前の
瑞樹「過去へ還る道」
瑞樹「過去へ還る道」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479207891/)
寺生まれのPさんとか、ふじともとか、よしのんとか、茄子さんとか、ひじりんとか、歌鈴ちゃんとか、みくにゃんとか、神様ちひろさんとかがでます
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486384458
歌鈴「おはようございますっ!」
朋「あ、歌鈴ちゃんおはよー」
みく「おっはー」
歌鈴「……お二人だけですか?」
みく「うん。ほかのみんなはレッスンに行ってるよ」
朋「何か用事でもあったの?」
歌鈴「あ、いえ、そういうわけじゃ――」
ちひろ「――あら、歌鈴ちゃん」
歌鈴「ひゃあっ!?」
ちひろ「……驚かせちゃいましたか?」
歌鈴「あっ、いえ、別に……ごっ、ごめんなさい」
歌鈴「……」
歌鈴「……そ、その……おはようございます」
ちひろ「ええ、おはようございます」
ちひろ「……どこかでプロデューサーさん見かけませんでしたか?」
歌鈴「いえ……」
ちひろ「……そうですか」
ちひろ「んー……どこで何してるんでしょう」
朋「たぶんいつもの人助けだと思うわよ」
ちひろ「そうですか……対価ももらわず人を助けるなんて相変わらず変な人ですよね」
歌鈴「……」
ちひろ「うーん……次のお仕事のことでちょっと話したいことがあったんですけど……それなら待つしかないですねー」
ちひろ「ありがとうございます、歌鈴ちゃん」
歌鈴「いえ……」
歌鈴「……」
みく「……ね、歌鈴チャン。あいつと何かあったの?」
歌鈴「へっ!?」
朋「うわ、直球ね」
みく「だって気になったんだもん」
みく「この前まであいつとそれなりに仲良くしてたでしょ?」
みく「でも急になんかよそよそしくなって……ちょっと気になっちゃった」
歌鈴「……」
みく「にゃふふ、何があったのかみくに教えてみにゃ?」
みく「それであいつの弱みを握って……今までの恨みを……にゃふふ」
朋「……たぶんちひろさんにそういうのは聞かないと思うわ」
歌鈴「いえ……別に、何もないですよ!」
みく「ん、そうなの?」
歌鈴「はい! 別にちひろさんが何をしたってわけでも――」
歌鈴「わけでも――」
みく「……ふーん」
朋「……」
朋「……何かあったなら相談にのるわよ?」
歌鈴「いえ……大丈夫です」
歌鈴「……もう、過ぎちゃったことですし、今からどうしようも……」
歌鈴「これは、私が……」
朋「……」
みく「……」
歌鈴「……あっ」
歌鈴「……」
歌鈴「あ、あははっ!」
歌鈴「わっ、私、ちょっと飲み物取ってきますね! 二人も何か飲みますか?」
みく「みくはミルクがいいにゃ!」
朋「あ、じゃああたし冷たいお茶!」
歌鈴「わかりましたっ!」
朋「……ねぇ、絶対なにかあったわよね、これ」
みく「間違いなくあったにゃ……教えてくれないみたいだけど」
朋「んー……あんな感じになったのは……」
朋「……芳乃ちゃんと聖ちゃんとお仕事に行った後くらいから……だったよね?」
みく「確かねー」
みく「……じゃ、そのときに何かあったんじゃない?」
朋「そうかも……」
朋「……芳乃ちゃんたちに聞いてみた方がいいかな」
みく「歌鈴ちゃんは教えてくれないだろうしにゃ」
歌鈴「おっ、おまたせしましたっ!」
朋「あ、ありがと!」
歌鈴「ふぅ……なんとかこぼさないでこれました……」
みく「成長してるにゃ」
歌鈴「私だっていつまでもドジなままじゃいりゃれっいらっいられませんっ!」
朋「あはは。まだまだ日は通そうね」
歌鈴「あうぅ……」
歌鈴「それで……えーっと……みくちゃんが牛乳で、朋ちゃんがお茶ですね」
みく「ありがとにゃ!」
みく「んくっ……ぷはーっ!」
歌鈴「ふふっ」
モバP「ただいま戻りました……っと」
朋「おかえりー」
歌鈴「あっ、お兄さん! ちひろさんがお仕事の話があるって言ってましたよ」
モバP「ん、わかった。ありがとう」
歌鈴「いえいえっ!」
朋「……ねぇ、ふと思ったんだけどさ」
朋「歌鈴ちゃんも、あいつみたいにいろんなところに人助けしに行ったりしてるの?」
歌鈴「あ、いえ……この辺で起きたことはほとんどお兄さんが解決しますし……」
歌鈴「それに、アイドルのレッスンとかもありますから……あまり……」
朋「あー……そりゃそうよね」
みく「……むしろPチャンは何でプロデューサー業しながらあんなことできてるのにゃ」
朋「寺生まれだからじゃない?」
歌鈴「寺生まれってすごいですねぇ……」
みく「それで納得できちゃうのもすごいにゃあ……」
歌鈴「あっ、でも近くでそういうことが起こってたらなるべくがんばってます!」
朋「そうなの?」
歌鈴「はいっ!」
歌鈴「実践を積むこともいいことだってお兄さんも言ってましたし……」
歌鈴「それに、やっぱりそういうのは見逃せないですから」
歌鈴「私の力で助けられるのなら、助けたいです」
朋「ふふ、そっか」
朋「それじゃ、もしかしたら歌鈴ちゃんも神社生まれのDさんとしてどこかでうわさになってるかもね。あいつみたいに」
歌鈴「あっ、いえ、私別に名乗ってるわけじゃないですし、そんなことはないと思います!」
みく「そうなの?」
みく「てっきり『私は神社生まれのDでしゅっ!』って言って名乗ってるんだと思ってたにゃ」
歌鈴「そっ、そんなの恥ずかしくてできないですっ!」
歌鈴「というより、なんで想像の中の私も噛んでるんでしゅかっ!」
みく「そりゃ今みたいによく噛んでるからにゃ」
歌鈴「あうぅ……」
歌鈴「……想像の中でくらいもっとカッコよくなりたいのに……」
朋「でも名乗らないってことはさ、逆にさすらいの除霊師としてうわさになってるかもね」
歌鈴「そ、そうなんでしょうか?」
みく「うんうん」
みく「だって『名乗るほどのものじゃありましぇんっ!』って感じで去ってるってことでしょ?」
歌鈴「だから噛ませないでくださいっ!」
みく「にゃふふ」
歌鈴「うぅ……」
朋「ちなみに、ほんとにそんな感じで去ってるの?」
歌鈴「……」
歌鈴「……ま、まあ……はい」
朋「わっ、そうなんだ! へぇ……」
みく「なんかかっこいいにゃ……」
歌鈴「あうぅ……だ、だって名乗るのも……ほら、私もアイドルですから、ちょっと……」
朋「あー、それもそっか」
みく「除霊系アイドルとして有名になるかもしれないけどにゃ」
歌鈴「そういうのはあまり……」
歌鈴「有名になるとしても、ちゃんとアイドルとして有名になりたいですっ」
朋「……まあそうよね」
歌鈴「ところで……本当に、私のことうわさになってると思いますか?」
朋「調べてみよっか?」
歌鈴「いっ、いい、いいですっ!」
歌鈴「恥ずかしいですし……」
朋「ふふっ」
みく「にゃふふ……ちょっと調べてみよっと」
歌鈴「わっ、やめっ、やめてくださいっ!」
モバP「3人とも、ちょっといいか?」
朋「ん、どしたの?」
モバP「後で仕事の話をするから覚えといてくれ」
みく「今じゃないの?」
モバP「ああ、みんなを集めてしたいんだ」
歌鈴「じゃあ、芳乃ちゃんたちが戻ってきてからってことですね」
モバP「ああ」
モバP「よろしくな」
朋「はーい」
歌鈴「わかりました!」
みく「わかったにゃ」
モバP「三人が帰ってきてくれたら伝えといてくれ。じゃあ、また後で」
朋「うん」
みく「……みんなを集めてお仕事の話ってことは、みんなで一緒のお仕事ってことかな?」
歌鈴「きっと、そうですっ!」
歌鈴「ふふっ……ちょっと楽しみかも」
みく「ねー?」
朋「そうね……どんなお仕事なのかしら?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
モバP「みんな集まったか?」
芳乃「それでは点呼しましょー」
芳乃「いちー」
茄子「に♪」
聖「さん……」
歌鈴「よん!」
みく「ごー」
朋「ろく」
朋「……うん、全員そろったみたい」
モバP「よし」
ちひろ「それでは説明を始めますねー」
歌鈴「……」
ちひろ「えーっと、今度のお仕事なんですけど、山奥の村でのイベントです」
みく「……山奥?」
ちひろ「はい♪」
