魔族「オヤジのせいで逃走生活する羽目になったぞ! チクショー!」 (52)


前回までのあらすじ! 人間界を支配しようとしていた魔王ことオレのオヤジは世界征服まであと一歩だった!

しかし現実は甘くない! オヤジの軍隊は勇者一行によって壊滅状態! これはまずいと思ったオヤジ! だが時すでに遅し!

勇者一行は既に俺たちの城に入り込んでいた! オヤジは間一髪で部下たちを魔界に戻すことに成功!

魔力が尽きたオヤジは勇者一行と戦うことになってしまう! 結果負けて人間界に平和が戻った!

こうして世界征服を企むバカだけがくたばりましたとさ! めでたしめでたし!


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462423318


――と言いたいところだけど、


 魔族「このオレはその時部屋で眠ってたんだよ! だから転移に間に合わず人間界に取り残されちまった!」

 兵士「追え! 逃がすな! 魔族は全員ぶっ殺せ!」

 魔族「しかも追われる身になっちまったよ! めでたくねえよ! バッキャロー!!」

 ゴースト「ワッハッハッハー! まあそう怒るな。こういう時こそ笑ってスマイル!」

 魔族「この状況を作った張本人に言われたくねーよ! バカオヤジ!」

 ゴースト「息子よ! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ! ワッハッハー!」

 魔族「うるせぇー!!」

 ゴースト「しかし親子二人で走ったのは何年ぶりだっけ? 昔を思い出すな!」

 魔族「こんな状況でそんなことを考えられるその頭が羨ましいわ!」

 ゴースト「そんなに褒めるな、照れてしまうだろう!」

 魔族「皮肉で言ってんだよ! バカ!」

 ゴースト「馬鹿って言うほ……」

 魔族「ループすんな! 壊れた蓄音魔道具か!」

 兵士「打てぇ!」


  ――パンパンッ!――


 魔族「うおっ危ね! “シールド”!!」


  ――カンカンッ!――


 ゴースト「ワッハッハッ! 我にそんな攻撃は効かないぞ!」

 魔族「防御してるのはオレだけどな……」


 魔族「ふぅ、やっとまけたぜ……」

 ゴースト「お疲れっちょ!」

 魔族「果てしなくうぜぇー……」

 ゴースト「息子よ、この逃走生活はどんなに多く見積もってもあと三日だ!」

 魔族「魔界の入口まで行くのにあと三日もかかるのか……」

 ゴースト「それまで存分に楽しもう!」

 魔族「楽しめるか! アホ!」

 ゴースト「阿呆って言った方が阿呆なのか?」

 魔族「知るか!」


  ――ガサガサ――


 ゴースト「む? どうやら腹をすかせた子犬がおるようだな」

 魔族「子犬? 腹が減ってんならこの晩飯用の肉食わせようかな? そういえば犬って肉食うのか?」

 ゴースト「よく人間とか食うからたぶん肉食だよ」

 魔族「ふーん…… えっ人間を食う?」

 ウルフ「グガァ!!」

 魔族「う、うわぁ!! “ヘルフレイム”!!」


  ――バアアァァァァン!!――


 ウルフ「くふっ!!」

 魔族「ビックリした! 魔物じゃねえか!」

 ゴースト「あらら、可哀想に。骨すら残ってないじゃないか」

 魔族「オヤジ! 子犬と魔物をどうやったら間違えるんだ!」

 ゴースト「えー、だってどっちも目と鼻と口の数が一緒だしー」

