とあるゾードム帝国軍人の話 (43)
アインハンダーというSTGに出てくるパルツィファルという最高(見た目)のロボットに関する話です。
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「なああの連中、アインハンダーな。また暴れたらしいぜ。」
”一本腕”、”死神”か…いいよな、出番のあるやつは話題に出て。
「おいおい、不謹慎だぞ。最近は帝都付近でも遠慮なしだぜ?」
<アインハンダー>
セレーネの悪足掻きじみた不可解な作戦行動には必ずついて回る名前だ。
対地対空なんでもござれ、弾薬まで現地調達しては局所的な被害をもたらす異形の戦闘機。
それを可能にしているのは一本の腕。
機体に取り付けられたソレでガンポッドやらを奪って継戦能力を保ってるという。
すでにセレーネの勢力圏なんて地球には残ってないにも関わらず散発的な襲撃は繰り返されていた。
アインハンダー自体はほとんど墜とされ続けていて帰れる見込みも少ないだろうに。
上層部は大規模な作戦の前準備だろうと読んでるらしいが、末端の俺らからすれば単に迷惑なだけだ。
誰だって無為に死にたくはない。
「聞いてんのか?パルツィファルのパイロットさんよ!こっちにでも来たときは頼むぜ、なあ?」
<パルツィファル>
”大型”歩行戦車のゲシュテルやデューラーの成功に気を良くして偉い人たちはそれを”よりコンパクトに扱いやすく”した機体を発注した。
そして出来上がったのがこの”中型”二脚歩行戦車。
いや見た目は良いよ?ヒロイックだ。
それに実験機ということを踏まえても装甲が厚くて安心だ。
ただ、デューラーは”大型”だから無敵戦車なのだということをちょっと忘れてただけさ…
「いやーこのサイズで簡易デューラーってのは無理だわな。」
「出力・積載量・情報処理他諸々に余裕がない!そのうえ同サイズの機体はほとんどなく、部品調達もままならずコスパ最悪で器用万能とはいかなかったなあ。」
うるさい。
実験機だから…こいつのノウハウで改善できるから…
「試験するだけでもどっか壊れるからなあ。専属の整備班もいないし、担当は今もお前と俺だけじゃん。いつになったら制式採用されるほどのデータと改善案ができるの?」
一日一日の積み重ねが大切なんだよ。
いつかできるから…
「まあまあいじけるな。そうやって倉庫で燻ってたこいつ(とお前)にも出番が来ただろ?」
出番?
ああ、異様に高感度すぎるセンサーのせいで機体動作までトレースする無線誘導弾(予定)の新型試作ガンポッド”モスキート”君の運用試験のことだな。
「いやーほんと隊長喜んでたぞ。これで子供をゾードム首都に教育にやれるって。」
モスキートはワスプの誘導弾を遥かに超える大火力を精密()に誘導するというのが売りだ。
おかげで搭載が可能な機体が限られている。
如何にゾードム帝国有利といえども戦時中に一企業の製品開発に協力できる程のサイズで遊んでる機体なんて…いたんだな…
そのうえバウンドランチャーなんて珍奇な武装までついでに付けられる始末。
「良かったよな。バラされるまえに製品モニターの仕事が来て。」
ああ、パルツィファルよ…俺もお前も企業(と隊長の懐)のために生かされてる軍人なんだな…
「なあ奴らきたってよ」
知っているさ。
だからこうして機体チェックをかけてるだろ。
「帝都から輸送列車の襲撃ときて、鉱山守備隊を抜いて地下ダムからこっちに上がってくるだろうな」
3機小隊らしいが大したもんだな。
なんとかやってみるさ。
「で、お前は何してんの。後方待機って命令だ。」
「事実、動ける機体はもう出ていってる。そんな木偶の坊に出番も何もないぜ。」
試験直前で準備が整ってるのは不幸中の幸いだ。
トレーラー回してくれるか。
ここから起動してたんじゃ間に合わないし壊れちまうよ。
「…どこにだよ」
奴らの最終目標は恐らく空港、そしてガイアーだ。
地下ダムから無理やり上がってくるとするとどのルートでも小型機体にすら狭い。
少なくとも1機くらいは最下層に降りてくる。
「最下層…原子炉か」
そう。奴らの作戦傾向からいえば行きがけの駄賃でこれも狙ってくるだろうな。
それにここなら搬入レーンを使って滑走して初速が稼げる(関節の負担も減るなあ)。
「そいつにはまともな武器がない」
俺以上にこいつを動かせる奴はいない。やれるさ。
最新鋭の兵器も積んでるし、地の利もある。冷静な判断だよ。
この上ない実績を得るチャンスなんだよ。
「…暇つぶしの相手が減るのは困るんだよなあ」
はやくつれていってくれたまえ。
冷静だなんて嘯いた。実際なんでこんなことをしてるのか。
基地でゆっくり待機していれば良かったのに。
でもなあ、
「1機抜かれた。読み通り最下層にくる。上手くやれよな。」
そんなことを考えている余裕はもうない。
なあに簡単だ。
まずバウンドランチャーを撃つ。
多少広いとはいえこの閉所。当たらぬまでも大きく動きを制限できる。
次にランチャーのおまけの機銃で狙い撃つ。終わり。
晴れて俺とお前は大出世だ。
当たらなかったら?
