ナルホド「発想を逆転させるんだ!」シンジ「!」 (201)

逆裁×エヴァ

ストーリーはオリジナル要素入れますが事件と推理はほとんど原作なぞりになるかも
都合上書き溜めありです
前スレHTML化依頼出しちゃって新スレ立ててごめんなさい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1463322863

???「碇、構わんのか?お前の息子は弁護士になったそうじゃないか」

???「ああ、問題ない。予定の範囲内だ」

???「しかし、弁護士という存在はお前の計画において邪魔者にこそなるが、一体なんの益がある?」

???「……既に、この計画は私個人のメリットなどという小さなスケールを越えているのだよ」

???「そして、シンジが弁護士になった以上、強くなってもらわねばならん」

???「弁護士として、強くだと?」

???「そうだ。人の生み出した法の秩序を操る者としてな」

???「全く、何を考えているのか分からんやつだ、お前は」

???「今のところ、全ては葛城弁護士に任せてある」

???「シンジはやがて、誰にも負けることのない弁護士になるだろう」

5月29日 19:32分 葛城法律事務所

ミサト「……くっ」

???「愚かなる弁護士よ。君は立ち入ってはならない世界に踏み込んだようだな」

ミサト「……あんたが直々にやってくるとわね、いい気味だわ」

???「まさか我らのもとにまで辿り着く者がいようとは。これもまた約束された運命の一遍か」

ミサト「あんた達が一体どんなことを企んでいるのか知らないけど、好き勝手はさせないわよ!」

???「たかだか一弁護士である君に何ができる。死海文書の定むる限り全ては我らの手の中」

???「これは頂いて行くことにしよう」

ミサト「ま、待ちなさい!」

???「……そして、愚かなる弁護士よ」

???「貴様にもまた、我らが慈悲を与えよう」

ミサト「!!」

ヒュンッ ガンッ!!

???「……永遠の沈黙という名の、罰とともに」

ミサト(…………っ)

ミサト(…………ゼ………エ………レ………)

同日 19:58分 葛城法律事務所

ガチャ

シンジ「ただいま〜」

シンジ「……あれ?電気が消えてる」

シンジ「ミサトさん、どこか行っちゃったのかな」

シンジ「……?」

シンジ「なんだ、この臭い?」スンスン

シンジ「鉄の……いや、血?」

シンジ「……!ミサトさんの部屋からだ!」ダッ


シンジ「ミサトさん!」ガチャ

シンジ「…………!」

サクラ「か、葛城さん!いや!死なんといてください!」

サクラ「葛城さんってば!いやぁ!死なんで、葛城さん……うええん」

ミサト「…………」

シンジ「み、ミサトさん!!」

サクラ「!」

シンジ「あ!き、君は……?」

サクラ「…………」フラフラ

シンジ「えっ、ちょっ!」

ドサッ

シンジ「た、倒れちゃったぞ……」

シンジ「とにかく女の子の方はしっかりと寝かして、僕は……」

シンジ「……ミサトさんの様子を調べるしかない!」

シンジ「……」

シンジ(まさかって思ったけど、やっぱりもう亡くなってる……)

シンジ(目を背けたくなるような光景だけど、確かめておかないわけにはいかないな)

ザッ

シンジ(ミサトさんの体はまだ温かい。死後、時間が経ってないみたいだ)

シンジ(……信じられない。信じたくない。昨日までああして元気にしてたミサトさんが、今僕の目の前で……)

シンジ(凶器は見た限りこのシュミの悪い置物……か?)

法廷記録
『凶器の置物:ヘビとリンゴと七つの目という趣味の悪い模様が掘られた真っ黒な置物』

シンジ(一度窓際に持たれかかったのだろうか、窓枠から引きずったように血痕が繋がっている)

法廷記録
『窓際の血痕:ミサトさんは窓際で亡くなったようだ』

シンジ(それにしてもこの部屋の状況……格闘した、というよりは何か)

シンジ(家捜しされたみたいな荒れ方だな)

シンジ「……ん?なんだ、コレ」

シンジ「手帳……かな?」

法廷記録
『手帳:現場に落ちていた。ミサトさんのものだろうか』

シンジ「中身は……」

シンジ「なんだこれ?なんだか色々なメモと……」

シンジ「誰かの連絡先が書いてある。名前は……『綾波弁護士』?」

シンジ「何かの手がかりになるかもしれない。覚えておこう」

シンジ「……?机の上に何か置いてあるな」

シンジ「コピー用紙だろうか。何か書かれているぞ」

シンジ「これは……血?『サクラ』……って書いてあるな」

法廷記録
『コピー用紙:サクラと書かれている。ミサトさんが残したものだろうか?』

シンジ「……こんなところだろうか。あんまり現場を荒らしすぎるのもまずいよね」

シンジ「そうだ、警察呼ばないとだよね」

ピーポーピーポー

シンジ「……?なんだ、パトカーのサイレン?まさか誰かが通報したのか?」

シンジ「もしかしてさっきの女の子かな」

ガチャ

シンジ(……っと)

サクラ「…………」

シンジ(どうやら気がついたようだけど、かなり落ち込んでるみたい)

シンジ「……あの、君は?」

サクラ「…………」

シンジ「……ご、ごめん、別に無理して」

サクラ「……サクラです」

シンジ「え?」

サクラ「サクラ……鈴原サクラです」

シンジ(す、鈴原……多分グウゼンだろうけどフキツな苗字だな)

シンジ(それにしてもサクラって、あの紙に書かれていた名前……か?)

シンジ「あの、サクラちゃんはなんでここに?さっき葛城さんって言ってたけど、ミサトさんの知り合い?」

サクラ「……うぅ、葛城さん」

シンジ(あまり落ち着いて話が出来る状況でもないみたいだ)

サクラ「うち、葛城さんとはヴィレで一緒だったんです」

シンジ「・、・ぃれ?」

サクラ「はい。うち、色々あって小さい頃から家にいられなくて。小さい頃からお世話になってたんです」

シンジ「その、ヴィレっていうのは?」

サクラ「……?対使徒用特設武装組織、特務私設団ヴィレです」

シンジ「……う、うん」(どうしよう、ホンキで言っているみたいだぞ)

シンジ「あの、君はそこでミサトさんと知り合ったの?」

サクラ「はい、そうですけど」

シンジ(困ったな、こういうのの専門は誰に頼めばいいんだ?)

サクラ「……あの、あなたはもしかして?」

シンジ「あ、ああ、僕は碇シンジ。弁護士だよ」(……新米の)

サクラ「あ、じゃあもしかして葛城さんが話してた?」

シンジ「み、ミサトさんが?それってどういう……」

???「御用だ御用だー!」バタンドン!!

シンジ「!!」

サクラ「!!」

???「その場を動くな!警察だ!」

マリ「あたしは警察署の真希波マリ!サツジン事件を目撃したとの通報があったにゃ!」

マリ「……おや、君たちは?」

シンジ「あ……っと、僕は碇シンジ、ここの所員ですけど」

マリ「ふーん、なるほど。それで、サツジン事件のあった現場っていうのはここで間違いないのかな?」

シンジ「ええ、多分」

マリ「よーっし!さっそく捜査開始!」ドタドタ

シンジ(落ち着きのない人だな)

マリ「って、ちょーっとちょっと!」

シンジ「うわ!な、なんですか!」

マリ「これ、この紙。ここに書かれてるサクラってのはどこの誰かさん!?」

サクラ「……え、それ」

サクラ「それ、うちの名前……」

シンジ「あ……!あの」

マリ「……きまり」

マリ「決まりだああああああああ!!」

マリ「早速タイホするにゃ!!」

5月30日 8:41分 シンジの自室

シンジ「……もう、朝か」

シンジ「結局、昨晩は一睡も出来なかったな」

シンジ「どうして、あんなことが……」

シンジ「……ミサトさん、まだ信じられないよ」

シンジ「昨日の子……サクラちゃん、だっけ」

シンジ「とにかく動き出さなきゃ始まらないぞ」

シンジ(行ってみるか……留置所)

同日 9:22分 留置所

???「サクラちゃん!大丈夫!?なんでサクラちゃんが!」

???「サクラくん、葛城弁護士の件は……」

シンジ(……あれ?誰か人が来てるぞ)

???「……?君は?」

シンジ「え?ぼ、僕?」

サクラ「あ、昨日の弁護士さん!」

シンジ「あ、僕はその、碇シンジって言います。い、一応弁護士をやってて」

???「ベンゴシ……?」

???「……そうか。もしかして君がミサトさんの所の?」

シンジ「え?は、はい、そうですけど。あなた達は?」

ナルホド「あ、ごめん。ボクの名前は成歩堂リュウイチ。君と同じ弁護士だよ。……元ね」

ミツルギ「私は御剣レイジ。元検事だ」

シンジ「ナルホドさんにミツルギさん?……元ってどういう?」

ナルホド「それを聞かれると弱るんだけど……」

ミツルギ「色々あって現在ワレワレは法廷から離れているのだ」

シンジ「法廷から離れて……?」

ナルホド「そう。ちょっとした深いワケでね」

シンジ「その、サクラちゃんとも知り合いなんですか?」

ミツルギ「知り合い……か。似たようなものだな」

シンジ「それじゃあミサトさんとも?」

ナルホド「そうだね。だけどゴメン、君にそれを説明している暇はないんだ」

ナルホド「……」

ナルホド「今、君にお願いしたいのは……法廷に立つことの出来ないボクたちに変わってこの子を、サクラちゃんを弁護してくれないかな?」

シンジ「え、ええ!?そんないきなり、ぼ、僕が!?」

シンジ「でも僕、新米ですよ……?」

ナルホド「新米というならボクも新米のペーペーだった頃に無敗の天才検事に勝ったことがあるよ」

ミツルギ「ラッキー、でな」

ナルホド「とにかく、お願い出来ないかな?」

ミツルギ「むっ、成歩堂、急いだ方がいいぞ。伊吹くんからだ」

ナルホド「……とにかく、考えてみてくれないか!それじゃ!」

ミツルギ「失礼する」

シンジ「あっ!ちょっと……!」

シンジ「行っちゃった……」

サクラ「……」

シンジ「あの……やあ」

サクラ「おはようございます、弁護士さん」

シンジ「うん。昨日はよく眠れた?」(……わけないか)

サクラ「……」

シンジ「さっきの人達、サクラちゃんの知り合いなの?」

サクラ「……はい。ナルホドさんとミツルギさん。ヴィレで一緒に働いてます」

シンジ(・ぃれ……ねえ)

シンジ(昨日逮捕されてからずっと事情聴取だったのだろう。随分疲れてるみたいだ)

シンジ(やっぱりこの子がヨウギ者……ってことになるのかな)

サクラ「刑事さんに言われました」

シンジ「え?」

サクラ「うち、葛城さんを……その、殺した犯人ってことになってるんですね」

シンジ「……」

シンジ「あの、そのことでさ。もしそういうことなら君の弁護、例えば僕に依頼することも出来るんだけど……どうだろう?」

シンジ「サクラちゃんとしては、そういう気持ち、あるかな?」

サクラ「…………」

シンジ(あ、あからさまに不安そうなカオをされたぞ)

サクラ「葛城さんが、弁護士さんに依頼するのは命が惜しかったら十四年は待て……って」

シンジ「は、はは、シンラツだなぁ……」

シンジ(ミサトさん、僕のことそんな風に言ってたのか……)

ねます

http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1462025113
前スレ的ななにか

シンジ「あの、ミサトさんとは確か知り合いなんだよね?」

サクラ「はい。……知り合いというか、結構お世話になって、姉妹みたいに良くしてもらいました」

サクラ「うち、お母さんがいなくて。それに色々と事情があって小さい頃から家族と離れて暮らしてるんです」

サクラ「葛城さんはそんなうちを気にかけてくれてて。だから……」

シンジ(てことはこの子、小さい頃から独りで暮らしてきたのか)

シンジ「た、確か、・ぃれ……だったっけ?」

サクラ「はい。葛城さんともそこで」

シンジ(聞いたことないぞ……)

シンジ「ヴィレっていうのは何をする所なの?」

サクラ「使徒と戦うための機関です。それと、ネルフに対抗してて」

シンジ「し、しと?あの、しとってなんのこと?」

サクラ「話しても分からんと思いますけど、人類を脅かす地球外生命体のことで……」

シンジ「チキュウガイセイメイタイ?」

サクラ「分かりやすく言うと怪獣です」

シンジ「ははぁ、たいそうなお仕事ですな」(全然わかり易くない)

サクラ「うち、そのヴィレで働いてるんです。決してアヤしいものじゃ……」

シンジ(……充分アヤしい)

