チェイス「雛見沢…」 (506)
アニメ準拠はほとんどありません
草は生えてませんが気分を害された方がいらっしゃったら申し訳ありません
仮面ライダー×ひぐらしのなく頃にです
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彼は、罪を犯した
彼は、罪を償おうと決めた
その手は、差し伸べる為に
その脚は、駆け付ける為に
例え、その生命が尽きたとしても
彼は、全てを救う事を誓った
例え、それが何であろうと
…。
剛「…寝ぼけたこと言うな……」
…。
剛「俺の全身から溢れ出す怒りの炎が見えねぇのか!」
…。
剛「今一番許せねぇのは……俺の……」
…。
剛「俺の、ダチの命を奪ったことだ!!!」
…。
剛「…一緒に…戦ってくれ…!!」
…。
剛「…変身!!」
…。
ダチ、か…。
剛「返せ!それは俺達の武器だ!!」
…。
剛。
いつか、また会う事が出来たなら…。
剛「「行って」良い…ってさ…」
…その時は、俺から言おう。
お前は、俺の…。
…。
……。
「…」
「……」
「……。」パチ
「…ここは…」
「…」
「…どこだ…?」
「…」
「…まさか…ここは…」
「…あの世か…?」
『…違うのです…』
「!!」ガバッ
「…」
『…』
「…」
『…やっぱり…見えていないのですね…』
「…何だ…?この声は…」
『…』
「…何故、姿が見えない…?」
『…それは、ボクが普通の人には見えないからです。最も…』
「…」
『貴方も、人ならざるもの、ですが…』
「…」
羽入『…ボクは羽入と申します』
「…ロイミュードか?」
羽入『いいえ。ロイミュードではないのです』
「…」
羽入『…生命体であるかどうかも、怪しいものですが…』
「…以前、進之介が見えない敵と戦った事があると聞いた。クリムも科学では説明出来ない物があるかもしれない、と…」
羽入『…お化け…そう呼ばれるのが正解なのかもしれません』
「…」
羽入『…貴方には、ボクが見えないのですか?』
「…見えない。それよりも…」
羽入『…』
「…俺は、死んだのか?」
羽入『…』
「もし生きているならば、俺は、剛に再び会わなければならない。ダチとして」
羽入『…分かりません』
「…」
羽入『ボクは、助けを求めました』
「…助け?」
羽入『助けを求め続け、何度も何度も世界をやり直しました』
「…」
羽入『でも、ダメでした』
「…何を、話している?」
羽入『そうしていく内に、ボクも梨花も疲弊していきました』
「…」
羽入『梨花は、もう良いと諦めてしまいました』
「…」
羽入『最後に死を選び、そのまま世界は進んでいきました』
「…?」
羽入『…そして、2016年。30年以上もの時間が経ってしまい、皆ここで起きた惨劇の事など忘れてしまいました』
「…」
羽入『後ろを、見て下さい』
「…?」
「…」
羽入『そこには、何が見えますか?』
「…ダム…以外は見えない」
羽入『…33年前、1983年。その時までここは、村がありました』
「…」
羽入『その名は、雛見沢村。人口は少なく、今の人達が見れば、田舎と呼ばれるような所でした』
「…」
羽入『事の始まりは、とある殺人事件』
「!」
羽入『ダム建設反対の村人による、建設会社の社員の惨殺』
「…」
羽入『そして連鎖していく、様々な事件』
「…村人達は、今何処にいる?」
羽入『…』
「…」
羽入『…あそこの、ダム…』
「…」
羽入『…あれの、下です』
「!!」
羽入『ここでは、ある病気が蔓延していました』
「…?」
羽入『それは、雛見沢症候群』
「…この村特有の、病気か…」
羽入『…この病気に犯された人は、疑心暗鬼になり、全ての人間が敵に見えてしまいます』
「…」
羽入『そうした者が、最後に取る行動…』
「…それが、連鎖していった殺人事件…か…」
羽入『…最後は、この村の地から謎の毒ガスが噴出、村の人間は全員…』
「…毒ガス…?」
羽入『ボクにも、それ以上のことは分かりません。何故こうなってしまったのかも…』
「…」
羽入『…今、梨花は全てを諦め自分の世界に閉じこもってしまいました』
「…」
羽入『永遠に、答えの無い、暗い闇の中に』
「…」
羽入『それでも、ボクは信じていました』
「…?」
羽入『いつか、この惨劇を終わらせてくれる、そんな人が来てくれる筈だと』
「…」
羽入『でも、ボクに出来る事は時間を巻き戻すことだけ』
「…」
羽入『時間を巻き戻せば、人間は影響を受けます』
「…」
羽入『…いえ、人間だけではありません。生命体である、限り…』
「…生命体…」
羽入『…』
「…つまり、歴史をやり直す、ということか?」
羽入『…』
「…俺に寿命は無い。もし俺がまだ生きているとすれば、この世に俺が2人、存在するということにもなりかねない」
羽入『…』
「…最も、生きているという保証は無いが」
羽入『…無理を言っているのは、分かっています』
「…」
羽入『貴方の優しさにつけ込んでいるというのも、承知しています』
「…」
羽入『でも、それでもボクは、梨花を、みんなを助けたいのです』
「…」
羽入『みんなの、本当の未来を、子供達に、明るい未来を与えたいだけなのです』
「…」
羽入『だから…だから…!!』ギュッ
「…!」
羽入『…』
「…感触…?」
羽入『…!?……そんな…』
「…?」
羽入『…これは…一体…?』
「…お前は、普通の者には見えないと言っていたが…」
羽入『…実体はある筈なのに、どうして…?』
「…それも、科学では説明のつかないことなんだろう」
羽入『…』
「…俺は、生きとし生けるもの全てを守ると決めた」
羽入『…』
「…それは、死んでも変わらない」
羽入『…!』
「時間を戻せ」
羽入『…』
「…」
羽入『…本当に、良いんですか…?』
「構わない」
羽入『…もしかしたら、そのお友達に、一生会えないかも…』
「…」
羽入『運命を変えて、そのお友達と会わなくなってしまうかも…』
「そんなことで、会えなくなる程のものではない」
羽入『…!』
「俺がどうしてまだ実体を持ち、そしてお前に触れる事が出来るのか。それは分からないが」
羽入『…』
「まだ俺に出来ることがあるのなら、その役目があるというのなら」
羽入『…』
「迷わず、引き受ける」
羽入『…』
「俺でなくとも、きっと皆そうしただろう」
羽入『…』
「それが、仮面ライダーというものだ」
羽入『…チェイスさん…』
チェイス「…要件を話せ」
羽入『…ボクのお願いを聞いてくれて、ありがとうございます』
チェイス「…」
羽入『…先ず、この世界を戻す。それよりも先に、やることがあります』
チェイス「…」
羽入『…この物語、繰り返される惨劇の中心…』
チェイス「…」
羽入『全てを諦めた彼女に、再び光を与える事です』
チェイス「…梨花、か」
羽入『…はい』
…。
……。
『梨花、聞こえますですか?』
…。
『…お願いします。どうか返事だけでも…』
…。
『きっと、今度は乗り越えられます。もう一度だけ、やり直してみませんか?』
…。
『あれから、33年。ボクはあの惨劇を打ち破れる方を探していました』
…。
『きっと、大丈夫です。今度は…』
…そうやって…。
『…?』
…そうやって、どれだけ私達は血を流したの?
『…梨花…』
どれだけ死んだ?どれだけ死を見た?
『…』
何回、何十回、何百回…もう覚えてないわ。
『…』
もう、何度も見てきた。何千年経とうが、忘れないわ。
『梨花…どうか話だけでも…』
笑顔、泣き顔、困り顔、怒った顔、焦った顔。
『梨花…』
痛みに苦しみもがく顔。
喉を掻きむしり、朽ち果てていく顔。
毒に苦しみ、弱っていく絶望の顔。
『…』
もう、放っておいて。私はこのままで良い。
『…』
それに、もう出来ないわよ。あんな変な喋り方。
『…』
アンタだって、もうそんな力ほとんど残ってないんでしょ?
…お社も無くなって…。
『…確かに、これが最後かもしれません』
ならせめて、少しでも長生き出来る方を選びなさい。
『…なら、梨花は本当にこのままで良いと言うんですか…?』
…。
『残された時間の少ないボクが消えたら、本当に一人ぼっちなのですよ…?』
…それが、私の運命なのよ。
『梨花!!』
…。
『…これは、梨花だけの問題じゃないのですよ…?』
…。
『沙都子や、魅音、レナ、圭一、詩音…悟史』
…。
『みんな、生きるべき人達。なのに、理不尽に死んでしまった。理由も分からずに』
…。
『貴方はもう良いのかもしれない。でもみんなは、沙都子達はどうなるのですか!?』
…それは…。
『それに諦めたのなら、そんな小さな「カケラ」、どうしていつまでも眺めているのですか?』
…!
『もう、世界は貴方やボクを置いて遥か未来へ行きました』
…。
『沙都子達のいない、未来へと』
…。
『でも、今からならまだやり直せます。あの子達に、新しい未来を与えることが出来ます』
…。
『…梨花。貴方にも』
…羽入…。
『だから、そんな心にも無い事、言わないでください』
…。
『貴方は神なんかじゃありません。神の使いでもありません』
…。
『何も悟ってなどいません。貴方の時間はあの時のまま、一秒も進んでいません』
…。
『貴方はただの人間です。人間の、子供なんです』
…。
『だから、言ってください。心の内を、曝け出して下さい』
…。
『必ず、手を差し伸べてくれる存在がいます』
…。
…羽入…。
『…はい』
…本当に、これで乗り越えられるの?
『…はい』
本当に、皆と一緒に、未来に行けるの?
『はい』
…信じて、良いの?
『だから、ボクはここにいます』
…。
『前を向いて下さい』
…。
『光は、必ずやってきます』
…光…。
『その光…』
…。
『その光の名は、仮面ライダー』
…仮面…ライダー…?
『願って下さい。念じて下さい。ありったけの思いを込めて』
…。
『貴方の、本当の思いを、叫んで下さい』
…けて…。
『…』
…助けて…!!
『…』
この世界から…!!
『…』
梨花「私を、助けて!!!」
…。
……。
梨花「…」
梨花「…あ…」
梨花「…え…?」
「zzz…」
梨花「…あ…」
「zzz…」
梨花「…」
【昭和58年 6月13日】
梨花「…あ…」
梨花「…は、羽入…?」
梨花「羽入?…羽入!?」
梨花「羽入…?」
「…ん…んー…?」
梨花「返事して!羽入!!」
「んがっ…?な、何ですの…?」
梨花「…ッ…」
沙都子「…梨花、どうしたんですの?大声なんて出して…」
梨花「…沙都子…」
沙都子「?」
梨花「…本当に、沙都子なの…?」
沙都子「監督のとこ行きます?」
梨花「…」ペタペタ
沙都子「ちょ…どうしたんですの?そんなお化けでも見たような目、しないでくださいまし」
梨花「…本当に、沙都子なのね…?」
沙都子「…頭でも打ったんですの?昨日も一昨日もそのずっと前から一緒に暮らしてますわよ」
梨花「…!」
沙都子「…全く…変な夢でも見たに違いありませんわね。顔を洗って、寝ぼけを治してくるこt」
梨花「沙都子!!!」ガバッ
沙都子「ドゥェッホ!!」
沙都子「朝からやってくれますわね。いくら親友といえども目覚め時に押し倒されるのは流石に訳が分かりませんことよ」
梨花「…ごめんなさい……なのです」
沙都子「…怖い夢でも見たんですの?」
梨花「…ほんの、ちょっと。長くて怖い夢を見てたのです」
沙都子「あらあら…そんなので怖がるなんて、梨花もまだまだお子ちゃまなのですわね!おーほっほっほ!」
梨花「…」
沙都子「…あら?」
梨花「…」
沙都子「…梨花?」
梨花「…ッッ…!!」
沙都子「…そ、そんな怖い夢でしたの…よーしよし…」
梨花「…ご、ごめんなさいなのです。何だか凄く長い間眠ってたような気がして…」
沙都子「夢なんてそんなものですわ。でも、夢なんですから。すぐに忘れますわ」
梨花「…」
沙都子「さ!早く朝ご飯の支度ですわ!あとお弁当お弁当…」
梨花「…良かった…」
沙都子「?」
梨花「何でもないのですよ。…に、にぱー☆」
沙都子「…?」
沙都子「…さ…て!早くお着替えあそばせ!…あ、歯磨き歯磨き…」
梨花「…」
沙都子「梨花も早く食べないと遅刻してしまいますわよ!」
梨花「は、はーいなのです!」
梨花「…」
梨花「(…本当に、戻ってきたのね。ここに…)」
梨花「(…羽入は?羽入は何処に行ったの?)」
梨花「(…それに、羽入の言っていた、光…)」
梨花「(…仮面…ライダー…)」
梨花「(…何処に、居るのかしら…)」
沙都子「梨花!本当に遅刻してしまいますわよ!」
梨花「!は、はーい!!なのです!」
梨花「…」
沙都子「…」
梨花「…」
沙都子「…梨花?」
梨花「(こうして、戻ったのは良いけれど…)」
沙都子「梨花?」
梨花「(私は、これからどうやって立ち向かっていくの…?)」
沙都子「りーかー…?」
梨花「(羽入は相変わらず返事が無いし、その光っていうのも、何だか分からない…)」
沙都子「梨花っ!」グイッ
梨花「!?」
沙都子「もー…何をボーっとしてるんですの?それ以上進んだら川に落ちてしまいますわよ?」
梨花「あ…ご、ごめんなさいなのです」
沙都子「…もしかして、調子が悪いんですの?」
梨花「い、いえ。すこぶる元気なのですよ。ほーら、に、にぱー☆」
沙都子「…さっきもそうでしたけれど、凄くぎこちない感じですわよ。無理してる感じが…」
梨花「(33年振りなんだからぎこちなくもなるわよ…)」
沙都子「…元気なら、良いですわ。でも今日はあまり無理をしないことですわね」
梨花「…ありがとうございます……なのです」
「!」
「あ!おーい!」
「梨花ちゃーん!沙都子ー!」
沙都子「…あら!皆さんおはようございますですわ!」
梨花「…!」
「どーお?久し振りの圭ちゃんの顔」
沙都子「相変わらずのボケーっとした顔ですわね。まだ旅行気分が抜けてないんじゃありませんの?」
「んだとー!?沙都子ー!こうしてやるー!!」ワシャワシャ
沙都子「ぎゃー!!レナさん!助けて下さいまし!!」
「は…はうっ!?助けを求める沙都子ちゃん…かぁいい…かぁいいよう!!」
「んげっ!?」
「あーあー…相変わらずだねぇ…」
「魅音!元はと言えばお前から…!」
「あーあー聞こえなーい」
「何ぃ!!?」
梨花「…」
「…?」
「?どったの?梨花ちゃん…」
梨花「…圭一?」
圭一「ん?」
梨花「…」ペタペタ
圭一「ん?…ん?」
梨花「…レナ?」
レナ「?何かな?…かな?」
梨花「…」ペタペタ
レナ「ひゃっ!ど、どうしたのかな?かな?」
梨花「…魅音…」
魅音「…どーしたの?そんなみんなの顔ペタペタペタペタ…」
梨花「…」モミ
魅音「ん?」
梨花「…本当に、みんな…」
圭一「…あ、ああ…う、うん…」
レナ「れ、レナだよ?どうして?」
沙都子「…今日の梨花は何だかおかしいんですの。私も顔を合わせた時妙に触ってて…」
魅音「私…胸…」
レナ「調子が悪いの?大丈夫かな…?」
圭一「まあ変な夢でも見たんだよ。梨花ちゃんもそういうことあるんだな!」
梨花「…」
沙都子「…!じゃなかったですわ!早く行かないと!全員揃って遅刻ですわよ!!」
魅音「…あ!ヤバっ!!走るよ!」
圭一「げっ!?マジかよ!」
梨花「…本当に…みんな…」
レナ「…梨花ちゃん」
梨花「…?」
レナ「…何があったか分からないけど…」
梨花「…」
レナ「レナ達は、ここにいるよ?」
梨花「…!」
レナ「さ、行こ!」
梨花「…はい。はい…なのです!」
…。
圭一「はーっ…はーっ…あー…何とか…ギリギリセーフ…」
魅音「はーっ…はーっ…圭ちゃん、相変わらずスタミナ無いねぇ…」
圭一「お前だってゼーゼー言ってんだろうが。そもそも待ち合わせの時間に遅刻してきただろ!」
魅音「あっるぇー?そーだっけー?」
圭一「がっ……このー!」
魅音「あっはっは!気にしない気にしない!」
圭一「…ったく…」
沙都子「ほらほら、早く教室に行きますわよ。チャイムが鳴ってからじゃ遅いんですのよ!」
レナ「そうだよ。知恵先生怒るとすっごく怖いんだから!」
圭一「そうだな…ん?」
…。
「あ、あの…ですから部外者の方を入れる訳には…」
「ならばどうすれば入れる?」
「え?…い、いえですから、関係者の方以外は…」
「関係者になるにはどうすれば良い?」
「え、ええと…出来ればまず身分を明かして頂いてですね…」
「身分証か。生憎今は持ち合わせていない」
「そんな堂々と言います…?」
「ダメか?」
「ダメっていう言葉が一番最適なんですよ。この場合」
「ならばここで雇ってくれ」
「警察呼びますよ」
「俺も警察の仲間ではあったが…」
「警察はそんな格好しないと思いますよ」
…。
沙都子「…アレなんですの?」
魅音「…まー…うん。そーいう…のじゃないの?」
梨花「…」
レナ「…うーん…」
圭一「そういうの…っつーか…そういうのだったら、もっとコソコソしてるっつーか…」
魅音「確かに、随分堂々としてるよね…」
レナ「真っ正面から来てるみたいだし…」
沙都子「ストロングな変態なだけですわよ」
梨花「…!ッ…」ダッ
沙都子「!?り、梨花!?」
魅音「梨花ちゃん!?」
梨花「…知恵!知恵!!」
知恵「!?ふ、古手さん…?」
梨花「そ、その人は…えっと…」
「…」
知恵「…こ、この人は…お知り合い?」
「…」
梨花「ぼ、ボクの…」
知恵「…」
梨花「し、親戚の、遠縁の親戚の、お兄さん…なのですよ!」
知恵「それもう他人で良いんじゃないですかね?」
「…」
梨花「えっと…」
「お前が、古手梨花か」
梨花「!」
「羽入から話は聞いた」
梨花「あ…」
知恵「…あの、とりあえず、お引き取り願えませんか?もうすぐ始業時間ですし…」
梨花「あ、あの!」
知恵「?」
梨花「この、この人は…」
「…俺の名は」
知恵「…?」
「チェイs」
梨花「左之助!左之助なのですよ!」
知恵「…左之助?」
梨花「はいなのです!紫、紫左之助なのです!」
知恵「…左之助さん?」
チェイス「違う」
知恵「左之助じゃないらしいですよ」
梨花「左之す…けっっ!!」ゲシィ
チェイス「違う」
知恵「…え、ええと…左之助さん。今日のところは、申し訳ありませんが…もしここで働きたいというのなら、まず身分をしっかりさせて、きちんと教員免許を取ってですね…」
梨花「…ッッ…!」ズキンズキン
チェイス「…免許か」
知恵「はい。こういうのは、ここの人がはい良いですよで入れるものではありませんから」
チェイス「分かった。その免許を取ることにしよう」
知恵「そんなジュース買おうみたいな感覚で取れるものじゃないんですよ」
チェイス「…」
梨花「…さ、左之助!とりあえずこっちに来るのです!」グイッグイッ
チェイス「俺は左之助では…」
魅音「…えーと…おーい、梨花ちゃーん!先、行ってる…よ?」
梨花「は、はいなのです!ボクもすぐに行くのです!知恵、ごめんなさいなのです…」
知恵「い、いえ…話がつきましたら、来て下さいね?」
梨花「はいなのです!」
沙都子「…?」
…。
梨花「はーっ…はーっ…」
チェイス「お前が梨花だな?」
梨花「…あのねぇ…」
チェイス「羽入から話を…」
梨花「話を聞いても!登場の仕方って、もんが、あるでしょ!?」
チェイス「しかし、これ以外お前に会う方法が無かった」
梨花「…いや、そうかもしれないけど…」
チェイス「俺には戸籍が無い。身分を証明出来るものも無い」
梨花「…もう良いわ。その辺は何とかするから…何とか出来る自信無いけど」
チェイス「それと俺は左之助ではない」
梨花「もう良いから!つい左之助って出ちゃったの!!」
チェイス「…」
梨花「…ちなみに、名前は?」
チェイス「チェイスだ」
梨花「却下。どう見てもアンタ日本人よ」
チェイス「俺達ロイミュードは、人間の身姿をコピーして人間体を持つ」
梨花「…や…もうアンタの正体は良いわ。混乱しそうだから」
チェイス「…俺は、ここでは紫左之助として生活すれば良いのか?」
梨花「もうそれしか無いわよ。…名前のセンスがどうとか言わないでよ?」
チェイス「了解した」
梨花「…それよりも、羽入よ。羽入は何処?アンタ、知ってるんじゃないの?」
チェイス「…」
梨花「いつもなら私から離れることはないのに。今回に限って…」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…いない」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…え?」
チェイス「羽入は、俺を含めた時間全てを巻き戻し、力を使い果たした」
梨花「…」
チェイス「俺を送り届け、羽入は33年後の世界に残った」
梨花「…え…?」
チェイス「羽入から全てを聞いた。時間は少ない」
梨花「…」
チェイス「だから、最短でお前に会える方法を選択した。一刻も早くお前達を救う為に」
梨花「…ごめん。もう一回。もう一回だけ…説明して?」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「羽入がいるのは、33年後、お前達が死んだ未来だ」
梨花「…」
チェイス「いつかは分かる。だから隠すことはない」
梨花「…そんな…」
チェイス「…」
梨花「…嘘…でしょ…?」
第1話 終
続きまたそのうち書きます
梨花「…」モグモグ
沙都子「…」モグモグ
チェイス「…」
梨花「…」モグモグ
沙都子「…」モグモグ
チェイス「…」
沙都子「…ン、ン゛ン゛!!」
チェイス「…」
沙都子「…ン゛ッ!!…ン゛ン゛ッン゛!!!」
梨花「…」モグモグ
沙都子「ン゛ン゛!!!」
チェイス「どうした?」
沙都子「その言葉そっくりそのままお返ししますわ」
チェイス「…?」
沙都子「何が悪いみたいな顔されても困るんですのよ」
梨花「…」モグモグ
沙都子「…まず、左之助?…さん。貴方はこの村の住人ではない」
チェイス「そうだ」
沙都子「そして、私は貴方を知らない」
チェイス「俺はお前を知っている」
沙都子「清々しい変態ですわね」
梨花「…」モグモグ
沙都子「…というより、も!!まず!!」バン!
チェイス「…」
沙都子「常識的に考えて下さいまし!普通、そのような方が!レディーの家に転がり込んで!おかしいと思いませんの!?」
チェイス「…」
沙都子「梨花も梨花ですわよ…何か事情があるとはいえ、大人の、それも男の方をスッと家に上げて…」
梨花「…左之助は、悪い人ではないのですよ」
沙都子「悪い人ではないのかもしれませんわよ。でも!常識的にどうかという話!ですわ!!」
梨花「いきなりだったので、仕方ないのですよ…」
沙都子「…はぁ…」
梨花「…」モグモグ
沙都子「梨花も何だか元気が無いようですし…とりあえずしばらくは良いですわ。…しかし!」
チェイス「?」
沙都子「も・し・も!!私達に何かしようものなら…その時は叩き出しますわよ!」
チェイス「了解した」
沙都子「それと!家に居候するだけなんてこの私が許しませんわ!」
チェイス「…」
沙都子「働かざるもの食うべからず。ここに居たいというならば、それなりに家事はやって頂きますわよ」
チェイス「了解した」
沙都子「…本当に大丈夫ですの?この人…」
梨花「…大丈夫なのですよ」
…。
梨花『羽入が…いない…?』
チェイス『33年という月日を戻し、俺を送り込む。羽入の力ではそれが限界だった』
梨花『…』
チェイス『羽入の話では、前原圭一という子供がまず事件を起こしたと聞いた』
梨花『…』
チェイス『それを無くしても、次は園崎魅音、園崎詩音が発端となる』
梨花『…』
チェイス『それを回避すると、次は北条沙都子。そして竜宮レナ』
梨花『…』
チェイス『そこからは、まだ見ていない。そう聞いた』
梨花『…羽入は、どうなるの?』
チェイス『…』
梨花『私達が、運命を乗り越えられても、それを羽入は見ずに終わるの?』
チェイス『…』
梨花『…そんなの、何の意味も…無いじゃない…』
チェイス『…』
梨花『私には、諦めるなって言っておいて、自分は…』
チェイス『…』
梨花『…何の為に、世界を戻したのよ…!!』
チェイス『…』
チェイス『…羽入は、俺にこう言った』
梨花『…』
チェイス『お前達に、未来を与えてやりたい、と』
梨花『…』
チェイス『そこに、羽入は含まれていなかった』
梨花『…!…何を…!』
チェイス『自分を犠牲にして、羽入はお前達の未来を選んだ』
梨花『ッ…!知った風な口、聞いてんじゃないわよ!!』
チェイス『…』
梨花『羽入はね!!もうずっと前から一緒に居るの!!ずっと!!』
チェイス『…』
梨花『ただの仲間なんかじゃない!!一心同体でやってきたの!!』
チェイス『…ダチ、というやつか』
梨花『それを…っ…』
チェイス『…』
梨花『…そんな…顔で…そんな、淡々と…!!』
チェイス『…』
梨花『言わないで…!!』
チェイス『…』
梨花『…!!』
チェイス『お前は、羽入が大事か?』
梨花『…』
チェイス『大事か?』
梨花『…大事に、決まってるでしょ…!』
チェイス『…羽入も、同じだ』
梨花『…!』
チェイス『…羽入は、そんな大切なお前の為に、世界に一人取り残される事を覚悟して俺を送り込んだ』
梨花『…』
チェイス『…その覚悟を、台無しにさせるな』
梨花『…』
チェイス『…』
梨花『…アンタも…』
チェイス『…』
梨花『…アンタも、全部、犠牲にしてきたの?』
チェイス『…』
梨花『一人で、ここに…』
チェイス『俺の目的は、生きとし生けるもの全てを守る事』
梨花『…』
チェイス『何処に居ても、それは変わらない』
梨花『…』
チェイス『俺はお前達を守る。羽入の為に、お前の為に』
梨花『…チェイス…』
チェイス『左之助だ』
梨花『今はチェイスで良いのよ!!』
…。
沙都子「良いですこと?先ずはお風呂の掃除ですわ!」
チェイス「了解した」
沙都子「…全く、素直ですわね。圭一さんにも見習って欲しいものですわ」
チェイス「…圭一…」
沙都子「どうかされましたの?」
チェイス「…いや」
…。
……。
羽入『圭一が雛見沢症候群を発症する発端は13日、学校の帰りにレナと近くのゴミ処理場に宝探しに行った時にあります』
チェイス『…』
羽入『レナと離れ、一人でいた時に、近くを通りかかったフリーカメラマン、富竹ジロウに声をかけられ、そこで過去の事件の事を知ります』
チェイス『バラバラ殺人、の話か』
羽入『はい。それをひた隠しにするレナや魅音に、疑心暗鬼になっていくのです。そして、富竹ジロウの死を皮切りに…』
チェイス『…』
羽入『そして全てを信用出来なくなった圭一は、たまたま遊びに来た二人を…』
チェイス『…』
…。
……。
チェイス「…」
梨花「…」
沙都子「それが終わったら、お風呂を沸かして下さいまし。…ぬるめで」
チェイス「…沙都子」
沙都子「…いきなりレディーを呼び捨てとは、遠慮の無い殿方ですわね」
梨花「…」
チェイス「…」
沙都子「…それで?何ですの?真剣な顔をして…」
チェイス「…お前は、俺の全てを、知りたいと思うか?」
沙都子「…」
梨花「…」
チェイス「…」
沙都子「は?」
沙都子「は?」
チェイス「知り合いの、過去や、普段の事、全てを知りたいと思うか?」
沙都子「…ああ、そういうことですの。…そうですわね…」
梨花「…」
沙都子「…思いませんわね」
梨花「!」
沙都子「知って、どうするんですの?それに話して嫌な気分になることもあるでしょうし…無理に聞こうとは思いませんわ」
チェイス「…」
沙都子「貴方のきちんとした情報を知りたいとは思いますわよ?いくつで、何処から何故ここに来たのか、とか…」
梨花「…沙都子…」
沙都子「誰しも話したくないことはあるものですわ。なら聞かないのが1番。違いますの?」
チェイス「…」
沙都子「…ま、そんなところですわね」
チェイス「…沙都子」
沙都子「はいはい…何ですの?」
チェイス「…見ず知らずの、俺を受け入れてくれて…」
沙都子「…」
チェイス「…ありがとう」
沙都子「さほど受け入れてませんわよ」
沙都子「zzz…」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「今日、夕方。圭一は富竹ジロウと出会い…」
梨花「知ってるわ。このまま行けば圭一は雛見沢症候群を発症する」
チェイス「…」
梨花「発症したが最後、治る事はない」
チェイス「…」
梨花「とは言っても、悪化を止める事は出来るわ」
チェイス「…リビングの棚に、梱包された注射器が入っていた」
梨花「あら、プライベートを覗いたの?」
チェイス「2人の箸を出す時に、間違って開けてしまった」
梨花「…それで?」
チェイス「沙都子には、兄がいると聞いた」
梨花「ええ。それも症候群の中でも1番。Lv5よ」
チェイス「…」
梨花「でも行方不明のまま。結局見つかることはなかったわ」
チェイス「…」
梨花「叔母を金属バットで撲殺。その後…」
チェイス「…お前が、雛見沢症候群にかかっているとは思えない」
梨花「…」
チェイス「感染者は、沙都子か」
梨花「…ご明察。あの子は今Lv3よ」
チェイス「…あの注射器は、それを抑える薬か」
梨花「一時的にだけどね。定期的に打たないと、直ぐに発症よ」
チェイス「…沙都子は、知っているのか?」
梨花「…沙都子はまだ小学生よ。そんな子に、どうやって伝えるの?」
チェイス「…」
梨花「…沙都子には、無害な薬の治験と伝えてあるわ。…あの子がもう少し大人になったら直ぐにバレるだろうけど」
チェイス「…」
梨花「…まだ圭一は発症していない」
チェイス「…今からなら、まだ間に合うということか」
梨花「あの注射器を、圭一に使う。そうすれば少なくともこの惨劇は回避出来る」
チェイス「…」
梨花「貴方、圭一を取り押さえられる?」
チェイス「造作も無い」
梨花「もし圭一が惨劇を回避出来ないのなら、その時は…」
チェイス「だが、それでは感染者を増やすだけだ」
梨花「…?」
チェイス「もし惨劇を回避したいのなら、1人の犠牲も出してはならない」
梨花「…」
チェイス「誰も傷つけさせない。そうでなくては羽入を裏切ることになる」
梨花「…甘いのね」
チェイス「…だが、不可能ではない筈だ」
沙都子「zzz…」
梨花「…」
チェイス「…この子は、誰とも分からない俺を受け入れてくれた。怪しい存在だと分かっていながら」
梨花「…」
チェイス「そして言った。抱える秘密は聞くべきではないと」
梨花「…」
チェイス「感染しているのにも関わらず、沙都子は既に乗り越えている」
梨花「…」
チェイス「この子に出来たのなら、圭一にも出来る筈だ」
梨花「…そうね」
チェイス「…」
梨花「…そう思ってた時が、私にもあったわ…」
チェイス「…?」
梨花「…圭一はね、そんじょそこらの人間とは違う」
チェイス「…」
梨花「何があっても諦めない、強い意志を持った人間よ」
チェイス「…」
梨花「運命なんて、平気な顔で捻じ曲げられそうな…頼り甲斐のある男だったわ」
チェイス「なら、何故…」
梨花「…解き方の分からない問題は、何度やっても無理なのよ」
チェイス「…」
梨花「運命を乗り越えても、待っていたのは死」
チェイス「…」
梨花「…理不尽よね。どう頑張っても、7月を迎えられないんだから」
チェイス「…お前は、諦めたのか?」
梨花「…」
チェイス「諦めたのならば、何故時間を戻させた」
梨花「…」
チェイス「俺がここに来たのは、お前が助けを求めたからだ」
梨花「…」
チェイス「そのお前が諦めるということは、羽入の覚悟を裏切ることになる」
梨花「…」
チェイス「ダチの思いを、裏切るな」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…簡単に、言ってくれるのね」
チェイス「…」
梨花「…でも、ありがとう」
チェイス「…」
梨花「…今の私には、それくらいが一番嬉しい」
…。
……。
知恵「…」
梨花「…」
チェイス「…」
知恵「…あの、私言いましたよね?」
チェイス「分かっている」
知恵「…分かっていると言われましても…」
チェイス「だが、何とかして欲しい」
梨花「ボクからもお願いしますですよ。知恵」
知恵「…いくら古手さんの頼み事と言われましても…」
チェイス「…」
知恵「…この方を、ここで雇うのは…」
梨花「でも、人手が足らないといつもボヤいていたのを知っているのです」
知恵「…ですが…資格の無い方に教鞭を執らせる事は…」
チェイス「報酬はいらない。それならば仕事とは言わない筈だ」
知恵「…ボランティア、だと…?」
チェイス「そうだ」
知恵「・・・」
梨花「…」
知恵「…校長先生。どうされますか?」
校長「…そうですなぁ…」
知恵「本人はボランティアでも構わないと言っていますし…」
梨花「その上ボクのお墨付き、なのですよ」
校長「ううむ…」
梨花「それにチェ…左之助はとっても強いのです。悪い奴なんか一瞬でぱーん☆なのです」
知恵「この人の方がよっぽど悪そうに見えるんですよ」
チェイス「…服か。生憎これ以外は…」
校長「…」
校長「…左之助…さん…で、よろしいのかな?」
チェイス「何だ」
校長「…確かに、貴方からは悪人の気配はしません」
チェイス「…」
校長「…しかし、ですな。それよりも…」
チェイス「…」
校長「…何故、ここを選んだのですか?」
チェイス「…志望動機というやつか」
校長「他にも教鞭を執る事が出来る場所はいくらでもある筈です」
梨花「…」
校長「貴方が、ここを選んだ理由は?」
チェイス「…」
校長「…貴方の言葉で、説明してはもらえませんかな?勿論、嘘偽り無く…」
チェイス「…」
梨花「そ、その…」
チェイス「…」
梨花「ぼ、ボクが代わりに…」
校長「いえ。彼に説明してもらわねばなりません」
知恵「…」
校長「身分も怪しい。目的も不明。そのような者をここに入れるのは私が許しません」
チェイス「…」
校長「ですから。貴方に聞きたい」
チェイス「…」
校長「ここに、何をしに来たのですか?」
チェイス「…」
梨花「…」
校長「…」
チェイス「俺の名は、左之助ではない。チェイスだ」
知恵「!」
梨花「!?…ちょっ…!」
チェイス「そして俺は、古手梨花とは何の関係も無い」
校長「…ほう…」
チェイス「俺は、ここに呼ばれた」
梨花「…!!?」
チェイス「この村を守れと、人間を守れと言われた」
知恵「…」
校長「…」
チェイス「…信用は、出来ないか」
知恵「…」
校長「…」
梨花「・・・」
チェイス「…ならば、こうするのが一番早い」スッ
校長「む…?」
知恵「?」
チェイス「…」
梨花「え…?」
チェイス「…」グッ
http://youtu.be/JIde65wVR54
梨花「…え…?」
『Break up』
校長「!?」
知恵「…!」
http://www.heroshock.com/wp-content/uploads/2014/12/zpsa498f41c.jpg
チェイス「…」
梨花「…あ…」
知恵「…こ、ここ…校長…先生…!!」
校長「…!!」
チェイス「…俺は、人間ではない」
校長「…」
チェイス「人間に作られた機械生命体、ロイミュード」
梨花「…本当…だったの…?」
チェイス「俺の使命は、この村を襲う「何か」から、お前達を救うことだ」
知恵「…」
校長「…チェイス、さん…」
チェイス「それが何かは分からない。だが少なくとも、こうすることで守る手段は増える」
校長「…」
チェイス「…俺を、此処で雇ってくれ」
校長「…」
知恵「…」
梨花「…」
校長「わ…」
チェイス「…」
校長「…分かり…ました…」
第2話 終
続きまたそのうち書きます
知恵「…は、はーい!じゃあ…岡村君?この問題は分かりますか?」
岡村「は、はい…えっと…」
富田「…」
岡村「え、えっと…こ、こう…でしょ…うか…?」
チェイス「違う」
岡村「ヒイッ!!?」
富田「うわっ!!?」
チェイス「文章を良く読め。大概の計算問題は文章にヒントが書いてある」
岡村「は、はいぃ…」
知恵「…」
チェイス「人間が作った問題だ。同じ人間に解けない筈はない」
岡村「はひぃ…」
…。
圭一「・・・」
魅音「・・・」
レナ「・・・」
沙都子「…」
梨花「…」
沙都子「…梨花?」
梨花「…」
沙都子「…どうして、こうなったんですの?」
…。
……。
梨花『機械生命体…ロイミュード…』
知恵『…これは…現実…なの…?』
校長『…』
チェイス『現実かどうか、それは知らない。ただ俺は自分の役目を果たしに来た。それだけだ』
校長『…その為に、未来から…』
チェイス『そうだ』
校長『…チェイスさん』
チェイス『…』
校長『…この老いぼれの耳が腐ってなければ確かに、何かが、この村を襲うと聞きましたが…』
チェイス『そうだ』
校長『それは、いつ、なのですか?』
チェイス『…少なくとも、今のままではお前達は7月を迎えることすら出来ない』
知恵『!』
校長『…ほう…』
チェイス『そうならない為に、まず情報を集めたい』
梨花『…』
校長『…古手さんは、この事を?』
梨花『…』
チェイス『梨花。嘘を吐くな。この男に嘘は通じない』
梨花『…!』
知恵『…』
校長『…人生経験は、貴方達よりは上ですからな…人を見極める力はそれなりにあると思いますが…』
梨花『…』
校長『…』
梨花『…話せば、長くなる。…だから、少しだけ』
校長『どうぞ』
知恵『…古手…さん…』
梨花『私も貴方達も、もう何百回も死んでる』
知恵『!!』
校長『…!』
梨花『その度に、世界をやり直してる。…「今」、この世界は33年振りだけどね』
校長『…参りましたな』
知恵『…あ、あの…』
校長『…そのような事に、今まで気づかなかったとは…』
梨花『無理もないわ。記憶が残るのは私だけだもの』
知恵『…あの』
校長『知恵先生。このお二方は嘘なぞ吐いてはおりません。本心です』
知恵『…ですが、あまりに突拍子もない…』
校長『その為に、彼は正体を明かしてくれた。それにそう考えれば彼が何故この学校に来たのかも合点がいく』
知恵『…』
梨花『…』
校長『…雛見沢村の住人全員の命の危機。もしも、それが本当だとしたら…』
チェイス『…』
校長『…迷う必要はありませんな』
梨花『…じゃあ』
校長『私達で良ければいくらでも力になりましょう。場合によっては警察にも…信じてはもらえないかもしれませんが…』
チェイス『…ありがとう』
…。
……。
魅音「…うーん…にしても、あの左之助って先生にゃー驚いたね」
レナ「そうだねぇ。沙都子ちゃんのトラップも簡単に避けられちゃったし」
沙都子「うぐぐ…精度をもっと高めねばなりませんわね…」
魅音「オマケにあのポーカーフェイスだしねぇ…自己紹介の時も今も、眉一つ変わってないよ」
圭一「…梨花ちゃんの知り合い…なんだよな?ならどういう人なのか、知ってるのか?」
梨花「みー…ボクも久し振りにお会いしたので、細かい事は分からないのですよ」
圭一「…そ、そっか」
梨花「…」
チェイス「…勉強は、進んでいるか?」
圭一「うわっ!?」
チェイス「…」
魅音「あ、あははー…な、何とか…」
チェイス「…前原、圭一」
圭一「えっ?」
チェイス「…竜宮、レナ」
レナ「は、はうっ?」
チェイス「…園崎、魅音」
魅音「!」
チェイス「…お前達は、いつも3人で勉強をしているのか?」
魅音「…え、え…ええまあ!ほら!アタシらしか年長組はいないし…」
レナ「で、でも!圭一君がいつも教えてくれてて…」
チェイス「…そうか」
梨花「…」
チェイス「…圭一」
圭一「は、はい?」
チェイス「計算が途中から合っていない」
圭一「え?…あ」
チェイス「人に教えるのならば、もっと責任感を持って教えるべきだ」
圭一「…」
チェイス「レナと魅音はお前を信頼して、全てを委ねている」
魅音「え?す、全てはー…あはは…」
レナ「あ、あはは…」
圭一「…」
チェイス「…」
梨花「…」
梨花「(…結局あれから普通に授業して、お弁当食べて…)」
魅音「…んー…」
圭一「…」
梨花「(今日もこのまま、何も変化せずに終わるのかしら…)」
魅音「…これっ!!」ヒョイ
圭一「がっ…!?」
魅音「はーい!私の勝ちー!」
沙都子「おーほっほっほ!圭一さんのビリッッケツ決定!ですわね!」
圭一「あああああああ!!!昨日のカードはどうした!昨日の傷付きカードは!」
魅音「バレたのに使う訳ないじゃーん☆」
圭一「何ぃぃぃぃぃ!!?この卑怯者ぉぉぉぉおおおおお!!!」
魅音「あっはっはっは!まー新入りの通過儀礼だと思ってさー♪」
沙都子「さ!潔く罰ゲームを受け入れるんですのよぉ?」
圭一「うぐぐ…分かった!だが次はこうはいかねぇ!次は勝つ!絶対に勝つ!」
レナ「そうだよ圭一君!レナ応援してるからね!」
沙都子「…レナさん1番上がりでしたわよね?」
圭一「…さ!今日の罰ゲームは何だ!!」
梨花「(…けど、チェイスだって何か考えが…)」
魅音「はいよっ!…今日はぁ…これっ!」バサッ
梨花「(…でも、あの不器用が服着て歩いてるような奴に…)」
圭一「…なっ…?」
沙都子「今日の罰ゲームは…メイド服を着て村を練り歩く!ですわよ!」
圭一「…んなぁぁぁぁぁぁ!!?」
魅音「はいはーい!レナ!圭ちゃん抑えててー♪」
レナ「はう~…圭一君のメイド服姿…見たいよぅ、見たいよぅ」
圭一「お前ら…!覚えてろよー!!!」
梨花「(…でも、さっき…)」
沙都子「おーほっほっほっほ!それは負け犬の遠吠えと言うんですのよ!!」
圭一「だああああああ畜生ぉぉおおおおお!!!」
梨花「(確かに…チェイスは圭一に…)」
…。
圭一「…あーもう…何たってこんな格好…」
魅音「似合ってる似合ってる。可愛いよぉ」
圭一「嬉しくないんだよ!レナは俺の事お持ち帰りしようとしてたし…村の人はめちゃくちゃこっち見てくるし……ったく…」
魅音「あはは。そりゃそんだけ似合ってりゃみんな見るって」
圭一「嬉しくないんだよ!!」
魅音「…ちなみにそのメイド服…前に着たのはレナだよ」
圭一「えっっ!!?」
魅音「もしかして、洗ってなかったかも…」
圭一「えっっっ!!?」
魅音「……あーっはっはっはっは!!!圭ちゃん顔真っ赤ー!!」
圭一「…!!!み、魅音ー!!!」
魅音「あっはははは!!!ごめんごめんって…あはは…」
圭一「ったく…からかうのも大概にしろよなー…」
魅音「やー…でも圭ちゃん何だか元気無かったみたいだからさー…」
圭一「え?」
魅音「ん?」
圭一「そ、そうだったか?」
魅音「そうだよぉ。ずーっと何か考え事してた」
圭一「…」
魅音「で?何かあった?」
圭一「…えっと…さ、魅音」
魅音「ん?」
圭一「…そのー…昔、此処で…」
魅音「…」
圭一「…バラバラ殺人があったって…」
魅音「・・・無かった」
圭一「!」
魅音「…」
圭一「…」
魅音「…でさー!圭ちゃん帰ってくる前の沙都子がねー?」
圭一「…」
…。
チェイス『レナと魅音はお前を信頼して、全てを委ねている』
…。
圭一「…魅音」
魅音「ん?…」
圭一「…大丈夫だ」
魅音「…」
圭一「何があったって、この村を嫌いになったりしない」
魅音「…」
圭一「俺に気を遣ってくれてるなら、嬉しい…けどさ」
魅音「…」
圭一「俺もこの村の住人だし、良いところも、悪かったところも、知ってみたい」
魅音「…圭ちゃん…」
圭一「…でも、無理にとは言わない。お前がそこまで隠すってのは、理由があるってことだから」
魅音「…」
圭一「…」
魅音「…圭ちゃん」
圭一「…」
魅音「…面白い話じゃ、ないけど…」
圭一「…」
魅音「…あのね…」
沙都子「~♪」ジュー
梨花「昭和50年、ダム建設計画の話が出てきてね。この村を全部沈めるって…」
チェイス「…」
梨花「勿論、住人達には手厚い謝礼金が支払われる予定だったわ。老人が多かったし、何より彼らはこの村を愛してやまなかったから」
チェイス「…しかし、住人達は立ち退きを拒否した」
梨花「そう。…拒否だけじゃ済まなかったけどね」
チェイス「…」
梨花「昭和53年。当時の建設大臣の娘が誘拐される事件が起こったわ」
チェイス「…」
梨花「結果的に救えはしたけれど犯人は捕まらず、事件は未解決のまま」
チェイス「…お前は、その時も既に?」
梨花「ご想像にお任せするわ。…そして、遂に起こったのよ」
チェイス「…例の、バラバラ殺人か」
梨花「そう。犯人は恐らく村人の誰か。相手は建設会社の現場責任者」
チェイス「…状況的に、そう考えるのが妥当だろうな」
梨花「この現場責任者が隣町の興宮警察署のとある狸刑事の知り合いでね。躍起になって雛見沢に関わろうとして。…でも後にこの男のせいで圭一やレナ達はこの村全体に畏怖の念を抱いてしまうの」
チェイス「…刑事…か」
梨花「?」
チェイス「続けろ」
梨花「…でもね、結局捕まったのは1人だけ。納得いかないみたい。このた…大石刑事は」
チェイス「…」
梨花「…それで、もう限界だって建設会社が引き上げてね、ダム開発は白紙になったのよ」
チェイス「…しかし、33年後は違った」
梨花「誰もいないんだから。そりゃ丁度良い土地が出来たって話じゃない」
チェイス「…」
梨花「…でも、そうはさせないんでしょ?」
チェイス「その為に俺はここにいる」
梨花「…そう」
チェイス「…やはり、寂しいか?」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…野暮な質問、するものじゃないわよ」
チェイス「…」
梨花「…こういうのは、察して気を遣うってのが男ってものよ」
チェイス「…すまない」
沙都子「…さ!出来ましたわよ!左之助さん!梨花!今日はハンバーグですのよ!」
チェイス「…」
梨花「…ほら!左之助!沙都子の美味しいご飯なのですよ!」ポン
チェイス「…了解した」
圭一「…」
…。
魅音『ごめんね圭ちゃん。…隠すつもりじゃなかったんだけど』
圭一『いや、分かってる。…そんな内容、これから楽しもうって新入りに話せたもんじゃないしな』
魅音『…全く、富竹さんもお喋りなんだからなー…』
圭一『?知り合いなのか?』
魅音『まあね。あの人毎年、この時期になると来るんだ。綿流しのイベントを見に』
圭一『へー…あ、カメラマンって言ってたもんな…』
魅音『…あ!でね?でね?これがもー…でも…あ、良いや、言っちゃえ』
圭一『?』
魅音『あのね?監督の診療所の…あ、まだ行ったことなかったっけ?』
圭一『あの診療所か?そういえば…え?監督?』
魅音『…あ。ごめんごめん。入江先生っていうんだけどさ。…ちなみに監督っていうのは、雛見沢ファイターズっていうこの辺の少年野球チームの、ね?…現場監督とかじゃないよ?』
圭一『分かってるよ……で?その診療所がどうしたんだよ』
魅音『あのね!そこのナースの鷹野っていう人と富竹さんが、…んもっ…すっっごく!仲が良くってねー…』
圭一『…へー…』
魅音『巷の噂じゃ、綿流しは二番手、一番は鷹野さんじゃないかってさー』
圭一『そりゃ…そうかもなー…』
魅音『でしょでしょ!?そう思うよねー!』
…。
圭一「…信頼、か…」
圭一「…レナも、俺に気を遣って…」
圭一「…!」パン
圭一「…よしっ…」
圭一「明日からは、またいつも通りの俺だ!」
圭一「…」
圭一「…全てを…」
圭一「委ねて…」
圭一「…!……いかんいかん…妄想が…」
沙都子「どうですの?左之助さん」
チェイス「…何がだ?」
沙都子「どうって…」
梨花「…」
沙都子「美味しいかどうか!ですのよ!食事中なんですから!!味の評価に決まってるでございましょう!!?」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「俺に味を感じる機能は…」
梨花「ン゛ン゛!!!」
チェイス「…」
梨花「ン゛ッン゛ン゛!!!」
チェイス「…美味い」
沙都子「!…そ、そうでございましょう?私が作ったハンバーグなのですから………というより」
チェイス「どうした?」
沙都子「美味しいなら!!もっと美味しいって顔出来ませんこと!?ポーカーフェイスにも程がありますわよ!!」
チェイス「…」
沙都子「ほら、もっとこう…口角を上げて、にぱーっと…」
チェイス「口角を…」
梨花「…」
チェイス「…」ググ…
沙都子「…」
チェイス「…」グググググ…
沙都子「…」
チェイス「…」ギギギ…
沙都子「…笑おうという意思は伝わりましたわ…」
チェイス「…」
梨花「・・・」
沙都子「しかし、素直なのはとても良い事でしてよ。圭一さんももっと左之助さんのようになって欲しいものですわね…」
チェイス「…」ギチギチギチ
梨花「もう戻して良いのですよ」
…。
?「…あのアマァ…!」
?「…なぁにが2人で一緒に、幸せにだ…!」
?「上納金掻っ攫って、1人だけ逃げよってからに…!!」
?「…こいつぁ…ちっとばかしマズい事になった…」
「…?お!おいおい!」
?「ああ…?何じゃ。ワシャあ今…お」
「鉄っつぁんじゃねえか!久し振りだなぁ!ええ?」
?「…何じゃ。随分立派な店構えたもんじゃのう…」
「そりゃあな。鉄っつぁんのおかげだよ。全く…どうしたんだよ。世界の終わりみたいな顔しちまって…」
?「…」
「…まあ、なんだ!どうだい?ちょっと一杯…」
?「…悪ぃが、ワシは今…」
「良いって良いって!それにもう店じまいだ。余りモンで良けりゃ食ってきなよ」
?「…すまんのう…」
…。
「…は…はァ!?そ、園崎組の上納金を…!!?」
?「シッ…!!何処で誰が聞いとんのか分からん。あまり大きな声を出すな…」
「い、いや…だけどよ…そりゃちっとマズいぜ?…いや、ちっとじゃねぇ。本当に…」
?「…まあ、バレたら指の一本や二本じゃ済まん…な」
「指どころじゃねぇ。腕脚全部切り取っても足りねぇ…何たってそんな…」
?「…このナリと歳で稼ごうとしたって…今の世の中甘くねぇっちゅう事じゃろうな…」
「…」
?「そこに、あんクソアマの話が舞い込んできた」
「…成る程な」
?「…正直、命なんてどうでもええっちゅう額じゃったわ。金の力っちゅうもんは末恐ろしいもんじゃ」
