咲「リンシャンロンパ」 洋榎「希望の雀卓と絶望の高校生雀士」 (991)


このスレッドは、咲-Saki-キャラクターでダンガンロンパをやるスレです。
全体的に推理部分はガバガバでお送りします。

ちょこちょこ安価を出す予定ではありますが、
推理部分がガバガバ仕様なのもあって、学級裁判等は非安価を予定してます。
人が増えて希望があればもしかしたら安価にするかも、程度で。

一部オリジナル設定がございますので、苦手な方はご注意ください。

あと、キャラが死にます。当然ですが死にます。苦手な方はご注意ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459958658


咲「…………」

咲(大会が終わった)

咲(私達清澄高校は、無事に栄冠を掴んだ)

咲(その後世界大会もある、だなんて夢みたいな話を聞いて)

咲(心を弾ませながら、帰りの電車に乗って)

咲(それで、微睡んで――)

ユサユサ

咲「ん……」

???「お、よーやっと起きたか」

咲「部長……?」

???「あー、生憎やったな」

???「ウチはアンタんとこの部長と違う」

洋榎「姫松高校の主将・愛宕洋榎や!」 ドヤドヤーン

咲「……」

咲「ふえ?」


???「あー、もう」

???「突然すぎて混乱してるじゃん!」

洋榎「いや、そない言われても……」

洋榎「いきなりお通夜みたいな顔の方がアレやん?」

???「どれ!」

洋榎「その、ほら、なんつーか、こう……な?」

???「語彙しょぼっ!」

咲「え、ええと……」

???「あ、ごめん」

???「直接会うの、初めてだよね」

胡桃「加倉胡桃、宮守女子で中堅やってたんだけど……覚えてる?」

咲「……ああ!」

洋榎「まあ、こんだけチマっこくて、そのくせ3年なんて奴、早々忘れられへんわな」 ケラケラ

胡桃「うるさいそこ!!」


咲「え……っと」

咲「あれ、ここ……」

洋榎「まあ、そうなるわな」

咲「あ、あれ……?」

咲「私、電車で……」

洋榎「少なくとも、こんなよう分からん場所で目覚めるはずがない……ってとこやろ」

胡桃「実は私も、何でここに居るのか分からないんだよね」

洋榎「そんでご多分に漏れずウチも、っちゅーわけや」

洋榎「ちなみに、ウチらは別の部屋で目覚めてん」

胡桃「私達が目覚めたのは、倉庫みたいな所だったよ」

洋榎「何でかウチは棚に寝かせられとったらしく、寝返り打ったら落っこちてな」

洋榎「全くふざけた話やで」

胡桃「地面に寝かされて、突然ボディプレスを受けて起こされた私の方が怒りたいからね!」

咲「た、大変だったんですね……」 ハハハ・・・


洋榎「自分はええなあ、テーブルでうつ伏せで寝かせてもろて」

咲「いや、でも、ちょっと全身痺れてますし……」

胡桃「図書室なのかな、ここ」

洋榎「入り口には資料室って書いてあったで」

胡桃「あ、そうなんだ」

胡桃「目ざとく見てるね」

洋榎「まあ、どこぞの口うるさい委員長さんと違うて、ウチは目線が高いからな」

胡桃「もう!」

胡桃「人の身体的特徴を弄るのは最低なんだよ!」

洋榎「悪い悪い」

咲「……」

洋榎「あ、ちょっと引いとる?」

咲「え、あの……」

咲「ちょっと……」


洋榎「自分、えー……」

洋榎「咲、でええか?」

洋榎「宮永っちゅーと、どうしてもあの個人戦チャンプを思い出してまうし」

胡桃「ボッコボコにされてたもんね」

洋榎「やかましい」

咲「え、えーと……」

咲「咲、でいいです」

咲「周りからも、そう呼ばれることが多いですし……」

胡桃「あ、じゃあ私もそれでいい?」

胡桃「こんな状況だし……ちょっとフレンドリーになっておかないと、落ち着かないしさ」

胡桃「よろしくね、咲ちゃん」

洋榎「よろー」

咲「あ、はい」

咲「よろしくお願いします、愛宕先輩、加倉先輩」

洋榎「あー、ウチのことも洋榎でええで」

洋榎「絹が入学してから苗字に先輩付けされとらんから、何か違和感すごいわ」

胡桃「あ、じゃあ私も胡桃でいいよ!」

胡桃「後輩出来たことないから、何か新鮮」 フフ

咲「え、えと、じゃあ、よろしくお願いします、洋榎先輩、胡桃先輩」


洋榎「んで、ちょっと頭良さ気な咲が加わったことやし、現状がどうなっとるのか話し合いたいとこやけど……」

胡桃「まだまだ判断材料足りてないし、それに――」

胡桃「あっちの人達も、起こさないわけにはいかないよね」

咲「!?」

咲「わ、私以外にも誰かいるんですか!?」

洋榎「おー、おるでー」

胡桃「この部屋だけで3人居たよね」

洋榎「一人は机に寝そべっとって、もう一人は床に寝かされとるわ」

胡桃「ちょっとした差別めいたものを感じるよね」

洋榎「テーブルに大の字ってのも、優遇とは言えないアレやけどなあ」

洋榎「女体盛りみたいやし」


咲「ええと……」

洋榎「まあなんにせよ、起こさんわけにはいかんやろな」

胡桃「残りの二人は、私達も知らない人だったから、とりあえず知ってる顔の咲ちゃんから起こしたんだ」

洋榎「こんなよく分からん状態で、知らん人間から声かけられたらビビるの間違いないからなあ」

胡桃「私達は運良く知り合い同士だったからよかったけど……」

洋榎「……もし知り合い同士同じ部屋に押し込まれとるなら、顔見知りだったりせんかな、と」

胡桃「あそこのテーブルにいる人なんだけど……」

胡桃「知り合いだったりしない?」

咲「……」

咲「え!?」

咲「りゅ、龍門渕さん!?」

洋榎「ふむ、やっぱ知り合いか……」


洋榎「もう一人の奴はどうや」

咲「……」

咲「……」

咲「……???」

胡桃「あ、知らない人っぽいね」

洋榎「んー……」

洋榎「ちゅーことは、知り合い同士を固めてる、って仮説はアウトか」

胡桃「その仮説が合ってるからって、何ってわけじゃないけどね」

洋榎「まあ、そうやけど」

洋榎「何らかの法則が分かれば、ちょっと落ち着くし、何かに繋がるかもしれへんやん?」

胡桃「……その前向きさは、嫌いじゃないよ」

洋榎「もっとオープンに好いてくれてもええんやで」

胡桃「それは無いかなあ」

胡桃「……っと、放っておいても、さすがにもうお目覚めみたいだね」

洋榎「眠っとる奴ら同士が知り合いの可能性もあるし、話聞いてみよか」


透華「ここは……」

咲「ええと……」

咲(目覚めた龍門渕さんに、簡単にだけど事の経緯を説明した)

咲(……と言っても、ほとんど私達も何も分かっていないし、説明したのもほとんど洋榎先輩だけど)

透華「なるほど」

透華「取り急ぎ伝えておくことがあるとすれば、3点」

透華「まず私に、そこで寝ている少女の心当たりはありません」

洋榎「うーん、やっぱ外れたかー」

胡桃「小説とかだと、全員顔見知りとか、こういう展開じゃ珍しくないんだけどね」

透華「それと、私も貴女がた同様、全国大会を見るためあの会場にいました」

洋榎「さすがはあの龍門渕高校のエースだけあるな」

洋榎「来年の対策はバッチリ、ってか」

胡桃「その龍門渕のエースの顔を知らなかったくせに」

洋榎「じゃかーしい!」

洋榎「そういう他校の分析は恭子に任せとったせいで、あんま詳しないねん」

洋榎「中堅やったら、もっと詳しいねんけどな」

胡桃「ふーん」

胡桃「で、3点目は?」

洋榎「リアクション冷たッ」


透華「その、何と言いますか……」

透華「お花を摘みに行きたいのですが、些か単独行動とうのは憚られる状況ですので……」

洋榎「お花摘みぃ?」

胡桃「ああ、うん、確かにそうだよね」

胡桃「とりあえずデリカシーないこの馬鹿は置いていくとして……」

胡桃「私が付き合うよ」

透華「いいんですの?」

胡桃「うん」

胡桃「それに……」

胡桃「咲はあんまり方向感覚がないって、久に聞いてるし」

胡桃「私が付き合うしかないと思うからさ」

咲(あ、部長と連絡取ったりしてるんだ……)

咲(さすが部長……コミュニケーション能力高いな……)


洋榎「うへえ」

洋榎「てことは、まーたウチが知らん人間に状況ザックリ説明すんのか……」

胡桃「しょうがないでしょ」

胡桃「……悔しいけど、一番そういうのに長けてるの、洋榎なんだから」

洋榎「ま、信頼されとるんやと思っとくわ」

洋榎「……んで、咲はどーする?」

咲「ふえ?」

洋榎「一緒にここで説得に参加してくれたらウチとしては有り難いんやけど」

胡桃「でもお手洗い行きたいなら、今一緒に済ませてもらう方が助かるよ」

咲「私は、ええと……」

どうする? >>14
A:洋榎と眠ってる人を起こす
B:胡桃や透華とお手洗いに行く
C:胡桃や透華とお手洗いに行くけどはぐれる

A


咲「私は……ここで残って洋榎先輩とこの人を起こしてみます」

咲「私も……今がどうなっているのか、気になりますから」

胡桃「そっか」

胡桃「それじゃ、いこっか」

透華「え、ええ」

透華「……」

胡桃「どうかした?」

透華「いえ……」

透華「試合を見ていたので分かってはいましたが……」

透華「やはり、先輩というのに、少々違和感が……」

洋榎「ブフォッ」

胡桃「笑うな、そこ!」


洋榎「ま、騒がしいのもおらんくなったし」

洋榎「いっちょ冷静に起こしたりますか」

咲「あはは……」

咲(洋榎先輩にそれが出来るのかは分からないけれど……)

咲(でも、あんまり騒がない方がいいのは確かだよね……)

咲(知ってる人がいるおかげでパニックにはならずに済んでるけど……)

咲(これって、多分、拉致だし……)

咲(これが小説なら、このままで終わるはずがない)

咲(例えばスプラッター小説なら、殺人鬼とかが建物に居るはず)

咲(そう考えると仲間は多い方がいいし、騒がない方がいい……よね)

咲(なんて……本の読みすぎかなあ)


洋榎「あ、起きた」

???「!?」

???「……!?」 キョロキョロ

洋榎「まあそうなるわな」

咲「えと……お、落ち着いてください」

咲「私達も、貴女と一緒で、知らない間にここにいて……」

???「え???」

洋榎「あー、まあ、あれや」

洋榎「とりあえず自己紹介しとくわ」

洋榎「ウチは愛宕洋榎」

洋榎「姫松高校っちゅーとこで、麻雀部主将をやっとる」

洋榎「怪しいモンでは決してないで」

咲「あ、私は咲です」

咲「宮永咲」

咲「清澄高校の麻雀部で、その、大将をしています」

???「清澄……」

咲「?」

???「ん、ああ……えと……」

恵「上柿恵です……千曲東って学校で、麻雀部に、所属してます」 ギッヒ


咲「千曲東……」

咲「どこかで聞いたことがあるような……」

恵「あー……」

恵「一応、長野の学校ですからねえ」

恵「清澄とは、一応あたってますし……」

咲「え!?」

咲「そ、そうだったんですか……」

咲「ご、ごめんなさい……」

恵「あー……まあ、清澄はたくさんのとこと戦ってるし、忘れられてもしょうがないっすわ」

恵「まあ、大将のこと覚えてもらってないのは、ちょっと悲しいですけど……」

咲「うう、ごめんなさい……」

洋榎「……ふむ」

洋榎「長野の学校の麻雀部、か……」


咲「どうかしたんですか?」

洋榎「いや、お手上げや。さっぱり分からん」

洋榎「少なくとも、千曲東は、ここ数年でも全国じゃ名前聞かん学校や」

恵「ま、風越がいますからね」 ギッヒ

洋榎「てことは、全国クラスの雀士だけ隔離しとるってわけじゃあないらしいな」

咲「え、ちょ……」

恵「……ああ、いいっすよ。自分がそんな上等なモンじゃないって自覚はありますから」

洋榎「ふーん……しかしそうなると……」

洋榎「咲が案外キーマンなのかもしれないな」

咲「私が……?」

洋榎「今んとこ、全部自分が戦った学校の人間なんやろ?」

洋榎「この拉致面子に何か意図がある場合、その中心人物は自分なのかもしれん」

咲「そんな……」

恵「……」

恵「どうでもいいですけど、女性でもキーマン、なんですかね」

洋榎「あー、確かに。マンっておかしいかも知れへんな」

洋榎「じゃあアレか、女の子っぽく最後に子をつけて、キーマンk」

胡桃「それまで!!」


胡桃「全く、何くだらないこと言ってるの」

洋榎「おう、おかえりんこー」

洋榎「……って、なんか増えとらん?」

???「うわ! マジで宮永もいるし!!」

咲「え!?」

咲「い、池田先輩!?」

華菜「龍門渕もいるし、これで鶴賀もいたら長野の決勝校が揃うなー」

透華「揃ってほしくはありませんけどね」

洋榎「ていうか、自分らどこに……」

胡桃「それがトイレの個室で爆睡してて……」

華菜「思い出すだけで忌々しいし!」

華菜「何で華菜ちゃんがトイレで起きなきゃいけないんだよ~~~~!!」

咲「あ、あはは……」


???「いやいや、個室なだけマシっすわ」

???「こっちゃ便所の床だよ床」

洋榎「あー、自己紹介一応しとこか」

洋榎「ウチは――」

???「あー、知ってる知ってる」

???「さすがに有名人だし」

???「つーわけで、知られてなさそーだから自己紹介しとこっかな」

花子「浅見花子。越谷女子、3年。よろしくー」

咲「……あ、えっと、宮永咲。清澄高校1年です」

花子「あー、知ってる知ってる。さすがに団体戦優勝校は知ってるって」 ケラケラ

洋榎「……ふむ」

洋榎「越谷は……清澄と対戦しとらんかったよな?」

透華「ええ、そのはずですわ」

洋榎「うーん、個人的な面識もなさそうやし、咲がキーマンってのもハズレっぽいなこりゃ」

胡桃「ま、そう簡単に法則なんて見つからないよ」

胡桃「そんなの無いかもしれないし」


洋榎「とりあえず、これでここに……」

洋榎「ひーふーみーよー……7人おるんか」

透華「結構な人数ですわね」

胡桃「でも……多分、これで全員ではないよ」

洋榎「?」

洋榎「いやいや、これB級映画やったら、この人数居ったら十二分やで?」

透華「これは映画ではありませんわよ」

恵「でも……これだけの人数を拉致するだけで、十分大掛かりですし……」

恵「更に拉致されてるって考える方が難しいんじゃ」

透華「私達も、俄には信じられませんわ」

透華「ただ……」

胡桃「ここのトイレ、ものすごく大きかったんだ」

華菜「サービスエリアを思い出すでかさだったな」

胡桃「個室だけで10個はあったよ」

洋榎「……なるほど」

洋榎「7人しか居らんなら、10個も個室は要らん、か」


咲「元からそういう建物に、この7人だけ拉致されたって可能性は……」

胡桃「勿論あるけど……」

透華「この建物……不思議なことに、窓がどこにも見当たりません」

花子「おお、言われてみれば……」

華菜「……窓がない建物って……あんまりないよーな」

胡桃「うん」

胡桃「だから、窓があると不都合な何か……」

胡桃「例えば今みたいなことのために、作られた施設かもしれないなって」

透華「それに……まだ廊下の向こうにいくつも部屋がありましたわ」

透華「そちらにも、誰かが居ると考えるのが自然かと」

洋榎「ふむ……」

洋榎「ま、考えとってもしゃーない」

洋榎「とりあえず、他の部屋とやらに行っとくか」

洋榎「道中軽く自己紹介でえやろ」

洋榎「……今後何人もこんな感じで拾うなら、多分何度も自己紹介することになるしな」

華菜「あとで纏めてやってもいい気がしてきたな―」

咲「まあまあ、相手のことを多少なりとも知れると、不安は安らぐものですし」


<廊下>

咲「廊下……」

花子「トイレはあっち、そこの角を曲がった所の左手にあったよ」

透華「その奥は……シャッターが閉まっていましたわ」

洋榎「ふうん……開くんかな」

胡桃「待ってる間にちょっと開けようとしたけど……当然開かなかったよ」

恵「壊すのは……」

胡桃「多分ムリ」

胡桃「っていうか、ここまでした犯人が易易と壊させてくれるとは思えない」

咲「ですよね……」

咲「小説とかでも、こういう場合、無理に壊すと良くないことが起こりますし……」

洋榎「まずは普通に探索して人見つける方が良さそうやな」


華菜「お、あっちにドアがあるし」

洋榎「あー」

洋榎「あれはウチらがおった倉庫やな」

恵「倉庫……」

洋榎「日用品とか、簡単な雑貨が置いてあったわ」

透華「日用品、ですか……」

咲「お手洗いがあることといい、ちょっと不思議ですよね……」

花子「え、何が?」

咲「その、例えばホラー小説とかでよくある展開だと、食料もトイレもないじゃないですか」

花子「いやー、まあ、読まないから分かんないんだけど」

咲「……」

透華「食料も、お手洗いもしっかり用意されている」

透華「お手洗いに関しては、ウォシュレットまで付いてましたわ」

洋榎「拉致の割には好待遇、やな」

胡桃「無理矢理殺人鬼とかモンスターと戦わせられる、って感じの待遇じゃないよね」

洋榎「モンスターて(笑)」

胡桃「ば、馬鹿にしないでよ!さすがにそんなこと本気で思ったわけじゃ……///」

洋榎「あーはいはいw」

胡桃「もう!!」


花子「……あの廊下の真ん中にデカデカとある、めっちゃ目立つ扉は?」

華菜「ホテルとか結婚式場で見るような豪華な扉だなー」

洋榎「あそこはまだ行っとらん」

洋榎「……露骨に目立っとるから、後回しにしようかと思っとってんけど……」

透華「ふむ……」

透華「ですが、あれだけ大きければ、気になるというのが人間心理」

透華「すでに目覚めた者が、あそこに集まっている可能性はありますわね」

咲「確かに……」

咲「気になって開けて、そこに誰か一人でもいたら、そのまま中に入っちゃいますよね」

胡桃「もしくは逃げるか……だろうけど」

花子「逃げてどうなる問題でもないっしょ」

恵「最終的には誰かに声をかけざるを得ない……ってことですね」

華菜「んじゃ、とりあえず開けてみるし」 ギギーッ

洋榎「おおっ、いきなり開けるんか……」

胡桃「……洋榎、あんなキャラしてるくせに案外ビビリだよね」 ププ

洋榎「ああ!?」

洋榎「う、ウチは慎重なだけや!」

胡桃「はいはい。ほら、行くよ」


咲「…………うわあ」

咲(それは――予想以上の光景)

咲(大きなホールと、いくつもの雀卓)

咲(そして――)

洋榎「ひーふーみー……」

洋榎「めっちゃ居るな」

華菜「うおっ、全自動卓があるし!」 ポチー

恵「うわ、いきなり押すんですか」

華菜「やっぱり雀士としては、牌の音で精神を……」

華菜「って、あれ?」

???「ああ、それ、何か動かないみたいだよ」

???「他の卓も、うんともすんとも言わなかったし」

華菜「お前は……」

恵「白糸台の失点しまくってた人……ですよね」

誠子「あはは……一応、亦野誠子って名前があるんだけどな……」


胡桃「えーっと……」

誠子「ああ、生憎ここにいる皆、状況は分かってないよ」

誠子「……どちらかというと、混乱していて、あんまり相互で話し合ったりもしてないし」

誠子「むしろ、よくそんなに和気藹々だったね」

洋榎「まあ、ウチらは顔見知りがおったからなあ」

胡桃「それより、あれは……」

誠子「ああ、あのスクリーン?」

誠子「来た時からずっとああなんだよね」

咲「……」

咲「ええと、『全員揃ったら、説明会を始めます』……?」

誠子「そう」

誠子「何らかの説明が、ここでされるっぽいんだ」

誠子「だから出て行くわけにもいかなくてさ」


ガチャッ

???「ははは、ほら見ろ、やっぱり誰かがこのドアに入ったと言った通りだったじゃないか」

???「まーなー」

???「まあ、体温感知できるから、人がここに集まっとるのは知ってたんやけどね」

洋榎「お……」

洋榎「清水谷竜華か……」

竜華「ん?」

竜華「ああ、姫松の」

洋榎「見れば見るほどオールスターになっとるな」

洋榎「荒川に辻垣内もおるようやしな」

洋榎「さすがに二人とも神妙な顔しとるし、話しかけられへんけど」

胡桃「そっちの人は……」

???「ふっ……」

那岐「私の名は新免那岐」

那岐「これは愛刀のムラマサ」

那岐「雀士としての、そして剣士としての私の相棒だ」

咲「え、ええと……」

竜華「ああ、気にせんでええで

竜華「ずっとこんな調子やし、カッコつけしいのアホの子や、多分」」


那岐「な、失礼な!」

那岐「私はこれでも幼い頃からきっちりとスポーツチャンバラをだな……」

ピンポンパンポーン

竜華「チャイム……?」

那岐「な、何だ……?」

胡桃「ツッコミ損ねた……」

胡桃「けど、それより……」

BOM!!

華菜「うわ!?」

洋榎「な、なんや!?」

恵「ステージに煙幕……!?」

???「いやっほーーーーう!」 ピョイーーーン

洋榎「ゲエーーーーッ、のぶ代ボイス!!」

胡桃「今の小学生はもう知らないらしいよ」


花子「なに、あれ……」

咲「あれ……エトペン?」

???「ぶっぶー!」

???「そこの角持ち女子高生、惜しいけどハズレだよ!」

???「ぼくはモノペン」

モノペン「この合宿の、監督者なのだーーー!」 ガオー

咲「が、合宿……?」

洋榎「監督者ァ?」

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「そうです」

モノペン「皆さんの共通点、もうお気づきだよね」

モノペン「ここに居る皆さんは、将来有望な高校生雀士の皆さん」

モノペン「そしてこれは、超高校級の雀士を育成するための、強化合宿なのです!!」


???「はぁ!? ふざけたこと言ってんじゃねーよ!」

???「大体なんで私らが強化合宿なんて受けなきゃならねーんだ!」

花子「つーか、これ拉致じゃんか!」

モノペン「はいそうです」

モノペン「僕は謙虚で正直者なので、大人しく認めます」

モノペン「皆さんは、全国大会の会場に居て、なおかつ合宿に招待しやすかった人達です」

モノペン「なので、中には、君みたいなミソッカスが混じっちゃうこともあるけど、しょうがないよね」

???「み、ミソッカスだぁ~~~?」

モノペン「門松葉子さん。県大会一回戦で敗退。本人の成績も散々」

モノペン「誰が見てもミソッカスだよね」

葉子「ぐっ……!」

恵「あ、あはは……あたしも人のこと言えないか……」

モノペン「それでも、そんなミソッカスでも超高校級になれる!」

モノペン「これが、その夢のような強化合宿なのです!!」


那岐「あの~……ちなみに拒否権は……」

モノペン「当然、ありません」

那岐「デスヨネー……」

モノペン「君達には、ここで、共同生活を送ってもらいます」

モノペン「倉庫には生活必需品が揃ってますし、お手洗いもちゃんとピカピカです」

華菜「いやいや、雑貨がいくら充実してても、衣食住がなきゃ人は生きていけないし!」

モノペン「のーぷろぶれーむ!」

モノペン「あとでシャッターを開けておくから、2階に上がってみてください」

モノペン「2階はそれぞれの個室となっていて、ホテルばりの快適な空間をご用意してまーす」

モノペン「全く至れり尽くせりだよね~」

洋榎「おいおいおいおい正気かおい」

胡桃「随分物が充実してるとは思ったけど……」

透華「ここで過ごせ、なんて馬鹿なことを言われるなんて思ってもみませんでしたわ」

華菜「っていうか、さすがに家族や部活の皆が心配してるはずだし!」

モノペン「ああ、そのへんも心配しなくていいよ」

モノペン「根回しは完璧だからね、うぷぷぷぷ」

華菜「……ッ」 ゾッ

竜華「ハッタリ……やと思いたいけど……」

洋榎「ハッタリと決めつけて無理に動きたくはないな……」

洋榎「最悪マジでそれが出来る組織やった場合、絹……残してきた家族に迷惑がかかるかもしれへん」


モノペン「ちなみに、食事に関しても心配ありません」

モノペン「知ってる人もいると思いますが、ちゃんと厨房があります」

洋榎「そーなん?」

竜華「ああ、ここ出て左に行ったらあったわ」

咲(私達がいた資料室や、洋榎先輩のいた倉庫とは逆方向か……)

モノペン「そこにある食材は、なんと自由に使って構いません!」

モノペン「勿論、お値段はタダ!」

モノペン「大盤振る舞いだよね~~すごいよね~~~~」

華菜「食材って何があるんだろ、高いのとかあるのかな」

葉子「いやいやそーいう場合じゃないっしょ」

恵「でも、日持ちするかってのは大事なよーな……」

モノペン「心配ご無用!」

モノペン「ちゃんと食材は毎日新鮮なものにしています」

花子「毎日……?」

誠子「ってことは……え!? 誰かが補充しにここ来るの!?」

モノペン「はい、そーです」

モノペン「さすがに自動で補充されるほど近未来ではないのです」 トホホホホ

モノペン「なので、補充作業のため、夜10時から朝7時までの間は、食堂及び厨房へのへの立ち入りを禁止します!」

洋榎「結構長いな……」

華菜「朝とか夜にお腹減ったらきつそうだし」

モノペン「そこは心配ご無用」

モノペン「カップラーメンでよければ、倉庫にいっぱい眠ってます」

モノペン「談話室にティファールがあるので、そこで食べることが可能です」

モノペン「勿論……深夜や早朝に出歩く勇気があれば、ですが」 ウププププ

咲「……?」


洋榎「はいはーい」

モノペン「元気がいいですね。はい愛宕洋榎くん」

洋榎「ちなみに……」

洋榎「ルールに反してその時間帯に厨房居ったらどうなるん?」

竜華「……!」

恵「そ、それ、聞くんですね……」

咲(確かに……避けては通れない疑問……)

咲(でも……)

咲(“かもしれない”で済んでた嫌な予感が、確定してしまうかも……!)

モノペン「ん~、賢明な皆さんなら分かっていると思いますが……」

モノペン「ルールを破る悪い子には、おしおきが待ってます」

華菜「お仕置き……?」

那岐「おしりペンペンとかじゃ……なさそうだな……」

花子「おしりペンペンて」

那岐「な、なんだその目は。我が家では中学生になるまではそれが罰だったぞ」

葉子「うわっ、思ったより長かった。引くわー。それアンタの親父ロリコンとかなんじゃないの」

那岐「なっ、おま、お父様を馬鹿に――」

モノペン「はいはい脱線しないの」

モノペン「人の話はちゃんと聞きましょうって、習わなかった?」

モノペン「おしおきって言うのはねぇ――」

洋榎「……」

胡桃「……」 ゴクリ

咲(お願いします……どうか……)

モノペン「処刑――――ってことだよ」

咲「…………っ!」


那岐「しょ、処刑……!?」

華菜「は、はは……じょ、冗談きついし!」

モノペン「冗談で君達を拉致してきたと思う?」

恵「うっ……」

???「……殺してももみ消す自信はある、ってことね」

モノペン「はい、新子憧さん大正解!」

モノペン「理解力は超高校級の雀士になるための必須要素」

モノペン「理解の早い生徒を持って、うう、ぼくは嬉しいよ」

憧「……そりゃどーも」 ハァ

洋榎「仮にハッタリだとしても……」

胡桃「試すわけにはいかない、よね……」

咲「うう……」

咲「やっぱり……そうなるよね……」

咲(こんなことなら、もっとこういう系統の小説読んでおけばよかったよぉ……)


???「…………」 スッ

モノペン「はい、辻垣内智葉さん」

智葉「合宿と言っていたが……」

智葉「スケジュールなんかは決められているのか?」

モノペン「はい、いい質問ですねえ」

モノペン「この合宿は、非常に自由度が高くなっております!」

モノペン「なんと、昼の1時から夕方の4時までの3時間、このお部屋で麻雀をしてもらえればオッケーなのです!」

華菜「え、緩っ」

透華「……それで本当に強化合宿になるんですの……?」

モノペン「更にぃ……」

モノペン「色々不便が生じるでしょうから、その麻雀も3日に1回参加すればオーケーとします!」

花子「ますます意味ねー……」

葉子「ほんとに強化合宿なわけ?」


洋榎「……一応、周りに倣って手ぇあげとこか」 スッ

モノペン「はい、愛宕洋榎くん

洋榎「3日に1回……って、いつからどうカウントするんや」

モノペン「そうですねえ……」

モノペン「そのへんは、ぶっちゃけあんまり決めてませんでした」

葉子「はぁ!?」

華菜「いやいや、そこ大事なとこでしょー……」

モノペン「そうですねー」

モノペン「じゃあ、『3日連続で麻雀時間に麻雀を打たないとおしおき』、これでいこう」

花子「そんなテキトーな……」

華菜「微妙にニュアンスも変わってるし」

モノペン「うるさいなあ」

モノペン「ルールっていうのは、細部が順次固められていくものなの!」

智葉「……そのルールが、途中で変動したりすることはないだろうな」

モノペン「増えることはあっても、変わることはありません!」

モノペン「ルールを変えちゃったら、なんでもありになっちゃうからね!」

モノペン「ルールの中で如何に戦うか……それは麻雀でも合宿でも必要なことなのです」 ウププププ


竜華「しかし、3日連続でアウトっちゅーことは、2日までは休んでもええんか……」

洋榎「今日からの3日の内、麻雀を打つのを今日にして……」

洋榎「その後の3日で打つのを最終日にした場合、このルールではアウトなわけやな」

洋榎「よう分からんルールやで」

モノペン「もう! しょうがないでしょ!」

モノペン「そこに突っ込まれるの、今回が初めてなんだから!」

憧「今回“が”……?」

モノペン「はっ! 言っちゃった!」

洋榎「おいおい、これまでにもあったっちゅーんか……?」

胡桃「でも……そんな話、聞いたことないよね……」

竜華「マジで揉み消すだけの力はある……っちゅーことか……」


葉子「あのさぁ……」

モノペン「はい?」

葉子「合宿しろっつーのは分かったんだけど……」

葉子「ぶっちゃけ、いつまでやんのこれ?」

葉子「一応、約束とか予定があるっつーか、なんつーか……」

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「良い質問ですねえ」

モノペン「この合宿ですが――」

咲「……」 ゴクリ

モノペン「な、ななななんとぉ!」

モノペン「期限というものはありませ~~~~ん!」

咲「!?」

モノペン「無料で美味しいものが食べられて、ふかふかのベッドで眠れて」

モノペン「そのうえ麻雀もたくさん打てる」

モノペン「そんな夢の様な環境に永遠に身を置けるなんて、幸せすぎて涙が止まらないですよ」 ウッウッウッ

咲「…………」

胡桃「うそ……」

竜華「くっ……!」


???「ふざけないで!!」

???「そんなの……さすがに認められるわけないじゃない!」

モノペン「えーっと、桧森誓子さん」

モノペン「さすがに……と言うと?」

誓子「拉致は百歩譲って、まあ貴重な体験くらいで流せなくもなかったけど……」

誓子「こんなところに一生なんて、絶対に無理!」

モノペン「最近の若い子は、本当に我儘で我慢というものを知らないなあ……」

モノペン「でも、そんなどーーーーしても合宿をやめて帰りたい人のために!」

モノペン「特別にお家に帰る方法をご用意しましたァ!」

咲「……ッ」 ゾッ

咲(嫌な……予感がする……)







エトペン「他の合宿参加者を殺すことができれば、その人だけは、特別にお家に返してあげます」






 


咲「~~~~ッ!」

華菜「…………は?」

花子「いやいやいやいや……え?」

誓子「殺す……って……」

洋榎「ちっ……今時バトル・ロワイアルなんて流行らんでホンマ」

エトペン「ああ、安心していいよ」

エトペン「バトル・ロワイアルみたいに、全員殺して最後の一人になれ、なんてことは言わないから」

エトペン「僕は、とっても優しいからね。うぷぷぷぷぷぷ」

咲「え?」

エトペン「たった一人。たった一人でも殺せたら、この合宿を卒業させてあげます!!」

竜華「ふざけとんのか……!」 ギリッ

透華「一人であろうと……人なんて殺せるはずがありませんわっ」


エトペン「勿論、人が死んだら合宿どころじゃないので、お家に帰って貰うというのもありますが……」

エトペン「一番の理由は、人を殺すことが、雀力上昇に繋がるからなのです!」

葉子「は、はあ!? 意味わかんねーんだけど!?」

エトペン「麻雀とは、相手の行動や手を予想し、自分の手を誤魔化し嘘吐き自分が上るゲーム……」

エトペン「即ち!」

エトペン「皆を見事騙し切り、殺害という目的を成した者は、雀士として必要な能力が十二分にあるとみなせるのです!」

花子「ん、んな無茶な……」

エトペン「でも、そういう無茶から、オカルトというのは始まるのですよ」 ウププププ

恵「えー……」

憧「まあ、登山してたらって前提もあるし、全否定までは出来ないけど……」

エトペン「ですから、ちゃんと殺すときはバレないよう工夫してください!」

エトペン「そこは殺せばいいバトル・ロワイアルとは違うんですよ。うぷぷぷぷぷぷ」

エトペン「そのためにわざわざ部屋も多くして、隠れたり隠したりしやすくしてあるんですからね!」


エトペン「さて、ザックリ説明しましたけど……」

エトペン「正直、まだまだ説明し足りないんだよね」

エトペン「でも、君達もう取扱説明書とか読まないしついてない世代でしょ?」

エトペン「生活してく内にルールは肌で覚えるだろうし……」

エトペン「分からないことなんかも、おいおい出てくると思います」

エトペン「でも、安心してください」

エトペン「何か分からないこととかあったら、ボクを呼んでくれたら駆けつけて質問には答えてあげますからね」

エトペン「ほーんと、優しい監督者だよね。うぷぷぷぷぷぷ」

エトペン「あと、超基本的なルールについては、電子手帳の中に入れてあります」

咲「電子手帳……?」

エトペン「各自の部屋の机の上に置いてあるから、戻ったら確認してみてね!」

エトペン「牌譜なんかも記録できるようになってる、超すぐれものなんだから!」


エトペン「さて、窓がなくて皆さんには分からないかもしれませんが、実はもう夜なのです」

葉子「げっ、マジ?」

那岐「どーりで先程からグーグーお腹が……」

エトペン「今回は初日なので、特別に食堂に豪華なご飯を用意しています!」 イヤッホーウ

エトペン「食べながら軽く交流でも深めておきなよ」

エトペン「そんでもって、ちゃんと立ち入り禁止になる時間――夜時間とでも名付けようかな」

エトペン「夜時間には各自の部屋に戻るように!」

エトペン「部屋にはちゃんとネームプレートがついてるからね!」

エトペン「それじゃ、他に質問ある人がいなければ、僕は帰るとします」

エトペン「質問ある人~~~~~~!」

シーン・・・

エトペン「ん、ないみたいだね」

エトペン「それじゃ!」

ボワン

那岐「き、消えた……」

恵「な、なんだったんですかね……」

洋榎「……」

洋榎「分からんことが多すぎるわ」

洋榎「ただ――とりあえず、今日のところは言う通りにするしかないやろ」

透華「そうですわね」

透華「とりあえず食堂で食事を取りつつ、改めて自己紹介でもしましょう」

透華「それで部屋に戻って、電子手帳とやらを確認して――」

透華「どうするかは、それからですわ」


<食堂>

華菜「にゅ、にゅああ~~~~……」

花子「マジで豪華で美味そうじゃん……!」

葉子「……ん! 美味いわこれ!」

憧「……とりあえず言われたからついてきたけど……」

憧「誰が仕切るの?」

憧「このまま放っておくと、脳天気な連中が食事にがっついて時間終わりそうだけど」

洋榎「んー」

洋榎「仕切るかはともかくとして……」

洋榎「確かに放置すんのもあれやし、他に先陣切りたい奴もおらんのやったら自己紹介、させてもらうわ」

洋榎「はいよう聞いたってやー」

洋榎「ウチは愛宕洋榎」

洋榎「姫松高校麻雀部主将、中堅レギュラーで個人戦でもインハイ出場」

洋榎「姫松の大天使洋榎ちゃんとはウチのことやで!」 ドヤドヤーン



姫松高校・中堅   アタゴ ヒロエ



胡桃「はいはいうるさいそこ」

洋榎「華麗に流された!!」


竜華「ていうか、個人戦の成績とか、そういうの言う必要あったん?」

洋榎「ん?」

洋榎「いや、麻雀関係で拉致られたんやったら、情報はあった方がええやろ」

憧「……ミソッカス扱いされてる人もいるんだし、成績は無関係なんじゃない?」

竜華「まあ、ちょっとデリケートな部分でもあるし、さすがにそれを全員に強制するのはデリカシー無いわ」

洋榎「ぐ、ぐむ~~~」

透華「こほん」

透華「私は龍門渕透華」

透華「龍門渕高校の2年生で、副将を務めておりますわ」

透華「個人・団体共に全国にすら行けませんでしたが……そんなこと、関係ありません」

透華「次こそ勝つ」

透華「そしてそれが可能だと思えるくらい努力していましてよ」

透華「故に! 終わったものの結果など、今後のことに影響を及ばすでもなし」

透華「どうでもいいことですわ!」



龍門渕高校・副将   リュウモンブチ トウカ



透華「そんなに心配しなくても大丈夫ですわ」

透華「私はこれでも、不可能と呼ばれることを次々可能にしてきましたし……」

透華「龍門渕グループも、私が居なくなって捜索しないはずがない」

透華「そして、これだけの大規模な事件、我が龍門渕グループが調べられないはずがありませんわ!」

透華「ですから、安心なさい」

透華「私が、導いてさしあげましてよ!」


葉子「くあ~~っこいい~~~~」

華菜「次誰行く? 私行こうか?」

憧「そういう順番で名乗ったなら、素直に時計回りにするのがいいんじゃない?」

恵「確かにそれなら順番でグダる心配はないですねェ……」 ギヒ

花子「えーっと、んじゃ私か」

花子「浅見花子。越谷女子、次鋒3年!」

花子「……つっても、この人数いきなり全員覚えんの無理っしょぶっちゃけ」

花子「まー多分私のことも覚えらんねーとは思うんだけど」

花子「この帽子、お風呂以外じゃずっと被ってるし、コイツで覚えてくれたらいいよ」



越谷女子・次鋒   アサミ ハナコ



葉子「帽子被ってるとハゲるって言うけど」

花子「いやいや、でもトレードマークは外せないっしょ」

華菜「っと、次私か」

華菜「池田華菜!」

華菜「風越女子の2年、大将を務めてるしっ!」



風越女子・大将   イケダ カナ



花子「ほら、あの娘だって猫耳ってトレードマーク、この切羽詰まった状況でもぴょんこ立ててるし」

葉子「どーなってんだあの髪の毛……」

華菜「お前ら人の自己紹介はちゃんと聞けー? 聞いてくださいーい?」


恵「上柿恵」

恵「千曲東ってとこで、一応副将をやってます」



千曲東高校・副将   カミガキ メグミ



恵「以上です」

恵「はい、次どうぞ」

咲「え、あ、そっか……」

咲「え、ええと、宮永咲です!」

咲「き、清澄高校という所で、大将をさせてもらってます!」

咲「よ、よろしくお願いします!」 ガバ



清澄高校・大将   ミヤナガ サキ



洋榎「おーおー、下げる必要無いのにめっちゃ綺麗な角度で頭下げおったな」

胡桃「緊張しなくてもいーよー」 アハハ

華菜「まあ、自己紹介されなくても、多分さすがに優勝校の大将だったら皆知ってると思うし」

花子「確かに……」

葉子「私でも知ってるもんな……」


誠子「えーっと、亦野誠子です」

誠子「白糸台高校で副将やらせてもらってます」

誠子「さっきの宮永咲さんの姉、宮永照先輩には大変お世話になりました」 ハハ

誠子「趣味は釣りなので、誰か釣りが趣味だったり興味ある人がいたら――」

洋榎「長い! 長いわ!!」

誠子「ええ!?」

誠子「いやでも自己紹介って、このくらいの長さになるのが普通じゃあ」

洋榎「それしていいならウチもたっぷりやりたかった!」

洋榎「空気読んであんま喋らんかったウチが損したみたいになってまうやんけ!」

胡桃「今まさにその話聞いて時間やら何やら損した気分だよ」



白糸台高校・副将   マタノ セイコ



花子「男を釣る方には、人並みに興味あんだけどねー」

誠子「えっ」

誠子「あー……そういう釣りはちょっと……」

花子「あはは、マジレス?」

華菜「あんまモテなさそーだもんなあ」


やえ「晩成高校3年、先鋒の小走りやえだ」

やえ「……正直……まだちょっと動揺しているんだ」

やえ「すまない。これからよろしくおねがいします」



晩成高校・先鋒   コバシリ ヤエ



葉子「真面目に考えすぎなんじゃねーの?」

花子「まーでも冷静に考えたらそれが普通なのかもねえ」

葉子「いやいや、こんな現実味沸かない状況じゃ真面目になれなくてもしょうがないっしょ」

誓子「えー、でも現実味ないけど、それでも真面目に腹が立ったりはするじゃない」

葉子「あー、確かにムカつきはするなー」

誓子「でしょ?」

咲「あ、えーと……」

誓子「ああ、自己紹介ね」

誓子「桧森誓子。有珠山次鋒の3年生!」

誓子「皆よろしくね」




有珠山高校・次鋒   ヒモリ チカコ



洋榎「……」

誓子「?」

誓子「どうかした?」

誓子「私の顔に何かついてる?」

洋榎「いや、なんちゅーか、変な睫g」

胡桃「デリカシー!!」


誓子「次は、ええと……」

智葉「……辻垣内智葉」

智葉「臨海女子の先鋒だ」



臨海女子・先鋒   ツジガイト サトハ



葉子「こえ~……」

花子「何かちょっとピリピリしてねーっすか……?」

那岐「……!」

那岐「……新免那岐」

那岐「讃甘高校のしぇんぽうだ」



讃甘高校・先鋒   シンメン ナギ



華菜「あ、噛んだ」

葉子「つーか、内容まんま辻垣内サンのと同じじゃね?」

花子「かっこいーと思ってンじゃないの、あーいうのが」

葉子「うへえ、クールな一匹狼気取りの中二病ってやつ……?」

誠子「まあまあ、何かちょっと涙目になってるしそのへんで……」


憩「えーっと、荒川憩でーす」

憩「三箇牧高校2年生!」

憩「今年は大将しとりました~!」



三箇牧高校・大将   アラカワ ケイ



花子「かつての高校ナンバー2と3が並んでると圧巻だねえ」

葉子「間に余計なのがいるけどな」

花子「刀のインパクトだけはやべーけどね」

那岐「…………」 プルプルプル

咲(意外とメンタル弱いんだ……)

巴「ええと、もういいですか?」

巴「永水女子3年・次鋒、狩宿巴」

巴「普段は巫女なんかをやってます」

巴「どうぞよろしくお願いします」 ペッコリン



永水女子・次鋒   カリジュク トモエ



洋榎「永水なあ」

洋榎「去年のあれこれもあるし、一編同卓せーへん?」

胡桃「もう、後にしなよ!」


葉子「っと、私か」

葉子「門松葉子、今宮女子」

葉子「2年、先鋒」

葉子「悲しいことに知り合いがここには一人もいないんで、適当によろしく」 ヒラヒラ



今宮女子・先鋒   カドマツ ヨウコ



花子「……目立つ変な髪型だよね」

花子「何かチンピラっぽいわー」

葉子「おめーにだきゃ言われたくねーよ!」

???「……」

華菜「ちょっと変わった、なんていうか、ロックっぽい髪型が並んでるな―とは思ってたけど……」

恵「案外、そっちの方は無口なんっすねえ」 ギッヒ

美子「……安河内美子」

美子「新道寺の次鋒ばい」



新道寺女子・次鋒   ヤスコウチ ヨシコ



葉子「……何かさっきから深刻そうな顔してっけど、大丈夫か?」

憧「いや、多分その顔、標準よ」

憧「映像で何度も見たことある」

葉子「え、マジで……」

花子「ふえー……そーなん……」

胡桃「失礼だよ皆」


ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは、家老渡高校中堅、佐々野いちごっちゅーんじゃ!」

ちゃちゃのん「気軽にちゃちゃのんって呼んでほしいけえ」



家老渡高校・中堅   ササノ イチゴ



洋榎「チャカのん」

ちゃちゃのん「この環境下じゃと最もやばそうな名称じゃよそれ!?」

誓子「茶葉のん?」

ちゃちゃのん「純和風ッ!」

花子「そーいや剱谷居ないね」

竜華「拉致りにくかったんちゃう?」

竜華「茶道もやっとるから、早々に地元戻ったって噂聞くし」

華菜「ほへー。すごいなー、二足の草鞋」

憧「自己紹介、進めていい?」

胡桃「ごめんね、どうぞどうぞ」

憧「新子憧、1年」

憧「阿知賀女子の中堅してます、どうぞよろしく」



阿知賀女子・中堅   アタラシ アコ



花子「ギャルかー」

憧「ギャルじゃないから」

華菜「金髪パイナップルにモヒカン、それとギャルに挟まれてると、ちゃちゃのんが淫乱枕アイドルに見えてくるし」

花子「分かる。アウトローに囲まれてるとそう見えてくるよね」

洋榎「オセロの理屈やな」

葉子「だからアンタにだけは言われたくないっての、バッテン帽子!」

憧「アタシも別にギャルとかじゃないから!」


洋榎「時間もないし、さくさくいこかー」

竜華「清水谷竜華」

竜華「千里山女子の大将です」

竜華「特技は、ゾーンに入ると人の体温や呼吸を感じることが出来ること」

竜華「持ちネタ一発芸は人間サーモグラフィーです」

華菜「なにそれ怖ッ」

洋榎「それ、ほんまずるいわー」

洋榎「知ってても対処出来へんし一発芸でやられると絶対笑うからほんまずるい」



千里山女子・大将   シミズタニ リュウカ



胡桃「まったく……」

胡桃「あ、私で最後かな」

胡桃「加倉胡桃、宮守女子中堅!」

胡桃「これでも一応3年生だからね!」



宮守女子・中堅   カクラ クルミ



洋榎「なるほど小学3年生かー」

洋榎「よちよち、よく挨拶できまちたねー」

胡桃「……」 ゲシッ

洋榎「あいたーーーっ!」

洋榎「おまっ、脛はあかんて……脛は……」


咲「……ちょっと変じゃありませんか?」

華菜「へ?」

誠子「変……って?」

咲「麻雀を打つ、っていうのが名目なのに……」

咲「19人だと、4で割れませんよね」

洋榎「そういやそうやな……」

透華「4で割れない事に、何か意味が……?」

???「ないっすよ」

憧「!?」 ビクッ

???「何故なら、ここに居るのは20人で、4で割れるからっす」

葉子「うおっ、何だァ!?」

恵「な、何もなかったはずのところから人が……」 ガクブル

那岐「ひ、ひいい……あ、悪霊退散般若波羅蜜多何たらー」 ブルブル

???「幽霊じゃあないっすよ」

桃子「東横桃子。鶴賀学園副将1年。れっきとした、生きた人間っす」



鶴賀学園・副将   トウヨコ モモコ



洋榎「まあ、なんいせよ……これで20人か」

胡桃「同じ学校の人は一人もいないんだね」

透華「ですわね」

透華「一応、名前と学年、ポジションなんかは全てメモを取らせてありますわ」

咲「あ、はい、簡単にですけど……」

葉子「って、自分で取ったんじゃねーのかよ!」

透華「何分、ハギヨシに取らせることに慣れているもので」

葉子「誰だよハギヨシって……」

誓子「彼氏かしら」 ワクワク

花子「まじ? 彼氏の友達紹介してほしいなー!」


憧「賑やかなとこ悪いけど……アタシ、自分の部屋に行ってもいい?」

華菜「ほえ?」

智葉「ここも10時には閉鎖される」

智葉「あまりのんびりせず、早々に部屋に戻るというのは賛成だな」

憧「部屋の中もチェックしたいし、電子手帳とやらも確認しないわけにはいかないからさ」

竜華「確かに……自分の部屋がどないなっとるんか、まだ見とらんしな……」

洋榎「せやな……」

洋榎「とりあえず今日の所は食い終わり次第自由解散にするかあ」

透華「ああ、それなら一点」

透華「折角ですので、明日朝8時に集まって朝食を取りませんこと?」

華菜「へ?」

巴「何故です?」

透華「たっぷりある夜時間に考察して、何か閃いたならその共有をと思いまして」

透華「それに、食事を共にすることで、変な気を起こす可能性がグッと減ると思いますわ!」

透華「食事! それは冷えきっていた家族ですら暖かなものに変える魔法のイベントっ!」

透華「ですから、ベストは毎日8時に朝食会を行なうことでしてよ!!」

咲(何より変な本人のテンションはともかく……)

咲(変な気――殺人を起こさないため、という点では、龍門渕さんの考えは、優れている)

咲(確かに毎日顔を合わせた相手だと殺しにくいし……)

咲(万が一があった場合でも、朝食会に来ないことで早期発見に繋がるかもしれない)

咲「私も……その意見に賛成です」


洋榎「ん、せやな」

洋榎「毎朝するかは一先ず置いとくとして、明日は8時に集まるか」

咲(その意見に、特に反対は出なかった)

咲(それから皆、黙々と――一部、騒がしかったけど――ご飯を食べた)

咲(豪華だし、美味しかったけど……だからこそ、どこか薄ら寒かった)

咲(あまり食欲が出なくって、比較的早めに、私は自分の部屋へと戻った――)


<自室>

咲「ふう……」

咲「あ、これが電子手帳……」

咲「中、見てみようかな」 ポチ


『合宿規則

厳守!破った人にはきつ~いおしおきがあります!

1.雀士達にはこの施設内だけで共同生活をしてもらいます。共同生活の期限はありません。

2・.夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3.探索は自由です。建物について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

4.ただし、シャッターを壊したり等、建物を著しく破損させる行為は禁止です。

5.勿論監視カメラの破壊も厳禁。布等でカメラを見えなくする行為も禁止です。

6.監督者であるモノペンへの一切の暴力を禁止します。

7・仲間の誰かを殺害した“クロ”は、この施設を卒業し元の生活に戻れますが、他の人に自分が“クロ”だとバレてはいけません』



咲「……」

咲「監視カメラ?」


咲「よく見ると部屋にカメラが……」

咲「私達の行動も関しされてるってことだよね……」

咲「てことは、食堂なんかにもあったのかな……」

咲「……」

咲「お風呂はユニットバス」

咲「脱衣所もあるけど……」

咲「うう、すりガラス……」

咲「カメラに裸が映っちゃうことはないけど……」

咲「でも例えば服を着たまま変なことをしてたら、気付かれる可能性はあるってことだよね……」

咲「気をつけなくちゃ……」

咲「……」

咲「シャワーは、後にしてもうちょっと読んでおこうかな」


咲「これは……地図?」

咲「こうしてみると、結構いろんな部屋があるんだ……」

咲「2Fのどこに誰の部屋があるのかも載ってる……」

咲「あとは……」 ポチポチ

咲「……」

咲「生徒名簿……」

咲「学年もポジションも全部載ってる……」

咲「何なら顔写真まで……」

咲「……」

咲「メモった意味……なかったな……」 ズーン


咲「……ふう」

咲「意外と水圧ちゃんと出るし、お湯も暖かかったな」

咲「……」

咲(正直、まだ不安でいっぱいだけど……)

咲(洋榎先輩や、龍門渕さんが何とか仕切ってくれてるから……)

咲「大丈夫だって、信じるしかないよね……」

咲「うん、今日はもう寝よう!」

咲「それで……明日に備えなくちゃ」

咲(明日になれば、なんとかなる)

咲(そんな根拠の無いことを無理矢理信じながら、眠りについた……)



Day1 END

ようやっと区切りがついたので、一旦終了します。
参加者は以下の通りです。

清澄高校・大将   ミヤナガ サキ(1年)
姫松高校・中堅   アタゴ ヒロエ(3年)
龍門渕高校・副将  リュウモンブチ トウカ(2年)
宮守女子・中堅   カクラ クルミ(3年)
風越女子・大将   イケダ カナ(2年)

阿知賀女子・副将  アタラシ アコ(1年)
白糸台高校・副将  マタノ セイコ(2年)
三箇牧高校・大将  アラカワ ケイ(2年)
有珠山高校・次鋒  ヒモリ チカコ(3年)
千里山女子・大将  シミズタニ リュウカ(3年)

臨海女子・先鋒   ツジガイト サトハ(3年)
讃甘高校・先鋒   シンメン ナギ(3年)
鶴賀学園・副将   トウヨコ モモコ(1年)
永水女子・次鋒   カリジュク トモエ(3年)
晩成高校・先鋒   コバシリ ヤエ(3年)

家老渡高校・中堅  ササノ イチゴ(3年)
千曲東高校・副将  カミガキ メグミ(1年)
新道寺女子・次鋒  ヤスコウチ ヨシコ(2年)
今宮女子・先鋒   カドマツ ヨウコ(2年)

越谷女子・次鋒   アサミ ハナコ(3年)

【残り20人】

再開します。
ちょいちょいどうでもいい自由行動とかは安価出すのでお暇な方は参加して頂ければと思います。
自由行動でらーぶらーぶしてね。


【Day2】

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『オマエラ、おはようございます!』

モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

咲「……」

咲(うう、目覚め最悪だよお……)

咲(朝からあの映像で起こされるのもだけど……)

咲(何!? モノペン劇場って!? 何その夢!?)

咲「……」

咲「うう、二度寝したいけど、顔洗って着替えたら食堂に行かなきゃ……」


<食堂>

咲(食堂に行くと、そこそこ人が集まっていた)

洋榎「おっ、はよー」

洋榎「早いやん、まだ朝食会まで時間あるで」

咲「おはようございます」

咲「洋榎先輩も……早いですね」

洋榎「あ、今意外とか思ったやろ」

咲「ええ!? そ、そんなこと……」

洋榎「これでも厳しい~~部活の主将として、毎朝朝練で早起きさせられとるんやで」

洋榎「まあ昔は寝坊もめっちゃしててんけどな、絹と恭子に鍛えられたわ」 ガハハ

胡桃「まったく朝から騒がしいよね」 ヒョコ

咲「あ、胡桃先輩。おはようございます」

胡桃「ん、おはよー」

胡桃「……で、朝食会を企画した張本人は? まだなの?」 キョロキョロ


葉子「あー、アイツなら今厨房だよ」

胡桃「あれ、意外」

胡桃「早起きとかしなさそうなキャラなのに」

葉子「うっせっすわ」

葉子「最速と言われる私より先に来てやがんの」

葉子「アイツ、7時より前に起きて張ってたんでねーの?」

咲「何でそんなことを……」

透華「勿論!」

透華「安心安全な食事を提供するため、ですわ!」

咲「おはようございます」

透華「ええ、おはようございます」

透華「気にしないと思っても、どうしても昨日のアレは気になってしまうもの……」

透華「そこの……ええと」

葉子「……門松」

透華「門松さんのように、毒が不安で柄にもなく早朝から厨房を覗きに来る方もいらっしゃるでしょう」

葉子「ばっ、私は別に、ビビってなんか……」

透華「ですので……真っ先に私が来て、しっかりと見張りもしておきましたわ!」

誠子「その本人が毒入れてたら意味ないけどね」

透華「わ、私はそんなこと……」

誠子「冗談冗談」

誠子「実際食材選んで調理してるのは私と巴だし、透華に狙って毒入れる余地なんてないよ」

誠子「私としても、監視してもらえるおかげで変に疑われる心配せず料理作れたから大助かりだし」

洋榎「へえ、自分料理できるん?」

誠子「魚限定だけどね」

誠子「釣りの時は朝早いし、部活でも朝は早いし、どうしても時間を持て余してたから、料理させてもらってたんだ」

透華「巴さんも同じようなことを言ってましたので、今日はお二人に人数分の料理をお願いしましたわ」

透華「私は作らせる専門ですので助かりましたわ」

胡桃「それでよく朝食会企画できたね……」

洋榎「こいつら早めに来とらんかったらどうするつもりやったんや朝食……」


咲(それから次第に食堂に人が増えていった……)

咲(時間の5分くらい前には来る真面目な人達)

やえ「おはよう! 皆早いな!」

美子「……おはようございます」

憩「おっはよーございますー!」

竜華「はよーっす」

ちゃちゃのん「みんな、おはようー」

智葉「……おはよう」

咲(時間ギリギリか、ちょっと遅れて来る人達)

憧「危ない危ない。ギリギリセーフ、かな」

恵「おはようございまーす」

誓子「おはよう! ちょっと危うく二度寝するところだったぁ……」 ホッ

咲(……そして、10分待っても来ない人達)

透華「もう!」

透華「来ていないのは……」

葉子「あの猫みてーなのとバッテン帽子、あと変な剣持ってるアブねーのと影薄い巨乳の四人じゃね?」

恵「へえ、ちゃんと見てるんですねえ」

葉子「まあ、頭ひとつくらい飛び抜けて目立つ連中だからな、最後の一人以外」

咲「あれ、でも……」

咲「私が来た時には、もう居ましたよね」

桃子「はいっす」

葉子「うおあっ!?」

恵「び、びっくりした……」

透華「いつ見ても心臓に悪い方ですわね……」


透華「仕方がありませんわ、私が直々に呼んで――」

バタン

華菜「ごっめん遅れたし!」

透華「池田華菜!」

透華「まったく、仮にも規律の厳しい風越出身である貴女がそのような体たらくでは困りますわ!」

華菜「いや、それには深いわけが……」

透華「言い訳無用!」

透華「その濡れきった髪の毛は何なんですの!」

華菜「ああ、これはシャワーを浴び……」

ジロー

華菜「うっ、そ、そんな目で見るなし!!」

華菜「こ、これには深~~い深~~~~~~いわけが……」


ガチャ

花子「はよーっす」

花子「あれ?」

花子「もしかして、まだ始まってなかった?」

透華「当たり前です!」

透華「全員揃って、と言ったではありませんか!」

花子「そーだっけ?」

花子「いやごめんごめん」

花子「てっきり先始めてると思ったからさ」

花子「寝過ごした時点でもう間に合わねーって思って、朝シャンしちゃった」

ジロー

華菜「か、華菜ちゃんはコイツと一緒の理由じゃないしっ!!」


透華「罰として、お二人で新免さんを迎えに行ってくださいまし!」

花子「えー」

花子「先食ってよくない? 冷めちゃうしさ」

透華「冷めてしまうから早く行くようの言っているんです!」

花子「うへー」

花子「だーってさ」

花子「大人しく朝シャン同士行きますか」

華菜「だーかーらー、華菜ちゃんはーーー!」

透華「……」

華菜「……わかったわかった、わかりましたよ行くってーの!」

華菜「ほら、さっさと行くし!」 スタスタ

花子「しっかしまさか私より遅い奴がいるとはねー」 スタスタ



咲(数分後……)

花子「あーっ、つっかれたー!」

那岐「おはよう。遅れてすまなかった」

華菜「ほんっとうだし!」

花子「どんだけ爆睡してんだよ!」

華菜「あんだけインターホン押す機会、そうそうないからな!」

那岐「申し訳ないとは思っている」

那岐「普段は剣の稽古もあり、武人として早朝から起き修行に勤しむ身」

那岐「なればこそ起きられると思っていたのだが……」

那岐「どうやら枕が代わっても眠れる私でも、目覚ましが変わると起きれなくなるようだ」

胡桃「意外と繊細なんだ」

誓子「普段は何で起きてるの?」

誓子「何か剣士っぽい目覚まし?」

葉子「剣士っぽい目覚ましって何だよ……」

誓子「それが分からないから聞いてるんじゃない」

那岐「いや、普段はiPhoneに入れた舞園ちゃんの着うたで起きているんだが……」

葉子「武士設定速攻でかなぐり捨てたな!!」

那岐「失礼な!」

那岐「私は硬派な武士だし、ライブだってサイリウムという練習刀を振るう鍛錬の場として……」

葉子「武士に謝れよ!!」

胡桃「アレは放っておいて、ご飯にしない?」

透華「それもそうですわね」


透華「それでは皆様、手を合わせて――」

透華「いただきます!」

「「「いただきまーす」」」

咲「ま、まばら……」 アハハ

誠子「魚もいっぱいあるから、好きなの食べてよ!」

巴「お口に合えばいいんだけど」

那岐「美味い!」

那岐「……が、肉が足りないな。肉はないのか?」

巴「ごめんなさい、宗教柄、あんまり肉料理は得意じゃないから今日は……」

憧「朝から肉!!っていうのも何でしょ」

那岐「馬鹿言うな」

那岐「私は朝からダブルチーズバーガー3つイケるタイプの武士だぞ」

葉子「もうそれ武士でも何でもねーじゃん……」

花子「ツッコんだら負けなんじゃね?」


透華「それで……」

透華「何か今日までに気付いたことなどがあれば、この場で共有したいと思うのですけど」

洋榎「せやなあ」

洋榎「とりあえずまとめ役なんやし、自分から発表したら続きやすくなるんちゃう」

透華「そうですわね」

透華「大したことではないのですが……」

透華「やはりというか、携帯電話は没収されていましたわ」

透華「恐らく、他の方々も通信機器は没収されているかと」

洋榎「ああ」

胡桃「困っちゃうよね」

咲(そうだったんだ……)

