サーバル「かばんちゃんがセルリアンに襲われたー!?」【けものフレンズ】 (41)

かばん「だ、大丈夫だよ。そんな大した傷じゃないから……」

ボス「緊急事態発生 緊急事態発生 至急医療班ニ連絡……連絡……連……」

サーバル「血も出てる! 動いちゃダメだよー、いま舐めて治してあげるからね!」ペロペロ

かばん「痛っ……!」

サーバル「あっ、痛かった? ごめんね」

かばん「ううん、平気……でもまさかこんな所でセルリアンと出くわすなんて」

サーバル「もー! 私がちょっと遠くまで様子を見に行ってるスキに……かばんちゃんが食べられなくてよかったよー!」

かばん「それより、図書館の方はどうだった?」

サーバル「うーん、相変わらずセルリアンたちがいっぱいいて、中には入れそうにないよ」

かばん「そっかあ。最近また増えてきたもんね」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486517416

かばん「ラッキーさん、ボクたちいつになったら図書館に入れるんでしょうか?」

ボス「ぴぴぴぴ」

サーバル「ボスも少し様子がおかしいね?」

かばん「さっき一緒にやられちゃったのかな」

サーバル「そういえば、襲ってきたセルリアンはどうしたの?」

かばん「それは走って逃げて……そうだ、ここに留まっていたらまた襲われるかもしれない。移動しないと……痛っ」

サーバル「無理して動いちゃダメだよ! ほら、私がおぶってあげるから」

かばん「あ、ありがとう……」

サーバル「ほらボスも」ヒョイ

ボス「き、ん急、かい、線、かかか患、者、はは搬そそそ送送送」

サーバル「何しゃべってるか分からないよー!」

かばん「バスの所はまだ危ないから、一旦べつの安全な場所に逃げよう!」

サーバル「おっけー!」

――しんりんちほーのはずれ


サーバル「……よいしょ。ここなら安全だね!」

かばん「サーバルちゃん、ありがとう」

サーバル「傷はまだ痛む?」

かばん「うん……血は止まったみたいだけど」

サーバル「なんだか青くなってる。いたそー……他に怪我してる所はない?」

かばん「たぶん、足だけだと思う。けどこのままじゃ歩けないや」

サーバル「じゃあ治るまで、ここにしばらく留まった方がいいね」

かばん「うん、そうだね……でもサーバルちゃんは別にボクと一緒にここに居なくても……」

サーバル「えーっ、なんでー? 私はかばんちゃんと一緒がいいよー!」

かばん「サ、サーバルちゃんがそう言うなら……」

サーバル「それにしても、お腹すいてきたねー。ちょっとジャパリまん取ってくる!」

かばん「あ、ボクの分も……」

サーバル「もちろんだよー!」

かばん「それと、良かったら丈夫な木の枝とツルもいくつか持ってきてくれないかな?」

サーバル「いいけど、何に使うのー?」

かばん「怪我した足をなるべく動かさないように、固定しようと思って」

サーバル「なるほど、すごーい! じゃあ行ってくるねー!」

かばん「ばいばーい……」

かばん(……セルリアンに見つからないように、隠れてなきゃ)

