[花騎士]ナズナ「団長さまがちっちゃくなっちゃいました!」 (58)

・花騎士団長ショタ化SSです。
ショタ化の際の性格はわんぱく系ではなく、優柔不断で大人しいタイプです。少しナヨナヨしてます。

・ルート分岐があります。
3つの√があります。
ルート分岐方法は選択肢を出して、その際の直下安価を採用する予定です。
選ばれなかったルートも、現在進行してるルートが終わったら書きます。
ルート分岐選択肢以外に安価はありません。なので安価は2回です。

・ルートによって出てくる花騎士がガラリと変わります。
なので、ルート分岐選択肢の際は、どんなルートで登場する花騎士は誰なのか少し紹介します(ネタバレになるので全員は紹介しません)


それでは、よろしくお願いします。


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――――――
騎士団 執務室
早朝

ウメ「……つまり、ナズナの後ろから顔を覗かせているその子供が、団長さんという訳だな?」

ナズナ「はい……そうなんです……」

ショタ団長「…………」ヒョコ

サクラ「あらあら~///」

ウメ「これは……随分と可愛らしい姿になったな」

サクラ「ボク~、今いくつかな~?」

ショタ団長「ごっ、5歳……です」

サクラ「あら~///」

ナズナ「記憶も子供の頃に戻っちゃったみたいで、私達の事も分からないみたいで……」

ウメ「一体全体、どうしてこんな事になったのかな?」

ナズナ「一番この件に関わりのありそうなイエローチューリップさんに聞いてみたのですが、やっぱり昨日の夜に団長さまに薬を……」

ウメ「成程、大体分かったよ。最近落ち着いていたように見えたのだが……全く」

ナズナ「ど、どうしましょう……? 一応、一日経てば元に戻るそうなのですが……」

サクラ「う~ん……。とりあえず、今日の団長業務は副団長の私がするわね~」

サクラ「それで、今日は最低限の警備と哨戒を出して、他の花騎士はお休みにしちゃいましょう」

サクラ「幸い、この前の大規模討伐で付近の害虫は掃討してから害虫の襲撃や目撃情報もないし、もうしばらくは彼らも近寄ってこないと思うの~」

サクラ「勿論、何かあった時にはすぐに対応できる状態にしておかないといけないけどね」

ウメ「了解した。では、そちらは私が担当するとしよう。サクラ、部隊はこちらで編成しても構わないか?」

サクラ「勿論よ~。誰を連れていくか決まったら教えてね?」

サクラ「ナズナちゃんも、それでいいかしら?」

ナズナ「は、はい! お二人とも流石ですね! 私なんて団長さまが小さくなって狼狽えてただけなのに……」

ウメ「なに、花騎士たる者、ありとあらゆる事態に即座に対応出来てこそだ」

ウメ「まぁ、今回は非常に変わった事態ではあるが……」

サクラ「私は副団長だから、団長さんが動けなくなっちゃった時に代わりをするのは当然よ~」

サクラ「ただ、流石に団長さん程、上手くお仕事出来ないと思うのー」

サクラ「だから、ナズナちゃん、手伝ってくれるかしら~?」

ナズナ「はい、勿論です! 団長補佐の私にお任せください!」

ナズナ「あっ、でも団長さまはどうしましょう……?」

ウメ「それなら、花騎士のみんなに面倒を見てもらう事にしようか」

ウメ「幸い、この騎士団には子供と接するのが得意そうな花騎士も多くいる」

サクラ「そうね~。ボク、今日は他のお姉ちゃんに一緒にいてもらうようになるけど、仲良く出来るかしら~?」

ショタ団長「う、うん。出来ると思います……」

サクラ「団長さん、良い子さんね~♪」ナデナデ

ウメ「小さい団長さんは随分と大人しいんだな……」

ウメ「さて、では仕事にとりかかろうか。みんなにも今日の事を説明せねばな」

――――――――
こうして、5歳児へと戻ってしまった団長は、今日一日を花騎士達と一緒に過ごす事になった。


だが……


~~~騎士団宿舎 食堂~~~


ナイトフロックス「ここは譲れません!」

スノードロップ「どうして分かってくれないんですか!」

ショタ団長「あわわ……!」アタフタ

アスター「全く、いい加減にしないか二人とも……」ハァ

朝食時の食堂、そこでナイトフロックスとスノードロップが団長を挟み、激しく言い争っていた。

目の前のテーブルの上にはナイトフロックスの作った一汁三菜の、焼き魚を中心とした和食。汁が味噌汁ではなく、緑色のスープのようなものになっている。

そして、スノードロップの作ったバターロールやスクランブルエッグとウィンナー、コーンスープなどの典型的な洋食が置かれていた。

ナイトフロックス「やっぱり団長さんの朝ごはんは栄養のバランスが整った和食にすべきです!」

ナイトフロックス「幼い時から栄養のバランスをしっかり考えてこそ、将来の健康に繋がるんですよ!」

スノードロップ「確かにそうかもしれませんが、流石に緑が多すぎる気がします! 特に薬草のスープって健康な朝の日に飲む必要はない気がしますよ!」

スノードロップ「私のだって、しっかり野菜は取り入れています! それに今回は子供でも美味しく食べられそうな料理を中心に作ってきました!」

スノードロップ「きっと団長さんも気に入ってくれるはずです!」

アスター(二人とも結局、自分の作った料理をブラザーに食べてほしいだけなんだろう……ナイトフロックスさんは今日一日でブラザーが元に戻るという事を忘れてないかな……?)

アスター「このままだと平行線だ。ブラザー、君はどちらの料理を食べたいんだ?」

ショタ団長「えっ、えっと……えっと……」

アスター「……昔のブラザーは優柔不断だったのかな?」

ショタ団長「りょ、両方食べる……?」

アスター「……君のその小さな体に、二人前が入るように見えないが……。二つの料理を並べて好きな物だけ食べて残すというのも、行儀が良くないかな」

ショタ団長「うぅ」

アスター「もしかして、選ばれなかった人に悪いと悩んでいるのかな?」

アスター「だが、ブラザー。こういう時はスパッと選んであげるのも優しさだよ」

ショタ団長「ごめんなさい……でも……」

