('A`)が深海棲艦と戦うようです (90)

10歳の時に両親が事故でまとめて死んでから、俺は無神論者として生きることに決めた。

両親は日曜のミサには毎週必ず出席していたし、三度の食事と起床就寝時のお祈りも一度もサボらず続けていた。それだけ信仰心に溢れる二人の最後が、「不幸にも」運転手が居眠りをしていたトラックの追突で車ごとぺしゃんこだ。

こんな理不尽、神様がいないとしか結論の仕様が無い。
もし仮に両親の不幸が信仰心の不足だというのなら、あれ以上の信仰を捧げなければ助けてくれない業突く張りの神様などこちらから願い下げである。

以来15年、俺の人生は多少の挫折も経験しつつ特に不自由なく過ごしている。

やはり神様はいないか、既に死んだか、或いはいたとしても大して必要な存在じゃないのだろう。

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まぁ、そんな俺────ドイツ連邦陸軍少尉、ドク=マントイフェルでも。

《HQより前線各位に通達、カシュカイシュにおいても敵の大規模な揚陸が発生。注意されたし、オーバー》

《Mayday Mayday Mayday, ル級の砲撃だ!被弾した、墜落する!!》

《ビスマルクを旗艦とする防衛艦隊は現在深海棲艦の挟撃を受けている、支援は不可能だ。沿岸防衛部隊各位、海上優性確保まで持ちこたえろ》

「上空【Helm】より爆弾投下!!」

(#;'A`)「走れぇえええええええええええええ!!!」

こうも悲惨な状況に置かれると、お祈り先を手放したことをほんの少しだけ後悔する。

~('A`)は深海棲艦と戦うようです~





腹の底に響くような轟音、呼吸を止める背面からの衝撃、吐き気を誘う不快な浮翌遊感。

二度と味わいたくないそれらを全身で体感しつつ、俺の身体は爆風によって駅の構内に押し込まれる。

(;'A`)「ガハッ、ゴォエッ……ッ!」

一瞬の苦悶の後肺が酸素を取り戻せば、今度は激痛と爆炎の熱、服に入り込んだコンクリート片が不快感を上乗せしてくる。……まぁ、これについては自分がまだ生きていることの証左なので甘受しよう。

('A`)「ティーマス、欠員は!?」

( <●><●>)「分隊全員無事なのは解ってます」

('A`)「上出来だ。ジョルジュ、ジョルジュはいるか?」
  _
( ゚∀゚)「ここだ」

アルカンタラマール駅の構内には、おおよそ80人程度の兵士がたむろしていた。
その人混みをかき分けて、下士官時代からの腐れ縁であるジョルジュ=オッペルが暗がりからこちらを出迎える。

無駄に自己主張の激しい眉毛がいつもは鬱陶しくて仕方ないが、今は見ただけで安心感さえ覚える。
  _
( ゚∀゚)「状況は?」

('A`)「ベレーンの防衛線は崩壊した、歩兵で生き残ったのはおそらく俺の分隊だけだ。

河口を封鎖していたポルトガル海軍の護衛艦2隻は轟沈済。駅周辺と沿岸部を守っていた俺たちはその後雲霞の如く押し寄せてきた【Helm】のクソ共から逃げ出すのが精一杯だったよ」
  _
( ゚∀゚)「ポルトガル陸軍の戦車隊はどうした?確かあの辺りにゃ一個中隊規模が展開してたろ」

('A`)「俺たちを逃がすために少しだけ粘ってたが深海棲艦の砲撃食らって隊長車が吹っ飛んで後退していた。プラゼーレス墓地で後続部隊と合流するそうだ」
  _
( ゚∀゚)「文字通りの墓場にならなきゃいいがな。

上陸したのは?」

('A`)「直接上陸した瞬間を確認は出来なかったが、川から向かってきていたのはイ級が2隻とホ級1隻。どちらも通常種だ」
  _
( ゚∀゚)「eliteやflagshipじゃないだけマシだな」

一通り情報を聞いたジョルジュが深々とため息をつく。それから「まあ生きてて良かったな」ととってつけたように労ってくる。

やはりこいつのことはあまり好きじゃない。眉毛以外イケメンだし。

('A`)「それと、4月25日橋が深海棲艦の砲撃で崩落した」
  _
( ゚∀゚)「そっちは寧ろ朗報だ。おかげでアルマダに増援にいけなんて無茶苦茶な命令は出なくなる」

酷い言い草だが、正直同感だ。

アルマダは既に海岸線4カ所に深海棲艦が上陸しており、内2カ所でflagshipが確認されている。

おまけにこのflagshipの中の1体が重巡リ級と来た。俺なら今アルマダに行けと言われたら軍法会議覚悟で戦場から逃げる。

( ><)「HQより通達!沖合に展開中の敵主力艦隊の概要が確認できたみたいなんです!」
  _
( ゚∀゚)「ようやくか、報告しろ!」

(;><)「敵艦隊概要、タ級2、チ級flagship1、ホ級elite1、ヲ級1………そ、装甲空母姫1体!!」

( <○><○>)
  _
( ゚∀゚)「……マジか」

('A`)「……マンドクセ」

やはり、この世に神は居ない。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira130960.jpg

アルマダ市の現状

オレンジライン:連合軍の防衛ライン

赤丸:深海棲艦側の突破地点

赤矢印:深海棲艦側の攻勢ルート

発端はニ日前、海上航行する学園艦の護衛にあたっていたスペイン海軍のイージス艦からもたらされた報告。曰く、【艦隊規模のワ級が北上している姿を確認した】というもの。

情報はすぐさま“艦娘”を保有するドイツのヴェルヘルム・スハーフェン基地へと届けられる。その日の内にビスマルク、プリンツ・オイゲン、イギリスのウォースパイト、フランスのコマンダン・テストら稼働可能な艦娘と、各国から抽出された連合艦隊・連合空軍が大西洋に広域防衛網を敷く。

更に、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペイン、フランス、オランダ、イギリスは急遽陸軍を総動員。特に沿岸部防衛に重点を置き、陸海空軍それぞれが万全の状態で深海棲艦の襲撃を待ち受けた。

そして、今日の未明。

《HQより各部隊に通達、パレーデの海岸線防衛ラインが突破された、敵が上陸・浸透中。上陸戦力はイ級flagship2隻、ホ級elite1隻。

付近部隊は警戒せよ、オーバー》

《カシュカイシュ方面にて新たに深海棲艦4隻が上陸!上陸戦力はハ級1、ホ級1、ワ級elite1》

《対応しきれるワケがない!!艦娘は、海軍の増援はまだか!?》

百数十隻の深海棲艦による総攻撃が、海上防衛網の“内外”から同時に行われた。

《こちらオエイラス防衛ライン、連携していたイギリスの戦車隊が全滅した!後退許可を求む!!》

《タホ川に新たに6隻のワ級が侵入してきている!撃沈できないのか、アルマダ市に橋頭堡を築かれるぞ!》

('A`)「………」

立てこもる駅の構内で飛び交う通信は、どれもこれも絶望的な内容ばかり。これがテレビやラジオなら消して不貞寝してやるところだが、残念ながら叶わぬ夢だ。

気を紛らわせるためにとたばこを探すが、見つからない。退却途中で落としたのだろうか。

クソッタレめ。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira130962.jpg

深海棲艦によるポルトガルでの攻勢

・赤い■:装甲空母姫並びに敵中核艦隊の展開地点
・赤い矢印:深海棲艦の攻勢ルート
・赤丸で囲まれた地名:特に激しい攻撃を受けているポイント

( ゚д゚ )「状況はどうなっている?」

('A`)「こっちみんな」

(;゚д゚ )「!?」

('A`)ゝ「芳しくありません、中尉!!」

(;゚д゚ )「そ、そうか……ところで、今何か強烈な拒絶をくらっ」

('A`)ゝ「気のせいであります!!中尉!!」

( ゚д゚ )「えぇ…」

……今声をかけてきたミルナ=コンツィ中尉は、決して悪い上官ではない。頭が切れて部下思い、深海棲艦との戦闘経験も豊富と、寧ろドイツ陸軍の尉官の中ではトップクラスの優良上官だ。
  _
( ゚∀゚)「中尉、HQから新たな司令です」

( ゚д゚ )彡「読み上げてくれ」
  _
( ゚∀゚)「こっちみんな」

(;゚д゚ )「!?」

ただ、うん、なんというか。

目力が凄すぎて言わずにいられないのだ。“こっちみんな”、と。

(;゚д゚ )「(部下に嫌われるようなことしたかな、俺……)そ、それで司令部はなんと?」
  _
(;゚∀゚)「(またやっちまった……)はっ、やはりアルカンタラマール駅の放棄は認められないとのことです」

( ゚д゚ )「……そうか」

報告を受けた中尉は、元からキツい目つきを更に厳しくして手元の地図に視線を落とす。
  _
( ゚∀゚)「……戦闘開始から5時間経ってますが、一向に朗報が転がり込んできませんね」

( <●><●>)「ワ級が“北上”する姿を見かけたという報告を聞いたとき、敵が“外洋から欧州西海岸に攻め寄せてくる”と安易に予想したのが原因だと解ってます」

('A`)「同感だが、今言っても何の意味もねえさ」

にしても、見事な作戦だと他人事のように感心してしまう。ロシア辺りの学者が最近深海棲艦側も頭脳的に動くようになったなどと言っていたが、この状況を見るとあながち間違いではなさそうだ。

( ゚д゚ )「まぁ、ここ以東に無抵抗で敵を進ませればリスボンの陥落が現実味を帯びるからな。本部としても捨てるわけにはいかないか」

('A`)「……そうですね」

中尉の指摘に、気乗りしないながらも同意する。

六年前、深海棲艦出現以降───日本で【艦娘】が実装されて有効な対抗手段が生まれる前ですら、人類は絶望的な戦いを強いられつつも一部の小諸島国家を除いて首都まで深海棲艦の進撃を許していない。

にもかかわらず先進国家の集合体たるEUで、しかもまんまと深海棲艦側の策略にかかりそれなりに国力のある国が首都を蹂躙される……学のない俺でも、EU、特にドイツやイギリスといった主要国の威信が地に落ちることは想像に難くない。