ちひろ「えーっと……ここですね」
聖「わ……本当に山奥……」
朋「ふーん……あれ?」
朋「ここ……何か見覚えが……」
芳乃「こちらはー……」
芳乃「……」
芳乃「……わたくしが、以前に住んでいたところでしてー」
朋「!」
モバP「ああ、あの村か……!」
聖「芳乃お姉ちゃんが昔住んでたって……」
聖「あの、神様になろうとしてた……?」
芳乃「うむー」
芳乃「おそらく、間違いないかと……」
モバP「……マジかー」
朋「えぇ……なんでここの仕事とってきたのよ」
モバP「いや……とってきたのは」
ちひろ「……私ですね」
ちひろ「お誘いがあって……ちょうどみなさん空いてましたし……みなさんのイベントってのも見てみたかったので」
ちひろ(それに――)
茄子「……確かにみんなでお仕事することってほとんどないですねー」
歌鈴「そうですね……そういう意味ではちょっとやってみたいですけど……」
歌鈴「でも……」
モバP「……俺が気づいて止めるべきだったな……すまん」
芳乃「……」
みく「ん、なんかあったの?」
芳乃「まあ、いろいろとー」
芳乃「しかしー、ふむー……」
モバP「……請けた仕事をキャンセルするってのは本当はあまりよくないんだが」
モバP「行くのは止めといたほうがいいかもな」
朋「うん……また生贄とかにされちゃたまったもんじゃないし」
みく「えぇ……本当に何があったの……?」
芳乃「長い話になるので、そなたには後で話しますー」
みく「ありがと」
みく「……でもその間みくは話についていけないにゃ……うげー」
芳乃「ふむー……」
モバP「さて……」
モバP「集まってもらって悪いが……今回の仕事はキャンセル――」
芳乃「――いえ、少々お待ちくださいませー」
朋「……芳乃ちゃん?」
芳乃「……すみませぬー。これはわたくしのわがままなのですがー」
芳乃「わたくしは、こちらの仕事を行いたく思いましてー」
朋「!」
芳乃「あの村を離れてしばらく経ちましたがー、今どのような状況なのかを確かめたくー」
芳乃「また、もしもまたわたくしのような者が再度現れているのならと思うとー……」
芳乃「わたくしたちをまたもや贄として呼んでいるのであればー、贄を与えられるべき者がいるということでありー」
モバP「……」
芳乃「……などと、お仕事外の話ではありますがー、わたくしは今一度あの村へと向かいたくー」
芳乃「ゆえに、できたらこの仕事を請けていただければ、とー」
モバP「……」
芳乃「……とはいえ、これはわたくしのわがままでしてー」
芳乃「そなたらが贄とされたのも事実ではありー、もしかしたら危ない目にあうかもしれませぬー……」
芳乃「訪れない方が懸命でしょー」
芳乃「……しかしー」
芳乃「……」
みく「……みくは別にいいよ?」
芳乃「!」
みく「何があったかはよくわかんないけど……でも、所詮人間にやられたんでしょ?」
みく「人間程度に負けるみくじゃないし、変なことがあってもぜんぜん大丈夫にゃ」
芳乃「……みく殿ー」
茄子「ふふっ、そうですねー」
茄子「妖怪のみくちゃんだけじゃなくて、神様のちひろさんもいますし、プロデューサーさんも、歌鈴ちゃんだって!」
茄子「何があったって大丈夫だと思いますー♪」
聖「うん……」
聖「……私達の事務所ってすごいですね」
茄子「ねー♪」
歌鈴「……ちょっと不安ですけど」
歌鈴「でも……うん、芳乃ちゃんが行きたいなら……!」
芳乃「……」
朋「……あははっ、確かに今はプロデューサーと二人のときよりずいぶん安心ね」
モバP「おい」
朋「いや、あんたが頼りなかったわけじゃないわよ?」
朋「でも、あのときよりは大丈夫って感じが強くない?」
モバP「……まあ、そりゃあな」
モバP「あいつもいるし」
ちひろ「ピース♪」
ちひろ「ふふっ、私がいれば大丈夫ですよ」
ちひろ「みなさんには楽しくアイドルをしてほしいですからね、変なことにはさせません♪」
朋「……このメンバーだったらなすすべもなく生贄にされるなんてことないだろうし」
朋「そう考えたら大丈夫かもね」
モバP「まあな……」
芳乃「……ありがとうございますー、みなみなさまー」
モバP「……よし」
モバP「じゃあ、この仕事は請けるってことでいいか?」
朋「うん」
茄子「はーい♪」
聖「うん……!」
歌鈴「はい!」
みく「にゃ」
芳乃「……みなさまがよろしいのなら、ぜひともー」
ちひろ「まあ、もう既に請けてるんですけどね」
モバP「……そうだったな」
ちひろ「ふふっ、みなさんのステージが見れるようで楽しみです♪」
茄子「そうですねー♪」
茄子「みんなでイベント……ふふっ」
みく「みくも久しぶりに暴れられそうで楽しみにゃ!」
朋「別にまだ襲われるって決まったわけじゃないんだから……」
芳乃「うむー、もしかしたら改心しているかもしれませぬー」
みく「えー……」
聖「……そんなに暴れたかったの?」
みく「わりと」
聖「わりと……」
みく「ま、相手がみんなに危害を加えなかったらそれはしないにゃ」
みく「最近ちょっとお肉が恋しいけど……ま、大丈夫にゃ」
歌鈴「お肉って……」
芳乃「たぶん気にしちゃだめなやつでしてー」
歌鈴「……そうですね」
朋「でも……確かに、芳乃ちゃん助けた後のことぜんぜん知らないのよねー……そのまま逃げちゃったし」
朋「今、どうなってるのかしら?」
聖「……お仕事の話をもらったときとか……何か話してたりは……?」
ちひろ「いえ、何も」
ちひろ「普通にお願いされましたね」
聖「そうですか……」
歌鈴「……何も言わないのもおかしい……ですよね?」
茄子「向こうが忘れてるんじゃないですか?」
朋「それはそれでちょっとムカつくわね」
モバP「……あの時見たあそこの住人からして……また新しい神を作ろうとしてたりしてそうなんだがな」
ちひろ「……そうなんですか?」
モバP「ああ。前は俺と朋で助けたんだけどな」
芳乃「助けられましてー」
ちひろ「そうですか……」
ちひろ(山奥の村……神様を作る……)
ちひろ(……瑞樹ちゃんの言ってた村ってきっと――いえ、間違いなく、ですね)
芳乃「急に考え込んで、どうしましてー?」
ちひろ「……なんでもありません♪」
ちひろ(まあ、大丈夫でしょう)
ちひろ(生まれたての神様くらい、なんてことないでしょうし)
モバP「……さて、とりあえず今日の話はこれでおしまいだ」
モバP「当日もよろしくな」
朋「んー」
茄子「はーい♪」
聖「……」コクッ
みく「まかせるにゃ!」
歌鈴「……うん」
芳乃「うむー」
モバP「それじゃ、話は終わりだ。解散」
朋「んー」
茄子「よーっし、みくちゃん。猫語の勉強しましょう?」
みく「……正直茄子チャンはもう教える必要がないくらいマスターしてると思うにゃ」
茄子「そんなことありませんよー♪」
聖「……猫語?」
茄子「はい、猫語です♪」
みく「聖チャンも興味あるー?」
聖「……ちょっと」
みく「にゃふふ、なら教えてやるにゃ」
聖「わくわく……」
歌鈴「あ……わ、私も教えてほしいです!」
みく「んー、歌鈴チャンもー?」
歌鈴「はいっ!」
歌鈴「その……いつか役に立つかもしれませんし……」
みく「オッケー」
みく「……ただし、みんな猫チャンに変なことしたらただじゃおかないからにゃ」
みく「友達だけど……食べるよ?」
歌鈴「そっ、そんなことしません!」
聖「うん……絶対しない……!」
みく「……ま、みんなならそうだよねー」
みく「ふふ、みくはみんなのことは信じてるにゃ」
茄子「ありがとうございます♪」
みく「それじゃレッスンはじめるよー!」
朋(……いいタイミングね)
朋「芳乃ちゃん。ちょっといい?」
芳乃「ふむー、なんでしょー?」
朋「……ちょっとこっち来て」
芳乃「やや、秘め事でしてー?」
朋「隠し事って言ってよ……なんか秘め事だとやなんだけど」
芳乃「ふふー」
芳乃「して、何の話でしょー?」
朋「二人で話したいの……こっちに来てくれる」
芳乃「わかりましてー」
朋「ねぇ、芳乃ちゃん」
芳乃「愛の告白でしてー?」
朋「だから違うわよ!」
朋「そうじゃなくて……歌鈴ちゃんのことなんだけど……」
芳乃「歌鈴殿のー?」
朋「うん」
