【ガルパンSS】杏「私の想いは罪になる」 (79)

2台の戦車を囲む煙は、その戦闘がいかに激しいものだったかを表していた

そして煙が晴れたとき
モニター越しでもハッキリとわかった

『黒森峰フラッグ車、走行不能!』

青い1本の旗のみがはためく戦車は

『よって』

紛れもなく我が校の

『大洗女子学園の勝利!』

隊長が乗る車両

桃「勝った、のか....?」

柚子「そうだよ桃ちゃん!」

杏「優勝だ!」

間の抜けたあんこうのマークが、不思議と勇ましくみえたのは
決して気のせいではないだろう

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490425283

「西住!」

みほ「?」

桃「今回の活躍、感謝の念に絶えない」

桃「本当にっ、本当ぃっ....」ポロポロ

桃「ありがっ!うわぁ~~~~!!!!」ボロボロ

私の横で河嶋は、感謝の言葉を言い切るより先に号泣してしまった
色々と足りない頭で頑張ってくれていたから、それだけ気苦労も多かったんだろう

柚子「桃ちゃん泣きすぎ!」ギュッ

そんなことを言って河嶋を慰める小山に至ってはその前から涙を流してる

全く、生徒会役員が2人ともこれじゃ私がキチンとするしかないじゃん

杏「西住ちゃん」

みほ「あ、はい」

杏「これで学校、廃校にならずに済むよ」

みほ「はい!」

杏「私たちの学校、守れたよ!」

みほ「はい!」

これだけのことが何で言えないんだこいつらは....