……だが、国家の威信とやらを守る代償に自分の命が使われることに納得できない俺は、やはり非国民なのだろうか。

( ゚д゚ )「で、HQからの死守命令についてだが……流石に増援は派遣されるのだろう?」

( ><)「プラゼーレス墓地でポルトガル機甲部隊の再編が完了、砲兵としてこちらを援護する体勢のようなんです!」

( <●><●>)「他に、損害が比較的小さいフランス軍が戦車小隊を一個こちらに投入してきました。同国の歩兵中隊も随伴する模様です」

('A`)「深海棲艦側で先行しているのは、先ほど我々が視認したホ級1、イ級2から変動ありません。あと20分ほどでここに到達するかと」

( -д- )「………」

( ゚д゚ )「………!!」

中尉はしばし下を向いて思考を巡らせると、おもむろに顔を上げ目を見開いた。

俺たちは一斉に背筋を伸ばし、同時に思う。
    _
('A`)( ゚∀゚)( <●><●>)( ><)
(こっちみんな)

と。

( ゚д゚ )「……よし!これよりアルカンタラマール防衛作戦を行う!!」

「「「Jawohl!!」」」

(#゚д゚ )「故郷の地を、必ず生きて踏もう!大丈夫だ!俺たちには神の加護がついている!!」

「「「Jawohl!!」」」

('A`)「……Jawohl」

中尉の飛ばす檄に、握り拳を力強く応じる80余名のドイツ兵。

俺も応えはしたが、さぞや力の無い声だっただろう。

別段、ミルナ中尉の檄に応えたくないわけじゃない。

が、神様が実在しないかとてつもないクソ野郎のどちらかだと知っている俺は、神“ごとき”に祈ったところでこの状況から生き延びられるとは思えなかったのだ。






インド通りに築かれた、土嚢と瓦礫と駅の構内のいすやら何やらを積み上げて作られた簡易なバリケード。

その後ろに、併せて200人近いドイツ兵とフランス兵がひしめき合いながら息を潜めている。

砲塔で前方をにらみ据えるのは、これまたフランス陸軍のルクレール戦車四台。

そしてここは、ポルトガル共和国首都リスボン市、アルカンタラマール駅前。

('A`)「……クフッ」

これもグローバル化の賜物なのだろうかと、妙な笑いがこみ上げてくる。隣でティーマスの奴が怪訝な目つきで(こいつの表情の変化が解るのは俺とビロードぐらいだ)見てきたので、慌てて引っ込める。

……いやいや、しかし笑うなという方が無理だろう。

別に状況自体は特に何かおかしなワケではないが、文字に起こして情景を俯瞰してみると、何故かどことなく喜劇的に感じられた。

試しに劇場をイメージし、舞台の上に俺たちを置きそれを横から眺めてみる。

……うん、やはり滑稽極まりない。この光景を作り出している奴らが一国の存亡に関わっていると考えると、いよいよ以てわき上がる笑いを堪えるのが難しくなっていく。

……まぁ、きっと今の俺はおかしくなっているのだと思う。おかしくなるより他に無かったともいえる。

「─────敵影、確認!!!」

今から戦う“敵”について真面目に考えてしまえば、憂鬱のあまり死にたくなるのだから仕方ない。

ズンッ、ズンッ、と、足下から這い上がってくる微細な震動。いくらか遠くの方で、何か巨大なものが地面を踏みしめながら進んできているのだとわかる。

('A`)「……」

急拵えのバリケードは、隙間だらけの穴だらけだ。俺は最前列であるのをいいことに、隙間から音源をのぞき見る。

『…………』

('A`)「……ア、ドーモデス」

やはり見なきゃ良かったと、すぐに心底から後悔した。絶対にそんなことはないと解ってはいるが、どうにもホ級の方と目が合ってしまった気がする。

(;'A`)(何度見ても気持ち悪いわ、やっぱ)

何か巨大な生物の口の中から這い出してこようとする人間を思わせる、軽巡ホ級。

深海魚に無理やり足をひっつけたような歪な形の、駆逐艦イ級。

どちらも一度見たら向こう一年は悪夢三昧確定の、おぞましい姿だ。

無論、軽巡や駆逐艦とランク付けされているだけあり、戦闘能力は“比較的”低い。知能もル級やヲ級に代表される所謂“ヒト型”と比べると相当劣るようで、欺瞞や誘導にあっさりかかることも珍しくない。

その代わり、というのも変だが、奴らはデカい。今目の前に居るこいつらのような通常種でも5、6メートルは固く、eliteだと10メートルにも達する。

flagship級ともなると、最大20メートルというとんでもない個体まで観測されている。

いい的だと言ってしまえばそれまでなのだが、やはり目の前にすると単純に怖い。

────深海棲艦が出現して以降は、民間で奴らにまつわる風評や噂話が爆発的に増大した。

そのほとんどは奴らに対する恐怖が生み出した根も葉もない虚言に過ぎないのだが、中でも深く信じられているのが“深海棲艦に通常兵器は効かない”というものだ。

( ゚д゚ )(…総員、射撃翌用意!!)

( ><)(射撃翌用意なんです!)

確かに、奴らは通常兵器で“倒しにくい”相手ではある。特に海上においては、奴らは(非ヒト型でさえ)通常の船舶より遙かに小さく、そのくせ航行速度が通常の船舶と大して変わらない。

ミサイルでロックオンすることが難しい(ル級らヒト型に至ってはロックオンが完全に不可能だ)上、足が速く小ささをイカして小回りも利かせてくるため海空からのありとあらゆる攻撃は避けられた。

  _
( ゚∀゚)(射撃翌用意!!)

かろうじてイージス艦の速射砲が的に当てることを可能としたが、装甲───ヒト型の場合自身の周囲に張り巡らしている不可視の障壁の硬さに関しては“第二次世界大戦頃の戦艦と同程度”というチートスペックだ。

( <●><●>)(射撃翌用意)

だが、“通常兵器だと相性が悪い”だけであって、繰り返すが“通常兵器で撃破できない”わけではない。現に艦娘が開発される前から、深海棲艦の破壊・撃破事例は少なからずある。

('A`)(……射撃翌用意、ヨシ)

さて、ここで問題だ。艦娘が戦争に投入される前、人類の叡智が編み出した深海棲艦に対する画期的な対策とは何か?












(#゚д゚ )「───────Feuer!!!」

正解はシンプル。

「陸に上げて物量で殴る」

これにつきる。

一度寝ます。
本日中に完結予定

『『『ゥオオオオオオオオオオオンッ』』』

こちらを認識した三体が咆哮した。

バリケードの裏で立ち上がった俺たちは、素早く隊列を広げつつ即座に攻撃を開始する。

15門のパンツァーファウスト3が、4門のエクレール戦車の主砲が、そして百数十丁の自動小銃が一斉に火を噴いた。エクレールとパンツァーファウスト3の砲弾は、吸い込まれるようにしてホ級の三段重ねされた砲塔部分へと吸い込まれる。

耳がおかしくなりそうな不愉快な轟音のオーケストラの中で、確かに響く鈍い弾着音。

一拍おいて、爆発音。

『───────ァアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

そして、深海棲艦全体に共通する、金属をすりあわせているような独特の断末魔。

( ><)「エクレール戦車の全砲撃が着弾!軽巡ホ級、主砲塔機能停止!ダメージあり!!」

ビロードが興奮気味に叫んでいるが、彼我の距離をたったの150Mまで引きつけての攻撃。戦車隊が陣の最後方に位置することを加味しても400Mと離れていない。超絶至近距離、こめかみにピストルの銃口を押し当てているのとなんら変わらない。

もしも外していたら、ルクレール戦車が鉄屑かフランス戦車道の教育課程に致命的な欠陥があるかの二択だ。

('A`)「手を止めるな!撃て撃て撃て!!!」

( ゚д゚ )「パンツァーファウスト第ニ射用意!態勢を立て直させるな!!」

俺は寧ろ、目の前の下級深海棲艦2匹の知能の低さに感心する。欺瞞は確かに施していたが、ルクレール戦車への“欺瞞”は迷彩柄の断熱シートを真上に被せただけという非常に雑なものだ。

並ぶ四つの不自然なシート、その目前にはこれ見よがしにバリケードが築かれている。これがリ級以上のクラスだったら俺たちは吹き飛ばされて終わりだったろうが、奴らは無警戒で進んできた。

放棄された陣地だと高をくくってでもいたのか、奴らの五感の問題か、或いは本当に何も思わなかったのかは定かではない。いずれにせよ、こちらからすればありがたいので諸々の考察については頭がいい御偉方と研究者諸兄に任せるとしよう。

( ゚д゚ )「Feuer!!」

『ァッ、アアアアアアアアアアッ!!!!?』

二度目の一斉射。爆発音に混じり、肉が裂ける生々しい音を確かに聞いた。

一度目の砲撃の時よりも遙かに巨大な断末魔を上げて、ホ級が左腕────正確には、先ほどまで左腕があった場所を押さえて悶絶する。

( <●><●>)「ホ級の左腕、欠損。攻撃が効いているのは解ってます」

船でいえば“中破”といったところか。いずれにせよ、これでホ級の脅威は大きく軽減された。
  _
(;゚∀゚)「! イ級二体、攻撃態勢に移行!!」

(;'A`)「クソッ!!」

が、あちらさんも流石に全くの無抵抗で殴られ続けてくれるわけではないらしい。無論両側のイ級二体に関しても独仏の小銃が全力で鉛弾をプレゼントしていたが、いくら百数十丁とはいえ“陸を歩く軍艦”に対しては役者不足にもほどがある。

( <●><●>)「イ級、砲撃態勢に移行」

(;'A`)「見りゃ解るよ!!」

イ級の、魚でいえば口にあたる部分が開く。中から、黒光りする砲口が顔を覗かせた。

( ゚д゚ )「Feuer!!」

瞬間、ミルナ中尉が号令する。第二次斉射の時に砲撃に参加しなかった五門のパンツァーファウスト3が咆哮、ロケット弾が向かって右手のイ級の口の中に次々と飛び込んでいく。

