響「まだ空っぽな明日は、限りなく黒に近いグレイ」【偶像喰種2章 後編】 (313)



冬馬。

…この職務で、上司や部下を失わない奴などいない。

下手をすれば、仕事に関係のない筈の家族や友人、恋人まで失う奴もいる。

〔CCG〕は「喪失者」の集まりだ。


……強くなれ、冬馬。

強くなって"喰種"を殺せ。

最も失わない者とは、最も力を持つ人間の事だ。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1463570084


予告した再開時期を一ヶ月もオーバーしてしまい申し訳ありません。偶像喰種シリーズ第二章の後半です。

前回と同じく一部原作主要キャラの登場、
およびアイマスキャラ何名かの死亡シーンがありますので、それらの要素が苦手な方はご注意ください。

あまとう大盤振る舞いの予定。


――――――――――――――――――――


(――夢を見た)

(――それは、10年以上前のこと……私が手の付けられない子供だったころの記憶)

(――"才能"にだけは恵まれていたから、それをいいことに暴れまわって)

(――人間も"喰種"も関係なく、殺して食べてた……本当にどうしようもない子供だったっけ)


(――だから、いつかは喰種捜査官…それか、私より強い喰種に殺されてもおかしくないなんて思ってはいたけど……)

(――まさか、ほとんど同い年の捜査官や年下の喰種……それも両方女の子に追い詰められるとは思わなかったなあ)



(――ましてや……)



~十数年前~


捜査官1「おいっ! 『リトルバード』が落ちたぞ!」

捜査官2「すぐに降りて探せ! 奴は瀕死だ! 日高捜査官の一撃を無駄にするな!」


ザアアアアアアアアア



「クソッ……痛えっ……!」ズル

「あの赤毛女っ……! よくも私の腕をぉっ……!!」

「…ブッ殺す……あの女捜査官も……隻眼の糞ガキも……!」フラッ


ドシャ



(……あ)

(……やばい。腹減って動けない)

(捜査官がすぐ近くにいる……早く逃げなきゃいけないのに)

(肉……誰でもいい、人の肉を喰わないと……)ググ

(……)ズルッ


ドシャ



??「……うん?」

スレタイ見ても信じられなかったわ
マジで待ってた


(……ダメだ。もう一歩も動けない)

(目の前に人間がいるのに…目の前のオッサンに一口でも噛みつけたら、逃げる力が手に入るのに)

(人間以下かよ……クソが)


??「……ああ。物音の正体はキミか」


(……あのオッサン……もう完全にこっちに気付いてやがる)

(通報されて終わりか、これ。完全にクインケコースじゃん)

(せめて拷問されないで楽に死ねたらいいんだけどな……)


(……ああ、つまんない人生……)



??「……ふむ……?」


「……見てんじゃねえよクソ爺」

「通報するならさっさとしろよ。こちとらテメエを喰う体力すらねえんだから」


??「…………」


「……おい、聞いてんのか?」


??「…………」






??「―――――ティンと来た!」





「……は?」


――――――――――――――――――――


(――ましてや、こんな人に拾われて生き延びるなんてね)


今日はここまで。
リトルバードの口調はトーカちゃんをモデルにしたつもりですが、心なしかたくみんっぽくなってる気がする……

>>5待っていてくれて本当にありがとうございます。
再開するタイミングを逃してもう皆飽きてしまったかなー……とちょっと不安だったので、すごく嬉しいです!

前スレ貼るの忘れてました。

前作

【アイマス】響「教えて、教えてよ。自分の中に誰がいるの?」【東京喰種】
【アイマス】響「教えて、教えてよ。自分の中に誰がいるの?」【東京喰種】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430488825/)

響「まだ空っぽな明日は、限りなく黒に近いグレイ」【偶像喰種】
響「まだ空っぽな明日は、限りなく黒に近いグレイ」【偶像喰種】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439088444/)


――――――――――――――――――――


小鳥(――"喰種")

小鳥(――人の形をしていながら、人の肉しか喰べられない怪人)

小鳥(――…本当なら、人と共に生きることは出来ない存在)


小鳥(――だけど何人かの"喰種"は、正体を隠して人と同じ組織に身をおいています)

小鳥(――この765プロも同じ)

小鳥(――人間の春香ちゃん、雪歩ちゃん、やよいちゃん、亜美ちゃん、真美ちゃん、律子さん、貴音ちゃん、高木社長)

小鳥(――喰種の千早ちゃん、真ちゃん、伊織ちゃん、あずささん、……あとは私と、かつてのプロデューサーさん)


小鳥(――そして……)


小鳥(――少し前まで人間だったけど、私達と同じ身体になってしまった"半喰種"の響ちゃん)


小鳥(――人間は喰種の存在に気付かず)

小鳥(――喰種は人間の目に怯えて)


小鳥(――そんな歪んだ鳥籠の中で、私達はトップアイドルを目指していました)


1レスだけだけど今日はここまで。

最近エログロ移転の話が出来たけど人差し指踏み折るくらいならこっちで書いててもいいよね…?

>>14ちょっと書き直します。


――――――――――――――――――――


あずさ(――"喰種")

あずさ(――人の形をしていながら、人の肉しか喰べられない怪人)

あずさ(――…本当なら、人と共に生きることは出来ない存在)


あずさ(――だけど何人かの"喰種"は、正体を隠して人と同じ組織に身をおいています)

あずさ(――この765プロも同じ)

あずさ(――人間の春香ちゃん、雪歩ちゃん、やよいちゃん、亜美ちゃん、真美ちゃん、律子さん、貴音ちゃん、高木社長)

あずさ(――喰種の千早ちゃん、真ちゃん、伊織ちゃん、私、小鳥さん、……プロデューサーさん)


あずさ(――そして……)


あずさ(――少し前まで人間だったけど、私達と同じ身体になってしまった"半喰種"の響ちゃん)


あずさ(――人間は喰種の存在に気付かず)

あずさ(――喰種は人間の目に怯えて)


あずさ(――そんな歪んだ鳥籠の中で、私達は暮らしていました)


あずさ(――ある日、765プロとは別の鳥籠が崩壊してしまう出来事が起こりました)

あずさ(――その鳥籠の名前は『876プロダクション』)

あずさ(――水谷絵理ちゃんと言う喰種が、周りが全員人間という環境で1人で頑張っていた事務所でした)


あずさ(――絵理ちゃんのミスでCCGの喰種捜査官に正体がばれ、それは876プロの人間全員に知れ渡ってしまいました)

あずさ(――そして、絵理ちゃんはすべて失ってしまったのです)

あずさ(――捜査官によって、その命さえも)


あずさ(――876プロの崩壊は、高木社長の判断で765プロのみんなにも伝えられました)

あずさ(――そして、春香ちゃんたち『人間』は初めて知ったのです)

あずさ(――今まで仲良くしていた子に『喰種』が混じっていたことに)


あずさ(――765プロに喰種がいることはまだ知りません)

あずさ(――それでも、自分たちが信じていた鳥籠が崩れかけて、人間たちは怯えました)

あずさ(――でも、その中でも)

あずさ(――たとえ得体の知れない怪物だったとしても、絵理ちゃんとの絆を信じる子はいたのです)


あずさ(――それを知って、響ちゃんが出した答えは―――――)



~レッスンルーム~


バンッ


春香「!」

雪歩「あっ……」

あずさ「……」


やよい「響さん!」


響「……お待たせ!」


春香「……どうしたの響ちゃん? そんなに慌てて……」

響「皆に言いたいことがあるんだ!」

雪歩「……?」

響「え、エリーゼのことで……」

やよい「絵理さんの……?」

あずさ「!」


あずさ「……」キュ

あずさ「……響ちゃん。言いたいことって、なあに?」

響「あずささん……」

響「……その、ね。自分、思うんだ。エリーゼの事……エリーゼが"喰種"でも、その……」


響「……」スゥ





響「―――――エリーゼは良いやつだぞ!!」





「「「!!!」」」


雪歩「そ、それって……」


響「会ったのは一日だけだったけど……」

響「自分、ちゃんと知ってるぞ! エリーゼは人が怖いのに頑張り屋で、それですっごく仲間思いなんだ!」

響「それはエリーゼが人間でも喰種でも変わんないんだ!」

響「喰種ってだけで『悪いやつ』って決めつけるのは間違ってるぞ!」





響「良い喰種だっているぞ! エリーゼは喰種でもいい喰種なんだっ!」

響「自分たちがそれを信じなきゃどうするんだッ!!」





「「「……」」」ポカーン


響「……あ」

響(……やばい、もしかして喋りすぎた!?)

響(今ので自分が"喰種"だってバレたかも……)

響(い、いや! もしバレたとしても……!)


春香「……」





春香「……ぷっ」


響「!」

春香「あっははははは! そうだよね! 私、なんてバカなことで悩んでたんだろ!」

あずさ「! 春香ちゃん……!」


春香「……そうだよね。人だって良い人と悪い人がいるんだもん。良い喰種だっているよね」

やよい「!」

やよい「うっうー! そうです!」

やよい「涼ちゃんも愛ちゃんも絵理さんが大好きなんですから、絵理さんはきっと良い喰種なんです!」


雪歩「春香ちゃん……やよいちゃん……」

あずさ「……」

春香「……ね、雪歩。あずささん。確かに、"喰種"って怖い生き物かもしれないけどさ」

春香「響ちゃんのお話聞いて思ったの。……絵理ちゃんだけは信じてみたいな……って」

春香「……それじゃダメかな?」


雪歩「……」

雪歩「……分かったよ」


あずさ「雪歩ちゃん……!」

雪歩「……信じてみます。"喰種"は怖いけど……絵理ちゃんのこと、私はよく知らないけど……」

雪歩「……亜美ちゃんと真美ちゃんが絵理ちゃんのこと好きだったのは、ちゃんと理由があると思うから」

春香「うんっ!」

春香「あずささんも! 絵理ちゃんのこと、信じてみませんか!?」

あずさ「!」

あずさ「……ふふっ、そうね」


あずさ「皆が信じてくれるなら、私も信じてみようかなあ」


響「みんな……!」

春香「……えへへっ、ありがと響ちゃん!」

春香「響ちゃんのおかげですごくすっきりした!」

春香「そうだよ。絵理ちゃんが喰種だからって、悪い人になるわけじゃないんだ。……殺されて当然なんかじゃないんだ……」

春香「……だから……」ジワ


ポタッ


響「! 春香……」


春香「……だから、響ちゃん」





春香「……絵理ちゃんが死んじゃったこと、悲しんでもいいよね……?」


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響(――春香と、それから雪歩とやよいも)

響(――あの後、エリーゼの死を、絵理が殺されたことを、ようやく泣くことができた)

響(――簡単な話だったんだ)

響(――春香たちだってそうだったんだ)


響(――最初から、心のどこかではエリーゼのことを信じたかったんだ)


響(――皆で思いっきり泣いてから、とりあえず必要な分のレッスンを終わらせてその日は帰った)

響(――吹っ切れた春香達の動きは、少しキレが良くなってるように見えた)


響(――皆で帰る時、あずささんには小声で)


『ありがとう、響ちゃん』


響(――とだけ言われた)

響(――その時の笑顔には、いつもの寂しそうな色がないように見えた)





響(――そして、春香たちの話は伊織たちにも伝わったみたいだ)

響(――次の日、自分は伊織に呼び出された)


――――――――――――――――――――


千早「……」

真「……」

小鳥「響ちゃん……」

あずさ「……」





伊織「……どういうつもり?」


今日はここまで。

カネキの「同じ表現を繰り返すのはコンプレックスの証」ってセリフがメチャクチャ刺さる。


響「どういうつもり、って……」

伊織「決まってんでしょ?」


伊織「言ったはずよ、『食べられてからじゃ遅い』って。優しいツラ見せて、のこのこ付いて来た人間を喰う喰種ばっかりだって」

伊織「"喰種"はそういうのばっかだって。絵理みたいなのは一握りしかいないんだって」


響「……」


伊織「何考えてんの? アンタ、春香達を奴らに喰わせたいの? なんとか言いなさいよ、ねえ?」


響「……」



響「そんなわけない」


伊織「じゃあ何? ……言ってみなさいよ」


響「……伊織のいう事は分かるぞ」

響「自分だって、この身体にまるまでは"喰種"が怖かった。よく知りもしないうちから、『会いたくない』って思ってた」

響「何も知らないで、ただ"喰種"を怖がって近づかないようにして……」

響「それで喰種に襲われずに、何事も起こらずに済むんなら……」

響「きっと春香達にとってはすごく幸せな事なんだと思う」


伊織「……」


響「……でもね。亜美と真美を見て気付いたんだ」


伊織「……亜美と真美が?」


響「うん。あいつら、絵理が"喰種"だって知った後でも……絵理のこと信じてたぞ」

響「『良い喰種だっているかもしれないじゃん』って、喰種の本買って勉強しようとしてた」


伊織「……あいつら……!」


響「……きっとさ。伊織たちが思う以上に、みんな伊織たちのことが好きなんだ」

響「自分、わかるぞ! 春香も亜美も真美もやよいも律子も、雪歩だって! 自分たちが"喰種"だからって怖がったりなんかしない!」

響「伊織のやることは間違ってる! "喰種"は怖いかも知れないけど、伊織たちをけなしてまでやることじゃない!」



響「『あいつらのため』とか言っておいて、本当は自分が怖いだけだろ!?」

響「次は自分の正体がバレて、そしたらどうなるか考えるのが怖いだけだろ!?」


響「怖い"喰種"なんて、皆で立ち向かえばいいだけだぞ! 765プロのみんなで!」

響「皆のこと考えるなら、突き放しちゃダメだぞ!」


伊織「……」


あずさ「……どうするの、伊織ちゃん?」

伊織「…あんたはどうなのよ、あず……」

伊織「……いえ、あんたに聞いて決める話じゃないわよね」



伊織「論外よ、響」

伊織「……アンタは何もわかってない」

伊織「私達の信頼がどうとか、そういう話じゃないわ」


伊織「喰種ってのはね。人間が協力して立ち向かえる相手じゃないのよ」

伊織「アンタは"喰種"の力を分かってない……赫子すらまともに出せない今のアンタに、そんなの分かるわけないでしょ」

伊織「知ってたら……そういうあいつらを巻き込むようなこと、言えるわけないわ」


伊織「……」

伊織「……そうね。いい機会だし、アンタに教えてあげるわ」

伊織「アンタが『みんなで立ち向かう』ってほざいた相手がどんなものか……」





伊織「 真 」


真「! ……なに、伊織?」


伊織「今から着替えて、地下道に行くわよ」

伊織「私がやってもいいけど……こいつに"喰種"の怖さを叩きこむなら、アンタの方が向いてるわよね」





伊織「響と戦って"喰種"の力を見せてやって。…言っとくけど―――――」





伊織「―――殺す気でいきなさい」


今日はここまで。

ちょっと強引かもしれんが、前々からずっと書こうと思っていたVSまこちんまでようやく持っていけました。


――――――――――――――――――――


響(――伊織がなにか物騒な事を言ったあと、自分と真はレッスン着に着替えさせられて)

響(――そして皆に連れられて、765プロの階段を降りて行った)



伊織「……」ヒソヒソ

真「(え、いいの……?)」ヒソヒソ

伊織「(いいわよ別に。それくらいやんないと危機感でないでしょ)」ヒソヒソ



響(――移動中、伊織と真はずっとヒソヒソ話を続けていた)

響(――あんまりにも小声だったから、自分の耳でも何を言ってるかまでは分からなかった)

響(――この後の打ち合わせ?)


響(――皆は足をとめたところは765プロの事務所がある建物の1階)

響(――たるき亭じゃなく、その隣のドアから入った、事務所に直接通じている階段のちょうど手前の……廊下? 玄関? みたいなところのことだ)

響(――このスペースの隅っこには社長の胸像が置いてあって)

響(――伊織が少し力を入れて胸像の位置をずらすと、地下に通じるフタが見えるようになった)


響(――見学の時から訳が分かんなくて少し気になってたけど…)

響(――社長の胸像って、これを隠すために置いてあったのか……)


響(――地下にまだ何かあるのか……?)