朋「あのさ……たぶん芳乃ちゃんと聖ちゃんと地方でお仕事した後からだと思うんだけど……」
朋「……なんか……どことなく、ちひろさんとよそよそしくなってない?」
芳乃「……」
朋「あの時、ちひろさんがみんなについてってたと思うんだけど……」
朋「……なんかあったの?」
芳乃「……」
芳乃「それは、わたくしにもわかりませぬー」
朋「!」
芳乃「わたくしも少しばかり気になったのですがー。聞いてもなんでもないと言われー」
芳乃「おそらくはー、歌鈴殿の過去の出来事が関係してると思うのですがー」
朋「そのときって……たしか神様と会ったのよね?」
芳乃「うむー……知っていたのですねー」
朋「聖ちゃんに聞いてね」
芳乃「聖殿に……」
朋「うん……遅くなっちゃったけど私を助けてくれてありがとうって感謝されちゃって」
芳乃「そうでしたかー」
芳乃「聖殿……ふふ」
朋「で、そのときに聞いたのよ……時を司る神様に会ったんでしょ?」
芳乃「うむ、川島瑞樹と名乗る神様にー」
芳乃「みなは彼女のおかげで、知らない自分を知ることができましてー」
芳乃「それは歌鈴殿も例外ではなくー」
朋「……それが原因ってこと?」
芳乃「歌鈴殿が話してくれないため確証は持てませぬがー、おそらくはー」
朋「そっか……」
芳乃「とはいえ、人には話したくないこともたくさんあるものでしょー」
芳乃「無理に問い詰めるのもー……」
朋「んー、そうよね……」
朋「……でも、ちょっと心配だわ」
芳乃「うむー……」
朋「ありがとね、芳乃ちゃん。教えてくれて」
芳乃「いえいえー」
芳乃「……もし、歌鈴殿を心配している人がほかにいるのならばー、その人にも教えませー」
朋「うん、そのつもり。プロデューサーさんと、茄子さんと、みくちゃんと……」
芳乃「全員でしてー」
朋「そりゃそうね、ふふっ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
モバP「さて、あの村までもう少しだ」
茄子「はーい♪」
聖「……山道なのにすごい快適」
歌鈴「そうですね……ぜんぜん揺れないし……」
茄子「ちひろさんの力で少しだけ浮いてますからね、この車」
歌鈴「あ……そうでしたね……」
ちひろ「だって、揺れるの嫌ですから」
ちひろ「ほんとは空を飛んで行きたかったんですけど却下されちゃいましたし」
モバP「そりゃそうだろ」
モバP「わざわざそんな変に目立つことをする必要はない」
ちひろ「見た人の記憶くらい簡単に弄れるんですけどねぇ」
モバP「そんなしょうもない理由で大勢の人間の記憶を弄られてたまるか」
ちひろ「んー……ちょっとくらいいいと思うんですけど」
ちひろ「どうせ忘れるじゃないですか」
みく「いや、空飛ぶ車なんて見たら普通忘れないと思うにゃ」
ちひろ「ふーん……そういうもんですか……」
ちひろ「人間はよくわからないですねー」
みく「……」
歌鈴「忘れる……忘れる、かぁ……」
歌鈴「忘れられたら……楽なのかな……」
茄子「……あっ、歌鈴ちゃん見てください、あそこ!」
茄子「狸です!」
歌鈴「ふぇっ!?」
歌鈴「どっ、どこですか!?」
茄子「嘘です!」
歌鈴「えええぇっ!?」
歌鈴「な、なんで嘘つくんですかっ!?」
茄子「歌鈴ちゃんの反応が見てみたくって♪」
歌鈴「うぅ……期待したのに……」
茄子「うふふっ♪」
歌鈴「うぅ……」
歌鈴「……悔しいからちょっと狸探します」
茄子「あっ、じゃあ私もー」
茄子「見つけたら教えあいっこしましょうね♪」
歌鈴「……今度は嘘つかないでくださいね」
歌鈴「じー……」
茄子「じー……」
芳乃「ほー……」
朋「……芳乃ちゃんも狸探し?」
芳乃「いえー……少しばかり懐かしさをかみ締めておりましてー」
芳乃「……」
朋「あー……芳乃ちゃんにとっては凱旋ライブ……じゃないや、イベントってことになるのかしら」
芳乃「うむー……」
芳乃「ここいらに来るまでは何を感じることもなかったのですがー」
芳乃「やはりわたくしの故郷なのでしょー」
芳乃「どこか心地よさを感じますー」
朋「……そっか」
芳乃「ほー……」
朋「……」
朋「あの村は今……どうなってるのかしらね」
芳乃「どうなってるのでしょー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
モバP「……よし」
モバP「じゃあ、ここからは歩きだ」
ちひろ「木が邪魔なら私がなぎ倒しますよ?」
モバP「生態系を壊すな」
ちひろ「あら、残念」
朋「今度は迷わないようにしなきゃね」
芳乃「その心配はありませぬー」
芳乃「わたくしが道案内をいたしますゆえー」
朋「わっ、ありがとう!」
モバP「そりゃ助かるな」
芳乃「ふふー、おまかせあれー」
芳乃「わたくしのこの力でそなたらを村まで導きましょー」
みく「……道を覚えてるわけじゃないの?」
芳乃「まったくもって覚えておりませぬー」
みく「えぇ……」
芳乃「しかし問題はありませぬー。忘れて、記憶を失くしてしまった道さえも、見事探して見せましょー」
みく「……大丈夫なの?」
朋「絶対大丈夫よ。前も芳乃ちゃんのおかげで帰れたんだし」
みく「あー、そういやそんなこと言ってたにゃ」
みく「……この前みんなの昔の話聞いたけど……みんないろいろ苦労してるんだにゃあ……」
朋「まあねー」
芳乃「しかし、そのような経験があったからこそみなと出会えたというものー」
芳乃「決して負の感情のことばかりではありませぬー」
みく「ふーん……」
朋「それに、みくちゃんだって結構苦労してるでしょ」
みく「お前らのせいでにゃ」
朋「あはは……」
みく「……一歩間違ってたらみく死んじゃってたかもしれないし」
朋「そうねー……初めて会ったときはただの妖怪だったからねみくちゃん」
みく「こっちとしてもただの餌だと思ってたからにゃ。みんなのこと」
みく「まさか返り打ちにあうなんて思ってなかったけど……」
芳乃「わたくしたちは普通の人ではないためー」
みく「ほんと、お前らおかしい奴にゃ」
みく「……でも、そんな奴らとこんな風に友達として話してるなんて……不思議にゃ」
朋「そうね……変なの、ふふっ」
みく「あははっ」
歌鈴「……あの、みくちゃん」
みく「んー? どったの?」
歌鈴「その……みくちゃんは私達のこと、恨んでたりしてないんですか?」
みく「そりゃあ恨んでるにゃ」
歌鈴「!」
みく「みくはずーっと、自由気ままに暮らしてたのにさ。Pチャンに捕まって、歌鈴ちゃんのせいで猫にもなれなくなって」
みく「で、あの神様のせいでみんなに飼われるし、変な契約も結ばれるし……もう本当最悪だったにゃ」
みく「もしみんなと出会ってなかったらみくは今でももっと自由に暮らせてたのかなーって思うと、そりゃちょっとは恨み言もあるよ」
歌鈴「……うぅ」
みく「でも、みく。これでよかったんじゃないかなって最近は思ってるよ?」
歌鈴「えっ……?」
みく「だって、みんなと一緒にいるのも結構楽しいしね。にゃははっ」
歌鈴「!」
みく「最初は頭のおかしい変な奴らとしか思ってなかったけど……今はみんなのこと結構好きだよ?」
みく「そりゃ、猫に戻れなくなったことなんて本当に恨めしいけど……でも、それよりも楽しいからまーいいかなーって」
歌鈴「そうなんだ……」
みく「あっ、でもあいつだけは大っ嫌いにゃ! あのあん畜生な神様だけは許さんにゃ!」
みく「あいつのせいで本当にひどい目にあったし……あいつだけは一生呪うにゃ!」
歌鈴「あはは……」
みく「にゃふふ。未熟でいてくれてありがとね歌鈴ちゃん」
みく「おかげでみくは死ななかったし、楽しく生きてられるにゃ」
歌鈴「あっ、いえいえ……で、いいんでしょうか?」
みく「ふふっ、変な感謝だよねー」
歌鈴「そうですね……ふふっ」
みく「でも、急にどしたの、そんなこと聞いて?」
歌鈴「いえ……」
歌鈴「……ちょっとだけ、気になったんです」
みく「ふーん……」
歌鈴「……」
芳乃「……歌鈴殿ー」
芳乃「なにか、力になれることがあるならばー――」
歌鈴「――ううん、大丈夫です」
芳乃「……そうでしてー」
朋「……」
歌鈴「これは、私が考えなきゃいけないことですから……」
朋「……変に抱え込まないで、いつでも相談していいからね」
歌鈴「うん……ありがとうございます、朋ちゃん」
朋「いえいえ」
歌鈴「……」
朋「……」
茄子「~♪」
聖「~♪」
ちひろ「あら、二人ともご機嫌ですね」
聖「ちょっと楽しくて……ふふ」
聖「自然の中って好き……♪」
茄子「私も結構好きなんですよねー♪」
茄子「昔住んでたところにも似てますし……あっちに行ったら墜落機とかあったりしないでしょうか」
聖「それは無いと思いますけど……」
ちひろ「ふふ……あら、そろそろ抜けそうですねー」
芳乃「うむー、ここを抜ければ到着するでしょー」
モバP「……一応警戒しながら行こう」
朋「あー……そうね。この前と同じなら、多分すぐ襲ってはこないと思うけど」
モバP「だが、いつ襲われるかわからないからな」
みく「わかったにゃ!」
みく「ふっふっふー、みくのこの足がうなるにゃ……!」
歌鈴「私も……うん、大丈夫ですっ」
茄子「私も、幸運オーラ全開でいきますねー♪」
聖「私は……」
聖「……ど、どうしよう……?」
朋「あたしと一緒に後ろの方に隠れてよ?」
芳乃「わたくしもー」
聖「……う、うん」
ちひろ「……みなさん大丈夫みたいですね」
モバP「よし、じゃあ行くぞ」
モバP「……」
モバP「……これは」
朋「何これ……?」
聖「見間違い……じゃ、ないですよね……?」
歌鈴「たぶん……」
芳乃「ふむー……想像だにしませんでしたー」
芳乃「まさか、ここまで村が荒廃しているとはー」
みく「……一応警戒してるけど、誰もいなそうにゃ」
茄子「そうですね……人が隠れられそうな場所もありませんし」
ちひろ「……いえ、あそこにひとつだけありますよ」
朋「……ほんとだ」
モバP「社……だな」
朋「前は芳乃ちゃんのいた、ね」
芳乃「……そなたー」
芳乃「あちらには、誰かいましてー?」
モバP「……もう少し近づいてみないとわかんないな」
ちひろ「では、近づいてみましょう」
ちひろ「入り口で呆けてても何も変わりませんし」
芳乃「うむー」
芳乃「あちらに誰かがおるのならばー、助けねばー」
茄子「んー……せっかくみなさんとお仕事できると思ったんですけど……」
聖「これじゃあ無し……ですよね?」
モバP「まあ、そもそも見せる相手もいないからなー」
モバP「……一応聞くけど、呼ばれたのは本当にここで間違いないんだよな?」
ちひろ「間違いありません」
ちひろ「確かにこの場所で……と」
モバP「そうか……」
歌鈴「も、もしかして……罠とか?」
みく「罠だとしてもわざわざ自分達の村壊す?」
歌鈴「……それもそうですね」
芳乃「なれば、何者かによるー?」
モバP「……だろうな」
モバP「それも、ここまでの破壊ができるやつなんて」
朋「まあ人間じゃないわよね」
みく「うげー……大丈夫かにゃあ……?」
ちひろ「まあ、何がきても私がいるから大丈夫ですよ♪」
朋「……なんかちひろさんと茄子さん似てきたわね」
茄子「あら、そうですか?」
ちひろ「そういうつもりはないんですけど……」
モバP「ついたな」
朋「なんかこの眺め懐かしいわね」
朋「……あんときはあんたと二人だったけど」
モバP「だな」
モバP「……さてと」
芳乃「そなたー、社の中はいかがー?」
モバP「そうだな……人の気配はない」
モバP「……が」
モバP「何かの気配はある」
朋「……人じゃない何かがいるってことよね」
モバP「ああ」
モバP「……歌鈴も感じるか?」
歌鈴「……はい」
歌鈴「人じゃない、何かの気配を……」
芳乃「……」
ちひろ「きっと、神様でしょうね」
芳乃「……やはり、そうでしてー?」
ちひろ「ええ。間違いなく」
ちひろ「裏づけもありますし」
聖「裏づけ……?」
ちひろ「ええ、裏づけ……半信半疑だったけど、確信に変わりました」
ちひろ「さて……どうしますか、開けますか?」
モバP「開けよう」
ちひろ「わかりました」
モバP「何があるかわからん。みんなは少し離れていてくれ」
茄子「わかりました」
歌鈴「お、お兄さんも、気をつけてくださいっ!」
モバP「ああ。ありがとう」
モバP「……すぅ……はぁ」
モバP「……」ギィ
みく「なんかいる……?」
モバP「いや……暗くてわからん」
ちひろ「……うわっ」
朋「どしたの?」
ちひろ「いえ……ちょっと気持ち悪くて」
芳乃「気持ち悪い、とはー?」
ちひろ「……そうですよね。あなたたちにはわかりませんよね」
モバP「……ちょっとライトで照らしてみるな」
モバP「よいしょっ……あぁ、いた」
ちひろ(あの中にいるモノの気持ち悪さを……)
???「……んー……?」
???「だれー?」
モバP「俺はT。後は……」
モバP「……一回外に出て紹介した方がいいな。出れるか?」
???「でれるよー……」
???「……ふわぁ……いっぱいいるー」
茄子「わっ、かわいい女の子ですね♪」
聖「本当……お人形さんみたい……」
朋「ねー、目も綺麗だし……髪もふわっとしてて……」
???「おまえらはー……だれー?」
朋「ん、あたしは朋」
茄子「茄子ですよー」
聖「聖ですっ」
芳乃「芳乃でしてー」
歌鈴「あ、歌鈴ですっ」
みく「みくにゃ」
???「いっぱいでー……ながいー」
朋「……確かに、こっちはいっぱいね」
???「でもおぼえたよー?」
茄子「わっ、すごい♪」
???「えへー……」
こずえ「こずえはねー……こずえっていうのー」
こずえ「かみさまだよー」
聖「神様……?」
こずえ「かみさまー……」
みく「……確かに人ならざるものだったにゃ」
歌鈴「そうですね……でも……」
歌鈴(……ちひろさんと比べると……なんだろう、少し違う感じがする?)
こずえ「おまえはだれだー……?」
ちひろ「……私、ですか?」
こずえ「だれだよー……」
ちひろ「……ちひろです」
こずえ「ちひろー……へー……」
こずえ「ちひろは……こずえとにたかんじがするねー……」
ちひろ「一緒にしないでほしいですね」
みく「ん、神様なら一緒じゃないの?」
ちひろ「ぜんぜん違いますよ」
ちひろ「こんな歪なモノと一緒にしないでほしいです」
朋「歪なモノ……って」
ちひろ「だって、本当に気持ち悪いんですよ」
ちひろ「……人が神になる事例は別に珍しいことじゃありません。方法だっていくらでもありますし」
ちひろ「ただ、そのどれもが長い年月を必要とします」
ちひろ「ただ、この子は違う」
ちひろ「幼い身体に、必要最低限の贄だけを用意して……あとは時間を早めただけ」
ちひろ「本来の時を経ずに……知識を蓄えることも技術を得ることもせず、ただ時だけを早めて……そうしてできたのがこの歪なモノ」
ちひろ「側だけは神様に成りましたけど、中身は欠損ばかりの……歪んだモノ」
ちひろ「確かに人ではなく……神様ではありますけど……でも、私達と同じにしてほしくはありません」
ちひろ「こんな……壊れかけの人形みたいな歪なモノを、神様として見てほしくありません」
ちひろ「……本当に面倒なことをしてくれましたね、瑞樹さんは」
朋「……パッと見だと違いがよくわかんないんだけど」
ちひろ「まあ、人間程度にはわかんないでしょうね」
茄子「じゃあ、みくちゃん、わかりますか?」
みく「んーん、みくもわかんない」
聖「そんな歪って言われても……」
ちひろ「……まあ、わかってもらえるとは思ってませんけどね」
ちひろ「でも本当にそんな感じなんですよ……いくら説明しても実感はわかないと思いますけどね」
芳乃「……ちひろ殿ー」
ちひろ「どうしました、芳乃ちゃん?」
芳乃「この者は、元は人だったのでしてー?」
ちひろ「そうでしょうね……何年時を早めたかはわかりませんけど。もともとは人間だったと思います」
芳乃「ふむー……」
芳乃「……そなたー、年はおいくつー?」
こずえ「んー……?」
こずえ「こずえはねー……おにんぎょうだからー、としなんてないよー」
芳乃「……?」
こずえ「おしえてくれたのー。かみさまはじっとしてー……みんなのねがいをかなえるってー……」
こずえ「おにんぎょうみたいにじっとするんだってー……」
こずえ「だからこずえはおにんぎょうなのー……」
こずえ「おにんぎょうはなんさいでもないのー……」
芳乃「……ほー」
芳乃(わたくしも……あのまま神となっていたらこのようにー……?)