那岐「おかげで朝起きられないしな」

花子「いや明日はちゃんと起きてよー?」

葉子「アンタがそれ言うんすか」


透華「他に何か気付いた方は……」

華菜「はい! はいはいはいはいはーい」

洋榎「ほんならウチが――」

華菜「おーーーい!?」

洋榎「冗談やって。んで、どーしたん」

華菜「いや、それが……」

華菜「何か夜時間は、シャワーが止まるみたいだし」

咲「え?」

憧「らしいね」

憧「私も昨日シャワー出なくて焦ったわ」

やえ「私もそうだった」

憩「右に同じ~」

美子「うん……おかげで朝浴びることになったし……」

美子「7時に起きれてなかったら、遅刻してたかも」

透華「それ、本当ですの?」

華菜「マジだし」

華菜「監視カメラにキレ倒したら、モノペンが出てきて補足していったし!」

咲「も、モノペンが……!?」

華菜「なんでも、夜時間は節約のために水が止まる~~って」

誓子「どーりで夜中お手洗いに起きた時、水が流れなかったわけだ……」

葉子「え、それどーしたんすか……」

やえ「ということは……シャワーのみならず、水全体が止まるのか……」

憧「……夜時間に殺人を犯しても、隠蔽が難しい、ってことかしらね」

一同「…………っ!」

憧「ちょ、ちょっと、そんな顔しないでよ」

憧「客観的かつ冷静に判断しただけだから」


透華「それに……」

透華「そんな大事なことも、モノペンは全体周知してくれませんのね」

華菜「問いただしたら、聞かれてないからとか抜かしてたし!!」

洋榎「問い質したら、もっとポコポコ隠れたルールとか出てきそうで怖いな」

胡桃「かといって、全部教えろって言って、教えてくれる雰囲気でもないよね」

洋榎「そーいう読み合い探りあいも麻雀要素、ってか」

洋榎「胸くそ悪いわー」

華菜「ホントだし!」

華菜「華菜ちゃんなんて、シャワー浴びて体洗ってる最中に水を止められたんだから!」

葉子「……え、それどーやって……」

華菜「倉庫にミネラルウォーターのペットボトルがあるってモノペンに言われて……」

華菜「くっそ寒い中、全裸で階段降りて倉庫までペットボトル取りにいってたし!!」

葉子「うわあ……」

花子「とんでもねー……」

華菜「これで男子が混じってたと思うと、ゾッとするし……」

花子「いや、男子居なくてもそれはちょっと……」


透華「ちなみに……」

透華「貴女の個室から倉庫に行くなら、この食堂も横切りそうなものですけど……」

透華「何か変わったこととかは……」

華菜「いやいやそんなの分かんないし!」

華菜「ある意味こっちも必死だったし、下手に首つっこんで何かされたらたまったもんじゃないし!」

憧「賢明ね」

透華「他には何か気付いた方は……」

洋榎「どんなしょーもないことでもええで」

那岐「……」 スッ

透華「はい、えーと……」

那岐「新麺那岐。超高校級の剣道家だ」

葉子「何ふかしてんだこいつ」

花子「いったー……」

透華「それで、気付きというのは」

那岐「あの枕……」

那岐「低反発のちょっといい枕だった!」 クワッ

胡桃「本当にしょうもない!!」


透華「他……は、なさそうですわね」

洋榎「てなると……探索するしかないやろな」

胡桃「規則では探索自体は自由ってなってたもんね」

透華「ルールの改変自体は無い、と考えてもいいと思いますわ」

憧「新ルールが発見されたり追加されるとしても、既存ルールに抵触はしない、か」

透華「あくまで能力向上という名目を貫くなら、基盤の部分を揺るがすことはしないはずですわ」

巴「でも……探索って、どうやってやります?」

巴「全員で動くのも、大所帯すぎて大変だと思うんだけど……」

憧「かといって、単独調査も考えものじゃない」

憧「そうなると、サボる人も出かねないし」

花子「なーんでこっち見てるんすかね~」

葉子「感じ悪くね~?」 オイコラ

那岐「全く心外だな!!」 プンスコ

花子「……」

葉子「……」

花子「見るならコイツ一人にしてくんないと」

葉子「そーだそーだ」

那岐「あ、あっれー!? 君達ちょっとひどくない!?」


透華「まあ、数人のグループが一番いいでしょう」

透華「見落としも減るでしょうし」

憧「何か有利な情報得ても、独り占めは避けられるしね」

洋榎「おいおい」

憧「別に誰かがそうするなんて言わないけど、警戒するに越したことはないでしょ」

憧「盲信っていうのは、全員を信じないのと同じくらい駄目なことなんだから」

咲「でも……どういう風にグループ分けを……?」

桃子「ま、ままままさか、好きな人同士で4人組作って~なんて言うんじゃ……!」 アワワ

咲「え、ええ!?」

咲「ど、どどどどうしよう……」

咲「わ、私人見知りだし、グループ作るの苦手だよお……」

透華「ふむ……ではこうしましょう」

透華「大将・副将・中堅・次鋒・先鋒で分かれて、探索するといたしましょう」

透華「どうやら、たまたま各4名になるようですし」

透華「反対がある方はいらっしゃいませんか?」

シーン…

透華「では、食べ終わり次第、そのグループで各々この建物を調査していきましょう!」


憩「すんませ~~ん、おまたせしました~~~~」

華菜「まったくだし」

竜華「相変わらずマイペースですね」

憩「いや~」

憩「のどぐろが美味しゅうて美味しゅうて」

咲「私達が最後みたいですね」

憩「ほな、とりあえず行こか~~」


咲「食堂は廊下の真ん中にあって……」

華菜「正面は、昨日の雀卓のあるホールだったな」

憩「あとであそこに集まって、報告会した後打つんやったね」

竜華「さて、どっちから行くか……」

華菜「華菜ちゃん達は右手側に行ってないから、あっち気になるし」

竜華「ん~……まあ、そんならそっちからで」

咲「最初の扉、これって……」

華菜「ここだけ中が丸見えの透明の扉なんだな」

憩「コインランドリーみたいやねえ~」

竜華「コイン要らんから、普通のランドリーやけどね」

華菜「ほほう、入る前から詳しいんだな」

竜華「まあ、ここで目覚めたからな」



<ランドリー>

竜華「ちなみにここの椅子、割りとフカフカで気持ちええねんで」

華菜「おお、ホントだ」

咲「この椅子で目覚めたんですか?」

竜華「せやで」

憩「おっきい洗濯機やな~」

咲「乾燥機能もついてますね」

華菜「人間くらい入れそうだし」

竜華「実際、あの剣持ったちょっとアレな子がここにぶちこまれとったわ」

華菜「お、おお……」

咲「一歩間違えたら大惨事でしたね……」


<談話室>

華菜「その横が談話室、と」

憩「ティファールの他に、自販機もあんな~」

竜華「お金いれんでも出てくるみたいやな」

華菜「紙コップタイプの自販機見ると、混ぜたくなるし」 ポチー

咲「わっ、躊躇なく……」

華菜「オロナミンコーラだし!」

咲「な、なんか病院の臭いがする……」

憩「ええ臭い~」

竜華「Weekly麻雀Todayも置いてあんのか……」

咲「ランドリーで洗濯してる間に時間を潰せ……ってことなんじゃ」

竜華「かもしれへんな」


華菜「あっちのドアは……っと」 ガラ

憩「廊下に続いとるようやねえ」

竜華「どうやら廊下はコの字型らしいからな」

竜華「そっちのドアはさっきの廊下を曲がった先」

竜華「階段に続く廊下に繋がっとるようやな」

咲「あれ、正面にも扉が……」

華菜「行ってみるし!」 タッタッタ

憩「ウチも~」 タッタッタ

咲「え、ええ!?」

竜華「うーん、行動力高いなあ」 スタスタスタ


<視聴覚室>

華菜「うーん、思ったより狭いし」

咲「ここでDVDとか見られるみたいだけど……」

竜華「肝心のDVDソフトがないなあ」

憩「倉庫探せばあるんちゃうかな~」

竜華「かもしれへんなあ」

華菜「この狭さ……どっかに隠し部屋とかあるんじゃないか?」 トントン

竜華「いや、ないやろ……」

竜華「単純に、食堂から続いてる厨房がこの壁の向こうにあるだけや」

華菜「あー、なるほど」

憩「だから扉は一個しかないんやなあ」

咲「……厨房から直接廊下には出られないんですね」

竜華「……」

竜華「包丁を、安易に持ち出せないようにするため……やろな」

咲「……」

華菜「殺し合いを推奨しているのに?」

竜華「あくまで周囲を騙して、ちゅーとったし、ありえへん話やないやろ」


<廊下>

竜華「それより……」

竜華「問題はコイツやな」

華菜「シャッターが上がって、地下への階段が現れてるし」

咲「そういえば……」

咲「朝、ちょっと迷っちゃった時に、今の階になかった部屋があったような……」

竜華「いやいやいや、なんでコの字の廊下と階段の移動だけで迷子になれるん!?」

憩「ちょっとした病気ちゃうかなあ……」

華菜「ま、とにかく下の階に行ってみるし!」

竜華「せやな」

咲「上の階は、各々の個室があるくらいですもんね」


<地下1F>

華菜「階段降りて……っと」

憩「わわ、なんやろこれ~?」

竜華「ふむ……」

竜華「今までみたいに廊下の左右に部屋が配置されとるんかと思ったけど……」

咲「鉄格子……ですよね、これ」

華菜「なんだろ、これ……」

エトペン「いやーーっほう!」

華菜「う、うわ!」

憩「出おったぁ~~!?」

エトペン「人を頑固な大便みたいに言わないでよね、もう、失礼しちゃうなあ」 プンスコ

エトペン「ここが何なのか、折角教えてあげようと思ったのにさ!」


エトペン「ここはトラッシュルーム」

エトペン「巨大な焼却炉だよ」

華菜「焼却炉……?」

エトペン「もうこの説明5回目だから大分飽きてるんだよねぇ……」

エトペン「まあ手っ取り早く言うと、毎日ゴミ当番を任命するから、当番の人は鍵をあけてここにゴミを捨ててもらうってわけ」

竜華「鍵かけとく意味あるん?」

エトペン「もちろん!」

エトペン「炎はとーっても危ないし……」

エトペン「自由に解放して、死体を燃やされたりしたら困るだろう?」 ウププププ

咲「…………っ」 ゾッ

エトペン「それに、ボクが見たいのは、どうやって頭をつかうか、というところなのです」

エトペン「証拠隠滅が簡単に出来過ぎても困るよね」 ウププププ

咲「……」

エトペン「おっと、どうやら他の場所で呼ばれたようだから、ボクはもう行くね!」

エトペン「夢の国のネズミと一緒で、同時に複数の場所には居られないのだ……」 オヨヨヨヨ

エトペン「それじゃあ!」 ドヒューン

咲「行っちゃった……」

華菜「……なーんか胸糞わるいし!」

憩「さっさと次の場所探そか~」

エトペン→モノペンに訂正


<ガチャルーム>

華菜「正面の扉は……」

華菜「なんだここ……」

竜華「巨大なウインドウの中にいろんなものが……」

華菜「そんでもって中央には巨大なガチャ……」

咲「あ、これは無料で回るわけじゃないんだ……」 ガチャン

竜華「っていっても、このコイン穴……」

憩「ちょっと大きうて、500円玉とも違うっぽいなあ~」

咲「うーん……」

ガラッ

咲「っ!」 ビクッ

華菜「誰だし!?」

誓子「あれ、確か……」

巴「大将の人達ですね」

竜華「確か次鋒の……」

花子「どうもー」

美子「……」 ペコリ


誓子「それ、モノモノマシーンって言うんだって」

華菜「モノモノマシーン?」

巴「どうやら巨大なガチャガチャみたいです」

華菜「そりゃ見りゃ分かるし」

花子「さっきモノペン呼び出して聞いてみたんだけどー」

花子「モノペンメダルっつー、オリジナルのメダルを入れて回すんだってさ」

誓子「それがこれ!」 テーレッテレー

咲「……!」

華菜「何で持ってんの……?」

誓子「さっき、どうやってメダルを手に入れるか聞いたの」

巴「どうやらいろんな所に隠されてるみたいで……」

誓子「それと、最初に10枚、自室の引き出しに入ってるんだって!」

咲「そ、そうだったんだ……」

華菜「全然気が付かなかったし……」

巴「まあ、昨日は色々あって皆疲れてたし、そこまで見る余裕が誰にもなくてもしょうがないかな」

誓子「あとなんか、不定期で配ってくれるんだってさ」

花子「最初は1日1枚配布を考えてたけど、忍びこむのが大変だからこうしたんだって」

花子「10枚あげるなんて太っ腹~とか言ってたっけ」


誓子「そして、こうして部屋に戻ってメダルを取ってきたってわけ!」

花子「ま、各施設の精査は他の班がやってるだろーし」

花子「こーいう班がいてもいいっしょ!」

華菜「うわー」

華菜「完全に遊びに夢中の子供の目だこれ」

巴「あはは……」

巴「でも実際、このガチャガチャの中身って、倉庫にはないものばかりらしくて」

華菜「ほへー」

巴「生活必需品とは違って、嗜好品が入っているみたいだから」

巴「本当は、このメダルを賭けて麻雀とかしろってことなんだろうけど……」

巴「それはそれで揉め事になりそうだし、こうしてメダルを消費して中身見るのはありかな……ってね」

ガチャガチャガチャ

誓子「……ちっ、もうダブった!」

華菜「そっちの変な睫毛の人は、多分そんな考えなくて純粋にガチャに夢中だけど」


花子「なになに、何が出――」

うごくこけし「ヴィイイイイイイ」

誓子「」

花子「」

華菜「んー、なんだこれ?」 ← 知らない

咲「さ、さあ……なんですかね……」 ← 知ってる

巴「目をそらしたってことは……知ってるのかしら」 ← 知らない

誓子「ま、まあまあ」 ← 知ってる

花子「そんなどーでもいいことで、言いたくないこと聞き出すことはないって!」 ← 知ってる

竜華「そ、そのとーり!」 ← 知ってる

憩「まあ、なんちゅーか、変なモン入っとるな~ってことやね」 ← 知ってる

美子「…………///」 ← 知ってる

華菜「ふうん……猫じゃらしか何かかな」

誓子「欲しいならあげようか?」

誓子「モノペンメダル3枚で」

華菜「高ッ!」

誓子「ジョーダン」

誓子「タダであげるわ」

誓子「……持ってても困るし」

咲「……」

咲(誰かにプレゼントする、っていうのもありなんだ……)


花子「変わった変わったァ!」

花子「私がとびっきりのアイテム取ってあげるからさ!」

憩「……どうする、移動しよっか~?」

竜華「そうやなあ」

華菜「ちょっと興味あるけど、全員ここにへばりつくわけにもいかないもんなー」

咲「メダル部屋に置いてきてるから、自分達じゃ出来ませんしね」

華菜「んじゃ、また後で」

巴「はい。それじゃあ後ほど麻雀の時に」


<廊下>

華菜「む、この扉、何か開かないし」

竜華「鍵でもかかっとるんかな」

憩「こじ開けてみる~?」

竜華「……」

竜華「いや、やめとこか」

竜華「探索自由言われとるけど……」

竜華「中に何があるか分からん以上、あんまり衝撃与えとうないわ」

華菜「まー確かに」

華菜「火薬庫とかいう洒落にならんものがないとも限らないもんなー」

咲「その向かいは……」

憩「頭の位置に小窓ついとるなあ」

竜華「ちょっと高い位置やけど……中がある程度見えるようになっとるな」

竜華「……っと、どうやらこの部屋には先客がおるようやな」

華菜「んじゃ、この部屋は軽く見るだけにしとくかー」 ガチャ


<武器庫>

華菜「うわっ、何だこの部屋……」

咲「は、刃物がいっぱい……」

誠子「武器庫なんだってさ」

咲「武器庫……?」

華菜「えーっと……」

誠子「亦野誠子。白糸台の2年だよ」

誠子「宮永先輩にはお世話になってたし……妹さんはちょっと気になってたんだ」

咲「は、はあ……」

誠子「まあ、なんか困ったことあったら、相談してよ」

咲「えーっと、ちなみに今、亦野先輩達は何を……」

誠子「ふむ、それなんだけど……」


透華「ふむ、ナイフも20本、ですわね」

恵「こっちも20ですねえ」

誠子「一応、数を管理しておこうって話になってさ」

誠子「さっきからこうして地道に数えてるわけ」

咲「……」

華菜「数えてなくない?」

誠子「あはは……」

誠子「まあ、2者確認したら十分だろうしさ」

桃子「それに、どうやら全部が全員に行き渡るよう、基本20個ずつ用意されてるみたいっすね」

咲「棚いっぱいの凶器、かあ……」

誠子「斧とかナタとか、相当物騒だよねえ」

憩「……ん?」

憩「なあ、ここ……斧がどう見ても足らへんのと違う?」

透華「ああ、それなら先程先鋒の方々が持って行きましたわ」

透華「なんでも、これで壊して脱出出来ないか試すんだとか」

華菜「いい!?」

竜華「大丈夫なん?」

透華「……これだけ大掛かりなことをした犯人が、自分達の用意したもので脱出させるとは思えません」

透華「が、それで犯行することを予測してないとも思えませんもの」

透華「恐らく処罰まではされないかと」

誠子「それに、その大胆さこそが見たかった~とかで、実はあっさりクリア出来ました、なんて可能性も捨てきれないしね」

華菜「なるほど……」


桃子「ちなみに……この階、他の扉も封鎖されてたっすね」

咲「そうなんだ……」

透華「……」

透華「殺し合いのため、と言わんばかりの武器庫の解放」

誠子「トラッシュルームも証拠隠滅向けだし……」

透華「そういうことなのでしょう」

透華「他の部屋の解放条件はわかりませんが……当分、使う機会はないと思われますわ」

誠子「どうやら門松さんや新免さん」

誠子「ああ、えっと、先鋒の、パイナップルみたいな娘と刀の娘ね」

誠子「彼女たちが斧やら使っても、やっぱり開かなかったみたい」

恵「さすがにキープアウトってテープでガチガチの部屋は、やばそうなんで試さなかったみたいですけどね」

竜華「……なるほど」

華菜「んじゃ、とりあえず逆の階段使って1Fに戻るし」


<1F>

華菜「さて、逆側の廊下は……と」

咲「こっちは、曲がり角までほとんど扉がないですね……」

竜華「閉塞感ものすごいな……」

憩「ほんで左に曲がる角の右手にある扉は……と」 ギィ

竜華「お手洗いみたいやな」

華菜「無駄に綺麗で無駄に設備が整ってるし」

憩「……」

憩「掃除とか、せんくて大丈夫なんやろか」

華菜「……まあ、そこまで長居しないし、麻雀の時以外は個室のトイレがあるし、まあ……」


華菜「んで、曲がり角を曲がって左手最初の扉が……」

咲「私の目覚めた資料室、ですね」

竜華「資料室、かあ」

竜華「何の資料なんやろ」

咲「少し見てみましたが……」

咲「主に、麻雀関連の書籍が多かったように思います」

華菜「ふうん」

咲「……」

咲「読んだことのない麻雀小説なんかもあったし、借りて帰ろうかなあ」

華菜「マジで」


<資料室>

竜華「なるほどこりゃすごい」

憩「そんなに広ないけど、これ全部麻雀関係だとしたら、かなりのもんやなぁ~」

咲「……」 イソイソ

華菜「ほんとに借りてるし!」

咲「図書委員みたいな人いないけど……この貸出カードを書けばいいのかな」

竜華「律儀やなあ」

憩「勝手に持ち出せそうやのにね」

華菜「まあ、勝手に持ちだしたらバレそうだけどなー」

華菜「本棚に露骨に隙間ができるし……」

華菜「ん?」


竜華「どうかしたん?」

華菜「……麻雀関係の本の奥……」

華菜「もう1冊、何か本が……」

咲「こ、これって……」

憩「……」

憩「殺人のために使えそうな資料、やなぁ……」

竜華「人体急所マップに武器のハウツー……」

華菜「ああああ、頭痛くなるし!!」

竜華「どえらいもん見つけてもうたなあ……」

華菜「……」

華菜「これを報告しないってのは……」

竜華「……気持ちは分かるけど、多分やめた方がええな」

竜華「ずっと隠し通せるもんとも思えへんし」

憩「そうなった時、最悪ウチらが隠しとったのがバレたら……」

咲「疑われるのは私達……ってことですね」

華菜「……うう」


<倉庫>

華菜「……で、さっきの正面の扉が倉庫、と」

憩「構造上の都合か、横長やねえ」

竜華「カップ麺やペットボトルの水なんかがあるな……」

咲「夜時間はこれでしのげってことでしょうか」

憩「部屋に持ち込んどいた方がええかな~?」

竜華「いやー、どうやろ……」

華菜「部屋には冷蔵庫がないから水はどんどんぬるくなるし……」

華菜「カップ麺も談話室まで降りてこないとお湯がなくて作れないし」

憩「うーん、あんまり意味なさそうやなあ……」

咲「さすがに深夜一人で下まではあんまり降りてきたくないですもんね……」

華菜「実際昨日、超不気味だったし!」

華菜「一応僅かな明かりはついてるけど、それでも薄暗いし正直不気味で……」

竜華「そういや、廊下の方は電気オートなんかな」

咲「スイッチ、ありませんでしたもんね」

華菜「あ、でも倉庫にはそこに電気スイッチあったし」

憩「あ、ほんまや」

竜華「入って来た時明るかったけど……誰か消さんと出ていったんやろなあ」

憩「まあ、電気代とか気にしてられへんし、ええんちゃうかな~?」

華菜「まあ、でも、どのくらい使い過ぎるとブレイカー落ちるとか分からないから、切っておいた方がよくないか?」

咲「……」

咲「そうですね」

咲「それに……普段切っておけば、電気が点いてることで誰か居るってすぐわかりますし」


<廊下>

竜華「ほんであの目立つ扉が、雀卓の置いてあるホールか……」

憩「一周してもうたねぇ~」

華菜「まだちょっと時間あるけど、どーしよ」

竜華「とりあえず戻ってええんちゃう?」

竜華「他に見て回る時間まではないし」

華菜「了解ー」

ガチャ

華菜「他の班の連中は……まだみたいだな」


<ホール>

憩「ほんま、大きいなあ~~」 タッタッタ

竜華「とりあえず、このホール調べて待ってよか」 スタスタスタ

華菜「確かに、雀卓5つあるだけのくせに大きいホールだし」

咲「……ですね」

華菜「……」

華菜「あのさ」

咲「……はい?」

華菜「ひょっとして……人見知りだったりする?」

咲「ふえ!?」

咲「え、ええと……」

咲「そ、そういうわけじゃないですけど……」

咲「確かに、まあ、そこまでコミュニケーションが得意では……」

華菜「んー、そっか」

華菜「いや、何かさっきから、いつも以上に大人しいなーってちょっと心配だったんだ」

咲「うう、すみません……」

華菜「あー、いいって、謝らなくて」

華菜「勝手に心配してただけだしな」

咲「じゃあ、ええっと……ありがとうございます」

華菜「?」

咲「その、直接面識がない人達しかいなかったら、多分ほんとに何も喋れず黙々と調べるだけでしたから……」

咲「その、池田さんがいてくれて、助かりました」

華菜「にゅあああ……」

華菜「す、素直にそう言われるとなんか照れるし……!」


ガチャ

洋榎「おっ、もう戻ったんか」

咲「あ、おかえりなさい」

洋榎「ただいまーっと」

胡桃「それだと何か、咲ちゃんがずっとお留守番してたみたいだよ」

咲「あ、あはは」

ガチャ

透華「あら、結構もう戻ってらしてるみたいですわね」

智葉「中途半端に時間があっても探索は不可と判断したのだろう」

ガチャ

誓子「ありゃ、もうお揃いだ」

咲(続々と皆帰ってきて……)

咲(予定より10分くらい早かったけど、情報好感が始まりました)


透華「どこから発表していきます?」

洋榎「んー、わかりやすく、先鋒から順番でええやろ」

智葉「……そうだな」

那岐「我々は、武器庫から持ちだした道具を使って、脱出を試みた!」

葉子「ま、結果は表情からお察しだけど」

やえ「壁は勿論、あの謎の鍵がかかった赤い扉まで、どれも頑丈に出来ていた」

やえ「やはり無理矢理武力を用いて脱出するのは難しそうだ」

智葉「それと……」

智葉「倉庫の棚、及び談話室のテーブルの破壊を試みた」

花子「はぁ!?」

誠子「え、なんで……?」

智葉「無意味な破壊が許されるのかを確認するためだ」

智葉「……結論から言うと、モノペンが出てきて止められた」

葉子「調査はいいけど、調査と無関係に、無意味に設備を壊すのはやめてくれってさ」

やえ「ただ……処罰については言及されなかったな」

透華「やろうと思えば出来なくはない……といったところですわね」

洋榎「まあ、あんまりやるメリットもなさそうやけどな」


透華「他に何か発見は……」

やえ「いや、私は特になかったな」

葉子「……」

洋榎「ん?」

洋榎「何かあったんか?」

葉子「ああ、いや、別に……」

智葉「下手に誤魔化すと、トラブルの元になるぞ」

葉子「いやいや、でもホントしょーもないし、ゼッテー今回の話し合いに影響しないから!」

胡桃「言うだけ言ってみなよ」

憧「一見無関係そうでも情報があるに越したことはないし……」

憧「些細なことでも情報提供する環境づくりって、大事だしさ」


葉子「……いやさ、なかったんだよ」

葉子「倉庫の生活必需品の中に」

誠子「なかった……って」

胡桃「なにが?」

葉子「…………」

智葉「門松」

葉子「わーってるって!」

葉子「タバコだよ、タバコ!」

胡桃「……」

葉子「あー、ほら、そーいう目で見る!」

憩「健康に悪いし、やめた方がええで~?」

葉子「うっさいなー、そういう話じゃないだろ!」

葉子「とにかく、なかったんだよ、タバコが!」

花子「そりゃないっしょー」

恵「必需品……では、ないですよね……」

葉子「いや吸う人間的には必需品なんだって!」

葉子「……それに、タバコはともかくとして、ライターすら無いってどーなのよ」

葉子「懐中電灯から生理用品、綿棒ティッシュとマツモトキヨシばりに揃えておいてさあ」

葉子「火ぃ点けられるもんは無いって、ちょっとおかしくね?」

洋榎「せやろか……?」

憧「まあでも……殺し合いが目的なら、あってもいいものではあるわよね」

憧「ニコチンは毒物にできるし、炎は殺害手段にもなれば証拠隠滅にも使えるし」


恵「そんな物騒な……」

憧「考えたくなくても、考えなきゃいけないでしょ」

透華「……武器庫の扉には、顔の高さくらいに小窓がありましたわ」

胡桃「あー、あのガラス張りの?」

洋榎「どこぞのオチビさんが上手く覗かれへんやったやつやな」

胡桃「うるさいそこ!!」

胡桃「ジャンプしたら覗けるから!!」

透華「ランドリーも、扉がガラス張りで中が丸見え」

憧「……証拠隠滅や武器の確保は、そう簡単には出来ないってことだろうね」

憧「焼却炉も鉄格子の中だったし、厨房の包丁や火を使うには食堂を通らなきゃならない」

憧「殺し合いは推奨するけど、安易なものは求めてない……」

憧「頭を使え……ってことなのかもね」


巴「ええっと、私達次鋒の発見としては……」

美子「この、モノペンメダルくらいです」

胡桃「なにそれ」

花子「各部屋の引き出し、上から2番目に入ってるんだけど……」

巴「これで地下の巨大なガチャガチャを回せるみたいです」

花子「なんでも100種類あるらしいっすわ」

誓子「あともう1点、発見があったわ」

誓子「あのね……ガチャって、クソよ」

洋榎「めっちゃ目ぇ濁っとる……」

胡桃「なんかこわい……」

誓子「おかしいわ……たった10連でもうダブるなんて……」 ブツブツ

美子「あと、不定期で補充してくれるみたいです」

巴「ガチャの中身は嗜好品や暇つぶしの道具が中心みたいです」

葉子「倉庫にない娯楽はそっちで……か」

透華「麻雀で賭けたければそのコインを……ということかもしれませんわね」


洋榎「っと、ウチラの発表やな」

洋榎「ウチらは、どーせ他の皆が下は探してくれると思っとったから……」

胡桃「2F……個室エリアを調べたよ!」

透華「個室を、ですの?」

洋榎「当たり前やけど、各部屋鍵は違っとるようで、他の部屋の鍵じゃ開かへんかったわ」

洋榎「それと、部屋のレイアウトやけど、どこも同じ造りらしいで」

憧「角部屋の私の部屋も、特に大差なかったわ」

ちゃちゃのん「うん。階段ある方の部屋のちゃちゃのんの部屋も、階段ない側のヒロちゃん達の部屋と大差なかったけえ」

透華「なるほど……」

憧「それと……あの部屋、覗き穴はないみたいね」

咲「えっ」

洋榎「誰かが訪ねて来た場合、ドアを開けんと相手の確認も出来へんっちゅーわけや」

胡桃「インターホンで会話出来るような設備もなかったしね」

智葉「疑心暗鬼を煽るため、だろうな」


洋榎「あと、防音がえらいしっかりしとったわ」

胡桃「洋榎がどれだけ騒いでも、隣の私の部屋には聞こえなかったよ」

憧「廊下にもね」

洋榎「あと、倉庫の中に目覚まし時計があってんけど……」

洋榎「その音も、やっぱり外には漏れへんかったわ」

透華「完全防音、ですのね……」

竜華「中で何が起きとっても、外には分からんっちゅーわけか」

洋榎「あと、そんなやから、ノックしてもあんまり聞こえへんから意味ないわ」

洋榎「部屋から出そう思ったら、インターホン押すしかないな」

胡桃「インターホン自体は結構大きくて、シャワールームでシャワー前回にしていてもバッチリ聞こえる音量だったよ」

洋榎「……」

洋榎「ほんま、あれ連打されたら嫌でも起きるで」

胡桃「多少でも粘ったっぽい新免さんってすごいなーって」

那岐「はっはっは、そう褒めないでくれ」

那岐「武士として当然のことさ」

葉子「多分褒められてないんだけど……?」


洋榎「あと、シャワールームのすりガラス」

洋榎「あれも相当頑丈やったわ」

胡桃「試しに洋榎がドロップキックしてみても、うんともすんとも」

洋榎「物投げてこら割れへんわって思ってからやったから、躊躇もなく全力でドロップキックしてんけどな」

那岐「どうやらガラスは強化ガラスとか防弾ガラスとかなのかもしれないな」

那岐「壁が壊せぬいらだちで、なんとなくランドリーの扉ぶち破ろうと斧を振ったが、弾かれたし」

葉子「お前途中でちょいちょい居なくなってサボってるのかと思ったらそんなことしてたのかよ!!」

那岐「武士の嗜みだ」

葉子「謝れよ! それ武士っつーか辻斬りに近い嗜みだかんな!!」


透華「私達副将は、武器庫を中心に調査致しました」

恵「武器をしこしこ全部数えてましたぜ」 ギッヒ

透華「数えやすくするためか、バトル・ロワイアルでもさせたいのか……」

透華「基本的に、各武器20ずつ用意されていましたわ」

憧「一応確認しとくけど、持ちだされていたのは……」

透華「ありませんわ」

透華「先鋒の方々が使われていた斧についても、全て返却してもらってます」

桃子「一応、どんな武器があったのかメモってあるんで……」

誠子「電子手帳にメモ帳機能あるっぽいから、それに写してもらうといいかも」

透華「ちなみに毒物の類はありませんでしたわ」

透華「それと、銃火器の類も」

洋榎「あくまでバトル・ロワイアルよりは金田一少年の事件簿……ってか」


透華「それと……」

透華「武器庫に、鍵はかかりませんでしたわ」

洋榎「!」

胡桃「そういえば、倉庫とかにも鍵ってかからないんじゃなかったっけ」

巴「でも確か……談話室には鍵がかかったような」

憧「密室殺人をするなら個室化談話室か……ってことかな」

智葉「武器庫に立てこもることは不可能、ということかもな」

竜華「……ほんなら、最後、発表させてもらうで」

咲(私達は、資料室に殺人の手引があったことを中心に、調査報告を行って、そして……)

透華「……なるほど」

透華「調べれば調べるほど……気が滅入りそうになりますわね」

憧「……ここからは脱出が出来ないし、殺しをさせたいんであろう情報がドンドン出てくる」

憧「笑えない冗談ね」


洋榎「冗談みたいやけど……そろそろ麻雀の準備もせーへんとあかん」

透華「ですわよね……」

透華「他になにかある方はいらっしゃいまして?」

巴「あ、調査結果とは違うんだけど……」

透華「はい」

巴「カップ麺とお湯用ののミネラルウォーター、談話室にいくつか移動してます」

巴「あと、ペットボトルのお水は、厨房の冷蔵庫にも」

透華「あら、気がききますのね」

巴「職業病みたいなものですよ」

華菜「それより……麻雀の準備って?」

洋榎「そらお前、対戦カード決めたりや」

洋榎「引退する奴も多いし、ポジションごとに戦う必要もないやろ」

洋榎「せやから……そうやな。あの雀卓を北として……」

洋榎「この中央の卓は中としようか」

洋榎「東南西北中をそれぞれ4枚ずつ用意するから、それぞれ引いて、それぞれの卓で打つとしようや」

胡桃「……こんな場なのに楽しそうだね」

洋榎「まーな」

洋榎「せめて麻雀くらい楽しまな、ほんまに滅入ってしまうやろ」

胡桃「……だね」


咲「……じゃあ、私はこれで」

咲「……」

咲「中」

咲「真ん中の卓かあ……」

ちゃちゃのん「あ、咲ちゃん、じゃったよね」

ちゃちゃのん「おんなじ卓じゃね」

咲「あ、はい、ええと……」

ちゃちゃのん「あ、ちゃちゃのんは、佐々野いちご」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんでええけえ、気軽に呼んじゃって」

咲「あ、はい」

咲(この人……私と同じで、コミュニケーション下手の臭いがする……)


咲「他の二人は……」

洋榎「おっ」

洋榎「ええとこ引いたわ」

洋榎「優勝チームの大将サンの実力、見させてもらうで~」

咲「よ、よろしくお願いします……」

誓子「爽がやられた娘か~~~」

誓子「揺杏はともかく、爽がボロ負けした相手っていうのは、まずいかもなあ~」 ウーン

咲「い、いえ、そんな……」

誓子「あ、でも、ダーツなら結構自信あるかも!」

誓子「そうよ、ダーツで勝負しましょう」

誓子「麻雀部の誇りを賭けて、ダーツ勝負なら負けないから!!」

咲「え、えーと……」

咲(この人何言っているんだろう……)


咲(そして……)

洋榎「うっし、トータルでは勝っとる!」

咲「や、やっぱりお強いですね……さすが部長を追い込んだ人……」

ちゃちゃのん「うう、あんまりいいとこなかったよう……」

誓子「あ、でも、1回はラスじゃなかった!」

洋榎「トータルではボロ負けやで自分」

誓子「でも格上相手にラス回避って、こう、やったってなるじゃない!」

洋榎「よう全国来れたな自分。おもろいわー」

誓子「どっちかっていうと、何か賭けてる時の方がエンジン入って……」

洋榎「ほほう」

洋榎「ほんなら、何か賭けるか? あのモノペンのメダルとか?」

誓子「あ、それ全部使いきっちゃってて……」

洋榎「むー」

洋榎「普通に半荘やるほど残り時間もないし終わってええかと思ってんけど……」

洋榎「差し馬するならもっぺんやってんけどなあ」


洋榎「まあ、ウチが勝つの濃厚やし、ウチが負けたら何か罰ゲームしたるで」

誓子「……それも楽しそうかも」

誓子「でも……」

誓子「どうせなら、これがいい!っていうのが」

洋榎「ほほう」

誓子「私……ううん、私達、後輩のユキをアイドルにするために頑張ってるの」

誓子「だから――」

誓子「すでにアイドル扱いされてるちゃちゃのんに、興味があって」

ちゃちゃのん「ふえ!? ちゃちゃのん!?」

誓子「だから、どういうリアクションがナチュラルボーンアイドルなのか調査したくて」

誓子「まあ、要するに――」

誓子「私が勝ったら、ちゃちゃのんのおっぱいを揉むわ」

ちゃちゃのん「!?」


洋榎「なるほど……」

洋榎「乳を揉まれた際の、天然物アイドルのリアクションを知りたい、か……」

誓子「あざとい演技になったら困るし、でもあの娘、演技以外だと冷めた反応しちゃいそうだしね」

洋榎「なるほど、ようわかった」

洋榎「けど――立場は、対等やないとアカン」

ちゃちゃのん「え、あの、ちゃちゃのんの意思は……」

洋榎「ウチが勝っても、ちゃちゃの乳を揉む」 ドン

洋榎「こいつのおっぱいを揉む権利を賭けて、真剣差し馬勝負や」

誓子「……絶対負けない!」

ちゃちゃのん「ええ!? ちょ、ちゃちゃのんの意思はぁ!?」


洋榎「……」 バチバチ

誓子「……」 バチバチ

咲(めちゃくちゃ火花散ってるよお……)

咲(ど、どうしよう……)

咲「>>136


A:私もおっぱいで(乱入する)
B:あ、あはは……(苦笑いして流されるまま差し馬対決が始まる)
C:さすがにそれはちょっと……(待ったをかける)

1

思ったより人いたからちょっとだけ再開
まあ意味はわかるんで今回はAで
次からはちゃんと読んでね


咲「私もおっぱいで」 ドン

ちゃちゃのん「ふえええええええ!?」

誓子「へえ……」 ニヤリ

洋榎「面白いやんけ……」 ニタァ

洋榎「ほんなら――おっぱい賭けた真剣勝負といこうやないの!」

誓子「見ててね、ユキ」

誓子「絶対おっぱい揉んで帰るから!」

咲「負けません」

咲「嶺の上に花を咲かせて――」

咲「おっぱいという嶺の頂点にそびえる、今にも咲かんばかりの蕾をつかみとって見せますッ」 ゴッ



▼アタゴヒロエの好感度が上がった!
▼ヒモリチカコの好感度が上がった!


そして――

洋榎「くっ……まくられた、か」

誓子「くっそー、いい感じだと思ったんだけどな~」

洋榎「いや、実際めっちゃ気迫あってよかったわ」

咲「……」 モミモミモミモミ

ちゃちゃのん「ちゃ、ちゃちゃのんはちいっとも良くないよお!」

咲「……」 モミモミモミモミ

ちゃちゃのん「ちょ、やめ……ひうっ!」

咲「……」 モミモミモミモミ

ちゃちゃのん「せめて何か言って……ひゃんっ!」

ちゃちゃのん「ちょ、先端はらめえええええええええ!」



▼スキル『おもちもみ師』を入手!



ちゃちゃのん「捨ててそんなスキル!!」


華菜「なーんか楽しそうなことやってるし」

憧「ちょっとくらい馬鹿げてる条件でやった方が面白かったかもね」

桃子「こっち、ガチだけど淡々としてたっすもんね」

巴「……さすがにおっぱいはあれだけどね」 アハハ

憧「まーでも、メダルくらい賭ければよかったかなあ」

那岐「ちなみにこちらの卓では賭けてたぞ」

華菜「おわっ! 全裸ァ!?」

那岐「はっはっは」

那岐「ちょっとしたジョークでモノペンメダル足りない分は脱衣すると言ってみたら見事に身ぐるみ残さず剥がされた」

憧「なーにやってんのよ……」

那岐「いやー、さすがに元2位と3位が居る卓では些か無謀だったか」

憧「よく賭けようと思ったわねそれ」

智葉「一人沈みでも挑み続けた根性は買おう」

憩「ええもん見せてもろたわ~」 ケラケラ

美子「……フらなくてよかった……」

憧「んでもう一人は相手に合わせてフォーム崩してでも振らずに上がれる安河内さんって……」

華菜「マジで何でそれでやろうと思ったんだコイツ」


那岐「勝てぬと分かっても、武士には戦わねばならぬ時がある!」

那岐「武士とは、誇りと高潔な魂で生きているのだッ」 ドヤーン

智葉「ちなみにトんだ分の支払いがまだだぞ」

憩「ほんなら、最後に残った刀置いてってもらおか~」

那岐「そ、それだけはご勘弁を……」 ヘコヘコ

那岐「あ、ほら、肩とかお揉みしますんで……」 ヘコヘコ

憧「誇りどこ行ったのよ」

華菜「あれでまだ武士云々言えるあたり、高潔な魂っていうより図太く鋼鉄な魂だし」


憩「ていうか、やっぱり武人ってサラシ巻くんやな~」

憩「智葉と一緒やね」

智葉「……」

那岐「ほう」

那岐「ほほう!」

那岐「もしや、同じ武士愛好家では……?」

憧「んで、もはやただの愛好家になってるし」

智葉「……確かにサラシは巻いているし、刀も振るう」

智葉「だが生憎、全て仕事であって趣味ではない」

那岐「……」 ショボーン

洋榎「さらしかー、見てみたかったな」

誓子「そういえば……上半身は武士っぽくサラシを巻くとして……」

誓子「下半身は何もないの?」

誓子「今後のユキのコスプレの参考に聞いておきたいんだけど」

那岐「……!」

那岐「くっ……下半身を武士テイストにする、という発想が抜け落ちていたとは……!」

那岐「ま、また明日か明後日かもうちょっと後にまたここに来てください」

那岐「その時は、本当の全身武士ファッションをお見せしますよ!」 ドヤドヤーン

憧「あーこれ構うと面倒くさいタイプだわ……」

憩「ほんじゃ、刀の代わりにペナルティで毛でも脱いでもらっちゃおか~」

那岐「!?」

那岐「や、でも、毛を剃るものが何もないし……ほら、倉庫のやつって、産毛用だから……」

智葉「その腰にぶら下げた刃物は飾りか?」

那岐「い、いやあああ! 許して!」

那岐「このムラマサは巨大な陰謀を斬るものであって、陰毛を斬るものじゃないんですうううう!」

葉子「キャラぶれっぶれじゃねーか!」

洋榎「お、そっちの卓も終わったんか」

葉子「あー負けた負けた」

葉子「負けすぎて何も残らねー試合だったわ」

透華「噂に違わぬミソッカス具合ではありましたわ」

恵「いやー、さすが龍門渕高校って強さでしたね……」

花子「いやー、他の二人よりは強い自信あるし、食らいついたけど、それでもやっぱパネーっすわ」


洋榎「全卓終わったようやな」

透華「それで、どうしますの」

洋榎「んー……」

洋榎「とりあえず自由行動でええんちゃう」

洋榎「ぶっちゃけすぐに脱出出来そうな要素はなかったんやし……」

洋榎「これ以上やっても、精神的に追い込まれてまうやろ」

胡桃「まあ、1回間置くと、見落としてたものに気付いたり~っていうのもあるしね」

洋榎「ちゅーわけで、自由行動といこうや」

洋榎「幸か不幸か、泊まりこむには申し分ない設備があるわけやしな」

咲「……」

咲(自由行動かあ……)

咲(どうしようかな……)



どうする? >>148
A:誰かを部屋に呼んで一緒に過ごす(相手を併記、1名のみ)
B:誰かと一緒に過ごす(相手を併記、3名まで、記載された順番に声をかける)
C:誰かと一緒に探索する(相手と行き先を併記、2名まで、記載された順番に声をかける)
D:一人でどこかに行く(行き先併記)
モノモノマシーンは行き先をガチャルームにすれば引けます

C憧池田ガチャルーム

メダルは10枚あります
再開します


咲「新子さん」

憧「ん?」

咲「あの……一緒に探索しませんか」

憧「んー……」

憧「いいよ」

憧「和の今の親友がどんな娘か、一回ゆっくり話してみたかったしね」

華菜「おーおー、ちゃんとコミュニケーションしてんじゃん」

咲「あ、池田……さん」

華菜「今うっかり呼び捨てしようとしなかった?」

咲「そ、そんなこと……」

咲「あ、い、池田さんも一緒に行きませんか!?」

華菜「お、いいのー?」

華菜「んじゃおじゃましまーす」

憧「咲と池田に私……変な三人組ね」 ハハ

華菜「年上には敬語使え?」


憧「で、どこを探索するの?」

咲「ええと、ガチャルームを見てみようかと」

憧「あそこ?」

華菜「脱出のヒントになりそうなものはなかったと思うけど……」

咲「ただ、ランダムに出てくるのが何なのか気になって……」

憧「まあ、あそこから出てくるもので、使えるものがないとも言えないか……」

憧「それに、やばそーなモンが入ってないか、確かめるに越したことはないもんね」

華菜「それなら、一旦部屋に戻ってメダル持ってこなきゃ」

憧「そーね」

憧「それじゃ、各自回収したらガチャルームに集合ってことで」

華菜「ちょい待ち」

華菜「三人で部屋を回るし」

憧「?」

憧「いやいや、非効率的でしょ」

憧「部屋の外で待ってるのを3部屋分繰り返すの?」

華菜「いや、っていうか……」

華菜「多分、コイツが自力でガチャルームまで辿りつけないから……」

咲「あ、あはは……」

憧「……あー。一回じゃ道覚えられないタイプの人かあ」


<ガチャルーム>

華菜「ちゃんと調べたら、あっさり見つかる場所にあったなあメダル」

憧「昨日は疲れもあって泥のように眠っちゃったからねえ」

咲「……改めて見ると、大きい機械ですね……」

憧「中に何が入っているのか、イマイチよく分かんないわね」

華菜「まあ、回してみりゃ分かるし」 ガチャガチャ

華菜「おっ、油芋」

華菜「確かにお菓子系は倉庫にもなかったからなー」 ガチャガチャ

憧「……」

華菜「んで、レーションと、花束と……」 ガチャガチャ

憧「いやいやいやいやいや!」

憧「アンタ何やってんの!?」

華菜「ん?」

華菜「ああ、悪い悪い」

華菜「連コインしないでかわるべきだったかな」

憧「そーじゃなくて!」

憧「え、もしかして持ちメダル全部ぶっこむ気なわけ!?」


華菜「え?」

華菜「そーだけど?」

憧「信じらんない……この先使うかもしれないってのに……」

華菜「そんな大事なモンなら、多分もっとちゃんと説明があるし」

憧「だとしても……」

憧「メダルとして残しておいたら、賭けとしても物々交換としても使えるじゃ無い」

憧「今この場で使える貨幣って、そのメダルだけなんだから」

華菜「んー」

華菜「でもメダルそのものより、お菓子とかになってる方が、物々交換的には良くない?」

憧「そりゃ当たり引いたらそうだろうけど……」

憧「さっき引いた変なモジャモジャとか、どう見てもゴミじゃない」

華菜「うーん……確かに……」

憧「ったく……」

憧「こっちは自分のメダル消費せずに中に入ってるものが知れて助かったけどさあ……」

華菜「うう……じゃ、じゃあ残った2枚は使わないでおくし」

憧「それがいいんじゃない」

憧「……おかげで大分中身の傾向分かったし、私は1枚だけ……」 ガチャガチャ

憧「香水、かあ……」

憧「当たりかどうか、微妙なラインね」

憧「んじゃ、最後は咲か」

憧「咲は何回ガチャるの?」

咲「ええと……」


ガチャる回数 >>157
0~10の間。それ以外は安価下。

2


咲「2回行きます」

憧「堅実ね」

華菜「むーっ、もっと派手に行こうよ」

咲「とりあえず――回しますね」 ガチャガチャ


出てきたもの
>>161-162のコンマの数字
対応するダンガンロンパのプレゼントをGET
92は最安価で好きなもの入手(脱出スイッチはNG)
93~100は、オリジナルのプレゼント入手(数字が大きいほどいいアイテム)

1


咲「これは――」


▼30:トル猫のドロワーズ  を手に入れた!
▼74:だれかの卒業アルバム を手に入れた!


憧「……なにこれ」

華菜「あっはっは、大外れ引いたなー」

憧「最初に出てきたやつも謎だけど……」

憧「2個目のこれって……」

咲「卒業アルバム……だよね……」

華菜「ちなみにこれって……」

咲「私のじゃないです」

憧「アタシも違う。阿太峯だったし」

華菜「華菜ちゃんのでもないし」

華菜「……そーなると、他の誰かのかな」

憧「中見りゃ早いでしょ」 パラパラ

咲「ふえ!?」

憧「あ、見たら駄目だった?」

憧「一応咲のだし、駄目っていうなら見ないけど」

咲「あ、いや、駄目っていうか……」

咲「私の卒業アルバムですらないし……勝手に見るのもなあって」

憧「いやいや、ガチャから出したんだから、もう咲のでしょ」

華菜「不明なまま置いておく方が不気味だし、んじゃさっさと確認しちゃうし!」


華菜「……ん?」

華菜「ちょ、これって……!」

憧「うわっ、瑞原はやりじゃん」

咲「瑞原……はやり……」

華菜「えっ、まさか……知らなかったり?」

憧「トッププロよ」

憧「ちょっとイカレた格好してるし、多分見た目は知ってると思うわ」

憧「これ、瑞原はやりの中学の頃の卒業アルバムだったんだ……」

華菜「そう考えるとかなりお宝だし」

憧「まあ、確かに」

憧「下着……とかいうよく分からない名称のズボンより、よっぽど有用ね」


憧「まあでも予想はしてたけど……」

憧「あんまり大した成果じゃなかったか」

華菜「ま、しょうがないし」

憧「ま、そこまで期待してたわけじゃないしね」

憧「……んじゃ、残った時間どーする?」

華菜「ティファールがちゃんと機能するか実験がてら、カップ麺を食べるし!」

憧「……」

憧「まあ、お昼ごはん食べてないし、ジャンクなのを食べるっていうのもありか」

憧「咲もそれでいい?」

咲「あ、はい!」


<談話室>

咲(それから、和ちゃんのことを中心に喋りながら、楽しい時をすごした……)

憧「っと、もうこんな時間か」

華菜「はあ……今日も脱出は無理そうだなーこれ」

憧「シャワーも浴びるなら早い内だし、そろそろ解散しよっか

憧「タオルとかパジャマも倉庫にあったみたいだから、持ってくといいわ」

華菜「だなー」

咲「はい」

咲「……」

咲(どうしよう、さっきのガチャで引いたアイテム、プレゼントしようかな……?)


プレゼントをあげますか?
>>169 (無効な内容は安価下)
A:はい(相手とプレゼント名を併記)
B:いいえ
【現在の所持プレゼント】
30:トル猫のドロワーズ
74:だれかの卒業アルバム

a
ドロワをとーか

あ、対象は池田or憧のみです
安価下

間に合わなかったか……
とりあえず透華にドロワで今回は進めます、申し訳ねえ


咲「じゃあ、私はこれで……」

華菜「大丈夫か?」

憧「一人で部屋に戻れる?」

華菜「階段を上がるんだぞ!」

憧「で、ネームプレートいっぱいの所に来たら、絶対に階段は降りないこと!」

華菜「後は自分の部屋のネームプレートを探し倒せばいいから!」

咲「あ、あはは……」

咲「さすがに大丈夫ですよ……」

咲「……」

咲「多分」

咲(二人と少しだけ仲良くなれた気がした……)



▼アタラシアコの好感度が上がった!
▼イケダカナの好感度が上がった!


咲「ええと……」

咲「ネームプレートネームプレート……」

咲「……」

咲「さすがにコの字の廊下で顔を模したネームプレートがあったら私だって迷わないんだから!」

透華「廊下で何を一人ごちてますの?」

咲「わひゃあ!」

咲「びっくりした……」

咲「龍門渕さん……」

透華「あら、その手の……」

透華「貴女もガチャを引かれたんですのね」

咲「あ、じゃあ、龍門渕さんも……」

透華「いいえ、私は引いてませんわ」

透華「今日も見まわりと脱出口の探索で忙しかったですし」

咲「……」

透華「……結果、聞かないんですのね」

咲「あ、えっと……」

透華「お察しの通りですわ」

透華「皆さんを集めて発表するような成果は得られませんでしたわ」


咲「すみません、なんか……」

透華「ああ、構いませんわ」

透華「私が好きでやってることですし」

透華「……元々、気に入らないものには歯向かわねば気がすまぬ性分ですもの」

透華「今回も、絶対こちらに犠牲なんか出さない……」

透華「そして、黒幕を龍門渕グループの総力を上げて叩き潰してさしあげますわ!」

咲「おお、燃えてる……」

透華「ですので」

透華「あんまりふらふら挙動不審にならない方がいいですわよ」

透華「余計な不安を与えてしまうと、事故にも繋がりかねませんから」

咲「あ、はい、ごめんなさい」


咲「あ、そうだ……」

咲「あの、これ……」

透華「これは――」

透華「ドロワーズじゃありませんの!」 パァァ

咲「あ、知ってるんですか?」

透華「当~~然、ですわ!」

透華「古来では、ドロワーズという衣服があり、スカートの下にはこれを着込んでいたのです」

咲「ええ!?」

咲「スカートの下に……着るものだったんですか?」

透華「ええ」

透華「それも、高貴な者が、ですわ!」

咲「そうだったんだ……」

透華「知らないのも無理ありません」

透華「スカートの下に何かを履くなんて、今の時代では考えられませんもの」

咲「はい……」

咲「てっきりズボンだと思って……」

咲「その、日中私達のために汗をかいて動きまわってもらってるから、動きやすいかなーって」

咲「これ履いてる間に洗濯とかも出来そうですし……」


透華「……これ、頂いてしまってもよろしいんですの?」

咲「はい!」

咲「私達のために頑張ってくれてる龍門渕さんに、受け取ってほしいんです!」

透華「……ふふ」

透華「ありがとうございます」

透華「素直に嬉しいし、ちょっと照れくさいですわね///」 ポリポリ

透華「こほん」

透華「龍門渕家の者として、この御礼は必ずいたしますわ!」

透華「高級店でもアミューズメント施設でも、お好きな所にご招待致します!」

透華「……ですから……」

透華「さっさと皆で、ここから出ますわよ」

咲「……はいっ!」

咲(良かった。どうやら喜んでくれたみたい……)



▼リュウモンブチトウカの好感度が上がった!


<自室>

咲「ふう……」

咲「シャワーも浴びたし……もう寝ようかな」

咲「冷蔵庫がないから間食も出来ないし……」

咲「夜におトイレ行きたくなったら困るもんね」

咲「……」

咲「タバコがないのといい……この生活リズムといい……」

咲「一応、雀力上昇した選手を、模範ととなる存在にしようとしてるのかな……」

咲「……」

咲「考えても仕方がないよね……」

咲「今日はモノペン劇場とかいう変な夢見ませんように!!」

咲「おやすみなさい……」



【Day2 END】


【Day3】

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『オマエラ、おはようございます!』

モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

咲「ふあ……」

咲「朝かあ……」

咲「朝食会に行かなくちゃ……」

咲「まだちょっと早いけど、顔洗って歯を磨いて、迷子にならないようにしながらも、念のため早めに……」


ピンポーン

咲「ふえ?」

ピンポーン

ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

咲「は、はーい」 ドタドタ

ガチャ

洋榎「うーす、おっはよーさん」

咲「洋榎先輩!」

胡桃「ごめんねー、起こしちゃった?」

咲「胡桃先輩も……」

洋榎「いやー、聞いたでー」

洋榎「自分、昨日迷子になっとったらしいやん」 ケラケラ

咲「うっ……」

胡桃「折角だし、じゃあ一緒に行こうって話になってさ」

胡桃「呼びに来ちゃった」

胡桃「……迷惑だった?」

咲「そ、そんなことありません!」

咲「すっごく嬉しいです!」

胡桃「そっか、ならよかった!」

咲「あ、歯だけ磨いてくるんで、ちょ、ちょっとだけ待ってもらっていいですか?」

胡桃「うん、全然いいよー」

胡桃「突然押しかけてきたのこっちだし」

洋榎「3分間待っとったる!」

胡桃「もー、歯ブラシはしっかりやらなきゃいけないんだから、急かさないの!」

洋榎「お母ちゃん代わりに、仕上げ見たろか?」

胡桃「ほら邪魔しないの」

洋榎「へーいへい」


咲「おまたせしました!」

洋榎「おーう」

胡桃「そんじゃ、行こっか」

咲「はい!」

洋榎「……」 スタスタスタ

胡桃「……」 ペタペタ

咲「……」 トコトコ

洋榎「……そっち食堂じゃないですよってツッコまへんのね」

咲「ふえ!?」

胡桃「ほんっとに方向音痴なんだね……」

咲「あ、あはは……」

咲「そ、そっちは食堂じゃ……」

洋榎「あっはっは、今ツッコむんかい!」

胡桃「まあ、元々こっちには用事があって来たんだけど」

咲「用事……?」

胡桃「そっ」

洋榎「しゃーないから、もう一人拾ったろ思ってな」


咲「ここって……」

咲「ええと……ささのん?さん?のお部屋ですよね」

洋榎「あのアホ、昨日探索しとったとき、とんでもなく暗い顔しとったからな」

胡桃「怯えてるのもあるけど、ちょっと人見知りもあるみたい」

胡桃「アイドルとして、ちょっと学校でも浮いてたんだって」

胡桃「顔見知りの洋榎が、あの性格でしょ」

胡桃「捨てられた子犬みたいに、洋榎にくっつくようになったんだ」 クスクス

洋榎「ほーら起きんかーい」 ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

胡桃「もう、やめなよ無駄な16連射」

洋榎「冒険島でも探検出来るレベルの華麗な連射力やろ」

胡桃「うるさいし迷惑だと思うけど」

洋榎「アホ」

洋榎「こーすることで、不審者じゃないっちゅーことをアピールしとんねん」

胡桃「まあ不審者ではないけど、それはそれとして出来れば出たくないような相手とはなるよね」

咲「あ、あはは……」


ちゃちゃのん「おはよう~」

咲「おはようございます」

胡桃「おっはよー。相変わらずいい匂いだね」

洋榎「脇から樹液出しとるんちゃう」

ちゃちゃのん「そ、そんなことないよぉ……!」

ちゃちゃのん「えへへ、ガチャガチャでいい匂いの香水引き当てたんじゃよー」 ニヘラ

胡桃「へえ~」

胡桃「やっぱりアイドルやってるだけあって、オシャレだね~」

洋榎「アイドルっちゅーわりには……乳にこう、ちょっとインパクトが……」

ちゃちゃのん「ちょっ、どこ見ちょるの///!!」

洋榎「実際揉んだ感じどうやってん」

咲「どうしても和ちゃんのより固いし揉み応えはありませんでしたけど……」

咲「ただ肌が綺麗で、もちもちとしていましたね」

洋榎「ふーむ、腐っても雑誌で表紙飾るだけはあるか」

胡桃「もー、揉んだりするなら私も誘ってよねー」

ちゃちゃのん「そ、そこは止めに入ってよお!」

胡桃「あはは、冗談冗談」


<食堂>

咲(ちょっと早めだったのもあって、食堂は相変わらずまばらにしか集まってなくて……)

咲(私と胡桃先輩、それとささのん先輩配膳とか簡単な調理を手伝いました)

咲(その間、洋榎先輩はコーヒーを飲んで座ってるだけで、胡桃先輩が突っかかってたっけ……)

咲(そのせいで、ほとんど私とささのん先輩がお手伝いすることになってたけど)

咲(ささのん先輩は、洋榎先輩たちのやり取りを見てるだけでどこか楽しそうにしてた)

巴「よし、こんなもんかな」

巴「お手伝いありがとうね」

咲「いえ」

咲「むしろ美味しいご飯をありがとうございます」

巴「今日は安河内さんが協力してくれたから、ちゃんと肉料理も入ってるし♪」

美子「……」 テレッ

ちゃちゃのん「ほんと、いい匂いじゃよ~~」

透華「朝食会の開始が楽しみですわっ!」

洋榎「誰も遅れて来なきゃええねんけどな」


咲(その後、朝シャンしてて今日は料理を作らなかった亦野先輩を皮切りに……)

咲(続々と人が集まって来ました)

咲(当然のようにちょっと遅れる人も居たけど……)

咲(さすがに今日は、10分遅れくらいで全員が揃って……)

花子「いやー、マジ、焦ったっすわー」

花子「起きたら8時ちょい前でやんの」

葉子「ほんっと図太いわ」

花子「いや絶対怒られると思ったからさあ、絶対寝坊してる馬鹿剣士を起こして来たわけじゃん?」

花子「トータルでは無罪放免だって」

恵「先回りして罰受けた感ありますねえ」 ギッヒ

那岐「人が寝坊する前提で話すのやめないか君達」

花子「実際私が行かなきゃ起きてなかったじゃん」

咲(主に雑談が飛び交う、和やかな朝食会)

咲(でもそれは、脱出への糸口が何も見つかってないことも意味していた……)


洋榎「……」

洋榎「ま、そんな暗い顔すんな」

洋榎「ぶっちゃけまだ脱出の方法が掴めとらんのは相当痛いけど……」

洋榎「幸か不幸か、籠城する環境は整っとる」

洋榎「精神を摩耗して争うのが一番避けなアカンからな」

洋榎「こうして進捗報告の無い和な朝食会も必要やろ」

咲「……ですね」

ちゃちゃのん「……」

胡桃「どうかしたの?」

ちゃちゃのん「ああ、えっと……」

ちゃちゃのん「辻垣内さんも、ちゃちゃのんと一緒で、ちょっとコミュニケーション苦手なんかのう、と……」

胡桃「……辻垣内さんか……」

洋榎「確かに、あんま心開いとらんように見えるな」


洋榎「おーい、元3位」

洋榎「どうや、ちょっとこっちで一緒に食わへんかー?」

胡桃「うわ、速攻声かける」

ちゃちゃのん「凄いの、ヒロちゃん……」

洋榎「何もせんと考えとってもしゃーないからな」

洋榎「何かを考えるのは相手の出方が分かって、考える余地が出てからや」

智葉「……」

洋榎「おーい、聞こえとらん?」

洋榎「元3位の辻垣内智葉さーん」

洋榎「どや、折角やし現役1位の宮永咲とかおるテーブルで食事でも……」

智葉「……悪いが、もう食べ終えた」

智葉「調べたいこともあるから、これで失礼する」 スタスタスタ

洋榎「……行ってもーた」

ちゃちゃのん「心、開いてくれちょらんのう」

洋榎「あのナリで引っ込み思案かぁ?」

胡桃「いや、元3位って連呼したのがいけないんじゃないの?」

咲「あはは……」


ちゃちゃのん「でも……実際今からだとちょっと仲良うし辛いのかもしれんのう」

胡桃「そう?」

ちゃちゃのん「うん……」

ちゃちゃのん「こんな状況っちゅーのもあるけど、結構もう、グループっちゅーか、派閥みたいなもん出来ちょるやん」

洋榎「そうかあ?」

胡桃「派閥っていうほど、露骨じゃないと思うけど」

洋榎「芸能界に居るせいで、人間を味方と敵に区別する癖が付いとるんやろなあ可哀想に」

ちゃちゃのん「そ、そうじゃないよお……!」

ちゃちゃのん「……確かに、芸能界におるせいで、派閥とか意識してもーてるっちゅーのもあるじゃろうけど……」

ちゃちゃのん「勿論皆仲いいし、派閥とかで争いがあるわけじゃないけど……」

ちゃちゃのん「こうしてご飯の時なんかは、昨日も今日も同じような顔ぶれで固まっちょる」

咲「昨日の昼食や夕食なんかも、結構固まって食べてる人達いましたね」

咲(私もクラスで休み時間本呼んだり寝たふりしたりが多かったから、なんか分かるかも)

咲(私には京ちゃんがいたし、ささのん先輩には洋榎先輩がいたけど……)

ちゃちゃのん「そうなったとこには、後から入るの難しいかなあって」

洋榎「ふーん……そんなもんか」

洋榎「ほんなら、明日の朝とか誘ってみるか」

胡桃「洋榎デリカシーないし、透華にお願いした方がいいんじゃない?」

洋榎「なんやとコラ~!」

胡桃「むーっ、ほっぺたつままないで!」

洋榎「……ぷにっぷにやな」 ムニムニ

ちゃちゃのん「……」 ソワソワ

洋榎「何や触りたいんか?」

ちゃちゃのん「ふえ!?」

洋榎「ええで、触り倒し」

胡桃「私のほっぺだから!!」

胡桃「何勝手に許可出してるの!!!」


咲(グループ、かあ……)

咲(まあ、派閥っていうほど、分断されてるわけじゃないけど……)

咲(今の所、グループとしては……) チラリ

憧「換気はされてるわけだしさ、そっから出ること出来ないかな」

透華「なるほど……」

やえ「換気扇が動いていて通れない、という可能性は?」

華菜「ブレーカーごと切るとか」

桃子「確か懐中電灯は倉庫にあったっすね」

咲(龍門渕さんのグループ)

咲(基本は龍門渕さん、池田さん、東横さんの長野メンバー)

咲(それと、龍門渕さんのカリスマ性に惹かれた小走先輩が入ってる)

咲(新子さんは特定の相手とつるまずに食事も1人だったりするみたいだけど……)

咲(昨日の交流もあってか、意見を交わせるこのグループと朝食は共にするみたい)


咲(それと、今いるグループは……)

ちゃちゃのん「……何かあんまり色々言われるから、おっぱいあった方がええんか気になってきたわ」

胡桃「大丈夫、ちゃちゃちゃんは十分可愛いし、女の子の魅力はおっぱいじゃないよ!」

洋榎「プロ雀士なら見た目より実力やしな」

洋榎「ウチにボコボコにされる程度の実力やけど」

ちゃちゃのん「うぐっ……」

胡桃「ひーろーえー!」

洋榎「ま、あれや。ウチらに言うてもしゃーないで、その悩みは」

洋榎「そういうのは……牛乳に相談や♪」

胡桃「なっつかしい!!」

咲「あ、あはは……」

咲(洋榎先輩が完全に中心人物だよね……)

咲(洋榎先輩がいろんな人と積極的に交流してて、胡桃先輩がそれにくっついてるイメージかな)

咲(それで……) チラッ

竜華「これ、ほんま美味しい!」

美子「よかったら、今度作り方ば教えましょか」

憩「このおひたしもええなあ~」

巴「あ、それ私の自信作なんですよ」

誠子「それで、九州の釣り場なんですけど――」

咲(あの五人)

咲(どちらかと言うと『真面目』な人達だし、あんまり派閥感はないかも)

咲(強いて言うなら同じ大阪の清水谷先輩と荒川先輩はよく一緒に行動していて……)

咲(九州大会でよく顔を合わせるからか、狩宿先輩と安河内先輩はよく一緒に行動しているかな)

咲(清水谷先輩は洋榎先輩ともよく絡んでいる気がするし、やっぱり派閥ってほど派閥感はないかも)

咲(亦野先輩に関しては、海の釣り情報の雑談のために九州の人達に絡んでるイメージだから、特定のグループって感じはないかも)


咲(それと……)

花子「出来杉君」

葉子「ぶんぶん」

恵「6人」

那岐「ぶんぶん」

恵「ドラえもん」

葉子「ぶんぶん」

誓子「え!? ドラ……7人……いや、違……えーっとえーっと」

花子「はいアウト~!」

葉子「唐揚げ頂きまぁ~す!」

恵「弱いっすねえ……」

誓子「恵ちゃんが変なパスばっかよこすから!」

葉子「いや、今のは簡単っしょ……」

花子「1体なり1匹なり1機なり……」

恵「1話、とかもありましたし……」

誓子「もう1回! 今度は色取り団にしましょう!」

葉子「まーだやるんすか」

花子「負ける気しねーからいーっすけど」

恵「この調子だとすってんてんになりますよ……?」

那岐「はっはっは」

那岐「誓子がいると、負けないから本当に楽しいな!!」

咲「……」

咲(その、あんまり真面目系ではない人達……)

咲(モノペンに、ミソッカスって言われてた人が多いグループ)

咲(あんまり深く考えず接することが出来るメンバーで集まってるって感じかな……)

咲(ただ、新免先輩だけは、辻垣内先輩を真似して一匹狼になりたいのか、敢えて距離を取ろうとする素振りをたまに見せてるかな)

咲(あとは……あのグループの中でも、脱出への渇望度では差があるのか、自由時間はあんまり一緒に行動しているとこ見かけないかも)


咲「ふう、ごちそうさま」

咲「……」

咲(昨日麻雀はしたし……)

咲(今日は麻雀をしてもしなくても大丈夫かな)

咲(探索をしてもいいし……)

咲(洋榎先輩にも言われたけど、万が一が起きにくいように、誰かと交流するのもいいかも)


どうする? >>198
A:誰かを部屋に呼んで一緒に過ごす(相手を併記、1名のみ)
B:誰かと一緒に過ごす(相手を併記、3名まで、記載された順番に声をかける)
C:誰かと一緒に探索する(相手と行き先を併記、2名まで、記載された順番に声をかける)
D:一人でどこかに行く(行き先併記)
E:一人で何かをする(行動併記)

B透華、誓子、憧


咲「龍門渕さん」

透華「あら、どうかしまして?」

咲「その……ちょっと、一緒にすごしませんか?」

透華「……?」

透華「何か、悩み事でも?」 コソ

咲「あ、いや、そうじゃなくて……」

咲「ちょっと、根詰めすぎてそうだから……」

透華「……」

透華「なるほど」

透華「正直、まだまだ油断しているような状況ではないのですが……」

透華「貴女に心配かけているようでは、恐らく駄目でしょうね」

透華「もっとたくさんの人に心配され、見落としやミスをする前に、少し休養するとしますわ」


誓子「あれ、なんの話してるの?」

咲「あ、えーっと」

透華「いえ、少々休養として、のんびりしようと思いまして」

咲「そうは言っても、のんびりするような場所って、部屋かここか談話室くらいなんですけど」 アハハ

透華「よければ一緒にきまして?」

透華「たまにはゆっくり親睦を深めることも必要でしょうし」

誓子「んー……それじゃあお言葉に甘えて」

誓子「身ぐるみ全部はがされて、気分的にムカムカしてるから花子ちゃん達と遊ぶテンションじゃないし」

咲(あのあと更に負け倒したんだ……)


咲「あ、新子さん」

憧「?」

咲「よかったら、新子さんも談話室でおしゃべりしませんか?」

憧「談話室で雑談、ね……」

咲(新子さんも、ちょっとどこか距離を感じるし……)

憧「……うん、そうだね」

憧「確かに、いろんな人と喋っておくのは大事になりそうだしね」

咲「やった!」

透華「それじゃあ、私達は談話室に行きますけど……」

巴「はいはーい」

美子「片付けはこっちでやっとくばい、心配いらんと」

透華「お片づけは当番制にした方がいいかもしれませんわね」

咲「あ、お皿洗いとかあるんだ……」

巴「ううん、ええっと、厨房にあるカゴに突っ込んでおくと……」

美子「夜時間に回収されとるんか、なくなって新しいのが補充されとると」

憧「あくまで麻雀……に集中しろってことかな」

咲「……」

咲(今、言いかけてやめた言葉……)

咲(麻雀と――何に、集中しろってことだって、解釈したんだろう……?)


