ルパン「マッカーサーの置き土産」 (40)
注意
『ルパン三世』のオリジナルSSです。
原作、アニメ、TVスペシャルなどとの相違点あり。
パラレルワールドだと思って読んで頂けたら幸いです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479620433
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─PM09:32 アメリカ合衆国 ニューヨーク─
「……」スッ
ピピッ プシュウゥゥゥゥゥゥ…
「……ヌフフ」
「見つけたぜ、お宝の在り処ちゃん」ニヤ…
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ビーーーーー! ビーーーーー! ビーーーーー! ビーーーーー!
<侵入者あり、ファイルの保管庫をやられました!>
「何としても捕らえろ、あれは軍事最高機密だ」
「総司令部の名に賭けて、侵入者を外に出すな」
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ババババッ─ ババババッ─
「……けっ」タタタッ─
「なんでぇ本丸は案外穴ぼこだらけじゃんか」ポイッ
シュウウウゥゥゥゥゥ……
ゲホゲホッ マエガ…
「色々用意したってのに、興ざめだねー」
「──っ!」バッ─
バリイィィィィン─
「ほいじゃあ、お邪魔しました~!」
『マッカーサーの置き土産』
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─AM10:21 アメリカ合衆国 某所 ルパンのアジト─
シャアアァァァーーーーー─…
…………。
……。
ルパン「ふぃー、仕事したあとのシャワーは最高だね~」
次元「で、何を盗んできたって?」
ルパン「ん……」ファサッ
次元「これか、おめえさんが持ち出したGHQファイルってのは」
ルパン「かつて日米間で大戦があったのは言うまでもねえ。
敗戦後しばらくの間アメちゃんに統治され、憲法までもが書き換えられた」
次元「その間に作られたのが、このファイルか」
ルパン「その通り、カテゴリーとしては軍事機密だから流石に苦労はしたがな。
ま~俺の手にかかりゃあちょろいもんさ」
次元「わからねえな。こんな物騒なもん盗むたあ」
ルパン「それがよ? 最近になって国連の中で密かに話題になってるのが、
このGHQファイル……通称『マッカーサーの手記』だ」
次元「そらまた一体……」
ルパン「この文言の中にはな、ある特殊なパターンで構成された暗号が隠されている。
そう明かしたのが、アーサー・マッカーサー4世ってわけさ」
次元「四世……あの元帥の息子か」
ルパン「現在最高峰のスパコンによって解析が行われているらしいが、
未だにその謎は明かされていない」
ルパン「だからそのファイルの暗号を先に解き明かして、
ルパン様がお宝を手に入れちゃおうってわけ」
次元「なるほどな……で、その最高機密の話はどこから出たんだルパン?」
ルパン「えっ? いや、まあ……そりゃあ……」タラタラ
次元「……また、あの女か」
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─AM11:12 アメリカ合衆国 ニューヨーク とある喫茶店─
?「じゃあ、あのルパン三世が盗み出したってこと?」
?「どこかから、情報が漏れていた。
君を疑るわけではないが、ご同行願えるかなミス不二子」
不二子「……あら、穏やかじゃないわね。
今日はゆっくりとデートを楽しむ予定じゃなくて?」
?「事態が変わった。『マッカーサーの手記』の暗号を
他の人間に解かれるわけにはいかない」
?「私達の機関を甘く見ないほうがいい。君のことも全て調べさせてもらっているよ。
今日君に単身で会ったのは、私個人の計らいだ」
不二子「……私を抱え込むっていうのなら、貴方について行ってもいいかも。
ねぇ、ラーク事務総長?」
ラーク「話が早くて助かるよ」
不二子「この対処は貴方の計らい? それとも機関の方針?」
ラーク「どちらでもあるし、どちらでもない。
ただの保険さ。手荒な真似をするつもりはないが、君はルパンの弱みだからね」
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次元「じゃあつまり、不二子がマッカーサーのせがれから情報を引き出した、と?」
