ダイヤ「あら......千歌さんって昔は髪を伸ばしていたのですわね......?」 (47)

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ダイちか


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千歌「初々しさを取り戻せっ」ダイヤ「......はぁ」
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千歌「――私はある日、恋をした。」
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単品でも読めるように作ってるつもりですが、一応同じ世界観ということで

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492916827

ダイヤ「あら……千歌さんって昔は髪を伸ばしていたのですわね……?」


ポツリと聞き相手の居ない部屋で言の葉を零す。

本日のわたくしは千歌さんのお部屋で独り、一心不乱にある書物を眺めていました。


ダイヤ「……これ、焼き増しして貰えないでしょうか……」


ページを捲る毎に、目に入ってくる弾けんばかりの愛おしい笑顔に胸の内が充足感や幸福感で包まれます。

……30分ほどでしょうか。黙々と書物を読み――というか眺め耽っていると……


千歌「ダイヤさん!!ごめんね、急に手伝い入れられちゃって!!」


――部屋の主の凱旋ですわ。


ダイヤ「いえ、大丈夫ですわ。」

千歌「もう、いきなりなんだからホント困っちゃうよねぇ……旅館だから、しょうがないけど……。……って、ダイヤさん何見てるの?」


千歌さんがわたくしの手元を覗き込む。


千歌「――っ!?///……な……な……っ……///」


今度は真っ赤になって言葉を失っていますわ。ふふ、喜怒哀楽が激しくて見てて飽きませんわね。


千歌「なんで私のアルバム見てるの~!?///」


――そう、わたくしがさっきから一心不乱に見ていたのは


ダイヤ「ふふ、小さい頃から千歌さんは愛らしいのね」


千歌さんのフォトアルバムでした。





    *    *    *





ダイヤ「――千歌さん」

千歌「……」

ダイヤ「千歌さーん?」

千歌「……ふん」


どうやらご機嫌を損ねてしまったようですわね。

――このままだとしばらく口を利いてくれなさそうなので、こういうときの策がありますわ。

わたくしはちゃぶ台の上のみかんを手に取って皮をむき始めました。


ダイヤ「千歌さんみかん剥けましたわよ。」

千歌「……」

ダイヤ「はい、あーん……」

千歌「……!」


みかんを一房手に取って、千歌さんに向かって差し出すと


千歌「……あむっ……」


食べましたわ。


千歌「……ふん」


みかんを嚥下するとまたぷいっと顔を背けてしまいます。


ダイヤ「はい、次の――あーん?」

千歌「……あむっ……」


……口は利かなくても律儀に食べるんですわよね。――でも、差し出すたびに口を開いてくれるのは正直可愛い。

親鳥が雛に餌を与えるときの気持ちってこんな感じなのかしら?