芳乃(……)
こずえ「それとねー……こずえはかがみなのー」
モバP「……鏡?」
こずえ「かがみだよー……えへー」
モバP「……」
こずえ「ふわぁ……それでー、おねがいはー?」
みく「……お願い?」
こずえ「おねがいしにきたんじゃないのー……?」
芳乃「そういうわけではありませぬー」
茄子「そうですねー、たまたま寄っただけですし」
こずえ「えー……しろよー」
こずえ「おねがいしろー……しろよー」
みく「そういわれてもにゃあ……」
聖「すぐに思い浮かぶわけでもないですし……」
朋「それに……神様へのお願いはあまりいい思い出ないしね」
ちひろ「あら」
歌鈴「……」
こずえ「んー……じゃあ、かりんー」
歌鈴「ひゃっ!?」
歌鈴「な、なんですか……?」
こずえ「おまえのねがいをかなえてやろー……」
歌鈴「え、えぇっ!?」
歌鈴「でも……そんな、願いなんて……」
こずえ「いわなくてもだいじょうぶー……」
こずえ「こずえがねー……かがみになってかりんをうつすのー……」
こずえ「そしたらねがいがわかるのー……えへー、すごいだろー」
歌鈴「う、うん……すごいかも……」
歌鈴「でも私、別に――」
こずえ「――じゃあー……んー……」
歌鈴「……はじめちゃった」
みく「神様ってやつは自分勝手じゃないといけないのかにゃ?」
ちひろ「みくちゃんだって、虫が何をしてようと気にしませんよね?」
みく「……みくたちはそれくらいの立場ってことね」
聖「……」
歌鈴「……これって動いちゃだめなんでしょうか?」
朋「さあ……?」
こずえ「むむー……」
歌鈴「うぅ……どうしよう……」
芳乃「……特に邪な願いがないのであれば、受け入れてはー?」
歌鈴「うん、そんな願いがあるわけじゃない……と、おもう、けど……」
歌鈴「……大丈夫、だよね……?」
こずえ「……」
こずえ「わかったー……」
こずえ「かりん、おまえのねがいはー……」
こずえ「ちひろがきえることー」
歌鈴「えっ……!?」
ちひろ「あら……」
こずえ「まかせろー……かりんのねがいは、こずえがかなえるよー」
歌鈴「いっ、いや……ちょっとまっ――!」
こずえ「――むむむー……とぉー……」ゴッ
歌鈴「きゃっ!」
ちひろ「……まあ、ちょうどいいですね」
ちひろ「歪なモノは壊さなきゃいけませんし……ふふ、返り討ちにしてあげます♪」ゴッ
モバP「……みんな、少し離れるぞ!」
みく「うん! あんなんのそばにいたらひとたまりもないにゃ!」
歌鈴「……っ」
朋「歌鈴ちゃん……」
モバP「……とりあえず近くに結界を張っておいた」
モバP「ここにいれば……外にいるよりは安全だろう」
モバP「……俺の力が持つ限り」
朋「……がんばってね」
モバP「ああ。任せろ」
ちひろ「結界なんてなくても大丈夫ですよー♪」
ちひろ「アイドルのみなさんには……あ、あとプロデューサーさんにも怪我ひとつさせませんから、ふふっ♪」
朋「……地獄耳ね」
茄子「集中した方がいいと思いましてー」
ちひろ「ふふっ、心配ありがとうございます♪」
歌鈴「……」
ちひろ「でも、大丈夫ですよー♪」
ちひろ「このくらいの相手すぐに――」
こずえ「おまえをー……けしてやるー……」
ちひろ「――あら。さっきまではこんな力を感じなかったんですけど」
こずえ「こずえはー……かがみだからー……」
こずえ「ちひろをうつせばー……こずえがちひろー」
こずえ「ちひろのちからもー……こずえのちからー……」
ちひろ「ああ、そういうことですか……」
ちひろ「じゃあ、私が今の私を超えればいいんですね♪」
みく「……あいつらバトルマンガみたいなこと言ってるにゃ」
茄子「まあ、バトルマンガみたいなことしてますからねー」
みく「うん……ビームなんてはじめて見た」
モバP「……たぶん、この村が崩壊したのもこずえが原因だな」
芳乃「……とはー?」
モバP「ああいう風に、誰かの願いを叶えていった結果こうなったんだろう」
モバP「誰かが憎いから消してほしいといった願いが積み重なった結果かもしれないし。この村がなくなってほしい……なんて大きな願いですぐになくなったのかもしれない」
モバP「いずれにせよ、こずえが何かの願いを叶え……そして村が崩壊したんだと思う」
モバP「当時を知る人間なんてこずえしかいないから、予想でしかないけどな」
茄子「……自分達で作った神様に自分達が殺されたんですね」
朋「間抜けね」
芳乃「それに付き合わされたこずえ殿はー……」
モバP「……」
朋「……」
歌鈴「……」
聖「か……歌鈴さん……大丈夫……?」
歌鈴「私は……大丈夫ですけど……」
歌鈴「でも、私のせいで……ちひろさんが……」
モバP「……」
芳乃「……私達にできることはここで見守ることだけでしてー?」
朋「そうね……」
芳乃「ふむー……」
芳乃「ちひろ殿がこずえ殿を救ってくれるようー、祈りましょー……」
朋「……」
茄子「……こうして二人の戦いを見てるとインフレに置いてかれちゃったみたいですね」
朋「いや、もともと神様と対等に戦える力なんて持ってないわよ」
茄子「ふふ、それもそうでしたねー♪」
歌鈴「……」
みく「……まあ、あいつならなんとかするにゃ」
みく「あん畜生が負けるビジョンが思い浮かばないし」
朋「同感ね、悔しいけど」
モバP「ああ……そこまで気に病むことはない」
歌鈴「……」
歌鈴「……私」
モバP「ん?」
歌鈴「私、この前……瑞樹さんのおかげで……過去を知ることができました」
歌鈴「……彼女の力で実際に過去の自分を見に行くことができたんです」
歌鈴「私が私じゃなかったとき……ちひろさんが私に降りてた時のことが見れるって聞いてどんなのだろうって……どきどきしながら見に行きました」
歌鈴「……そこでは、ちひろさんが私のお父さんを……」
歌鈴「……」
歌鈴「お父さんはお母さんに会いにいったって……私はちひろさんから聞いてて」
歌鈴「私はそれをそのまま信じてて……」
歌鈴「でも、それが嘘だって……お父さんが本当はもう……この世にいないって、知って」
歌鈴「知っちゃって……」
歌鈴「……ちひろさんをすごく憎みました」
歌鈴「本当にすごく……すっごく……」
歌鈴「いなくなっちゃえばいいのにって……消えちゃえばいいのにって……そんなことも考えました」
歌鈴「だから……」
朋「……こずえちゃんがそれを叶えてくれようとしてるのね」
歌鈴「きっと……」
歌鈴「……」
芳乃「……ちひろ殿の自業自得かとー」
みく「そうにゃ! あいつあんだけ悪行働いてきたんだから、そろそろ清算するときがきただけにゃ!」
みく「みくもこのままあいつがいなくなればせいせいするし……にゃふふ」
歌鈴「……」
歌鈴「……ううん」
歌鈴「違うんです……私」
歌鈴「私は……」
歌鈴「……」
歌鈴「……っ!」ダッ
モバP「歌鈴!?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こずえ「ふわぁー……そろそろこうさんしろー……しろよー」
ちひろ「こっちのセリフですよ」
ちひろ「いい加減あきらめてください」
こずえ「でもー……こずえはねがいをかなえなきゃだめなのー……」
こずえ「だからー……くらえー」
ちひろ「はぁ……だから、いい加減に――」
歌鈴「――待ってください!」バッ
ちひろ「!」
ちひろ「歌鈴ちゃん……!?」
歌鈴「破ぁ!!!」
ちひろ「……っ!」
ちひろ(いけない……歌鈴ちゃんの力じゃあれは打ち消せない……!)
ちひろ(歌鈴ちゃんに当たらないように……私も――!)
こずえ「……あれー?」
歌鈴「大丈夫ですか、ちひろさん!」
ちひろ「……ええ、大丈夫ですけど」
ちひろ「どうしてここに?」
こずえ「なんでじゃまするのー……かりんー……?」
こずえ「ちひろにきえてほしいってー……ねがいじゃないのー……?」
歌鈴「確かにそうなんですけど……でも、それだけじゃないんですっ!」
こずえ「……?」
歌鈴「私っ、ちひろさんのことをすっごく憎みました!」
歌鈴「お父さんがちひろさんに殺されたって聞いて……すっごく憎みました」
歌鈴「本当に……本当に、すっごく!」
ちひろ「そんなこともありましたね」
歌鈴「でも……私、今日まで、たくさんちひろさんに助けられてるんです!」
歌鈴「いっぱい……本当にいっぱい!」
歌鈴「アイドルのお仕事の手伝いだってたくさん……!」
歌鈴「それだけじゃなくって……私の修行の手伝いまでしてくれて……!
