凛「結局は、ただの自問自答」 (48)
――――――
凛「ん……」
凛「……ん? あれ?」ムクッ
凛「…………」キョロキョロ
凛「そっか。まだ事務所だったんだ。いつの間に寝ちゃってたんだろう……」
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『……あ。やっと起きた。ずいぶんぐっすりだったけど』
凛「うん……今日のレッスンが、ちょっとハードだったかな」
『確かに。まあ、もうすぐライブもあるし』
凛「ニュージェネだけでライブするの、久しぶりだから気合入れないとね。今日は個人レッスンだったけど、また明日からは三人でのハードな、レッスン……が……え?」
『……? どうかした?』
凛「…………」
凛「ねえ。アンタ……誰?」
『ワタシ? いや、誰もなにも―――』
『―――そんなこと、あんたが一番……いや、ワタシが一番よく知ってるんじゃない? ねえ、「私」』
凛「え……わ、私と同じ顔? 私がもう一人……」
リン『そう。ワタシはシブヤリン。あんたも渋谷凛。ワタシたちは「渋谷凛」ってこと。見ればわかるでしょ?』
凛「うそ……そんな……。あ、そっか。夢か。夢だよ。私まだ眠ってるんだよ。うん」
リン『そう思う? じゃあ、ほっぺでもつねってみたら? 思いっきり』
凛「…………」ギュー
リン『どう?』
凛「いたい」
リン『だよね』
凛「え? じゃあ夢じゃない……現実? 本当に、アンタは私なの?」
リン『だからそうだって言ってるんだけど。自分が二人いるのがそんなに変?』
凛「変だよっ! ドッペルゲンガーとかじゃあるまいし、同一人物なんてことあるわけが―――っ!」ピタッ
凛「……。なにが目的?」
リン『目的?』
凛「仮にアンタが私だとして……私の前に現れた理由は?」
リン『理由、か。まあそうだよね。「渋谷凛」だったら、まずそれを聞くよね』
凛「……なんか、いやな言い方。まるでなんでもお見通しです、みたいな」
リン『当たり前でしょ。だってワタシのことだから』
凛「は?」
リン『あんたのことなら、ワタシはなんでも知ってる。なんでもわかる。だってワタシたちは同じ「渋谷凛」だから』
凛「……ふーん。なるほどね。確かに同じ『渋谷凛』なら考えてることも同じはずだよね。それがウソじゃなければ、だけど」
リン『ふふ。やっぱり信じてないんだ』
凛「それはアンタ次第、かな。自分を信じるってけっこう難しいことだよね」
リン『ワタシ次第か……だったら実際に証明してあげるのがいいかな』
凛「証明?」
リン『そう、証明。例えば……えーと』
リン『あんたは……そう。「渋谷凛」は今のこの状況を。戸惑いつつも、内心ちょっと楽しんでることとか』
凛「…………」
リン『実はこんな展開にワクワクしてるでしょ。どう、正解?』
凛「…………。正解」
リン『ふふん』ドヤッ
凛「っ―――で、でもそれを当てたくらいで信じろって言われてもっ」
リン『ふーん、まだ納得しないんだ。だったら―――』
リン『―――これが、もう一人の私? なんだろう。なんでいきなり現れて……はっ! もしかしてこれ、なにかの力に目覚める予兆だったりして……』
凛「!? ちょ、ちょっと―――」
リン『もう一人の自分がトラウマを抉ってくるけど、その試練に打ち勝って、新たな能力を獲得する的なパターンのやつだ、きっと。ふふ、面白い展開だね。悪くないかな』
凛「待って! 待ってっ、私、別にそんなこと考えてな―――」
リン『同一の存在を乗り越えて、新しい自分へと生まれ変わる。……そう。さしずめ私の二つ名は「蒼の偶像」。なんてね。キリッ』
凛「やめて!! わかった! わかったから! アンタは私、私はアンタ! それでいいんでしょ!?」
リン『…………』
凛「…………」ハァハァ
リン『蒼の偶像ってなんですか? 何に引っかけた二つ名なんですか?』
凛「私たちは『渋谷凛』です!! 完全に同一人物です!! ちょっと上から目線ですみませんでした!!」
リン『よかった。信じてくれたんだ』