伊織「この下よ」グッ


ガコン


カッ カッ カッ


ガチャン


シイィィィィィン……



響「…伊織?」

伊織「何?」

響「ここは何なんだ? 765プロの地下に、こんな所があったなんて……」

伊織「地下道よ。昔の東京喰種が人間から身を隠すために作った道」

伊織「このホールより先に進まないでよ? 一人で行ったら迷って二度と出られなくなるわ」

響「わ、わかった……」


響「えっと……そ、それで? 『喰種の怖さを教える』って、何をするつもりなんだ……?」


伊織「二度とナメた口聞けないように、うちの武闘派にボコボコにしてもらった方がアンタのためになるって思ったのよ」

伊織「"喰種"の能力も知らないうちから理想をペラペラ語ってるのなんて、バカの極みだもの」

伊織「ほっといたらアンタの考え無しな行動で私たちにまで迷惑がかかるかもしれないし、釘は打っとかないとね」


響「……自分の聞き間違いじゃないなら、さっき殺す気がどうとか……」



伊織「言ったわよ?」



伊織「粋がった弱虫に勝手に動かれるくらいなら、殺して排除したほうがずっとマシ」

伊織「アンタがそこそこやれるようなら、手元に置いておいてやるけど……赫子も使えないんじゃねえ?」



伊織「ま、生き残りたきゃ"喰種"の世界でやっていける能力があるかどうか、この伊織ちゃんに見せてみなさいよ」

伊織「アイドルとして顔だけは傷つかないようにしてあげるから、せいぜい頑張りなさい」


響「えっ……えええええええええええええっ!!?」

響「ちょ、待って!? 何でそんな暴力的な発想に行きつくんだ!? 殺して排除って何で簡単に言えるの!?」

響「ぴよ子! あずささんもそう思うだろ!? 何か言ってやってよ!」ビッ


小鳥「がんばれ響ちゃ~ん」ヒラヒラ

あずさ「千早ちゃん、コーヒー飲む?」カチャ

千早「……いただきます」ズズズ


響「あ、あれ? 何で止めてくれないの……?」


真「……」コキッコキッ

真「……」ギッギッ


響「……あっ! ま、真! 同じ事務所の仲間同士で殺し合いなんておかしいよな!?」

響「真は自分のこと殺したりなんかしな―――――」ヒュッ





 ド ズ





響「えっ」

真「……」


響「ぐぷっ……?」ドッ


響(――ついさっきまで、真は自分から結構離れたところに立っていた)

響(――それが、ほんの一瞬で自分の目の前まで迫って来て……)

響(――一瞬、お腹に衝撃が伝わったと思ったら、吐き気がこみ上げてきて……)


響(――自分のお腹を殴ったのか?)

響(――こんな人間離れした速さで!?)


響「おっ…おえええぇえええっ」


響(――苦しい)

響(――あんまり殴られた事なんてないけど、パンチの強さだってどう考えても人間のそれじゃない!)

響(――まるで、トラックに胃袋だけ轢き潰されたような……それくらいの……!)


真「……」スッ


響(――え)

響(――こんどは……足?)

響(――パンチであれなら、脚力は……)


響「ちょっ、ちょっと待っ……」



 ゴ ズ ッ



響「かっ……!」グタリ



響「 ぐあ あっ  おえっ   」デロリ


響「やめ おねが  まこと いた   」ピクピク


真「……」グイ

響「やっ、やめっ……!」



真「……はあ」


真「あのさ、響」

真「『元人間』だから知らないのも無理はないけどさ。正直、響は"喰種"を嘗めすぎだよ」

真「伊織も言ってたけど、"喰種"は人間よりずっと高い身体能力を持ってる」

真「それだけじゃない。他の"喰種"との縄張り争いや白鳩との戦いで、ボク達のほとんどはほぼ毎日殺し合いをしてるんだ」

真「これくらいの痛みや暴力なんて、ボクにとっては珍しくもない……」スッ



響(――何?)

響(――靴を自分の指に合わせて……人差し指だけ起こすようにずらして……)


真「……いまいち危機感がないみたいだね」グッ


響(――え)



響(―― ま さ か )





真「折るよ」





バキッ





響「―――――うあ゛あああアアアアアアアアッッッ!!!」


響「指がっ……指……骨が、自分の―――!!」


響(――いたいいたいいたいいたいいたい!!)

響(――少し動かすだけで肉が裂けそうだ!)

響(――それに踏まれるとき、爪もひび割れて、靴底の摩擦で半分だけ引きはがされて!!)

響(――骨も爪もメリメリ音を立てて砕けてく!!)


響「はっ……はあっ……やだ、やだ、やめて……!!」ブルブル



真「……明日にはくっつくよ」


真「……でも」ビキキ



メシャッ





壁「」パラッ



真「―――これはすぐには治らないよ」ビキッ


響「あ、あ、あああ……?」


響(――叩き潰された胃と肉の中の骨の破片ごとに悲鳴をあげる指の痛み)

響(――そいつらで頭がいっぱいになって、涙とよだれまみれになった自分の目でも)

響(――真の肩から何かが生えて来たことだけはわかった)


響(――今、真は肩の『なにか』を右腕にまきつけて、腕全体を覆うグローブみたいにしてる)

響(――プロデューサーとも美希とも違う、すごく硬そうな金属みたいなものだ)

響(――あとは、それごと右手を壁に叩きつけて……)

響(――その痕が、あの……事務所のテレビみたいな穴……?)


響(――あんなの、人間が喰らったら……)


真「……まあ。今の響じゃ、伊織の言う通り殺してしまった方がいいのかもね」

真「その時はその時」

真「ボク達が処理してやるから―――――」





真「 お や す み 」





響「あ……」



響(この目)

響(本気で死んでもいいって思ってる)

響(このままじゃ)

響(あの凶器をぶち込まれて潰される)



響(死っ……)



ズズ


響「――――――!!」ズルッ



ガキンッ



真「……」

響「……あ……」


響(な、なにか出た……)

響(赤い爪……?)

響(まるで、プロデューサーみたいな……)


響(……もしかして、これが自分の"赫子"?)




パン



響「!」

真「あっ」



伊織「はい、そこまで。やればできるじゃない」


響「え?」


伊織「なーんか、思ってたのよりしょぼい赫子ね。千早、アンタこんなのに苦戦してたの?」

千早「私が戦った時はもう一回り大きかったわ」

伊織「あらそう? じゃ、とっとと上がりましょ」


響「へ」


伊織「真。もう『冷たい演技』はやんなくていいわよ」

真「……」


真「……ああ……もう良いんだね……」フラッ



真「―――無事に終わって良かったああああああ」グテン


響「ちょっと」


真「ゴメンね響、けが大丈夫? 痛むならボクが運ぶから、無理して動かないで!」


響「えっと」


伊織「小鳥ー、アイスコーヒー用意してやってー」

小鳥「はーい」

あずさ「大丈夫、響ちゃん? 応急処置だけど、包帯巻いてあげるから手を出して……」


響「あの……」





響「……終わったの……?」


今日はここまで。

いおりんは優しい子。


――――――――――――――――――――


響「……『鱗赫』?」

伊織「そ。形は少し違うけど、アンタの赫子はプロデューサーと同じ『鱗赫』って呼ばれてるわ」

    カグネ
伊織「『赫子』ってのは"喰種"だけが持ってる捕食器官のことで、大まかな形と生えてる場所から4種類に分けられるの」

伊織「そのうち、腰の付け根から生えてるざらざらの鱗がついたものが鱗赫。脆くて防御には全く使えない代わりに一発一発の攻撃力が高いわ」

伊織「あと、4種類のうち最も回復力に優れてるから……さっき真にやられた傷、もう治ってるでしょ?」


響「えっ? ……あ、ホントだ。全然痛くない……」


伊織「言っとくけど、今のアンタは"喰種"としてはまだまだヒヨっ子よ」

伊織「今ので満足して赫子に頼り切ってるようじゃ、どっかでボロ出して喰われるでしょうね」

伊織「今はとりあえず生かしておいてあげるけど……」

伊織「……ハッキリ言って、私達に意見できる立場じゃないくらいの足手まといよ」

伊織「勝手な行動したら……今度こそ殺すから」


響「う……」



あずさ「……」


あずさ「……伊織ちゃんは本当に優しいわ~♪」

あずさ「実は伊織ちゃん、今回の特訓のこと、響ちゃんが765プロに入ってからずっと考えてたんだって」


伊織「なっ!? 何言ってんのよあずさ!?」

あずさ「真ちゃんにも『冷たいイメージ持たせてた方が響も必死に応戦するでしょ』って、響ちゃんの前ではクールに振る舞ってもらうよう頼んでたみたいなの」

伊織「ちょっ!」


響「……そうなの真?」

真「……そうなんだよ。赫子って、本当に死ぬ気でやらないと出せなくて……」

真「ボクもこの方法で父さんに教えてもらったんだ。赫子の出し方」

真「……ほんとにごめん! 痛かったよね!」

響「い、いや、もう気にしてないぞ……」


響「じゃ、じゃあ……真は春香達に見せてる顔の方が素ってこと?」

あずさ「そうそう。本当は真ちゃん、すごく可愛い女の子なの! 実はケンカだって嫌いなんだから」

伊織「…あのガバガバ演技でよく見抜かれなかったわよね。響が柵から落ちた時なんか思いっきり動揺してたじゃない」

真「う、うるさい! 伊織だって響のことを想って色々考えてたの見え見えなんだよ!」

真「さりげなく響に色々レクチャーしてあげてるし! 伊織ってば面倒見よすぎるよ!」

真「今回の特訓の理由なんだっけ?『現実見せてやる』だっけ!? あれ建前でしょ? 響が死なないように特訓してあげるための良い言い訳見つけただけじゃないか!」

伊織「はぁ!? 違うわよバッカじゃないの!? 勝手に動かれたら迷惑だっつってんでしょ何回も!」

あずさ「伊織ちゃんは本当に良い子ね~♪」ナデナデ

伊織「ああああああもおおおおおおお!!!」


ギャーギャーワーワー


響「……」ポカーン

小鳥「ねえ、響ちゃん」

響「あ、小鳥……」


小鳥「さっき殺されそうになって、簡単には信じられないかもしれないけど……」

小鳥「きっとみんな、響ちゃんの言う通り……」

小鳥「本当は秘密を全部取っ払って春香ちゃん達と仲良くしたいって思ってるの」


小鳥「だから、響ちゃんがああ言ってくれて、本当は皆嬉しくて……期待してるんだと思う」


響「……そっか……」



伊織「―――あーもう皆うるっっさい!!」バッ

伊織「響! これだけは言っとくわよ!」ズイッ

響「な、なに?」ピクッ


伊織「…さっきので十分わかったと思うけど!」


伊織「…"喰種"として生きるってことは、あんな痛みや暴力と日常的に付き合っていかなきゃいけないってことなの」

伊織「それだけじゃない。春香達をこっちの世界に引き込むって言うんなら、『あれ』があの子達にまで降りかかる。それを代わりに受け止めるくらいのことはしなくちゃいけないわ」

伊織「アンタが私達のために何をするかは知らないけど、アンタが1人の"喰種"として戦うなら……それを覚悟しなさい」


伊織「もう一度聞くわよ。それでもアンタは、この765プロのために何かする気なの?」


響「……ああ」


響「さっきの真……すごく怖かったぞ。あれが"喰種"の怖さなんだって分かった」

響「でも、それだけじゃない。真も、伊織も、あずささんも、ぴよ子も、千早も……怖いだけの"喰種"じゃないって知ってるんだ」

響「仲間のために泣くことができる、優しい"喰種"だって知ってる」


響「だから……自分は戦う!」


伊織「……あっそ。じゃあ、まずは精々トレーニングに励みなさい」

伊織「詳しい内容は真に任せるけど……とりあえず赫子を自由自在に出せるくらいにはなっとくこと。じゃないと、本当に死ぬわよ」

伊織「理想を語るなら、まずはちゃんと力をつけなさいよね」


伊織「……それじゃ」クルッ



響(――最後に言うだけ言ったかと思うと、伊織はすぐさま離れていった)

響(――エリーゼが死んだ後、泣いて謝ってた所を見た後ならわかる)

響(――伊織も本当は、今の辛い世界から抜け出したいんだって)

響(――いつか、春香ややよい達と、本当の仲間になりたいんだって……)



響「……よしっ!」パンッ


響(――何かしなきゃって気持ちで、胸がいっぱいになった)

響(――何が出来るかは、まだわからないけど……)


響(――自分は、もう絶対に……)





響(――誰も悲しませたりはしない)


今日はここまで。

前スレから引きずっていた「エリーゼ死亡からの立ち直り編」がようやく一区切りつきました。

次からは美希編、レストラン編、876決着編、そしてVS冬馬、黒井編など、ようやく話を先に進められそうです。


もうちょいすっきりとした話を書けるように構想を練り直してくるので、また1週間ほど時間があくと思いますが、どうかお付き合いいただけると嬉しいです。


~翌日・765プロ事務所~


ガチャ


響「はいさーい」

律子「あら響、おはよう」

響「はいさい律子。今いるのは律子だけ?」

律子「伊織も来てるわよ。……そういえば」


響「?」

律子「春香達から聞いたわよ? 『絵理ちゃんは良い喰種だ』ーって、アンタ信じて疑わなかったみたいじゃない」

響「うえぇっ!?」


響(し、しまった! 普通に考えて、昨日の話は律子にも伝わるに決まってるじゃないか!)

響(ちょっと抜けてる春香ならともかく、賢い律子なら何か気がついちゃうかもしれない……)


響「え、えっと、律子―――」ポン


律子「……」ワシャワシャ

響「……律子?」



律子「お手柄よ、響」

律子「喰種に対する思想はともかく……このままじゃ皆のアイドル活動に響きかねなかったからね」

律子「みんなを元気づけてくれてありがと」



響「……律子……」


響「……あのさ、律子」

律子「ん?」

響「律子は、"喰種"のことどう思ってるんだ?」

響「……エリーゼのこと、悪い"喰種"だって思うのか?」

律子「……」



律子「……どうだろ」

律子「私の見た絵理ちゃんは、弱い自分を一生懸命克服しようとしてる頑張り屋だったわよ」

律子「だから、あの子が悪い子か……なんて、ちょっと想像できないわよねー」アハハ


響「……!」パァ


響「うんっ! うんうんっ!!」コクコクコク

響「それでいいぞっ! エリーゼは頑張り屋のいい奴なんだっ!」

響「律子がそう思ってくれて、自分すっっっごく嬉しいぞ!!」クルッ


タタタ……


律子「…ふふっ。はしゃいじゃって」


律子(全くもう。今ので"喰種"なのかって疑われたらどうすんのよ)

律子(……むしろ、今問い詰めた方が良かったのかな)


律子(だとしたら……しくったかなあ……)


律子(……見学の時には"喰種"と人間の区別がついてないようだったから、てっきり響は人間だと思ってたんだけど……)

律子(……どうでもいいか、そんなこと)


律子(伊織や真、あずささん……)

律子(プロデューサーがいなくなってから、ずっと沈んだような顔をしてたあの子達)

律子(それが、響が765プロに入ってから、皆いい顔をするようになった)

律子(多分、響のおかげ)


律子(……私達人間が気付いてないだけで、765プロは今大きな変革を迎えてるのかもしれない)

律子(だとしたら……)



律子(いい加減、怖がってないで私も動くべきなのかもね)


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響「伊織っ、伊織っ! 今の聞いたか!?」バッ

伊織「うるさい! 小声で話しなさい!」

響「あ……ごめん」ボソ


伊織「聞いたわよ。…全く、今ので疑われたらどうすんのよ」ボソ

響「……あっ!?」

響「……ん?」

響「いや、でも……」


伊織「? 何よ」

響「伊織。自分、思うんだけど……」ヒソヒソ



響「律子になら、もう話してもいいんじゃないか?」



伊織「……!」ピクッ

響「伊織もさっきの聞いただろ? 律子なら自分たちが"喰種"って知っても……」ヒソヒソ

伊織「……そうかもね」

響「! じゃ、じゃあ!」



伊織「……ごめんなさい。やっぱり待って」

響「……伊織?」

伊織「心の準備をさせてくれないかしら」

伊織「……いや、分かってるわ。私も、もし765プロの人間で一番に秘密を話すなら……それは律子だと思うの」

伊織「あいつなら、私達が"喰種"だって知っても受け入れてくれるかもって……アンタが来る前から思ってた」


伊織「……だから、数日ほど腹決める時間を頂戴」

伊織「言う時は私から言うわ。『私、水瀬伊織は"喰種"よ』って」

伊織「いつか覚悟を決めなきゃいけないって思ってたわよ」


響「伊織……!」


伊織「にひひっ、アンタのせいよ? アンタが来なけりゃ、こんな事で悩むことも無かったのよ」

伊織「もし面倒くさいことになったら、アンタにはキッチリ責任とってもらうから!」

響「うんっ、うんうんっ!」

響「自分、なんでもするぞ!」

伊織「声がでかいっ!」

響「あっ……!」バッ


伊織「……ま、私は私で覚悟決めるとして」ヒソヒソ

伊織「昨日、アンタは765プロのために戦うって言ったわよね? それ、具体的に何をするつもりなの?」

響「!」


響「……それなんだけどさ。自分、昨日いろいろ考えたんだ」

伊織「…で?」


響「まず……『良い喰種』をたくさん味方につけるのがいいって思ったんだ」

響「人間と仲良くできるような良い喰種をいっぱい友達にすればするほど、765プロの戦力も上がるって思うんだぞ」

響「そうやって、765プロを誰にも危害を加えられないくらい強い組織に出来たら……そこから色んな喰種と人間を仲良くさせられるんじゃないかって」


響「ねえ伊織。765プロとか水瀬財閥ってさ、他所の"喰種"とはどれくらい仲がいいんだ?」

伊織「他所?」

響「そうだぞ。ほら、876プロとか、水瀬財閥と協力してる組織とか……」


伊織「……そうね……」


伊織「まず、確かに水瀬財閥は『喰種の組織』への強いコネクションを持ってはいるわ」

伊織「ただ、アンタの目的に水瀬財閥やほかの組織の力は使えないと思った方がいい」

伊織「水瀬財閥……お父様やお兄様たちは今のところ私の我儘を聞いてくれるけど、それはあくまで『水瀬伊織が』『765プロで』『人間のフリをして』『アイドル活動をする』ことに限ってのこと」

