今日は、バレンタイン…。
早朝の朝もやに包まれた校庭、まだ肌寒い部室に乙女が二人…。
絵里「そういう貴女のチョコは…フッ。海未、貴女の穂乃果への気持ちは、そんな貧相なチョコに収まってしまうの?」
二人は、お互い同じ相手のために用意した、どこまでも対称的な二様のチョコ…漫画の世界にしかありえないような巨大なそれと、一見 一口サイズのチョコがいくつか入っただけの変哲のない包装紙…を抱え、終わらないパーティ(喧嘩)に興じていた…。
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海未「全く、分かっていませんね。本質というものが。異国かぶれのエセ風情には、手間に込められた真心というものを理解できないから…」
等身大サイズのハラショウを模した塊を一瞥し、嘲りの笑みを浮かべながら海未は、
海未「愛の大きさと物量を混同する。そのチョコは下劣極まりない」
そう言って吐き捨てる。
絵里「独り善がりも大概にしなさい?海未。貴女の言葉に穂乃果への本当の愛なんて、微塵も感じられないわね。実際にこの二つのチョコを貰って、穂乃果が本当に喜ぶのはどちらかしら?このサプライズ満点の私のチョコと…」
流し目で一瞬だけ海未の小さなチョコに目をやり、哀れみと勝利の確信を思わせる不敵な表情、絵里は言う。
絵里「手間と愛情がこもってるらしいそのチロルチョコ。海未、貴女のその気持ちは、ただ穂乃果に認めてもらいたいという浅ましい劣情に過ぎない。そんなチョコを穂乃果に渡すべきではないわ」
海未「ハッ。言いますね、この人は。渡すべきでないのは貴女のチョコに他ならない。そんな、自分の姿を模したエセ芸術品からこそ、独り善がりな愛情の悪臭が漂ってきているのが分かりませんか?」
絵里「ハラショー。まったく貴女の理解力には敬服するわ。これ以上の歓談は不毛ね。いいからさっさとそのチョコを…」
海未「だから、絵里は黙ってその粗大ごみを…」
絵里・海未「「わたしにくれればいいのよ・いいのです!!!」」
愛憎 謀略 渦巻く吉日。
今日は、セント・バレンタイン。
おわり
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