アスター「ふぅ……大人のブラザーと比べての違和感が半端ないな……」

アスター(この子の将来の姿が騎士団長なのだから、人生とは分からんものだな……)

アスター(今度、ブラザーに昔の事を聞いてみるのも面白そうな気がしてきた)

アスター(それよりも、まずは目の前の状況だな……)

アスター(二人はまだ言い争っているし、ブラザーはその雰囲気に気圧されてるのもあるのか、何も決められない状態だ)

アスター(どうしたものかな……)

アプリコット「ど、どうしたんですか? 何か騒がしいですけど……」

アスター「む、アプリコットさんか」

アプリコット「わぁ♪ この子ってもしかして話に聞いてた小さくなった団長さんですか? 可愛い!///」ダキッ

ショタ団長「わぁ!」

アスター「ちょうど良かった。スノードロップさんとナイトフロックスさんが、どちらの朝ご飯がブラザーにとって良いか揉めててな」

アプリコット「そうなんですか? 喧嘩は良くないですよ」

アプリコット「それに、団長さんだって困ってますよ。お二人がそんな雰囲気じゃ、決めにくいのも当たり前だと思います」

アプリコット「団長さんだって、ゆっくり決める時間欲しいですよね? お二人の料理とも美味しそうで迷っちゃいますよね」

ショタ団長「うん……ごめんなさい……」

スノードロップ「あ、謝る必要なんてないです! そうですね、私達がこんな雰囲気じゃ団長さんにも申し訳ないですね……」

ナイトフロックス「私達、団長さんに料理を食べてもらいたいがばかりに、意見の押し付け合いなんてして……」

アプリコット「喧嘩なんてしないで、団長さんが決めるまで待ってあげて――――はっ!」

アプリコット「ス、スノードロップさん……まさか、このパンってバターを使って……」カタカタ

スノードロップ「はい、使ってますよ。バターロールは朝ごはんの鉄板―――」

アプリコット「バターはダメです! マーガリンは敵です!」クワッ!

アプリコット「スノードロップさん、あなたはバターで団長さんを育てる気ですか!?」

アプリコット「失望しました……。スノードロップさんがそんな人だったなんて!」キッ!

スノードロップ「え、えぇー!?」

アプリコット「団長さん、バターなんて食べちゃいけません!」

アプリコット「そうです。小さい頃からしっかりジャムの素晴らしさを教えておかないと、団長さんがバターに穢されてしまうかもしれません」

アプリコット「こうなったら、私が美味しいジャム料理を作ってあげます!」

ナイトフロックス「えぇ!?」

アスター「アプリコットさん、行動が言ってた事と真逆なのだが……」

ショタ団長「あわわ、また喧嘩みたいに……」

アルストロメリア「分かってない!分かってないよみんな!」バン!

ショタ団長「!?」

アスター「あぁ、また混沌としていく……」

アルストロメリア「朝なら美味しくて元気が出る物が一番! 子供にとって美味しく、元気が出る物といえば勿論!」

サフラン「そう! カレーね!」

ショタ団長「また元気なお姉ちゃん達が増えた……!」

アルストロメリア「朝カレーという言葉もある通り、カレーは最早一般的な朝食だよ!」

サフラン「という事で団長さん、どうぞ♪」コトッ

ショタ団長「わぁ……カレー……!」キラキラ

スノードロップ「カ、カレー……! 確かにカレーは子供にとってヒーロー的料理……!」

ナイトフロックス「団長さんの興味が一瞬でカレーへ……! 流石にカレーは強いですね……」

アプリコット「隠し味にジャム入れて良いですか? 甘くなって美味しいと思います!」

アスター「……って、ちょっと待て。それ、究極カレーじゃないのか……?」

アルストロメリア「勿論だよ!」

アスター「……いや、子供相手に究極カレーはやめた方がいいんじゃないか……?」

サフラン「どうして? とっても美味しいわよ! ほら、団長さんだって食べる気になってる!」

アスター「確かにブラザーに選ばせるべきだとは思うが、究極カレーだぞ……? もう少しマイルドなカレーにした方が―――」

ショタ団長「頂きます!」ハムッ

アスター「って、食べてしまったか……大丈夫―――」

ショタ団長「か……辛いぃーー!!」

アスター「あぁ、ほら言わんこっちゃない……」

サフラン「大丈夫!?」

ショタ団長「ウグッ……エグッ……辛いよぅ……」ボロボロ

アルストロメリア「わわっ、泣いちゃった! どうしよう……」

アプリコット「団長さん、どうぞ! お水です!」

ショタ団長「グスッ……ありがとう……」ゴクッ

ショタ団長「!?!?!?!!?」ブフゥ

サフラン「きゃっ!?」サッ

スノードロップ「団長さん!?」

ショタ団長「ゔえええぇぇぇ……凄い甘いよぅ……」

アスター「アプリコットさん、まさか……」

アプリコット「辛さを甘さで打ち消せるかなぁと思って、ジャムを入れてみました!」

アスター「何でそう余計な事をするんだ君は!?」

ショタ団長「うぇぇぇぇぇ……口の中が痛いくらいヒリヒリするし甘い……」グスグス

スノードロップ「も、もっと泣いちゃった……」

ナイトフロックス「ごめんなさい、まさかこんな事になるなんて……」

アスター「今はまずブラザーを泣き止ませなければ……」

ハツユキソウ「ふんふん♪ いつもお仕事の日が急にお休みになると特別な感じがして良いですね~♪」

ハツユキソウ「遅い時間にご飯食べても大丈夫ですし~♪」テクテク

ハツユキソウ「今日は部屋でずっとダラダラして惰眠を―――」

アスター「ハツユキソウさん!」

ハツユキソウ「はい!? う、嘘です嘘です! 本当はお休みじゃなかった日なんですからダラけ過ぎず、有意義に自主鍛錬とかするべきですよね!」

ハツユキソウ「勿論、するつもりでしたよ! 本当ですよ!?」

アスター「いや、そういう事じゃない。ハツユキソウさんに頼みたい事があるんだ」

ハツユキソウ「頼みたい事? 」

アスター「この子の口に手をズボッと突っ込んでほしいんだ!」

ハツユキソウ「ふぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