シンジ「あの、事件のこと聞いてもいいかな?」

シンジ「君はどうしてあの日、うちに来ていたんだい?」

サクラ「葛城さんに呼ばれたんです。あの日、頼みがあるからうちに来てくれって」

サクラ「それで、行ったら……葛城さん……」

サクラ「…………」

シンジ「あ!ご、ごめん、もう大丈夫!」

シンジ(この子がどれくらいミサトさんと親しかったのか分からないけど)

シンジ(そりゃあツラいよな。僕だってそうなのに)

シンジ(こんなところに入れられて、可哀想に)

サクラ「その時のデンワの記録、うちの携帯に残ってます」

サクラ「今は刑事さんが持っていますけど」

シンジ(刑事……あのお調子者そうな人か。あとで聞いてみよう)

シンジ「裁判のことは何か聞いた?」

サクラ「弁護士さんへの依頼は今日の夕方までって言われました。裁判は明日」

シンジ「明日?やけに早いね」

サクラ「それ相応のジュンビが整っているそうで……」

シンジ「なるほどね」

シンジ(つまりこの子はかなりフリ、ということか)

シンジ(彼女の意思を尊重するなら、僕が弁護するわけにもいかないしな)

シンジ(誰かアテを探してきてあげようか)

シンジ(って言っても、僕に弁護士の知り合いなんていないぞ……)

シンジ(……そうだ!確か、ミサトさんの近くに落ちていた手帳に弁護士の名前があったような)

シンジ(メモしておいてよかった。……綾波さん、か。どうしよう、イチかバチか少し当たってみようかな)

シンジ「……じゃあ、サクラちゃん、僕はここらへんで。また来るよ」

サクラ「は、はい……」

同日 某時刻 綾波法律事務所

シンジ(メモの住所を頼りにやってきたぞ。ここが、綾波さんの法律事務所……か)

レイ「……」

シンジ(綺麗なところだな。それにいい匂いがする。普段、清潔に整えられているんだろう)

レイ「……」

シンジ(よくよく考えてみれば、ミサトさん以外の弁護士とまともに会うのはこれが初めてかも。なんだかドキドキしてきたぞ)

レイ「……」

シンジ(よし、深呼吸をして、それから失礼がないよう身なりを整えて)クルッ

レイ「……」

シンジ「う、うわぁーっ!!」

レイ「……何か?」

シンジ「あ、あ、いや、あの。し、シツレイしました!」

シンジ「じゃなくて、おジャマしております!」

シンジ(け、気配を感じなかったぞ!)

シンジ「あ、あの、もしかして綾波さん、ですか?」

レイ「ええ。綾波レイよ」

レイ「あなたは?」

シンジ「あ、あの、僕はその、碇シンジというもので!べ、弁護士をやらせていただいてます!」

レイ「碇……?弁護士……?それって……」

シンジ「あ、えと!決して怪しいものじゃ!」

レイ「……そう。それで碇くん、どういったご要件かしら?」

シンジ「ご、ゴヨウケンと言いますか……」

シンジ「じ、実はミサトさん……葛城弁護士の事件をご存知ですか?」

レイ「……葛城弁護士。知っているわ。彼女がどうかしたの?」

シンジ「そ、それがその……な、亡くなった……んです」

レイ「!」

シンジ(流石にまだ広まってはいないのか。ムリもないな)

レイ「…………」

シンジ「その、綾波弁護士はミサトさんのこと知っているんですか?」

レイ「綾波でいいわ。それに敬語もいらない。多分同い年だもの」

シンジ「え、そ、そうかな」

シンジ(てことは僕よりも若い時から弁護士をやっているのかな)

レイ「葛城弁護士とは……前に同じ職場だったわ」

レイ「まさか亡くなっていたなんて……一体どうして?」

シンジ「さ、サツジン事件、ということになっているみたい……」

レイ「そんな……誰がそんなことを」

シンジ「実はそのことでお願いがあってきたんだけど、事件のヨウギ者として捕まっている子がいるんだ」

シンジ「それで、その子の裁判までもう時間がなくて」

レイ「私にその子を弁護してほしい、ということ?」

シンジ「……うん」

レイ「……でも、どうして?」

シンジ「え?」

レイ「あなた、葛城弁護士とは親しかったんでしょ?」

シンジ「うん、そりゃあね」

レイ「なら、なんでその子を……事件の犯人かもしれない子を庇おうとするの?」

シンジ「!」

シンジ(そ、そうだ。そもそも、あの子がミサトさんを……っていう可能性もあるんだよな)

シンジ(それなのに僕はどうして彼女の弁護を?)

シンジ「……」

シンジ「ぼ、僕は、あの子は犯人じゃない、と思うから」

レイ「犯人じゃない?なぜ?」

シンジ「なぜ……って言われても、そんな風には見えないし」

レイ「本気で言ってるの?」

シンジ「うっ……」

シンジ「ぼ、僕は真実が知りたいんだ」

レイ「シンジツ?」

シンジ「……そう、ミサトさんを殺した人間がいるんなら、僕はそんな奴を許せない」

シンジ「真実を……本当の犯人を知りたい」

レイ「……」

レイ「それならなんで私に頼むの?」

シンジ「それは、その……恥ずかしながら僕には依頼してもらえなかったから」

シンジ「僕、まだ新米なんだ」

レイ「なら、無理ね」

シンジ「え?」

レイ「明日の裁判。もしあなたが弁護を担当するのなら一緒に法廷に立ってもいいわ」

シンジ「ど、どういう意味さ、それ」

レイ「私、弁護は出来ないの」

シンジ「???」

シンジ(べ、弁護出来ない弁護士……?)

レイ「ごめんなさい。でも、法廷であなたを援護することは出来るわ」

レイ「明日の法廷、碇くんが立てるといいわね」

シンジ(ど、どうなってるんだ?)

シンジ「あの、弁護出来ないって、どうして……?」

レイ「そのままの意味よ。私は誰かを弁護することは出来ない。碇くんと違って」

シンジ「君は弁護士じゃないのかい?」

レイ「……」

レイ「また明日、会いましょう。でも今日はもう帰って」

同日 某時刻 葛城法律事務所

シンジ(ここに来てしまった)

シンジ(昨日の事件の捜査のためか、大勢の警察が集まっている)

シンジ(それにしてもさっきの綾波の言葉、一体どういう意味だろう)

シンジ(誰かを弁護することは出来ない?)

マリ「あ!君は!!」

シンジ「ん?ああ、確か昨日の刑事さ」

マリ「ワンコくん!!」

シンジ「わ、わんこくん!?」

マリ「ここ、一応事件の捜査中だから無闇に荒らさないで欲しいんだけど」

シンジ(その前にわんこくんについて説明してよ……)

シンジ「確か真希波刑事、でしたよね?」

マリ「そうそう。あ、うちのことはマリって呼んでくれていいからね」

シンジ(いや、呼ばないよ!)

マリ「なんぴとたりともあたしのことをコネメガネだなんて呼ばせないにゃ」

シンジ(コネがあるのか、悪い大人だな)

マリ「それで、一体どういう用件かな?」

シンジ「今回の事件の法廷について聞かせてもらえませんか」

マリ「事件の法廷のこと?なんで君が?」

マリ「……あー、そっかそっか。君、確か弁護士だっけ?」

マリ「あの子の弁護、しようってわけ?」

シンジ「あ、いやまだそういうわけじゃ」

マリ「気の毒だにゃあ、よりにもよってこんなフリな裁判をね」

シンジ「そ、そんなにまずいんですか?」

マリ「そりゃあもうベラボーに」

マリ「何せ今回の担当はあの式波検事だからね。まさか勝てるなんて思わない方がいいよ」

シンジ「式波検事……か」

マリ「おやーん、まさか知らないってわけじゃないよね?」

シンジ「そ、そりゃあ知ってますよ。海外で十三歳にして大学を卒業後、検察官になってから」

シンジ「日本でも法廷に立ち、九年間無敗の記録を続けている『ユーロきっての天才検事』のことですよね」

マリ「うんうんそのとおり!なんだ、よくご存知じゃん」

シンジ(そう、有罪判決に対しての異常なまでの拘りと犯罪に対する憎しみを持つ検事)

シンジ(なるほど、サクラちゃんがフリなはずだ)

シンジ「あ、そういえば検死結果ってもう出たんですか?」

マリ「ああ、うん。だいたい終わってるよ。ほら、ここにしっかりと書類があるからね」

シンジ「じゃあ、その……1部欲しいなぁ、なんて」

マリ「ふーん、そうは言われてもねぇ。これ、漏らしちゃいけないことになってるし」

シンジ「……」

マリ「…………」

シンジ「………………」

マリ「……………………」

シンジ「……………………………」クゥーン

マリ「……そ、そんな物欲しそうな顔しちゃダメにゃ。じゃあその、姫には内緒ってことで」

シンジ「ありがとうございます!」(ヒメ?誰のことだろう)

法廷記録
『検死結果:死因は鈍器による一撃でほぼ即死』

シンジ「あ、それと」

マリ「んん?まだ何かあるのかにゃ?」

シンジ「サクラちゃん……ヨウギ者の携帯デンワを知りませんか?」

マリ「携帯デンワ?」

マリ「ああ、あの可愛らしいやつのこと?」

マリ「それならほら、ここにちゃーんと」

シンジ「良かった。すみません、それ、返してもらえませんか?」

マリ「言っておくけど、手がかりになりそうな番号は載ってないよ?もうあたしがしっかり調べたからね」

シンジ「はぁ、それは構いませんけど」

マリ「ふふん、まあ気の毒な依頼を受けた弁護士クンに優しくすると思って返してあげるにゃ。せいぜい明日の法廷は頑張んなよ」

法廷記録
『携帯電話:通話の内容が記録されている。『それじゃ、明日よろしくね』『分かりました。何でもお伺いしますよ』『センキュー、サクラ』』

シンジ(ミサトさん……)

マリ「さてっと、そろそろいいかな?あたしもこう見えて色々と仕事があるんで」

シンジ「あ、色々とどうもありがとうございました」(貰えるものは貰ったかな)

マリ「うんうん、気にしないでよ」

マリ「さぁ早く帰って昨日の『小江戸戦士ヒメサマン』でも見るかな〜」

シンジ(仕事はどうしたんだよ)

シンジ(さて、そろそろ明日の裁判、何とか戦えるくらいの物は揃ったかな)

シンジ(『それならなんで私に頼むの』か。そりゃそうだけど)

シンジ(でもその前にもう一度、サクラちゃんに会って話さないと)

同日 14:48分 留置所

サクラ「あ、弁護士さん」

シンジ「やあ。どうかな、依頼の宛は見つかった……?」

サクラ「それが……葛城さんの伝で見つかった人達からは『私の手には負えません』と言われてしまって」

シンジ(『式波検事』の影響力かな)

シンジ(この子、見捨てられちゃったわけか)

シンジ(まあ、綾波にああ言われた時からもう決めてあるんだけどね)

シンジ「実は僕の方で、ちょうど君の弁護をしてくれる弁護士を見つけてきたんだ」

サクラ「……!ほ、本当ですか?」

シンジ「もちろんさ。ただ聞かせて欲しいんだ」

シンジ「君が無実だって、信じてもいいんだよね?」

サクラ「は、はい、勿論です!うち、絶対やってません!」

シンジ「……そっか、よかった。なら、明日の裁判は大丈夫」

シンジ(きっと、君を助けてみせるよ)

サクラ「ありがとうございます、弁護士さん!うちのためにそこまでしてくれるなんて」

シンジ「うん、まあミサトさんのよしみだし」

シンジ(僕が弁護士になったのも、君みたいな人を助けたいっていう思いがあったからね)

シンジ(狭い部屋の中でたった独りで不安な孤独、僕にも覚えがある)

シンジ(僕はそんな人達を助けられる人間になりたい)

???『無理だね』

シンジ(……!)

シンジ(……アレ、今、誰か?)

