清太「はいどーも。清太です」 カンタ「カンタです」 (20)

カンタ「二人合わせて清カン隊です」

清太「いやん。てなわけでね、僕らこうして漫才やらせてもらうわけなんですが」

カンタ「珍しい組み合わせだよな」

清太「そうなんですよ。劇場で同時公開させてもらった縁でちょっとやってみないかってことでね」

カンタ「今では大人気の俺たちだけど当時はあんまり騒がれなかったんだぜ」

清太「あの頃はジブリもそれほどね。ただ両方とも今でも色褪せない名作となっております」

カンタ「ちなみにこんなコンビ名だけど俺たち下ネタ大嫌いだからな」

清太「そうそう。たまたま合わせたらゴロいいじゃんってなっただけですから」

カンタ「タマタマこすり合わせたわけじゃないぞ」

清太「やめなさい」

カンタ「……失礼しました」

清太「たしか二人で同時に言って決まったんですよね。清カン隊だ!って。あれは気持ちよかった」

カンタ「性感帯を攻めて同時にイって気持ちよかったわけじゃないぞ」

清太「やめろ!」

カンタ「……すみません」

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清太「僕ね、ラノベの主人公になりたいなあ思って」

カンタ「なんだいきなり」

清太「いや、最近流行っているやないですか。憧れません?」

カンタ「まあ確かに夢だよな」

清太「僕なんか特に辛い人生歩んできてますから本当」

カンタ「そこあまり掘り下げない方がよさそうだな」

清太「妹と二人暮らしでね」

カンタ「自分から言っちゃった。っていうか、え?妹と二人暮らし?」

清太「ええまあ」

カンタ「ちょっと、ラノベの主人公っぽいぞ」

清太「え?そうですか?」

カンタ「現実離れしているって。普段妹と何やってんだ?」

清太「僕が料理するのを妹が手伝ったり」

カンタ「おお、仲良いな」

清太「一緒に海行ったり」

カンタ「いい兄妹じゃんか」

清太「妹の背中流してあげたり」

カンタ「ええ!?」

清太「寝るときは同じ布団で」

カンタ「それは仲良すぎだろ……親はどうしたんだ?」

清太「仕事で海外ですよ」

カンタ「完全にラノベの世界だぞ!」

清太「ああ、ラノベってこういうことなの?」

カンタ「知らずになりたいとか言ってたのか」

清太「情報に疎いもので」

カンタ「あらら。ニュースとかあんま見ない方か」

清太「世間からはじき出された身でね。情報がまあ入ってこない」

カンタ「ん?」

清太「防空壕は住所扱いしてもらえなくて近所付き合いとか皆無なんですよ」

カンタ「ちょっと待て」

清太「たまに配給なんかもあったらしいんですがそれも」

カンタ「待て待て。え?なに防空壕って」

清太「家ですよ」

カンタ「なんで当然みたいな顔してんだ。お前それホームレスっていうんだぞ」

清太「立派なホームですよ。遊びに来て下さい。おもてなししますんで」

カンタ「そこまで言うなら生活はちゃんとしてんだな。普段何食ってんだ?」

清太「カエルとか野草とか」

カンタ「なんてもん食ってんだよ。妹可哀想でしょ」

清太「いやいや、たまに野菜を盗んだりしてますよ」

カンタ「なんで公言しちゃうの」

清太「川や海で行水してるし衛生面も問題ありません」

カンタ「海行ってたのって風呂代わりになの?」

清太「布も一枚しかないから妹と一緒に寝ざるを得なくてね」

カンタ「不憫すぎる……でも親は海外で仕事って」

清太「父親が軍人ですよ。あ、戦死してます」

カンタ「ああ……」

清太「母親は空襲でね」

カンタ「もういいよ!お腹いっぱいだよ!」

清太「僕らは毎日お腹ペコペコでしたよ!」

カンタ「……すみません」

清太「だから華やかだと聞いているラノベの主人公にどうしてもなりたくてね」

カンタ「難しいって。お前の場合特に……せめてもっと周りに女がいれば」

清太「僕の周りの女……あ」

カンタ「いるのか。幼馴染みか?同級生か?」

清太「親戚の家にもお世話になっていた時期がありまして」

カンタ「親戚のお姉さんか。俺たちみたいな子供からしたら憧れるよな」

清太「そこのおばさんがまあ酷い」

カンタ「なんの話?」