スノードロップ「ア、アスターさん!? アスターさんも実はかなり混乱してますよね!?」

アスター「すまない、手を突っ込むはやりすぎだな……」

アスター「頼む、この子に指を舐めさせてあげてくれないか!?」

スノードロップ「アスターさん!?」

ハツユキソウ「ゆ、指を舐めさせるですか!? 何かインモラルな雰囲気が……!///」

ハツユキソウ「……はっ! これはあれですね! この子に指を舐めさせてる様子が広まって、『ゆ、雪女が男の子を怪しい儀式で使い魔にしようとしてるぅ~』って噂が流れてしまうやつですね!?」

ハツユキソウ「そうして、幼い男児にいかがわしい行為をさせたとして、逮捕されて花騎士終了なのでは……!?」

ハツユキソウ「それで、釈放された頃には『ショタ食い雪女』の噂が広まって、私の人生も終了する形に……!」

ハツユキソウ「うぅ、そんなのいやですよぉ~~~~~!! 不幸です~~!!」

ナイトフロックス「ハツユキソウさんも落ち着いてください! 実はこの子は団長さんで……」

ハツユキソウ「えっ!? この子、団長さんなんですか!? あー、そういえば確か今日のお休みの理由にそんなことを聞いたような……」

スノードロップ「それで朝ごはんにカレーを食べたら凄い辛かったみたいで……」

サフラン「ごめんなさい……私達の基準で作ってしまったけど、もう少し甘いカレーにしておくんだったわ……」

アルストロメリア「うぅ……反省だよ」

ハツユキソウ「成程! それで冷やす為に私が呼ばれたんですね!」

ハツユキソウ「でもでも、流石に舐めさせるのは……そうだ! 私の部屋に差し入れで貰ったアイスが大量にあったはずです! 待っててくださいね団長さん!」トトト

スノードロップ「えっ!? あの、普通に水を……行っちゃった」

ショタ団長「口中い”だい……」

―――その後、すぐにハツユキソウが両手で抱えて持ってきた大量のアイスをみんなで食べ、舌を冷やしている内に、団長はお腹が一杯になってしまった。

ショタ団長「美味しかったぁ」ケプ

ナイトフロックス「朝ごはんをアイスで済ませるというのは、栄養的には良くないですよね……」

スノードロップ「でも、私達が原因だから何も言えませんね……」

アプリコット「見てください! このアイス、ジャムをかけると凄い美味しいです!」ジャムドバー

アスター「とてつもなく甘そうだな……」

アルストロメリア「うっ、何かシャーベット食べ過ぎて頭痛くなってきたかも……」ズキズキ

ハツユキソウ「皆さん、追加で持ってきましたよ! ささ、食べちゃってください!」ドサッ

ハツユキソウ(これ……差し入れで溜まりに溜まった要らないアイスを消化できるチャンスかも!)

サフラン「ごめんなさい、流石にもう食べられないわ……。残ったカレーも食べなきゃいけないし……」

ショタ団長「ゔゔっ、何か今度はお腹が痛く……」グギュルルルル

ハツユキソウ「やり過ぎちゃった!? ごめんなさい! トイレ行きましょうトイレ!」

―――――――

ハツユキソウ「うぅ、また調子に乗っちゃったよぅ……。ごめんなさい団長さん」トコトコ

ショタ団長「大丈夫、僕もたくさん食べちゃったし……」トコトコ

ハツユキソウに連れられてトイレに向かった帰り道、ハツユキソウは団長のお腹を壊した事実に落ち込んでいた。

ハツユキソウ「でもでも、私が持ってきたアイスでお腹を壊しちゃった訳ですし……」

ショタ団長「でも、とっても美味しかったから嬉しいよ! 口中痛いのも治ったし!」

ハツユキソウ(うぅ、ただ要らないアイスを処分しようとしていただけなのに、そんな屈託のない笑顔を向けられると、心が痛いです!)

ショタ団長「ありがと、お姉ちゃん!」

ハツユキソウ「お、お、おぉお姉ちゃん……!?」

ショタ団長「? お姉ちゃん……?」

ハツユキソウ「こ……これは良いかもぉ~♪/// 弟っていうのも悪くないですね~♪///」

そんな会話に花を咲かせていると、特徴的な眼帯を付けステッキを持った女性が、廊下を行ったり来たりしながらブツブツと呟いているのが、ふとハツユキソウの視界に入った。

アイビー「守護の執行人たる組織から召喚されし使徒……うぅむ、何か違うわね……」

ハツユキソウ「アイビーさん、こんにちは~!」

アイビー「あら、ハツユキソウちゃん。と、この子は……もしかして話に聞いてた幼くなった団長さん!?」

ショタ団長「こ、こんにちは……?」

アイビー「確か記憶も昔に戻ってるんだったかしら……? それなら、自己紹介しないといけないわね!」

アイビー「我は不死なる生命の守護者アイビー! 超越者に約束されし我が不滅なる力で、全ての生命を守ってみせるわ!」

ショタ団長(何かちょっと変わったお姉ちゃんだ!?)

ショタ団長「えっと、アイビーお姉ちゃん……?」

アイビー「はぅあ!?」

ショタ団長「!?」

アイビー「も、もう一回……!」

ショタ団長「アイビーお姉ちゃん……?」

アイビー「こ、これはクるわね……!

アイビー「良いわね、とっても良い!」

ハツユキソウ「分かります、良いですよね!」

ショタ団長「????」

アイビー「団長さん、ハツユキソウちゃん! この後って暇かしら? 折角お休みになったんだし、外で他のガキんちょ達と一緒に遊び―――」

タチバナ「失礼します、ちょっと待ってください」ヒョコ

アイビー「タチバナさん?」

タチバナ「団長殿が子供になったと聞いて、ずっと探していましたが、やっと見つけました」

タチバナ「皆さん、多くの事を吸収できる多感な時期の子供こそ、いろんな知識や物語に触れ、勉強しておくべきだと思うんです」

タチバナ「そこで、みんなで団長殿を連れて図書館へ行くのを提案したいのですが、どうでしょう?」

アイビー「う~ん……お勉強も確かに大事よ。でも子供の時こそ、いろんな友達と外でたくさん遊んだ方が良いんじゃないかしら?」

タチバナ「子供のうちから本を読む習慣を身につけないと、大人になっても中々本を読みません」

タチバナ「団長殿には、たくさんの本を読んで知識の引き出しを多くして、将来困らないようにしてもらわないと」

アイビー「外で友達と遊ぶことは、社交性を育むトレーニングになるわ」

