青葉「私のペンタブがない」 (45)


青葉「さぁ仕事仕事っと…あれ、ペンタブがないや」


青葉「机の下かな。お~いペンタブく~ん。どこいっちゃたのかな~?」ガサゴソ


ゆん「・・・・…」


はじめ「・・・・…」


青葉「ペンタブくんはどこだ~?」ガソゴソ


ひふみ「・・・・…」シャカシャカ


青葉「おっかしいな~トイレ行く前にはあったと思うんだけど…予備も買ってないし…」


青葉「すいませんゆん先輩、ペンタブって余ってないでしょうか?」


ゆん「……」

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ゆん「……」


青葉「あの、ペンタブを…」


ゆん「…悪いけど、ウチ予備持ってへんねん」


青葉「分かりました…はじめさん、ペンタブとか持ってないですか?」


はじめ「ごめんね、持ってないや」


青葉「そうですか…あの、ひふみ先輩、ペンタブって余ってないですか?」



ひふみ「えっ!?ええと…」チラ


ゆん「……」


はじめ「…」


ひふみ「…ごめんね。余ってない、かな」


青葉「そ、そうですか」シュン


ひふみ「ごめんね…」ペコリ


青葉「いえそんな!すいませんけど、ちょっと買ってきます」タタタ










青葉「ふぅ~外は暑かったなっと」


青葉「あれ、スリッパがなくなってる…」






青葉「あの、みなさん。私のスリッパ知らないですか?」


ゆん「知らへんな」


はじめ「わかんない」


ひふみ「さぁ、どうかな…」


青葉「……」


次の日も、その次の日も、私の持ち物は無くなり続けました。


おっちょこちょいな私でも、さすがに気付きます。


青葉「あ~私いじめられてるんだな~」


八神「青葉?」


青葉「八神さん!?」


八神「廊下で何ブツブツ言ってるの?」


青葉「い、いえ!何でもありません。すいません仕事に戻ります!」


しまった。独り言が出ていたようです。



八神「青葉、ちょっと待って」


青葉「八神さん?」


八神「今、いじめられてるって言ったよね?」


青葉「それは…」


八神「聞き間違いなんかじゃない。何かあったの?」


青葉「……」


八神「ちょっと場所変えよっか」







外のカフェ


八神「青葉のものが無くなってる?」


青葉「…はい」



八神「そっか…」


青葉「誰がやってるのかは分かりませんけど…」


八神「場所的に青葉の物を盗れるとしたら、ひふみんかゆんかはじめしかいないよね」


青葉「…はい」


八神「特定の誰かがやってれば、残りの人が気づくだろうし……青葉?」


青葉「え?」


八神「青葉、涙が…」


青葉「あれ、どうして涙が…」ポロポロ


八神「青葉…」


八神さんは私の手を優しく握ってくれました。
私はずっと泣きつづけました。
八神さんはずっと、私のそばにいてくれました。






青葉「すいません、急に泣いちゃって…ダメですね、私」


八神「私もさ…昔いじめられてたんだよ」


青葉「え?」


八神「ファリーズの1作目の話。1年目の私がいきなりキャラデザに抜擢されたら、先輩方は面白くないでしょ?」


青葉「それじゃあ私が先輩たちにいじめられてるのも…」


八神「青葉がフェアリーズ3のキャラコンペで勝ったから、だろうね」


青葉「本当に、先輩たちが豹変しちゃったみたいで怖いです…」


八神「人間なんてそんなもんだよ…私の時だってそうだった。優しかった人が急に冷たくなった」


青葉「一体どうすればいいんでしょうか…」


八神「私に任せて。ひふみん達には話を付けておくから。こんな状態、上司として放っておけないよ」



次の日


ひふみ・ゆん・はじめ「すいませんでした」ペコリ


青葉「やっぱり、先輩たちだったんですね…」


ひふみ「青葉ちゃんにいたずらしてみようって話をしてたら」


ゆん「エスカレートしちゃいました」


はじめ「盗った物はちゃんと返すから」


青葉「どうして…いたずらしようって話になったんですか?」


ひふみ「どうしてっていうか…」


ゆん「何となく?」


はじめ「話の流れでいつの間にかって感じだった」


青葉「……」






ひふみ「いずれにせよ、青葉ちゃんに不愉快な思いをさせてしまいました」


ゆん「本当に反省しています」


はじめ「二度とこんなことはしないので、許してください」


青葉「分かりました……」



これで解決したと思ったのですが…………


