奪い合う競争相手となるからである。

食通の友人「さ、腹減ったろ。この中に餌がある。食え」ガラッ

食通の友人は、揚げパンを差し出す。

アライちゃん1「おいしそうなのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「ほしいのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「ひさびさのごはんなのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん4「ありがとなのらー!ひとしゃんいいひとなのらー!しゅきしゅきなのらー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん5「おまんまー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん6「なのぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん達が、這い這いで食通の友人のほうへ向かってくる。
そうとう腹が減っていたのだろう。すごい勢いだ。

佐助「フゥーッフゥーッフゥーッフゥーッフゥーッフゥーッフゥーッフゥーッ」ブルブルブルブル

こらえろ!こらえろよ佐助!
獲物を捕らえたい気持ち(…でいいんだよな?)は分かるが、
ここでこいつらの首を飛ばしたら、食通の友人のクビが飛ぶんだぞ!
耐えろ佐助!

アライちゃん1「うまいのだぁ!」モグモグ
アライちゃん2「おいしーのだ!でもおかーしゃんがまえひとからもらったごはんのほうがおいしかったのだ!」モグモグ

アライちゃん3「おいしいのだあああ!」モグモグ

アライちゃん5「まんまおいひぃ!」モグモグ

アライちゃん6「もぐもぐ」モグモグ

アライちゃん4「ひとしゃんはいいひとなのら!しゅきしゅきなのら!」スリスリ

アライちゃん4が、食通の友人の手を抱きしめ、頬擦りしている。

食通の友人「う…」

アライちゃん4「もっとごはんほしいのだー!」手ペロペロ

アライちゃん4が、食通の友人の手を舐めた。

食通の友人「ッッッッッッッ…!」ブルブル





佐助「ガウウウウゥウゥウゥゥウウウゥゥウ!!!!!」ハグゥ

アライちゃん4「のだああぁっ!?」ドサァ


佐助が飛び出し、アライちゃん4をくわえた。
くっ…我慢できなかったか…!?


佐助「グアウゥゥ!」ポイッ

アライちゃん4「のだっ!」ガシャン

佐助は、くわえたアライちゃん4を傷付けないように、籠へ入れた。

アライちゃん1「な…!」

アライちゃん2「けものなのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「こあいのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん5「のぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

佐助「ガウ!」ハグゥ

アライちゃん6「のあぁっ!」ジタバタ

続いて、アライちゃん6の首を加えると…

佐助「ガウウゥ!バウ!」ブンッ

アライちゃん6「のだあぁーーっ!」ヒューッ スポッ

そのまま籠の入口へ向かって投げ飛ばした。
ナイスシュート。まるでロベカルだ。

アライしゃん「ひ、ヒトしゃん!ヒトしゃんのけものが、アライしゃんのいもーとをいじめてるのだぁ!とめてほしいのだぁ!」グイグイ

アライしゃんが、俺の手をグイグイと引っ張ってくる。
あ゛あ゛!?止めろだと!?
てめぇの息の根でも止めてやろうか!?
俺は右手でアライしゃんの首根っこをガシリと握り、グイグイと締め上げる。

