若葉「Hotel Moonside」【デレマス】 (14)


・キャラ崩壊注意
・地の文あり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1481726609

油断した、想定外だ。
俺は額に流れる嫌な汗と共に目の前の人物に対して狼狽した。

「黙ってても、時間が過ぎるだけですよ~」

理性という名の赤信号が点滅している。青になって仕舞えば最後、俺の仕事人生は事故で終了してしまうだろう。

何も起こるわけがないと思っていた。相手はあろうことかストライクゾーンからかけ離れた彼女だ。例え彼女が全裸で迫ってきたところで余裕綽々に鼻で笑う自信さえあった。

しかしどうだ。今の俺の状況はそんな理想とは打って変わり、バスタオル一枚だけの彼女にベッドの上で壁際まで押し込まれしまい、身動きが取れなくなっているじゃないか。
わずか数十センチの距離にいる、獲物を狙う獰猛な獣のような目をした彼女の雰囲気に呑まれ、うまく呼吸すら取れなくなってしまっている。

「私となら大丈夫って思ったんですか? こうやって誘惑されても凌げるとでも、思っちゃったんですか~」

彼女の言葉の一つ一つにギクリとしてしまう。
反抗したくても、その目を見つめて仕舞えば指先ですら言うことを聞いてくれない。

ペロリと、彼女は舌なめずりをした。いつもなら朗らかに笑う口元も、今は妖艶さを纏う笑みでしかない。僅かに光る唾液の跡が、より一層と魔性の魅力を引き出していた。

「わ、若葉……さすがに悪戯が過ぎるぞ」

やっとの思いで絞り出した言葉。しかし彼女はそれを聞くと、少しムッとした表情を見せた。

「悪戯、イタズラ……Pさんにはまだ、悪戯をされている、なんて思える余裕があるんですね~。あはは、じゃあもっと、頑張らないといけませんね」

そう言って、彼女はその細い指先で俺の太ももをゆっくりと滑らせた。ゾクゾクとした感覚が脳に走る。

「Pさんが悪いんですよ~。成人の私とこんな場所に来て、何も起こらないと高を括ってるから、こんな目に遭わされるんです」

「それは、飲みで二人ともお酒飲んで終電が無くなったから、明日はオフだし仕方なく……」

「私、女性扱いされてないんじゃないかって、凄くすーっごく傷ついちゃったんですよ~? だから、これを機に私の女をPさんに知ってもらおうと思って」

「だからすまないって、謝ったじゃないか……っ」

「いいえ、許しませんよぉ。それにーー」

彼女の顔がズイっと近くなり、耳元に当てられた口かの吐息に意識を持っていかれそうになる。






「もう、お互い止まれないでしょう?」




彼女は膝立ちとなり、俺の頭を抱えるようにして自分の胸元へと持っていく。上を向けば、彼女の露わになった鎖骨と、さらにその上にある貫くような宝石そのものの瞳が俺を見ていた。

思わず下に顔をずらしてしまうと、そこにはバスタオルの隙間からはみ出た太ももが喉を震わせてしまう。

「まるで赤ちゃんみたいですね~」

彼女の指が頬を撫でた。優しいなんて程遠い、艶やかな仕草に、いつもの彼女らしからぬギャップを感じる。

大きくなった鼻息が、彼女の身体に当たるたびに小さく揺れる。

「年頃の男女が二人、こんな夜にこんな場所に居れば、することなんて一つだとは思いませんかぁ~?」


赤く火照った彼女の頬。彼女もまた鼓動を速め、脳が理性を失わせているに違いない。しかし、彼女がさっき言った通り、止める術を俺は持ち合わしていなかった。

そこからのことはよく覚えていない。
まるで夢を見ていたかのような、気がついたらという言葉が凄くしっくりくるほど、いつの間にか朝が来ていた。

しかし、それを願えど夢でないことは隣を見れば明白だった。スヤスヤといつものように天使のような寝顔で眠る彼女を見れば、何があったか朧げながらも思い出せる。

あの夜、確かに天使と悪魔を見た。
同一存在のそれらは、罪を犯した俺に罪悪感を重く押し付け、当の本人は嬉しそうに隣で眠っているのだ。

「うにゅ……えへへ、Pさぁ~ん……」

もう俺は、彼女を以前と同じように見ることは叶わないだろう。
その可愛らしい顔、愛おしい唇、未熟な姿体は、俺の認識上で歪み、その女性を知ってしまったが故に性的なものへと変貌してしまった。

「…………さすがに、マズイよなぁ」

二つの意味でタブーを持つ彼女に不本意ながらも手を出した自分を絞め殺してやりたい気分だった。

数日後、特に俺と彼女の関係に何か変化があったかと思えば、そうではない。

何の変化もなく、依然としてアイドルとプロデューサーの立ち位置で仕事に励んでいる。恋人になったわけでも、あまつさえあれから行為に至ったことも無かった。

時折、ふと思ってしまう。

あの時のことは夢で、彼女との間には何も無かったのではと。

だが、そんなことを考えてしまう同じタイミングで、彼女はいつも誰にも気づかれないように小さくサインするのだ。

唇に人差し指を当て、 軽くキスの仕草をする。



あの時と同じ獲物を狙う獣のような瞳で。


おしまい


デレステでHotel moonsideのセンター若葉さんにしたら開幕ドヤ顔からの少しの色っぽさがやばかったので放出した。

疲れてるのかな俺

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom