【カガクチョップSS】蓮「沙衣はサイコパスの沙衣」 (30)

一部残酷描写がありますので苦手な方はご注意ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490529128

科学準備室

蓮「…」

蓮「ハッ、居眠りしちゃった…」

蓮「…ってまた椅子に縛り付けられてる!?」ギシギシ

蓮「今度は何をする気よ!さっさとほどきなさい!!」

蓮「ねえ、ちょっと!聞いてるの!?」

蓮「ほどきなさいよー!!」ガタガタ

雨柚「しーっ…!」

蓮「盛本さん?そこにいるの?」

雨柚「静かに…!」

蓮「ど、どうしたの?」

雨柚「部長が来ちゃいます…!」

蓮「ええ、だって来ないとほどいてもらえないわよ?」

雨柚「ダメです!」

蓮「えっ」

雨柚「今日の部長は何かおかしいんです」

蓮「沙衣はいつもおかしいじゃない」

雨柚「それはそうですけど…、じゃなくて!」

雨柚「本当に変で、何かにこう取り憑かれたような…」

雨柚「いつもの部長とは全然別人のような気がするんです」

蓮「ふうん?」

雨柚「とにかく、早くここから逃げましょう!」

蓮「それには賛成だけど、どうやってロープを解くの?」

雨柚「私のスカートのポケットに糸切りバサミが入ってます」

雨柚「自分じゃ取れないので、今からそっちに行きますから取ってくれませんか?」ガタタ

蓮「わかったわ」

雨柚「お願いします」

蓮「こっちのポケット?」

雨柚「あっ、違います!反対側です」

蓮「こっちね…」ゴソゴソ

蓮「あった!」

蓮「これで何とか…」ギリギリ

雨柚「どうですか?」

蓮「うーん…意外と小さいわね、このロープの太さじゃ刃が立たない…」

雨柚「片方の刃で押し切ってみたらどうでしょう?」

蓮「名案ね、やってみましょう!」

蓮「おっ、行けそう」ザスザス

プツッ

雨柚「切れた!」

蓮「やった!」

雨柚「この調子で次も…」

沙衣「…」

雨柚「あっ…」

蓮「あーっ!やっと来たわね!?」

沙衣「…何をしてるのかな?」

蓮「それはこっちのセリフよ!!」

蓮「もう、こういうタチの悪い冗談はやめてって言ってるでしょ!?」

蓮「せっかく結んだところ悪いけど、切らせてもらってるわよ!」

沙衣「そんな小さなハサミでかい?」

沙衣「こんなもの、必要ないよ」ヒョイ

蓮「あっ、ちょっと!?」

沙衣「どこからハサミを?」

蓮「盛本さんが持ってたのよ」

沙衣「君か」ギロッ

雨柚「っ!?」ビクッ

蓮「そんな事どうでもいいでしょ、早く返してくれない?」

沙衣「それはできないね」

沙衣「けど、代わりにこれはどうかな?」スッ

蓮「何それ、ナイフ?」

雨柚「ひっ…」

蓮「いいのあるじゃない!切ってくれるの?」

沙衣「違うよ」

蓮「じゃあ何なの?」

沙衣「こう使うのさ」

ザシュッ!!