アライしゃん「ぐぎいぃぃ!くるひぃのらあぁ!」ジタバタ

首を掴んだまま、片手でアライしゃんを持ち上げる。

アライしゃん「うっ…くひっ…」ジタバタ

そして、籠の中へ落として叩きつけた。
籠の底がガシャンと音を鳴らす。

アライしゃん「のぎゃああっ!!」

アライちゃん4「ぐびっ!!」ムギュウゥ

おっと…先程食通の友人の手を舐めた害獣が、叩きつけたアライしゃんの下敷きになった。

まあ別にいいや。そもそもの狙いはアライしゃんなのだから。

アライしゃん「!?げほっ、ごほっ、な、なにしゅるのら、ごほっ!なんであらいしゃんをとじこめるのだ!?」ゲホゲホ

アライしゃん「おまえも…おまえも、あのときあらいしゃんをとじこめたやつとおなじ、わるいヒトなのかぁ!?」ウルウル

バーカ、いい人だよ。
いい人だからてめーを駆除するんだ。

アライしゃん「ご、ゴハンのヒトしゃん!おまえのなかまがアライしゃんをいじめるのだ!なんとかしてほしいのだ!」ガシャガシャ

その時、佐助がまたアライちゃんを捕らえ、籠の入口へダンクシュートした。

アライちゃん1「のあぁっ!」ヒュー

アライちゃん2「のだあぁ!?」ヒュー

アライしゃん「のぎゃああぁっ!」ガンッガンッ

投げ込まれたアライちゃん達は、アライしゃんへミサイルのように突っ込んで衝突した。

アライちゃん1&2「「いだいのだあぁ!!」」コスリコスリ

アライちゃん達は、ぶつかった患部を手でこすっている。

アライちゃん3「のだぁっ!」ガンッ

アライちゃん1「のだっ!?」ドゴォ

また1匹投げ込まれる。

アライちゃん5「のびゃあっ!?」ガンッ

アライちゃん2「のぎゃっ!」ガスッ

アライちゃん1&2&3&5&6「いひゃいのらああぁぁ!!びえええんっ!」コスリコスリコスリコスリ

アライちゃん4「」ブクブク

アライちゃん4は泡を吐いている。
搬送中に死なないだろうか…。

食通の友人「これで全部だな」

アライしゃん「と、とじこめられたのだぁ!」ガシャガシャ

じゃ、お前はそいつら持って会社に行きな。
俺は佐助の嗅覚を頼りに、もっと巣穴を探してチビスケどもを捕らえるぜ。

食通の友人「頼むぜ!」

~強制給餌場~

アライしゃん「どうしてっ!どうしてアライしゃんたちをつかまえたのだっ!おまえはいいやつだってしんじてたのに、うらぎったのだぁ!ごみなのだぁ!」ウルウル

アライちゃん1「だしてー!」ビエエン

アライちゃん2「こわいのだー!」ビエエン

食通の友人「乱暴ですまねえな、でも、飯をやるだけじゃ、また無くなっちまうだろ?そしたらまたひもじい思いするだろうが、違うか?」

アライしゃん「う…」

食通の友人「だから、お前らを保護してやるんだ。飢えることなく、無事に大きくなれるようにな。ホントだぞ」

アライちゃん3「た…たべもの、くれるのか?」

アライちゃん4「」ピクピク

アライちゃん5「のぁー?」

アライちゃん6「なのだー?」

アライしゃん「…しんじたいのだ、おまえがいいヒトだって。でもおまえのなかまが、あらいしゃんをいじめるのだ。しんじるのがこわいのだ…!」ウルウル

アライしゃん「そ、それに、あんなくるしいごはん、もういやなのだ…!アライしゃんたちをたすけてくれるのなら、ふつうのごはんをよこすのだぁ!」

食通の友人「^^」

アライしゃん「…なにわらってるのだ?…わかってくれたのか?」

食通の友人「悪いな…俺は」ガシッヒョイ

アライしゃん「のだ…?」

食通の友人「守れない約束は、やらねーんだァ!」グイグイガチャガチャガチャ

アライしゃん「の、のだああぁ!?」

食通の友人は、すさまじい早業でアライしゃんの手足を再び拘束した。

アライしゃん「ふーっふーっ…う、うそついたのか!?」

食通の友人「何がだよ、何一つ嘘ついてねーだろ?」ガシッヒョイ

アライちゃん1「やなのだーはなすのだぁ!」ジタバタ

食通の友人「俺は、こいつらに」ガシャン

アライちゃん1「のああぁ!」カチッ

食通の友人「飯を腹一杯」グイッ ガシャン

アライちゃん2「やなのらー!」ジタバタ

食通の友人「食わせて、大きくしてやるんだよ!」グイッガシャン

アライちゃん3「はなすのだー!これとるのだー!」ジタバタジタバタ

アライしゃんとアライちゃん6匹が拘束された。

アライしゃん「はぁ…はぁ…」

食通の友人「動き回って腹減ったろ?それじゃ」スチャ

食通の友人は、強制給餌機を手に取る。

アライしゃん「ま、まつのだ…それはいやなのだ、ふつうのゴハンをよこすのだぁ」フルフル

食通の友人「…」

アライしゃん「お、おまえ、なんのつもりなのだ…アライしゃんたちを、ほごするって、いってたのだ」

食通の友人「…」

アライしゃん「ほごしたいなら、こんな、くるしむやりかた、いらないはずなのだ!おかしいのだぁ!なっとくできるようにせつめいするのだぁ!」

食通の友人「…どうやら、何か勘違いしてるようだな」

アライしゃん「え…」

食通の友人「保護するってのはな…」スッ

食通の友人「俺らがてめーを食う前に、他の奴に食われないよう保護するってだけのことだァ!」ズボオォ

アライしゃん「むぐぅ~~っ!」ジタバタ

食通の友人「スイッチオン」カチッ

アライしゃん「おごごごごご!もごごごごごご!」グビグビ

食通の友人「給餌完了」ズポォッ

アライしゃん「げはっ、うっ、おごごほぉ…」タプタプ

アライしゃんの腹はパンパンに膨れている。

アライちゃん1「こわいのだー!」ジタバタ

アライちゃん2「やなのだー」ジタバタ

アライちゃん3「おがーしゃーん!」ジタバタ

食通の友人「前回は、2週間で肥やしすぎたせいか、味が薄くてすぐ死にそうになったからな…」

食通の友人「今回は、4週間かけてじっくり太らすぜ!」ズボオォ

アライちゃん1「むぐぅーーっ!!」ウルウル

食通の友人「強制給餌ィ!」ブイイイィィン

アライちゃん1「ん゛ーーーっ!んん゛ーーーっ!」ゴクゴク



アライしゃん「ぜぇ…はぁ…うぷっ…」

アライちゃん1「びえええええんっ!のどがいだいのらああああっ!」ビエエン

アライちゃん2「おながぐるじいのだあああ!ごんなにいらないのだあああ!」ビエエエエン

アライちゃん3「おがーしゃーん!だずげでおがーしゃーん!」ビエエエエン

アライちゃん4「おえええええええっ!げえええええっ!」ゲボゲボ

アライちゃん5「おなかいっぱいなのらー」ウエップ

アライちゃん6「のあぁ…」

食通の友人「餌付け完了」

アライしゃん「はぁ…はぁ…アライしゃんは、いつもりにかえれるのだ…?いつこのいじめはおわるのだ…」ハァハァ

食通の友人「あ?帰さねえよ」

アライしゃん「のあっ!?」

食通の友人「これから毎日!てめーが死ぬまで!ずっとずっとずーっと!1日3回!こうやって飯を食わすんだよ!良かったなぁ飢えて死ななくて!」

アライしゃん「い、いやなのだぁ、いやなのらぁ!」フルフル

食通の友人「てめーがダメにした畑の野菜の損失額、てめーの肝臓で利子つけて返してもらうからなァクソ害獣がああァー!」

アライしゃん「い゛や゛なのらああああっ!!おがーしゃーーーんっ!だずげでおがーーしゃーーーーんっ!」ビエエエエン

…2週間後…

デブアライしゃん「うぅ…ぐるひぃのだ…」ブヨンブヨン

デブアライちゃん1「あ…あへ…あはは………」ケラケタ

デブアライちゃん2「ひ…ひひ………」ヘラヘラ

デブアライちゃん3「うっひひひ…」ブリブリ

デブアライちゃん5「なのだー…」ジョロロロロ

デブアライちゃん6「あ、あひはへへへ…」

あれからアライしゃん1匹とアライちゃん達5匹は、見事に大きく育っていた。
横にも太くなったが、背も伸びていた。

耐えず不気味な笑みを浮かべている。

食通の友人「よぉ」ガチャ

デブアライしゃん「や゛ぁあああああーー!やなのだぁーーっ!くるな、ぐるなああーー!」ジタバタ

デブアライちゃん1「びいいぃいーーーっ!」ジタバタ

デブアライちゃん2「やだあぁぁーーーーーーっ!」ジタバタ

デブアライちゃん3「おがーしゃーーーんっ!だずげでぇーーーっ!!」

デブアライちゃん5「びゃぁあーーーーっ!!もうやなのだたべたくないのだーーーっ!」ジタバタ

デブアライちゃん6「くるなくるなくるなくるなくるなくるなぁーーーっ!!」ジタバタ

子供のアライさん達は、食通の友人の顔を見た瞬間、発狂したかのように騒ぎだした。

食通の友人「おやおや…あの日以来、てめーらに給餌してたのは他のスタッフだってのに…。俺と会うのは、ここに来てから久々だろ?」

デブアライしゃん「はぁ…はぁ…!もういやなのだぁ!んー!」

デブアライしゃんは、口をぎゅーっと閉じている。

食通の友人「安心しろ、今日はお前には食わせねえよ」

デブアライしゃん「のぁ…」

食通の友人「ご苦労さん、今日で解放してやるよ。強制給餌は終わりだ。こっち来い」カチャカチャ

デブアライしゃん「ぜひー…ぜひー…ほ、ほんとなのか……」ゼェハァ

食通の友人「俺は嘘つかねえ。これでで苦しいことは全部終わりだ。体を洗って、終わりにしようぜ」グイッ

デブアライしゃん「はぁ…はぁ…たすぁったのだ…」ゼェハァ

~洗浄室~

食通の友人「そら服を脱げ」ヌガシヌガシ

デブアライしゃん「な、なにするのだ!?…ああ、あらいしゃんのけがわがとれちゃったのだ!」

食通の友人「シャワーで洗うぞ」ジャー

デブアライしゃん「はぁー…おゆがきもちいいのだ、いきかえるのだ……」

食通の友人「よし、こっち来い」

デブアライしゃん「どこいくのだ…?」

食通の友人「外に出るんだよ。道のりは遠いけどな。ここから出たいだろ?」

デブアライしゃん「で…でたいのだ!」ブヨン

食通の友人「じゃあその靴をはきな、外に出れるぜ」

デブアライしゃん「は、はくのだ」ハキハキ

デブアライしゃんは、床に置いてある靴を履く。

食通の友人「おいおい、ちゃんと履けてねえぞ。ここをロックするんだ」バチン

食通の友人は、デブアライしゃんの靴についた締め付け金具をロックした。

デブアライしゃん「のあっ!こ、これ、しめつけられていたいのだぁ!」ギュウギュウ

食通の友人「はいスイッチオン」カチッ
その途端。

デブアライしゃんの靴から伸びたワイヤーが、天井に引っ張られ、

デブアライしゃん「な、なんなのだ!?」ブラン

デブアライしゃんは宙吊りになった。

食通の友人はナイフを持つ。

食通の友人「良かったなぁ、お外に出られるぜ」

デブアライしゃん「の、ぁあああ!なんなのだこれ、あしが、いたいのだ!」ブランブラン

宙吊りになったデブアライしゃんの頭部へ血が集中する。

食通の友人「もっとも、外に出るときには………」スッ

食通の友人は、デブアライしゃんの首へナイフを当てる。

食通の友人「てめーはゴミ袋か下水道管の中だけどなぁ!」ザグゥッ

そしてナイフを突き刺した。

デブアライしゃん「のぎゃああああああああああーーーーーーっ!!?」ブッシュウウゥゥーーッ

食通の友人「ヒャーハハハ!ゲロを喉に詰まらせてくたばったてめーの妹は、とっくの昔に外へ出たぜ!てめーも後を追いな!」

デブアライしゃん「ぎびひっ、ぎびいぃぃっ!ち、ちが、どまらないいぃっ!」ブシュウゥドボドボ

デブアライしゃんの首から噴出した血は、床の排水口へ流れ落ちていく。

デブアライしゃん「の…あぁ…」ダラン

デブアライしゃん「おがーしゃん…あらい…しゃんは…がんばった…のだ…ほめ…て…」

デブアライしゃん「」ブラン

食通の友人「…喋らなくなったな。瞳孔が開き、脈も呼吸も止まったようだ」

食通の友人「さーて、捌くか」



その後、フォアグライしゃんの試食が行われた。
その場には、例のフランス大使も参加した。

結果は「まあ悪くない」という感触。
一般のフォアグラより美味いとも言えるが、あの日フェスで口にした絶品といえる味とは程遠い。


その後、5匹のアライちゃんを使い、実験を試みた。
同じサイズまで脂肪肝を肥大させるとき、
どれだけの時間をかけたら最も美味になるか?…を調べたのだ。

4週間、6週間、8週間、10週間、12週間。

5匹の姉妹へ、別々のペース配分で給餌した。

結果、最も美味だったのは12週間。
どうやら、アライちゃんの段階から時間をかけて肥やすほど、美味になるらしいことが判明した。

4ヶ月ほどで極上の美味。
8ヶ月かけるとさらにそれを上回り、
1年間でようやく、フェスで口にしたフォアグライに匹敵する味を再現できた。

こうしていよいよ、フォアグライ加工会社は本格的に営業開始した。

名目上はフォアグラ加工場であり、一応ガチョウも育てているが、
それは助成金を受けとるための申し訳程度の隠れ蓑である。


だが、ガチョウと異なり、アライちゃんは仕入れルートが不安定でコストを要する。

果たして、無事にビジネスは成功するのか…!?





結果から言おう。




ビジネスは大成功。
そして。

日本中…いや、世界各地からハンターが大挙して押し寄せ、
森で組織的なアライちゃん乱獲を始めた。



原因は、フォアグライ加工場が生け捕りアライちゃんの高額買い取りを始めたためである。

これまで限られた猟師や駆除業者しかアライさん捕獲をしていなかったが、
アライちゃんの市場価値が上昇することで、捕獲活動が活性化。



おかげで、フォアグライ加工場は安定したアライちゃんの仕入れが可能となった。



そして、年々増加傾向にあったアライさん被害件数のグラフは、
フォアグライ加工場の登場以来、急激なペースで下がっていった。



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実験10
~フレンズのレベル継承実験~

かねてから可能性が指摘されていた、レベル継承説。
これから、その理論を解明すべく、実験を開始する。


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つづく


夜中。

山へ続く道路に、検問が敷いてある。

山の方から車がやってきて、検問の前で停車通りかかる。

警官1「止まってください!」

車が停車する。

運転手「どうしました?」

警官「今このあたりで、行方不明者が出ておりまして。捜査にご協力いただけませんか?」

運転手「いいですとも」

警官「トランクの中を見せて頂いてもよろしいですか?」

運転手「どうぞ」

警官「では失礼します」ガチャ

警官がトランクを開ける。


トランクの中には、籠があり。



アライちゃん1「なのだー!」ガシャガシャ

アライちゃん2「なのだー!」ガシャガシャ

アライちゃん3「ここはどこなのだー!?」ガシャガシャ

アライちゃん4「おそとにだすのらー!」ガシャガシャ

アライちゃん5「もりにいってみたいのだー!」ガシャガシャ

アライちゃん6「やっとおそとにでられるのかー?」ガシャガシャ

アライちゃん7「おなかしゅいたのらー!」ガシャガシャ

アライちゃん8「すぴー…」zzz



籠の中には、たくさんのアライちゃんがいた。

警官「このアライちゃん達は?」

運転手「へへぇ、今日山でとってきたですよ」

警官「この先の山は個人所有の山でしたっけ」

運転手「そこの所有者に依頼されたんですよ」

警官「あなた、駆除業者か猟師ですか?免許をご提示願います」

運転手「あいよ」スッ

運転手は、特定有害駆除対象フレンズ駆除免許を提示した。

警官「ご提示頂き感謝します」

警官「ところで、このアライさん達…親がいませんね。子供ばかりのようです」

アライちゃん1「ま、またしらないヒトがきたのだ」

アライちゃん2「ごはんー!ごはんのじかんはまだなのかー?」ガシャガシャ

アライちゃん3「ころころのごはんたべたいのだー!」

警官「大人はいないのですか?殺傷した特定有害駆除…言いにくいなコレ。アライさんは、死骸を放置せず回収するよう規定があるのですが」

運転手「あぁ…木に登ってるとこをボウガンで仕留めましたので。そのまま引っ掛かって回収不可能になりました」

警官「なるほど、事情は分かりました。捜査ご協力ありがとうございました」

運転手「ども」

運転手を乗せた車は、都市へ走り去る。



2日後。
例の検問に、また例の車が通りかかる。

運転手「また検問ですか」

警官「行方不明者が見つからないもので。またご協力お願いします」

運転手「はい。どうすれば?」

警官「トランクの中を見せてください」

運転手「…行方不明者に関する情報はいらないのですか?」

警官「はい。問題ありません」

運転手「わかりました」ガチャ



トランクの中には、空の籠がある。

それからボウガンが一丁あった。


警官「もうけっこうです」

運転手は、トランクを閉める。

警官「一応、免許の提示をお願いします」

運転手「はいよ」

警官「ご協力ありがとうございました」

運転手は、山へと向かって車を走らせた。



山の中に、まわりの風景に不釣り合いな建物がある。
車は、建物の前へ駐車する。

運転手「ちわーす、アライちゃん狩りにきました」ガチャ

山の所有者「ひひ、毎度ども。ほれ、あちらへどうぞ」

運転手「今日は5匹ほど頂いていきます」スタスタ

運転手は廊下を進むと、部屋の扉を開ける。




アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん3「たいくつなのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん4「ごはんー!」ヨチヨチ

アライちゃん5「ひとしゃんなのだ!ごはんなのだ!」ヨチヨチ

「なのらー」「のぁー」「なのだぁー」


部屋の中には、大勢のアライちゃんがいた。

部屋の床は隙間の大きい金網のように、格子状になっている。

アライちゃん6「のああぁ」プリプリ

アライちゃん7「おしっこするのらー」ショー

アライちゃん達は、ところ構わず排便する。

排泄物は網の隙間を抜けて、砂へ落ちていく。

アライちゃんのいる空間は、入口とは金網によって隔てられている。

壁にはトンネルのような穴が空いている。


運転手「さーて、お前ら。飯の時間だ」パチパチ

アライちゃん達「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん達は、一斉に壁に空いた穴へ入っていく。

金網で仕切られた部屋の入口側にも、壁に穴が1つ空いている。

運転手は籠の蓋を開け、壁の穴へ押し当てる。

しばらくすると、壁の穴からアライちゃんの声が聞こえてくる。

アライちゃん1「ごはんなのだー!」
ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「これだけがいきるたのしみなのだー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「くださいなのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん4「べりーかーぷ!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん5「おなかへったのらー!」ヨチヨチヨチヨチ

壁の穴は、向こう側と繋がっているトンネルだったのだ。
餌がもらえると思ってやってきたアライちゃんが、次々と籠の中へ入っていく。

アライちゃん「」

籠の中へ、アライちゃんが5匹入った。

アライちゃん1「のだぁ!?いつものごはんのばしょじゃないのだぁ!」

アライちゃん2「せまいのだぁ」

運転手「よいしょ」ガシャ

運転手は、籠へ十分な数のアライちゃんを入れると、壁の穴から籠をどける。
壁の穴から出てきたアライちゃん達はぼとぼとと床へ落ちていく。

アライちゃん6「ごはんはどこなのだぁ!?」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん7「においがしないのだぁ」ヨチヨチヨチヨチ

運転手は、床へドッグフードを撒くと、部屋から出ていく。

アライちゃん8「ごはんなのだぁ!」モグモグ

アライちゃん9「おいしいのだぁ」モグモグ

運転手が部屋を出ると、別の男が籠を持って部屋へ入った。
彼もまた、あの部屋でアライちゃんを「捕獲」するのだろう。

運転手は、籠をいったん置き、山の所有者のところへ向かう。

運転手「所有者さん、捕獲終わりました。こちら売ったカネと領収書です」スッ

山の所有者「へへへ、ひぃ、ふぅ、みぃ…あいよ、ご苦労さん」

運転手「んじゃー『狩りの時間』が終わるまで、あっちで仕事してますよ」

山の所有者「あいよ」

運転手は、『託児室』と書いてある部屋に入った。

託児室には、大人アライさんが数匹いた。

アライグマ♂「キュルルル」パコパコ

アライさん1「あぁあぁ!きっ、きもちいい、のだぁ!」ハァハア

雄のアライグマと交尾している、アライさん1。

アライさん2「うぅ…また産まれそうなのだぁ」ゴロゴロ

大きなお腹をさすり、ゴロゴロしているアライさん2。

アライさん3「あ、っぁああああ!のだあああぁああ!」ズキズキ

さらに大きなお腹を押さえ、痛がっているアライさん3。

アライさん4「…」ギュー

乳児アライちゃん1「んみんみ…」チューチュー

乳児アライちゃん2「ちゅーちゅー」ゴクゴク

アライちゃんへ授乳しているアライさん4。

アライさん5「ちび達、はやくおかーしゃんのおっぱい飲むのだ」グイグイ

アライちゃん1「いやなのだ!もうおっぱいじゃなくて、おかーしゃんとおんなじごはんがいいのだ!」ジタバタ

アライちゃん2「おっぱいじゃおなかいっぱいにならないのだぁ!」ジタバタ

アライさん5「お願いなのだ、ちび達!ヒトが見てるのだ!いいからおっぱい飲むのだ!」グイグイ

我が子へ無理矢理授乳しようとして、嫌がられているアライさん5。

運転手は、ここで仕事をする。
彼の担当は、アライさんの世話である。

運転手「ほーれお前ら、食事だぞ」ポイポイ

運転手はドッグフードをばら撒く。

アライグマ♂「キュルルル」モグモグ

交尾後アライさん1「ふぅ、気持ちよかったのだ。ごはんなのだ」モグモグ

妊娠中アライさん2「お腹へったのだ…栄養つけなきゃいけないのだ」モグモグ

出産間近アライさん3「あ゛ぁああ!いまそれどころじゃないのだぁ!」ジタバタ

乳母アライさん4「ちび達、おかーさんはごはんたべてくるのだ、いいこにしてるのだ」ソッ

乳児アライちゃん1「のぁー」

乳児アライちゃん2「なのらー」

母アライさん5「お、おかーさんも、ごはん食べるのだ…」モグモグ

アライちゃん1「あらいしゃんもごはんたべたいのだぁ!」ジタバタ

アライちゃん2「はなすのだぁ!もうおっぱいじゃおなかいっぱいなんないのだぁ!」ジタバタ

母アライさん5「お願いなのだ、ヒトの前ではおっぱい吸う赤ちゃんでいなきだめなのだぁ!」グイグイ

運転手「まずはアライちゃんの回収かな」スタスタ

母アライさん5「ひぃ!」ビクッ

運転手「ちび達、こっちおいで。お前らにもドッグフードやるよ」

アライちゃん1「ほんとなのかー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「たべるのらー!おじしゃんいいひとなのらぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