サーバル「……ただいまー! あれ? かばんちゃんが消えた!?」

かばん「いるよ、ここだよー」

サーバル「うわ、葉っぱだらけ! そんな所で何してたのー?」

かばん「セルリアンに見つからないように、葉っぱを集めてその中に隠れてたんだ」

サーバル「なにそれ、楽しそう! 私もやるー!」キャッキャ

ばさばさ

かばん「もう、それじゃ土だらけになっちゃうよ……あと、木の枝とツルは持ってきてくれた?」

サーバル「そうそう、忘れる所だった! はい、これ」

かばん「ありがとう。えーっと、これを足に巻いて、ギュッと……いたたたた!」

サーバル「だ、大丈夫!? 痛いの? どこ? 舐めてあげる?」

かばん「ふぅ……な、なんとか大丈夫。ちょっと強めに縛っただけだから……」

サーバル「そうすれば治る?」

かばん「どうだろう……治ればいいなあ」

サーバル「明日になれば治るよ、きっと! フレンズのみんなは大抵ジャパリまん食べて眠ればすぐに元気になるもん!」

かばん「……そうだね」

サーバル「さ、取ってきたジャパリまん食べよっか!」

かばん「うん!」

ちょっと仮眠とってから書き溜めして続き投下したいと思います
一応、アニメ5話までの情報を元に考えてます
公式との矛盾や食い違いはご容赦ください
あと、このSSはアライさん不在で進行する予定です


――それから数日後


サーバル「……まだ治らないみたいだね」

かばん「うん……もうあまり痛みは感じないんだけど」

サーバル「歩ける?」

かばん「よいしょ……あうっ! う~ん、やっぱりダメかなあ。少しくらいなら歩けるけど、ずっと体を支え続けるのは無理かも」

サーバル「これじゃ狩りごっこもできないよー」

かばん「あはは、そうだね……」


ばさっ ばさっ


かばん「あっ、トキさん!」

トキ「こんにちは。調子はどう?」

かばん「足の方は相変わらずダメみたいで……」

トキ「そう。体調が良くなる紅茶、あんまり効かないのかしら」

サーバル「私はその紅茶のおかげで毎日元気だよー!」

トキ「あなたのために運んで来てるわけじゃないのよ……まあいいわ。はい、これ今日の分」

かばん「すみません、毎日……」

トキ「気にしないで。代わりに歌の練習に付き合ってくれるんでしょう?」

サーバル「歌の練習は紅茶を飲み終わってからにしようよ!」

トキ「それもそうね」

かばん「いただきます」ズゾゾ……

サーバル「私もいただきまーす!」ゴクゴク アチー!

かばん「ふぅ、温かい飲み物はいいですね。体がポカポカします」

トキ「その不思議な入れ物のおかげね」

サーバル「この筒にお湯を入れておけば冷たくならないなんて、すごいよねー!」

トキ「温かい飲み物は喉にも良いそうよ」

かばん「トキさんも一杯いかがですか?」

トキ「私はいいわ。カフェで散々飲んでるもの」

サーバル「ねーねー、強くなれる紅茶ってないのかなー?」

トキ「あなたには頭が良くなる紅茶の方がいいと思うわ」

サーバル「そんなすごい紅茶があるのー!?」

トキ「あったらの話よ……今度アルパカに聞いてみるわ」

サーバル「やったー!」


…………。

トキ「……今日も歌の練習に付き合ってくれてありがとね。それじゃまた明日」

ばさばさっ

かばん「ばいばーい」

かばん(……トキさんの歌、どんどん素敵になっていくなぁ。それに比べてボクは……)

かばん(足、いつになったら治るのかな……)