<談話室>

誓子「あ、お茶入れよっか」

透華「ありがとうございます」

憧「やっぱこの談話室、狭いわよね」

誓子「4人だから普通に感じるけど、20人いると結構狭いよね」

咲「雀卓があるだけのホールの方が大きいくらいですよね」

透華「そっちをメインで使え――ってことなのでしょう」

誓子「はい、ミルクティー」

誓子「結構自信あるのよね」

咲「わっ、美味しい……」

憧「それで……」

憧「何の話するの?」

咲「ふえ?」

透華「まあ、そうですわね」

透華「折角ですし、話題はこの集まりの主催に決めてもらうのが一番でしょう」

咲「え、ええと……」


どんな話をする? >>206

出たら何したいか?


咲「ここから出たら……何がしたいですか?」

透華「なるほど」

透華「脱出へのモチベーションを保つにはいい話題ですわね」

誓子「私は……普段通りの日常が送りたいかなあ」

誓子「もう引退したのに部室に顔出して」

誓子「もう、また来たんすかー、なぁんて言われて」

誓子「ケラケラ笑いながら、部の皆と、なーんてことない話で笑って」

誓子「あと、後輩をアイドルにする~っていう途方も無く壮大な計画も続きをしたいし」

誓子「やっぱり、日常に、戻りたいっていうのが一番かな」

誓子「爽や成香に会えるなら――他はなにもいらないかも」

咲「桧森先輩……」

誓子「あー、でも、たまにはここで知り合った皆にも会いたいかな」

誓子「変わった娘とか、麻雀上手い子ばっかりだったし、今後のアイドル育成計画の参考にしたいしね!」


憧「……その気持は、アタシもよく分かるな」

憧「アタシも、ここから出たら、しずに会いたい」

咲「新子さん……」

憧「こんなおかしな犯罪に巻き込まれた恐怖とかを打ち消すように、強く抱きしめたい」

憧「またいつこんなことが起こるか分からないから、ぎゅっと、抱きしめたい」

憧「……別れなんていつ来るかわからないし、その時がいつ来ても後悔がないように、過ごしたい」

憧「なーんて、思ったりね」

咲「……本当に、大切なんですね」

憧「……うん」

憧「ここに閉じ込められてから、特にそう思う」

憧「ああ、アタシにとって――しずは、欠かせない存在だったんだなって」


憧「あーもう、恥ずかしい!」

憧「はい次!」

透華「ああ、私ですね」

透華「……そうですね……」

透華「絶対にやりたいこととしては、黒幕を龍門渕グループの総力を上げて叩き潰すことですわ」

透華「……勿論、衣や皆と会う、というのもそうですけど……」

透華「それに関しては、したかろうとしたくなかろうと、実現すると信じてますから」

透華「一番したいことは、黒幕を叩き潰すことですわっ!」

透華「……」

透華「勿論、家族の皆にだって、会いたいですけど」


透華「それで――貴女はどうなんですの?」

咲「ふえ?」

憧「人に聞いておいて、自分だけ話さないとか無しに決まってんでしょー」

誓子「白状しないと、こしょこしょするからね」

咲「え、ええと……」

咲(うう、聞き返されるなんて想定してなかったよお……)

咲「私が出たらしたいことは――」

咲「>>211

みんなと仲良くなりたい!


咲「みんなと仲良くなりたい!」

透華「……え?」

咲「正直……怖いし、嫌な思い出ばっかりだけど……」

咲「ここでの出会いも、大切にしたいっていうか、なんっていうか……」

咲「こんなことがなかったら、多分、桧森先輩とも、新子さんとも、こんなじっくりお話出来なかったと思うし……」

咲「だから……」

咲「ここから出たら、嫌なことだけじゃなかったんだよって言うためにも……」

咲「外に出てからも、みなさんと仲良くしたいな……って」

憧「……そっか」

誓子「うん、私もそれに賛成!」

誓子「そりゃ忘れたいって人だっているかもしれないけど……」

誓子「忘れるなんてぶっちゃけ無理だし!」

透華「それなら――良かったことも、ある方がいいに決まってますわよね」 フフ

咲(素直に言ってよかった……)

咲(三人と、仲良くなれたような気がする……)



▼リュウモンブチトウカの好感度が上がった!
▼ヒモリチカコの好感度が上がった!
▼アタラシアコの好感度が上がった!


咲(いい感じで場が和んできたな……)

咲(誰かにプレゼントを渡すなら今だろうけど……)

咲(どうしよう?)


プレゼントをあげますか?
>>214 (無効な内容は安価下)
A:はい(相手とプレゼント名を併記)
B:いいえ

※あげられるのはこの場に居る透華、誓子、憧にのみ

【現在の所持プレゼント】
74:だれかの卒業アルバム

B


咲(まだいいかな……)

キーン、コーン……カーン、コーン

憧「このチャイム……」

誓子「あっ、見て!」

誓子「あのテレビ……」

咲「あれは……モノペン!?」

モノペン『うぷぷぷぷぷぷ』

モノペン『どうやら、共同生活を満喫してもらっているようですね!』

モノペン『イチャコラしてるところ悪いんだけど……』

モノペン『ちょっくら、雀卓のあるホールにお集まりください』

モノペン『あんまり集まりが悪いと先生泣いちゃうゾ』

モノペン『走らなくてもいいけど、早く来てね』

モノペン『それじゃ!』

ザー・・・

咲「……ッ」

誓子「うーわ、行きたくない……」

憧「行きたい人なんていないって」

透華「ですが……」

咲「行かないわけにも、いきませんよね……」

誓子「……」


<ホール>

咲「……」

透華「まだ全員は……揃っていないようですわね」

誓子「何が始まるんだろ……」

花子「やーな予感しかしねー」

ガラッ

竜華「……まだモノペンは出て来とらんみたいやな」

憩「やねえ」

咲(そして続々と人が集まってきて……)

咲(ようやく20人全員が集まった時、ソレは始まった――)


モノペン「いやっほーーーーい!」 ピョイーン

葉子「で、出やがったな……!」

葉子「おら、ぶった斬ったれ自称武士!」

那岐「え、ヤだよ! 死ぬでしょそれ!」

モノペン「もう、騒がしいなあ……」

モノペン「今から、とーっても大事なお話をするから、ちょっと静かにね」

咲「……っ」

モノペン「というのもねえ……」

モノペン「ボクは悲しいし、怒ってるんだよ!!」 ガオーッ

モノペン「なぁに、君達は!」

モノペン「どれだけゆとり世代なのかなっ!」

モノペン「ゆとり世代らしからぬ我慢強さで殺しをしないと思いきや……」

モノペン「早くも皆麻雀を全然打たなくなってるじゃないか……」 ヨヨヨヨヨ

花子「いちおー、私らは打ってたけど?」 アノー

モノペン「途中で飽きて、全赤なんていうお遊びを始めたでしょ!」

花子「いやー、あはは、それは……」

葉子「さすがにそこまで私は麻雀馬鹿じゃねーっつーか……」

恵「あれはあれで楽しかったですもんねえ」

那岐「ドラゴンロードを疑似体験出来たな」

モノペン「完全に遊びだよね」


モノペン「とにかくボクは怒ってるんだよ!!」

モノペン「なんだよ、その緊張感の無さは」

モノペン「ハングリーさが足りないんだよね」

モノペン「こんなんじゃあ、いくら日数をかけたって、意味なんてないじゃないか……」 オヨヨヨヨ

モノペン「練習っていうのは、ちゃんと密度があって初めて意味を持つんだよ!」 プンスコ

モノペン「そこで、ボクは考えました」

モノペン「閉鎖空間も人も武器も揃っているのに、人が死なない理由」

モノペン「そして、そんな環境にいるのに、全然必死にならない理由」

モノペン「分かっちゃったんだ、足りないものが」

モノペン「モチベーション――――」

モノペン「つまり、動機が足りないんだ!」


モノペン「そこで、皆に共通して危機感を持ってもらる、スペシャルな動機を用意しました!」 イヤッホーウ

ちゃちゃのん「す、スペシャルな……」

やえ「動機……?」

華菜「って、一体……」

モノペン「バトル・ロワイアルを始め、大体のものの期限は、3日と相場が決まっています」

葉子「……そうかあ?」

モノペン「ですので、今日から3日以内に誰も死ななかった場合――」

モノペン「君達を落第生とみなし、ボクらはこの施設を放棄します」

竜華「放棄……って……」

恵「帰してくれる……ってことじゃ……ないですよね」

モノペン「当然だよ」

モノペン「君達をココに残して、食料の供給も、換気扇もストップ」

モノペン「しぶとく生きられても面倒だから、換気扇を通じて、外の空気の代わりに、毒ガスを送りこむことにします」

誓子「どっ……」

花子「毒ガス……!?」

モノペン「はい」

モノペン「安心してください」

モノペン「絶~~~対に助からないような毒なので、万が一にも自分だけ生きてみんなの死を引きずる、なんてことはありません」

モノペン「ただひとつの例外もなく、みんな仲良くお手々を繋いで三途の川を渡れます」

モノペン「仲間ハズレは悲しいもんね……」

モノペン「ほーんと、ボクって人がいい……いや、クマがいいよね!」 ウププププププ


誓子「ちょ、ふざけないでよ!」

モノペン「ふざけてないですよ?」

モノペン「ボクはいつだって大真面目」

モノペン「不真面目なのは、麻雀もせず人も殺さないオマエラの方だろう?」

透華「このっ……!」

モノペン「うぷぷぷぷぷぷ」

モノペン「ボクは優しいから、自殺者が出た場合でも、毒ガス攻撃はやめてあげるよ」

モノペン「どーしても殺したくないなら……」

モノペン「必死に麻雀でもして、最下位に死んでもらえばいいんじゃないかな」

モノペン「もっとも――」

モノペン「ちゃんと最下位が自殺するなら、だけどね」

モノペン「うぷぷぷぷぷぷ」

咲(それだけ言い残して――いつの間にか、モノペンは消えていた)

咲(いつの間にか、なんて言い方になるのは――モノペンなんて、途中から見ていなかったから)

咲(誰もが押し黙り、そして――)

咲(先程まで仲良くしていたはずの仲間達を、警戒と敵意のこもった目で見回していた……)


咲(多分、時間にすれば、数分のことだとは思う)

咲(けど……)

咲(それが永遠にも感じるくらいの長い間、ホールは静寂に支配されて……)

咲(そして心は、猜疑心に支配されていた)

誓子「……っ」 タラリ

葉子「……ッ」 ギロリ

胡桃「……」 ブルブル

ちゃちゃのん「ひいっ……」 ガタガタ

竜華「……くっ」 ギリッ

咲「……」

咲(疑いたくなんてない)

咲(でも――)

咲(皆が人を殺さないなんていうのは、私の幻想で)

咲(このままだとモノペンが全員を殺すというのだけは、抗いようのない事実だったから) 

咲「……」 ブルッ


智葉「いつまでそうして睨み合っているつもりだ」

咲(そうして膠着していた場を動かしたのは、意外にも――)

智葉「そうして疑い合った所で何も変わらないし、何も分からんままだ」

葉子「ん、んなこと言ったって……!」

智葉「アイツの言葉を思い出せ」

智葉「3日は猶予があるんだろ」

誓子「み、3日しかないのよ!?」

智葉「なら、尚更答えの出ないニラメッコに費やす時間などないだろ」

透華「た、確かに……そうですわね……」

透華「大丈夫……絶対に、誰も死なせやしませんわっ!」

透華「この3日で、必ず……」

透華「必ず、全員で脱出する術を探しだしてみせますわっ!!」


葉子「クソッ、クソッ!!」

花子「ね、ねえ、葉子確か今日も午前は脱出口探してたんだよね!?」

葉子「便所の換気扇ぶっ壊して出られねーか試してたんだよ!」

葉子「でも全然壊れやしねえ!」

花子「今度は私らも手伝うから、もっかいやってみよ!」

葉子「っしゃ」

葉子「ほら、行くぞへっぽこ剣士!」

葉子「アンタ、力だけはあるんだろ!?」

那岐「ま、待って……こ、腰が抜け……」

恵「あ、じゃ、じゃあ、斧とか持ってきます!」

誓子「あ、私も!!」

透華「ちょ、お待ちなさい!」

透華「凶器になり得る武器の無断持ち出しは――」

咲(どうすればいいのか――)

咲(そんな答えのない疑問を頭の中で繰り返してる間に事態はドンドン転がっていて)

咲(気がつけば、ホールには人がいなくなっていた――)


咲「ど、どうしよう……」 ガクガクガク

咲「怖いよ……」 ガクガクガク

咲(だ、駄目……何も考えられない……)

咲(へ、部屋に戻る……?)

咲(そ、それか誰かに何か相談を……)

咲(……)

咲(こ、殺し合いになるかもしれないのに……?)

咲「……はっ!」

咲(だ、駄目、こんな考え、モノペンの思う壺……!)

咲(で、でも……)



どうする? >>227
A:自室にこもる
B:誰かに相談する(相手併記、1名のみ)
C:とにかく行動に出る(行動内容併記、複数人への相談は不可)

B洋ネキ


咲(洋榎先輩……)

咲(洋榎先輩に相談しよう……)

咲(龍門渕さんや新子さんは、出た後のことを話したせいで、ちょっと相談しづらいし……)

咲「洋榎先輩は……」

咲「破壊組にはついていっていなかったし……」

咲「顔面蒼白で資料室に向かった狩宿先輩達とも一緒じゃないっみたいだったから……」

咲「……」

咲「部屋に、いるかな……」


咲「……」

咲「よかった、こっちの階段で合ってた……」

咲「……」 ピンポーン

咲「……」

咲「……」

咲「いない、のかな……」

回想洋榎『こーすることで、不審者じゃないっちゅーことをアピールしとんねん』

咲「……」

咲「確か……」 ピンポーン

咲「……」 ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

洋榎「っと、なーに人の部屋のインターホンでクラフトワークのサーレーごっこしとんねん」

咲「わっ……」

咲「びっくりした……」

咲「部屋にいたんじゃなかったんですね……」

洋榎「……まあな」


咲「……あれ」

咲「でも……」

咲「この部屋だったら、さっき私が使った方の階段が近いような……」

洋榎「……」

洋榎「なんや、ちょっとは方向感覚マシになっとるんちゃう?」 ニカ

洋榎「……ま、向こうから来たのは、ちょっくら野暮用があったからや」

咲「野暮用……」

洋榎「……胡桃もちゃちゃも、えらい怯えとったからな」

洋榎「見ていて辛いし、励ましたろ思っとってんけど……」

洋榎「あかんなあ、フられてもーたわ」 ハハ

咲「洋榎先輩……」

洋榎「って、後輩にこんなだっさいとこ見られる方がアカンっちゅーねんな!」

洋榎「……で、どないしたん」


咲「その……」

咲「相談、というか……」

咲「なんというか……」

洋榎「……」

洋榎「立ち話もなんやし……部屋あがってくか?」

咲「えっ」

洋榎「それとも……」

洋榎「やっぱ、あの話のあとやと、部屋は入りづらいか?」

洋榎「せやったら、談話室にでも――」

ギュッ

咲(気がついたら……無意識に、洋榎先輩の服の裾を掴んでいた……)

咲(洋榎先輩が、あまりに“らしくない”寂しい笑みばかりを浮かべるから)

咲「そんなこと、ありません」

咲「洋榎先輩の……部屋の中でいいです」

咲「ううん……」

咲「部屋の中が、いいです」


洋榎「……」 バタン

洋榎「ま、くつろいでくれ」

洋榎「ちゅーても、椅子も一個しかないし、冷蔵庫もないから冷えた飲み物一つないねんけどな」

洋榎「……ぬるくてええなら水持ちこんどるけど……」

咲「あ、おかまいなく……」

洋榎「……」

咲(洋榎先輩も……)

咲(少し、疲れの色が滲んでる……)

洋榎「そんで、話っちゅーのは?」

咲「……ええっと……」

咲「>>234

……洋榎先輩の話を聞かせて下さい!何でもいいですから!

おつおつ。そろそろ死人も出そうですね……
ところで好感度って上げたらいいことあるの?

完全に寝てました申し訳ねえ。
ちょっとキリいいところまでは進めておきます。

>>236-237
特にいいことがあるわけじゃないです。
めっちゃ仲良くなったら個別ルート作ってもいいけど、死ぬからねコイツら。
仲良くなるとストーリーでよく絡んだり台詞増えたりとかそんなのです。
あと、個別ルートばりに仲良くなった娘が死ぬと舞園ばりに咲が引きずってくれます。
それだけ。すまんな。


咲「……洋榎先輩の話を聞かせて下さい!」

咲「何でもいいですから!」

洋榎「ウチの話、か……」

洋榎「ちゅーても、そないに面白い話もないで?」

洋榎「いや、普段なら鉄板なネタとかあるねんで」

洋榎「自宅にセスナ機突っ込んできた話とか」

洋榎「ただこの空気で披露してウケるかっちゅーとなー」

洋榎「やっぱり場の空気って、大事やん」

咲「確かにそうですね……」

咲「……」

咲(いや、でもすっごく気になる……)


洋榎「……」

洋榎「ま、ちょっと真面目な話をするとな」

洋榎「ぶっちゃけ……ウチもビビっとんねん」

咲「え?」

洋榎「頼ってもろてる相手にこんな弱み見せるのもあれやけどな」 アハハ

洋榎「でも……」

洋榎「すまんな」

洋榎「ウチも……帰って、また会いたい奴がおる」

洋榎「家族が、絹が、待っとんねん……」

咲「……」

洋榎「多分、他のやつにだって、出て会いたい奴の一人や二人くらいおるやろ」

洋榎「せやから――」

洋榎「みんなのために、死ぬなんてこと、ウチには出来へん」

洋榎「出来へんねん……」 ブルッ

咲「洋榎先輩……」

洋榎「勿論……他の奴に、させるわけにもいかん」

洋榎「もう、3日以内にどないかするしかない状況や」


洋榎「……」

洋榎「せやけど、あかんな」

洋榎「結構ごちゃごちゃ考えてまうからやろか」

洋榎「あんまり役立てる気がせーへん」

咲「……」

洋榎「……万が一が起きへんように、透華がよう頑張っとる」

洋榎「今は脱出したがっとる連中が斧とか持ちだしとるせいでワチャワチャしとるけど……」

洋榎「仕切りは、透華に任せるのが一番やろ」

洋榎「ウチが出来てもそのサポートや」

洋榎「……」

洋榎「他力本願、ほんまはアカンねやけどなあ」

洋榎「でも……」

洋榎「脱出出来るか分からんって思っとるし、脱出のために動かなアカンって分かっとるのに」

洋榎「塞ぎこんどる胡桃達に、元気出してもらいたいって思ってまうねん」

咲「洋榎先輩……」

洋榎「勿論、咲にもや」


洋榎「……ま、考えとってもしゃーない」

洋榎「ウチはウチにやれることをやる」

洋榎「今の透華は、万が一を防ぐので手一杯やろうからな」

洋榎「ウチはせめて、溜め込んでもーてるモンのはけ口くらいにはなってやりたいねん」

洋榎「せやから――」

洋榎「こうして部屋に来てもろて、実はめっちゃ嬉しいわ」 ヘヘ

咲「私も……」

咲「洋榎先輩を訪ねてよかったです」

咲「ちょーっと弱くて、完璧超人じゃないんだなーって分かって、親近感わきましたし」 フフ

洋榎「もー、なんやねんそれ」 プクー

咲「あはは」


洋榎「……っと、色々喋っとったらこんな時間やな」

咲「わっ、ほんとですね」

咲「洋榎先輩、喋りが上手だから、喋ってるだけであっという間……」

洋榎「おっ、嬉しいこと言ってくれるやないの」

咲「どうしましょう」

咲「夕ごはん食べに、食堂にでも行きますか?」

洋榎「……いや、やめとこか」

洋榎「食堂には包丁もあるし、あんまりそういう場に出入りして透華の心労増やしたないわ」

洋榎「今日は特にバタついとるしな」

洋榎「倉庫には武器になりそうなもんなかったし、カップ麺でも取ってくるわ」

洋榎「……咲もそれでええか?」

咲「はい」

洋榎「何味がええとかある?」

洋榎「一応しょうゆ・しお・カレーとあってんけど」

洋榎「湯、入れて来たるわ」

咲「い、いいですよ! 私も行きます!」

洋榎「ええて、ええて」

洋榎「咲と話したおかげで落ち着いたし」

洋榎「お礼とでも思ってや」 ニカ

咲「じゃあ、お言葉に甘えて……」


咲(しばらくして……)

洋榎「おまたせ……っと」

咲「ありがとうございます」 ペッコリン

洋榎「ええ、ええ、座ったままで」

洋榎「水はぬるいけど、勘弁してやー」

咲「あ、紙コップ」

咲「器用に持ってきますね……」

洋榎「ふふん」 ドヤーン

洋榎「まあ、前もって持ってきとくべきやったんやろうけどな」

洋榎「普段口つけて飲んどるからなー」

咲(ってことは、間接キs――)

洋榎「二本持って来といてよかったわ」

洋榎「ほい、こっちは口つけとらんから、安心してええで」

咲「あ、ありがとうございます……」


咲「はふ、はふ」 ズルズルズル

洋榎「……」 ポカン

咲「……あ、あの」

咲「私の顔に、何かついてます?」

洋榎「ああ、いや……」

洋榎「特に疑うこともなく躊躇も0で食べるんやなあ、と」

咲「ふえ!?」

洋榎「ま、今ンとこ毒物は発見されとらんしな!」

咲「そ、そんなんじゃ……!」

洋榎「冗談や冗談」

洋榎「せやけど……」

洋榎「普通に信頼してもろてるみたいなんは、素直に嬉しいわ」

洋榎「何か照れくさいけどな!」


咲「……あの、今日はありがとうございます」

咲「おかげで、元気が出ました!」

洋榎「おう、そう言って貰えると助かるわ」

咲「もうこんな時間ですし……さすがにおいとましますね」

洋榎「はは、泊まっていってもええねんで」

咲「さすがに恥ずかしいですし……」

咲「シャワー浴びなくちゃいけませんから」

洋榎「せやなあ」

洋榎「こんな空気だけど、風呂は入らなあかんし、明日は洗濯もしたいし……」

洋榎「バタバタだけしとるわけにもいかんし、のんびりするわけにもいかん、か」

咲「……ですね」

咲「……」

咲(どうしよう、プレゼントを渡そうかな?)



プレゼントをあげますか?
>>248 (無効な内容は安価下)
A:はい
B:いいえ

※今回はAの場合自動で洋榎に74:だれかの卒業アルバムをあげることになります

B


咲(やめておこっかな……)

咲「それじゃ、私はこれで……」

洋榎「おーう」

洋榎「……あ、そうや」

洋榎「部屋まで来て仲良うなった記念に……」

洋榎「ほら、これやるわ」

咲「こ、これって……」

洋榎「はっはっは、なんかガチャしたら出てきてん」

洋榎「このコケシ、スイッチ入れるとなんかめっちゃ揺れんねん」

洋榎「おもろいやろー」 ケラケラ

咲(これが何なのか知らないんだ……)

洋榎「ま、しょーもないジョークグッズやろうけど……」

洋榎「不安になったらそれでも見て、頼りになるウチのことでも思い返してや」 フフン

洋榎「ほんで……溜め込んで爆発する前に、ちゃんとウチに」

洋榎「それが無理でも他のやつに相談するんやで」

洋榎「こんな状況で一人で抱え込むと、ロクなことがないからな」

咲「……はい」

咲(でも、この動くコケシを見て洋榎先輩を思い出すって……)

咲(何かちょっと卑猥な感じで躊躇われるな……///) アハハ・・・

咲(でも……)

咲(プレゼントをくれるくらいだし、仲良くなれたって思っても、いいのかな……)



▼洋榎の好感度が上がった!


キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『えー、校内放送でーす。午後10時になりました』

モノペン『ただいまより“夜時間”になります』

モノペン『間もなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりま~す』

モノペン『ではでは、いい夢を……おやすみなさい……』

咲「……」

咲(一日が終わる……)

咲(そして、始まるんだ……)

咲(悪夢のような、期限付きの三日間が)

咲(これまでの三日間とは違う――)

咲(本当に、切羽詰まった、三日間が――――)



【Day3 END】


【Day 4】

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『オマエラ、おはようございます!』

モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

咲「……」

咲(始まる……悪夢のような三日間が……)

咲(……)

咲「怯えていたって、始まらないよね……」

咲「顔、洗わないと……」


ピンポーン

ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

咲「あ、洋榎先輩かな……」

ガチャ

洋榎「うーっす」

ちゃちゃのん「お、おはよ……」 オズオズ

咲「おはようございます」

咲「……」

咲「あれ?」

咲「胡桃先輩は……」

洋榎「……」

洋榎「迎えに行ってんけど、ちょっとまだ怯えとるようでな」

洋榎「ちょーっと無理矢理でも明るく引っ張りだそうとして、突き飛ばされてもーたわ」

洋榎「……ああ、ウチが悪いんやで」

洋榎「もーちょい、上手く立ち回れたらよかってんけどなあ……」

洋榎「まあ、『ご、ごめん……』みたいに言うて部屋引っ込んだし、ちょっと気まずいんやろ」

洋榎「朝食会には来る言うとったから、後で一人で来るやろ」

洋榎「そんときに、ちょっと話してみるわ」


<食堂>

咲「ふわっ……」

咲「き、昨日よりむしろ豪華に……」

巴「はは……」

巴「こうでもしてなきゃ、何か落ち着かなくて」

美子「うん……」

ガラッ

葉子「うわ、マジで結構集まってきてるじゃん」

誓子「朝食会、今日もやるんだ」

透華「あったりまえ、ですわ!」

透華「こんなことになったからこそ!」

透華「朝食会で親睦を深めることが大事なのです!」

憧「ま、それどころじゃないとは思うけど、情報交換の場は大事だしね」

咲「あ、おはようございます」

誓子「おはよー」

憧「おはよ」

憧「で、どう、進展あった?」


誓子「ううん、全然」 ハァ

葉子「くっそ、換気扇のカバーのアレ、何で出来てやがんだ」

誓子「まあ私達が斧の扱いになれてないだけっていうのは、あるかもしれないけど」

憧「トイレの換気扇、頭より高い位置だしね」

葉子「剣と一緒に感覚で振りやすいんじゃねーかって期待したのによお」

葉子「あのボケ剣士は振りかぶって斧こっちに落として来やがるし!!」

誓子「あれホント焦ったわ」

恵「危うく速攻死者が出るとこでしたからね……」

憧「一応高い所のものを取るように簡単な台なら倉庫にあったけど……」

葉子「脚立はねーんだよなあ」

憧「まあ、換気扇を壊しにくくするため……ってのが妥当かな」


葉子「んなわけで、こっちに共有するような情報は無し!」

誓子「今日どうしよう」

葉子「探すしかねーだろ、他にぶっ壊せそうなとこを!」

葉子「こんなところで死んでたまるかっつーの!」

竜華「おはよ」

咲「おはようございます」

透華「続々集まってきましたね」

智葉「……」

洋榎「珍しいな、辻垣内が遅れてくんの」

咲「少し意外そうにしましたし……」

咲「これだけちゃんと朝食会に集まるって、思っていなかったんじゃないですか?」

洋榎「なるほどなー」

洋榎「……ほんで相変わらず浅見と新免来とらんな」

胡桃「……おはよ」

洋榎「……」

洋榎「アカンでー、委員長キャラが遅れてきたら!」 ガシッ

胡桃「っ!」 ビクッ

洋榎「ほれ、遅れてきた罰や」

洋榎「浅見と新免、迎えに行くで」

洋榎「……ウチも付き合っちゃるから」

胡桃「……ん」


咲「あの二人……今までみたいに戻るといいけど……」

ちゃちゃのん「……ただの喧嘩とかじゃないけえのう……」

ちゃちゃのん「……ちゃちゃのんも……」

ちゃちゃのん「正直、不安じゃ」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんとくっついとらんと、不安で、不安で……」

ちゃちゃのん「胡桃ちゃんもようしてくれるから慕っちょるんじゃけど……」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのん、知り合いも、お友達も、ここにはあんまおらんから……」

咲「ささのん先輩……」

ちゃちゃのん「あ、も、勿論咲ちゃんのことは信頼しちょるよ、うん!」

咲「あ、あはは……ありがとうございます」

咲(多分、嘘だよね……)

咲(信頼されるようなことはしてないし)


花子「うへ、マジで全員ちゃんと集まってんじゃん」

花子「どーせもう自然消滅だと思ってたまにはゆっくり寝たかったのに」

那岐「果報は寝て待て、だな!」

洋榎「カホウ、ってどんな字書くか知っとるか?」

那岐「……」

那岐「火のお宝だ!」 クワッ

花子「家の宝ですらないんだ!?」 ガビーン

咲(全員揃ったかな……)

咲(結構皆、席移動して情報交換してる……)

咲(席を移動するなら今の内かな)


誰と朝食を食べますか?

>>259(3人まで指定可能)

透華桃子

人気の無さなら門松新免上柿浅見あたりも負けてないからな
残念だが当然

再開します


咲「ここ、いいですか」

透華「ん、ええ、勿論ですわ」

桃子「どーぞっす」

咲「……やっぱり少し、ピリピリしてますね」

透華「無理もありませんわ」

透華「相手の言葉を信じるなら、残されたのは僅か三日間」

透華「……更に言うと、どの時点で“3日経った”とみなされるか分からない以上、最終日はあまりゆとりがありませんわ」

透華「実質今日と明日しか、丸一日使える時間は残っていない……」

桃子「にも関わらず――まだ、何の糸口も見つかってないっすからね」

透華「ええ」

透華「それでも何とかしようともがいてはいますが……」

咲「他のテーブルの情報交換も、何も成果なしって報告で終わってるもんね……」

透華「あまりいい状態とは言えませんわね……」


桃子「……とはいえ、あんまり焦ってもどうにもならないっすからね」

桃子「あ、このスクランブルエッグ美味しいっすね」

咲「あ、ほんとだ」

透華「まったく……」

透華「そんな呑気にしている場合じゃありませんのよ!」

桃子「……ま、そーなんっすけどね」

桃子「でも、深刻なのは全部龍門渕さんがやってくれてるっすから」

桃子「たまの息抜きくらい、担当するっすよ」

透華「……」

透華「確かに……美味しいですわね……」

桃子「ちゃんと抜くとこ抜いて、しっかり導いてもらわないと」

桃子「何せ、リーダーなんっすからね」

透華「リーダー……いい響きですわ!」 フフ

咲(冗談めかしてはいるけど……)

咲(実際その行動力には、相当助けられてるよね……)

咲(洋榎先輩も頼りにしてたし……)

咲(名実ともに、皆にとってのリーダーなんだなあ……)



▼リュウモンブチトウカの好感度が上がった!
▼トウヨコモモコの好感度が上がった!


桃子「それで、今日はどうするんっすか」

透華「それなんですが――」

智葉「……」 スッ

透華「っと、もう食べ終わった方がいるみたいですわね」 ガタン

透華「皆さん静粛に!!」

透華「私から、一点、提案がありますわ!」

ザワザワ

誓子「提案……?」

葉子「何か、脱出の方法でも分かったとか!?」

透華「いえ……残念ながら、そうではありません」

透華「提案とは――今日再び、ホールに集まって麻雀をしよう、ということですわ」

葉子「はァ!? そんな場合じゃねーだろ!」

洋榎「んで、そのココロは?」

透華「確かに、今はそんな暇ではありません……」

透華「ですが、明日はもっとそんな暇ではなくなります」

透華「ましてや最終日ならなおさらですわ」

透華「門松葉子、貴女がたはすでに昨日打っているため、確かに麻雀をしている場合では無いのかもしれません」

透華「が!」

透華「他の者にとっては、今日打っておかねば、明日、ないし最終日に打たなくてはいけなくなる」

透華「死活問題に繋がりかねませんの」


洋榎「ま、そうやな」

洋榎「比較的冷静な今の内、麻雀ノルマは消化しておくに限る、か」

桃子「私も異論ないっす」

やえ「勿論、その意見に賛成だ!」

咲(洋榎先輩の言葉を皮切りに、続々と賛同が集まり――)

葉子「んじゃ、フリーな私らがまた斧でぶっ壊せそうな場所を――」

透華「いいえ、貴女がたにも参加してもらいます」

葉子「はぁ? なんで」

透華「万が一、を防ぐためですわ」

葉子「いやいや、万が一なんてねーっつーの」

葉子「大体、殺しがバレたらアウトなんだろ?」

葉子「だったら四人いる状況で殺ったらバレバレじゃねーか」

葉子「しかも相手も斧持ってんだぜ?」

葉子「私が襲われたって、斧で返り討ちにしてやるし」

透華「それでもです」

透華「何かの拍子にうっかり、ということもありますし……」

透華「管理できていない時に武器を持ち出す、というのも良くありません」


透華「それと……」

透華「昨日、こういうリストを作成しましたわ」

葉子「なにこれ?」

誓子「チェックシート……?」

透華「倉庫にあった画用紙を使って、武器の数を数えるシートを造りました」

透華「定期的に数を数えることで、こっそり持って行かれて万が一が起こることを防ごうと思いますの」

透華「更に貸出票のようなものも作りましたので、持っていく人はここに時刻と名前を書くように」

花子「うへー、面倒くさー」

透華「コピー機がないので少々手間ですが、用紙は私が作ります」

透華「基本見回りも私と、有志の方々でやりますから、手間は記載の手間だけですわ」

透華「……」

透華「それとも、誰もが勝手に武器を持ち出せる環境で、見えない敵に怯えたいんですの?」

葉子「……」

花子「はいはい、わかった、わかりましたって」

咲(最後には、結局全員が武器の管理方法に同意して、今日麻雀を打つことにも同意することになって、そして)


咲「また自由行動、か……」

ドン

胡桃「あ、ごめん……」

咲「あ、いえ……」

胡桃「……」

胡桃「ごめんね……多分、今、酷い顔してるよね」

咲「そ、そんな……」

胡桃「……こんなんじゃ、駄目だって、わかってるんだけど」

胡桃「怖いんだ」

胡桃「……ちょっと……一人で部屋で頭冷やしてくる」

胡桃「それから、自分に出来ることをするよ」

咲「はい……」

咲「……」

咲「胡桃先輩、大丈夫かな……」

咲「ちょっと気になるけど……」

咲「今日は、他の人が何をしてるのか見て回ってみようかな……」


<ランドリー>

咲「あっ」

桃子「あ、どもっす」

桃子「洗濯っすか?」

桃子「丁度一個開くっすよ」

咲「あ、そういうわけじゃ……」

桃子「確かに、手ぶらっすもんね……」

咲「……あとで洗濯しなくちゃ……」

桃子「タオルなんかは補充されるっすけど、服は洗わないわけにはいかないっすからね」

桃子「一応S・M・Lとシャツが揃ってるっすけど……」

桃子「これ、胸がきつきつで……」

咲「あ、あはは……」

咲「……」

咲「そういえば、タオルってどうしてます?」

桃子「ああ……勿体無いっすけど、捨ててるっす」

桃子「もしこっから出られても……多分、捨てるっすから」

咲「だよね……」

咲「……ステルス捨てるっす……」

桃子「え?」

咲「う、ううん、なんでも……!」 ブンブン


咲「……でも、ゴミって……」

咲「部屋のゴミ箱に置いとくと臭うんじゃ……」

桃子「……マジで言ってるんすか?」

桃子「個室エリアの一角に、でっかなゴミ箱あったじゃないっすか」

桃子「あそこに捨てときゃいいんっすよ」

咲「……」

咲「そういえば、そんなものがあったようななかったような……」

桃子(あー、この人何があったか覚えるのも苦手だからすぐ迷うんすね……)

桃子「そこに入れときゃ、掃除当番が回収して焼却してくれるんすよ」

咲「掃除当番……?」

桃子「モノペンから焼却炉の鍵を渡されて、誰かを掃除当番にしろって」

桃子「最初は毎日日替わり予定だったんすけど……」

桃子「永水の眼鏡サ……狩宿?さんが、立候補したんすよ」

咲「永水の……」

桃子「何でもそういう家事や雑務に慣れていて、やってないと落ち着かないらしいっす」

桃子「いつやってるのかは知らないっすけど、わざわざやってくれてるみたいっすよ」

桃子「今も一人食堂の片付けしてるし、頭が上がらないっすね」

咲(でも眼鏡サンとかいつも呼んでるんだ……心の中でだけかもしれないけど……)


<談話室>

咲「っと……」

美子「……どうも」 ペコ

咲「……」

咲(休憩してるのかな)

咲(考え事してるようにも見えるし……)

咲(何考えてるのか、よく分からないな……)

咲「……」

咲(多分、向こうもそう思ってるんだろうけど……)

咲「え、ええと、失礼しましたー……」


<トラッシュルーム・鉄格子前>

咲「改めて……」

咲「大きい焼却炉だなぁ……」

誓子「ホントよねえ」

咲「わひゃあ!?」

誓子「そんな怯えないでよ~、傷つくわ~」

咲「ご、ごめんなさい……」

誓子「夜時間の前に、巴さんがゴミを捨ててくれてるみたいよ」

咲「そうなんですね……」

咲「……桧森先輩は何を?」

誓子「ああ、ちょっとガチャをね」

誓子「葉子ちゃん達は斧で今度はトイレの壁を殴ってるんだけど……」

誓子「成果はなさそう」

咲「手伝わなくていいんですか?」

誓子「ああ、人多すぎてもうっかり事故りそうだからさ」

咲「まあ……確かに」


誓子「ところで……」

誓子「咲ちゃんは、何か困ってることはないかしら?」 ペカー

咲「ふえ!?」

咲「どうしたんですかいきなり……そんな満面すぎて怪しい笑顔で……」

誓子「いやね、お姉さん、ちょっとモノモノガチャをやりたくて……」

誓子「でももうスッテンテンだし、隠されてるメダルもあらかた回収しちゃったみたいなのよね……」

誓子「そこで!」

誓子「何かバイトをしてメダルを稼いじゃおうかなって!」

咲「は、はあ……」

誓子「ちなみに昨日は葉子ちゃんにマッサージをしてメダルを貰ったわ!」

誓子「夜時間までかかったせいで、汗まみれになったのにシャワー使えなかったのがアレだったし……」

誓子「汗かく系なら今お願いしたいんだけど……」

咲「ちなみにそのメダルは……」

誓子「こうしてダブリのアイテムになったわ」

咲(Oh……)


誓子「まあ、本当はこんなことしてる暇はないんだけどさ」

誓子「こう、他のことしてなきゃ、落ち着かないし」 アハハ

咲「……ですよね」

咲「でも、特にしてほしいことは――」

誓子「うう、そっかー」

誓子「あ、じゃあ、アイテム買わない?」

誓子「ほら、いっぱいあるから!」

誓子「今なら大特化、モノペンメダル2枚でいいわよ!」

誓子「たった2枚で狙ったアイテムを貰える! おっかいっどくう!」

咲「え、ええと……」


どうする? >>276
A:買う(商品併記)
B:買わない
C:値切る
D:逃げる
E:殺してでも奪い取る

モノペンメダル残り8枚

商品
20:希望ヶ峰の指輪
33:ヤス・シシドのTシャツ
46:イン・ビトロ・ローズ
49:残鉄剣

A
20、46


咲「じゃあ、折角なので、指輪と……その花のやつを」

誓子「まいどー♪」

誓子「うふふ、これでまた回せるわ……」

誓子「それにしても……なかなか可愛いのを選んだわね」

誓子「自分でするの?」

咲「ふえ? えと……」

誓子「はっはーん」 ニヤ

誓子「さては誰かにあげるんだ!」

誓子「いやー、指輪にこのおしゃれなアイテムとか、ガチなやつねー」

誓子「だれだれ、やっぱりよく一緒にいる姫松の人?」

誓子「それとも慕ってるみたいだし龍門渕さん?」

誓子「それは愛なのか友情なのか……」

誓子「はあ……うっとり」

咲「あ、あはは……」

誓子「まあ、愛は性別を越えるものね……」

誓子「私は応援するから、頑張ってね!」 グッ

咲「あ、あはは……」


▼20:希望ヶ峰の指輪を手に入れた!
▼46:イン・ビトロ・ローズを手に入れた!
▼モノペンメダルが4枚になった!
▼ヒモリチカコの好感度が上がった!


誓子「ふむ、やっぱり女の子っぽいのに人気が集まるみたいだし……」

誓子「次は商品によって値段を変えてみようかしら」

誓子「最悪、残り一個だけど、もう一回イン・ビトロ・ローズを売ってメダルを……」 ブツブツ

咲「……」

咲(何かに熱中すると他のことが考えられなくなるタイプなのかな……)

咲(今はメダル集めに意識が行ってるみたい……)

誓子「あ、咲ちゃんになら安くサービスしちゃうし、なんならダブってないのでも売っちゃうよ」

誓子「だからまたよろしくね!」

咲「は、はい」


<武器庫>

咲「相変わらず赤い扉は開かず、かあ……」

やえ「やあ」

咲「小走先輩」

やえ「どうした、何か必要なものでもあるのか?」

咲「あ、いえ、そういうわけじゃ……」

やえ「ふむ、探検か」

やえ「本当は私も助力したいが……」

やえ「私には、透華が定めたルールを守らせ、秩序をもたらす役目があるからな!」

やえ「絶対に犠牲は出さないぞ!」

咲「今は小走先輩がここを見てるんですね」

やえ「ああ」

やえ「今透華は浅見花子たちについて彼女たちを見張っているからな」

やえ「……見張り、なんて言い方はしたくないけどな」

咲「今は……斧が2本とナタが2本、それにハンマーが1本貸し出されてるんですね」

やえ「ああ」

やえ「どれが有効か分からないから――ということだ」

やえ「他にもナイフやらバットやらあるが……」

咲「まあ、あんまり脱出には役に立ちそうにありませんよね……」


咲「でもこの部屋、整理されてるから、何かなくなったらすぐわかりますよね」

やえ「ああ」

やえ「それに入り口に小窓があって中が見えるし、鍵もかからないからな」

やえ「コソコソと武器を持ち出すのはほぼ不可能だろう」

やえ「その“ほぼ”を“絶対”にするのが、私の務めだ」

咲「なるほど……」

やえ「とはいえ、ずっとここで一人いるのも気が滅入るし……」

やえ「それで集中力を欠いたら意味がないからな」

やえ「あとで巴や美子ともローテーションする手はずになっている」

やえ「清水谷竜華も明日は参加してもいいかも、と言っていたし……」

やえ「いつでも志願してくれていいからな!」

咲「はは……考えておきますね……」


<1F>

咲「地下、こうして見ると施設少ないなあ……」

咲「……」

咲「開かない赤い扉と、キープアウトされてた部屋……」

咲「なんだったんだろう、あそこ……」

ガンガンッ

咲「……」

咲「音、ちょっと漏れてるけど……」

咲「多分、この音って……」

咲「……」

咲「やっぱりお手洗いからだ」


<トイレ>

葉子「だーっ、くそ!」

恵「全ッ然、壊れないっすね……」 ゼハー

透華「相当頑丈に作られてますわね……」

葉子「くっそ、交代!」 ゼハー

花子「しゃーないなー」

花子「ハンマー駄目だったし、ダメ元でナタ行って見るかあ」

那岐「刃こぼれ起こすぞ」

葉子「オメーは見てねえで手伝えよ!」

那岐「なあ、君後輩だよな?」

透華「お手洗い以外の方がいいかもしれませんわね……」

葉子「んじゃどこ壊すのさ」

恵「図書館もランドリーも食堂も、他のものが置いてあって壊しにくいですよ」

透華「それが狙いかも知れませんし……」

花子「だとしても、ある程度絞らないと、全部やって回る時間ねーって」

透華「ふむ……麻雀の時にでも考えるべきかもしれませんわね」


咲「あの、地下の赤い扉とかは……」

葉子「ああ、ありゃ駄目」

恵「まあ、地下で穴開けてどーすんだ、とは思うんですけど……」

花子「それでも一番脆そうだから、一回ドッカンドッカンやってみるかって話になったんだけどさあ」

葉子「重要施設があるけど、脱出の手がかりにはならないってモノペンの奴がさ」

透華「それがブラフという可能性は?」

葉子「あるけどさあ」

恵「ちょっとリスキーですからねえ」

透華「ふむ……」

透華「あそこを攻めるなら最終日、といったところですわね」


葉子「ひょっとして、暇?」 ッツカサ

葉子「手伝ってかね?」

葉子「このまま黙って死ぬなんて嫌っしょ」

咲「あ、私、力ないから……」

葉子「ちっ」

花子「まーまー」

花子「ああいう大人しい文学少女はアンタみたいな目に見えたチンピラと相性悪いからしゃーないって」

葉子「アンタに言われたくねーわ」

咲「あ、あはは……」

咲(あんまり否定出来ない……)


<資料室>

憩「あ、咲ちゃんや~」

竜華「どーしたん?」

咲「お二人は、ここで何を……?」

憩「いや、何か手がかりないもんかな~と」

竜華「必死さがない、言うとったからな」

竜華「まあ必死さアピールと……」

憩「もしかしたら、本のどっかに脱出のヒントないなか~なんて~」

竜華「ちゃんと本を読んでたら脱出できたのにね、なんて、ブラックジョークみたいで無くは無いやろ」

咲「確かに……」

竜華「どう、手伝わへん?」

竜華「自分、本好きなんやろ」

咲「んー……少し考えさせてください」

咲「この前借りて行った本も、結局色々あって全然読めてないし……」

憩「あはは、そらしゃあないわ~」

竜華「ほんなら小説ゾーンは咲のために残しとくわ」

咲「あはは……」

咲(いつの間にか頭数にカウントされてる……)


<食堂>

咲「食堂は……」 ガチャ

華菜「お、どーしたー?」

咲「そういうお二人こそ……」

誠子「いや、ちょっと速いお昼ごはんにしようかなって」

誠子「そうだ、何か作ろうか」

咲「え?」

咲「悪いですよ……」

誠子「いーって、いーって」

誠子「私も宮永先輩にはお世話になったからさ」

誠子「こういう恩は後輩に返していくものだよ、うん」 ウンウン

咲「じゃあ……お言葉に甘えて」


誠子「おまたせ!」

咲「わあ……」

誠子「ふっふっふ」

誠子「結構美味しいはずだよ」

咲「はふはふ」

咲「おいひい……」

誠子「そう言ってくれると嬉しいな」

誠子「宮永先輩の妹さんで、現在のチャンピオン」

誠子「ずっと話してみたかったんだ」

誠子「こんなことになっちゃって、それどころじゃなくなってたけど……」

誠子「これを機に絡んでくれると嬉しいなー、なーんてね」

華菜「おかわり!」

誠子「はいはい、っと」


咲「っと、そろそろ麻雀を打ちにいく時間ですね」

誠子「ねえねえ、一緒に打とうよ」

誠子「見てみたいんだ、嶺上開花」

咲「いいですけど……」

誠子「よっしゃ!」

誠子「槓材が集まる反動で対子場になって能力有利になるかとか、色々たーめそっと」

誠子「他誰と囲みたいとかある?」

誠子「固まっちゃう前に声掛けるけど」

咲「はあ……」

咲(誰にでも声かけるタイプの人なんだ……)

華菜「おいおい私は」

華菜「まあ宮永とはやったことあるし、他でも全然構わないけどな」

咲「ええっと、じゃあ>>290>>291と一緒に打ちたいです」

他に一緒に打つ面子
>>290-291
当然この合宿の参加者限定(モノペンNG)
重複したり無効な内容なら安価下

チカ

竜華


<ホール>

誠子「ふっふっふ」

誠子「どう? 私もやるもんでしょ」

竜華「?」

誓子「今日は負けないから!」

咲「実際その行動力はすごいと思います」

誠子「まー、考えるの苦手だしねえ」

誠子「生意気な後輩に負けないよう、見栄張れる程度に頑張ってゲラゲラ笑うのが手一杯さ」

竜華「ま、ようわからんけど……」

竜華「同卓した以上、負けへんで」

誓子「私にだって意地はあるんだから!」

誠子「麻雀でもかっこいいとこ見せちゃうぞー」

誓子「どうせだから……何か賭けない?」

竜華「ええけど、何賭けるん?」

誓子「んー……」

誓子「じゃあシンプルに、1位がラスに何か命令、みたいな」

誠子「いいね! 乗った!」

咲「え?」

竜華「あんまり無茶なのはなしやで」

誓子「わかってるって」

誠子「咲もそれでいい?」

咲「あ、はい」

誠子「んじゃ、よろしくお願いします」

咲「よろしくお願いします」 ペッコリン


結果 >>294のコンマで決定
コンマを4で割った際、
あまりが1 → 竜華が1位
あまりが2 → 誠子が1位
あまりが3 → 誓子が1位
あまりがなし → 咲が1位

00~39:αがビリ
40~69:βがビリ
70~99:γがビリ
咲・誓子・誠子・竜華の内、1位だった者を除き、左から順にα・β・γとする


竜華「ツモ、っと」

竜華「点数計算いる?」

咲「清水谷先輩の逃げ切りですね」

誓子「やったー! 三位! 逃げ切ったわ!」

竜華「いやトータルではマイナスやからな」

誠子「ま、負けた……」

竜華「ふっふっふ……」

誠子「うっ……な、何をすれば……」

竜華「ほんならこの後、アンタにはウチの分まで洗濯してもらおかな」

誠子「うわーっ! 面倒ーーーーっ!」

誠子「折角だから咲に宮永先輩や淡のこと聞いたりしたかったのになー」 トホホー

咲「あはは……」

竜華「んじゃ、こっからはヒラで打とかー」

誓子「次は2位とって、最後には首位とっちゃうんだから!」

誠子「ぐー、次は負けないぞ!」

咲「……」 ゴッ


▼マタノセイコの好感度が上がった!
▼ヒモリチカコの好感度が上がった!
▼シミズタニリュウカの好感度が上がった!


誓子「いやー、やっぱり強いな―」

誓子「ねえ。何か秘訣とかあるの?」

咲「ええ?」

咲「特に、そういうのは……」

誓子「よねえ」

誓子「……ねえ、ここから出たら、北海道来ない?」

咲「え?」

誓子「いいわよ~北海道は。涼しいし、海鮮も美味しいし!」

誠子「いいなー、私も行きたいー」

誓子「あはは、来てよー」

誓子「有珠山周りは何もないけどさー」

誓子「麻雀打ってくれたら、きっと皆喜ぶし」

誓子「咲達を連れてくことが、後輩に出来る贈り物かなー、なんて」

誠子「私もあのユキちゃんって娘と戦ってみたかったし、行きたいなあ」

誓子「あはは、来て来て」

誓子「咲もさ。面白い場所や面白い遊び、いっぱい紹介しちゃうから」 ニカッ

咲「はい!」

咲(桧森先輩に気に入られたみたいだ)


誠子「さて、自由行動だね」

誠子「まあ私は自由でなく洗濯労働の身なんだけどさ」 トホホノホ

竜華「まだほのぼのしとるけど、明日からもうちょい焦燥感でいっぱいやろうからなあ」

竜華「今のうち資料室片しとくか―」

誓子「私もさすがに何かしたほうがいいかなあ」

誓子「こっから出て、皆と会って……」

誓子「咲とも遊ばなきゃいけないしね」

誠子「咲はどーすんの?」

咲「私は……」

咲(どうしようかな)


どうする? >>300
A:誰かを部屋に呼んで一緒に過ごす(相手を併記、1名のみ)
B:誰かと一緒に過ごす(相手を併記、3名まで、記載された順番に声をかける)
C:誰かと一緒に探索する(相手と行き先を併記、2名まで、記載された順番に声をかける)
D:一人でどこかに行く(行き先併記)
E:一人で何かをする(行動併記)
F:この中に未来の殺人犯がいるかもしれないっていうのに、一緒になんて居られない!私は自分の部屋に戻る!!

B胡桃ちゃちゃのん巴


やえ「なあ、少しいいか?」

洋榎「あ、ウチか」

洋榎「……ええで」

咲「……」

咲(洋榎先輩、頼られてるだけあって、他の人にも声かけられてる……)

咲(じゃあ、私は……)

咲「私は、胡桃先輩と行動しようかと」

竜華「……せやな」

竜華「それがええんちゃう」

誓子「胡桃ちゃんもいちごちゃんも落ち込んでるしねえ」

誠子「洋榎とのコンビが沈黙してるとこっちまで暗くなるしね」

咲「じゃあ、私、声かけてきますね」


咲「胡桃先輩」

胡桃「……ん?」

咲「その……一緒に過ごしませんか?」

咲「ちょっとカッとしちゃって洋榎先輩と気まずいのはわかりますけど……」

咲「一人で居ると、もっと考え込んじゃいそうですし……」

胡桃「……ん、ありがと」

胡桃「んじゃ、お言葉に甘えようかな」

胡桃「私だって、このままでいいなんて思わないしね」

ちゃちゃのん「あのー……」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも、一緒してええかいのう……」

ちゃちゃのん「その、ヒロちゃん、向こう行っちゃったし……」

咲(あんまりコミュニケーション得意じゃなくて、でも友達は欲しいタイプ、かあ……)

咲「じゃあ、とりあえずのんびりしましょうか」

ちゃちゃのん「あ、ちゃちゃのんご飯まだじゃけえ、食堂だと有り難いのう」

咲「じゃあ、そうしましょう」

咲(私はもう食べちゃったけど)


ガチャ

葉子「っしゃいくぞ!」

葉子「さっきヒビ入ったし、今日中に壁をぶっ壊すッ!」

巴「がんばってください」

花子「まっかせてー」

誓子「午後は私お頑張らなくちゃ」

恵「これ、ありがとうございます」

巴「いえいえ」

スタスタスタ

誓子「っと、咲じゃない」

誓子「ごはん?」

咲「あー、はい、そんなとこです」

誓子「まあゆっくりしてなさい」

誓子「お姉さんとして、ここは私がかっこよく壁に穴をあけてきちゃうから」 フンス

花子「おいてくよー?」

誓子「あー、ごめん今行くー」

誓子「それじゃあね!」 タタタタタ

ちゃちゃのん「何しとったんじゃろ」

巴「ああ、お弁当、渡してたんですよ」

巴「肉体労働ですし……」

巴「ローテーションで壁を壊してるみたいだから、合間に食べられるおにぎりとか作って」

ちゃちゃのん「ほへ~、家庭的じゃのう」

巴「まあ、私も非力な部類だし、これくらいしか出来ないからさ」


巴「よければ、何か作ろうか?」

巴「簡単なものか精進料理しかできないけど」

ちゃちゃのん「何か悪いのう」

巴「いいっていいって」

巴「普段姫さまのお世話してたから、世話焼いてないと落ち着かなくって」

咲「ありがとうございます」

巴「腕によりをかけてくるわ」 フフ

巴「ついでに私も一緒に食べてもいいかしら」

ちゃちゃのん「勿論じゃよー!」

巴「じゃ、作ってきちゃうわね」


巴「おまたせ」

ちゃちゃのん「わぁ……!」

胡桃「いい匂い……」

巴「そう言って貰えると、作った甲斐があったわ」

咲「……」

巴「そういえば……」

巴「珍しく、愛宕さんは居ないんだ」

胡桃「……」

咲「ええ、まあ……」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんは他の人にも呼ばれちょってん」

胡桃「それに……ちょっと、喧嘩みたいになっちゃって」

巴「そうなんだ……」


巴「……話して楽になるようなことなら、聞くけど……」

咲(わっ、すごい、それ言えるんだ……)

咲(これがコミュニケーション能力……これが、上級生……) ゴクリ

咲(まあ、一緒に海水浴行ったりしたっていうし……大丈夫だよね)

胡桃「……」

胡桃「私の住んでるとこさ」

咲「?」

胡桃「すっっっっっごい、田舎なんだよね」

咲「……」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも大概田舎じゃけど……」

胡桃「多分そんなもんじゃないよ」

胡桃「ご近所サンは全員顔見知りってレベルだし、買い物は街まで出なきゃいけないし」

胡桃「まあ、とにかく、ものすっごい田舎でさ」


胡桃「その、伝わってくるんだ」

咲「?」

ちゃちゃのん「伝わるって……何が?」

胡桃「……訃報」

咲「あ……」

胡桃「ご近所の誰々さんが死んだ、とかさ」

胡桃「特にど田舎でお年寄りばっかりだから、頻繁にあったんだ」

胡桃「で、田舎で顔見知りで……」

胡桃「数少ない子どもとして可愛がってもらってたから、お葬式にも出て」

胡桃「……昨日まで笑顔で挨拶してくれた人が、冷たい肉の塊になるのを、何度も見てる」


胡桃「だから……怖いんだ」

胡桃「人は簡単に死ぬって知ってるから……」

胡桃「ああなっちゃうのが、すごく怖い」 ブルッ

咲「胡桃先輩……」

巴「……それでいいんじゃない」

胡桃「え?」

巴「死を恐れない方が、おかしなことだもの」

巴「私は神に仕える身だけど……」

巴「やっぱり、死ぬのは怖いもの」

巴「だからこそ……今精一杯生きてるの」

胡桃「……」

胡桃「体も小さくて、何の役にも立たないけど……」

胡桃「私にも……出来ること、あるかな……」

ちゃちゃのん「あるよ! あるある!」

ちゃちゃのん「だってちゃちゃのん、こんなに怖いのに泣かないでいられるの、ヒロちゃんと胡桃ちゃんがいてくれるおかげじゃもん!」

ちゃちゃのん「一緒に死んじゃうことに怯えて、それでも立ち向かう人がいる……」

ちゃちゃのん「それだけで嬉しいし、がんばろうってなるんじゃよぉ」


胡桃「うん……」

胡桃「洋榎にも、謝らなきゃ」

胡桃「ありがとね、皆」

咲「いえ……」

ちゃちゃのん「むしろこっちこそいっぱいありがとうなんじゃよー」

巴「普段たくさん与えているからこそ、困ったときに自分に帰ってくる」

巴「そういうものよ」 ニコリ

咲「……」

咲(何か私は何もしてない気がする……)

咲(どうしよ、誰かに何かあげるくらいする?)



プレゼントをあげますか?
>>310 (無効な内容は安価下)
A:はい(相手とプレゼント名を併記)
B:いいえ

※あげられるのはこの場に居る胡桃、ちゃちゃのん、巴にのみ

【現在の所持プレゼント】
20:希望ヶ峰の指輪
46:イン・ビトロ・ローズ
74:だれかの卒業アルバム

やめとこ


咲(やめとこう……)

咲(水を差すのもなんだしね)

胡桃「でも、今は多分まじめに働いてるよね……」

胡桃「あいつ、ああ見えて根は真面目だし」

ちゃちゃのん「じゃのう」

胡桃「……明日、ゆっくり時間あるよね」

ちゃちゃのん「うん、あるはずじゃよー」

ちゃちゃのん「多分ヒロちゃんも、また仲良うどつきあいたい思っちょるし!」

咲「そうですよ!」

胡桃「じゃあ、明日時間作るためにも、洗濯でも済ませておこうかな」

咲「あっ、私もやらなきゃ」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも忘れちょった……」

巴「ははは」

巴「タオルは捨てるなら回収するから、ちゃんと出しておいてね」

胡桃「はーい」


胡桃「明日は……」

胡桃「早起きしてさ」

胡桃「一緒に、洋榎を起こしにいかない?」

ちゃちゃのん「…………!」 パァァ

咲「はい!」

巴「いいんじゃない」

巴「私は、朝ごはん作らなくちゃいけないから付き合えないけどね」



▼カクラクルミの好感度が上がった!
▼ササノイチゴの好感度が上がった!
▼カリジュクトモエの好感度が上がった!


咲(その後、皆で洗濯をして……)

咲(楽しく、話した)

咲(こんな状況だけど――)

咲(皆で協力したら、なんとかなる)

咲(そんなことを、自然と思える一日だった)

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『えー、校内放送でーす。午後10時になりました』

モノペン『ただいまより“夜時間”になります』

モノペン『間もなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりま~す』

モノペン『ではでは、いい夢を……おやすみなさい……』

咲(でも……それが幻想だと、私は知る)

咲(これが、心からの笑顔で過ごせる最後の夜だと、この時はまだ、知る由もなかった――)


【Day4 END】


【Day5】

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『オマエラ、おはようございます!』

モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

咲「ん……」

咲「今日は、洋榎先輩を迎えに行くんだったよね」

咲「顔だけ洗ったら早く行かなきゃ」


ガチャ

胡桃「わっ!」

咲「び、びっくりした……」

胡桃「迎えに来たけど……」

胡桃「まさかインターホン押す前に出てくるとは」

咲「あはは……」

ガチャ

巴「あ、おはよう」

巴「そっか、先に迎えにいくためにこんな早いんだ」

巴「じゃあ後で、配膳、手伝ってもらおうかしら」

胡桃「ま、それくらいは」


胡桃「改めて、こんな朝早くに出る巴には頭が下がるね……」

咲「だね……」

胡桃「透華も朝一ででかけてるっぽいし、多分あの腹立つ放送の前に起きてるよね……」

咲「すごいね……」

胡桃「……っと、あれ?」

ちゃちゃのん「……あ」 ピンポピンp

胡桃「何やってんの……?」

ちゃちゃのん「あはは……」

ちゃちゃのん「迎えに来たんじゃんけど……」

ちゃちゃのん「もう出とったんじゃね……」

ちゃちゃのん「うう、誰もおらんのに連打しちょったなんて……恥ずかしい……」

咲「まあまあ」

胡桃「その羞恥心、全部ぶつけて洋榎の部屋のインターホン連打しちゃえ」


ピンポーン

ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

咲「……」

咲「出ない、ね……」

胡桃「……」

ガチャガチャガチャ

ちゃちゃのん「……寝てるんと、ちゃうかな」

ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

ピンポーン

ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

胡桃「……あいつ……こんなに寝つき悪かったっけ……?」

咲「……ね、ねえ」

咲「大丈夫……だよね……?」


ピンポピンポピンポピンポピンポーーーーン

ガチャガチャガチャ

胡桃「う、うそでしょ」

胡桃「洋榎……洋榎ッ」 ガチャガチャガチャ

ギィ・・・

透華「あら……どうしたんですの」

ちゃちゃのん「ほえ!?」

咲「龍門渕さん……?」

胡桃「ああ、洋榎が……洋榎が!」

透華「ちょ、どうしたのそんな蒼白な顔で……」

胡桃「あ……透華……」

胡桃「ひ、洋榎が……洋榎が出てこないの!」

透華「……」

透華「愛宕洋榎なら……」

透華「朝一で、小走やえと二人で見回りをしているはずですけど……」

胡桃「………………」

胡桃「え?」

透華「出口をつくるため壊すのを手伝った結果、予想以上に疲労が溜まっていたみたいで……」

透華「代わりに今日はお二人がやるので、たまにはゆっくり眠っていいと言われまして……」

透華「まあ、いつも通り目が覚めたので、こうして手伝いに行こうと部屋を出たんですけれど」

透華「昨日までの私と同じコースなら、1時間は前に部屋を出ているはずですわ」

胡桃「……」

ちゃちゃのん「……」

咲「よ、よかった……」 ヘナヘナ

透華「?」


<食堂>

巴「……あれ?」

巴「3人……?」

咲「それが……」

ちゃちゃのん「何か、ヒロちゃん、龍門渕さんに変わって、見回りしちょるみたいで……」

巴「あー……」

巴「昨日小走さんに呼ばれてたの、それだったんだ……」

胡桃「もうっ、おかげで赤っ恥かいちゃった」

咲「あはは……」

ちゃちゃのん「一番動転しちょったもんねえ」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんのこと、大好きなんじゃのう」

胡桃「そ、そそそそういうんじゃないからっ///」

巴「はいはい」

巴「っと、悪いけど、グラスとか並べてくれる?」

ちゃちゃのん「はーい」


咲(それからどんどん人が集まってきて……)

花子「はよーっす!」

竜華「ありゃ、ほんまに早いやん」

那岐「ふっふっふ」

那岐「自力で起きれぬなら、起こしてもらうまで!」

誓子「私が二人をちゃーんと起こしてきたんだから!」

誓子「モノペンメダル1枚で!」

咲「あ、まだ稼いでるんですね……」

誓子「もっちろん!」

誓子「またいいもの集めなきゃ!」

咲(ちょっと遅れてくる面子も、普段とはちょっと変わってて)

葉子「はよーっす」

花子「遅いねー、最速サン(笑)」

葉子「うっせー」

葉子「こっちゃ慣れない破壊工作で体バキバキでクソほど疲れてるんだっつーの!」

咲(それでも5分も過ぎない内に、ほぼ全員が集まって)

花子「私ら間に合ったし、これで全員じゃね?」

憧「いや、まだでしょ」

ちゃちゃのん「うん。ヒロちゃんと小走さん、あと龍門渕さんがまだ来ちょらんよ」

咲「……」

咲「見回りしてる3人、ですよね」

胡桃「……何かあったのかな」


ガチャッ

透華「……」

花子「おっはー!」

花子「人が珍しくちゃんと来たのに遅いじゃん……って……」

洋榎「……」

やえ「……」

那岐「おいおーい、謝罪の言葉が聞こえないぞ。切腹はどうした和の心だろ!」

葉子「馬鹿、黙ってろ!」

那岐「え?」

誓子「どう見ても、ただならぬ雰囲気でしょ!」

胡桃「洋榎……?」

ちゃちゃのん「何があったんじゃ……」

咲「すごく……深刻そうな顔だよね……」


透華「……まずは食事に、しましょう」

透華「あとで――大切な話がありますわ」

咲(それが、並々ならぬ事態の訪れを感じさせた)

咲(だけど――問いただせる人は、居なかった)

咲(まずは食事にしよう)

咲(その言葉が、何が起きたか口に出したら食事どころじゃなくなることを意味しているようで)

咲(誰もが深刻なことになったのではと感じつつも、黙って食事を口に運んでた)

那岐「???」

那岐「なあ、何があったんだ?」

やえ「いや――今は、とりあえず、食事にしよう」

やえ「あとで、透華から、発表がある」

咲(訂正。若干名空気を読まず聞いていた。流されてたけど)


透華「……みなさん、食事は終わられましたわね」

咲(あまり、会話はなかった)

咲(粛々と食事が終えられたのを見て、リーダー役の龍門渕さんが立ち上がる)

透華「黙っているわけにもいきませんので、言いますわ」

咲(ひとつ、大きく深呼吸)

咲(よほど言いづらく、大きなことなのだろうと、嫌でも思い知らされた)

透華「毎朝、見回りのついでに、武器庫の武器をチェックすることにしているのですが――」

咲(一拍、置いて)

咲(誰かが唾を飲み込む音が聞こえた)

透華「なくなっていたものが、ありました」


葉子「なっ……!」

花子「わ、私らはちゃんと返したよ!? ちゃんと表にも書いたしっ……!」

透華「……」

咲(いやでもざわついた)

咲(そりゃ、そうだよね……)

咲(だって、何か武器がなくなってるなんて……)



透華「なくなっていたのは――ナイフが、一本」



透華「脱出作業に用いるようなものではない、正真正銘の、人を殺すための凶器ですわ」

咲(もう、ざわついてはいなかった)

咲(誰も、何も、しゃべることが出来なかった――)

人いなさそうだし、さすがに寝ておきたいので、きりもいいため中断します。
いい加減今日中に死人出したい……

完全に寝ぼけてた
「作者はウソつきだ」と思った読者のみなさん、どうもすみませんでしたい
作者はウソつきではないのです
まちがいをするだけなのです……

何故か1の位しか見てなかったぞ
ちょっと訂正文考えて用意してそれから投下します
申し訳ない


>>295 訂正

誓子「……」

誓子「勝った?」

誓子「わはっ……」 パァァ

誓子「やった! やったやったやったー!」

咲「亦野先輩のソレ……加槓でも出来るんですね」

誠子「ん、出来るようにした」

誠子「いつまでも同じまんまじゃ来年捲土重来難しいからねえ」

咲「おかげであんまりカン出来ませんでしたよ」

誠子「流れちゃうからなー」 ケラケラ

誠子「これぞ亦野流、宮永咲封じッ」 キリッ

竜華「どいつもこいつもカンカンカンでカンドラゲー……」

竜華「ふつーのマージャンさせてーな」 ハァ


>>295 訂正続き

誓子「じゃあ、命令だけど……」

誓子「有り金、もとい有りモノペンメダルを全部よこせ~~~!」 グエッヘッヘ

誓子「なーんてのは、さすがに酷すぎるし……」

誠子「ツッコむ前に自分で引っ込めるんだ」

誓子「咲に、本気でそーいうことする女って思われたくないし?」 アハハ

誓子「まあ、それじゃ――」

誓子「私のダブったガチャ景品、何か買い取ってもらうってことで!」

誓子「好きなの選んでいいからさ!」

竜華「ま、しゃーないか」

竜華「でもメダルなんて持ち歩いとらんから、あとでええか?」

誓子「いい、いい!」

誓子「全然いいわ!」

誠子「楽しそうだなー」

誠子「咲はこの後どーすんの」

 


>>296 訂正

誓子「いやー、でもやっぱり強いな―」

誠子「勝っておいて嫌味だなー」 ハハ

誓子「本心本心」

誓子「私には皆や爽みたいなオカルトはないし……」

誓子「ねえ。何か秘訣とかあるの?」

誓子「こう、こうしたらオカルトばひゅーん、みたいな」

咲「ええ?」

咲「特に、そういうのは……」

誓子「よねえ」

誓子「……ねえ、ここから出たら、北海道来ない?」

咲「え?」

誓子「いいわよ~北海道は。涼しいし、海鮮も美味しいし!」

誠子「いいなー、私も行きたいー」

誓子「あはは、来てよー」

誓子「有珠山周りは何もないけどさー」

誓子「麻雀打ってくれたら、きっと皆喜ぶし」

誓子「咲達を連れてくことが、後輩に出来る贈り物かなー、なんて」

誠子「私もあのユキちゃんって娘と戦ってみたかったし、行きたいなあ」

誓子「あはは、来て来て」

誓子「咲もさ。面白い場所や面白い遊び、いっぱい紹介しちゃうから」 ニカッ

咲「はい!」

咲(桧森先輩に気に入られたみたいだ)


>>298 訂正

誠子「さて、自由行動だね」

誠子「咲はどーするの」

誠子「私は暇だから、二人と一緒に商品見せてもらおうかなー、なんて思ってるんだけど」

誓子「えっ、ほんと!?」

誓子「大歓迎よ!」

竜華「……まだほのぼのしとるけど、明日からもうちょい焦燥感でいっぱいやろうからなあ」

竜華「何か買ったら、今のうち資料室片しとくか―」

誓子「私も売ったらさすがに何かしたほうがいいかなあ」

誓子「こっから出て、皆と会って……」

誓子「咲とも遊ばなきゃいけないしね」

誠子「咲はどーすんの?」

咲「私は……」

咲(どうしようかな)


どうする? >>300
A:誰かを部屋に呼んで一緒に過ごす(相手を併記、1名のみ)
B:誰かと一緒に過ごす(相手を併記、3名まで、記載された順番に声をかける)
C:誰かと一緒に探索する(相手と行き先を併記、2名まで、記載された順番に声をかける)
D:一人でどこかに行く(行き先併記)
E:一人で何かをする(行動併記)
F:この中に未来の殺人犯がいるかもしれないっていうのに、一緒になんて居られない!私は自分の部屋に戻る!!
G:そんなことよりオナニーだ!

