【オリ主】東京喰種 parallel (36)

喰種、人と同じ姿をし、人に紛れ、人を喰らう者。彼らには、人を喰う以外に生きる方法がない。
すなわち、人を殺さなければ生きられない。
だから、人と喰種が理解しあうことはできない、絶対に。


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三城「おはようございます、如月准特等」

如月「おはよう、三城君。今日からよろしくね」

三城影也、新人の喰種捜査官である。彼は幼少期に両親を喰種に殺されている、それも目前でだ。
その光景を彼は今でも鮮明に覚えている、そしてそれを思い出し度々恐怖している、が、
だからこそ彼は、自らが捜査官になった。自身と同じような思いをする子供たちを一人でも減らすため。
勿論、喰種への深い憎しみは持っているが、敵討ちは既に終わっている。

三城の両親を殺した喰種は『鮫』と呼ばれていた。レートはS-。
青い半透明の甲赫の赫子を持った喰種だ。
三城の両親が命を懸けて三城を逃がしたが、子供が喰種から逃げ切るなど不可能である。
鮫に殺されかけた三城を救ったのがまだ新人捜査官だった如月である。
如月の鮫討伐は大きな話題となった。
その日、その瞬間から、如月は三城にとっての憧れの人である。

如月「それじゃあ、三城君、さっそく捜査に行くから一緒に来てもらえるかな」

三城「はい、分かりました」

如月「いきなりで悪いね、どうにも人手が足りなくて」

三城「あの、如月さんは今もあのクインケを使っているんですか?」

如月「ああ、これが一番使いやすいからね。君にとっては見たくもないものだろうけど・・・。」

三城「そんなことないです。クインケ、シャーク。あの喰種に人間が勝ったことがそのクインケを
   見る度に実感できますから」

如月「そうか、それなら良かったよ」

三城はこう言ったが、勿論親を殺した喰種の赫子そっくりのクインケなど見たくもなかった。
しかし三城はそれを受けとめなくてはいけない、そう思っていたのだ。
だから彼はこう発言した。クインケ、シャークは鮫が死んだことの確固たる証拠なのだ。
彼の発言のすべてが虚偽というわけではないが、しかし真には彼は如月がシャークを使うことを
望んではいなかった。

三城は如月とコンビを組み、喰種の捜査、そして駆逐にあたった。

コンビを組んで1年後のことである。
二人はとある喰種の捜査にあたっていた。
通称『共食い蟷螂』、今から14年ほど前、当時の上等捜査官、二等捜査官ペアを殺害。
それからずっと身を潜めていた、が、最近になって再び頭角を現し、人間、喰種を無差別に襲い始める。
両手に甲赫の鎌があることから、蟷螂と呼ばれる。
レートはA~。

蟷螂が行動を起こすのは、決まって深夜である。
その為二人は夜中の路地を月明りだけを頼りに捜査していた。

三城「何か、聞こえますね」

如月「気を付けろ、何かいるぞ」

二人は入り組んだ路地を足音を殺し、進む。廃ビルの角を曲がった。
そこには一人の女性が倒れていた。そして、その女性を喰い漁っている少年がいた。
少年は三城たちに気が付くと、振り向いた。
その目は、赫眼は、禍々しく光を放っている。
少年は立ち上がると、青く透き通る、羽を広げた。

三城「青い、羽・・・。」

如月「三城、お前はあの女性を連れて行け。まだ助かる見込みはある」

三城「分かり、・・・ました」

二人は喰種に向かって飛び掛かって行った。如月がシャークを使って喰種と応戦する。
その隙に三城は女性を背負って、逃げようとする、が、

少年喰種「逃がさない」

少年喰種の放った羽赫、それを三城は尾赫のクインケで受けた。
羽赫とは思えない、異常な一撃の重さに三城は吹き飛ばされる。

如月「お前の相手は私だ」

如月のシャークに対し、少年喰種は羽赫の羽で、チャンバラを始めた。
羽赫とクインケがぶつかる度に金属音が響き渡る。

三城はこの赫子に見覚えがあった。忘れたくても忘れられない鮫の赫子、
それにそっくりなのだ。
三城は思った。この喰種、こいつは何としても俺が殺したい、と。

如月と少年喰種の戦い、如月のクインケは刀剣部分と小さな刃のついた盾部分でできている。
対する少年喰種の赫子は、二枚の青い甲赫のような羽赫、とでも言ったところであろうか。
離れてしまえば、少年の重い羽赫の攻撃を一方的にくらうことになる。
如月はなるべく間合いを詰めて戦っていた。しかし、近距離であっても、羽赫を弾丸のように
飛ばせることに変わりはない。
攻撃の合間を縫って撃ち込まれる羽赫の攻撃に如月は押され気味であった。