母アライさん5「行っちゃだめなのだぁ!アライさんを一人にしないでほしいのだぁ!」ガシッ

アライちゃん1「はなすのだぁ!」ジタバタ

アライちゃん2「いじわるやめるのだぁ!」ジタバタ

運転手「邪魔なんだよ、ラァ!」ドゴォ

運転手は、アライさん5の顔面に蹴りをぶちこんだ。

母アライさん5「いだいのだああぁ!」ゴロゴロ

運転手は、アライちゃん2匹を拾い、籠へ入れた。

出産間近アライさん3「あああ!うまれるのだあぁ!」

アライさんのスカートの中から、赤ん坊のアライちゃんが顔を出す。

乳児アライちゃん3「のあぁ~」ポトッ

乳児アライちゃん4「なのぁ」ポトッ

アライさん3は、2匹の赤ちゃんを出産した。

アライさん3「はぁはぁ…うまれたのだ…」

運転手「おめでとさん」

アライさん3「お願いなのだ、もうアライさんの赤ちゃん、とらないでほしいのだ…!」ギュー

運転手はその言葉を無視すると、アライちゃん2匹が入った籠を持ち、部屋の外へ出ようとする。


唐突に、部屋が開けられた。





警官1「警察だ!」ガチャ

警官2「特定有害フレンズの駆除促進のための法律、第二条違反のため現行犯逮捕する!」ガチャ

警官3「クソ害獣どもが!」タタッ

運転手「げえぇーーーっ!?な、なぜバレた!?」

警官1「お縄につけ!」ガチャ

運転手「ぐうぅぅっ…カモフラージュは完璧だったはずなのに…」

運転手は手錠をはめられる。

アライさん1「またヒトが来たのだ」

アライちゃん1「あらいしゃんのごはんはどうなったのだー!」ガシャガシャ

アライちゃん2「はやくごはんよこすこだー!」

武装警官「……」ジャキ

武装警官は、火炎放射機を構えた。

武装警官「焼却処分開始します」

警官2「OK」

アライさん2「なんだ?なんかのお祭りなのか?」

続きはあとで

武装警官「放射!」カチッ

火炎放射器から炎が放たれた。
厳密には着火された可燃液が噴射されたのである。

当然、そんなことをアライさん達が予測できるはずもなく。

交尾後アライさん1「あぎぎぎぎぃゃぁあああああーーーーーーっ!」ボッゴオォゥウ

次々に、炎に包まれる。

妊娠中アライさん2「あづいあづいいぃぃっぎゃあぁああああああーーーーーーー!!」ボジュウゥゥ

新しい命は、生まれることもなく。

出産直後アライさん3「のぎゃあああぁぁあっぁぁああああああ!!やめるのだあああっ!」ガシィ

産まれたばかりの我が子を、火炎から身を守る盾に使う。

乳児アライちゃん3「ぶじぇえええっ!」ボオオゥ

乳児アライちゃん4「ぴぎぃぃっ!」ボオォゥ

産まれたばかりの命は、母の盾となって燃えていく。

乳母アライさん4「だずげでぇーーーっ!!!!」ボゴゴジュウウゥゥ

乳児アライちゃん1「びいぃぃぃっ!!!」ボオオウ

乳児アライちゃん2「のりゃああああああああっ!!!」ジュワアアアァ

母子もろとも、一瞬で炎に包まれる。

母アライさん5「びぎいいぃぃぃぃぃっっっ!!ちびたぢいいぃぃぃっ!おがーざんをだずげでえええっ!」ボッゴオォゥウ

籠の中へ囚われた我が子へ助けを求める。

アライグマ♂「キュルルル!!」メラメラ

ついでに害獣を一匹駆除する。

火炎放射を浴びたアライさん達は、燃え盛る炎に身を焼かれ、悲鳴を上げる。

アライちゃん1「お、おがーしゃんがもえてるのらあぁ!」ガシャガシャ

アライちゃん2「たいへんなのだ!ひとしゃん!おかーしゃんをたしゅけるのらぁ!」ガシャガシャ

運転手によって籠へ閉じ込められた子供達は、籠の中で騒ぎ、暴れている。

武装警官「こいつらはどうします?保健所送りですか?」

警官1「養殖させられた特定有害駆除対象フレンズは、いかなる目的にも利用できない。まとめて焼却処分しましょう」

武装警官「了解」ガシッ

アライちゃん1「のだ?」

アライちゃん2「あらいしゃんたちを、おへやからだしてくれるのか?」

武装警官は、アライちゃん達の入った籠を持ち上げる。

武装警官「フン!」ポイッ

アライちゃん1&2「のりゃあああ!?」

投げられた籠は、炎の中へ落ちた。

アライちゃん1「ぴぎいぃぃぃいぃっっ!!!あぢゅいあぢゅいのりゃあああああっ!!だぢゅげでええっ!だちてえええぇえーーっ!」ガシャン!ガシャン!

アライちゃん2「のぎゃあああああああああああっ!!!おがーじゃーーーんっ!!だぢでえええええええっ!」ガシャンガシャン

炎に包まれたアライちゃん達は、籠の中で暴れ回る。
だが籠はびくともせず、アライちゃん達を炎にくべたまま閉じ込めている。

やがて、放った炎は消えた。

交尾後アライさん1「」プスプス

妊娠中アライさん2「」プスプス

出産直後アライさん3「お…ご…ぇ…」ジュウゥゥ

乳母アライさん4「…ァ…」プスプス

乳児アライちゃん1~4「」ジュウウゥ

母アライさん5「」プスプス

アライグマ♂「」プスプス

死屍累々である。
焦げ臭い匂いが部屋に充満する。

アライちゃん1「」ブスブス

アライちゃん2「」ジュージュー

籠の中の子供2匹も、焼け焦げたようだ。

武装警官「焼却完了」

警官「まだ1匹息があるぞ」

出産直後アライさん3「…だ…げ…で…」ジュージュー

出産直後のアライさん3は、我が子を盾にすることで、頭部や胸部など致命的な部位を防御していた。
もっとも、手足や下半身は燃え尽きており、放置しても助かる見込みはないだろう。
単体回復スキルがあっても、もはや死を待つばかりである。

武装警官「焼きますか?」

警官1「いや、いい…」スタスタ

警官1は、アライさん3へ歩み寄る。

出産直後アライさん3「だ…げ…ず…げ…」ピクピク

警官1「フン!」グシャッ

出産直後アライさん3「ぎゅっ」メキィ

警官1は、アライさん3の喉を踏みつけた。

警官1「ふっ!ふっ!ふっ!」ドスドスドスドスドスドス

出産直後アライさん3「」グシャッグシャッグシャッグシャッ ボギン

何度も喉を踏みつけると、そのうち首が折れた。

警官1「おい、アライさんはこれだけか?嘘をついたら刑期が延びるぞ、慎重に答えろ」ガシッグイッ

運転手「………奥の部屋で、チビを集めてる。それで全部だ」

運転手は諦めたようであり、自供する。



先程のアライちゃん飼育室の扉が開けられる。

金網の向こう側に、アライちゃんがわらわらと集まっていた。
その数、ざっと30匹はいると見てよい。

アライちゃん1「ひとしゃんなのらー」ヨチヨチ

アライちゃん2「ごはんなのかー?」ヨチヨチ

アライちゃん3「そっちいくのらー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん4「ひとしゃん!あらいしゃん、おしょとにいってみたいのら!もりでおしゃんぽしたいのらぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

警官1「む、壁の穴に入ろうとしている!焼却開始!」

武装警官「ラジャー」ガシャリ

武装警官は、火炎放射器を構えた。

武装警官「放射!」ボッゴオォゥウ

火炎放射器から、30匹ほどのアライちゃん達に向かって炎が放たれる。

アライちゃん達「「「「のぎゃああああああああああああああーーーーーーっ!!」」」」ボゴワアアァァ

武装警官は、火炎放射器を左右に動かし、広範囲へ炎を放つ。

アライちゃん1「ぎぴいいぃぃっっ!!」ピョンピョン

アライちゃん飼育室の床は金網になっている。
アライちゃん1は金網の上で炎に包まれ、跳ね回る。

アライちゃん2「あぢゅいいいぃぃっ!おがーじゃーーーんっ!だぢゅげでえええええっ!」メラメラ

アライちゃん2は、体を床に擦り付けて火を消そうとする。

だが床は金網である。火を消すには役に立つはずもない。

アライちゃん25「ひ、ひいいぃっっ!!とんねるにかくれりゅのりゃああっ!!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

何匹かのアライちゃん達は、壁に空いた穴へ向かってよちよちと走る。

アライちゃん26「なのだーーっ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ スポッ

アライちゃん27「びいぃいっ!せなかがあぢゅいのりゃあっ!」メラメラ ヨチヨチヨチヨチ スポッ

アライちゃん28「こあいのらーーっ!!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ スポッ

アライちゃん29「かくれるのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ スポッ

アライちゃん30「これでだいじょうぶなのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ スポッ

数匹のアライちゃんは、壁に空いた穴へ逃げ込んでしまった。

警官1「ちっ!逃げ込まれたか!」

武装警官「…あの壁の穴、どこに通じてるんでしょうかね?」

警官1「いや、わからんが…」

武装警官「…ん?金網の向こう側だけじゃなく、こっち側の壁にも穴が空いてるな」

武装警官は、壁の穴に気付く。
籠へアライちゃんを『捕獲』するためのトンネル出口だ。

武装警官は、壁の穴に耳を当てる。

「こ…こわいのらぁ!」
「もういったのか?」
「まだはなしごえがきこえたのらぁ!」
「びええええええんっ!せなかがあぢゅいのりゃああああっ!」
「べりーかーぷ!」

武装警官「…どうやら、この穴は向こう側とつながってるみたいですね」

警官2「ということは…」

武装警官「このトンネルの中に潜んでますね」

武装警官は、壁の穴に火炎放射器の先を突っ込む。

武装警官「放射!」カチッ

暗い壁の穴の中が、火炎によって照らされ明るくなる。

火炎はジェット噴射のような勢いでトンネル内を焼き尽くしていく。

金網の隔たりの向こう側に空いた壁の穴から、火炎が飛び出た。

武装警官「放射終了」カチッ

武装警官は穴から火炎放射器を引き抜く。

武装警官「燃やしました」

壁の穴へ逃げ込んだアライちゃん達がどうなったか、確認の必要はないだろう。

警官1「さて、向こうは…」

アライちゃんの飼育室は、焼け焦げたアライちゃんの山となっていた。

警官1「…全員死んだかな?」

武装警官「一応念入りに燃やしておきます」ボッゴオォゥウ

武装警官は、アライちゃんの山へ再び炎を放った。

アライちゃんの山から聞こえた声「のぎゃあああああああああああっっ!!!!」

武装警官「生き残りがいるっぽいですね。念入りに焼きましょう」ボッゴオォゥウ

やがて、燃料をだいぶ減らしたあたりで炎を止める。
もう声は聞こえなかった。



警官は、この違法養殖場の従業員を一人残らず逮捕した。
現場にいなかった従業員の名前も芋づる式に判明。
指名手配は済んでおり、いずれ捕まるだろう。

運転手「くっ…なぜ、ここがわかったんだ!?追跡はされてなかったのに!」

山での所有者「ここの従業員以外、誰も立ち入らせてなかったぞ!バレるはずがない!」

車のトランクに入った装備は少なかったが、それだけで警官による追跡などを行う相手に決めるのは困難であろう。
実際のところ、カムフラージュに隙は見当たらず、山へ立ち入る人物は確認されていなかったのだ。

警官1「電話で通報があったんですよ、ここで養殖されてるって」

運転手「で…電話!?バカな、一体誰が!?」

警官2「匿名の通報でした」

山の所有者「匿名…!?」



~特定有害駆除対象フレンズ撲滅委員会 本部~

会長「…」

会長がいる部屋の自動ドアが開く。
しかし、出入りする人物の姿は見当たらない。

「拙者、帰還したでござる」

どこからともなく、部屋の中で声がした。

会長「…よくやったのです。お前の潜入調査で、違法養殖場を摘発できたのです」

「はっ、拙者、光栄でござる!」

返事をした人物の姿は見当たらない。

会長「もう透明化を解除してもよいのです」

「御意でござる」

会長以外誰もいなかった空間に、次第に人影が浮かび上がっていく。

緑の髪の少女「ふぅ…大変こわかったでござる…」スッ

なんと、緑の髪の少女が出現した。
今までは透明になっていたようだ。
いったいどんなテクノロジーだろうか?

…現代科学でこのような芸当を披露することはできない。
未知なる可能性、サンドスターを操る者…フレンズの特殊能力で間違いないだろう。

会長「長期にわたる潜入捜査、ご苦労だったのです」

緑の髪の少女「い、いえいえ、拙者、できることをしたまででござる…」

会長「そう謙遜しなくていいのです。お前のハートは、かつてのビビり屋さんだった頃よりずっとタフになっているのです」

緑の髪の少女「いやぁ、そんな…」テレテレ

会長「野良アライさんは、一匹残らず滅ぼすのです。食べて、殺して、絶滅させるのです」

緑の髪の少女「…仲良くできたらいいのでござるが…拙者、もうその望みは捨てたでござる」

緑の髪の少女「かの救世主が、たったひとつだけ和解を諦めた相手、セルリアン…。きゃつらもその同類とみなし、心を鬼にするでござる…!」

会長「ただ一つ、大変なことがあるのです」

緑の髪の少女「な、何でござるか?」

会長「お前、ずっと透明になって潜入捜査してたせいで、行方不明者扱いになって捜索されてるのです」

緑の髪の少女「なんとな!?」



緑の髪の少女「…」テクテク

緑の髪の少女は、部屋から出て、廊下を歩く。

緑の髪の少女「…ぅ…」テクテク

少女の脳裏に、炎に包まれるアライさん達の顔が浮かぶ。

必死に助けを求める者。
最期に母親の愛情を求める者。

必死に助かる術を探し隠れるも、無惨に殺される者。

緑の髪の少女「う…ぷっ…!」

炎に焼かれ、焼け焦げていく顔。
苦しみに悶える、断末魔の悲鳴。
肉が焼ける匂い。


そんな所業を、ヒトとそう変わらない姿のアライさん達へ、躊躇なく執行する武装警官の顔。



緑の髪の少女「むぐっ…んん!」タタッ

緑の髪の少女は、トイレへ駆け込む。


緑の髪の少女「げえええええっ!おえええええええっ!!!」

少女は吐いた。
涙を流しながら吐いた。

緑の髪の少女「はぁ…はぁ………」ゼェゼェ

緑の髪の少女「なんでで…ござるか…」ハァハア

緑の髪の少女「アライさんだって、拙者達と同じフレンズなのに…!」

緑の髪の少女「親子の愛があって、喜んで、遊んで、笑って、泣いて…心があるのに!」ハァハア

緑の髪の少女「なんでっ!あんなに躊躇なく、みんな殺してしまえるのでござるかっ…!」ハァハア

緑の髪の少女「どうしてあんなに残酷になれるのでござるか…どうして…」ハァハア

緑の髪の少女「…」ハァハア

緑の髪の少女「……うぐっ、ぐすっ…」シクシク

緑の髪の少女「分かってるでござる…もう、平和的な解決方法がないってことくらい…」

緑の髪の少女「それでも…彼女達を殺すのに、微塵も心を痛めないのは…おかしいでござる………」トボトボ

緑の髪の少女「…」トボトボ



~森の中~

アライさん1「またヒトがやってきて、アライさん達を殺したのだ…!」

アライさん2「アライさんの子供達は、巣を離れてる間にみんなさらわれたのだ…!」

アライさん3「最近のヒト達はおかしいのだ…!たくさん森にやってきて、たくさん殺していく…!鬼畜なのだぁ!」

アライさん4「このままでは、アライさん達は滅ぼされてしまうのだ…!」

アライさん1「こうなったらもう…ヒトと戦うしかないのだぁ!」

アライさん2「森にきたヒトを、みんなやっつけるのだ!」

アライさん3「一致団結するのだ!困難は群れで分け合うのだ!」

アライさん4「ヒトは…ゴミなのだぁ!アライさん達の平和のために、ヒトをやっつけるのだぁ!」

アライさん達が集まって話している。

アライさん1「かつてジャパリパークのアライさんは、フレンズ達と力を合わせて、せ…せる…なんだったのだ?…ともかく、わるいやつをやっつけたのだ!」

アライさん2「いまこそアライさん達も、ジャパリパークのアライさんのように!団結して、ヒトをやっつけるにだ!」

アライさん3「正義の行進なのだ!」

アライしゃん「なのだー!」

アライさん4「ヒト征伐、開始なのだあぁ!」



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実験5
~サンドスターレーダーの品質試験~

サンドスターレーダーの試作機が完成。
ISO26262の規格に基づき、安全性の品質試験を行う。

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~メモ~

実験10は成功。
仮説通り、親フレンズのレベルは子に継承される。
個体差にバラツキあり。

正式な実験結果は、教授へ要点のみ報告済み。
報告書の作成を進める。

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つづく

食通の友人が、フォアグライ事業を初めてから3年が経った。

人々を虜にする絶品超高級食材フォアグライは、世界中の富豪にバカ売れ売れた。

フォアグライ加工場は、初期費用を1年で回収。
その後も経営は黒字であり、事業として成功していた。

取締役である食通の友人の方針により、
この会社は6年でフォアグライ生産を終了する計画を打ち立てていた。

それだけの期間が経てば、アライさんはほぼ途絶えると見込んだためである。

その経営方針が、フォアグライのプレミア感を引き立たせ、
「今しか食えない超プレミア品!」という謳い文句でさらに購買意欲を掻き立てた。

ではその間、アライさん達は狩られるままだったであろうか?

否。
人間達に狩られる恐怖の中、アライさん達は希望を求めていた。

人間達を倒す、希望の『流れ』を、待ち望んでいた。

自分達を率いて、統率し、人間達と戦う戦略をもつ『誰か』を。

それが自分でないことを知りながら、『誰か』が現れるのを待っていた。


…その『誰か』は、ついに頭角を表すことになる。



~森~

新人ハンター「家屋に忍び込んだアライ退治は駆除業者の仕事…」ザッザッ

新人ハンター「山狩りするのは俺の仕事!!」ザッザッ

犬(ダックスフント)「ワンワン!」ザッザッ

新人ハンターは、籠と猟銃を持って森を進む。
この犬…ダックスフントは小型犬だが、決して格闘能力は低くない。
アライさんの巣穴へ潜り込み、アライちゃんを引きずり出すことに関しては人間以上。

アライちゃん狩りにはうってつけの犬種である。

「のだ~~~!」

アライさんの声が聞こえる。

新人ハンター「行くぞ」ザッザッ

「のだ~~~!!」

新人ハンター「こっちから聞こえたな」ザッザッ

犬「ワンワン!」

犬が上を見ながら吠える。

新人ハンター「どうした?まだアライさんはいないぞ」






ごしゃっ。






新人ハンターは、自分の頭蓋骨が砕ける音を聞いた。






…立ち上がれない。
視界の焦点が合わない。

「ワンワン!ワン!」

統率して戦うくらいなら「二度と犯罪を犯さない生活をします」って誓って農業を教わるようにすればいいのに……ってその段階はとうに越えたか

ますますテラフォじみてきたな

地面に倒れ伏す新人ハンターの頭の隣には、大きな石…いや、小さな岩が転がっていた。

彼は、頭上から落下した岩に頭を打たれたのである。

頭部からの出血は甚大だ。


犬「ワンワン!ワン!」

犬は、なおも頭上に向かって吠える。

ボスアライさん「のだぁ!」バッ

上空から、竹槍を持ったアライさんが襲いかかる。

犬「ワンワン!」サッ

犬は素早く動き、槍をかわすが…

ボスアライさん「遅いのだ!」シュバ

犬「ギキャウウウゥ!」ブッシュウゥ

犬の喉に竹槍が突き刺さる。

犬「ギュウゥ…」バタッ

ボスアライさん「はぁ、はぁ、どんなもんなのだ…」シュウゥゥ

ボスアライさんの体が少しだけ光る。
EXPを得て、レベルが上がった反応だ。

ボスアライさん「いい感覚なのだ…また少し、力を増したのだ」

取り巻きアライさん1「ボスはすごいのだぁ!」ガサッ

取り巻きアライさん2「ヒトを倒しちゃったのだぁ!」ガサッ

ボスアライさん「ヒトは便利なものをたくさん持っているのだ。全部奪うのだ」

アライさん達は、新人ハンターの荷物を漁る。

取り巻きアライさん1「犬はどうするのだ?」

ボスアライさん「晩御飯にするのだ!」

取り巻きアライさん2「ヒトの死体はどうするのだ?」

ボスアライさん「………」

取り巻きアライさん1「ど、どうするのだ?」

ボスアライさん「…どんぐりの木の根本に埋めるのだ。きっといい栄養になるのだ」

取り巻きアライさん2「…わかったのだ!」ザッザッ

アライさん達は、新人ハンターや、民家から奪った刃物で犬を解体する。

新人ハンターの死体は、どんぐりの木の根本に埋められてしまった。



深夜の森。

木に登ったボスアライさんのもとへ、たくさんのアライさん達が集結している。

ボスアライさん「ヒトはアライさん達を徹底的に滅ぼしに来ているのだ!」

アライさん1「こ、こわいのだ…!」ザワザワ

アライさん2「最悪な奴らなのだ…!」ドヨドヨ

ボスアライさん「お前達!…そう、今話を聞いているお前だ。もし明日、自分が銃を持ったヒトに会ったら…そのときお前は、どうなるのだ?」

アライさん3「会いたくないのだぁ!」

アライさん4「でも、もう森には食べ物が少ないのだ…畑に行かなきゃ野菜がないのだ…」

ボスアライさん「まさか自分だけは助かる、そう思っているのか?…お前たちの友人はそう思い続け、何の備えもせず!あっけなくヒトに見つかって、殺されたのだ!」

アライさん5「うぅ…!」ガクガクブルブル

アライさん6「明日にも、ヒトがアライさんを殺しにくるかもしれないのだ…」ガクガクブルブル

ボスアライさん「そこのお前!そう、チビを3匹連れてるお前なのだ!お前は明日、子供を連れて歩いてるとき、ヒトに会ったらどうするのだ?」

アライさん1「えっ…っ…に、逃げるのだぁ!」

ボスアライさん「ヒトは銃を持ってるのだ。背中をズドンと一発。大きな穴を開けられ、お前は死ぬのだ」

アライさん1「ひっ…い、いやなのだぁ!」

ボスアライさん「そこのお前!木によりかかってるお前!お前はどうするのだ?」

アライさん2「そ…そうだ…仲良くしてもらうのだ。お友だちになるのだ!」

ボスアライさん「握手した瞬間、お前は首を刃物で刺されるのだ。ヒトが仲良くしたいのは、お前の死体とだけなのだ」

アライさん3「の、のだあああぁ!」ガクガクブルブル

ボスアライさん「お前はどうだ!」

アライさん4「た…戦うのだ!」

ボスアライさん「一人で戦うのか?」

アライさん5「うぅ…一人じゃ勝てないのだ…!」

ボスアライさん「じゃあ、どうすれば勝てるのだ?」

アライさん5「うぅ……わからないのだ!」

ボスアライさん「教えてやるのだ。お前達がヒトを倒せる方法は3つあるのだ」

アライさん5「…?」

ボスアライさん「1つ。夜中にヒトの寝床へ忍び込み、首をかっきるのだ」

ボスアライさん「2つ。ここにいる全員で、武器を持って一斉に襲いかかるのだ」

ボスアライさん「3つ。これを使うのだ」チャキ

アライさん5「そ…それは!ヒトの銃なのだ!銃で撃つのか?」

ボスアライさん「これというのは、銃だけの話じゃないのだ。罠を…道具を使うのだ」

アライさん5「罠…道具…」

ボスアライさん「ヒトは油断しているのだ。自分が狩られる側に回るなんて、ちっとも思ってないのだ!」

ボスアライさん「見るのだ!この荷物を!これはアライさんが倒したヒトから奪ったものなのだ!」

アライさん達「「す…すごいのだ!」」ザワザワ

銃の撃ち方は分かるとしてもその他の使い方(リロードとか)は分かるのか?