思えば西住ちゃんには大変な負担をかけてしまった

無理やり戦車道に引き込んで
ボロボロの戦車と初心者ばかりの生徒たちを率いてもらって
その上全国優勝まで強いて

でもそれを受け入れて
完璧にやり遂げてくれた

これまで西住ちゃんがやって来たことを考えていたら
言葉だけじゃ絶対に伝えきれないと思った、思ってしまった

熱くなる顔、きっと私の頬は紅潮しているんだろう
高鳴る鼓動がどうしても抑えきれない

杏「....」ピョン

杏「っ!!!!」ギューッ

みほ「うわぁ!?」

いつの間にか私は、西住ちゃんに思いっきり抱き着いていた

杏「ありがとね....」

みほ「....いえ」

みほ「私の方こそありがとうございました」ニコ

最後まで西住ちゃんは優しいんだ
だから私は

『気持ち悪い』

どこからか聞こえるあの声

『気持ち悪い』

また、なのか

『気持ち悪い』

戦車道で流した汗に
嫌なものが混じる

『気持ち悪い』

どんなに嬉しくても、興奮しても
これだけはダメだったんだ

『気持ち悪い』

違う、まだ間に合う

早く

早く

早く

杏「....」バッ

みほ「?」

みほ「会長?」

杏「....」

杏「あーごめんごめん、いきなりこんな」アハハ

みほ「いえ、私は....」

私たちは勝った、学校を救った
すごく嬉しい

会長だってきっとそう
さっきまではそうだったはずなのに

私から離れて歩き出した会長の背中は
今までよりずっと小さくみえた

桃「柚子ちゃぁ~んっ!!!」ポロポロ

柚子「はいはい桃ちゃん泣かないで」ナデナデ

柚子「....」チラ

杏「....」テクテク

柚子「....」

柚子「....会長」

・ガルパンSSです
・全国大会で大洗女子が優勝した直後から始まります

よろしくお願いします

~数日後~

みほ「....」テクテク

杏「....」テクテク

みほ「....あ」

みほ「会長、こんにちは」

杏「....」チラ

杏「おー西住ちゃん」ニコ

杏「どう?疲れはとれた?」

みほ「体の方はとれたと思うんですけど」

みほ「心の方は、今まで生きてきて一番疲れたのでまだなんとなくフワフワしてます」

杏「フワフワかー、ま、何かあったら言ってよね」

杏「西住ちゃんは大洗を救った英雄なんだからさ」ニコ

みほ「そんなこと....」

杏「....」

杏「んじゃ、私生徒会があるから」ヒラヒラ

みほ「あ、はい、頑張ってください!」ニッコリ

杏「西住ちゃんこそ、戦車道の方よろしくね」テクテク

みほ「はい!」

みほ「....」

みほ「(決勝戦の後、少し様子がおかしかったような気がしたけど)」

みほ「(気のせいだったみたい)」フフッ

みほ「よかったぁ~」ニヘラ

杏「....」テクテク

杏「....」タッ

杏「....」タッタッタッ

杏「....」ドクドク

杏「っ....」ドクドク

杏「....ダメだよ」ドクドク

杏「....」スーハー

杏「....」スーハー

今までの努力を無駄にするわけにはいかない
何のために私は耐えてきた

幸せな学校生活を送るためだろう
楽しい学園生活を送るためだろう

杏「ふぅ....」

杏「卒業まであと半年」

杏「そこまで我慢すれば」

杏「きっと」

鏡の中の私に向かって言い聞かせる

杏「忘れられる」

ドロドロとした心を、記憶を、綺麗に洗い流したくて
私は蛇口を捻った

杏「....」ジャー

生徒会長の私が頼れるのは流水くらいなんておかしな話だ

杏「....」バシャバシャ

杏「....」バシャバシャ

杏「....」フキフキ

もっとも、念入りに顔を洗ったところで何かが変わるわけでもなく
むしろ冷たい水は、現実から逃れることを許してはくれなかった

杏「....ぷはっ」

我ながら酷い顔だ
こんな思い、二度としたくなかった

杏「....」ニコ

杏「....大丈夫かな」

杏「いつも通りの顔」

杏「出来てたかな」

杏「....」

杏「....」ニコ

杏「....自分じゃわかんないや」

私は
幸せには
なれない

ガラガラ

杏「....おつかれー」

桃「遅かったですね会長!」

杏「ああ、うん、ちょっと顔洗ってきた」

桃「顔ですか?」

杏「そうそう顔」

杏「かーしまも洗ってきた方がいいんじゃない?」ニヒヒ

桃「私の顔に何かついてますか!?」

杏「なんか目の周りに変な丸いのが....」ジー

桃「えぇっ!?いったい何が!?」

しばらくぶりに生徒会室へ帰ってきた会長は
いつも通り桃ちゃんを弄って遊んでいる

柚子「桃ちゃん桃ちゃん、会長は片眼鏡のこと言ってるんだと思うよ?」

桃「....そ、そんなこと分かっている!あと桃ちゃん言うな!」

杏「ふっ」クスリ

無邪気な笑顔は昔から変わらない
というか容姿自体あまり変わっていないような....

杏「あーあ、かーしま見てるとなんかどうでも良くなっちゃうな~」

桃「そうですか!だったらいくらでもどうぞ」ビシッ

杏「いやただ立ってる姿見せられても面白くないから」

桃「?」ポカーン

柚子「うふふっ」クスクス

杏「はー....」

杏「....」

柚子「....」チラ

たぶん私以外の誰も気が付かないであろう、あまりにも小さな変化
基本的に常に飄々としていて、心が中が読みづらいと評される会長
でも私にはわかる、なぜなら、ずっと隣から見ていたから

柚子「あれ?会長、胸元が濡れてますよ?」

杏「え?あ本当だ、気づかなかったよ~」フキフキ

柚子「....」

何事にも鋭い会長が、あんなに大きな水濡れに気づかないはずはない

柚子「私のジャージ着ますか?」

杏「おーサンキュー、さすが小山~」

柚子「いえいえ」ニコ

杏「んじゃちょっと着替えよっと」ヌギヌギ

柚子「....」ジー

全国大会の決勝が終わってから、会長はどこか上の空
いや、上の空だったらまだ良いのかもしれない

杏「....」ヌギヌギ

もっと、ずっと深刻なこと
普段の調子ならそれすら顔に出さないはずだけど
最近はそんな余裕がない時もしばしば

杏「....んしょ」

杏「ん?」

杏「何、小山?」

柚子「え?」

杏「なんかずっと見てるけどどした?」ニコ

柚子「....」

会長の小さな変化が伝わってしまうから
それを打ち明けてくれないことが余計に辛くなってしまう

柚子「....会長は」

やっぱり私を、私たちを頼ってはくれないんですか?

柚子「....」

杏「ん?」

柚子「いえ、なんでもないです」ニコ

杏「そっか、ならよかった」ニコ

私が救えないなら
いっそ気づかないほうが楽かもしれない

杏「でももしなんかあったらすぐ言うんだぞ?かーしまに言ったってしょうがないからな~」ニヒヒ

桃「か、会長ぉ~」グスン

柚子「そうさせてもらいます」フフ

桃「柚子までぇ~」グスン

杏「あはは~」

杏「お、もうこんな時間だ」

杏「よーし、遊んでないでそろそろ仕事しよっか」

仕事といっても貯まった書類を片づけるのは私だけなんだけど
ずっとこれでやってきたからか違和感は特にない

桃「了解です!」

柚子「はーい」

会長は、その体では不格好なくらい大きな椅子に腰を下ろす
満足げな表情で深々と椅子に座り、干し芋を齧るその姿は、日常の風景そのものだ

そこには先ほどまでの会長はいない
だからこそ、あの弱った瞳が胸に引っかかる

杏「....」パクリ

会長の悩みの種はきっと...

杏「....」ジー

杏「おーい小山~、手ぇ止まってるよ~」

柚子「すっ、すみません!」

杏「あいあい~、頼むよ~」ニコ

柚子「....はい」

そうやって誰にも頼らずに、また1人で抱え込んでしまうんですか?
弱みも悩みも全部覆い隠してしまうんですか?

会長







...........杏ちゃん

本日はここまでです
書き溜めがないため投下速度は遅いんですが、話自体はそこまで長くならないはずです
まあここからどんどん内容が膨らんでいくのが常なのでお付き合いいただければ幸いです

沙織「高校卒業して大学に入ればきっと出会いもたくさんあるだろうし~」

沙織「そこで出会った人と卒業後にすぐ結婚するの~」

沙織「そしてこのピンクの婚姻届けを出すんだ~♪」

優花里「もう婚姻届けを準備しているんですか!?」

麻子「どうせいつも読んでる情報誌の付録だろ」

優花里「なるほど....」

華「少なくとも5年以上先の実現するか不透明な夢のために今から備えているんですね」ウフフ

沙織「備えあれば患いなしって言うしね!」

沙織「っていうか、こういう話の時っていつも私ばっかりじゃん!」

沙織「みんなはどうなの?」

沙織「はいゆかりん!」ビシッ

優花里「えぇっ!?私ですか!?」

沙織「早く答えないと運命の相手逃げちゃうよ!」

優花里「そう言われましても....私の恋人は戦車だけです!」エッヘン

沙織「....華は?」

華「私の恋人はご飯だけです!」エッヘン

沙織「....」

沙織「麻子」

麻子「枕だな」

沙織「....」

沙織「そうだ!みぽりんは?」

みほ「えぇ?私ぃ!?」

沙織「少なくともこの3人よりはまともな恋愛観持ってるんじゃない?」

優花里「む!まったく失礼な人ですね武部殿は!」

華「そうですよ!まだ女子高生なのに独身を拗らせている沙織さんほどではありません!」

麻子「そうだそうだぐぅ....」スヤスヤ

沙織「はいはい3人は黙っててください~」

沙織「でもみぽりんってさ、そういうこと全然教えてくれないから」

みほ「そう、かな」

沙織「うん、そうそう!だからもっと教えてよ!」

沙織「そういう分野なら戦車よりずっと自信あるんだから!」フフン

麻子「どの口が言う」ムニャ

みほ「....」

みほ「私、高校生、というかこっちに来るまでずっと戦車道漬けの生活を送ってたから」

みほ「あんまり男の人とかそういうことを意識したこともなかったかも」

沙織「....」

みほ「....」

沙織「....」

沙織「終わり!?」

みほ「うん?うん、終わりだよ」

沙織「そこから淡い初恋のエピソードとか始まらないの?」

みほ「あんまり経験がなくて....」

みほ「あ!でもボコと運命の出会いを果たした思い出なら!」

沙織「....」

沙織「つーまーんーなーいー!」

沙織「私と恋愛の悩みを共有してくれる人はどこにいるの!」

沙織「しょうがないから優季ちゃんのとこ行ってこよ~♪」タッタッ

華「沙織さんも相変わらずですね」クスリ

優花里「私もかなりの戦車バカですが武部殿も大概ですよね~」

麻子「zzz....」

みほ「....」

みんなはこういうけど
私は沙織さんのあんなところ、素直に尊敬している
私には逆立ちしても出来ないことだから

沙織さんみたいに恋を追い求めながら過ごす学校生活は正しい青春の在り方なのかもしれない
でも私は、彼女が、普通の女の子が求めるそれを知らない

見えないものの背中は追えない

いつか私のもとにもやってきてくれるのだろうか

知ることができれば
追いかけられるのだろうか

短いんですが本日はここまでです
一向に話が進まず申し訳ありません

杏「ぷわぁ~」

桃「会長お疲れでは?私の背中を貸しましょうか!」

杏「いらない」

桃「そうですか....」シュン

柚子「あの....私しか仕事してないんですけど....」

杏「いやー私もね、仕事してないように見えて意外としてるんだよ~」ヘラヘラ

柚子「ずっと干し芋食べて椅子でうたた寝してただけだったような....」

杏「まーまーそろそろ私たちの仕事も終わりだしいいじゃない」

柚子「確かにそうかも....」

チョットー

マッテクダサイー

杏「ん?」

沙織「も~ゆかりん遅いよ~」

優花里「酷いであります!私だけ置いていくなんて!」

華「練習終わった後もずっと倉庫に残って戦車眺めていた優花里さんが悪いのでは?」

麻子「その通りだ」

優花里「ぐぅ....」

みほ「あはは....」

杏「....」

優花里「西住殿ぉ~みなさんが私をイジメるんですぅ~助けてくださぃ~」

みほ「うーん....」

みほ「でも私たち30分くらい待ったよ?」ニッコリ

優花里「ぐぅ....」

優花里「あ、生徒会のみなさん!今お帰りですか?」

柚子「そうよ~」ニコニコ

沙織「被害が拡大する前に撤退した....」

桃「お前たちは今まで練習か?」

桃「私たちがいなくてもしっかりやっているようだな!」

みほ「今年だけではまだ安心できませんから....」

杏「その通りだけど気合い入れ過ぎないようにね~」

みほ「気を付けますね!」ニコ

杏「....」ドキ

杏「....うん」ニコ

沙織「それじゃあさようなら~」フリフリ

テクテクテクテク

優花里「西住殿!先ほどは....」

華「みほさん、あまり優花里さんを甘やかしては....」

麻子「秋山さんはもう少し....」

沙織「そうそう!みぽりんは....」

みほ「みんな落ち着いて....」

テクテクテクテク

杏「....」ズキズキ

杏「....」ズキズキ

杏「....」ピタ

桃「私がいなくても西住がいれば少しは安心できる!」

柚子「桃ちゃんは別に....会長?」

杏「....ごめん、先行っといて、ちょっと忘れ物思いだした!」ダッ

柚子「会長!?」

柚子「....」

柚子「....」ダッ

桃「うぇっ柚子ちゃん!?」

柚子「私も忘れ物~」タッタッ

桃「....」

桃「私一人ぃ....?」

杏「はぁっ....!はぁっ....!」タッタッ

杏「っ....!!」タッタッ

杏「どうしてっ....!!!」タッタッ

ピタ

杏「はぁっ....!はぁっ....!」

柚子「....」

杏「わかってるんだ」

柚子「会長」

杏「わかっててもっ!!!」

柚子「....」

杏「顔を見るだけでドキドキするし」

杏「他の子と楽しそうに話してるだけで」

杏「無意識にイライラしてる」

柚子「....」

杏「こんなにいうこと利かない心臓、いっそ止まった方がマシかもね」

杏「だって私はおかしいんだからさ」フッ

柚子「会長、そんなこと言っちゃダメです!」

杏「....」

杏「....じょーだんだよ、冗談」ニコ

柚子「冗談でも、あんまり気持ちの良い言葉じゃありません....」

杏「....」

杏「でもさ」

杏「なんか笑えてくるんだよね」

杏「あれだけ苦労して」

杏「我慢して」

杏「決意して」

杏「行動して」

柚子「....」

杏「その結果がこれ」

杏「5年前から何一つ変わってない!」

杏「努力でどうにか出来ることじゃなかった....!」

柚子「....」

柚子「....杏ちゃん」

杏「....」

杏「小山、それは」

柚子「いいの」

柚子「誰もいないし、いいでしょ?」

杏「....」

柚子「....私が」

柚子「ううん、桃ちゃんもいる」

柚子「だからみんなで一緒に....」

杏「....」

杏「....」スー

杏「....はぁ」

杏「小山」

杏「取り乱してごめん」

柚子「....」

杏「聞いてくれてありがと」

杏「お前に吐き出して楽になったよ」ニコ

柚子「....」

杏「そんな顔するなよ~」

杏「だぁ~いじょうぶだって!」

杏「私だってバカじゃないんだし、ちゃんと学んでるから」

柚子「....」

杏「私の中にずっと置いとけばいいだけの話ってこと」ニコ

柚子「でもそれじゃあ!