かばん「…………」モジモジ

サーバル「――……かばんちゃーん……トキとの練習は終わったー? ……かばんちゃん?」

かばん「えっ? あ、うん。トキさんはもう行ったよ」

サーバル「どしたの、ボーッとして。はい、ジャパリまん取ってきたよ」

かばん「ありがとう」

サーバル「私は歌はさっぱりだからねー。トキには悪いけど……ん?」

かばん「?」

サーバル「あーっ!!」

かばん「わっ、びっくりした。急に大声出してどうしたの?」

サーバル「これ何!? この地面に描いてあるの、何これ!? 私そっくり!」

かばん「え? ああ、これはさっき何となく手持ち無沙汰だったから……」

サーバル「かばんちゃんが描いたの?! すごーい!」

かばん「そ、そうかなあ……えへへ」

サーバル「あっ、それじゃこっちはボスだ!」

かばん「うん。うまく描けてるかな?」

サーバル「とっても上手だよ! やっぱりかばんちゃんは手先が器用で、不思議なことを思いつけるフレンズなんだね!」

かばん「あ、ありがとう……でも絵が描けるだけじゃセルリアンには勝てないし、役に立たないよ」

サーバル「そんなことないよ! 私、こういうの見ると、とーっても楽しい気持ちになれるよ! 役に立ってるよ!」

かばん「……うん、そうだね。サーバルちゃんの言う通りかも」

サーバル「よーし、私も何か描いてみよー! この枝を使って……えい! う~ん、上手くできないよー」

かばん「サーバルちゃんは爪を使えばいいんじゃない?」

サーバル「そっか! それじゃさっそく……みゃみゃみゃみゃあ!」ガシガシ

かばん(……それ、穴を掘ってるだけじゃ……まあ楽しそうだからいっか)


