【狼と香辛料】ギンコ『蟲になる方法?』【蟲師】 (16)

狼と香辛料×蟲師のクロスです。

書き溜め無しです。
誤字脱字はご容赦下さい。

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しんしんと雪が降り積もる温泉町「ニョッヒラ」
名湯秘湯を求めて各地の貴族王族がお忍びで通う領国でも有数の観光地だ。

俺はそこで宿屋を経営しているロレンツ、隣にいるこの長い栗色髪の小さくて偉そうなのはホロ。

昔麦の貿易をした村で拾った?いや勝手に荷台で寝てたと言った方が正しいか?
狼にはおおよそ見えないだろうが人の姿にもなれる知性のある獣。
俺もこの目で見るまでは信じられなかった。

彼女の正体は人の体躯を悠々と超える巨大な狼。
麦に宿る『賢狼ホロ』だ。
伝説や大昔の伝承に名前がチラッと出てくる程長く…いや永く生きている。

なんの因果かその狼と所帯を持つ事になるとは…



ドスッ!!

ロレンツ「うっ!!」

突然みぞおち辺りに衝撃が走った。
ムッとした顔でこちらを睨んでいるホロの肘が腹にめり込んでいた。

ホロ「あー寒い寒い。こう寒いと震えて肘も滑りんす」

ロレンツ「な…なにを…」

ホロ「ぬしよ!わっちの話を無視して何をほうけておる!よもやなんでこいつと所帯を持つハメに…なんて考えてはおるまいな!」

ロレンツ「ま…まさか…賢狼様のお側にいれるなんて恐悦至極にございます」

ホロ「むっ!わざとらしい!このたわけ!」

そう…俺達は昨日結婚した。

ホロのお腹には俺たちの新しい生命が宿っている。

ホロ「なんじゃ!ジロジロ見るでない」

こりゃ当分機嫌も直りそうも無いか…

こういう時は話を逸らすに限る。
何かホロが食いつきそうな話題は…目を配らせると酒屋の壁に「大型キャラバンが渡り鳥商会がついにニョッヒラに!」と大きな張り紙がされているのが見えた。