こっから本編続きやっていきます
申し訳ない


咲(しばらくして――また、龍門渕さんが口を開いた)

透華「物音で下手な不安を与えないようにと、夜の巡回をしていなかったのがいけなかったのですわ……」

透華「施錠し、部屋にいれば全員が安心……」

透華「そんな狭い視野で……」 グッ

やえ「と、透華は悪くない!」

やえ「悪いのは、ナイフをとった犯人で――」

咲(犯人)

咲(その単語に、疑念と一緒に言葉が次々吹き上がってきた)

憩「犯人、かぁ……」

憧「……ま、なくなったんだし、ナイフに足でも生えてない限り誰か盗んだ犯人がいるわよね」

ちゃちゃのん「な、なななななな……」

胡桃「な、ナイフ……って……!」

葉子「はァ!? なんッ……はァ!」

竜華「何か目的があって……やろか」

巴「……公に出来る目的なら、厨房の包丁でもいいですし……」

洋榎「怖くなって護身用に持ってっただけ、と思いたいけどな」


葉子「いや、いやいやいやいやいや!」

葉子「んな呑気こいてる場合じゃねーっしょ!」

花子「だよね」

透華「……では、貴女がたは、どうするべきだと?」

葉子「いや、犯人探すにきまってんだろ!」

葉子「あのナイフ、マジで人殺すのにくらいしか使わねーやつじゃんか!」

花子「さすがにナイフ隠し持ってる奴がいるって思うと、落ち着かないっつーか……」

透華「では、どうやってその犯人を探すつもりで?」

葉子「決まってんだろ、身体検査だ、身体検査!」

那岐「武士たるもの、そう容易く肌を見せるわけには……」

葉子「オメーは前に脱衣麻雀で全裸になってたろーが!」


憧「アタシは反対」

葉子「はァ!?」

花子「……なに? もしかして……持ってたりするわけ?」

憧「んなわけないでしょ」

憧「大体仮にアタシが盗んだ犯人だとしても、持ってくるわけないじゃない」

葉子「……は?」

智葉「ここに居る全員が、武器庫の武器を数えていることを知っている……ということだろ?」

憧「そ」

憧「夜中の内にこっそり盗むのに成功したとしても、朝には絶対バレるのよ」

憧「んで、全員集まっての朝食会」

憧「まあ、ここでバラされると思って間違いないでしょ」

憧「仮に犯人がバレバレだったらここで黙って後から直接、なんてぬるい方法とられるかもしれないけど……」

智葉「バレる可能性が高く、身体検査になるかもしれない場に、わざわざ持ってくる者はいない」


葉子「んじゃ、部屋を見て回れば……」

憧「そうね、あるかもね」

智葉「だが――」

智葉「お前は、自分の部屋を自分抜きで家探しさせれるか?」

智葉「見てない所で自分の部屋に刃物を置かれ、自分のせいにされるかもしれないのに」

葉子「うっ……」

花子「まあ普通に不在で漁られたくはないし……」

花子「全員で行くしかないんじゃないの」

透華「私もそう思いますわ」

透華「でも……」

透華「ナイフを隠している場所が、自室とは限らない」


透華「一応この一時間で三人手分けして探しましたが、見つかってません」

透華「簡単にしか探せてないのですが……」

洋榎「ちょっとこった所に隠されとったら、多分見落としとるわ」

憧「もし自室以外に隠してあった場合、ソレを探さざるを得ない」

憧「部屋まで漁って見つかりませんでした、じゃあ諦めます――なんてできる?」

花子「それは……」

葉子「あ、諦める必要なんてないじゃねーかよ」

憧「……ま、なんにせよ、アタシは自室以外に隠されてると思ってる」

憧「あとでこっそり回収できるし」

憧「何より見つかったとしても、ソレを自分がやったっていう証拠がない」

憧「要するに、見つけたとしても、ナイフを隠し持つ人物がいなくなるだけで、他に成果は得られない」

葉子「それだけで十分だろ!」

葉子「誰かヤベー奴が隠し持つかもしれねーんだから!」

透華「そうですわね」

透華「これが二日目くらいのことなら――そうでしたわね」

やえ「だが、今は――3日以内の制限がある」

憧「一応身体検査をして、部屋を探して、それからナイフを探す……」

憧「こっそり隠し持たれるリスクを考えて全員固まって探すとなると、かなりの時間全員が拘束されることになる」

憧「残り2日しかない中、ほぼ1日くらいを潰して、得られるものは誰もナイフを隠し持ってないって状況だけなの」

透華「……怖い気持ちはわかりますわ」

透華「それでも――期限のことを考えると、私達は、犯人探しをすることなんて出来ませんの」


葉子「ぐっ……」

智葉「大体、犯人が見つかったとしてどうするんだ?」

智葉「拘束するのか?」

智葉「それとも――殺すつもりか?」

花子「なッ……!」

葉子「そ、それは……」

透華「ちょ、辻垣内智葉!」

透華「冗談でもそういうことは――」

智葉「冗談じゃない」

智葉「真面目な話だ」

憧「……犯人見つけてもどうにもできない」

憧「時間をかけて犯人を見つけて、拘束して人員裂いて……」

憧「その犯人を殺して期限伸ばすわけでもない限り、自分達の首を締めるだけ」

葉子「くそっ、わかったよ、ちくしょう!」

花子「……かーなり、やばいんじゃね、これ」


透華「勿論、ただ怯えていただけで、猛省している、という可能性もあります」

透華「そういう方は、私のところまでいらしてください」

透華「……全て見なかったことにしますから」

咲(……誰も、甘い、なんて言えなかった)

咲(犯人を許すつもりの者なんて、一握りしかいないのに)

咲(ただ、犯人を罰する勇気がなかったから)

咲(それに、今はただ、ナイフを隠し持ってる人がいなくなる――)

咲(それだけで、よかったから)

葉子「ああ、クソ!」

葉子「昨日ヒビ入ったんだ、絶対トイレの壁ぶっ壊すぞ!」

花子「……壊れりゃいいけど」

葉子「壊すしかねーんだよ!」

葉子「それに、斧持ってたら、ナイフで挑んでなんてこねーだろ!」

咲(皆、怯えて、ピリピリして……)

咲(ぱらぱらと、食堂から、立ち去っていった)


胡桃「ごめん……先、部屋、戻るね」

ちゃちゃのん「ちゃ、ちゃちゃのんも、一回お部屋で頭落ち着かせてくるけえ……」

咲「あ、はい……」

咲(私は、怖くて立ち上がれなかった)

咲(いつの間にか、自分が小刻みに震えているのがわかった)

咲(視界の端で、安河内先輩がお皿を下げている)

咲(その顔は、とても不安そうだった)

咲(……いつもそうな気がするけれど、それ以上に)

誠子「咲」 ポン

咲「ひゃっ……」

誠子「そう怯えられると傷つくな……」


誠子「あのさ、ちょっとお喋りしない?」

咲「……へ?」

誠子「ぶっちゃけ、私も考えるのとか苦手なんだよね……」

誠子「あんま得意じゃないっていうかさ」

誠子「かといって、龍門渕さんや愛宕さんみたいなカリスマ性もないし」

誠子「体動かすかーとも思ったけど、ちょっとあの子達ピリピリしてるし」 アハハ・・・

咲「……そう、ですね」

誠子「それに、咲には聞きたいこといっぱいあるんだ」

誠子「……大星がどうだったのか、とかさ」

咲「大星さんですか?」

誠子「そ、私の可愛い後輩」

誠子「淡の奴、あれからずっとリベンジに燃えてて可愛いんだこれが」 タハー

誠子「でもなんか今一スランプを抜け出しきらないみたいでさ」

誠子「で、折角だから、打ち破ったライバルのコメント聞いといてやろうかな―って」

誠子「そうすれば……大星のやつも、多分喜ぶだろ」

咲「……そうですね」

咲(興奮すると下の名前で呼ぶんだ……)

咲(……そっちの気がある人、とかじゃ、ないよね……)


巴「……」

誠子「……ここだと邪魔だろうし、談話室行こっか」

咲「……ですね」

咲(確かに、一人でいると気が滅入るし……)

咲(この人と喋ってる方がいいかも……)

咲(でも――後に私は、このときの行動を後悔することになった)

咲(今は、まだ、そんなこと、知る由もなかったけれど……)


<談話室>

咲(結構長い間、亦野先輩と話していた)

咲(どうやらフレンドリーな先輩、という感じで、とても話はしやすかった)

咲(洋榎先輩とはまた違う、なんていうか、その、あんまり敬意を感じないから楽な先輩という感じだった)

誠子「そっかー、普段の宮永先輩そんな感じなんだ……」

咲「はい」

ガラッ

咲「っ」 ビクッ

花子「ありゃ」

花子「まっさか談話室に人がいるなんてなー」

咲「ど、どうも……」 ペコ

誠子「お疲れさんでーす」

誠子「壁どーです、壊せそうです?」


花子「いや、ぶっちゃけどーも怪しいんだよね」

花子「全然あれから進まないし……」

花子「んで、もっと他にまともな場所探そうってなったんだけど……」

花子「葉子の奴、意地になってトイレをガッツンガッツンしてっからさあ」

花子「手分けすることになったわけ」

咲「それで、談話室を壊しに……?」

花子「違う違う」

花子「サボりだよ、さーぼーり」

花子「薄々これ無理じゃね、って思っててさ」

花子「まさかこの空気の中談話室で二人っきりで談話してる人いるだなんて思わなかったし」

花子「ああ、ちなみに今の、一応褒め言葉ね」

咲「は、はあ……」


咲「でも……じゃあどうするんですか?」

咲「期限は、もう明日しか……」

花子「えー、それ言わるの?」

花子「ここでサボってる二人と一緒だと思うんだけど」

誠子「……」

咲「?」

花子「ぶっちゃけさあ」

花子「多分――誰か、死ぬと思うんだよね」

咲「なっ……!」

花子「そりゃ最初は護身用だったかもしれないけど、このペースだと絶対耐え切れず人殺すって」

花子「勿論私は殺したくないし、殺しを肯定なんてしないけどさ」

花子「……でも、死にたくはないし、こーして堂々とナタを持って身を守りつつサボってるってわけ」

花子「部屋こもると武器持てないし、一回こもると怖くて出られなくなりそーじゃん」

咲「そ、そんな……」

花子「私だってそれが正しいとは思わないけどさ」

花子「まあ客観的事実ってやつ?」

誠子「だからってそんな言い方――」


ガラッ

那岐「おっ、人発見~」

花子「うわ、馬鹿がきた」

那岐「失礼な」

那岐「ところで……トイレを壊してたんじゃ」

花子「そのくだりさっきやったんだよねー」

誠子「サボりだってさ」

花子「別行動で壊せる場所を探してるって言ってよ」

誠子「座ってカップ麺入れてるじゃん」

花子「いいじゃんいいじゃん、ほら口止め料でいっぱいもってきたヌードルあげっからさあ」

誠子「倉庫に無料でしこたまあるやつだしそれ」

那岐「おいおい無視かー、泣いちゃうぞー」

咲「あ、あの、新免、先輩?は、壁は……」

那岐「いや、なんかお前はもういいってキレられてな」

花子「いやー思った以上に役に立たねえの」

那岐「そこで私は、考えた」

那岐「私は孤高の一匹狼だ」

誠子「え、そう?」

花子「せめてもーちょいそれっぽく振る舞ってよ」

咲「ま、まあまあ……」

那岐「だが――たまにはデレて、皆のために持てる力をふるおうと!」

誠子「デレる……って、また武人っぽくない言葉のチョイスを」

花子「あいつ本当に何か力持ってると思う?」

咲「あ、あはは……ノーコメントで……」


那岐「まあ、見て驚け」

那岐「これが!」

那岐「武士道だッ!」 ババッ

花子「ゲエーーーッ、脱いだ!?」

誠子「こ、これは……!」

那岐「ふっふっふ……」

那岐「前回、さらしを褒められると同時に、下にはないのか、と言われてからずっと調べていたのだ」

那岐「すると、資料室に、武士についての本があった」

花子「えっ、そんなのあんの」

誠子「まあ小説もあったらしいし……」

咲「刀のハウツー本とかかも……」

那岐「古来より、真の武士は、なんとふんどしというものを衣服の下に身に着けていたのだ!!」

誠子「うへえ、なにそれ」

花子「なっが! きっも!」

咲「それで、制服じゃなくて倉庫のジャージに着替えてたんですね……」

那岐「これな、夜時間にチクチクと裁縫道具と倉庫の布で自作したんだ、すごいだろ!」

花子「いやまあすごいけど……」

誠子「毎日これ作って寝坊してたのかと思うと……」

咲「あ、あはは……はは……」


那岐「そして……これを……」

誠子「油性ペン?」

那岐「こうだ!」 キュキュキュキュキュー

那岐「古来より、こうして武士は体に文字を彫り、仲間にエールを送ったとされる!」

花子「掘ってはなくねー?」

誠子「しかも文字ガタガタだし……」

咲「っていうかあれ……闘うって書きたいんでしょうけど……」

誠子「うん、文字、間違ってるね……」

那岐「どうだ、感じてくれたかな?」

花子「何を」

那岐「このあふれる武士の魂……」

那岐「女だてらの漢字の漢と書いてオトコの魂……」

那岐「ギトギトにあふれんばかりの私の魂、エナジィを!」

那岐「その体に注ぎ込まれるように感じ取り、あふれるパゥワーに換えられそうか!?」

花子「葉子ーっ! 葉子頼むお前の先輩への敬意0の容赦無いツッコミでこいつぶん殴りに来て!!」


那岐「まだ、駄目か?」

那岐「ここまでしてもまだ私を武人と認められないのか……」

花子「あーもう、どっからツッコんだらいいわけ?」

誠子「いや、私にも正直……」

那岐「では――こいつを見てもまだ私を認められないかな?」

シャッ

花子「あのさ、おもちゃを抜くのは――」

誠子「って、ちょ、これ――」

咲「ほ、本物!?」

那岐「はっはっは!」

那岐「当然だろう?」

那岐「このムラマサはお祖父様が私に下さった本物の刀」

那岐「言うならば先祖代々受け継いできた武士の魂、ソウルオブ武士!!」

花子「何で言い直した」

那岐「ほらほらどうだ、あふれるYAMATO★DAMASIを感じるだろう?」 ハァハァ

誠子「いやー、その……」

花子「ちょ、こっちむけんな!」


花子「それこそ没収しろよ龍門渕!」

那岐「いやー、初日に没収されかけたんだが……」

那岐「泣いて全力で駄々をこねたら許してもらえたぞ!」

誠子「武士の誇りは?」

那岐「何を言っているんだ、刀に勝る武士の誇りはないんだぞ」

誠子「ああ、そうなんだ……」

那岐「まー、それに、コレで人が死んだら私ってバレバレになるからな」

那岐「ルール的に無いだろうと思ってもらえたんだ」 ハッハッハ

花子「……それ奪われそうな脳みそしてそうだから不安がってんだよ」

那岐「安心しろ、こいつは武士の魂」

那岐「片時も離さず持っている」

那岐「対極室にも持ち込んだし」

誠子「そういや話題になってたな……ヤバイ人がいるって……」

那岐「照れるな」

花子「いや褒めてはなくね?」

誠子「うん、褒めてはいないかな私も世間も」

咲(堂々と危険物持ち込む人はやっぱり違うなあ……怖い……)


那岐「寝食だって共にしてきたんだぞ」

花子「そーいや食堂でも常に持ってたな」

誠子「盗まれる心配はない……のかな」

那岐「お祖父様がくれた小6のあの日から、寝る時もずーっと一緒で」

那岐「今ではこいつを抱えてないと眠れぬ体になったんだ」

花子「病気っしょ、それ……」

誠子「高3ですよね……?」

咲「……」

咲(和ちゃんのことがあるから、あんまり強く言えない……) ゲッソリ

那岐「こいつには、長年一緒に居て、私の汗も涙も寝小便も染みこんでるんだ……」 フッ

花子「きったな! そんな汚いモン飯の乗ってるテーブルに置かないでほしいんだけど!!」

誠子「っていうか、小6で貰って寝小便が染み付いてるって……」

咲「あ、あはは……」

咲「そ、その、おねしょって生理現象だし、あんまり言うのも……」

花子「……そこだけやけに庇うじゃん」

花子「もしや……」

咲「ち、ちちち違います! 私は、おねしょなんて……!」


花子「その割には剣の腕はへっぽこなんだよね」

花子「ナタ持った時のフォームの汚さったら」

那岐「なっ、馬鹿にするなよ!」

那岐「これでも武士に憧れて、高校の時からずっと習ってるんだからな!」

花子「思ったより遅ッ」

誠子「一般的な剣道部と大差ないね……」

那岐「それでも私には受け継いだ武士ソウルと天賦の才があるからな」

那岐「2年に1人の逸材と言われたほどだ」

誠子「多分だけどそれ……褒められてないよ?」

花子「道場内でも結構ヒエラルキー低い扱い受けてるんじゃあ……」

誠子「しっ! あんま言わないでやろうよ!」

那岐「私のフォームだって、よく先生に褒められたものだ」

那岐「そのフォームで刀を振れば、きっと綺麗に二遊間を抜くセンター返しを打てるだろうって」

花子「絶対褒められないからソレ」


那岐「そこまで言うなら、私の秘伝の奥義を見せてやろう」

花子「あーはいはい、何すんの?」

那岐「そこの作りたてのカップ麺!」

那岐「ソレを借りる」

花子「これ?」

誠子「ツッコミ損ねてたけど……多いよね、数」

花子「折角だし普段できない無駄な贅沢したくてさ」

花子「全種類同時に開けて、食べ比べたり一緒に食べてどうか実験しようかなって」

咲「楽しんでますね……」

那岐「そいつを使うぞ」

花子「いいよ」

花子「どーせいくつか口止め代わりこの子らにあげるやつだったし」

誠子「いや自分のあげてよ」


那岐「これを――」

花子「何? ぶった切ってくれんの?」

那岐「刀に乗せる」

花子「……」

誠子「……」

咲「……」

那岐「はい! 落ちない!」

花子「すごいけど地味!!」

誠子「っていうか、すごいけどあんまり武士関係ない!!」

那岐「まるで手足のように刀と過ごした私だからこそ出来ることだ」

那岐「リモコンをとったり……自販機の下に入ってる小銭を取ったり……」

那岐「今では細かい作業も全てこいつでできる!」

花子「武士の魂何だと思ってんだろコイツ」


那岐「では、これならどうかな?」

花子「うおっ、三種のカップヌードル全てを置いた!?」

那岐「まだ2つくらい全然乗るぞ!」

那岐「たださすがに両手で支えてないとぷるっぷるするから乗せてくれ」

花子「しょうがねーなー」

誠子「……なんか楽しくなってきてない?」

花子「ま、こんな空気出し、ちょっとは息抜きね」

咲「えっと……これでいいですか?」

那岐「そうそういい感じ」

花子「んじゃラスト――」

那岐「あ、まって、そっちじゃない」

那岐「うん、もうちょい右」

那岐「あ、私から見て。そうそうそんな感じ」

那岐「あ、もーちょい奥。そう。こっち側」

那岐「はいおっけーーーーい!」

誠子「何だろうこの空気……」

咲「……」

咲(でもちょっと楽しい……)


那岐「はっはっは!」

那岐「孤高の一匹狼だったこの武士オブ武士の私の力で、再び笑顔と結束をもたらしてみせよう!」

那岐「成功したら大きな拍手を!」

那岐「奇跡の大技に挑戦するぞ!」

花子「もう武士じゃなくて大道芸人みたいになってるし……」

那岐「なんとこのまま、階段を登り降りします!」

花子「マジで!?」

誠子「ちょっとすごいかも」

咲「ですよね……普通にやったら、あの剣先が上の段にあたっちゃうし……」

咲「どうやって登るんだろう……」

那岐「……」

那岐「なんとこのまま、階段を降ります!」

誠子「あっさり訂正した!」

花子「しょっぱくなったな! いっそそのまま回転とかしてみろよ!」

那岐「いや、無理に決まってるだろ!」

那岐「私は武士であって、大道芸人じゃないんだぞ!!」

花子「いや芸人っしょ限りなく」


那岐「ではアシスタントに……」

那岐「従順そうな宮永咲!」

那岐「君を指名しよう」

花子「やっぱり大道芸人じゃね、これ」

那岐「まあ私こんな状況だからな」

那岐「ドア開けてくれ」

咲「あ、はい」

那岐「よーし、そうしたら、私の前を歩いて……」 プルプルプルプル

那岐「人と会ったら危ないし、先導して」 プルプルプルプル

花子「地味な見た目だなー」

那岐「こ、これ意外とすっごく難しいんだぞ!」 プルプルプルプル

誠子「それは分かるけど……」

花子「重みに筋肉が負けて腰がどんどん落ちてきてるし」


<廊下>

那岐「ふーっ、ふーっ……」 プルプルプルプル

花子「大丈夫?」

花子「階段まで持つ?」

那岐「任せておけ」 プルプルプルプル

那岐「武士をなめるなよ……」 プルプルプルプル

誠子「あ、悪いんだけど、ちょっと階段見てきてくれない?」

誠子「一応本物の刀の剣先で危ないし……」

誠子「誰かとばったりあったら危ないからさ」

咲「あ、はい!」

咲「ええっと、階段下は大丈夫そう」

咲「上は――」

咲「あっ」

華菜「おっ」


華菜「あれ、何やってんだ?」

咲「あはは……いや、ちょっと……」

咲「池田さんこそ、それは?」

華菜「ああ、これ?」

華菜「さっき要らないアイテムを売るって話聞いてさ、やっとこうかなーって」

華菜「ピリピリしてるから、こういうときにこそノホホンする必要もあるんじゃないかなーって」

華菜「確かに時間との戦いだけど……」

華菜「私達は仲間であって、争い合う必要なんてないしな!」

咲「池田さん……」

咲「あ、私達も、強いていえばそんな状況で……」

華菜「うわ、なんだあれ」

咲「……あの状況の新免さんが、今からこの階段を降りる芸を見せてくれるんだそうで」

華菜「はー……すごいなありゃ」

咲「じゃあ私、もう一回ばったり会って事故らないよう下の方を見て――」

那岐「ふぎゃっ!」

咲「えっ?」


咲(新免先輩の変な声に驚いて振り向いた私が見たもの)

咲(それは、派手に転倒する新免先輩と、宙を舞うカップ麺で――)

花子「う、うわっちいいいいい!!」

華菜「ふぎゃあああああああああ!!」

咲(割りと出来立てのカップ麺を浴びた2人の絶叫と)

バラバラバラバラ

華菜「ふにゃっ!」

咲(反射的にぶちまけられた大量のガチャ)

咲(そしてそれを踏んづけ転倒する池田さん)

那岐「ぐえっ!」

誠子「ばっ、危ないから刀をしまって!!」

咲(ギャグのようだけど、かみ合わせが悪ければ刀で誰かが死ぬ地獄絵図)

咲「だ、だだだ大丈夫ですか?」


咲「とりあえず立って……」

那岐「あ、ああ――!?」 ズルッ

ヒュバッ

誠子「あ、危ない!!」

咲「……」

咲「あ!」

咲「亦野先輩、扉! 扉です!」

咲「扉にふんどしが挟まっているんです!!」

誠子「そ、そうか、だから転倒を――」

咲(刀のせいで、ギャグっぽくてもこっちは必死で)

咲(何やらチャイムの音がしたけど、それどころじゃなくて)

咲(もう、こんな時に――)

咲(そんなことを思いながら聞き流そうとして)











モノペン『死体が発見されました!』










咲(聞き流すことなど出来ず、目の前の危機も忘れたように、凍りついた)


咲(まだ頭上では阿鼻叫喚の声が聞こえてる)

咲(たまに、「うおっ、あぶな!」なんて声も飛び交ってる)

咲(だけど、意識はふわふわしていて)

キャアアアアアアアアアア

咲(意識が再び覚醒したのは、階下から悲鳴を聞いた時だった)

咲「い、今の悲鳴……」

華菜「な、何が……うわっ」 ズルッ

誠子「咲! 先に行け!」

誠子「この惨状をどうにかしないとここ通れないし……」

ヒュバッ

誠子「あぶなっ!」

那岐「なんだ!? 何もみえない! 敵襲か!?」 ブンブン

誠子「ふんどしが顔に絡まってるんだよ!!」

誠子「なんとかしてやるから落ち着けって!」

誠子「いいから先に行って、早く!」

那岐「さ、咲だけにか……?」

誠子「良いから黙ってて!」

那岐「でも熱くて反射的に体があ~~~~~!!」 バタンバタン

咲「――っ!」

咲(命がけのわりにどこかコミカルな惨状に背を向け、階段を駆け下りた)


咲(張り裂けそうなくらい胸が痛い)

咲(嫌な予感が止まらない)

咲(開け放たれたガチャルーム)

咲(でもそこに用はない)

咲(横目に見ても、案の定誰もいない)

咲(きっと、人が集まっているはず)

咲(焼却炉でもないとしたら、場所は一つ!)

咲「あっ――――」

咲「ひっ、桧森先輩ッ!!」


誓子「あ、ああ……さ、咲ちゃん……」

咲(壁に体重を預け、震える桧森先輩)

咲(さきの悲鳴も、きっと桧森先輩のものだろう)

誓子「あ、あれ……」

咲(震える指で、桧森先輩が指を差す)

咲(開け放たれた、武器庫の中を)

咲「う……あ……」

咲(開け放たれているから、中の様子がよく分かる)

咲(ぺたりと腰を抜かしたように座るささのん先輩と)

咲(立って“その光景”を見下ろしている辻垣内先輩)

咲(そして、その中央)

咲(泣き叫びながら、名前を呼ぶ胡桃先輩の腕の中で――)











咲(血塗れの洋榎先輩が、眠るようにして、死んでいた――――)









 

ようやく非日常編が始まりますが、用事があるので中断します
今夜はお休みします、申し訳ない

予定通りが一番よ
難癖つけてくる奴は思い通りにならないと荒らしたりするから安価は危険

し、死体だけは安価で頼む…(咲だけは無効で)

>>1が入れ替えられるキャラを選択方式の安価にしたら?それなら公平だと思う

予定通りでいいよ

安価希望
じゃなきゃ好感度あげる意味がない

決まってるならわざわざ安価にしなくてもいいんじゃね

せっかくだし安価がいい。ネキの時は驚いたから心の準備的な意味でも。

プロット通りのほうが色々面倒なくていいよ

コンマ安価いいと思うの

イッチが決めたキャラなら納得できるからそのままで

予定通りでいいんじゃない

安価といっても結果被害者が誰になったはは>>1以外はわからない形式なんだよね?
じゃあ安価でもいいかな

安価でいいんじゃない?

安価で

選択式でも安価で死人を決めるとか嫌杉ww

どうせなら選べる方がいいなあ
誰かは死ななきゃ進まないわけだし
残したいのというか救いたいのは選べたら嬉しい

安価は反対
選択肢に出てきたキャラはクロにならないって分かっちゃうし

>>407
同意

役所入れ替え可能なんだし選択肢に出てきてもクロじゃないってことにはならないはず
だから安価に賛成かな

めんどくさそうだから安価いらんわ

一部でも安価あるなら安価かな

>>405
例えばコンマだったら裏で作者が数字がいくつだったら誰が被害者とか決めてるってこと
選択肢でもキャラ名そのものの選択じゃなくて選択肢選んでも誰が被害者かわからないような選択肢で作者のほうは裏でその選択結果が
どうなるか知ってるってこと
けっこうよくあると思うけど

>>416
もし安価コンマでやるならこれがいい

安価じゃないパターンもあるんだし
安価パターンも見たい

コンマならまだしも安価はさすがにない

安価でいいよ、選べる幸せ

推理ものなんだし、安価より最初の予定通りやってもらう方が完成度高くて面白いと思うんだけど

ダンロンが元ネタだし選択肢は多い方が普通だよね~

事件が起こる前に被害者が誰か知ってると読むときに穿ってみてしまうからもし安価になってもオープンじゃない方がいい

ならここでは安価がいいね

そもそもなあ、安価で死人決めるって、死んでもいいと思うキャラを安価に挙げる行為なわけじゃん
絶対荒れるって

予定通りでいいでしょ
今ですら荒れかけてるし、荒れる覚悟はいるよ安価は

死ぬなら好感度あげる意味ないっつーけど、そもそも好感度上げてもなんもないって>>238で言われてるし
誰が死ぬか素直にワクワクしながら読みたい

安価とか荒れる要因にしかならないしやめて欲しい
予定が決まってるのに安価する意味ないわ

もう安価なしにさせてやったら?
どうせ安価ありにしたらコイツら荒らすよ?
粘着質な上に決めつけ激しいしね

安価がない方が伏線とか張りやすいし、安価なしがいいです。

そういうのは>>1次第なんで読むほうとしては安価ありがいい!

普段の過疎具合から想像もつかないくらい人が居てビビってるし、集計の面倒臭さにキレ倒してるよ
集計してくるからここで打ち止めね

これで間違ってないと思うけど、間違ってたら指摘して頂きたい。
多数決により死人は安価なしで行こうと思います。

【安価なし】
>>389>>392>>395>>397>>399
>>400>>404>>407>>409>>414
>>422>>431>>433>>434>>436

【安価あり】
>>390>>391>>394>>396>>398
>>402>>403>>406>>410>>415
>>421>>423>>428>>437


>>401は分からない形式なら安価がいいってニュアンスのこと言ってるけど、そういうシステムではないので、今回は無効票扱いで。
???でやるのはアンフェアだし結局荒れるだろうなと思うので

他にも微妙なニュアンスで「○○なら××がいい」「○○なら嫌だから××で」みたいな感じのがあったけど、
「いや別に○○ってわけじゃないよ」なやつは判定面倒なので申し訳ないが一律無効票にしました
>>417 → >>416じゃないし、安価コンマへの要望だから安価希望には含めなかったよ
 >>419 → 安価になったら安価じゃないパターンなんてないよ
 >>420 → コンマになる可能性もあるけどならない可能性もあるので悪いけど無効票だよ
 >>424 → ごめんねオープンだよ。でも安価反対とまで書いてないから中立扱いだよ
 >>429 → 荒れることへ危惧だけだと判断したよ)


咲(いつのまにか……悲鳴をあげていた)

咲(後ろからドタドタと足音が聞こえて)

咲(後ろから、さらなる悲鳴が聞こえて)

咲(頭がぐちゃぐちゃになって)

咲(炎と死の記憶が、洋榎先輩の死をキッカケに掘り返されて)

咲(脳みその許容量を大幅にオーバーして)

咲(気がついたら、意識を手放していた――)

普通に見落としてたわ
じゃあ同数ですね
どーすんだこれ

3人ほど安価予定だったので、とりあえず1人安価、1人非安価、
残った1人はとりあえず先になるので保留しときます。
確実にやる安価がコンマ予定なんので、再度安価出すなら選択肢出して選べるようにします。


<ホール>

咲「……はっ!」

咲「夢……?」

透華「じゃ、ありませんことよ」

咲「え……」

やえ「起きたか……」

咲「ここ……ホール……?」

華菜「気絶したお前を運んだんだよ」

華菜「重かったんだからな」

咲「な、なんでホールに……」

咲「そ、それより、夢じゃないって……」

咲「洋榎先輩が!!」

透華「落ち着いてくださいまし!」

咲「」 ビクッ

透華「……ごめんなさい、私も、少々心にゆとりがありませんわ」

やえ「それに……どうやら始まるようだぞ」

咲「始まる――って……」

エトペン「うぷぷぷぷぷぷ、ようやくみなさん起きたようですね!」


咲「も、モノペン!?」

咲「な、なんで――」

やえ「奴が、ここに集まれと言ってきたんだ」

透華「……」 ギリッ

モノペン「うぷぷぷぷぷぷ」

モノペン「いやー、やっぱり死にましたね!」 イヤッホーウ

モノペン「そりゃそうですよね、死にたくありませんもんね!」

モノペン「おめでとうございます、これで毒ガスは回避です!」 ウププ

花子「ちっ……」

葉子「野郎……」 ギリッ

誓子「そんな言い方って――!」

恵「ちょ、だめですって歯向かっちゃ」

モノペン「うぷぷぷぷぷぷ」

モノペン「みなさんは、洋榎さんを殺した犯人、クロに感謝しなくちゃいけません」 ウププ

誓子「……!」

恵「お、落ち着いてくださいって」

モノペン「ですが、それはそれです」

透華「……」 キッ

やえ「一体何を……」


モノペン「確かに人が死んで、三日以内のルールは解除されました」

モノペン「でも……」

モノペン「まだ終わってないルールがあるよね?」 ウププ

那岐「?????」

憧「……合宿規則の7、でしょ」

モノペン「ぴんぽんぴんぽーん!」

モノペン「さすが新子憧サン、頭がいいだけありますね」

モノペン「知的です・て・き、でございまーす」 ブヒャヒャ

憧「そーいうのはいーから」

モノペン「ピンポンピンポン大正解だけに、頭脳の星の一等賞がよかった?」

智葉「茶番は十分だ」

智葉「……他の人に自分が“クロ”だとバレてはいけません」

智葉「これのことを言っているんだろ」

憧「そう」

憧「誰か一人、洋榎を殺した人間はここを出る」

憧「ただし、誰にもバレてなければ――ね」

モノペン「うぷぷぷぷぷぷ」

モノペン「その通りです」

モノペン「そこで――“学級裁判”を、開始したいと思います!」

咲「学級……」

桃子「裁……判……?」

モノペン「クロだとバレているかどうかを判断するにはどーしたらいいのか……」

モノペン「そんなみなさんの疑問にお応えするのが、この“学級裁判”なのです!」

モノペン「ま、学級要素はないんですけど、ただの裁判とも違いますからね」 ウプププププ

モノペン「麻雀裁判とかじゃ、しまらないでしょ?」

葉子「ん、んなこたァどうだっていいんだよ!」

誓子「な、何よ、何なのよソレ!」


モノペン「学級裁判は、殺人が起きた数時間後に開催されます!」

モノペン「学級裁判の場では、殺人を犯した“クロ”と……」

モノペン「その他の生徒である“シロ”との対決が行われるのですっ!!」

花子「た、対決……?」

恵「た、対決って……い、一体……」

モノペン「学級裁判では、『身内に潜んだクロは誰か?』を、オマエラに議論してもらいます」

モノペン「その結果は、学級裁判の最後に行われる“投票”により決定されます」

モノペン「そこで、オマエラが導き出した答えが、正解だった場合は……」

モノペン「秩序を見だしたクロだけが“おしおき”となりますので、残ったメンバーは強化合宿を続けてください」

華菜「…………は?」

透華「……」 ギリッ

モノペン「ただし……もし間違った人物をクロとしてしまった場合は……」

モノペン「罪を逃れたクロだけが生き残り、残ったシロ全員が“おしおき”されてしまいます」

モノペン「その場合、もちろん強化合宿は強制終了となります!」

モノペン「以上、これが学級裁判のルールなのですッ!!」


花子「な、なななななァ!?」 ガクガク

葉子「ン……だよそれ!」

誓子「聞いてないわよ、そんなこと!」

モノペン「そうですよ、だって学級裁判についてはまだ誰にも言ってませんから」 キョトーン

誓子「ふ、ふざけんじゃないわよ!」

華菜「そ、そうだ! フェアじゃないぞ!!」

モノペン「今回の補足説明で初めて言いましたけど……」

モノペン「質問されていたら、ボクだってちゃんと答えてましたよ?」

モノペン「でも、誰もそのルールに関して質問してこなかったんだもん」

モノペン「君達風に言うのなら――」

モノペン「聞いてないわよ、そんなこと」 ウププ

モノペン「なーんてね、あーっはっはっは」

誓子「こ……の……!」

葉子「っざけやがって……!」


透華「……一応、聞いておきますわ」

透華「さっきから仰っている、“おしおき”というのは――」

モノペン「もう、やだなあ」

モノペン「オリエンテーションで説明したのを忘れちゃったの?」

モノペン「処刑だよ、ショ・ケ・イ!!」

智葉「……」

憧「ま、そうなるわよね……」

モノペン「電気イスでビリビリ!」

モノペン「毒ガスでモクモク!」

モノペン「ハリケーンなんちゃらで体がバラったりってヤツだよ!」

モノペン「ああ、なんちゃらトレインと違って、ボクがバラったりすることはないからね!」

モノペン「ボクは立派な近代おもちゃ、そんなヤワではないのです」

ちゃちゃのん「いや……いやぁ……」 ブルブル

胡桃「……」 ブルブル

透華「つまり……」

透華「犯人を当てれば、犯人だけが殺されますが……」

やえ「もし犯人を外せば――」

華菜「ひっ、華菜ちゃん達全員が処刑されるぅ!?」

モノペン「賢い猫ちゃんだね!」

モノペン「さりげなく自分が犯人じゃないとアピる小技もグッド!」

モノペン「細かい所に気を配れたり小技を使えるのは、麻雀にも大事だもんね!」


モノペン「つまり、外の世界で言う裁判員制度ってヤツだよ」

モノペン「犯人を決めるのはオマエラって訳」

那岐「な、なあ、これ、ひょっとしてヤバイんじゃ……」

葉子「ひょっとしなくても最低で最高にやべーんだよクソっ!」

モノペン「ただし、判断は慎重にね」

モノペン「オマエラ全員の命がかかってるんだからさ!」

モノペン「ま、クロは除くんだけどね」 ウププププ

モノペン「じゃあ、今のルールも電子手帳に追加しとくからさ、各自ちゃんと確認しとくんだよ!」 ソウソウ

やえ「ふざけたことを……!」

咲「なんで……こんな……」

モノペン「ふざけてないですよ、ボクは大真面目です」

モノペン「そんなわけだから、死にたくなかったら、クロを見つけなくてはなりません」

モノペン「大丈夫、いいヤツばかりじゃないけど、悪いヤツばかりでもないからね」

モノペン「学級裁判までの時間は、皆で協力して捜査をしましょう!」


花子「ちょ……待ちなよ」

花子「アンタの言ってることって……無茶苦茶じゃんか!」

華菜「そ、そーだそーだ!」

モノペン「んぁ……?」 キョトーン

誓子「何が学級裁判よ!」

誓子「私達を……洋榎の命を弄んで!」

葉子「ざっけんなっつーの!」

那岐「わ、私だって、そんなの参加するの嫌だからな!!」

モノペン「……どうして?」 キョトーン

誓子「どうして、じゃないわよ!」

誓子「なんで私達が犯人当てなんて……」

誓子「それも、殺し合いみたいな形でしなくちゃならないのよ!」

やえ「まったくだ!」

やえ「大体、今の時点で誰も犯人が分かってないのは明白な以上、クロだけでもここを出るべきだ!」

やえ「人を殺したのは許されないが……それは法が裁くべきであって、私達の仕事じゃない!」

透華「確かにそうですわ。出る権利がある人がいるなら、出るべきです」


モノペン「なんとっ!」

モノペン「学級裁判に参加しないですとっ!」

モノペン「そんな事言う人には罰が下るよ!?」

智葉「……」

華菜「は? 罰……?」

那岐「あ、はい、じゃあ私は参加――」

葉子「ぅおいコラ!」

モノペン「暗くてコワーイ牢屋に閉じ込めちゃったり……しちゃうかもね」

憧「牢屋……?」

那岐「裁判さいこーう!」

葉子「ふざっけんなテメェ!」

誓子「私は絶対に嫌だから!」

誓子「そんな……そんな悪趣味なゲームみたいなこと!!」


モノペン「そんな身勝手な」 ビックリィ

モノペン「卓上では個人競技でも、協調性はとっても大事ですよ?」

葉子「何が協調性だ馬鹿!」

花子「身勝手なのは、そっちだろッ!!」

誓子「こんなことにならなきゃ、洋榎だって……!」

誓子「大体、誰かだって、手を染めることなんか……!」

華菜「そうだそうだ、お前が一番身勝手じゃないか!」

やえ「殺し合いが見たい? 知ったことか!」

やえ「私達には、そんなもの関係ないッ!!」

モノペン「ええ、物分りが悪いなあ……」

モノペン「目の前の圧倒的な悪の迫力と数の暴力に……正直ブルッてるぜ」

モノペン「だ、だけどなぁ……」

モノペン「ボクは悪に屈する気はない……」

モノペン「最後まで戦い抜くのがモノペン流よ……」

誓子「……ッ!」 カチン

モノペン「どうしても裁判をせずに帰りたければ……」

モノペン「ボクを倒してからにしろーーーッ!!」 ガオーッ


咲(正直……)

咲(私は、まだ、頭が混乱していた)

咲(ここにきて、最初に出会った洋榎先輩が――)

咲(短い間だったけど、とてもよくしてくれて、心の支えになった人が)

咲(無残に命を奪われた)

咲(その事実が受け入れられず、でも目を背けることも出来ず――)

咲(ただただ、呆然とするばかりだった)

咲(そんな私の目の前で、怒りの感情を抱えていた人達が、感情を爆発させている)

咲(体を抱え、ガクガクと震える胡桃先輩やささのん先輩とは違う形で、きっと心をすり減らしているんだ)

咲(そんな怒った人達に、ガオー、なんて言いながら、モノペンがテトテトと突進していた)

咲(そして――――)


モノペン「ぎゅむっ……」

誓子「はい、これで満足?」

やえ「よし、そのまま取り押さえるぞ!」

美子「はじめっから……こうしいてればよかったと……」

葉子「っしゃ!」

葉子「腕だ腕、あの原村和のヤツと同じなら、腕がもげやすいはずだ!」

恵「こうなったら、さっさと無力化しちゃわないと……」

華菜「反撃に気をつけるし!!」

花子「こんにゃろ、洋榎の仇!」 ゲシゲシ

那岐「あ、あわわわわ」

葉子「手伝え、テメーも!!」

葉子「腰にでっかい獲物ぶら下げてんだろーが!」

那岐「で、ででででも……」

葉子「ああもう、いいから刀だけでもよこせ!」


咲(その騒動を見ても、私は動けなかった……)

咲(呆然と、眺めることしか出来なかった……)

透華「皆さん落ち着いて――」

モノペン「……君達こそ、これで満足?」

花子「……は?」

誓子「何を――」

モノペン「監視者であrモノペンへの一切の暴力を禁止します」

モノペン「電子手帳の規則にあったよね?」

華菜「――――っ!」 ゾッ

モノペン「規則違反だよね」

透華「いけません皆さん、そいつから離れ――」

モノペン「召喚魔法を発動する!」

咲(そう――呆然と、眺めることしか、できなかった)

モノペン「助けて! グングニルの槍槓ッ!!」

咲(大切な仲間が――また一人、命を落としてしまうのを)

ちょいちょい書き込みあったし、起きてくる人もおるやろと判断して安価飛ばします。
ちょっと遠目に飛ばしておくんで、長時間取られなかったら中断して夜に再開するんで、誰かとっておいてください。
死にやすい奴死ににくい奴がいますが、仕様です。
殺したいキャラがいる方は頑張って狙ってください。


誰がグングニるか >>470のコンマで判定
00~09:浅見花子
10~39:安河内美子
40~49:上柿恵
50~69:小走やえ
70~99:桧森誓子

踏みたくないけど踏まないと進まないから・・・

チカセン引いたらごめん


グシャ

グサグサグサッ

花子「――――あ?」 ゴフッ

葉子「お、おい……」

恵「ひっ……」

那岐「あっ、あばばばば……」

花子「……んで……私が……」

誓子「は、花子!」

花子「……くそったれ……」

咲(モノペンから飛び出した、点棒を模した鋭い槍)

咲(それが、何本も、浅見先輩の体を貫いていた――)

花子「……ッ」

咲(浅見先輩は、最後にカッと目を見開くと……)

咲(そのまま……2度と動かなくなった……)


胡桃「な、なに……?」

恵「こ、これ……って……」

那岐「ウ、ウ、ウソだ……」 ジョロロロ・・・

華菜「ウソだあああああああ!!」

透華「ああ……そんな……」 ガクリ

ちゃちゃのん「も、もう嫌じゃよお……ヒロちゃん……ヒロちゃあん!」

モノペン「ボクはいま、痛感しております」

モノペン「“お約束”というものの偉大さを……」 ムクリ

美子「ひ……っ!」

やえ「み、みみみみんな下がれ! 下がれ!」

モノペン「おかげで、どんなに腹を立てられてもこの通り、おとなしくしてくれますもんね」

モノペン「関係ないところでは、出来るだけ、死人は出さないようにと思っていたんだけど……」

モノペン「やっぱり見せしめは必要だったんだね!」 ニョホホ

モノペン「おぉ! なんと偉大なお約束ッ!!」

モノペン「おでこにもナイフをオマケしておきましょう!」 グッサー

透華「……ッ!」 ギリッ

誓子「このっ……!」

恵「ちょっ、やばいですって」 ガシ

モノペン「ま、でもさ、これでオマエラもわかってくれたよね?」

モノペン「……ボクは本気だよ」

モノペン「逆らう雀士は……ハチの巣になったり爆発させられたり」

モノペン「生き埋めにされたり溶かされたり蜂蜜塗られて裸で森に放置されたり……エトセトラ」

モノペン「そんな風になりたくなかったら……」

モノペン「オマエラは、合宿の規則にしっかりと従う事ッ!!」

モノペン「いいねっ!?」

那岐「…………」 ウンウンウンウン


咲(何本もの点棒型槍で貫かれた……浅見先輩の体……)

咲(その体からは、大量の血が広がっていた……)

咲(それは……私が初めて見た“人の死ぬ瞬間”だった)

咲(“あの時”は……直接見たわけじゃなかったから……)

咲(……)

咲(誰の目にも明らかだった)

咲(さっきまで仲間だった新免さんは……)

咲(死んだ)

咲(殺された)

咲(絶命した)

咲(こんなにも、あっさりと)

咲(これが……人間の死……)



モノペン「驚くことないんだよ」 アノネェ

モノペン「死んだだけ……」

モノペン「ただ、死んだだけだよ」

モノペン「いつか人類が滅びるくらいに、メチャ当たり前の事で……」

モノペン「いつかSEKAIがOWARUくらいにムチャ自然な事なんだよ」

モノペン「君の嫌いなボクにもボクなりの理由があると思うんだ」 ウププププ

モノペン「少年マンガじゃないんだし、死んでも死なないなんて事はないんだ」

モノペン「君達はワンピースの住人でもなければ、ネギまの住人でもないんだよ」

モノペン「だから不死身じゃないし、死んでも火葬なんてしてもらえないのだ」 ヒャッホーウ

モノペン「そう、これが現実なのだ!」 ギャハハハハ

智葉「……どうして殺したんだ」

智葉「牢屋に入れるんじゃなかったのか?」

モノペン「気が変わったの」 エーット

智葉「……最初から殺す気だったんじゃないだろうな」

モノペン「殺す気……?」

モノペン「なんて読むの? きてれつだいひゃっか?」

葉子「……」

モノペン「悲しいなあ、もうツッコミすら入れてくれないなんて」 オヨヨヨヨ

モノペン「ま、そんな事はどうでもいいとして……」

誓子「いいわけないでしょ!」

誓子「花子を殺しておいて……!」

恵「だ、だから落ち着いて……!」

透華「そうです、貴女まで……こんな所で失うわけにはいきませんわ」

完全に寝ぼけて間違えたぞ
自分でも何で新免さんが死んだか分からずびっくりだぞ
捜査パート入ったら中断するか……
申し訳ねえ、各自新免さんを浅見さんに脳内修正してください


モノペン「あのねェ」

モノペン「本当だったら、キミも殺してよかったんだよ」

モノペン「キミなんて、真っ先にボクに手を出したんだからさ」

誓子「ぐっ……!」

憧「……じゃあ何で、誓子じゃなかったの?」

モノペン「うぷぷぷぷぷぷ」

モノペン「別に」

モノペン「運だよ、運」

モノペン「ボクに手を出した人間で、門松葉子サンは刀を奪うためボクから離れてたし……」

モノペン「池田華菜サンもボクから離れちゃったけどさ」

モノペン「残った連中は全員射程に入ってたんだけど――」

モノペン「ぶっちゃけ、誰でもよかったんだよね」

モノペン「本当に――単なる、運だよ」

誓子「……!」 ギリッ

モノペン「そうそう、何で殺したのかだけど……」

モノペン「さすがに全員牢屋に入れたら裁判が成立しなくなるからさ」

モノペン「でも……一人殺せば、オマエラはボクに従うだろ?」

モノペン「オマエラ全員を殺すのは本意じゃあないし、それならランダムに一人殺すのがベストかなって」 ウププププ

モノペン「雀力の低いミソッカスは、所詮持ってる運もミソッカスってことだね!」 ブヒャヒャヒャヒャ

透華「ふざけてやがりますわ……!」 ギリッ


モノペン「あ、そうだ」

モノペン「クロ捜しの捜査にあたって、オマエラにこれを配っておかないとね!」

モノペン「これはボクがまとめた死体に関するファイル」

モノペン「その名も……」

モノペン「ザ・モノクマファイル!!」 テレテレッテレー

モノペン「Xファイルとか、デスノートとか、他にも候補はあったんだけどね!」

モノペン「やっぱりシンプルイズベストだよね」 ウププププ

憧「これって……」

モノペン「まぁ、結局のところオマエラは素人さんな訳だし」

モノペン「死体を調べるって言っても限度があるでしょうから……」

モノペン「代わりに、ボクが死亡状況や死因っぽいのをまとめておいてやったの!」

智葉「死因、ね……」

モノペン「えっ? そういうお前は、どうやって死因なんかを調べたんだって?」

モノペン「監視カメラで一部始終を見てたから、一目瞭然なのだっ!!」

智葉「じゃあ、お前は知っているんだな」

智葉「愛宕洋榎を殺した犯人を……」

モノペン「モチロンですともっ!!」

モノペン「じゃなきゃ、学級裁判のジャッジを公正に下せないでしょ?」

憧「……そう、ジャッジは公正にくだされるんだ」

憧「それを聞いて少しだけ安心したわ……」

モノペン「じゃあ、捜査を頑張ってくださいね」

モノペン「だって、頑張るしかないんだからっ!!」

モノペン「やるしかないんだから!」

モノペン「では後ほど、学級裁判でお会いしましょう!」 ドヒューン

咲(こうしてモノペンは去っていった)

咲(混乱した状況と……)

咲(困惑した私達と……)

咲(変わり果てた浅見先輩を残して……)

ちょっと頭回らないし、一旦中断します。

ちなみにコンマの幅は、単純に修正が楽なキャラほど死にやすくなってました。
浅見は本来2章でおくたばりになるポジションだったので、
2章の被害者を選択式安価にして、先述の残り2人分に関しては非安価にしようと思います。
それで2:2になるからトントンってことで。

予想以上のチカちゃん人気に正直ちょっとビックリだぞ
捜査パート調整入れるから投下は今日も夜遅くになりそうです

とりあえず場つなぎ的に番外編落としておきます


【Side:アサミハナコ】

体が、熱い。
痛みなのか何なのかすら分からない感覚が、全身を満たしている。

「――――あ?」

口から間の抜けた声が漏れる。
何だこれ。
そう言おうとしたはずなのに、口から出たのは言葉ではなく真っ赤な液体。

更にまだだまこみ上げてくる。
それを吐き出すと全てが終わりになってしまうような気がして、なんとか飲み込もうとするが――
駄目だった。
足に力も入らない。

ぐらりと視界が歪む。
その端に、驚愕する葉子達の顔が映った。

「……んで……私が……」

他にも、モノペンを襲ってた奴は居たじゃねえか。
どうしても、そんな考えが浮かんでしまう。
まったく理不尽だった。
自分がここで死ぬことも、そもそもこんな催し物も、全部全部理不尽だった。

「……くそったれ……」

頭の片隅、ほんのすこしだけあった良心が、葉子達の無事を喜んでいる。
どこか他人事な自分が、ああ、私はあいつらの身代わりになって死ぬんだな、なんて考えている。
今時そんなの流行らないし、私だって自分が一番可愛いっていうのに。
命あっての物種だっていうのに。

まったく、本当に、ふざけてやがる。
ああ、くそ、学校戻って、またあのバカたちと、いつもの部室で馬鹿話でもする予定だったっつーのに。
ああ、むかつく。本当に。

「……ッ」

もう声も出ない。
アサミハナコの終わりを感じる。

あーあ、もう、何考えてもしょうがないっすわ、これ。
死んだらおしまい。むかつくけど。

だから――精々、あんたらは頑張んなよ。
んであのクソムカつくペンギンをぶっ殺してくれ。
ぶん殴るじゃなくてぶっ殺すな。

そんで、まあ……
あとは、適当に楽しんでいきて……
たまにくらい、私のこと、思い出して、く……れ…………y………――――

――――――


【Side:アサミハナコ END】

黒幕推理は多分無理なタイプのアレだよ残姉じゃないよ、という短編終わり

捜査パートですが、ガバガバ事件だけどある程度推理しやすいよう、
原作みたいにコトダマ提示した方がいいかしら。

裁判パートも原作ロンパみたいに何で何処ロンパしたか明示してそれっぽくするか、
ゲームっぽさ廃して読みやすさ重視か、どっちがいいか意見くれると嬉しいなって。
ロンパっぽくやると、まあ安価で学級裁判やってる系統のスレみたいな感じになります。

深夜どころかめざましテレビ始まってる時間になってしまった。
なんてことだなんてことだ。


とりあえず進められるだけ捜査パート進めます。


咲(しばらくの間……)

咲(私達は、口を開こうともしなかった)

咲(洋榎先輩や浅見先輩の死が、とてつもなくショックなのは当然だけど……)

咲(でも、それだけじゃなかった……)

咲(この中にいる誰かが……“人を殺した”という事実……)

咲(しかも、その人物を突き止めなければ、他の全員が処刑されてしまう……)

咲(互いが互いに、疑いの目を向けざるを得なかった)

咲(先程まで一致団結してモノペンに立ち向かっていたのに……)

咲(その結束は、浅見先輩の命と一緒に、容易く失われてしまった)

咲(本当に、最悪の状況)

咲(ただ、そんな常軌を逸した最悪の状況でも……)

咲(動じた様子を見せてない人も、いた)

智葉「落ち込んでいる場合じゃない」

智葉「それに、奴も言っていた通り、まるっきり疑心暗鬼で信用出来ない、なんて状況も問題だ」

智葉「盲信するのと同じくらい、疑心しか持たないことは悲劇を生む」

憧「……ゼンツもアレだけど、常にベタオリしても勝てない――ってことね」

智葉「時間は有限だ」

智葉「誰を信じるかは各々に任せるとしても……協調して、捜査をする必要はある」

憧「ま、確かに……」

憧「自分の命がかかってるんだし、いつまでも死人のことを引きずっているわけにもいかないか」

ちゃちゃのん「そ、そんな言い方……!」

憧「アタシだって好き好んでそーするわけじゃないって」

憧「でもしょうがないの」

憧「そうしなきゃ……全員まとめて処刑されるだけ」

憧「卓上でもそれ以外でも――状況に素早く適応できないと、痛い目見るわよ」


葉子「クソっ……クソクソクソクソクソ!!」

葉子「やりゃいいんだろうが、やりゃ!!」

恵「……死にたくは、ないですもんねえ」

透華「どのみち、私達は逃げられませんわ」

やえ「やるしかない、か……くそっ」

巴「……うん。やるしかないのよね……」

誓子「分かったわよ……」

誓子「このまま死んだら、花子ちゃんにも申し訳、立たないもんね……」

華菜「何が処刑だ……殺されてなんてたまるか……!」

誠子「くそっ……やるしかない、やってやる!」

咲(やるしかない)

咲(皆が口々に、そう呟いていた)

咲(自らを奮い立たせるように)

咲(そう……やるしかないんだよね……)

咲(やりたくなくても、やるしかないんだもん……)

咲(それが生き残る唯一の道なら、やるしかない……)

咲(それに……私は知らなくっちゃいけない……)

咲(どうして、洋榎先輩が殺されたのか)

咲(どうして、洋榎先輩が、殺されなくちゃいけなかったのか……)

咲(知るのは怖いけど……)

咲(でも、知らなくちゃいけないんだ)

咲(そうじゃなきゃ……洋榎先輩の死に、きっと私は納得がいかない……)

咲(だから……)