――さらに数週間後


ボス「………………」

サーバル「ボス、最近全然元気がないね」

かばん「少し前から、話しかけても反応してくれなくなっちゃった」

サーバル「冬眠、なのかなあ?」ツンツン

かばん「眠ってるなら起こさない方がいいんじゃない?」

サーバル「それもそうだね」

かばん「そういえば、あのバスはまだ図書館の近くに置きっぱなし?」

サーバル「うん。たまに様子を見に行くんだけど、あの辺りはまだセルリアンもうようよしてるし……」

かばん「そっかあ……」

サーバル「ほかのフレンズたちに助けを呼んで、バスを引っ張ってくるのはどうかな?」

かばん「でも、あれはラッキーさんじゃないと動かせないから、ここへ持ってきても意味がないんじゃないかな」

サーバル「ボスが目を覚ましてくれないと私たち何も出来ないってことかあ~」

かばん「ここで暮らすようになってだいぶ経つよね……いつになったら図書館に入れるようになるんだろう」

サーバル「大丈夫だよ! きっと足も良くなるし、ボスもいつか冬眠から覚めるから、それまでの辛抱だよ」


――数ヵ月後


カワウソ「やっほー。遊びにきたよー」

サーバル「カワウソ! いらっしゃーい」

カワウソ「ね、ね。かばん、今日もお絵かき教えて!」

かばん「ええ、いいですよ」

カワウソ「やったー!」

サーバル「ジャガーは相変わらず見回り?」

カワウソ「真面目だよねー」

かばん「ジャガーさんたちがしんりんちほーに引っ越して来てから、この辺りもだいぶ過ごしやすくなってきましたね」

サーバル「うんうん。セルリアンも少しずつ数が減ってるような気がするよ!」

カワウソ「そういえばこの前、じゃんぐるちほーのフレンズを数人見かけたなあ。気候が色々変わったりして、ちほーの差がなくなったのかな?」

サーバル「私は元々さばんなちほーの動物だけど、こっちも過ごしやすいよ」

かばん「色んなフレンズたちと交流できて、楽しくなりそうですね」

カワウソ「確かにー! ジャパリパークも、もっともーっと面白くなるといいなー!」


オーイ……

サーバル「ん? 何か聞こえる……」

ジャガー「――……おーい! みんなー!」

サーバル「あっ、ジャガーだ! おーい!」

カワウソ「あんなに急いで、どうしたんだろう?」

ジャガー「はぁ、はぁ……た、大変だみんな!」

かばん「何かあったんですか?」

ジャガー「と……図書館が……!!」

サーバル「――――燃えて失くなっちゃった!?」

かばん「そんな……!?」

ジャガー「真っ黒焦げで、建物全部が崩れ落ちていた。もうあそこには何もない……セルリアンも居なくなっていたよ」

カワウソ「で、でも昨日までは何ともなかったじゃん!」

ジャガー「一晩であっという間さ……おそらく風向きの関係で、私たちには火の気配もニオイも感じ取れなかったんだろう」

かばん「…………」

ジャガー「見に行って確かめてみるかい?」

かばん「……いえ、大丈夫です」

サーバル「そんなー! 図書館がなくなっちゃったら、どうやってかばんちゃんの正体を調べたらいいのー!?」

カワウソ「ジャパリパークにはあの図書館以外に調べものができる場所なんてないよねー」

ジャガー「うーん……一応、何か手がかりになりそうなものが残っているかどうか、探してみようか?」

かばん「みんな、ありがとう。でも……もういいよ」

サーバル「もういいって、どういうこと?」

かばん「自分の正体が分からなくても、もういいんだ。あきらめるよ」

サーバル「えーっ、せっかくここまで頑張ってきたのにー?」

