安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】 (342)


安価でオリジナルな展開のまど☆マギをやっていくスレです。

本編、映画、外伝、スピンオフキャラは出てきません。

仲間を集めたり発狂したりしながらラスボス打倒を目的に頑張っていきましょう。

それじゃあ最初に舞台となる町の名前を決めてください。

※安価ルール
基本的に直下を採用しますが、黙って安価下になることもあります。
また安価下1~3のレスが合成された物が採用されることもあります。
そのへんは>>1のさじ加減ということでご了承下さい。

まちのなまえ↓

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471170342

一体何と戦えばいいんだ・・・
時間軸とか世界観はどの辺だろ

聞袋川(きぶかわ)市になりました。町の真ん中を大きな川が流れてそう。

それじゃあヒロインの名前。年齢は自動的に中二となります。

ヒロインのおなまえ↓

>>4基本は魔女と戦ってワルプル的なラスボスを安価で決めて、って感じです。
時間軸や世界観はTV本編最初な辺りをイメージしてもらえればOKだと思います。

牛耳川サリナ(うしみかわ さりな)に決定しました。

町の名前とカブってるような、そうでもないような。

それじゃあ牛耳川サリナの願い事を決めましょう。

サリナのねがいごと↓




聞袋川(きぶかわ)市――

それほど大きくもなく、小さくも無く。

都会でもなく田舎でもない中途半端な普通の町だ。

平和といえば平和な町だけど、犯罪が無いわけじゃない。

良くもなければ悪くもない。

至って普通の町だ。

そんな町で私、牛耳川サリナは町の真ん中を流れる聞袋川のほとりに建つ、

聞袋川中学校に通っている。


ちなみに学校に友達は――

安価
1、いない
2、少ないけどいる
3、それなりにいる
4、リア充ライフ


数人、友達と呼べる子たちがいる。

でも実の所――

安価
1、あの子たち以外にもたくさん友達が欲しい
2、入院している父の看病があるため彼女たちとも遊べてない
3、その友達すらウザい。てか何もかもウザい。ひきこもりたい。
4、その他安価


放課後や休日は病院へ通う毎日だ。

一緒に遊ぶ暇なんてない。

家に帰ったら掃除洗濯を始めとした家事もしなくちゃいけない。

それもこれも父が過労で倒れてからだ。

母が亡くなって以来、一人でわたしを育ててくれた父――

今まで父がしてくれていた分を代わりにしているのだと思えば苦じゃない。

苦じゃない、とはいえ、わたしだって思春期の女子だ。

友達と遊びたいし、恋愛だってしてみたい。でも今のままじゃ――


サリナ「お父さん、はやく元気にならないかなぁ」


掃除機で床をガーガーとやりながら、なんとなく呟いた。

するとわたしの耳に聞きなれない声が飛び込んできた。


???「その願いはキミの魂を対価にするほど価値のあるものかい?」


白いウサギのような動物が、掃除機のノズルの先に座っていた。

わたしは驚いて――

安価
1、思わず「うん」とうなずいた
2、突然の事に固まってしまった
3、掃除機に吸い込んでみる
4、自由安価


サリナ「えいっ」

無心で、今までやっていた掃除の続きを再開してしまった。

掃除機の先端を目の前の異物に宛がう。

???「え? いやちょっとムグッ!?? ムギュギュギュギュギュギュ!????」

ズゾゾーゾゾゾゴボッツ! という激しい音を立てながら掃除機が目の前の白い物体を吸い込もうとする。

だが吸い込むにはちょっと大きかったみたいだ。

わたしは掃除機をオフにして、頭からノズルに吸い込まれそうになっている白ウサギの胴体を引き抜いた。

???「グゴホッ、ゲホッゲホッ! なんて酷いことをするんだキミは。こんな仕打ちを受けたのは久しぶりだよ」

目の前の不思議生物が喋ってる。

なんだろうこれは。

よくわからない。

まあ、でもとりあえず言葉は通じるみたいだし。

安価
1、挨拶と自己紹介は基本
2、願いとか魂とか言ってたけど何?
3、とりあえずもう一回掃除機で吸ってみる
4、記述で自由安価


サリナ「願いとか魂とか言ってたけど、どういう意味?」

???「ゲホッ、ゲホッ……掃除機で吸い込んだかと思ったらいきなり本題かい?

    ボクが何者かとか、どこから来たのかとか、そういう疑問は浮かばないのかい?」

言われてみれば確かにそうだけど、そんなことは大した問題じゃないように思えた。

細かいことはどうだっていい。

もしかしたらこの不思議な生き物はわたしの願いを聞いてくれるかもしれない。

そんな気がした。

だからこの際、目の前の白ウサギが妖精だろうと悪魔の使いだろうとどうだってよかった。

わたしは目の前の不思議に『願い』について詳しい説明を求めた。


白ウサギの説明内容は、よくある魔法少女ファンタジーものに似ていた。

曰く、世の中には『魔女』と呼ばれる悪い怪物がいて、それは人々を影から付け狙い死へと誘うのだという。

身近で起きている怪事件や証拠の無い失踪事件などは殆どが魔女の仕業によるものだと。

それを退治するのが白ウサギと『願い』の契約をした魔法少女のお仕事なのだそうだ。

白ウサギと契約し、魔法少女のスーパーパワーを手に入れて魔女を退治し、

町の平和を守ろう! ということらしい。

だいたいこの手の漫画やアニメだと平和のためにボランティアさせられることが殆どだが、

この白ウサギは、なんと事前に『願い』を叶えてくれるのだという。

報酬前払い式だ。

とんだホワイト企業だ。

父の会社にも見習わせてやりたい。


???「それじゃあさっそく契約だけれど。願い事は『お父さんの病気を治して元気にする』でいいかい?」


わたしは少し考えてから、こう返した。

安価
1、うん
2、やっぱり保留
3、疑問があるんだけど
4、その他自由に記述安価


サリナ「お断りします」

わたしの返答に白ウサギは小首をかしげてみせる。

???「なんでだい? キミは確かに父の全快を望んでいるはずだよ? それも、人並み以上の強い願いのはずだ」

父はよく言っていた。おいしい話には必ず裏がある。

世の中に無償の奉仕なんてものはない。

タダで何かをしてくれるヤツは、金じゃない、それ以外の対価を得ようとしているヤツだ。

それが善意であれ、悪意であれ、受け取ったが最後『何か』を取られるまでソイツに付きまとわれることになる。

いろいろと苦労を重ねに重ねて来た父の言葉には、尋常ならざる重みがあった。

その言葉がわたしの心に疑念を抱かせた。

こいつは。この白いウサギはわたしから何を得ようとしている?

――その疑念を以て目の前の生き物と視線を合わせた瞬間――


ぞるっ。


得体の知れない悪寒が背筋を走った。

この目の前の、コレは妖精なんかじゃない。ましてや悪魔の使いなんて生易しいものじゃない。

もっと。

もっと得体の知れない何か、だ。


サリナ「お断り、します」


紅い小さな双眸がわたしを射抜くようにじ、っとみつめ、そして


???「わかったよ。ボクの方からキミの前にはもう現れない。けど必要ならボクを呼ぶといい。

    いつでもキミの前に現れるからね」


白いウサギは薄れゆく陽炎のように姿を消した。


キュゥベえ「ボクの名前はキュゥベえ。またすぐに会うことになると思うけどね」


声の反響が部屋から消えたのを確認すると、わたしは手に持っていた掃除機をその場に落した。

力が抜け、へたり込む。

あれは、いったい何だったのだろうか。

ふと辺りを見る。

部屋の中は真っ暗だった。

もう夜だ。明日も学校だ。

早く、寝なきゃ。

私はお風呂にも入らずにベッドの上へと倒れ込んだ。


夢を見たような気がする。

何の夢だったかよく覚えてないけど。

朝、ベッドの上で目を覚ました私は、ひどく体が冷えている事に気が付いた。

寝汗で下着までベトベトだ。

よほどの悪夢だったのか。

シャワーを浴びて着替え、いつものように身支度を済ませるとわたしは

安価
1、学校へ向かう
2、父を見舞ってから学校へ
3、サボろう
4、記述安価


朝の通学の時間はわたしにとって貴重なひと時だ。

小学校の頃からの友達と学校まで歩いて通う数十分の時間。

その短い時間は、唯一だれにも邪魔されず他愛のないお喋りに興じることができる。

朝日がキラキラと街路樹の葉を揺らす。

白い石畳みの歩道を小走りに駆けていくと、一人の女の子の姿が見える。

いつもの公園の前で待っていたのはわたしの友達の


安価
牛耳川サリナのともだちのなまえを決めてください


サリナの友人の名前は『藍根のぞみ(あいね のぞみ)』、になりました。

ちなみに藍根のぞみの願い事は何でしょうか?


安価
藍根のぞみのねがいごとは?


のぞみのシルエットは遠目に見ても良く分かる。

彼女はなんというか、平均的な中二女子の体形にしてはちょっと大き目だった。

のぞみ「サーリナー! はやくはやくー!」

まんまるな体を震わせてこちらに手を振っている。

毎朝みる光景だが、なんというか彼女の存在は非常に安心感がある。

安定感もあるが。

サリナ「のぞみ、おまたせー!」

わたしはふざけてのぞみのお腹に顔をうずめる。

うん。ぷにぷにして暖かい。

のぞみ「ちょっとやめなよサリナー!?」

サリナ「あー、のぞみんのお腹やわらかいー……」

のぞみ「やめなさいって……言ってるでしょーが!」

のぞみのゲンコツがわたしの頭をこづいた所でスキンシップは終了してしまった。

通りすがりの人たちがこちらを見てクスクスわらっている。

人目がなければのぞみのお腹のタプタプ具合をもっと堪能できたというのに。

のぞみ「あれ? サリナ、顔色悪いね。どうしたの? 朝ごはん食べてないならバナナあるけど?」

そう言って鞄からバナナを取り出そうとするのぞみを制止して、わたしは昨日の出来事について


安価
1、あらいざらい話す
2、願い事を話題にしてみる
3、魔女の噂を話題にしてみる
4、その他記述安価


やっぱり話さないことにした。

昨日の出来事は悪い夢だった。

そういうことにしておこう。

わたしが呼ばない限りは、あの悪夢の続きを見ることなんて絶対にないんだから。

わたしたちの日常に異物を持ち込む必要なんて、無いんだから。

わたしは無言でバナナを受け取ると、皮をむいて頬張った。

そういえば朝ごはん食べてなかったし。

うん、バナナおいしいよバナナ。

わたしが無言でバナナをかじっていると、のぞみが心配そうにわたしの顔を覗き込んだ。

のぞみ「サリナ、どうしたのよ? バナナおいしくなかった? だったらおにぎりもあるけど……」

いけない。顔に出てたみたいだ。

サリナ「なんでもなーい! ほらほら! のぞみ、捕まえてごらんなさーい!」

わたしは無邪気に駆けだした。

のぞみ「ちょっとサリナ!? なんか今日はテンションおかしいわよ?」

サリナ「そんなことなーい!」

友達に無用な心配をかける必要は無いんだから。


緊急速報!学校でイベント発生!

安価
1、謎の転校生がクラスに
2、あやしい先輩と接触
3、魔女の噂を聞いちゃう
4、自由安価

あやしい先輩は自動的に中学三年生となります。

あやしい先輩の名前を決めます。


安価
あやしい先輩のなまえをきめてください

猫草 アミ(ねこぐさ あみ)に決定しました。

妖しい猫草アミ先輩の願い事は?


安価
猫草アミせんぱいのねがいごとは何ですか?

安価下ルール発動。>>1の裁量で安価が採用されます。



放課後、帰り支度をしているとのぞみが背中をツンツンしてきた。

のぞみ「ねえサリナ。あんたと話したいって先輩が来てるわよ」

のぞみの陰から指差す方を見ると、そこにはモデル体型のスラッとした長身の女性が壁に背中を預けていた。

女性、というのも見た目が中学生離れしていたからだ。

可愛い女の子、ではない。

美女。それも日本人っぽい感じではない。

外国のオシャレ映画や連続ドラマで美女役をこなしてそうな感じの美人さんだ。

それが、わたしと同じ制服を来て廊下に立っている。

……怪しい。すごく怪しい。

そもそもあんな人、うちの中学校にいたかな。

サリナ「だれ、あれ」

のぞみ「三年の猫草先輩よ。超有名じゃない。噂じゃ芸能事務所からオファーが来てるとか、読者モデルもやってるんだって。

    いーな。あたしもあんな痩せてる美人に生まれたかったわー」

サリナ「その猫草先輩がわたしに何の用だろう」

のぞみ「さあ? でも不安ならあたしもついてったげよっか?」

どうしようかな……


安価
1、のぞみといっしょに話を聞きに行く
2、ひとりでいく
3、無視して父のお見舞いに
4、記述安価


サリナ「あたしパス」

のぞみ「そうだよね。サリナはパパさんの所に行かなきゃだもんね」

サリナ「じゃあのぞみ。そういう事で後はお願いね!」

のぞみ「え? ちょっとサリナ!? あたしにどうしろっての!?」

わたしは教室の窓からサッと飛び出した。

柔らかい芝生に着地するとそのまま脱兎のように走り出した。

なんだか知らないけどわたしは忙しいの!

美人だかモデルだか知らないけど、そんな人と話してる暇はないんだから。


わたしは町の外れにある聞袋川総合病院を訪れた。

エレベーターを上がり、ひとつの病室を訪れる。

窓際のベッドに痩せこけた中年男性の顔を見つける。

彼の手元には分厚い本とメモ帳。何かを写し書きしているようだ。

サリナ「お父さん?」

親父「ん? おおサリナか。今日は早かったな」

サリナ「うん。ちょっといろいろあって」

親父「なんだ? 悩み事か? 学校が忙しいか? やはり家政婦さんを雇って家の事をしてもらおうか?」

サリナ「う、ううん! ぜんぜん忙しくないから大丈夫だよ! お父さんはわたしの心配なんてしてないで、

    体を治すことだけ考えてればいいんだから」

親父「そうか? サリナがそう言うならそうするよ」

父は少し寂し気な表情を見せた。

親父「何か悩み事があったら相談するんだぞ。こんな親父じゃ頼りないかもしれないが」

相談? 相談かぁ……


安価
何か相談してみる?


サリナ「ねえお父さん。もしも……もしもの話だけどね?」

親父「なんだ? 何でも言ってみなさい」

サリナ「もしもある日とつぜん何でも願いが叶えられるって言われたら……どうする?」

親父「……そいつの身元を始めとして洗いざらい調べ上げる。どこの組織に所属していて何を目的にしているか。

   そしてきっとロクでもない宗教か団体の構成員だということが判明するだろうから、なるべく距離をとるようにして二度と関わらない」

バッサリだ。

まあ、確かに父ならこう言うだろうと予想は出来ていたが。

親父「どうした? 変な勧誘でも受けたか?」

サリナ「ううん。そういう夢を見ただけ。それで少し不安になっちゃって」

親父「……サリナ。お金の心配ならするなよ。俺の身体の事もだ。人には自分ともう一人ぐらいの生活を守るぐらいの力は備わっているもんだ。

   不安を煽るような輩の言葉には耳を貸さないこと。いいな?」

サリナ「わかってる。うん、わかってるよ」


でもね、お父さん。

人にはウソかもしれないと分かっていても縋りたい言葉だってあるんだよ。


ただの過労でこれだけ入院が長引くなんて、中学生のわたしでも在り得ない事だって、分かるんだから。

父もお医者さんも看護婦さんも何も言ってくれないけれど、わたしには何となく分かっていた。

お父さんは、もしかしたら……


その日はそれ以上話さずに病院を後にした。

病院の外は夕暮れの街並みが広がっていた。

オレンジ色に染め上げられた町の影は暗く暗く、アスファルトの上に伸びている。


夕暮れの町。

すこし寂しい路地を歩いていると、ふいに目の前に長い影が現れた。

わたしは思わず歩みを止めて影の主に目をやる。

そこには。

猫草「私の誘いを断るなんて、随分と生意気ね。牛耳川サリナさん?」

ファッション雑誌から飛び出して来たかのうような美女が立っていた。

猫草先輩だ。

どうしてわたしの帰り道を知っているのだろうか。

その疑問の答えに辿り着く前に、彼女はわたしにこう切り出した。

猫草「キュゥベえの誘いも断ったらしいじゃない。あなたってそんなに偉いのかしら?」

初対面の他人に対してこれほど高圧的な態度がとれる人っているんだな。

そう思いながら一歩後ずさり、彼女の言葉の端に聞き覚えのある単語があることに気が付いた。

サリナ「きゅぅ……べえ?」

わたしの頭に痛みが走る。

そうだ。あの白昼夢の続きだ。

彼女は。彼女もあの悪夢を知っているんだ。

サリナ「あなたも、その……魔法少女の勧誘を受けたんですか?」

問いかけると、少し考えるような仕草を見せた彼女は、やがて得心のいった様子で告げた。

猫草「そうよ。私はキュゥベえの誘いを受けて契約した。魔女と戦う正義の味方。魔法少女よ」

そう言って彼女は大きな宝石を目の前に翳した。

夕暮れと同じ色だ。

深い深いオレンジ色の宝石をこれみよがしに見せつけてくる。

猫草「ここじゃ何だし。すこし場所を変えるわよ。話があるの。あなたにとっても重要な話だと思うのだけれど」

どう、しようかな……

安価
1、ついていく
2、逃げる
3、自由安価






聞袋川を下って行くと工場地帯が広がっている。

町の産業と経済を支えている一大工業地区だ。

巨大な煙突と大きな屋根が夕暮れの空を覆い隠している。

その一角。廃棄されたまま取り壊されていない廃墟の工場。

今は誰もいないはずの廃墟の中へと猫草先輩はわたしを招き入れた。

猫草「みんな。出ておいで。ごはんの時間よ」

そう言って彼女は鞄から缶詰を5つほど取り出して、おおきな白い皿に盛りつけていく。

すると廃墟の影から無数の猫たちが姿を現し、嬉しそうに駆けて餌へと集まってくる。

サリナ「すごい……猫だらけ」

猫草「この子たちはね」

猫草先輩は押し出され餌にありつけなかった小柄な三毛猫に手に乗せた餌を食べさせながら言葉を紡いだ。

猫草「町の中じゃ生きていけない弱い子ばかりなの。誰もこの子たちを守らない。ううん。守ってくれる人もいたけれど、

   その人は他の人から責められて、結局、守るのを止めてしまったわ」

どこか遠い目で、彼女は続ける。

猫草「だから私は魔法少女になった。この子たちを守るために。誰も守ってくれないなら、私が守るしかないって。そう思ったから」

彼女は立ち上がった。その胸には子猫を抱きかかえている。

猫草「牛耳川サリナさん。あなたには守りたいと思う人はいないの? キュゥべえから誘いを受けるということは、そういう願いがあるハズだわ」

願い? 確かにわたしには願い事がある。

お父さんに元気になって欲しい。そして、居なくなって欲しくない。

でも、だからと言って得体の知れないヤツにその願いを託すなんて。

猫草「迷っているのね。でも時間は待ってはくれないわ。手遅れになる前に。後悔の無いように。

   死んでからでは、遅いんだから」

その言葉を最後に、彼女は言葉を噤んだ。

わたしが何か言おうとしてもそれを無言で制止した。

家の近くまでわたしを送り届けた猫草先輩は夕闇の路地に溶けるように消えていった。

その日もわたしは倒れるようにベッドへ横になり、そのまま深い眠りについた。


翌朝、飛び跳ねるように起きて時計を見る。

もう1時間目が始まっている時間だ。

慌てて身支度を済ませ、玄関を飛び出ようとした所で。

今日は休日だということを思い出した。

玄関に崩れ落ちてドアノブに縋るように倒れ込む。

疲れてるのかな、わたし。

気を取り直してリビングでコーヒーを淹れてテレビをつける。

ニュースや情報番組をザッピングしながら昨日の事を思い出す。

猫草先輩の言葉。お父さんの病状。

そして、呼べば現れるというあの白い生き物の事。

わたしはソファに深く座りながら、今日の予定を考える。


安価
1、溜まってる洗濯掃除を済ませる
2、のぞみと遊びに出かける
3、猫草先輩の所に行ってみる
4、記述安価



ふいに強い眠気に襲われた。

大きな生あくびをあげて、そのままソファでうたた寝でもしようかと横になる。

が、そういうわけにもいかない。

二日連続で家事をサボっているので洗濯物や掃除が溜まっているのだ。

掃除は別としても、せめて洗濯物だけでも回してから眠らきゃ。

わたしは眠気に足を引っ張られるようにして溜まった汚れものを最新のドラム型洗濯機に放り込む。

後は乾燥まで機械がやってくれる。

いやはや便利なものだ。

わたしは奮発して良い洗濯機を買ってくれた父と、洗濯機の開発者に感謝しながらソファに戻り、

テレビもつけっぱなしのままでうたた寝を始めた。



夢を見ている。

夢の中で夢を見ていると分かるのは、そこに現実にはない浮遊感があるからだ。

ふわふわと場面が展開して、次々と何かが起こる。

だが、その夢はどこか違った。

浮遊感はなく、逆に体にのしかかるような重みがあった。

その夢は

安価
どんな夢?
1、なんかすごい怪物と魔法少女が戦ってる
2、なんかヤバい怪物に追われる夢
3、現実にありそうなリアルな悪夢
4、自由安価




わたしはわたしの家の玄関前に立っている。

玄関脇には白い花輪が立てかけてある。

玄関の前には灯篭の灯りと、参列者名簿に記帳を促す黒い影のような人。

嫌な焦燥に駆り立てられるようにして、わたしは玄関のドアを開ける。

リビングには白黒のクジラ幕が吊るされている。

祭壇には白い花と、線香の煙と、白黒の写真に――

お父さんの、写真が、飾られて、


これは、ダレの、おソウ、シキ……?


