【ディケイド】門矢士「風に乗って」【デレマス】 (137)

※注意

・仮面ライダーディケイドとデレマス(アニメ)のクロスSSです。ディケイド寄り
・地の文有り
・他ライダーとのクロス要素もあり

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【ディケイド】門矢士「宇宙が来る」【デレマス】 - SSまとめ速報
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第13話 GOIN’!!! to Ride the Wind


フェスを目前に控えた8月の中頃。シンデレラプロジェクトは、新曲の収録を終えた。
ユニットごとのパフォーマンスに始まり、プロジェクト全体でのダンスや歌等、シンデレラプロジェクトとして出来ることはほぼやった。

そして、フェスの前日。
346プロの貸し切った会場近くのホテルで、調整や打ち合わせ等をしつつ、皆が翌日を楽しみに待っていたのだが門矢士だけは違った。

士「…………」

未央「…つかさん、どうしたの?」

卯月「さぁ…。朝からずっとあんな感じです…」

現在時刻は正午を少し過ぎた頃。
シンデレラプロジェクトがミーティングルームとして借り受けた、広めの一室。
長い脚を組み、椅子に深くもたれ込む士は、ずっと仏頂面だった。

凛「仕事が上手く行ってない…っていうのは、ありえないよね」

蘭子「…まさか、異界の者たちの訪れが?」

みく「ええ…。それは困るにゃあ」

士は今、謎の感覚に囚われていた。

一言で言うなら、鬱陶しい。朝から頭の奥で何かが鳴っている。龍騎の世界で感じた、戦いを知らせるあの音に酷似していた。
敵の攻撃だと思うが、あまりにも地味。精神干渉にしても、弱すぎて効果がない。
しかしそのままではいられないので、士は面倒くさげに口を開いた。

士「…お前たちの中に、変な感覚のヤツはいるか」

「「「え?」」」

士「頭の奥で何かが鳴ってるような、そんな感覚があるヤツはいるか」

士の問いに、全員が「?」を浮かべた。士の問いも要領を得ないので、当然と言えば当然の反応なのだが、士にもそう言う他ない感覚である。
とにかく、その反応から、士は少女たちの中に該当者がいないことを察した。

みりあ「何かあったの?」

士「…朝からずっとこうだ。何かが感覚に引っかかる。敵の攻撃か…?」

きらり「士ちゃん、大丈夫ぅ…?」

莉嘉「働き詰めでお疲れ、とか?」

士「いや、そんなことは全くない」

普通の人間ならいざ知らず、士は働き詰めで参るほど弱くはない。社会人としては規格外とも言える体力の持ち主だ。
故に、体調不良と言う線は最初から捨てている。だからこそ、この現象が気になるのだ。

李衣菜「あの。それでもし、また敵が来たら、士さんは…」

士「戦うしかねえだろ。このタイミングで敵が来れば、そいつが原因だろうからな」

その時、士にしか聞こえない音が、突然大きくなった。
それは攻撃と言うよりは、何かの“報せ”であるかのように、士の中で次第に存在感を増していく。

士「…………何かが来てやがる」

その場にいる全員の表情が、一瞬で強ばった。プロデューサーとて例外ではない。
もし大規模な戦いになれば、明日のフェスに支障が出るかもしれない。
そして、もし誰か一人でも巻き込まれてケガでもすれば、その時点で“全員でステージに立つ”という目標も叶わなくなってしまう。

何人かはそこまで考えているであろう、と、士は表情から読み取っていた。

椅子から立ち上がった士は、自分の感覚を頼りに歩き出す。

P「門矢さん、自分に何かできることはありますか」

士「敵はまだ来てない。だが、そう遠くないうちに現れるだろう。なるべく早く片付けるが、可能な限りここから人を出すな。いいか」

P「分かりました。皆さんも、門矢さんの指示通りにお願いします」

「「「はいっ」」」

外へ向かう途中で、士は様々な人間とすれ違う。
多くはスタッフだ。今回のフェス開催に向けて、彼らもまた陰ながらにアイドルたちを支え続ける存在だ。
フォーカスされることは無いだろうが、彼らには彼らの物語がある。それらも守るため、士は歩を進める。

ホテルの外に出た士は、裏手の駐車場で足を止める。そして、ディケイドライバーを装着した。

士「変身」

変身が完了すると同時に音が収まり、オーロラが出現して戦闘員・マスカレイド・ダスタードたちが現れた。
落ち着き払った態度で手を払い、ライドブッカーを握りしめる。士のもう一つの仕事が始まった。



士「雑魚だけか…。何かの作戦か?」

5分程度で敵を全て片付け、士は変身を解除した。

奇妙な音に導かれるようにして戦ったが、今思えばあれは世界が発した敵の襲来のサインだったのだろうか。
となれば、戦いが続く限り、それが今後再び起こる可能性は高い。

ただ、これまでのように行き当たりばったりに戦うよりは、事前に対策を立てられる分幾分マシだ。

だが今、士にとってそんなことはどうでもよかった。
彼の中で問題になっているのは、先ほど少女たちが見せた表情についてだった。

士「慣れてきている…か」

プロデューサーをはじめとした何人かは、敵が出現した際に「恐怖し怯える」という段階を脱している。
それによって何が起こり得るか。どう行動すればいいのか。それを瞬時に考えられるようになっていた。
それは本来のこの世界では要らない思考だ。やはり士が戦うことで、世界の枠組みは徐々に歪み始めている。
目に見えてそれが分かるのが、士としては歯痒かった。


何事もなかったかのように戻ってきた士を、シンデレラプロジェクトの面々が拍子抜けした表情で出迎えた。

未央「あれ?思ったより早かったね」

士「雑魚ばかりで、多少は戦えるやつがいなかったからな」

そうして、いつものようにソファにふんぞり返る。その様子を見て、全員がほっと息を吐いた。

だが、まだ懸念事項はあった。

みりあ「明日はどうなるのかな」

士「……さあな」

今日も大切だが、彼女たちにとって一番大事なのは明日のステージだ。そこに敵が来ればステージは台無しになってしまう。
アスタリスクの二人の初ステージも、一人の人間の暴走でぶち壊されてしまった過去がある。警戒するのは当然の事だった。

P「天気は問題ありません。大きなトラブルも無ければ、予定通りに進行できるはずです」

士「何かあれば俺たちが対処する。あまり考えすぎるな」

敵が来るかどうかは、その時にならなければ分からない。先の予想が正しいのなら、来る時にはまたあの音が聞こえる。
明日戦うことが無ければいい。しかし、そういう時にこそ敵が攻めてくることが多いのも知っている。だから士は戦うことを覚悟していた。


今日はそれ以降に敵が来ることも無く、粛々と過ぎていく。

女子寮組はさておき、そうでない者たちは初めてプロジェクトメンバー以外と同じ屋根の下で過ごすことになる。
そのことに、少女たちは多少浮足立っていた。

夕食後。プロデューサーと士が会議で部屋を離れている間、プロジェクトの部屋に集まった少女たちの中で、莉嘉が提案した。

莉嘉「ねーねー!みんなで何かしない?」

みく「何かって何にゃ」

莉嘉「うーん…、トランプとか」


今日何度目かの会議が終わり、やっと解放された士とプロデューサー。2人はホテルのラウンジで、揃ってコーヒーを飲んでいた。

旨いが、士には少し物足りなかった。
長い旅の内に、コーヒーは栄次郎が淹れるものが当たり前になっていたせいだろうか。
ここ最近は光写真館に戻っても、栄次郎のコーヒーを飲む時間すらなかった。仕事が多忙を極めていた証拠だ。

士「…………」

P「門矢さん、どうかしましたか」

士「明日のフェスが終われば、あいつらはさらに注目されて、仕事も増えるだろうな」

P「そう…ですね。そうなればいいと、思っています」

そう答えた対面のプロデューサーは、よく見れば分かるくらいの微妙さで微笑んでいた。
だが、彼の表情は突如一変して、いつも通りの固い表情になってしまう。

P「門矢さん。……明日は、どうなるでしょうか」

士「何とも言えない。だが、予想する限りじゃ敵は来る」

こんな会話をしなければならないのが残念でならない。
本当なら明日の天気を心配するとか、誰それのコンディションは問題ないかとか、そう言う話になるはずなのだ。
それでも今は必要なことだからと、士はプロデューサーには包み隠さずに話をする。

士「昼間話したが、敵が来れば恐らく分かる。明日もしそうなったらお前には知らせる」

P「他の方には、私の裁量でお伝えしてもよろしいのでしょうか」

士「まず信じる奴の方が少ねえだろうがな…」

それきり、プロデューサーは黙り込んでしまった。いつもの癖で、手が首の後ろを押さえている。

士「…あくまで予想だ。そう今から構えすぎるな」

コーヒーを啜る。豊かな苦みが、口の中一杯に広がった。きっと、目の前の男もこんな風に苦い思いをしているのだろう。

ゆっくりとした動きでカップを持ち上げ、口をつけるプロデューサー。一息ついた彼の目には、少しだけの余裕があった。

P「…はい。明日も何卒、よろしくお願いします」

士「ああ」

2人は共に立ち上がり、様子を見るためにプロジェクトの部屋へ向かった。


その頃、2人が戻って来る事など少しも知らない少女たちは、トランプゲームからガールズトークに移っていた。

何人かは顔を真っ赤にして突っ伏し、何人かはガチガチに固まったまま一言も発さない。
そんな中、割と平静な未央が莉嘉とみりあを相手に話をしていた。

莉嘉「未央ちゃん、Pくんと士くんに色々と助けてもらったんでしょ?そーゆーところから、好きになったりしないの?」

未央「うーん、ちょっと違うかも。プロデューサーにも、つかさんにも感謝してる、って言えば良いのかなぁ」

みりあ「どうして?」

未央「プロデューサーは、私がその…、やめるって言っちゃっても、ちゃんとやり直そうって言ってくれたんだ。今もあの時のことは忘れてないよ」

未央「つかさんは、私が怪物になっちゃいそうなところを、ギリギリで止めてくれた。みんなと一緒にいられるのは、2人のお陰なんだ」

未央「だーからっ、明日は2人に恩返しする場でもあるんだ。しまむー・しぶりんと一緒のステージで、今度こそ見てくれる人を笑顔にするから」

あの時のことは、当事者の未央・プロデューサー、そして士の3人以外には口頭でしか伝えられていない。
話を聞いただけでは、未央がどれほど2人に感謝しているのは伝わり切らないだろう。それほどに短く、危険で、濃い出来事だった。

えへへ、とはにかんだ未央は、逆に莉嘉に聞きたいことがあったのを思い出した。

未央「そういえば、莉嘉ちゃんも別のとこから来た仮面ライダーに助けてもらったんでしょ?どんな人だったの?」

莉嘉「進ノ介くん!刑事さんで、赤い仮面ライダーで、タイヤがくっついてるの!」

未央「お、おう?良く分からなくなりましたぞぉ?」

みりあ「えっとね未央ちゃん。進ノ介さんは刑事さんで、みんなを守るって言って士さんと一緒に戦ったんだよ」

莉嘉「そう言えば、身長がPくんと同じくらいだったカモ☆」

未央「プロデューサーと同じくらい!?わー、おっきい人だったんだ…」

身長と言い目つきと言い、プロデューサーは何かと普通から外れている。
その彼と並べるような男性と聞き、未央の脳内で「進ノ介」という人物が勝手にプロデューサーと結びついた。

と言うことは、きらりと同じかそれ以上は有るということか。そう思っていると、ちょうどみりあがきらりにも話を振っていた。

みりあ「そうだったよね、きらりちゃん!」

きらり「うゆ……」

テーブルに突っ伏しているため顔は見えないが、唯一覗く耳が真っ赤だった。
恥ずかしさのあまり今は普通に会話が出来ないが、先の反応は恐らくイエスと捉えていいのだろう。

そう言えばデビュー時のマジックアワー特別編でも先の恋バナでも言っていたが、きらりのタイプは「彼女より大きい男性」らしい。
みんなして「それプロデューサーのこと?」と聞いたために今きらりは真っ赤になっているわけだが、
そうなればその進ノ介と言う人物も当てはまっている可能性がある。

未央「ほうほう…。凸レーションのみんなは、その進ノ介さんの事をどう思ってるの?」

莉嘉「進ノ介くん、すっごくカッコよかった!アタシのタイプの「大人っぽい人」だし、進ノ介くんなら悪くないかもっ☆」

みりあ「カッコよかったけど…、好きとかそう言うのは、よく分かんないや♪」

未央「むー、お2人的には『憧れのお兄さん』みたいな感じなのかな。きらりんは?」

そう聞かれ、きらりが顔を上げる。どうやら進ノ介の事は普通に話せるようだ。

きらり「未央ちゃんと同じ、かなぁ…。きらりたちみーんなを、とっても危ないことから守ってくれて、すーっごく感謝してるにぃ」

思い出すのは、身を挺して攻撃から守ってくれた勇敢な姿と、戦いが終わった後の傷だらけの笑顔。
彼は「他の誰かがこうならないために戦っている」と言うのが、心情に聡いきらりにはすぐに分かった。
そんな彼への感謝は、今でも消えていない。だから莉嘉やみりあとは少し違い、きらりは進ノ介のことを尊敬していた。

莉嘉「進ノ介くん、また会いたいね」

みりあ「会えるかな?」

きらり「精一杯前に進めてれば、きっと会えるにぃ。ベルトちゃんにも」

未央「ベ、ベルトちゃん?」

莉嘉「ベルトさんはね、進ノ介くんのベルトで、おじさんなんだよ」

みりあ「とっても優しそうな声をしてるんだー♪」

その後きらりからの補足によって、未央はベルトさんの事を正しく理解した。

未央「そっか。その2人に、ちゃんと会ってみたいな」

恋バナのムードもすっかり消え失せた室内。それによって、撃沈していた数人が復活を果たしていた。

李衣菜「…やっと終わった感じ?恋バナなんてロックじゃないから、恥ずかしくて耐えられなかったよ」

みく「…今度、普段言ってることを録音して後で聞いてみるといいにゃ。もっと恥ずかしくなるはずだにゃ」

アスタリスクの2人が、復活早々喧嘩を始めようとする。
そんな様子はさておき、先ほどまで出会った仮面ライダーの事を思い出していた流れが続き、今度は莉嘉が2人に聞いた。