かばん「確かに少し残念だけど……でも本当の事を言うと、実はそこまで悲しくないんだ。だってボクが何者かなんて、もう自分で分かってるから」

サーバル「そうだったのー!?」ガビーン

カワウソ「それで、それで? かばんは何ていうフレンズなの? 気になるー!」

かばん「ボクはボクだよ。みんなと一緒にここで暮らして、歌を歌ったり、絵を描いたりして遊ぶ、みんなの友達なんだ」

サーバル「?」

かばん「ボクには出来ない事がたくさんあるけど、出来る事もたくさんある。つまり、それがボクっていう動物なんじゃないかな?」

カワウソ「上手に絵を描けること、とか?」

かばん「上手かどうかは分からないけど、絵を描いてみんなを楽しませることはできるよ」

ジャガー「確かに、かばんは他の動物よりもずっとかしこいな」

サーバル「歌も上手だし、手先も器用だ! かばんちゃんはすごいよー!」

かばん「えへへ、面と向かって言われるとちょっと恥ずかしいけど……そういうわけで、もう自分の正体を調べなくてもいいかなって。満足しちゃったんだ」

ジャガー「……まあ、かばんがそう言うなら、私はそれでも構わないが」

サーバル「セルリアンがいなくなったって事は、避難してたフレンズたちも戻って来るのかなあ?」

ジャガー「そうだな。他のちほーに移住したフレンズにも一応連絡してみよう。もしかしたら戻ってくる子がいるかもしれない」

かばん「しんりんちほーもまた賑やかになりますね」

ジャガー「……ところで、かばんとサーバルの二人はここに残るのか?」

かばん「えっ? ……そうだなあ、どうしよう」

サーバル「私はここにずっと居たいなあ」

カワウソ「えーなんでー? さばんなちほーには戻りたくないのー?」

サーバル「さばんなちほーも良いけど、しんりんちほーだって楽しいもん! それに、かばんちゃんが作ってくれた住みかはとーっても居心地が良いよ!」

ジャガー「ビーバーにも負けないくらい立派な家だもんな」

サーバル「それに、かばんちゃんを一人で残しておくなんて出来ないよ! まだ足も治ってないのに」

かばん「そんな、ボクの事なんて気にしないでいいのに……」

サーバル「気にするよ! それに足が治って走れるようになったら、また狩りごっこしたいもん!」

かばん「う、うん……そうだね。狩りごっこ、私もしたいな。サーバルちゃんと」

サーバル「そうそう! だから頑張って治そう! きっともうすぐ歩けるようになるよ!」

ジャガー「……二人とも話がついたみたいだな。それじゃ、私は他のフレンズたちにも図書館の件について話してくるよ」

カワウソ「あっ、ジャガーもう行くの? 私も行くー!」

サーバル「絵はいいの?」

カワウソ「絵はまた今度ねー! ばいばーい!」

かばん「あっ、うん。ばいばーい……行っちゃった」

サーバル「なんだかスナネコみたいに移り気な子だね、カワウソって」

かばん「そうだね。……あの二人、また遊びに来てくれるかな?」

サーバル「もちろんだよ! それからトキも、カバも、ツチノコも、これからはみんな遊びに来てくれるよ、きっと!」

かばん「そんなにいっぺんに来られたら大変だなあ」

サーバル「あはは、みんなかばんちゃんの事が好きだからねー!」

かばん「……ありがとう、サーバルちゃん。ボク、頑張って足を治すよ」

サーバル「うんうん、その調子その調子! ……あっ、そういえばジャパリまん補給しなくちゃいけないんだった! ごめん、ちょっと行ってくるねー!」

かばん「行ってらっしゃーい」

かばん「…………」

かばん(……ふぅ……せめてもう片方の足も悪くならなければなあ……ボクももっと色んなフレンズと色んな事して遊べたのに)

