男「罰ゲームとはいえ」後輩(女装)「ここまでする必要は…」(28)

部室

男「……」ダラダラ

後輩「……」ダラダラ

男&後輩「あったんですか?」チラッ

部長「あたしに聞くなっつーの」

男「うむぐぐ。いやですよ、あれですよ、トントン拍子に進むから否定する暇もなくて」

部長「厳正なくじ引きの結果だし」

後輩「言っても部員四人だけじゃないですか…」

部長「ブチグチ言うでねェ! 我が部貴重なツテを使って取り寄せた女装グッツなんだぞぉ!」ダバァッ

部長「──着て損はあってもやって損は無しッ! いざ男×男での摩訶不思議女装デート罰ゲーム開始せよッ!」

男「横暴だァ…」

後輩「酷いです部長…」

部長「ほほう、罰ゲームを指定したのは君らだったはずだが? 今更怖気ついたとでも? 許さんよッ!! まったくもって許さんッ!」

男「あえてぶっちゃけますけど、アレ、完全に部長嵌める為だけにやっただけっすから」

部長「知ってたとも! だから根本からへし折った、甘い甘い、あたしを騙そうなんざ二年はやい」

後輩「じゃあババ抜きのトランプトリックも?」

部長「あたりきしゃんのコンコンチキよ、即座に寄り目にして看破してくさったわ」

男(トランプ糞高かったのになぁ~)

部長「ふふん。ゆえに君らの謀反的な生き様を買ったのだ、凄いよ、あたし感動しちゃって涙ちょちょぎれそう!」

部長「一点の雫同等に怒りはち切れんばかりだけどねッ! わははー! 見事成敗してやったわッ!」ジィー

後輩「び、ビデオ回さないで!」ババッ

部長「演劇部からの要望だー! 女装する被験体を記録せよとね! ならば女物服を貸すとッ!」バッ バッ

後輩「ひぇー!」

男(この光景だけは実に楽しそう)

部長「であるからして男くん!」ババッ

男「へェいッ!?」

部長「行って来なさい問答無用! 単にそこら回って買い物して甘味物喰って手を繋いでブラブラブラしてこいよ、さっさと」

男「…、簡単に言ってくれますね、マジで」

男「いや、俺は別に構いませんよ。むしろ罰ゲームにしては軽いもんだし、ただ…」チラ

後輩「?」

男「後輩君がガチ罰ゲームじゃないっすか、ほんまモンの黒歴史製造中じゃないっすか」

部長「るぅせェッッッッ!!!!」

男「ほわぁッ!?」

部長「こっちはな、な? オイ、部長は女装した後輩とデート行って来いと言ってんだろ、それだけだよ、要望はそれだけなんだよ」

部長「みてェーんだよドギマギ男同士の背徳感がよォー!? 手を繋いで温もりさに戸惑うテメェー等をよォオオオオ!!!??」

後輩「この人やばいっすね」

男「…今更だよ、後輩君」

部長「ああああああーーーー見たい見たい見たい、知人の後輩たちが秘密裏に女装デートしてる姿陰ながら盗撮してにやけたいなァーーー!!」ゴロン!


じたばたじたばた!


部長「黙ってあちし罠にはめようとした後輩たちの戸惑う姿くっそみたいなァー! もうがまんできないなぁー!」…チラ

部長「…見てェなァ…?」

男「……」

男「一つ言えるとしたら、部長、その目付きの悪さの使いドコロは間違ってますよ、絶対に」

後輩「やってること子供で目つきだけヤクザなんですけど…」

部長「テメェらは一々人を傷つけにゃ先に進まんのかゴラッ!」

男「わ、わかりましたよ…行きゃ良いんでしょ、行けば…」じりじり

男「はあ。じゃあ行こっか、後輩くん」

後輩「ほ、本当に行くんですか? 僕、この格好…」

男「………」じぃー

男「大丈夫だよ、似合ってるし。なによりもかわいいし」ニッ

後輩「ふむぐっ」

後輩「…かわいいですか、僕…」モジモジ

男「むしろそっちがいいな」スタスタ

後輩「突然すごいことサラッと言いませんでした? 今?」


ガラリ パタン


部長「……」ぽつーん

部長(あり? 本当に行っちゃった…?)

