後輩「先輩は鈍感過ぎますよね」(49)
男「えっ?そうかな」
後輩「鈍感…というか、自分に無頓着というか」
男「んー、自分じゃ良く分からないよ」
後輩「どうして、告白断ったんですか?」
男「あぁ、知ってたんだ」
後輩「そりゃ、校内一の美人さんが振られたんですから」
後輩「噂だって耳にします」
男「そっか」
後輩「それで、振った理由は?」
男「振った理由かぁ」
男「………僕が好きじゃなかったからかな」
後輩「好きじゃなくても付き合ってから好きになることもありますよね」
男「それは、嫌だな」
後輩「嫌って、何がです?」
男「僕は、好きになったこと付き合いたい…のかな?」
後輩「何故、疑問系…」
後輩「先輩は好きな人いるんですか?」
男「んー、どうだろうね」
後輩「何ですか、それ」
男「いない…と思うんだけど」
後輩「けど?」
男「…………」
後輩「先輩?」
男「ごめん、もう帰るね」スタスタ
後輩「あっ…………」
───
──
─
喫茶店
男父「よぉ、久しぶりだな」
男「…………話は?」
男父「いや、久しぶりの再会なんだからもうちょっとだなぁ」
男「用件は?」
男父「はぁ、相変わらず可愛げがないよ、お前は」
男「貴方の息子だからですよ」
男父「これ、渡しに来たんだよ」スッ
男「これは?」
男父「お前にも前に話しただろ、うちの家系が代々引き継いできたもんだ」
男「指輪、ですか」
男父「あぁ、もう渡した相手がいないからな」
男「…………」
男父「それと銀行の金もお前が好きに使っていい」
男「あんな大金、学生に使わせるんですか」
男父「あぁ、お前が好きに使え」
男「……母さんは、最期まで貴方を待ってましたよ」
男父「そうらしいな…」
男父「最愛の息子に看取られたんだ、幸せだったろうよ」
男「幸せ…?」
男「ずっと待ってたんですよ…貴方を」
男「でも、貴方は来なかった!」
男「最期の瞬間まで貴方を待ってたのに!」
男父「……………………」
男「っ………!」スタスタ
───
──
─
翌日 図書室
後輩(あっ、先輩……)
男「……………………」ペラ
後輩(………………)スタ
後輩「相席、よろしいですか?」
男「どうぞ」ペラ
後輩「ありがとうございます」スタッ
男「………………」ペラ
後輩「………………」ジッ
後輩「先輩って所作が綺麗ですよね」
男「急に、どうしたの?」ペラ
後輩「一つ一つの動作がキラキラしてます」
男「ちょっと意味分からないよ」
後輩「私には、そう見えるんです」
男「…………へぇ」ペラ
後輩「見てて飽きません」
男「………………」
後輩「何かありました?」
男「どうしてそう思うの」
後輩「何だか不機嫌そうなので」
男「…そう見えるんだ」
後輩「ずっと先輩を見てきたんですよ、これくらい分かります」
男「そんなに見てるの?」
後輩「はい」
男「どうして?」
後輩「先輩が好きだからですよ」
後輩「何度も告白してるじゃないですか」
男「そうだっけ…?」ペラ
後輩「まぁ、先輩が私に興味が無いことは前から知ってましたけど…」
男「じゃあ、何度も告白する必要ないじゃない」
後輩「今までの告白、全否定ですか」
男「君、凄くモテるんだし彼氏なんて直ぐに出来るでしょ」
後輩「私は先輩の彼女になりたいんですよ」
男「………………そう」ペラ
後輩「先輩は私と初めて会った日のこと覚えてますか?」
男「覚えてるよ」
男(忘れるはずがない)
男(だって、あの日は──)
後輩「雪の降った日に、公園で私に雪の兎を作ってくれましたよね」
男「そういえば、あんな日に結局誰を待ってたの?」
後輩「えっ?」
男「雪が降ってる中、公園で一人誰か待ってたでしょ?」
後輩「えっと、そうでしたっけ…?」
男「君が人を待ってるって行ったんでしょ」ジト
後輩「あれは、まぁ…確かに待ってましたけど」
後輩「その人はちゃんと来てくれたからいいんです」
男「ふーん…」ペラ
後輩「聞いておいて反応薄くないですか?」
後輩「先輩って本当に私のこと何とも思ってないですよね」
男「どうだろうね」ペラ
後輩「確かに私は良いところもないし」
後輩「誇れるところなんて、この胸くらいですし」ポヨン
男「そんなことないよ」
後輩「私の唯一の誇りも否定しますか…」
男「そうじゃなくてさ…はぁ」パタン
男「君に良いところがにないなんてことはない」
男「君は優しいし気遣いだって誰よりもできる」
男「人を思いやれるのは、そう簡単にできることじゃない」
男「君が誇れることなんて僕からしたら、たくさんあると思うよ」
後輩「せ…先輩……」
男「ふぅ…………」ペラ
後輩「ありがとうございます、先輩」
後輩「凄く嬉しいです、今の言葉家宝にします」
男「家宝になるような言葉じゃないから」
後輩「ふふ、そのくらい私は嬉しかったんですよ」
男「そう……………」ペラ
?「やっほー!!!」
後輩「っ?!」
男「………………はぁ」
?「なーに、溜め息なんてついてんのさ!」
男「ここは図書室なんですから、静かにして下さい生徒会長」
会長「ふふん、だが断る!」
副会長「はぁはぁ…会長ちゃん、急に走らないでよ…!」
会長「遅いよ、処女ビッチ!」
副会長「ビ、ビッチじゃないよ!」
男「処女なんだ」
副会長「ちょ、男くん!そこは反応しなくても…」
会長「とりあえず、この腐れビッチは置いといて」
副会長「………………ふふふ、会長ちゃん?」ニコ
会長「男っちゃんは何してんのー?」
男「それより副会長さんどうにかしないと、命無いですよ」
会長「親友だから許してくれるさ、ねっ、副会長!」
副会長「親友でも許せないこ──」
会長「んでんで、男っちゃんは家に帰らず読書かい?」
副会長「ぐぬぬぬっ!」
男「そうですけど、もう帰ります」
会長「おっ、帰ってオナニーするんですな」
後輩「お、おな…?!」
会長「おやおや、この可愛らしい子は男っちゃんの彼女かな?」
後輩「あっ、いえ…私は男先輩の後輩です」
会長「ふむふむ、なるほどね」
会長「しっかし、ご立派ご立派」
後輩「えっ、何がです?」
会長「おっぱいがっ!」
後輩「………………え」
副会長「会長ちゃん、普通にセクハラ止めてね」
会長「同性同士なら問題ないっ!」
副会長「いや、近くに異性もいるんだし…」
男「帰りますから、お好きにどうぞ」スタスタ
副会長「あっ、ちょ、ちょっと待ってよー」スタスタ
会長「さて、と」スタッ
後輩(あれ、会長さんの雰囲気が…)
会長「二人っきりになったことだし、ちょっとお話しよっか」
後輩「は、はい」
会長「後輩ちゃんはいつから男と知り合ったの?」
後輩「呼び捨て何ですね」
会長「まぁ、同級生だからね…それで?」
後輩「えっと、小学校の時です」
会長「へー、なるほどね…じゃあ、君が…ふむ」
後輩「会長さん…?」
会長「私はね…昔、男に凄く助けられてね」
会長「だから、あの人には幸せになってもらいたいの」
後輩「会長さんが幸せにしてあげないんですか?」
会長「おやおや?敵に塩をおくるのかい?」ニコ
後輩「敵って…」
会長「だって、男のこと好きなんでしょ?」
後輩「片思いですよ」
会長「そうかねぇ」
後輩「?」
会長「残念ながら私じゃ、あの人を幸せには出来ないよ」スタ
会長「それは、後輩ちゃんのお仕事」
後輩「相手にもしてもらえないのに…幸せになんて」
会長「後輩ちゃんになら出来るよ」
後輩「どうして…」
会長「だって、あの人は後輩ちゃんを見る目だけは違うから」
後輩「………………」
───
──
─
副会長「もう帰っちゃうの、男くん?」スタスタ
男「何か用事でもあるの?」スタスタ
副会長「良かったら生徒会室に寄っていかない?」
副会長「久しぶりに男くんと、お話したいから」ニコ
男「少しだけなら、いいよ」
副会長「ではでは、行きましょう!」
生徒会室
副会長「こうして話すの、本当に久しぶりだね」
男「まぁ、あまり会わないから」
副会長「そうだよね…」
副会長「ねぇ、さっき一緒にいた子」
副会長「不思議な子だね」
男「不思議?」
副会長「うん、凄く不思議な雰囲気だった」
男「………………」
副会長「男くんだって、感じてるんでしょ?」
男「どうかな」
副会長「あの子、後輩ちゃんだっけ…?」
副会長「好き、なんですか?」
男「そう見える?」
副会長「少なくとも好意的には見えます」
男「まぁ、昔から一緒だったから」
副会長「それなら私や会長ちゃんもですよね」
男「それよりも前からだから」
副会長「…そうですか」
副会長「男くんってあんまり人に興味なさそうなのに」
副会長「後輩ちゃんには興味あるように見えたよ?」
男「興味…ね」
副会長「私達にも昔は興味持ってくれてたのに」
男「今でも持ってるよ」
副会長「そうは見えないよー」
副会長「最近、よく昔のこと思い出すの」
副会長「男くんが私達二人を助けてくれた時のこと」
男「助けたなんて、大袈裟だよ」
副会長「助けられたよ、だって救われたもん私も会長ちゃんも」
男「そう、なら良かったよ」
副会長「男くんは覚えてくれてるの?」
男(今日はやけに昔のことを思い出す日だな)
男「忘れられないよ、あんな事」
副会長「ふふ、私も忘れられないよ」ニコ
男「もう帰るよ、暗くなってきたし」スタ
副会長「ありがとう、お話に付き合ってくれて」
男「別に、久しぶりに話せて良かったよ」
副会長「…そういうこと言われると喜んじゃうよ?」
男「別にいいんじゃない」
副会長「じゃあ、喜んでおくね」ニコ
男「ん、またね」
副会長「バイバイ、男くん」
ガラララ
───
──
─
ザザッ
?『あの桜の木は死んでしまったの』
男『もう咲かないの…?』
?『えぇ、今は咲かないわ』
男『じゃあ、いつかは咲くの?』
?『そうね、また栄養をあげれば咲くと思うわ』
男『栄養って…?』
?『男は何だと思う?』
男『お水!』
?『ふふふ、そうねお水も大切な栄養ね』クス
?『でも、あの桜の木は特別でね』
?『お水だけでは咲かないわ』ナデ
男『んんっ…』
?『あの桜が咲くところを見れれば良かったのだけど…』
?『ねぇ、男?』
男『なーに?』
?『私の代わりに桜を見て…そして忘れないで』ニコ
ザザッ
───
──
─
パサッ
男「変な夢…」
男「何であんな夢を」ハァ
男「あの桜の木って…あの公園だったよね」
男「………いってみようかな」
公園
後輩「先輩、どうしてここに?」
男「それは僕が聞きたいんだけど」
後輩「私はこの桜の木を見に来たんです、先輩もですか?」
男「まぁ…うん」
後輩「そうですか、一緒ですね」ニコ
男「………………」
後輩「この桜の木は死んでいる」
男「え?」ゾク
後輩「昔、私に教えてくれた人がいたんです」
男「そう…どうして死んでいるのかな」
後輩「桜が咲かないからじゃないですか?」
男「でも、あの時は咲いてた」
後輩「私達が初めて会った時ですね」
男「うん、どうしてあの時は咲いたんだろ」
後輩「咲いた…のかな」
男「?」
後輩「先輩は桜、好きですか?」
男「嫌いじゃないよ」
後輩「私も嫌いじゃないです」
後輩「でも、この桜の木は嫌いです」
男「どうして?」
後輩「この桜の木は特別な時にしか咲かないんです」
後輩「だから嫌いです」
男「特別な時ってどんな時なの?」
後輩「………………」
男「君はこの桜のこと知ってるんでしょ」
男「なら教えてよ」
男「どうしてあの日、母さんが死んだ日にこの桜は咲いたのか」
後輩「先輩は桜の木の下には何が埋まってると思います?」
男「……………」
後輩「死体ですよ、人間」
後輩「桜は人間の血を吸って成長しピンクの花を咲かせるんです」
男「それは作り話でしょ」
後輩「そうですね、これは作り話です」ニコ
後輩「この桜の木は血なんて吸いません」
後輩「人の悲しみを吸うんですよ」
男「何それ……」ハァ
後輩「ふふ、信じられないですよね」
後輩「信じなくていいですよ、こんな話」
後輩「先輩この後、時間ありますか?」
男「特に用事はないけど」
後輩「それなら、デートしましょ!」
───
──
─
店員「お待たせしましたー、カップルパンケーキです」コト
後輩「わぁ、美味しそうですね先輩」
男「何ここ…」
後輩「パンケーキ専門店ですよ」
男「……………」
後輩「はい先輩、あーん」スッ
男「いや、僕はいらないよ」
後輩「聞いてなかったんですか、先輩?」
後輩「カップルパンケーキ何ですから、あーんしなきゃダメなんです」
男「そもそもカップルじゃないよね」
後輩「細かい事は気にしなくていいんですー」
男(一番、重要なことだと思うけど)
後輩「あーん!」ススッ
男「あむっ…」モグ
後輩「どうですか、お味は?」
男「甘いね」
後輩「恋の味ですね」
男「何それ」クス
後輩「やっと笑ってくれましたね、先輩」
男「君が変なこと言うからだよ」
後輩「やっぱり先輩の笑顔好きだなー」
男「はいはい」
後輩「流さないで下さいよ」
後輩「今度は先輩の番ですよ」
男「何が?」
このSSまとめへのコメント
未完結のものは未完結でわかるようにどうにかならないかな