はじめ「ねえ、ゆん。ムーンレンジャーの映画観た?」


ゆん「はぁ?そんな子供向けのアニメなんか見とるわけないやろ」


ひふみ「私は観た……」


青葉「!」


はじめ「え、ひふみ先輩も観たんですか!?」


青葉「ムーンレンジャーですか!?私もこの前ねねっちと観ましたよ!」


ゆん「……」


ひふみ「……」


はじめ「へーそうなんだ」


青葉「はい、ねねっちたら」


ひふみ「みんな、話してないで仕事、しよ」


はじめ「はい」


ゆん「分かりました」


青葉「……」




青葉「ふぅ~間に合った……おはようございます」


ひふみ「……」カタカタカタカタ


はじめ「……」カタカタカタカタ


ゆん「お、おはようございます!」ゼェハァ


青葉「あ、おはようございます」


ゆん「……」


ひふみ「おはよう、ゆんちゃん…ギリギリ、だよ」


ゆん「す、すいません…」


はじめ「あ~惜しい。もうちょっとで遅刻だったのになー」


ゆん「うっさい!電車が遅れただけや!」


青葉「……」


次の日


青葉「おはようございます!」


ひふみ「……」カタカタカタカタ


はじめ「……」カタカタカタカタ


ゆん「……」 カタカタカタカタ


青葉「あの、駅前でドーナツが安売りしてたから買ってきたんです!」


3人「……」カタカタカタカタ


青葉「い、一緒に食べませんか!!」


3人「……」カタカタカタカタ


青葉「み、みなさんで…」


3人「……」カタカタカタカタ


青葉「ぅ……」


3人「……」カタカタカタカタ


3人「……」カタカタカタカタ


3人「……」カタカタカタカタ


カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ


カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ カタカタカタカタ


青葉「……いい加減にしろぉ!!!」



3人「……」


青葉「どうして私だけ無視するんですか!?」


3人「……」


青葉「そんなに私の事が嫌いですか!?」


3人「……」


青葉「私がキャラコンペで勝ったから嫉妬してるんですか!?」


ゆん「……」ピク


青葉「!……やっぱりそうなんですね、ゆんさん!私がコンペに勝ったのが面白くないから、私に意地悪してるんですね!」


ゆん「……別に」


青葉「ほ、ほかの人だってそうなんでしょう!?1年目の後輩に嫉妬して……先輩として恥ずかしくないんですか!?」


ひふみ「あ、青葉ちゃん…ちょっと落ち着いて…」


青葉「何で私が悪者になるんですか!?みなさん、そもそもコンペから逃げてたじゃないですか!!」



ゆん「に、にげてなんか」


青葉「ゆんさん私に言いましたよね!『私は上手くないし、落ちるの見てるから』って!」


ゆん「なっ……」


青葉「逃げてるじゃないですか!人前で負けるのが恥ずかしかったんでしょ!」


はじめ「青葉ちゃん、声が大きいよ…」


青葉「はじめさんだって、コンペに出てませんよね」


はじめ「わ、私はモーション担当だし……」


ひふみ「青葉ちゃん、本当に落ち着いて…」


青葉「ひふみ先輩も3Dが忙しいとか言い訳して、コンペに出ませんでしたよね!」


ひふみ「わ、私は本当に忙しくて……!」


青葉「ふ~んそうですか。八神さんはもっと忙しいと思いますけど」



ゆん「じぶん……ほんまええ加減に」


八神「みんなどうしたの、大声出して」


青葉「や、八神さん…!」


ひふみ「コ、コウちゃん……」


ゆん「……」


はじめ「……」


八神「おしゃべりしてましたって感じでもなさそうだね……別々に話聞こっか。青葉、ついて来て」



会議室


八神「ひふみん達に無視されてる……か」


青葉「この前先輩たちが謝ってきて以来ずっとです……」


八神「ひふみん達にも困ったなぁ……分かった。もう一回注意しとく」


青葉「……よろしくお願いします」


八神「大丈夫。みんな、本当に悪い人間ってわけじゃないから。ちゃんと仲直りできるよ」


青葉「はい……」


八神「よし。じゃあ次はひふみん達か。青葉、悪いけど呼んできて」



青葉「あの、八神さんが呼んでます」


ひふみ「分かった。ゆんちゃん、はじめちゃん……いこっか」





青葉(今頃八神さんたちはどんな話をしてるんだろ……でも、八神さんがいなかったら耐えられなかっただろうな)