???「風向きが変わり始めたね。明日の裁判、面白くなりそうだよ」

ミツルギ「それはどういう意味だ?キミは一体何を知っている?」

???「夢さ」

ミツルギ「ユメ……だって?」

???「そう。リリンの夢の一片を知っている、それだけのことだよ」

ミツルギ「何故、この世界が変わってしまったのか、キミは分かるのか?」

???「変わった、という言い方はどうだろう。正しくは『ねじれた』というべきだね」

ミツルギ「ねじれた?」

???「そう。あるいは『逆転した』とも言えるね」

ミツルギ「……!」

5月30日 8:38分 地方裁判所被告人控え室

シンジ「……」

シンジ「……ぷふぅ〜」(深呼吸、深呼吸)

サクラ「……あの」

シンジ「?」

サクラ「うちの弁護士さんはまだ来てないみたいなんですけど」

シンジ「あ、ああ、そのことなんだけど」

レイ「……碇くん」

シンジ「!」

サクラ「!」

シンジ「あ、綾波!ほ、本当に来たんだ」

サクラ「綾波さん……?あ、もしかしてうちの弁護をしてくれる方ですか!」

レイ「……?」

レイ「弁護は碇くん、あなたがするんじゃないの?だからここにいるんでしょ?」

サクラ「……え?」

シンジ「あ、う、うん。えと、その通りだよ」

シンジ「あの、サクラちゃん。黙っててごめん」

シンジ「それでさ、君の弁護、やっぱり僕にやらせてくれないかな」

サクラ「べ、弁護士さんが?でもどうして?」

シンジ「……」

シンジ「サクラちゃん、君のことを助けたいんだよ」

シンジ「僕に任せてくれないかな?」

サクラ「べ、弁護士さん……」

レイ「このコが被告人のコ?」

シンジ「うん。ミサトさんの知り合いらしいんだ」

レイ「そう。なら、この子は無実なのね?」

シンジ「え?さ、さあ、それはまだ分かんないけど」

レイ「……」

レイ「碇くん、あなたは彼女を無実だと思っているんじゃなかったの?」

シンジ「そ、それは、そうだけど」

レイ「揺らいではダメよ。絶対に、裁判が終わるまで被告人を信じ抜くの」

シンジ「え?」

レイ「……葛城弁護士がそう言ってたわ」

シンジ「……!」

シンジ「そっか。そうだね」

シンジ(そうだ、僕は信じるんだ。あのコを、そして僕自身を)

サクラ「べ、弁護士さん!」

シンジ「!」

サクラ「う、うち、昨日はあんなこと言っちゃいましたけど、こうなったら信じますから、弁護士さんのこと!」

サクラ「ぜっっったいムザイにしてくださいね、うちのこと!」

シンジ「え?う、うん!任せてよ!」

???「……」

シンジ「?」

シンジ(あれ、今、誰かこっちを見てたような)

???「……」

シンジ(……あの人だ。誰だろう?)

シンジ(胸に弁護士バッジをつけてる)

シンジ(ってことは弁護士かな?でもなんでこの法廷に?)

シンジ(誰かを探してるみたいに見えるな)

レイ「碇くん、もうすぐ開廷時間よ!」

シンジ「!そ、そうだね。よし、行こうか」

サクラ「……」

シンジ「じゃあ、サクラちゃん。行ってくるよ」

サクラ「は、はい、お願いします」

とりあえず今日はここまでで

同日 9:03分 地方裁判所 法廷

裁判長「では、これより鈴原サクラの法廷をはじめます」

アスカ「検察側、準備完了しているわ」

シンジ「弁護側、準備完了しています」

シンジ(式波検事……九年間無敗のエリートか)

シンジ(……厳しい戦いになりそうだな)

レイ「あのコが式波アスカ……」

裁判長「お二人とも随分お若いですな」

裁判長「確か、弁護側が碇くん」

シンジ「はい」

裁判長「そして検察側が惣流君でしたかな」

アスカ「……ええ」

レイ「惣流?あのコは式波検事ではないの?」

シンジ「本名は式波アスカさ。だけど彼女は法廷の中でだけは惣流アスカを名乗っているんだ」

レイ「法廷の中でだけ?一体どうしてそんなことをするの?」

あ、言い忘れてたけど今日は色々あってまだ外だから携帯から書いてます
操作慣れなくて投稿ペース落ちるかも

シンジ「……さあ、何か事情があるんじゃないかな」

裁判長「では惣流君、冒頭弁論をお願いします」

アスカ「今回の事件は至ってシンプルよ」

アスカ「ある法律事務所で弁護士が一人、殺されたの。事件現場にいたのは現在の被告人」

アスカ「本法廷であたしがすることは、被告人の犯行のカンペキな立証よ」

アスカ「このあたしが担当した以上、当然ね」

アスカ「お相手の弁護士もよりによって新米みたいだし?」

シンジ「うっ!」

裁判長「ふむぅ、カンペキな立証ですか」

アスカ「まずは事件の捜査を担当した真希波刑事に証言を求めるわ!」

裁判長「分かりました。では真希波刑事をここへ」

シンジ(いよいよ始まるのか……サクラちゃん、待っててよ!)

マリ「はーい!」

アスカ「証人、名前と職業を」

マリ「あ!姫ー!」

シンジ「ひ、ヒメ……?」

裁判長「ヒメ?」

アスカ「…………」

マリ「やあ姫ー!あたしを呼んでくれてありがとうー!アイラビュ!」

シンジ(ひ、ヒメって……明らかに惣流に向かって言ってるよな)

アスカ「…………」

裁判長「はて、そのヒメというのは?」

アスカ「さあ?あたしに聞かれても困るわね」

アスカ「とにかく、証人は名前と職業!早く言う!」

マリ「もう、お姫様ったら釣れないにゃ〜」

アスカ「名前と!職業!」バン

シンジ(ぼ、僕は一体何を見せられてるんだろう……)

レイ「変わった人ね」

シンジ「そ、そうだね」

マリ「あたしの名前は真希波マリ、刑事をやってるにゃ」

マリ「あん、年齢は秘密よ!」

アスカ「聞いてないし、あたしと同年代でしょ!」

マリ「やん、ヒメってばナイスツッコミ!」

アスカ「…………」

シンジ(唇を震わせて怒っているぞ)

マリ「あ、それはそうと、やっぱりそっちはワンコくんじゃん!」

シンジ「え……」

裁判長「証人は弁護人とも知り合いなのですか」

マリ「知り合いも何も、事件現場に被告人と一緒にいたのがワンコくんだし」

裁判長「なんと!それは本当ですか、ワンコくん!」

シンジ(いや、ぼく碇くん)

シンジ「はぁ、一応いましたけど」

アスカ「ふっふっふ」

シンジ「?」

アスカ「なら、分かってるんじゃない。あんたも現場を目撃したんでしょ?」

アスカ「そこの被告人が現場で被害者と一緒にいるのを」

裁判長「そうなのですか、碇くん!」

シンジ「そ、それは……」

アスカ「この裁判、早くも判決が見えてきたわね」

シンジ「む、むむむ……」

レイ「碇くん大丈夫?」

シンジ「早くも胃が痛くなってきたよ」

レイ「私、腹痛止めなら持ってるけど」

シンジ「き、気持ちだけもらっておくよ」(君も結構変わってるな……)

アスカ「とにかく真希波刑事、事件のことを証言してもらえるかしら」

マリ「はいはい、姫の仰る通りに」

アスカ「…………」

シンジ(イッカンしているな)

裁判長「では真希波刑事、お願いします」

ー証言開始ー

マリ『事件は私立「葛城法律事務所」で起こったにゃ』

マリ『被害者は事務所長の葛城ミサト弁護士。死因は鈍器で頭を一発』

マリ『うちが現場に駆けつけた時、そこには被告人とワンコくんがいたにゃ』

マリ『そして現場を捜査したあたしは決定的な証拠を見つけたのよ!』

マリ『事件現場の机の上に被害者のダイイングメッセージが残されていた』

マリ『しっかりと被告人の名前が書かれてるからね。ケッテイテキな証拠?ってやつよ』

裁判長「ほほう、被害者のダイイングメッセージ、ですか」

アスカ「これが現場に残されていたそれよ」

裁判長「確かに、大きくはっきりと「サクラ」と書かれていますな」

シンジ(大々的すぎて逆にイワ感があるんだよな)

レイ「碇くん、気をつけて」

シンジ「え?」

レイ「あの検事さん、腕利きなんでしょ?」

レイ「下手に攻め込むとしっぺ返しをくらうわよ」

シンジ(確かに、綾波の言う通りだ。相手の出方が分からない以上、ここは慎重に攻めるべきか)

裁判長「とにかく弁護人、尋問をお願いします」

ー尋問開始ー

マリ『事件は私立「葛城法律事務所」で起こったにゃ』

シンジ「待った!」

シンジ「『おこったにゃ』……?」

マリ「うん」

シンジ「あの、『おこったにゃ』とはどういう?」

マリ「おこった、の語尾に口癖のにゃがついたにゃ」

シンジ「その口癖は絶対につけなければいけませんか!」

アスカ「異議あり!」

アスカ「……バカ弁護士はバカな質問をしてないで本題に戻りなさい」

シンジ「は、はい、分かりました」(怒られたぞ……)

マリ『被害者は事務所長の葛城ミサト。死因は鈍器で頭を一発』

マリ『うちが現場に駆けつけた時、そこには被告人とワンコくんがいたにゃ』

シンジ「待った!」

シンジ「誰ですか、そのワンコくんという人物は!」

マリ「??ワンコくんはワンコくんだにゃ」

シンジ「ちゃんと名前で言ってくれなきゃ分かりません!」

アスカ「異議あり!」

アスカ「弁護人の頭の悪さに異議を申し立てるわ」

裁判長「異議を認めます。弁護人はもう少し賢い発言をするように」

シンジ(ツッコミ方がムチャクチャだ……)

マリ「姫〜!ありがとう〜!」

アスカ「……姫?誰のことかしら?」

アスカ「裁判長、証人の発言は正確ではないみたいよ」

裁判長「真希波刑事、証言台での発言には気を使ってください!」

シンジ(ふ、フコウヘイだぞ!)

マリ『そして現場を捜査したあたしはアレを見つけたのよ!』

シンジ「待った!」

シンジ「アレ、というと?」

マリ「んもう、ワンコくん焦っちゃダメにゃ」

マリ「アレといえばアレしかないでしょ」

マリ『事件現場の机の上に被害者のダイイングメッセージが残されていた』

マリ『しっかりと被告人の名前が書かれてるからね。ケッテイテキな証拠?ってやつよ』

シンジ「待った!」

シンジ「ケッテイテキ、というのは本当ですか?」

マリ「そりゃあ、その子の名前が書かれていたわけだし」

シンジ「しかし、別の人物が被告人に罪を着せるために書いた可能性もある!」

アスカ「異議あり!」

アスカ「つまり、あんたは現場に被告人と被害者以外の第三者がいた可能性を指摘するのね!」

シンジ「そ、その可能性もあるでしょう」

アスカ「その痕跡をあんたは示せるのかしら?」

シンジ「!」

アスカ「現場に第三者がいた可能性、それを示唆するムジュンがあるというならば、それを突きつけるべきよ!」

アスカ「その代わり、ただのハッタリだったら容赦はしないわ」

レイ「どうなの、碇くん?指摘できそう?」

シンジ「うん……と、とりあえずやってみるよ」

シンジ「弁護側が指摘する現場のムジュンは……」

アスカ「ふん、なるほど。まあそんな所だとは思ったわ、バカシンジ」

シンジ「ば、ばかしんじ?」

アスカ「……裁判長、続けて真希波刑事に証言を求めるわ。被害者の行動について」

裁判長「なるほど、いいでしょう。真希波刑事、お願いできますか?」

マリ「ラジャ!」

ー証言開始ー

マリ『犯人に殴られた被害者は最後の力を振り絞ったにゃ』

マリ『そして机の上のコピー用紙に犯人の名前を書いた』

マリ『犯人は慌ててそれを止めようとして被害者にもう一度襲いかかったのよ』

マリ『被害者は逃げようとしたけれど、窓際で力尽きたってわけ』

マリ『そこで犯人が証拠を処分する間もなくワンコくんが入ってきたって感じ』

今日はここまでにしておきます
なんかグダグダでごめんなさい

あ、本当だありがとう
>>74>>75の間に抜けてた分です

法定記録
『窓際の血痕』

シンジ「くらえ!」

シンジ「弁護側が指摘するムジュン、それはこちらです」

裁判長「これは……被害者の死体の状況ですか」

シンジ「はい。被害者は事務所の窓際で亡くなっていました」

シンジ「死の間際に机でダイイングメッセージを書いたのだとすれば、そこから窓際で息を引き取るまでの時間に空白が生じます!」

シンジ「この間、被害者がどうしていたのか説明がつきません!」

裁判長「なるほど、それなら筋が通ってるように思えますな」

アスカ「当然じゃない!あたしの立証にアナなんかあるわけないわ!」

シンジ(たいそうな自信だな)

レイ「碇くん、検事さんはああ言ってるけど?」

シンジ「うん、手札は揃ってるし、なんとかつき崩してみるよ」

裁判長「では碇くん、尋問をお願いします」

ー尋問開始ー

マリ『犯人に殴られた被害者は最後の力を振り絞ったにゃ』

マリ『そして机の上のコピー用紙に犯人の名前を書いた』

マリ『犯人は慌ててそれを止めようとして被害者にもう一度襲いかかったのよ』

マリ『被害者は逃げようとしたけれど、窓際で力尽きたってわけ』

シンジ「異議あり!」

法廷記録
『検死結果』

シンジ「『あたしの立証にアナなんかあるはずがない』でしたっけ、惣流検じゅわっ!」ビシッ

マリ「わ、いいリアクション」

アスカ「言いたいことがあるなら早く言いなさいよ!」

シンジ(し、証拠品ファイルが飛んできたぞ!)