「だから言ったでしょう? 死んでからでは遅いって」



サリナ「ぅぁあああああああっ!!!!!」

目を覚ます。リビングだ。ソファの上でうたた寝をしていて……

クジラ幕は? お父さんのお葬式は!?

そうだ、お父さんが死んで……

いや、違う。あれは夢だ。夢、なんだ。

いつもと変わらないリビングを見渡し、溜め息をつく。

額に浮いた汗を拭い、洗濯場へと足を進める。

洗濯ものを、畳まなきゃ。

洗濯機はまだゴウンゴウンと動いていた。

寝始めてから10分も経っていなかった。

疲れてる。うん、わたしってば疲れてる。

このまま家にいても押し潰されそうだ。

わたしは気晴らしに家の外へと飛び出した。

行く当てはない。とりあえず暖かい日差しの下にいたかった。

あてどなく歩き出したわたしは

安価
どこへいこうかな?


聞袋川を下り工場地帯を抜けるとすぐに大海原が広がっている。

外国の船も行き来する大きな港があるので、海辺のこの辺りでは輸入品や雑貨を扱う店が多い。

そんなオシャレなお店を見てまわったり、港に停泊している船を眺めたりしていると、

すこしは気分も落ち着いて来た。

港のベンチにすわって青い海と空を眺めていると


イベント発生!
1、新キャラっぽい子に話しかけられた(どんな子かも)
2、しゃべる猫だニャーん
3、おや?景色が歪んで……
4、記述安価


心もだいぶ落ち着いた。

お昼も過ぎて帰り支度をしていると、外国の人だろうか、

いかにもお嬢様って感じの女の子に話しかけられた。

流暢な日本語でお店の場所を訪ねられたので教えてあげると、

オーバーなくらい感謝された。

平和だ。

何もない、穏やかで平穏な日だ。

まさに休日に相応しく爽やかな、あの空と海のような清々しい日だ。

休日の余韻を胸に、私は父の所に顔を出し今日の出来事を話した。

父も少し顔色が良くなったみたいだ。

やはりわたしの杞憂だったようだ。

何も悪い事なんて起きない。

そう。不幸なんて宝くじみたいなもの。

わたしに当たるわけがない。

その日は溜まっていた家事を済ませて、ごく普通の夕食を取り、ごく普通に床についた。

その夜は、夢を見なかった。



のぞみ「えー? なんであたしを連れて行かないかなぁ? おいしいお店いっぱい知ってるのに!」

サリナ「ごめんのぞみ。今度の休みに一緒に行こうよ。かわいい雑貨おいてるお店見つけたから」

のぞみ「雑貨? 何? それって食べれるの?」

サリナ「あのさぁ、のぞみん? 人の趣味嗜好はそれぞれだけどさー。もうちょっと女の子らしくするとかさー」

のぞみ「女の子らしく? 何それ食べれるの?」

休み明けにのぞみと学校へ向かう道すがら、この間の休日の話をする。

まあ、いつも通りの返答だ。

サリナ「いつも通り過ぎてちょっと怖い」

のぞみ「はあ? 何それ? バナナ食べる?」

わたしはバナナを頬張りながら、こんどの休日の予定をあれこれと話し合った。



学校の下駄箱で、猫草先輩が待っていた。

遠巻きに写メ撮られても動じない。

廊下の壁に背中を預け、じっとしている。

のぞみ「うわ。あの人またいるよ。サリナ、あんた何かしたの?」

サリナ「ううん。何もしてないけどさー」

猫草先輩か。どうやら向こうからは話しかけてこないみたいだ。

話しかけようかな。待っていたのなら何か用があるのかもしれないし。


安価
どうしようかな?


こちらに用はない。

なら話しかける必要もないはずだ。

わざわざ下駄箱で待っていた理由はわからないけど。

サリナ「行こう、のぞみ」

のぞみ「う、うん……」

わたしたちは猫草先輩の前を素通りした。

その時、彼女はボソリと呟いた。


「忠告はしたわよ。死んでからでは遅すぎるって」


ぞっ、と悪寒が首筋を突き抜ける。

サリナ「それってどういう……」

振り向いた所に、彼女はいなかった。

のぞみ「サリナ? どうしたの?」

サリナ「……ううん。何でも」

嫌な、予感はする。

たぶん、いや、もしかしたら、もしかして。

のぞみ「顔色悪いよ。保健室行く? ついてったげるから」

サリナ「いや、わたしは……」


安価
わたしはどうするべきだろう

なんか重要安価っぽい所で今日は終了します。
不定期でフラッと再会しますので気長&気楽に待っててください。
では、おやすみなさい。

安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】


☆登場人物

牛耳川サリナ
 主人公の女の子だよ。中二だよ。苦労人のパパのおかげでキュゥべえをかなり警戒してるよ。

藍根のぞみ
 サリナの同級生で友達だよ。ややふっくらとしているよ。三度の飯より飯が好きらしいよ。

猫草アミ
 中三のスーパーモデル級美少女だよ。意味深なことばかり呟いているよ。魔法少女だよ。

キュゥべえ
 うさんくさい魔法の契約モンスターだよ。悪意は無いけど善意や道徳、倫理観もないよ。


☆ここまでのあらすじ
 魔法少女になればパパの病気は治りそう。でも怪しい契約は結んじゃダメだってお父さん言ってたし。
 そんなこんなしていると猫草先輩が意味深な台詞を言い始めたよ

「死んでからでは、遅すぎる」

 果たしてその真意は……?


というわけでぼちぼちはじめます。

まあ一人目ですし軽くゆるーく進めていきましょう。


背中にのぞみの引き留める声と始業のチャイムを聞きながら、

わたしは走った。

嫌な予感がする。

いますぐ猫草先輩に会って問いたださなければいけない気がする。

あの人は何か重要なことを知っている。

誰もが教室に急ぐ中、わたしは廊下を逆走し、

猫草先輩を追いかけた。

「まって、ください」

渡り廊下の途中でようやく追いついたわたしは、息切れに喘ぐように言葉をかけた。

猫草先輩は足を止め、首をかしげるように振り向く。

「さっきの言葉……前にも言ってましたよね。『死んでからでは遅すぎる』って。それって、どういう意味なんですか!?」

叫ぶように訪ねるわたしに、猫草先輩は平然と、落ち着いた様子でこう答えた。


安価
1、「あなたのお父さんの寿命はあと3日」
2、「あと1週間で強大な魔女が現れ町中の人が死んでしまう」
3、「え? あ、いやいや。私の口癖みたいなもので深い意味はないですごめんなさい」
4、自由安価


「一週間後、この町にとても力の強い魔女が現れるの。

 まだ普通の魔女とすら出会ったことのないあなたには分からないでしょうけど、

 その力は圧倒的。この町の人たちを簡単に殺しちゃえるぐらいの力を持っているわ」

突拍子もない話に、あっけにとられてしまう。

何? この町の人たちがみんな……?

それってわたしも、お父さんも。のぞみも、学校のみんなも。

みんな、死んじゃうって事?

とてもじゃないけれど信じられない。

わたしの疑いの視線に気づいたのか、猫草先輩は溜め息をついて窓の外に目をやった。

渡り廊下から見下ろす運動場ではどこかのクラスが一時間目の体育をしている。

運動場を走り回る生徒たちを見下ろしながら猫草先輩は言葉を続けた。

「信じられないでしょうね。でも本当の事よ。

 その魔女は私ひとりの力ではとうてい敵わない強さなの。

 できれば逃げてしまいたい。

 けど、けれどね。

 私はこの町を守りたい。

 だから一緒に戦ってくれる魔法少女を探しているの。

 牛耳川さん。あなたにもこの町を守りたいという気持ちがあるのならお願い。

 魔法少女になって一緒に戦って欲しいの

 一緒に魔女を倒しましょう?」

そんな、急にそんなこと言われても……


安価
1、信じられない
2、信じるけど魔法少女になるのはちょっと
3、一緒に戦いましょう
4、自由安価



「先輩の言ってる事は信じます。でもわたしが魔法少女になるのはちょっと……」

わたしがそう答えると、猫草先輩の目が厳しくなった。

外の景色から私に視線を戻す。

その眼は、わたしを睨みつけていた。

この目は警戒心? いや、憎悪すら感じられるこれは――

――敵意だ。

「そう。私の言う事を信じるのに魔法少女にはならない。ということはあなた、

 この町の人がどうなったって良いって言うのね?」

怒りからか早口でまくしたてるように猫草先輩が言う。

わたしが何か反論を差し挟む余地もなく、次々と言葉を吐き出す。

「あなたは魔法少女になれるのに、危険な魔女との戦いは私だけに押し付けるというのね?

 あなたや、あなたのお友達や、家族や町の人たちが平和に暮らしていられるのは、

 私みたいな魔法少女が魔女と戦っているからだっていうのに!」

淡麗な容姿に似合わない子供じみた癇癪をまき散らしながら、猫草先輩はその場を立ち去ろうとする。

もはや、わたしに彼女を引き留める言葉はなかった。

どうやらわたしは彼女の逆鱗に触れてしまったらしい。

「さようなら。あなたならきっと協力してくれると思っていたのに。

 もういい。私ひとりで戦うから」


 『もう誰にも頼らない』――そう最後に呟いた言葉が、酷く心に刻みついた。


 渡り廊下にチャイムが響き渡る。

 もうすぐ2時間目がはじまる時刻だ。



「おばちゃん! AランチとBランチね!」

「のぞみ、奢ってくれるの?」

「何言ってんの。両方あたしが食べるんですけど」

「……だよねー」


昼休み。元気のないわたしを見かねたのぞみが食堂に連れて来てくれた。

てっきり昼食をご馳走してくれるのかと思ったけど、そんなことは無かった。

わたしはサンドイッチとコーヒー牛乳を買って、のぞみと向かい合わせのテーブルに着いた。

「んで。あれからどうしたの? 猫草先輩と何かあったわけ?」

チキンステーキを頬張りながら心配そうに聞いてくるのぞみに、私はどう返事をするべきだろう。



確かに問題はあった。

あったが、もう終わってしまった問題だ。

猫草先輩はわたしに魔法少女の仲間になって欲しかったようだ。

けれど私は魔法少女にはなりたくない。

利害の不一致。

彼女と私が協力しなければならない理由は無い。

けど、けれど彼女が言った『強大な力を持った魔女』の話は嘘とは思えない。

それに彼女ひとりにこの町の平和を任せていていいのだろうか?



問題は山積みだ。

のぞみに相談して解決するとも思えないけど、気持ちは少しは楽になるかもしれない。


安価
1、相談しようそうしよう
2、魔法少女の部分は伏せて相談
3、ぜんぶ忘れよう
4、記述安価


よし、忘れよう。

魔法少女だとか何だとか、そんな話を悩んでも仕方がない。

猫草先輩には彼女なりの生き方があるし、わたしにはわたしの生活がある。

彼女には悪いがほぼ初対面の彼女に振り回される必要なんてないのだ。

『強大な力を持った魔女』とやらの話は少しひっかかるが、それはまたその時にでも考えればいい。

「べつに何もないよ。ちょっと気になっただけ。もう関わることもないだろうし」

「ふーん。まあサリナがそう言うんだったらべつにいいけどさ」

どこか腑に落ちないといった様子で視線を向けてくるのぞみ。

居心地の悪い視線から逃れるようにわたしは彼女に提案した。

「そうだ。今度の週末。海の方に遊びに行こうよ。前に言ってたお店の話なんだけどさー」

「あー、美味しいスイーツのお店があるっていう……」

「雑貨屋さんの話よ! もー、そんな話してないでしょ?」

無理に明るく振舞おうとするわたしの意図を察してくれたのか、のぞみもおどけて話に乗ってくる。


魔法少女にはなるべく関わらない。


それで良いはずだ。

それで今まで通り何もかも普通に過ぎていくはずだ。

言いしれぬ不安を感じる内心を押し込めるように、何度も心に言い聞かせた。


ここでワルプルギスの夜的なラスボスの名前を決めておきます。泣いても笑っても1週間後に来ます。

安価
町ひとつを壊滅させられるほどの力を持った魔女の通称は?
下1~3を合成して作製。



※※※※※※※※

通称『聖女の怨み』

カタマリの魔女。その性質は嘆き。偽りの審判により火刑に処された聖女の嘆きは大粒の雨となり石畳を濡らす。
けれど彼女の涙が足下の炎を消すことはない。永遠の責苦は枯れない涙と共に在り続ける。

※※※※※※※※



ラスボス爆誕。1週間後に聞袋川市を襲撃する予定。慈悲はありません

……そういえば戦闘とか強さのバランスとか考えてなかったです。ちょっと考えてくるんで今日はここまで。
簡単な戦闘システムのようなものを考えてきます。

それじゃまた

戦闘システム……そんなものを作る才能が無いことに気づくのにまる1日かかったぜ。

魔女と戦うことになった場合でも選択や自由安価等で進行していこうと思います。

選択肢次第では勝利出来、なおかつ自由安価で弱点を看過できれば撃破成功みたいな感じで。
とりあえず試行的な部分が多いですがご容赦くださいませ。



安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】


☆登場人物

牛耳川サリナ
 主人公の女の子だよ。中二だよ。苦労人のパパのおかげでキュゥべえをかなり警戒してるよ。
 魔法少女に積極的に関わらない方針だよ。今週末は遊びに出かける予定だよ。

藍根のぞみ
 サリナの同級生で友達だよ。ややふっくらとしているよ。三度の飯より飯が好きらしいよ。
 さいきんサリナが先輩と揉めてるみたいで心配だよ。バナナたべる?

猫草アミ
 中三のスーパーモデル級美少女だよ。意味深なことばかり呟いているよ。魔法少女だよ。
 サリナに一緒に魔法少女として戦ってほしかったけどフラれちゃったよ。孤軍奮闘中だよ。

キュゥべえ
 うさんくさい魔法の契約モンスターだよ。悪意は無いけど善意や道徳、倫理観もないよ。
 あんまり出番がないよ。


☆ここまでのあらすじ
 魔法少女になればパパの病気は治りそう。でも怪しい契約は結んじゃダメだってお父さん言ってたし。
 そんなこんなしていると猫草先輩が意味深な台詞を言い始めたよ。
 なんでも1週間後に町がヤバいことになる級の魔女が来るんだって。
 ウソとは思えないけどそんなのと戦うのはちょっと……わたし魔法少女にはなりたくないし。
 そんな難しい事は忘れて日常生活に戻ろう!


その日の授業が終わると、いつもの日課通りお父さんの病室を訪ねた。

「どう? 調子は」

いつも通りの質問。

「ああ。だいぶ良くなって来たよ。この分だと退院もそう遠くないだろうな」

いつも通りの返事。変わり映えのしない遣り取りだ

普段通りならこの後は学校の出来事や勉強の進み具合なんかの他愛の無い話をしばらく続け、

夕陽が傾き始めた頃には病院を出て家に帰る。

それで、『いつも通り』の続きが出来る。

その、はずだ。

でも、そろそろはっきりさせるべきかもしれない。



安価
1、父に入院が長引いている事について問いただす
2、医者か看護婦をつかまえて父の病状について問いただす
3、『いつも通り』を続ける
4、自由に記述安価


『いつも通り』で良い、とは思えなかった。

わたしは父との会話を早めに切り上げ、家に帰る――フリをして、担当医を探す事にした。

どこにいるのかは分からないけど、とりあえずナースステーションで看護婦さんに聞いてみよう。

入院患者の娘が父の担当医に質問があると言えば、居場所ぐらいは教えてくれるはずだ。

病室を出て薄暗い廊下を進む。

ひときわ明るい蛍光灯に照らしだされたカウンターのある一角。

そこに3人ほどの看護婦さんたちが休憩時間なのか、くつろいだ様子で雑談をしている。

今ならさほど忙しくもなさそうだ。気兼ねなく尋ねられる。

声を掛けようとカウンターに近づくと、聞くとはなしに彼女たちの雑談が耳に入って来た。

「それにしてもさ。いつもお見舞いに来てるあの子、健気よね」

「ほとんど毎日来てるわよね。いつも遅くまでお話ししてるし。よっぽとお父さん想いなのね」

「でもあの子、知ったらショックでしょうね。だって治ると思って毎日お見舞いに来てるお父さんが実は――」


父の病状
1、いつ死んでもおかしくない状況
2、難病が発症していて、高額な手術をしなければ命は助からない
3、治る見込みのない不治の病でずっと入院していなければならない
4、自由に記述安価



「もう危篤状態だなんて知ったら。それも一日のほとんど意識の無い状態だなんて」


――え?