青葉(早くひふみ先輩たちと仲直りして、また一緒にお菓子食べたいなぁ)


青葉(あ、でもその前にコンペのキャラデザを仕上げなきゃ……肝心なことを忘れちゃうなんて、ダメだなあ私)クス


八神「お待たせ青葉。ひふみん達も席に座って」








八神「とりあえず、皆の話を聞きましたけど……」


青葉「……」


ひふみ「……」


ひふみ「……」


はじめ「……」


八神「はぁ……正直、今回の件は呆れてるよ。もう学生じゃないんだから、こういうトラブルを起こされると困るんだよねぇ。ね、青葉?」


青葉「は、はい!私もそう思います」


ひふみ「……」


ゆん「……」


はじめ「……」


八神「はぁ……だったらさぁ、どうしてひふみん達にあんなこと言ったわけ?」


青葉「そ、そうですよね!私ったらあんなことを……って……え?」


八神「青葉、最近調子に乗ってるんじゃないの?」


青葉「え?え?」


八神「……今更しらばっくれないで欲しいな。これ以上、青葉に幻滅したくないんだけど」


青葉「あの、さっきから何をおっしゃってるのか……」



八神「『みなさん、そもそもコンペから逃げてたじゃないですか』。そう言ったそうだね」


青葉「そ、それは…!」


八神「他にも、『人前で負けるのが恥ずかしかったんでしょ』とか、『私がキャラコンペで勝ったから嫉妬してるんですか』とか。青葉さ、一回コンペに勝った
   からって何か勘違いしてない?」


青葉「た、確かに私がそう言ったのは事実です……でも、先輩たちだって私のことを無視してたんですよ!」


八神「は?」


青葉「は?って……さっき八神さんに言ったじゃないですか!」


八神「私は青葉からそんな話聞いてないけど?」



八神「ひふみん、ゆん、はじめ。青葉が会議室でどんなこと言ってたか分かる?」


ひふみ「さ、さぁ……」


八神「『私がコンペに勝ったから、キャラ班のリーダーにしてください』だってさ」


青葉「な……そんなこと言ってません!」


八神「日頃から生意気な発言ばかりして、偉そうな態度を取ってたそうじゃないか。それじゃあひふみん達に無視されても仕方がないんじゃないの?」


青葉「私は偉そうにしてなんか……そ、それじゃあ私の持ち物を先輩たちが盗んでたのはどうなるんですか!?」


八神「なんの話?」


青葉「前に相談したじゃないですか。私の物がなくなるって……」


八神「初耳だけど?」


青葉「ひふみ先輩たちだって私に謝罪して……」


ひふみ「……なんのことを言ってるのかな……」


八神「また私に甘えて、ひふみん達を悪者に仕立てあげようって魂胆?青葉も大胆だねぇ」


青葉(そんな……八神さんに裏切られるだなんて……)


青葉「うっ……うっ……」ポロポロ


八神「好き放題やっておいて、自分が責められたら泣くなんて……学生気分が抜けてないんじゃないの?」


青葉(そういえば八神さん……)

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八神「ファリーズの1作目の話。1年目の私がいきなりキャラデザに抜擢されたら、先輩方は面白くないでしょ?」

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青葉(先輩方って、そういうことだったんだ。八神さんも最初からグルで……私に味方なんていなかったんだ)ポロポロ



八神「青葉、皆に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」


青葉(悔しい……けど、私にはどうすることもできないんだ……)


青葉「も、申し訳ありませんでした……」ポロポロ


八神「申し訳ない?何が申し訳なかったの?」


青葉「わ、私は……コンペに勝ったからといって調子に乗っていました。さらに、あるはずのないいじめをでっち上げました……
   八神さん、ひふみ先輩、ゆんさん、はじめさん、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした……」ポロポロ



