ロック「あの子達を人食い虎にしちまったんだ!」ヘンゼルとグレーテル「タイガーアパカ!」 (25)

― ロアナプラ ―

グレーテル「タイガーアパカ!」デュクシッ

チンピラ「ウーオウーオウーオウーオ……」ドサッ



グレーテル「やったわ、兄様」

ヘンゼル「見事なアッパーカットだったよ、姉様」

グレーテル「だいぶ腕試しできたし、そろそろロアナプラを出ましょうか」

ヘンゼル「うん、そうしよう。運び屋にところに向かおう」

ヘンゼル「ところで、こいつはどうする?」

グレーテル「救急車を呼んであげましょう」

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― ブラックラグーン号 ―

ロック「このところロアナプラのあちこちで起こっていた連続暴行事件の犯人が」

ロック「君たちのような子供だったとは驚きだ」

ロック「だけど、どうして君たちはストリートファイトを繰り返したんだ?」

ロック「もし、街の大物に手を出したりしてたら、今頃命はなかったかもしれない」

ヘンゼル「それはもちろん、僕たちの鍛錬の成果を確かめるためだよ」

グレーテル「そうね、兄様」

ロック「そもそも、君たちはどうしてストリートファイターになったんだ?」

グレーテル「私たちが生まれたのは山の中、カルパチアの岩山の上」

グレーテル「いつも曇っててとっても寂しい場所だったわ」

グレーテル「お師匠様に引き取られてからは、ずうっと血と汗と鍛錬の中」

グレーテル「最初はね、よく兄様と話してたわ」

グレーテル「どうして神様は、私たちにこんなにも辛くあたるんだろう?」

ヘンゼル「だけど、僕たちは気づいたんだ。これは仕組みなんだって」

ロック「仕組み?」

ヘンゼル「神様は仕組みを作ったんだ」

ヘンゼル「自転車のタイヤが回るように世界を動かす力……」

ヘンゼル「それは自分より強い人に会いに行くことだって」

ヘンゼル「そのために世界が作られたのなら、僕たちがここにいる理由もそれだけなんだ」

ヘンゼル「殴って殴られてまた殴るんだ、そうやって世界は円環(リング)を紡ぐんだ」

グレーテル「だからね、お兄さん」

グレーテル「もう私たち、闘うのだって悲しくはないわ」

グレーテル「汗の臭いも、歓声も、トレーニングも、筋肉痛も、ムエタイも――」

グレーテル「今は大好きでいられるの!」

ロック「違う!」ガシッ

ヘンゼル「!」

グレーテル「!」

ロック「違うよ、世界は本当は……君たちを幸せにするためにあるんだよ」

ロック「血と汗と鍛錬なんて世界のほんの欠片でしかないんだ」

ロック「全てなんかじゃないんだ……!」

グレーテル「ねえお兄さん、あなたのような優しい人は初めてよ」

グレーテル「だから、ね」

グレーテル「お礼」

ロック「お礼……?」

グレーテル「準備はいい? 兄様」

ヘンゼル「いつでもいいよ、姉様」

ヘンゼル「タイガー! タイガー! タイガー! タイガー! タイガー!」シュッシュッ

グレーテル「タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ!」ピョンピョン

ロック「…………」

ヘンゼル「タイガー! タイガー! タイガー! タイガー! タイガー!」シュッシュッ

グレーテル「タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ!」ピョンピョン

ロック「…………」

ヘンゼル「タイガー! タイガー! タイガー! タイガー! タイガー!」シュッシュッ

グレーテル「タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ!」ピョンピョン

ロック「いでっ!」デュクシッ

レヴィ「うるせえんだよ、クソガキども!」

レヴィ「拳突き上げて飛び跳ねたり、得体の知れねえ衝撃波を飛ばすんじゃねえよ!」

レヴィ「船がブッ壊れるだろうが!」

グレーテル「怒られてしまったわ、兄様」

ヘンゼル「仕方ないよ、姉様」

ロック「あの……一発衝撃波が当たったんですけど……」

レヴィ「ダイヤの魂が入ってきたな、ロック」

ロック「いや、メチャクチャ痛いんですけど……」

――

――――

ロック「くそっ! くそっ! ちくしょう!」ガンッ

ロック「なんて……なんてことだ、あんまりだ!」

ロック「みんなが寄ってたかって、あの子たちを虎に仕上げたんだ!」

ロック「人食い虎にしちまったんだ!!!」

ベニー「……ロック、ああいうものをまっすぐ見るな」

ベニー「ここはそういう場所で、それが一番だ。それしかないんだよ、ロック」

ロック「俺が――」

ベニー「あの子たちを養うか? 無理だ。あの子たちはムエタイをやめられないよ」

ベニー「誰かがほんの少し優しければ――」

ベニー「あの子たちは学校に通って、友達を作り、幸せに暮らしただろう」

ベニー「でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック」

ベニー「だから――この話はここでお終いなんだ」

― 港 ―

ダッチ「久しぶりだな、サガット」

サガット「ああ、しばらくだ」

ダッチ「タイが誇るムエタイの帝王絡みの仕事を請け負うことができて光栄だ」

サガット「今の俺はもはや“帝王”ではない。強さを追い求める一頭の虎に過ぎん」

ダッチ「王の座から降りたことで、かえって鋭さが増したんじゃねえのか?」

サガット「ふん……」

サガット「ところで、あの二人はどうしている?」

ダッチ「ロアナプラで散々ストリートファイトして、恐怖の一夜を演出してくれたぜ」

サガット「ロアナプラでの武者修行はどうだった?」

グレーテル「とても楽しかったわ、お師匠様」

ヘンゼル「ピストル相手にもタイガーショットは十分通用するね、お師匠様」

サガット「そうか」

サガット(ひょんなことからこの妙な双子を弟子入りさせてしまったが)

サガット(この二人、アドンに勝るとも劣らない素質を秘めているのかもしれんな)

グレーテル「お兄さん!」

ロック「ん?」

グレーテル「またいつか会いましょうね。今度は二人で、ストリートファイトで!」

ロック「ああ、そいつは勘弁だな」

サガット「よし、二人とも、タイガーアッパーカットで涅槃仏のある修行場まで帰るぞ」

ヘンゼル「どっちが早いか競走しようよ、姉様」

グレーテル「負けないわよ、兄様」

サガット「タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ!」ピョンピョンピョン

ヘンゼル「タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ!」ピョンピョンピョン

グレーテル「タイガーアパカ! タイガーアパカ! タイガーアパカ!」ピョンピョンピョン



ロック「えええ……あれで移動すんの……」

ベニー「……ロック、ああいうものをまっすぐ見るな」





― 完 ―

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