アイビー「小さいうちにたくさん遊んで運動神経と社交性を育む事こそ、子育てにとって大事なことなんじゃないかしら?」ムッ

アイビー「それに百聞は一見に如かずとも言うでしょ。実際に外に出て、いろんな体験をすることが一番大事よ!」

タチバナ「あてずっぽうにいろんな体験をさせるより、団長殿が何に興味があるのか、まずそこから一緒に探したほうがいいのではないでしょうか?」

アイビー「習い事に関してはそうかもしれないけど、友達と遊ぶことに関しては当てはまらないわよ!」

アイビー「子供のうちからみんなで遊ぶことをたくさんしないと、人と接するのが苦手な子にもなりかねないわ!」

ハツユキソウ「な、なんだか雰囲気が悪くなってきましたよぅ!」

ハツユキソウ(というか、みんな団長さんを育てていくみたいになってますけど、今日一日で戻るらしいってことを忘れてる気がしますよ!?)

ショタ団長「ま、また喧嘩みたいに……」

ハツユキソウ(だ、団長さんが困ってる! こうなったら、流されてばかりじゃなくてお姉ちゃんとして団長さんを守らないと―――)

アイビー「ハツユキソウちゃんはどう思う!?」

ハツユキソウ「えっ、私ですか!?」

タチバナ「そうですね。ハツユキソウさんの意見も聞かせてもらいたいです」

ハツユキソウ「えと、え~と……」

ハツユキソウ「やっぱり、お外で遊んだり、友達を作るのは大事なんじゃ―――」

タチバナ「…………」ムッ

ハツユキソウ「あっ、でもでも、お勉強も大事ですよね! この時期に手に入れた知識は一生ものですものね! まずは図書館で―――」

アイビー「う~~…………」ムッ

ハツユキソウ「うぅぅぅぅぅ、団長さん、助けてください~!」

ショタ団長「えぇ!?」

アイビー「……でも、団長さんの意志が一番大事よね……。私達、勝手に盛り上がって勝手に決めようとしちゃったけど……」

タチバナ「そうですね……今日は、団長さんに、どっちにしたいか決めてもらいましょう」

ハツユキソウ(いや、だから今日で団長さん元に戻るんじゃ……)

ハツユキソウ(でも、それを言ったら、また何か面倒くさいことになりそうだし、収まりそうになってるから言わないでおこう……)

アイビー「団長さん! お外でみんなと花騎士ごっこして遊ぶのと」

タチバナ「図書館に行って、いろんな本を読んでみることの、どちらが良いですか?」

ショタ団長「えっと、僕は……」

???「団長さんは、もちろん私と一緒にいたいですよね?」

ハツユキソウ「えっ? 誰――」

スズラン「邪魔」ドン

ハツユキソウ「うぁいた!?」

その瞬間、どこからともなく現れたスズランは、ハツユキソウを押しのけて団長の元へと駆け寄り、団長を抱きかかえた。

ショタ団長「えっ、えっ!?」

スズラン「あなた達も邪魔。どいて」

そして、杖を掲げると、突然の事態に頭が追い付いていないアイビーとタチバナの足元へ向け、光線を放った。

タチバナ「きゃっ!?」

スズラン「さぁ団長さん、一緒に行きましょう♪」

アイビーとタチバナがひるんだ隙を狙い、スズランは団長を抱きかかえたまま、走り出した。

アイビー「ま、待ちなさい! って早っ!? 彼女、あんなに早かったかしら!?」

ハツユキソウ「団長さんが……団長さんがさらわれてしまいました!?」ガーン

タチバナ「…っ! アイビーさん、一緒に追いますよ! ハツユキソウさんは応援を呼んできてください!」

ハツユキソウ「ら、らじゃ-!」アセアセ

アイビー「分かったわ! 行くわよ!」

―――――――――
騎士団宿舎 廊下


スズラン「ここまで来れば……」

スズラン「大丈夫でしたか? 団長さん」

ショタ団長「だ、大丈夫だけど……お姉ちゃん、誰……?」

スズラン「私はスズラン。団長さんを助けに来ました!」

ショタ団長「た、助け……?」

スズラン「はい♪」

そのまま、膝をつき団長の目線へと合わせると、手を両手でギュッと握る。

スズラン「団長さんが小さくなったと聞いてから、良くない人から団長さんを守れるように、私と一緒にいた方が安全って思ったんです」

スズラン「ただ、小さい頃の団長さんが好きだったものをたくさん用意するのに時間がかかって、こんなにお迎えが遅くなっちゃって……」

スズラン「私がいない間、あの女達に何かされてないか気が気じゃなくて、ついつい焦ってしまいました。ごめんなさい団長さん……」

ショタ団長「僕、別に何もされてないよ……?」

スズラン「本当に何もされてないですか? 変な場所に連れていかれそうになったり……」

ショタ団長(それは今かも……)

スズラン「後、変な物を食べさせられたり、お腹壊しちゃったりとか」

ショタ団長(ギクッ)

スズラン「……『何かあった』んですね?」

ショタ団長(目、目が怖い! 目が怖いよ!)

ショタ団長「何も……」

スズラン「かばってあげてるんですね? 流石、団長さん! 幼い時もとても優しかったんだなって実感します♪」

スズラン「大丈夫、私が守ってあげます。だから、あんな女達の事なんて庇わなくてもいいんですよ?」

ショタ団長「ほ、本当に何もなかったよ……?」

ショタ団長「お腹は壊しちゃったけど、それはアイスとか自分で食べ過ぎちゃっただけで……」

スズラン「『アイスを食べ過ぎてお腹を壊した』んですね」

スズラン「あの場にいた女でアイス……成程、分かりました」

スズラン「あの女、本当は冷たい物が苦手なはず……。きっと、団長さんを利用してアイスを消費しようとして、それで団長さんの体調まで壊して……」ブツブツ

スズラン「許せない……許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない」ブツブツブツブツ

ショタ団長「あ、あの……?」ビクビク

スズラン「本当にごめんなさい団長さん。私が早く行かないばっかりに、団長さんに辛い目に合わせて……」

スズラン「せめてもの口直しに……はい♪ 団長さん、この飴好きでしたよね?」

ショタ団長「あっ、これ好きな奴! どうして分かったの?」パクッ

スズラン「うふふ、私は団長さんの事なら、分からない事はないんですよ♪」