駅前広場


ガヤガヤ ざわざわ

後輩「…う、ううっ」

後輩(人の視線が、いつもより数倍を持って気になってしまう)ズゥーーーン

後輩(あ、こっちみた! あの人も見てる気がする、あわわ、駄目だぁ! もういっぱいいっぱい!)ガクガクガク

男「いやーお待たせ。見事にトイレ混んでて時間掛かっちゃったよ」

後輩「先輩…っ!!」パァアア

男「やっぱり緊張した?」ニコニコ

後輩「置いていったのわざとかこんちくしょう!」

男「おやおや。違うよ、勘違いしないでくれ。その格好じゃ例え同性でもトイレは行きづらいだろ?」

後輩「人目が多い場所で待ち合わせるのはわざとでしょ…!」

男「そんなことないさ。見失わない為に、目立つ場所が良いと思っただけ。…ほら後輩くん」スッ

後輩「え…手を出して…なんですか…?」

男「そりゃ手をつなぐんだよ。デートだからね、手だって繋ぐさ当たり前さ」

後輩「うぐッ、…抵抗とかないんですか先輩には…」

男「既に部室でやりきったよ」

後輩「そういった抵抗じゃないですって! ぼ、僕は…男で先輩も男じゃないですか…」

男「今の君は見た目以上に女の子に見えるけど? 心配いらないよ、知り合いにバレても部長の名を売ればいい」ニコ

後輩(たまに先輩が見せる冷徹ぶりは何なのだろう…)

男「仕方ない。問題があるなら、恋人繋ぎはやめておこう」

後輩「…元からハードル高いの打ち込もうとしてたんですね」

男「──……」

男「ふむ。ならばコレならどうだろう? 時期に君に彼女が出来るとする、そのための予行練習といった感じで」

後輩「女装して学ぶデート術とは一体なんなんです!?」

男「それは実に貴重な体験だよ後輩君。与えるものでなく、貰う立場から学ぶ。普通は出来ることじゃないよ、これは」フムフム

男「俺だったら手放さないね、このタイミングを。出来ることなら俺が変わってみたいところだもの」

後輩「先輩の…女装…」もわんもわん

後輩「…ちょっと想像しにくいですね、色々と」

男「羨ましいよ、女装なんてそうそうやりたくてもやれない」

後輩「…凄いですね先輩の話術。少しだけ今の自分が肯定されたような気分になってきました」

男「本音を語ってるだけだよ。どうせやるなら肯定的に捉えて先に進もう、ほら、最初の一歩だ」スッ

男「──君から手を伸ばして、俺の手を掴んでご覧」

後輩「…ぇ…」

男「俺から掴もうとしないから。後輩君、君のタイミングで始めるんだ」

後輩「あ…うっ…」ドキッ


ドッドッドッドッ


後輩(な、なんだコレ!? やっちゃいけないこと、でも気になってて、スタートを切るのは自分からを…強要される今…っ)

後輩(わけのわからない緊張めいたこ、興奮みたいなのを…っ)ドキドキドキ


スッ ぎゅ、ぎゅっ


男「うん。じゃあ行こうか」くいっ

後輩「あ…」とたたっ

後輩(…せ、先輩って手のひら大きいんだな、知らなかった。僕と変わらない華奢な背格好なのに)

後輩(あと、それと)

後輩「先輩…」チラ

男「ん?」

後輩「…くっそ手汗かいてますケド、緊張してるんですか?」

男「……」ダラダラダラダラ

後輩「その…」カァァア

男「い、いやね、だってアレじゃん、俺戸惑ってちゃ、君可哀想じゃん…っ?」

男「年上としてやらねばならんときに、一緒にわたわたしててもね…うん…」

後輩「……」ポケー

後輩「くす、先輩らしいですね、色々と」

男「…貶されてるのか、褒められてるのか」

後輩「わかりました。先輩がたまに見せる堂々っぷりは、緊張の裏返しだと勝手に把握しておきます」スタスタ

男「そりゃ先輩として面目丸つぶれなんですけど!? 同情されてる感丸出しなんですけどッ!?」

小物屋

後輩(あ。かわいい)