ダイヤ「おいしい?」

千歌「……おいしい」


やっと口を利いてくれましたわね。


ダイヤ「ごめんなさい。怒らせるつもりはなかったのですけれど……」

千歌「……ん……べ、別にチカ怒ってるわけじゃないけど……」


千歌さんはもじもじしながら、わたくしから取り上げて自分の横に置いておいた、アルバムを一瞥する。


千歌「……誰だって、勝手にアルバム見られたら恥ずかしいよぉ……。……というか、どうやってアルバム見つけたの?この部屋の本棚には置いてなかったはずだけど……」

ダイヤ「えっと……先ほど千歌さんのお姉さんから渡されたので……」

千歌「……くっ……また、美渡姉……!!」

ダイヤ「あ、いえ、美渡さんから渡されたのではなくて……」

千歌「……え?」

ダイヤ「先ほどこの部屋で待ってるときに……」


わたくしはことのあらすじを千歌さんに説明し始めました――


――――――――――――

――――――――

――――




来訪して早々、部屋に通された直後に千歌さんが旅館の手伝いに借り出されてしまったので、わたくしは独り千歌さんの部屋でぼんやりしていました。


ダイヤ『……やることがないですわね。』


こういうこと自体は千歌さんの家が旅館ですし、よくあることなので、そこまで気にしてはいないのですが……


ダイヤ『何か本でも持ってくればよかったかしら……』


退屈なものは退屈ですからね……

――などと思っていたら、襖越しに声を掛けられる。


『ダイヤちゃん?今大丈夫かしら?』


聞き覚えのある声……十千万旅館の三姉妹の長女――高海志満さんの声ですわ。


ダイヤ『あ、はい。どうぞ――』


家の人に対して、わたくしがどうぞと言うのもなんだかおかしな感じがしますが……

わたくしの了承を確認すると、襖から柔和な笑顔の志満さんが顔を見せます。


志満『――ダイヤちゃん、ごめんなさいね。せっかく来てくれたのに部屋で待たせちゃって……』

ダイヤ『いえ、そんな……わたくしも繁忙時に尋ねてしまって、申し訳ないですわ……』

志満『あらあら……そんな気遣いしなくてもいいのよ?……あ、そうだ!ちょっと待ってて!』

ダイヤ『はい……?』


程なくして志満さんが戻ってきて


志満『あったあった!これ……しばらく暇になっちゃうだろうから……』

ダイヤ『これは……アルバムですか?』

志満『そう、千歌ちゃんのアルバム』

ダイヤ『……!!』


きっと、このときわたくしの目が爛々と輝かせていたのでしょう。

志満さんは少し『ふふっ』と笑って


志満『見たいでしょ?』

ダイヤ『は、はいっ!!』

志満『ふふっ 喜んでもらえそうで何よりだわ。』


渡されたアルバムを大事に胸に抱いていると下から千歌さんの声が聞こえる


『志満ねぇー!!ちょっときてー!!』


志満『あらあら……呼ばれちゃったわ。行かなきゃ。……ダイヤちゃん、ゆっくりしていってね』

ダイヤ『は、はいっ!!ありがとうございますっ!!』


半ば興奮気味にお礼を言うわたくしを見て、志満さんはまた少し『ふふっ』と笑って


志満『――なんだったら、お義姉さんって呼んでくれてもいいからね?』

ダイヤ『――えっ///』


『志満ねぇ~!?』


志満『はいはい、今いくから――』


志満さんは階下からの呼び声に応えるように――ついでに爆弾発言を残して――去っていきました。


ダイヤ『……///』


虚を衝かれて、思わず赤面するわたくし――


ダイヤ『……志満お義姉様……。……悪くないかも……ですわ……///』


何気なく独り言ちてから――ッハとなって。


ダイヤ『……と、とりあえずアルバム……拝見させていただきますわ……///』


そうして、わたくしはアルバムに没頭し始めました――





――――

――――――――

――――――――――――


ダイヤ「――というわけですわ。」

千歌「ま、まさか思わぬところに伏兵が……」


千歌さんは項垂れる。

応援してくれているのだから、そんなに頭を抱えるようなことではないとは思いますが――まあ、確かに家族に茶々を入れられるのは嫌なのかもしれませんね。――お互い。


ダイヤ「それはそうと、千歌さん」

千歌「……ん?なに?」


わたくしはさっきアルバムから得た恋人の新情報について、詳しく知りたいなと考えていました。


ダイヤ「千歌さん、昔はロングヘアーだったのですのね?」

千歌「あー、そういえばそんな時期もあったなぁ……」

ダイヤ「……短くしたのは、何か理由でも?」

千歌「んーん。周りの子たちが髪伸ばしてたから、なんとなく伸ばしてただけかな。――小学校あがる前くらいに切った方が動きやすいなって思ってバッサリやっちゃったんだけど。」