アスカ「証人の発言に異議があるってわけぇ!?」

シンジ「あ、いや、あの。い、今の証人の発言……この証拠品と……その、ムジュンしてるかなって……」

裁判長「これは……被害者の検死結果ですか?」

シンジ「はい。そこには確かに『被害者は即死』と書かれています」

シンジ「即死の被害者が、どうやってダイイングメッセージを残し、襲いかかる犯人から逃げられたんですか!」

マリ「おおっ!!」

マリ「確かに不思議だねぇ、一体どうしてだろう!」

シンジ(よし、真希波刑事もああ言ってる!惣流の方も……)

アスカ「…………」

アスカ「ふん、いい気なもんね」

シンジ(なんだ?随分と余裕そうだぞ)

アスカ「あんた、その検死結果、いつ、誰からもらったの?」

シンジ「これですか?」

シンジ「確か昨日の午後にそこの真希波刑事から」

マリ「に゛ゃ!?」

マリ「わ、ワンコくん!それは言わない約束だって!」

シンジ(ああ、そういえば姫って惣流のことだったのか)

アスカ「……ふぅ〜ん。そう」

アスカ「なら、真希波刑事に変わってあたしから謝っておくわ」

シンジ「謝る?」

アスカ「そう、うちの刑事が遅れた情報を提供してしまったことに対して、ね」

シンジ「お、遅れた、だって?」

アスカ「あんた、その検死結果は古いわ」ニヤ

アスカ「こっちが最新のものよ。『死後僅かな間、被害者が生きていた可能性を認める』とある」

アスカ「検察側はこれを証拠品として提出するわ」

裁判長「なるほど、確かにそのようですな」

裁判長「分かりました、この場で新しい検死結果を受理します」

法廷記録を書き換えた
『検死結果:死因は鈍器による一撃。死後、僅かな間生きていた可能性を認める』

シンジ「そんな!じゃあ、僕のこの証拠品は……?」

アスカ「今この時点をもって、ムイミよ」

アスカ「それと、コ・ネ・メ・ガ・ネ?」

アスカ「今月の給与査定、楽しみに来ておきなさいよ。「色々」とね」

マリ「え゛」

マリ「あ、あの……あたしまだ今月の家賃払えてないんだけど……」

アスカ「…………」

マリ「うう、眉に火がつきそう」

レイ「少し妙ね」

シンジ「え?」

レイ「このタイミングで検死結果の改訂を報告するなんて」

レイ「そもそも検死の間違いだってそう簡単に起こらないわ」

シンジ「!」

シンジ(まさか、証拠のでっちあげ……ってわけじゃないだろうね、惣流?)

アスカ「…………」

アスカ「とにかく、これで疑問は解消されたわ」

アスカ「被害者は殴られてから少しの間生きていた。だから殴られた後に行動する余地はあったのよ」

アスカ「説明はついたかしら?」

裁判長「確かに、このメッセージは被害者が残したもの、という可能性は高そうですね」

アスカ「ふふん、当然ね!」

シンジ(くそ、逆にこっちがフリになってしまった)

アスカ「続けて、証人には凶器について証言してもらうわ」

裁判長「分かりました。証人、お願いします」

マリ「ほいほー」

ー証言開始ー

マリ『凶器として使われたのはこの黒い置物型のライトにゃ』

マリ『海外の大企業ゼーレ社の商品で、大きくそのエンブレムが掘られてるにゃ』

マリ『海外の支店から三日ほどで配達されるらしいね』

マリ『被告人はこれを凶器として使ったと考えられるよ』

マリ『まあ、女の子が持ってても意味の無いものだからねぇ』

レイ「ゼーレ社……聞いたことがあるわ」

シンジ「え?」

レイ「かなり大きな企業よ。裏では諸国の様々な権力と繋がってるっていう噂もあるわ」

シンジ「そ、そんな大企業なの?」

レイ「確か、一時期葛城弁護士が熱心に調査していたような気がするわ」

シンジ「ミサトさんが……?」

シンジ(被今回の事件の害者であるミサトさんが調査していた企業の商品が凶器だって?)

シンジ「これはグウゼンなのか?」

ー尋問開始ー

マリ『凶器として使われたのはこの黒い置物型のライトにゃ』

シンジ「待った!」

シンジ「これ、ライトになっているんですか?」

マリ「イエース。オブジェタイプのライトにゃ」

マリ「ほら、ここをこうして押すと……」カチ

シンジ(うわ、結構強い光だな)

マリ「ムードメイクってやつだねぇ」

マリ『海外の大企業ゼーレ社の商品で、大きくそのエンブレムが掘られてるにゃ』

シンジ「待った!」

シンジ「ゼーレ社、というのは?」

マリ「んん、遅れてるねぇワンコくん」

マリ「今どきゼーレ社を知らないなんて、アウト・オブ・デイト!」

マリ「ジョーシキが足りてないよ」

シンジ(この刑事の口から常識と言われると、なんだかハラだたしいな)

シンジ「それで、エンブレムというのはこのマークですか?」

マリ「そう、蛇とりんごと七つ目の模様のことだよ」

裁判長「こ、これはなんともまた……」

アスカ「シュミの悪い絵ね……」

マリ『海外の支店から三日ほどで配達されるらしいね』

シンジ「待った!」

シンジ「三日ですか、随分かかるんですね?」

マリ「日本では販売が実装されてないからね。海外から届けて貰うことになるんだ」

アスカ「それで、そのブツがなんだっていうの?」

シンジ(……?)

シンジ(惣流、今なんとなく話題を急かしたような……気のせいかな?)

マリ『被告人はこれを凶器として使ったと考えられるよ』

シンジ「待った!」

シンジ「この置物が凶器、というのは確かなんですか?」

マリ「被害者の血液が検出されたからね。ほぼ、間違いないよ」

シンジ(なるほど、そこに間違いはなさそうだな)

マリ『まあ、女の子が持ってても意味の無いものだからねぇ』

シンジ「異議あり!」

法廷記録
『携帯電話』

シンジ「女の子が持っていても意味がない……確かにそう見えますね」

シンジ「ではなぜ被告人はこれを持っていたんでしょう」

マリ「そりゃあ、なるべく足がつきにくそうなものを凶器にと思ったんじゃないかな」

シンジ「残念ですが、被告人が凶器に使用する目的でこれを購入したというのは考えにくいんです」

アスカ「どういうことよ?」

シンジ「これを見てください」

裁判長「これは……携帯電話、ですか?」

アスカ「け、携帯電話、ですって?」

シンジ「この携帯電話には被告人と被害者の通話の記録が残されています」

ピッ

…………

ミサト『それじゃ、明日よろしくね?』

サクラ『わかりました、なんでもお伺いしますよ』

ミサト『センキュー!じゃ、またね、サクラ』

裁判長「…………」

裁判長「なるほど、これは確かに重要な証拠品ですが……」

裁判長「なぜこんな大事なものを検察側が提出していないのですか!」

アスカ「き、聞いてないわよ、携帯電話なんて……」グヌヌ

シンジ「さあ?真希波刑事がやらかしちゃったんじゃないですか?」

マリ「え、ええ!?ちょっとワンコくん、裏切り!?」

アスカ「こ、コネメガネェ〜……!」(来月の給与査定、覚えておきなさいよ……)ブツブツ

シンジ(おやおや、かわいそうに)

シンジ「とにかく、今お聞きしてもらった通り、被告人が被害者と会う約束をしたのは事件の前日です」

シンジ「つまり、これが計画的な犯行だとすれば被告人に」

シンジ「注文から三日かかるこの凶器を用意することは不可能なのです!」

シンジ「それならば女の子が持っていても意味の無いものを、どうして被告人は持っていたのですか!」

マリ「おおっ!」

アスカ「む……」

裁判長「ふむぅ、なるほど」

裁判長「確かにこれでは凶器と被告人の関係性にかなりギモンが残りますね」

アスカ「異議あり!」

アスカ「そんなのどうとでもなるわ!」

アスカ「たまたま被告人がこのシュミの悪い置物を持っていたのかもしれないじゃない!」

シンジ「異議あり!」

シンジ「どうとでもなるというならば、それがどうなったのかを証拠品で示す」

シンジ「それが検察側のするべきことではないんですか!」

アスカ「くっ!そ、それは……」

アスカ「…………」

シンジ(よし、惣流は言葉に詰まってるぞ)

シンジ(これでサクラちゃんの犯行にかなりのギモンが残った)

シンジ(裁判長の心証は傾いたはずだ!)

アスカ「……ふふふ」

シンジ(?)

アスカ「いい気なもんね、バカシンジ」

シンジ「な、なんだと……!」

アスカ「あんたの言う通りね。何がどうなったのか、そろそろ決着をつけましょ」

シンジ「け、決着だって……?」

アスカ「検察側は被告人の犯行のカンペキな立証を約束するわ」

裁判長「ど、どういうことですか、惣流くん」

アスカ「言ったままよ。被告人の犯行は明らかだわ」

アスカ「なんせ検察側は被告人の犯行を目撃した証人を準備しているんだもの」

裁判長「な、なんですと!?」

シンジ「な!!」

シンジ(は、犯行を目撃した証人だって!?)

レイ「碇くん、これ……」

シンジ「う、うん、まずいよね」(かなり……)

アスカ「ふっふっふ、あたしを追い詰めたつもりだったのかしら?」

アスカ「残念だったわね、バカシンジ」

シンジ(くそぅ。惣流のやつ、とくいげだぞ)

裁判長「ではさっそくその重要な証人を呼んでいただきましょう」

アスカ「もちろんよ!じゃあ犯行現場を目撃したシアム・シエール氏をここへ!」

寝ます
明日はもっと早めに書き始めて話を進めます

???「……」

アスカ「証人、名前と職業を」

???「……ホワッ?」

アスカ「……?」

???「オー、ソーリー。アイドンアンダスタンジャパニーズ」

アスカ「……」

シンジ(に、日本語が通じないのかよ!)

アスカ「め、メイアイハブ・ユアネームアンドワッドゥーユー?」

???「オゥ?オー、オーケー。イェアー!」

アスカ「ハリアップ!」バン

レイ「検事さんも大変ね」

シンジ(だ、大丈夫かなぁ)

シャムシ「マイネーミズ、シアム・シエール、イェア!」

シャムシ「アイワーキンセールスオブゼーレ!」

アスカ「聞いての通り名前はシアム・シエール、ゼーレ社の営業をやっているそうよ」

裁判長「はあ、それはそれは」

シンジ(通訳を呼ぶんじゃダメなのか?)

裁判長「ではシエールさん。事件のことについて証言をお願いします」

シャムシ「オゥ、オーケーオーケー」

シンジ(日本語が通じないんじゃなかったのかよ!)

アスカ「…………」

レイ「バクハツ寸前ね」

ー証言開始ー

シャムシ『アイサウ!アイサウザッツガーゥ』

シャムシ『キリングヴィクテムソー!アイテリブルド・フォーフィア』

シャムシ『アイイグザクトリーサウイト・フロムダ・ウィンドウオブマイルーム』

シャムシ『マイルーミズ・ネクストゥダ・ホテォオブダ・オフィスエインド』

シャムシ『イズオンダ・フロァワンオブィト』

シャムシ『マイティステモニズ・イグザクトリ・ディファネトリ・トゥルーリィ・トゥルー』

シンジ「…………」

裁判長「…………」

レイ「…………」

アスカ「…………」

……………………

アスカ「……えー、今聞いてもらったように」

裁判長「ち、ちょっと待ちなさい!証人は一体なんと発言したのですか!」

アスカ「あら裁判長、証人の発言くらいちゃんと聞いていなきゃダメじゃない」

シンジ「い、いやいや!証人の発言は全部英語だったじゃないですか!」

アスカ「……?」

アスカ「…………ああ、そうだったわ!」

アスカ「この国の人間は英語が話せないんだったわね。向こう暮しが長いせいですっかり忘れていたわ」

アスカ「はぁ、全く世界の外れで法廷に立つのも大変ね」

シンジ「どうするんですか、これでは尋問もできないじゃないですか!」

シンジ「大体、僕は学生の頃英語の成績が2でした!」

シンジ「英語なんてさっぱりわかりませんよ!!」

裁判長「弁護人の言う通りです!これはユユしき問題ですぞ!」

アスカ「む、むぅ……じゃあ、その。あたしが通訳するわ。それで文句ないでしょ」

裁判長「ふむぅ……弁護人、どう思いますか?」

シンジ「そうですね……」

シンジ「分かりました。その代わり、正確にお願いしますよ」コクッ

アスカ「ふん、あたしに偉そうな口効かないでもらえるかしら」

シンジ(とにかく、どんなことを話してるにせよこの証人を崩さなきゃ話が進まない!)