後輩(猫のキーホルダーか、今時シンプルな猫ってあまり無いよなぁ)チャリ

男「なにか良いのあった?」

後輩「先輩…ぶっはぁっ!?! なんスか、そのっ、派手な眼鏡…ッ」プルプルプル

男「笑われるとは心外だな…」カチャッ

後輩「本気でチョイスしてるなら尚更笑いますよっ」

男「普段は地味な眼鏡ばっかりだし…こういうのも有りかなと…」

後輩「それ、部長から言われたんでしょう? いやいや、先輩の雰囲気に合ってていいじゃないですか」

後輩「でも…イメチェンを狙ってなら…」キョロキョロ

後輩「これ。つけてみてくださいよ、先輩」

男「ん…似合ってなくても笑うなよ…」

男「ンンッ! …どうだ?」

後輩「わー! やっぱ良いですよねーくろぶち~!」パァアア

男「そ、そうか? ほぉーこういうのが良いのか…」

男「どうにもファッショに疎くてさ。いや、別にどうにかなろうとも思ってないけども」

男「家でも妹に、部活では部長に、ダセェダセェ言われてるから───」チラ

後輩「んー、っと」カチャ

後輩「ほら先輩、おそろいです」ニコ

男「──……」

後輩「えへへ、どうです? 似合ってます?」ニコニコ

男「お、おう。随分とまあ、その、眼鏡女子だなーっと…」

後輩「………」ぴたり

後輩「…そういや僕、女装してましたね、ハイ…」ズゥーン

男「………」ぽりぽり

「何かお探しですかー?」

男&後輩「ふぇいっ!?」

「でしたらこれなんかおすすめですよ? うちのオリジナル商品で~」

後輩「っ…っ…っ…!」ぱくぱくぱく

男「あっ! ええっと、そうなんですか? じゃあちょっと見せてもらおっかなー…?」くいっ

後輩(っ! 先輩、さり気なく自分の後ろに引っ張ってくれた、のか? 女装がバレないように気を使って、とか)

男「へーなるほど、……」パチン☆

後輩(ウィンク下手くそ過ぎる。クス、ありがとうございます、せんぱい)ペコ


物陰裏


部長「…………」ドロドロドロドロドロロロロ

演劇部「通報されっぞその顔」もぐもぐ

部長「うっさいわ黙っとれバカチンめ!」ガー!

演劇「ただえさえ目つきクソワルイのにその雰囲気じゃ、もう擁護できないレベルで犯罪者だよ」

部長「うっ」

部長「うぐぐ、どうしてこうなった、あちしはただ部員たちの困ったちゃん姿見たいだけであったのにいぃいい」

演劇「初めから終わりまで全てテメーのせいだっつーのが笑うポイントだよな」

部長「でもでもでもあれだよねっ? ほんとーに二人、くっついちゃったりしないよねっ? ねっ?」

演劇「ひっつくな暑苦しい。いや、したらしたで面白いから可です。後に現状報告貰いたい、演劇の糧とする」

部長「キサマは人の血が通っておらんのかいッ!? おわあー! なんたる非生産的ッ! 視聴者並び趣味混同に生きる命に制裁をッ!」

演劇「我が演劇部は悲哀、悲壮、悲観、これら恵まれない人類の嘆きを演じる兵達よ」

部長「現実に実際生み出すため手助けする非道なクソ迷惑な奴らだと認識しておりますよ…」

演劇「創作はリアルがなければ生まれない、これ役者本道なり」

演劇「で? あんたは一体どうしてそこまで悲しむ必要があるのやら、教えてほしもんだね。どっちが本命で苦しんでる?」ワククァク

部長「わくわくすんでない! んにゃむぅうう~~~っっ! …知りたい、本命知りたい?」

演劇「払われた消しカスの行方ぐらいは興味ある」

部長「掃除タイムでゴミ箱直行だねそりゃ!」

演劇「語る気ないならもう帰るよ? 雰囲気いいし既に私の演劇ポイントマックス溜まったし」シュンシュンシュン…

部長「むぎゅうう」

演劇「……。手を離せヤクザ」

~~~

男「猫のキーホルダーか」チャリ

後輩「中身に磁石が入ってるらしくて、近づけるとくっ付くらしいですよ」スッ

カチン!

男「お。本当だ、だから奇妙な格好をしているわけか、凝ってるなぁ」

後輩「……、」

男「何気におそろ買っちゃったな。よく考えると今後、付けにくい物体だ」チャリ


ふと、先輩の指がきれいだなと、思った。


後輩(はて? 果たしてそれはフツーのことなんでしょうか、先輩さん)ジィー

男「なに? そんな見つめて、実はどっちも欲しかったり?」

後輩「あっ、いえ別に──それよりこの後どうします? やることやっちゃった感ありますけど」タハハ

男「そうだね。まあそこら辺ブラブラでも許してもらえるんじゃないかな。ヤクザでも」

後輩「案外、陰ながら覗いてたりして。…カメラの件も嘘じゃなかったり」

男「ありそうだわー」


キャッキャウフフ


(──自分は多分、人に悪意ある嘘はつかない)

(けれど正しい嘘は喜んでつく。それが僕で、いわゆる女装してしまっている自分なのだった)

(今ある自分の姿は正しいのか? 問われても答えられない。きっと嘘をついてしまう)

『黒歴史製造中じゃないですか』


後輩(はぁー…違う、違うんです先輩それは)

後輩(嫌だったら本気で断るし、駄目だったら一目散で逃げる自信がある)チラ

男「お。新しく本屋出来てたんだ、少し寄ってみる?」

後輩「はい。行ってみましょうか」ニコ


それはきっと、今の時間を増やしたいが為の『嘘』


後輩(お許し下さい先輩…こんなカマトトぶった変態な自分を…)ホロリ

男「知らないうちに新刊が山ほど出てるんだけど! ナニコレ!? 世の中恐い!」