スズラン「さ、団長さん。一緒にお部屋へ行きましょう! 団長さんの好きな物、楽しい物が一杯―――」

オオオニバス「―――誘拐の現場、発見よ。スズランさん」

スズラン「っ!? その声は……」

不意に聞こえてきた声に杖を構え、戦闘態勢を取る。

オオオニバス「全く……随分強引な事をしたわね。スズランさん」

ショタ団長(わぁ、何か優しそうな雰囲気のある人……)

オオオニバス「スズランさん、離してあげなさい。無理やり連れていくのは、団長さんも可哀想」トコトコ

スズラン「……異常性癖のサイコパスが!!! 団長さんに近付くなぁぁ!!」

ショタ団長「!?」ビクッ!!!!

オオオニバス「まぁ……サイコパスだなんてひどい。団長さんもびっくりして可哀想」

オオオニバス「待っててくださいね団長さん。今この怖いお姉さんから解放してあげますから」

スズラン「私はあなたみたいな異常者から団長さんを守ろうとしてるだけ!!」

スズラン「あなたに絶対、団長さんをやらせない……! やらせるものか!!」

オオオニバス「好き勝手言ってくれるわねぇ……」

オオオニバス「『異常者』はあなたには言われたくないけど」

ショタ団長(な、何この空気……今までも喧嘩ばっかりだったけど、これは全然違う)

スズラン「私が異常者……? あなたみたいな?」

スズラン「あは……あははははははははははははははははは!! 面白いわ、オオオニバスさん! あなた、お笑いの才能あるのね!」

スズラン「殺したくなっちゃうくらい、凄い面白かったもの」

オオオニバス「まぁ、褒めてくれて嬉しいわ」

オオオニバス「少なくとも、あなたの異常とも言える束縛は私にはないわ。私は、最終的に団長さんが傍に戻ってきてくれればいいの」

オオオニバス「それに、私は団長さんの確かな愛が欲しいだけ。あなたみたいな、心なんて不確かで弱い物に縋るばかりに暴走する女とは違うの」

スズラン「全然理解できない。全然全然全然理解できない」

スズラン「心が通じ合わないで何が愛なの? 体だけ手に入れるのが確かな愛? はぁ?」

スズラン「それ以前に、あなたの傍に団長さんが行く事なんてないわ」

オオオニバス「そっ。まぁ何を言っても無駄ね。あなたに理解してもらうつもりもないけど」

オオオニバス「ただ一つ、親切心で教えてあげるわね。あなたのやり方で団長さんと心を通じ合わせるなんて、絶対無理だと思うわ」

スズラン「……あはは」

オオオニバス「うふふっ」

ショタ団長(き、気持ち悪くなってきた……舐めてる飴に何の味も感じないよ……)

オオオニバス「何にせよ、団長さんを離すつもりはないのね。それなら……」

スズラン(こいつを殺したいのは山々だけど、団長さんの傍にいないと、誰か他の悪い人が団長さんを引っ張っていっちゃうかもしれない)

スズラン(でも、団長さんの傍にいながら、こいつと戦うのは厳しいわね)

スズラン(あいつらの時みたいに、足元に打ち込んで怯ませるか、直接撃ちこんで逃げる?)

スズラン(いや、こいつは案外すばしっこい。かわされて逆に距離を詰められ、攻撃後の隙を狙われるかも)

スズラン(それなら……)

スズラン「団長さん! 逃げますよ!」

スズランは咄嗟に団長の手を引いて逃げようとする。

だが、逃げようとした先に、突如音を立てて氷の塊で出来た壁のようなものが出現した。

スズラン「!!」

その氷の壁はすぐに崩壊し消えるが、スズランの足は完全に止まってしまう。

ラベンダー「―――逃がさないわよ」

氷の壁があった場所の向こうにいた少女、ラベンダーが魔導書を閉じ、ツカツカとスズランへと歩み寄る。

オオオニバス「あら? 意外な援軍ね」

ラベンダー「勘違いしないで。私はこの女が団長さんを連れていこうと阻止しようとしただけ」

ラベンダー(しくったわね……。部屋で小さくなった団長さんの髪の毛を集めてたら、いつの間にか随分と時間が経っちゃったわ)

ラベンダー(幼い団長さんの髪の毛は今しか集められないとはいえ、夢中になりすぎたわね……)

ラベンダー(面倒くさい害虫に絡まれてるし、もうちょっと早く動くべきだったわ)

ラベンダー「オオオニバス。あなたも、団長さんに何かするようなら……」

オオオニバス「あらあら、穏やかじゃないわね」

ショタ団長(怖い雰囲気がどんどん大きく……)ガタガタ

スズラン「また邪魔な虫が……」

ラベンダー「誰が邪魔な虫よ。あなたこそ団長さんにとってお邪魔虫じゃない」

ラベンダー「早く団長さんを離してあげなさい、さもないと……って、もしかして団長さん飴なめてる!?」

ショタ団長「あっ、うん……」

ラベンダー(だだだだだ、団長さんの舐めた飴! 団長さんの取れたて唾液がたっぷり、しかも今だけショタverのスペシャル仕様! 今を逃すと絶対に手に入らない一品……!)

ラベンダー「団長さん、私がもっと良い物あげるから、それペッてしませんか? ね? ね? 大丈夫です、私がしっかり受け止めてあげますから!」

ショタ団長「え、やだ……そろそろ舐め終わっちゃうし……」

ラベンダー「くっ……!」

ショタ団長(飴が好きな人なのかな……?)

ラベンダー「スズラン、団長さんの飴を手に入れるのに協力してくれたら、まずはあの猟奇趣味からやるのに協力してもいいわよ」

スズラン「はぁ? する訳ないでしょ。あなたみたいな変態の体に一滴たりとも団長さん成分を取り込ませたくないわ」

スズラン「それに、あなたどうせすぐ裏切るでしょ。いつ後ろから刺されるか分かったものじゃないわ」

ラベンダー「………………………………チッ」

オオオニバス「…………」スッ

睨み合うスズランとラベンダーを見て、オオオニバスは下がろうとする。

ラベンダー「……!」パサッ シュン!

だが、それを察知したラベンダーはすかさず魔導書を開き、魔力で氷柱を作りだし、オオオニバスに向けて放った。

オオオニバス「危ないわね」サッ

オオオニバスはそれをいとも容易く避け、氷柱は壁へと突き刺さり、消える。

ラベンダー「あなたも逃がさないわ。どうせ私とスズランがやりあいそうな雰囲気になったから下がって、消耗させて美味しい所を持っていこうとか考えてるんでしょ」

