勇者「どちらか選んでください?」 (21)

…目が覚めたら見知らぬ部屋にいた。


勇者「…どういうことだ?」


…確か俺は魔王を倒しに家から出ようとしたら急に眩しい光に照らされて…


…駄目だ。思い出せない。


勇者「とりあえずここから脱出しないと…」

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…急にモニターがつき、覆面の人物が映し出された。


覆面「…目が覚めたようだな、勇者よ。」


覆面「…お前にはどちらかを選択してもらう。」


覆面「…どちらも選択することはできない。さぁ、貴様はどちらを選ぶんだ?」

覆面「…一人は犯罪者の人間だ。窃盗、殺傷も行う大悪党。」


…左半分に人間の男が映る。


覆面「…もう一方は村の人気者のスライムだ。」


…右半分には花をつけたスライムが映った。


覆面「制限時間は30分だ。…決まったらボタンを押すといい。」


覆面「左のボタンが人間、右のボタンがスライムだ。」

…普通ならスライムを押し、悪党の人間を殺すだろう。


…しかし、何故こんな事をする?


…相手が分からない以上、様子を伺うしかないか。


勇者「…俺はどちらも押さない。」


覆面「…そうか。なら仕方ない。」


…次の瞬間、スライムと人間の男は爆発して…死んだ。

覆面「おふざけなんかじゃない。…助けたいのなら、次は選択する事だな。」


覆面「…村の様子を見せてやる。」


<平凡な村>
村娘A「いやああああ。」


村娘A「スラリン…スラリンが…」


村長「…落ち着くのじゃ。村娘Aよ。…生きている以上、必ず死ぬ。それが少し早かっただけじゃ。」


村娘A「…でも、こんなのって…。」


村長「…わしだってこんな事をしたやつを許せない。」

覆面「…もう一人の方も見せてやる。」


<普通の町>
村人A「もう、アイツに怯えることなんてないんだ!」


村人B「ありがたや。ありがたや。」


村人C「…ありがとう。」

勇者「…何がしたいんだ。」


覆面「そちらからの質問に答える気はない。…次の選択だ。」


覆面「…一人はお前の村に居る少女だ。」


左半分に映ったのは俺の好きな…僧侶だった。


覆面「…もう一人はお前の村の村長だ。」


…右半分に映った村長はいつものように村人をいびっていた。


覆面「…さぁ、どちらを選ぶ?」

…僧侶。


覆面「制限時間は…


勇者「…そんなの必要ない。俺は僧侶を選ぶ。」


覆面「…そうか。やっとその気になってくれて嬉しいよ。」


覆面「今回は映像をなしにしてやる。感謝するんだな。」


覆面「…お腹が空いただろう。ご飯を調達してやる。」


覆面「毒などは入れていない。…まぁ、食べないのなら食べないでいいがな。」

…村長。


勇者「…俺は悪いとは思わない。」


…お前は俺の父さんを殺した。…死んで償うべき存在なんだ。


勇者「…ふん。」


…カシャン


…どこからともなく鍵が落ちてきた。

覆面「その鍵を左端の箱に差し込め。」


…左端の箱?そんなのなかった気が…。


勇者「…これ、か?」


…そのような箱は目を覚ましたときにはなかったはずだ。


覆面「…再度言うが、質問には一切答える気はない。」


覆面「…それじゃあな。」


…プツン


箱の中には俺の好きなライ麦パンが入っていた。


…美味しそうな見た目に、思わず腹の虫が鳴る。


勇者「…どうせ食べないと死ぬんだ。」


…温かい。まるで父さんが作ってくれたライ麦パンそっくりの味だ。


勇者「…父さん。」


…勇者の頬に一筋の涙が零れた。

覆面「…お食事はお気に召してくれたかな?」


勇者「…あぁ。」


覆面「…そうか、それはなによりだ。…じゃあ選択してもらうぞ。」


覆面「…一人はさっきの少女。」


…左半分にまた僧侶が映る。


覆面「…もう一人はお前の母だ。」


…画面右半分には、俺の母が映っていた。

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