衛藤美紗希「女子力アップよ!」 二宮飛鳥「じょ、女子力……」 (13)

飛鳥「………」ペラ

梨沙「飛鳥ー。なに読んでるの?」

飛鳥「小説。好きな作者の新刊が出たんだ」

梨沙「へえ、どんな話なの?」

飛鳥「ジャンルとしてはミステリーだよ。福引で二泊三日の旅のチケットを当てた探偵が、旅行先で奇妙な殺人事件に遭遇するんだ」

梨沙「ミステリーはアタシも結構好きね。漫画なら貸してもらおうかなって思ったんだけど」

飛鳥「絵のない本は苦手か」

梨沙「読めないわけじゃないんだけど、なんか肩が凝るのよね。それに、飛鳥の好きな本って考えるとムダに長くて難しそうだし」

飛鳥「それは穿った見方がすぎるんじゃないかい? 見ての通り、ページ数自体は多くない」

梨沙「確かに……じゃあ、読み終わったら貸してくれる?」

飛鳥「あぁ、いいよ。キミ自身が望んだのであれば、喜んで」

梨沙「ありがと」


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飛鳥「ところで、キミもさっきまで読書中だったようだけど」

梨沙「うん? あー、雑誌読んでたのよ。これ」

飛鳥「……この春必勝……女子力アップ……」

梨沙「めちゃくちゃうさんくさそうな顔で読んでるわね」

飛鳥「仕方ないだろう。冒頭から必勝だなんて……そう軽々しく0パーセントと100パーセントの概念に踏み込むべきじゃない」

梨沙「こう書いたほうが売れるんだからしょうがないわよ」

飛鳥「キミ、そういう寛容なところはオトナだな」

梨沙「ふふん♪」

飛鳥「そもそも、欲しいと思っているの? 女子力」

梨沙「そりゃあ欲しいわよ。もともとアタシは女子力あるけど、今からもっと磨けばもっと魅力的になれるでしょ?」

梨沙「そしたら、パパにもっと褒めてもらえるし、もっとかわいいって言ってもらえるし!」

飛鳥「その芯のぶれなさには安心感すら覚えるよ」

梨沙「褒めてる? バカにしてる?」

飛鳥「褒めてる」

梨沙「ならいいわ♪」

梨沙「これからどんどん女子力磨いていって、パパもアタシにゾッコンね!」

飛鳥「……キミ、ゾッコンなんて単語をどこで覚えたんだ」

梨沙「なんかこの前ハートさんが言ってた」

飛鳥「学習意欲が旺盛なのはいいことだけど、吸収する対象は選んだほうがいい」

梨沙「?」



ガチャリ

心「今ここではぁとの話してた?」

飛鳥「うわ」

心「オイなんだその妖怪が出たみたいな反応。傷つくぞ☆」

飛鳥「いや、あまりにタイミングがよかったから」

梨沙「今、女子力の話してたのよ」

心「女子力! まさしくはぁとの得意分野じゃん♪」

梨沙「そうだっけ?」

心「あたぼーよ!」

飛鳥「その言葉のチョイスがすでに女子力を感じられない……が、確かに心さんはあるほうなのかもしれないね。女子力」

梨沙「アタシだって負けてないわ」

心「はぁとも負けられないぞ♪ 人生経験が違うからな☆」

飛鳥「平行線だな……」

心「飛鳥ちゃーん、どっちが女子力あるかジャッジして♪」

飛鳥「ボクには難しい。そもそも、女子力の定義だってよく理解していないんだから。公平に裁定を行うなら、プロフェッショナルを呼んだほうがいい。たとえば――」


美紗希「おはようございますぅ♪」

飛鳥「そう、彼女だ」

心「女子力!って感じの子が来たね♪」

梨沙「美紗希は、ええと……そう! ミスター女子力!」

飛鳥「ミスターは男性相手に使うものだから、この場合はミス女子力が正しい」

梨沙「ちょ、ちょっと間違えただけよ」

美紗希「褒めてくれるならそのあたりはどっちでもOK!」

美紗希「なるほど。梨沙ちゃんとはぁとさんの女子力対決ねぇ……」

美紗希「うーん……難しい! ふたりとも女子力高いしぃ」

梨沙「アタシ!」

心「はぁと!」

飛鳥「互いに譲らないね」

美紗希「飛鳥ちゃんはいいの? 参加しなくて」

飛鳥「ボクは拘りがないから。あえて言うなら、女子力の定義を教えてほしい。そこからかな」

美紗希「なるほど~。てっつがくぅ~」

飛鳥「哲学……か?」

美紗希「女子力の定義かぁ……そうねぇ。一口で言うのは難しいなぁ」

美紗希「たとえばだけど、梨沙ちゃんの肩出しファッションは、ちゃーんと相手に見せることを考えてて女子力高いしぃ」

梨沙「トーゼンよね」ドヤァ

美紗希「はぁとさんの裁縫スキルはホントにすごいし! 自分で服作れちゃうし、友達にプレゼントもできる! まさに女子力よねぇ」

心「どやぁ☆」