ラベンダー「もう二度とその手は食わないわ」

スズラン「前にも同じ事があったわね。本当に姑息……」

オオオニバス「あら、あの時は加減を間違えていろいろ切っちゃわないか考えて、下がってあげただけ」

オオオニバス「……そうね。やってあげても良いけど、私って加減が苦手だから……」

オオオニバス「……腕とか足とか首とか、持って行っちゃっても文句言わないでね?」シャキ

ショタ団長(斧出したよ!? どこに閉まってたの!?)

ラベンダー「それはこっちの台詞よ。体が切られたり千切れる痛みが分かれば、猟奇趣味のあなたも大人しくなるでしょ」パサッ

スズラン(この状況で、団長さんを連れて逃げるのはもう無理そうね……)

スズラン(傍にいたら確実に団長さんに被害が及ぶ。離れるのは不安だけど、仕方ないわ……)

スズラン「団長さん、ごめんなさい。団長さんとくっついていられないのは寂しいし不安ですけれど、少し離れていてくれますか?」

スズラン「この女達は本当に本当に危ない人です。団長さんにとって害がある人達です」

ショタ団長「あっ……あっ……」ブルブル

スズラン「大丈夫、団長さんは私が守ってあげます。だから、少し離れた安全な所からしっかり見ていてくださいね」

スズラン「団長さんにとって邪魔な人、良くない人……今から全部殺してあげますから♪」

スズラン「私の活躍、しっかり見ててください。そして、後で一杯褒めてください♪」サッ

オオオニバス「……はぁ。私が切りたい肉は一つだけなのに、どうしていつも汚い肉ばかり切る羽目になってしまうんでしょうか……」

ショタ団長(まさか本当に殺し合うの……? ど、どうしてこんな事になってるの……?)

ショタ団長(と、止めなきゃ……何とかして止めなきゃ……)ブルブル

ショタ団長(で、でも体が震えて……)グスッ

ルート分岐です。

1.
『状況に耐え切れず泣き出してしまう。団長の精神はボロボロだ!』

団長を怖がらせてしまったスズランやオオオニバス、ラベンダー。何とか団長からの信頼を取り戻そうと、力を合わせたり罵りあったりしながら、みんなで頑張る√です。
少しだけ独占欲が強かったり、愛が重かったり、ちょっとメンヘラ気味な花騎士が中心に登場する√です。

登場花騎士:スズラン・オオオニバス・ラベンダー・ディプラデニアなど



2.
『泣くのは何とか堪える。団長は強い子』

共通√を続けます。
いろんな花騎士が登場します。この先にもう一つ√分岐があります。

登場花騎士:ラナンキュラス・デルフィニウム・シャクヤクなどなど



直下の安価を採用します。なお、しばらく待ってこなかった場合は共通√を続行します。

2.『泣くのは何とか堪える」
共通√を続けます。


今回はここまで。
少し書き溜めますので、また近いうちに投下しますね。

スズラン「……コロシテアゲル」

団長が震えて行動に移せないうちに、スズランの攻撃により戦いが始まってしまう。

ショタ団長「あわ、あわわわ……」

3人とも団長がいる方向には攻撃が向かないように意識してるのか、攻撃が飛んでくる気配は一切ない。

だが、その光景は5歳児を畏怖させるには十分だった。

ショタ団長「あっ……あぁぁ」ブルブル

???「団長団長、こっちだよ」

団長が震えていると、ふと服の端が誰かに引っ張られる。

見ると、そこにはヒラヒラとしたピンクのドレスを身に纏った、赤いリースのステッキを持った少女がいた。

ランプランサス「行こ行こ、団長。今ならあの人達見てないよ」グイッ

ショタ団長「あっ、ちょっと……」

ランプランサス「ほら、早く早く。こんなクソ面倒くさい場所から帰ろ♪」ツカツカ

ショタ団長「帰るって―――わわっ」

どこに連れていかれるのか分からない団長は少し抵抗するが、5歳児の力では敵わずに引っ張って連れていかれてしまった……

―――――――

ランプランサス「うんうん、ここまで来れば、少しだけペースを緩めても大丈夫かな」

乱闘の現場から離れた所で、やっとランプランサスは少し歩調を緩める。

ランプランサス「あいつらもバカだよねー♪ 戦うのに夢中で、肝心の団長がいなくなってるのに気付かないなんて♪」

ランプランサス「結局、お嫁さんである私が、団長の事を一番愛してるのよ」

ランプランサス「あっ、ごめんね、団長! 少し急いじゃって」

ショタ団長「えっと、お姉ちゃんは誰なの……」ビクビク

強引に連れてこられた事で不信感が抜けていない団長は、少し怯えながらランプランサスへと尋ねる。

ランプランサス「私はランプランサス! 団長のお嫁さんだよ!」

ショタ団長「えっ、お嫁さん……嘘だよ、僕にお嫁さんなんている訳ないよ……」

ランプランサス「そんなことないよー! 私と団長は、確かに夫婦なんだよ! ラブラブ夫婦なの!」

ランプランサス「団長、夢の中では何度も何度も何度も愛を囁いてくれたのに、忘れちゃったの?」

ショタ団長(夢の中なんて、おぼえてるわけないよぉ……)

ショタ団長(どうしよう……この人もちょっと変なお姉さんだった……)

ランプランサス「むー……でもまぁ良いか。それなら、お部屋で一緒に、私達がいかに夫婦か語りあおう♪」

ランプランサス「団長のお部屋は捜索隊が出てる今じゃ危ないから……そうだ、私の部屋に行こう! そこを新しい愛の巣にしても良いかも~♪」

ランプランサス「さ、行くよ!」

ショタ団長(どうしよどうしよ、このお姉ちゃんちょっと怖い……絶対に着いて行っちゃいけない気がする!)ブルブル

ディプラデニア「……はぁ。何やってるんですかあなたは」

団長を引っ張って連れていこうとするランプランサス。

それを見かねたように、露出がやや多く派手な赤と白の服装に身を包み、レイピアを携えた花騎士、ディプラデニアが現れ、声をかけてきた。

ランプランサス「は? 何しに来たの?」

ランプランサスは団長から手を離し、警戒するようにディプラデニアを睨む。

ディプラデニア「ただの通りがかりですよ。その子……まぁ、噂の団長さんなんでしょうけど、怯えているのに気付かないんですか?」