「…」
?「じゃが、やっぱり人間、いざという時にゃ自分の命が惜しくなる。…今みたいに全部の責任押し付けられちまったらな」
「…そりゃ大層な女に引っかかっちまったもんだな」
?「…」
「どうすんだい鉄っつぁん。この先…」
?「…」
「園崎のモンが鉄っつぁんに気付いちまったら、俺だってどうにも…」
?「…その時の為に、な」
「?」
?「…保険はかけとるんよ」
「…保険?」
?「まあな。当てならある」
「…?」
?「…待っとれや…」
「…」
?「…沙都子よぉ…」
第3話 終
続きまたそのうち書きます
…。
羽入『り、りぃかぁ…辛いのは食べないで欲しぃのでひゅぅ…』
羽入『苦いのも嫌なのです!甘いのが良いのです!』
羽入『シュークリームにぃ…シュークリーム…シュークリームぅ』
羽入『…!買ってくれるのですか!?ありがとうなのです!あうあう!』
羽入『は、早く…!久し振りのシュークリームなのです…!』
羽入『…あ、あうあう!焦らすのはダメなのですよ!梨花!』
羽入『…!お、おいひぃのでひゅ…』
羽入『梨花!ありがとうなのですよ!にぱー☆』
…。
梨花「…」
梨花「…!」
梨花「…夢…」
梨花「…そうよね」
梨花「…羽入は、もう…」
チェイス「…」
梨花「…!」
チェイス「…」
梨花「…起きてたの?」
チェイス「睡眠機能はあるが、したところで意味は無い。だから起きてお前達の身の安全を確保する方が合理的だ」
梨花「…そう」
チェイス「…泣いているのか」
梨花「!…な、泣いてなんか…」
チェイス「涙が、流れている」
梨花「…ほんっと…デリカシーが無いのね…!」ゴシゴシ
チェイス「…」
梨花「…アンタには、一生かかっても分からないわよ…」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「俺も、涙を流したことがある」
梨花「!」
沙都子「zzz…」
梨花「…アンタが?」
チェイス「人は、嬉しい時や悲しい時に涙を流す」
梨花「…まあ、そうね…」
チェイス「俺は、悲しい時だった」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…何が…あったの?」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「失恋だ」
梨花「寝るわ。静かにしててよ」
チェイス「…」
チェイス「…」
梨花「…そういえば、だけど…」
チェイス「どうした」
梨花「…今日の夕方、圭一が魅音に事件のことを質問するのよ。魅音が明日の朝教えてくれるから分かるわ」
チェイス「それは羽入から聞いた」
梨花「…もし圭一が発症していたら、明日になればすぐ分かるわ」
チェイス「何故だ?」
梨花「昼ご飯の時に机をくっつけるんだけど、その動作が少し遅いのよ」
チェイス「…そうか」
梨花「…ねえ、チェイス」
チェイス「どうした」
梨花「…アンタ、圭一に変な事言ってたけど、アレはどういう意味だったの?」
チェイス「…」
梨花「魅音やレナが、圭一を信頼してるって…」
チェイス「…俺達ロイミュードは、単純な能力の他にも人間に対するセンサーが備わっている」
梨花「…」
チェイス「あの二人が圭一に接する時、心臓の鼓動が少し早くなり、体温が上昇している事に気がついた」
梨花「…あー…」
チェイス「特に魅音は顕著に表れていた」
梨花「…何?アンタってそういう話好きなの?」
チェイス「…」
梨花「…意外ね。もっとドライな奴かと思ってた」
チェイス「俺はお前達のように感情を自由に表すことが出来ない」
梨花「…」
チェイス「だから、学びたい。人間のコミュニケーションというものを」
梨花「…なら、アドバイスしてあげる」
チェイス「…」
梨花「…時には、熱い男も悪くないものよ」
チェイス「…」
…。
『ベルトさん!』
『アンタみたいな奴、どー…にも嫌いになれないんだよな』
『うわっ…霧子ォ!!?』
『考えるの、やーめた』
…。
チェイス「本当か?」
梨花「今の間は何?」
…。
沙都子「…むにゃ…けいいちさーん…しゅぎょーがたりなくてよぉ…」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…」ムク
チェイス「まだ朝ではない」
梨花「分かってるわよ…何だか眠れなくなっただけ」
チェイス「お前は人間だ。睡眠は取らなくてはならない」
梨花「村がヤバイってのに、そんな事一々気にしないでよ」
チェイス「…」
梨花「…分かった。分かったわよ。じゃあ…もう少し話し相手になりなさい」カチャカチャ
チェイス「…待て」
梨花「何?」
チェイス「それは、酒か?」
梨花「…そうだけど…」
チェイス「ダメだ。お前は子供だ」
梨花「んがっ…!?あ、あのねぇ…こう見えて、アンタの10倍は…」
チェイス「だが、身体は子供だ。未成年の飲酒は健康に著しく害を与える」
梨花「もう何度も飲んでるわよ。それにちょっと酔ったくらいが…」
チェイス「それだけではない。発育にも大きく響く」
梨花「余計なお世話よ」
チェイス「…ルールはルールだ。守らなければならない」
梨花「…はぁ…分かったわよ…もう…」
梨花「…アンタ、綿流しの儀式については聞いてる?」
チェイス「実物は見ていないが、古手神社の巫女が古い布団を裂き、その中の綿に願いを込めて川に流す儀式だと聞いた」
梨花「そ。…なら、大体知ってると思うけど…」
チェイス「…」
梨花「私は明後日から暫く帰るのが遅れる事になるわ。奉納演舞の練習があるから」
チェイス「…その間は」
梨花「心配は無用よ。その「何か」がやってくるのは綿流し後だから」
チェイス「…」
梨花「ただ、この子は別よ」
チェイス「…」
梨花「…私がいない間、沙都子は一人になる」
チェイス「…」
梨花「…つまり、あの男の格好の餌食になる可能性があるってわけよ」
チェイス「あの男…沙都子の、叔父か」
梨花「そう。この男ははっきり言って正真正銘人間のクズよ」
チェイス「…」
梨花「沙都子が発症するのは、この男のせい」
チェイス「…」
梨花「薬も打たず、虐待されて…沙都子は壊れてしまうの。…ただ」
チェイス「…ただ?」
梨花「…事件を起こすのは、沙都子ではない…」
チェイス「…」
梨花「沙都子の兄、悟史は知ってる?」
チェイス「ああ」
梨花「…彼が行方不明になってから、沙都子は心の拠り所を探していた」
チェイス「…圭一、か」
梨花「…察しが良いわね」
梨花「圭一が疑心暗鬼になる要因は、一つだけじゃない」
チェイス「?」
梨花「圭一はね、沙都子の兄になろうとしたのよ」
チェイス「…兄…」
梨花「そう。悟史の代わり。…沙都子も次第に圭一の事を兄のように慕っていってね…」
チェイス「…兄…」
梨花「…それだけで、終われば良かったのに…」
チェイス「…発症か」
梨花「ええ。そのせいで殺意を抑えきれなくなった圭一は沙都子の叔父、北条鉄平を殺してしまったの」
チェイス「…」
梨花「それだけじゃない。…貴方、北条家については聞いてる?」
チェイス「…何のことだ?」
梨花「…昔ね、沙都子が産まれた当時。北条家の人間は園崎、公由家と折り合いが付かなくてね」
チェイス「…」
梨花「村八分って言葉は、知っているかしら?」
チェイス「ああ」
梨花「それが今でも続いてる。北条家はこの雛見沢では忌み嫌われる存在なのよ」
チェイス「…魅音やお前とは、仲が良いのに、か…?」
梨花「田舎にありがちな風習よ。私も魅音も、こればかりはどうしようもない」
チェイス「…」
梨花「…圭一は、そんな背景を知って雛見沢に敵意を向けるようになってしまうの」
チェイス「…この子の、為にか」
梨花「そう。…行き過ぎた正義感。褒められたものではないわ」
チェイス「…沙都子の親は、今何処にいる?」
梨花「…その辺は、またその内話すわ」
チェイス「…」
梨花「…可哀想。だなんて思わないであげて」
チェイス「…」
梨花「…この子の、精一杯のプライドの為に、ね」
チェイス「…」
沙都子「…zzz…」
チェイス「何故、兄になろうとする?」
梨花「え?…さぁ、ね。…同情、かしら」
チェイス「家族になりたい。それは愛しているということではないのか?」
梨花「…どうかしらね。ただ、家族愛っていうのもあったかもしれないわ」
チェイス「家族…愛…」
梨花「異性としてではない。本当の妹のように」
チェイス「…そうか」
梨花「…」
チェイス「不思議だ」
梨花「?」
チェイス「何故、家族なのに虐待など…」
梨花「…ああ、叔父の事?」
チェイス「家族愛は、無いのか?」
梨花「…肩を持つ訳ではないけど、沙都子の親がしたことで少なからず影響はあったみたい」
チェイス「だが、その恨みを沙都子にぶつけたところで何も解決はしない」
梨花「それは、向こうもよく分かってる筈よ。けど、どうしようもないんでしょ」
チェイス「…」
梨花「行き場の無い怒りを、この子にぶつけるしかストレス解消法が無い」
チェイス「…」
梨花「アンタ、生きとし生けるもの全てを守るって言ってたわよね?」
チェイス「ああ」
梨花「…なら、どう?」
チェイス「…」
梨花「目の前で、沙都子が暴力を振るわれたら、貴方は北条鉄平をどうする?」
チェイス「振るわれる前に取り押さえる」
梨花「や…そうじゃないわね。じゃあ、もしも、北条鉄平が、沙都子の親権を盾に沙都子を奪ってしまったら、どうする?」
チェイス「…」
梨花「ルールはルールなんでしょ?これなら向こうに問題は無いわ」
チェイス「…難しいな」
梨花「…そ」
チェイス「…」
梨花「…圭一は、解決させたわよ」
チェイス「!」
梨花「貴方には、出来るかしら?」
チェイス「…」
梨花「…まあ、その時は別の発症者が現れたんだけどね…」
チェイス「…」
梨花「大見得切ったんだから、やってみせなさい。出来ないだなんて絶対に言わせない」
チェイス「…どうやって、解決したんだ?」
梨花「あら?もう降参?」
チェイス「俺には出来ない、方法なのか?」
梨花「…この村の人間、隣町の人間。色んな人達を味方につけることが出来るかしら?」
チェイス「…」
梨花「圭一は口から産まれてきたような奴だから。見事に全員手玉に取っちゃったわよ」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…」グググギギ…
梨花「…貴方はまず感情表現の練習からだったわね」
…。
沙都子「…んん…さのすけさん…わたくしのとらっぷをぉ…」
梨花「…」
チェイス「…寝ないのか?」
梨花「…もう少し、夜風に当たっていたいのよ」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「心配するな」
梨花「…え?」
チェイス「お前は…お前達は絶対に死なせない」
梨花「…」
チェイス「そんな残り時間を惜しむような行動はするな」
梨花「…」
チェイス「もう「それ」以上、お前を悲しませたりはしない」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…全く…」
チェイス「…」
梨花「…不器用な癖に…そういうところは鋭いのね」
チェイス「…」
梨花「…33年振りだもの」
チェイス「…」
梨花「怖くて、当然じゃない」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「梨花」
梨花「?」
チェイス「…」ギュ
梨花「…ロリコンに目覚めたの?」
チェイス「お前の不安や悲しみが、どうやったら止まるのか、考えた」
梨花「…」
チェイス「…だが、思いつかなかった」
梨花「…それで、これ?」
チェイス「俺には圭一のような器用さも、魅音やレナ、沙都子のように明るく振る舞う事も出来ない」
梨花「…」
チェイス「だが、約束する」
梨花「…」
チェイス「必ず、助ける」
梨花「…」
チェイス「だから、怯えるな」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…アンタと圭一、似てなくもないわよ」
チェイス「…ん…?」
梨花「…こうやって、真っ直ぐ向き合うところ」
チェイス「…」
梨花「約束」
チェイス「…」
梨花「絶対に破らないでよ」
チェイス「…了解した」
第3.5話 終
続きまたそのうち書きます
魅音「あー!ごめん!今日の部活は無し!」
圭一「え?」
レナ「?」
沙都子「あら?何か用事ですの?」
魅音「それがさー…昨日の夜に知り合いから電話がかかってきてね?少しだけバイト頼まれちゃって」
圭一「へー。そりゃ大変だな」
沙都子「ん…まあ、実は私達も今日は興宮までお買い物に出掛けなければなりませんので…」
梨花「みー☆」
圭一「じゃあ、レナと俺だけか」
レナ「二人で部活は出来ないし、今日はお休みだね」
魅音「ごめんねー?明日は通常通りだから!よろしくっ!バイバーイ!!」バビューン
圭一「お、おお…」
沙都子「…何だか、嵐のように去っていきましたわね」
レナ「急いでるのかな?かな?」
梨花「何だか興宮のワードに反応していたようなのです」
沙都子「ん…あ!こうしてはいられませんわ!梨花!左之助さんを呼んで下さいまし!」
梨花「了解した。なのです!」
レナ「?左之助先生がどうかしたの?」
梨花「左之助は荷物持ち担当なのですよ」
沙都子「おーほっほっほ!左之助さんは圭一さんと違って力持ちですから!」
圭一「何ぃ!?」
沙都子「圭一さんは食器棚を一人で持ち上げることが出来まして?」
圭一「ゲッ…あの人そんな事出来んのかよ…」
沙都子「人は見た目によらないということですわ」
レナ「・・・見た目・・・?」
沙都子「…それは否定しませんわ…」
…。
チェイス「部活…」
沙都子「そうですのよ。魅音さんを中心として、様々なゲームで勝負をするのですわ」
チェイス「…部活というのは、ゲームをするものなのか?」
梨花「中身はゲーム同好会なのです」
沙都子「というより部として認知されてるのかどうかすら怪しいものですわね…」
梨花「でも楽しければ良いのですよ。ボクはとっても楽しいのです。にぱー☆」
沙都子「そうですわね…今ではなくてはならないものになっていますから…」
チェイス「…そうか」
沙都子「左之助先生も参加してみませんこと?そのポーカーフェイスなら、魅音さんも見破れませんわよ?」
梨花「カードゲームにボードゲーム、麻雀、色々あるのですよ」
チェイス「…俺は、遠慮しておこう」
沙都子「?」
チェイス「麻雀やボードゲームに関しては、ルールを知らない」
沙都子「あら?そうでしたの?」
梨花「(…そういえば、ロイミュードは人間の身姿をコピーするって言ってたわね…確か、記憶もそのまま引き継ぐって…)」
沙都子「私が教えてあげても宜しくってよ」
チェイス「…考えておこう」
梨花「(…どれだけ真面目な奴をコピーしたのよ…)」
チェイス「…?」
沙都子「?」
「「「~!」」」
「…」
梨花「みー…何だか騒がしいのです」
チェイス「…喧嘩ではないな」
沙都子「え?あ、ちょ…左之助さん!」
…。
「だーかーら!!テメェが今蹴飛ばしたのは俺のバイクだってんだよ!!」
「どーすんだ!?傷付いてんじゃねぇか!!」
「蹴飛ばしたんじゃなくて、蹴飛ばした缶が当たっただけですよ。傷もついてないし…」
「よく見ろよ!傷つきまくってんだろ!!?」
「それは貴方達の走り方に問題があるんじゃないですか?」
「んだとこのアマァ!!」
チェイス「何をしている」
「…あ?」
「!」
チェイス「何故お前達はこの子に怒っている?」
「…んだよ。関係ねーだろ。すっこんでろ!」
チェイス「このままでは彼女が危険だ。見過ごすわけにはいかない」
「…」
チェイス「何があったのか説明しろ」
「あ?そりゃあ…こいつが蹴飛ばした缶が!ここに!当たったんだよ!俺のバイクに!!」
チェイス「…そうなのか?」
「…まあ、そうですけど、傷はついてませんよ。どう見たって壁に擦り付けた後じゃないですか」
チェイス「だが、お前の不注意が招いた事だ。謝らなければならない」
「…え?」
チェイス「ルールはルールだ。お前が謝れば済む話だ」
「…」
「…おい。おい!!」
チェイス「どうした」
「いや、何を勝手に終わらせようとしてんだよ!!」
「謝って済む問題じゃねぇんだよ!!」
チェイス「ならばどうすれば良い」
「…そうさなぁ…うひひ」
「そのボインを好きにさせてくれるってんなら…」
チェイス「ボイン?」
「…ッ!」
沙都子「左之助さん!」
梨花「左之助!」
チェイス「どうした」
沙都子「どうした?じゃありませんわよ。わざわざ何を…あ、詩音さん」
詩音「あら?沙都子」
梨花「詩ぃ。どうしたのですか?」
詩音「どーもこーもありませんよ。このチンピラ様にいちゃもんつけられて困ってるんです。これからバイトあるのに…」
「誰がチンピラだぁ!!」
「調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
チェイス「待て。原因を作ったのはお前だ」
詩音「…まあ、そうです…ね。どーもすいませんでした」ペコ
「ああ!?そんなもんで済まされる訳ねーだろ!」
「こいつ…ちょっと来い!」グイ
詩音「!」
沙都子「詩音さん!」
「あまり俺らを舐めてっとどうなるか教えtイダダダダダダダ!!!」
チェイス「…」ググ…
「てめ…!何すんだ!よっちゃんを離しやがれ!!」
チェイス「その女は謝った。もう終わった事だ」
「痛い痛い痛い痛い!!!折れる!腕が折れる!!」
「んだこいつ…!蹴っても殴ってもビクともしねぇ…!!っつか固ぇ!」
チェイス「それ以上彼女を責めるなら、話は別だ」
「分かった!分かったよ!!もうしない!しないから離してくれよおおおお!!」
チェイス「…」パッ
「…お…お…」
沙都子「…お?」
「覚えてやがれええええええ!!!」ピュー
「お、おい!よっちゃん!!」ピュー
チェイス「…」
詩音「あっはっは!まるで負け犬ですねー、あれ…」
沙都子「ああいう輩に絡むものではありませんわよ。詩音さん」
詩音「しょーがないじゃないですか。成り行きですよ成り行き」
チェイス「…気をつけて、行動するべきだ」
詩音「はいはい…でも助けてもらっちゃって。ありがとうございました」
チェイス「…」
詩音「私は園崎詩音。沙都子の…知り合いの…魅音の、双子の妹です」
沙都子「ややこしいですわね」
梨花「みー。この方は紫、左之助なのですよ」
詩音「・・・左之助・・・?」
チェイス「…」
詩音「…そ、そうですか。でも助かりましたよ。ホント」
沙都子「それよりも詩音さん。バイトのお時間ではありませんの?」
詩音「…!ヤバっ!」
梨花「詩ぃは今日は色んな人に怒られる日なのです。にぱー☆」
詩音「り、梨花ちゃまったらもう…失礼しまーす!!」バビューン
チェイス「…」
沙都子「…本当、姉妹揃って嵐のようでしたわね」
梨花「左之助。今の人は園崎詩音。魅ぃの双子の妹で、興宮に住んでるのですよ」
チェイス「羽入から聞いている」
梨花「ン゛ン゛ッッッ!!!」
沙都子「!?」
梨花「ン゛…さて、買い物買い物…」
沙都子「・・・」
チェイス「…そういえば、沙都子」
沙都子「何ですの?」
チェイス「ボインとは何だ?」
沙都子「ン゛ン゛」
…。
レナ「ふー…お買い物、終了!」
圭一「はー…いつもこんなに買ってんだな…」
レナ「あはは…1週間分だから」
圭一「その上弁当だもんなぁ。…苦労してるんだな…」
レナ「そんな…圭一君だっていつもレナ達に勉強教えてくれるし…それにこうやってお買い物も手伝ってくれるし…」
圭一「良いって。こんなんで良けりゃこれからも手伝うよ」
レナ「こ、これからも!?…はうう…」
圭一「…っていうか、ただ何となくさ、恥ずかしくて」
レナ「?」
圭一「ほら、梨花ちゃんだって沙都子だって、家事を自分達でこなしてるんだろ?…俺、親に全部やってもらってるしさ」
レナ「んー…」
圭一「だから、手伝おうかなって思った…ってだけなんだ」
レナ「あはは。それでも嬉しいかな。…かな」
圭一「で?今日の晩御飯は何にするんだ?」
レナ「うーん…今日は…オムライスにしようかなって」
圭一「へー…オムライスってこんなに卵使うのか?」
レナ「い、1週間分だから。そんないっぱい使わないよう」
圭一「ほー…」
レナ「…」
レナ「圭一君は?今日はどうするの?」
圭一「今日?…うーん。母さんは出掛けてるし、親父は興宮の…エンジェルモートって店に行ってるし」
レナ「エンジェルモート…」
圭一「ああ。何だか凄い嬉しそうでさ。誘われたんだけど、断ってきたよ」
レナ「圭一君。そっちに行かなくて良かったの?」
圭一「?…そんな凄い店なのか?」
レナ「…色々と、圭一君の好きそうなお店かな。…かな…」
圭一「えっ!!?ま、マジで!?」
レナ「…けーいちくん。やっぱり…」
圭一「え!?あ、いや!こっち!レナとの買い物のが大事!!」
レナ「…ちなみに、ご飯は?」
圭一「カップ麺かな」
レナ「え?……うーん……」
圭一「良いって。1日くらい。流石に1週間カップ麺だったらヤバイけどさ」
レナ「…うーーーーーん…」
圭一「…レナ?腕組んでどうしたんだよ」
レナ「…お父さん…カレーくらいなら…」
圭一「…?」
レナ「うーーーーーーーん…」
圭一「長い長い」
…。
沙都子「んー…」
梨花「みー…やっぱり左之助の服を買うには出費が大きすぎるのです」
チェイス「服ならある」
沙都子「それしか無いのでは?」
チェイス「これで十分だ」
沙都子「十分じゃありませんわよ。道行く人間もれなく全員貴方のこと避けていきましたわよ」
チェイス「…」
沙都子「まあ、不思議と汗もかかないし臭いもしませんから何も言いませんでしたが、流石にここずっと同じ服なのは衛生的にどうかと思いますわ」
梨花「でもこのままでは予算オーバーになってしまうのです。パンツが限界なのです」ピラピラ
チェイス「…」
沙都子「うーん…」
梨花「これは困ったのです…」
沙都子「…んー…監督のお古を譲ってもらえるでしょうか?」
梨花「沙都子が頼めばお古でも新品でもくれる筈ですよ」
沙都子「でも、うーん…」
梨花「…みー…」
…。
レナ「…うん!レナ、決めたよ!」
圭一「?」
レナ「今日、圭一君のお家にご飯作りにいくよ!」
圭一「え?で、でも親父さんの…」
レナ「お父さんは料理出来るし…それに…」
圭一「それに?」
レナ「な、何でもない…でも大丈夫だから」
圭一「良いのか?そりゃ俺はレナの手料理が食えるなら嬉しいけど…」
レナ「ほ、ホント!?」
圭一「あ、ああ」
レナ「…えへ」
圭一「あ、あはは…」
…。
沙都子「あ」
梨花「あ」
レナ「あ」
圭一「あ」
チェイス「…」
沙都子「…あら…」
レナ「あれ…」
梨花「ばったり。なのです」
…。
沙都子「レナさん。圭一さんを甘やかしてはいけませんわよ」
レナ「で、でもカップラーメンじゃ可哀想だよ」
沙都子「これを機に圭一さんもチャレンジしてみてはいかがですこと?…ンま!!大火事になるのが関の山でしょうけど!!」
圭一「やかましいわ!!!」
梨花「…」
チェイス「…どうした」
梨花「え?あ、いや…」
チェイス「…」
梨花「…ちょ、ちょっと…」ボソ
チェイス「何だ」
梨花「こ、これは異常自体よ…今までに無かった事だわ…」ボソボソ
チェイス「…この辺りの地域は狭い。同じ時間に歩いていれば会うだろう」
梨花「違うわよ!圭一は本来、この時間にエンジェルモートで詩音と会うの!」ボソボソ
チェイス「エンジェルモート…?」
梨花「メイドカフェみたいなもんよ!そこに行く筈なの!」ボソボソ
チェイス「…圭一」
圭一「?何ですか?」
チェイス「お前は今日、エンジェルモートに行くのか?」
圭一「え?」
梨花「ン゛ン゛!!!」
沙都子「!!?」
圭一「い、いや…確かに親父に誘われましたけど…断って…」
レナ「レナのお買い物を手伝ってくれるって、来てくれたんです!」
梨花「…そ、そうなのですか…」
圭一「でも、何でそれを?」
梨花「け、圭一の性格ならエンジェルモートがきっと好きになると思ったのですよ」
圭一「えっ!?」
レナ「…けーいちくん…」
圭一「え!?あ、いや!レナの!レナの買い物のが良い!幸せ!!」
レナ「えへへ…」
梨花「…」
チェイス「沙都子」
沙都子「何ですの?」
チェイス「圭一の好きなようなもの、とは何だ?」
沙都子「…大分グレーゾーンなお店とだけ伝えておきますわ」
圭一「!!!」
レナ「・・・」
圭一「れ、レナ…無言は勘弁…」
チェイス「何故摘発されない?」
沙都子「…さあ…?」
梨花「…さあ…?」
「はーい!お釣り280円ねー」
チェイス「…?」
「わーい!ありがとー!」
「また来てねー!」
圭一「!」
レナ「…この声…」
沙都子「…まさか…?」
梨花「…嘘でしょ…?」
沙都子「え?」
梨花「ん?」
沙都子「ん?」
梨花「魅ぃの声なのです。見に行くのですよ」
沙都子「…え、え?あ、はい…」
「…はー…あとちょっとかー…」
圭一「おーい!」
「…んぐぇっ!?」
魅音「びっくりしたー…何この偶然」
沙都子「私達の方がびっくりですわよ。仮にも女性なのですからもうちょっと驚き方を考えて欲しいものですわ」
レナ「魅ぃちゃんの言ってた手伝いってここのお店のことだったんだね」
圭一「おもちゃ屋かー…」
魅音「何か限定品買いに行くからってさ、昨日の夜いきなり頼まれちゃって」
圭一「そりゃまた随分急だな…」
魅音「まあ、限定品っていうくらいだからそんなもんじゃない?…あ、噂をすれば…」
「おーい!魅音ちゃーん!」
沙都子「…何だか凄い大荷物ですわね」
チェイス「…」
「悪かったねー…突然こんな事頼んじゃって」
魅音「良いよ良いよ。楽しかったし」
「…あれ?何だか大所帯だねぇ」
魅音「あー…うん!私の友達!」
「…彼もかい?」ボソ
チェイス「…」
魅音「あ、あはは…」
「まー…お礼と言っちゃなんだけどさ、ちょっと待っててよ!…あ!君達もさ!」
レナ「?」
沙都子「?」
「すぐ来るから!ちょっとだけ待っててよ!」
梨花「…」
魅音「おじさーん?そんな無理しなくてもー…あー…ごめんね?何か…」
梨花「みー。ボク達は貰える物は貰う主義なのですよ」
魅音「そういえば、左之助先生は何か買ったの?」
沙都子「それが、服を買おうと思ったのですが、流石に予算オーバーですわ…」
梨花「左之助は給料が出るまでかわいそかわいそなのです」
チェイス「…」
魅音「あ、あはは…はは…」
チェイス「俺は特に注文は無い。着れるものなら着る」
沙都子「…いえ、それではいけませんわ。服というのはその人「らしさ」を表すものでもありますから」
チェイス「…俺…らしさ…」
魅音「だとしたらまあまあヤバイ人になるけど」
チェイス「服がその人間のらしさを表すというのは、俺には分からない」
沙都子「そうですの?…例えば魅音さん」
魅音「おじさん?」
チェイス「…おじさん…?」
魅音「あ、ごめん…私?」
沙都子「男勝りな性格を表していると思いませんこと?」
チェイス「…」
梨花「…」
圭一「まあ、確かにな。制服も女の子らしいっていうか、スケ番ぽいっていうか…」
魅音「あ、あれはそういうデザイン!デザインだから!!」
チェイス「服、というのはある種の鎧のようなものだ」
沙都子「…鎧?」
チェイス「鎧というのはその身を守る為のもの。鎧を取ってみなければその人間の本質は分からない」
圭一「…本質…」
チェイス「戦っても、話しても。その本質を見極め、理解しない限り分かり合うことは出来ない」
沙都子「何の話ですの?」
梨花「…左之助は、こう言いたいのですよ」
レナ「…」
梨花「普段見せる顔と、本当に見せる顔が違う事もある、ということなのですよ」
圭一「…」
魅音「…」
沙都子「…そういう考えも、無いことはない、ですわね」
「おーい!お待たせー!」
魅音「!」
「いやー、探すのにちょっと時間食っちゃってねー…」
沙都子「!…ちょ、ちょっと!それ埃被ってるじゃありませんの!」
「あーごめんごめん。正月の福袋の余りでさ…」
梨花「もう6月なのですよ…」
「でもね、これ結構良いの入れてたんだよー?…えーと、ひーふーみー…5袋!…」
チェイス「俺はいらない」
「あ、あはは…申し訳ありません…じゃ、じゃあさ!子供達で分け合って!」
魅音「えー?でも悪くない?店の商品なのに…」
「良いって!売れ残…お駄賃お駄賃!」
圭一「今売れ残りって…」
レナ「言ってた…」
「ン゛ン゛!ま、まあまあ!結構良さげなのも入れといたからさ!」
沙都子「でしたら、お言葉に甘えて…」
梨花「先手必勝なのですよ」
魅音「じゃー…私はこれ!」
レナ「じゃあ、レナはこれ…」
圭一「俺は…これで…」
チェイス「…」
圭一「…」
「どう?良いのあった?」
圭一「え?あ、いやー…」
沙都子「あら?圭一さん…ププッ…」
レナ「わあ…かぁいいお人形さん!」
圭一「…えええ…?」
「あー…でもそれその中じゃまあまあ高い部類だよ?」
圭一「いや…これは…」
沙都子「まさに試合に勝って勝負に負けるというやつですわね。そのお人形さんでおままごとでもしてはどうですの?」
圭一「なぁぁぁにぃぃぃぃ?お前を着せ替え人形にしてやろうか沙都子ォ!」
沙都子「セクハラですわ!酷い男ですわ!」
魅音「…」
圭一「…あー…これはちょっと…なぁ…」
レナ「…」
圭一「…んー…」
梨花「…」
圭一「…」
…。
『戦っても、話しても。その本質を見極め、理解しない限り分かり合うことは出来ない』
『普段見せる顔と、本当に見せる顔が違う事もある、ということなのですよ』
…。
圭一「…なあ、魅音」
魅音「ン゛っ?」
梨花「!」
圭一「…これ、いるか?」
魅音「え?わ、私!?」
圭一「…ん」
魅音「…え、え?」
圭一「…ほら、何つーか…えーと…ほ、ほら!お前のやつ!その手品セット!そっちの方が良いかなって…」
魅音「え…えっと、そ、それなら!それなら仕方ないかなぁ!!貰っちゃおうかなぁ!!?」
圭一「は、はははははははは!!」
魅音「あ、あははははははは!!」
沙都子「…何ですのこの空気」
レナ「…ふふっ」
チェイス「…」
梨花「…ちょっと」
チェイス「何だ」
梨花「…わざと?」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…なんだかんだで、器用なもんじゃない」
チェイス「…」
魅音「いやー!欲しくないけど!貰っちゃしょーがないよねー!ねー!」
レナ「レナのと交換する?」
魅音「だ、ダメっ!!」
レナ「…ふふふっ」
圭一「…」
…。
……。
圭一「なあ、レナ」
レナ「なあに?」
圭一「…俺、あれで良かったのかな?」
レナ「…魅ぃちゃんにあげたこと?」
圭一「…何ていうか、その…左之助さんと梨花ちゃんの言葉が引っかかったっていうか…」
レナ「魅ぃちゃんが、喜んでるかどうかってこと?」
圭一「…」コク
レナ「…圭一君は、魅ぃちゃんのこと、どう思ってるの?」
圭一「え?」
レナ「魅ぃちゃんのこと。どう思ってる?」
圭一「…そりゃあ、部活の頼れる部長で、いざという時は俺なんか比べ物にならないくらい動けるし、男勝りな感じはするけど…」
レナ「…」
圭一「…へ、変な意味じゃないからな?」
レナ「うん。ちゃんと聞いてるよ?」
圭一「その…ほら、あいつ、意外と使ってる文房具とか小物とか、可愛いやつだったりするし…」
レナ「…」
圭一「…もしかしたら、そういう部分もあるのかなって。思い返してみたら…」
レナ「…圭一君」
圭一「?」
レナ「明日、魅ぃちゃんの顔。良く見てあげてね」
圭一「え?あ、ああ…」
レナ「…あ!ちょっと待っててね!冷蔵庫に入れたら直ぐ行くから!」
圭一「…」
レナ「ちょっとだけ!ちょっとだけ待ってて!」
圭一「なあ、レナ」
レナ「?」
圭一「…俺も、晩御飯作るの手伝うよ」
レナ「…」
圭一「…レナにばっかりやってもらってたら、その…良くないから」
レナ「…うんっ!」
…。
沙都子「ちょっと、お家に寄ってもよろしくて?」
梨花「?…はい。良いのですよ」
チェイス「…?」
梨花「左之助。沙都子の本来のお家なのですよ」
チェイス「…」
沙都子「もしかしたらサイズの合う物があるかもしれませんわ。ちょっと左之助さん…しゃがんでくださる?」
チェイス「…」
沙都子「…ん。丁度良いサイズの物があった気がしますわ。良かったら着てみませんこと?」
チェイス「了解した」
沙都子「では決まりですわね。行きますわよ」
チェイス「…」
梨花「…でも今日はもう遅いのです。明日でも…」
沙都子「思い立ったが吉日ですわ。それに左之助さんの衣服はそろそろ洗わないと」
梨花「…」
チェイス「…どうした?」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…嫌な、予感がするのよ」
チェイス「…」
梨花「…一難去ってまた一難…かもしれないわよ…」
チェイス「…」
…。
レナ「…ただいま…」
「おお。お帰り礼奈。今日は遅かったみたいだね」
レナ「…今日、圭一君の家でご飯を作ろうかなって思って…」
「そうなのかい?なら今日は父さんが作るよ。楽しんでおいで」
レナ「…うん」
?「えー?礼奈ちゃんの手料理食べれないの?」
レナ「…あ…」
「まあそう言わないで…礼奈はお友達思いだから…」
?「ふーん…ねえ、礼奈ちゃん」
レナ「…」
?「いつも帰ってくるのが遅いのって、私のせい?」
レナ「…」ブンブン
?「そっ。なら良かったー!」
「リナさん。礼奈はそんな事を思うような子じゃないよ」
リナ「そうだよねー!礼奈ちゃん優しいもん!」
レナ「…」
リナ「じゃあねー♪れ・い・な・ちゃん♪」
レナ「…」ペコ
…。
沙都子「…あら?」
梨花「…あ…」
チェイス「…」
沙都子「…どうして…電気が…」
梨花「…そんな…」
チェイス「…」
沙都子「まさか…!」
梨花「!さ、沙都子!」
?「…あァ?沙都子ぉ?」
梨花「!!」
沙都子「ッ…」
チェイス「…」
?「……おぉおぉ。沙都子けぇ…」ガラッ
沙都子「…あ…」
?「ワシも今日からこっちで暮らすことにしたわ。沙都子」
沙都子「…て、鉄平…叔父様…」
梨花「…ッ!!」
鉄平「…ん?何じゃ?お前ら…」
チェイス「…」
鉄平「気に入らん目つきじゃのう…何じゃ?お?」
チェイス「…」
鉄平「…まあええ。沙都子。腹が減っとんのじゃ。さっさと晩飯作れや」
沙都子「…梨花…左之助さん…」
梨花「…沙都子…!」
チェイス「…」
沙都子「…私、こちらで暮らすことにしますわ…」
梨花「!!」
鉄平「はよせんか!!この…!」
沙都子「!」
梨花「!!…沙都子っ!!」
沙都子「…!」
梨花「…。……?」
沙都子「…あ…」
梨花「…!」
鉄平「い、イデデデデデ!!離せ!!離さんかこのボケ…!!」
チェイス「…」ギリギリギリギリ
沙都子「…左之助…さん…」
梨花「…チェイス…」
チェイス「…少なくとも、俺の目の前で暴力は振るわせない」
鉄平「な、なんじゃと…!?」
チェイス「…それと…」
沙都子「…」
チェイス「…あまり自暴自棄になるな」
鉄平「!」
梨花「!」
鉄平「…な、何の…」
チェイス「お前の目は、まだ死んでいない」
鉄平「…え、ええから離せ!!」
チェイス「…」パッ
鉄平「…薄気味悪い…沙都子、さっさと行きんね」
沙都子「…は、はい…」
梨花「…」
チェイス「…」
沙都子「…」ペコ
梨花「…沙都子…」
梨花「…ッ…!」
チェイス「…」
梨花「…チェイス…」
チェイス「…」
梨花「…何とか、出来ないの?」
チェイス「…」
梨花「…約束、守るんじゃないの…?」
チェイス「…」
梨花「…ッ!…チェイス!!」
チェイス「…俺の知る限りでは…」
梨花「…何よ…」
チェイス「あの男は、正真正銘、人間のクズ…ではない」
梨花「…?」
チェイス「あの男が沙都子に手を振り上げた瞬間、少しの間だけだが、止まった」
梨花「…え…?」
チェイス「あれなら、大丈夫だ」
梨花「…」
チェイス「約束は、守る。…そして」
梨花「…」
チェイス「守り続ける」
梨花「…!」
チェイス「誰も傷つけさせない。あの男も」
梨花「…チェイス…」
…。
圭一「レナ。こんな感じか?」
レナ「うーん…それじゃご飯がカチカチになっちゃうよ?ちゃんと羽釜にお水の分量書いてあるのに…」
圭一「え?あ…ホントだ」
レナ「ふふっ。圭一君、料理の事は全然知らないんだね?」
圭一「折角役に立とうと思ったのになあ。これじゃ足引っ張ってるかな…」
レナ「…そんなことないよ」
圭一「でも、全然手伝えてないし…」
レナ「…ううん。そうじゃないの」
圭一「?」
レナ「…圭一君といるだけで、レナは嬉しいの」
圭一「…えっ?」
レナ「…」
圭一「…レナ?」
レナ「…さ!今日はオムライスだから!色々勉強だよ!だよ!」
圭一「お、おう!任せろ!!」
レナ「…」
圭一「…」
レナ「…圭一君」
圭一「?」
レナ「…何でもない!ご飯ご飯!」
圭一「…?」
第4話 終
続きまたそのうち書きます
…。
『えーと…北条…鉄平さん?…うーん…体格はまあ、良いけどさ…年齢がね…』
…。
『あー…その年齢じゃウチは募集してないねー』
…。
『んー…ちょっと…今回は…はい…』
…。
鉄平「…」
沙都子「…」
鉄平「…」ガタ
沙都子「!!?」ビクッ
鉄平「…」
沙都子「…あ、も、申し訳ありません…」
鉄平「…チッ…」
沙都子「あ、か、片付けます…すぐに…」
鉄平「…」
沙都子「…」ジャー
鉄平「…」
…。
『お前の目は、まだ死んでいない』
『あまり自暴自棄になるな』
…。
鉄平「(…自暴自棄…)」
鉄平「…」
沙都子「…」ジャー
鉄平「(…元はといえばこいつの親のせいで…!!)」
沙都子「…」カチャカチャ
鉄平「(…この…!まるで借りてきた猫のようになりくさって…!!)」
沙都子「…」カチャカチャ
鉄平「(…ッ…!!この…!!)」
沙都子「…!」
鉄平「…」
沙都子「…あ…あ…」
鉄平「…」
沙都子「…ご、ごめんなさい…ごめんなさい…」
鉄平「…」
沙都子「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
鉄平「…」
沙都子「…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
鉄平「…チッ…」
沙都子「…」
鉄平「風呂じゃ、沸かしとけ」
沙都子「…は、はい…」
鉄平「…」
沙都子「…」トボトボ
鉄平「…」
鉄平「(…何なんじゃ…これは…)」
梨花「…」
チェイス「…」チュー
梨花「…アンタ、水で良かったの?」
チェイス「俺達ロイミュードはコア・ドライビアと呼ばれる動力源からエネルギーを自動で供給し活動する。食事は本来必要無い」
梨花「…でも、食べられたり飲めたりするんでしょ?」
チェイス「コア・ドライビアの熱で燃えて消滅する。それがエネルギーとなることはない」
梨花「…じゃあ、何で…」
チェイス「人間の身体をコピーした結果だ。特に意味は無い」
梨花「…人間と同じ生活を、送ってはいる…ってだけ?」
チェイス「それだけだ。人間としての機能はほとんどついていない」
梨花「…一体、何の為に…?」
チェイス「俺は元々、クリムという人間に作られたロイミュードのプロトタイプだった。人間に限りなく近い感情を持つ人工知能を搭載された」
梨花「…」
チェイス「その俺のデータを基に、合計108体のロイミュードが作られた」
梨花「…」
チェイス「しかし、俺以外のロイミュード達には、俺には無い感情プログラムが成されていた」
梨花「…何?」
チェイス「…人間が持つ、悪意だ」
梨花「!」
チェイス「その結果、ロイミュード達は人間に反旗を翻し、世界を滅ぼそうとした」
梨花「…はた迷惑な奴もいたものね」
チェイス「…主犯はクリムではない。クリムの知り合いの、蛮野という男だ」
梨花「…」
チェイス「…ロイミュード達はグローバルフリーズという事件を引き起こし、人間達を襲った」
梨花「…グローバルフリーズ?」
チェイス「ロイミュードの特殊能力として、周りの世界をスローモーションにすることが出来る。規模は個体によって様々だが」
梨花「…それでも100体以上が一度にそれを使えば…」
チェイス「全ての時間が、ほぼ静止した」
梨花「…」
チェイス「その状況にクリムは俺の封印を解いた。ロイミュード達と戦わせる為に俺に仮面ライダーの力を与えたんだ」
梨花「…それで?どうなったの?」
チェイス「結果としてグローバルフリーズを止めることには成功した。…しかし」
梨花「…何?」
チェイス「俺は敵に捕まり、洗脳された」
梨花「!!」
チェイス「その結果、俺はロイミュードを守る為の番人となり、新しい仮面ライダーの敵となってしまった」
梨花「…でも、今は…」
チェイス「…完全ではないが、記憶が戻っている」
梨花「…」
チェイス「勿論、罪は償う。生きている限り、償い続ける。出来る限りの人間を救うことで」
梨花「…そ」
チェイス「様々な人間と関わっていく中で、俺は再び仮面ライダーとしての力を手に入れた」
梨花「…」
チェイス「その後、仮面ライダー達によってロイミュード達は殲滅され、全ては終わった」
梨花「…」
チェイス「…この俺も含めて」
梨花「!」
チェイス「…」
梨花「…それって…」
チェイス「…後悔はしていない」
梨花「…でも…それじゃ…」
チェイス「俺は、生きているのか、それとも死んでいるのか」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…でも、こうして…触れるじゃない。話す事も…」ペタペタ
チェイス「…羽入に、触れることが出来た。最も、姿は見えなかったが」
梨花「…!」
チェイス「…」
梨花「…そう…」
チェイス「…」
梨花「…でも、今アンタはここにいるじゃない」
チェイス「…」
梨花「…ここで生きて、暮らしているじゃない」
チェイス「…そうだな」
梨花「…それで、良いじゃない」
チェイス「…」
チェイス「…沙都子の、叔父だが」
梨花「…ええ」
チェイス「一般的に「クズ」と呼ばれる者には2種類の人間がいる。と俺は考えている」
梨花「?」
チェイス「初めからそうなっている者と、そうならざるをえなかった者だ」
梨花「…叔父は、後者だってこと?」
チェイス「俺は、そう思う」
梨花「…でも、あいつは今まで何度も沙都子を壊してきたわ」
チェイス「それは誰もあいつを分かってやらなかったからだ」
梨花「分かることなんかないわよ。同情の余地も無い…」
チェイス「…そうやって、誰もがあいつを…」
梨花「…!!アンタに何が分かんのよ!!」
チェイス「…」
梨花「いじめ抜かれて!!壊されて!!何度も!!何度も!!私は見てきたのよ!?」
チェイス「…」
梨花「アンタに分かるの!?親友が、どんどん崩れていく姿を…」
チェイス「…」
梨花「親友が死んでいく姿を見続けてきた私の思いが!!!」
チェイス「…その気持ちは、俺にも分かる」
梨花「…知った風な口…聞いてんじゃないわよ!!」
チェイス「…」
梨花「人間でもない癖に!!」
チェイス「…」
梨花「…!」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…ッ…」
チェイス「…確かに俺は、人間ではない」
梨花「…そうよ。アンタはロボットじゃない」
チェイス「…だからこそ。ロボットである俺にしか分からない事もある」
梨花「…?」
チェイス「人間の命は平等だ」
梨花「…」
チェイス「死んで良い命など、この世には無い」
梨花「…!」
チェイス「お前は神ではない。特殊な能力を持っただけのただの人間だ」
梨花「…」
チェイス「お前に人の運命を決める権利は無い」
梨花「…なら、沙都子はどうなのよ…」
チェイス「沙都子も救う。北条鉄平も救う」
梨花「…そんな事…!」
チェイス「救える命ならば、救う。それだけだ」
梨花「…アンタの使命は、この村を救うことじゃないの?」
チェイス「そうだ」
梨花「…!なら…あんな男なんて…!!」
チェイス「目の前の命すら救えない者に、大勢の命を救う力など無い」
梨花「!!」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「お前は年齢を重ねたように振舞ってはいるが、その思考は年相応な子供と大差無い」
梨花「…」
チェイス「悟ったように見せても、その本質はまだ子供のままだ」
梨花「…」
チェイス「命の取捨選択など、するものではない。それは傲慢というものだ」
梨花「…何よ。叱ってるつもり?」
チェイス「お前は前に進む事だけを考え、置き去りにされた者の存在を無視している」
梨花「…」
チェイス「どんな悪人でも、クズだとしても」
梨花「…」
チェイス「裁くのは、お前ではない」
梨花「…そんな、甘くないのよ。現実って」
チェイス「…」
梨花「振り向いる暇なんか、無いのよ。私には」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「ならば、振り向くのは俺の役目だ」
梨花「…え…?」
チェイス「お前は一人ではない」
梨花「…」
チェイス「少なくとも、今ここに、俺がいる」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…何なのよ…」
チェイス「…」
梨花「…まるで、羽入みたいに…」
チェイス「…」
…。
「リナさん。その…今、話…良いかな?」
リナ「なーに?」
「…その…これからの事なんだけど…」
リナ「…あー…結婚の話?」
「うん…礼奈にも早く話しておきたいし…」
リナ「…うーん…まだちょっと…」
「そ、そうなのかい?…でも、こういうのは、早目に…」
リナ「分かってる分かってる。こっちにも色々準備があるんだって」
「う、うん…わ、分かったよ」
リナ「じゃ!アタシ寝るねー♪お休みー」
「あ…お、お休み…」
リナ「…」バタン
「…」
リナ「…」
「…」コツコツ
リナ「…」
リナ「…プッ…」
リナ「…何本気にしてんの…気持ち悪ッ」
リナ「抱かせてもらえるとでも思ってたの?…引くわー…」
リナ「こっちは貰えるもん貰ったらさっさとサヨナラしたいのに…」
リナ「…にしても逃げるなら灯台下暗しってやつよねー…」
リナ「まさか鉄平のバカもアタシがこんな近くにいるだなんて思わないもんねぇ…」
リナ「…っつーかあのクソガキ、マジでウザいわね…」
リナ「ゴミばっか集めて…気持ち悪いったらありゃしない…ヤクでもキメてんじゃないの?」
リナ「…マジ…いっぺんシメてやろうかしら…」
リナ「…でも、その前に…」
リナ「…あー…あんまムダ遣いするとダメね。もう元嫁さんの慰謝料1/3くらい使っちゃってんじゃん」
リナ「こっちはハンコが貰えりゃ良いのに…」
リナ「…何処に隠してんだか、あのクソメガネ…」
リナ「園崎の上納金だけじゃ、正直自信無いし…」
リナ「…あー…早くこんな辛気臭いトコ出てって外国で遊んで暮らしたいなー…」
リナ「…あーあ…」
…。
魅音「はぁ!!?」
レナ「お、叔父さんが帰ってきた…?」
圭一「?」
梨花「は、はい…だから今日からはボク一人だけなのです」
チェイス「…」
圭一「いや…一人じゃないと思うけど…」
魅音「ちょ…ちょっとぉ!!左之助先生!!沙都子が連れ去られた時何かしなかったの!?」
レナ「そ、そうですよ!!きっともう…!」
チェイス「法律的には、北条鉄平の方が正しい」
魅音「…!だからって…!」
チェイス「あの場で俺が何かをしたところで、事態は悪化するだけだ」
魅音「…そりゃ…確かに向こうは一応北条一族だから…」
梨花「左之助はルールに則ってでしか行動しないのです。ほっとくのです!」
チェイス「…」
圭一「…な、なあ…その、叔父って、何だ?」
レナ「…」
魅音「…えっと…うん。そうだね。いつかは分かった事かもしれないから…」
圭一「…」
魅音「…沙都子の叔父はね…」
沙都子「…おはようございます…」
レナ「!!」
魅音「!!」
圭一「!!」
梨花「!!」
梨花「沙都子!?ぶ、無事なのですか!?」
沙都子「…」
魅音「大丈夫!?あのクソ叔父に何かされてない!?」
沙都子「…」
圭一「お、おい…「何か」って…?」
レナ「…沙都子ちゃんの叔父さんは…凄く気性が荒くて…」
圭一「…え…?」
魅音「…それだけじゃない。弱い者にはこれでもかってくらい強気になって、強い者には媚びへつらって、とにかく人間のクズなんだよ」
圭一「…」
魅音「沙都子だって例外じゃない。あの叔父に何度となく…」
圭一「・・・んだと・・・?」
沙都子「…あ、あの…」
レナ「大丈夫?沙都子ちゃん…何処か、その…」
沙都子「…い、いえ…実は…私…」
魅音「?」
沙都子「…何も、されてませんの」
レナ「…え?」
魅音「え?」
梨花「!」
魅音「…そ、そんなわけないよ!!ちょっと!!こっち!!こっち来て!!」
梨花「チェックしますですよ!!」
レナ「あ!圭一君は来ちゃダメ!!」
圭一「え?」
沙都子「え?ちょ、何処に…!」
魅音「ちょっ…確認!!確認!!」
梨花「レナ!押さえるのです!!」
レナ「うん!ごめんね沙都子ちゃん!!」
沙都子「えっ!?ちょ…!」
魅音「嘘なんか吐いたらダメ!!ちゃんと正直に話すの!!」
沙都子「え?あ!あ!!あーーー!!!」
圭一「・・・」
チェイス「…」
…。
梨花「…」
魅音「…」
レナ「…」
沙都子「…まさかこんな形で穢されるとは思いませんでしたわぁ…」グスッ
魅音「…ごめん」
レナ「…ごめんね…」
梨花「…」
沙都子「確かに、叔父様は酷いお方でしたわ。前は」
魅音「…」
沙都子「…でも、今回は、何か…」
レナ「…?」
沙都子「その、何か…と言いますか…ちょっと、違うんですの」
圭一「…違う?」
