クラーナ「ほう……不死者か、私の姿が見えるのか?面白い……」 (35)















これは孤独な物語



















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クラーナ「ほう……不死者か、私の姿が見えるのか?面白い……」





あの男……ザラマンが私の元を離れてから200年ほど経った今。

1人の不死者の男が私の目の前に現れた。


その男は大層な騎士の格好で、この病蔓延る『病み村』の毒沼を渡ってきたようだ。

全く無謀なヤツだ。




クラーナ「私はイザリスのクラーナ」



大方、世界から消え去ろうとしている『最初の火』を継ごうとする巡礼者の1人だろう。
この病みきった村を訪れる者など、それが目的としか思えない。

全く愚かなヤツだ。
人間風情が、あの偉大なるグウィン王の跡を継ごうとは。
つくづく人間とは愚かなものだ。


……しかしこの男……呪術の心得があるようだな。しかもかなりの腕前……よくぞ人の身で、我らの見出した炎の業をここまで会得したものだ。


どれ……ひとつ暇をつぶしてみようか……

クラーナ「人の身で私は姿が見える者は久しぶりだ……才もある……」


クラーナ「お前も私の呪術が目当てなのか?あのザラマンのように……」





『YES』






だろうな。

呪術を扱う者として、ザラマンの名を出せば食いつくのは当たり前だ。

あの馬鹿弟子……私の元を離れてからは、それなりに名を馳せたようだからな。
あれ以来一度も顔を見せずに逝ってしまったようだが……




……フン……




まぁ、これも私の指導の賜物か。

クラーナ「ふうん、そうか、そうだろうな」

クラーナ「だったらお前を私の弟子にしてやろう」

クラーナ「だが私の呪術はそれなりの糧を必要とするぞ?お前に応えられるかな?」


答えはわかっている。

欲しいのだろう?私の呪術が。このイザリスのクラーナの炎の業が。






『YES』







ほらな。欲深い、卑しい人間め。



…………いや…………本当に欲深いのは…………



クラーナ「いいだろう……呪術とは炎の業、それを御する業」


…………本当に欲深いのは…………



クラーク「だがいいか?これだけは覚えておけ。炎を畏れろ。その畏れを忘れた者は、炎に飲まれ全てを失う」



クラーク「……もうそんなものは見たくないんだ……」





本当に欲深いのは私達だった。
















イザリス『……今こそ……炎を……我らのものに……』















クラーナ「ハッ!?」


『?』


クラーナ「……いや……何でもない……それよりもどうだ?少しは成果は出たのか?」





『YES』





フン。
どうやら中々に見込みのあるヤツだ。
当分の暇つぶしにはなりそうだな。



……この世界から火が消え去るまでの暇つぶしには……



クラーナ「よし、行ってこい。馬鹿弟子が、亡者に何かなるんじゃないぞ。かけた時間が無駄になる」



せいぜい足掻くがいい……人間……



人間風情には、どうせこの先の『目覚めの鐘』に居つく私の妹にすら敵わないのだ。







クラーク『姉上!!姉上ッ!!私達の都が!!母上が!!』








……私の可愛い……変わり果てた姿になってしまった愚かな妹に……


……………………



ゴォォォオオオンッ!!!

ゴォォォオオオンッ!!!


クラーナ「ッ!?」


病み村の『目覚めの鐘』が鳴り響いている。

まさか……討たれたのか?私の可愛い妹……あのクラークが……



クラーナ『あの子はもう長くはない……せめて私達の手で葬ってあげたほうが……』

クラーク『私は……あの子を守り続けるつもりだ。……人間の為に、病の元を自ら飲み込んだ、あの愚かな妹を……姉上……ここでお別れです』



クラーナ「…………また1人、逝ったのか…………私を知る者が…………あの呪われた都から共に逃れた者が…………」



半身を混沌に侵され苦しみ、それでもなお死を間近に迫った妹を守る為に戦い続けた私の可愛い愚かな妹よ…………


永遠に眠るがいい。


そしていつかまた会おう。


あの都で苦しむ母と妹達を送った後に。


……………………




あれからどれくらいの時間が経ったのか。

短いのか、長いのか……長き時を生きる私にはもはや判断はつかないが、再びあの男が毒沼を渡ってきた。



クラーナ「あぁ…………お前か。待っていたぞ、早速始めようか」


この男が背負う武器からは、クラークのソウルの匂いがした。
我らがイザリスの一族と、混沌の炎の入り混じった匂いが。


お前がやったんだな。馬鹿弟子。




『?』




いいんだ。



あの子を……クラークを解放してくれてありがとう。


……………………





クラーナ「イザリスの魔女か……すまんがその話はやめてかれないか」


『?』


馬鹿弟子が、私の正体に勘付いたようだ。


馬鹿弟子でも馬鹿ではなかったか。
それもそうだろう。これほどの呪術を扱う者など、イザリスの一族以外にいるはずもない。

……というより、最初にイザリスのクラーナと名乗ってしまっていたな。馬鹿か私は。






だが馬鹿弟子よ。
女に過去を問うヤツがいるか。
だからお前は馬鹿弟子なんだ。









クラーナ「私は母も、妹達もすべて棄てて、逃げ出したんだ」


クラーナ「そして罪を滅ぼすといい、探求のふりをしている……卑怯者だよ」

そう。

私は棄てたんだ。


母も。
妹も。
都も。

全てを棄てた、一族の卑怯者。






グラナ『私はあの都に帰るよ姉さん。……せめて私だけでも、母さんや他の姉さん達を見守ってあげたいんだ』






私は止めなかった。

私は共に行こうとはしなかった。

仕方ないじゃないか。

怖かったんだ。

母の創り出したあの炎が。

全てを飲み込み、異形の化け物を生み出していくあの炎が。

その苗床と化した母や妹達が。







『……』








クラーナ「成果なしか……まぁ馬鹿弟子には忍耐も必要だろうさ。少しは気にしろよ」





……だから馬鹿弟子……





いつか私はお前に、私の全てを伝えよう。

そしてお前なら出来るかもしれない。

この世界の火を継ぐことが。

母と妹達を解放する事が。


……………………



クラーナ「あぁ、お前か。よく無事でいたな。もうダメかと思ったぞ」



馬鹿弟子のソウルが一段と強くなっているのを感じた。

あの裏切り者の公王達を。

死者を統べるニトを。

そして狂気に満ちた白竜シースを討ったのだろう。

これで残る最初の王はただ1人。






…………お前ならやれると信じているぞ。馬鹿弟子よ…………






クラーナ「なぁ、お前……ひとつ頼みがあるんだが……私の母イザリスは、かつて最初の王の1人だった。最初の火の側でソウルを見出し、その力で王となったのだ」







イザリス『世界を創り出した火を我が一族の手に……世界を我が手に……』






クラーク「……そして母は、その力で自分だけの炎を創り出そうとし……それを制御できなかった」

愚かな母よ。

私達は、最初の火の力のほんの一部を使っていただけ。

最初の火そのものを創り出すことなど出来るハズがなかったのに。

それに気づかないまま異形と化した母よ。





クラーナ「混沌の炎は、母も妹達も飲み込み、異形の生命の苗床にしてしまった。……だが、私だけは逃げ出してこんなところにいる」



卑怯者と言われてもいい。



クラーナ「母も妹達も、ずっとずっと苦しんでいるというのに……」




裏切り者と思われてもいい。





クラーナ「だからお前に頼みたい……母と妹達を、混沌の炎から解放してやってくれ」





だからどうか馬鹿弟子よ





クラーナ「私にはできない……その力も、覚悟もない……だがお前なら……」





だからどうか馬鹿弟子よ





クラーナ「勝手な事だとはわかっている……だがお願いだ。皆を解放してやってくれ……」





母と妹達を殺してくれ





クラーナ「母の野心が不遜なものであったとして、もう1000年だ。償いは済んでいるだろう」





イザリスの罪を、お前が断ち切ってくれ









頼む






















『YES』




















……………………




クラーナ「お前……よくやってくれたな……ありがとう、お前に会えて本当によかったよ」




母や妹達が、1000年の苦しみから解放されるのを感じた。

母と妹達を見守り続けたグラナのソウルが、この男に宿っているのを感じた。



クラーナ「もうとても馬鹿弟子なんて呼べないな」





終わったのだ。

イザリスの一族、1000年の悪夢が。





クラーナ「私では碌な礼も出来ないが……これが私の全てだ。受け取ってくれ」


『炎の大嵐』


私が1000年かけて編み出した究極の呪術。

お前なら……いや、貴方なら扱う事が出来るはずだ。

王を……最初の火を継ぐ者よ。










……ズキンッ……

…………あぁ…………そうか…………



貴方は最初の火を継ぐ者……『薪の王』として、次の世界終焉まで、最初の火に焼かれ続ける者……





クラーナ「……もうお前に教える事は何もない……」





もう貴方がここに来ることは2度とない。


私はまた1人になるのか。


今度こそ、本当の1人に。


それは寂しいな。





…………だが…………





クラーナ「…………フッ…………そろそろお別れだ。短い間だったが楽しかったよ」



それが貴方の使命なのだろう。

最初の火を継ぎ、世界を終焉から救う事が。

ならば最後は笑って送り出してやろうじゃないか。




……さらばだ……王よ……






クラーナ「馬鹿者が、はやくいかんか。……私ではもう、何もしてやれんぞ」





ありがとう





馬鹿弟子よ





















『NO』




















クラーナ「……え?」




……何を言っているこの馬鹿弟子は……




クラーナ「何を言っているんだお前は……私に構うな。お前にはやるべき事があるだろ?わかったらとっとと行け」





『NO』





…………一緒に来いだと?何を馬鹿な事を…………




クラーナ「……もう1度言おう……私のことなど気にするな。お前には散々世話になったんだ。これ以上助けてもらうわけにはいかないよ」




『NO』




これまでの礼がしたい?馬鹿言うな。礼などいらん。むしろこっちが礼をし足りないくらいだ。だがこれ以上私がお前にあげられるモノなぞ……


ハッ!?まさか……そうか。私の身体か……いいだろう……光栄に思え。

我がイザリスの一族の身体、人間如きが味わえるなど世界が終焉を迎えてもあり得ない事だ。
これまでの礼を含め、お前の精を全て探り取ってやろう。何、人間との間だ。恐らく子は宿らない。思う存分吐き出すがいい。
…………フッ、誠心誠意尽くしてやるよ…………馬鹿弟子め…………


















『NO』















お前ふざけるなよ?だからお前は馬鹿弟子なんだ。
女の誘いを……しかもこんな極上の女の誘いを断る馬鹿がどこにいる。……まさかお前男色の気が……






『NO』グイッ







とにかく来い?ッ!?ちょ、ちょっと待て!引っ張るな馬鹿弟子が!!


『隠し扉の先』



クラーナ「…………そんな…………」

混沌の娘「……その声は……クラーナ姉さん?」



馬鹿な……私は夢を見ているのか?
何故この子が……まだ生きているのだ?



混沌の娘「……クラーナ姉さん……また会えてよかった……クラーク姉さんが連れてきてくれたの?」

クラークはもう…………そうか……この子はまだ知らないのか……


クラーナ「そうだ……ただ、クラークは少し遠いところに行ったんだ……心配するな、可愛い妹よ……これからは私が側にいよう……この世界が終わるまで……」

混沌の娘「……そう……ありがとう……姉さん……」







『…………』ザッ!!


クラーナ「……行くのか?馬鹿弟子……」


『YES』


クラーナ「そうか……最後までありがとう。これで私はもう、1人じゃなくなったよ……」






……今度こそ……






クラーナ「達者でな。王よ」


『YES』

時代は流れていく。


幾たびも火は陰り、その度に別の王が火を継いでいく。


そして、いつか本当の終焉が訪れる。







太陽王グウィンの時代から流れ、ロスリックの時代……1人の『火の無い灰』が、古きこの遺跡に訪れた。


魔術によって隠された部屋にて横たわる異形の者と1人の亡骸。


それらは最後まで離れることはなかった。










『…………また会えたな…………母上……そして妹達よ』












爛れ続けるもの「姉さーん」フリフリ

クラーナ「ん?……!?そ、そういえばお前もいたな。弟よ……」


終了です。

ダークソウルのクラーナ師匠でした。

ダークソウル→ダークソウル3でノーヒントで進んでて、混沌の娘と共に死んでいるのを発見した時は鳥肌立ちました。マジで。

ではまた、何か書いた時はよろしくお願いします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月25日 (金) 17:49:05   ID: Nzw2LvS2

ダクソのss探したらこんな良作が…

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