ー尋問開始ー

シャムシ『アイサウ!アイサウザッツガーゥ』

シンジ「待った!」

シンジ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「……あ、あの」

アスカ「なによ」

シンジ「つ、通訳、お願いしたいんだけど」

アスカ「はっ、呆れたわ。この程度の英語もろくにできないなんてね」

アスカ「証人はそこの被告人席のコが何かしてるのを見たそうよ」

シャムシ『キリングヴィクテムソー!アイテリブルド・フォーフィア』

シンジ「待った!」

シンジ「これは……?」

アスカ「被告人が被害者を殺害している所を見た、と言っているわ」

アスカ「証人は恐怖にフルえたそうよ、文句ある?」

シンジ(なるほど、ケッテイテキな証言というのはこの部分か)

シャムシ『アイイグザクトリーサウイト・フロムダ・ウィンドウオブマイルーム』

シンジ「待った!」

シンジ「惣流検事、お願いします」

アスカ「ふん!証人は確かに自分の部屋の窓からその光景を見た、と語ってるわね」

シンジ「証人の部屋、というのはどこに?」

アスカ「あんたバカ?まだ証言の途中なんだから最後まで聞きなさいよ!」

シンジ「し、シツレイしました……」(やりづらいなぁ……)

シャムシ『マイルーミズ・ネクストゥダ・ホテォオブダ・オフィスエインド』

シンジ「待った!」

シンジ「惣流検事」

アスカ「彼の部屋は事件があった法律事務所の隣のホテルにとっていたらしいわ」

アスカ「これでいいでしょ、ほら?」

シンジ「あ、あの……」

アスカ「なに」

シンジ「なんでそんなにエラそうなんですか?」

アスカ「バカね、エラいからに決まってるでしょ」

シンジ「そ、そうですか」(ミもフタもないな)

シャムシ『イズオンダ・フロァワンオブィト』

シンジ「なるほど」

アスカ「階は事務所の……って、え?」

シンジ「何となく分かりました。彼の部屋、事務所の一つ上の階にあるんですね」

アスカ「む……そうよ」

シンジ「あれ、何かフマンですか?」

アスカ「べ、別に。その調子で続けなさい」

シャムシ『マイティステモニズ・イグザクトリ・ディファネトリ・トゥルーリィ・トゥルー』

シンジ「待った!」

シンジ「あ、惣流検事。またお願いします」

アスカ「……ふん、いい気なもんね」

アスカ「ずばり、彼の証言は正確に、明確に、本当に本当みたいよ」

レイ「どう、碇くん。アナは見つかった?」

シンジ「ううん、どうかな。一通り聞いてみて、何となくピンと来たところはあるような」

レイ「検事さん、あの証人とは上手くコミュニケーションが取れてないみたいだし付け入る隙はありそうよ」

シンジ「うん、そうだね!」

シャムシ『アイサウ!アイサウザッツガーゥ』

シャムシ『キリングヴィクテムソー!アイテリブルド・フォーフィア』

シャムシ『アイイグザクトリーサウイト・フロムダ・ウィンドウオブマイルーム』

シンジ「異議あり!」

法廷記録
『コピー用紙』

シンジ「確かにそれを見た……ですか」

シンジ「シアムさん、いくら日本語が通用しないからって嘘をついていい理由にはなりませんよ」

シャムシ「!」

裁判長「ど、どういうことですか、弁護人!」

アスカ「ハッタリで言いがかりをつけてるならただじゃおかないわよ!」

シンジ「ハッタリなんかじゃありません。証人にその光景が見えたはずがないんです」

シンジ「惣流検事、あなたが提示している証拠が確かならね」

アスカ「ど、どういう意味よ」

シンジ「実際に考えてみましょう、事件現場の隣のホテルの一つ上の階、つまり現場のちょうど斜め上の位置に部屋を取っていた証人から見えた視界について」

アスカ「!」

シャムシ「オウ?」

シンジ「証人から見えたのはおそらく、窓際からその周辺の限られた部分でしょう」

シンジ「つまり、検察側の主張するように現場の中央部に位置する机で襲われダイイングメッセージを残した被害者の姿は」

シンジ「証人の視点から見えるはずがないんです!」

裁判長「なんと!言われてみれば確かにその通りですな」

アスカ「くっ!!」

シャムシ「ホワイ!?」

裁判長「しかしどういうことでしょう。本来見えるはずのない光景が証人には見えたというのは」

シンジ「ええ。当然、証言と証拠との間にムジュンが存在するのですから」

シンジ「そのうちの少なくともどちらかが誤りということになるでしょう」

シンジ「つまり検察側が提示する有罪の根拠には明らかなギモンの余地が残るんです!」

アスカ「な、なんですって!」

シャムシ「……!」

裁判長「なるほど、証拠と証言の食い違い……ですか。これについてどう思われますか、惣流くん」

アスカ「むう、確かに証人の証言が本当なら、あのダイイングメッセージの有意性はなくなるわね……」

アスカ「でも、被告人の犯行を目撃した人物がいることに変わりはないわ!」

シンジ(証拠の方を捨てたのか、まあ証言を採用した方が有利だしね)

シャムシ「…………」

シャムシ「……アノ」

シンジ「!」

アスカ「!」

シャムシ「チョト、イイデスカ?」

裁判長「し、シアムさん!」

アスカ「あ、あんたは日本語が喋れないんじゃ」

シャムシ「オー、ソーリー。ワタシ、ニホンゴニガテ」

シャムシ「ナルベク、シャベリタクナイ」

シャムシ「ミスタケンジサン、サキハツウヤクゴクロウサマ」

アスカ「…………!」グググ

レイ「検事さん、いい顔するわね」

シンジ「う、うん、そうだね」(今笑ったら殺されてしまうかもしれないな)

アスカ(あたしはミスケンジよ……!)ブツブツ

シャムシ「ケドワタシ、ジブンノイッテルコトジシンアル」

シャムシ「カッテニマチガッテルトオモワレルノ、キライ」

シャムシ「ミスタサイバンチョサン、ショウゲンカエタイネ」

裁判長「なるほど、証言の訂正ですか」

裁判長「分かりました、では訂正する内容について話してもらいましょう」

ー証言開始ー

シャムシ『ワタシ、タシカニハンコウミタ』

シャムシ『ワタシガミタヒガイシャ、フラフラダタヨ』

シャムシ『イッパツナグラレテ、メッセジカイテカラマドギワニゲテキテ』

シャムシ『ソコデトドメササレタネ。ワタシ、ソレミタ』

シンジ「…………」

シンジ(って、めちゃめちゃ喋れるじゃないか!)

裁判長「ふむぅなるほど、そういうことなら辻褄があっているかもしれませんね」

レイ「……今回の彼の発言、安直だったわね」

シンジ「そうだね、ここは証拠品をつきつけてギブアップしてあげよう!」

レイ「……それを言うならノックアウト」

シンジ「……」

裁判長「では碇くん、尋問を」

ー尋問開始ー

シャムシ『ワタシ、タシカニハンコウミタ』

シャムシ『ワタシガミタヒガイシャ、フラフラダタヨ』

シャムシ『イッパツナグラレテ、メッセジカイテカラマドギワニゲテキテ』

シンジ「異議あり!」

法廷記録
『検死結果』

シンジ「シアムさん、自分の発言に自信があるのならもう少し正確にお願いします」

シャムシ「ド、ドウイウイミネ!」

シンジ「残念ながらあなたの今の証言はありえないんですよ」

シンジ「検死記録を見れば簡単にわかることですが、被害者は鈍器の「一撃」で亡くなっているんです!」

シンジ「一発殴られたらそこで終わりなんですよ!」

シャムシ「ホワッ!?」

シャムシ「い、イェアー、アー」

シャムシ「ア、アイドントアンダスタンワッチューセイ。プリーズ……」

シンジ「何を言ってるか分かりませんよ!」バン

シンジ「僕は英語の成績が2だったんだ!正直英語で言われてもさっぱりです!!」

シャムシ「ホワッホワッ……!」

アスカ「っし!……はっ!」

シンジ(なんで惣流までガッツポーズしてるんだよ!)

レイ「碇くん、すごいツッコミだわ。輝いてみえるわよ」

シンジ「そ、そうかな。なんだかノってきちゃったよ」

シャムシ「あ、アイ……アイドン……」

シャムシ「……!」

シャムシ「オ、オウ、ソウネ」

シャムシ「ワ、ワカッタネ、ソノ」

シャムシ「ヒガイシャハヤッパリイチドシカナグラレテナイネ」

裁判長「それはどういうことですか、シアムさん」

シャムシ「テイセイ、マタスルネ」

シンジ「証人、法廷はコロコロと適当なことを言っていい場所ではありませんよ!」

裁判長「ふむぅ、どう思いますか、惣流検事」

アスカ「む、むむむ、あたしはその……」

アスカ「証人は発言に気をつけるべき、だとは思うけど」

シャムシ「イェスイェス。ワタシ、コンドコソダイジョブ」

裁判長「軽はずみな証言はこれで最後にしてもらいたいですな」

レイ「あの証人さん、随分とムリヤリ押し通してきたわね」

シンジ(ず、ズルいよぉ……)

ー証言開始ー

シャムシ『ソーリーソーリー、ヤッパリサッキノカンチガイダッタネ』

シャムシ『ヒガイシャ、マドギワデコロサレタ、マチガイナイ』

シャムシ『ワタシガミタノ、ソレダケネ』

シンジ「そ、それだけですか?」

シャムシ「イエスイエス」

アスカ「ならはじめからそう証言しなさいよ……」ギリギリ

シャムシ「ワルイネミスタケンジサン、チョトカンチガイシテタミタイダヨ」

裁判長「まあ、とにかく弁護人、尋問をお願いします」

シンジ「は、はあ」(あ、あんな短いのツッコミを入れる余地なんてないぞ……)

ー尋問開始ー

シャムシ『ソーリーソーリー、ヤッパリサッキノカンチガイダッタネ』

シンジ「待った!」

シンジ「簡単に勘違いで発言されては困ります」

シャムシ「ダカラソノコト、アヤマテル」

シンジ「謝って済むなら警察はいりませんよ!」

アスカ「誰にでも間違いはあるでしょ」

アスカ「それとも何か、弁護人はこれまでただの一度も間違いなく生きてきたのかしら?」

シンジ「それは……そうですけど」

レイ「……?」

シャムシ『ヒガイシャ、マドギワデコロサレタ、マチガイナイ』

シンジ「まった!」

シンジ「間違いない?どうしてですか」

シャムシ「ワタシ、ミテタ。ダカラトウゼンマチガイナイネ」

シンジ「しかしあなたは先ほど、かなりいい加減な証言をしているように思われましたよ!」

アスカ「異議あり!」

アスカ「……弁護人、あんた少し昔のことに囚われすぎなんじゃないかしら?」

アスカ「嫌われるわよ、そういうの」

シンジ「な、なんだと!全然そんなことないぞ!」

裁判長「…………」

シンジ(さ、裁判長にアワれみの目で見られてしまった)

書き溜めはここまでです

もうちょっとだけ書きますね

シャムシ『ワタシガミタノ、ソレダケネ』

シンジ「待った!」

シンジ「それだけって、他には何も?」

シャムシ「イエス、ソノトウリ」

シンジ「人が殺されている瞬間を見たのに、やけにアッサリしてますね」

シャムシ「オウ、ポリスニツウホウスルホウニキガイッテタヨ」

シンジ「どうしてそんなに落ち着いていられたんですか!」

シャムシ「オチツイテナイ、アワテテツウホウシタ」

シンジ(そ、そういう意味じゃないんだけど)

アスカ「さて、もうそろそろ充分なんじゃないかしら」

シンジ「!」

シンジ(まずい、今の状況じゃ攻めきれないぞ)

裁判長「ふむ、確かに証人への尋問はもうやりきった感じがしますね」

シンジ「そ、そんな、待ってください!弁護人はまだ!」

アスカ「異議あり!」

アスカ「はったり、はったり、はったり」

アスカ「そうやってまたのらりくらりとかわそうってんならそうはいかないわよ」

アスカ「弁護人、まだ尋問の余地があるというなら今、証言のムジュンを指摘しなさいよ」

シンジ「そ、それは……!」

レイ「碇くん、まだ使えそうな証拠あるの?」

裁判長「碇くん、どうですか?シアムさんの証言へのムジュン、あなたに指摘できますかな?」

シンジ「証言の……ムジュン」

シンジ(……ダメだ!何も思いつかない!)