「娘と会う夕方のほんの数十分のために、気力を振り絞って意識を繋ぎ止めてるんですって」


――なにを、言って


「集中治療室に入るのも延命治療も拒否してるのは、娘さんに一円でも多く遺産を残すためらしいわよ」


――なにを言って、いるんだろう

父は、お父さんは。

だってさっきまで、普通に話して。



気が付くとわたしは走っていた。

さっきまで、いつもと変わり無い一時を過ごしていた部屋に戻る。

病室へ駆け込み、縋るように父のベッドへ辿り着いたわたしの目にはようやく――


ようやく、真実を目の当たりにした。


顔色は真っ白と言って良いほど青白く、額に脂汗を滲ませ、苦痛に顔を歪めながら眠る父の表情を目の当たりにして、

ようやくわたしは、自分の目が節穴だったことに気が付いた。


「おとう……さん……」


床にへたりこんだわたしの呟きに、父が返事をしてくれる事は無かった。


どうやって家まで帰ったのか覚えていない。

たぶんタクシーに乗って家まで帰ったのだと思う。

あの後、父の担当医に全てを聞いた。

お父さんの強い要望で、わたしに事実を告げる事はしないで欲しいと頼まれていたらしい。

罪悪感に顔を沈ませる壮年の担当医に頭を下げ、わたしは茫然自失といった様子で病院を後にしようとした。

見かねた医師がタクシーを呼んで、わたしを家まで送らせたのだ。

ああ、そうだ思い出した。

わたしはタクシーで帰ったんだ。

そうだ。私は家に、帰ってきたんだ。


何故だろう。不思議と涙は出なかった。

ただ、悔しさだけが心と頭をグルグルと渦巻いていた。

何故、どうして。

どうして気づいて、あげられなかった。


悔しさと、わたし自身への憤りがやり場のない怒りへと変じ、

怒りは突発的な暴力となってわたしの身体を突き動かした。


「なんでっ……!」


通学鞄を壁に投げつける。大した音も立てず、鞄は床に落ちた。

発散された怒りは僅かではあったものの、すこしは冷静さを取り戻したわたしは、気が付いた。

力なく床に落ちた鞄の隣に、見慣れない白い影があることに。

その白い影はウサギのような、猫のような、見慣れない不思議な小動物の形をしていた。


「そろそろボクが必要じゃないかと思ってね」


白い小動物はさも当然といった口ぶりで人の言葉をその身から紡いだ。

わたしはこいつを知っている。

これは、人ならざる何か。そして――

わたしの願いを叶えてくれる何かだ。


安価
1、父の体を元通り健康な状態にしてほしいと願い魔法少女になる
2、目の前の異形と会話を試みる
3、それでもわたしは魔法少女になりたくない
4、自由記述安価



「あなたは――何?」

気が付くと自然と言葉が口から滑り出ていた。

わたしの意思なのだろうか。

自分でも自覚のないままに、わたしと白い異形の会話が始まった。


「あなたは何?」

「……『事実』意外には耳を貸さない、って目だね。珍しい。そんな目が出来る子はめったに居ないよ。

 敬意を表して、ってわけじゃないけれど。いいだろう。なるべく誤解や祖語が発生しないよう、

 できるだけ努力して答えることにするよ。

 ボクは個を持った生命体じゃない。キミたちのような生き物とは生命としての在り方が違う。

 別種の――いいや。別次元の生き物さ」

「別次元の、生き物? そんな異生物が、どうして魔法少女の勧誘をやっているの?」

「キミたち人間と同じだよ。生活を守るために、仕事をしている」

「仕事? 魔法少女をひとり増やす度にお給料がもらえるとでも言うの?」

「ボク個人の生活を守るためじゃない。この宇宙全体の生命種の生活を守るためだよ」

「何を、言ってるの」

「この宇宙で生活を営む、ありとあらゆる文明にエネルギーを供給する。

 言うならボクたちは発電所の作業員のようなものなのさ。

 この宇宙のエネルギーは有限なんだ。誰かが効率の良い発電を行わなくちゃならない」

「……発電? 勧誘をしているなら営業のサラリーマンなんじゃないの?」

「いいや。ボクたちは発電所なんだ。そしてキミたち魔法少女は『燃料』なんだよ」

「意味、わかんない」

「理解できないだろうね。全てを説明しても理解できた子はそう多くはないよ。

 むしろ理解なんかしなくてもいい。結果は後からついて来るんだからね。

 要はキミが何を望み、何を願うかだ。

 願いは間違いなく叶えられる。

 それだけは保証しよう」


わたしの頭じゃコイツの言っている事の半分も理解できない。

でも、何もせずお父さんが死んでしまうのを待つ事なんて――


安価
1、契約する
2、話しを続ける
3、お断りする
4、記述自由安価


理解できない。

でも理解できないからと言って、安易に従ってはいけない。

お父さんも言っていた。

願いを叶えてやるなんて怪しい事を言う相手がいたら、そいつを徹底的に調べ上げるって。

わたしの頭じゃついて行けないかもしれないけれど、それでも。

お父さんの教えを無駄には出来ない。

「わたしたちが、魔法少女が燃料ってどういう意味?」

「……驚いたね。まだ事実を求めるのかい。いいだろう。

 特に急ぎの用は無い。とことん付き合ってあげるよ。

 まず、ボクがキミたちを燃料と例えた事の真意についてだね。

 それに答える為にはまず、ボクたちが生み出しているエネルギーの性質について説明しなければならない。

 ボクたちが生み出すエネルギーは電気じゃない。感情から生み出される相転移エネルギーだよ」

理解はできない。それでも、確かめなきゃ。

わたしは頷く。頷いて先を促す。

「相転移エネルギー。分かりやすく言えば感情エネルギーだね。

 ボクたちの種族は感情を物理エネルギーに変換する技術を持っているんだ。

 この技術は画期的でね。今までのあらゆるエネルギー発生機関に比べて圧倒的なエネルギー生産量を誇るんだ。

 けれど欠陥もあってね。

 感情エネルギーは、感情を持った生物からしか抽出できない。

 皮肉な事にボクたちの種族は感情を持たない。

 故に他の惑星に住む、情緒豊かな他種生物に燃料の役割を果たしてもらわなくちゃいけないんだ」

「感情を持つ生き物を、燃料に――発電する? わたしたち人間も――燃料?」

「その通り。よく理解できているよ。

 ボクたちはキミたち人間に、感情エネルギーの燃料になって欲しい、という契約を持ちかけているんだ。

 その対価として願いを叶えてあげる。

 ボクたちの惑星の技術力をもってすれば人の子供が願う程度の事、造作も無く叶えてあげられるよ」


――どうだい? 納得したかな?

 
 白い獣は小首を傾げた。

 いや、まだだ、まだわたしは全てを確かめていな――

 
 ふいに視界が、真っ暗になった。

 何が、起こって――


「……やれやれ。極度の緊張が連続して精神が耐えられなくなったようだね。

 まあ、その年齢を考えれば良く持った方だと思うよ。

 けれど、願いを叶えるなら急いだ方が良いだろう。

 また呼ぶといい。呼べばすぐに来てあげるからね」


 白い異形の言葉が、薄れゆくわたしの意識に反響する。

 リビングの床に倒れ込んだわたしは、そのまま泥のように眠ってしまった。




翌朝、スマフォの振動音で目が覚めて、画面を見る。

画面いっぱいに表示されている着信履歴。

履歴の発信元は3種類あった。

ひとつは学校から。

時間を見る。

時刻は正午を指し示していた。

遅刻も遅刻。もうお昼休みの時間だ。

慌てて他の履歴も確認する。

もうひとつは『藍根のぞみ』と表示されている。

無断欠勤しているわたしを心配して電話をかけてくれたのだろう。

こちらは後で折り返し連絡するとして。

最後のひとつに、目をやった。

瞬間、悪寒が奔った。



『聞袋川総合病院』



着信履歴は、今から5分前と10分前に、一件ずつ。

嫌な。

嫌な嫌な嫌な嫌な嫌な嫌な嫌な嫌な予感がする。

折り返し電話を掛けようとする手が、ふるえる。

ふるえる指先を抑え込むようにして画面を操作していると、着信が入った。



『聞袋川総合病院』



通話ボタンを押す。と同時に焦燥と冷静の入り混じった、壮年男性の声がする。

「牛耳川サリナさんですね? すぐに病院まで来てもらえますか。お父さんの容態が急変して――」

玄関から飛び出すように駆けだした。

電車? 走っていく? それで間に合う? 通りに出てタクシーを――それが一番速い!

全速力で走りながら、猫草先輩の言葉がふいに脳裏を横切った。


『言ったでしょう? 死んでからでは遅すぎるって』


死んでない! まだお父さんは死んでなんかいない。

まだ。

まだ、死んでなんか――



「手術で延命することは可能です。しかしご本人様は延命治療を拒否されています。

 容態急変時の処置も望まれていません。

 これらはご本人様が作製された誓約書にも明記されています。

 よって私たち病院側として出来ることは――無いんです」

申し訳ありません、と深々と頭を下げる壮年の医者と、その後ろに控える看護婦さんたち。

いい大人たちが何人も揃って中学生女子に頭を下げるなんて、恥ずかしくないんだろうか。

お医者さんたちが部屋を後にすると、病室に残されたのは眠ったまま苦しそうに肩で呼吸する血の気の無い顔をした父と、

それを見守る事しか出来ない、無力で無能なわたしだけが残された。


あと1時間も持たないかもしれない、とお医者さんは言っていた。

その間、一緒にいてあげるべきだとも、言っていた。

一緒にいる間にも、みるみる呼吸は弱く、浅く早くなっていく。

唇も紫色に変わっていく。

ああ、これは――

これが、人の、死。

お父さんは、これから――


「さてと。どうする? あまり時間は無いようだけど」

白い獣は窓際に降り立った。赤い瞳でうなだれるわたしを見据えている。


外は嘘のように青空が広がっていて、気持ちの良い天気だった。

決断するべきだろう。

ヤツの言う通り、残された時間はそう多くはない。


安価
1、契約する
2、まだ聞きたい事が残っている
3、お断りする
4、記述安価


決めなくちゃ。

どうするか、今すぐわたしが、決めなくちゃ

でも、怖い。

魔法少女だとか契約だとか燃料だとか異次元だとか、そんな未知への恐怖もある。けれど、

けれど何より恐ろしいのは、父を見捨てる選択肢を前に、迷っている自分がいる事がいちばん恐ろしい。

複雑な問題じゃない。要は、こういう事だ。

我が身可愛さに父を見捨てるか、父の忠告を無視して得体の知れない契約を結ぶか。

どちらを選んでも、わたしは罪を犯すことになる。

故に、恐ろしい。

どちらの道を進もうと、決して今まで通りの生活なんか送ることはできない。できっこない。

だから、最後の一歩を踏み出せずにいる。

時間は刻一刻と迫っている。

父の息はもう風前の灯といった様子で――


「サリ……ナ、いるのか……?」


掠れた声が、わたしの耳を撫でた。

聞きなれた、いつもの声。

生気も気力も失われてはいるが、それでも聞き間違えるわけがない。

お父さんの、声だ。

「お父さん!?」

わたしは慌てて父の耳元に顔を寄せる。

「聞こえる? わたしだよ! サリナ! サリナだよ! お父さん!」

淀んでいた父の目に僅かに生気が戻り、黒い瞳がわたしの方に向けられた。

掠れた呼吸音に掻き消されそうなほど弱弱しい声音が、ぽつりぽつりと紡がれる。

「裁判所、手続き……済んで……後見、人……お金の心配、しなくて……いい」

「お金の事なんでどうでもいいよ! そんなもの、どうだっていいのに!

 無くたっていいのに! わたしは、お父さんが――」

「バカ、め……お金、は大事だ……無駄遣い、する、な……」

「しない! しないから! お父さんの言う事、ちゃんと守るから! だから――」

だから――

だから、お父さん――


「元気で、な。泣くなよ、サリナ――」


息が、止まった。

瞬間、父の体から力が抜けていくのが分かる。

空気が抜けていくかのように、ふう、っと萎んだように見えた。

そう、見えた。

ああ、お父さん。お父さんの言う事、ちゃんと守るよ。

お父さんの言う通り、都合の言い嘘で騙そうとするヤツには近づかない。

騙されたりなんかしない。

得体の知れない契約なんか結んだりしない。

だから――

だから、お父さん――



1、『お願い、死なないで』→父は病気が治った状態で蘇生
2、『ごめん、なさい』→父の死を受け入れる


今日はここまで。次回再開時に改めて安価かけますので、その時までどちらか検討しといてくださいな。
たぶん明日の夜も出来ると思う。
んじゃ。

再開時に安価をかけると言いましたが、父の死を受け入れるルート(というか魔法少女にならないルート)
を希望される方が特に多いみたいなので前言撤回する形になりますが

2、父の死を受け入れる

の方を選択させてもらいます。スレの流れに抗い1の方を選んでやろうと考えておられた奇特な方がいらっしゃったら、
ごめんなさい。>>1の裁量で、今回は非魔法少女ルートで行かせてもらいます。

ですが皆さん本当に良いんですか?
魔法少女化せずにワルプル級ラスボスの襲撃からどうやって逃れるつもりなんでしょうか……?



安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】


☆登場人物

牛耳川サリナ
 非魔法少女化ルート突入。

藍根のぞみ
 ご飯はおかず。おかずはご飯。

猫草アミ
 ルート的にほぼ死亡確定系美少女。

キュゥべえ
 冷徹非情な契約マシーン。


☆ここまでのあらすじ
 パ パ 死 亡 確 認。



父が息を引き取ってからは、あっという間に物事が進んで行った。

あらかじめ契約していた葬儀社の人たちが現れ、火葬から役所の手続き、

近所への挨拶周りからお墓への納骨まで全てをその日の内に済ませてくれた。

わたしがいつか悪夢で見たような普通のお葬式は行わなかった。

お金のかかる葬儀を父が望まなかったからだ。

その日の夜遅く、死後に関わる一切の仕事を終えた葬儀社の人に頭を下げると

「全て、あらかじめ頂いていた料金に含まれております。それでは」

とだけ言い、あっという間に去ってしまった。

家に残されたのは私と、葬儀社の人と交わしたいくつかの書類。

そして病院に残されていた父の荷物ぐらいだった。

真っ暗なリビングにへたり込んで、窓越しに夜空を見上げる。

まるで現実感など無かった。

現実――そう。

お父さんが、死んでしまっただなんて、現実を――


その日の夜、わたしはずっと夜空を見上げて過ごした。

朝が来るまで、ずっとそのままだった。


翌朝、担任の先生と校長先生が家を訪ねて来た。

しばらく、1週間は学校を休んで良いということと、

時々、様子を見に来るという内容を伝えると、痛ましそうな視線を残して早々に帰っていった。

その後も役所の人、裁判所の人、保険会社の人と、ひっきりなしにいろいろな人が訪ねて来ては、

いろいろな話をしてきた。

どれも大して難しい話じゃなかった。

あの白い異形の荒唐無稽な話に比べれば、酷く単純明快で滑稽なほどだった。


訪問人たちのラッシュもひと段落ついた夕方。

わたしは昨日から食事を摂っていない事に気が付いた。

何か、食べようかな――


安価
1、冷蔵庫にあるもので簡単に済ます
2、近所のお店に食べに行く
3、食べなくてもいいや
4、記述安価


何かを作る気力もなかったわたしは近所のお店に食べに行く事にした。

父とよく食べに行ったラーメン屋さんだ。

わたしがテストで100点を取った時は、ご褒美だと言って決まってチャーシュー麺を食べさせてくれた。

あまりに嬉しそうに連れて行ってくれるので最後まで言いそびれていたけれど、

わたしはラーメンが好きな方じゃなく、どちらかと言われれば嫌いだった。


「へいらっしゃ……嬢ちゃんか。話は聞いてるよ。その……残念だったな」

ラーメン店のおじさんにまで話が伝わっているみたいだった。

店内はわたしの他に2、3組のお客さんがいるだけだ。

わたしはいつも通りカウンター席の端に座る。

けれど隣にお父さんはいない。

「チャーシュー麺を、ひとつください」

「へいよ。チャーシュー麺いっちょう」

わたしがポツリと呟くとおじさんはいつも通りの調子で返事をして、ラーメンを作り始めた。

待っている間、何げなく着いているテレビを見上げる。

世界のどこかでテロ事件が起きたらしい。

詳しくは分からないけれど大勢の人が亡くなったみたいだ。

けれどそんな事は、今のわたしにはどうでも良い事だった。

世界のどこかで誰が亡くなろうと、何人亡くなろうと、わたしには関係無い。

わたしには――わたしは、ただ、お父さんが――

「へいお待ち」

おじさんがわたしの目の前にチャーシュー麺をゴトリと置いた。

湯気の立つ出来たてのラーメンからは香ばしい鳥ガラスープの匂いが立ち込めてくる。

この香ばしくも脂っこい匂いがわたしは好きじゃなかった。

トッピングに乗っている安っぽいもやしも。

乾いて硬くなっちゃっている刻みネギも。

うすっぺらいくせに脂身ばかりのチャーシューも。

――お父さんと一緒じゃなきゃ、少しも美味しくなかった。

お父さんと、一緒じゃなきゃ。

「ごめん、なさい」

ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

助けてあげられたのに、わたしは見捨てたんだ。

お父さんの言いつけなんて、破ればよかったんだ。後で死ぬほど怒られれば良かっただけなのに。

それだけのことで、お父さんは助かったのに。

なのにわたしは、お父さんを、見捨てた。

「ごめん、なさい」

運ばれて来た食事を前に、わたしは何度も呟いた。


お店の人も困っているだろう。

けれどわたしは堪える事が出来なかった。

お父さんを死なせたのは――

いいや。

お父さんを殺したのは、わたしだ。

わたしがお父さんを――


「あのさぁ。何を辛気臭い顔してんのさ。せっかくのラーメンがマズくなっちゃうよ」


カウンター席の端に座っていた女の子が、ふいに話しかけてきた。

その子は手にラーメン鉢と箸を持ってわたしの隣に腰掛けると、そこで遠慮なしに麺をすすり始めた。

誰だろう。いや、そもそも初対面でこの無遠慮さは非常識極まりない。

「何だが『わたし悲劇のヒロインです』って顔してるな。まあ、おおかた人並み外れた不幸な目にでも遭ったんだろうが、

 そんな事、生きてればいくらでも遭うもんさ。この先、何度でもな。まあ、あたしみたいなガキがお説教するのも何だけどな」

あなたの言う通りだ。なんで初対面の、同学年ぐらいの女の子にお説教されなければいけないんだろうか。

わたしは今、それどころじゃないって言うのに。

それにこの子、ちょっと――いいや、かなり上から目線だ。

すこしカチンと来たわたしは思わず、この子に、わたしがどれだけ辛い目に遭ったのか。どれだけ大変だったのかを滔々と語って聞かせてしまった。

父が死んでしまったこと。

父はわたしの為に治療を拒んだこと。それを隠していたこと。

そして、わたしはそれに少しも気づかずにいたこと――

「ふーん。まあ案の定、大した事ないな。それってあたしからすりゃ、良い親父さんに恵まれてたって自慢話にしか聞こえないね」

また小バカにするような態度だ。

確かにお父さんはわたしの為に――わたしの為にありとあらゆるモノを残してくれた。

わたしの為にたくさんの事をしてくれた。

わたしに、たくさんの事を残してくれた。

わたしは、わたしはお父さんに――――

「それだけしてもらったんならな。言う言葉が違うんじゃないか? お前。親父さんに謝ってどうすんだよ」

溜め息まじりにその子は言った。


――ああ、そうか。

お父さんに、わたしは『ごめんなさい』なんて言う必要は無かったんだ。

いつも通り、チャーシュー麺を食べさせてくれた時と同じように、言えばよかったんだ。

ごめんなさいじゃ、無い。


「ありがとう、お父さん」


その後、わたしは泣いた。

お店のおじさんにはすごく迷惑をかけたと後になって気が付いたけれど、

その時は誰も何も言わず、ただ見守ってくれていた。

ひとしきり泣いた後、延び延びになったラーメンを思いっきり啜った。

もちろん美味しくはなかったが、それでも空腹を満たすには十分だった。



落ち着いてから我に返ったわたしは店のおじさんと、話を聞いてくれた女の子に謝った。

「謝罪の言葉は聞きたくないね」

少し照れている様子の女の子に、わたしはお礼を言った。

「まあ悪くない。そっちの方が良いだろうさ」

店のおじさんはそんなわたし達の様子を見ながらウンウンと何やら納得した様子で頷いている。

いったい何に納得しているんだろうか。よく分からない。

わたしは女の子に改めてお礼を言い、牛耳川サリナというわたしの名前を名乗った。

すると女の子も名前を教えてくれた。

やはり少し照れた様子だった。

この子はもしかしなくても照れ屋なのだろうか。

だったら何で話しかけてきたのだろう。

「さてと。あたしはそろそろ行こうかな。まあ頑張れよ。せっかく親父さんが大事にしてくれた命だ。

 せいぜい幸せに長生きすることだな」

その子は代金をカウンターの上に置くと席を立った。

立ち上がってからこちらに背を向けた所で、ふいに何かを思い出したように、言った。


「……そうだ。長生きしたいなら今すぐこの町を出た方がいい。もうすぐこの町に良くない事が起きる。

 そうなると生きていられるか分からない。お前の命が大事だって言うんなら、そうするのが一番いい」


その言葉は、どこかで聞いたような内容だった。

わたしはそれを覚えている。

それは魔法少女である猫草先輩が言っていた――


町を滅ぼすほど強大な魔女の話。


なら、どうしてこの子が同じような話をするのだろう。

理由は簡単。至極単純明快な話だ。

「あなたも、魔法少女……なの?」

その子はピクリと立ち止まった。足を止め、きびすを返し、わたしの耳元に顔を寄せて囁いた。

「……ここじゃ何だ。場所を変えるぞ。ついて来な」

さっきまでの照れ屋な女の子の顔ではなくなっていた。

その瞳には精悍さが宿っていた。

その眼差しは父の表情にも良く現れる事があった。

戦う者の目。敵と相対する戦士の目だった。


見返せば見返すほど何か杏子っぽい感じですけど別人です。スネ夫とトンガリぐらい別人です。
そんな杏子っぽい照れ屋な魔法少女の女の子の名前と願い事を安価で決定します。
今後の大まかな流れとしては彼女が多少助けてくれたり見捨ててくれたりする感じになる予定。

それじゃまた次回ということで。


安価
この女の子のなまえと願い事をきめてください↓
1~3ぐらいを合成します。あんまり無茶なのはスルーするかも。でも出来る限り合成します。

あらゆる逃走ルートを潰そうとあれこれ考えを巡らせていたら日にち経ってました。
しかしラスボス以外は積極的には攻めて来ないという魔女の性質上、ひとつの町に閉じ込められるはずもなく……。

というわけで逃げるだけならいつでもできそうです。ただ、逃げた結果どうなろうと受け入れる覚悟があればの話ですが。

出来る事は出来るだけしておいた方がいいでしょう。どうぞ後悔の無いように。



ちなみにラーメン屋の魔法少女の名前は

【柚咲心音(ゆざき ここね)】

になりました。



安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】


☆登場人物

牛耳川サリナ
 逃走推奨され系ヒロイン。

藍根のぞみ
 出番が減ってる。おなかも減ってる。

猫草アミ
 まだ出番はある。

キュゥべえ
 血も涙もない発電所。


☆ここまでのあらすじ
 ラーメン食ったらだいぶ持ち直した。



彼女はわたしを連れだすと、住宅街の裏手にある高台に歩いて向かった。

わたしは彼女の後ろを黙ってついて行く。

住宅街を抜けて少し寂しい坂道を登っていけば、10分と掛からず到着するだろう。

道すがら、彼女は柚咲心音(ゆざき ここね)という名前を教えてくれた。

わたしも名前を名乗り簡単な自己紹介を終えた辺りで、聞袋川市全体を見下ろせる高台の公園に着いた。

夕陽に染まっていたはずの空は、いつの間にか星空の輝く夜空が広がってた。

繁華街の明かりが星空を映す水面のようにキラキラと色とりどりに輝いている。

遠くに目をやると西の山の端がかろうじで紫色で、まだ夕闇の名残をのこしていた。


ドカっとベンチに座る柚咲さん。隣に座るように仕草で促してくる。

わたしは黙って隣に座る。やや距離は開けて。

話を聞いてくれたり親身になってくれたり忠告してくれたり。

今の所、何の問題も無いが、さっきの目つきが気になる。

戦う者の、目。

もしかしたら、わたしの対応がマズければ攻撃されたり――しないよね?