沙都子「ええ。その…あまり、大声を出さない、と言いますか…」
魅音「…」
沙都子「ずっと、静かで…お皿もひっくり返さないし、何も言わずに寝ておりましたわ」
魅音「小学生におんぶにだっこの時点で相当酷いけどどう?」
沙都子「それは…何とも…」
レナ「…でも、何かあったら絶対に言わなきゃダメだよ?」
沙都子「え、ええ…」
梨花「…沙都子」
沙都子「?」
梨花「空返事ではいけないのです。ちゃんと、約束して下さい。何かあったらちゃんと報告すると」
沙都子「…はい」
チェイス「…」
…。
鉄平「…ん…」
鉄平「…朝か…」ムク
鉄平「…ああ、そうじゃ…確か、沙都子の家に…」
鉄平「…」
鉄平「…園崎の目と鼻の先で寝るなんざ、ワシもようやったもんじゃのう…」
鉄平「…む…」
鉄平「…これは…」
『叔父様へ。朝ご飯です。食べて下さい。沙都子』
鉄平「…朝飯…」
鉄平「…最近、まともに朝飯を食ったんはいつじゃったかのう…」
鉄平「…」
鉄平「…何で…こんな事になっちまったんか…」
鉄平「…」
…。
『あまり、自暴自棄になるな』
…。
鉄平「…」
鉄平「…アホが」
鉄平「…ワシかて、なりたくてなっちまったわけじゃ…」
鉄平「…」
鉄平「…」モグモグ
鉄平「…」
鉄平「…美味い…」
…。
知恵「ほ、北条君ですか?」
チェイス「北条悟史という生徒がいた筈だ」
知恵「…ええ。確かに…」
チェイス「北条家に関するデータが欲しい。悟史も例外ではない」
知恵「…警察には、お聞きにならないんですか?」
チェイス「経緯は知っている。届け出をされていないことも」
知恵「…お見通しですか」
チェイス「ならば、北条悟史の公式なデータが得られるのはここだけだ」
知恵「…そう言われても、通知表や、校内イベントの写真などしか…」
チェイス「十分だ」
知恵「…これ、です…」カサ
チェイス「…」
知恵「…彼は、とても真面目に勉学に取り組み、そしてとても優しく、妹思いでした」
チェイス「…」
知恵「…しかし、ある日を境に、彼は変わってしまいました」
チェイス「…」
知恵「…そのことに関しては?」
チェイス「知っている。無理に話すことはない」
知恵「…お気遣い、ありがとうございます」
チェイス「…」
知恵「…一体どうして、いなくなってしまったのか…」
チェイス「…」
知恵「思い出す度、悲しくなります」
チェイス「(この女は、悟史が何をしたかまでは知らないのか)」
知恵「…何か、分かりましたか?」
チェイス「(ここで、悟史の事を話せば、この女は傷つく…)」
知恵「…チェイスさん?」
チェイス「…いや」
知恵「…そうですか」
チェイス「…何かあれば、また頼む」
知恵「…はい」
梨花「…」
梨花「(何よ。これは…)」
梨花「(あいつの言葉で、惨劇が回避されていってる…)」
梨花「(誰も北条鉄平の事を分かってやれない…?)」
梨花「(それが、何だって言うのよ…)」
梨花「(…あんな奴…)」
魅音「梨花ちゃん?」
梨花「っ!?」ガタッ
魅音「うわびっくりした!!」
梨花「…ど、どうしましたですか?」
魅音「え、えーと…今日は部活、無しって事で…」
梨花「!」
沙都子「申し訳ありませんですわ。晩御飯を作らないと…」
梨花「…」
沙都子「…それでは…」ペコ
梨花「…」
レナ「…」
圭一「…やっぱり沙都子、叔父が…」
魅音「…何も無かったとはいえ、来てすぐに打ち解けるって訳じゃ、ないからね…」
レナ「…やっぱり、心配だね」
梨花「(そうよ。まだ沙都子は叔父を怖がってる)」
圭一「…俺も、そうだったな…」
梨花「?」
魅音「?」
圭一「…いや、こっちに来た当初はさ、まだ向こうでの生活が抜け切ってなくてさ」
梨花「…」
レナ「…しょうがないよ。みんな…」
圭一「…でも、そんな時に、魅音達が手を差し伸べてくれてさ」
魅音「…」
圭一「…何か、受け入れられたんだなって…」
魅音「…あ、あはは…そりゃ一緒にやってくんだもん。仲良くしなきゃさ」
梨花「…!」
レナ「…そう、だね」
圭一「…あのさ…こんな事言うと、ダメなのかもしれないけど…」
梨花「…」
圭一「…沙都子の叔父も、皆が受け入れたら、変わるのかな…」
魅音「!」
レナ「!」
梨花「…嘘…」
圭一「…今までは、色々あったのかもしれないけど」
魅音「…でも、あいつを受け入れるなんて…」
レナ「そうだよ。だって…」
圭一「確かに、沙都子の叔父は酷い奴なのかもしれない。とっつきにくい人かもしれない」
梨花「…」
圭一「…でも、本当は違うかもしれない…」
魅音「…でもね、圭ちゃん。あいつの悪人ぶりは、相当だよ?」
レナ「村の人達だって、叔父さんの事を怖がってるの。何をするか分からないし、いつも睨み付けてくるって…」
魅音「挨拶だって交わさないし、運転も乱暴だし…」
レナ「何より、沙都子ちゃんに対して…」
圭一「それは、分かってる。…でも、もしも、さ」
梨花「…」
圭一「…俺が、誰からも受け入れられず、一人で居たら、どうなってたんだろうって…」
梨花「…」
…。
チェイス『人間の命は平等だ』
チェイス『死んで良い命など、この世には無い』
…。
魅音「…」
圭一「…わ、悪い。何も知らないのに…」
魅音「…ううん」
レナ「…圭一君の言うことも、分かるよ」
梨花「…圭一」
圭一「ん?」
梨花「…今の言葉は、本心ですか?」
圭一「え?あ、えっと…ああ」
梨花「…では、お聞きします」
圭一「…?」
梨花「圭一は、沙都子と、沙都子の叔父の命のどちらかが助かるとしたら、どちらを選びますか?」
圭一「!」
魅音「…」
レナ「…」
梨花「沙都子は、大事な大事なお友達なのです。でも叔父は…」
圭一「…梨花ちゃん」
梨花「?」
圭一「…それって、決められてることなのか?」
梨花「…もし、そうだとしたらということです」
魅音「…」
圭一「…」
梨花「沙都子の叔父が改心するという保証などありません。このままいけば、沙都子はあの男に壊されてしまうかもしれません」
レナ「…」
梨花「それでも圭一は、沙都子の叔父は救うべきだと思いますか?」
圭一「…」
圭一「…その、二択なら、確かに沙都子を選ぶよ」
梨花「…」
圭一「でも、そんなの、間違ってる」
梨花「…間違ってる?」
圭一「もし、可能性が1%でもあるなら、俺は試すべきだと思うんだ」
魅音「圭ちゃん…」
圭一「沙都子の叔父にも、そうなった背景がある筈なんだ」
レナ「…」
圭一「初めから、そうだった訳じゃないかもしれない」
魅音「…」
圭一「本当は、沙都子に対して優しくしてやりたいのかもしれない」
レナ「…」
圭一「もしも、本人が変わりたいって思ってるなら…俺達は手助けしてやるべきだと思う」
梨花「…」
圭一「…だから…」
魅音「…」フゥー
梨花「…」
魅音「…ん!」
梨花「?」
魅音「…良し!」パン
圭一「?」
魅音「…圭ちゃんがそこまで言うなら、分かったよ!」
圭一「…魅音…」
魅音「私も、しばらく見守ってみる事にする。実害は無いみたいだし…」
梨花「で、でも!何かあってからでは!」
レナ「…梨花ちゃん」
梨花「…ッ」
レナ「梨花ちゃんの気持ちも、すっごく分かるよ。レナも、魅ぃちゃんも」
梨花「…」
レナ「…圭一君だって分かってる。これは、賭けなんだって」
梨花「…」
レナ「…もし、圭一君の言うように叔父さんが、ちゃんと沙都子ちゃんと向き合えるっていうなら…」
梨花「…」
レナ「チャンスを、あげて欲しいの」
梨花「…チャンス…?」
レナ「うん。チャンスだよ」
梨花「…」
圭一「一度は過ちを犯したのかもしれない。けど、やり直しは出来る」
レナ「その為には、みんなが協力してあげないといけない」
魅音「…そう、だね」
梨花「…」
圭一「だから、梨花ちゃんにもお願いしたいんだ」
梨花「…どうして…」
圭一「…?」
梨花「…どうして、圭一達は…圭一は、あの男の、面識も無いあの男の為に…?」
圭一「…」
梨花「…」
圭一「…俺、ここに来る時、変な夢を見たんだ」
魅音「…夢?」
圭一「…ああ。夢、だと思いたい」
レナ「…?」
圭一「…誰か、分からないけど、何処かの山で、俺は、「誰か」を殺してた。金属バットで」
梨花「!」
圭一「…それで、雨の降る中、その人をスコップで埋めて…」
梨花「…圭一…」
圭一「…今思うと、その人が、聞く限りだと沙都子の叔父に似てるっていうか…」
魅音「…」
圭一「そんな事、あっちゃいけない。絶対にしない。って思って…」
梨花「…それで、救える命なら救いたい。と思ったのですか?」
圭一「ああ」
梨花「…そう、ですか…」
魅音「…」
梨花「…まさか…今回は…」
レナ「?」
梨花「…圭一」
圭一「ん?」
梨花「…分かったのです。ボクも、ほんの少しだけ、あの男を信じてみることにするのです」
圭一「…そっか。ありがとな。梨花ちゃん」
梨花「でも、一度だけなのです」
圭一「ああ!」
魅音「ん!じゃあ決まりだね!…あ!もうこんな時間!」
レナ「あ…」
魅音「じゃー…明日も沙都子関連の問題を会議してくよ!」
圭一「おう!じゃあな!」
魅音「バイバーイ!」
レナ「…」
圭一「ん?どうした?レナ」
レナ「え…あ、うん…」
圭一「どうしたんだよ。最近帰る時に限って元気無いな」
レナ「だ、大丈夫だよ。学校が楽しくて…」
圭一「…レナも、何かあるんだったら言わなきゃダメだぞ?」
レナ「う…うん」
圭一「じゃ、帰るか!梨花ちゃんも…」
梨花「みー…実はボクは…」
レナ「圭一君。梨花ちゃんは古手神社の巫女さんだから。綿流しの奉納演舞の練習があるんだよ。だよ」
圭一「えっ!?そ、そうなのか!?」
梨花「はいなのです。だから今日からは神社に直行なのです」
圭一「そっかー…大変だな。頑張れよ!梨花ちゃん!」
梨花「はい、なのです」
圭一「じゃあな!梨花ちゃん!」
レナ「バイバイ。梨花ちゃん」
梨花「…」ヒラヒラ
梨花「…」
梨花「…そう…」
梨花「…圭一が、こんなに…」
梨花「…もしかしたら、本当に…」
梨花「…今度こそ、みんなで…」
梨花「この長く続く惨劇を、終わらせ…」
チェイス「…」
梨花「エ゛ッ」
チェイス「…」
梨花「…何よ。盗み聞きなんて…」
チェイス「俺が入っていい話ではなかった。それだけだ」
梨花「…わざわざ教室の外で待ってたってわけ?」
チェイス「油断は出来ない。お前を無事に送り届け、寝かせつけることも役目の一つだ」
梨花「…」
…。
梨花『人間でもない癖に!!』
…。
梨花「…チェイス」
チェイス「何だ」
梨花「…昨晩の、事だけど…」
チェイス「気にするな。何度も言われている」
梨花「…」
チェイス「今日から古手神社に行くと言っていたが、何時から何時までだ」
梨花「…何で?」
チェイス「調べたい事がある。その時間を使う」
梨花「…6時から、7時30分まで…」
チェイス「了解した」
梨花「…」
チェイス「行くぞ」
梨花「…ねえ、チェイス」
チェイス「どうした」
梨花「…アンタ、前に失恋して泣いたって言ってたじゃない」
チェイス「ああ」
梨花「…あれ、教えなさいよ。暇潰しに」
チェイス「…あれは、俺が…」
第5話 終
続きまたそのうち書きます
沙都子「…」
沙都子「…これは…」
沙都子「…えっと…」
鉄平「…」
沙都子「…あの、叔父…様…?」
鉄平「…何じゃ」
沙都子「…こ、これ…は…」
鉄平「…暇だっただけじゃ。意味なんぞ無い」
沙都子「…部屋が…綺麗に…」
鉄平「…」
沙都子「…」
鉄平「…飯は、炊いといた」
沙都子「え?」
鉄平「…ワシに出来ることなんざ、それくらいじゃ」
沙都子「…叔父様…」
鉄平「…晩飯、作らんかい」
沙都子「…は、はい!…ですわ」
鉄平「…」
沙都子「…」モグモグ
鉄平「…」モグモグ
沙都子「…」
鉄平「…この家は…」
沙都子「…?」
鉄平「…お前が、管理しとったんか」
沙都子「…え、ええ…」
鉄平「…一人でか…」
沙都子「…ええ。いつか、にーにーが帰ってくると…」
鉄平「…にーにー…」
沙都子「…はい」
鉄平「…沙都子」
沙都子「?」
鉄平「…今、何年生じゃ」
沙都子「…5年生、ですわ」
鉄平「…ほうか」
沙都子「…」
鉄平「…まだ、そんな歳か…」
沙都子「…?」
鉄平「…」
沙都子「…」
鉄平「…朝飯…」
沙都子「…」
鉄平「…美味かった」
沙都子「…!…はい!」
鉄平「…」
チェイス「…」
チェイス「…」ピンポーン
「…はーい!今出ますよー!」
チェイス「…」
「はい。どうかされッ…」
チェイス「…」
「…」
チェイス「…」
「あ、あの…どちら様でしょうか…?」
チェイス「竜宮レナの学校の担任の、紫左之助だ」
「…た、担任の、先生ですか…?」
チェイス「レナはいるか?」
「え、ええ……ん?レナ?」
チェイス「そうだ」
「?…お、おーい!礼奈!礼奈ー!」
チェイス「…?」
「今呼びましたので…あ、良かったら上がっていかれますか?」
チェイス「いや、ここで…」
「…?」
チェイス「…」
「…あ、あの…」
チェイス「…上がっていこう」
「そ、そうですか…居間の方でお待ち下さい。お茶、持ってきますので…」
…。
レナ「え、えっと…」
チェイス「…」
レナ「ど、どうかされたんですか?」
チェイス「…1~2年前の学校の連絡網は持っているか?」
レナ「?」
チェイス「必要だ」
レナ「…え、えっと…あったかなぁ…」
チェイス「…」
レナ「…どうして、必要なんですか?」
チェイス「北条家に関する情報が欲しい」
レナ「!」
チェイス「…」
レナ「…でも、流石に前の連絡網は…」
チェイス「…」
レナ「…も、持ってない、と…思います…」
チェイス「…ならば、北条悟史について聞こう」
レナ「!!」
チェイス「北条悟史はある日突然人が変わり、最後には行方不明になったと聞いた」
レナ「…」
チェイス「…何故、そうなった?」
レナ「…わ、分かりません。レナは…」
チェイス「…そうか」
レナ「…」
チェイス「…先程、お前の名前を言ったら、父親に妙な顔をされた」
レナ「…」
チェイス「お前は、家と学校では暮らし方が違うのか?」
レナ「…」
チェイス「父親は、お前の事を礼奈と呼んでいた」
レナ「…レナは…」
チェイス「…玄関に、この村の者とは考えにくい靴があった」
レナ「…ッ」
チェイス「あのデザインをお前が使うとは考えにくい。それに大きさもお前のものとは違う」
レナ「…」
チェイス「…」
レナ「…母親の…」
チェイス「父子家庭だと聞いている」
レナ「…ッ…」
チェイス「…」
「すいませ~ん。アタシので~す♪」
レナ「!」
チェイス「…」
リナ「竜宮さんとお付き合いしていま~す♪間宮リナでーす!」
チェイス「…」
「す、すいません。お騒がせしてしまってるみたいで…」
チェイス「…いや」
レナ「…」
リナ「礼奈ちゃーん。どうしたの?暗いよー?」
レナ「…い、いえ…」
チェイス「…」
リナ「(誰かと思ったけど、学校の担任ね…ま、このガキの事だし、大方ゴミ捨て場に行ってるの注意しに来たんでしょ)」
チェイス「…」
リナ「(…っつーか…このオトコ…無表情だし、服装もヤバいけど…)」
チェイス「…」
リナ「(すっごく良いオトコじゃない…この村の奴はジジイかナヨナヨしたメガネ野郎しかいなかったから、余計に目立つわね…)」
チェイス「…」
リナ「だいじょーぶですよー!礼奈ちゃんは優しいから、問題なんか起こしませんって!」ギュッ
「あ…」
チェイス「…」
リナ「ねー…?」ギュッ
チェイス「…」
リナ「…」
チェイス「…」
リナ「(…な、何よこいつ…眉一つ動かさずに…どんだけ鋼のメンタルなのよ…)」
チェイス「…問題のあるのは、竜宮レナではないようだ」
リナ「…え?」
「…え?」
レナ「…」
チェイス「悪意の篭った人間は、悪意の篭った顔をするものだ」
リナ「…は?」
チェイス「北条鉄平とは、違う」
リナ「!!?」
チェイス「…」
リナ「…あ…え?」
「り、リナさん…?」
リナ「え…えと…え?」
チェイス「…」
リナ「(な、何で?何でこいつからあのバカの名前が!?)」
チェイス「…心臓の鼓動が、早まっている」
リナ「(何よ何よ何よ何よ!!!何なのよこいつ!!?)」
チェイス「たまたま出た言葉だったが…」
リナ「(こいつ…ヤバい…!!)」
チェイス「ヒントは、近くにあるものだな」
リナ「(修羅場ならいくらでもくぐって来た…けど、分かる…!)」
チェイス「詳しく話せ。お前が知っていることを」
リナ「(こいつ…本当にヤバい!!)」
チェイス「…」ジリ…
リナ「(何か、何か打開策…打開策…!)」
「あ、あの!!」
リナ「!!」
チェイス「…」
「あ、あの!何なんですか!リナさんに対して…酷いじゃありませんか!」
チェイス「…その女は、何かを隠している」
リナ「…竜宮さん…」
「リナさんはこの家からほとんど出ていませんし、やましい事なんて何もありません!」
レナ「…」
チェイス「…」
「先程から礼奈に対しても…まるで取り調べするみたいに…」
チェイス「…」
「お帰り下さい。何があったかは知りませんが、幾ら何でも横暴です」
チェイス「…」
リナ「…!竜宮さん!この人怖~い!」ギュッ
「あ…り、リナさん…だ、大丈夫だから…」
レナ「…」
チェイス「…そうか」
「…」
チェイス「…梨花を迎えにいく時間だ。俺は帰るとしよう」
リナ「…」
チェイス「…レナ」
レナ「…は、はい…」
チェイス「…あまり、抱え込むな」
レナ「…」
「か、帰って下さい!さもないと警察を呼びますよ!」
チェイス「…恋は、盲目…か」
「え…?」
チェイス「…気持ちは、分かる」
「…」
…。
梨花「何が盲目よ。恋愛にすら発展してないわよ。そんなの」
チェイス「…」
梨花「良いように利用されてるだけじゃない。分かり易い問題ね」
チェイス「やはりそうだったか」
梨花「そりゃ、レナだって呆れるわよ」
チェイス「…このまま行けば…」
梨花「…そうね。レナの疑問がいつしか確信に変わった時…」
チェイス「…レナに、雛見沢症候群が発症する」
梨花「ええ。リナを殺し、そして北条鉄平を殺す」
チェイス「…?」
梨花「あら?アンタ聞いてないの?」
チェイス「…どういうことだ」
梨花「…レナが起こす惨劇の世界では、あの家族はリナと鉄平による美人局の被害者なのよ」
チェイス「…」
梨花「…最も、今回の鉄平にはそんな感じはないけど…」
チェイス「…だとしたら…」
梨花「ええ。何かしらの理由があって、今リナと鉄平は仲違いしてる」
チェイス「…レナの父親は、間宮リナはあの家からほとんど出ないと言っていた」
梨花「…それは恐らく、会えばマズい状況って事じゃないかしら」
チェイス「…」
梨花「…アンタ、一応警察組織に属してたんでしょ?何か思いつく節は無いの?」
チェイス「…」
梨花「…そんな、簡単な理由でそこまで会いたくないってことはないと思うし…何よりあの二人が喧嘩別れするような関係にあるとは思えない…」
チェイス「…ビジネスパートナー、というやつか」
梨花「…」
チェイス「…なら、答えは自ずと分かるな」
梨花「…ええ。これはもう決定的ね」
チェイス「…金銭トラブル、か」
梨花「…金銭トラブル、ね。それなら合点がいくわ」
チェイス「それに、必死に逃げている様子だった」
梨花「…こういう時は、変に逃げるよりも近くで身を潜めてた方が意外とバレないものだからね…」
チェイス「…相当な、額…か」
梨花「…この辺でそんな額をポンと出せるっていうなら、限られてくるけど…」
チェイス「銀行、もしくは何処かの金庫…」
梨花「それならとっくにニュースになってるわよ」
チェイス「…だとしたら、表には出せない金か」
梨花「…ヤクザ絡み…」
チェイス「…園崎か」
梨花「…間宮リナは、園崎系列のスナックに勤務してたわね」
チェイス「…ならば、答えは出たようなものだ」
梨花「…上納金…ね」
チェイス「…」
梨花「…全く…何でそんなものに手を出したんだか…」
チェイス「…」
梨花「…そういう、背景があった。って言いたいんでしょ?」
チェイス「そうだ」
梨花「…あのね、アンタの言うことも一理あるわよ。そうなることでしか生きていけなかった。っていう人間がいるってのも分かるわよ」
チェイス「…」
梨花「…でもね、本来はそういう風にならないの。ならずに必死に何とかしようとするのよ」
チェイス「…」
梨花「…私だって、死ぬっていう運命を変えようと必死なんだから」
チェイス「…だが、お前も33年間、諦めていた」
梨花「だから、一理あるって言ってんじゃない」
チェイス「…」
梨花「どれだけ不幸な人生だったとしても、人に迷惑かけてお金巻き上げてるようじゃ同情もされないわよ」
チェイス「分かっている。罪は償わせる」
梨花「…アンタ、園崎組がどれだけのものか知ってて言ってんの?」
チェイス「…」
梨花「腕一本じゃ済まないわよ。五体全部取ったって終わるものじゃない」
チェイス「…」
梨花「罪を償うなんて、甘い事言うんじゃないわよ」
チェイス「…人が殺されるのを、黙って見ていろと言うのか?」
梨花「…そういう訳じゃないけど…」
チェイス「…」
梨花「…分かってよ。沙都子を助ける為ならまだしも、あの二人の為に園崎をなんて…」
チェイス「人殺しは犯罪だ。それ以上もそれ以下もない」
梨花「…それが通用するのは、都会だけよ」
チェイス「…」
梨花「雛見沢って、アンタが思ってる以上に住みづらい所なのよ」
チェイス「…」
沙都子「…あ、あの、叔父様…」
鉄平「…ん…」
沙都子「…もし、宜しければ…」
鉄平「…?」
沙都子「…ど、どうぞ…」
鉄平「…酒…」
沙都子「…取ってありましたの。捨てる訳にもいかなくて…」
鉄平「…ほうか」
沙都子「…」
鉄平「…」
沙都子「…ど、どうぞ…」
鉄平「…」チビ…
沙都子「…」
鉄平「…ッ…」グイッ
沙都子「…わ、私、お風呂に入ってきますわ…」
鉄平「…沙都子」
沙都子「!は、はいっ…」
鉄平「…」
沙都子「…」
鉄平「…いや、何でもないわ。さっさと入らんね」
沙都子「…は、はい…」
鉄平「…」グイ
鉄平「…」
鉄平「…ワシゃあ一体、何しとんのじゃ…」
鉄平「…ロクに働きもせんと、いじめとった子供に世話してもろうて…」
鉄平「…情けないのう…」
鉄平「…」
鉄平「…どこから、間違えたんかのう…」
リナ「…」グイッ
「…り、リナさん…」
リナ「…!」グビッ
「…リナさん…あ、あの…」
リナ「…何?」
「だ、大丈夫だよ。あの人が来たら、また僕が…」
リナ「…あ、そう」
「だ、だから…あまり飲み過ぎないように…」
リナ「…るさい…」
「…え?」
リナ「うるさいのよ!!」パリィン
「あっ…」
リナ「ちょっとだけ勇気出したことがそんな偉いわけ!?褒めて欲しいわけ!?」
「…そ、そんな…僕はそんなつもりじゃ…」
リナ「どいつもこいつも…!男ってのはいっつもそう!!」
「…り、リナさん…」
リナ「自分の事ばっかり!!自分の欲丸出し!!」
「ぼ、僕はそんなつもりじゃ…」カチャカチャ
リナ「…何よ。そんなゴミ捨てれば良いじゃない」
「…で、でも…初めて君と買った…」
リナ「…は?」
「…初めて君と買った、ものだから…」
リナ「…ッ…!!」バキッ
「!!?」
リナ「…ほんっと…気持ち悪い男…」
「…り、リナ…さん…?」
リナ「…もう、やーめた。…限界」
「…え?」
リナ「…限界。限界よ、もう」
「…な、何を…?」
リナ「…金。金の為」
「…え…?」
リナ「前の奥さんと別れて、莫大な慰謝料貰って、それでアタシんとこ来て…」
「…」
リナ「金って怖いわよねぇ?ホント…真面目そうな奴でさえ変えちゃうんだから」
「…」
リナ「毎日毎日仕事もせずに店に来て、やることと言えばアタシに言われるがまま金ばら撒いて…」
「…」
リナ「ようやく家にまで来させて、やることは変わらず金の無駄遣い」
「…リナ…さん…」
リナ「例えアタシに好意があったとしても、消えるわよ。そんなやり方だったら」
「…」
リナ「…この際だから教えてあげる」
「…」
リナ「アタシの目的は、アンタの金。持ってる金、全部!!」
「…!」
リナ「…アンタから早いとこ金掻っ攫って、こんな村、すぐ出るつもりだった」
「…そんな…」
リナ「だけど、どーこ探しても見つかんないの。この家のハンコ」
「…」
リナ「…もう、飽きたわ。探すのも。このままじゃあの大金が無くなるのも時間の問題」
「…」
リナ「…もう一個、アンタに今一番お似合いの言葉、教えてあげるわよ」
「…」
リナ「・・・金の切れ目が、縁の切れ目・・・」
「!!」
リナ「…ぷっ…」
「…そんな…
リナ「あーはっはっはっは!!!今頃気づいたの!?自分のバカさ加減に!?ダッサ!!」
「…僕はただ…君の為に…」
リナ「アタシの為にお金無駄遣いしてたの?チョー受ける!!」
「…」
リナ「…ま、アタシもそんな時間に余裕無いし。これで勘弁したげるわよ」
「…よくも…」
リナ「良い勉強になったでしょ?金で女を何とかしたって、いずれこうなるって」
「…よくも…僕を…!」
リナ「じゃーね♪…お財布君?」
「…!!」グッ
リナ「…ん?」
「…よくも!!!騙したなぁ!!!」グワッ
リナ「!!!?」
…。
リナ「…」
「…」
リナ「…?」
「…え…?」
リナ「…は…?」
「・・・え・・・?」
レナ「…」ポタッ…ポタッ
リナ「…礼奈…ちゃん…?」
「・・・」
リナ「…何、してんの…?」
レナ「…ダメ…」
リナ「…」
レナ「…どれだけ、憎たらしくても…」
「・・・」
レナ「…どれだけ、殺したくても…」
リナ「…礼奈…ちゃん…」
レナ「…殺したら、もう、後戻り出来ない…」ポタッ…ポタッ
「…礼…奈…?」
レナ「…お父…さん…」ポタッ…
リナ「…礼奈ちゃん…血が…」
レナ「…そんなの…ダメ…」ガクッ
リナ「!!」
「!!!」
レナ「…」
リナ「…礼奈ちゃん…?」
レナ「…」
「…礼奈…」
リナ「…礼奈ちゃん!!」
レナ「…」
リナ「礼奈ちゃん!!起きて!!!礼奈ちゃん!!!」
レナ「…」
リナ「礼奈ちゃん!!!」
第6話 終
続きまたそのうち書きます
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「ふわぁ…」
チェイス「…」
梨花「…ん…」
チェイス「寝るのならば、電気を切るべきだ」
梨花「窓際で座られてたら気になって眠れたもんじゃないわ」
チェイス「…」
梨花「…アンタも寝てみたらどうなの?綿流しまではまだ…」
チェイス「必要ない」
梨花「…あ、そ」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…綿流しの練習は、上手くやっているか?」
梨花「娘にコミュニケーション取ろうと頑張ってる父親みたいなのやめて?」
チェイス「…」
梨花「…まあ、33年振りとはいっても身体は覚えてるみたい。すぐ取り戻したわ」
チェイス「…」
梨花「…ただ、あの鍬の重さは慣れないわね。腕がもうパンパン」
チェイス「…身体は、変わっていないからな」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…綿流しが、何でああいうお祭りなのか、知ってる?」
チェイス「知らない」
梨花「ああそう。…ま、羽入のことだから、それは言わなくて当然よね」
チェイス「?」
梨花「…アンタ、布団を切り裂くっていうところに何か思わない?」
チェイス「処分するのなら、もっと手早い方法があるはずだ」
梨花「雛見沢の人間はゴミに願い込めてんの?」
チェイス「…ならば、何だ?」
梨花「…そうねぇ…あれは、ね」
チェイス「…」
梨花「…布団を、人間に見立ててやってるのよ」
チェイス「!」
梨花「そうなれば、あの綿が何か。分かるでしょ?」
チェイス「…内部か」
梨花「…もっと分かりやすく言えば、臓物。言わば「腹わた」ね」
チェイス「…」
梨花「腹わた。だから布団の綿を使ってるの」
チェイス「…何故、そんな風に…」
梨花「…オヤシロ様。まあ、羽入よ」
チェイス「…」
梨花「…オヤシロ様はね、人間の臓物を好むのよ」
チェイス「!」
梨花「…っていう、ここの村人の考えよ」
チェイス「…」
梨花「あの顔と性格で人間の内臓なんか食べるわけないでしょ。あいつの好きな物は甘い物だけよ」
チェイス「…」
梨花「…その昔、ここではね、鬼が出たって言い伝えがあるのよ」
チェイス「…鬼…か」
梨花「昔はね、雛見沢ではなく、「鬼ヶ淵村」と呼ばれていたの」
チェイス「…」
梨花「地獄を追い出された人食い鬼が村人を襲って、皆は鬼を恐れた」
チェイス「…」
梨花「でもその時、オヤシロ様と呼ばれる神の仲裁で鬼と人間が共棲するようになったという…伝承があるのよ」
チェイス「…」
梨花「羽入も良い迷惑よ。いつも言ってたわ。どうせお供えするならシュークリームにしろって。それで私に食べろって」
チェイス「…味覚は繋がっていると言っていたな」
梨花「ええ。…ホント…」
チェイス「…」
梨花「…ホント…いつもいつも…」
チェイス「…梨花…」
梨花「…ごめん。話、変えて」
チェイス「…竜宮レナの、ことだが」
梨花「…名前のことかしら?」
チェイス「そうだ。あの子は家では礼奈と呼ばれていた」
梨花「…そうね」
チェイス「…それは、何故だ?」
梨花「…あの子はね…」
チェイス「…?待て」
梨花「何?」
チェイス「…」
梨花「…どうしたの?」
チェイス「…微かだが、叫び声が聞こえる」
梨花「…叫び声?…ん…」
『…ゃーん』
梨花「…本当ね」
チェイス「…聞き覚えのある声だ」
梨花「…」
チェイス「行くぞ」
梨花「え?」
チェイス「この声は、只事ではない」
梨花「え!?ちょ…今私、寝間着!!」
チェイス「お前を一人には出来ない」
梨花「え!?ちょ…あ!あーーーーーー!!!!」
…。
レナ「…」
リナ「礼奈ちゃん!!しっかりして!!…あーもう!!さっさと開けてよ!一つしかない診療所の癖に!!」ガンガン
レナ「…」
リナ「こんなとこで、こんなことで死ぬんじゃないわよ!!…ったく!!早く開けて!!」ガンガン
「…は、はぁい…」
リナ「はぁいじゃない!!開けろ!!とにかく!!」ガン!!
「…ど、どちらさまですか?もう今日は…」ガチャ
リナ「急患!!急患なの!!」
「…!!り、竜宮さん…!?何故…!」
リナ「事情は後で説明するわよ!!今はとにかくこの子の手当てして!!」
「は、はい!すぐに!!」
リナ「礼奈ちゃん?病院着いたからね!?すぐ良くなるからね!?」
「…あ、あの…貴方は…?」
リナ「口動かす前に手ぇ動かせ!!」ゲシッ
「は、はいぃ!!」
リナ「…」
リナ「(…何故…?)」
リナ「(…こっちの台詞よ…!!あのバカガキ…!)」
…。
…。
レナ「…」
リナ「礼奈ちゃん!!しっかりして!!…あーもう!!さっさと開けてよ!一つしかない診療所の癖に!!」ガンガン
レナ「…」
リナ「こんなとこで、こんなことで死ぬんじゃないわよ!!…ったく!!早く開けて!!」ガンガン
「…は、はぁい…」
リナ「はぁいじゃない!!開けろ!!とにかく!!」ガン!!
「…ど、どちらさまですか?もう今日は…」ガチャ
リナ「急患!!急患なの!!」
「…!!り、竜宮さん…!?何故…!」
リナ「事情は後で説明するわよ!!今はとにかくこの子の手当てして!!」
「は、はい!すぐに!!」
リナ「礼奈ちゃん?病院着いたからね!?すぐ良くなるからね!?」
「…あ、あの…貴方は…?」
リナ「口動かす前に手ぇ動かせ!!」ゲシッ
「は、はいぃ!!」
リナ「…」
リナ「(…何故…?)」
リナ「(…こっちの台詞よ…!!あのバカガキ…!)」
…。
レナ『…』
リナ『礼奈ちゃん!!起きて!!』
『…』
リナ『…!ちょっと!!アンタもボーッとしてないで!!病院に電話しなさいよ!!』
『…』
リナ『…!!ああもうこの役立たず!!』
レナ『…』
リナ『この…!バカで生意気な癖に…!』
『…』
リナ『アタシはこの子を病院に連れてく!!妙な気起こすんじゃないよ!!』
『…』
リナ『…起こす気にもならない…みたいね…!本当のバカだわ…!!』
…。
……。
リナ「…」
「…」
リナ「…」
「…一応、傷は浅いようです。手当もしましたし、いずれ目を覚ますでしょう」
リナ「…」
「…さて」ギシッ
リナ「…」
「…何故、こうなったんですか?」
リナ「…」
「約束した訳ではありませんが、聞かないことにはこちらも納得がいきません」
リナ「…」
「落ちたり転んだりして出来た傷ではありません。もし頭頂部から落ちて尚且つ血が出るほどなら、ダメージを受けるのは頭だけではなかったかもしれませんから」
リナ「…」
「…説明して、頂けませんか?」
リナ「…どこから、どう説明すれば良いのか…」
チェイス「全てを説明すれば良い」
リナ「!」
「!」
「…そうですか。貴方が最近雛見沢分校に赴任したという…」
チェイス「紫 左之助だ」
入江「私はこの診療所で医者をやっている、入江という者です。よろしくお願いします」
梨花「入江は雛見沢ファイターズという野球クラブの監督もやっていますです。ですからボク達には監督と呼ばれているのですよ」
チェイス「…」
入江「…さて」
リナ「…」
入江「…間宮、リナさん」
リナ「…」
入江「私は警察ではありません。貴方を逮捕する権限もありませんから」
リナ「…」
入江「ゆっくりで構いません。…私達も黙って聞いています。ですから」
リナ「…」
入江「…何があったのか、話して頂けませんか?経緯も、レナさんの事も」
リナ「…」
チェイス「…まずは、何故お前があの家にいたのか、だ」
リナ「…」コク
…。
……。
リナ「はぁーい!ご来店ありがとうございまーす!リーナでーす♪」
「…」
リナ「何ー?お客さん暗いよー?何かやな事あった?」
「…ええ」
リナ「…そうなんだー…じゃあさ、飲んで!今だけでも忘れよっか?」
「…頂きます」
リナ「何それー!丁寧過ぎー!」
「あ、す、すいません…慣れていないもので…」
リナ「お客さん何歳?」
「…もう、40を…」
リナ「え!?それでこういうお店初めて!?」
「…え、ええ…」
リナ「真面目だねー…今時珍しー…」
「…妻以外の女性とは、ほとんど会話もしたことがなくて…」
リナ「…もしかしてじゃなくても、別れちゃった?」
「…ええ」
リナ「…そっかー…真面目そーなのに…」
「私と妻は、同じ職業で…ですが稼ぎに大きく差があって…」
リナ「奥さんのが稼いでたの?」
「…ええ」
リナ「ふーん…まあ、無いことはない、よね」
「…私には才能が無いのだと、よく他の仕事をするよう勧められました」
リナ「…」
「…ですが、女々しいことに私は諦めきれず…最後には愛想を尽かされました。あれこれと尽くしてはみましたが…」
リナ「…そうなんだ」
「結局妻は新しい出会いを見つけ、出ていきました。…しかも」
リナ「?」
「一人娘すらも取ろうと、浮気相手に何度も会わせていたんです。懐くように、と」
リナ「…ほー…」
「娘はそれが浮気相手だとは知らず、まるで近所の人に接するように仲良くなっていました」
リナ「うん」
「…ですが、その背景を知らなかった私は、妻の浮気を知った時、娘もきっと分かっていたのだと、つい…当たってしまいました」
リナ「…あちゃー…」
「…娘はそれ以来、母親の話題を一切出すことはなく、私を慰めようと必死になっていました」
リナ「…」
「…妻も娘の事は諦めたのか、莫大な慰謝料を置いて、一方的に離婚届を渡してきましたよ」
リナ「!」
「…それで、逃げるように雛見沢に戻ってきました。全てを忘れたいと、願って…」
リナ「…」
「…それに、娘は…」
リナ「…ん?」
「…いえ、何でもありません…。申し訳ありません。いきなり変な話を…」
リナ「良いよぉ。そういうとこだもん。ここ」
「…貴方の聞き上手に、つい甘えてしまいました」
リナ「そう?…だったら嬉しいなぁ」
「…」
リナ「アタシで良かったらいくらでも聞くよ!愚痴でも何でも!」
「…はい」
リナ「今はまだヤル気も湧かないかもしれないけどさ、これからこれから!だからまた来てよ!いつでも良いからさ!」
「…はい」
リナ「アタシは間宮リナ!お客さんは?」
「…竜宮です」
リナ「カッコ良い苗字じゃーん!忘れないから!絶対!」
「…はい!」
…。
リナ「…初めはさ、良いカモ見つけた。ってくらいにしか思ってなかった。店の売り上げアップさせて、給料上げてもらおうとかしか…」
入江「…」
チェイス「…」
梨花「…」
リナ「…でもね、向こうは本気だったんだ」
チェイス「知っている。俺もその本気振りは見た」
リナ「…竜宮さんが来たのは、その2日後」
入江「…」
リナ「いきなりさ、プレゼントだって、高いネックレス持ってきて。正直引いたんだけど…お店だから。拒否するわけにもいかなくてね」
梨花「…」
リナ「…でも、それだけじゃなかった」
入江「…」
…。
「り、リナさん!何か、の、飲みたいお酒はありますか?」
リナ「え?…んー…じゃあね、コレかなぁ?」
「わ、分かりました!じゃあそれをボトルで!」
リナ「…え?本気?結構高いよ?」
「だ、大丈夫です!お金なら…」
リナ「あ…あ、そ、そう…」
…。
チェイス「酒と女に、溺れていったか」
梨花「そういうの何処で覚えてきたのですか?」
リナ「…まあ、そんなところ。…試しにさ、アフターって事で高い中華料理店に連れてってもはいどうぞでお金出すし…」
チェイス「…」
リナ「…これは相当持ってるなって、思って」
入江「…」
リナ「…そしたらね、何だかお金に対してどんどんがめつくなっていったのよ。アタシ。…元からだけど」
梨花「…」
リナ「…いつまでこんな無差別に媚びへつらう商売やってなきゃいけないんだ…って」
梨花「…園崎の上納金に手を出しましたですか?」
リナ「…!…うん。そう」
入江「!…そ、それは…」
リナ「ヤバイってのは…分かってるよ。今だって余裕なんか無い」
チェイス「…」
リナ「…でも、ある日ね?店のマスターが金庫開けてたのを見たの。今月の上納金の確認…って」
入江「…」
リナ「…一件だけでも、とんでもないのにさ。それが何十件もあるんだよ?上納金って」
チェイス「お前達が働いて稼いだ金を持っていくのが、気に食わなかったということか」
リナ「…園崎に一泡噴かせてやろうってのは、あったよ。確かに」
梨花「…」
リナ「…でもそれよりも、お金だ。いっぱいある…ってのが大きかった」
入江「…」
リナ「それでね。お店で働き出した時にたまたま目をつけたガラの悪い、金髪のオッさん…鉄平に話をしたの」
チェイス「北条鉄平とは、そこで関係を持ったか」
リナ「…うん。特別な関係、じゃない」
入江「…」
リナ「…ある程度ボディーガードになってくれて、金にがめつくて、それでいていつでも切れる関係」
梨花「鉄平は、どんな感じだったのですか?」
リナ「…少し渋ったけど、了解したよ。…金に困ってそうだったし」
チェイス「…」
梨花「…それで、今は鉄平からも逃げているのですね」
入江「…つまり、貴方は途中で園崎への上納金を独り占めしたわけですね?」
リナ「…」コク
チェイス「…それでいて、敢えて近くにいることで疑いをかけられないようにした」
梨花「その一番丁度良かったのが、竜宮家なのですね」
リナ「…」コク
入江「…」
リナ「でも、そのせいで竜宮さんの無駄遣い癖は悪化した。とんでもないくらいに」
梨花「…」
リナ「…ついでに竜宮家の財産も取ってやろうと思ったけど、やめたわ」
梨花「?」
リナ「このままじゃ無くなるのもそう遠くないなって思って…」
入江「…それは、どういうことですか?」
リナ「…これだけやっておいて、何だけどさ…」
チェイス「…」
リナ「あの人、アタシがあの家に来て一番初めに買ったグラスを凄く大事そうにしてたんだ」
梨花「?」
リナ「それをつい割っちゃってね。…必死にかき集めながら悲しんでる姿を見て、思ったのよ」
入江「…」
リナ「…哀れだな…って」
リナ「勿論、アタシがこんなこと言う資格が無いのは分かってる。アタシが原因みたいなもんだし…」
チェイス「…別れを切り出したことで、逆上してきたわけか」
リナ「…うん」
入江「…それを、レナさんが庇った。ということですか」
リナ「…どうして、アタシなんか…」
梨花「…」
リナ「本来、煮ても焼いても足りない相手の筈なのに…」
入江「…」
チェイス「…そう思うならせめて、レナが目を覚ました時に連れ添ってやれ」
リナ「…」
チェイス「…だがそれは、お前の為ではない」
リナ「…!」
チェイス「父親を人殺しにはさせないという、レナの強い思いだ」
リナ「…うん」
梨花「…」
チェイス「…お前のもう一つの罪に関しては、後回しだ」
リナ「…うん…」
レナ「…」
リナ「…」
…。
入江「…まさか、あの明るさの裏にこんな事情があったとは…」
チェイス「…悟られまいと、必死に隠していたんだろう。これは家庭の事情…だと」
梨花「…左之助。レナが何故礼奈と呼ばれているか。ボクからお話しますです」
チェイス「…」
入江「…」
梨花「…レナの家庭事情は、先のリナのお話で大体合っています」
チェイス「…」
梨花「幼い頃の両親の離婚。知らないうちに自分も共犯になっていたことの、罪の意識」
チェイス「…」
梨花「…レナは、それを一気に背負ってしまったのです」
入江「…」
梨花「…その残酷な運命は、やがてレナの心を蝕んでいきました」
チェイス「…」
梨花「そしてレナは、「い」やな事を忘れようとれ「い」なの「い」を取って、「レナ」というもう一人の人格を作り上げたのです」
チェイス「…だが今回は、忘れようとはしなかった」
梨花「…はい。レナは「逃げず」に立ち向かったのです。家庭の問題と」
入江「…そうでしたか」
梨花「立派なのです。レナは」
チェイス「…そうだな」
梨花「…リナは、改心するでしょうか?」
チェイス「分からない」
梨花「…いつもみたいに、言い切らないのですか?」
チェイス「更生するきっかけを与えても、そう素直には戻れない」
梨花「…」
チェイス「…女心というものは、分からない」
梨花「貴方からそんな言葉を聞けるとは思わなかったのですよ」
チェイス「…それよりも。あいつらにはやらなければならないことがある」
入江「…園崎の上納金をくすねた罪は、とても重いものですからね…」
梨花「ここでは園崎が右と言えば右。園崎がリナや鉄平に罰を与えるというなら、ボク達は逆らわないわけにはいかないのです」
チェイス「…何故、そこまで園崎は…」
「…それは、むかしむかー…しに、遡るのよ…」
チェイス「…」
「…うふふ」
入江「…た、鷹野さん?」
鷹野「ごめんなさぁい。たまたま通りがかったら明かりが点いていたものだから…つい」
梨花「こんな時間にお散歩なのですか?」
鷹野「ええ。でもちゃあ…んとボディガードが付いてたから大丈夫よぉ?ねー…?ジロウさん?」
富竹「…あ、あはは…」
チェイス「…」
梨花「左之助。紹介しますです。この女の人は鷹野三四。男の方は富竹ジロウ。鷹野はここの病院でナースのお仕事をしていて、富竹はカメラマンをやってるのですよ」
チェイス「…」
鷹野「最近越してきた変わった服装の青年って…もしかして貴方?」
チェイス「…最近越してきたのは、確かだ」
富竹「た、鷹野さん…いや、申し訳ない。えー…と、左之助さん。かな?」
チェイス「…そうだ」
富竹「僕は本来野鳥専門のカメラマンをやってるんだけどね。ここの綿流しの祭りが好きで、毎年撮りに来てるんだ!」
チェイス「…」
富竹「宜しく!」
チェイス「…」
富竹「…?」
チェイス「…」グッ
富竹「…!?い、痛たたたたたた!!!?」
鷹野「!?」
富竹「あ、あはは…力が強いなぁ。握り潰されるかと…」
チェイス「すまない。それなりに加減はしたが…」
梨花「左之助はこう見えてゴリラのような力を持ってるのです。怒らせると怖い怖い、のですよ?」
鷹野「…良いかしら?お話の続き…」
チェイス「続けろ」
鷹野「…そうねぇ…これは、どれだけ遡るかし……あら?あそこにいるのは…レナちゃん?」
梨花「…レナは今、怪我をして寝てるのですよ」
入江「え、ええ。ですが、軽いもので…明日にも退院出来ますから」
鷹野「…そう。入江先生が仰るなら…うふふ」
チェイス「…」
鷹野「…それでね?何故園崎がここまでになったのか…それのキーワードは…」
チェイス「…」
鷹野「…「人肉缶詰」…」
梨花「…」
チェイス「…それは?」
鷹野「…貴方、この村が昔何て呼ばれてたかは知ってる?」
チェイス「鬼ヶ淵村、だと聞いた」
鷹野「そう…それは知ってるのね」
チェイス「…」
鷹野「なら、本題に入りましょう」
チェイス「…」
鷹野「…終戦後のお話でね。日本中では物資の不足が問題となっていたの」
チェイス「…」
鷹野「勿論、この辺だって例外ではないわ。食料だって、何だって不足してたらしいわ」
チェイス「…」
鷹野「…でもね?そこで活躍した人物が、当時も今も変わらない御三家の一つ、園崎。その一族の一人、園崎宗平なのよ」
チェイス「…宗平…」
鷹野「ええ。彼は食料飢饉だった筈の当時、大量の缶詰を所有していてね…貴重なタンパク源だからって、皆が押し寄せたわ」
チェイス「…」
鷹野「園崎宗平はね、それを闇市で売り捌いて、財を成したの」
チェイス「…」
鷹野「そのお金で雛見沢を近代化させようと、彼は画策したわ。…でもね?」
チェイス「…」
鷹野「…ある日、一人の男性がその缶詰から、ある物を発見したの」
チェイス「…何だ?」
鷹野「…髪の毛。なんだって…人間の…」
チェイス「…」
鷹野「そこからはバッシングの嵐。宗平は人肉を缶詰にして売っていた、だなんて揶揄されたのよ」
チェイス「…」
鷹野「…でもね?彼は一切口を噤んで、その問題には言及しようとしなかったの」
チェイス「…」
鷹野「結局宗平は雛見沢に舞い戻り、その財力で御三家の残り、古手、公由家を手助けしたのよ」
チェイス「…力関係は、その時からか」
鷹野「ええ。…今ではもう、その缶詰が何だったのかは分からないけれど…」
チェイス「…宗平にしか、分からない事だ。深く追求することもない」
鷹野「…でも、気になるじゃない?こういう歴史って…」
チェイス「…」
鷹野「好きなのよねぇ…歴史…」
チェイス「…」
鷹野「…あら?もうこんな時間…」
富竹「…!?あ、ほ、ホントだ…!鷹野さん!明日早番じゃないの!?」
鷹野「大丈夫よぉ。ちょっとくらい…」
入江「…せめて、私のいないところで仰ってくれませんかねぇ…?」
梨花「…どうして富竹が鷹野の予定を知ってるのですか?」
富竹「えっ!?そ、それは…たはは…」
鷹野「…うふふ…お子様には、まだ分からない事よぉ…」
梨花「…むー…」
鷹野「…あらー…可愛らしいわぁ…!」プニプニ
チェイス「…帰るぞ。梨花」
梨花「え?」
チェイス「もうお前は眠らなければならない。家に行くぞ」
梨花「連れて来たのは左之助なのです。それに、レナが…」
チェイス「…少なくとも、今は大丈夫だ」
梨花「…?」
チェイス「…」
鷹野「…」
…。
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…ねえ。私はぬいぐるみじゃないんだけど」
チェイス「お前の護衛も俺の任務だ」
梨花「そうかもしれないけど…レナの事が…」
チェイス「…」
梨花「…こんな急いで出る事もなかったんじゃないの?」
チェイス「…あの、3人は…」
梨花「?」
チェイス「あの3人は、信用するな」
梨花「…え?」
チェイス「あの3人は、嘘をついている」
梨花「…何を…」
チェイス「身のこなしが、素人ではない」
梨花「…?」
チェイス「そして微かだが、鷹野の首筋に硝煙の反応があった。洗い流しきれていなかったようだな」
梨花「…」
チェイス「俺の目は人間とは違う。ある程度なら調べずとも判別出来る」
梨花「…それって…」
チェイス「あの女は、危険だ」
梨花「…!!!だ、だったら!!」
チェイス「今は手出し出来ない。レナは軽い怪我だと言い切った手前、それは考えられない」
梨花「…で、でも…ほら、もしかしたら、花火でもやってたのかも…」
チェイス「…花火と銃の火薬は、違う」
梨花「…」
チェイス「そして、もう一つ。根拠がある」
梨花「…何?」
チェイス「…俺の…」
梨花「…」
チェイス「…勘だ」
リナ「…zzz…」
レナ「…」
リナ「…zzz」
鷹野「…」
入江「…夏とはいえ、夜にその格好では風邪を引いてしまいますよ」パサ
富竹「…きっと、それだけ必死だったんだろう。肩や服に血が付いていても、気にもしていない」
入江「…根っから悪い人なんて、この世にはいませんよ」
リナ「…ん…zzz…」
鷹野「…ねえ。入江所長」
入江「はい?」
鷹野「この方って、「そういう」人なのよね?」
入江「…え?」
鷹野「園崎系列の末端の店で働いてるような子なんだから、身寄りも無いのでしょう?」
入江「…恐らくは」
鷹野「…そうなの…」
富竹「…鷹野さん…?」
鷹野「…うふふ…」
第7話 終
続きまたそのうち書きます
第一話 神は追跡者になにを願ったのか
第二話 チェイスはなぜ雛見沢へやってきたのか
第三話 過去の雛見沢でなにがおきたのか
第三・五話 古手梨花はなにを語るのか
第四話 イレギュラーは結末に影響を与えるのか
第五話 命を救うのに理由は必要なのか
第六話 なにが竜宮レナを追いつめたのか
第七話 入江診療所はなにを隠しているのか
とりあえず各話にドライブっぽいタイトルをつけてみました
>>180
ありがとうございます
嬉しいです
…。
『お母さん、しばらく帰ってこれないかもしれないから。ここにお金、置いとくわね』
…いつ、帰ってくるの?
『…分からない。…でもあの人もいるし、大丈夫よ』
…お父さん、昨日も、今日も…寝てるよ。
『…そう。そのうち起きるわよ。起こさないであげて。…絶対に』
…本当に、帰ってくるよね?
『…そのお金は、絶対にお父さんには渡そうとしちゃダメよ』
どうして?
『…どうしても、ダメなのよ』
…?