伊織「……受け入れてくれたならともかく、もし何かヘマをして765プロの誰かが通報したり他の誰かに言いふらしたりしようものなら……765プロの人間全員殺すってハッキリ言われたわ。人間の味方をしてくれるとは言えないわね」


伊織「それでもウチはマシな方。ほかの組織のやつらなんか"喰種"の思想にどっぷり浸かってるようなのばっかり」

伊織「喰種と人間の和平のために協力なんてもってのほか……」

伊織「それどころか、あいつらに借りや弱みを作るようなら765プロの人間を美食として差し出せって言われるでしょうね」

伊織「だから……もし律子たちへのカミングアウトが成功したとしても、それを喰種にも大っぴらに示すことは出来ないわね」


響「そうか……」


伊織「……で、アイドル事務所の方だけど」


伊織「残念だけど、765プロが『喰種の組織として』関わってるのは絵理だけよ」

伊織「あいつは律子のいとこが入ってる876プロにたまたまスカウトされたから交流があっただけ」

伊織「今のアイドル事務所は基本ヒトの組織で、そこに正体を隠して忍び込むのが今の喰種アイドルの主なデビュー方法なの」

伊織「要するに組織じゃなくて個人の喰種がコソコソやってるのばっかりだから、コンタクトをとりにくいし取るメリットもない」

伊織「ある喰種アイドルが駆逐されて、そこから芋ヅル式に正体がバレていくデメリットの方が大きいから、他所の事務所の喰種アイドル同士は互いに不干渉なのが普通ね」


伊織「……一応言っとくと、うちは人間の高木社長が率先して喰種を引き込んでるかなりイレギュラーな事務所なの」

伊織「このことは捜査官側はもちろん、喰種側にも隠し通してるわ。あくまで私達が人間のフリして忍び込んでるって体をとってる」

伊織「大っぴらに他所のアイドルと関係を持てないのは、これも大きいのよね」


伊織「……去年までなら『喰種の組織として』機能してるアイドル事務所も結構あったのよね」

伊織「それが12月の346のアレを皮切りに一斉摘発なんてやられるもんだから……正直あの時は本気で死を覚悟したわよ……」ハァ

響「? 去年に何かあったのか?」

伊織「あら、アンタ去年はまだ上京してなかったの? トップニュースになってたと思うんだけど」



伊織「……ま、いいわ」

伊織「だから他所の事務所と協力する形も取り辛いし、そこにいる喰種がアンタの言う『良い喰種』かどうかも実際に会わなきゃわからない」

伊織「アイドルをやってる"喰種"は結構いるから、やるとするなら仕事で知り合った他所の喰種アイドルに話を持ちかけてみるくらいね」

伊織「もちろん片っ端から話しかけるようなマネしたら、それこそやよい達の危険につながりかねないし……」


伊織「ハッキリ言って、すごく困難よ。一歩一歩カメみたいな鈍さで手探りするようなもんだと思っておいて」


響「……そっかー……」グタッ

響「……思ってたよりも、ずっと大変だな……」


伊織「あら、あきらめるつもり? 少し手間がかかるから諦めるって、真はどれだけ温い殴り方したのかしら?」フフン

響「分かってるぞ。大変だけど、やることは見つかったんだ」

響「まずは色んな喰種アイドルに話しかけて、少しでも味方を増やす!」

響「今更引くわけにはいかないぞ!」



伊織「にひひっ♪ アンタはそう言うバカだって、私もそろそろ学習しちゃったわ」


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響(――とりあえず、やることは決まった)

響(――自分たちと同じ、アイドルをやっている"喰種")

響(――そいつらを少しでも味方につけて、悪い喰種に立ち向かう力をつける)


響(――そしたら、皆安心して人間と喰種とで仲良くできる)

響(――絵理のような悲劇だって無くせる)


響(――そう決まったら、まずは1人目を探さなきゃな)

響(――どうやって探そうか―――――)







――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響(――自分が味方に引き入れようと思った"喰種")

響(――その1人目は、思ってたよりずっと早く見つかった)

響(――ただ……)





高木「うむ、皆集まっているね」

高木「どうやら皆元気を取り戻したようで何よりだ」


高木「そこでだ! 皆にいい知らせがある!」

高木「我が765プロに、新しい仲間がやってきたのだよ!」


高木「ほら、挨拶してくれたまえ」



「……」





「ここが、765プロ……」











「星井美希、15歳だよ」










美希「よろしくなの」





響(――ただ、見つかったのは予想だにしないところからだった)


今日はここまで。ようやくミキミキを登場させられました。


――――――――――――――――――――


雪歩「社長、どこからあんなに可愛い子を見つけてきたんでしょう……?」

やよい「うっうー! すっごくキレイな人ですー!」

真美「でかい」

亜美「マウンテン……」



春香「美希ちゃん!」

美希「ん」

春香「私、天海春香。これからよろしくね!」

美希「ああ……よろしくなの」

春香「えへへ……これ、良かったら食べて! お菓子作りが趣味なんだ~♪」

美希「……ふーん……」ジッ


美希「いらないの」プイ

春香「えっ…」


美希「ミキ、お菓子はあんまり好きじゃないの。だから春香がお菓子持ってきても、ミキ食べないよ?」

春香「そ、そっか……」


美希「それとね」

美希「社長さんは『新しい仲間』って言ったけど、ミキはただのヘルプだよ」

美希「この前社長さんに助けてもらったから、その恩返しなの」

美希「お仕事が終わったら765プロを抜けるから、あんまり仲良くするつもりはないの」


春香「……え……」





春香「……そ、そっかぁ……」

春香「あはは、ごめんね勝手にこんなことして!」

春香「そ、それじゃあ……」タッ


美希「んー」ヒラヒラ


美希「……はあ。あんなもの食べさせられるとかジョーダンじゃないの」

美希「まさかとは思うけど、こっちの"喰種"は皆アレを食べさせられてるんじゃ……」チラ

美希「……ん?」ピク



響「…………!!」ジイイイイイイ



美希「っ!」ビク

美希「……ひ、響? 何の用?」ドキドキ


響「……こっち来て」グイ

美希「え? ちょっと、待っ……!」ズルズル


~社長室~


響「……何しに来たんだ? まさか、今度は春香たちまで……!!」ギョロ

美希「ちょ、ちょっと待つの! ミキはもう貴音とかを狙うつもりはないよ?」

響「……本当?」

美希「本当なの! 今回はただのお手伝いなの! 社長さんに傷を治す手伝いしてもらったからそのお礼なの!」


響「傷?」

響「……って言うか、美希ビビりすぎじゃないか? 最初に会った時と何か雰囲気違うぞ」


美希「……ミキに何したか憶えてないの?」

響「何って……ミキが自分たちを騙して貴音を食べようとしたから、自分……」





―――『死ぬの死ぬの死ぬの死ぬの死ぬの死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬううううううっ!!!』





響「……あ。アレか」

美希「ミキ的にはアレ、軽くトラウマなの……あんなの喰らったあとでもう一回貴音を狙うとか恐ろしくて出来ないの……」


美希「そう言えば、響の赫子……」

響「?」

美希「……何でもないの」


美希「まあ、あの時のキズは自然に治せるものじゃなかったから。ぶっちゃけミキ死にかけてたよ」

美希「そこを千早ってヒトに、響と貴音と一緒に765プロまで運ばれて」

美希「あとは社長さんにお肉をもらってキズを治した後、『ほとぼりが冷めたら連絡する』って言われて」

美希「それまでしばらくこの町を離れて引きこもってたの」


響「ああ……だから見かけなかったのか」

美希「そ。恩返しはちゃんとするって決めてるから、社長さんのお手伝いはするけど……」

美希「あんまり765プロにいたくないし、お仕事したらすぐに出てくつもりだよ」


美希「だから……短い間だけど、それまでよろしくね。響」


響「……」

響「……美希が自分たちの敵になるつもりが無いのは分かったぞ。とりあえず信用するよ」

美希「ほっ」


響「―――それはそれとして! 美希にはもう一つ言いたいことがあるんだ!」

響「さっきの春香への態度! ちょっと言い方がきつすぎるぞ! 春香めちゃくちゃ傷ついてたじゃないか!」


美希「は? ……ああ、あの子?」

美希「何か悪い事でもあるの? 実際、ミキはお菓子なんて食べられないの。ああでも言わないと食べなきゃいけなくなるでしょ?」

響「そ、それはそうだけど! でも、怪しまれるだろうし……」

美希「すぐに出てくからどーでもいいって思うな。人間と仲良くする気はないの」

響「むう……っ!」


美希「……もしかして、765プロの喰種は皆アレ食べてるの?」

響「そ、そうだけど」

美希「ええ……頭おかしいの。そこまでして人間と仲良くしてるの? ただの餌と?」

響「……」ムッ


響「……エサじゃない。大切な仲間だぞ」

美希「まーだそんな事言ってるんだ。しかも事務所ぐるみで? 美希にはわかんないの」



美希「……どうせ裏切られるに決まってるのに」ボソッ


響「美希?」


美希「……なんでもないの」クルッ

美希「もうすぐ時間だよ? めんどくさいけど美希も荷物見てくるから、響も準備したほうがいいって思うな」


響「準備? ……なんの?」

美希「会場の下見? だっけ。さっきメガネの人がミーティングで言ってたの。聞いてなかった?」

響「……まあ、美希のことが気になってたし……」


響「それで、下見って?」

美希「ほんとに聞いてなかったんだね」


美希「確か……」








美希「765プロの単独ライブだよ」







美希「ミキや響……あと貴音もそこに出すって言ってたの」


今日はここまで。

偶像喰種は原作の流れのほかにオリジナル要素として「765プロの単独ライブ」を組み込んでいきます。

ちなみに、響や貴音が765プロに入ってから作中ではあまり時間がたっておらず、2人とも今までレッスン漬けで仕事はこれからが始まりです。という事にしました。


ようやく出せたアイマス要素、そして東京喰種の要素、両方使いこなせるよう何とか努めてみせます。


【速報】東京喰種、実写化決定


来るだろうなと思っていたがついに来た。
どれだけクソでもこれだけは見に行くと決めています。


ツイッターのTLから発見しました。

 実 写 映 画 化 でございます

http://i.imgur.com/6mE0s32.jpg

…舞台版のCM見てみたけど面白そうじゃん!
ちょっとDVD買おうと思います。


――――――――――――――――――――


響「単独ライブ……」

響「ここがその会場か……」


響「大きいな……」





響(――『765プロ感謝祭』)


響(――このホールで行われる、765プロでは初の単独ライブ)


響(――春香、雪歩、やよい、亜美、真美、律子)

響(――千早、真、伊織、あずささん)

響(――ピヨ子、社長……)


響(――そして、プロデューサー)


響(――13人全員の力でこぎつけたライブだって聞いた)



響(――ピヨ子は言ってた。765プロは弱小事務所から始まったって)

響(――CDを手売りして、屋上ライブや地方ラジオなんかの地味な仕事も片っ端から受けて行って)

響(――辛いことがあった時も皆で励まし合って乗り越えて行ったって……)


響(――これは、自分や貴音が入る前の765プロ)

響(――その皆が仕事やライブパフォーマンスを頑張って、ゆっくりと知名度を上げて行って……)

響(――ようやくここまでたどり着いた)



響(――765プロの皆の絆の証―――――)


1レスだけですが今日はここまで。

ライブ会場のイメージはアニマス13話の会場です。


律子「……ん?」


響「……」


律子(…何見てんのかしら、あの子)チラ


春香「千早ちゃん! 単独ライブですよ! 単独ライブ!」

千早「もう春香……はしゃぎすぎよ」

やよい「ついにここまで来たんですね! なんだか夢みたいですー!」

伊織「バカね。こんなんで満足してどうすんのよ? トップアイドルにはまだまだ遠いわよ?」

あずさ「でも、とっても嬉しいわ~♪」

伊織「……もう。能天気なんだから」

真「アイドル大運動会からだよね。仕事がだんだん増えてきたの!」

雪歩「真ちゃん、すっごくカッコよかったよ!」

亜美「なつかちーねえ真美い。涼ちんや愛ぴょんも応援に来てくれて」

真美「そーだね! 絵理おねーちゃんもゼーハー言いながら走ってて!」


亜美真美「「……」」



亜美「……あれ、演技だったんだね」

真美「"喰種"なら、あれくらい楽勝だもんね」


春香「……亜美? 真美?」


亜美真美「「……」」スゥ


パシッ!


春香「!」


亜美「……うっし! やるよ真美!」

真美「おうよ! 天国のおねーちゃんや兄ちゃんに届くくらい!」

亜美「元気!」

真美「一発!」

亜美真美「「オロナミンCィィィィィィィ!!!」」ワッ



春香「……亜美、真美……!」

雪歩「…すごいなあ、亜美ちゃんも真美ちゃんも。すぐに受け入れちゃった」

真「雪歩……」

伊織「全く……誰かに聞かれたらどーすんのよ」ハァ

あずさ「でも、亜美ちゃん真美ちゃんらしくて素敵じゃない?」

千早「……そうでしょうか」


響「……」ジー

律子「…ひーびーきっ」ポン

響「わっ!?」ビクッ

律子「なーに遠くから見てるのよ。あんたも混ざってきたら?」

響「え? あ、えっと、それは……」

響「……やめとく。話に付いていけそうに無いし……」

律子「……ふーん?」



律子「……考えてること、当ててあげよっか」

律子「『自分だけ甘い汁吸ってるみたいだな』じゃない?」

響「うっ……」

律子「そりゃ、これまでの765プロは仕事がろくに来ない弱小事務所だったわよ。こんな単独ライブなんて想像もできないくらいにね」

律子「それで……売れ始めた頃に偶然スカウトされちゃったから、そんな負い目感じてるんでしょ?」

響「……う、うん」


律子「心配することなんてないわよ。765プロはこれからが始まりなんだから」

律子「今までプロデューサーに頼ってばっかりだったから、皆もっと頑張らないといけなくなっちゃったしね」

律子「これから、もっと忙しくなる……だから」

律子「そんな事考えられなくなるくらい、響にもいっぱい苦労してもらうつもりよ!」

律子「……それこそ、今悩んでた頃が懐かしく思えるくらいにね!」アハハッ

響「律子……」

律子「……そう。765プロは『まだまだこれから』。だから……」



律子「『これから頼んだわよ』、響」


――――――――――――――――――――


響(――単独ライブの会場に来てからずっと)

響(――ちょっとだけ『仲間はずれ』になっていた気分だった)

響(――多分、そう考えてたのは自分だけで……それはきっと、自分が『半喰種』だからって理由もあったのかもしれない)


響(――でも、そんな寂しい気持ちは、律子と話したらすぐに消えていった)

響(――うん。大丈夫)


響(――ありがとう、律子)


響(――そんな、ちょっとした会話の後……自分は律子から、ライブまでに自分がやることをざっと教えられた)

響(――律子が言うには、『とにかく宣伝と経験を積む』だそうだ)

響(――ミニライブの箱を借りて、色んなバンドやアイドルグループのライブ……その前座とかに出してもらって)

響(――本番に向けてライブの経験を積み、そして皆に顔を覚えてもらう……って話だった)

響(――そうやって、少しでもファンを増やそうってことみたいだ)



響(――それが春香や千早達……)

響(――そして、自分と貴音、美希の12人でやる仕事だ)


一旦ここまで。


……半人間かぁ……


律子「……ああ、そうそう!」

響「?」


律子「美希ちゃんのこと、任せていい?」

律子「もちろん私もサポートするけど、初めてで緊張してるなら……あんたが一番、支えになってあげられると思うから」

響「うっ……」


響(ま、まあ確かに……新人同士の方が仲良く出来そうだけど……)

響(……でもなあ……)