ルパン「どんな手を使ったのかは知りたくもねえけどよ……」イジイジ
次元「んなこたあどうでもいいんだよ。それで、その情報を国連にタレこんだってか」
ルパン「そゆこと。まあ、不二子にしか出来ない芸当だわな」
次元「国連まで利用しようたあ、がめつい女だぜ……」
次元「じゃあ、おめえに情報を流した理由はなんだ。
暗号を解かせるだけ解かせて、あとはいつも通りなんてことはねえだろうな?」
ルパン「不二子には不二子の仕事があるのさ。
俺たちの犯罪ファイルを全て抹消するって仕事がな」
次元「……仕事の物々交換、ってわけか」
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─PM02:46 ニューヨーク 国際連合本部─
コンコンッ
ラーク「タックスか?」
タックス「はい、お連れしました」
ラーク「通してくれ」
ガチャッ
?「お会いできて光栄であります、ラーク事務総長」ビシッ
ラーク「ルパン逮捕のエキスパートである君を呼んだ理由は
聞いているね、ミスター銭形」
銭形「はっ! 必ずやルパンを逮捕し、GHQファイルを奪還してみせます」
ラーク「では、捜査に入りたまえ」
銭形「失礼します!」バタンッ
…………。
ラーク「……なぜ隠れる、君は今日付けで私の秘書官だ」
不二子「顔馴染みなのよ、銭形は」コソッ
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ルパン「ここをこうして、それからこう……」カタカタ
次元「どうだ、何か分かったか?」
ルパン「じぇーんじぇん。スパコンが未だに解析出来ないのも無理ねえぜ」
ルパン「本当に暗号なんてあんのか? このファイル……」カタカタ
次元「不二子も、おめえさんの頭に賭けたんだろうがな」
ルパン「俺ぁただの人間だっての……」カタカタ
…………。
ルパン「…………俺の頭に賭けた、ねぇ」
カタカタ… カタカタ…
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カツカツ… ガチャッ
ラーク「どうだね、解析の方は?」
解析班「いえ、何の数字が出てきただけで」
ラーク「数字?」
解析班「はい。『34』という数字が出てきただけです」
ラーク「……続けろ。ルパンに出し抜かれる前にな」
解析班「は、はいっ」
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ルパン「『34』……ここで手詰まりだ」
次元「なんの数字だ?」
ルパン「わからねえ……だが、何か意味があるはずだ」
ルパン「GHQファイル……『34』の数字……」
ルパン「…………、んー?」
次元「どうしたルパン?」
ルパン「わか、ちゃったかも? いや、しかし……」
次元「しかし……なんだよ」
ルパン「こりゃあ、俺の手に余るお宝かもしれねえ」スクッ
次元「……おい、何してるんだ」
ルパン「荷造りだよ、次元も急げ」
次元「いったいどこに行こうってんだ?」
ルパン「決まってるだろ。かつてのGHQ統治下……日本だよ」
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prrrrr… prrrrr…
ラーク「……私だ」
『ニューヨーク管理局の情報によると、
ルパン三世と次元大介がアメリカを発ちました。行き先は東京です』
ラーク「なに、日本に向かった……? 分かった」ガチャッ…
ラーク「……まさかルパン……暗号を」
不二子「まんまと出し抜かれちゃったようね……」
ラーク「っ……! 貴様が流したんだろうが、その情報を!」
不二子「やだ、いい大人が私にあたらないでよ。
決め付けなんて酷いわ……」
ラーク「……まあいい、何としてでも最後は私達が目的を果たす」
ラーク「タックス! いるか!」
タックス「は、はいぃ!」
ラーク「ミスター銭形と特殊部隊を日本に派遣しろ、今すぐにだ!」
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キィィィィーーーーン─…
─AM09:43 東京 羽田空港─
ルパン「はい到着~、久々だなぁ」
次元「で、これからどうするんだ?」
ルパン「お姉ちゃん、アイスクリーム二つ~」
店員「お味はいかがなさいますか?」
ルパン「お姉さんのおススメでお願い」
店員「はいっ、かしこまりました」
次元「…………」
ルパン「ほれ、次元ちゃん」
次元「抹茶か……甘いのは苦手なんだよ」
