真宮桜「人間の私と死神みたいな人間みたいな彼の家族」 (37)

クラブ棟 りんねの部屋

りんね「それで? 今日はどういう用件だ、おばあちゃん。」

魂子「りんね……。」スゥ

魂子「お・ば・あ・ちゃ・んと呼ばないでー。」グリグリ

りんね「こめかみが…」イデデ

魂子「まったくもう…かわいげのない孫なんだから。」ハァ

六文「いつも思うんですけど他にどう呼べばいいんでしょうか?」

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魂子「せっかくいい話を持ってきてあげたのにー。」

りんね「いい話?」

魂子「これよ、これ。」ペラ

りんね「? ……こ、これは!?」ブルブル

六文「お、温泉旅行券!? しかもあの世この世どちらでも使えるなんて!」

魂子「こないだの死神青年会の集まりでやったビンゴ大会でもらったのよ。ちょうど四人とペット一匹分あるし、あんたたちを誘ってあげようかなーって。」

りんね「四人? 他にも誰か誘うのか?」

魂子「ふふっ、さっきね、乙女さん…じゃなかったわね、苺ちゃんにも声かけてきたの。」

りんね「おふくろに?」

ナレーション「六道りんねの母、乙女はいろいろとあってこの世の小学生、苺として転生したのである。」

魂子「……昔ね、りんねが生まれる前に、乙女さんと話してたのよ。りんねが生まれて、大きくなったら家族で温泉旅行にでも行きましょう、って。」

六文「魂子さま…」

りんね「おばあちゃん…」

魂子「だからお・ば・あ・ちゃ・んはやめなさいってー。」グリグリ

りんね「……そういうことなら、ありがたく誘われるよ。」シュー

六文「あっ、でもでも魂子さま。四人分ってことはあと一人連れて行けるんですよね? …もしかして。」

魂子「鯖人なら連れて行きませーん。乙女さんともね、ぐーたらする鯖人は抜きで行こうって昔は話してたんだから。」

りんね「そうか。いい判断だ。おやじを連れて行くとろくでもないことにしかならんからな。」

魂子「ま、とはいっても。一人分もったいないし、桜ちゃんでも誘う?」

りんね「え」ピタ

魂子「ほら、桜ちゃんにはあんたも私もいろいろと世話になってるし。」

六文「それはナイスアイディアです! そうしましょう、りんねさま! …りんねさま?」

りんね(真宮桜と温泉旅行…)




桜『六道くん、誘ってくれてありがとう!』

りんね『いつもいつもお金を借りたり食事を差し入れしてもらったりしてるお礼だ、気にしないでくれ。いつか必ず、借りた金も倍にして返すから。』

桜『うん。期待しないで待つよ。』ニコリ



桜『温泉街って私始めてー。』スタスタ

りんね『ふ、二人で少し、土産屋でも見て回るか?』

桜『うん。行こう。』ギュッ

りんね『真宮桜ー。』アハハ…

桜『六道くーん。』ウフフ…




りんね「なんと素晴らしい旅行(予定)だ!」ガタッ

魂子「じゃ、決まりってことでいいわね?」

六文「ぼく、さっそく桜さまに伝えてきます!」タタッ

りんね「待て六文! このことはおれの口から…!」タッ

桜「へぇー、温泉旅行。でもいいんですか、私も。」カンカン

苺「もちろん。うちの息子がよくお世話になってるもの。魂子お義母さまにもそう言っておくわ。」カンカン

りんね・六文「」ズコー

りんね「ま、真宮桜…。」

六文「こっちから行く前にもうここまで階段を上ってきてたとは…。」

桜「あ、六道くんと六文ちゃん。」

苺「あらら。どうしたの慌てて。」

りんね「ま、真宮桜。その、うちのおばあちゃんが…。」

魂子「お・ば・あ・ちゃ・ん禁止ー。」グリグリ

りんね「…とにかく、その、温泉旅行券を当てて…。」シュー

桜「うん。もう聞いたよ?」

りんね「……その、どうだろうか。これまで真宮桜には世話になったわけだし、よければこれも礼の一部として…。」

桜「うん。本当にいいなら、ぜひともご一緒させてもらいたいな。」

りんね「そ、そうか! では行こう、真宮桜!」パァ

桜「うん。楽しみにしてるね。」ニコリ

りんね「! …ああ、必ずいい旅行にしよう!」パァ

魂子「話はまとまったわねー。じゃ、今週末に乙女さんの家の前に集合ってことで。」

六文「はーい! 楽しみですね、りんねさま!」

りんね「ああ、楽しみだ! 夢なら覚めるな……。」

苺(…ふふっ、前世では叶わなかった家族旅行。いい思い出にしようっと。)