蓮「な、え?」

雨柚「え、あれ?」ポタタ

雨柚「血が…」ゴホッ

雨柚「」ドサッ

蓮「ギャアアア!!!」

沙衣「ハァ…盛本くん、君には失望したよ」

沙衣「まさか科学部員でありながら科学の進歩を妨害するような行動を取るとはね」

沙衣「あれほど委員長とそのまま大人しくしておいてと言ったのに…」

蓮「え、嘘でしょ?冗談よね…」

蓮「アンタ、も、盛本さんに何したのよ!!?」

蓮「これも実験の一環ってわけ!!?」

沙衣「いや、違うよ?単に制裁を加えただけさ」

沙衣「だけど、つい感情的になってしまうのは科学者としてあるまじき行為だね」

沙衣「おかげで被験者が半分になってしまった」

蓮「な、何を言ってるの…?」

沙衣「今回の発明は特別でね、まさしく世紀の大発明と言ってもいい」

沙衣「だけどその成功は被験者である君たち…」

沙衣「じゃないか、君の協力しだいなんだ」

蓮「え、え…?」

沙衣「まあ話すより実際見てもらった方が話が早いと思うよ?」

沙衣「ということで今回の発明は『プラナリア・ポーション』!」ジャーン

沙衣「これは再生能力を持つ動物、プラナリアから作った人間の欠損部位を再生させることができる画期的な発明なんだ」

沙衣「使い方は簡単、人体の切断された部位にこの液体をふりかけるだけ!」

沙衣「じゃあ早速、試してみようか?」

蓮「試すってどうやって…」ハッ

蓮「まさか!?」

沙衣「そのまさかさ」

蓮「こ、来ないで!!」ブンッ

沙衣「おっと」

沙衣「拘束されてるからいくら抵抗しても無駄なのにな」ゴッ

蓮「きゃあ!」ガタン

沙衣「ほらね」チャキッ

蓮「や、やめて…」ギュッ

沙衣「ほら、手をほどいて」

蓮「嫌よ!!」

沙衣「君も盛本くんみたいになりたいのかい?」

蓮「あ…」パッ

沙衣「いい子だ」ブンッ

ドスッ!!

蓮「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!?!!!?!」

沙衣「勢いで切るのは無理だったか…」ブシュブシュッ

ザスッ…ボトン!