杏「打ち明けたところで」

杏「どうにもならない」

杏「それどころかみんな損しかしない」

杏「そのくらい私だって覚えてるよ」ニコ

杏「小山だってそうだろ?」

柚子「....」

柚子「....それでも私!」

杏「....」

杏「こうやって話聞いてくれただけでも十分助けられてるよ」ニコ

杏「だから、な?」

柚子「....」

杏「....」

杏「よーし!この話終わりぃ~」パンパン

杏「かーしまも帰らず突っ立ってるだろうし早く行こっか」テクテク

杏「あんまり待たせると泣き出しかねないからな~、『遅いよ柚子ちゃぁ~ん』ってさ~」アハハ

柚子「....」

柚子「....」トボトボ

本日はここまでです

決勝戦を終えて早数週間が経ち、長かった夏休みがようやく終わろうとしていた

全国大会で優勝し学校を救うという最大の目標を完遂した私だったけど
やり切った、燃え尽きた
そんな言葉は、幼いころから戦車道とともに生きてきた私にとって無縁で

毎日が休日であるはずの夏休みでも、大洗女子の隊長として連日訓練に励んだ
もっともそれは、他の戦車道生たちも同じだった
みんなもまた、大舞台を経験したことでさらに気合いが入ったようで

結局私たちは
これまで通りどころかこれまで以上の訓練を
照り付ける太陽を受けて尋常ならざる熱を発する鉄の箱の中で行い続けた

みほ「ということで今日の訓練はここまでにします!」

みほ「次は新学期が始まってから、それまではお休みです!」

一同「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

沙織「いやいや、新学期まであと2日しかないよ!?」

みほ「それでは皆さん、よい夏休みを!」

一同「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

沙織「みんな宿題は?」

一同「......」

私としては残された休日を精一杯楽しんで欲しいという配慮だったけど
ここにいる戦車道生の大多数の中では新たな戦いが始まるみたい

みほ「さすがに訓練入れ過ぎたかな....」

華「そんなことはないと思いますよ?」

みほ「そうかな....」

優花里「皆さんの顔を見てください」

優花里「充実感と達成感が溢れています!」

麻子「そもそも初めは西住さんや私たちの自主練だっただろう」

麻子「西住さんが強制したわけじゃない」

みほ「....ありがとう」

沙織「みぽりんのおかげでみんな戦車道が大好きになっちゃったね~」

みほ「////」

優花里「3年生が減ってしまった分チーム編成は色々と歪になってしまいましたが」

優花里「この感じで訓練を積んでいけば来年の新入生が入るころまで十分にやっていけそうです!」

麻子「むしろさらにレベルが上がるかもしれない」

華「今年の躍進で新入生も増えそうですし楽しみです」

卒業を半年後に控えた3年生は、全国大会後の訓練には基本的に参加していなかった

沙織「こうやって見渡すとちらほらいるけどね....」

みほ「まあまあ沙織さん、3年生が完全に引退せずに合間を縫って練習に参加してくれたおかげで徐々に減った人数に慣れていけたから....」

大会後にやる気の火が消えなかったのは3年生も同じだったようで
夏休みにもかかわらずかなり頻繁に顔を出してくれた

園さんは風紀委員の見回りだと言い張りながら訓練に参加していた

自動車部の3人は毎日私より早く来て、私より遅く帰っていた
というか本当に帰っているのか怪しい、ツチヤさん含めたフルメンバーで毎日泊まっていたんじゃ....

