暦「ビデオに殺されるなんて…」 (46)


[10月1日 火曜日]


火憐「ねぇねぇお兄ちゃん、ビデオデッキって家にあった?

暦「えっ、なんだ急に」

月火「あるの? ないの!?」

暦「あぁ、物置から引っ張り出せばあるぞ。今も動くかは知らねぇけどな」

火憐「じゃあ用意しといて! 後で使うからさ」

暦「お、おう」

暦(ビデオって…今どき何を見るつもりなんだ?)



その日の夜中、妹たちは自室でビデオを見ていた。

気になった僕は、こっそり部屋の中を覗いてビデオの内容を確認することにしたのだが…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486138828



火憐「…じゃあ、見てみるよ」

月火「うん…」


カチッ
ザザザ


火憐「…」

月火「…」

暦「…?(一体、何のビデオなんだ?)」


妹たちが見ていたビデオの中身は、女子中学生が好んで見るものではないどころか、僕にも意味のわからないものだった。

ビデオの内容を順番に挙げると、

①丸い穴から空を見上げている
②鏡に映る女の人が櫛で髪をとかしている
③新聞紙の文字が紙面を泳ぐ
④大勢の人が苦しみ這いつくばる
⑤布切れを被った男が海辺に立ち、画面左を指差す
⑥瞬きをする人の眼、瞳には「貞」という文字が反転
⑦雑木林の古井戸


火憐「…これでおしまい?」

月火「みたい…だね」

暦「…不気味なビデオだな」


ビデオの映像が終わると、突然、電話が鳴った。

深夜だったこともあって、僕も驚いてしまった。


火憐「ッ!!」ビクッ

月火「なっ、何!?」

暦「おわッ!?」ガチャン

火憐「おっ、お兄ちゃん!?」

月火「まさか、覗き見してたの?」

暦「あたた…バレちまったか」


トゥルルル


火憐「てか、まだ電話鳴ってるし!」

暦「ああ、俺が出るよ」


こんな真夜中に誰だろうと思いながら、僕は電話を取った。



暦「もしもし?」


ツーツーツー


暦「…切れてる」ガチャ


月火「お兄ちゃん、誰からだったの?」

暦「わからない。すぐに切れたよ」

月火「いたずら電話ってこと?」

暦「だろうな。全く、こんな夜中にいたずら電話をかけるような奴の気が知れないな」

火憐「それを言うなら、真夜中に妹の部屋を覗くような兄の気も知れないけどね」

暦「うっ…」

火憐「何で覗き見なんかしてたの?」

暦「そりゃ、いきなりビデオを見るなんて言うから、気になって…」

火憐「…あぁ、あのビデオね」

暦「あれ、一体何のビデオなんだよ? どこから持って来たんだ」

月火「実はね…」


暦「呪いのビデオ?」

月火「今、学校で噂になってるんだよ。そのビデオを見た人間は、一週間後に死ぬんだって」

暦「一週間後に死ぬって…じゃあ僕と月火ちゃんと火憐ちゃんは、一週間後に死ぬのか?」

火憐「んなワケ…ないでしょ」

暦「なんだ、自信がないのかよ」

火憐「…実はさ、ウチの学校を卒業したカップルがそのビデオを見たらしくて、二人とも同じ日に亡くなったって聞いてるんだよね」

暦「えっ…それは、見てから一週間経ったのか?」

火憐「そこまでは知らない。ただの偶然だって思うけど」

月火「それにこのビデオ、何人か学校で見てる人いるんだよね。今日、私たちにも回ってきたから見てみたけど、意味不明な内容だったな~」

暦「それは同感だ」

月火「まあ、一週間後に死ぬなんてそんなこと無いって。本当だったら、もう見た子なんかとっくに死んでるハズだし」

暦「…そうか」


そして、僕たちがビデオを見た翌日、火憐ちゃんの同級生が4人、同じ時間に亡くなった。

[10月2日 水曜日]


この日、火憐ちゃんの同級生が4人、それぞれ場所は違うが同じ時間に亡くなった。

死因は不明、4人とも外傷は無く、とりあえずは病死ということになっている。

違う場所で同時刻に生徒が4人死亡したということで警察も動いているが、殺人事件にしようにも具体的な手掛かりとなるようなものは見つかってない。

強いて4人の共通する点を挙げるとすれば、例の“呪いのビデオ”を一週間前に見ていたということくらいだ。


火憐「…」

月火「…」

暦「…火憐ちゃん、月火ちゃん…」


火憐ちゃんと月火ちゃんが通う栂の木二中は、校内の混乱を避けるため、しばらく休校になったそうだ。

今、栂の木二中の生徒の間では、ビデオの呪いが本物ではないかと囁かれている。

そして、そのビデオは今、僕の家にある。


火憐「…ねぇ、兄ちゃん」

暦「なんだ?」

火憐「私たち…もしかして来週、死ぬのかな」

暦「バカなこと言うな。まだ呪いが本物だってわかった訳じゃない」

火憐「でも4人死んでるんだよ! それに、前のも合わせたら6人、ビデオを見た後に…」

暦「…」


あのビデオを見た人間が全員同時に亡くなっているという事実を突きつけられたら、呪いを信じたくなるのも無理はない。


月火「呪いを解く方法…とか、誰か知ってるんじゃ」

火憐「そうだ…きっと、あのビデオをこの街に持ち込んだ張本人がいるはずだよ。前に学校でも変なおまじないが流行ったでしょ、絶対に関係あるよ! そいつを捕まえて、洗いざらい聞き出してやる!」ガタッ

月火「火憐ちゃん…!」

暦「おい、どこへ行く気だ!?」

火憐「兄ちゃんはついて来なくていいから!」


飛び出して行った火憐ちゃんを追いかけようとしたが、月火ちゃんに止められてしまった。


月火「お兄ちゃん、やめて!」

暦「でもよ…!」

月火「火憐ちゃんの彼氏の瑞鳥くん、5日前にビデオ見ちゃったんだよ…」

暦「え…」

月火「だから…今は放っておいてあげて」

暦「…」


もしも戦場ヶ原がビデオを見たとしたら、僕も火憐ちゃんと同じようにしたかもしれない。

そう思った僕は、火憐ちゃんを追うことをやめた。



あの後、火憐ちゃんは帰ってきたが、僕は何も聞かないことにした。

聞いたところで何も話してくれないだろうし、今はそっとしてあげてやりたかった。

僕は湯船に浸かりながら、今後の行動を考えていた。


暦「…あと6日か」

忍「何時になく神妙な面じゃな、お前様よ」

暦「忍…」

忍「不死の血が流れるお前様と、不死の怪異であるあのちっこい方の妹なら、恐らく死ぬことはないじゃろう…が、儂も呪い殺されるような経験は無いからわからん」

暦「そうか…」

忍「問題は、あのでっかい方の妹じゃな。あやつは不死でも何でもない、ただの人間じゃ。呪いが本物じゃったら、6日後にあやつは死ぬかもしれんな」

暦「わかってる。それに、僕と月火ちゃんは不死だけど、死ぬ可能性が無いわけじゃないだろ」

忍「そうじゃな」


僕たちがビデオを見たのは10月1日、期限は来週の火曜日、8日までだ。

その間までに、死を回避できる方法を探すしかない。




あの後、火憐ちゃんは帰ってきたが、僕は何も聞かないことにした。

聞いたところで何も話してくれないだろうし、今はそっとしてあげてやりたかった。

僕は湯船に浸かりながら、今後の行動を考えていた。


暦「…あと6日か」

忍「何時になく神妙な面じゃな、お前様よ」

暦「忍…」

忍「不死の血が流れるお前様と、不死の怪異であるあのちっこい方の妹なら、恐らく死ぬことはないじゃろう…が、儂も呪い殺されるような経験は無いからわからん」

暦「そうか…」

忍「問題は、あのでっかい方の妹じゃな。あやつは不死でも何でもない、ただの人間じゃ。呪いが本物じゃったら、6日後にあやつは死ぬかもしれんな」

暦「わかってる。それに、僕と月火ちゃんは不死だけど、死ぬ可能性が無いわけじゃないだろ」

忍「そうじゃな」


僕たちがビデオを見たのは10月1日、期限は来週の火曜日、8日までだ。

その間までに、死を回避できる方法を探すしかない。


連投失礼しました

[10月3日 木曜日]


