トリティン副総帥 (21)

※SLG「Almagest -Overture-」のネタバレを含みます。その点を注意して頂けると幸いです。

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トリティン「マチス、グッドホープ自治議会から要請がきたよ。
独立宣言に際し僕らに政権を委託したい、って。」

フライヤー「そうか。……この要請、受け入れざるをえないだろうな。」

トリティン「そうだね……。
現実的な問題としてこの要請を拒絶すると、
僕らの活動基盤に傷が付く事になりかねない。
最悪の場合、W.L.T.C.がまた分裂してしまう恐れもある。
それに、統一連邦の圧制もこれ以上見過ごしてはおけない。」

フライヤー「……そうなると、メガリス行政区と開戦する事になるか。
ハンス、しばらく議会と行政の方を頼む。俺も出撃しよう。」

トリティン「うん、分かった。内政の方は任せてよ。」

少し後


マークライト「宇宙軍は何をやっているんですか!?は、早く残っている戦艦を出」

ドカーン

トリティン「マチス、元メガリス行政区統治域の
治安や経済状況はもう少ししたら落ち着くと思う。
戦後処理は概ね完了したと言っていいんじゃないかな。」

フライヤー「そうか。ご苦労だったな、ハンス。」

トリティン「マチスの方もご苦労様。……けど、問題はここからだね。」

フライヤー「そうだな、恐らくじきに……。」

コンコン ガチャ

秘書官「総帥、副総帥。報告します。ブラオローゼ公国が我が国に対し宣戦布告してきました!」

フライヤー「そうか、報告ご苦労。」

秘書官「はい……。それでは失礼します。」

ガチャン

フライヤー「やはり来たか。できればこの戦争は避けたかったんだがな。」

トリティン「うん。けどそういうわけにもいかなかった、か。」

フライヤー「そうだな、直近のブラオローゼは
明らかにロゼッタ全域を統治下におくつもりで動いていた。
仮に今この戦争を避けたところで、いずれはなんらかの形で
開戦せざるをえない状況にもちこまれていただろう。
あるいは議会や支援団体の方からW.L.T.C.の支配を目論んだか……。」

トリティン「最近いくつかそれらしい動きも見受けられるしね。
この戦争を利用して僕らに対して何らかの干渉を行うつもりなのかな。」

フライヤー「ああ、恐らく数期の間には何か仕掛けてくるだろう。」

少し後


プレシアソ「ブラオローゼ公国より正式に講和の提案が届きました。
条件は、……フライヤー総帥、トリティン副総帥両名の退陣。」

クレティアヌス「野郎……!つまりあれか、この戦争は
フライヤーとトリティンが全部悪いって事にして講和してやるから、
代わりに自分らで2人を引き摺り下ろせって事か!?」

リアラ「あ、それならちょっとわかりやすい。解説ごくろー。」

フライヤー「来たか。……ハンス。」

トリティン「うん、用意はできてるよ。多分そろそろ……。」

プレシアソ「議会より通達、ただちに総帥・副総帥の出頭を求めるとの事です。」

フライヤー「分かった。すぐに向かおう。」

その後


トリティン「……とりあえず、当面ところ議会の流れが僕らの罷免に傾く事は避けられたかな。」

フライヤー「ああ。しかし依然として状況は予断を許さない。
もし今後戦況が俺たちにとって不利に傾けば、
恐らくすぐにでも議会から突き上げがくる事になる。
W.L.T.C.内からブラオローゼへ内通する動きも出てくるだろう。」

トリティン「そうなれば今度こそ僕たちは辞任に追い込まれるかもしれない……。それだけは防がなきゃね。」

フライヤー「そうだ。W.L.T.C.がここまで変わってしまった責任を、俺たち以外の誰にも負わせるわけにはいかない。」

トリティン「……特に、リカには。」

フライヤー「……この嵐、必ず乗り切ってみせる。
ハンス、しばらく議会と行政の方を頼む。俺も出撃する。」

トリティン「うん、分かった。国内の方は任せてよ。」

少し後


ぷにたん「おや、ここまで来」

ドカーン

議員1「ブラオローゼと戦争など、総帥と副総帥は何を考えておられるのだ!」

議員2「そうだそうだ!国力が違いすぎる!これが無謀な戦争である事は明らかだ!」

秘書官「報告します。ブラオローゼ公国が滅亡しました。」

議員2「なん……だと……。」

トリティン「なんとか勝てたね。」

フライヤー「ああ。……だが、俺たちは目立ちすぎた。」

トリティン「そうだね……。
いくら統一連邦の腰が重いとは言っても、この短期間にメガリス、ブラオローゼを
立て続けに制圧した僕らの事をこれ以上放置しておくとは思えない。
きっと近いうちに……。」