三城はその少年喰種の羽赫に弱点を見つけた。
一度攻撃を放つと、再び赫子が形成されるまでにかかる時間が、通常の羽赫よりも
長いのである。
その為、少年喰種は放つ赫子は常に方羽だけであった。

如月が体勢を崩すと、少年喰種が右の赫子を一斉に打ち込み如月を殺しにかかった。
三城はその隙をついて、右側から喰種の脇腹に斬りかかった。

少年喰種は血を流し、悲鳴を上げた、が、次の瞬間、廃ビルの壁を蹴りながら、空高く飛び上がった。
少年は三城の攻撃で大ダメージを追いこそしたが、それによって、女性がまだここにいること、
そしてその女性の傍に誰もいないことを知った。

少年喰種は残された左の羽赫で女性に照準を合わせる。
そのことに気が付いた如月は女性の所へと急いだ。

次の瞬間、少年喰種は隠していた羽、二枚を肩の少し下から展開した。
そして左上の翼で女性、下の翼で如月と三城に同時に攻撃をしてきた。
三城はその攻撃を何とか弾くことに成功したが、如月は不意打ちに対応しきれず、
また気を失っていた女性は当然に、羽赫の雨を浴びて、粉々の肉塊へと変貌した。

三城のクインケは、羽赫の攻撃に耐え切れずに砕け散った。
少年は今の攻撃で力尽きて、落下し、地面に激突した。

三城「如月さん、起きてください。如月さん!」

如月は返事をしなかった。少年は既に立ち上がり、逃げようとしている。
今は嘆いている時間はない。そう思った三城は、如月のクインケを手に取って、
少年喰種に飛び掛かった。

少年喰種は三城の攻撃を赫子で受けるも、受け止めきれず地面に倒れ伏した。

三城は喰種の鼻先にクインケを突き付け、振り上げ、振り下ろしt

少年喰種「父さん」

少年はそう呟いた。三城は最初から、少年が羽赫を展開した時からそのことに気が付いていた。
この喰種は両親の仇の子供であり、そして大切な先輩を今さっき殺した張本人である。
この喰種が憎い、が、三城自身が親を殺される悲しみを知っているからこそ、
この喰種に対して同情してしまうのだ。

喰種であっても人と同じように泣いたり笑ったりする、三城はそれに気が付いた。
いや、気が付いたというよりも、ずっとそれを見て見ぬふりしてたのだ。

あと数センチ剣を下ろすだけで、喰種を殺すことができる。
三城は今まで何人もの喰種を殺してきた。数えてすらいないほどに多くの喰種を殺してきた。
それなのに、三城はこの喰種を殺すことができない。

ふと力が抜けた。その瞬間、少年は自分を抑え込んでいた三城を振り払い、
三城の腹部に蹴りを入れた。

三城は吹き飛ばされ、壁に激突した。呻きながら顔を上げると、そこにはすでに
戦闘準備を済ませた喰種が立っていた。

少年は三城を睨みつける。そして喋った。

少年喰種「なんで殺さなかった?」

三城は少年を睨み返した。

三城「なんでだろうな」

少年は羽赫を広げ、赫眼を赤黒く輝かせた。
三城は死を覚悟した。

しかし少年は、舌打ちをすると、赫子を消して去って行った。

被害にあった女性と如月、二人の葬式が行われた。

被害者女性の葬式で、三城は唯々ひたすらに遺族に頭を下げた。
彼女の小学生くらいの子供が泣いていた。
三城はそれを見て、逃げるように立ち去った。

如月の葬式が終わった後、三城は如月の墓へ行った。そして誓った。

三城「戦います。俺が如月さんの分まで、人々を守ります」

三城は今まで自分は正義の為に戦っている、そう思い込んでいた。
あの日以降、三城は人と喰種、その命に優劣をつけられなくなった。
だから今度は、喰種を殺す、殺さない、どちらがより多くの命を救えるか、
それを考えるようにした。