~~~


『んでんで? 女装ディルドオナ配信やってる変態生主が懺悔したいって?』

後輩「っ…違うだろ、そこまでやってない…! 煽っただけだ視聴者を…!」

『機会あったらやるんだ。あと一歩の手前だね、BANされる前に中国の有料配信移行すればー?』

後輩「気軽に言うな。今の視聴者層がどれほど付いてきてくれるかわからないのに」ガサガサ

『そしたらコッチ稼げるもの。つーか高校生謳ってる生主で被ってるし、一刻も早くライバルは消滅せよ』

後輩「現状一位獲得してる癖に…まだ元を取りたいのか、守銭奴め」

『金はあっても困らない。それにしてもはーあ、趣味じゃなく趣向がそもホモっけかよツマンネ』

『大好きなパイセンが無垢で純情な後輩ちゃんだと思い、慕われてると思ってる。なるほど、そーいう萌えか』

後輩「……。言われなくても悪いことぐらいわかってる」


ガサリ


後輩「あった、良かった失くしてなかったぁー…」ギュッ

『なにそれ? カメラに写して、よく見えない』

後輩「今日の放課後で先輩と買った奴。猫のキーホルダー」チャリ

『ほぉーん。思い出の品ね、大切にしろよバカタレ。つか部屋を片付けなさいよ』

後輩「うぐ…」

『スカイプのカメラ越しでも分かる女装コス、アニコス、なんでもござれ。よく親バレしないね』

後輩「い、言ってるだろ。親はこっちに感心ないの、すきほーだいやれるんです」

『ならいいや。気軽にこんなトークできる奴減ってほしくないし、また今度コラボする?』

後輩「…コスは?」

『微妙に流行りそうで流行らない島風コス。もう旬終わってる? どっち?』

後輩「やってみた反響で判断したら? というか二着分も用意してあるの? また作った?」

『体型似てるしいけるでしょ。今作ってるやつ合わせて三着ぐらい』

後輩(何故余分な一着分が用意されて…深く考えるのはよそう…)

『ねーねー』

後輩「なに?」

『──つらーいだけだよ、そーいうのは』

後輩「……、」


きっとそう


『こんなことで楽しめてるオレ等にはフツーなんて巡っても来なけりゃ、道すらないから』


そんな本当は聞きたくない。だから、だから、

後輩「うるさいな。別に本気じゃないし、そーいう不憫萌を客観的に味わいたいだけだし」


だからそんな嘘をついてしまうのだ。


後輩「いらぬお節介どーもでした。そっち学校早いんだろう? いい時間だし早く寝なってば」

『こわいこわい。弱い所つかれたらすぐおこっちゃう、じゃ寝ます。おやすー』

後輩「…おやすみ」カチッ


怒ってなんかいない。怒れる立場じゃないことぐらい、わかってるつーの。


~~


部長「よくぞ帰った我が同胞たちよ。そして何故昨日は途中で姿くらましたのであろーかねぇチミチミタチィィイ!!!」ズバァシィッ!