シンジ「うぅ……な、何もありません……」

レイ「碇くん、諦めちゃダメよ!」

シンジ「そ、そんなこと言ったって、もう使えそうな証拠が……!」

アスカ「どうやら、弁護人にはムリみたいね」

裁判長「そうなると、シアムさんの発言は被告人の犯行を裏付ける充分な証言になりえます」

シンジ(そんな……!ここまでなのか……)

シンジ(このまま、僕は助けられないのか……『また』)

シンジ(サクラちゃん……ミサトさん……僕では、ダメなんですか)

裁判長「ここまで、のようですね。今回の法廷、どうやら結論が出たと言えそうです」

裁判長「被告人、鈴原サクラは……」



待った!



シンジ「!」

レイ「!」

裁判長「!」

アスカ「!」

ミツルギ「その判決、お待ちいただこうか裁判長!」

裁判長「!き、君は!」

シンジ「み、ミツルギさん!」

レイ「ミツルギ?」

アスカ「み、ミツルギ、ですって!」

アスカ「なんなのよ!いきなり入ってきて神聖な法廷を乱すなんて!」

ミツルギ「碇シンジくん、まだ諦めるには早すぎるぞ!」

シンジ「で、でも、もう証拠が……」

ミツルギ「証拠なんていくらでもある。真実を曇らせるウソをウソたらしめる証拠などな!」

裁判長「う、嘘ですと!」

アスカ「いきなり入ってきて何を言い出すかと思えば……!」

ミツルギ「裁判長、このデータを証拠品として提出させていただきたい」

アスカ「な!い、いきなり何言い出すのよ、もう結論は出ているのよ!」

ミツルギ「その結論にギモンの余地があると言っているのだ!常に法廷は、究極の真実を追求しなければならない!」

シンジ「!」

シンジ(し、シンジツ……そうだ、僕はシンジツを!)

ミツルギ「裁判長!お願いできないだろうか!」

裁判長「ふ、ふむぅ、しかし君はこの法廷を担当しているわけでは……」

ミツルギ「裁判長!このミツルギレイジのバッジにかけて、信頼に足るデータだということを保証する!」

ミツルギ「これが真実への重大な架け橋になるかもしれないのだ!」

シンジ(い、一体なんなんだ?このドトウの展開は……!)

ミツルギ「裁判長、データに目を通していただければお分かりになることがあると思う」

裁判長「む……!『右:零・零二。左:零・零一』とありますな」

シンジ「!」

シアム「!」

シンジ「そ、それって、めちゃくちゃ悪いじゃないですか!」

ミツルギ「そのとおり。証人、君は裸眼のその状態ではかなり視界が危ういのではないのだろうか」

ミツルギ「それこそ、今そこに立っているジャジャ馬くんが服装のせいで男性に見えてしまうほどに!!」

シャムシ「ほ、ホワッ!?」

アスカ「ジャジャ馬言うな!」

寝ます

ごめんなさい、なんか読み返してみたら変な感じなんで>>133の後に挿入で

またちゃんと書き溜めしておきます



裁判長「……分かりました、君がそこまで言うのなら特別に、緊急でこの証拠品を受理します」

裁判長「ところでこれは一体なんのデータなのですか?」

ミツルギ「被告人の健康診断における視力検査の結果だ」

シャムシ「!」

アスカ「な、なんであんたがそれを!」

ミツルギ「ふふ、ジャジャ馬くん。私を舐めてもらってはこまる」

ミツルギ「私はこれでも検察官、君が入手しているデータを手に入れることは容易いのだよ」

アスカ「な、なんですってぇ!」

ミツルギ「その視力で、およそ五メートルは離れているホテルの部屋から、電気のついていなかった現場を正確に目撃することが出来たのか!」

レイ「零・零一ではおそらくムリね」

シャムシ「ソ、ソレハ、ソノ……」

シャムシ「ワ、ワタシ、メガネカケテタネ。ダカラモクゲキハバッチリ……」

ミツルギ「ならばもっとはっきりと証言したまえ!眼鏡をかけていたのなら見えたはずだ!」

ミツルギ「犯人がどの凶器を使っていたか、どんな服装をしていたか!」

ミツルギ「部屋の状況はどうだったのかまで、はっきりとだ!!」

シャムシ「ホ、ホ、ホ」

シャムシ「ホワアアアアアアアアアアッ!!?」バン

ミツルギ「……」

シャムシ「ワトアイ……ワトアイサウ……」

ミツルギ「先ほどからどうやら、この証人の発言は信頼に足らない部分が多いらしいが」

ミツルギ「何より、現場を目撃したという情報、極めて確証性に欠けるのではないだろうか!」

裁判長「確かにその通りですな」

アスカ「そ、そんな……」

シンジ(す、すごい。まさかあのフリな状況を一転させてしまうなんて!)

レイ(これが、葛城弁護士の言っていた『逆転』?)

ミツルギ「裁判長、加えてこちらのデータもご覧いただきたい」

裁判長「これは……?」

ミツルギ「今、私が勤めている職場は流通に厳しくてね」

ミツルギ「サクラくんも例外なく通販に至るまですべての流通経路が記録されている」

ミツルギ「その中に、ないのだよ。犯行に使われた凶器がね」

裁判長「!で、では……」

ミツルギ「そう、サクラくんには凶器を入手する機会がないのだ」

ミツルギ「これはもうお話にならない」

ミツルギ「現状、判決を下すことなど明らかに不可能なのがお分かり頂けるだろうか」

アスカ「くっ……」

ミツルギ「ジャジャ馬くんにはもう少し正確な弁論をお願いしたいね」

アスカ「あ、あたしのこと馬鹿にして……許さない」

ミツルギ「とにかく、証拠、証言、全てに確証が持たれない以上、検察及び警察には再度、慎重な捜査を要求せざるを得ないだろう!」

裁判長「……全く、御剣くんの言う通りですね。君が来てくれなければ危なく判決を下してしまうところでしたよ」

シンジ(た、助かった……のか?み、ミツルギさんに頼りっぱなしだったけど)

裁判長「今回の審理はここで中断せざるを得ません。審理の続きは明後日、それまでに弁護人、検察双方にはより綿密な捜査を命じます」

シンジ「わ、分かりました」

シンジ(な、なんとかまだ生きてるみたいだ)

レイ「すごかったわね、あのミツルギさんっていう人」

裁判長「では、本日はこれにて閉廷」

アスカ「そんな……あたしが、こんな新米のバカシンジなんかに……!」バンバン

アスカ「こんなところで……あたしが……!」

同日 11:37分 地方裁判所被告人控え室

シンジ「ぶっはぁ〜、助かった……」

サクラ「あ、弁護人さん。その、お疲れサマです」

シンジ「さ、サクラちゃん。ごめん、なんだか情けないのを見せちゃって」

サクラ「そんな!弁護士さん、すごくカッコ良かったですよ!うち、シビレっぱなしでしたし!」

サクラ「……最後は心臓が止まりかけましたけど」

シンジ「は、ははは……」

シンジ(そりゃそうだよね。ミツルギさんが来てくれなかったら、僕は……)

???「どうやら、ミツルギのやつは間に合ったみたいだね」

シンジ「え?」

ナルホド「やあ、シンジくん。それにサクラちゃん」

シンジ「あ!ナルホドさん!」

ナルホド「シンジくん、サクラちゃんの弁護、担当してくれたんだね。ありがとう」

シンジ「いえ、半ばゴウインにって感じですし」タハハ

ナルホド「ミツルギが持ち込んだデータは役に立ってくれたかな」

シンジ「はい、あれのおかげでなんとか助かりました!それになんというかこう、本場を見せられたなって感じで!」

ナルホド「そうか、なら良かったよ」

シンジ「それに比べて僕は全然ダメでした。ミツルギさんが来てくれなかったらきっと……」

シンジ「情けないですよね、ほんと」

サクラ「べ、弁護士さん……」

ナルホド「……」

ナルホド「シンジくん、なんでキミは弁護士になろうと思ったんだい?」

シンジ「……え?」

シンジ「僕が弁護士になろうとした理由……?」

シンジ「それは……」

シンジ「…………」

ナルホド「別に話してくれなくても構わないよ。でも、もしもそこに理由があるのなら」

ナルホド「その時の気持ちを忘れちゃダメだ。そうすれば今の自分を信じることができるからね」

シンジ「今の自分を……信じる、か」

シンジ(僕にまだ、自分を信じる力が残っているのだろうか?あの時の僕に……)

ナルホド「…………」

ナルホド(……どうやら、ミサトさんの言っていた通りみたいだな)

シンジ「あれ、そういえば綾波は?」

ナルホド「綾波……っていうと、もしかしてさっきボクとすれ違いざまに出ていった女の人かい?」

シンジ「え!もう行っちゃったんですか!」

シンジ「今日のお礼、言いそびれちゃったな」

サクラ「あ、うちも一応言っておいた方がいいですよね、お礼!」

ナルホド「まあ、サクラちゃんの場合無事無罪になってから、だけどね」

レイ「……はい、はい。彼は葛城弁護士の事件の裁判で弁護を担当しました」

???『そうか、ではひとまず思い通りにことは進んでいるな?』

レイ「ええ、ですが彼……」

???『なんだ?』

レイ「どこかまだ、躊躇いがあるように感じます」

???『……なるほど。葛城弁護士は全てを教えきれなかったようだな』

???『レイ、シンジにはもっと強くなってもらう。今回の法廷、絶対に負けさせるな』

レイ「……分かりました」

ピッ

レイ(一体あの人は何を考えているの)

レイ(それに碇くん、あなたはどうして……)

アスカ「っだああああああ!!」

アスカ「くそっ!くそっ!こんのぉおおおおお!!」

アスカ「ちっきしょお!なんなのよあのミツルギとかいう男!」

ミツルギ「……私の名前を呼んだかね?」

アスカ「っ!きゃあああああ!」

アスカ「ってあんたさっきの!ミツルギ!」

ミツルギ「随分な荒れようだな」フッ

アスカ「ちょっと、勝手に入ってこないで!出てってよ!」

ミツルギ「少しは話を聞こうという気はないのか?」

アスカ「ないわ!」

ミツルギ「む、むう、そうか」(真っ正面から断られてしまった)

アスカ「だいたいあんた、あれだけ法廷であたしをコケにしておいて!」

アスカ「こんなところまで来てあたしを笑いに来たんでしょ!あんな、新米の弁護士に恥かかされて!」

アスカ「笑いたいなら笑えばいいじゃない!ほら早く!笑いなさいよ!」

ミツルギ「ははは、はは……」

アスカ「…………」

ミツルギ「…………」

アスカ「いやああああああああ!!バカ最低早く出ていってよ!!」

ミツルギ「ま、待て!私は何も君を笑いに来たわけではない!ジャジャ馬くん、君に一緒に来てほしいのだ!」

アスカ「絶対嫌!!なんであんたについていかなきゃいけないのよ!!早く消えてってば!!」

ミツルギ(ぬ、ぬうう、どうしてこうなるのだ)

ナルホド「シンジくん、この後はどうするんだい?やっぱり事件の調査かな?」

シンジ「そうですね、明後日の法廷もありますし、今日みたいな調子だと危ないですから」

ナルホド「……どうだろう、その調査、ボクにも協力させてもらえないかな?」

シンジ「え、ナルホドさんが!?」

ナルホド「うん、サクラちゃんをなんとか助けたいという気持ちはボクも同じだからね」

ナルホド「ただ、その代わり一つ頼みがあるんだ」

シンジ「頼みですか?」

ナルホド「そう。シンジくん、君に来てほしいんだ」

ナルホド「ボクらと一緒に「ヴィレ」の本部にね!」

シンジ「!」

サクラ「!!な、ナルホドさん、それって……」

ここまでです

同日 13:45分 ヴィレ本部

シンジ「ヴ、ヴィレって本当にあったんですね……」

サクラ「あ、それどういう意味ですか!弁護士さん、やっぱり信じてなかったんですね!」

シンジ「だって使徒がどうとかネルフがなんとか、よく分からなかったし」

シンジ「というかサクラちゃん、君って一応被告人だよね?こんな所まで来て大丈夫なの?」

サクラ「ふふふ、実はそこら辺には色々とコネがありまして。ね、ナルホドさん?」

シンジ(今サラッと怖いこと言ったぞこのコ)

ナルホド「うん。と、というかサクラちゃん、まさかヴィレのこと話しちゃったのかい!?」

サクラ「え?……ああ!そういえばキギョウヒミツだったんでした!」

ナルホド「ど、どうりでシンジくんの飲み込みがいいと思ったよ、とほほ」

シンジ(……なんだ?サクラちゃんが言ってたの、大事な話だったのかな?)

シンジ(よくわかんないけど)

シンジ(それにしてもここ、位置的には裁判所の真下に当たるんだろうか)

シンジ「これが……ヴィレですか?」

ナルホド「うん、そうさ。裁判所の地下にこんなものがあるなんて驚いたかい?」

シンジ「僕はこんなものの上で戦っていたのか……」

シンジ(一体なんだろう、この形)

シンジ(とかげ……いや、鳥の骨みたいな姿の大きな建物が空漠とした地下空間にそびえている)

シンジ(なんだか全然現実味がない光景だな)

ナルホド「まあ、驚くのも無理はないさ。ボクもはじめてここに来た時は驚いたよ」

シンジ「ナルホドさんがはじめてここに来た時?」

ナルホド「うん。一人の不思議な男の子に連れて来られてね」

シンジ「不思議な男の子……?」

シンジ「それにしても、なんでこんな形なんですか、その、ヴ、ヴィレって」

サクラ「あ、それ!それ!やっぱり気になりますよね!」

ナルホド「実はここはね、本当はただの建物じゃないんだ」

シンジ「建物じゃない?」

ナルホド「うん。本当はあれは艦なんだよ」

ナルホド「希望の艦『ヴンダー』、それが本当の名前さ。最も、今は飛ばないんだけどね」

シンジ(飛ばない艦だって?)

シンジ(まあこんな閉じられた場所にいたら飛べないか、そりゃ)

サクラ「ね、そろそろ行きましょうよ。ナルホドさん、弁護士さんを紹介するんですよね、あの人に?」

ナルホド「うん、そうだね。実はシンジくん、君に会って欲しい人がいるんだ」

シンジ「会って欲しいって……どういう意味ですか?」

ナルホド「ミサトさんのことやサクラちゃんのこと、知りたいだろ?」

シンジ「ミサトさんに、サクラちゃん?」

シンジ「あの、それって……」

ナルホド「……さあ、行こうか。ヴンダーの中へ」

同日 某時刻 ヴンダー内部

???「あ、ナルホドくん、サクラちゃん!おかえり!」

サクラ「あ、マヨイちゃん!ただいまやー!」

ナルホド「ただいま、マヨイちゃん」

マヨイ「いやー、ちょうどよかった。ヒマだったんだよねぇ、あたし」

マヨイ「……って、あれ?そちらさんは?」

シンジ「え、僕?」

ナルホド「ああ、紹介するよ。彼は碇シンジくん、弁護士さ」

ナルホド「で、こっちが綾里マヨイちゃん。格好がアヤしいのは気にしないで」

マヨイ「ちょっと!この服はゲンカクな伝統と倉院流霊媒のカクシキを重んじた大事なものなんだから!」

ナルホド「とにかくほら、シンジくんに挨拶しなさい」

シンジ「あ、碇シンジです。よろしくね」

マヨイ「シンジくん?うん、綾里マヨイだよ!よろしくね!」

マヨイ「それにしても弁護士かぁ。じゃあナルホドくんと同じで、ツミな男ってやつなんだねぇ」フフ

シンジ(ねぇ、と言われても)

マヨイ「あ、ナルホドくんの言う事は気にしなくていいからね。この男、口先だけは達者なもので」

ナルホド(どの口が言ってるんだ)

シンジ「二人とも、仲がいいんですね」

マヨイ「仲がいいというか放っておけないからね、ナルホドくんは」

ナルホド(どの口が言ってるんだ)

マヨイ「まあ、聞きたいことがあったらなんでも聞いてくれていいんだよ、新入りクン」

シンジ「し、新入り?なんのこと?」

マヨイ「あれ、違うの?」

サクラ「うーん、違うというか、どうなんでしょう。ね、ナルホドさん?」

マヨイ「どうなの、ナルホドくん?」

ナルホド「どうしてボクに聞くんだよ」

ナルホド「あの子に聞いてみなきゃ、今のところはなんとも言えないさ」

マヨイ「あの子?あ、もしかしてカヲルくんのこと?」

ナルホド「うん。今、どこにいるのかな?」

マヨイ「うーん、さあ?あの人、結構カワリモノだからねぇ」

マヨイ「この前なんか、いきなりダイサンターミナルで会っちゃってさ。散歩でもしてたのかな」

ナルホド(どこにいるかは分からない、か)

マヨイ「あ、でも今ならブリッジにいるんじゃないかな?」

ナルホド「ブリッジ?」

マヨイ「うん!カヲルくん、お昼が終わった頃はいつもあそこにいるよ」

マヨイ「『希望の翼は折られてしまったー』とかなんとか、毎日ツブヤいてるみたい」

マヨイ「ナルホドくん、こりゃあクサいね」

ナルホド(毎回思うけど、このコどこでそんな言葉を仕入れてくるんだ?)

ナルホド「ふーん、そっか。ありがとうマヨイちゃん。ちょっと行ってみるよ」

ナルホド「マヨイちゃんはどうするの?」

マヨイ「うーん、どうしようかな。味噌ラーメンでも食べに行こうかな」

ナルホド「なんだ、まだご飯食べてなかったのか」

マヨイ「まさか!ちゃんと食べたよ。味噌ラーメンは別腹だってば!」

ナルホド・シンジ((なにが別腹なんだろう))

マヨイ「あ、そうだサクラちゃんもどう、一緒に味噌ラーメン?」

サクラ「うち、お金ないよ」

マヨイ「……あーん、ナルホドくぅ〜ん」

ナルホド「奢らないからな」

ナルホド「ま、とにかくそういうことなら、ボクらはちょっとブリッジに行ってくるから」

マヨイ「うん、分かった!じゃあね、ナルホドくん、サクラちゃん、それにシンジくん!」

シンジ「うん、じゃあまたね」

マヨイ「ふふふ、シンジくん。困ったらいつでも先パイとして話にノるからね?」

マヨイ「弁護士へのアドバイスならお手の物ってやつだよ、あたしは!」

シンジ(僕、多分この子より年上のはずだよな……)

同日 某時刻 ヴンダー・ブリッジ

ナルホド「マヨイちゃんの話だと、彼はこの時間はいつもここにいるらしいけど」

シンジ「あの、その「彼」って言うのは……?」

ナルホド「うーん、なんていうのかな。直接会ってくれた方が早いんだけど」

ナルホド「渚カヲルくんっていう不思議な子でね」

???「おや、僕のことをお探しみたいだね」

ナルホド「!」

シンジ「!」

サクラ「あ、カヲルさん!」

カヲル「やあ、ご無沙汰しているよ」

カヲル「はじめまして、でいいかな?碇シンジくん」

シンジ「え?なんで、僕の名前を知ってるの?」

カヲル「知っているさ。僕は君のことならなんでも知っているんだよ」

カヲル「僕は渚カヲル。よろしくね」

シンジ「渚……カヲルくん。うん、よろしく」

カヲル「ふふ、そんなに緊張しなくてもいいよ。ナルホドくん、ありがとう。彼を連れてきてくれて」

ナルホド「うん。それで本当なのかい?君のいう逆転の可能性、この碇シンジくんが持っているというのは」

カヲル「……そうだね、捻れた世界を元に戻すにはシンジくんの力が必要だ」

カヲル「だけどまだ、その時ではないらしい。希望の艦が動き出そうとしないからね」

ナルホド「このヴンダーが?どういう意味だい?」

カヲル「時が来た時、シンジくんがここに来れば希望の艦は必ずそれに応える。捻れた世界を復元するために」

シンジ「捻れた世界?それって一体どういう……?」

カヲル「世界の起源を知りたいのかい?ふふふ」

ナルホド「シンジくん、君は今の自分に違和感を感じたことはないかい?」

シンジ「違和感?」

ナルホド「そう。本当はこんな自分じゃない。ここは自分が立っている場所じゃない。そんな感覚を覚えたことはないかな?」

シンジ「!?」

シンジ「そんな、こと……」(ないと思うけど……)

ナルホド「結論から言うと『ヴィレ』は、その可能性を追っている組織なのさ」

カヲル「彼らはそれを世界の捻れと呼んでいるんだよ」

シンジ(世界の捻れ……?)

シンジ(な、なんか話が大きくなってきたな。僕はただ平和に弁護士をやっていただけなはずなのに……)

ナルホド「ヴィレの科学者、赤木リツコさんは実際にその可能性を……えーと……」

ナルホド「何だったかな?」

カヲル「十六次元的交錯」

ナルホド「そう。それだと仮定したんだ」

ナルホド「そしてその可能性を起こしうる……えー……?」

カヲル「超人知的生命体」

ナルホド「うん、それを使徒と名付けたんだよ」

シンジ「使徒……って怪獣のことですよね」

ナルホド「カイジュウ?」

サクラ「ひ、平たく言えばです」

ナルホド「つまりこの世界には使徒っていうよくわからない存在がどこかにいて、この世界をおかしくしてしまっている」

ナルホド「それが赤木博士の推測さ」

シンジ「な、なんだかすごい話ですね。僕にはとても……」

カヲル「そうかな。君は案外、今の説明にしっくり来ているんじゃないかい?」

シンジ「え!」

カヲル「シンジくん、この世界の捻れは君もどこかで必ず感じているはずさ」

カヲル「そして君は、この世界で使徒にたどり着きうるごく僅かな可能性の一つだ」

シンジ「あ、あの、どういう意味なんですか?僕がどうとか、使徒がとか」

ナルホド「それはボクが聞きたいくらいさ。カヲルくん、いい加減君の知っていることをボクらにも教えてくれていいんじゃないかな?」

カヲル「そうもいかないよ。残念ながら、今僕が君たちに伝えられるのは二つだけだ」

カヲル「この世界は、あるリリンの見ている夢でしかないということ。そして……」

カヲル「僕はシンジくん、君を幸せにするためにこの世界に遣わされたということさ」

シンジ「ぼ、僕を……幸せに?」

ナルホド「君はこの世界が夢というけど、そのリリンというのは一体誰なんだい?」

カヲル「それを言ってしまえば、僕のこの世界での役割は終わってしまう」

カヲル「でもまだその時ではないんだ」

ナルホド(どういう意味だ……?)

カヲル「シンジくん、君は今、葛城ミサトさんの事件の法廷に立っているね」

シンジ「!」

シンジ「カヲルくん、知っているの?ミサトさんのこと、あの事件のこと」

シンジ「なんで、なんでミサトさんは殺されなきゃならなかったの?一体誰がそんなことを……!」

カヲル「……」

カヲル「葛城ミサト、彼女はある企業を追っていたんだ」

シンジ「その企業って……」

カヲル「そう、この世界を支配する大企業ゼーレ社さ」

シンジ(また……ゼーレか)

カヲル「『人類補完計画』、それが彼女がゼーレを追っていた理由だよ」

シンジ「じ、人類補完計画?」

ナルホド「なんだかベタな都市伝説にありそうなやつだな」

カヲル「実際、世間での信ぴょう性はそんなものさ。だけど葛城ミサトさんはその計画に確信を持っていた」

カヲル「彼女はそのためにゼーレ社の内部にまで深入りしてしまったんだ」

シンジ「ま、まさか、それで……?」

カヲル「……」

カヲル「キール・ロレンツ」

シンジ「え?」

カヲル「この男を法廷に立たせることが出来るかどうか、君の勝機はここにかかっている」スッ

シンジ「これは……男の人の写真?この人がミサトさんを?」

カヲル「僕から君にそれを語ることはできない」

カヲル「ただ、もしも今回の法廷に勝ちたいのならば何としてもその男を法廷に立たせるんだ。そうすれば真実は必ず君の元に転がり込んでくる」

シンジ(真実が僕に……)

カヲル「それと、これも君に渡しておこう。葛城ミサト、彼女が必死で集めたゼーレの情報さ」

法廷記録
『キール・ロレンツの写真:高齢の男性の写真。彼がミサトさんを?』

『ゼーレのデータ:『CODE人類補完計画』と書かれた書類。僕には理解できない』

カヲル「僕が話せることはこれくらいだ。あとは君の力で真実を勝ち取るんだよ」

シンジ「ありがとうカヲルくん、こんなに沢山情報をくれるなんて」

シンジ「でもなんでそんなに色々なことを知っているの?」

カヲル「ふふ、さっきも言っただろう?僕は君のことなら何でも知っているのさ」

カヲル「ただ、君に話すことが出来ない。それだけだよ」

ナルホド「いつか、それも聞かせてくれるのかい?」

カヲル「もちろんさ。時が来れば、ね」

カヲル「さあ、そろそろ行きなよ。君たちにはまだ、するべきことがあるんだろう?」

ナルホド(ボクがシンジくんに協力するところまでお見通し、か。かなわないな)

シンジ「うん、本当にありがとう、カヲルくん」

カヲル「構わないさ。でも、忘れないでほしい」

カヲル「信じる心、君自身の力をね。君は決して無力なんかじゃない」

シンジ「カヲルくん……」

カヲル「そして時が来たら、またここに戻ってきてほしいんだ」

シンジ「ここ……ヴンダーに?」

カヲル「そう。その時、希望の艦はきっと動き出すだろう」

同日 某時刻 ヴンダー内・廊下

シンジ「カヲルくんの言葉、どういう意味だったんでしょう?」

ナルホド「分からないよ。でも、この艦が飛び立つことが出来ない理由を彼は知っているのかもしれない」

サクラ「弁護士さんがヴンダーを動かせる、みたいな言い方でしたよね」

シンジ「ぼ、僕、こんな大きな艦を動かせるとは思えないんだけど」

ナルホド「そこも含めて、何か訳がありそうだね」

ナルホド「ん?向こうから誰か来るな」

チョットドウイウツモリナノアタシヲコンナトコロニツレテキテ!!

ダカラソノコトニツイテハスマナイトイッテイルダロウ!

サクラ「あ、あれって……」

シンジ「!」(式波アスカ……!)

アスカ「すまないじゃないわよ!だいたいあんた、法廷であれだけ人をコケにしておいて……ん?」

ミツルギ「……おっと」

すいませんちょっとここまでで

ナルホド「み、御剣、その子……」

ナルホド「というかなんでお前はさっそくケンアクになっているんだよ!」

ミツルギ「む、し、仕方ないだろう!このジャジャ馬くんが」

アスカ「ジャジャ馬言うなっての!」

ミツルギ「むむむ、その、あ、アスカくんが実に聞き分けがないのだ!」

アスカ「人にあれだけ恥をかかせておいてよくそんな言葉が出てくるわね!」

ミツルギ「だからそれは真実のためにだな……」

アスカ「シンジツなんてあたしはどうでもいいの!」

ナルホド(結構キツい感じの子だ。こりゃ相当手を焼いてるみたいだな……)

ミツルギ「成歩堂、キミの方はその……どうやら『当たり』のようだな」

アスカ「んん」ジロ

シンジ「……」

アスカ「あらあらあんた、どこのどなただったかしら?」

アスカ「弁護士の顔と名前は覚えないようにしてんのよね。……情けない男は特に」

シンジ「……冗談はやめてよ、式波検事」

アスカ「……ふん、あんた。まぐれで1回逃げ延びられたからっていい気にならないでよ」

アスカ「法廷に立つあたしは、被告人の無罪判決は許さない。絶対に勝ってみせるわ」

ミツルギ「…………」

サクラ「ど、どうして検事さんはそんなことを!」

アスカ「どうして、ですって?そんなのあたしが検事だからに決まってるでしょ?」

サクラ「ど、どういう意味ですか!」

アスカ「検事の仕事は被告人を有罪にすること。それが出来ない奴に価値はないわ」

シンジ「……」

ナルホド「それはどうかな?」

アスカ「……?誰よ、アンタ」

ナルホド「ボクは成歩堂リュウイチ。シンジくんと同じ弁護士さ」(今は法廷から離れてるけど)

アスカ「ナルホドー?なに、あんた。弁護士フゼイがこの天才検事に物申そうっていうの?」

ナルホド「天才検事である君がどれだけエラいのか、ボクには分からない」

ナルホド「けど、弁護士も検事も、法廷に立つのなら真実を追い求めるべきじゃないかな」

アスカ「シンジツ?」

アスカ「……ふん、簡単に言うわね。なら聞くけど、そんなものがどこにあるの?誰が教えてくれるの?」

アスカ「誰もそんなもの教えてくれないじゃない。こんな世界のどこにもシンジツなんてないのよ」

アスカ「……ね、あんたもそう思うでしょ?バカ弁護士」

シンジ「……!」

シンジ「……いや、僕はナルホドさんの意見に賛成だよ」

シンジ「僕も、シンジツのために法廷で戦う」

アスカ「……はん、いい気なもんね、あんたは相変わらず」

シンジ「そういう君は変わったよ、アスカ」

サクラ「……!?」

ミツルギ「……さて、そろそろ行こうか、アスカくん」

アスカ「あたしも暇じゃないんだから、早く用を済ませてよね」

ナルホド「御剣のやつ、案外放っておけなくてあの子を選んだのかもな」

シンジ「選ぶ?……どういう意味ですか?」

ナルホド「……チルドレンのことさ」

シンジ「チルドレン?」

ナルホド「渚カヲルくんが教えてくれた。君たちのように『逆転』の可能性を持つ子をね」

シンジ「『逆転』の可能性?」

ナルホド「それがボクらには大事なんだ。さっきも聞いただろう?」

ナルホド「世界の捻れを解消して、ナントカ生命体の使徒にたどり着きうる可能性」

ナルホド「それを持った人間を彼、カヲル君や赤木博士は『チルドレン』と呼んでいる」

ナルホド「チルドレンとしてミサトさんは君を育てあげたんだよ。ボクも一度会ってみたかったから、君が今回の法廷に立ったのは幸運だったよ」

ナルホド「ボクやミサトさんが選んだチルドレンが君。そして御剣はあの子を選んだんじゃないかな」

シンジ「放っておけなくて、ですか?」

ナルホド「なんとなくね、そんな感じがしたよ」

ナルホド(あいつも昔、ああいうところあったからな)

ナルホド「……さてと、会う人にも会ったし、そろそろ戻ろうか。サクラちゃんをあんまり借りてても悪いしね」

サクラ「うう、うち、またあそこに戻るんですか」

ナルホド「もう少しの辛抱さ。大丈夫、必ず真相を暴いてみせるよ。ね、シンジくん?」

シンジ「は、はあ」

サクラ「うち、弁護士さんのこと信じてますからね!」

サクラ「……はぁ、あの刑事さんにお礼言っておかないとなぁ」

シンジ(コネの刑事、か)

一旦ここまで

同日 15:35分 葛城法律事務所

シンジ「また、戻ってきちゃったな」

ナルホド「ミサトさんの法律事務所か」

シンジ「ナルホドさんはミサトさんとはどういう関係だったんですか?」

ナルホド「関係?うーん……」

ナルホド「あの人と初めて会ったきっかけはヴィレだったよ」

シンジ「ヴィレ?……そもそもヴィレってなんなんですか?ナルホドさん、なんであんなところに?」

ナルホド「はは、まるで尋問みたいだね」

シンジ「あ、ご、ごめんなさい。なんかセンサクしちゃって……」

ナルホド「いや、いいんだ。君には教えておくべきだしね」

ナルホド「ボクがヴィレと初めて関わることになった理由はさっきの少年、渚カヲルくんだった」

ナルホド「とは言ってもほんの数ヶ月前のことだよ。突然、出来なくなってしまったんだ」

シンジ「出来なくなった?」

ナルホド「うん。法廷に立つことが、ね」

シンジ「そ、そんな!一体どうして!」

ナルホド「それが分からないんだ。まるでスランプに陥ったみたいにボクのお家芸であるツッコミのキレが全くなくなっちゃってね」

ナルホド「それに証拠品を見てもさっぱりアタマが働かなくなったんだ。アレには本当に参ったよ」

シンジ「ええ!?な、なんか大変ですね」

ナルホド「そんな時に彼が現れたんだ。そしてボクを大法廷の地下深くにあるヴンダーに連れていった。さっきのマヨイちゃんやミツルギ達と一緒にね」

シンジ「そこでミサトさんと?」

ナルホド「うん。サクラちゃんや他の人たちともね」

ナルホド「ヴィレはこの世界に生まれてしまったイワ感を調査していたんだ。そしてそれは多分、この世界のほとんどの人がどこかで感じている」

シンジ「世界に生まれた、イワ感?」

ナルホド「そう。ボクが法廷に立てなくなった理由もそれらしいんだ」

ナルホド「その原因はカヲル君に言わせれば『夢』。赤木博士に言わせれば『使徒』」

ナルホド「正直、それ以上のことはまだボクにも分からない」

シンジ(なんか信じられない話だけど……でも)

シンジ(『使徒』……なんだろう、この引っかかる感じ。何かがおかしいような)

ナルホド「ミサトさんとは同じヴィレの弁護士としてよく話してたんだ。特にボクの裁判の話を面白がって聞いていたね」

シンジ「ナルホドさんの裁判の話?」

ナルホド「ミサトさんは笑っていたよ……」

シンジ(ナルホドさん、顔がモスグリーンになっちゃったぞ。あんまり聞かないでおこう)

ナルホド「……ボクが君の質問に答えてあげられるのはこのくらいかな」

ナルホド「さてと、そろそろ事件の捜査を再開した方がよさそうだね」

ナルホド「時間もそんなに無いみたいだし」

シンジ「そうですね。やっぱりまず調べるとするなら……」

ナルホド「キール・ロレンツ、だったっけ?」

シンジ「はい。でもこの人がどこにいるのかもまだ分かりませんから」

ナルホド「まずは情報収集だね」

シンジ「はい。……とするとまずは」

シンジ(綾波……あの娘はゼーレ社をミサトさんが調べていたことを知っていた)

シンジ(今朝の裁判のこともある。あのコの所、やっぱりもう一回行ってみよう)

同日 某時刻 綾波法律事務所

ナルホド「綾波さん、だっけ?」

シンジ「はい。確かこの法律事務所であってたと思います」

レイ「……」

ナルホド「それにしても随分小奇麗な法律事務所だね。ファイルも何も置かれてないなんて」

レイ「……」

シンジ「多分綺麗好きなんだと思います。なんかそんな感じしますから」

ナルホド「ふうん。ボクの事務所なんか例えばここいらには……」クルッ

レイ「……」

ナルホド「ぎゃあ!!」

レイ「ひどい。人の顔を見て、いきなり」

ナルホド「あ!ご、ごめん……なさい」(気配を感じなかったぞ!)

レイ「碇くん、どうしたの?今度は変な……尖ったお客さんまで連れてきて」

ナルホド(ボクのことだよな……?)

シンジ「うん、急にごめん。今日のお礼、言えてなかったと思ってさ」

レイ「お礼?何の話?」

シンジ「今日一緒に法廷に立ってくれたじゃない。僕、まだ新米だからさ。あれ、すごく心強かったよ」

レイ「ああ、そのこと……。別に気にしないで」

レイ「ところで誰なのこの……尖った人は」

ナルホド(尖ってて悪かったな)

シンジ「あ、そっか、ごめん。あの、この人は成歩堂リュウイチさん」

ナルホド「よろしくね」

レイ「ナルホド……?」

シンジ「それからこっちが綾波レイです」

レイ「」コクッ

ナルホド(綾波さん、か。なんだかミステリアスな雰囲気だな)

レイ「それで、まさかお礼を言うためだけにここまで来たの?」

シンジ「うん、実はそれだけじゃないんだ。綾波にちょっと聞きたいことがあって」

レイ「聞きたいこと?」

シンジ「今朝の裁判に何度か話が出てきたと思うんだけど、ゼーレ社のことなんだよ」

レイ「ゼーレ?ゼーレがどうかしたの?」

シンジ「綾波はさ。もしかしてこの人のこと、知ってたりしないかな?」スッ

レイ「!」

レイ「キール……ロレンツ?」

シンジ「……!」

ナルホド「なにか知ってるみたいだね」

レイ「碇くん、なぜあなたがこの人の写真を?」

シンジ「え……じ、実はある人から貰ったんだけど」

レイ「碇くんがこの写真を持ってくるなんて……」

レイ「いいわ、そういうことなら私もあなたに協力する」コクッ

レイ「その男、ゼーレの代表取締役よ」

ナルホド「つまり社長か」

シンジ「だ、大企業の社長って結構な大物じゃないか!」

シンジ「……あ、でも確かゼーレって海外の企業だよね?じゃあこの人、今は日本にいないのかな」

レイ「……いえ、いるわ」

シンジ「え!」

レイ「葛城弁護士の事件のちょうど1週間ほど前から彼は来日しているはず」

レイ「もちろん今もよ」

シンジ「な、なんだって!」

ナルホド「ミサトさんが追っていた企業の取締役が、ミサトさんの事件の1週間前から日本に来ている、か」

シンジ(偶然にしてはどう考えてもできすぎてる)

レイ「どうしたの碇くん。まさかこの人を疑っているの?」

シンジ「いや、まだ分からない。でも話を聞く必要があるんだ、この事件のシンジツを見つけるために」

レイ「会えるかしら?」

シンジ「どこにいるか知ってるの?」

レイ「ええ。多分今はゼーレ社の支部に滞在しているはずだけど」

シンジ「そっか。あのさ、できればでいいんだけど案内してもらえないかな、そこ」

レイ「構わないわ。あなたに協力する」

シンジ「ありがとう、助かるよ!」

ナルホド(ゼーレ……人類補完計画、か)

レイ「じゃあ明日、またここに来て。その時までに私もなるべく彼の情報を集めてみる」

ここまでです
次かその次は少し空くかも知れません

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