ボスアライさん「ここにいるお前達!できるだけ多くの仲間を連れて、アライさんのもとへ集うのだ!たくさんの力が合わされば、ヒトに勝ち、屈伏させることができるのだ!」

アライさん1「わ…わかったのだ!」

ボスアライさん「『明日になれば、事は勝手に良くなる』そう考えてる奴!お前が真っ先に死ぬのだ!」

ボスアライさん「大事なのは、今、生きているこの一瞬一瞬すべてが、ヒトとの戦いだと意識することなのだ!」

アライさん2「た…戦うのだ!」

アライさん3「ボス!アライさんは、ボスについていくのだ!アライさんの力を使ってほしいのだ!」

アライさん達『ボス!ボス!ボス!ボス!』

ボスアライさん「よろしいのだ!いい仲間を持てて、アライさんは幸せなのだ!アライさんはこれから、名前を名乗るのだ!」

名前。
アライさん達は、誰もが自らを「アライさん」と名乗る。
名前を名乗るという発想すら、持つものはいなかった。

ボスアライさん「これからアライさんは、名前を名乗るのだ…!人類への反逆者…アライさんの王…『アライキング・ボス』と!」

アライさん「…お、おぉ…」

イマイチなネーミングセンスに、それまでの熱が若干冷める。

アライキング・ボス「アライさん達は、ヒトと戦う勇者なのだ!天下を取るのだ!」

『アライキング・ボス!アライキング・ボス!アライキング・ボス!』



アライさんは、基本的に群れを作らない。
互いに分け合うことも、譲り合うことも、支え合うこともない。

だが、共通の敵を見つけたときのみ。
互いに力を合わせるのである。

今、森に生きる大勢のアライさんは、人類という共通の敵を見つけた。



翌朝…

アライさんのいる森に、一台のバスが停まっている。

バスから、一人のフレンズが降りてくる。

キツネ「はぁ…いい加減もうやめたいなぁ…」ハァ

ため息をついて出てきたのはキツネのフレンズである。

キツネは、森に入り、アライさんを探す。

>>アライキング・ボス
キャシャーンとかオッサンしかしらんやろ

キツネは、アライさんの群れを見つける。

キツネ「やあやあアライさん達、おはよう~」

アライさん1「…フレンズなのだ」

アライさん2「何なのだ?」

アライさん3「お前、人間の匂いがするのだ」

キツネ「そうだよ~。フレンズがヒトと仲良くなって、おんなじ暮らしができるようになる方法があるんだ」

アライさん1「…やっぱり、ヒトの仲間なのだ」

キツネ「そうだよ。ヒトと一緒に仲良く暮らしてる。アライさん達も同じようになれるよ」

アライさん2「ヒトはアライさん殺しなのだ!仲良くなんて、絶対嫌なのだ!」

キツネ「…で、でも、安全で、美味しいご飯を毎日…」

アライさん3「ヒトをみんなやっつければ!安全で、美味しいご飯を毎日食べれるのだ!」

キツネ「…やばいっ!逃げよう!」ザッ

アライさん1「お前、人間の仲間なのだ!」ザザッ

アライさん2「人間の仲間なら、お前も倒すのだ!」ザザッ

キツネ「うわー!」タタタッ

アライさん1「待つのだー!」ドタドタ

アライさん2「倒すのだ!」ドタドタ

アライさん3「やっつけるのだ!」ドタドタ

キツネ「…交渉決裂か。嫌だなぁ…やむを得ないなぁ…」クルッ

キツネは、一番先頭を走って追ってくるアライさんをチラリと見る。

アライさん1「捕まる気になったのか!」ドタドタ

キツネは一瞬、身を翻す。

キツネ「大胆不敵!トリッククロー!」ブンッ

突如、キツネはアライさん1に向かって拳を振りかざした。

アライさん1「のああぁー!」バギィ

アライさん1はキツネの拳に当たり、吹っ飛ぶ。

アライさん2「いだぁいっ!」ドゴォ

アライさん3「のぎゃっ!」ガスゥ

吹っ飛ぶアライさん1にぶつかり、アライさん2&3はボーリングのピンのように倒れた。

キツネ「乱暴してごめんねー。それじゃ~」スタコラサッサ

キツネは遠くへ逃げていった。

アライさん1「ぐ…ぐぞ~…」ムクッ

アライさん2「逃げられたのだ…悔しいのだぁ!」ムクッ

アライさん3「むかつくけど追っても仕方ないのだ!帰るのだ!」



アライさん1「たくさん仲間が集まったのだ!どうやってヒトと戦えばいいのだ?」

アライキング・ボス「ふっふっふ。アライさん達を追うやつらは、決まって森の中でもだけ銃を撃つのだ」

アライキング・ボス「銃を撃つ奴は、猟師っていうのだ。あいつらは人里では銃を撃てないのだ」

アライさん2「つ…つまり、どういうことなのだ?」

アライキング・ボス「矛盾してるように見えて、実は森の中よりも、敵の本拠地…つまり人里が、一番安全なのだ!」

アライキング・ボス「銃さえなければ、ヒトなんて烏合の衆なのだ!」

アライさん3「まさか、これから…人里に行くのか!?」

アライキング・ボス「その通りなのだ!まずは集落を1つ、乗っ取るのだぁ!」



~森の近くの村~

のどかな田舎の夕方。
農家の老夫婦が畑仕事を終え、麦茶を飲んでいた。

老人「ふぅ~、今年はいいトウモロコシができたのー」

老婆「そうじゃの。ふふ、東京の息子に送ったら喜ぶかのう」

老人「ばーさんや、あいつはもうそんなトシじゃねえ。トウモロコシなんかよりいーもんいっぱい食っとる」

老婆「…しばらく便りも寄越さんで、なにしとるんかのう」

老人「寂しいのう…元気にしとりゃいいんじゃが」

老婆「さ、お風呂沸きましたよ。お入んなさい爺さんや」

老人「おお、じゃあひとっ風呂浴びるかのう!」

……

老人は、風呂に浸かる。

老人「ふぅ…極楽じゃわい」カポーン

老人「このひとっ風呂が、腰の痛みに効くんじゃよな~。ふぅ~…」

ギャー!ワー!

老人「ん?…婆さんの声…?」

老人「ばーさん?どうした!」ザパァ

老人は、ろくに服も着ずに居間へ駆けつけた。

老人「ばーさん!」ガラッ

居間にいたのは。

アライさん1「ここは居心地良さそうなのだ!」

アライさん2「お野菜美味しいのだ!黄色いツブツブが甘くて美味しいのだ!」モグモグ

アライさん3「たくさん食べるのだー!」モグモグ

アライちゃん1「なのだー!」ゴロンゴロン

アライちゃん2「ひろくてきもちいのだー!」ゴロンゴロン

アライちゃん3「かいてきなのだー」ノンビリ

老婆「」グッタリ

老人「ば…ばーさん!お前らばーさんに何をした!」

アライさん1「アライさん達がご飯食べてたら、こいつが襲いかかってきたのだ!だからやっつけたのだ!」

アライさん2「正当防衛なのだ!」

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん2「せーちょーぼーえーなのだ!」ヨチヨチ

老人「ぬっ…ぬがあああ!殺してやるうぅ!」バッ

老人は、鉈と鎌を持って飛びかかった。

アライさん1「たっくる!」ドガァ

老人「ぎゃっ!アッ痛ッだだーッ腰が!腰がグギっと!」ドテッ

アライさん2「弱いのだ!こいつもやっつけるのだ!」ズイッ

アライさん2は、畑を耕す鍬を持っていた。

アライさん3「正義の鉄槌なのだ!」ズイッ

アライさん3は、シャベルを持っていた。

アライさん2「のだぁ!」ズガァ

アライさん3「のだぁ!」ズブシャ

アライさん1「なのだぁ!」ドグシャ

うわぁ……腹立つなぁ……



老人「」

老婆「」

老人と老婆は血塗れになり、ピクリとも動かなかった。

アライさん1「敵を倒したのだ!」

アライさん2「なんだか強くなった気がするのだ!」ピカー

アライさん3「正義は勝つのだ!」

アライちゃん1「おかーしゃんちゅよいのだー!」キャッキャッ

アライちゃん2「これでのんびりできるのだー!」ピョンピョン

アライちゃん3「わるいやつはやっちゅけたのら!このおうちはもうあんぜんなのらぁ!」ワイワイ

アライさん1「まだなのだ。死体はほっとくと臭くなるのだ。どかすのだ」ズルズル

アライさん2「あのゴミ捨て場に捨てるのだぁ」ズルズル

アライさん3「ポイなのだ!」

老人と老婆は、牛糞の肥溜めに投げ捨てられる。
老夫婦は牛の糞と藁の中に沈んでいった。

襲われたのはこの家屋だけだろうか。
違う。

悲鳴とアライさんの声は、村のあちこちから聞こえていた。



夜が明けた。

鶏が鳴くより早くから、アライさん達の声が聞こえていた。

「ヒトに勝ったのだぁ!」

「残ったやつらもみんな逃げていったのだぁ!」

「大勝利なのだぁ!」

「アライさんにお任せなのだぁ!」

「お野菜が美味しいのだ!」

「こっちの鳥も美味しいのだ!」



木々が立ち並ぶ夜道を、村から逃げていく人々が歩いていた。
20人程だろうか。

子供「うえーん!」シクシク

青年「…もう警察に電話したからな。しかし、なんてことだ…くそっ…」スタスタ

年配女性「アライさんのせいで…父ちゃんも、母ちゃんも…」スタスタ

その時。

子供「あうっ!」ドガァ

青年「!?ど、どうした!」タタッ

子供の頭に、小さな岩がぶつかったのである。

「逃がさないのだ!」ガサッ

「助けは呼ばせないのだ!」ガサッ

青年「あ…あ…」

アライキング・ボス「お前達が悪いのだ!」ブンッ

青年「ぎゃっ!」ドサッ

また一人。また一人。
岩にぶつかり、倒れていく。

アライキング・ボス「お前達が先に、何も悪いことしてないアライさんを殺したのだ!これはその報いなのだ!」ブンッ



村から逃れたものは、誰一人いなかった。



翌日。

村ひとつがアライさんに襲撃されたニュースは、全国で大々的に報じられた。

官邸も、フレンズ省も、特定有害駆除対象フレンズ根絶委員会も大騒ぎだ。


職員「か、会長!奴ら、どうするのですか!?」

会長「根絶やしにするのです」

大臣「皆殺しなのです」

職員「一体どうやって!?今までだって、ずっと駆除活動してきたのに、こんな調子だったじゃないですか!」

大臣「それは、この害獣が…人の命までは脅かさない存在だったからなのです」

職員「え…」

大臣「たった今、特定有害駆除対象フレンズ達への警戒レベルに上がったのです」

職員「警戒レベル…?」

大臣「内閣総理大臣が承認したのです。特定有害駆除対象フレンズの活動が、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態…だと」

職員「…まさか」


大臣「日本を…」



大臣「武力をもって防衛しなくてはならない緊急事態なのです」






アライさん一行の行動は無駄に早かった。
村に追っ手が来るとふんで、次は隣町…
比較的、都会と呼べる街への襲撃を始めていた。

アライキング・ボス「制圧した場所に留まっていても、戦況は有利にならないのだ!」タタタタ

アライさん1「次は、もっと賑やかな街を襲うのだ!」タタタタ

アライさん2「天下を取るのだ!」タタタタ

アライさん3「ヒトに勝って、平和を手にするのだ!」タタタタ

アライキング・ボス「大地は誰のものでもないのだ!ヒトのものじゃないのだ!だからアライさん達のものにするのだ!」タタタタ

アライさん1「街が見えてきたのだ!早速襲うのだ!」タタタタ

アライキング・ボス「待つのだ。ヒトは昼間しか動かないのだ。アライさん達は昼間は隠れて、夜に襲撃するのだ」

アライさん2「隠れるって…どこに隠れるのだ?」

アライキング・ボス「ふんぬ!」ガゴン

アライキング・ボスは、道具を使ってマンホールを開ける。

アライさん1「地面に穴が空いたのだ!」

アライさん2「これは何なのだ?」

アライキング・ボス「下水道なのだ。ヒトはこの中に飲み水を蓄えているのだ。昼はここで寝て、夜になったら外へ出るのだ!」

アライさん1&2「「完璧な作戦なのだぁ!」」

アライキング・ボス「早速隠れるのだ!」ゴソゴソ

先頭のボスが、マンホールに降りる。

アライさん1「飲み水があるのか!」ゴソゴソ

アライさん2「うっ…臭いのだ。本当に飲み水があるのか?」ゴソゴソ

後を追う大量のアライさん達が、マンホールに隠れていく。

くそ。
いきなり凄まじいものを見たせいで、ボスがマンホールに隠れるのをみすみす見逃してしまった。

まさか、アライ狩りにいく前に、街中でこいつらを見ることになるとは。

だが、今のこのタイミングは、決して悪いタイミングではない。

マンホールに入ったのは、ボスとその取り巻き数匹程度。

残りの奴ら…何匹いるんだ?あれ…
千匹近く、いやそれ以上いるかもしれん…
とにかく、後ろの奴らはボスに従っているだけとみた。

つまり、今このタイミングでボスとその部下を分断すれば、
通信手段のない奴らの計画は総崩れというわけだ。

弾は百発はある。
効果は十分だ。

ここは森の中じゃないが、知ったことか。
俺は建物の窓から身を乗りだし、12連射エアライフルをマンホール目掛けて撃った。

アライさん3「の゛あ゛っ!」バタッ

アライさん4「がびゅっ!」ドサッ

アライさん5「ぐぎぇっ!」ドチャッ

アライさん6「のぎゃああっ!!」バタッ

アライさん7「ごぶっ!」ドサッ

アライさん8「ぎびいぃっ!」ドサッ

アライさん9「!?」

アライさん10「な、何なのだ!?」

アライさん11「じ…銃!?そんな、音がしなかったのだ!銃はパーンって音が鳴るのだ!」キョロキョロ

音がしてたまるか。

俺が持つ銃は、サイレンサー付きエアライフル。
威力も射程も犠牲にして、無音という武器を手にした兵器だ。

アライさん12「に、逃げるのだぁ!」ザワザワ

アライさん13「逃げるって、どこに!」

アライさん14「マンホールに入ればいいのだぁ!」サッ

させるか。
俺は、『マンホールに入ろうとした奴』だけを単発で撃つ。

アライさん14「ぐぎゃああっ!」バタッ

アライさん12「ど、どうすればいいのだ!」

アライさん達は大慌てだ。
今のうちに、俺は携帯電話を出し、この状況を警察に通報する。
Googleマップで番地まで調べたからな。奴らの位置はこれで、防衛省まで届くことだろうよ。