ランプランサス「怯えてる? 何で? 夫婦が一緒の部屋で過ごすのは当たり前の事だよね、団長?」

ショタ団長「あっ……あう……」カタカタ

ディプラデニア「……呆れた。病的な妄想癖ですね……」

ディプラデニア「経験則から言わせてもらうと、妄想や思い込みで男性を引っ張り回す女は嫌われますよ」

ランプランサス「思い込み?」

ディプラデニア「そうです。今のあなたみたいな人は、男性にとって負担で避けられるって事を言ってるんです」

ディプラデニア「……もっと現実の団長さんを、見てあげたらどうですか?」

ランプランサス「へぇ、言うわね~。メンヘラクソビッチの癖に」

ディプラデニア「生憎ですが、私はその事を十分自覚しています。悪口として言ったつもりなら、あまり効きませんよ」

ディプラデニア「それに、あなたみたいな夢と妄想の世界で生きてる人に言われたところで、尚更効きません」

ランプランサス「あぁ、もうクソうざい!」

ショタ団長(な、何で何で、ここでも怖い喧嘩みたいに……)

ショタ団長(もうやだよ……何で行った先でこんな事ばかり起きるの……?)ジワッ グスッ

ショタ団長(僕が何も自分で決められないから? だからみんな喧嘩ばっかりするの?)

ショタ団長(ごめんなさいごめんなさい、誰か助けて――――)

食堂での言い争いも可愛い物と感じさせる程のギスギスとした剣呑な雰囲気が続き、流石に精神的に堪え切れなくなる。

身体の震えは止まらず、今まで寸前で堪えていた涙も、最後の防波堤が決壊して溢れ出しそうになる。

そこへ……

???「押し通ぉぉぉるっ!!」

???「豪快にいっくよぉ!」

小柄な二人の人物が、間に強引に割って入った。

その際、二人で団長を取り囲むようにして、ランプランサスとディプラデニアに対峙する。

ランプランサス「な、何!? 誰!?」

あまりの強引さに思わず数歩後ずさりするランプランサス。ディプラデニアも突然の乱入者に少し目を丸くしている。

デルフィニウム「ふっふっふっ、何だかんだと聞かれたら!」

ラナンキュラス「答えてあげるが何とやらだね!」

デルフィニウム「我が名は第六天魔王デルフィニウム! そして!」

ラナンキュラス「第六天魔王! ラナンキュラスだぁ!」

デルフィニウム「ラナァァァァァン! 打ち合わせと違う! 魔王はデルちゃんで、参謀がラナンのはずでしょ!」

ラナンキュラス「冷静に考えると、デルフィばっかりずるいよ!」

ラナンキュラス「私だって魔王役がやりたい! やらせろぉ!」

デルフィニウム「なぬ!? ラナンでも冷静になる時があるとは……こいつぁ予想外だぜ……」

デルフィニウム「だがしかぁぁぁぁぁぁし! 魔王役は渡さぬぁぁぁぁぁい!」

ラナンキュラス「なんとぉぉぉ!」

ランプランサス「…………くっそくだらないよぉぉぉ~~! 何なの~~~!?」

ディプラデニア「というか、第六天魔王の意味を分かっているのでしょうか……」

ショタ団長(な、何なの何なの!?)

今まで会った花騎士とは明らかに違うテンションの、嵐のような騒がしさの乱入者に狼狽える団長。

その様子を見て、ラナンキュラスはそっと前かがみになり、団長へと耳打ちする。

ラナンキュラス「大丈夫、私達に任せて」ニコッ

そして、そのまま団長の幼い小さな手のひらへと、手を伸ばした。

ショタ団長「う……うん」

信用していいのか分からなかったが、この二人が来てからピリピリとした雰囲気が嘘のように吹き飛んだ事、そしてラナンキュラスの微笑みを見て、そっとその手を握った。

デルフィニウム「こうなればみんなに聞いてみよう! デルちゃんとラナン、どちらが魔王に向いてそう?」

ランプランサス「どっちでもいいよぉ!」

ディプラデニア「どちらが魔王に向いているかは正直分からないですが……えっと、ラナンキュラスさん」

ラナンキュラス「ほいほい?」

ディプラデニア「魔王より参謀の方が、頭が良いイメージはありますね」

ラナンキュラス「何と!?」

ディプラデニア「最近の物語では、魔王を参謀が裏で操っていた~なんていうのも目にしますし、参謀もそう悪い物じゃない気がします」

デルフィニウム「な、何だってー!?」

ラナンキュラス「成る程! それなら私、参謀でも良いかな!」

デルフィニウム「いや、デルちゃんが参謀をやろう!」ドン!

ラナンキュラス「なんだとぉ!!?」

デルフィニウム「頭が良いイメージがあるなら、ラナンよりこのデルちゃんこそ適任! 何より!」

デルフィニウム「ラナンなんかに操られてたまるかぁぁぁぁい!」

ラナンキュラス「言ったなデルフィィ! 表でろぉい!」

ランプランサス「あぁ、頭痛くなってくる……」

デルフィニウム「こうなれば、もう一回配役について考えてくるね!」

デルフィニウム「それでは、デルフィニウムちゃんと!」

ラナンキュラス「ラナンキュラスちゃんでした! ばいばい!」

ランプランサス「ちょっと待って。何でさりげなく団長を連れていこうとしてるの?」

ランプランサスの言葉で、さりげなさを装って団長の手を引いて去ろうとしていたラナンキュラスとデルフィニウムの動きがぴくっと止まる。

デルフィニウム「……相棒!」

ラナンキュラス「応とも! 団長、背中にしっかり捕まってね!」

ショタ団長「えう!? う、うん!」

ラナンキュラスはしゃがみ、背中に団長を背負う。

デルフィニウム「逃げるんだよぉぉぉぉ!!」ダッ!

ラナンキュラス「豪快にすすめぇ~~~!」ダッ!

ランプランサス「あっ、ちょっと!?」

ランプランサス「あんなバカ達と一緒にいたら団長までバカになっちゃうよ!」

ランプランサス「ディプラデニアさん、追うよ! あなた走ったりするのは得意でしょ!」

ディプラデニア(確かにあの二人は少しおバカっぽい所はありますが……団長さんに悪い事をするタイプの人達ではないですね)

ディプラデニア(団長さんも幼くなった分、相手の年齢も低い子の方が話しやすいかもですし、この人に任せるよりかはよっぽど安心でしょう)

ディプラデニア(……それに、何か追ったら嫌な予感もしますし)

ディプラデニア「何で私も追う前程になってるんですか」