歌鈴「だからっ、私……ちひろさんを嫌いになりきれないんです!」
歌鈴「だって、今まで……たくさん優しくしてくれたから!」
歌鈴「憎んでるし、恨んでるし……絶対に許さないって思ってます!」
歌鈴「でもっ……でも……でも、違うんですっ!」
歌鈴「だからって、消えてほしいっていうのは、違うんですっ!」
こずえ「……?」
こずえ「……よくわからないのー」
ちひろ「……本当ですよ」
ちひろ「そんなよくわからない理由で飛び出して来たんですか?」
ちひろ「あのくらいの攻撃、歌鈴ちゃんに助けてもらわなくてもぜんぜん問題なかったんですけど……」
歌鈴「あうぅ……」
歌鈴「でも……このまま、ちひろさんが私の願いのせいで傷つくのは……嫌だったんです」
歌鈴「嫌いです……ちひろさんのこと、大嫌いなんですけど……それは違うと思うんです」
ちひろ「……」
歌鈴「だから……えっと、こずえちゃん!」
歌鈴「その……お願いは中止……キャンセル、キャンセルですっ!」
こずえ「それはむりなのー」
歌鈴「えっ……」
こずえ「こずえはねー……おねがいごとをかなえなきゃいけないのー」
こずえ「だからー、かなえるよー……」
こずえ「かりんのおねがい……かなえるよー」
歌鈴「だっ、だからそれは私のお願いじゃなくって――」
ちひろ「――いくら言っても無駄ですよ。歌鈴ちゃん」
歌鈴「ちひろさん……!」
ちひろ「本人がさっき言ってたように、人形なんです、この子は」
ちひろ「……いえ、機械と言ったほうがいいかもしれません」
ちひろ「止めることのできない……暴走してる機械です」
ちひろ「本人の意思はそこにはありません……ただ『誰かの願いを叶える』ということを実行するだけの……本当に歪なモノ」
歌鈴「じゃあ……どうすることもできないんですか……?」
ちひろ「ええ……ですから歌鈴ちゃん。下がっていてください」
ちひろ「このままだと歌鈴ちゃんも怪我してしまいますから」
歌鈴「でも……ちひろさんは……」
ちひろ「ふふ、私を心配する必要はありませんよ。神ですしこのくらいじゃ死にません」
歌鈴「そうですか……」
ちひろ「アイドルに怪我なんてさせられませんから。終わるまで、後ろで待っててください」
歌鈴「……わかりました」
歌鈴「ごめんなさい……でも――」
ちひろ「――ああ、そうそう。一応いっておきましょうか」
ちひろ「助けてくれてありがとうございます。歌鈴ちゃん」
歌鈴「!」
歌鈴「い、いえいえっ!」
こずえ「おはなしはおわりー……?」
ちひろ「ええ。待っててくれてありがとうございます」
こずえ「かりんのねがいはー……ちひろをけすことだけなのー……」
こずえ「ほかのひとはちがうからー……まつよー」
ちひろ「そうですか」
ちひろ「……さあ、どこからでもどうぞ。かかってきてください♪」
こずえ「いくぞー……おらー」
ちひろ(……まさか、歌鈴ちゃんが私を助けにくるなんて)
ちひろ(アイドル活動を助けるのは、私がアイドルしてるみなさんを見たいから)
ちひろ(歌鈴ちゃんの修行を手伝ったのだって、ちょっとした気まぐれだったのに)
ちひろ(歌鈴ちゃんのことなんかぜんぜん見てないんですけど……)
ちひろ(……考えてることもよくわかりませんし、人間って変な生き物ですね)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
歌鈴「……」
朋「お帰り、歌鈴ちゃん」
歌鈴「た、ただいま……です」
歌鈴「……うぅ、勢いよくでてっただけにちょっと恥ずかしいです」
芳乃「ふふー。そなたの声明もこちらまで聞こえてきましてー」
歌鈴「ひゃっ、き、聞こえてたんですか……!?」
聖「うん……ばっちり……」
茄子「まあ、結構大きな声でしたしねー」
歌鈴「あうぅ……」
朋「ふふっ」
みく「……まあ、気持ちはわからないでもないがにゃ」
歌鈴「みくちゃん……?」
みく「みくだって、あいつのこと嫌いだし、大っ嫌いだし、恨んでるし、憎んでるけど……」
みく「……あいつがペットにするとか言わなかったらこうして一緒にいられてないからにゃ」
みく「当時は呪い殺してやろうかと思ってたけど……今はちょっとだけ感謝してるよ」
みく「確かに目の前で死なれたら忍びないにゃ」
朋「そうね……あたしもちひろさんのこと大っ嫌いだけど、感謝の気持ちが0ってわけじゃないし」
朋「助けに行くかはともかく……ちひろさんが危ないってなったら心配するわ」
朋「そんなもんなのよね、人間って」
歌鈴「うん……」
歌鈴「……ちひろさんはよくわからないっていってましたけど」
朋「まあ、あいつ神様だしね」
みく「あいつみくたちのこと虫と同じようにしか見てないからにゃ」
歌鈴「虫……」
モバP「無事に帰ってこれたようでなによりだ」
歌鈴「あ……お兄さん」
モバP「……歌鈴の気持ちも聞けたしな」
歌鈴「……」
歌鈴「ずっと迷ってたんです……私……ちひろさんを好きな気持ちと嫌いな気持ちの両方があって」
歌鈴「どっちを選んだらいいのかもわからないし……どうやってちひろさんと接していいかわからなくて……」
歌鈴「そんな中、ちひろさんがもしかしたら消えちゃうかもって思ったら……助けなきゃって思って……」
歌鈴「無我夢中で飛び出しちゃって……」
モバP「……歌鈴が出て行ったとき、めちゃくちゃ肝を冷やしたぞ」
歌鈴「あうぅ……ごめんなさい……」
モバP「ちひろさんが助けてくれなきゃどうなってたか……」
歌鈴「えっ、私助けられてたんですか?」
モバP「……気づいてなかったのか?」
歌鈴「その……無我夢中で」
モバP「そうか……」
モバP「……歌鈴の力はまだまだ未熟なものだ」
モバP「あのまま神様の力を受けたら……きっと無事じゃすまなかっただろう」
モバP「だけど、歌鈴が無事なのは、ちひろさんが後ろから助けてくれたからだ」
歌鈴「そうだったんだ……」
歌鈴「ちひろさん……」
モバP「……」
モバP「……好きな気持ちと嫌いな気持ちが混在することは珍しいことじゃない……いいや、むしろ普通のことだ」
モバP「全面肯定だって、全面否定だって難しい……よく知る相手であればあるほどな」
歌鈴「うん……私もわかりました」
歌鈴「……いま、気持ちを言葉に出して……叫んで……思うが侭に動いて……わかったんです」
歌鈴「ああ、こうすればいいんだって」
歌鈴「許せないって気持ちも、好きって気持ちも……どっちか片方じゃなくて、どっちも出せばいいんだって」
歌鈴「どっちだって私の素直な気持ちなんですから」
モバP「……ん、そうか」
モバP「それが歌鈴の答えなんだな」
歌鈴「はいっ」
歌鈴「お兄さん……ううん。皆さん」
歌鈴「その……今までご迷惑をおかけしました!」
朋「……もう大丈夫なの?」
歌鈴「はいっ!」
歌鈴「もう大丈夫です!」
朋「……そっか、ならよかったわ」
聖「……心配してたんだよ?」
芳乃「うむー」
歌鈴「ご、ごめんなさい……」
歌鈴「こういうのって……やっぱり、自分で決着をつけなきゃって思ってたから……」
茄子「確かに、自分の心の話ですからねー」
みく「でもあそこまで大丈夫大丈夫言われると心配するにゃ」
歌鈴「あはは……今度また悩んだときはみんなに相談しますね」
朋「ふふっ、いつでもどうぞ」
歌鈴「はいっ」
歌鈴「……あっ、そうだ!」
歌鈴「みなさん、ちひろさんがこんなこと言ってたんです!」
モバP「暴走した機械のようなもの……か」
朋「こずえちゃんが……よね?」
歌鈴「はい……そう言ってました」
芳乃「……本当に助けることはできないのでしてー?」
歌鈴「どうすることもできないって……ちひろさんはそういってました」
芳乃「……」
芳乃「どうしても、ダメでしてー?」
歌鈴「……ごめんなさい、私にはわかりません……」
芳乃「……そうでしたー、すみませぬー」
芳乃「……」
芳乃「そなたー。どうにもなりませぬかー?」
モバP「……少し考えてる」
芳乃「ふむー……」
芳乃「……もしかしたらわたくしがあのようになっていたかもしれませぬー」
芳乃「なればこそ、彼女を見殺しにはしたくなくー」
芳乃「なにかあれば、とー……」
みく「……神様の力をひっぺがせばいいんじゃないの?」
みく「歌鈴チャンがみくにやったように」
モバP「いや……俺もまだ未熟なんだ。神の力をすべて引き剥がすことはできない」
みく「そっかー……」
モバP「……すまん」
芳乃「いえー……」
朋「……あっ!」
聖「ひゃっ……」
朋「あ、ごめん……脅かしちゃって」
聖「いえ……何か思いついたんですか?」
朋「方法はぜんぜん思いついてないわ」
朋「でも……それを知る方法なら思いついた!」
芳乃「ほー?」
朋「あたしが占えばいいのよ!」
朋「あの子を救う方法を!」
芳乃「おー」
茄子「あっ、そっか……朋ちゃんの占いって絶対に当たるから」
朋「そ。それで出た方法があの子を救う方法よ!」
モバP「なるほどな」
みく「でも、それで方法がなかったって結果が出たら……」
朋「……その時は、本当に何もないってことね」
朋「絶対に当たるから、何をやってもこずえちゃんは助けられないってことになるわ」
芳乃「ふむー……」
朋「ただ、ここで考え込むよりはいいはずよ……プロデューサーもわからないって言うんじゃ、答えが出るかも怪しいもん」
モバP「そうだな……朋に任せた方がいいかもしれない」
朋「だから……占ってもいい?」
みく「いいと思うよ」
茄子「ええ」
聖「……」コクッ
歌鈴「……はい」
モバP「頼む」
芳乃「……」
朋「芳乃ちゃんは?」
芳乃「……」
芳乃「……願わくば、良き方法の見つからんことをー」
朋「ありがとっ」
朋「それじゃ、占うわ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朋「それじゃ……みんなやることはわかった?」
茄子「はい♪」
みく「うー……大丈夫かにゃあ……?」
聖「朋さんの占いだから……絶対大丈夫」
みく「そうだよね……うー、でもちょっと怖いんだけど……」
モバP「大丈夫だ。何かあっても俺と歌鈴が守るから」
歌鈴「う、うん……がんばりましゅっ……がんばりますっ!」
芳乃「……朋殿ー」
朋「ん、何?」
芳乃「占っていただき、ありがとうございましてー」
朋「ふふっ、別にいいわよ、このくらい」
朋「いい結果が出てよかったわ」
芳乃「うむー」
芳乃「それではみなみなさまー、ご協力をー」
朋「よっし……みんな大体の配置につけたわね」
聖「こずえちゃんとちひろさんが……二人だけで戦っててよかった……」
朋「そうね……おかげであたしたちにはほとんど被害来ないし……こうしてバラバラになるのをばれたりもしないしね」
朋「特にみくちゃんと茄子さん」
聖「うん……」
聖「……」
朋「……それじゃ……聖ちゃん。お願い」
聖「うん」
聖「すぅ……」
聖「~♪」
『それじゃ、占いで出た結果教えるわね!』
こずえ「そろそろねむいのー……でもー、おねがいかなえな――
聖「~♪」
朋「こずえちゃーんっ!」
こずえ「――うた……?」
ちひろ(あら……みなさんバラバラになって……)
ちひろ(……何をしてるんでしょう……?)