美希「別にいいの。どーせヘルプが終わったらミキ出てくし」ニュッ

響「…うぎゃあっ!?」


律子「こーら、そんな事言わないの。これから一緒に仕事してく仲なんだから」

美希「どーでもいいの。って言うか、律子だっけ? 初めましてのクセになれなれしいの」

律子「『さん』をつけなさい、あたしの方が年上なんだから」

美希「……」ハァ

美希「……さん。これでいい?」


律子「もう……何がそんなに不満なのよ? 社長と何があったかは知らないけど……」

律子「美希ちゃん、アイドル嫌いなの?」


美希「……当たり前なの」

律子「何でよ?」

美希「……律子……さんには関係ないって思うな」


律子「……」


律子「……ふー」


律子「ね、美希ちゃん。美希ちゃんはステージ、見たことある?」

美希「……何なの?」

律子「アイドルのステージ、よ。見たうえで嫌いなのかどうかって聞いてるのよ」

美希「…………そんなの、無いの」


律子「あはは、やっぱり?」





律子「―――オッケー」ニヤリ


律子「―――全員集合!!」パンッ


真美「ん?」

春香「はいっ!!」

真「何ー?」


ゾロゾロゾロ


律子「あんた達、今から一曲だけリハーサルやるわよ」

律子「美希ちゃんが『今までアイドルのライブを見たことない』って言ってるの。手本見せてやりなさい」


亜美「ほう! 若造が……この亜美仙人の極意を読み取れるかな?」

雪歩「い、今からですかぁ!?」

伊織「急な事言うわね……下見とはいえ、わざわざ舞台に上がって貧相なラジカセで踊れって言うの?」

律子「それは大丈夫よ。元々響たちに見てもらうつもりだったし、音源の手配は出来てるわ」クイッ

千早「もう。事前に言ってほしいわ……」ハァ

やよい「頑張りますー!」


あずさ「あらあら……とっても素敵なアイデアですね♪」

律子「……あ、そうそう。普段のレッスンを十分こなしてたらちゃんと踊れるはずだから、出来てなかったらレッスン倍増ね♪」ニコォ

雪歩「ひっ!?」

真「…連帯責任?」

律子「当然♪」ニコォ


真美「はるるん! 絶対ミスっちゃダメだかんね!」クワッ

亜美「こんな所で転んでも何も面白くないかんね!?」グワッ

春香「私信用無いなあ!?」


律子「はーい、散った散った! さっさと位置につきなさい」

伊織「……それで? 何の曲をやるのよ?」


律子「ん? それはもちろん―――――」


――――――――――――――――――――


貴音「……おや。皆が舞台に上がって……『りはーさる』というものでしょうか?」

響「貴音」

響「…皆が自分たちに向けて、一曲踊ってくれるって。あと美希がアイドルのステージを知らないって言うからさ」

貴音「はて。美希はアイドルを目指して様々なオーディションを受けていた筈ですが……ステージを見たことがないと?」


ひびみき「「うっ」」


美希「(そ、そういや初めて会った時そんな話で通してたの……)」ヒソヒソ

美希「(響、なんとか誤魔化すの! ミキが喰種ってバレたらこの場の全員巻き添えにするの!)」ヒソヒソ

響「(巻き添えって何するつもりだよ!? …わかったぞ、ええと……)」ヒソヒソ


響「ほ、ほら、内申点とかそのために仕方なく……」


美希「(響はおバカなの?)」

響「(うるさい! 美希のためにやってるんだぞ!?)」


貴音「なんと……そのような心苦しい事情が……」


美希「(響のお友達? その……大丈夫なの?)」

響「(貴音をバカにするな! 大丈夫……だぞ! 多分!)」


貴音「しかし、本当はアイドルを好いていなかったのなら……」

貴音「尚更、春香達のステージを見るべきなのでしょうね」ニコ

美希「……」ムッ


美希「……どうせ、どーってことないの」フン

美希「『あのヒト』がすっぽかした約束なんて、ステージなんて……どうってことも……」


響(……あのヒト?)


貴音「それは観てから決める事ですよ、美希」

貴音「一年の苦難を共にした者たちが、絆の下に形作ったステージ……」


貴音「それは何よりも輝くものでしょうから……」



律子「……よし! 全員準備できたわね!」


律子「始めちゃって、春香!」

春香「はいっ!」


春香「響ちゃーん! 貴音さーん! 美希ー!」

春香「しっかり見ててね! 765プロ、私たちの一曲!」







春香「―――――『The world is all one !!』」







――――――――――――――――――――


今日はここまで。

このシーンを書こうとしたときにパッと頭に浮かんだのがざわわんでした。


――――――――――――――――――――


響(――すごかった)

響(――技術が、ってことじゃない。ダンスなら、自分なら簡単に追いつけそうなものだったし)


響(――自分にとっては、アイドルとしてこれ以上ないくらいに輝いていたってことでもない)

響(――いや…それも凄いことかもしれないけど、自分にはもっと目を奪われたことがあったんだ)



響(――みんなが一つになっていたんだ)



響(――人間も喰種も、まるで秘密なんてないかのように)

響(――みんなが手をとって、みんなが背を預けて、みんなが笑いあって……)



響(――これが765プロなんだ)

響(――これが一年かけて作り上げた、765プロの絆なんだって思わされたんだ)


貴音「……まこと、素晴らしきステージですね」

響「……うん」

美希「……あ……」



律子「ふふっ。これが今までの765プロの集大成よ」

律子「初めて『アイドル』を見た感想はどう、美希ちゃん?」


美希「……」



美希「…………キラキラしてるの」


美希「……ねえ、律子…さん」

律子「ん?」


美希「……ミキ、キラキラできる?」

美希「ミキもあんな風に……ステージでキラキラできるの?」


律子「…………」



クシャ



美希「わっ」


律子「『キラキラ』させるのがプロデューサーの仕事よ」ナデナデ

律子「こんなに可愛いんだから、春香達に負けないくらいすごいアイドルにしてやるわよ」



美希「律子……」

律子「『さん』をつけなさいって」


律子「響に、貴音も」クルッ

響「!」


律子「あんな風に輝きたいなら、あんた達は不安なんて抱えないで真っ直ぐに努力しなさい」

貴音「ええ。頼りにしています、律子殿」


律子「…ふふっ」ニッ

律子「任せなさい! この秋月律子プロデューサーが、あんた達すごいアイドルにしてやるわ!」


律子「あの人が作り上げちゃったものに負けないくらい、ね!」



――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響(――それから、自分達は会場の軽い下見を終わらせて)

響(――人間と喰種に分かれるよう、『それとなく』車を分けて事務所まで戻った)

響(――あと、ぴよ子が言うには『いつも分けてる訳じゃない』らしい)

響(――今回だけは美希が何か言いたそうだったから……ボロが出ないように配慮した、って言ってた)


響(――それで、当の美希は……)

響(――ずっと窓の外を見つめながら、とにかく呆けてた)

響(――時々『あの人が見せたかったのは……』って呟いてるのがハッキリ聞こえたけど)

響(――それ以上は、誰にも話しかけないで、ずっと空を見つめてた)


響(――そんな美希に、千早も、真も、伊織も、あずささんも、ぴよ子も……何も言わなかった)

響(――ただ、美希の見えないところで伊織は意地悪そうににやにやしていて)

響(――真は苦笑していて)

響(――あずささんとぴよ子はただ笑ってて)

響(――千早は何でもないように目を閉じていて)


響(――まるで『やっぱりこうなった』って思ってるみたいだった)



響(――もしかして、ここにいる皆……最初は美希と同じ表情をしてたのかな)


響(――そして)


響(――この瞬間から、美希は何かが明らかに変わった)

響(――次の日から、まるでどこか、はるか遠くを見ているような顔で、レッスンに打ち込むようになったんだ)

響(――人には相変わらずそっけない感じだったけど……ダンスや歌のレッスンだけはしっかり見るようになった)


響(――美希が変えたもの。美希に見えているものが何なのか、自分にはわかる。きっと皆も分かってる)

響(――こうなってしまうくらい……『あれ』が忘れられないんだ)



















響(――この日、ひとつ分かったことがある)

響(――きっと、エリーゼも『そう』だったんだと思う)



響(――自分が怖がっていた"喰種"は、生まれてからずっと戦い続けていた"喰種"は……)





響(――こうやって、アイドルの道を歩み始めるんだ)





響(――『ここ』から始まっていったんだ)



今日はここまで。

とりあえずミキミキ編は一区切りです。美希はあとでまだ出番あるけど、とりあえずこの辺でいったん話が変わります。


次はレストラン編、久々に話の流れがほぼ原作をなぞる形になると思います。


――――――――――――――――――――


~某洋館~


『―――お待たせしました』

『―――本日のディナーです!』


ワアアアアアアアアアアッ


「え……えっ?」



『―――今回の“美少女枠”は、なんとあの~~~プロの期待のホープ!』

『―――華麗なダンスを舞う脚からは、さぞジューシーな肉汁が流れることでしょう!』



「な……なに……これ……」


――――――――――


仮面の男「ほう。今回はダンス特化の娘ですか」

仮面の男2「YS嬢が手配する『食事』はいつも素晴らしいな!」

仮面の女「わーお! 今日の子もおいしそー! 英語でデリシャース! フランス語じゃボンジョルノー♪」

仮面の男3「……あの、FM嬢? それはイタリア語ですしそもそも意味も違う気が…」

仮面の女「あれ? なんだっけ? ボンジュール?」

仮面の男4「放っておけ。そのピエロ女はいつもそんな感じだ、まともに相手するだけ無駄だ」


『―――それでは、本日のスクラッパー君の登場です!』


「ひっ……」


覆面の大男「はぷっ……はぷぅ!」


「や、やだ、来ないで……!」

「やっ……」


「やだああああああああああああああ!!!」


――――――――――


YS「……どうですか、マダム? 今回の『食材』は?」

マダムA「いいわねえYS! あたくし、とても満足してましてよ?」

YS「では、今回も……」

マダムA「ええ。良い仕事を手配してあげますわ!」

マダムA「だから、これからも素敵な『美食』を……」


マダムA「よろしく頼みますわね、YS」


YS「……ええ」チラ


覆面の大男「おいしきゅなーれ! おいしきゅなーれ!」


バツン

バツンッ


「あっあっあっ……あああああああっ!」

「痛いっ! やだっ! 助けて!」

「助けてえっ!! やだ! 助けてえええっ!!!」



YS「……」フフッ




YS「…仰せの通りに、マダムA」

YS「これからも……ありがたくご用意させていただきます―――」





YS「―――『レストラン』の皆様のお口にかなう食材を」


――――――――――――――――――――


今日はここまで。

ガルウィングヘアーのタロちゃんください。


宗太=旧多=和修=半喰種ってわかったけど、
結局レストラン編で使ってた『PG』って名前は何の略だったんでしょうね。
Pはピエロかなーとは思ってたんだけど

一番有力なのが「ピエログール」
次点が「pigeon」で白鳩らしいよ


投下します。

>>141
なるほど、ピジョンの説もあったんですね!

旧多フェイスのピジョン……いやなんでもない


――――――――――――――――――――


~地下道~


響「―――やあッ!!」ビュッ


真「おっと!」パシッ

響「まだまだっ!」ギュオッ

真「もっと腰を入れて!」

響「らっ!」クラッ

真「惜しい!」キュッ


ペチーン


響「……とっと!」フラッ

響「あっ……」ペタン



真「……へへっ、やーりぃ! またボクの勝ち!」


響「……うがー! 全っ然勝てないぞ!」バタン

響「身のこなしじゃ、負けてないと思うのに……」ムー


真「そこは実戦経験の差だよ。技術だけならビックリするくらい成長してる。やっぱ響はセンスあるよ」

真「ひょっとしたら……響なら東京で一番強い"喰種"になれるんじゃない?」


響「えー……自分、ケンカしたくて訓練してるわけじゃないぞ」

真「わかってるよ。ボクたちはアイドル、痛いのや苦しいのは好きなことやってる時だけでいい」

真「ケンカや殺し合いなんてしないに越したことはないよね」アハハ



真「……うん。争っていいことなんて、何もないんだ」

響「……」


響「……あのさ、真。真のこと、ちょっとだけ聞いてもいい?」

真「ボク?」

響「うん。その……やっぱり、ひどい所で育ったのか?」

真「…あー……」


真「……うん。ひどかったと思うよ」

真「東京の中でも、特に治安の悪いところに産まれちゃってさ」

真「縄張り争いが絶えない場所だったからなー……子供とか女とか関係なしに、喰種も捜査官もボクのことを殺しに来てた」

真「『共喰い』だって良くあることだったからね。殺らなきゃ殺られるって言葉がピッタリの場所だった」


真「だから、襲ってくる喰種も人間も全員殺して生き延びなきゃいけなかった」

真「父さんと一緒に戦って殺して喰べてを繰り返して……」

真「プロデューサーから聞いたけど、出会ったときは『殺人マシーンの目をしてた』ってくらいひどい有様だったらしいよ?」


響「……」


真「たまに、同い年の女の子とすれ違うことがあったんだけどさ。フリフリの服を着て、かわいいぬいぐるみを抱いてて……時々すごく羨ましくなった」

真「人間に生まれなきゃ、あの服を着ることは許されない。喰種に生まれちゃったから、同じ女の子でもあんな恰好は出来ないんだ…って」

真「そんな惨めな気持ちで、ほとんど毎日殺し合いをしてたなあ……」


響「……じゃあ、どうやってアイドルになったんだ?」


真「…へへっ! それはもう、全部プロデューサーのおかげ!」

真「ある時プロデューサーが目の前に現れてさ。いつも通り殺そうとしたら、全っ然手も足も出なくて」

真「ああボクも終わりか、嫌な人生だったなって思ったら……アイドルになれって言われて」


真「あとは765プロに入ってお仕事させられて」

真「雪歩たちと出会って、カッコいい服ばっかり着せられて、たまにカワイイ衣装を着せてもらって」


真「いつの間にか、伊織に『マヌケ面』ってバカにされるくらい丸くなっちゃった」


響「…そっか……やっぱりすごかったんだな、あのプロデューサーは」

真「うん!」

真「ボクだけじゃなくて…765プロの喰種は、みんなプロデューサーに人生を変えられたんだよ」

真「まあ、小鳥さんだけは社長がきっかけらしいけどね」



響「……そっか……」

真「……」



真「……今更ボクのことを聞いたのってさ。美希のことが気になったから?」


響「!」

響「……うん。そうだぞ」


真「たぶん……『765プロのみんなも、今の美希みたいに荒れてたのかな。美希もこれから変わっていくのかな』って思ってる?」

響「…すごいな!? 丸々当たってるぞ!」

真「わかるよ! 自分でもビックリするくらい人生変えられちゃうんだもん!」

真「ホントはプロデューサーについていて欲しかったけど……ま、いなくなっちゃったのは仕方ないよね」


真「……今まで迷惑かけた分、恩をもらった分……ボク達が次につなげていかなくちゃ」



響「そうだな。自分も頑張るぞ!」

真「あはは、765プロに入ったばっかりの喰種は手がかかるよー?」

響「何自分一人に押し付けようとしてるんだー? 真も手伝うんだぞ!」

真「あっははははは! 分かってる分かってる! アイドルも後輩育成も一緒に頑張ろ!」

響「うん!やるぞー!」

真「おーっ!」


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響(――この時の自分は、765プロの"喰種"と関わることにすっかり慣れて)

響(――今、最高の仲間だって思ってる皆は、昔はものすごく荒れていたこと)

響(――裏を返せば、"喰種"はアイドルを始めれば、ころっと人間らしく変わってしまうんだってこと)

響(――"喰種"はそれだけ純粋な存在なんだって、そんな風に考えるようになっていた)


響(――ここまでは、間違っていないんだと思う)





響(――ただ自分は、ひとつ大きな勘違いをしてた)

響(――それは、『純粋だから』『"喰種"はみんないい奴』だと思い込んでいたこと)

響(――"喰種"が、人に恐れられる化け物だったことを忘れていたこと)



響(――765プロのみんなはいい"喰種"だ)

響(――でも……そこから酷い思い込みをしてしまっていたことに)



響(――自分はこれから、気付くことになる)


今日はここまで。

蛇足だったかなーとは思いましたが、せっかくなのでまこちんの過去にもちょっと触れさせてもらいました。

『もしアイドルが喰種だったら、過去はどんなものか』、真が一番考えやすかったです。


真は強いけど暴力が嫌いな可愛くなりたいだけの乙女だと思っています。

なんかこのシリーズのグールは原作に比べて共食いに抵抗が少ない気がする
原作の一般喰種は「共食いとかマジ引くわ……」ってかんじだけど育ちのよさそうな伊織やしぶりんも共食い的なこと言ってたし


投下します。

>>152
たしか絵理に会った帰りとPが喫茶店で話をしてた時あたりでしたかね?