『…お母さん、行くわね』
…。
『…じゃあね。さよなら』
…。
……。
リナ「…ッ!」ガバッ
リナ「…」
リナ「…ハーッ…ハーッ…」
リナ「…夢…」
リナ「…ッ…」
リナ「…あれ?」
リナ「…何でアタシ…布団…」
リナ「…!」
リナ「礼奈ちゃっ…!」
レナ「…」
リナ「…」
レナ「…」
リナ「礼奈ちゃん…」
レナ「…ここまで、運んでくれたんですね」
リナ「…」
レナ「…それは、ありがとうございます」
リナ「…」
レナ「…でも、貴方がお父さんにしたことは、許せません」
リナ「…うん」
レナ「…反省しているというなら、その罪を償って下さい」
リナ「…」
レナ「…もし、良かったら」
リナ「?」
レナ「教えてくれませんか?どうしてリナさんがそんな風になったのか」
リナ「…ただの、言い訳になるから。やめとくわ」
レナ「構いません。それでも、聞きたいんです」
リナ「…」
レナ「私達を騙したリナさん。私を助けたリナさん」
リナ「…」
レナ「…本当のリナさんは、どっちなのか」
リナ「…どっちも、アタシよ」
レナ「…」
リナ「…話すと長いから。時間のある時にしましょ。礼奈ちゃん、学校あんでしょ?」
レナ「…」
【AM8:00】
レナ「…」
リナ「…傷、痛む?」
レナ「…いえ。それよりも…」
リナ「?」
レナ「…リナさんに、気遣ってもらうなんて、思いませんでした」
リナ「…アタシも、助けてもらえるなんて思わなかった」
レナ「…今日は、昼で帰りますから」
リナ「…ん」
…。
リナ「…」
入江「…そうですか。竜宮さんは、学校に…」
リナ「…アタシといたって、今の父親といたって、気分は良くないでしょ」
入江「ええ。そう思います」
リナ「…」
入江「…しばらくは、ここにいて頂いて構いません」
リナ「…」
入江「まずは、竜宮さんとしっかりお話をしなければなりませんから」
リナ「…そう、だね…」
入江「…それでは」
リナ「…あ、待って」
入江「…?」
リナ「…」
入江「…」
リナ「…ありがと」
入江「…私は医者ですから」
リナ「…」
入江「患者に、良いも悪いもありません」
リナ「…」
沙都子「では…叔父様。行って参りますわ」
鉄平「…のう、沙都子」
沙都子「は、はい?」
鉄平「…例の注射は、打っとるんか?」
沙都子「か、監督からの…ですの?は、はい…」
鉄平「…ほうか」
沙都子「…?」
鉄平「…沙都子」
沙都子「?は、はい?」
鉄平「…」
沙都子「…」
鉄平「…人間っちゅうんは、やり直しは出来るんかのう」
沙都子「…やり直し…」
鉄平「…」
沙都子「…分かりませんわ」
鉄平「…」
沙都子「…それでも」
鉄平「…」
沙都子「やり直してみないことには、どうにも言えませんわ」
鉄平「…ほうか」
沙都子「…」ペコ
鉄平「…」
鉄平「…やり直してみないことには、か…」
鉄平「…腹ァ、括れっちゅうこと…じゃな」
鉄平「…」
鉄平「…やらんと、いかんかもしれんのう…」
…。
「左之助せんせー!これ教えてー!」
チェイス「…」
「左之助せんせー!出来たよー!」
チェイス「…」
…。
魅音「なんだかんだで、あの人も教師が板に着いてきたねぇ」
圭一「あの格好も見慣れてきたよな。もう」
レナ「でも、暑くないのかな…」
魅音「…確かに、汗もかかないしねぇ。痩せてるのかなって思ったらウチの若衆なんざ目じゃないくらい力持ちだし…」
圭一「…どういう、人なんだろうな」
魅音「…んー…」
梨花「(…人、じゃないのよ。人じゃ)」
梨花「(…にしても、チェイスはレナには何も言うなって…)」
梨花「(…どうしてそういう気遣いは出来るんだか)」
梨花「(沙都子も結局何も無いみたいだし…)」
梨花「(もしかしたら、このまま…)」
梨花「(…本当に…)」
校長「…」コツコツ
梨花「(…ん?)」
知恵「あら…校長先生」
校長「生徒達は、上手くやっていますかな?」
知恵「ええ。チェ…左之助先生もだいぶ…」
チェイス「…」
校長「…それで、ちょっと…左之助先生も…」
チェイス「?」
知恵「?」
校長「…」
チェイス「…」
知恵「…」
校長「…」
知恵「…えっ!?」
梨花「…?」
知恵「…わ、分かりました。…えっと…そ、園崎さん!」
魅音「?はーい!」
圭一「どうしたんだ?魅音の奴…いきなり職員室に呼ばれていったけど…」
レナ「うーん…お家の事かな?」
圭一「…あいつって、次期当主…とかなんとか言ってたよな」
レナ「うん。でも魅ぃちゃんは全然気にしてないから…」
圭一「それでも、家がそうさせてくれないんだろうな…」
レナ「…凄いよ。魅ぃちゃんは」
圭一「…そうだな」
沙都子「魅音さんは背負ってるものがたくさんあるんですのよ。とても大きなものを…」
圭一「…」
沙都子「…ン圭一さんと違って!!」ギシッ
圭一「一言多いんだよお・ま・え・は!!」グリグリ
沙都子「ぎゃああああああレナさあああああああん!!!」
レナ「…あはは」
圭一「…?」
沙都子「…?」
梨花「…」
圭一「…ど、どうしたレナ?」
レナ「え?」
沙都子「いつもならここでレナさんの拳が圭一さんの顔面にめり込むのが日常でしてよ」
圭一「どんだけ世紀末な日常なんだよ」
レナ「ちょ、ちょっと疲れてるのかな。…かな」
梨花「(…やっぱり、ボロは出るわよね)」
圭一「…前にも言ったけど、何か悩み事があるなら、ちゃんと話した方が良いぞ?」
沙都子「そうですわ。抱え込むのはストレスの原因でしてよ」
レナ「だ、大丈夫だよ」
圭一「…話しにくいことでもさ、話してみたら意外と解決するかもしれないぜ?」
レナ「…」
沙都子「…無理に聞くことはありませんが、それでも私達は心配なんですのよ」
レナ「…うん。ありがとう」
梨花「(…私は知ってるけど、話せるわけないわよね…)」
沙都子「…そういえば梨花」
梨花「?」
沙都子「先程から一言も話してませんが、梨花も何かあったんですの?」
梨花「みー。ボクは常にあれこれ考えてますのですよ」
沙都子「う…ホントに考えてそうですわね…」
魅音「…」ツカツカ
圭一「あ」
レナ「魅ぃちゃん…」
魅音「…」
圭一「…どうした?」
魅音「…ごめん。今日は帰らないと」
沙都子「え?」
魅音「いやー悪いねー!おじさんちょーっと!用事が出来ちゃってね!」
圭一「よ、用事?」
魅音「うん。すぐ終わるから」
レナ「…すぐ?」
魅音「うん。…すぐに」
梨花「…?」
魅音「それじゃっ!…あ!圭ちゃん!今日の分、明日教えてね!」
圭一「うぇっ!?な、何だよそりゃ!」
魅音「バイバーイ!!」バビューン
沙都子「…用事。魅音さんも忙しいみたいですわね」
レナ「…でも、今まで学校にいる時にお家の用事で抜け出す事なんかあったかなぁ…」
沙都子「…無かったですけど、そういうことも稀にあるのでは?」
圭一「…先生に聞いてみるか?」
レナ「うーん…でも、人の家の事情は…」
チェイス「…」
圭一「あ」
沙都子「あ…」
梨花「!」
チェイス「授業の続きだ。自習時間とはいえ席を立つのはルール違反だ」
圭一「うっ…」ガタン
沙都子「う…正論ですわね」ガタン
チェイス「お前達はこの学校では年長者だ。年長者は年少組の見本にならなければならない」
レナ「ご、ごめんなさい…」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…俺は職員室に戻る。引き続き自習時間だ」
圭一「は、はい…」
梨花「…」グイ
チェイス「…」
梨花「(何が、あったの?)」クイ
チェイス「…」
梨花「(な・に・が・あっ・た・の?)」クイックイッ
チェイス「…何も無い」
梨花「(嘘でしょ)」クイッ
チェイス「園崎魅音は家の用事だ。俺達と関係は無い」
梨花「(じゃあ…)」
チェイス「…」
梨花「(何でこっそり出て行こうとしてんの?)」グイ
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「職員室に、行くだけだ」
梨花「…そう」
沙都子「…?」
チェイス「…」
梨花「…左之助」
チェイス「…」
圭一「?」
梨花「…早く、帰ってくるのですよ」
チェイス「…了解した」
レナ「…?」
圭一「…?」
沙都子「…」
魅音「…」
…。
知恵『園崎さん。…その…』
左之助『…』
校長『…』
魅音『?』
知恵『…園崎、お魎さんから、お電話です』
魅音『…?婆っちゃから?』
知恵『…』
魅音『…は、はーい?何ー?』
お魎『…北条、鉄平じゃ』
魅音『…は?』
お魎『北条鉄平が、園崎の上納金をくすねたと自首してきおった』
魅音『…』
お魎『…あんのチンピラが、堂々と門からやってきおったんじゃ』
魅音『…』
お魎『次期当主としてお前も参加せえ』
魅音『…分かった』
…。
魅音「…」
魅音「…あの自分のことしか考えない叔父が、ねぇ…」
魅音「…ふーん…」
…。
リナ「…」
鷹野「はーい間宮さーん…今良いかしら?」
リナ「…あの入江って人は?」
鷹野「往診に出かけてるわ。ご老人が多いから…忙しいのよ」
リナ「…そ」
鷹野「それよりも…お腹、空いてない?」
リナ「…悪いけど、そんな気分じゃないのよ。…それに」
鷹野「…それに?」
リナ「礼奈ちゃんは昼で学校、帰るらしいから。私もそれが終わったら出てくわ」
鷹野「…そう」
リナ「迷惑、かけたわね」
鷹野「あら…貴方、聞いてたより素直じゃない」
リナ「開き直っただけよ。多分アタシは園崎の人間に八つ裂きにされて死ぬだろうし」
鷹野「そんな事言わないで…ね?」
リナ「人間、絶対に死ぬってなったら諦めがつくもんよ。アンタら普通の人には分からないだろうけど」
鷹野「…普通…ねぇ…」
リナ「普通よ。アンタらは。…アタシみたいなゴミ屑に比べればさ」
鷹野「…そう…。ねえ?」
リナ「…?」
鷹野「…それって、いつ死んでも良いってことよねぇ?」
リナ「…え?」
鷹野「小此木」
リナ「は?」
小此木「はいよ」
リナ「は?…え!?ちょ、ちょっと!?」
鷹野「ごめんなさぁい。どうしても貴方くらいの女性の死体が必要なのよぉ…」
リナ「何!?ちょっ…何すんのよ!!離しなさ…ムググ…」
小此木「暴れんなって…今はまだ殺しゃしないからよ」
リナ「!!?」
鷹野「私とそう変わらない身長で、女性で、居ても居なくても誰も気にしなくて、定職にも着いてない。そういった条件の人ってそうそう居ないのよねぇ…」
小此木「…しかし、こんなとこに好条件の物件があるたぁ思いませんでしたね」
鷹野「ホントよねぇ…貴方、良かったじゃない…」
リナ「!!」
鷹野「最後に、人の役に立てるのよぉ…?」
リナ「…!!…!!!」
小此木「でも流石に…あんまり大仰には出来ませんぜ?綿流しの祭りが終わるまで監禁ったって…」
リナ「~!!」
鷹野「そうよねぇ…でーも…そこは、貴方に任せるわ」
小此木「…それと、銃の腕は少しは良くなりましたかい?」
鷹野「私は「裏」だから良いのよぉ」
小此木「へへっ…そう言って、この間、練習してたって聞きましたぜ?」
鷹野「最後の手段よ。万が一私が警察に疑われた場合のね」
リナ「!!!」
鷹野「さ。その子を連れてって。…バレないようにね?」
小此木「はいよ…あー…ン゛ン゛!ほいだら行って参りますわぁ。鷹野センセ」
リナ「…!!」
鷹野「あらぁ?その話し方、似合ってきたじゃない。小此木造園さん」
リナ「(小此木…造園…!)」
小此木「へっへへ。何年もいりゃあ、そら学習しますわ」
リナ「(伝えなきゃ…!誰かに伝えなきゃ…!)」
小此木「あん?おいおい…まさか逃げられると思ってんのか?」
リナ「(誰かに…伝えないと…!)」
小此木「…ったく、腕も塞いどくか」
リナ「(…そうだ…!確か…左之助とかいう礼奈ちゃんの担任…!)」
鷹野「あら?今更死ぬのが怖くなったの?」
リナ「(こいつら…!ヤバい…!!)」
鷹野「…そう」
リナ「(誰か…お願い…誰か!!)」
鷹野「…でもざぁんねん…」
リナ「(誰か…!!)」
鷹野「…貴方、もう終わりなのよ」
リナ「(助けて…!!)」
鷹野「小此木。あんまり暴れるようなら気絶させても構わないわ。多少なら大丈夫よ」
リナ「(助けて…!!!)」
小此木「…ま、女に手を上げるのは趣味じゃねえんですがね…」
鷹野「どうせ、殴られた痕跡も分からなくなるくらいになっちゃうんだから」
リナ「…!!」
小此木「はいよ。…じゃ、行くぞ」
リナ「…」
鷹野「…お達者でねぇ…あ。小此木?」
小此木「?」
鷹野「…あの人は、応えてくれた?」
小此木「…それが、まだなんですわ」
鷹野「…そう」
…。
圭一「え?レナも帰るのか?」
レナ「うん。やっぱりちょっと熱っぽいかな…かな」
圭一「そうなのか?…心配だな」
レナ「大丈夫だよ。明日には元気になるから!」
沙都子「ちゃんと身体を休めるんですのよ?」
レナ「うん!ありがと。沙都子ちゃん」
梨花「(…嘘ね)」
レナ「梨花ちゃん。圭一君。沙都子ちゃんも、また明日ね?」
圭一「おう!」
沙都子「はいですわ」
梨花「…レナ?」
レナ「?」
梨花「…」
レナ「…?」
梨花「…何でもないのです。また明日なのですよ」
レナ「…うん!」
梨花「(…かける言葉が、無いわ)」
沙都子「…」
梨花「(…無駄に生きただけで、頭の中は子供…)」
沙都子「…梨花…?」
梨花「(…チェイスの、言う通りね…)」
…。
魅音「…」
お魎「…」
茜「…」
鉄平「…」
茜「…これ以上、何を驚くことがあるかねぇ」
鉄平「…」
茜「まさかあのチンピラ風情が、命取られるかもしれない相手にこうして詫び入れに来たってんだから」
鉄平「…弁解はせん。ワシャあどんな報いでも受けるつもりじゃ」
茜「…へぇ」
お魎「…」
魅音「逃げられないと諦めた…」
茜「…」
魅音「…訳では、ないようですね」
鉄平「…」
茜「素直に詫びれば、罪が軽くなる…って考えてる訳でもなさそうだねぇ。命乞いの一言も無かったって聞いたよ」
鉄平「それだけの事をしたんじゃ。腕でも、脚でも心臓でも。いくらでも好きにしてくれて構わん」
魅音「…上納金は?」
鉄平「…それは…」
茜「その感じじゃ、まだ手はつけてないんだろ?」
鉄平「…」
茜「何処だい?きちんと耳揃えて返してくれるってんなら命までは取りゃしないよ」
お魎「…」
鉄平「…それは…」
茜「…それは?」
鉄平「…分からん!!!」
茜「は?」
鉄平「分からんのじゃ!!な、失くしてしまった!!」
茜「…は?」
鉄平「上納金に手を出した上、ワシャそれを失くして…それで…」
茜「…ふざけてんのかい?ガキの小遣いじゃないんだよ?」
鉄平「分かっちょる!!じゃから…ワシ一人で…!」
お魎「何を言うちょるんじゃ…」
鉄平「…!」
お魎「…盗んだ上失くした?それでお前のようなチンピラ一人で終わらせろ…?」
鉄平「…」
お魎「調子に乗るなクソガキャア!!!!」
鉄平「…!」
お魎「末代まで呪っても呪いたりん…じゃが、お前の今おる家族なんざ…あの小娘だけじゃ」
魅音「…!」
鉄平「!!」
お魎「こりゃ、あの小娘にも一肌脱いでもらわんとあかんの…」
鉄平「…!沙都子にゃ手を出すな!!!」
魅音「!」
茜「…」
お魎「あん?」
茜「…どういう風の吹き回しだい。アンタ、あのガキの事、相当憎んでたんじゃないのかい?」
鉄平「…」
茜「…はー…ん。そうかい。そういうことかい…」
鉄平「…ッ」
茜「アンタ、あの子に情が移ったんだね?」
鉄平「…」
茜「チンピラの目にも涙かい。…傑作だねぇ」
お魎「それが何じゃ。こっちの知った事か」
鉄平「…頼む…!」
お魎「?」
鉄平「どんな残忍な拷問でも受ける…!!どんな痛みでも耐える…!!」ゴツン
茜「…」
鉄平「ワシ一人で…どうにかしてくれ…!」
茜「…土下座なんて、何処で覚えたんだい。アンタが」
鉄平「…」
茜「…だけどね、こっちにも食わせなきゃならない奴らが何百といるんだよ」
鉄平「…!」
茜「そいつらの迷惑料。ウチら本体の迷惑料。上納金。アンタのボロボロの身体隅々まで切り裂いても取り戻せやしないよ」
鉄平「…」
お魎「当たり前じゃ。呪うんなら自らの行いを呪わんか。こん…ダラズがッ」
鉄平「…ワシは…」
お魎「?」
鉄平「…夢を、見た」
お魎「…あァ?」
鉄平「…夢でワシは、何度も何度も、沙都子を虐め抜いとった」
お魎「…何じゃこいつは…とっとと…!」
茜「待ちなよ」
お魎「あん?」
茜「…言ってみな。言うくらいならタダだ」
お魎「…」
鉄平「…虐めて、虐めて、何度も壊した」
魅音「…」
鉄平「…目の光を失った沙都子を見ても、何も思わんかった…」
茜「…」
鉄平「…だのに…現実は、違った…!」
茜「…」
鉄平「親もおらん。兄もおらん。だのにあいつぁ…一生懸命、生きとった…」
お魎「…」
鉄平「誰にも弱音を吐かず、ワシのようなゴミにもならず…!」
魅音「…」
鉄平「…あいつぁ、一生懸命笑って!!生きとったんじゃ!!」
茜「…」
鉄平「…おまけに、今沙都子は何かの病気にかかっとる…!」
魅音「!」
茜「…」
鉄平「週に何回か…病院の先生から貰った薬を、治験だか何かと言って打っとるらしいが…ありゃ間違いなく何かの病気を抑える薬じゃ…!」
魅音「…嘘…」
鉄平「ワシかて分かる…!そんな、子供に治験させる医者なんぞ、おるわけがない…!」
茜「…」
鉄平「…きっと今、あの子は苦しんどるんじゃ…!病気のことも、兄のことも!!」
お魎「…」
鉄平「…お願いじゃ…どんな苦難にも耐えて必死で生きとる、沙都子を…」
魅音「…」
鉄平「あいつの人生を、奪わんでくれ…!!!」
茜「…人生、ねぇ」
鉄平「…」
茜「…これが、普通の家の子だったら、考えたんだがねぇ…」
鉄平「…!」
お魎「あれは北条の家。情けなんざかけるこたぁねぇ」
鉄平「…そんな…!」
茜「悪いけど、沙都子とやらにも責任は負ってもらうよ」
鉄平「…!!」
茜「アンタは勿論、帰さない。そうしなきゃウチのメンツ丸潰れだ」
鉄平「…」
茜「聞いてはやるとは言ったけど、考えるとは言ってないよ」
鉄平「…!」
お魎「そいつを連れてけ。ついでに北条沙都子も連れてこんか」
鉄平「や…やめ…!!」
魅音「待って!!」
お魎「あ?」
茜「あ?」
魅音「…待って!」
鉄平「…」
茜「何だい?次期当主」
魅音「…」
茜「まさか、現当主のご意向に逆らおうってかい?」
魅音「…沙都子は、関係無い…!」
お魎「何だって…?」
魅音「沙都子は!!関係無い!!」
茜「あるよ」
魅音「…!」
茜「こいつ一人じゃどうにもならない。なら親類にも責任を負ってもらう。筋は通ってるじゃないかい」
魅音「…でも…」
お魎「でももクソもあるか。元々気に食わんかったんじゃ。北条の人間がいつまでも雛見沢に…」
魅音「…!」
茜「…ま。北条に産まれたのが運の尽きだってことさね」
魅音「…ざけないで…」
茜「・・・」
魅音「…ふざけないで…!」
茜「・・・あ?」
魅音「ふざけるなって!!言ってんのよ!!!」
鉄平「!」
お魎「…」
茜「・・・何だって?」
魅音「何が園崎よ…何が北条よ…!!」
お魎「…キサマ…」
魅音「そんなつまらないことで!!いつまでも!!何が園崎組なのって聞いてんのよ!!!」
茜「…その言葉…」
魅音「…」
茜「本心かい?」
魅音「…そうだよ…!!」
茜「・・・へぇ」
魅音「何の罪も無い子供にすら敵意を向けるような、ちっさいちっさいヤクザだって言ってんのよ!!!」
茜「…吐いた唾は、飲み込めないよ」
魅音「何度だって言ってやる!!アンタらは…!!」シュッ
茜「…」ジリ…
魅音「…!!」ビクッ
茜「…一度は大目に見た。二度目は怒った」ジリ…
魅音「…」
茜「…三度目は、例え娘でも容赦しないよ」
魅音「…!」
茜「友達だか何だか知らないけど、アンタはこのアタシと当主の前で大見得を切った。例え親子でも越えちゃならないもんがある」
魅音「…」
茜「…指一本くらいは、覚悟しなよ…!」ビュッ
魅音「ッ!!」
レナ「…え…?」
鷹野「ごめんなさいねぇ?何だか急に青ざめた顔して、帰っちゃったの…」
レナ「…何…で…?」
鷹野「…さぁ?何だか切羽詰まってる感じだったから…」
レナ「…!」ダッ
鷹野「…あら?レナちゃん?…そっちはベッドしか…」
レナ「…」
鷹野「…ごめんなさいねぇ。止めたんだけど…」
レナ「…本当に、行っちゃったんですね…」
鷹野「ええ。…酷い人よねぇ。私も振り切られちゃって…」
レナ「…」
鷹野「折角レナちゃんがお話ししたいって言ってくれてたのに…」
レナ「…」
鷹野「世の中、ああいう人もいるのね。…でも気にしちゃダメよぉ?」
レナ「…」
鷹野「だって、気にしてたら前に進めないじゃないの。ね?」
レナ「…はい」
鷹野「…事情は聞いてるから。どうするの?お家に帰る?」
レナ「…」
鷹野「帰りづらかったら、ここに居ても良いのよ?…傷も、痛むかもしれないでしょ?」
レナ「…あの、鷹野さん」
鷹野「…なあに?」
レナ「…どうして、嘘、吐くんですか?」
鷹野「・・・え?」
レナ「…」
鷹野「…嘘?」
レナ「はい。嘘です」
鷹野「どういうことなの?私は…」
レナ「嘘ですよ」
鷹野「吐いてなんかないわよぉ。私はちゃあんと…」
レナ「嘘だッッ!!!」
鷹野「!」
レナ「…」
鷹野「…」
レナ「…」
鷹野「…どうして、そう思うのかしら?」
レナ「…これ…」
鷹野「…?」
レナ「…誰の、髪の毛ですか?」
鷹野「…」
レナ「この髪の毛。長さも色も、この辺の人じゃありません。監督でも、鷹野さんでも、リナさんでも…」
鷹野「…風で飛んできたのかしら?」
レナ「…この辺りは、お爺さんとお婆さんばかりですよね?往診が出来るだけ早く出来るようにって…」
鷹野「…」
レナ「それに、ベッドの下に落ちてました。まるで隠すように」
鷹野「…!」
…。
リナ『…!…!』ズルズル
小此木『あん?おいおい…まさか逃げられると思ってんのか?』
リナ『…!…!』ズルズル
…。
鷹野「…そう…」
レナ「…」
鷹野「…じゃあ、誰かさんが引き取りに来た。っていうのはどうかしら?」
レナ「引き取りに来たのに、どうしてこんなにベッドが破れてるんですか?」バサッ
鷹野「…あら…」
レナ「…教えて下さい」
鷹野「…」
レナ「…リナさんに、何をしたんですか…!」
鷹野「…うふふ」
レナ「…!」
鷹野「…そう、そうなの…」
レナ「…鷹野…さん…?」
鷹野「…あの子、意外と頭良いのねぇ…」
レナ「え…」
鷹野「…」
レナ「…え…?」
鷹野「…ごめんなさいねぇ。でも…貴方が悪いのよぉ?」
レナ「…それ…拳銃…」
鷹野「安心して。サイレンサー付きだから、周りには聞こえないし、病院だから幾らでも血は消せるわ」
レナ「!」
鷹野「…全く…子供なんだから…」
レナ「…」
鷹野「覚えておきなさい?竜宮礼奈ちゃん」
レナ「…!」
鷹野「…この世にはね、聞いちゃいけないこともあるって…ね?」
レナ「!!」
…。
茜「…」
魅音「…!」
お魎「…!!?」
鉄平「!?…!!?」
茜「(…あ?な、何だいこりゃ…)」
魅音「(身体が…動かない…?)」
お魎「(な、何じゃ…?)」
鉄平「(ゆ、指すら動かん…!他の奴らも、止まって…!)」
「…本来、この力は…」
茜「(…あ!?)」
「この力は、二度と使わないつもりだった」
お魎「(…!?)」
「久しく使っていなかったせいか、加減が効かない可能性があるが…」
魅音「(…あれ…?)」
「生憎、これ以外の方法が思いつかなかった」
鉄平「(…!この声…!!)」
「これしか、出来ない。…だが、俺にしか出来ない」
魅音「(…左之助…先生…!?)」
チェイス「ロイミュードである俺にしか、出来ない事だ」
http://i.imgur.com/6fkElBX.jpg
「「「「(誰!!!?)」」」」
第8話 終
続きまたそのうち書きます
圭一「…うーん…」
沙都子「圭一さん、どうですの?今の気分は」
圭一「…流石にやり辛いな。都会の時は当たり前だったのに…」
沙都子「レナさん、魅音さんのお二方がいないのは初めてですものね…」
圭一「一人で勉強するのもさ、落ち着くんだけど…何か、こう…当たり前だったものが無いっていうのも、むず痒くてさ」
沙都子「それでも魅音さんに合わせる必要が無いから楽ではありませんの?」
圭一「まあそうだけど」
沙都子「否定する意思も感じられませんでしたわね」
梨花「魅ぃに言いつけておくのです」
圭一「んがっ…!言い始めたのは沙都子だろー!」
沙都子「おーほっほっほっほ!言葉でのトラップもありましてよ!」
圭一「…ったくー……ッッ!!!?」
沙都子「!!!」
梨花「…!?」
「うわっ!?」
「きゃっ!!」
「な、何だ!!?」
…。
知恵「…!?」
校長「むっ…!?」
…。
沙都子「(な、何でございますの…!?)」
圭一「(み、身動きが…取れない…!?)」
梨花「(…あのバカ…やっぱり…!)」
梨花「(でも、これは…!)」
梨花「(あいつが今いるところって…まさか…この現象…!)」
梨花「(…雛見沢全域…!?)」
…。
鷹野「(…ど、どうして…?身体が…動かない…!)」
レナ「(…何…?何なの…!?)」
鷹野「(引金を引けない…!でも、レナちゃんも動いてない…)」
レナ「(…世界が…止まってる…?)」
鷹野「(どうして…?)」
レナ「(…まさか…)」
鷹野「(…まさかこれが…)」
レナ「(オヤシロサマの…)」
鷹野「(…神の祟りだって言うの…?)」
…。
チェイス「鉄平。やはりお前はクズではなかった」
鉄平「(…な、何じゃ…ワシはどうかしてしまったんか…)」
チェイス「あの子を守ろうとするその意思。俺は聞いていた」
鉄平「(…まさか、オヤシロ様ってのはこいつのことか…!?)」
チェイス「…そして、魅音」
魅音「(…!?やっぱり…左之助先生の声…!)」
チェイス「友達を守ろうとしたお前の勇気。俺は見ていた」
魅音「(…助けに…来たの…?)」
チェイス「だが、その為に犠牲になって良い命など無い」
茜「(…こいつ…!)」
チェイス「何故、人間が人間の運命を決める?」
茜「(…一体…何モンだい…!?)」
チェイス「俺には分からない。お前達の考えが」グッ
茜「(…!こいつ…刀を…!!)」
チェイス「…俺にとっては…」グググ
茜「(…嘘だろ…?)」
チェイス「…お前達の方が、クズに見える」ボキッ
魅音「(!?)」
茜「(!?)」
お魎「(…)」
チェイス「…」パチン
魅音「…ッハァ!!」
茜「…ッ…!」
鉄平「…む…おうっ!?」ドテッ
お魎「…!」
チェイス「…」
茜「!…身体が…。…アンタ一体…!!」
チェイス「俺は生きとし生けるもの、全てを守る。……」
茜「…あ?」
チェイス「…魔進チェイサー。今はそれで良い」
茜「…何でも良いさね。…随分荒らしてくれたじゃないかい…!」
チェイス「命を守る為だ」
茜「へェ…?…そりゃ、「どっちの」だい?」
チェイス「全てだ。北条鉄平。沙都子。魅音…」
茜「…」
チェイス「…お前達もだ」
茜「…は?」
お魎「…?」
チェイス「俺は…」
魅音「ま、待って!」
チェイス「…」
魅音「…左之助先生…なの?」
チェイス「…その名前は、知らない」
魅音「…!」
チェイス「お前達は今、全員、「何か」によって命を狙われている」
茜「…は?」
チェイス「俺はそれを止める為に来た」
お魎「…」
チェイス「今は、小競り合いをしている場合ではない」
鉄平「…お前…」
茜「…」
お魎「…小競り合い…じゃと?」
チェイス「何が違う」
お魎「…お前のような他所モンに、何が分かる?」
チェイス「話は聞いている。北条はダム計画に唯一賛同した家族だと」
お魎「なら口を出すな。北条家はワシら…いや、雛見沢の裏切り者じゃ」
チェイス「…」
茜「北条のお陰でアタシらは今いる場所を追い出されるだけじゃない。食い扶持まで奪われそうになったんだよ」
チェイス「…」
茜「アタシらの仕事はね、新しい土地ではい始めましょで出来る仕事じゃあ、ないんだ」
魅音「…母さん…」
茜「確かに、国からは膨大な金額を提示されたさ。しかしね、一生奴らを食わせられる額じゃあない」
お魎「…それに、何処で暮らせってんだい?」
チェイス「…」
お魎「命があったって、いきなり何も知らない土地で暮らして、ちょっとばかの金を与えられ。何の楽しみがあるっちゅうんじゃ?」
魅音「婆っちゃ…」
お魎「この村を潰すっちゅうんは、ワシらから全てを奪うと同等じゃ」
茜「北条家は、それを選んだってことさ。あいつらのせいで国もここを潰す「理由」が出来ちまったからね」
チェイス「…その為に、大臣の子供を誘拐し、建設会社の社員を殺したのか?」
茜「…」
お魎「…」
チェイス「答えろ」
茜「…答える義理は無いね」
チェイス「…」
茜「他所モンであるアンタにゃ関係無い。それだけさね」
チェイス「…」
…。
鷹野「!」
レナ「…!拘束が…」
鷹野「…ッ!」ビシュッ
レナ「ッ!!!」
鷹野「!…次は当てるわよ…!」
レナ「…!…これ…」
鷹野「…先にあの世に…」
レナ「…んぬぬぬ…!」ガタン
鷹野「逝ってなさい!!」ビシュッ
レナ「…ぇぇぇええええやあああああああああっ!!!」グンッ
鷹野「!!…酸素ボンベを…!?」
…。
圭一「!…やっ…と、解けたぁ…」
沙都子「な、何だったんですのぉ…」
梨花「…!!」ダッ
沙都子「え?梨花…梨花!!?」
圭一「梨花ちゃん!?」
梨花「…!!」
沙都子「ちょっと…ど、何処に!?」
梨花「(…あの大馬鹿鈍感不器用男…!)」
梨花「(…こんなとこでそんな力使って…!)」
梨花「(…全く…)」
梨花「(羽入以上に厄介な奴ね…!)」
沙都子「ちょ、ちょっと!!走って何処に…きゃっ!!?」
知恵「きゃあっ!!」
圭一「!!?こ、今度は何だぁ!?」
沙都子「な、何!?何かの破裂音…!?」
圭一「…!お、おいアレ!!」
知恵「……あそこって…!」
校長「…まさか!」
沙都子「…監督のいる、病院…」
圭一「…!!…レナ!!!」
…。
チェイス「…お前達が北条に怒った理由は、分かった」
茜「…」
お魎「…」
チェイス「だが、何故人を殺すのか、迫害するのか。それは俺には分からない」
茜「分からなくて結構…どうせアタシらは隔離された厄介者さ」
チェイス「お前達に、人を裁く権利は無い」
茜「…?」
チェイス「北条鉄平も、沙都子も。お前達と変わらない「命」を持っている」
お魎「…」
チェイス「違いはあれど、お前達は全員同じ人間だ」
茜「…そうかい。このチンピラ風情とアタシらが同じってかい…?」
チェイス「そうだ」
茜「…バカにすんのも、大概に…!」
お魎「カァ゛ッ!!!!」
茜「!」
魅音「!」
鉄平「!」
お魎「…さっきから聞いとりゃずけずけと…キサマ…」
チェイス「お前達は間違っている」
お魎「都会の常識を押し付けよってからに!!」
チェイス「世界の常識だ」
お魎「…ワシにとっちゃここが世界じゃ…他所モンがどうこう言うこたねぇ!」
チェイス「お前が決めたルールなど、何の意味も無い」
お魎「…!!」
チェイス「何の罪も無い子供に手を出すようなルールなど、俺が絶対に認めない」
お魎「…」
チェイス「お前に人の命運を決める権利があるというのは、勘違いだ」
茜「…」
チェイス「それは、ただの傲慢だ」
お魎「…キサマ…!」
チェイス「自分達がこの村の長だと思っているのならば、もっと長らしく行動するべきだ」
茜「…この男も、無傷で帰せってかい?」
チェイス「その男を捕まえるのは、お前達ではない。警察だ」
お魎「そんな事を…あの警察に任せろと…?」
チェイス「それがルールだ」
お魎「ッ」ブチ
魅音「!」
お魎「…この男を…」
チェイス「…」
お魎「逃がすな!!殺してしまえ!!!」
鉄平「…!」
「「「「…」」」」
魅音「ヤバッ…!」
鉄平「いつの間にこんな…!」
チェイス「…」
お魎「殺せ!!生かして帰すな!!」
チェイス「…」カシャッ
『Tune…Chaser…Cobra』
http://i.imgur.com/Gwqjccq.jpg
茜「あ!?」
チェイス「…!」ヴンッ
「うわっ!?」ベシッ
「ぐっ!?」ベシッ
「いでっ!!?」ベシッ
「がっ!!」ベシッ
茜「…!武器だけを…!?」
チェイス「…」ヴンッ
茜「痛ダッ!!?」ベシッ
チェイス「…俺には人を説得出来るだけの口が無い」
茜「あたた…え?」
お魎「…!」
チェイス「だから、行動でしか意思を示せない」
魅音「…」
チェイス「お前達が何度人を殺そうと、何度でも止めてみせる」
茜「…」
チェイス「俺が出来ることは、お前達を救うことだけだ」
茜「…」
お魎「…」
魅音「…」
茜「…はぁ」ドサッ
魅音「…」
茜「あー…こりゃ参った参った…」
魅音「!」
茜「実力で分からせる…そりゃアタシらの十八番だった筈なんだけどねぇ…」
魅音「…母さん…」
茜「こうも見事にやられちゃ、お手上げだ」
鉄平「…」
茜「どうすんだい?鬼・婆さま?」
お魎「…」
茜「どうやったって、手持ちの道具と人数じゃ敵わないよ」
チェイス「…」
鉄平「…」
魅音「…」
お魎「…一人でダメなら、二人…」
チェイス「…」
お魎「二人でダメなら四人…四人でダメなら八人…」
魅音「婆っちゃ…」
お魎「百でダメなら二百…」
鉄平「…」
お魎「…と思ったぎゃー…さっきみたいなんやられちまえば一人も百人も変わりねぇ」
茜「…」
お魎「こげな男に大勢の犠牲出すこたねぇ」
魅音「!」
お魎「…その代わり、だ…」
チェイス「分かっている。警察へ連れていき、上納金も回収する」
お魎「…いや、警察は許さん」
茜「…」
鉄平「…」
お魎「警察に頼るなんざ園崎の名が廃る」
鉄平「…」
お魎「…だから、キサマにゃ長い間、罪を償ってもらうよ」
茜「…ああ。そういう…」
チェイス「…」
茜「…北条鉄平。アンタ、海は好きかい?」
鉄平「…えっ?」
茜「何間抜けな顔してんだい。…まあどっちにせよ拒否権は無いけどねぇ」
鉄平「…」
茜「アンタには海外に行って、漁でもしてもらおうかねぇ」
鉄平「!」
茜「…っていうか、アタシは初めに言ったよ」ポリポリ
魅音「え?……あ」
…。
茜『アンタは勿論、「帰さない」。そうしなきゃウチのメンツ丸潰れだ』
…。
茜「あっちは人手不足でねぇ。まあ食い扶持探してたみたいだから、丁度良いだろ」
魅音「…初めから、そのつもりで…」
茜「アンタも次期当主って名乗りたいならね、もっと言葉の裏をかくべきだよ」
魅音「…ごめん…」
茜「…で?どうすんだい?」
鉄平「…どんな報いでも受けると決めた…」
茜「…」
鉄平「…そんなワシに…もう一度、やり直させてくれるというのなら…」
茜「…」
鉄平「…喜んで…引き受ける…!」
茜「…そうかい」
チェイス「…」
茜「どうだい?合意の元だ。アンタもそれなら納得だろ」
チェイス「…」
茜「まさかまだルールだなんて言わないだろ?アタシらは細かいのが苦手なんだ」
チェイス「…」
「万事解決。なのですよ」
茜「お…」
お魎「む?」
魅音「…えっ!?」
鉄平「!」
チェイス「…」
梨花「御三家の一つ。古手家現当主、古手梨花も賛同しますです」
魅音「…梨花ちゃん…」
茜「ありゃ…」
お魎「…こりゃ、梨花ちゃまかい…」
梨花「鉄平は罪を償って、そして立派になって帰ってくるのですよ。にぱー」
チェイス「…しかし」
梨花「にぱー☆」
チェイス「…」
梨花「に ぱ ☆」
チェイス「…」
魅音「…でも、沙都子には…」
茜「無職のオッさんが家でボーッとしてるより出稼ぎ行かせた方が数億倍外受けも良いだろ」
魅音「…うん」
茜「…あの子の責任は、「待つ」ことさ」
魅音「…うん」
茜「…そういうことだろ?婆さま」
お魎「…ふん」
茜「…さ、部外者は帰んな。ここからは本当にこっちの問題だ」
チェイス「…」
梨花「…さ、帰りますですよ」
…。
圭一「レナ!!レナ!!!」
沙都子「レナさん!!何処ですの!!?」
知恵「竜宮さーん!!!返事を…返事をして下さい!!」
校長「…まさか…何故病院が…」
圭一「レナー!!」
沙都子「レナさーーーん!!!」
「…」
圭一「…!」
「…」ガラ…
沙都子「!…レナさっ…」
鷹野「…」ヨタヨタ
圭一「…?」
沙都子「…た、鷹野…さん…?」
知恵「鷹野さん…」
鷹野「…貴方達…」
圭一「だ、大丈夫ですか!?な…何が…」
鷹野「…分からないわ。突然患者さんが何か…」
沙都子「…そ、それよりも、レナさんは!?」
鷹野「…それも、分からない…一体何処に…」
知恵「と、とにかくその怪我を…」
鷹野「…私は大丈夫…それよりも、レナちゃんを…」
圭一「そ、そうだ…レナ!!レナーー!!」
沙都子「み、見に行こうにもこう瓦礫が積まれていては…」
圭一「…クソッ!!」ガラガラ
沙都子「…!」
圭一「見捨てられるか…!絶対に助けるんだ!!」ガラガラ
知恵「…ッ」ガラガラ
圭一「レナ…!!」ガラガラ
沙都子「…!んん…しょっ!」ガラッ
校長「…ええい!」ガラガラ
圭一「絶対に助けるんだ…!」ガラガラ
知恵「竜宮さん!!返事を…返事をして…!!」ガラガラ
校長「…ぬぅん!!」ガラガラッ
沙都子「!…穴が出来ましたわよ!!」
圭一「…良っしゃ!!レナ、待ってろよ!!」
沙都子「わ、私も行きますわ!」
知恵「わ、私も…!」
校長「…」
知恵「校長先生、申し訳ありませんが…鷹野さんを…!」
校長「…それは、無理ですな」
知恵「…え?」
校長「…」
知恵「…あ…」
校長「…私達が瓦礫を取り除いている最中に、逃げてしまったようですな」
知恵「…」
校長「…竜宮さんを、絶対に助けて下さい」
知恵「…はい」
チェイス「…」
梨花「…」むすっ
チェイス「…何故怒っている」
梨花「アンタが鈍感過ぎるからよ」
チェイス「…しかし、あれ以外の方法が無かった」
梨花「…あんな事すれば、雛見沢はパニックになるわよ。見てみなさい」
チェイス「…」
梨花「…みんな、外に出てきてる。アンタを見てる」
チェイス「…何故、俺を…」
梨花「アンタくらいしか心当たりがないのよ。何が原因で何が起こったにせよ」
チェイス「…」
梨花「アンタのせいでオヤシロ様が怒ったとか、実はアンタがオヤシロ様なんじゃないか、とか…変に勘繰る奴らは大勢いるでしょうね」
チェイス「…」
梨花「アンタのしたことが間違ってるとまでは言わない。けど後先の事は考えておきなさい」
チェイス「…すまなかった」
梨花「…ま、結果的にアンタは沙都子や鉄平を救ったわけだけど…」
チェイス「…」
梨花「…良いんじゃないの?」
チェイス「…」
梨花「…と、ここまでは褒めてあげるわ」
チェイス「…」
梨花「…あれ、見なさい」
チェイス「…」
梨花「アンタの事だから、遠い園崎家からでもさっきの破裂音、聴こえてるんでしょ」
チェイス「…」
梨花「…病院で、何かがあったみたいよ」
チェイス「…」
梨花「…医療事故。な訳ないわよね」
チェイス「…やはり、あの女は…」
梨花「…答えって、意外とすぐ近くにあるっていうのは間違ってないのね」
チェイス「…」
梨花「…どうする?これから」
チェイス「…」
梨花「あれだけ大仰な事しておいて、鷹野三四がのうのうと現れるわけないと思うけど?」
チェイス「…だが、奴は必ず戻ってくる」
梨花「…そうね。そんな気はするわ」
チェイス「羽入やお前から聞いた話から推測するに、恐らく、奴がやろうとしていることは、雛見沢症候群の大量発症に見せかけた、バイオテロ」
梨花「…奇遇ね。…いえ、そう考えるのが自然…か」
チェイス「…必ず、止めてみせる」
梨花「ええ。私も、そろそろ動かないと」
チェイス「…」
梨花「…」
入江「…ハァッ…ハァッ…」
校長「…入江先生」
入江「…こ、これは一体…何事ですか!?何故病院が…」
校長「…恐らく、鷹野先生が、何か…」
入江「…!な、何ですって…!?」
校長「…今はそれよりも、生徒です。中に前原君達が向かっていますが…」
入江「…!竜宮さんが…!」
校長「ええ。…無事を祈るばかりです…」
入江「…!」ダッ
校長「…行くのは結構。しかし!!」
入江「えっ…」
校長「貴方には、説明責任がある」
入江「…」
校長「何故こうなったのか。彼女が何者で、そして貴方も何者なのか」
入江「…」
校長「全てを説明して頂きたい」
入江「…それは、竜宮さんの無事を確認してからでも構いませんか?」
校長「ええ。構いません。…貴方は逃げんでしょうからな」
入江「…」コク
校長「私はここで待っております。万が一この瓦礫が崩れたら、中からは出れんでしょうからな」
入江「…分かりました…!」
…。
圭一「レナー!!何処だー!!」
沙都子「レナさーん!!お願いですから返事をして下さいませ!!!」
知恵「竜宮さん…!!竜宮さん!!!」
圭一「…!クソッ…何処にもいない…!」
沙都子「…そんな…!」
知恵「…」
圭一「…」
沙都子「…そんな訳ありませんわ!瓦礫だって…どかしたのに…」
圭一「…」
沙都子「きっとレナさんは脱出したんですわ!何処かに…いる筈…なんですわ…」グスッ
圭一「…!」ギュッ
沙都子「…ううう…」
知恵「…?」コツコツ
圭一「…?知恵先生?」
知恵「…これは…?」
圭一「…ん…?」
沙都子「…?」
知恵「…蓋が…よ…いしょっ!…っと」ガタン
圭一「…!階段…」
知恵「…」
圭一「…まさか、この先にレナが…」
知恵「…行きましょう。二人とも…」
沙都子「…ええ」
圭一「…はい」
圭一「…この病院に、地下なんか…」コツコツ
沙都子「私も良く来ますが、聞いたことがありませんわ…」コツコツ
知恵「…」コツコツ
圭一「…」
沙都子「…一体…この先に何が…」
圭一「…ッ!!」
レナ「…」
沙都子「…!レナさん!!」
圭一「レナ!!」
レナ「…」
圭一「…怪我してる…!おい!しっかりしろ!!レナ!!」
知恵「…ここは…」
レナ「…」
沙都子「…?」
知恵「…え…?」
沙都子「…え?」
圭一「…?」
入江「…ハァッ…ハァッ…み、皆さん!!」
沙都子「…」
知恵「…」
入江「…!!」
圭一「…あ、え、えっと…」
入江「…皆さん…」
沙都子「…」
知恵「…」
入江「…見て、しまったのですね…」
圭一「…え…?」
沙都子「…あ…」
入江「…」
知恵「…」
沙都子「…にーにー…?」
悟史『…』
圭一「…えっ?」
第9話 終
続きまたそのうち書きます
沙都子「…あ…」
悟史『…』
沙都子「…何…で…?」
入江「…」
沙都子「…にーにー…」
圭一「…さ、沙都子?」
知恵「…そんな…嘘…」
悟史『…』
沙都子「…にーにー…にーにー!!」バンバン
圭一「…沙都子…」
沙都子「にーにー!!にーにー!!!」バンッバンッ
入江「…!沙都子さん…!」ガシッ
沙都子「離して!!離してぇ!!にーにーが!!にーにーが!!」
入江「起きません!!起きないんですよ!!彼は…!!」
沙都子「…!」
入江「…悟史君は…もう…!!」
沙都子「…え…?」
圭一「…どういうことだよ…あそこで寝てる奴が…沙都子の…?」
悟史『…』
圭一「…」
レナ「…」
圭一「…おい。…おい!!」バン!!