そして三城は喰種を殺すとそう決めた。

鮮波蒼、彼はこんな感情を持った。人と喰種、仲良くしていくべきだ。
人間が喰種を殺す理由を彼は一度として理解できなかったのだが、その理由がようやく分かった。
その理由、それは死にたくない、愛するものを失いたくない、つまり自分たちと同じなのである。
ならば心を通い合わせること、詰まる所、友情を育むことさえできるであろう。
鮮波はそれを望んだのだ。

しかし、嗚呼、現実とは実に非情である。
彼自身が人間との友情を育みたいと考えているが、それができないのである。
彼は喰種、人を喰わねば生きていけない、人を殺すしかない生き物なのだ。
人間の命を尊重すること、彼には不可能なのだ。

鮮波は既に理性喪失の寸前にまで至っていた。
彼は前回の食事を捜査官に邪魔され、実質3ヶ月間何も食べていないと言っても過言ではない。
街中で暴れでもしたならば、間違いなく捜査官に殺されるであろう。
鮮波は食事を探しに路地の奥へと、人目の少ない場所へと入って行った。

鮮波「・・・。」

8階建ての廃ビルの下、人目のない場所に死体が転がっていた。
赫子で刺された痕はない、綺麗な死体である。

不思議に思っている鮮波に「自殺者を見るのは初めてか?」
後ろから喰種がそう質問した。

この喰種の名は風宮紅葉、19歳。

鮮波「自殺者・・・。」

風宮「ああ、そうだ。こういう人目に付かない場所ではたまに人が死ぬ。
   それも自分の意思で死んでいくんだ」

鮮波「ええっと、なんでここに来たんですか」

風宮「俺はこういう自殺スポット、て言うのかな。
   そういう場所を回って死体を集めているんだ」

鮮波(この人の獲物か、戦ったとして勝てるだろうか?)

鮮波は風宮を睨みつける。彼は今、この死体を手に入れたかった。
色々と考えはあったが、何より今は一刻も早く食べたいのだ。
元より飢餓状態に近かったというところに、このように食い物を置かれては、
耐えろという方が無理というものだ。

鮮波は涎を流す、目は赤黒い赫眼に染まる。更に強く風宮を睨みつけた。

風宮「欲しいのか?」

神崎「だーれだッ?」

三城「うわぁ、ちょっ、えっ、何!」

神崎「ふっふっふ、捜査官なんだから、このぐらいでうろたえるようじゃだめですよ」

神崎「正解は、私でした」

三城「私って誰?というか手を放してくれないかな」

神崎「あれ、聞いてないんですか?今日から二城さんとコンビを組むことになっている神崎夕菜です」

三城「いや、それは聞いている。だからって初対面で視界を奪われたりしたら分かるわけがないだろう」

神崎「そこはこう、超能力的な何かで」

三城「無理だ。というか神崎、俺の名前間違ってないか」

神崎「ああ、やっぱりですか。一城さん?」

三城「違う、足りないんだよ。減らしてどうする」

神崎「足りないって何ですか?私の胸にケチ付けるんですか?初対面の部下にセクハラですか?」

三城「そんなこと一度も言った覚えはない」

神崎「ほら、そこで拾った薄い本あげますから。これで貧乳の素晴らしさを勉強してください、五城さん」

三城「だから俺はそんな発言していない。というか誰だこんなロリ本を局に持ってきた輩は!あとお前も拾うな!
   それに俺の名前は三城だ!!絶対わざとやってるだろう!!」