言われてみれば確かに。原作じゃゲテモノ嗜好みたいな扱いされてましたっけ。
原作キャラの「普通な喰種の」感性なら、冗談でも共喰いを話題にしないものなんでしょうかね…その辺は読み込みが甘かったかもしれません。


ちょっと後付け臭いですが、
とりあえずあの辺りは脅しの色が強く
実際に喰えるかどうかは別問題……みたいなイメージでとらえておいてください。

僕自身がカニバリズム嗜好にそこまで抵抗がないため、原作と比べて作中の描写で人肉食や共食いに関する禁忌感が薄れてた節はあるでしょうが、
この先はともかく、平和な時の765プロや346プロでは共食いを好んでやりたがる子はいないんじゃないかなと思います。
「殺すぞ」くらいの気持ちで口に出すことはあっても、いざ「やれ」と言われると「いや無理無理無理」と拒絶するくらいの抵抗はあるかと。


でも人にとっての牛や豚と違って
喰種とその主食の人間って見た目は同じですし、喰種の共食いって人間同士のそれよりも抵抗が少なそうな気もします。
あんまり考えたことのなかった話ですが、考えてみると結構面白いですね。


――――――――――――――――――――


響(――『こと』が始まったのは…それから二日ほどたった日の、何回目かの宣伝ライブの時だった)

響(――その日のハコは、自分たち765プロだけじゃなく、他にもいくつかのプロダクションやフリーのアイドルが参加していて)

響(――空き時間やほかのアイドルが舞台に出ている時には、自分から挨拶に行ったり、たまたまの接触で話すようになったりで、他所のプロダクション同士の交流が結構起こっていた)


響(――もちろん、それは自分たちも同じだった)



響(――その日の自分は、空腹をすこし強く感じるようになっていて……)


――――――――――――――――――――


~楽屋・廊下~


響「ふう……」

伊織「お疲れ、響。今日のステージはだいぶマシな出来だったんじゃない?」

響「ん……そっか。ありがと伊織」

伊織「……」


やよい「響さん? どうかしたんですか?」

真美「妊娠?」

亜美「ジョジョ解体?」


伊織「それは処女懐た……亜美はどこでそんな言葉覚えたのよ。ただの疲れでしょ、あんた達は先行ってなさい」

「「「はーい」」」


パタパタパタ……


伊織「……空腹かしら?」

響「う、うん。…いや、お腹が減ったからボーっとしてたってほどのものじゃないんだけど……」サス

伊織「その調子だと、例の角砂糖頼りで碌に食事を摂ってないってところ?」

響「うっ……」

伊織「…図星ね」ハァ


伊織「気持ちの整理をつけたいのはわかるけど、限界迎えるまでにはちゃんと食べなさいよ」

伊織「拒絶し続けたらどうなるかくらい、もう知ってるんでしょ?」


響「ああ、それは分かってる。分かってるから……」

伊織「…ん。言っとくけど、また同じこと繰り返すようなら無理矢理口に突っ込むわよ?」

響「ああ……」


響(……)

響(――美希に襲われたあと、寝ている間に食事をさせられた時を最後に……)

響(――食事について自分はずっと、社長からもらった『角砂糖』でお腹を誤魔化し続けてる)


響(――社長は言ってた。「それはあくまで『空腹を抑える』だけ……食欲が全て満たされるわけではない」)

響(――「"喰種"が満足いく生活を送るためには、やはり一定の"食事"が不可欠なんだ」……って)


響(――だんだん、その時が近づいてる……)


響(――ここ最近は、エリーゼのこととか、765プロのこととかで頭がいっぱいで、ずっと考えないようになっていたけど……)

響(――自分も、人のことは言えないんだって)

響(――自分も、ちゃんと踏ん切りをつけなきゃいけない一人なんだ……って)


響(――いつかの悩みに、自分はまた支配されそうになってるんだ)


響「……」フゥ

響(とりあえず、帰ったら肉を一口食べてみよう……)

響(ずっと拒絶してたけど……もう我儘を言っていられる場合じゃない)


響(いい加減、腹決めないと―――)スック


ガッ


?「わっ!?」


ドテッ


??「……あれ?」


響「ん?」

響(今、だれかぶつかったのか?)


??「! 大丈夫ですか!? もしかして病気とか……」

響「えっ!? い、いや違うぞ! 自分がぶつかって転ばせちゃったみたいで……」

響「ゴメン! 大丈夫か!?」アタフタ

?「んー、だいじょぶだいじょぶ! ちょっと転んじゃっただけだしね~」サスサス


響「立てるか?」

?「おっ、サンキュー! キミもだいじょーぶ? ケガとかさせちゃってない?」

??「あ! 私、絆創膏持ってますよ! よかったら……」

響「いやいや…自分は大丈夫さー! ケガが無くてよかったぞ」


響(……ビックリした。あんまり考え事しながら動くもんじゃないな)

響(……ん?)


?「んー……」ジー

響「…?」

?「さっき出てたアイドルの子だよね? たしか、765プロの響ちゃん!」

響「! そうだぞ! 765プロの我那覇響!」


?「やっぱり~! ダンスめっちゃカッコ良かったよ~!」

??「ああっ! 本当だ! 今度765プロ単独ライブに出演するんですよね!」


響「その通りさー! 二人とも、よかったら見に来てほしいぞ!」

?「うんうん、行く行く~!」

??「私も見に行きたいです! 今からでもチケット、間に合いますか?」

響「大丈夫だぞ! っていうか、そのための宣伝だし……」


響「……そうだ! 見に来てくれるなら、自分が二人の分のチケットも頼んでおくぞ!」

?「え!? マジ!? いいの!?」

??「わあ! 是非お願いします!」

響「オッケー、任せるさー! キミ達の分も……あ」


響「そう言えば、名前を聞いてなかったぞ。次会うときに渡すから、二人の名前教えてよ!」


?「! メンゴメンゴ、まだ名前言ってなかったね~!」

??「あはは、私としたことが……!」






唯「ゆいは『大槻唯』、346プロのアイドルだよ! よろしくちゃーん♪」

夢子「『桜井夢子』です、フリーでアイドルやってます! 仲良くしてくださいね♪」





今日はここまで。

モバマスをよく知らない方や苦手な方には予告もなくて申し訳ないのですが、今回はモバマスアイドルもちょっとだけ出て喋ったり動いたりします。
このスレではそこまで大きい活躍はしないだろうと思うので、どうかご容赦ください。

唯ちゃんを書いたのはこれが初めてなので、何か口調に違和感があったら遠慮なく指摘していただけると嬉しいです。

単純に味も不味いらしい>喰種の肉
人間で例えるならサルミアッキ食ってるとかその辺りだろうか


>>164
原作の描写を使うなら
まさに「腐りかけの魚のハラワタ」なんでしょうね。基本「食べ物」としてカウントできるようなものじゃないみたいです。

期末があったので更新止めてました。
終わったので再開します!


~765プロ事務所~


小鳥「大槻唯ちゃんに桜井夢子ちゃん?」


響「そうだぞ! この間のミニライブで出会って仲良くなったんだ!」

小鳥「へえ、早速お友達が増えたのね! 2人とも喰種?」


響「ううん、夢子は"喰種"だけど唯は人間だぞ。夢子と2人のときは"喰種"の話もしてて……」

響「……もしかして、人間と関わるの不味かったか?」


小鳥「んー…ううん。大丈夫よ」

小鳥「もし人間だったら、響ちゃんがどこかでボロを出したりしてないかなー…って。ちょっと心配にはなったけど」クスッ


響「!? ひどいぞぴよ子! 食事のフリだって最近は上手くなって来たんだぞ!」

小鳥「ふふっ、ごめんなさいね響ちゃん。冗談だから怒らないで!」


小鳥「2人とはどんなお話をしてるの?」

響「話? んー…苦手なステップの教えあいとか、どんなコーヒーが美味しいかとか……」

響「……あー、唯のほうは飴の話ばっかりでたまに困る時があるぞ」

小鳥「うわー……。あ、でも響ちゃんならある程度はついていけるんじゃない?」

響「そりゃあ、この体になる前は自分も結構食べてたし。怪しまれることはないと思うさー」

小鳥「やっぱり人間の食事を経験してる子は強いわねー。こっちは話を合わせるのが大変で大変で……」

小鳥「知ってる? 会食やグルメリポートなんかで味のコメントをするために、わざわざ何度も何度も人間の食事を口にしては吐いて食べては吐いてを繰り返して不味さを事細かく分析できるように訓練してる子だっているのよ?」

響「うわっ…それは真似できないぞ。すごいなそれ……」

小鳥「人にご飯を作るために同じことをする子もいるんだから……ちょっと尊敬しちゃうわね」


小鳥「……そうだ。唯ちゃんや夢子ちゃんはどこの事務所なの?」

響「事務所? 夢子はフリーで活動してるって言ってたぞ」

小鳥「フリーかあ…まあ、"喰種"がアイドルをするなら、そっちの方が安全かもね。唯ちゃんは?」

響「唯は……あー、思い出した。どっかで聞いたような名前だったんだ」

小鳥「有名なところなのかしら?」

響「自分、そう言うのはあんまり気にしたことなかったんだぞ……えっと、たしか―――」



響「―――『346プロダクション』」



小鳥「……!」ピク


響「どっかで聞いたことがあったんだよなー…? えっと、確か伊織が……」

小鳥「響ちゃん」

響「去年の12月に……ん? どうしたんだ、ぴよ子?」



小鳥「関わるな、とは言わないわ。でも、唯ちゃんの前では本当に気をつけて」

小鳥「あの子たちは特に『気付きやすく』なってるかもしれないから」



響「……気付きやすくなってる? それってどういう事?」

小鳥「そうね…もっと早く話しておけばよかったわ」


小鳥「響ちゃん。今の346プロっていうのはね、簡単に言えば……」



小鳥「『隣で一緒に頑張ってた子が"喰種"だった経験』をしている人間の集まりなのよ」



響「!」

小鳥「だから"喰種"に会ったことのなかった春香ちゃんたちと比べて、『もしかしたらこの子は"喰種"かもしれない』って思いやすいの」

小鳥「私が『気を付けて』って言ったのはそう言うこと。人がわからない分765プロより厳しい振る舞いが必要になるから……本当に気を付けて」


響「わ……分かったぞ」


小鳥「あと……」


ガチャ


やよい「うっうー! おっはようございますー!」


小鳥「!」サッ


小鳥「おはようやよいちゃん! 今日は早いわね!」

やよい「はいっ! 今日はお休みですから、久しぶりにいーっぱい事務所のお掃除しようと思ったんですー!」

小鳥「ふふっ。やよいちゃんはもう立派なアイドルなんだから、そんなことしなくていいのに」

小鳥「でも、ありがとね。私も手伝うわよ?」スック

やよい「わあ! ありがとうございますー!」

やよい「響さん、お仕事頑張ってください! 帰ったら事務所がぴっかぴかになってますよー!」

響「え? う、うん! 楽しみにしてるぞ!」


小鳥「……」ソッ


小鳥「(……最後にこれだけ。夢子ちゃんの方も、人が分かるまであんまり信用しすぎない方がいいわ)」ボソッ

小鳥「(特に、こっちで身元が分かるようになるまでは『半喰種』ってことは絶対に喋らないで。いい?)」

響「(えっ?)」

小鳥「(約束して)」

響「(わ、わかったぞ……?)」


小鳥「……うん、よろしい。頑張ってきてね、響ちゃん!」

やよい「? いってらっしゃーい!」


――――――――――――――――――――

~楽屋~


ガタンッ


響(346プロ……346プロ……)ゴク

響(うわ、ここのコーヒーあんまり美味しくないぞ)

響(……あ、思い出した。伊織が話してたところだぞ)

響(たしか……)


伊織『……去年までなら『喰種の組織として』機能してるアイドル事務所も結構あったのよね』

伊織『それが12月の346のアレを皮切りに一斉摘発なんてやられるもんだから……』


響(その頃は自分、まだ東京にいなかったからなあ)

響(今からでもニュースとかで調べられるかな?)スッ


響「……」スッスッ


響「……あっ」



『天下の346プロ、化物の巣窟だった! 美城の新当主が挑んだ醜き風習との闘い!』



響(346プロ……これかな?)トン

響(ブログ記事っぽいけど……)


響(……あれ)



響(もう削除されてる……?)


響(これも、これも……目につくような記事は全部削除されて……)



夢子「何見てるんですか?」



響「ぬひゃあ!?」


響「あっえっと……あ、なんだ夢子か……」

夢子「お邪魔してます♪ …あと『なんだ』ってなんですか!」

響「ご、ゴメン……」


夢子「それで、響さんは何を見て……346プロ?」

響「あ、うん。よく知らないことだったから調べてたんだけど、それっぽいタイトルの記事は全部削除されてて……」

夢子「あれ? 響さん、去年は東京にいなかったんですか?」

響「う、うん。今年の初めに上京したばっかりだぞ」

夢子「あー……」


夢子「まあ…しょうがないですよね。喰種だってバレたとはいえ、みんなに愛されるアイドルが関わってた問題ですし」

夢子「実際、ファン同士の過激な争いで『こういう記事』はほとんど削除に追い込まれてるらしいですよ?」

夢子「不謹慎だ、傷口を掘り起こすな、もう触れないでくれ……ってね」


響「そうなんだ……」

響「……一体、346プロで何があったんだ?」


夢子「何って……『完塞』ですよ。あたし達にとってはよくある事でしょ?」

響「完塞?」

夢子「……? 知らないんですか? 響さん、"喰種"ですよね?」

響「…はっ!」


小鳥『―――こっちで身元が分かるようになるまでは『半喰種』ってことは絶対に喋らないで―――』


響「い、いや、知ってるぞ! 完塞、完塞だな! 大変だよなー!」

夢子「……」


夢子「……ですよね! そういえば響さん、これは知ってましたか!?」

響「こ、今度はなんだ?」

夢子「ふふん……今は完全に浄化されちゃった346プロですが! 昔は『隻眼の喰種』も在籍してたんですよ!」

響「隻眼……隻眼!?」

夢子「あたしも直接見たことは無いんですけどね! 人間と喰種両方の性質をもつ伝説の存在が346プロにいたんですよ! それも2人も!」

響「2人も!? 元々人間だった喰種がそんなにいるなんて……!」


夢子「え? 元人間?」

響「…ち、違うのか?」

夢子「何言ってんですか、違いますよ! 人間と喰種のハーフです! 混血!」

響「…ハーフ…? 人間と喰種の間に子供ができるのか!?」

夢子「確率は低いらしいですけどね。でも、めちゃくちゃ強いらしいですよ!」

響「……!」


響「な、なあ! その『隻眼の喰種』って普通の喰種とはどう違うんだ!? 346プロ以外にもいるのか!? その2人って今どこにいるんだ!?」グオッ

夢子「近い近い! 近いですって! いっぺんに聞かなくても教えますから!」

夢子「……いや、待てよ……」

夢子「……」ニヤ


夢子「……ねえ響さん。『隻眼の喰種』のこと、知りたいですか?」

響「う、うん! 教えてほしいぞ!」

夢子「そうですか……なら……」


夢子「今度、時間をとってお話しします! ですから……」



夢子「次のお休み、一緒にお出かけしませんか?」


今日はここまで。

JAILの古間さんとサンドイッチの話は個人的にかなり強烈でした。


でも完塞の使い方なんか違くね?


>>179
こっちの方がニュアンスが伝わりやすいかなー…と思って『完塞』にしました。
『完塞』って単語を使いたかっただけでもある。たしかに間違ってるかも。

投下します。


――――――――――――――――――――


「――はい……はい。早速次の食材を見つけたので、今度の晩餐会に出そうかと」

「柔らかそうな肉の持ち主で、香りもいいですから……気に入ってくれると思います」

「…あと、もう一人……ちょっと出そうかどうか迷ってる子がいまして」

「それが……―――――」

「―――――、――って感じなんですけど……アリですか?」


「! 分かりました! じゃあ、そいつも連れてきます!」

「すごく良い香りでしたから……きっとマダムのお口に合うかと」

「見たところ、こいつ単純ですし簡単に騙して連れてこれると思います」

「はい、はい……では、いつも通りオーディションの件、よろしくお願いします」

「……」ガチャ


「……さてと」



「あとはあいつらを皿に乗せるだけ……♪」


――――――――――――――――――――


~レッスンルーム~


夢子「……っ、……!」タンッ

響「ふっ……よっ……はいっ!」タタンッ


響(――夢子に『隻眼』について教えてもらう約束の日は……)

響(――なぜかダンスレッスンから始まった)


響(――これは夢子から言い出したことだった。『思いっきり汗を流した後のアイスコーヒーは美味しいんですよ!』って言って)

響(――あとは『私も響さんの素晴らしいダンスを出来るようになりたいです!』って……)


響「……へへ」ニマ

夢子「?」


響「……ふー。今日はこんなものかな?」

夢子「お疲れ様です響さん! コーヒー買ってきたので飲んでください!」スッ

響「お! ありがと夢子!」カチッ

夢子「どうですか!? レッスン後のアイスコーヒーの味は!」

響「んぐっ……ぷはー! やっぱりブロンディは美味しいぞ! 社長のおすすめってだけはあるな!」


夢子「社長? 765プロの社長さんって"喰種"だったんですか?」

響「えっ? ……あっ!? い、いや、人間だぞ! ただコーヒーが趣味ってだけで、自分たち"喰種"のことは何も知らないぞ!」ブンブン

夢子「へー……?」



響(忘れてたぞ……そう言えば伊織が……)


伊織『……一応言っとくと、うちは人間の高木社長が率先して喰種を引き込んでるかなりイレギュラーな事務所なの』

伊織『このことは捜査官側はもちろん、喰種側にも隠し通してるわ。あくまで私達が人間のフリして忍び込んでるって体をとってる』

伊織『大っぴらに他所のアイドルと関係を持てないのは、これも大きいのよね』


響(……って言ってたな)

響(これもバラさない方がいいんだよな……?)


響「……」チラ

夢子「?」


響(……ぴよ子が言ってたな)


小鳥『夢子ちゃんの方も、人が分かるまであんまり信用しすぎない方がいいわ』


響(って)


響(言いたいことは分かる)

響(ちょっと前の美希みたいに、悪意をもって自分たちに近づこうとしてる"喰種"だって存在するんだってことだ)


響(……でも、そういう美希だって……あの舞台を見てから変わった)


美希『……ミキ、キラキラできる?』

美希『ミキもあんな風に……ステージでキラキラできるの?』


響(そんなに悪いやつじゃないんじゃ……って思う)


夢子「どうしたんですか、響さん?」

響「うえっ!? い、いや、何でもないぞ!」



響(……そこまで気をつけなきゃいけないことかな?)