「それで? あたしを魔法少女と見抜いたってことは、あんたも魔法少女だってことだよな」

柚咲さんはわたしに確認をとっているようだ。

お前も魔法少女なのか、と。


どう答えよう?
安価
1、いえす。あちしも魔法少女ですぜ!
2、ノー。知り合いが魔法少女なだけで。
3、白いアイツに勧誘されたけど普通少女。
4、記述安価


「ううん。魔法少女じゃない。キュゥべえに勧誘されたけど断ったんだ」

正直に魔法少女ではない事を話すと、柚咲さんはクリっとした目を更に大きくして驚いた様子だった。

「へえ! あいつの誘いを断るヤツもいるんだ。あたし初めて見たかも。なんで断ったんだ?」

さっきまでの鋭さを持った気配はどこへやら。好奇心を丸出しにした年齢相応の少女がそこにいた。

わたしは少し、ほんの少しためらってから、これも正直にホントウの事を告げた。

「お父さんと約束したから。だから、わたしは――『願わなかった』」

その一言と表情で彼女は察したのか、今度は慌てて口元を抑えた。

「あんた、さっきの死んだ親父さんの話……もしかして」

察してくれて助かる。この子はもしかしなくても、ものすごく相手の考えている事を慮るタイプのようだ。

わたしには到底、真似できない。もし彼女のような性質がわたしにもあれば、もっと早くに父の病状に気づけたかも――

「うん。キュゥべえはわたしにお父さんの病気を治してあげるって言ってた。でもお父さんはそんな怪しい契約、

 結んじゃダメだって言ってた。願いを叶えてもらった後、どんな見返りを求められるか分かったもんじゃないって」

神妙そうな表情で話を聞いていた柚咲さんが、瞳を閉じたまま腕組みをした。

足を組み直し、唸るようなそぶりを見せてから、口を開いた。

「そんな考え方のヤツもいるんだな。なんというか、新鮮だ。まあ確かにそうだな。魔法少女になったばっかりに魔女との戦いで、

 命を落とすヤツは多い。あたしだって何人も目の当たりにしてきた。そんな時はいつも思うさ。次は自分の番じゃないかってね。

 でも、あたしは後悔してない。あたしはキュゥベえのお蔭で今の自由な生活を手に入れることが出来た。

 大切な仲間もいる。そいつらを守る力だってある。悪いことばかりじゃないさ。まあ、良いことばかりでもないけどな」

そこでなぜか照れ笑いをする柚咲さん。

なんだろう。今の発言のどこに照れる要素があったのだろうか。

わからないけど不興を買ったりとかはしていないようだ。

願いを断ったわたしに、願い事を叶えた魔法少女が理解を示してくれるなんて。


「なるほど。あんたが魔法少女じゃないって事はわかった。それでいてわたしが魔法少女だと見破ったのは、

 おおかたキュゥべえからアレの事を聞いたんだろ? もうすぐこの町を襲う――『聖女の怨み』の事を」

セイジョノ……ウラミ? それってもしかしなくても例の大型魔女の事だろうか?


詳しい説明をしてもらう必要があるかもしれない。

一度は全て忘れようとも思ったが、やはりこの町を襲うというのなら、もしかしたらのぞみや学校のみんなだって傷付くかもしれない。

あるいは何か被害から逃れる方法の糸口が見つかるかもしれない。


安価
1、もう関係ないので詳しい説明はいいです。
2、知ってる限り説明してください。
3、あ、違います猫草先輩ってこの件に詳しい人がいて。
4、記述安価



わたしはベンチから立ち上がった。

立ち上がって、夜景の広がる聞袋川の町を見下ろしながら――確かにこう言った。

「わたしにはもう関係のない話です。だからもうその話は――必要ありません」

満天の星が煌めく夜空を見上げた。月はどこだろう。こんなにも輝き散らした星空では、月を見つけるのも一苦労というものだ。

しばらく沈黙が流れた。草木が夜風に揺れる音だけがサラサラと夜の公園を通り抜けていく。

やがて静寂を破ったのは、控えめな冷静さを湛えた口調だった。

さっきまでの好奇心に裏付けされた少女のハイテンションさは、なりを潜めている。静かな、いっそ冷徹ささえ感じられる声音。

「それがいい。あんたが一番大切なものは、親父さんが守りたかったもの。つまり、あんた自身って事になる。だったら、

 魔法少女になって戦い死の危険を冒すことも、この町に残って『聖女の怨み』に襲われるリスクを犯すことも、道を逸れることになる。

 だから、あんたの選択は何も間違っちゃいない。この上なく正解だと思う」

けど――と、彼女は続けた。

「けどね。もしもあたしがあんたの立場なら――戦うと思う。例え魔法少女じゃなくても、大切な家族から命を託されても」

なぜ――と、わたしは問うた。

「なぜかって? そりゃあ『あたし』だからさ。誰かの為に戦ってこそ、あたしってもんだ」

だから――彼女はわたしの肩を軽く叩きながら、

「だからあんたは『わたし』の選択をした。それはきっと、『牛耳川サリナ』にしか選べない道さ」

くるりと向きを変え、高台から住宅街へと続く坂道を下り始めた。

呼び止めようとしたわたしは、伸ばそうとした手を止め、開こうとした唇を閉ざした。

進むべき道が、違うんだ。

彼女は戦う者。

わたしは――逃げる者? いいや私は――

『生き残る者』だ。

何があっても、何が何でも。

わたしは生き残る。それが――それがお父さんとの、約束なんだから。

「さよなら。柚咲さん」

わたしがポツリと呟くと、彼女は後ろを振り向きもせずパタパタと手を振って見せた。

彼女の背中が住宅街の闇に消えた。

生き残る。

例え向かう未来に何があったとしても。



家に帰った頃には夜も更けていた。

今から出来る事はあるだろうか。

私という存在が生き残るために、できる限りの事はしておきたい。

とりあえずリビングに散らばっている書類の山を片付けていると、スマフォに新着メールがあることに気が付いた。

差出人は、『藍根のぞみ』。

内容は――

『やっほー。のぞみんだよ。サリナ落ち着いたら電話してちょ。落ち着いてなくても電話しておくれ~(泣)

 食べるぐらいしかノーのないあたしだけど話聞いてあげるくらいはできるからね!!!!』


のぞみらしいメールだ。いつも通りに振舞って、わたしを元気づけようとしてくれている。

あの子らしい。不器用なのに変な所で気を遣うんだから、まったく。

……わたしは彼女に告げるべきだろうか。

この町に迫る脅威について。

あるいは――


安価
1、そんなことより町を出る準備だ!
2、電話しようそうしよう
3、今日は休んで明日からいろいろしよう
4、記述安価


ふいに猫草先輩の事が脳裏に浮かんだ。

廃工場で野良猫たちに餌をやり慈愛の籠った瞳で見つめる、彼女の姿が。

彼女に会えば――

いや。今さら会って何になるだろうか。

わたしは柚咲さんから大型魔女『聖女の怨み』についての情報提供を断った。

つまり、これ以上魔法少女や魔女について関わらないと決断したのだ。

確かにこの町のために一人で戦うことになるだろう猫草先輩には同情の念を禁じ得ない。

しかし、わたしは生き残らなければならない。

どうして頭に先輩の事が浮かんだかは分からない。もしかしたら罪悪感からだろうか。

それでも会う理由がなければこんな夜遅く、彼女に会いに行く事はない。

何か、彼女に会う理由があるだろうか。

そもそもわたしは先輩から敵意にも似た憎悪の視線を向けられている。

一人で会うのは危険かもしれない。



サリナが猫草先輩の集会所へ向かう事が『生き残る』事に結びつく理由を記述して下さい。
妥当性があれば会いに行きます。10分程度で出なければ単なる気の迷いで処理されます。

安価
いまから猫草先輩の集会所に向かう理由は?


ふいにわたしの内面の深い所から――黒い泥のような感情が這い出して来るのを自覚した。

そうだ。

『生き残る』方法はひとつじゃない。

わたしは『逃げる者』じゃない。

逃げるために万全を尽くすのではなく、ただ、ただひたすらに生き残るための道を進まなければならない。

生き残る方法はひとつじゃないんだ。

『逃げる』ともう一つ。

わたしは――

――きっと

最善で――

――最悪の




―――――判断を下した。




「他の誰かに退治してもらえばいいんだ。わたしじゃなく、他の魔法少女たちに」



その時のわたし自身の表情はいったいどんなものだっただろうか。

表情ひとつ変えない冷徹なものだっただろうか。

あるいは悪意に醜く歪んだものだっただろうか。

今となっては分からない。けど、そんなことはわたしが生き残る上で何の関係もない事だ。

わたしは取る物も持たずに猫草先輩のいた猫の集会所へと向かった。

会えるかどうかも分からないが、最善を尽くそう。

生き残るための最善を。

その為に、わたしの命はあるのだから。



※妥当性が証明されたため安価が実行されました。



夜の工場地区は薄気味悪くもあり、幻想的でもあった。

配管や煙突が複雑に入り組んだ構造に、照明が仄白い光と影のコントラストを創りだしている。

そんな工場たちの影に埋もれるように、ひとつの廃工場がひっそりと佇んでいた。

廃墟の中は外に比べて少し暖かい。

ここなら外で寝るよりも過ごしやすく安全なのだろう。

わたしは猫草先輩を探して廃墟の中をグルっと見回す。

もちろん懐中電灯を持って来ている。真っ暗な夜道を灯り無しで出歩くほどわたしの危機意識は低くない。

丸い光に照らされて、ところどころに猫がうずくまっているのが見える。

何匹か寝ている猫を見つけた所で、はっと気が付く。

ここは猫の寝床であって、人が寝られるような場所ではない。

こんな夜遅くに猫草先輩がここに居て、眠っているなんて事は常識に沿って考えれば在り得ない。

しまった。こんな事なら事前に学校の名簿を調べ、彼女の住所を調べておくべきだった。

こんな時間ならきっと家でシャワーでも浴びて寛いでいるに違いない。

モデルや雑誌の仕事をしているとも言っていた。

きっと高級なマンションの一室を借りて、優雅な生活をしているに違いない。

とんだ無駄足を踏んでしまった。

そう思って出口へ向かおうとした所で、段差に足元をとられて懐中電灯を落としてしまった。

コロコロと転がる懐中電灯。

あわてて追いかけると何か、柔らかいものにぶつかって止まったようだ。

駆け寄り、懐中電灯を拾い上げ、何気なくぶつかった物を照らし出すと――

そこにはまるで、猫のようにうずくまり、丸くなって寝息を立てている猫草先輩の姿があった。

――寝てる。この人、廃墟で寝てる。しかも床で寝てる。


どう……しよう?


安価
1、起こす
2、起きるまで待つ
3、そっとしといて帰る
4、記述安価


起きるのを待とう。

無理に起こすのは良くない気がする。

これから彼女と交渉する事になるんだから、なるべく心象は良い方がいい。

叩き起こした相手と話すのと、起きるのを待っていてくれた相手と話すのなら、どちらが好印象かは言うまでもない。

わたしは静かに寝息を立てる猫草先輩の隣に体育すわりで腰を下ろした。

床が冷たい。ポケットからハンカチを取り出し、それを床に敷いてから座りなおす。

これで少しはマシだろうか。

暗い廃墟の闇の中。よくよく耳をすませれば遠くの工場から機械音が響いてくる。

だがその音も遠く聞く分には心地の良い子守歌のように眠気を誘う。

わたしはうとうとしながら寝入る彼女の顔を見た。

まつげ長いなー、とかどうでもいいことを考えながら、ふと思う。

そういえばわたしは彼女について何もしらない。

魔法少女ということ以外には、のぞみから聞いた程度の話しか。

どんな人で、何を考え、何をしているのか――

そして、どんな願い事を叶えて魔法少女になったのか。

――そこまで思いを巡らせて、わたしはひとつの引っかかりを覚えた。

そういえばなぜこの人は――わたしが協力してくれると思ったのだろう。

別れ際に、まるでわたしが協力するに決まっていたような、それ以外は在り得ないと思っていたような口ぶりだった。

あの激昂具合も、まるで『本当ならわたしが一緒に戦ってくれるハズだった』と考えていたなら合点がいく。

まるで、信頼していた人物に裏切られたかのような――

――いいや。わたしは彼女の事を知らない。きっと勝手な思い込み――なのだろう。

そうだ。思い込みの強い人なのだろう。

そうでなければ、何だという言うのだろうか。

とめどない思考が頭の中をグルグルと回る内に、わたしは眠りに落ちていた。

膝を抱えたまま、うずくまるようにして、深い眠りに落ちていった。



夢を見ている。

わたしがまだ小さい頃の夢だ。

ひとりで公園で遊んでいたわたしは、何かが滑ったような大きな音を耳にして驚いていた。

遊びを中断して、大きな音のした方へと駆けて行く。

そこには――道路の真ん中で血を流して倒れている一匹の猫がいた。

あわてて駆け寄る。息も絶え絶えのその猫は、今にも死んでしまいそうだという事が子供のわたしにも分かった。

わたしはその猫を抱えて、走った。

幸いにも公園からさほど遠くない場所に動物病院があったのを知っていた。

駆けこんだ血まみれのわたしを見た獣医さんが、すぐに手術を行ってくれた。

結果から言えば、その猫は助かった。

無事に命を繋いだ猫の傷が癒えた後は、我が家のペットとして飼うことになった。

父もその事については了承してくれてた。

猫の命を助けた事も、褒めてくれた。

だからわたしは、調子に乗ったんだと思う。

捨て猫、傷ついた猫を見つけると、片っ端から拾い集め、家で飼おうとしたのだ。

もちろん、父は止めた。

わたしの目を見て、これ以上ペットを飼う余裕はない、と。

幼心にも、家に金銭的な余裕があまりないことを感じ取っていたわたしは、父の言葉に従った。

拾ってきた猫たちは元の場所へと返してきた。

ごめん、ごめんと謝りながら。

その言葉が何の贖罪にもならない事を自覚しながら。

全ての猫を返し終えて、ようやく家に帰った所で――


最初に助けた猫がいなくなっている事に気が付いた。

二階の廊下の窓が少し空いていた。

おそらくあそこから逃げたのだろう。

逃げた? 何で? 当時は分からなかったがそれはきっと――

あの子たちを守れなかった、守る力の無かったわたしに愛想を尽かしたのだと、今なら分かる。

ああそうか。やはりわたしは、そういう事には向いていなかったんだ。

なら、仕方のない事だ。

わたしはそうではなかったし、今でもそうではないんだから。


うっすらと朝の光の気配を感じ、わたしの覚醒が促された。




というわけでまた次回。明日は出来ると思うけど来なかったら明後日で。
ついでに

安価
サリナが助けた猫に付けた名前は?

遅くなりました。



安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】


☆登場人物

牛耳川サリナ
 『生き残る者』。父から託された命を守る為なら何だってやってやる系ヒロイン。

藍根のぞみ
 食べられないもの以外は何でも食べちゃう系親友ポジ。

猫草アミ
 猫 草 先 輩 野 良 猫 説。

柚咲心音
 『戦う者』。サリナとは違う道を歩む魔法少女。

キュゥべえ
 今回のケースでは別に暗躍したりはしない、ハズ。


☆ここまでのあらすじ
 猫の集会所でうたた寝。目が覚めたら朝だった。



むくり、と体を起こして辺りを見渡す。

わたしは――そうだ。

猫草先輩に会いに来て、起きるのを待っている内に寝ちゃったんだ。

そして、ずいぶん昔の夢を見ていた。

わたしがまだ小さい頃、自動車に撥ねられて瀕死の重傷を負っていた猫を助けた時の夢を。

そしてわたしの元から逃げ出してしまった――

『にゃん太』の事を。

わたしの元を去ったにゃん太は今も元気にやっているだろうか。

また交通事故に遭っていないだろうか。

あの頃はまだお父さんも元気だった。

夕飯のサンマをまるまる一匹、咥えて逃げるにゃん太を追いかけ回す父の姿を思い出し、自然と笑いが零れる。


「何を笑っているのかしら。人が休んでいる間に押しかけて来て勝手に眠るなんて、いったいどんな神経をしているの?

 牛耳川サリナさん」


よく通る声と共に長身痩躯の女性が、廃工場の入り口から白い朝日を背にしてこちらに近づいてくる。

猫草先輩だ。

彼女はわたしの目の前まで来ると立ち止まって、おもむろに鞄から何かを取り出した。

手には――缶詰と、白い皿。

眠たい目をこするわたしの前に、おもむろに白い皿を置き、その白い皿の上に一つの缶詰を置いた。

『猫ちゃん大好きキャット缶』と書いてある。

どう見てもペットフードだが。

これは――食べろという事だろうか。

それとも彼女なりの嫌味なのだろうか?