ダイヤ「動きやすい……?」


利便追求はある意味、千歌さんらしい理由だと思いましたが


千歌「どうかしたの?」


少し訝しげな反応をした、わたくしに疑問が投げ返されます。


ダイヤ「ええと……どうかしたと言うほどのことではないのですが……子供の頃は今に比べて引っ込み思案なお子さんだったと聞き及んで居ましたので」

千歌「だ、誰がそんなこと言ってたの……?」

ダイヤ「果南さんですわ」


千歌さんに疑問に共通の幼馴染の名が挙がる。


千歌「あぁ……なるほど……。んー、でもそれは"逆に"かな」

ダイヤ「……逆に?」

千歌「ほら、果南ちゃんといると……どうしても動き回るハメになるじゃん?」

ダイヤ「……嗚呼……確かに……」


子供の頃、自分も連れまわされていたことを思い出す。

果南さんは子供の頃から、髪は長かったですが、シニヨンにして上にあげていましたね。


ダイヤ「それからはずっと短めなのですわね」

千歌「うん。なんだかんだ、身体動かす遊びの方が好きだったし……まあ、ただ――」

ダイヤ「……ただ?」


ふっと千歌さんの手が伸びてきて、わたくしの髪を撫でる


ダイヤ「……ち、千歌さん……?///」


突然の行動にやや面食らって、少しドキリとする。


千歌「――ダイヤさんみたいな綺麗な長い髪を見ると羨ましいなって……今でも思うことはあるかな」

ダイヤ「あ、ありがとうございます……///……ただ、この髪もいいことばかりではなくってよ?」


千歌さんの手で揺れる漆黒の髪を視界の端で捉えながら、昔のことを思い返す。


千歌「そうなの?」

ダイヤ「日本人形みたいですから……幼い頃はからかわれたりすることもそれなりにありましたのよ」

千歌「そうなんだ……こんなに綺麗なのに……」

ダイヤ「ふふ……ありがとう。……今でこそ、この黒髪は自慢なのですけれど」

千歌「うん……見てるとなんか吸い込まれそうだもん……いいなぁ……」


羨ましがる千歌さんを見て、なんとなく言葉が口をついた


ダイヤ「そんなに羨ましいのなら……いっそまた伸ばしてみるとか……?」

千歌「うーん……ロングのチカ、見たい?」

ダイヤ「……そうねぇ。」


問われて、ロングヘアーの千歌さんを想像してみる。


ダイヤ「……今の髪型も好きですけれど……伸ばしたら、それはそれで千歌さんの愛らしい顔立ちを際立たせてくれるかもしれませんわね。」

千歌「……///……そ、そっか……///」


千歌さんが紅くなる。……わたくし、何か変なことを言ったでしょうか?


千歌「……ダイヤさんって、ちょっと天然ジゴロなところあるよね……」

ダイヤ「え、ええ……?そんな、果南さんじゃあるまいし……」

千歌「果南ちゃんは別格!!」


本人の知らぬところで天然小悪魔の烙印を押される幼馴染。

……まあ、これに関しては自業自得ですけれど。


ダイヤ「わたくしは素直に思ったことを言っているだけなのですけれど……」

千歌「そういうところがジゴロなんだよっ」


……それを言ったら千歌さんも大概ジゴロだと思うのですけれど……

まあ、得てして自分のことは自分が一番わかっていないものですし……

良くも悪くも似たもの同士ということでしょう。


ダイヤ「でも――」


今度はわたくしが手を伸ばして千歌さんの髪を撫でる。


千歌「――わっ!?///」


また、紅くなって、更に少し飛び跳ねる千歌さん。


ダイヤ「好きな人の前でも素直になれないのは、わたくしは嫌ですわ――」


わたくしはそう言いました。

なかなか素直になれなかった昔の自分に言い聞かせるように――


千歌「……ダイヤさん……」


素直になれるようにわたくしの心を暖かく照らしてくれた太陽のような人に伝えるように――


千歌「……うん」


千歌さんは優しく微笑みながら頷いた。

彼女は自然な動きで髪を撫でるわたくしの手を包むように自らの手を重ねてきた。

――暖かい。

この暖かい陽光のような心が……わたくしをここまで惹き付けるのでしょう……

そう思いながら、穏やかなときを噛み締めるのでした。





    *    *    *



……次の日の朝練にて


千歌「えへへ、ロングにしてみましたっ」

ダイヤ「――」


千歌さんがロングヘアーになっていました。


ダイヤ「……??……え……??」


――髪伸びるの早くないですか?