莉嘉「ねーねー。みくちゃんと李衣菜ちゃんの2人も、仮面ライダーの人と会ったって聞いたよ?どんな人だったの?」

みく「えっ、仮面ライダー……ああ、翔太郎チャンとフィリップチャンの事かにゃ?」

李衣菜「あー、あの2人。変身した時はびっくりしたなー。だって2人で1人になったんだもん」

みりあ「2人で1人……?」

きらり「がっちーん☆って合体でもしたのぉ?」

蘭子「否!」

未央「おっ、らんらーん♪説明してくれるの?」

蘭子「うむ!彼の双色の戦士たちは、まず右翼の戦士が『風の記憶の器』からその記憶を呼び起こし、左翼の戦士にその魂と共に送る」

蘭子「そして左翼の戦士がそれを受け入れ、『切り札の記憶の器』からその記憶を呼び起こすことで、双色の戦士へと姿を変えるのだ!」

要はフィリップがサイクロン、翔太郎がジョーカーを起動して、変身時にフィリップの魂が翔太郎の肉体に憑依する、ということだ。
これの翻訳は当事者のみくと李衣菜によって行われ、その場にいなかった凸レーションの3人に伝えられた。

莉嘉「へーっ!誰かの身体に一緒にいられるって、何だか面白そう!」

みく「いや、流石にあの2人くらいコンビネーションが良くないと無理だと思うにゃ」

莉嘉「アタシとお姉ちゃんならバッチシだもん!」

李衣菜「そっか、家族なら出来るかもね。っていうか、そうしたら翔太郎さんとフィリップさんは、家族って言えるくらいのコンビなのかな」

みくも李衣菜も、そこまでにはまだまだだなぁ、と思うばかりだ。
仮に相手の身体に乗り移っても、喧嘩するばかりで一歩たりとも動けないという確信がある。
それにとどまらず、複雑で激しい戦闘も行えるあの2人は、まさしく阿吽の呼吸の仲なのだろう。

みく「そう言えば士チャン、あの2人とは知り合いだったって言ってたよね」

李衣菜「あー、言ってた言ってた。話してくれたことないけど、そういう人は、他の世界?にもいるんだろうなぁ」

未央「ゲンちゃんも、元の世界にいる仲間との絆を見せてくれたよねー」

話題はころころと変わる。次は出会ってそう時間も経っていない如月弦太朗が話題になった。

蘭子「盟友と手を取り合えば、我らが魂を満たす魔力は何倍にもなると、彼の者は教えを授けたのだったな」

莉嘉「宇宙キターって叫んでたけど、あれどういうことなんだろ?」

未央「そのまんまなんじゃない?こう『考えないで感じる』タイプのやつだよ、きっと」

アーニャ「космос…宇宙のパワー、私も感じてみたいです」

真っ赤になったメンバーを団扇で扇いでいたアーニャも、話に加わった。

みく「アーにゃんに、宇宙のパワー…」

きらり「むむむむむ~…」

未央「すっごい強そうだね…」

アーニャ「?」

彼女たちの脳内ではアーニャにコズミックエナジーが降り注ぎ、何かピカピカしたものに変身していた。
白い光を放つアーニャが、変身した士と共に怪人たちをばったばったと倒していき、最後に一際強い光を放って怪人たちを消滅させる。
そこまで想像できた。

李衣菜「…いやいや、ダメでしょ。私たちアイドルだよ?戦ってちゃダメじゃん」

みく「それもそうだにゃ」

ケガでもしたらステージには立てなくなる。それを思えば、戦うことなど以ての外だ。

みりあ「士さんも弦太朗さんもすごかったよね。あんなにおっきなワルモノもやっつけちゃうんだもん」

きらり「それを当たり前みたいにやっちゃうのが、もっと凄いところだよねぇ」

士は「この世界を守るのが仕事」と言った。
それでも、命がけの戦いに何の躊躇もなく向かっていくのは、やはり少女たちからすればとんでもないことだった。

プロデューサーと士のプロデュースで、彼女たちの仕事は少しずつ増えてきていた。
分からないことや難しいことも当然たくさんあるが、それでも彼女たちが仕事に励めるのは、それが楽しいからだ。

だが彼女たちが考える限り、士が仕事だと言う「戦い」に、楽しいことは一つもない。
攻撃されれば痛いし、ケガもする。いつだって死と隣り合わせだ。「仕事」と言われても、そんなことは出来そうにもない。

士はそれを嫌な顔もせず、いつも余裕の態度でこなしていく。
ケガをした戦いは数度あったが、それでも「戦うことをやめる」と言ったことは無かった。

未央「辛い思いばっかりのはずなのに、どうしてなんだろう…」

まるでそれを聞いていたかのようなタイミングで、ドアが叩かれた。

みく「はい!」

『私です。入ってもよろしいでしょうか』

プロデューサーの声だ。それが聞こえると、皆が佇まいを整えた。立ち上がった美波がドアを開けると、プロデューサーと士が入ってきた。

P「…あの、顔が赤い方が数人いらっしゃるのですが、体調は大丈夫でしょうか」

具体的に言えば、卯月、智絵里、かな子の3人だ。
姿勢だけは正したものの、まだ完全に平静になれていなかったところに、
プロデューサーと士…「男の人」が戻ってきたせいで、また元に戻ってしまったのである。

凛「あー、…うん。体調不良じゃないから、大丈夫…だと思う」

士「……はぁ」

声のした方を凛が見ると、士がニヤついていた。どうやら、これまでにやっていたことを、一瞬で察したらしかった。

P「…そうですか。ですが、体調に違和感がありましたら、すぐに連絡をお願いします」

一方で、さっぱりわかっていないプロデューサーは、いつものように真面目な対応をした。

士は腕時計を見る。今は21時を少し過ぎたところだ。
「明日の事を考えれば、そろそろ就寝の時間にした方がいい」というのは、こちらに戻る途中にプロデューサーと相談した内容だ。

士「明日も早い、気温もかなり高いって予報だ。いつも以上に体力を消耗するだろう。早めに休んで備えろ」

「「「はいっ」」」

天気予報では、明日は一日中晴れの予報だ。真夏のフェスにはうってつけと言える。

P「消灯は遅くとも22時30分とします。それ以降は、必ず休むようにしてください」

士「見回りはしねえぞ。ちゃんと寝ろ」

顔を見回す。遊びに来ているわけではないということは言わずもがな全員が理解していたため、不満な顔をしている者はいなかった。

P「皆さんの方からは、何かありますか」

士「部屋変えろってのは聞かねえからな」

皆が首を横に振った。では、とプロデューサーが続ける。

P「今日はこれで、解散とします」

「「「………………」」」

士「………………」

P「………………」

沈黙に包まれる室内。解散とは言われたが、誰も椅子から立ち上がろうとしなかった。

未央「…いやいやプロデューサー。こう、〆に相応しいこと言ってよ。『明日は期待しています』とか、そういうの!」

みく「そうにゃ!士チャンも!」

P「え、ええと…」

言葉に詰まるプロデューサーの背中を、士が叩いた。

士「何か気の利いたセリフの一つでも言ってみせろよ、プロデューサー」

しかし困惑した表情のプロデューサーは、首に手を当てるばかりで何かを言う気配がない。
そう言えば、彼はこういう時の言葉選びに慣れていないのだった。

仕方がない、と士は口を開いた。

士「明日は初めてお前たち全員でステージに立ち、別部署のアイドルと共演する機会だ。
経験、活躍、知名度。どの角度から見ても、ハッキリ言って一番下っ端だな」

士「だから、このフェスではそこまで重要でもねえ。とりあえず、やれるようにやってみろ」

士「明日は、お前たちが『世界』へ踏み出す日になる。一足跳びでも、転んでも構わない。それぞれに踏み出していけ。後はこいつが、何とかする」

「こいつが」の辺りで、士はプロデューサーの肩に手をかけ、不敵に笑った。
士とプロデューサーの視線が交錯する。プロデューサーは、上手く話を繋いでくれた士に心中で感謝しながら口を開いた。

P「皆さんにとって、明日は初めての大舞台になります。緊張も不安も、もちろん成功も。すべてが皆さんの糧になるはずです」

P「明日は楽しみましょう。私は、皆さんの笑顔が見に来てくれた皆さんを笑顔に出来ると、信じています」

「「「はい!」」」


全員が部屋から出たのを確認し、プロデューサーと士も部屋の電気を消してドアを閉めた。

士「で、お前は何でまだ残ってる、本田」

未央「えへへ…」

未央の視線は士に向いている。彼と話がしたいことを察したプロデューサーは、一足先に自らの部屋へと戻って行った。

士「…で?」

未央「えっと、つかさんに聞きたいことがあって」

士「…フッ、俺の好みは同年代だ。それに俺とお前はプロデューサーとアイドル、手を出したら終わりだな」

未央「つかさん……」

苦笑する未央。わざとらしい士の言葉は気にせず、未央は聞いた。

未央「つかさんはさ……、どうして戦うの?いつもの『仕事だから』っていう答えはナシで」

士「…………」

まっすぐに見上げてくる未央の目から、士は逃げない。一つ息を吐いて、口を開いた。

士「やらなきゃならねぇことだからだ。戦ってこの世界を守る。そのために俺はここにいる」

未央「つかさん、戦うことが怖かったことってないの?」

士「無い。いや、初めて戦った時には有ったのかもしれないが、覚えてねぇ」

士「そもそも俺は破壊者だ。全てを破壊する力があるのに、戦いを恐れる?ありえねぇな」

モバマス「ディケイド様の踏み台ニダ」

W「ディケイド様の引き立て役ニダ」

未央「…じゃあつかさんが戦うのは、“義務”ってこと?」

士「なるほど、義務か…。確かに、それが一番近いかもな」

未央「……それ、何かヤダなぁ」

士「はあ?」

それがどういうことなのか、士には分からなかった。見れば、そう言った未央自身も自分の言葉に困惑しているようだった。

しかし未央は、自身の言葉の意味をゆっくりと理解していっている。だから士は口を挟まずに、未央の言葉を待った。



「だって…。悪いやつが来たからそれと戦うのって、つかさんが『やってやる』って思ってやってるわけじゃないんでしょ?」

「何かを守ってやるー、とか、俺は死にたくないんだー、とかでもないんでしょ?」

「それじゃあつかさんの役目って、戦ってこの世界を守るためだけの装置みたいじゃん」

「つかさんが、本当に戦う理由もなく戦うのって、なんか…イヤなんだ」


士「…………」

テーブルの上に置かれた進行予定表。その隣に六枚のカードが並ぶ。

W、フォーゼ、ドライブの三枚を手に入れ、目標の半分は達成しているのが一目でわかる。
それは同時に、未だに士をこの世界に止まらせ続ける呪縛にもなっていた。


「今の士は『この世界を守るためだけの装置』」だと、未央は言った。
言われるまで、そんなことを思ったことも無かった。だが、言われてみればその通りだった。

士はこの世界に“呼ばれた”存在で、本来ならこの世界のために戦う理由も何も無い。
今戦っているのは、世界に託された“守護者”としての役割を果たしているだけだ。

『俺はこの世界でプロデューサーという役割を持ってはいるが、それに意味は無い。いや、意味があってはいけない』

弦太朗に聞かせた言葉だ。思い出せば思い出すほどに、あの頃はどうかしていたと自分でも思う。
あの言葉では、自分が装置であることを黙認しているようなものだ。

士「俺は装置じゃねえ」

一人の人間で、仮面ライダーだ。何のために戦うのか、何を破壊し何を守るのか。それは自分で選択し、自分で決断しなければならない。
そのための「ここにいる意味」を探すと、弦太朗に、そして自分自身に誓った。

目を閉じれば、瞼の裏には14人の少女たちと、1人の同僚の顔が浮かんでくる。

共に過ごしていれば答えが得られるような、そんな気がする。だから、“答えを得るために”とりあえず彼女たちを守ると、士は決めた。


誰かがドアを叩いた。カードをポケットに突っ込んで、問いかける。

士「誰だ?」

『私です。おはようございます、門矢さん』

士「ああ」

時計を見れば、6時20分を少し過ぎたところだ。
今日の天候状況の確認や、最終的なスケジュールのチェックなどがこの後行われる。プロデューサーはそれで呼びに来たのだろう。

ドアの向こうには、いつも通りの悪人面が立っていた。

P「朝は早いのですか?」

士「いや、考え事をしてたら眠りが浅くてな。早めに目が覚めただけだ」

質問から察するに、プロデューサーは士が起きていない可能性も考慮してこの時間に来たのだろう。
わざわざこっちのことまで考えなくても、と士は心中で呟いた。

P「門矢さんの体調は大丈夫でしょうか」

士「ああ、身体は休められたから心配するな。…少し待て」

テーブルの上に広げたままの進行予定表を手にし、士は部屋を後にした。


日が昇るとともに、気温はぐんぐんと上昇していく。10時を少し過ぎるころには、既に30℃に差し掛かっていた。

そんな炎天下の中を、士は一人で歩き回っていた。プロジェクトの方にはあらかじめ断っておいての単独行動だ。

何をしているのかと言えば、戦う場所の下見である。
敵の襲撃に備え、戦うにはどこが一番影響を出さずに済み、なおかつ会場から離れたポイントなのか、それを把握しておく必要があった。

士「駐車場が4か所…。とりあえず全部回るか」

そうして、第1・第2駐車場は確認の末に、使えないという判断を下した。
理由は単純で、今日のフェスに参加するファンたちが案内通りに進むなら、会場までにそこの2つの近くを通ることになるからだ。
巻き込む可能性は減らさなければならない。

士「3か4だな」

残りの第3、第4駐車場はステージエリアの裏にある。頻繁な出入りは無く、安全性は比較的高いと言えた。
しかし、第3駐車場には346プロの関係車両や技術スタッフなどの車両などが停車している。
これも影響があってはいけないと、士はリストから除外した。

そうして、残った第4駐車場へ向けて歩き出そうとした士の身体に、何かとぶつかった衝撃が伝わった。

「ちょっ、大丈夫か!?」

「うん、大丈夫。…大丈夫だってば」

士「…ん?」

少女の声が聞こえ、それでやっと誰かにぶつかったと気が付いた。
視線を下に向けると、士がぶつかったらしい少女が砂を払い落としながら立ち上がるところだった。
後ろにいた少女が、それを支える。

「すいません、ぶつかっちゃって…」

士「ああ、まったく不用心なヤツだな」

「ちょっと、そんな言い方―――って、あれ?その腕の…」

彼女の視線の先には、士が会場入りした時からつけているスタッフ腕章があった。
さらに少女2人は士の顔を見上げてくる。顔を見られて悪い気のしない士は、得意げな表情になった。

やがて、士にぶつかった方の少女が尋ねてきた。

「あの、もしかしてあなたが、門矢士さん…ですか?」

士「フッ、いかにもその通りだぜ」

「美嘉さんに見せてもらった通りだ、おっきい人だな…」

士「……俺の事を知ってる。城ヶ崎の名前が出た。そして、スタッフ用のここにいる。お前たち、346プロの関係者だな」

士「こっちはお前らの名前も知らねえ。人に確認する前に、まずはそっちが名乗るべきだろ」

あっ、という顔をした2人は、すぐに頭を下げて挨拶をした。

「す、すいません。アタシ、北条加蓮って言います」

「神谷奈緒、です。すいません、門矢プロデューサー」

士「北条と神谷……」

出演者名簿にそんな名前は載っていなかった。ステージに立つ人間でないのは確定。
しかし、美嘉本人と関わりがある以上、恐らくはこの2人もアイドルだろうという予想はすぐについた。

士「聞いたことがねえな。新人か」

加蓮「はい。ほんのちょっと前にスカウトされたばかりです」

奈緒「あたしも、加蓮と同じタイミングでスカウトされて、今は城ヶ崎美嘉さんの部署に配属されてます」

加蓮「あのっ、門矢さんが担当しているシンデレラプロジェクトの……」

士「だいたいわかった」

いつもの台詞で、加蓮の言葉を遮る。士には単独行動する理由があり、時間を無駄には出来ない。
故に、目の前の少女たちとの会話に興じるわけには行かなかった。

士「俺にはやらなきゃならないことがあるんだ。雑談してる場合じゃねえ」

加蓮「あっ、すいません。ご迷惑をおかけしました」

奈緒「えっと、何をするんですか?」

士の身体が向いているのは、ステージエリアと真逆の方向。奈緒の問いは至極まっとうだった。

士「個人的な見回りだ。必要になるかもしれないからな」

それだけ言って、士は第4駐車場に向けて歩き出した。
後ろにいる加蓮と奈緒の事は、今この時は、たいして興味も抱かなかった。

辿り着いた第4駐車場には、車は殆ど止まっていなかった。
今後のことを考えても、新しく来る車は殆ど無い。士はここ第4駐車場を戦いの場に決めた。
敵が来た時に、ここに繋がるオーロラを出現させて戦場を移す。実に大雑把だが、それが士の作戦となった。

シンデレラプロジェクトのリハまでに、士はきちんとステージエリアに戻ってきた。

観客席側からリハの様子を眺める。士の姿を見つけては、皆が手を振った。
全員が、リハを終えた段階で十分と言えるレベルにまで仕上がっているのを確認した士は、ステージを眺めながらぼそりと呟いた。

士「小せえ」

ステージが、ではない。そこに立つ少女たちが、だ。
広いステージに比べて彼女たちは本当にちっぽけで、外から強い風が吹けばそのまま吹っ飛んで行ってしまいそうな気さえした。

士「まあ、そんなもんだな」

ちっぽけな少女たちの一歩は、今はまだ小さい。世界に足跡が残るかどうかも怪しい。

士「…こいつに、残してやるか」

提げたトイカメラが、風に吹かれて小さく揺れた。


士「進行上の問題はなさそうだな」

P「天候も良いですし、大丈夫かと。皆さんも元気そうです」

この昼食の時間が、事実上最後の休憩だ。
これから先は観客の導入、ステージセッティング、衣装合わせなどで、裏方が気を抜いていい瞬間は終わりまでやってこない。

更に敵の襲撃に備えることになる士には、余計に気を緩めることが出来る時間が無かった。


だがプロデューサーは、対面にいる士の表情からは警戒心など少しも見ることが出来ない。
いつも通りの、自分は何事も知っていて何事も余裕である、そんな顔だ。

士「…お前に顔を眺められても嬉しくねえ」

P「あっ…、すいません」


表情による感情表現が下手なプロデューサーと違い、士は意図的に表情によって感情を隠す。
彼の内情を知らなければ、今でもその表情に騙されそうな程巧みなポーカーフェイス。

アイドルたちの話によれば、彼は彼女たちに対して一線を引いている部分があったという。
その時に役立っていたのが、他でもないポーカーフェイスだった。

想像もつかないほど様々な経験をしてきた人間が感情を隠せば、安穏とした世界で生きてきた自分たちには見破る術など無い。
それなりに関わり合ってきた今なら多少は分かるが、それでも困難なことに変わりはない。

しかし、今の士のそれは、使い方が違った。
自分を隠すのではなく、知られてはいけないことを隠すために使っている。

敵の襲撃があるかもしれない、などと不安げな、あるいは警戒した表情をしていれば、それが何かしらの形で他人に伝播する。
人間の表情―例えば“笑顔”―に力があるのは、プロデューサー自身よく知っていることだ。

士もそれを知っているからこそ、悪影響を及ぼさないように表情を作っている。
そしてそれは、絶対の防壁だと言えた。自分たちがそうだったように、士のポーカーフェイスが見抜ける人物など、この場にはいないはずだから。

見方を変えれば、この時点で士は既に戦いを始めていたのだ。皆を守るための戦いを。


P「門矢さんは…。戦うことに、お疲れになりませんか」

士「あ?」

P「その…、いつも気を張っていて、疲れることは無いのかと、思いまして」

士「別に四六時中張りつめてるわけじゃねぇ。普通に気は抜いてる」

P「では、今は……」

士「そうしなきゃいけねぇ時だろ。やるべき時に、やるべきことがあるだけだ。お前だって今は同じだろ、“プロデューサー”」

P「…………」

士「この世界を守るために出来ることをするのも、あいつらがステージで最大限やれるようにするのも、差はねえだろ」

P「……仕事」

士「ああそうだ。やらなきゃどっかが回らねぇことだ」

P「…では。門矢さんは、何故戦うのですか?」

士「……それ、昨日も聞かれたな」

P「私がこの仕事をするのは、誰かを笑顔にするお手伝いをしたいからです。戦うことが仕事だと言うなら、何故門矢さんはその仕事をするのですか」

士「……現在、企画検討中だ」

P「……えっ?」

士「戦う理由なんて、今の俺にも定まり切ってない。なんせ、これだけ長く一つの世界にいること自体初めてだからな」

士「この世界で俺はどうすればいいか、俺は俺なりに考え行動していた。だがつい最近、それも変わった。また1からのスタートだ」

士「この世界にいる意味を探すために、世界を滅ぼさせるわけにはいかねぇ。今のところ、それが俺の戦う“理由”みたいなもんだ」

その言葉を最後に、2人の間には沈黙が訪れた。お互いに何も話さず、動かずのまま。

それが破られるのは、シンデレラプロジェクトのメンバーが2人の様子を見に来る10分後の事だった。


美波「…他に気付いたことはある?」

みく「出ハケ、まだちょっとバタバタしてるかも」

シンデレラプロジェクトの楽屋で、本番前の入念な打ち合わせが行われている。
ホワイトボードには、先のリハで感じたことが書き連ねられていた。

これは美波の発案だった。
プロデューサーや士が促さずとも、彼女たちはある程度自分たちで、大事なことは話しあうようになっていた。
各々があれこれ悩みを抱えて燻っていた合宿の日からすれば、小さなことだが確実に前に進んでいるのが見て取れる。

楽屋のドアが開く。入って来たのは美嘉だった。

美嘉「やっほー★やってるね」

未央「みかねえ!」

莉嘉「お姉ちゃん!」

美嘉「今日は頑張ろうねっ★」

「「「よろしくお願いします!」」」

未央「みかねぇ!見ててねっ、この前より絶対、一歩進んで見せるから!」

今日ニュージェネとして立つステージは、あの日のリベンジなのだ。
気持ちはもう、あの時より前に進めているはず。後は、それを証明するだけだ。

美嘉「……一歩じゃあ、分かんないかもね♪」

P「…………」

プロデューサーが、静かに頷いた。とりあえず士も笑っておく。

みりあ「美波ちゃん、まだ練習する時間あるかな?」

美波「ええ。全体曲?」

みりあ「うん!」

美波「待ってて、付き合うわ。先に出ハケのこと、連絡してくるわね」


美波が出て行った後、美嘉も楽屋から出て行く。士はその後を追い、背中に声を掛けた。

美嘉「何?…まさかまた、部外者が口出しするなとか、そういう…」

士「違う。挨拶をしに来ただけだ」

美嘉「挨拶?」

士「ああ。…今日はまぁ、よろしく頼むぜ」

頭を下げるどころか、身長的に上から思い切り見下ろしながらの挨拶だった。
おまけに腕組みまでしていたため、挨拶をするような姿勢でも態度でもない。
そんな失礼極まりない“挨拶”ではあったが、美嘉は不思議と不快な気分にはならなかった。

美嘉「何で今更挨拶なワケ?」

士「思い返しても、お前にそういうことをした覚えが無くてな」

美嘉「そうだったったけ?…ま、いっか。こっちもヨロシクね★」

士「ああ」


開演を目前にし、いよいよ慌ただしくなってきたバックグラウンド。
トップバッターを務めるシンデレラガールズ他数名のアイドルたちは、既にステージ衣装に身を包んでいる。
その姿は、“本番が近い”と言う事実を、シンデレラプロジェクトに突き付けていた。

かな子「すごいね…」

智絵里「う、うん…」

覚悟は出来ていても、やはり大舞台に立つことをイメージすれば緊張してしまう。
気の弱い智絵里とかな子には、それだけでもかなりのプレッシャーとなっていた。

そんな2人の様子を見た美波が、横から声を掛ける。

美波「大丈夫?お水飲む?待ってて、もらってくるから」

そう言って小走りに外へ向かった美波の前には、ニュージェネレーションズの3人がいた。

卯月「ちょっと、暑いですね…」

美波「スタッフさんに言ってこようか?」

アーニャ「…ミナミ、お手伝いしましょうか?」

美波「ううん、これくらい」

そして美波が再び動き出そうとしたところで、川島の落ち着いた声が通り抜けた。

川島「みんなー、揃ってるー?」

「「「はーい」」」

離れていた者も、自然と集まって来る。今日のフェスの出演者全員が、その場に集合した。

川島「お客さんは勿論、スタッフさんも私たちも全員、安全に楽しく今日のフェスを、この夏一番、盛り上げていくわよ!」

「「「はいっ!」」」

川島「じゃ、円陣組むわよ。楓ちゃん、掛け声よろしく」

楓「はい。…それじゃあ円陣組んで、エンジン掛けましょう!」

「「「は!……い?」」」

楓の駄洒落に、場の空気が白ける。だが、若干名、異なる反応をする者がいた。



莉嘉「おーっ!スタート・アワー・エンジーン!」


みりあ「あーっ!ベルトさんが言ってたのだー!」


きらり「うっきゃー☆エンジン全開で行っくにぃ♪」

楓「あら?うふふ♪」

川島「…これが、若さなの…?わからないわ…」

凸レーションの3人の言葉に、凛・蘭子・美波以外は首を傾げるばかりだった。

その3人によって、白けた空気は吹っ飛び、代わりに熱気が満ちてくる。

茜「おおっ、エンジンを掛けるんですね!?それじゃあ、思いっきり燃やしましょう!!ボンバーッ!!」

輝子「ヒィィィヤッハーーーーッ!!」

幸子「わぁっ!しょ、輝子さんっ、急に叫ばないでくださいよ!ビックリするじゃないですか!」

愛梨「う~ん、何だか熱くなってきちゃった……」

美嘉「愛梨ちゃん、それ脱いじゃダメだからねっ!?」

裕子「むむむ!これは…熱気を操るエスパーの気配!?」

藍子「うふふ。みんな太陽みたいに、燃えてますね♪」

小梅「あ…。あの子が、暑がってる…。珍しい……」

美穂「あ、あの、皆さん?今から盛り上がりすぎると、後が大変なんじゃ…」

まゆ「でも、緊張するよりはいいと思いますよぉ」

「「「………………」」」

凸レーションを除いた11人が、先輩たちのフリーダムな姿に唖然としていた。
エンジンを掛ける段階だと言うのに、もうアクセルをめいっぱい踏み込んでいるかのような熱を感じる。
流石は346プロトップのアイドルたち、パワーもシンデレラプロジェクトとはケタが違うようだ。

収拾がつかなくなる前に、川島が手を叩いて各人を止めた。

川島「んんっ。みんな、その元気はステージで使うこと。はいじゃあ改めて楓ちゃん、ちゃんと、お願いするわね?」

楓「はぁい。では改めて…346プロ、サマーアイドルフェス!みんなで頑張りましょう!」

「「「おーーーっ!」」」



同時刻。楽屋で待機中のプロデューサーと士も、どちらからともなく視線を交わして頷いた。

P「我々も、頑張りましょう」

士「ああ」



そして迎えた15時。シンデレラプロジェクト初のビッグイベント、サマーアイドルフェスの幕が上がった。


みりあ「あっ、始まったよ!」

楽屋備え付けのテレビに映るステージ。
フェスはいつも通りに、シンデレラガールズによる『お願い!シンデレラ』からスタートした。

食い入るように見つめる者。
1ファンのように楽しむ者。
それを受けて気持ちを固める者。
ステージに緊張する者。

それぞれがそれぞれなりの反応を表す。そんな楽屋の中に、プロデューサーと士の姿は無かった。

智絵里「か、カエルさん…、カエルさん……っ」

委縮してしまった智絵里がおまじないを口にするも、不安は少しも消えなかった。

そんな智絵里のことを心配して、また美波は声を掛けた。

美波「大丈夫、智絵里ちゃん?声出しにいこっか。まだ少し、時間あるから」

その隣で、心配そうな目で見てくるアーニャに、美波は困ったような笑顔で言った。

美波「…ちょっと行ってくるね。私も、何かしてないと落ち着かなくて…!」

アーニャ「ミナミ……」

今日の美波はパートナーのアーニャからしても、リーダーだからと言えど少し頑張りすぎているように見える。
しかしリーダーとして頑張っているのを、無理を言って止めるわけにもいかない。生憎、それが出来るプロデューサーと士は不在だ。

掛ける言葉もなく、美波は智絵里と共に楽屋から出て行ってしまう。



美波が倒れたという連絡があったのは、それから程無くしてだった。


P『門矢さん、新田さんが…!』

士「何だ…ああ?」

プロデューサーは舞台袖、そして士は敵襲に備えて外にいた。
先に連絡が行ったのはプロデューサーだった。彼からの電話を受け、士も急ぎ救護室へ向かう。

士「容体は?」

P『大事ではないようです…。ですが、今倒れてしまったとなると、ステージは…』

士「…クソッ、切るぞ」

救護室の前には、美波の様子を見に来たシンデレラプロジェクトのメンバーが押し掛けていた。

みく「あっ、士チャン!」

士「入るぞ、どけ」

乱暴な口調で有無を言わさずに道を開けさせ、救護室に入った士の視界に、かな子・智絵里・きらりの背中が入る。
衝立の向こうには、プロデューサーの背中が見えた。

きらり「士ちゃん……」

泣いている智絵里、その背中をさするかな子ときらりを躱し、士は衝立の向こうをのぞき込んだ。

ベッドに横たわる美波は、顔を両手で覆い隠していた。

士「ちひろ。何があったか説明しろ」

ちひろ「はい、えっと……」

智絵里「つ、士さん……私の、私のせいなんです……」

振り向こうとして、やめた。今振り向けば、きっと智絵里を必要以上に怯えさせるだけだと、勘が告げていた。

智絵里「リハーサル室で、練習付き合ってもらってたんです…。そうしたら、気分が悪いって……」

ちひろ「風邪ではないそうですが、極度の緊張で発熱が……」

P「緊張……」

美波の傍らにしゃがみ込んでいるアーニャが、今の事態を我が事のように苦しんでいるのが士には分かった。
「止めていれば」、「でなくとも自分が負担を減らしていれば」。後悔の言葉ばかりが見える。

アーニャ「ミナミはリーダー、とても頑張ってました…!」

P「……私が、負担を……」

士「…………」

奥歯を噛みしめ、内心で舌打ちをする。
敵の襲撃に備えることに掛かりきりになり、全員をよく見ていなかった。
“プロデューサーをやる”と決心したにも関わらず、この事態を招いてしまった。

美波「…違います」

アーニャ「ミナミ!」

美波「私も昨日、夜遅くまで練習していたので…。すいません、もう大丈夫です…」

ちひろ「まだ熱があるんですよ…?」

ちひろの言う通り、美波の顔はまだ赤い。ステージはおろか、ここから出すことも許してはいけないほどだ。

P「新田さん。…ステージへの出演は、許可できません」

美波「……っ」

P「申し訳、ありません」

瞳が、揺れた。
涙が出そうだったのだろう。美波はきつく目を瞑り、それを堪えた。

これは自業自得。ステージに立てないのは、自分が悪い。
だから、どんなに悔しくても、泣いてはいけない。堪えて、自分を責めることだけが、今の彼女に許された行い。

ちひろ「…ラブライカが出られないとなると、調整が必要になりますね…」

美波「っ!ま、待ってください!私が出られないのは自分のせいですっ、でもっ、アーニャちゃんは!」

アーニャ「!」

美波「アーニャちゃんには1人でも出てほしいんです!だって…っ、あんなに頑張ってきたのに……!」

アーニャ「……ミナミ……」

士「………ハァ」

誰にも聞こえないように、小さく息を吐く。

士「…ひとまず寝てろ。昨晩休まなかった分、今な」

P「門矢さん?」

美波たちに背を向けて、士はきらりの方を見た。幸いきらりは目配せの意図をすぐに察し、智絵里とかな子に戻るよう促してくれた。

きらり「…2人とも、戻ろぉ?相談しなきゃいけないこと、色々あるにぃ」

かな子「うん…。智絵里ちゃん、大丈夫?」

智絵里「美波さん……っ」

智絵里は美波に詫びて、かな子ときらりに支えられながら救護室を出て行った。

P「…アナスタシアさんも、戻ってください」

アーニャ「でもっ、ミナミが」

美波「アーニャちゃん……ごめんね。プロデューサーさん、士さん……お願い、します」

士「ああ。…行くぞ、アナスタシア」

アーニャ「……はい」

アーニャを先に外に出し、士も外に出る。追ってプロデューサーも出ようとしたところで、士はドアを閉めた。

士「お前は少しそこにいろ。こっちの事は俺がやっておく」

P『…分かり、ました。よろしくお願いします』


プロデューサーと美波を欠いたまま楽屋に戻った一同。
士は今起きていることに関して、全てを聞かせた。その上で、こう続けた。

士「新田の代役が要る」

未央「代役……みなみんの……」

士「現状、アナスタシアを出演させるにはそれしか手がない。誰か出来る奴はいるか」

みく「ちょっとなら出来るけど…」

李衣菜「練習時間はほとんど無いよね…」

莉嘉「ぶっつけ本番、かぁ…」

かな子「この、大舞台で…」

歓声が絶え間なく上がる外と切り離されたかのように、楽屋は重い沈黙に包まれた。

少し出来るといったみくを信じ、出来る限りを教えるべきか。
士には振付はレッスンを見ていただけでほとんど頭に入っているし、その通りに動ける運動神経もあるため、教えるだけなら容易い。
だが実際の所は莉嘉が言ったようにほぼぶっつけだ。付け焼刃ではボロが出るのは明白。

このまま、美波の想いが途切れてしまうのかと思われた、その時。

「…あのっ」

歩み出たのは蘭子だった。

士「神崎」

蘭子「だっ、第2形態より先は、未知の…」

そこで、彼女の言葉は一度止まる。だが、意を決して蘭子は再び口を開いた。

蘭子「あ、あのっ。合宿の時私3人で、スペシャルトレーニングで、その……」

何とか思いを言葉にしようとしているのは伝わってくる。士も口を挟まずに、蘭子の言葉に耳を傾けた。

蘭子「……誰かと一緒に何かをするのって、すごく…ドキドキしました。いつもの自分よりも、ずっとおっきな力を感じて…」

蘭子「だから…やってみたいんです。大事なステージの前で、言うようなことじゃないかも、知れないけど…」

蘭子「…新しいドキドキを、感じてみたいんです。お願いします!」

士「…………神崎」

蘭子「は、はいっ」

蘭子の身体に力が入る。士がきついことを言ってくると予想したのだろう。

士「ラブライカの出番は、お前のステージの直後だ。連続になるが、それでもやれるか?」

蘭子「……はい!やりますっ」

士「らしいが。アナスタシア」

士の隣にいたアーニャは、蘭子の方へ一歩踏み出して、両手を握った。

アーニャ「…ランコ。よろしくお願いします」

士「決定だな。いいだろう、連絡は俺がやってやる。終わるまで待ってろ」


一方、士たちが出て行った直後の救護室では、プロデューサーが静かな口調で美波と会話をしていた。

P「何故、昨日は遅くまで練習をなさっていたのですか」

美波「不安…だったんです。大事な舞台で、私はリーダーだから、ちゃんとみんなを引っ張って行かなきゃって思って」

美波「でも、考えれば考えるほどに、どんどん不安になってしまって。身体を動かしていれば、それを忘れられたんです」

P「何か一言、言ってくだされば…。いえ、気付かなかったこちらの落ち度です」

美波「そんなっ、悪いのは私なんです。プロデューサーさんたちは、何も…」

美波「お2人は今まで、私たちのために懸命に…。だから、プロデューサーさんにも士さんにも、今以上に苦労を掛けるわけには行かないじゃないですか」

ちひろ「新田さん。何事も、1人で抱え込む必要は無かったんですよ」

P「我々を頼っていただいて良かったのです。我々でなければ、皆さんでも」

美波「…私、そういう時にどうすればいいか、知ってたはずなのに…」

美波は、自分の両手をぎゅっと握りしめた。

アーニャと弦太朗に、教えてもらったこと。大切なことなのに、どうして忘れてしまっていたのだろう。気持ちは後悔に溺れていく。

不意に、冷え切った両手に温もりが伝わってきた。

ちひろ「…だったら、もう一回覚えましょう。ね?」

美波「あ……」

ちひろの手が、美波の両手を解きほぐして、優しく包み込んだ。

ちひろ「ほら、プロデューサーさんも」

P「えっ、あ、はぁ……」

躊躇いがちに手を伸ばしたプロデューサーは、ちひろの手に自分の手を重ねた。

ちひろ「何かあったら、私たちを頼ってください。いいですね?」

美波「…ありがとう、ございます」


プロデューサーの携帯が震えた。士からのメールだ。その内容に目を通すと、それを美波にも見せた。

美波「ありがとう、蘭子ちゃん……」

急な変更がある場合、連絡は何よりも優先される。今は士が請け負っているようだが、人手は少しでも多い方がいいはずだ。

ちひろ「プロデューサーさん」

P「はい。私は戻ります」

手を放し、プロデューサーは立ち上がった。美波も、彼の姿を目で追う。

美波「みんなのこと、よろしくお願いします、プロデューサーさん」

P「はい。新田さんも、今はしっかり休んでください」

一礼して、プロデューサーは救護室を後にした。

P「もしもし門矢さん、私です」

士『統括の方にはもう連絡しておいた。今頃下まで連絡が行ってるはずだ。音響のチェックも済んでる』

P「衣装合わせは?」

士『まだだ。都合の確認を頼む』

P「他に何か、することは?」

士『神崎が着替える間、繋ぎが必要になる。あいつらは今、その打ち合わせをやってるはずだ。
衣装の方の確認が終わり次第、そっちに助言を頼む』

P「分かりました。門矢さんは今どこでしょうか」

士『どっかの用具置き場にいる。神崎のダンスのチェック中だ』

P「門矢さんから見て、神崎さんはどうでしょうか?」

士『出来てる…と言えなくもないな。残り時間で仕上げてやるよ』

P「ありがとうございます、よろしくお願いします」


プロデューサーと士の迅速な行動によって、各部署への連絡・確認は滞りなく行われた。

蘭子とアーニャの振付合わせ、美波用の衣装を蘭子に合わせる調整、繋ぎのMCの内容確認、万が一美波抜きの際の全体曲のフォーメーション確認。

急なトラブルを、シンデレラプロジェクトは一つになって乗り越えていく。

全員の尽力によって、今出来ることはシンデレラプロジェクトのステージが始まるまでに、全て終えることが出来た。


自分たちのステージを控え、衣装に着替えたメンバーたち。その中で、プロデューサーと蘭子とアーニャは救護室の美波の元を訪れていた。
体温が下がっていれば、ステージに出られる可能性はあった。
しかし、彼女の体温は未だ38℃より下らず、出演は今度こそ見送りが決定した。

アーニャ「ミナミ……」

美波「ごめんね、アーニャちゃん。今日は、蘭子ちゃんと一緒に頑張ってほしいの」

蘭子「私っ、美波さんの分まで頑張りますから!」

美波「…うん。アーニャちゃん、蘭子ちゃん。頑張って、思いっきり楽しんできて!」

アーニャ「Да!」
蘭子「はい!」


今、ステージでは、美嘉が1人で歌い踊っていた。
流石は346トップクラス。1人でありながら、ステージから観客席に至るまで、彼女は自分の世界を作り上げていた。

この世界に、これからシンデレラプロジェクトが飛び出していく。トップバッターは蘭子だ。

P「…皆さん、時間です。準備は良いですか」

「「「はいっ」」」

P「それでは」

緊張するアーニャと蘭子の返事はぎこちない。そんな2人を、突然後ろから莉嘉とみりあがくすぐった。

「「すきありー!」」

「「ひゃーーーっ!?」」

突然のことに驚き、悶え、可愛い悲鳴を上げるアーニャと蘭子に、莉嘉とみりあは無邪気に笑いかけた。

みりあ「笑顔だよっ、蘭子ちゃん、アーニャちゃん!」

莉嘉「せっかくのステージだもん、楽しんで行こーっ☆」

蘭子「あ……」

みく「MCでバッチリ繋ぐから安心するにゃ!」

士「勢いで解散するなよ」

李衣菜「しま…せんよ、多分」

みく「李衣菜チャン、そこは断言するところにゃ!?」

士が適当に混ぜっ返し、李衣菜が迂闊に乗っかり、みくがツッコむ。いつも通りの流れだ。
そんないつも通りの流れは、いつものように少女たちに笑顔をもたらした。

未央「よーっし、気合い送るよー!」

智絵里「わ、私も…。えいっ…!」

かな子「智絵里ちゃんは大事に持ってて!」

蘭子「みんな…ありがとう…!」

アーニャ「ありがとう、ございます♪」

士「ほう」

その一瞬が、ベストのタイミング。士はカメラのシャッターを切っていた。

P「皆さん、行きましょう」

「「「はいっ!」」」

今度こそ、少女たちの力強い声が、舞台裏に響いた。


ステージに向かう蘭子の背中を見送り、プロデューサーは士の前に立った。

P「こちらは、私に任せていただいて構いません。…門矢さん」

士「ああ、分かった。外で見てるぞ」

P「何かあれば、ご連絡を」

士「分かってる分かってる」

ひらひらと手を振り、士はスタッフ用の通用口から外へ出る。途端に押し寄せてくる音と歓声が、皮膚を震えさせた。

蘭子は大きな舞台の上で、1人ながら実に堂々としたパフォーマンスを見せる。
この後すぐ、再びステージに立つことになると言うのに、それを心配しすぎるような様子もなかった。

ポケットから、フォーゼのカードを引っ張り出す。弦太朗に見せようなどという訳ではないが、何となくそうする必要があると感じたからだ。

曲が終わる最後の瞬間まで、蘭子は見事に自分の世界を魅せていた。
しばし客席に手を振って応えると、蘭子は小走りで舞台袖に引っ込んだ。大変なのはここからだ。

入れ替わりに、アスタリスクの2人がステージに登場する。
彼女たちの事を知っているファンは、登場の瞬間から既に噴き出していた。


ステージに向かう蘭子の背中を見送り、プロデューサーは士の前に立った。

P「こちらは、私に任せていただいて構いません。…門矢さん」

士「ああ、分かった。外で見てるぞ」

P「何かあれば、ご連絡を」

士「分かってる分かってる」

ひらひらと手を振り、士はスタッフ用の通用口から外へ出る。途端に押し寄せてくる音と歓声が、皮膚を震えさせた。

蘭子は大きな舞台の上で、1人ながら実に堂々としたパフォーマンスを見せる。
この後すぐ、再びステージに立つことになると言うのに、それを心配しすぎるような様子もなかった。

ポケットから、フォーゼのカードを引っ張り出す。弦太朗に見せようなどという訳ではないが、何となくそうする必要があると感じたからだ。

曲が終わる最後の瞬間まで、蘭子は見事に自分の世界を魅せていた。
しばし客席に手を振って応えると、蘭子は小走りで舞台袖に引っ込んだ。大変なのはここからだ。

入れ替わりに、アスタリスクの2人がステージに登場する。
彼女たちの事を知っているファンは、登場の瞬間から既に噴き出していた。

李衣菜「さあ、今日は特別なバージョンでお届けするよー!それではー」

「「どうぞー!」」

照明が青と白に変わる。蘭子は、先ほどまでの黒を基調とした衣装とは真逆の、白い衣装に身を包み、アーニャと共にステージに立った。

『え、あれ?さっきの子じゃね?』

『美波ちゃんは…?』

青と白のサイリウムを用意していたファンの手が、しばし止まる。
だが、士によって可能な限り調整されたアーニャと蘭子のコンビが歌い踊り始めれば、そんな者もあっという間にサイリウムを振って応援し始めた。

士「…………ん?」

銀髪コンビが会場を沸かせる中で、士は視界の奥に広がる空の様子を見、振り返って山々を、空を眺めた。

雲が流れてきていた。それも黒雲だ。
周囲を見渡せば、それに気が付いたスタッフたちは雨が降った時に備えて、カバーなどの準備を始めていた。流石に手際が良い。

士も一旦舞台袖の方へ入った。
近くにいたスタッフをとっ捕まえ、雨が降るかもしれないことを報告すると、奥のプロデューサー達の元へ歩いていく。

未央「あれ、つかさん」

卯月「外にいたんじゃ…」

士「外は今、雲が来てる。雨が降るかも知れねえ」

P「雨、ですか」

莉嘉「ねーねーPくん、雨が降ったらどうなっちゃうの?」

P「それほど雨脚が強くなく、長引かなければ、中断程度で済むはずですが…」

士「逆なら、中止もあり得る」

「「「え……っ」」」

降水確率が0%という予報も出されていただけに、それは一層強いショックを与えた。

P「ですがこの季節、この時間帯の雨雲でしたら、恐らくは夕立で終わるのでは?」

士「そうだと思うが、だとすると今度は雷が問題だな」

落雷によって機材がダウンしてしまえば続けられなくなってしまう。何とも嫌なタイミングで、自然が敵に回ったものだった。

凛「士さんでも、流石に天気は無理だよね…」

きらり「どうなっちゃうのかなぁ…」

備え付けられたモニターの中では今、蘭子とアーニャが歌い終えたところだった。

2人の凛々しい姿に、誰からともなく、拍手が起こる。

未央「天気の事ばっか気にしたってしょうがない!それよりさ、頑張ったらんらんたちを迎えてあげようよ!」

智絵里「…うん!」

かな子「そうだよね!」


歌い終えたアーニャと蘭子は、ステージから手を振っていた。

彼女たちの頬に、水滴が触れたのはその時だ。

何だか、ひどく冷たい雨粒だったような気がする。


蘭子「大変ですっ」

アーニャ「雨が…!」

「「「!」」」

士「降ってきやがったか……」

恐れていたことは現実になってしまった。
しかし準備自体はされていたため、機材には素早く雨除けのシートなどが被されていく。

プロデューサーは、外から来たスタッフを捕まえ聞いた。

P「外の状況は?」

「まだ降ってきたばっかなので何とも…。ただちょっと、雷が来たらヤバいかもしれないですね…」

雨合羽を羽織ったスタッフたちが、次々にすれ違う。今この場で、シンデレラプロジェクトに出来ることは、何も無かった。


誰もが困惑する中で、その瞬間は突然にやってきた。


「ぐっ―――」


一瞬、士の意識に生じた、猛烈な揺らぎ。


その直後、聞きたくなかった音が聞こえた。


轟く雷鳴。そして、突風が吹き抜ける。


落雷によって舞台袖の電気が消え、小さな悲鳴が上がる。


そして、それ以上に大きな悲鳴が、外から聞こえた。


もう疑う余地はない。士はステージに続くステップを素早く駆け上がった。


強風に煽られた雨粒が、勢いよく士に叩きつけられる。


それを無視して開いた目に、最悪の光景が映った。


フェンスを蹴散らし、我先にと逃げ惑う観客たち。



そして、その中央に佇む、3体の異形のモノたち。


「来たなディケイドォ!!貴様と相見えるこの瞬間を、どれほど待ち望んだか…!!」

獣のような白い怪人が吼える。その姿、身体に刻まれた線からして、それが獅子座「レオ・ゾディアーツ」であることは一目でわかった。

「覚悟しろ、貴様の命はここで尽きる」

今度は白い怪人でも、陣羽織に丁髷と侍のような特徴を持つ怪人が声を発した。
以前怪人と共にスーパー戦隊と戦った時の経験から、士はそれが「ウェザー・ドーパント」だと知っていた。

「我らが創造主の前に立ち塞がる仮面ライダーは、抹殺するのみ…!」

そう言った最後の怪人から、重加速粒子が放たれた。逃げようとする人々の動きが鈍くなり、雨粒がゆっくりと落ちていく。
竜巻のような意匠を持つそのロイミュードは、「トルネードロイミュード」だった。


士「ゾディアーツ、ドーパント、ロイミュード、か…」

何の因果か、それはこれまで共に戦った3ライダーの世界の怪人たち。それが今、こうして士の前にいる。

士「…まったくてめえら、プロデューサーをステージに立たせやがって」

吐き捨て、士はディケイドライバーを装着した。


「変身!」


『KAMEN RIDE DECADE!』


士「ハッ」

ステージから勢いよく3怪人の元へ跳ぶ。素早く散開した3怪人の中央、取り囲まれるような形で、士は地面に降り立った。

レオ「ディケイドォォォォッ!!貴様、よくもオヒュカス様をォォォォッ」

士「ああ、あの蛇野郎の知り合いか」

レオ「我らが偉大なる指導者を…!貴様を許さんっ!!」

振り下ろされた巨大な爪をバックステップで躱す。士を捉え損ねた爪が地面を抉った。

士「蛇野郎の部下が犬とライオンか。ハッ、あいつ動物好きだったのか?“ペット”によく懐かれて、今頃“あの世”で喜んでるだろうぜ」

レオ「貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ」

またしても爪を躱そうとした瞬間、士の身体に電流が奔った。

士「ぐっ!?」

ウェザー「この世界が、貴様の墓場だ」

動きの止まった士を、レオの鋭い爪が斬り裂きふっ飛ばす。

士「がっ―――」

トルネード「抹殺する……!」

士の身体はトルネードの起こした竜巻に飲み込まれ、上空へ運ばれた。竜巻の中で身動きの取れない士に、トルネードが連続攻撃を仕掛ける。

士「ぐぅっ、このっ」

成す術なく打たれる士に、ウェザーの作り出した黒雲から雷が落ちた。

士「ぐあぁぁっ!」

落下する士を、下でレオが待ち受ける。

レオ「ゴアアアアアアァァァァッ!!」

咆哮を衝撃波にして放つレオ。防御も出来ずに士が吹っ飛び、地面に叩きつけられた。

レオ「ハァァァァーーーーッ……!」

ウェザー「ふん、あっけない」

トルネード「…いや、生体反応は残っている。まだ生きているぞ」

士「……チッ。やってくれる」

士は手を払いながら平然と立ち上がった。

レオ「…フン。あの程度で死なれては、オヒュカス様の無念を晴らすことも出来ん。貴様には苦しみ抜いてから死んでもらう!」

士「ハッ、すぐにヤツと同じ所へ行かせてやる」

レオ「ほざけっ」

互いに向かって駆ける士とレオ。ライドブッカーと爪が火花を散らした。

士「今用があるのはお前じゃないんだがなぁ…!」

レオ「こちらにはある!」

士の狙いは、重加速を発生させているトルネード。
だがレオは自身の目的―オヒュカスの仇討ち―のために士を執拗に狙い、トルネードから遠ざけていた。

士「邪魔を…するなっ!」

『ATTACK RIDE SLASH!』

レオの腕を弾き上げ胴を横一線に斬り裂き、即座に蹴りを入れてふっ飛ばす。

ウェザー「フンっ、単細胞の獅子ごときが」

トルネード「仮面ライダーは抹殺する!全て!」

入れ替わりにウェザーとトルネードが士に襲い掛かる。トルネードの右腕は竜巻のようにねじれた槍と化した。

トルネード「フッ!」

士「ハッ!」

突きを躱し顔面を殴りつけるが、トルネードは怯むことなく右腕を薙ぐ。
それもライドブッカーで難なく受け止め袈裟切りにしようとしたところで、ウェザーの放った冷気が士の右腕を凍らせた。

士「くっ…!」

トルネード「喰らえっ」

その隙に再びトルネードが腕を突き出す。屈んで躱し素早く足を払うも、トルネードは自身を風で包むことでバランスを保った。

士「!」

士を狙って、上空から氷柱が降り注ぐ。士は追撃を諦め、一度退いた。

『FORM RIDE AGITO:FLAME!』

フレイムフォームの炎で右腕の氷を溶かし、そのままフレイムセイバーで氷柱を切る。
そしてディケイドの姿に戻ると、再びライドブッカーを手に駆け出した。

ウェザー「こちらは3、お前は1だ。どちらが有利か、わざわざ言わなければならないか?」

レオ「シャァァアッ」

復帰したレオが、その爪にコズミックエナジーを集め、エネルギーの刃として放つ。
当たるものだけ弾き飛ばした士は、再び3怪人の中に飛び込んだ。

トルネード「学習能力の無い奴め」

士「どうかなぁ!」

『ATTACK RIDE ILLUSION!』

「「「ハァッ!」」」

3人のディケイドの拳が、同時に3怪人の鼻っ柱に叩き込まれた。

ウェザー「ぐあっ!?」

士「3vs1がどうとか言ってたな。もう一回言ってみろ」

それぞれが怯んだ隙に、士はオーロラを出現させた。行き先は勿論、昼間に確認した第4駐車場だ。

まずウェザーと戦う分身体が、ウェザーを上手くオーロラの向こうに蹴り飛ばし、追って消えて行った。

次の分身体は、相手をするトルネードを地面に叩き伏せ、重加速を解除させた。
長いこともがいていた観客たちは、再び蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「ハァァッ!」

トルネード「ぬおぁぁっ」

トルネードの胴に拳を叩き込み、先ほど同様にオーロラの向こうへぶっ飛ばすと、その分身体も後を追ってオーロラに飛び込んで行った。

レオ「おのれぇっ!!」

士「ハァァァァッ!」

ライドブッカーを爪で受け止めるレオ。両者の鍔迫り合いが続く。

そんな中、士の耳に飛び込んできたのはプロデューサーの声だった。

P「門矢さんっ!」

士「こいつらの相手は、俺がやっておくっ!お前は元通りに進行させろ、いいな!」

P「…………はい!」

この戦いに、プロデューサーが出来ることは無い。今は士を信じて自分に出来ること、フェスの再開に向けて尽力するしかないのだ。


士の耳には更に声が入って来る。

卯月「つ、士さん!大丈夫ですか!?」

士「俺の心配をするよりっ、自分の振付のことでも心配してろ、島村!」

卯月「は、はいっ!頑張ります!士さんも、頑張ってください!」

莉嘉「士くーんっ!!頑張ってーっ!!」

みりあ「ファイトだよ、士さん!」

きらり「士ちゃーん!!ファイトだにぃーっ!」

李衣菜「早く倒して、戻って来て下さいね!?」

みく「戻って来なかったら許さないにゃーっ!」

未央「お願いつかさんっ、ステージを、みんなを守って…!」



「ああっ、分かった分かった!戻ってくるからっ、やれることはやっておけ!いいな!」


「「「はいっ!!」」」


士「だァッ!」

レオ「ごあっ!」

レオを渾身の力で蹴飛ばし、士がオーロラに飛び込んで行く。その影も見えなくなったところで、オーロラが消滅した。

P「お願いします、門矢さん…!」


ウェザー「どうせ死ぬというのに、小賢しいマネをッ!」

レオ「だが、ハッキリした。貴様を倒した後に、あのステージを目の前で破壊してやろう」

トルネード「そして抹殺する。仮面ライダーは全て殺す…!!」

3怪人の背後に出現したオーロラから、ダスタード・マスカレイド・ナンバーの無いロイミュードたちが続々と出現する。少し前にも見た光景だ。

士「ハッ、ペットは飼い主に似るってか。やることが変わってねぇ」

レオ「貴様ァ、これ以上の愚弄は許さんぞ!!」

数の差だけで見れば、1vs3よりも今の方がはるかに不利だ。

だが、士には負ける気が微塵もしなかった。


「今の俺には、守るべきものがある。そのために、お前たちの全てを破壊する…!」


破壊するしかない力も、すべては使いようだ。誰かを守りたいなら、敵を破壊すればいい。

何かを破壊することで、守れるものがあるのなら。

破壊者にだって、守護者にだってなってやろう。

そのために必要な力は、士には有り余るほどあるのだから。


レオ「行けぇぇぇぇっ!!」

士「飛ばして行くぜ、ついて来れるか!」

『FORM RIDE FAIZ:AXEL!』

ファイズ・アクセルフォームに変身した士は、ファイズショットを右拳に装着し戦闘態勢を取った。

『Start Up!』

一歩踏み出した瞬間、士の姿は銀色の軌跡を残してかき消えた。

レオ「―――――」

雑魚怪人たちは、自分が何をされたのかも知らずに斃れていく。大群がいると言うのに、そのスピードを捉えることは出来なかった。

トルネード「このっ―――」

自らを竜巻で包み、風と一体化するトルネード。そうすることで、トルネードもまた超高速での活動が可能となる。
仮面ライダーを抹殺するために、トルネードが超高速の世界に進入した。

トルネード「それが貴様だけのものだと思うなッ」

士「ほう、ついて来れるか。だがな―――」

それぞれの言葉は、自分と相手以外の誰にも聞こえない。
周囲の音すら振り切ったスピードの中で、繰り出された士の拳がトルネードにヒットし動きを鈍らせた。

士「ついて来ようなんて、生意気なんだよっ」

トルネードの動きが止まったのはほんの一瞬。
だがその一瞬さえあれば、何十発もの攻撃を繰り出せるのが、アクセルフォームの最大の強みだ。

トルネード「っ――――」

宙に浮いたトルネードの身体に、ほぼ同時に数十発の拳が叩き込まれた。
あらゆる方向から満遍なく殴られ全身がぐちゃぐちゃになるような感覚を覚えた時には、既にポインターによってロックオンされていた。

『FINAL ATTACK RIDE FA・FA・FA・FAIZ!』

『3』

空中に、赤い円錐状の光が無数に出現した。

『2』

それが怪人たちに突き刺さり、次々と爆発が起こる。

必殺の一撃を避けるために、トルネードは渾身の力でポインターを消し飛ばした。

『1』

空中に残った最後の2つのポインターが、レオとウェザーに突き刺さる。

レオ「が、あっ」

ウェザー「ぐぅぅっ」

それに抗った2怪人を、光が貫くことは無かった。だが、いきなり消耗させられたレオとウェザーが膝を折る。

『Time Out. Reformation』

『FORM RIDE AGITO:BURNING!』

士「ハァァァァッ……!!」

爆発の炎の中で、アギト・バーニングフォームに変身した士。
莫大な熱が放たれ、雨粒が士に触れることなく蒸発していく。

士はシャイニングカリバー・シングルモードを振るい、残る雑魚怪人を屠りながら3怪人目指して歩を進める。

士「お前をやれば、この雨も止むか?」

ウェザー「舐めるなァァッ」

絶対零度の冷気が放たれる。
しかし士は溶岩のように赤熱する装甲から業炎を放ち、冷気をものともしない。その歩みは、止まる様子がなかった。

ウェザー「ぐっ……!!」

『FINAL ATTACK RIDE A・A・A・AGITO!』

士「はあぁッ!!」

燃え盛る右拳が、鈍い音を立ててウェザーの頭部に叩き込まれた。
その一撃によってウェザーの力が弱まり、雨は次第に弱まっていく。

レオ「おのれえぇぇぇっ!」

叫び、レオから2体の特殊ダスタード「レオ・ダスタード」が生み出された。赤と白の2体が士に向かって駆け出す。

『KAMEN RIDE KIVA!』

仮面ライダーキバに変身し、同じくレオ・ダスタードに向かって駆けた士は、
ダスタードが手にした槍をスライディングで回避し、そのまま足を払い蹴り上げた。

士「はあああああっ!」

素早く立ち上がり、宙に浮いたレオ・ダスタードに連続パンチを浴びせる。
最後にアッパーでもう一度高く打ち上げ、カードを挿入した。

『FINAL ATTACK RIDE KI・KI・KI・KIVA!』

右脚のヘルズゲートを解放して高く跳び上がる。

士「だァァァーーーッ!」

空中でレオ・ダスタードにまとめてキックが決まり、アスファルトに叩きつけると同時にキバの紋章が浮かび上がった。


ウェザー「ぐ……、おのれ……っ」

トルネード「この力、やはり脅威となる…。抹殺…!!抹殺するのみだ…!!」

レオ「こいつ……。クソォッ、認めんっ、認めんぞっ!!」

強大なはずの3怪人は、目まぐるしく変わる士の攻撃に翻弄されていた。

そして、打たれる度に本能が理解する。目の前の敵の強さを。


士「―――どうした、もう終わりか?」


「「「……うううおおおおああああああーーーーっ!!!」」」

その強さ、その態度、言葉遣い、雰囲気。一挙手一投足の何もかもが、彼らの癪に障る。

怪人たちは、怒りで己を奮い立たせた。

そうしなければ、目の前の敵には立ち向かえないような気がしていた。


士「まだやる気か。いいぜ、手札はいくらでもある」


今度は怪人たちが、士に跳びかかっていく番だった。


『傘は閉じて下さい!具合が悪くなったら、お近くのスタッフにお申し付けください――』

変身した士が怪人たちを引き連れて消えて行ったことで、会場には一応の平穏が訪れていた。
修正は緩やかに行われ、多くはもう今の状況を「夕立による中断」ぐらいにしか思っていない。

しかし、そうでない者たちの心には、士のことが引っかかり続けていた。


P「…………」

プロデューサーが、ステージ上に出来た水たまりを押し流す。
このステージから飛び出して行った同僚は、まだ戻って来ない。

彼が消えてしばらくして、雨は次第に弱まって行った。
きっと戦っている、そしていつも通りに、怪人たちを圧倒しているのだろう。プロデューサーはそう思っていた。

そんな士の身を挺した行動によって、ステージ再開の目途は何とか立った。

だが、離れてしまった観客たちは、そう簡単に戻って来そうには無かった。


かな子「もうすぐ再開できそうだって」

卯月「よかった……」

凛「これ、士さんのお陰なんだよね…」

杏「…だねぇ。ほーんとよく働くよ、士は」

再開後すぐに出番が控えるニュージェネレーションズとキャンディアイランドの6人は、
他のメンバーと離れて、舞台裏で待機していた。

彼女たちもまた、雨が弱まったのは士の戦いの影響だと思っていた。
凛は先ほど「士でも天候はどうしようもない」と言ったが、士はそれすらどうにかしてしまったのだ。

智絵里「…でも、まだ雨降ってるね」

「「「…………」」」

智絵里「あ…っ、ご、ごめんなさい」

未央「へーきへーき♪」

智絵里「ごめんなさいっ、私気が利かなくて…。美波さんが倒れちゃったときも、何も出来なかったし」

かな子「智絵里ちゃん…」

智絵里「せめて、自分のやれることを、ちゃんとやらないと」

杏「それでいいんじゃん?」

少し高い位置にいる杏は、何とも残念そうな表情をしていた。

杏「杏なんて、やれることやるだけで精一杯だよー」

かな子「…ふふっ。そうだよね、やれることをやろう?」

卯月「士さんも、そう言っていましたもんね」

凛「うん。あの人も今、やれることをやってくれてるんだと思う」

未央「私たちみんなが、それぞれに今出来ることを、全力で精一杯やるしかないっ!」


ダンスのチェックを行うアスタリスクと、それに付き合う蘭子。

3人で進行表を読み合わせながら、髪飾りを直し合う凸レーション。

アーニャに付き添われ、休むことに専念する美波。

彼女たちが再びステージに立てるよう、必死に状況を整えるプロデューサー。

その頑張りの全てを守るため、たった1人で戦う士。

シンデレラプロジェクトのアイドル14人とプロデューサー2人は、
皆が皆、今出来ること・やるべきことに全力で向き合っていた。


未央「よーっし、最後まで走り切ろーっ!」

「「「おーっ!」」」


『FORM RIDE DEN-O:WING!』

士「降臨、満を持して……ってな」

デンガッシャー・ブーメランモード&ハンドアックスモードの二刀流で構える士。
その目前には、またしても3怪人が呼び出した雑魚怪人の大群がいた。

ウェザー「雑魚共っ、精々足止めくらいには役目を果たせ!」

ウェザーの檄が飛び、怪人たちは一斉に士目掛けて突撃を開始した。

士「フッ!」

ブーメランを投げると、士はハンドアックス一本で大群に飛び込んだ。
大きな弧を描いて進むブーメランは進行方向の敵を容易く切り裂き、頭数を減らす。

ブーメランをキャッチした士は、舞うような華麗な動きで無数の敵の攻撃を掻い潜っては、一撃で確実に倒していく。
風を掴む羽根のように流れ、その動きは誰にも捉えられない。

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE・DEN-O!』

士「ハァァァァッ!」

フリーエネルギーがチャージされた両手の武器を投擲する。
高速で回転しながら飛ぶブーメランとハンドアックスは、やすやすと大群に穴を開けた。

『FORM RIDE KABUTO:MASKED!』

それでもなお群がる怪人たち。だがその攻撃は、蛹のような強固な鎧の前には通用しない。

レオ「邪魔だァァァッ」

レオが放ったコズミックエナジーの刃が、怪人たちを斬り裂いて士に迫る。

士「フッ、甘いな」

士はカブトクナイガン・アックスモードを構えて易々とそれを防ぐと、仮面の下で不敵に笑い、発声した。

士「キャストオフ!」

瞬間、纏っていたアーマーが猛烈な勢いでパージされた。
士に群がる怪人たちは反応も出来ずにアーマーをぶつけられ、爆発していく。
あまりの勢いに、遠巻きに様子を窺っていた3怪人の元までアーマーは到達していた。

レオ「のわぁっっぐっ」

ウェザー「がはっ!」

トルネード「ちぃっ」

士「ほらほら、ボサっとするな。まだあるぜ?」

そう言う士の手には、後2枚のカードが握られていた。


「「「じゃん、けん、ぽん!」」」

ステージに上がる前の掛け声を決めるジャンケン。今回の勝者は凛だった。

未央「くぅ~っ、負けたか~」

卯月「また負けました……」

初めての大舞台、それもリベンジがかかっている状況ながら、3人はいつものように笑い合っていた。
笑顔が笑顔を呼び、自然と力が湧き上がってくる。

未央「…行こう!」

凛「うん!」

卯月「はいっ」

ステージに続くステップへ、3人一緒に歩いていく。
彼女たちの前には、プロデューサーが何やら深刻そうな顔をして待ち受けていた。

未央「どうかしたの?」

凛「もしかして、士さんの戦いで何か…?」

P「いえ、設備には何も問題はありません。準備は出来ています」

卯月「じゃあ、一体…?」

首に手を当て、プロデューサーが答える。

P「…お客様がまだ、戻り切っていません」

「「「!」」」

P「襲撃…いえ、今は“雨の影響で”観客席から離れてしまった方々が、まだ戻り切っていないのです」

凛「どのくらい?」

P「……正直、まばら、と言う他ありません。中止直前の1/10にも満たないはずです」

卯月「十分の一以下、ですか」

P「はい。…ですので、ショックを受けるかも、しれません」

未央「あ……」

プロデューサーの顔が、申し訳なさそうに歪んだ。
あの日を乗り越えようとしていたのは、ニュージェネの3人だけではない。それはプロデューサーも同じだった。
今の彼の言葉は、あの日出来なかった彼なりの気遣いなのだ。

その気遣いは、もっとも大きなすれ違いを起こしてしまった未央に、向けられていた。


未央「…残念だなぁ」

P「すみません、本田さん。またこのような状況で、あなたたちに出ていただいて―――」

未央「あぁいやっ、違う違う!残念なのは人の数の事じゃないよ、プロデューサー!」

P「……え?」

あたふたと手を振った未央は、プロデューサーが顔を上げるのを待ってから、自分の言葉の真意を口にした。

未央「その…つかさんがいなくて、残念なんだ。まだ戻ってきてないでしょ?」

未央「助けてくれた時にさ、つかさんは『自分の力で進めるか』って、私を奮い立たせてくれたんだ」

未央「プロデューサー、しまむー、しぶりん、みかねえ、プロジェクトのみんな、それにつかさんもいてくれたから、私は今ここにいられるんだ」

未央「だから、その人たちみんなに見てて欲しかったんだ。今の私の…精一杯」

未央「進もうとしてきたことの全部を」

凛「未央……」

卯月「未央ちゃん……」

未央「―――なんて残念そうにしてると、また何か言われそうだから、それはお終いっ」

未央は明るく言って、ばしばしと手を叩いた。そして笑顔で、Vサインをずいっと押し出す。

未央「今はやれることに集中する。見てくれる人、みんなを笑顔にするんだ!」

凛「うん。お客さんが少なくても、やるしかないよね」

卯月「私たちは、やれることを頑張りましょう!」

P「あ………」

未央「せっかく守ってもらったステージだもん。思いっきりやらなきゃ、つかさんにも失礼だしね」

彼女の言葉に、プロデューサーは静かに力強く頷いた。

P「あなたたちのステージは、門矢さんの分まで、私が見届けます。―――行きましょう!」

「「「はいっ!」」」


手を繋いでステップ前に立つ3人。

そこに、暗い階段を駆け下りて行ったあの日を思い出させるものは無かった。

未央「しまむー…、しぶりん…!」

卯月「はい!」

凛「うん!」

彼女たちを待つのは、眩しく輝くステージ。夢のようなひと時。


「「「チョコ」」」


「「「レー」」」


「「「トー!」」」


今度こそ、前へ。少女たちは、輝くステージへ駆け上がった。


未央「みなさーん!初めましてーっ!」

「「「ニュージェネレーションズです!」」」

卯月「待っていてくださって、ありがとうございます!」

凛「雨、大変だけど、盛り上がるよう頑張ります!」

彼女たちは、互いの顔をしっかりと見合って、頷いた。

未央「聞いてください!ニュージェネレーションズでっ」

「「「できたて!Evo!Revo!Generation!」」」


レオ「何故だディケイド、何故貴様はそれほどまでに……強いっ!?」

士「当然だろ?俺は世界の破壊者、悪魔だからな。誰よりも強いに決まってる」

トルネード「理解不能、理解不能っ。抹殺対象が、こんな力を持っているなどと…!!」

士「フンっ。抹殺されるのがどっちか、そろそろ分からせてやるぜ」

ウェザー「最高に調整された我々の力が、何故通用しない……!?」

士「俺は常に進化している。お前らの“最高”如きで、追いつけると思うな」

「「「ぐはぁっ!」」」

士の一撃を喰らい、3怪人は地面を転がった。

強かった。ただの戦闘能力に限ってもそうだが、何より今の士からは本気の闘志が溢れている。
それが、戦うためだけに調整されたはずの彼らを竦ませるのだ。

レオ「何故だっ、何故貴様は……!!」


「俺の仲間が言っていた。『人間は守るものが出来た時に、本当に強くなれるんだ』と」

「さっき言っただろ。今の俺には、新しく守るべきものがあるってな」

「ここにいる意味を見つけるために、あいつらをやらせるわけには行かねぇ」

「だから、俺は強くなる。俺のために、この世界のためにな」


「おのれっ、おのれディケイド……!!貴様は何者だ……ぁっ!!」



「この世界の仮面ライダーだ、覚えておけ!」


ウェザー「ほざくなッ、世界に忌み嫌われた流れ者風情がァァッ」

トルネード「貴様の世界などどこにも存在しない…!貴様がいるべきは死の“無”だっ」

レオ「ならばこの世界ごと、貴様を消すまでだディケイドォォォォォッ!!」

『FORM RIDE HIBIKI:KURENAI!』

士の身体は真紅の炎に包まれ、響鬼・紅へと変身を遂げた。手の中で弄ぶ烈火が、その度に鈴の音を響かせる。

「「「シャアアアアアアアアアアアアッッ!!」」」

レオが咆哮の衝撃波を発し、ウェザーが雷撃を掌から放ち、トルネードが突風を放つ。

士は臆することなく烈火を握りしめ、力強く振るった。


曲が終わる。

無我夢中だったステージが終わり、彼女たちは今やっと、目の前の光景を受け止めることが出来た。

オレンジ、ピンク、ブルーの光に照らされる観客席。そこから聞こえてくる歓声。
客足も戻り、多くの観客が3人のステージに拍手喝采していた。

誰も皆、笑顔だった。


「「「ありがとうございましたっ!!」」」


今西「いい…笑顔じゃないか」

P「はい」


かな子「すごい…!すごい良かったよ!」

卯月「ありがとうございます!」

凛「頑張って!」

智絵里「うん!やれることを、やってきます!」

杏「はあー、出番かぁ。しょうがない、ちょっとだけ頑張るよ」

未央「任せたよ!」

杏は未央の掌に自分の手を打ち合わせると、振り返らずにステージへと進んで行った。


ニュージェネレーションズから、キャンディアイランドへ。

キャンディアイランドから、凸レーションへ。

凸レーションから、アスタリスクへ。

手と手を通して、それぞれの思いが繋がれていく。

それを見守り、ステージ上で輝く彼女たちを、大事そうに眺めていたプロデューサー。

その背中に声を掛けたのは、救護室にいるはずの美波だった。

美波「プロデューサーさん!」

P「新田さん…。体調は、よろしいのですか?」

ちひろ「はい、平熱まで無事に下がりました」

美嘉「全然オッケーだよっ★ほら、美波ちゃん」

ちひろと美嘉に背中を押され、美波が一歩前に出る。
彼女たちが言う通り、顔の赤みは引き、体調の心配はもう無さそうだった。

美波「もう、大丈夫です。ステージへの出演を、許可してもらえませんか」

P「はい。すぐに衣装室の方へ向かってください。千川さん、お願いします」

美波「……っ、ありがとう、ございます!」

すぐに礼をすると、美波はちひろと共に出て行った。

美嘉「揃ってよかったじゃん」

P「…当然の結果です」

美嘉とプロデューサーは、モニターに映るアスタリスクの姿を見た。

美嘉「美波ちゃんの分、着替えが多少ずれ込むでしょ。その間の調整は、アタシがやってあげる」

P「助かります、城ヶ崎さん」

美嘉「可愛い後輩たちのため、だよ。同じアイドル同士、こういう時は助け合わないとね★」


アスタリスクの2人と入れ違いに、美嘉がステージに出て行く。

戻った2人の前には、全体衣装に着替えた仲間たち、そして何より美波がいた。

みく「美波チャン!」

李衣菜「もう大丈夫なの?」

美波「ええ!熱も下がったし、みんなが頑張ってるのに、寝てられないもの!」


士「はァァァァッ」

燃え盛る烈火の一撃、“音撃打 灼熱真紅”が3怪人に次々に叩き込まれた。
強烈な一撃と、体内で響く清めの音に、彼らの力はますます削がれていく。

『FORM RIDE BLADE:JACK!』

士「おっと、最後まで回ったな」

ウェザー「くぅぉおあッ!!」

ブレイド・ジャックフォームになった士を、ウェザーの雷撃が襲う。
だが士は避けるどころか、ブレイラウザーを雷にまっすぐ突き出した。

『FINAL ATTACK RIDE B・B・B・BLADE!』

ブレイラウザーにウェザーの雷、そしてディアーサンダーを纏わせ、士は天高く飛翔する。

レオ「おおおおおおおあぁぁあああああァァァァッ!!!!」

トルネード「逃がすか!!」

空からはウェザーが起こした雷が降り注ぎ、地上からはレオの咆哮波とエネルギー刃が迫り、自ら竜巻となったトルネードが士を追う。

士「まずはお前かっ」

トルネード「抹殺するッ!!」

空中で正面から激突する士とトルネード。
だが地面に落ちたのは、ライトニングスラッシュで胴を斬り裂かれたトルネードだけだった。

ウェザー「おのれえぇぇぇっ」

自由自在に空を舞う士に、雷は当たらない。
それどころか武器を避雷針代わりに扱い、刀身に纏う雷は更に強くなっていく。

士「でやぁぁぁッ」

士はスピードを保ったまま急降下し、落雷のような一太刀をウェザーに喰らわせると、そのまま一直線にレオ目掛けて全速力で突撃する。

レオ「ゴアアアアアアァァァァッ!!」

士「ハアアアアァァァァーーーッ!!」

咆哮を斬り裂き、エネルギーの刃を弾き飛ばし、士がレオに肉薄する。
ブレイラウザーは最後に繰り出したレオの爪すらもあっさりと斬り飛ばして、その身体に届いた。

レオ「ぅぐううあああっ……!!」

士「―――フッ、よく耐える。だが」

よろよろと立ち上がる3怪人の前に優雅に着地すると、士はケータッチを取り出した。


『KUUGA!AGITO!RYUKI!FAIZ!BLADE!HIBIKI!KABUTO!DEN-O!KIVA!』


『FINAL KAMEN RIDE DECADE!』


士「そろそろ、クライマックスだ」


みくと李衣菜の着替えも済み、ついにシンデレラプロジェクト14人が揃った。

莉嘉「ねえねえっ、円陣やろうよ!」

莉嘉の提案に乗って、少女たちは一つの輪になる。

凛「掛け声は?」

みりあ「『ファイト、オー!』かな!」

李衣菜「よし、それで!」

掛け声も決まったところで、後はそれの音頭を取る人物が必要になる。視線は自然と1人に集まっていた。

美波「……ダメよ、本番前に熱出しちゃったし、リーダー失格―――」

未央「みなみん!みんな待ってたよ!」

「「「うんっ!」」」

彼女の今までの頑張りを、皆分かっていた。どれだけ助けられていたのかも、よく理解した。
皆のために頑張ってくれた彼女が、リーダーとして失格などとは、誰も思っていなかった。

李衣菜「ノーバディーズ・パーフェクト、ですよ」

みく「こういう時、支え合うのが仲間だにゃ!」

それでもまだ、美波本人に不安はあった。
今度こそ、リーダーとして引っ張っていけるか。迷惑をかけないか。

そんな美波の手を、優しく、暖かく包んでくれるものがあった。

「ミナミ」

アーニャの、パートナーの手だった。

「美波さん!」

アーニャのために力を貸してくれた、蘭子の手だった。


隣にいる仲間の手を握る。不安も、ドキドキも、全部が一緒だ。みんなと一緒なのだ。

未央「宇宙を掴む、若者たちへ……」

卯月「あ…。それ、弦太朗さんが言っていた…?」

未央「手を繋いだら、何か思い出したんだ」

凛「こういう時がくるって、分かってたのかな」



『宇宙は一人では挑めない。互いを信じ合い、手を繋げ』


『最後に不可能を超えるのは、人間同志の絆だ』



彼女たち自身の絆。プロデューサー、士との絆。


繋いだ手を通して、力がみなぎる。


その手はきっと、“彼ら”とも繋がっているはずだ。



「それじゃあみんな、精一杯やりましょう!」



「シンデレラプロジェクト!」



「「「ファイトーッ、おーーっ!」」」



不思議と、身体に力が漲っていく。

昂揚感を覚えると同時に、左腰のライドブッカーからカードが飛び出した。

士「これは……」

ドライブ・タイプトライドロン。
W・サイクロンジョーカーエクストリーム。
フォーゼ・コズミックステイツ。

ケータッチに対応していない仮面ライダーたちの、最強フォームのカード。

士「…そうか、向こうもいよいよってことか」

シンデレラプロジェクトが今、全員でステージに立っている。それを直感で理解した。

士「行くぜ進ノ介。ひとっ走り付き合えよ」

決め台詞を借用し、士はドライブのカードをバックルに挿入した。

『FINAL KAMEN RIDE DRIVE:TRIDORON!』

士の隣に、ドライブ・タイプトライドロンが出現した。手にしているのは大型トレーラーを模した大砲“トレーラー砲”だ。

士「まずはお前からだ」

トルネード「なぁっ!」

『FINAL ATTACK RIDE D・D・D・DRIVE!』

士はライドブッカー・ソードモードを、ライフルを持つように構え、切っ先をトルネードに合わせた。
追従して、ドライブがトレーラー砲の銃口をトルネードに合わせる。

その切っ先にマゼンタの、銃口に赤色のエネルギーがチャージされていく。

トルネード「仮面ライダーは、全て抹殺する!!うおあああああっ!!!」

両腕を槍と化し、最大の竜巻で身を包んだトルネードは、さながらドリルのような姿になって、士に突撃した。

士「喰らえッ!!」

そして迫るトルネード目掛けて、マゼンタと赤のトライドロンが発射された。

トルネード「っぐうう……うぅおおおぉぉああぁぁあぁぁぁぁッッッ!!!」

真正面から激突する、2台のトライドロンと暴風のドリル。
だがその力は、最早トルネード一体だけで対抗できるようなものではなかった。

腕が砕け散る。防御も出来なくなったトルネードのボディに、トライドロン2台分のエネルギーが全てぶつかった。

トルネード「があああああああああっっっ!!!」

そのボディが爆ぜ、内から出現したコア“8”も、空中で弾け飛んだ。

士「次は…、これで決まりだ」

今度は翔太郎の決め台詞を借り、次のカードを挿入する。

『FINAL KAMEN RIDE DOUBLE:CYCLONE JOKER XTREME!』

隣にW・CJXが出現した。
あくまでカードの作り出した実体であるため、翔太郎のようなポーズなどは取らない。

ウェザー「その姿は……!おのれぇぇっ」

士「雨雲もまとめてふっ飛ばしてやるぜ」

『FINAL ATTACK RIDE DO・DO・DO・DOUBLE!』

士「ハァァァァーーーーッ……!!」

士をマゼンタ、Wを黒と緑の竜巻が包み、共に上昇していく。
三色の竜巻はやがて空まで届き、残った雨雲を無理やり散らしてしまった。

ウェザー「クソッ!!死ぬのは貴様だぁぁぁぁーーーっ!!!」

上空の士に向けて、熱線・雷撃・冷気・豪雨・突風などのあらゆる気象現象が襲い掛かる。

士「でやぁぁぁぁーーーっ!!!」

それを真っ正面から打ち破り、士とW、2人の両脚蹴りがウェザーを捉えた。

ウェザー「認めん……!!こんなことは認め―――」

最後まで言い切ることなく、ウェザーが爆発した。
その最期を以って、上空を覆っていた雲は晴れ、暮れかかる空が姿を現す。

士「―――さて」

士の前に残っているのはレオのみ。怒りと屈辱に震える姿を眺めながら、士は口を開いた。

士「お前で終わりだ。予告通り、飼い主と同じ所へ行かせてやるよ」

レオ「あの方を侮辱するなァァァァァァァァッッッ!!!」

もはや言葉になっていない唸り声を上げながら、レオが士に突撃する。

士「最後だ。こいつで宇宙を掴むっ!」

『FINAL KAMEN RIDE FOURZE:COSMIC!』

士の隣に、フォーゼ・コズミックステイツが登場した。

『FINAL ATTACK RIDE FO・FO・FO・FOURZE!』

ライドブッカーの刀身にマゼンタ、バリズンソードに青いコズミックエナジーが集まり、強く眩く輝く。この輝きは、絆の輝きだ。

士「これが!俺と、あいつらと、仮面ライダーの力だ!」

2つの刃がレオを捉える。その背後に、美しく輝く銀河が現れた。


レオ「お、のれ…っ!おのれディケイドおおおおおおおおお!!!」


士「飼い主もお前も、相手が悪かったな」


レオ「貴様ああああああああああーーーーーっっっ!!!」


怨嗟の声は、途中から断末魔に変わる。


襲撃の首謀者レオ・ゾディアーツは、大量のコズミックエナジーを放出し、爆散した。



その時、フェスの会場全域に、一陣の風が吹いた。



士「良い風だ」

変身を解除し、生身の身体で風を感じる。

その風をきっと、あいつらも感じている。

根拠は無いが、確信していた。

士「……さて、戻るとするか」

その風に乗って、士は歩いて行った。

自分が守ったはずの者たちの元へ。



音楽が終わる。全員で合わせるのに苦労した最後の振付も、しっかりと決まった。


その一瞬の静寂に、穏やかな風が吹く。


そしてまたすぐに、少女たちは歓声に包まれた。


同じ風に乗って、少女たちは今確かに、世界に一歩を踏み出した。


士「よう」

みく「あっ、士チャン!」

「「「お帰りなさい!」」」

戻ってきたプロジェクトの楽屋には、衣装のまま感動を分かち合う少女たちがいた。

P「ステージを守っていただき、ありがとうございました」

士「ああ、よく働いた。ボーナスくらいほしいもんだ」

李衣菜「士さん、それ言っちゃ台無しですって!」

ツッコみ、みんなが笑った。幸せそうな笑顔だった。

士「……良いステージだったんじゃねえか」

未央「またまたー。今戻ってきたばっかで、ステージ見れてなかったくせにー」

士「いや、だいたい分かる。お前らの顔を見れば、な」

偽らざる、士の本心だった。

士「守る価値があるだけの事はやったみたいだな」

美波「はい!みんな、出来ることを精一杯やりましたから」

莉嘉「そうそう!お姉ちゃんまで出てきてね―――」

そこからしばらくは感想会となった。
あれがよかったこれがよかった、何が楽しかった嬉しかったと皆が言うので、士は聞き役に徹した。


やがて時間は進み、フェスは最後の数曲を残すのみとなった。

その数曲は出演者全員が登場するので、勿論シンデレラプロジェクトもステージに上がる。


危険なトラブルも乗り越えて、日も完全に沈んだ満天の星空の下、サマーフェスは無事に閉幕となった。


未央「記念写真撮ろうよ!」

ステージ衣装のまま楽屋に戻って来るなり、未央が言った。

プロデューサーと士は撤収作業の打ち合わせのため、まだ戻っていない。確認を取らずに準備するには今しかなかった。

莉嘉「さんせーい!やろやろっ☆」

みりあ「はーい!」

と言っても時間はあまりない。2人が戻ってくるまでに急いで出来たのは、ホワイトボードへの書き込みくらいのものだった。

P「記念撮影…ですか」

きらり「今度はPちゃんも士ちゃんも一緒だにぃ!」

李衣菜「みんなで写ってるの、欲しいじゃないですか」

士「別に構わねえが、誰が撮るんだ。誰か呼んだのか?」

「「「あっ」」」

「「…………」」

プロデューサーと士は揃ってため息を吐いた。他の出演者の着替えが終わるまでに、ちょうどいい人を捕まえてくるのは難しい。

士「…お前ら、俺の本職は何だか言ってみろ」

蘭子「仮面ライダー!」

士「間違ってないが、今は違う」

未央「プロデューサー!」

士「それもそうだが、そうじゃねえ。…これだ、これ」

そう言いながら、士は首にかけたトイカメラのカバーを外した。

士「この世界で最高のカメラマンが撮ってやるんだ。今までの人生でこれ以上ないってほど感謝しながら撮られろ」

アーニャ「でも、ツカサが写りませんよ?」

士「良いんだよ。早くしろ、時間無くなるぞ」

P「すいません門矢さん。お願いします」

士「ああ、好きに並べ」

士に言われ、各自ホワイトボードの前に集まった。プロデューサーはホワイトボードの横で手をかけている。

士「誰か号令」

美波「じゃあ、私が。…みんな、1足す1は?」

「「「にーっ!」」」


衣装室へ着替えに行った少女たちを見送って、プロデューサーと士は無数の箱を前に格闘していた。

P「内容を確認し、問題の無いものをユニットごとに分けていきましょう」

士「面倒くせえ……」

ファンレターとアンケートのチェックだ。
駆け出しのアイドルたち故、今は1箱で済んでいるが、これからはもっと増えていくのかと思うと、ため息を吐かずにはいられなかった。

P「門矢さん、万が一があっては困りますので、真面目にお願いします」

士「……お前、言うようになったな」

P「あなたが同僚ですから」

士「……本当に、良く言うようになったぜ」


作業が片付くころには30分が過ぎていた。
ユニットごとのファンレターが入った小箱と、アンケートをまとめたダンボール箱を持って、2人は少女たちの待つステージに向かう。

その道中、プロデューサーは隣を歩く士に話しかけた。

P「一区切り、と言ったところでしょうか」

士「ああ。明日からは、また違う世界が、あいつらを待ってる」

P「門矢さんは、まだこちらにいるのですよね」

士「必要なものはまだ半分。仕事は完了してない」

結局、これまでに集まったのは3枚。まだ終わりは遠そうだ。

P「これからも、ご協力のほどをよろしくお願いします」

士「…これから先も、今日みたいなことになるがな」

P「それは…。すみません、荒事では何もお力になれず」

士「気にするな。元々戦いが無い世界の人間だ、戦うことなんざ覚えなくていい」

P「ですが」

士「いいって言ってんだろ。戦うのは俺の仕事、それで終わりだ。いいな」

P「……はい」


莉嘉「はぁ…あっという間だったなぁ…!」

かな子「何だかふわふわしてる…」

智絵里「うん……」

ヒールを脱ぎ裸足になった少女たちは、縁に腰かけたり立っていたりで様々だ。

夢見心地の彼女たちを現実に引き戻したのは、プロデューサー・士の存在と、彼らが抱える大小の箱だった。

中を覗き込む。色とりどりの封筒が箱一杯に入っていた。

みりあ「何それ?」

P「ファンレターです。皆さん宛の」

士「と、会場で配布してたアンケートだ」

みく「ファン、レター」

卯月「……アイドルみたい、ですね」

卯月の、思ったままの言葉に、ついみんなが笑った。

「「「アイドルだよっ!」」」

もう、「みたい」じゃなく、彼女たちは本当のアイドルだった。


箱からファンレターやアンケートを拾い、少女たちは各々ステージに散らばっていく。
そんなステージ上で、士はポケットからカードを取り出して、それぞれの元を回っていた。

莉嘉「あっ、士くん!見て見てこれ!『私も莉嘉ちゃんみたいなカッコイイJC目指して頑張ります』だって!」

みりあ「私のはねっ、『みりあちゃんを見てると、何だか娘を見てるようで、び、びわらい』…?」

きらり「それはね、『ほほえましい』って読むんだよぉ☆」

みりあ「ありがとうきらりちゃん!『微笑ましくって、元気が出ます。元気一杯で頑張ってください』って書かれてる!」

きらり「きらりはねぇ…『きらりちゃんの笑顔を見てると、はぴはぴな気分になれます。お互いはぴはぴで頑張りましょう』だってぇ…」

きらり「うぇへへ、照れちゃうゆ……」

士「…そうか、良かったな。ところでお前ら、進ノ介のことを思い出したりしたか?」

きらり「うん。みんなでステージに上がる前に、手を繋いだにぃ」

莉嘉「そうしたら何だか、握手した時の事を思い出したんだー」

みりあ「私たち3人、皆一緒だったんだよー♪」

士「…なるほど、それでか」

きらり「どうかしたのぉ?」

士は、3人にドライブのカードを見せた。

士「お前らが進ノ介とベルトの事を覚えてた影響で、あいつらの力が使えた。
お前らとあいつらの繋がりが、“力”として現れたってことだ」

みりあ「うーん、どういうこと……?」

莉嘉「アタシたちの、進ノ介くんとベルトさんの思い出が、どかーんってなったの?」

士「まぁ、そんなとこだな。あいつらの事、忘れるなよ」

「「「うんっ!」」」


みく「えっ、翔太郎チャンとフィリップチャンのこと?そう言えば…。李衣菜チャンは?」

李衣菜「私もです。手を繋いだ時に、自然と」


蘭子「弦太朗さんの事なら、私だけじゃなくて、皆思い出してました」

蘭子「『手を繋げ』って、言ってくれたじゃないですか。あの言葉を、覚えてました」


士「繋がり…、絆ってやつか」

あの3ライダーと縁の深い少女たちの記憶が、知らずのうちに士とライダーとの力を呼んでいた。
同時に、離れたところにいた士と少女たちを、カードが繋げていた。

出会いが繋がりを、絆を生む。そうして出来た絆は、今なお少女たちの“記憶”として、世界を超えて繋がっていた。

カードは残り3枚、つまりライダーもあと3人。
そして、プロジェクト内でライダーと繋がっていないのが3組。

士「こいつらとライダーたちを繋げるのも、俺の役割だった……」

一つの戦いと、その最中に起きた事との関係性で、芋づる式に様々なことが見えてくる。

士が、自らの求める答えに向かって、一歩前進した瞬間だった。


そして、一歩前進したのは士だけではなかった。

「ねぇ、つかさん」

士「ああ?」

振り返ると、そこには未央がいた。何があったのか、目尻には涙の痕が見える。

ただ、未央は笑顔だった。だから、悪いことで泣いていたわけではないのだろう。

未央「……あの時、助けてくれてありがとう。人でいられて、よかった」

士「……フッ、良く感謝しておけ。恩は…まあまたいつか返せよ」

未央「うんっ」



月明かりと星の光以外の光源は、ステージやテント周辺を照らすライトくらいしかない。周辺は闇に包まれていた。

その闇の中から、少女たちを見つめる何者かの瞳があった。

一仕事終えたということで気が緩んでいたか、それとも何者かが気配を隠すのに長けていたか、それは分からない。
だが、士はその何者かの視線に、少しも気が付いていなかった。

少女たちに囲まれ、言葉を交わす士を見ながら、何者かは1人呟く。


「それが、今の君か。…どうやら、お宝の在処くらいは分かりそうだ」


何者か…否、“海東大樹”は、右手を銃に見立て、その指先を士に向けた。


「この世界のお宝も、必ず、僕が頂いて行く」


宣戦布告の弾丸が、士に目掛けて放たれた。


士「……?」

士が何かを感じて遠くを見るも、広がるのは闇のみ。何も見つけられなかった。

何かを考えようとする前に、士の耳にはまたしても未央の声が飛び込んでくる。

未央「ええええぇぇぇ~~~っ!?すごい、これって運命だよ!」

凛「ちょっ、恥ずかしいこと言わないでよ…!」

未央「ええ~~?」

卯月「……ふふっ♪未央ちゃんの言う通りかも、しれませんね」


未央「偶然でもさ、こういうの、なんかいいじゃん!」

卯月「はい♪こうやってみんなでライブまで出来て、夢みたいです…!」

凛「でも……、夢じゃないんだよね」

未央「うん。全部、私たちが体験したこと」


彼女たちが様々なものを見、聞き、触れ、感じてきたものは、全てが本物だ。


士「…命の危険も、戦いも、だがな」


それが例え、非現実的で危険な、戦いであったとしても。


P「常識では計り知れないことがあると、身を以って知りました」


卯月「プロデューサーさんも、士さんも一緒です!」


堅物の大男と、捻くれた守護者の2人と共に過ごしてきた今日までの日々。

キラキラして、ジリジリして、ワクワクして、ハラハラしっぱなしの、お祭りのようだった。


未央「色々あったけど、でも全部ひっくるめて、キラキラしてた」


そんな日々は、まだこれからも続いて行く。魔法のような時間は、まだ終わらない。


凛「これからも、もっと多くのキラキラしたものが、あるんだよね」


“世界”は、もっと多くのものを秘めて、彼女たちを待っている。




「何もかも、夢じゃない」



「うん。今度こそ―――」




―――夢じゃないっ!

今回はここでおしまいです。

サブタイトルの英訳は「風に乗って行こう」。
『GOIN'!!!』の歌詞の一節であり、ディケイドの挿入歌である『Ride the Wind』と合わせると丁度いいので一つにしてみました。


1クール分、9話8エピソードとここまででも十分長いのですが、ここからまだ2クール目の分、最低12話が続きます。
いつ終わるのかは私自身にもさっぱり分からないのですが、長くお付き合いいただけたら幸いです。


以下はシリーズの一覧になります。

【ディケイド】門矢士「俺がアイドルのプロデューサーか」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「俺がアイドルのプロデューサーか」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448888770/)

【ディケイド】門矢士「いよいよデビューか」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「いよいよデビューか」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449401806/)

【ディケイド】門矢士「堕天使と飴の島」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「堕天使と飴の島」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453465830/)

【ディケイド】門矢士「このライダー、ドライバー」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「このライダー、ドライバー」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454587827/)

【ディケイド】門矢士「風が見守るあの街で」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「風が見守るあの街で」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459250306/)

【ディケイド】門矢士「宇宙が来る」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「宇宙が来る」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460202584/)

【ディケイド】門矢士「風に乗って」【デレマス】
【ディケイド】門矢士「風に乗って」【デレマス】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462018305/)


また機会があったらよろしくお願いします。


ここからは完全にオマケの、1クール各話ごとの解説です。

全体的に共通しているのは
・サブタイトルをそこそこ工夫
・色んな曲の歌詞を台詞にしたり地の文の一部にしたり

元スレで解説を載せている5.5、6、7話に関してはサブタイトルの訳だけ載せておきます。

第5.5話「ディケイドはやってきた」

第6話「星に願いを」

第7話「可能性と進化の光」


○第8話「LEGNE・心通わせて」
サブタイは変身したキバの法則(曲名や音楽用語を用いる)に則って

○オリジナルグロンギ「ゴ・イバジ・グ」 
生物モチーフ:イヌワシ
ゲゲルの殺害方法はイヌワシの獲物を獲る方法+バヅーの殺害方法



○第9話「筋肉・団結・知識・リアクション・クライマックス!」
筋肉~リアクションは番組に必要な要素 クライマックスは電王要素
筋肉~リアクションの英単語の頭文字はタロスズと同じ(Momo・Ura・Kin・Ryu)

○オリジナルイマジン「フロッグイマジン」
元ネタはグリム寓話「カエルの王子さま」


○第10話「“どうやって”少女たちを見分ければいいのか」
サブタイはドライブの法則(問いかけの文)に則って

○FFRが一番に決まった。ちなみにW以外全員考えてある。

○本編終盤では進ノ介が市民から応援されながら戦うシーンが少ないような気がしたので、
「どのユニットがそういうのに一番合ってるだろうか」と考え凸レーションになった。

○凸の3人に仮面ライダーの応援をさせたのは、
都合上カットしたゲリラライブシーンの代わりになる「お客さんを巻き込むシーン」を作るため。

○ディケイドとFFRの連携必殺技には「ディケイド○○」という必殺技名があるので、一応設定した。
設定名「ディケイドイグニッション(DCDI)」。これまた全員分考えてある。


○第11話「ぶつかり合うCとR / ようこそ“風の街”へ」
サブタイはWの法則(アルファベット入りの文/キーワード)。キーワード部分は主題歌の歌詞ネタ。

○シリーズ中最初に決まった話。

○FFRは大戦2010で披露済みなので割愛。

○デレマスアニメ放映年に、則ってSS中は2015年設定。
なのでSS中で士が言った「5年くらい前」は大戦2010(2009年)、
「1年前の別世界」は仮面ライダー大戦(2014年)のこと。

○ハーフチェンジ全披露は書いてる途中で決めた。
片方ずつのメモリチェンジだけで回したのは完全な趣味。


○第12話「乙・女・前・進」
サブタイはフォーゼの法則(四字熟語)。英語も併せて四単語。
同話の挿入歌「ススメ☆オトメ」が元。

○弦太朗(フォーゼ)と繋がったのは蘭子。
「他人と手を繋げなかった一人ぼっちの少女」を「仲間との絆に支えられた人物」と繋ぎたかった。
魔力とかの繋がりでウィザードにしても良かったが、する気は最初からなかった。

○40あるスイッチはフードロイドも含めて全部使用。
ついでにブレイドの通常ラウズカードも全部使用。

○「オヒュカス・ノヴァ」
見た目に関してはとあるTCGのカードをイメージ。

○FFR必殺技
設定名「ディケイドギャラクシー(DCDG)」。


○第13話「風に乗って行こう」
13話の挿入歌『GOIN'!!!』の歌詞の一部が元。
同時にディケイドの挿入歌『Ride the Wind(風に乗って)』と組み合わせて一つのサブタイトルに。
12話同様、結構お気に入りのサブタイトル。

○士が披露した様々な変身の順番にも一応法則がある。
最初のアギト:フレイムフォームを除き、ファイズ→アギト→キバ→電王→カブト→響鬼→ブレイドの順。
これは各話で変身してきたのと同じ順、かつ使用していないフォームに変身している。

○海東の登場は最初は無かった。
でも後のことを考えたらこの辺りで顔見せが必要かな?と思っての登場。
2クール目ではユウスケ、海東、果ては夏海も活躍する予定。


完全な私信になりますが、次の投稿はだいたい1ヶ月後に行います。

現在これと並行でライダー×ライダーのクロスものをいくつか書いているので、そちらに注力するためです。

ライダー同士のクロスものも同じ酉で投稿する予定なので、ご縁があれば何卒よろしくお願いします。

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