遼「おい、夕菜。お前、ふざけんなよ」

神崎「何が?ですか」

遼「なんで兄貴を殺した!!」

神崎「あぁ、言われてみればそんなことがあったかもしれないです」

遼「てめぇ!!」

佳賀里遼は目を赫眼に染め上げ、赫子を放出する。
兄と同じ羽赫、であるが、その羽一枚一枚はカッターナイフの刃のように鋭く尖っている。

神崎はそれを見て、呆れたように息を漏らすと、左目、片眼だけを赫眼へと変え、
腕に紫色をした甲赫の赫子を纏わせ、鎌を作り上げた。

風宮「やめろ」

遼「風宮さん、でも、」

風宮「お前の気持ちは分かる。でも落ち着け」

遼「・・・分かりました」

風宮「神崎、お前もだ」

神崎「はいはい、分かりました。
   あと、名前で呼んでくださいって、何度も言ってるじゃないですか」

二人は赫子を仕舞うと、それぞれ反対方向に歩いて行った。

神崎「み~つけた」

鮮波「夕菜、なんか用か?」

神崎「別に、ただ、会いたいなって、思っただけ」

鮮波「そうか」

二人はしばらく沈黙し、そして再び話し始めた。

鮮波「なあ、夕菜」

神崎「ん、何?」

鮮波「佳賀里悠を殺したのは、わざとか?」

神崎「わざとも何も、私はこれでも喰種捜査官だからね。
   目の前に喰種がいるのに見過ごすなんてことは出来ないの」

鮮波「いや、そうじゃなくて。
   お前、今日はあの辺りは調べないって言ってただろう?」

神崎「ああ、うん。そうだね、でも、捜査範囲決めるの私じゃないし・・・」

鮮波「・・・そうか、疑って悪かったな」

鮮波「夕菜」

神崎「分かってるって。囲まれてるね」

北条「おい、蒼。何だ、その女は。なんで人間と一緒にいる?」

神崎「人間じゃないですよ。半喰種です。」

北条「気持ち悪いんだよ」

神崎「いきなりそれはひどいんじゃないですか」

鮮波「こんなに手下を引き連れて、何の用だ?北条。まあ、だいたい分かるが」

北条「お前が人を殺さない為の喰種集団なんかにいるって聞いたからな、
   呼び戻しに来てやったんだよ」

鮮波「一つ訂正してくれ、人を殺さないなんて不可能だ。
   自殺者なんてそうそういるもんじゃない。
   最低限しか人を殺さない為の喰種集団だ」

北条「お前も生意気言うようになったな、えぇ。
   全く、兄貴に顔向けできねえじゃねえかよ。
   おい、お前ら!こいつらを殺しちまえ!!」

鮮波「8年もコクリアに入れられてて何も学ばなかったのか?
   殺し合いは避けるべきだとか、敵の力量を見誤るなとか」

大勢の喰種が神崎に飛び掛かる。
神崎は赫子を放出する。ただし、今回は本気である。
先ほど佳賀里遼と対峙した時とは明らかに赫子の量が違う。
その赫子は全身を包み込んだ。

共食い蟷螂、と、呼ばれる。

彼女は喰種集団の中に突っ込んだ。
喰種たちの猛攻撃が始まる、が、神崎はかわそうとすらしない。
攻撃を受けながら、まるで何事もないように淡々と敵喰種の首をはねていく。

北条もまた目前、鮮波に対し赫子を出して襲い掛かる。
北条の赫子は鱗赫、初撃を鮮波は難なくかわす。
撃ち込まれた赫子は勢いそのままに道路に亀裂をを入れた。

北条「どうした?早く赫子を出せ」

鮮波「あんたを殺したのが俺だってばれたら、危険度上がっちゃうからな。
   赫子なしで戦うよ」

北条「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ、糞餓鬼」

北条は鮮波に対して強力な攻撃を連続して撃ち込む。
鮮波はというと、逆にそれをかわしながら北条に近づいていく。
至近距離で撃ち込まれた北条の赫子をかわすと、鮮波は爪で赫子の根元を引き裂いた。
北条の赫子が再生する暇など与えず、鮮波は正拳突きで北条の体を打ち抜く。