「あの、これって……」


わたしがおそるおそる尋ねようとするのを遮って、彼女の声が工場に響いた。


「朝ご飯は食べないと体に良くないわ。でもそれを食べ終わったら出て行って頂戴。

 私はもうあなたに用はないわ。あなたにだって私に用はないはずよ。

 それとも何? まさか今更、私とお友達になりたいとでも言うつもり?」


そうだ。わたしは眠るためでも、ましてや猫缶を食べるためにここに来たわけじゃない。

わたしにはわたしの目的がある。

そのために、わたしはここにいるのだから。


安価
1、『柚咲心音』という魔法少女の話をする
2、『聖女の怨み』の話をする
3、『お父さんの死』の話をする
4、記述安価



「お父さんが――死んじゃったんです」


――あれ? わたしは何を――


「ずっと一緒だったのに。わたしは何も気づいてあげられなかった」


――何を、言ってるんだ――


「でも……ううん。だからこそ、わたしは死んじゃうわけにはいかない」


――ちがう。こんな話をしに来たんじゃ――


「わたしは、死にたくない。死ぬわけには、いかないんです」


――わたしは彼女を利用して、魔女と戦わせようとして――


「身勝手なのはわかっています。でも、お願い」


――正直に話してどうするの! 上手く口車に乗せて、だまして、利用しなきゃ――




――デモ、ソンナコト、ワタシニデキル、ワケガ、ナカッタ――




「魔女を、倒してください。お願い、お願いします」




気が付くと、わたしは心の内に秘めておくべきことを全て吐き出していた。

ああ、そうだ。そうだった。

わたしに人を騙すなんて、そんなこと、出来るはずがなかったんだ。

だってわたしは、お父さんの子だもの。


わたしの本心。それはあまりに身勝手で、自己中心的で、我が身の保身しか考えていない。

醜い。醜悪だ。こんな勝手な人間に頼み事をされて、誰が引き受けるだろう。


わたしは泣きそうな顔で、おそらく呆れ顔でこちらを見下ろしているだろう猫草先輩の顔を伺った。

さぞかし気分を害した事だろう。

早々に立ち去ろう――


だが、彼女の表情は、わたしが予想していたものとは、かけ離れていた。

彼女は。猫草先輩は――

彼女の頬を一筋の涙が伝っていた。

「そう。お父さん、死んじゃったんだ」

彼女はポツリと、雫のように呟いた。



わたしは同時に二つ、混乱していた。

思わず心に秘めておくべきだった事を口にしてしまったわたし自身に。

そして、そんな醜いわたしの内心を耳にして涙を流す猫草先輩の涙に。

彼女は濡れた頬をそのままに、わたしの傍まで歩み寄ると、膝をつき、わたしの頭を抱きしめた。

何を――と、問うよりも早く、彼女は口を開いた。


「私は貴女に命を救われた。だから私の命は貴女のもの。

 貴女を庇護する者が誰もいないと言うのなら、私が貴方の盾となりましょう。

 貴女の身に降りかかる厄災を、遠く遠くへ退けましょう」


それは母親が幼子に読み聞かせるように、じっくりゆっくり、嫋やかな声色だった。


「私の願いも、私の命も、貴女のお蔭でここにある。

 だから私は――サリナ。

 あなたの為に戦います」


何を、言っているのだろう。

わたしの為に、戦う?

いったいどうして? わたしが彼女の命を――救った?

わたしは、だれかの命なんて、一度たりとも救ったことなんて――


「ああ。それと、サリナ」


少し高飛車な、皮肉っぽい、それでいて良く通る声で彼女は言った。


「女の子に『にゃん太』は無いんじゃないかしら。これってどう考えても男の子につける名前だもの」


彼女は――猫草先輩は――いいや、違う。彼女は――


『にゃん太』は、いつかのようにいたずらっぽく笑って見せた。



猫が魔法少女になれるなんて、聞いていない。

いや、そもそも誰かに尋ねてすらいないのだから、誰も教えてくれるはずもない。

あるいはにゃん太とキュゥベえ以外には誰も知らないのかもしれない。

でも彼女は――飼っていた時は勝手に男の子だと勘違いしてたけど――確かに魔法少女になっていた。

猫が、少女に。

確かにこれは魔法の領域だ。

あまりの事実に衝撃を受けたまま、ぼーぜんとしているわたしに、にゃん太は今までの出来事を話してくれた。


わたしの元を去った後は、わたしのように、誰かを助けられる人(猫?)になりたいという想いを強く抱くようになったらしい。

けれども一匹の猫に出来る事はたかが知れていた。

己の弱さを憂う日々がしばらく続き、やがて奇妙な白い猫と出会う。

キュゥベえと名乗る変な猫が、にゃん太にこれまた変な話を持ち掛けてきた。


「ただの獣がこれほどのポテンシャルを持つなんて前例の無いことだ。是非とも魔法少女になって欲しい。

 いや、魔法子猫というべきかな? まあ名前なんてどうでもいいことだ。

 願い事を強く念じてご覧。そうすればキミの願いは今すぐに叶えることが出来る」


報酬として町の片隅に追いやられていた猫たちを守る力と人の姿を得た彼女は、代償として魔女と戦う使命を帯びることとなった。

けれど彼女は後悔していないらしい。

誰かを守れる存在になれたという事実が、彼女にとっては何よりもかけがえのない報酬なのだという。


「サリナ。本当は一緒に守って欲しかった。

 守る力を持った私と一緒に、誰かの為に戦って欲しかった。

 けれどサリナ。貴女が庇護を欲するというのなら、猫草アミは――ううん、にゃん太は、何に代えても貴女を守るわ」


無論、あなた達もね――と、いつの間にか足元にすり寄って来ていた子猫を拾い上げ、背中を撫でながら彼女はそう言った。



『困った事があったらすぐに私の名を呼んで。この町にいる限り、いつでもどこでも貴女の元に駆けつけるから』


彼女はそう言い残すと日課だという魔女退治に出かけてしまった。

夕方にはまたここに戻ってくるという。

それまで呼び出すのは少々、気が引ける。

いくら元ペットとはいえ、彼女には彼女の生活があるのだから。

それに大型の魔女『聖女の怨み』にばかり気を取られていたが、小型の――というか普通の魔女という脅威もこの町には潜んでいるんだ。

今までその脅威に晒されずに済んで来たのは、影ながらにゃん太がこの町を守っていたから。

その事実を目の前にして、胸が締め付けられるような想いがする。

でも、今はそんな感傷に浸っている余裕はない。


件の大型魔女『聖女の怨み』という存在について、わたしはまだ何も知らない。

果たしてにゃん太ひとりで(一匹で?)戦って勝ち目があるのだろうか?

いや、きっと勝ち目は無い。

一緒に戦ってくれる魔法少女が必要だ。

ひとりで戦わせるわけには、いかないはずだ。



安価
1、「にゃん太ー! ちょっと戻って来てー! 作戦ターイム!」
2、そういえばのぞみからのメール返信してないや
3、聖女の怨みを倒せなかった場合を考え逃走ルート確保
4、記述安価



にゃん太を呼び出すのは夕方でも良いはずだ。

それまで、何をするべきだろうか……


ふと思い出し、スマフォを取り出してメールを確認する。


『やっほー。のぞみんだよ。サリナ落ち着いたら電話してちょ。落ち着いてなくても電話しておくれ~(泣)

 食べるぐらいしかノーのないあたしだけど話聞いてあげるくらいはできるからね!!!!』


あまり心配をかけすぎるのも良くないだろう。

今の時刻は――まだ日の出からさほど時間が経っていない。

のぞみの事だからきっと寝ているはずだ。

電話は迷惑だろうか?

でも、何かしら連絡をとって安心させてあげるべきかもしれない。


安価
1、電話する
2、登校する(いつもの待ち合わせ場所へ)
3、メールで返信する
4、記述安価



のぞみへの連絡を電話にするかメールにするか、それともいっそのこと学校へ登校し、直接会って顔を見せるべきか。

どうでもいい事で悩んでいる最中、わたしの頭に閃きにも似た考えが浮かんだ。

そうだ。どうしてこんな簡単な事に気が付かなかったんだろう。

にゃん太も、柚咲さんも、大型魔女がこの町に来る事を知っていた。

という事は、他にもこの事を知っている魔法少女だっているかもしれない。

いいや、知っているはずだ。

彼女たちが知っていたということは、魔法少女なら知る事が出来ると考えていいはず。

つまり――

正義の味方である魔法少女たちが、この町を守るために集まってきているという可能性があるということ。

ううん。可能性なんかじゃない。

きっと集まってくれているはずだ。

だって彼女たちは魔法少女なんだから。

多くの犠牲が出ると分かっていて、それを見て見ぬフリなんか出来るはずがない。


――探そう。

にゃん太に協力してくれる魔法少女が、この町の周辺に集まっているかもしれない。

にゃん太が3日前に言った『一週間後』という言葉を信じるなら、その日まであと4日程度だ。

少し早めに待機したり、現地を調査している魔法少女たちに会えるかもしれない。

大型魔女の討伐を目的に、続々と集まる魔法少女たち――

そんな都合の良い絵空事を想像しながら、わたしは町の郊外へと駆けだした。

わたしに出来る事を、するんだ。



町の東西を横切る大きな高架道路。

その東側の乗り降り口に当たる場所が聞袋川市の玄関口、という事になっている。

道路は東西それぞれ隣町へと続いている。

高架道路から降りたすぐ先には『ようこそ聞袋川市へ』という大きな看板アーチが掛かっている。

アーチを潜るとすぐ目の前に見えてくるのが『道の駅、聞袋川』だ。

高架道路を利用する人たちの休憩所、という名目で建てられたものだが、道路を降りた先にあるため微妙に便利が悪い。

しかし近くに休憩所のようなものは無いため、多くのドライバーたちがここで休んでいく。

わたしは一度、家へ戻って着替えてからバスを利用して『道の駅、聞袋川』までやって来た。

家からここまではバスで15分程度の距離でさほど離れていない。

そして、ここからなら高速バスを利用して市外へ脱出する事も容易だ。

つまり、町の外へ出るだけなら大した時間も手間もかからない。

だが仮に道路が寸断されるような事になれば、その限りではないかもしれない。


この町にやって来るならここを経由するケースが多いに違いないと予想して来てみたのはいいけれど……

お昼前に到着したわたしは、道の駅にあるフードコートで食事をとりながら、魔法少女らしき人物がいないか辺りを見回してみた。

まあ、当たり前の事だが平日の昼間からこんな所にいる女の子なんて、わたしだけだった。

どうやらここには魔法少女どころか普通の少女すらいないようだ。

場所が悪かっただろうか?

でもあてどなく町の周囲を探し回るわけにもいかない。

どうしたものかと思案しながら、まだのぞみに連絡をとっていないことに気が付いた。

今は学校にいる時間だ。

電話は迷惑だろう。わたしはメールを送ることにした。


安価
1、わたしはげんきです。
2、いえーい。学校はどんな感じ?
3、魔法少女探してるんだけど見なかった?
4、記述安価


わたしは当たり障りのない文面を選んだ。


『わたしは元気だから心配しなくていいよ。メールありがと。しばらく学校公認で休んでいいんだって。

 うらやましいでしょー!? なんちって』


まあ、こんなものかな。

心配するなと言ってもどうせ心配するんだろうけど、あの子は。

わたしは送信ボタンを押した。

さてと、どうしようかと考え始めた瞬間、メールを受信した。

のぞみからだ。

あんた1分も経ってないんだけど。

それにあんた、いま授業中でしょうが……

わたしは呆れ顔で溜め息をつきながらメールの文章に目を落とす。


『無理しちゃダメだよ!!! 今度の週末、遊びに行けそう!?? あたし的にはかなり楽しみにしてるんだけど???』


ああ、そっか。今度の週末遊ぶって約束してたっけ――

そこでわたしは思い出した。

今度の週末って、4日後だよね。

4日後。その日って――


大勢の人が死んじゃうって、にゃん太が言ってた日。

つまり、『聖女の怨み』がこの町を襲う日でもある。


――約束を守るには、魔女を倒さなくちゃいけない。

――いや、倒してもらわなくちゃいけいない。

――その為にも今は。



わたしは、のぞみにメールを返信した。


安価
1、必ず行こう
2、行けたら行こう
3、無理かもしれない
4、記述安価



嘘はつけなかった。


『ごめん。無理かも』


短くメールを返す。

その後は10分経っても、30分経っても返事は返ってこなかった。

――仕方がない。

守れないかもしれない約束を、守れると無責任に言い放つような真似はしたくなかった。

送った文面を見返す。

もう少し、気の利いた文章にすればよかったかな。絵文字も使えば――

いいや。飾った所であの子にはバレるだろう。

わたしが、何か大きな悩みを抱えているだろうことは。

そして、その悩みを相談する気が無い事も。

わたしはのぞみを拒絶した。

あの子もそれを感じただろう。

これで良いのかもしれない。

深く考えすぎる必要はない。

あの子とわたしは、ただの仲の良い友達であって、それ以上の関係じゃないんだから。

こちらの事情にこれ以上、深入りさせる事もない。

あの子にはあの子の、わたしにはわたしの道がある。

ひととき交わったからと言って、それが永遠に続くなんてことは在り得ないんだから。


わたしはフードコートの席を立った。

時刻はお昼過ぎ。夕刻までにはまだ時間がある。

どうしようかな。



安価
1、もうちょっとここで魔法少女を待ってみる
2、街中を探してみる
3、家に戻って休もう
4、何をするか記述安価

時間も時間だし今日はここまで。

今後のスレの方針としましては、魔女についての情報やら何やらが小出しにされてきますので、
それを元に無制限安価で弱点看破出来れば撃破~、みたいな流れになると思います。あれ、これ前にも書いた気がする。

なので撃破そのものは難しくないと思います。でもちょっと>>1の独自解釈とか無駄な設定とか何とかいろいろあるんで、
推理モノみたいな感じではなく長文のいじわるなナゾナゾ程度に軽く考えてください。

それじゃ、明日か明後日に。

今日明日の夜共に時間がとれないです。
明後日の夜にやりますね。

それと記述安価についてですが、せっかく書いてくれてるのが無駄になるのは忍びないので、
決定した安価行動を阻害しない範囲で採用させてもらう方向で行きます。

今回の場合だと

2、街中を探す

という行動をしながら自殺という手段が脳裏を過ったり、SNSを調べたりという感じです。


安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】


☆登場人物

牛耳川サリナ
 『生き残る者』。大型魔女『聖女の怨み』を退治してくれる魔法少女を探している。

藍根のぞみ
 親友から仲の良い友達に降格されちゃった。

猫草アミ
 聞袋川市を守る魔法少女。人ではなく、元々はサリナに飼われていた猫。本名『にゃん太』。

柚咲心音
 『戦う者』。サリナとは違う道を歩む魔法少女。

キュゥべえ
 今回のケースでは別に暗躍したりはしない、ハズ。


☆ここまでのあらすじ
 町の玄関口で魔法少女を探したけどそれらしい子はいなかったので町中を探すよ。



聞袋川市の中心を南北に流れる聞袋川と、東西に走る高架道路。

その二本が交差している場所が、聞袋川市の中心街だ。

雑居ビルや商店などが乱雑に立ち並ぶ区域で、休日ともなればそれなりに人通りも多い。

だが今日は平日。それも昼間だ。

これから4~5時間もすれば夕方の帰宅ラッシュや買い物客などで人の数も多くなるだろう。

わたしは道の駅から乗って来たバスを降りた。

降りたバス停の名は『聞袋大橋』。

町の中心点にかかる赤い大きな鉄骨の橋で、目立った名所もないこの町のシンボルのようなものだ。

去りゆくバスを見送りながら、わたしは魔法少女らしき人物を探して町中を探索し始めた。

でも、魔法少女ってどの辺りにいるんだろう……?

いざ町の中心まで来てみたものの、見当がつかなさ過ぎて途方に暮れてしまう。

何か手がかりでもあれば。

でも魔法少女の居場所を教えてくれる人なんて――


ふと、わたしは手元のスマフォに目をやった。

……もしかしてだけど、検索したら魔法少女についての情報が出てくるんじゃないかな。

ひと昔前の話なら別だけど、これだけネットが発達してるんだから噂話のひとつやふたつ、出てこない方がおかしい。

あてどなく町中を探すより、ネットで検索した方が情報収集や魔法少女探しに役立つんじゃないだろうか。

わたしは適当なファーストフード店に入って飲み物とフライドポテトを注文すると、スマフォの検索画面を立ち上げた。




結果から言うと、それらしい記事を見つけることができた。

それも、3件。

ひとつは、ネットゲームの協力プレイ募集サイトに書かれていた『急募!聞袋川にて魔法少女協力求む』という協力要請。

ふたつめは、中高生向け雑談サイトにて話題に挙げられていた『聞袋川市がヤバいんだって』という雑談の内容。

みっつめは、『魔女図鑑』というタイトルの雰囲気のある個人サイト。


ひとつめの協力要請はネットゲームの協力メンバー募集に見せかけられてはいるが『聞袋川』という地名と『魔法少女』という単語

から、まず間違いないだろう。わたしの他にも魔法少女の力を求めている人物がいるということだ。

そしてこの人物はおそらく魔法少女で、しかも時期からして『聖女の怨み』を倒そうとしていると見て間違いないだろう。

掲示板の内容には簡単に『会って詳しい作戦を立てよう』という文言と、簡単な住所が書いてある。

その住所をわたしは知っていた。

丁度、いまわたしがいるファーストフード店からほんの100メートルほど離れた場所にある雑居ビル、その屋上が指定されている。

今すぐ向かえば5分もしない内に辿り着くことが出来るだろう。


ふたつめは、あまり魔法少女や魔女とは関係の薄そうな話題だったが、

『近日中に聞袋川市にヤバいことが起きる』という抽象的な話題で盛り上がっていた。

何がヤバいのかとか、詳しい話の無いままに、無責任で適当な雑談ばかりが書き込まれていた。

普段なら目に留まることもないけれど、時期が時期だけに無関係とは断じることはできない。

もしかしたら誰か魔法少女が警告の意味を込めて情報をそれとなく流しているのかもしれない。


みっつめは、個人サイトだ。

クレヨン画を書きなぐったような不気味なレイアウトの趣味ページだった。

ただの悪趣味なサイトにしか見えないが、そこに『聖女の怨み』というワードを発見した。

ページを開くと、これまた不気味な画像と共に文章の一節が表示される。


※※※※※※※※

通称『聖女の怨み』

カタマリの魔女。その性質は嘆き。偽りの審判により火刑に処された聖女の嘆きは大粒の雨となり石畳を濡らす。
けれど彼女の涙が足下の炎を消すことはない。永遠の責苦は枯れない涙と共に在り続ける。

※※※※※※※※


これも偶然の一致ということはないだろう。

このサイトの運営者は少なくとも魔女と『聖女の怨み』を知っている――おそらく魔法少女だ。

だが運営者の情報は少しも記載されていない。謎の多いサイトだ。



あまり関係のなさそうな情報まで仕入れてしまったが、大きな収穫があった。

やはり『聖女の怨み』を倒そうとしている魔法少女は、もうこの町に来ていたのだ。

それにわたしみたいな普通の女の子にも発見出来たんだから、他の魔法少女たちもこの呼びかけに気が付いていて、

もう既に何人か集まっているかもしれない。

もしかしたら10人、いや100人ぐらいの大勢で、案外、大型の魔女なんて簡単に蹴散らしてくれるかもしれない。

わたしは期待に胸を躍らせながら、すぐ目と鼻の先にある魔法少女の集合場所へと足を向けた。

――店を出ようとした所でハっと気が付く。

これからわたしは討伐をお願いする立場なんだから、何かお土産や差し入れのようなものを持っていくべきじゃないだろうか。

幸い、ここはファーストフード店だ。

味はともかくとして安くて美味しいものがたくさん購入できる。

何か、買っていこうかな。


もっていくものを指定してください
安価
1、ハンバーガーをいくつか買っていく
2、フライドポテトを山盛り買っていく
3、購入しない
4、記述自由安価

あっ


えー、それでは新キャラの魔法少女が出てきます。

名前を決めてください。


安価
協力要請を出していた魔法少女の名前は?
下3で有効なものを合成します

夏女 舞々(なつめ まいまい)になりました。

夏女舞々ちゃんの願い事は?


安価
マイマイちゃんは、どんな願い事で魔法少女になったの?


願い事は『いじめっ子を消してほしい』に決定しました。


今回はキャラ作製後、すぐに戦闘に入るので、あらかじめ武器を設定しておきます。

メインで使用していく武器ですね。

マイマイの武器は何ですか?