かばん(最近、腰から下の感覚がどんどん薄れてきてる)

かばん(……本当に、治るのかなあ……)


――1年後


かばん「……そうですか、博士の行方はまだ……」

アルパカ「そう気を落とさないでぇ~、探せばいつか見つかるよぉ」

サーバル「あっ、アルパカ! 来てたんだね!」

アルパカ「来てたよぉ。んもう、たまにはカフェに遊びに来てよにぇ!」

サーバル「うん、遊びに行くよ! でもほら、かばんちゃんが……」

かばん「あっ、ボクのことは気にしないで……」

アルパカ「サーバルが背負って行けばいいじゃないのぉ、トキだってぇ私くらいなら運んでくれるしぃ」

サーバル「それもそうだね! 今度かばんちゃんと一緒に行くよ」

かばん「じゃ、じゃあその時はよろしくお願いします……」

サーバル「それより、アルパカは何しにここへ?」

アルパカ「紅茶の差し入れだよぉ、ついでにカフェ特性のジャパリまんもねぇ」

サーバル「わーい! ありがとう!」

アルパカ「それと例の博士についてぇ、お客さんに色々聞いてみてはいるんだけどぉね~、全然なの、全然」

サーバル「そっかあ……でも協力してくれて嬉しいよ! あのカフェ、すっかり有名で色んな鳥さんが来るもんね!」

アルパカ「えへへ~そうでもないよぉ」テレテレ

かばん「あの、また何か分かったらお願いします」

アルパカ「分かったよぉ、それじゃあ元気でにぇ。体、早く動けるようになると良いねぇ」

トキー! モドルヨー!
ワカッタワー

かばん「ばいばーい……」

サーバル「ね、かばんちゃん。博士って本当に居るのかなー?」

かばん「アルパカさんは図書館で会ったって言ってたし、嘘ってことはないと思うよ」

サーバル「でも図書館がセルリアンに占領された時、博士がどこにいたかなんて誰も知らないし……もしかしたらあの時、食べられてたのかも」

かばん「それは……そうかもしれないけど」

サーバル「……ま、そんな事考えても仕方ないか! 今は気長に知らせを待つしかないよね!」

かばん「うん……あ、そういえばサーバルちゃん」

サーバル「なに?」

かばん「今度のお絵かき会なんだけど、インドゾウさんとアフリカゾウさんも参加したいって」

サーバル「ひえー! そんなにおっきなフレンズ、家に入りきらないよー!」

かばん「それで、一つ思いついたことがあるんだけど……」

サーバル「おっ、いつもの奴だね! 聞いてあげるよ! ……うんうん、それで……? …………」


――――――

――――

――


――数十年後


サーバル「――……かばんちゃん……かばんちゃーん……おーい」

かばん「…………サー……バル……ちゃん……?」

サーバル「起きた!」

ツチノコ「あ! やーっと目を覚ましたな! せっかく俺が珍しく遊びに来てやったってのによ」

かばん「……ツチノコ……さん。お久しぶり……です」

ツチノコ「あーあー、無理して起き上がろうとすんな。そのまま横になってていいから」

かばん「すみ……ません……」

サーバル「起きたばっかりで口が上手く動かないんだね。お水、いる?」

かばん「…………」コクリ

ゴク……ゴク……

ツチノコ「それにしても痩っせたなあ。前に会ったの何年前だ? その時はまだこんなに寝てばかりじゃなかったろ」

かばん「……なんだか、ここ最近……起きてても、すごく……眠たくなって……きちゃって」

サーバル「起きてしばらくすれば元気になるんだけど、またすぐ眠っちゃうんだ。かばんちゃんって冬眠する動物だったのかな?」

ツチノコ「…………さあな」

かばん「……ふぅ。だいぶ意識がはっきりしてきました」

ツチノコ「そりゃ良かった。お前いつもどれくらい眠ってるんだ?」

かばん「えっと……」

サーバル「今回は、4日間くらいかな! その前は3日だったから、一日ずつ延びてるね」

かばん「だそうです」

ツチノコ「……そうか。ちゃんと飯は食ってんのか?」

かばん「起きてる間はちゃんと食べられますけど、やっぱり眠ってる間はどうしようもなくて……」グゥゥゥ←腹の虫

かばん「…………////」

サーバル「はい、ジャパリまん! ゆっくり食べてね」

かばん「あ、ありがとうサーバルちゃん……いただきます」モシャモシャ

ツチノコ「……両手も使えないのか」

サーバル「うん。だから私がこうやって食べさせてあげるんだ……どう? まだ食べられる?」

かばん「……大丈夫、もういいよ」

かばん「腕は一応動かせるんですけど、指先にはもう力が入らなくて、物を持つことができないんです」

ツチノコ「ふぅん……博士はまだ見つかってないのか? お前の体の不調を治してくれるかもしれないっていう……」

かばん「……まだ、ですね。でも、いつかきっと見つかるって信じてます」

サーバル「うん! 私も信じてるよ!」

ツチノコ「そうか……まあそれはいい。ところで、家の外に大量にいるフレンズたちはなんだ? さっきからジロジロ見られてる気がするんだが……」

サーバル「ああ、そうだった! ごめんツチノコ、話はまた後にしよう!」

ツチノコ「お? お、おう……?」

かばん「ボクの夢の話を聞きに、フレンズたちが集まってくるんです」

ツチノコ「夢の話……?」

サーバル「さ、かばんちゃん。私の肩に手を回して……よいしょ、っと」

かばん「ツチノコさんも、どうですか? お気に召すかどうかは分かりませんけど……」

ツチノコ「いや、俺はべつに……」

ざわざわ

サーバル「みんなー! ほら、ちゃんと並んでー! そこ押さないー! 静かにー! ほらツチノコも早く早く!」

ツチノコ「…………」

かばん「あ、あの……みなさん、おはようございます。えっと、ボク、今回は4日間ほど眠っていたんですが……」

ツチノコ(……異様な光景だった)

かばん「たぶん、前回の続きになってます。ただ、今日初めて夢の話を聞くという方のために簡単なあらすじを話しておくと……」

ツチノコ(しんりんちほーの大きな樹の根元に、あいつが座るための場所が作られていた。大勢のフレンズに取り囲まれて、そこはまるで世界の中心みたいだった)

かばん「……昔々、とある世界にニンゲンという動物がいました」

ツチノコ(あいつがサーバルに支えられてそこへ座ると、フレンズたちは一斉に黙り、固唾をのんでそれを見守った)

かばん「ニンゲンは他の動物たちと仲良く暮らしながら子供を生み、少しずつ数を増やしていきました」

ツチノコ(ざわめいていた森も木の葉を揺らすのを止め、静かにあいつの声に耳を傾けた。周りのものすべてが、あいつの言葉を待った)

かばん「ニンゲンは群れを作り、秩序を作りました。そしてある日、その群れのリーダーがこんなことを考え始めたのです」

ツチノコ(……俺たちは不思議と、その言葉に、物語に惹かれた。ただの奇妙な夢の話にすぎないのに、それらは俺の心を捉えて離さなかった)