 魔族「オヤジにとっては人間もウルフもドラゴンも子犬なのかよ……」


 ゴースト「“魂戻っちゃえ、ついでにゾンビになっちゃえ”!」


  ――シュゥゥゥン!――


 ゴースト「ちょっと可愛そうだったから蘇生したぞ」

 魔族「完璧に死霊術だったじゃねーか」

 ゴースト「どっちも似たようなものでしょ」

 魔族「似てない似てない。つーかまた襲われたりしないよな?」

 ゴースト「そこのところは心配無用! ちょっと細工をしたから」

 魔族「具体的には?」

 ゴースト「空気中の魔力を吸収できるようになったからお腹が空かなくなる!」

 魔族「ただ腹が減らなくなっただけかよ、心配だなぁ」

 ウルフ「!!」


  ――タッ!――


 魔族「お、おい! こっちに来たぞ!」

 ゴースト「今度は殺さないでね」


  ――ズサッ!―― 


 魔族「ん?急にひれ伏した?」

 ウルフ「魔王…… 様…… 先程の無礼…… 誠に…… 申し訳ありません…… でした!」

 ゴースト「うむ!」

 魔族「つっこむべきか? これは?」


 ウルフ「先程は本当に申し訳ありませんでした!」

 魔族「えっと、その前に質問していいか?」

 ウルフ「はい!」

 魔族「魔物ってしゃべれるのか?」

 ゴースト「ワッハッハッ! 息子よ! 魔物は……」

 魔族「オヤジは黙れ」

 ウルフ「いえ、基本的には喋れない魔物は大勢います。しかし体内の魔力の量が多ければ思想を飛ばす――テレパシーのようなことをして会話をすることが     可能な魔物もいます。私の息子はそれです」

 魔族「ふーん…… けどお前はなんか普通にしゃべっているように見えるんだけど」

 ウルフ「魔王様が手を加えて下さったおかげです」

 ゴースト「ピース!」

 魔族「まあオヤジはバカだけど有能だからな」

 ゴースト「馬鹿って言……」

 魔族「聞き飽きたから黙れ」


 ウルフ「ところで、襲った身としては誠に申し上げにくいのですがよろしいでしょうか?」

 魔族「どうした?」

 ウルフ「実は…… 妻と息子に合わせて欲しいんです」

 魔族「――えっと? 詳しく話せ」

 ウルフ「はい! 私と妻と息子はこの森の奥に結界を張って生活をしていました」

 魔族「何気にすごいこと言ってるぞ、こいつ」

 ウルフ「結界を張ってるのは私の息子です」

 魔族「さっきから聞いていたがお前の息子すげーな」

 ゴースト「我の息子もすごいぞ! ただ口が悪いのが難点だが」

 魔族「おい、狼。こいつのことはバカって呼んでいいぞ」

 ウルフ「は、はぁ」

 ゴースト(そういえば全然関係ないけど、昔飼っていたポチ丸(狼)は全く別の生命体になってしまったんだった)

 ゴースト「どこで育て方を間違えたんだろう? ちょっと前までは可愛かったのに」

 魔族「オヤジがバカだからだろ、まったく」

 ゴースト「うーん…… そうか……」

 魔族「――あっ! か、勘違いするんじゃねーぞ! オヤジがバカだからといって、嫌いではないからな!」

 ゴースト「――あっちょっと考え事してて聞いてなかった! ごめん! 何か言ってた?」

 魔族「バァカァオォヤァジィ!!! 心配して損した!!」

 ゴースト「馬鹿って言……」

 魔族「うるせぇぇぇぇぇ!!!」

 ウルフ(仲いいな)