コンコン ガチャ

秘書官「総帥、副総帥。報告します。地球統一連邦が我が国に対し宣戦布告してきました!」

フライヤー「そうか、報告ご苦労。」

秘書官「はい……。それでは失礼します。」

ガチャン

トリティン「……来たね。」

フライヤー「俺たちは銀河の覇権争いになど興味はない。
対話のテーブルにさえ着いてくれていれば、妥協点はあったと思うんだがな。」

トリティン「想像以上に統一連邦の態度は強硬だったね。
行政区を軍事力で制圧した以上、やむをえない部分はあるのかもしれないけど……。」

フライヤー「……乗るべき風を誤ったか。
もしキャロルが今ここにいれば、このような事にはなっていなかったろうな。」

トリティン「うん。……けれど彼女はもういない。
この風の先も、僕たちで飛んでいくしかないんだ。」

フライヤー「そうだな。」

トリティン「軍備の方は進んでる。
ドックの戦艦数にはしばらく戦えるだけの余裕があるし、開発も順調だ。
ストーンヘンジを除いたロゼッタ全域を統治下に置いた今、経済力も十分なものがある。
マチスが上手く接収してくれたお陰で国内情勢も安定してるし、
しばらくの間なら内政は僕一人でも十分回せるよ。」

フライヤー「分かった。ハンス、国内の方は任せる。
統一連邦への対応には俺が当たろう、俺も出撃する」

トリティン「了解。……気をつけて、マチス。」

少し後


ジャクソン「反」

ドカーン

議員1「今度は統一連邦と戦争だと!?総帥と副総帥は何を考えておられるのだ!」

議員2「そうだそうだ!国力が違いすぎる!これが無謀な戦争である事は明らかだ!」

秘書官「報告します。地球統一連邦が滅亡しました。」

議員2「なん……だと……。」

フライヤー「ハンス、国内の方に異常はあるか?」

トリティン「ううん、大丈夫。今のところ内政、議会ともに大きな不安はないよ。
むしろ問題は……。」

フライヤー「国外、か。」

コンコン ガチャ

秘書官「総帥、副総帥、大変です!
つい先ほど緊急の首脳会議が開かれ、我が国の軍事行動に
対する最上級の非難決議が採択されました!」

フライヤー「そうか、報告ご苦労。」

秘書官「はい……。それでは失礼します。」

ガチャン

フライヤー「……非難決議か。俺たちは降りかかる火の粉を払っていただけなんだがな。」

トリティン「うん……。けど他国はそう見てはくれなかったみたいだね。
マチス、各国から声明が発表されているよ。」

フライヤー「分かった、見せてくれ。」


※この時点でMSAはIZNに、CRWはFANに滅ぼされています。

アップルシード「本当に、残念だ。」

バートン「観察を続ける事はできまいな。」

トラパトーニ「この世界に生きた証だ。」

ジャナンタ「在り様となりましょう。」

パク「やり直しを要求する!!」

ナナミ「そこに映るものを見て恥を知りなさい。」

リアラ「アンタが言うなー。」

クレティアヌス「お、おいリアラ!」バッ

リアラ「んぐっ!?」

クレティアヌス「あはっ、あははははっ……。」

ナナミ「………………。」ギロ

クレティアヌス「はっ、はははっ……わ、悪い。
あれだ、こいつには俺からよく言って聞かせておくから。
……ほら、来いリアラ!」グイグイ

リアラ「んー!んむー!」ズルズル

バタン

ナナミ「……とにかく。恥を知りなさい、恥を。」ブチン

フライヤー「………………。」

トリティン「………………。」

フライヤー「……こうなった以上、徹底抗戦も考えざるをえんか。」

トリティン「そうだね……。けど非難決議が採択されたといっても、
「共通の敵」を作り出すために僕たちがスケープゴートにされたという面は否定できない。
戦わずに済む道だってまだ残っているはず……僕は対話への道を探ってみるよ。」

フライヤー「分かった、外交の方は任せよう。
交戦国の方はこちらで引き受ける、俺も出撃する。」

トリティン「うん、気をつけて。僕の方もできるだけ急いでみるよ。
さて、どこか交渉に応じてくれる国家があればいいんだけど……。」

コンコン ガチャ

秘書官「総帥、副総帥。報告します。オリンピア連合が我が国に対し、資金援助を申し出てきました。」

フライヤー「………………。」

トリティン「………………。」

少し後


ドカーン ドカーン ドカーン…

議員1「最上級の非難決議が採択されただと!?総帥と副総帥は何を考えておられるのだ!」

議員2「そうだそうだ!国力が違いすぎる!これが無謀な戦争である事は明らかだ!」

秘書官「報告します。
顕在・潜在を含め全ての敵対勢力が消滅しました。
我々は、この戦争に勝ったのです!」

議員2「なん……だと……。」

議員1「いや、それはそうなるだろう。」

フライヤー「勝った……か。
しかし戦争の勝ち負けで思想の正しさが証明できるほど、この世界は単純ではない。
分かってはいるのだが、な。」

トリティン「そうだね。僕たちのしてきた事が本当に正しかったのかどうか、
それは今でも分からないけど……。
それでもこの戦争を終息させた事、それはきっと間違いじゃなかったはずだよ。」

フライヤー「そう思いたいな。」

フライヤー「ハンス、これからの事だが……。
俺は銀河連盟発足にあたり、現W.L.T.C.から原理主義派を分離させようかと考えている。」

トリティン「……そうなんだ。」

フライヤー「俺の翼は折れてしまった。
このような事になってしまった以上、最早俺が再び空を飛ぶ事は叶わないだろう。
しかし親鳥の翼が折れたからといって、その巣の雛鳥まで空を諦める必要はない。
彼らの背にはまだ飛ぶ事のできる翼があるのだからな……。そこでハンス、頼みがある。」

トリティン「なに、マチス?」

フライヤー「分離後のW.L.T.C.原理主義派、その総帥に就いてもらいたい。
戦争の中心をW.L.T.C.が演じた事、連盟の中核をW.L.T.C.が担う事、
その他にもしがらみが多く難しい情勢ではあるが……。
ハンスの力があれば、このような状況でも雛鳥を正しい風の先へと導いて行けるだろう。
……どうだ、ハンス?引き受けてはくれないか。」

トリティン「マチス……ごめん。だけど、それは引き受けられないよ。
マチスも気づいているよね?世間は僕たち2人が戦争を主導したと見ている。
その僕が総帥に就いてしまえば、きっと分離後の原理主義派も
現W.L.T.C.と同じものと見なされてしまうよ。
それじゃあ分離する意味がないだろう?」

フライヤー「……そうかもしれないな。だが、ハンスの手腕をもってすれば……。」

トリティン「そう言ってくれるのは嬉しいけど……。
構わないんだよ、僕には気を遣ってくれなくても。
もしもマチスが僕の事を評価してくれるのなら、
僕にもW.L.T.C.がここまで変わってしまった責任を取らせて欲しいな。」

フライヤー「しかし、それではハンスの翼は……。」

トリティン「いいんだ、マチス。
……思えば、僕の翼はあの時に折れてしまっていたんだと思う。
マチスの導きがあったからここまでは騙し騙し飛んで来る事ができたけど、
それがなくなった今、僕の翼ではもう銀河を渡る事はできそうもない。
だからこれからはこの翼を、降りしきる雨から雛鳥を守るために広げるよ。
……君と一緒にね、マチス。」

フライヤー「……分かった。力を貸してくれ、ハンス。」

トリティン「うん、任せてよ。」

トリティン「それじゃあ、分離後の原理主義派の総帥はリカに。
そして僕たちはそれをバックアップする、と。」

フライヤー「俺たちとの繋がりを世間に意識させずにな。
言葉にするのは容易いが、難しい仕事になる。」

トリティン「そうだね……。けど、きっと何か方法はあるはずだよ。
僕も全力を尽くしてみる。」

フライヤー「ああ。頼りにしている、ハンス。」

トリティン「後は、リカにこの事をどうやって伝えるかだけど……。」

フライヤー「そうだな……。」

バンッ!

アンジェリカ「マチス、ハンス、どういう事!?
どうして、私が総帥なんて……。」

フライヤー「………………。」チラッ

トリティン「………………。」チラッ

フライヤー「……議会の決定だ。ライプニッツ公の演説は聴いただろう。」

アンジェリカ「いつの話よ!?」


終わり

これで終わりです。
読んでくださった方ありがとうございました。

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