鞠莉「あれじゃない?果南がワカメたくさん食べさせたとか」

果南「……んなわけないでしょ」

花丸「そんなにたくさんワカメばっかり食べたくないずら……」

ルビィ「……花丸ちゃん?ツッコミどころ間違ってるよ?」

ダイヤ「そうですわ……ワカメを食べたからってこんなに早く髪が伸びるなんて……」

ルビィ「……お姉ちゃん?お姉ちゃんもちょっとツッコミどころ間違ってるよ?」


ざわざわとする一向を見てやれやれといった感じで、善子さんがため息交じりに口を挟んで来ました。


善子「……というか、どう考えてもエクステでしょ」

花丸「……えくすて?」

梨子「わかりやすく言うと付け毛のことだね」


……嗚呼、なるほど。


曜「今朝、千歌ちゃんにお願いされて早速編みこんでみました!」

千歌「えへへ……ロングにするのどれくらいかかるかって相談したら、曜ちゃんがエクステ持ってるって言うから……」


千歌さんはそういってはにかむとわたくしに向き直る。


千歌「ど、どうかな……似合う……?///」

ダイヤ「え、えっと……っ///……そ、そうですわね……ふ、雰囲気が大人っぽくなりましたわね……っ///」

千歌「え、えへへ……///……他には……?///」

ダイヤ「そ、その……か、可愛らしいと思いますわ……っ///」

千歌「うん……っ///……えへへ……///」


周りのメンバーがニヤニヤしながらこっちを見てるのがわかる。


果南「はいはい、ご馳走様」

善子「もうこの流れ……割と食傷気味なんだけど……」

鞠莉「あら、Happyでいいじゃない」

花丸「でも、こんなラブラブムードじゃ練習しづらいずら」

ダイヤ「――っ!?///」


花丸さんの言葉に思わず赤面する。


曜「じゃあ、今日の朝練は自主練ってことにしよう!いこっ梨子ちゃん」

梨子「うん。じゃあ、あとでね千歌ちゃん」

千歌「え、ええ?う、うん」


曜さんが梨子さんを引き連れて去っていく。


ルビィ「それじゃ、ルビィも生徒会の仕事残ってるしそっち行こうかな……」

ダイヤ「な、ならわたくしも――」

鞠莉「――ダイヤ?」


鞠莉さんがにっこり笑ってこっちを見ている。

その笑顔には普段からは考えられないような鬼気迫る迫力が感じられました。


ダイヤ「――な、なんでもありませんわ。」

果南「ダイヤ……観念しな?生徒会は私たちが手伝ってくるから」

善子「やれやれね……ずら丸、私たちも撤退するわよ」

花丸「だから、いちいち名指しで呼ばなくていいずら……」


皆口々に言いながら屋上を後にして


千歌「…………///」

ダイヤ「…………///」


赤面すると千歌と二人で取り残されました。

いよいよ、冬の到来を告げる冷たい風がわたくしの隣にいる彼女の髪を静かに棚引かせます。


千歌「……ダイヤさん」

ダイヤ「……な、なんでしょうか……?///」


いつもと違う、大人っぽい雰囲気の千歌さんに少々戸惑いながらもどうにか返事をする。


千歌「……くっついていい?」

ダイヤ「……え、えっと……///」

千歌「……風、冷たいな」

ダイヤ「……!!……そ、そうですわね。こちらに……///」

千歌「えへへ……うん」


ピトッ――と千歌さんが肩をくっつけてくる。


ダイヤ「…………///」

千歌「……ダイヤさん」

ダイヤ「……な、なんですか?///」

千歌「……まだ寒い……かも……?」

ダイヤ「――///」


千歌さんが甘えたような声を出す。

嗚呼、これは――普段千歌さんがわたくしに大して"おねだり"をするときに出す声です。

……///……今の見た目でおねだりは据え置きだなんて卑怯ですわ……///


千歌「……ダイヤさん……チカ寒いなー……」

ダイヤ「……も、もう……///」


ええい……ままよ……///


千歌「……えへへ♪」


ふわりと千歌さんを抱きしめる。


千歌「……♪」


普段ないはずの位置にある髪がわたくしの手を滑る。

――なんだか不思議な感じ……


ダイヤ「……千歌さん……///」

千歌「……んー?……なぁに?」

ダイヤ「……これで寒くないですか……?///」

千歌「……えへへ……うん。……あったかい……」

ダイヤ「……そう……///」


恥ずかしすぎて、顔が直視出来ない……


千歌「――♪」

ダイヤ「随分ご機嫌ですわね……///」

千歌「えへへ、ダイヤさん今すごいドキドキしてるなって」

ダイヤ「……っ///」


密着してますものね。……この動悸、千歌さんに伝わらないはずもなく――


千歌「ドクンドクンって……ダイヤさんの心臓の音……チカに伝わってくるよ……」

ダイヤ「…………っ///」


可愛らしい声が耳元で囁く。

また、余計に鼓動が早くなる。