――――――――――――――――――――


~某喫茶店~


夢子「ここでお話ししましょう! ここはスタッフも"喰種"なので、秘密の話をするにはうってつけなんですよ♪」

夢子「なんでも、346プロの人たちもここを使ってたとか……」

響「へー……」キョロキョロ


客1(喰種)「『隻眼』の戦いっぷり、すごかったらしいな……」

客2(喰種)「特等が束になってやっとだったらしいぜ」


響(この人たちも"喰種"なのか……)


客2「さすがリトルバードと渡り合っただけはあ……」スンッ

客2「!?」ガタッ

客1「どうした?」

客2「い、いや……なんか今、人間の匂いがしたからよ……」

客1「マジで? ……服に匂いがついてたとかじゃね? 今入ってきた奴らは"喰種"だろ」スンスン

客2「そうか……?」ストン


夢子「……」

響(あれ? もしかして今の…自分のこと?)



夢子「もしもーし、響さーん?」チョンチョン

響「っ!? あ、ああ、何でもないぞ」


響「それより『隻眼』! 『隻眼の喰種』について教えてほしいぞ!」

夢子「あはは、そんなに喰いつかなくても教えてあげますって!」ケラケラ


夢子「その前に……」チリンチリン

夢子「アイスコーヒーはもう飲んだから、オリジナルブレンドをふたつお願いします」ピッ

「かしこまりました」


夢子「……さてと。どこから話したもんですかねー……」ウーン


夢子「とりあえず……響さんは、人間と"喰種"が交わったらどうなると思いますか?」

響「え? そりゃ、人間と"喰種"の子供が生まれるんじゃ……」



夢子「違うんですよ。死んじゃうんです」

響「……え」



夢子「そもそも懐妊する可能性自体低いらしいんですけどね」

夢子「母親が人間だと、"喰種"の子供に必要な栄養なんか摂れないから胎内で餓死しちゃう」

夢子「母親が"喰種"だと、妊娠しても体が赤ちゃんを栄養と勘違いして吸収しちゃうんですって」


響「そうなんだ……」


夢子「でも」

響「!」


夢子「極まれに、それでもこの世に生まれてくるやつがいるらしいんです。"喰種"と人間のハーフとして」


夢子「たしか、『雑種強勢』って言うんでしたっけ? 響さんは知ってますか?」

響「あれだろ? 虎とライオンを掛け合わせたライガーみたいに両方よりも優れた形質を持った雑種になるっていう……」

夢子「そう! それです!」


夢子「ハーフの"喰種"は純粋な"喰種"よりもずっと優れている」

夢子「そして……」



夢子「そいつの赫眼は、『片側だけに』発現するらしいですよ」ギョロリ


響「片側だけ……だから『隻眼』って呼ばれるのか」

響(自分と同じだ……)


響「……その『隻眼』ってさ、今はどこにいるんだ?」

夢子「そこまでは私も知らないんです」

夢子「……あっ」


響「! 何か知ってるのか?」

夢子「知りたいんですか?」

響「う、うん!」

響(自分と同じ『隻眼』……会って話がしたいぞ!)


夢子「そうですか……」ニヤ



夢子「……なら、とっておきの場所があるんです!」


夢子「…ところで響さん。お腹すいてませんか?」

響「! い、いや、自分は……」クウウ

響「……!!」サアア


響(腹が鳴った……)


響(やばい、本当に何か食べないと……)


響「あ……」


夢子「……響さん、もしかしてあまり食べてない……?」

響「えっいや! じ、自分は、その……!」アタフタ

響(やばいやばいやばい! こんなところから自分が『隻眼』ってバレるかも……)

夢子「……」


夢子「あっ」


夢子「もしかして響さん、『食事が苦手な』喰種なんですか?」


響「……えっ?」

夢子「やっぱり! たまにいるんですよ、響さんみたいに人間を食べるのに抵抗があるヒト!」

夢子「安心してください! うちのシェフに頼めば、響さんみたいな方でも食べられるようなメニューを作ってもらえますから!」

響「そうなの!?」

夢子「はい!」


響(良かった……別に怪しまれることじゃなかったんだな……)

響(それに……)

響(自分みたいなのでも食べられるメニュー? それってまさか、ヒトを食べなくても……)

響(……いや、そんな都合のいいモノはないって、『この身体』になった時にわかってるじゃないか)


響(……それでも。"喰種"として生きていく以上、自分でも抵抗なく食べられるっていうのなら……)

響(……)


響「……なあ、夢子」

夢子「何ですか?」

響「そういえば夢子のいう場所ってさ、食事ができる場所なのか?」

夢子「…ああ! そうですよ。会員制の、レストランと情報交換を兼ねてる場所で」

夢子「私たちもそのまんま『レストラン』って呼んでるんです」


響「レストラン……」

夢子「響さんも来ませんか? きっと気に入りますよ!」

響「……うん」



響(自分はまだ、ろくに食事ができない)

響(だから、もし少しでも抵抗なく食事ができるメニューがあるのなら……自分はそれを知りたい)

響(それに……)


響(最後に食事をしたとき……貴音を襲いそうになって、自分は人間でも"喰種"でもないって、絶望して泣いてたとき)

響(社長がこう言ったんだ)



高木『キミはふたつの世界に居場所を持てる、唯一人の存在なんだよ』



響(それは多分、346プロの『隻眼』も同じ)

響(もしレストランに行って、自分以外の『隻眼』に会うことができたなら……)

響(話し合うことができたなら……)

響(そこからぐっと、人間と"喰種"の距離を縮められるかもしれないんだ)


響(なら……)



響「行こう」



響(―――行くしかない!)


一旦ここまで。

雑種強勢で生まれた子供って大体生殖能力ないみたいですね。
じゃあエトしゃんも子供産めないんでしょうか

シマムラとかいうクインケが出てる段階でもう絶望
なまじ感情移入しやすいアイマスキャラだときっついわー

なお、最近の原作で死ぬのは名もなきモブ捜査官とモブグールが大半


――――――――――――――――――――


~夕方~


響(――夢子はその後、何処かに電話してから)

響(――いったん自宅に帰ったらしく、綺麗な赤いドレスに着替えて待ち合わせ場所に戻ってきた)

響(――その後、ちょっとした話をしながら道を歩いて行って……)



響「ここが……」

夢子「はい! ここが会員制の"喰種"用レストランです!」

夢子「人間用のレストランにカモフラージュしてるので、人間の客もいるんですけど……」

夢子「会員になってる"喰種"だけ、奥の秘密スペースに行けるようになってるんですよ♪」

響「へー……」


夢子「……あ、そうそう。響さんはドレス持ってますか?」

響「えっ!? 私服じゃダメなのか!?」

夢子「すみません、言い忘れてて……」

響「そんなレストランがあるの!?」

夢子(あれ? こいつドレスコードを知らない?)


夢子(…って言うか着替えてきた時点で気付きなさいよ……まあ言わなかったあたしもあたしだけど)


夢子「そ、そうなんですよ~! でも安心してください! 響さんの分のドレスも頼んでありますから!」

夢子「ちょっと待っててくださいね! スタッフに響さんのこと、伝えてきますから」タッ


「お待ちしておりました」

「どうも。あいつが例のー……」

「……なるほど」


「かしこまりました。ご案内致しますので、どうぞこちらへ」

夢子「それじゃあ響さん、また後で会いましょう!」

響「うん!」


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


ザアアアアアアアアアア


響「……」

響(……あれ? なんで自分、レストランでシャワーなんか浴びてるんだ?)


――――――――――


『少し汗をかかれていらっしゃるようですので』

『こちらのシャワールームをお使いください』


――――――――――


響(……レッスンのあと、一応シャワー浴びたんだけどな)

響(ドレスを着る必要があるレストランって、みんなこうなのか……?)


ガチャ


響「!?」

響「うぎゃあっ!? だ、誰だ!?」


「あっれー? ゆいの他にシャワー浴びてる人いるんだ」

「……って……」





唯「響ちゃん?」

響「唯!?」


響(嘘!? ここって"喰種"専用のレストランじゃ……!?)


唯「もしかして、響ちゃんも夢子ちゃんに誘われたん?」

響「…? 唯もなのか?」


唯「そーそー! ゆいもねー、なんか美味しいレストラン知ってるって言うから来たんだ~!」

唯「そっか、響ちゃんも来てたんだ!」


響「ええ……?」



響(……いや、そういえば……カモフラージュのために人間の客もいるんだっけ)

響(じゃあ、唯はそっちに誘われたってことか)

響(……別々の場所で食事するのか? まさか、同じテーブルでやるわけじゃないよな……?)


唯「……ん~、響ちゃんってい・が・い・と~?」


響「ん?」


ダキッ


唯「小っちゃいわりにイイ体してんじゃーん! うりうり~!」ワシャワシャ

響「うひゃあっ!? な、な、な、何するんだ唯ー!」

唯「照れんな照れんな~! せっかくの裸の付き合いなんだからー、洗いっこするしかないじゃ~ん♪」

響「うぎゃあああああああああ!?」


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


「お客様にはこちらのドレスがよろしいかと」スッ

唯「おっ、お姉ちゃんいい趣味してんじゃーん!」ニコニコ

「そちらのお客様には……あの、どうかされましたか?」

響「だ……大丈夫だぞ……」ゲッソリ


響(し、死ぬかと思った……)

響(セクハラされたこともそうだけど……なにより、唯は人間だから……)

響(洗われてる間ずっと、若い女の子の、ジューシーな匂いが……!)ジュルリ


響「……っ」ゴシゴシ



響(早く何か食べないと……!)


今日はここまで。

>>196
無印前半では結構キャラの立った人物も死んでたんですけどね。
特にヤモリや真戸さんなんかは死に大きな意義を持てたキャラだったと思います。


――――――――――――――――――――


「あちらの部屋でお待ちください」

「荷物はすべてこちらで預からせて頂きます」


響「分かったぞ」

唯「よろよろー♪」

響(結構待たされるみたいだな……)


ガチャ


響「!」



男「あ……どうもー」

デブ「……」



唯「あれ? ゆい達以外にもお客さんいる感じ?」

響「みたいだな……?」


響「……」スン

響(この匂い……2人とも人間か?)

響(ここまで自分以外、全員人間……?)


男「いやー、僕ら二人で待たされてるから心細くて…」

男「翔英社の『トーキョーグルメ』って雑誌で編集やってます、小鉢と申します」


響「は、はいさい」

唯「こんちゃーすコバっちゃん♪ 大槻唯だよ!」

響「あっ、響! 我那覇響だぞ!」


男→小鉢「唯ちゃんに響ちゃん……あれ? もしかして346プロの唯ちゃんと765プロの響ちゃん!?」

唯「お! コバっちゃん、ゆい達のこと知ってんだ~! そーだよ、ゆい達アイドルでーす!」ガッシ

響「! 自分のことも知ってるの!?」


小鉢「そりゃもう! 期待の765プロの新人さんでしょ?」

小鉢「可愛い子には是非ともウチの雑誌ともタイアップしてほしいからね! こーゆーのは細かくチェックしてるんだ」


唯「えー、なになに~? ゆい達狙われてんのー!?」

小鉢「そりゃもう! カワイイ子が美味そうにメシ食ってる絵はそれだけでいいもんだ!」

小鉢「だから折角知り合ったんだし、よかったらウチの雑誌とコラボして美味しいもん食べに行かない?」

唯「んー…ゆいはいいよ~♪ コバっちゃん面白だし!」

小鉢「やったね! 響ちゃんは?」

響「うぇっ!? え、えっと……考えておくぞ……」

小鉢「そっかー。まあ、名刺に電話番号書いてるからさ、いけるって時にはいつでも電話ちょうだいよ!」

響「う、うん」


響(自分じゃ食べられないしな……帰ったら貴音にでも話してみるか……)


小鉢「いやー、ほんとありがとね! 良かったらこの店から食レポデビューしてみない? おっちゃんが奢ったげるからさ!」

唯「おっ! いーじゃんいーじゃん♪ コバっちゃん太っ腹~♪」

小鉢「いやいや……唯ちゃんとこ、今人気を取り戻すの大変なんでしょ? コバっちゃんで良かったらいくらでも協力するよー!」

唯「……まーねー」


響「?」


小鉢「しっかしまー、確か2人とも女子高生だよね?」

小鉢「学生なのにすごいお店知ってるねー。あちらの方もお若いのに」チラ

デブ「……」


小鉢「僕なんか知り合いの情報通の紹介で連れてきてもらって、初めてここに料理店があるって知ったのに」

小鉢「東京のうまい店結構知ってるけど、こんなところに店があるなんてね」

響「あ、自分もそうなんだぞ」

唯「ゆいも友達に教えてもらったよ」

小鉢「あら、そうなの?」


小鉢「…にしても御手洗さん、こんなに待たすなら一言あっても良かったのに…今日中にもう一軒回りたかったんだけどなー」

響「? もしかして、小鉢さんも一緒に来た人と別々に入ったのか?」

小鉢「ああ…うん。入り口でスーツが要るから別室で準備しろって、ここに連れてこられたけど?」

響「……!」


響(自分と同じだ……)

響(って言うか……やっぱりこの人、普通の人間だよな……?)

響(カモフラージュとはいえ、"喰種"の店にこんなに来るものなのか……?)



小鉢「それにしても、メシ食いに来てシャワー浴びたのは初めてだよ」


響「そうなの!?」

唯「マジで!?」


小鉢「…へ?」


ガチャ


仮面のメイド「皆様、食前のコーヒーをお持ちしました」ガラガラ

仮面のメイド「お待ちの間お召し上がりください」


響(結構待たされるな……)スッ

響(……あれ? このコーヒー、なんか……)クンクン


小鉢「このクッキー、何かパサパサで味薄いなー。でも逆にセレブ感あるかも」

唯「えー? ゆいセレブ感より甘いのがいいよ~。コーヒーも砂糖ついてないし……」

唯「……あっ! そうだそうだ!」ゴソゴソ


唯「じゃーん! 実はアメちゃん隠し持ってたんだー♪ これで苦いコーヒーもおいしく……」



メイド「私物の持ち込みはご遠慮ください」パシッ

唯「」



小鉢「アハハ、レストランに飲食物の持ち込みはタブーだよー」ズズズ


響(2人とも楽しそうだな)クスッ


メイド「……」ガラガラ

響「……」


響(……今のメイドの人、仮面つけてたな)

響(着替えた後の夢子もオリジナルの仮面を被ってた)

響(そう言えば伊織が言ってたな。"喰種"はみんな、正体を隠すためのマスクを持ってるって)



響(結局……エリーゼに自分のマスク、作ってもらえなかったな……)


――――――――――――――――――――



「皆様、お待たせしました」



「どうぞこちらへ……」



――――――――――――――――――――


今日はここまで。

使い捨てだけど、個人的には小鉢さん結構好きなキャラです。

最期に美少女2人とお喋り出来てよかったね。


――――――――――――――――――――



響「……どういうことだ」





響(――桜井夢子)

響(――宣伝ライブの場所のひとつで、唯と一緒に知り合って)

響(――そして、仲良くなった女の子)


響(――ぴよ子に気をつけてって言われたから、そりゃ少しは警戒してたけど)

響(――でも)


響(――ここまで歩いてくる時に、あいつは言ってたんだ)


――――――――――――――――――――


夢子『…そう言えば響さん。なんで「隻眼の喰種」に会いたいんですか?』


響『えっ?』

響(なんて言おう……とりあえず、自分も隻眼だってことだけは伏せて……)

響『……隻眼の喰種と話がしたいから、だぞ』


夢子「なんの話をするんですか?」

響『その…さ。「隻眼の喰種」って、つまり人間と"喰種"……どっちでもあるんだろ?』

夢子「そう……ですね?」


響『そいつなら、その……人間と"喰種"の両方の気持ちが分かるから』

響『そいつと協力することができたら、人間と"喰種"が歩み寄れるんじゃないか』

響『いい"喰種"が、安心してアイドルをやっていけるようになるんじゃないか……って』


響『人間でも"喰種"でも……』



響『きらめくステージに憧れるのは同じだってわかったから』



夢子『……』


夢子『……優しいですね、響さんは』

響『え? そ、そう……?』

夢子『はい♪』


夢子『ステージに憧れる気持ち、すっごくわかります』

夢子『あたしが憧れるのは、正確にはステージじゃなくて「ある音楽番組」に出ることなんですけど…』

夢子『……でも、気持ちは同じなんだって思います』



夢子『"喰種"に生まれたからって、憧れた夢をあきらめたくない』

夢子『せっかく生まれたんだから、あがいてでも夢をつかみ取りたい』

夢子『人間だから、"喰種"だからって理由であたしの未来を決められたくない』



夢子『……どんな手を使ってでも……』ボソ


響『? 最後のはどういう……』

夢子『んっ! ゴホンゴホンッ!!』

夢子『えー! 気にしないでください! 言葉のあやです! あや!!』

響『そっか……』


響『……へへっ』



響『自分たち、似た者同士だなっ!』



――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


響(――夢を語った時の夢子の姿と同じものを、ずっと前から自分は知ってる)

響(――それは、アイドルになってステージに立ちたいって願った自分の姿)

響(――分かるんだ。すごく、憧れたから)

響(――「ああなりたい」って、強く思ったから)