聖「~♪」
朋「一緒に歌いましょっ!」
こずえ「……でもー、おねがいかなえなきゃー」
朋「そんなの後でいいじゃない!」
朋「ほら、~♪」
聖「~♪」
こずえ「んー……でもー……」
『まずはあたしと聖ちゃんが歌って、こずえちゃんの気をこっちに引き寄せるの』
『あたし……はともかく、聖ちゃんの力があれば少なくとも一瞬は気をそらせるわ』
茄子「よしっ、今です、みくちゃん!」
みく「うん、いっくよーっ!」
みく「……えいっ!」ガシッ
こずえ「ふわぁー……うでつかんでー、どうしたのー……?」
茄子「よいしょっ!」ガシッ
こずえ「わぁー……もうかたほうもー」
ちひろ「……ええと」
ちひろ「私ごと撃てってことですか?」
みく「違うにゃ! やめて!」
茄子「ふふっ、ちょっとだけ待っててください、ちひろさん」
ちひろ「はぁ……」
『で、その気をそらした瞬間にみくちゃんと茄子さんがこずえちゃんの両腕をつかんで動きをおさえるの』
『茄子さんの幸運もあるし、たぶん足止めはできるはずよ……ちょっとだけでも』
こずえ「うぅー……やめろー……やめろよー……」
モバP「いくぞ歌鈴!」
歌鈴「はいっ!」
モバP「破ぁ!!!」
歌鈴「破ぁ!!!」
こずえ「ふわぁー……?」
みく「……っ」
茄子「……っ」
こずえ「……あれー……?」
こずえ「あたまー……くらくらするよー……?」
こずえ「うぅ……」
みく「ひー……ちょっと怖かったにゃ」
茄子「そうですねー……初めて『破ぁ!!!』ってされたときを思い出しちゃいました」
『茄子さんたちの足止めが成功したら、その隙に歌鈴ちゃんとプロデューサーが同時に「破ぁ!!!」ってやって』
『神様の力を全部ひっぺがすことはできなくても弱めることはできるはずよ』
『……で、力が弱まったら次は芳乃ちゃん』
芳乃「……」スタスタ
芳乃「こずえ殿ー」
こずえ「芳乃ー? なにー?」
芳乃「……そなたを助けましょー」
芳乃「このような場所にとらわれずー……自由で広い世界へと歩き出せるようー」
『プロデューサーの作ったこのお札をこずえちゃんの頭に貼り付けて』
芳乃「……遅くなってすみませぬー」ペタリ
こずえ「ふわぁー……?」
こずえ「……あれぇー?」
こずえ「力がどんどん抜けてくよー……?」
こずえ「なんでー……なんでだよー……?」
こずえ「ふわぁー……」
みく「……もう離しても大丈夫かにゃ?」
芳乃「いえ、まだ一応お願いしますー」
みく「んー」
朋「どう、できた?」
芳乃「うむ。そなたの占いどおり、しっかりと貼り付けましてー」
聖「あ、ほんと……」
茄子「キョンシーみたいですね」
聖「……ふふっ」
ちひろ「……お疲れ様です、みなさん」
『でね……最後の仕上げはちひろさんよ』
ちひろ「別に助けてもらわなくてもなんとかなったんですけどね」
みく「なんかあいつの言葉がただのツンデレみたく見えてきたにゃ」
モバP「さて……こずえなんだが……」
モバP「なあ、ちひろ」
ちひろ「はい?」
モバP「お前の力でこいつを歪でない普通の神様にすることってできないか?」
ちひろ「え、嫌ですよ」
『普通に頼んでも拒否されちゃうのよ』
モバP「……嫌ってことはできないことはないんだな」
ちひろ「まあ……できないことはありませんけど……でもすっごく疲れるんですよ?」
ちひろ「だから嫌です」
『だからねあいつの大好きな言葉をこっちが使ってやるのよ』
『対価って言葉』
モバP「いいじゃないか」
モバP「俺達がちひろを助けた……その借りを返すようなもんだと思って」
モバP「……いや、ちひろ風に言うならこうだな」
モバP「ちひろを助けた対価にこずえを助けてやってくれ」
ちひろ「……助けてほしいとはいってませんよ?」
モバP「苦戦してたようだったからな」
ちひろ「別に苦戦もしていませんでしたけど」
モバP「そうか……ずいぶん長引いて苦戦していたように見えたが」
ちひろ「……」
モバP「……頼む。こずえを歪なものじゃなく普通の神様にしてやってくれ」
芳乃「わたくしからもー、お願いしますー」
歌鈴「私もっ、お願いしますっ!」
朋「お願いっ!」
聖「……お願いします」
茄子「お願いします」
みく「……お願い、にゃ」
ちひろ「……はぁ」
ちひろ「まさか、自分たちから勝手に動いて対価を要求してくるとは思いませんでしたよ」
ちひろ「私だってそんなことしたことはないのに……」
モバP「その代わり自分勝手な対価を押し付けてくるがな」
ちひろ「少し形が変わってるだけですよ」
ちひろ「……まあいいでしょう。さっき歌鈴ちゃんにも助けられましたし」
芳乃「本当でしてー?」
ちひろ「ええ。少しばかり時間はかかりますけど」
歌鈴「わぁっ! ありがとうございますっ!」
ちひろ「ふふっ、気まぐれですよ、気まぐれ」
『そうしたら、あいつはこずえちゃんを助けてくれるわ』
茄子「……全部あたりましたねー」
朋「ほんとにね」
朋「わかってても怖いわ」
茄子「自分の力なのに……」
朋「それでもよ……茄子さんだって自分の幸運が怖いときってあるでしょ?」
茄子「最近はまったくありませんね」
朋「……そうね。茄子さんはそういう人よね」
茄子「うふふっ♪」
ちひろ「それじゃ、この子を普通の神様にしますので、少し離れててください……茄子ちゃんとみくちゃんも」
茄子「はーい」
みく「んー」
みく「はぁ……怖かったにゃあ……」
聖「お疲れさま……」
ちひろ「それじゃあ、こずえちゃん」
こずえ「ふわぁ……なにー、ちひろー?」
こずえ「きえてくれるのー……?」
ちひろ「いえ、私は消えませんよ」
ちひろ「すこーしへんな気分になるかもしれませんが……我慢してくださいね」
こずえ「……?」
ちひろ「では」ポン
こずえ「……あたまなでなでするのー……?」
ちひろ「いいえ、このまま――」
こずえ「……ぁ」
こずえ「わぁ……ふわぁぁー――」
こずえ「――」
ちひろ「――ふぅ、終わりました」
こずえ「――」
芳乃「……こずえ殿が動かないのですがー」
ちひろ「もう少ししたら動きますよ……そんな疑いの目を向けないでください」
芳乃「ふむー……」
ちひろ「はぁ……疲れたぁ……」
モバP「……どうやって普通の神様にしたか聞いていいか?」
ちひろ「ああ……簡単に言うと、一度初期化したんです」
モバP「初期化……?」
ちひろ「はい。今のこずえちゃんは変なものを色々インプットしてますから」
ちひろ「歪なモノをちゃんとした形に戻すより、一度まっさらにしてから改めて作り直す方が簡単ですしね」
ちひろ「なので、持ってた記憶以外のすべてをリセットしたんですよ……初めて神様になった時と同じになるように」
ちひろ「で、神として欠損してた部分に私の力を入れて補わせたんです……普通の神様と同じになるように」
ちひろ「最後に記憶を戻して……後はなじませるだけです」
ちひろ「私の力と記憶がこずえちゃんになじむのに少し時間がかかりますが……すぐ終わりますよ」
モバP「そういうもんなのか……」
ちひろ「そういうものです」
ちひろ「わたしは 門外漢なので結構時間がかかりましたが……それこそ瑞樹さんだったら一瞬でやったでしょうね」
モバP「……時を司る神様か」
ちひろ「ええ」
ちひろ「……こずえちゃんを神様にしたときもその辺のフォローちゃんとしてくれればこんなことにはならなかったんですけどね」
ちひろ(はぁ……本当に面倒なことを……これも何回考えたかわかりませんね)
ちひろ(……今度あったら絶対に嫌がらせしてやります)
歌鈴「あのっ、ちひろさん!」
ちひろ「あら、どうしました。歌鈴ちゃん?」
歌鈴「その……」
歌鈴「今までごめんなさい!」
ちひろ「……?」
歌鈴「私……その、ちひろさんとどう接したらいいかわからなくなって……変な風になっちゃって……」
歌鈴「だから、ごめんなさい!」
ちひろ「ああ、そのくらいなら別にかまいませんよ」
ちひろ「人間がどういう風に動いたところで特に興味もありませんし」
歌鈴「……」
ちひろ「でも、歌鈴ちゃんがアイドルをまっすぐできないんじゃないかって不安はしてましたが……」
ちひろ「……でも、もう大丈夫そうですね」
歌鈴「はいっ!」
歌鈴「気持ちの整理もついたので、もう大丈夫です!」
歌鈴「ちひろさんのことは絶対に許せませんけど、もう普通に接することができると思いますっ!」
ちひろ「そうですか……ならよかったです、ふふっ」
歌鈴「ふふっ」
歌鈴「ちひろさん、これからもよろしくお願いしますねっ!」