悟史『…』
圭一「おい!!何寝てんだよ!!お前!!!」
入江「…!前原さん!!」
圭一「何なんだよこれは!!何が!!どうなってんだよ!!」
入江「前原さん!!落ち着いて!!落ち着いて下さい!!!」
圭一「落ち着けるかよ!!沙都子が…沙都子がこんなに苦しんでるってのに…!あいつは…!」
入江「今は!!竜宮さんの手当てを優先させて下さい!!」
圭一「…!」
入江「…話は、その後に必ずします」
圭一「…」
レナ「…」
知恵「…」
圭一「…すいません」
入江「…いえ」
…。
梨花「ちょっと!あんまり揺らさないでよ!」
チェイス「足が無い。ならば自力で走るしかない」
梨花「だからってそんな馬みたいな速度で走られても困るのよ!」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…でも、もしもよ?」
チェイス「…」
梨花「…もし、鷹野三四がこの事件の犯人ならば…」
チェイス「…動機か」
梨花「…アンタの事だから、考えてるんでしょ?」
チェイス「…」
梨花「…鷹野三四はどうなの?アンタが思うに…」
チェイス「…」
梨花「どっちなの?」
チェイス「…判断は出来ない。あの女は自分の中身を中々見せない」
梨花「…間宮リナ、北条鉄平とは格が違うって事ね…いえ、あの二人が分かり易過ぎたのかしら」
チェイス「だが、ここまで大々的にそのような事をするのなら、きっとそれに相当する何らかの大義名分がある筈だ」
梨花「…」
チェイス「やらなければならない。そうしなければならない事情が」
梨花「…だからって、人を殺して良い理由にはならないわ」
チェイス「そうだ。だから捕まえる。人を殺す前に。そして罪は償わせる」
梨花「…もう、殺してるかもしれないわよ」
チェイス「ならば、これ以上の犠牲は出させない」
梨花「…どうしてそう言えるの?大量虐殺をしようとしてる奴なのよ?人なんか蟻を踏み潰すくらいに…」
チェイス「あの女にとっては、大量虐殺は必要最低限のものなんだろう。余計な事はしない筈だ」
梨花「…それは何?警察のマニュアルか何かで見たの?」
チェイス「そうではない」
梨花「じゃ…何?」
チェイス「俺の勘だ」
梨花「…それ、アテになるの?」
チェイス「分からない」
梨花「…あ、そ…」
梨花「…ねえ、チェイス」
チェイス「何だ」
梨花「…アンタ、人間を傷つけさせない、殺させないとか言ってるけどさ…」
チェイス「ああ」
梨花「…なら、羽入は?」
チェイス「…」
梨花「もし、 羽入がこの場にいたとしたら…」
チェイス「…」
梨花「アンタは、助けたの?」
チェイス「…」
梨花「助けてくれたの?」
チェイス「…羽入は俺に、こう言った」
梨花「…」
チェイス「自分は生命体かどうかも怪しい、と」
梨花「…生きとし生けるもの、には含まれないってこと?」
チェイス「…一つ、付け加えておこう」
梨花「…」
チェイス「助かりたい。そう思っているのならば」
梨花「…」
チェイス「俺は助ける。人類の脅威でない限り」
梨花「…」
チェイス「例え鬼でも、神だとしても」
梨花「…」
チェイス「守るべき者ならば、守りたい」
梨花「…そ」
チェイス「…」
梨花「…その気持ち、羽入にもきっと伝わってるわよ」
チェイス「…」
梨花「だから、アンタをここに連れてきたんだと思うわ」
チェイス「…」
梨花「…病院はもう直ぐよ」
チェイス「了解した」
校長「…む!」
チェイス「…」
梨花「あ…」
校長「…」
梨花「…今、中はどうなってるの…?」
校長「今現在、入江先生と知恵先生。前原君と沙都子さんが様子を見に行っています」
梨花「…レナは?」
校長「…貴方にとってこれは、予測出来なかったものなのですか?」
梨花「…ええ。完全にイレギュラーだわ。何もかも」
校長「…そうですか」
チェイス「鷹野はどうした?」
校長「…ええ。先程まで居た筈でしたが、まるで逃げるように姿を消してしまいました」
チェイス「…やはりか」
校長「…やはり、ということは?」
梨花「恐らく、鷹野三四こそがこの一連の事件の首謀者よ」
校長「…!」
梨花「動機は分からない。けど恐らく何かしらのバイオテロを大々的にやろうとしてる」
校長「…なんと…!」
梨花「…チェイス。瓦礫の向こうに反応は?」
チェイス「…そこにはない」
梨花「…なら、入るわよ」
チェイス「…待て」
梨花「?」
チェイス「俺の身体では、その穴は通れない」
梨花「…あ」
チェイス「どいていろ」
梨花「…ん」
チェイス「…」ブンッ
圭一「うわっ!?」
知恵「きゃっ!?」
入江「!?…また爆発…!?」
圭一「…何なんだよ…今日は…!」
入江「…私にも分かりません。ですが…」
圭一「?」
入江「…恐らく…いえ、鷹野さんはきっと何かをしようとしています」
圭一「…どういうことですか?」
入江「…彼女は…」
圭一「…」
入江「…いえ…もう隠せる状況ではありませんね」
圭一「…」
入江「話した感じですが…貴方は利口だとお見受けしました。…しかしまだ子供です」
圭一「…?」
入江「理解出来ない話かも、しれません。ですが…」
圭一「…構いません。全部聞きます。黙って、聞いています」
入江「…どうも」
知恵「…」
入江「私と、富竹ジロウ。そして鷹野三四」
圭一「…」
入江「全員表向きの職業がありますが、実は全員、ある組織から此方に派遣されてきた者なんです」
圭一「…ある、組織…」
入江「大元は明かせませんが、私達の属する組織、「東京」はその大元から援助を受けて成り立っています」
圭一「…そんな組織が、どうして?」
入江「この村特有の病気を、調べる為です」
圭一「…この村の、病気?」
入江「ええ。…その名も」
チェイス「雛見沢症候群…だな」
入江「!!」
圭一「!」
チェイス「…」
梨花「…」
圭一「左之助先生…梨花ちゃんも…」
チェイス「…沙都子が見ているのは…悟史か」
圭一「えっ…」
梨花「そうなのですよ。…まさか、こんなところにいたなんて…」
入江「…あの…」
チェイス「…」
入江「…何故、その名を?」
チェイス「話を続けろ」
入江「…私達はこの村に蔓延する病気、雛見沢症候群について調べていました」
圭一「…」
入江「…ですが、一向に解明はされず、援助は打ち切られる寸前でした」
知恵「…」
入江「…ですが、必ずこの村にはその病気があるのです」
圭一「…その根拠は?」
入江「…例えば、竜宮レナ…いえ、礼奈さん」
梨花「!」
入江「…彼女もまた、発症しています」
圭一「…なっ…!!」
入江「雛見沢症候群が発症する原因としては、疑心暗鬼になることや、極度のストレス」
チェイス「…」
入江「どちらも症状は同じく、非常に周りに対して攻撃的になり最後には自分自身を攻撃してしまう」
圭一「…それとレナが…」
入江「…彼女は、以前の学校で一度、大勢の生徒に対して金属バットによる暴力事件を起こしました」
圭一「!!?」
チェイス「…」
梨花「…」
入江「…勿論、この情報は表沙汰にはなりませんでした。まだ未成年ということもありますし、あまりに凄惨だったということもあり…」
チェイス「…」
入江「…保護された彼女は、警察にこう語ったそうです」
チェイス「…何だ」
入江「…オヤシロサマが、呼んでいると」
圭一「…!」
知恵「…あの」
入江「…はい?」
知恵「…そういった込み入った事情までは、私は知りません」
入江「…でしょうね。これは報道規制が入る程のものでしたから」
知恵「…その、オヤシロサマが呼んでいるというのは、いわゆる帰巣本能、ということで良いんですか?」
入江「…ええ」
知恵「…そんな…まるで寄生虫がいるみたいな…」
入江「…」
圭一「…え?」
知恵「…え…?」
入江「…この村に来た者は、必ず…」
圭一「…」
知恵「…」
圭一「…嘘…だろ…?」
知恵「…そんな…」
チェイス「…」
知恵「…だとしたら、この村を出た者は…」
入江「…雛見沢症候群は、空気感染によって起こります」
知恵「…つまり、全員が可能性を持っているということですか?」
入江「…可能性ではありません。間違いなく感染しています」
チェイス「それこそが、鷹野の狙いだ」
入江「え…?」
知恵「…?」
梨花「みー。鷹野三四は、この村を……えーっと……」
圭一「…?」
梨花「…」
圭一「…梨花ちゃん?」
梨花「…やめたわ。もうここまで来たら猫被ってる場合じゃない」
圭一「えっ…?」
入江「え?」
知恵「…」
梨花「鷹野はこの村でバイオテロを起こすつもりよ。…ターゲットはこの村の住人全て」
圭一「!!」
入江「…何と…」
梨花「…まあ、これは私達の推測だけど…でも、何か心当たりは無い?」
入江「え?…あ…え、ええ。…言われてみると…確かに鷹野さんは山狗という部隊を作ってはいますが…」
チェイス「…お前達は、関係無いのか?」
入江「…関係無いとは、言えません。もしかしたら、彼女のやろうとしていることの手助けをしてしまっていたかもしれませんから…」
圭一「…東京…雛見沢症候群…バイオテロ…」
梨花「正確には、雛見沢症候群に見せかけたバイオテロよ」
入江「…ちなみに、何故そのような推測を…?」
梨花「…見てきたからよ」
入江「…?」
梨花「この村の凄惨な結末を、何十回も、何百回も、何千回も」
入江「…ま、待って下さい。…その…つまり…?」
チェイス「古手梨花は、死ぬ度に何度も時間を戻してきた」
圭一「…は…?」
知恵「…」
入江「…」
入江「…」
チェイス「信じられないだろうが、今は関係無い。鷹野を止める。それだけだ」
入江「…成る程。そうですか…」
梨花「…」
入江「…何故、鷹野さんが、貴方にここまで執着するのか…分かりました」
梨花「…私?」
入江「…ええ。貴方の個人データをとにかく欲していましたから。彼女は」
梨花「…」
入江「…もし鷹野さんが、そのようなことをしているのならば、単純なテロでは終わらせないでしょう」
梨花「…どういうこと?」
入江「この村の象徴。表向きの象徴といえば、御三家の一つ、古手家」
チェイス「…つまり、梨花か」
入江「ええ。裏は園崎家ですが、この場合は無関係でしょう」
圭一「…」
入江「鷹野さんが最も重要視しているのは、雛見沢症候群、始まりの発端なんです」
梨花「…」
チェイス「…しかし、梨花が感染しているとは思えない」
梨花「私は大丈夫なのよ」
チェイス「…どういうことだ?」
梨花「…女王、だから」
入江「女王感染者。…古手家の人間は必ずそうなるんです」
チェイス「…!…そういうことか…」
圭一「…つまり…。…!!まさか…!!」
入江「…古手梨花が死ぬことで、パンデミックは始まる…」
知恵「!!」
圭一「…そんな…アンタら、病気を治しに来たんじゃねえのかよ!!」ガシッ
入江「がっ…!…そ、そうです…!ですが…彼女は…!!」
チェイス「…あの女だけか?」
入江「…え?」
チェイス「…富竹ジロウは、何処にいる?」
入江「…」
梨花「…いつもならば、もう死んでるわ。感染して…ね」
チェイス「…だが、仲間になった可能性も…」
入江「…それはありません。彼は常にこの村に対して真摯に向き合ってきた人間ですから」
圭一「…それが、嘘だって可能性も…」
梨花「…邪魔だから、殺した可能性もあるわね」
知恵「…しかし、それなら入江先生は何故…?」
入江「私は医者ですし、ここで毎日過ごしている者をそう簡単に殺せる筈はありません」
圭一「…なら鷹野さんはどうやってテロを起こすつもり…」
レナ「…あのー…」
圭一「ん?」
知恵「え?」
入江「?」
梨花「?」
チェイス「?」
レナ「…みんなでレナを囲んで、どうしたのかな…かな?」
…。
レナ「…やっぱり、鷹野さんは…」
入江「…推測の域を出ていませんが、彼女の普段を考えると、決してないことではない」
梨花「その上…レナを殺そうとした…」
レナ「うん。…でも、不思議な力で…助けられたっていうか…」
梨花「・・・」
チェイス「…」
圭一「…決まりだな。それで…その間宮って人もきっと…」
レナ「…多分、何処かに誘拐されたのかも」
知恵「…多分、自分の死体役でしょう。…それなら辻褄が合います」
チェイス「自分自身も死んだことにして、雛見沢症候群を完成させる、か…」
梨花「…止めないと…いけないわね」
圭一「…ああ。絶対に」
チェイス「…お前は、不安にならないのか?」
圭一「え?」
チェイス「お前の身体にも、雛見沢症候群を起こす虫が住んでいる」
圭一「…それは、不安ですけど…」
チェイス「…」
圭一「…でも、今はとにかく目の前の事件を、事件にしない。それが大事なんじゃないかって」
チェイス「…」
…。
梨花『…圭一はね、そんじょそこらの人間とは違う』
チェイス『…』
梨花『何があっても諦めない、強い意志を持った人間よ』
…。
チェイス「…」ポン
圭一「えっ?」
チェイス「…圭一」
圭一「は、はいっ!?」
チェイス「…お前は、強い人間だ」
圭一「…あ、ありがとう…ございます…?」
チェイス「…」スッ
圭一「…」
梨花「…どうするの?」
チェイス「警察に協力を仰ぐ。今は人数が必要だ」
梨花「…警察…」
チェイス「この村とは切っても切れない、刑事がいるとお前は言っていた」
梨花「…まさか…大石に?」
チェイス「そうだ」
梨花「…はぁ…。まあ、この際…仕方ないわね」
チェイス「…それと」ツカツカ
梨花「?」
チェイス「…」
沙都子「…」
悟史『…』
梨花「あ…」
チェイス「沙都子」
沙都子「…」
チェイス「その男は、まだ起きない」
沙都子「…」
チェイス「まだ、その男は戦っている。病気と」
沙都子「…」
チェイス「まだ、今は我慢する時だ」
沙都子「…」
チェイス「待っているのは、お前だけではない」
沙都子「…」
チェイス「…悟史も、きっとお前と再会出来る日を待っている筈だ」
沙都子「…」
チェイス「今は、そっとしておいてやれ」ポン
沙都子「…!」
チェイス「きっと、いつかまた会える。全てを清算した時に」
沙都子「…」
チェイス「…」
沙都子「…あ…」
チェイス「…」
梨花「…!!アンタ…」
チェイス「…?」
沙都子「…左之助さん…貴方…」
チェイス「…どうした」
梨花「…何よ」
チェイス「…?」
梨花「アンタ…笑えるじゃない」
チェイス「…!」
沙都子「…」
チェイス「…そうか」
沙都子「…良い、笑顔ですわね」
チェイス「…笑うというのは…」
梨花「…」
チェイス「…こんなにも、簡単な事だったのか…」
…。
鷹野「ハァッ…ハァッ…」
鷹野「…ハッ…ハッ…」
鷹野「…。開けなさい」コンコン
『…鷹野さんで?』
鷹野「そうよ。…早くしなさい」
小此木「…やけに機嫌が悪そうですなぁ……お」ガチャ
鷹野「…」
小此木「…その怪我…何を?」
鷹野「…ネズミに噛まれただけよ」
小此木「…ああ。やっぱり銃の扱いは下手なまんまですか」
鷹野「早くしなさい!時間が無いの!!」
小此木「はいはい…と、その前に手当てですよ」
鷹野「…こんな傷…」
小此木「裏方が調子悪くちゃ舞台は映えませんぜ」
鷹野「…分かったわよ」
小此木「…全く…」
…。
富竹「…」
リナ「…」
富竹「…静かになったね」
リナ「…」
富竹「きっと、鷹野さんが来たんだ」
リナ「…じゃあ、アタシもアンタも、ここまでってことね」
富竹「…随分、冷静じゃないか」
リナ「…逃げられないと分かってたら、諦めもつくわよ。人間」
富竹「…どうして諦めるんだい?」
リナ「身動き取れないように拘束されて、周りは敵しかいない。助けが来る保証は無し。どうするっていうの?」
富竹「…」
リナ「舌でも噛み切ってやろうかって思ったけど、結局あの女の欲しがってた死体になるだけ。…それにいざやろうとしたって、そうそう出来るもんじゃないわ」
富竹「…きっと、レナちゃんが事情を察してくれるよ」
リナ「アタシがあの子とあの子の父親に何したか分かってるんでしょ?」
富竹「…それでも」
リナ「でももクソもないわよ。裏切られたって、そう思ってるわよ。きっと」
富竹「…」
リナ「アタシみたいなゴミ屑はね、こういう結末がお似合いなのよ」
富竹「…その歳で、そんな事を思っちゃダメだ」
リナ「アンタみたいに真面目に人生歩んでないのよ。こっちは」
富竹「…」
リナ「…でも、後悔はしてるわよ」
富竹「…後悔?」
リナ「園崎の上納金よ。結局使わず仕舞い。どうせ死ぬって分かってたらぱーっと使っちゃって死にたかったわ」
富竹「…」
リナ「…金に執着し過ぎたのね。アタシは」
富竹「…君は一体、どういう人生を…」
リナ「どんなゴミみたいな人生歩んできたらそうなるのって?」
富竹「…そんなことは…」
リナ「…そうねぇ。死ぬまでの少しの間、まあ…話してあげても良いわ」
富竹「…」
リナ「…アタシね、普通の家庭に産まれて、フツー…に、育ってきたのよ」
富竹「…」
リナ「…なんてね、ウソウソ。ホントはアホみたいな家庭に産まれたわ」
富竹「…?」
リナ「元々ね、裕福じゃなかったんだけどさ、アタシが産まれて尚更貧乏になったのよ」
富竹「…」
リナ「それだけならさ、アタシだって頑張ったわよ。もうちょっと」
富竹「…」
リナ「…ある日を境にね、お父さんの寝室にお母さんが入らなくなったのよ」
富竹「…それは、どういうことだい?」
…。
リナ「ねえ。お父さん、ご飯食べないの?」
「…あの人は調子が悪いのよ。後で食べさせるわ」
リナ「…でも、昨日も、一昨日も…」
「貴方が寝てる時に起きてるから」
リナ「…どうしてリナは入っちゃダメなの?」
「病気が移っちゃうかもしれないでしょ。貴方はまだ子供なんだから」
リナ「でも、お父さんが心配だよ」
「その気持ちだけで私達は嬉しいわ」
リナ「…」
「…さ、お風呂に入って寝なさい。明日も学校あるんでしょ?」
リナ「…うん」
リナ「…zzz…」
「…」
リナ「…ん…んう?」
「…!」ピシャッ
リナ「?…お母さん?」ムク
「…」
リナ「お母さん。どうしたの?」
「…」
リナ「…?」ガラ
「…!」
リナ「…お母さん?何処かに行くの?」
「…ちょっと、出かけるのよ」
リナ「…何処に?」
「…散歩よ。散歩」
リナ「…こんな時間に?」
「ええ。…あと、リナ」
リナ「何?」
「…これ、渡しておくわね」
リナ「…これ……お金?」
「ええ。暫くはそれで暮らして」
リナ「え?」
「…」
リナ「…やだよ。お母さん何処に行くの?」
「…散歩よ。ちょっとだけ」
リナ「…なら、こんなの要らない!」ペシッ
「…リナ!!」
リナ「!」
リナ「…」
「お母さん、しばらく帰ってこれないかもしれないから。ここにお金、置いとくわね」
リナ「…いつ、帰ってくるの?」
「…分からない。…でもあの人もいるし、大丈夫よ」
リナ「…お父さん、昨日も、今日も…寝てるよ」
「…そう。そのうち起きるわよ。起こさないであげて。…絶対に」
リナ「…本当に、帰ってくるよね?」
「…そのお金は、絶対にお父さんには渡そうとしちゃダメよ」
リナ「どうして?」
「…どうしても、ダメなのよ」
リナ「…?」
「…お母さん、行くわね」
リナ「…」
「…じゃあね。さよなら」ガチャッ
リナ「…!お母さん!!」
「…!」ダッ
リナ「お母さん!!待って!!お母さん!!!」
リナ「お母さッ……」
リナ「…ハァ…ハァ…
リナ「お父さん!」バンバン
リナ「お父さん!!開けて!!お母さんが…お母さんが出てっちゃった!!」ガチャガチャ
リナ「起きて!!お父さん!!お父さん!!!」ベリッ
リナ「…!」
リナ「お父さん!!」バァン
リナ「お父さ…」
…。
リナ「…え?」
…。
リナ「…お父…さん…?」
…。
リナ「…うっ…」
…。
リナ「お…おえぇ…」
…。
リナ「…お父…さん…」
…。
……。
富竹「…」
リナ「最初はね、頭が真っ白になったの」
富竹「…」
リナ「そこにあったのが、自分の父親って思えなかったから」
富竹「…」
リナ「首吊っててさ。色んなものが出てたわ」
富竹「…君は…」
リナ「忘れられないわね。あれは」
富竹「…」
リナ「鍵じゃなくてね、接着剤がつけられてたのよ。ドアに。満遍なく」
富竹「…それで、異臭を抑えていたのかい?」
リナ「変な臭いするなってのはあったけどね。お母さんも香水めちゃくちゃつけてたし、よく分かんなかったわ」
富竹「…」
リナ「仕事クビになって、失業保険で頑張ってたけど無理で自殺」
富竹「…」
リナ「お母さんは私を捨てて消えたわ」
富竹「…」
リナ「そこからはもう、堕ちてくだけね。…察して」
富竹「…ごめんよ。そんな話を…」
リナ「良いのよ。減るもんじゃない」
富竹「減るさ」
リナ「…何がよ」
富竹「…「君」が」
リナ「…」
富竹「…」
リナ「…もう、すっからかんよ」
富竹「…」
リナ「…人にさ、迷惑かけちゃいけないってのは、知ってるわよ」
富竹「…」
リナ「…ならさ、この不公平、無くしてくれない?」
富竹「…」
リナ「何が悪いのよ。どん底から這い上がって」
富竹「…」
リナ「アタシの稼いだお金もあんのよ。何で取ったらダメなのよ」
富竹「…」
リナ「まるで、生まれたことが間違いみたいじゃないのよ」
富竹「…そんなことはないよ」
リナ「そんなことあるわよ。生まれて、親に捨てられて、どうやって生きてけってのよ」
富竹「…」
リナ「アタシの人生はね、あそこで終わったのよ」
富竹「…」
リナ「もう、無理。ホント」
富竹「…」
「…だから言ってるじゃない。せめて最後くらい人の役に立ちなさいって」
鷹野「…ね?」
リナ「ね、じゃないわよ」
鷹野「…でも、要らないんでしょ?」
リナ「助からないならね。助かるなら欲しいわよ」
鷹野「助かるのは私よぉ。うふふ…」
リナ「包帯まみれの格好で余裕ぶっこいてんじゃないわよ。アホみたいよ」
富竹「…その、傷は?」
鷹野「あら?何かしらねぇ…うふふ」
富竹「…」
鷹野「…ねえ、ジロウさん?」
富竹「…何度聞かれても、答えは同じだ」
鷹野「…」
富竹「僕は君達とは組まない。僕達はこの村を助けに来たんだ。殺しに来たんじゃない!」
鷹野「…強情な人…」
富竹「…そして、僕は諦めない」
鷹野「…何を?」
富竹「彼女と一緒に助かる事」
リナ「!」
富竹「…そして君を説得することだ」
鷹野「あら…そうなのぉ…うふふ」
富竹「…!」
鷹野「…ねえ、ジロウさん」
富竹「…」
鷹野「…時間は、無いわよ」
富竹「…!」
鷹野「…今日の夜までに決めなさい。じゃないと…」スッ
リナ「!」
富竹「…!それは…!!」
鷹野「うふふ…キレイでしょう?雛見沢症候群のウィルスなのよぉ…」
富竹「…取り出しに、成功していたのか…!!」
鷹野「この虫は人間に寄生するらしいから。だから宿主が死ぬと一緒に死んじゃうのよねぇ…」
富竹「…何故、そんなものを…!」
鷹野「…でも、それって、人間の体内に近い環境でも生き残れる可能性があるってことよねぇ…」
富竹「…それを…どうするつもりだい?」
鷹野「…ねぇ。ジロウさん」
富竹「…」
鷹野「ただでさえ感染してる私達が、その上獲物を求めて蠢いてる虫を…さらに注入されたらどうなるかしら?」
富竹「なッ…!?」
リナ「は…?」
…。
『…』ブォォォオオオオオオン
チェイス「…」
梨花「…来たみたいなのですよ」
沙都子「…あの人は…」
圭一「何だ?パトカー…?」
レナ「…警察の…?」
知恵「…」
入江「…」
『…』バタン
チェイス「…」
「お待たせしました。私は…」
チェイス「…お前が、大石か」
熊谷「え?…ああいや、私は違いますよ。熊谷と申します」
梨花「大石はこの人の倍は腹回りがあるのです」
熊谷「…あはは…」
チェイス「…?」
熊谷「…大石さーん!!早く降りて来て下さい!!」
「…いやァ…申し訳ありませんなあ」バタン
チェイス「…」
大石「子供達の目の前で煙草は吸えんですからなぁ。ひとしきり吸わせて頂きました」
チェイス「…大石、蔵人か」
大石「ええ。…その声は…貴方が、私に連絡を寄越した人物ですね?」
チェイス「…」
大石「…改めて、大石です」
チェイス「…左之助、と呼ばれている」
大石「…?……ああ!はいはい左之助さんですねぇ?よろしくお願イダダダダダダダダダダ!!!」
チェイス「…すまない。加減はしたが…」
大石「…ふ…ぬはっはっはっは!!こりゃ頼もしい若者ですなぁ…」
大石「…それで?今回お呼びになったのが…」
チェイス「例の話だ」
大石「…えぇえぇ。聞いていますよ。鷹野さんの、話ですね」
梨花「確証は、ありますですよ」
圭一「レナが命を狙われたんです!銃を突きつけられたって…」
レナ「は、はい」
大石「…そうですか。それならば例えその推測が違っていたとしても、殺人未遂、銃刀法違反の疑いで拘束出来ますからなぁ…」
沙都子「俄かには信じ難いお話ですが、今日起きた事でもう…驚く事も無くなりましたわ」
大石「興宮にその報告はありませんが…まあそれを抜きにしても、調べん事には、いきませんなぁ。ねぇ熊ちゃん?」
熊谷「はいッス!」
校長「…どうか、よろしくお願いします」
知恵「生徒達や、村の方達の為に、私達も出来る限りのことはします」
大石「ええ。お任せ下さい!この大石、久し振りに燃えて来ましたよぉ!!」
入江「…」
大石「…それと、入江…さん?」
入江「…ええ。分かっています。全てを話すつもりです」
大石「話が早くて助かります。こういうものは時間が勝負ですからねぇ…」
チェイス「…」
大石「…?どうされましたかな?」
チェイス「…」
大石「…?」
チェイス「…ギアは、入ったか?」
大石「ぎ、ギア?」
チェイス「…いや」
大石「…ま!それは分かりませんが、ヤル気も…いや、そうですな…」
チェイス「…」
大石「エンジンは全開ですよぉ!!…なんて、ぬっはっはっは!!」
チェイス「…」
梨花「…何の話?」
チェイス「…あいつは…」
梨花「…?」
チェイス「…狸ではない」
梨花「どっからどう見ても…」
チェイス「あの男は…」
梨花「…」
大石「さぁて!事件解決の為、この大石蔵人、一肌でも二肌でも脱いでやりますよぉ!!」
…。
『…脳細胞が、トップギアだぜ!!』
…。
チェイス「「刑事」だ」
第10話 終
続きまたそのうち書きます
見てくれてる方本当にありがとうございます
茜「…全く、これじゃ今月は大赤字だねぇ…」
魅音「…母さん…」
茜「…まあ、カッコつけた手前そんなこた向こうにゃ言えないけどね」
魅音「でも、上納金を回収すれば…」
茜「持ち逃げするような奴さ。とっくの昔に高飛びしてんだろ」
魅音「…」
茜「…しかし、ありゃあ見事なもんだねぇ。びっくりしたよ」
魅音「…ましん…チェイサー…って言ってたけど…」
茜「どう見ても神様だなんて格好じゃないよ。あんなのがオヤシロサマだなんてアタシは認めないね」
魅音「…」
茜「…左之助先生とか呼んでたけど、ありゃまさか…知り合いかい?」
魅音「…分からない。でも声は左之助先生だった」
茜「…それにしたって、一体どういう事なんだろうねぇ。アタシらを守るって…」
魅音「…何かが、あるのかも」
茜「…ま、どうでも良いさね。こっちはこっちで忙しいんだ」
魅音「…」
茜「アンタも、やれる事はやっときな。次期当主なんだから」
魅音「…うん」
…。
熊谷「…一応、まとめてみました」
大石「鷹野三四によるバイオテロ。それにレナさんがおっしゃっていた見覚えの無い髪の毛」
レナ「色も長さも、この辺の人ではありませんでした」
入江「…聞く限りでは、それは小此木という鷹野さんの右腕的存在…山狗のNo.2と考えて間違いはないでしょう」
大石「ええ。やはり事情を知る方がいると助かります。個人の特定も早い早い」
入江「特徴的な髪型ですからね。それに鷹野さんは彼に山狗の実質的な指揮を任せています」
熊谷「…この雛見沢には、小此木造園と名乗る方が頻繁に病院に立ち寄っていたそうです」
梨花「一つ分かれば全てがパズルのように組み合わさっていく…これなら…」
入江「ですが、そうも行きません」
梨花「?」
大石「ええ。個人の特定が出来ても、居場所までは分かりません。小此木造園という会社を調べてもらいましたが、そのような会社は興宮にも雛見沢にも存在していませんでしたから」
チェイス「…そして、人数だ」
大石「ええ。相手が何人いるのか…それに人質も取られている状態です」
圭一「人質なら、この村の住人全員じゃ…」
チェイス「間宮リナ。富竹ジロウ。この二人もだ」
大石「富竹さんは勿論のこと、間宮リナという女性には窃盗の疑いもありますからねぇ。きちんと逮捕しなければなりませんよ」
沙都子「上納金の回収ですの?…でもそれって…」
大石「ええまあ、「そこ」に関しては今回は目を瞑りましょう。園崎には恩を売っておいて損は無いでしょうから」
チェイス「…その事で、沙都子に伝えておかなければならないことがある」
沙都子「え?」
…。
沙都子「…」
梨花「…鉄平は、自分の意思で罪を受け入れたのです」
沙都子「…」
圭一「…沙都子の…叔父が…」
大石「…ほほぉ。そうでしたか…」
梨花「きっと、これで良かったのです。過去を清算する事で鉄平は未来へと進む覚悟を決めたのです」
大石「…ふむ…」
レナ「?」
大石「実はですねぇ。興宮警察署は北条鉄平を要注意人物としてマークしていたんですよ」
熊谷「ええ。とても素行の悪い人間でしたから…しかし彼が更生するとは…」
チェイス「元々、そういう人間だったんだろう」
沙都子「…私は…」
梨花「?」
沙都子「…」
圭一「…沙都子?」
沙都子「…そんなことまで、考えてはいませんでしたわ」
入江「…」
沙都子「私は、ただあの方に笑顔を取り戻して欲しかっただけなんですのよ」
チェイス「…」
沙都子「…帰ってくる保証の無い仕事なんて、やるべきではありませんわ」
チェイス「…」
レナ「…沙都子ちゃん」
沙都子「?」
レナ「…あのね?レナ達…初めは叔父さんが帰ってきたって聞いて、凄く不安だったんだ」
沙都子「…」
レナ「沙都子ちゃんがまたいじめられるんじゃないかって。もう学校に来ないんじゃないかって。ずっと思ってた」
沙都子「…」
レナ「…でもね、やめたんだ」
沙都子「?」
レナ「信じることにしたの。叔父さんを」
沙都子「…信じる…」
レナ「うん。圭一君がね?沙都子ちゃんの叔父さんを受け入れてあげないと、可哀想だって」
沙都子「…」
圭一「…俺だって、違うとこから来たんだし。でも…」
沙都子「…」
圭一「俺を受け入れてくれたこの雛見沢なら、きっと…って思って」
沙都子「…圭一さん…」
大石「…あー…ゴホン」
圭一「…」
大石「つまりは、こういうことですよ。北条さん」
沙都子「…?」
大石「…貴方の叔父を、信じてあげて下さい。そういうことですよ」
沙都子「…あ…」
大石「ええ。お兄さんを信じて待つように、叔父さんの事も信じて待ってあげるべきなんだということ、だと思いますよぉ?」
沙都子「…」
大石「話を聞くに、園崎家は北条鉄平にやり直す機会を与えてくれたんでしょうなぁ」
沙都子「…やり直す…。…あ…」
チェイス「…」
沙都子「…だから、あんな話を…」
レナ「…」
沙都子「…そう…ですの」
チェイス「お前が出来ることは、一つだ」
沙都子「…」
チェイス「二人が過去を清算し、そして帰ってきた時」
梨花「(…二人?)」
沙都子「…」
チェイス「笑顔で、迎え入れてやることだ」
沙都子「…ええ。そうですわね!」
梨花「…」
校長「…話は、まとまったようですな」
知恵「…」
圭一「あ…」
大石「…それで、どうでしたか?」
校長「ええ。小此木造園の車を見たという老人が何人かいらっしゃったようです」
熊谷「助かります。私達警察はここの方達にあまり好かれていないようでしたから…」
知恵「出来ることは、何でもする。そう言ったじゃありませんか」
大石「頭が下がる思いですなぁ…ねえ熊ちゃん?」
熊谷「ええ」
校長「…しかし、やはり先の…例のアレでパニックになっていたようで…」
大石「構いませんよぉ。ルートを絞れるに越したことはありませんから」
知恵「…一応、目撃情報を元にある程度の所は絞れたんですが…」パサッ
圭一「…」
入江「…これ…は…」
レナ「…山…」
沙都子「…全部…ですの?」
校長「…山道へと走っていった以外無かったものですからな…」
梨花「…山全てが、範囲…」
校長「ええ。見られている可能性もあるというのに単純なルートを辿っていくとは考えにくいものでして…」
大石「それは、間違いありませんなぁ。道という道を練れば捜査を撹乱させ、時間稼ぎになりますから」
チェイス「…この人数では、とてもじゃないが回れないな」
圭一「…雛見沢は、山に囲まれてますからね…」
レナ「…ここから探すなんて、一日二日じゃ無理だよう…」
沙都子「…監督。何か知りませんこと?」
入江「…これは鷹野さんの独自行動です。私にはどうにも…」
知恵「…本来の仲間にも、隙を作らなかったんですね」
入江「…ええ。恐らく山狗の隊員ともビジネスパートナー繋がりでしょう。彼女が全てを委ねる相手など、いませんよ」
圭一「…じゃあこれで終わりってことですか?」
チェイス「…」スッ
梨花「…」ゲシッ
チェイス「…?」
梨花「(「その力」はいざという時以外使わないで!)」
チェイス「…」
大石「…しかし、絞る方法ならありますよぉ」
知恵「…?」
大石「確かに小此木造園はここ何年かの間、雛見沢を出入りしていたようですが…しかし」
チェイス「…大仰に行動はしていない」
大石「その通り。秘密裏に行動していたでしょうな」
圭一「…そうか!つまり新しくアジトを建てる余裕は無かった!」
大石「おんやぁ…察しの良い子じゃありませんか」
沙都子「…どういうことですの?」
入江「…考えられるのは、既にあった廃墟、あるいは無人のビルを根城にしていた…」
大石「ええ。そして雛見沢を囲む山々にそれらしきものがあるのは…」
梨花「みー☆それならボクにお任せなのですよ」
レナ「梨花ちゃん。分かるの?」
梨花「ボクは生まれてからこの村をでた事が無いのです。どこに何があるかは全部頭に入ってるのですよ」
大石「やはり、知恵は出し合うものですなぁ。話が早くて助かります!ぬっふっはっはっはっは!」
…。
鷹野「…」トントン
富竹「…」
鷹野「…」トントン
富竹「…」
リナ「…」
鷹野「…!」ドンッ
リナ「ッ…」
富竹「…何度聞かれても、何時間拘束されようとも、僕の答えは変わらないよ」
鷹野「…どうして?」
富竹「逆に聞きたいくらいだよ。何の罪も無い村の人達を殺すだなんて…」
鷹野「…これは、やらなければならないことなのよ」
リナ「…」
富竹「どんな理由があっても、罪も無い人を殺してはならない」
リナ「…」
鷹野「この実験が成功すれば!!私達の研究は報われるの!!私達の居場所が出来るの!!」
リナ「…なーんだ」
鷹野「!」
富竹「…」
リナ「…てっきり、アタシよりもクズなんていないもんだと思ってたけど…」
鷹野「…」
リナ「…世の中、広いもんね」
鷹野「…何ですって…?」
リナ「人を殺すのに「実験」だなんて言葉使える奴なんて、もうクズとかの話じゃないわよ」
鷹野「…!!」
リナ「神様にでもなったつもり?」
富竹「やめるんだ!それ以上は…」
リナ「どうせ死ぬんだから。言いたいだけ言ってやるわよ」
鷹野「…貴方…」
リナ「おもちゃ貰って。それを自慢気に振りかざして」
鷹野「…」
リナ「アンタは神じゃないわ」
鷹野「…!!」ギリッ
リナ「ただの悪魔よ」
鷹野「…良いわ。もう…」
富竹「!」
鷹野「死にたいなら、今すぐ死なせてあげるわよ!!」ジャキッ
富竹「やめろ!!鷹野さん!!!」
リナ「…!」
鷹野「否定させない…!させるものですか…!!!」
富竹「鷹野さん!!!」
小此木「あーはいはい。そこまでそこまで」
鷹野「…小此木…」
小此木「撃つのは結構。しかしサイレンサーも付けずに撃てば流石に響きますぜ」
富竹「…」
小此木「それにアンタの腕じゃもっと近くねえと、な」
鷹野「…それで、何の用かしら…!」
小此木「タイムリミットとか言ってる割には、随分待たせるもんですから。気になって覗いたらこうなってましてねぇ」
鷹野「…」
富竹「…」
鷹野「…ジロウさん。どうして応えてくれないの?」
富竹「君が間違った事をしているからだ」
鷹野「…」
富竹「僕らが目指していたものは、雛見沢症候群の研究、治療法のはずだ」
鷹野「…そんな悠長な事を言ってるから…打ち切られるんじゃない」
富竹「だから、無理矢理死なせて雛見沢症候群を立証したいのかい?」
鷹野「そうよ!!じゃないと…!」
富竹「…君は僕にも、誰にも過去をほとんど語らなかった」
鷹野「…」
富竹「…それは多分、君がそうなった理由のせいなんだろう」
鷹野「…」
富竹「教えてくれないか?どうして君がそこまでこだわるのかを」
鷹野「…」
小此木「…鷹野さん。時間ですぜ」
富竹「…」
リナ「…」
鷹野「…貴方は、どれだけ私が仲間に引き込もうとしても、首を縦に振らなかった」
富竹「…」
鷹野「どれだけ肌を重ねても。貴方は応えなかった」
富竹「…」
鷹野「…残念だわ」
富竹「…!」
鷹野「小此木。準備に取り掛かって」
小此木「はいよ」
リナ「…ここまで…か」
富竹「なッ…!!」
リナ「…礼奈ちゃん…」
小此木「ほら行くぞ。立ちな」
リナ「…ごめんね…」
富竹「…!クソッ…!!」
…。
大石「…さぁて、左之助…さん?」
チェイス「…」
大石「貴方とは、こうして二人で話したくてですねぇ」
チェイス「…」
大石「「例」の件に関して…」
チェイス「…」
大石「そっちは…」
チェイス「解決の保証は無い。どうなるかもまだ分からない」
大石「そうですか…分かりました。…ま、それに関しては!まだやめておきましょう」
チェイス「…」
大石「…後は…個人的な、質問です」
チェイス「…何だ」
大石「率直にお聞きします」
チェイス「…」
大石「…貴方、何者ですか?」
大石「どう見てもこの村の住人ではありませんし、そして紫左之助という名前の人間も…少なくとも古手家の親戚にはいませんでした」
チェイス「…」
大石「これは調べがついています」
チェイス「…」
大石「紫左之助という人間は存在しない。そして先の、雛見沢で起きたらしい身体の自由が効かなくなる事件…」
チェイス「…」
大石「…私、こう見えて腕力には自信があったんですがねぇ。貴方の力は私が経験した事の無い程のものでした」
チェイス「…」
大石「私は超常現象など信じてはいません。この世の全ての事件は人間によるものだと、考えています。…しかし…」
チェイス「…」
大石「…こう言うのは何なんですがねぇ。…貴方は…」
チェイス「お前の想像の通りだ」
大石「・・・」
チェイス「俺は人間ではない」
大石「…ほほう」
チェイス「…今言えるのはそれだけだ」
大石「…本気で言っているなら、普通はちょっと疑っちゃうんですがね…」
チェイス「…いずれ話そう。今は鷹野を止めることだ」
大石「…ふむ。実は、ですねぇ…」
チェイス「どうした」
大石「…その、「鷹野三四」なんですが…」
鉄平「…」
「…」
鉄平「…」
「お前が今から行くとこは、所謂…蟹工船みてぇなとこだ」
鉄平「…」
「五体満足じゃあ帰って来れない可能性もある」
鉄平「…そうけ」
「だが、給料は良い。10年も真面目に働きゃ良い額にはなるぜ」
鉄平「…10年じゃ済まんじゃろ」
「上納金が見つかりゃあ、何とかなる」
鉄平「…気にしとらんのか。ワシは…」
「…話を聞いた時はあの場で八つ裂きにして埋めてやりたかったさ」
鉄平「…」
「…だがよォ…」
鉄平「?」
「おめぇ、本気で謝ってたろ。血が滲むくれぇ頭床に擦り付けてよ」
鉄平「…」
「謝る事なんざ誰にだって出来る。そういう奴ァ結局自分の為にやってるんだからな」
鉄平「…」
「だがおめぇは違った」
鉄平「…」
「子供の為、必死で謝った。命を投げ捨てて」
鉄平「…」
「大の男がそこまでしたんだ。流石の俺らだってそんな奴を責めたてようとは思わねぇ」
鉄平「…」
「茜さんも、当主も、そんなおめぇのメンツを立ててやったんだよ」
鉄平「…そうけ」
「…にしても、その間宮リナってなぁ、本当に居場所が分からねぇのか?」
鉄平「…とっくの昔に、何処かに消えた。そう思うんが普通じゃ」
「ほーう…そりゃ…確かに10年じゃ済まねぇかもなぁ」
鉄平「…」
「…お?何だありゃあ…」
鉄平「…?」
「こんな山道、何たって車が…」
鉄平「車?…何処に…」
「ほんの少し轍が出来てんだろ。だがこんなロクに舗装もされてねぇところ、誰が走るってんだ」
鉄平「…」
「この山にあるのは動物か戦前に建てられた廃墟くれぇだぜ」
鉄平「…!おい!」
「あ?」
鉄平「…こ、この轍、追えるか?」
「そんな時間は無ぇよ。今から海まで行くんだぜ?」
鉄平「頼む!!」
「何だよ…まさかこの後に及んで…」
鉄平「違う!この先に間宮リナがおるかもしれん!!」
「あ!?」
鉄平「あの計算高い女が自分の周りに金を置いとるとは思えん!そんな誰も入らんような廃墟…金を隠すのにはうってつけじゃろうが!!」
「…!…成る程な…分かった!」ブオオオオオオン
鷹野「…」カラカラ
富竹「…」
鷹野「…」カチャカチャ
富竹「…分かっているけど、あえて聞くよ。…それは?」
鷹野「分かっていると思うから、あえて言わないわ」
富竹「…変わらないね。君は」
鷹野「…」
富竹「結局君は、最後まで全てを見せてはくれなかった」
鷹野「…」
富竹「話す機会は幾らでもあった。悩みなら何でも聞こうと思ってたよ」
鷹野「…こうして、話してるじゃない」
富竹「違う」
鷹野「…」
富竹「君が言ったのは、悩みじゃない。何故なら君は悩んでないからだ」
鷹野「…」
富竹「君が欲しかったのは、都合の良い駒だけだ」
鷹野「…」
富竹「誰一人、信用などしていない。君は…」
鷹野「…貴方は、別だったのに」
富竹「僕は君の駒になる気は無い」
鷹野「…」
富竹「人殺しの片棒を担ぐなんて、死んでもごめんだ」
鷹野「…」
鷹野「…ねぇ、ジロウさん」
富竹「…」
鷹野「雛見沢症候群って、誰が発見したか知ってる?」
富竹「…君の祖父だと聞いているよ。鷹野一二三という…」
鷹野「ええ。そうよ」
富竹「…それが…」
鷹野「本当はね、高野って書くのよ」
富竹「…?」
鷹野「…それと、私は鷹野三四じゃない」
富竹「…え?」
鷹野「捨てた名だけど、教えてあげる」
富竹「…?」
鷹野「私の本当の名前は…田無、美代子」
富竹「!!」
鷹野「高野一二三との血縁関係は無いわ」
富竹「…何だって…?」
鷹野「…」
富竹「…君は、一体…」
鷹野「…ある小さな女の子がいました」
富竹「え…」
鷹野「小さな女の子には、趣味があったの」
富竹「…」
鷹野「それはね、お子様ランチについてる旗を集める事」
富竹「…」
鷹野「でもね、当時は高くてね…そんな頻繁に集められなかったわ」
富竹「…」
鷹野「…でも、最後。最後の一本を集められると思ったその時」
富竹「…」
鷹野「その子の親は、死んでしまったの。事故でね」
富竹「!」
鷹野「そして女の子は、施設に引き取られました…」
富竹「ちょ、ちょっと待ってくれ!君はッ」
鷹野「でもその施設にはとても怖い人達がいて、その子を含めた子供達は全員いじめられていたの」
富竹「…!」
鷹野「ある日、その子は逃げ出そうと必死に計画を練った…」
富竹「…」
鷹野「…失敗はしたけど、偶然見つけた公衆電話と10円玉で、ある人に助けを求めたの」
富竹「!…まさか、その人が…」
鷹野「死に絶える前に親が言い残した数字の羅列を必死で思い出して、その人に電話をしたわ」
富竹「…」
鷹野「そしたら、繋がったの」
富竹「…」
…。
大石「…」カサ
チェイス「…写真…誰だ?」
大石「高野一二三。雛見沢症候群の研究の第一人者です」
チェイス「…鷹野?」
大石「いいえ。…えー…高野山。高野山の高野。高野一二三です」
チェイス「…待て。まさか鷹野三四は…」
大石「ええ。高野一二三は養子を取っています」
チェイス「…それが、鷹野か」
大石「いいえ。その子供の名前は「田無美代子」なっていました」
チェイス「…それは…どういうことだ?」
大石「私も気になりましてねぇ。勿論調べましたよぉ」
チェイス「…」
大石「彼女の親は田無さんが小学生の時に事故でお亡くなりになっていました」
チェイス「…」
大石「その後彼女は施設に引き取られ、そして高野一二三によって助けられました」
チェイス「…助けられた?」
大石「…この施設なんですがね、これがもう、随分酷い所でして。補助金目当ての為だけに建てられたような所なんですよ」
チェイス「…そこで、鷹野は…」
大石「ええ。彼女含めた子供達全員、虐待されていたそうですよ。死人も出ていたらしいですねぇ」
チェイス「…」
大石「…ま、因果応報。この施設の職員は全員児童虐待、殺人の疑いで検挙されていますが、ね」
チェイス「…そうか」
大石「一二三…三四…まあ恐らく、恩人の思いを受け継いだ名前…というところでしょうなぁ」
チェイス「…偽名か?」
大石「…いえ、大学に問い合わせたところ、確かに鷹野三四という生徒がいたそうです」
チェイス「…名前を、変えたのか」
大石「ええ。それ程までに、祖父の想いに応えたかったのでしょうなぁ…」
チェイス「…しかし、奴は方法を間違えている」
大石「ええ。止めなければなりませんねぇ」
チェイス「…」
大石「…ちなみに」
チェイス「?」
大石「…貴方、どう見ても人間なんですが」
チェイス「…」
大石「…」
チェイス「…それは、俺にとって褒め言葉だ」
大石「え?」
…。
「…着いたな」
鉄平「…」
「…何たって小此木造園の車がこんなとこに…」
鉄平「それ以上近づくな。バレちまうじゃろうが」
「…しかし、ありゃあ興宮にある庭師って話だぜ?」
鉄平「…知らん。じゃが間違いなくあのアマはここにおる」
「…」
鉄平「…」
「仮に、間宮リナがボディガードなんて雇ってたらどうする?」
鉄平「…」
「そいつらがチャカ持ってたら、どうする?」
鉄平「…お前も持っとるんじゃろ」
「護身用に持ってるのはナイフだけだ。何せ目の前にいるのは丸腰のオッさん一人だからな」
鉄平「…」
「…」
鉄平「…しかし、ここでお前が間宮リナを捕まえりゃあ…」
「…そりゃ、まあ…」
鉄平「…?お、おい…」
「…ああ、見えてるよ。…間宮リナと…ありゃあ誰だ?男の癖に女みてぇな髪型しやがって…」
鉄平「…それと、もう数人…」
「…しかしありゃあ、仲間にゃ見えねえな。連れてかれる家畜みてぇになってやがる」
鉄平「仲間割れじゃろ。今度は逃げられんかったか…」
「…向こうの部屋に行ったな」
鉄平「…おう」
「…おい。一旦戻るぞ。良い情報が手に入ったからな」
鉄平「アホ抜かせ。ここであいつを捕まえんと一生捕まらんかもしれんぞ」
「相手何人いると思ってんだ!死ぬぞ!」
鉄平「…どうせ捨てた命じゃ。何度でも捨ててやる」
「…そんな台詞、俺も吐いてみてぇや…」
鉄平「…おい、火…あるか?」
「あ?…ああ、あるよ」
鉄平「…マッチか。上出来じゃ」
「…何して…」
鉄平「これで気を引く。後は間宮リナを捕まえて逃げるだけじゃ」ビリッ
「…は?」
鉄平「ナイフ、貸さんかい」
「…何を…」
鉄平「今更お前一人殺したって逃げられるとは思わんわ。この車壊すんじゃ。貸せ」
「…は…は?」
鉄平「給油口は…ここか…!」ガギギ…
「…?」
鉄平「…ふんっ!!」バキャッ
「…」
鉄平「…良し…と」スッ
「…破いた服を、給油口に入れて…」
鉄平「…ゆっくりじゃ。玄関開けて放り込むぞ」ポタッ
「は!?」
鉄平「幸いこの建物は木造じゃ。よぉ燃えるじゃろ」
「い、いやそういうことじゃねえよ!」
鉄平「何じゃ」
「お、おめぇまさか…あの人数相手に…」
鉄平「戦うだなんて言っちょらんわ。奴らの気を引いて、その隙にリナを捕まえる」
「…」
鉄平「ヤクザじゃろうが。漢見せんか」
「!…言ってくれるじゃねえか。チンピラが…」
鉄平「そのチンピラが命懸けとるんじゃ」
「…おうよ。なら…い、行くぞ?」
鉄平「…おう」シュッ
「…あ、開けるぞ…」ギ…
鉄平「…」ボッ
鷹野「…私はね、一二三博士の研究を世に知らしめたいだけなのよ」
富竹「…」
鷹野「周りの人間はこの研究の素晴らしさを理解出来ずに彼を失脚させたけど…」
富竹「…格好つけていても、それは所詮、ただの恨みだ」
鷹野「…何と言われようと、私はやり遂げる。彼の思いを受け継いで…」
富竹「なら、ちゃんと研究するべきだ!毒ガスで殺し、雛見沢症候群に見せかけるなど!!」
鷹野「そうしないと!!!」
富竹「!」
鷹野「…そうしないと、研究費が打ち切られてしまうのよ…!!」
富竹「…それでも僕は、絶対に認めない」
鷹野「…そう。そうなの」
富竹「…」
鷹野「…貴方は私を裏切らないって思ったのに…」
富竹「…裏切ったのは、君だ」
鷹野「…さよなら」
富竹「…いや」
鷹野「…え?」
富竹「残念ながら、僕はまだ生きられそうだ」
鷹野「…?…えっ!?」
小此木『ゴホッ!!ゴホッ…!か、火事だ!!火事だ!!!』
鷹野「!?」
富竹「…!でえ…やっ!!」ドスン
鷹野「きゃあっ!」
小此木『誰か!水だ!水持ってこい!このままじゃ全員お陀仏だぞ!!』
富竹「脚は…動く。なら…!」
鷹野「!ま…待ちなさ…!」
小此木「クッソ…!誰が…!!」
富竹「…!…!!」ズリズリ
鷹野「小此木!!ジロウさんを捕まえて!!」
小此木「!?…テメェ…!」ガチャッ
富竹「…!」
小此木「…逃がッ!?」ドカッ
「…」
富竹「…え?」
小此木「がっ…!痛ぇ…!!」
鷹野「!?」
「…」グイッ
富竹「!…え、え?」
「行くぞ」
富竹「!…は、はい!」
鷹野「待ちなさい!!…このっ…!!」パァン
「うおっ!?やべぇ早く逃げるぞ!!」
「分かっとるわ!!こっちを手伝え!!」
「バカ!こっちも一人抱えてんだぞ!」
「こっちは椅子に縛られた野郎じゃ!どんだけ重いか分からんのか!!」
「…ああもう、行くぞ!!」
鷹野「逃がさな…ッ…!」ズキン
「おい!椅子なんかどうでも良いからトランクにでも詰め込んどけ!」
鷹野「…足が…!!」
「早く出さんか!!追いつかれるぞ!!」
鷹野「…」
…。
小此木「…つつ…思いっきり殴りやがって…」
「小此木隊長!」
小此木「…あ…?…おい!俺の事は良い!!早く火を消せ!!」
「え、は、はい!」
小此木「他のとこはどうでもいい!保管庫だけには火を近づけるな!!毒ガスに引火でもしたら全員木っ端微塵だぞ!!」
「…!」
小此木「分かったら早くしろ!!全員死んじまうぞ!!」
鷹野「…」
小此木「鷹野三佐!!アンタもボーッとしてねぇで手伝ってくれ!!」
鷹野「…!」
小此木「こんな所で死にてぇのか!!アンタは!!」
鷹野「…分かったわ。…痛ッ…!」
小此木「…ああ?」
鷹野「ごめんなさい…ジロウさんに突き飛ばされて…」
小此木「…だからあれ程訓練を受けろって言ったでしょうに…!銃はおろか受け身の一つも取れねぇのか…!」
鷹野「…」
小此木「…ええい!今はこの火を止めることだ!!お前ら!絶対にこの火を保管庫に回すな!!」
鷹野「…ジロウさん…」
…。
鉄平「…ッハァ!!」
「ハーッ…ハーッ…」
富竹「…」
鉄平「…あー…やっちまったなぁ」
「あー!!!こりゃ気持ち良いじゃねえか!!なァ!?」
鉄平「やかましいわ!!…このアマ…とんでもなくヤバい奴らと手を組みよってからに…!!」
リナ「…」
鉄平「リナ…!もう逃がさんぞ…!!」
リナ「…」
鉄平「お前だけは許さん。このまま園崎に…」
リナ「…った…」
鉄平「あ?」
「?」
リナ「…かった…」
「…何だって?」
リナ「…良がっ゛だぁ゛…」
鉄平「…」
「…」
富竹「…」
鉄平「…お?」
第11話 終
続きまたそのうち書きます
相変わらずコメントが少ないスレを作るな
そのうちじゃなくてちゃんとこの日にやりますってやれよ
いつもゲリラ的にしか投下しないから安価出してもコメント来ないんだぞ
>>304
すいません
でも書き溜めて見直してから投下してるのでそれは難しいです
鉄平『…』ボッ
『うおっ…よく燃えんなぁ…』
鉄平『…』ポイッ
『…おまっ…そんな簡単に…!』
鉄平『ボサボサしとれんのじゃ。躊躇っとったら死ぬぞ』
『…!』
『うわっ!?煙だ!!火が出てるぞ!!』
『かなり燃えてるぞ!!何が起きた!?』
『水だ!水持ってこい!!』
鉄平『…よし!今じゃ!』ダッ
『…あー!!もうどうにでもなれ!!』ダッ
小此木『ゴホッ!!ゴホッ…!か、火事だ!!火事だ!!!』
鉄平『…!』
小此木『誰か!水だ!水持ってこい!このままじゃ全員お陀仏だぞ!!』
『…おい!リナだ!居たぞ!』
鉄平『!』
リナ『…』
鉄平『…貴様…よくもこのワシを…!』
リナ『…鉄平…』
『怒るのは後にしろ!運ぶぞ!』
鉄平『…ッチィ!』
リナ『ま、待って!』
『待てるか!!』
リナ『向こうの部屋!向こうの部屋にもう一人捕まってる!!』
『ぁあ!?』
リナ『助けてあげて!!あっちも殺されそうなの!!』
鉄平『…ああクソ!!』ダッ
『早くしろよ!!』
…。
鷹野『小此木!!ジロウさんを捕まえて!!』
小此木『!?…テメェ…!』ガチャッ
鉄平『…』コソッ
富竹『…!』
鉄平『…フンッ!』ブンッ
小此木『…逃がッ!?』ドカッ
鉄平『…』
富竹『…え?』
小此木『がっ…!痛ぇ…!!』
…。
リナ「?え゛え゛…」
「…な、何だァ?こいつ…」ブオオオオン
鉄平「知るか。またいつもの嘘泣きに…」
富竹「違う」
鉄平「?」
富竹「彼女は、本当に命を諦めかけていたんだ」
鉄平「…まあどうでもええわ。…いやどうでも良くないのう」
富竹「…」
鉄平「…ありゃあ何じゃ?拳銃まで持っとったぞ」
富竹「…あれは…」
リナ「…あいつら、この村の住人全員殺すつもりだって」
鉄平「…!?」
「…な、何だそりゃ。どういうことだ?」
リナ「…あいつら言ってたわ。保管庫にある毒ガスで住人を全員殺して、雛見沢症候群に見せかけるって…」
「…んな突拍子もねぇ話…」
富竹「…本当だよ」
鉄平「…何?」
富竹「あそこにいた拳銃を持っていた女性は鷹野三四。…山狗という小隊の長だ」
鉄平「…あいつがか?」
富竹「最も彼女は軍の訓練を受けていないから、銃は撃てても当てられる程の技術は無い。受け身の取り方も分からない」
「…そんな奴が、どうして…」
富竹「実質、隊の指揮を取っているのは、貴方が殴り倒した小此木という男だ」
鉄平「…」
富竹「あの場は冷静さを失っていた上、不意打ちで何とかなったけど…本来の彼は山狗の中でも選りすぐりの隊員だ。もし彼と面と向かっていたら、きっと二人とも命は無かった」
「…そんなやべぇ奴なのか…顔見られてねぇよな?」
鉄平「こっちはこのアマさえ捕まえられりゃ何でもええんじゃ。戦おうだなんて思っちょらん」
リナ「…アタシ、本当は燃やされる予定だったんだって」
鉄平「…あ?」
リナ「鷹野って女は、この村のナースの振りして、本当はあの部隊の隊長だった。小此木って奴が…何だっけ?さん…さ?」
富竹「鷹野三佐。彼女の軍での階級だよ」
「…」
富竹「東京大学を首席で卒業。エリートとして色んな人脈を作り、山狗という部隊を立ち上げた…」
鉄平「…ワシが一番嫌うタイプのアマじゃのう」
富竹「三佐の階級と山狗の地域に浸透した諜報網、そして必要とあれば県警から日本政府に至るまでを動かすことができる絶大な権力を彼女は所有している」
鉄平「…あー…」
「悪ぃ。もうちょっと分かりやすく説明してくれ」
富竹「偉いって事さ」
鉄平「極端にも程があるわ」
富竹「…というより、出来ればこの拘束を解いて欲しいんだ。流石に腰が痛くなってきてね…」
鉄平「お?…おお」
リナ「…良いよ。アタシがやるから、続けて」
富竹「ありがとう。…しかし、それはつい最近までだったんだよ」
鉄平「…?」
富竹「…その昔、高野一二三という、雛見沢症候群の研究をしていた男がいてね…」
「…さっきも言ってたけどよ。その雛見沢症候群ってなぁ…何だ?」
富竹「この村特有の寄生虫による病気さ。これに感染するとその人間は凶暴化し、全てを信用出来なくなる」
鉄平「き、寄生虫…?」
富竹「この村にいる以上、感染率は100%だ」
リナ「え…?」
富竹「君達も、僕も感染している」
「…身体ン中に虫が入ってるたぁ…気持ちの悪い話だなぁ」
リナ「そういう問題…?」
鉄平「…で、それはいつ発症するんじゃ」
富竹「具体的には決まっていない。けど、少しでも不安を感じたら、それは始まる」
リナ「不安…?」
富竹「例えば、誰かを信用出来なくなったり…そんなことはなかったかい?」
鉄平「そんなことしかないわ」
リナ「…」
富竹「…えっ…?」
鉄平「ワシはこのアマに儲け話持ち掛けられて、全部掻っ攫われたんじゃ」
富竹「…それで、発症していないのかい?」
鉄平「その話がデタラメなだけと違うんか?」
富竹「そ、そんなはずはない!既に前例が…」
鉄平「…」
「守りたいモンが出来た。からじゃねぇのか?」
鉄平「あ?」
富竹「え?」
「…その鉄平って奴ァな、自分の為じゃなく、人の為に命を捨てたんだ」
富竹「…」
「細けぇことは分からねぇけどよ。つまり…自分の命の為に人を攻撃するってことだろ?その病気ってのは」
富竹「…そう、だね。宿主が死ねば寄生虫も死ぬ。寄生虫は生きる為に宿主を利用する…」
「だが、こいつはその寄生虫には従わなかった」
鉄平「…」ポリポリ
「つまり、勝ったってことだな」
富竹「…そんな…」
鉄平「…」ポリポリ
リナ「…鉄平…」
鉄平「…確かに、前までのワシならその寄生虫にかからずとも人なんぞ誰も信用しとらんかったわ」
富竹「…」
鉄平「…ま、それも大金の前じゃ何てことないモンじゃったがのう…」
リナ「…」
鉄平「…お前に持ち逃げされて、無一文で逃げるように雛見沢におる沙都子っちゅう、一応家族の家に転がり込んだ」
リナ「!…そんな近くに…」
鉄平「……昔は、よう虐めとったわ。ドン臭くてのう…」
「…」
鉄平「…そこは変わっとらんかったが…」
富竹「…」
鉄平「唯一頼りにしとった兄もおらん、親もおらん。家族なんざだーれもおらん状態でのう…」
リナ「…」
鉄平「それでも、必死で生きているあいつの顔が…とんでもなく眩しく見えたんじゃ」
「…」
鉄平「…それに比べワシは、何をしとるんか…そう思ってな」
富竹「…守りたいものが、出来た…」
鉄平「…お前もその内分かるわ」
リナ「…アタシも、ね」
富竹「?」
鉄平「…」
リナ「アタシも、雛見沢に隠れてたんだ。そっちのが見つからないかなって思ってて」
鉄平「…分かっとるわ。さっきの反応で」
リナ「たまたまお店に来てた上客がね、前の奥さんから貰った慰謝料が沢山あるからって…」
鉄平「…がめついお前の事じゃ。それも掻っ攫おうと思ったんじゃろ」
リナ「その時はね、そう思ってた」
「…その時は?」
リナ「…色々あってね。やっぱり恨み買っちゃうんだ」
鉄平「…」
リナ「丼でぶん殴られそうになったんだけど、その人の娘に助けられてね」
富竹「…レナちゃんだね」
リナ「うん。アンタは知ってると思うけどさ…」
富竹「…君も、彼女を助けたい一心で、寄生虫の魔の手から逃れたんだね」
リナ「今知ったんだけどね。それ」
鉄平「…」
リナ「…今更だけど、上納金なら竜宮さんの家にある庭の下に埋めたよ」
「あ!!?」
鉄平「・・・」
リナ「一銭も使ってない。…それどころじゃなかったし」
「…そうか」
リナ「…ごめんなさい」
「俺に謝られても困るんだよな…」
リナ「…鉄平も、ごめん」
鉄平「…その竜宮ってのに謝るのが先じゃろ」
リナ「…ん」
「…さて、と」キッ
富竹「?…どうして車を…」
「…まあどうせもう待ち合わせには間に合わねえんだ。だから聞けるだけ聞いとくが…」
富竹「…」
「話を戻すが、さっきおめぇは鷹野って奴が偉かったのはつい最近だって言ってたな?」
富竹「…ああ」
「そりゃ何だ?何か失敗でもしたのか?」
富竹「…雛見沢症候群の第一人者、高野一二三。理由は割愛するけど、鷹野さんの命の恩人さ」
「…」
富竹「…彼はある日突然研究費を打ち切られてね。研究の中断を余儀無くされたんだ」
リナ「…その時、鷹野は?」
富竹「僕もさっき聞かされた話だから信憑性までは分からないけど、彼と折り合いがつかない学会側が無理矢理失脚させたらしいんだ」
リナ「…」
富竹「結局、一二三はそのまま病気で亡くなったらしい」
鉄平「…それで、その無念を目の前で見たっちゅうわけか」
富竹「命の恩人が、良いように利用され、消された。彼女にとってはたまらなく嫌なことだっただろうね」
「…だろうな」
富竹「…そこから彼女の人生は、高野一二三に捧げられた。彼の為に、彼の研究を本物にする為に」
鉄平「…」
富竹「先の頭脳と……どうやって作ったかは想像に任せるしかない人脈。それで再び雛見沢症候群の研究機関を作ったんだ」
リナ「…」
富竹「…しかしね、前例がある、といってもこの寄生虫は宿主が死ぬと同時に消滅する。正直なところ、証明しようが無いんだ」
鉄平「同じ轍を踏んだ…ちゅうことかい」
富竹「ああ。初めはカットされる程度だったけど、どんどん下がっていってね。最後には打ち切りの話が出たんだ」
リナ「それをさせない為に鷹野は毒ガスを使って…」
富竹「ああ。だがそれはあくまで最後の手段に過ぎない」
「…どういうこった?」
富竹「…雛見沢症候群が発症する条件として、まず疑心暗鬼になること」
「…ああ」
富竹「それと、女王の死」
鉄平「…女王…だァ?」
富竹「そう。この雛見沢症候群に感染していても影響を一切受けない。それどころか薬を拒絶する程身体が病気に慣れてしまっている」
リナ「…何それ」
富竹「…古手家の人間だ」
「…今古手家の生き残りって言ったら…梨花ちゃまか!?」
富竹「そう。鷹野さんがこの実験で最も重要視しているもの。それが梨花ちゃんだ」
鉄平「…待て。梨花っちゅうと…沙都子の友達か!?」
富竹「…ああ。彼女の死を目撃することによって信仰心の強い雛見沢村の人達は皆連鎖的に発症する。という鷹野さんの考察だ」
鉄平「仮にその考察が正しいとしても、そんなもん…!」
富竹「認められる訳がない。しかし鷹野さんは止まらない」
「…つまりあれか。梨花ちゃまが死んで、村人達が死ねば、ほら病気はあったでしょってか…?」
鉄平「死ぬ理由なんざどうでもええ。結果論っちゅうことか…」
リナ「…それで、混乱の最中に毒ガスを…」
富竹「…そういうことだ。彼女は警察とも繋がりがある上、医学の道ではトップクラスの知識を誇る。その彼女が雛見沢症候群だと言えば、警察もそれに準ずるだろう…」
リナ「…そんな凄い奴だったなんて…」
「…ここに来て雛見沢の鎖国状態が皮肉にも役に立っちまったってことか…」
鉄平「…なんちゅう厄介な奴じゃ…」
「…そりゃあ、俄かには信じ難いが…確かに辻褄は合うな。さっきのを見りゃあ…」
富竹「…お願いだ。このままでは雛見沢村の人達が危ない。何とかして止めて欲しい」
「…てめぇの知り合いのケツ拭けってことかよ…」
富竹「…」
「…あああああ!!!こうなったらヤケだ!!行くぞ!!」ブオオオオオオン
…。
チェイス「…」
悟史『…』
梨花「…」
チェイス「…この子が叔母を殺したことは、皆知っているのか?」
梨花「…確信は無いけど、状況的にそう思うのが普通よ」
チェイス「…」
梨花「棒のようなもので撲殺。消えた悟史。血の付着した悟史の名前入りの金属バット。事件が起きる前、性格がガラッと変わった彼…」
チェイス「…沙都子も、知っているのか?」
梨花「あの子には…重過ぎるわ」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「人をここまで変えてしまう病気、か」
梨花「恐ろしいでしょ?」
チェイス「確かに、この病気は無くさなければならない」
梨花「…うん。そうね」
チェイス「…」
梨花「…ねぇ。もしも、よ」
チェイス「…」
梨花「もし、私が発症したらどうする?」
チェイス「…お前は、発症しない筈では…」
梨花「もしもよ。もしも」
チェイス「…」
梨花「アンタのことも信用しなくなって、攻撃的になって」
チェイス「…」
梨花「怒り狂って、誰かを殺そうとしたら」
チェイス「止めるだけだ」
梨花「…簡単に言うのね」
チェイス「相手がロイミュードでないなら、止めることは造作も無い」
梨花「…そうだったわね。アンタの力なら今すぐにでも鷹野達を…」
チェイス「…」
梨花「…そう簡単にいかなかったわね」
チェイス「相手が無差別に人間を殺せる武器を持っていて、いつでも殺せる状態にあるというのならば、俺もそう簡単には動けない」
梨花「…時間を止めて、そのまま相手のいる所突き止めてボコボコにするとかは?」
チェイス「俺にそこまでの力は無い。それに止められるわけではない」
梨花「どうして?だって…」
チェイス「数十分にコンマ数ミリ程度だが、人間でも身体は動かせる」
梨花「…スローになるってだけ?」
チェイス「それが俺の限界だ。それに永遠に続けられる訳ではない」
梨花「…そっか」
チェイス「下手に動いて奴らを刺激すれば、取り返しのつかないことになる」
梨花「…ごめん。無理言ったわね」
チェイス「…俺もまた、神ではない」
梨花「…」
チェイス「お前達より少し未来に生きているだけのロボットだ」
梨花「…33年でそんなに進歩してるってのが驚きだけどね」
チェイス「…抜きん出た者が二人居ただけだ」
梨花「…チェイス」
チェイス「どうした」
梨花「…これで、私達が助かったら、さ」
チェイス「…」
梨花「アンタはどうするの?」
チェイス「…」
梨花「少なくとも、その剛っていう親友と会えるまで33年間、必要なのよ?」
チェイス「…」
梨花「…長いわよ。結構」
チェイス「…」
梨花「…その期間くらい、ここに居れば?」
チェイス「俺は、生きているのか死んでいるのかも分からない存在だ」
梨花「…でも、触れるわよ?」
チェイス「…それは、使命によって生かされているだけかもしれない」
梨花「…使命を終えたら、死ぬってこと?」
チェイス「不明だ」
梨花「そんな、使い捨てみたいなマネ…させないわよ」
チェイス「…」
梨花「…」
?「悟史くぅぅぅぅぅうううううん!!!!!」ダダダダダダダ
梨花「!?」
チェイス「!」
詩音「悟史君!!悟史君!!?」バンバン
チェイス「…」
梨花「詩ぃ!落ち着くのです!」
詩音「落ち着ける訳ないでしょ!!!」
チェイス「お前は、あの時の…」
詩音「どうしてここに悟史君がいるんですか!?説明して下さい!!」
梨花「その前に、どうしてここに?」
沙都子「私が、連絡しましたの」
梨花「え?」
詩音「沙都子から連絡を受けて、半信半疑だったけど、藁にもすがる想いで…」
梨花「…詩ぃ…」
詩音「…夢だと思ってた。夢だと思って、諦めかけてたのに…」
チェイス「悟史とはどういう関係だ?」
詩音「…そんなの、察して下さいよ」
梨花「詩ぃ。どうせ左之助に女心は理解出来ないのですよ」
沙都子「とんでもない殿方ですわね」
詩音「コホン。…友達以上、恋人未満…です!!」
チェイス「それは分かっている」
詩音「何なんですかこの人!!!」
詩音「…まあ、初めに関係を持ったのはお姉なんですよ。それでお姉が興味を持つっていうのはどんな人なんだろうって私も関わり出して…」
チェイス「…そこから、悟史を愛するようになったのか」
詩音「ン゛ブッフゥ」
沙都子「んま」
梨花「こういう男なのです。放っておくのですよ
詩音「…もうそれで良いです。良いですよ。間違ってませんから」
チェイス「…」
梨花「詩ぃは魅ぃと違って素直なのですよ」
チェイス「…あの子は、いつ目覚めるか分からないぞ」
詩音「構いません。…こうして無事なのが確認出来た。今はそれだけで…」
チェイス「…そうか」
詩音「…良かった。無事で…てっきり鬼隠しにあったのかと…」
チェイス「鬼隠し…」
詩音「…この村では毎年一人ずつ、行方不明になる都市伝説があるんです。…それが悟史君だったんじゃないかって…」
チェイス「…」
詩音「…本当に、良かったです…」
チェイス「…そうか…」
梨花「…」
レナ「…」
圭一「レナ…大丈夫か?」
レナ「うん。もう…大丈夫だよ」
圭一「…ケガだけじゃないだろ」
レナ「…」
圭一「色んな事。あったんだろ」
レナ「…」
圭一「…それを全部、レナは背負っていたんだろ」
レナ「…」
圭一「背負って。隠して。必死に明るく振る舞って。俺に対してだって気を遣ってくれて…」
レナ「そんなこと、ないよ」
圭一「ある!!」
レナ「ッ!」
圭一「…あ、ご、ごめん…でも…」
レナ「…圭一君…」
圭一「そんな、無理してるレナの顔、見たくないんだ」
レナ「…」
圭一「いつも疲れた顔してて、でももしかしたら俺の思い過ごしなのかなって思ってた」
レナ「…」
圭一「でも、本当は違ったんだ」
レナ「…」
圭一「レナは、ずっと疲れてた。休めなかったんだ」
レナ「…」
圭一「本当のレナを出せずに、いつも明るく振る舞って。…そんなことしてたらいつか疲れちまうだろ」
レナ「…」
レナ「圭一君」
圭一「ん?」
レナ「…あのね?レナはね…」
圭一「…」
レナ「…ホントは、すっごいワガママなんだよ」
圭一「…」
レナ「圭一君と、ホントはずっと一緒にこうしていたい」
圭一「えっ…」
レナ「でも、魅ぃちゃんともずっと仲良くしたい」
圭一「…別に、それは…」
レナ「ううん。きっと圭一君がレナと仲良くなり過ぎると、魅ぃちゃんとレナの関係は変わっちゃうと思う」
圭一「何で…俺とレナが仲良くするとそうなるんだ?」
レナ「…察して欲しい…かな」
圭一「…」
レナ「圭一君も、魅ぃちゃんも。沙都子ちゃんも、梨花ちゃんも。詩ぃちゃんも悟史君も。みんな一緒が良い。ずっと仲良くしていたい」
圭一「…レナ…」
レナ「…でも、圭一君との仲良しは、みんなとの仲良しとは違うの」
圭一「…。……!!」
レナ「…レナは、圭一君とずっとこうしていたい。一緒に居たい」
圭一「…レナ…」
レナ「…でも、みんな大事」
圭一「…」
レナ「…ワガママだよね」
圭一「…なあ、レナ」
レナ「…」
圭一「…それ、ワガママって言わないんだよ」
レナ「…」
圭一「俺だって、みんなと仲良くしていたい。大事な仲間だから」
レナ「…」
圭一「…そんなの、当然だ」
レナ「…圭一君…」
圭一「…それに、本当は、俺は…こんな幸せな日常、味わっちゃいけないんだ」
レナ「…?」
圭一「…」
レナ「…何か、あったのかな…かな?」
圭一「…」
レナ「…レナは、黙って聞いてるよ。だから、教えて?」
圭一「…俺は…」
レナ「…言いづらい?」
圭一「…」
レナ「…良いよ。話せる時に話して?」
圭一「…」
レナ「…レナも、きっと圭一君と同じくらい大きな秘密を抱えてるから」
圭一「…!」
レナ「…」
圭一「…」
レナ「…もしかして、知ってる?」
圭一「…」
レナ「…レナの事、知ってた?」
圭一「…ごめん。本当は…」
レナ「…ううん。良いよ。いつかはきっと、知ることになるから」
圭一「…」
レナ「…レナはね、凄く後悔してる」
圭一「…」
レナ「いっぱい、いっぱい謝っても、許されないことをしたって思ってる」
圭一「…」
レナ「…本当はレナも、こんな幸せな日常、過ごしちゃいけないんだよ」
圭一「違う!!」
レナ「!」
圭一「…」
レナ「…圭一君…」
圭一「…俺は…俺なんか…!」
レナ「…?」
圭一「本当は、クズ野郎なんだ!!」
レナ「…」
圭一「…俺が、何で雛見沢に来たと思う?」
レナ「…お父さんの都合じゃないの?」
圭一「…違うんだ。全然」
レナ「…」
圭一「…少し前、だ。つい半年前くらい」
レナ「うん」
圭一「都会で過ごしてた時は、いつも勉強、勉強で、こんな風に誰かと話すことなんか無かった」
レナ「…うん」
圭一「…正直、色んな奴を見下してた」
レナ「…」
圭一「必死に走るサラリーマンとか、学校帰りに遊びに行く奴らとか、工事現場で働く人達とか、全員見下してた」
レナ「…」
圭一「俺は、こんな風にはならないって。偉くなって、みんなを馬鹿にするんだなんて思ってた。だから常に勉強して1位を目指し続けた」
レナ「…」
圭一「…そんな風に過ごしてて、俺はいつの日か何をしても許される奴だって勘違いし始めた」
レナ「…」
圭一「好奇心で、買ったエアガンを、初めは段ボール。次は空き缶。…そして最後には…」
レナ「…」
圭一「…自分よりも弱い、幼い女の子を狙った…!!」
レナ「…!」
圭一「…毎日、毎日。夜になると家を出て、一人でいる子供を狙った」
レナ「…」
圭一「撃った。当てた。…今だに、その感触は消えない」
レナ「…圭一君…」
圭一「…ある日、いつものようにエアガンを向けて、子供を襲った時」
レナ「…」
圭一「その子の目に、当たったんだ」
レナ「…」
圭一「血を出して泣きじゃくるその子を見て、駆け寄ろうとしたけど、集まってくる人達を見て恐ろしくなって、逃げた」
レナ「…」
圭一「…次の日から、警察が周りをうろつくのを見て、震え出した。ようやく自分のしたことがどれだけクズなのかって理解出来た」
レナ「…」
圭一「…事件が起きて数日。やっと自白した」
レナ「…」
圭一「…親父は何も言わずに俺を殴りまくって、被害者の家に連れて行った」
レナ「…」
圭一「許してくれるわけがなかった。色んなものを投げつけられて。額から血が出ても、親父は土下座し続けた」
レナ「…」
圭一「莫大な慰謝料と、治療費を払って、それでも親父は毎日謝りにその人達の家に行った」
レナ「…」
圭一「…親父は自分を責めてた。自分が構ってやれなかったからだって…!!」
レナ「…」
圭一「そんな事ない…!!そんな事ないんだ!!!!」ダンッ
レナ「圭一君…」
圭一「…それで、ここなら過ごしやすいって、親父が連れて来てくれたんだ」
レナ「…」
圭一「…これが、俺なんだ。クズで、大馬鹿野郎なんだ…!」
「前原君」
レナ「!」
圭一「…えっ?」
「…!」グイッ
圭一「!」
「…ッッ!!!」バッチィン!!