きょ、今日は完全に千歌さんのペースに飲まれていますわ……///


千歌「ねぇねぇ、ダイヤさん」

ダイヤ「こ、今度はなんですの……?///」

千歌「どっちがよかった?」

ダイヤ「……え……?」


どっち――とは


千歌「髪が長いチカと……短いチカ……どっちがいい?」

ダイヤ「……あ、えっと……」


答えに窮する。……この場合どう答えるのが正解なのでしょうか……

――と悩んでいたら


千歌「……って言っても答えられないよね。」


と言ってクスクスと笑う。


千歌「――ダイヤさん優しいから……」

ダイヤ「わ、わかっているなら――」

千歌「――でもね」


千歌さんは喰い気味にわたくしの言葉を掻き消しながら


千歌「この優しさを独り占め出来るのことが……チカはすごい嬉しいの……。えへへ……///」

ダイヤ「…………」


――嗚呼、もう……

わたくしはまたこうしてどんどん貴女が愛おしくなっていく……

抱きしめる腕に力がこもる

――ぎゅっと……彼女を抱きしめて髪を撫でる。


千歌「…………♪」


言葉は発しませんでしたが千歌さんがご機嫌なのがわかります。

……しばらく、そうして髪を撫で続けていると


千歌「そういえばね……」


千歌さんは思い出したかのように言葉を発した。


ダイヤ「……なんですか?」

千歌「鞠莉ちゃんが言ってたんだけど……女の子は髪を撫でられることに愛情を感じるんだって……」


……確かに鞠莉さんが言いそうなことですわね。


ダイヤ「……愛情は感じますか?」


わたくしは尋ねる。


千歌「うーん……半分かな……」

ダイヤ「……半分?」


千歌さんのこの回答は正直少し意外でした。

おかしいですわね……目一杯、愛情を込めているつもりなのですが……


千歌「……うん、今日増やした分は地毛じゃないからかな……?」

ダイヤ「……そういうものなのですか?」

千歌「わかんないけど……たぶん」


……よくわかりませんが、本人が言うならそうなのでしょう。


千歌「……あのね」

ダイヤ「はい」

千歌「今、チカの髪を撫でてくれてるって感覚がすごい幸せなんだ……」


幸福感が伝わってくる……そんな優しい声で千歌さんはそう言う。


ダイヤ「……なるほど」

千歌「だから、ロングちかちーは一日限定かな……」

ダイヤ「そうですか……」

千歌「……残念?」


千歌さんはわたくしの反応を聞いて、問いかけてくる。


ダイヤ「……どうでしょう……びっくりはしましたけど……わたくしはどちらの千歌さんも好きですわ」

千歌「えへへ……ダイヤさんの女たらしー」

ダイヤ「千歌さん以外の人にこんなこと言いませんわ」

千歌「うん……知ってるっ」


ぎゅーっと千歌さんが抱き返してくる。


ダイヤ「それで……決まりましたか?」

千歌「え?」

ダイヤ「髪を伸ばすかどうか……」

千歌「あ、うーんとね……ダイヤさんの反応見て悪くないかなって思ったけど……どっちのチカも好きって言ってくれたから……検討中かな」

ダイヤ「……そう」


わたくしは千歌さんの頭の上の方――本来の千歌さんをぽんぽんと撫でる。


ダイヤ「……ふふ」

千歌「……?……どうしたの……?」


わたくしは何故千歌さんが唐突にエクステまでして、ロングヘアーを見せてくれたのか……なんとなくわかって――


ダイヤ「焦らなくてもいいのよ」

千歌「……ぇ……」

ダイヤ「女の髪は一生物……そんなすぐに伸びないですものね。だからこそ"今"見て欲しかったのですわよね……」

千歌「……うん」


どうやっても、今こうして"浦の星で"――長い髪を風に棚引かせて抱き合うこともなかっただろうから



千歌「――決めた」


千歌さんはそう言う。


ダイヤ「ふふ……どっちにしますの?」


わたくしは問う。


千歌「……秘密♪」


千歌さんがいたずらっぽく答える。


ダイヤ「うふふ……それは楽しみですわね」


わたくしもいたずらっぽく笑う。


いつかの未来――抱き合ったとき、この手はどこまで髪を撫でているのか

――でも一つ核心していることがありますの。


ダイヤ「……いつかの未来でも……必ず……いつまでも……わたくしは貴女を抱きしめて髪を撫でていると思いますわ……。」


小さな声で呟いた言葉が……少し冷たい内浦の空に飲み込まれて消えていきましたわ――。





<終>


終わりです。お目汚し失礼しました。

G'sマガジン2016年の9月号にある千歌ちゃんは昔はロングだったということについて
ダイヤさんが知ったらどうなるかなと思って書きました。
ロング千歌も可愛い。

またダイちか書きたくなったら来ます。

よしなに。


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