凛「これだけダメージ受ければね……ていうか、アンタ私なんでしょ。二つ名とか言って煽ってたけど、アンタ自信にもダメージいかない?」
リン『もちろん精神的に大ダメージ。他人の目線で見ると、自分がどれだけ痛々しいかよくわかるものだね。今ちょっと体震えてる』
凛「なんなのその新手の自傷行為……と、とにかく。アンタが本当に『渋谷凛』なのはわかったけどさ。結局なにしに来たの? 目的とかないの?」
リン『目的? あっ。ああ、目的ね。そうだった。それを言わないとね。派手に自虐してたせいで忘れてた……』
リン『目的はもちろん説明するけど、でもその前に、ワタシがどういう存在なのかを説明した方がいいかな』
凛「どういう存在って……だから、もう一人の私なんでしょ?」
リン『正確にはちょっと違うんだよね。例えるなら、うーん……あんたとは違う、別の世界のあんた、みたいな存在というか』
凛「?」
リン『あんたがいつも無意識に考えていることの具現化、みたいな存在というか。あんたがあんたじゃなかったらワタシになってるかも、みたいな存在というか』
凛「……はっきり言ってくれない? 抽象的にいえば、なんでもカッコよくなるわけじゃないよ?」
リン『その発言、あんたにそっくりそのまま返す―――ああダメだ。返したところで自分だった……じゃなくて。はっきり言っていいなら、遠慮なく言うからね。いい?』
凛「うん。むしろその方が助かると思う」
リン『ワタシはね』
凛「うん」
リン『卯月と』
凛「―――え? 卯月?」
リン『―――卯月と、百合ックスしたいだけの人生だった「シブヤリン」なんだ』
凛「」
リン『…………』
凛「」
リン『……ああ、そうだった。過去形じゃないよね。もちろん現在進行形で、百合ックスしたいと思いながら今も生きているよ』
凛「……過去形でも進行形でも、衝撃の程度は変わらないからね」
リン『うん。そうだね。確かに卯月との出会いは衝撃的だった』
凛「お願いだから自分としっかり向き合って。もう一人の自分と対話して。……ていうか、今そんな話はしてないって、わかっててとぼけてるでしょ」
リン『……へえ。思ったよりも冷静にリアクションするね。もっと取り乱すと思ったけど』
凛「さすがに発言の直後は面食らって時間が止まったけどね。なんでだろう、割とすぐ我に返れた」
リン『割とすぐ、か。ふふ、なるほどね。ワタシの見込んだ通りかも。ふふ』
凛「……なに。見込んだ通りって。あとその不敵な笑みは」
リン『なんですぐ冷静になれたか、教えてあげようと思って』
凛「え?」
リン『ワタシはあんただから』
凛「……。うん。それは何回も聞いた。ついさっきの変態発言で信じたくなくなったけど」
リン『あんたはワタシ。ワタシはあんた。つまり―――』
凛「つまり?」
リン『―――アンタも心のどこかで、卯月と百合ックスしたいと思っている―――』
凛「…………」
リン『…………』
凛「…………」
リン『……でしょう?』
凛「いや、思ってないけど」
リン『…………』
リン『…………は?』
凛「は? じゃなくて。別に思ってないけど、そんなこと。聞こえなかった?」
リン『』
凛「……いや、同じ渋谷凛でも、私の真似して時間が止まる必要ないんじゃないかな。天丼とか私のキャラじゃ―――」
リン『天丼したわけじゃないしっ! ていうか、ウソだ!! ウソだよ!! なんで!? 卯月だよ!? あの島村卯月だよ!?』
凛「知ってるよ」
リン『ニュージェネレーションの! はじけて♪サマーの! 恥じらいスマイルの! 島村卯月だよ!?』
凛「知ってるよ。ワンダーメイドで笑顔のご奉仕の島村卯月でしょ」
リン『S(mile)ING!の! 流れ星キセキの島村卯月だよ!?』
凛「知ってるよ。ワタシポンコツアンドロイドの島村卯月でしょ」
リン『ピンクチェックスクールの―――』
凛「もういいから! 確認しなくても卯月は卯月だから!」
リン『そんな……。あ、あんた、本当に渋谷凛? なんか、ただのそっくりさんな気がしてきた……』