北条「ま、待ってくれ、蒼。
   俺は、お前の」

鮮波「北条さん、俺、決めたんですよ。
本当に守りたいものだけ守る、それ以外は守らない。
   それしかできないって、分かったんです」

鮮波が北条の体から腕を引き抜くと、北条は地面に倒れ込んだ。
鮮波は目の前のそれの頭部を右足で踏んだ。
誰にも分からないし聞こえない、そんな微かな声でそれに言葉を掛けた後、
鮮波はそれを踏み潰した。
まるでトマトがはじけるように、赤が広がった。

携帯電話の着信音が鳴り響く。
夕菜はたった今殺し合いが終わったばかりだというにもかかわらず、
平然と電話に出た。

神崎「三城さんですか、どうかしました?」

三城「喰種集団の移動が確認された、俺は今そこに向かってる。
   お前も来てくれ、場所は」

神崎「ああ、それならたった今全滅しましたよ」

三城「嘘だろ、・・・。
   まさかお前がやったのか?敵は少なくとも十数人はいたはずだが」

神崎(あれ、これヤバい?私が半喰種ってばれる?何とかごまかさないと・・・)

神崎「えっと、喰種どうしの殺し合いがあったんですよ。
   それで、えっと、なんか鎌を持った喰種が、こう、スパパーンって、感じで」

鮮波「夕菜、語彙力」

三城「鎌って、まさか共食い蟷螂!また暴れだしたのか!!」

夕菜「ああ、そうかもですね。・・・。ちなみにその蟷螂さんのレートはいかほどでしょうか?」

三城「SS~、年齢も分かっちゃいないが危険なのは確かだ。
   今後の活動次第ではまだ上がるかもしれないな」

夕菜(ねえ、蒼君。レートSS~だって、どうすればいいですか。助けてください)

鮮波(とりあえず、しばらくおとなしくしとけ)

それはある日のこと、

神崎「この組織が目を付けられたの!早く逃げないと」

風宮「逃げるって言っても、当てなんてないしな」

遼「それに夕菜、お前はこういう事態を避けるためにCCGに入ったんだろう」

神崎「そんなこと言ったって、気が付いたら根も葉もないことが書いてあって、
   偉い人が決めちゃったからどうしようもないし、もう分んない!どうすればいいの!!」

鮮波「どうしようもないってことだろ、夕菜。
   お前は捜査官として戦え、俺たちは喰種として戦う」

神崎「いや、待って。何それ。殺し合うの?」

鮮波「そうだ。少なくともお前は助かるだろ?」

神崎「嫌だ、嫌だよ。蒼君のこと殺してまで助かりたくない」

鮮波「どうしようもないこと、だから仕方がない」

神崎「でも、だからって」

風宮「大事なものほど失った時の痛みは大きい、誰でも分かる簡単なこと、そして誰もが忘れてしまうこと、
   夕菜、たった一つ守れればいい、だからって、そのたった一つが守れるとは限らない」

神崎「そんなこと、分かってる」

鮮波「俺達だって死にたくはない、勝つよ。正しいことだなんて思わないけど、生きるために勝つ、
   明日の夜だな、ここに捜査官が来るのは。だから夕菜、分かったら――――――」

神崎「嘘、だって、勝てるって思ってたら俺達と一緒に戦えって、そう言うでしょ。
   勝てるなんて思ってないんでしょ。だから私に捜査官側で戦えって、そう言うんでしょ」

鮮波は真っ青な赫子の羽を広げた。そしてそれを、――――――

神崎「やめて、ねえ、なんで撃つの?」

鮮波「夕菜、死ぬな。死ぬならせめて、今ここで俺に殺されろ」

神崎「蒼君、・・・。」

鮮波「夕菜、俺は弱くて、卑怯で、お前に好きになってもらえるような奴じゃないんだ。
   好きな奴が死ぬのを見たくない、だから自分は死んで楽になろうとか考えるくせに、
   その好きな奴に生きろとか言っちゃうんだ。殺す勇気もないくせに、格好つけて、
   せめて俺に殺されろとか言っちゃうんだ、最低だろう?」

神崎「それでも、それでも大好きだよ」

鮮波「なあ、夕菜。すごく酷いこと言ってもいいか?」

神崎「うん、いいよ」

鮮波「最低なこと言っていいか?」

神崎「うん」

鮮波「生きてくれ」

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