清太「最初は優しかったんですよ。ああ、この人聖母なのかって」

カンタ「ラノベの話だぞ。おばさんはいいから」

清太「頼れる人いなくて、この人に甘えたい。この人を愛したい。この人と一生を添い遂げられたら、と思いました」

カンタ「変な方向にフラグ立てようとすんな」

清太「でも裏切られた。結局僕は都合のいい男やったんやなって」

カンタ「なんでおばさんとその気になってんだよ」

清太「いないんですよ!他に!」

カンタ「だからっておばさんはヒロインにはならないぞ」

清太「あのとき僕が愛した人はヒロインにはなれない───。」

カンタ「そうだよ。なんで意地でもラノベ風にしてんだよ」

カンタ「でもそういう家に限って女学生のお姉さんとかいそうなもんだけどな」

清太「いましたよ」

カンタ「いるのかよ。じゃあそれ言えよ」

清太「彼女は僕とは全然釣り合う人じゃありません」

カンタ「なんでだよ」

清太「お姉さんは女学生。僕とは天と地ほどの格差があります」

カンタ「女学生ってそんな高尚なもんだっけ?」

清太「だって僕ニートでしょ」

カンタ「知らねえよ。ニートだったのかよ」

清太「彼女は高嶺の花すぎます」

カンタ「別に関係ないと思うけどな。お前の理論なら誰でもダメってことだぞ」

清太「ニートの女の子がいれば釣り合うでしょ!」

カンタ「どんなラノベだよ。お前が頑張ればいいだけだろ」

清太「そんな選択肢はありませんでした」

カンタ「うわ、そんなんだから家追い出されたのか」

清太「それは違います」

カンタ「何が違うんだよ」

清太「誤解を生まないよう妹にこう言ってやりました」


『節子、兄ちゃんは世間からはじき出されたんやない。自らドロップアウトしたんや』


清太「……ってね」

カンタ「……」

清太「……節子、兄ちゃんは」

カンタ「いや聞こえているから。そんなくだらないこと二度も聞かせないで」

清太「妹は感動して僕の頭を撫でてくれましたよ」

カンタ「妹に気を遣わせんなよ。ドロップアウトして結局世間からはじかれてんだろ」

清太「ところで君はどうなんです?まあ君じゃラノベ要素はないか」

カンタ「俺はラノベよりエロ漫画の主人公のがいいな」

清太「そっちのがないわ!」

カンタ「やっぱり小学生じゃ現実的に難しいか」

清太「無理する必要はないのでいいですよ。人間無理はしない。突き詰めれば働く必要もないんです」

カンタ「ニートの鑑だな」

清太「まあそうそう都合よくフラグの立ちそうな女の子がいるわけもないしね」

カンタ「強いて挙げるなら近所に都会の美少女が引っ越してきたくらいか」

清太「あるんか!」

カンタ「ちなみに同い年でクラスメイトで席も横顔を覗けるいい位置なんだ」

清太「僕が憧れたラノベやないですか……」

カンタ「うちの婆ちゃんと仲良いから俺もプライベートでしょっちゅう会っている仲ってだけだぞ」

清太「なんで隠していたんですか!B-29並の秘密兵器やないですか!」

カンタ「出会い方がな……いきなり喧嘩しちゃって」

清太「いやいやむしろお望み通りの展開ですって。そこから色んなイベントこなして段々親密になるパターンでしょ」

カンタ「イベントと言えるかわからないが、雨の日に傘を貸した」

清太「!?」

カンタ「俺は何も言わず、ずぶ濡れで走り去った」

清太「ヤバい……めっちゃ男前」

カンタ「傘には穴が空いていたから彼女も少し濡れちゃったんだけどな」

清太「ボロ傘渡しちゃったんですか。それはマイナスですね」

カンタ「わざと空けたんだよ」

清太「あー、はいはい。濡れて服透けさせたかったのね。小学生が思い付きそうなエロ漫画展開ですね」

カンタ「次はお前の穴を濡らしてやるってメッセージを込めたんだ」

清太「わかりにくい!絶対それただのボロ傘だと思われてるよ!」

カンタ「その日のうちに返事はもらったよ」

清太「え?伝わったんですか?」

カンタ「まだ濡れた傘を棒状にしてがっちり握りながら持ってきてくれた」

清太「それ普通!普通に畳んで返しただけでしょ!」

清太「それでどうなのその子とは」

カンタ「ED曲流れてるとき不自然なほど笑って会話できてたし、まあ悪い関係ではないのかな」

