しほ「常夫さん、やっぱりあなたから…」

常夫「いや、やっぱり君が…」

みほ「一体なにがあったの？」

しほ「実は…、その…、」

まほ（こんなお母さま見るの初めてだな…）

しほ「この間、病院で診てもらったのですが…、その…、妊娠３カ月だそうです…」

みほ「えええええ！？」

まほ「あ…、（口パクパク）」

しほ「もー『狙えば必中』って西住家の家訓をここまで忠実に守るなんて、ダーリンってば
本当に入り婿の鑑なんだから♡」

常夫「いやあ、照れるなあハニー♡」

みほ「えっと…、その…、おめでとう…」

まほ（まだ口パクパク）

しほ「みほも来年からはお姉さんです。で、ここからが本題なのですが生まれてくる
赤ちゃんの名前はどうしようかということです」

みほ「気が早いなあ…」

しほ「ダーリンとも相談したのですが、今度は思い切って今流行りの
『なんて読むのかよくわからん当て字の名前』に挑戦してみようと思います」

みほ「ええええ！？」

まほ「ちょっと待てやコラぁぁぁぁ！」

みほ「お母さん！まさか『偉大』と書いて『ぐれーと』って読むとか『可憐』って書いて
『ぷりてぃ』って読むとかそんなＤＱＮな名前をつけるつもりなの！？」

まほ「みほの言う通りです！」

しほ「そんな軽自動車にでっかい透明なアクリルのシフトレバーをつけたり
フェイクファーを敷き詰めたりする一家みたいな名前はつけません。我々は
戦車道の宗家ですから、やはり『Ⅳ号４３式１５ｃｍ突撃自走臼砲』と書いて
『ぶるむべあー』と読むとか、『７６.２ｍｍ野砲ＺＩＳ－３』と書いて
『らっちゅ・ばむ』と読むとかそんな名前を…」

みほ「いやぁぁぁ！そんな優花里さんにしか読めなさそうな名前はいやぁぁぁ！」

常夫「お父さんは『Ⅴ号回収戦車』と書いて『べるげぱんたー』と読むとかそんな名前が…」

しほ「ダーリンってば骨の髄まで整備士なんだから♡」

しほ「『ロンメル駆逐戦車』と書いて『やーくとぱんたー』ってのはどうかしら？」

常夫「はっはっは、ソレはタミヤが勝手につけた名称だろう？」

まほ「子どもにプラモの名前つける気かあんたら」

みほ「優花里さんだってそんなことしないと思う…」

まほ「それ以前に役場で受け付けてくれないと思うが、それにしてもみほ、
自分の仲間をつかまえてえらい言いようだな」

みほ「だって、たまにキモいときあるし…」