ランプランサス「はぁ!?」

ディプラデニア「私はあなたが団長を連れていくのが可哀想だから止めていただけです。あの二人ならまだ安心できます」

ランプランサス「むっかつくぅ! 結局最後の最後まで邪魔ばっかり!」

ランプランサス「良いもん! 私一人でだって追いかけるよ!」ダッ!

ディプラデニアを残し、ランプランサスは急いで二人を追いかけ、廊下を走る。

子供を背負って走っているからか、タイムラグはあったが大きく離されてはいない。

ラナンキュラス「わぁぁ、やっぱり追ってくるぅー!」タッタッタッ

デルフィニウム「う、狼狽えるなラナァン! 走り抜けるのだ! 風のように!」タッタッタッ

ショタ団長「ぼ、僕邪魔じゃない……? 降ろしても……」

ラナンキュラス「だいじょーぶ! ラナンキュラスちゃんは強い!」

ラナンキュラス「団長、今は私達を信じてしっかり掴まっててね!」

ショタ団長「う、うん……」

デルフィニウム「修羅場からの迷える子羊救済もお手の物! 安心と信頼の頼れるあなたの味方! デルラナお助け業者だよ!」

ラナンキュラス「ちょっとぉ! それを言うならラナデルお助け業者でしょ!」

ショタ団長「あはは……」

ショタ団長(何か……このお姉ちゃんたちの雰囲気はまだ安心できる……)

この二人も口論はし合っているが、友人同士のお互いを信頼しあっての悪ふざけ、じゃれ合いのような空気を感じ、ピリピリとした一触即発のような空気の中にいた団長にとっては、少し心地よく感じた。

デルフィニウム「……ラナン!」

ラナンキュラス「分かってらい!」

そして、二人はそれぞれ、廊下の左右の端へと移動、そのまま駆け抜ける。

ランプランサス「何あの動き……」

ラナンキュラス「えっへへ、鬼さんこちら!」

デルフィニウム「ふっふっふ! この完璧なるデルちゃん達には追いつけないかな?」

ランプランサス「な……むーかーつーくー!」

煽りをド直球に受けたランプランサスは追いつこうとスピードをあげる。

それとほぼ同時に、カチッと小さな音と共に、床が押されて下にずれるような感覚がランプランサスは感じた。

ランプランサス「え?」

嫌な予感がしたランプランサスは、今走り抜けた廊下を振り返ろうとする。

それと同時に真上の天井がカコン!と開き、仕込んであったバケツが真っ逆さまになって、中に入っていた液体がランプランサスや廊下に降り注いだ!

ランプランサス「きゃあああああああああ!!!???」ツルン

慌てたランプランサスはその液体に滑り、ぬるぬるの廊下へバシャ!と音を立てて倒れ込む。

ランプランサス「ひゅぃい!? なにこれ!? ロ、ローションか何か!?」

ランプランサスは立ちあがって走り去る二人を追おうとするが、液体に足を取られて上手く立ちあがれない。

そうこうしている内に、いつの間にかラナンキュラス達は廊下の突き当りのT字になっている曲がり角の先へと消えてしまった。

ランプランサス「あぁもう! こんなクッソくだらなくて面倒くさい事するなんて、もしかしてあのウサギ達も関わってるんじゃないの!?」

細工をされ、開いた天井からブラブラと吊る下がっているバケツを忌々しげに見つめ、ランプランサスは壁を使って強引に立ちあがる。

ランプランサス「ま、まだ諦めてないんだから……! 団長を取り戻さないと……!」

ゆっくりと壁伝いに歩き、何度か転びながらも、何とか抜け出したランプランサスは、廊下の曲がり角へと急ぐ。

やっとたどり着き、曲がり角の先へと行くと、並ぶドアの一つから、一人の花騎士が出てくるのが見えた。

ピンクの和装に身を包み、どことなくオドオドとした雰囲気を漂わせている。

ランプランサスには、その花騎士に見覚えがあった。

ランプランサス「シャクヤクさん!」

シャクヤク「ひゃ、ひゃい!?」

突然名前を呼ばれ驚いたシャクヤクは、ビクッと体を震わせランプランサスの方へと向く。

ランプランサス「ちょうどよかった! ねぇ、こっちに子供を連れたバカそうな二人が走ってこなかった!?」

シャクヤク「えぅ……あの……バカとかそういう言葉はあんまり……」

ランプランサス「いいから教えて!」

シャクヤク「は、はいぃ! で、でも私さっきまで部屋にいて……」

シャクヤク「そういえば、廊下をバタバタ走り抜ける音は部屋から聞こえたような……」

ランプランサス「分かった! ありがとうね!」

シャクヤクの言葉を聞くと、ランプランサスは急いで廊下の更に先へと向かう。

シャクヤク「き……緊張……しましたぁ」

ランプランサスが見えなくなったところで、シャクヤクはホッと胸を撫で下ろした。

キィ……

???「ナイスうさ! 同志シャクヤク、安全を確認出来たら早く部屋に戻るうさ」コソッ

シャクヤク「わ、分かりました!」

背後でわずかにドアが開き、中から聞こえてきた声に促され、シャクヤクは再び部屋の中へと戻っていった……

今回はここまで
続きを書き溜めてから、また近いうちに投下しますね。

次はルート分岐まで行きます。

スレタイを微妙に間違えてたり、安価は2回と言っておきながら、2週目のルート決定含めると3回だったりとAFNをやらかしてるのがどうしても気になるので、一度スレを立て直させてください。
立て直したら再度最初から投下しますが、採用されたルート安価はそのままです。

本当に申しわけありません……。
スレを立て直したら、ここで告知してから依頼をしてきます。

立て直しました
【花騎士】ナズナ「団長さまが小さくなってしまいました!」
【花騎士】ナズナ「団長さまが小さくなってしまいました!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487853027/)

最初からですが、内容は誤字修正以外全く変わりません。
そのまま、続きも投下する予定です。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
それでは、こちらの方は依頼を出してきます。

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