アライさん13「ボスに聞くのだ!」

アライさん15「ボスはマンホールに入ったのだ!」

アライさん16「ボス、出て来てほしいのだ、ボス…」スタスタ

また一匹、マンホールに近付いた。
そこだ!
俺は再び引き金を引く。

アライさん16「ぎゃぐうぅ!」バタッ

アライさん17「ひいぃっ!!」ザワザワ

アライさん16「ああああっ!あ、アライさんのお腹が、いだいのだあああっ!」ゴロンゴロン

副ボスアライさん1「慌てるんじゃないのだ!こういう時、敵は高いところに…」

む、副ボスか。
俺は偉そうに喋る奴の脳天を照準に捉え、5連発放った。

副ボスアライさん1「おごべっ!」ドサッ

アライさん18「ひぃっ…!」

アライさん19「あ、あの建物に逃げるのだあああっ!!」タターッ

アライさん達は、その場から散り散りになった。

何匹かは、こっちの建物に向かってやってくる。
ドアに鍵はかけたが、いつ蹴破ってくるか…。



アライさん達は、完全にその場から霧散した。
建物に閉じ籠っている者もいるが、千匹以上は来た道を戻っていったようだ。


ふぅ…これでいい。
今の俺にできるベストな結果だ。
奴らを司令塔から分断してやった。
ともあれば、奴ら雑魚どもを片付けるのは難しくない。

さて、問題は、生き残った司令塔。
奴は今、どこにいるだろうか?
そこのマンホールから顔を出してくれれば、ブチ抜いてやるところだが…。

何か「志村ー!」みたいなフラグに見える

俺はしばらくマンホールと対峙する。



1時間経っても、出てこない。
というか、マンホールがピクリとも動かない。
奴はもうこの場にはいないのか、それとも俺が去るのを待っているのか。

…いや、もういないだろう。
もうこの場にいてもしょうがない。
俺はドアを開ける。

アライさん19「あ」

アライさん20「あ」

アライさん21「ヒト…なのだ」

おやおや、ここに逃げ込んでたのか。10匹はいるか。
俺はすかさずエアライフルを単発で撃つ。

アライさん19「ぐびぃっ!」ブシュウゥ

アライさん20「ひ、ひいぃっ!」



アライさん29「」グチャ

さて、これで奴らの戦力は分断した。
どう出るかな。



作戦がおじゃんになったアライさん達。
あらかじめ取り決めておいた「集合場所」…
奪った村へ、集まっていた。

アライさん30「はぁ、はぁ…なんとか逃げてこられたのだ………」ゼェゼェ

アライさん31「つ、次は、どうすればいいのだ?」ハァハァ

アライさん32「ボスはどこなのだ?」ハァハァ

アライキング・ボス「ここなのだ」

アライさん30「ボ、ボス…!」

アライキング・ボス「ヒト達…まさかこんなに早く、こっちの居場所を察知してくるなんて…驚いたのだ」

アライさん31「次の作戦はどうするのだ!?」

アライキング・ボス「…」

実際のところ、マンホールに隠れて夜襲する作戦をハンターに潰されたのは、大痛手であった。

アライキング・ボス「…森に逃げ込む、わけにはいかないのだ。何としても、街中に陣取らないと、この戦いは勝てないのだ」

アライさん30「次はどうするのだ?」

アライキング・ボス「…次は地下鉄から潜入するのだ」

アライさん31「チカテツ?なんなのだそれ?」

アライキング・ボス「ヒトが地面の下を通るための穴なのだ。地上の道は狭いから、ヒトは地下に穴を開けて、そこを歩いていくのだ」



この街は、街外れへと続く地下鉄がある。
地下鉄がある時点で結構な都会なわけだが、
今はもう使われていない路線もあるようだ。

アライキング・ボス達は、通気口から潜入し、地下鉄への侵入へ成功した。

アライキング・ボス「ぶはぁ!」ストン

アライさん30「凄いのだ!今の通り道は何なのだ?」スタスタ

アライキング・ボス「地下鉄に閉じ込められた人が脱出するための抜け穴なのだ」スタスタ

アライさん31「ボスは賢いのだ!」スタスタ

一行は、地下鉄の線路を進んでいく。
数百匹のアライさんが一列になって行進する様は凄まじいものだった。

そのうち、ガタンガタンと音がする。

アライさん30「?なんの音なのだ?」スタスタ

アライキング・ボス「隠れるのだ!線路からどくのだ!列車が来るのだ!」サッ

アライさん31「列車って何なのだ?」スタスタ

アライキング・ボス「大きな蛇なのだ。ヒトのペットで、ヒトを飲み込んで運ぶのだ。すごく速いのだ」

アライキング・ボス「後ろの奴に伝えるのだ!壁にくっつくのだ!」

アライさん30「壁にくっつくのだ!」サッ

アライさん31「壁にくっつくのだ!」サッ

アライさん32「壁に………」サッ



アライさん480「壁がべとべとくっつくらしいのだ」

アライさん481「壁にひっつくと汚いのだ」

アライさん482「じゃあ壁にひっついちゃ駄目なのだ」サッ

アライさん480「なのだ!」サッ

アライさんの数匹が、線路へ降りる。

ガタンガタン…

アライさん480「ん?何の音なのだ?」

列車「プアアアアアアアアアアアアアアアン」ガタンガタン

アライさん480「ごばっ」グチャ

アライさん481「」ベチャ

アライさん482「」ドグチャアアァ



地下鉄を抜けるころには、アライさんの数は半分になっていた。

こうして、アライさんの群れは都市への侵入に成功したようだ。



夜…

ニュースキャスター「ご覧ください…街は、アライさんの襲撃に備えて厳重警戒体制をとっています」

アライさん30「夜が来たのだ!」バッ

アライさん31「天下を取るのだ!」バッ

ニュースキャスター「う、うわあぁぁ!」

アライさん30「のだぁぁ!」ドゴォ

ニュースキャスター「ぐふっ!」


ついに、アライさんによる人類への反抗が始まった。

つづく

~オマケ~

なにも、アライさんはひとつの森に固まっているわけではない。
日本のあちこちに、生息地がばらけている。

だが、アライキング・ボスの噂は、ヒトのニュース番組の影響だろうか…
日本中のアライさんに伝わっていた。

アライさん1「凄いのだ!今、すごく強いアライさんが、ヒトをやっつけてるらしいのだ!」

アライさん2「ホントなのか?凄いのだ!それじゃあ、ヒトをやっつけるチャンスなのだ!」

アライさん3「アライさん達も、こうしちゃいられないのだ!天下を取るのだ!」タタッ

アライさん4「のだああああ!」タタッ

アライしゃん「なのだー!」トテトテ

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ



全国で、アライさんによるヒト襲撃事件は、多発的に発生した。
ニュースに映った400ナンボという数ではない。
万単位のアライさんが、一斉に人類への反抗を始めたのだった。

これにより、国の戦力は分散させられることになる…。

■■■■■■■■■■■■■

~メモ~

実験1は成功。
彼女と教授の命は助かった。

全身の80%を機械化しても、サンドスターは維持された。
心臓でなければ、やはり脳だろうか?

■■■■■■■■■■■■■

つづく

襲撃されたのは、日中にアライさん達が襲撃を企てたのは別の街である。

ニュースキャスターは「厳重警戒体制をとっている」と言ったが、実際のところ、その言葉には欺瞞がある。

カメラの周りはいかにも厳重警戒体制をとっているかのような雰囲気だが、
実際のところ、それ以外の地区に住む人々は無警戒であった。

何故人々は警戒しないのか…?
それは、アライさんが「見下されているから」である。

皆さんは、「ゴキブリがたくさん集まっている」という理由で、会社が休みになったり、外出を控えたことはあるだろうか。

おそらく無いであろう。
人々のアライさんに対する認識は、その程度であった。

続きはまた夜



~アライさんが制圧した村~

アライさんが都市を襲撃中、アライちゃんやアライしゃん等の子供達は、制圧した村に居座っていた。

見張り等の少数の成体アライさんの他は、多くが子供達である。

さすがに乳児には、その母親がついているようである。

村の公園では、アライさんの子供達が遊び回っていた。

アライしゃん1「あははは!これおもしろいのだぁ!」ブラーンブラーン

アライしゃん1は、ブランコに乗って遊んでいる。

アライしゃん2「はやくかわるのだぁ!あらいしゃんものりたいのだぁ!」ワクワク

アライしゃん1「やなのだ!もっとあそぶのだー!あはははは!たのしーのだ!」ブラーンブラーン

アライしゃん2「むぅー!いつまでやってるのだー!」

アライしゃん3「ぽいなのだー!」ポーイ

アライしゃん3が、サッカーボールを投げた。

アライしゃん4「きゃっちなのだ!」ガシッ

アライしゃん4「けるのだー!」ポーン

アライしゃん5「わぁっ!どことばしてるのだー!」タタタタ

アライしゃん4「あははははっはは!」

アライしゃん達が転がして遊んでいるボールには、乾いた血の痕がついていた。

アライちゃん1「これなんなのだー?」

アライちゃん1は、跳び縄に興味があるようだ。
大人数で跳ぶ用のやつだ。

アライちゃん2「なにしてあそぶのだー?」

アライちゃん3「わかんないのだー」ツンツン

四つん這いのアライちゃん達では、正しい遊び方を知っていても、遊ぶことはできないだろう。

アライちゃん4「きれいなのみつけたのだー!」

家屋の中を探索していたアライちゃん4は、血まみれのタンスの引き出しから花札を見つけた。
花札は、古びた誕生日プレゼントの包装紙の上に置いてあった。

アライちゃん5「わー!きれいなのだー!ほしいのだー!」ヒョイ

アライちゃん5は、花札を1枚取った。

アライちゃん4「ああっ!あらいしゃんのものなのに!かってにとるなぁ!」

アライちゃん6「あらいしゃんもほしいのだー!」ヒョイ

アライちゃん7「あらいしゃんはこれをもらうのだー!」ヒョイ

アライちゃん4「とるなぁ~!」

この花札は、もう揃うことはないだろう。

アライちゃん達は、次々と村の子供達の遺品を持ち出し、思い思いに遊んでいるようだ。

アライちゃん8「ん?ここは何なのだ?」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん8が辿り着いたのは、畑の近くの牛小屋である。

アライさん1「なんなのだこれ?くさいのだ」

アライしゃん1「あけるのだー」ガチャ

ブランコ遊びに飽きたアライしゃん1は、牛小屋の扉を開けた。
そこには…

雄牛「ウモォ~」

アライしゃん1「けものなのだ」

まずは、雄牛が一頭いた。品種はホルスタインだ。

ホルスタインのフレンズ「ひ…ひぃ…」ガクガクブルブル

さらに、牛と一緒にホルスタインのフレンズがいた。

※参考画像: https://i.imgur.com/6jWgVZR.jpg

そして、彼女の子供と思わしき、小さなフレンズが3人いた。

ホルスタインちゃん1「ぃ…ゃ…」プルプル

ホルスタインちゃん2「っ…」プルプル

ホルスタインちゃん3「ままぁ…」ガクガクブルブル

ホルスタインのフレンズ(以後ホルスタイン)「た…食べないで…ください…」ガクガクブルブル

アライさん1「?何言ってるのだ、フレンズなんて食べないのだ」

アライさん2「じゃあこっちのけものはどうするのだ?」

雄牛「ウモォ~」

雄牛とはいえ、牛は大変有益な家畜である。
田畑を耕すことができるし、牛糞は発酵・殺菌することで、栄養価の高い堆肥となる。
畑の近くにいることから察するに、トラクターと共に田畑を耕しているのであろう。

アライさん1「食べるのだ!」

だが、アライさんに農耕の知恵などない。

アライさん3「チビ達と一緒に食べるのだ!」キラン

アライさん3は、包丁を雄牛へ振りかざす。

ホルスタイン「はなおさんを食べないでぇーーっ!」ドゴォ

アライさん3「うぎゃああぁ!」バギメギ

背中にタックルを受けたアライさん3は、きりもみ回転しながら吹っ飛び、地面に叩き付けられた。

アライさん3「うぁ、ああああああび!せなかがいたいのだああああ!足がしびれるのだあぁ!」ジョロロロ

アライさん3は背中の痛みを訴えている。
失禁していることに気づいていないようであり、その脚はピクリとも動かない。

ホルスタイン「はぁ…はぁ………」

アライさん1「こ、こいつ、強いのだ…!」

アライさん2「こんな手強いやつがいたのか…」

アライさんの身体能力は人間の少女程度。
それは、アライグマの身体能力が基本的にヒト以下であるため、ヒトの力まで底上げされているためである。

だがホルスタインは牛のフレンズ。
人の力などゆうに超える。
フレンズになっても尚そのパワーは残っており、タイマンではアライさんなど相手にならない程の強さがあるのだ。