安価
夏女舞々の武器を決めてください
いちおう安価下1だけど隠し機能として2、3あたりも合成されるかも。



ハンバーガーとそれからアップルパイを持ち帰りで購入すると、わたしはそれを引っ提げて指定されているビルの屋上へと向かった。

そこは、雑居ビルの入り組んだ、やや薄暗い区域だった。

何も用事が無ければ足を踏み入れる事は無いような、町の影。

お昼時だというのにその一帯だけは妙に寂しい雰囲気を湛えている。

空気も少し冷たいようだ。

少し、不気味な雰囲気だ。

わたしは思わず一歩、後ずさった。

でもすぐに思い直して暗がりに足を踏み出す。

ここで退いては『聖女の怨み』を倒すことが出来ないかもしれない。

足裏から這い出してくるかのような恐怖心を踏みつぶしながら、わたしは目当ての雑居ビル目指して歩を進める。



「あれ。おかしいな……」

思わずそう呟く。

あの掲示板に記されていた雑居ビルは、歩いて5分もかからない場所にあったはずなのに――

スマフォの時刻表示を見る。

お店を出てから、もう20分も経過していた。

――おかしい。

いくら何でもかかり過ぎだ。

はっとして辺りを見回す。

景色が――歪んでいた。

コーヒーに溶かしたミルクのように斑模様に渦を巻くように、ビルの壁面が流動し、溶けてグニャグニャと形を変え続けている。


「なに……これ。何なの」


まるで現実感の失われたグニャグニャの空間の中。原型をとどめているのはもはやわたしだけだった。

あっという間に薄暗い路地裏は、ドロドロに溶けた泥のような地面と壁に覆われた異次元空間へと姿を変えていた。


「いったい何なのよ!」


恐怖と混乱に駆り立てられたわたしの悲鳴に、聞きなれない声が答えた。


『パパに会いたい?』


「え?」

振り向く。そこには変わらずドロドロの空間だけが広がっている。誰の姿もない。

じゃあさっきの声はいったい何処から?


『パパに会いたい?』

『会って謝ろう?』

『ごめんなさいをしなくっちゃ』

『だって約束、守ってないもの』

『泣くなって言われて泣いちゃう弱虫』

『無駄遣いするなって言われてるのに買い物しちゃう悪い子』

『そんな子は、今すぐ、早く、パパに会って謝らなくっちゃ』





「いけないよ?」




耳元から、声がした。

振り返る。そこには。

いつの間にか泥の中から這い出して来ていた、無数の骸骨がわたしの身体に縋りついていた。

汚泥の中へとわたしを引きずり込もうと、次々と現れる骸骨たち。

蔓植物のようにわたしの身体を絡めとり、細い骨の腕が、脚から腰へ、腰から胴へ、胴から胸へ、胸からわたしの首へと延びて来て――

――ひ。

声にならない悲鳴を上げようとするわたしの口を、泥まみれの骨が塞いだ。

誰か。

誰か助け――



「ザコはまとめて吹き飛ぶでちーっ!!!」

頭の悪そうな女の子の雄叫びが聞こえたかと思うと、強烈な爆風がわたしもろとも骸骨の群れを吹き飛ばした。

「へ? いやああああ!??」

空中高く放り出されたわたしの身体は、ゆったりと弧を描き、地面に向けて落下を始めた。

このままじゃ地面に激突しちゃ――


――わなかった。

いつの間にか戻っていたアスファルトの地面に顔から落ちそうな寸での所で、誰かがわたしの体を受け止めた。

いったい何が起こったのか。

わけもわからず目を見開いたままのわたしを抱きかかえてくれたのは、明らかにわたしより小柄な女の子だった。

色とりどりの造花とフリルがふんだんにあしらわれた可愛いらしいドレスと、ひときわ大きな花弁の赤い造花の帽子を被った女の子。

その子は、眠そうな目でわたしの顔をひとしきり観察したかと思うと、いきなりポイっと放り投げた。

明らかに小柄な女の子に出せる力じゃない。

この子は、間違いなく魔法少――

「ぶへっ」

地面に投げ出されたわたしは潰れるように倒れ込んだ。

起き上がって周囲を見渡す。

風景は完全に元通りの薄暗い路地裏。

荷物もちゃんとぜんぶある。

あのドロドロも、ガイコツたちも見当たらない。

唯一残った違和感は、目の前の全力でおめかししている小柄な女の子だけだった。

「まったく、やれやれでち」

女の子は偉そうに、無い胸を張ってわたしを見降ろしながら溜め息をついた。

「騒ぎは起こしたくないのに、迷惑なヤツでち。ほら、さっさとどっかに行くでち。こっちは使い魔相手にタダ働きさせられて、

 たいそうご立腹なんでちからね!?」

使い魔? いや、何だかよくわからないがさっきのガイコツたちが『魔女』の類だというのなら、この子はわたしを助けてくれたのだろうか。

だとしたら彼女は命の恩人だ。何か、お礼をするべきだろうか――

わたしは荷物からハンバーガーとアップルパイを差し出した。

「ん? 何でち? それは……アップルパイでち!? 欲しいでち! よこすでち!」

彼女は――わたしを助けてくれた魔法少女は飢えた野犬のようにアップルパイに飛びつくと、袋を噛み千切るようにして中身に食らいついた。

――どうしよう。あまりお近づきになりたくない感じの変わった子だが、少なくとも悪い子では――無いよね?

とりあえずこの子が食べ終わるまで、しばらく待つことにした。



「ちちちち……この安っぽいドロ甘さ、たまらんでち……」

ご丁寧に指先に着いたアップルパイの中身までペロペロしている。行儀が悪い。この子の両親はいったいどんな教育をしていたのだろうか。

わたしが目の前の女の子に辟易した表情を向けていると、それに気が付いたのか、頬を少し赤らめて軽くお辞儀をして来た。

育ちがいいのか悪いのか分からない。

軽く混乱しているわたしを後目に、少女はスカートの裾を摘まんで再度、お辞儀をしながら口を開いた。

「失礼したでち。自己紹介がまだだったでち。あちしは夏女舞々(なつめ まいまい)。近しい者は『マイマイ』と呼ぶでちから、お前もそう呼んでいいでちよ」

少女は――マイマイはそう言って、今度はアップルパイの包装紙をペロペロと舐め始めた。

……できれば止めさせたいが、命の恩人に強く出て良いのか悪いのか。

思案顔のわたしにマイマイは質問を浴びせてきた。

「そういえばお前、何でこんな寂しい場所にひとりでいたでち? 使い魔に襲われなくたって、悪い人間に襲われる事だってあるかもでちよ?」

――そうだ。わたしは魔法少女に会いに来たんだ。

わたしは掲示板に書き込まれていた魔法少女の協力要請を見て、ここから少し先にある雑居ビルを目指していたことを告げる。

告げた瞬間、包装紙を舐めるマイマイの舌が止まった。

「お前、アレを見て来たでち? だったらお前は魔法少女――」

ふいに、わたしの身の毛が総立ちになった。

ブワっと、全身の神経に突風が吹き付けたような圧力を感じた。

目の前の、少女からだ。

マイマイはさっきまでの眠たそうな目ではなく、野生の獣が捕食対象に向けるような冷徹無比で残酷な鋭い瞳をわたしに向けていた。

手には、いつの間にか巨大なハンマーを手にしていた。片側に、おどろおどろしいトゲのついた巨大な鎚。

あれが振り下ろされたが最後、わたしの身体がどうなるかなんて想像するまでもないだろう。

死が――傍らを駆け抜けたような気がした。

ふっ、と。圧力が消えた。

体が軽くなった。

マイマイの目つきも、さっきまでの眠たげなものに戻っていた。

「――じゃ、ないでちね。違うでち。お前はただのアップルパイくれただけの一般人でち。ちょっとばかし魔法少女の才能もあるみたいでちが」

少女が右手をふいっと振ると、巨大なハンマーは空中に霧散するように消えた。

今のは――何だ? 敵意?

いいや、おそらく今のは――

『殺気』という、ものだろう。

さっきの口ぶりから、協力要請を出したのはマイマイだろう。

だが、要請を見て来た者に対して今しがた向けた殺気は、いったいどういう事なのだろうか。

なるほど…
キャラ予約ってしてもよろしいでしょうか?


魔法少女に協力要請を出しておきながら、それを見て来た魔法少女に殺気を向ける夏女舞々という少女。

矛盾している。あるいは性格が破綻しているのか。

――どうする、べきだろうか。

彼女とこれ以上関わるべきか、否か。

少し、危ない所のある子かもしれない。

もしかしたら他の魔法少女との戦闘も厭わない好戦的な女の子なのかもしれない。

場合によってはにゃん太に危険が及ぶ事もあるかもしれない。

それに、他の懸念もある。

あの要請を見て集まっているであろう他の魔法少女たちはどこにいるのだろうか?

この先にある雑居ビルに集まっている――と考えるのは、少し浅慮が過ぎるかもしれない。

未だ、名残惜しそうにアップルパイの包装紙の匂いをクンクンと嗅いでいるマイマイの姿を見据えながら、わたしは言葉を選んで口にした。


安価
1、『聖女の怨み』と戦って倒して欲しい
2、『協力要請』を見て集まった他の魔法少女たちは?
3、『アップルパイ』好きなの?
4、記述安価

それじゃあ今日はこの辺で。明日の夜もやります。

自殺要素を回収出来なかった……でも一回鬱方向に舵を切ったらラストまで直行しそうだし……
ちょっとさじ加減とか検討しときますね

>>265予約とかはナッシングな方向でお願いします。




安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】



☆登場人物

牛耳川サリナ
 『生き残る者』。亡き父の影響で、非魔法少女のまま生き抜こうとしている。

藍根のぞみ
 食べたいと思った時にはもう食べちゃってる系仲の良い友達。

猫草アミ
 『にゃん太』。

柚咲心音
 『戦う者』。サリナとは違う道を歩む魔法少女。

夏女舞々
 小柄で変な喋り方をする魔法少女。何だか危ない雰囲気……?

キュゥべえ
 今回のケースでは別に暗躍したりはしない、ハズ。


☆ここまでのあらすじ
 アップルパイ万能説。


得体の知れない魔法少女を前にして、疑念はいくらでも浮かんでくる。

でもわたしは迷うためにここに来たわけじゃない。

聖女の怨みと戦ってくれる魔法少女を探してここに来たんだ。

ならばわたしがやるべきことは一つ。

彼女と、この町を守るために戦ってくれるように話し合いをすることだ。

だが、相手はどう見ても一筋縄ではいかない子である。

ここはご機嫌を取るわけじゃないが、せめて相手の好きそうな話題を取り上げるべきだろう。

いきなり本題に入って、会話が円滑に進むとも思えない。

相手は獣じゃない。

生身の、生きた人間だ。

わたしはなるべく普段通りのしゃべり方で、学校で友達に話しかけるように口を開いた。


「アップルパイ、好きなの?」


打算が入った分だけ少し硬い喋り方になってしまったかもしれない。

でもわりと自然な感じで切り出せたと思う。

さて、マイマイはどんな風に返してくるだろう?

あれだけおいしそうに食べていたんだから、少なくともいきなり殴りかかって来るという事はないだろう。

無いと、思いたい。



「例えば、でち」


急に落ち着いたトーンで、彼女は口を開いた。

「もし明日、世界中がムチャクチャのグッチャグチャに滅亡してしまうとして、お前は最後に何を食べたいでち?」

――最後の晩餐、というやつだろうか。

明日死ぬなら何が食べたい、か。

……のぞみなら。食いしん坊の彼女なら何と答えるだろうか?

わたしは――

何だろう。人生最後の日に、わたしは何を食べたいのだろう。

悩む素振りを見せていると、マイマイは答えを待たずに話を続けた。

まあ、彼女の答えは聞くまでもない。

「あちしはアップルパイが食べたいでち。甘くて甘くて甘くておいしいアップルパイを食べるのでち。

 そしてアップルパイの食べ過ぎで死にたいでち。死ぬときはアップルパイと一緒でち」

彼女は最後まで真顔で言ってのけた。

そこまで来ればもうアップルパイが好きか嫌いかというレベルではないように思う。

アップルパイを愛しているんだ、この子は。

彼女は、夏女舞々はアップルパイを愛している。


「なのでアップルパイをくれたお前は良いヤツでち。そうでちね……何か『お礼』をしてやるでち。

 今ここで、すぐにしてやれる事は無いでちか? あいにくあげられるような物は持ってないでちが、

 軽い質問に答えてやるぐらいは出来るでちよ?」


わたしにとっては先ほどの使い魔から命を助けてくれた事に対するお礼のつもりだったのだけれど、この

子にとってわたしは『何か分からないけれどアップルパイをくれた人』という扱いになっている。

小さな事に拘らない子なのか。

それとも単に頭がよろしくないだけなのか。

だが『お礼』とやらは素直に受け取っておいて損はないはずだ。


安価
夏女舞々に『お礼』として何を要求しますか?(質問ならその内容も)

※レスなさそうなので上2つ採用しますね




わたしは、わたしの果たすべき目的を彼女に告げた。つまりそれは――

「なら、お願い。『聖女の怨み』と戦うためにあなたの力を貸してほしいの」

マイマイは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに目を閉じて溜め息をついた。

呆れ、侮り――といった感情が溜め息には混じっていたように思う。

「いいでちか?」

まるで子供に言い聞かせるかのように、彼女は言った。

「まず前提として間違っているでち。マトモな思考のできる魔法少女なら、『聖女の怨み』なんてバケモノと

 戦おうなんてバカげた事は考えないでち。例え1000人の魔法少女がいようとも、戦えば絶対に負けるでち。

 こんなの魔法少女なら誰でも知ってる当たり前のことでち……っと、お前は魔法少女じゃないんだったでち」


戦えば絶対に負ける?

そんなはずはない。

少なくとも猫草先輩は――にゃん太は戦おうとしている。

何の勝算も無く戦いに挑むはずは――


「『ワルプルギスの夜』という大型の魔女がいるでち。そいつは出現する度に町ひとつを吹き飛ばす怪物でち。

 大昔から何千何万という魔法少女が挑んでは負け続けてて、今では誰も戦おうなんて考えないでち。

 出現したらその町の魔法少女は、一目散にどこかへ逃げるものでち。それが当たり前なんでち。

 『聖女の怨み』も、そいつと同列に扱われている大物でち。手を出そうなんて考える方が頭おかしいってレベルでち」



勝ち目が、無い?

いいや、それはこの子がそう言っているだけで。

本当かどうかなんて分からない。

この子が嘘を言っている可能性だって。

そうだ、間違っている情報を掴まされているだけかも。

だから、絶対に勝てないなんて事は――


「どうやらお前、魔法少女を正義の味方か何かと勘違いしてるでちね」


今度は何を? 魔法少女が正義の味方じゃ――無いって言うの?

考えていた事がいつのまにか口に出ていた。

彼女はやれやれ、と言った風に話を続ける。


「誰だって自分の身がいちばん可愛いに決まってるでち。得体の知れない怪物がドコかの町を襲うらしいって聞いて、

 その怪物と戦いおうとするバカがどこにいるでち? 何か相応の見返りでもない限り、戦おうなんて考えないでち。

 それは――――『お前』だって、同じはずでち」


彼女はわたしを指さした。

わたしの心臓がドキリ、と跳ね上がった。

そうだ。わたしも――わたしだって――


猫草先輩から一緒に戦おうと誘われて、断った。

魔法少女になれるにも関わらず、ならない道を選んだ。

この町がどうなろうと、わたし自身が生き残る道を選んだ。


そうか、当たり前の事だ。

何もおかしいことはない。

魔法少女だって、人間なんだ。

誰が好んで死地に向かうだろうか。

負けると分かってる戦場に、いったい誰が足を運ぶというのか。


「断言するでち。何の見返りもなく善意だけで『聖女の怨み』と戦ってくれるヤツなんていないでち。

 もしそんなヤツがいるのなら、そいつは頭のおかしなバカ野郎でち。関わり合いにならない方が身の為でち」


ふと、彼女は視線を落とした。

表情が帽子の影になって窺い知れないが、その語り口は少し物悲し気な口調にも聞こえた。


「じゃあなんで……どうしてあなたはこの町にいるの? それにあのネットにあった協力募集の書き込みは何なの?

 本当はあなただって、この町の人たちを守るために――」

視線を落としたまま、彼女は答える。

「魔法少女にはナワバリがあるんでち。魔女が溜め込んでる『報酬』を得る権利と言ってもいいでちね。

 この町も『猫草』とかいう魔法少女のナワバリだったはずでち。

 『報酬』は魔法少女が生きる為に必要な――そう、アップルパイのようなものでち。

 魔法少女はアップルパイを食べ続けないと生きていけないのでち。何もしないでいると干からびて死んでしまうでち」

にゃん太の存在は知られていたようだ。元飼い主として少し誇らしい気分になる。

だが今はそんな気分に浸っている場合じゃない。

魔女を狩る権利――その為のナワバリ。

なら野良犬や野良猫がそうするように、ナワバリの奪い合いが発生するはずだ。

じゃあ、もしかしてこの子は――

「あなたは、にゃん……猫草さんのナワバリを奪いに来たの?」

わたしの言葉に、マイマイは顔を上げて嬉しそうな作り笑いを浮かべた。

「半分正解でち。でもあちしは無理矢理奪い取るような無粋な真似はしないでち。そうでなくても猫草は相当の力を持った

 魔法少女と聞いてるでち。マトモにやり合えば不覚を取ることも考えられるでちからね。

 あちしの狙いは、『聖女の怨み』の襲撃でソイツが逃げ出した後でち。

 空白になったこの町のナワバリを、あちしが素早く占領してやるでち。

 逃げ出した後にナワバリを主張した所でもう遅いでち!

 出戻りの間抜けに言ってやるでち! 『そんなに大事ならどうして見捨てて逃げ出したんだ?』って!

 ちちちちち! あちしと同じような考えの魔法少女は多いでちよ!

 だから掲示板にこの場所を書き込んで、誘っていたでち!

 あの書き込みを見て来るヤツは、あちしと同じナワバリ狙いの魔法少女でち!

 もう5、6人は格の違いを分からせてやったでち。

 現状、次期この町の魔法少女はあちしって事で間違いないでちね」

彼女を始め、この町に近づく魔法少女たちは正義の味方なんかじゃない。

ナワバリを狙う、飢えた獣だ。

それはもしかしなくても、あのラーメン屋で会った柚咲さんも、おそらくは同じ目的なのだろう。

明確な『報酬』のないままに戦う人なんていない。

それは、わたしが一番良く知っているはずだったのに。


命をかけて戦う魔法少女に、わたしは何の報酬が支払えるだろうか。

わたしは、何か他人に与えられるだけのものを持っているだろうか。

わたしは、何も――


「たくさん喋れてまあまあ楽しかったでち。でもお礼になってない様な気がするでち。うーん、そうでちね。

 じゃあこうするでち。またいつか困ってる時に助けてやるでち。魔法少女じゃないお前は運悪く普通の魔女に遭遇

 しただけで一発アウトでち。使い魔程度でも簡単に死ぬでち。だから見かけたら1回だけ助けてやるでち。

 それでいいでち?」


首を横に振る権利も気力も、今のわたしには無かった。


「それじゃあ、もうそろそろ夕方になるでち。知ってるでちか? 夕暮れ時や真夜中は、魔女や使い魔が出やすいでち。

 はやくお家に帰った方がいいでちよ。パパもママも心配するでち」

気が付けば薄暗い路地裏には西からの日差しが差し込んでいた。

ビルの影が色濃い黒を作り出している。まるでそこから先は、闇の世界が続いているかのように。

マイマイは暗い暗い闇の中へと消えて行った。

去り際に「暇ならまた遊びに来てもいいでちよ。今度はもっと上等なアップルパイを持ってくるでち」と言い残して。



路地裏から表通りに飛び出したわたしは、脱力感と疲労感につつまれ近くの壁に寄り掛かった。

夕方の帰宅ラッシュの時間だ。学生やスーツ姿の人、買い物帰りの人たちが歩道を歩いている。

わたしはその雑踏に紛れ込むようにして家路を急いだ。

帰ろう。わたしの家に。

パパもママも、いない家に。


夕陽の色が濃くなる前に、わたしは家に辿り着いた。

靴を脱ぎ棄て、フラフラと歩みを進めリビングのソファへ倒れ込んだ。

体が痛い。頭もうまく回らない。

このまま眠ってしまっても、いいよね。

お風呂も洗濯も掃除も片付けも、また明日にしても怒られないよね。

もう、怒ってくれる人もいないんだから。


安価
1、今日はもう休む
2、のぞみと連絡をとろう
3、にゃん太を呼んでみる
4、記述安価

今日はここまでということで。

ところで、のぞみ魔法少女ルートと非魔法少女ルートどっちがいいとか要望ありますか?
現状、ちょうど50%&50%ぐらいでどっちにしようか迷っています。
要望がなければその場のノリで決まりますけど。

それじゃ明日の夜か、無理なら明後日の夜にやりますね。




安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】



☆登場人物

牛耳川サリナ
 『生き残る者』。魔法少女の現実を突きつけられ凹み中。

藍根のぞみ
 サリナから電話かかって来そうな予感がする……!