圭一「!?」
知恵「…」
圭一「…!」
知恵「…前原君」
レナ「…ち…」
圭一「…知恵…先生…」
知恵「痛いですか?」
圭一「…」
知恵「痛いですか!?」
圭一「…はい」
知恵「…先生も、手が痛いですよ」
圭一「…」
知恵「それだけ力を入れて叩きましたから。痛いに決まってるじゃありませんか」
レナ「…」
知恵「痛いのなんか、先生だって嫌です」
圭一「…」
知恵「痛みを感じない、一方的なやり方なんて、ただの暴力です。犯罪です」
圭一「…」
知恵「貴方を本当に叱ってくれるのは、きっと親御さんだけだったんでしょう」
圭一「…はい」
知恵「だから、私が叱ります。私も叱ります。まだ貴方は分かってないようですから」
圭一「…」
知恵「貴方を殴った親御さんの手が、心が、どれだけ痛かったのか!!」
圭一「…はい…!」
知恵「…これからは、人の上に立つ、のではなく…」
圭一「…」
知恵「…人の役に立つ人に、なって下さい」
圭一「…ごめん…なさい…!」
知恵「…」フーッ
圭一「…ごめんなさい…」
レナ「…圭一君…」
圭一「ごめんなさい…」
レナ「…」ギュッ
…。
大石「…おんやぁ。こりゃ私達が出る幕じゃありませんねぇ」
熊谷「…」
校長「…彼女がどうして、ここに来たと思いますか?」
大石「そりゃまたどうしてでしょうなぁ…」
校長「この学校が、取り壊しになる事が決定になった時、彼女一人が大反対したんです」
大石「ほぉ…」
校長「子供達の学び舎は、そんな簡単に壊して良いものではない、と」
大石「…」
校長「一人でデモなんてのもやらかしたらしいですよ」
熊谷「それデモじゃないですよね」
校長「色んな都市伝説が蔓延るこの雛見沢村は、教員が来たがらないもので…参っていたんですがね」
大石「…ええ。私もよー…く知っていますよぉ」
校長「彼女が、立候補したんですよ。色んな学校からお呼びがかかる程の方だったのに」
大石「えぇえぇ。教鞭の執り方…というより………ええ」
校長「…」
大石「何より、男性職員が放っておかないでしょうなぁ」
校長「…ウォッホン!!」
大石「ああこれは失礼しました…ええ。本当に…」
熊谷「…」
校長「…彼女がいれば、どんな生徒でも大丈夫でしょう」
大石「このご時世、ああいう生徒と真っ直ぐ向き合う先生なんてドラマの中だけだと思ってましたよぉ」
校長「…」
…。
「…!」
茜「…」
「…!!」
茜「…上納金回収、そして間宮リナの捕獲…」
鉄平「…」
リナ「…」
「…へい…!」
茜「良くやったねぇ。良くやった」
「…へい…」
茜「…電話が鳴ってたよ」
「へい。…へいっ!?」
茜「待てど暮らせど、北条鉄平とお前が来ないってねぇ…」
「おうっ…!」
茜「何してんだと思ったら二人とも埃まみれで、オマケが二人に北条鉄平は上半身裸」
富竹「…」
茜「何処だかの組織とドンパチやって、人助け。ああ立派なもんじゃないか」
「…!」パァァ…
茜「それとこれとは話が別だけどねぇ!」スパァン
「ですよねッッッ!!」
茜「…何だい何だい。そんなジェームズ・ボンドみたいな話引っさげて…ええ?」
「…そ、それが、どうやら本当の話らしいんです!本当の!!」
茜「そのカメラ小僧の何をどうやって信じろってんだい」
「本当なんですよ!!俺ら銃で撃たれそうになったんですよ!?なぁ!?」
鉄平「お、おう!ホンマじゃ!ホンマなんじゃ!!」
茜「…まあ、嘘ならもっとマシな嘘つくだろうからねぇ…」
鉄平「…わ、分かっとる!ワシは今すぐにでも罪滅ぼしに向かう!いくらでも働く!」
茜「…何なんだいこりゃ…何がどうなってるんだい…」
「で、ですから説明した通りで…!」
茜「…葛西!!」
葛西「…」ヌッ
「ヒイッ!?か、葛西…さん…!!」
葛西「…」
茜「こいつらが本当に嘘ついていないか、見てやんな」
葛西「…」ギロッ
「ヒイッ!?」
鉄平「!?」
リナ「ヒッ…」
富竹「…」
葛西「…」
富竹「…」
茜「…あら。カメラ小僧にしちゃあ度胸あるじゃないか。葛西と目ェ合わせてもビクともしないのかい」
富竹「…何度も死にかけたんだ。ただの脅しなら慣れたものだよ」
「バッ…!お前!」
葛西「…」
富竹「真実を見抜いてくれると言うなら、真っ正面から向かい合うのがこっちの筋だ!!」
茜「…ほーう…」
葛西「…」
茜「…良い事言うじゃないか。ええ?」
富竹「…」
茜「…」
葛西「どうやら、嘘は言っていないようです」
茜「…そうかい」
茜「はー…嘘はついてない…か…」
「へ、へい!」
茜「…まあ、それでその二人の罪がどうのこうのって訳じゃないけどね」
鉄平「…」
リナ「…」
茜「…ま、チンピラもアバズレも、堂々と詫び入れに来たのは褒めてやるよ」
リナ「…」
茜「…だが、罰は与えるよ。示しがつかないからね」
リナ「…はい」
茜「…さー…て…」
…。
チェイス『…魔進チェイサー。今はそれで良い』
茜『…何でも良いさね。…随分荒らしてくれたじゃないかい…!』
チェイス『命を守る為だ』
茜『へェ…?…そりゃ、「どっちの」だい?』
チェイス『全てだ。北条鉄平。沙都子。魅音…』
茜『…』
チェイス『…お前達もだ』
…。
茜「…はー…」
葛西「…」
茜「…どうやら、繋がったねぇ…」
鉄平「…?」
茜「否が応でも関わることになっちまったよ」
葛西「…例の…」
茜「ああ。全く…」
富竹「…じゃあ…」
茜「ウチらのシマで勝手な事はやらせないよ」
富竹「!」
茜「全部聞いてんだろ!!魅音!!」
富竹「!魅音ちゃん…!」
魅音「…」
茜「アタシには決定権は無い。決めるのはアンタだよ。魅音」
魅音「…」
葛西「…」
茜「どうすんだい?このままじゃこいつらの言う通り鷹野とかいう奴にみんな殺されちまうらしいよ」
鉄平「…」
茜「アンタのお友達もだ。…んで大好きな子もだ」
魅音「ン゛ブッフゥ」
リナ「・・・」
茜「…というより、これで何もしなけりゃアタシが許さないし、現当主もお怒り心頭間違い無しだよ」
魅音「…決まってるよ」
茜「…」
富竹「…!」
魅音「…一人でダメなら、二人」
茜「二人でダメなら、四人…」
魅音「…それでもダメなら、百人」
茜「いーや、二百人だ」
魅音「…」
富竹「…」
魅音「…これは園崎のメンツをかけた大一番の勝負だよ」
茜「ああ、そうさ」
魅音「…決まってるでしょ…」
鉄平「…」
リナ「…」
魅音「…全面戦争だよ!!!」
…。
……。
鷹野「…」
小此木「…あーあ。どうするんです?根城がやられちまいましたぜ?」
鷹野「…怪我人は?」
小此木「ま、奇跡的に俺一人ですかね。頭ぶん殴られちまった」
鷹野「…そう」
小此木「そうじゃなくて。このままじゃ必ず園崎の耳に入ると思いますがね」
鷹野「…止まれないのよ。私達は」
小此木「…まあこっちも金貰っちまった以上、任務は遂行しますよ」
鷹野「なら、分かってるでしょう?」
小此木「…あー…はいはい。おい。聴こえてるか?こちら小此木。どうぞ」
『小此木隊長。どうされましたか?』
小此木「アジトがやられた。もう構うことはない」
『…』
小此木「死因なら後で考える。ちょいと予定が早まったが、決行だ」
『了解』
小此木「…」
鷹野「たかが村単位のヤクザがプロの精鋭部隊とやり合うだなんて、言ってくれたものよねぇ」
小此木「あんまアテにせんで下さいよ。あっちだって丸腰じゃねえんですから」
鷹野「数なら負けてるかもしれないけど、貴方達なら一人で五人くらいの戦力にはなるでしょう?」
小此木「こりゃまた買い被っちゃって…」
鷹野「…狙いは、古手梨花。それ以外は殺しなさい。全て」
小此木「はいはい。…女子供もいるんじゃないですか?」
鷹野「構わないわ。全員殺しなさい。元々そういう予定なんだから」
小此木「そうでしたっけねぇ…では、「アレ」は?」
鷹野「準備しておいて。万が一にも生存者は出してはいけない」
小此木「はいよ。…まるでゴキブリ扱いですねぇ…」
鷹野「…うるさいわよ」
小此木「おお怖い怖い。じゃ、俺らの本業と行きますかねぇ…!」ポキポキ
鷹野「…お爺ちゃん…」
小此木「…」
鷹野「見ていて下さい…」
小此木「…」
鷹野「私が、神になるその瞬間を…!!」
第12話 終
続きまた出来たら書きます
…。
りぃぃぃかぁぁぁあああ!!
『はにゅー!やっと戻ってきたのです!』
何処に…何処に行ってたのですかぁ!!心配したのですよ!!
『ごめんなさいなのです。でも、とっても不思議な体験をしたのですよ。にぱー』
不思議な体験…?
『はいなのです。そこは、はにゅーに触れる世界なのでした』
…触れる事が不思議というのもなんですが…それは一体?
『それと、ボクとそっくりだけど、ボクよりも大きい、名前も一緒の梨花という人に出会ったのです!』
…?
『そこには、色んな仲間がいて。いっぱい遊んでもらったのです!』
…は、はあ…。
『これで絵日記は決まりなのですよ!』
…いや、後30日分どうするのですか!!それで全部乗り切るつもりですか!!
『にぱー☆』
あああ…梨花の学校でのキャラがどんどん固定されていくのですぅ…。
…。
羽入『…』
羽入『…あ』
羽入『…ああ…』
羽入『…そういえば、もう…』
羽入『…誰も、いないのですね…』
羽入『…』
羽入『…梨花…』
羽入『…貴方が幸せなら、ボクはそれで良いのですよ…』
羽入『…貴方には、沢山の仲間と、強い味方達がいるのですから…』
羽入『…ボクとの時間は、もう終わりなのです…』
羽入『…』
羽入『…よろしくお願いします…』
羽入『…チェイス…』
『ちょっと待った』
羽入『びゃっ!?』
?『すまない。驚かせるつもりではなかったが…聞き捨てならない単語があってな…』
羽入『え…えっ?』
?『お前は今、チェイス。と言ったか?』
羽入『…は、はいなので…うひゃあ!!火の玉なのです!!幽霊なのですうううう!!』ブンブン
?『待て!!消そうとするな!!何をする!!』
羽入『だって!!だって!!怖いのです!!!』
?『俺は敵ではない!!お前を攻撃したりしない!!』
羽入『うぐ…あうう…』
?『…チェイスの事で、詳しく話を聞きたい』
羽入『…?』
?『あいつが生きているなら、一目くらいは会っておきたい』
羽入『…貴方は?』
?『あいつの…古き、友だ』
羽入『…?』
?『俺とあいつは、元々仲間…いや、仲間だったかどうかは怪しいな』
羽入『…』
?『…洗脳して仲間にするなど、本当はダメなんだ』
羽入『…!もしや…貴方は…』
?『…そうだ』
羽入『…でも…その姿…』
?『…人間との決着をつけようとしたが、ダメだった』
羽入『…?』
?『共通の敵を倒し、最後の戦いに臨んだが…既に俺の体は限界だったようだ』
羽入『…人間というのは…あの、方ですか』
?『そうだ。俺の…人間の友達だ』
羽入『…』
?『…そして生き返ったんだがな』
羽入『は?』
?『俺にも分からない。何故か再び現世に呼び出され、そして復活した』
羽入『…?』
?『どうやらお呼びではなかったようだが…そこで俺は人間と組むことになった』
羽入『…』
?『かつての俺の仲間…それの模造品。いわば亡霊と戦ったんだ』
羽入『亡霊…』
?『しかし復活したとは言ってもその肉体は俺の力を発揮するには十分ではなく、一度は負けてしまった』
羽入『…』
?『そこで俺は、人間の力を借りる事にした』
羽入『…』
?『皮肉なものだと思ったよ。人間を超える筈が、人間に助けられてしまった』
羽入『…そんなこと…』
?『いや、それで良いんだ。そうじゃないとダメだった』
羽入『?』
?『俺は人間を超える。超えられるとばかり思っていたんだが、足りないものがあったんだ』
羽入『足りない…もの?』
?『そうだ。分かるか?』
羽入『…』
?『…「分かる」ことだ』
羽入『…??』
?『相手を倒したい。超えたい。そればかり思っていては、何も始まらない。人間を知り、分かる事が必要だったんだ』
羽入『…』
?『俺達は個人主義者の集まりとばかり考えていたが…それは違った』
羽入『…』
?『人間の悪意を植え付けられ、その恨みだけで動いていたに過ぎなかったんだ』
羽入『…』
?『だが、奴らは違った』
羽入『…』
?『俺達を理解し、向き合い、分かり合おうとしてくれたんだ』
羽入『…』
?『…今思えば、それが簡単に出来る人間に、俺達が勝てる訳もなかったな…』
羽入『…』
?『…』
羽入『…人間でありたいと、思ったのですか?』
?『…』
羽入『…』
?『…それは、無いな』
羽入『…』
?『確かに俺達は作られた存在だ。ただのロボットだ』
羽入『…』
?『だが、確かに仲間は居た。全ての感情を共に分かち合える仲間が居た』
羽入『…』
?『例え作られた存在であっても、寂しくはなかった』
羽入『…』
?『後悔は、していない』
羽入『…』
?『それに、今も一人ではない』
羽入『…?』
?『…お前は、一人なのか?』
羽入『…今は、一人なのです』
?『…何故だ?』
羽入『…話すと、長くなりますですよ』
?『構わない。俺で良ければ話せ』
羽入『…』
…。
……。
?『…そうか。そうだったのか…』
羽入『…ボクの力では、二人を戻すことが限界だったのです』
?『…確かにチェイスならば、何の迷いも無くそちらを選ぶだろう』
羽入『…ボクのせいで、チェイスはもう元の世界には戻れなくなりました』
?『いや』
羽入『…』
?『例えお前が拒んでも、チェイスは行っただろうさ』
羽入『…』
?『そういう、男だからな』
羽入『…チェイスは、今でも敵だと思いますか?』
?『…』
羽入『…』
?『今も昔も、俺にとっては友だ』
羽入『…戦っていたのに、友なのですか?』
?『今では、ということだ』
羽入『…』
?『全てが終わった今、もう争う理由はない』
羽入『…』
?『そして、今』
羽入『…?』
?『俺が奴にしてやれることは、これくらいだ』
羽入『…?』
?『受け取れ。そしてこれをチェイスに届けてくれ』
羽入『…!これは…』
?『チェイスなら、きっと使いこなせる筈だ』
羽入『…でも、もうボクには力が…』
?『…出来るさ。俺達の力を使えば』
羽入『…え?』
?『…全く、貴方という人は…』
羽入『え!?こ、今度は緑の火の玉なのですぅ!!!』
?『ああもう!!耳元で大きな声を出さない!!』
羽入『ひぃっ!?』
?『女の子に食ってかかるなんて…相変わらず粗相の無い男ですわね』
羽入『ひいい!!白!!白いぃ!!』
?『あら…ごめんあそばせ』
…。
羽入『…そ、そうだったのですね。貴方達が…』
?『ええ。…ま、本来何の関係も無い貴方に手を貸すのは不服ですが…』
羽入『…』
?『俺達は死んだとばかり思っていたが、コア・ドライビアのエネルギーがまだ微量に残っていたらしい』
?『こうして話す事くらいは出来ますのよ』
羽入『…そのせいで、一度は復活したのですね』
?『もうこの世界には未練などありませんので、残りのエネルギーを全て使い切って、一刻も早く立ち去りたいんですよ』
羽入『…でも、ボクの力と貴方達の力は、別では…』
?『貴方、私達のエネルギーを電池か何かと勘違いしてませんか?』
羽入『…てっきりゼンマイかと思ってたのです…』
?『・・・』
?『…まあ、良いですよ。構造を説明したところで貴方の空っぽの頭では理解出来そうにありませんから』
?『コア・ドライビアの力を使えば、人の怪我を治す事も可能なんですのよ』
羽入『そ、そんなに科学は進歩してるのですか…!』
?『…タイムスリップなんてものこそ、どうかしてますけど…』
羽入『…試して、頂けるのですか?』
?『ああ。だが恐らくお前を送り込むのは無理かもしれない』
羽入『…では、どうやって…?』
?『出来ることは、「穴」を開けることくらいだ』
羽入『…!』
?『それであいつに、贈り物をしてくれ』
羽入『…』
?『紛い物の姿ではなく、本当の姿にしてやってくれ』
羽入『…』
?『それがあれば、きっと奴はその雛見沢村とやらを救える筈だ』
羽入『…分かりました』
?『契約成立。ですわね』
?『私はそんなつもりは毛頭!!ありませんけど…ンね!』
?『でしたらずっとここで一人朽ち果てていけば良いと思いますわ』
?『やる!!やります!!やらないとは言ってないでしょう!?』
羽入『…』
?『ははは。お前達は変わらないな…』
羽入『…』
?『…こうして、共に逝けるのなら、死ぬのは怖くない』
羽入『…』
?『だから、気にするな』
羽入『…』
羽入『…では』
?『…』
羽入『…お願いします。ハート』
ハート『ああ。行くぞ。…ブレン』
ブレン『はい。今度は一緒ですね。ハート』
ハート『…メディック』
メディック『はいですわ。ブレンは置いといて私と共に…』
ブレン『私!!私こそ!!ハートに相応しい!!!』
メディック『眼鏡の無いブレンなんて屋根の無い家と同じですわ』
ブレン『な、何ですって!!この眼鏡が見えないんですか!!』
メディック『何も見えませんわ。あの眼鏡かけ機は何処に行ったのでございましょう?』
ブレン『キー!!!』
羽入『・・・あの』
ハート『…個人主義者の集まりだからな。いつもこんな感じさ』
羽入『…』
ハート『…頼んだぞ。羽入』
羽入『…はい』
ハート『お前の友と、俺達の友の為に』
羽入『…はい!』
12.5話 終
続きまた出来たら書きます
小此木「…」カチャカチャ
「…」カチャカチャ
「…」カチャカチャ
小此木「準備出来た者から配置につけ。全員が終わり次第作戦を遂行する」
「…はい」
小此木「…どうした?」
「…」
小此木「…どうした。言ってみろ」
「…今年、子供が産まれたんです」
小此木「…ああ。聞いたよ」
「…良い子に育ちますようにって、大事にしてやりたいって嫁も言ってました」
小此木「…」
「…どうして、この作戦に自分を呼んだんですか…」
小此木「…だが、終わればもう必死こいて働く必要は無いぞ」
「それで!何の罪も無い人や、子供達まで殺せって言うんですか!?」
小此木「…」
「…この仕事が終わって、幸せに暮らせるんですか…!?」
小此木「…」
「俺は、暮らしていけるんですか…!?」
小此木「…一つ。言えることがある」
「…」
小此木「…少なくとも、死んだ後は別々になるだろうよ」
「…!」
小此木「だが「そっち」に行くのはお前だけじゃあ、ない」
「…」
小此木「俺達全員、永遠に暗闇を彷徨う事になるだろうさ」
大石「…ふーむ…」
熊谷「やはり限られたとは言っても、山の中から一つの建物を探すのは至難の技ッスね…」
梨花「みー…どの山かは分かったのですが…」
大石「…応援を頼めれば頼みたいものなんですが…何にしても時間が足りない」
熊谷「応援を頼めば、上からヘリで行けそうなモンなんですけどね…」
チェイス「手続きか」
大石「手続きは、許可が降りてからですね。その上今回は人が出払っている状態ですから」
チェイス「…」
大石「こういうのは兼ね合いというものがありますからねぇ」
熊谷「それに興宮署の署長は頭の固い人間でして。…ええまあ…」
大石「私との関係は良好とは言いづらいんですよぉ。参りましたねぇ」
チェイス「…」
大石「住む世界が違うと面倒なことになるんですよ」
チェイス「(出会った時の俺と剛のようなものか)」
?「みんなぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」ダダダダダ
チェイス「!」
大石「!」
熊谷「!?」
魅音「ハーッ…ハーッ…」
チェイス「…魅音」
魅音「…あ、あの!!け、圭ちゃん達は!?」
チェイス「…なk」
レナ「魅ぃちゃん!?」
圭一「魅音!!」
チェイス「…」
詩音「あ、お姉」
魅音「…そ、それが…って圭ちゃん!?その顔何!?パンパンなんだけど!?」
圭一「えっ…あ、ああいや…」
魅音「だ、大丈夫?それ…」
圭一「これは…」
魅音「…」
圭一「…懺悔…」
魅音「…?」
レナ「そ、それより魅ぃちゃん。何があったの?」
魅音「…う、うん!それがね?北条鉄平が自首してどこかの山からリナと富竹さんを連れてきて鷹野さんがヤバイの!!」
詩音「え?何何何何何!!!?」
…。
圭一「…やっぱり…」
レナ「…」
魅音「…レナに手を出したって事は、どうやらクロで間違いないみたいだね」
大石「成る程…育ての、亡き親の研究を世に知らしめる為に…」
チェイス「…いずれにせよ。止めるべきだ」
入江「…そうですね。何があっても人を殺すなんて…」
チェイス「…それだけではない」
入江「?」
大石「今回の件で恐らく鷹野さんを刺激してしまったことは間違いないでしょう」
入江「…!」
魅音「…そうだね。計画を早める可能性も高い」
大石「高い。ではなく間違いなく早めるでしょうな…」
魅音「…」
詩音「…話を聞いていると、まるで御伽噺のようで…混乱してきましたよ」
魅音「詩音。冗談言ってる暇無いよ。こうしてる間にもあいつらは準備を整えてるはずだから」
チェイス「しかし早める、ということは準備が万端というわけではない」
圭一「むしろ、出来合いで固めた可能性も…」
大石「その通りですよ。結果的に彼らは今追い詰められた袋のネズミ。しかしそのネズミもその気になれば、という話です」
梨花「なりふり構わず、来るということですか?」
チェイス「魅音や大石の言う通りならば、今この瞬間に武装集団がなだれ込んでくる可能性もあるということだ」
大石「こちらは何も準備していませんからねぇ…」
魅音「…で、だよ」
大石「はい?」
魅音「…まあ、どうしてここに警察官様がいるのかは良いよ。呼んじゃったんだし」
大石「おんやぁ…年寄りなんですから、もう少し労って欲しいですねぇ…」
魅音「…人数なら、出せるよ」
チェイス「…」
梨花「…!」
大石「…」
魅音「協力が必要っていうなら、私が何とかする」
圭一「…それって…」
知恵「…」
大石「…ふ…ぬはっはっはっは!!これは…聞いたことがありませんねぇ!」
魅音「…」
大石「…本来敵対関係にある警察と貴方達が手を組む、というのは…」
梨花「でも、迷ってる暇はないのですよ」
大石「…こりゃ、始末書じゃ済まないかもしれませんよ?熊ちゃん…」
熊谷「…抗争に手を貸すようなものですからね…」
圭一「そ、そんなの俺達がいます!証人になります!!」
知恵「私達がいくらでも証言します!貴方達は無関係だって!」
大石「…お心遣い、ありがとうございます。ですがそんな単純なことじゃないんですよ」
魅音「…」
大石「恐らく死人も出るかもしれないこの大一番。市民の命を守る立場の私達がそれに手を貸すということは、警察としては言語道断なんですよ」
チェイス「…」
魅音「…手を貸さない…って事で良いんですか?」
大石「…」
熊谷「…」
知恵「…!」
魅音「つまり、貴方達はこの死人も出るかもしれない大一番に見て見ぬ振りをする、と」
沙都子「…」
魅音「…尻尾を巻いて逃げる、というわけですね?」
大石「…」
詩音「お姉、そんな言い方…」
魅音「詩音は黙ってて」
詩音「…」
魅音「…」
大石「…ふむ」
チェイス「…」
大石「…流石、園崎のお嬢さんは気合が入っていますねぇ。ウチの若手に見せてやりたいくらいです」
梨花「…」
大石「そうですねぇ…今の警察は、確かに臆病かもしれません。ルールに縛られ、上からの圧力に怯え…」
圭一「…」
大石「ただ、訂正して頂きたいものです」
魅音「…」
大石「全員がそうというわけではない。熱い魂を持った者も、確かにいます」
梨花「…!」
魅音「…ですが、ルールに縛られt」
大石「警察というものは!!!」
詩音「!?」
魅音「…ッ!」
大石「制服を着ていなければ…手帳を持っていなければいけないというものではない」
圭一「…大石さん…」
大石「…」スッ
魅音「!」
詩音「…それ、警察手帳…?」
大石「「これ」に縛られるなら、その鎖を解けば良いだけです」
梨花「・・・」
大石「私は…私の魂は…」
魅音「…」
大石「例え「これ」が無かろうと、警察であることには変わりない!!!」
知恵「…」
大石「真の警察というものは、生まれながらにして警察であるものです…!」
熊谷「…」
魅音「…つまり…」
大石「…ここから先は、私は刑事ではなく、大石蔵人として行動しましょう」
魅音「…」
熊谷「大石さん」
大石「?」
熊谷「…」スッ
大石「…おや」
詩音「…あら…」
大石「…良いんですかぁ?貴方、まだ先は長いんですよ?」
熊谷「…何言ってんスか」
大石「…」
熊谷「…誰の背中見て、ここまで着いてきたと思ってんスか…!」
大石「…そう…ですかぁ…」
梨花「…」
大石「私…良い後輩を持ちましたねぇ…」
チェイス「…決まったか」
大石「ええ。私達も持てる力は最大限発揮するとしましょう。定年までに雛見沢に関する事件は全て解決したいものですから」
魅音「…感謝します」
大石「お気になさらず。協力しているのはただのおじさま二人ですから」
レナ「…それじゃあ…」
魅音「うん。向こうがもう準備を始めてるっていうなら、こっちも始めるよ」
詩音「…相手のターゲットは村人全員…」
レナ「じゃあ、避難を…!」
チェイス「それは無理だ」
レナ「え…」
チェイス「相手のアジトは山にある。その中を掻い潜って雛見沢から出すのは不可能だ」
圭一「…じゃあ、せめて家の中にいてもらえば…」
大石「それも良い案です。…あ、園崎魅音さん」
魅音「…?」
大石「一つ、やってもらいたいことがあるんですよぉ…」
魅音「…は、はぁ…」
鷹野「…」
小此木「鷹野三佐。準備整いました。村人に扮した者もいつでもOKだそうです」
鷹野「…そう。なら始めて」
小此木「…その前に」
鷹野「…何?」
小此木「…この仕事が終わった、後の話ですが…」
鷹野「ええ。成功の暁には貴方達全員、これから一生余裕のある生活を約束するわ」
小此木「それは、聞きました」
鷹野「…何かしら?」
小此木「…この作戦には、所帯を持つ奴もいます」
鷹野「なら安心しなさい。その分も…」
小此木「この村の子供とそう変わらない年齢の子供がいる奴も、います」
鷹野「…それが?」
小此木「俺だけなら構いませんが、何故こいつらをこの作戦に参加させたんです?」
鷹野「決まってるじゃない。精鋭部隊を作るんだから、隊員もそれに見合った人間でないと」
小此木「…」
鷹野「珍しいのねぇ。仕事第一の貴方がそんな事、聞くなんて…」
小此木「…(皮肉なもんだと、思っただけだよ)」
鷹野「…」
小此木「(お国の為、市民の為、鍛え上げた筈の力をその市民を殺す為に使うなんてな…)」
小此木「…こちら小此木。最終確認を行う」
『はい』
小此木「ターゲットは村人全員。一人たりとも村から出すな」
『…はい』
小此木「写真で見せた子供、古手梨花は殺すな。無傷で捕獲しろ」
『はい…』
小此木「諸君らには、この作戦が終わった後、遠方への異動、あるいは退職。どちらかを選んでもらう」
『…』
小此木「報酬は一人1億2千。好きに使ってもらって構わない」
『…はい』
小此木「尚、諸君らには金銭だけでなく、精神面でも手厚い保護があることを約束する」
『…』
小此木「尚、首筋に赤線が描かれている者は仲間だ。絶対に狙うな。今奴らはそれぞれの家の中で準備させている」
『…はい』
小此木「言い聞かせろ。村人を人と思うな。情を殺せ。これからの生活の為に」
『…はい』
小此木「…終了の合図は青。緊急事態は赤の信号弾を上げる。以上だ」
『…はい』
小此木「では、作戦にかかれ!!」
『…了解…しました…!』
小此木「…」フー
鷹野「…貴方は、行かないの?」
小此木「…誰かは知りませんが、逃げられた以上ここの人間に知られちまったと思った方が良いでしょう。となりゃこっちも無傷じゃ済まねぇ」
鷹野「…」
小此木「万が一、億が一、一人でも誰かが三佐の前にやってきた時、誰が守るんです?」
鷹野「…自分の身くらいは…」
小此木「守れねぇから、そんな足になっちまったんでしょう?」
鷹野「…」
小此木「三佐の銃の腕が不思議なくらい下手くそっていうのは、俺達の常識ですぜ」
鷹野「…」
小此木「普通、百発撃ちゃ一発は当たる筈なんですがね。貴方のは掠りもしない」
鷹野「…どうしてかしら…」
小此木「訓練を一度もやらないから…ってだけじゃねえでしょう。…まあ三佐は前線に出ませんからどうでも良い事ですが」
鷹野「…」
小此木「それと、富竹ジロウですが…」
鷹野「分かってるわ。殺して頂戴」
小此木「…女っていうのは、ドライですねぇ…」
鷹野「…元々、そうじゃなかっただけよ」
小此木「そういう風には、見えませんが?」
鷹野「…」
鷹野「…ジロウさんとは、学校で知り合ったのよ」
小此木「同期…ですか」
鷹野「ええ、そう。…誰とも話そうとしなかった私に、一番初めに心を開いてくれた男の人よ」
小此木「…誰に対しても、分け隔てなく接する。っていうのはこっちでも変わらねぇ…か」
鷹野「…勉強を教えたり、休日は野鳥を撮影しに行ったり…」
小此木「…今でも、そうだったんじゃ?」
鷹野「…」
小此木「…演技じゃあ、ねぇんでしょう?」
鷹野「…」
小此木「俺は、報酬が貰えりゃそれで構いません。綺麗事なんて知ったことじゃあ、ない」
鷹野「…だったら、何かしら」
小此木「しかし、このままこの作戦を終わらせた時、三佐がどんな顔してんのか想像もつかないもんで」
鷹野「決まってるじゃない。私は…」
小此木「高野一二三に全てを捧げた三佐、富竹ジロウに心を開いた三佐」
鷹野「…!」
小此木「…本当の貴方は、どっちなんです?」
鷹野「黙りなさい!!」
小此木「…」
鷹野「貴方達はただ、仕事をすれば良いの!!それで全てが上手く行くの!!」
小此木「おお怖い怖い…与えられた職務は着実にこなしますよ」
鷹野「何がこなす、よ…発砲音すら聴こえないじゃない!」
小此木「誰が丸裸で撃ちますか。わざわざここに居て撃ちますよって知らせてるようなもんでしょうに」
鷹野「…ッ」
小此木「心配せずとも、もう少ししたら信号弾が上がりますよ。向こうだっていきなり来られちゃ準備もクソもないでしょう」
鷹野「…」
『パシュッ』
小此木「ほら」
鷹野「…そうね」
小此木「…上がっ…」
鷹野「…」
小此木「…あ?」
鷹野「…何が、着実にこなす…なのかしら?」
小此木「…」
鷹野「貴方、アレが何色に見えるの?」
小此木「…何…で…?」
『小此木さん!!小此木隊長!!』
小此木「おい!!何があった!!説明しろ!!」
鷹野「どう見たって、赤じゃない…!!!」
『そ、それが…!!』
小此木「何だ!!!」
『…村人が、誰一人いないんです!!』
小此木「・・・」
鷹野「・・・」
『家の中もくまなく探しました!!しかしもぬけの殻です!!』
小此木「…な…」
鷹野「…」
小此木「…何だ…そりゃ…」
鷹野「…まさか…」
…。
【約1時間前】
大石「園崎魅音さん。これを」
魅音「?これ、何?」
レナ「…○○さん…○○さん…あれ?みんな、この村の…」
入江「そのリストにある人間は、全て鷹野さんの仲間です」
魅音「はっ!?」
大石「やはり内情を知る方がいると心強い。先手を打てますからねぇ」
魅音「えっ!?…こ、この人も!?昨日話した分…」
チェイス「長く住むことで、住民達の心を開かせたんだろう」
魅音「…ホントに、この人達が敵なの…?」
入江「ええ。間違いありません」
圭一「この間まで普通に話してた奴が、銃を持って襲ってくるってことかよ…!」
入江「彼らは特殊な教育を受けています。その中でも、特に心理学に秀でた者達が村人に選出されたんです」
沙都子「…随分大掛かりな事をしたものですわね…」
大石「…時間がありません。このリストに書かれている者以外を、園崎の…いえ、何処でも構いませんので、見つからない場所へと避難をさせて下さい」
魅音「見つからない場所…」
詩音「…それなら、地下は?」
魅音「地下?…あ!地下!!地下だよ!!!」
詩音「ああもう耳元でやめて下さい!!!」
大石「何処でも構いません。園崎の人間を使えば村人は無条件で聞くでしょう」
魅音「…は、はい」
大石「戦うことよりも先ず、戦う為に環境を整えなければなりません」
魅音「!…はい!」
大石「それでは、よろしくお願いします」
魅音「分かった!!行ってきまーす!!」バビューン
チェイス「…間に合うか?」
大石「…分かりません」
圭一「魅音なら、絶対に大丈夫です!あいつはやる時はやってくれますから!」
知恵「私達も協力します!そのリストを…」
大石「…貴方達には別にやって頂きたいことがあります」
知恵「えっ?」
大石「魅音さんとは、逆の事をして頂きます」
校長「…!」
圭一「…そうか!そのリストの家の人間をとっ捕まえて…!」
大石「いえ。無理に捕まえようとすれば危ないのは此方です」
入江「…相手は訓練を受けた兵士ですからね…」
圭一「…じゃ、じゃあどうすれば…?」
沙都子「…おほ…」
圭一「…?」
沙都子「…おほほ…」
詩音「…沙都子?」
沙都子「おーっほっほっほっほっほ!!!」
レナ「…!そっか!沙都子ちゃんなら…!」
大石「おや?何か良い案が?」
沙都子「この私を何だと思っておりますの?ええ?左之助さん!!」
チェイス「小学生だ」
沙都子「年齢じゃなくってよ!!!」
チェイス「…?」
圭一「沙都子はトラップを仕掛ける天才だから!こういうのには最適ですよ!」
大石「…ほほぉ~…」
チェイス「…子供のイタズラで、奴らを足止め出来るか?」
沙都子「…ふっ」
チェイス「…」
沙都子「知らなくって?この私。数名程度なら小一時間あればその全てのお宅にありとあらゆるトラップを仕掛ける事が可能でしてよ?」
チェイス「その悪癖は治すべきだ」
詩音「ホントですよ」
沙都子「…何か恥ずかしくなるんでやめて下さいます…?」
梨花「それは成長の始まりなのですよ」
…。
小此木「入江所長か…!!クソッ!!」
鷹野「それしか考えられないわ。ジロウさんはあの男達が連れて行ったんだから…」
小此木「おい!村人班!!応答しろ!!」
『あ…お、小此木…隊長…』
小此木「何をしてる!!お前達はさっさと…!」
『い、いえ…!!その…出ようとはしたんですが…!』
小此木「何だ!」
『と、扉は開かないわ窓にはガムテープがビッシリ貼られてるわで…!』
小此木「銃で壊せ!!」
『壊しましたよ!!やったんです!!』
小此木「…あぁ?」
『そしたら…とんでもない量のネズミ捕りが…!!動けねぇ…!!』
小此木「…」
『他の奴らも…!!』
小此木「…山班。応答しろ」
『はい!』
小此木「村人が隠れそうな場所を当たれ。…それと、5人ずつで行動しろ」
『…りょ、了解』
鷹野「…」
小此木「…あの二人さえ逃がさなけりゃあ…」
鷹野「…私を責めてるの?」
小此木「…出資者にケチはつけませんよ。ケチは」
鷹野「…そう」
小此木「…」
…。
……。
魅音「…○○さーん!」
「はいよ」
レナ「○○おばさーん!」
「はいはい。おりますよって」
圭一「え、えと…○○さん!」
「はーい」
圭一「○○さーん!」
「…はい」
魅音「…っはー。以上…確認終了…!」
圭一「…しかし良くこんな入ったな。園崎はどれだけ土地持ってるんだよ。だだっ広い地下だなんて…」
魅音「あはは…ここ、昔は防空壕とか、兵隊さんの基地とかに使ってたって噂があるんだよ」
圭一「…いつまでも、隠れてられるか?」
魅音「外には頼れる見張りが着いてる。…大丈夫と思うしかないよ」
圭一「…でも、毒ガスってのをやられたら…」
魅音「分かってる。それまでに何とかする」
レナ「…沙都子ちゃん。大丈夫かなぁ…」
圭一「俺も途中で分かれるまでの間しか見てなかったけど、すっげえ楽しそうだったよ」
魅音「トラップはあの子の本領だからね。良い案だよ」
レナ「永遠に足止めするって言ってたけど、何かな?何かな?」
魅音「本気を出した沙都子の罠はとんでもないからねぇ…」
圭一「それにしたって、左之助さんや梨花ちゃんもついてる。大丈夫だろ」
レナ「…」
鉄平「…」
富竹「…」
魅音「…」
鉄平「…ワシがおるのは、気に食わんかったか?」
レナ「い、いえ…」
鉄平「心配せんでも、そう長くはおらん。様子を見て出て行くつもりじゃ」
圭一「!そ、それは…」
鉄平「…逃げるわけじゃのうて…」
魅音「そうではありません」
鉄平「?」
魅音「一人の死傷者も出さない。それが園崎の判断です」
鉄平「…ワシは、ここの村人じゃねぇ」
魅音「いえ。ここに来た以上、貴方もこの村の一員です」
鉄平「何じゃそら。住民票も無いっちゅうのに…」
魅音「貴方には、五体満足で居てもらう必要がありますから」
鉄平「…そういうことけ」
富竹「先ずは命を優先しましょう。それからの事は、助かってからです」
鉄平「…ふん」
圭一「…あ、あの」
鉄平「…?」
圭一「…初めまして。沙都子の、クラスメイトの…前原圭一って言います。最近越してきました」
鉄平「…ほうか」
圭一「…沙都子は、沙都子には、兄である悟史が唯一の心の支えでした」
鉄平「…」
圭一「…でも、最近は違った」
鉄平「…」
圭一「沙都子、言ってたんです」
鉄平「…何をじゃ」
圭一「…北条さんに、笑顔で居て欲しいって」
鉄平「…!」
圭一「…だから、本当は行って欲しくなかったって」
鉄平「…」
魅音「…」
圭一「…きっと、北条さんも、あいつの心の支えになれたのかも、しれないって…」
鉄平「…ほうか…」
圭一「…」
鉄平「…必死に生きて、這いつくばって…」
レナ「…」
鉄平「得たもんは…ガキの同情くらい…」
富竹「…」
鉄平「…尚更、行かんとな…」
魅音「…」
鉄平「無事に帰ってきて、少しでもでかくなったワシを、見せんといかん…」
圭一「…」
沙都子「おーほっほっほっほ!!見て下さいませ!あの方達、まるでゴキブリのようにもがいてますわよ!!」
梨花「みー。これで今年のボクと魅ぃの家はネズミとゴキブリだらけなのです…」
沙都子「命がかかってるんですのよ!!そんなもの後回しにして下さいまし!」
知恵「これで後は警察の方を呼ぶだけですね!」
大石「いやぁ…久しぶりに走りましたよぉ」
熊谷「ガムテープで窓を全て隠し、玄関前に大量のネズミ捕りを固定。それをバレずに、迅速にこなしてしまうとは…」
入江「相手は突然のアクシデントに思わず足を取られ、そして最後には身動きが取れなくなる…」
大石「大した才能です。将来が楽しみですなぁ」
沙都子「おーほっほっほっほ!これくらい朝飯前ですわ!」
チェイス「静かにしろ」
沙都子「ほっ」
校長「…皆さんは早く園崎さんの家に避難して下さい」
知恵「…」
入江「…!山狗の隊員が…!」
大石「…参りましたねぇ。相手は完全武装、こちらは丸腰です」
梨花「拳銃は持ってないのですか?」
熊谷「拳銃の形態には許可が必要ですから。自己の意思で勝手には持ち出せないんですよ」
大石「お陰様でこの通りですがね…」
チェイス「…大石。熊谷」
大石「はい?」
熊谷「?」
チェイス「皆を守り、園崎家へ走れ」
梨花「…!」
大石「…貴方は?」
梨花「…」
チェイス「…俺は、奴らを足止めする」
入江「え…」
熊谷「足止めって…相手は…」
校長「いえ。ここは左之助先生に任せましょう」
大石「…しかし」
知恵「市民を守るのが警察なんですよね?」
大石「…」
チェイス「安心しろ。俺はあの武器では死なない」
沙都子「…左之助さん…?」
大石「…了解しました!では…お任せしますよ!!!」
チェイス「…」コク
熊谷「皆さん、なるべく姿勢を低くして、足音を立てないように走って下さい」
沙都子「で、でも…」
梨花「行きますですよ。沙都子」
入江「…」
梨花「左之助は無敵なのです。あれくらいならボコボコなのですよ」
チェイス「…」
沙都子「…さ、左之助さん…!」
チェイス「…」
沙都子「…絶対、帰ってきて下さいませ…」
チェイス「…」コク
「…」ザッ
「…!おい!居たぞ!!撃て!!」
「ジジイを二人発見した!!」
校長「ジジッ…」
大石「!なっ…!?何故!!」
熊谷「腰低くしろって言ったでしょ!!」
校長「や、やろうとはしたんですが…」
大石「身体が言うことを聞いてくれなかったもので…」
沙都子「ちょっとおおおおおお!!!!」
梨花「腰痛くらい耐えなさいよおおおおおおお!!!!」
「撃て!!構うな!!」ビシュッ
「…!」ビシュッ
「!」ビシュッ
入江「しまッ…!」
『パァン!!!』
「えっ?」
大石「!」
チェイス「…」パァン!!!