だが。
それはタイマンで、素手で戦ったときの話である。

アライさん1「こいつ、アライさん達を攻撃したのだ!」スチャ

鋭く大きな農具を構えるアライさん1。

アライさん2「アライさんたちの敵なのだ!アライさん達の平和を脅かす悪のフレンズなのだ!」スチャ

アライさん4「こんな悪い奴、フレンズなんて呼べないのだ」スチャ

アライさん5「ヒトの味方する奴は許さないのだ」スチャ

「倒すのだ!」「やっつけるのだ!」「力を合わせるのだ!」「武器を持つのだ!」

ホルスタイン「…」シュルシュル

ホルスタインは、雄牛の鼻輪につけられた紐を外し、自由にする。

ホルスタイン「はなおさん、子供達と一緒に逃げてください。ここは私が食い止めます」

ホルスタインちゃん1「ままー!」ビエエエン

ホルスタインちゃん2「ままもいっしょににげようよぉ!」ビエエエン

ホルスタインちゃん3「だれか…たすけてぇ…」ガクガクブルブル

雄牛「ブモオオォォォ!」ドドドドド

ホルスタイン「はなおさんっ!」

だが、雄牛はアライさん達の方へ向かって走り出した。

雄牛「ブモォ!」ドゴォ

アライさん1「ぐひぃっ!」ドサァ

アライさん1は、雄牛のタックルを農具で防御するも、大きく吹っ飛ばされた。

雄牛「ブモォ!」ドゴォ

アライさん2「ぐぼげえぇ!」ガハァ

雄牛の後ろ蹴りを腹に食らったアライさん2は、大量に吐血した。

雄牛「ブモオオォォォ!」ドドドドド

雄牛はなおもアライさん達へ突撃を繰り返す。

だが…

アライさん5「よくも仲間を!」ドガァ

アライさん5は、突っ込んでくる雄牛の額へバールを振りかざした。

雄牛「ブモッ…!」ガクッ

雄牛はガクリと膝をついた。

アライさん5「今なのだ!たあ~!」ドガドガ

アライさん6「仲間を痛め付けた仕返しなのだ!怪獣め!」ドガドガ

アライさん7「正義の鉄槌なのだ!」ガスガス

アライさん達は、雄牛の頭めがけて農具を叩き付ける。

ホルスタイン「嫌ァああああああぁぁァァっ!!!」ダッ

ホルスタインは、子供を連れて逃げることができなかった。

ホルスタインは、雄牛を見捨てて小さな命と共に逃げ延びる選択肢を選べなかった。

ホルスタインは、懸命な判断ができなかった。

ホルスタイン「はなおさんを!ころさないでえぇーーっ!」ダッ

アライさん6「ひえ!」サッ

アライさん7「き、きたのだ!」サッ

アライさん5「ごぶぎぇえええっ!」ドボギャアアァ

ホルスタインの捨て身タックルをくらったアライさん5は、体が変な風に折れ曲がった。

ホルスタインちゃん1「まま!がんばってぇ~っ!」

ホルスタインちゃん2「まけないでぇ~っ!」

ホルスタインちゃん3「わるいやつをやっつけてぇ!」

ホルスタインの子供達もまた、時間を稼いでくれている親を見捨てて逃げ出すことができなかった。

ホルスタイン「だあぁーっ!」ドガァ

アライさん1「や、やめるのだ!こっちは怪我人なのだ!」ヨロヨロ

ホルスタイン「だったら…この村から出ていってください!もうはなおさんを傷つけないで!」ガスゥ

アライさん1「ぎゃふぅっ!」ゴロンゴロン

ホルスタイン「はぁ…はぁ…」

アライさん1「うぅ…痛いのだ…」

村のみんなを殺した憎き敵。
いつも野菜泥棒をして、みんなを困らせる悪い奴。
雄牛の命を奪おうとする敵。

そんなアライさん相手であっても、ホルスタインは本気でアライさん達を殺すことができずにいた。

最初のタックルでアライさん3の脊髄をブチ折ったものの、
それ以降のホルスタインの攻撃は、アライさんに重傷を与えることができずにいた。

ホルスタイン「もう傷つきたくなかったら!出ていってください!」

ホルスタインは、そう訴え続けるばかりだった。

アライさん6「はぁはぁ…こうなったら、弱い奴から倒すのだ!」ダッ

ホルスタインちゃん1「ひっ!」

ホルスタインちゃん2「や、やあぁ!」

ホルスタイン「や、やめてぇっ!」タタッ

ホルスタインが子供達のところへ駆け付けようとした、その時。

アライさん7「足元がお留守なのだ!」ドガァッ

ホルスタイン「きゃあああっ!」ドサァ

アライさん7のバールが、ホルスタインの膝を打った。

アライさん7「転んだのだ!今なのだ!」ドガァドガァ

アライさん8「たぁ~!」ガスガス

ホルスタイン「きゃああっ!」

アライさん達は、ホルスタインの手足へ何度も農具を打ち付けた。

ホルスタイン「う…ぁ…っ」ブルブル

ホルスタインの手足の骨は、へし折れてしまった。

雄牛「ブ…ブモォ…」

雄牛は縄できつく手足を縛られていた。
アライさん達は、どこで縄の縛り方を学習したのだろうか…

アライさん6「こいつは、今殺したら鮮度が落ちてもったいないのだ。後で殺すのだ」

ホルスタインちゃん1「ひぃ…!」ブルブル

ホルスタインちゃん2「あぁ…」ブルブル

ホルスタインちゃん3「ま、ママ…!」

ホルスタイン「み…んな…お願い…ママとはなおさんはもういいから、みんなで…逃げて…」

ホルスタインちゃん1「や…やだぁ…!」ヨチヨチヨチヨチ

ホルスタインちゃん2「ままぁ…やだよぉ…!」ヨチヨチヨチヨチ

ホルスタインの子供達は、四つん這いで母親に近づく。

ホルスタインちゃん3「おねがい…あらいしゃんたち…もう…やめて…」

アライしゃん1「つかまえたのだ!」ガシッ

ホルスタインちゃん1「ひっ!」

アライしゃん2「てきのざんとーなのだ!みんなでやっつけるのだ!」ガシッ

ホルスタインちゃん2「は…はな…ちて…!」プルプル

アライしゃん1「さっきのぶらんこ、もっとたのしいあそびかたおもいついたのだ!」

アライしゃん2「どうしゅるのだ?」

アライしゃん1「こうやって、こいつをのっけるのだ」ヒョイ

ホルスタインちゃん1「な…なにしゅるの…やめて…」プルプル

ホルスタインちゃん1は、ブランコへ横向きに乗せられる。

アライしゃん1「そして、こーやって、ぶらぶらさせるのだ!」ブンッブンッ

ホルスタインちゃん1「い、いやああぁ!」ギュー

ブランコは勢いよく揺れていく。

アライしゃん1「そして、なげるのだぁ!」ブンッ

アライしゃん1は、ブランコからホルスタインちゃん1を投げた。

ホルスタインちゃん1「きゃあああああぁあっ!」ポーン

ホルスタインちゃん1は、空中へ投げ出された。

ホルスタインちゃん1「んぎぃっ!」ドシャ

そして落下し、地面をゴロゴロと転がった。

ホルスタインちゃん1「あ…ぅ…い…だい…」ピクピク

アライしゃん2「おもしろいのだー!あらいしゃんもやるのだぁ!」ガシッ

アライしゃん2は、再びホルスタインちゃん1をブランコへ乗っけた。

アライしゃん3「あらいしゃんも、ひもとぼーるのあそびかた、おもいついたのだぁ!」グルグル

ホルスタインちゃん2「きゃああぁ!」

ホルスタインちゃん2は、跳び縄で縛られてしまった。

アライしゃん3「まとあてなのだ!おなかならおはなかーど1まい、おかおなら3まいなのだぁ!」

ホルスタインちゃん2「や…やめて…」プルプル

アライしゃん4「たのしそーなのだぁ!えい!」ボンッ

アライしゃん4は、ボールを蹴った。

ホルスタインちゃん2「ぎゃぐぅ!」ドゴォ

ボールはホルスタインちゃん2の腹へ当たった。

アライしゃん4「おはなかーど1まいなのだぁ!」キャッキャッ

アライしゃん5「たのしそーなのだ!あらいしゃんもけるのだぁ!」ボンッ

ホルスタインちゃん3「ひ…ひぃ…」ブルブル

アライしゃん6「あらいしゃんも、ぼすみたいにつよくなりたいのだ!とっくんするのだ!」

アライしゃん6「たっくるなのだ!たぁ~!」ドゴォ

ホルスタインちゃん3「いだいっ…!」ドサァ

アライしゃん7「ふははっは!さかさまにもつのだ!」ガシッ

アライしゃん8「うしろからささえるのだ!」ガシッ

ホルスタインちゃん3「も、もう、やめて…!」ジタバタ

ホルスタインちゃん3は、逆さまに抱えあげられた。

アライしゃん7「くらえ!ぱいるどらいなーなのだぁ!」ドガンッ

ホルスタインちゃん3「ぐぎゅっ!」ドガァ

アライしゃん7は、ホルスタインちゃん3の頭を地面に叩き付けた。
体重の乗ったパイルドライバーである。

ホルスタインちゃん3「ああああああああああ!いだい!いだいいいいいいぃぃっ!」バタバタ

アライしゃん9「かっこいいのだぁ!あらいしゃんも、ぱいるどらいばーするのだぁ!」ガシィ

再び、ホルスタインちゃん3は…。



所変わって、ここは成体のアライさん達に襲撃された都市。

住人達は大パニックになっていた。

~ホームセンター~

アライキング・ボス「ここは武器屋なのだ!ここで武器を調達するのだぁ!」

アライさん30「たくさん武器があるのだ!」

アライさん31「どれにするか迷うのだ~」

アライさん達は、バール等の道具を物色している。

客1「うわ、アライさんだ」

客2「やばくね?帰ろ帰ろ」ササッ

店員「も、もしもし警察ですか!?あの…」

アライキング・ボス「のだぁ!」ドガァ

アライキング・ボスは、店員をバールで殴り付けた。

店員「」ドサァ

アライキング・ボス「あまり時間がないのだ!適当に1個持ったらさっさと出るのだ!」

数百のアライさん達は、適当な武器?を持つと、ホームセンターを後にした。

人々をなぎ倒して進むアライさんの群れは、都市を横切っていく。

警官1「あれがアライさんの群れか…すごい数だ…!」

警官2「くそ、俺達は市民の安全を確保するのが優先だ!」タタッ

警官達は、『アライさん達への攻め』ではなく、『人々の守り』の体制をとった。

アライさんを1匹殺すより、人間の命を1人救う方がずっと大事だとの判断だ。

住宅地を中心に警官を配備し、アライさんが近づかないように拳銃を抜く。

警官1「300…いや、400はいるか!?」

トランシーバー『ザザ…こちら本部!街の外から、さらに大勢のアライさんが来ている!』

警官2「何だと!?」

都市を襲撃しているのは、地下鉄から侵入したアライキング・ボス率いる500匹だけで無かった。


アライさん501「のだのだのだー!」ズドドドドドドド

アライさん601「ボスに加勢に来たのだ!」ズドドドドドドド

アライさん701「波状攻撃なのだー!」ズドドドドドドド

さらに大勢のアライさん達が、全く別方向から、次々と都市への侵攻を開始したのだった。



住人1「いやああああ!」タタッ

住人2「逃げろー!」タタッ

変な男1「はーーーっははっはは!それ見たことか!お前達がアライさんを虐げた報いだ!」ゲラゲラ

変な男2「あんなに可愛らしいアライさんを!殺して食ったお前達に、天誅が下ったんだ!」ヘラヘラ

変な男3「アラ虐、死すべし!!!!ざまーみろ社会!アライさんをのけものにしたからだ!!」ケタケタ

彼らは笑っている。自分たちの住む都市が破壊されていくというのに、一体何がおかしいというのであろうか。
彼らの頭であろうか。

アライキング・ボス「むぅ…おかしいのだ…確かこの辺なのだ…」タタタタ

アライさん30「あ!人間なのだ!人間は倒すのだ!」ダダッ

アライさん31「成敗なのだ!」ダダッ

アライさん達は、変な男達を見つけ、襲いかかる。

変な男1「いえいえ、我々はアライさんの味方です。ドーナツあげますよ!」ポイ

変な男たちは、アライさん達へたくさんのドーナツを投げる。

アライさん30「食べ物なのだー!」モグモグ

アライさん31「美味しいのだー!」モグモグ

アライキング・ボス「待つのだ!毒があるかもしれないのだ!」

変な男2「無いよ。もぐもぐ」モグモグ

変な男3「アライさん達!一緒にアライさんを虐げるこの社会をぶち壊してやりましょうよ!」

アライキング・ボス「むぅ…。もぐもぐ、平気そうなのだ。よろしい、お前達はアライさん達の家来にしてやるのだ」モグモグ

変な男1~3「ありがたき幸せーッ!」

変な男1「して、目的地はどこですか?」

アライキング・ボス「保健所なのだ!」

変な男2「保健所ですね、あっちです!」



警官達は、応援を要請するも、住宅地を防衛するのに精一杯であった。

銃声と、アライさん達の悲鳴。
アライさん達の怒声と、警官達の呻き声が、夜の都市のそこら中から響き渡っていた。



~保健所~

アライキング・ボス「ここが保健所か!」

アライさん30「入るのだ!…あれ、開かないのだ!」ガチャガチャ

アライさん31「これじゃ入れないのだ!」ガチャガチャ

保健所の扉は鍵が閉まっていた。

アライキング・ボス「どくのだ、お前達の力じゃ、この扉は開けられないのだ」ズイッ

アライさん30「ボ、ボス!」

アライキング・ボス「野生…解放!」ギイイイィン

アライキング・ボスの目が発光する。
サンドスターが励起し、ボスの体の周りでけものプラズムの光が眩く走る。

アライさん31「な、何なのだこれ?」

アライキング・ボス「レベルを上げれば、お前達もこれができるようになるのだ…たあ~!」ドガァ

アライキング・ボスは、バールでドアを殴り付けた。
施錠されたドアは鍵ごと吹き飛んだ。

アライキング・ボス「行くのだ!捕らえられた仲間を救出するのだ!」ドタドタドタドタ

アライさん30「天下を取るのだ!」ドタドタドタドタ

アライさん31「困難は群れで分けあうのだ!」ドタドタドタドタ

アライさん32「愛と平和のために、戦うのだぁ!」ドタドタドタドタ



しばらくして、アライさんの群れが保健所から出てきた。

その数は、入ったときよりも増していた。
…保健所に捕らわれていた大勢のアライさんが救助され、戦列に加わったのであった…。



軍隊は動かないのだろうか?