かばん「もっと縄張りを大きくしたい、他の群れも自分のものにしたい……そしてニンゲンたちは、互いに争いました」


かばん「あるニンゲンは不老不死を望みました」

かばん「あるニンゲンは、愛する他のニンゲンのために、自分の命を捨てました」

かばん「他の動物と支えあった生きることを選んだニンゲンや、動物を食べる以外の目的で殺してしまうニンゲンもいました」

かばん「……そして前回は、ニンゲンがクニという群れを作り、それを別のクニが滅ぼした物語をお話ししましたね」

かばん「今日は、滅ぼされたクニの、ある子供のお話です。その子は名前を……と言って…………――――」


ツチノコ「………………」


――――――

――――

――


――それから数ヶ月後


サーバル「…………かばんちゃん、目を覚まさないね」

トキ「私が歌ったら起きるかしら」

サーバル「それは……目覚めが悪くなるから止めた方がいいかも」

カバ「今、何日目なの?」

サーバル「えっと……もう二週間くらい経つかなあ?」

カバ「その前は?」

サーバル「確か、一週間くらいだったと思う」

ジャガー「さすがに長いな」

カワウソ「そんなに長い間何も食べなかったらお腹が空いて死んじゃうよ!」

サーバル「そうだよね。だから次に起きた時にお腹いっぱい食べられるように、ジャパリまんをたくさん取ってきてるんだ!」

カバ「一度にそんなに食べられるわけありませんわ……」

サーバル「でもでも、きっと喜ぶと思うよ!」

トキ「……早く起きるといいわね」

カワウソ「夢の話の続き、聞きたいなぁー! まだかなー、まだかなー」

ジャガー「そういえば聞いた? さばんなちほーで何年も続いてたサンドスターの噴火なんだけど……」

トキ「それ、知ってる。この前、とうとう完全に止まったらしいじゃない」

サーバル「そうなのー!? あれだけどっかんどっかんサンドスターを生み出してたのにねー」

カバ「とはいえ年々弱まってたみたいですし、止まるのも時間の問題だったんでしょうね」

ジャガー「セルリアンもどんどん少なくなってきているし、もうすぐジャパリパークも平和になるな」

サーバル「そしたらかばんちゃんと一緒に心おきなく狩りごっこができるね! う~っ、楽しみだなぁー!」

カワウソ「夢の話も聞きたいしー、一緒にお絵かきもしたーい! 私もかばんと遊ぶの、すっごーく楽しみだよー!」

トキ「私が作った合唱団のコンサートも、聞かせてあげたいわ」

サーバル「それと、博士も探さないとね!」

ジャガー「ああ。かばんが起きた時の事を考えて、他のフレンズにこれまでの夢の話もしてやらなくちゃいけないしな」

カバ「みんな絵の描き方を忘れないように、お絵かき会も続けていきたいですわね」

サーバル「よーし、やることはたくさんあるぞー! がんばろー!」

カワウソ「おーっ!」


――――――

――――

――


――……数百年後。


あなたは気が付くと、薄明るい林の中に立っている。

ざわめく木々の隙間を吹き抜ける風に乗って、生命の息遣いが微かに聞こえてくる。

ふと林の奥を見やると、木陰の中を楽しそうに駆け回っているサーバルがいる。

一本の大きな樹のそばに、緑に覆われて朽ち果てた家が見える。

サーバルはその手に小さな筒を抱え、家の中へ入っていく。


あなたは中の様子を見ようと、おそるおそる近づいてみる。

サーバルが去って行った後、今にも崩れてきそうな家の入り口から、そっと顔を覗かせる。

ひっそりと静まり返った部屋に、生き物の気配はない。


薄暗い家のかげに、錆び付いた乗り物が打ち捨てられている。

ときおり差し込む木漏れ日がにぶい光沢をあなたの目に反射させる。

その横に、耳としっぽのついた小さな動物のおもちゃが転がっている。



遠くから、動物たちの賑やかな歌声が聞こえてくる。





おわり

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