幾つもの死を乗り越えてきた。戦友は沈み、姉妹も海の藻屑となり、提督は……大好きだった提督は肉片となったわ。
しかし、悲しみに暮れる暇はない。私は、皆の戦った意味を証明しなけれならないのから。私は皆の悲願を叶えるまで戦い続ける。
………その筈だったのに。
「終戦だ! 戦争が終わったぞ!」
「戦争は終わったんだ!」
「やったー! 終戦、終戦だよぉ!!」
暁「終戦……」
突如、戦争は終わった。深海棲艦との講和条約が締結した。
暁「まさか……そんな」
そういう動きがある……というのは知っていた。だけど前線で戦っている私にとっては、内地の日和った馬鹿の世迷い事だと思えなかった。それなのに本当に停戦だなんて……。
「も、もう戦わなくていいんだ。平和になったんだね!」
暁「……違う」
平和になったから戦わなくていい。違う。それでは、私の終戦理由になり得ない。
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艤装を外され、軍属を解かれた。だけど、私は納得できない。
暁「違う、まだ戦争は終わってないわ!」
「もう大丈夫だよ」
「平和になったんだよ」
暁「違う、違うったら……」
深海棲艦を滅ぼさなくては、平和は訪れない。ほんの前までは常識だったことが、ガラリと変わってしまった。今ではすっかり私が異端者だ。
「私たちは分かり合えるんだよ」
「戦う必要はないんだ」
暁「ふざけないでよっ!!」
そんな言葉は聞きたくない。分かり合える? 何を言ってるの。私の大事な人達を殺した奴らと分かり合え? ふざけた事、言ってんじゃないわよ。
「暁ちゃん……」
「暁…」
暁「みんな…みんなどうしちゃったのよ」
艤装を外されて腑抜けになってしまったのか。それとも、上の奴らに何かされたのか。
そういえば艤装を外す時、検査だと称して薬や、よくわからない機械で弄られた。けれども、私のギラギラした憎しみは決して消える事はなかった。
皆はもう、当てにならない。私は、私だけで戦争を続ける。
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ーーーー
「あ、このテレビに出てる人が深海棲艦の偉い人かー。なんか白いね」
暁「あはは……そうね」
半年後、私は施設にいた。ここは元艦娘達が集まる児童院。艦娘が社会に出るのを助ける施設……だそうよ。
「あー、私もいつか向こうに遊びに行って見たいな」
「そうね……」
一先ず私は、憎しみをしまい込んだ。交流が盛んになったこの世界で、憎悪を剥き出していては居場所がない。
もちろん一日足りとも忘れた事はない。チャンスを待つの。いつか必ずその時は来るわ。
……だが、私にとってこの場所は生き地獄だ。
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