ルパン「まあまあ、せっかく帰ってきたんだからさ」
ルパン「ペロペロしたら……これ着てすぐに向かうぞ」
次元「ん……だっせぇ色のスーツだな」
──
職員「はぁ……東京都民すべての戸籍謄本ですか?」
ルパン「はい~。過去の事件をちょっと調べてまして」
ルパン「戦後直前の資料を拝見したいんですよ。
年代の方は1945年から5年間のものでよろしくさん」
職員「……少々お待ち下さい」
ルパン「よろしく~」
次元「……おい、どういうこった」コソ…
ルパン「まあ大人しく資料を待とうぜ」
職員「……すみません。現在追っている事件について、
上司の方にお訊きたいのですが。
お繋ぎしてもらってもよろしいでしょうか?」
次元「……っ!」
ルパン「少々お待ちを、今掛けますので……」ピッピッピ
ルパン「どうぞー」
職員「……代わりました。はい……」
次元「誰に掛けたんだよ」コソ…
ルパン「五右衛門ちゃんに頼んどいたのよ」コソコソ
次元「マジか、アイツに務まるのかよ……」
職員「はい、では……ありがとうございます。
それではこちらへ」
ルパン「はいはい~」
次元「……奇跡だな」ボソッ
──
ルパン「…………」ペラ…
次元「…………」ペラペラ…
ルパン「……いた。この人だ」
次元「おい、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねえか?」
ルパン「『マッカーサーの手記』の謎……それは簡単な洒落に過ぎなかったのさ」
次元「洒落だと?」
ルパン「ああ、『34』という数字。それが隠されていた『GHQファイル』。
この二つを合わせないと謎は解けなかったんだ」
ルパン「ファイルは日本語で『記録』。それを平仮名に起こしてから、
戦前の横書き表記にする。それを今の読み方にするんだ。
つまりは逆さ読みだな」
次元「逆さ……『クロキ』か?」
ルパン「ご名答~。それに加えて『34』、これは単純に読んで『ミヨ』だ」
次元「……『クロキミヨ』、人名か」
ルパン「ああ。それでここに来て調べてみたら、予想通り」
『黒木ミヨ 当時二十五歳』
次元「お宝の匂いはまるでしねえな」
ルパン「ああ。だが、ちょっと興味が湧いちまった。
ここまで調べたらな」
次元「……ったく、あとはお前だけでやれよ。
今回は俺すら必要ねえヤマだ」
ルパン「そうだな。付き合ってくれてあんがとよ」
次元「……先に飲んでるぜ。早く終わらせるんだな」
ルパン「おっ、いいね~」
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─AM11:50 東京 某所─
銭形「むぅ……ルパンが東京に」
銭形「ファイルと関係があるのか?」ズルル─
銭形「……何が目的だ、ルパン」
店主「警部さん、替え玉は」
銭形「二玉」ズルル─
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─AM12:10 東京 とある居酒屋─
?「それで、今はルパンだけで行動していると」
次元「ああ。それにしてもよく市職員を騙し通せたな五右衛門」
五右衛門「う、うむ……少々口調には苦戦したでござるが」
五右衛門「まったく、ヤツの酔狂にもほとほと呆れるばかりだ」
次元「まあ、ゆっくりあとで話でもきこうぜ。
酒の肴くらいにはなるだろう」
五右衛門「確かに、そうでござるな」
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─PM02:11 東京 文京区 某所─
ルパン「……」ピンポーン
?「はい、少々お待ちくださいー」
ガチャッ
?「……えっと、どなたです?」
ルパン「庭先のお花、綺麗だね~。君は、ここの家主さん?」
?「いえ……母は今買い物に出ています」
ルパン「そうか。じゃあ君でいいや、かわいこちゃんだし。
ちょっと付き合ってくれないか」
?「えっ、いやあの……貴方は、どちら様ですか?」
ルパン「通りすがりのマッカーサー、ってまっさーかー!」
…………。
?「え、えっと……怪しい人?」
ルパン「……ごめんね、冗談。ただのおじさんです」
──
ルパン「美鈴ちゃんか、ごめんよ急に連れ出しちゃって」
美鈴「いえ、なんだか悪い人ではなさそうだから」
ルパン「もしかしたらわるいわるーい泥棒さんかもよ~」
美鈴「ふふっ、それこそまさかですね」
ルパン「へへへ……まさかだよねぇ~……」
美鈴「それで、なんで突然訪ねて来たんですか?