イ級が一瞬眼を見開いたような気がした。閃光が迸り、今までで一番の轟音が大気を震わせる。

体内からの誘爆によって頭部……どころか身体の七割ほどを吹き飛ばされ、主を失った脚部がしばしの制止の後横倒しになる。

(*><)「イ級ダウン、イ級ダウン!!!」

( <●><●>)「ミルナ中尉の戦略眼が素晴らしいのは解っていました」
  _
(#゚∀゚)「喜んでる場合か!!」

(;'A`)「もう1体だ!もう1体の方も止めろ!!」

手放しで歓声を上げようとした奴らも、俺とジョルジュの叫びに慌てて再び銃口を構える。もう1体、右手のイ級は味方のよもやの轟沈に呆然としたのかしばらく制止していたが、我に返り口を開けて砲をこちらに向ける。

『──────ァアアアアアアアアアアアッ!!!?』

だが、砲声の代わりに響いたのは苦悶の声。背面に突如飛来した砲撃を食らい、イ級が激しくのけぞり蹈鞴を踏んだ。

『ア゛ァ゛ッ!!?』

次いで、ホ級の顔面(?)に砲弾が何発か叩き込まれる。片腕を失いバランス感覚を失っていたホ級は、あごにフックを食らったボクサーのようによろめき地響きを立てて転倒する。

「プラゼーレス墓地のポルトガル戦車隊より入電!弾着視認、効果の程を求むとのことです!」

( ゚д゚ )「“効果絶大、引き続き砲撃されたし”と返せ」

……なるほど、後方待機していたポルトガル軍の砲撃か。攻撃開始と同時にホ級達の位置情報を戦車隊にも共有していたのだろう。

勿論支援火力への情報提供は当然のことだ。が、実際の火力投入のタイミングが絶妙という他ない。

完全にこちらの攻撃に注意を引きつけられていたホ級とイ級は、予期せぬ方面からの砲火の雨に為す術が無くなった。

『アッ、アアッ、アアアアァァ………』

ポルトガル軍の砲撃はなおも続く。ホ級は残った右手を何かに助けを求めるかのようにしばらく虚空にさまよわせ、十何発目かの砲弾に頭を吹き飛ばされて沈黙した。

『ァアアアアアアアアアアア……』

もう1体のイ級も既に虫の息だ。巨体のあちこちに痛々しく穴が開き、その穴からは黒煙が噴出している。
それでも口を開いてなんとか砲の照準をこちらに併せようとする敢闘精神には感服するが、間もなく無駄な努力となることは明白だ。

(#><)「ホ級、沈黙!!残るイ級も大破状態です!!」

( ゚д゚ )「油断するな、一気に仕留めろ!!総員、射撃翌用意!!」

「「「Jawohl!!」」」

('A`)「Jawohl!!」

────戦争なんてのは神の次に嫌いな代物だ、ましてや愛着も何もない外国でくたばるなんざ御免被る。

そんな俺でもやはり、今度ばかりは興奮を抑えられぬ声でミルナ中尉の号令に応える。

かつては人類を海洋から駆逐しかけた化け物を、艦娘の力を借りずにただの人間達がなぎ倒す。それも、全く損害を受けず事実上の完封勝利(なお、ポルトガル全域の戦況については考えないものとする)。

こんなもの、エクスタシーを感じずにいられるだろうか。「流石に気分が高翌揚します」という奴だ。

はやる気持ちを抑え、小銃の弾倉を取り替える。そして、今にも倒れそうなイ級に銃口を向け、奴にトドメを刺すべく引き金を────






「敵機直上、急降下ーーーーーーーーーーー!!!!!!」

('A`)「え?」

誰かの叫び声が聞こえ、上から何かが落ちてきた。

一拍間を置いて、爆発音。エクレール戦車が一台、一瞬で炎に包まれる。

「対空警戒、対空警戒!!【Helm】来襲、数は目算で20~30!!」

(;'A`)「………!!」

また別の誰かが叫び、その声につられて俺は上空を見上げる。

程なくして見つけた。あの忌々しい深海棲艦の艦載機が、我が物顔で空を飛んでいる様を。

(;'A`)「っ!!」

ふと、奴らの一部の姿が揺らいだ気がした。ただの見間違いか目の錯覚だったのかも知れないが、俺にはそれが奴らの次の攻撃の予兆に見え思わず小銃を空へと向ける。

(;゚д゚ )「攻撃やめるな!!まだイ級は生きてるぞ!!」

それが間違いだった。

(;゚д゚ )「っ、イ級発砲────

衝撃と、今日二度目の浮翌遊感を味わいながら、俺の意識は闇に落ちた。














…………激しく揺られた脳はただでさえ低い機能を更にグレードダウンさせたらしく、眼が覚めた瞬間俺はつかの間自分が誰であるのかすら忘れていた。

自分がドク=マントイフェルという冴えない名前であることを思い出し、ついで少しずつ正常に稼働し始めた眼が自身が五体満足であることを確認して安堵の息を漏らす。

(メA`)「………」

いや待て安堵って何だ。四肢が着いているのは当たり前、別に着いてるから安心する必要があるものじゃない。一体俺の身に何が起きた?

(メA`)「……あ」

そこまで考えて、俺は自分が弛緩した身体を誰かに引きずられていることに気づいた。

(メメ<●><●>)「おや少尉、案外お早いお目覚めですね。もう1時間ほど寝るつもりかと思っていました」

頬の切り傷から血を流しつつ、ティーマスが覗き込んできたことで俺はようやく現状を思い出した。

ここはポルトガルリスボン、アルカンタラマール駅前、インド通り。

深海棲艦と交戦中だった俺は、上空に現れた深海棲艦の戦闘機に気をとられた挙げ句死にかけていたイ級の砲撃を食らって吹っ飛ばされた。

(メA`)「……ティーマス=ワーカー軍曹、状況の報告を頼む」

(メメ<●><●>)「ようやく脳みそも機能を取り戻したようで何よりです」

(メA`)「あとお前のフルネームを初めて呼んだ気がする」

(メメ<●><●>)「一体貴方は何を言ってるんですか?」

いかん、また意識が。

(メ#゚д゚)「隊列は崩すな!歩兵は相互にカバーしつつ弾幕射撃で対空牽制!!三個分隊、戦車の護衛につけ!」

(;><)「ルクレール、2両目撃破されたんです!!」

(;メ゚д゚)「っ、なら二個分隊でいい!戦車隊はイ級に早くトドメを、ポルトガル軍はどうした!?」
  _
(;メ゚∀゚)「【Ball】、【Helm】の攻撃を受けて混乱状態みたいです。まともに通信が繋がりません」

(;メ゚д゚)「……クソッタレが!!」

(メA`)「………」

(メメ<●><●>)「貴方がイ級の砲撃で間抜け面をさらしつつ吹っ飛ばされた直後、敵航空隊の攻撃が本格化しました」

戦線を立て直すため必死に指揮を続けるミルナ中尉を、どことなく他人事のように眺める。阿鼻叫喚の中俺を物陰……俺が吹き飛ばされる前に破壊された元ルクレール戦車の陰に引きずり込みつつ、ティーマスが淡々と状況を説明してくれた。

(メメ<●><●>)「敵の中核艦隊旗艦、装甲空母姫より【Ball】が多数発艦。アルマダ、カシュカイシュ、そしてリスボンに来襲。

同時に、アルマダに上陸していた空母ヲ級からも追加の【Helm】40余機がここへ向けて発艦。

戦爆連合の猛攻を受け、現在アルカンタラマール防衛線は瓦解状態です。立て直しが不可能なのは解ってます」

(メA`)「……まぁ、そうだろうな」

中世の騎士が使った兜を思わせる形状の、一般的な深海棲艦の戦闘機として知られる【Helm】。

白色の球体という形状を基本形とし、flagship級や姫、鬼といった上級の深海空母が使うことが多いとされる【Ball】。

どちらも装甲は薄く、Helmの方に至っては通常種ならH&K MP5一連射で火を噴く“ワンショットライター”だ。加えて速力も400km/h程度が限界と、人類側の使う戦闘機とは性能面で雲泥の差がある。

だが、奴等は最大でも1m20cm程度と深海棲艦本体に輪をかけて小さい。ロックオン不可能という問題がここでも立ち塞がり、かといって有視界でバルカンによる撃墜など更なる無理難題だ。

そのくせ向こうの爆弾や機銃は、大して此方の戦闘機のものと威力に差が無いと来ている。

「あああああぁあっ!!?腕が、俺の腕がぁあああああ!!!?」

「こっちにも負傷者だ!衛生兵を!衛生兵を呼んでくれぇ!!」

………そんなものが、ほぼ唯一の対抗手段である艦娘のない軍に襲いかかればどうなるか。

結果はご覧の有様だ。

「…ぁ……ぁぅ……ぐ……」

ずるずると、下半身を吹き飛ばされたドイツ兵が一人目の前を張っていく。最早死が免れないのは傍目にも明らかだが、そいつは声にならない声を上げながら必死にこの場を逃れようとしていた。

《タスケテ!!※※※※!!