桜(うーん。軽く承諾しちゃったのはいいけど、ホントに私も混ざっていいのかな?)チラッ

りんね「」ナミダグミ

六文「」ニコニコ

魂子「」ニコニコ

苺「」ニコニコ

桜(……うーん。まーいいやっ! なんだか楽しみになってきちゃったし。)ニコリ

いったんここまで 最新刊にあった家族温泉回がよかったのでわりと勢いだけで始めました 続きはいつか分からないです
ではまたいつか

週末 苺の家の前

りんね「おふくろーっ!」

苺「あ、りんね! 一番乗りね。」

六文「おはようございます苺さま!」

りんね「…おばあちゃんも真宮桜もまだ来ていないのか?」キョロキョロ

苺「ええ。魂子お義母さまは準備に時間がかかるし、たぶん一番遅く現れるんじゃないかしら。」

りんね「そうか。まぁおばあちゃんだしな。…なぁ。そういえば聞いていなかったから聞くが、大丈夫なのかおふくろ。一人で。この世のご両親に言われただろう。」

苺「大丈夫大丈夫。お父さんたちには友達の家族が招待券一人分余ってお誘いされたって言ってあるから。」

りんね「そうか……。」

桜「おはよう六道くん、六文ちゃん、六道くんのおかあさん。」スタスタ

りんね「ああ真宮桜。おはよう。」

六文「桜さま、おはようございます!」

苺「おはよう桜ちゃん。」

魂子「あら、私がビリ?」ニュー

りんね「ああ、おば…。」

魂子「それ禁止ー。」グリグリ

苺「魂子お義母さま、ほぼ皆同じタイミングでしたから気にしないでくださいな。」

魂子「あらそう。じゃ、しゅっぱーつ。」

りんね「…他にどう呼べというんだ。」シュー




現世 ある温泉地

りんね「着いたか。あっという間だったな。」

桜「そりゃそうだよ。霊道使ってるし。」

ナレーション「霊道とは、この世とあの世を結ぶ不思議な道のことである。また、現世のあらゆる場所に繋がっており、これを使えば車で何時間もかかるところへだろうとほぼ一瞬でたどり着ける。死神の特権である。」

六文「わぁ…なんだか、あれ……?」

温泉街「」ガラーン

魂子「あら? なんだかがらんとしてる。」

苺「おかしいですね。有名だし、すごくにぎわってるって聞いてたけど…。」

りんね「いいじゃないか! つまりは俺たちの貸切だ!」

りんね(あからさまにトラブルの予感がするが…今は仕事じゃない。旅行を優先だ!)

桜「いやいや。なんか様子もヘンだよ?」

魂子「そうねぇ。ちょっと旅館で聞いてみましょうか。」




現世 旅館

主「いらっしゃーい…。」ゲッソリ

りんね「これは…。」

六文「まるで取り憑かれてるみたいな…。」

魂子「予約した六道ですけどー。」

主「はいー…。ようこそー…。ご案内しまーす。」ユラリ

桜「やっぱり何かおかしいよ。」コソッ

りんね「主は見たところフツーだが…。」コソッ

魂子「そうねぇ。なんていうか、疲れてるっぽいだけだし。」コソッ

六文「でもでも、疲れてるだけであんなにげっそりしますかね?」コソコソッ

苺「どうかしら…。」コソッ




部屋

主「こちらがおぼっちゃんのお部屋ですー…。」

りんね「こ、これは! なんという豪華空間! 広々とした六畳間に座椅子、それにベランダ! れ、冷蔵庫まであるじゃないか!」

六文「りんね様! テレビもありますよ! それにお饅頭がテーブルに! あっ、お茶も!」

りんね「慌てるな六文! 持ってく準備は?」

六文「バッチリです!」タッパー

ナレーション「旅館に置いてあるお菓子やお茶のパック、その他諸々の生活雑貨はよい子は持ち帰らないようにしよう! ダメ、ゼッタイ!」

魂子「こらりんねはしたない。」

主「いいですよー…。どうせ、お客様も来ないしー…。」

桜(すごい投げやり…。)

苺「……あのう。ここの温泉街って、こんなに静かなものなんですかー? もっとすごい人がいるのかと…。」

主「……はぁ。」ションボリ

桜「目に見えて落ち込んでる…。」

主「実はですね…。」

りんね・桜・六文・魂子・苺(語りだした…。)

主「ここ最近、ウチに対してお客様からのクレームがすごいんです……。旅館の中を歩いていると足のない人がゆらゆら漂っているとか。部屋で食事中のお客様の目の前にいきなり人の顔が机の下から浮かんでくるとか…。」

苺「まぁ……。」

主「この辺りは幽霊が出るという噂がすっかり出回って、他の宿にもさっぱりお客が入らず…。このままじゃウチは責任を取って代々続いた宿を畳まねばなりません…ああ! あの浄霊できるというお方がちゃんと仕事をしてくれれば!」

魂子「あら、そんな人が?」

鯖人「すみませーん、お酒追加ー。」グワラ

りんね「ん?」

桜「あれ?」

鯖人「あっ。」

鯖人「」コソコソ

ゴーン!