ひふみ「青葉ちゃん!あのね……」


八神「はぁ……謝ればチャラになるとでも思ってるの?」


青葉「……」


八神「これからの行動で示すことだね。この件は上に報告しないであげるけど……次はないよ?」


青葉「わ、分かっています……」


八神「じゃあ仕事に戻って」


廊下

青葉(何もかも終わった……もうイーグルジャンプにはいられないなぁ)


青葉(憧れの八神さんと一緒に働けて、コンペで成果を出して……順調だったはずなのに)


青葉「悔しいよぅ……悔しいよぅ……」ポロポロ


りん「青葉ちゃん?……ちょっとどうしたの?」


青葉「と、遠山さん……」


りん「目が真っ赤よ。泣いてたのね……何かあったの?」



青葉(まるで八神さんの時と同じ……どうせ遠山さんも裏では八神さんとつながってるんだ)


りん「青葉ちゃん、私でよければ話を聞くわ。なにか辛いことでもあるの?」


青葉「はっ……そう言って、遠山さんも私を陥れる魂胆なんでしょう?」


りん「あ、青葉ちゃん?」


青葉「こっちは分かってるんですから……遠山さんに話したことも、どうせ八神さんに報告するんですよね!」


りん「青葉ちゃん、さっきからなにを言ってるの……?」



青葉「どうしてみんな……そんなに私のことが気に入らないんですか!?」


りん「ちょっと、落ち着いて」


青葉「えぇいいですとも。全部言ってやります!私が八神さん達に何をされたか!!」


もうやけっぱちです。遠山さんが八神さんとグルだったとしても構いません。自分の中にある感情を吐き出さないと気が済みません。






りん「そう……そんなことがあったの」



青葉「八神さんには本当に失望しました……!あんなに小さい人だったなんて」


りん「……」


青葉「あぁ、遠山さんは八神さんのことがお好きなんでしたっけ?あんな最低な人を好きになるだなんて、遠山さんもつくづく馬鹿なんですね!!」


りん「青葉ちゃん……」


青葉「あ~全部言っちゃいました。どうせ遠山さんも八神さんにチクつるんでしょう?いいですよ。どうせ私は退職するんですから、今更何をされようが
   気にしません」


りん「そんな大げさね。青葉ちゃんは退職する必要なんてないわよ?」


りん「コウちゃんから辞めろなんて言われてないでしょ?」


青葉「だからって」


りん「次はない、ってことは今回は許すってことじゃない。自分から辞める必要なんてないわ」


青葉「はぁ……」


りん「コウちゃんったら、青葉ちゃんがコンペに勝ったからちょっとスネてるのよ。それで青葉ちゃんに意地悪したんだと思うわ」クス


青葉「意地悪って……明らかに度を超えてますよ!完全なパワハラじゃないですか!!」


りん「パワハラ?それを言うなら、私の方が青葉ちゃんよりパワハラを受けてるわよ」


青葉「どういうことですか……?」


りん「う~ん。口で言うより見てもらった方が早いかしら」スルスル


青葉「と、遠山さん、いきなり服を脱いで何を……って、それ……」


りん「この背中のアザはね、青葉ちゃんがコンペに勝った日に、コウちゃんに付けられたのよ」


青葉「えっ……」


りん「まさか金属バットで殴られるなんて思わってなかったわ。あれは痛かったわねぇ」クス


青葉「そ、そんな……」


青葉(よく見ると、体中にアザや傷跡が……)


りん「コウちゃんは、ちょっとだけ情緒不安定なの。仕事が上手くいかなかったり、失敗したりすると、私に痛いことしてくるのよ」


青葉「ひっ……」


りん「最近は落ち着いてたんだけど、青葉ちゃんの件では久しぶりに荒れてたわね。バットで殴られて、窒息しそうになるくらい首を絞められて……」


青葉「……」ガタガタ


りん「あ、でも誤解しないでね。コウちゃんはすごく優しいの。私に乱暴した後は、涙目になって謝って来るのよ。
   『りん、ごめんね』って。謝るコウちゃんが子供みたいで可愛くって……」クスクス

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