凛「その言葉、そっくりそのまま返すっ―――ああ、ダメだ。返したところで自分だった―――って、ああ! ダメだ! この返しも天丼だった! やっぱり私たち同一人物だ! 嫌だけど!」
リン『どうして、なんで……納得いかないっ……! ねえあんた、本当にしたいと思わない? 卯月と』
凛「思わないよ! 卯月とそんな爛れた関係になりたいとも思ったことない!」
リン『まったく?』
凛「まったく!」
リン『微塵も?』
凛「微塵も!」
リン『神様に誓える?』
凛「当たり前だよ! まっすぐ目を見ながら誓えるよ!」
リン『そう……』
リン『……。じゃあ、卯月の目を見ながらでも誓える?』
凛「そんなの、もちろっ―――」
凛「……………………。もちろん」
リン『考えた! 今、長考した! やっぱり本当はしたいんだ! 欲望に素直になれないだけだ!』
凛「なっ!? ち、違うし! ちょっと言葉に詰まっただけだし!」
リン『即答できなかっただけでしょ! やましい気持ちがあるから!』
凛「ウソじゃないし!! 本心だから!! メチャクチャ本心だから!! ん、んんっ? あれ? あ、あー、なんだか声が出づらいなー。今日のボイスレッスンがハードだったかなー。あーあー」
リン『演技力!! ボイスレッスンよりやることがあるんじゃないのあんたは!?』
凛「アンタみたいに煩悩丸出しよりはマシでしょ!! 同じ渋谷凛として恥ずかしいんだけど! それでもCool属性のつもり!?」
リン『Coolアイドルが性欲旺盛じゃダメなんてルールないじゃん!! アイドルの属性と性欲は比例するわけじゃないし!!』
凛「そりゃそうだけど!! そんな方程式あったら一大事だよ!!」
リン『!? 方程式!? まさか……Cute(17歳+東京出身+長電話)=性欲(17歳+東京―――』
凛「証明しようとするな!! もうやだこのワタシ!!」
リン『しょうがないじゃん! 卯月が可愛過ぎるんだから!!』
凛「暴論だよ!!」
リン『正論だよ!!』
凛「そんな理論通らないから!!」
リン『本当に!? 本当にそう言い切れる!?』
凛「それはっ!!」
凛「……そ、それは……まあ……。う、卯月が可愛過ぎることは否定できない!!」
リン『でしょ!? 卯月が可愛いということは正論! いや、真理!』
凛「確かに! 卯月は可愛いから!」
リン『前日についつい長電話しちゃって、次の日会ったら申し訳なさそうに謝るけど、気にしてないし楽しかったよって言ってあげたときの、ほっとしたような笑顔とか!』
凛「久しぶりにニュージェネだけの仕事で、ちょっとテンションがハイになっちゃってて、やたらとスキンシップが多いけど、それを指摘すると真っ赤になっちゃうところとか!」
リン『さらにそれを未央に煽られて、さらに赤くなっちゃうところとか!』
凛「そうそれ! いいのに! もっとスキンシップしてきてもいいのに!」
リン『ワタシが指摘しなければ、別に気にしなかっただろうけどね! 卯月の恥じらう姿が見たくてついね!』
凛「卯月は照れるとすぐ顔に出るから! その様子がまた可愛くて可愛くて!」
リン『そうだね! 普段の笑顔とはまた違った味わいがあるから!』
凛「未央もまたいい仕事してくれるんだよね! 卯月を煽ってくれれば恥じらう姿が見れる! 私が煽られたとしても、その様子をちょっと困った笑顔で見てる卯月が見れる! うまくいけば未央に便乗する、ちょっと小悪魔な卯月も見れる!」
リン『本当だよ! 未央の手腕にはいつも頭が下がる思いだよ! ワタシ、ニュージェネで良かったと心から思える瞬間だね!』
凛「ああ、話してたら明日のレッスンが待ちきれなくなってきた! 早く明日が来ないかな! 疲れてるし、今日は早く寝なくちゃ!」
リン『でももしかしたら、また卯月から電話がきて、ついつい長くなっちゃうかも……どうする?』
凛「付き合うよ! 何時間でも! 通話の回線が焼き切れるまで!」
リン『よく言った! さすがワタシ! さすが「渋谷凛」!』
凛「卯月の為なら、睡眠時間くらいいくらでも捧げてみせるね! だって卯月だから!」
リン『そう! 卯月だから! つまり!』
凛「つまり!」
リン『卯月は!?』