響(――だから、夢子はいい奴だって……)



響(――そう信じることにしたのに――――――――――)






『お待たせいたしました』










『―――"本日のディナー"の4人です』










響(――これ、どういうことだよ)


一旦ここまで。

もうお察しかと思いますが、月山ポジは消滅しました。
あのキャラを再現できるアイマスキャラが本当に思い浮かばなかった。
それくらい月山は個性や役割が尖りすぎてると思うのです……


そういや師匠を月山ポジにしようと考えたことありましたわ。

月山の美食を追及するゆえの残虐さまでは表せないと思って断念したけど、無印終盤の「行かないでくれまいか」のシーンはすごく映えると思ったんだ


投下します。


『――左の男は、グルメ雑誌の編集者』

『忙しい合間にもジム通いを欠かさず…健康的に締まった体は噛み応えがありそうです』

『よもや自らが"晩餐"の品目に並ぶとは、夢にも思わなかったことでしょう』


小鉢「な、何でそれを……」


『仲介はTR様です』


TR「……」ペコリ


『続きまして、向かって右側は――』

『先ほどとは対照的にデップリと肥えたメス肉です』

『シャワーを拒否したために表面に余分な油脂が付着してございますが、こちらは後ほど丸洗いで取り除かせていただきますのでご安心ください』

『仲介はFM様』


FM「ワー! どもども、ぼんじゅ~る♪」


デブ「なっ……」


FM「ボンジョルノー亜美ちゃーん」

デブ「む、ムサシ!?」

FM「そーだよ、ムサシだよー? 巌流ナントカで大活躍した金髪美少女剣士佐々木武蔵だよー? 偽名だけどー」

デブ「あんたッ……いい男紹介するって言ったじゃない!? そのためのディナーって聞いたのに!」

FM「んー、騙してゴメーン♪ 謝るからケーサツ要らないよねー? ふっふー!」

デブ「ッ……!」


デブ「だ……大体前から怪しいって思ってたのよ!!」

FM「へー」

デブ「全然モノ食べないしつじつまの合わない嘘が多いしッ!」

FM「ほー」


デブ「そもそもアンタどう見ても日本人じゃないしどう考えても偽名だし!」

FM「ふー」

デブ「アンタなんてっ……」

デブ「アンタが化け物だなんてとっくにバ」FM「はー!」デブ「レてたんだよ馬ぁぁ鹿!」

デブ「くたばれクソア」FM「マー!」デブ「ァァァ!!」


デブ「あーーーっ!!」

デブ「ああああっ!!」


デブ「……」


デブ「……こんな時まで茶化さないでよ……惨めになるじゃない……」



観客「「「……」」」プッ


ワハハハハハハハハハハ


「いいぞー!」

「面白いブタだなぁ!」

「人生最期で最大の絶望をふざけ倒される豚女……実にいい余興だなFM嬢!!」


アッハッハッハッハ


FM「ん、楽しかったー? みんなありがとー! メルシー♪ どうでもいいけどメルシーって美味しそうだよねー!」

FM「――えー、亜美ちゃんがちょっと可哀想なので話を進めるね!」

FM「亜美ちゃんにはこの日のためにバンバン食べさせて、まるっと美味しそうにコーディネートしたよ!」

FM「みんな、どーぞトロトロの脂を味わってねー」


デブ「ううううっ……」

小鉢「ひどい……」

響「……」

唯「……え? あの子って、えっ?」パチクリ


『――さて、ここまで前菜を紹介させていただきました』

『いよいよ! 本日のメインディッシュを紹介させていただきます!』

『……あちらの黄金色の髪をした少女をご覧ください!』


唯「…っ!」ハッ

唯「今の……ゆいのこと?」


「ほう…」

「あれが今宵の『美少女枠』か。今日は2人いるようだが、もう一人の黒髪の子はなんだ?」

「さあ……他にも連れてきた方がいらっしゃるとか?」

「あの子もなかなか良いルックスだな。金髪の娘と甲乙つけがたい」

「しかし……軽薄そうな雰囲気は苦手だが、健康的で良い肉付きだ。胸や尻が舌の上でとろけるくらい柔らかそうだな」

「毎度毎度、レストランに出されるのが惜しいくらいだ! あれなら私が飼いビトとして十分に愛でてやるのに!」

「…私、あの子知ってるわ! まだ駆け出しの子だけど、あの子のステージを見たことがあるの!」

「何? と言うことは、今回もアイドルの娘か?」

「なるほど……さすがはBD嬢。今回も柔らかくて食べごろの芽を摘んできた、と言うわけか……」


FM「……ありゃ?」


『仲介は皆さんご存知! BD嬢です!!』


ワアアアアアアアアッ


「いいぞBD-!」

「素敵な女の子じゃない!」

「毎回いい仕事をしてくれるなBD!」


BD「……」スッ


唯「はっ……!?」

響「あれは……」


BD(夢子)「紳士淑女の皆様! 喜んでいただけて何よりです!」

夢子「今回メインディッシュとして選ばせていただいたのは……あの346プロの期待の星、大槻唯!」

夢子「まだまだ未熟な彼女ですが、その恵まれたスタイルは皆様の食欲をそそると考え連れて参りました」

夢子「もう少し見つけるのが遅ければ、きっと大きな花を咲かせこの晩餐の場にもてなす事が難しくなっていたでしょう」

夢子「私自身、この幸運と、この仕事を全幅の信頼とともにわたくしに任せてくれた皆様に感謝し、最高のディナーを提供させていただきます!」


唯「ディナー……え? ……あたしが?」


響「夢子……」

響「なんで……」


響「……なんでッ!!」


響「―――夢子ォ!!」

夢子「!」

『……おや? そういえば、本日はもう一人メインディッシュがいらっしゃるのだとか……』


響「うるさいっ!」

響「……夢子、これはどういうことだ!? なんで自分たちをこんなところに連れてきた!?」

夢子「……」

響「自分、信じてたんだぞ! 夢子はいい奴だって! "喰種"でも夢に向かって頑張ってるすごい奴だって!」

響「そう思ったから! 自分、夢子はそういう奴だって信じてついてきたのに!」

響「どうして自分たちを騙したんだッ!?」


夢子「……はー……」



夢子「ほんっっっとバカね、あんた」


響「夢子……?」

夢子「あんなの全部、演技よ、え・ん・ぎ!!」

夢子「なに? 少しレッスンして遊びに行ったくらいで親友になったとでも思ってた?」

夢子「その程度の付き合いで、本心をしゃべるって思ってたのアンタ?」

響「夢子……」


響「……全部、演技なのか?」

夢子「はっ。こんなのも見抜けないなんて、脳味噌だけは喰えたもんじゃなさそうね」


夢子「見抜けなかったアンタのアタマが悪いのよ。バーーーーーーーーーーカ」


響「……夢子……」ドサッ

「おやおや…」

「本当に信じ切っていたみたいですわね。お可哀想に」

「心なしか、BD嬢を"喰種"だと知っていたかのように聞こえたが……」

FM「あー……」チラッ

FM「…えっと、ドンマイ?」


夢子「……さてと」フゥ


夢子「皆様、お見苦しい所をお見せしました」

夢子「皆様が疑問に思ってらっしゃる通り……いつもわたくしが連れてくる食材は一人だけです」

夢子「ですが今回は! 少々興味深い匂いを、この馬鹿な娘から感じたのです!」

夢子「聞いて驚かないでくださいね? この娘、我那覇響は変わった食肉……」


夢子「なんと"喰種"なんです!!」


ザワッ


「"喰種"?」

「あたくし共喰いはちょっと……」

「BD嬢の持参なさるものは常に素晴らしいが……」

「"喰種"の肉はちょっと……」

「野蛮よ……」

「やはり、所詮はマダムAの腰巾着……」

「品のない野良猫女ということか……」


デブ「えっ…?」

小鉢「き…君…?」

唯「響ちゃんが…"喰種"?」


響「あ……」サアッ


夢子(野良猫女、ね……)

夢子(今野良猫だの腰巾着だの言った2人、覚えてなさいよ)


夢子「コホン。…紳士淑女の皆様、戸惑われるのも無理はございません」

夢子「"喰種"の肉など、喰うに値しない粗雑な味わい……」

夢子「舌の肥えた皆様であれば、既にご承知のことと思います」


夢子「ですが、私は彼女の『匂い』に注目しました!」

夢子「どうぞ皆様、この香りをご堪能ください! これは我那覇響の匂いを十分に吸ったスポーツタオルでございます!」スッ


バッ


「…うん? なんだ?」

「旨そうな……」

「複雑な香り……」

「いや、これは……!」

FM「…ふぅーん……?」クンクン


夢子「そう!」


夢子「彼女は"喰種"の身でありながら、人の匂いを色濃く醸しています」


夢子「興味が湧きませんか? 人の匂いのする"喰種"がどんな味なのか!」


「おおっ」

「素晴らしいっ!」

「さすがBD嬢だ!」

「常に我々の求める究極の美食を提供してくださる!」

FM「……いえーい! DBちゃんサイコー!」


夢子「喜んでいただけて何よりです!」


夢子「――嗅覚と味覚に新しい刺激を! これぞ正に未知の味!」


夢子「本日はしっかりダンスで汗を流させ、コーヒーも含ませました」

夢子「肉はほぐれ、香り高い味わいを我々に提供してくれることでしょう」


夢子「さあ」





夢子「究極の美食を楽しみましょう!」





「「「オオオオオオオオオオッ!!!」」」



響「あ……」ドサッ


響(桜井、夢子……)

響(全部罠だったんだ……)


響(ミニステージで話しかけてきたのも…)

響(レッスンや遊びに誘ってくれたのも…)


響(夢を語ってくれた時だって…全部、罠……)



響(……いい奴だって、思ってたのに……!)


『さて、盛り上がって参りましたところで! 本日の「スクラッパー」の登場です!』

『提供はマダムA!』


FM「あ、今日はAさんなんだ」

FM「AさんAさん、今日はどのスクラッパー連れてきたの?」


マダムA「『マダム』をつけなさい! もう!」

マダムA「…そうね、今日はお気に入りのうちのお気に入り……」



マダムA「タロちゃんよ♪」





ズシン


ズシン


ズシン ズシン



小鉢「大きな扉が開いて……誰か入ってくる?」

デブ「なによ、あのデカいの……」

唯「な、何か持ってるよ! あれ……ノコギリ?」

響「……?」



響(……自分たち……)

響(……ここで死ぬのか?)



「…………」ズン






タロちゃん「よよしく」



タロちゃん「おねないします」





今日はここまで。

FM嬢の余興について、ちょっとやり過ぎた気もします。不快な気分にさせたらゴメンね。


――――――――――――――――――――


小鉢「はは……。これ…ハプニングレストランだ!」

小鉢「ここまで大規模なのには驚いたけど…多分、お客さんに協力してもらってやってるんだよ!」


ガッ


小鉢「え?」


タロちゃん「ギコギコ~ギコギコの歌~」

小鉢「あっ嘘っ痛い痛い痛い痛い」

小鉢「痛いいた……わーっ! わああああああああ!!!」


小鉢「ぎゃめろおおおおおおぉおおあおお!!」

小鉢「ううううううぢゅああああブ」ブヂュ


小鉢「」



『――早くも一体、解体が終わりました』

『回収スタッフが戻り次第、オードブルを皆様にお取り分け致します』


タロちゃん「……つぎ~…めいんでぃっしゅ……」

タロちゃん「こっち」


デブ「は!?」



タロちゃん「まって~、まてまて~」

デブ「く、来んなっ!」ダッ

タロちゃん「にげちゃだめ~」

デブ「なっ……なんで、あたしがっ……」フラッ


ズサッ


デブ「は……?」


タロちゃん「いもいもむしむし」ノシノシ

タロちゃん「まるまる、まるまる」ガシ


デブ「ちょ、やめ……嫌……」ズル



タロちゃん「まるやーき」バッ



ジュウウウウウウウウウウ



デブ「ん゛――――ッ!!」

デブ「づううううううう」

デブ「ぎいいぃいいぃぃいいい」

デブ「が……」


デブ「」


響(今……あいつの動きが急に鈍ったような……?)


『――えー、どうやら女の方、準備した毒が効いた模様です』

『後ほど胃は洗浄致しますので、ご安心ください』


響(毒!?)

響「…あっ」

響(変な匂いがしたと思ったら……まさかあの時のコーヒー!?)

響(じゃあ、あいつだけじゃなく……!!)バッ


唯「あ、あれ……?」ゼエゼエ

唯「ゆいの身体、急に、しんどく……」ゼエゼエ



響「唯っ!!」


「あーあ、あのスクラッパー手順をわかっちゃいねえ」

「シャワー浴びてないんだから先に身体洗わせろよ」

「もういい! そんな豚より俺は美少女を喰いてえ!」

「早く次やれーーー!!」


タロちゃん「あう」

タロちゃん「つぎ?」

タロちゃん「う~…」ジイイ


唯「うっ……ごほっ……」←めいんでぃっしゅ

響「ッ……」←めいんでぃっしゅ


タロちゃん「……」

タロちゃん「…どっち?」


「俺は金髪がいい!」

「俺は黒髪の子が喰いたい!!」

「どっちが先でもいいから早くしろー!」

「早くそいつらの内臓をぶちまけろー!!」


FM「……んー」ノソ

マダムA「あら? FM、どこに行くのかしら?」

FM「ちょっとトワレ~♪」





FM「あ、もしもし? ムサシちゃんだよー。剣握ったことないけど」

FM「思ってたよりも早く『あれ』になっちゃったみたい。うまくいかないねー」

FM「今外? すぐ近く? んー、オッケー♪」

FM「じゃあ……」


FM「……ん……?」



FM「――ワオ☟」


一旦ここまで。

Paアイドルって美味しそうな子多いよね。


――――――――――――――――――――


響(自分、1人っ……!)

響(動けるのは自分しかいない!)ザッ


響「――こっちだ大男!! 狙うなら先に自分を狙えええっ!!」バッ


タロちゃん「あう」クルリ


「ほう、庇ったか」

「確かあの娘たち、両方ともBD嬢のセレクトだったな」

「あの状況でさえ友達を庇うか……美しいじゃないか」

「どこまで続くか見物だな」


唯「響、ちゃん……」ガクガク


響「大丈夫だ唯! 自分が、自分が守るから!」


響(……ああもう! 夢子が裏切ったことは後だ後!)

響(こいつを倒すことを第一に考える! 夢子のことは頭から消すぞ!!)


響「ハー…ハー…」


響(でも……動けるのは自分ひとり……)

響(スクラッパーを倒したところで…残りの"喰種"がみんな襲ってきたら……)


タロちゃん「」ブンッ


響「ッ!!」サッ


ドゴッ


響(……考えてるヒマなんてない! 自分がやらなきゃ唯まで死ぬ!!)

響(出来る出来ないの話じゃないんだ! 切り抜けなきゃいけないんだ!!)


ゲシッ


響「どうだ……?」

タロちゃん「しびび、びび」フッ

ドゴッ

響「くっ!!」ザッ


響(蹴ってもまるで効果がない……肉厚すぎて自分の力じゃ……)

響(どうすればいい……?)


響(……落ち着け……)


真『技術だけならビックリするくらい成長してる。やっぱ響はセンスあるよ』


響(自分が見た中で一番強いのは真だ)

響(その真が言ったんだ。自分は戦闘センスがあるって)


響(――信じろ。自分はやれる。こいつを倒せる)


響「……そうだぞ」

響「自分、完璧だからな」


響(久しぶりに言ったな、これ)フッ


響「……」スッ


マダムA「タロちゃーん! 早くママをおなか一杯にしてー!」

マダムA「上手に出来たらご褒美あげるからーっ!!」


タロちゃん「ま」

タロちゃん「ままーーーーーっ!!」ダッ


響「……」キッ


タロちゃん「まっまーーーーーー!!」ゴオッ


響「……フッ」スゥ


ガシッ


響(ここだ……)

響(……ごめんっ!!)ヒュッ


ボキリ


「「「ーーーーーーーーーーッ!!?」」」


「今あの女何やった!?」

「あんな小さい身体で……」

「マダムの飼いビトを……」


「腕を折った!!」

「肘を蹴りつぶしやがった!!!」


夢子「嘘っ……!?」


夢子(我那覇響……)

夢子(こんなに、強かったなんて……!?)


夢子(アイツ一体、何者なのよ……!?)