僕はビデオの件が終わるまで、しばらく学校を休むことにした。

羽川には何と伝えたら良いか考えたが、一連の死亡事件に例のビデオが絡んでいることは知っていたようだ。


羽川『私にも手伝えることがあったら言ってね。阿良々木くんと、火憐ちゃんと月火ちゃんの命に関わるんだったら、放っておけないよ』


羽川はああ言ってたけど、なるべくこの件には関わらせたくない。

確証はないが、怪異への感度が強い羽川なら、何かの拍子にビデオの影響を受けるかもしれないからだ。


暦「…これか」


火憐ちゃんと月火ちゃんは、知り合いの生徒を訪ね回ってビデオに関する情報を集めに行った。

僕は代わりに、火憐ちゃんと月火ちゃんが先週の修学旅行で記念に撮った集合写真を受け取りに行った。


暦「…!! 何だ、これ…」


写真の中には、亡くなった4人の生徒もはっきりと写っている。

何の変哲もない、よくある集合写真だ。

ただ一つ、昨日亡くなった生徒4人の顔が歪んでいることを除けば――。

余接「見つけた、鬼いちゃん」

暦「おっ、斧乃木ちゃん?」

余接「写真なんか持って、何してたの?」

暦「いや、何でもないんだ…」

余接「ふーん。そうは顔に書いてないけどね」

暦「…」

余接「まぁいいや。僕は臥煙さんから頼まれて、鬼いちゃんを探してたところだったんだ」

暦「臥煙さんが?」

余接「臥煙さんが言うには、『ビデオを持って、私のところに来ておくれ』だってさ」




昼過ぎに臥煙さんのもとへ向かうことになった。

僕は一旦家に戻り、保管していたビデオを取り出そうとしたが、


暦「ビデオが無い!?」


保管してあったはずのビデオが、消えていた。


暦「火憐ちゃんと月火ちゃんが持って行ったのか…?」


火憐ちゃんと月火ちゃんはまだ帰ってきていない。

あんなものが家にあること自体、不吉でしかなかったから、ビデオを返しに行ったか、あるいは処分しに行ったのか。

どちらにせよ、臥煙さんの頼みには応えられないことに変わりはない。


暦「…仕方ない」


僕はノートを取り出して、記憶を頼りにビデオの内容とこれまでの経緯を書き記した。

これを臥煙さんに読んでもらえば、大体の事情は伝わるはずだろう。


伊豆湖「やあやあ、待ってたよこよみん」


学習塾の跡地で、臥煙さんは先に待っていた。


伊豆湖「さて、こよみん。早速だけど例のビデオを渡してもらえないかな?」

暦「えぇと…そのビデオなんですけど…」

伊豆湖「どうしたんだい?」

暦「実は…あのビデオ、なくなってしまったんです」

伊豆湖「…何だって?」

暦「ビデオがなかったんです。元々あれは、妹たちの学校から持ってきた物だし、多分返しに行ったんじゃないかと…」

伊豆湖「…そっかぁ。それじゃあ仕方がない…なんて言うとでも思った?」


顔は笑っているけど、眼は笑ってない。


暦「ご、ごめんなさい!」

伊豆湖「私はね、あのビデオをずーっと探してたんだよ。わかる? こよみん」

暦「本当に、ごめんなさい…」

伊豆湖「…私は何でも知っている。この町で“呪いのビデオ”が噂になっていること、そして、こよみんとキミの妹たちがビデオを見てしまったことも」

暦「…!」

伊豆湖「でもね、私は神様じゃない。私にも知らないことは一つや二つくらいあるんだよ。それを知るためにこよみん、キミをここへ呼んだのさ」

暦「臥煙さんが知らないことって…?」


間を置いて、臥煙さんは真剣な表情で言った。


伊豆湖「…あのビデオの中身さ」



伊豆湖「少し話をしようか、こよみん」


臥煙さんは突然、話を切り出してきた。


伊豆湖「10年ほど前…私もまだ学生だった頃かな、高校生4人が同じ日の同じ時間に死ぬ事件があったんだ」

暦「! それって…」

伊豆湖「そう。この町で起きた中学生4人の不審死と同じようなものさ。しかも、亡くなった4人は死ぬ一週間前に、伊豆へ遊びに行った宿泊先で奇妙なビデオを見たらしいんだよ」

暦「ビデオ…」

伊豆湖「当時、子どもたちの間では『見ると一週間後に死ぬ』という“呪いのビデオテープ”が噂になっていてね。にわかには信じがたい噂話だけど、そのビデオテープの呪いが本物だと信じて、ビデオについて調べた人間がいたんだ」

暦「ビデオを調べた人間って…一体、誰なんですか? 臥煙さんの知り合いとかですか」

伊豆湖「知り合いというよりかは、私にとっては先生だね。私の大学の先生で、《高山竜司(タカヤマリュウジ)》という人さ」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月18日 (月) 16:36:17   ID: C2iZXQq1

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