清太「やめてよED曲とか言い出すの」

カンタ「メタいね。ゴメン」

清太「僕そのとき死んでますから」

カンタ「ヒエッ……ナンマンダブナンマンダブ」

清太「幽霊だとお腹も空かないし便利なんですがね。今日も何も食べてません」

カンタ「お前今までずっと幽霊って設定だったの?」

清太「死んでるといえば」

カンタ「暗い話広げようとしないで」

清太「ぶっちゃけどうなの?サツキとメイって死んでるの?」

カンタ「さっき初めて話した女の子のことめっちゃ知ってるじゃないですか。メイの話題出したっけ?」

清太「ネットで噂になっているでしょ。トトロは死神とか」

カンタ「情報通だな。もう設定お構いなしか」

清太「全部お父さんの妄想だったとか」

カンタ「俺にはわからないよ。その噂が本当ならここにいる俺は最初から存在しない妄想という概念かもしれないんだから」

清太「え?」

カンタ「そういう意味では俺もトトロの一部かもしれない。いや、俺自身がトトロなのか」

清太「ちょっと何言うてんの」

カンタ「サツキがトトロに皮で包まれた棒を剥いてから渡すシーン。あれって俺のシーンとの対比だろ」

清太「絶対関係ないし傘のこと棒って呼ぶのやめて」

カンタ「だって俺はトトロと会う描写がないんだ。根拠は十分だ」

清太「その短絡的思考、小学生らしくていいよ」

カンタ「本当はトトロよりトロトロの方が好きなんだけどな」

清太「あー、君絶対トトロじゃないわ」

カンタ「だからあのとき大股開きのサツキに抱きつかれたとき、かなり興奮した」

清太「あ、もうなりきってるの?」

カンタ「でかい樹が異常な速度でそそり立っちまって」

清太「そそり立つってなんですか。普通に樹が成長したでいいでしょ」

カンタ「その後あえて空飛んで逃げられないようにしてやったんだ」

清太「君空まで飛べるの?」

カンタ「飛行機のおもちゃ好きだからな。そういう意味では俺が飛行機なのかもしれない」

清太「さっきから何を言っているんや君は」

カンタ「ブーン」

清太「うわ、またなりきりコーナー始まってもうた」

カンタ「ブーン。戦闘機だぞー」

清太「……なんやと?」

カンタ「空襲だぞー。ブーン」

清太「ヒエッ、防空壕に避難や!」

カンタ「それお前の家に帰宅するだけだろ」

清太「その前に火事場泥棒や!」

カンタ「逃げろや!っていうかツッコミお前の番だろ!仕事してくれよバカ!アホ!ゴミクズ!」

清太「なんやと?」

カンタ「あ、まずい」

清太「君は今僕を怒らせること言ったね」

カンタ「ゴメンなさい。言い過ぎました」

清太「僕は仕事しろって言われるのが一番嫌いなんですよ!」

カンタ「そっち!?やっぱりゴミクズだった!」

清太「そろそろお開きの時間ですね」

カンタ「もう時間か。終わると思うと寂しいな」

清太「まあいつか金曜ロードショーでやるだろうからそのとき会えますよ」

カンタ「来年公開30周年だしな」

清太「来年ですか。やるかは知らないけれど待ち遠しいですね」

カンタ「そんな人はDVD、Blu-ray買ってくれてもレンタルでもいいですよ」

清太「そんなに宣伝しても僕らには一切印税入ってこないです」

カンタ「ケチ臭いこと言うなよ」

清太「その印税があれば、節子に死ぬほどドロップ舐めさせてあげられたのに……」

カンタ「シャレになっていませんが」

清太「最後に嫌な気分になりました。もう帰ります」

カンタ「防空壕か。風邪引くなよ」

清太「あんな辛気臭いとこ二度と行きません」

カンタ「立派なホームじゃなかったのかよ」

清太「これから僕は節子とどの家に取り憑いてやるか考えるんです」

カンタ「あ、まだ幽霊って設定だったんだ」

清太「トトロだの飛行機だのよりは現実的でしょうが」

カンタ「楽しくていいだろ」

清太「僕だってこれからいい家に住み着いて楽しむんです」

カンタ「俺なら一人暮らしの女子大生の部屋がいいな」

清太「芸能人や金持ちの豪邸もいいですね」

カンタ「まあどこへ住もうとお前んちお化け屋敷なんだけどな」

清太「カンタァー!」




おわり

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