タロちゃん「いたあい! いたあああああい!!」ジタバタ


響「……ふう」


響(出来た……)

響(ちょっとだけアイツの血がついたな)

響(……いい匂いがするな)


響(あとは、何とかしてこいつを無力化できれば……)



響(そして、こいつを喰って)

響(唯を連れて逃げて)

響(唯をたべて……)



響(……あれ)



響(……ああ)






ドクン





響(おなか、すいてたな)



ガシッ


タロちゃん「あう?」


ボチャ


タロちゃん「……あいた?」

タロちゃん「……いた?」


タロちゃん「みえない」


タロちゃん「――めえええええええええ!!!」


タロちゃん「ぎゃああああああ!! まま! まま!! どこーーーーー!!」ジタバタ

マダムA「タロちゃん!? タロちゃんどうしたの!? ママはこっちよ!?」


「あ、あいつ……見たか?」

「ああ……あの女」


「抉りやがった」

「スクラッパーの目玉をくり抜きやがった!」


夢子「……は?」

マダムA「ああっ!? ちょっとアンタ! あたくしのタロちゃんに何してくれてんのよッ!!」

夢子「ま、待ってくださいマダム! 下手なこと言わない方が……!」


響「……」スッ


マダムA「このッ……その目玉はあたくしの大事な子供のものよ!」ガシッ

マダムA「あんたが気安く手に持ってて良いものじゃないのよおッ!!」ブンッ


ヒュッ


バシッ


響「……」

タロちゃんの目玉「……」コロコロ


響「……あ」ギロリ



「「「!?」」」ザワッ



夢子「―――えっ?」


夢子(――我那覇響)

夢子(――こいつは、ちょっと"喰種"離れした考え方を持ってて、人の匂いが混じっているだけの)

夢子(――ただの馬鹿な"喰種"だって思ってた)


夢子(――でも、マダムAの屈強なスクラッパーを倒して)

夢子(――そいつの目まで抉り出して)


夢子(――目玉を食べそうだった所をマダムに弾き飛ばされて)

夢子(――そのままアイツが、こっちを向いて……)


夢子(――その目を見て、やっと気付いた)

夢子(――こいつ)

夢子(――この目ッ……!!)






響「―――あああああーーーーー」ビキキ

響「―――あああああーーーあああああーーー!!」ビキビキビキビキビキビキ





夢子(――左目だけが赤いですって?)

夢子(――つまり……)





夢子(――『隻眼』?)


「かっ…片方だけの…」

「赫眼……!」

「隻眼の"喰種"?」

「"隻眼"ッ」

「ひいぃいい……!!」


FM「FMちゃんのご帰還~」

FM「あれ? みんな何で驚いてるの?」ジッ

FM「……えっ」


FM「なにあれ、すごーい」


夢子(……あ、あああ)

夢子「そ、そう言えば……!」ガクガク


FM「BDちゃん何か心当たりあるの? 吐いちゃえ吐いちゃえげろげろ~」

夢子「ああっ……」ガクガク


夢子「あ、ああ、あいつ言ってたんです」

夢子「元、み、346プロの"隻眼"の喰種に会いたいって」

夢子「会って、はは話がしたいって」


FM「…へー? ふんふんそれでそれで?」


夢子「あ、あいつ、それを言ったとき、すごくちんぷんかんなことを言ってたんです」

夢子「隻眼の喰種を『元人間』って聞いたんです」

夢子「あああいつ、食事も苦手らしくて……」


夢子「ず、ず、ずっと、違和感を感じてたんですけど……」

夢子「あいつ……やけに人間っぽい考え方をするんだ……!!」



夢子「もしかしたら……」


夢子「あいつはただの隻眼じゃなくて……!!」


FM「……ってことは……」

FM「わーお……♪」


――――――――――――――――――――


響「……」ジー


「おい! これ、逃げた方がいいんじゃないか!?」

響(まずそう)


「だ、大丈夫だろ……さすがにここまで登ってくることなんか……」

響(まずそう)


「BD嬢! これはどういうことかね!? なんて奴を連れてきてくれたんだ!!」

響(まずそう)


「わ、わ、わ、わたしは……!!」

響(まずそう)


響「くんくん」

響「くんくんくん……」


響「あぶったぶたばらみたいな いいかおり」

響「どこかな、どこかな」クンクン


響「あっ」スッ


唯「ゼエッ……ゼエッ……」



響「うん」

響「みつけた」



響「――うまそう!!」


唯「あっ……うう……」ガクガク


響「……」スッ


唯「……あ……ひびき、ちゃ……」

唯「あいつ、どうなって……」


響「うん」グパァ


唯「ひびきちゃ、ケガ、してな……」


響「あー」ギラギラ


唯「え?」


唯「なんで……」

唯「なんで、ゆいを見てよだれ、なんて……」


響「あー」ボタッ




響「   ―――  いただ    」トスッ


響「あ」ガクッ



響「」バタリ





「ふー」


FM「あぶないあぶない」


響「」ダラン


FM「あぶないあぶない……あぶない賞として」ヒョイヒョイ


タロちゃんの目玉「」コロンッ


FM「アメ玉2個くらいプレゼントしちゃおう」スッ


響「……んー?」モグモグ


FM「寝てるうちだしノーカンだよねー」


響「ん……んん……」モグモグ

響「……んー」ゴクリ


響「……スー」



FM「うん、もう大丈夫」ニコ



FM「そっかー、キミは『こっち』に『来ちゃった』人かー」

FM「『私たちの王様』とも違う、もうひとつの『隻眼』」

FM「キミが会いたがってる『王様』とも違う世界を生きてるひと……」



FM「……だからこそ」

FM「もしかしたら、キミこそが『みんな』を助けてくれるのかもしれないね」


マダムA「ちょっと! FM!」バッ

FM「はいはーい、なーにオバチャマA-?」

マダムA「おばっ……いや、そんなこと今はいいわ」

マダムA「何タロちゃんのかわいいお目目を食べさせてるのよ!? 早く2人とも殺してしまいなさい!」

マダムA「あなたなら出来るでしょお!?」


FM「え、やだ」

マダムA「ハァ!?」

FM「だって2人とも殺したくないし……それに」



FM「もう、食べる時間ないと思うよ?」







「周辺への配備よし!」

「突撃許可出たぞ! 用意しろ!」

「やっとかよ……! 死人出てたらどうすんだよ!」



バンッ





「喰種捜査官だ!」


「目標! 喰種組織"レストラン"!!」

「支配人の確保は他グループの仕事だ!」

「このホールを担当する我々の仕事は、生存者の救助と……」





「この場の"喰種"全員の駆逐だ!!」





今日はここまで。

法寺さん……


ザワッ


「白鳩だと!?」

「バカな、奴らに嗅ぎ付かれたと言うのか!」

「逃げろ!」

「おい! どけ!!」

「うわああああああああああ!!」



FM「ホントに来ちゃった。白鳩もバカに出来ないねー」

FM「また『やり直し』かぁー。次のマダムを探さないとなー」

FM「……んー」


響「」プラプラ


FM「流石にこのまま白鳩に保護されちゃったら、身体検査コースだよね。そしたら殺されちゃうかもしれないし……」

FM「だから、今日は助けてあげるね」


FM「じゃ、行こっか」グッ


唯「う……ちゃん」


FM「!」ピク



唯「…レ、ちゃん……」ゼエゼエ

唯「なん、で……」

唯「なんで、こんな、とこ……」


唯「ゆいたち……」



唯「……ずっと、かえってくるの、まって……」



唯「あり、す、ちゃんだって、ホントは……!!」



FM「……」

FM「そっかー」


FM「唯ちゃ……」


ザッ


捜査官「動くな! 肩の人間を今すぐ降ろせ!」


FM「……」フー

FM「…グズグズしてちゃダメだね」ズッ

FM「FM嬢が通りまーす」ビキッ


ビュッ



ボチャ

ブチュ

メゴッ



捜査官A「ばっ!?」ボトッ

捜査官B「グエ」ビチャ

捜査官C「こいつ! つy」バンッ


ボトッ

ボトボト



FM「なんだっけ。無理が通れば道理が……ごるぱ?」


唯「え……!?」カタカタ

唯「ひと、が……」カタカタ


FM「……ゆーいちゃん」

FM「唯ちゃんは人間だから、このまま捜査官の人たちに助けてもらえるよね」

FM「マダムから聞いた話だと、毒が抜けるまで入院コースだろうけど……死にはしないみたいだから安心だね!」


FM「あと、あの人達に言われても、この子のことは言わないでくれると嬉しいな」ツンツン

FM「それが終われば唯ちゃんは無事生還めでたしめでたし~♪ ハッピーエンド~!」


FM「……だから」





FM「もう、こんな危ないところ来ちゃダメだよ」



タンッ


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


夢子「嘘でしょ!? 白鳩が来るなんて!」

夢子(なんで!? なんでこうなるのよ!?)

夢子(あたしはここで一定の成果を上げ続けて、マダムたちの信頼を得て……)

夢子("喰種"だってバレないようにバックアップしてもらって……)

夢子(そうすれば、"喰種"でも、誰にも邪魔されずに夢を追いかけられるって)


夢子(そう、思っていたのに……!!)


夢子「……ッ!」クルッ


捜査官「! 逃がすか!!」ジャキ


バババババババババッ


夢子「っ!?」ズドッ

夢子「かっ……!」ドッ


夢子「うあっ……」ベシャ



夢子(逃げ、なきゃ……)ズルッ


夢子(このま、ま……)ズッ



夢子(死んでたまるもんか……!!)


――――――――――――――――――――


一旦ここまで。あとちょっとでレストラン編終わります。


――――――――――――――――――――


響(――気が付くと、朝日が目に差し込んでいて……ことは全部終わっていた)


響(――あとで知った話によると…レストランは既に、CCGに目をつけられていて)

響(――周辺を固めるのにモタついたことが原因で、小鉢さんともう一人の人間が死んだものの)

響(――奴らは……レストランの連中は、ほぼ全滅したんだそうだ)


響(――あの時はまだ、身体に回っていなかったみたいだけど)

響(――レストランの通路にも、遅効性の毒ガスが充満していたらしい)

響(――だから、後から自分の身体にも影響が出ていて……)

響(――大男に一撃を喰らわせた後のことは、ほとんど覚えていない)


響(――思い出せるわずかな事は、誰かに担がれている感覚と…外に出してもらったのか、まだ冷えた空気の感触と)

響(――そして、霞んで見えた3つの仮面)

響(――確か……レストランで見たピエロマスクと)

響(――キスマークが印象的な白い仮面と、狐のお面だったと思う)


――――――――――――――――――――


FM「ぼんじゅ~る♪ お待たせー」

キス「あら、無事に脱出できたのね。……その人は?」

FM「マダムAだよー。マダムはまだ必要かなって思って適当に担いできた!」


マダムA「」プラーン


狐面「おー、お手柄じゃんフ…FMちゃん。強請ればマダム界に取り入るのに使えそうだね」

キス「ええ。資金源とコネを失わずに済んだのは大きいわ」

FM「えへへー。ムサシちゃん、首級とったり~!」


狐面「で、そっちの黒髪の子は何?」

FM「こっち? この子は恩人」

キス「恩人?」


FM「うん♪ 唯ちゃんを庇って、助けようとしてくれたから。外まで運んだのはそのお礼」

キス「! ……唯、来てたのね」

狐面「助けた? 人間なら放っておいても白鳩が保護してくれるんじゃない?」

FM「それがね。かくかくしかじか」

キス狐「「!」」


キス「……そう。元人間の『隻眼』……」

狐面「『生まれつき』の王様とも違うんかー。確かに危ないかもね」

FM「この子はお家に帰してもいいよね? 765プロの子っていうのは知ってるし」

キス「ふうん…765プロ……」

キス「そうね。用事が出来たら、その時に改めて挨拶に行きましょう」

狐面「意義なーし」






FM「…じゃ、キミはここでお別れだよー」

FM「また来るかもしれないから、美味しいコーヒーでも淹れてくれると嬉しいなー♪ 仮面つけてるから分かんないかなー。あと聞こえてるのかなー」

FM「……」



FM「唯ちゃん、助けてくれてありがと」


―――――――――――――――――――――――――


響(――次に目を覚ました時、自分は765プロの近くにある…公園のベンチに寝かされていた)

響(――3人が何を言ってたのかは、まったく思い出せない)


響(――……)

響(――喰種組織『レストラン』)

響(――あそこにいた"喰種"たちは、自分の知っている"喰種"とは全然違っていた)

響(――人が死んだり、絶望したりしていたのを、手をたたいて喜んでいた)

響(――吐き気がするほど、残酷で、嫌なやつの集まりだった)


響(――夢子も、そのうちの一人だった)



響(――人を人とも思わない……)





響(――そして……)



響(――自分も……!!)



――――――――――――――――――――


今日はここまで。


…私個人の独断で、偶像喰種第二章をもう一度分割することにしました。

事情はまた後程説明します。とりあえずこれを中編にして、後編は9月3日か4日に再開しようと考えています。ただもう再開が遅れることはないでしょう。

なので、次にエピローグを書いて、このスレはいったん終了ということになります。


急な決定ですが、どうかお付き合いいただければ幸いです
















――――――――――――――――――――
















――――――――――――――――――――






―――哀しみの螺旋は、続いていく―――





――――――――――――――――――――


絵理『……もしもし、サイネリア?』

サイネリア「センパイ!? センパイが電話してくるなんて、珍しいデス! ああ、センパイの生声が直に……!」

絵理『……うん。えっと、一昨日の依頼の話なんだけど……』

サイネリア「おおー、完成したデスか! どこに?」

絵理『…いつもの所。終わったら、書いておいた場所に送ってあげて?』

サイネリア「センパイの頼みならなんのその!デス!」

絵理『……ありがとう』

サイネリア「いやいや、センパイの助けになれればそれでいいですから!」



サイネリア「…あーそうそう。ワタシからも、一個センパイに話があるんデスけど」

絵理『……?』

サイネリア「あのですね……」



サイネリア『―――なんでメールじゃなくて電話にしたんデスか?』


絵理「……っ」ブツッ


――――――――――――――――――――


~現在~


サイネリア「……」グス


サイネリア「……やっぱりあの電話……」

サイネリア「センパイの、最期の言葉だったのね……」キュ



ギリッ


サイネリア「許さない……」

サイネリア「白鳩、そして……」



サイネリア「876プロ……!!」






―――人間関係は化学反応



一度作用し合ったら、もう元には戻れない―――





~『レストラン』の日・深夜~


夢子「……っ、……!」ズッ

夢子「はっ、はあっ……!」ズルッ


夢子(何とか、逃げられた……)ズッ

夢子(……でも……)


ジワ…


夢子(ちくしょう……何なのよ、あの武器……!)

夢子(キズがふさがらないっ……!)


夢子(このままじゃ、あたし……)

夢子(……)


夢子(食事を、とらないと……)


夢子(だれ、か……)ズッ



ベシャ





?「…あれ?」

?「今、だれか……」


?「!」


夢子「―――――」


?(ひ、人が倒れてる……!!)


?「あのっ! 大丈夫ですか!? 酷いケ、ガ……を……」ハッ

?「……!!」


夢子「……? アンタ、は……?」

?「……君は―――」





涼「―――"喰種"、なの……?」



――――――――――――――――――――




―――決して交わらないはずの人間と"喰種"が


―――また、混ざり出し…動き出す



―――そして、『彼ら』も―――――





「……ふぅ……」

「……何処にいる? 『ナオ』の妹……」



「人間を喰い散らかす、この街の癌が……」



「それにしても疲れたな……私も歳か」

「気晴らしに、奴をいびりにでも……」


「……そういえば」

「最近はずいぶんと御無沙汰していたものだ」



「……ククク」

「久しぶりに、会ってやろうじゃないか」

「……なあ―――――」





黒井「高木ぃ……!!」



~続く~


とりあえず原作のレストラン編まで終わりました。

以前と比べて、アイドル要素ほかオリジナルシーンが割と多かったと思いますが、いかがでしたでしょうか。


当初はこのスレで第二章を終わらせるつもりだったのですが、

この先のCCG編のことを考えると「長くなりそうだなー」と感じたのと

最近文章がますます雑になってきた気がして1スレに長々と書くと読むのが苦痛だよなあと思い、キリのいいところでまた一旦話を区切ることにしました。


それと、今回は執筆再開を遅らせてしまってすみませんでした。

今回はあくまで「区切り」のための分割であり、執筆環境の変化や外伝の執筆の予定は特にないので、一週間後にすぐ再開できます。

2~4月でちょっと個人的にゴタゴタしていたので、このスレを立てるのは遅れてしまいましたが……

講義があるとはいえまだ夏季休暇が続きますし、次はもう少なくとも忙しさで遅れることはないと思います。


…あとは、だらだらと書いていてモチベーションも下がってきたな……と感じるので、

一週間の執筆停止、そしてシンデレラガールズの4thライブで思いっきりモチベを復活させて戻ってこようと思います。

神戸1日目現地で当たったので! やっぱりアイマスを題材で書く以上アイドル要素はしっかり書きたいですし

人生初ライブでアイドルのなんたるかをしっかり体感してきます!



ここまで読んでいただきありがとうございました。

後編の執筆開始は9月4日あたりを予定しています。

変更や遅延の多いスケジュールで皆様を振り回してしまいますが……どうかもう少しだけお付き合いいただければ幸いですm(__)m


追記。


もしまとめて下さる方がいればタイトルを

響「まだ空っぽな明日は、限りなく黒に近いグレイ」【偶像喰種2章 中編】

に変更願います。


次にスレ立てするときは

響「まだ空っぽな明日は、限りなく黒に近いグレイ」【偶像喰種2章 後編(全3編)】

にする予定です。


タイトルは後編2ぐらいでよくない?
なんか色々つけてもわかりにくくなりそうだし

>>310
そっちの方がすっきりしますね。
そうします!

今週の喰種……これ天然隻眼も短命だよね多分。

ひびきんと楓さんとらんらんの寿命がヤバイ

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