猫草アミ
 『にゃん太』。 聞袋川市をナワバリにする、かなり強めの魔法少女。

柚咲心音
 『戦う者』。この子もナワバリ狙い……?

夏女舞々
 変な喋り方をする魔法少女。『聖女の怨み』の襲来後、ナワバリを頂くつもりでち。

キュゥべえ
 今回のケースでは別に暗躍したりはしない、ハズ。


☆ここまでのあらすじ
 無料で戦ってくれる魔法少女なんていないみたいです。



ソファで仰向けになりながら、さっきまでのマイマイとの会話を思い出す。

彼女の言っていた事は、妥当だったと思う。

――考えてみれば当たり前の話だ。

何の報酬も無しに命懸けの危険な戦いに挑む人なんていない。

それが勝ち目の無い戦いと分かっていれば猶更だ。

わたしはそれを承知の上だったはずだ。

承知の上で、他の魔法少女に戦わせようなんて考えたんだ。

何の見返りも支払わずに、ボランティアで戦ってもらおうとしていた。

無償の奉仕を期待したんだ。

それは、お父さんを過労に追い込んだブラック企業と何が違うというのだろう。

いいや、労働に対価を支払っている分、まだブラック企業の方がマシだ。

わたしは――――


「……ホント、最悪」


いつの間にか薄暗くなっていたリビングにわたしの独り言が響いた。

口にした自己嫌悪の言葉がわたしの肌にまとわりついて、動く気力を削いでいく。

もう指先程度しか動かす力が残っていない。

――わたしは無意識に、手元にあったスマフォへと指を伸ばしていた。

ああ、そういえば、こういう時って――

――何もかも嫌になった時って

――いつもあの子に相談していたっけ。


何回かの呼び出し音が鳴った後、大きく張りのある声がわたしの耳元に飛び込んできた。


「ちょっとサリナ!? あんまり連絡くれないからすっごく心配してたんだけど!?

 どのくらい心配してたかというと……かなりよ! か・な・り!!!」


そうか。わたしはこの子にかなりの心配をかけていたみたいだ。


「……昼間のメールはゴメン。サリナを元気づけようとしたつもりだったんだけど。無理に誘って悪かった。

 その……怒ってる?」


怒ってない。のぞみこそ、約束破ったわたしに怒ってないの?


「あたしがあんたに起こるわけないでしょーが!!! あーもう! とにかく今からサリナん家に行くから!

 ちょっと待ってなさい!」


わたしの返事を待たずに電話が切れた。

どうやら彼女は家に来るようだ。

玄関の鍵は、開けておくことにする。



「元気なさそうだからどうせ晩御飯も準備出来てないんじゃないかって思ってね」

家に押しかけて来たのぞみの両手には野菜やら肉やらの食材が大量に下げられていた。

どうやらここで料理を始める気のようだ。この子は。

「お腹空いてるだろうし簡単に出来るものでいいよね。えーと、確か土鍋がこの辺りに……あったあった」

いくら親友とはいえ、わたしの家の土鍋の場所を把握しているというのはいかがなものか。

というより土鍋って何だ。さっき簡単に出来るものって言ってなかったっけ。

のぞみが料理に取り掛かり始めてから20分と立たずに、テーブルの上にガスコンロと土鍋がセットされた。

鍋の中では様々な具材がグツグツと音を立てて煮えている。

「のぞみ……何これ」

「え? ちゃんこ鍋だけど? ほらお椀貸して。よそったげるから」

わたしの目の前にゴトリと置かれたお椀には、ほどよく馴染んだ鶏肉と野菜が盛り付けられていた。

香ばしい出汁の匂いが鼻腔をくすぐり食欲をそそる。

わたしはおもむろにのぞみ特製ちゃんこ鍋の汁をすする。

――濃厚。それでいてさっぱりとした口当たりのだし汁は、雑多な具材が煮込まれているのにも関わらず、

スープのように澄んでいる。雑味や濁りが無い。おそらく出汁を取る段階から丁寧に仕込んであるのだろう。

鶏肉は――やわらかい。モモ肉はともすれば脂っこくなりがちだが、こちらもさっぱりとした口当たりだ。

白菜と長ネギは新鮮さを保ったまま鍋の一部として全体に溶け込んでいる。やわらかく、やさしい食感だ。

「……おいしい」

おもわずそう呟いてのぞみの方を見る。のぞみは既に二杯目を自分で入れ始めていた。

「へっへっへ。食べるだけが能じゃないのよ。おかわりする?」

わたしは無言でお椀を差し出した。


「どう? 少しは元気になった? お腹空いてたら悪い考えばっかり浮かんできちゃうからね」

締めのうどんを啜りながら、のぞみははにかんだ笑みを見せてくれる。

わたしは少し悩んでいた。この子に全てを打ち明けるべきだろうか?

告げれば、巻き込んでしまうだろう。

だが告げなくても、この町もろとも魔女の襲来に巻き込まれる事には変わりない。

だが、全てを告げるということは――わたしの醜悪さまでも明かすということだ。

他人を利用しようとしていること。

ただ自分だけが生き残るために、何だってやるつもりでいるということを。

わたしが利己的で、自己中心的で、わがままな生き物であるという事をこの子に――

親友に知られてしまうということだ。

わたしは――卑怯にも――知られたくないと思っている。

知られずに済むならそれが一番いいと、思ってしまっている。

でも。

でもやっぱりわたしは――

「あのね、のぞみ――」

わたしが言いかけると、のぞみは手でそれを制止した。

「サリナ。パパが亡くなって、他にもいろいろ大変な事がいっぱいあるみたいだけどさ。

 無理に話さなくてもいいよ。わたしも無理に聞こうだなんて思ってないし。

 サリナが話したいと思った時に聞かせてよ。わたしはいつでもいいからさ」

のぞみは笑った。いつも通りに、何も変わらない笑顔だった。


その後、一緒に片付けをして、学校での出来事やくだらない雑談をしていると、いつの間にか夜も更けていた。

「それじゃあサリナ。あたしもう帰るわ。またいつでもごはん作りに来てあげるからね」

その台詞。まるで恋人みたいじゃない――などとは恥ずかしくて口には出来なかった。

玄関を出ようとするのぞみを見て、今の時刻を思い出す。

こんな夜遅くに一人で出歩くのは危ないんじゃないか。

わたしの忠告にのぞみはやれやれと首を横にふった。

「ちゃんとパパに迎えに来てもらってるよ。近頃何かと物騒だからね。ほら、サリナも噂ぐらいは耳にしてるでしょ?」

噂? 何の噂だろう。お父さんが亡くなってからはずっと忙しくて、噂なんか気にする時間もなかったけど。

「テロリストよテロリスト! なんでも聞袋川市の近くにテロリスト組織が潜伏してて、大規模なテロを計画してるんじゃないかって。

 学校はその話でもちきりなんだから」

テロ……リスト? 何だろうそれは。急に、藪から棒で面食らってしまう。

そんな話はテレビの向こう側。どこかよその国の話じゃないのだろうか。

変な話題だ。いぶかしみながらも手を振って、お迎えの自動車に乗り込むのぞみを見送った。


翌朝の目覚めは爽快だった。

体も心なしか活力がみなぎっている様な気がする。

冷蔵庫を開けると簡単な朝食が用意されていた。食べ物の事となると、どこまで気が利くんだあの子は。

もぐもぐしながら、わたしは決意を新たにする。

弱気になってはダメだ。

わたしはもう、後には引けないんだから。

お父さんの為にも、わたしは絶対に生き延びる。

そのためにも、出来ることをしなくちゃいけない。


安価
何をしようかな?
1、魔女の情報収集
2、戦ってくれる魔法少女探し
3、町を脱出する準備
4、記述安価



昨日、さんざん無駄足を踏んだわたしは学習した。

やみくもに歩き回っても、魔法少女は見つからない。

なら、どうやって見つけるか。

考えてみれば簡単な事だ。

知ってる人に聞けばいいのである。

わたしは家の近くの公園、一昨日、柚咲さんと会った高台の公園へと足を運んだ。

朝早くの時間なのでわたしの他には誰もいない。

わたしは町を見下ろしながら、両手を口に添えて大きな声を張り上げた。


「にゃん太ー! にゃん太ー!! ちょっと来てー!!!」


ここからなら町の隅々まで聞こえるはずだ。魔法少女のにゃん太なら聞き漏らす事はないだろう。

というか呼べば来ると言っていたので、ここまで大声で呼ぶ必要はなかったかもしれない。


数分待ったが、音沙汰がない。

仕方がない、もう一度呼んでみよう。


「にゃん――」

「聞こえてるから! サリナ! もう十分よ!」


ガサガサと繁みを分けて出て来たのは、猫草アミ先輩の姿をしたにゃん太だった。

制服を着ている所からすると、どうやら通学途中だったようだ。

「一回呼べば聞こえるから。というか声の大きさは関係ないから。わたしの魔法の性質上、サリナがわたしを呼んだ

 という事実さえあれば分かるんだから」

魔法の性質? なんだろうそれ。

「魔法少女にはそれぞれ願いと関係の深い特殊な魔法の力を得るの。誰かの病気や怪我を治す事を願うと自己再生の魔法の力を得たり、

 誰かを傷つける事を願えば攻撃的な魔法の力を身に着けられる。

 わたしの場合は少し変則的だけれど――猫が本来持つ『第六感』が強化されているの。だから離れていても知りたい事が分かったり、

 危険を察知したりすることが出来る。だからサリナが心の中でわたしの名前を呟くだけでも、わたしには分かるわ」

魔法ってそんなに便利なものなんだ。

……ちょっと待って。

知りたいことが……分かる?

「なら、にゃん太。お願いがあるの。この町の近くで一緒に戦ってくれそうな魔法少女を探して!」

にゃん太ならわたしの頼みを無碍にはしないだろう。

しかも都合の良いことに知りたい事を知れる魔法だなんてすごい力まで持っている。

――そこまで考えて気が付いた。

ならにゃん太はどうして――どうしてわたしの他に仲間を集めようとしなかったんだろう?

その理由は、すぐににゃん太の口から聞かされる事になった。


にゃん太は表情を変えず、すまし顔のまま鞄から何かを取り出した。

それはオレンジ色の宝石でもなく、猫缶でもなく――黒い宝石、のようなものだった。

「これは『グリーフシード』と呼ばれる宝石。魔女を倒すと稀に落とす魔法のアイテム、といった所かしら」

マイマイが言っていた『報酬』ってコレの事だったんだ。

でもわたしにはただの黒い宝石にしか見えない。いったいどんな価値があるというのだろう。

売れば一個5万円になるとか?

「わたしたち魔法少女が魔法の力を使うと、その分に応じて魔力を消耗するの。失われた魔力は『グリーフシード』を使う

 ことでしか回復しない。つまり、わたしたち魔法少女という自動車は、魔力というガソリンで動いているけれど、そのガソリン

 が入っている給油タンクを持っているのは、他ならぬ『魔女』だけってわけ。これがどういう事かわかる?」

ええと、ちょっと難しい話になって来たな。つまり魔女をたくさん倒せば魔法がたくさん使えるって事かしら。

わたしの考え無しな返答に、にゃん太は首を振りながら答える。

「一度でも魔女を倒せない程に魔力を消耗してしまえば、もう二度と魔法少女として戦う事は出来なくなる。

 だからどんな初心者の魔法少女でも魔力の無駄遣いは絶対にしない。魔女を倒してもグリーフシードを落とさない事だって

 あり得るんだから。常に最小限の魔力消費で戦い続けなければならない。全ての魔法少女はそんなギリギリの綱渡りを強いられて

 いるのよ」

ファンタジーの世界だと寝て起きたら完全回復している事が多いけど、現実はやはり厳しいみたいだ。

この話を聞いて先のナワバリの話を思い出す。

魔女が魔力の元を持っているのなら、その狩場を巡って争いになるという話にも納得がいく。

町ひとつの狩場を奪えるというのなら、ナワバリを持たない魔法少女にとってはこの上ない利益だろう。

マイマイや、その他の魔法少女がこの町のナワバリを狙っているという話も理解できる。

そして――

「ここまで話せばサリナも分かるでしょう。『誰も大量に魔力を消耗すると分かっている戦いには参加できない』。

 どんなに心優しい正義の魔法少女がいたとしても、彼女には彼女の守るべきもののために戦う使命がある。

 『聖女の怨み』と戦えば大量の魔力を消耗し、二度と戦えない状態になってしまうのは目に見えている。

 だから――そうね。山のようなグリーフシードでも報酬として用意しない限りは、どんな魔法少女も相手には

 してくれないでしょうね。事実、誰も相手にはしてくれなかったわ」

マイマイと話している時に、何となくそうではないかと感じてはいた。

誰も損すると分かってる戦いになんか挑みたがらない――挑めるはずがない。

でも――

でもにゃん太、あなたは――

切なげに空を見上げるにゃん太に、わたしはかける言葉を見つけられずにいた。


ごめんなさい、にゃん太。

あなたは――自分だけしか頼ることのできない世界で、たった一人で戦い続けて。

そんな世界でもわたしを信じて――信じ続けていてくれたのに。

わたしは同じ道を、歩めなかった。

それなのにあなたは、それでもわたしを守ると言ってくれた。

なら、だったらわたしはわたしの為に、あなたの為に出来ることを――

「にゃん太。なら魔女の正体を一緒に探ろう。どんなに強い魔女って言っても、きっと弱点はあるはずだよ。

 わたしも手伝うから。一緒に手がかりを集めて、一緒に考えよう」

わたしは寂しげに佇むにゃん太の背中に声をかけた。

「まずは集められるだけ情報を集めよう。名前は『聖女の怨み』だよね。名前が分かってるって事は前にも出たことがあるんでしょ?

 その時の話を知っている人に心当たりはない? あ、それと夏女舞々ちゃんっていう魔法少女がいろいろと知ってそうだったよ。

 あとね、この町に柚咲さんって魔法少女もいるの。悪い子じゃないから話ぐらいは聞いてくれると思うんだ。にゃん太は他に何か知ってる

 事はない? 何でもいいよ。何が魔女を倒す手がかりになるかわからないんだから」

「わたしは――」

振り向いた彼女の目から――涙が零れていた。

「にゃん……太?」

「わたしは、死ぬために戦おうとしていたの。この町を守るために避けられない戦いに挑まなければならない。どこにも逃げ場はない。

 戦っても絶対に勝ち目なんて無い。そう思って、そう自分に言い聞かせて来た。けれど、サリナ。あなたはやっぱりわたしの――」

にゃん太は跪き、両手をぎゅっと握りしめて俯いたまま、呟いた。

「貴女はわたしの、希望です」

その姿はまるで祈りをささげているかのうようだった。

希望――わたしの語る希望。それは仮初の希望かもしれない。

わたしはこの子を裏切る事になるかもしれない。

我が身に危険が及べば、わたしはこの子に見せびらかした希望すら踏みにじって逃げ出すだろう。


――ああ、お願いです。できればこの希望を、嘘にしないでください。


わたしは心の中で、誰にともなく祈りを捧げた。当てのない祈りなど誰も聞き届けるはずもないのに。

今日はここまで。明日の夜は出来ると思います。
明後日は確定で出来ないので、もし明日来れなかったら2日ぐらい間が空きます。

※『聖女の怨み』がワルプル級とか言ってますけどあくまで起こした現象レベルの話です。
本質的には聖女さんはぜんぜん格下です。

あれ?qbからあらかた聞かされたと思ってたんだけど・・・



ちょっと忙しくて時間とれませんでしたけど、今からやりますよ。





安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】



☆登場人物

牛耳川サリナ
 『生き残る者』。利用しているにゃん太に対し罪悪感を抱いている。

藍根のぞみ
 いつから食べるだけだと錯覚していた?

猫草アミ
 『にゃん太』。 サリナの言葉に仮初の希望を見出した。

柚咲心音
 『戦う者』。ラーメン屋以降出番がない。

夏女舞々
 変な魔法少女。有象無象のザコ魔法少女たちは彼女が追い払ってしまったでち。

キュゥべえ
 今回のケースでは別に暗躍したりはしない、ハズ。


☆ここまでのあらすじ
 無報酬で戦ってくれるにゃん太をできるかぎりサポートしよう!(ヤバくなったら逃げるけど)

>>306 サリナは『聖女の怨み』についてキュゥベえからは説明を受けていません。
    『聖女の怨み』についての情報は現状、猫草先輩と柚咲さんから聞いた「もうすぐこの町に来て、町を壊滅させちゃう大型の魔女」程度のものです。

※前回の安価の指針に従い、『仲間の魔法少女集め』を優先しつつ『魔女の情報を集める』を実行していきます。



とりあえず跪いたままのにゃん太を立たせ、わたしは二人の魔法少女の話を聞かせた。



ひとりは『柚咲心音』という魔法少女。

ラーメン屋で出会い、初対面のわたしを励ましてくれ、大型魔女の襲来についての助言までしてくれた。

絶対に悪い子ではない。もしかしたらにゃん太に協力してくれるかもしれない。

でも、さっきのにゃん太の話を聞く限りだと望み薄だろう。

それどころか生活の為、にゃん太のナワバリであるこの町を奪おうとするかもしれない。

そんなことは無い――とは思いたいが、魔法少女にとって『グリーフシード』を安定して手に入れられるナワバリは喉から手が出るほど

欲しいもののはずだ。

安易に接触すれば喧嘩になってしまう、なんて可能性も無いとは言えない。



もうひとりは『夏女舞々』という魔法少女。

こちらは『聖女の怨み』が町を蹂躙した後、ナワバリを奪おうと狙っている子だ。

この町を守ろうとしているにゃん太にとっては敵でしかない。

仮に聖女の撃退に成功したとしても、直後にこの子の襲撃を受ける事も在り得る。

にゃん太にとっては危険な存在だ。

ただ、妙に義理堅い所もあるし、文句を言いながらも魔女の使い魔に襲われていたわたしを助けてもくれた。

こちらも完全に悪い子だとは言いきれない。

上手く事が運べば、もしかしたら一緒に戦ってくれる事もあるかもしれない。



どちらの魔法少女も、にゃん太が会おうと思えばいつでも会うことが出来るだろう。

マイマイは例の雑居ビルへ行けば会えるはずだ。

柚咲さんについては居場所は分からないが、そこはにゃん太の魔法『第六感』で探せばいい。



にゃん太が今まで出会った魔法少女は誰も協力してくれなかったという。

でもわたしは、あの二人には協力してくれる可能性があるように思えた。

仮にそうでなくとも現状、一緒に戦おうと勧誘できる魔法少女は彼女らぐらいだ。

わたしは一応、念のためにとにゃん太に確認しておく。

他に勧誘できそうな魔法少女はいないか、と。



するとにゃん太の表情がふいに、曇った。

嫌な記憶を蒸し返してしまっただろうか。

謝るとにゃん太は――

「そうじゃないの。ただ……」

と口ごもる。

そうか。いないのなら仕方がない。

あくまで念のために確認しただけだから、と気にしないように声をかける。

が、どうやらそうではないらしい。

にゃん太は、視線を逸らした。

わたしと目を合わせようとしない。


何を躊躇っているんだろうか。

言葉を促すと、彼女は意を決したように目を瞑ったまま、言った。


「実は一緒に戦ってくれる可能性のある……ううん。おそらく確実に一緒に戦ってくれるだろう子を知っている。

 いえ、知っているというよりは……『教えてもらった』」


何だ、それなら話は早い。ならその子にも声をかけて――

意気揚々と続けようとしていた言葉を遮って、にゃん太は厳しい口調で言った。


「出来ればこの話、私にさせないで欲しい。でもサリナ、貴女がどうしても魔法少女の仲間が欲しいというのなら、

 その子について話して聞かせてあげる。けれど、けどね、サリナ」


にゃん太は目を閉じたまま、重く異様に澄み渡る声で、続きを厳かに呟いた。


「世の中には『聞くべきじゃない話』というものもまた、存在するんだわ」


もったいぶって何を隠しているのだろうか。

よく分からない。

分からない、が。



にゃん太となにをおはなしする?
安価
1、その子の話を聞かせてちょうだい
2、聞かずにいる。二人の勧誘作戦会議へ
3、とりま聖女の怨みについて知ってる事教えて
4、記述安価



「わたしは――」

聞くか聞かないか――返事をしようとしている所で、お腹が鳴った。

誰のお腹だろうか。重要な話をしている時に――

「ごめんなさいサリナ。昨日から何も口にしていなくて。ちょっと失礼するわね」

そう言いながら鞄から猫缶を取り出すにゃん太。

そうだ。忘れがちだがこの子は毎日、町の平和を守るために有象無象の魔女や使い魔たちと戦っているんだ。

ろくに朝ごはんを食べる時間が取れない時もあるのだろう。

のぞみの手料理を今朝の食事で頂けたわたしは、とても恵まれた立場にあるんだ。

わたしは缶切りを取り出したにゃん太の手を取って、近くのコンビニへ向かった。




「このツナマヨというのが美味しいわね。他には、そうね。唐揚げっていうのも美味しかったわ」


猫として生きてきた彼女にとって、おにぎりや唐揚げは無縁の存在だったようだ。

わたしの家にいた時も猫専用の食事を与えていたし、野生では雀やネズミを狩っていたそうだ。

お店で買う食べ物もわたしの家で飼われていた時の習慣から、猫缶を買い続けていたらしい。

何とも不憫な話だ。罪悪感すら覚えてしまう。

それにしても早朝の登校時間に中学生女子が二人、飲食店に立ち入るというのは少々目立ちすぎる。

なので今の時間、開いているのは必然、24時間営業のコンビニぐらいだった。


コンビニのイートインスペースでおにぎりと唐揚げを貪るにゃん太。

猫に食べさせたら栄養過多で病気になってしまいそうなメニューだけれど、魔法少女となっているこの子には無用の心配だろう。

むしろ人間形態で猫の食事をさせている方が何かの病気になってしまうかもしれない。


「さっきの話だけれど」


エビマヨ味のおにぎりに手を伸ばしながら、にゃん太が言った。


「サリナが望めばいつでも話してあげるから。いつでも聞いて頂戴ね。でも、けれども。よくよく覚悟を決めてからでないと、

 きっと後悔することになるわ」


わたしは無言で頷いた。

この子の忠告には身を貫くような鋭さがある。無碍にしていいものではないだろう。

これでわたしはいつでもこの子に尋ねることができる。



話を元に戻す。

協力してくれる魔法少女探しだ。

『柚咲心音』と『夏女舞々』。

現状ではこの二人と接触して協力を取りつけていくことになるだろう。

だが彼女たちはにゃん太のように自己犠牲の精神にあふれているわけではないはずだ。

ただ頼むだけでは無理だ。

何か、工夫が要る。

どうすればいいだろう。

いったい、どんな風に頼めば彼女たちは一緒に戦ってくれるだろうか?