りんね「またか。」グイ

鯖人「それはこっちのセリフだ。」ヒリヒリ

魂子「鯖人。あんたまた人を騙して…。」フー

苺「パパったら、相変わらずのゴクツブシなんだから。」

鯖人「いやぁ。」テレ

桜「褒めてないですよ。」

りんね「おやじ、やはりおれの手で引導を渡すべきか…。」スチャッ

鯖人「まぁ待ちなさいりんね。別にパパは今回は人を騙してなんかないぞ? ただ、機会を窺っていたんだ。」

六文「機会?」

鯖人「ああ。今回の件。解決策自体は見つかったんだが、ぼくじゃ方法を実践できなくてね。」

主「そうなんです。だから解決のできる人材がお客様に来るまで待ってくれ、と。」

鯖人「そうそう。だからぼくは騙してなんていないよ?」

りんね「ほう。それで、いったいどれほどここに?」

主「だいたい三十万円分ほどはお泊りいただいてますー。」

りんね「やる気ないんだろう?」

鯖人「てへー。」




宿の外

苺「それで? パパ、どういう霊なの? ここにいるのは。」

鯖人「うん。それがねー。」ボコボコ

霊「……。」ユラァ

桜「あっ。玄関の上に出てきた。」

主「え、何がですか?」

ナレーション「霊の存在は、特別な人にしか見えないのだ。」

霊「……まだ来てなーい…。」ユラァ

りんね「玄関の辺りを見ているようだが…来てない?」

六文「誰か待ってるんですかね?」

桜「そうみたいだね。っていうか、この霊(ひと)…。」

魂子「あらご主人にそっくり。」

主「え。私?」

鯖人「話を聞く限りなんだけどね。あの方、この宿の以前の主だそうなんだ。」

主「ええっ、父は半年前に亡くなったばかりですが…。」

桜「いえ、だから幽霊として今いるんです。」

鯖人「それでね。未練を聞いてみると、あるお客さんをもてなせなかったことらしいんだ。」

苺「あるお客さん?」

主「……はっ、もしや。」

りんね「何か心当たりが?」

主「はい。昔からここをご利用してくださってるご家族というのでしょうか、まぁ、ございまして。」

主「その一家の家系は、それこそ私の遠いご先祖の頃からの付き合いだそうでして、それで、必ず毎年ご家族でご利用いただいてるんです。それで…。」

桜「それで?」

主「半年前です…。そのご家族の坊ちゃんが、新しく出来た恋人と二人でご利用なさるということで、それでウチの父が相手方の父によろしく頼むと言われたそうでして。」

主「父は必ず自らその二人をおもてなしして、いい旅行にしてあげたい、と。ところが、当日になって…。」

りんね「なるほど…。当日に事故か何かにでもあったんですか?」

主「いえ。年だったのでぎっくり腰になりまして。それで慌てて医者に。……仕方がなかったので、おもてなしの方は私の手で代わりに。」

苺「はぁ。」

主「それから数日しないうちに、父はそのまま持病の心臓病で…。」

魂子「なるほどねぇ。その一件が後悔になって、いまだ宿をうろついていると。」

鯖人「その未練を断ち切ってあげればいいんだけどねぇ。ほら、僕はこの通り一人だから、そのお客さんのふりはできないし。」

りんね「あの秘書はどうした秘書は。」

鯖人「いやいや、彼女を巻き込むわけにはねぇ?」

六文「単に出来る限り宿にタダで泊まりたかっただけなのでは?」ジトー

苺「でしょうねぇ。」フー

鯖人「とにかく!」

桜(ごまかした…。)

鯖人「こうしてカップル役にふさわしい人材が現れたわけだ!」ガシッ

りんね「は?」

桜「え?」

魂子「ああ、確かに。」

苺「ちょうどそれっぽいわね。」

りんね「なんでそうなる。だいたい、カップルという話ならおやじにはおふくろが…。」

苺「いやいや、どう見てもこれじゃ親子よ?」チンマリ

鯖人「そうそう。ささっ、りんね、これも死神の仕事だろう。がんばりなさい。」

苺「パパにしては珍しいわね。積極的に参加するなんて。」

六文「絶対何か企んでますよ。」ジトー

鯖人「いやいや、そんなことないよ? さ、りんね。後は任せる。あ、それとこれ宿代の請求書ね。」ポン

りんね「なに? …これは!」ガサガサ

鯖人「じゃ、ぼくはこれで。じゃあね、ママ、おかあさま、桜ちゃん。」シュタッ

りんね「おい。」ゴン!

鯖人「いたい。」ミシ…

りんね「この請求はどういうことだ。」

鯖人「いやね?」

主「ウチとしては宿代は十万円までしかご負担できないのでー…。そしたらこの方がその分は息子にツケるとー。」

鯖人「」コソコソ

りんね「逃、が、さ、ん、ぞ。」ゴゴゴゴゴ…

鯖人「ふっ。」

鯖人「さらば!」バサッ!

りんね「待て!」

魂子「あらら。」

主「もうこの際お祓いしていただけるならチャラにしますー。」

苺「やるしかないみたいね、りんね。」

りんね「くっ…。し、しかし。真宮桜が…。」

りんね(そんな、カップルだなんて。いいのか、真宮桜!?)

桜「うーん。まぁ、そういうことならしょうがないね。」

りんね(!)

りんね「そ、そうか。すまない真宮桜。フリとはいえ、その…。」

桜「気にしないよ。とりあえず、どうしようか?」

りんね「あ、ああ。とりあえず、そうだな。」

六文「あの人の未練は自分でお客さんをもてなすことなわけですし。」

魂子「だったら黄泉の羽織で実体化してもらいましょうか。」

りんね「そうだな。それでいこう。六文?」

六文「はーい。被せてきます。あのー? すみません、降りてきてくれませんかー?」

霊「はいー…?」

六文「はい。」バサッ

ナレーション「六道りんねが普段霊体化するために着ている黄泉の羽織は、裏返して霊に着せると実体化させられるのだ。」

りんね「あの。おれたち、予約してた例の…。」

霊「あっ、ぼっちゃん!? ……髪、去年となんか変わってませんか? それに顔も心なしか別人のよーな…。」ジロジロ

りんね「髪はイメチェンです。顔は気のせいでしょう。それよりも…。」

主「うわっ、とうさん!」

霊「あ、お前こんなとこで何してる! 俺がお客様を部屋にご案内するから、お前は厨房に食事の準備を指示しに行け!」

主「あ、ああ!」タタッ

霊「まったく……。ああ、失礼。ご案内しますとも。そちらが……?」

桜「あ、はい。彼女です。」

霊「そうですかそうですか。では、ご案内を。」

りんね「問題なく信じてくれたな。」コソッ

桜「すっかり私たちをそのお客さんだと思ってくれたみたい。」コソッ

霊「ささ、こちらに。」

桜「えっと…。とりあえずついていこうか。」

りんね「あ、ああ。」

りんね(待て。そうか、カップルの泊まりということはつまり…。)




部屋

霊「こちらがお二人のお部屋になりますー。」スタスタ

りんね(や、やっぱりか!)

桜「……。」

りんね(フリとはいえ、いくらなんでもこれはマズイのではないか!? 真宮桜、いいのか?)

桜「……。」ジー

りんね(……な、何を考えてるか分からん!)

魂子「あらま。まぁ、そうなるわよねぇ。」

苺「そうですねぇ。」

六文「まぁ大丈夫ですよ、ぼくもいるし…。」

魂子「六文、今日は私たちの部屋に泊まりなさいな。」

苺「いろいろとおやつ買ってあげるわよ。猫缶とか。」

六文「そういうことでりんね様!」シュタッ

りんね(おい六文!)

魂子「じゃ、りんね。がんばりなさいな。」

苺「私たちが関わったら、カップルが家族連れになっちゃうし。」

りんね「いや、しかし…!」

魂子「間違いは起こさないようにねー。」スタスタ

苺「りんねだって高校生だし、気持ちは分かるけどね。」スタスタ

りんね「おい!」

桜「六道くん。あの人待ってるよ。」

霊「あのう。ご説明をー。」

りんね「……あ、ああ。」




霊「――以上が当旅館の施設の説明になります。では、何かありましたらどうぞ。お食事は二時間後を予定しておりますので。」タタタ

シーン…

桜「とりあえず荷物置かないとね。」

りんね(冷静!?)

りんね「…あ、あの。真宮桜。」

桜「?」

りんね「す、少しは気にならないのか? いくらフリとはいえ…その、男と女がだな。」

桜「ううん? だってフリだし。六道くんなら大丈夫だって、分かってるし。」

りんね(だ、大丈夫…。それは、信頼されてるのか? それとも、男として見られてないということか?)

りんね「……そ、そうか。まぁ、その、安心しろ。寝るときは、さすがにあの霊に見つからないように外に行くから。」

桜「そう? …とりあえず、外歩こうか。ここでじっとしてても退屈だし。」

りんね「あ、ああ。そうだな。」

いったんここまで

続きはまたいつか

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