熊谷「…な…」
チェイス「…」パァン!!!
「!!」
チェイス「…」シュウウ…
校長「…」
熊谷「…な、何だ…あれ…?」
大石「あれは…銃…?」
チェイス「…俺の前で、手は出させない」
「…こ、こいつ…」
「撃った弾を、撃って弾いた…?」
梨花「…」
沙都子「…え…?」
チェイス「行け。恐らく敵はこいつらだけではない」
大石「…!は、はい!」
熊谷「皆さん、行きますよ!!」
入江「…!」
チェイス「…」グッ
http://youtu.be/JIde65wVR54
梨花「…!!」
チェイス「…」ブンッ
『Break up』
沙都子「…。…!!」
知恵「北条さん!振り向かないで!!」
沙都子「…あ…」
梨花「…!!」
http://i.imgur.com/KD0kg9y.jpg
「!!?」
沙都子「…そんな…」
梨花「沙都子!!」
チェイス「…俺の名は、魔進チェイサー…」
沙都子「…」
「…!!」カチッ
「…ば、化け物…」
チェイス「…又の名を…」
「ヒ…!」
「化け物…!!」
沙都子「…!!」
チェイス「死神だ」
第13話 終
続きまた出来たら書きます
後多分2、3話で終わると思います
「逃がすな!!撃て!!」ビシュビシュ
「一人も村から出すな!!」ビシュビシュ
大石「ええい…こうなれば…!」ピタッ
熊谷「!大石さん!!」
「!ジジイが一人止まったぞ!!」
「撃て!!」
大石「熊ちゃん!!先生方!!私に構わず進んで下さい!!」
知恵「しかし!!」
大石「私の事は心配無用!!…ただし…」
校長「…!?」
大石「この家の方の修理代は園崎さんに請求願いますよ…!!」
知恵「!」
大石「行って下さい!!貴方達の手に雛見沢の未来がかかってるんです!!」
入江「…未来…!」
梨花「…」
熊谷「…分かりました!!でも絶対に生きて戻ってきて下さいよ!!」
大石「勿論です!!貴方には教える事がまだ山程あるんですからねぇ!!」
熊谷「…」
大石「…」
沙都子「…」
梨花「沙都子!もっと速く走りなさい!!」
沙都子「!は、はい…!」
梨花「今は自分達の命を優先しなさい!!」
沙都子「…」
入江「…彼は…彼は一体、何者なんですか!?あの姿は…!」
梨花「後で話すわよ!!そんな事気にしてる暇があったら走りなさい!!」
入江「えっ!?は、はいっ!!」
梨花「(あのバカ…!)」
梨花「(あれ程使うなって言ったのに…!)」
梨花「(…それでも使ったってことは…)」
梨花「(それだけヤバいって事じゃないのよ!!)」
チェイス「…」
「ば、化け物が…」
「まさか…これがオヤシロサマって奴か…?」
チェイス「俺は、オヤシロサマではない」
「…何でも良い。撃て!!撃ちまくれ!!」ビシュッビシュッ
「う、うわあああああ!!!」ビシュッビシュッ
「…!!」ビシュッビシュッ
チェイス「…」
「だ、ダメだ!!効いてないぞ!!」
「な…と、とにかく撃て!!撃つんだ!!足止めしろ!!直ぐに応援を呼ぶ!!」
チェイス「…」カシャッ
『Tune…Chaser…Cobra』
http://i.imgur.com/Gwqjccq.jpg
チェイス「…!!」ヴンッ
「うわっ!!」ビシッ
「ぐえっ!!」ビシッ
「…!チィッ!!」スッ
チェイス「…」ヴンッ
「!!」ビシッ
チェイス「…人間である以上、殺しはしない。だが…」
「…!」
チェイス「もしもこれで止まらないというのなら、多少の痛みは覚悟しろ」
「…ッ!!」
…。
「死ねっ!!」ビシュッ
大石「…ぬおっ!?」ササッ
「このっ!!」
大石「…ええい!」バリィン!
「あのジジイ!家に隠れやがったぞ!」
「チッ!!ジジイの癖にコソコソ隠れやがって…!」
「出てこい!!さもなくば家ごと破壊する!!」
大石「ジジイは関係無いでしょジジイは…!」
「…おい!!」
大石「…ん?」
「10数えている間に出てこい!!」
大石「…水筒…そうか!」
「10!…9!」
大石「…ポットは…ああ良かった。ありましたねぇ」
「8!…7!」
大石「…戦闘技術じゃ敵いません…が…」ポチャポチャ
「6!…5!」
大石「…如何せん、貴方達は手段が正当過ぎる…」カチ
「4!…3!」
大石「…場数はまだまだ足りないようですねぇ…」シュー…
「2!…1!…」
大石「…そお…れっ!!」ポイッ
「!出てきたぞ!!」
「この…!」スッ
「!お、おい!!待て!!撃つな!!!」
「えっ?」ビシュッ
「!!バッ…」
「…!!?水筒…!?」
『カッ』
「うわっ!!?」
「な、何だァ!!?」
「目が!!目が熱ッ…!!」
大石「ぬぅおおおおおおおお!!!」ダッ
「!」
大石「そおりゃあああああああああ!!!」ゴキィ!
「ぐわっ!!!」
「ぐえっ!!!」
大石「とおっ!!!」バキィ!
「がっ…!?」
「ぐおっ!!!」
大石「…」スッ
「…ぐ…こ、この…ジジイ…!」
大石「フリーズ」カチャッ
「…!」
大石「…そこまでですよ」
「テメェ…一体…」
大石「…そちらより、少しばかり生きてきた年数が違うものでして」
「…水筒…そうか…!」
大石「おかげでライター、無くなっちゃいましたよ。煙草が吸えませんね。これじゃ」
「即席爆弾…か…!!」
大石「…さて。貴方には聞かなければならないことがあります」
「…」
大石「まず、鷹野三四さんの居場所。それと貴方達のチームの人数…」
「…」
大石「答えないのならば、他の方に聞くまでです」
「…経験の違いってのは、あるもんだな…」
大石「…ええ。動けなくなった分、頭でカバーしなければなりませんからねぇ」
「…だがな、いくらそれだけ経験を積んでも…」
大石「?」
「…勝てないもんは、勝てないんだよ…!」
大石「…何を…」
?「…」
大石「ッ!!!」
?「…!」バキィ
大石「がはっ…!!?」
?「…ったく…結局また俺が出向く羽目になるのか…」
大石「…!…貴様は…!!」
?「…あー…あん時のジジイか…」
大石「…!」
小此木「…悪いな。こっちも仕事なもんでね…」
大石「…!!!」
小此木「…」ピ
大石「それは…」
小此木「悪いが俺達も自分の実力が素晴らしいだなんて思っちゃあ、いない」
大石「…?」
小此木「常に最悪のパターンを想定して動くのが隊長ってもんだ」
大石「…まさか!!」
小此木「あー、こちら小此木。応援を要請する。何人まで出せる?」
『雛見沢近くで、50人は待機している』
小此木「そりゃ助かる。全員送ってくれ。それと例のやつを頼む」
『了解。直ぐに向かわせる』
大石「!!」
小此木「どうやらそちらさんにはとんでもない切り札が潜んでたらしいが…」
大石「…!」
小此木「生憎俺達だってバカじゃない。兵隊は山狗だけじゃないんだ」
大石「そんな…」
小此木「…戦闘員を削りながら逃げるってのは、間違いだったな」
大石「…皆さん…!!」
小此木「こいつの始末は任せた。俺はあいつらの逃げた方向に向かう」
「はっ!」
大石「…逃げて…下さい…!!!」
梨花「ハァッ…ハァッ…」
沙都子「ハッ…ハッ…」
入江「!二人とも!」
知恵「園崎さんの家はすぐそこですよ!頑張って!!」
梨花「(追い詰められた状況に、全力疾走…!)」
沙都子「ハァッ…ハァッ…」
梨花「(女子小学生の身体には、堪えるわね…!!)」
熊谷「…ええい!」ガバッ
梨花「ひゃっ!?」
校長「ぬんっ!」ガバッ
沙都子「きゃっ!?」
校長「大丈夫!!」
熊谷「私達が、命をかけて守ります!!」
梨花「…二人とも…」
知恵「…お願いします!」
梨花「(…このまま行けば…!)」
「…」
「…ぐ…」
「い、痛ぇ…」
「…」
「…が…は…」
チェイス「…」クルッ
「…く、くそ…」
チェイス「…何故だ?」
「…」
チェイス「何故、お前達は無理をする?」
「…?」
チェイス「何故、そんな顔で撃つ?」
「…」
チェイス「そんな顔で、何故殺そうとする?」
「…」
チェイス「…」
「…俺達は…これが終われば、大金を手に入れる事が出来る」
チェイス「…」
「…それでも…だ…」
チェイス「…」
「…俺達の力は…こんな事の為にあるんじゃ…ないんだ!!」
チェイス「…」
「…国を…人を守る為に軍人になったんだ…!」
チェイス「…」
「…でも…これが終われば、家族を…」
チェイス「…血で薄汚れた金で、か?」
「…!」
チェイス「…」
「…そんなこと…分かってんだよ…!!」
チェイス「…」
「…綺麗事なんだよ…!そんなもん…!!」
チェイス「…例え綺麗事だとしても」
「…」
チェイス「…俺は、長く険しい道を選ぶ」
「…」
チェイス「その先にあるものが、間違いでない限り」
「…!」
チェイス「…」
「…」
チェイス「…む…」
『居たぞ!!化け物だ!!』
『小此木隊長の言ってた奴か!』
『足止めしろ!園崎家には行かすな!!』
「…!軍の奴ら…何十人いるんだ…!?」
『殺せるようなら殺せ!』
『相手は何をしてくるか分からんぞ!距離を取れよ!!』
「応援を頼んだのか…!」
チェイス「…!」
入江「うあっ!?」ビシィ
知恵「!!?入江先生!!」
入江「…ぐ…!!」
小此木「…ったく…変な情に流されやがって…」
校長「…!古手さん!北条さん!隠れて下さい!!」
小此木「おっと…おい!」
「動くな!!」
沙都子「ひっ…!」
梨花「…!」
熊谷「…キサマ…!!」
小此木「真面目なのは良い事だけどな。…組織に従えないってのは、宜しくないよなぁ…」
入江「例え組織からの命令であっても、決定事項であっても!!人の命を奪うなどと!!」
小此木「…アンタは医者だからな。そりゃそう言うだろうよ」
入江「医者だからではない!!人としてだ!!!」
小此木「…」
入江「貴方は間違ってる!!人の命に変えられるものなど何も無い!!!」
小此木「…」ビシュッ
入江「ぐあっ!!?」
熊谷「!!…やめろぉぉぉぉおおおお!!!」ダッ
「…」ビシュッ
熊谷「がっ…!!」
小此木「正義感だけじゃあ、食えねえ。そういうことだ」
入江「…!!」
熊谷「…!」
知恵「入江先生!!熊谷さん!!しっかりして下さい!!」
小此木「…まあ、良いさ。古手梨花以外は殺せとの命令だからな。悪いが全員ここで死んでもらう」
梨花「(…チェイスは何をしてるのよ…!!)」
小此木「…その前に、だ」
校長「…!」
小此木「…村の奴らがこの園崎の家にいる事は分かってるんだが…」
梨花「(早く来なさいよ…!!)」
小此木「…何処だ?」
入江「…!」
小此木「言えば…そうだな。その金髪のガキくらいは助けてやっても良い」
沙都子「!」
梨花「…」
小此木「どうする?本来なら一人残らず殺せとの命だが…」
入江「…そんな…!」
小此木「そのガキの命すらいらねぇってならそれまでだ。人海戦術で探せば良いだけの事だからな」
知恵「…!」
小此木「どうする?ここで答えて一人でも多くの命を救うか…それとも」
梨花「…!」
小此木「全員、ここで死ぬか」
梨花「…この…!」
沙都子「いい加減にして下さいまし!!」
小此木「…ん?」
沙都子「先程からまるで自分達が神にでもなったかのように振舞って…!何様のつもりでございますの!?」
小此木「…ああ。こりゃ失礼。お嬢様」
沙都子「私も!!この方達の命も!!全て同じ!!選ぶことなんて許されないんですのよ!!」
小此木「…そりゃあな。知ってるさ」
沙都子「ならどうして…!!」
小此木「仕事だからさ」
沙都子「…!…そんな理由で…!」
小此木「…その後の覚悟も出来てる。俺達にはきっと地獄すら生温いんだろうよ」
沙都子「…でも、死ぬまで貴方達はのうのうと生き続ける…」
小此木「…まあな」
沙都子「そんな罪も背負う気の無いもの、覚悟とは言いませんわ!!」
小此木「…」
沙都子「都合の良いように、自分の行いを無理矢理正当化してるだけではありませんの!!」
小此木「…」ポリポリ
沙都子「貴方達なんて…貴方達なんて!!」
小此木「…」
沙都子「ただの、人殺しですのよ!!」
小此木「…」
沙都子「…」フーッフーッ
小此木「…参ったな…子供に言い負かされちまった」
沙都子「…」
小此木「…間違ってるのは、俺らだからな」
沙都子「…」
小此木「だが、悪かったとは言えないんだ」カチャッ
沙都子「!」
梨花「!」
小此木「…せめて、苦しまずに逝ってくれ」
沙都子「…」
梨花「…沙都子!!!」
小此木「…じゃあ…」
?「…」パァン!
小此木「なッ!!!?」ビシッ
梨花「!!」
?「…」
小此木「がっ…!!今度は何だ…!?」
沙都子「…えっ…?」
梨花「・・・!?」
詩音「…」シュウウ…
沙都子「…ねーねー…?」
小此木「…女ァ…?」
詩音「…バカですね。沙都子…」
沙都子「…」
詩音「相手を挑発すれば、返されるのは当たり前です」スチャッ
沙都子「ねーねー…」
梨花「詩ぃ…!」
詩音「…でも、見直しましたよ」
沙都子「…」
詩音「甘ったれの沙都子じゃなくて、お姉さんは嬉しいです」
小此木「…」
沙都子「ねーねー!!」ガバッ
詩音「あらら…」
梨花「詩ぃ…良かった…」
詩音「こちらだって無抵抗って訳にもいきませんから。武器を整えて来ましたよ!」
梨花「…」
詩音「ま…それはさておき」
小此木「…」
詩音「…そこの貴方」
小此木「…何だ?」
詩音「…人様に迷惑かけておいて、よくもまあ偉そうにしていられますね」
小此木「…元々だ」
詩音「…葛西!」
葛西「…」ヌッ
小此木「…!」
葛西「お前ら!!出てこい!!」
小此木「…何?」
「…」ガサッ
「…」ガサッ
「…」ガサッ
詩音「はーい。取り囲んで下さーい」
小此木「…」
「…た、隊長…」
「…こ、こりゃ…ちょっと…」
「…囲まれちまってますぜ…」
小此木「…だな」
詩音「どうします?懺悔の時間、いります?」
小此木「成る程。園崎のヤクザが…か」
葛西「…」
小此木「…こりゃ…面白い事もあったもんだ」
詩音「…何がです?」
小此木「他所もんに厳しいアンタらが、らしくない真似をするなんてな…」
詩音「時代は変わるんですよ。いつまでも鬼婆オンステージじゃ人口も増えやしないんですから」
葛西「・・・」
『…』
小此木「…だが、ちょっと決断が遅かったな」
詩音「…は?」
梨花「?」
『…』ブオオオオオオオン
知恵「…?あれは…?」
詩音「…?」
沙都子「…車の…音?」
小此木「…流石に大仰な事は出来ない…が」
梨花「…え?」
『…』ブオオオオオオオン
「うわっ!?」
「な、何だァ!?」
『目標ポイント到達』
葛西「…!!」
『MG3、発射します』
小此木「…これくらいなら、許容範囲だろ?」
葛西「…伏せろォ!!!」
詩音「!!!」
…。
『』
『』
『』
チェイス「…!!何の音だ…!?」
「…あれは…」
チェイス「…答えろ!何だ!!」
「…小此木隊長が、最後の手段を使った…」
チェイス「…」
「MG3による、掃討作戦だ…!」
チェイス「…何!?」
「…あれが使われたということは、もう…!」
チェイス「…!!」
「…!!」
チェイス「…俺は…」
「…」
チェイス「…守れなかった…のか…?」
「…」
チェイス「…ッ!!!」ドォン!!
「…」
チェイス「…」
『そんな事、無いのですよ』
チェイス「…」
『…梨花には、心強い味方がもう一人いるのです…』
チェイス「…この声…」
『…チェイス…』
チェイス「…羽入か…!?」
『…ボクの、最後の力を使って、貴方に頼みますです』
チェイス「…何処にいる!?羽入!!」
『今こそ、貴方の本当の役目を果たす時なのです』
チェイス「…?」
『…これを…』
チェイス「…!お前…手が…」
『…貴方に…』
チェイス「・・・」
『さあ。行って下さい』
チェイス「・・・これは・・・」
『貴方の、「昔のお友達」から貰ってきました』
チェイス「…!!」ガシッ
小此木「・・・」
梨花「…」
沙都子「…」
葛西「…」
詩音「か、葛西ぃ…重いぃ…」
知恵「…」
校長「…」
小此木「・・・あ?」
『…』
小此木「…おい!!何処に向かって撃ってる!?ふざけてるのか!?」
『いやぁ?とっ…ても真剣ですよぉ?』
『そうですよ。ねえ?』
梨花「…えっ…?」
沙都子「…この、声…」
小此木「!?…な…!」
『…しかしびっくりしましたよぉ。まさかこんな車運転する時が来るなんてぇ…』
『僕だって、こんなの撃ったの初めてですよ』
『貴重な体験ですねぇ…ねえ?』
『そうですよ…ねぇ?』
梨花「…まさか…!!!」
大石「赤坂さん!」ヒョコ
赤坂「はい!大石さん!!」ヒョコ
小此木「馬鹿なぁぁぁぁあああああ!!!!?」
梨花「赤坂!!!」
小此木「て…テメェら…!!奴らは何処だ!!何処に行った!!」
大石「彼らですかぁ?…そうですねぇ…」
茜「そいつらなら今頃、ウチの奴らと、この若僧の仲間とドンパチやってるよ」ヒョコ
小此木「なッ…にぃ…!?」
茜「人数が足りなかったんじゃないかい?ウチと警察を相手取るには」
小此木「…!!」
大石「いやぁ。駄目元で頼んだ甲斐がありましたよぉ」
赤坂「僕だって甘んじて本庁にいたわけじゃないんですよ。少しなら人数も出せる」
茜「…ま、積もる話もあるけどね。…全部ひっくるめて、アンタらとのあれこれはこの抗争見逃してもらうってことでチャラさ」
大石「おや。良いんですか?貴方の一存で決めちゃって…」
茜「言ったろ?アタシらは細かい事が苦手なんだ」
大石「ぬはっはっはっは!!こりゃこりゃ…」
小此木「…警察とヤクザが、手を組むなんざ想像出来るか…!!」
大石「手段など選んで…。…!!」
熊谷「…」
大石「熊ちゃん!!大丈夫ですか!!」
熊谷「…ええ。何とか…急所は外れています…」
大石「直ぐに救援を呼びます!!もう少しの辛抱ですよ!!」
熊谷「…私よりも、入江先生を…!」
大石「!」
入江「…」
茜「おや…先生じゃないかい!?」
知恵「お願いします!!入江先生…意識が!!意識が…!!」
赤坂「…!もう少し早く来ていれば…!!」
小此木「……!!」
小此木「…お前…何処かで見た面だと思ったが…!!」
赤坂「…ああ。そうだとも」
小此木「…あん時の…雛見沢に来た小僧じゃねぇか…!!」
赤坂「…」
小此木「…すぐに帰っちまったからほとんど覚えてなかったが…」
梨花「赤坂!!赤坂ぁ!!」
赤坂「…梨花ちゃん」
梨花「…来て…くれたのですね…!」
赤坂「…恩返しさ」
梨花「え…」
赤坂「君が僕に教えてくれた」
梨花「…」
赤坂「半信半疑だったけど、間一髪で雪江を助けられた。間に合ったんだ」
梨花「!」
赤坂「君に助けられたんだ」
梨花「…」
赤坂「…今度は、僕が助ける番だ!」
梨花「…赤坂…!!」
赤坂「…」
小此木「…」
赤坂「…」シュタッ
小此木「…あ?」
赤坂「大石さんから聞いたよ。アンタが、あの時の誘拐事件の犯人だって」
小此木「…」
赤坂「一連の事件のほとんどは、アンタらの自作自演だって」
小此木「…ああ…」
赤坂「…」
小此木「…顔がバレてりゃ、そうなるか…」
赤坂「児童誘拐、殺人、そして今回のテロ。捕まったらもう出てこれないぞ」
小此木「…ハッ…」
赤坂「…?」
小此木「…大人しく、捕まるのは性に合わない…」
赤坂「…」
小此木「…ッ!!」ブンッ
赤坂「!」
小此木「…ぬ…おおおおお!!!」ドンッ!
梨花「!」
茜「!」
小此木「おおおおおおお!!!」ドゴッ!バキッ!
茜「…往生際の悪い奴だねぇ…!」スチャッ
葛西「…」ヌッ
茜「?…何だい。葛西…」
葛西「…」
茜「どきな。あのロン毛はアタシが…」
葛西「その必要はありません」
茜「あ?」
小此木「…!!」バキッ!ガスッ!
赤坂「…」
茜「…あ?」
小此木「…!」バキッ!ドカッ!
梨花「…」
葛西「…」
茜「…ああ。そういうことかい」
小此木「…ッ…」ブンッ
赤坂「…」
小此木「…ハァッ…ハァッ…」
赤坂「…ペッ」
小此木「…バケモンが…!」
赤坂「…気は、済んだかい?」
小此木「…ハハ…」
赤坂「…」
小此木「…ハハハハハ!!」
赤坂「?」
茜「…頭でもおかしくなったかい?」
葛西「…」
小此木「…ハハハ…」
赤坂「…何がおかしい?」
小此木「…50分…」
赤坂「…?」
小此木「…この作戦の、制限時間だ…」
赤坂「…」
小此木「…後、1分…!」
赤坂「…まさか!!」
小此木「…鷹野三佐が、毒ガスの詰まった爆弾を投下する時間だ!!!」
茜「はっ!!?」
赤坂「そんな事…お前達も…!」
小此木「…!」ガポッ
赤坂「!」
小此木『…地下に隠れていようが、無駄だぜ…』
茜「!…こいつら全員殺してマスクを奪いな!!」
小此木『無駄だ!俺達を殺しても全員分は無い!!』
茜「ッ…!」
小此木『お前らが無抵抗で死ぬような奴らじゃないってことは、俺らも承知済みだ!』
梨花「…殺される覚悟も、出来てるって事…!?」
小此木『甘い!!甘いんだよ!!お前達はなァ!!』
梨花「…!」
赤坂「ぐっ…!」
?「…誰も、死なせない」
小此木『ん?』
?「…」ズンッ
小此木『おごっ…!?』
小此木『』
?「…」
茜「…は…?」
葛西「…!」
沙都子「…えっ…?」
熊谷「…!?」
大石「…え?」
知恵「…!!」
校長「!」
梨花「・・・」
http://youtu.be/h28fxXVUrcs
?「誰一人、死なせはしない」
梨花「…その…声…」
?「…必ず助けると、約束した」
梨花「…まさか…」
http://i.imgur.com/S7ybBky.jpg
チェイス「遅れてしまって、すまない」
梨花「…チェイス!!!」
http://i.imgur.com/EVE6KMI.jpg
…。
……。
悟史『…』
悟史『…』
悟史『…。』ピクッ
悟史「…!!」
14話 終
続きまた出来たら書きます
次で終わると思います
>>394
ミスです
雪江→雪絵
でしたね
間違えてましたホントすいません…
渡したのはプロトスピードか
OVA見てないからなんでハートが持ってたのか解んないけど
>>403
ドライブドライバーの模造品です…
チェイス「…」
梨花「チェイス!チェイスなの!?」
チェイス「…そうだ」
梨花「…その、姿…」
沙都子「…」
茜「…チェイス…?」
チェイス「…」
梨花「…「それ」が、仮面ライダー…なの?」
チェイス「…そうだ」
梨花「…!」
赤坂「…君は…」
チェイス「…皆を助けてくれたのは、お前か?」
赤坂「え?」
チェイス「…礼を言う」
赤坂「…いや。礼を言うのは僕の方だ」
チェイス「…」
赤坂「君のおかげで、色んな人が助かった」
チェイス「…」
赤坂「…本当に、ありがとう」
チェイス「…」
『グオオオオオオン』
梨花「!」
赤坂「!」
大石「!…あれが…」
チェイス「…鷹野の、最終手段か」
梨花「…チェイス!」
チェイス「…」
梨花「…頼んだわよ」
チェイス「…」
チェイス「…」ガチャガチャガチャッ
『スピスピスピード!!』
梨花「!?」
チェイス「…ッ!!」ビュッ
赤坂「!…消え…!」
茜「違うよ。跳んだんだ」
赤坂「!?…この高さを一瞬で…!?」
チェイス「…」
沙都子「…左之助さん…!」
赤坂「…一体…彼は…!」
梨花「…あいつはね…」
赤坂「…」
梨花「貴方達と、同じ」
赤坂「…」
大石「…」
熊谷「…」
梨花「…この世を守る、正義のヒーローよ」
チェイス「…」
「…!鷹野三佐!!」
鷹野「…何?」
「し、下!!下を!!」
鷹野「下?…ええ。残り10秒もしたら…」
「そうじゃなくて!!見て!!見て下さい!!」
鷹野「?……!!!?」
「何かが、高速で迫って来てます!!!」
鷹野「!!よ、避けなさい!!」
「き、急旋回します!!」
『グォォオオオオオオオン!!』
鷹野「ッ…!!!も、もっと早く!!早くしなさい!!」
「め、目一杯ですよ!!!」
チェイス「…」ガチャッ
鷹野「…!!」
チェイス「…」カチッ
『フルストロットル!!スピード!!』
「な、何とか避けられ…!!」
鷹野「…」
チェイス「…!」
「ヒッ…!?」
鷹野「…避けられる訳…ないでしょ…!!」
チェイス「…ハァッ!!!」グワァッ!!
赤坂「ッ…!!」
沙都子「キャッ!!」
詩音「!?」
知恵「!…凄い音…!!」
茜「…」
葛西「…」
熊谷「…はは。最早漫画の世界ですね…」
大石「…左之助さん…!」
「…」
梨花「……」
「…」
梨花「…!」
チェイス「…」
梨花「…チェイス!!」
チェイス「…」シュタッ
沙都子「さ、左之助さん!」
チェイス「…赤坂」
赤坂「…?」
チェイス「…鷹野が使おうとしていた毒ガス爆弾だ」
赤坂「おっと!…これが…」ズシッ
チェイス「処分は任せる」
赤坂「…ああ。助かったよ」
チェイス「…」
「…」
鷹野「…」
大石「…?…ああ、緊急離脱しましたか…」
茜「…バカだねぇ…あんなとこでパラシュート開きゃ、捕まりますよって言ってるようなもんじゃないか」
詩音「…どんな気分なんですかねぇ。ライオンの群れに飛び込む草食動物って…」
「…はぁ…」
鷹野「…!」
茜「…さて。ありゃどうするんだい?」
大石「勿論。捕まえますとも」
茜「ありゃ。こっちも捕まえたいんだけど?」
赤坂「彼女を捕らえれば、恐らく様々な者達が芋づる式に捕まっていくでしょう」
茜「…ったく。手柄は警察のもんってかい?」
大石「では、これで私達のいざこざは無かったということにしましょう」
茜「…全く。分かった!分かりました!!」
赤坂「ありがとうございます」
大石「ぬはっはっはっは!!一件落着ですなぁ!!」
…。
鷹野「…」
大石「…さぁて、鷹野三四…いえ、田無美代子さん?」
鷹野「…捨てた名前よ」
大石「親御さんにつけて頂いた名前をそんな簡単に捨てるものじゃあ、ありませんよぉ?」
鷹野「…」
梨花「…」
鷹野「…あと少し、だったのに」
チェイス「…」
鷹野「…貴方のせいで…」
チェイス「…」
鷹野「…!!」ガチャッ
梨花「!」
赤坂「!!梨花ちゃん!!」
鷹野「…アンタだけでも…」
梨花「…!!」
鷹野「アンタだけでも、殺せば!!」
沙都子「梨花ぁ!!!」
チェイス「無駄だ」
鷹野「…!!腕が…!?」
赤坂「…えっ?」
梨花「…?」
鷹野「腕が…上がらない…!!どうして…!!?」
チェイス「お前に銃は撃てない。人は殺せない」
鷹野「…!!何を…」
チェイス「…梨花」
梨花「…?」
チェイス「俺は前に、この女について話したが…」
梨花「…火薬がどうのって…?」
チェイス「あれは嘘だ」
梨花「…?」
チェイス「…俺には、見える」
鷹野「…?」
チェイス「…お前の腕を必死に抑え込む、老人の姿が」
鷹野「…」
チェイス「…」
鷹野「…え…?」
チェイス「お前にも、見える筈だ」
『…』
鷹野「…!!」
『…美代子…』
鷹野「…あ…!」
『…美代子…』
鷹野「…そんな…!?」
『…もう、良いんだ…』
鷹野「…一二三…おじいちゃん…!?」
『私の為に…これ以上罪を犯してはいけない…』
鷹野「どうして…!?」
『…お前の手に、それは似合わない…』
鷹野「…!!」
『人の為に使う手を、人を殺す為に使ってはいけない』
鷹野「!!!」
『…だから、その銃から手を離しなさい』
鷹野「は、離して…!私は…私は!!」
『…』グググ
鷹野「貴方の功績を、無駄にしたくない…!!」
『…美代子』
鷹野「お願い…!離して…!!」
『…そんな事をしても、悲しいだけだ』
鷹野「…!!」
『…』バチィン
鷹野「…銃が…!!」
『…美代子』
鷹野「…」
『…全て、私のせいだ…』
鷹野「…」
『…すまなかったね…』
鷹野「…」ガクッ
梨花「…」
チェイス「…お前がやろうとしていたことは、人の為ではない。一二三の為にでもない」
鷹野「…」
チェイス「お前の、独りよがりの醜い欲望なだけだ」
鷹野「…」
梨花「…」
鷹野「…何よ…」
梨花「…?」
鷹野「…その目は、何なのよ…!」
大石「…」
鷹野「…同情のつもり?」
赤坂「…」
鷹野「そんなものいらない!!私が欲しかったのは…!」
沙都子「…」
鷹野「…おじいちゃんの…笑顔だけ…!!」
茜「…」
鷹野「…気に食わない…!!」
知恵「…」
鷹野「気に食わないのよ!!貴方達全員!!」
詩音「…」
鷹野「…良いわ…」
熊谷「…」
鷹野「なら、一つ良いことを教えてあげる…!」
チェイス「…」
鷹野「古手梨花!!」
梨花「…?」
鷹野「…貴方の親が、どうして死んだのか…」
梨花「…え…?」
鷹野「私が雛見沢の研究の為にこの村にやって来た時の事よ!!」
梨花「…」
鷹野「その為には「女王感染者」たる者の存在が不可欠だったから…」
梨花「…」
鷹野「私が殺してやったのよ!!」
梨花「!!!」
チェイス「!」
鷹野「初めはね…北条沙都子の感染を治す為の名目で、貴方を実験台にしようとしたわ」
沙都子「え…」
梨花「…な…」
鷹野「でもあの女は私達の考えに気づいていたみたいでねぇ!!!」
梨花「…」
鷹野「鬱陶しかったから!!二人とも自殺に見せかけて殺してやったのよ!!」
沙都子「!!」
梨花「…」
鷹野「…でも、丁度良いサンプルが手に入ったから、嬉しかったわぁ…」
梨花「…は…」
鷹野「…アンタの母親、脳髄まで隅々調べ尽くさせてもらったからねぇ!!!!」
梨花「…」スッ
チェイス「…!」
鷹野「おかげで研究は順調に進んだわ!!とっても…ね!!!」
梨花「…こ…」
チェイス「梨花!!」
梨花「…やる…」
鷹野「フフフ…」
梨花「…こ……てやる…」
鷹野「アーッハッハッハッハッハ!!!」
梨花「殺してやる!!!!!アンタは殺す!!!!!」ジャキッ
鷹野「アッハハハハハ!!!何も知らずに可愛い子ぶって!!何て間抜けなんでしょうねぇ!!!」
梨花「殺す!!!!絶対に許さない!!!!!」
沙都子「梨花!!」
赤坂「梨花ちゃん!!!」
詩音「梨花ちゃま…」
鷹野「アハハハハハハ!!…は…?」
チェイス「…」
鷹野「…」
梨花「チェイス!!どきなさい!!その女は…!!」
チェイス「させない」
梨花「どきなさいよ…!!」
チェイス「…」
梨花「どけって!!!言ってんでしょ!!!!!」
チェイス「約束した」
梨花「…!」
チェイス「お前が人を殺そうとしたら、止めると」
梨花「そんなの…!!今…!!!」
チェイス「もう誰も死なせない。誰の手も汚させない」
梨花「綺麗事よ!!そんなもの!!!」
チェイス「例え綺麗事でも、俺は止まらない」
梨花「うるさい!!どかないならアンタも撃つわよ!!!」
チェイス「それで気が済むなら、何発でも撃て」
梨花「!!」
チェイス「恨みは、全て俺にぶつけろ」
梨花「…!」
チェイス「…終わったら、後ろを見ると良い」
梨花「…!」
圭一「…」
魅音「…」
レナ「…」
沙都子「…」
梨花「…!」
チェイス「誰も、お前が人を殺すことなど望んでいない」
梨花「…」
チェイス「お前がこの女を殺しても、得るものなど何も無い」
鷹野「…」
梨花「…」
チェイス「ただ、失うだけだ」
梨花「…」
チェイス「友達の、笑顔を」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…ズルいのね…アンタって…」
チェイス「…」
梨花「…ホンっ…と…バカ真面目なんだから…」
チェイス「…」
梨花「…バカぁ…」
チェイス「…」
梨花「うえぇ…」
チェイス「…」ギュッ
鷹野「…」
大石「…さ。行きますよ」グイッ
鷹野「…」
大石「心配しなくても、貴方は法が裁いてくれます」
鷹野「…」
大石「…一二三さんの気持ちを一番、理解していたようで…一番、理解出来ていなかったんですよ」
鷹野「…」
大石「…救いようのない人だ」
鷹野「…」
「待って下さい!!」
大石「?」
鷹野「…!」
富竹「…ハァッ…ハァッ…」
鷹野「…ジロウさん…」
富竹「…鷹野さん」
鷹野「…」
富竹「…本当の君を、見てやれなかった僕にも、責任がある」
鷹野「…」
富竹「…ごめんよ。鷹野さん…」
鷹野「…」
富竹「…すまなかった…」
鷹野「…謝らないで…」
富竹「…すまなかった」
鷹野「謝らないで…!!」
富竹「…」
鷹野「謝ったら…終わっちゃう…!!!」
富竹「…すまなかった…」
鷹野「…」
富竹「…」
鷹野「…ああ…」
大石「…」
チェイス「…」
梨花「…」
鷹野「…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」
…。
……。
…。
……。
梨花「…」
沙都子「梨花…立てます?」
梨花「…ええ」
圭一「梨花ちゃん…」
レナ「…良かったぁ…」
梨花「…ごめんなさい。心配かけて」
魅音「良いって。…よく堪えてくれたね」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…お礼なんか、言わないんだから」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…それよりも」
梨花「?」
鉄平「…」
リナ「…」
沙都子「!」
レナ「…!」
鉄平「…沙都子」
沙都子「叔父様…」
鉄平「…すまんかったな。沙都子…」
沙都子「そんな…」
鉄平「…これからワシは、このアマと一財産稼ぎに行くんじゃ」
リナ「…」
沙都子「…え?」
鉄平「お前も、悟史も養えるくらい、がっぽり稼いできちゃる!!」
沙都子「…」
鉄平「だから、帰って来た時は思いっきりわがままを言え!!」
沙都子「…」
鉄平「何が欲しい?何でもええぞ?」
沙都子「…」
鉄平「ん?」
沙都子「…なら…」
鉄平「?」
沙都子「…笑顔で、無事に帰ってきて下さいまし…!」
鉄平「…」
沙都子「兄妹仲良く、迎えますから…!」
鉄平「…」
沙都子「…いつまでも、待ってますから…!」
鉄平「…ほうか」
沙都子「…」
鉄平「良し!約束じゃ!」
沙都子「…」
鉄平「…あ。後は…冷えたビールじゃ!それを…」
沙都子「分かっておりますわ!コップもちゃんと冷やしておきますのよ!」
鉄平「ほうか!はっはっはっは!!」
沙都子「…」
鉄平「…」
沙都子「…」
鉄平「…じゃ。行ってくるわ」
沙都子「…はい…!」
リナ「…」
レナ「…」
リナ「…多分、察してくれたと思うけど」
レナ「…はい」
リナ「園崎の上納金は返せても、竜宮さんのお金は返せないんだ。今すぐは」
レナ「…」
リナ「だから、ね…」
レナ「…」
リナ「…汗水垂らして得るお金だよ。汚くないから」
レナ「…はい」
リナ「…」
レナ「…帰って来る時は、連絡して下さい」
リナ「…ん」
レナ「…」
リナ「…ん?」
レナ「…お茶碗。リナさんの」
リナ「…」
レナ「ちゃんと、取っておきますから…」
リナ「…」
レナ「今度は、ちゃんとお父さんの事、笑顔にして下さい」
リナ「…」
レナ「…」
リナ「あはは。許してもらえるかなぁ?」
レナ「許してません!」
リナ「…あはは…」
レナ「…ちゃんと、約束守ったら、許してあげます…」
リナ「…アタシの事、お母さんって呼べるの?」
レナ「…んー…」
リナ「…」
レナ「…」
リナ「…」
レナ「んーーーーーーーー」
リナ「長い長い」
レナ「…分かりません」
リナ「あはは。そりゃそうだ」
レナ「…」
リナ「…じゃ。アタシも行くね」
レナ「…はい」
リナ「…またね。レナちゃん」
レナ「…はいっ!」
圭一「…何つーか…」
魅音「…あれじゃ、あんまり酷い仕事はさせらんないねぇ…」
圭一「え?そういう問題?」
魅音「…でも、ま…」
圭一「…」
魅音「…一件落着!!うん!!」
圭一「…だな」
魅音「…圭ちゃん」
圭一「…」
魅音「さっきの梨花ちゃんにも、言えることだけど」
圭一「…」
魅音「過去がどれだけ酷いものだったとしても、それは変えられるものじゃない」
圭一「…」
魅音「これから…今からは、未来を見て」
圭一「…」
魅音「…勿論、その罪は忘れちゃいけないけど…」
圭一「…」
魅音「いつまでも、止まったままだと成長しないから」
圭一「…」
魅音「…」
圭一「…」
魅音「だからここ2、3日の分教えて」
圭一「そういう問題!?」
詩音「私も最近学校行ってないんで良いです?」
圭一「は!?」
魅音「あははっ!まあ良いじゃん。これで万事解決!」
詩音「…あ、それよりもお姉?」
魅音「ん?」
詩音「ちょい。こっちこっち」グイグイ
魅音「え?」
詩音「…彼とは、何処まで行ったんです?」
魅音「ン゛っ?」
詩音「だってぇ…お姉ったらこの間凄く嬉しそうに人形貰ったーだなんて話してましたから…進展あったのかなー…なんて」
魅音「ン゛…」
詩音「あれ程押せ押せって言ったじゃないですか!何もしてないんですか!?」
魅音「…そ、そんなこと言われたってぇ…」
詩音「良いですか!?お姉は良いモン持ってるんですから!!これで!!押せば良いでしょ!!」モミッ
魅音「うええっ!!?何してんのさー!!」
詩音「使える物は使う!!それが男を虜にするテクニックってもんでしょうが!!!」
魅音「やめてええええええ助けてええええええ!!!」
圭一「…」
レナ「…あはは」
圭一「…何だか、さっきまで命の取り合いしてたなんて思えないよな」
レナ「…思いたくないから、明るく振舞ってるんだよ」
圭一「…」
レナ「…で、圭一君」
圭一「…ん?」
レナ「・・・レナと魅ぃちゃん、どっちが良い・・・?」
圭一「…えっ…」
レナ「・・・どっち?」
圭一「え?…え?」
魅音「あー!!レナ何してんのさーー!!」
レナ「えへへ。早い者勝ちだよぉ?」
魅音「ダメー!!そういうのナシー!!!」
レナ「えへへ」
チェイス「…」
梨花「…呆れてる?」
チェイス「…いや」
梨花「…」
チェイス「あれなら、大丈夫だと思っただけだ」
梨花「…?」
詩音「あっはははは!!全くお姉ったら…からかいがいがありますねぇ…」
沙都子「ねーねーはもう少し愛情を持って接してあげたらどうですの?」
詩音「何言ってるんです。私の愛は天よりも高く海よりもふか…」
沙都子「…」
詩音「…え…?」
沙都子「…」
梨花「…!!」
チェイス「…」
悟史「…」
詩音「…え…」
悟史「…」
詩音「…ど…して…?」
沙都子「…にーにー…?」
悟史「…みんな…」
詩音「…意識が…無い筈じゃ…」
悟史「…そんなこと、ないよ」
沙都子「…」
悟史「本当は、ずっと起きてた。…でも、体が動かなかったんだ…」
詩音「…」
悟史「…ごめん」
沙都子「…」
悟史「…あと…」
梨花「…」
悟史「…ただいま」
詩音「…」
沙都子「…」
悟史「…あはは」
詩音「悟史くぅぅぅぅぅううううううんんんんんん!!!!」グギュッ
沙都子「にぃぃぃぃいいいにぃぃぃいいいいい!!!!」グギュッ
悟史「お゛う゛っ」
詩音「いやー…すいません。暫く身体動かしてなかったっていうの忘れてました」
悟史「野球で鍛えた筈なんだけどね。…こんなに痩せちゃったよ」
詩音「ずっと寝たきりでしたからね…」
沙都子「そんなの、沢山ご飯を食べれば済む話ですわ!」
悟史「あはは…」
魅音「…悟史…」
悟史「あ…魅音」
レナ「…」
悟史「…レナ」
圭一「…」
悟史「…」
圭一「…えっと…」
悟史「圭一…君。だよね?」
圭一「え?」
悟史「…起きてたから。ずっと」
圭一「…聞いてたって、ことか…」
悟史「うん。…ありがとう。沙都子の事を見てくれて」
圭一「…いや」
悟史「…でも、もう少しだけ、見てもらいたいんだ」
圭一「…」
沙都子「…」
詩音「…え?」
悟史「…」
チェイス「…」
赤坂「…そうだね」
沙都子「え…」
赤坂「北条悟史君。君には…」
悟史「はい」
赤坂「…」
詩音「…え…?」
悟史「…詩音。ごめんね」
詩音「…何を…」
悟史「…少しだけ、覚えてるんだ」
詩音「…」
レナ「…!!」
悟史「感触は、残ってる。バットで、叔母さんを何度も殴った…」
沙都子「…にーにー…?」
赤坂「…殺人の容疑だけじゃないさ。君には聞きたいことが山程ある」
悟史「…はい」
詩音「ま…待って…」
赤坂「…」
詩音「…そんなの…」
悟史「…詩音」
詩音「…」
悟史「罪を犯したなら、罰を受けなくちゃいけない」
詩音「でも!!貴方がやっただなんて証拠は…!」
悟史「僕は、覚えてる」
詩音「そんなの知らない!!幻!!幻なんです!!!」
悟史「…僕の頭に、刻み込まれてる」
詩音「病気だったんです!!仕方なかったんです!!」
悟史「だとしても、人を傷つけて、殺した」
詩音「知らない!!知らない知らない!!!」
沙都子「…ねーねー…」
悟史「…」
詩音「…知らない…!!」
悟史「…」ナデ
詩音「…!」
悟史「…もし、また戻ってこれたら」
詩音「…」
悟史「詩音の話、沢山聞かせてね」
詩音「…!」
沙都子「…ッ!!」
梨花「…」
悟史「…梨花ちゃん」
梨花「…貴方が、やったの?」
悟史「…うん。間違いない」
梨花「…」
悟史「病気だとしても、やったことの罰は、受けるべきなんじゃないかな…」
赤坂「…」
梨花「…そう」
悟史「会えたばかりなのに、また離れちゃって…ごめんね?」
詩音「…!」
沙都子「…」
悟史「…」
詩音「…私、待ちます…!」
悟史「…」
詩音「…いくらでも、待ちます!!」
悟史「…」
詩音「…だから、お願い…」
悟史「?」
詩音「…また、雛見沢に帰ってきたら、その時は…」
悟史「…」
詩音「…笑顔で、帰ってきて下さい…!」
悟史「…うん」
沙都子「…」
悟史「…沙都子」
沙都子「…?」
悟史「この償いは、終わらない。きっと、償い続けなきゃいけない」
沙都子「…」
悟史「…叔父さんにも、ちゃんと言わないといけない」
沙都子「…」
悟史「…だから、ごめん」
沙都子「…」
悟史「…もう少しだけ、待ってて」
沙都子「…!!」
赤坂「…行こうか。悟史君」
悟史「はい」
沙都子「…」
詩音「…」
悟史「…」バタン
赤坂「…」
圭一「…悟史!!」
悟史「!」
梨花「…」
圭一「過去は、確かに忘れちゃいけない!!」
悟史「…」
圭一「過去は変えられない!!けど…」
悟史「…」
圭一「未来は、いくらでも変えられる!!!」
梨花「!」
魅音「…圭ちゃん…!」
圭一「これからは、お前の未来を、未来のキャンバスを、思いっきり塗りつぶしていけ!!!」
悟史「…」
圭一「…それに、お前ここ数年間授業受けてないだろ」
悟史「…うっ」
圭一「帰ってきたら!俺がみっちり教えてやるからよ!!」
悟史「…!」
圭一「だから!!帰ってこい!!いつでも!!!」
悟史「…」
魅音「私達も、待ってるから!!!」
レナ「また!!一緒に部活しようね!!」
詩音「待ってます!!ずーーーーッッ…と!!!」
沙都子「帰ってきた時は!!元気な顔で居て下さいまし!!!」
悟史「……」
赤坂「…さ。行こうか」
悟史「…はい…!」
赤坂「…」
悟史「…!」ズズッ
赤坂「(…雪絵…)」
悟史「…ッッ…!!」ゴシゴシ
赤坂「(…人は一人じゃ、生きていけないんだな…)」
悟史「…!」
赤坂「(君が生きていてくれて、本当に良かった)」
…。
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…過去の清算って、こういうことだったわけね」
チェイス「…」
梨花「アンタが大石とヒソヒソ話してたのって、悟史を逮捕する件だったんでしょ」
チェイス「…そうだ」
梨花「…嫌な予感はしてたわよ…」
チェイス「命を奪って良いという人間はいない」
梨花「…」
チェイス「人の命を奪った事実は変わらない」
梨花「…」
チェイス「だが、きっとやり直せる」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…鷹野は、どうかしらね…」
チェイス「…」
梨花「…壊れちゃったみたいよ」
チェイス「…」
梨花「…悪いのは、アンタじゃないから」
チェイス「…」
梨花「…悟史なら、大丈夫よ」
チェイス「…」
梨花「アンタ、これからどうする?」
チェイス「…」
梨花「…」
チェイス「…役目を、果たすだけだ」
梨花「…家、来れば良いじゃない」
チェイス「…」
梨花「私の事、守ってくれるんでしょ?これからも」
チェイス「…」
梨花「…ここにいれば良いじゃない。ずっと暮らせば…」
チェイス「…その役目は、もう終わった」
梨花「…」
チェイス「…」
梨花「…え?」
チェイス「もう一人、助けなければならない者がいる」
梨花「…え?」
チェイス「…」
梨花「!!」
チェイス「…」シュウウ…
梨花「…アンタ…身体が…!!」
チェイス「…」
梨花「そんな…!!チェイス!!」
チェイス「…元々、俺はここに居てはいけない存在だ」シュウウ…
梨花「そんなことない!!アンタは…アタシの…!!」
チェイス「…それに…」
梨花「…!!」
チェイス「どうやら、俺が必要になったらしい」シュウウ…
梨花「…!!」
チェイス「…俺は行かなければならない。ダチの元へ」シュウウ…
梨花「…行かないで…!」
チェイス「…33年後に、また会おう…」
梨花「…チェイス!!!!!」
梨花「…」
梨花「…」ガクッ
梨花「そんな…!!」
梨花「…チェイス…」
沙都子「…」
梨花「…」
沙都子「…行って、しまわれたのですね…」
梨花「…」
沙都子「…会えますわよ。きっと」
梨花「…」
沙都子「梨花が、彼を必要とする限り」
梨花「…」
沙都子「…きっと、また…」
梨花「…ッ…!!」
沙都子「…だから」ギュッ
梨花「…!!」
沙都子「…今は、思い切り、泣くと良いですわ」
梨花「…」
沙都子「…」
梨花「…う…」
沙都子「…」
梨花「あああああああああああああ!!!!!」
沙都子「…!」ギュッ
…。
……。
…。
……。
剛「…」ドスッ
狩野「…!」
剛「…悪いな」
狩野「…お前…!!」
剛「これは俺の戦いだ」ガポッ
狩野「…ま、待て!!」
剛「…」ブウウウウウウン…
狩野「…こ、これを…!!」
『…』ピカッ
狩野「…?」
『…成る程。このシフトカーが俺を呼んだのか』
狩野「…!俺の声…!?」
『…お前の身体を、少しだけ借りるぞ』
狩野「…!!」
『…』カッ
…。
…。
チェイス「…」
チェイス「…これが、人間の肉体か」
チェイス「…派手に動けば、壊れそうだな」
チェイス「…剛」
チェイス「…待たせたな」
…。
剛「…」
チェイス「…」
剛「…チェイス…!」
チェイス「…これを、届けに来た」
剛「…これは…!」
チェイス「…」
剛「…チェイス…」
チェイス「…」
剛「…俺の…ダチ…」
チェイス「…」
剛「…一緒に…戦ってくれるよな…?」
チェイス「…」コク
剛「…」
チェイス「…」
剛「…行くぜ…!」
チェイス「…」
剛「…変身!!」
チェイス「…」
剛「…追跡…」
剛「…撲滅…!」
剛「…いずれも…マッハ…」
剛「…仮面ライダー…」
チェイス「…」シュウウ…
剛「マッハ、チェイサー!!!」
チェイス「…」シュウウ…
…。
狩野「…ッ…」バタッ
…。
チェイス『…』
チェイス『…』
チェイス『…久しぶりだな』
『ひぇっ!?』
チェイス『…随分、待たせてしまった』
『…ボクの姿が、見えてるのですか?』
チェイス『…いや。…だが…』
『…』
チェイス『気配がした』
『…』
チェイス『…俺は、雛見沢を助けると約束した』
『ということは…助けて…くれたんですね…』
チェイス『…』
『…良かった…!』
チェイス『…まだ一人、助けなければならない奴がいる』
『…え?』
チェイス『…』
『…でも、梨花を…』
チェイス『お前だ。羽入』
羽入『え…』
羽入『…そ、そんな…ボクは…』
チェイス『俺に残された全てのエネルギーを、お前に注ぎ込む』
羽入『…』
チェイス『そうすれば、お前は元の世界に帰れる筈だ』
羽入『…待って下さい』
チェイス『…』
羽入『そんな事したら…貴方は…!!」
チェイス『…助けると誓った』
羽入『…』
チェイス『諦めさせないと、誓った』
羽入『…!』
チェイス『涙を流し、命を捨てようとする者を、俺は見捨てない』
羽入『…チェイス…』
チェイス『…行くぞ』
羽入『…』
チェイス『…』
羽入『…でも…』
チェイス『…』グイッ
羽入『あうっ!!』
チェイス『…』ドスッ
羽入『ッッ!!!?』
チェイス『…』グッ
羽入『…!…チェイス…!!!』
チェイス『…』シュウウウウウウ
羽入『…貴方…!!』
チェイス『…』シュウウウウウウ
羽入『…!!』
チェイス『行くんだ。お前の、ダチの元へ』
羽入『…!』
チェイス『…幸せに、なると良い』
羽入『…!!!!』
羽入「…」
羽入「…!」
羽入「…身体が…」
羽入「…力も…」
羽入「…」
羽入「でも…」ポロ…
羽入「…そんなの、ボクは…」ポロポロ
羽入「…」
羽入「…チェイス…」
羽入「…貴方は…」
羽入「…どこまでも…正義のヒーロー、なのですね…」
羽入「…ありがとう…」
羽入「…」
羽入「…仮面…」
羽入「…ライダー…」
…。
……。
http://youtu.be/xZi1Grbj2y4
魅音「圭ちゃん!分かったよ!こうだね!?」
圭一「違うっつの!!話聞けよお前!!!」
詩音「あっはは!お姉ったら言われてますねー…」
圭一「詩音!!お前もだよ!!!…っていうか真っ白じゃねえか!!!やってすらないのか!!!」
詩音「分からないものは悩んでも仕方ないんで」
圭一「…なんっつー清々しさだ…」
魅音「うー…話を聞くと分かるのに…」
圭一「雰囲気で分かった気になってるだけだろ…」
レナ「圭一君。出来たよ」
圭一「ん?…ん。…ん!?おお!流石レナ!飲み込みが早いぜ!!」
レナ「えへへ。いっぱい覚えたいから…」
圭一「良い心がけだって思わないか?なあ」
詩音「頭に過るくらいは」
圭一「もう気持ち良いよそこまでいくと」
魅音「…もう一回教えてぇ。今度は聞くからぁ…」
圭一「分かった分かった…レナ、ちょっと待っててな?」
レナ「うん。忘れないように復習しておくから良いよぉ」
圭一「…いやー…レナは本当良い奴だよ」
魅音「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛…私だってやれば出来るもん!!出来るんだもん!!!」
圭一「出来てから言えよ…」
…。
「ごめんください」コンコン
…。
「ごめんくださいなぁ」ガタ
入江「はーい!申し訳ないんですがそのまま上がってきていただいて宜しいですか!」
「はいはい…おっとと…」
入江「!大丈夫ですか!?」
「ああ。大丈夫ですよぉ。…ちっとばかし腰が痛いだけだから…」
入江「!…もしかして、また畑仕事ですね!?あれ程息子夫婦にやらせるって言ってたのに!」
「いやぁ。若いのは動きはするけど要領が悪いんです。本当…もうちょっとねぇ…」
入江「初めのうちは皆さんそうですよ」
「…それよりも先生、大丈夫なのかい?アンタの方こそ…まだ全然治ってないんだろう?」
入江「私は、良いんですよ」
「そんなことないよ。アンタが倒れたら私ら困っちまう」
入江「…私には、休んでいる暇など無いんです」
「…?」
入江「それに、私はやっぱりこの仕事が好きなようですから!」
「…ええ御人だ。うちのバカ息子にも見せてやりたいよ」
入江「…そんな事言って、お二人のご結婚…許してあげたらしいじゃないですか」
「そりゃあね。…いつまでも新参を受け入れないんじゃ新しい人間も増えやしない」
入江「…ええ」
「何だっけねぇ…あー…ぐろー…ぐろー…」
入江「グローバルですか?」
「そーそー!それよ。それ!雛見沢もそろそろグローバルにならないと!」
入江「…あはは…」
…。
…。
「おい新入り!!もっと早く巻け!!」
鉄平「へ、へい!!」
「…おい!巻きすぎだ!!そこまで上がってきたら今度はゆっくりだ!!魚の上がってくる流れを感じろ!!」
鉄平「へい!」
「そっちの女ももっと遠くまで餌投げろ!!」
リナ「は、はーい!」
「休むんじゃねぇぞ!!休むのはデケぇのを釣り上げてからだ!!!」
鉄平「へ…へい!!」
「稼ぎたかったら働け!!汗をかけ!!!」
リナ「はーい!!!」
鉄平「…!こいつぁ…なんて力だ…!」
「お!?何だ新入り、随分引きが良いじゃねえか!!」
鉄平「ぐぐぐ…!!」
リナ「うわっ!?こっちもぉ!?」
「お前もか!!何だ今度の新人はツイてんじゃねぇか!!!お前ら!新人に負けんなよぉ!!!」
「「「へい!!!!」」」
…。
赤坂「…」
鷹野『…』
『…』
「…もう今日で14日目ですよ。何も喋りゃしない」
赤坂「…」
「会話はおろか、聞いてんのかどうかも…」
赤坂「…」
『…貴方が雛見沢村で起こした事件。こちらはまだ全てを把握出来ていませんが…』
鷹野『…い…れ…』
『?』
赤坂「…」
鷹野『…まが…くよ…呼んで…るよ…』
「…」
『…田無さん?』
鷹野『広い草原に…陽は満ちて…』
『…』
「…」
赤坂「…」
鷹野『胸にせまる…はてない悩み…』
『…』
「…だーめだ…こりゃ…」
赤坂「…負けを認めるくらいなら、いっそ壊れてしまえば良い」
「え?」
赤坂「彼女はこれで、二回死んだ」
「…」
赤坂「…ズルい人だ」
「…」
鷹野『山が呼んでる…』
『…』バンッ
鷹野『夢もあこがれる…山の彼方…♪』
…。
大石「…さぁて。と…」
熊谷「大石さん!おはようございます!」
大石「おや?もう復帰出来ました?」
熊谷「あはは…まだちょっと…」
大石「ああ、それで私服…寂しいですねぇ。今日も一人ですかぁ」
熊谷「大丈夫ッスよ!こんな傷!…いてて…」
大石「あーあー…無理せずに、まあ休暇と思って休んで下さい」
熊谷「…すいません」
大石「それで?今日はどうされましたぁ?」
熊谷「え、ええ。悟史君の事件当時、心神喪失状態にあったと決まったそうで…」
大石「ええ。事件前の彼の精神状態は村人全員が把握していたそうですから…」
熊谷「…まさか、あの村の住人が北条家に味方してくれるだなんて…」
大石「いざこざはもうしないと決まりましたからねぇ」
熊谷「…結局、雛見沢症候群とやらは立証されませんでしたね」
大石「田無さん、何も喋らないそうで…」
熊谷「…それでも、機関や少数の人間の記憶には、残った」
大石「ええ。…まあ最も彼女の短絡的な行動のせいで最終的にはただのバイオテロ事件となりましたが…」
熊谷「…上の人間には、都合が良いのかもしれませんがね」
大石「ええ。許し難い事ですが、田無さんが何も喋らない事には…」
熊谷「…」
大石「…ま!それで諦める私達じゃありませんよぉ!!」
熊谷「…そうッスね!!」
大石「ぬはっはっはっはっは!!じゃあ行きますか!!」
熊谷「はいっ!……はい!?」
大石「まあまあ!そろそろ甘い物が恋しくなってきたでしょ!!病院食は味が薄いんですから!!」
熊谷「いや、ちょっ…もう帰らないと!抜け出してきたんですから!」
大石「なら今日は一日大丈夫ですねぇ」
熊谷「えええ…?」
…。
…。
梨花「…」グスッ
沙都子「梨花!ご飯出来ましたわよ!」
梨花「…」
沙都子「梨花!」
梨花「…」
沙都子「…」
梨花「…」
沙都子「梨花ぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
梨花「!!?」ビクゥ
沙都子「全く…そんないつまでも塞ぎ込んで…そんな事ではチェイスさんに怒られてしまいますわよ?」
梨花「…いない奴が、どう怒るってのよ…」
沙都子「…」
梨花「…」
沙都子「…梨花…」
「全く、その通りなのです!!」
梨花「!」
沙都子「!?」
「…梨花はいつまでも甘えんぼさんなのですねぇ…」
沙都子「…?」
梨花「…え…?」
「やっぱり、ボクがいないと梨花はダメダメなのです」
梨花「・・・」
「…」
梨花「…え…」
羽入「梨花」
梨花「…嘘…」
沙都子「…」
羽入「…えへへ」
梨花「…羽入…」
沙都子「…」
…。
羽入「りぃぃぃぃぃいいいいかぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
梨花「はにゅううううううううううううう!!!!!」
沙都子「え!?誰!!!?」
…。
……。
https://youtu.be/tDgQAi8A59g
【33年後】
「…」
…。
「あれ!!?ちょ…お母さん!!何で起こしてくれなかったのー!!遅刻しちゃうー!!」
「いい加減自分で起きなさい。じゃないと社会に出てから困るわよ」
「朝は弱いのー!…っていうかお母さんと違って私の学校は興宮なんだから!!遠いんだからね!!」
「今から全速力で漕げば間に合うわよ」
「うえええええ…暑いのにぃ…」
「朝ご飯はちゃんと食べて行きなさいよ」
「食べてる時間無いよー!」
「詰め込みなさい。勿体無いんだから」
「うー…朝からこんな食べられない…」
「…現代っ子ねぇ…」
「昔は昔!今は今!普通こんな朝から食べないってー…」
「他所は他所、家は家」
「あー言えばこー言う…」
「本当に遅刻するわよ」
「分かった!んもー!!」
…。
「行ってきまーす!!」
「はいはい」
…。
「…」
…。
「…あら。久しぶりね」
…。
「…貴方にとっては、ついさっきの出来事かもしれなかったけど…」
…。
「もう、33年も経つのよ」
…そうか。
「…小皺も出てきちゃって。もう立派なおばさんよ」
…。
「…あっさりと別れちゃって、ほとんど何も喋れなかったわね」
…。
「…33年後、会ったら何を言おうかずっと考えてた」
…。
「けど、会ったら忘れちゃったわ。あれこれ決めてたのに」
…。
「…だから、今思った事を言わせて」
…。
「…」
…。
梨花「おかえり。チェイス」
…ただいま。
終わります
長くなってすいません
乙彼!
