カービィ「どうぞ」

課長「お、ありがとう」

課長「君はコピーだけは上手だねえ。他の仕事もその調子ならいいんだけどねえ」

カービィ「す、すみません」


ﾊﾊﾊ…　ｸｽｸｽ…


カービィ「ハ、ハハハ……」

カービィ「……」ｶﾀｶﾀ

課長「じゃあカービィ君、我々は帰るから」

同僚「明日の会議の資料、ちゃんと作っておけよな！」

カービィ「はい」

課長「よーし、今日はおごりだ！」

同僚「マジっすか！？」


ﾊﾊﾊ…　ﾜｲﾜｲ……


カービィ「……」ｶﾀｶﾀ

カービィ「あー……やっと終わった！　この手だとキーボード打つのも一苦労だわ」

カービィ「腰いてえ……肩もいてえ……」ﾓﾐﾓﾐ

カービィ「時間は……10時か。今日はまだ早い方だな」

カービィ「さ、帰るか……」

―　駅前　―

カービィ「……」ｽﾀｽﾀ

デデデ「おい！」

カービィ「？」

デデデ「お前、カービィじゃないか？」

カービィ「あっ、お前もしかしてデデデ！？　うわ、懐かしい！　１０年ぶりぐらいか！？」

デデデ「まさか、こんなとこで会えるとはなぁ～」

デデデ「終電まだ大丈夫だろ？　ちょっと飲んでかないか？」

カービィ「いいとも！　飲もう飲もう！」

―　居酒屋　―

カービィ「再会を祝して……カンパーイ！」

デデデ「カンパーイ！」ｶﾁﾝｯ

カービィ「……」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞｯ

デデデ「……」ｸﾞﾋﾞﾋﾞｯ

カービィ「ぷはーっ、んめえなオイ！」

デデデ「ああ、うめえ！」

デデデ「ところでよ、カービィ」

カービィ「ん？」

デデデ「今はなにやってんだ？」

カービィ「ああ、この近くの事務機器メーカーで営業やってる」

デデデ「へえ～、すごいじゃん！」

カービィ「全然。営業成績ボロボロだから、パシリやってかろうじて居場所確保してるぐらいだし」

カービィ「景気が傾いたら真っ先にリストラ候補だ」

デデデ「んなことねえって」

カービィ「あるよ。お前コピーとるのだけは上手いな、って毎日イヤミいわれてるし」

デデデ「ハハハ……お前のコピー能力はすごかったもんなぁ」

カービィ「お前はなにやってんの？」

カービィ「お前ハンマーの扱い上手かったし、ウワサじゃ建築業に行ったって聞いてたけど」

デデデ「ああ、だけど上司のミスを押し付けられてクビ切られちまってよ」

デデデ「今はなんとか派遣で食いつないでるよ」

カービィ「食いつないでるって、そんな言い方することもないだろ」

カービィ「派遣から正社員になったり、派遣のエキスパートになったりって例もあるしさ」

デデデ「そんなのごく一部さ。しょせん俺みたいのは消耗品だよ。１０年後……いや５年後すら見えない」

カービィ「んなことないって……」

デデデ「……」

カービィ「……」

カービィ「他のみんなはどうしてんのかな～」

デデデ「んー……ほとんど疎遠になっちゃったけど……」

デデデ「メタナイトは警備会社に入って、ワドルディは大企業で係長やってるってのは風の噂で聞いた」

カービィ「へえ～」

カービィ「俺はアドレーヌが漫画家のアシスタントやってるって話や」

カービィ「カインたちは動物園に就職したってのは知ってる」

デデデ「ほぉ～」

カービィ「他の奴らは連絡先すら知らないけど、ま、みんなそれぞれ頑張ってるんだろ」

カービィ「にしても……プププランドもすっかり変わったよなぁ」

デデデ「ああ……急激に近代化の波が押し寄せて……」

デデデ「俺も時流に乗るしかなく、自ら王の座を退位するしかなかった……」

カービィ「今やポップスター中が一つの大都市みたいなもんだしな」

デデデ「ああ……」

デデデ「今でもたまに、また昔みたいに大王としてバカやりてえなぁ……って思うよ」

カービィ「俺もさ……」

デデデ「しょせん無いものねだりってやつなんだけどな」

カービィ「あっ、そうだ！　今度久しぶりにグルメレースやらね？」

デデデ「お、いいな！　でも、もう俺あんまり食えんぜ」

カービィ「俺もだから心配すんな。医者から大食いは止められてるし」

カービィ「肺活量もすっかり落ちちまったしな」

デデデ「ハハハ、お互い様か。じゃあヘルシー食材集めて、健康的なグルメレースやるか！」

カービィ「おう！　あ、もちろんトマト多めにしてな！」

デデデ「へへっ、しっかりしてやがる」

デデデ「おっと、もうすぐ日が変わっちゃうな。明日に響いちまう」

デデデ「今日は久々に会えて楽しかったよ」

カービィ「こっちこそ！　声かけてくれてありがとな！」

デデデ「じゃな！　お疲れ様！」

カービィ「お疲れ様！」