咲「やるしか……ないんだ……ッ」 ゴッ


憧「捜査の前に……」

憧「誰か見張りを立てるべきだと思うんだけど」

やえ「見張り……?」

憧「現場のよ」

憧「各々が本当に好き勝手調べてたら、犯人に証拠隠滅されるかもしれないでしょ」

憧「だから――見張りは必要じゃない?」

やえ「そうだな……」

やえ「では、見張りは私が引き受けよう」

やえ「正直――今、冷静に思考が出来る自信はない」

智葉「もう一人、必要だな」

葉子「は? なんで?」

葉子「わざわざ捜査人員減らす意味なくねー?」

憧「馬鹿」

憧「見張りが一人だったら、そいつが犯人の場合証拠隠滅され放題でしょ」

葉子「誰が馬鹿だコラ!」

恵「気が立ってますねえ……」 ギッヒ

やえ「……なるほど」

やえ「それじゃあ――一緒に見張りをしてもらおうか、新免那岐」

那岐「え? 私?」

憧「妥当ね。武力があって頭は弱そうな人を任命したいとこだし」

智葉「だな」

那岐「私は愚かではないし、そもそも戦闘になったら多分小学生にも負けるぞ!」

葉子「威張んなよ……」


憧「あとは……」

憧「この、モノペンファイルだけど――」

モノペンファイル『被害者は愛宕洋榎』

モノペンファイル『死亡時刻は大体午後1時頃』

モノペンファイル『死体発見現場となったのは、地下にある武器庫』

モノペンファイル『致命傷は腹部に突き刺さったスペツナズナイフ』

憧「いくつか気になることもあるし、解散前にいい?」

葉子「気になるとこォ?」

美子「……」

美子「この死亡時刻……」

憧「……そう」

憧「これ、死体発見アナウンスとほぼ同時くらいなのよね」

透華「と、いうことは……」

竜華「洋榎は、刺されて放置されて、そんで死んだ直後に発見された……ってことか?」

智葉「もしくは、“大体”や“頃”という表記によるトラップか、だな」

咲「トラップ……?」

智葉「あのペンギン、大事な部分を隠すようなところがある」

智葉「だが、このファイルが丸っきりウソでは読み合いもクソもない」

憧「それで、“大体”だったり“頃”だったりと曖昧な単語をチョイスした、か」

憧「ウソにはならないように」

智葉「前後30分くらいは見ておいた方が良いだろうな」

透華「まあ、12時31分は、12時寄りか1時寄りかで言えば、1時寄りですもんね……」

憧「ま、今回は1時30分はあんまり見なくていいと思うけどね」

智葉「……と、なると、だ」

智葉「アリバイは、死体発見からその30分前から常に誰かと行動していない限りは証明されないな」

憧「刺されてから死ぬまでにラグがあったとしたら、もっと必要かもしれないわね」

憩「んー……あんま詳しく見たわけやないけど……」

憩「さすがにあの傷やと、そう長くは持たんと思うけど……」

憧「じゃあ、まあ、死体発見から1時間前くらいまで常に誰かと行動してたらアリバイあり、でいいか」

憧「この中に――誰か、アリバイがあるって人はいる?」


誠子「あ、はいはい!」

憧「それを証明する人は?」

誠子「咲と――あと、その、浅見さんかな」

誠子「1時間くらい、ずっと談話室で話してたんだ」

誠子「だよね?」

咲「はい……」

葉子「なんだって談話室で……」

咲「その、浅見先輩、ちょっと休憩しようとしてたみたいで……」

憧「ふうん」

憧「じゃあ、そこの2人はシロ、ね」

智葉「クロが先程死んだ、ということもなさそうだな」


葉子「エラソーにしてっけど、そーいう自分はどーなんだよ」 ッツーカサ

憧「アタシ?」

憧「アタシもアリバイはあるわよ」

竜華「ああ、一緒にホールで色々捜しとったで」

憩「憧ちゃんから誘ってもらってなぁ~」

憧「何かあった時にアリバイを証明できるだろうし……」

憧「二人っきりほど殺される心配もないし」

憧「一人で動かず誘っておいて正解だったわ」

智葉「これで5人アリバイ成立、か」

智葉「バラける前に、死体発見前に何をしていたか確認しておくか……」


葉子「私は……トイレで壁をぶっ壊そうとしてたよ」

葉子「アンタも見てんだろ?」

智葉「ああ」

智葉「私は、一応全体を見て回っていた」

智葉「異常事態にすぐ気づけるようにな」

透華「それで、第一発見者になったんですのね」

智葉「ああ」

智葉「佐々野達が騒いでいるのが聞こえてな」

智葉「無理矢理扉を開けたのは私だ」

恵「無理矢理……?」

誓子「あ、そっか、皆知らなかったんだっけ」

誓子「あのね、最初、洋榎の体が扉にもたれかかっていて……」

智葉「そのせいで、扉が開かなかったんだ」

誓子「私達が開けてーって叫びながら扉を叩いても、全然起きる気配がなくて……」

智葉「悪いと思ったが、体当たりで無理矢理開けさせてもらった」

誓子「その際、洋榎の体がちょっと部屋の真ん中の方に転がっちゃったの」

憧「……ちょっと待って」

憧「それってつまり……」

透華「愛宕洋榎の体で扉を閉じていた……いわば……」

咲「密室殺人……!?」


憧「……その謎は、あとでまた現場を見るとして……」

憧「混乱し切る前に、順序良く行動だけ言ってって」

憧「とりあえず、密室を見てる智葉以外の2人は――」

誓子「私は、ガチャルームでガチャをしてたけど……」

誓子「それを証明する人は、いないわ……」

誓子「さすがにあの状況で、ずっとガチャに付き合ってくれる人なんていなかったし」

葉子「つーか、あんな切羽詰ってたのにンなことしてたんだ……」

誓子「その、息抜きっていうか、ストレスでどーにかなっちゃいそうだったから……」 アハハ・・・

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも、アリバイはなしじゃ……」

ちゃちゃのん「あと――2人じゃなくて、3人じゃよ」

胡桃「……私も、アリバイはないよ……」

ちゃちゃのん「……最初は、胡桃ちゃんが見つけたんじゃ」

ちゃちゃのん「ドアに縋ってヒロちゃんの名前を呼んじょるから何かと思ったら……」

誓子「で、思わず上げたちゃちゃのんの悲鳴に反応したのが私で、私のに反応したのが智葉ってわけ」

憧「なるほどね」

透華「詳しいことは、あとで気持ちの整理ができたら聞くとして……」

透華「他の方はどうです?」

透華「ちなみに私は、一応ありますわ」

恵「ええ」

恵「一緒に、トイレ以外で壊せる場所がないか探してもらってて……」

恵「ナタを持って一人でウロウロするの、不安だったんで……」

憧「これでアリバイ7人で死人は2人、か」

憧「それでもまだ11人も容疑者がいる」

憧「他の皆は?」


やえ「私は……」

やえ「情けないことに、自室で頭を冷やしていた……」

やえ「不安でしょうがなくて、一歩も出ていないし、誰とも会っていない」

巴「私も……」

巴「自分の昼食の片付けをして……」

巴「あとは、お弁当でも作って配ろうかとしてたから……」

憧「ふたりともアリバイはなし、か」

桃子「私も自室に居たっす」

桃子「……まあ、アリバイはなしっすね」

美子「私は……ランドリーで洗濯を」

透華「そういえば、壊せそうな場所を探している際にお見かけしましたわね」

美子「その、隣で何やら騒がしかったから……」

美子「ランドリーの中で、座って……」

憧「それを証明する人は――」

美子「……」 フルフル

憧「なし、か……」


華菜「華菜ちゃんも直接のアリバイはないけど……」

華菜「桧森先輩に、いらないガチャアイテムを売ることを聞いたのって、いつでしたっけ」

誓子「んー……」

誓子「多分、12時ちょっとすぎくらいじゃないかとは思うんだけど」

華菜「んで、それから色々売買して、部屋に戻ったんだ」

華菜「私もそうやってメダル手に入れるかーって思ってさ」

華菜「散らかってたアイテムをかき集めて――」

華菜「いろんな中古品って、箱がないと価値下がるから、全部ガチャに詰めなおして」

華菜「それからそれを抱えて階段降りてたら、亦野先輩達と遭遇したんだ」

華菜「……」

華菜「これ全部やって、ちゃんと2階から降りてきたって、実質アリバイには――」

憧「ならないわよ」

憧「そんなもの、最初から全部ガチャに詰めてれば殺人する時間くらい確保できるでしょ」

華菜「……デスヨネー」

那岐「じゃ、じゃあふんどしを作り、一発芸に備えていたというのはアリバイには……」

葉子「なるわけねーっしょ……」

誠子「いやー、擁護してあげたいっちゃあげたいけど、30分くらいしかいなかったし……」

那岐「ぐ、ぐぐぐぐぐ……」

那岐「服の下に別のもの着るって大変なんだぞっ!」

那岐「ましてや下半身!」

那岐「あれほんと短時間で出来る作業じゃ――」

憧「いや、ふんどし談義はどーでもいいから」

憧「……ま、とにかく……」

智葉「11人はアリバイなし、か――」


憧「それじゃ、解散して捜査を始めよっか」

やえ「……じゃあ、我々は武器庫で、現場の保全に努めるとしよう」

やえ「ほら、いくぞ」

那岐「うう……」

那岐「死体のそばっていうのは、その~……」

葉子「いいから行けよヘタレ武士」

憧「……」

憧「捜査だけど……」

憧「基本2人以上でやった方がいいと思う」

憧「証拠隠滅の危険性もだけど――」

智葉「……」

智葉「命そのものを消されることの防止、か」

憧「そ」

憧「これが連続殺人事件にならないとも限らないし」

憧「証拠見つけたら後ろからボカ、なんて推理漫画のモブみたいな死に方はしたくないでしょ」

智葉「常に二人以上で行動しておけば、そう易易と殺人には踏み切れまい」

憧「正体がバレバレになるし、バレたら……おしおきなわけだからね」


憧「そんなわけだから――華菜」

華菜「へ?」

憧「捜査、行くわよ」

華菜「年上には敬語使えー?」

華菜「……っていうか、何でカナちゃん?」

憧「……適度にアホで、でもアホの極みってわけじゃなさそうだからよ」

華菜「敬語っつーか敬意。敬意が要る」

憧「アホすぎたら捜査の役に立たないけど……」

憧「役に立ちそうな人とは、別行動して情報収集させた方がよさそうだしね」 チラ

智葉「……」

憧「そんなわけで、アタシ達は行くから」

憧「後は適当に二人組でも組んで、ちゃっちゃと捜査しちゃってよ」 スタスタスタ

華菜「あ、ちょっと待てって!」 タタタタタ


誠子「咲」

咲「亦野先輩……」

誠子「あのさ、一緒に捜査しない?」

咲「え?」

誠子「お互いアリバイある者同士だし……」

誠子「個人的に、ちょっと話しやすいしさ」

誠子「……あ、私のことは、助手とでも思ってくれたらいいよ」

誠子「ぶっちゃけ、そこまで推理力には自信ないし……」

誠子「でも、身体能力にはそこそこ自信あるからさ!」

誠子「気になることがあったら、なんでも言ってよ、調べるからさ」

咲「えっと……じゃあ、よろしくお願いします」


咲「……」

咲(胡桃先輩は……) チラッ

胡桃「……」

ちゃちゃのん「……」

透華「……心の傷は、すぐには癒えないものですわ」

透華「でも――前を向くことも、必要ですわ」

透華「長い目で見れば、それこそ、彼女たちが前を向くことは私達全体のプラスに繋がる」

透華「ですので……」

透華「申し訳ありませんが、今回は私も捜査には不参加とさせていただきます」

透華「今は――お二人の、ケアをしたいと思いますわ」

智葉「……ま、それもいいだろう」

智葉「龍門渕は確定シロだから、監視の役目を果たせない鹿倉達と組ませても隙を見て証拠を処分されることはあるまい」

憩「ほんなら……」

巴「捜査開始――ですね」

咲(そして――ぞろぞろと、ホールを皆が後にした)

咲(後に残ったのは、私と亦野先輩)

咲(物言わなくなった浅見先輩と、そして――)


誓子「……」

葉子「……行くしかねえって」

恵「人数考えると、私らは3人一組ですね」 ギッヒ

咲(桧森先輩達が、残っていた……)

誓子「……そうだね」

誓子「……」 スッ

誠子「えっ、それって――」

咲「た、タバコ……!?」

葉子「ばっ、何で今――!」

誓子「……」

誓子「ごめん、悪いんだけどさ」

誓子「これ――厨房のコンロで、火、つけてきてくれないかな」

恵「え、でも――」

誓子「……お願い」

恵「……」

恵「……」 コクリ

恵「……」 スタスタスタ


誓子「……驚かせちゃったかな」

咲「……少し……」

誓子「あれ、さ」

誓子「揺杏が――後輩が、吸ってるやつなんだ」

誓子「この前学校で吸ってたから、せめて家で吸え~なんて言って没収して……」

誓子「それがどうやら、財布や携帯と違って没収されずにポッケに入り続けてたみたい」

咲「そんなこと、あるんですね……」

咲「ここにはタバコもないから、てっきり持ってても没収されるのかと」

誠子「まあ……私物も持ち込めてるものあるみたいだしね」

誠子「……刀とか」

咲「ああ……」

葉子「私はバッチリ没収されてたけどな」

葉子「つーか、タバコ入れてたカバンごとどっか行ってるし」

誓子「だからこうして、1本メダル1枚で販売していたの」

葉子「足元見やがって」 ケッ

誓子「でも助かってるわ」

誓子「必死こいて隠されたメダルもかき集めてくれたしね」


誓子「……」

誓子「花子ちゃんは……」

誓子「あのナリだけど、タバコとかは、吸ってなかったみたい」

葉子「……そーいや、私が美味そうに吸うのを見て、吸ってみたい、つってたっけ」

誓子「……」

誓子「揺杏のやつは結構キツイよって言ったら、じゃあやめとこう、なんて言ってたけど」

ガチャ

恵「……」

恵「はい……タバコです」 スッ

誓子「……ん、ありがと」

誓子「……」

誓子「私達……」

誓子「やりたいことも、やってないことも、まだいっぱいあるのにね……」

咲(そう言うと――桧森誓子は、タバコに軽く口付けた)


誓子「……ん」

咲(桧森先輩が、煙草を黙って差し出す)

咲(それを受け取り、門松先輩が、煙草を思いっきり吸い込む)

咲(そして、とても美味しそうに、吐き出した)

葉子「は~~~……美味いわ、やっぱ」

葉子「一回ハマると、こんな状況でもやっぱり美味いよ」

葉子「……一回くらい……試しときゃよかったのにさ」

咲(今度は門松先輩の差し出した煙草を、上柿さんが受け取る)

咲(そして、門松先輩のように思いっきり吸い込んで――)

咲(盛大に、噎せ返っていた)

恵「げっほ……」

恵「あたしゃ、やっぱ向いてないですわ、煙草」

葉子「……ま、でも、吸ってから嫌うのとじゃ、吸わなくて嫌うより、いいだろ」

恵「……ま、そうですね」


葉子「ほれ」

咲「……え?」

葉子「あんたも」

咲「あ、わ、私は……」

咲「煙草は、ちょっと……」

咲「それに……」

咲「ここで浅見先輩と仲が良かったのって、やっぱり、門松先輩達だと思うから……」

葉子「……」

誓子「そっか」

咲(そうとだけ言うと――)

咲(桧森先輩は、門松先輩から受け取った煙草を、浅見先輩の口元へと持って行った)

咲(半開きになり、口の端から血を垂れ流しているその口に、タバコが差し込まれる)


咲(もくもくと、煙がのぼる)

咲(私も、皆も、いつしか黙祷をしていた)

咲(きっと、これが、彼女たちなりのお焼香なのだろう)

咲(あまり、話す機会はなかったし、そこまでいい印象があるわけじゃないけれど)

咲(それでも、あの時話していて、悪い人じゃないことは分かったから)

咲(目を開けた時、自然と、目尻に涙が溜まっていた)

誓子「……」

誓子「花子ちゃん……」

誓子「これ、もらっていくね」

咲(そう言うと、桧森先輩は、浅見先輩の帽子を脱がし、自らの頭にかぶせた)

咲(ところどころに、まだ血のついた、その帽子を――)

誓子「……」

誓子「私、絶対、ここを出るから」

誓子「一人でじゃなく、皆で出るから」

誓子「だから――花子ちゃんも、一緒に出ようね」

咲(桧森先輩が、帽子に触れる)

咲(……皆で、生きて帰る)

咲(胸の中に、黒幕には絶対に負けないという、決意の炎が灯るのを感じた)


誠子「……咲」

咲「……はい」

咲「やりたくはないけど……」

咲「こんなところで、皆で死ぬわけには、いきませんもんね」

誠子「ああ」

葉子「……ああ、そうだ」

葉子「部屋の鍵、持ってると思うんだけど……」

葉子「それ貸してくんねえ?」

咲「へ……?」

誠子「なんで……?」

葉子「いやさ、ナイフで殺害したってことは、返り値の問題とかあるっしょ」

葉子「そういう工作の後とか、血が付いた服とか、部屋に隠してるかもしれないじゃん?」

恵「おお、珍しくなんかまともな意見……」

葉子「うっせ」

葉子「まーとにかく、全員の部屋を片っ端から調べてやろうと思ってよ」

葉子「拒否はさせねー」

葉子「無実の証明になるかもしれないわけだし、徹底拒否する奴はクロってことになるしな」

誠子「……」

誠子「私達、アリバイあるから確定シロなんだけど」

葉子「……」

葉子「あっ!」

咲(大丈夫なのかなこの人……)


誓子「でも、シロの人からも鍵貰ったって方が、他の人を説得しやすくない?」

誓子「それならフェアだしさ」

誓子「どーしてもって渋るなら、一緒に来てもらえばいいし」

葉子「……それそれ! それだよ!」

誠子「ははは……」

咲「そういえば……」

咲「桧森先輩、前もメダル尽きてたと思うんですけど……」

咲「1時間もガチャルームにどうやって居座ったんですか?」

誓子「あっはっは」

誓子「実は1時間どころか、ほぼずーっと居たのよね」

咲「えっ」

誓子「だってほら、ガチャルームに来る人って、ガチャアイテムを求めてるわけじゃない?」

誓子「ってことは、一番高値で売れる相手は、ガチャルームに訪れる人なのよ!」


誓子「……まあ、あの状況で訪れる人なんて、ほとんど居なかったんだけどね」

誠子「ほとんど……?」

咲「ってことは……居はしたんですか?」

誓子「うん」

誓子「……洋榎がね」

咲「…………」

咲「えっ!?」

誓子「何でも、誰かにプレゼントを贈ろうとしてたみたい」

誓子「断腸の思いで、もう残り1個しかないビトロ・イン・ローズをメダル6枚で売ったわ……」

咲「わ、私の時の3倍……」

誓子「誰かにあげるつもりだったみたい」

誓子「このバタバタが終わったら告白するんだ……ってとこだったのかしら」

葉子「……それ、死亡フラグだったんじゃねーの……」

誓子「……はっ!」


誓子「ちなみに、そのメダルではゴミしか出なかったわ」

咲「うわあ……」

誓子「で、ちょっと熱くなっちゃって……」

誓子「ドアを開けっ放しにして、人が通り掛かるのを待ってたのよね」

誠子「へ?」

誓子「通り掛かる人を捕まえて、これらのアイテムいらんかね~って」

葉子「タチの悪い露天商みたいだなオイ……」

誠子「それで、誰か捕まったの?」

誓子「まあ、捕まえたはいいけど、全然売れなかったのよね……」

誓子「華菜ちゃんだけは興味示してくれたけど、メダル持ってなかったみたいだし……」

誓子「辻垣内さんに至っては、侮蔑の眼差しだけ貰ったわ」

葉子「そらそーなる」

誓子「辻垣内さんだけはなんか近寄りがたいのよね……」

誓子「気軽に智葉ちゃ~んって呼ぶのも親しげに智葉って呼ぶのも憚られるというか……」

誓子「それでもずっと扉を開けて見てたのよね」

誓子「そのおかげで、悲鳴に気づけたんだけどね」

誠子「佐々野先輩や鹿倉先輩にも声ってかけたんです?」

誓子「うーん、胡桃ちゃんはどうやら逆の階段から降りてきたみたいだから声かけてないのよね」

誓子「いちごちゃんも、約束があるから~って商品見てもくれなかったし」

咲(約束……?)

咲(あとで本人に確認してみようかな……)


誠子「ってことは……」

誠子「ガチャルームがある方の廊下から逃げようとしたら、目撃されてるわけか」

誓子「あっちから来る人がいないわけじゃなかったけど……」

誓子「誰も返り血は浴びてなかったわ」

咲「どこかで途中着替えたとか……」

誓子「なくはないだろうけど……」

葉子「廊下に隠れる場所はねーし、リスキーすぎんだろ」

恵「武器庫で着替えて、焼却炉で古い洋服は処分した……とか」

誓子「それもないと思うわよ」

誓子「ガチャルームから焼却炉見えるけど、誰もそっちには近づいてないもの」

誠子「ふーん」

葉子「っと、んじゃ尚更証拠の返り血探さなきゃならねーな」

誓子「そうね」

誓子「……それじゃ、私達は、部屋を探して回ってみるわ」

咲「はい」

咲「……あ、これ、私の部屋の鍵です」

誠子「はい、これが私の」

恵「あい、確かに」

咲「それじゃ――」

咲「また、学級裁判で」



▼コトダマ【モノペンファイル】が追加された!
▼コトダマ【桧森誓子の証言】が追加された!


誠子「それじゃ、捜査開始だね」

咲「はい」

誠子「どうする?」

誠子「どっから行く?」

咲「そうですね……」

咲「……」

咲「ささのん先輩たちに聞きたいこともあるので……」

誠子「……そっか」

咲(それに……)

咲(まだ――落ち着いて、洋榎先輩の死体を見る自信はないから……)



――捜査開始――

なんと捜査開始までしか行けてませんが、眠いので一旦中断します申し訳ない。
とりあえずなんちゃってロンパ的進行で行ってみて、テンポ悪いなと思ったら2章からやめます。

寝てました。
やれる内に捜査パートだけでも進めておきます。


<食堂>

咲「あ、ここにいたんですね」

透華「あら……」

透華「……事情聴取、ですの?」 コソ

誠子「……まだ立ち直って無い所悪いんだけど、こっちも立ち直ってないからさ」

誠子「死体いきなり調べさせるのも酷だから……」

誠子「かんべんしてあげてよ」

透華「それは構いませんが……」

透華「ああ、そうだ」

透華「そこに、おにぎりがありますわ」

咲「ふえ?」

透華「狩宿巴が作っていた途中のものみたいですわ」

透華「毒物の類は心配いりませんし、空腹なら食べたらどうです」

誠子「そうだね、腹が減っては戦はできない、って言うし」

誠子「……カップラーメンも、口からは食べ損ねたからね」

透華「?」

透華「口以外から、どうやって食べると……」

誠子「頭で食べたっつーか、浴びたというか……」

誠子「それでも他の人達と比べたらダメージ全然少なかったけど」 アハハ・・・

透華「???」


透華「まずは私から、話をさせて頂きます」

透華「……私は、死体発見アナウンスが聞こえる1時間ほど前まで、武器庫にいました」

透華「こんな時だからこそ、皆が武器を取ることを防ごう、と」

誠子「その時点でなくなってたのって――」

透華「斧が2本、ナタが2本、ハンマーが3本、そしてナイフが1本ですわ」

透華「斧とナタ、ハンマーは門松葉子たちに渡していました」

咲「そういえば、浅見先輩が……」

誠子「持ってたね、斧とハンマー」

誠子「あんなん持って現れたから、思わず体固まったなー」

咲「……確か、サボりにきた、って言ってましたよね」

透華「あら、そうなんですの」

透華「門松葉子は脱出すると息巻いておりましたわね」

透華「ずーっと壁を壊そうとしていたようですし」

透華「斧、ナタ、ハンマーは1つずつ、彼女のいるトイレにあったようですわ」

誠子「そんなに色々持ってても、使い切れない気がするけど」

透華「床に置いて、色々試していたようです」

透華「……傍に武器があることで、ナイフを持った人物が来ても大丈夫、と思いたかったのでしょう」


誠子「んー、じゃあ、こっそりトイレに行って斧とか持ち出す、ってのは無理っぽいね」

透華「焦りの色も濃かったようなので、無理ではないでしょうが……」

咲「相当リスキー、ですよね」

透華「こっそり持ちだそうとした時点で、殺し合いになってもおかしくありませんからね」

誠子「まあ、それだったら手伝うって嘯いて貰った方がいいか」

透華「その場合、門松葉子が真っ先に襲われてそうですけどね」

咲「ちなみに……」

咲「残りのナタとハンマー、あとナイフは……」

透華「……」

透華「ナイフは相変わらず、誰が持って行ったか分からず、ですわ」

誠子「……」

誠子「まあ、行方は分かったけどね」

誠子「……死体に刺さってたから」

咲「……」

透華「……それと……」

透華「残ったナタとハンマーは、上柿恵が持ち歩いていました」

透華「正確に言うと、上柿恵がナタ、私がハンマーですけど」

誠子「ああ、そーいえば、二人して行動してたんだっけ」

透華「ええ」

透華「ナタを持って一人でうろついていると、ばったり会った際怯えられて襲われるかもしれない――」

透華「そう相談されて、付きそうことになりました」


透華「……」

透華「実は……」

透華「今日は、12時45分から愛宕洋榎と交代予定だったんですの」

咲「それって……」

咲「死体発見アナウンスのちょっと前……ですよね」

誠子「何でそんな中途半端な時間に?」

透華「最初は12時半か12時、ということだったんですけれど……」

透華「少々予定が立て込んでいるので、遅らせてくれと言われまして」

透華「彼女も、色々と動いてくれてましたので、承諾しましたわ」

誠子「それならいっそ1時に変わればよかったんじゃ」

咲(き、聞きにくいことズバズバ聞いてる……)

透華「……」

透華「それについては、あとから説明しますわ」

透華「とにかく――交代は12時45分予定でした」

誠子「……」

誠子「あれ?」

透華「……そう」

透華「12時は、本来、私がまだ見張りを続けねばならない時間帯でしたわ」

透華「ですが――」

透華「私は、上柿恵の懇願を聞き、共に行動してしまった」

透華「結局これまで門松葉子達以外武器を持ちださなかったこと」

透華「そして、今日も誰も訪れなかったことから――」

透華「油断、していたのですわ」

透華「辻垣内智葉も見回りをしていましたし、大丈夫だろうと、考えて……」

透華「それよりも、ばったり遭遇し争いになりかねない、凶器を持った人物を一人でうろつかせない方を優先し……」

透華「結果が――これ、ですわ……」

透華「……誰も死なせない、なんて息巻いて……」

透華「情けない、ですわね……」

咲「そんな……」

誠子「えと、よくやってると思うけどな、私は」


透華「……」

誠子「あ、あーっと、あとあれ」

誠子「アナウンスのあと、どー行動してたのか聞いてもいいかな!」 アセアセ

透華「……ええ」

透華「私と上柿恵は資料室にいました」

透華「本棚をどければ、意外と薄い壁があるのではないか、と思いまして」

透華「その最中、死体発見アナウンスが流れ出して……」

透華「場所が分からなかったものの、とにかく行かなくては、と思い」

透華「混乱する上柿恵の手をとって、あてもなく駆け出しました」

誠子「あのアナウンス、確かに場所教えてくれないのが不便だよなあ」

咲「私達も、偶然桧森先輩の悲鳴が聞こえて場所が地下って分かっただけですもんね」

誠子「誓子だけに、地下ってね」

咲「……」

透華「……」

誠子「……ごめん、続けて」

透華「部屋にこもっている方もいるようでしたので、部屋で事件が起きたのでは、と階段を登って――」

透華「途中、部屋から飛び出したという小走やえと会いましたわ」

透華「それで2階では騒ぎになっていないということで、引き返しって地下に行き――」

透華「武器庫に辿り着き、そして……」

誠子「……そっか」

誠子「とりあえず、小走先輩が死体発見アナウンスの時に2階にいたのは確かみたいだね」

咲「……そうですね」


▼コトダマ【龍門渕透華の証言】が追加された!


透華「それと……」

透華「さっきのことですが……」

誠子「さっきの?」

咲「1時交代にしなかったことについて……ですよね」

透華「ええ」

透華「……愛宕洋榎は、どうやら1時丁度に、約束をしていたようですの」

誠子「約束?」

透華「……」 チラ

ちゃちゃのん「……」

ちゃちゃのん「うん」

ちゃちゃのん「」ちゃちゃのん、ヒロちゃんに、呼ばれちょってん」

ちゃちゃのん「1時に武器庫来てくれーって」

胡桃「……え?」

誠子「ん? どうかしたの?」

胡桃「ううん……ただ、私も洋榎に呼ばれてたから……」

透華「どうやら、2人を慰めようとしていたようですわね」

透華「実際あの武器庫、あまり人が近寄らないので、ゆっくり話しやすいといえば話しやすいですし」

誠子「まあ、小窓のおかげでオープンではあるし、外から見えない部屋の中よりは会いやすい……のかな」

咲(周りが武器だらけって、あんまり怯えた人を呼ぶのに向いてないとは思うけど……)

咲(他に適当な場所がないし、しょうがないか)


誠子「それで、第一発見者になっちゃったんだ」

ちゃちゃのん「……うん」

ちゃちゃのん「正確には、第一発見者は胡桃ちゃんじゃんけどね」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは、ヒロちゃんに呼ばれても、やっぱりちょっと怖くって、なかなかお部屋出れへんかったし」

胡桃「……私も不安で不安でしょうがなかったけど、むしろだから早く洋榎に会いたかったな」

ちゃちゃのん「で、ちゃちゃのんが時間ギリギリで武器庫に向かう途中、ガチャルームで……」

咲「あー……」

誠子「声かけられたんだっけ」

ちゃちゃのん「うん」

ちゃちゃのん「じゃけど約束があったけえ、お話もろくにせんと武器庫に向かって……」

ちゃちゃのん「扉にすがりついて、ヒロちゃんの名前を叫ぶ胡桃ちゃんに会ったんじゃ」

ちゃちゃのん「ただならぬ空気じゃったし、小窓を覗き込むと――」

ちゃちゃのん「真っ先に、血だまりが目に飛び込んできて……」 カタカタ

ちゃちゃのん「視線を下ろすと……」 カタカタ

ちゃちゃのん「ぐったりとしたヒロちゃんが、ドアにもたれかかっちょるようで……」 カタカタカタカタ

胡桃「……」 ジワッ

透華「……そして、愛宕洋榎の名を叫ぶ2人の声を聞きつけた辻垣内智葉が、死体を押しのけるようにして無理矢理扉を開けた」

透華「そうですわよね」

ちゃちゃのん「うん……」



▼コトダマ【佐々野いちごの証言】が追加された!


ちゃちゃのん「……」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんが……」

ちゃちゃのん「もっと早くに行けちょったら」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんは……死なずに済んだんかいのう……」

透華「……それを言うなら、私がきちんと交代まであそこにいれば……」

胡桃「……」

胡桃「馬鹿だよ、洋榎……」

ちゃちゃのん「え?」

胡桃「待っててくれる妹がいて、外にもいっぱい友達がいて……」

胡桃「泣いてくれる人も、いっぱいいて」

胡桃「絶対……生きて帰らなきゃいけないはずだったのに」

胡桃「私達になんて構わず……自分の安全だけを考えてればよかったのに」

胡桃「馬鹿だよ……」 グズッ

ちゃちゃのん「う、うう……」

誠子「……」

誠子「行こう、咲」 コソ

咲「……はい」

咲(悲しいけど……私まで塞ぎこむわけにはいかないもんね……)

咲(洋榎先輩のためにも、絶対にクロを突き止めるんだ……!)


<武器庫>

やえ「あ……」

やえ「……」

やえ「もう、ここに来て大丈夫なのか?」

咲「……はい」

咲(先に食堂に行って、よかったかもしれない)

咲(おかげで……)

咲(辛いけど、絶対に真相を明かさなくちゃって思えたし……)

誠子「あれ?」

誠子「この床……」

誠子「部屋の奥の方から血が続いてない?」

咲「本当だ……」

誠子「でも死体はもっと手前にあるけど……」

やえ「死体があそこにあるのは、無理矢理扉を開けた際に体が動かされたからだな」

咲(ということは、奥の方で出血して、それからドアまで運ばれた……?)



▼コトダマ【床の血の跡】が追加された!


誠子「血の跡は、あっちの棚の方から続いてるのか」

誠子「……あれ?」

咲「どうかしたんですか?」

誠子「これ――」

誠子「ナイフ、2本なくなってない?」

咲「え?」

咲「あ――本当ですね……!」

やえ「ああ」

やえ「いつの間にか、もう一本なくなっていたんだ」

やえ「……もしかすると、一本はまだ持っていかれたままで、残った一本が事件に使われたのかもしれないな」

咲「……」



▼コトダマ【武器庫のスペツナズナイフ】が追加された!


誠子「……それじゃ、死体を……」

咲「……」

咲(手を合わせ、黙祷を済ませて――)

咲(しっかりと、洋榎先輩を見据える)

咲(まだ、弔ってあげることもできないけれど)

咲(せめて事件を解決させて、洋榎先輩が守りたかった人達を守るんだ……)

咲(それで――ここから出たら、お墓をつくってあげなくちゃ……)

咲「……」

誠子「……あれ?」

誠子「これ……」

咲「どうかしたんですか?」

誠子「なんか、ナイフの刃だけが刺さってるんだけど……」

那岐「スペツナズナイフだからな」

咲「うわあ!」

誠子「び、びっくりした……!」

咲「い、いたんですね……」

やえ「見張りは二人一組という話だっただろう?」

咲「そうなんですけど……」

誠子「全然喋ってなかったし……」

咲「何でそんな部屋の隅っこに……」

那岐「死体から遠ざかりすぎるわけにもいかないけど……」

那岐「正直何かちょっと怖いからだ!」

那岐「ここなら適当に距離を保てるし、なんかこう、不気味な捜査から一線置いてる感じがだな」

誠子「ああ、そう……」


誠子「……っていうか、何でパジャマ?」

那岐「うぐっ!」

那岐「ま、まあ、さっき色々あって、着替えをだな……」

やえ「本当なら止めたかったのだが、早めにホールを出たからと懇願されてな」

やえ「……まあ、あれだけの悲劇が眼前で起きたんだ」

やえ「着替えの理由は察してやってくれ」

誠子「?」

咲「あー……」

やえ「ランドリーに衣類を放り込む間も、倉庫でズボンを調達する間も、廊下を見ていたが……」

やえ「誰もまだホールから出てこなかったし、現場は荒らされていないはずだ」

咲「……」

咲(その順番で回ったってことは、ランドリーに服入れてから倉庫まで裸だったのかな……)


那岐「そ、それよりっ!」

那岐「スペツナズナイフって、聞いたことないかな?」

誠子「うわぁドヤ顔……」

誠子「いやまあ、聞いたことないけど……」

咲「モノペンファイルに載ってましたよね」

咲「凶器の正式名称みたいで……」

那岐「ふっふっふ」

那岐「剣士として、教えてやろう」

那岐「スペツナズナイフというのは、まあざっくり言うと、刀身が飛び出すナイフだな」

那岐「勢いよく射出されて、そのナイフで刺殺する暗器の一種だ」

誠子「へえ……」

咲「意外と詳しいんですね……」

やえ「まあ、全てさっき辻垣内智葉に教えられた知識だがな」

那岐「あ、ちょ、バラさなくても!」

やえ「どうでもいいことで裁判中ウソついた云々で揉めぬためだ」

誠子「剣士キャラなのに、こういう武器は知らないんだ」 ニヤニヤ

那岐「わ、私は誇り高い武士だから、そういう西洋の刀はだな……!」

那岐「に、日本刀なら結構わかるし……」

誠子「へえ、例えば?」

那岐「と、トラテツとか……」

咲「……」

咲(コテツ……)


やえ「どうやら今回の凶器はそれらしい」

やえ「そして――」

やえ「どうやら武器庫のナイフの内、いくつかはスペツナズナイフのようだ」

誠子「まさに暗器として使う用、か……」

やえ「実際スイッチも相当わかりづらくてな」

やえ「指でそーっとなぞってようやく分かったくらいだ」

やえ「これがソレだ」

咲「……グリップ部分についてるんですね」

やえ「鍔に付いているものもあるらしいが、ここにあるのは全てグリップ部分だな」

やえ「スイッチの出っ張りも目立たなくなっているし、色も同じ」

やえ「他のナイフと同じと思わせるための迷彩だろうな」

那岐「偉そうに語ってるけど、これも全部教えてもらった情報だからな」

やえ「ああ」

やえ「資料室の本に、詳しく書かれていたらしい」

咲「勤勉に本を読んでいた者が有利になる……ということでしょうか」

やえ「だろうな」

やえ「あくまで名目は勤勉に麻雀に取り組ませることであり、真面目なものほど有利になるというわけだ」


那岐「ほーん」

那岐「私にも見せてくれ」

那岐「剣士として後学のためにな」

誠子「武士の武器には卑怯な気がするけど」

那岐「まあそう言わず――」 カチッ

バシュッ

ビイーーーーン・・・

誠子「……」 パクパク

咲「……」 ヘナヘナ

やえ「ちょ、何やってんだ!」

那岐「ち、違……」

那岐「こ、こんな簡単にスイッチ押せるなんて思わないじゃないか!!」

やえ「馬鹿者!」

やえ「私達でも使えるようにカスタマイズされているに決まっているだろ!」

誠子「うっわ、思ったよりえげつない射出速度……」

誠子「壁に刺さってまだ揺れてるし……」

誠子「……大丈夫?」

咲「は、はい……」

咲(か、掠った!? 今髪の毛掠った!?)

咲(……うう、ちょっと漏れた……)


誠子「……」

誠子「そーいえば、今刃が刺さってる壁といい……」

誠子「武器の乗った棚がない壁もあるんだなあ」

咲「……言われてみれば……」

那岐「そんなに用意できなかったんじゃないか?」

誠子「なるほど」

やえ「いや……」

やえ「そちらの壁に関しては、そこにあるとドアが開かなくなるからだろ」

やえ「内開の扉が全て開けられるようにするには、障害物と成るものがあっては困るからな」

咲「……」

咲「死角になるから、とか」

誠子「え?」

咲「武器を取る姿を見られないよう工夫しろ、みたいなところがありますよね、小窓の存在と言い」

やえ「ああ、そうだな」

咲「……なので、小窓から見える範囲にしか、武器が置いていないとか……」

誠子「あー、なるほど」

やえ「武器のない壁も見えなくはないが、普通に扉の前に立って見やすい位置ではないもんな」

誠子「廊下を歩いてる途中に小窓覗けば~ってレベルだしね」

咲「……」

誠子「ま、小窓については後で実際覗いてみるよ」


誠子「でも発射式ナイフの刃で殺されたとして……」

誠子「残った柄はどこに行ったんだろ」

やえ「それがだな……」

咲「……え?」

咲「洋榎先輩の手――」

やえ「……そうなんだよ」

やえ「何故か、死んだ洋榎が両手で握りしめているんだ」

咲「どうして……」

誠子「ふーむ」

誠子「ほんとにこれもスペツナズナイフなのかな」 ゴソゴソ

やえ「モノペンファイルにそうあったのだし、それは事実だろう」

誠子「でもスイッチっぽいものが――」

やえ「……それが――」

やえ「よっと」

やえ「ここにあるんだ、スイッチ」

誠子「え?」

那岐「ぷぷーっ」

誠子「くっそー、ムカつく笑顔……」

咲「……」

咲「これ、本来の持ち方と逆ですよね……?」

咲「普通、スイッチって、上にくるんじゃ……」

やえ「そうなんだ」

やえ「スイッチが下に来ている」

やえ「……それも、美味い具合に掌にかぶらない位置に、だ」

誠子「スイッチの存在を隠せるよう鍔の近くについてるせいで、人差し指もギリギリふれてないのか……」

咲「……これだと、強く握っても射出されませんよね……」

やえ「ああ」

やえ「……私は、偽装工作で犯人が持たせたのではないかと思っている」

やえ「握らせ方が雑なのも、慌てていたのだろう」

誠子「確かに、人がいつ来るか分からないし、焦るのもしょうがないか」



▼コトダマ【スペツナズナイフの柄】が追加された!


誠子「……」

誠子「死体そのものも、調べないわけにはいかないよな……」

咲「……」 ブルブル

誠子「……」

誠子「……代わりに調べようか?」

咲「……」 コクリ

誠子「えーっと、死因は……」

誠子「このスペツナズナイフの刃だったよな」

誠子「……結構深々刺さってるな……」

咲「……」 ブルブル

やえ「……結構、慣れた手つきだな」

誠子「いや慣れちゃいないけど……」

誠子「魚を頻繁に捌くし、血に慣れてるだけだよ」

那岐「女の子なら概ね血には慣れてるはずだけど、やっぱり自分のと他人のじゃ違うもんだからなあ」

誠子「……あれ、これ……」

誠子「突き上げるようにして刺さってる、のかな」

やえ「ああ」

やえ「……あまり自ら刺したとは思えない刺さり方だな」

咲「そっか……」

咲「切腹とか、正しい作法は知らないけど……」

咲「自分のお腹を刺そうとしたら、大体上から刺すか、真横ぐらいからになりますもんね」

誠子「大分角度がついてるし、自分で刺したってわけじゃなさそうだな……」

やえ「まあ、自分で刺したにしては、持ち手の部分についてもおかしな部分が多かったしな」



▼コトダマ【スペツナズナイフの刃】が追加された!


誠子「あとは――」

やえ「あ、ストップ」

誠子「?」

誠子「あ、別に死体に何か細工しようってわけじゃないよ」 グッパーグッパー

誠子「ほら、両手とも何も持ってない」 グッパーグッパー

やえ「ああ、それもだが……」

やえ「ポケットを漁るなら気をつけろよ」

やえ「割れたガラスが入っている」

咲「割れたガラス……?」

やえ「ああ」

やえ「荒川と清水谷のコンビが真っ先に調べにきていたんだが――」

やえ「荒川が指を怪我してな」

やえ「血が少々ついてしまっているが、まあ気にしないでくれ」

誠子「ガラス、ねえ……」

那岐「さっきも言ったけど、ガラスってあんまり手に入らないはずなんだけどな」

誠子「そうなの?」

やえ「ああ」

やえ「ここの小窓もそうだが、強化ガラスなのかなかなか割れなくなっている」

やえ「グラスなんかもプラスチック製だしな」

那岐「まあ、割れるやつだと、夜時間に回収しに来る黒幕達が怪我しちゃう可能性あるからなー」

誠子「じゃあ何でガラスなんて入ってるんだろ……?」


やえ「更に――」

誠子「え、まだ何かあるの?」

やえ「どうやら、薔薇も入っていたらしい」

誠子「薔薇ぁ?」

やえ「こっちは荒川に変わってガラス片を調べようとした清水谷が指を切っていたな……」

那岐「先陣切るってそういうリスクがあるから嫌なんだよな」

誠子「ってことは、薔薇はガラスと同じポケットに入ってたってことか……」 ゴソゴソ

誠子「ホントだ」

誠子「……」

咲「ガラス、あんまり多くないですね……」

誠子「薔薇も小さいのが一本……」

誠子「薔薇はあれかな、貰い物とか」

やえ「ああ、あるかもしれないな」

やえ「かなり慕われていたようだし」

咲「……」

咲(このサイズの薔薇……どこかで見たような……)



▼コトダマ【割れたガラス片と一輪の薔薇】が追加された!


誠子「ん~~~~~」

誠子「密室トリックって感じだし、死体に何か細工って思ったけど、他には特にないなあ」

那岐「怪しいのはガラス片だな」

那岐「私の直感は3割当たる!」

やえ「無視してもいいぞ」

誠子「あざーっす」

那岐「冷たくない君達」

咲「でも実際、何で割れてるんでしょうか」

誠子「んー」

誠子「あれじゃない、ドア、無理矢理開けたって言ってたし」

やえ「その衝撃で死体は転がり、あの位置に行ったわけだからな」

やえ「その衝撃で割れた、と考えるのが自然だろう」

咲「ってことは、トリックとは無関係の場合でも、割れてておかしくはない、かあ」

那岐「まあ、ガラス片をポケットに入れてる時点で、相当おかしいんだけどな」


誠子「あとは……小窓について調べとくか」

誠子「とりあえず窓から覗いてみるから……」

咲「あ、じゃあ、もたれかかってみますね」

誠子「オッケー」

やえ「身長差はあるが、まあやむを得まい」

やえ「協力してやりたいが、私達には一応監視という仕事があるからな」

咲「気にしないでください」

咲「……こんな感じですかね」

やえ「まあ私も詳しくは知らないのだが……」

やえ「もたれかかるようにして、というし、そんな感じじゃないか?」

那岐「立って、こう、クール系ライバルキャラみたいに立っていたって可能性は――」

やえ「ない」

咲「さすがにそれは……」

やえ「大体その時すでに血溜まりもあったというし、普通に座り込んでいたにきまっているだろ……」


ガチャ

咲「どうでした?」

誠子「ん、やっぱり最初は、床の血だね」

やえ「血さえなければ、正面の棚が一番目についたはずだ」

誠子「で、血がこっちに向かってるし、視線を下ろすと――」

誠子「ぐったりしてる体、まあ投げ出された足とかだけど、そういうのが見える」

誠子「で、横見てみたけど、確かに棚の無い位置は見えづらかったな」

誠子「扉の横に至っては、全然見えなかったよ」

那岐「はっはっは」

那岐「ということは、私は姿なき剣士に――」

咲「でも、廊下から歩いてきたら角度がつくのである程度見えますよね」

誠子「んー、難しいかもしれないけど、こんだけ目立つやつがいたら目に留まるとは思うな……」

那岐「今の言葉に悪意こめられてない? 大丈夫? 目立つってソレ純然たる褒め言葉でいい?」

誠子「……ノーコメントで」



▼コトダマ【武器庫の小窓】が追加された!


誠子「ここの調査はこんなものでいいかな」

咲「……ですね」

誠子「他に特に何か持ってたわけでもないし、着衣に乱れもなかったし」

咲「ちゃ、着衣の乱れって……」

誠子「冗談冗談」

誠子「……でも、女子寮とかだと、たまーにそういう噂が……」

咲「……」

咲「あー」

誠子「引くとかしてくれるならともかくリアクションとりにくい納得されるとちょっと困る」

ガチャ

憧「あ……」

華菜「お、ここに居たのか」

華菜「もういいのかー、ここ来て……」

咲「はい……」

咲「いつまでもへこたれてるわけにもいきませんから……」


憧「ふうん」

憧「結構強いんだ」

華菜「うん、その方がいいし!」

華菜「あとの2人は見てるこっちがキツイくらい落ち込んでるからな―」

憧「どっかのKYが火に油を注ぐしね」

華菜「うぐっ……」

華菜「いや、あれは場を和ませようと……」

誠子「……何やったんだよ……」

憧「ああ、アタシ達はいろんな人に聞き込みしてるんだけど……」

憧「落ち込んでるからって例外はつくれないじゃん?」

憧「で、聞いたら、胡桃といちごは二人共洋榎に呼び出されてたっていうじゃん」

華菜「いや、それで、その……」

華菜「二人共最初は相手も呼び出されてるのしらないって言っててさ」

誠子「確かにさっき、ちょっと驚いてたっけ」

華菜「えー、もしかして二人っきりで愛の告白とか思って期待してたりーヒューヒュー」

華菜「みたいなことを言ったら泣かれて……」

やえ「何やってんだ……」

誠子「思ったよりアホだった……」

那岐「おいおーい、空気読めないとか最悪だな!」

華菜「お前には言われたくないしっ!!」


華菜「大体、お前のせいでちょっと火傷したんだからな!!」

那岐「おいおーい、年上には敬語使えー?」

華菜「ぐぎぎぎぎ……!」

憧「ああ、そうか、2人も何か変なことになってたんだっけ」

那岐「うっ……」

那岐「まあ、その詳細はいいじゃないか、うん」

那岐「名誉のために黙っていたまえ!」

誠子「黙ってもらう側のセリフじゃないよーな……」

華菜「まあ、思い出すだけでムカつくから、誰にも喋っちゃいないけども」

憧「とにかく、2人は変な惨撃に巻き込まれたんだっけ」

誠子「そうそう」

咲「私だけは下り階段に差し掛かっていたから助かって……」

憧「なるほど、それで咲だけ駆けつけるのが早かったんだ」

憧「で、確か……」

華菜「小走先輩は部屋にいて、アナウンス聞いて降りてきたんだったな!」

華菜「龍門渕に聞いたし!」

やえ「ああ……」

やえ「情けない話だが、少々動転していてな」

やえ「人に会って疑心暗鬼になるくらいなら……と」


憧「で、階段で合流して降りてきたのよね」

華菜「これで全員のアナウンス後の行動は把握したな!」

誠子「あ、そーなんだ」

誠子「教えてよ」

憧「……ま、いいか」

憧「その代わり――時間のロスをなくすために、死体の状況教えてよ」

憧「私だって、あんまり死体は触りたくないし」

憧「触ったんでしょ?」

憧「袖口に血もついてるし」

誠子「……まーね」

憧「とりあえず先に情報貰うわよ」

憧「で、こっちの情報伝えてる間に、調べさせてもらうから」

誠子「オッケー」

誠子「……それでいいよね?」

咲「……はい」


咲(刃やガラス片の情報を渡して……)

咲(新子さんが武器庫を調べてる間に、情報を貰った)

咲「新子さんはアナウンスを聞いて、食堂から出てきた狩宿先輩と合流」

誠子「で、効率よくするため手分けして探した、と」

華菜「ああ」

華菜「とりあえず探す場所が少なくて違った際にロスが少ない地下からってなったんだってさ」

華菜「西の階段からそうやって地下に行ったみたい」

誠子「東側は清水谷サン達だったよね」

華菜「私はのたうち回ってよく見てないんだけどな」

咲「清水谷先輩は、荒川先輩と一緒なんでしたよね」

華菜「ああ、憧と一緒だったけど、別れて東側で死体を探したらしい」

華菜「そこでランドリーから出てきた安河内先輩とも合流してて、階段の惨状見て引き返したんだって」

誠子「手伝おうとしてくれてたけど、収束しつつあったし、何より死体が気になったからさ」

誠子「地下に行くよう言って、西階段に回ってもらったんだ」

咲「思ったより、いろんな人に見られてるんですね……」

那岐「くっ……私のクールなイメージが……!」

華菜「そんなもんはじめっからないし」

那岐「インハイだとクールに見えるよう頑張ったのに……!」

華菜「刀ぶらさげて相当フールに見えてたけど」

誠子「最終的にふんどしも取れて下半身むき出しだったからなあ」

咲「うわ……確かにソレは一層クールから遠ざかりますね……」

那岐「一層って?」

華菜「まームカつくし思い出したくなかったってのもあるけど……」

華菜「一応名誉のために黙ってたの、何の意味もなかったくらいいろんな人にバレてるよな……」

誠子「私達が黙ってても、目撃者多いもんなあ」

誠子「私達当事者四人と、清水谷サン達三人と……」

華菜「ああ、あと、鶴賀のステルスも見たって言ってたし」

華菜「部屋が東側だから階段そのまま降りようとしたけど、私達が邪魔で降りれず迂回するハメになって……」

華菜「それのせいで到着が遅くなったんだと」

誠子「これで8人……」

華菜「全員に知れ渡るのも時間の問題だな……」


誠子「じゃ、私らも行こうか」

誠子「……って言っても、他どこ探せばいいのかわからないけど」

咲「ほとんど聞いて回っちゃいましたもんね」

誠子「一応、第一発見者の辻垣内智葉にも聞いとくかぁ」

咲「あ、呼び捨てた」

誠子「……どーもあのクラスの大物だとミーティングで呼び捨てた癖が」

華菜「年上には」

誠子「敬語使えー、でしょ。よく言われたら白糸台でも」

咲「ちなみに辻垣内先輩は……」

華菜「さぁ」

華菜「ステルスと一緒に色々調べて回ってるらしいけど……」

華菜「真っ先に声をかけて話聞いたから、今どこにいるかまでは」

誠子「そっか」

誠子「まあ探して回るしかないか」

咲「ですね……」



▼コトダマ【東階段の惨劇】が追加された!!

皆さん地震大丈夫ですか。
ちょっと落ち着いたのでとりあえず区切りいいとこまでは投下します。


<トラッシュルーム前>

巴「あ」

咲「どうも……」 ペコリ

誠子「あ、おにぎり貰いました、ありがとうございます」

巴「いえいえ」

誠子「で、ここで何を――」

巴「ええと、証拠を隠滅するなら、ここを使うかなと思って」

巴「一応見に来たんだけど……」

巴「特に変わった所はなさそう」

巴「まあ、鍵を持ってるのは私なんだから、当然と言えば当然なんだけど」

巴「それと――」

美子「ランドリーを見てきたと」

誠子「ああ、そういえば、事件発生前までランドリーに……」

美子「……」 コクリ

美子「あの時点で、他に洗濯機を使ってる人はいなかったばい」

巴「でも、さっき見に行ったら――」

美子「洗濯終了してた洗濯機が、1台」

巴「これは美子ちゃんのやつね」

美子「そして――稼働中の洗濯機が、1台あったばい」

巴「倉庫にあった汎用のやつだったから、誰のかまでは……」

誠子「ああ、それ多分……」

美子「え?」

咲「はは……」

咲「ま、まあ、名誉のために詳細は伏せますけど……」

咲(新免さんのシミ付きのやつだよね、それ……)



▼コトダマ【安河内美子の証言】が追加された!


誠子「一応、ランドリー確認しとく?」

咲「そうですね……」

咲「まあ、一応」

誠子「……あれ?」

誠子「階段、綺麗になってるな……」

巴「ああ、そこの隅に固められてたカップラーメン?」

巴「それだったら、汚いし、事件に関係なさそうだから、さっき片付けたけど……」

巴「何だったの、あれ?」

誠子「いやー……ははは……」

咲「し、新免先輩に直接聞いてもらった方がいいかなー、なんて」


<ランドリー前>

桃子「あ、どーもっす」

誠子「……ああ、どうも」

桃子「今一瞬見失っていたっすね?」

智葉「無理もあるまい」

智葉「私だって、集中していないと見失うしな」

桃子「……あ、集中してれば見失わないから、もしかして私と組んでたんっすか?」

桃子「信用ないっすねえ」

智葉「皆等しく疑っているし、同様に等しく信用している」

智葉「……だから教えておこう」

智葉「ランドリーにだが、動いている洗濯機と、終わっている洗濯機とがある」

智葉「終わっている方は安河内美子のものだ」

智葉「事件前の見回りで確認している」

智葉「事件の40分ほど前には回し始めていたようだ」

智葉「終わった衣服を改めたが、特におかしなところはない」

誠子「動いてるのは?」

智葉「衣類の上下が1セットだけ回っているな」

咲(腰抜かしてたし、袖口も濡れちゃったとかかな……)


誠子「そういえば、扉をぶち破ったのって……」

智葉「私だ」

智葉「巡回をしていたら、何やら騒がしかったのでな」

智葉「鹿倉がドアにすがるようにして愛宕洋榎の名を呼び、佐々野がドアノブを何度も捻って何やら叫んでいた」

智葉「ただならぬ状況とわかり近づくと、私より先に辿り着いたらしい桧森がドアを叩いていたな」

智葉「とりあえず小窓を覗くと血が見え、視線を下げると愛宕洋榎の体が目に入った」

智葉「力なくもたれかかっていたし――」

智葉「それに、腹に刃が突き刺さっているのが見えた」

智葉「まだ息があるならあまり衝撃は与えられないが、このまま放っておいても命はないだろうと判断し……」

智葉「ドアノブをひねったまま、扉に体当たりをした」

智葉「死体が引っかかってすぐには開かなかったが、何度かやる内に死体が動いて中に入れた」

智葉「……さすがに、死体に釘付けになったよ」

智葉「それからすぐだ、死体発見アナウンスが鳴ったのは」

智葉「その後、鹿倉が死体に縋り付き泣き出し、佐々野も死体の傍でぺたりと腰を抜かした」

智葉「……桧森は、部屋に入らず廊下で愕然としていたようだがな」

誠子「死体発見アナウンス、か……」

誠子「確か、3人以上で死体を発見すると、捜査を平等にするためにアナウンスが流れるんだっけ」

咲「え?」

誠子「咲は意識を飛ばしてたから聞いてなかったかもしれないけどね」

桃子「一応さっき確認したっすけど……」

桃子「死体としてしっかり認識してないと、アナウンスは流れないらしいっす」

智葉「例えば切れた手首だけ見てもアナウンスは流れないそうだ」

智葉「他の三人は、ただならぬ状態とわかりつつも、腹に刺さったナイフまでは見ていなかったらしいからな」

智葉「恐らくそれで、部屋を開けて亡骸全体を確認した瞬間にアナウンスが鳴ったのだろう」


智葉「露骨に動揺する人間が多くて、逆に冷静になれた」

智葉「宮永咲。お前が来てから……」

智葉「私は、死体に背を向けた」

智葉「……それから、現場に辿り着く順番を暗記することにしたんだ」

誠子「なんでまた……」

智葉「死体や現場は後から調べられる」

智葉「だが、到着順といった情報は、あとからでは知りようもないからな」

咲「なるほど……」

智葉「到着順は、私が見ている限りだと、私達の後に宮永咲」

智葉「それから新子・狩宿・がほぼ同時」

誠子「そういえば一緒だったんだっけ」

智葉「間を置いて門松」

智葉「それから龍門渕、上柿、小走」

咲「ここも2F探そうとして合流したって言ってましたよね」

誠子「結構遅かったってことは、廊下で新子達に会わなかったのは、こっちのグループがもたついていたからかな」

智葉「だろうな」

智葉「資料室を見たが、棚をどかそうとしたらしく本が散乱していた」

桃子「あそこ出ようとしたら、そりゃ時間はかかるっすよね~」 ウンウン

智葉「それから荒川、清水谷、安河内」

桃子「どうでもいいけど、宮永サンだけフルネームなんっすね」

誠子「私はそれわかるなー。今の2年3年って、宮永イコール宮永照世代だし」

智葉「……話を続けるぞ」

智葉「それで東横がやってきて、間を置いて――」

桃子「階段で遊んでた変な人達がまとめて、っすね」

誠子「変な人達って……」

桃子「否定出来るんすか?」

誠子「出来ないけど、それはそれとして変な奴は一人だけだから!」


桃子「まあ、まさか生命の終わりを体現するグロを見ると思いきや……」

桃子「生命の始まりを体現するグロを見ることになるとは……」

誠子「ああ、あれ見ちゃったんだ……」

桃子「ほどけてそのまま、足が上がった体勢っすからね……」 ゲッソリ

智葉「?」

咲「なるほど……」

桃子「えっ、今の話になるほど要素あったっすか!?」

咲「あ、そっちじゃなくて……」

咲「事件について、なるほどなあって」

誠子「どう? 何か分かりそう?」

誠子「私、あんまり推理モノとかも得意じゃないからさあ」

咲「うーん……」

咲「話し合ってみないことには、やっぱり……」

咲「今の時点では何とも……」

桃子「ま、そうっすね」

桃子「でも――」

智葉「何人か、すでに当たりをつけている人間はいるようだったな」

智葉「それが正しいのかは、分からないが」


智葉「……こちらの持っている情報自体はそんな程度だ」

桃子「他にも色々死体を調べたりはしたっすけど……」

智葉「それは自分達でもしているだろうし、自分の目を信じた方がいいからな」

智葉「……」

智葉「麻雀の能力と、殺し合いと裁判には共通項がある」

咲「え?」

智葉「そんな戯言を信じているわけではないが……」

智葉「宮永照の妹に、期待していないわけではない」

智葉「……仇を取るのだろう?」

智葉「期待しているぞ」

咲「……はい!」


▼コトダマ【辻垣内智葉の証言】が追加された!


誠子「んじゃ、次はこっちが見つけた情報でも――」

キーン、コーン……カーン、コーン

咲「!」

誠子「校内放送!?」

桃子「このタイミングでっすか!?」

智葉「……と、いうことは……」

モノペン『えー、ボクも待ち疲れたんで……そろそろ始めちゃいますか?』

モノペン『お待ちかねの……』

モノペン『学級裁判をっ!!』

モノペン『ではでは、集合場所を指定します』

モノペン『地下1Fにある、武器庫正面の赤い扉にお入りください』

モノペン『うぷぷ、じゃあ後でね~!!』

咲「……ッ!」

智葉「始まる、か――」


<赤い扉前>

誓子「あっ」

咲「桧森先輩」

誓子「……いよいよね」

咲「……はい」

誓子「洋榎の仇、絶対取ろうね」

誓子「それで、生き残って――花子ちゃんの仇を取る」

葉子「……」

恵「……」

誠子「さすがに二人共沈痛な面持ちだな……」

葉子「そりゃね」

葉子「……でも、ま、見てなって」

葉子「分かっちゃったからさぁ、私」

誠子「え?」

葉子「この裁判、最速で終わらせてやんよ……!」


やえ「まだ居るのか」

咲「小走先輩」

やえ「一応、見張りである以上私達は最後に行かねばならないからな」

誓子「いやー」

誓子「やっぱりこう、緊張するから、皆で気合入れてせーので扉を開けて――」

智葉「先に行くぞ」 スタスタ

誓子「え、ちょ!?」

やえ「ちなみに、もう何人も扉をくぐったぞ」

葉子「んだよ!」

葉子「クソ……覚悟決めていくぞ!」 スタスタ

恵「しかないですよねえ」 スタスタ

誓子「うう……」

誓子「皆でせーので気合入れたかったなあ」 スタスタ


咲「……」

誠子「?」

誠子「私達も行こう?」

咲「はい……」

咲「……」

咲「あの……」

やえ「ん?」

咲「……その、洋榎先輩なんですけど……」

咲「せめて、安らかに眠れるようにしてあげたいんですが……」

やえ「……今は、やめておこう」

やえ「死体をいじり、余計な揉め事に発展するのも、彼女の本位ではあるまい」

やえ「……クロを暴き、この事件を終わらせてから、皆で弔ってやろう」

咲「……はい」


透華「その通り、ですわ」

咲「あ……」

透華「今は辛いかもしれません」

透華「ですが――目の前のことを切り抜けねば、愛宕洋榎に顔向けできませんわ」

ちゃちゃのん「……うん」

誠子「……着替えては、こなかったんだ」

透華「……それでもいい、と、私が言ったんです」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんの、血……」

ちゃちゃのん「スカートについてもーたし、見ると、嫌なことは、思い出しちゃうけど……」

ちゃちゃのん「でも……」

胡桃「……でも……なかったことには、できないから」

胡桃「それに……忘れちゃいけないと、思うから」

透華「すぐさま、乗り越えるなんて出来なくて当然です」

透華「ですから――今はまだ、吹っ切らず、引きずりなさい」

透華「それでも、止まらず、引きずったまま、前に進めばいいのです」

胡桃「……うん」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのん達は、この血に誓ったんじゃ」

ちゃちゃのん「絶対――ヒロちゃんを忘れないって」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんにいっぱい貰ったものを、忘れないって……」

胡桃「……あんな濃い奴……忘れられるわけないもんねっ……」

咲「胡桃先輩……ささのん先輩……」


やえ「……行こう」

やえ「全員揃ったようだしな」

咲「……はい」

咲(そうだ……)

咲(私だって、まだ洋榎先輩のことを吹っ切るなんてできない)

咲(乗り越える自信だって無い)

咲(だからこそ――)

咲(引きずりながら、前に進むんだ)

咲(この辛さも含めて、洋榎先輩のことを、忘れたくないから)

ガチャッ

誠子「あんだけやっても開かなかったのに……」

やえ「よし、行くぞ」

那岐「何か最後って様になるから、私は最後に入るからな」

透華「いいから、行きましてよ!」


<赤い扉内部>

誠子「これは……」

咲「エレベーター……?」

モノペン『うぷぷ……みんな揃いましたね?』

モノペン『それでは……』

モノペン『正面に見えるエレベーターにお乗りください』

モノペン『そいつが、オマエラを裁判場まで連れてってくれるよ』

モノペン『オマエラの……運命を決める裁判場にね……』

モノペン『うぷぷ……ボクは一足先に行って、待ってるからね~!!』

咲「裁判場……」

誠子「……マジで、始まっちゃうんだね……」

ポーン

葉子「あいた……」

誓子「は、早く乗り込んでよ最速」

恵「そうですよ、最速なんでしょ!」

葉子「う、うるせえ、ちょっと心の準備を……」


憧「……アホくさ」

憧「今更ジタバタしたって、変わらないでしょ」 スタスタスタ

智葉「ああ。とうに賽は投げられているしな」 スタスタスタ

憩「確かに……まあ、覚悟は、とうに、しとるもんなあ~」 スタスタスタ

竜華「うん。……絶対生きて戻るからな、怜……」 スタスタスタ

桃子「……こんなとこじゃ、死ねないっすもんね」 スタスタスタ

葉子「ああ、クソ、行くよ、行きゃあいいんだろうが行きゃあ!」 スタスタスタ

恵「うう……やっぱり嫌だ……」 スタスタスタ

やえ「嫌だが……やるしかないだろう……!」 スタスタスタ

巴「そうじゃなくちゃ、浅見さんが報われないもんね……」 スタスタスタ

誓子「見守っててね、花子ちゃん……」 スタスタスタ

華菜「うう、やってやる……死んでたまるか!」 スタスタスタ

那岐「そ、そうだ! 絶対犯人を当ててやる!」 スタスタスタ

美子「スー……ハー……」

美子「よし……」 スタスタスタ

透華「さ、行きましょう……」

ちゃちゃのん「……ん」

ちゃちゃのん「大丈夫じゃ」

ちゃちゃのん「こっからは……自分一人で、歩ける」

胡桃「……うん」

スタスタスタ

誠子「……先、入っておくね」 スタスタスタ

咲(……)

咲(始まるんだ――)

咲「……」

咲(この一歩を、踏み出すと――)

咲(それでも――)

咲「……行かなきゃ」

咲「洋榎先輩を殺した、クロを暴くために――」 スタスタスタ

一区切りついたので、今日の投下を終了させて頂きます。
建物の見取り図あった方がいいかなあとは思うのですが、絵が描けないのでAAで……
大きさはあくまでザクっとしたイメージです。
ホールとかここまで極端にでかくはないので、大体の位置関係の参考くらいに思ってもらえれば。


<1F>

階段       階段
A||BBCCCCDE||
A||BBCCCCDE||F
A||BBCCCCDE||F
 ||BBCCCCDE||I
GL======」I  
GGGGGHHHHHHI

A女子トイレ
B資料室
C麻雀ルーム
Dランドリー
E談話室
F視聴覚室
G倉庫
H食堂
I厨房



<地下(解放済みの場所のみ)>

階段       階段
?||???AAAB||C
?||???AAAB||C
?||???AAAB||C
?||???AAAB||C

?L======」  
  ??DDD?? 
 
A武器庫

Bガチャルーム
Cトラッシュルーム
D赤い扉

あとついでにコトダマリスト貼っておきます。
難易度やさしいばりにヒント出してるつもりなので、ガバガバ推理ものですが推理してもらえれば幸いです。


【モノペンファイル】
被害者は愛宕洋榎。
死亡時刻は大体午後1時頃。
死体発見現場となったのは、地下にある武器庫。
致命傷は腹部に突き刺さったスペツナズナイフ。

【桧森誓子の証言】
死体発見アナウンスが流れる1時間ほど前から、ガチャルームにいた。
扉を開けて、通りがかる人物にダブったアイテムをメダルと交換するよう交渉していた。
正面にあるトラッシュルームに行った人間は誰もいなかった。

【龍門渕透華の証言】
死体発見の1時間くらい前まで、武器庫で武器を見張っていた。
その時点でなくなっていた武器は、門松葉子達の持ちだした斧・ナタ・ハンマーと今朝からなくなっているナイフのみ。
その後、上柿恵に呼ばれ、2人で壊せそうな場所を捜し建物をうろついていた。
死体発見アナウンスがした時、2人は資料室に居り、2階から降りてくる小走やえと遭遇している。

【床の血の跡】
武器庫の床に付いた血の跡。
部屋の奥から扉に向かって続いている。
愛宕洋榎の遺体は、その間に横たわっていた。

【武器庫のスペツナズナイフ】
武器庫に保管されたナイフの中には、スペツナズナイフが混ざっていた。
現在武器庫にあるナイフは、スペツナズナイフを合わせて18本。
内1本は、新免那岐が誤射したため刃先と柄が分離している。
龍門渕透華が確認した時点では、19本揃っていた。

【スペツナズナイフの柄】
ナイフと混同しやすく、柄の部分のスイッチも分かりづらくなっている。
死体が握っていたが、その握り方だとスイッチには触れない。
そもそもボタンが下にくるような握り方をしていた。
握らせた人物は、時間がなく焦っていて、そこまで気を回せなかったのだろうか……?

【スペツナズナイフの刃】
愛宕洋榎への致命傷となった刃。
射出された状態で、腹部に深々と刺さっていた。
下から突き上げるような形で刺さっている。

【割れたガラス片と一輪の薔薇】
愛宕洋榎のポケットに入っていた。
捜査の際、荒川憩と清水谷竜華の血液が付着してしまっている。

【武器庫の小窓】
扉の上部に付いている小窓。
第一発見者達は、小窓を上から覗き込むことで、洋榎の死体を発見した。
扉の横の壁等、頑張って横から覗きこまない限り死角になる場所があるようだ。

【東階段の惨劇】
死体発見アナウンスの前から、階段付近で阿鼻叫喚の光景が繰り広げられていた。
廊下から階段に行くことも、また2階から地下へ行くことも、新免那岐のせいで出来なかった。
一応名誉のために黙っていてあげたが、死体発見アナウンス時に東階段を使おうとした人達に見られているので、あんまり意味はなかった模様。

【安河内美子の証言】
死体発見アナウンスの流れる40分ほど前から洗濯を開始していた。
騒がしいのは得意ではないので、ランドリーに一人で居た。
その時点で動いていた洗濯機は安河内美子の使っていた1台のみ。
その姿は、死体発見アナウンスの30分ほど前に、巡回中の辻垣内智葉が目撃している。
また、事件発生後確認した所、洗濯終了した洗濯機は安河内美子の使っていた1台のみだったが、稼働中のものは1台あった。

【辻垣内智葉の証言】
騒いでいる鹿倉胡桃、佐々野いちご、桧森誓子を見て扉を無理矢理開け死体を発見。
以後、現場に来た人間の順番に注意を払っていた。
現場への到着順は、鹿倉胡桃→佐々野いちご→桧森誓子→辻垣内智葉→宮永咲→新子憧・狩宿巴→門松葉子→
龍門渕透華・上柿恵・小走やえ→荒川憩・清水谷竜華・安河内美子→東横桃子→亦野誠子・池田華菜・新免那岐・浅見花子

ちょっとだけですが、裁判開廷するくらいまでは進めます


<エレベーター>

咲(ゴウン、ゴウンと耳障りな音を響かせながら、エレベーターは更に地下へと下って行く)

咲「死刑を待つ囚人の気分って、こんな感じなのかな……」

憧「それを言うなら、“判決を待つ被告人”の気分じゃないの?」

咲(私達の不安な気持ちをよそに、エレベーターはどんどん地下へと潜っていった……)

咲(一部、苛立ちからかぶつぶつと呟いているけど……)

咲(基本的には、皆黙っていた)

咲(黙って、闘う決意を固めていた)

チーン

咲(そして――開いた)

咲(エレベーターが)

咲(そして――仲間を疑い、殺しあう、地獄の釜が)


<裁判場>

モノペン「にょほほ! やっと来たね!」

モノペン「どう、これって、いかにも裁判場って感じじゃない?」 ジャジャーン

モノペン「ユニバーサル・スタジオもビックリの再現度じゃない?」

モノペン「どうする、パレードでもする?」

葉子「ちっ……悪趣味な空間を……」 ケッ

誓子「どこまでも腹立たしいわね」

憧「……裁判所じゃなくて、裁判場なんだ。どうでもいいけど」

モノペン「ま、合宿設備の一部だからね。運動場みたいなものだよ」

モノペン「それより――」

モノペン「オマエラ、自分の名前が書かれた席に着いてくださいな」

モノペン「ハリーアップ、ハリーアップ!!」 ヒャッホーウ


咲(モノペンに言われるまま、私達は、指定された席へと向かった)

咲(一同が、円状に陣取るように配置された席)

竜華「嫌な配置やな……」

咲(どうやら、団体戦におけるポジションごとにまとめられてるらしく、隣の清水谷先輩が呟いた)

咲(今の私の位置からだと、目に見えて疲弊した胡桃先輩とささのん先輩の顔がよく見える)

咲(他にも、ぐるりと見回せば全員の顔を見ることが出来た)

竜華「……」

咲(本格的なセットに、嫌でも緊張感が高まる)

咲(その緊張感は互いに飛び火し、場の空気が、一気に重苦しいものに……)


咲(そして――幕は開く)

咲(命がけの裁判……)

咲(命がけの騙し合い……)

咲(命がけの裏切り……)

咲(命がけの謎解き……命がけの言い訳……命がけの信頼……)

咲(命がけの……学級裁判……っ!)










 ―― 学級裁判  開廷 ――






 


モノペン「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう」

モノペン「学級裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます」

モノペン「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき」

モノペン「だkど……もし間違った人物をクロとした場合は……」

モノペン「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが晴れて合宿所卒業となりまーす!」

モノペン「なんとその場合、進路についても安心保証!」

モノペン「この手厚い待遇、涙がちょちょぎれちゃうよね」 ウププププ

咲「……」

透華「本当に……この中に犯人がいるんですよね?」

モノペン「当然です」

那岐「よ、よし、じゃあみんなで目を閉じよう!」

那岐「それで犯人が手を挙げるというのは……」

葉子「アホか。挙げるわけねーだろ馬鹿」

誓子「しかも投票制だから、目ぇつぶって犯人誰か分からなかったら意味ないし……」


智葉「……一ついいか?」

智葉「議論の前に聞いておきたいんだが……」

智葉「……あれは一体、どういう意味だ?」

咲(あれ……)

咲(そう言って指さされた咲には、写真があった)

咲(額縁に入れられた、浅見先輩と洋榎先輩の遺影)

咲(桧森先輩と門松先輩の間に立つ、おちゃらけて笑う浅見先輩の遺影と――)

咲(私の正面、胡桃先輩とささのん先輩の間に立つ、洋榎先輩の遺影)

咲(それを見るだけで、顔が歪むのを感じた)

モノペン「死んだからって、仲間はずれにするのはかわいそうでしょ?」

モノペン「友情は生死を飛び越えるんだよ!」

憧「セーシを飛び越える、ねえ……」

葉子「アンタが言うと……何か卑猥だな……」

憧「喧嘩だったら買うけど?」

やえ「ま、まあまあ二人共……」


モノペン「さてと……」

モノペン「前置きはこれぐらいにして……」

モノペン「そろそろ始めよっか!」

モノペン「じゃあ、議論を開始してくださーい」

咲(始まる……)

咲(犯人を決める為の議論が……)

咲(何か気付いたことがあったら、気が引けても発言しないと……)

咲(私だけじゃなくて……)

咲(みんなの命がかかってるんだもん……!)

こっからノンストップ議論です
折角コトダマ提示したしウィークポイントも《》でやってちょっとロンパっぽくしてみます
テンポわりいなってなったら次章からやめます


あとさすがに今晩だけで裁判終わらないんですけど、
裁判って一晩でガッと終わらせた方がいいですか。
それともぶつぎりでもこまめに開いた時間に投下した方がいいですか。
意見求む。ため一旦休止。

んじゃとりあえず今夜ももうちょっとだけ進めます


透華「それで……」

透華「議論ですが、何から――」

葉子「ああ、ちょっといい?」

透華「……はい、なんですの?」

葉子「私、わかっちゃったんだよねー」

竜華「……え?」

華菜「わ、わかった……って……」

葉子「事件の真相だよ真相」

葉子「その悪趣味な写真見て確信に変わったわ」

恵「あ、それって、さっき確認してた――」

葉子「そう」

葉子「まどろっこしーの苦手だし、悪いけど最速で答えさせてもらうよ」

葉子「犯人は愛宕洋榎」

葉子「自殺なんだよ、じ・さ・つ!」


葉子「さっきアイツ呼んで確認したんだけどさぁ」

やえ「あいつ……」

智葉「モノペンのことか」

葉子「自殺の場合、裁判どーなんだって聞いたら――」

モノペン「その場合、クロは被害者と同一人物になります」

モノペン「なので、自殺であると指摘できればそれで終了」

モノペン「ただし外れれば、自殺したクロを除く、全員がおしおきされます」

憩「はー……」

憧「確かに写真はここにあるし、この中に犯人がいるって発言に矛盾はギリギリしないわね」

葉子「ま、私から見てもいい奴だったし、この状況に胸も痛めてた」

葉子「密室になってる以上、これはもう自殺で決まりっしょ」

竜華「……なるほど」

透華「確かに……そうなのかもしれませんわね……」

咲「……そうでしょうか」

葉子「……あ?」

咲「洋榎先輩には、帰りを待ってる妹さんがいます」

咲「それに――死ぬわけにはいかないと、本人の口から、聞きました」

ちゃちゃのん「確かにそれ、ちゃちゃのんも聞いた……」

ちゃちゃのん「胡桃ちゃんも、ひょっとして――」

胡桃「うん……」

胡桃「洋榎は、自殺するようなタイプじゃないよ」


葉子「んなこといったって、自殺しかありえねーんだって!」

竜華「確かに……《現場はほぼ密室と言っていい状態》……」

やえ「自殺だったら、解決するな……」

葉子「だろ?」

葉子「元々《武器庫の見張り番になる予定だった》っつーし」

葉子「一人になったところで、堂々とナイフをとったんだよ」

竜華「なるほど……」

竜華「最初から死ぬ気やった、か」

竜華「ありえん話でもないな」

葉子「で、《扉を背に、自分の腹をぶっ刺した》んだ」

葉子「そのまま死ねば自分がストッパーになって密室も完成するってわけ」

葉子「これ以外、もうなくねー?」


《扉を背に、自分の腹をぶっ刺した》 ← 【床の血の跡】



咲「それは違うと思います」

葉子「……は?」

咲「少なくとも、洋榎先輩は扉の傍でナイフを刺されたんじゃありません」

葉子「いやだから、刺されたっつーか自分で――」

憧「床の血の痕よね」

咲「はい」

咲「あの血、奥の棚の方から続いてました」

憧「自殺にしろ何にしろ、ナイフを刺したのは棚の傍でってことになるわね」

那岐「密室にするなら扉の近くで刺した方がいいよな」

那岐「刺した後で歩くとか、絶対痛いし」

憩「まあ、痛みさえこらえれば、出来んことは全然ないけど~」

憧「でも、わざわざ自分から痛い目見てまで先に刺す理由はなくない?」

葉子「う……そ、それは……」

誓子「……あとから気付いたから、とか」

胡桃「え?」

誓子「私もよくあるけど……」

誓子「追い込まれて視野が狭くなることってあるじゃない」

誓子「で、やらかしたあとに、ああ、ああしとけばよかったーって、なったりするの」

誓子「あれじゃないかしら」

巴「……とりあえず、詳しく聞いてみようか」

透華「ですわね」

透華「そのパターンがありえるかどうか、吟味しなくてはいけませんし」


誓子「大体、自分で自分を刺すって、相当勇気がいるじゃない」

恵「まあ、確かに……」

那岐「私なら絶対にしないな」

葉子「切腹しろよ武士」

誓子「だから、やっぱり時間を置いたら決意が鈍っちゃうと思うのよ」

美子「……それは、確かに」

誓子「だから、《ナイフを取って、すぐに決行した》んだと思う」

誓子「みんなのために死のうと、《自分のお腹めがけてナイフを振り下ろして》……」

誓子「それから、気付いたんじゃないのかな」

ちゃちゃのん「……?」

誓子「このままだと、犯人探しで疑心暗鬼になるんじゃないかって」

誓子「だから、疑心暗鬼を回避しようと《扉まで移動》した……」

誓子「そして、密室を完成させたの」

誓子「……どう?」

誓子「これなら全部の辻褄が合うと思わない?」


《自分のお腹めがけてナイフを振り下ろして》 ← 【スペツナズナイフの刃】



咲「それは違うと思います」

誓子「へ?」

咲「死体に刺さったスペツナズナイフの刃なんですけど……」

咲「突き上げるように刺さっていたんです」

誠子「確かに、振り下ろして刺さる形じゃあなかったね」

葉子「はあ? 証拠はあんのか」

モノペン「そういう水掛け論を見てもしょうがないので……」

モノペン「はい!」

モノペン「現場の写真を、そこのスクリーンに映してあげます!」

モノペン「まったく、ほんっとボクって人がいいよね」

モノペン「いや、この場合、ペンギンがいい……かな?」

ちゃちゃのん「ヒロちゃん……」

胡桃「……」

巴「あんまり、気分のいい写真じゃないわね……」

透華「ですが……」

透華「確かに刃は、上を向いて刺さってますわね」


葉子「……あのさ、それが何だっつーの?」

咲「……え?」

葉子「別に振り下ろしてようが突き上げてようがどっちでもよくね?」

恵「た、確かに……」

葉子「大体さっきから揚げ足取ってばっかだしさあ」

咲「そ、そんな……」

葉子「何かそーやって議論を引っ掻き回したい理由でもあるわけ?」

咲「わ、私は別にそんな……」

智葉「揚げ足取りも無駄ではない」

智葉「そうやって可能性を潰し、残った答えを拾い上げるのも立派な推理だ」

憧「まあ、あんまり自殺で刃物を突き上げる人もいないんじゃない?」

葉子「うっ……」

ちゃちゃのん「た、確かに……」

胡桃「だよね……」


葉子「ぐ、ぐぐぐぐぐ……!」

華菜「で、でもさ、まだ自殺の可能性も……」

憧「大体自殺だったら、刃先を飛び出させる必要ないでしょ」

憧「そりゃ自殺で、誰も殺人者なんて出てない方がいーけどさ」

憧「現実味ないと、全滅するのは私らなんだから」

咲(そうだよね……)

咲(洋榎先輩のためにも)

咲(外で待ってるみんなのためにも)

咲(ここは下手に日和っちゃ駄目なんだ……!)

葉子「刃先に関しては……ほら、あれだ」

憧「敢えて――なんて言わないでよ」

竜華「まあ、刃先わざわざ飛び出さすなんて、むしろ殺人起きたと見せかける工作みたいやもんな」

葉子「自殺とアピールするために密室にしたのと矛盾するばいね……」


葉子「じゃあ、あれだ!」

葉子「うっかり……」

葉子「うっかり押して飛び出しちまったんだよ!」

憧「あのねえ、そんなことが……」

誠子「ありえるんじゃない?」

誠子「実際、誰とは言わないけどやらかした人いるし」

憧「え、そんな馬鹿いるわけ?」

那岐「ば、バカって何だバカって!」

那岐「しょうがないだろ、あんまり分からない感じでスイッチがあったんだから!!」

葉子「ほら!」

葉子「やっぱ刃先が飛び出したのは事故なんじゃん」

咲(うっかり刃が……)

咲(本当にそうなのかな……)

智葉「……」

智葉「お前は――死体を調べていたんだろう?」

咲「……え?」

智葉「なら――分かるはずだ」

智葉「違うか?」

咲「……」

咲(なんだろう……)

咲(死体を調べてたら、刃先がうっかり飛び出したかどうかの手がかりがつかめるってことかな……)

咲(それって一体……)


【スペツナズナイフの柄】



咲(これだ……!)

咲「あの……」

咲「そもそもに、洋榎先輩の持ち方だと、スイッチに触れないんです」

葉子「はぁ?」

咲「それに――」

咲「スイッチも、こう、洋榎先輩に刺さった刃と手にした柄をくっつけた場合、下に来てるんです」

巴「うーん、鍔にスイッチついてるのも多いから、スイッチって上についてるイメージなんだけどなあ」

憧「まあいずれにせよ……」

憧「持ち手が変なのに代わりはないわね」

やえ「うっかり射出した可能性は低い、か……」

憧「どっちかっていうと、射出した後握らされた……って考える方が自然よね」

智葉「0ではないにしろ、限りなく自殺のセンは0」

智葉「ここからは、他殺のセンで議論した方がいいだろうな」


憧「あんまりグダグダ引っ張っても時間の無駄だしね」

誠子「……そういや、制限時間ってあるのかな」

やえ「言われてみれば……」

やえ「時間を言ってもらえれば、タイムキーパーはするぞ!」

恵「あ、じゃあ私は書記を……」

誓子「じゃあ発表者は私が……」

葉子「就活かよ……!」

誠子「就活って単語がすぐ出てくるのもなんかすごいね」

憧「進学する方が少数派の高校なんじゃないの?」

那岐「確かに、頭わるそうだもんな!」 ハッハッハ

葉子「オメーにだきゃ言われたくね―よ……!」

智葉「……で、どうなんだ、モノペン」


モノペン「うーん」

モノペン「ぶっちゃけ、ボクとしては面白い議論が見たいだけなので、時間制限とか設けてないんだよね」

モノペン「面白い議論で、君達も続けたければ、何日でもどーぞってなるし」

モノペン「まあ、大体途中で飽きちゃうんだけどね」

モノペン「基本的にはボクから見て議論が終わったかなってなったら投票開始だよ」

憧「まだ終わってない!!ってなったら?」

モノペン「その際、過半数の反対があれば、議論を続行させてあげるよ」

モノペン「でも、そうやって引き伸ばし続けて何の益も出ないようなら、ボクだって考えちゃうからね」 ウププププ

巴「下手な引き伸ばしで時間をかせぐ、とかは止めた方がいい……ってことかな」

透華「そして、議論が終わったら投票に移る、と……」

咲「……」

一同「……」

那岐「あ、あれ!? もしかして、今まさに条件満たそうとしていないか!?」

憧「改めて議論する《必要はあるけど……」

透華「現状、自殺を否定したのみ」

竜華「新たな議論のとっかかりがほしいとこやな……」

那岐「や、やばいって! このまま投票とかしたら、私達、全員……!」

憩「誰か何かない~? 何でもええよ~?」

葉子「つっても自殺じゃねーっつんだろ?」

那岐「あばばばばばば……」

葉子「あーもう、なんでもいい、何かしゃべれ馬鹿剣士!」

那岐「え、えー……」

那岐「いい、天気ですね」

葉子「お見合いかよ……!」

恵「まあ、見合って見合って~……ではありますけども……」


透華「とにかく、何かを議論しなくては……」

胡桃「そうは言っても……」

やえ「……誰か犯人の目星とか……」

一同「……」

誠子「ま、ついてたら真っ先に言うよね」

憧「アタシはある程度ついてるわよ」

咲「……え!?」

華菜「だ、誰なんだし!?」

憧「……まだ言わない」

やえ「な、何故……」

憧「皆がどう考えてるのか、まだ腹の底が見えてこないから、かな」

憧「後は単純に、さっきみたいに他の可能性潰してからでもいいかなって」

透華「で、でも……」

智葉「とりあえず、事件の流れを確認しよう」

智葉「その中で……犯人候補から除外される人物がいるかもしれないだろう?」

誠子「……それしかない、か」

ちゃちゃのん「……まだ、結構、残っちょるもんね……容疑者」


誓子「えーっと、他殺と仮定して、流れを話し合うんだよね」

透華「愛宕洋榎は、私と交代で《武器庫を見張る》ことになっていましたわ」

美子「それで……武器庫についた……」

竜華「ほんで、まあ、一人でおったんやろ?」

憩「うーん、たまたま一人でいるところを、犯人さんに見つかったんやろか~?」

透華「さあ……そこまでは……」

やえ「まあ、とにかく……」

やえ「正確な時間は分からないが、《犯人は武器庫を訪れた》……と」

巴「それで、《後からやってきた犯人に、いきなり襲われた》のよね」

憧「武器庫に残ってるものに、他に血が付いたものはなかった……」

ちゃちゃのん「……っちゅうことは、抵抗することもできず……」

胡桃「洋榎……」 クッ

那岐「《スペツナズナイフの先制攻撃だな!》」

葉子「空気読め馬鹿!」

透華「それで、抵抗できずさされてしまい……」

華菜「……犯人の手で、《扉まで移動》させられて、結果密室が完成した、と」

誠子「……」

誠子「だめだ、さっぱり分かんない」

恵「何もおかしなところはないですよね……」

誓子「だからこそ手詰まり……なの……?」




《後からやってきた犯人に、いきなり襲われた》 ← 【武器庫のスペツナズナイフ】



咲「それは違うと思います」

巴「え?」

咲「さっき……犯人はあとからやってきたって言いましたけど……」

咲「それだとナイフの本数に説明がつかないんです」

華菜「ナイフの本数……?」

誠子「そういえば、18本になってたんだけっけ」

葉子「はあ!? 更に一本なくなってんのかよ!」

透華「ですが、私がいた時には、19本ありました」

桃子「……つまり、取られたのはその後、ってことっすね」

咲「それが凶器なんじゃないか……って、思うんです」

竜華「確かに、犯人が元から盗んだナイフを凶器にして、洋榎もナイフをとったとかでも……」

竜華「洋榎の腹に刺さってない方のナイフは、多分元の棚に戻されるやろうしな」

憧「まあ、調べられる可能性があるのに、わざわざ一本持って帰る馬鹿はいないだろうしね」

美子「先に武器庫に来た犯人が、ナイフを取った……」

透華「そして後から来た愛宕洋榎を刺殺した方が自然、ですわね」

智葉「棚に近づいている者がいれば、慌てて近寄って声をかけるだろうしな」

智葉「あんなピリピリした状態なんだ」

智葉「おそらくは、武器も持たず声をかけたことだろう」

智葉「殺されやすいくらい無防備で、な」


華菜「……ん?」

華菜「んんんんん?」

やえ「どうした?」

華菜「ってことは、龍門渕が犯人なんじゃ……!」

透華「……は?」

華菜「だって、交代で武器庫を見張ってたなら……」

華菜「交代時に19本あったのが本当でもウソでも、龍門渕にしかナイフは盗み出せないし!」

葉子「た、確かに……」

葉子「まさか、アンタが……!」

透華「な、私は……!」

誓子「でも、透華なら交代とかのスケジューリングしてるし、被害者を好きなタイミグで呼び出せるわ……」

那岐「よし、そいつが犯人だ!」 ポチポチポチポチ

モノペン「生憎だけど、投票タイムにいかないと、どれだけ連打しても投票はされないよ」

那岐「え、そーなの?」

咲(ううん……犯人のはずがない)

咲(それに、犯人がナイフを盗むタイミングはあった)

咲(その根拠は――――)


【龍門渕透華の証言】



咲(これだ……!)

咲「その……交代と言っても、顔を合わせて交代したわけじゃないんですよね」

透華「ええ……」

透華「それより早くに、上柿恵に呼ばれ武器庫を後にしましたわ」

透華「大口を叩いてこの失策……」

透華「言い逃れの出来ない過失です」

透華「ですが……私は殺してませんわ」

葉子「……そーなの?」

恵「ええ……」

竜華「ちゅーかこの話……アリバイの話のとき、すでにせんかった?」

誓子「……あ!」

憧「よっぽどアクロバティックなトリックでも使ってない限り、今回アリバイがある連中はシロ」

憧「その大前提くらい、頭に叩き込んでおきなさいよ」

透華「私と上柿恵、宮永咲と亦野誠子、そして新子憧と清水谷竜華と荒川憩」

やえ「その7人はシロ確定……で、いいんだよな」

智葉「浅見花子と愛宕洋榎も、だな」

憧「犯人は残った11人に絞られてるの」

華菜「う、うう……」


美子「龍門渕さんが武器庫を出てから、愛宕さんが来るまでの間に、犯人が来た……」

やえ「それで、その時取ったナイフで犯行に及んだ」

やえ「……ここまでは揺らがぬ事実だろう」

那岐「いやー、龍門渕透華犯人説、本当に追うだけ無駄だったなー」

葉子「テメーが言うんじゃねーよ!」

憧「裁判における戦力外が判明しただけ有意義だったんじゃない」

やえ「お、おいおい……」

葉子「言ってくれるなオイ!」

葉子「そーいうお前の推理はどーなんだよ!」

恵「何か、目星ついてるって言ってましたよね……」

憧「……まあ、そろそろいいか」

憧「大体誰が推理出来るかも見極められたし」

憧「そもそも――問題になるのは、あの密室なのよ」


巴「確かに……」

透華「どうやって密室にしたのか、未だに謎ですものね……」

誠子「あ、ポケットに何か入ってたし、あれを使って……」

憧「無理じゃない」

憧「そもそも、鍵がかかるような構造じゃないんだし」

憧「そーいう類のトリックが使えるやつじゃないでしょ」

やえ「で、では、どうやって……!」

憧「犯人は別に、外に出て密室を作ったわけじゃない」

憧「密室トリックは、必ずしも外で細工をする必要はないのよ」

憧「……ここまで言えば、さすがに分かる?」

咲(外で細工をする必要はない……)

咲(つまり、犯人は、部屋の中で何かをしたってこと……?)

咲(それって――)


・犯人は被害者と同一人物
・犯人は室内に隠れていた
・犯人は人間ワープの能力者


・犯人は室内に隠れていた



咲(これだ……!)

咲「もしかして……」

咲「犯人は、部屋を出ずに部屋に隠れていた……ってことですか?」

憧「……」 ニヤリ

華菜「いやいやいやいやいや!」

葉子「ありえないっしょ!」

憧「さあ……」

憧「ありえないかどうかは、第一発見者に聞いた方が早いんじゃない?」

胡桃「え?」

ちゃちゃのん「ちゃ、ちゃちゃのん達け?」

憧「いや――」

憧「2人はどうせ、洋榎の死体で動転してて話はあてにならなそうだし」

誓子「じゃあ私?」

憧「……お願いできる?」 チラ

智葉「……いいだろう」

誓子「無視!?」


智葉「悲鳴を聞いて駆け付けて……」

智葉「小窓を覗くと、そこに血が見受けられた」

やえ「まあ、小窓を覗くと真っ先に目に入るもんな」

智葉「慌てて視線を下げると、そこに《愛宕洋榎の死体が扉にもたれかかっていた》」

智葉「それで扉に体当りし……」

智葉「扉を無理矢理開けたんだ」

葉子「やっぱりどう考えても部屋に居るなんて無理だろ!」

透華「確かに、《隠れる場所なんてどこにもありません》わ」

那岐「そうか分かったぞ!」

葉子「そうか黙ってろ」

那岐「ひどいな! 聞いてくれてもいいだろ!」

恵「……で、何なんです」

那岐「忍者みたいに、天井の三角コーナーにへばりついてたんだよ!」

葉子「……」

葉子「それ、できる奴いんの?」

那岐「こう、腕や足をつっぱれば……」

那岐「私は武士だし、出来ると信じてたぞ!」

葉子「信じただけかよ!!」

那岐「実際は1秒も持たないし、そもそも《脚立でもなければ天井に手がつかなくて》な」 ハッハッハ

葉子「じゃあなんで言ったんだよ! やっぱり聞くだけ無駄だったじゃねーか!!」

誓子「宮守のノッポちゃんとか阿知賀の山登りの娘ならともかく、さすがに私達の中で天井に手がつく娘はいないんじゃないかな」

葉子「手がついても出来ねーよ、へばりつくなんて!」

憧「……しずなら出来そうで怖いわ」


《隠れる場所なんてどこにもありません》 ← 【武器庫の小窓】



咲「それは違うと思います」

那岐「そうだよな」

那岐「夢は信じれば叶う」

那岐「人類は、きっと天井にはりつくことだって……」

誓子「そこじゃないんじゃない?」

咲「はい……」

咲「……」

咲「隠れる場所がない、ってことですけど……」

咲「あります」

咲「隠れることが出来る場所」


桃子「でも、棚は全部武器でびっしりっすよ」

那岐「ダンボールでもあればスネークもできるが……」

那岐「ああ、メタルギアのネタな」

誓子「面白いわよね、あれ」

那岐「寝ずにプレイしたものだ」

葉子「お前ホントよくそーいうこと喋りながら武士キャラ名乗れるな……」

透華「ですが実際、身を隠すものなど何も――」

咲「確かに、身を隠す“もの”はありません」

咲「でも――場所ならあります」

誠子「???」

誠子「どーいうこと?」

咲「扉の横」

咲「そこの壁にはりついていれば――小窓を覗いている人間に、姿が見つかる心配はありません」


華菜「な、なんだって!?」

やえ「た、確かに、あの小窓からは横が非常に見づらいが……」

智葉「ありえない話ではないな」

智葉「あの状況で小窓を見れば、真っ先に血が目に入る」

ちゃちゃのん「確かに、ちゃちゃのんもそうじゃった」

智葉「それが扉まで点々としていれば……誰だって視線を下に下げる」

誓子「言われてみれば……」

胡桃「……そう、だね」

智葉「死体を見てしまえば、あとは何とか扉を開けようとする」

智葉「小窓越しにのんきに部屋を見回す奴などまず居まい」

竜華「なるほど、確かに……」

咲「扉を開けてから、胡桃先輩はすぐさま洋榎先輩に駆け寄りすがりついた」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんもそうじゃ」

誠子「それで腰抜かしてたんだよね」

誓子「私は逆にびっくりして後退しちゃった」

透華「扉の横を見るゆとりなど、なかったわけですわね……」


憩「せやけど……ちょっとリスキーやない~?」

美子「……」

美子「小窓の方は見ながら廊下を歩いてたら、ちらっと視界に映る可能性も……」

智葉「それに、私は到着順をカウントするために入り口を中止していたぞ」

憧「そう」

憧「入り口を注視していた」

憧「それで、犯人が絞れたのよ」

葉子「は……?」

憧「普通、振り向かれた時点で詰みになる」

憧「けど――」

憧「一人だけ、いるのよね」

憧「どこか別のところに注視さえしてもらえてれば、見つかる恐れがない人間が」

憧「相対的に、見つけにくい人間が」


華菜「だ、誰なんだ!?」

葉子「もったいぶってないで言えって!」

憧「ちょっとは自分で考えなさいよ……」 ハァ

咲(……)

咲(私は、あんまりピンとこないけど……)

咲(聞いたことは、多分ある)

咲(全体を俯瞰してみてれば捉えられるけど――)

咲(他に目立つ人がいたりすると、存在感が消える人……)

咲(その人の、名は――――)

さすがにめっちゃ夜も更けてきたので、一旦中断します。
コトダマとかウィークポイント出すとテンポは悪くなるので、
こんな感じで進めるかコトダマとかウィークポイントなしで行くほうがいいかも、
意見頂けると有り難いなと思います。



あと捜査時のミスを今更ながら訂正します。

>>551
×誠子「スイッチの存在を隠せるよう鍔の近くについてるせいで、人差し指もギリギリふれてないのか……」
○誠子「スイッチの存在を隠せるよう鍔の近くについてるせいで、小指もギリギリふれてないのか……」

切腹のポーズしたら鍔は小指側につくやんけ……
もしこれに違和感持って推理した人がいたら申し訳ない。
今後は気をつけます。

またちょっとだけ進めるんじゃ


東横桃子



咲(これだ……!)

咲「それって……東横さんのこと……?」

桃子「……っ!?」

憧「……そう」

憧「アンタだけは、他に目立つものがあれば、存在を隠し通せるんでしょ」

憧「今更無理だとは言わせないわよ」

智葉「……確かに、以前麻雀で披露していたな」

智葉「そのステルスに騙されなかった……とまでは言えない」

咲(……)

咲(なんだろう)

咲(さっきの脱線で……少し、気になることがあるけど……)

憧「だから、犯人は東横桃子!」

憧「アンタしかいないのよ!」

咲(でも、今はそこを考えている場合じゃない)

咲(まずは、本当に東横桃子さんが犯人なのかを、見極めなくちゃ――)


憧「犯人は《被害者より先に武器庫に来た》……」

やえ「そして、《武器庫にあったスペツナズナイフ》を手にとって……」

透華「愛宕洋榎を刺した……」

巴「その後、死体を《扉の前まで移動》させてから……」

竜華「自分は扉横に隠れとった、と」

智葉「そして私達がやってきて……」

華菜「扉は無理矢理開けられたんだよな」

美子「それで、《すかさず何食わぬ顔で合流》」

誓子「これで密室に見せかけるのは完成、か……」

やえ「確かに、この流れかと思うと、全て辻褄が合うな……」


《すかさず何食わぬ顔で合流》 ← 【辻垣内智葉の証言】



咲「それは違うと思います」

美子「……え?」

咲「東横さんは……確か最後のほうで合流したんですよね」

智葉「ああ」

智葉「亦野誠子達の集団を除けば、その次に遅く合流している」

桃子「そ、そーっすよ!」

桃子「私がクロなら、ボロが出るまえに合流するのが普通じゃないっすか!?」

憧「……出来なかったんじゃないの?」

桃子「……は?」

憧「いくらなんでも、出口を注視されてたら、すぐに出ることは出来ない」

憧「でも……人がどんどん入ってきた後なら?」

透華「人によるブラインド……ということですの?」

竜華「確かに……最初は入り口で呆然としとっても、そこに無限に固まることはない……」

竜華「立ち尽くしてた奴がどくにしろ、そいつを押しのけるにしろ、誰かしらは部屋にどんどん入ってくる」

憧「そうなれば、相対的にドンドン影が薄くなる」

やえ「それで、頭一つ遅れた連中を除き最後だったのか……」

憧「そう」

憧「更に言うと、最後は人をブラインドにして、他の人間が部屋に入ってきたと同時に外に出た」

憧「これなら、智葉の注目も、“出入り口”から“入ってきた人物”へ移動する」

憧「誓子に関して言えば、途中からへたりこんで地面ばっか見てたみたいだしね」

やえ「最悪見つかったとしても、後退りしていれば、見つかった瞬間到着したと装えないこともない、か……」


葉子「決まりじゃねーか!」

葉子「オメーが犯人だ!」

桃子「わ、私は犯人なんかじゃ……!」

葉子「あ、どもったな! そういうのって怪しいんだぞ!」

誓子「え!? どもったら怪しいの!?」

桃子「そ、そんなこと言われても……」

誓子「あ、またどもった!」

葉子「決まりだ決まり!」

那岐「まぁ私は分かってたけどな、うん」 ポチー

やえ「……投票タイム前にボタンを押しても意味が無いと言われたばかりではないのか?」

咲(黙って議論を見てた所で突然犯人と言われて、東横さんも焦ってる……)

咲(東横さんがクロならここで追い詰めるべきだし……)

咲(クロじゃないなら、みんなのためにも、東横さんを擁護しなくちゃ……!)


桃子「だ、大体、こんなの単なる決め付けじゃないっすか!」

誓子「まあ、そうかもしれないけど、でも……」

葉子「つーかさ、結局のところ、お前が犯人なんじゃねーの?」

恵「まあ……《現時点では、他に候補もいない》ですしね」

葉子「処刑が嫌なのはわかるけど、もう詰みなんだから観念しろって」

桃子「しょ、証拠は!?」

桃子「証拠はあるんすか!?」

桃子「《私がやったっていう証拠、どこにもないっすよね!?》」

憧「生憎、この裁判では証拠がなくても多数決で決まるのよね」

憧「無実を納得させられなきゃ、貴女の負け」

憧「そしてアタシ達の勝ち」

桃子「だ、大体、返り血が付いた服はどーするんすか!」

憩「まあ《倉庫には衣類がわんさかある》しー」

竜華「倉庫で着替えて、後からこっそり着てた服を処分してまえば解決するわな」

憧「持ってる衣服さえ、巻き込んで存在感を消せるんだからね」

憧「そもそも、《やってないって証明できるものもないでしょ?》」

憧「アリバイもないし、無実も証明できないし、状況が全てアンタの犯行を裏付けてるのよ」

桃子「ぐ、ぐぐぐ……!」


《やってないって証明できるものもないでしょ?》 ← 【東階段の惨劇】



咲「それは違うと思います」

憧「……は?」

咲「新子さんの推理では、東横さんはずっと武器庫にいたんですよね」

憧「そりゃね」

咲「自室に居たとは言ってましたけど……」

咲「こっそり自室に戻った可能性は薄い、と」

憧「そうね」

憧「皆が武器庫に群がってきてる中、逆走して上まで向かう」

憧「しかも階段も幅ひろくはないし、集団で移動してる奴らとかち合ったらおしまいだもの」

憧「部屋に戻ったとは考えにくいわ」

咲「ならやっぱり……東横さんは犯人じゃありません」

憧「!」

咲「東横さんは……」

咲「死体アナウンスの際、何で遅れたんですか」

憧「そう、それもそもそもソイツがクロっていう根拠よ!」

憧「普通に部屋を出たなら、階段付近の東横桃子の方が、廊下中央の小走やえより早く辿り着くはず」

憧「運動神経に若干の差があったとしても、遅いのよ」

咲「……何かに足止めをされ、Uターンを余儀なくされていたのだとしたら……?」

憧「!」

桃子「確かに……」

桃子「私が遅れたのは、東階段で、そこの武士気取りさんが通路を塞いでたからっす」

憧「!」


咲「具体的に、それはどんな感じでしたか?」

桃子「えっと……」

桃子「ラーメンぶちまけながら、何故か下半身裸で、ポーズは所謂まんぐり――」

那岐「だあああああああああああ!」

那岐「ストップ、すとーーーっぷ!!」

那岐「そ、ソレ以上は孤高の剣士キャラたる私の股間に関わる!!」

竜華「……それ、沽券の間違いとちゃう?」

誠子「ある意味……股間の問題ではあるけどね……」

透華「一体なんなんですの、その、まんぐり何とやらは」

誓子「はは……知らなくていいんじゃないかな……」

葉子「まあ、あんまりイイ子チャンの女子高生は知らないわな」

葉子「知ってたのが、ちょっと意外だわ」

桃子「まあ、私は毎日……」 ポッ

桃子「っと、これは蛇足っしたね」

葉子「なんだよ、毎日何なんだよ!」

誓子「え、なに、恋人いるの?」


咲「ちなみに今の恥ずかしい話……」

咲「知ってる人、いましたか?」

誠子「まあ、当然私は……」

華菜「あ、挙手する流れなのか?」

透華「結構手があがりますわね」

咲「……いずれも、現場に遭遇した人ですよね」

咲「それじゃあ……」

咲「あの話を、誰かにしたっていう人はいますか?」

透華「……今度は手がおりましたわね」

やえ「全員誰にも話していない、か……」

誠子「さすがに、あれの細部を話すのは、女同士とはいえ、ねえ……」

竜華「さすがに可哀想っちゅーか……」

華菜「まあ、こっちとしても思い出したくないからなー」

咲「……つまり……」

咲「ラーメンだけなら残骸から予想出来ても、ポーズだけは、あの時あの場所に居なければ知りようがなかったんです」

咲「ですから――」

咲「東横さんがずっと武器庫にいた、というのは誤りです!」

憧「ぐっ……!」


透華「……何か反論はありまして?」

葉子「どーなんだ、おい!」

憧「……」 ギリッ

憧「ないわ……」

憧「言いがかりを謝る、ごめん」 ギリッ

那岐「謝る表情じゃないよーな……」

智葉「だが、己の意見に執着し、場を乱されるよりはいい」

葉子「おい、今こっち見たか!?」

憧「でも、じゃあ密室の謎はどーなんのよ」

憧「他にもう、密室を作る方法なんてないわよ!」

咲(そう……)

咲(この場にいる人に、もう密室を作ることは出来ない)

咲(つまり、密室を作ったのは――――)



・被害者である愛宕洋榎
・人を操る念能力者であるシャルナーク
・超常現象である太古のアースパワーだべ!


・被害者である愛宕洋榎



咲(これだ……!)

咲「やっぱり……密室は洋榎先輩が作ったんじゃないかな……」

那岐「はぁ?」

葉子「だよな! やっぱ自殺だよ自殺!!」

葉子「もうそれっきゃねーって!」

咲「……洋榎先輩は……」

咲「犯人を、庇ったんじゃないでしょうか」

ちゃちゃのん「え……?」

胡桃「犯人を……庇う……?」

咲「はい」

咲「きっと洋榎先輩だって生きたかったでしょうし、恨まなかったわけじゃないとは思います」

咲「でも――」

咲「刺されてしまったら、もう助からない」

透華「確かに……現時点で怪我の治療は不可能な状況ですわね」

咲「だから――せめて、犯人だけでも、助けようとしたんじゃないでしょうか」

咲「このままただ死ねば、犯人も結局脱出できない可能性がある」

咲「でも――」

咲「ここで自分が密室を作り、自殺以外ないと見せかけることができれば、犯人だけでも家に帰れる」

咲「そう思ったんじゃないでしょうか」


やえ「……いや、それはないんじゃないか?」

咲「……え?」

竜華「確かに、洋榎はお人好しなとこがある」

竜華「更に言うと、あれでいてケッコー計算できるオンナや」

竜華「せやから、自分は助からないからせめて――ってなるのは分かるんや」

竜華「けど……」

巴「それは同時に、他の皆の死を意味する……」

透華「実際、今すでに、クロ以外の全員が窮地に立たされてますわ」

竜華「あの計算高い洋榎が、そこまでするか?」

恵「そこまでする相手だったってことじゃないですか?」

恵「確かあのへんの人達と特別仲良しでしたよね」

ちゃちゃのん「し、親友だなんて、そんな……さ、さすがにまだそこまでじゃ……///」 テレテレ

葉子「何でちょっと嬉しそうなんだよ……!」

咲「それは、関係ないと思います」

咲「ささのん先輩や胡桃先輩だから特別扱いしたんじゃないかと……」

胡桃「……」

咲「だって、そもそも、洋榎先輩は――」



・学級裁判のことを忘れるほどの超高校級のアホだった
・学級裁判の存在を知らなかった
・私の恋人だから


・学級裁判の存在を知らなかった



咲(これだ――!)

咲「だって、そもそお洋榎先輩は、学級裁判の存在を知らなかったんですよ」

憧「……確かにそうね」

智葉「学級裁判の存在が知らされたのは、愛宕洋榎の死体を発見した後」

智葉「愛宕洋榎の認識に、クロを外せば全員死ぬ、というものはなかっただろうな」

胡桃「じゃあ、やっぱり洋榎は――」

透華「クロを庇って密室を作った……ということで、間違いないでしょうね」

竜華「確かにそれなら、ナイフの持ち方がおかしかったのも納得できる」

竜華「射出して刺された後、現場に残されたかした柄を、自殺に見せるため持ったってことやろ」

憩「まあ、スイッチの位置まで気を回しとる余裕はなくてもおかしくないんと違います~?」

やえ「決まりだな……」


葉子「それは分かったけどさ……」

葉子「ぶっちゃけ、犯人の手がかり0じゃない?」

憧「いや……あるはずよ」

桃子「え……?」

憧「さっき自分で言ってたじゃない」

咲「……返り血、ですか」

憧「そう」

憧「犯人が誰であれ、返り血のついた服は処分しなきゃならない」

憧「だから、わざわざ鍵まで渡したんでしょ」

誓子「あ、そうか、部屋を見て回った調査報告だよね!」

恵「……っていっても、何もなかったですよ?」

憧「……」

憧「は……!?」

葉子「いや、さすがに何か見つかったら報告してるっつーの!」

憧「トリックに使う“何か”を見つけられそうな人員を置いておくべきだったわね……」

葉子「んだとコラ!!」

誓子「血のついたものは勿論……」

誓子「濡れたものも何もなかったわ」

咲「……ってことは、処分の方法は2つだけですよね」

やえ「ランドリーか――トラッシュルーム、だな」

竜華「洋榎が密室作ったんなら、犯人はそこに居続ける必要もない」

竜華「証拠隠滅は出来るもんな」

透華「つまり――」

透華「トラッシュルームかランドリーかはわかりませんが……」

透華「返り血のついた服を処分できた人間こそ、クロというわけですわね――!」

ちょっと休憩です、申し訳ない。
さすがにいい加減犯人特定しやすくなりすぎてるので、次の投下でクロ指名までは行きたいと思います。

途中ちょっと何も言わず休憩挟む可能性ありますが、とりあえずクロ指名まで行きたいので再開します。


憩「ほんなら、ランドリーかトラッシュルームかってことやけどー……」

竜華「印象だけで言うなら、トラッシュルームの方が証拠隠滅に使われてそうやな」

憧「その心は?」

竜華「現場からトラッシュルームまでは、角を1回曲がるだけや」

竜華「それに引き換え、ランドリーは階段登って更に角を曲がらなアカン」

竜華「誰かに遭遇するリスクは高い」

竜華「それに、ランドリーやと“モノ”が残るから衣類しか洗えへんけど……」

竜華「トラッシュルームやったら、返り血塞ぐのに別の何か使った場合、そいつを処分できるからな」

やえ「衝動殺人ならともかく、確かに計画殺人ならトラッシュルームの方が濃厚かもしれないな」

やえ「実際服に返り血を浴びてその場で着替えるよりも、すぐ脱げるようシーツでも被ってやった方が手早く出来るだろうし……」

憩「シーツとかやったら、確かにランドリーで洗うよりは、トラッシュルームやろなあ~」

葉子「……ん?」

葉子「んんんんん?」

恵「どうしたんですか」

葉子「分かった、分かったぞ犯人が!」

華菜「またロクでもない推理じゃないだろーなー」

葉子「うっさいな!」

葉子「へっへっへ、いいから聞きなって」

咲「……」

咲(確かに、何かロクでもない意見が出る気はするけど……)

咲(こうやって議論して可能性を潰していくことで、全体像が見えるかもしれない)

咲(いずれにせよ、返り血の問題はあるんだもん)

咲(まずはここの議論で、気になることがあったらドンドン意見していかなきゃ)


葉子「私にはわかったんだよね」

葉子「トラッシュルームの鉄格子を開けなきゃ、焼却炉には近づけねーし……」

葉子「焼却炉のスイッチも押せねーはずだよな?」

恵「まあ、そりゃ確かに」

葉子「そんで、そのトラッシュルームの鍵は……」

葉子「掃除当番が持ってんだったよなぁ……!」

葉子「つまり、犯人は掃除当番って事になるよなぁ!?」

恵「な、なるほど……!」

那岐「分かっていた、私は分かっていたゾ!」

那岐「……で、掃除当番って誰だっけ?」

美子「確か……」 チラ

巴「……え!?」

透華「鍵は、狩宿巴に渡してありますわ」

竜華「それも、確か自ら志願したとかちゃうかったっけ?」

巴「ちょ、わ、私は……!」

咲(本当に……掃除当番が犯人なのかな……)


葉子「観念しろって!」

葉子「トラッシュルームの鍵は……」

葉子「《掃除当番が持って》んだったよなぁ!?」

竜華「確かにそう……」

竜華「つまり、焼却炉に近づけたのは……」

恵「《掃除当番だけ》……?」

葉子「《焼却炉に近付かなきゃ》証拠隠滅なんて出来やしねー」

葉子「……つー事は、犯人は掃除当番だ!」

やえ「それにシーツなら、畳んで血さえ見えなくしておけば……」

やえ「万が一人に見られても、汚れたから等言い訳が出来るな……」

憩「結果的には、目撃証言もなく辿り着いたようですけど~」

葉子「《無実を証明できるモンが何もない》以上、理論上、掃除当番しか犯人はいねーんだ!」


《無実を証明できるモンが何もない》 ← 【桧森誓子の証言】



咲「それは違うと思います」

葉子「は?」

咲「トラッシュルームは、今回の事件では使われてないはずなんです」

咲「……そうですよね、桧森先輩」

誓子「あ、うん」

誓子「焼却炉には誰も近づいてなかったよ」

智葉「そういえばお前は、扉を開けて誰か通らないかを見ていたんだったな……」

咲「ですから、今回に関しては、誰にも見つからずにトラッシュルームに入るというのが、そもそも不可能なんですよ」

葉子「ちっ」

やえ「と、いうことは……」

憧「トラッシュルームよりは考えにくかったんだけど、ランドリーで返り血を洗濯したことになるわね」


透華「そういえば、操作中に稼働している洗濯機がありましたわ」

透華「それも上下セットで……」

誓子「なにそれ、めちゃくちゃ怪しいじゃない!」

咲「あ、いや、それは……」

誠子「事件とは無関係なんですよね?」

やえ「ああ」

やえ「事件発生後に、新免が放り込んだやつだ」

やえ「血が付いていないのはちゃんと確認している」

憧「なんでまたそんなタイミングで洗濯なんて……」

那岐「そんなタイミングだからというか、むしろあのタイミングで尿道緩めずいつ緩めるのかというか……」 モヂモヂ

那岐「と、とにかく!」

那岐「アレは事件に無関係だ!」

那岐「証人もいるしな!」


憧「証人ね」

憧「……そういえば、共犯って可能性はないの?」

智葉「どうなんだ、モノペン」

智葉「共犯すれば、共にここから出られるのか?」

モノペン「いいえ、出られませんよ」

モノペン「あくまでトドメの一撃を刺して手を汚した人間だけが、クロになります」

モノペン「勿論出られるのもクロになった一人だけ」

モノペン「ま、ネトゲとかと一緒ですね」

モノペン「倒した扱いになるのは、トドメの一撃をさした人だけなんですよ」

智葉「……だそうだ」

憧「手を下してない共犯者がいるなら、今のうち吐いちゃった方がいいよ?」

那岐「だ、だから違うって!」

やえ「ああ、私も共犯者ではない」

憧「ふむ」

憧「まあ自分の命を投げうって守るような相手じゃないし、これは本当かな」

那岐「おい、失礼だぞ! 小走に謝れ!」

葉子「お前が言われてるんだよ、多分……!」


巴「そうなると、可能性としては――」

智葉「残りは、洗濯終了していたものだな」

智葉「これは大量の衣類が入っていた」

智葉「悪いが改めさせてもらったが――」

智葉「血のついたものは入っていなかったな」

憧「ま、そりゃ洗ったんだからね」

竜華「確か、その洗濯機を使っていたのって――」

美子「……ッ」

咲「……安河内先輩、ですよね」


美子「た、確かにアレはそうだけど……」

美子「で、でも、違――!」

憧「口でだけなら何とでも言えるわよ」

憧「確か……」

憧「《一人でランドリーに居た》のよね」

憧「聞くけど、他に誰か来た?」

美子「そ、それは……」

竜華「武器庫ン中で洋榎を殺害し……」

竜華「そこで《犯人は返り血を浴びた》」

やえ「そしてランドリーに行き、《安河内美子は衣服を洗濯》……」

やえ「そのまま《自室に戻り、犯行の発覚を待った》」

誠子「なるほどねぇ」

誠子「そんで、犯行が発覚した時には、もう血は洗濯機によって洗い流されていた――と」


《自室に戻り、犯行の発覚を待った》 ← 【安河内美子の証言】



咲「それは違うと思います」

誠子「え?」

咲「安河内先輩は、確かずっとランドリーにいたんですよね」

美子「……」 コクリ

咲「そしてそれは、辻垣内先輩も見ている……」

智葉「ああ」

咲「その時の時間って……」

智葉「大体12時半ぐらいだな」

咲「その時、洗濯機は回ってましたか?」

智葉「回っていた」

美子「大体20分くらいから回してたから……」

咲「……じゃあ、やっぱり、直接事件に関わってくるわけじゃないんじゃないかと思うんです」

葉子「はあ? なんで」

葉子「その前に殺しを済ませてればいいだけの話じゃん」

咲「それはありえないんです」

咲「だって……」

咲(その根拠は――)


【モノペンファイル】



咲(これだ……!)

咲「モノペンファイルの、死亡時刻ですよ」

憩「確か、前後30分くらいは見とこう~っちゅー話やったな」

咲「はい」

咲「つまり、どんなに早くても、殺害時刻は12時半」

咲「それどころか、洋榎先輩が武器庫の番になるのが12時45分だったことを思うと、犯行はその前後である可能性が高いんです」

憧「つまり、あの時点で洗濯機は回せない、と」

誠子「途中で放り込めばいいんじゃない?」

智葉「……不可能ではないが……」

咲「洋榎先輩が45分に来てすぐ殺されたと考えても、15分は――」

咲「40分前にスタートが本当なら、25分も洗濯が進んでます」

咲「途中から入れたら、残りの時間分しか洗ってもらえない……」

咲「見つかったら終わりな血でべったりの衣服を、そんな中途半端な状態の洗濯機に入れると思いますか?」

憧「入れないと思うわ」

憧「それやるくらいなら、別の洗濯機に放り込んで、自分は部屋戻ってました、とかした方がウン倍マシ」

智葉「実際、血を落としきれずにいた場合、他の自分の衣服があった時点でアウトだからな」


誓子「敢えて困難な道を選んで、自分を容疑者から外したとかは?」

智葉「ありえなくはない」

智葉「だが――」

憧「考えにくい、わよね」

智葉「リスクにリターンがあまりにも見合わなすぎる」

竜華「確かに、結局容疑も完全に晴れるわけと違うしな……」

智葉「洗濯機の中身は衣服のみだった」

智葉「つまりどこかで着替え、その衣服を洗濯したことになるが――」

憩「あの傷の深さ考えたら、武器庫の密室作れるんは刺された直後くらいやもんなあ~」

憧「武器庫の中で着替える時間はない」

憧「目撃されるリスクと、その際のどうしようもなさがものすごいのよね……」

葉子「……ん?」

葉子「ちょっと待てよ、それじゃあ……!」

誠子「誰も返り血を処分できなくない……?」

憧「……そう」

憧「密室を洋榎が作ったと仮定すると、犯人を絞り込めるとしたら、返り血をどうしたか、その一点」

誠子「どっかに隠してあるとかは?」

憧「ないわね」

憧「その辺は概ね探したわ」

憧「トイレの換気扇とか、犯行現場の近くで、なおかつスタート地点になるような場所には、血が付着したものはなかった」

憧「このトリックを崩さない限り――全滅よ、アタシ達」

誠子「……!」 ゴクリ


やえ「何か気付いた者はいないか!?」

憧「って言ってもねえ……」

憧「トリックに使ったものがある場合、部屋に入れてるだろうし……」

憧「部屋を見た人間が、ヒントをくれないことには」

誓子「うーん……」

誓子「でもほんとに、これと言ってなかったのよね」

誓子「各部屋で違うものがあるとしたら、それこそガチャの中身だったり……」

那岐「分かった!」

憧「却下」

那岐「酷いぞ!」

やえ「……一応、言うだけ言ってみてくれ」

那岐「なんだか扱いがドンドン悪くなってる気がするが……」

那岐「木を隠すなら森の中、サンタさんばりに全身赤い服を着ていれば……!」 ドヤァ

葉子「……で、誰か今そんな服着てっか?」

誓子「さっきも誰もいなかったわよね……」

那岐「……」

那岐「ほ、ほんとだ! 誰もいない!」 ガーン

葉子「ほんっっっと馬鹿だなオメーは!!」

誠子「……あ、そもそもこれってスペツナズナイフだったんだし……」

誠子「返り血浴びない射程から射出したらいいんじゃない?」

竜華「なるほど、確かにそれなら返り血は浴びへん……」

憩「柄の部分引ったくられたら血ぃつきようやけど……」

透華「現場に残された柄を拾ったということなら、その問題は解決しますわ」

咲「……」

咲(……あっ)

咲(もしかして――)


憧「いや、それはないわ」

誠子「え?」

憧「忘れたの?」

憧「刃は、突き上げるように刺さっていた」

憧「借りに立ち上がってるとしても、その射線上には床がくる」

智葉「血は重力に従い落ちる以上、限界まで下がったとしても、返り血は防げまい」

透華「それでは、一体……」

那岐「分かったァ!」

葉子「……」

憧「……」

那岐「無言の圧力やめない?」

やえ「……仕方ない、聞こうじゃないか」

那岐「更に扱いが悪化してる気がするが……まあいい」

那岐「この名推理で汚名返上しようじゃないか!」

葉子「んで、何だよ」

那岐「ズバリ、ものすごい機敏な動きで、返り血を全て避けたんだ!」

やえ「……」

憧「……頭いたくなってきたわ」

那岐「? 大丈夫か?」

葉子「オメーのせいだよ!」

智葉「……大体そんなこと、誰に出来ると言うんだ?」

那岐「いやー、そこまでは分からないが……」

那岐「多分修行したら誰でも出来るようになるぞ!」

葉子「出来ねーよ馬鹿!」

誓子「漫画の見過ぎかしら……」

那岐「な、なにおう!」

那岐「じゃ、じゃあ修行して将来出来るようになったら土下座して謝ってもらうからな!」

葉子「大体今出来てなくちゃ意味ないんだっつーの!」

那岐「……」

那岐「た、確かに……!」 ガガーン

憧「……ロキソニンが倉庫になかったのが悔やまれるくらい頭痛いわ」


咲「……」

咲「あの……」

やえ「ん?」

咲「私、分かったかも、しれません……」

憧「え?」

やえ「歯切れが悪いが……言ってみてはもらえないか?」

葉子「まあ、あの馬鹿より酷い意見ってことはないだろ」

憧「ま、的外れでも何かヒントになるかもしれないしね」

那岐「そう、間違った答えも無駄ではないのだ!」

葉子「お前は黙ってろ」

透華「それで――犯人は、どうやって証拠を隠滅したんですの?」

咲「……隠滅は、していません」

咲「さっき話し合った通り……」

咲「トラッシュルームは使われてませんし、ランドリーもほぼほぼ使われてません」

憧「ってことは、やっぱりその2つ以外の処分の方法……」

智葉「もしくは、返り血を浴びない殺害方法がある、ということか」

憧「アタシだって検討もついてないってのに……」

憧「それで、それはどんな方法なの?」


咲「……わかりません」

憧「はぁ?」

咲「ランドリーもトラッシュルームを使わないで証拠を処分する方法も……」

咲「返り血を浴びない殺害方法も……」

咲「どっちも、私には浮かびません」

咲「そういうのを思いついたら、是非とも言ってほしいし……」

咲「私の推理は間違っていると、思わせてほしいかなって……」

那岐「つまり、血が出ない殺人剣を会得して……」

葉子「オメーはもう黙ってろマジで!」

憧「どういうこと、説明して咲!」

咲「……何もしてないんですよ」

誠子「へ?」

竜華「どういうことや……?」

咲「犯人は、何もしていないんです」

咲「返り血対策も、証拠隠滅も」

誓子「???」


咲「……強いて、いうなら」

咲「犯人がしたことは――」

咲「洋榎先輩の死を、心の底から嘆いたことなんだと思います」

ちゃちゃのん「…………え?」

咲「多分、事故か何かで……命を奪うことになって……」

智葉「……なるほどな」

智葉「死体や血に気を取られていなければ、もっと早くに解決できていた、というわけか……」

誓子「全然わかんないんだけど……」

智葉「先程の言葉の通りだ」

智葉「犯人は証拠隠滅もしていなければ、返り血対策もしていなかった」

誓子「いやいやいやいやいや」

やえ「それだと返り血を浴びてることになるぞ?」

竜華「さすがにそんな奴おったら気付くで……」

咲「気づかなかったんですよ」

華菜「ま、まさか……」

華菜「持ち物を巻き込めるステルス能力で、返り血まで……!?」

桃子「なっ……!」

桃子「死体発見直後ならともかく、その後も返り血べったりだったらさすがに存在感出すぎて気付かれるっすよ!」


咲「気付かなかったんですよ」

咲「その人はずっと返り血を浴びてたのに、誰も」

葉子「いや、それは無理があんだろ馬鹿剣士並に……!」

誠子「どんな魔法を使ったっていうんだ……?」

那岐「太古のアースパワーとかか……?」

誓子「説明して咲ちゃん!」

那岐「あ、無視?」

咲「……その人は、真剣に洋榎先輩の死を嘆いていた」

咲「だから辻垣内先輩も、違和感を感じず窓を覗き込んでしまった」

咲「扉にすがりついてるせいで見えない正面部分に、血が付いてるとも知らずに」

ちゃちゃのん「咲……ちゃん……?」

咲「そして心底嘆いていたから、誰も疑わなかった……」

咲「その人が駆け寄ることにも、抱きしめてることにも」

咲「その時に、べっとりと洋榎先輩の血がついてしまったから……」

咲「だから誰も、疑ってなかったんです」

ちゃちゃのん「何を、言って……」

咲「返り血対策が出来なくて、証拠隠滅も出来ない以上……」

咲「返り血を浴びている人が、犯人だって分かっていたのに」

ちゃちゃのん「まさか……」

咲「だから……」

咲「だから、今もこうして返り血のついた服を着ているのに、誰にも疑われていない……」











咲「そうですよね――――胡桃先輩」










 

きりがいいので寝ます。
章タイトルつけてなかったけど、次の投下で出来れば章終わるとこまで行きたいと思います。

出来れば1章終わるくらいまで投下したいと思います


胡桃「…………ッ!」

那岐「え、なに、どーいうこと……?」

憧「……愛宕洋榎の死体にすがりついていたのは、皆見てる」

憧「それで血がついたんだろうって思ってたけど――」

智葉「あの中には返り血も含まれていた、ということだ」

那岐「……」 ウーン

那岐「そ、そうか、アイツ、返り血を浴びたまま処分せず、堂々と今ここにいるのか……!」

憧「だからそう言ってるでしょ……」

ちゃちゃのん「な、なに言うちょるんじゃ!」

ちゃちゃのん「い、今までだって、犯人候補かと思ってた人が犯人じゃないなんていっぱいあったじゃろ!」

誓子「……それは、そうだけど……」

咲「もし、胡桃先輩では不可能な証拠があったり……」

咲「他に犯行が可能な人がいるなら、遠慮せず言ってください」

咲「私だって……」

咲「そのほうが、いいんです……」


ちゃちゃのん「だ、大体、2人の関係はちゃちゃのんが傍で見ちょったけえ!」

ちゃちゃのん「胡桃ちゃんが、ヒロちゃんを殺すわけなんて……!」

憧「でも逆に、そんだけ仲良かったんだから、刺されてなお密室作ってあげたってのにしっくりくるじゃない」

誓子「確かに……」

透華「鹿倉胡桃を庇って――確かに他の方よりしっくりきやすくはありますね」

胡桃「……」

胡桃「庇って……か……」 ポツリ

ちゃちゃのん「だ、大体そんなの言いがかりじゃ!」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんなら、他の誰を庇ったっておかしくないけえ!」

ちゃちゃのん「それこそ新免さんだって庇うような人じゃ!」

那岐「……ん? ひょっとして今馬鹿にされた?」

恵「そーいうのだけは鋭いんですね……」

憧「ま、なんにせよ……」

憧「誰が何と言おうと、容疑者が認めたらソレで終わり」

憧「……胡桃自身は、何か反論ある?」

胡桃「反論……」

胡桃「……」 ギリッ

胡桃「……あるよ」

胡桃「あるある!!」





憧「ありゃ、まだ足掻くか……」

智葉「……ま、聞いてみようじゃないか」

胡桃「洋榎の分まで生きなきゃいけないんだ……」

胡桃「間違った推理に殺されるわけにはいかない……!」 ギリッ

憧「また分かりやすい追い込まれ方だこと」

憧「まるで金田一に追い込まれた時の真犯人だけど……」

胡桃「うるさいそこ!」

胡桃「さっきもドヤ顔で犯人間違えたでしょ!!」

胡桃「黙ってて!」

憧「んなっ……!」

胡桃「今回も……」

胡桃「今回も間違いだって証明する……!」

咲「胡桃先輩……」

咲(勿論、胡桃先輩の反論が妥当なら、それが一番いい)

咲(でも――)

咲(でももし、それが矛盾のある発言だったら……)

咲(何も、言わないわけには……っ!)


胡桃「そもそもさ……」

胡桃「私は《ちゃちゃちゃんと一緒に洋榎に呼び出されてた》んだよ」

誓子「え、そーなの!?」

胡桃「そう」

胡桃「さっき取り調べの時にそう言ったよね!?」

透華「確かに……」

透華「《愛宕洋榎に呼び出されたと証言している》のを私も聞いていますわ」

胡桃「先に言っておくけど……」

胡桃「確かに私は細かいことを気にするし、早めに待ち合わせに行くこともあるよ」

胡桃「でもせいぜいが5分かそこら」

胡桃「つまり、《1時に呼び出された場合、武器庫についた時点で洋榎はすでに武器庫に来ている》んだよ……!」

透華「確かに、愛宕洋榎は45分からの担当……」

ちゃちゃのん「ほ、ほうじゃ!」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんより先に犯人が来てて、ナイフ取ったっちゅーさっきまでの大前提と矛盾するけぇ!」

ちゃちゃのん「じゃけん、胡桃ちゃんは犯人じゃなか!」

憧「胡桃だったら洋榎も心許しただろうし、一緒に武器庫に居てナイフ取ることは出来たでしょ」

胡桃「計画殺人だったらそうかもしれないけど……」

胡桃「でも、後からちゃちゃちゃんが来ると分かってるのに、そもそもナイフなんて手にするわけないじゃん……!」

胡桃「計画殺人なら、尚更もっと上手くやるんじゃないかな?」

胡桃「だって《辻垣内さんとかが窓より私の体に注目してたら終わりだった》んだよ!?」

胡桃「ランドリーにいた安河内さんがあまりに危険な賭けすぎるからほぼシロって言うなら……」

胡桃「私だって同じ理屈でシロのはずだよ!!」


《ちゃちゃちゃんと一緒に洋榎に呼び出されてた》 ← 【佐々野いちごの証言】



咲「それは違うと思います……」

胡桃「……ッ!」

咲「確かに――ささのん先輩は呼びだされた、と証言してました」

咲「でも――」

回想ちゃちゃのん『1時に武器庫来てくれーって』

回想胡桃『……え?』

回想誠子『ん? どうかしたの?』

回想胡桃『ううん……ただ、私も洋榎に呼ばれてたから……』

咲「あの時、胡桃先輩、ささのん先輩も呼び出されてること、知りませんでしたよね」

胡桃「……!」

咲「確かに、2人とも呼びだされていたのかもしれません」

咲「けど――」

咲「少なくとも、“一緒に声をかけられた”わけじゃありませんよね」

胡桃「こ、言葉のアヤみたいなものだし……」

咲「……そういう意味の“一緒に”じゃなかった、とは言わないんですね……」

胡桃「……っ!」 ギリッ

ちゃちゃのん「だ、大体2人ともが呼び出されたのが事実なら、そこに大きな違いは……」

咲「ありますよ……」

咲「だって、今の胡桃先輩の反論は、後からささのん先輩が来るとわかっている前提だったんですから……」


胡桃「だ、だとしても!」

胡桃「私が犯人で、なおかつ他に呼び出されてる人がいなかった場合……」

胡桃「普通、武器庫に入って用件は何か切りだすよね?」

胡桃「そうじゃなくても、いきなりナイフに近づくことなんてないし、したらさすがに洋榎も止めるよ」

胡桃「それに、用件聞いたら、多分ちゃちゃちゃん来ること洋榎の口から聞けるよね!?」

胡桃「じゃあやっぱり、私の犯行も相当難しいって言えない!?」

ちゃちゃのん「ほ、ほうじゃほうじゃ!!」

ちゃちゃのん「そんなギリギリで難しいことするなんて、ありえんけぇ!」

咲「……」

咲(確かに、二人とも1時に呼び出されてた場合、犯行するのは無理があるかもしれない)

咲(でも、なんだろう……)

咲(もうちょっとで、何かをひらめきそうな気がする……)



う じ む し が ち か ん

○○○が○○○


じかんがちがう



咲(これだ……!)

咲「確かに、お二人の言う通り……」

咲「2人が1時に呼び出されてたら、犯行は厳しいと思います」

ちゃちゃのん「じゃ、じゃろ!?」

咲「でも……」

咲「本当に、お二人が呼び出された時間って、同じだったんでしょうか」

胡桃「ッ!!」

ちゃちゃのん「な、なにを……」

咲「……」

咲「洋榎先輩は、落ち込んでいるお二人を慰めようとしてたんだとは思います」

咲「でも……」

咲「付き合いが長く、参ってる胡桃先輩の方に、ちょっとだけ多く力を割いたんじゃないでしょうか」

咲「ささのん先輩は友達がいれば安心するんじゃないか、と考えたとしたら」

咲「先に胡桃先輩を励まして、そのまま2人で励ます方がささのん先輩には効果があると思ったのかもしれませんし」

ちゃちゃのん「そ、そんなの全部言いがかりじゃ……」

透華「ああ、それで、45分に交代だったんですのね」

咲「……はい」

咲「1時交代にせず、45分交代で押し通した理由」

咲「それは、45分には胡桃先輩が来ると分かっていたからじゃないですか?」

胡桃「う、ぐぐっ……!」


憧「もし45分に呼び出されていたのだとしたら、5分前行動として武器庫につくのは12時40分」

智葉「愛宕洋榎が時間ギリギリに来たと仮定すると、単身武器庫に居る時間がある」

智葉「……当初の推理にも反しないな」

胡桃「~~~~っ……!」

ちゃちゃのん「そ、そんなの言いがかりじゃ!!」

ちゃちゃのん「た、確かにヒロちゃんにとっちゃ、ちゃちゃのんより胡桃ちゃんの方がウエイトは大きいかもしれん……」

ちゃちゃのん「でもだからこそ、そんなヒロちゃんを胡桃ちゃんが殺すなんてこと、ありえないんじゃ!!!」

ちゃちゃのん「大体、胡桃ちゃんだけ先に呼び出したっちゅーのも、咲ちゃんの思い込み、言いがかりじゃ!!」

胡桃「……そ、そうだよ!」

胡桃「根拠はあるの、根拠は!?」

咲「根拠は……」

咲(ある……)

咲(おそらくあれが、根拠になるはず――――)


【割れたガラス片と一輪の薔薇】



咲(これだ……!)

咲「ポケットに入ってた、割れたガラス片と一輪の薔薇ですよ……」

胡桃「……!?」

咲「多分……胡桃先輩も気付いてないんじゃないですか……?」

やえ「確かに、ポケットで割れていた……」

やえ「密室トリックに使ったわけでもなく、最初から愛宕洋榎が持ち込んでいたものなら気づかないのも無理はない」

智葉「……おそらく、無理矢理扉を開ける際に死体が倒れ、そこで割れたんだろう」

竜華「あれ、結局なんやったん?」

竜華「指切ったし……何であないに危ないもんを……」

咲「……桧森先輩は……」

咲「これが何かわかりますよね?」

誓子「この写真……」

誓子「あ!!」

誓子「洋榎に売った、ビトロ・イン・ローズ!?」

咲「イン・ビトロ・ローズだったような……」

葉子「どっちゃでもいーんだよ!」

葉子「何なんだそりゃ!」

誓子「ええっと、ガチャから出てくるアイテムで……」

誓子「試験官に入った綺麗な薔薇の贈り物よ」

誓子「すごくプレゼントに喜ばれるみたい」

咲「……そしてそれを、洋榎先輩に売ったんですよね」

誓子「うん」

誓子「咲ちゃんにも売って、残り1つしかなかったけど、どーしてもって言うから」

誓子「コンプからは遠ざかっちゃうけど、売ってあげたの」


胡桃「……」

ちゃちゃのん「そ、それが一体なんじゃって言うんじゃ!」

咲「……」

咲「本来、ダブってないものは売るつもりなかったんですよね」

誓子「うん」

咲「ってことは、部屋まで取りに戻ったんですか?」

誓子「そーだけど……」

ちゃちゃのん「じゃ、じゃあ、その間にトラッシュルームを掃除当番が……!」

誓子「ああ、それはないって」

誓子「だって洋榎に売ったの、犯行よりも結構前の時間だし」

咲「ですよね」

咲「さすがに桧森先輩でも、犯行時間とされる間に離席してたなら言うはずです」

咲「大事なのはそこでなく、むしろ売ったのは随分前ということにあります」

ちゃちゃのん「そ、それは一体どういうことじゃ!?」

誓子「私にもさっぱり……説明して咲ちゃん!」

咲「つまり……洋榎先輩は、武器庫に行く前に、自分の部屋にイン・ビトロ・ローズを置く暇があったんです」

咲「割れたら危ないし、結構な料のメダルをかけたものですよ」

咲「普通は、部屋に置いておきますよね」

那岐「確かに、割れて危ないようなものは持ち歩きたくないよな」 ウンウン

葉子「腰からもっと直接的にアブねーもんをぶら下げてるだろ……!」

咲「持ち歩くとしたら、理由は一つ」

咲「それを、使う予定が――」

咲「つまり、渡す予定があったからじゃないんですか」


胡桃「洋榎が……?」

咲「はい」

咲「生憎、私が買ってしまったせいで、あのプレゼントは一種類しか手に入らなかった……」

咲「メダルの有用性を思うと全部使うわけにもいかないと考えたのかもしれませんし……」

咲「とにかく、洋榎先輩は一つしか用意できなかった」

咲「プレゼントが一つしかない状況で、2人を同時に呼び出すと思いますか?」

胡桃「……」

咲「胡桃先輩!」

胡桃「……」

咲「洋榎先輩は……」

咲「最期に、胡桃先輩を思っていたんだと想います」

咲「だから、密室をつくった……」

咲「でも決して、胡桃先輩に他の皆を殺してほしいなんて思ってるわけがありません!」

咲「きっと、自分で最後に――って、思ったはずです」

咲「私だって……」

咲「和ちゃんに手なんて染めてほしくないから」

胡桃「う、うううう……」

咲「……」

咲「最後に……」

咲「今回の事件を振り返って、まとめて――」

咲「終わらせましょう……この、辛い裁判を……」


咲「最初から、事件を振り返ります」



<Act1>

咲「まず、洋榎先輩は桧森先輩からイン・ビトロ・ローズを買いました」

咲「その後、洋榎先輩は2人の人物を武器庫に誘った」

咲「でも、プレゼントは1つしかない」

咲「だから時間をズラして、見張り交代する予定の12時45分に犯人を、そして1時にささのん先輩を呼び出したんです」


<Act2>

咲「45分に呼び出された犯人は、洋榎先輩より先に武器庫に来ていた」

咲「そして……待っている間に、ナイフを手にした」

咲「ナイフ盗難騒動もあったし、多分、色々怖くて手にとっちゃった、程度じゃないかと思います」

咲「そして――ナイフを手にしているときに、洋榎先輩がやってきてしまった」


<Act3>

咲「そこでどんなやり取りがあったのかまで、私にはわからないけど……とにかく悲劇は起こってしまった……」

咲「スペツナズナイフの刃が、洋榎先輩に向かって射出されてしまったんです」

咲「死を前にして洋榎先輩が想ったのは……今目の前で自分を刺してしまった犯人のことでした」

咲「事件後の犯人の様子からすると、洋榎先輩が力を振り絞って、犯人を部屋から追い出したのかもしれません」

咲「そして、犯人から奪ったスペツナズナイフの柄を握り、扉を背に座り込むことで、密室を作り上げた」

咲「全ては、犯人をこの狂った合宿から出してあげるために」


<Act4>

咲「一方部屋を追い出された犯人は、必死でドアに縋り付き、洋榎先輩の名を叫んだ」

咲「きっと犯人は、部屋を追い出されてから、自分がしてしまったことにようやく実感が沸いたんだと思います」

咲「そしてその必死な声を聞いて人が集まり、密室だったドアは開け放たれた」

咲「犯人は必死に縋り付いたけど……残念ながら、死体発見アナウンスが鳴ったんです」

咲「犯人は亡骸を抱きしめて、ずっと泣いていた……」

咲「だから、服に付いた血はその時のものであると、皆信じて疑わなかったんです」

咲「誰一人、ランドリーやトラッシュルームを使えない状況だったのに……」



咲「そうですよね――――胡桃先輩!」


胡桃「う、うううううう……!」

胡桃「洋榎……」 ペタン

胡桃「洋……榎……」 ポロポロ

咲「……」

智葉「……終わったな」

ちゃちゃのん「……」

ちゃちゃのん「終わった……?」

ちゃちゃのん「何が……何が終わったんじゃっ!」 クワッ

恵「え……」

誓子「そりゃあ、学級裁判が……」

ちゃちゃのん「認めん!」

ちゃちゃのん「そんなのは認めんけぇ!」

ちゃちゃのん「大体……そんなの全部推測に過ぎないけぇ!!」

憧「ま、そりゃそーだけど、せめて推理って言ってあげたら」

智葉「……例え推測でも、説得力があり多数決で勝てばそこがクロになる」

智葉「そういうルールだ、この裁判は」


ちゃちゃのん「そんなのおかしいじゃろ!!」

ちゃちゃのん「証拠……証拠は!?」

ちゃちゃのん「証拠がなきゃちゃちゃのんは認めんけぇ!!」

竜華「せやけど他に実行可能な奴がおらん以上は……」

ちゃちゃのん「そんなの……そんなのもっと考えたら浮かぶかもしれへんじゃろ!」

ちゃちゃのん「それに、ほら……」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんの血なら、ちゃちゃのんにだって!!」

憩「せやけど……おしりの部分と袖口やんなあ……」

透華「腰を抜かしたように座り込んでいたから、そこにだけ付いたのでしょう」

透華「……返り血のつくような位置ではありませんわ」

ちゃちゃのん「誰か……誰か他になにかない!?」

ちゃちゃのん「こ、このままじゃ、答え間違えて皆死刑じゃ!!」

ちゃちゃのん「誰でも良い……」

ちゃちゃのん「思考を止めないで、誰か――」

咲「ささのん先輩……」


葉子「んなこと言ったってなァ……」

華菜「これ以上説得力ありそうな推理なんて何も――」

那岐「私くらいにしか出せぬだろうな」

誓子「悪いこと言わないから、多分黙っていた方が……」

ちゃちゃのん「な、なんじゃ!?」

ちゃちゃのん「何でもいいから、言ってみて――!」

那岐「いや、さっき真剣に嘆いたからって発言の時、思い至った推理なのだが……」

那岐「例えば真剣に嘆き大量の涙を流したとしよう」

那岐「その涙を使えば、ランドリーどころか水道を使わずとも返り血を洗い流せるのではないか!?」

葉子「ま、マジで言ってんのか、お前……」

ちゃちゃのん「あ、あはっ!」

ちゃちゃのん「ほ、ほら、他にも方法はあったけぇ!」

ちゃちゃのん「これだけで胡桃ちゃんを犯人呼ばわりするわけには――」

誓子「いい!?」

葉子「あ、あの馬鹿の話を真に受けるって……!」

咲「……」

咲(駄目だ……ささのん先輩は、今話が通じない状態……)

咲(でも……受け入れてもらわなきゃいけない……)

咲(何でもいい……ささのん先輩に、胡桃先輩しかないと思わせる何かがあれば……)

咲(洋榎先輩と胡桃先輩、そしてささのん先輩――)

咲(三人が仲良くしてるのを見てたから、信じたくない気持ちはわかるけど)

咲(だからこそ――このまま逃避して最後のお別れをするなんて、絶対にだめ……!)

咲(辛いけど……向き合ってもらわないと……)

咲(そして、それは……)

咲(洋榎先輩達と朝食を共にし、良くしてもらった私の役目……!)


ちゃちゃのん「証拠は……証拠はあるんか!?」

ちゃちゃのん「胡桃ちゃんがヒロちゃんを殺すわけが……!」

ちゃちゃのん「そんなの絶対おかしいよ……!」

ちゃちゃのん「その推理は決定的に間違っちょる!!」

ちゃちゃのん「信じないけぇ!」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは胡桃ちゃんのお友達じゃ! 胡桃ちゃんを信じる!」

ちゃちゃのん「全部でっち上げに決まっちょろう!!」

ちゃちゃのん「嘘じゃッ!!」

ちゃちゃのん「認めないけぇ!」

ちゃちゃのん「大体可能性なら、ランドリーにいた安河内さんにだって……」

ちゃちゃのん「そもそも! 証拠不十分じゃ!」

ちゃちゃのん「証拠はあるんかいのう!?」

ちゃちゃのん「《胡桃ちゃん以外ありえへんっちゅー証拠は!?》」


《胡桃ちゃん以外ありえへんっちゅー証拠は!?》 ← 【武器庫の小窓】



咲「胡桃先輩しかないっていう、根拠ならあります」

ちゃちゃのん「…………は?」

咲「正確には、胡桃先輩がクロじゃないと説明がつかないこと、ですけど」

誓子「それって……」

咲「さっき、身長の話が出た時に、引っかかったんです」

那岐「身長の話……」

那岐「むっ、もしや私がMVP……!?」

葉子「ちょっと黙ってろって」

咲「あの小窓……顔の、結構高い位置についてますよね」

咲「男子ならともかく……女子には少し、中が覗きにくい位置に」

智葉「ああ、確かに」

智葉「死体を見るには、小窓の上から覗きこまねばいけなかったから苦労した」

智葉「体の一部ならまだ見やすいが、きちんと全体像を把握しようと思うと伸びもしなくちゃいけない」

竜華「確かに……ガラスや扉の厚みがあるし、実際窓から壁際見ようとしても、なかなか直下の部分って見えへんもんな」

誓子「私はまだ160あるから何とか見れたけど、他の2人は大変だったんじゃ……」

咲「……確かに、ささのん先輩は大変だったと思います」

咲「辻垣内先輩の身長で、ようやく窓の上から覗き込める程の高さですから」

咲「じゃあ一体辻垣内先輩よりも30センチ以上小さい胡桃先輩は、どうやってここを覗き込み、倒れているのが洋榎先輩だと知ったんですか?」


ちゃちゃのん「そ、それは……」

ちゃちゃのん「そ、そうじゃ、ジャンプとかすれば余裕で……!」

ちゃちゃのん「そうじゃ、胡桃ちゃん、ああ見えて身体能力は高いかもしれへんじゃろ!」

咲「……確かにそうですね」

咲「ジャンプで小窓を覗くことについては、すでに胡桃先輩自身が言ってくれてます」

咲「最初にチームを分けて探索して、結果を報告し合った時に――」

洋榎『どこぞのオチビさんが上手く覗かれへんやったやつやな』

回想胡桃『うるさいそこ!!』

回想胡桃『ジャンプしたら覗けるから!!』

咲「胡桃先輩は、ジャンプしてようやく小窓を覗けるレベルだったんじゃないですか」

咲「もし余裕で上から覗き込める跳躍力を誇るなら、多分そこを広げてもうちょっと洋榎先輩と漫談してましたから」

咲「それは、私よりささのん先輩の方が詳しく知ってますよね……」

咲「だってあの探索に、中堅として同行してたんですから……」

憧「確かに、ひょろっちい体格相当のジャンプだったし、中見るだけで精一杯って感じだったかな」

咲「しかも、胡桃先輩は、他の人とは違います」

咲「他の人は、すでに胡桃先輩が騒いでるのを聞いていた」

咲「だから洋榎先輩が倒れている、という事実を確認するだけでよかった」

咲「でも胡桃先輩は、誰か分からない“ドアを塞いでいるもの”の正体を確認しなくちゃいけない」

咲「血を目撃して“何かが起きてる”ことは確認できても、それが“洋榎先輩の流したもの”と理解するのは難しいんですよ」

ちゃちゃのん「そ、それは、呼び出した人物が中に倒れちょるんじゃないかって心配するのは当然のことで……」

咲「もし本当に1時に呼び出されてるとしたら、中にいるのは龍門渕さんか小走先輩の可能性が頭を掠めるはずなんです」

咲「だって……いつも武器庫で番をしてるのは龍門渕さんだし、そのお手伝いをしているのは小走先輩だったんだから」

憧「ついでに言うと、先に洋榎が来てるって考えるのも不自然よね」

憧「だって相手を待たせないために早めに行動してた、ってことでしょ」

憧「普通は交代するとしても1時間単位だと思うし、ここで洋榎一人が見張りをしてるって事前に聞いてない限りは、中に居る人の候補は複数いるはず」

智葉「そもそも、あれだけの嘆きの声を演技で出せるとは思わんな」

智葉「……死んでいるか、死にそうだという確信はあったのだろう」

咲「……もし仮に胡桃先輩が犯人じゃない場合、扉を塞いでいるのが出血した洋榎先輩の体と知るのは無理があるんですよ」


ちゃちゃのん「う、ぐ……」

ちゃちゃのん「で、でも、120%不可能というわけじゃ……」

胡桃「……もう、いいよ」

ちゃちゃのん「……胡桃ちゃん……?」

胡桃「……ごめんね、ちゃちゃちゃん……」

ちゃちゃのん「な、何を……」

ちゃちゃのん「な、なんで謝るんじゃ……」

ちゃちゃのん「そういうのは、裁判を一緒に乗り越えたあとで……」

ちゃちゃのん「それも、ごめんじゃなくて、ありがとうって――――」

胡桃「……ごめんね、咲ちゃん、皆」

ちゃちゃのん「な、なにを……」

胡桃「もう……言い逃れも出来そうにないし」

胡桃「……投票、始めよっか」


ちゃちゃのん「ま、待って……」 グスッ

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「それじゃあ、建設的議論も終了したみたいですので」

モノペン「お待ちかねの、投票タイム~!!」

ちゃちゃのん「待ってってば!」

モノペン「お手元のスイッチが反応するようになってますので、クロだと思う人に投票してください」

那岐「あ、ランプ光った」 ポチ

モノペン「ちなみに光った瞬間から有効になりますから気をつけてね」

那岐「え!?」

那岐「間違えて門松に投票しちゃったんだけど!?」

葉子「あぁ!?」

那岐「きゃ、キャンセルは……」

モノペン「キャンセルなんてありませんよ」

モノペン「投票も、処分も、一度決まったら絶対に覆せません!」

モノペン「皆さんは注意して投票しましょう!」

ちゃちゃのん「お願い……待って……お願いじゃけぇ……」 ポロポロ

モノペン「ちなみに誰にも投票しないとおしおきされちゃうからね」

モノペン「人狼ゲームみたいなもんかなそこは!」

モノペン「そんな突然死、皆冷めちゃうだろうからやめてよね!」 ウププププププ

ちゃちゃのん「お願い……何でもするから……」 ポロポロ

胡桃「ごめんね、洋榎……」 ポロポロ

胡桃「私……あんなことしちゃったうえに、ちゃちゃちゃん達まで、手に掛けようとした……」 ポロポロ

胡桃「折角助けようとしてくれたのに……私も、そっちに行くことになるよ……」 グスッ

ちゃちゃのん「やめて……やめてよ……」

胡桃「ごめんね……」

モノペン「結果が出ましたァ!」

モノペン「それでは、集計結果を発表いたしまーーーーす!!」

ちゃちゃのん「やめてええええええええええええええ!!」


モノペン「さあ、投票の結果、クロになるのは誰か!」

モノペン「その答えは……正解なのか不正解なのか――ッ!?」

モノペン「さあ、どうなんでしょーー!」 ガション

憧「スロット……!?」

華菜「ま、回り始めた!」


ドゥルルルルルルルルル





━━━━━━□■━━━━━━
  MONO  □■   PEN  
━━━━━━□■━━━━━━

┏━━━━【 VOTE 】━━━━┓
┃     ┃     ┃     .┃
┃ 胡 桃..┃. 胡 桃 ┃. 胡 桃 .┃    チーーーーーン
┃     ┃     ┃     .┃
┗━━━━【GUILTY】━━━━┛    テーレッテレー

  ┏━━━━━━━━━┓
  ┃             ┃       ジャラジャラジャラジャラジャラ
  ┗━━━━━━━━━┛





誓子「め、メダル……!?」

憧「……つまり、大当たりってことでしょ……」

モノペン「あらら、大正解っ!」 ウプププ

モノペン「今回、愛宕洋榎サンを殺したクロは……」

モノペン「……鹿倉胡桃サンでしたー!!」 イヤーッホウ!


咲「……」 ギリッ

咲「分かっていたことだけど……」

咲「ほんとに……そう、なんだ……」

モノペン「そーだよ」

モノペン「ちゃーんと、監視カメラで見てたからね!」

モノペン「怯えた顔で無人の武器庫に入ってくる所も」

モノペン「不用意にポンと肩を叩いて声をかける被害者のお馬鹿な行為も」

モノペン「そして凶行の瞬間も、ばーっちりね!」 ウププププププ

モノペン「それにしても人騒がせなおバカさんだよね」

モノペン「自分を殺したクロのために、力を振り絞って部屋から追い出して密室つくり上げるなんてさ!」 ギャハハ

咲「……ッ!」 ギリッ

ちゃちゃのん「よくも……よくもそんなこと……!」

憧「ちょ、落ち着きなさいって!」

智葉「ここで歯向かって処刑されたいのか?」

胡桃「……洋榎は、馬鹿なんかじゃないよ」

胡桃「いつもどおり、分かったうえで、馬鹿やってくれてただけ」

胡桃「私を励まそうと、いつもどおり、コミカルに……」

胡桃「似合わない、小洒落たプレゼントなんて用意してさ……」

胡桃「……」

胡桃「馬鹿なのは……洋榎じゃないよ……」

胡桃「馬鹿なのは――私、だけだから」


ちゃちゃのん「何で……」

ちゃちゃのん「ヒロちゃんも胡桃ちゃんも、あんなに仲がよくって……」

ちゃちゃのん「すごく、良い関係だったし……」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも、そんな2人と仲良くなれて嬉しくて……」

ちゃちゃのん「それなのに、何で……」

胡桃「……ごめんね……」

胡桃「怖かった……」

胡桃「誰かがナイフを隠し持ってるって知って……」

胡桃「武器庫に誰もいなくて、その状況で洋榎と二人っきりになるって分かって……」

胡桃「……せめて何かあった時にって、ナイフを手にして……」

胡桃「でもさっさと仕舞うほど割り切れなくて」

胡桃「……ナイフを持ってる間に、声、かけられちゃって」

胡桃「……」

胡桃「ナイフ向けた後でも、すぐには発射されなかったのに」

胡桃「すぐにナイフを下ろしていれば、こんなことにはならなかったのに」

胡桃「ナイフを向けちゃった焦りで、洋榎の声もろくにきけなくて……」

胡桃「それでも、刺すことまではできなかったのに」

モノペン「そんなヘタレの背中を、助けようとした張本人が押してしまう」

モノペン「まったく皮肉だよね!」 ウププププププ

ちゃちゃのん「それって、どういう……」

胡桃「……私が、洋榎の言葉を聞かず、部屋を出ようとして」

胡桃「でもそうしたら私の暴走や疑心暗鬼は止まらないと想ったのか、それでも洋榎は説得をしてくれて」

胡桃「ナイフをようやく、おろして――」

モノペン「で、不用意にナイフを取り上げようとしちゃったんだよね」 ギャハハ

胡桃「……奪うとか、取り上げるとか、そんな乱暴じゃなかった」

胡桃「危ないから放しなよ、くらいの感じだった」

胡桃「でも私は――反射的に、ナイフを構えて……」

胡桃「そして、刃先が……」

憧「それで、ああなった、と」

智葉「一度腕をおろし、その後慌ててナイフだけ上に向け威嚇しようとしての誤射」

智葉「それで、刃先がああも上向きだったのか」

胡桃「……ごめんね」

胡桃「引き返す場所は、いっぱいあったはずなのに」

胡桃「結局、自分の心の内も、ごめんなさいの言葉も、喋れないまま――こんなことに、なっちゃった……」


モノペン「うぷぷぷぷぷ」

モノペン「ほーんと、愚かな話だよねえ」

モノペン「怖いとか、ゴメンとか、たった一言言えてれば、もっといい方向に向かっただろうにさ!」

モノペン「こーんなとこでもダマにしちゃうなんて……」

モノペン「まったく救いがたい座敷童……いや、疫病神だよ!」 ギャハハ

胡桃「……ほんと、救いがたいや……」

胡桃「ここまで来ないと……冷静になれなかったなんて……」

胡桃「あの洋榎が、皆のこと、殺して逃げるような真似、喜ぶはずないのにね……」

華菜「……」

誓子「その……」

胡桃「ごめんね、みんな……」

胡桃「許してとは、言えないけどさ」

咲「そんなっ……!」

咲「悪いのは……悪いのは全部、モノペンじゃないですか!!」


モノペン「おやおや、人のせいにするのはよくないなぁ」

モノペン「君は、自ら危険牌で大三元に振り込んだ時に、中を1回鳴かせただけの他家に責任があるとでも言うのかい?」

モノペン「これだから責任転嫁世代はこまるなあ」

咲「……ッ」 ギリッ

憧「責任払い、っていうのもあるにはあるけど?」

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「だとしても、ボクがやったのなんて、3日以内のルールを作ったくらいだよ」

モノペン「精々が最初に1鳴きさせた程度」

モノペン「その後ナイフを盗んで鳴かせた人にも責任はあるし……」

モノペン「何より、最後の1鳴きは愛宕洋榎サンが軽率に二人っきりになったことにあるんだから!」

モノペン「危険牌の回避方法だって山程あったはずなのに、ほんと絶望的なおバカさんだよ!」 ギャハハ

モノペン「ま、それで自分が死んじゃったんだから、責任払いもクソもないよね」

モノペン「だーって元々自分が振り込んだんだもーん!」


胡桃「……ごめんね咲ちゃん」

咲「胡桃先輩……」

咲「私、私っ……!」

胡桃「……」

胡桃「それと……かばってくれて、ありがとう」

胡桃「気に、しないでね」

胡桃「全部、あのモノペンのせいだから」

胡桃「だから……」

胡桃「謎を解いたことは、間違ってなんかないんだから」

胡桃「むしろ、私に罪を重ねさせないでくれてありがとうだし……」

胡桃「だから……」

胡桃「だか、ら……」 カタカタ

胡桃「わた、しに……投票……した、のも……」 カタカタ

モノペン「うぷぷぷぷぷ」

モノペン「よーやく、死の恐怖がやってまいりましたね!」 イヤーッホウ!

モノペン「いやー、死にたくなくて手を染めたくせに、達観で覚悟決められて困ってたんですよね」

モノペン「だーって、面白くないじゃーん!」 ギャハハ

胡桃「う、ううううう……!」 ポロポロ

胡桃「いや……死にたく、ない……!」 ポロポロ


胡桃「私、まだ、死にたくないよ……!」

胡桃「約束だって……皆と、一緒に卒業するって、私……!」 

モノペン「あーもう泣かないでよ、ばっちぃなあ」

胡桃「卒業したらエイちゃんの故郷に卒業旅行しようねって……」

胡桃「怠がるシロでも楽しめそうな場所を、まだまだ皆で探さないといけないし……」

胡桃「塞と一緒にホテル探したり、豊音と旅行バッグ買いに行く約束も……」

胡桃「やだ……やだよお……」

胡桃「まだ皆に、お別れだって言ってないのに……!」

モノペン「それは愛宕洋榎サンもそうだったんだよ」

モノペン「それでもその生命を奪ったのは、他ならぬ自分なんだから」

胡桃「嫌だ……」

胡桃「まだ、やりたいこと、やってないこと、いっぱいあるのに……」

胡桃「洋榎にも、言わなきゃいけない言葉が……」

胡桃「咲ちゃんやちゃちゃちゃんと、外で遊んで、何もないところだけど、宮守に呼んだりだって……」

胡桃「何で……何でこんなことにっ……!」

モノペン「うぷぷぷぷぷ」

モノペン「それを、もっと素直に全部吐き出せていれば、よかったのにねえ」

モノペン「ぜーんぶ、手遅れなんだよ」

モノペン「振り込んでから手元のイーシャン国士を嘆いたって手遅れだし、ツモったかもなんて未来は無いの!」

モノペン「君にあるのは、処刑されるっていう未来だけ!」

胡桃「う、うああああああ……!」


モノペン「ま、それじゃさっさとおしおき、始めちゃいましょうか!」

モノペン「そろそろこの汚い涙にも飽きてきたしね!」

咲「…………ッ!」 ギリッ

智葉「落ち着け!」

ちゃちゃのん「お、お願いじゃ!」

ちゃちゃのん「殺されたヒロちゃんだって、胡桃ちゃんの死なんて望んどらんけぇ!」

モノペン「こらこら、そーいう問題じゃないの」

モノペン「秩序を乱したらおしおきされる」

モノペン「それが社会の常識だよ」

胡桃「ああ、あああああ……!」

ちゃちゃのん「待って! 待ってって!」

モノペン「今回は超高校級の麻雀打ちである鹿倉胡桃サンの為に」

ちゃちゃのん「待てって言ってるじゃろ!!!」

モノペン「スペシャルなおしおきを用意させましたぞっ!!」

胡桃「ああ……洋榎……洋榎ぇ……」

ちゃちゃのん「聞いてってば!!」

憧「ばっ、ちょ、誰か取り押さえるの手伝って!」

モノペン「それでは、張り切っていきましょう!」

ちゃちゃのん「は、離して! 胡桃ちゃんが! 胡桃ちゃんがぁぁ!」

胡桃「ああ……ああ……」

胡桃「嫌だよ……ああ……」

モノペン「おしおきターイム!」

ちゃちゃのん「駄目! 駄目じゃ! 待って!」

胡桃「イヤぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!」

ちゃちゃのん「待ってぇぇぇぇええええええええええぇぇぇええ!!!」


どこからともなく、スイッチが現れる。

モノペンが、楽しそうにスイッチを押した。

『GAME OVER』

ディスプレイに、そんな単語が現れる。

モニターには、懐かしいレトロゲームのようにデフォルメされた胡桃先輩が映し出されていた。

『カクラさんがクロにきまりました』

更に、文字が現れる。

モニターの中の胡桃先輩が、やはりデフォルメされたモノペンに引きずられていった。

『おしおきをかいしします』

そして――同時に、現実の胡桃先輩の首にカチリと何かがはまる。

それが鎖付きの首輪だと気付いた時には、胡桃先輩は鎖に引きずられすでに裁判場から姿を消していた。

呆然としている私達を、ゴウンという機械音が現実世界に引き戻す。

見ると、裁判場の壁が開き、通路ができていた。

……胡桃先輩に引きずられていった方向に。

そして――促される。

通路の奥に向かうよう。

行きたくなんてなかった。

誰だってそうだ。

その先に何があるのか、予想なんてついているのだから。

それでも――鋭い爪を射出され、脅され、皆が通路の奥に向かう。

そこにあるのが、処刑場と理解しつつも。







【鹿倉胡桃おしおき : くるみ割り人形】







そこは、ちょっとしたホールのようだった。

真っ赤な幕が、ブザーと共に上がっていく。

糸で吊られた人形たちが、一列にラインを組んでいる。

その人形の列の中央に、胡桃先輩は居た。

人形に負けない蒼白な顔で、やはり糸で吊るされている。

その表情は、人形よりも気迫だった。

胡桃先輩の名を叫ぶささのん先輩の声をかき消し、BGMが流れ始める。

音楽に乗り、人形達がタップダンスを踊り始めた。

まるでちょっと上質な人形劇。

その中央で、一人の少女が人形に混じり糸で踊らされている点を除いて。


次第に踊りは激しさを増してくる。

その過程で、人形の肘が隣の人形にあたる。

足も、どかどかと当たり始める。

どんどん下手くそな人形芝居のようになってきた。

それでも音楽は止まないし、踊りが止まることもない。

例え胡桃先輩が、その顔中を腫らすほど、人形に殴られても。


最初は、脇腹。

隣の人形が振った腕が直撃していた。

きっと、固い素材で出来ているのだろう。

胡桃先輩の顔が歪むのがよくわかった。

それから、足。

何度も蹴られるだけでなく、思い切り踏みつけられていた。

そして、踏みつけられた状態で、更に糸により無理矢理踊りを踊らされる。

足を軽快に上げようとしても、人形の足が強固にそれを拒み続けた。

そうしたら、どうなるのか。

簡単だ、踊りながら固定されるようになればいい。

関節が外れようと、ちぎれかけようと、糸を操る処刑人には関係がない。

そうして、踊りに扮した暴行は更に激しさを増していく。

次第に全身、それも目に見えて痛そうなものが増えてきた。


派手な音を立て、腕が折れる。

意外にも、胡桃先輩のものでなく、隣の人形の腕がだ。

そちらはよく見ていなかったが、恐らく更に隣の人形と衝突をしたのだろう。

頭上のモニターに映る操り人たるモノペンの顔にも、焦りの色が浮かんでいた。

無理矢理〆ようとでもしたのか、大げさなターンが行われる。

へし折れ、鋭利になった腕が、胡桃先輩の顔面めがけて繰り出された。

胡桃先輩が、必死で避けようと顔を動かす。

そして――モニターに映るモノペンの顔が、驚愕に染まった。

本来糸に逆らえぬはずの胡桃先輩が、逆に糸を引っ張ったのだ。

紙一重で、回避をした。

胡桃先輩の顔に、僅かに安堵の色が浮かんでくる。

そして、そして――――


嫌な音が、辺りに響いた。

顔を動かし引っ張る形になった糸が、変な場所に引っかかっている。

そのため固定された顔が、安堵と驚愕の入り混じった表情を作っていた。

もっと端的に言うならば――絶望的な、表情。

きっとその表情で、体でも見下そうとしたのだろう。

けれどもそれは叶わぬ願い。

糸は固定され、頭は微塵も動かない。

例え、体は他の糸に従い一回転したとしても。

その頭は――動かない。


頭部という主を残して華麗なターンを決めた胴体が、再び正面へと向く。

私達はあまりの光景に誰も言葉を発してないのに、どこからか歓声が聞こえてきた。

その歓声に応えるようにして、人形達がペコリと頭を下げる。

同じく、頭部の糸を切られた胡桃先輩も、頭を下げた。

ただしその擬音はペコリなんて可愛らしいものではなく、だらりと表現すべきものだったけれど。

そして、人形達が体を起こす。

手をつなぎ、人形達が歓声に応える光景のまま、舞台の幕が降りてきた。

舞台の中央では、この舞台の主役を張った胡桃先輩が、糸に操られるままに両腕を上げている。

本当に掴みたかったはずの人の手ではなく、冷たく無機質な人形の手を取らされて。

その手を高々と上げさせられ、胡桃先輩の最期の舞台の幕が閉じる。

他の人形と違い、その拗じれた顔は、二度と持ちあげられなかった。

思ったより頭が回らないので、とりあえずおしおき終わって切りがいいので中断します。
裁判終了後のあれこれは夜にでも投下します。

昨日は爆睡こいてました申し訳ない
いい加減1章完結だけはさせます

あと桑田くんは可哀想だと思うし処刑もトップクラスにエグいと思うし好きだけど、カスかどうかで言えばカス


モノペン「ひゃっほーーーう!」

モノペン「エクストリームーーーー!!」

モノペン「アドレナリンが……染み渡るぅ~~~~~~!!」

透華「……!!」

誓子「な、ななななな……!」

華菜「ひいっ……」 ブルブル

那岐「あ、あわわわわ……」 ジョロロロロ

咲(そのあまりに悪趣味で凄惨な光景に――)

咲(皆、声を無くしていた)

咲(時折聞こえる、鳴き声混じりのささのん先輩の発する言葉だけが、私達が発するもので唯一言葉の体をなしていた)

咲(……ささのん先輩の口にする、胡桃先輩の、名前だけが)


モノペン「どーお、すごかったでしょ?」

モノペン「事件が起きてから、大急ぎで作ったんだから!!」 ギャハハ

咲(それと――)

咲(この場において、文章の体を成した言葉は、目の前の畜生ペンギンだけが発している)

咲(私達の神経を逆なでしながら)

モノペン「いやー、首も反転して、幸運を呼ぶ座敷童からまさに不運を呼ぶ座敷童になっちゃいましたね」 ウププププ

モノペン「これでもう、彼女はリーチすら言えなくなったのです!」

モノペン「あ、もとからだっけ!」 ギャハハ

咲「……ッ!」 ギリッ

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「安心してよ、全員分、ちゃあんと用意してるからさ」

智葉「……一応、何をか、聞いておこうか」

モノペン「決まってるだろう?」

モノペン「人生最後の舞台を彩る、おしおきをだよ」 ウププププ

モノペン「それが嫌なら――裁判に勝ち続けることだね」 ギャハハ


巴「……ッ」

やえ「くそっ……!」

モノペン「あらあら、睨まないでよ」

モノペン「ぜーんぶ、彼女の自業自得」 ウププププ

モノペン「最後まで初志貫徹して誰も殺さず皆一緒に死ぬとか……」

モノペン「もしくはもっと冷静に手変わりしてればよかったのにね!」 ギャハハ

ちゃちゃのん「……っ!」

モノペン「ボクはただ、短絡的な殺人鬼を処分して、オマエラの生活の安全を確保してあげただけだもん」

モノペン「むしろ感謝の視線を浴びてもいいくらいだよ!」 ギャハハ

憧「さすがに……腹立たしいけど……」 ギリッ

智葉「……命を握られている以上、ここで犯行も出来ない、か」

モノペン「うんうん、物分りがよくて助かるよ」


モノペン「これからも、オマエラは、強化合宿の一環として、共同生活を送ってもらいます」

モノペン「勿論、たるんでいるようだったら、また今回みたいにスパイスを垂らすけどね」 ウププププ

モノペン「それじゃあ、精々、頑張ってね」

モノペン「殺し合いなんてしたくない人は、長生きして適応出来るように」

モノペン「それに、出たい人は――」

モノペン「誰にもバレない殺人を、さ」

モノペン「それじゃ、生活に困らないよう、綺麗に色々片付けといてあげるから」

モノペン「各自、エレベーターで帰ってくださいねー」 ウププププ

モノペン「それじゃあ!」

咲(そういうと、モノペンは去っていた……)

咲(何も言えず立ち尽くすだけの、私達を残して)


咲「……」

咲(私は、何も出来なかった)

咲(何も言うことが出来なかった)

咲(あんなにも、腹がたったのに)

咲(あんなにも、悲しかったのに)

咲(あんなにも、叫び倒さねばならない理由が存在したのに)

咲(私はただ、黙って床を見つめることしかできなかった)

咲(怖かった、というのも大きな理由)

咲(でも、もっと色々な感情が、頭の中で渦巻いていて)

咲(きっと、これを一言で表すのなら――)

咲(絶望と、呼ぶのだろう)


咲(私には、声をあげる勇気がなかった)

咲(それを成す力もなかった)

咲(洋榎先輩のように、仲間のために動くことも出来ず)

咲(胡桃先輩のように、感情のまま動くこともできず)

咲(ただ、指を加えて、胡桃先輩が処刑されるのを見ていただけ)

咲(無様で、無力な私は――ただ、友達が処刑されるのを見ていただけだった)


咲(誰かに促されて、エレベーターへと乗り込む)

咲(それが亦野先輩だったか龍門渕さんだったかすら、もう記憶にない)

咲(ただ、疲れ果てて、エレベーターにもたれかかり、到着まで床を見ていた)

咲(多分みんな、同じようにしていたと思う)

咲(場にそぐわない軽快な音とともに扉が開いた)

咲(……)

咲(モノペンが、言っていた通りだった)

咲(エレベーターのある赤い扉の正面)

咲(武器庫の中は、綺麗サッパリ片付いていた)

咲(裁判の間に、したのだと思う)

咲(まるで最初からそこには何もなかったかのように、洋榎先輩の亡骸も消えていた)


咲(洋榎先輩を、弔うことも、悼むことも許されない)

咲(勿論、胡桃先輩のことも)

咲(胸が、ずきずきと痛む)

咲(2階までが、やけに遠い)

咲(一歩進むごとに、洋榎先輩と胡桃先輩の賑やかな声が聞こえてくるような気がする)

咲(……誰も、何も、喋っていない)

咲(その静寂が、余計に胸を締め付けて)

咲(誰もが力なく、自分の部屋に戻っていく)

咲(私も、そうだった)

咲(鍵穴に上手く鍵が入らなくて、自分が震えていることに気がついた)

咲(そうして、部屋に入って――)

咲(ベッドに腰をおろし、急に、思い出す)

咲(洋榎先輩と部屋で話した時のことを)

咲「う、うぇ……」

咲(それで、ようやく――)

咲「うええええええ……」

咲(私は――友達の死に、涙を流した)


咲(怖かった)

咲(死にたくなかった)

咲(やらなきゃいけないと思った)

咲(胡桃先輩の死を嘆くこともできず、ただただ自分がああして処刑されるのではと戦慄した)

咲(その事実が胸を締め付け、涙を干上がらせていく)

咲(私には、泣く資格なんてないから)

咲(だって、言うならば、我が身可愛さに私が――)

咲(私が、胡桃先輩を処刑場に送り込んだのだから……)


咲「……許さない」

咲(私に、泣く資格なんてない)

咲(そう思ったあと、湧き上がったのは怒りという感情だった)

咲「こんなこと、させた黒幕……」

咲「絶対、許さない……!」 ギリッ

咲(多分ソレは、殺意と呼ばれる、負の感情なんだと思う)

咲(でもその感情がなければ、今は立ち直れそうになかった)

咲「私は、絶対に他の皆を手にかけない」

咲「絶対、ここから脱出してみせる」

咲「そのために、絶対――」

咲「モノペン。貴方をゴッ倒す……!」

咲(危険と知りつつ、口に出した)

咲(決意表明と、不格好な宣戦布告)

咲(そんな私を――)

咲(洋榎先輩のくれたコケシが、黙って見つめ続けていた)


【Day5 END】










【生き残りメンバー 17人】










【Chapter1 END】

チャプターとかつけてなかったけど、とりあえずこれで第一章終了です。

胡桃に自然な形で捻挫させときゃもっと自然だったのでは、等々反省点もありますし、
次は被害者が安価なのもあって、少々ストーリーを練ろうと思います。
多分今月中には2章投下開始出来るとは思いますが、もうしばらくお待ち下さい。
気が向いたら番外編くらいは投下するかもしれません。

あんまり引っ張ってもアレなので、スローペースにですが2章始めます


【Day6】

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『オマエラ、おはようございます!』

モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

咲(気がついたら、泥のように眠っていた……)

咲(不愉快極まりない声で叩き起こされる)

咲(洋榎先輩と、胡桃先輩のことを思い出すと、視界がぼやけた)

咲(とてもつらい)

咲(あまり、起き上がる気にならなかった)


ピンポーーーーーン

咲「……」

咲「ん……」

咲「…………」

咲「あっ」

咲(ふと時計へと目をやると、8時を回っているようだった)

咲(……あのまま、二度寝をしちゃったんだ……)

咲「……さすがに、起きなくちゃ……」

咲「みんなも、心配するだろうし……」

咲「……」

咲(インターホンも鳴らされた気がするけど……)

咲(とりあえず、顔を洗って服を着替えなきゃ)


ピンポーーーーーン

咲「……あ、また鳴った」

咲「はーーい」

ガチャ

誠子「あ、よかった」

咲「……?」

やえ「まったく、心配したんだぞ」

やえ「もう朝食会の時間は過ぎている」

咲「あ、そっか……」

咲「……すみません」

誠子「ああ、無事ならいーって」

誠子「……それに、泣きつかれて寝坊したの、1人や2人じゃないし」

やえ「結局、2人1組を維持したまま、起こして回ることにしたんだ」

誠子「万が一、があったら困るしね」


誠子「……大丈夫?」

誠子「ちゃんと眠れた?」

咲「……はい」

咲「……」

咲「やっぱり、まだ、辛いですけど……」

やえ「……」

やえ「気持ちは分かる」

やえ「だが我々は、立ち止まるわけにもいかないんだ……」

やえ「まだ、我々を取り巻く問題は解決していないんだから……」

咲「……はい」

やえ「……」

やえ「少々、ホッとしたよ」

咲「え?」

やえ「そんな顔でとは言え、頷いてもらえて」

誠子「……正直、ショックの余り、冷静な考えが一切できない、とかでもおかしくないとは思ってたもんね」

咲「……大丈夫です」

咲「だって――2人の分まで、私は、生きなきゃいけないから……」


誠子「……」

誠子「出来れば、その気持ちを、分けてくれると有り難いんだけどね」

咲「え?」

やえ「……」

やえ「この部屋の主、分かるだろう?」

やえ「彼女も、遅刻しているんだ」

咲「ささのん先輩……」

やえ「……」

やえ「恐らく……」

やえ「彼女のダメージが、一番大きいだろうからな……」


ピンポーーーーーン

咲「……」

やえ「……」

誠子「……」

やえ「これで起きてくれればいいんだが……」

誠子「……起きていて出てきてない、って可能性も」

やえ「あるが、どうすることもできまい」

やえ「防音である以上、地道にインターホンを押して出てきてもらう他ないんだ」

咲「……」

咲(小走先輩達は、しばらく時間をおいてから、再度インターホンを押した)

咲(出る準備をしている可能性もあったし、迷惑だから時間を置いたんだと思う)

咲(多分、常識的に考えるとソレが正しいことなんだろうけど)

咲(……鬱陶しいほどインターホンを連打して呼びにくる人を、私もささのん先輩も知っているから)

咲(礼儀正しいインターホンは、ちょっぴり違和感があった)

咲(……そしてその違和感は、もう洋榎先輩たちが連打しながら迎えにくることがないということを思い知らせてくるようだった)


咲(何度かのインターホンを経て……)

咲(ようやく、重たいドアが開かれた)

ちゃちゃのん「……」

誠子「……おはよう」

やえ「……朝食会の時間はとっくに過ぎているぞ」

ちゃちゃのん「……」

咲(ささのん先輩は、応えない……)

咲(ただ、黙って、濁った目をしているだけ……)

やえ「ほら、宮永咲も心配しているぞ」

咲「!?」

咲(多分、私が洋榎先輩や胡桃先輩と一緒に絡んでたことを踏まえて話を振ったんだとは思う)

咲(でも――でも、正直、今一番ささのん先輩に恨まれていて気まずいのは私なんじゃないかと思うんだけど……)


咲「え、ええと、一応、朝食会は出ておいた方が……」

咲「ほら、やっぱり、揃ってないと心配になりますし……」

咲「ご飯だって、食べないわけにも……」

咲「ま、まあ、私も寝坊しちゃったんですけどね……」 アハハ・・・

咲「それに――」

咲「……」

誠子「……それに?」

咲「……」

咲「きっと、皆が仲良くやることを一番望んでたのは、あの人だから……」

ちゃちゃのん「……」

ちゃちゃのん「……ごめん、ちょっと準備するけえ」

ちゃちゃのん「……もうちょっとだけ、待っちょって……」


<食堂>

咲(ささのん先輩を迎え入れたけど、特に会話はなかった)

咲(正確には亦野先輩がちょいちょい話題を振ってくれたけど、皆生返事しかできなかった)

咲(……昨日のことを、引きずってるから)

咲(それに、そもそも、私もささのん先輩もコミュニケーション能力は低かったし)

憧「あ、咲」

桃子「珍しいっすね、寝坊なんて」

咲「あはは……」

華菜「まあ、色々あったからなー……」

咲(ちなみに、途中で桧森先輩と池田先輩とも合流していた)

咲(やっぱり皆、昨日の疲れで上手く起きられなかったみたい)

巴「これで、あと来てないのは――」

やえ「透華と、透華が迎えに行った新免那岐に辻垣内智葉だけだな」


華菜「ああ、多分もうちょっとかかるんじゃないか?」

華菜「さっき新免の部屋のインターホンを押してるの見たけど……」

葉子「アイツなかなか起きないらしいもんねぇ……」

咲「そうなんだ……」

憧「あ、咲」

憧「ここ空いてるし、座りなよ」

咲「あ、はい、じゃあ……」

誠子「私もお邪魔していいかな」

憧「どーぞ」

咲「……」

咲(正直――呼んでもらえて、助かった)

咲(私自身、昨日のことが吹っ切れてないから……)

咲(今はまだ、ささのん先輩とお話するにはツラすぎるから)

咲(……ただの逃げだって、分かってはいるんだけれども)


ガチャ

透華「大変おまたせ致しました」

那岐「いやー、すまないすまない」

那岐「いやでも、他にも遅刻した者がいるというし、それを考えると執行猶予くらいは――」

葉子「そん中でも頭2つくらい抜けて遅かったけどな」

誓子「っていうか、とっくに執行猶予中みたいなものよね」

那岐「え? 執行猶予中に執行猶予ってつかないの?」

葉子「執行猶予の意味わかってねーだろ……」

誓子「むしろ何で詳しいの? 経験者?」

透華「こほん」

透華「えー……半ば無理矢理になってはしまいましたが……」

透華「まずは、変わらず朝食会をさせてもらうことを、感謝いたします」

透華「こんなことになってしまいましたが……」

透華「いえ、こんなことになってしまったからこそ、結束が必要ですわ!」

透華「もう二度と、あんな悲劇を起こさないためにも!」


智葉「……結束、か」

智葉「確かに結束は必要だ」

透華「その通り!」

透華「ですので、これからも朝食会を――」

智葉「――だが断る」

透華「なっ……!?」

智葉「確かに結束は必要だ」

智葉「“出来るのなら”――な」

智葉「最低限の協力は必要だ」

智葉「だが――」

智葉「誰も彼もを無条件で信じられるような状況じゃない」

智葉「すでに殺人を犯した人間がいるせいで、閾値が大幅に下がった」

智葉「殺人を犯すための、な」

咲「な……!」

智葉「もう、人殺しは遠い世界の話じゃないと全員が知った」

智葉「……次の事件は、もっと簡単に起こる」


透華「……ッ」

やえ「そ、そんなことはない!」

誓子「そ、そうよ! そんなわけがないじゃない!」

那岐「そーだそーだ、適当言うんじゃない!」

智葉「適当で場を乱すほど空気が読めないつもりはない」

智葉「……お前は、そんなことないとは言わないんだな」

透華「……閾値なんて関係ありません」

透華「私が、殺し合いなんて止めてみせますわ」

透華「龍門渕の名と、私自身のプライドに賭けて」

智葉「……伊達に龍門渕の麻雀部を一度叩き潰し、再建したわけじゃないな」

智葉「我を通す力を持ち、それでいて冷静に現状を分析も出来ている」

憧「……閾値は確かに下がった」

憧「それを分かっているからこそ、透華は絶対に朝食会を続けさせようって言ってるんでしょ?」

智葉「努力は認める」

智葉「だが――」

智葉「この朝食会が、さほど大きな意味を持つとは思えないというのが本音だ」


透華「な――!」

智葉「すでに疑心暗鬼の種は蒔かれた」

智葉「それにすでにこの数日でグループも出来上がり、グループメンバーで固まる者が増えている」

智葉「この時点で、交流としてはあまり機能していない」

智葉「更に言うと、そのメンバーとは朝食会以外でも喋れることがほとんど」

智葉「無理して一堂に会することもあるまい」

憧「ま、それはそうかもね」

やえ「お、おい!」

智葉「それに、一度殺人が起きた以上、再度毒物を警戒する必要が出てきた」

智葉「……すでに監視の目を潜り抜けて、ナイフを奪う者まで現れたんだ」

智葉「毒物を調達する者がいても、それを仕掛けられる者がいても、もはやおかしくはない状況だ」

憧「全員生きているかどうかは、どうやって確認するわけ?」

憧「全員生きてることが確認できるだけ、朝食会に出る意味はあると思うけど」

智葉「……麻雀を打つ際のシステムを利用する」

智葉「電子手帳をかざして着席するのは知っているだろう」

誓子「それでちゃんと麻雀してるか判断してるんだったわよね」

憧「手帳見たら、ご丁寧にも全員の最終収支が登録されてたのよね」

咲「え?」

憧「……見てないの、電子手帳?」

咲「その、機械は苦手で……」

智葉「麻雀は一人では出来ない」

智葉「確実に、誰かの電子手帳に生きた証は刻まれる」

智葉「もしホールでも目撃情報がなく、誰の生徒手帳にも名を刻まれていない者がいるとすれば――」

憧「その子はもう死体になってる、ってことね」

智葉「ああ」

智葉「……生存者の確認という点でも、別にコレは必須ではない」


智葉「警戒する要素はたくさんある」

智葉「それを帳消しにするほどのメリットもない」

智葉「……悪いが、私はもう朝食会に参加する気にはなれない」

智葉「……それだけを言いにやってきたんだ」

透華「……」 ギリ

モノペン「はいストップ~!」

誓子「うわっ、出た!?」

モノペン「出たとは何だい、目上には敬語を使いなよ」

智葉「……何の用だ」

モノペン「いや、今日だけは朝食会をしてもらおうと思ってさ」

智葉「……なに?」

モノペン「今日は10時から、朝のラジオ体操をホールで行おうと思います!」

葉子「はぁ!?」

美子「ラジオ体操……?」

華菜「っていうか、言うほど朝じゃないし!」

モノペン「そうなんだよ……こちらの事情でこんな遅くになっちゃったんだ……」 ショボーン

モノペン「だからとりあえずご飯でも食べて待っててよね!」

モノペン「それから、ラジオ体操には全員が来ること!」

モノペン「来なかったら……」 ウププププ

透華「腹立たしいけど、行きますわ」

透華「そんなつまらないことで、犠牲を出すわけには行きませんし」

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「賢い人は嫌いじゃないよ!」

やえ「分かったらさっさと消えろ」

やえ「折角の食事がまずくなる!!」

モノペン「はいはい……っと」 ドヒューン

咲「……」


咲(こうして、事件の後最初の朝食会が始まった)

咲(引きずっている絶望感と……)

咲(辻垣内先輩の言っている内容に対する不安と……)

咲(呼び出しに対する困惑と恐怖とが空間を支配している、居心地最悪の朝食会が――)

中途半端ですが、あまりに眠くてうつらうつらしまくってるので中断します


あと、支援絵ありがとうございました
チカちゃんかわいい
チカちゃん予想外に人気でびっくりですわ

またちょいちょいだけやります


<ホール>

モノペン「はい、いっちにー、さんっしー!」

那岐「いっちにー、さんっしー」

咲「……」

咲(昨日の処刑がちらつくせいで、モノペンに逆らう者はいなかった)

咲(ただ、ラジオ体操に参加しろとだけしか言われていないうえ……)

咲(辻垣内先輩やささのん先輩が体操をしてなくても特にお咎めもなかったので、もう半数の人間が体操をやめている)

咲(それでも部屋から出るのはダメみたいで……)

咲(暇を持て余して、念のためやっておくかとう人に紛れて、とりあえずラジオ体操をしておいた)

咲(……気分が晴れるどころか、どんどん憂鬱になっていったけど)

咲(このラジオ体操がどうにも複雑な気持ちにさせること狙っていたのなら、予想以上の効果を上げたと言わざるを得なかった)


智葉「……随分長いんだな」

モノペン「なんと、今回のために特別に作った、オリジナルのモノペン体操なのです!」

モノペン「これを踊れば元気100倍、暗殺拳だってなんのその!」

モノペン「ですからみなさん、是非一緒にやりましょー!」

葉子「誰がやるかよ……!」

モノペン「しょぼーん」

モノペン「まあ、佐々野いちごサンに至っては、100倍しても0のままなくらい元気がありませんからね」

モノペン「要介護ッチとして、是非一緒にモノペン体操を!」

やえ「か、軽い気持ちでやったが……」

那岐「結構キツイなこれ……」 ゼハーゼハー

モノペン「さ、まだまだいくよー!」

智葉「……途中退室は?」

モノペン「勿論、みとめませーーん!」

誠子「……うーん、運動不足だと辛いだろうけど、これ案外シェイプアップにはいいかもしれない」

憧「あんだけ動けばどんな体操もシェイプアップにいいってなるわよ」


モノペン「はい、おしまーい!」

那岐「つ、疲れた……!」

憧「ちなみにこれ、体操したしないで何かあるわけ?」

モノペン「え、ないよ?」

モノペン「強いて言うなら、体操で健康になれるかどうかの違いかな」

誠子「うわ、やり損……」

智葉「……それで、本題は?」

モノペン「ん?」

智葉「まさか、こんなやってもやらなくても変わらないラジオ体操が本題ではないだろ」

智葉「……このホールに全員を押し込めていただけの理由があるんじゃないのか?」

モノペン「うぷぷぷぷ……」

モノペン「その通り!!」

モノペン「今回学級裁判を乗り越えたオマエラには、ボーナスをあげます!」

華菜「ボーナス?」

桃子「ロクでもないもんじゃなきゃいいっすけど……」


モノペン「実は今、2階の宿泊エリアから、3階にあがれるようにしてきたのです!!」

モノペン「階段までを阻む壁はなくなりました……」

モノペン「これで皆さんは、さらなる高みに登ることができます!」

モノペン「物理的にもね!」 ブヒャヒャヒャヒャ

咲「3階……」

誠子「どうせ開放するなら、入り口のドアにしてほしいんだけどね……」

モノペン「更に、地下にある施設の一部も解放されてますので、みなさん是非一度お立ち寄りください」 ウププププ

憧「施設が増えた、か……」

華菜「なーんか、嫌な予感しかしないし……」

やえ「……確かに……」

透華「とはいえ、怖気づいて調査しない、なんてわけにはいきませんわ」

透華「3人1組、ないし4人1組で再度調査を――」

智葉「断る」

透華「なっ……!」

智葉「3人1組以上というアイデアは悪くない」

智葉「犯人だとバレたらアウトだと分かっていても、2人きりだと恐怖心から事故も起こりやすい」

智葉「が、3人以上なら、残りの1人に目撃された時点で終わりになるが故、万が一は起こりにくくなる」

やえ「わ、わかっているなら、何故……」

智葉「理由は単純。そもそもに、荒事なら負ける気などしない」

竜華「確かに、ちょっと真っ向から喧嘩売れへんオーラがあるな……」

葉子「……どこぞのアホより、よっぽど剣士っぽく見えるしな……」

智葉「一人になるリスクよりも、嘘の情報を教えられるリスクの方が高いからな」

誓子「嘘……って……」

憩「そないなことするメリットって……」

智葉「露骨な嘘でなくとも、情報を隠される恐れはある」

智葉「ならば、団体行動で一箇所に時間をかけるより、自分一人で全てを見て回る方がいい」

智葉「時間をかけるべきかも、己の判断に従う」

巴「でも、それだと見落としが――」

智葉「自分で見落とした場合と、他人に隠された場合なら、致命的なのは後者だ」

智葉「……自分が見落としただけならば、諦めもつく」


透華「……」

智葉「悪いが、私も死ぬつもりはないんだ」

透華「……わかりました」

やえ「お、おい!?」

透華「ですが!」

透華「2点ほど、言っておきます」

透華「まず――私達は、夕方6時ごろには、調査結果の報告会をしたいと思っていますわ」

透華「見落としは、確かに防ぎようがありません」

透華「ですが、調査した他の者の情報が聞ける場なら、少なくとも大嘘まではつかれないと考えられますわ」

透華「……例えここで単独行動をとったとしても、拒絶することはしません」

透華「ですから、来て頂ければ、と」

智葉「……甘い奴だ」

透華「私はただ、疑心暗鬼に陥って、あの腹立たしいクソペンギンの思惑通りになりたくないだけですわ」

透華「私、これでも嫌いな奴には死んでも負けたくない性分でしてよ」

透華「ですから、何度も言っているように――もう、犠牲を出させたりはしませんわ」


透華「それと――夕方来ないかもしれませんし、明日の朝食会について一言」

透華「確かに、もう、朝食会を開くのは難しいかもしれません」

透華「とはいえ、人間である以上食事は必須」

透華「勿論、それでも最低限だけ部屋を出て籠城することは可能」

透華「ですが――一人で探索出来るほど腕に覚えがある貴女が、そうやって閉じこもっているとは思えませんわ」

透華「なら、8時とは言いません。一緒に食事をとれとも言いませんわ」

透華「ですからせめて、9時までに食堂に姿くらい見せて下さいまし」

透華「それだけで、貴女の安否はわかりますから」

智葉「……」

智葉「考えておこう」 スタスタスタ

ガチャッ

バタン

透華「……」


華菜「もっとこう、ガツーンと言わなくてよかったのか?」

桃子「いいんじゃないっすか、無理強いしてもしょうがないっすから」

やえ「それに、今のしっかりとした意見で、他の皆はある程度協力してくれそうな雰囲気だ」

透華「みなさんも、探索をどうしても単独でしたいというなら止めませんわ」

透華「ですが……」

透華「それならせめて、無事にいるよう、お願いします」

巴「……まあ、私達は自衛できるほど強くないし……」

憧「とりあえず、各々が信用できる少人数で行動するか……」

憧「それか、最低限3人で行動した方がよさそうね」

ちゃちゃのん「……」

憩「ん~、まだ何人か動けないみたいやけど~……」

桃子「ああ、じゃあそういう人は私が見てるっすよ」

桃子「……会話がない空間にはなれてるっすから」

華菜「なんて悲しい響きだ……」

透華「それでは、私が決めるより各自好きに組むほうがいいでしょうし、解散しましょう」

透華「見つけたものに関する情報交換は、またのちほど、6時に食堂で――」


憧「ねえ、咲」

咲「……はい?」

憧「一緒に回らない?」

咲「え?」

憧「評価してるのよね、こう見えて」

憧「前の事件を解決したの、実質咲なわけだし」

咲「そ、そんなこと……」

誠子「あるって」

誠子「ね、前みたいに、一緒に行動しない?」

誠子「体力と運動神経に関しては、女子高生雀士にしちゃある方だと思うし、どう?」

咲「え、ええ、私は別に問題は……」

誠子「やった!」

憧「……ま、咲がいいならいいか」

憧「咲以外だと、誰でもそこまで変わらなさそうだし」

誠子「ひどいなー」

咲「……」

咲(はーい好きな人とグループ作ってーで余らないどころか、人気になる日がくるなんて……) ジーン

こっから探索・新施設紹介編ですが、めっちゃ眠たいため中断します申し訳ない

なんだかよくわからないことになっていて、なんだか意見も色々出てるせいでようわからんので
とりあえず明確にこれですわって通達来るまでは今まで通りやっていこうと思います。
その頃にはスレも1000いきそうだし。ちょっとですが投下します。


<3F>

誠子「よ……っと」

憧「ここが3階ねえ……」

誠子「窓もないし、ホントにそーかは分かんないけどね」 ハハ

憧「さて、この扉は――」

誠子「椅子に軽い雑誌にティファールに……」

憧「観葉植物に加湿器……ねえ」

咲「これ、1階にあった談話室と同じような感じですよね……」

誠子「何でまた同じものが」

誠子「同じのあっても意味ないだろうになー」

誠子「……ネタ切れとか?」

憧「……殺人が起きた後だから、じゃない」

咲「……ですよね……」

誠子「え? え?」

憧「今までは、部屋以外で誰かと話すなら、まあ食堂か談話室あたりが多かったでしょ」

誠子「確かに」

咲「ホールはよく呼び出されるし、あまり行かないですよね……」

咲「心理的にあんまり近寄りたくないっていうか……」

憧「まあ、そこを入れても3箇所だった」

憧「今までは、どこかのグループが談笑してる場に、他の人間やグループが一緒になることが多かった」

憧「でも、これからは違う」

憧「誰にもかち合わずに談合できる場が増えた」

憧「……まあ、実際不穏な話をすることはないとしても、効果はあると思うわ」

憧「あんまり顔を合わせてなくて何してるか分からない集団って、疎外感もあって好感持ちにくいだろうし」

咲「……」


誠子「そんなもんかなー」

憧「白糸台はそーゆーのなかったの?」

憧「他のチームで、あんまり絡んだことない仲良しグループがあってさ」

憧「そこの輪に突然放り込まれたら、不安になったりしない?」

誠子「うーん……」

憧「……図太いのか、コミュ力があるのか、微妙なところね」

咲「でも少しうらやましいかも……」

憧「……っと?」

誠子「どうかした?」

憧「……」

憧「いや、廊下の長さは一緒なのに、扉の数は下より極端に少ないなって」

誠子「言われてみれば……」

咲「……中が、広いとか……」

憧「まあ、開けてみれば分かるでしょ」 ガラッ


<脱衣所>

誠子「これって……」

咲「大きな、脱衣所……?」

誠子「この人数に対して広すぎる気もするけど……」

憧「……」

咲「……」

咲(このロッカーの数……)

咲(中に何かを隠すため……?) ガチャ

咲「……」

憧「ふうん……鍵はないみたいね」

誠子「あ、そーなんだ」

誠子「って言っても、盗まれるようなものなんてないしなあ」

憧「……はぁ」

誠子「え?」

憧「なんでも」

咲「……」

咲(ロッカーに物を隠すことはできる)

咲(でも、鍵をかけることは出来ない、か……)

咲(これも完全に証拠を隠滅するハードルをあげるためかな……)

咲(……でも、ここに物を隠されたら、発覚も遅れるし、誰が隠したかわかりにくいよね……)

咲(ロッカーの背は高くて向こう側は見えないし、無駄に広いせいで……)

咲(……)

咲(やっぱり、ただ無意味に広いってことじゃないのかもしれない……)


ガラガラガラ

誠子「この扉の向こうは――と」

憧「まあ、やっぱり大浴場よね」

誠子「露天風呂とかあればいいのになあ」

憧「あったらそこから出られるもんね。あるわけないでしょ」

誠子「だよね……」

華菜「おっ、お前たちも――」

華菜「って、服着たまま入るつもりか?」 スッポンポーン

憧「……」

誠子「ああ、いや、簡単な調査しようかなーって」

憧「っていうか、アンタこそよく入ってたわね、この早い段階で……」

華菜「一番風呂だし!」

憧「だし!じゃなくて」

華菜「まあ、中じっくり見て回ろうと思ってさ」

華菜「っていっても、本当に何のへんてつもない銭湯って感じだったけど」

華菜「あと年上には敬語つかえー?」

咲「湯船があって、シャワーがあって~~って感じですか?」

華菜「ああ」

華菜「一応シャンプーとかも備え付けだった」

華菜「……本当に、日常生活としては不便しないように出来てるみたいだ」

誠子「ジャグジーとかサウナは?」

憧「あのねえ……」

華菜「両方あったし」

憧「えっ!?」

誠子「マジ!?」

華菜「熱めの湯船とか、水風呂なんかも揃ってたし」

憧「銭湯っていうよりスーパー銭湯ね……」


憧「中を見るのはあとでいいか……」

誠子「床びっちゃびちゃだしね」

華菜「良い湯だったぞ!」

華菜「私は今度はサウナに行くし!」

誠子「さいですか」

憧「ここは夜実際に入って調べるとして……」

憧「大浴場の正面の扉を調べに行こっか」

咲「はい」

誠子「脱衣所も色々あるけど?」

憧「ドライヤーとか体重計をあんまり調べてもねえ」

誠子「乗らないの?」

憧「乗らない」

誠子「ここにきて食生活崩れてるし、これで管理しろっていうことかも」

憧「乗らない!!」

咲「血圧はかる機械や、イボイボ付いた竹なんかもある……」

誠子「マッサージチェアもあるし、ホテルって感じだよね」

憧「……」

憧「ま、ボーナスなのかもね」

誠子「へ?」

憧「真面目に合宿をしてるメンバーへの」

憧「……もしくは、学級裁判を起こし、生き残った者への、ね」

誠子「……」


<医務室>

誠子「この部屋は……」

咲「ベッドがいっぱい……」

誠子「スーパー銭湯みたいなお風呂に談話室……」

誠子「ここまでスーパー銭湯なわけだし、ここはやっぱり仮眠室かな?」

咲「それは……どうでしょうか……」

憧「このカーテン、まあ、どう見ても……」

咲「医務室、ですよね……」

憧「てことは、ここの戸棚は徹底的に調べる必要があるか」

憧「……銭湯の正面ってのも、気にかかるし」

咲「……」

咲(近くの扉に隠れることが難しい代わりに、正面にはすぐ脱衣所がある)

咲(背の高いロッカーエリアに隠れ、すばやく何かを隠すことができる……かも……)


憧「包帯やらガーゼやらはあるわね」

咲「こっちには大量のシーツが」

憧「……ふむ」

誠子「これである程度の怪我ならなんとかなったりするの?」

憧「……まあ、輸血パックとか注射器とかあるにはあるけど……」

咲「適切に使えるか、ですよね」

憧「資料室に医学関係の本があるから、読んでおく方がいいかもね」

憧「それより、気になることがあるでしょ?」

咲「……」

誠子「気になること?」

咲「薬の類がないこと、ですか?」

憧「そう」

憧「……睡眠薬すら置いてないのよね」

憧「元より用意してないのか、それとも別の場所なのか……」

誠子「誰かが持って行った可能性とか……」

憧「空の戸棚はなかったけど、元々少数しか無いとかだったら、その可能性もあったかもね」

咲「うーん……」

誠子「考えててもしょうがないし、他のところ行こうか」


憧「他になにか気になった?」

咲「……扉に、やはり覗き窓があったこと、でしょうか」

憧「……ま、そうよね」

憧「多分、シーツとか、そういうもんを持ってく姿を隠しにくくするバランス調整だとは思うけど」

誠子「まあ、考えても仕方ないんじゃない?」

誠子「深い意味なんてないかもしれないし……」

憧「……」

誠子「で、こっち側の廊下には……と」 ガラッ

誠子「うわ、また談話室?」

巴「そうみたい」

咲「あ、どうも……」 ペコリ

美子「でも、ここには――」 チラッ

誠子「うわ、冷蔵庫だ! 透明タイプの!!」

咲「中には……ビン牛乳?」

巴「そっちの扉が脱衣所と繋がってるみたい」

ガチャ

華菜「ありゃ、なんかいっぱいいるし」

巴「どーも」

華菜「どもーっす」

華菜「なーんか『ドリンクはこちら』って張り紙見たんだけど……」

美子「これのことみたい」

華菜「よっしゃもーらい!!」

巴「ビン牛乳自体は、厨房の冷蔵庫にもあったんだけどね」

咲「そうなんですか?」

誠子「まあ、メニューに合わないから朝食とかには出さなかったんだけど」

咲(いつも誰かに作って貰うかカップ麺だから知らなかったよ……)

巴「そんなに日持ちするものでもないし、これ、こまめに私達が補充しなきゃダメなのかしら」

誠子「かもねえ」


誠子「ここにも特に何もなさそうだね」

巴「そうホイホイ色々あっても困るけどね」

美子「……皆は、もう地下は?」

憧「は、まだなのよね」

咲「これからです」

美子「そう……」

巴「……ちょっと、アレだけど、使い方によっては良い施設が解放されてるから」

咲「?」

憧「……ああ、そうだ」

憧「明日の麻雀なんですけど、三人は誰と打ちたいとかってある?」

華菜「何だ突然」

憧「ほら、前真面目に打ってないからって毒ガス騒動になったじゃない」

憧「だから少しでもまじめにやれるよう、卓のセッティングとかしておいた方がいいかなって」

華菜「あー、確かに」

巴「あんまりよく考えてなかったなあ」

華菜「んじゃ折角だから、ここの四人で打つか?」

憧「あ、ごめん、アタシは咲達と打ちたくてさ」

咲「え?」

憧「言ってなかったけど、いいよね?」

咲「ええ、まあ」

誠子「私も問題ないよ」

華菜「んー、じゃあ残り一人かあ、誰も言いっちゃいいんだけど……」

華菜「せっかくなら普段当たらない人とやっておくべきなのかもなー」 ウーン

憧「じゃあ奈良県代表の晩成高校のエース様なんてどう?」

憧「麻雀どころじゃないっぽいし、入れてあげてよ」

華菜「そうだな、あんまりやる機会はないし」

憧「じゃ、この四人の卓で決まりね」 ニィ

憧「アタシらは誰入れよっかなあ」

誠子「もー、それは明日でもいいじゃん、ほら、行こうよ」

誠子「時間もそんなにないしさ」

憧「はいはい」


<地下>

誠子「ここ、って……」

憧「……テープの封鎖が溶けて出てきたは小窓付きの扉、ね」

咲「これ……」

誠子「何って言えばいいんだろう、薬局?」

憧「お金払うことはないけどね」

咲「すごい、薬ばっかり……」

誠子「風邪薬にロキソニンに……」

咲「よく分からない薬まで……」

憧「……ま、それよりも問題は……」

誠子「この正面の棚だよね……」

憧「正確にいうと、堂々と置かれたドクロマークのボトルね」


誠子「これ……毒、だよね……」

憧「舐めてみたら分かるんじゃない」

咲「毒って文字も書いてあるし、やめた方がいいんじゃ……」

憧「ま、あのペンギンがこんなとこで嘘つくとは思えないけど」

咲「ロキソニンにもラベルで『痛み止め』って書いてましたし、薬の効果が嘘なく書かれてるみたい……」

誠子「うーん」

誠子「となりのボトルは栄養剤だったりビタミン剤だったり……」

憧「なるほど、確かにこのあたりは上手く使えば密室でも体調管理に役立てられる、か」

咲「あれ、これ……」

憧「栄養剤のボトルだけ一個少ない……」

誠子「誰かが持っていったんじゃない?」

憧「毒ならともかく、栄養剤を?」

誠子「いやいや、むしろ毒より栄養剤の方が必要でしょ、いつまで出られないかわからないんだから」

憧「ふうん……」

咲「っと、そろそろ約束の時間ですよ」


咲「行って、とりあえず皆の見つけた情報と差異がないかを確かめないと」

憧「……ま、ほとんどないと思うけどね」

憧「栄養剤の数以外」

誠子「やけに気にするね」

憧「まーね」

憧「一応、犯人誰か問いただしておかないと」

誠子「そんな大げさな……」

憧「……」

憧「今までは、凶器を見張るだけでよかったかもしれない」

憧「でもここからは、毒物が混ざってくる」

憧「誰も傍にいないとしても、信用出来ない日々が始まるのよ」

憧「……あんまり楽天的だと、死ぬわよ」

誠子「な……っ!」


咲「……」

咲(その言葉で……押し込めてた不安が、再度顔を覗かせた……)

咲(疑心暗鬼は、確かに、もう、始まっているのかもしれない)

咲(多分、栄養剤を持って行った人に、悪意なんてないんだろうけど)

咲(でも……)

咲(でもきっと、この行為の奥には――)

咲(毒が開封される前に持ちだしておかないと怖いという想いが)

咲(……誰も信用出来ないという気持ちが、あるのだから……)

用事があるのと、ここからまたちょっと長そうなので中断します
とりあえず最速で再開出来ても火曜日になりそうです、申し訳ありません

予定が狂って遅くなりましたが投下します


<食堂>

憧「おまたせ」

咲「あ、おかえりなさい」

誠子「どこ行ってたの」

憧「ああ、明日打とうって話をちょっとね」

憧「それと……」

憧「はい、これ」

咲「わあ、山盛りのお肉」

誠子「ワイルドー……」

憧「簡単な味付けだけどね」

憧「小分けしてないから、3人で食べようと思って」

憧「……毒が見つかった以上、誰かが用意して小分けにするってのは、もう現実的じゃないからね」

咲「……」

誠子「そう、だね……」

憧「巴もさすがに自覚あったのか、勝手に作らず、料理いるか聞いてきたしね」

誠子「ちょっと、申し訳ないよね……なんか信用してないってみたいで」

咲「うん……」

憧「……ま、しょうがないでしょ」

憧「そのくらい割りきらないと、この先持たないわよ」 モグモグ


ガチャ

桃子「あ、帰ってきた」

華菜「集合を食堂にしたのはいいけど、まさか伝わってないとはなー」

桃子「まあ、言ったかどうかなんて覚えてないし、向こうもそんな感じだろうからしょうがないっすよ」

やえ「おまたせ」 スタスタ

葉子「わりーわりー」 スタスタ

誓子「集合ってホールじゃなくてこっちだったんだ」 スタスタ

透華「……」

透華「辻垣内智葉は……」

やえ「それが、ホールには――」

ガチャ

智葉「……」

透華「辻垣内智葉!」

透華「よかった、来てくださったんですわね」

智葉「……食事を取りに来ただけだ」

智葉「特に喋る情報はない」

憧「……」

誠子「ツンケンしてるなー……」

憧「まあ、無理もないっちゃないけど……あれ、情報仕入れるだけ仕入れて、自分は出さないってことよね……」


透華「まあ、いいでしょう」

透華「正直無理矢理にでも参加して頂きたいところですが……」

華菜「無理しすぎると揉めまくりそうだし」

桃子「ただでさえ元は傲慢なんっすから、こっちが引かないと」

やえ「意外と評価ボロクソなんだな……」

透華「そんなわけで、情報交換ですわ」

透華「……みなさん、当然全部屋周りはしましたよね?」

華菜「あ、私は風呂入ってたからまだ」

透華「……」

華菜「玄関前のセミの死骸でも見るような目」


透華「まあ、池田華菜には後で私から全体図を教えるとして……」

透華「誰か何か気付いた方はいらっしゃいます?」

美子「そうはいっても……」

憩「さほど大きな発見はなかったかなあ~って」

巴「あ、モノペン出てきて教えてくれたけど、やっぱり大浴場横の談話室の牛乳はこっちで補充するみたい」

華菜「げっ、そーなの」

美子「そん代わり、夜時間も立ち入ることが可能ばい」

透華「なるほど」

透華「夜時間に立ち入り禁止にすることで、食堂や厨房に食材を補充してるんでしょうし」

憧「補充しない代わりに立ち入りは自由、か……」

憧「……わざわざ立ち入ることはない気もするけど」

誠子「あ、でもお風呂夜に入れるのは大きいんじゃない?」

咲「お水が止まるのは、多分大浴場もなんじゃ……」

誠子「かけ湯くらいなら出来るんじゃない?」

憧「……」

憧「もしそうだとしたら、モノペンはお湯を張り替えてくれないし、私達で風呂掃除もしなきゃならないんじゃ……」

誠子「……」

誠子「うわっ、そうなるの!?」

華菜「め、めんどうくさー……」


憧「……呼び出して聞いてみる?」

憧「どうせカメラとマイクで聞いてるんだろうし、呼べば来るでしょ」

モノペン「もう、ペンギン使いが荒いなあ」 ニュッ

誠子「うわあ!?」

華菜「わわっ、亦野の股間からペンギンが生えてきたしっ!」

モノペン「やあ、ボクはモノペニs……って、こらー!」

モノペン「そういう卑猥なジョークは厳禁だぞっ」 プンプン

モノペン「ボクは健全なゆるキャラマスコットなんだからねっ!」 プリプリ

竜華「マジで出てきおった……」

モノペン「もうっ! 呼び出しておいてその反応はひどくない!?」

憩「まだ呼ぶか決まっとらんかったし、決まるまで待っとってもよかったんとちゃいますぅー?」

桃子「これでやっぱり呼ぶのやめようとかなったらどうするつもりなんっすか」

モノペン「オマエラ、ちょっとボクに対して厳しいよね」

憧「……まあ、ヘイト溜まってるからね」

透華「あくまでさせたいのは殺し合い」

透華「……貴女に直接手を出さなければ、処分されることはないのでしょう?」

モノペン「まあね」

モノペン「勿論、学級裁判の敗者は別枠だけどね」


透華「それで、大浴場の清掃はどうなってますの?」

モノペン「しょうがないから、それはボクの方でやっておいてあげるよ」

モノペン「適当な夜時間に、こっちで掃除しておいてあげるからさ」

誠子「適当って……」

モノペン「基本的に立ち入ってもいいけど、ボクが『清掃中』の札をかけてる時だけは、立ち入り禁止です」

モノペン「ただし談話室や更衣室までならオーケーです」

憧「更衣室も?」

華菜「あ、そういえば、大浴場にあった鍵のかかった扉……」

モノペン「はい」

モノペン「ぶっちゃけ、ボクはあそこから入るからね」

葉子「!?」 ガタッ

モノペン「当然、あの辺りはトイレなんて比じゃないくらい頑丈だから、ぶっ壊せないと思うけどね」 ウププププ

葉子「……チッ」

恵「そもそも3階に穴をあけても、地上に降りれないから意味ないよーな……」

葉子「うっせー!」


憧「……深夜に風呂場で血のついたシャツを洗える可能性はある」

憧「でも、モノペンが清掃中の可能性もある、か……」

モノペン「入ってきたら、勿論おしおきだよ」

モノペン「清掃中の札を外してもね」

憧「……なるほど」

憧「清掃中の札を外して誰かを放り込むのもダメ、ってことね」

モノペン「そう」

モノペン「ボクを凶器として使った殺人とみなすかとか、ややこしくなっちゃうでしょう?」

憧「もうすでに色々とややこしいと思うけど」

モノペン「ま、そーだけどさ」

モノペン「その辺は臨機応変、必要になったらルールを追加するからいいの」

智葉「……コロコロ訂正はしない、という認識でいいんだよな?」

モノペン「うん、そこは勿論」

モノペン「それを覆すと、ゲームにならないからね」

透華「ゲーム、ね……腹立つ認識ですわね」

モノペン「うぷぷぷぷ……」

モノペン「他に質問がないなら、ボクはもう行くよ?」

桃子「とりあえず、以上でいいっすよね?」

華菜「他になんか必要になったらまた呼べばいいんじゃないか?」

憩「ソレでええんちゃいますぅ~?」

モノペン「オマエラ、ボクのことを居酒屋のバイトくんか何かだと勘違いしてない?」

誓子「あ、それと唐揚げ1つ」

モノペン「持ってこないし、仮に居酒屋だとしても今頼んだやつ持ってきた時に頼んでよね!」 プンプン

ドヒューン

美子「あ、帰った……」

巴「……本当に唐揚げ持ってきてくれたらどうしよう……」


やえ「話を戻そう」

やえ「大浴場の扉は気が付かなかったな……」

憧「普通、そんなじっくり中に入らないしね」

巴「まあ、床は濡れてるし、曇ってるし……」

竜華「確かに実際使う時に見たらいいやってなってもうたな」

透華「他に何か大浴場の情報で変わったことや他の人が気づいていなさそうなものはありまして?」

華菜「うーん」

華菜「一応、ボディソープやシャンプー、リンスは完備されてたし」

華菜「それとドライヤーなんかも脱衣所にあったな」

華菜「他にも化粧水とか櫛、歯ブラシに簡単なヘアワックスなんかが置いてあったし!」

誠子「へえ、ちょっとしたホテルみたい」

誓子「それも結構な金額がかかるやつね」

華菜「あ、でもタオルとかは無いから、各自倉庫から持っていくしか無いし!」

やえ「……なんか近所の銭湯凸報告みたいになってきたな」

透華「貴重な情報ではありますが……」

桃子「殺し合い云々で役立つ感じではないっすね」


透華「他に、誰か何かありまして?」

透華「特に今話している3階について、まず聞きたいと思うのですが……」

シーン・・・

透華「……特にない、ですか」

巴「他の談話室は特に普通だったし……」

憩「向かいの保健室みたいなとこも、極々普通ではあったなあ~」

竜華「シーツがあったし、数は把握しといた方がええかもな」

竜華「ほら、やっぱり確実に洗濯できる機会って少ないやん」

竜華「でもシーツで返り血を防げば……」

誠子「そっか、自分自身は無事なんだ」

憧「シーツだけなら最悪脱衣所のロッカーに隠せるし、見つかっても服と較べて証拠になり得る情報が少ないからね」

竜華「ロッカー見て回るほど時間も人員もあらへんし、シーツの数くらい数えといた方がええかもしれんな」

巴「でも部屋の掃除は自分達でだし、シーツも部屋のものと交換するかも」

やえ「とりあえず、持って行った者に名前だけ書いてもらって、実際の数とズレるようなら名前書き忘れてないか聞いて回って……」

透華「また地道で退屈な作業になりそうですわね……」 ハァ


桃子「他におかしな所と言えば、やっぱり薬が一個も保健室にはなかったってことっすかね……」

透華「……」

竜華「代わりに……薬局? 薬品室? 的な所に山程あってんけどな」

誠子「あのラベル、本物だったのかな」

憩「多分そうちゃいますぅー?」

憩「少なくとも栄養剤や風邪薬の類は、成分表示見る限り、皆がよう飲む薬局のアレとちゃんと同じやったで~」

モノペン「モチのロンだよ」 ニュッ

葉子「おわっ!?」

誠子「また出た?!」

モノペン「失礼なヤツらだなあ、人を不審者みたいに」

モノペン「ちゃあんと、表示通りのスペシャルなお薬を、ご用意しましたー!!」

誠子「ってことは、ドクロのラベルが貼られた瓶には――」

モノペン「勿論、舐めるだけで死ぬようなやっばいやつをご用意してます!」 イヤッホーーーウ


誓子「な、なめただけで……!?」

モノペン「まあ、殺そうと思ったら、それなりの量を用意した方がいいとは思うけどね」

モノペン「殺し損ねでもしたら大変でしょ」

憧「……じゃああんな大きな瓶に入れてる必要ないんじゃ……」

誠子「ちょっとした砂糖瓶とかのサイズだよね、あれ」

モノペン「まあ、あれ全部なんて明らかにオーバースペックだよね」

華菜「それを何瓶も用意するなんて、何でそんな無駄なことを……」

憧「……」

智葉「……」

咲「……」

咲(恐らく――何人かの人は、同じ考えに至ってる……)

咲(“毒を盗んだのを気付きにくくするため”)

咲(10の内の1盗まれたらパッと見で気づくけど、1000の内1が盗まれるとパッと見では気付きにくいから……)

咲(簡単に凶器やらシーツやらは盗めなくはなってるし、薬品室もガラス窓がついてるし、犯行に必要なものを揃えるにはそれなりに工夫しなくちゃいけない)

咲(でも――)

咲(あの毒薬だけは、盗みやすいって印象にしてあるんだ)

咲(そう思わせることで、疑心暗鬼が起こりやすくするために……)


やえ「そ、そうだ、後で皆であの毒を捨てるというのだはどうだ!?」

葉子「捨てるっつってもよォ……」

誓子「どこに捨てるの?」

巴「あ、焼却炉使う?」

巴「まだ鍵は持ってるけど……」

憧「いや、燃やして変な煙とか出たらヤバイっしょ……」

やえ「うっ……た、確かにそうだな……」

憩「それやったら、トイレに流したらええんとちゃいますう~?」

竜華「ああ、それやったらええかもな」

葉子「便所つまらねー?」

透華「便器自体はたくさんありますから、仮に詰まっても問題はないでしょう」

那岐「でもそれやると、便所の水が毒液になるんじゃ……!」

葉子「いや、飲まないから問題ないっしょ、便所の水は……」

誓子「でもそれをコップとかに盛られたら最悪よね」

誓子「……便器の水を飲むって点でも」


透華「毒はなんとかしなくてはなりませんが……」

透華「破棄するのは、あまり賛成できませんわね」

華菜「にゅあ!?」

やえ「ど、どういうことだ! 説明してくれ透華!」

透華「まず第一に、毒を0にしてしまった状態で、モノペンが放置してくれるとは思えませんわ」

咲「食料品とかも、なくなってる分を補充してるもんね……」

憧「どーなの、モノペン」

モノペン「しょうがないなあ」

モノペン「お答えしましょう!」

モノペン「基本的に、薬局の薬は補充されません!」

華菜「おおっ!」

巴「ってことは……」

透華「……“基本的に”ですわよ」

モノペン「あらら、目ざといなあ」

モノペン「いや、この場合、耳ざとい、なのかな?」

モノペン「確かに、薬はとっても貴重なので、基本的に補充はしませんが……」

モノペン「さすがに0になったら困るでしょうから、手に入ったらちょーっとだけ、補充しておくよ!」

憧「……ちょっとだけ、ね」

竜華「……それも補充タイミングも不定、みたいな感じやな」

透華「結局全て破棄しても、こっそり補充された毒を掠め取られないか不安になるだけ」

透華「それよりも、瓶にテープでもして、取り出せないようにする方が建設的でしてよ」

透華「……減っていなければ、補充のしようもありませんわよね?」

モノペン「ぐむむむむむ……」

モノペン「いいでしょう」

モノペン「その機転に免じて、毒が0になるまでは、補充をやめておいてあげます」

モノペン「ボクは優しいからね」


葉子「っつーことは、どうにか毒の瓶を封印すりゃいいのか」

那岐「テープなら、結構たくさん倉庫にあったぞ!」

那岐「ふんどしを作ろうとして色々探したから間違いない!」

恵「……でも、すでに持って行かれてたら分からないよーな」

透華「……」

透華「まあ、当然そう思いますわよね」

憩「テープで封じた後なら、テープ剥がされとらんか等で区別つくんやけどなあ」

竜華「剥がした後で貼り直されたら分かるんちゃう?」

透華「マジックで瓶とテープをつなぐ線なり絵なりを描けば、違うテープになれば気付けるでしょう」

透華「綺麗に一発で上から書かれない限りは、ですが……」

憧「まあ、失敗したら即バレるし、リスキーではあるわよね」

透華「そのまま同じテープを貼り直したら粘着が弱まりますからね」

透華「幸い武器庫も近いですし、定期見まわりでテープを剥がされていないかをチェックすれば、毒を持ちだされていないかは調べられるかと」

憧「盲信は出来ないけどね」


那岐「じゃあ、これで一安心なんだな?」

那岐「ビクビクしないで好きにモグモグ出来るようになるんだな!?」

憧「……どうかしらね」

那岐「へ?」

透華「……」

透華「さっきも行ったように、すでに持って行かれているかは不明ですからね」

那岐「な、なんだってー!?」

葉子「……何がどーいう理由でヤベえってなってるか、よくわかってないっしょ」

那岐「……ばれた?」

葉子「バレるわ」

憧「……ふむ」

憧「モノペン」

モノペン「ん? なんだい?」

モノペン「まだボクに質問あるの?」

憧「……ええ」


憧「いくつかあるんだけど、いい?」

モノペン「どーぞ」

モノペン「ボクは優しいからね、答えられる分は全部答えてあげるよ」

憧「これさ、例えば毒を使った料理を全員に食べさせるとするじゃん」

憧「クロ以外が全員死んだらどーなるの?」

モノペン「ふむ」

モノペン「ボク達が望むのは、圧倒的な頭脳戦であって、ジェノサイドじゃありません」

モノペン「なので、この合宿では、同時に殺せるのは2人までとします」

モノペン「これ規則だから気をつけてね」

憧「で、それが禁止されてるとして」

憧「例えばうっかり全員殺しちゃった場合、やっぱりクロは処刑ってこと?」

モノペン「はい、そーです」

モノペン「校則違反の方が即時適用され、学級裁判を開く前に死亡となるので、終了となります」

憧「例えば3人殺した、ってなった場合は?」

憧「クロが処刑されて死体が4つの状況で裁判、なんて勘弁してほしいんだけど」

モノペン「……ふむ」

憧「先に校則違反が適用されるなら、裁判はなしにすべきじゃない?」

憧「だって、あの法廷のモノペンの席、アタシ達とは違う位置だし」

憧「校則違反で死んだ人間のクロがアタシ達にいない、っていうのは卑怯でしょ」

モノペン「なるほど……」

モノペン「いいでしょう」

モノペン「先手を打って、この厄介さを潰そうとした勇気に免じて、その場合の裁判はなしにしてあげましょう!」


憧「それはどーも」

憧「で、他にもまだあるんだけど」

モノペン「まだあるの?」

憧「共犯についてなんだけど……」

やえ「っ!」 ギョッ

葉子「おいおい、ま、まさか……」

憧「ンなわけないでしょ」

憧「ただ、ルールは知っておかないと、対策も出来ないでしょ」

モノペン「で、何を聞きたいの」

憧「まず、共犯なんだけど……手を下した本人だけがクロになるのよね」

モノペン「はい、その通りでございます」

憧「例えば、2人が協力して、各々殺した場合はどうなるわけ?」

モノペン「その場合は、それぞれが別の事件として、クロを当ててもらうことになります」

憧「同じ事件のように見えてても?」

モノペン「はい、そーです」

憧「……その場合、順番はどーなるわけ?」

憧「例えばAとBが手を組んで、先にAをCが、その後BをDが殺したとするじゃない」

憧「で、仮にD→Cの順に死体が発見された場合、裁判の順番はどうなるの?」

モノペン「うーん、そこはまだ考えてないけど……」

モノペン「関係ある? 順番……」

憧「例えば、AとBが手を組んでアリバイを証明し合い、Eをクロに仕立て上げたとするじゃない」

憧「別個の裁判でクロは別って名言されてたら、片方はFに罪をかぶせた、でもいいわ」

憧「とにかく先にC殺しの裁判があって、皆Eをクロと指摘して間違えたとする」

憧「その場合は、Bも処刑されちゃうわけ?」

憧「裁判してれば、Bも皆を騙しきっていたはずなのに」


モノペン「うーん、そうだね」

モノペン「それだと確かに不公平だし、死んだのが確定したらやる気を出さないかもしれないのも問題だ」

モノペン「だから、クロが複数いる場合も、裁判と議論自体は1回にします」

誓子「つまり……どういうこと?」

モノペン「議論や裁判は一回こっきり」

モノペン「ただし、投票だけは、各死体ごとにやるってこと!」

モノペン「勿論、投票をまとめてやるかどうかで複数犯か分かっちゃうのもオモシロくないので……」

モノペン「死体が複数出た場合は、クロが何人であろうと、死体ごとに投票してもらいます」

憧「ちなみに、1人が殺せる上限が2人までなのよね」

モノペン「はい、そのとーりです」

モノペン「なので、死体が3つ出てきた場合は、確実にクロが複数人いるとなるのです」

憧「例えばさっき言ったケースに加えて、Aが更にFを殺してたとして……」

憧「C殺しのクロをAと当てることが出来なかったけど、FはAが殺したと当てた場合は?」

憧「その場合、当てられた犯人としてのAと当てられなかった犯人としてのBが同時に――」

モノペン「ああ、もう、ややこしいなあ!」

モノペン「そんなレアケースばっかり追い求めないでよね!」

憧「その辺先に聞いておかないとなーって」

モノペン「もう!」

憧「ややこしいけど、後から揉めるのはそっちとしても本意じゃないでしょ?」

憧「整備されたルールの元で、騙し合ってもらうのが目的だろうし」

モノペン「もう!」 そりゃあそうだけどさ!

モノペン「じゃあもう、シンプルに、『クロを完答出来なきゃクロになった人間以外全員おしおき』でいいよもう!」

モノペン「人殺しをする側にもちょっとくらいアドバンテージをあげなきとね!」

透華「なっ……」

竜華「それはつまり、例えAが1つの罪を暴かれても、もう1つを誤魔化しきったらAの勝ちっちゅーことか……!?」

モノペン「はいそーです」

モノペン「何なら、その裁判で完答することが条件ですので――」

モノペン「例えAが2つの罪を完全に当てられても、Bが逃れることができれば、AとBは揃って卒業できるのです!」

モノペン「そうでもしないと、折角頑張ったBが、ヤケッパチになったAに告発されて興ざめするかもしれないからね」

憧「それって、AとBが互いのアリバイを偽造するとか、そういう露骨な共犯関係じゃなくても成立するの?」

モノペン「はい、そのとーりです」

モノペン「その辺、カメラで見てるだけのこっちじゃ明確に共犯化までわかりませんから」

モノペン「一律、裁判単位で、そういう判定を取ります」


那岐「……つまり、どーいうこと?」

誓子「なんか良く分からないけど、これ、クロ側がとっても有利なんじゃあ……」

モノペン「そーですよ」

モノペン「バレなくするためのハードルは高めですから、このくらいのハンデはね」 ウププププ

モノペン「ルールもシンプルになったでしょう?」

憧「ちなみに、クロが被害者を兼ねてた場合って、どうなるの」

モノペン「その場合も、投票対象に代わりありません」

モノペン「例えば、兎さんを虎くんが殺して、その虎くんをドラゴンが殺した場合……」

モノペン「兎殺しの裁判では虎に」

モノペン「そして虎殺しの裁判でドラゴンに入れないと、完答失敗とみなされ、シロの皆さんはおしおきをされます」

華菜「……その場合、死んだタイガーは……」

モノペン「勿論、死にっぱなしですよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」

モノペン「死んだ人間は生き返らない。生き返らないんだよ!」

モノペン「魔法は奇跡じゃないんだよ!!」 ガオーッ

モノペン「……ま、亡骸くらいはお家に帰れるけどね」

誠子「あわわわわ……」

葉子「ど、どーすんだよ!」

葉子「めちゃくちゃ裁判で不利になるんじゃねーか!?」

モノペン「さりげなく自分はクロにならないアピールがグッドですね、果物みたいなアタマしてるのに」

モノペン「まあ、なので、次の裁判は、みなさん是非頑張ってクロの席に座りましょう!」

竜華「共犯有利、か……」

透華「これでますます、疑心暗鬼が加速しかねないですわね……」

憧「でも、プラスの面もある」

咲「え?」

憧「……」

憧「1人1殺」

憧「ここに残ったのは17人」

憧「各自1人を殺して、クロ全員が共犯になって、敢えて完答を失敗させれば――」

憧「少なくとも、8人はここを出ることが出来る」

咲「ッ!」

華菜「な……!」

美子「……」

葉子「!!」

透華「……ただそれは、確実に9人が命を落とすということを意味していますわ」

憧「……まあね」

憧「ただ――冷静に、一番多くの命が救われる方法は、それじゃないかって思っただけよ」


透華「そんな方法……!」

憧「わかってるって」

憧「アタシだって、積極的にそんなことするつもりはないし」

憧「大体これだってある種の理想論」

憧「誰か一人でも難色を示されたらおしまい、なし崩し的にバトル・ロワイアルになるもの」

憩「そういえば……」

憩「事件発生後に誰か殺して、便乗しようとする人とか出てきてまう可能性とかあるんちゃうかな~」

竜華「さすがにそこまでされるとキリがないし、捜査に集中できへんで」

透華「すでに十分クロ側有利」

透華「捜査に集中できず頭脳戦にならないのは、そちらとしても不本意でしょう」

透華「捜査開始から先の殺人事件は一切禁ずるルールの制定を要求しますわ!」

モノペン「我儘だなァ、オマエラは……」

モノペン「まあいいでしょう」

モノペン「実際そんなことで捜査がグダっても困っちゃうしね」

モノペン「死体発見アナウンス後の殺人事件は全面禁止!」

やえ「よし!」

やえ「共犯有利とは言え、これでぐっと心配事は減るな!」

モノペン「このルールを破ったらやっぱりおしおきで、その人が殺した被害者は全公開」

モノペン「他にクロがいるときのみ、学級裁判が始まります」

モノペン「ですから、殺すなら、その前にしてくださいね!」

やえ「ちなみに死体が見つからなかったら?」

憧「建物全体を手分けして探すんだし、そもそもそんなシチュエーションはまずないと思うけど」

透華「確かに、アナウンスが鳴って一向に現場に来ないようなら探しますし、最悪全員の部屋くらいは調べますからね」

那岐「つまり……どういうことなんだ……?」

誓子「まあ、そんなに深く気にしなくていいんじゃない、多分」

誠子「完全に推理担当じゃないこと自覚してる顔だ……」

那岐「私はまだ裁判のMVPを諦めてないぞ!」

誓子「無理ね」

葉子「無理だろ」

誠子「無理だと思うな」

那岐「えっ、即答?」

咲「私も無理かと……」

憧「満場一致でしょ」

智葉「だな」

那岐「徹底して話に入ってこなかったのにわざわざ来てまで賛同された!!!」


憧「あー、あとまだ質問あるんだけど」

モノペン「またあ?」

モノペン「最大8人出られることが分かっただけで万々歳じゃなかったの?」

憧「まあそれもあったんだけど、とりあえず……」

憧「トドメを刺した人間だけがクロになる、って言ってたわよね」

モノペン「はい」

憧「じゃあ例えば、AがBを刺したとして、A逃走後まだ息があるBをCが殺したら、クロはCだけなのよね?」

モノペン「そーですね」

憧「例えばAがBを刺して、ほっといても死ぬ状況で、CがBに刺さってるナイフを更に押し込んで殺した場合は?」

モノペン「その場合、Cさんがネトゲでいう経験値泥棒みたいな感じで、クロの座を掠め取ったとみなされます」

憧「殺意がないCが、ナイフを引き抜いた結果死んじゃった場合は?」

モノペン「検死の結果、ナイフを抜いたことで、抜かなかった時より死期が早まったとみなされたら、Cがクロになります」

憧「あくまで、最後の一押しをした人になるんだ」

モノペン「正確には、直接の死因に一番近い人物といったとこですかね」

憧「でも、被害者本人は基本クロにならないのよね」

憧「……例えば毒を飲んだ場合、最終的に毒を口に運ぶのは被害者本人になるけど」

モノペン「そうですね」

モノペン「明確な自殺でない限り、それはお膳立てした人間がクロになります」

モノペン「内面を読み取ることはこっちでも出来ないですからね」

モノペン「誰かが毒を持ったら、それに気づいて敢えて飲んでいようと、クロは毒を盛った人になります」

憧「でも、毒を盛った人物以外が、その毒の入ったものを食べさせた場合、食べさせた人がクロになるってことよね?」

憧「放っておけば飲んで死んだかもしれない毒入りのものを、早期に摂取させて殺したってことで」

モノペン「……そうなりますね」

誓子「でも、毒入りの物を第三者が食べさせる機会なんてそうそうないんじゃ……」

那岐「はい、あ~ん、とか……」

葉子「アホか。誰がやるんだそんなこと」

憧「ううん。その『あ~ん』を、皆がやるのよ」

葉子「…………は?」


憧「胡桃が暴走するまで誰も人を殺さなかったし、ただ人を殺したいだけの人はいないわけじゃない?」

やえ「当然だろう」

咲「胡桃先輩にしたって、好きでやったわけじゃ……!」

憧「そう」

憧「……今後殺人が起きるとしたら、事故、もしくは生きて帰りたいという想いからくる故意の殺人の可能性が非常に高い」

憧「事故で毒殺なんて起こるもんじゃないし、毒殺が起こるとすれば、その動機は十中八九生還のため」

透華「まあ、そうでしょうね」

竜華「今更ソレ以外の理由で人を殺すって、あんまり考えられへんもんな……」

竜華「特に、手段が毒殺なんてことになれば、うっかりとか、正当防衛でとかは、考えにくいし」

憧「そこで、全員が互いに『あ~ん』したらどう?」

透華「……なるほど」

透華「折角毒を仕込んでも、最後の一押しをしてクロになるのは、食べさせた者になる……」

憧「これをされると、食べ物に毒を混ぜても、自分がバレずにクロとなり生還する手段にはならない」

憩「人を減らす目的には使えてまうような~」

憧「うん、だから勿論これだけで絶対安全ってわけじゃないんだけど」

憧「でも人が減るってことは、クロ候補が減るってことなわけで、帰りたい人間にとって、無駄に減らすのは得策じゃないはずなのよ」

透華「そうですわね。食べさせ合いっこ、見た目はアレですが、やる価値はありますわ」

巴「まあ、それだけで危険性が減るのなら……」

桃子「先輩以外とやりたくはないっすけど、命には換えられないっすもんね」

那岐「よくわからないが、あーんした方がいいってことだな?」

那岐「本来は孤高の戦士なのだが、仕方ない。食べさせ合いをしてやろう!」

葉子「くそっ、こっちに入るつもりだぞあいつ!」

恵「悪い人じゃないんでしょうけど、あんまり深入りしたくはないですよね……」

誓子「あつあつおでんなら、あーんしてもいいんじゃない」

葉子「あー、確かに」

那岐「私のことをリアクション芸人か何かだと勘違いしてないか?」


智葉「茶番だな」

憧「……」

憧「言ってくれるじゃん」

憧「こっちは結構色々な情報を引き出しながら、一番有益な毒への心配が減る方法をもたらしたんだけど?」

憧「何もしない人に偉そうに言われたくはないかな」

智葉「確かに、有益なルール詳細の制定は有り難かったな」

智葉「素直に礼を言うよ、ありがとう」

智葉「ついでに、お礼としていいことを教えてやる」

智葉「そんなに毒殺が怖いなら、誰ともつるまないことだ」

智葉「周りは全員敵」

智葉「……最初からそう思っていれば、裏切られることもないし、油断して寝首をかかれることもない」

憧「ご忠告どーも」

憧「あんまり孤立して襲われなきゃいいけどね?」

智葉「要らぬ心配だな」

智葉「……この場の全員で襲いかかられても、切り抜けられるであろう技量はあるつもりだ」

智葉「そう易易とやられはしないさ」 スタスタスタ

ガチャ

憧「……」 チッ

憧「何あれ。感じ悪いし、どっかおかしいんじゃないの」

咲「ま、まあまあ……」

ちゃちゃのん「……」

ちゃちゃのん「…………じゃ」

憧「……え?」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんに言わせれば、憧ちゃんも、辻垣内さんも、他の皆も、全員一緒じゃ」


憧「……なにそれ」 ムスッ

ちゃちゃのん「何で、そんなに殺し合いのルールなんて詰めようとしちょるの」

ちゃちゃのん「何で、こんなおかしなルールに適応しようとなんてしちょるの」

ちゃちゃのん「おかしいじゃろ、そんなの!」

ちゃちゃのん「こんな……こんなふざけたこと、納得したらいかんじゃろ!」

ちゃちゃのん「ましてや、誰かが死ぬ前提で、裁判で生き残る前提で話すなんて!」

憧「……あのね」

憧「現に殺人事件は起きたし、裁判も起きた」

憧「アタシだってこんなルール認めたくはないけど、現実として受け入れなきゃ死ぬだけなのよ」

ちゃちゃのん「……」

ちゃちゃのん「そんなの、分かっちょるよ……」

ちゃちゃのん「でもやっぱり、こんなのちゃちゃのんはイヤじゃ……!」

ちゃちゃのん「もう誰も、死んでほしくないし、殺しとうない!」

透華「お、落ちついて下さいまし!」

透華「もうあんなことが起こらないようにと、考えたくもないケースを想定させ、ルールを――」

憩「……ん~?」

憩「っていうか、殺したくない……って……」

ちゃちゃのん「……殺したような、もんじゃけえ」

咲「え?」

ちゃちゃのん「胡桃ちゃんは、ちゃちゃのんや皆が殺したようなもんじゃけえ!!」


咲「……ッ!」

憧「あ、あれは……しょうがないでしょ……!」

憧「ああしなきゃ、アタシたちが死んでたんだから!」

華菜「そ、そーだし!」

やえ「……あれは、やむを得なかったんだ」

誓子「そうよ……あんまり自分を責めちゃダメよ……」

透華「ええ……あれは、誰のせいでもありません」

透華「強いて言うなら、そこの忌々しいクソペンギンのせいですわ!」

モノペン「うきゅ?」 キョトーン

モノペン「なーに言ってんのさ!」

モノペン「処刑投票を行ったのは、オマエラでしょ!」

モノペン「ちゃあんとその責任は、オマエラ自身がとらないと!」

モノペン「何でもかんでもボクのせいにしないでよね、もう!」 プンプン

モノペン「いいかい、よーく覚えておけよ」

モノペン「人が人を裁くっていうのは、大きな責任が伴う行為なんだ……!」

咲「……っ」 ゴクリ


透華「どれだけ何を言おうと無駄ですわ」

透華「全ては貴女の責任」

透華「私の中の全ての怒りは貴女単独で向いています」

透華「鹿倉胡桃のことも、愛宕洋榎のことも」

透華「裁判で私達が投票をするはめになったことも、こうして今争っていることも」

透華「そしてもちろん、浅見花子のことも」

透華「全ては貴女の責任ですし、私はそれら全ての怒りをただただ貴女に向けるだけですわッ!」

モノペン「ふぅん」

モノペン「噛ませ犬みたいな顔して、大した熱血漢だよ全く」

モノペン「……ちなみに……」

モノペン「そんな龍門渕サンや皆は知ってるのかな?」

誓子「え?」

モノペン「この前の学級裁判で、2人だけ、投票を間違えた人がいます!」

那岐「あ、私だけじゃなかった! ほら! 私だけじゃなかった!」

葉子「やかましい! はしゃぐなっての!」

モノペン「まあ、一人はそこではしゃいでいるお笑い枠」

那岐「言われてるぞ」

葉子「オメーだよ!!!」

モノペン「そしてもう一人はァ、そう、勿論佐々野いちごサンなのです!!」

モノペン「何とカノジョは、自分に投票していたのでーす!」

ちゃちゃのん「……」

モノペン「大事な友だちを殺せないという、感動的な想いの現れですねえ……うっうっうっ」 ブワッ

モノペン「……なーんて言うと思ったら大間違いだよ!!」 ガオーッ

モノペン「皆さんは、自分の命押しさに、鹿倉胡桃サンを処刑台に送り殺しました」

咲「……」

モノペン「でも、佐々野いちごさんだけは、違ったのです」

モノペン「オマエラ全員を殺してでも、鹿倉胡桃サンを助けようとした――」

モノペン「それが、あの投票結果の真実だよ」


ちゃちゃのん「そ、そんな……つもりじゃ……」

モノペン「うぷぷぷぷ」

モノペン「本当にオマエラは我儘で言い訳ばっかりだよね」

モノペン「いい加減認めちまいなよ」

モノペン「可愛いのは自分と一部の人間だけ……ってさ!」

透華「このっ……!」

モノペン「ギャハハハハ!」

モノペン「それじゃあもう質問もないみたいだし、ボクは帰るよ!」

モノペン「それじゃ、まったねー!!」

透華「くっ……!」

ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは……もう、あんな……」

ちゃちゃのん「誰も、殺したくなかっただけで……」 ブツブツ

憧「……」

咲(さっきまで、僅かに明るい空気を取り戻しつつあったというのに、すっかり空気は沈んでいた)

咲(下手をすると、今日一じゃないかというくらいに、ずっしりと、重たい空気が流れている)


咲(それからしばらく、誰も何も口を開かなかった)

咲(龍門渕さんや、あの新免先輩ですら、何と言葉を口にしていいか分からないでいた)

憧「……ご飯食べ終わったし、行くわよ」

透華「……どこに、ですの?」

憧「……毒にテープ貼るんでしょ?」

憧「人員は多いほうがいいだろうし、夜もふける前に、さ」

咲(沈黙を破ったのは、建設的な意見だった)

咲(最もソレは、決して気持ちのいい話題ではなかったけれども)

咲(とにかく、龍門渕さん達につれられて、何人もの人が食堂を出て行く)

咲(付いていこうとして――やめた)

咲(ついていく気はあったのだが、どうしても足が動かなかった)

咲(憂鬱だ)

咲(特にささのん先輩を見ていると、悪夢でも見るんじゃないかってくらい、憂鬱な気持ちになれた)


<自室>

咲(結局、手伝わずに戻ってきてしまった)

咲(……こんなので、明日からも、やっていけるのかな……)

咲「…………」

咲(ささのん先輩の言葉が、アタマの中でぐるぐると回っている)

咲(確かに、私達は、命押しさに胡桃先輩を死に追いやったのかもしれない)

咲(皆の一票が胡桃先輩を処刑台送りにしたのだ)

咲(でも――私だけは、少し違う)

咲(真相を暴いて、処刑台に足をかけさせたのは、間違いなく――――)

咲「……」

咲(……今は、とにかく眠ろう)

咲(よくない考えに、アタマが支配されないように――――)




【Day6 END】


【Day7】

キーン、コーン……カーン、コーン

モノペン『オマエラ、おはようございます!』

モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

咲「ん……朝か……」

咲(……もう、洋榎先輩達が迎えにきてくれることは……)

咲「……」

咲「いけないいけない」

咲「ここで沈んでてもしょうがないもんね」

咲「顔を洗って、準備をしなきゃ……」


咲「……」

咲「今日から、あーんで朝食を取るんだよね……」

咲「……」

咲「朝ごはん、一応自分達で作るべきなのかな……」

咲「毒だって絶対安全ではないし……」

咲「……」

咲「うう、一人でいると、なんだか落ち着かないよ……」

咲「洋榎先輩達がそうしたように、誰かを迎えにいって、一緒に食堂にでも行こうかな……」


食堂に誘う相手 >>947
(なし・一人で行く等も可。安価で取れるのは1名のみ)

辻垣内智葉

誰かいるやろうと皮算用して投下します
980くらいまでいったら次スレ立ててこようかなと思います


咲(辻垣内先輩……)

咲(誘わないと、朝食会にも来てくれなさそうだもんね……)

咲「……」

咲「うう……緊張するよぉ……」

咲(でも……)

咲(洋榎先輩も胡桃先輩も、こんな緊張を乗り越えて、私に声をかけてくれたんだよね……)

咲「……うん」

咲「頑張らなくちゃ」

咲「いってきます――!」

こけし「ヴヴヴヴヴヴヴ」


<辻垣内の個室前>

咲「……」

ピンポーン

咲「……」

咲(まだちょっと早いよね……)

咲(朝食会までも時間あるし、実際ほとんど皆廊下に出てきてないし……)

咲(早い人はもっと遥かに早いんだろうけど……)

ピンポーン

ピンポーン

咲(寝てたら申し訳ないけど、何度か押して見なくちゃ)

咲(洋榎先輩の連打に慣れてるせいで、単発だとどうも違和感があるし……)

咲(それに一回だと、身支度中ですぐ出られない時、相手がもう居なくなったかと思っちゃうだろうしね)

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン


咲「……」

ピンポーン

ピンポーン

ピンポピンポピンポーン

咲「……」

ピンポピンポピンポピンポピンポピンポ

咲「……」

咲「まさか、何かあったんじゃ……」

ピピピピピピピピピピピピピンポーーーーーーーーーーン

咲「辻垣内先輩……っ!」

ガチャッ

咲「あ、先輩!」

智葉「五月蝿い」

咲(あ、マジトーンで怒ってるやつだ……)


智葉「まったく……何をしにきた」

智葉「交流お断りだと、明言しなくても察することは出来たと思うが」

咲「あ、その、ええと……」

咲「やっぱり、ご飯を食べないっていうのはアレですし……」

咲「その、こんな状況だからこそ、やっぱり、皆で協力しなくちゃいけないって……」

智葉「……」

智葉「無理だろうな」

智葉「愛宕洋榎と鹿倉胡桃」

咲「」 ビクッ

智葉「……私の目から見ても、仲は良さそうだったよ」

智葉「その2人ですら、あの結末を迎えたんだ」

智葉「今更多少交流を深めた所で、悲劇を防ぐことは出来ん」


咲「……それでも……」

咲「出来ることはしておきたいから……」

咲「……」

咲「胡桃先輩のクロを暴いた私が言うことじゃ、ないのかもしれないですけど……」

咲「仲良くなっていたせいで、今だってとっても辛いです」

咲「でも……」

咲「胡桃先輩と親しくならなければよかったなんて、思えないから……」

咲「だから……」

咲「せめてこんな環境だけど、皆で……」

智葉「……」

智葉「強いな、お前は」

咲「え?」

智葉「……いいや、何でもない」


智葉「それより……」

智葉「改めて言っておくが、今日食堂に顔を出すつもりはない」

咲「そ、そんなあ……」

智葉「元より倉庫から食料品はガメてきてある」

智葉「生存確認で顔くらい見せてもよかったが、こうして今私の生存を証明してくれる人間も見つかったしな」

咲「……」 シュン

智葉「……そんな顔をするな」

智葉「明日からは、気が向けば顔くらいみせてやる」

咲「……!」

咲(ちょっとだけ、仲良くなれたのかな?)

咲(どうしよう、何かあげようかな)



プレゼントをあげますか?
>>956 (無効な内容は安価下)
A:はい(プレゼント名を併記)
B:いいえ

【現在の所持プレゼント】
20:希望ヶ峰の指輪
46:イン・ビトロ・ローズ
74:だれかの卒業アルバム

指輪


咲「あ、これ……」 スッ

智葉「これは……」

智葉「希望ヶ峰学園の指輪、か……」

咲「はい」

咲「かつて、国主導で超高校級の人達を集めて育成しようという計画が立って、それで――」

智葉「……お伽話みたいなものだな」

智葉「好きなのか、そういうの」

咲「あ、はい……その、本とか、都市伝説とか、結構好きで……」

智葉「……なら、価値が分かる者が持っているべきだろう、この指輪は」

咲「あ、いえ……」

咲「その……辻垣内先輩に、貰って貰いたいなって」

智葉「……」


智葉「普通こういうものは、将来を誓い合った相手に渡すものだ」

智葉「まともに会話したばかりの人間に渡すには些か重たいな」

咲「うう、ごめんなさい……」

咲「でも……」

咲「辻垣内先輩と、ここに将来を誓っておきたくて……」

智葉「……」

智葉「!?」


咲「辻垣内先輩は、その、ここから疑心暗鬼が起こると思っているかもしれませんけど……」

咲「私は……そんなの、イヤですから……」

咲「辻垣内先輩とだって、争いたくなんて……」

智葉「……」

咲「あ、現実を、見てないわけじゃないですよ!」

咲「むしろ……」

咲「友達と、命を賭けて対立する現実を知ってるからこそ、です」

咲「だから……」

咲「辻垣内先輩も、絶対、一緒に生きてここを出ましょう……!」

咲「誰か一人なんかじゃなくて!」

咲「一緒に……皆一緒に外に……」

咲「そんな将来を、誓いたくって……」


智葉「……ふっ」

咲「……!」

智葉「……?」

智葉「どうかしたのか」

咲「あ、えっと……」

咲「ようやく笑ってくれたなーって……」

咲「その、あんまり人と喋るの得意じゃないし、不安だったけど……」

咲「辻垣内先輩と話せてよかったです」

智葉「……」

智葉「何と言われようと、今日は朝食会に出ないし、そんな将来の約束は出来ない」

智葉「だが――」

智葉「さっきの言葉、頭の片隅にでも入れておこう」

智葉「……それじゃあな」 バタン

咲「……」

咲(指輪、ちゃんと受け取ってくれた……)

咲(コミュ障の思い上がりじゃなければ、喜んでくれたみたいでよかった……)



▼ツジガイトサトハの好感度が上がった!


誠子「あ、咲」

咲「あ、おはようございます」

誠子「こんなとこにいたんだ」

誠子「部屋に呼びに行ったのに全然出ないから心配したよ」

咲「あ、ごめんなさい」

咲「ちょっと、辻垣内先輩に会いに……」

誠子「ほえ?」

咲「その、朝食会に来てくれないかと思ったんですけど……」

誠子「……」

誠子「なるほど」

誠子「じゃあ私も力添えを――」

咲「わわ、待って下さいストップストップ!!」

咲「ある程度お話出来たし、ちょっとずつ歩み寄れたから、もう今は大丈夫です!」

咲「しつこすぎて嫌われてもイヤですし!」

誠子「そう?」

誠子「慎重だなー」

咲「あ、あはは……」

咲(地雷を踏むことを過剰に警戒するタイプのコミュ障なんですよ、私……うう……)


<食堂>

誠子「……まばらだけど、一応集まってきてるね」

憧「おはよ」

憧「一緒に食べない?」

憧「昨日言ったように、あーんすれば多少の防衛にはなるし、一人ってのは寂しいし」

誠子「ん、いいよ」

誠子「阿知賀にはインハイでも色々お世話になったしさ」

憧「来年もあるし、ハーベストタイムを今後どう伸ばすつもりなのかは聞いておきたいかなー」

憧「来年も当たる気がするし」

誠子「仲間は売れないなあ~~」

咲「……」

咲(来年……)

咲(そうだよね……来年また、大会に出るためにも……)

咲(絶対に、生きて帰らなくちゃ……!)


誠子「おまたせ」

憧「待った?」

咲「いえ……すみません、料理作ってもらっちゃって」

誠子「いいっていいって」

憧「どうせ相互監視しないとまともに料理なんて出来ない環境だったし、三人になったら余計ワチャワチャするしね」

咲「……」

憧「そりゃ咲達のことは信じたいけど、最低限の自衛はね」

憧「他のグループもそうだと思う」

誠子「やっぱり味は私らのじゃ劣るし、前みたいに気軽に作ってもらえたらいいんだけど……」

憧「正直、何人ここに集まるか不明な状態だったからね」

憧「大量に残るかもしれない料理を作らせるのも悪いっしょ」

誠子「まあ、それでも手伝ってくれるっていうから、この焼鮭は作ってもらったんだけど」

憧「一応見張ってたし、食べさせっ子の対策もあるから、毒は入ってないと思うけど」

咲「……それじゃ、もらおうかな」

咲「やっぱり、狩宿先輩達の料理、美味しいし、食べたいもん」 アハ


憧「……あ、透華はもう居ないんだ」

咲「あ、来てない人の様子を見てくるって……」

咲「辻垣内先輩については、来ないけど無事って伝えておいたけど……」

憧「なるほど、あのミソッカス組が来てないんだ」

咲「ミソッカスって……」

誠子「まあ、昨日あんなことがあったもんなあ」

咲「……」

憧「あ、咲は知らないんじゃない?」

咲「え?」

憧「ほら、昨日、薬局だか薬品室だか……まあとにかく、あの毒ある部屋来なかったでしょ」

誠子「そっか、あの時居なかったんだ」

咲「え? え?」

憧「食堂でのアレコレで気まずくなるとしたら、いちごと咲だけど……」

誠子「そういえば、佐々野さんも見かけないなあ」

憧「あの後、薬品室で、またちょっとトラブったのよ」


咲「トラブル……って……」

憧「毒自体は持ちだされた形跡が確認できなかったんだけど――」

憧「他の所、瓶が消えてたじゃない」

咲「そういえば……」

憧「あれ、持ちだしたのが、どうやら葉子達らしくて」

咲「!」

誠子「何でも、今までのくせで、武器庫に向かって……」

咲「そっか、いつも斧とかで壁壊そうとしてたから……」

誠子「でもあんなことがあった後だし、武器を取る気にまではなれなかったんだってさ」

憧「その時に、真っ先にあの部屋を見つけた」

憧「それで、栄養剤の瓶を持ちだしたんだってさ」

咲「何でそんな……」

誠子「……」

憧「勿論、それを問い質したのよ」

憧「正確には、誰が盗んだの、ってとこから長々問い質したんだけど、割愛するわ」

憧「とにかく――聞いたわ。どういうつもりなのかって」

誠子「ただ……あんまりはっきりした答えは貰えなかったんだ」

誠子「上手く主張がまとまってなかった、って言うのかな」

憧「要するに、誤魔化そうとして失敗したのよ」

憧「……毒を盗む程の勇気はなかったけど、毒は怖かった」

憧「だから、今後のことを考えて、1瓶まるまる栄養剤を盗んだ」

憧「ここには食料はたっぷりあるけど、密封されてるのは乾パンやカップ麺とかになるからね」

誠子「栄養が偏るし、不健康にもなりやすい」

憧「そのために、体調を整えるサプリが山程用意してあるんでしょ」

憧「で、その中でもことさら汎用性が高い奴を持って行った」

憧「……何でだか、ここまで言えば分かるわよね?」

咲「……」

咲「毒を混ぜられるのを警戒した、ですよね」

憧「そう」

憧「まだあの時は食べさせっ子のシステムも作ってなかったし、毒ビンも密閉してなかったしね」

憧「クロがこっそり栄養剤に毒を混ぜていたら……なんて思うと、栄養剤すら使えなくなる」

憧「だから先に持って帰ったってわけ」

誠子「一応、彼女たち曰く、正当な取り分らしいけどね」

誠子「ほら、大きな瓶が5つ並んでたの、覚えてる?」

咲「はい」

咲「計算しやすくなってましたよね……一列5瓶で……」

誠子「残り17人で5瓶だから、1瓶あたり4人か3人で分けることになる」

憧「で、葉子と恵、あと誓子の3人で分けるから、これは正当な分配だ――ってさ」

憧「初期人数が20だったことを考えたら1瓶4人で分けるべきだと思うんだけどね」

憧「ただ死んで花子が生きてた場合彼女たちに付いてた――って言われると反論出来ないし、素直にあげたんだけど」


憧「まあ、そんなこんなで微妙な空気なわけよ」

咲「はあ……」

誠子「口頭であらましだけ聞くと、それっぽく聞こえないだろうけど……」

憧「何か企んでないか探る必要あったから、ちょっとね」

誠子「ちょっとっていうか、割りとガッツリ追い詰めてたよね」

誠子「こう、正論で頭ぶん殴ってた感じ」

憧「やましい行為する方にも責任あるわよ」

憧「それに――」

憧「自己正当化の一環だろうけど、葉子は言ってたわ」

憧「この栄養剤は私らで分け合うから、残りはお前らで好きに分けたらいいだろ――って」

憧「……彼女達も、理解してるのよ」

憧「誰も彼もを盲信できないということと、でも一人で生き抜けるほど強くないことを」


咲「……」

憧「問題は、そのグループわけよね」

誠子「?」

誠子「えーっと、門松サンと上柿サン、あと桧森サンだっけ」

憧「あんまり絡む機会ないわよね」

誠子「確かに……」

咲「私は桧森先輩とはちょいちょい……」

憧「インハイでは一応試合したこともあるんだし、それでだと思うな」

憧「……有珠山が戦った他の高校でここに居るのって、あの辻垣内智葉と洋榎だし」

咲「私は直接対決はありませんでしたけどね」

誠子「……愛宕さんは、誰とでも仲良くしてたって感じだよね」

憧「でも、そんな洋榎がいなくなったからこそ、こっからは一層派閥みたいなものができてくる」

憧「で、このグループなんだけど……繋がりが、びっくりするくらいネガティブなのよね」

咲「ネガティブ……?」

憧「ぶっちゃけ、疎外感とか劣等感とか、そういうので繋がってる感じなのよ」

憧「正直な所、麻雀の腕じゃこの3人がどうしても遥かに劣る」

憧「花子もそうだったけど、麻雀しててもボッコボコで楽しくはなかったと思う」

憧「多分、反省して成長できるほどの力もないだろうし」

憧「そこに加えて、インハイに出てないことによる顔見知りの少なさ」

憧「……結果として、同じく麻雀に楽しく取り組めなくて、なおかつ喋る相手もいない連中でつるむことになりました、って感じなのよね」

咲「そ、そんな言い方は……」

憧「極端だとは思うけど、歯に衣着せてるような場面でもないからね」

憧「……実際、今はどうか知らないけど、多分スタートはそんな感じでつるんでたんだと思う」

憧「結局ナイフ盗難騒動の時もバラバラになってたみたいだし、結束自体は脆そうなのよね」

憧「そのうえ、毒を警戒して栄養剤をせしめる程度の知能はある」

誠子「……その点、新免さんとか超がつくほど安牌なんだけどなー」

咲(それはわかるかも)


憧「……なんにせよ、あそこは内輪揉めしそうなうえ、それが飛び火してもおかしくないから厄介なのよ」

誠子「飛び火?」

憧「直接的な被害が出る可能性も勿論あるし……」

憧「瓦解したあと、一人で生きてはいけない彼女達を受け入れるよう迫ってくる可能性がある」

憧「特に咲は、誓子に気に入られてるみたいだし」

咲「え?」

憧「……あのグループ、ネガティブな理由で繋がってるだけで、中のメンバーの思想とかはバラバラだからね」

憧「グループのメンバー以外で喋る相手も、それぞれ違うみたいだし」

憧「そうなると、誰を信用するかどうかでも揉めるだろうし、結果瓦解したらその”信用してる人”を頼る」

誠子「この場合、咲がそうなるってことだよね」

憧「そう」

憧「で、今度はその”信用してる人”のグループが、やってきた人間の処遇で揉めることになる」

憧「例えば、咲から見て誓子が信用できたとしても、アタシから見ればそうでもない」

憧「で、アタシが誓子と行動するのを嫌がったら――どうする?」

咲「ええ!?」

誠子「どうするって……」

憧「アタシを孤立させるのを躊躇って誠子がこっちにきたら、それで少人数が2組出来て終わリ」

憧「でも3人以上の組じゃないと、殺人鬼の襲撃可能性を減らせない」

憧「3人なら1人殺せない相手が出るけど、2人だと両方処分される可能性があるからね」

憧「……かといって、誠子が咲達の元に行けば、今度はアタシが孤立する」

憧「そうすると今度はアタシが他のグループの個人的に信頼出来る人間を訪ね、そこのグループでも同じことが起こるってわけ」

憧「要するに、どうなるか分からないドミノ倒しの起爆装置になりかねないのよ、あのグループは」


憧「……だからここではっきり言っておくわ」

憧「咲」

憧「アタシは咲を買っている」

憧「咲は気にしてるみたいだけど……でも、さっきの裁判でアタシたちを救ったのは、間違いなく咲だよ」

憧「冷静な思考と推理力を持っているって思ってる」

憧「だから、咲を選んだの」

憧「……あと、和の親友ってのもあるしね」

憧「……ねえ、手を組まない?」

憧「別に他の派閥と断絶しようとか、そういうのでなく」

憧「何かあったときは、アタシと咲……ああ、あと、一応誠子もか」

誠子「一応て」

憧「この三人で、助け合って、最後まで生き残ろう?」


咲「私は……」

誠子「うん、いい、いいんじゃない?」

誠子「憧、頭キレるし」

誠子「ね?」

咲「うん、それは本当にそう」

咲「食べさせっ子のアイデアとか、すごく助かったし……」

憧「そりゃどーも」

憧「それでもあの裁判で謎を解いた咲には今のところ負けるけどね」

誠子「今のところ、なんだ……」

憧「ちなみに誠子は……」

憧「……」

憧「肉壁として期待してるわ」

咲「でも、亦野先輩、水属性っぽいし、陸地で盾にするのはひどいんじゃ……」

憧「あー、確かに、陸地でやるなら剣士の方をスカウトすべきだったか~」

誠子「え!? カテゴリー的に新免さんとかと同じ扱い!?」


誠子「私だって、夜にあれこれ考えたりしてるんだよ!」

憧「例えば?」

誠子「例えば、ほら、あれ」

誠子「昨日の夕飯、憧が山盛りのお肉持ってきてくれたじゃん」

咲「あれ美味しかった」

咲「……ちょっと胃もたれしちゃったけど」

憧「胃薬も確かあったわよ」

咲「そうなんだ」

誠子「えーっと、まあ、とにかく、あれも結構優れてたと思うんだよね」

誠子「確かにああやってれば三人同じものを食べるしか無いし、作る人間は毒なんて入れられないと思ったんだ」

憧「もっと褒めるがいいー」 アハハ

誠子「でもだからこそ、あれだけやれば十分そうなのに、何で食べさせ合いなんて提案したのかなーって」

咲「……」

誠子「そう、そこでふと思いついたんだ!」

誠子「阿知賀は女子校……」

誠子「つまり!」

誠子「憧にはソッチの気があって、誰かとあ~んがしたかったがために、あれを提案したんじゃないかと!」

憧「咲、あいつ金銭トレード出していい?」

誠子「あいつ呼ばわりなうえ人とのトレードですらない!!」


憧「……まあ、でも、そこに着眼出来るくらいの脳味噌はあったんだ」

誠子「し、失礼な!」

憧「いやいや褒めてるんだって」

憧「着眼点自体は悪くないのかもね」

誠子「悪かったら釣りも麻雀も出来ないからね」

憧「なるほど、そうね」

憧「ついでに着眼点が悪くないうえしっかり考察も出来るようならあんな成績じゃないもんね」

誠子「はっはっは、私だって泣くんだぞ」

咲「ま、まあまあ……」


誠子「でも実際どうなの?」

誠子「何か意味あったの?」

憧「そうやって素直に疑問を持てて、謎を突き止めようと出来るのは美徳だと思うわ、素直に」

誠子「照れるなー」

憧「で、理由だけど……」

憧「さっきの策だけじゃ不完全で、食べさせ合うことでグッと毒物混ざる可能性が減るからよ」

誠子「ふえ?」

誠子「それって、一体……」

憧「さっきのは、あくまで料理を作る人間が毒を入れないための策」

憧「どれだけ意識してても、毒を入れたか分からないものがあるでしょ」

誠子「……?」

咲「……あ」

憧「咲はさすがに気付いたか」

咲「食材、だよね」

誠子「ああ!」

憧「正解」

憧「食堂に常に置いてある食材に、事前に毒を盛られる」

憧「その可能性も排除しなきゃいけなかったからね」

誠子「なるほど、それで食べさせ合い」

憧「人数減らすのが目的でもない限り、食材に毒を仕込んでもクロになるのは食べさせた人」

憧「自分は卒業できず、しかも罪をかぶせるクロ候補が減るだけとなったら、当分は大丈夫でしょ」

誠子「き、昨日食材に盛られてなくてよかったあ~……」

憧「どーだか」

憧「……粉末状だし、飲み物系にはすでに仕込んじゃってましたって可能性があるにはあるわ」

憧「透華がそれを警戒して朝巴たちとそういうのは処分してたみたいだけど」

憧「昨日は時間的にも『水で溶かして食材を漬ける』みたいに凝ったことする時間はなかったし、安全狙いで肉のみだったけど」

憧「今後昨日混ぜられた可能性があるもの全部捨てて、新しいの補充されたら、そこそこ安心して色々作れるようになるわ」


ガチャ

憧「っと、透華達戻ってきたわね」

誠子「あ、新免さんオロオロしてる」

咲「ここでは桧森先輩たちの所に行くんですね」

憧「多分、深く考える力がないのがプラスに働いてるケースね」

憧「栄養剤とかでハブられてるし、普通怖くて単身ご飯だけ混ざったり出来ないわよ」

透華「ふむ、約一名を除き、揃いましたわね!」

咲「ささのん先輩は……龍門渕さんの横、か……」

憧「……」

憧「咲」

咲「え?」

憧「さっきの誘いの返事、考えておいてよ」

憧「お昼――麻雀の前に、答え聞くからさ」


誠子「いいんじゃないの、組んじゃって」

咲「……」

憧「無理して即断しなくていいから」

憧「むしろ、ホイホイ飛びつかない思慮深さは評価対象だし」

憧「……」 スッ

誠子「何この紙切――あいたっ!」

咲「?」

誠子「け、蹴らなくても……」

咲「……」 チラ

メモ帳『麻雀が始まる90分前にはホールに来て。話したいことがある』

咲「これ……」

憧「……ここじゃ、聞かれるかもしれないからね」

憧「咲と、あと誠子だけで来て」

咲「……」

誠子「わ、わかった」

憧「……」

憧「さ、改めてご飯にしましょ」

憧「透華の仕切りも始まったしね」


咲(朝食会は、つつがなく終わった)

咲(龍門渕さんが皆の結束を煽り、池田さん達がちょっとした笑いを起こし場を和ませる)

咲(特に覚えないといけない内容があるわけでもなく、きちんと今日は麻雀に出席するよう念を押されて朝食会は幕を閉じた)

咲(ほんのすこしだけ、嫌なことを忘れられる朝食会だった)

憧「それじゃ、また後で」

誠子「私もたまには皿洗いとか手伝った方がいいのかなあ」

誠子「……咲はどーするの?」

誠子「麻雀まで時間あるけど」

咲「……」

咲(やっぱり……一部の人だけ信じて固まるのって、寂しいし、よくないとは思う……)

咲(でも、私人見知りだから……)

咲(ううう、どうしたらいいんだろう……)



どうする? >>980
A:誰かを部屋に呼んで一緒に過ごす(相手を併記、1名のみ)
B:誰かと一緒に過ごす(相手を併記、3名まで、記載された順番に声をかける)
C:皿洗いを手伝う
D:一人でどこかに行く(行き先併記)
E:一人で何かをする(行動併記)

さすがに人もいないだろうし寝ます
最近すっかり深夜になってしまって、安価出す度に止まりそうなのですが、以下の2つならどっちがいいとかありますか?

①テンポ重視、安価は減らして本編さくさく行こう
②エタらなきゃスローでもええねん、安価の自由行動時間は大事

意見貰えるとありがたいです
あと次の投下で次スレ立てる予定なので、>>1000だけ残しておいていただければと思います
ほかは勝手に埋めてもらってOKです

乙です 1

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