勇者「皆さんも、剣を買うなら鍛冶屋の町スミッスの剣をどうぞ!」 (29)

勇者「てやぁっ!」


ズバッ!


スライム「ピギャァァァ!」

勇者「すごいぞ! なんという切れ味だ!」

勇者「さすが鍛冶屋の町スミッスの職人が作り上げただけのことはある!」

勇者「皆さんも、剣を買うなら鍛冶屋の町スミッスの剣をどうぞ!」

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ドゴンッ!


戦士「ぐわぁぁぁっ!」

女魔法使い「戦士、大丈夫!?」

戦士「平気さ」ムクッ

戦士「なんたって、防具屋アーマで購入した鎧をつけてたからな!」ジャキーン

戦士「やっぱり防具を買うならアーマだぜ!」

女魔法使い「ファイア!」ボワァァァァァッ

勇者「ものすごい威力だ!」

戦士「こんな短期間で、ずいぶん魔法の腕を上げたな! ビックリしたぜ!」

女魔法使い「ううん、実はこの杖のおかげなのよ」

女魔法使い「魔導都市マジーシャに売ってるこの杖を持って呪文を唱えると」

女魔法使い「呪文の威力がなんと……1.7倍にもなるのよ!」

女僧侶「1.7倍!? すごいです!」

勇者「……ふう、これで今日のノルマは終了かな」

戦士「あー、疲れたぜ!」

女魔法使い「僧侶ちゃん、ちゃんと水晶で撮っておいてくれた?」

女僧侶「はい、バッチリです! いい広告になると思いますよ!」

女僧侶「あ、そうだ! この水晶の宣伝もしとかないと……」

女僧侶「このクリスタ山の水晶が一個あれば、録音・録画も簡単にできるんです!」

女僧侶「魔力はほとんどいりませんので、皆さんもぜひお試しください!」

勇者「まったくイヤな時代になったなぁ」

勇者「行く先々でスポンサーの製品を宣伝しながら冒険しなくちゃならないなんて……」

戦士「ホントだぜ! めんどくさいったらありゃしねえ!」

女魔法使い「産業の革命が進んで世の中がどんどん商業主義になっていって……」

女魔法使い「今やスポンサーなしじゃ、冒険するのもままならないものねえ」

女僧侶「でも、こうして宣伝さえしてれば、いい製品を提供してもらえるんですから……」

勇者「そうだな……愚痴っても仕方ないな」

勇者「みんな、スポンサーと二人三脚で魔王を倒すぞ!」

オーッ!!!

こうしてスポンサーの製品を宣伝しながら勇者たちの冒険は進んだ……。




戦士「うめえ!」

女魔法使い「おいしいわ!」

女僧侶「外はカリカリで、中はフワフワですぅ!」

勇者「パンが名物の町ブレドで買ったパンはやっぱり最高だな!」

勇者「皆さまもぜひ、パンの町ブレドにお立ち寄り下さい!」



勇者「あ~……よく眠れた! こんなに眠れたのは本当に久しぶりだ!」

勇者「体力も魔力も全快してる! 最高の気分だ!」

勇者「あなたもぜひ、ヤード町の宿屋で楽しい一泊を過ごしてみては……?」ニコッ

女魔法使い「ヤード町の宿屋は一泊なんと500G!」

女僧侶「近くにはおいしいレストランもありますよ!」

戦士「カップルで宿泊すると二割引きになるキャンペーンも実施中!」



戦士「ぐああああっ……!」ブシュゥ…

女僧侶「戦士さんっ!」

女僧侶「すみません! 今、魔力を切らしてしまって、回復魔法が……!」

戦士「大丈夫だぜ! このヒール薬局で買った傷薬があれば!」ヌリヌリ…

戦士「こんな大きな傷も立ちどころに治せるのさ!」

女僧侶「まぁっ、すごい! ヒール薬局の薬があれば僧侶いらずですね!」



勇者「ふぅ、ふぅ……坂道が続くなぁ……」

戦士「ぜぇ、ぜぇ……足が痛くなってきたぜ……」

女僧侶「どうして魔法使いさんは、この険しい山道を平然と歩いてるんですか?」

女魔法使い「これよ!」ビシッ

勇者「こ、これは!?」

女魔法使い「この魔法シューズなら、どんなに険しい道も楽々歩けるってわけよ!」

戦士「くそっ、俺も買っておけばよかった……!」

ついに勇者たちは魔王のもとにたどり着いた。



勇者「さぁ、追い詰めたぞ! 魔王!」

戦士「覚悟しやがれ!」

女魔法使い「世界平和のため、あんたを倒すわ!」

女僧侶「あなたの野望はここまでです!」



魔王「フフフ……勇者たちよ、よくここまで来た」

魔王「この魔界一のイス職人に作ってもらった極上の玉座から立つのは惜しいが」

魔王「立ち上がることにしよう……」スッ…

勇者「いくぞっ! ――ハァッ!」


ズバァッ!


勇者「やった!」

勇者「オリハルコン以上の防御力を誇るといわれる魔王にダメージが通った!」

勇者「攻撃力を増幅させるステロイドリングを装備しておいてよかった!」

魔王「ぐぐっ……なんのこれしき!」

魔王「この邪悪山の瘴気で作られた闇マントに守られていたおかげで」

魔王「致命傷には至っておらんわぁっ!」バサァッ

魔王「もし、このマントがなければ即死だったかもしれんな……」ニヤ…

魔王「喰らえッ! 我が暗黒魔法を!」ズオアッ


ドゴォンッ!!!


勇者「ぐううっ!」

魔王「さすが暗黒ギルドの長である暗黒魔術師が生み出した暗黒魔法!」

魔王「あの勇者にもかなりのダメージを与えることができた!」

魔王「暗黒魔法を学びたい者は、ぜひ暗黒ギルドに参加しよう!」

勇者「いやいや、このホーリー教からいただいた聖水をかけていたおかげで」

勇者「威力は軽減されてるぞ!」

勇者「ホーリー教はいつでも入信者をお待ちしています!」



勇者「……ってちょっと待てよ」

勇者「さっきから気になってたけど、闇マントとか暗黒ギルドとか、なんだよそれ」

魔王「そっちこそ……戦いの最中になに堂々と宣伝しておるのだ……」

勇者「ま、まさか……」

魔王「まさか――」

勇者「お前もか……」

魔王「貴様らも……!」

勇者「そうか……そういうことだったのか」

魔王「我々はお互いにスポンサーがついておったというわけだな」

勇者「お互い大変だなぁ」

魔王「まったくだ」

魔王「今やスポンサーがいないと戦争も起こせない世の中になってしまったからな」

勇者(そういえばよくよく思い返してみると……)

勇者(魔王の部下たちも宣伝めいたことを口走ってたことがあったっけ……)

勇者「じゃあ俺たちは、四人分の最強装備を全部宣伝しなきゃならないから」

勇者「協力して戦いを長引かせよう」

魔王「よかろう、ただし私もいくつか暗黒魔法を宣伝しなきゃならんからよろしく頼む」

勇者「オッケー」

魔王「ある程度戦ったら、私はわざと倒れることにするよ」

勇者「え、いいのか?」

魔王「私にやられる時の演技指導をしてくれた劇団の宣伝もせねばならんのでな……」





― 終 ―

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