違う。
只今、どう動かすのがベストか、作戦を練り準備をしているのである。

敵はそもそも本当にアライさんだけなのか?
軍隊を出払わせて、余力をなくした所につけこもうとする何者かの攻撃ではないのか?

日本各地で同時多発的に襲撃するアライさん達へ、どのように戦力を分配するべきか?

どうすれば、軍人達や民間人への危険を最小限に抑えられるか?

どんな道具を、兵器を、準備すべきか?



軍隊は、他国からの侵略攻撃に対するマニュアルは何通りも用意していた。

暴動した市民の鎮圧手段も、幾通りもマニュアルを用意していた。

侵入したテロリストの追い詰め方も、何通りもマニュアルを用意していた。


だが。
万単位のアライさんが、一度に日本中を侵攻してきたときの対処法など、
シミュレーションした事さえなかったのである。



変な男1「この国の中枢、各庁は、こんな感じに点在してます!」トントン

変な男1は、地図の上にマーカーでいくつか赤丸を書く。

変な男2「ここをぶっ壊せば、この国は統率が取れなくなる!アライさん達の勝利ですぜ!」トントン

アライキング・ボス「なるほど…よし、ここからは、戦力を分散させるのだ!」

アライキング・ボス「各隊の隊長には、このアライキング・ボス自ら3年間鍛えた部隊長をつけるのだ!」

部隊長アライさん1「アライさんに、お任せなのだ!」

部隊長アライさん2「天下を取るのだ!」

部隊長アライさん5「みんな!アライさんに続くのだぁぁ!」タタッ

アライさん2051「のだー!」ドタタタタタタ

アライさん2151「のだー!」ドタタタタタタ

アライさん2251「なのだー!」ドタタタタタタ

~フレンズ省本部~

部隊長アライさん1「なはははは!あそこがアライさん達を差別する法律を作った、一番悪いやつらの棲み家らしいのだ!」ドタタタタタタ

アライさん1000「天下を取るのだ!」ドタタタタタタ

アライさん1001「成敗なのだ!」ドタタタタタタ

警官隊員1「ぐっ…う!この数で護れるか!?こちらフレンズ省前!至急応援要請!」

警官隊員2「こっちには銃があるんだ!負けるわけねえ!…なんて、死亡フラグだよな」

警官隊員3「…娘の誕生日、何を買ってやればよかったのかな…」

警官隊員は各地に分散して配備されていた。
フレンズ省を護る警官隊員の数は、アライさんの軍勢よりはるかに劣っていた。

部隊長アライさん1「ふははは、成敗開始なのだ!はああぁぁ…!」キラリ

部隊長アライさん1は、目を輝かされると、音もなく…。







音もなく、首を失った。







部隊長アライさん1「」ブシュウウゥゥ ドサァ

アライさん1000「ぶ、部隊長!?」ドドドドド

アライさん1001「どうしたの…」

アライさん1001「」ブシュウウゥゥ ドサァ

アライさん1001も、音もなく首を失った。



警官隊員1「な、なんだ…?」

アライさん1002「何なのだ!?と、突撃なのだぁ!」ブンブン

アライさん1003「お、お前、その手…!」

アライさん1002「手…?」ブシュウウゥゥ

アライさん1002の手は消えていた。

アライさん1002「ぎっ…ぎゃあああああああっ!!?」ブシュウウゥゥ

「凄いのです」

「こんなに沢山、餌どもが涌いているのです」





アライさん1003「な、何なのだ!?どこなのだ!?」チャキ

アライさん1004「人間から奪った拳銃で、撃ち殺してやるのだ!」チャキ

アライさん1004「」ブシュウウゥゥ ドサァ

音もなく、アライさん1004は頭を失った。

アライさん1005「ま、また!!何なのだあぁ!」



??「もぐもぐ…。やはりレベルの高いアライさんのジビエは、美味いのです」クチャクチャ

アライさん達の前に、少女が立っている。

アライさん1005「だ、誰なのだ!撃ち殺してやるのだ!」パァン

アライさん1005「」ブシュウウゥゥ ドサァ

またしても、アライさん1005は、頭部を失った。

??「もぐもぐ…まずは全員皆殺しなのです」ガリボリ

次第に、街灯に照らされ、少女の姿が見えてくる。

??「その後で、肝臓の美味しいとこだけ…」


会長「捕食してやるのです」バリゴリ

少女は、アライさんの頭を持ちながら、頭蓋骨を噛み砕き、脳髄をすすり食っていた。


アライさん1003「うっ…うわあああぁああああーーーっ!!」

『会長』。

『特定有害駆除対象フレンズ根絶委員会』の会長である。

彼女は、今自分が果たすべき執務を全て部下に押し付け、誰の許可も得ず単身ここへ突っ込んできた。

何のために?
決まっている。
腹を満たすために。


会長「今日は、ディナーの暇もなかったのですが…」フワッ

会長が地面から浮く。

会長「こんなに素敵なディナーを用意してくれて、嬉しいのです」フッ

アライさん1006「う、撃つのだ!拳銃で撃つのだぁ!」パァンパァン

殺傷した警官から奪ったと思わしき拳銃で、アライさんは所構わず上空を撃つ。

真っ暗な闇の中を、無音で飛び回る会長は、誰にも視えず、聴こえなかった。

一匹、また一匹。
アライさん達は、美味しい部位をついばまれて倒れていった。

会長はなぜこんな芸当ができるのか?

それは、彼女がフレンズとなる以前から…
動物であった頃から朝飯前な特技であった。

彼女は『ワシミミズク』のフレンズ。

それは、オオカミと並んでアライグマの個体数を抑える、『天敵』のひとつであった。

会長「やはりアライさんは、美味いのです」バリバリムシャムシャ

アライさん1007「」ブシュウウゥゥ

会長「フレンズになる前から、何度も食ってきた大好物なのです」ガリボリ

アライさん1008「」ドサァ

会長「たまらないのです」バツン

アライさん1009「のぎゃああぁーーーーっ!」ドチャァ

会長「主食なのです」ガブゥ

アライさん1010「」グシャアアァ



~コンビニ前~

アライさん201「お腹減ったのだ…」

アライさん202「あ、食べ物屋さんがあるのだ!」

アライさん203「入るのだ!」ドタドタ

10匹程のアライさんが、コンビニへ押し入る。

店員「むにゃ…いらっひゃいまへ…って、う、うわあぁあ!!」

客3「に、にげろおおぉ!」タタッ

彼らはこんな状況になってまで、何故今まで逃げなかったのだろうか?
あなたがこのコンビニの経営者なら、是非「商品なんかどうでもいいから逃げろ」と言ってあげてほしい。

アライさん201「美味しそうな食べ物がいっぱいあるのだ!」ドサドサ

アライさん達は、籠へパンやお菓子を突っ込んでいく。

アライさん211「たくさんお弁当が手に入ったのだ!さあ行くのだ!」タタッ

アライさん達は、奪った食糧を持って店を出ようとする。

清掃員「待つのだわ、まだお金を払っていないのだが」ガシッ

コンビニ内をモップで清掃していた清掃員が、アライさん201を掴んで止める。

アライさん201「お会計?わけわかんないこと言うんじゃないのだ!」ジタバタ

清掃員「ゴハンを買うには、お金を払わなくちゃいけないのだよ」グイッ

アライさん201「お前らの身勝手なルールを押し付けるんじゃないのだ!森や畑の食べ物は、見つけた奴のものなのだぁ!」

清掃員「それは森に生えてないのだが。工場の職員さんが、一生懸命作ったパンなのだわ」グイイッ

アライさん201「知らないのだ!いいから離すのだ!」グイイッ

清掃員「はぁ…」

清掃員は、ため息をつく。




清掃員「やっぱりアライさんは、害獣なのだ」ブンッ

清掃員は、モップの柄をアライさん201の顔面に叩き込む。

アライさん201「のごばっ!」グシャアアァ

アライさん201の顔面は陥没し、鼻のあったあたりから噴水のように血を吹き出した。

アライさん202「!な、何するのだ!」

清掃員「お前らの気持ちは分かるのだ。タダで食べ物が手に入ったらどんなに楽か」ヒュンッ

アライさん202「ごひゅっ」ゴキィ

モップの柄が、アライさん202の首に横から突き刺さる。
アライさん202は倒れ、起き上がることはなかった。

清掃員「あたし達は美味しいパンを頑張って作ってくれた人に、感謝しなきゃいけないのだ」ドガァ


アライさん203「ごぶぅっ!」グシャ

アライさん203の喉が割れた。

アライさん204「こ、このお!」ブンッ

アライさん204が金属バットを振りかざす。

清掃員「だからお掃除やお仕事を頑張って、恩返ししなくちゃいけないのだ」ブンッ

アライさん204「ぎびいっ!」

背後に回った清掃員から後頭部に突きをくらい、アライさん204は泡を吹いて突っ伏した。

アライさん205「許さないのだ!たあ~!」バッ

清掃員「お金を払うことは、感謝の気持ちのやりとりなのだ」ズグシャ

アライさん205「ぎひぇっ」

モップがアライさん205の耳に叩き込まれる。
アライさん205はひっくり返ってゲロをぶちまけながら、手足をばたつかせた。

206「ひぃ!ま、待った、降参なのd…」

清掃員「人にいっぱい感謝されることをしなきゃ、お金は貰えないのだ」ドズゥ

アライさん206「ごぼぐっ!」ボギィ

アライさん206は口のなかにモップの柄を叩き込まれ、脛椎を破壊された。

アライさん207「降参なのだ!降参…」

清掃員「畑で野菜や小麦を作ってくれた人に、感謝も恩返しもしないお前達は」ズドグゥ

アライさん207「ぎょぶっ…」

アライさん207は、目にモップの柄を突っ込まれ、眼底を割られ脳を破壊された。

清掃員「ヒトの好意にたかるだけのお前たちは」ドズゥ

アライさん208「ぎびゃああぁーっ!ごぶうぅぅっ!」ゴボォ

みぞおちを突かれたアライさん208は、胃を破壊され、とめどなく吐血した。

清掃員「ハエなのだ」ドズゥ

アライさん209「」ドサァ

アライさん209は、左胸を突かれた後、瞬時に心停止した。

アライさん210「あ…あぁ…」ガクガクブルブル

清掃員は、大きな帽子の下から憎悪の目を向けている。

深い憎しみと、悲しみが宿った目だ。
取り返しのつかない絶望を味わい、それを他者へも味わわせんとする、復讐鬼の目。

アライさん210「お…お前……汗のにおいで分かったのだ…」

清掃員「…」ツカツカ

清掃員は、アライさん210へ近付く。

アライさん210「お前も、アライさんと同じ…」

その瞬間、アライさん210の頸動脈にモップの柄が叩き込まれた。

アライさん210「ぐぶふっ…なんで…ながま…な゛の゛に゛…」グタッ

アライさん210は昏倒し、内出血でカエルのように顎の下を膨らませた。

清掃員「…」グイッ

清掃員は、倒れたアライさん達を店の外へ投げ捨てた。

店員「あ…ぁ…」

目の前で行われた殺戮に、身を震わせる店員。
床が血が濡れているが、商品は無事のようだ。

清掃員「申し訳ないのだわ。すぐお掃除するのだった」サッサッ

清掃員はモップで床の血を拭き取る。
店内に、暴力の痕跡は何一つ残っていなかった。



軍隊は、作戦が決まらずにはすぐには動けない。
隊員の命を無駄に失うわけにはいかないからだ。

少なくとも、敵の兵力を知った上で、他の作戦との兼ね合いを考慮して出兵しなくてはいけない。

だが。
今、この状況で。

どんな決断が下されようとも。
そんな作戦が遂行されようとも。

絶対に変わらず、兵を派遣すべき場所があった。

…そこに、可能性があるから。




アライしゃん1「ぶらんこたのしーのだぁ♪」キャッキャッ

ホルスタインちゃん1「あぐぅっ…」




…助けを待つ人が、きっといるから。





アライしゃん4「つぎはあらいしゃんのばん…ん?なんのおとなのだ?」

ホルスタインちゃん2「い…だい…よぉ…」




敵を倒すためではなく。
人命を救助するために。




アライさん1「ん…?あれは何なのだ?」

アライちゃん1「なんかとんでるのらー!」

アライちゃん2「とりかー?」

アライちゃん3「こうもりなのかー?」


アライさんの子供達が巣食うこの村に。


戦闘用ヘリ「」バタバタバタバタ

機銃とヘルファイアを詰んだ戦闘用ヘリ5機と。


装甲車「」ブルルルゥゥン


重機関砲ブローニング・ハイパワーを搭載した、装甲車が7機到着した。

次スレへつづく

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