タスケテ!!※※※※!!》

燃え上がる三台目のルクレール戦車の中から、フランス語とドイツ語で交互に助けを求める女の声が聞こえてくる。
ガンガンと装甲を内側から叩く音が狂ったように、そして徐々に勢いを失いながら喧噪の中で響く。

「※※※※!!!」

『────ォオオオオオオッ!!!』

狂乱状態のフランス兵が一人、そこかしこに転がる死体を蹴散らしながら俺たちの傍を駆け抜けていった。助けの言葉か悪態かを叫んでいたが、その叫び声はイ級が下腹部から機銃を放ったところで途切れる。

(メ#゚д゚)「せめて、せめてイ級をここで仕留める!!総員残存火力を集中!!目標、正面イ級!!」

「「「Jawohl!!」」」

この期に及んでも、まだミルナ中尉は任務を遂行しようとしていた。ジョルジュ、ビロードを中心に敗残兵が集まり、向かってくるイ級に向けて引き金を引く。

『アアアアァァアアアア!!!』

(;><)「ダメなんです!ターゲットにダメージありません!!」

(;メ゚д゚)「あきらめるな!撃ち続けろ!!」

……でも、大破しているとはいえ奴等は“船”だ。相次ぐ爆撃でパンツァーファウストもほとんど失逸している今、たかが十数挺のアサルトライフルごときではトドメを刺すにはほど遠い。

(メA`)「…ティーマス、煙草持ってたりする?」

(メメ<●><●>)「あいにく健康志向なので」

(メA`)「そうだったね」

クソッタレ。

  _
(メ;゚∀゚)「アルカンタラマール防衛線よりHQ、深海棲艦機の猛攻を受けて戦線の維持が難しい!後退、もしくは艦娘の派遣を求む!!」

《此方HQ、艦娘の派遣は不可能だ。深海棲艦の攻撃は広域に及んでいる、外洋の主力艦隊の救出から優先しなければならない。

また、後退は許可できない。抜かれればポルトガル防衛線全体が崩壊する、死守せよ》
  _
(メ#゚∀゚)「ならせめて対空砲の派遣を要請する!艦娘とまでは行かないから対空弾幕射撃が可能な車両を寄越せ!!」

《……此方HQ、大局的に鑑みて、要請は許可できない。アウト》
  _
(#メ゚Д゚)「…ッオオオオオオオオオッ!!!!」

がつんと音を立てて、ジョルジュが通信機を地面にたたきつけている。
……まぁ、ほとんど死ねと言われたも同然だからな。あいつが怒り狂うとしても仕方ない。

(メA`)「……」

(メメ<●><●>)「……少尉、反撃は?」

(メA`)「マンドクセ……とも、言ってられんよなぁ」

ミルナ中尉は作戦の直前、俺たちには“神の加護”がついていると言った。だが、神の加護がついた結果、俺たちは今死にかけている。

(メA`)「………ティーマス」

この結果が、中尉の信仰不足故なのか、深海棲艦に神をも凌駕する力があるのか、そもそも加護自体を必要としないのかは解らない。

だが、一つだけはっきりしたとH&K MP5を構えつつ俺は思う。

(メA`)「援護しろ」

(メメ<●><●>)「Ich verstehe」

やっぱり、神なんて信じるものじゃない。

(#'A`)「っ!」

通りに飛び出すと同時に、小銃の引き金を引く。ただし目標はイ級でもないし、そもそも当てるつもりもあまりない。

『……!』

『!?』

生き残った最後の一両であるルクレール戦車の真上、徐々に高度を下げつつ飛び回っていた【Helm】の一群に向けてばらまくように弾幕を放つ。

勿論当たってくれるのが最良だったが、近代戦闘機に比べて遅いというだけで時速400kmは地上から狙い撃つには十分高速だ。

とはいえ最低限の目的は果たした。俺はなおも照準を上空に向けて【Helm】共を牽制しつつ、困惑したように右往左往している車体を駆け上がると上部ハッチを激しく蹴飛ばし始めた。

(#'A`)「オラァ!!出てこい蛙野郎!!」

正確には戦車に乗っている人間なんだから“野郎”の可能性は極めて低いか。だが今はそんなことどうでもいい。そもそも上品なおフランス野郎にドイツのジャガイモくさい言葉が解るとも思わない。

(メメ<●><●>)「っ」

この間はティーマスが変わってHelm共の軌道を遮る形で弾幕を張る。あちらは有効射程圏の遙か圏外まで退避しているが、動きさえ牽制できるなら今はこれでいい。

それにしてもどこから軽機関銃など調達したのか……。変な奴だが、やっぱり優秀であるには違いない。

(#<●>∀<●>)「フウハハハハハハァーーーーー!!!!汚物と深海棲艦は消毒DAAAAAAAAAA!!!!!」

いかん、変なスイッチが入った。

(メ;'A`)「ええ……部下兼友人がガチモンのトリガーハッピーだった…長いつきあいで初めて知ったんだけど」

ξ;゚⊿゚)ξ 

('A`;)「ってうおっ!?」

自分の部下が明後日の方向へと旅立ってしまった瞬間を目撃して呆然としていたら、いつの間にか足下のハッチが開いていた。

車内から顔を覗かせるのは、いかにもフランス女な金髪巻き毛。
ただ、存外年は若い。俺と同い年か、下手したら更に下か。友軍車両の全滅でパニックにでも陥っていたのか、眼は泣きはらしたように赤い。

フランス軍が絶望的に人材不足なのか、或いはこいつが飛び抜けて優秀だったのか。
できれば後者を希望するが今は贅沢を言ってられない。

(#メ'A`)<アンタ英語は出来るか!?>

ξ;゚⊿゚)ξ<す、少しなら>

(#メ'A`)<前方のイ級を仕留めたい!協力してくれ!!>

ξ;゚⊿゚)ξ<……解ったわ>

少しだけ間はあったが、まさかの二つ返事とはさい先がいい。今は本当に1秒でも時間が惜しい。

('A`)<名前は>

ξ゚⊿゚)ξ<ツン。ツン=デレ>

('A`)<ツン、車内で機銃手は?>

ξ゚⊿゚)ξ<……さっき深海棲艦機の機銃掃射で死んだわ>

('A`)<解った。俺が動かす>

ξ゚⊿゚)ξ<任せた>

双方最低限の単語を使っての会話だったというのもあるが、期待以上に迅速に決めごとが済んだのは僥倖だ。俺は機銃座に座りながら手招きでティーマスを呼ぶ。

( <●><●>)「貴方が随伴歩兵を集めるように言うと解ってました」

('A`)「………中尉経由で昇給を交渉してみるよ」

生き残っていた20名ほどのドイツ兵を連れて戦車の傍についた友人兼部下を前に、俺はそう言って肩を竦めるしか無かった。

(#'A`)「Panzer vor!!」

号令一過、戦車のエンジンが唸り震動が身体に伝わる。フランス語の戦車用語なんざそもそも知らなかったが、ドイツ語でも意味は通じたようだ。

『─────ゥオオオオオオオオ!!』

('A`)「Feuer!!」

向かってきた戦車への威嚇のつもりだったのか、大破状態のイ級は咆哮した。間抜けに開いた口の中に、主砲弾をぶち込む。

『』

( <●><●>)「イ級沈黙です」

凸('A`)凸「バーカ」

弱点をぶち抜かれて昏倒したイ級に向けて思い切り下品に中指を突き立てる。“誇り高きドイツ軍人”にあるまじき行動かも知れないが、これぐらいは勘弁願いたいものだ。

('A`)「っと。歩兵隊、対空警戒!艦載機の爆撃に備えろ!」

「「「Jawohl!!」」」

(;メ゚д゚)「ドク……すまん、助かった」

('A`)「中尉、感謝はありがたいですが今は時間がありません。通信機を貸して下さい」

(メ゚д゚ )「……解った。ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「はっ」

中尉相手といえど、時間が惜しいことに変わりは無い。とっとと話を切り上げ通信機を本部へとつなぐ。

('A`)「アルカンタラマール防衛線よりHQ。進撃してきたホ級1、イ級2の撃破を完了。されど制空権を掌握され、戦力は過半を損失。継戦不可能、後退の許可を求む」

《此方HQ、何度も繰り返しているが後退は許可できない。アルカンタラマール駅を死守せよ、オーバー》

('A`)「HQ、リスボン死守にアルカンタラマール失陥の回避が必須なのは解っている。ただしそれは、艦娘を中核とする“海上戦力の帰還が敵のリスボン侵入までになされなかった場合”だと思われる」

《……その通りだ》

('A`)「この点について、HQ。あくまでも推測だが、深海棲艦側はおそらくこれ以上此方の海上打撃群を抑えきるだけの戦力を有していない。後は十中八九時間との闘いだ」

《………何故そう言いきれる?》

('A`)「敵が損耗を恐れている」

違和感を感じたのは、HelmとBallの動きだった。

先ほど言ったとおり、この2種類の深海棲艦機はどちらもほとんど艦娘ありきでなければまともな対策が打てない存在だ。単に厄介というだけでなく、攻撃能力も十二分に備わっている。

つまり、併せて100を優に超える敵航空戦力が居ながら、俺たちがまだ“半壊で済んでいる”というのは明らかな異常事態だ。

('A`)「奴等は今、損害を出すことを病的に恐れている。おそらく海上打撃群がポルトガル近海まで帰還した際に、艦娘や連合艦隊を迎撃できる戦力を可能な限り減らしたくないからだ。

逆説的に言えば、奴等は海上打撃群に関しては“撃破が出来ない、足止めが精一杯だ”と考えている。

時間さえかければ、ビスマルク達が戻ってこれる公算は大いにある」

アルマダやカシュカイシュにおいても既に相当数の深海棲艦が上陸しているが、その進軍の足は極めて鈍い。

特に、強化種たる“elite”の進軍の遅さは目につく。

おそらく内陸部への浸透強襲に際し、高い戦闘能力を誇るelite種が何かの手違いで孤立・各個撃破されることを防ぐための処置。

もう一つ推察するなら、“できるだけ早くリスボンを制圧するための配慮”という一面もあるのではないか。どんなに高い攻撃力と射程を誇っていても、深海棲艦は陸に上がれば鈍重だ。高速侵攻には速力面で艦載機戦力が不可欠。

無論あくまで推測に過ぎないが、疑問点を口に出しながら整理していく内にこの推測が真実に近いという確信が生まれた。

現に、今この瞬間もHelmとBallは上空を旋回するのみで総攻撃に移らない。あくまで“素振り”を見せるのみで、随伴歩兵────中でも、有効射程距離が長い狙撃銃の持ち主達が迎撃の構えを見せると傍観へと姿勢を戻している。

('A`)「よってHQ、“遅滞戦闘を行い打撃を与えつつの後退”ならば問題ないと提言する。要は、海上打撃群が妨害部隊を殲滅し中核部隊、並びに上陸している深海棲艦部隊を俺たちと挟撃できればいいんだ。

遅滞戦闘を行う俺たちにありったけの戦力と火力をつぎ込め。そうすれば後は俺たちが、俺たちの仕事をやる」

《………》

('A`)「HQ、もうこれ以上話し合いに時間は割きたくない。こうしている間に向こうが多少の損害度外視しての攻撃に踏み切れば、俺たちはおろかリスボンの壊滅も視野に入るぞ」

《………貴官の名を、改めて聞いておきたい》

('A`)「ドク=マントイフェル少尉だ」

《…………》








《HQより全リスボン防衛戦力に告ぐ、アルカンタラマールを中心にポルトガル西海岸方面へ至急急行せよ。陸、空を問わず全物資・全戦力を迎撃線の構築に回せ》

('A`)「HQ、理解を示して貰い感謝する。最善を尽くす、オーバー」


.
('A`)「……ウツダシノっふ!?」
  _
(*゚∀゚)「ヒューーーっ!!!ドク、お前見直したぜ!HQに啖呵切っておまけに退却と増援の許可まで貰うとはな!」

通信を終えてぐったりと機銃座に突っ伏そうとした俺の頭を、ジョルジュの太い腕ががっちり拘束する。

ああああ男の大胸筋の感覚がぁああああ!!!やめろぉおおおおお!!!!