男「いやですね、影で盗撮するなら本気でやってくれません? 周りから俺らが不審がられてましたから!」

部長「女装してカップル繋ぎ変態野郎が怪しくなくてなにをテロ防止できますかなあ!?」

男「いらぬ危ない橋渡らせたのアンタのせいだろ!? 最後にゃ警官に目をつけられてどれほど危なかったか…!」

後輩「あはは~…」

部長「せやったらぶっちゃけてありのままの姿見せてレット・イット・ゴーしないさいよバカー!」ダバー

男「できるか脳タリ女! それこそ人生おじゃんだわ!」

後輩(部長も悪ノリしたら歯止め効かないもんなぁ。…不安がること先輩にさせなきゃいいのに)チラ

部長「キョエエエ! 我が一族に伝わる延髄斬りチョップ喰らえッ!」ズバァッシュッ

男「抜かせ場末ラーメン屋一家にそんな伝承残ってるわけあるかッ!」パッシィイイン

部長「ぶぇっ!? ひっ、ひ、ひひひどぉ~~~いいいーー!! お父ちゃんのラーメン世界一やぞぉー!」ぽかぽか

男「ああ、俺も実は大好きだ! ……だからどしたァー!!」


すったもんだ よいよい


後輩「あ、あのー! そんな騒いでるとまた教師に怒られるんじゃ~…?」

男「むぐ! そ、そうだな、なにを熱くなって終わった話を蒸し返してるんだ俺は…」カチャ

後輩「そうですよ! 結局は無事に逃げ切れましたし、事なきを得たってことで…」

部長「なにをいい思い出で終わらそうとしてるぅー! アンタら変態じゃよ変態! ふつーに受け止め過ぎだっつの!」

後輩「……」ピク

部長「こっち端から冗談振りにマジ受け止めしやがってからにぃい~~! じ、実はそっち気あんのかと不安になるわい!!」

後輩(──こっちは止めようとしてるのに、またぶり返す)

男「やれって言ったのアンタじゃないっすか…」

部長「冗談は冗談だろがいっ! なんちゅうたって君があたしを止めんで誰が止める!?」

男「んな身勝手な言い分…」


正しい嘘はきっと優しい


後輩「……うるさいな」ボソリ


悪意ある嘘はきっと、誰かを傷つけるため


部長「え?」

後輩「一々うるさいんですよ、部長。マジで嫉妬するぐらいなら端からやらないでください」

後輩「先輩振り回してなにが楽しいですか? そっちこそ、くだらない冗談やめてくださいよ──って…」ピタ

部長「……」

男「…後輩くん?」

後輩(しまっ──た、僕は一体なにを言って、)

ガララー!

演劇「よォー来たよ部長さん。昨日の動画編集終わったから持ってきて、あん?」キョロ

演劇「…なにこの空気? え、えっ、えっ!? しゅ、修羅場なの!? うそうそカメラカメラ!」ゴソゴソ

後輩「っ!」バッ


たたーっ!


男「ちょ、後輩くん何処に…!」

男「って、部長も追いかけるんですよ! なんか俺ら癇に障ること言っちゃったみたいですしッ!」

部長「……。いいよアタシはカンケー無いし、君が追いかけなって」フリフリ

男「はぁっ!? これ以上部員減ったらあんたの責任だからなー!」ダダッ

部長「……」

演劇「あぁ行っちゃった。つか一体なに墓穴掘ったワケ?」

部長「別に」フィ

演劇「彼、最後にあんた見てから去っていったじゃん」

部長(──…別にそこまで怒らなくてもいいじゃんか)ボソリ

~~~

男「この辺で見たと聞いてやって来たが…」キョロキョロ

男(もうここ行き止まりだぞ? 逃げれる場所といえば──誰もいない空き教室)ガララ

男「おーい、後輩くんやーい」


シィーン


男「居るワケないか、うん」スッ

男(んんっ!? なんだあのカーテンの膨らみ、…嘘だろ、隠れてるつもりか君は…)スタスタ


「……」ビクッ


男「あの~? もしもし? もしやと思いますがその膨らみの中身さん、…後輩くん?」

「違います」

男「もろに君じゃないか。というか隠れる場所はもっとなかった? まるわかりだよ、それ」ぐいぐい

「違いますったら違います。やめてください、大声出しますよ」ぐっぐっ

男「誤魔化す気もない言葉は嫌いでね。まあ、そのままでいいけど。どうしていきなり逃げたのさ」

「…用事を思い出したのです。僕はここで包まっていなければならない」

男「つまらない意地張ってないで正直に言ってくれ。…なにか気に障ること言ったなら、謝るから」

後輩「先輩が───! 謝ることなんて、…あ…」バサァッ

男「じゃあ部長か」ぐいっ

後輩「ち、ちがいますっ、というか手を離して下さい、はやくっ」ぎゅぎゅっ

男「あんな雰囲気で走り出して、誰の責任でもないとか信じられないだろうに。
  ……それともいいたくないだけ? 言ったら駄目な系の奴ってこと?」

後輩「………」

男「そっか。ならいいよ、別に」ぱっ

後輩「えっ?」

男「無理やり問いただすのは趣味じゃないってだけ。ただ、それでも一つ言わせてもらうけど」

男「別に嫌じゃなかったから。あの時も今でも、特に後悔なんてしてないから」

男「…部長は性格がアレだから気にしなくていい。俺も、話半分でしか聞いてない」

後輩「先輩…」

男「なんて、気がきかないくせに野郎クセしてフォローしてみる、あはは、ま! そんな感じだから!」ぽん

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