沙衣「ふう…」

沙衣「やっぱり、ナイフだけで切り落とすのは難しいね」

蓮「指が、指が…」

蓮「私の指があぁ…」ドクドク

沙衣「大げさだなぁ」

沙衣「アドレナリンが分泌されてるから見た目ほど痛くはないはずだよ?」

蓮「何言ってんの?」フーッフーッ

蓮「アンタ、本当にどうかしてるわよ…」ポロポロ

沙衣「大丈夫、すぐに再生するよ」キュポン

沙衣「見ててごらん」トクトク

蓮「ううああぁ…」パシャパシャ

蓮「あああ、沁みるぅ…」

ボコボコッ

蓮「あ、あ…え?」

蓮「指が…、生え…?」

沙衣「ほーら、成功だ!」

沙衣「やっぱり私は天才だった!」ハハハ

蓮「うううう…」

蓮「満足した…?もう十分でしょ?」

蓮「いい加減解放してよ…」

沙衣「まだまだ、これからが本番だよ?」

蓮「本番って…」

沙衣「指は再生したけど…」

沙衣「…頭はどうかな?」

蓮「…っ!?」

沙衣「頭が再生すれば今度こそ大成功、私も超一流の科学者の仲間入りだ」

沙衣「そのためにはまたちょっと我慢してもらうことになるかな?」

沙衣「さてと道具は…おっ、あった」ガチャッ

蓮「やぁ…」

沙衣「景気よく、チェーンソーで行くとしようか」ブゥン

蓮「やめ…」

沙衣「科学の進歩には、多少の犠牲は付き物だよ?」ブロロロロ

沙衣「さあ、覚悟を決めて!!」ブンッ

蓮「いやあああああああぁっ!!!!」

ガラッ

雨柚「遅れてすみません、日直の当番が長引いちゃいまして…」

雨柚「って、あれっ!?長倉さんが気絶してる!!」

雨柚「だ、大丈夫ですか!?」ユサユサ

蓮「」

雨柚「ダメだ、起きない…」

沙衣「やあ、盛本くん」

雨柚「部長、大変です!長倉さんが」

沙衣「あー、そうなっちゃったか」

雨柚「何があったんですか?」

沙衣「ちょっと新発明の実験に協力してもらっていたんだけど…」

沙衣「ここまでなるとは予想外だったな」ウーム

雨柚「まさか、実験に失敗して…!?」

沙衣「いやいや、むしろ大成功だと思うよ」

雨柚「…?」

雨柚「そもそも何の実験だったんですか?」

雨柚「というかこのヘッドギアはいったい…」

沙衣「それを説明する前に…」

沙衣「盛本くんは、VRは何か知ってるかい?」

雨柚「はい、確かバーチャルリアリティ…仮想現実の略ですよね?」

沙衣「そう、そして今それが体験できるゲーム機が大流行しているのも知ってるかな?」

雨柚「もちろんです」

雨柚「あまりにも人気過ぎて入手困難になってるって聞きますね」

沙衣「その通り」

沙衣「私も苦労してやっと手に入れてね」

雨柚「えー、部長持ってるんですか、VR!」

雨柚「すごいじゃないですか!」

沙衣「そうなんだけど…」

雨柚「どうかしたんですか?」

沙衣「実際プレイしてみたら、意外と失望させられてね」

雨柚「それはまたどうしてです?」

沙衣「仮想『現実』なんて言うけど…」

沙衣「プレイするにはまず重たいヘッドマウントディスプレイを付けなければならないし」

沙衣「操作にはもちろんコントローラーが必要になる」

沙衣「でも、そんなこと現実にするかい?」

雨柚「それはまあ、ゲームですからね…」

沙衣「他にも、VR酔いとか画面のカクつきとかQTEとかも現実にはありえないよね」

雨柚「カクつき?QTE?」

沙衣「それで思ったんだ、プレイヤーがゲームの中に入って直接プレイすることができれば…」

沙衣「モニターもコントローラーも要らないし、その他の問題も解決するんじゃないかってね」

雨柚「どういう意味ですか?」

沙衣「前置きが長くなったけど、そこで今回の発明の出番となるわけだ」

沙衣「それは『ゲームギア』と言ってね、今回私が発明した新型のゲーム機なのさ」

沙衣「ちなみにセ○の携帯ゲーム機とは何の関係もないよ」

雨柚「えっ、これゲーム機なんですか!?」

雨柚「とてもそうは見えませんけど…」

沙衣「この装置はゲームデータを電気信号に変換して直接脳に送り込めるようになっていて」

沙衣「そうすることによってゲーム内と現実の感覚をリンクさせることができるんだ」

雨柚「それはつまり…」

沙衣「ゲームの世界をまるで現実世界にいるかのようにリアルに体験できるという意味さ」

沙衣「たとえば、レースゲームなら実際に車を運転することができるし…」

沙衣「RPGならドラゴンを自分自身の手で剣を振るって斬り倒すなんてことができるわけだ」

雨柚「それはすごいですね!面白そうです!」

沙衣「ただ、この発明には欠点があってね…」

雨柚「なんですか?」

沙衣「ポジティブな感覚だけじゃなくてネガティブな感覚も現実世界と同じになるから…」