('A`)「……」
  _
( ゚∀゚)「………ドク、大手柄なのに浮かない顔つきだな」

('A`)「俺さ、これでお役御免ってことにして戦線離脱しちゃダメ?」
  _
( ゚∀゚)「俺の感動を返せよお前」

男から感謝されたって、1マルクの得にもならない。









( ><)「─────上空敵編隊、攻撃態勢!!」

深海棲艦の奴等に動きがあったのは、本部との通信を終えてからきっかり20分後。第1波の増援として、ゲパルトとレオパルド2各一個小隊が随伴歩兵とセットで此方と合流した直後だった。

これ以上の戦力増強を許しては、本格的にリスボン制圧が難しくなるという判断だろうか。HelmとBallが、文字通り空から“降って”きた。

《Feuer!! Feuer!!》

《一つ一つを狙おうと思うな!大きな塊の中に火線を突っ込ませるイメージで撃て!!》

4両のゲパルト───ゲパルト自走式対空砲が唸りを上げる。火線が空で交錯し、貫かれた何機かのHelmが錐揉みしながら四方八方へ墜落する。

(#゚д゚ )「よく狙え、撃て!!」
  _
(#゚∀゚)「いいか、撃墜までする必要は無い、とにかく車両への攻撃を絶対にさせるな!!」

ゲパルトの火線をかいくぐって迫ってきた個体には、随伴歩兵の弾幕射撃がお出迎えだ。それにしても軽機関銃を基幹として装備を揃えてくるとは、HQもなかなか話がわかる。

( <●><●>)「敵艦載機隊、後退。当方損害、至近弾数発のみで損傷・撃破車両共に0」

(*><)「此方の戦果、撃墜18、撃破7、損傷10!大戦果なんです!凄いんです!!」

\おぉー!/

ビロードが子供のように飛び跳ねて歓喜を露わにし、それに一部の兵が追従して歓声が上がる。言葉が通じないフランス兵の生き残りも、手応えで自分たちが深海棲艦機を圧倒していたのは解るのだろう。どこか誇らしげに互いを賞賛しあっている。

だが、俺やミルナ中尉は逐一脳の回転を止めている暇が無い。

(;'A`)「全車両散開、随伴歩兵も伏せろ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「※※※!!」

俺が天井を叩くとツンが何ごとか操縦士にフランス語で叫び、車両が急加速で前進、レオパルド2、ゲパルトも八方に散開する。

直後、戦車隊の展開位置に直撃する砲弾。炸裂音と共に砂煙が舞い上がる。

(#゚д゚ )「上空11時方向、射角60°から70°をなぞる形で射撃!!」

《Jawohl!!》

弾着観測射撃を行ったとみられる、少し離れた位置に浮遊していた敵機を目ざとくミルナ中尉が発見する。ゲパルトの内1両が砲火を迸らせ、貫かれたBallが一機タホ川へ火球に姿を変えながら落ちていった。
  _
( ゚∀゚)「砲撃の発生位置は!?」

( ><)「1時方向、ジャウ通り方面からです!!」

ジャウ通り……戦艦の主砲にとっては決して遠くない。

('A`)「アルカンタラマールよりHQ、ジャウ一番通り地点に敵が潜んでいる可能性がある、あぶり出しを行いたい。攻撃を求む」

《こちらHQ、了解した。MLRSによる砲撃を敢行する。衝撃に備えろ》

('A`)「了解。HQより伝達、MLRS使用!衝撃に備えろとのことです!」

( ゚д゚ )「了解。総員衝撃に備えろ!!」

1分と立たずに、八発のロケット弾が頭上を通過。轟音と共に指定地点に着弾する。

ξ゚⊿゚)ξ<……何か動いたわね>

('A`)<……あぁ>

ロケット弾による砲撃が行われた地点、明らかに10Mを超える何か大きなものがうごめいた気配があった。

カシュカイシュから上陸したelite級の何かが侵出してきているのか、或いは新種の深海棲艦か。どちらにせよ油断できない相手なのに変わりは無い。

('A`)「……HQ、空軍の出撃は可能か?或いは投入可能なグラーフ・ツェッペリンはあるか?」

《こちらHQ、現在“欧州”の主要な空軍は外洋における海上打撃群の援護に回されている、これ以上戦力を割くと不測の事態に対応しきれない可能性が高まる。

またグラ子……ゴホンッ、グラーフ・ツェッペリンに関しても稼働可能な六隻中五隻が前線に投入されている。遺る1名に関してもドイツ本国の防衛から放すわけにはいかない》

('A`)「……今なんか不穏な発言が」

《気のせいだ》

('A`)「ソッスカ」

(;><)「11時方向に水しぶき!タホ川を此方に向かって突貫してくる【艦影】を確認しました!」

('A`)「っと。ゲパルト1、2は直上の敵航空隊に牽制射撃。レオパルド2全車、ルクレールに続いて11時方向タホ川を照準!!」

《《《Jawohl!!》》》

双眼鏡を覗いていたビロードの報告に併せて戦車隊に指示を出す。ほどなくして件の水しぶきが、三つ並んでタホ川をさかのぼってくるのが見えた。

(#'A`)「────Feuer!!」

号令を下せば、五つの戦車主砲が一斉に火を噴く。五発の砲撃が、やや先行していた中央の水しぶきに直撃した。

『────ァアアアアアアァア!!!??』

例の耳障りな断末魔と共に砲撃を食らったイ級が一隻川の中程でのけぞって身もだえする。1.5kmという広い川幅にもかかわらず、深海棲艦達は密集して突撃してきていた。結果として、遺る二隻も止まる羽目になる。

( ><)「艦種確認!タホ川の敵艦、全てイ級!全て通常種です!」

('A`)「今更んなもん怖くもなんともねえっての。全車続けて撃て!!20秒で沈め切れ!」

( ゚д゚ )「迫撃砲、撃て!!当てなくていい、水柱を上げるだけでも奴等の砲撃の妨害になる!!」

『『『ァアアアァアアアアア!!!?』』』

いっそ哀れになるほど、新手のイ級達はただの的でしか無かった。戦車砲と迫撃砲の釣瓶打ちを食らい、瞬く間に損傷箇所が増えていく。

HelmやBallが援護しようにも、ゲパルトの分厚い弾幕が遮って爆撃路を開けない。
  _
(#゚∀゚)「Los Los Los!!」

すかさず、ジョルジュの率いる分隊が川の畔まで突っ走る。分隊員達が背に担ぐのは、後方から補充された新たなパンツァーファウスト3。
  _
(#゚∀゚)「ぶちかませ!!撃て、撃てぇ!!」

『『『ァアァアアアアアア……!アァァァア……』』』

五門の戦車砲、八門の迫撃砲、そして12門の対戦車携行砲。

我がドイツ連邦陸軍が誇る火砲集中戦術の前に、三隻の駆逐艦はむなしく川底に身を横たえる。

('A`)(……さぁて、これで解ったかい敵将さんよ)

俺は機銃座に深く腰をかけ直しつつ、今頃海のど真ん中で歯がみをして居るであろう敵旗艦───装甲空母姫のいそうな方角を眺める。

('A`)(あんたらの事情が割れた以上、こっちにだって戦い方は幾らでもある。このまま艦娘たちが帰ってくるまでおつきあいして貰うぞ)

────少しかっこつけて、深く椅子に腰をかけたのが幸いだった。

(゚A゚)「ヒエッ」

数センチ、本当に数センチ頭上を一発の砲弾が駆け抜ける。頭頂に熱を感じる間もなく、右手で轟音が鳴り響き爆風が吹き付けてきた。

アルカンタラマール駅の公舎は跡形も無くなり、着弾地点はほとんどクレーターのようになっている。はっきり言って、誰一人として吹き飛ばされずに済んだのはほとんど奇跡のようなものだ。

(;><)「九時方向、九時方向!敵艦砲射撃飛来!!」

ビロードの叫びに併せて、タホ川にもう一度目を向ける。そこに、そいつはいた。

『……………』

『惜シカッタナ』とでも言うように口角を上げて。『次ハ当テルゾ』と伝えるように此方を見て。『ホラ逃ゲナイノカ?』と挑発するように左手の砲を向けて。

身の丈せいぜい1.6mといったところか。もしも両腕についた砲が無ければ、もしも“水面に立って”いなければ、俺は奴を「戦場に迷い込んだビキニの女」と勘違いしたかも知れない。

それほどに、人間味溢れた様子で重巡リ級eliteは俺たちを────俺を見つめていた。

《こちらHQ、アルマダ市防衛線から急報。交戦中だった重巡リ級eliteが確認できない、其方に向かった可能性がある。注意せよ》

(;'A`)「たった今感動の初対面を遂げたところだよ!!

総員九時方向、重巡リ級elite!!撃ち方はじめ!!」 

ξ;゚⊿゚)ξ「※※※※※!!」

『………♪』

先陣をルクレールが切り、次いでレオパルド2が1両、2両、1両と僅かに間をおいて砲弾を放つ。

リ級はそれを、踊るような動きで川面を滑りつつ避けていく。

('A`)「ミルナ中尉、迫撃砲を奴の進路を塞ぐ形で撃って下さい!ジョルジュ、パンツァーファウストを至近に叩き込んで水柱で動きを止めろ!!

戦車全車両、撃ち方ぁ!!」

機動力が高いなら、その機動力を封じるまで。火砲を増やし、制限した航路に戦車の照準を集中させる。

が。

(;゚д゚ )「なっ……」

迫撃砲は、水面に着弾する前にリ級が放った機銃弾によって全て撃ち落とされた。
  _
(#゚∀゚)「Verdammt!!」

撃ち込まれたパンツァーファウストの水飛沫を、リ級は体操選手のように跳躍して飛び越えた。

(;'A`)「クソッ……」

そして再び戦車砲を──わばわざ着弾点を高速で通り過ぎながら──回避したところで、再びリ級が此方に砲塔を向ける。

《リ級砲g

乗組員の叫び声が途切れ、直撃弾を受けたレオパルド2が一両天に舞い上がる。そのまま車両は数秒の対空を経て20m程向こう側に落下し、爆散した。

('A`)「………」

流石に、握る拳に力が入る。血が煮えくりかえりそうなほどに頭の芯の辺りが熱を帯び、噛みしめた歯がミシミシと音を立てる。

あの野郎、完全にこっちをおちょくっている。

ヒイッ、寝落ちしてただけです…

昨日中に終わらせると言っておきながら申し訳ありません。
再開します

(;'A`)「……!」

いや待て、冷静さを失うな。此方の目的は奴等に打撃を与えつつの遅滞と戦線の緩やかな後退だ。elite級の“ヒト型”撃沈が成れば確実に向こうの計算を崩せはするが、そのためにいくら犠牲を払うことになる。

('A`)「……フーッ」

既に交戦から5分と立たずに貴重な戦車が一両破壊されている。こいつにこれ以上かまけてはいけないと、気持ちを切り替えミルナ中尉に目配せする。

( ゚д゚ )「迫撃砲隊、重巡リ級周辺に砲火を引き続き集中!いいか、当てる必要は無い、とにかく此方に照準をつけにくくしろ!」

('A`)「HQ、現在リ級と交戦を開始、既にレオパルド2を一両損失。状況推移によって後退開始の許可を求む」

《HQ了解。幸運を祈る、オーバー》

('A`)「お言葉を感謝する。アウト」

最後のは軽い皮肉だ。

('A`)「各車両、リ級の攻撃は極めて強力だ。回避・散開を繰り返し的を絞らせるな。随伴歩兵はゲパルトと連携してとにかく空に気を配れ。歩兵はこの際リ級は無視でいい」

「「「Jawohl!!」」」

挑発に乗って闇雲に攻撃をかけたところで、水上の機動力がイ級やホ級のような“非ヒト型”と比べものにならない。翻弄されるのがオチだ。

向こうが一気に突破に踏み切ってこない以上、此方が遮二無二攻撃するべきじゃない。

忌々しい気持ちを押し殺して、リ級eliteの方に視線を戻す。攻撃動作を見逃せばそれだけで命取りだ、僅かな変化にも気を配らなければ。

『………』

……あくまでも“俺の目から見て”だが、タホ川のリ級eliteはこちらの攻撃が緩んだことの意図をまるで知っているかのような素振りだった。ミルナ中尉の指揮の下撃ち込まれる迫撃砲の雨や散発的に飛来する戦車砲を相変わらず踊るような動きで回避しつつ、先ほどまでより挑発的な色合いを濃くした笑みで此方を見てくる……ような気がする。

モウ終ワリカイ?
アタシハ傷一ツツイテナイヨ?
モウ少シ踊ラセテヨ。
遊ビ足リナイヨ。
オ前ノカーチャンデーベーソ!

明確に奴が言葉を発したわけじゃない。が、時にこっちに向かって手をひらひらと振り、時にこっちを向いたまま後ろ向きで川面を疾走してみてといった数々の動きは、奴にとってこれが「戦闘」ではなく「遊び」であることを物語る。
  _
(#゚∀゚)「……ドク、一生の頼みだ。あいつを殺させろ」

(;'A`)「繰り返すがこっちから下手に必要以上の攻撃をかけるな。しかしなんなんだあいつは……」

深海棲艦と会話が成立したという話は日本ですら聞かないが、深海棲艦の上級種────リ級以上の所謂“ヒト型”が感情を持っているのではとは前々から言われている。

それにしてもこいつは豊かすぎだろ、仕草といい表情といい人間や艦娘とほとんど変わらない。

10分ほど、申し訳程度の砲撃による牽制とそれを回避し続けるリ級という、なんとも不毛な光景が続く。

《HQよりアルカンタラマール、アルマダ防衛線もなんとか歯止めがかかり遅滞戦に移行した。戦況は順調に推移している》

('A`)「そりゃ何よりだ」

《が、カシュカイシュ方面にて大挙揚陸が確認されていた艦隊が再び動きを見せている。リ級の牽制は継続しつつそろそろ後退を開始してくれ。

此方からも合流用の増援を随時派遣する》

('A`)「了解。これより遅滞戦に本格移行する、アウト」

( ゚д゚ ))
  _
( ゚∀゚))

本部にそう返しつつハンドサイン。中尉とジョルジュがうなずき、リ級や艦載機への牽制は続けつつ緩やかに歩兵隊を後退させ始める。

『………?』

リ級は、もともと弱まっていた攻撃が更に勢いを失い、俺たちが少しずつ下がり始めた様子を見て不思議そうな様子で足を止めた。

何発かの迫撃砲弾が奴に───正確には奴の回りに張り巡らされている“戦艦の装甲並みに高い耐久力の”不可視のシールドに直撃するが、特に気にする素振りを見せない。やはり奴にとって迫撃砲程度は本来避ける必要のないものらしい。

モウイッチャウノカイ?

奴は腕を組み、眉をひそめ、小首をかしげて此方を眺めてくる。……なんというか、こいつはやはり人間くさすぎる。

残念ダナア。

君ハドウモ頭ガイイミタイダシ。

久シブリニ艦娘以外トモオモシロイ戦イガデキソウダッタノニ。

ヤレヤレ、拍子抜ケダヨ。

奴は川面でがっくりとうなだれ、恨めしげな表情でじとーっと此方を見つめ、まるで映画俳優のように大げさに肩を竦めてため息をつき──────









ジャア、今カラ殺スヨ

とても冷たい、笑みを浮かべた。

(;'A`)<────全速後退!!!>

ξ;゚⊿゚)ξ「!?」

コンマ一秒すら惜しく、俺はツンを介さず命ずるために英語で車内に向かって叫ぶ。操縦士も何の戸惑いも無くその指示に従ったのは、彼女もまた“何か”を第六感で感じ取ったからなのか。

激しくエンジンを吹かし、ルクレールが下がる。その眼前に砲弾が突き刺さり炸裂。爆風で一瞬車体が浮き上がる。

「リk

何ごとかを叫ぼうとした、隊列の最外殻に展開していた歩兵の頭がはじけ飛ぶ。それを皮切りとして、重苦しい銃声が重なってバタバタと10人以上の歩兵がなぎ倒された。

「り、リ級elite、攻勢に移行!!」
  _
(;゚∀゚)「パンツァーファウスト!!!」

4門のパンツァーファウスト3が火を噴き、リ級eliteの進路上に着弾。

川面に上がる水柱が、その進路を塞ぐ。

『!!』

リ級はその水柱を“殴り砕き”、その動きの延長で左手の主砲を川縁のジョルジュ達に向ける。
  _
(;゚∀゚)「走れ────おがっ!?」

逃げるジョルジュ達の背後で砲弾が炸裂。最後尾の一人が爆風でばらばらになってそこかしこにパーツが飛び散り、ジョルジュ達も前のめりに吹き飛ばされた。

(;゚д゚ )「負傷者を回収、運搬しろ!」

(;'A`)「戦車隊、しんがり行くぞ!砲撃開始!

ゲパルトも牽制は二両でいい、残る二両はリ級への攻撃に参加してくれ!!」

《《《Jawohl!!》》》

機関砲と戦車砲が同時にがなり立て、水面にいくつもの水柱を立てる。

『~♪』

が、当たらない。派手さはないが最小限の効率的な動きで、リ級は弾幕の隙間をすり抜けていく。

《リ級に発砲炎!!!》

「「「ぐぁあああああっ!!!?」」」

砲弾は先行して離脱を開始していた歩兵隊へ。火柱と断末魔が路上に満ちる。

(;'A`)「ミルナ中尉、無事ですか!?」

(;メ゚д゚)「俺は無事だが今の砲撃で20人近くやられた!

くそ、負傷者収容は最優先しろ!!衛生兵に見せている暇はない、応急処置は移動しながらだ!!」



(;'A`)「っ、ジョルジュ!動けるか!?パンツァーファウストで援護を頼む!!」
  _
(;メ゚∀゚)「どこぞのお寝坊さんと一緒にすんなっつの!!

Feuer!!」

『……』

リ級は水中で直立して無造作に機銃を放つ。撃ち抜かれた三発の対戦車ミサイルが全弾リ級に届く前に空中で炸裂する。

入れ替わりに砲弾。左手で轟音。そして震動。

《ゲパルトが一両やられた!!随伴兵も損害大!!》

(;'A`)「……!ジョルジュ、お前の隊の生存者と負傷者抱えて下がれ!!」
  _
(メ;゚∀゚)「クソッ…了解した!!にしても野郎どんな眼してやがるんだ!!ロケット弾撃ち抜きやがったぞ、それも三発だ!!」

(;'A`)「とにかく今は後退と隊列の維持に集中しろ!!」

これが『elite』の力かと痛感する。甘く見ていたつもりは全くなかったのだが、どうやら俺の認識でもまだなお“過小評価”だったようだ。

('A`;)(……いや待て、これ程力の差があってなお、装甲空母姫が“リ級単体による殲滅”を万一のロストに配慮して考えていなかったとしたら?)

もしもリ級の攻勢が、“整然とした退却を妨害するためのもの”だとしたら?