ちひろ「ええこちらこそ。アイドルとして輝く歌鈴ちゃんを楽しみにしてますね♪」
こずえ「――」
こずえ「――ふわぁ……?」
聖「あっ……こずえちゃんが動きました……!」
芳乃「おー。大丈夫でしてー、こずえ殿ー?」
こずえ「……?」
こずえ「よしのー」
芳乃「うむ、芳乃でしてー」
こずえ「あれー……こずえはどうしたのー……?」
芳乃「そなたは少しばかり寝ていましてー……今目が覚めたところでしてー」
こずえ「そっかー……」
こずえ「……あー、ちひろー」
こずえ「けさなきゃー……」
歌鈴「あっ、いえ、もういいんです。大丈夫です!」
こずえ「そうー?」
こずえ「じゃあやめるぅー……」
歌鈴「ほっ……」
モバP「……確かに『願いを絶対叶えなければいけない』なんてことにはなってないようだな」
ちひろ「そうインプットされたものを消しましたから」
ちひろ「自分はお人形だ……なんて思うことももうないでしょう」
ちひろ「鏡の方は神としての特有の力なので消すことはできませんでしたが」
モバP「そうか……」
こずえ「ふわぁ……なんかへんなかんじー」
こずえ「なんかー……すっきりー……しゃっきりー……えへー」
ちひろ「もうお人形じゃなくなりましたからね」
こずえ「そうなのー……?」
ちひろ「ええ。もうこずえちゃんは自由です」
こずえ「じゆうー……ふわぁー……」
芳乃「……」
芳乃「……そなたは帰る家はありましてー?」
こずえ「いえー?」
こずえ「こずえのいえはここだよー?」
聖「……社ですね」
茄子「神様の住まいとしては正しいですねー」
こずえ「こずえはねー……だれかのおねがいをかなえなきゃなんだってー」
こずえ「だからここでまってたのー……おねがいするひとー」
こずえ「ねむりながらー、まってたのー」
芳乃「……」
芳乃「ねーねー、そなたー」
芳乃「またわたくしのわがままなのですがー」
モバP「いや、みなまで言わなくてもいい」
モバP「きっとみんな同じ気持ちだ」
モバP「こずえ」
こずえ「なにー……?」
モバP「こずえはもう誰かのお願いを叶える必要はない」
こずえ「そうなのー……?」
モバP「ああ。ここでずっと誰かを待ち続けなくてもいいんだ」
こずえ「ふわぁ……」
こずえ「じゃあー……こずえはー、どうしようー……?」
モバP「こずえさえよければ、俺達についてこないか?」
こずえ「おひっこしー……?」
モバP「そうだな……引越しだ」
モバP「俺達のアイドル事務所に」
こずえ「あいどるー……? じむしょー……?」
こずえ「なにそれー……?」
モバP「……説明が難しいな」
朋「あれよ。踊って歌う人がいっぱいいるのよ」
こずえ「へぇー……こずえー、うたはすきだよー……?」
こずえ「ほらー……~♪」
茄子「ふふっ、上手ですね♪」
こずえ「えへへー……」
モバP「それで……どうする?」
こずえ「……よくわかんないけどー……たのしそうだから、おひっこしするぅー」
モバP「ん、そうか」
聖「こずえちゃんも私達の仲間ですね……ふふ」
こずえ「なかまー?」
芳乃「うむー。仲間でしてー」
こずえ「なかまー……えへー」
モバP「よし、決まりだな」
モバP「じゃ、帰るか」
ちひろ「そうですね……さすがに私も少し休憩したいです」
みく「みくもー」
茄子「……みんなでするお仕事はまた別の機会ですねー」
聖「うん……」
朋「でも、ま、いいんじゃない?」
朋「お仕事はできなかったけど……歌鈴ちゃんの悩みも解決したみたいだし、こずえちゃんも助けられたし!」
歌鈴「そうですね……今日普通にお仕事があったら、まだ少し引きずってたかもしれませんし……」
芳乃「うむー……わたくしもー、こずえ殿を助けることができて本当によかったと思いますー」
芳乃「……でも、それはそれとしてみんなでのお仕事はほしくー」
朋「そうね」
歌鈴「うん……」
モバP「……なるべく早く取ってこれるようがんばるよ」
こずえ「ふわぁー……」
こずえ「……こずえー、ねむいのー……」
モバP「ん、そうか」
モバP「眠ければ寝てもいいぞ。背負ってくから」
こずえ「じゃあ寝るのー」
モバP「わかった……じゃあその前に、おぶさってくれ」
こずえ「わかったー……よいしょー……」
モバP「……よし」
モバP「じゃ進むぞ」
こずえ「んー……」
こずえ「……」
こずえ「すー……」
モバP「……寝るのはやいな」
こずえ「すー……」
こずえ「……」
こずえ「……ありがとねー……えへー……」
おしまい
乙
寺生まれのPさんって下記で全部?
茄子「世界で一番幸運な私」
茄子「世界で一番幸運な私」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454938732/)
聖「私の歌を聞いてくれる人」
聖「私の歌を聞いてくれる人」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455549520/)
菜々「体力持つのは一時間」
菜々「体力持つのは一時間」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456162372/)
芳乃「かみさま」
芳乃「かみさま」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1457097186/)
朋「百発百中」
朋「百発百中」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1458071365/)
歌鈴「私の中の神様」
歌鈴「私の中の神様」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459093019/)
小梅「最近あの子がちょっとおかしい……」
小梅「最近あの子がちょっとおかしい……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460255482/)
みく「みくは猫だよ!」
みく「みくは猫だよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462469441/)
泰葉「人形の館」
泰葉「人形の館」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465066298/)
まゆ「一目惚れ」
まゆ「一目惚れ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467820704/)
藍子「ゆっくり止まっていく」
藍子「ゆっくり止まっていく」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474813680/)
瑞樹「過去へ還る道」
瑞樹「過去へ還る道」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479207891/)
寺生まれのPさんとか、ふじともとか、よしのんとか、茄子さんとか、ひじりんとか、葛藤する歌鈴ちゃんとか、神様ちひろとか、神様こずえちゃんとか書きたかったの混ぜました
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。
最近書いたの
芳乃「最寄り駅はきさらぎ駅でしてー」
芳乃「最寄り駅はきさらぎ駅でしてー」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484573041/)
モバP「朋と初詣」
モバP「朋と初詣」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483545492/)
茄子「年の境目」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483195726
朋「まゆちゃんとクリスマス」
朋「まゆちゃんとクリスマス」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1482669592/)
こちらもよかったらよろしくお願いします
>>60
それで全部です
乙 httpのところにs入れるとダメなのね
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません