義妹「兄が大変失礼致しました」 (18)

女「あ、ああ、いえ。そんな気にしていないので」

義妹「いえ、本当に愚兄が失礼を。まさか結婚して半年も経たぬ内に浮気をするとは…………ただいま父が絶縁を突き付けております。本当に、本当に失礼を」

女(…………良くできた妹さんだなぁ。これで高校生だもん。大学生にもなって浮気されるような甲斐性なしとは大違いだよ)

女「い、いえ、本当に大丈夫ですよ。結局、私が彼の望む女性になれなかった事が原因ですから、そう叱らないであげてください」

義妹「…………そんな、自分を卑下しないでください」

女(…………いやあ、目の前で歯を折られれば流石に怒りも冷めるって)

女「と、ともかく、これ以上続けるのも難しいと思うので、彼とは縁を切ろうと思います。婚約までしていたのに、本当に、ごめんなさい」

義妹「……」

女「お義母さんとお義父さんにもよろしくお伝えして頂けませんか?」

義妹「…………いえ、お義姉さん。一晩だけ、うちに泊まっていかれませんか?」

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あっ(察し)

女「と、泊まり?」

義妹「はい。言葉の上でのお詫びばかり並び立てて、婚約まで迫ったお義姉さんを家に返しては既に地まで堕ちた我が家の名誉も更に突き抜けるというもの。どうか、一晩、おもてなしをさせて下さい」

女「お、おぉ…………?」

女(そうは言ってもなあ)

女(ぶっちゃけ未練も怒りも冷めきってるし、かといって義妹ちゃんや義両親に憤りがあるわけでもなし)

義妹「お願いします。お義姉さん」

女(まあ、将来的に妹になる筈だった女の子のお願いだし、一晩だけなら大丈夫かな)

女「…………うん、分かった。それじゃあ一晩だけ義妹ちゃんにおもてなしをされちゃおうかな」

義妹「は、はいっ…………!」

女(可愛いなぁ)

義妹の部屋

女「そう言えば、ご両親は?」

義妹「兄を折檻し終えて、辺境の寺に放り込みに行っています。寺で修行か絶縁か選択させられて、前者を選んだみたいで」

女(うっわぁ)

義妹「…………でも、当然ですよ。浮気されてもなお相手を気遣えるようなお義姉さんを、愚かにも裏切るような真似をしたんですから」

女「…………うーん? 買い被りじゃないかなぁ」

義妹「じ、事実ですよ。私も両親もお義姉さんだったら心配いらない、むしろこちらが心配だーってずっと言ってたんですから」

女(何それ恥ずかしい)

義妹「ほらほらお義姉さん、あまり固くならずにご自分の家のように寛いで下さい! 今、下からジュース持ってくるので!」パタパタ

女「あっ、お、お構い無くー」

パタン

女「…………」

女「おもてなしって言ってもなぁ。正直家に居るのとあまり変わらないし、そう肩肘張らなくていいか…………ん?」

女(なんだこの布切れ…………パンツか)

女(ああ、パンツか。だいぶ際どいな)

女(これとか後ろから丸見えじゃないの?)

女「…………やっぱ自宅じゃない」カァァァ

サッー(迫真)

義妹「お義姉さん、ゲームってやります?」

女(ゲーム? 格ゲーとかかな。スマブラなら知り合いの家で何度かやったけど、まあ、下手な方ではないよね)

女「んー、それなりにはやるかな。FPSとかADV系はあんまりやらないけど」

義妹「そ、それじゃあRPGってやったことありますか?」

女「むー、それも人並みかな。あ、もしかして、やれってこと? でもRPGって大半が一人用じゃないかな?」

義妹「…………」カァァァ

女「……ああ、そういうこと?」

義妹「…………じ、実はお恥ずかしながら、戦術とか、効率的なレベル上げとか得意じゃなくて。ストーリーは好きなんですけど、ボスに勝てないんです」

女(かわいい)

女「あはは、分かったよ。それじゃ一緒にやろうか?」

義妹「は、はいっ! お願いします!」

女「…………」カチカチ

義妹「…………」モグモグ

女(…………実妹のノリで膝に座らせちゃったけど、小柄だな、義妹ちゃ。しかもめちゃめちゃ良い匂いするし。ああいや、頬張ってるカステラの匂いじゃなくて)

義妹「あ、そこ、そうやって倒せばいいんですね」

女「んー? ああ、うん。NPCの行動が最適化されてるから、敵に有効な属性とか攻撃方法は味方キャラを真似すれば良いんだよ」

義妹「おおー」パチパチ

女(かわいい)


女「…………」カチカチ

義妹「…………お義姉さんって、これからどうするんですか?」

女「んー? どうするって?」カチカチ

義妹「ほら、その…………愚兄が失礼をしたせいで、お義姉さん、交際相手が居なくなったじゃないですか。これから、どうするのかなぁって、その、失礼ながら」

女「いや、構わないよ…………うん、まあ、今回の件で少し懲りたからね。私に男性経験は少し早かったみたいだ。暫くは一人で細々過ごすよ」カチカチ

義妹「お義姉さん、一人暮らしでしたよね?」

女「ん、大学が近いからって一人暮らし始めたんだよ。でもまあ、寂しくなったら家に帰ればいいし、そんなに心配いらないよ」カチカチ

義妹「…………お義姉さんって」

女「ん?」カチカチ

義妹「お義姉さんって、女の子に興味はないんですか?」

女「」

女(ぶっこんで来やがった…………!)

女(義妹ちゃん、それはアレだよ。親友の部屋に遊びに来た男の子がゲイ関係のネタにならないニュースを見た時くらいにアカンやつだよ)

義妹「…………お義姉さん?」

女(つーかあれか、この娘そういう趣味か。それは聞いてない。いや、私はノーマルなんだけども)

女「い、いやあ、どうだろう…………」

義妹「…………」

女(そ、そんな悲しそうな目をしないでよ。だって、そんなこと言ったってそういうこと考えたことないし)

女「そ、それよりほら、ボス、倒したよ?」

義妹「あ…………は、はい、ありがとうございます…………すみません、ご迷惑でしたよね。お義姉さんをもてなすつもりなのにとんだご無礼を、ご容赦ください」

女(やべえ罪悪感)

ごめん風呂敷畳めなくなったから終わる

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