ここまで思考を巡らせたところで、リ級とは全くの別方角から一発砲弾が飛来。ルクレールの真後ろ数メートルに着弾した。

『───ォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』

《ドク、前だ!!二時方向、十二時方向に新手の深海棲艦を確認!!距離はそれぞれ2km程度!!》

《艦種照会!……軽巡ト級elite、並びに駆逐ロ級eliteと認む!!なおもこちらに接近中!!》

( <●><●>)「……まんまとしてやられたのは解ってます」

(;'A`)「…マンドクセ」

あぁくそっ。本当に悪いときには悪いことが重なる。

────非ヒト型の上級種の判別は、ル級らヒト型に比べて遙かに簡単だ。

『『ォオオオオオオオオオッ!!!!!』』

デカい、説明不要。

これにつきる。

('A`;)「アルカンタラマールよりHQ、正面にelite二体が出現した!遠距離砲撃による支援を求む!座標は──」

《HQ了解、指定座標に向けて攻撃を開始する》

(;'A`)「ゲパルト並びにレオパルド、正面のelite級にはMLRSによる攻撃が行われる、しばらくは無視でいい!リ級への牽制を続行しつつ後退しろ!」
  _
(メ゚∀゚)「負傷者の後退急がせろ!HQ、トラックの数が足りない。手配を頼む!!」

《HQ了解した。追加の移送トラックを其方に向かわせる》

(;'A`)「クソッ、Feuer!!」

隊列と戦力を保った上での遅滞戦闘に移れたなら、正直リ級はともかくeliteとはいえト級やロ級程度なら後方支援火力と戦車隊・パンツァーファウストの運用で十二分に余裕を持って下がりつつ迎撃できた。

自身の迂闊さに唇をかむ。“ヒト型のelite・flagship級”がタホ川へ侵入したという報告がないことで完全にその点に関して考慮していなかった。まさかリスボンと同程度に重要な攻勢目標であるはずのアルマダから引き抜いてくるとは……!

《MLRS射撃、弾着10秒前……五秒前……弾着今》

各個体に四発ずつ、合計八発のロケット弾が飛来。それぞれロ級、ト級の上半身に着弾、炸裂する。

『『オオオオオオオオオオオッ!!!!』』

(;><)「ダメージはあるみたいですが目標は未だ健在!動きの鈍化も見られません!」

('A`;)「HQ、ターゲットへの弾着確認も大きなダメージは見られない。

こちらはリ級への攻撃を継続しなければならない、引き続き支援砲撃を求む」

《こちらHQ、了解した。MLRSに加えて自走砲……それと、可能なら出せる範囲で空軍や艦娘も支援に回す。なんとか耐えてくれ、オーバー》

('A`)「感謝する、アウト」

随分と物わかりが良くなった司令部に感動しつつも、やはり現状の歯がゆさには気が滅入る。

本来なら支援火砲と戦車隊の火力を勢揃いさせて迅速に眼前のelite級二体を駆逐したい。ロ級elite、ト級eliteはどちらもデカくて強いが鈍重なのは共通事項だ。集中砲火で八方から絶え間なく攻撃を仕掛ければ十中八九こちらは無傷に近い状態で沈められる。

非ヒト型とはいえeliteの損失は装甲空母姫からすれば相当な痛手であることは明白で、リスボンはおろかポルトガル戦線全体の大幅な攻勢遅滞を見込めたはずだ。ともすれば、此方が相応の防衛態勢を整えきったと判断して作戦中止に踏み切ってくれた可能性すらある。

だが、今リ級から眼を離せばおそらく確実にゲパルトを集中的に潰してくる。鼻先に不自然なバリケードが築かれていても前進を続ける非ヒト型と違い、リ級以上は作戦に応じて攻撃目標の優先を取捨選択する。

向こうの立場に立って考えれば、最優先で叩きつぶしたいのはまず間違いなくHelmとBallの行動を大きく制限しているゲパルトだろう。

('A`;)「当たらなくても最悪いいが命中を本気で狙うことは維持しろ!とにかく奴に砲撃態勢を作らせるわけにはいかない!砲撃間隔にも注意しろ!!」

艦載機隊の総攻撃誘発の危険を冒して対空砲車を割いてもなお妨害はギリギリだ。これ以上此方からは火力を割くことはできない。

攻撃間隔が異様に空くためもどかしくはあっても、正面の新手二体に関してはHQと砲兵隊に任せるしかないのが現状だ。

(;'A`)「ミルナ中尉、歩兵の隊列編成状況は?!」

(;゚д゚ )「なんとか立て直した!もう少し待て!」

『『───ォオオオオオオオオオッ!!!』』

('A`;)「なるべく早く!ト級共が進軍を再開してます!

HQ、再度支援砲撃を」

《こちらHQ!アルカンタラマール防衛線、聞こえるか!?》

('A`)「……聞こえている、どうぞ」

此方の要請を遮るようにして飛び込んでくる、切羽詰まった通信。

……こういう時のお約束として、この手の通信は大概ろくでもない内容だ。

《海上部隊よりの急報だ、“中核艦隊”の数が減っている!

装甲空母姫の傍から戦艦タ級一隻が消えやがった、ポルトガル戦線に向かった可能性がある!!》

とはいえ、まさかここまで最悪な内容だとは思わなかったが。

('A`;)「……HQ、その情報が発信されたのは?」

《受信したのはついさっきだが海上打撃群からこの報告が上がったのは15分以上前だ!タ級の速力を考えると既n









衝撃、砲声。












────誰かが泣き叫ぶ声で目を覚ますと、俺はまた地面を引きずられていた。

四肢は……見る限りでは、今回も奇跡的にある。が、左手は焼け爛れ右足の感覚が無い。

一生ものなのか、回復するのかは今のところ判断はつかない。

(メメA`)

(A`メメ)

まるで夢の中にいるような状態の脳みそをなんとか働かせようと四苦八苦しながら、俺は僅かに首を動かして辺りを見回した。

両腕を無くして泣き喚く兵士が居た。

飛び出した自分のはらわたを他人事のように呆然と眺める兵士が居た。

わけのわからぬことをわめき散らし、駄々っ子のように地面を跳ね回る兵士が居た。

(メメA`メ)「……」

コツンと、足に当たったものがあったので目を向ける。
半分潰れた女の顔と目が合った。

こっちみんな。

(メメA`メ)「……ああ、畜生」

地獄だ。本当に。

( <メメ><●>)

ξ;メ゚⊿゚)ξ

ティーマスとツンが俺を引きずっている。ティーマスの左手からは、夥しい量の血が流れている。ツンは比較的軽傷らしく、励まそうとでもしているのか両手で俺の軍服の肩口をつかみながら何ごとかティーマスにフランス語で話しかけている。
  _
(#゚∀゚)

ひっくり返り燃えさかる戦車の横で、ジョルジュが部下達を叱咤しながらパンツァーファウストを構えていた。放たれた砲弾は此方に近づいてくるト級の頭部に着弾したが、奴の歩みは止まらない。

(。><)

ビロードは道に座り込み、子供のように泣いている。小銃を抱え込み、怯えた様子でがたがたと震えている。

(;メ゚д゚)

ミルナ中尉はそんなビロードをなんとか励まして立たせようとしながら、遮るものがなくなって上空から押し寄せてくるHelmとBallに向かって必死に小銃を撃っている。
………本当に、あの人の姿勢には頭が下がる。

(メメA`メ)「………」

全ての戦車が燃えていた。
レオパルド2もルクレールもゲパルトも、ひっくり返り粉々になり飴細工のようにひしゃげ、車体に炎を纏い転がっていた。抵抗する術を失って逃げ惑う歩兵を、ト級とロ級が機銃掃射で薙ぎ払っていく。

(メメA`メ)「………」

ふと、タホ川の方に目をやる。

戦艦タ級と、“あいつ”が───重巡リ級eliteがそこにいた。

人間に近い形をしながら少しも人間味を感じられない、冷たい目つきで陸の様子を眺めるタ級。その横でリ級eliteが、すねた子供のような表情で水面を蹴っていた。

(メメA`メ)「………」

『………!』

ふと、奴の目線が俺の目線とぶつかった気がした。

リ級の奴はしばらく此方を見つめた後、寂寥感と憐憫をない交ぜにしたような笑みを浮かべて唇を動かす。











ジャアネ。

『…………』

タ級の腰についた艤装が起動し、主砲塔が回転する。

照準は当然、陸。俺たちを一撃で薙ぎ払うべく、ぴたりと狙いを定める。

(メメA`メ)

攻撃を下すべく手を振り上げているタ級と、その横でどこかつまらなさそうにしているリ級を見ながら、俺は胸の内でしみじみと思う。

(メメA`メ)(……やっぱり、神様なんざ信じるだけ無駄ってことだな)











「Feuer!!」

砲撃を号令する「声」がした。覚悟していた爆熱も衝撃も、いつまで経っても起きやしない。

『……………?───────!!?』

『』

タホ川の上で、タ級はしばし何故自分の艤装が火を噴かないのかと不思議そうな様子で佇んでいたが……やがて、自分の左半身が消し飛んでいることに気づくと、そのまま断末魔の絶叫を上げた後川面に倒れ込んだ。

リ級『………………!!!!』

隣にいたリ級eliteは束の間動きを止めていたが、追撃にギリギリで反応しその場から飛び下がる。

着弾点から巨大な水柱が上がり、リ級は更に数メートル先の水面まではね飛ばされて着水した。

『ォオオオオオオオオオッ!!!!?』

『アァアアアア……』

砲火は更に肉薄してきていたト級とロ級にも着弾する。戦車砲はおろか規格次第ではミサイルすら凌駕する威力の一撃に、ト級は苦悶の声を上げてのけぞり後退する。ロ級の方は横っ面に穴を開け、黒煙を噴き上げながら地面に倒れ込み沈黙した。

(;メA`メ)「……!?」

「────ふっ、陸のKameradinをよくもいたぶってくれたわね、深海棲艦ども!!」

何が起きたのか解らずに、暫時唖然としていた俺の目の前に、一人の女が立ち塞がる。

灰色を基調とした軍服を身に纏い、旧ドイツ海軍のものを思わせるデザインの軍帽を被り、艤装を背負うその姿。

まちがえようもない、艦娘だ。

「ふんっ、ヤパーヌからはるばる戻ってきてみれば、早速ドンパチ始まってるんだもの、たまったもんじゃないわ!!

とはいえ、こんな言葉をご存じかしら?“主役は遅れてやってくる”って!!」

(メ'A`メ)

アレ?なんだコイツ?俺が記憶しているどのドイツ艦娘とも言動が一致しないぞ?