>鷹野「古手梨花!!」
>鷹野「…貴方の親が、どうして死んだのか…」
ここ神社長の宝生永夢ゥ!口調で脳内再生されて雛見沢症候群発症しかけた
今更ですが後日談書けたらその内投下します
…。
赤坂「…どういうことですか?」
「俺に聞くなよ…」
赤坂「確かに鷹野は依然、何も話しません。ですが確かに「彼」との繋がりが…」
「シッ!!…お前、何処で誰が聞いてんのか分からないんだぞ…!」
赤坂「…上からのお達し。ですね…?」
「…何…も!…言わない」
赤坂「…」
「それと、もう鷹野はいい加減起訴しろ。もう期限が迫ってんだぞ」
赤坂「…あの状態で、どう起訴するんですか…!」
「…まあ、そこは…ほら。任せとけば…」
赤坂「そんな適当に済ませて良い事件じゃないんですよ!!これは!!!」
「…」
赤坂「人が何人も死んでる!!何百人も殺されかけてる!!!」
「…」
赤坂「それを…彼女一人に罪を負わせて終わらせるですって…?」
「…それが、上の判断だ」
赤坂「…そんな…!」
「赤坂」
赤坂「…!」
「…これはお前の為に言ってんだぞ」
赤坂「…」
「仮に、この証拠書類「らしき」ものが本物だとしようか」
赤坂「…」
「…上層部だけじゃない。この国を作り上げてきた政府までひっくり返るぞ」
赤坂「…それが…!」
「…後は察しろ。俺は絶対にこんなものは認めん。以上だ」
赤坂「…!!」
「…」
…。
大石『ははあ…そうですかぁ…』
赤坂「…」
大石『私達、とんでもない人とお関わりになってたんですねぇ』
赤坂「…そんな悠長な…」
大石『赤坂さん。貴方、お子さんが産まれたんですって?』
赤坂「え?…え、ええ…」
大石『…おめでとうございます。一度、顔を見てみたいもんですなぁ』
赤坂「…」
大石『…私は独り身ですから。これから一生拝めませんからねぇ』
赤坂「…」
大石『良いですか?赤坂さん』
赤坂「…」
大石『確かに、上司に逆らってまで自分の意思を貫き通すのは、決して間違っていることではありません。…事実私もそうしてきました』
赤坂「…」
大石『ですが、今貴方には二人。本当に守らなければならない存在がいらっしゃる。違いますか?』
赤坂「…」
大石『聞こえは良いでしょう。…が、私は賛成出来かねますなぁ』
赤坂「…」
大石『これは警察官としてのアドバイスではありません。人生の先輩としてのアドバイスです』
赤坂「…大石さん…」
大石『…その証拠書類、とやら。まだお持ちでしょう?』
赤坂「…え?」
大石『それは貴方が持つには重過ぎる荷物です』
赤坂「…!!」
大石『私が預かりましょう』
赤坂「そんな…!」
大石『なぁに。どうせ「ただの紙」数十枚。証拠じゃないなら貰っても良いじゃありませんかぁ』
赤坂「しかし!これは…!」
大石『…私もね、いい加減成仏したいんですよ』
赤坂「…!」
大石『このままじゃ、私は一生雛見沢に束縛されてしまいます』
赤坂「…」
大石『…ご面倒はかけませんよ。ただ、その捨てる紙を再利用するだけです』
赤坂「…」
大石『私の生き霊。いい加減消させてくれませんか?』
赤坂「…大石…さん…!」
…。
…。
あれ…。
『シャシャシャシャシャシャシャシャシャ』
『グツグツ…』
…何だっけ、これ…。
…暑い…。
『シャシャシャシャシャシャシャシャシャ』
『ジュー…』
暑いし…でも眠い…。
…でも暑い…。
『シャシャシャシャシャシャシャシャシャ』
『カチャカチャ』
…学校…行くんだっけ…。
…あれ?今何月?何日?
…羽入は…。
『ジーーーーーーーーーーーーーーーー』
梨花「うるさい!!!!」ガバッ
沙都子「!?」ビクゥ
梨花「・・・」
沙都子「…危ないですわね。お皿落とすとこでしたわよ…」
梨花「…あれ?」
沙都子「あれじゃないですわよ。後もうその反応何回も見ましたから、そろそろ別のリアクションを起こしてくれませんこと?」
梨花「…」
沙都子「ま、それよりも早く布団を干して、朝ご飯を食べて歯を磨く事ですわ」
羽入「でないとボクが食べてしまうのですよ」
梨花「…あ…」
沙都子「…まだ寝ぼけてるんですの?でしたらどうぞカレンダーをご覧になって下さいな」
梨花「…」
【8月1日】
梨花「…あ…」
沙都子「そうですのよ。…今だに信じられませんが、梨花の言う「運命」というのはもう乗り越えたんですのよ」
羽入「そうなのですよ」モグモグ
沙都子「…それにそのお話が本当でしたら、この蝉の声も100年以上聞いてないという事ですから…」
『シャシャシャシャシャシャシャシャシャ』
梨花「…これ、何ゼミだっけ…」
沙都子「さあ?見に行きます?」
羽入「幸いにも今は夏休みなのです。時間はたっぷりあるのですよ」モグモグ
梨花「…」
沙都子「そうですわねぇ…なら今年の自由研究は蝉の生態にでもします?」
羽入「全員一種類ずつやれば被らないのです。これで万事解決なのですゲフッ」
梨花「…羽入」
羽入「はい?」
梨花「お は よ う」ギリギリギリギリギリ
羽入「痛いぃぃぃぃひぃぃぃいいいいい」
羽入「痛いのです…最近梨花はバイオレンスなのです…」
梨花「触れられるって分かったからね」
沙都子「それよりも梨花のおかずがひもじいことになってしまいましたわね」
梨花「止めなさいよ。そうなる前に」
沙都子「あんな堂々と食べてたら寧ろそれが正解かなって思ってしまいましたわ」
梨花「アンタは最近食い意地が張ってきたって思わない?」
羽入「今までは梨花を介してでしか食べられませんでしたが今は自分の意思で食べられるようになったのです。当たり前の事ですが、とても幸せなのですよ」
梨花「沙都子はこんな業突く張りになっちゃダメよ。太るから」
沙都子「気をつけますわ」
羽入「ボクが太っている体で話を進めないで欲しいのです」
梨花「違うの?」
羽入「梨花に任せると辛いものや苦いものばかり食べられるのです。ボクの胃の梨花に対する恨みは凄まじいものなのですよ」
沙都子「それはありますわね。私も梨花がキムチをそう簡単に取れないよう買い物の時は常に注意を払ってますから」
梨花「好みは人それぞれじゃない」
羽入「ボクも同じなのです。でもいつも梨花はシュークリームを一つしか食べてくれなかったのでとてもひもじかったのです」
梨花「私あれ食べ過ぎると吐きそうになるのよ」
羽入「だからと言って2個までは少ないのです」
沙都子「胃が繋がってるということは、そこも繋がるんですの?」
羽入「ええ。まあ」
梨花「ええ」
沙都子「…あっ…」
…。
『では次のニュースです…』
沙都子「…」
『一昨日、大阪府大阪市北区で起きたひったくり事件で…』
梨花「…」
『被害者は…』
羽入「…ニュースしかやってないのです?」
梨花「当たり前じゃない」
沙都子「…確か、33年後の未来を知っているのでしたっけ?」
羽入「全てを知っているわけではないのです。ボクが出来たのはあくまで空から見渡す程度でしたので」
梨花「どうだったの?やっぱり技術とか進化してた?それくらいは分かるでしょ?」
羽入「…ほとんどの人が俯きながら歩いていました…」
沙都子「…えええ…?」
梨花「…何か、あったのかしらね…」
羽入「…それでも、その中で、ボク達を助けてくれる存在を探し続けました」
沙都子「…あ…」
梨花「…」
羽入「…彼のおかげで、こうしてボク達は話し、触れ合い、生きる事が出来るようになったのです」
沙都子「…」カタン
梨花「…あいつ、結局1枚しか写真撮らせてくれなかったわね」
沙都子「…ええ。それも不意打ちで」
羽入「これは、どういった状況なのですか?やけにブレてますですが…」
沙都子「買い物の帰りに袋を全て持たせて両手を塞いでから撮りましたわ」
羽入「必死だったのは分かりました」
沙都子「…」
羽入「…」
梨花「…チェイス…」
…。
チェイス『もう一人、助けなければならない者がいる』
梨花『…え?』
チェイス『…』
梨花『!!』
チェイス『…』シュウウ…
梨花『…アンタ…身体が…!!』
チェイス『…』
梨花『そんな…!!チェイス!!』
チェイス『…元々、俺はここに居てはいけない存在だ』シュウウ…
梨花『そんなことない!!アンタは…アタシの…!!』
チェイス『…それに…』
梨花『…!!』
チェイス『どうやら、俺が必要になったらしい』シュウウ…
梨花『…!!』
チェイス『…俺は行かなければならない。ダチの元へ』シュウウ…
梨花『…行かないで…!』
チェイス『…33年後に、また会おう…』
梨花『…チェイス!!!!!』
…。
梨花「…ホント、あっさり去っていったわよね」
沙都子「…その方が、彼らしいですわ」
梨花「…こっちは、そういう訳にいかないってのに」
羽入「…」
梨花「振り回すだけ振り回しておいて、パッと離してどっか行っちゃって」
沙都子「…」
梨花「与えた影響がどれだけ大きいのか、理解して欲しいもんね」
羽入「…チェイスは、初めからこうするつもりだったのでしょうか?」
梨花「…さあ?」
羽入「…命を犠牲にするくらいなら、ボクなんて放っておいてくれれば…」
梨花「…!」
沙都子「…羽入さん」
羽入「?」
沙都子「それは、チェイスさんを裏切ることになりますわよ」
羽入「…」
沙都子「彼は生きとし生けるもの全てを守ると誓った、正義のヒーロー」
梨花「…」
沙都子「その彼が守ったこの村と、住人。そして羽入さん」
羽入「…」
沙都子「そして、絆」
羽入「…絆…」
沙都子「その絆を自ら断ち切るような発言は、彼の覚悟を裏切ることになりますわ」
梨花「…羽入」
羽入「?」
梨花「…」ゴンッ
羽入「!?痛い!痛いのですぅぅぅ!!」
沙都子「んま」
梨花「…沙都子の言うこともそうだけど…」
羽入「…?」スリスリ
梨花「…アンタが消えて、どれだけ心配したか、分かってる?」
羽入「…」
梨花「…33年。会えるかどうかも分からない。力が尽きかけてたアンタが本当に消えるかもしれない。その時私がどれだけ悲しかったか分かる?」
羽入「…梨花…」
梨花「…そんな事、二度と言うんじゃないわよ」
羽入「…」
沙都子「…幼い頃からずっと一緒にいたのですから。…ね」
羽入「…」
梨花「…」
羽入「…はい!なのです」
…。
梨花「…で、よ」
羽入「はい?」
梨花「…いや、アンタいきなり来たじゃない。着の身着のままで」
羽入「…まあ」
梨花「また微妙な時期に来たもんよね。夏休み一歩手前って」
沙都子「都会だったら寂しい夏休みを送ってましたわね。間違いなく」
羽入「仕方ないのですよ」
梨花「力戻してもらったならこっちの出来事が終わった瞬間に来なさいよ。何でちょっとスパン空けるのよ」
沙都子「そうすれば一応夏休み前に入学手続きが取れましたのに。制服も私服も無いものですから困ったものでしたわ」
梨花「みんなびっくりしてたわよ。自己紹介して帰っちゃうって」
羽入「…事の顛末を、見ていたのです」
梨花「…」
羽入「何が、どうなっていたのか。答えを知りたかったですから」
梨花「…あ、そ…」
羽入「梨花。ボクからも言うことがありますよ」
梨花「…」
羽入「例えどのような事があっても。殺してしまえば鷹野達と変わりません」
沙都子「…」
羽入「…よく、耐えてくれました」
梨花「…もし、あの時」
沙都子「…」
梨花「…チェイスがいなかったら。チェイスが止めていなかったら」
羽入「…」
梨花「間違いなく…引き金を引いたわね」
羽入「…」
梨花「…だから、耐えたってのは間違いよ」
沙都子「…梨花…」
梨花「今でも思ってる。憎い。殺してやりたいって」
羽入「…」
羽入「梨花」
梨花「…」
羽入「…とぅっ」デュクシ
梨花「オッフ!!!」
沙都子「あ。角の有効活用…」
梨花「意外と痛い…!!お腹…!!」
羽入「ボクだってやる時はやるのです」
梨花「…はあ…!?」
羽入「…憎い。殺してやりたい。その思い。抱くなとは言いません。誰しもそういう事はあるかもしれませんから」
梨花「…だから何よ…」
羽入「しかし、その「一線」を越えれば最早それは、同情に値するものではありません。ただの犯罪ですから」
梨花「…」
羽入「たった一本の線でも、その溝はとても深いものなのです。分かり合う事など出来ない程に」
沙都子「…その通りですわね」
梨花「…ごめん」
羽入「だからもう、そんな事は…」
梨花「でもさっきのは結構痛かったんだけど?」ギリギリギリギリギリ
羽入「痛いぃぃぃぃひぃぃぃいいいいいごめんなさぃぃぃぃぃいいいい」
沙都子「・・・」
…。
『次のニュースです』
沙都子「…」
梨花「…」
羽入「…」
『三重県で熱中症患者が急増…』
梨花「…」
沙都子「…分かっては、いましたけれど…」
羽入「…報道規制。なのですね」
梨花「その方が良いわよ。バイオテロの標的にされるような村ですよだなんて言われてみなさいよ」
羽入「…誰も…」
沙都子「…来たがらない、ですわね…」
梨花「でしょ?…おかげでこっちは何も分からず終いだけど」
沙都子「…忘れたい気持ちも、確かにありますわ」
梨花「…まあね」
羽入「皆、前を向いて歩き出しています」
梨花「…」
羽入「…ですから、梨花も…」
梨花「…無理ね」
羽入「…」
梨花「これでも親殺された身だから。一応、何かしらで関わることにはなると思うわ」
沙都子「…」
梨花「…その時、あいつがどんな顔してるか、よね」
沙都子「捕まえられた方は少なくとも50人…」
梨花「主犯は鷹野、小此木。…富竹と入江は…微妙な立ち位置だったわね」
沙都子「監督は庇えても、富竹さんは…」
梨花「鷹野に着いていったきりね。かれこれ1ヶ月経つけど顔も見てないわ」
羽入「元々ここには目的があって来たのですから。それが無くなった今、いる理由もないのでしょう」
沙都子「…監督、こちらに身を置くとおっしゃってましたわね」
梨花「本人は罪滅ぼしだって言ってたけど、その前にあの人の身体が滅ぶんじゃないかって思うわね」
羽入「…それだけ、鷹野の影響が大きかったのですよ」
梨花「…これだけの規模の犯罪なのに、報道がされないってことは、最早用無しってことなんでしょ」
羽入「…きっと、赤坂が全てを明かしてくれますですよ」
梨花「…そうね」
沙都子「…さ!て!!」パン
羽入「?」
梨花「何?」
沙都子「何じゃありませんわよ。学生の本分を忘れてはいませんこと?」
梨花「…あ」
沙都子「今までは言いませんでしたが、早めにやらないと後で大変でしてよ」
梨花「…これも、100年以上振りね」
沙都子「黄昏たって宿題は減りませんわよ」
羽入「大袈裟なのです」
梨花「やらないとは言ってないでしょやらないとは」
沙都子「そう言って明日から明日からと梨花は…」
羽入「これは間違いなく宿題をやらずに最終日に泣くパターンなのです」
梨花「半分はアンタにやらせるわ」
羽入「報酬無しではやらないのです」
沙都子「やるにはやるんでございますの?」
梨花「大体ね、絵日記なんて今更書けないわよ。何を書けって言うのよ」
羽入「その日にあったことを書くのです」
梨花「殺されかけた恐怖が忘れられませんって書こうかしら」
沙都子「知恵先生の困った顔が目に浮かびますわ」
梨花「…正直これどころじゃなかったから…」
沙都子「100年振りだとしても、思い出というものは関係ありませんわ」
梨花「…そうよね」
沙都子「今から作れば良い。それだけの話ですから」
羽入「…梨花やボクにとっては、当たり前の日常が既に思い出なのです」
梨花「角の生えたのに寄生されました、と」
羽入「言葉の虐待なのです」
沙都子「ペット扱いされてますけどそこは大丈夫ですの?」
…。
『シャシャシャシャシャシャシャシャシャ』
梨花「ん…あー…外はやっぱり日差しが暑いわね…」
沙都子「当たり前ですわ。夏ですもの」
梨花「…こんな暑いもんだったかしら」
沙都子「それもまた思い出の一つになっていくんですのよ」
梨花「…でも家よりマシね。風が吹く分」
羽入「エアコンを買うべきなのです」
梨花「そんな高いもん買う余裕は無いのよ。アンタの食費のせいで」
沙都子「未来はエアコンが安くなってるんですの?」
羽入「一家に一台の時代だったのです」
梨花「アンタまあまあ楽しんでたのね。羨ましいわ」
羽入「…ボクだって、梨花を連れ出そうとしたのですよ」
梨花「…」
羽入「でも、あの世界を見てしまったら、きっと梨花はさらに閉じこもってしまうと思ったのです」
梨花「…」
羽入「これからは、共に歩んで行きましょう」
梨花「…」
沙都子「…小難しい話は抜きにして、早く行かないと日が暮れてしまいますわよ」
羽入「そうなのです。1日というのは限られてますから」
梨花「…こういう、何もしない1日っていうのも良いじゃない」
沙都子「梨花がこう言って宿題をやろうとしません、と…」
梨花「やめてよ」
沙都子「…あら」
梨花「…あ」
羽入「!」
レナ「♪」
圭一「…おっ」
…。
「ぃよーし!!昼メシにすんぞ!!」
鉄平「…お」
リナ「…っあー!!お腹空いたー!」
「おーいリナちゃん!お握り作ってくれよ!」
リナ「え!?アタシが!?」
「いやー、ここ数年女の作った飯を食ってねえからなぁ。ここの奴らは」
「おー!良いねぇ!リナちゃんが作ってくれたもんなら何でも食うぜー!!」
「船長のは毛が入ってってからなぁ」
「何ィ!?」
リナ「あっはは!分かった分かった!…でもアタシが出来るのなんて知れてるよ?」
鉄平「良え機会じゃ。嫁入りする前の修行で料理くらい覚えんか」
リナ「んガッ…それは関係無いでしょ!!」
「いやいや、折角嫁入りすんのに何も出来ねぇんじゃ先々危ねえぞ?」
リナ「うえー…後片付けとか面倒臭いんだよねぇ…」
鉄平「10歳程度のガキでもやっとるんじゃ。お前が出来んくてどうするんね」
リナ「う…分かった!分かりましたー!!」
「よーし!!なら今日からリナちゃんには炊事の手伝いもしてもらうぞー!!」
リナ「ええええええええ!!?」
「よっしゃー!!これでメシが楽しみになるぞー!!」
「おおー!!!」
リナ「…はぁ…」
鉄平「…」
…。
リナ「…あのさ」
鉄平「…何じゃ」
リナ「…ほら、前に竜宮さんの家の判子、探してたって言ってたじゃない」
鉄平「…おお。見つからんかったらしいが…」
リナ「あれね。レナちゃんがずっと持ってたんだ」
鉄平「…最初っから疑われとったっちゅうことじゃろ」
リナ「…あの左之助とか言う学校の先生に言われたよ」
鉄平「?」
リナ「悪意のある人間は、悪意のこもった顔をするって」
鉄平「…」
リナ「やっぱり、分かるんだね。嫌な女だって」
鉄平「…それが自分で分かるようになったんなら、上出来じゃろ」
リナ「…ね、鉄平」
鉄平「ん?」
リナ「…アタシ、今どんな顔してる?」
鉄平「…」
リナ「…」
鉄平「目が細くなった」
リナ「すっぴんだからね」
鉄平「…しかし、今でも現実とは思えんわ。あの出来事は」
リナ「まあ…ね」
鉄平「…人を殺してしまうような病気っちゅうんが、末恐ろしいもんじゃ」
リナ「…竜宮さんも、そうなっちゃったのかな。アタシのせいで」
鉄平「…」
リナ「…」
鉄平「精神的なもんはどうしようもない。じゃが金は返せる」
リナ「…ん」
鉄平「…というより、それしか償う方法は無い」
リナ「…」
鉄平「後は、お前の出方次第じゃ」
リナ「…ん」
鉄平「…しかし、あの富竹っちゅう若造は、とんでもないもんを残していったもんじゃ」
リナ「…聞いたのは、アタシらだから」
鉄平「分かっとる。…じゃが複雑な気分ではある」
リナ「…叔母さん殺したの、沙都子ちゃんって子のお兄さんだってね」
鉄平「…」
…。
鉄平『…ったく、何たってこんなカビ臭い地下に…』
富竹『噂には聞いてたけど…本当だったのか…』
鉄平『…まあ、ええわ。ここなら警戒することもない。ゆっくり話せる』
富竹『…?』
鉄平『知っていることを洗いざらい話せ。何故あのアマはこんなことをしとるんか…』
富竹『…』
リナ『アタシも気になる。教えてよ』
富竹『…確か、貴方は…北条さん…でしたね?』
鉄平『…おう』
富竹『…貴方の奥さん、玉枝さんが鬼隠しの4年目の被害者…』
鉄平『…そうじゃ。じゃがあれはどう見ても殺人じゃろ…』
富竹『ええ。決して鬼隠しなんてものではない』
鉄平『…それで?』
富竹『…貴方も、分かっているとは思いますが…』
鉄平『…』
リナ『?』
鉄平『…沙都子の、兄か?』
リナ『…!』
富竹『…ええ』
鉄平『…』
富竹『北条玉枝さんや…貴方による…その…』
鉄平『度重なる虐待に耐えかねて…かい』
リナ『…』
富竹『…』
鉄平『…ほうか』
富竹『…』
鉄平『…因果応報。…自分らが蒔いた種とは言え…』
リナ『…でも、病気だったんでしょ?』
鉄平『分かっとる。悟史を責める気は無い』
富竹『…』
鉄平『そうさせたんはワシらじゃ。責任は此方にある』
リナ『…』
鉄平『…それでも…』
富竹『…』
リナ『…』
鉄平『…この溝は、埋まるんかのう…』
…。
リナ「…まあ、仲良くしようってのは、時間かかるよね」
鉄平「良くしてやりたい気持ちはある。受け入れてやりたい気持ちはある」
リナ「…それでも、複雑…か」
鉄平「…向こうも、じゃろうな」
リナ「…時間なら、いくらでもあるよ」
鉄平「アホか。こういうもんは時間がいくらあっても解決出来るもんじゃない」
リナ「そうじゃないって」
鉄平「…?」
リナ「悟史君と腹割って話す内容。考えとけばって話よ」
鉄平「…」
リナ「…アタシも、竜宮さんに何て言おうか思案中だし」
鉄平「…お前がか?幾らでも出てくるじゃろ」
リナ「そんな上っ面のもんじゃないよ」
鉄平「…」
リナ「…ちゃんと、全部話して謝んなきゃな…ってさ」
鉄平「…それが良えわ」
リナ「…時間なら、幾らでもあるから、ね」
「あるわけねぇだろ!!!」
鉄平「!?」
リナ「!!?」
「…ったく…こっそり聞いてりゃ何だ?ガキ一人おっさん一人にウジウジしやがって…」
鉄平「…」
リナ「船長…」
「ここは託児所じゃねぇ。金を稼ぐ場だぜ。そんな甘ったれた考えの奴なんざいらねぇよ」
鉄平「…」
「…ギャンブルで借金。最後に行き着いたのがここ…」
リナ「…?」
「あそこのジジィだ。逃げられねぇと観念してようやく働くようになりやがった」
鉄平「…」
「給料日にゃあちらこちらに支払って、残った額なんざ知れたもんだ」
鉄平「…」
「それと、リナちゃんに良く話しかけるあいつ」
リナ「?」
「あいつは元受刑者だ。殺人のな」
リナ「!」
「…行く当てが無ぇんだとよ。自分から園崎組に頼み込んできやがった」
リナ「…あの人が…」
「ウチはそんな奴らばっかだぜ」
鉄平「…」
「それに比べてお前らは何だ?ガキの生活費?将来の旦那との生活資金?」
リナ「…」
「…立派なもんじゃねえか。そんな理由でここに来た奴なんざ初めてだ」
鉄平「…」
「そんなお前らがな、こんな掃き溜めみてぇなトコにいつまでも居るもんじゃねぇ」
リナ「…船長…」
「…分かったらさっさと働け!ここじゃでけぇもん釣り上げた奴がヒーローなんだからよ!!!」
リナ「は、はーい!!」
鉄平「…おう」
「…」
鉄平「…のう、船長」
「お?」
鉄平「…すまんかった」
「…気にすんなって」
沙都子「それにしてもどうしたんですの?随分ご機嫌だったようですけれど」
圭一「ん?ああ…」
レナ「えへへ。お父さん、新しい仕事が決まったんだぁ」
沙都子「本当ですの!?それは良かったですわね…」
圭一「リナさんとの件があってから、自分のせいだって反省してたらしいんだ。それで…」
梨花「…良いことね」
レナ「頑張るって、お父さん。今度はちゃんとリナさんと向き合うんだって言ってたんだよ。だよっ!」
梨花「…リナも、レナ達と向き合うと言っていたからね…」
圭一「…でも、まさか梨花ちゃんが本当はこんな感じだったなんてなぁ…」
梨花「…」
圭一「…裏に隠したミステリアスな性格!!くぅぅ…こりゃ新しい萌え路線だ!!!」
梨花「…」グシャ
圭一「痛っでぇ!!!」
梨花「…圭一に甲斐性を求めるのは、まだ先ね」
圭一「爪先…!!爪先踏むのは…!!!」
レナ「あはは。でも悪いのは圭一君だからね」
圭一「うう…梨花ちゃんだけは癒しで居てくれると思ったのに…」
羽入「大丈夫ですか?」
圭一「…!いや、そうかぁ…羽入は俺の癒しになってくれるかぁ…」
羽入「とぅっ」デュクシ
圭一「オッフ!!!」
梨花「…そういえば、魅音は?ここ最近見ないけど…」
圭一「いや、それがさ。何だか用事があるの一点張りで…」
レナ「レナ達も、よく分からないの」
梨花「…」
沙都子「園崎家の当主は魅音さんのお婆様なのでしょう?でしたらそんな毎日忙しい程では…」
梨花「…魅音に気を遣ってるのよ。学業に影響が出ないように出来る限り当主を続けるつもりみたい」
沙都子「…あの方が…」
梨花「見た目は鬼でも心はお婆ちゃんなのよ」
レナ「でも…そういった用事じゃないなら、何だろ…?」
梨花「…さあ…ね」
羽入「…」
圭一「…」
沙都子「そういえば、ですわ」ポン
圭一「?」
沙都子「本題を忘れていましたのよ」
レナ「それって、何かな?かな?」
羽入「夏休みの課題のお話なのです」
圭一「課題?」
羽入「梨花はまだ開いてすらいないのです。このままでは梨花は不良まっしぐらなのですよ」
圭一「…そんなあったかな?」
レナ「圭一君はもう終わるんだよね?」
圭一「ああ。こういうのって、先にやっとけば後は楽だし…」
レナ「都会の時はやっぱり沢山あったの?」
圭一「そりゃなぁ…流石にぶっ続けでやっても2週間はかかるなぁ」
沙都子「…そんなにやって意味はあるんですの?」
圭一「気を引き締めるって意味では良いと思うんだ。勉強代わりにこれをやれってさ」
梨花「進学校ならではね。遊んでる暇があるなら勉強しなさいって」
圭一「はは。…まぁ…うん」
レナ「で、でも!遊んでるばっかじゃダメだもんね!勉強もしなきゃ!」
圭一「まあでも、全部真面目に取り組んでた奴なんてホント極一部だったぜ?めんどくさいからって答え丸写しとか」
沙都子「それじゃ本末転倒ですわ。頭に入らないんじゃありませんこと?」
圭一「そういう姿勢はテストで出るからな。まあお察しの通りだよ」
レナ「わぁ…絵日記とか自由研究なんて久し振りだよぉ」
圭一「そうだな。こんなのは課題っていうより思い出作りの一貫みたいなもんだし…」
梨花「でも書けって言われてパッと思い浮かぶものじゃないでしょ」
沙都子「見て下さいな。梨花の絵日記」
レナ「…本日の献立…」
圭一「あ、あはは…でもあったことを書くんだから、間違ってないよな」
梨花「…正直、気分も乗らないから…」
羽入「む。梨花はチェイスに言われた事をお忘れなのですか?」
梨花「…」
羽入「ボクは見てきましたから。ちゃんと分かってるのですよ」
圭一「?何か言われたのか?」
梨花「…」
羽入「お前は年齢を重ねたように振舞ってはいるが、その思考は年相応な子供と大差無い…」
沙都子「似てませんわよ」
梨花「…無駄に長く過ごしただけだってのは、確かに分かるけど…」
圭一「へー…左之助先せ…あ」
レナ「あははっ。やっぱりそっちで呼んじゃうよね」
圭一「いやだって、いきなり本名はチェイスだなんて言われても…」
レナ「うん。レナもびっくりしたよ」
沙都子「私もですわよ。逃げる時に振り向いたら…」
圭一「…今思えば、あの時間が止まったのも、チェイスさんがやったんだよな」
レナ「うん。きっとオヤシロサマなんだって、思ったかな…」
羽入「オヤシロサマはボク!!ボクなのですー!!!」ジタバタ
レナ「羽入ちゃんが?」
圭一「オヤシロサマ?」
羽入「何度も説明してるのです!!あんまり疑うと時間を止めて顔に落書きするのですよ!!」
梨花「これが雛見沢の神よ」
圭一「・・・」
レナ「・・・」
圭一「…梨花ちゃんは、さ」
梨花「?」
圭一「今までずっと、同じ時間を過ごしてきてたんだろ?」
梨花「…ええ。そうよ」
圭一「…それに慣れちゃって、今は色んなものが新鮮に思えるのかもしれないけどさ」
梨花「?」
圭一「いつか。…今度はそっちに慣れてくんだと思う。普通に生きていくってことに」
梨花「…」
圭一「…でも、忘れちゃダメなんだ。今までの苦しみ。辛さ。全部」
梨花「…」
圭一「忘れちまったら、全部ダメになる」
梨花「…」
レナ「今までの辛さに比べたら、ちょっとめんどくさい事なんて平気だよ」
梨花「…」
圭一「何だって出来るんだ。だって今、梨花ちゃんの止まった時間は動き出したんだから」
梨花「…」
レナ「…その長い間、色んな未来を思い浮かべたんだよね?」
梨花「…ええ。沢山」
レナ「だったら、今度はその未来に…夢に向かって、歩き出してみたら?」
梨花「…未来…」
レナ「うん!未来だよ!」
梨花「…未来…」
レナ「梨花ちゃんの将来の夢。レナ、聞きたいな!」
沙都子「私も興味ありますわ」
圭一「そうだな!俺も聞きたい!」
梨花「…」
羽入「…梨花」
梨花「…」
羽入「…ちょっとずつで良いのです」
梨花「…」
羽入「百年振りの、普通。踏み入れた足が止まる事もあるでしょう」
梨花「…」
羽入「ここから先は、梨花も知らない沢山の未来が待っているのです」
梨花「…羽入…」
羽入「みんなと迎える、明るい未来」
梨花「…」
羽入「…ほら。やってきましたですよ」
梨花「え…?」
魅音「みーんなー!!」
詩音「お待たせしましたー!!!」
圭一「あっ!いつの間に!!」
魅音「何さそれぇ…折角こうして走ってきたのに!!」ムギュ
圭一「!?か、感触が…!!」
レナ「あっ!魅ぃちゃんズルいよ!!」
魅音「へへー。早いもん勝ちなんでしょー?」
圭一「う…」
レナ「むー…」
詩音「うふふ。お姉もすっかりヤル気になっちゃって…」
圭一「うむむ…」
魅音「…どお?」ムギュ
圭一「うぐぐ…」
レナ「むー…」
圭一「いや…魅音…」
魅音「?」
詩音「…」
圭一「…汗、かきすぎ…」ビッチョリ
魅音「あっ」
レナ「あっ」
沙都子「あっ」
詩音「あーあ…」
詩音「まぁ、そりゃ興宮から全力疾走ですからね」
魅音「アンタが原付の後ろ乗せてってくれれば良かったでしょ!!!」
詩音「いや知りませんよ!!そもそも会ったのすぐそこじゃないですか!!」
魅音「うー…」
圭一「え?詩音と魅音は同じ用事じゃなかったのか?」グッチョリ
詩音「違いますよ。私は私の用事がありましたから。ホントたまたま見かけただけで」
レナ「…それで、何の用事だったの?」
魅音「…うーん…それは、どーして…も!言えない…」
沙都子「…気になりますわね…」
圭一「気になるな…」
魅音「秘密秘密!!こればっかりは口が裂けても言えないなぁ…」
沙都子「…あ!ちなみにですけど…」
魅音「ん?何?」
沙都子「…夏休みの宿題、やってますの?」
魅音「え?そんなん終わり際で良いでしょ」
詩音「テキトーで良いんですよテキトーで」
圭一「ほら」
沙都子「成る程」
魅音「えっ?」
詩音「えっ?」
…。
詩音「…ま、宿題よりも!ですよ。…沙都子!」
沙都子「な、何ですの…?」
詩音「貴方にビッグなニュースがありますよ!」
沙都子「?」
レナ「ビッグ?」
詩音「ええ。…沙都子なら、分かるんじゃないですか?」
沙都子「…!」
詩音「はい!…では……悟史君!!」
悟史「…」ヒョコ
沙都子「!」
悟史「…」
沙都子「…あ…」
悟史「…あ、あはは…」
沙都子「…にーにー!!」ガバッ
悟史「うわっ!!」
圭一「…」
レナ「悟史君。…身体の方は大丈夫なの?」
悟史「…うん。まだちょっと動きづらいけど…」
魅音「保護観察…それと暫く通院生活なんだって」
悟史「…うん」
圭一「…悟史…」
悟史「…うん。ちょっと、久し振りだね。圭一」
圭一「ああ。…いやでもちょっと太ったか?」
悟史「少しずつだけど、食べられるようになってきたからね」
圭一「…そっか」
悟史「…約束。忘れてないからね」
圭一「…え?」
悟史「…罪を償う。それを心に刻んで生きていく」
圭一「…や、約束って…」
悟史「僕はそう思ったんだ。…いや、思わなきゃいけない」
沙都子「…」
悟史「叔父さんとも、自分とも向き合って、一生をかけて償う」
詩音「…悟史君…」
悟史「それと、真っ白なキャンバスに、描き続ける」
圭一「…」
悟史「…だから。先ずは勉強かなぁ」
圭一「…ぃよっし来た!!俺が一から鍛え直してやるからな!」パンッ
悟史「うん!よろしく!圭一!」
圭一「おう!宜しく!」グッショリ
悟史「うわっ!手がジットリしてる!!」
魅音「・・・」
詩音「・・・」
梨花「…真っ白なキャンバス、ね…」
羽入「ええ。今の梨花と同じなのです」
梨花「…どんな絵でも、良いのよね」
羽入「はい!だって今、梨花は生きているんですから!」
梨花「…そうねぇ…」
羽入「決まりましたか?将来の夢」
梨花「…夢っていうよりは、人生設計、かしら?」
羽入「!そう!それで良いのですよ!梨花の人生設計!」
梨花「大袈裟ねぇ…」
羽入「何なのですか?梨花の、人生設計!教えて欲しいのです!」
梨花「…そうねぇ…まずは…」
羽入「うんうん!」
梨花「…」
羽入「…」
梨花「…お嫁さん、かしら?」
羽入「は?」
梨花「は?」
レナ「えええっ!?梨花ちゃんおぉぉお嫁そ、さんになるのぉ!?」
圭一「マジか!?相手とかどんなのが良いんだ!?」
魅音「えー!?梨花ちゃんがそんなことを!?」
梨花「…」
羽入「…なんだかんだで、いつも通りなのです」
梨花「…ふふっ」
羽入「?」
梨花「良いじゃない。それで」
羽入「…」
梨花「今日の絵日記は、決まりね」
羽入「…そう、ですねぇ」
梨花「…」
羽入「…」
梨花・羽入「友達と、仲良く過ごしました!」
…。
……。
『…』
茜「…」
お魎「…」
葛西「茜さん!!!!い、今すぐテレビを…!!」バタァン
茜「うるさいねぇ。静かにしな」
葛西「…!」
『…元、興宮署所属刑事、大石蔵人さんから送られてきたものです。実名を出してくれとの事でしたので発表させて頂きます。尚入手ルートに関しては不明…』
葛西「…」
『…もう一度、端的に読み上げます…』
お魎「…」
葛西「…」
『ファイル、雛見沢症候群について。鷹野三四』
茜「…」
『雛見沢村という田舎のみで発生する寄生虫による奇病であり、完治させる方法は具体的には見つかっていない』
葛西「…」
『尚、一時的に寄生虫の動きを止める事は可能である。しかしこの寄生虫は宿主の死と共に消滅するため、取り出す方法は難しい』
茜「…」
『そこで雛見沢村の住人の中にいる女王感染者たる古手家の人間を生きたまま解体、寄生虫を取り出し研究』
お魎「…」
『これにより寄生虫を取り出す事が可能。しかし女王一匹ではワクチンを作る事は不可能な為、更なる女王感染体が必要』
葛西「…」
『…少し飛ばします。…○月○日、政府から支援の打ち止めを打診される…』
茜「…」
『しかし○日、警視庁幹部○○、政府、○○大臣と個人的な契約を結ぶ事に成功』
お魎「…」
『雛見沢の住人を毒ガスにより殺害、これを後に雛見沢大災害と呼ぶこととし、雛見沢症候群の危険性を訴える…』
茜「…」
『尚、古手現当主古手梨花については前述した通り生きたまま解体。サンプルを取り出すこととする…』
葛西「…」
『以上、鷹野三四のパソコンから押収されたこれらを○○大臣、警視庁幹部○○さんの歴史的大罪を示す証拠として皆さんに提示させて頂きます』
茜「…」
『尚、時間の都合上質問は一人一つずつでお願いします』
『○○代表!!』
『○○代表!!』
『○○だ』ブチッ
葛西「…」
茜「…全く。大石から当主と話がしたいって言われるもんだから、魅音を送ったんだがねぇ…」
お魎「…」
茜「…あの狸刑事、どうしてもこの雛見沢との因縁を解決しなきゃ成仏出来ないらしい」
葛西「…」
茜「…魅音を当主として、任せてはみたんだけれど、ねぇ…」
お魎「野党側の…政治家の知り合いを紹介せぇっちゅうから、まさかとは思ったぎゃー…」
茜「…とんだ成仏のさせ方もあったもんだ」
お魎「あいつは将来園崎を背負って立つんじゃ。この程度、何ちゅうこたぁねぇ」
茜「あー怖い怖い。くわばらくわばら…」
葛西「…」
…。
魅音『園崎次期当主、園崎魅音です』
大石『ああ、堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。遠慮せずにどうぞ』
魅音『…』
大石『…早速本題に入りましょうかね。これを…』カサ
魅音『…?』
大石『どうぞ?お読みになって下さい』
魅音『…』ペラ
大石『…』
魅音『…』ペラ
大石『…』
魅音『…!!!』
大石『ね?特ダネでしょう?』
魅音『…何故、こんなものが…』
大石『鷹野さんのパソコンに残っていたデータらしいですよ。ファイルというよりはただの日記ですが…』
魅音『そうではありません。何故あの計算高い女がこのようなものを残していたのか、ということです』
大石『…あくまで、予想ですよ。もう彼女が喋ることは一生無いでしょうからなぁ…』
魅音『…』
大石『…きっと、鷹野…いえ、田無さんは、心の片隅。ほんの小さな小さな隅に、ほん…のちょこっとだけ、良心が残っていたのではないか、と思うんですよぉ』
魅音『…』
大石『富竹ジロウに心を開き、本当の笑顔を見せた田無さん。その感情がまだあったのでは、と…』
魅音『…』
大石『自分がしたことを忘れない為に、それを残したのではないか、と』
魅音『…』
大石『どうです?女性の貴方的には…』
魅音『…それも、あるかもしれませんが…』
大石『む…?』
魅音『この、個人的な契約…というものが気になります』
大石『…ああ。こんなのはまあ、お察しですよ。ええ…』
魅音『…鷹野は、ここに行き着くまでに、恐らくその身が、心が擦り切れるほどまで酷使したのでしょう』
大石『…』
魅音『これは、その絶望。女を、人間を捨てた鷹野の怨念が宿っているようにも思えます』
大石『…はー…流石、目の付け所が違う。貴方、才能ありますよぉ?』
魅音『…これを、どうしろと?』
大石『…お力を、貸して頂きたい』
魅音『…』
大石『…退職願は、出しておきました』
魅音『…』
大石『ああ、それと。私はもう少しで逮捕されるでしょうな』
魅音『…は?』
大石『罪状は、暴行…いや盗ってきちゃいましたから、強盗致傷ですかね?」
魅音『…何を…』
大石『だってねぇ。赤坂さんが私にこれを渡したなんてバレたら彼の立場も危ういでしょう?ですから彼の隙を見てちょちょっと…』
魅音『…』
大石『ああ、話が逸れました。それで、貴方にやって頂きたいことなんですがねぇ』
魅音『…』
大石『…』
魅音『…』
大石『…政治家のお知り合い。なんて、いらっしゃいます?』
魅音『…』
…。
……。
茜「証拠能力が無くても、これじゃもうこの二人はダメだね。警視庁もてんやわんやだ」
葛西「…」
茜「…末恐ろしい男だよ。あの狸…いや、熊刑事は」
葛西「…」
茜「…やっぱ一番怖いのはバケモンでも神でも幽霊でもないね。生きてる人間だ」
葛西「…」
茜「…さー…て」
葛西「…」
茜「これから、ここがどうなんのか…」
お魎「…」
葛西「…」
茜「…見ものだねぇ…」
終わります
人死んでる時点で完璧なハッピーエンドとか無いと思います
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