ナイフ使い「切り刻んでやるぜ」ペロッ アサシン娘「ナイフなめるのみっともないよ」 (34)


ボス「なんだお前は!?」

ナイフ使い「今日も俺のナイフは血に飢えている……」

ナイフ使い「お前たち……切り刻んでやるぜ」ペロッ

ボス「たった一人で何ができる! やっちまえっ!」


ザシュッ! ズバッ! ザクッ!


ナイフ使い「ふっ、いっちょあがりだ」ペロッ


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アサシン娘「どう? そっちは終わった?」

ナイフ使い「ああ、ボスも護衛もあの世に送ってやったぜ」

ナイフ使い「俺のナイフでな……」ペロッ

アサシン娘「護衛は元傭兵なんかも混ざってた精鋭揃いだったのに、さすがだね」

アサシン娘「さすが業界ナンバーワンなんて言われてるだけのことあるよ」

ナイフ使い「だろ?」ペロッ

アサシン娘「だけどさ……」

ナイフ使い「?」

アサシン娘「ナイフなめるのみっともないよ」

ナイフ使い「え!?」


ナイフ使い「なんで!? なんでみっともないの!?」

アサシン娘「なんていうか、ナイフをなめるのって小物臭いんだよね」

ナイフ使い「小物!? どこが!?」

アサシン娘「本来ナイフってなめるものじゃないのに、わざわざなめるのが」

アサシン娘「なんか自分に酔っちゃってるって感じがするの」

ナイフ使い「うぐぐ……」

アサシン娘「せっかく腕は一流なのに、それじゃ三流に見えちゃうよ」

ナイフ使い「うーむ、そりゃまずいな。三流だと思われたら仕事が来なくなる」


ナイフ使い「よし決めた!」

ナイフ使い「今日から俺はナイフをなめない!」

アサシン娘「頑張ってね」


ナイフ使い「……」

ナイフ使い「……」イラ…

ナイフ使い「……」イライラ…

ナイフ使い「……」イライライライライラ

ナイフ使い「……」ペロッ

ナイフ使い「あーっ、しまった! なめちゃった!!!」


アサシン娘「ナイフをなめてないとイライラするなんて、かなり重症だね……」

アサシン娘「こりゃもう、自分に酔ってるなんてもんじゃなく、完全に中毒だよ」

アサシン娘「タバコや酒をやめられない人と一緒」

ナイフ使い「俺もまさか自分がこんなことになってるとは思わなかった……」

ナイフ使い「どうすりゃいい? どうすれば俺はナイフなめをやめられる!?」

アサシン娘「うーん、そうだねえ……」

アサシン娘「荒療治だけど……ナイフにカラシを塗ってみよう!」

ナイフ使い「そりゃいいな!」


ナイフ使い「……」

ナイフ使い(このナイフにはカラシが塗ってある……だからなめちゃいけない……)

ナイフ使い(でも……!)

ナイフ使い「……」ペロッ

ナイフ使い「辛っ!」

ナイフ使い「ダメだ! 辛いぐらいじゃ俺のナイフなめは止められねえ!」ペロペロペロ

ナイフ使い「うおおおおおおおおおお!」ペロペロペロペロペロ…


アサシン娘「塗ってたカラシ全部なめちゃったの!?」

ナイフ使い「ああ……」

アサシン娘「カラシをワサビや唐辛子にしても、多分結果は同じだろうね……」

ナイフ使い「辛い辛い言いながら全部なめちゃうだろうな」

アサシン娘「それならいっそ、毒を塗ろう!」

ナイフ使い「毒……!?」

アサシン娘「なめたら死ぬって分かってたら、さすがのアンタもなめないでしょ?」

ナイフ使い「……そうだな。本気でやめるなら、そんぐらいしないとな!」


ナイフ使い「……」

ナイフ使い「……」イライラ

ナイフ使い(なめたい……)

ナイフ使い(だけどダメだ! これなめたら俺は死んじまうんだぞ!)

ナイフ使い(さすがに死ぬと分かっててなめるほど、俺もバカじゃ――)

ナイフ使い「……」

ナイフ使い「……」ペロッ


ナイフ使い「……」ブクブク…





アサシン娘「いやーっ、泡吹いてる! 解毒剤持ってこなきゃ!!!」


アサシン娘「んもう、もう少し発見が遅れてたら死ぬとこだったよ!」

ナイフ使い「……すまねえ」

アサシン娘「毒塗っててもなめちゃうんなら、もう諦めた方がいいかもね」

アサシン娘「無理にやめようとすると、かえって体がおかしくなっちゃうかも」

ナイフ使い「いや……この一件で逆に俺は、絶対にやめなきゃって思ったぜ!」

ナイフ使い「ナイフに何かを塗る以外に方法はねえか!?」

アサシン娘「うーん、そうだなぁ……」


アサシン娘「禁煙してる人は、禁煙パイポをくわえて口の寂しさを紛らわすっていうけど」

ナイフ使い「そうか! ナイフの代わりに別の物をなめればいいんだ!」

アサシン娘「といっても、なにをなめればいいんだろ……」

アサシン娘「あ、ペロペロキャンディなんてどう?」

ナイフ使い「それだ!」


ナイフ使い「さぁ~て、悪徳政治家さんよ」

ナイフ使い「俺のナイフで切り刻んでやるぜ」ペロペロペロ

ナイフ使い「覚悟しな」ペロペロペロペロペロ


政治家「ひいいいいっ! 殺し屋がナイフとペロペロキャンディをなめながら迫ってくるぅぅぅ!!!」



アサシン娘(なめるものが二つに増えただけだったか……!)


ナイフ使い「……」ペロペロ

アサシン娘「ペロペロキャンディのせいで、かえって重症化しちゃったね」

アサシン娘「やっぱり今まで通り、ナイフだけをなめてるのが一番健全だと思う」

ナイフ使い「いや……ようやく俺はナイフなめを克服する方法が分かったぜ」ペロッ

アサシン娘「へ?」

ナイフ使い「ようはナイフをなめなきゃいいんだろ?」

ナイフ使い「だったら――」


スバッ! ドシュッ! シュバッ!

「うげっ!」 「ぐはぁっ……!」 「ぐぎゃっ!」





???「ふん、これで密輸組織は壊滅だ」


ペロペロキャンディ使い「ようするにだ」

ペロペロキャンディ使い「ナイフじゃなくペロペロキャンディで敵を始末するようにすりゃ」

ペロペロキャンディ使い「ナイフをなめなくて済むってわけだ!」ペロッ

ペロペロキャンディ使い「ハーッハッハッハッハ!」ペロペロペロペロペロ…



アサシン娘「あたし、アンタの暗殺スキルとバカっぷりをなめてたよ……」







― 完 ―

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