思い当たる節がないのですが……」
ルパン「ちょっと、君のばあちゃんについて訊きたかったもんでさ」
美鈴「おばあちゃん……?」
ルパン「そう。君のばあちゃんと、粋な外国人について」
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銭形「んっ、んぐぅ……!」ドンドン
銭形「っ……んなにぃ、ルパンが新宿方面に!?」
銭形「すぐに向かう、ちょっと待ってろ!」ピッ
銭形「あ、おばちゃん! お土産に団子10個!」
おばちゃん「一個サービスしとくね」
銭形「ありがとうございますッ!」
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美鈴「マッカーサーが、おばあちゃんと知り合い?」
ルパン「ああ、『黒木ミヨ』……アンタのばあちゃんだろ?」
美鈴「ええ。そうですが……」
ルパン「少し調べさせてもらったんだがな。
美代さんはひどい皮膚病を患っていたそうだ」
ルパン「当時だったら、莫大な医療費がかかったはずだ。
しかし、数年後には病気は完治していた」
ルパン「特別家庭が裕福だったわけでもないのに、だ」
美鈴「……支援、してくれていたの?」
ルパン「多分、な」
美鈴「……私も、小さい頃に皮膚の病気を抱えていました。
そんなに重度なものではなかったですが」
美鈴「よくお母さんに『庭に咲いてる花はね、お肌にすごい効くのよ』
って教えてもらいました。セイタカアワダチソウのおかげで、
私は病気を克服したんです」
ルパン「あの花は、かつて『マッカーサーの置き土産』として呼ばれてたんだ」
美鈴「そうなん、ですね」ニコッ
ルパン「やっぱり粋な野郎だぜ。ダグラス・マッカーサー」
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─PM03:32 東京 とある墓場─
ルパン「東京の真ん中たあ、いい場所に埋めてもらってるねえ」
美鈴「うちの家系……おばあちゃんは、
生粋の東京人だったらしいですから」ニコッ
美鈴「お正月と、お盆にしか来てなかったけど。
いい機会をありがとうございます」
ルパン「いや、俺も参らせてもらえるたあ光栄だよ」
美鈴「…………」スッ
ルパン「……、……」スッ
ルパン「……ばあちゃんに挨拶はすませたかい?」
美鈴「ええ」
美鈴「また来るね、おばあちゃん」
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美鈴「家に、古いレコードがあるんです。よくおばあちゃんが
フォークソングを聴いていたってお母さんから聞いたことがあって」
美鈴「今日、帰ったら聴いてみようかな」
ルパン「少しは、ばあちゃんの気持ちが分かるかもな」
美鈴「ふふっ、そうですね」
美鈴「どういう関係だったのかは、あまり知りたくないけど……
でも、きっといい人だったんでしょうね」
ルパン「ああ。軍事機密書類に名前を残すくらいには、
ロマンチストだったんだろうぜ」
銭形「みつけたぞおおおおおおルパーーーーン!!!」ダダダダダ─
美鈴「っ!?」
ルパン「っていいとこなのに!」
ルパン「相変わらず見つけるのが早いこってぇとっつぁん!」
銭形「大人しくGHQファイルを返せええええ! ついでに逮捕だーー!!」
ルパン「こんなもんもういらねえよ──!」バッ
銭形「どぁっ!? ちょっと待てコラ! ルパン!」
ルパン「軍事機密なんだからしっかり回収しろよなとっつぁーん!
ヌーフフフフ!」タタタ─
銭形「ぐぅぅ、ルパンめぇ……」ワナワナ
美鈴「あの、大丈夫ですか?」
銭形「ああ、どうも……あの男に何かされませんでしたか?」
美鈴「え、いえ。特にはなにも……」
銭形「あ、この資料の中身は見てないでしょうな!?」
美鈴「ええっ? は、はい……」
銭形「ならばよし。お礼にお団子、お一ついかがですか?」パクッ
美鈴「い、いただきます……」
銭形「むぅ、うふぁんふぇ……」モグモグ
美鈴「……」パクッ
美鈴(……ありがとう、ルパンさん)
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─PM04:23 ニューヨーク 国際連合本部─
ラーク「……は?」
ラーク「た、宝は存在しないぃぃ……?」
『はい。ルパン三世が解き明かしたのは、
どうやら女の名前だったそうで……』
『歴史的価値のあるものは、何一つないかと……』
ラーク「ぐぐっ、ぐぐぅ……マッサーカー!!」
不二子「親父ギャグなんてさいてー……」
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─PM07:43 東京 とある居酒屋─
ルパン「ええ、どういうことだよ不二子ぉ!?」
不二子『だってお宝はなかったんでしょう?
そんなの私の苦労と釣り合わないじゃない』
ルパン「でもさ、ちょちょいのちょいじゃない。
パソコンでさ~、ねっ、ねっ……?」
不二子「ちゃんと私のデータだけ消しときましたから、それじゃ・あ・ね!」ガチャッ
ルパン「……これって、俺が悪いの?」
次元「まあ、あの女にロマンもくそもねえってこった」
五右衛門「左様。とりあえず飲め、ルパン」
ルパン「生ビール飲んでるの? 五右衛門が?」
次元「ちっと、昼から飲ませすぎた」ボソッ
五右衛門「あとこれはポッポーでござる」
ルパン・次元「「ポッピーな」」
次元「だが、宝じゃねえってことは今回もタダ働きか」
ルパン「まあな。だが、宝みてえに美しいお話を手に入れたんだ。
それだけで、今日の酒は格別だぜ」
次元「ふん、ならいいんじゃねえか。今回は俺と五右衛門持ちだ」
ルパン「さっすがー! 嬉しいなぁ、じゃあ何飲みましょうかね~」
五右衛門「ホップーがいいでござるよ」
ルパン・次元「「だからホッピーだって」」
終わり
短いしヤマもオチも弱いですがおしまいです。
ルパンSSもっと増えてくれ乙!
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