 魔族「すまなかった。話を戻してもらっていいか?」

 ウルフ「はい。ある日私はうっかり結界の外へ出てしまいました」

 ゴースト「このうっかり者め!」

 魔族「オヤジのことは基本無視でいいぞ」

 ウルフ「はい。そしてその結界は一度出たら戻ることは困難なんです」

 魔族「まあ、簡単に入れたら結界の意味がないからな」

 ウルフ「そこでお願いがあります! どうか結界の入り口を探してくれませんか?」

 魔族「うーん……」


 ウルフ「襲った身でこんなことを言うのはおかしいですが、何でもいたしますから!」

 ゴースト「ん? 今何でもするって言った……」

 魔族「よし! なかなか強力な結界だったから手間取っちまった! オレについて来い!」

 ウルフ「えっ? どうしたんですか?」

 魔族「だ、か、ら、見つけたんだよ。入り口を、結界の」

 ウルフ「もう見つけたんですか!? と言うよりいつから探してたんですか?」

 魔族「えっと、話終わった直後。ってそんな細かいことどうでもいいだろ。早く行くぞ!」

 ウルフ「ちょっと待って下さい! 私は仮にも貴方を襲ったんですよ!? そんなすぐに了承したんですか!? いいんですか!?」

 魔族「え? だってオレはお前のこと一回殺したんだぞ。罪悪感とか感じるだろ?」

 ウルフ「いえ、それは私が襲ったのが悪いのでは?」

 ゴースト「ワッハッハッハッ! 息子は我に似て優しいからな!」

 魔族「仮にも世界征服を企んでた奴が優しいとは世も末だな」

 ゴースト「ハッハッハッ! 照れるぞ、もっと褒めろ!」

 魔族「――なあ、何でもするって言ったよな」

 ウルフ「――はい、言いました……」

 魔族「じゃあひとつだけ命令しよう!」

 ウルフ「はい……」

 魔族「今後はオヤジのことはバカと呼べ!」

 ウルフ「!?」

 ウルフ「……」

 ウルフ「――はいっ! わかりましたっ!」

 ゴースト「君!! 最高の笑顔でOKするなぁー!!」


 魔族「ここだよな?」

 ウルフ「はい。おそらくは」


  ――ビリリリリ!――


 ウルフ「ウギャー!! は、はい!! この焼かれ加減は間違いなく息子の結界です!!」

 魔族「ちょっと待て!! 焼かれる必要はあったのか!?」

 ウルフ「息子の結界に焼かれる機会なんてあまりないので、体験できるときにやっておこうと……」

 魔族(こいつひょっとして変態じゃないのか?)


  ――シュウィン――


 魔族「あっ! 結界が開いたな」

 「――だれ!? そこにいるのは!?」

 ウルフ「そ、その声は!?」

 狼少年「!! ぱぱ!!」

 ウルフ「ソイールゥ!! 元気だったか!?」

 魔族「――あいつ、どちらかというと魔族に近いな」

 ゴースト「おや! ここは我の知識が発揮できる場面だ! あやつはおそらくウルフと魔族、精霊の類とのキメラだな!」

 魔族「へえ~」

 ゴースト「あやつの魔力の属性は土、肌の色は薄い茶色! それらから考慮すると地底に住んでると言われる土竜族かな! あやつの相手は!」

 ウルフ妻「ガウガ!!(あ、貴方!!)」

 ウルフ「ガウコォー!! 会いたかったぞぉ!!」

 ゴースト「あれぇ~? おかしいな~? ウルフに見える」

 魔族「ププッ!!」

 ゴースト「わ、笑うなー!!」

 狼少年「……」

 狼少年「マインファーター、マインファーター。まおうがいるよ」

 ウルフ「マインゾーン。あれはただの馬鹿様だよ」


 ウルフ「本当にありがとうございました!!」

 魔族「そんなに感謝しなくていいから」

 ウルフ妻「ガウ!!(ありがとうございました!!)」

 狼少年「ありがとうございました!!」

 魔族「――まあ、感謝されて悪い気持ちはしないからいいが」

 ゴースト「ブーブー! 我だって頑張ったのに……」

 魔族「じゃあ、オレたちは行くからな! 元気でやっていけよ!」

 「「「さようなら!!」」」


  ――シュウゥゥゥン――


 魔族「――へへっ!」

 ゴースト「む! 病気か! 急に笑い出して!」

 魔族「ばっ! わ、笑ってねーし!」

 ゴースト「いや、確かに笑ったぞ! 病気なら薬を飲んだほういいぞ!」

 魔族「は? 病気?」

 ゴースト「病気じゃないのか? だったらなんで笑ったんだ?」

 魔族「い、いや…… だから笑ってないって……」

 ゴースト「うむ…… そうか?」

 魔族「そうそう!」

 ゴースト「病気じゃないならまあいいか」

 魔族「そうそう! 気にするな!」

 ゴースト「うむ! ――お、もう夜ではないか!」

 魔族「だな。飯食って寝るか」

 ゴースト「そうしようか! 今日はリトルドラゴンの丸焼きが食べたいな!」

 魔族「ツッコんで欲しくて言ってるのか?」


――その頃の暗い夜道――


俺はとある料理店で働いている普通の男だ。

お客さんがちょっとしたトラブルを起こしてしまったせいでいつもよりも少し遅くに帰ることとなった。

この道は夜になると真っ暗になる。手に持っているランタンの明かりのおかげで辺りが辛うじて見える程度だ。

特にすることはないから歩き続けながら考え事をした。

夕食は何がいいか、明日は休みだしどこに行くかとあれこれ考えていると同僚たちがとある噂をしていたのを思い出す。


 ねぇ。あそこの森の辺りって昔処刑場があったんだって。

 え! 何それ!

 当時の王様がそれはそれは残虐な暴君で少しでも気に入らない人がいると公開処刑をしていたそうだよ。

 えぇ~! 本当なのそれ~?

 まあ私も友達から聞いただけだから本当かどうかわからないけどその処刑方法がそれまた凄く残酷だったらしいよ。

 え?

 なんでも手、首、足にロープを引っ掛けて動物に引っ張らせたとか。

 うぁ。

 当然だけど体が引きちぎられるじゃん。

 想像したくない。

 その死体は処刑場の近くに穴掘って無造作に埋められたらしいよ。

 ひどいね。

 で、ここからが本題なんだけど、ある人の死体が見つからなかったんだって。

 え!? どういうこと!?

 引っ張った衝撃で手足がどっかに飛んでっちゃったとか。で、その日から手だけの幽霊が夜になると現れるようになったんだって。

 体のパーツを集めるため?

 そう、そのとおり!

 おーい、お前ら。話してないで真面目に仕事しろ。

 はーい。

 はーい……

 そういえば先輩の帰り道って森の近くを通るらしいですね。帰りは幽霊に気を付けてくださいね。

 うるさい、俺はそんな話信じてないからな。


そんな噂をふと思い出してしまった。くだらない。

この辺りは夜になると本当に真っ暗になる。だからもの好きが変な噂をでっち上げたに違いない。

改めて辺りを見回してみる。

普段は夕方に帰るからか、いつもと違った印象を覚える。

木々の葉っぱが夜風に揺られてざわめいている。

風がヒューヒューと音を立てながら息をしている。

暗闇が大きな口を開けて俺を食べようとしている。

ええい、やめだやめだ! 幽霊なんていない! そんなくだらない噂を信じてどうする?

俺は変な考えを振り払うように、頭を横に振った。

そのとき不注意のせいか、転んでしまった。

ランタンも放してしまい、地面に思い切りぶつけて壊してしまった。

しまった! こんな真っ暗闇の中では明かりなしで歩くのは困難だ!

馬鹿なことをしてしまった自分を心から呪う。

仕方ない。手探りで帰るしかないか。

そう思ったとき、背後で“ピチャン”と音がした。


振り返った。だが真っ暗で何も見えない。

今の音はなんだ? まるで水滴が落ちるような音だった。

いや、水滴というよりは水の塊と形容したほうがいいか。

心臓がバクバクと脈打ってる。俺の前には一体何がいるのか?

今にも逃げ出したい。だが、恐怖で体が動かない。

一秒が何時間にも感じられた。

そして、生暖かいものに足を掴まれた。

真っ暗なはずなのにそれだけははっきりと見えた。



















それは地面から生えた“手”だった。

俺の意識は深い闇に消えてしまった。


  ――ピチャン――


 「ぷはっ! うやめしや~ 夜道を明かりもなしに歩くのは危険だよ~」

 男「……」

 「えれ~? もうきぜつしちゃってる?」

 「――まあ、いいか! これでおどろかせた人間の人数は10人をとっぱしたよ、やったね!」

 「しかし、う~ん。人間をおどろかせるのもいいかげんあきてきたな~」

 「魔界に帰ろうにも帰れないし…… どうしよう……」

 「――まあ、明日考えよっか~ ウオーナにはすいみんが必要だよ」


――第一話完――

今更ながら書き込みますが初スレです。

至らない点があると思いますので、指摘して下さい。

また、このssには中二病要素、意味不明な理論、魔法、etc.があります。

嫌いな方も頑張って最後までみてください。お願いします。

また、ここまで読んで、吐き気、頭痛が起こったのでしたら、パソコンの横に紙袋を用意することをおすすめします!

吐きながらでも最後まで読んでください。人間、辛いときに頑張ると大きく成長するんです!!

あと、ネーミングセンスについては特に追求してください。外国人の名前の知識なんて皆無ですから。

嫌いな人は閉じてくださいってスタンスにしないと荒れるぞ

>>17
mjd? サンクス!!

>>16
訂正

今更ながら書き込みますが初スレです。

至らない点があると思いますので、指摘して下さい。

また、このssには中二病要素、意味不明な理論、魔法、etc.があります。

嫌いな方は頑張らなくていいよ。

また、ここまで読んで、吐き気、頭痛が起こったのでしたら、ブラウザバックをすることをおすすめするよ。

吐きながら最後まで読まなくていいんです。人間、辛いときは頑張らなくていいんですから!!

あと、ネーミングセンスについては特に追求してください。外国人の名前の知識なんて皆無ですから。

あと、間違えを指摘してくださるのはたいへん嬉しいです!
>>16さんみたいに心優しく、なおかつ要点をまとめて指摘してくださると凄く嬉しいです!

指摘してくださるときの要望(守ってほしい、うん。強制はしないけど)

悪い例
 あなたの作品凄くつまらないですぅ……
(どこがつまらないか言ってください)

良い例
 名前が○○…… だっておwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww馬鹿じゃねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww草不回避ですわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
 低脳乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
(要点をまとめてあるからOK ただし何回もやられると心が折れます)

……半年ROMれとしか言えねえ

面白いのに書き手が残念すぎる


一番いい手は余計なこと言わず「今日はここまで」「続き書き始める」
だけ言わないと荒れやすいよ

感想は全部書き上げて聞いた方がいい


せっかく面白いんだから

>>20~23
なんか色々とすまない……
これからは自重するので、どうか見てください。
>>21
面白いと言ってくれてありがとう。

ROMりはしませんが、反省します。
本当にごめんなさい。

書き込む前に板の空気を知っておくって大事よ

>>26
まさにそのとおりですね。
空気も読まず馬鹿な言動とったらどうなるか身に染みて分かりました。

心を入れ替え再開


 ゴースト「グッモニン!! おはよう、息子!!」

 魔族「朝から元気だな……」

 ゴースト「元気なのはいいことだ! 褒めるな、いや褒めろ!」

 魔族「うざさもマックスだな……」

 ゴースト「怒るな! 怒ると体に悪いぞ! 笑え! ワッハッハッハー!」

 魔族「あははは…… オヤジは本当にうぜぇー…… 笑えるよ……」

 ゴースト「ん? 今なんて言った?」

 魔族「悪口が聞こえないなんていい耳だな……」

 ゴースト「もっと褒めろ! ワッハッハッハッ!」

 魔族「……」


 魔族「さて、腹ごしらえも済んだし行くか!」

 ゴースト「うむ! 昨日のようなスリリングなことがあるといいな!」

 魔族「ふざけんな、あんなことがそんなにあってたまるか!」

 ゴースト「怒るな! 笑いこそ全てに勝る武器だ!」 

 魔族「その武器でオヤジのうざさを消すことができるならいくらでも笑ってやってもいいぞ」

 ゴースト「そうだ! その意気だ! 笑え!」

 魔族「笑えるか! 無意味に笑えるオヤジは本当に頭の中お花畑だな!」

 ゴースト「最近よく褒めてくれるな! 嬉しいぞ!」

 魔族「オヤジの耳はどうなっているんだよ! 本当に!」


 魔族「……」

 ゴースト「息子よ、気付いておるか?」

 魔族「ああ、“下に”なんかいるな」

 ゴースト「うむ。近づいてきておるな」

 魔族「魔族、魔物?」

 ゴースト「おそらく魔物だろう、魔力が低すぎる」

 魔族「目的は?」

 ゴースト「わからん。だが、こちらを襲おうとしておるのは確実だ」

 魔族「そうか……」


瞬間、魔族の居た場所から手が伸びてきた。魔族は素早く回避して、戦闘態勢をとった。


 「えれ?」

 魔族「お前は何者だ? なんでオレらを襲ってきた?」

 「――あちゃ~ 魔族だったか~」

 魔族「答えろ!」

 「……」

 (めんどくさいことになっちゃったな~)

 魔族「答えないのか……」

 (あっちはやる気まんまんだね、戦いとかは嫌いなんだけど)

 魔族「答えないのならこちらから行くぞ!」

 (やるしかないか)

 魔族「“インフェルノ”!!」

 (え?)

 ゴースト「ちょ、ちょっと待て!」


魔族が放った魔法で辺り一面が溶けてしまった。地面が赤く染まり、おぞましい光を発している。


 魔族「はあ、はあ……」

 ゴースト「おーい…… やりすぎだぞ」

 魔族「相手の力がわかってないんだ。最初から全力を出す」

 ゴースト「――まあ、いいか。蘇生させて事情を聞こ……」

 「“水よ、わが周辺のりょういきを浄化したまえ”!!」


地面が青い光を放った。そして次の瞬間、白い蒸気が発せられ、元の色に戻った。


 魔族「な!? 魔力が低いんじゃなかったのか!? あ、あれを受けて……」

 ゴースト「生きていたか…… どうやら魔力を隠していたようだな」

 「ふぅ…… ちょっと! 何するのさ!」

 魔族「はぁ?」

 「あんなのまともにくらったら死んでたよ!」

 魔族「だってそのために魔法を放ったのに……」

 「まあ、なんてざんこくなの!!」

 ゴースト「パパは貴方をそんな子に育てた覚えはありません!」

 魔族「その顔で自分のことをパパとか言うな!」


 魔族「……で、なんで襲ったんだ?」

 「おそったっていうか、イタズラ? ちょっとイタズラをしただけだってば!」

 魔族「本当に勘弁してくれよ…… 追われる身としては一日中神経を使ってるんだから」

 「へえ~ 追われてるんだ」

 魔族「他人事みたいに言ってるけど、お前にも関係あるんだからな!」

 「――ええ!」

 魔族「あの中央王国の国王が『人間界に存在する魔の物は全て滅せよ』とかいうお布令を出しただろ?」

 「――初耳だよ……」

 魔族「え?」

 「ウオーナはふだん土の中を泳いでるの」

 魔族「え? 土の中を泳ぐ?」

 「せいかくに言うと、コーブツの中を泳いでいるの」

 魔族「鉱物? 泳ぐ? どういうことだ?」

 ゴースト「――あっ! 思い出した! 地底にいる魔族!」

 魔族「急にどうした?」

 ゴースト「確か土魚族だっけ? 体外に水、土属性の魔法のベールをまとって地中での活動を可能にした魔族だ!」

 魔族「さっきオヤジは魔物って言っただろ。あとなんだ? ベールをまとうって?」

 ゴースト「詳しくは知らないから上手く答えられないけど、水属性の変容性と土属性の硬化性を上手くハイブリットさせて
      鉱物の形を変えずに土の中を移動できるらしい」

 魔族「よくわからない説明だな」

 ゴースト「硬くなる→傷がつかない→跡が残らない」

 魔族「ますますわからん」

 土魚族「魔法なんて今の理屈で考えようとしても無駄だよ」

 魔族「は?」

 土魚族「魔力ってのは本来今の物理法則にはない考え方なんだから、魔法は常識に囚われて使ってはいけない」

 土魚族「魔法を使うコツは、感じること」

 魔族「なんかいきなり知的になったぞ」

 土魚族「ふふ…… ウオーナは覚えることだけは得意だからね! 一字一句ぜんぶ先生の言葉だよ!」

 魔族「台無しじゃねーか!」


 魔族「で、ウオーナって言うのはお前の名前か?」

 土魚族「そのとおり! ウオーナ・ハトロイド! 16歳!」

 魔族「オレの2歳上か……」

 ゴースト「我の271歳下だな! さて問題! 我は何歳でしょう?」

 土魚族「えっと……」

 魔族「くだらないことするな」

 土魚族「287歳! さて、あなたたちの名前は?」

 魔族「!?」

 ゴースト「ワッフッフッフ…… 我は魔王! ゲフンフンフンフンだ!」

 魔族「ちゃんと言えよ!」

 ゴースト「さて問題! 我の名前はなんでしょう?」

 魔族「問題を出すことがブームなのか?」

 土魚族「うーむ…… わかった! ゲなんとかさん!」

 魔族「分かってねーじゃねーか!」

 ゴースト「そのとおり!」

 魔族「悪乗りするな!」


 土魚族「まさか、あなたがあの魔王、ゲノゼクス・ルートさんだったなんて」

 魔族「なんだわかってたのか」

 ゴースト「控えよ~!」

 土魚族「ははぁ~」

 魔族「まあ、いいか」

 土魚族「そういえば勇者に破れたって聞いたけど……」

 ゴースト「ワッフッフッフッ! 確かに我は勇者一行に負けた!」

 魔族「笑い方キモイ」

 ゴースト「しかし倒される直後、オートレイズを自分にかけたのだ!」

 魔族(オート“死霊術”の間違えだろ)

 土魚族「おお!」

 ゴースト「そして我はここにいるのだ!」

 土魚族「すごーい!」

 魔族「もうつっこむの疲れた」


 土魚族「で、あなたは誰?」

 魔族「まあ、魔王の息子だ」

 土魚族「ふーん…… で、名前は?」

 魔族「!?」

 ゴースト「息子の名前は……」

 魔族「言うなぁ!! バァカァァァ!!」

 ゴースト「馬鹿言う奴が馬鹿なんやねん!」

 魔族「口調変えるな!」

 土魚族「お名前は?」

 魔族「――ふぅ……」

 土魚族「え?」

 魔族「フウ! オレの名前はフウだ!」

 土魚族「フウ…… フウ・ルート……」

 土魚族「なんか木管楽器みたいな名前だね」

 魔族「うるさい……!」


 土魚族「さて、自己紹介も終わったし、どうしようか?」

 魔族「オレたちは魔界に帰ろうとしている途中だからな」

 土魚族「――え?」

 ゴースト「まあ気長に行こうではないか!」

 土魚族「魔界に帰る? どうやって?」

 魔族「そりゃ、入り口から帰るだろ? だから南に言ってるんだ」

 土魚族「――まさか知らないの?」

 魔族「?」

 土魚族「入り口は閉じられたよ」

 魔族「……」

 ゴースト「……」

 「「はぁっ!?」」

 魔族「どっどういうことだ!」

 土魚族「魔王さんがたおされたあと、人間界からの魔界への進行が急激に悪化したの」

 ゴースト「まあ、そうだろうな」

 土魚族「で、これ以上進行されないために魔界の入口を閉じたの」

 魔族「人間界には他にも魔物や魔族がいるのにか?」

 ゴースト「まあ、仕方がないだろう。人間の中には我を倒した奴らが居るのだぞ。被害は最小限に抑えんと」

 魔族「……」


 土魚族「だから、人間界から出る方法はもう……」

 ゴースト「仕方ないな」

 魔族「オヤジが諦めるなんて珍しいな」

 ゴースト「諦める? 何を言ってるんだ?」

 魔族「だろうな…… やっぱり」

 土魚族「え? え?」

 ゴースト「入り口を作るか……」

 土魚族「えは!? むりだよ! 入り口を作るって! 空間をねじ曲げるってことだよ!」

 魔族「大丈夫大丈夫。だって……」

 ゴースト「魔王さまであーる!!」

 魔族「うるさい! 耳元で大声を出すな!」

 ゴースト「ごめんちょ」


 ゴースト「空間を捻じ曲げるには、空間に膨大な魔力を当てる感じで行けばいいのだ!」

 魔族「曖昧なことを言うな!」

 土魚族「魔法なんて今の理屈で考えようとしても無駄だよ」

 魔族「いや、さっきの繰り返さなくていいから」

 ゴースト「うおぉぉぉぉぉ!!」

 土魚族「すごい魔力量! これなら!」

 ゴースト「でりゃぁぁぁぁぁ!!」
















  ――ふわん――


 魔族「今の音はなんだ?」

 ゴースト「……」

 ゴースト「魔力が足りない!」

 魔族「笑顔で言うな!」


 土魚族「え? じゃあウオーナはどうすれば……」

 ゴースト「まあ、心配するな! 魔力が足りないなら集めればいい!」

 魔族「詳しく話せよ」

 ゴースト「聞くところによると人間界と魔界は大昔にも戦争をしたそうじゃないか!」

 ゴースト「で、人間界にも古代の魔道具がたくさんあるはずだ!」

 魔族「要はそれを集めようと?」

 ゴースト「それだぁ!」

 土魚族「じゃあ帰れるの!?」

 ゴースト「もちろんさ!」

 土魚族「ヤッター!」

 ゴースト「まあ、集まらなくてもあと一年も経てば元の力を取り戻すから心配しなくていいぞ」

 魔族「一年間も逃走生活を続けるなんて嫌だぞオレは」


――とある街――


 「……」

 「――はぁ」

 (やっぱりこの世界にはフレーくんはいないのでしょうか?)

 (タルっちにもフェルさんにも会えないなんて)

 (――フレーくん、タルっち。ワタクシがそばにいなくて大丈夫でしょうか?)

 (というより、ワタクシはフレーくんに23時間と45分も会ってないんですね)

 (フレーくんとタルっちとの仲を引き裂いたあの低脳で単細胞で非生産的な戦闘狂の糞犬、糞ゲル、糞トカゲ野郎さんたちは
  今度会ったら足から頭にかけてゆっくりゆっくりすり潰してあげましょう)

 (蘇生薬は何回かけましょうか? 最低でも5回はやりたいですからね)

 (同じ拷問方法では飽きてしまいますから全身皮剥ぎと爪剥ぎ、あとは5cmずつの輪切り、
  アガニーさんからもらった薬を使うっていうのも面白そうです)

 (ゲルに爪や皮はあるのか? と疑問は残りますが同じように神経が集中している部位はあるでしょう。
  最悪強制的に人間化させればいいんですし)

 (そこまでしてあげれば、自らの愚かさに後悔してくれるでしょうね)

 (けどただ単に後悔するだけではワタクシの気が収まりません。仮にもフレーくん、タルっちの命を脅かしたんです)

 (糞野郎さんの体を使った魔法でも作りましょうかね。けど、それは非効率的です)

 (いっそ糞野郎さんたちをエネルギーとして利用するのはどうでしょうか)

 (面白そうですね、それにしましょう!)

 (まあ、何はともあれこの世界を出ることが先決ですね)


――第2話完――

区切ります。
書き溜めが切れたので更新は遅くなります。

前半の自分のレス読み返していたらリアルに吐き気を催してきました。
いつかリメイク出すつもりです。
全力でHTML化依頼出したいのですが、完結してないものを依頼するのっていいんですか?
ダメなら3行で完結させます。

HTML化スレの最初のレスくらい自分で読めよ
中断でもOK

>>45
あっ普通に書いてありましたね、目が抜け落ちていました。
他の方のレス見たら『完結しました』としか書かれていなかったもので……

依頼出してきます。

まあアイデアはよかったからしばらくROMって、叩かれてない作者がどうしてるか把握してからやり直せばいいよ

>>47
一応一年半ROMったつもりなんですがね……
オリジナリティ()を出そうとした結果がこれです。

励ましてくれてありがとうございます。

(自分への戒め)
調子に乗らないほうがいいぞ!
下手したら俺のようにベットに顔を埋めながら「チルディッシュ!! チルディッシュ!!」と叫ぶことになるからな!
死にたくなりたくないなら皆と同じようにやろう!
先達の教えは素直に受け取ろう!
オリジナリティ()なんて全く面白くないからな!

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