安価
☆☆☆無制限安価☆☆☆
とりあえず試験的に21:30ぐらいまで『聖女の怨み討伐隊(仮)』にマイマイとゆさりんを勧誘するための作戦案を
募集します。

ダメっぽいのはにゃん太に却下されます。

いけそうな作戦たちが統合して実行されます。


短いですが今日はここまで。

上2案を中心に次回は勧誘を実行していきます。

尚、引き続き作戦案は募集し続けておきます。締め切りは次回開始時までということで。

それではまた明日か明後日に。


遅くなったけど少しやりますよ。






安価で目覚めた心が走りだした未来を描きそう【まど☆マギ】



☆登場人物

牛耳川サリナ
 『生き残る者』。勧誘される側から勧誘する側へ。

藍根のぞみ
 自分で作って自分で食べれる自給自足型大食乙女。ただの一般人。

猫草アミ
 『にゃん太』。 ちょっとサリナに依存気味の魔法少女。

柚咲心音
 『戦う者』。今どこで何をしているのか不明。

夏女舞々
 アップルパイに偏執する凶暴そうな魔法少女。

キュゥべえ
 今回のケースでは別に暗躍したりはしない、ハズ。


☆ここまでのあらすじ
 魔法少女を勧誘するそうです。



作戦らしい作戦が閃いたのは、『マイマイ』の方だった。

彼女は『アップルパイ』が大好きな子だ。

いや、大好きというのは過少表現かもしれない。

魔法少女にとってのグリーフシードと同じようなものだと言っていた。

魔法少女にとっての生命線と同じぐらいの価値があるのだと。

つまり、言いかえるなら。

夏女舞々という少女にとっては、グリーフシードとアップルパイは等価なんだ。

そして、にゃん太はこう言っていた。


――山のようなグリーフシードを用意でもしない限りどんな魔法少女も大型魔女の討伐に協力してくれない――


ということは、少なくとも、おそらく世界にあの子だけだろうけど。

「マイマイちゃんならアップルパイを沢山、ごちそうしてあげれば一緒に戦ってくれるかもしれない」

わたしは自分で口にした言葉が、我ながらちょっと間抜けに感じてしまった。

確かに普通なら命懸けの戦いに食べ物で参戦したりしないだろう。

でもあの子なら。ちょっとおかしな感じの――ややクレイジーな雰囲気のあの子ならもしかしたら、と思う。

勝算は高い気がする。

わたしはにゃん太に尋ねてみた。

「どうかな。ついでに魔女を倒した後も町を守るのに協力してもらおう。ずっとアップルパイをご馳走してあげるって言えば、

 それもオッケーしてくれるかもしれないよ?」

安直、安易。

楽観的で希望的観測に過ぎない――過ぎないけれど。

わたしの問に、にゃん太はクビを傾げ――やや悩んだ様子でこう答えた。


「アップルパイって、何かしら?」


ああ、そうだ。この子はおにぎりや唐揚げも知らない猫だった。

わたしはにゃん太にアップルパイがどんなものなのか、簡単に説明した。

あまり分かっていない様子だったが、とりあえずは納得してくれたようだった。



「こんな甘いだけのものに命をかけるなんて、とうてい思えないわ」

わたしはにゃん太と一緒に町中のファーストフード店で早めの昼食を取っていた。

この間、マイマイへのお土産にアップルパイを買った店だ。

わたしはハンバーガーセット。にゃん太はアップルパイをそれぞれ注文した。

「わたしもそう思う。でも価値観って人によって全然ちがうじゃない。他の誰もが無意味だと思っている事に命をかけたり、

 逆に誰もが命懸けで守りたいものを……捨ててしまったり、とか」

死に際の父の顔を思い出す。縋るような、憐れむような、慈しむような、万感の籠ったあの目を。

あの時、やはり父を助けるべきだったのかもしれないという後悔の念は、きっとわたしが死ぬまで背負い続ける十字架なのだろう。

そうじゃない道を選んだからといって、きれいに割り切る事なんて出来ない。

もし、願い事を使っていたら――


――ダッタラ、『コノ町ヲ救ウタメ』ニ、願イヲツカウベキジャナイ?――


心の中にいる、もう一人のわたしがわたしに問いかけてくる。

彼女はこう言いたいんだ。

ボロボロに崩壊したこの町に積み上げられた無数の死体を目の当たりにしてからでは、遅いのだと。

町の人がみんな『死んでからでは遅い』んだ。

そうなるなら、そうなる前に――


――だったら、どうして『お父さんを助けなかった』の?――


また別のわたしがわたしに問いを投げかける。

そうだ。この町を救うために魔法少女になるのなら、あの時、お父さんが苦しんでいる時に願いを使うべきだったんだ。

そうしなかったのは、わたしだ。

わたしが、そうしたのに。

今更、この町を救うために願い事を使おうなんて、虫の良すぎる話だろう。

でも、それでも――そうするしか道が残されていないのなら、他の道が全て閉ざされてしまったのなら――

矛盾した道を進むことになるかもしれない。

わたしは心の中で密かに決心をした。

最後の最後の、本当に最後の切り札として、あるいは逃げ道として。

裏切り者が背中に隠し持つナイフのように、その選択肢をしっかりと握りしめておくことにした。


でも切り札は最後の最後。本当に何も出来なくなった時に切るものだ。

そしてこのカードはとびきりの『ジョーカー』。わたしにとって特別な裏切りを暗示している。

切らないに越したことはない。

そのために――そのためにも、わたしは今、こうして戦ってくれる魔法少女を探しているのだから。


「今日はやけに警察の自動車が多いわね」


にゃん太がアップルパイをマズそうに頬張りながら窓の外を眺めながら呟いた。

わたしも視線を追うように外を見る。

そういえばサイレンを鳴らしてこそいないが、警察車両が多く出回っているようだ。

何か事件でもあったのだろうか。

周りに聞き耳を立ててみるが、都合良く誰かの会話が聞こえてくるなんて事も無かった。

町で事件が起こっているなら魔女に関係する事かもしれない。

でも今は仲間探しが最優先だ。

うーん、どうしようかな。

わたしは――


安価
1、スマフォで聞袋川市で何か事件が起きていないか調べる
2、マイマイに会ってアップルパイDEプロポーズ作戦を実行
3、柚咲さんをにゃん太の第六感で探してみる
4、記述安価


わたしは何げなくスマフォを起動した。

そして聞袋川市について検索――

するまでもなく、ホーム画面のニュースアプリに、わたしの知りたい情報が表示されていた。

ネットニュースのトップに、全国レベルのニュースアプリのトップに、わたしの町の事が載っていたのだ。

わたしは思わず絶句しつつも、無意識に記事の文面を読み上げる。



『聞袋川市にテロリストが潜伏中。市内は厳戒態勢』



「な、何コレ!?」

わたしが素っ頓狂な悲鳴を上げたのを、いぶかしそうな表情でにゃん太が見つめる。

そういえば昨日、のぞみが言っていた。

テロリストがどうのこうのって。

でもあんなの、学校で流行っているつまらない噂話みたいなものだと思っていたのに。

わたしは慌てて動画サイトにアクセスする。

この動画サイトでは最新のテレビニュースも動画として放映されている。

わたしは大手放送局のニュース動画を再生する。

画面ではニュースキャスターがテロリスト関連のニュースを話している。

先日から国内に潜伏していたとの情報があったテロリスト集団が聞袋川市で目撃されたとの事らしい。

市内は厳戒態勢で隣県からも警察の応援が集まっているとの事だった。

なんだ、これ。

わたしは来るべき大型魔女『聖女の怨み』との戦いの準備で忙しいというのに、テロリストだって?

テロリストの相手なんてどこかの国の軍隊がやるべきことであって、魔法少女や、ましてやわたしの仕事なんかじゃないはずだ。

でも、そのテロリストたちがこの町の人たちを傷つけるというのなら――

「にゃん太、ちょっと変だけど大事な話があるの。ちょっと聞いてくれる?」

わたしは訝しそうな表情のままのにゃん太に、ニュースの記事の内容を聞かせた。



「つまり悪い人間たちがこの町を襲うって事? 魔女みたいに」

そういう事になる。

ニュースによるとこのテロリストたちの詳細は不明だが、警察関係者の情報によると危険な大量殺戮兵器を隠し持っているらしい、

というような事まで言っていた。

どこまでが確かな情報か分からないが、わたしたちに何か出来るのなら警察に協力するべきかも――


「関係ないわね。わたしには」


そう言ったのは、その言葉を吐いたのは他でもないにゃん太だった。

わたしは思わず聞き間違いかと思ったぐらいだ。

命に代えてもこの町を守ろうとしていた者の言葉とは思えない。

わたしが言葉の真意を問うよりも早く、彼女は次の言葉を口にした。


「それは人間たちの間で解決すべき問題だわ。あいにく私は魔法少女。魔女とは戦えはするけれど人間とは戦えない。戦うべきじゃない」


それってつまり魔法少女の魔法の力って、人間には通用しないってこと? 魔女にしか効かない浄化パワーみたいな。除霊みたいな感じの。


「いいえ。私がその気になれば――例えば暴漢がサリナを襲ったとして、私はその犯罪者を指先ひとつで缶詰の中に圧縮する事だって出来るわ。

 魔法少女の戦闘能力はそれぐらい高いと思っていい」


なんだそれ無茶苦茶強いじゃない。だったらテロリストが何人いようと敵じゃないと思うんだけど。


「そういう問題じゃないの。サリナ。私は魔法少女で、魔女と戦うための存在。その領域の外に踏み出してしまったら、きっと私は――」



――魔法少女ではない『ナニカ』になってしまう。そんな気がする――



わたしには彼女の言葉の意味が分からなかった。

でも分かった事はある。

にゃん太はテロリストの件に――というか人間同士の問題には関わる気はないようだ。

わたしが調べようとすれば手助けはしてくれるかもしれない。

けれどにゃん太の目的はあくまでも『魔法少女としてこの町を守る』ことであり、当面の最大目標は『聖女の怨み』を撃退すること。

全国レベルのニュースになるほどの大事件であっても、積極的に関わってはくれないだろう。


ネットで調べられる範囲のテロリスト潜伏事件についての情報はこんなものだった。

もっと時間をかければいろいろ出て来るかもしれないが、今はそれよりも大事な事がある。

そうだ。わたしたちの目的はあくまでも『聖女の怨み』の撃退。

そのための魔法少女探しだ。

そして脈のありそうなマイマイ――夏目舞々に会いに来たんだった。

本当はわたし一人で来た方が良かったかもしれないが、もしも仲間になってくれるならにゃん太とは共に戦う事になる。

仲良くできるなら早めにしておいた方がいい。

衝突するリスクはあるけれど、そういった問題を早めに解決するためにも一緒に会っておくべきだと考えの事だった。

にゃん太は正直、あまり乗り気ではなさそうだったけど「サリナがそう言うなら」と半信半疑といった様子で、

アップルパイへの好奇心も後押ししてか着いて来てくれた。

もう一人の勧誘できそうな魔法少女――柚咲心音さんについては居場所についての手がかりが無く、にゃん太の第六感が頼りだったのだが。

にゃん太の第六感は、完全にはコントロールできないのだという。

発動にはムラがあり、いつでも何でも知れるというわけではなく、ふいに閃きのようなものが頭を過るらしい。

だから居場所が不明な人を探すために使おうと思っても念じた瞬間に分かるわけじゃない。

何とも不便な魔法の力だ。

でも他に手がかりがないのだから仕方がない。

「ねえにゃん太。柚咲さんの居場所ってまだ分からないの?」

わたしはハンバーガーの最後の一口を頬張りながら聞いてみた。向かいの席のにゃん太は面倒くさそうに頬杖をついている。

思わず欠伸をしそうなほど緩んだ顔してるし。少し前まであった緊張感はどこに行ったんだ、この子。

「だから前にも言ったでしょう? そう都合よく…………あ。いた」

見つかった。それもすっごく都合よいタイミングで。

「いたの!? どこ!?」

にゃん太はわたしを指さした。

へ? どうゆうこと?

わたし、柚咲さんじゃないよ? 牛耳川サリナだよ??

「違うわ。あなたの後ろよ。そこに立ってる子」

振り返ると、いつかラーメン屋で会った女の子がわたしの席の後ろに立っていた。


「よう。あたしを探してるみたいだから来てやったんだけど?」


柚咲心音――あの日、夜の高台の公園で道を分かち、二度と会うことは無いと思っていた。

わたしとは異なる道を進んだはずの女の子が、わたしの前に姿を現した。

続きはまた明後日あたりに。安価スレなのに安価少なくてごめんなさい。あと展開遅くてごめんなさい。

マイマイより先にゆさりんが会いに来てくれました。

次回までに柚咲さんとの会話方針とか勧誘方法なんかを書いてくれてると助かります。



安価
柚咲心音さんとどんな感じでお話ししよう?(無制限安価)

※やりますよ。





時刻はもうお昼時にさしかかっていた。

柚咲さんはトレーにハンバーガーを山盛りに積み上げて、わたし達とテーブルをはさんで向かい側に腰を下ろした。

にゃん太はわたしの隣だ。

「それじゃあまずは自己紹介だ。あたしは柚咲心音。サリナとは一度、会った事がある」

ハンバーガーをむしゃむしゃと頬張りながら、柚咲さんはにゃん太の方を見つめている。

「それって私に言ってるの?」

頬杖をついたまま、にゃん太は気だるげに言葉を返す。

柚咲さんは眉をひそめながら視線をわたしの方に向けてくる。

え、いや。わたしに振られても困るんだけど。

そういえばにゃん太との初対面の時も高飛車というか上から目線の横柄な態度だった。

まあ、猫らしいと言えばそうなのだけど、冷たく対応された方は驚いてしまうだろう。

……にゃん太が協力を断られ続けて来た原因は、この子の態度にもあるような気がする。

でも今はそんな事を気にしている場合じゃない。

勧誘しようとしていた相手が、自分から会いに来てくれたんだ。

これはまたとないチャンスだ。


「それにしてもびっくりしちゃった。また会うなんて思ってもみなかったよ。柚咲さん」

わたしはなるべく友好的な雰囲気を作りだそうと、当たり障りのない言葉を選んで投げてみた。

「まあな。あたしも予想だにしなかったよ。まさかあんたが魔法少女と一緒にいるだなんてね。

 ……『もう関わらないんじゃなかったのか?』」

少し。ほんの少しだけ威圧の籠った言葉だった。

彼女は、おそらく疑ってるんだ。

あの日、ラーメン屋で彼女に語って聞かせた事。夜の高台で吐いた言葉。

それらが全て、嘘だったんじゃないよな?

わたしは言葉の中に込められた圧に押され、次の言葉を継げずにいた。

すると柚咲さんは溜め息をつきながら、言った。

「巻き込まれたにせよ、心変わりしたにせよ……お前が選んだんならそうすればいい。他人の意見を気にする必要はないよ。

 あんたとあたしは所詮、赤の他人なんだからね」

冷たい言葉とは裏腹に、何故だか物言いはとても優しかった。



柚咲心音。彼女もきっと平坦ではない人生を歩んで来たのかもしれない。

わたしと大して歳は変わらないはずだ。

でも彼女はわたしの何倍も落ち着いている。

冷静に物事を熟慮してから判断ができる子だろう。

わたしの様にクルクルと立場を変えたりしない。

芯の通った考え方の出来る子、なのだろう。

彼女ならもしかしたら――正義の為に戦ってくれる?

それとも――わたしの安い下心を見抜いてしまう?

どっちにしたってやることは変わらない。

わたしは彼女を勧誘しなければならない。そのためにここにいるんだから。

まずは、そうだな。好きな食べ物を聞いたりしてみようか。

それで会話が盛り上がってある程度、仲良くなった所で本題に――


「で? その赤の他人様がいったい何の用かしら。まさかサリナに会いに来たとか言うんじゃないでしょうね」

にゃん太が突き放したように言う。

あ、そうか。わたし、さっきから柚咲さんと何を話せば勧誘できるかって事ばかり考えていたけれど、

彼女にはわたしたち――というかにゃん太に会いに来た理由があるんだ。

まずは、それを聞いてあげないと。

会いに来た客人に、一方的に話をした挙句、命懸けの戦いに参加してくださいなんて言うバカはいない。

にゃん太がいなければ危うくわたしがそのバカ1号になっていたかもしれない、なんていう事は忘れておく。

にゃん太が問いただすと柚咲さんは一口かじったハンバーガーを手に持ったまま、少し神妙な面持ちで言った。


「もうすぐ『聖女の怨み』がこの町にやって来る、ってのは知ってるよな。あたしはそいつの『情報』が欲しい。

 何でもいい。『聖女の怨み』の正体に近づくことが出来る情報ならどんな些細なものでもいいから、教えてくれ。

 できる事ならあたしは――いや、あたし達の『チーム』は『聖女の怨み』を倒したいんだ」


彼女の口から聞かれた言葉は、わたしにとって――いや、わたしとにゃん太にとってまさに僥倖だった。

やった。やっぱり間違っていなかった。

柚咲さんは悪い子じゃなかった。

にゃん太、いるじゃない。あなた以外にも正義の味方の魔法少女が。

にゃん太も目を丸くして柚咲さんの方を見つめていた。

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