ロレンツ「そういえば今度大きなキャラバンがこの町に来るみたいだな」

ホロ「なに!?いつじゃ!?」

ちょろい…ニヤリ

ロレンツ「何々?ふむ…来週末か…この季節雪の中を掻き分けてくるとはご苦労な事だな」

ホロ「ぬしなら同じ事をしそうじゃがな」

ロレンツ「何故そう思うんだ?」

ホロ「つい最近『商売というのは危険な程利益が出る』とかぬかしてたひよっこが…!」

ロレンツ「なるほど確かに…考えてみれば冬を越すのに蓄えは多い方がいいと考えるのが町民の考えか。この真冬にこそ来る価値はある…かもな」

ホロ「よしんさい。お主も一角の商人なんじゃ。もう行商の考え方なんて捨てるが良い」

ロレンツ「むっ…中々癖ってのは抜けないんだよ…」

ホロ「今度はその行商を相手に商売をするんじゃからの。いつまでも同じ土俵に立たれていては困りんす」

ロレンツ「まぁ確かにお前のいう通りだな…さて!今日は外食でもしながら行商達を出し抜く算段でも立てるか!」

ホロ「トナカイの肉っ!」

ロレンツ「またか?今が旬だから確かに美味いが毎週毎週、よく飽きないな…たまには別の」

ホロ「わっちに取っては懐かしい味なんじゃ。寂しいわっちに故郷を感じさせてくりゃれ」ウルウル

ロレンツ「はぁ…わかった。負けたよ。いこう」

観念したように俺が両手を上げると
ホロは子供のようにはしゃいで腕にしがみ付いてきた。

ホロ「さすがわっちが見込んだ男じゃ!」

苦笑いをしてため息を吐くと観念した俺にホロはいたずらっぽく笑いながら言った。

ホロ「ところでぬしよ。覚悟してくりゃれ?」

ロレンツ「覚悟?」

ホロ「わっちは2人分食べないといかんのじゃからの?」

ロレンツ「お…おい!///」

ホロ「クスクス…ほんに可愛いやつじゃのう」

こりゃ本腰入れてキャラバンの連中から搾り取る気で策を練らないと
こっちが搾り取られて干からびるな…

例の渡り鳥商会といえば大陸を又にかける大商会。
そこら辺の小さな国なんてわけ無い程の力を持っている。

うまく取り入れればかなりの利益を見込めるはずだ。

酒場に着くとホロはワインを蒸留して作ったぶどう酒、別名炎の酒を飲みたがったが子供に障るぞと言うと大人しくなった。

ホロが我慢しているのに俺が飲む訳にはいかんので2人で暖かい生姜の効いたレモネードを頼む。

これは体が温まる。

ふむこれを宿の売店で売るのも悪くないな…そんな事を考えていると

ホロ「ふん!酒がのめないからと言って安く済むとは考えておるなら浅はかじゃぞ」

ロレンツ「その分肉を食うからだろ?分かってるよ。少しぐらいの贅沢出来るぐらいは蓄えはあるつもりだ。昨日は結婚式で疲れてるだろう?沢山食べてゆっくり休んで欲しい」

ホロ「むっそんな優しい言葉で返すとは…ぬしも腕をあげたようじゃの」

ロレンツ「ふっお褒めに預かり光栄です。何卒お手柔らかに」

ホロ「ふふっ」

こんな幸せなやりとりがいつまでも続けばいいと心から思う。

俺たちの間には決して埋まる事の無い溝がある。
種族の寿命の差だ。

ホロは何百、何千と生きる事が出来るが
俺はどんなに頑張っても80年が限度だろう。

ホロに取っては人の一生など瞬きをしてる間に終わるのだろう。

式に参列してくれたディアナさん(クメルスンに住む年代記作家で正体は巨大な白い鳥)に人が永遠の命を手に入れたという伝承はあるのか?と聞いたがそのような伝承は無いと言われ、そんな都合のいい話なある訳無いとダメ元で聞いたのにも関わらずかなり落ち込んだ。

ホロ「…し。ぬしよ!聞いておるのか?」

ロレンツ「ん?あぁすまない。どうした?」

ホロ「どうしたではありんせん…今日はやけに上の空じゃの。何か悩み事かえ?」

ホロが少し拗ねたようにレモネードを啜りながらじっとりとした目で俺を見ている。

ロレンツ「いや…まぁ…何も」

ホロ「隠し事はせぬ約束だったはずじゃが?」

ロレンツ「隠し事という訳じゃないが…言っても仕方がない事だよ」

ホロ「ふむ…分かった。寿命の事か?」

ロレンツ「うっ…」

ホロ「ぬしは分かりやすいの」

ロレンツ「お見通しか」

ホロ「わしはなぬしよ。ぬしが死ぬ時にディアナのやつにでも頼んで苦しまずに逝ける毒でも飲もうかと考えた程にぬしに惚れておる」

ロレンツ「なっ…!馬鹿な事を…」

ホロ「ぬしの方こそ馬鹿じゃ」

ロレンツ「なにを!」

ホロ「覚悟はこれからゆっくりすればいい。ぬしが生きている間その生を全て賭けて幸せにしてくれるんじゃろ?」

ロレンツ「あ…あぁ!そのつもりだ」

ホロ「なら詰まらん事を考えずに今はわしとの食事を楽しんでくりゃれ。そんな難しい顔をされてはせっかくの肉が台無しじゃ」

ロレンツ「…そうだな。すまなかった。うん!さぁ飯だ飯だ!今日は好きなだけ頼め!」

ホロ「その言葉待っておったぞ!この店の肉を有りっ丈持ってきてくりゃれ!」

ロレンツ「なっ!?」

ホロ「冗談じゃ。さすがにわっちでもそんなには食えん。狼の姿なら朝飯前じゃがの」

ロレンツ「今は夕食だ。勘弁してくれ」

ホロ「ふふっ頭が回ってきたようじゃの」

ホロは無邪気に笑った見せるが
残されると分かっているホロの方がしなければならない覚悟は大きいはずだ。

人との別れなど慣れていると言ったホロの言葉を思い出した。

今は気休めでもその言葉にすがるしか無い。
2人で旅をしている時にホロが優しくする俺に「わっちが怖いのはこういう事じゃ」と言った事があった。

あの時は「分からんのならそれでもいい。分かられても困る」とホロは言った。

今なら分かる。

俺は1人は嫌じゃ…1人は飽いたと言って泣いたホロの涙をまた…

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