凛「かわいい!!」
リン『かわいいは!?』
凛「正義!!」
リン『つまり卯月は!?』
凛「正義!!」
リン『卯月イズ!?』
凛「ジャスティスッ!!」
リン『…………』ガシッ
凛「…………」ガシッ
リン『……やっと分かりあえたみたいだね。ワタシたち』
凛「そうだね……。まあ、分かりあうも何も、最初から同一人物なんだけどね」
リン『確かに。今さら分かりあうっていうのも、変な話か。ふふ』
凛「ふふ」
リン『あははっ!』
凛「あはははっ!」
リン『あはは……はあ。でもまあ、これでわかったでしょ』
凛「ん? なにが?」
リン『……とぼけちゃって』
凛「…………」
リン『ワタシたちは……ううん。「私」は、卯月が好き。だよね』
凛「……。うん」
リン『したいだの、百合ックスだの言ってたけど、そんなことじゃなくて、ただ単純に、とにかく卯月が好きって思ってる』
凛「うん」
リン『そりゃあ内心は、そんなことまでできたらいいなとか思ってるけど』
凛「う、うん」
リン『卯月の笑顔が好き。卯月の歌が好き。卯月の頑張るところが好き。卯月のちょっとお姉さんぶるところも好き。卯月の少しドジなところも好き。……卯月が、好き』
凛「……うん」
リン『ならさ。もう、やることは決まってるよね』
凛「……。そうだね」
リン『うん。……ああ、もちろん今から百合ックスしに行くってのは無しだからね。ふふ』
凛「わかってるよ。当たり前だし……ふふ」
リン『だよね。……じゃあ、あんたが。ワタシが。「渋谷凛」がやること。それは?』
凛「決まってるよ。それは―――」
凛「―――それは。これからも、ずっと。卯月のことを見守ること、だよね」
リン『――――――え?』
凛「…………」
リン『いや、ちょっと待って……ち、違うでしょ。それじゃあ今までと何も変わらないじゃん。そうじゃなくてさ、その、あんたの想いを、卯月に、とか……』
凛「…………」
リン『今まで思ってたことを、言わなくちゃ、とか。ほら、今の関係よりもっと親密になりたい、とか』
凛「…………」
リン「……っ! 黙らないでよ! ワタシは! 卯月に告白しろって言ってんの! わかるでしょ!? そんなことくらい! 同じワタシなんだからさ!」
凛「……。あんたこそわかってるんじゃないの? そんなことくらい」
リン『!?』
凛「告白なんて、するわけがない。したって意味がないから。だって……うん。私は知ってるから」
リン『! やめて! 言わないで!』
凛「だって―――」
凛「―――卯月は、プロデューサーのことが好きなんだから」
リン『…………』
凛「……納得した? まあ、とっくにしてるよね。同じ私なんだし」
リン『……ワタシは、本当にそれで。このままでいいのかって言ってるの』
凛「いいよ。それで卯月が笑顔でいてくれるなら。今の関係のままでいれるなら、それでいい」
リン『……鈍感なプロデューサーなんかより、ワタシの方が、卯月のことを一番想ってるのに』
凛「応援してあげようよ。アイツ、バカみたいに真面目だから、担当アイドルにそんな感情はーとか思ってるんじゃないの? 私が二人をフォローしないとさ」
リン『イヤだよ! なんでアイツのために! なんで、卯月はアイツを!』
凛「アイツだから、卯月も好きになったんでしょ。それに、私もプロデューサーのこと嫌いじゃないしね。まあ悪くないかな、ってこと」
リン『そんなことない! 大嫌い! 卯月をとらないでよ! ワタシの卯月なのに!』
凛「……素直じゃないよね。好きなくせに。ああ、もちろん恋愛感情じゃないけどね。それなりに信頼してるよって話。それこそ、卯月を任せられるぐらいにはね」
リン『っ―――』
凛「私は、卯月を大切に思ってる。そして、プロデューサーも大事。じゃあどうするかなんて決まってるでしょ」
リン『…………』
リン『……あんたは、本当にそれで納得してるの?』
凛「もちろん。だって私は、卯月が好きだから。好きな人を想うカタチなんて、人それぞれでいいんじゃない?」
リン『…………』
凛「…………」
リン『……そう。わかった。他の誰でもない、「私」自身がそう言ってるんだし。もう何も言わないよ。言っても無駄だしね』
凛「よかった。やっぱり自分で自分を信じるって難しいね。納得させようにも、ただの卯月が可愛い論議になっちゃうし」
リン『議論が熱くなるのも仕方ないよ。普段、卯月が可愛いって声を大にして言える相手なんて、未央くらいしかいないもんね』
凛「そうだね。まあ、話し終わったら疲れた目をしてるけどね。いつも一方的に話し相手にしてごめんとは思ってるんだけど」
リン『そうやって発散しないと、いつか爆発しちゃうから。もちろん性的な意味で』
凛「……ちょっと。せっかく、もうそっち系の話はしなくていいと思ってたのに。また再燃させないでくれる?」
リン『……ん? そうだ。だったらいっそ、性的な部分は、未央で発散させてもらえば』
凛「こら。聞いてんの?」
リン『未央のカラダで慰めてもらうのも、悪くないかな。あのミツボシ級の未央っぱいで―――』
凛「ねえ。もう帰ってくれない? 結論は出たんだし、もう議論することもないし」
リン「燃やせ(意味深)友情! パッション(意味深)は、ミ・ツ・ボ・シ(意味深)」
凛「帰って!! 未央はただのもらい事故じゃん!! かわいそうでしょ! 持ち歌いじるのやめなよ!」
リン『カオスでラブリーなミツボシ。そして、目指すは六ツ星。もちろん性的な意味で―――』
凛「黙って!! 早く帰って!! あと未央に謝れ変態!!」
リン『放課後パーティー本田未央……特技名は青春の輝き……ゴクリ』
凛「帰れ!!」
――――――
凛「―――はっ!?」ガバッ
凛「…………」キョロキョロ
凛「ここ、事務所……私、寝てたんだ……じゃあ、さっきまでのは……夢?」
凛「……。なんて夢。オチまでひどすぎるんだけど」
凛「はーあ……。目は覚めたけど、気分が全然晴れない。そりゃそうだよね。ただ自分の煩悩が、どれほどひどいのか見せつけられるだけの夢なんだから」
凛「…………」
凛「卯月を見守る、か。うん……大丈夫。夢の中で言ったことは本当のことだし。卯月のことはこれからも応援するつもりだし。今までと、なにも変わらない。うん。これでいいんだ」
凛「……単純に欲求不満なだけかもしれないけど。おかしいな。私、そんなに普段色々と抑えてるのかな。もしかして自覚がないだけで、潜在的にはド変態……いや! やめようそんな恐ろしい仮定の話はっ」
凛「……というか私、なんでまだ事務所にいるんだっけ。ええっと」
凛「んー……レッスンが終わって、事務所に戻って……卯月がもうすぐ戻るっていうから、ソファーに座って待ってようかなって、そしたらそのまま寝ちゃって……卯月……」
凛「―――!!」ガタッ
凛「そうだった! 卯月! 卯月の誕生日! プレゼント渡すんだった! ど、どうしよう、もう帰っちゃったかな……待ってる間に寝ちゃうなんて……」
凛「……はあ。仕方ない、明日渡そうか。せっかく持ってきたのにな―――」
ガチャ
「―――あっ、凛ちゃん! すみません、遅くなりました!」
凛「―――!」
凛(……まだ、帰ってなかったんだ。よかった。なんとか今日中に、プレゼントは渡せる)
凛(ハッピーバースデイ。卯月。これからも、よろしくね)
凛(…………)
凛(遅くなった、って……もしかして、さっきまで、プロデューサーと会ってたのかな)
凛(…………)
凛(……ううん。私は大丈夫。二人のことは、これからも応援するつもりだし、それでうまくいったなら、本当に心からうれしいと思える……はず)
凛(……でも、もしも。嫉妬する心の方が強くなっちゃったら―――)
凛(その時は、また、自分との押し問答でもしようかな。夢の中で、ね)
凛(―――頼んだよ。『シブヤリン』さん)
凛(……ただ、あんまり変態的すぎる発言は、ちょっと……うん)
おわり
終わりです。ありがとうございました。
島村さん、誕生日おめでとうございます。
これからもしぶりんともっとイチャイチャしてください。
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