「ヤパーヌで新たな力を授かり、深海棲艦よ!私は帰ってきた!!」

( <メメ><●>)

ξメ゚⊿゚)ξ

「戦艦Bismarck zwei、ただ今参上!!

太陽に変わっておしおきよ!!」

(メメA`メ)

リ級

「流石よね、私!!!!」

(メメA`メ)「お前は何を言ってるんだ」

最後の力を振り絞ってそうツッコむと、俺は完全に意識を手放した。






丸四日に及ぶ眠りから目を覚ますと、俺はポルトガル国内の病院にいた。

( <●><●>)「あ、起きたんですね。そろそろ本国への遺体返還の手続き方法を調べようと思ってしまってましたよ」

起き抜けに相棒からかけられた第一声がこれという現実について、おそらく俺にも泣く権利はあるのではないかと思う。

主治医の(拙いドイツ語を用いた)説明に寄れば、右足も左手も重傷でこそあったが奇跡的に後遺症は残らないそうだ。脳や骨にも異常は見られず、後一日二日安静にした上で精密検査に問題が無ければ無事退院、ドイツへの帰国が許されるという。

('A`)「……」

取り扱われるニュースは、どの媒体も今回の大規模襲撃────公式呼称【リスボン沖事変】で一色だった。

当事国であるポルトガルがそうなのは当然として、EU諸国や遠く離れた日本、中国といったアジアの国々でも大きく取り扱われている。艦娘配備国も参戦していたにもかかわらず一国の首都が陥落一歩手前まで追い詰められた今回の襲撃がいかに衝撃的だったかを物語っている。

( <●><●>)「あぁ、連邦陸軍司令部で貴方とコンツィ中尉の昇進が話し合われている。

リスボン陥落を防いだ功労者ということで、異例の2階級特進も考慮されているとか」

('A`)「………俺はまだ死んでねえぞ」

( <●><●>)「だからこそ異例なのですよ」

そう言ってティーマスはむいたリンゴを俺の前に置いてくる。なんか兎の形にむかれてるんだけど、こいつ滅茶苦茶器用だな。

('A`)「…」




('A`)「マンドクセ、辞退しよう」

( <●><●>)「貴方ならそう言うと解ってました」

そういって、ティーマスは小さく肩を竦める。そして、それ以上理由は聞いてこない。

やはり、なんだかんだいってこいつはいい相棒だ。

( <●><●>)「それにしても、幸運としか言い様がありませんでしたね」

('A`)「あぁ、まあな」

いかにも専門家ですと顔に書かれているようなコメンテーターが、テレビの中で偉そうにEU主要国の対応を批判している映像を眺めながら頷く。

('A`)「丁度日本で“改ニ”改造を終えたビスマルクが帰ってきましたってのは、できすぎなんてもんじゃない」

艦娘の装備の性能や身体能力を飛躍的に向上させる、“改装”。

基本的には艦娘の身体への負担が大きく一度が限界なのだが、近年艦娘先進国たる日本においてある程度の練度があれば更に上の段階へと能力を引き上げる“追加改装”が実装された。

欧州やアメリカでも理論は知られているがまだ研究段階であり、艦娘の“改ニ”化には日本を経由しなければならない。今回のビスマルクの日本派遣は、欧州に初めて“改ニ艦”を配備するという戦略的にも政治的にも意味が大きいものだった。

とはいえ、日本で改ニになってきたビスマルクがたまたま深海棲艦の総攻撃が行われている欧州に帰還し、その圧倒的な性能をその日の内にお披露目し陥落寸前にあったポルトガルを救うという筋書きはできすぎだ。
流石に俺でもなんらかの大いなる力が介入したのではと疑ってしまう。

( <●><●>)「………で、あのビスマルクは改ニ以外に日本でどんな改造を受けてきたんでしょうね」

('A`)「………知らん」

確か、文化交流と日本の艦娘育成方式の研究もかねてオオアライとかいう町の鎮守府に一週間ほど滞在したそうだが……本当に何があったのか。

それと、次回の改装派遣が決まっているU-511は大丈夫なのだろうかと僅かに不安がよぎった。

テレビは更に話題を移し、ポルトガル戦線の現在の状況を伝えていた。

あの後、Bismarck ziewの到着によって戦線の瓦解を免れた連合陸軍は満を持して反転攻勢を開始。予備戦力まで総動員して内陸奥深くに侵攻していた深海棲艦を次々に確固包囲・撃破した。

この頃には海上打撃群も妨害部隊を駆逐、さらにはアメリカ合衆国が第六艦隊と艦娘アイオワを派遣して中核艦隊並びに近海の残存艦隊を攻撃。

重厚な包囲網に装甲空母姫以下深海棲艦側は外洋へ逃げることが叶わず、陸へ陸へと追い立てられアルマダ市へと逃げ込んだ。

現在アルマダ市は、世界最強を謳われるアメリカ軍を中核とした部隊の猛攻にさらされている。米国防省発表に寄れば、後10時間で装甲空母姫を含めた深海棲艦の掃討は完了するそうだ。

('A`)「……」

( <●><●>)「例のリ級なら逃げましたよ。

これは私の勘ですが……どうも、アレだけはうまいこと逃げている気がします」

('A`)「おぉ」

生返事になってしまったが、俺も同感だ。

端的に“elite”故に戦闘能力や知能が高いというのもあるが、俺はあのリ級に、それ以上の“何か”を感じていた。普通の深海棲艦とは一線を画した、一筋縄ではいかない“何か”を。

《今回の事件を受けて、ローマ法王からも声明が発表されています。曰く、神はこの度の事件の犠牲者の魂を慈しみ────》

('A`)「………フッ」

( <●><●>)「どうしました?ついに顔だけじゃなく頭まで変に?」

('A`)「いや別に……ところで俺そろそろ泣いていい?」

かつて、どこかのお偉いさんは“砲兵は戦場の女神”だと言っていたそうだ。

俺たちの命とリスボンの命運を救うべく颯爽と現れたビスマルクの姿を思い浮かべると、言動を差し引いてもこの言葉はあながち間違っていない気がする。

( <●><●>)「因みに、帰国後は対深海棲艦の戦闘レポートを書き上げる作業が待ってますよ」

('A`)「……マンドクセ」

俺は無神論者だが、神を信じる人々を別に否定はしない。神に救いを求める人々を否定はしない。

だが、今後一つだけはっきり言えることがある。



神様より艦娘の方が、よほど人を助けてくれる。

~('A`)が深海棲艦と戦うようです~

完!これ

反省点が多すぎて書き切れない……地の文本当に難しい、もうなんていうか様々な面で勉強不足修行不足を痛感致しました。
三日もかかってしまい申し訳ありません、でもところどころ声援いただけたの本当に嬉しかったですありがとうございます!!


( ^ω^)はホームレスのようです - SSまとめ速報
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↑深海棲艦がいない世界線

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( ・∀・)戦車道連盟広報部のようです - SSまとめ速報
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川 ゚ -゚)艦娘専門店へようこそ!のようです - SSまとめ速報
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( ^ω^)戦車道史、学びます!のようです - SSまとめ速報
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川 ゚ -゚)艦娘専門店へようこそ!のようです - SSまとめ速報
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↑同じ世界線の諸々

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ギ、ギ、ギギギシギシギシ
\ アンアアアアンアンアン /
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/◎。/◎。/|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

乙。ポルトガルが舞台の艦これssは新鮮だったな

申し訳ありません、初の地の文投稿と言うことで魔が差し、wifiで、タブレットを用いて自演を働いてしまいました。
今後、二度とこのようなことがないよう、自分の文章力を磨いてしっかりと自信を持って投稿していきます。

申し訳ありませんでした。

>>68
個人的には自分で自分に乙する奴の方が新鮮だわ……

文は面白かった
自演は仕方ない

>>70
いやもう、まさしくですね。

>>71
なんというか、自分で自分の作品を汚してしまったことへの後悔で一杯です。ただただ反省しかないです、優しいお言葉ありがとうございます

おつ
話は面白かった
懲りずにまた投下してくれたら嬉しい

>>73
ありがとうございます。そういった言葉をいただけるだけで涙が出ます。

とりあえず次書く時からはsaga付けるようにした方がいい
>>15おかしくなってるし

>>75
いやもう、まさしくですね(汗)

不勉強だった上に雑談スレにまで迷惑をかけてしまいまして本当にお恥ずかしいです

自演でワロタ
面白かったのに晩節を汚すとはこの事


リ級が不穏な終わりだな、地図は想像を掻き立ててくれていいね
戦闘描写も現場の必死さと組織立って戦ってる感が両立されてて良かった、陸軍も遊んでる訳ではないのだよ!
ドクは前線に置いてこそ輝くタイプかな?w次回あれば楽しみにしてます

>>77
いや本当に。自分で自分の作品汚してちゃ世話ないですね。('A`)たち登場キャラクターにも申し訳ないですし、読んで下さった方々にも申し訳ないです

ただ、面白いと言っていただきましてありがとうございます。

あと>>65の下から1つ目と3つ目の作品同じだけど間違いだろうか

>>78
うわぁあああ、ありがとうございます。
次を書く機会がもしいただけたなら、「艦これ欧州戦線」は是非書いてみたい題材なので頑張らせていただきます。
感想ありがとうございます!

>>80
あ、ご指摘ありがとうございます。
仰るとおりミスですね


( ´_ゝ`)流石な鎮守府の門番さんのようです(´<_` ) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1489148331/)
此方が抜けてました

おつおつw
気にしなくても十分面白かったよ!

>>83
ありがとうございます。

更新際にもちょくちょく乙をいただいておりまして、たいへんモチベーションがあがりました。ありがとうございました!

ブーン系とは一周回って新しい気分になれる艦これssだった

>>85
ブーン系がっつり減りましたからね…ガルパンも艦これもいいけど、ブーン系も……いいぞ!

感想ありがとうございます。


タ、エリレ、ト、ロなんて編成でも
ここまで怖くなるものか

>>87
ご感想ありがとうございます。

あくまでこのss内の話ですが通常兵器が効くとしても戦艦に陸上兵器で立ち向かうわけですからね。ミルナとドクは、深海棲艦側の事情を鑑みてもかなり善戦した方です

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