美紗希「あとはぁ、飛鳥ちゃんも女子力あると思うわよ?」

飛鳥「ボクも?」

美紗希「うん♪」

飛鳥「具体的に、どこが」

美紗希「まずは、梨沙ちゃんと同じでファッションにこだわりがあるとことでしょ? それとぉ……」

心「こうなったら、ここからどっちがより多く女子力磨けるかで白黒つけるしかない!」

梨沙「望むところよ!」

美紗希「あ、そういうことならあたしがレクチャーしちゃうわよぉ♪」

飛鳥「待ってくれ。そこで話を切られると………」

飛鳥(気になってしまうんだが……)

梨沙「さあ、最初はなに? 最強の女子力を教えて!」

美紗希「まずは相手への気配りよ! いついかなる時もフォローの気持ちを忘れないの!」

心「うおぅ、すっげえまともな内容から入ってきた!」

美紗希「次にカニの殻むきが上手にできること!」

梨沙「なんで2番目にカニなのよ!?」

美紗希「カニも女子力よ!」バーン

心「一切の迷いもなく言われるとそんな気がしてくるぞ……」

飛鳥「………」

飛鳥「まあ、聞かなくてもいいか」


美紗希「あとはぁ……かわいいニックネームで呼び合うとか?」

心「はぁとはもうスウィーティーなニックネームあるからなぁ♪ ばっちり定着してるし!」

飛鳥「そうだね、心さん」

心「そこははぁとって呼べよ☆ そういう流れだろ☆」

梨沙「ニックネームねぇ……アタシ、なにかあるかしら」

心「お望みならはぁとが女子力スウィーティーなの考えてあげるぞ♪」

梨沙「美紗希に考えてもらうからいい」

心「信用なくない?」

飛鳥「そもそも女子力スウィーティーとはいったいなんなんだろう」

心「スウィーティーも女子力よ☆」

美紗希「スウィーティー……奥が深いわぁ」

飛鳥「概念が混ざり始めた」

梨沙「どうなのよそれは」

心「興味あるなら、今夜あたりサシで語り合う?」

美紗希「いいですねぇ。サシってことは、ひょっとしてぇ」

心「もちろんアルコール付きだぞ☆」

美紗希「女子力~~!」

心「今夜は宴だミサキーヌ☆」

美紗希「ミサキーヌ! 女子力~~!」

美紗希「じゃああたしは煮物の作り方教えちゃいますぅ」

心「スウィーティー~~☆」



梨沙「なんか二人で盛り上がりながら向こうに歩いて行っちゃったんだけど」

飛鳥「波長が合いそうなのは理解っていたさ」

梨沙「結局アタシ、女子力あるニックネーム考えてもらってないわよ」

飛鳥「そうだね」

梨沙「………」ジーー

飛鳥「期待の視線を向けられても、ボクには無理だよ」

梨沙「そうよねえ。飛鳥が考えるならかっこいい系の名前よね」

飛鳥「ヴァ・リサ」

梨沙「もう思いついてるし……」

梨沙「今日の話で余計に女子力のことがわからなくなったわ」

飛鳥「割となんでも女子力につなげていたからね」

梨沙「飛鳥はどう? 何かわかった?」

飛鳥「ボクかい? さあ、もともとキミよりも理解が浅かったからね。今も当然、なんとも言えないさ」

飛鳥「けれど、まあ。美紗希さんや心さん、そしてキミの姿を見ていたら」

梨沙「見ていたら?」

飛鳥「あえて言うなら……女子力は、『好き』の力なのかな、と思った」

梨沙「好きの力?」

飛鳥「それなら、ボクにも多少はあるのかな……と思えるから」

梨沙「ふーん……」

その日の夜


飛鳥「ああ、Pか。どうしたんだい、こんな時間に」

飛鳥「明日のレッスンの時間の変更? メールかLINEでいいのに、キミも律儀だな」

飛鳥「……いや、いいんだ。ボクはそういうところ、嫌いじゃない」

飛鳥「時に、質問だけれど。キミ、煮物は好きかな」

飛鳥「……そうか。好きか。うん、検討しておこう」

飛鳥「いや、なんでもないよ。それじゃあ、おやすみ。また明日」

飛鳥「………」

飛鳥「ん? 梨沙からメール……」


『お昼の女子力は好きの力ってお話なんだけど、もしかして女子と好の文字をかけてたの? 当たってたら褒めて!』


飛鳥「………」

飛鳥「アレだな……ほとぼりが冷めた後で説明を求められると、妙にむず痒いな」

飛鳥「さて、どう褒めたものか」フフ


おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
女子力は正義。衛藤さん誕生日おめでとうございます。若干遅れましたが誤差の範囲です

シリーズ前作:二宮飛鳥「カニか」 柳瀬美由紀「カニだよ!」

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