あのぴよたんさんもたびたび訪れては訓練に参加、という名のゲーム談議に花を咲かせていた

生徒会チームは訓練がなくとも毎日のように学校に来ていたようで
そのたびに私たちの訓練を手伝ってくれた

結局夏休みの訓練の間、引退したはずの3年生の顔を見ない日はなかった

ただ1人、会長さんを除いて

お待たせして申し訳ありません
短いんですが今日はここまでです
どうにかペースを早めます

沙織「始まっちゃったねぇ~....」

華「そうですね」

優花里「まあ我々、夏休み中も頻繁に来てましたし」

沙織「だ・か・ら!休んだ気がしないの!」

みほ「ごめんね....付き合わせちゃって....」

沙織「いやいやいや!別にそれが嫌だったとかじゃないくて!」

みほ「でも....」シュン

華「みほさん、沙織さんは毎日とても楽しそうでしたよ」ニコ

優花里「その通りです!」

優花里「そもそも自発的にアマチュア無線の資格取ってきたんですよ?」

優花里「むしろやる気の行き先が出来て助かったのではありませんか?」

沙織「やだも~///」

みほ「沙織さんが楽しんでくれたなら私もちょっと気が楽かな~」

沙織「あったりまえじゃん!ここまで来た以上来年に向けて、ね?」ニッコリ

沙織「ね、麻子もそうでしょ!」バシン

麻子「....」

4人「....」

沙織「麻子?」

麻子「....」

麻子「....ぐぅ」コテン

4人「....」

華「....ふふ」クスリ

沙織「今日で一番学校が始まった感あるかも」クスクス

優花里「冷泉殿の居眠りなくして学校生活は送れませんね!」

みほ「みんな酷~い」クスクス

麻子「zzz....」

放課後、私は誰もいなくなった教室で
大洗女子戦車道のこれからについてまとめていた

こんなことをする余裕が出来たのも
みんなが着実に成長してくれたおかげだ

私は隊長としてその恩を
何倍にもして返さなければならないと思っている

みほ「....」カキカキ

各部隊の構成、成長に合わせた訓練内容の変更
ほかにも考えなければならないことはたくさんある

でも

みほ「....」カキカキ

みほ「....ふぅ」

みほ「結局新入生次第か~....」ウーン

先日の全国大会でも常にギリギリ
それどころか他と比べれば圧倒的に足りない戦力で回してきた私たちにとって
来年入学してくる新入生は必須戦力だ

みほ「でも、その子たちに負担をかけないように今からしっかり鍛えなきゃ....」グッ

桃「何を鍛えるんだ?」ズイッ

みほ「うわっ!?」ビク

桃「そんなに怯えることないだろ!」

みほ「あ、河嶋先輩」

桃「うむ、頑張っているようだな西住」

桃「私がいなくなりさぞ苦労していることだろうが、引き続き精進して欲しい」

みほ「はぁ....」

桃「ここに書いてある新入生についてだが、きっと大丈夫だ!」

桃「なんてったってうちは全国優勝を果たしたんだからな!」

桃「戦車道希望者がドッサリ入ってくるに決まっている!」

みほ「いや、ドッサリ来られても戦車が足りなくなるだけですよ....」

桃「ほ、補助金とか寄付とかたくさん入ってくるだろたぶん!」

みほ「戦車を大量に買うほどの資金はさすがに....」

桃「....」

桃「よし、お前ならきっとやれるぞ!期待している!」グッ

みほ「(相変わらずバ....脳が足りない人だなぁ....)」ゲンナリ

桃「それじゃあ私はそろそろ生徒会室に戻る」

みほ「はい、また訓練の方にも顔を出してください」

桃「もちろんだ!」

みほ「そういえば....」

桃「?」

みほ「今日って会長さん来てますか?」

桃「当り前だ、というか夏休み中もほとんど毎日来ていたぞ」

みほ「そう、ですか....」

会長さんはしたたかな人だ
それこそ、同じ女子高生とは思えないほどに

戦車道を復活させた理由だって
学校を守りたい、その一心でやったことで

戦車道自体に元々興味があったわけじゃない、と思う

目的を達成した会長さんが戦車道にかかわらなくなるのも当然かもしれない

みほ「....」カキカキ

でも
あの時の、優勝した時の会長さんの笑顔は
かけてくれた言葉は

みほ「....」カキカキ

みほ「....」ピタ

みほ「....よし」

お待たせして申し訳ありません
いつも書くときに使っていた椅子を処分してしまい、慣れない姿勢になったことでペースが死ぬほど落ちています
もうしばらくお付き合いいただければ幸いです

日付が変わった頃に投稿します

今まで何度も開けてきたこの扉が
どうしてこんなにも大きく感じるのか

みほ「....」

みほ「....」ギュッ

まだ夏の香りが濃く残る初秋だというのに
ドアノブは凍るほど冷たい

みほ「....」

みほ「....」パッ

私は開ける前に手を放してしまう

みほ「はぁ....」

やましいことも後ろめたいことも
何一つないというのに
胸の鼓動は激しくなるばかりだ

みほ「....」

みほ「あの時より緊張してるかも」

転校初日の方がよほど苦しい状況だったはずなのに
自分の心がよくわからない

みほ「....」

みほ「....」ギュッ

手のぬくもりが僅かに残っていたおかげか
今度はそれを回すことができた

みほ「....」グッ

重い

でも

みほ「っ....」グッ

やっとの思いで開いたその扉の向こうには

杏「....」

杏「....お~」

杏「西住ちゃん、久しぶり~」ヒラヒラ

普段となんら変わらない様子の会長さんが座っていた

みほ「お久しぶりです会長」ペコリ

杏「ん~」

みほ「....」

杏「....」

みほ「忙しいんですか」

杏「ん、まあね~」

みほ「そろそろ引継ぎの時期ですもんね」

杏「そそ、それ関係も色々忙しくてさ~」

みほ「他の学校じゃないようなことがたくさんありましたし」

杏「本当だよ~」

杏「まー今は大体終わったけど、立つ鳥跡を濁さずっていうしね」

杏「私らの代のゴタゴタは私らが始末しとこーって感じ」ニッ

みほ「大変ですね」

杏「大変っちゃ大変だけどさ」

杏「これで終わりって思うとちょっと寂しくもあるよ、やっぱり」

みほ「....」

みほ「....卒業まであと半年もないんですね」

杏「....」

杏「....そうだね」

みほ「....」

みほ「会長さんは」

みほ「もう戦車道には来てくれないんですか」

杏「....」

みほ「すみません、引退した人にこんなこと頼むのもおかしな話なんですけど」

みほ「でも....」

杏「ごめんね~西住ちゃん、私も本当は顔出したいんだけどさ」

杏「見ての通り、なかなかそんな余裕もないんだよね~」

みほ「....」

杏「でもそこまで言われちゃしょーがない!今度絶対行くから!」

杏「ね?」

みほ「....」

みほ「....私でもわかります」

みほ「会長さんはもう来てくれないんだって」

杏「や、西住ちゃん、私今

みほ「私が生徒会室に入ってから

みほ「一度も目を合わせてくれませんよね」

杏「....」

みほ「そんなこと、今まで一度もなかった」

杏「....」

杏「....それは....ごめん」

みほ「....」

みほ「会長にとっての戦車道ってなんだったんですか」

杏「え?」

みほ「学校を救うための方法でしかなかったんですか」

杏「....」

杏「....違う」

みほ「戦車道はもういりませんか」

杏「そんなわけないじゃん!!!」

みほ「....」

杏「1年もやってないけどさ、私は戦車道楽しかったよ!!!」

みほ「....」

杏「西住ちゃんは何もわかってない!!!」

みほ「....」

杏「私だって行きたいよ!!!」

杏「仕事も勉強も全部置いて!!!」

みほ「....」

杏「みんなと久しぶりに練習して」

杏「一緒に戦車走らせて....」

みほ「....じゃあどうして」

杏「それは....」

杏「それはっ....!!!」

杏「....」

杏「....」

杏「....いや」

みほ「....」

杏「西住ちゃん、仕事が一段落したらきっと行くからさ」

みほ「....」

みほ「....でも」

杏「今日のところは、この話終わりにしよ」

みほ「....」

杏「お願い」

みほ「....」

みほ「はい」

杏「うん」

みほ「すみませんでした、会長さんを困らせるようなこと言って....」

杏「ぜ~んぜん」

杏「私が今まで西住ちゃんを困らせてきたのに比べればどうってことないよ」ニヒ

みほ「ふふっ、そうかもしれません」クスリ

みほ「それじゃあ、失礼しました」

みほ「お仕事頑張ってください」

みほ「....」ペコリ

パタン

杏「....」

杏「....そうそう」

杏「私は西住ちゃんを巻き込んだんだ」

杏「理由や、結果はどうであれ」

杏「あれは罪なんだ」

杏「だからこうしてあの時の罰を受けてるんだよね」

杏「きっとそうだ」

杏「絶対そうだ」

杏「....」

杏「そうじゃなきゃっ....」

杏「っ....」ポロリ

そう思わなければ

この苦しみに

痛みに

私はきっと耐えられないから

本日はここまでです
あまりに遅すぎてなんと謝ればいいのか....
残り1/3くらいだと思います

みほ「....」トボトボ

昨日、会長がほんの少しだけ見せた表情
笑っていたとき、怒っていたとき
どの顔の中にも、普段とはどこか違っていた

みほ「....」

みほ「....あの顔」

みほ「あれはなんだったんだろう」

みほ「....」

結局一晩中、会長の顔や言葉が頭に浮かんでは消え
満足に眠ることができなかった

みほ「....」

会長の様子もだが
ここまで思い悩んでしまう私も少しおかしいような気がする

みほ「....」

みほ「....やっぱり昨日のこと、謝らないと」

登校後、私の足は教室ではなく
一日ぶりの生徒会室へ向かっていた

みほ「ふー....」

みほ「....」

みほ「よし」

ガチャリ

みほ「こんにちはー」

柚子「はーい」クルリ

柚子「西住さん?」

みほ「小山先輩、こんにちは」ペコリ

柚子「お昼休みにどうしたの?」

みほ「....」

みほ「....実は」

みほ「昨日会長さんと色々あって....」

みほ「そのことを謝ろうと思ってきたんです」

柚子「....」

柚子「そう、だったんだ....」

みほ「....はい」

みほ「あ、あの、会長さんは今いないんですか?」

柚子「....」

柚子「会長、今日風邪でお休みしてるの」

みほ「えっ!?」

柚子「あんまりこういうことってないから私も驚いてるの」ニコ

みほ「....」

柚子「でも、最近忙しかったからちょうどいいのかも」ニコ

みほ「....」ショボン

柚子「....」

柚子「....西住さん」

みほ「はい?」

柚子「会長、大丈夫って言ってたけどやっぱり心配だから」

柚子「もしよかったら、今から会長のところに行ってきてくれないかな?」

みほ「....」

みほ「でも、授業が....」

柚子「私、副会長よ」

柚子「そんなのどうにでもなるの」ニコ

みほ「....」

柚子「お願いできる?」

みほ「....」

みほ「....わかりました」コクリ

柚子「....」

柚子「ありがとう」ニッコリ

みほ「こちらこそ」

柚子「....」

柚子「杏ちゃんを」

柚子「よろしくね」ペコ

みほ「....」

みほ「こちらこそ、学校のこと、よろしくお願いします」ペコリ

タッタッタッタッ

柚子「....」

柚子「勝手にこんなことしたら杏ちゃんなんて言うかな」

柚子「やっぱり、怒るかな」

柚子「....」

柚子「ううん、それでもいい」

柚子「今度こそ杏ちゃんの助けになれれば」

柚子「私は....」

柚子「私はっ....!」ポロリ

ガラガラ

桃「おはよー柚子、柚子ちゃん!?」

桃「どどどどどどどどうした朝から!?!?!?!?!?」アセアセ

桃「お腹か!?お腹が痛いのか!?!?!?」アセアセ

桃「大丈夫!?!?!?」アセアセ

柚子「....」アゼン

桃「柚子ちゃぁん!?」

柚子「....ぷふっ」ポロリ

桃「!?」

柚子「なんでもないの、なんでもない」ニコ

桃「そ、そう....?」

柚子「うん」

桃「....」

桃「まあでも、もし何か嫌なことや辛いことがあったら」

桃「わ、私の前では我慢しなくても、いいからな////」

柚子「....」

柚子「桃ちゃんったらっ」ギュッ

桃「んなっ!!?!??!?」

桃「ちょっと柚子ちゃん!?」

柚子「ごめんね桃ちゃん、でも」

柚子「あとちょっとだけこうさせて」ポロポロ

桃「....」

桃「....約束だからな////」ギュー

柚子「うん....」ギューッ

本日はここまでです
短いんですがキリの良い所で

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