最後の手段もちゃんとある。
頼んだぜ相棒、と呼ぶにはまだ頼りないか。
ま、お互い様だ。
レーダーの範囲に入った。
ここからバウンド弾をばら撒きながらレーンを滑走する。
すぐに奴が目視範囲に入る。
幸い撃破すべき敵と認識してくれたようだ。(突っ切られてたら泣くところだ)
噂の一本腕。いいねえ。
ガンポッドは弾切れかな。助かるよ。
最新量産型はガンポッド1個しか持てないって本当なんだな。
思いの外冷静だ。
バウンド弾も運良く狙い通り機能している。
あとは機銃でパンパンと。
しかし当たらない。
軽快に飛び回りやがって翻弄されるばかりだ。
そもそも反応が鈍すぎる。ロックもできないじゃないか。
バウンド弾は優秀でしたと推薦してやるか。
奴の機銃でコアにダメージが入り始めた。くそ、まずい。
と、奴が止めとばかりに接近してくる。
弾とガンポッドが欲しいのかい?
終わりだな。
ガチン!
最後の手段、上手くいった。何でもやってみるもんだ。
一本の腕より二本の腕の方が強いぜ。組み合って負けるわけがない。
流石に全力で動かれちゃあ抑えるので精いっぱいだがなあ…
ダメージと合わせてお膝ガクガクよ。吐きそう。
ま、モスキートはすでに発射されている。
上方から誘導してお前はお終いだ。
拙い処理能力のほとんどを振り分ければ有用な武装だな。
「もう1機だ!」
一閃
パルツィファルの腕は吹き飛んだ。
あの閃光がフラッシュ、レールガンってやつか。
一瞬後には叩きつけるつもりだった奴にコアユニットを砕かれ、モスキートすら奪われたガラクタの上を通り過ぎていくのは
「アストライアーか…エース機体だぜ。ま、健闘したな。とっとと脱出しろよ。」
記録にも残らない俺の私闘(無断出撃)の件はその後原子炉を吹き飛ばすやらの大暴れのおかげで有耶無耶になった。
ついでにガイア―が墜とされたとか、経緯は不明だがセレーネ本隊とアインハンダーが衝突したとかで混乱の最中の部隊再編で潰しのきかない俺は遂に放逐されてしまった。
なんてことはない。
ただ俺とパルツィファルはアインハンダーに負けた。
やるだけやったがケチがついた。それだけの話だ。
空港跡地のスクラップを漁る。
元軍人の俺から見ればまだ使えるものもある。
同業者はよくいるが今日見えるのは珍しい顔だ。
なあ、機械の体ってのはどんなもんだい。
今日は自分のパーツを取りに来たのかい。
「…」
無言。つれない奴だ。心まで冷たいのかしら。
少し話題を変えてやるか。
なあ、美味しい話があるぜ。この空港近郊の元基地があるだろ。
あそこの地下はアインハンダーに襲撃されて原子炉が暴走してまともな人間は入れない。
その代り、物資搬入にも使われてた名残でたんまりとパーツから何から残ってると思うぜ。
そうだな、例えばザラマンダーのロケットアームなんて回収すれば使えるかもな。
「…」
少しは感情を表してほしいな。
一泡吹かせたい奴らがいるんだろ。アインハンダーさんよ。
脛に傷のある奴らばかりで構成されてるってのは本当なんだな。
あんたなら延命治療だろ。
そりゃ目立つぜ。ガンポッドを積み込んでいくシャーベなんてさ。
コックローチ?
はは、セレーネにも話の分かるやつはいそうだな。
個人的な問題でね。協力してやるよ。
宇宙に上がって対等に戦えるようにな。
握手と行こうか。
大事だろ、こういうのは。
特にあんたと組むんならさ。
以上。
インパクトだけは強いロボ、パルツィファル君と一ヶ月後についてる謎ブースターで妄想しました。
HD化とリメイクと続編を待っているんだ。
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