沙衣「疲れるしお腹もすくしケガもする」

沙衣「正確にはそう脳が錯覚する、かな?」

雨柚「ええっ!?それって危ないんじゃ…」

沙衣「それでテストプレイをしてもらってたんだよ、感覚の微調整のためにね」

沙衣「このヘッドギアは出力するだけじゃなく脳波をフィードバックとして採取することが可能なんだ」

雨柚「じゃあさっき気絶してたのは…」

沙衣「よほど恐ろしい体験をしたんだろうね」

沙衣「なにせホラーゲームだから」

雨柚「なぜホラーを…」

沙衣「ネガティブな感覚のサンプルにピッタリだからね」

沙衣「それに、VRと言ったらやっぱりホラーゲームだろう?」

雨柚「はあ…」

雨柚「とにかく、それで気を失ってたんですね」

雨柚「でも、そんな実験によく協力してもらえましたね?」

雨柚「確か長倉さん、ホラー苦手だったんじゃあ…」

沙衣「そこはその、教室に入った時に一人で居眠りしてたから…」

沙衣「背後からそうっと近づいて、ね?」

雨柚「ええ…」

雨柚「そんな恐ろしい発明を本人の知らないうちに体験させるなんて…」

沙衣「大丈夫大丈夫、この装置にはローカライズオプションがあってね」

沙衣「AIがプレーヤーの記憶を分析して、ゲーム内の言葉や場所や登場人物をプレーヤーの身近なものに変えることができるんだ」

沙衣「それで恐ろしさも軽減されてるんじゃないかな?」

雨柚「その機能いります?」

沙衣「リアリティが増すじゃないか」

雨柚「リアリティが増すってことは、生々しさも増すような気が…」

沙衣「んー、そうとも言えるね」

沙衣「…まあ、何だかんだ言って最後にはいつも被験者になってもらってるだろう?」

沙衣「そこまでの過程を省いて効率化しただけだよ」

雨柚「…」ドンビキ

沙衣「それはそうとして、そろそろプレイした本人に感想を聞いてみるとしようか」

沙衣「おーい」

蓮「ハッ…!」

沙衣「どうだい、気分は?」

蓮「うがーっ!!」

雨柚「うわっ!?」

蓮「何が科学の進歩のためよ!!」

蓮「殺されるくらいなら!殺してやるーっ!!」ガスッガスッ

沙衣「ちょっ、待っ…」

蓮「うるさい死ねっ!!」バキャアッ

沙衣「ぐえっ」ドサッ

蓮「…」ハアッハアッ

雨柚「あわわわ…」

蓮「盛本さん!?良かった、早く一緒に逃げましょう!!」

蓮「…って、え?盛本さんが生きてる?」

蓮「なんで?」

雨柚「あの、えーと…私も良くわからないんですけど」

雨柚「長倉さんは、今まで部長の新発明の被験者になってたみたいです」

蓮「そうよ!人体を再生させる薬とかいうやつで…」

蓮「それで盛本さんが刺されて、私も殺されそうになって…!」

蓮「大丈夫だったの!?ケガは?」

雨柚「ええ…、私そんなことになってたんですか…」

雨柚「じゃなかった、そうじゃなくてですね」

雨柚「今回の部長の発明はこれです」

蓮「へ?何これ?」

雨柚「何でもゲームの世界に入れるヘッドギアだそうですよ?」

蓮「そんなの付けた覚えないわよ!?」

雨柚「部長の話だと、長倉さんが居眠りしていた隙にこっそり装着したとか…」

蓮「なんてハタ迷惑な!!」

雨柚「という訳で、長倉さんの今までの体験はすべてゲームの中の話なんです」

蓮「で、でも!沙衣や盛本さんが出てきたけど…」

雨柚「それもこの発明の機能でして…」

雨柚「プレーヤーに合わせて出てくる人や場所が身近なものに変わるようになってるそうです」

蓮「な、何よそれ…」

雨柚「ちなみにプレイしてもらっていたのはホラーゲームらしくて…」

蓮「あっ、これすっごく怖いやつじゃない!」

蓮「確かこれ、主人公がマッドサイエンティストに捕まって人体実験を受けるって…あっ!」

蓮「そっか、そういう…」

蓮「そういうことか…」

蓮「全部ゲームの中の話だったのね…」

雨柚「はい」

蓮「ハハハ…」

蓮「…でも良かったわ、ゲームで」

蓮「本当に殺されると思ったんだから…」

雨柚「部長も流石にそこまではしない…と思いますよ?」

蓮「そう信じたいわね…」

雨柚「第一、そんな簡単に人死にが出たら大変じゃないですか」

蓮「それもそうよね」ハハハ

蓮「あー、でもホントに良かった…」

蓮「安心したら力が抜けちゃった」ガクッ

蓮「そうそう、さっきは思いっきり殴って悪かったわね」

蓮「でもアンタだって悪いのよ?人が居眠りしてるからって勝手に実験台にするから…」

蓮「でしょ、沙衣?」クルッ

蓮「アレ?」

蓮「おーい」ヒラヒラ

雨柚「部長?」

沙衣「」

雨柚「あっ」

蓮「し、死んでる…」

終わりです。
ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom