【仮面ライダー】乾巧「どこだよ、ここ……」チェイス「あの世、ではないのか」 (1000)




――――――ドサァッ!!



剛「っ!! ぐっ! ハァ、ハァ……! ぉ、おいっ!!」

チェイス「…………」バチッ…バチッ…

剛「ハァ、ハァ……! 嘘だろ……!! 何やってんだよっ!!?」

チェイス「…………これでいいんだ、剛」

剛「……!?」

チェイス「霧子が愛する者たちを守れるのなら…………本望だ……」

剛「っ!? ……っ……!!」



スッ……



チェイス「人間が俺にくれた……宝物だ……」

チェイス「…………俺とお前はダチではないが……」

チェイス「持っていてくれ…………燃えてしまうと……勿体ない……」

剛「……っ゛……!! ……っ゛……」

チェイス「……ッ!!」ガバッ!!

剛「うっ!? ――――ッ!!!」



タッタッタッタ……!



チェイス「…………!!」バチッ! バチバチッ!



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蛮野「ヘェッハッハァッ!!」

チェイス「……ヌゥン……!!」



ダンッ!! ガシィッ!!



蛮野「な!? うぐぅっ! はぁなぁせえぇぇぇ!!」

チェイス「……グッ……うぅ……!!」グググ…



バチッ! バチバチッ!!

バキバギィッ!!



蛮野「ぬうぅうああああアアアぁぁああアアァァァーーー!!!」

チェイス「ウオオオオォォォオオォーーー!!!」




チュドオオオオォォォンンッッ!!!






バチッ……バチッ……






――――――パキンッ




剛「ハァッ……!! ハァ……ぁぁ……!! チェイスウウゥゥゥーーーッッ!!!!」






その日、一人の男が死んだ。

彼は、人間を守るために作り出された一体の機械だった。
しかし、機械故に、彼を生み出した存在や、彼自身の意思とは無関係に、人間を傷つけさせられたこともあった。
ある時は人のために、またある時は、人に牙を向く怪人のために、機械は立場を変え姿を変え、長く戦い続けた。

争い、傷つけ傷つきながら、機械は様々なものを目にし、様々なヒトに触れ、様々な心を知り、様々な事を学んだ。
それらは時に、彼自身の体や精神、或いはその両方を傷つけ、苦しみを伴う葛藤へと追い込んだ。
しかし、その体についていく傷も、目に見えない、形無き胸の痛みも、彼にとっては全てが新鮮で、尊いモノだった。


仲間を、友を守るために戦い、何度も傷を負った。誇らしかった。

車の免許を取りに行き、教官に何度か怒られた。楽しかった。

恋というものを知って、胸が切なくなった。嬉しかった。

失恋を知り、涙を流した。心地よかった。


それらは皆、人間ではない彼が、人間のような存在になった気持ちになれる、何よりも大切な【宝物】だった。

多くの宝物を手に入れた彼は、その内の形ある物2つを、最も大切な宝物に託して、この世を去った。
彼が守った宝物は、他の大勢の人達の、沢山の宝物を守っていくのだろう。


男は死んだ。この世界での彼の物語は、幕を閉じたのだ。





だが、死んだ後の彼は、どこへ向かうのだろう?








ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ――――



チェイス「…………」パチリ

チェイス「…………」



ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ



チェイス「…………」



ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ――――



チェイス「…………」ムクリ

チェイス「…………」ポチッ



ピピp


シーーーン……



チェイス「…………これが、目覚まし時計、というものか」シゲシゲ

チェイス「今は夜のようだが」

チェイス「…………なぜ俺はベッドで寝ている」

チェイス「……ここは、どこだ」チラリ

チェイス(どこかの家の一室、のようだが……どこの誰の家だ?)

チェイス(……いや、そんなことより……なぜ俺は)



チェイス「生きている……?」




チェイス(記憶が確かなら、俺はゴルドの攻撃でコアに致命傷を負った……)

チェイス(ボディが崩壊するまで時間もなかったので、爆発に奴を巻き込もうと、奴にしがみついて、そのまま……)

チェイス「……俺のコアは、消滅したはず……なぜだ?」

チェイス「……! 傷は――ッ!?」

チェイス(…………無い!?)


ガバッ!


チェイス「治って、いるだと……!?」

チェイス「……フッ! ハッ!」ビュンッ! シュバッ!

チェイス(体が問題無く動かせる……やはり完全に修復されている……!)

チェイス(あれほどのダメージ……メディックが居てもそう簡単に完治できるものでは無いぞ)

チェイス(そもそも、俺は自分のコアが完全に破壊された事を、感覚で理解している! 一度破壊されたコアを復活させることなど……)

チェイス(しかし……俺は現に今こうして……)

チェイス「…………とにかく、ここがどこなのか、ハッキリさせるのが先か」

チェイス(なぜ俺が生きているのかはわからないが、本当に、完全に破壊された俺のコアを復活させているのだとすると)

チェイス(俺を生かした者は、相当の科学技術を有している可能性が高い。あのクリムすらをも上回るほどの)



ガチャッ、ギィ……



チェイス「……廊下か。俺が居るのは、突き当り右の部屋、ということか」

チェイス(そんな科学力を持っている者が、何の目的で俺を生かしたのか……何か悪事に利用しようというのなら)

チェイス(……絶対に、思い通りにはならん)グッ

チェイス(もし善意で救ってくれたのなら……素直に礼を言おう)

チェイス「…………」スタスタ



クルッ



チェイス「…………」スッ



ギィ……パタン



チェイス「開けたら、閉める」ウン

チェイス(……! ドアに何か……?)





【 チェイスの部屋 】



チェイス「…………」

チェイス(名札……?)

チェイス「………………なんだこれは」

チェイス(チェイス……というのは、ほぼ間違いなく俺の事だろう。『チェイス』などと言う名前を持った者が他に居るとも思えん)

チェイス(とするとこの部屋は、予め俺のために用意してあったものということになるが……)

チェイス(一体何がしたいというのだ。俺をここへ連れてきた人間は)

チェイス「…………」テクテク

チェイス(……広めの廊下沿いに扉が1つ、2つ、3つ……俺が居た部屋を含めれば4つか)

チェイス(他人の家の部屋を勝手に開けてはならないと進之介が言っていたが、この状況ではやむを得ん。調べさせてもらうとしよう)



コンコンッ



チェイス「失礼する」



ガチャッ



チェイス「…………」



ガチャガチャッガチャッ



チェイス「……鍵がかかっていたか」

チェイス(俺の名前があった名札と同じ、木製の名札があるが、何も書かれていない……誰も使っていないということか?)

チェイス「他の部屋は……」



ガチャガチャッ



チェイス「駄目か」



ガチャガチャッ



チェイス「ここもか……」

チェイス(そうするするとここも恐らく……む?)

チェイス「ここだけ半開きになっている……鍵はかかっていないか」



キィィ……



チェイス(!! まずい!!)バタンッ



チェイス「…………危なかった」



チェイス「思わずノックをする前に開けるところだったな」コンコン

チェイス「失礼する」



ガチャリッ、キィィ……



チェイス「……誰もいない、か」

チェイス(中の状態は俺がいた部屋と殆ど同じだな。机とベッドとタンスと窓だけだが)

チェイス「……! ノートパソコンか」

チェイス「俺の部屋には無かったと思うが……」

チェイス「これを調べれば何か分かるかもしれんな」パカッ

チェイス「…………いや、待て」パタン

チェイス(前に進之介が言っていたな)





~回想(特上課にて)~




進之介「ただいまー。霧子ー、昼飯買ってきたぞ……っていないじゃん」

チェイス「霧子なら書類を届に出て行ったぞ」カチカチ

進之介「ん? おぉ、チェイス。来てた、の……かっ……!?」ガタタッ!

チェイス「今お前のノートパソコンを借りているぞ」

進之介「み、見りゃ分かるけど……!! 何してんの!?」

チェイス「人間についてより深く知りたいと思った。だからインターネットを使って情報を集めている」カチッ

チェイス「霧子が使ってもいいだろうと言っていたので、Y○HOOニュースを閲覧していたところだ」

進之介「あ、あいつそんな勝手に……」ソワソワ



進之介「……えっと、チェイス、その、デスクトップに置いてあるフォルダに触ったりしてない、よな……?」ソワソワ

チェイス「いや、ロイミュードの力を使わず、普通にパソコンを操作するもの初めてだったからな。良くわからず、いくつか適当にクリックしたが」

進之介「ちょっ……!! ほ、ほんとだ……沢山のウィンドウが開きっぱなしに……!?」

進之助「じゃ、じゃあフォルダを開いた先の更に先の先のフォルダとか開いたか!?」

チェイス「……? それは何という名前で登録している」

進之介「そ、それは……ぐっ……!」

進之介(しゃ……『写真』ってフォルダの中の、『その他』っていうフォルダの先の『失敗』っていう……)ヒソヒソ

チェイス「なぜ急に小声になる……? それならさっき開いたが」

進之介「嘘おぉぉおおぉ!!? すぐ手前じゃん……!!」

チェイス「手前……? この失敗写真データ集の中に何かあるのか?」

進之介「いや!? 別に!? 何もないけどっ!! っておい何して……!?」

チェイス「……画像データの中にフォルダが1つだけ……これのことか?『Otakara』とあるが……」

進之介「うおおおぉい!! 開くな開くな!! ちょ、ちょっとチェイス代われ!!」

チェイス「なんだ、どうしたというのだ」カチッ

進之介「あ」

チェイス「む……?」



ガチャリッ



霧子「ふぅ、ただいまチェイス。あ、泊さん、戻ってたんで――」

進之介「ふうぅんッッ!!!」バシーーン!!

チェイス「!!」ビクッ

霧子「ひうっ!? と、泊、さん? どうしたんですか……?」

進之介「ん? 何が?」

霧子「すごい勢いでパソコンを閉じましたよね……?」

進之介「そう? ノート使った後はいつもこんな感じだけど?」

霧子「そ……そう、ですか……」

進之介「そ、それよりほら、昼飯買ってきたからさっさと食べよう! チェイス! お前も食うかっ!?」

チェイス「いや、俺はもう少し調べものを――」カチャッ



ガシィッ!!



進之介「そう言わずに!! 食べるだろ!? 食べるよな!! 良し食おう!!」

チェイス「いや、別に俺は――」

進之介「良しじゃあこれ電源落とさないとな!!」ポチーッ!

進之介「霧子! これレンジで温めてくれッ!」

霧子「は、はい、わかりました……?」



チェイス「…………どうしたのだ進之介」

進之介(ここからは小声で頼む)

チェイス(…………俺がこれに触れるのは、不快だったか)シュン

進之介(いや別にそうじゃなくてな? あー……いいかチェイス、男はな、自分のパソコンには、こう、人に見せたくない物の一つや二つ保存してるもんなんだよ!)

チェイス(? 人に見せたくない物なのに保存するのか?)

進之介(そ、そうだ! 基本的に誰にも見せず、自分一人で楽しむものなんだ! つまりは、そう……宝物なんだよ!!)

チェイス(! 宝物……今のはお前の、宝物なのか)

進之介(そう! そうなんだよ!)

チェイス(ならば俺にも見せてくれないか)

進之介「そりゃ無理だ!! 駄目!! 絶対!!」ガタッ!

霧子「? なんですか泊さん?」

進之介「やべ……! いや、何でもない何でもない!」

チェイス(……俺は見てはいけないのか。お前の宝物ならば、きっと素晴らしいものだと思ったから、共有できればと……)シュン

進之介(……いやまぁ、男同士だし、共有できないこともないんだけど……)

チェイス(女では駄目なのか? 霧子もか?)

進之介(ダメダメダメぜっっったい駄目!! 霧子にだけは知られたくない!!)

チェイス(……男にのみ許される男の宝物、というわけか)フム

進之介(……うん、まぁそれでいいや……とにかく、俺はこれを誰にも、特に女性には見られたくないんだ。お前ならまぁ、少しはいいかも、しれないけど……)

チェイス(俺が見てもいいのか?)

進之介(お前がそういうものに興味もつのかわかんないけど、まぁ……そのうちな、そのうち)

チェイス(……そうか、なら、楽しみにしている)

進之介(お、おう。何にせよ、人のパソコンのデータを無闇に見たりするのは、良くないことなんだ。覚えとけよ)

進之介「ふぅ……じゃ、そういうことで、な!」

チェイス「了解した」

霧子「いったいなんの話をしてたんですか?」

チェイス「男の話だ」キリッ

霧子「???」

チェイス「ところで進之介」

進之介「? なんだ?」



チェイス「YA○OOの検索履歴にあった、『新作 人気 AV』のエーブイとは、なんの略語なのだ?」

進之介「」

霧子「」






~~~~


チェイス(あの後、何故か霧子は顔を真っ赤にして怒って出て行ってしまい)

チェイス(進之介は何とも言えない視線を俺に向けて膝から崩れ落ちていたな)

チェイス(消え入りそうな声で、検索履歴もやたらと言いふらしてはいけないことを教えてくれたが、結局どういうことだったのかよくわからん)

チェイス(……あれからさほど時間は経っていないはずだが……何故だろうな)

チェイス(随分と遠い昔のように思える……)

チェイス「……とにかく、これを使うわけにはいかんな。持ち主の許諾を得なければ」

チェイス「……他に何か――!」

チェイス「ベットが使われている形跡がある……! まだ温かい」

チェイス「部屋を出たばかりかもしないな。探してみよう」スタスタ



ガチャッ、クルッ、バタン



チェイス「……? この名札、良く見れば裏返しに……」スッ


クルン、カタン……




【 乾 巧の部屋 】



チェイス「…………かわい……うまい?」

チェイス「……いや、『乾』は『いぬい』で『巧』は『たくみ』、と読むのか」

チェイス「ここには巧という人物がいるようだな。とにかくこの人間を探すとしよう」





◇一階・ロビー◇



???「…………」

???「……わけがわかんねぇよ……」

???(いよいよ最期が近づいてきたから、誰にも言わずに、1人であの土手に行って……死んだはずなのに……)

???(なんで俺は生きてんだ……? 最近ずっと感じてた、死が近づいてる感覚も無いし、体調もスッキリしてる……)

???(何より、ここは何処だよ!? やたら広いくせに人が1人も居ねぇってなんなんだ……!)

???(……スマートブレインの残党の仕業か? 俺をまた何かの実験に使おうと……いや、ひょっとしてもう、使った後か?)

???(だがもしそうだとしても、ベルトが無ぇし、戦う術が無いんじゃどうしようも……)

???(……いや、1つだけあったか……できれば、アレにはなりたくないんだけどな……ヤバい状況になったら、仕方ないか)

???(今できることと言えば、この家を調べる位だが……)

???(扉が開くところはもう粗方調べ尽くしちまったし、他にどこをどう調べりゃいいんだか……!)

???「……おい!! 誰か居ないのかァ!!」





チェイス「ここに居るが」ヌゥッ

???「うっぉおおぉ!!?」ビクゥッ

チェイス「……どうかしたか」

???「いきなり後から声かけんな!! ビックリしただろうが!!」

???「っていうか人居たのかよ……! さっきあんだけ大声で探し回ってたってのに……!」

チェイス「探し回って……? お前は、この家の住人ではないのか」

??? 「いや、違ぇよ……って、それって……お前もか?」

チェイス「俺は気が付いたら2回の部屋のベッドで寝かされていた。俺はこの家に見覚えはない」

チェイス「お前が俺をここに連れてきたのではないのか?」

???「……俺も、目が覚めたら知らないベットで寝ぼけてて、慌てて飛び起きて部屋から出てみたんだが……」

???「玄関の扉は開かないし誰も居ないし……クソ、何が起きてんだ……!」

チェイス(……様子を見るに、嘘をついてるわけでもないようだ)

チェイス(脈拍や呼吸のペースが多少乱れているが、これは突然の事態に対する動揺によるものだろう)

チェイス「……お前は、乾巧という名前か?」

???「ッ!? なんでそれを……!!」

チェイス「やはり、あの部屋に居たのはお前か。部屋の扉に名札があった。お前の名前が書かれいてたが、気づいていなかったようだな」

巧「俺の名前が? どういう……」

チェイス「わからん。が、俺たちをここへ連れ来てた者は、俺たちのことを事前に知っているようだ」

巧「…………」

チェイス「……俺の名前はチェイスと言う」

巧「はぁ?」

チェイス「……初対面の相手とは、自己紹介を交わすのが人間のルールではないのか?」

巧「あ、あぁ……って、お前はもう俺の名前知ってんだろ?」

チェイス「…………」ジーー

巧「……た、巧だ……乾巧」

チェイス「よろしく」スッ

巧「よ、よろしく……」ギュッ



巧(なんか、変な奴だな……見知らぬ場所に連れてこられた割には随分冷静だし、やたら無表情だし……)

巧(しかも『チェイス』ってなんだよ……あだ名か?)

巧(……本当にこいつ俺と同じ状況の人間なのか? スマートブレインの一員だったりしないだろうな……!?)

巧(ここはストレートにいくか……)

巧「……お前、オルフェノクか?」

チェイス「……おる……ふぇのく……? とは、何だ」

巧「知らないのか?」

チェイス「あぁ。聞いたことはない。それは何だ?」

巧(……嘘をついてる、って感じがしねぇな……)

巧(俺と同じように、正体を人に知られるのが怖くて嘘ついてるにしたって、少しは動揺するはずだ……)

巧(純粋にわからねぇって顔……な気がする)

巧「……何でもない、忘れてくれ」

チェイス「? 何故だ。『おるふぇのく』が何なのか、教えてはくれないのか」

巧「悪いな。世の中には知らない方がいいことってのがあんだよ。……知らないなら、そのままの方がいい」

チェイス「……そうか」

チェイス「俺はたった今目覚めたばかりで、この家に何があるのか、わかっていない。何か変わった事は無いか」

巧「……変わった事って言ったってな……出口らしい出口は、全部鍵がかかってて開かないって事くらいだな」

チェイス「調べたのか」

巧「他にやることも無かったんでね。2階は俺が居た部屋以外は鍵がかかってた。今俺たちが居るのが、1階のリビングってとこか」

巧「あっちにキッチンがあって、確認してみたが、電気もガスも通ってるし、冷蔵庫には食材がぎっしりだ」

巧「でも、電子レンジもコンロも食器も、最近誰かが使った形跡は無い……新品みたいにピカピカしてやがる」

チェイス「……このテレビはつくのか」

巧「いや、まだ確認してねぇけど……」

チェイス「リモコンはこれか」ピッ



TV『……ザザ、ザザ……ザザザッ……』



巧「……どのチャンネルも映りません、ってか」

チェイス「…………」スタスタ



ガチャガチャッ



巧「? おい、何してんだよ」

チェイス「壊れていないか確認するだけだ」ガチャガチャ

チェイス「……配線に問題はないし、断線もしていない。単純に電波が来ていないようだ」

チェイス「恐らくDVDプレイヤーは見れるだろう。アンプの隣にDVDボックスが並んでいる」

巧「……DVDなんて見たって何にもならないだろ」

チェイス「……そうか。他には何か、変なモノは無いか?」

巧「いや、特には」

チェイス「…………」



チェイス(ますます不可解だな……。本来ならばこの状況、俺を連れてきた人物がなんらかの接触をしてきてもいいはずだ)

チェイス(だが、俺が目覚めてから出会った人間は、この乾巧ただ一人……俺と同じ、ここに連れてこられてた側の人間だ)

チェイス(……ロイミュードの俺と一般人を同じ場所に閉じ込め、何らかの実験でもしようと……?)

チェイス「わからん。何が目的だ……?」

巧「さぁな。もう数時間待って、何も事が起こらないようなら、適当に窓でもぶち破って外に出るしかねぇな」

チェイス「……! 乾、ここに来る前、お前は何をしていた?」

巧「! ……ここに来る、前……」

チェイス「何者かに襲われて気を失ったとか、見知らぬものと接触した、或いは誰かに付けられていた、といったようなことが無かったか?」

巧「いや、そういうような事は、無ぇけど……」

チェイス「誰かと争っていて負傷した、等ということも、無いのか?」

巧「…………別に、いたって平和だったぜ。……平和な、筈さ」

チェイス(……俺のように戦って致命的な怪我を負った、というわけではないのか)

チェイス(少しでも俺との共通点が見つかればと思ったのが……)

チェイス「なら、何をして過ごしていたか、覚えていないか?」

巧「…………」

チェイス「…………?」

巧「…………寝てたよ。一人でな」

チェイス「……寝ていた?」

巧「あぁ。土手で一人で、のんびり日向ぼっこして、寝てたんだよ。悪いかよ」

チェイス「いや、悪くはない。太陽の光をゆっくり浴びる事は、人間の体には必要だと聞く」

チェイス「……つまり乾は、その土手で昼寝をしていて、目が覚めたらここに居たと言うことか」

巧「あぁ、そういうことだ」

巧(……嘘は言っちゃいないぜ。俺の正体が化け物で、直前まで死にかけてた、なんて言ったところで、無駄に混乱させるだけだしな)

巧「そういうお前は、どこで何してたんだよ」

チェイス「あぁ……俺は――――」




~~!!~♪~♪! ~~♪♪~~!!


チェイス「ム……?」

巧「ッ! 何だ!?」

チェイス「何かの曲のようだ」

巧「んなこたぁわかってる! 俺が言ってんのは、何で誰も居ないはずの2階から……」




巧「バイオリンの音が聴こえてくるのかってことだ!」



~♪♪~~♪~♪!! ~~♪♪~~



チェイス「行った方が良さそうだな」スッ

巧「あぁ……!」




◇2階・北西の部屋◇




???(A)「……んん……ぐ、うぅう……?」パチ

???(B)「……~~~~♪」キィッキッキッキィ~♪

???(A)「……はぇ?」ポカン

???(B)「~~♪ おっ、ようやく起きたか。あぁいや、何も話さなくていい。今はこの超絶技巧の演奏に聴き入っていろっ!」



ドタドタドタッ!



???(B)「ん? 誰か上がってくるな。ここの住人か」キィキィキキキィ~♪♪



<おい、ここ開いてるぞ!

<名札に文字が……! さっき見たときは何も……『城戸 真司』……?



バタンッ!!



巧「……! あんたら、いつからここに……!?」

チェイス「…………」

???(B)「妙な事を言うな。お前達が俺をこの家に連れてきたんじゃないのか?」~~♪♪

チェイス「いいや、違う。俺たちはこの家のことを何も知らない」

???(B)「そうか……なら俺と同じか。よくわからんが、とりあえず落ち着いて俺の曲を聴け」~~♪♪

巧「いや、何言って……」

???(A)「……えーっと、状況が……読めないんだけど……何、これ?」

???(B)「さぁ? 俺は何も知らん。それより静かにしてろー」~~♪♪

???(A)「え、えぇ……?」



~♪♪~~♪~♪!! ~~♪♪~~



巧(……意味がわからねぇ……わからねぇけど……)

巧「…………すげぇな、これ」

チェイス「…………」コクリ

???(A)「……おぉぉ……」



~♪♪~~♪~♪!! ~~♪♪~~……キイィンッ!♪






???(B)「……以上、音楽の神が生みし奇跡の子……『紅 音也』による『剣の舞』だ」フフン

???(A)「は~……すっげぇなー! 指の動きについていけなかったよ!」パチパチパチ!

チェイス「俺は音楽には疎いが、今の技巧が素晴らしいものだということはわかった」パチパチ

巧「いや、お前まで何拍手してんだよ……」

チェイス「それはそうと乾、この部屋に入る前に、ノックをしていなかったぞ」

巧「はぁ?」

チェイス「人の部屋に入る前には、ノックをするのが人間のルールではないのか」

巧「今そんな事どうでもいいだろうが! ……紅音也、って言ったか」

音也「あぁ、いかにも! この俺こそ、100年に一度の超天才……」

音也「紅――――音也だッ……!!」ドヤァァァ

巧「…………」

???(A)「…………」パチ、パチ…

チェイス「……そこのベットに居る茶髪の男性は知り合いか?」

音也「いや、全く。誰なんだお前」

???(A)「え!? あ、あぁ……俺は城戸s――」

音也「あぁ、やっぱりいい。男の名前なんぞ覚えても別に得にならんからな」シレッ

???(A)「そっちが訊いておいて何だその態度ー!? 俺の名前は城戸真司!! 23歳!! 仕事はジャーナリストで得意料理は餃子ッ!!」ガルル

音也「何だ同い年か。その割にはお前……なんかガキっぽい雰囲気漂ってるな?」

真司「なん、だとこんのやろぉ……!?」←猪木顔

巧「おいやめろよ。下らねぇことで喧嘩すんなって……ガキじゃあるまいし」

真司「う、ぐ……!」

音也「そーだそーだー、大人になれー! 大人の男になれないと彼女はできないぞ真司君!」

真司「余計なお世話だよこんちきしょう!? っていうかちゃっかり名前覚えてんじゃんか!!」

チェイス「落ち着け城戸。23歳という若さならまだ十分出会いの余地はある。今から大人になれば恋人の一人すぐにできるだろう」

真司「あんたは何のフォローをしてるんだよぉ!?」

チェイス「ところで乾、『大人の男』とは、何をもってして大人と判断されるのだ?」

巧「知るかよ! なんでソレ俺に振ったんだ……!」

音也「ハッハッハ! 中々愉快な連中だなお前ら!」





◇10分後、一階・リビング◇



音也「それじゃあ、改めて名乗らせてもらおうか。紅音也……23歳、職業は音楽家だ。ヴァイオリン1つで人の心を震わす天才ヴァイオリニストだ!」

真司「えっと、俺は城戸真司……同じく23歳。仕事はさっきも言ったけど、ジャーナリストやってるんだ」

真司「OREジャーナルって会社聞いた事無いかな? アクセス数はそれなりにあったと思ったんだけど……」

チェイス「いや、知らない」

巧「知らねぇ」

音也「知らんな。(っていうか『あくせす数』ってなんだ?)」

真司「そ、そっか……知らないか……まぁ、メジャーってわけでもないし、なぁ……」

巧「もう次いいか? ……乾巧。歳は18。職業はクリーニング屋……だった」

真司「『だった』? 今はやってないってこと?」

巧「……あぁ」

音也「じゃあ今は職無しのプーってことか。いい若者が嘆かわしいことだ……」ヤレヤレ

巧「……何かそれ、あんたにだけは言われたくないな……」

音也「で、そこの全身紫で統一された斬新ファッションのお前は?」

チェイス「……名はチェイスだ。生まれて2年以上経過してることは確かだが、正確な年齢は不明だ」

巧「……急に何変な冗談言ってんだ?」

真司「ハハハ、どうみたって2年どころか20前後は行ってるでしょー!」

音也「変わったギャグセンスの持ち主だな。ネタそのものは別に面白くないが、無表情で唐突に会話に盛り込んでくるそのスタイルは見込みがある」

チェイス「……? 冗談ではないのだが」

巧「わかったわかった。言いたくないならそれでいいだろ」



真司「仕事は? 何してんの?」

チェイス「あぁ、俺は仮め――!」

チェイス(……仮面ライダーは俺の『使命』であって、職業ではないな……)

音也「かめ……? 亀でも売ってんのか?」

チェイス「いや……仕事は今のところ無い」

音也「なんだお前もか! おいおい、ちゃんと職探ししてんのか? 日本が今景気がいいのは一時的なもので、その内ガタッと落っこちるって話なんだぞ?」

音也「今の内にまともな仕事見つけないと後悔するぞ?」

巧「……? 今ってそんなに景気良かったか?」

真司「むしろあんまり良くないよなぁ」

音也「? 何言ってんだお前ら。世間はもう誰もかれもが金持ちになった気分で騒ぎまくってるだろ。テレビで経済学者が、今の経済を皮肉ってたぞ」

音也「えーと……なんつったけ……バルブ?」

真司「バ、バルブ?」

巧「……おい、あんた、まさかひょっとしてバブルの事言ってんのか?」

真司「は!? そ、そうなの!?」

音也「おぉ! そうだそうだ! バブルだバブル! ……で、なんで『バブル』って呼ばれてるんだったか……?」

真司「……マジ?」

巧「……あんたタイムスリップでもしてきたのか? 一体いつの話してんだよ」

音也「? なんのこっちゃ?」

チェイス「……乾」

巧「あ?」

チェイス「バブル、とは何だ? 直訳して『泡』だと認識しているが……」

巧「お前もかよ!」

チェイス「生憎、俺は人間の歴史についてはあまり詳しくないんだ」

真司「いや『人間の歴史』って、そんな世界規模の話じゃないぞ? あくまで日本内の事で……まぁ、今時の若者なら知らない人もいるかもだけど」



巧「あぁー、バブルってのはだな……」

チェイス「うむ」

巧「…………あんた、城戸……さん、だっけ?」

真司「え? な、何だよ急に?」

巧「説明してやってくれよ」

真司「え!? 何で俺!?」

巧「あんた記者なんだろ? 俺よりその手の事を説明するのが上手いんじゃねーかなと、思って」

真司「そ、そう? そうかな? へへへ」

音也「で、本当は?」

巧「面倒だからパス」

真司「おいっ!?」

チェイス「では城戸。よろしく頼む」ズイッ

真司「あぁ、完全に俺が説明する流れなのね……」

真司「ゴホン……バブルっていうのは、昔の日本の経済状況の事を指す言葉なんだよ」

真司「なんか、アメリカとの関係が原因らしいんだけど、とにかく、当時の日本人の皆が、『日本全体が儲かってる』って錯覚ちゃったんだよね」

真司「土地とか株がすっげー高騰し続けてたんだけど、ある時それが上がるどころか下がり始めちゃったらしいんだよね。まぁ良くわかんないけど」

真司「儲かりまくってると思ってたのに、いつの間にか自分の会社が倒産してたー、なんて人が続出したんだってさ」

真司「この株と土地の高騰と暴落は、本当に短い間のことだったんだよね。ほんの数年だったって編集長が言ってたよ」

真司「で、その短い期間であっという間に崩壊した経済を、作ってもすぐに消えてなくなる泡とかけて、『バブル』って呼ぶようになったんだよ」

チェイス「……なるほど。良く分かった。そんなことがあったのだな」

音也「ほーん……」

巧「……俺もよく知らねぇけどさぁ、かなりザックリと説明しただろ」

真司「君がやれって言ったんでしょうに!? 仕方ないだろ! 俺普段経済関係の取材なんてしたことないし、記事だって全然書いたことないんだから!」

音也「そんじゃいつも何の取材してたんだよ」

真司「んーー、火事の対策についてとか」

音也「ほぉ」

真司「金色のザリガニの事とかぁ」

音也「……ん?」

真司「髪の毛が生えたカエルとか!」

チェイス「……カエルに毛が生えるのか?」

真司「本当はそんなのいないぜ!? でもいたんだよ! 新種だよ新種!! いやー凄かったよなぁあれ……!」

真司「頭に箒みたいに毛がしっかり生えてたんだよ! 金色のザリガニも同じ人が見つけたんだけど、あれもビックリしたなぁー!」

真司「ちなみに俺ね! 昔は『ザリガニ捕りの真ちゃん』って呼ばれてて――――」



巧(……あぁ、段々わかってきた。この音也って方も大概だけど……城戸真司、こいつ……)

巧(アホだ)




真司「それでさ! 捕まえたザリガニを家に持って帰って、親に調理してもらうんだけど、これがまた美味いんだな~!」

チェイス「そんなに、美味いのか?」

真司「そりゃもう! 味噌汁にしてもいいし、そのまま焼いてもいいし! もう、最高! って感じ!」

チェイス「……しかし、ザリガニは今絶滅危惧種と聞くが?」

真司「そうなんだよ~……昔は沢山いたんだけどなぁ。最近じゃもう滅多に見ないよ! 人間が川とか自然を汚すからなー」

チェイス「そうか……それは残念だ……」


巧(そしてこのチェイスって奴も……こいつはこいつでなんつーか、かなり天然っぽいし……!)

巧(何でこんなどうでもいい話を興味津々に聴いてんだよ!)


音也「ザリガニかぁ……前に和食店で出てきたのを何種類か喰ったっけな」

巧(お前も話題に乗るのかよ……!?)

チェイス「……!」ガタッ

真司「マジで!? どうだった!?」

巧(食い付き半端ねぇな……)

音也「まぁ、それなりに美味かったぞ。と言っても、同じ甲殻類なら海老とか蟹の方が好きだけどな」

真司「まだそんなお店あったんだぁ! どこどこ!? どこの何て名前の店!?」

音也「さぁ? もう覚えてない。確か行ったのはその一回だったしな」

チェイス「…………」ストン

真司「なんだよ……期待させるなよ……」ズーン

巧(たかがザリガニで喜んだり落ち込んだり、忙しい奴らだな……)

巧(……放っとくいつまでもこの話になりそうだな……ったく、仕切ったりするのは慣れてねぇってのに……!)

巧「なぁ、いい加減本題に入ろうぜ。今話すべきなのは、俺たちが何でこんな所にいるのかってことだろ?」

真司「あっ! そうだった! ここは何なんだよ!? 何で俺、知らない家で寝てたんだ!?」

チェイス「今のところ、何者かが俺たちをこの家に連れてきたとしか、考えられんな」

真司「や、やばいなぁ……こんな所で油売ってたら、いくら編集長がいい人でも本当にクビにされかねないよ……!」

真司「…………あれ……?」

音也「? どうした?」

真司「……いや、なんか……忘れてるような気が……」

チェイス「忘れている……?」

真司「仕事クビになるとか、そんな話じゃなくて……もっと、本当に大事な――――」


真司「――――ぁ……」

チェイス「……?」

真司「…………」

巧「おい、どうした?」

真司「……あ、い、いや、なんでもないよ! うん、何でも、ない」

音也「…………」




巧「……とりあえず、ここに来る前、あんたら二人、何してた?」

真司「……それは……」

音也「俺か? フフッ、聞きたいか? 聞きたいか! そうだろうそうだろう! なら聞かせてやる……」

音也「俺と……俺の愛した女をめぐる……愛のための戦いの記憶を!!」シャラーン

巧「……なんでもいいからさっさと話してくれ」

音也「良しわかった!! あれは爽やかな晴天の日だった……」

巧「簡潔にな」

音也「俺はいつものように愛機のヴァイオリンを手に街を歩いてた……道行く女性とすれ違う度に、彼女達は俺を振り返り悟る……」

巧「おい、簡潔に――」

音也「自分の小指と俺の小指が……赤い糸で結ばれていると……!」

巧「聞けよ!」

音也「しかし、運命とは時に唐突に訪れ! そして残酷で、美しい……! 俺はあの教会の庭で、出会ってしまった……」

巧「聞けって!」

音也「小指だけじゃない……両手両足すべての指が赤い糸で結ばれた――――『運命の女』とッ!!」スチャ




ヴァイオリン『~♪♪~♪~~♪!! ピンッ!』←(例の曲)




巧「……ッ……っ……!」イライラ

真司(なんか始まった……)

音也「まるで雷に打たれたかのような衝撃だった……一瞬時が静止した! いや、一瞬ではあったが永遠にも感じられる瞬間だった!」

音也「黒い服が良く似合う、絹のような美しい黒髪の……!」

音也「…………どこか、痛みと悲しみを感じさせる、不思議な眼をした女だった……」

チェイス(……今一瞬……遠い目をしたな)

音也「…………で、そいつの事をひどい扱いしてた腐れ外道元旦那をこの俺がぶちのめして俺と女はめでたく結ばれるも俺は息絶えました! おーしまいっ!」

真司「……ってうおぉーい!? なんか一番重要そうなところがすっごいザックリと片付けられてるんですけど!? さっきの俺のバブル説明の比じゃない!!」

巧「お前真面目に説明する気無ぇだろ!!」

音也「何を言うかこのたれ目小僧め。お前が簡潔に説明しろというからしてやったというのに、注文の多い奴だ」

巧「たれ目小僧って何なんだよ……! っていうか聞こえてたんじゃねーか俺の要求!」



チェイス「……紅、少しいいか」

音也「ん? どうした、やっぱり俺のノンフィクション大恋愛門物語が聞きたいのか?」

チェイス「それも非常に心惹かれるが、お前が最後に言った事で、気になることがある」

音也「腐れ外道元旦那の事か? あぁ、あいつは男の風上にも置けんクソ野――」

チェイス「その後の方だ」

音也「む、この俺がぶちのめして、の部分か。確かに、あの男はクソ野郎ではあったが力は本物だった。だから俺も命を削って力を得ることで――」

チェイス「もう少し後だ」

音也「フッ、せっかちな奴め。いきなりエピローグが知りたいとはな。そう、クソ野郎をぶっ飛ばし、俺は女と結ばれた。短い時ではあったが、満ち足りた――」

チェイス「満ち足りた時間だったが……お前は息絶えた。……そうなんだな?」

音也「…………お前も、もう分かったみたいだな」

チェイス「…………信じられないことではあるが、そうと考えれば、説明がつく」

巧「おい、何言ってんだ? 息絶えたって……なんの話を……」

真司「あー! なんか腹減ってきたなぁ! なぁ、皆でなんか食べない!?」

巧「はぁ?」

真司「幸い食材は沢山あるみたいだしさ! 俺、なんか作るよ!」ガタッ

巧「何急に飯の話なんてしてんだよ……! それよりこいつ等の言ってる事――――」

真司「冷蔵庫冷蔵庫……うわ! 本当にぎっしりだな! 色々あるけどどうしようかなー」

チェイス「…………城戸」

真司「目移りしちゃうな~! あ! 餃子の皮あるじゃん! っしゃあ! ひき肉もあるからこれ行けるぞぉ!」

音也「おい真司…………止せ」

真司「えーなんでだよ! 俺の餃子が食いたくないってのかよ!」ガサゴソ

音也「お前も分かってる筈だ。自分に何が起こっているのか、ここがどういう場所なのか」

巧「……!! どういう意味だ!? あんたら、ここが何なのか見当ついてるのか!?」

真司「……そりゃあ、やっぱ誘拐でしょ! あ、一般人相手にしたドッキリって線もあるかな!」ハハハ



チェイス「……城戸、気持ちわかる……だが、今俺たちの身に起こっている事は、紛れもない現実だ……!」

真司「…………めろよ……」

音也「目を背けるな。……今を受け入れろ」

巧「おい……おい!! どういうことだよ!! 何を話してんだよ!!」

真司「………やめろよ……」

チェイス「……乾、お前は、ここへ来る前、土手で寝ていたと言っていたな」

巧「それが何だよ!? 今の話と何の関係が……」

チェイス「本当に、それだけだったのか?」

巧「何、を……」

チェイス「……本当は……命の危機に陥っていたのではないのか?」

巧「ッ!!!」

真司「……やめろよぉ……!!」ワナワナ

巧「何で、そんな事が……分かるんだよ……!」

チェイス「……俺は、仲間達と共に、世界を破滅させようとする強大な悪と戦った」

巧「……!?」

音也「…………」

チェイス「だが俺は、敵に致命傷を受けた。助かる見込みはなかった」

チェイス「俺は捨て身の策で、自分もろ共敵を倒そうと、自爆した」

チェイス「……そして目が覚めたら、ここに居た」

巧「…………何だよ、それ……それじゃあまるで……!!」

チェイス「そうだ。ここは終点なのだろう……少なくとも、今ここに居る俺たちにとっては」

音也「……つまり俺たちは――――」










真司「 や め ろ っ て 言 っ て る だ ろ !!!」



巧「ッ!!」



チェイス「……城戸……」

真司「やめようよ!! こんな話!! してどーするんだよ!? 俺たちここに居るじゃんか!!」

真司「こうして話してるだろ!? 息もしてるし心臓だって動いてる!!」

真司「生きてるだろ!! 生きてるんだよ!! そんなわけないんだ!! 俺だけ……俺だけ先にこんな所でっ!!」

真司「あいつは、まだ戦ってるかもしれないのに……!! たった、一人で……!!」

チェイス「…………お前にも、お前の事情が、戦いが、守りたい何かがあったのだろう」

チェイス「だが、終わってしまった俺たちには、もう、どうすることもできない……」

チェイス「後は、生きている人間たちの役目だ……!」

真司「うるさい!! 終わってなんかない!! 俺だけ勝手に終われないんだよォ!!」ガタァンッ!!

真司「……そうだよ、こんなことしてる場合じゃない……! 早く、戻らなきゃ……蓮が……蓮が危ないんだ……!!」ズンズン

音也「いい加減にしやがれ!! お前が必死に見ないふりをすれば、この事実が変わるのか!!」

音也「現実を見ろ!! ここは俺たちが元居た場所とは、『決定的に違う別の何か』なんだよ!!」

音也「もう俺たちは……あそこには帰れない……!!」

真司「違う……! 違う……!! そんな事、俺は……!!」

音也「俺たちは……もう――――」











音也「――――死んでるんだよ……!!」





真司「…………ぅ、ぅううあああぁぁぁあぁぁああッッ!!!」

真司「くそ!! くそ!! くそぉ!! くそおぉおぉぉ!!!」ガンッガンッガンッ!!

真司「くそ!! くそ……!! くそっ……! くそぉ……っ」ガンッガン

真司「ぐ、うぅ……く、そぉぉぉ……」ズル…ズル…

真司「…………蓮っ……ごめん……!! ご、めんっ……!!」ポロポロ…




巧「……何なんだよ……俺たちが……本当に、死んでるなら……一体……」

巧「どこだよ、ここ……」

チェイス「………………」







チェイス「あの世、ではないのか」









ここまでで書き溜めが尽きているのも全部乾巧って奴の仕業なんだ。

チェイスが食事できること前提で話が進んでますが、まぁ、食べれた方が面白いかなと思って結局食べれる事に。
これも某飯テロSSって奴の仕業なんだ。

基本このSSは、作中で死亡した仮面ライダーがあの世(?)でグダグダーっと生活するだけの物です。
笑い有り涙有り、シリアス……時々ある、かも。変身? あるかなぁ。バトル? 書けるかなぁ。
色々と未定の見切り発車。


舞台となるこの家、というか世界にはまだまだ死人が増えます。
ただし最後の最後まで悪党として死んだライダーは来ません。多分。
浅倉とか蛮野とか。後キャラ描写の少ない劇場ライダー。サイガとか。

登場するキャラに偏りがあるかも。

出せるかどうか不明ですが、こいつも死人ライダーじゃね? って奴が居たら書き込んでみて下さい。忘れてるかもしれないので。
出せるかどうか不明ですが。


更新は不定期です。

後、>>1はゴースト未視聴です。最近やっとドライブを見終わりました。
ゴースト見てない理由は、【仮面ライダー】のキーワードで自動録画してたはずが1話から10話位まとめて消し飛んでたので。
ポンコツブルーレイ絶ってぇ許さねぇ!!

つか真司は最終回で死が無かったことになったんだけど

逆だ、含むなら、だわ

あとチェイスは普通に飲み物飲んでたし同じロイミュードのハート様は食事してたからたぶん食えるだろ

>>29
最終回のは由依が鏡の由依に命を貰わなかった本来の世界の話だから、神崎がループさせてきた世界とは違うんじゃなかったっけ

うろ覚えだけど


どうもです。8時になったら投下します。


今回は初期メンバーのチェイス、巧、真司、音也による、互いの身の上話会って感じです。

新キャラはまだ来ないです。ついでに言うと次回もこの4人だけかも。


>>29
>>40さんの言う通り、最終回のすべてが無かった事になった世界と、実際にライダーが全滅した世界は別扱いという解釈で書いてます。

>>39
そういえば最初期にそんな描写あったけ……何かめっちゃお菓子食べてるロイミュードもいましたね。
すっかり忘れてたや。




◇20分後……◇



チェイス「…………落ち着いたか?」

真司「…………まだ、呑み込み、きれないけど……」

真司「………………理解は、してる……」

チェイス「…………そうか」ポンポン

真司「っ……何?」

チェイス「……落ち込んでいる人間を慰める時は、背中を軽く叩いてやるのが、人間のルールだと認識している」

チェイス「……間違っていたか?」

真司「……ハハ、まぁ、必ずしもそうする場面ばっかじゃないと思うけど……」

真司「今は……嬉しいかな……。……ありがとう」

チェイス「……どういうたしまて」

音也「…………」

巧(……一瞬笑ったけど、本調子には程遠いだろうな……)

巧(……さっきまでのバカみたいな明るさが嘘みたいだ……まぁ、当たり前か……)

巧(本当にひどい顔してるぜ……死んでるみたいなツラだ)

巧(…………死んでる人間が、死んでるみたいなツラ、か……)

巧「……全っ然笑えねぇな……」ギュッ

音也「……で、お前はどうなんだ、巧。受け入れられるか? この現状を」

巧「…………られる、られないの問題じゃないだろ。……あんた達の言ってる事が本当なら、色んな疑問が解消するしな」

巧「……俺は死んだ。もう覆りようがない、確かな事実なんだ。受け入れるさ」

音也「……そうかい……しっかし、18歳だったか? 随分若い歳で……災難だったな」

巧「お互い様さ。あんただって、まだ23だろ? ……やり残した事とか、無かったのかよ? ……夢、とか」

音也「……そうだな。まぁ、自分の息子が成長していく様を間近で見れないってのは、心残りではあるが……成長した姿は見れたからな。良しとするさ」

巧「成長した姿は見れた……? 逆だろそれ。ってか子供いんのかよ……」

音也「あぁ、いるとも! 俺に似ず、引っ込み思案で、遊び心を良く分かってない奴だったが……」

音也「……音楽を愛する気持ちは……俺と、そっくりそのまま……同じだった……」

巧「…………」



音也「俺が音楽の天才……ってのはまぁ、自他ともに認める事実だが、理解されてばかりってわけじゃ無かった」

音也「どっちかっつーと、理解されない方が多かったな。最初の頃は特に……」

真司「…………」

巧「……? なんだよ、急に……」

音也「まぁ聞けよ。……俺はよく恋をした。女を口説いて、女と遊んで……沢山の女と恋をしてきた」

音也「だがどういうわけか、どれも長続きしなくってなぁ……俺が冷めちまうか、他の女に行っちまうか、女が俺に嫌気がさすか……」ポリポリ

音也「いつもそのどれかだった……女相手でこれだ。男が相手となれば、更に面倒くさい事が起こる」

音也「この性格だからな。男には鬱陶しく、目障りに映るんだろう。何かとしょっちゅう喧嘩を売られた」

音也「んで、俺も『俺に盾突く男が嫌い』だったから、売られた喧嘩はいつも買ってた。殴る殴られるの大乱闘さ」

チェイス「…………」

音也「女を求めて、食って飲んで遊んで、音楽を嗜み、男と喧嘩して、寝て起きて……ただその毎日だった」

音也「俺はそんな日々に満足していた。己の欲望に忠実に生きる……これほどの幸せはない! ってな」

音也「……でも、なーにかが違うって、俺の中の【音】が叫んでた」

音也「……ひょっとすると俺は、本当にその女達に恋をしていたわけじゃ、なかったのかもしれない……」

音也「ただ、『俺の【音楽】』を……誰かに、知ってほしかった」

チェイス「……音楽を……知ってほしい?」

音也「言ったろ。俺は天才だが、理解されてばかりじゃなかった。……だから、理解者が欲しかったんだろうよ」

音也「死んじまった今だからこそ思うが……あの時までの俺は、きっと孤独だったんだなー」

音也「……そんな時……一人の女と出会った。そいつは、今までの女とどこか違った」

音也「凛とした態度と、それと反対にどこか脆そうな、危いものを感じる瞳と……」

音也「決意と、強さと、誇りに満ち溢れた……音楽を奏でてる女だった……」

チェイス「……その女性も、音楽に携わっていたのか?」

音也「いや、違う。そうじゃない。俺がここで言ってる【音楽】ってのは、その人間が、知らず知らずの内に、心で奏でている音のことだ」

巧「……心で、奏でる音……」

音也「人は皆、音楽を奏でている……それは、自分の仕事だったり、夢だったり、或いは恋だったり。その人それぞれで、本当に色々だ」

音也「それらは皆、仕事という名の音楽だ。夢という名の……恋という名の音楽だ。人間の芸術だ……」

音也「楽し気な音楽を奏でている奴もいれば、喜びに溢れた音楽、激しい音楽、悲しい音楽……中には音楽とも呼べない雑音を鳴らしてる奴もいる」


真司(…………心の音楽……か。俺は……どんな音を、奏でてたのかな……? 奏でることが、できてたかな……)



音也「話がそれたが……そういう意味で、聞き惚れる音楽を奏でる女と出会った」

音也「接していく内に、その心の美しさが、俺の胸に染み込んでいった……おそらくあれが、本当の意味での、最初の恋だった」

音也「そいつを手に入れようと躍起になっていたら、他の色んな奴に出会った。例によって、俺に盾突く男とも出会った」

音也「だが、喧嘩をして終わりには、ならなかった。気付けば俺は、その男をダチみたいに思ってた。友情っていうのを感じたのも、あれが最初かもなぁ」

音也「俺はその女と出会って、いつの間にか孤独じゃなくなってたのさ」

チェイス「……その女性が、先ほど言っていた、お前の運命の女、ということか」

音也「………………」フルフル

巧「……違うのか?」

音也「……残念ながらなー。最初は、運命の女だと信じて疑わなかった。あいつも俺の事を、そんな風に思ってくれていた」

音也「だがある日、俺は出会っちまった。本当に運命を感じる、別の女にな」

音也「その女もまた、綺麗な音を奏でていた……だが、同時に悲しい音でもあった」

真司「……その人の、どこがそんなに良かったんだ……?」

音也「…………俺の音楽を、理解してくれた」

巧「! …………」

音也「初めてだった。今まで誰も理解したことはない、俺の音楽に込めた思いを、その女はあっさりと指摘してみせた……」

音也「気持ちが抑えられないくらい高揚するのが分かった。俺はもう、その女に心を奪われてた」

チェイス「最初の女性は、違ったのか?」

音也「……あいつも、俺の音楽を愛してくれてはいた……」

音也「だが、愛してはいても……本当の意味で、『理解』はしていなかった。その事に、運命の女と出会って、気付いてしまった……」

チェイス「…………だから、後から現れたその女性の方を、選んだのか」

音也「……あぁ」

チェイス「……最初の女性には、何の非も無いように聞こえるが」

音也「……そうだな」

チェイス「……既に愛を誓った相手を置き去りにして、別の相手を選んだというのか」

巧「ちょ、おま、何言ってんだよ……」

チェイス「…………すまない、紅。忘れてくれ」



巧(……何だ……? 無表情は無表情だけど……まさかこいつ……)

巧(微妙に……怒ってる?)




音也「構わんさ。お前の言う通りだからな……あいつからしてみれば、自分じゃどうしようもない理由で捨てられたようなもんだ……」

音也「でもな、愛ってのは理屈じゃねぇんだ……一度生まれた感情は……消そうと思って消せるもんじゃない……」

音也「別の女に惚れてるのに、あいつと共にいることなんて、許されない。それこそあいつを、本当に傷つけることになっちまう」

チェイス「……最初の女性のことは、愛せなくなったのか?」

音也「それは違う。……断じてな。あいつに対しての愛が消えたわけじゃない。昔も今も、大切な女だ……これからも、ずっとな」

巧「……でもよ、そうは言っても、その人は、その……一人になっちまった訳だろ? ……悲しませたり恨まれるのが、怖いとか、思わなったのか?」

音也「そりゃ当然思ったさ。最初にそういう話になった時、あいつ……ひどい顔して、部屋から飛び出して行っちまったっけ……」

音也「あいつを悲しませたのは……どうしようもない事実だ」

真司「…………」

音也「……なのにな……なのにだぞ?」

チェイス「……?」

音也「…………あいつ、俺を恨まなかったんだよ」

チェイス「……! 何故だ?」

音也「一言で言えば……あいつが、それだけ強い女だったってことだな。……最後に話したとき、あいつの作るオムライスのレシピを訊いたんだが……」

音也「あいつ、……『最後の隠し味に愛情を入れるんだ』なんて言ってやがった」

音也「泣いてないフリはしてが……まっすぐ前を向いているのが分かった……」

音也「その時、改めて思ったのさ……こいつと出会えて、こいつを本気で愛せて、良かった
ってな」

チェイス「………………」



音也「…………長くなったが、要するに俺は、『悔いはない』って事が言いたいのさ」

音也「色んな事があったが……心の底から愛せる女に、二人も出会えて……友に恵まれ……未来に生まれる息子に出会うことまでできた」

音也「俺みたいな風来坊には、勿体ない位に……充実した、23年間だった……これ以上望むものはない……」フフッ

巧「…………ハッ、結局、ただの惚気話かよ」

音也「何だお前、今頃気付いたのか?」

巧「……こいつ……! ったく、ただ悔いなく死ねたって事を伝えるのにどんだけ長ったらしい浮気自慢垂れ流してんだか……」

音也「あぁん!? 浮気じゃねぇし!! ちゃんとケジメはつけたのっ!! ……ほとんど、向こうから切り出してくれたもんではある、が……」

巧「ケッ、どっちにしろ自慢には変わりないだろ。なぁおい、お前からも何か言って――――」




チェイス「…………」ダバァー




巧「!!?」

巧(な……!? 泣いてる……!? ガチ泣きしてるぞ! 無表情で!)

チェイス「すまない、紅……お前を誤解するところだった。お前は、純粋にその二人を……愛していたのだな……」ボロボロ

音也「お、おう…………で、何でお前、そんなに泣いてらっしゃるので……?」

チェイス「お前の生き様に心撃たれた……俺の『愛』に対する価値観は、まだ未熟だったということも分かった……」ボロボロ

チェイス「愛の形は……音楽と同じく、人それぞれなのだな……」ズビー

音也「そ、そうか……フハハハハ! もっと言えもっと言え! 俺を称えるがいいぞハッハッハッハ!!」

チェイス「それに何より……その最初の女性の気持ちが、痛いほどに理解できた……」ズズッ

音也「ん……? ってことはなんだ、お前失恋経験があんのか! そうかそうか! ならこの俺に話してみろ、愚痴でもなんでも聞いてやるぞ!」

巧「あんたはただ面白そうだから聞きたいだけだろ! おい、お前も少しは涙ぬぐうとかの動作しろよ!? 鼻水垂れてんじゃねーか、ほらティッシュ! 」

チェイス「すまない……」ヂーン!



真司「…………なんか、いいなぁ……」

音也「ん?」

巧「…………」

真司「音也が……羨ましいよ。全然違うよ……俺と……」

真司「俺は、悔いがない……なんて、とても言えないや……」

真司「悔いだらけだよ……何も成し遂げられなかったし……やり残したこともある……置いてきたモノだって、沢山だ……」

真司「……心配な人達が……大勢いるのにっ……!」

音也「…………そうかい」

巧(……城戸の奴……なんかさっきから、自分が死んだこと自体より……それによって、『自分以外の何かが守れなくなってしまう』事を気にしてる、のか……?)

巧(……自分の事はいつも二の次ってタイプか……確かにこの紅音也とは、正反対だな……)

真司「何でだろうな……? 同じ歳なのに、音也が……凄く、強いっていうか、逞しく見えるよ……」

音也「…………」

真司「……音也は……やるべきことをちゃんとやって、死ねたんだよな……」

音也「……まぁ、そうだな」

真司「……じゃあさ、自分がやるって決めた事を……全然成せないまま死んだ奴は……どうすればいいのかな……?」

チェイス「……城戸……」

音也「…………わからん。俺の口からは、何も言えん」

真司「……ハハ、そっか。そりゃそうだよな……」

巧「おい紅……!」

音也「俺とお前とじゃ、経緯も立場も、今の胸の内の状況も違う。俺の言葉は響かんだろう」

巧「っ…………」

音也「ただ俺は、考えても仕方ないような事は、考えないように生きていた」

チェイス「…………」



音也「俺たちは死んだ。もう、生きている連中には会えないし、何もしてやれる事は無い」

音也「……だから俺はせめて、生きている奴らが、思い描いているだろう過ごし方をしようと思う」

真司「……どういう、ことだよ……?」

音也「生きている人間が、死んだ人間に望むことは何だと思う?」

真司「え……?」

音也「天国での平穏な暮らしさ。生きてる人間達にとっちゃ、俺たちは、もう傍にいない、永遠に会えない遠い人だ」

音也「だからせめて、あの世では笑って過ごして、たまに自分たちの様子を空から眺めている……なんていう風に、想像したくなるもんだ」

音也「間違っても、悲しみに震えている死後を想像したがりはしない。だろ?」

巧(…………真理……啓太郎……海堂……三原……)

音也「だーかーらっ! 俺様はここで自由気ままに食って飲んで遊んで暮らすと決めているのだァーハッハッハ!!」

音也「ん? あんまり生きてた頃と変わらんな! はははは!」

チェイス「……なるほど。確かに、その通りかもしれんな……」

真司「…………やっぱり、音也は強いよ……うん……」

真司「俺なんかじゃなくて……音也みたいな奴がライダーになってれば……戦いも、止められたかもなぁ……」

チェイス「! ライダー……だと?」

真司「……あっ……」

巧「『戦い』……って、何のことだよ」

真司「い、いや、あのっ別になんでも――――」

音也「おいおいおい真司くぅ~ん? 俺たちは死人同士だ、死人の仲間だっ! 恐らく俺たちはこれから先もここでずーっと暮らす事になるんだぞー?」

音也「隠し事は無しだ! つらい記憶があるなら今の内に吐き出しとけぇ!」セナカバシンッ

真司「痛い!?」

チェイス「……城戸、俺も紅に賛成だ」

真司「! ……チェイス君……」

チェイス「お前が何故、自分の過去を秘密にしたがるのかはわからないが……それは、今のお前にとって、誰かに知られては、不都合がある事か?」

真司「……それは、何というか……」

チェイス「そうであるならば、俺は無理に尋ねる気はない。人間には誰にでも、知られたくないものがあると聞く」

チェイス「だが、だれかに話をするだけでも、心が軽くなるという事も、人間にはあると聞く」

チェイス「それに……紅が言うように、俺たちは、死んだ者同士の仲間だ。叶う事なら……俺はお前とも、紅とも乾とも……」

チェイス「…………ダチに、なりたいと、思っている」

真司「……!」

音也「ほう」ニヤリ

巧「…………」

チェイス「ダチになる相手の事は、ちゃんと、知っておきたい。それがどんな事であろうとだ」

チェイス「……お前が背負って来たものを……俺にも、分けてはくれないか?」

真司「…………っ……くッ……ッ!」ゴシゴシ

音也「あーーあーー! 泣ーかしたー泣ーかしたー! せーんせーにーゆーてやろー!」

巧「あんたはちょっと黙ってろ」

チェイス「……すまない、泣くほど嫌らなば、この話は……」

真司「ち、違う違うっ……! ただ、ちょっと、嬉しくて……! ずっと、張り詰めた思いで戦ってたから……!」グスッ



チェイス「……話してくれるのか?」

真司「ッ……あぁ、いいよ。ただ、とても信じられないだろうけど……」

巧「……何が、あったんだよ?」

真司「…………皆さ、どんな願いでも一つだけ、叶える事ができるとしたら、何を願う……?」

巧「どんな願いでも? ……急に言われてもな」

音也「そうだなぁ、俺ならやっぱり、絶世の美女を1000人ぐらい呼んで俺の演奏会を開くことだな! 勿論、俺を除く男子禁制な!」

巧「勿論の意味が分からないんだが……」

チェイス「……俺は……仲間達の幸せな日々だ」

音也「まーたそんなお前ー、優等生すぎるぞー? もっと自分の欲求に従えぇい!」

チェイス「? 従っているつもりだぞ?」

巧「無欲だなお前……」

チェイス(……特に、剛には幸福に生きてほしい……今まで、ずっと辛かった筈だからな……)

チェイス(全てを忘れて、霧子や進之介達と静かに過ごしてくれていれば……十分なのだが)

真司「そっか……みんな割と、素朴な願いだな」ハハ

真司「……じゃあさ、もし叶えたい願いが、そんなレベルのものじゃなくて……本っ当に、『何を犠牲にしてでも』叶えたい願いだったら?」

巧「あ……?」

チェイス「……どういう意味だ?」

真司「…………例えば、意識不明の恋人を助けたいとか、自分の不治の病を治したいとか……さ」

音也「そりゃあまぁ、叶えられるなら、叶えたいんじゃないか?」








真司「…………それが、殺し合いの末に手に入る権利だったとしても?」



チェイス・巧・音也「「「……!?」」」





真司「今から話すのは……一人の願いを叶えるための……」




真司「大勢の人間の、願いと命を踏み躙った……『仮面ライダー』と呼ばれる人間達の……最悪の戦いの話だ……」




◇1時間後……◇





巧「…………なんなん、だよ……それ……」

チェイス「………………」

音也「……っ……!!」ギュゥ



真司「…………で、そうして俺は死んで、蓮は……あの後どうしたのかは分からないけど……」

真司「多分、戦いに行ったんだと、思う……。……これで、話はおしまい」

真司「……やっぱり、信じられないでしょ?」

巧「…………あんたの、話してる時の顔が演技だとするならな……もしそうなら、俳優になれるぜ城戸さん……」

音也「信じる他無いのは、分かってる……お前がこの状況で嘘をついてる可能性は、限りなく低い……」

音也「だがっ……! いっそ嘘であってほしいぜ、こんな……!! 信じたくもねぇッ、こんなイカれた話っ!!」

音也「狂気の沙汰にも程があるだろうが……!!」グググ…

真司「……そうだよな……そう思うよなぁ。だから、俺も必死になって、誰も犠牲にならないでいい方法を探しながら……」

真司「ずっと、戦ってた……モンスターと戦って、ライダーと戦って……友達と、戦って……」

真司「……でも……ダメだった。自分自身の考えに、答え……みたいなものは出せたけど……結局、死んだら……終わりだもんな……」



――――ダアァンッ!!!



真司「ッ!!」

音也「……!」

巧「……チェイス……」



チェイス「…………何だと、いうのだ……!」ブルブル

チェイス「何故だ……!? 何故そいつ等は……城戸の言葉に耳を貸さない……!?」

チェイス「神崎四朗や、浅倉猛という男は元より……! どんな理由であれ、自分の願いのために他人の命を犠牲にするなど……人間のルールに反するッ!!」

チェイス「自分達のやっている事に、少しも疑問を抱かなかったのか……!?」



真司「…………疑問を抱くような良心を、最初から持ち合わせてない奴もいれば……」

真司「疑問を抱いてるような余裕が無かった奴もいるし……疑問を抱いても、見ないフリをするしかなかった奴もいたんだよ……」

チェイス「しかし! そもそも神崎四朗の目的が妹に命を与えることなら! ライダーバトルに参加している人間が、ただの使い捨ての駒だという事は明白だ!!」

チェイス「その事実を知らないライダー達にしてもッ! 願いを叶えてくれる保障など無い事になぜ気づかないのだ!?」

巧「おいチェイス! 落ち着けよ……!」

真司「……気付てる奴だっていたさ。気付いてないまま戦ってる奴の方が、少ないかもしれない」

真司「でも、それでも戦うことしかできないから、皆、戦ってたんだ……」

真司「手塚が言ってたよ……『神崎士郎の言葉に賭けるしかない奴だけが、ライダーになれる』……って」

チェイス「……っ……!!」




チェイス(何故……何故だ……!? 『ライダー』という言葉を聞いて……もしや城戸も、進之介や剛のように……)

チェイス(誰かの幸せのために戦う、『仮面ライダー』を知っているのかと思えば……!!)

チェイス(これは何だ!? こんなにも優しさと正義に溢れた男がっ!! どうして、こんなに重く冷たい業を背負わされている!?)

チェイス(……同じ名前を冠する……戦う戦士だというのにっ……!!)

チェイス(経緯が違うだけで……これほどまでに……違ってしまうものなのか……!?)ギリィ…





真司「皆が皆……自分の願いを叶えるために、戦ってた……だけど、そんな中に、何の願いも抱いてない、俺が割り込んだ」

真司「人を守りたかった……誰も死なせたくなかった……」

真司「……でも、中身の無い俺の言葉が、皆の心に届くわけがなくて……」

真司「編集長に諭されて……蓮と一緒にモンスターと戦って……小さな女の子一人を助けて……やっと、答えらしいものが出たけど……」

真司「何もかも……手遅れだったんだ……」

音也「…………ッ……」

真司「……俺、結局何ができたのかな……? 俺が戦ってた事って、なんか……意味あったのかな……!」

真司「俺があの戦いに居たことは……いい事じゃなかったんじゃないかって……!!」

巧「!! 城戸さん、それは……!!」

真司「だって俺……! 死なせないって誓った奴ら……皆、死んじゃっ、てっ……!!」ジワ…

真司「手塚に、だって! 逆に、助けてっ、貰って!!」ポタ…

真司「優衣ちゃんだって、目の前で、消えちゃったし……!!」ポタポタ

真司「俺、ほんとバカだからさ!! 俺じゃない、誰かならっ! もっと、うまくやれたんじゃって……!!」ポロポロ

真司「もっと沢山、守れたんじゃないかって!!」ポロポロ

真司「…………今じゃ、そんな事ばっかりが……頭ん中をぐるぐるぐるぐる……!! ずっと……!!」ボロボロ…





チェイス「  違  う  ッ  !!!!」




真司「!!」ビクッ




チェイス「お前がその戦いに居たことが、良くないことだった……!? そんなはずはない!!」

チェイス「お前が救ってきた命は、沢山あったはずだ!! 最後に助けた少女は、お前が居なかったらどうなっていた!?」

真司「っ…………」

チェイス「お前ではなく、他の誰かなら!? お前のような強い意志と優しさを持った人間が、そうそう居るものか!!」

チェイス「お前だったからだ!! 他の誰でもない……城戸真司という男だからこそ、守れた物があったのではないのか!?」

真司「……だけどっ……!」

音也「…………」

チェイス「秋山蓮と言う男は! お前が居たからこそ、他のライダーのように、手を血に染めずに済んだのではないのか!!」

真司「……でもその代わりに……蓮の恋人は助けられなかったかもしれない……!」

音也「なら、お前が止めずに、誰かを殺し続けて、願いとやらに近づいていくそいつを、黙って見てれば良かったってのか?」

真司「……音也……それ、は……」

チェイス「…………」

音也「もしそうなっていたら……そいつはきっと、死んでいただろうな」

音也「……心が、な」

真司「……心、が……?」

音也「確かに、お前は沢山の命が消えていくのを見たかもしれん……だが、本当にそれだけだったか?」

音也「お前の言葉と行動に、微塵も反応しない奴らばかりだったのか?」

真司「それは……」

音也「お前の友だった蓮は? 子供の医療費を肩代わりするような北岡は?」

音也「……血も涙もない人間しか居なかったか?」

真司「……違、う……」

音也「だろうな。……そいつらは、お前が居たから、願いは叶えられなかったのかもしれんが……」

音也「お前が居たから……心まで死なずに、済んだんじゃないのか?」



真司「…………そう、なのかな……俺は……守れて、いたのかな……?」

巧「……十分だと思うぜ。そんな異常な環境で、人の心を変えるなんて……俺だったら、できない……」

巧「変えようと努力しようと、思ったかどうかすら……微妙だ……」

巧「正直に言って、尊敬するよ……あんたみたいに、最初から最後まで、誰も傷つけない戦いを選び続ける人間なんて……」

巧「この世に一握りしかいないだろうに……」

巧「……俺から見れば、あんたはヒーローと変わらねぇよ……」

真司「っ!! それは違う! 俺はヒーローなんかじゃない……あの戦いに居た人間に、正義なんて無い……!」

巧「っ……! 何でだよ……!! 何でそんな風に考えちまうんだよ!! あんたが、あんたの生き方が、正義じゃないってんなら……!!」

巧「……ッ……俺はいったい…………どうなっちまうんだよっ……」

チェイス「乾……?」

巧「…………あんたが認めなくったって……他の誰もが『違う』と言ったって……!」

巧「俺はあんたを…………!」





巧「正義の味方だと……思うよ……!!」




真司「!!! …………ぅ、っぐ、う……!」

チェイス「……お前はただ、自分の信じる『人間のルール』に、必死に従って生きた」

チェイス「俺がこう言っても、お前は否定するかもしれんが……」

チェイス「お前は本当に良く……頑張った……!」

音也「……安心しろ。ここに居る3人とも、お前の行いを否定する奴はいない……いい加減によ、許してやっていいんじゃないか?」

音也「……お前自身の事を」

真司「…………ぐっ……ぇぐ……ひっぐ……! あ……とう……!!」ボロボロ

真司「……あり、がとうッ……!!」ボロボロ

音也「…………」ポンポン

巧「…………」

チェイス「…………どういたしまて、だ……」





◇10分後……◇



音也「……さて、巧。お前は何があった」

巧「えっ……いや、俺は、別に話すことは……」

チェイス「お前は今、城戸が正義でないなら、自分はどうなるのか……と言っていたな」

巧「……覚えて無くていいことを……」

チェイス「お前の事も、聞かせてくれないか。……どうして、命を落とすことになったのか」

巧「………………」

巧(…………とんでもねぇ話聞かされた後だしな……俺の話が信じられないってことは、無いだろうし……)

巧(……この流れで俺だけ話さないってのもな……)

巧(これから一緒に過ごしてく連中なら……確かに、自分の事を隠したままにするのは……無理があるし、辛いよな……)

巧(……話して俺への態度が変わったら……まぁ、その時はその時だな。それが普通だろうし……)

巧「……城戸さんの話と同じくらい、信じられないような話だぞ?」

音也「今更驚くことなんてそうそう無い。いいから話してみろ」

真司「……巧君も、俺の話っ、聞いてくれたから……次は俺が、聞き手に、なりたい……な」グシグシ

チェイス「…………」コクリ

巧「……わかった。……ただ、最初に言わせてくれ」





巧「……俺を嫌いになる準備、しとけよ」

真司「え……」

チェイス・音也「「…………」」



巧「……何から話せばいいんもんかな……」

巧「………………俺はな、ガキの頃に……一回死んでるんだよ」

音也「一回、死んでるだと……?」

巧「……火事が起きてな。でも俺は生き返った……人間を超えた……進化した生命体として」

チェイス「! ……乾、それはひょっとして、最初にお前が俺に訊いてきた……」

巧「……あぁ。その生き物が生まれる条件は……死んだ人間だ」

巧「本来の、寿命を迎える以外の、何かの理由……事故とか、病気とか。そういう事で死んだ人間が、低確率で蘇生して、覚醒する……」

巧「……それが……『オルフェノク』だ」

真司「……オル……フェノク?」

巧「この話は……そのオルフェノクに覚醒した人間達と……」

巧「そのことで、人生を狂わされて……それでも必死に生き抜いた皆……俺の仲間達の話で……」

巧「…………俺の……罪の、記憶だ……」




◇1時間後……◇




巧「…………そうして、木場は死んだ。王は倒したけど……失ったものは……多すぎた」

真司「……っ……」

音也「…………」

チェイス「……それでお前は、どうなった……?」

巧「…………スマートブレインの人体実験の影響もあったし……赤いファイズの形態になるのも、どうもリスクがあったみたいだったからな」

巧「その上、元々オルフェノクに覚醒した時期自体、大分昔だ……寿命なんて、ほんの数日分しか残ってなかった……」

巧「……王を倒して、何日かして、真理と啓太郎と俺で、土手に行ったんだ……啓太郎がさ、晴れてるから日向ぼっこしに行こうよ、なんて言って……」

巧「3人で川の字になって、太陽を浴びてたんだが……手を日にかざしたら、灰が零れ落ちた……」

音也「……オルフェノクの、死の予兆か……」

巧「……もう限界だって分かった…………でも、この灰まみれの手を透けたあの太陽は……本当に綺麗で、暖かくてさ」

巧「隣にいる真理と啓太郎が、毎日平和に、これを見られる世界を守れたなら……俺達のやってきた事に、価値はあったのかもなって、思ったりもした」

巧「でも……やっぱりどうしても考えちまう……その平和が……」

巧「仲間と……俺が殺してきたオルフェノク達の死によって成り立っているものなんだと思うと……」

巧「気持ちが……黒く塗りつぶされて行くんだ……」

チェイス「…………」



巧「……敵も、仲間も……沢山の『人間』が死んだ……」

巧「人間を超えただの……新しい生物の頂点だの、怪物だ、化け物だって言ったってよ……」

巧「そんなのはただ……身に余る力を手に入れただけの……だたの人間だ」

巧「皆……ただの人間だったんだ……!」

巧「……だけど……その力を得ちまった人間は……普通の人間を襲う……黙って見てたら、何も悪くない人たちが殺される」

巧「…………だから、俺は殺した。自分と同じオルフェノクを……同じ人間を……この手で……」

巧「人間を守るために、人間を殺したのさ……守ることと戦う事ってのは、どうして矛盾すんのかなぁ……」



チェイス(……これが……乾の過去……乾の、罪の記憶……)

真司(……俺が正義じゃなかったら、っていうのは……こういう事だったのか……)

音也(……たかが18のガキが背負うようなもんじゃないぞ……ったく、神様ってのはどうしてこうも残酷なんだろうなっ……)



巧「……こうしてる今でも、時々……両手から灰が零れ落ちてる感覚がすんだよ」

チェイス「!!」ガタッ

真司「な、それって!?」

巧「……! いや、違うぞ? 俺の体が灰になってるわけじゃないからな!」

真司「そ、そっか……なら良いんだけど……」

チェイス「……驚かすな」ストン

巧「…………俺が言ってんのは、さ……」





巧「……倒したオルフェノクの、灰の感触が……消えてくれないって、事なんだよ……」ギュッ…



チェイス・真司・音也「「「………………」」」



巧「……俺の話は終わりだ。ご感想は?」

音也「…………」

真司「…………」

チェイス「…………」

巧「…………」



巧(互いに顔を見合わせて……何も言わないか……)

巧(まぁ、そりゃあそうだろうな。化け物である上に、人殺しだからな……)

巧(…………なんとかして、明日にはここを出るか。外に何があるか、わからねぇけど……)

音也「…………」チラッ

真司「…………」コクリ

チェイス「…………」ウム

チェイス「…………乾」

巧「…………何だよ……」

音也「ちゃんと前を見ろ」

巧「……チッ……何だよ……」ジロ

チェイス「悪ぶるな。そんな事をした所で、俺達はお前を悪者だなどと、微塵も思わん」

巧「……は?」

真司「多分、っていうか確実に、俺達の考えてる事、同じだからね……」

音也「そういうことだ。分かったらちゃんと椅子に座れ。体をこっちに向けろいっ」

巧「な、なんだよっ、何が言いたいんだよ……」

音也「ったく、分からん奴だなぁ。おい真司、こいつの最初の発言に対する答えを言ってやれ」

真司「合点承知! ……あのね、巧君。俺たちは……」




真司「君を嫌うなんてこと、絶ーーーっっ対、ありえないから!」ニッ

巧「……!!」

チェイス「うむ」

音也「良ーく言った! 大儀である! 褒美にお前が寝るときにお休みの演奏をしてやろう!」

真司「それはいらない」

巧「……話聞いてたのか!? 俺はオルフェノクっていう怪人で――――」

音也「それが何だ? お前散々『オルフェノクはただの人間だ』って言ってたろーが」

巧「怖いとか、思うだろ普通!」

音也「悪いが俺は生前、人間の魂を食らう狼男とダチになった男だっ! そんな俺が人を襲わない化け物をわざわざ怖れる理由が無~い!」ヘラヘラ

真司「なんだそりゃ。……巧君は悪い人間じゃないわけだし、ましてや、そのオルフェノクの姿を見てもないし、怖いとは思わないなぁ」

真司「仮にその姿を見たとしても、俺は怖いなんて思わないよ。巧君だって分かってれば。言葉も通じて優しいって時点で、ミラーモンスターとは雲泥の差だよ!」

巧「や、優しいって、俺のどこがだよ!」

チェイス「お前が優しくなかったら、倒したオルフェノクや、死んでいった仲間達の事で、思い悩んだりはしないのではないのか」

巧「…………人殺しなんだぞ」

真司「……巧君達には、それしか手段が無かっただけだろ? 巧君の選択が正しいとは、言えないのかもしれないけど……」

真司「俺みたいに、誰も殺したくないって言って、放置するのが正しいのかと言われれば、それも違うでしょ」

音也「誰もやりたがらない、でも誰かがやらなきゃならない事を、お前は自分から背負い込んだ……」

音也「誰にでも、できることじゃないだろ」

チェイス「お前も城戸と同じだ、自分を責めすぎるな。お前がそれ程までに、罪の意識を抱くことはない」

巧「っ………………」



チェイス「……乾」

巧「…………気持ちは、嬉しいよ。そう言ってくれると……少しは、気が楽になる」

巧「……だけど、俺が罪の意識を捨てる事は、無い。それは絶対に無い。捨てていい物じゃない……」

巧「これは、俺が一生……って言ってももう死んでるけど……背負っていくべきものだ。戦う事の罪は俺が背負うって、あの時誓ったんだ」

チェイス「…………」

巧「だから、俺はこのまま、この痛みを背負い続ける。誰に許してもらっても、俺はこの荷物を降ろす気はない……」

真司「巧君……」

巧「でも……その気持ち自体には、一応……礼は言っとく。…………ありがとな」

音也「……あまり思い詰めすぎるんじゃねーぞ? 吐き出したい時は俺に言え」

真司「俺にもね! 何も言ってやれないかもだけど……愚痴ぐらいは聴くからさ!」

チェイス「俺もだ」

巧「……っ……おう……」フイッ



チェイス「では、今度は俺も話そう」

音也「おっ、やっとお前かぁ。俺的にはお前が一番良く分からんからなー。何考えてんのかが読めん」

巧「……そうだな。お前泣くときも顔の形変わらないくらい表情硬いもんな……」

チェイス「努力はしているのだがな……」

真司「悪い人間じゃ無いのは分かるんだけどねー。さっきも俺の話聴いて怒ってくれたし」アハハ

チェイス「悪くないように努めているし、人間でもないぞ」

巧「……んでもってこの、突然妙な冗談言ってくるノリな」

音也「謎なギャグセンスを飛ばす割に終始無表情で、無駄に真面目っぽい……まるで螺子が外れたポンコツロボットだな!」ハハハ!

チェイス「……不用意に相手が傷つくような発言は、控えるのが人間のルールではないのか」

音也「ハハ、そう怒るな。悪かった悪かった」

チェイス「確かに俺はロボットだが、心もあるのだ。傷つくこともある。それと螺子は外れていないし、ポンコツではない。いたって正常に作動している」

音也「悪かったってーそうムキに…………? お前今なんつった?」

チェイス「『確かに俺はロボットだが、心もあるのだ。傷つくこともある。それと螺子は外れていないし、ポンコツではない。いたって正常に作動している』……」

チェイス「と、言ったが」

真司「い、一字一句正確に……」

音也「…………ロボットだぁ!?」

巧「いや、冗談に決まってんだろ! ……冗談だよな……?」

チェイス「冗談ではない。本当だ。正確にはロイミュードという名称だが」

真司「……ま、まっさかー! どっからどう見ても普通の人間じゃんかー! (ヾノ・∀・`)ナイナイ」

音也「だよな。本当にロボットだってんなら、なんか証拠見せみぃ! デキネェダロ!」

チェイス「わかった」テクテク

音也「えっ」



チェイス「…………」ガラッ

チェイス「…………」カチャカチャ



巧「……おい、なんかキッチン行って食器漁りだしたぞ……」

音也「何始める気だ……?」

真司「……なんか、嫌な予感するんだけど……」



チェイス「…………む、これがいいか」チャキ



テクテク



真司「何か持って戻ってきた……?」

巧「……!? ステーキナイフ、か……?」

音也「……おい、お前、それどうする気だ……」

チェイス「見ていろ」ペタッ

音也「……左手をテーブルに置いてー?」



スッ……



音也「右手のナイフを振り上げー……ってうおおおぉぉーいッ!!?」

真司「ちょちょちょちょ!! 何やってんの!? 指でもツめる気かよ!?」ガシッ!

巧「何なんだお前は!! 何がしたんだ!?」

チェイス「……ロイミュードの体内は鋼で形成されている。このようなナイフで傷を負えば、内部の鉄製の機器類とぶつかり火花を起こす」

チェイス「それを見れば信じるだろうと思ったのだが……」

巧「お前キャラ作り必死すぎだろ!! どんだけロボット設定で行きたいんだ!!」

真司「分かったから!! もう分かったから!! 君十分キャラ立ってるよ!!」グググ…!

音也「大体お前ロボットだとしても自傷行為してその後どうする気だ!! 治せるのかそれ!!」

チェイス「……確かにそうだな。失念していた」パッ

真司「し、失念していたって……」ヘナヘナ

巧「お前、大丈夫か……!? 本当にどっかやられてんじゃねーのか!?」

チェイス「すまない……その内メディックに治してもらえば良いなどと考えていた。彼女らには、もう会えないというのに……」

真司「誰さメディックって……」ゼェゼェ



音也「お前なぁ……! さすがにこれは引くぞ!? 証拠見せろっつったらお前、普通こう、ロボットにしかできない事だろうが!」

チェイス「……と、いうと?」

音也「……ロケットパンチとかぁ、ジェットで空を飛ぶとか……目からビームとか! できねーだろ!? よってお前はロボじゃない!」

巧「おい! 下手な事言うなよ! こいつ腕ぶった切って『ロケットパンチだ』とか言いかねねーぞ!」

真司「さすがにそれは……無いよね!?」

チェイス「……ロケットパンチ……ジェットで空……目から――――!」

チェイス「目からビームは出せないが、映像なら出せる。それで構わないだろうか?」

巧「ほら見ろ! なんかまたやる気だぞ……!」

真司「目から映像……!? どゆこと!?」

音也「……ははーん分かったぞ! 『俺の目を見ろ。お前が映っているだろう』的なジョークだろ! 分かったからもうロボごっこは終わりだ!」

チェイス(……記憶データ、オープン。現在から遡って……先ずは、3カ月ほど前の時でいいだろうか……)

チェイス(記憶映像の読み込み開始……完了。空間ディスプレイ出力準備……完了。投影開始まで……2、1……)




チェイス「……!」カッ!!




ピカァッ!!




音也「のわあぁ!?」ドテッ

真司「へ……!?」

巧「は……はぁ……!?」




ブウゥン……




映像『……「ただいまー。霧子ー、昼飯買ってきたぞ……っていないじゃん」「霧子なら書類を届けに出て行ったぞ」』

映像『「ん? おぉ、チェイス。来てた、の……かっ……!?」ガタタッ! 』

映像『「今お前のノートパソコンを借りているぞ」「み、見りゃ分かるけど……!! 何してんの!?」』




音也「」クチアングリ

真司「な、な、な、なん……!?」

巧「……マ、マジか……」



チェイス「これは俺の記憶だ。俺の見たものを、そのまま映像としてし出力している」

音也「……ハッ!? ってことは何だ……お前、そんな、まさか……モノホンの、ロボットさん!!?」

チェイス「……最初からそう言っていたのが」

巧「……うっそだろぉ……スマートブレインにだって、こんな人間みたいな……」

真司「…………す、すげぇぇーーー!!! こ、この飛び出す映像も凄いけど!! ロボット!! ロボットだよ本物だぁ!!」

巧「ちょ、おい、城戸さん……」

真司「そっかぁーー!! チェイスっていうのはロボットとしての名前だったのかぁ!! いや疑ってごめんなっ!? でもすごいなぁ……!!」

真司「いやロボットってもう、それだけでかっこいいよなぁ!! あっ! 生まれて2年は経ってるって、チェイスがロボットだったからなんだな!!」バシバシ!

チェイス「背中を叩かないでくれ。映像がブレてしまう」

真司「ったくなんだよそうならそうと初めからはっきり言ってくれればいいのにぃー!! 水臭いぞー!!」ユッサユッサ!

チェイス「初めからはっきり言っていたぞ。キッチンの水が臭いのかは知らないが、揺らさないでくれ、映像が安定しない」グラグラ

巧「…………」

巧(マジのロボットだと分かった途端にこのはしゃぎ様……やっぱこの人、アホだ……)

音也「……だ……だいぶ、驚かされちまったが……オホン! まぁ、なんだ……映像付きでお前の話が聞けるなら、かなり解りやすくなるだろうな!」

音也「おい真司、揺らすのやめろ! あ、それとお茶入れてこい! 喉が渇いた!」

真司「おまっ、ついでのように人をパシりにするなよ! 」ピタッ

チェイス「何でもいいから見てはくれないか。今一時停止している」

真司「ちょ、映像出したままこっち向かないで! 眩しい!」

巧(一時停止できんのか……便利だなおい……)

音也「ほれ、さっさと行け! 4人分な! オラオラ行け行けッ!」ゲシゲシ

真司「痛! 脛っ、脛蹴るな! 分かった分かったよ! 次はお前行けよ!?」シブシブ

巧「……お前、人間の食い物とか大丈夫なのか?」

チェイス「問題ない。飲食によるエネルギー補給は可能だ。味覚も人間と同様にある」

音也「……で、この一時停止の画面に映ってるこいつ……誰?」

チェイス「…………この男は、泊 進之介という。俺に、沢山の人間の心とルールを教えてくれた……」




チェイス「……刑事で、仮面ライダーの、戦友だ」



今回は以上です。

……チェイスの話が終わってないのは私の責任だ。だg(ry
チェイスの過去は次回3人にお披露目です。

この4人は多分このSSにおけるメインみたいな扱いになります。
色々話すうちに他の死人キャラとも違う結束力みたいなものができていく予定。

音也の考えや過去について割と突っ込んだ考察してます。
苦手な人には、スイマセンでした。

乙、皆いい感じ!
あと細かいけど進ノ介だよ

おつ
チェイスは変身道具なくても「ロイミュード000番」の形態ならなれたんじゃ?
まあたっくんとかもウルフ化できなそうだしそういう世界なのかな?


意外な組み合わせだが、思いのほかバランス良くていいなこの4人



こんばんわ。8時に投下します。


>>92
うわぁーやっちまってたか……
なんとなーく何かが違うような気はしてたんですが、気付いた時は既に投下中だったという……
それと神崎士郎が神崎「四朗」になってましたね。スミマセン。


>>93
……奇行に走るチェイスとそれに慌てふためく3人の構図が書きたすぎて失念しとった……
000の形態は後々登場させるので許してくだちい。


>>100
何でこの4人かっていうと、死んだライダーで>>1が好きな奴って誰が居たっけー
ってふと思いついたのがこの4人だっただけで、バランスとか全然考えてませんでした。
自分でも書いてみるとわかる謎の調和性。ぶっちゃけ書いててチョータノシイネサイコー! って感じです。



音也「刑事で……」

巧「仮面ライダー……って、それ、城戸さんの言ってた……!?」

チェイス「いや、それとは別物だ。城戸の言っていた仮面ライダーとは、偶々名称が同じだけで、そのあり方は根本的に違う」

チェイス「……俺の知っている仮面ライダーとは……人間の今と未来、夢と幸福を守護する者……」

チェイス「その身を粉にし……人間に、恐怖や絶望、痛みや悲しみを与えようとすると悪と、日夜戦い続ける……希望の象徴だ」

巧「……それが……仮面ライダー……?」

音也「……まるで映画のヒーローだな」

チェイス「…………そうだ。その通りだ。進ノ介も、剛も……まさしく、人間達にとって……そして、俺にとって」

チェイス「……英雄そのものだった……」

巧「……………」

音也「……この、なんか焦ってるような顔した、アホっぽい奴がかぁ?」

チェイス「……進ノ介はアホではない。刑事の仮面ライダーだ。強く気高い男だ。アホではない」

音也「うわっ、こっち向くなっつの! 前が見えん!」

巧「……お前は、その刑事で仮面ライダーの……泊進ノ介と、どう出会ったんだ?」

チェイス「……最初に出会った時は、敵同士だった」

巧「! 敵……?」

音也「うひー、目がチカチカしやがる! ったくもー……」

音也「……で、何で敵だったんだ? お前見かけによらず、お巡りさんの厄介になるようなやんちゃロボだったのか?」

チェイス「……そうだな。あの時は本当に、迷惑をかけてしまった」

チェイス「……続きは城戸が戻ってから続けよう。……城戸には、辛い話になるかもしれんが……」

巧「? なんでお前の話が――! あぁ……そういうことか……」

音也「……同じ名前の仮面ライダーが、片やヒーローで片や殺し合いの参加者じゃな……」

巧「……でもまぁ、大丈夫じゃないのか? ある程度は吹っ切れたみたいだし……」

巧「また落ち込むようなら、俺達が適当にフォローすりゃいいだろ」

音也「……クク、自然にそういう意見が出てくるお前も、御多分に洩れずお人よしだな?」

巧「っ……ほっとけ!」

音也「さて、そんじゃお茶を待つとしますか。ふぅーよっこらせっ○す」ギシッ

巧「おいやめろ」ギシッ

チェイス「……よっこら○っくす……とは、何だ?」ギシッ

巧「限りなくどうでもいい知識だから、お前は知らなくていい」

音也「いいか? これはな、『よっこらせ』という掛け声の、最後の『せ』の部分と『セッ――」

巧「やめろっつてんだろ!?」



真司「おい音也っ! 淹れたきたぞお茶!」カタカタ

音也「おぉ、ご苦労ご苦労! ほら、早く並べろ」

真司「自分で取ってくださる!? ここに置いとくからっ!」カチャン

音也「お前なぁ、客にお茶出して、盆ごと置いて自分で取れなんて言う家政婦が居るか?」

真司「客って何!? 俺家政婦じゃないんだけど!?」

真司「いいじゃんかよ! 俺もう今座っちゃったよ! 手を伸ばせば届くだろ!」

音也「チッ……まったくもう! 真司のくせに生意気ねっ!」グイー

真司「おん前っ……! やーめた! お前にはあーげなーい!」ヒョイッ

音也「あっ! てめぇ大人げねーぞ!? 俺を誰だと思ってんだ! 紅音也様だぞ!!」

真司「お前が音也様なら俺はスーパー真司様様だもんね! バーカ!!」

音也「俺がバカァ!? ならお前は究極馬鹿、アルティメットバカだなブゥァアーーカ!!」

真司・音也「「ぐぬぬぬぬぬ……!!」」

巧「いや、あんたら二人とも馬鹿だよ……同レベルの……」

チェイス「…………」クルッ




ピカァッ!




真司「うわぁ! また眩しい!?」

音也「おい! 目が悪くなったらどうする!?」

チェイス「……紅。お茶を持ってきてくれた城戸には、素直にありがとうを言うのが、人間のルールではないのか」ピカピカ

音也「あ、はい……」マブシイ

チェイス「城戸、飲み物を持ったまま、無暗に暴れるのは、良くない事ではないのか」ピカピカ

真司「ス、スイマセン……」マブシイ

チェイス「……バカと言ったら、自分がバカなのではないのかっ!」ピカピカ

真司・音也「「…………ごめんなさい」」

巧(…………生まれて数年しか経ってないロボットに正論を言われて、小学生レベルのケンカを止める23歳……)

チェイス「……話を始めていいだろうか?」

音也「お、おう……」

真司「……あ、音也、お茶……」コトッ

音也「えっ、あぁ……すまん、な」

真司「……2人も、どうぞ」コト、コト

巧「……サンキュー」

巧(……めっちゃ湯気立ってら……)フーフー



チェイス「ありがとう。では、話そうか」

チェイス「……事の発端は、今から1年半程遡る。……雨が降りしきる日の事だった」

チェイス「人類の滅亡を企む人口生命体、『ロイミュード』が、世界の各地で、徒党を組んで襲撃を開始した」

チェイス「この事件は後に、『グローバル・フリーズ』と呼ばれ、今でも人々の間で、未曽有の大事件として記憶に残っている」

真司「人口生命体が……人間を襲撃!? 世界規模で!? そんな話、聞いた事も……!」

巧「ロイミュードって……さっきお前が自分の事そう言って……!」

チェイス「そうだ。俺は、その時人間を襲撃したロイミュード達とは、違う目的で造られたロイミュードだが、本質は彼等と同じだ」

音也「……なるほど。それが、お前がやんちゃしてた事と関係するってわけか」

チェイス「うむ……俺は元々、そのロイミュードによる襲撃に対抗するために、『クリム・スタインベルト』と言う科学者によって生み出された存在だ」

チェイス「つまり、『対ロイミュード用ロイミュード』……と言ったところか」

チェイス「俺はクリムの開発した強化ユニット、プロトドライブシステムによって変身し、ロイミュード達に戦いを挑んだ」

チェイス「結果、各地のロイミュードを、完全に倒し切る事はできなかったが、撤退させることに成功し、人類滅亡の計画は未然に防ぐことができた」

チェイス「……だが、その時点でのクリムが開発したシステムは、プロトと名の付くだけあり、まだ未完成だった」

チェイス「グローバル・フリーズを生き残ったのも束の間……復活した敵の中でも、特に強力なロイミュードに、俺は倒されてしまった」

チェイス「……そいつの名は『ハート』……ハート・ロイミュードという名だ」

チェイス「どのように戦い、俺が負けたのか、今の俺には記憶が残っていないが……」

チェイス「本当に強いあいつの事だ。その時の俺は、手も足も出なかったのかもしれない……」



真司(…………なんだろ……自分がやられちゃった事を話すに、しては……)

真司(なんだか……嬉しそうに話してるような……?)




チェイス「ハートに敗北した俺は敵に拉致され、『ブレン』というロイミュードに洗脳を受けた」

巧「せ、洗脳って……」

チェイス「……機械的に言い直せばハッキングだ」

巧「……いや、別に言い直さなくていい。分からなくて言ったわけじゃないからな?」

チェイス「……そうか、では続ける。……そうして、俺は敵の側になってしまった」

チェイス「本来の敵を守り、本来の守るべきものに銃口を向けた……」

音也「…………」

チェイス「だが、今にして思えば……ブレンの洗脳を受けておいて、良かったと思う」

真司「えっ? なんでだよ!?」

チェイス「……敵がこちらに抱いている思いや、敵の背負っているもの、そして、敵が守りたいものの価値は……」

チェイス「その敵の立場になって、初めて分かるという事だ」

チェイス「……もし俺が、あの時ロイミュードの側についていなければ……ハートが……ブレンが……メディックが」

チェイス「どういう理由で人間を打倒しようとしているのか、知る由も無かっただろう」

チェイス「……何が好きで、何が嫌いで、何が楽しく、何が嬉しく、何が恐ろしく、何が悲しいのか……」

チェイス「何も知らぬまま……知ろうともしないまま……戦っていただろう」

チェイス「クリムに言われるがまま……自分が正義で、ロイミュードが悪と断じていたはずだ……」

チェイス「そして、この手にかけていたかもしれない……」

チェイス「今は……そうなってしまわなくて、本当に良かったと思う」



チェイス「……俺を最初に『仮面ライダー』と名付けて呼んだのもブレンだったが……今思えば、これも運命的なものを感じる……」

真司「!? 仮面ライダー……!?」

音也「お前が知ってるのとは違うぞ。偶然同じ名前だっただけらしい」

巧「その名前……敵に付けられたのか」

音也「ってか、お前もその仮面ライダーだったのか」

チェイス「あぁ。最初は、ロイミュード達にとっての危険因子の名称として、外見の特徴を端的に表したものとして使われているだけった」

チェイス「だが……数奇なめぐりあわせにより……いつしかそれは、悪と戦う、心に熱き正義を宿す戦士達の総称として、人々に呼ばれるようになったのだ」

真司「……悪と戦う……正義の、仮面ライダー……」

チェイス「……話を俺の洗脳以後の事に戻すが、それから俺は、仮面ライダーだった頃の記憶を失い……」

チェイス「代わりに、ロイミュードのリーダー、ハートの意志に従わない身勝手なロイミュードを粛清する、死神として動いた」

チェイス「ここからは新しい映像を交えて説明しよう。長くなると思うが、よく聞いて欲しい」

チェイス「……特に城戸、お前には、しっかりと理解してもらいたい」

真司「……!」

チェイス「……死神としての役目を続け、半年ほど経った頃だった」

チェイス「俺はついに、この男と出会った……」パパッ



映像『……「危ない!?」ドガガガガガッ!! 「キャアァッ!?」』

映像『「くっ……! ……!?」チェイスの声「…………仮面ライダー、か」』

映像『「!!」チェイスの声「……俺の仲間を……やったな」』

映像『ガションッ! ギュンギュンギューン! ドドッドド! BLAKE UP! バチバチバチ……! ガシュイィン!!』

映像『「お前は……!?」 チェイスの声「俺はマシンチェイサー……ロイミュードの番人……同時に……」』

映像『チェイスの声「死神だッ……!!」「……!!」』

巧「! こいつは……!」

真司「……赤い戦士……もしかして、これが……!」

チェイス「……そう……俺のいなくなった後も、調整を重ね、ついに完成したドライブシステムと……」

チェイス「クリムが必死の思いで探し、厳選し続け、選び抜いた……新しい、正式なシステムの資格者……」

チェイス「……泊進ノ介……仮面ライダー、ドライブだ」





◇1時間後……◇



映像『チェイスの声「…………これでいいんだ、剛」』

映像『「!?」チェイスの声「霧子が愛する者たちを守れるのなら…………本望だ……」』

映像『「っ!? ……っ……!!」

映像『チェイスの声「人間が俺にくれた……宝物だ…………俺とお前はダチではないが……」』

映像『チェイスの声「持っていてくれ…………燃えてしまうと……勿体ない……」』

映像『「……っ゛……!! ……っ゛……」』

映像『ガバッ!! タッタッタッタ…! バチッバチバチ!』

映像『「ヘェッハッハァ!!」チェイスの声「……ヌゥン……!!」ダンッ!! ガシィッ!!』

映像『「な!? うぐぅっ! はぁなぁせえぇぇぇ!!」チェイスの声「……グッ……うぅ……!!」』」

映像『「ぬうぅうああああアアアぁぁああアアァァァーーー!!!」』

映像『チェイスの声「ウオオオオォォォオオォーーー!!!」』




――――――ブツンッ




映像『ザザザ……ザザ、ザザザッ……』



シュイィン……



チェイス「…………これが、俺の全てだ。あの自爆で、蛮野が倒せたかどうかは分からないが……」

チェイス「……剛は強い。きっと大丈夫だと、俺は信じている」

音也「…………そうか」

巧「……お前、すげぇよ……なんつうかその……本当に、ヒーローやってたんだなぁ……」

音也「……最初は人間のために戦って、次はロイミュードのため……そしてまた人間のために戦い……」

音也「最後にゃ両方のために戦って、友のためにその命を投げ出した……か」

音也「あっちこっち行ったり来たりはしたみてーだが……お前結局、他の誰かのためにしか、戦ってなかったわけだ」フッ

チェイス「…………言われてみれば、そうだな」フム

音也「表情が無くとも、そんじょそこいらの人間よか、よっぽど熱い魂があるじゃねーか」ニヤリ

音也「お前も、お前を造った博士も、文句なしのあっぱれな男だな……」

真司「…………っ……」




チェイス「……城戸……」

真司「…………っ……」グスッ

チェイス「っ……確かに、俺が知る仮面ライダーと、お前が見た仮面ライダーは、まったく違うかもしれない……」

チェイス「だが、お前は……お前だけは……神崎の仕組んだ戦いに参加した中では……」

チェイス「……俺の知る意味での仮面ライダーを……名乗っていいはずだ」

チェイス「…………う、うっ……」グスグス

チェイス「……だから、もうこれ以上……そんな悲しい顔はしないd――――」




真司「うわああぁぁぁぁああぁーーーっ!!!」ダバァーーッ!

音也「うおっ!?」

巧(……おいおい……)

チェイス「す、すまなかった城戸! やはりお前の気持ちを考えて、仮面ライダーの事は伏せるべきだったか……!!」

巧「……いや、これはそういう事じゃないんじゃないか……?」

真司「…………チェイスゥッ!!」ガシッ!!

チェイス「……!?」ビクッ

真司「…………お前は……お前って奴は……!!」










真司「なんて優しい心のロボットなんだあぁぁあぁあぁぁあ~~!!!」びえぇぇ!!





巧「ほらな……」

音也「あー……」

チェイス「……!? ……???」



真司「うぅおぉぉおぉ……!! も、もうっ! 感動したっ!! 何もかもがっ、カッコイイよチェイスゥ!!」ユサユサッ

チェイス「……か、かっこいい? 俺がか?」グラグラ

真司「ラ、ライダーとしてっ! もう一度やり直すときの、決意とかっ! 失恋してもっ、『寧ろ痛みが心地いい』とか……!!」グスグス

真司「友達を助けるためにぃっ! 命、投げ出したりッ、最初から最後まで全部だよぉ!!」エグッエグッ

真司「おっ俺、ロボットの、こういう話の映画とか、弱いんだよぉおぉぉ!!」ヒック

真司「人間に憧れるっ、切実な気持ちとかっ! ロイミュードの仲間と、人間の仲間との間で、葛藤してるのとか!!」ヒックヒック

真司「もうっ……!!全っ部どストライクすぎるんだよ~~~っ!!」オーイオイオイ

チェイス「どストライク……とは、どういう意味だ? 後、肩が痛いぞ」グラグラ

真司「もうね、もうね……!! チェイスね……お前ねっ……! 偉いッ!!」バンッ!!

チェイス「うぐっ……! ……俺は……偉い、のか?」

真司「そうだよ偉いよ!! 迷って迷って……それでもちゃんと答えを出して、自分の決めた、仮面ライダーのルールを貫き通して……!!」

真司「お前は偉い!! 偉いんだよおおぉォォ~~~~っ!!」ワシャワシャワシャワシャ!!

チェイス「……何故俺の髪を乱しいるのだ?」グワングワン

音也「……撫でてるつもりなんだろ」

巧「おい、止めてやらなくていいのか、これ」

音也「俺は嫌だ! 面倒くせぇ!」

巧「……はぁ……おい城戸さん! 程ほどにしろよ! チェイスが困ってんだろ。ってかあんた今日泣いてばっかだな!」グイッ

真司「えぐっえぐっ……ゴ、ごめんなチェイス、ちょっと興奮しちゃって……」ズルズル

チェイス「いや、別に構わない」←髪グシャグシャ



チェイス「……それより、気にしてはいないのか?」

真司「グスッ……? 何が……?」フキフキ

チェイス「だから、お前の知るライダーと俺の知るライダーの違いについて……なのだが……」

真司「ヂーーンッ!! ぷぇっ! ……別に、そこまで重く考えてはいないよ。むしろ嬉しいかなぁ」

音也「!」

巧「……嬉しい?」

真司「あぁ! だってさ、同じ『仮面ライダー』の名前でも、誰かのために、人を守るためだけに戦う人たちもいるって知れたんだ」

真司「……さっきまで、もう俺にとっての仮面ライダーっていう名前は、嫌な記憶を思い出させる、悪い言葉でしかなくなりかけてた」

真司「だけどっ! チェイス達が歩んできたライダーの在り方を知って……なんていうか、俺の中のこの名前に、別の、いい価値が生まれたんだ!」

真司「もう、俺は死んでるけど……ここで暮らすうちは、俺はいい意味での……仮面ライダーらしく過ごすよ!」ニヒッ

チェイス「……!! ……そうか。それなら良いんだ」

音也「…………」フッ

巧「へっ……泣くのは今ので最後にしてくれよ?」

真司「う、うるさいな! 感受性が豊かなんだよっ!」

巧「クハハハ……! …………」

チェイス「……どうした乾?」

巧「っ! いや、別に。何もないぞ」

チェイス「……? そうか」





巧(…………仮面ライダードライブ……泊進ノ介……泊、進之介……)

巧(仮面ライダーマッハ……詩島剛……詩島霧子……剛……)

巧(…………妙だなぁ……知ってる訳ねーってのに……どっかで聞いたような、会ったような……)

巧(……ま、気のせいに決まってるか)



真司「……でもさー、今更疑うわけじゃないんだけど、チェイスの話って、本当なんだよな?」

チェイス「本当だが?」

巧「何だよ、なんか気になるのか」

真司「うん……だってさ、俺、東京に住んでるんだけど、グローバル・フリーズなんて事件、知らないんだよ」

真司「そんな大規模な事件が起きてるんなら、絶対知ってるのに。オルフェノクの話もそうだよ。噂位知ってていいはずなのにさ。おかしいだろ?」

チェイス「…………」

巧「…………」

音也「……お前、今更言ってんのかよ」

真司「え? えっ?」

巧「今の今まで分かってなかったのか……」

真司「な、何が?」

チェイス「……城戸、お前が死んだ年は……西暦何年だ?」

真司「え? 2002……ん? いや違うか、2003年だよ」

チェイス「……俺は2015年だ」

真司「え!?」

巧「俺は2004年な」

真司「え、えぇ!?」

音也「やっぱり俺が一番の古株か……俺はな、1986年だ! つまりお前らよりずーっと早く生まれてるんだほら敬え!」

真司「……えええぇぇぇっっ!!?」

真司「ちょちょ、え!? どういうこと!? じゃあ、ここに居る皆、死んだ時代はバラバラって事!?

巧「時代だけじゃないな、多分。なんつったけ……」

巧「パラ……パラソルなんちゃら……いや違うとは思うけど、そんなような言葉あるだろ?」

巧「いくつもの世界がどーこーってヤツ……要は、住んでた世界そのものが違うんじゃねーか?」

チェイス「俺は、巧の経験したオルフェノクと人間の抗争について、まるで知らない。いくらスマートブレインや警察機関が隠ぺいしたとしても……」

チェイス「お前の言う通り、多少なりとも何らかの噂が残っていてもいいはずだ。だが、そんな情報は全く聞いたことが無い」

チェイス「ましてお前の、ミラーモンスターが現実世界に大量出現した件など、絶対に何かしらの情報が残る」

チェイス「だが実際には、俺はそんなものを知らない」

巧「お前の年の直後に死んでる俺も知らないぜ。鏡に人が消えるなんて噂があったら、真理や啓太朗が真っ先に話題に出しそうだ」

音也「第一、世界が滅びかけるような摩訶不思議大事件が、地球上でそうポンポン起こってたまるかってんだ」

音也「俺達は互いに、まったく違う『別の世界』からここに来た。恐らくな」

真司「えぇぇ……!? い、いやでも、そんなあの世ってある!? 普通じゃないよ!」

巧「普通じゃないって城戸さん……逆にどんなのが『普通のあの世』なんだよ? そんなの、俺達人間が勝手に想像してただけの事だろ?」

音也「これが実際のあの世なのかもしれんぞ? 時間も、世界の概念も飛び越えて送られる……何が起こるかわからんスリルがあるな!」

巧「スリルって……あんたは呑気だな……」

真司「マジかぁ……パラソルワールドだったかのか……」

巧「だからパラソルは違うって」



音也「何にせよ、恐らくまだまだここに来る死者はいるはずだ。というかいてくれ。野郎4人で共同生活とかさすがにきっついわぁ!!」

音也「できれば美しい女が同じく4人は欲しい! あ、これはお前らに分けるために4人なわけじゃないぞ?」

音也「お前らが放つむさ苦しい匂いを浄化して相殺するためだ。1人もやらん!!」

巧「何の話をしてんだ!? いらねーよ! っておい、第一あんたにはその運命の女がいたんだろ? 本当に浮気じゃねーか!」

音也「馬鹿を言うな! あいつとはしばらく……いや、ひょっとするともう永遠に会えん。つまりは終わってしまった恋だ。いくら俺に愛があろうがな」

音也「だから俺はまた新しい恋を探すのだ! 真夜との愛を超えるものがそうそう見つかるとも思えんが、恋は常に迷路だからな!」

音也「砂漠の荒野からたったひとつの宝石を探し当てた時、俺の世界はまた……美しい草原へと変わるのだァー!!」

巧「いやどっちにしろ他の女に行くんじゃその人にとってみりゃ浮気――――」

音也「巧……世の中に、こんな言葉があるのを、知っているか?」

巧「はぁ?」

音也「それは、それ」スッ

音也「これは、これ」ススッ

巧「……あんたって奴は……! 話してると頭が痛くなってくるぜ……!!」ズキズキ

音也「真夜は俺と言う男をちゃんと理解している。自分のせいで俺があの世で寂しくしてるなんて知ったら、それこそ悲しむ!」

音也「新しい人生を……いや、人死を満喫して欲しいと、あいつは願っているはずだ! だから俺はその通りにするだ~け~さぁ~~♪」

巧(人死って何だよ……死後って言えよ……!)

真司「……にしても、不思議なめぐりあわせだよなぁ」

チェイス「? 何がだ?」

真司「だってさ、仮面ライダーなんて、同じ名前の変身する奴が2人もいて、変身して戦うのに限れば、巧君もファイズに変身するでしょ?」

真司「んでもって、皆人を襲う悪い奴と戦ってて、これって偶然?」

チェイス「……偶然、とするには……あまりに共通しすぎているな」

巧「……偶然じゃないのかもな。ひょっとすると、そういう奴らのための、あの世だったりしてな」

真司「ってことは……巧君は差し詰め……仮面ライダーファイズってわけだなっ!」

巧「止せよ……なんかそれ、落ち着かねぇ」

チェイス「そうか? とてもいい響きだと思うが。仮面ライダーファイズ」

巧「やめろって! なんか恥ずかしいんだよ!」

音也「お!? 恥ずかしいか!? そうかなるほどじゃあもっと言ってやろう!」

巧「おい!」

音也「仮面ライダーファイズゥー仮面ライダーファイズ! 仮面ライダーファイズの乾巧をよろしくお願いいたします!」

巧「てめっ……! やめろって!!////」

チェイス「何故恥ずかしがるのだ? 仮面ライダーは希望の象徴。人々の命と尊厳を守ろうとしたお前はまさしく希望だ」

チェイス「仮面ライダーファイズの名を与えられるのは、名誉な事ではないのか? 仮面ライダーファイズ……お前に驚くほどしっくりくるというのに」

巧「お前はなんでそうこっ恥ずかしい事を平然と……!////」

音也「おーおー照れてる照れてるぅー↑!」



巧「チッ……! って、そういうあんたも、俺達の共通点が絶対だってんなら、アンタも何かに変身して戦ってたんじゃないのかよ!」

真司(あ、うまく話し逸らそうとしてる)

音也「ん? 何言ってんだ。そう話しただろうが」

真司「えっ?」

音也「ん?」

チェイス「……俺達は聞いていないが」

音也「おいおい、一番最初に話したのが俺だからってもう忘れちまったのか?」

巧「……あんたが話したのは、ほぼ運命の女云々だけで終わってんだが」

音也「……?」





音也「………………」ポク、ポク、ポク、ポク…





音也「!」チーン!



音也「おーおー! そうだったそうだった! すまんすまん! 俺の戦いの伝説をまだ聞かせていなかったなぁっ!」ポン!

音也「じゃあ聞かせてやろう!! 耳かっぽじって正座してお聞きっ!!」

巧(あ、やべぇ、まずいスイッチ入れちまったかもしれねぇ……)



音也「全てはあの日から始まった……俺が最初に愛した女、麻生ゆりとの出会いg――――」

チェイス「音也」

音也「――発端だった……ってなんだ。せっかく人が話をしようって時に水差すな!」

チェイス「勿論お前の話はとても聞きたいのだが、時計を見てくれ」

音也「時計?」

チェイス「……現在、午後の10時半になろうとしている」

真司「じゅ、10時半!? うげぇー! すっかり時間の事忘れてた!」

巧「ぶっ通しで話てたからなぁ……っぐ~ぁあ……! ずっと座ってたから腰がいってぇ……!」

真司「あ、そうと思ったら、本当に腹減ってきた……死ぬ……」ぐぎゅ~~…

チェイス「かなり遅くなってしまったが、食事にした方がいいだろう」

音也「ぬぅ……まぁ、そういうことなら仕方ねぇ。話は食いながらにしてやる!」

真司「良し、じゃあなんか作るか! 何によっか!」

音也「お前最初、餃子が得意とか言ってたな? 良し、それでいこう」

真司「今から!? いや、それは流石に準備に時間が……もっと簡単な物でお願いします……」

チェイス「俺も手伝おう、城戸。何を作るんだ?」

真司「お、ありがとう! チェイスも料理できんの?」

チェイス「…………いや、考えてみたら、経験が無い。すまない、やはり俺には手伝えそうな事は……」

真司「ありゃ、そうなの? まぁ大丈夫だって! 寧ろ、今やって覚えとこうぜ? 練習連取!」

チェイス「……俺がやってもいいのか?」

真司「おう! 料理なんて、経験無くても手順道理にやればそれなりにできるし!」

チェイス「……そうか。では、手伝わせてもらおう」

音也「よし! なら俺は隣で作業が捗る曲の演奏を――――」

真司「お前は手伝えっ!」

巧「……俺もなんかした方がいいか?」

真司「巧君、料理したことは?」

巧「……いや、あんまり……」

真司「そっかぁ。んー、じゃあ、今日は待ってるだけでいいよ。さすがに包丁握ったことない人が、キッチンに2人並ぶのは危ないしな」

真司「それより、なんかリクエストある?」

巧「……熱すぎなきゃなんでもいい」

音也「ふむ……良し決めた! オムライスだ! 俺はオムライスを喰うぞっ!」

真司「オムライスかぁ。じゃあそれにしよう! ……音也は本当に手伝えよ!? 言い出しっぺだぞお前!」




チェイス「城戸、急がないと本当に遅くなってしまうぞ」ジャキッ

真司「え!? 何でもう包丁持ってるの!? 危ないから! 今は置いといて!」

チェイス「……すまない。……ところで、城戸」

真司「ん?」

チェイス「いつの間にか、呼び方が『チェイス』と呼び捨てになっているが……」

真司「え? あ……! ごめんごめん! 話してる内に、なんか気づいたら呼び捨てちゃってたよ……」

チェイス「いや、それ自体はむしろ嬉しい。俺を呼び捨てているということは……城戸は俺を……ダチだと、思ってくれているのか?」

真司「え?」

チェイス「……砕けた呼び方ほど、相手を信頼している事の表れだと、インターネットに書いてあったのだが……」

真司「……なーに今更言ってんだよ! 俺達はとっくに友達だって! 『チェイス』っ!」

チェイス「……!!」

真司「うっし、じゃあ始めようか! とりあえずチェイス、冷蔵庫から卵と鶏肉と、ケチャップとマヨネーズ出してきてくれ」

チェイス「了解した」ガチャッ

音也「さーて……それじゃ俺様もやるとしますか! フライパンとフライ返しはどーこかなー!?」ガラッ

真司「あ、音也はそれよりご飯炊いてくれよ。お米どこかな?」






チェイス(…………剛、お前は今、元気にしているか?)

チェイス(……もし、何かも間違いで、再びお前に出会えたら……真っ先に、お前に教えてやりたい……)








チェイス(…………俺にも、ダチができたことを)ホロリ…





巧「…………はー……」

巧(何とも妙な事になっちまったなぁ……)

巧(……こいつらと過ごすのは、まぁ……嫌ではねぇ。嫌じゃねーけど……)

巧(…………やっぱり、会いてぇなぁ……真理……啓太郎……)

巧(……チッ、やめだやめだ! 過ぎたことをクヨクヨ考えんな!)

巧(……生きてる連中が望んでいるような過ごし方をする……か。悔しいけど確かにその通りだ……)

巧(俺があいつらの笑顔を望んでたように……あいつらも……俺の笑顔を望んでるなら……)

巧(そうするしかねぇよな。……それに、幸いなことに)






真司「じゃあチェイス、まず卵割ってみるか。このボールに開けるんだ」

音也「おいおい、ど素人にいきなり卵割りなんてできるかー? 難しいぞー?」

チェイス「……何故だ? 包丁を使えば簡単なのではないのか?」ジャキッ

真司・音也「「いやいやいやいやいや!?」」









巧(こいつ等と一緒にいれば……笑えそうだし……な)フッ





◆――チェイスの日記――あの世での生活、初日目――◆



俺に宛がわれた部屋の机の中に、使われていないノートが何冊かあったため、日記というものを付けてみることにした。

最初は何が何やら全く意味不明だったが、ここはどうやら、死んだ仮面ライダー、もしくはそれに匹敵する、強く優しい心を持った戦士が
死後に送られる世界である可能性が高いようだ。

自分が死んでしまい、生きている仲間達とはもう会えないという事実は辛いが……
同時に、同じく人のために戦い、その命を散らした気高い3人の男と出会えた。

仮面ライダー龍騎の城戸真司、仮面ライダーイクサの紅音也、そして……本人はそれで呼ぶなと嫌がっていたが……
やはり彼、乾巧には、仮面ライダーファイズの名が相応しい。



今日は悲しい日でもあるが、それ以上に嬉しい日でもある。
ついに俺に、ダチができたのだ。それもいっぺんに3人もだ。言うまでもなく、上記の3人の仮面ライダーだ。
剛が知ったら、喜んでくれるだろうか? もしそうだったら、俺はもっと嬉しいのだが。


それと、初めて料理というものをした。勝手がわからない事だらけだったか、真司と音也の3人での作業はとても楽しかった。
『猫の手』の意味が解らず、招き猫の真似をしたら音也にひどく笑われた。
その音也はというと、様になっている包丁捌きでパセリという植物を細切れにしていた。少し悔しかった。

音也のレシピに真司の一工夫を加えて完成した『おむらいす』はとても美味しかった。
巧は最初「やっぱり結局熱いじゃねーか」と3分ほどおむらいすを睨み付けていたが、それが過ぎると恐る恐るスプーンで取って食べていた。
一口目を食べた時の表情を見るに、気に入ってくれたようだ。俺も苦労した甲斐があった。

そんな巧を見て真司と音也の2人が笑っていた。何がおかしいのか尋ねると、巧は『猫舌』というものらしい。
巧の舌はざらざらしているのだろうか。



食事の最中、音也が自分がなぜ死に至ったのかを話してくれた。
彼はファンガイアという、人間の命を食らいながら人間社会に溶け込む怪人と戦っていたそうだ。

彼の話で最も驚き、そして心打たれたのは、本来ファンガイアの王でなければ使用できない
闇の鎧なるものを3度に渡って使い、見事王を打倒した事だ。
人間が使用すればたった1回の変身で命を落とすと言われるそれを、音也は愛の力で耐えたのだという。

俺はこの話に感動したのだが、真司と巧の2人は、しきりに「話を盛りすぎだ」と言っていた。
音也の嘘なのだろうか? 俺は本当だと信じたい。とてもいい話だから。



食事が終わった後、3人に下の名前を呼んでも構わないか尋ねたところ
真司と音也は快く、巧は少し迷っていたが、名前で呼ぶことを許してくれた。
今それぞれを名前で表記しているのもそのためだ。

これがきっかけで、他の3人も、互いの名前を読び捨てで呼ぶことにしたようだ。
巧だけは、真司には「さん」をつけて呼ぶと言っていたが。
音也がそれについて、なぜ自分は「さん」じゃないんだと騒いでいたが、真司ほど尊敬に値しないかららしい。



……何を書けばいいのかわからず色々書いてしまった。
書きたい事はまだあるが、今日はこれまでにしておこう。



……ここが本当にただのあの世なのか、それとも別の何かなのかはわからないが
この3人に出会た事は、俺達をこの場所に呼んでくれた神に感謝しよう。



明日も、実に楽しみだ。



◆―――――――――◆



今回は以上です。

また新キャラが出ませんでしたが、次は絶対出します。


…………まさかと思うけど
デュエルの安価スレ(ファラオvsキング)とかやってなかったっけ

>>136

嘘つくのもあれなんで、正直に言いますが、ほぼ確実にそのまさかですね。
満足さんと吸血鬼の人戦でエタったあれですよね。よーく知ってます(白目)

その節はどうも、結局期待を裏切ってしまいすみませんでした。
アレに関しては申し訳ありませんが、再開することは無いと思います。
あのスレは自分的に、もう半分トラウマみたいになっちゃてるもので。
安価スレも多分二度とやらない……ってかできそうにないです。怖くて。
安価は安価で楽しい時もありましたが、それだけリスクもでかいですね。
やっぱり自分で最初から最後まで展開を決められる方が向いてるようです。

当時は色々精神的に不安定な状態にありまして……だというのに勢いであんな事始めちゃった結果がアレですわ。
今は安定して元気だし、前回、前々回のふわっとしたプロットと違い、大事な軸は現時点でしっかり考えてあります。
安価でもないし、エタる事はまず無いかと。

しっかしビビったー。なぜバレたし。
文章の雰囲気とか「……」使いすぎとかですかね。
思えば謎空間に歴代キャラ集めて、なんやかんやで仲良くなって、一緒に料理とか作っちゃうのもまんまアレと同じですね。
これ書いてて今気づいた。

あーービビった。携帯から確認して沢山米来たわーいとか思ってレス見て深夜に即返信するくらにはビビった。

…………また長文キメェとか言われそうな文字量になってやがる……真司のファイナルベント喰らってきます。

下手すりゃコピペになるぞ、落ち着け…

>>138
いえいえ、気持ちはよくわかります
自分もこう、昔の作品がトラウマになって、指なんか動けなくなって、そのまま書けなくなったとか......
でもいつかちゃんと終わらせないと進めないと思います

あと気づいた理由としては多分キャラの配役(?)とセリフ回し、かな?
とくにツッコミのところはちょっと似ている
というか安価デュエル何十回も読み返してるのに物語自体に気づかなかった...



いろんな意味で騒がせてしまってごめん orz


先日はお見苦しい書き込みをしてしまい、誠にすまんこってす。
エタに関しては本当に大丈夫です。克己ちゃんに誓ってエターナル化はあり得ませんので。

短めですが、6時20分頃に投下します。


>>139
自分で改めて見返して、確かにくう疲や初カキコどもに通ずるものがあって草生えた。
これが様々なスレで改変されたりして貼られるのか…………悪くないな(錯乱)

>>142

うおぉマジすか……あんなできそこなった未完SSをですか……
嬉しいような申し訳ないような……再開は……うーん……
少なくともこれを完結させてからじゃなきゃ考えようがないですね。
これが終わって、万が一気が向いたらってことで……すまぬ。




◆――――――――◆




現代社会において、人は死ぬと『あの世』へ行き、天国か地獄に行く、という話を信じている人間が、どれだけ居るかは定かではない。

あの世の有無の答えなど、誰にも分からない。あの世にいる神様と、死んだ者にしか分からないのだろう。


しかし、例え神が居なかろうが、あの世が無かろうが、【我々】は存在している。

今は居らずとも、かつてそこに居た彼等の事を、彼等の、眩い輝きを放つ魂の存在を【我々】は知っている。



あらゆる世界で、大勢の戦士達が、志半ばで散っていった。

彼等の中には、誰もが認める善人も居れば、利己的な動機で行動する人間も居たが、そこにそれほど大きな違いは無い。

彼等はただ、何かを守るために、ひたすらに一生懸命だっただけなのだ。

己にとっての【宝物】のために生き、戦い、死んだのだ。

そんな彼等の、必死に生きた彼等の物語は、命を失ったからという理由一つで、今幕を下ろしている。

それは、いったいどれだけ意味があることなのだろうか。




我々は思い出さなくてはならない。彼等の雄姿を。



我々は忘れてはならない。彼等の背負った悲しみを。



我々は語り継がねばならない。彼等が守ったものの価値を。





【物語】は終わらない。終わらせない。終わらせてはならない。



彼等にはその魂を、輝かせ続けていいだけの、権利がある筈だから……。





◆――――――――◆





◇2日目の朝:2階・チェイスの部屋◇




ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ――――



チェイス「…………」パチッ

チェイス「…………」ムクリ

チェイス「…………」ポチッ



ピピp…………



チェイス「……明るいな。朝と夜の概念もあるようだな……」

チェイス「…………」ゴソゴソ

チェイス「…………」テクテク



ガチャリッ、クルッ、パタン



チェイス「…………」テクテク



コンコン!



チェイス「巧、起きているか」



<…………寝てる……



チェイス「起きているな、入るぞ」ガチャッ


巧「……んだよ、こんな朝っぱらに……まだ8時じゃねーか……」

チェイス「もう8時、だ。早寝早起きは、健康を維持するための人間のルールではないのか?」

巧「……チッ……ったく……わかったよ……起きりゃいーんだろぉ……」モゾモゾ

チェイス「起きたら洗面所で顔を洗うといい。歯も磨いた方がいいだろう」

巧「わかってるっての! お前は俺の母親か……!」

チェイス「母親ではない。ダチだ」

巧「へいへい……」フアァ…

巧「…………」

巧(……夢じゃない、か……)






テクテク……ピタッ



コンコン!



チェイス「真司、朝だ。起きろ」



<……ぐがぁーー……ぐおぉー……



チェイス「…………」ガチャッ

チェイス「……真司、起きろ」

真司「……zzz……そっか……男……ために練習……」

チェイス(……この部屋の目覚まし時計は……これか)



カチカチカチ、カチカチカチ、カチカチッ

ポチッ



ジリリリリリリリリリリッッ!!!



真司「うびゃあああッ!!? ご、ごめんごめん嘘だって! そんなに怒らなくても……あれ?」

チェイス「起きたな。顔を洗って来い。巧は先に行った」

真司「……チェイス? ……あ、そっか……ここあの世だったっけ……」

チェイス「顔を洗ってこい。巧は先に起きている」

真司「あ、うん……ふあぁ……! 朝ごはん作んなきゃな……」ノソノソ




チェイス「後は音也だな……む……?」




♪~~♪♪~ウデヲオオキクノバシテセノビノウンドウカラ!




チェイス「……?」



コンコン!



チェイス「音也、起きているのか?」


<ん? おう、起きてるぞ!


チェイス「……何か、しているのか?」


<あぁ、これか。お前もどうだ! 目が覚めるぞ!



チェイス「?」ガチャリ



ラジカセ『手足の運動です! 1! 2! 3! 4! 』

チェイス「……何をしているのだ。……踊っているのか?」

音也「何だお前、ラジオ体操もっ、知らんのか? 曲に合わせてっ、ほっ、簡単な動きの、体操をするんだ、よ!」

チェイス「このラジカセはどうした?」

音也「初めからっ、俺の、部屋にあったぞ。中身をっ、確認しないでっ、再生してみたら、これだったっ、わけだ」グググ…

チェイス「…………楽しいのか?」

音也「別に楽しくは、ねぇなぁ! 普段やってる奴も、健康のためにっ、やってるだけで……」グイッ

音也「楽しいからやる奴は……ただの物好きっ、だろうな!」グイッグイッ

チェイス「そうなのか。……ならなぜ今やっている?」

音也「条件反射、もとい、気まぐれだな!」ノビー

チェイス「……俺もやってみてもいいだろうか」

音也「好きにしろっ! 俺の動きを、見ながら、音声の指示に従って……やってみろ!」





◇一階・食卓◇



真司「ふいー……さっぱりした! あ、巧おはよ!」フキフキ

巧「あぁ。……ここもちゃんと、朝とかあるんだな」

真司「つくづく俺達の考えてたあの世と違うよなー。さてと、朝ごはんの準備しよっと」

巧「手伝おうか?」

真司「そうだな、じゃあ今朝は頼もうかな。って言っても朝ごはんだから、簡単な物しかしないけどね」

巧「目玉焼きとかか?」

真司「後はまぁ、定番のベーコンとかソーセージとか? 軽くサラダも作って……インスタントのスープとかあると嬉しいんだけどな」

巧「……上の戸棚とかは?」

真司「あぁ、まだ見てないな。後で探すか。さぁ冷蔵庫にベーコンはあるかなーっと……」ガチャッ

真司「んー、ベーコンベーコン……お! あったあった! しかも厚切り! ……あれ?」

巧「……なんだよ?」

真司「昨日ここにあった餃子の皮とひき肉が無い……誰か場所変えたかな?」

巧「俺は触ってないぜ」

真司「……あっれー? おっかしーなー。どこにもないや……? 何でだろ」

真司「……まぁその内見つかるかな。卵4つとベーコン4枚っと」バタン

真司「後はレタスにミニトマトかなー。あ、キュウリも使おっと」ガラッ

真司「あ、パンとお米どっちがいい?」

巧「俺は……パンだな」

真司「ん、了解。上の2人にもどっちがいいか聞いた方がいいよな……巧、聞いてきてくれる?」

巧「あぁ、分かった。……チェイスは何してんだ?」ギシッギシッ






巧「おい、音也。パンと米どっちがいいかって真司が……」ガチャッ



ラジカセ『両足飛びの運動です! はい! ……』



音也「いっち、にー、さんし!」ピョンピョン

チェイス「5、6、7……」ピョンピョン

巧「…………何してんだお前ら」

チェイス「ラジオ体操だ。巧は知らないのか?」

巧「いや知ってるよ! そうじゃなくて何でラジオ体操なんか……しかも第2まで……」

巧「……お前ら、朝はパンと米どっちがいいんだ?」

音也「パン!」フリアゲ!

チェイス「俺もパンで構わない」マゲノバシ

巧「2人ともパンな。……終わったら来いよ?」

音也「うーい!」スッスッ

チェイス「分かった」ビュンッ


ゴンッ!


音也「ぐぇ!?」

チェイス「……すまない、大丈夫か?」

巧「……もっと離れてやれよ」



◇15分後……◇



真司「よーし完成! 手伝ってくれてありがとな!」

巧「……目玉焼きは1個失敗したけどな。黄身が割れた」

真司「まぁ初めてなら仕方ないよ。食っちゃえば同じ同じ!」

音也「おーい! まだかー! 腹減ったぞー!」チンチン

巧「うるせーよ! 今朝は下りてきたかと思えば本当に真横に立って演奏だけしやがって……食器を叩くな!」

音也「捗っただろう?」フフン

真司「邪魔だったっつーの!!」

チェイス「すまないな。任せてしまって」

真司「いいっていいって! ほら、食べよ食べよ!」



パンッ!



真司「いただきますっ!」

音也「いっただきまーす!」

チェイス「いただきます」

巧「……いただきます」




カチャカチャ……



真司「んぐんぐ……うん! 我ながら美味いな!」ホクホク

チェイス「……うむ、美味しいぞ。パンもいい焼き加減だ」モグモグ

音也「おい、俺の目玉焼き潰れてんぞ」

巧「食っちまえば同じだよ。気にすんな」

音也「……それとなんか俺のパンだけ妙に焦げてるっぽいんだが」

巧「あぁ、それな。わざとだよ」

音也「んだとぉ!? 何のつもりだこの野郎!!」

真司「自分の胸に手を当てて考えろ!」

音也「…………」スッ

音也「…………清く正しい心しか感じないぞ!」

巧「やっぱ焦がして正解だったな」

音也「俺の何がそんなに気に入らないってんだ!? ったく、まあいい、俺はどっちかと言えば焦げ目の方が好きなんだよざまぁみろー!」バクッ

真司「知ってるか音也。焦げってな、発癌物質なんだぜ」

音也「!!? お、お前ら、俺のこの健康極まりない体になんてものを!!」

真司「ぎゃはははざまぁーみろー!」

チェイス「…………俺達は死んでいるのだから、癌どころか普通の病気も何も無いのではないのか」

巧「…………」

真司「…………しまった!?」

音也「ふはははははは!! 俺の勝ちだなバカ真司ぃ!!」ムシャムシャ

巧「……やっぱ焦がすだけじゃ生ぬるいな」モグモグ

真司「うん……次はパンに直接色々塗りたくってやるか。潰した納豆とか」ズズ…

音也「聴こえてんぞバカと猫舌めが!」ムシャムシャ





真司「ふぅ……食った食った! ごちそうさまー!」

チェイス「ごちそうまでした」

音也「まぁまぁな出来だったが、卵は味が薄めだったな。次から塩胡椒はもっと使えよ?」

巧「お前マジで次は何かやってやるからな。覚悟しとけよ」



チェイス「……今日はこれからどうする?」

巧「……どうにかして外に出てみようぜ。窓の外を見るに、庭しかないってわけじゃなさそうだし」

真司「となると……やっぱりもうどこか無理やり壊しちゃうしか、無いかな」

音也「だろうな。だがもしこの家を拠点にするなら、あまり目立つところをぶち抜くのは気が引けるな……」シーシー

チェイス「もう一度、一通り開くかどうか試してはみないか」

巧「無駄だって。昨日俺が散々あっちこっち行って試してもビクともしなかったんだぜ?」

真司「どうする? どこを壊す?」

音也「玄関……は無理だな。人ひとり通れる窓が開いてるわけではないし、下手に扉の方を弄ってドアノブがイカレでもしたらそれこそアウトだ」

巧「一番やりやすいのは、このリビングのでかい窓だけど……壊すと風通しが良くなるってレベルじゃないしな」

音也「となると、あまり誰も使わない部屋、壊れても特に支障のない部屋の窓ってとこか」

真司「……じゃあ、あそこで決まりだな!」

巧「だな」

音也「ん? なんだそんな所があんのか?」

真司「あぁ! 誰も使わない、壊れても支障のない部屋!」

巧「つまり……」




真司・巧「「お前の部屋」」

音也「お前らぶっ飛ばすぞ!?」



巧「なんでだよ、誰も困らないじゃんか」

音也「俺が困るだろうが!? 今俺が使ってるだろうがっ!?」

真司「使わなくなるんだよ。これから」

音也「これから!?」

巧「お前はアレだ、そこのソファで寝ればいいだろ。ふかふかだぞ」

音也「俺のプライベート問題はどうなる!?」

真司「じゃ、なんか窓壊せそうなもの探そうか」ガタッ

巧「さっき音也の部屋に行ったとき銀のオブジェがあったからそれでいけそうだぜ」ガタッ

音也「最初から最後まで俺の物を犠牲にする気か……!!」

真司「じゃあそれで行こうか。チェイス、音也の部屋行くぞー」

チェイス「……いいのか? 音也」

音也「いいわけあるか!! お前も止めんか!! つーか何で2階から出ようとしてんだ!? 2階からどうやって外に出る気だ!!」

真司「大丈夫だって! ちゃんと屋根のすぐ向こうに塀が見えたし、それを伝っていけば出れる出れる!」

音也「いっそお前らなんか足滑らして落ちてしまえ!!」ウガー!

真司「巧、今の聞いた?」ヒソヒソ

巧「あぁ、こいつ同じ死人の仲間が怪我すりゃいいと思ってるぜ」ヒソヒソ

音也「……もう怒ったぞ? 怒っちゃったぞ俺? ……ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」ダッ!

音也「紅流秘奥義……!! 脛集中脚ッ!!! アタタタタタ!!!」ゲシゲシゲシゲシ!

真司「ちょ、痛!! 痛たたたた!! 何が紅流秘奥義だよ、ただの脛への蹴りじゃんか!! あ痛ーっ!?」

巧「ほんの冗談じゃねーか! 大人げねーぞ! いってぇ!?」

音也「謝れ!! 謝れオラッ!!」

真司「ぐぬぉ……!! こうなりゃ徹底抗戦だもんね!! 行くぞ巧!!」

巧「……いや、俺もういいや。なんか飽きた」

真司「え!? 何だよここで離脱!? ちくしょう!!」

音也「そらそら謝らんともっと激しくなるぞー!?」

真司「……!! そこだ!! ゴールデンボールキッk(ry」

音也「それはマジでやめて」




ドタバタギャーギャー!!



チェイス「…………」テクテク

チェイス「…………」クイッ



ガチャリッ……



チェイス「……! 皆、玄関が……」



真司「お前なんか禿げて髪の大事さに改めて気づけバーカ!!」グイー!

音也「痛だだだだ!? てめっ、コノヤロ!! 髪はやめろ髪は!!」ギギギギ

チェイス「…………」

巧「……おーい、そろそろ終われよー」

音也「まだだ!! 負けられない戦いがここにある……!!」ヘッドロック!

真司「戦わなきゃ生き乗れないぃぃ……!!」ジタバタ

チェイス(…………記憶データ、オープン。戦闘中に視界を光源に覆われた状況を検索……完了)

チェイス(空間ディスプレイ出力準備……完了。投映開始まで……2、1……)



ピッカァァ!!



真司「ぬわあーーっ!?」

音也「またこれか!?」

チェイス「話を聞いてくれないか」

巧「これ便利だな。色んな意味で……」

チェイス「…………玄関の扉が、普通に開いている」

3人「「「!!」」」

チェイス「外に出れるぞ」

巧「……本当だ……簡単に開いたぞ」カランカラン

真司「な、何で急に?」

音也「ゼェ、ゼェ……や、やれやれ……俺の部屋は守られたか……」

チェイス「行ってみよう。ひょっとすると、俺達の他にも誰かいるかもしれない」




◇探索開始◇



真司「中も綺麗だったけど、外観も綺麗な家だなここ……」

巧「割と気温が暖かいな……春みたいだ」

音也「当然っちゃ当然だが、太陽もしっかりある……本当にここがあの世なのか、ちょっと心配になってきたぞ」

チェイス「……あの建物は何だ?」

巧「……ちょっと遠くにあるみたいだが……でけぇな」

真司「……ドーム……かな?」

チェイス「近くには俺達が居たような民家なども幾つかあるようだが……どうする?」

音也「取り合えずは、あのドームに行くべきだと俺は思うぞ。あれだけ目立つ建物なら、他の死人も行ってるかもしれん」

真司「うん……俺もあそこに行った方が、何かしら分かりそうな気がする。もしかしたら、この世界の管理者……みたいな奴が居るかも」

巧「異議なしだ」

チェイス「……決まりか。ではまず、あのドームへ向かってみよう」ザッザッ





<ちょっと待って! どこへ行く気なんだ!?

<ここで貴様らとのんびりお喋りなんぞしていた所で埒が明かん! 俺は俺で勝手に動く!





音也「うん?」

真司「!! 人の声だ!!」

巧「……!? 今の声は……!!」

真司「行こう! 人がいるならまずはそっちからだ!」ダッ

巧「まさか……!」ダッ

チェイス「……了解した」タタタッ

音也「……両方男の声だったが……はたして美女はいるかなぁー!?」ルンルン

チェイス(……後に聞こえた方の声……どこかで聞いたような……?)





◇チェイス家から北の一軒家、庭◇




ガチャンッ! カランカラン!



優男風の青年「ダメだ! こんな所で1人で行動するなんて危険だ! 何があるかもわからないのに!」

赤と黒の服の男「この家で貴様らと共に居たところで、事態が進展するのか? 要らぬ心配をしている余裕があるなら自分の心配をしろ」

優男風の青年「どうして君はそう……」

黒づくめの男「放っておけ。そいつがそうしたいのならそうさせればいい」

優男風の青年「なっ、あなたまでそんな……!」

グレーの上着の男「それに……実際ここに居ても、何も得られないのは事実だ。単独行動はともかく、動ける内に動いた方がいい」

優男風の青年「……わかりました。ならせめて、君は僕らと離れずに行動して!」

赤と黒の服の男「お前達が俺について来たいのなら勝手にしろ。行先は俺が決める」

グレーの上着の男「……! 誰かこっちに向かってくる!」

優男風の青年「え!?」

赤と黒の服の男「! 敵か……!!」

黒づくめの男「ッ……!」




タッタッタッタ……!




チェイス「!! お前達は……」

音也「…………男4人……いやまだだ!! まだ中にいる可能性もある!!」



巧「ハァ、ハァ、…………ッッ!!!」

巧「……お前……!!」

優男風の青年「き、君は……!! 乾君!?」





巧「……木場……!! お前なのか木場!!」ダッ

木場「乾君っ……!!」





真司「………………なん、で…………だよ……」

真司「…………俺っ……言った、じゃんか……」

真司「お前は、なるべく……生きろって……! 言ったじゃんかよぉ……!!」





黒づくめの男「…………城、戸……?」

真司「……何でだよ……!! 蓮っ!!」ダッ

蓮「っ…………」





チェイス「…………」ジッ…

赤と黒の服の男「…………何だ貴様は」

チェイス「…………お前は、バナナの男か?」

赤と黒の服の男「!? 貴様、俺を知っているのか……!」

チェイス「以前、メガへクスとの戦いで共闘したバナナの戦士と、お前は同じ声をしている」

赤と黒の服の男「……メガヘクス……?」

チェイス(……! そうか、あれはメガへクスにより複製された存在……ここにいるのが複製の元になった人物ならば、知るはずがないか)

チェイス「……俺の名はチェイスだ。お前の名を、聞かせてもらえないか」

赤と黒の服の男「……戒斗」

戒斗「駆紋 戒斗だ」





音也「…………」

グレーの上着の男「…………」

音也「誰、お前」

グレーの上着の男「…………相川 始だ」

音也「ふーん。で、この家の中に女性はいるか?」

始「いや、ここにいる4人で全員だが……」

音也「……チクショーーーッ!!」

始「……俺は名乗ったのだから、お前も名乗るのが礼儀じゃないのか」

音也「紅音也。23歳の超天才でーす」テキトー

始(……何なんだこいつは……)




ここまでです。うーん、短い。いっそ投稿間隔広げてがっつり書き貯めた方がいいかな……?


と言う訳で新たに、555から木場勇治、龍騎から秋山蓮、剣から相川始、鎧武から駆紋戒斗の4人が登場します。


始さんは劇場版ベースで、それ以外の3人はTVベースです。
……ベースってだけでその要素しかないわけじゃないのだ。

描写有った死亡者思い付く限り。登場済みは除いて。
平成は死ににくいイメージだけど、
思い返すと結構死んでるな…。

アギト:木野さん、水城。
龍騎:全員一回は…。オルタナティブたちもか。
ファイズ:草加・長田・レオ
剣:夏美・禍木
響鬼:斬鬼・朱鬼
カブト:風間(劇場版)・剣・矢車(劇場版)・大和・織田・黒崎・黒天道
電王:桜井さん・ガオウ・死郎・イブ
キバ:白峰
ディケイド:士・ヒビキ(先代)
W:おやっさん・克己withNEVERの面々
オーズ:ポセイドン
フォーゼ:イカロス

ウィザード:笛木
鎧武:初瀬・シド・湊・戦極・狗道・朱月
ドライブ:剛・エイジ・ハート・ブレン・メディック・蛮野
ゴースト:父さん

ナチュラルに影山忘れとるー!Σ( ̄□ ̄;)
兄貴に蹴られて来るわ…orz


こんばんわ。深夜ですがいきなり投下しちゃいます。

相変わらず量が少なく、話もちょっとしか進みませんが。





木場「乾、君……本当に、乾君なのか……?」

巧「あぁ……しっかし、お前も来てたとは驚いたぜ。……まぁ、俺が居るんだもんな……先に逝ったお前が居たって、不思議じゃないか……」

木場「!! ここは、やっぱりそういう場所なのか…………それじゃあ、君は……!」

巧「……何とか踏ん張りはしたんだがな……あんまり持たなかった。王を倒して、お前が死んだあの日から……大体1週間くらいってとこか」

木場「…………ごめんっ……本当に、すまなかった……!!」

巧「! 何謝ってんだよ……」

木場「君がこうなってしまったのは、俺の責任だ……!! 俺が、君にあんな仕打ちをしたせいで君の体はっ……!!」

巧「……俺はお前を責める気なんて無い。……お前は、人間とオルフェノクに対する自分の考えに……決着を付けたかったんだろ」

巧「…………お前が長田の死を受けて、あの時点で導き出した答えがそれだった……俺が必死だったように、お前も必死だった」

巧「……それだけさ……」

木場「それだけって……!? 俺が君を死なせたようなものなのなんだぞ!? ……俺の事が……憎くないっていうの……?」

巧「お前は色々重く考えすぎなんだよ。俺は今更その事をどうこう言う気はないんだ」

巧「本人が気にしちゃいないって言ってんだ。お前も気にすんな」

木場「……そんな……だけどっ……!」

巧「しつこい男は嫌われるぜ? ほら、この話は終わりだっ」パンッ

木場「…………ごめん……ごめんっ……」

巧「……ハァ。お前な、こういう時はそういう台詞より、もっと喜ばれる物があるだろ?」

木場「え……、……!」

木場「……あり、がとう……?」

巧「おう。……こんな形でも……こうしてお前にまた会えて……すげぇ、嬉しいよ……木場」

木場「!! っ……乾……君っ……」






真司「何でだよ蓮っ……!! 何で、お前まで、死んじゃったんだよォ!!」グスッ

蓮「…………」

真司「バカ野郎……!! バッカ野郎っ!!」ポロ…

蓮「…………馬鹿はお前だ。馬鹿」

真司「なっ……! 何だよ! 開口一番に言う言葉がそれかよ!!」グスッ

蓮「お前の馬鹿は死んでも治らないと思ってはいたが、本当に治ってないらしいな……」

真司「お前は……! 人がこうしてお前の事で泣いてるってのに……!」グシグシ

蓮「それが馬鹿だと言うんだ」ハァ

真司「バカバカってお前なぁ……!!」

蓮「……俺のような人間のために、お前が泣く必要がどこにある……」

真司「え……?」

蓮「…………俺は、戦ったぞ」

真司「!! …………」

蓮「戦って……勝った。……願いを、叶えた」

真司「…………そっか」

蓮「…………」

真司「……その割に、なんでそんな顔してんだよ……」

蓮「……俺が……憎くないのか」

真司「……は?」

蓮「……あの時……お前が息絶える直前に言った事を……お前がやっと見出した答えを……俺は否定したんだぞ」

蓮「…………裏切られたとは、思わないのか」




真司「……そんなこと思わないよ」

蓮「!」

真司「……確かにあれは、俺が出した答えだけど……願いでもあるんだ。ライダーとして、戦うための願い……」

真司「お前や北岡さん……他の皆と同じ……譲れない、俺の軸」

蓮「だから……! それを俺は、オーディンとの戦いを選んで――――」

真司「そして蓮の軸は、恵理さんを助けることだった」

蓮「ッ……!!」

真司「俺は、ミラーワールドを閉じることが、叶えたい願いだ。でも、俺はだからと言って……」

真司「……蓮が、恵理さんを助けたいと思った気持ち自体を否定する気なんて、絶対無いよ」

真司「だって、それは蓮にとっての、俺が叶えたい願いと同じ……譲れないもので、大切な物なんだから」

蓮「…………城戸……」

真司「それと同じさ。お前はなにも、俺の思いまで否定したわけじゃないだろ?」

真司「……蓮は、自分の叶えたい願いを……ライダーとして、叶えようと必死に……戦い続けた。必死に頑張った」

真司「そして勝ち取った……それは、凄い事じゃんか」

真司「……俺はずっと迷ってた。人に言われる事に左右されて、ふらふらふら……そして結局、最後に負けた」

真司「負けた俺には、お前をとやかく言う権利なんて無い」

真司「……大丈夫だって。……ちゃんと、分かってるからさ」

蓮「…………」

真司「……ってそんな事より! 何でお前まで死んでるんだって! 願いを叶えたなら、それこそ生きてなきゃおかしいだろ!」

真司「恵理さん助けても、お前が死んでちゃ意味ないじゃんかよ……!」

蓮「…………相変わらずお前は……底抜けのお人よしだな」

真司「ぐ……!? へ、へーん! そんなのもう言われ慣れてるもんねー!」

蓮「何より馬鹿だ」

真司「……そっちはまだムカつくかな……!」コノヤロウ

蓮「……フッ……」

真司「!…………へへっ……」ニヘラ





チェイス(…………あれが、巧が言っていた木場勇治と、真司が言っていた秋山蓮か……)

チェイス(巧が友と再会できたのは喜ばしいが、真司の方は……複雑、だろうな……今の話を聞くに、2人の間にわだかまりは無さそうだが……)




戒斗「……それで結局、貴様は何者だ。俺が貴様と共闘しただと? メガへクスなどと言う敵と戦った覚えはないぞ」

チェイス「……今のお前に説明しても、混乱するかもしれないが……」

チェイス「今から俺の話す事は、真実だという事を前提に聞いて欲しい」

戒斗「内容によるな。何か下らんことを企んでいると判断すれば、それ相応の処置をとらせてもらう」

チェイス「……最初に確認するが、お前は……命を落としたのか?」

戒斗「…………体に致命的なを傷を負い、力が抜け、意識を失った事がそうだとするなら、そうだろうな」

チェイス「やはりか……ある時、地球にメガへクスと呼ばれる機械生命体が侵略してた」

戒斗「! 何……?」

チェイス「奴等……いや、奴と言った方がいいのか。奴は地球に存在するありとあらゆる物質や生物を機械に変換し、取り込もうとした」

戒斗「……それはいつの事だ」

チェイス「……2014年の、終わり頃だったと記憶している」

戒斗(……俺が、御神木の元で舞と最後に話をした、少し後か……)

チェイス「奴は他人の記憶を読み取り、その記憶内に存在する人物のデータを元に、機械生命体として、本物さながらのコピーを作り出す力があった」

チェイス「その力で奴は恐らく、既に故人となっていたお前を忠実に模したコピーを生み出したのだろう」

戒斗「……なるほど……それで貴様は、俺と共闘した事がある、と」

チェイス「……今の説明だけで、理解できたのか? まだ、コピーのお前が敵に生み出された事までしか言っていないが……」

戒斗「予想はつく。大方そのメガへクスとかいう知性の無い鉄くずが、何も考えず手駒として俺を作ったものの……」

戒斗「思考回路まで忠実に再現した事で、コピーの俺の怒りを買って反逆された……そんな所だろう」

チェイス(……当たっている……)

戒斗「人の模造品を武器として戦いに挑もうなど、まさにプライドどころか自我すら無い弱者がやりそうな事だな……フンッ」

チェイス「……俺の話を信じてくれるのか? 人間からすれば、かなり荒唐無稽な話だと思うが……」

戒斗「荒唐無稽な出来事など、今まで散々目の当たりにしてきた上に、現在進行形で出くわしている」

戒斗「今更機械怪人が地球侵略をしたからと言って、そう驚きはしない」



チェイス「そうか……理解が早くて助かる。……お前は今、そこの家から出てきたようだが、あの3人とはいつから共に?」

戒斗「昨夜からだ。死んだはずだというのに、目が覚めてみれば、知らない家でどこの誰とも知れん奴等と過ごす事になるとは……」

チェイス「……ダチはできたか?」

戒斗「……何を言っているんだ貴様は」

チェイス「俺にはダチができた。同じ家に俺を含め4人で閉じ込められていたが、3人全員とダチになれたぞ」フンス

戒斗「…………それを俺に言って貴様は何を求めている」

チェイス「お前は誰ともダチになっていないのか?」

戒斗「下らん……志を共にする仲間ならともかく、じゃれ合うだけの友など必要ない」

戒斗「まして奴等と友だちごっこなど不可能だ。まず俺が拒否するし、奴等も拒否するだろう」

戒斗「……約1名、そういった事を望んでいた奴がいるがな」チラッ





巧「……そういやお前、あの時のスーツ姿じゃないんだな。髪もオールバックじゃねぇし」

木場「え? あ、あぁ、そうだね……どうしてかな?」

巧「さーな。ま、何にせよ今の方がいいぜ。アレはお前にゃ似合ってなかったしな」

木場「はは、酷いなぁ……俺が会社勤めとかしてたら、いつもあんな感じだったはずだよ?」

巧「お前はサラリーマンなんて向いてないだろ。ファミレスの店員とかの方がしっくりくるな」

木場「ぷっ何だよそれ……あははっ」




戒斗「…………」

チェイス「…………彼の事か?」

戒斗「終始俺達の中を取り持とうとしていたが、鬱陶しい事この上なかった」

戒斗「どうせ自分が不安だから、繋がりが欲しくて必死だったのだろうが……俺にそんなもの求めるのがそもそもの間違いだ」

戒斗「……どうやらお仲間が見つかったようだしな。もう小うるさい説教も聞く必要もない。清々した気分だ」フン

チェイス「……清々したというより、ホッとしている表情に見えるが」

戒斗「…………誰が、ホッとしていると?」

チェイス「お前がだ」

戒斗「……なぜ俺が安心しなければならない。俺が何に不安を抱いていたと言う気だ貴様は」

チェイス「木場勇治の事が心配だったのではないのか?」

戒斗「寝言は寝て言え」

チェイス「木場勇治に巧が……今彼と話している人物だ。……乾巧が近づいたとき、彼が巧の名を呼ぶまで、ずっと警戒していただろう」

戒斗「……チッ……」

チェイス「だから俺は、お前は彼を気にかけていたのだと思った」

戒斗「……もし仮にそうだったとして、貴様は結局何が言いたい」

チェイス「……いや、ただ悪い人間では無さそうで、ホッとしただけだ」

戒斗「…………わけのわからん事を……」




音也「…………」

始「…………」

音也「なんか、仲間外れだな。俺達」

始「……何がだ?」

音也「俺達だけ、知り合いも何かしらの接点がある奴も、誰もいないようじゃないか」

始「……その方がいいに決まってる。俺はこんな所で、仲間と会いたくなどない」

音也「まぁ、そりゃそうなんだがな……ん、と言うとお前もやっぱり死人か?」

始「…………そうだな。恐らくは、そうなのだろう。やはりここは、死者の住む世界なのか」

音也「どうもそうらしいな。まぁ、取り残された者同士、仲よくしようじゃないか! ははは!」ポン

始「……お前、軽い男だな」

音也「良く言われる! さて、まずは好みの女性のタイプでも語り合おうか! どんなのが好きなんだ。ん?」

始「……本当に軽い奴だな……」

始(俺の周りには居なかったタイプだな、こいつは……。もっとも俺自身、そんなに人間関係が広い方ではなかったが……)

音也「俺の好みはとにかく、美しい事だな! 外見だけではなく心も美しいことが条件だが!」

始「…………」

音也「ほれ、何黙ってんだ。次はお前の番だぞ」

始「……俺はお前と女性の好みについて話す事を了承していないんだが……というか、今のでお前は終わりなのか……」

音也「いいだろう別に~! 減るもんじゃなだろさっさと吐け! こういう話題から始まる男の友情もあるんだぞ?」

音也「それともなんだ、マニアックすぎて人に言えない好みなのか?」

始「人聞きの悪い事を言うな」

音也「なーら教えてみろ! 大丈夫だ、俺は守備範囲が広い! 多少変わった特徴でもそう引いたりはせん!」

始(…………剣崎とは違う方向で、なかなか面倒そうな奴だ……答えないといつまでも付き纏いそうだな……)




始「…………強いて言うなら、明るくて、元気な子だ」

音也「ほう! 確かに明るい事はいい事だな! 元気なのも、こちらが活力を得られそうだしな!」フム

始「誰にでも、分け隔てなく優しくて……感受性が豊かで……笑顔の良く似合う子だな……」フッ

音也「なるほどなるほど…………お前それ、実際に居る女だろう?」ニヤニヤ

始「……まぁ、そうだが」

音也「惚れてたのか? どんな関係だったどこまで行った!?」ウリウリ

始「別にそんなんじゃない……大切な存在……生きがいだった事は確かだが」

音也「そりゃあもう惚れてるって事だろうが~! 鈍ちんめ! 年は幾つだ、上か下か!?」ニヤニヤ

始「そんなんじゃないと言ってるだろう……年は下だ。……あれから4年だから……14歳か」フッ

音也「えっ」

始「……何だ?」

音也「…………あ、あぁいや……まぁ、その、なんだ……い、いいんじゃないか?」

音也「好みは人それぞれだからな! そいつにしか分からん価値があるんだろう! はははは!」

音也(……しまったな、こいつはそういう趣味の持ち主だったか……)

音也(『あれから』と言うのが何を指してるのかは知らんが、4年経って14歳って事は最初は10歳……ひえー……)

音也(俺とは一生相容れそうにないな……と言うより、世間と相容れんのでは……)ウーム

音也「…………あー、お前……」

始「……?」

音也「……色々あるだろうが……頑張れよ! 法を犯さん程度に……!」d グッ

始(…………物凄く、失礼極まりない勘違いをされている気がする……)イラッ




巧「……って、ここでお前とだけ駄弁ってても仕方ないな。他の奴等にも紹介しとかねーと」

木場「……えっと、乾君、彼等は……?」

巧「んー……まぁなんつうか、新しい……友達って言っていいのかな。同じ共通点がある仲間っていうか……」

木場「! まさか、オルフェノク?」

巧「いや、そうじゃねーんだけど……その、何か巨大な何かと戦って死んでいった、戦士、みたな……」

木場「……それが共通点?」

巧「あぁ。それ以外はてんで違うな。ただの人間が2人とオルフェノクの俺と……あっちに居るあいつはロボットだ」

木場「ロ、ロボット!?」

巧「2人の人間の方も、とても信じられないような人生送ってたみたいだぜ」

巧「……おい! 真司さん!」

真司「! おう、巧! ……やっぱり、そっちは巧の知り合い?」

巧「あぁ。話してた木場だよ。木場、この人は城戸真司ってんだ。アホだけどいい人だぜ」

木場「そ、そう、なんだ……? ……木場勇治です。よろしくお願いします、城戸さん」ニコリ

真司「君が木場君かぁ! 話に聞いた通り、優しそうな顔してるなぁ~!」ウン

木場「あはは……どうも。……乾君、この人たちには、どこまで……?」

巧「ほぼ全部話した。俺とお前がオルフェノクだって事もな」

木場「え……!?」

巧「……悪いな、勝手に話しちまった。お前が来るとは思ってなかったから……」

木場「あ、いや、俺は別に……でも、良かったのかい? そんな事……」

巧「あぁ。話して良かったって思ったよ。本当に皆、いい奴等だぜ」フッ

木場「……そうか。君がそういうなら、大丈夫かな」

巧「あぁ。特にこの真司さんは、普段はアホだけど、お人好し度は半端ないぜ」

真司「貶してんのか褒めてんのか分かんないだけど……」

蓮「クックク……! お前、こんな所ですら、もう馬鹿が知れ渡ってるのか……」クツクツ

真司「うっせぇ!」



巧「……そっちの黒いのは誰だ?」

真司「あぁ、俺が話した秋山蓮だよ。……俺の後に、死んじゃったらしい」

巧「……そっか……」

蓮「……おい城戸、お前いったいどこまで……」

真司「あー……ごめん、ライダーバトルに関する大体の事は……言っちゃったんだ……」

蓮「お前っ……何を考えてあんな事を他人に……!」

真司「で、でも!! こいつら皆いい奴なんだ!! ちゃんと蓮が悪い奴じゃなくて、色々あって戦う事を選んだ事も言ったから、蓮を悪く見る事は……!」

蓮「そんな事まで勝手に……! ……ハァ、馬鹿が……」

真司「……ごめん……」

蓮「……もういい。既に知られてるものは仕方ない。……それよりお前ら、死者が集まる場所だという事以外に、ここについて何か分かってる事は?」

真司「それが、まだ外に出たばっかりで……今は調度、あのドームに行こうとしてたんだ」

蓮「……ここは本当にあの世なのか? 家の中にいた時も思ったが、現代的すぎるだろう……」

木場「でも、俺たち全員、死んでる事は確実に共通しているし……」

木場「天国……なのか地獄なのか、なんとも分からないけど、死後の世界なのは間違いないんじゃあ……」




チェイス「いづれにせよ、あのドームに向かうべきだ。何らかの疑問が解決される可能性は、少なからず有る」

巧「おぉ、チェイス、戻ってきたか。……そいつは、知り合いか……?」

チェイス「いや、知り合いと呼べるような関係ではない。俺が一方的に、少し知っていただけだ」

戒斗「……貴様らは?」

真司「俺は城戸真司。蓮とは知り合いなんだ! よろしく!」

巧「……乾、巧」



戒斗「……木場、貴様はこいつらと行動するんだろう?」

木場「まぁ、うん。そうだね」

戒斗「なら、俺が居る必要も無いな。じゃあな」

木場「えっ!? 何言ってるんだよ! 君も一緒に行動しようよ!」

戒斗「必要ない。俺は俺で勝手に動くと言った筈だぞ」

巧「お前なぁ……人が親切に言ってるんだから素直に聴けよ! 反抗期かよ!」

戒斗「俺は一人でも危険に陥る事などそうそう無い。さっさと行け」

巧「……こいつ……」

木場「そんな事言っても……!」

蓮「放って置けと言ったろ。こいつがここまで言うからには、余程自分に自信があるんだろう」

真司「お、おい蓮!」

蓮「周りでぞろぞろ動かれるより、1人で居た方が、かえって安全な場合もある」

蓮「こいつ自身がこうと決めているんだ。俺達がとやかく言って世話を焼く必要もないし、焼かれる方がこいつには迷惑……」

蓮「選んだ道の先でどうなろうと、自分の選択した結果なら文句はない……そうだな?」

戒斗「その通りだ。……お前は最初の3人の中では、一番話が分かる奴だったぞ。さらばだ」クル

真司「あっ、お、おい! どうすんだよ蓮! あいつ行っちゃうぞ!?」

蓮「だから奴がそうしたいならそうさせろと言っているだろ……」

木場「危険すぎるでしょう!? 腕に自信があるのか知らないけど、これと言って武器になりそうな物なんて何も持ってないし……!!」

巧「…………」




ザッ!!




真司「! チェイス……!」



戒斗「…………何の真似だ」

チェイス「……一人で行かせるわけには行かない」




戒斗「俺に同行者など必要ない。邪魔だ、退け」

チェイス「お前が良くても、俺が良くない」

戒斗「……これだけお仲間が居るのに、俺が居なくなるのは怖いとでもいう気か?」

チェイス「そうだ」

戒斗「…………1人欠けただけで、それが不安になると言うのか?」

チェイス「そうだ」

戒斗「……話にならんな。俺のコピーと『共闘』したというから、それなりの力を持っているのかと思ったが……」

戒斗「守ってもらわなければ先に進めない、臆病者だったとはな。俺のコピーにも、守ってもらってやっと立っていたのか?」ギロ




真司「お前っ……!! チェイスは臆病者なんかじゃないぞ!!」

巧「……チェイス! もうそんな奴ほっとけ! 行こうぜ!」

チェイス「もう少し待ってくれ」



チェイス「……俺が怖いのは、守ってもらえなくなる事ではない」

戒斗「……何……?」

チェイス「……お前が俺達と行動を共にしてくれなければ、俺は……」








チェイス「お前を守れない」



戒斗「……!?」




チェイス「俺はそれが怖い。俺はお前をまだよく知らない。だが、お前が俺のあずかり知らぬ場所で危機に陥る事になれば……」

チェイス「俺は、お前をここで引き留めなかった事を、後悔するだろう」

チェイス「俺は後悔をしたくない。どんなときでも、自分の納得のいく選択を選びたい」

戒斗「…………貴様は、俺が弱いとでも言いたいのか?」

チェイス「そうではない。……実際にお前は、俺の心配が無用なほどに強いのかもしれない。だが……」

チェイス「この世に絶対的な強さなど無い。万が一と言う事も有りうる。だからこそお前は、ここに居るのではないのか?」

戒斗「!! …………」

チェイス「俺は、今こうして言葉を交わし、同じ境遇にある人間が傷つく事に悲しまずにいれるほど、都合の良い心を持っていない」

チェイス「…………俺を弱い男だと、思っても構わない。……構わないから、共に来てはくれないか」

チェイス「…………頼む」ペコリ

戒斗「…………」




真司「チェイス……お前……」

木場「…………」

巧「…………」

蓮「…………」




戒斗「…………」








――――それが俺の弱さだとしても……拒まないっ……俺は……泣きながら進むッ!!







戒斗(……弱さを認め、肯定し……本当の意味で強くなる……か……)

戒斗(……もっともこいつの言う弱さは……そもそも弱さではなく、強さなのだろうがな)

戒斗(…………『優しさ』、という名の……)

戒斗(……優しい者ほど、先に倒れていった……しかし……)

戒斗(奴等は決して、本当に弱かったわけではなかった……その優しさに、意味が無かったわけではなかった……)

戒斗(一人一人の優しさが、他の命へと連なり……最後に、葛葉の勝利と言う形へ変わった)

戒斗(人類は……俺という魔王から、未来を奪い返した……)

戒斗(…………やはり、認めざるを得んようだな……葛葉……)

戒斗(お前の言う……本当の強さとやらを……)



戒斗「……いいだろう」

チェイス「!」

戒斗「赤の他人の安否で一々不安になる、お前の考え自体は気に入らないが……その意志は、固く強い」

戒斗「ここでお前の申し出を蹴るのは簡単だが、それはお前の強さを否定する事になる」

戒斗「……今はお前の……その強い心に従ってやる」

チェイス「……俺は、心が強いのか?」

戒斗「俺は強い者を弱いと評価する事も無ければ、弱い者を強いと評する事も無い」

戒斗「俺が強いと言ってるんだ。お前は強い。この俺が認めてやったんだ……もっと堂々としていろ」クルッ

チェイス「…………」

戒斗「何をしている。あのドームに向かうつもりだったんだろう。さっさと行くぞ。そっちに居る2人も呼んで来い」

チェイス「……わかった」




真司「……あいつ、説得しちゃったよ……あの扱いづらそうな奴を……」

木場「……いい人……いや、いいロボットだね。……本当にロボットなのかい?」

巧「……人間よか、よっぽどできた人格してるだろ?」

蓮(……無表情で思考が微妙に読めないが……あいつも、城戸と似たタイプか)




戒斗「……おい」

チェイス「何だ?」

戒斗「……お前はなぜ、そうまでして他人を守りたがる? まして拒絶すら示す相手に、手を差し伸べた……?」

チェイス「…………」

チェイス「人間を守るのが……俺の、仮面ライダーの使命だからだ」

戒斗「……仮面……ライダー、だと……?」

チェイス「人間の平穏と尊厳を守る、希望の戦士の名だ。俺はこの名に相応しくあるために、人間を守り続ける」

チェイス「お前も、誰かにとっての、希望の戦士だったのではないのか?」

戒斗「…………違うな……断じて違う。俺が誰かの希望だと? フンッ……ありえん話だ」

戒斗「……寧ろ、全ての人間にとっての……『絶望』といったところだな」スタスタ

チェイス「…………」

チェイス(……全ての人間にとっての絶望……? この男は、人間の希望を奪うような事をしたのか?)

チェイス(……とにかく、音也ともう1人を呼んで来よう)



◇――――◇



真司「よーっし! それじゃあ、8人皆でドームに向かうって事で、いいんだよなっ?」

始「あぁ、それでいい」

木場「俺も賛成だよ。現状、あそこが一番目立つ建物だし、調べれば、何かしら出てきそうだからね」

蓮「まぁ、異議は無い」

戒斗「……同じく」

蓮「……ところで、相川」

始「……何だ」





音也「――――だからだな、女の魅力と言うのは最終的に母性に集約されるわけで、そうなれば当然それなりの人生経験がある方が魅力に溢れてるわけだ!」ペラペラ

音也「身体的にも、出るとこ出てる方が色々できるし、どんなものも大きいに越した事は無い! そうだろう? つまり……」ベラベラ

蓮「…………お前はさっきからこいつと何を話してるんだ」

始「……俺が聞きたい……」ゲンナリ





ここまでです。

次回はまた何人か増えるかも……?


気付けば3週近く放置してたのか……近々親族の葬儀があるので、投下はまだできそうにないです。来週の木曜日までにはなんとします。

唐突にワンピ熱が再燃しアラバスタ編からアニメ追いかけてて執筆が遅れてるのは私の責任だ。ごめんなさい。
どうでもいいけど、ライダーでワンピ世界生き残れそうなのって誰だろ。
一瞬クロスとか過ぎったけど、>>1が一番好きな龍騎やファイズで良くてグランドライン前半ってとこよね……。

ロギア系能力者「なぜ私に物理攻撃が…」

RX「今のはただのパンチだ」


チョーオヒサシブリネ! サイテー!
こんな時間に失礼、>>1です。

わかってる、みなまで言うな……

前回の投稿の少し後にちょっとしたゴタゴタがありまして、SS書いてる場合じゃねぇ!
ってな事になって、それは先月の終わりごろに解決したんですが、じゃあいざ書こうかなと思ったら、おろ? 全然捗らねぇやべぇ、と。
仕方ないからまだ見てなかった仮面ライダーチェイサーを見たり、空島編を見たりしてインスピレーションを回復させとりまして。
最近になってようやくそこそこ感覚が戻ってきて、投下の目途が立ったのでこうして報告に来た次第です。

生存報告は次からできる限りします。まぁそんな報告必要ない位のテンポにできるのが一番ですが。

予定通り行けば明日の、というか今日の夜7時ごろには投下できますので
まだ待っていてくれてた天使は>>1の罪を数えながらライダーキックの準備をどうぞ。


時間ですので上げてきまーす。




◇移動開始から約10分◇



蓮「……しかし、本当に妙な場所だな」

チェイス「死後の世界なのだから、すぐ前まで生きていた俺達からすれば、『妙』で当たり前では?」

蓮「……お前は……」

チェイス「チェイスだ。ロイミュードという、所謂ロボットだ。人間ではない」

蓮「…………」チラッ

真司「はは……信じられないかもしんないけど、本当だぜ。目から映像出すの見たし」

蓮「……ロボットにまで、死後の世界のルールが適応されるのか?」

チェイス「それは……俺も気になっている。ロイミュードは人間をベースにして作られている」

チェイス「故に限りなく人間に近い存在ではあるが……機械である事に変わりはない」

チェイス「その俺が、人間のお前達と同じように、死んであの世にたどり着く事があるのか……疑問だ」

巧「でもこうしてここに居るんだから、ロボットも対象だったって事じゃねーのか?」

始「……そもそもここが、本当にあの世なら、だがな……」

戒斗「……あまりにイメージとかけ離れているからな。それが所詮、人間の勝手な想像によるものだと分かってはいても……」

戒斗「ここは現世との違いがほとんど無さすぎる。物に触れた時の感触……聴こえる音……全てが同じだ」

戒斗「……今歩いているこの風景に関して言えば、不可思議ではあるがな」

始「右を見れば見渡す限りの草原と田んぼ、その向こうには大きな山と森……」

始「左を見れば、同じ草原の奥に砂浜を挟んで海……正面のドームとのアンバランスさも相まって、もはや意味不明だな」

巧「俺達が居た家があった場所から少し歩いただけで、ここまで景色が変わるなんてな」

木場「……やっぱり、あの世で間違いんじゃないかな? 俺達全員、死んでいるのは確実に共通しているし……」

木場「何人もの死んだ人間が同じ場所で生き返って……なんて、そっちの方がありえないと思うけど」

真司「だよなぁ。もしも、ここが地球上の何処かであの世じゃないとしても、こんな凄い自然の中に巨大ドームがある変な場所なんて、どこにも無いよな」

戒斗(…………海とドームを除けば……昔の沢芽に、少しだけ似ているか……)



音也「ま、何でもいいだろ! 俺達は今こうして、言葉を交わし物を食べ、己の意志で行動できる……現世の肉体が死んでも、俺達の魂はここに在る」

音也「難しく考えんでも、気ままに楽しくやってりゃいいんだよ!」ケラケラ

木場「ははは……気ままに楽しく、か……何だかんだで、大事な考えかもしれないですね」

始「それも悪くはないが……まずはここが、本当に俺達にとって害の無い場所なのか、判断がつくまで気は抜けんぞ」

音也「んも~、お前警戒しすぎだろぉ! 息苦しくならんのか? 肩の力抜いてみー」

始「……お前は不用心すぎるし力を抜きすぎだ」ハァ

巧(……出会って十数分でバカを見抜かれてるな……いや、見抜くとか以前の問題か)

音也「んだとぉ! 人をバカを見るような目で見ながら何を言うか!」

始「…………お前がバカじゃなかったら、ここに居る全員がノーベル賞でも取れそうだな……」フー…

音也「んなこたぁない! 俺はバカじゃないしむしろ天才だが、バカと仮定したとしても1人はバカのままだろう!」

巧「誰がだよ?」

音也「真司に決まってんだろ」

木場「……? あ、あれ? 城戸さんは?」

蓮「! 城戸! どこだ!?」

真司「え? ここだけど?」ヒョコッ

蓮「…………橋の下に降りて何をしてる……」

真司「いやー、かなり綺麗な水してるからさっ、もしかしてザリガニとかいるんじゃないかなーって!」ワクワク

蓮「…………」

巧「……あのなぁ真司さん……」

音也「見ろ。俺は絶対にこいつほどバカじゃないぞ!」

始(……どっちもどっちだろうに……)

チェイス「……ザリガニがいるのか?」

真司「かもしんない! ほらこれ見ろよ! すっげぇ水が透き通ってるだろ!?」パシャパシャ

チェイス「…………」ザッ

巧「いやお前まで行くなよ!?」ガシッ

蓮「さっさと戻れ城戸! 置いていくぞ馬鹿がっ……!」




◇数分後◇



チェイス「着いたな」

真司「うっわー、やっぱでっかいなーここ……」オー

木場「東京ドーム並みですね。……人は……見当たらないけど」

巧「この雰囲気だと、中にいる可能性も望み薄だな……」

蓮「どっちにしろ中には入るんだ。行くぞ」

始「慎重に進むぞ。何か待ち構えている可能性も考慮しなければならない……」

音也「んで、どこから入る?」

戒斗「正面だ。わざわざ別の入り口を探す方が面倒だ」

始「人の話を聞いていたか……?」

戒斗「俺が1人で行って確認すればいいだろう。何かあったとしても、俺ならば多少の無茶は可能だ」スタスタ

木場「あ、ちょっと……!」

蓮「…………」スタスタ

真司「蓮?」

蓮「あいつ1人では不安だ。俺も行く」スタスタ

真司「あっ、じゃあ俺も!」タタタッ

木場「……彼等だけ行かせて、いいのかな」

チェイス「なら、俺も行こう」スッ

巧「……もういっそ全員で行っちまおうぜ。ここに何か罠を仕掛けるくらいなら、最初から俺達を襲うなりしてるだろ」

木場「まぁ……確かに」

音也「だとよ。行くぞハジメちゃん!」

始「……何なんだその呼び方は……」

巧「……金○一か?」

音也「? なんで耕助が出てくる?」

巧「あぁ……そっちしか知らないのか……」

木場「?」



◇ドーム内・通路◇



戒斗「…………なんだ……これは……」

戒斗(……売店があるのに店員が誰もいないのは、まぁいい……だが……)

戒斗「……『これ』は……なんの、人形だ……?」

戒斗(等身大の……アーマドライダーのような人形が、上下左右からライトを当てられて立っている……)

戒斗(隣には1台のバイクもある。こっちは本物の二輪車のようだが……)

戒斗(……触った感触は、ただのマネキン等のそれだな……特に目立って怪しいところも無いが……)

戒斗(同じように、これとは違うデザインの人形とバイクがセットになって、いくつも通路に並んでいる……)

戒斗「……! これは……碑文? この人形の説明文……なのか?」




真司「おーい! 戒斗ー!」

戒斗「!」

蓮「……何か見つけたのか?」

戒斗「お前達、結局ついて来たのか……」

蓮「あぁ。それで……これはいったい何だ?」

戒斗「さぁな……今その説明文らしいものをこいつの隣に見つけた」

真司「人形……だよな?」

戒斗「そうらしい。ただのオブジェ……この通路の飾りとして置かれているようだ」

真司「……黄色い目に、黒い体……赤い線がちょっと入ってて、メタリックな感じ……」

真司「なんかかっこいいなぁ……! 俺達が変身してたのとちょっと通ずるところあるよな!」

戒斗「! ……変身、だと?」

真司「ん? 蓮から何も聞いてないのか?」

戒斗「……そいつとはお互い、身の上話をするような関係じゃないからな……だが、変身とはどういう事だ」

戒斗「貴様らもアーマードライダーなのか」

真司「アーマード……? 『ライダー』の部分は合ってるけど、俺達のは仮面ライダーっていうんだよ」

戒斗「……また、仮面ライダーか。あのチェイスとかいう男もそう言っていたが……」

蓮「……城戸……あいつも、俺達と同じなのか? 俺達が出会わなかっただけの……」

真司「いや、チェイスの言うライダーと、俺達が知ってるのとは全然違うよ。変身して戦うのは同じだけどな」



音也「おーい、なんかあったかー?」

チェイス「……そこにあるのは、人形か?」

真司「あれ、チェイスに音也、皆まで?」

始「俺の警戒も駆紋の様子見も、意味は無かったようだな……取り越し苦労か」

音也「んん? 何だこりゃ。妙にメカメカしいデザインの人形だな」



木場「……えっ……!?」

巧「!! こいつは……!!」

戒斗「……貴様ら、これを知ってるのか?」

木場「し、知ってるもなにも、これは……!!」







ファイズ人形『』






巧「ファイズ……!?」




チェイス「!! まさかこれは……お前が話していた、オルフェノクと戦うための戦士……ファイズなのか?」

真司「え!? そ、そうなの!? これがファイズ!?」

巧「あぁ、そうだ……!! 俺はこいつに何度も変身した! 俺だけじゃない、木場が使った事だってある……!!」

木場「だけど……どうしてファイズの人形が、こんな所に飾って……!?」

音也「…………」

戒斗「……どうやらこの世界は……貴様らのような、他人のために戦って死んだ戦士のための空間……のようだな……」

木場「ど、どういう……?」

戒斗「この世界の支配者か何かかは知らんが、それに準ずる存在の言う、既に死んでいる『仮面ライダー』に当てはまる人物の受け皿……」

戒斗「それが、『この場所』なんだろう」

始「!! 仮面ライダーだと……?」

音也「……やっぱりお前も、何かと戦ってたクチか?」

始「……俺の知っている仮面ライダーは……アンデッドという、人間を襲う不死身の生命体を封印する事を仕事にした戦士の事だ……」

始「だが、ここが仮面ライダーのための世界ならば、俺がここに居るのはおかしい! 俺は……仮面ライダーではない……!」

音也「それを言うなら、俺だってそんな名前で呼ばれたことは無いぞ。っていうか、生きてた頃にそんな言葉を聞いた事すらないんだが」

巧「俺だってそうだ! 仮面ライダーって何なんだよ……!? 俺はそんなフレーズ一度も……」

戒斗「本人がどう思っていようが、ここの支配者がそうだと判断した死人はここへ来る……そんな所だろう」

戒斗「木場、それから、乾巧と言ったな。こいつを見ろ」

巧「……?」

木場「……『仮面ライダーファイズ』…………『乾 巧(18)』……!!?」



巧「俺の名前……! って、何で、俺にだけ限定されてるんだ……? 木場や他の奴等も、何人も使ってたのに……」

音也「お前が一番、そのファイズのベルトってのを使っていたって事もそうだろうが……」

音也「何よりも、お前がその力を何のために使っていたか……そこが重要なポイントになってるんだろうな」

始「! お前、何か察しがついているのか……!?」

音也「……あぁ。多分だがここは……俺達にとっての天国であり、墓であり、弔いの地……って感じか。少なくとも、ここを用意した誰かにとっては」

蓮「……その碑文には、何が書いてある?」

戒斗「…………『元々は人間が死亡した後、超低確率で蘇生し、進化した新しい生命体、オルフェノクのための専用武装である』」

戒斗「『オルフェノクによって構成された巨大企業、スマートブレインによって製造された』」

戒斗「『いずれオルフェノクの中に出てくるであろう反乱因子を、確実に抹殺するための武器を求めた結果作成される』」

戒斗「『オルフェノクのみが使用し、装着・変身が可能なファイズギアは、その全ての武装が、オルフェノクを死に至らしめるための力を有している』……」

戒斗「……このファイズギアとか言う物のシステムについての説明は、合っているのか?」

巧「…………あぁ……完全に合ってる……」

木場「その後は、何て……?」

戒斗「……機能についての説明は少し飛ばすぞ。……しかし……こいつは相当お前を知っているようだぞ。乾」

巧「知って、いる……?」






戒斗「……『主だった使用者は、乾巧18歳。幼いころに火事に遭ったことで一度は死亡するものの、それがオルフェノクへの覚醒の引き金となった』」

戒斗「『オルフェノクである自分自身を恐れるあまり、以降他人との交流を極力避け、孤独な毎日を送る』」

巧「ッ!?」




戒斗「『普通の人間ではないという事実から、夢や希望を抱く事が無かったため、どんな仕事も長続きせず、住所を転々としていたが』」

戒斗「『ある時ファイズギアを所持した普通の人間の少女、園田真理と出会い、流されるままにファイズへと変身し、彼女を襲うオルフェノクを撃破する』」

戒斗「『それ以降、なし崩し的にファイズの変身者として、オルフェノクと戦う事になる』……」

戒斗「……何か相違点は?」

巧「……な、無い……」

木場「これはいったい……何がどうなって……」

戒斗「この後も、お前がどうして、園田とかいう女と行動する事を決めたか、人間のために戦う事を覚悟したのか……そんな事が綴られている」

戒斗「……最後のくだりだ……『同じ人間だと信じるオルフェノクを、それでも人間のため、自分がその手を汚して殺める事を選び、罪を背負う事を覚悟した男、乾巧』……」

戒斗「『心許せる友や背中を預けた戦友を失い、戦う事の罪を背負い続け、命と心をすり減らしながらも、人間のためにその身を犠牲にし続け散った彼の生き様は』……」

戒斗「…………『間違いなく英雄のそれであり、仮面ライダーの名に相応しい』……」

戒斗「……だ、そうだ」

巧「……!!」





◇――――◇


真司『だってさ、仮面ライダーなんて、同じ名前の変身する奴が2人もいて、変身して戦うのに限れば、巧君もファイズに変身するでしょ?』

真司『んでもって、皆人を襲う悪い奴と戦ってて、これって偶然?』

チェイス『……偶然、とするには……あまりに共通しすぎているな』

巧『……偶然じゃないのかもな。ひょっとすると、そういう奴らのための、あの世だったりしてな』

真司『ってことは……巧君は差し詰め……仮面ライダーファイズってわけだなっ!』


◇――――◇





巧(あの時話してた事が……まさか本当に……!?)



巧「……なんなんだよ……わけわかんねぇよ……!」

木場「これを作った人物は……何をどこまで知っているんだ……?」

蓮(『仮面ライダーの名に相応しい』……? 城戸は俺達の知るライダーとは違うと言っていたが、ここで意味する仮面ライダーとは……)

チェイス「……! それでは、ここに並んでいるのは全て、ここに来た……死んだライダーの……!!」

真司「じゃ、じゃあもしかして、俺のもあったりするの!?」

音也「だろうなぁ。おい、木場……でいいよな? これ、お前のじゃないか? 名前があるぞ」

木場「え? ……こ、これが……?」

音也「なになにー? あー、『仮面ライダーオーガ』……変わった見た目だが、こうして見ると、ファイズと同系統だってのが分かるな」

木場「本当だ、俺の名前が……! で、でも、俺はこんな物知らない! 変身した事が無いどころか、スマートブレインでもこんなもの開発してないはず……!」

音也「? そりゃおかしいな。しかしこうしてお前の名が刻まれんだぞ? ここの説明見てみろよ?」

木場(……『主な変身者は木場勇治21歳……ファイズギアと同じく、対オルフェノク用兵器として作られた、別名【帝王のベルト】……)

木場(基本世界では存在しないシステムであり、基本世界から派生した分岐世界においてその力を振るった』……?)

木場(……【基本世界】って……何だ? 【分岐世界】……? 何のことを――――)ズキッ

木場「痛っ……!? えっ……?」ズキンズキン

蓮「……木場?」

木場(何、だ? 急に頭痛が……?)ズキズキッ




ビキイィッッ!!




木場「っがッ!! づあぁあぁ!!?」

チェイス・始「「ッ!!?」」

巧「!? 木場!?」

木場「ぐ、がぁぁあぁ……!!!」ギリギリギリ

蓮「木場!! おい!!」

戒斗「いったい何事だ!!」

真司「ちょ、え!? 木、木場さん!?」

音也「な、なんだおい、どうした急に?」

巧「木場!! おい木場!! しっかりしろ!!」

木場「ぐうぅぅ……!?」





―――――――何を……考えてるんですか?



木場(!? 長田さん……!? 何だ……頭の中で、映像が浮かび上がって……!!)



―――――――もう一人……俺達と同じ夢を持っていた人間の事を……



木場(!! 俺の声……!? まさかこれは、俺の記憶なのか……!?)





結花『……ファイズ……乾さんの事ですか?』

木場『あぁ……不思議な男だった……彼が生きていてくれれば早く夢に近づけるのに……』










真理『もしかしたら私……嘘つきかもしれない……』

真理『私……人間もオルフェノクも関係ないって言ったけど……水原が言ってたでしょ? 巧がオルフェノクかもしれないって……』

真理『あの時……凄く嫌な気分だった……だから、嘘つきかもしれない……』


木場『………ッ………』





木場(何なんだ……!? こんな事……俺は知らない!! 知らないのに……!!)

木場(……本当に、こんな事があったような、気がしてきた……! 凄く、しっくりくるっていうか……)

木場(実際に経験した……忘れようがない、重要な思い出のような……!?)









海堂『…………結花……』



バリッ!! バリバキバギョッ!!



木場『っ!!! 海堂おおおぉぉぉーーッ!!!』

村上『君たちは人間にもオルフェノクにもなりきることができなかった。そして……』

村上『……人間に裏切られたのだ!』

真理『…………』

木場『真理さん……!? どういうことだ!?』

真理『ごめんねぇ、木場さん。でも、どうしようも無かったんだぁ』

木場『嘘だっ……!! 君が俺達を……裏切ったっていうのか!?』

真理『だって、信用できないから。あなたたちの事。いつ人間の敵になるかもしれないし』

真理『……だから、早く死んでよ』









木場『うう……っぅうう……!! あ゛あ゛ぁァッッ!!!』


ガシャアァンッ!!


木場『……海堂っ……!! 結花ぁ……!!』

木場『俺は…………俺は今まで何をやってきたんだぁァッ!!?』

木場『うああああぁあぁぁあっぁぁ……!!!』




木場(……なんだよこれ……園田さんが……俺達を裏切って……?)

木場(…………そんな訳ないじゃないか……どうしてその場所に、園田さんが居るんだ……!)

木場(奴等と彼女が繋がっているとして……スマートブレインと、どう繋がる事が出来るって言うんだよ……)

木場(何で、疑問に思わないんだ……『この俺』は、そんな事も気づかなかったのか……!)












観客『オーーガ!! オーーガ!! オーーガ!!』

木場『…………』

ファイズ『木場……!?』

真理『木場さん……!』




――――0・0・0――――

――――ENTER――――



【STANDING BY……】




木場『…………変身……』




【COMPLETE……】



ギュウゥオオォォオオォォ……!!!



オーガ『…………』

ファイズ『……!!』

真理『何で……? 何で木場さんが……!?』

オーガ『……漸く分かったんだよ…………俺が生きていく道は一つしかない……』

オーガ『俺はオルフェノクとして生きていく!!!』




木場(馬鹿な……事をっ……!!)









巧『木場……!! お前本気か!? 本当に理想を捨てたのか!?』

木場『そうだ!! その証拠に俺はお前を倒す!! 例えお前がオルフェノクであっても……!!』

巧『……いいぜ……! お前がやれなかった事を俺がやる!! お前の理想は俺が継ぐッ!!』




木場(…………乾君……君は本当に……どこまでも……)




ファイズ『!! 真理……!!』

エラスモテリウム『グルルルル……!!』

真理『ひっ……!』

オーガ『!!!』ダッ




【EXCEED CHARGE……】




ギャギィン!! ググググ……!!



オーガ『っ……!!』

真理『……!?』

ファイズ『木場……!!』









巧『……木場……お前っ……』

木場『……約束、して…………俺の……俺の、できなかった事……君が……!』




木場(…………そうか、これは……俺じゃない俺の記憶……)

木場(理屈じゃなく、本能としてっていうか……理解させられた……)

木場(違う世界の俺……違う世界の皆……)

木場(……世界が変わっても……皆、やってる事は変わらないんだなぁ……)

木場(乾君は、人間を守るために……そんな乾君を、園田さんは、真っ直ぐ信じ続けて……)

木場(長田さんは……何も言わずに、俺や海堂の傍に居てくれて……)

木場(海堂も、やっぱり変わらず繊細な癖に、素直じゃなくて……)

木場(そして俺は…………)

木場(勝手に信じて……勝手に幻滅して……簡単に騙されて……怒りを、憎しみを振り撒いて……)

木場(最後には……勝手に希望を押し付けて死んで……残った人たちを悲しませた……)




木場(…………馬鹿だよなぁ……本当に……)ユラリ



巧「き、木場……!! 大丈夫か!?」

木場「……うん……平気だよ……」

真司「立って大丈夫なのかよ!? なんかすごい苦しみ方だったけど……!」

音也「お前、なんか複雑な病気でもあんのか……?」

蓮「死後の世界に病まで引き継がれるのか?」

音也「……そりゃそうか」

木場「本当に、大丈夫……ただ、記憶が……頭の中に雪崩れこんできて……」

チェイス「記憶が……?」

始「何の事を言っているんだ?」

木場「……俺は……今ここに居る俺自身は、このオーガと言うシステムを知らない……知らなかった」

木場「知らなくて当然なんだ……これは俺が変身したんじゃなく、俺が経験した人生とは、違う道筋を歩んだ俺が変身したもので……」

戒斗「……何を言っている。訳が分からんぞ。ショックで錯乱でもしたか?」

木場「本当なんだ……! このオーガを見た瞬間、違う世界の、別の俺の記憶が頭の中に……」

巧「違う世界……?」

真司「! もしかして、昨日巧が話してた……パラソルワールドってやつじゃない!?」

始「……パラソル?」

蓮「…………お前、パラレルワールドの事を言っているのか?」

真司「パラレル……うん、多分それだ!」

戒斗「…………」

蓮「……平行世界、か。その別の世界でのお前が使ったのが、これだと……?」

木場「…………えぇ。そういう事みたいです……」

始「……その世界でも、お前は死んだのか」

木場「……どっちの死に様も、かっこ悪いですけど、ね……」

木場「乾君は……何も思い出さないかな? これを見て……」

巧「思い出すって、言われても……別に何も……?」

木場「……そうか……」




木場(どうして俺だけに、別世界の記憶が入ってきたんだろう……?)




音也「あー、良くわからんがとにかく、別に体に問題は無いんだな?」

木場「……はい。すみまんせん、心配かけて……」

音也「ん。まぁそれはそれとして……これには、お前の事何て書いてあったんだ?」

木場「……まだ、最初の部分しか読んでないけど……」

木場「…………もう、いいです。俺は……あまり見たくない……」

巧「木場……?」

戒斗「どうした。何か思い出したくない過去でもあるような言いぶりだな」

木場「…………」




戒斗「……自分の犯した罪が書かれていそうで恐ろしい。そんな所か」

木場「っ! ……」

巧「おい、何だよ急に……」

戒斗「フン、図星か。貴様は自分のしでかした事の罪深さを自分で理解している」

真司「か、戒斗?」

蓮「…………」

戒斗「故に、貴様は自分の生きた短い人生に、自信が無い。誰にも誇れる部分が無い……汚点ばかりが目について、自分ですら忘れてしまいたいと、そう考えている」

木場「ッ……!! お、俺は……」

巧「お前……! いきなり何言ってんだよ!? お前に木場の事をとやかく言う権利はねぇだろ!!」

巧「そんな、どこの誰とも知らない奴が書いた文章読んだくらいで、こいつの何が分かるってん――」

戒斗「勘違いするな。俺はそいつの歩んだ人生になど、欠片も興味は無い」

戒斗「こいつの分の説明など、最初の名前と年齢の部分を見ただけで、後は一文字たりとも、視界に映してもいない」

巧「なん、だと……! お前っ……!!」

真司「おい戒斗やめろよ……! 何でそんな事を言う必要が……!」アセアセ

チェイス「ダチのダチはダチ……と言う言葉を聞いたことがある。巧は俺のダチで、木場は巧のダチ……」

チェイス「ダチのダチを侮辱されるのは、聞いていて不快だ。理由のない暴言は慎んでほしいが」ジロリ

戒斗「誰が貴様らとお喋りがしたいと言った。黙っていろ」

チェイス「…………」

真司「お前なぁ……!」

戒斗「……言う必要があると思っているから言っている。俺が理由も無く、憂さ晴らしに貶していると思うのは構わんが、邪魔をするな」

戒斗「不快だと言うなら後ろを向いて耳を塞ぐなりしておけ」

チェイス「! 必要がある……?」

真司(……イライラして八つ当たりしだしたわけじゃないって事か……?)





戒斗「……木場。この際はっきりと言っておくが……貴様は……」

戒斗「虫唾が走るほどに…… 哀 れ な 弱 者だ !!」

木場「ッ!? ……っ……」

巧「お前!! いい加減にしろ!! 木場がお前に何をしたん……!!」

音也「待て巧」スッ

巧「!? 音也……!」

音也「今は聞いておけ。全部聞いて、それでも気に食わなかったら、言い返すなりぶん殴るなりすればいい」

巧「な、なんでそんな……!」

音也「いいから! ほれこっち来い!」

巧「おい、離せよ!! 何だよおい……!!」





戒斗「貴様が犯した罪とやらがどんな事かは知らん。知りたいとも思わん」

戒斗「だが、貴様が何をしたにせよ……今のお前の在り方は……不愉快極まりない!!」

木場「…………」

戒斗「……お前は今まで、自分自身で事を決め、それを最後まで貫き通した事があるか」

木場「え……?」

戒斗「生きる事とは、即ち選択し続ける事だ。日常の些細な事から、その後の人生を左右する大きな事柄……全ては己の選択で決まる」

戒斗「そこにいる、貴様の友だと言う乾巧……ここに書かれている事が事実だとするなら、そいつはまさに、大きな決断を迫られ続けた人生だったのだろう」

戒斗「そして決断を迫られるたび……自分の意志で選択し、選んだ道を歩み続けた」

戒斗「その道が、どんなに茨の道であろうと、途中で途切れている道であろうと……そいつは、ただ歩き続けた」

戒斗「選んだ道が正しかったのかそうでなかったのか……そんな事は俺は知らんし、乾自身、理解できん事だろう」

戒斗「しかし……どれだけ茨で傷つこうと、我武者羅に前に進み続け、途切れた道の行き止まりに着いても尚、その先に足を踏み出したそいつは……」

戒斗「お前とは比べ物にならんほどに、強い人間だった筈だ」

巧(……!? こいつ、何言って……?)




木場「……あぁ……そうだね……俺も、本当にそう思う…………」

戒斗「だが貴様は何だ? 最初に会った時から……貴様は事あるごとに俺と秋山、そして相川をまとめようとしていた」

木場「それは……! こんな謎しかない場所で1人になったら、皆危ないと思って……!」

戒斗「あぁそうだな。確かに、貴様のその想い自体は本当だろう」

戒斗「…………だが、それだけではなかっただろう」

木場「……!?」

戒斗「貴様は、ただ純粋に……1人になるのが怖かった。見知らぬ人間であろうと、誰かが傍に居なければ、不安だったからだ!」

木場「!! 俺は!! ……俺は、ただ………」

戒斗「だから貴様は俺達をバラバラにさせたくなかった! 自分1人でこの世界を生きていける自信が無かった!」

木場「……っ……悪いのか……! 1人が怖くなるのが、悪いっていうのか!? 怖くなって当たり前じゃないか!」

木場「確実に死んだはずの自分が、こんな見た事も無い場所で1人取り残されたら、誰だって怖いんじゃないのかい!?」

木場「俺は怖かった!! これから何が起こるのか、何をすればいいのかも分からなくて……!!」

戒斗「そうだ。貴様は自分1人では、どこへ進めばいいのか、どう進めばいいのか、判断できなかった」

戒斗「選択できなかった……!」

木場「……!?」

戒斗「だから俺達に……他人に選択を任せようとした……」

戒斗「貴様が弱い理由の3つの内の1つがそれだ。自分で自分の道を選択できない……!」



チェイス「…………」





木場「……俺、は……!」

戒斗「だが、どんな人間であろうと、与えられた選択だけを頼りに生きれるものではない。ましてや貴様は壮大な戦いに巻き込まれた身……」

戒斗「お前も、自分で道を選択した事は、何度もあっただろう」

木場「…………」

戒斗「……では、その選んだ道の行く先で、貴様はどうした?」

木場「道の……行く先……?」

戒斗「…………その道を進むのが怖くなった……或いは周りの環境による影響や、他人に余計な事を吹き込まれ、馬鹿正直にそれを鵜呑みにし……」

戒斗「すぐに別の道を進もうとした事は……無いのか?」

木場「!!!」

戒斗「これが2つ目の理由……選んだ道に自信が持てず、進み続けられない事!」




蓮「…………チッ……」

真司「…………」




巧「ちょっと待てよ!! そんなの、人間なら誰でも似たようなもんだろ!! 俺だって強い人間なんかじゃねぇ!!」

巧「色んな事が重なって、自分じゃどうにもならない事だってあんだろ……!!」






戒斗「そうだ、乾巧……その通りだ」

巧「……!?」

始(肯定した……?)

音也「…………」





戒斗「今上げたのはあくまでも、俺が今まで目にしてきた、ただの弱者に限らず、やがて強者となる者……あらゆる人間たちがよく抱えていた物だ」

戒斗「正直に言えば、俺にはそれも不愉快なモノではあるが、そこまで非難するつもりも無い……」

戒斗「何故なら……これらは決して、『救いようのない弱さ』ではないからだ」

戒斗「どうにもならない事……確かにあるだろう。俺には縁の少ない事だが、人は迷い、不安を抱く生き物だ」

戒斗「自分を取り囲む状況が悪く、それを打破する術を持たなければ、恐怖に足がすくみ、歩みを止めてしまう者もいる」

戒斗「だが、そういう意志の弱い弱者は、弱者である自分自信を憎み、許せずにいる人間も、決して少なくない」

戒斗「そうであるならば、そういう連中は救いがある。実際に弱さを克服できるかできないかはともかく……」

戒斗「己の弱さを憎むという事は、それは即ち、本心では強くなりたいと願っているからだ」




巧「……!」




戒斗「それらは自分で殻を破り、強くなるために歩み出し始める可能性がある。だから俺は、そういう弱さを全面的に否定する気はない」

戒斗「……それと……これはある女からの受け売りで、俺自身はあまりそうとも思っていないが……」

戒斗「今言った事とは逆に、抱えた弱さを、強くなることで否定するのではなく、その弱さと向き合い……」

戒斗「受け入れ、弱さを含めての自分なのだと、自分自身を肯定し、折り合いを付けて生きる」

戒斗「……それもまた、ある種の強さでもある、らしい」




真司(……ちょっと、意外……戒斗がそんな事も言う奴だったとは……)




戒斗「今言った2つの強さの共通点は、自分が弱い存在である事を、認識できている事だ。これがあるだけで、人は誰しも強くなる可能性を秘めている」

戒斗「……だがな……最後の3つめ……これがある者は、もう救えない……!」

戒斗「こいつをいつまでも捨てられない奴だけは、どんな人間であろうと、俺は絶対に認める気はないッ……!!」

チェイス「……それは、一体……」






戒斗「…………己の弱さを認めず、弱さから目を背けようとする者だッ!!」

木場「ッッ……!!!」



戒斗「今弱いのは構わん!! 何かを成すだけの力を持たないのも、何かを恐れ逃げ腰になってしまう事も、この際良しとしよう!!」

戒斗「だが……その力を持たない理由を! 逃げようとする理由を! 自分が弱いせいである事実そのものから逃げようとする、卑怯極まりない思想!!」

戒斗「これだけは……強くなる余地など無い、最悪の弱者たる所以だ!!」

戒斗「貴様はこの自分の人生が綴られた碑文を、『見たくない』と言った!」

戒斗「弱さ故に犯した罪から、目を背けようとしている! 即ち、己が弱さから逃げている!!」

戒斗「自分がやった事の重大さを理解できているくせに、それと向き合うのを恐れ、記憶に蓋をして自分を騙そうとしている!!」

木場「……っ……、……!」

戒斗「……そして貴様は……起きた事柄に関し、自分に責任があるのを分かっていながら、心の何処かで、同時にこうも考えているだろう……!」




戒斗「『周りの皆が、環境が、運が良くなかったから、こうなってしまった部分もある』!! 『だから自分は悪くない』と!!」

木場「!!!?」




戒斗「弱さを認めないばかりか、弱さの理由すらも他の何かのせいにしている時点で、そんな人間は絶対成長しないッ!!」

戒斗「どうせ貴様の犯した罪など、現実から逃げ続けていたツケが回った結果の物だろう!!」

戒斗「そんな最悪の弱者の貴様が……確かな強さを持つ乾と友だなどと……」

戒斗「つまらん冗談も大概にしろ!! 反吐が出るッ!!」

木場「……っく……ぅ……」



木場(……そうだ……俺は…………最低だ……!)




――――こんな形でも……こうしてお前にまた会えて……すげぇ、嬉しいよ……木場――――




木場(俺には……乾君に、あんな言葉を、かけてもらえるような……資格なんてっ……!!)







――――バキイィッ!!



木場「……!?」

戒斗「ぐっ……!!」ドサッ!




始「!!」

蓮「…………」

真司「た、巧……!」




巧「っ……ハァ……! ハァ……!」ブルブル

木場「乾、君……」

戒斗「……フンッ」ペッ

巧「……オイ……もういっぺん言ってみろよ……!! つまらん冗談だって……!?」

巧「オイ……!! 誰が俺とダチだと、反吐が出るってんだよぉッ!!?」グワァッ!!

音也「ストーップ、そこまでだ巧。一旦落ち着け。どうどう」ガシッ

巧「落ち着けるか!! こいつ!! こいつ何もッ!! 何も知らねぇ癖に、この野郎ッ!!」ジタバタ!

戒斗「……お前も大概……強さを持っている割に、もの好きな男だな。甘える事しか知らん弱者のために怒るなど……」グシグシ

巧「うるっせぇ!! 木場は弱者なんかじゃねぇ!! こいつはただ優しかっただけだッ!! あんな事に巻き込まれなきゃ、きっと普通に、ずっと優しく生きれたはずなんだ!!」

巧「目を背けるのがそんなに悪いかよ!? 見たくねぇ現実を見据えたら、その現実が変わんのかよッ!!」

チェイス「! ……巧……」

巧「俺は変わらなかったぞ!? 来る日も来る日も……傍で笑ってくれる奴等を守るために、本当は同じ人間な筈の奴等を何人も殺して!」

巧「罪を背負って……守ろうとしたのに……!! 最後に守れたのは一握りだった!!」

巧「木場はこうしてここに来ちまった……! 長田も、草加も!! 皆死んでった!!」

巧「終いにゃ自分まで死んで……!! 真理も啓太郎もバカだから……俺が居なくなって、今頃必死に探し回ってんのかも知れねぇ!!」

巧「あいつ等が、笑顔でいられるために戦ったのに……今頃あいつ等……泣いてるかもしれねぇって思ったら……!!」

巧「結局、俺が守れた物が何だったのか……分からなくなりそうなんだよ……!!」ヘタッ…

音也「……自分を追いつめるような考えはするな。お前には難しい事なんだろうが……」

巧「…………悪い……でも、やっぱり……どうしても思えない……!」




戒斗「…………」ジッ…

巧「……俺には、お前が俺の何を見て、俺が強いって言ってんのか、全然わからねぇよ……」

巧「そこに書いてあった事といい……俺は自分が強いなんて……これぽっちも思えないんだ……!」

巧「本当に俺が強かったら……もっとマシな結果になってるだろうがっ……」

巧「【強い】って事が、誰かの命を奪っておいて! 本当に守りたいものは守れないなんていう……見たくもない現実を見て死ぬ事なら!! 俺はそんな強さいらねぇ!!」

蓮「…………」

真司「……巧っ……」

巧「木場が、現実から逃げてるから弱いってんなら……! 俺は……!!」

巧「弱くたっていいからっ……逃げれるもんなら、逃げてほしかったよ……!!」

音也「…………」




戒斗(……周囲に降りかかる災厄を、己の身一つで抱え込み、自分を除く全ての者を守らんとする……)

戒斗(そこに強弱の区別は無く……ただ自分にとって大切だという理由で、己が全てを投げ打ち悪意と戦う……)

戒斗(…………つくづく似ている……あの馬鹿に……)




戒斗「…………やはり……お前は強い。俺が、最も強いと認めた男と、お前は勝るとも劣らん程だ」

巧「…………」

戒斗「だから余計に癪に障る。お前の強さに甘えてばかりの、そいつの弱さにだ」

巧「まだ言うかてめぇ……!!」

木場「いいんだ乾君!!」

巧「! 木場……!?」



木場「……駆紋君の言う事は……正しい……俺は……ずっと自分に言い訳してた……!」

巧「…………」

木場「周りの人たちに甘えてばかりで……! 俺がもっと、強い人間だったら……!」

木場「誰に何を言われようと、何が起ころうと……! 仲間を……人間を信じ続ける事が出来るくらい……強い人間だったら!」

木場「君にあんな仕打ちをっ……皆を悲しませる事を、しなくてよかったかも、しれないのにっ……!!」

木場「自分が傷つく事ばかり怖れて、傷ついた時の事ばかり覚えていて……!」

木場「傷つけられた事ばかりじゃ、なかった筈なのに……! 君も皆も、沢山傷ついてた筈なのに……そしてそれに、耐えていたのにッ!!」

木場「駆紋君に言われて、今更気が付いた……! 俺はずっと逃げてたんだ!!」

木場「オルフェノクになって、俺はその事実と戦ってるんだって……人間であろうとする事で、戦ってるんだと思ってた……」

木場「でも違ったんだ……! 俺は戦ってたんじゃない!! 現実から逃げたくて……皆と一緒に戦ってるつもりになって、オルフェノクである自分の運命から、逃げ続けていただけなんだ!!」

巧「……違う……!! 違うだろ木場!? お前はお前なりに、必死に戦っ――」

木場「やめてくれッ!!」

巧「ッ……!?」

木場「…………ごめん……君が俺を思ってくれている事は……凄く嬉しい……本当に感謝してる……」

木場「でも違うんだよ……! 俺は乾君が思ってるような真っ当な人間じゃない!!」

木場「俺は必死に戦ってなんていない!! 本当に俺が……人間として生きようと、死に物狂いで自分の人生と戦えていたら……!」

木場「オルフェノクに着いて人間を滅ぼそうとなんて、きっとしなかった……!!」

木場「俺は、いつもギリギリの所で、運命と戦ってる皆を置いて、自分だけ楽な方に逃げだすような奴なんだ……!!」

巧「!! そんな事!!」

木場「だけど……もう嫌なんだ!! ずっと誰かに甘え続けて、人から、運命から……自分で描いた夢からすら逃げ続けて……!」

木場「自分の不幸を理由に、同じ不幸を誰かに負わせて……!! 挙句に死んだ後まで君に甘えようとしてる!!」

木場「もう、嫌だ……!! こんな俺でいたくない……いや……」

木場「この期に及んで今の俺のままで居たら、ここで君と一緒に居る資格なんて……俺には無いッ……!!」

木場「何のしがらみも無いこの場所でくらい……君とは、仲間として、友達として……!! 隣にいる資格が欲しい!!」

巧「資格なんて……! 俺達はとっくに――――」

木場「何も言わないでくれっ、乾君……! 今更遅いけど、それでも、俺は強くなりたいんだ!!君みたいに……!!」

巧「……木場……」






――――まだ俺にはわからない……何が正しいのか……その答を……君が俺に教えてくれ……!!




木場「あの時……敵も仲間も、正しいことも悪い事も、何も信じられなくなっていた俺が……」

木場「最後の最後にもう一度信じることができたのは、君だった……!」

木場「俺が信じたのはきっと……君の中にある、人間が本当に持つべき、大切な何かだったんだ……!」

木場「だから、俺はここで変わりたい……! でなきゃ、俺はその大切な何かを、ずっと失ったままな気がする……!!」

木場「何よりっ……!!」








木場「あの時、誰かを信じて死ねた自分に嘘を吐きたくないんだッ!!!」





巧「ッ……!!!」

木場「……っ……」スクッ

巧「! 木場……!?」




戒斗「…………」

木場「……駆紋君……君が教えてくれなかったら……俺は、同じ過ちを繰り返してたかもしれない……」

木場「……ありがとう。気付かせてくれて」

戒斗「……勘違いするな。俺は貴様の辛気臭い態度と、弱者の匂いが鬱陶しかっただけだ」

木場「……うん……でも、ありがとう」

戒斗「…………貴様が最悪の弱者でないと証明したいなら、まずはするべき事があるだろう」

木場「……わかってる。ちゃんと、この目に焼き付ける……」

戒斗「…………フン」スタスタ





巧「…………」

音也「……あいつ木場の事を、本気で最悪の弱者だとは、思ってなかったんだろうよ」

音也「もしそうなら、そんな人間のためにわざわざ時間を割いて、お前に殴られてまであんな事言わんだろう」

巧「…………あいつが言ってた事が本当でも……俺は、木場を弱いなんて、思わねぇし、思えねぇ」

音也「それはそれで別にいいだろう。あいつが言った事が正しくたって、お前の思う事が正しくないわけじゃない」

音也「お前が木場を強いと思うなら、それはちゃんと木場の中で、本当に強さとして残るさ」

巧「…………」

音也「ほら、行けよ」

巧「は……?」

巧「一緒に見てこいよ。木場がなったライダーの、その記憶ってのを」

巧「いや、でも……」

音也「変わろうとしてるあいつの邪魔になるってか? 一大決心したあいつが、隣に友達が居るくらいでそれに甘えちまうほど、お前の中の木場は弱いのか?」

巧「別にそういわけじゃ……!」

音也「なら行って来い。木場の事を思うなら、あいつが犯した罪ってやつも、ちゃんと解っておいてやれ」

巧「…………」

音也「さーて、俺は俺のイクサ人形を見つけに行くとするか! 俺の英雄譚がどう書かれてるのか楽しみだぜっ!」ハハハ!

巧「…………ったく……」

巧(…………木場……)





真司「……えっと、丸く収まった……って事で、いいのかな?」

チェイス「……そのようだな」

真司「……ふひ~~……一時はどうなる事かとひやひやしたよ……」

真司「……木場君、大丈夫かな……戒斗の奴、あそこまでボロクソに言わなくたって……」

チェイス「…………不器用、なのだろう。あれが、駆紋なりの優しさ……なのかもしれない」

蓮「……行くぞ城戸」

真司「へ? どこへ?」

蓮「さぁな。龍騎の人形でも探しに行くか。さぞお前の馬鹿っぷりが沢山書かれてそうだ」

真司「なぁにをー!? ……って、何言ってんだよ! バラバラに行動したら危ないんじゃ……!」

蓮「1人にならなければいいんだ。木場は乾に任せて、俺達は別行動だ。同じところに全員で留まってていたら、調べるのに効率が悪い」

真司「そりゃあ、そうかもしんないけど……木場君の事も気がかりだしさぁ!」

蓮「……いいから来い!」グイッ

真司「うわっ!? な、なんだよ! ぐぇ、ちょっと、首が、苦し!」グググ

蓮「気が利かん奴め……! だから馬鹿だと言うんだっ」ズルズル





チェイス「…………」

始「…………」

チェイス「……行ってしまったな」

始「……あぁ」

チェイス「……追いかけなくていいのか?」

始「……別に、俺が秋山を追う理由が無い。寧ろ反対側へ行ってしまった紅の方が気がかりだな。面倒事を増やして戻ってきそうだ……」

始「……お前の方こそどうなんだ?」

チェイス「……多少心配ではあるが、真司もようやくダチと会えたわけだからな。積もる話もあるだろう」

チェイス「今はそっとして置こうと思う」

始「……そうか」

戒斗「…………」スタスタ

始「…………」

チェイス「…………」

戒斗「…………」スタスタ

チェイス「……どこへ行くのだ、駆紋」

戒斗「取りあえずドームの中央へ行ってみる。他の連中は左右の通路に別れて進んだようだからな」

チェイス「俺も同行していいか?」

戒斗「…………断ったところでついてくる気だろうに……」

チェイス「その通りだ」フンス

戒斗「…………好きにしろ」ハァ…



チェイス「うむ……では、ハジメちゃん」

始「その呼び方はやめろ」

チェイス「……他人と早く打ち解けるには、あだ名で呼び合うのが良いと聞いたのだが」

始「……俺と打ち解けたいと思うのは構わないが、本人の了承も無くあだ名で呼ぶな」

チェイス「……では、ハジメちゃんと呼んでも構わないか?」

始「たった今『やめろ』と言ったんだが……?」プルプル

チェイス「…………なら……相川」

始「……何だ? (心なしか急に落ち込んだような……)」

チェイス「向こうに1人で行った音也の事を、頼めないだろうか。流石に単独行動はまずい」

始「……、……俺がか」

戒斗(……今一瞬、露骨に嫌そうな顔をしたな)

チェイス「…………無理だろうか」

始「っ…………分かった、行ってくる……行くからお前も早く行け」

チェイス「……すまない、感謝する」

始「……ハァ……」スタスタ




始(剣崎……お前ならこんな状況、すぐに他人と打ち解けて、纏めてあげてしまうんだろうな……)

始(初対面の相手にあだ名で呼ばれても、嬉しそうに笑うお前の顔が思い浮かぶ……)

始(…………会いたいよ……お前達に……橘……北条……遥香さん……)

始「……天音ちゃん……」




チェイス「…………」

戒斗「……何をぼさっとしている。俺と行くんじゃないのか」

チェイス「……駆紋」

戒斗「……?」

チェイス「俺は相川を怒らせてしまったのだろうか……」ショボーン

戒斗「……知らん」

チェイス「嫌われてしまっただろうか……」ショボーン

戒斗「知らん!」

チェイス「……他人とうまくダチになるには、どうするのが一番良いのだろうな」ムゥ

戒斗「だから知らん……! 貴様で考えろ!」

チェイス「お前はダチはいたか?」

戒斗「居ないし俺には必要ない! ……下らん事を話してないでさっさと行くぞ」

チェイス「では俺とダチになってくれないか」

戒斗「『では』の意味が分からんぞ……!」

チェイス「ダチはいいモノだ。ダチを知らないのは勿体ない事だ。俺はお前ともダチになりたいし、お前もダチが増えれば、もっと笑顔になれるかm――」

戒斗「わかった。貴様はここに置いていく」ズンズン

チェイス「何故だ。置いていくな」テクテク





木場「………………」

巧「…………木場」

木場「…………これを書いた人は……」

巧「……?」

木場「きっと、本当に優しい人……なのかもしれないね……俺なんかより……ずっと」

巧「……何が書いてあった?」

木場「…………『基本世界では存在しないシステムであり、基本世界から派生した分岐世界においてその力を振るった』」

木場「『木場勇治は、交通事故による2年に渡る昏睡状態から死に至り、オルフェノクに覚醒したが』……」

木場「『眠っていた2年の間に変わり果てた環境に絶望し、2度目の死を選ぼうとするが、オルフェノクになった体で簡単に死ぬことはできず、その後スマートブレインに目を付けられる』」

木場「……この後は、スマートブレインに人間を殺せって脅迫されてた事や、長田さんや海堂、乾君達と出会った経緯が書かれてる」

木場「その次が、これ……俺がスマートブレインの側に着いたきっかけになった、長田さんの件に、君と戦って、助けられた事……」

木場「そして……俺が王を道連れにして、死んだ事……」

巧「…………確かに、そのまんまだな……」

木場「……それで、ここ、この辺りから、平行世界……俺が見た別の記憶、ここで言う派生世界の話になってる……」

木場「この派生世界では、スマートブレインの策略で人類が圧倒されて、僅かに生き乗った2000人余りの人間以外は、全部、オルフェノクになってしまったらしい……」

巧「なっ……!!? ど、どうして!!」

木場「分からない……頭に入ってきた記憶は、最後に近い辺りから以前のものは、断片的にしか無くて……青い薔薇がどう、とか……」

巧「ば、薔薇……?」

木場「何にせよ、俺達が経験した事の途中から、未来の流れが変わったのが、派生世界なんだと思う」

木場「……この別世界の運が悪かったのか……それとも、俺達の世界の運が良かったのかは、分からないけど……」

木場「……『絶望的状況下の中、生き残りの人間達に怖れられ、蔑まれながらも、人間のためにレジスタンスとして、オルフェノクの力を使いスマートブレインに抵抗した』」

木場「『しかし、1人の心無い人間の愚かな行為がきっかけで、人間達の信用を失った彼とその友人であるオルフェノク、長田結花、海堂直也の3人は』……」

木場「『信用を取り戻すため、スマートブレインが所持していると噂される、ファイズのベルトを超える【帝王のベルト】を奪うため、たった3人で敵地に潜り込むが』……」

木場「『事前に計画を傍受していたスマートブレインの罠にかかり』…………」

木場「……っ……『結花と直也は戦死してしまう』……」

巧「っ……!!!」

巧(……クソッ……そっちの世界じゃ、長田が生き残るどころか、海堂まで……)ギュウ…




木場「……『さらに、計画が漏れた原因が』…………」

木場「『「オルフェノクだから信用していなかった」、という園田真理の裏切りによるためである、と嘘を刷り込まれ』……」

巧「!!」

木場「『これを信じてしまった勇治は、数少ない同じ境遇の仲間を殺された事と、信頼していた相手に裏切られた事のショックで、オルフェノクとして生きる事を決意』……」

木場「『結果、自らが人類のために奪おうとした帝王のベルト、オーガギアを使用し、人類の味方であるファイズ、乾巧と敵対する』……」

巧「…………」

木場「…………『最終的に、自らもオルフェノクである事を明かした巧のファイズに力負けするが』……」

木場「『人質にされた真理が別のオルフェノクに襲われそうになった瞬間、反射的に真理を庇い致命傷を負う』」

木場「……『死を悟った彼は、駆け寄ってきた巧に対し、人間とオルフェノクが共存できる世界を創るという夢を託し、巧の力強い頷きを見て、笑顔で息を引き取った』」

巧「…………」

木場「……ごめんね」

巧「……何がだよ?」

木場「俺は違う世界でも、君や皆に迷惑をかけてた……だから……」

巧「アホッ」ペシッ

木場「痛っ!」

巧「……別の世界で起きた事で、俺に謝ったってしょうがねぇだろ。大体、お前はそこでも、最後には俺達の方を信じて戦ってくれたんだろ?」

巧「いんんだよそれで。次にそういうつまんねーことで謝ったら、デコピンじゃ済まさないからなっ」

木場「…………ハハ、はい。気を付けます……」

巧「……それで、続きは?」

木場「…………それがさ、なんとも奇妙っていうか……不思議な気分になるんだ……まるで……」

木場「今の俺の気持ちを、見透かしてから書いたみたいだ……」

巧「……読んでもいいか?」

木場「あぁ……」





巧(……『怪物になってしまった事への悲しみと、心だけでも人間として生きたいという願いの狭間で苦悩し続け』)

巧(『様々な人の悲しみや怒り、痛みや憎悪に触れ、悪意に満ちた策略や自らの運命に翻弄され続けた、木場勇治』)

巧(『彼が人を捨てて怪物へと堕ちてしまったとして、それを「どうしようもない、弱い人間だ」と、本当に非難できる人間が、果たして存在するだろうか』)

巧(『迷いに迷って、壁にぶつかりズタズタになりながら、時に闇に染まりかけても、最後の最後に、彼は人を守る事を選んだ。その命を捨ててまでも』……)

巧(『それは結局、木場勇治と言う人間が、どこまでも優しく、純粋だからこその結末だったのだろう』)

巧(『純粋が故に揺れやすく、脆く儚い。それでも、確かに誰かを想って戦っていた彼には』……)

巧(『どうかこの名を送らせてほしい。そしてどうか、自らも、この名を名乗って欲しいと願う』)




巧「…………【仮面ライダーオーガ】……」





木場「…………読んでいて気づいたんだ……この内容、俺がしでかした肝心な事は、あやふやというか……ぼかして書いてあるんだよ……」

木場「……君を実験材料に使って、君の寿命を縮めた事も、あの子を王に覚醒させようとした事も……」

木場「…………俺が初めてオルフェノクになった時に、怒りに任せて……人を殺してしまった事も……!」

巧「! ……そうか……」

木場「誰だかは知らないけど……やっぱり俺は、この人にも、君にも誰にも……こんな風に肯定してもらっていいような人間じゃないと、思う……」

巧「お前……」

木場「でも」

巧「!」

木場「何か、これを見たら……そんな風に考える事自体が、この人や、君や残してきた皆……駆紋君の想いを、軽んじる事になるのかなって……今思った」

木場「こんな風に俺を……こんなダメな俺を、認めてくれる……励ましてくれる誰かが居るなら……俺は今度こそ、それに応えたい」

木場「例え今の自分が、死人だったとしても……皆が認めてくれた俺のまま……この場所で変わるんだ」

木場「…………乾君」

巧「……ん」

木場「……俺、もう、逃げないから」

巧「…………ハリキリすぎんなよ、程ほどにな」

木場「……うん!」





巧「……で、どうする? なんか皆、俺達に気つかっていなくなっちまったけど」

木場「あー……じゃあ、二手に別れようか? 通路を真っ直ぐ行っただけなら、走って行けばすぐ追いつくんじゃないかな」

巧「そうすっか。んじゃ、俺は音也と、えっと……相川? が行った方に行くわ」

木場「なら、俺は秋山さんと城戸さんの方だね」

巧「おう、後でな」タッタッタ

木場「うん、また!」タッタッタ





巧(……木場の奴……吹っ切れた顔してたな。戒斗の奴はまだちょっとムカつくけど、いい方に転がったなら、良しとするか)タッタッタ

巧(……またあいつと、一緒に笑える日が来るなんてなぁ……)フフッ

巧「しっかし音也の奴どこまで行ったんだ? ってか、このまま進めば、先に相川に会う事になるんだよな……」タッタッタ

巧(どーすっかな……あいつ、なんか俺と似てる気がすんだよな……『できれば話しかけんな』的なオーラっつーか……)タッタッタ

巧「…………」チラリ

巧「それにしても、色々あんな、この人形……これが全部、謎の誰かさんの言う、仮面ライダーなんだな……」タッタッタ

巧「……誰かのために戦って死んだ戦士……か――――ッ!!?」ビタッ





巧「……こ、これ……は……!!」



巧(そうだ、何で思いつかなかった!?木場がいるんだ……一番コイツを使ってたあいつが、来てないわけねぇ!!)






カイザ人形『』





巧「草加……!!」

巧「『仮面ライダーカイザ』、『草加雅人(21)』……! やっぱりだ、間違いない!」

巧(……そうか、あいつも、来てるんだな! ……会ったら会ったで面倒そうだけど)

巧(……居たらなんて話しかけりゃいいんだ? 何を言っても嫌味が返ってくるよな……)

巧(いや、真理に会えなくなった分余計に荒れてそうだし、下手に関わると理不尽にキレられるかも……)

巧「……ま、それはそれで俺達らしいか。あいつもここで暮らしいく事になる以上、色々割り切らなきゃやってけねぇし、多少は落ち着くかも……」

巧「……ん……?」

巧(…………待てよ、草加が死んだ、直接の原因って……)





巧「!!!」

巧「や、やべぇ!! 木場と草加を鉢合わせるわけには……!? 少なくとも俺が一緒にいないと碌な事にならねぇぞ!!」ダッ!!




音也「……うーむ、中々見つからんな。数はそう多くはないようだが、少々大きい間隔で置かれてるから、目当ての人形を探すのも一苦労だ」

音也「しかしこの仮面ライダーとやら……存在した世界も生まれた経緯も違うからか、デザインもそれぞれ全く違うな」

音也「…………これに至っては俺のイクサとは似ても似つかんな。どこか和風っぽい感じっていうか……」

音也「ただ、それにしては……何でギター持ってんだコイツ。バンドマンだったのか?」

音也「何々……? 『仮面ライダー斬鬼』……『ザンキ(32)』? ライダーの名前と本名が同じなのか?」

音也「……『変身者はザンキ32歳』……『【ザンキ】とは彼の仕事上の名義、コードネームのようなものであり』……」

音也「『本名は【財津原蔵王丸(ざいつはら・ざおうまる)】という』……」

音也「……すんげぇ仰仰しい名前だなオイ……素顔はどんな顔してんだろうな」

音也「ま、他人の話は後でいい。それより俺のイクサはどこに……ん?」





白い帽子の男「…………」





音也「おっ、人発見。ライダー人形を眺めてるとこからして、同じ死人か」

音也「おーい! そこの俺様程じゃないがダンディなおっさん!」

白い帽子の男「ッ!」ザッ

音也「ん? あぁ……まぁ、そう警戒するな。俺はあんたと同じ立場の人間だ、危害は加えん」

音也「俺の名は紅音也。100年に一度の天才音楽家だ……!」

白い帽子の男「…………」ジッ…

音也「さぁ、俺は名乗ったぞ? そっちの事も教えてほしいんだが?」









荘吉「……鳴海荘吉、探偵だ」





今回はここまでです。

木場さんへの戒斗さんによる強者理論SEKKYOには思うところもあるかもしれませんが
今後の展開上、同じ屋根の下で暮らすことになる木場、戒斗、蓮、始の4人もちゃんとした繋がりを持たせたかったので
少々強引な展開になってるかもしれません。

そして今回から登場のおやっさん、ザンキさん、そして我らが草加雅人が追加されました。

人が増えてさばききるのが大変ですが、頑張るぜ……!


初めて購入したPC洋ゲーに嵌りまくって作業どころか生存報告すら怠ってしまったのも
全部スカイリムって奴の仕業なんだ……

MODぶっこみまくったせいで、先日クラッシュ確定から復帰できなくなり、ようやく目が覚めました……
これからは次回までの進行状況と合わせて、少なくとも週に一回は報告に来ます。

現在の進行度は大体1/3位で、来週の金曜までには更新します。

何度もご心配おかけしてすみません。

オツカーレ(建前)

イッテイーヨ(本音)


水曜には投下しようとか思ってたのに、結局期日になってしまった。
前回の文量に比べると短いですが、行きます。

それと今回、一気に人増えます。



音也「探偵? 珍しい仕事してんだな」

荘吉「……お前、俺と同じ立場の人間……と言ったな」

音也「ん? ひょっとして、まだ自分の状況が分かってなかったりすんのか?」

荘吉「いや、俺が死んだのは覚えている。ここに来たときに、同じ状況の人間とも接触している。ここが死後の世界だって事は理解している」

荘吉「……お前は、どうして死ぬようなことになった」

音也「いきなりプライベートな事を聞く奴だな……まぁいい! 俺は懐の広い男だ! いいだろう話してやろうじゃないか!」

音也「俺はある1人の愛する女のために……その女を苦しめる悪の親玉と、命がけの――――」

荘吉「ファンガイアのクイーンと、キングの事、か?」

音也「ッ!? お前なんでソレを……!」

荘吉「……どうやら本人で間違いないようだな、紅音也」

荘吉「向こうにお前の名前が記された碑文と、ライダーの人形があった。そこに書いてあった内容を覚えていただけだ」

荘吉「本当にお前が、紅音也という男なのか確認したかった。他人の名を騙って危害を加えてくる輩が居ないとも限らんのでな」

荘吉「気を悪くしたなら謝ろう」

音也「あー、そういう事かい。別にいいさ」

音也「……ん!? おい、その俺の……イクサの人形はどこだ!! どこで見た!?」

荘吉「……向こうだ。ここから少し離れたところで見た。歩いて4・5分程度だが……」

音也「成程!! 礼を言うぞ探偵のおっさん!! フハハハ!!」ドダダダー!

荘吉「おい、待て! お前に聞きたい事が……!」

荘吉「……いっちまった、か……やれやれ、騒がしい奴だ」





荘吉(……紅音也……1987に若くして死亡した、昭和生まれの男……)

荘吉(普通に生きてさえいれば、俺と同じ程度の年齢にはなっていただろうに……)

荘吉(……ここでいう、仮面ライダーと呼ばれる人間達は、俺のような一部を除いて殆どが若者ばかり)

荘吉(……俺のスカルの碑文に書かれてあった事は紛れもない事実……紅音也の物も、今の反応からして、ほぼ確実に全てが本当の事……)

荘吉(この事を踏まえれば、ここまで見てきたライダーの碑文に書かれていた事にも、嘘は無い……)

荘吉(……どいつもこいつも、あの馬鹿弟子と大差無い若さで……なんともやりきれん話だな……)



荘吉「! 仮面ライダー、斬鬼……」

荘吉「……これがザンキの言っていた鬼の姿か……成程、見た目は、スマートめなデザインのドーパント……と言った所だな」

荘吉「……この白いライダー――?」

荘吉(……こいつ、この胸と両腕に付けられているのは……)

荘吉「……!! これは、俺と同じ、ロストドライバー……!?」

荘吉(そうか……! 通りで見覚えがあるわけだ……この胸と腕にある無数の黒いのは、マキシマムスロットか……!!)







荘吉「……【仮面ライダーエタナール】……だと……?」





始「……紅の奴、一体どこまで行ったんだ……」

始(思わず言われた通りに探しに来てしまったが……どうもあの男は相手にするのが面倒だ……)

始(……引き返したい……)




ガチャリッ……




始「!!」

赤いジャケットの男「……!」

始「……誰だお前は」

男「……北に進んでまず一人……占い通りだな」

始「占い……?」

男「お前も死人だろう? 俺は手塚海之。しがない占い師だ。大きな建物に向かい、しばらく待っていれば進展があると、最初の占いに出ていてな」

手塚「こっちでできた仲間と共に、このドームにやって来た」

始「……お前も、生前はライダーだったのか」

手塚「……やはり、ここにいるのは全員仮面ライダーなんだな」

手塚「俺は、神崎士郎という男が仕組んだ、ライダー同士の戦いに巻き込まれ、仮面ライダーライアとして戦っていた」

手塚「ライダーバトルや、神崎士郎という名に聞き覚えは無いか?」

始「……いや、何も」

手塚「そうか……となると、お前と俺が元いた世界は別モノだな」

手塚「それなら、城戸真司や、秋山蓮という男達を知らないか? こっちに来ているはずなんだが」

始「! ……それならさっき別行動を取ったばかりだ。2人で俺が来た道と逆の方へ行った」

手塚「! そうか……! ありがとう。助かる」

手塚(『最初に出会った男が目的の居所を知っている』……やはり占い通りだ)フッ




始「用が済んだなら、もう行っても構わないか? はぐれた知り合いを探さなければならない」

手塚「いや、待ってくれ。今俺と仲間が、ここに居る死人を探して、見つけ次第休憩ロビーに連れてくる算段になっている」

手塚「この世界に、どんなライダーが何人居るのか、顔合わせも兼ねて確認しておきたくてな」

始「……成程な」

手塚「できれば、そのお前の知り合いという人物にも知らせたい」

手塚「だが俺は城戸と秋山を探しに行かなくてはならないから、お前は知り合いを見つけたら、そいつを連れてロビーに来てほしい」

始(……俺だけで行ってはマズいだろうか……)

手塚「……どうした?」

始「いや、何でもない……できるだけ大勢に伝えよう」

手塚「そうしてくれ。12時に集合する予定だ。忘れないでくれ」

始「分かった」

手塚「……ん、そういえば、まだ名前を聞いていなかったな」

始「……相川始だ」

手塚「! ……そうか、覚えておこう。それじゃあ、また後で」

始「……あぁ……」スタスタ





手塚(……相川始……確か、仮面ライダーカリス……だったか)

手塚(全ての生物の始祖、アンデッド……その中でも特に異質な存在であるジョーカー……)

手塚(人と出会い、心を知り、人のために戦い散った異形の者……)

手塚(人間でなかろうと、種族が別だろうと……分かり合う事ができる者たちが居るというのに……)

手塚(俺達は……同じ人間同士で……)

手塚(……いや、ここではもうその足枷も無い。色々あったが、これからは、笑いあえる時間も増えていく事だろう)

手塚「そのためには、まず本人たちに会わないとな」スタスタ




◇――◇



真司「なーー蓮ーー」

蓮「なんだ」

真司「龍騎の人形どこだよー! 見つからねーぞー!」

蓮「俺が知るわけないだろう。道沿いに進んでればその内見つかるだろ」

蓮「それよりも人を探せ。これだけ見た事ないライダーが並んでるんだ。他にも何人かここに居るはずだ」

真司「あーあー、なんか腹減って来たなー……売店はいっぱいあるのに、店員が居ないから買えないし、っていうかお金ないし……」

蓮「朝は喰わなかったのか?」

真司「いや食べたけどさ……こうも色々食べ物屋さんのメニューとか、食品サンプル見せられるとさー、分かるだろ?」グゥ~

真司「あ……ハンバーガーだ……いーなー、食べたいなー……」ジュルリ

蓮「サンプルでも齧っていろ」

真司「食えるか!! あーーもう!! 本当に誰もいないのかなぁ!?」ダッ

蓮「おい、城戸……」

真司「誰かーー!! いませんかー!! あ、これ呼び鈴だ……!」

真司「おーい!! 店員さーん!! いないのー!! お腹減ったぞー! テリヤキバーガーとポテトLサイズーー!!」チリンチリンチリーン!!

蓮「おい、やめろ城戸……!」

蓮(こいつが騒ぐと俺まで腹が空いてくる……今朝はまともに調理するような空気でもなかったから、パンと水だけだったしな……)グゥ…



ブゥン……ガシャンッ!



蓮「!? 何だ……!!」





サソード人形『』ガシャンガシャン




蓮「なっ……!?」

蓮(こいつ、ただの人形じゃなかったのか!?)

蓮「チッ……!! 城戸ォ!!」

真司「オラー店長働けー!! 仕事サボんな給料泥棒ーー!!」チリンチリンチリン!!



サソード人形『』ガシャッ!ガシャッ!



蓮(こいつ、城戸の方に向かって……!!)



蓮「おい城戸!! そこから離れれろ!!」

真司「は? ……うおぉ!? 何コイツ!?」

サソード人形『』ガシャッガシャッ

真司「やば、うわあぁーー!!」

サソード人形『』ガシャッガシャッ

真司「あぁーー……!! ……あ?」

サソード人形『』ガシャッガシャッ

真司「……あ、あれ? 素通り……?」

蓮「……!?」



サソード人形『』ガションッ!




真司「……え……」

蓮(……カウンターに、立った?)





サソード人形『イラッシャイマセコンニチハ』

真司「うおっ!? って、え?」

サソード人形『ゴ注文ヲドウゾ』

真司「あ、はい。あの、テリヤキバーガー、と、ポテト、L……で……」

サソード人形『オ飲物ハイカガデスカ?』

真司「えっ……じゃ、じゃあ……オレンジジュース……М……」

サソード人形『カシコマリマシタ。少々オマチクダサイ』ガシャガシャ

真司「…………」

蓮「…………」



真司・蓮(そういうシステムだったのか……!!)



サソード人形『オマタセイタシマシタ』ガション

真司「早っ! ……本物、だよな? 湯気立ってるし……」

サソード人形『マタノゴ来店オマチシテオリマス』ペコリ

真司「え、あの、支払は……?」

サソード人形『会場内デノ販売物ハ、初回ノミ、ライダーポイント無シデ購入デキマス』

真司「あ、そうですか……あの、ライダーポイントって……?」

サソード人形『…………』ガショガションッ

真司「あ、あれ? ちょっと? おーい?」



サソード人形『』ガションッ



蓮「……元の位置に……戻った……」

真司「えー……」



蓮「……随分と、シュールな……光景だったな……」

真司「変身してた本人が見たらどう思うんだろな……」

蓮「…………お前、それどうする気だ」

真司「……トレイで出されちゃったからなぁ……これ持って探索ってわけには……」

真司「……そこにテーブルあるし、食べるよ。勿体ないしな」

蓮「……ハァ……」

真司「……蓮も頼めば?」ガサガサ

蓮「…………」

真司「……んぐ、むぐ……あ、普通に美味いぞこれ!」ホクホク

蓮「…………」

蓮「…………」チリンチリン

サソード人形『』ガションッ



ガシャガシャ……ガションッ



サソード人形『イラッシャイマセコンニチハ。ゴ注文ヲドウゾ』

蓮「…………ダブルチーズと、チキンフィレオを……」

???「あの、俺も一緒に頼んでいいですか?」

蓮「!」

木場「どうも、さっきぶりです」

真司「ングング……あ! 木場君! ……もう、いいの?」

木場「はいっ。もう大丈夫です。恥ずかしい所見せちゃいましたね」

真司「気にすんなって! それより木場君、戒斗と一緒の家だろ? これからあいつになんか酷い事されたら、俺に言えよ!」モグモグ

木場「いやいや、酷い事ってそんな……駆紋君は、俺の事を思って言ってくれたわけだし……」

真司「そうかもしんないけどさぁ! 言い方ってもんがあると思うのよ俺は! もし俺があんなキツイものの言い方されたら絶対傷つくよ! 1日凹む自信があるね!」モグモグ

蓮「自分で言っていて悲しくならないのか?」

真司「うるへー!」モグモグ



木場「……あの! 秋山さん……」

蓮「?」

木場「さっきはすいません……気を使わせちゃって……」

蓮「……俺は同じ場所にいつまでも留まっていても仕方ないと思っただけだ。気を使ってなんていない」

木場「……フフッ」

蓮「……何がおかしい」

木場「あ、いや、ごめんなさい……ただ……フフフッ」

木場「……俺が、あの家で最初に会ったあなた達は……本当は皆、凄くいい人なんだろうなって……」

木場「いい人だからこそ……きっと、ここに居るんだろうなって……そう思ったんです」

蓮「……俺がいい人だと思うのか」

木場「えぇ。とても」ニコリ

蓮(……俺がいい人なら、城戸はもう菩薩か何かだな)

蓮「……それはともかく、注文するならさっさとしろ。こいつがさっきから固まってるぞ」

サソード人形『』シーン

木場「あっ……」




◇ドーム中央・観客席付近◇




チェイス「やはり広いな」

戒斗「東京ドーム並みだからな」

チェイス「これだけ広いと、野球というスポーツもやりがいがありそうだな」

戒斗「……お前、野球をやった事があるのか?」

チェイス「いや、全くない。バスケットなら、少しやった覚えがある」

チェイス「駆紋は何か得意なスポーツがあるか?」

戒斗「……サッカーなら、少し」

チェイス「成程、サッカーか」

戒斗「球技に限らないのであれば、一番はダンスだがな」

チェイス「ダンスを踊れるのか?」

戒斗「あぁ。それだけは誰にも負けんと自負している」

チェイス「相手はどんな人だったのだ?」

戒斗「……はぁ?」

チェイス「ダンスは、共に踊るパートナーが必要だと、聞いた事があるが」

戒斗「それは社交ダンスだろう! 俺がやっていたのはストーリトダンスだッ!」

戒斗「俺が誰かと手をつないでクルクル回る踊りをするように見えるのか貴様は……!」

チェイス「……それはそれでいいと思うが?」

戒斗「……お前と話していると調子が狂うな……」ハァ

チェイス「……む?」

戒斗「! 何だ?」

チェイス「向こうで誰かの話声がする」

戒斗「……行くぞ」

チェイス「あぁ」






コートの女性「だ・か・ら! 何でアンタみたいなイカレた奴と一緒に行かなきゃならないわけ!?」

白い服の青年「なっ……貴様! 我が兄に向かってイカレたとは何事だ!」

黒スーツの女性「まぁ……その恰好は確かに変よね」

痛い服の青年「……あんた達はいいよなぁ……片やバリバリのキャリアウーマンって感じの恰好で……」

痛い服の青年「もう一方は小奇麗なブランド物っぽい服着てさー……」

痛い服の青年「光の住人って雰囲気が漂って……あぁ、闇の住人の俺には眩し過ぎるよ……」



白い服の青年「しっかりするんだお兄ちゃん! 俺達は皆死人……ならばここは天国か地獄かのどちらか!」

白い服の青年「俺が天国に行けるはずがない……という事はつまりここは地獄!! 目の前の彼女らも、我々地獄兄弟と同じく相応の闇を持っているはずだ!」

コートの女性「や、闇って……アンタ初対面の人間相手に……!」

黒スーツの女性「…………」

痛い服の青年「そ、そうか……! 確かにその通り――って待て! 俺は今のお前を地獄兄弟だなんて認めないって言ってるだろ!」

白い服の青年「何故だ! どうしてだお兄ちゃん! 俺程の闇を抱えた男はそうはいないぞ! 俺の目を見てくれ……! 深い闇が見えるだろう!?」

痛い服の青年「…………」ジッ

白い服の青年「…………」ドキドキ

痛い服の青年「……駄目だね」

白い服の青年「なっ!?」ガーン

痛い服の青年「お前の目には光が見えるんだよ……! 捨てきれない鬱陶しい光が輝いてる! ……タブン」

白い服の青年「そ、そんな……!? 俺にまだ光が残ってるなんて……一体どんな光なんだ!?」

痛い服の青年「う、そ、それはその……あー……あ、愛だ!! 愛の光が……見え、る……」

白い服の青年「ッ……!! そう、か……はは……愛の光か……成程、俺が捨てきれない訳だ……」

痛い服の青年「そ、そうさ! だからお前を地獄兄弟の一員とは認められないんだ!」

痛い服の青年「仮にもし俺が認めたって、兄貴だったら絶対認めないなっ!」

痛い服の青年「…………兄貴……今頃、どうしてるのかなぁ……」

白い服の青年「……唯一残った兄さえも失った……! もう、俺には何もないんだぁ……」ヘタリ

痛い服の青年「兄貴……うぅ……!」グスッ

コートの女性「……地獄兄弟……って、何?」

黒スーツの女性「……さぁ……?」





チェイス「……若い男2人に、女性が2人か。何やら揉めていたようだが……駆紋、どうす――――」

戒斗「ッ――――!!!」ダッ!!

チェイス「! 駆紋!?」





コートの女性「ッ! ちょっと、また誰か来るんだけど!?」

痛い服の青年「……兄貴……俺こんな所でどうしたらいいんだよぉ……兄貴ぃ……」メソメソ

白い服の青年「ふ、ふふ……やはり、怪物の俺に、居場所などあるわけ無いんだ……! うぅぅ……!」メソメソ

コートの女性「聞けよ!」

黒スーツの女性「……ッ!!? あ、あなた……!!」






戒斗「……湊ッ……」

湊「……戒、斗……な、なんで……どうしてっ……!?」

戒斗「……お前も、こちらに来ていたのか……」

戒斗「…………悪いな。あいつの方が、強かった」

湊「っ……!! 戒斗っ……!!」タタタッ





コートの女性「え……嘘、知り合い?」

チェイス「どうやらそのようだな」

コートの女性「ひゃあぁあぁ!? な、何だよアンタ!?」

チェイス「俺はチェイスだ。ちなみに人間ではなく、ロボットだ」

コートの女性「いや、いきなり背後から現れて何言い出してんの……!?」

チェイス「できれば、そちらの名前も聞きたいのだが」

コートの女性「…………美穂だよ。霧島美穂」



チェイス「そうか。よろしく頼む。ところで、お前達はここが何なのか、もう知っているか?」

美穂「……仮面ライダーのあの世でしょ? ……あたしの知ってる仮面ライダーと、随分違う奴等が多いみたいだけど……」

チェイス「……そうか。では、今戒斗と共にいる女性も……」

美穂「もう分かってるよ。自分のライダーの人形見つけて、書かれてた事も読んだって……」

美穂「……あたしも、自分の人形の説明見たけど……正直なんか、複雑だよ」

チェイス「……それは、どうしてだ?」

美穂「……さーね。知りたきゃ人形探せばいいんじゃない? あんだけでかでかと目立つ置き方されてちゃ、隠したくても隠せないし……」

チェイス「隠したいのか?」

美穂「誰が自分の人生を事細かに書かれた物を人目のつくとこに置かれて喜ぶのさ……あれを見て、わざわざあたしと仲よくしたがる人なんて、湊さん位だよ」

チェイス「……それで、その2人は……?」

美穂「……知らないって。あたし達がここに居たら、2人揃って話しかけてきて、一緒に行動しようって言われたんだけど……」

美穂「白い方はともかく、黒い方はなんか色々ヤバそうな雰囲気だったから拒否ったんだよ……恰好といい顔の傷といい、明らかに不審者じゃん!」

チェイス「人を見た目で判断するのは良くない。ちゃんと心を見て判断するのが人間のルールではないのか?」

チェイス「……俺の名はチェイスだ。お前の名を聞かせてくれないか」

白い服の青年「うぅ……グスッ……俺は……神に代わり、剣を……振るう男……神代、剣だ……」グスグス

剣「……いや、俺は所詮まがい物……神の代わりにもなれなければ、振るう剣も、初めから無い様な男だぁ~……!」ズビーッ

美穂「…………」イラッ

チェイス「……何があったのかは知らないが、神代剣……いい名だと思うぞ」

チェイス「そっちのお前も、名前を……」

痛い服の青年「これから俺どうすればいいんだよ……兄貴のいないここで、何をすれば……」

チェイス「すまないが、名前を……」

痛い服の青年「あの時、馬鹿正直にあんな物持っていかなければ……!! あぁあぁぁ~~!!」グシャグシャッ

美穂「…………」イライラ




チェイス「……わかった。後でもう一度聞かせてくれ」

剣「爺や……ミサキーヌぅぅ……!」

痛い服の青年「寂しいよ……会いたいよぉ兄貴ぃ……!!」エッグエグ

美穂「」プツン








美穂「グジュグジュメソメソうるっさいんだよこのモヤシ共ォ!!!」グワッ!!

痛い服の青年「ッ!?」ビクゥッ

チェイス「!?……霧島……?」

剣「うぅ……ヒック……うぅ……?」

美穂「挙動不審気味に勝手に話しかけてきておいて勝手に泣き出すな!!」

美穂「大の男が恥も外聞もなく女の前でピーピーピーピー……見てるこっちが恥ずかしいっつうの!!」

美穂「特にアンタ!!」ビシッ!

痛い服の青年「っ、な、何だよ……」

美穂「黙って聞いてれば光だ闇だって訳のわからない事ばっか言って……! 死んで悲しいのは皆一緒なんだよ!!」

美穂「自分だけが不幸だとでも思ってんの!? 甘えんなヘタレ!!」

チェイス「…………」

剣「…………」ポカーン



美穂「大体何? 地獄兄弟? もう名前からしてダッサいんだけど!」

痛い服の青年「なっ……!?」

美穂「光の住人とか闇の住人とかって勝手に人を区別して、自分に無い物を誰かが持ってたら、『光の住人だから持ってるもので、闇の住人の自分は無くても仕方ない~』……」

美穂「……って、言い訳するのが目的のグループか何か? それが地獄兄弟? へーすごいねー! そのとことん腐った根性の情けなさが!!」

痛い服の青年「う、うるさい!! お前なんかに地獄兄弟の何がわかるんだよ!!」

美穂「知らないし知りたくもないね! アンタの言う兄貴って奴も、きっと碌でもない男だったんだろうね~!」

痛い服の青年「!!」

美穂「毎日ウジウジ人を呪って世間を呪って、自分に言い訳し続けて一日を終える……うわぁーヤダヤダ! 絶対知り合いになりたく――――」







痛い服装の青年「――――笑ったな」




美穂「!」

チェイス「ッ……!」

剣「…………」

痛い服の青年「今……俺の兄貴を……笑ったな……!!」

痛い服の青年「俺の事はいくらでも馬鹿にすればいい……けど、俺の兄貴を笑うのは……! 絶対に許さないぞッ……!!」

美穂「……ふーん、そういう顔もできるんじゃん。だったらさ、大好きな兄貴の顔に泥塗るようなみっともない真似、しない方がいいんじゃない?」

美穂「名前聞かれてんだから、はっきり答えなよ!」

痛い服の青年「……影山だ……!」

影山「闇の住人にして、兄貴の……矢車想の唯一無二の弟分! 影山瞬だ!!」

美穂「はいはい、影山瞬ね。……さ、これでいいでしょ?」

チェイス「……あぁ、助かった」

影山「おいお前! 顔覚えたからな! 地獄兄弟をバカにした事、絶対後悔させてやるぞ! 覚えてろよ!!」

美穂「んん~~? あたしそんな事言ったっけかな~?」シレッ

影山「本当に後悔させてやるからな……!?」ピキピキ




剣「…………」ポケー

美穂「……何? あたしの顔になんか付いてる?」

剣「……ハッ! い、いや別に! 何も!」

美穂「あっそ。とにかくアンタ達、男なら男らしく、もっと芯のある生き方心がけなよ!」

美穂「最低でも女の前で泣き出したりしないように! 分かった!?」

剣「あ、あぁ……! 分かった! 約束しよう!」

影山「!? おい!」

美穂「なら良し! ……で、何だっけ、あたしらと行動したいんだっけ?」

剣「? ……あぁ! そうだった! いや、正確には、ここで会ったある男に言われて、人を見つけ次第、休憩ロビーに連れてくるよう言われていたんだ!」

剣「できればその、い、一緒に来てほしいが……嫌だと言うならせめて! 皆、12時に休憩ロビーに集まるという事だけ覚えておいてくれ!」

美穂「……まぁ、今はもう、別にそこまで嫌ってわけじゃないし、湊さんがいいなら、あたしは平気だよ」

剣「!! そ、そうか! それは良かった! ハハハハ!」

美穂「?」

影山「……おい剣!」

剣「! な、なんだ?」




影山(何こいつの言う事を素直に聞いてるんだよ!)ヒソヒソ

剣(それは……彼女の言う事が正しいと思ったからだ!)ヒソヒソ

影山(こんな乱暴で口うるさい女の言う事なんか聞く必要ないだろ! 何よりこいつは俺達地獄兄弟を馬鹿にしたんだぞッ!)

剣(えっ……いや、だってさっきは、もう俺は地獄兄弟ではないと……)

影山(あ……う、な、なら! 今からもう一度お前にチャンスをやる! お前が地獄兄弟に入った記念に、あの女を俺達2人で懲らしめるんだ!!)

剣(!? 一体何をしようというんだ!?)

影山(それをこれから考えるんだよ!)

剣(し、しかし……)




影山(何も痛めつけようとかそういう事じゃない。地獄兄弟の闇の凄さを思い知らせてやれればそれでいいんだ! 軽いお仕置きだよ!)

影山(ここで一番信頼できるのはお前しかいないからな……頼りにしてるぞ弟!!)

剣(!! ……正直、心苦しいが……お兄ちゃんが言うなら仕方ない! 俺はお仕置きにおいても頂点に立つ男だ……!!)

影山「良し! 今ここに、新生地獄兄弟、結成の狼煙を上げるぞ!!」スッ

剣「うむ!!」ガシッ





剣(……だが……やはり少々、気が引けるな……あまり迷惑にならなそうな事で、尚且つお兄ちゃんの機嫌を取れる何かを考えなくては……)

剣(……というか、なぜ俺は初対面の女性相手に、こんなにも気を使ってるんだ?)

剣(…………まさか……)







――――剣君っ♪






剣(……馬鹿な! 彼女はミサキーヌではない! ミサキーヌにだって、姉さんと自分を重ねて見るなと言われたじゃないか!)

剣(この神代剣! 同じ過ちを犯す事は絶対に無いッ!)

剣(…………しかし……)




美穂「……チェイスだっけ? あんたのどの辺がロボットなんだよ」

チェイス「…………映像出力」ピカーッ

美穂「!!? え……う、嘘……マジで!?」

チェイス「これが証拠だ」

美穂「ちょ、ちょちょ待って待って! もっかい! もう一回やって!!」




剣(…………この胸を刺すような痛みと、僅かに熱を持った心臓の感覚は……)ボー…





戒斗「…………話は聞いていたが、本当にロボットだったのか」

チェイス「む、戻って来たか……そちらの女性は、知り合いか?」

戒斗「……あぁ。湊燿子、俺の……仲間だ」

湊「………………」

美穂「……湊さん? どうしたの? 顔色悪いよ……? 大丈夫なの?」

湊「! ……えぇ……気にしないで……平気だから……」

戒斗「…………」

影山「……あんた達も、ライダーなのか?」

剣「違う世界のライダー、か……最初の家で会った2人も、俺達とはまるで違うライダーだったようだが……」

戒斗「……誰だ、貴様ら」

チェイス「白い服を着ている方が、神代剣、その隣の変わった服を着ているのが、影山瞬というらしい」

戒斗「そっちの女は?」

湊「……彼女は、霧島美穂。昨日の夜、目が覚めたら私と彼女で同じ家に閉じこめられていて……ここまで、私と一緒に行動していたのよ」

戒斗「……そうか」

美穂「で? そういうあんたは何者? 仲間って言ったけど、湊さんとどういう関係?」

戒斗「駆紋戒斗だ。湊との関係は言った通りだ。生きていた頃は共に戦っていた。最初は敵だったが」

美穂「……ふーん。何だ、つまんないの。てっきり湊さんの年下の彼氏かと思ったのになー」

戒斗「…………」

湊「か、彼氏って……! 別に戒斗とはっ、そんなのじゃないわ! 戒斗にも迷惑だから、そういう冗談はやめて!」

美穂「……んー……?」

湊「ごめんなさい戒斗! この子結構思った事ズバズバ行っちゃう子で! 余り気にしないであげてっ」

戒斗「…………」

美穂「……あーあーあー。へ~、そうなんだぁ……湊さん、そういう事か~」ニヤニヤ

湊「……何が、そういう事なのかしら……?」



チェイス「……話はまた後にしよう。神代、12時に休憩ロビーへ集合、だったな?」

剣「そうだ。お前達、他にここで会った奴は居るのか?」

戒斗「……俺とこの男を含めて8人だ。残りの6人はどこへ行ったかわからんな」

剣「ふむ……できればその6人にも伝えたいが……」

湊「……今は何時なのかしら?」

チェイス「……11時45分……後15分だな」

美穂「どうする? あたし達だけで行っちゃう?」

チェイス「俺としては合流してから向かいたいが……」

影山「いやでも、もしかしたらもう、他の奴が教えてるかもしれないぞ?」

戒斗「どっちでもいい。多少遅れたところで何か問題があるわけでもあるまい」

戒斗「ここへ来た人間が集まると言うのなら、人数は多ければ多いほどいい。それだけ得られる情報も多くなる……」

戒斗「俺達は残りの6人を見つけてから行く。先に行きたい奴は行けばいい。湊、ついて来い」

湊「! えぇ、わかったわ」

美穂「え? 湊さん、あたし達と一緒に行かないの?」

湊「……ごめんなさい、後で合流しましょう」

美穂「えー! 湊さんが行かないならあたしもそっちについて行こー!」

剣「何!? 行ってしまうのか!?」

美穂「だって流石にあんた達と3人だけっていうのは……嫌だし……」

剣「い、嫌……」

影山「あぁ……今日は胸に闇が溢れてくる日だなぁ……!」グギギ



ここまでです。



今回で登場確定したのは

龍騎から……手塚海之、霧島美穂。

カブトから……影山、ぼっちゃま。

Wから……克己ちゃん。

鎧武から……湊さん。


の、計6人でした。


とはいえ、まだ話に実際に出てきてない人がいるので、次回にはお披露目したい所。


投稿しようとした今日まで素で忘れていた生存報告の約束。そして仮面ライダーエタナールとか言うこれ以上ない位の大ポカ。
もう(>>1の頭が)駄目かもわからんね。


投下します。




◇―――その頃の音也―――◇




音也「……【仮面ライダーファム】……【仮面ライダースカル】……【仮面ライダーイクサ】……仮面ラ……」

音也「!! イクサ!! あったー!! 俺のイクサだ! まったく、探したぞ! フッ、やっぱいつ見ても完成されたフォルムだなぁ!」

音也「……うん、他のライダーも色々見たが、全く負けとらんな。イクサが一番イカしてる!」

音也「さーて、俺の碑文には何が書かれてるかなー?」ワクワク

???「すまない、そこの人」

音也「『ライフエナジーと呼ばれる、人間の生命エネルギーを喰らって生きる怪人、ファンガイアに対抗するため、対ファンガイア組織である【素晴らしき青空の会】が開発したパワードスーツ、それがこの【イクサシステム】である』……」

???「……聞こえてるか? 話があるんだが」

音也「『この武装は様々な者の手に渡り、何度も所有者が入れ替わっていたが、最後に行き着いたイクサの所有者は、元は唯の一般人にすぎない、紅音也だった』……うんうんその通りだ」

???「……オホン……悪いが、話があるから、こっちを向いてくれないか?」

音也「『彼はとにかく自由奔放である。その場その時の気分で行動し、周囲を掻き乱すだけ掻き乱して、その責任を取るでもなく立ち去る、嵐のような存在だ』……余計なお世話だトンチキ!」

???「……驚いたな……結構大きな声で言ったと思ったが、まるで無反応とは」

音也「分かったからちょっと待ってろっての!今俺は自分の人生を振り返ってるんだ邪魔をするな!」

???「聴こえてるんじゃないか……せめてこっちを向く程度の事はしてもいだろうに」

音也「『特に女性に対しだらしない傾向があり、女と見るや取りあえず口説かずにはいられない性分もあって、彼に対し良い印象を持つ人間はそう多くない』!?」

音也「何だコノヤロー!! 俺のだけ何か書いてある事が酷いぞ!? どうなってんだお前、おい!」

???「いや、俺に言わんでくれ……それといい加減こっちを見ろ」

???「というか、いいのか? 自分の事が書かれてる物をわざわざ朗読しなくてもいいんじゃないか?」

音也「馬鹿だなーお前。わざわざお前に聞かせてやってるんだろうが! この俺の儚くも強く輝き散る花火の如く美しい人生を!!」

???「……色々突っ込みたい事があるが、俺の存在に気づいていて、こうして声をかけられて尚無視するのは、大人の男として、礼儀がなっていないと思うぞ?」

音也「『しかし、それはあくまでも紅音也と言う男をあまり知らない人間の評価だ』……お?」

???「ここまで言ってまだ俺に見向きもしないのか……」



音也「『自由であるという事は即ち、何物にも流されず、何者にも屈しない強く固い芯がある事の表れであり、その点では、彼は良くも悪くも他の追随を許さなかった』……ハハハ、だろうなぁ!」

???「おい……」

音也「『本人の性格上、彼を真に理解できる人間は少ないが、紅音也の奥底にある本質は、人の奏でる音楽と女性を心から愛し、尊敬し』……」

音也「『それらを奪ったり、傷つける者を何よりも憎み、それらを守るためならば、己の命を投げ打つことすらも厭わない、どこか高潔さすら感じる、彼自身の正義なのだ』……!」

音也「フハハハ! いいぞいいぞ! 良く分かってるじゃないか! 落すと見せかけて褒めるとは、こやつ、やりおるなっ!」

???「……ハァ……おい!」

音也「だぁー!! んもううるせーなぁ! せっかく面白くなってきた……」

音也「とこ、ろ……ッ!!?」








ザンキ「まったく……最近の若者に常識が無くなって来たとは聞くが、それでもまだ少しはしっかりしてると思ってたんだがな」

ザンキ「イブキやトドロキが特別だっただけなのかねぇ……」




音也「…………お前……何で……」

ザンキ「……? どうした、急に鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」

音也「…………あ……当たり前だろぉッ!!」

ザンキ「うおっ……何だ一体?」

音也「お前っ!! なんだってお前が……!? 何死んでんだ馬鹿野郎ッ!! 俺との約束はどうしたんだ!!」ガシッ!

ザンキ「? ……???」

音也「お前だから、任せられると思ったんだぞ……!! 渡を、守れるって……!!」

ザンキ「ワ、ワタル……?」

音也「クソ……ハジメちゃんの言った通りだなこりゃ……! まさか、こんな所でお前と再会する事になるなんて……!!」

ザンキ「…………」

音也「お前……俺が居なくなった後、何があったってんだよ……次郎……!!」

ザンキ「…………そういう事か」

音也「……?」

ザンキ「俺の名前はザンキだ。と言っても、これは仕事の名義で本名はまた違うんだが……そっちもジロウなんて名前じゃない」

音也「は……? ……何言ってんだお前?」

ザンキ「俺はお前さんを知らない。今初めて会ったんだよ。ジロウってのが誰で、お前さんとどんな関係かは知らないが、俺はそのジロウってのじゃない。別人だって事だ」

ザンキ「顔が似てるのか? 俺と、そのジロウって人は」

音也「…………別、人?」

ザンキ「そうだ」

音也「……他人の空似?」

ザンキ「そういう事だな」

音也「…………なんじゃああそりゃあぁぁッ!! こっちは心臓止まるかと思ったわ!!」

ザンキ「それは、まぁ……何というか、すまんな。こっちも悪気があって似てたわけじゃないんでな……勘弁してくれ」

音也「……あぁ、いや……こっちこそ悪かった。ダチが死んじまったのかと思って取り乱した……」

音也「…………しかし、似てるってレベルじゃないな……生き別れの双子かってくらいだぞ」

ザンキ「そんなにか?」

音也「あぁ。ドッペルゲンガーか何かかな?」



ザンキ「……で、紅音也……音也でいいな? 話があるんだが」

音也「ん? あぁ、そう言えばそんな事言ってたな。何だ」

ザンキ「ある奴に言われてな。ここで見つけた人間に片っ端から、『12時に休憩ロビーに集まれ』と伝えているらしいんだ」

音也「休憩ロビー?」

ザンキ「俺はさっき通り過ぎた所だったんだが、この事を知った者にも、できるだで多くの人に伝えてほしいって話だった。だからこうして人を探して歩いてたんだ」

音也「ほーん……まぁいい考えだな。ここに居る全ての人間を、お互いに把握できるってわけだ」

ザンキ「どうする? 俺はまだお前しか見つけてないが、最初に思いついた連中が動いてから、それなりに経つらしいし、時間もそこそこだ」

ザンキ「この件はもう殆どの者が知ってるだろう。俺はそろそろロビーに行こうかと思ってるが……」

音也「勿論行くとも! 女ライダーとの出会いがある僅かな可能性に賭けてな!!」

ザンキ「……本当に女性に目が無いらしいな……」

音也「だが……もし女が1人も居なかったら、誘ったお前を恨むぞ!!」

ザンキ「そりゃあまた……理不尽な話だな……」





◇――更にその頃の真司達――◇




真司「ふぅ~……美味かったー! こういうジャンクフードって、体に悪いって分かってても、ついつい食べたくなるんだよなぁ」

木場「カップラーメンとかも、見かけると買いたくなっちゃいますよね」ハハ

蓮「…………」チュー



パタパタパタパタ……!



蓮「……! 誰か走ってくるぞ」

真司「ん? あ、あれ巧だ! おーい巧ー!」

木場「え?」



巧「ハァ、ハァ……! 木場ッ!」

木場「乾君、どうしたんだい……? あの人を探しに行ったんじゃ……」

巧「それどころじゃねぇんだよ!! あいつは……! まだ居ないか……!?」

木場「あいつ……?」

巧「……木場、落ち着いて聞いてくれ……! 実は、こっちに草k」




ガチャリッ!



巧「!!」

蓮「む……」

真司「?」




???(A)「待ってよ、どこに行くんだよ……あの人にだって、1人になるなって言われたのに」

???(B)「あいつがそう言ったら、俺がそれに従わなければならない理由があるのかなぁ?」

???(A)「そんな……」

???(B)「俺は足手まといの君のお守りをしながら行動するのはまっぴらなん――――!!!」

木場「!!?」

巧(クソッ……!? なんつータイミングで……!!)





巧「……草加っ……」

草加「…………ここに、居たか……乾ぃ……!」




???(A)「……草加……?」

真司「……巧達の、知り合い?」

木場「……ッ……!!」

蓮「…………」



巧「……草加、落ち着いて話がしたい……!」

草加「君が俺に話……? 一体何を話してくれるんだ? そこの屑と一緒に、薄汚い化け物らしく無様に死ぬまでの経緯……とかかなぁ……?」

巧「っ、草加……!!」

真司(……お、おい蓮! あいつ、いきなり表れてかなり酷い事言ってるんだけど……本当に巧達の知り合いなのか!?)ヒソヒソ

蓮(……いい意味での知り合いじゃなそうだな……)ヒソヒソ

草加「……まぁいい。今は君にはこれと言って用は無いさ……」

草加「それよりも……俺が今、一番話したいのは…………貴様だ……」プルプル…






――――ダッ!!



巧「!?」










草加「木いいぃぃぃいいぃぃ場ああぁぁあぁぁああぁあ!!!!」グワァッ!!





ガシャアァァンッ!!




木場「がっ……!!」




蓮「ッ!!」

真司「えっ……!?」

巧「き、木場ッ!!」

???(A)「え……え?」



木場「う、ぐっ……! ゲホッ……!!」



ドカッ!!



木場「ぐ、あッ……!?」

草加「……会いたかったよ木場ぁ……!! 凄く、凄く会いたかった……!!」

草加「本当に……よくも……やってくれたなああぁぁあぁッ!!?」ブンッ!



バキィッ!!



木場「ぐっ……!!」

真司「お、おい!! やめろ!! やめろよッ!! 何だよお前!? 何してんだよッ!!」ガシッ!

草加「触るなぁ!!」バキッ!

真司「ぐあ!?」

蓮「! 城戸!」

巧「止せ草加!! もういいだろ!? 木場の話も聞いてやってくれ!!」

草加「黙れぇ!! 薄汚れた、人間の皮を被った怪物どもが!! 話を聞く!? 聞いてどうなる!? 聞けば俺は生き返るれれるのか!?」

草加「貴様等が……貴様等オルフェノクが存在したからッ!! 俺達は、真理はッ!! あんな目に遭ったんだぞ!!」

草加「そして、木場ぁ……!! 貴様が……!! 貴様が俺をッ!! 俺を殺したんだろうがぁッッ!!」

蓮(! 何だと?)

木場「……ッ……」

真司「えっ……あ……!!」




真司(そうだ……昨日、巧が話していた……! もう1人の、死んだ仲間のライダーの話!)

真司(いけ好かない奴だけど、戦いでは信頼できた、木場さんが殺してしまったって言う……! 名前は……確か草加雅人!!)




草加「貴様のせいだ……!! 貴様が俺をこんな所に追いやったんだッ!! 真理のいない、空虚な世界にぃぃ!!」

木場「…………か、った……」

草加「……!」

木場「……すま……な、かった……!」

草加「…………ぐ、が……ぎいぃいぃ……!!」ビキビキ



バキャッ!!



木場「がッ……グ……!」

草加「『すまなかった』……!? すまなかっただとッ!? なんだそれは……!? ふざけるなァ!! そんな薄っぺらい一言で、許すとでも――――!!」

木場「許さなく、て……いい……!」

草加「……何……?」

木場「俺が、君にした、仕打ちは……俺の弱さが招いた……俺の罪だ……」

木場「本当に……申し訳ない事を……したと、思ってる……」

木場「許してほしいから……言ってるんじゃない……本当に、悔いているんだ……」

草加「…………」

木場「君の怒りと憎しみは、当然のもので……俺は、それを全部……受け止める義務がある……!」

木場「それが……罪を犯した俺の、受けるべき……罰だから……」

巧「木場、お前……!?」

木場「乾君……止めないで、ね……これは、俺の問題だ……!」

木場「……俺は、一切抵抗しない……殴りたいだけ、殴ってくれ……!」



草加「…………いいねぇ。君は凄いよ……自分から進んで罰を受けるって事か……」

草加「素晴らしい贖罪の精神だよ…………まるで人間みたいだ……」

真司「『みたい』って、木場君は……!」

草加「だからこそ!! 油断ならないんだよ……!! オルフェノクってのはなッ!!」ギロッ

草加「そうやって人間のふりをして……油断させて……最後には人間を裏切って、人間を滅ぼそうとするんだもんなぁ……!!」

蓮「…………」

草加「何が『悔いている』……だ……貴様がどんなに悔いたところで……俺はもう、二度と真理には……!!」

木場「…………」

草加「……でもまぁ、殴りたいだけ殴ってくれって言うんだから……」

草加「ご希望に応えてやるよ……!!」グッ

木場「っ…………」ギュッ



パシッ!



巧「!!」

木場「……!?」

真司「蓮!」

草加「……何の真似かなぁ……? これは……」

蓮「その辺にしておけ……今この場において、傍から見て異常なのはお前だ」

草加「部外者が知ったように言うじゃないか……! これは俺達の問題だ。関係ない人間が邪魔をするな!!」

蓮「関係ならある。こいつは一応、この世界で俺と同じ屋根の下で暮らす事になる奴だ」

蓮「別に仲がいいわけでもないが、悪いわけでもない。顔見知りが無抵抗に殴られるのを黙って見ているのは、流石に気分が悪い」

草加「…………」

蓮「これ以上やると言うなら、俺が代わりに相手をしよう。……もっとも、俺の場合は、黙って殴られてやる気も無いがな」

蓮「……さっさとこいつから離れろ。痛い目を見たくなかったらな」

木場「秋山……さん……」

草加「…………」

巧「…………草加……!」



草加「…………そうか。痛い目を見たくなかったら……か」スクッ…

草加「……その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!!」ビュンッ!



バキャッ!!



蓮「ぐっ……!?」

真司「!? 蓮!? お前っ、マジでいい加減にしとけよ!!」

草加「邪魔なんだよ……俺の思い通りにならないモノは……全てぇッ!!」ダッ

巧「おい、草加!?」

蓮「……いいだろう。こっちが態々譲歩してやったのを突き返したんだ……覚悟はできるな……!!」ポキポキッ

真司「蓮も落ち着けって!! 気持ちはすげぇ分かるし俺も殴ってやりたいけど! ここで喧嘩なんかしてどうすんだよ!?」

木場「そ、そうですよ! 元はと言えば俺が悪いんだ! あなたがそんな事する必要は……!」

蓮「お前達はどいてろ……それに城戸、俺が負けず嫌いな性格なのは、知ってるだろう……!」ズンズン!

巧「草加やめろ!! そいつは関係ないだろ!!」

草加「ハンッ、いい子ぶるなよ乾……!! 薄汚い化け物が、人間の俺に命令するなッ!!」ギロッ



ドガッ!!



草加「うぐぉ!?」

巧「!!」

蓮「余所見とは、随分余裕だな……!」

草加「……貴っ様ぁ……!!」ガバッ



ガンッ!! バキッ!! ゴッ!! パァン!! ……



???(A)「く、草加……!」オロオロ

真司「おい蓮!? 蓮ってば!! ど、どうすんだよこれ……!? おいあんた! コイツと一緒に来ただろう!? 黙って見てないで止めてくれよ!!」

???(A)「……でも、僕、草加とは昨日会ったばかりで、僕の事嫌いみたいだから……邪魔するとこっちまで巻き込まれそうだし……」オロオロ

真司「そんな……た、巧ぃ~!」

巧「わからない……! どうやって落ち着かせれば……!?」

巧(こいつがこんなに見境なく怒り散らすのなんて初めて見た……普段のこいつだったら、赤の他人が居るところで、自分の印象を悪くするような事はしねぇだろうに……!!)

巧(余りにも頭に来すぎて、自分でもどうにもできなくなってんのか!?)

木場「や、やめてくれ……! やめてくれ2人ともッ!!」




???(C)「やはり、こうなってしまったか」

巧「! だ、誰だあんた……」

???(C)「……相手側に非があるとはいえ、暴力に暴力で対抗していては、ライダーバトルと何ら変わらないぞ、秋山」

蓮「……!!」

草加「貴様……!」

真司「……あ、あぁ……お前っ……!?」

???(A)「手塚さん!」

手塚「また会ったな……城戸、秋山」フッ

真司「て、手塚ぁ!!」ダッ

秋山「手塚……!!」

草加「……口出しする気かよ……手塚ッ……!!」

秋山「! お前、手塚を知って……」

手塚「そこの男は昨夜からの付き合いだ。……草加、そいつは俺の知り合いだ。手を放してやってくれ」

草加「なぜ俺が君の指示に従う義理がある……? 君まで俺の邪魔をしようって言うのかなぁ!?」

手塚「……お前がどうしても自分の感情を優先したいというなら仕方ないが、お前のためにもその辺りでやめておいた方がいい」

草加「……それはどういう意味かな……」

手塚「ここはあらゆる世界の死んだライダーの行き着く世界。こう言えば沢山の人間が居るように感じるが、実際にはそう多くは無い」

手塚「ここにあるライダーの人形を大体見て回ったが、数は全部で20程だ。つまりこの世界に居る者は、精々がその程度の人数と言う事……」

草加「何が言いたい……? はっきり言えよ……!!」





荘吉「その少ない人数で、恐らくはこれから共にここで過ごしていくことになる。お前がここで良からぬ事をすれば、それだけ他の人間がお前に抱く印象は悪くなる」

一同『!!』



荘吉「人数が少ない分、情報が伝わりきるのも早い……そういう事だ」

手塚「……その通りだ」

草加「何なのかなぁッ……次から次へと……!」

荘吉「俺の事は後でいいだろう。それより、まだ言いたい事があるんじゃないのか。手塚海之」

手塚「! ……お前は、俺の事も天道の事も、信用も信頼もしていないだろうが、それでも俺達にとっては同じ家で一夜明かした仲だ」

手塚「お前がここで孤立してしまうのは、俺としてはあまり気持ちのいいものではない……今は抑えてくれ」

草加「…………チッ」パッ

蓮「…………」

真司「おい、蓮……! お前も手離せって……」

蓮「……フン」パッ

草加「…………」グイッ

巧「……草加」

草加「……忘れるなよ、木場……俺は絶対に、貴様を許しはしない……!!」

木場「……あぁ……」

???(A)「! どこに行くんだよ草加!」

草加「12時にロビーに集まれと言い出したのは俺達だろう。言い出しっぺが誰もいないなんて事は良くないんじゃないかなぁ?」

???(A)「じゃあ、僕も……」

草加「君は後からこいつらと来ればいいだろう。一々俺に着いてこないでくれよ。 迷惑 だからさ」スタスタ

???(A)「…………」





巧「……木場、大丈夫か?」

木場「…………平気だよ……俺が彼にした事を考えれば、まだ甘い位さ」

木場「……秋山さん、本当にすみません……俺のせいで……」

蓮「俺はただ奴が気に食わなかっただけだ。奴が俺に喧嘩を売った。だから買った。それだけだ」

木場「…………」

手塚「相変わらず素直じゃないな。お前は」

蓮「……煩い」




真司「手塚、お前もこっちに来てたんだなぁ……!」

手塚「……城戸……またお前と会えるとは思っていなかった。元気か?」

真司「おう! もうばっちし! いい奴等とも沢山会えたしな!」

手塚「フッ、そうか……ところで、あんたは誰だ? 俺の名を知っているようだが……」

荘吉「俺の名は鳴海宗吉。私立探偵をやっている。お前の名前はたった今会話に出ていたのを聞いただけだ。まぁ、ライダーの人形で事前に情報を得ていた、というのもあるが」

手塚「……あれには変身者の名は刻まれていても、顔写真のような物は無かったはずだが」

荘吉「俺はここに置いてある人形と、そこに書かれていた内容全てを記憶してある」

真司「えぇ!? あ、あれを全部!?」

荘吉「お前の口から『ライダーバトル』と言う単語と、その存在に否定的な言葉が出た時点で、城戸真司か手塚海之である可能性を睨んでいた」

荘吉「神崎士郎のライダーバトルを止めようとしていたのは、その2人だけらしいからな……」

荘吉「直後に、そこの黒髪の坊主が、お前を『手塚』と呼んだことで、確信した」

蓮(……情報収集の早さと、記憶力の良さ……得た情報を元に観察し、洞察する能力……探偵の肩書は伊達じゃないようだな)

手塚「……そういう事、か。無駄勘繰ってしまったな。すまない」

荘吉「構わんさ……俺のような探偵が来る事は、占いじゃ予測できなかったか?」

手塚「……俺が占ったのは、俺を含む最初の家に居た3人の近い運命を見たのと、今日ここで、どうすれば城戸と秋山に合流できるかを占った、その2つだけだったからな」

手塚「全ての細かな運命も占おうとすればできないでもないが、時間がかかりすぎるし、何より、些細なことまで知りすぎてしまっても、面白くないだろう?」

荘吉「……成程」

木場「……占い……?」

巧「あんた占い師なのか? ……まさか、最初に来たとき言ってた、『やはりこなってしまったか』って……」

手塚「あぁ。昨日占った内容に、大きな建物で仲間と再会できる事と、その際草加がトラブルを起こすと出ていたんだ」

巧「……なんだよそれ……随分ピンポイントな占いだなぁ。本当かよ」

真司「巧、手塚の占い馬鹿にしゃちゃ駄目だぜ……! 本当に当たるんだから!」エヘン!

蓮「お前が威張ってどうする、馬鹿」

真司「馬鹿って言うな!」




蓮「……鳴海。あんたは俺達の事をどこまで知った?」

荘吉「碑文に書かれている以上の事は何も知らん……だがあれは、それなりに深いとこまで、その人間の性格や経歴を書いてあるからな」

荘吉「お前達にとっての重要な事は大体知っている。もっとも、あの碑文がある限り、俺でなくとも、お前達の事はここに居る誰もが知ることになるだろう……」

荘吉「そして、逆にお前達が他の連中の事を知るのも容易い……勿論、俺の事もな」

蓮「……チッ、有難迷惑な事をしてくれるな……ここの管理人は……」

木場「でも……俺はあれ、嫌いじゃないな……少なくとも、悪意があって作った物とは思えない……」

木場「正直、他の皆について書かれている事も、ちゃんと読んでみたいな、って……」

蓮「…………」

木場「あっ、いや、興味本位で言ってるんじゃないんです! ただ、あれって……俺達がお互いに歩み寄るのに、いい切っ掛けになってくれる気がして……」

蓮「…………どこ誰とも知らん奴に、勝手な見解で書かれた物を鵜呑みされても癪だ」

木場「す……すいません……でも……!」

蓮「……だから、知りたいなら俺に直接聞けばいい。答えられる範囲で答えてやる」

木場「!! いいんですか……?」

蓮「その方がマシだと思っただけだ。代わりに、お前の事も聞かせてもらうぞ。特に、あの草加とか言う奴と、何があったのか」

木場「……はい……!」

巧「……本当に素直じゃねーな」

真司「だろー!? ほんっと厄介な奴だよ!」ハハハ!

蓮「……お前の馬鹿さ加減の厄介さに比べればずっとマシな筈だがな」

真司「こ、の、やろう……!」

蓮「……それはそうと手塚、お前……奴と同じ家なのか」

手塚「……草加の事か?」

真司「! そ、そうだ! あいつ、とんでもない奴だよ!! 巧や木場君に酷い事言うし、いきなり殴りかかるし、止めに入った蓮にまで……!」

巧「……仲間の俺が言うのも何だけどさ……あんた、あいつと一緒にいて、大丈夫か……?」

手塚「問題ない。別に俺と草加の2人きりというわけじゃないしな」

木場「……そのもう一人の住人って、もしかして、そこにいる彼が?」


???(A)「……えっと……」




手塚「あぁ、そうだ。どこか気弱なところがあるようなので、少し心配ではあるんだが……どうだ、何人か伝えられたか?」

???(A)「……草加が殆ど1人で……あ、でも、ザンキって人には僕が……」

手塚「十分だ。今ここに居る彼等には?」

???(A)「あ……まだだった。あのね……手塚さんの提案なんだけど、12時に、休憩ロビーに、ここに来ている皆で集合しようって……」

木場「休憩ロビー?」

手塚「ここからは少し離れてるな……今時間は?」

真司「……11時56分なんだけど……」

巧「ギリギリじゃねーか!!」

???(A)「ご、ごめんっ……もっと早く言っていれば……!」ビクッ

巧「え? い、いや、別にお前を責めてるわけじゃねーって……お前、名前は?」

???(A)「……僕は……」

手塚「名前は天道総司というらしい。俺が目覚めた家と同じ家に居た、もう一人のライダーだ」

天道「……こんにちは」

真司「天道君、ね! 俺城戸真司! よろしく! 天道って苗字かっこいいなぁ!」

天道「…………そう、だね……」

蓮「そんな事言ってる場合か! 草加の奴は先に行っている! もう勝手に場を仕切って、俺達についてある事無い事言いふらしてるかもしれんぞ……!」

真司「そ、そこまであいつが腐ってるってのか!? そんな奴いるの!? 幾らなんでもそれは……」

巧(……悪い、真司さん……どんぴしゃだよ……)

木場(その光景が容易に想像できてしまう……)




天道「……急いだ方がいい、よね?」

手塚「だな。皆、少し走るぞ」ダッ

蓮「まったく……!」ダッ

真司「あっ、待てよ蓮! 巧、木場君! 行こう! 天道君も!」ダッ

天道「……うん……」タタタ

木場「は、はいっ」タタタ

巧「俺はさっき向こうから走ってきたってのに……」ハァ

荘吉「…………」ダッ



パタパタパタパタ……




荘吉「……お前、ザンキと会ったのか」

天道「えっ?」

荘吉「ザンキとはこの世界で同じ家から来た。あいつとはどの辺りで会った?」

天道「……ビデオレンタル店があったとこ……ここからは正反対だけど……」

荘吉「あそこか……そうか、わかった」

荘吉「…………ところで、お前の名前だが……」

天道「……何?」






荘吉「何故……ここへ来てまで、コピーした男の名を名乗っている?」





天道「!!!!」ビタッ

天道「な……何で……」

荘吉「……そう驚く必要も無いだろう。言った筈だ、俺はここにあるライダーの人形と、碑文の内容を覚えていると」

荘吉「天道総司というのは、ネイティブワームに改造されたお前が擬態した男の名だ。その顔も、元はその男の顔……」




擬態天道「……ひ……ぅ……!」




荘吉「…………」

擬態天道「…………だ……だってっ……だって僕は……!!」

荘吉「…………悪かった、今言う必要も無い事だったな……」ポン

擬態天道「……え……?」

荘吉「……お前がここで、どんな名前で、どんな風に生きるか……それはお前の自由だ。お前の好きにしろ」

荘吉「俺はこの事を誰かに言うつもりは無い。だが、碑文の存在がある以上、いずれは誰もが、お前が何者かを知る……」

擬態天道「……!!」



巧「おーい! 何やってんだあんたら!」タッタッタッ

真司「置いてっちゃうぞー!」タッタッタッ



荘吉「……また後で話そう。行くぞ、坊主」ダッ

擬態天道「…………」パタパタ…






擬態天道(…………どうしよう……どうしようっ……! ここで、天道総司じゃないって皆に知れたら……)

擬態天道(僕はもう……誰でもなくなっちゃうよ……!!)


ここまでです。

亀執筆とはいえ、もうちょっと文字量増やしたいな……


ところで仮面ライダーマッハ/ハート予告来ましたねヤッター!
そしてまさかのチェイスのガチ復活フラグ来たねやだぁぁぁーー!

いや、ファンとしてはチェイスがまた剛と会えるのは凄く嬉しいんだけどね。
まぁスレに組み込めそうな内容だったら組み込んで、無理そうだったらもうパラレルって事で(思考停止)


進行状況の報告に来ました。現在1/3程度です。
来週の週末前に投下を目安にしてますが、この真夏にぶっ壊れたエアコンのおかげで作業が長時間続けられないため、遅れたらすみません。
なるべく急ぎます。

次回で、このSSにて登場する死人ライダーは全員登場します。お楽しみに。


こんばんわです。

ゴースト関連の要素を期待している方は申し訳ありませんが、>>1は未だにゴースト未視聴なので、ドライブより後の作品のネタは多分無いと思います。
死人ライダー全員集合! なSS書いといて親和性がありそうなのに何言ってんだって話ですが……
今新しい知識入れて、世界観に影響が出そうな物を無理やりプロットに組み込むのもマズイかなと思うので、はい。

それでは、投下します。




◇12時00分・休憩ロビー◇




ザンキ「着いたぞ。ここがロビーだ」

音也「おー、結構広いな。これなら多少大人数が来ても余裕がある……そして知らん顔がちらほらと居るな」

???(A)「! おぉ、ザンキ君、戻って来たか。……隣の彼は?」

ザンキ「紅音也というそうです。さっき偶然見つけて、ロビー集合の話をまだ聞いてなかったようなので、俺が連れてたんです」

音也「おっさんは誰だ?」

ザンキ「だから礼儀を弁えろと……」

???(A)「別に構わないさ。事実、私も彼も32歳だ。おっさんと呼ばれるのも無理はない」

音也「なっ、あんた32歳なのか!? 老けた32歳だなー!」



ごつんっ!



音也「痛ぇっ!? てめー何しやがる!!」

ザンキ「初対面の相手に言っていい事と悪い事の違いくらい解れ」

音也「うっせー!! 俺は超・天・才の紅音也様だぞッ! お前のせいで俺の天才的音楽の発想力が詰まった頭脳が傷ついたら責任とれんのかあ~ん!?」



ごつんっ!



音也「あでっ!? に、二度も殴った!? 親父にも殴られた事……あるような無い様な……あんまり覚えてないが多分殴られてないのに!!」

ザンキ「天才を自称するならそれ相応の身の振る舞い方をしろ……それと親父に殴られた事がないってのは間違いなく気のせいだ。俺が親なら確実に殴ってる」

ザンキ「……全く、本当にこれが鳴海さんや木野さん達と同じ、人のために戦った戦士だとは信じられんな……」

音也(ぐ、ぐぬぬ……! 次郎の顔に普通に説教されて呆れられるのは、なんとも腹が立つな……!)プンスコ

???(A)「ははは……その辺にしておいてやろうザンキ君。ここに居ると言う事は、彼もきっと悪い人間じゃないだろう」

音也「おう、おっさんは話が分かるな! まぁ俺は女を救うついでに全人類の未来を守り抜いちゃうくらい、心の清い正義の味方だからな! 悪い要素など0%だ!」

ザンキ「木野さん、あまりこいつを不用意に褒めないでください。これは褒めるとすぐに調子に乗るタイプですよ」

音也「てめーコラ! 出会ってものの数分しか経ってない俺の何が分かるってんだコラアァン!?」

ザンキ「お前が分かり易すぎるだけだろうに……」

音也「あ、それはそうとおっさん、あんた、この次郎モドキ……もといザンキと知り合いらしいが、ひょっとして同じ家で目覚めたクチか?」

木野「ん……あぁ、ザンキ君とは同じ家からここへ来たんだ。もう一人鳴海宗吉という人も一緒だったがね。探偵をやってるらしい」

音也「探偵? って事はあの帽子の……そうか、そんなような名前だったな……まぁそれはともかく、あんたらの家に居るのはその3人だけか?」

木野「……そうだが、それが何か?」

音也「チッ……じゃあ、ここに来てから見かけたか接触した女性は居るか?」

木野「女性……? いや、この世界に来てからはまだ女性は見てないな」

音也「おのれえぇッッ!!」クワッ!

木野「な、何だ突然……?」

音也「何でもない。教えてくれてありがとよ……」ハァ

木野「……なかなか、独特の空気を纏った男だな、彼は」

ザンキ「…………」



木野「ところで、鳴海さんはまだ来てないようだな……」

ザンキ「あぁ……けどもう12時を回っているし、その内他の連中と合わせて来るでしょう」

ザンキ「集まり次第、自己紹介なんかもするでしょうね。紅、お前も今度はもう少し真面目に……」

ザンキ「……紅?」

木野「……向こうにいる彼等に話しかけてるようだが」

ザンキ「…………」




音也「おーい、そこのお前らー」

???(B)「ん……?」

???(C)「…………」

音也「今からこの紅音也様が簡単な質問をするから速やかにお答えなさいっ!」

???(B)「……なんなんだお前いきなり」

音也「お前達のルームメイトに、或いはここで出会った者の中に、美女は居るのか!?」

???(B)「はぁ……?」

音也「女は居るのかと聞いているッ!! YESなのかNOなのか!? どっちだ!!」

???(B)「……とても人にものを聞く態度じゃないなおい……」

音也「いいから教えろってんだよ!! 素直に教えれば……原価10億ドルの俺の演奏をなんと! 出血大サービス! 30%オフの値段で生で提供しちゃうぞ!!」

???(B)「…………」

音也「更に! 今なら俺の演奏したオリジナル曲を録音したカセットテープを5つ付けて!! 驚きの値段……9万9千8百円!! 超お得!!」

???(B)「……確かにお得だな。原価が10億ドルで、それを3割引きしたのが何故か日本円になって10万だからな」

音也「どうだ欲しいだろう!? 買いたくなっただろう!?」

???「要るかバカたれ!! どこの誰とも知らん奴の曲を何で金出して買わなきゃならないんだ……」

???「しかも今時カセットテープとか……金貰っても要らんわ!」

音也「しょうがねぇな……じゃあもうタダでくれてやるから教えろ! キリキリ教えろ!」

???(B)「……そうだな。その自作曲の押し売りが無いなら教えてやってもいいぞ」

音也「何ぃ……? 変わった奴だな。タダで物が貰えるってのに。勿体ねー」

???(B)(ゴミ貰ったって仕方ないだろ……)

???(B)「いいか、ここに来て俺が見つけた女は……」

音也「おうっ!」ワクワク

???(B)「0人だ」

音也「そうか! 0人か! ……誰か弁護士を呼べッ!! この無礼者を訴えるッ!!」

???(B)「無礼者はどう考えてもお前なんだけどな……あと、弁護士は俺だから」




音也「へんっ!! もうお前にゃ聞かねーよバーカ!! おい! お前はどうだ! 女を見たか見てないか!」

???(C)「…………」

音也「……おーい! もしもーし! お前に聞いてんだよー!」

???(C)「……黙れ」

音也「な、何おう!?」

???(C)「……女は見てない。居たかどうかも覚えてないし興味も無い。分かったらさっさと向こう行け」

音也「……んだよ。なーにイライラしてんだお前。カルシウム取ってるか? 牛乳を飲め牛乳を!」

???(B)「いや、お前の態度に突き合せれてたら誰でもイラつくと思うぞ」

音也「くっそー! それじゃもうここに直接美女が現れるのを期待するしかないのかー……!?」

???(B)「……ほんとに色んな奴が居るなぁ」

???(C)「……五月蠅いのはこいつだけにしておいて欲しいがな」

???(B)「そいつはどうだろうなぁ。ライダーって、皆癖のあるやつばっかりなイメージだよ。俺」

???(C)「……あの2人はまだ来ないな」

???(B)「地獄兄弟の事か? 他の連中を連れてくるために探索するって言ってたからね。時間になったんだからもう来るでしょ」



剣「……む、まだキリ・シーマ達は来ていないのか……」

影山「仲間探しの途中なんだろ……さーて、どうやって仕返ししてやろうかなー……!」



???(C)「噂をすればか……」

???(B)「……って、誰も連れてきてないじゃないの」



剣「! 北岡と大道か」

影山「あいつ等、結局自分達だけここから動いてなかったのか……」

北岡「よう、呼びかけお疲れさーん」ヒラヒラ

影山「お疲れさーん、じゃないだろ! 自分達だけさっさと休憩しやがって!」

北岡「お前らが勝手に人探しに行っただけだろ? 俺はわざわざ他人のために伝言届けに行くほどお人好しじゃないの」

克己「……同じく」

影山「何だとぉ!? まるで俺がお人好しみたいな言い方じゃないか!」

北岡「違うのか?」

影山「違う!!」

剣「いいじゃないかお兄ちゃん! それはつまり優しい心を持ってるという事だ!」

影山「だから地獄兄弟がそんな優しさとか持ってちゃ駄目だって言ってんだよ!!」

克己「……相変わらず地獄地獄と……本当の地獄を知りもしないガキが……」ハァ

影山「! またっ……! 何なんだよ大道! お前は本当の地獄を知ってるのかよ!」

克己「少なくともお前よりはな……」

影山(くっそ……! こいつ、最初に会った時からこうだ! 地獄兄弟の事を鼻で笑いやがって……!)

影山(……でも、こいつの雰囲気は確かに……何かこう、黒い物を感じる気がするすんだよな……)

影山(兄貴風に言えば、『瞳の奥に闇が見える』っていう……俺ですら察せられる闇があるって事は……)

音也「おい、お前ら……!!」

剣「? 何か用か?」

音也「女を……見たか……!? 見たと言ってくれ……!!」

影山「女……? 女って、誰の事だよ」

音也「誰でもいい!! 女なら何だっていい!! いや、できれば美女がいいが……!!」

剣「美女なら居たぞ! 2人だけだが、今は彼女達の仲間と一緒にこっちへ向かってる筈だ」

音也「……イイイィヤッフウウゥゥーーー!!! 見えたぞ一筋の光!!!」

影山「……何だ、こいつ」

北岡「俺も分からん。馬鹿だって事以外は」




草加「……集まったのは、まだこれだけか」

木野「! 雅人君か。どうだ、他に人は見つけられたかい?」

草加「えぇ。6人がこっちに向かってると思います。……ただ……」

木野「? どうしたんだ? ……! 君、良く見たら怪我をしているじゃないか! 何があったんだ?」



草加「……っ……皆! 聞いてくれ!」

ザンキ「?」

北岡「なんだ?」

克己「…………」

剣「! 彼は、俺達にここの事を教えてくれた……」

影山「……草加、だったっけ?」

音也「……うん?」



草加「ここには、俺が元いた世界で生きていた……とんでもない悪人がいるんだ!!」

木野「! 悪人……?」

北岡「…………」

ザンキ「……どういうことだ?」





草加「……そいつ等の名前は、乾巧と、木場勇治……!! 2人とも、普段は人間の姿をしているけど……」

草加「本当はオルフェノクと言う、人の皮を被った、凶悪で醜い化け物なんだっ……!!」





◇その頃・通路にて◇



湊「戒斗、もう12時を回ったわ」

戒斗「あぁ、分かっている……あいつ等め、揃いも揃っていったいどこへ行った?」

チェイス「恐らく固まって行動しているのだろうな」

美穂「んー……やっぱり先に行かない? ここまでで誰も見つからないって事は、もう先にロビーに着いてるんじゃないの?」

チェイス「……確かにそうだな。駆紋、どうする?」

戒斗「……仕方ない……だが、これでもしまだロビーに居ないようだったら、そこに誰が居たか、どういうライダーなのかを連中に伝えるという面倒事を、俺達が担わなければならんぞ」

チェイス「……そんな事まで考えていてくれたのか」

戒斗「勘違いするな。あいつらのためじゃない、俺のためだ。お前もあいつらも、一応敵ではなく味方だ。情報の共有は、それだけで何かあったときに強みになる」

戒斗「逆に、知らないと言う事はそれだけで弱点になる……万が一、あいつらが相手の事を知らなかったがために、こちらが不利益を被るような事になっては迷惑だからな」

チェイス「そうか……お前は優しいな」

戒斗「……人の話を聞いていたか……?」

湊「……プッ……フフ」

戒斗「何を笑ってる湊……」

湊「ご、ごめんなさい、違うのよ……あなた、チェイスと言ったわね」クスクス

チェイス「? あぁ」

湊「面白い人ね、あなた。あの戒斗の事を『優しい』なんて評価するなんて」

チェイス「思った事を言っただけだ。湊は、戒斗が優しいとは思えないか?」

湊「……そうねぇ……」

戒斗「…………」ジロッ

湊「……ノーコメント、と言う事にしておくわ」クスクス

チェイス「?」

戒斗「チッ……行くぞ。時間が惜しい」スタスタ

美穂「……ねぇねぇ、湊さん。本当にあいつと何もないのー?」ヒソヒソ

湊「違うったら……あなたもしつこいわねぇ」

美穂「でもさー、あの戒斗ってのと話してる時の湊さん、やたら楽しそうなんだけど?」

湊「……気のせいよ」





――――ドタドタドタバタバタ……!



チェイス「……! 後ろから誰か来るぞ」

湊「!」

戒斗「……やはりまだ着いていなかったようだぞ」




真司「あっ! チェイスだ! おーい!」バタバタ

巧「戒斗もいるな。……後ろの女2人は誰だ?」

蓮「……知らん顔だな」

木場「俺たちとは違う世界の人じゃないかな?」

手塚「鳴海さん、あんたは?」

荘吉「いや、俺も知らないな」

擬態天道「…………」




湊「探していたのは彼等?」

戒斗「あぁ……だが2人見当たらない上に、新しい奴が3人増えている……」

チェイス「あの中には俺の知る者はいないが……霧島や湊は、見知った者は……」

美穂「……う、そ……でしょ……?」

湊「! 霧島さん……?」

戒斗「……居たようだな」



真司「あー、疲れた……休んでる場合でもないんだけどね……!」ハァハァ

巧「お前等も急げ! ここに来てる奴全員で12時にロビーに集合するって話が……」

戒斗「もう知ってる。こっちはそれを貴様等に教えるために探し回ってたんだぞ」

木場「そ、そうなのかい? ごめん……もしかして、結構時間かかった?」

チェイス「いや、そうでもない。俺達がその話を知ってから15分ほどしか経っていない」

戒斗「だがおかげでもう12時を過ぎた。お前達を無視していれば間に合っただろうにな……一体どこで何をしていた」

真司「ハンバーガー食べてました……」

木場「……同じくです」

蓮「…………」

戒斗「……成程。人があちこち歩き回っていた間、貴様らは呑気に飯を食っていたわけか」

巧「いや、それだけじゃねーんだよ……ちょっと今面倒な事になってて……」

チェイス「面倒?」

真司「それが聞いてくれよ! 実は巧の顔見――――」




美穂「真司ぃ!!」ダキッ

真司「知り……!!??」

美穂「アンタ……真司だろう!? 何でここに居るんだよ……アンタ……結局、死んじゃったの……?」

真司「えっ、は? え!!? ////」

手塚「……城戸、知り合いか?」

真司「え、いや……俺は……」

美穂「……何だよ……なんでこんなっ……!! せめて、アンタだけは……生きててほしかったのに……!!」ジワッ



蓮「何だお前、女がいたのか」

真司「違うっての!! いや、別に彼女が居た事が無いとかそういう意味ではなくって……!!」

巧「どういう事だよ。そいつは真司さんの事知ってるみたいだぞ?」

真司「そ、そんな事言ったって……!?」

美穂「……真司……?」

真司「うっ、あー、オホン! き、君、ちょっと落ち着いてね?」

美穂「……どうしたの? ……あ! ご、ごめん! いきなり抱き着いたりして! 知ってる奴に会って気持ちが急に……」

真司「……えーっと、そのぉ……俺達、どこかで会った?」

美穂「…………え?」

真司「悪いんだけど、君みたいな子の事、記憶に無いっていうか……」

美穂「……ちょ、ちょっと待ってよ……冗談やめてよ! あたしだよ! ほら! 霧島美穂! あんたに助けて貰った……!」

真司「助けて……? あ! もしかして、ミラーワールドに引きずり込まれそうになった人だったり……?」

美穂「……何言ってんだよっ!? あたしだってば!! 仮面ライダーファム!! 神崎士郎に選ばれた、最期に生き残ってた5人のライダーの内の1人だよ!!」

手塚「!! 何だと……?」

蓮「…………」

真司「い、いやいやいや!? 君こそ何言ってんだよ! どこでその事を知ったのか知らないけど、女のライダーなんて俺は……!?」

美穂「……忘れちゃったの……? あたしの事……」

真司「い、いやだから……!」

美穂「…………そっか……そうなんだ……アンタにとって……あたしは……」ポロッ

真司「え……」

美穂「…………沢山助けた人の中の……ただの一人ってだけ……だったんだ……ね……」ポロポロ

真司「!?」

美穂「……ハハハ、なーんだ……あたしの勝手な、勘違い……だったんだ……!」ポロポロ

美穂「……バッカみたい……!!」ダッ!

真司「え、あの!? ちょっとぉ!?」




真司「……どーゆー事……?」



蓮「どういう事かは、こっちが聞きたいな。城戸……」ガシッ

真司「え!?」

巧「……真司さん……俺、恋愛とかした事無いからよくわかんねーけど、幾らなんでも、あの対応は……酷いぞ」

真司「!!?」

湊「あの子があなたとどういう関係だったのかは知らないし、あなたに気持ちが無いからのなのか何なのかも知らないけど……」

湊「あの子と同じ女として言わせてもらうわ……あなたのやった事は、最低よ」ジトッ

真司「なっ!? 何言ってんだよ!? 違うよ!? 違うからね!!」

チェイス「……真司。どんな理由があれど、女性を泣かすのは男のやる事では無いと、聞いた事があるぞ」

真司「チェイスぅ!?」

蓮「その通りだ。幾ら遊び半分で付き合っていた女と人前で再開したからと言って、他人のフリを貫き通そうとするとは、見損なったぞ」ニヤニヤ

真司「だああーもう違うっつーのぉぉ!! ていうか蓮!! お前は完全に解ってて言ってるだろ!! 何笑ってんだよ!?」

チェイス「真司。早く彼女を追いかけるんだ」ズイッ

真司「チェイス聞いてくれ!! 俺は何も……」

チェイス「真司。俺はお前のダチとして、ダチの間違った行いを見過ごすわけにはいかない」ゴゴゴゴ

真司「えぇ……」

チェイス「幸い彼女の向かった先はロビーの方だ。急げ」ゴゴゴゴ

真司「……ああぁもう!! 何なんだよおぉーー!? おーい霧島さーん!!」ダダダッ



戒斗「…………」

湊「酷い男……あんな態度をとる必要が本当にあったのかしら」

巧「真司さんは悪い男じゃない筈だし……何か事情があったのかもしれねーけど……」

チェイス「どうか丸く収まって欲しい所だ……」

鳴海「……城戸真司は、嘘を吐いていないぞ。あいつが霧島美穂の事を知らないのは本当だ」

巧「え?」

湊「……どういうこと? それじゃあ彼女の方が嘘を吐いてると?」

鳴海「いいや、それも違う。2人とも嘘を吐いてるわけじゃない。ちょっとした勘違いだな」

チェイス「巧、彼は何者だ?」

巧「……探偵だってよ。鳴海宗吉って名らしい」

木場「あのー……」

巧「……木場?」

木場「もしかして、ここに居る城戸さんは、彼女が知ってる城戸さんとは違う人なんじゃあ……?」

湊「……違う人? 人違いをしてるとでも?」

木場「……まぁ、ある意味、では……」

チェイス「……! そういう事か!」

湊「え……どういう事なの?」

巧「あっ……あー、そうか……まぁそりゃそうか。おかしいと思ってはいたんだけどな……あの真司さんが、わざとそんな真似するわけねーし」

チェイス「真司に謝らねば……行くぞ巧!」ダッ!

巧「……あの2人大丈夫か……?」タタタッ

湊「ちょ、ちょっと!?」

戒斗「……霧島が知っているたのはパラレルワールドの城戸真司であり、今ここに居る城戸が元居た世界に、霧島は存在していない……と言う事だ」

湊「パラレル……?」

戒斗「そんな事より急ぐぞ。下らん事で時間を無駄にした」ダッ

湊「か、戒斗……!」ダッ

擬態天道「……どうしてもっと早く、この事を言わなかったの?」

鳴海「言うタイミングを計ってたんだが、割り込む隙が無かった。それに、平行世界の事をいきなり説明されても、霧島は余計混乱するだけだろうしな」

鳴海「どうせなら落ち着いた後で、ゆっくり説明した方がいい」

手塚「……そういう事か……それより秋山、お前は大体の察しがついていたな?」

手塚「あまりからかってやるな。城戸はともかく、彼女が更に勘違いしたらどうする」

蓮「だからあの女が居なくなった後に言ったんだ。俺はあいつと違って馬鹿じゃない、その辺はうまくやるさ」ククッ

木場(……からかわない選択肢は無いのかな……)

鳴海「行くぞ。もう10分は過ぎそうだ」




◇休憩ロビー◇



鳴海「……着いたな」

蓮「大分集まっているな。これで全員か?」

手塚「あぁ。占いによれば、ここで全員と接触できるはずだ」

木場「…………相川さんが居ないような……?」

手塚「……確かに居ないな……」




音也「俺は今、神に感謝している……!! 死を迎えてたどり着いたこの世界……黒く穢れた存在しかなかったこの地獄に、お前達のような天使を遣わしてくれた事を!!」

湊「……ごめんなさい、もう少し離れてもらえるかしら?」

音也「それはできないっ! 俺は今、天使の放つ光に魅入られている! それが、触れればこの身焼ける太陽だと知っていても……求めずにはいられない!」

音也「何故なら俺は今……愛を知ってしまっ――――」

美穂「…………」ヒュンッ

音也「ぶげぇ!!」ベシーンッ!!

美穂「……いい加減にしてくれない……? あたし今機嫌悪いんだよ……」

音也「フ、フフフ……! 例えお前達が拒もうとも……俺はお前達を欲するこの感情を拒mぶぎょっ!?」ゲシッ!

美穂「機嫌悪いって……言ってるでしょ……!!」グリグリ

戒斗「……懲りない男だな」

真司「な、なぁ……頼むから聞いてくれよぉ……どうも俺と君は、元は違う世界、って言っても、凄く似てる世界なんだけど、別の世界であって……」

美穂「……うっさい、あっち行ってよ……!」

真司「そ、そんなぁ……」

戒斗「今はやめておけ。どうせ聞く耳なんぞ持たん」

湊「要件があるなら、後にしたら?」

真司「……ごめん、霧島さん……でも、後でちゃんと話しするからさ……」トボトボ

剣「……キリ・シーマ……一体どうしたんだ? 何かあったのか? というか今の男は誰だ!?」

美穂「アンタには関係ないよ……ほっといて……!」グスッ

影山「……ほっとけってさ。ほら行くぞ」

剣「お兄ちゃん……しかし!」

影山「行くぞほら!」




剣「キ、キリ・シーマ……!」

影山(ったく……やっと現れたから、何かしてからかってやろうと思ったのに……)

影山(……茶化せる空気じゃないじゃんか。何なんだ一体)

影山「……あーあ、退屈になっちゃったな……ん……?」




擬態天道「……!!」




影山「お前……!? 天道!?」

剣「!? 何だと!?」

擬態天道「……っ……」

影山「驚いたな……お前も死んだのかよ! 一番死に様を想像しにくい奴が……」

剣「どういう事だ天道!? お前、まさかワームに敗北したのか!?」

擬態天道「あ……う……」

手塚「お前達、こいつの知り合いか?」

影山「? 誰だよあんた?」

手塚「手塚海之だ。この世界で天道と同じ家に住んでいる」

影山「ふーん、そうなのか。じゃあかなり振り回されたろ? こいつの傍若無人ぷりには」

手塚「傍若無人……? いや、そんな事は全く無いが。寧ろ素直過ぎて心配になるくらいだ」

影山「はぁ? す、素直!? こいつが!?」

剣「……!」

擬態天道「……あの……ぼ、僕はっ……」

影山「……『僕』?」



剣「お兄ちゃん!! そいつから離れるんだ!! 手塚海之、お前もだ!!」ザッ!



擬態天道「!?」

手塚「何を……?」

影山「……! おい、まさか……!!」

剣「今、本能で分かった……!! こいつ、天道に擬態したワームだ!!」

擬態天道「ッ……」




剣「どうにもおかしい訳だ……あの天道が妙に大人しくしていた事もそうだが、何よりも死んだという事が最も納得いかない!!」

影山「……成程な……! まぁ、俺が居るくらいだし、ワームが居てもおかしくはないって事か……!」

剣「お前の目的は何だ!? 事と次第によっては、この神代剣が真に止めを刺してやる!!」

擬態天道「ち、ちが……僕は、ただ……!!」



荘吉「落ち着け、若造」サッ

剣・影山「「!」」

剣「誰だお前は! こいつは人間に仇名すワームという怪物なんだ! 庇う意味など無い! そこを退くんだ!」

荘吉「ワームという怪物……か……それは、お前達も同じじゃないのか? 神代剣に、影山瞬」

剣「ッ!!?」

影山「ッ……!!」






北岡「あいつ等何騒いでるんだ……? 」

克己「さぁな。何にせよ俺には関係ない」ペラッ

北岡「……さっきからお前、何読んでんのよ?」

克己「パンフレットだ。そこの棚に置いてあった」

北岡「パンフレット? 何の?」

克己「この場所の、だな。欲しけりゃ自分で取ってこい」

北岡「このドームのか……? 気が利くのかなんなのか……なんとも分からんな。この世界は」

蓮「…………よう」

北岡「……!」

蓮「また会ったな……北岡」





北岡「……秋山か。まぁ、城戸が居たからもしかしてと思ったけど……やっぱりお前も死んだんだ」

蓮「手塚もいるぞ。……どうやら、俺達の世界のライダーが、一番人数が多そうだな。平行世界の女ライダーまで居る始末だ」

北岡「……それ、そっちに居る若い女の事か? 何か城戸が必死に訴えてたけど……そっちに気が行き過ぎてたのか、城戸の奴、俺に気づきもしてないよ」

蓮「どうもあっちの女が居た世界……つまり、俺達が居た世界とほぼ同一の別世界で、城戸とそれなりの仲だったらしい」

蓮「だが、こっちの城戸はそんな事知る訳も無い。突然初対面の女に抱き着かれて、知らないと言ったら泣かれて、周りから総スカンに合ったあいつは見物だったな」クックク

北岡「マジで? それは俺も見たかったなぁ! しっかしあの城戸がねぇ……世界が違うからって、彼女なんて作れるのか? アレに」

蓮「同感だ。……で、どうだ? 死んでみた気分は」

北岡「……何とも言えないね。そういうお前は?」

蓮「……お前と同じ、だろうな。……体は何ともないのか」

北岡「ん? あぁ……そうだな。こっちに来てから、眩暈も痺れも無いし、咳も出ないし血反吐を吐く事も無い……」

北岡「……自分以外の全てを殺してでも欲しかった物が、死んだ後にある意味で手に入るなんて……皮肉な話だよな」

蓮「良かったじゃないか。一応願いが叶った事に違いないだろう?」

北岡「バカ言えよ。ここじゃあ俺の弁護士としての肩書は何の意味も無いんだぞ? 俺が永遠に生きたかったのは、『元の世界』での話だ」

北岡「……それに、ゴロ―ちゃんも令子さんも居ないんじゃね……」フゥ…

蓮「…………だが、仮面ライダーとして、自分の願いのために、他人の死を望んで戦った俺達には、それ位は当然の報いだろう」

蓮「こうして自我を持ち、とても地獄とは思えん場所に存在できているだけ、罰としては温いくらいだ」

北岡「……ま、そりゃそうだけどさ。ただ、仮にここが俺達に罰を与える事も目的とした場所だと考えるなら……」




真司「ハァ……どーしよう……何て言えば納得するのかなぁ……」

チェイス「……駄目だったか?」

真司「うん……全然取り合ってくれないよ……」




北岡「何であいつまで居るんだって話だよな……」

蓮「…………そもそも、罰を与えるつもりが無いから……かもな」





北岡「……これを読めば少しは分かるかねぇ?」ペラッ

蓮「何だそれは」

北岡「この場所のパンフレットだとさ。隣に居るこいつは一足先に見てたみたいだ」

蓮「……お前は……」

克己「…………」パラパラ…

北岡「大道克己。俺と同じ家に居た男さ。あともう2人、ガキが居るけどね。そこで何か騒いでる奴らだよ」

蓮「……そうか。それで、それには何が書いてある?」

北岡「えっとー? 表紙は……『時の安らぎ場【タイム】へようこそ』……?」

蓮「時の安らぎ場……何のことだ?」

北岡「さぁね。俺にもさっぱりだ。何にせよ、ここの正式な名前は【タイム】って事らしいな」








音也「うぐぐ……中々情熱的なビンタと蹴りだな……これは手ごわい……! しかし壁が高ければ高いほど、乗り越えた時の喜びもまた大きい!!」

巧「何やってんだよお前……」

音也「お、巧か。いやなに、念願叶ってW美女が現れたからな! 全力で落としに行ってるとこだっ!」

巧「……そんな事満面の笑みで答えんな」

木場「あの、紅さん……あそこに居る、彼の事……なんですけど……」



草加「……ッ……ッ……」ギロリ



音也「ん? あいつがどうかしたか?」

巧「俺達の事、好き放題言ってたりしなかったか……?」

音也「あぁ。言ってたぞ」

木場(やっぱりか……)

巧「言ってたぞって随分軽いな……俺はともかく、真司さん達まで悪く言ってたりしなかったろうな?」

音也「あぁ、大丈夫大丈夫。アレの目論見は台無しにしてやったぜ! 感謝しろよ~?」

木場「えっ、台無し……って、あなたが?」





◇数分前◇




草加「……そいつ等の名前は、乾巧と、木場勇治……!! 2人とも、普段は人間の姿をしているけど……」

草加「本当はオルフェノクと言う、人の皮を被った、凶悪で醜い化け物なんだっ……!!」



剣(!! ……人の皮を被った……)

影山(……醜い、化け物……)



北岡「……それ、本当の事か?」

草加「本当だ!! 信じてくれ!! 普段は普通の人間を装ってるが……奴等は自分を、人間を超えた上位の生命体と考えている……」

草加「隙あらば人間を平然と騙して、挙句その命を奪ってしまうような、卑劣で邪悪な男……それが乾巧と、木場勇治という怪物なんだっ……!!」

ザンキ「ちょっと待て……そいつ等がもしその、オルフェノク? と言う怪人だというのが本当だとして、本当にそんな悪い奴らなのか?」

ザンキ「体が普通じゃないってだけで、心まで怪物って訳じゃないかもしれないじゃないか」

草加「……そこなんだ……奴等の本当に恐ろしい所はっ……」

克己「…………」

草加「奴等は、本性こそどす黒い邪悪な心だが、上辺だけは本当に良くできた人間に見えるんだ……!」

草加「人の心の中に付け入るのが上手いんだよ……!! 誰とでもすぐ打ち解けてしまう……だが、その時胸の内で考えている事は、相手をどうやって陥れるかと言う事だけ!!」

草加「まだ俺も奴等も生きていた頃、アレの本性を知っていた俺は、乾と木場にあらゆる手を使われて、集団の中でも孤独に追いやられていったんだ……」

木野「…………」






草加「俺が何を言っても誰にも信じてもらえなくて……! 何とかして俺一人だけでもあいつ等を止めなきゃって……ずっと……!!」

草加「カイザのベルトを使って、必死に戦ったけど……結局、俺は木場に殺されて……今ここに居る……」

草加「さっきも、早速奴等に取り込まれた、城戸って人や、蓮て名前の男に殴り飛ばされて、この傷を……」

ザンキ「…………本当なのか?」

草加「……っ……正直っ、こうして真実を話すのも……! 凄く怖くてっ……! あいつ等、絶対また俺をッ……!!」ブルブル






克己「その辺で黙れ。お前の茶番は耳障りだ」

ザンキ・木野・剣・影山『!!』





草加「……何だって……?」

克己「聞こえなかったか? お前の三文芝居は聞いてると頭が悪くなりそうなんだよ。暫く黙ってろ」パラッ

草加「芝居……!? 俺は、真実を皆に伝えようと……!!」

音也「そいつの言う通りだ」

草加「……!?」

音也「よう。確かお前、草加雅人とか言う奴だよな。巧からよ~く聞いてるぞ」

草加「な、に……?」

音也「悪いな……俺は巧とは同じ家に住んでるんだよ。あいつの身の上話は本人から直接聞いてる。あいつがオルフェノクだって事も知ってる」

草加「だ、だったら分かるだろう!! あいつは邪悪な……!!」

音也「おい……マジでいい加減にしろよ……?」キッ

草加「……あいつに何を吹き込まれたんだ……!? あいつの言う事に真実なんて無い!! 君や他の皆を騙すためのでっち上げだ!!」

音也「あいつが嘘を言ってたなんて思えないし、そんな可能性を考えたところで時間の無駄だ。寧ろお前の方がよっぽど油断ならねぇ」

草加「……俺は……親切で……言ってやってるんだぞ……?」ピクピク

音也「おいおい、大丈夫か。目元引ヒクついてるぞ。さっそくメッキ剥がれかけてんじゃねーか」

草加「……キ、サマ……!!」ギリッ

音也「んんん~~? どした? 今何か『貴様』とか失礼な言葉が聴こえた気がするぞ~?」ツンツン

草加「……いいさ、そんなにあんな薄汚れた化け物と仲良くしたいなら、そうすればいい……物好きめ……!!」

音也「おう、してやるさっ! 言われなくてもな!」ヘンッ





――――――――――





音也「……ってな事があったわけだ!」

木場(……それでさっきからこの人ことも睨んでるのか……)

巧「そっか……あー、ありがとな。……でも、あんまりあいつの事、邪険にしないでやってくれるか?」

音也「あん……? おいおい巧、お前仲よくする相手は選べよ。お前に話を聞いてた時から思ってたけど、アレはお前がそんなに気にかけてやる程の人間じゃねーぞ!」

木場「……けど、俺が彼を殺してしまったのは事実だし……」

音也「……あぁ、そうかお前……いや、それにしてもだろ! なんつうか、こう、陰湿で小賢しくて女々しい奴だろあいつ! 女でもなかなか居ないぞあんなの」

木場(ボ、ボロクソだ……)

音也「……第一、お前が今まで必死に苦労して生き抜こうとしてた傍らで、あいつは何をしてたんだよ?」

巧「……それは……」

音也「お前の話じゃ、散々嫌がらせも受けたそうじゃねーか」

巧「だからそれは……! あいつもあいつなりに、オルフェノクと関わってから、自分のトラウマとか、人を襲う悪と戦ったり……守るもののために……」

音也「そりゃお前の見解だろーが。つーか、惚れた女を守るって言って、そのために身近な人間を追いつめて傷つけてもいいってのか?」

巧「別にそういわけじゃ……! ただあいつにも、あいつにしか分からない痛みとか、葛藤とかあっただろうし……!」

音也「……そうかもしれないけどな……俺はな、お前や真司、チェイスとここで会って、短い間だが、それなりに信頼してるし……ダチだと思ってんだ」

巧「……音也……」

音也「それが、またあんな奴のせいで、お前が必要ない苦痛を受ける事になるってんなら、俺は見過ごすわけにはいかねぇんだ」

巧「…………」

音也「……それにあいつ、さっきのゴタゴタで、ここに居た連中からはあまり良く見られて無い筈だ」

音也「お前ら、ここに来る前にもあいつと一悶着あったんだろ?」

木場「…………はい」

音也「その事も併せて考えりゃ、あいつはもう、ここでは孤立する一方だ。俺1人が歩み寄ったところで、他の奴等があいつを嫌ってちゃ、もうどうしようもない」

巧「そんな……!」





音也「仮に俺が、今更あいつに近づいても、もうあいつは俺を『敵』と認識してる……向こうの方から拒絶されるだろうよ」

木場(……草加さん……)

音也「……言っちゃなんだが、自業自得ってヤツじゃないか? 散々人を振り回して傷つけて陥れて来たんだ。自分のした事が、巡り巡って返って来たって事だろ」






巧「……それでも……」

木場・音也「「!」」

巧「それでも、仲間なんだよ……! 俺にとっては、守りたかった……生きててほしかった奴の一人なんだ……!!」

巧「……あいつのやり方が、生き方が間違ってたから……今度はその罰を、黙って受け入れてろっていうのかよ……!」

音也「…………」

巧「……生き方が間違ってたなら……今度は正しい生き方ができるようにすりゃいいじゃねーかよ!」

音也「……それでお前が割を食うのか?」

巧「……食わねーよ。そんなもん」

音也「何でわかる?」

巧「……皆がいるからな」

木場「! ……」

音也「…………ったく……ありゃかなりの頑固者の捻くれ者だぞ。 正直難しいだろうが……言ったからにはお前もサポートしろよ?」

巧「! ……あぁ!」

木場(……大丈夫かな……上手くいけばいいけど……)

木場(俺は、どうすればいいんだ……? 下手に関わらない方が彼のため……なのかな……)





木野「……随分賑やかになってきたな」

ザンキ「……そうですね……」

木野「ザンキ君……君は、彼をどう思う……?」

ザンキ「草加の事ですか? ……まぁ、あまり例を見ないタイプというか……」

ザンキ「…………闇を、感じますね」

木野「…………最初に彼と会った時は、私は、ただの社交的な青年だと思った……だが……」

ザンキ「……恐らくは、演じているんでしょうね。社交的で紳士的な青年を」

木野「……何故だと思う?」

ザンキ「……本来の自分を見せないと言う事はつまり、安心できない、していない……油断できないから……とも取れますね」

木野「……彼が、他人を信用してない……と言う事なのだろうか」

ザンキ「そうですね……敢えてしていないのか、それとも『できない』のか……その違いも重要でしょうが……」

ザンキ「根本的な問題として、彼がどういう人間なのか、こちらがしっかりと把握しなければならないでしょう」

ザンキ「何が彼をああさせるのか……原因がわかれば、闇を取り除く事もできるかもしれまんせんが……」

木野「……様子を見るに……闇は深そうだ」

ザンキ「……ですね……でも、放っておけないんでしょう?」

木野「…………ただ同じ名前の響きだから、というだけなんだがな……」

木野「本当なら、未来があった筈の若者が、こんな所でまで闇を背負ったまま過ごすのは……見ていて気分が良くない……」

ザンキ「……大人の俺達にしか出来ない事も、ありますしね」

木野「……あぁ……ところで、いい加減その敬語は止さないか? 同い年なのに、俺ばかり普通に話してるじゃないか」

ザンキ「いえ、何と言うか、俺よりも木野さんの方が、人生の経験が濃そうなので、なんとなく敬語になってしまうんですよ」

木野「……言外に老けてると言ってないか?」

ザンキ「はは、まさか」






始「……ハァ、ハァ……!!」

手塚「! 相川! 待っていたぞ。どこに行っていた?」

始「……紅は……どこだ……!?」

チェイス「……音也なら、俺達よりずっと前にここに居たようだが……まさか今までずっと……?」

始「……あぁ……探し回っていた……クソッ、何故真っ先にここに居る事を思いつかなかった……!!」

チェイス「……すまない、俺が余計な事を言ったばかりに……」

始「……いや、構わん。俺の考えが浅かっただけだ……」

音也「お? なんだハジメちゃんじゃねーか。どした、そんなに息切らして。そこに自販機あるぞ。金無いけど!」

始「…………」ジトーッ

木場「だ、大丈夫ですよ! 1人につき最初の一回だけ、お金無しで何でも買えるみたいですから!」

始「……そうか……」ヨロヨロ

音也「マジで!? そりゃすげー! ハジメちゃん! 俺の分も頼むー! ビールはあるか!?」

始「自分で行け……!!」

木場「というか、お酒飲む気ですか……」

手塚「……今から全員に自己紹介や状況の説明をしてもらうので、飲酒は控えてくれ」

音也「なんだよー、いーじゃねーかちょっとくらい!」




ここまでです。

中途半端やな……そして中々進まない話。


今回で情報が出て無かった2人、北岡先生と木野先生が登場して、全員が揃いました。
あれ?あの人は? ってのが居たらごめんなさい。ここらが限界人数です……


次回、うまくすれば初の戦闘シーンがあるかもしれません。

さて、書けるかなー……


こんばんわ、ご無沙汰しております。

また一カ月も空けてしまって申し訳ない……
エアコンは相変わらずぶっ壊れたままで、最近まで茹で死にしそうな環境でノロノロ執筆しとりましたが、
やっと季節が涼しくなってきたせいか作業が捗り出して、今週中には更新できそうです。

現在会話パートが終了し、戦闘シーンに差し掛かかっております。
誰が誰とどう戦うのか、ご期待ください。


こんばんわ。今から投下していきます。
なんかいつもに比べて無駄に長くなってしまった気がするけど、堪忍して。



手塚「……よし……皆、集まっているな」


全員『!』




手塚「まずは、ここに集まってくれてありがとう。俺は手塚海之……ここに集まる事を提案した者だ」

手塚「早速だが、これからお互いの事をより詳しく知っておくために、自己紹介をしていって貰いたい」

手塚「ここに居る時点で全員把握してるとは思うが、今俺達が居るこの世界は、ほぼ確実に、死んだ人間のために用意された場所だ」

手塚「それも【仮面ライダー】と呼ばれる……或いは、この世界が【仮面ライダー】だと判断した存在のための、だ」

手塚「それを踏まえた上で、自分が元はどんな世界に居たか、どういう経緯で死に至り、ここに来たか……話してもらいたい」




剣「…………」

影山「…………」




手塚「勿論、話したくない事があるなら、話さなくても構わない。ただ、ここには誰が何の目的で設置したかもわからないが、俺達全員分の碑文がある」

手塚「大まかな事は全てアレによってお互い把握できてしまう。今ここで隠しても、あまり意味は無いだろう」

北岡「だったらさぁ、わざわざ自己紹介なんて方法取らんでも、全員で名前だけ名乗って、後は各自見たい奴だけ人形を見てくればいいだろう?」

手塚「そういうわけにもかいかない。あの碑文は確かに、その人間にとっての重要な部分が記されてはあるが、それだけだ」

手塚「具体的にどういう事があって、どんな理由があって、どういう行動を取り、どんな結果となったか……本人の口から聞いておきたい事もある」

手塚「その方がより確実な情報を共有できるし、実際に顔を合わせて互いの事を知ると言う事は、それだけで意味がある」

手塚「現時点で、これと言って何らかの危険や被害が生じているわけはないにしろ、この先何も起こらないとも限らない」

手塚「その何かが起こった時、お互いに助け合う事が、当たり前にできるような関係を築いておく事も重要だと、俺は考えている」

真司「うんうん……! その通りだよ! なぁチェイス!」

チェイス「うむ。冷静で正しい判断だ」



戒斗「……フン」

湊「…………」

手塚「だからこそ皆には、できれば今のこの場で、正直に自分の事を語って欲しい」

手塚「もし本当に嫌なら、ここに来てから得られた情報を、ほんの少し話してくれるだけでもいいし、ここで出会った、信頼できる者にだけ話をするのもいいだろう」

手塚「だがこの機会はある意味、人との繋がりという、最も大切な強さを築けるチャンスでもある……できれば、この時間を有効に利用してもらいたい」

手塚「……それでは……まず誰から話してもらおうか……?」

巧「順番は? 何か決めとかなくていいのか?」



手塚「……そうだな。なら、皆それぞれ、最初に居た家があるな? まずはそこで同じ家に居た者同士で固まろう。草加、天道、こっちへ来てくれ」

擬態天道「……うん」スクッ

草加「…………」




北岡「だとさ」

蓮「……あぁ」スクッ

克己「影山、神代。来い」




影山「だから何でお前が命令すんだよ! お前らが来いよ!」スクッ

剣「……そういつつ既に立ち上がっているぞ、お兄ちゃん」

荘吉「なら、俺はあっちだな……おい、お前ら」

影山「! ……何だよ」

荘吉「さっき話した事、しっかり胸に刻んでおけ……」スタスタ

影山「…………」

剣「……行こう、お兄ちゃん」




ザンキ「俺達はこのまま、でいいんですかね」

木野「鳴海さんがもうこっちに来てるからな」




美穂「…………」

湊「私たちはこのままでいいとして……」

戒斗「俺達は向こうに行く。そっちの前から二番目のテーブルでいいだろう」

蓮「……木場と相川、こっちに来い」




巧「だってよ」

木場「うん、分かってるよ」スクッ

始「…………」スクッ

チェイス「俺達は……」

真司「もう居るな。全員」

音也「ははは、楽でいいな!」ゴクゴク

巧「……っておい! 何いつの間にビールなんか飲んでんだよ……!?」





ガタガタザワザワ……





手塚「……間違いはないな? これで今、誰が誰と共に過ごしているか、皆分かったな?」

手塚「自分の知り合いと、その同じ家に居る人の顔を覚えておけば、今後も何かと行動しやすいだろう」



手塚「……それでは次に、皆に話をしてもらうが、最初に話をした人と同じ世界に居た人は、それに続いて話をしてくれ」

手塚「その方が、その世界がどんな場所で、何が起こっていたか分かり易くなるだろう」

手塚「その世界に居た全員が話終えたら、最初に話をした人の左隣から順に話してくれ。その人が終わったら、それと同じ世界出身の人が続いて、と、同じ要領で続ける」

手塚「……始めよう。まず自分から話したいという者は居るか?」

草加「仕切ってるのは君なんだし、少なくとも俺達の内の誰かから話すべきだと思うけどね」

手塚「……そうだな。じゃあ、俺からでもいいが、2人はどうしたい?」

擬態天道「……ッ……最後で……いいよ……」

草加「じゃあ俺から話そう。名前は草加雅人。変身するライダーは【カイザ】という名だ。ここの名義で言うなら、仮面ライダーカイザってとこかな」



音也(……あまりいい内容にはならなそうだな……)

木場「…………」

草加「……俺は子供の頃、ある塾の生徒だった。大人になった後で、そのメンバーで同窓会を開いたが……その時、オルフェノクに襲われた」

北岡「さっきも聞いたが、オルフェノクってのは……?」

草加「ある特定の条件化で人間が覚醒して変化した化け物の事さ……普段は人間の姿をしているけどね……」

草加「基本的にどいつもこいつも、何かの動植物にちなんだ、灰色の薄気味悪い姿をしている」

草加「オルフェノクは人間を遥かに超える力を持っている……その力に溺れた屑が、徒党を組んで組織を作り上げて、生まれたのがスマートブレインという巨大企業……」

草加「奴等オルフェノクは、その巨大企業という社会的立場の力を利用し、陰で人間を襲って、オルフェノクを増やそうと画策していた」

克己「人間を襲って……増やすだと?」

草加「……人間がオルフェノクに覚醒するには二通りある。1つは、その人間が死を経験した事によって低い確率で覚醒するパターン……」

草加「もう一つは……オルフェノクが人間を殺す事で、無理やり覚醒させる方法だ」

ザンキ「……随分、血生臭い話だな」

木野(人間が、死によって覚醒……進化したと言う事か……? それはまるで……)



草加「だがこの2つ目の方法は、1つ目の方法よりも更に低確率でしか成功しない……当然、失敗すればその人間はただ死ぬだけさ……」

草加「だがオルフェノクからすればそんな事は知ったことじゃない……! 人間を惨殺し、そのおまけで仲間が増えれば良し……ならないならならないでも良し……」

草加「覚醒できない人間に生きる価値など無い……奴等はそういう思想の元、次から次へと人間を襲って殺しまわった……」

草加「……俺はオルフェノクの存在が許せない……俺達流星塾の仲間の命を……人生を滅茶苦茶にした奴等がな……!!」

北岡「…………成程ね」

克己「…………」




草加「ちなみに、そこのソファに座ってるそいつ、乾巧と……そっちのテーブルに居る木場勇治。その2人はオルフェノクだ」ピッ




音也(!! こいつは本当に、いっそ清々しいな……このタイミングで言えば2人は悪党だと思われるじゃねーか……)

巧「…………」

草加「あぁそうそう、俺が死んだ理由も、そこの木場に殺されたからだったなぁ……首をへし折られたっけ」

木場「!! …………」

美穂「……何、それ……どういう事?」

湊「……本当なの? それ……」

音也(躊躇なく爆弾投下しやがってこんの野郎が……)

手塚「……乾と、木場、でいいか? 今の話は本当か?」

巧「……あぁ。俺達はオルフェノクだ」

木場「……全部本当ですよ…………俺が、彼を殺した……」

蓮「……!」

戒斗「…………」

始「…………」



草加「いやー、痛かったなーあの時は。それに苦しかった……寄って集って俺一人を、殴る、蹴る、斬る……いや本当、大変だったよ……木場ぁ」

真司(……戒斗が言ってた、木場君の知られたくない、『しでかした事』って、これの事か……)

音也(けど……! わざわざこんな説明の仕方しなくたって……!)

ザンキ「…………」

木野(……雅人君……君はいったい……)

草加「……まぁ、兎に角俺は、オルフェノクという人類の天敵を生かしておくつもりは無かった」

草加「スマートブレインが、オルフェノクの中に生じる反乱因子を抹殺するために作り出した3つのベルト……その内の1つ、カイザギアを手に入れた俺は、オルフェノクと戦い続けた」

草加「…………が、結果最期は……言った通りさ。木場にしてやられたよ」

草加「……まぁ、概ねこんな所かなぁ? 俺の話は終わりだ」

手塚「……そうか。じゃあ、今話をしてくれた草加と同じ世界に居た人物は、手を上げてくれ」

巧・木場「「…………」」スッ

手塚「……2人だけだな? では、どちらからでもいい。話を聞かせてくれ」

巧「……じゃあ、俺から……名前は乾巧。仮面ライダーファイズだ」

巧「さっき草加が話したように、俺達の住んでた世界では、オルフェノクっていう怪人が、日夜人を襲ってた」

ザンキ「……君は、違うんだな?」

草加「…………」

巧「……俺はオルフェノクだが、目の前で何にも悪くない人間が死んでいくのは……見たくなかった。だから、3本のベルトの1つのファイズギアを使って、ずっと……オルフェノクと戦った」

巧「……自分と同じ、オルフェノクを……」

蓮「…………」

北岡「…………」

巧「……怪人と言ったって、元は皆ただの人間だ。どんなに姿が変わって、とんでもない力を手にしても、人の心がある……」

巧「中には、人を襲うのを良しとしない、優しいオルフェノクも居た……居たんだよ……!」

木場(……海堂……今頃どうしてるかな……あいつ1人で、大丈夫かな……)

巧「……結局、オルフェノクが人間を襲うようになるのは、自分自身とそれを取り巻く環境が、一瞬で変化しちまうからで……」

巧「そのオルフェノクになった奴が悪い人間だったって一言で……片付けてほしくないって……俺は思う」

真司「巧……」

音也「…………」ポン

草加「……フンッ」




始「……お前が死に至った理由は?」

巧「……オルフェノクってのは、強大な力を手にする代わりに、その急激な進化に人間の体の方が耐え切れない、不完全な存在らしい」

巧「寿命が普通の人間より、ずっと短いんだ。俺の場合は覚醒したのがまだガキだった上に、戦いに巻き込まれて……色々とあったから、更に寿命が縮んだ」

巧「……最後の戦いが終わってから……すぐ後だった。……こんな感じでいいか?」

手塚「あぁ。十分だ。ありがとう」

木場「……じゃあ、俺の番だね……木場勇治です。一応、仮面ライダーオーガって事、らしいです……」

木場「俺は今から2年以上前に、事故に遭ったんです……2年間、昏睡状態にあったんですけど、結局死んで……」

木場「その時、オルフェノクになったんです。けど、2年越しに生き返った俺には、どこにも居場所が無かった……」

木場「両親は同じ事故に遭った時にもう亡くなっていて……住んでいた家も無くて……唯一残ってる繋がりだと思っていた恋人は、とっくに新しい人と居て……」

美穂「……それは……キツイね……」

木場「……何もかも失った俺は……自分の中で湧き上がる怒りや絶望……力が抑えきれなくて……恋人だった人と、その人の新しい恋人を……」

木場「……殺してしまった……!」

蓮「!! …………」

湊「……それで、どうしたの?」

木場「……それからすぐ、スマートブレインが接触してきて……」






――――――――――――






木場「……そうして、乾君の言葉で、もう一度人間を信じてみようと思った俺は、オルフェノクの王との決戦に加勢したけど……致命傷を負った」

木場「最期は乾君に俺もろとも王を倒してもらって……気が付いたらこの世界に……って感じです」

蓮「……そうか」

始「…………」

木場「……改めて自分で話してみて思うけど……本当、軸がブレブレだなぁ……俺は……」

巧「……木場……」

手塚「……話をしてくれて、感謝する。……すまないな、辛い事まで言わせて」

木場「いえ、いいんです。この事を黙ったまま、皆と本気で付き合っていけるなんて、俺自身思ってないですから……」

草加「……チッ……」




手塚「じゃあ、次は俺が話そう。改めて……手塚海之だ。変身したのは仮面ライダーライアだ」

手塚「……俺の世界では、仮面ライダーと呼ばれる騎士達がいた」

手塚「……自分の願いを叶えるために、最後の一人になるまで、自分以外の仮面ライダーと殺し合う、13人のライダーが……」

北岡「…………」

美穂「…………」

蓮「…………」

真司「…………」





――――――――――――





手塚「……そして俺は、城戸を庇って、王蛇の攻撃を受けた。結果俺は死んだが……城戸と言う希望を残せた」

美穂(……浅倉ッ……!)

木野「……とんでもない、話だな……」

ザンキ「……本当ですね……妹のためとはいえ……とても人のやる事とは……」

荘吉「…………」

手塚「……俺が話せるのはここまでだ。これ以降の事は……」

蓮「……俺達が、か」

手塚「あぁ、頼む……一応他の皆にもわかるよう、ライダーバトルに関わった者は挙手してくれ」

蓮「…………」スッ

真司「はい」スッ

美穂「…………」スッ

北岡「ん」スッ

真司「……って、北岡さん!?」

北岡「ようやく気付いたのかよ、流石のバカだな城戸」

真司「アンタまで言うか!?」

影山「北岡……お前、その戦いに居たのか!?」

北岡「あぁ。戦って死ねたわけじゃないけどね……」

剣「……それは、いい事なんじゃないのか?」

北岡「……本来ならそうなんだろうけどね。ま、後で話してやるよ」

真司「……北岡さん……」




美穂「……ねぇ、北岡」

北岡「ん……? あぁ、別のライダーバトルの世界に居た女ライダーだっけ?」

美穂「……別のって……もしかして、アンタもあたしの事知らないの……?」

北岡「知らないね。女のライダーなんて居たら印象に残りやすいだろうに」

北岡「それより早く説明した方がいいんじゃない? ほれ城戸、お前からだ」

真司「え、俺から? まぁ、いいけど……えっと、城戸真司、仮面ライダー龍騎です。俺は、ライダーになるって事がどういう事か良くわかってないままライダーになったんだけど……」






――――――――――――




真司「……で、その背中の傷が原因で俺は死んだんだ」

美穂(……あの黒い龍騎の話が無い……それに色々食い違うところが……別の世界って……まさか本当に?)

剣「……なんとも、壮絶な話だな……」

影山「……その後はどうなったんだ?」

真司「それは俺にもわかんない。死んじゃったしな。後の事は、蓮や北岡さんの方が……」

蓮「なら俺が話そう……秋山蓮。変身したのは仮面ライダーナイトだ。俺は……自分の願いのために、ライダーバトルに参加した」

蓮「……意識不明の恋人を、助けるためにな」

木場「……!!」

始「…………」

戒斗「…………」




――――――――――――



蓮「……城戸が死んで……すぐにオーディンが俺の前に現れた。俺は俺自身の願いのために、最後の一人を決める戦いに挑んだ」

蓮「結果的に、俺は勝った。……どうして勝てたのかは良くわからん。相手が勝手に粒子になって消滅したからな……」

蓮「…………新しい命を手に入れた俺は……それを恵理のところへ持って行った」

始「……彼女は、目を覚ましたのか?」

蓮「…………わからん。それを確認する間もなく、俺は力尽きた」

木場(そんな、ことが……いったい、どれほどの覚悟だったんだろう……秋山さん……)

戒斗「…………」

蓮「俺の話はこれで全部だ。……次はお前だ北岡」




北岡「はいはいっと……北岡秀一。仮面ライダーゾルダ。俺は弁護士をやって……いた。自他ともに認めるスーパー弁護士だったよ。欲しい物は金で何でも手に入ったが……」

北岡「ただ一つだけ、金じゃどうしようもない物があった……自分の命さ」

美穂「……!」

北岡「世の中うまくいかないもんだよなぁ。所謂、不治の病ってヤツを患ってたのさ」

北岡「……俺は生きたかった。他人を蹴落として、犠牲にしても……生きたいと思った。だから神崎の申し出も、すぐにOKしたよ」

北岡「負ける気はしなかった。どんな手を使っても勝つ気でいたし、勝てるだけの力を持ってたと、今でも思ってる」

克己「……だが、お前はここに居る」

北岡「そーいうこと。最終的に、俺は自分の命のリミットに間に合わなかった。なんだかんだで誰も殺せず、誰にも殺されず……戦いとは関係ない理由で、勝手に死んだ」

美穂「…………」

北岡「ま、その理由の一端は、間違いなくお前の存在があったからだろうけどな、城戸」

真司「お、俺?」

北岡「……自覚が無いってのがまた腹立つんだよねぇ」

蓮「まったくだ」

真司「えぇ……?」

蓮「……しかしお前、短いがよく話す気になったな。お前なら何だかんだ理由を付けて、自分の事はあまり語りたがらなそうだが」

北岡「そりゃお互いさまだろ。ここで生きていく以上、手塚の言う通り味方は多い方がいい。人形のせいで勝手に知れ渡る事だしな」

美穂(……これが……北岡の戦っていた理由……)





北岡「さてそれじゃ、お嬢さんの話を聞こうか? 別世界とはいえ、おたく城戸とどういう関係だったのよ?」ニヤニヤ

剣「む……!」

音也「うん……!?」

美穂「……別に関係って程のもんじゃないよ。ちょっと助けられただけさ……」

美穂「…………あたしは霧島美穂。仮面ライダーファムに変身してた」

美穂「……あたしは……死んだお姉ちゃんを生き返らせたくて……バトルに参加してた」

美穂「…………仮面ライダー王蛇の……浅倉猛に殺されたお姉ちゃんを……生き返らせたくて……!!」

真司・蓮・北岡・手塚『!!』





――――――――――――




美穂「……もう少しで、その黒い龍騎にやられそうって時に、真司が助けに来てくれたけど……あたしの体はもう限界で……」

美穂「真司が帰って行ったあと……道端で倒れちゃってそのまま……」

美穂「……覚えてるのはここまでかな。はい、これでおしまい」

湊「…………」

真司「…………そんな……」

北岡(……成程ね……俺を時々苦々しそうに見てたのは、浅倉の弁護をした俺が憎かったわけか……)

真司(……何なんだよ、俺の偽者って……!? 黒い龍騎……それがこの子を……!)

真司(ってか、その世界の俺はなんですぐ病院に連れて行かなかったんだよ!! 何で帰っちゃったんだよバカ!! 俺のバカ……!!)

真司「……くそっ……」




手塚「……これで、俺達の世界のライダーの話は終わりだ。それでは……次は天道、話してくれるか?」

擬態天道「……ッ……」

手塚「…………無理なら構わない。話せる事だけ話してくれ。お前の事情は、さっきの会話で大体察した」

擬態天道「……大丈夫、話せるよ……」スクッ

擬態天道「……先に言っておきたい事がある……僕はっ……人間じゃない……!!」

剣・影山「「!?」」

戒斗「…………」

チェイス「……人間ではない……?」

巧「……どういう事だ」

擬態天道「…………天道総司って名前も、この顔も……全部他人の物なんだ……」

擬態天道「僕の世界では……7年前、東京の渋谷に隕石が降って来たんだ……その隕石には、ワームって言う、地球外生命体が居た……」

擬態天道「ワームは好きな人間に擬態する事ができるんだ……その姿だけじゃなく、本人の性格や無意識に行う癖、記憶……全てを完璧に模倣できる……」

擬態天道「その力を使って……ワームは地球を支配しようとしたんだ」

木野「……まさか、君もそのワームだと……?」

北岡「けどお前、今『隕石が【降って来た】』って言ったよな? まるで自分が地球人みたいな言い方じゃないか」

擬態天道「…………僕は元々、人間だった」

影山「ッ!!」

剣「なんだと……!?」

擬態天道「…………話すと長くなるけど、ワームが乗った隕石は、実は7年前より、ずっと昔にも一度落ちてきていて……」





――――――――――――





擬態天道「……天道は最後まで、僕を気にかけてくれてた……ワームの僕に、生きていてもいいんだって教えてくれたあいつになら、ひよりが居るこの世界を託せるって思った……」

擬態天道「僕は根岸を道連れに……炎の中に飛び込んだ……覚えてるのは、そこまでだよ……」

剣「…………お前……」

影山「…………」




北岡「ネイティブワームによる人体実験、か……ゾッとするね……」

木野(……擬態させられる前の記憶が無いのか……辛いだろうな……)

チェイス(……名乗るべき名も無いというのは……どれだけの苦痛なのだろう……)

手塚「……良く話してくれたな」

擬態天道「……手塚、さん……僕、僕の事っ……」

手塚「……誰もお前を拒絶したりなどしない。ここに居る誰もが、同じことを思っているはずだ」

手塚「……これからも、よろしく頼むぞ」

擬態天道「……!! ……うん……っ……」

手塚「……では、彼と同じ世界に居た者は……」

剣「……俺達だ」スッ

影山「…………」スッ

手塚「そうか。どちらからでも構わない。話しを聞かせてほしい」

剣「……お兄ちゃん……」

影山「……俺から行く。影山瞬。仮面ライダーパンチホッパーだ……ザビーだった事もあるけど」

影山「俺は元々ZECTの一員だった。一時期はザビーゼクターの資格者だった事もあったくらい、組織の中でもそれなりの地位に居た」

影山「って言ってもそれは、俺を信頼してた上司の……矢車想を蹴落として手に入れた地位ってだけで、俺自身は力不足もいいところだったんだろな。正直あんまり上手くいかなかった」

影山「あげく天道にザビーゼクターを奪われて、ZECTを追放された……そして……」

影山「……兄貴に……矢車想と再開した」





――――――――――――





影山「……俺はまんまとネイティブの思惑に引っかかって、ワームになってしまった……冷汗が止まらなくて、思考も定まらなくなって……」

影山「段々自我が薄れてくのが分かった……もしかしたら、無理やりワームにされた人間ってのは、そこのそいつがそうだったように、元の人間性を失っちゃうのかもな……」

影山「……俺はそんな自分が許せなくて……ワームの自分が存在する事が耐えられなくて……」

影山「……俺は、兄貴に殺される事を選んだ……どうせ死ぬなら、兄貴に止めを刺してほしかったんだ……」

影山「最後に覚えてるのは……兄貴が俺に何かを語りかけていた事かな……何て言ってたのか、良く聞こえなかったんだけどさ……」

美穂(……地獄兄弟……あいつには、大事な思い出だったんだ……)

克己「…………」

影山「……兄貴と地獄兄弟としてやってた頃は……とても人の暮らしと呼べるようなものじゃなかったけど……なんていうか、満たされてた」

影山「ここが俺の居場所なんだって思えた……初めて自分らしく生きれた気がした……こんな事言ったら、兄貴は怒るかもしれないけど……」

影山「やっぱり……楽しかったなぁ……!」ポロ…

剣「……お兄ちゃん……」




影山「……グスッ……ほら、次はお前だぞ!」

剣「……あぁ。神代剣……仮面ライダーサソードだ。……と言っても、本来の神代剣は死んでいるんだがな……」

湊「え……?」

蓮「まさかお前も……」

剣「……俺の場合は、今の2人とは違って、正真正銘のワームだがな……」

剣「……でも、少なくともあの日までは、俺は自分を、人間神代剣だと信じ……生きていた……」





――――――――――――





剣「……俺の願いは、全てのワームを倒す事……俺がワームだと分かった以上、この俺自身も対象だ……」

剣「ましてそれが、姉さんを殺した張本人だとすれば、尚更な……」

真司「……そんな……」

剣「そして俺は天道に全てを託し、ヤツの手を借りて命を絶ったつもりだったが……神は俺に、少しだけ慈悲をくれた」

剣「……爺やと少しだけ話して……爺やに手を握られて眠った……」

剣「…………と思ったら、何故かお兄ちゃんや、ここに居る北岡や大道達と共にあの家に居たわけだ」

巧(……なんか……モヤモヤする話だな……)

剣「……話は終わりだ。次へ進めてくれ」

手塚「……わかった。聞かせてくれて感謝する。では、次は……」

チェイス「……俺だな。俺の名はチェイス。仮面ライダーチェイサーだ。一部の者はもう知っていると思うが、俺はロボットだ」

北岡「……あいつ、何言ってんだ?」

真司「北岡さーん、これ本当の話だから! マジだから!」





――――――――――――





チェイス「……その自爆で蛮野が倒せたかは分からないが、きっと剛が何とかしてくれた筈だ」

蓮「……機械生命体による大規模な襲撃……SFの世界だな」

北岡「いってもこの現状が一番のSFだろ」

克己「違いない……」

チェイス「後は皆と同じだ。気が付いた時には、この世界にいた」

手塚「……流石に驚いたな。まさかロボットと会話していたとは……」

チェイス「よろしく頼む」

手塚「あぁ、よろしく……チェイスと同じ世界に居た者は居るか?」

チェイス「本人達は知らないかもしれないが、そっちにいる駆紋戒斗と湊燿子は、俺と同じ世界の住人だ」

チェイス「もっともロイミュードが関わる事件には、関与していないだろうが……」

手塚「……そうなのか?」

戒斗「どうもそうらしい。俺達はその頃には死んでいたのだろうがな……」




手塚「……なら、お前達には後で話してもらおう。次は……」

音也「俺だなっ!! フフフ、やっとこの紅音也様の波乱万丈の英雄的痛快冒険譚を語る時が――――」

巧「簡潔にな」

真司「簡潔にだぞ」

音也「うるせい!! 本当なら俺の人生は1時間程度じゃ語り尽くせねーんだぞ!!」

真司「1時間もかけんな!! 皆10分かそこらで済ませてんだろ!?」

チェイス「……音也、ここでは要点だけ話すのが適切だと思うぞ」

手塚「……俺からも、短めに頼む。他の皆を待たせてしまう」

音也「ちぇー……」





――――――――――――





音也「まぁ、そういうわけで、俺は愛しのマイスイートエンジェルの膝の上で幸せな最期を遂げたのだ……! どうだ感動的だろう!?」

戒斗「…………」

始「…………」

美穂「…………」

湊「…………」

木野「…………」

北岡「やっぱお前馬鹿だよ」

音也「最初の感想がそれか!! いい度胸してんなお前!!」ウガー!

真司「あーはいはい落ち着け、どうどう」

巧「結局20分も使いやがって……」

音也「これでもかなり端折ったんだぞ!?」

巧「相手の女がどう綺麗かとかどうでもいいだろ!」

ザンキ(……こいつはまったく……)ハァ

剣(愛した女性の傍で死ねたのか……正直、羨ましいな……)

始(ダークキバ……人間が使ったら一回で死ぬ力を3回使用して耐えた……本当の話か……?)

擬態天道(……僕も、最期に一度でいいから、ひよりの顔が見たかったなぁ……)




音也「そちらのお嬢さん方っ! 俺の話を聞いて、何か湧き上がってくる感情は無いか? 安心しろ! 俺の両腕は開いているぞッ!!」

湊「間に合ってるので結構よ」ニコッ

美穂「まぁ、確かに湧き上がってくる感情、あるっちゃあるね」

音也「そうだろうそうだろう! 燃えるような恋の灯が――――」

美穂「そこまで愛してくれた人がいるのにあたし達に色目使ってるとか最っ低だね! まじウザイ!」ニコッ

音也「…………今のはちょっと傷ついた……が! こんな事ではへこたれんぞ俺は!!」

巧(そこはへこたれてくれよ、頼むから……)

手塚「……紅、あんたの世界に居た知り合いは、ここに居るのか?」

音也「いや、いねーな。幸いなことに」

手塚「そうか、分かった。そうなると次は……そこのあんただな。話してもらえるか?」

克己「…………」

北岡「だとさ。どうするんだ?」

克己「…………まあいいだろう。隠したところで意味も無い……」

克己「俺は大道克己。仮面ライダーエターナルであり……動く死体だ」

影山「? 死体ぃ?」

克己「そう、死体だ。ゾンビって奴だよ」

克己「俺はガキの頃から病弱な体だったそうだ。特に心臓が弱くてな。移植手術ができなきゃヤバいって程にな」

克己「ある日、その心臓移植の手術ができると決まったって日に、俺は交通事故にあった。話に聞くと17歳の時だ……いや16か? まぁどっちでもかまわん」

克己「結果、俺はその時一度死んだ。完全に死亡したんだよ」

木場「それって、死んで生き返ったって事ですか? 俺達と同じように……!」

克己「……少し違うな。俺は今でも死んでるのさ。死んだまま蘇っただけ……それにお前等の場合……オルフェノクか。それはある種の自然現象だろう?」

巧「……まぁ、そうだな」

克己「俺の場合はな……北岡、お前達が殺し合いを繰り広げる切っ掛けを作った張本人が求めた事を、俺の母親も望んだからなのさ」

北岡「!」

真司「神崎が求めた事……妹の優衣ちゃんを生き返――――ッ!」

克己「……お袋は、当時自分が科学的に研究していた、死者を蘇生させて兵士にする技術を、自分の息子に使ったんだよ」

克己「そうして俺は、不死身の怪物……【NEVER】へと生まれ変わった」






――――――――――――






克己「……兎に角、人間らしさってものがほぼ完全に無くなった俺には、風都の住民全てを、俺と同じNEVERにするのが最大の目的で、願いだった」

ザンキ「……どうして、そんな事を……?」

克己「さぁな? そうしたかったから、としか言えないな。理屈なんか求めたって無駄だ。人格が完全に崩壊してる人間に、論理や正論を説いて意味があるか?」

ザンキ「…………」

真司(……あれ? こいつひょっとして、結構悪いやつ!?)





克己「……だが、俺のその目的は、2人で1人の仮面ライダーにことごとく台無しにされた」

剣「……それが、仮面ライダーW……」

克己「俺が風都に叩きつけようとしたあらゆる絶望を、奴等は、爽やかな風で木の葉を飛ばすかのように払いのけやがった……」フッ

克己「そして俺は奴等の全力の一撃を受けて……二度目の死を迎えた……」

克己「だが何の因果か、またこうして生きている……いや、死んでるのか。結局は動く死人ってわけだ」

北岡「……ふぅーん。お前もお前で、結構苦労してんだねぇ」

木野「……ひとついいかな?」

克己「……?」

木野「君の話では、NEVERの君は生きていた頃の記憶が段々と消えていき、人間らしい感情が失われている……と言う事らしいが……」

克己「あぁそうだ。それが?」

木野「……これは多分、今君の話を聞いた殆どの者が思ってる事だと思うんだが……」

木野「…………今の君の様子は、とても人格が崩壊してるようにも見えないし、人間らしさが無い様にも思えないぞ?」

克己「…………」

真司「……そういえば確かに」

北岡「まぁ、それは同意だな。秋山みたいに常に無口でどこか不機嫌そうだけど、それだけだしな」

蓮「やかましいぞ」

木場「それに、本当に人間らしさが無くなってるなら、今の話を自分からしようなんて思わないんじゃ……?」

音也「それどころか、そもそもこの場所で律儀に集まろうともしないだろうな」ゴクゴク

始「……正直に言って、今ここに居るお前と、そんな大きな事件を起こした者のイメージが一致しない」

克己「…………だが事実だ」




剣「大道、ちょっとこっちを向け」

克己「……なんだ」

剣「……ふむ」ペタペタ

克己「おい、何の真似だ」

剣「……確かに常人に比べて体温は低いようだが……別に死人の肌というレベルで冷たいわけでもないぞ?」

克己「……!!」バッ

克己「……どういう事だ……体温が……!」

荘吉「恐らく、ここが死後の世界であり、お前が完全に死んだことによるものだろう」

克己「!」

荘吉「お前が動く死体だったのは現世での話だ。理屈はわからんが、ここは死んだ者が生きていた頃に抱えていた【異常】をある程度修正するようになってるんだろう」

荘吉「他にも、似た様な事が起こってる奴がいるはずだ」

巧「……! 俺の体……」

荘吉「お前が今普通の人間に見えるのも、実際にお前の精神が、正常な状態に戻りつつあるからなんじゃないのか」

克己「…………下らない話だ」

手塚「……では、次は……」

荘吉「俺だ」

ザンキ「……順番通りなら次はそこの彼女では?」

荘吉「俺はそいつと同じ世界の出身だ。風都にいた探偵だよ」

克己「探偵……? ――――ッ!」

荘吉「お前からは随分面白い話が聞けた。半熟は半熟なりに、街を守ってるらしい」フッ





荘吉「……名は鳴海宗吉。仮面ライダースカル……私立探偵だ」

荘吉「さっき大道の話に出て来た、仮面ライダーWの左翔太朗は、俺の弟子だ」

克己「!!」

荘吉「……さて、まずは俺達の風都にはびこっていた悪が、そこらにばら撒いていた危険な代物……ガイアメモリの事でも話すか」

チェイス「ガイアメモリ……大道やその仲間達が使用した、地球の記憶と言う奴か」

荘吉「そうだ。USBメモリ型の物体で、使用した人間を、ドーパントという怪人に変える」

荘吉「ある種のドーピングであり、兵器であり、使用者を破滅させる麻薬だ」

荘吉「そして……俺や大道が、ライダーに変身するための力の源でもあった」

木場「ただの人間が怪人に……」

真司「あれ、でも、その怪人になれちゃう物が、鳴海さん達がライダーになるための物で……って、どゆこと?」

荘吉「……ガイアメモリは、地球上で起こったありとあらゆる現象・事象を、一つのメモリにプログラムとして収納した物だ」

荘吉「【蜘蛛の記憶】が込められたスパイダーメモリを使えば、スパイダードーパントに……【蝙蝠の記憶】が入ったメモリを使えば、バットドーパントに……」

荘吉「生物に限らず概念的な物ですら、地球の記憶として、様々な特性を持ったガイアメモリが存在した。大道のエターナルメモリがいい例だ」

荘吉「……そんな危険な物を開発し、街で捌いて一般市民を暴走させていたのが、秘密結社……ミュージアムだ」






――――――――――――






荘吉「……何とかフィリップは救い出したが、俺は敵の銃弾を背中に浴びた。もう助かる術は無いと悟った」

荘吉「俺はバカ弟子に、帽子と使命を託して力尽きた」

木野「…………」

ザンキ「ミュージアム……その組織は一体何を目的にそんな物を……」

荘吉「残念ながら、そこまではたどりつけなかった。だが、大道の話や碑文を見る限り、あいつらは限りなく真相に近づいてる」

荘吉「いや、案外既に、決着をつけているのかもしれないな」

荘吉「あの失敗ばかりの半熟卵には荷が重いかと思っていたが……それでも、美味い半熟に育ったようだ」

克己「…………詰めの甘い、煮え切らない半熟……か」

克己(……だが、奴がそういう男だったからこそ、フィリップは魔物ではなく人間として、俺に立ちはだかった……)

克己(あそこに居たのがWではなく、この男だったとして……俺を止められたかはわからんな……)




荘吉「……話は終わりだ。次は湊燿子。お前だ」

湊「! ……えぇ」

湊「湊燿子、仮面ライダーマリカよ」

湊「……私は……ある巨大企業の幹部として、日々与えられた命令を遂行していた……」

湊「企業の名は……ユグドラシルコーポレーション。表向きは、ある町の医療福祉都市化を目的とした組織……」

湊「けど実態は、その町に高頻度で出現する、異世界へと続く出入り口である、クラックと呼ばれる存在と……」

湊「その向こうに存在する、ヘルヘイムの森と名付けられた、外来種によって滅んだ世界を、秘密裏に観測、研究するための組織なのよ」

真司「え、え? ユ、ユグドラ……医療ふくし……がいらい……?」

蓮「……要するにだ、表向きはクリーンな公の企業だと言って、裏では超自然的な現象を、一般市民にバレないように隠蔽しながら研究していた組織に居たという事だ」

真司「………なるほど、なんとなくわかった」ホケー

美穂「でも、それってそんなに悪い事なの? 滅んだ別の世界を研究する事が、誰かに責められるわけ?」

戒斗「……確かに、それだけなら問題は無かったろうな」

始「……つまり、それだけではなかった……と」

克己「組織が何かを隠すって事は、知られちゃまずい、後ろめたい事が有るって事だ。そうだろう?」

戒斗「…………」

湊「……えぇ。……ヘルヘイムの森……その異世界の森は、元々はどこかの平行世界の、文明があった一つの星だった」

湊「だけど滅んだ……ヘルヘイムの植物、森の意志そのものによって……」

チェイス「……森の意志? 森が意志を持っているのか?」

湊「そうよ。ヘルヘイムの森というのは、一つの世界を滅ぼし、その世界を浸食し終わったら、クラックを別の世界に繋いで、またそこを侵略する……」

湊「そうやって浸食と滅びを、ある目的のためだけに繰り返すのよ」

ザンキ「……その、目的っていうのは……」

湊「……禁断の果実を相応しい者に与えて、その世界を次のステージへと進化させる事よ」

巧「進化? 世界を……?」

影山「禁断の果実って……何だよそれ」



戒斗「黄金の果実……知恵の実とも呼ばれていたな。手にした者に神にも等しい力を与える、文字通りの禁断の実だ」

戒斗「ヘルヘイムは、その脅威の繁殖力で世界を滅ぼしつつ、その世界に禁断の果実を一つだけ実らせる」

戒斗「そしてその実を食した者……即ちその世界の新しい神が、手にした力で崩壊した世界を新たに創り変える……」

蓮「……まるで聖書の中の話だな」

戒斗「実際、俺達の世界での聖書に記された知恵の実は、実際に存在したこの黄金の果実の事だと言われていた」

戒斗「……俺達は、それを求めて争い合った」

真司「! 争い合ったって……!」

湊「……私と戒斗は、元々は敵同士だったの。戒斗は、ただ自分の運命と戦おうと、抗うために武器を取った者の一人……」

湊「私は、そんな己の運命に抗おうと必死な若者達を、いいように利用しようと、過ぎた力を与えた側の人間……」

美穂「湊さん……?」

湊「…………私は本当なら、あなた達のような優しい人と共に、こうして言葉を交わしたりなんて、許されるべき人間じゃないの……」






――――――――――――





湊「……誰よりも戒斗を信頼して、その背中を追っていた彼が、それでも世界を守るために戒斗を倒そうとしたのだから、並大抵の覚悟じゃなかったでしょうね……」

湊「それでも、私も黙って見過ごすわけには行かなかった。爆弾が作動したのを見て、私は必死の思いで走りながら変身して、戒斗の壁になった」

湊「気づいた時には、私は屋上から地面に叩きつけられていたわ。少ししてから戒斗が駆けつけてきてくれたけど……ご覧の通りよ」

美穂「…………」

湊「……ごめんなさいね霧島さん。幻滅したでしょう? こんな女……」

美穂「……そんなことないよ。湊さんだって、自分なりに必死だっただけでしょう? あたしも、詐欺なんてセコイ事やってたし、おあいこだよっ」

湊「……そう……ありがとう……」

戒斗「…………」

チェイス(……彼女の話も壮絶だが……駆紋戒斗……世界を滅ぼして新たな王になろうと……)




――――寧ろ、全ての人間にとっての……『絶望』といったところだな




チェイス(あの時言った言葉は、そういう事だったのか……)

手塚「……聞かせてくれてありがとう。では次は……駆紋、いいか?」



戒斗「大体の事は湊が話してしまったがな……まぁいい」

戒斗「駆紋戒斗。仮面ライダーバロン……バロンと言うのは、俺がリーダーを務めたダンスチームの名でもある」

真司「ダンス? ダンスやってたのか? 戒斗が?」

チェイス「そうらしい。ダンスなら誰にも負けないと言っていた。相当実力があるようだ」

巧(…………イメージできねぇ)

戒斗「もっとも俺は、別にダンスが好きだったわけじゃない。強さを証明するための手段として利用していただけだ。ちょうどその頃、街でダンスが流行っていたからな」

剣「……ダンスで、強さを証明……?」

影山「何言ってるかわかんねぇ」

湊「その頃は、若者の間でストリートダンスが注目を浴びていたの。それぞれチームを組んで、人気を得たチームがランキング上位に入り、さらに人々の注目を浴びる」

湊「人気者になりたい、一番になりたい……そんな若い心に付け込んで、私たちユグドラシルの人間は、ロックシードや戦国ドライバーを彼等に渡した」

湊「体の良い性能テストと、スケープゴートとして利用するためにね……」

ザンキ「…………」

戒斗「だが俺にはそんな事はどうでもよかった。力が手に入るなら、利用でもなんでもさせてやると……逆に利用し、いつかその喉笛に食らいついてやろうとな」

音也「……強さを証明するってのは、一体どういう事なんだ? 証明してどうしたかったんだ?」

戒斗「言葉のままだ。どんな形でもいい……俺こそが強い人間だと……弱者を踏み躙り、弱者を支配する者である事を証明できるなら、どんな手段でも構わなかった」

音也「…………」

始「……それで、アーマードライダー同士の派閥争いに参加したのか」

戒斗「……どんなに強大な力に打ちのめされようと、俺は決して屈する気は無かった」

戒斗「立ちはだかる敵は粉砕し、喚き散らすだけの弱者は黙らせ、徒党を組むしか能の無い臆病者を屈服させ、汚い手を使う卑怯者を叩き潰した……」

戒斗「それが強さだと……今の世界における本当の強さとは、その一つだけだと信じてな……」

戒斗「実際、そのやり方で今まで俺は生きてきた。戦い、勝利し、生き残って来た」

戒斗「…………だが……その道理が、手段が通じない男が現れた」

チェイス「!」

戒斗「……男の名は葛葉紘太。俺が、真に最も強いと認めた、唯一無二の男だ」





――――――――――――





戒斗「……あろう事か奴は、その満身創痍の体で俺の武器を叩き折り、奪い取ったその先端を俺の胸に突き立ててみせた」

戒斗「瞬間的に敗北を悟った。崩れ落ちる俺の体を、ボロボロの体で受け止めた奴に、俺はどうしても訊きたかった」

戒斗「『何がお前を、そこまで強くしたのか』と」

木場「…………その人は、なんて……?」

戒斗「……『守りたいという祈り、見捨てないと言う誓い。それが俺の全てだ』……敵である俺の死に際に涙を流しながらそう言った」

木場「…………」

戒斗「幾ら奴が俺を仲間だと勝手に思っていたとしても、世界を滅ぼしかけた魔王のために、奴が涙を流す意味が解らず、俺はまた、何故泣くのかを訊ねた」

戒斗「すると今度はこう言ってのけた……『泣いていいんだ。それが俺の弱さだとしても、拒まない。俺は、泣きながら進む』……とな」

巧「……なんつーか……すげぇな、そいつ……」



戒斗「……その時、俺はようやく、奴の底知れない力の根源を見た気がした」

戒斗「そして同時に、どこか満たされた気分になった。俺がずっと追い求めていた、真の強さの答えが、そこにはあった……」フッ

湊「……っ……」

戒斗「……そうして俺は死んだ。奴がその後どうなったのかは知らん。恐らくは果実を手に入れたのだろうが、どんな選択をしたのか……」

戒斗「だがきっと、俺が思い描いた未来とは、全く違う答えを導き出したのだろう」

戒斗「……俺はこれで終わりだ。次はあんただ」

ザンキ「……分かった」

ザンキ「名はザンキ……本名は別にあるが、職業上この名を名乗っている」

ザンキ「あー……未だに自分を、その仮面ライダーと言うものと同一に語っていいのかわからないが、そうだと仮定するなら……仮面ライダー斬鬼、と言う事か」

北岡「……ライダーの名前を普段の名としても名乗ってるのか?」

ザンキ「あぁ、そうだ」

始「職業上と言ったが……仕事でライダーをやっている、と言う事か?」

ザンキ「ライダーっていうのが、鬼の事を指すならな」

始「鬼……?」

ザンキ「俺は、人を襲って捕食する魔化魍という怪物……妖怪と言った方が分かり易いかもな。それらを駆除するのが目的の、猛士という組織に居たんだ」

真司「人を食べる妖怪!? 土蜘蛛とか、一反木綿とか居たの!?」

巧「いや、そういう事じゃ無いだろ、なんかの比喩とかだろ」

音也「それに土蜘蛛はまだしも、一反木綿が人を食うかよ」

ザンキ「いや、居たぞ。ツチグモもイッタンモメンも。でかいのがな」

巧「……マジかよ……」

音也「一反木綿ってそんな恐ろしい妖怪だったのか……!?」

チェイス「その魔化魍というものが、今言った【鬼】とどう関係が?」

ザンキ「あぁ……鬼っていうのは、その魔化魍を倒すために直接前線に立って戦う、猛士における戦闘員の事だ」

ザンキ「当然、生身の人間じゃ太刀打ちはできない。だから、俺達は鬼に変身するんだ」

蓮「それが……あんたの世界のライダーか」





ザンキ「鬼は肉体と精神、その両方を極限まで鍛え抜くことで、自然の力を取り込んで変身できるようになるものだ」

ザンキ「魔化魍がどこから来るのか……何の目的で増えるのか……それは、猛士が組織されて何百年も経った今でも解らない」

ザンキ「何者かが背後に存在するのか、それともただ自然に発生しているだけなのか……それすらもな」

ザンキ「だからこそ俺達鬼は、いつだって自分を鍛え抜いて生きてきた。どんな時、何が起ころうとも、大切なものを守れるように、当たり前の幸せを壊させないために……」

ザンキ「そう……鍛えて鍛えて……全力で生きたんだ。……生きていたんだが……」

木野「……ザンキ君……」

ザンキ「ある時、戦いの最中に手ひどくダメージを受けてな……ドクターストップがかかって、鬼を引退せざるを得なくなった」

ザンキ「だから、俺は弟子のトドロキを育てる事に専念した。仮に鬼になっても、あくまで最低限のサポートに徹するとの約束でだ」

始「…………その約束を破った、か……」

ザンキ「……弟子のトドロキはなぁ……根性と人の好さは人一倍だったが、俺と似て無茶をする奴でな……」

ザンキ「放っておけなかった……例えこの体が動かなくなろうと、死ぬことになろうと……」

ザンキ「いや、死んだとしても……! あいつのために、できる事は全てやろうと……残してやれる物は、ひとつ残らず渡してやろうと……そう思った」

ザンキ「……だから、禁術に手を出しでても、俺は生きながらえた」






――――――――――――






ザンキ「……必死でリハビリを続けるあいつの傍に、少しでも長くいてやることが、俺がやるべき事だと思ってた」

ザンキ「だが、そのために俺が生ける屍にまでなったと言う事実が、あいつを悲しませる羽目になった」



ザンキ「何だかんだで、俺は過保護だったんだな……俺が心配しなくても、トドロキは俺が思っているよりずっと、強い男だった……」

戒斗「だろうな。弟子の強さを見誤るとは、過保護なのも加えて、師としては未熟だな」

ザンキ「ハハ、手厳しいな……あいつが、まだ痛みが残ってるだろう体で、烈雷を右手に駆けつけてきた時は……正直泣きそうになった……」フフッ

ザンキ「一緒にカエングモを倒した後……トドロキは言った。『もう、大丈夫っスから』……」

ザンキ「声は、ほんの少し震えてたが……それ以上に、一片の迷いも無い力強さが、その言葉にはあった」

ザンキ「色々と遠回りをしたが……俺のやった事は、間違いじゃなかったと思えた。そうしたら、急に力が抜けてな……」

ザンキ「意識が遠のいてくのがわかった……頭を下げるあいつの肩に手を置いたのが、最期の記憶だ」

ザンキ「……悪いな。さほど面白くもない話だったろう?」

木場「い、いえ!! そんな事全然……!!」

真司「っていうか寧ろ……」

巧(死に様……というか生き様が、死ぬまでの行動の動機がクリーンすぎて……)

影山(俺達の黒い部分というか……)

北岡(ドロドロ感が際立つねぇ……)

克己「……まさか俺以外にもゾンビになった奴が居るとはな」

美穂「……ねぇ、死んだまま生きる事とか、最後に永遠の闇に堕ちるっていうヤツの事とか、怖いとは思わなかったの?」

ザンキ「……そうだな、全く恐怖を感じないとは言わないさ。だが、俺が居なくなった後のあいつの事を考えたら、その方がよっぽど怖かったのさ。あの時は」

ザンキ「よくよく考えれば……弱いのは俺の方だったのかもしれんな」

音也「別に弱いってこたぁないだろ。死体になっても弟子の支えになろうとしたあんたの行動は、紛れも無い強さだ」ゴクリ

ザンキ「……フ、そうか…………ところで、お前はいい加減飲むのをやめろ」

音也「別にいいだろー! 一本しか貰えねーんだ、ちびちび飲んでるだけだっての!」

ザンキ「量の事を言ってるんじゃない……」

手塚「……まぁ、もういいさ……話す事は、もう無いだろうか?」




ザンキ「あぁ。それじゃ次は……」

木野「私だな……私は木野薫と言う。医者をやっていた者だ。ええと……ここでは仮面ライダーアギト、と言う事になるのか」

真司「アギト……?」

荘吉「……木野の碑文を見たが、確か【アナザーアギト】と書かれていたぞ」

木野「アナザー、アギト……もう一人のアギト、と言う事か……成程、津上が本来のアギトとするなら、私に相応しい名だな」

木野「……今から話す事は、多分君たちには信じられないような話が続くと思うが、全て事実だと言う事を念頭に置いて聞いて欲しい」

蓮「何を今更……ここに居る全員の話は、普通の人間が聞けば突拍子もないものばかりだろうに」

木野「まぁ、そうなんだがな。私が経験した戦いと、君たちが経験した戦いは、なんというか、根本が違う気がするんだ」

湊「根本が違う……どういうこと?」

木野「そうだな……まず、君たちが仮面ライダーと呼ばれるものに変身する時、君たちは、どういう手段で変身する?」

克己「手段……?」

真司「……俺や蓮とかの場合は、神崎が作ったカードデッキを鏡にかざして、こう、変身っ! って……」

巧「俺はファイズのベルトを巻いて、携帯のコードを入力して……」

チェイス「俺はマッハドライバー炎とシグナルバイクを使う」

剣「俺やお兄ちゃんは、ゼクターを使って変身するな」

木野「鳴海さん、あなたの変身にも、確かロストドライバーというものと、ガイアメモリを使うんでしたね?」

荘吉「……ああ」

木野「ここに居る殆どがそうだと思う。唯一私に近いのは、ザンキ君が変身する鬼だが、これも正確には、専用の道具が必要という事だ」

ザンキ「……つまり、何を言いたいんですか?」



木野「……ここに居る仮面ライダーの皆は、何かしらの道具……即ち科学的な力、ないし一部に科学が使われた物によって変身をする……そうだろう?」

影山「まぁそうだな。っていうか普通そうじゃないのか?」

草加「……つまり、あんたの場合はそうじゃないという事か」

木野「そうだ。皆の話を聞いていて何か違和感を感じていたが、君たちの場合、ライダーとしての力は、必ず人の技術が関わっているんだ。力の源がどうであれな」

木野「そしてまた、戦うべき相手も、人が関わっているか、人に限りなく近い思考能力を持っている事が多い……」

木野「……私の場合はそうじゃないんだ。そういったものは一切関わっていない」

木野「襲い来る敵も、人が考えられる次元を超えた存在であり、私が持つ力はただ純粋に超常的な力……一種の超能力なんだ」

木野「どちらかと言えば……私の力は、君たち2人のモノによく似ている」



巧・木場「「!!」」



草加「…………」

音也「オルフェノクの力……って事か」

木場「じゃあ、あなたの力も、超自然の現象によって発生した……」

木野「……それも少し違う。この世に存在する自然現象を、神の仕業と表現するのならば、話は別だがな」

戒斗「神だと?」

木野「……この力は、世界を創造した神によって与えられた力だ……そして私の戦いとは……」

木野「神の力を与えられ、その運命に翻弄される我々人間と、神そのものとの戦いの事なのだ」







――――――――――――






木野「アギトの津上翔一、ギルスの葦原涼、ただの人間の氷川誠……彼等3人と力を合わせ、なんとかそのアンノウンを倒せた」

木野「だが、既に私の体は、先の戦いでとっくに限界を迎えていた……」

木野「それでもあの場で、共に戦う程までに生きられたのは、彼等と出会い、拳を交えながらも心を通わせた事で……」

木野「真に戦うべき相手がなんなのかを知ったからだろう」

始「……戦うべき相手とは?」

木野「……弱い自分自身さ。過去に囚われる自分、逃げようとする自分、他人を傷つけようとする自分……全てだ」

木野「私はあの雪山で弟を失い、弟の右腕を移植されて生き永らえた。その結果私は、弟を救えなかった罪悪感に苛まれた」

木野「そして、こんな形で生き延びた自分は、『何があっても、助けを求める人間は全て自分が救うべきなのだ』という考えに至ったが……」

木野「その思想はやがて、『人を救う資格があるのは自分だけ、自分以外の誰かに、人を救う事などできない』等という、歪んだエゴに変わっていった」

ザンキ「…………」

鳴海「…………」



木野「だがそんな私の心の闇を、津上が、あかつき号に居た仲間達が、弟の右手が掃ってくれた。正しい道へと戻してくれた……」

木野「私は医者として、人を救う人として……終わることができた」

木野「……戦いが終わり家に戻って、真島と葦原と共に、少しの時間を過ごした。真島は、私と同じ医者を目指すと言っていたよ……」

木野「叶う事なら、医者になったあいつの姿を見て見たかったが……最後にに見たのは、コーヒーのおかわりを淹れに行く真島の後ろ姿だった」

蓮「……神に力を与えられた人間と、それを滅ぼそうとする神との戦いか……」

剣「確かに、スケールが壮大すぎてにわかに信じがたい話だったな……」

美穂「世界が変われば、ライダーもその敵も、随分と違うんだねぇ……」

木野「私の話は終わりだ。次は……君で最後というわけか」




始「……相川始……仮面ライダーカリス」

始「……今名乗った名前は、ただの偽名だ。本来俺に、人間の名前など無い。そもそも人間ではないからな。俺は、不死身の生命体、アンデッドだ」

蓮「……!」

木場「えっ……」

始「……お前達は、自分達人間の始祖が何か、考えた事はあるか?」

音也「始祖?」

北岡「……どこからを人間とするのかで変わるんじゃない? 進化論の説で考えるとして、一般的には猿でしょ」

戒斗「それより、それとお前がアンデッドとかいうモノであることと、どう関係する」

始「……お前達の世界では、人間の始祖は猿なのかもしれない」

始「だが、俺の世界において、人間から動物、魚や昆虫に植物……全ての生物は、それぞれ元となる不死生命体を始祖として誕生した。その始祖がアンデッドだ」

湊「不死身の始祖……つまり、あなた達の世界の人間は、人型のアンデッドが元と言う事なの?」

始「その通りだ。俺の知る地球では、1万年毎に53体のアンデッド同士で争い、最期に生き残ったアンデッドの種族が地球を支配し、繁栄する」

始「その戦いを俺達は、バトルファイトと呼んだ。最後に行われたバトルファイトでは、人間の始祖であるヒューマンアンデッドが勝利し、人間が反映した」

真司「あ! わかった! そのヒューマンアンデッドが、君って事でしょ!」

始「……いや、そうじゃない」

真司「え、違うの……?」




始「俺は……なんの生物の始祖でもない。俺はアンデッドの中で唯一、勝ち残ったところで何も生み出さない、特殊なアンデッド……」

始「ただ滅ぼすだけの存在……それがこの俺、ジョーカーアンデッドだ……」






――――――――――――





始「……フォーティーンの生贄にされかけた天音ちゃんの身代わりになるために、剣崎を騙して、俺は自ら【VANITY】の封印に飛び込んだ」

巧「騙した、って……」

始「フォーティーンを倒すには、生贄となった対象の者をカードごと破壊……つまり殺す事で、力の供給を絶つ必要があった」

始「最初から俺が身代わりになるなどと言えば、剣崎のことだ……絶対に納得しなかっただろう」

始「だから俺はまず剣崎に、お前が生贄になれと言ったんだ。そう言った方が、事が早く済むと思ったんだ」

始「恨み言の一つすら言わずに剣崎が行動したのには、流石に驚いたが、あいつらしいとも思った……最低でも、裏切られたと思われるのは覚悟してたのにな……」

始「剣崎を飲み込もうとカードから光が出てきた時、俺は剣崎を押しのけて光に入った……その時になって初めて、あいつは怒ったような顔をしたっけな……」

チェイス「…………」

始「なんとか剣崎を説得して、ようやく俺の体を、あいつのラウザーが貫いた……あいつの顔は見えなかったが、泣いていたかもしれない……」

始「覚えているのは、そこまでだな……」

擬態天道「……後悔とか……してないの? 悔いは、無かったの……?」

始「……全く無いとは言えないな。もっとあいつらと……人間と共に居たかったさ……だが俺は、それでも十分生ききった」

始「最後に生き残れば、世界を滅ぼすアンデッドである俺と、アンデッドを倒し封印する使命を背負った剣崎……」

始「どれだけお互いを信頼し、絆で結ばれていようと、俺達は敵同士……戦う事でしか解り合えない……そう思っていた」

始「だが、あの最後の戦いが終わってから4年……俺ですら知らなかったもう一人のジョーカーが現れた事で……」

始「睦月の力でカードから解放された俺は、仲間の望みに応え、再び剣崎達と肩を並べて戦う事ができた。天音ちゃんの成長した姿も見れた」

始「満足だった……何の始祖でもない空っぽの怪物には、十分すぎるほど、満ち足りた日々だった」

始「ひょっとすると俺は、俺が思っていたよりずっと前から、人間と解り合えていたのかもしれない」

始「……俺には、その事実があるだけで……幸せ過ぎるほどに……幸せだったんだ……」フッ





真司「…………凄いな。お前……」

始「!」

真司「……やっぱり、他の皆もそうだけど、すげぇ尊敬するっていうか」

始「尊敬?」

真司「人とアンデッド……人とロイミュード……人とワーム、人とオルフェノク、人とファンガイア……!」

真司「どんなに姿が違っても、どんなに持ってる力が違っても……歩み寄る気持ちさえあれば、誰とだって、どんな奴とだって一緒に生きていけるんだって……改めて思った!」

真司「誰かのために自分を犠牲にする勇気……近しい人からすれば、そんな事されたら堪ったもんじゃないかもしんないけどさ……」

真司「やっぱりそういう心って、一番大事にするべきモノなんじゃないかって思うんだよ! それこそ、誰よりもまず人間が持ってなきゃ!」

巧「……!」

チェイス「……うむ」コクリ

蓮「…………」

真司「その勇気があったから、命は失いこそしたけどさ! そのおかげで守れたものが……生きている人達に残せたものが沢山ある!」

音也「そしてその生きている奴らが、俺達が残したものを更に発展させていく……ってな?」ニヤリ

真司「そうっ!! ここに居る皆、経緯や結果は違えど、そういう人の集まりだろ? なんていうかさっ……嬉しいんだ俺っ!」ハハハ!

草加「…………フン」

北岡「おーい、城戸。俺俺。俺は違うぞー?」

克己「俺も、何も残してないどころか、全部破壊しようとしたしな」

真司「本質は皆一緒だろって事だよ! ……聞けば聞くほど、皆事情が事情なだけで、本当に悪い奴なんて、1人もいないじゃんか!」

克己「…………」





真司「……俺もあともう少し、蓮や北岡さんとか、皆の事情に突っ込んで犠牲になる覚悟があれば、なんか違ったかなぁ……?」

北岡「いやいやいやいやいや……お前なぁ……」

美穂「あんたそれ以上どうお人好しになろうってのさ!? 馬鹿も休み休み言えよ馬鹿……」

真司「えぇ!? 何だよいい事言ったのに!?」

手塚「……お前にこれ以上自己犠牲の精神を強くされても、周りの人間の胃が痛くなるだけだから自重してくれ」

真司「て、手塚ぁ!?」

蓮「お前にこれ以上馬鹿になられたら手が付けられん。いっそ馬鹿のギネス記録でも目指したらどうだ?」

真司「んだとぉ!!」

木場「……ぷっ、フフハ……!」プルプル

始「……フ、クク……」ククク

真司「何だよ! 笑うなよー!!」




手塚「さて、これで全員話し終えたが……」

木野「やはり皆、死を迎えた後に、突然この世界にやってきているようだな」

ザンキ「戦いの最中に死亡した……もしくは戦いの傷や後遺症によって死んだという事が共通点だが……それ以外はこれと言って何も無いな」

戒斗「仮面ライダーという呼称も、この世界がそう勝手に呼んでいるだけの者の方が多いしな」

影山「どんな共通点があるかはこの際どうでもいいんじゃないか? それより問題は、これからどうするか……」

剣「うむ……死んでしまった以上、俺はもう現世に戻りたいとか、そう言った希望は無いんだが……」

北岡「まぁ、その手の可能性は無い物として考えておいた方が無難だろうねぇ。それとも、俺達全員で戦って、生き乗った者が生き返れるデスゲームだったり?」

巧「やめろよ縁起でもねぇ……」

音也「けどよ、こんなでっかいドームまで作って、集めたのは仮面ライダーっつう戦う力を持っていた奴らだ……何も無いと思うのも危険かもしれんぞ?」

真司「嫌だよ俺皆と戦うなんて!? もしそんな事になったら絶対止めるかんな!!」

音也「もしもの話だっての、そう熱くなるなよ」チビチビ

荘吉「その危険性は、あまり心配しなく居てもいいだろう」

湊「……なぜかしら?」

荘吉「ここに置いてあった碑文……あそこには、ただそいつの人生が書かれていただけじゃない」

荘吉「稀にマイナスな部分が書かれている物もあったが、文章の最後には必ず、その人物がいかに強く、高潔な人間であるかを伝えたがっているような内容で締めくくられている」

荘吉「そして、この世界での平穏を望んでるかのような……書いた人物の願いが滲み出ている」

荘吉「ほぼ間違いなく、この世界を用意した何者かの本心だ。俺達を油断させて何かをしようという訳でもない……あれはそんな上っ面の気持ちで書ける文章じゃあない」

チェイス「では、俺達に何かをさせたいわけではない……そういう事か?」

荘吉「恐らくはな……ただ、100%そうだという訳でもない。俺は俺で、もう少し調べてみる」

木野「では、当面は何の心配も無さそうですか?」

荘吉「そういう事だな」

真司「ホッ……良かったぁ」




美穂「じゃあ……ただここで、平和にゆっくり暮らしてればいいのかな」

蓮「だが、こうして生かされていても……はっきり言ってやりたい事なんて何も無いぞ? 一番の生きがいと呼べるものは、全部現世に置いてきてしまった……」

真司「そんなもんこれから見つければいいんだよー! 何だって好きな事できるさ!」

擬態天道「……そうかな……」

真司「そうだよっ! お前だって、もう誰の代わりになる必要も、誰かの真似をする必要も無い! したいと思った事をやればいいんだっ!」

擬態天道「……そうだといいな」

手塚「……できるさ」

草加「幸いここは色々あるしね。服屋に本屋に雑貨屋、何でもござれだ。買う方法が分からないけどね……」

克己「……その事だが、ここに書いてあるぞ」ペラッ

北岡「何だって? 何ページ?」パラパラ

克己「16ページ目だ。ライダーバトルを繰り返すことで、ライダーポイントとか言うのを個人でそれぞれ稼いで、そのポイントと物品を交換するらしい」

真司「なっ!? ライダーバトルって……!!」

克己「お前達が知っているのと意味は全く違う……これは殺し合いではなく、寧ろスポーツ感覚で行うもののようだな」

蓮「スポーツだと?」

影山「っておい! お前らばっかり見てるなよ! こっちにもよこせ!」

北岡「そこの棚に沢山あるから勝手に取れよ」ペラッ

剣「こんな物が……何々……時の安らぎ場タイム? ここの名前か?」

巧「……こっちにもあるな」パサッ

音也「でかした! 俺にも見せろ!」

真司「あ、俺も俺も!」ペラッ

チェイス「……各施設の説明が詳しく書かれているな。ゲームセンターなどもあるようだ」




湊「16ページだったわね……。……! あったわ、『ライダーバトルとライダーポイント(RP)について』……」

戒斗「……『RPはこの場所における通貨のようなものです。様々な施設やシステムをご利用いただく際に、このRPが使われます』……」

擬態天道「『RPはライダーバトルを行う事で、バトルに参加した一人一人に加算されます』……」

蓮「『※お試しとして、施設内のサービスをどれか一つを一度だけ、RP無しでご利用いただけます』……何だこれは」

始「……つまり、ここで生活する金が欲しければ、積極的に俺達でバトルをしろ……という事だな」

剣「何故わざわざこんな仕組みに……」

音也「そりゃあれだろ! あの世だからと体がなまってだらしない肉体にならないよう、ストレス解消やスリルを味わうための、娯楽兼運動施設として作られた粋な計らいだろ!」

巧「そんな単純な話に捉えていいのかよ……」

手塚「しかし、何もせずともなんでも手に入るより、こうして何かをして通貨を手に入れる方が、人としても堕落しないで済みそうだ」

草加(……これを使えば気兼ねなく乾や木場をぶちのめせるわけか……)ニヤァ…

ザンキ「しかし根本的な問題として、木野さんを除く全員は変身するための機器が無いぞ」

克己「変身と戦闘に必要な専用武装は、毎回特殊空間で限りなく本物に近いコピーを生成するらしい」

北岡「カードデッキとモンスターまでか? ……どうなってんのさ本当」

美穂「……『バトルの勝敗に関係なく、参加者全員にポイントは与えられますが、勝利した場合の方が、ボーナスポイント等を含めより多くポイントを獲得できます』だってさ」

チェイス「勝ちを狙って損は無い、か」

ザンキ「『また、ポイントを貯めた状態でバトルに勝利した場合、その場でポイントを必要量消費する事で、様々な種類の特別な権利と交換する事もできます』……?」

木野「特別な権利? 内容は書いてないのか?」

克己「特別権利一覧のページを見たが、どうやら現世と関連するものらしいな。50000ポイントで何処かの世界の好きな『物』をこちらに転送できるそうだ」

木場「えぇ!? それって、なんでもですか!?」ペラッ

克己「生きているものは無理らしい。主に無機物だろう。似た様な事は60000で行えるらしいが」

擬態天道「……『60000RP=人間以外の動物の魂』……だって」

ザンキ「動物の? それは生きてる命から抜き取るって事か……?」

擬態天道「あ、ううん……霊体として漂っているものを連れてくるだけだって……」

北岡「霊体って……やっぱそういう事なんだな……何でも有りかよ、時の安らぎ場」





擬態天道「あと、10万RPと、50万RPで、何かできるみたいだけど、内容は秘密みたい……」

真司「50万!!? 一回の参加でどれだけ貰えるかによるけど……簡単に届かないかもなぁ……」

蓮「だろうな。そもそも、このRPってのは、日常生活でも使うものだ。それを戦闘終了後に消費すると言う事は、それまでは使わずにとっておかなければならん」

木場「10万の権利が欲しかったら、10万貯めておかないと実行できない、と……」

影山「ポイントの方は分かったけど、実際にそのライダーバトルをするにはどうすりゃいいんだ?」

戒斗「……ここに書いてある。ドーム出入り口のすぐ正面に端末があるらしい。それを操作しろとの事だ」

巧「端末? ……そういや、何も映ってないテレビみてーなのがあったけど、それの事か?」

戒斗「写真を見る限りそのようだな」

木場「……どうします? 誰かやりたい人は……」

巧「別に今そんな事したくないんだけどな……けど、ここで生きてくにはそのRPを稼がないとだし……」

荘吉「……なら、とりあえず俺が実験台になろう。誰か一緒に来たいヤツは?」

ザンキ「鳴海さんが行くなら、俺も行きますよ。ここは年長者が一肌脱ぎましょう」

木野「それなら私もだな。しかし、この力を人に振るうのはなんとも不安だな……」




影山「……!!」




影山「ちょっと待ったおっさん……ここは俺達、地獄兄弟に任せてもらおうか……!!」

一同『!』

剣「え、なぜ?」

荘吉「……お前達でやるのか?」

影山「ちょっとじっとしすぎて体が痛いからな! 運動してほぐしたいんだよ……!」

剣「お兄ちゃん、兄弟同士で戦うのか?」

影山「いいや違う……俺達が戦うのは……お前だよ! 霧島美穂!!」

美穂「は、はぁ!? あたし!?」

真司「え? え!?」

剣「! ま、まさかお兄ちゃん……」

影山(絶好の機会じゃないか!! 試合という形であいつをコテンパンにできるチャンスだ!!)ヒソヒソ

剣(彼女一人相手に俺達二人でか!?)ヒソヒソ

影山(なんだよ、兄貴の言う事が聞けないのか……!)ヒソヒソ

剣(そ、そんなぁ~……)ヒソヒソ



美穂「……はぁ、さっきの事根に持ってんなら悪かったわよ。でもだからってそんな事で喧嘩しなくても……」

影山「喧嘩じゃない! ただ純粋に勝負がしたいだけさ! それとも、所詮女のライダーじゃ、俺達地獄兄弟に勝てないとビビってるのかー!?」ゲヘヘ

美穂「こ、コイツ……!! 下手に出ればつけ上がりやがって!! いいわよ相手になってるよ!! さっさと行くよ!!」ズンズン

影山「そうこなくちゃな……!」ザンザンッ

剣「…………どうしよう」





真司「おい待てよ! 幾らなんでも女の子相手に二人がかりは無いだろ! 大の男が恥ずかしくないのかよ!」

美穂「! あんた……」

影山「ぐっ……まぁ、そりゃあ……じゃあ分かったよ! そっちももう一人加える事を許可してやる!」

剣(やめるという選択肢は無いのか!?)

真司「よし! じゃあ俺が加勢するぜ! いいよな霧島さん!」

美穂「え、う、うん……」

北岡「おいおい、なんか面白い事になってきたな」ニヤニヤ

音也「ハッ!! しまったその手があったかぁ……!!」

巧「! おい、音也お前……」

音也「まぁ待て待てムァドマァゼェル! そこの馬鹿レベルMAXだけじゃ心もとない……この俺がお前のナイトになってやろう!」

美穂「は? いや、別にいらな……」

音也「そう遠慮するなぁ! お前に降りかかる火の粉全ての盾となり、お前に仇名すブァカ兄弟を屠る剣となろうじゃないかッ!」

影山「おい!? 今度はそっちが三人がかりかよ!? ずるいぞ!!」

音也「うるせぇ!! 地獄兄弟だか遅刻兄弟だか知らんが、女相手に数で勝負しようとしたヤツがちょっとの事で駄々をこねるんじゃありませんッ!!」

真司「おう! そうだそうだ! 音也一人が入ったところで大した問題じゃないだろ! ガタガタ抜かすなー!」

音也「真司くーん、それ、どういう意味?」

美穂「っていうか、あんたはこいつが加わるのはいいわけ……?」

剣「お兄ちゃん、ここは引こう! はっきり言って無駄な戦いすぎる! 何もこんな形で仕返しをせずとも……!」

影山「おい! お前! ……えっと、天道じゃない奴!!」

擬態天道「ぼ、僕の事……? ……酷い呼び方しないでよ……」

影山「同じワーム仲間として協力しろ! こっちに加われ!」

擬態天道「な、何で僕が……僕その人達と何の関係も……!」

影山「ただの試合なんだからいいだろ! 勝てたら地獄兄弟に加えてやるから!」

擬態天道「えっ、いや、別にいいよ」

影山「ノリ悪いなクソ……!! じゃあ北岡か大道! どっちか来てくれよぉ!」

蓮「だそうだぞ?」

北岡「はぁ? 冗談じゃないよ、俺まで馬鹿に見られるだろ」

蓮「面白い事になって来たと言ってじゃないか?」ククク

北岡「当事者じゃないからだよ……お前行けよ大道」

克己「…………まぁ、いいだろう」

北岡「……え、マジ? 何で?」

克己「俺も体を動かしたかったところだ。じっとしすぎるのは好きじゃない」ポキポキ

北岡「あ、そ……そんじゃ、しっかり人柱として働いてくれよー?」

木場「ひ、人柱ってそんな……」




克己「そういう訳だ、こっちも一人追加だ」

剣「……本気か?」

影山「よっし……! これで同じ条件だな!」

克己「正し、条件がある。俺の足を引っ張るな。それとお前らも……」

美穂「?」

音也・真司「「ん?」」




克己「簡単に潰れてくれるなよ? せっかくのゲームだ。遊びがいが無いのは嫌なんでね……せめてある程度は抵抗しろ。それが俺が参加する条件だ」

美穂「……随分強気ね。そんなに自信がある?」

克己「まぁ、負ける気はしないな。お前もお供の方二人も生ぬるそうだ」コキッ

音也「…………おい真司、全力で行くぞッ」ダッ

真司「おう……ここまで言われて黙ってたら男じゃないぜ……!!」ダダッ

美穂「ちょっ……待ちなさいよ! あたしを守るためにやるんでしょーが!?」ダッ

影山「あっ! こら先に行くな!」ダッ

克己「フン……」ザッザッ

剣(……大変な事になってしまった……というか、俺はむしろ相手チームに入りたいぞ……)トボトボ…




巧「……あー、どうする? 追いかけるのか?」

北岡「どうなるか見たい事は見たいけどなぁ……俺は面倒くさいからパス」

チェイス「観戦はこのドーム内のどこでもできるらしい。何でもあちこちで空間に大きなディスプレイが表示されるとか……」

蓮「本当に何でもありだな……」

北岡「それならここに居るよ。ここのライダーバトルの安全性が確認できたら、俺もやろうかねぇ?」

チェイス「それと、観客席では直接この目で見れるそうだ。基本的に戦う場所はそこらしい」

木場「……俺はどうしようかなぁ」

チェイス「俺は応援もかねて直接見てくることにする。巧はどうする?」

巧「じゃあ俺もそうすっかなぁ……真司さんや音也がどういう風に戦ってたのか、ちょっと興味あるし」

木場「……それなら、俺も見ておこうかな?」

ザンキ「何かに備えて、我々も行きますか」

木野「そうだな……行きましょう鳴海さん」

荘吉「……あぁ」

湊「戒斗はどうするの?」

戒斗「俺も直接見に行く。これから何度も戦う事になる相手だ。どんな手札を持っているのか見ておきたい」ツカツカ

巧「……草加、お前は?」

草加「君たちが行くならやめておくよ。ここの空気が少しは綺麗になる」

巧「……そうかよ……」

手塚「秋山はここに居るのか?」

蓮「どこに居ても見れるなら、わざわざ動く必要も無いからな。そういうお前は?」

手塚「俺もここにいよう。実は少し腹が空いててな。初回サービスを利用させてもらうとしよう」

擬態天道「なら僕もここに……」








◇ドーム・玄関正面◇



影山「あった、これだ!」

音也「で、どうりゃいいんだ?」

美穂「こういうのは画面タッチすれば点くもんでしょ」ピッ




ブゥン……!



真司「おっ! 点いた! 『ライダーバトルを行いますか?』……はい!!」ピッ



端末『バトルの参加者を選出します。参戦する方は端末に向かってご自分の名前を言ってください』



真司「オホン……城戸真司!!」

音也「紅音也!!」

影山「影山瞬!!」

剣「……神代剣」

美穂「霧島美穂」

克己「大道克己」

真司「以上です!」




ピピピ……ピコン!


端末『6名の参加を確認しました。バトルの条件を設定してください』ピロン



剣「……何やら色々設定項目があるようだが……」

美穂「真司、あんた適当に決めてよ」

真司「適当でいいの? それじゃあ……えっと、『ステージの選択』? そんなのもあるのか」

音也「戦う場所の条件ってわけか。まぁ最初だし弄らんでもいいだろ」

真司「ランダム、と……『ルールの選択』か。タイマンとか、バトルロイヤルとか、色々あるな。ポイント稼ぎバトルとか言うのもあるぞ」

影山「今回はチーム戦だからな、チーム戦の設定があるはずだ!」

真司「お、あったチーム戦! チームの割り振りは……レッドが俺と霧島さんと音也で、ブルーが他3人と……」ピッピ

真司「『強化形態の使用の有無』……これはまぁ有りだな」ピッ

真司「……『怪人形態の使用の有無』か。これはどうする?」

影山「……それは無しでいいだろ」

剣「……あぁ、無しでいい」

真司「ん……そっか。じゃあ無しと」ピッ

真司「……他に何か弄っとくとこあるかな? ……ん? 『変身のタイミング』?」

克己「試合開始前に変身しておくか、開始以降に変身とするかの選択だな」

音也「普通は変身のラグ含めての戦いだからな! ここはリアルに開始以降を選べ真司!」

真司「了解ッ! ……っと、こんなもんかな?」ピピッ

影山「覚悟しとけよ! お前ら全員ギッタギタにしてやる!」

音也「こっちの台詞だ! 戦場での俺の華麗なる舞いを見せてやる!!」





端末『設定が完了しました。バトルを開始しますか?』

真司「よーし……はい!! 開始しますッ!!」ピッ!




――――カッ!!!




一同『!!!』










チェイス「む……誰も居ないぞ?」

巧「さっきまで話声がしてたはずだぞ?」

木場「……もう始まってるのかな」




ブウゥン……!




チェイス「む……」




映像『ライダーバトルが開始されます。観戦する方は、観客席での観戦をお勧めします』

映像『試合開始まで、2分53秒です』

木場「……って事は……皆準備中?」

チェイス「どうやら戦いの場に直接転送されようだな。中に入ろう」

巧「あぁ」テクテク




◇戦場◇




真司「うぅ、何が……?」

音也「……!! こりゃあ……」

美穂「……ここ、どこ……!?」

真司「え? ……!!」





影山「……街だ……!! 街がある!! 地面のコンクリートも本物だ!」

克己「実際には、本物とほぼ違わない幻……だろうがな」

剣「ここは本当にドームの中なのか!? 明らかにドームの面積を超えているぞ!?」

克己「特殊空間で生成されるって言ったろ。通常の物理法則なんて、ここでは無いも同然だ」

克己「…………しかし、まさかランダムで選ばれた戦場がここだとはな……」

克己「つい最近まで居た筈が……妙に懐かしく感じる……」





ヒュオオオォォォォ……





克己「またこの目で拝むことになるとは思わなかったぞ……風都」




風ぐるま『』カラカラカラ…




剣「! お兄ちゃん、キリ・シーマ達が向こうに居るぞ!」

影山「あぁ……それに見ろよこれ。いつの間にか持ってたみたいだ」ガシャッ

剣「それはベルト……! ハッ! 俺のサソードヤイバーも! ではゼクターも!」

影山「……いや、無いな。どうしたんだ俺のホッパーゼクター」

克己「ロストドライバー……そして……戻って来たか。エターナル……!」ニヤリ




真司「あっ……!! 俺のカードデッキ!!」カシャッ

美穂「あたしのもだ……!」カシャンッ

音也「おおおう! 来た来たイクサシステム!」ガシャガシャ




――――ポーン!



音也「お?」

アナウンス『ルールの確認を行います。3対3形式で、3人全員が戦闘不能状態となったチームは敗北、1人でも生き乗った参加者がいるチームを勝利とします』

アナウンス『バトル開始の合図まで、スタート地点から動かないでください。バトル開始まで、15秒、14、13……』

真司「いよいよだな! 気合い入れてこうぜー!」シュッシュッ!

音也「ゴングが鳴ったら即変身だぞ真司ぃ!」ワクワク

美穂「言ったからには、ちゃんとあたしの盾になりなさいよ?」スッ…




アナウンス『8、7、6……』




剣「まずいぞ! カウントが始まってしまった……! 肝心のゼクターが無いというのに!」

影山「どうなってんだよ!? システムのバグかなんかか!?」

克己「…………」スッ…




アナウンス『2、1――――』





プァーーーッ!!!


疲れた&腹減った……

遅い夕飯で少し休憩してきます。 戦闘シーンはまた後で。



あぁ、>>537の無機物の召喚ってそういう
この分だとシグナルバイクも怪しいなぁ、ディスクアニマルとかもこれで入手しろって事か


お待たせしました、再開します。

>>548

その発想は無かった……。
残念ながらそういった展開とは違うものをやるためのRPです。何かまだは言えませんが。




◇観客席・東◇





巧「! 始まった!」

チェイス「音也達は街の道路中央に居るな。相手チームは少し離れた歩道橋の上だ」

木場「って、何でこんな街がドームの中に!?」

巧「……もう一々気にしたら負けだろ。ここでは」

チェイス「! 動くようだぞ」







音也「さぁて……思い切り暴れさて貰うぜ!!」ジャキッ!!



ギュウゥン……ピロロロ!



【レ・ディ・ー】





克己「…………」バッ



カチッ



【エタナール!!】



カチャッ!



克己「……変身……!!」ガシャッ!!



【エターナル!!】



ボオオォォ……! カシャアァン!!



音也「変身ッ!!」ガチャッ!!



【フィ・ス・ト・オ・ン】



ギュン!! ピピピ!! ピロロロロ……ガシュウゥンッ!!




イクサ「……ん~~~! やっぱりしっくりくるなこれ!」

エターナル「ハハ……! いい気分だ……!」




影山「……行くぞ剣!!」クルーッ

剣「どっちへ!?」ガビーン



イクサ「……なんだ? 向こうの2人は変身もしないで逃げやがったぞ?」

イクサ「まぁいい! チャンスだ! 真司、俺達であの白いのをやっちまうぞ!!」ダッ

真司「ごめん音也!! もうちょっと待って!!」クルーッ

美穂「ここは任せた!」クルーッ

イクサ「!? 何でお前らまで変身してないんだ!?」

美穂「良く考えたらあたし達!」

真司「鏡が無きゃ変身できないんだったー!! あっちのビルのガラスで変身してくるからー!!」

イクサ「何じゃそりゃあぁ!!」






巧「……何をやってんだよ……6人中4人が反対方向に行っちまうぞ?」

戒斗「戦略的撤退……でもなさそうだな」

チェイス「! 戒斗か。湊も……」

湊「どういう状況なの?」

木場「さぁ……僕らにもよく……」





エターナル「……ハァッ!!」バサァッ!





木場「! 一人が橋から飛び降りて走り出した!」

チェイス「どうやら残った大道は、音也に仕掛けるようだな」




エターナル「……!」ダダダッ!!

イクサ「! あぁ、おい、お互いなんか手違いがあったみたいだから、あいつら来るまで……」

エターナル「フッ!!」ブンッ!

イクサ「ぬおっ!? 問答無用かお前!」ガシッ!

エターナル「戦場ではアクシデントなんざ常に付き纏うもんだ。寝ぼけた事言ってないでさっさとかかってこい」グググ…!

イクサ「……へっ、いいぜ! さっきナメた口をきいた事を後悔させてやる!!」グルンッ!

エターナル「!」

イクサ(拳を受け止めたまま、その腕を掴んで……!!)ギチギチ…!

イクサ「背負い投っげえぇぇ!!」グオォ!!

エターナル「……フン!」シュッ!

イクサ(ッ!! ナイフ!? この体勢から!?)

エターナル「オォッ!!」ギャリッ!!

イクサ「ぐっ! ……っらぁッ!!」



ドカッ!!



エターナル「チッ……!」スザァッ!

イクサ「へへ、ちょっと掠ったが……どうよ俺の蹴りは!」

エターナル「……そうだな、70点と言ったとこか」

イクサ「こんにゃろ減らず口を……!」ダダダッ

エターナル「……!」スゥ…

イクサ「ハッ! ハァッ!! そらそらそらァ!!」シュバババ!!

エターナル「ッ! ッ! ……ッ!」パシパシパシ!

イクサ(ぐぬ……! こいつ俺の連続パンチを全部いなしやがる! 傭兵としての経験は伊達じゃねーか……!)ビュンビュンビュン!!

エターナル(この男の拳、一撃一撃が……速く、重い……! 話じゃ元はただの一般人のはずだが……元々の戦闘センスがずば抜けてるのか……?)ヒリヒリ…

イクサ「……!! そこだぁ!!」ビュバッ!!



ガッッ!!



エターナル「ッ……!!」




木場「ガードが崩れた!」

チェイス「チャンスだぞ音也……!」

戒斗「違うな。あれは罠だ」

巧「……! 駄目だ音也! 突っ込むな!」





イクサ「胸ががら空きだぜ傭兵さぁんッ! オッラァ!!」ギュンッ!!

エターナル「お前がな?」クルリッ

イクサ「ッ!?」スカッ

エターナル「フンッ……!!」ズバァッ!!

イクサ「あがッ……!?」

エターナル「フッ! フン! ハッ!! ゼアッ!!」ズバズバズバァッ!!

イクサ「がっ、は、グぁッ!?」ギャリギャリガキィ!!

エターナル「……オオォッ!!」ギュンッ!!




ドガアァッ!!!




イクサ「うあぁぁーーッ!!?」ドシャァン!!







チェイス「何……!?」

巧「フェイントだ! 音也の攻撃に合わせて、わざと防御が崩れたような体勢とったんだ……音也が大振りな攻撃をするよう誘うために……!」

戒斗「フン……それなりに戦闘を見る目があるようだな、乾」

木場「がら空きの体に、あのナイフ型の武器で4回斬りつけられた上に止めの回し蹴り……痛そうだなぁ……」

湊「どんなに同じライダーと認められてても、つい最近戦うようになった元一般人と、常に戦場で生きてきたプロの傭兵では、流石に差があるわ」





エターナル「どうした? そんなものか?」クイックイッ

イクサ「ぐ、痛てて……! うっせ! 今のはハンデだ! 特別に喰らってやったんだよ! 本番はこっからだ!」ザンッ!

エターナル「……そうか。ならもう少し本気を出してもいいか」バサァッ

イクサ(っ! マントを脱いだ……?)

エターナル「……喜べ。お前はここに居る誰よりも先に、この力を見れるんだからな」チャキッ




カチリッ



【ゾーン!!】



ガシャッ! ギュウゥン……!



【ゾーン!! マキシマムドライブ!!】



イクサ「な、なんだこら! 何をしようとこの俺様には通じんぞ!」



エターナル(コイツが俺の手元にあったと言う事は、恐らくは……)





――――キラッ!


ヒュン! ヒュン! ヒュンヒュンヒュンッ!




エターナル「やはりな……!」

イクサ「!? なんだ……あいつが今使ったのと似たようなのが沢山!?」

エターナル「全て俺の力だ……加減はしてやるが、全力で避けなきゃ、即刻リタイアだぞ?」



ガギュウゥン!! ガキュガキュギュギュギュギュギイィンッ!!



【アクセル!!】【バード!!】【サイクロン!!】【ダミー!!】【エターナル!!】
 【ファング!!】【ジーン!!】【ヒート!!】【アイス!!】【ジョーカー!!】
       【キー!!】【ルナ!!】【メタル!!】


エターナル「最初はこんな所でいいだろう。全力の半分だ……これが耐えられないなら、お前は俺の相手には役不足だ」




イクサ「……もしかして、これって結構やばい奴か!?」

エターナル「まともに受ければ、ただじゃ済まんだろうな」スッ



キュウゥン……カチャッ!



【エターナル!! マキシマムドライブ!!】



ズオオオオォォォォ……!!





チェイス「何やら大技を使うようだ!」

戒斗「全力の半分とは言っていたが……様子を見るに生半可な攻撃じゃなさそうだな」

巧「大丈夫かよあいつ……!」





エターナル「……喰らえ……うらああぁぁッッ!!!」ザッ!!




ドバッ!!! ズバアアァァーーーッッ!!!




イクサ「ぬわああぁぁーーーっ!!?」ビクゥッ!!




ガガガガガガガガガッ……!! ズドオォーーン……!!

ズズゥン……






イクサ「…………っぶねぇーー!!! ぎ、ぎりぎりだった……!! 何だ今のは……薄緑色のエネルギー波……!?」ハァハァ



エターナル「ほう、本来の半分の精度とはいえ、所見で今のを避けるか……やはり天性の戦闘センスがあるようだな」

イクサ「そりゃどうも……!」

エターナル「そうでなきゃ面白くない……始まったばかりで、この道路や向こうの風車みたいになられてもつまらない」

イクサ「あん……?」チラ





イクサ「    」






チェイス「な……なんという破壊力だ……!!」

巧「今の、斬撃か……!? 大道が居たところから、少し向こう側の風車があるとこまでの道路に、馬鹿でかい亀裂が……!!」

木場「風車に至っては……あれ、縦に真っ二つになったっていうのか!?」

湊「……すさまじい力ね……街一つ滅ぼしかけたというのも納得だわ……」







イクサ「なんちゅうもん放ってんだお前は!! 殺す気か!?」ウガー!

エターナル「安全面は確保されてるらしいから安心しろ。死ぬようなダメージを受けるてことは、ここではただ戦闘不能になるってだけのことだ」

イクサ「だとしても気持ち的に嫌だろうが!! もう怒ったぜ……こっちも手加減なんて無しだ!!」

エターナル「そいつは楽しみだな。じゃあ、次もうまく避けてみろ」スッ…




ズオオオオォォォォ……!!



イクサ「!! またか!?」

エターナル「今度は多めに飛ばすぞ……」ジャキッ!

エターナル「オオオォォッ!! ハアアァッ!!」シュパパパパン!!




ザン!! ザンッザンッザン!! ズバアアァーーッ!!




イクサ「おまっ……!!! その威力で連続でもいけるとかどんだけーーー!!?」ズシャァッ!

エターナル「ハッ! フンッ! ハァッ!」ババババッ!!



ズババババンッ!! ゴオオォォーーッ!!


>>552がエタナールになってる






イクサ「うっわ危なッ!! うおおぉ!? おわぁ!! ひゃひっ!? げぇ!! 横切り縦切り同時!? こんちきしょうがぁぁーーッ!!」ドタバタッ




ぴょーん! ぐるん! ベシャリッ! ゴロゴロ……ガバッ! ドダダダダ……!




イクサ「くっそ!! これいつまでやる気だこの野郎!!」ヒィー!

エターナル「お前が喰らうまでだ」スパパパンッ!!

イクサ「ですよねっ!!」ダッシュ&ジャンプ!






チェイス「凄いぞ音也……! 紙一重でなんとか避けている……!」

湊「彼も彼でとんでもないわね……あの飛んでくる斬撃の嵐を、なんで避けられるのかしら。様子からして、攻撃を撃つ相手の動きから予測してるわけでもないでしょうに……」

木場「……勘で我武者羅にかわしてる、って感じですね……」

巧「必死に逃げ回ってるって言った方が正しいかもな……見てる側としてはみっともない動きだぜ……」

戒斗「……甘いなお前達」

湊「え?」

戒斗「あれは勘の要素も大いにあるが……良く見ろ。攻撃が放たれる直前……毎回一瞬だが、エターナルのナイフの動きを見ている瞬間がある」

木場「えっ!」

湊「……! そう言われれば、斬撃を避けながらも時々前を……!」

戒斗「放たれた後の斬撃にも目が行っているのと、不格好な動きのせいで気付き辛いのだろう。意識してやってるのか、それとも無自覚か……」

戒斗「どちらにせよ奴は、ある程度エターナルの動きを観察して戦っている」

戒斗(……やはり、普段の馬鹿さ加減でそいつの強さは計れんな)





エターナル「…………っ」ズバズバズバッ!!

イクサ「ウヒッ!? う、ゲホ……ぬおぉ!? へひ……! ……だあぁもうーー!!」ズリズリゴロゴロ…!

エターナル(……当たらんな……この点は加減なんてしてないってのに……)ピタリ

イクサ「うへ、ぜぇ、ぜぇ……!! どした……! エネルギー切れかい……!?」

エターナル「この手段じゃどうもお前には通用しないらしい。やめだ」

イクサ「そ、そうか……! それがいい……! 何度やっても、俺には、そんな攻撃……当たらん、からな……!!」ゲホゲホ

イクサ(た、助かったーー!!)

エターナル「つくづく惜しい男だな。お前が兵士だったなら、かなりの地位に行けただろうに」

イクサ「はっ、下らねぇ……俺は戦争屋の手下になる気もトップになる気もねぇよ……!」

イクサ「そんなもんのために戦うより女の笑顔のために戦うほうがよっぽど有意義だからな……!」ニヤリ

エターナル「それは残念だ……とにかく、このままじゃ埒があかないんでな。違う戦法でいこう」シュウウゥ…

イクサ(! 体を覆っていた緑のエネルギーが消えていく……!)




エターナル(この辺で一度やめておいた方がいいしな……パワーバランス調整の影響で、俺のこの強化状態は3分間使用し続けると、その後一定時間使えなくなるらしい)

エターナル(今は1分程度しか使っていないし、26本全てのメモリを使ったわけでもないから、再発動はいつでもできるだろうが……)

エターナル(ここぞと言うときまで温存しておこう)

イクサ「それで……! 次はどんな手品を見せてくれんだよ……!?」

エターナル「……AからMだ」

イクサ「?? なんだって?」

エターナル「好きなアルファベットを選べ。AからMだ。お前に決めさせてやる」

イクサ「……なんだか良く分からんが、そうだなぁ……Dだな! 俺は小さくても別に気にせんが、D程度はあると嬉しい!」

エターナル「Dだな?」スッ

イクサ「あーーいや、待て! やっぱりそこまで大きさを求めるとそれだけが目的とか思われそうだ……うーんしかし……」

エターナル「……どうするんだよ」

イクサ「……良し……Cだ! ここが妥協点だ! やっぱり男としてはな……Cはあって欲しい! お前もわからるだろこの気持ち!」

エターナル「いや、さっぱりわからん」カチャッ





チェイス「……音也は何の話をしているんだ?」

木場「えっと、多分……その……」

巧「ろくでもない事だから気にすんな」

戒斗「……つくづく分からん男だな。なぜあんな男にあれほどの才能が宿っているのか……」

湊「やっぱり最低ね……」ジト…






エターナル「……Cのメモリ、か……フン」



ギュウゥンッ!



【サイクロン!!】



ビュオオォォ……!!






イクサ(!! 風!! 小規模の竜巻か……!?)

イクサ「ぐ、強い……! 吹っ飛ばされる……!!」ブワァァ…!

イクサ「くぅ、ぐわっ!?」ドサァッ!



フワァーー……!



エターナル「……ハッ!!」

イクサ(! 竜巻に自分から飛び込んだ……! あいつ自身にダメージは無いのか!)ググ…

エターナル「…………!」グルグルグル…!

イクサ(!! あいつ、今ナイフを順手から逆手に……!)

イクサ(やたらぐるぐる回ってるのも考えるとなんかやばそうだ……!!)

イクサ(避けねぇと!)サッ



グラッ……!



イクサ「う!? あ……!?」

イクサ「な、なんだ……!? 足がふらつく……!!」グラ…

イクサ(なんか、妙に頭もフワフワしてるような……あっ!?)








音也『美味っ! ビール美味しっ!』ゴクゴク






イクサ(飲んだ後で激しく動いたから……! よ、酔っちまったぁ!?)フラフラ






ガチャッ!!


【サイクロン!! マキシマムドライブ!!】



イクサ(や、やべ……!! 避けるのは無理だ!! ガードは……!?)《0.1秒》

イクサ「……ッ!!」ガッ!《0.9秒》



ガシャン! バシッ!!



【イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ】



エターナル「うらあああぁッ!!」ビュゴオォ!!



ギャルルルルッッ!!!





イクサ「しゃあらあああぁッ!!!」ドバァッ!!



ゴガアアァン!! ギギギギギギ……!!



エターナル「……ッ!!」ギギギ…!

音也「こなくそ……!! ぶっ飛べオラァァッ!!」グオォ!




ドギャアアァッッ!!




音也「うがっ!」ベシャッ

エターナル「ぐぉッ……!! ……チッ……!」スタッ!






木場「!? い、今何が……!? 速すぎてよく……」

戒斗「……まずエターナルの方が、風の回転エネルギーを得た状態で竜巻ごと突っ込み、回転に乗せたナイフでイクサを切りつけようとした」

チェイス「それを察知した音也が、腰のベルトから武器を外して技を使ったのだ。恐らくあれが、イクサの必殺技だろう」

巧「相打ちか……!?」

湊「いいえ。イクサの方は攻撃の拮抗状態が解けた時に、少し体位置をずらしたようね……直撃はしていないわ」

戒斗「対してエターナルは高速回転をしていたせいで、まともに体勢を整えることもできなかった。エネルギーは幾らか相殺したとはいえ、それなりに効いたはずだ」






音也「ハハッ……! どうだよ傭兵さん! 今度は100点満点だろ……!!」

エターナル「……フ、即興で思いついた技なんてそうそう使うもんじゃないな……だがいい実験にはなった」ググ…

音也「膝つきながら余裕ぶってもかっこ悪いぜ? さあ、こっから逆転劇の始まりだ……!!」

エターナル「ハン……来い……!!」

音也(……とは言ったものの、俺の方は今のが唯一の必殺技なんだよなぁ……相手は恐らくあの、メモリ? の数だけ技があるんだろうな……)

音也(おまけに下手に動き回ると酔いが更に回って余計に戦いずらくなるし……!)フラッ

音也(……あれ? 何だかんだいって、俺、詰んでる?)タラリ…

音也(ってか真司は何してんだよ!! いつまで変身に時間かかってんだ!?)






影山「くそぉ!! これじゃ戦えないぞ!? 運営に文句言ってやる!!」バタバタ

剣「!! お兄ちゃん! ゼクターは無いのではなく、いつもの様に俺達の意志で呼べるのでは!?」ピタッ

影山「……あっ……」ピタッ

剣「……来い!」



ボコボコボコ……! ドギャンッ!


サソードゼクター『――!!』



剣「やはりだ!」

影山「よ、良し……! 来い、ホッパーゼクター!!」




ピョーンピョーンピョーン!! カシャッ!!


ホッパーゼクター『――! ――!!』




パンチホッパー「はぁ、やっと変身できる……!」

サソード「行こうお兄ちゃん!」

パンチホッパー「あぁ……! 変身……!!」ガシャッ

サソード「変身っ!!」ガチャッ



ドンッ、ウィーン!



【HENSHIN】

【HENSHIN】



プシュウゥゥー……!!



【Change Punch Hopper !】


ミスった。>>571の頭に↓を追加です。


◇……今から遡る事3分……◇



>>559
またか畜生……何で読み返していて気付かんのだ……!
各自エターナルで脳内保管お願いします……



影山「俺は先に行くぞ! クロックアップ!!」カシャッ!



【CLOCK UP !】



ギュンッ!!


剣「えっ!? ま、待ってくれお兄ちゃん!?」








真司「良し! ピッカピカの窓ガラスだ……! 行くぞ……変身ッ!!」バッ

美穂「…………変身ッ!」スゥッ



カシャ、カシャン!


キュンキュンキュンキュキュキュキュ……!

ギャキィィン!!



龍騎「っしゃあっ!!」バッ!

ファム「ってこら!? 何ミラーワールドに入ろうとしてんの!」ガシッ

龍騎「え? あ、そっか、戦う場所は現実か。つい、いつもの癖で……」ナハハ

ファム「……本当、馬鹿だな真司は……」

龍騎「馬鹿って言うなっての!」

ファム「……あたしの知ってる真司じゃないのに……なんでそんなに似てるのさ……」ボソッ

龍騎「…………あのさ、霧島さん……俺は――――」









【RIDER JUMP !】




龍騎「!! 下がって!!」シュパッ



ブゥン……ガシャッ!



ファム「え? きゃっ!?」ガバッ




【ガードベント】





パンチホッパー「ライダーパンチ……!!」ガチャッ!



【RIDER PUNCHI !】



パンチホッパー「おらああぁッ!!」バチバチ!!



ドガゴンッッ!!



龍騎「うっぐ……!?」ズザザザ!

ファム「真司!?」

パンチホッパー「やるじゃんか……ライダーパンチを盾で防御しきるなんてな」

龍騎「ってえー……! 不意打ちとか卑怯だぞ! 正々堂々勝負しろよ!」

パンチホッパー「そりゃ無理な話だな! 俺達、ZECTのライダーシステムとお前らのとじゃ、圧倒的にスペックが違い過ぎるからな!」

ファム「スペック……?」

パンチホッパー「同じ能力を持ってるZECTのライダーならともかく、そうじゃない奴相手に、正々堂々なんて元から無理なんだよ!」

パンチホッパー「今見せてやる……!! クロックアップ!!」カシャッ!










【ERROR】






パンチホッパー「…………は?」

パンチホッパー「……何だ今の音声」カシャッ



【ERROR】



パンチホッパー「…………おい……おい!?」


カシャカシャガシャガシャ!!



【ERROR、E、E、E、ERROR】



パンチホッパー「………………」



龍騎「……えっと……?」

ファム「チャンスだよ真司!」

龍騎「……だよな!」シュパッ!



ガシャンッ!


【ソードベント】



龍騎「っしゃあ!」パシッ!

パンチホッパー「……どうなってんだよーー!?」ピューー!

龍騎「あっ!? こら、逃げんなぁ!!」ダダダッ

ファム「真司!? ちょっとー!」



サソード「ふぅ、ふぅ……! キ、キリ・シーマ! 大丈夫だったか!?」ガション、ガション!

ファム「!! あんたか……! 顔に似合わず随分ごついライダーなのね……!」ザッ!

サソード「ま、待ってくれ! 俺は君とは……!」

ファム「何言ってんのさ! 喧嘩売ったのはあんたの兄貴! 弟なら責任とって黙ってやられろ!」ジャキッ!!

サソード「……君とは戦いたくなどないんだが……仕方ない……! せめて、いい試合にしよう!!」スッ…!


今回はここまでです。肝心のバトルが短かったですね……。
次回はバトルに集中できるので、もう少し色々見せられるかな?

しかし、我ながら擬音のオンパレードで笑う。SSの戦闘ってこんなんでええんやろか。


こんばんはです。随分長く開けてしまいましたが、まだ生きてます。
今一戦闘描写が上手く書けてる気がしなくて何度も書き直し続けてましたが……もうなんだっていいや!!
今まで通り好きなように書くコトにします。

というわけで、少ないバトルシーンですが、ちょこっと投下します。




木野「これはたまげたな……扉をくぐったら街の中とは……」

ザンキ「浮かんでいる映像を見るに、全員一対一の図式で戦っているようですね」

荘吉「………………」

木野「……? 鳴海さん、どうかしました?」

荘吉「…………いや……何でもない」キュッ…

荘吉(……風都を再現した場所か…………)





ヒュウウゥゥ……


からからから……



荘吉「……空は快晴でも……住民がいないと、こうも寂れて見えるものか」

荘吉(翔太郎、フィリップ……亜樹子……今お前達が見ている空は……晴れいているか……?)









龍騎「ハァ……! ハァ……! お、大人しくしろよ!? いい加減戦え!!」

パンチホッパー「ぐ、ぐぐ……! まさかクロックアップが使えなくなるなんて……聞いてないぞ!?」

龍騎「ほら! かかってこいよ! さっきの威勢はどうしたー! う、えほ……」




パンチホッパー「……チッ……仕方ない……! クロックアップが無くたって、どっちにしろこんなアホっぽい奴に俺が負けるか!」

龍騎「アホッ……!? 余裕ぶっこいて目の前に現れておいて一目散に逃げ出したお前の方がよっぽどアホだろ!!」ダッ!

パンチホッパー「……!」

龍騎「おりゃ!! 喰らえっ!!」ブンッ!!



ビュンッ!! シュパッ!!



パンチホッパー「うわっ……! くっ、うお!?」ヒュン! ヒュン!

龍騎「む……! よくかわすな……じゃあもっと上げてくぞぉ!!」シュンッシュンッ!!

パンチホッパー(!! 剣を振るスピードが、どんどん速く……!? 避けきれな――――!!)

龍騎「だあぁっ!!」ズバッ!! ザシュッ!!

パンチ「っがっ!? ぐあッ!!」バチバチ!!



ドシャッ! ゴロゴロゴロ……!







ザンキ「ほう……中々やるな。あの赤いライダー、城戸君の……龍騎だったか。粗削りながらも鋭い攻撃だ」

木野「ただのジャーナリストが、よくあそこまで戦えるな……」

荘吉「……戦えるようにならざるをえなかった、というのもあるだろうがな」






龍騎「へへっ! どーだ!!」

パンチホッパー「このっ……! 調子に乗るなぁ!!」ガバッ!

パンチホッパー「……ライダージャンプ!!」




ガシャッ!!


【 RIDER JUMP ! 】


ピキュオン……! ピキュオン……! ピキュオン……!




龍騎「お、来るかー!?」

パンチホッパー「……ハァッ!!」ドヒュウゥン!!




龍騎(でもその技はさっき見たばかりだ! おまけに不意打ちでもないのに、そんな大きくジャンプして飛び込んで来たら、迎撃してくださいって言ってるようなもんだぜ!)シュバッ



ブゥン……! ガシャッ!!




【ストライクベント】




キランッ! ギューーン……!


ドラグレッダー『ギャグオオォォン!!』




パンチホッパー「なんだ!? 龍!?」ヒュルルル…!

パンチホッパー(! そういえばこいつ、さっきの話で契約モンスターがどうとか……! これがそうなのか!)



ドラグレッダー『ギャオオォォ……!!』ギュルン!


ガシッ!



龍騎「よっ、とぉ!」カシャン!

龍騎「さぁ行くぜーー……!!」ゴオォォ…!




パンチホッパー(……ふん、飛び込んできたところに、何か飛び道具でも放とうって事か!)ヒュルルル……

パンチホッパー「それなりにいい作戦だな…………俺が本当にただ飛び込むつもりなら、だけどな!!」

龍騎「……!?」

パンチホッパー「フンッ……!!」ギュッ!



ピタッ!



龍騎(……!? 後ろのビルの壁に、足をつけた……?)




パンチホッパー(ライダーパンチは発動しない……! ゼクターレバーを倒して!)ガチャッ!

パンチホッパー(すぐに逆に倒すっ!!)ガチャッ!!



【 RIDER JUMP ! 】



バシュウゥンッッ!!



龍騎「なにっ!?」

龍騎(直線上に真っ直ぐこっちへ!? 速い!!)

パンチホッパー「今度こそ喰らわしてやるよォ!! ライダーパンチッ!!」ガシャッ!



【 RIDER PUNCHI ! 】




龍騎(くっ……! 放つのはもうちょっと威力貯めてからにしたかったけど、相殺するには今撃つしかない!!)ゴオォォ!!

パンチホッパー「オラアアァッッ!!!」ギュオォッ!!

龍騎「だああぁぁーーっ!!!」

ドラグレッダー『ギャオオォォ!!』ボゴオオォォ!!



ゴオオォオオォォォッッ!!



パンチホッパー「ぐうううぅぅ……!!」メラメラメラ…!!

龍騎「おおおぉぉぉッ!!」ボゴゴゴォォ…!!


パンチホッパー「ぐく、うぅ……!! うりゃあああぁぁーー!!」ゴォッ!!



ブワアァァッ!!



龍騎(炎を抜けて――!? 押し負けた……!!)



バギャンッ!!



龍騎「ガッ、ぐ……!!」ズザザッ…!

ドラグレッダー『ギャオオオォ……!』 ギューーン……!






木野「今のが、彼が話していた契約モンスターというものか……」

ザンキ「ビルの窓ガラスから飛び出て来たと思ったら、またガラスに消えた……?」

荘吉「……元々ミラーモンスターはミラーワールドに生息していた存在だ」

荘吉「現実世界の人間が鏡の世界では存在できないのと同じく、モンスターが現実世界に長時間いられなくとも不思議じゃない」



パンチホッパー「はは! 見たか! これが俺のライダーパンチ!! どんな奴が相手だろうと、いつだってコイツで倒してきた!」

パンチホッパー「お前がどれだけ沢山の妙なカードを使っても……この拳一つで全部殴り飛ばしてやる……!!」シュッシュッ!

龍騎「……へん! まぁまぁやるじゃん……! けど、本当にその技だけで俺の攻撃を全部どうにかできるなんて思ったら、大間違いだからな!」ザッ!

パンチホッパー「ならさっさと見せてみろよ……次の手をさぁーー!!」ダッ!!

龍騎「ならご期待に応えて……!!」ダッ!!

パンチホッパー(!! 向かってきた……!? 俺と正面からやり合う気か!!)

パンチホッパー「舐めるなよ……!! 俺はパンチホッパーの名の通り、両腕ででの攻撃に特化している!! 俺に接近戦で勝とうなんて10年早いぞォッ!!」ビュンッ!!

龍騎「そうか、よっ!!」ゴォッ!

パンチホッパー(ハッ! 俺のストレートパンチに、そんなゴテゴテしたモノ着けたままの右手で適うわけないだろ!)ニヤリ

パンチホッパー(スピードも俺に比べたら大したこと無いぞ! そのグローブ弾き飛ばして、隙ができた瞬間に重たいのを顎にぶち込んでやるッ!!)




ゴガッ!! ガキィンッ!!




パンチホッパー「えっ――――?」グラッ

龍騎「だあぁッ!!」ギュンッ!!




ドガッッ!!




パンチホッパー「ぐあぁッ!?」ドシャンッ!! ゴロゴロ…

龍騎「っしゃあっ!! 決まったー!!」イエーイ!




パンチホッパー「う……ゲホッ……!!」ズルズル…

パンチホッパー(バ、バカな……!! 俺がパンチの打ち合いで負けた!? 何で!? スピードは俺より遅かったはず……!!)



龍騎「もういっちょーー!!」 ダダダッ!!

パンチホッパー「ッ!? く、くそ……!!」グググ…

龍騎「おりゃあッ!!」ギュンッ!!

パンチホッパー「ぐ、おぉ!!」バッ!



バゴォンッッ!! バラバラ……! パラ……



パンチホッパー「!! 地面が、砕け……!?」

龍騎「あっ、避けんな……よッ!!」ビュオッ!!

パンチホッパー「う、うわぁ!?」ヒュン!

龍騎「また! こんのっ……!」グッ…

パンチホッパー「クソッ……!! やめろぉ!!」ガシッ!!

龍騎(!! 俺の右手を……!?)

パンチホッパー「うおああぁぁーーっ!!」ガン!! ガギン!! ゴガッゴガンッ!!

龍騎「うげっ!? がッ!? がふッ!! こ、の……!! はぁなぁせーー!!」バキィ!!

パンチホッパー「うぅ……!!」バッ…!

龍騎「うぐぅ……くそ、痛ってー……! やったなお前ー!?」プンスコ

パンチホッパー「ハァ、ハァ……!」





パンチホッパー(あ、あのグローブ……!! さっきはあの龍を操ってただけだったから、何のために腕に装備するのかわからなかったけど……!!)

パンチホッパー(あれはモンスターのコントロールのためだけじゃない……普通に打撃技の補助武器としても強力なんだ!!)

パンチホッパー(いや、多分元々はそっちがメイン……! でなきゃさっきの隙のある技のためだけに、わざわざ利き手を封じてまで使おうとはしない!!)

パンチホッパー「最初からその武器の必殺技を使って見せることで、本来の用途をカモフラージュしたってわけだ……! とぼけた顔して食えない奴だな……!」

龍騎「……? カモフラージュって……何を?」

パンチホッパー「隠す事無いだろ……それはさっきの剣と同じように、接近戦でも有用な武器なんだろ! してやられたよ……!!」ギリッ…

龍騎「! あぁ、これか! どうもそうみたいだな」ハハハ

パンチホッパー「……そうみたいって……わかっててやったんだろう!?」

龍騎「いやいや、俺、あんまりこれで直接殴ったりって使い方はしてなかったんだ。もっぱらさっきの技を使うばっかりで」

パンチホッパー「……はぁ……?」

龍騎「こういう使い方もできるんんだな! まぁ俺以外のライダーのストライクベントって、殴ったり叩きつけたりするための武器だったような気がするし、俺のが特殊だったのかな?」

パンチホッパー「お……お、前……そんな……そんな話が……!」プルプル

パンチホッパー「あってたまるかーーーッ!! 俺はなんとなく思いついた戦法に押されてるっていうのかあぁーーーッ!?」ドダダダッ!!

龍騎「うわっ!? な、なに怒ってんだよ!?」ビクッ




◇休憩ロビー◇






蓮「……こいつは……」

北岡「……まぁ、城戸らしいっちゃらしいよ」

手塚「相変わらず、色々な意味で不確定要素満載な男だ」フフッ

擬態天道「……この人は、生きてる頃からこんな感じなの?」

北岡「あぁ。そりゃあもう、何もかも行き当たりばったりっていうか、ぶっつけ本番っていうか……」

蓮「そしてそのぶっつけ本番で、なんだかんだ何とかなってしまうのが、この馬鹿の質の悪い所だ」ハァ

草加「……心中お察しするよ」

始「……だが、この影山と言う男も負けていない様だ」

北岡「あー、そうだな。傭兵として働いてた大道はともかく、影山が城戸とまともに戦えるとは思わなかったなぁ。いや、あいつもゼクトととかいうのに居たらしいけどさ」

蓮「と言うより、城戸が手を抜きすぎだ。いつものあいつなら、この程度の格下相手に苦戦するはずがない。何をやっているんだ……!」

始「……加減して戦っているというのか?」

北岡「手を抜いてるぅ? 初めて戦う相手にはいつもこんなもんだろ、あいつ」

手塚「いや……俺もそんな気がしている。あいつが最初から本気で戦ったら、こんなものじゃない」

蓮「城戸が元々持っていた戦いの才能は凄まじい物だ。あいつよりずっと先にライダーとして戦っていた俺が、いつの間にかあいつに追い詰められるほどに、城戸の成長速度は異常だった」

蓮「あいつの経験値を考えれば初見の相手だろうと、このレベルならワンサイドゲームにもできる筈……なのにこの有様……手を抜いてるのは明らかだ」





映像『「お前ッ!! 舐めるのもッ!! いい加減に!! しろよ畜生ーーッ!!」ババババッ!!』

映像『「うわっ、わわわっ!? 何だよ何でそんな怒ってんだよ意味わかんねーよ!?」ガッ!ガガガッ!』




蓮「見ろ、今のもそうだ……!」イライラ

擬態天道「? 何が……?」

草加「……影山は癇癪を起して我武者羅に殴りかかっている……拳を振る速さは一級品だが、冷静さを欠いてあちこち隙ができてるのを自覚してない」

草加「特に足の運び方が雑になっている。足払いでもすれば簡単に引っかかるだろうね……と、こんなとこかな」

蓮「そうだ……その気になればいつでも勝負を終わらせられるのに、あいつはきっとそのチャンスにも気が付いていない」

蓮「いったい何のつもりだ……! あいつの戦い方はいつも不格好だが、今のこれはあまりに雑だっ」

蓮「こんな調子じゃ他の見てる連中に舐められるぞ……」

擬態天道「……もしかして、友達が過小評価さるかもしれないのが、気に食わなかったり……?」

北岡「ブフッ!」

手塚「あぁ、それでか」ナットク

蓮「……俺はただ仮にも最期に残っていたライダーの一人が無様な戦いをするのが腹立たしいだけだ、妙な事を言うな」ジロリ

擬態天道「! ご、ごめん……」

北岡「おいおい、そうマジになるなよー大人げない。本当の事だろー?」プークスクス

蓮「…………」イラッ

手塚「……しかし、今の城戸が手を抜いて戦ってしまうのは、仕方がない事だと思うぞ」

蓮「! どういうことだ?」

手塚「……お前なら、良く考えれば簡単にわかるんじゃないか? 一番城戸と長くいたお前なら」

蓮「何……?」

北岡「仕方ない……ってのは、手を抜かなきゃいけない理由があるって事か?」

手塚「……というより、手を抜きたくなってしまうんだろう。多分、加減しているのも無意識で、本人は至って真面目に戦っているつもりだろう」

草加「……相手が弱すぎるから、加減してやりたくなったとかかな? 自他共に認めるお人好しの馬鹿なんだろう? そいつ」フン

蓮「…………」ギロッ






始「…………初めてだから、じゃないのか?」

擬態天道「……初めて……?」

北岡「何がだよ?」











始「…………人の生き死にの関わらない戦いが、だ」







蓮「――――!!」

北岡「………………」

手塚「……そうだ。城戸にとって……いや、俺達の世界の仮面ライダー全員にとって、ライダーに変身すると言う事は……」

手塚「己の命を、そして他人の命を……願いのために失い、失わせる戦いを意味していた」

手塚「城戸の場合は、モンスターに襲われる一般市民を守る事は勿論、敵であるライダーを守るためにも必死だった」

手塚「そこにあったものは、人の命を守りたいという、城戸の悲痛な思いだけだ。戦いへの積極性どころか、城戸自身の幸せすら、あいつの戦いには存在していなかった」

蓮「………………」

手塚「だがこの世界へ来て、城戸は初めて、命のやり取りではない……誰のためでもない戦いをする機会を得た」

手塚「ただ純粋に、自分と相手が楽しむためだけの戦いを……遊びの範疇の変身をしているんだ」

擬態天道「……そうか……初めから、本気になる必要が無いんだね」




手塚「あぁ……城戸の強さの理由は、元の才能も勿論あるだろうが……その力が本当に発揮されるのは、何よりも、誰かを守るために戦うときだ」

手塚「今城戸は、何かを守るために戦っていない。ただ試合をしているだけだ」

手塚「命を懸ける戦いを実戦とするなら、これはただの練習なんだ。そしてこの先、実戦が行われることは無い」

始「……秋山、さっきお前は、本番でうまくいってしまうのが城戸だ、と言ったな」

始「その言葉通りなら、本番ではない今は、気が抜けてうまくいっていないだけなんじゃないか」

手塚「……何より嬉しいのさ、あいつは。簡単に終わらせたくないんだ。この楽しいだけの変身を、少しでも長く、味わっていたいだけなんだろう」





映像『「だから何で当たらないんだよ!! これだけ打ち込んでれば一発位は入るだろぉ!?」バシバシバシ!!』

映像『「いやっ、これ、結構、ギリギリっ、だからな!?」ガッ! ガガッ!!』





北岡「…………なるほど、ね……」フー…

手塚「そしてそれは、俺達も同じだ。今この世界に居る……全てのライダーがな」

擬態天道「!」

草加「…………」

手塚「後で俺達もやってみようじゃないか。今なら城戸達と同じように、ここに居る6人でチーム戦ができるぞ」

始「……俺もか?」

蓮「……確かにどっちみち、生活できるだけのものは稼ぎたいが……」

草加「俺はごめんかなぁ。本当に強いかも分からない奴とチームを組むくらいなら、いっそバトルロイヤル形式でいいんじゃないかな?」

北岡「……確かに、一理あるな。俺も、誰かと背中を預け合ってー、なんて柄じゃないし」

手塚「そうか。それならそれでも構わないが、チーム戦で勝利すれば、そのチーム全員が多くのRPを得られるようだぞ?」

草加「…………」

北岡「けどこの人数でバトルロイヤルやって勝てれば、その方が儲かるよな?」

擬態天道「……1人はね……」

始「……お前達はせっかく神崎のライダーバトルから解放されたんだ。少しはバトルロイヤル思考から離れろ」

北岡「…………そりゃごもっとも」




始「……ところで、神代剣と霧島美穂の方も、拮抗しているようだな」






ファム「やっ!! ハッ!!」ガキーンッ!! ガギューンッ!!

サソード「くっ……フンッ! ハァッ!」ガガッ、ガキンッ!





北岡「ん……あぁ、ウチの坊っちゃんか。……そういや、結局霧島のやつ1人で戦ってんのか。ナイト約の2人は参加した本来の目的忘れてんじゃないの?」

蓮「……若干、霧島の方が押しているか」

手塚「お前から見て、あの神代という男は強いのか?」

擬態天道「……あんまりよく知らない。でも、まだ本気じゃないとは思うよ」

始「……確かに、動きがぎこちない様子が見受けられるな。さっきからあまり攻め込もうとしていない。防御してばかりだ」

擬態天道「それもそうだけど、何よりキャストオフをしていない、マスクドフォームのままだからね……」

手塚「マスクドフォーム?」

擬態天道「……あっちの影山さんが変身してるパンチホッパーは例外だけど、僕たちが変身するライダーシステムには、共通してマスクドフォームとライダーフォームがある」

擬態天道「マスクドフォームは見ての通り、装甲が厚くて防御力に特化してる形態の事だよ」

擬態天道「この状態でベルトのゼクターを操作すると、纏っている装甲を解除して、防御を捨てる代わりに機動力に特化したライダーフォームに変わる」

擬態天道「このマスクドフォームからライダーフォームへの変化の事を、キャストオフって言うんだ」

蓮「キャストオフ……その機動力とやらは、今の防御力を捨ててまで得る価値があるのか?」

擬態天道「……まぁ、そうだね……ワームのクロックアップの事は話したと思うけど、僕らのライダーシステムは、そもそもがそのクロックアップに対抗するための物だからね」

擬態天道「ライダーフォームになると、ワームと同じようにクロックアップを使えるようになるんだよ」

草加「……確か、タキオン粒子がどうとか……」

北岡「あー、なんだっけ……その粒子のおかげで、時間の流れを操作できる……だっけ? 意味はわからんが」

擬態天道「解り易く言えば超高速での活動が可能になるって感じかな……クロックアップを使った側からすると、自分以外の周りの時間が、ほとんど止まってるような状態になるんだ」

蓮「! つまり、動きが遅くなった世界の中を、自分だけが自由に動けるというわけか?」

擬態天道「うん。相手の攻撃を簡単に避けて、一方的に攻撃する事もできるね」

草加「……とんでもない能力だな……」

始「なら、それを使わない神代も、やはり手を抜てるのか……」

北岡「ま、あいつ霧島に気があるみたいだし、本気出すに出せないってとこでしょ」

擬態天道(……あれ? でも何で、パンチホッパーは龍騎との戦ってるのに、クロックアップを使わないんだろう……?)







ファム「……! そこッ!!」ヒュオンッ!!



ガッギュイィンッッ!!



サソード「うっ……! く……」ズザザ…!

ファム「……やっぱり見た目通り固いね……! 結構いい状態で入ったと思ったんだけど……!」チャキッ…

サソード「いやいや、装甲で軽減されたとはいえ、君もいい太刀筋をしている。ライダーフォームで当たったら痛そうだ……!」



ファム「………………」

サソード「……? どうした?」

ファム「……あんた、なんで本気出さないわけ?」

サソード「えっ……」

ファム「さっきから守ってばっかりで、たまに反撃してきてもこっちが避けれるか防御できる程度の攻撃だけ!」

サソード「そ、それは……君の攻撃が速くて鋭いし! 俺も少し体が鈍っているようで……!」

ファム「嘘つくな!! あたしはそういう嘘つかれんの凄い嫌いなんだよ!」

サソード「う、嘘ではないぞ!? 君の動きは本当に女性とは思えないほどに洗練されて――」

ファム「あんまり何もしてこないから、試しにあからさまな隙をわざと作ってやったら、明らかに気付いているのに攻めてこないじゃない!!」

サソード「うっ……!」

ファム「あたしの事、舐めてるわけ……!?」ビシュッ!

サソード「……仕方ないじゃないか! 君は女性で、俺は男だ! 男が女に手を上げるなんてそんな事……」

ファム「はぁ!? あんた馬鹿でしょ! これ試合なんだよ!? 負けたら死ぬわけでもないのに、何つまんない事で遠慮してんのさ!」

サソード「し、しかしだな……」

ファム「第一! 女が男より弱いっていうその発想が既にムカつく!! フェミニスト気取るのはいいけど、『いい試合にしよう』って自分で言っておいて正々堂々戦わないって、馬鹿にするのも大概にしろアホ!!」

サソード「ア、アホ……」ズーン

ファム「……まったく、敵のあんたに気を遣われてたんじゃ、喧嘩に乗ったあたしが馬鹿みたいじゃん……」

サソード「…………すまない」

ファム「謝るくらいなら今すぐ本気出せっての! あたしはあんたの兄貴の挑戦を受けた! 受けた以上あたしは全力で勝ちに行く!」

ファム「その結果勝つにしろ負けるにしろ、全力でやった事なら後悔はしない! けど……」




シュバッ! シャキィン……!!




ファム「相手に手を抜かれて勝ったって、あたしは全然嬉しくない!! そんなのあたしのプライドが許さない!!」

サソード「…………」



ファム「ねぇ、今ここで礼儀がなってないのは、女のくせに男に勝負を挑むあたし? それとも、女だから男の自分より弱いって決めつけて、本気を出そうとしないあんた? どっち?」

サソード「! それは……」

ファム「……全力で戦おうって言ってる相手に、何か理由つけて本気を出さないスポーツ選手がいる? いたらそいつはプロじゃないでしょ」

ファム「喧嘩の礼儀だろうと……礼儀には、礼儀で返しなよ!!」

サソード「――――!!」

サソード「…………ノブレス・オブリージュ……」

ファム「……? 何?」

サソード「俺とした事が……忘れていたよ。高貴なふるまいには、高貴な振る舞いで返す……」

サソード「爺やが言っていた……女性に対しては、その身も心も、両方大事に扱うものだと……!」スクッ

サソード「女性に力を振るう事を頭ごなしに否定し、相手の思いを疎かにしてはいけないのだな……!」

サソード「すまなかったキリ・シーマ。目が覚めた……改めて言わせてくれ。いい試合にしようッ……!!」チャキッ!

ファム「……最初っからそう言ってればいいのに。ま、その真っ直ぐな所は、嫌いじゃないけどね」

ファム「でも、勝つのはあたしだよ!」ダッ!

サソード「そうはいかないさ……! 今から俺は、本気で君に勝ちに行くッ!!」スッ!

ファム(ん……!?)




ガチャッ!!


ガシュウンッ! ガシュン、ガシュンッ! ガシュゥンッ!




サソード「キャストオフッ!!」ガチャンッ!!




【CAST OFF !】


ギャギュィン!! ピロロロロ……プシューー……!


【CHANGE SCORPION !】





サソード(Rフォーム)「これが俺の……サソードのライダーフォームさ……!!」ジャキッ!

ファム「へぇ……さっきのごてごてした見た目と違って、スマートでかっこいいじゃん……!」ザッ…



サソード「君にそう言ってもらえるのはとても嬉しいな……!」ジリ…

ファム「でもさ、それってやっぱり、防御力下がってるでしょ? もう余裕こいてダメージも喰らえないで……しょッ!!」ビュン!!

サソード「おっと……! あぁ、その通りだキリ・シーマ。だが、ただ防御を捨てたわけじゃない! 君に面白いものを見せてあげよう!」

ファム「……!」

サソード「行くぞ……クロックアップッ!!」カシャッ!



【CLOCK UP !】



フッ……



ファム「!? 消えた……!? どこへ――――あう゛ッ?!」 ガギィン!!

ファム(ッ……!! な、何……!? いきなり、何かに背中を殴られた!?)




【CLOCK OEVER !】


ファム「!?」

サソード「……今のが、対ワーム戦のために作られたライダーシステムの最大の特徴にして最強の攻撃手段……クロックアップ!!」

サソード「使用者の俺からは、君を含む世界の動きが殆ど停止した状態となる! 今やったのは、スピードが極限まで遅くなった君の背中を、このサソードヤイバーの柄で殴りつけたのさ」

ファム「うっ、く……! 超高速移動の更に上の能力、て感じか……!」

サソード「まぁ、そういう認識でいいだろう」

ファム「……殴るだけじゃなくて、急所でも切り付ければ勝てたんじゃないの?」ムスッ

サソード「それは流石にな……クロックアップを持たない俺達以外のライダー相手には、防御不能の絶対当たる必殺技を放つようなものだ」

サソード「君じゃなくても、同じことを俺はしたさ。ただし! 加減するのは今のが最後だ! これ以降のクロックアップでは、確実に仕留めに行くぞ!」

ファム「そういうことね……いいよ、かかっておいでよ!!」

サソード「覚悟はいいなキリ・シーマ!! クロックアップ!!」カシャッ!




【ERROR】





サソード「……え!?」

ファム「……?」

サソード「お、おかしいな、こんな筈は……!」カシャッ!



【ERROR】



サソード「…………どういう事だ!? なぜ発動しない!? こ、壊れてしまったのか!?」

ファム「……あのさ、もしかして、そのクロックアップって、調整されてるんじゃないの?」

サソード「ちょ、調整?」

ファム「あんたが自分で言ってたように、それってかなり強力な能力でしょ? そう何度もポンポン使われたら、確かに他のライダーは誰も太刀打ちできないだろうし」

ファム「きっとこのライダーバトルのバランスを偏らせないために、簡単に連続で使えないようにされたんじゃないの?」

サソード「な、成程……そういう事か……」

サソード(……じゃあ今頃お兄ちゃんはクロックアップ無しで……!?)

ファム「……まぁ、別にそれが無いと戦えないわけでもないでしょ? 次はあたしから行くよ!」ザッ!

サソード「ぐ、ぬ、むむむ……! すまないキリ・シーマ!」ダッ!

ファム「あ!? ちょっと、どこ行くんだよ!?」

サソード「悪いがこの勝負は後回しにさせてもらう! お兄ちゃんがどうなっているのか心配だ!」ダダダッ!

ファム「な……!」

サソード「この試合はあくまでもチーム戦! 味方の援護も勝敗に大きくかかわる! 俺はチームで勝って、君にも勝つ!」バッ!

サソード「追いかけてくるのも構わないが、君も誰かを援護しに行くのもいいかもしれないぞー!」ピュー!

ファム「そ、そんな勝手に……!! あぁ、もう!! もう行っちゃったよ……! ホント自分勝手な奴! 戦うって言って本気出さないで、本気出すって言ったら援護に行くって……!」

ファム(……まぁ、最終的に勝つにはそれが正しいのかもしれないけど……)

ファム「……仕方ないなぁ……あたしも誰か援護に行こうか? 真司の方に行きたいけど、2体1になるとはいえ、地獄兄弟に真司が負ける姿も想像し辛いよなぁ……」






バゴオオオォォンッッ……!!!





ファム「うわっ!? 何!?」





ズドオォン!! ガラガラガラ……!!




ファム「あっちは、真司達が行った方角じゃない……ひょっとして、エターナルとあの音也とか言うのが……?」

ファム「……気のりしないけど、あっちに行ってやるか……!」タタタッ







蓮「……結局戦わないのか」

北岡「……女と戦り合うのを渋ってた坊っちゃんが、活入れられてやる気になって、噂のクロックアップを使って……」

始「……しばらく問答した後に神代がどこかへ去って、霧島も別の方に、か」

手塚「向かっている方角からして、神代は影山の、霧島は音也の援護に向かったようだな」

擬態天道「……クロックアップの使用制限、か……」

始「当然と言えば当然の処置だろうな」

草加「あの兄弟2人は、自分の能力の説明欄も見ずに行ったようだな。ちゃんとこのページから全員分記載されていたのに」ペラッ

北岡「……あ、マジだ。俺らのカードの仕様も少し変わってるみたいだ。同じカードは一定時間後に再度使用可能に、だとさ」ペラッ

蓮(……ファイナルベントは他のカードよりもインターバルが長い、か。時間が必要ではあるが、再発動できる時点でありがたい強化調整だ)パラッ

手塚「それはそうと、こうなると城戸は1人で地獄兄弟を相手に戦わないとならないな。時間がたてばクロックアップもまた使えるようになる……」

蓮「…………」

北岡「でもま、だからと言ってあいつが簡単に負ける事もないでしょ。切り札はいくつも残ってるし」

始「霧島が神代を追わず、大道と紅の方に向かったのは正しい選択だろうな。紅はあんな調子だが、戦闘センスに関してはやはりずば抜けている」

始「あのイクサというシステムに、もう少し戦い方のバリエーションがあればもっと化けていたはずだが、エターナルというライダー……能力が未知数だ」

始「技や固有能力のスペックで言えば、イクサは圧倒的に不利……しかし、ここでエターナルに敗北させてしまうと、残された城戸と霧島の2人は更に追い込まれるだろう」

手塚「あぁ。紅のイクサの強さは、城戸に匹敵すると言ってもいい。城戸達チームの3人の中でも大事な戦力だからな」

擬態天道「逆に2人がかりでなんとかエターナルを倒すことができれば、あとは3人で地獄兄弟を……ってことだね」








◇美穂移動開始の2分前……◇





エターナル「おおぉぉーーッ!!」ビュバババンッ!!

イクサ「うひっ?! うお、く、ぐ! このっ……!!」ガッ!! ガガガ!!

エターナル「……フンッ!!」グンッ!



ガッ!!



イクサ「うっ!?」ドシャッ!

イクサ(しまった、足払い!! やっべぇ!!)ググッ

エターナル「であァッ!!」シャキィンッ!!




イクサ(立てない! 両腕でガード……片手ついてる! 右手で受け止め――無理だ、上から斬り崩される!!)

イクサ(ナイフが、綺麗なフォームで……こりゃ顔面狙いか……負け――――)

イクサ「――――てたまるかってんだ馬鹿野郎ォォ!!」ブンッ!!




バキィッ!!




エターナル「ぐぉっ!?」グラッ…

イクサ(今だ! 一旦離れる!)ゴロンッ!

エターナル(こいつ……!! 倒れた状態のまま俺の脛に蹴りをッ……!! こちらの攻撃が入る直前で、何て瞬発力だ……!!)

イクサ「ぐ、うぅ……! くっそ、頭がグラグラしてしょうがねぇ……! 一つの動きをするたびに酔いが……!」グワングワン…

エターナル(遠距離からの飛び道具は予備動作を読まれてかわされる……接近戦ではここという場面での一撃が入らない……)

エターナル「……出鱈目だな、お前」

イクサ「お前が言うな!! さっきから妙なアイテムばっか使いやがって……!! 俺も欲しい! 一つくらいよこせー!」フラフラ

エターナル「気が向いたらな……」カチャッ!




【ルナ!!】




イクサ「あっ、またお前……!?」




ガギュウゥン!!




【ルナ!! マキシマムドライブ!!】




エターナル「さぁ、こいつはどう防ぐ?」




――――ゆら……



イクサ「!? なん、だ……?」

イクサ(いよいよ本格的に酔いが廻ってきたか!? 相手が、何人もいるように見えるぞ……!?)

エターナル「……行くぞ」ギュン!




ザザザザ……!!




イクサ(!! 残像!? いや、違う……! ただの残像がこんな長く、それもあちこちバラバラに出現するわけ……!!)

エターナル「ほら、こっちだ……!!」ビュンッ!

イクサ「!? うげっ!!」ゴッ!!

イクサ「ぐっ……くそ、今のはどいつが……!?」

エターナル「次はこっちだ」ギュンッ!

イクサ「がふっ!?」バギッ!!

エターナル「おっとこっちもだ」ビュオッ!

イクサ「うがっ!?」ドゴンッ!!

イクサ(うぐ……!! や、やっぱり、ただの残像じゃねぇ!?)

イクサ「このやろう、人を寄って集って……! 分身だか何だか知らんがリンチは卑怯だぞ、こらぁ!!」ビュバッ!!




スカッ……!




イクサ「うっ!? 消えた……こいつじゃな――――」

エターナル「そうだ、そこに俺はいないぞ」ギャリィッ!!

イクサ「がああぁっ!?」バチバチバチ!!




バチバチッ!! ドシャッ……!





イクサ「ぐ、あ……くそぉ……!!」グググ…

エターナル「ようやくお前に、まともなダメージを与えられたたな……この手の手品には弱いようだな。紅音也」

イクサ「へ、へへ……面白い手品だな……! 女子に見せたら喜びそうだ……種を教えちゃくれないか……!」グラグラ…

エターナル「無理だな。俺も原理がよくわかっていない」ジャキッ…

イクサ「そりゃ残念、だ……!」ハハ…



イクサ(……今の技……やっぱり分身に近い……! 本体以外は実態を持たない幻影だが、確かに攻撃された事を考えると、幻影に紛れて本体がいる!)

イクサ(本体はいくつもの幻影と重なって、色んな角度から攻撃してきた……幻影を見せるのに加えて、高速移動もできるんだろう……!)

イクサ(……本体を見分けて倒す……のは無理だな。まったく判別がつかない……! 全ての残像を本体もろとも吹き飛ばすか……!?)

イクサ(いや、今こいつは残像で俺を囲って四方八方から攻撃してきた……イクサナックルで吹き飛ばすにも、あれじゃ全体には当たらねぇ……!)



エターナル「ルナメモリの使用可能時間はまだ少し残っている。少々味気ない決着の仕方だが、お前相手じゃ余裕ぶってもいられないしな。このまま押し切らせてもらおう」



ガギュウゥン!!



【ルナ!! マキシマムドライブ!!】



ザザザザ……!!



イクサ(どうする!? 万事休すか!? いやいや!! 女を守ると言って1人も倒せず脱落なんて、かっこ悪すぎて目も当てられねぇ!!)

イクサ(考えろ……! こいつは必ず、もう一度俺を囲ってボコるはずだ! 本体を探しあてるのは無理……全部を一片に吹っ飛ばすのが現実的!)

イクサ(何かあるだろ! 一度に攻撃を当てる方法! 自分の周囲に拡散する攻撃……!!)



エターナル(?)「これで」ザッ

エターナル(?)「終わりだ」ザザッ

エターナル(?)「それなりに楽しかったぞ」ザザザッ!




イクサ(!! そうだ!! やりたくはねぇが……これしかねぇ!!)ガシャッ!!




バシンッ!!




【イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ】




エターナル(?)「フン、またそれか」ユラ…

エターナル(?)「それで相殺する気か?」ザザザ…

エターナル(?)「全方位に対応できるとは」ユラ…

エターナル(?)「思えないがな……」ザザ…

エターナル(?)「勘頼りで当たるとでも?」

エターナル(?)「もし当たったら景品でもやろうか?」

イクサ「へっ、お前こそ……俺がどこに攻撃するか当てられたら……1億ドル分の価値の俺の演奏を聞かせてやるさ!!」

エターナル(?)「ハッ、減らず口を……」



エターナル「「「「……止めだァッ!!」」」」グワァッ!!




イクサ「俺が殴るのはぁッ!!」グルンッ!




エターナル(!? なんだ、この体勢……どこを狙っ――――)

エターナル「――――!! お前ッ!?」







イクサ「この地面だああぁーーーッ!!!」ギュオォ!!




バゴオオオオオオォォォォンッッ!!!!






エターナル「ぬおおああぁッ!!?」




ズドオォォン!!


ヒュン、ヒュンヒュン!!


ドガッ!!




エターナル「うがっ!? チィィ……!!」ジャキッ




ガギュン! ガキィン!




エターナル(砂塵で周りが見えない……!! 衝撃で飛んでくるコンクリートの塊も厄介だ……!!)ガキン! ギャリッ!

エターナル(邪魔をする物や相殺するエネルギーが無い環境で放つと、こうも強力な物か!!)




ガラガラガラッ!! ガシャアン……!






エターナル「…………! 気配が……」

エターナル(生意気な事を……気配を消してこの砂塵に紛れて襲うつもりか!)

エターナル(……チッ、今のは奴が選べた策の内でも、最も効果的なものだろうな……!)

エターナル(必殺の一撃を地面に放ち、全方位から来る俺の攻撃に対応し……尚且つ、それにより破壊され吹き飛んできた瓦礫で、俺の意識を自分から外させた!)

エターナル(頭の回転の速さもそうだが……何よりも、それを思いついた後、実行に移す豪胆な精神!!)

エターナル(こんな事をすれば、奴自信ただでは済まない……確実にダメージを受けたはず……! 普通の人間なら絶対にやろうなどと思わないことを、こいつは……!!)



…………シーーーン…………






エターナル(……メモリを使ってこの砂塵を晴らすか……いや駄目だ。こちらの位置を教えるようなものだ)

エターナル(相手が見えないのは奴も同じはずだ……自然に晴れるのを待って……こちらが先に見つけて倒す!!)






【アドベント】




エターナル「!?」




バサッバサッバサッ!!


ブランウイング『クァアーーー!!』



ブワアァーー……!!



エターナル「こいつは……!? 別の奴か……!!」



ファム「ハッ!!」



ジャキィン!!



エターナル「……フン!」ガキン!



ギギギギギ……!!





ファム「随分派手にやってるじゃん……! あたしも混ぜてよ!」

エターナル「……それも面白そうだが、今はこいつの相手をしている。邪魔をしないでもらいたいんだがな……!」ギャリィン!!

ファム「うわっ! っと……そう言わないでよ。あたしさっき振られちゃったばかりで寂しいのぉ! それとも女の子と遊ぶのは恥ずかしい?」キャピッ

エターナル「……! 奴はどこへ……!?」

ファム「聞いてよ!」

エターナル(砂塵は今ので吹っ飛んだが……どこにも居ないだと……!? いったいどこに隠れ――――!!)

エターナル「…………」



ファム「ねぇちょっと! 戦うの!? 戦わないの!?」

エタナール「…………」ジッ

ファム「……何地面見つめんのさ! こっちを見……」














地面のラクガキ[バーーーーカ!!!m9(^Д^)]





ファム「…………」

エターナル「……クク……成程な。最初から逃げる算段だったわけか……ククク、道理で俺が素人相手に気配が読めないわけだ……!」

エターナル「ここに居ない人間の気配を感じるわけも無い……!! 一杯食わされたな……! ハハハハハハ!!」

ファム「……えっと、大丈夫?」

エターナル「……紅音也……面白い……!! この仮りはすぐに返してやる……!!」ズンズン!

ファム「あ!? 待ってよちょっと!! あたしとは戦わないわけ!?」

エターナル「あの男を叩きのめすのが先だ……!!」スッ…



カチャッ!



【アクセル!! マキシマムドライブ!!】



エターナル「俺の後ろ側には来ていない……つまりここを真っ直ぐに行ったはず……アレが無意味に逃げ回るとも思えない。目的は他の連中の戦いに割り込む事か……!」



ギュギュギュギュ……!!



ファム「いや、ちょっと!?」

エターナル「ハァッ!!」



ギューーーンッ!!



ファム「は、速っ!? もう居ない……!? ……なんなんだぁ! どいつもこいつもーーッ!!」





今回はここまでです。

克己ちゃんのルナの効果はバトライドウォー創生のアレにちょっとした設定を加えた感じ。

この3VS3のライダーバトルは次で終わらしたいところですが……どうなるかな。


突然ですが、またしばらく更新遅れるかもしれません。
まさかの尿管結石で何もできない。処方された痛み止め効かないクッソ痛い死ぬ木野さん助けてください


こんばんわです。この間言った病気、正確には尿「路」結石でした。お腹がめっちゃ痛くなるアレです。
未だに油断してると痛みに襲われますが、ちゃんと効く痛み止め貰ったおかげでなんとか生きてます。
痛みが無い間に少しですが書いたので投稿しときます。



巧「……あいつはホントに……」

木場「音也さん、煙に紛れて逃げたみたいだね……」

チェイス「コンクリートの破片で何やら地面に書いていたようだが……」

巧「大道の様子を見るに、バカにするような事が書かれてたんだろ」

湊「……あんな方法で挑発する余裕があるなら、その時間でもっと違う事ができると思うのだけれど……」

戒斗「逆に言うと、その余計な事やふざけた事をしたがる性格でなかったら、もっと恐ろしい実力になっていただろうな」

木場「……乾君は、この勝負どっちのチームが勝つと思う?」

巧「そうだな……音也が意外にも強えーってのは分かるんだけど、それを差し引いてもエターナルの強さは半端じゃないしな」

巧「向こうが手札を出し尽くすまで音也が立ってられるかどうか……まぁでも、龍騎の真司さんとかいるし……どうなんだろな」

チェイス「地獄兄弟の2人が使う、あのクロックアップという能力……あれがどのタイミングで使われるかによっても変わってきそうだな」

湊「さっき別の画面に映ってたけれど、ここでは一度クロックアップを使うと、再発動までにインターバルが必要のようね」

木場「使える機会は限られるけど、使ってしまえばその瞬間、相手の敗北にもなりえるってとこですよね……俺が戦ったら勝てるかなぁ……」




パンチホッパー「ぜぇ、ぜぇ……!! く、くそぉ……!?」

パンチホッパー(あ、当たらない……!! ビックリするほどに避けられるし防がれるし、それどころか時々反撃してくるし……!!)

パンチホッパー(どうなってんだよ!? 俺はこれでも特殊部隊で本物の訓練を受けた男だぞ!?)フラフラ

龍騎「ハァ、ハァ……! つ、疲れた……! 腕が痺れちゃったよもう、あー痛……」ズキズキ

パンチホッパー(……落ち着け……落ち着け俺! 冷静になるんだ……今の俺が兄貴に見られてたら、きっとどやされるぞ!!)

パンチホッパー(クロックアップが使えなくなったのは……多分だけど、この世界で制限がかかってるんだ! 他の世界のライダーとの力関係を考えてだろうな……)

パンチホッパー(けどだとしても、一度試合で使うとそれ以降使えない……ってことは、可能性として無くはないけど、あまり考えられない!)

パンチホッパー(もし本当に一回限りの能力に設定されてるとしたら……認めたくはないんだけど……!)

パンチホッパー(クロックアップが無い俺達の世界のライダーじゃ、こいつみたいに色んな攻撃手段がある奴相手には分が悪すぎる! それこそバランスが悪くなる!)

パンチホッパー(となると、これはきっと、時間が経てば使えるようになる……って感じの調整になっているはずだ!)

パンチホッパー(最初に使ってどれくらい経ったかな……5分ってところか? もしかするともう使えるかもしれない……でもっ……!!)

龍騎「……なんだよ、もう来ないのかっ!?」

パンチホッパー「うっせー! ちょっと休憩タイムだ!」

パンチホッパー(使い所を間違って仕留めそこないでもしたら意味が無い! ここは無駄な体力を使わずに、今度は守りに徹する!!)

パンチッパー(そしてここぞと言う場面でクロックアップを使って、一気に叩きのめす!!)




龍騎「へっ、休憩なんてさせないっての!!」シュバッ!




ブゥン……ガシャッ!!




【アドベント】



キイィィン……!



ドラグレッダー『ギャオオォォン!!』




パンチホッパー「チッ、またその龍を操る気かッ……!!」

龍騎「いいや、今度は操る必要はないんだなー!」ダッ!

パンチホッパー(! 向かってきた! また接近戦を狙ってるのか……! 反撃は……いややめておこう! 今はとにかく防御と回避だ!)

龍騎「おりゃあ!!」バシィッ!!

パンチホッパー「くっ……!」

龍騎「だあぁっ!!」ギュオッ!!

パンチホッパー(右のグローブ!! これは絶対に回避する!!)バッ!!

龍騎「……!」ズザザッ!

パンチホッパー(そうだ、これでいい! クロックアップの使い所か、奴が隙を晒すのを待ってから攻撃するんだ!)

パンチホッパー「……!」



ドラグレッダー『ギャオオオォン!!』



パンチホッパー(この龍……出てきたはいいけど、俺達の頭上を飛び回って何を……?)

龍騎「まだまだぁ!!」ビュンッ!!

パンチホッパー「うおっ……!」ガガッ!

龍騎「そこだッ!」ズザアァッ!

パンチホッパー「うっ!?」

パンチホッパー(足を狙ってきたか……!! 後ろに飛んで避ける!!)バッ!!

龍騎「!」スカッ…!

パンチホッパー「良し……!」



パンチホッパー(距離を保つんだ! 近づきすぎず離れすぎず……! 一定の距離を保って、しばらくこのまま攻撃を受け流し……)


ドラグレッダー『ギャグルルオオオォッッ!!』



ドガァンッ!!!



パンチホッパー「げッハアァッ!?」

パンチホッパー(な、何が……!? く、苦しい……肺の空気が押し出されっ……!!)


ドシャッ!! ガガッ!! ズザアァー……!!



龍騎「うっひゃー、綺麗に入ったなぁ。どうだ! 結構効いただろ!」

ドラグレッダー『ギャグルルル……!』



パンチホッパー「……!! そ、その龍か……!!」

パンチホッパー(くそッ、油断してた!! いつの間に、俺の背後に……!! )ググ…

パンチホッパー(『操る必要はなない』って……つまり、この龍自体が勝手に戦ってくれるって事、なのか……!!)フラフラ

龍騎「さーて、それじゃ今の内に……止めを刺させてもらうぜ!!」シュバッ!

パンチホッパー(!? や、やばい!! こいつ何か大技を放つつもりだ!! ここから、動かないと……!!)フラフラ

パンチホッパー「うあっ……!?」グラッ…ベシャ!



ブゥン……ガシャッ!!



【ファイナルベント】




龍騎「はあああぁぁぁッ……!!」グオオォォ……!



パンチホッパー(だ、駄目だ……!! 今のダメージで、体に上手く力が入らない!?)ズル…



龍騎「ハッ!!」シュバァーッ!!

ドラグレッダー『ギャオオォォン……!!』



グルングルングルン……



パンチホッパー(くそぉッ……!! 俺が、こんな奴に負けるなんてぇ……!!)









サソード「ライダースラッシュッッ!!」



ガチャガシャンッ!!



【RIDER SLASH ! 】



龍騎「え……!?」

パンチホッパー「!!!」

サソード「ッハアアァァーッ!!」ギュオオォーッ!



ビチャビシャ……!


ドシュッ!! ズバッ!!



ドラグレッダー『ギャグオオ!!?』グラリ…!

龍騎「な、何だとぉ!?」

サソード「……やはり、その龍がいなければお前は技を使えないようだな!」

パンチホッパー「つ、剣ぃ!!」



龍騎「ドラグレッダーがやられた……ってことは……」



フワァ……ヒュルルルル……!



龍騎「あれれれれぇぇーー!?」ヒュルルル…



ドシャンッ!!



龍騎「痛だぁー!?」



サソード「すまないお兄ちゃん! 遅くなった!」ザッ!

パンチホッパー「な、ナイスタイミング……!! 助かったぁ……」

龍騎「う、ぐ、くっそー……! お前、弟の方かぁ!? まさかファイナルベントを放つ直前でドラグレッダーを攻撃されるなんて……!!」ズキズキ…

サソード「ここからは俺も加勢させてもらおう! そちらはそのドラゴンが居るのだから、2対1だなどとは言わないだろう?」

龍騎「むぅ……! ちょっとかっこ良さげな登場できたからっていい気になるなよ! 俺はまだまだ全力じゃないんだからなっ!」


ドラグレッダー『グルルルオオォッ……!!』


龍騎「それにほら! 今のでこいつも頭にキタみたいだぞー! 次はもっと凄い技をお見舞いしてやるから覚悟し……ろ……?」






ドラグレッダー『グルル……! グルァオォ……ッ……!!』

龍騎「お、おい……? ドラグレッダー!? どうした急に! 苦しんでるのか……!?」

サソード「俺が手にしているこの剣……サソードヤイバーと言ってな。簡単に言うと毒を纏った攻撃ができる代物だ!」

龍騎「ど、毒、だって!?」

サソード「斬撃によるダメージ自体は少ないだろうが……それによってできた傷から入った毒は、じわじわとその龍の体力を削る!!」

サソード「いずれは全く身動きが取れなくなるだろう!」

龍騎(マ、マジかよぉ……!! 毒攻撃なんて想定してなかったぞ……! 勝負が長引けば長引くほど不利になるって事じゃんか!?)

龍騎(もしこの毒でドラグレッダーがやられちゃったら、俺は契約モンスターを失って、初めて変身した時のあのめっちゃ弱い状態に……!!)

サソード「さぁ、立てるかお兄ちゃん!」

パンチホッパー「あ、あぁ……! しかし大手柄だぞ剣! これであの龍を使った厄介な連携攻撃は、もう半分封じたようなもんだ!!」

サソード「うむ! このまま畳みかけよう!!」ダッ

龍騎(うぅ……! ど、どうする!? カードはもうサバイブ以外使い切っちゃったし……かと言ってここで出すと後が辛いかもだし……)

龍騎(ここはドラグレッダーに頑張ってもらうしか……!!)ジリ…

龍騎「くっ! ドラグレッダー!! 影山の方を頼む!!」ダッ




ドラグレッダー『……グギャオオォンッ!!』グオォォ!!

パンチホッパー「良ーーし……じゃあこっちに来い!! 相手してやるぜ!!」ザザッ!




サソード「なら俺は本人の方だな……!! 行くぞ!!」

龍騎「ッ……!!」



龍騎(あの剣型の武器、常に毒を纏ってるのかどうかわからないけど、いずれにせよ触れるのはマズイ!!)

サソード「であぁ!!」ブンッ!!

龍騎(右手のストライクベントで防御を……!!)サッ!



ガギィッ!!



サソード「その手甲で防いだか……! しかし、それは悪手だったな!」

龍騎「!」

サソード「フッ……!!」ギャギリィ!!

龍騎「!?」

龍騎(刃がストライクベントに食い込んだ!? やばっ……!! 動かせない!!)ギチギチ…!





サソード「……ライダースラッシュ……!!」



ガチャガチャンッ!!


【RIDER SLASH ! 】



龍騎「なっ!? さっきの技……!?」

龍騎(腕まで斬られるッ!! 駄目だ、ドラグクローは手放すしかない!!)パッ!

サソード「はぁぁっ!!」ググッ!




ズバアァッ!! バギャァーンッ……!!




龍騎「うおぉっ!!」ゴロゴロ…!

サソード「……とっさに武器を手放して回避するとは、大した反射神経だ……! だがこれで、お前は1つ手札を失った!」ジャキッ!

龍騎「はは……綺麗に真っ二つだ……やられたなこりゃ……!」ザッ





龍騎(まずいぞ……! あいつの毒剣は一度でも喰らうわけにはいかない……!)

龍騎(でもこっちは丸腰……ドラグレッダーは影山の相手で手一杯だし、もう毒を受けてる! 援護は望めない……)

龍騎(どこかに置きっぱなしになってるソードベントを回収できれば、リーチ差の問題とかも解決できるのに……!!)

サソード「今度は逃がさない……! おおぉぉ!!」ダダッ!

龍騎「くぅ……!?」






……ヒュン、ヒュン、ヒュン……!





サソード「……!? 何だ……?」ピタッ

龍騎「……?」

サソード(……音が……右から、風を切って飛んでくるような音が……!)サッ





ヒュン、ヒュン、ヒュンビュンビュンブンブンッ!!




サソード「ッ!!! 刀……!?」

サソード(刀が、俺に向かって一直線に飛んでくる!!)ジャキッ

サソード「フンッ!!」ガキィン!!



ガンッ! ガキュンッ……ジャララ……!



龍騎「あぁっ!? お、俺のソードベンドだ!!」ダッ!

サソード「!? 何ぃ!?」グルッ

龍騎「っしゃあっ!! 取ったぁ!!」ガシィ!

サソード「くっ……!? 一体誰が……!!」






イクサ「俺様!! 神様!! 音也様だよおおぉぉんんッ!!!」バアァーーン!!




龍騎「お、音也かぁ!!」

サソード「そんな……!? 大道と戦っていたはずなのに……まさかもう既に倒したのか!?」

龍騎「え!? マジ!? 勝ったのか音也!?」

イクサ「いんや!! 面倒くさくなったから、おちょくって逃げて来た!! アハハハハハ!!」

龍騎「逃げたんかい!?」

イクサ「それより真司ぃ! 俺がわざわざお前の獲物を持ってきてやった事に対して! 何か言う事ないのかぁ~ん!?」ビシッ!

龍騎「あ、あぁ! 助かったよ! 今まさにこれが欲しいって思ってたところなんだ! ありがとう!」

サソード「……これは、またこちらが不利になった……という事か……!」

イクサ「そのと~~りっ!! 覚悟しろいこの蠍ちゃんがぁ!!」

龍騎「いつになくテンション高いな音也……」

イクサ「なぁ~に大丈夫! だいじょうぶぇ! 全然だよこんなの!! まだまだイケるよ俺はッ!! ヒック!」

龍騎「? そ、そうか? じゃあ頼りにさせて……ヒック?」

イクサ「しかしまぁ、あれだな! それがお前の変身する、りゅうきだっけ~?」フラリ…

龍騎「え? あぁそっか、音也は初めて見るんだもんな。どーよ、結構カッコいいだろ!」ドヤッ

イクサ「おう! ストーブみてぇな顔で面白いぞ~~!! ハハハハ!!」ゲラゲラ

龍騎「ストーブ!? 初めて言われたんですけどそんなこと!?」

サソード「……この男はいつもこんな風なのか?」

龍騎「いや、確かにいつもお調子者的な奴だけど、ここまでじゃ……音也? お前大丈夫か……?」




イクサ「うるせぇ!! 大丈夫だっつってんだろー!? まだ全然……酔ってましぇーん!! 俺まだ飲めますもんねっ!! ドンペリ持って来ーい!!」ゲラゲラ

龍騎「…………!! お前、まさか酔っぱらってるのか!?」

サソード「な、何?」

イクサ「酔ってねぇってば!! うぃっ……えーい……」フラフラ…

サソード「……これは……」

龍騎「皆で話してる時、1人だけビール飲んでたから……! その上でこんな激しい戦いしてたら、そりゃ酔いも回るよ!! お前そんなんで戦えるのかよぉ!?」

イクサ「だいろーぶ……って、言ってるでしょッ!! 音也さんわぁ……まだイケますよ~!!」グデングデン…

龍騎「……勝負の話だよな!? 飲める飲めないの話じゃないからな!?」

サソード「……成程、俺はまだそこまでピンチでもないらしい……!」ジャキッ

龍騎「!? まさか今の音也と戦う気か!?」

サソード「潰せる者から潰すのが集団戦での鉄則! 酒を帯びた状態でわざわざ戦いの場にやって来たこいつが悪いッ!」ダダッ!

龍騎「い、言い返せない……!!」

龍騎(とはいえ仲間をみすみす倒させるわけにはいかないぞ! 幸い音也が持ってきてくれたコイツがある!)ダッ!



龍騎「待てー! 思い通りにはさせないぞぉ!」ブンブンッ!

サソード「もう遅い!!」ジャキッ!

龍騎(剣を逆手に持ち替えた……!?)

サソード(この距離ではこの白いライダーを切り付けるにはまだ遠い……だが!!)グッ…!

龍騎「!!」

サソード「投げつければ十分に届く!! さっきのお返しだ!!」バビュンッ!!




ビュオオォーーッ!!




龍騎(やばい!? 今の音也は完全に頭にアルコールが回ってる! こんな状態で頭にあんな物当てられたら気絶してもおかしくない!!)

龍騎「音也ぁ!!」







イクサ「ん……」



ガシィッ!!



サソード「!? なぁ……!?」

龍騎「へ……?」




イクサ「……ぬふ。ぬふふふ……!」フラ…

サソード「ば、バカ、な……!? 俺が全力で投げつけたサソードヤイバーを……!!」

龍騎「頭を傾けて、片手でつかみ取ったぁーー!? しかもちゃんと柄の部分を!! これなら毒には触れない!!」

イクサ「……おう。おうおうおう……! コノヤロー……やんのかぁ? やるかーお~ん? ヒック……うひひ!」

サソード(しまった……!! 顔面に食らわせた瞬間に飛び込んで、そのまま回収して切り付けようと考えていたのに……)

サソード(受け止めるなんて!? 俺の唯一の武器が取られてしまった!!)




イクサ「ふひひはははぁぁーーー!!! やったるぞおおーーッ!!!」ドダダダ!!

サソード「ぐう!?」

イクサ「デヤァー!!」ビュオ!!



ヒュンヒュンヒュン!! スパパパパッ!!



サソード「う!? おぅッ!?」スカッ!

イクサ「えひぃ!!」グルンッ!



ザシュッ!!



サソード「ぬあぁ!?」ズザザ…!

イクサ「おかわりぃ!!」ドヒュン!

龍騎「飛んだ!?」

サソード(ジャンプ斬りか!! 今からじゃかわせない……! 腕を上で交差させて防御するしか……!!)ガッ!

イクサ「なんちゃってぇーへへへ!!」スカッ!

サソード「!?」

イクサ「ほれぃ!!」ゴォッ!



ドガァッ!!



サソード「ぐあッ!?」

イクサ「お疲れさーんっ!!」



ドゴンッッ!!



サソード「ぐっはぁぁあ!?」



ガガッ!! ジャリジャリ……ズザザァ……!!



龍騎「き、斬ると見せかけて、がら空きになった胴体に膝蹴りとヤクザキック……!?」

サソード「う、お……ごほっ……!!」

イクサ「ヘイヘイ! カマーン!! ういぃ、ヒック……!」

サソード(こ、こいつ何者だ!? 酔いが回っている人間の動きじゃないぞ!?)

イクサ「ふひひひひ!! アイムナンバーワーーン!!」シュタッ!




龍騎「……なんだかわかんないけど……凄いぞ音也!! よーし俺もー!!」

サソード「!!」

サソード(こ、これは……追い込まれている!! この訳のわからないライダーに加えて、元より強いであろう龍騎にまで攻撃されては、武器を失った俺では持たない!!)

サソード「お兄ちゃん!! 助太刀してくれ!! その龍は放っていてもその内倒れる!! それよりもこっちに援護を!!」




………………。




サソード「……!? お兄ちゃん!? お兄ちゃん!! どこだ!? 居ないのか!?」

龍騎「お前の兄貴は今居ないよ! 今頃このタワーのてっぺんだ!!」

サソード「なんだと!? ど、どういう……」

イクサ「うしゃしゃしゃしゃーー!!」グワァッ!

サソード「う、うわあああぁ!!」





◇ほんの少し前の影山視点◇




パンチホッパー「さぁて……ここまで引き離せば十分だな! これでお前はもう、ご主人様をサポートできないってわけだ……!」

ドラグレッダー『ギャグルル……!!』フシュー!

パンチホッパー「毒が回り始めたその体でどこまで持つかなぁ!?」

ドラグレッダー『……グルルオォ……!!』グオォォ…!

パンチホッパー「! 上に逃げようったってそうはいかないぞ!! ライダージャンプ!!」


ガチャンッ!



【RIDER JUMP ! 】



ピキュオン……ピキュオン……ピキュオン……!




パンチホッパー「ハァッ!!」ドビュンッ!!



ギュオーーーッ!!



ドラグレッダー『グルルオォ……!!』



パンチホッパー「ここだぁ!! 横っ面にぶちかます!! ライダーパ……」

ドラグレッダー『ギャオオォンッッ!!』ズイィ!

パンチホッパー「!?」

ドラグレッダー『グギャワァァ……!!』





ガパァ……!! ガブウゥッ!!




パンチホッパー「あがぁっ!? ぐ、が……!! こ、こいつ!?」

パンチホッパー(ゼクターを操作しようとした寸前に、俺の胴体に噛みつきやがったぁ!!)





ドラグレッダー『グルルルゥゥッ……!!』ミシミシッ!

パンチホッパー「ぐごぁぁ……!! 痛、だぁぁ……!? こ、この、離せッ!! 離せってぇぇ!!」ギリリ…!




バシッ!! バキッ!! ガッ!! ゴガッ!!




ドラグレッダー『グウゥゥ……!!』ガチガチッ!

パンチホッパー「げふっ……!? この、蛇モドキ野郎……絶対離さないつもりか……!!」

パンチホッパー(ゼクターに触ることができれば、すぐにもライダーパンチが打てるのに……!! ベルト部分までしっかりこいつの口の中だから、手が届かない!!)



グオオオオォォォォーー……!!



パンチホッパー(く、くそ! どこまで飛んでいく気だ!? まさか空高くから落っことそうってんじゃないだろうな!?)

ドラグレッダー『ギャグォオォ!!』



パカァ……!


パンチホッパー「!! や、やっぱり落とすつもりだったのか!! うわああぁーー!?」ヒュルルルル…!



ガシャアン……!


パンチホッパー「うがっ! あ、あれ? 地面じゃない……? ここは……」






…………ヒュオオォ……!


ぐるん……ぐるん……




パンチホッパー「……!! ここって、最初の開始地点から見えた、あのでかいタワーの風車の上か!?」

ドラグレッダー『……グルルル……!』




パンチホッパー「……ここで決着つけようってのいうか? 機械じみたモンスターの割に粋な事考えるじゃないか……!」シュッシュッ!

ドラグレッダー『……ギャオオォ……!』クルリッ

パンチホッパー「……あ、あれ!? おい! 何だよ! 戦わないのかよ!?」

ドラグレダー『……ギャオオォン……』グングン…

パンチホッパー「……行っちまった……何だよ!? 何しにこんな所まで俺を……連れてき、て……」

パンチホッパー「………………」







ヒュウウゥゥ…………







パンチホッパー「…………おい、これ……」

パンチホッパー(どうやって降りるんだ!?)

パンチホッパー「この高さから落ちたら、ただじゃ済まない……いくら変身しているからといって飛び降りるのは無理だぞ!?」

パンチホッパー(あの龍……!! 最初から俺とまともに戦う気なんて無かったのか!? 俺をここに置き去りにして、戦闘に参加できなくするために!!)

パンチホッパー「…………どうしよう……!?」




サソード「う、うわあああぁ!!」

龍騎「まずは1人目ぇーー!!」

イクサ「うしゃああーー!!」





【トリガー!! マキシマムドライブ!!】




イクサ「!」

龍騎・サソード「「!?」」




ドンドンドンッ!! ドガガガガガガッ!!




イクサ「あだだだっ!?」

龍騎「ぐあっ!! じゅ、銃撃……!?」

サソード「……今のは……!」



エターナル「……トリガーメモリ……期待通りの性能だな」

龍騎「あいつは、大道……! 音也を追いかけて来たのか!!」

サソード「た、助かった大道……! 危うく最初の脱落者になるところだった!」

エターナル「……龍騎はお前が倒せ。イクサは……紅音也は俺がやる……!!」ジャキィッ!

龍騎「……なんか……えらくご立腹の様子だけど……お前何やったんだ?」

イクサ「んーひひひ……あのなー。地面になー……バーカって、書いた!! おしまい!!」ヘラヘラヘラ

龍騎「あー、なるほど……シンプルに人をコケにした言葉だなぁ……」

イクサ「ウンコマークとか書きたかったけどなー、時間が、無かったから~……我慢した!! 偉いだろ褒めろ!!」エヘン

龍騎「どこにも褒められる要素が無いよ!!」




サソード「……大道、先に言っておく。この紅音也という男……ただものじゃないぞ!」

エターナル「あぁ、知っているさ……!」ジリ…

サソード「酒で完全に酔っているのに、動きが俊敏で予測できないんだ! 気を付けろ!」

エターナル「だから知っていると……酒だと?」





バサッバサッ……!


ブランウイング『クァアーーー!!』


ファム「こらああーー!! あんた達ーー!!」




エターナル「!」

サソード「!! キリ・シーマ!!」

龍騎「あ、本当だ……! こっちも味方が増えたぞ!」

イクサ「うひゃあーー!! マイエンジェル、キリ・シーマぁぁぁ!!」

ファム「あんたまでその変な呼び方すんな!! ってそうじゃなくて……そこの2人!! あんた達いい加減にしなさいよ!! あたしと戦え!!」

サソード「2人? ……大道、彼女とは……」

エターナル「勝負しろと言われたが無視した。俺はそれより先にこの男を倒す……!!」

ファム「こんの……!? まだ言うかー!!」バッ!



ブランウイング『クゥアーー……!!』


バサバサバサッ!!


ビュオオオォ……!!



サソード「! 風を起こしているのか……!?」

エターナル「…………!!」バサバサッ



ファム「あたしが無視していて平気な相手じゃないってこと……!!」シュバッ!



ブゥン……



ファム「教えてあげるよ!!」



ガシャッ!!



【ファイナルベント】





龍騎「ファ、ファイナルベント……!!」

ファム「真司!! そいつと一緒に離れてて!!」

龍騎「お、おう! わかった!! ほら音也、行くぞ!」ズルズル

イクサ「んおおぉ……?」



ブランウイング『クァアアーーー!!』バサバサッ!


サソード「! 旋回して来る……!」



バサバサバサッ! ギュウオォ……!!


サソード「!? 速い……!! もう背後に!?」

エターナル「……!」



ドバサァッ!!



エターナル「うぅ……!?」ブワァ!

サソード「うおあ!? こ、これはッ!! 吹き飛ばされ……!!」ビュゴオォ!!



龍騎「おおぉ!? 2人とも吹っ飛んだぞ!!」




ファム「……フーー……」スーッ…!




サソード(!! 飛ばされる方向に彼女が!? くっ、駄目だ! 空中で風に流され続けている!! 身動きが取れない!?)ビュウウゥゥ…!

エターナル(視界が、廻る……!! まともに周囲が見えない!!)グルグルグル…!

エターナル(だが、あの女さっき、確かに長物を手にしていた……あれで流される俺達を一刀両断するつもりだ!!)



ファム「はああぁーー……!!」ヒュンヒュンヒュン…!!


龍騎「いけーー!!」





エターナル(……一か八か……やるしかない……!)グッ…

エターナル(視界の隅で神代が見えた瞬間だ……!!)

サソード「うおおぉーー……!!」グルグル…

エターナル(今だ!! 俺の左斜め後ろ!! 角度的に狙うは……ここだッ!!)




エターナル「らあぁッ!!」


ドギャッ!!


サソード「ぐあぁっ!!」ドシャァーッ!



ファム「!? チッ……!! やああぁーーーっ!!!」 ギュンッ!



ズッパァッ!!



エターナル「うっぐうぅ……ッ!!」ギュルルル…!!



ドッガアアァンッ……!!



エターナル「がふ……!!」ズル…




龍騎「おー!! や、やったか!?」

ファム「ううん……駄目だと思う! 決めてになるには浅かった……!」

ファム(まさか一緒に飛ばされた仲間を蹴り飛ばして逃がすなんて……それに、蹴りの反動で自分の位置も少しずらして、致命傷を避けた……!!)



サソード「う、うぅ……! ……ハッ! 大道!?」

エターナル「…………なるほど確かに、悪くない一撃、だったな……!」

ファム「どう? 少しは気が引けたかしらん?」

エターナル「……俺としては紅音也を倒したい。が、それもお前ら2人に邪魔されてちゃどうしようもないな……」

エターナル「……おい神代、影山はどこだ」

サソード「そ、それがどうも、なぜかこのタワーの頂上に居ると、先ほど城戸真司が……」

エターナル「…………成程。話に聞いていたドラゴンが居ないのを見るに、そいつに連れてかれて置き去りにされたか」

龍騎「へっへー! その通り! つまりお前らは今、2人で俺達3人を相手にしないとならないってことさっ!」

サソード「ぐ、ぬぅ~……! 大道は今のでそれなりにダメージを受けたし、これは、絶体絶命というやつでは……!?」

エターナル「…………そうだな。このままここで戦ったら、勝機は薄いかもしれん……」

ファム「ふーん? 負けを認めるってわけ? まぁ別にそれでもいいけどねー」

エターナル「違うな……負けを認めるわけじゃない。勝ちは狙うし、紅も倒すさ……」

龍騎「何だとぉ~~?」

イクサ「ふあぁ~……なーんか眠いな~……」

ファム「まだ何か策があるってわけ? 言っとくけど、あんたがこっちへ向かって来ても、あたしのブランウイングが吹き飛ばすだけだよ……!」

エターナル「向かう、か。それも違うな……!」

サソード「! 大道、お前……!」

龍騎「……?」




エターナル「……行くぞ神代。3つ数えて同時にだ」グッ

サソード「……確かに……今はそれしか無いな……!」グッ

ファム「! 来て、ブランウイング!!」


ブランウイング『……クァウーー……!』



エターナル「行くぞ。1……」

サソード「…………!」

ファム「何をするつもりか知らないけど……来るなら来い……!」

エターナル「2……」

龍騎「っ……!」ゴクリ…




エターナル・サソード「「3ッ!!」」クルッ!



龍騎・ファム「「!!?」」

イクサ「……んにゃ?」



ダダダダダダーーッ!



龍騎「に、逃げたぁー!?」

ファム「策って……逃げるって事!? 何だそりゃあ!!」

龍騎「追いかけよう! ……おい音也しっかりしろ!! 寝るな!!」

イクサ「ぬあおおぅ!! 寝てねーよ!! 寝てないですっ! ……代金? らいろーぶだ! 俺の演奏は3億の価値が……」ムニャムニャ

龍騎「夢の中で飲み代踏み倒そうとするな!?」

龍騎「……って、待てよ!? あいつらが向かってるのは……!!」





サソード「フンッ!! であッ!!」ズバズバッ!!

エターナル「はあぁ!!」ドガシャアァン!!





ファム「扉を壊して、タワーの中に!?」

龍騎「……何を狙ってんだ!?」



イクサ「ヒック……うぃー……」

ファム「何にしろ行くしかないよ……! ちょっと、あんた! さっきから何でそんなフラフラしてんの!?」

龍騎「こいつビール飲んでたから酔ってるんだよ! どうする!? 置いてくか!?」

ファム「はぁ!? もーこいつは……!! ……ちょっと待って!考えがある!」

龍騎「考え!?」

ファム「オホン……」






ファム「音也さぁ~ん! あたしぃ怖ーい男3人組に乱暴されそうなのぉ! 助けて! お願ぁいっ!」ダキッ

イクサ「誰だその腐れカス共はッ!!! どこにいやがるッッ!!!」カッ!!

ファム「このタワーの中の何処かに居るの! 守ってくれる……?」

イクサ「この命に代えても……君を守って見せると誓おう!! うおおおぉぉ!!!」ドダダダッ!!

龍騎「……えぇ……」

ファム「さぁ、行くよ!」ダッ!

龍騎「あ、うん……」











ヒュウゥゥーーー…………




パンチホッパー「………………」←体育座り

パンチホッパー「…………寒いな、ここ……」ポツーン…




ここまでです。結局決着ついてねーじゃねーかっていうね。
次回こそ……次回こそ終わらせるんで……!


うおおぉ思ってたよりギリギリだった……危ねぇ。そしてここまで報告も無しに放置して申し訳ない……

年明けから新しい仕事探してたんでSSはずっと手付かずでして、先日やっとこさ就職先がほぼ決まって、こっちに来る余裕ができました。
現在勘を取り戻しながら執筆してますので、もう1、2週間ほどお待ちいただきたい。

こんばんわ>>1です。そろそろ二週間経ちますが、休日に風邪ひいて寝込んでたおかげであんまり進んでません……
仕事で時間が取れない事もあって重加速執筆なんですが、今書いてある分だけでも今日投下しときます。
前回、次でバトル終わらすと言いましたが……無理でしたごめんなさい……自分としても早く話を進めたいんですが。
つい長々しくなってしまう……難しい。




ザンキ「どいつもこいつも、なかなか派手にやりますねぇ」

荘吉「……そうだな」

木野「いやはや、流石に若いだけあって、皆無茶をする……うらやましい話だ」

ザンキ「はは、何をおっしゃる。木野さんだってまだまだ十分イケるでしょう?」

木野「いやいや、あそこまで飛んで跳ねてっていうのは正直厳しそうだ。ここで生活するには、我々もこのバトルを繰り返さないといけないようだが……」

ザンキ「俺は少し楽しみですけどねぇ。ここは鍛えがいのありそうな連中が、わんさかいますから」フッ

木野「フフ、成程……とはいえ、実際にやる時はほどほどにな。あまり年下相手に全力を出し過ぎるのも大人げないだろう」

ザンキ「……全力を出して優位に立ちすぎるなら、考えますがね……」

荘吉「……全力でなければ、負けるかもしれないと?」

ザンキ「……はっきり言って、彼らの戦闘力は異常だ。元々のライダーのスペックもそうだが、まともな訓練を受けたわけでもないただの一般人だった青年達が、たかが一年やそこらで、この動きだ」

ザンキ「俺だって、そう簡単に負けてやるつもりはありませんよ。しかし、何年も鬼として訓練を重ねてきた俺と比べても、彼らの戦いにおいてのセンスは劣ってない」

ザンキ「何をどうしたら、見習いジャーナリストや音楽家がこんな風に強くなれるのか……不思議ですよ」

木野「……確かにな。これだけ強大な力を持っていながらも、決してその力に溺れることなく、正しい事のためにのみ、その力を使える……」

木野「もし生きていれば、きっと誰もが認める、本当に強い人間として名を残していたろうに……」

荘吉「……力に溺れない強さを持っていたからこそ……かもしれんがな。ここに居るのは……」

ザンキ「……せめてここでは、存分に良い時を過ごして欲しいですね」

木野「あぁ」

荘吉(…………無いとは思うが、お前がこっちに来るような事があったら、俺は許さんぞ。翔太郎)







イクサ「ぬうおおおおぉぉーーっ!! どこだあぁぁ!! 出てきやがれーーッ!!」ドダダダーッ!

龍騎「おい音也! 勝手に先に進むなってばー!」

ファム「さて……あいつらの姿は見えない……か。真司、あんたはどう思う? 別れて探すか、一緒に行動するか」

龍騎「うーん、別れて探した方が効率はいいと思うけど……1人になったところを不意打されても困るしなぁ……」

ファム「何、やられる可能性考えてんの? ダメダメ! 男なら勝つイメージだけしてなっ!」

龍騎「そ、そうは言ってもなぁ……霧島さんを1人にするわけにはいかないよ。女の子なんだし……」

ファム「あんたまであたしを女扱いか!! ……まぁ、悪い気はしないけど……」

龍騎「音也も音也で放っておくのは怖いしな~……んん~~……あっ!」

龍騎「じゃあこうしよう! 俺は多分1人でも多少は何とかなると思うから、霧島さんは音也と行動してよ!」

ファム「……はぁ!?」

龍騎「そうすれば戦力的に、バランスとれてると思うんだ。うん、これがいいよ! 霧島さんが酔った音也をフォローして動けば、割と戦えるでしょ!」

ファム「ちょ、ちょっと待て! 何であたしがあのアホと……!!」

龍騎「霧島さんがピンチになれば、音也なら無条件で助けてくれるはずだから。あんな調子だけど、あいつまだ戦えるみたいだし」

ファム「いやいやいや!! せ、せめてそこはあたしと真司で……!!」

龍騎「それじゃ音也がやられちゃうかもだろ? この振り分けが一番なんだって! じゃ、俺この階から探すから、そっちは上の方探索頼むよ!」ダッ

ファム「え!? ちょっと!?」

龍騎「音也ーー! 上の探索はお前と霧島さんに任せたからなーー! 守ってやれよー!」

イクサ「勿論だッ!! さぁ行こう俺の天使よ!!」ズダダン!!

ファム「な、上から……!? ちょ、やめ、離し……!?」

イクサ「安心するといい……誰であろうと、君には指一本、この俺が触れさせないぞおぉぉーー!!」ダダダダー!

ファム「ま、待ちなってば!! わかったから!! あんたと行くからおろせーー!?」

龍騎「頼んだぞ2人ともー!」タタタ…!





◇風都タワー頂上◇



パンチホッパー「……天気いいなー。でもこれがただの仮想空間だってんだから凄いよなぁ……」ゴロゴロ

パンチホッパー「別に天気良くても嬉しくないけど。むしろ嫌いだけど太陽。ったくあのドラゴンめ……どうせ置き去りにするならもっとジメジメした路地裏とかにしろよな……」

パンチホッパー「…………退屈だな……このまま何もできずに試合終了になんのかな……」

パンチホッパー「……自分から売った喧嘩なのに情けないな……」

パンチホッパー「…………」

パンチホッパー「……今誰か俺を笑ったか? 笑えよ……」

パンチホッパー「……なーんて。兄貴の真似ー」

パンチホッパー「…………寂しいよう兄貴ぃ……」




ガダンッ!!




パンチホッパー「!!」

エターナル「退屈なら暴れて来い。このまま負けたら本当に情けないぞ影山」

パンチホッパー「だ、大道!! どうやってここに!?」

エターナル「下からタワー内部に入って上って来ただけだ。アクセルメモリで移動スピードを上げてだがな」

パンチホッパー「上って来た!? 階段とか使ってか!? それにしても早すぎる気が……」

エターナル「忘れたか? 俺は一度この風都でテロを起こして、正にこの風都タワーを占拠した事があるんだぞ。内部の構造は全部頭に入ってる。最短ルートで駆け上がって来たんだよ」

パンチホッパー「な、成程……」

エターナル「だがおかげでアクセルメモリの使用可能時間が尽きた……もうこの勝負で使う機会は無いだろう」

エターナル「……ぼさっとするな。今頃奴らが俺達を探している。さっさと行って迎え撃つぞ……!」

パンチホッパー「お、おう! ん? そういえば剣はどうした?」

エターナル「アクセルの移動速度にはついて来れないからな。代わりに奴らを誰でもいいから足止めしろと伝えた」

パンチホッパー「おいおい、大丈夫か? もしあいつ1人とあの3人で戦う事になったら、間違いなく剣が……」

エターナル「それも恐らく問題ない。龍騎1人以外に合ったら逃げに徹してまともに戦うなと言ってある」

パンチホッパー「龍騎以外……? 龍騎とだけは戦えって事か? 何でまた……」

エターナル「話は走りながらする。それとお前の能力制限についてもな」





◇風都タワー・第一展望室◇




龍騎「……見つけたぞぉ……!! さっきはよくもドラグレッダーをやってくれたな! 覚悟しろー!?」グッ

サソード「! 龍騎か……いいだろう、受けて立つ! お前を倒して大道達と合流させてもらう!」

龍騎「へん! 武器が無くなったままのお前と、武器を取り戻した俺とじゃ、ちょっと厳しいんじゃないのー!」ダッ!

サソード「……さあ、どうかな……!」

龍騎「うおぉーー!!」ダダダッ!

サソード「……!!」ジリッ…

龍騎「でやあッ!!」ブンッ!

サソード「くっ……!」ヒュンッ!

龍騎「まだまだぁ!」ビュン!

サソード「なんのっ……!」ダンッ!

龍騎「むっ……良くかわすな! じゃあこういうのはどうだ!」ジャキッ!



ヒュンヒュンヒュンビュンビュンッ!!



サソード「ぬぅ! ハッ、フッ! くぅ、うおぉ!?」ヒュン、ヒュン、シュバッ!

サソード(これはいかんなっ、避けきれない……!)

龍騎「!! そこだ!!」 ギュン!!

サソード「!!」



ギャリィッ!! バチバチッ!!



サソード「うぐっ……!!」

龍騎「しゃあっ!! どんどん行くぜー!!」

サソード(……見極めるんだ……チャンスを……!!)





◇――数分前――◇




サソード「ハァ、ハァ……身を隠したはいいが、これからどうする大道!?」

エターナル「俺はタワーの頂上に行って影山を連れ戻す。あの3人全員に勝つには、俺の力だけでは難しい」

エターナル「だがお前達2人の力、正確に言えば、お前達が持つクロックアップの能力があれば、十分活路はある」

サソード「……それなんだが、一度発動してから、どうやら二度めが使えないようなんだ。エラー音的な物が鳴って弾かれる……!」

エターナル「……やっぱり自分の能力の変更部分を確認してなかったようだな……」

サソード「! やはり、何か制限がかけられていたのか!」



エターナル「俺達はここに来た時点で、それぞれのライダーの能力の差が開きすぎないように、程度の違いはあるが、様々な部分で固有能力を調整されている」

エターナル「元々の状態から強化されている物も有れば、弱体化してる物もある」

エターナル「お前のクロックアップで言えば、効果を維持できるのは最長で30秒。尚且つ一度発動した場合は以降最低でも1分は発動不能だ」

サソード「1分? それなもうとっくに使えるじゃないか! 30秒分も使えれば十分だ! 反撃に行こう!」

エターナル「慌てるな。『最長で』30秒、『最低でも』1分だ。これらの数字はクロックアップを使用してから効果が解除されるまで、攻撃的な行動を取らなかった場合のものだ」

サソード「攻撃的な行動……? ッ! ひょっとして、その最中に攻撃をした場合、更にペナルティが!?」

エターナル「発動中に攻撃を行う度に、その威力の強弱によって維持できる時間が元々の30秒という時間から引かれる。大技を使おうとすれば、それだけ大きく残り時間を消費するって事だ」

エターナル「ルールブックには、必殺級の技を使った場合、20秒分消費するとあった」

サソード「20秒!? 10秒の間に決めろという事か……!!」

エターナル「そして、攻撃時に消費した秒数と同じ時間だけ、再発動にかかる元々のインターバルの1分に加算される」

サソード「!! ライダースラッシュを使えば、1分20秒のインターバルを必要とする……そういう事か……!」

エターナル「細かい攻撃も行っていれば、30秒分全部が加算されることもあるだろうな」

エターナル「更に、残り時間が攻撃時に消費する時間を下回っていた場合、クロックアップは強制的に解除される」

エターナル「欲張って大ダメージを与えようとしてクロックアップが解けて隙を晒す……なんて事が無いように気を付けろ」

エターナル「それと、それら全ての時間が経過してたからと言ってすぐに使おうとするな。意味が無い」

サソード「……どういう事だ?」

エターナル「仮に1分30秒分経過した後、クロックアップの持続時間は即30秒に戻る訳じゃない。そこから更に経過した秒数分、持続時間が回復する仕組みだ」

サソード「! 早くに使ってしまっても、数秒しか維持できない、か……では、万全の状態で使いたい場合は、最大で実質2分待たねばならないわけか……!」

エターナル「そういう事だ。さて……お前達のクロックアップについての説明はこれで十分だろう。問題はここからだ……!」

サソード「!」




エターナル「奴らに勝つには、この制限されたクロックアップを、お前達が限界まで理解し、付け焼き刃なりに使いこなす事が最も重要だ」

エターナル「この戦いはチーム戦……幾ら俺でも、本来の実力を出せないお荷物2人が味方に居たところで勝てるとは思えん」

サソード「うぐっ……」

エターナル「今教えた事を絶対に忘れるなよ。今回初めてその変更されたシステムで戦うお前達に、新しい仕様に完璧に慣れて上手く立ち回れなどと言うつもりは無い」

エターナル「だからこそ、ここぞと言う場面以外では絶対に使うな……!! 確実に仕留めきれると思った瞬間に使え!」

サソード「……!! しかし、俺は自分の武器すら手元に無い状態だ……! こんな様でどうやって……!?」

エターナル「だからクロックアップなんだ……!! 下手に回避や微弱なダメージ狙いで使っても、後の1分2分の間、奴らの攻撃を捌ける筈がない。そこでだ、お前は龍騎を潰しに行け!」

サソード「!? 龍騎を……? 何故龍騎なんだ!?」

エターナル「敵チーム3人の中で、一番読めない戦い方をするのがイクサなら、龍騎は一番分かり易く、一番強力な切り込み隊長だ……!」

エターナル「使う技の一つ一つが絶大な威力を誇るが、その戦い方はプロの傭兵の俺からすればまだまだ甘い部分が見える!」

エターナル「どんなに修羅場を潜りぬけて来たと言っても、体と記憶に染みついた素人上がりの人間特有の、戦いの『クセ』がある……!!」

サソード「! クセ……!」

エターナル「その隙を確実に突く事ができれば、お前にも龍騎を倒すことは十分可能だろう……! そして龍騎を倒すことができれば、一気に俺達の勝利へと近づく!」











…………………………






龍騎「うりゃああ!! 守ってばっかじゃ勝てないぞー!!」ギュンッ!

サソード「くぅ……!!」ガギィッ!

サソード(……大道の言う、城戸真司の戦いのクセ……段々わかってきたぞ……!!)

龍騎「おおおぉぉ!!」グオオォ!

サソード(攻撃の一撃一撃が、確かに重いし痛い……だが! その攻撃が上手く決まりすぎると……!!)フラッ…

龍騎「だああぁぁ!!」ドカァッ!!

サソード「うわああぁぁーー!!」ドガンッ! ガラガラッ! ガシャアァン!

龍騎「っしゃああっ!! 決まったー!!」グッ!

サソード(……すぐに調子に乗りだす!!)

龍騎「そんじゃあそろそろ決めちゃうぜーー!!」ダダダッ!

サソード「……う、ぐぐぐ……」

サソード(やはり、俺が立てないフリをしているのが分かっていない!)

サソード(そしてこのこいつは……敵が弱って動けないところに、止めの一撃を喰らわそうとして……!!)

龍騎「ハァッ!!」ダンッ!!




ビュンッ……!!



サソード(大げさな動きをしたがる!!)



龍騎「ジャンピングキーック!!」グオォッ!







サソード「今だ!! クロックアップッ!!」





【CLOCK UP!】







龍騎「ッ……!!?」





ギュウウーーンン……ン……!!……!





龍騎「」ズ…ズズ…

サソード「うおぉぉーー!!!」ダダダダッ!!








エターナル『いいか、確かに今の丸腰のお前では、龍騎を相手に勝つのは難しいだろう。そもそもお前は剣で戦うのが本来のスタイル。素手での戦いにはあまり慣れて無いだろう』

サソード『あぁ。だから困っているんだが……』

エターナル『簡単な事だ。この点を解決するためにも、龍騎が一番いいんだよ。あの3人の中で、刃物型の武器を持ってるのはあいつだけだからな』

サソード『……まさか……』






エターナル『奪って、斬れ』







龍騎「」…ズ、ズ…

サソード「こいつは借りるぞっ!!」パシッ!!

サソード「そして……!!」ジャキッ

サソード「はァああアぁぁぁーッッ!!!」スバッ!!




ガギィッ!! ギャリィッ!! ギャリガリリリッ!!

ズバズバズバズバザシュザシュザシュッッ!!!






エターナル『奪い取ったらすぐに攻撃に転じろ。全力の斬撃を死ぬ気で浴びせまくれ』

エターナル『妙な遠慮なんかはするなよ。そんな事をすれば、切り札を使い切ったお前は、仕留めきれなかった龍騎に切り札を出されて終了だ』

エターナル『全ての一撃を殺すつもりで浴びせろ。一切の慈悲も無くな……!』





サソード「ああぁぁぁぁああぁーーー!!!」



ズババババババババッッ!!



サソード「……そろそろだな……!!」





【CLOCK OVER!】





龍騎「――――があ゛ゲァ……!!!?」





ドガシャアアーンッ!!




サソード「……ハァ、ハァ……ハァ……!!」

龍騎「……う、う゛……お、ぐ……!! な、何、が……!?」

サソード「……や、やった……!! 龍騎に、致命傷を……!!」

龍騎「……!! もしか、して、今のが……クロック……アップ……!?」ズル…

サソード「……どうだ、驚いただろう……!? これでもかなり弱体化してるんだがな……!」

龍騎「……く、うぅ……! ま、だ、まだ……!!」スッ…

サソード「!! もうカードには触らせんっ!! 止めだぁーー!!」ダンッ!!



サソード(――――勝った!! これで戦況は俺達に傾……)








キイィィーーーン…………キイィーーン…………






サソード「……!? 何だ……!?」

龍騎「……やっと……来た、か……! 遅いぞ……!」

サソード(この音はいったい……!? 窓から聞こえるような――――)

サソード(……窓――――『鏡』……!!?)

サソード「しまった!! くっ……間に合えぇ!!」ダダダッ!!

龍騎「残念……! もう遅い、よッ……!!」




龍騎「ドラグレッダーーーッ!!!」



ドラグレッダー『ギャグオオォォッ!!!』グワァッ!!




ドガッ!!



サソード「ぐわあぁっ!?」








エターナル『もしクロックアップ中の攻撃で仕留めきれなくても、慌てず止めを刺しに行け。決して、弱ったからと油断するなよ』

エターナル『あいつはどんな逆境にいようと、生きている限りあがき続けるタイプの男だ。意識を刈り取るまで奴には何もさせるな』

サソード『わ、わかった……!』

エターナル『……もしも、お前が止めを刺しきれず、龍騎に隙を与えてしまったのなら……もう勝ちは無いと思え』

エタナール『あいつは狂気のバトルロイヤルを、最期のギリギリまで生き乗った男だ。人を殺さなけれならん場所で、誰も殺さずに、だ』

エターナル『殺せなかったんじゃない。殺さなかったんだ……分かるかこの意味が』

サソード『……?』

エターナル『死なせてしまえばその方がよっぽど楽だろう。なにせその死んだ奴は、もう戦いに参加しないのだから。城戸真司の脅威になる事は無かっただろう』

サソード『だが、それは城戸が望むことではなかったんだろう?』

エターナル『そうだ。そして、他人が殺し合わない限り減る事の無い敵がうようよいる中、それでもあいつは生き残った』

サソード『……ッ!!』

エターナル『…………つまり、誰も殺さないという選択を選び、それでも尚死なずに済んでしまうほどに……あいつは――――』








サソード「……く、ま、待て……!!」

龍騎「…………っへへ、惜し、かったな……! でも……もう……次は無い!!」シュバッ!!

ドラグレッダー『ギャグオオォォ!!』






――――パキーン……!




サソード(!? 何だ、左手の装備が、変化した……!?)



龍騎「…………こいつは……凄いぞッ……!!」




ブゥン……!








エターナル『――――何かが、根本的に【強い】んだ……!』








ガシャッッ!!







【 サ バ イ ブ 】



ここまでです。しかし、進まねぇ……色々書きたいシーンやイベントがひかえてると言うのに……

それはそうと湊で噂のゴライダー、何ですかあの面子期待しかない。
何が嬉しいって、椿さんが大丈夫なのかまだ不安だったところにご本人でのケンジャキ復活という形で元気な姿を見せてくれるというまさかの展開。
なんかやっとホッとできた。
願わくばディケイド版の設定を引き継いでない事を祈りたい

おしごとたいへんれす(^q^)
暇ができたときに少しづつ進めてるんでもうちっと待って……

こんばんわです。
毎度毎度大変待たせて申し訳ない。最近やっと以前より時間がとれるようになりまして、近々更新もできそうなので生存報告に参りました。
今週中か来週の頭にはバトル決着後までの話を投下します。

大変お待たせしました。(毎回言ってる気がする……)
投下開始です。
今度こそ、本当に決着します。





◇第二展望室◇



エターナル「……というわけだ。わかったか?」

パンチホッパー「クロックアップの制限……そういう事だったのか。というか大分使いづらくなったなぁ!?」

エターナル「もう決まってる事だ。騒いだところで元に戻る訳でもない。上手く使えよ」

パンチホッパー「上手くって言ったってさぁ……!」

エターナル「……!! 来たぞ」

パンチホッパー「!!」



イクサ「……見つけたぜ……か弱い美女に群がる男の風上にも置けん馬鹿どもがぁッ!!!」

パンチホッパー「……こいつ何言ってんだよ」

エターナル「……酒で酔ってるらしい。神代が言っていた」

イクサ「さぁ下がっていてくれお嬢さん!! この俺がっ、ウィ……こいつらを成敗して、ヒクッ……くれようっ!!」グッ

ファム「はいはい、何でもいいけど、足は引っ張らないでよ……!!」ジャキッ












◇第一展望室◇






ボゴオオォォォッ!!



サソード「うおぉ!! 熱ッ……!? 炎か!?」


ゴオオォォオォオ……!!


ギャキイィィンッ!!




龍騎サバイブ「ハァッ!!」ボオォォッ!!

サソード(ッ!!? 姿が、変わった……!! 天道のハイパーカブトのような、上位形態か!!)




龍騎S「……時間も余力も無いからな……! 悪いけど、一瞬で終わらせてもらうぜッ……!!」シュパッ!



ブゥン……!



サソード「ッ……!!」





――――もしも、お前が止めを刺しきれず、龍騎に隙を与えてしまったのなら……もう勝ちは無いと思え





サソード(くそっ……完全に俺の判断ミスだ!! あのドラゴンの存在を考慮していなかった……!!)

サソード(……しかし……!! だからと言って逃げるわけにはいかない!! 今の状態のこいつが、本当にどうしようもなく強いのなら尚更!!)

サソード(お兄ちゃんや大道が、余計に苦戦を強いられてしまう!!)



サソード「勝てないとしても……! せめてもう一太刀ッ!!」ダッ!!

龍騎S「……!!」シュッ!




ガシャンッ!!




【ファイナルベント】



龍騎S「言ったろ……一瞬で終わらせる、ってさ……!!」



ドラグランザー『グルァアオオオォンッッ!!』



サソード「!! ドラゴンの方も変化しているのか……!!」ダダダ…!



チェイス「……落ち込んでいる人間を慰める時は、背中を軽く叩いてやるのが、人間のルールだと認識している」

チェイス「……間違っていたか?」

真司「……ハハ、まぁ、必ずしもそうする場面ばっかじゃないと思うけど……」

真司「今は……嬉しいかな……。……ありがとう」

チェイス「……どういうたしまて」

音也「…………」

巧(……一瞬笑ったけど、本調子には程遠いだろうな……)

巧(……さっきまでのバカみたいな明るさが嘘みたいだ……まぁ、当たり前か……)

巧(本当にひどい顔してるぜ……死んでるみたいなツラだ)

巧(…………死んでる人間が、死んでるみたいなツラ、か……)

巧「……全っ然笑えねぇな……」ギュッ

音也「……で、お前はどうなんだ、巧。受け入れられるか? この現状を」

巧「…………られる、られないの問題じゃないだろ。……あんた達の言ってる事が本当なら、色んな疑問が解消するしな」

巧「……俺は死んだ。もう覆りようがない、確かな事実なんだ。受け入れるさ」

音也「……そうかい……しっかし、18歳だったか? 随分若い歳で……災難だったな」

巧「お互い様さ。あんただって、まだ23だろ? ……やり残した事とか、無かったのかよ? ……夢、とか」

音也「……そうだな。まぁ、自分の息子が成長していく様を間近で見れないってのは、心残りではあるが……成長した姿は見れたからな。良しとするさ」

巧「成長した姿は見れた……? 逆だろそれ。ってか子供いんのかよ……」

音也「あぁ、いるとも! 俺に似ず、引っ込み思案で、遊び心を良く分かってない奴だったが……」

音也「……音楽を愛する気持ちは……俺と、そっくりそのまま……同じだった……」

巧「…………」

巧「……あいつはホントに……」

木場「音也さん、煙に紛れて逃げたみたいだね……」

チェイス「コンクリートの破片で何やら地面に書いていたようだが……」

巧「大道の様子を見るに、バカにするような事が書かれてたんだろ」

湊「……あんな方法で挑発する余裕があるなら、その時間でもっと違う事ができると思うのだけれど……」

戒斗「逆に言うと、その余計な事やふざけた事をしたがる性格でなかったら、もっと恐ろしい実力になっていただろうな」

木場「……乾君は、この勝負どっちのチームが勝つと思う?」

巧「そうだな……音也が意外にも強えーってのは分かるんだけど、それを差し引いてもエターナルの強さは半端じゃないしな」

巧「向こうが手札を出し尽くすまで音也が立ってられるかどうか……まぁでも、龍騎の真司さんとかいるし……どうなんだろな」

チェイス「地獄兄弟の2人が使う、あのクロックアップという能力……あれがどのタイミングで使われるかによっても変わってきそうだな」

湊「さっき別の画面に映ってたけれど、ここでは一度クロックアップを使うと、再発動までにインターバルが必要のようね」

木場「使える機会は限られるけど、使ってしまえばその瞬間、相手の敗北にもなりえるってとこですよね……俺が戦ったら勝てるかなぁ……」


サソード(いや、この場合は進化といった方がいいか!)

サソード(ドラゴンの方は俺の後方、龍騎本人はすぐ目の前だ……どう来る……!? 本体とドラゴンで挟み撃ちにでも来るか!?)

サソード(だが、例え押しつぶされようが焼き払われようが、あと一撃、 もう一撃! 急所に当てて見せよう!!)ギュッ…!



龍騎S「はあぁーー……!!」ダッ!!



サソード「向かってくるか……!!」

サソード(俺が捨て身の一撃を狙っているのは分かっているだろうに、それでも正面から来るのは、やはりと言うべきか……!)

サソード「これが最後だぁ!! 行くぞ城戸真司ッ!! うおおぉー!!!」ダダダダ!!

龍騎S「…………!!」ダダダ…!!

サソード「おおぉぉぉぉーー!!! 喰らえぇぇ!!!」



ジャキィンッ!!



龍騎S「…………」




サソード「……!?」

サソード(こいつ、構えない……!? 何をして――――)ビュオォッ!!




龍騎S「おおっとと……!!」スカッ!

サソード「なっ!!?」

龍騎S「へへっ、危ない危ない……!」ダダダ…!

サソード(かわした……!? 挟み撃ちじゃない!!)ピタッ!

サソード(俺を素通りして……何を考えている!?)クルッ



ドラグランザー『グァルルル……!!』



サソード「あのドラゴン……!! いつの間にあんな所に!?」

サソード(さっき俺の後ろに居ながら、距離をとったのか!? 何故……)




龍騎S「ハッ!!」



ドラグランザー『ギャルルオオオォォン……!!』




ウィーーン……! ウィーーン……! ガシャン!! ガションッ!!



ドガンッ!! キキィーーッ!! ブロロロロロロ……!!




サソード「」



ドラグランザー(バイク)『ギャアアアオオォォ!!!』

龍騎S「いっけええーーー!!!」




サソード(ドラゴンがバイクになったーーーっ!!?)

サソード「って驚いている場合じゃない!! まさかあれで俺を跳ねる気か!?」

サソード(……なら向かってきたところに、乗っている本体の体を切り付けて――――!!)




ドラグランザー『ギャアアオオオォォーーッッ!!!』



ボゴオォ!! ボゴオォ!! ボゴゴゴゴオォォーー!!!



サソード「――――な、ん!!?!」

サソード(火球……!! 多すぎ――でかい――)




サソード(――――かわせない!!!)


~ラビットハウス~

カランカランカラン

チノ「ココアさん、お客様ですよ?」

ココア「あっ、はいはーい!」

ココア「いらっしゃいませー!ラビットハウスにようこ………」

薊「…………」ニコニコ

ココア「………そ?」

チノ「ココアさん……?」

リゼ「どうしたんだココア?」

薊「アンティークな雰囲気の喫茶店…」チラッ

薊「……それに…」チラッ

ココア「ぁ……」ビクビク

薊「可愛らしい店員」ニコッ

チノ「ココアさん!」

リゼ「なんだお前!ココアから離れろ!」

薊「おやおや、離れろとは…これでも私は客だよ?」ニコッ

ココア「ヒッ」ビクビク

ティッピー「何者じゃ!お主!」

薊「………?ウサギが喋った?」

チノ「ふ、腹話術です!」

薊「喋るウサギとは…ラビットハウス…おもしろいね?」ニコッ

リゼ「……貴様…なんの用だ?」

薊「>>67




ボガン!! ドガン!! ドガガアアアァァーーンッッ!!!!



サソード「ぐわあああぁぁーーッ!!??」ゴオォォォ!!




龍騎S「止めだぁーーー!!!」

ドラグランザー『ギャグルアァァ!!!』



ドゴオォッッ!!


ギューーン……! ドガアアァーーンッ!!



パラ……パラ……



サソード「ぅ……が……な、なんて……威力……だ……」ガクッ




ブロロロロロロ……キキィー!!




龍騎S「……しゃあ!! 勝ったぁ!! ちょっと危なかったけどな……! あ゛~体中痛いぃ……」ズキズキ

龍騎「……てか、これ、やりすぎたかな……? 大丈夫だよな? 死んでないよね? いつもの感じでやっちゃったけど……!」




アナウンス『仮面ライダーサソード・神代剣、戦闘でのダメージにより失神を確認。リタイアです』




龍騎S「あ、これバトル始める時に聞いたのと同じやつだ。なるほど、負けた奴が出たらその場で知らされるのか」

龍騎S(あとちゃんと失神って言ってたな。良かった……いや、俺達元々死んでるから死にようが無いとは思うけど)

お送りします [saga]

以降P表記のモバP「思いの外ドッサリ買い込んじゃったなぁ」トテトテ

P「こう暑い日が続くとアイスとかジュースとかばっかりになるよなぁ…夏なんて何のために存在するんだよスイカの為か?」

タッタッタッタッタッタッタッ

P「はぁ…外あっちぃ。早く冷房のきいた部屋に戻らねば」

タッタッタッタッダダダダダダダダッ

P「うん?何やら背後から殺気が」

飛鳥「レゾン・デートル!!」ゴスッ

P「脊椎が!」

飛鳥「やぁプロデューサーこんな道端でどうしたんだい?」

P「お前、誰の、せいだと」ゲホッ

飛鳥「ふふ、相も変わらずキミの周囲は非日常なセカイが広がっているみたいだね」

P「げふっ…、取り合えず突然のダイビングクロスチョップの理由を聞こうか」

飛鳥「それは胸に手を当ててみるといいよ」

P「お前の?」

飛鳥「自分の!」

P「冗談だよ。手を当」

飛鳥「手を当てるほどもない、なんて言ったら封印されし左腕の雷帝が火を噴くよ」スッ

P「…身に覚えがないんだけど」

飛鳥「そうかい。だったら己が罪、直接その瞳に映してみるといい」

P「…?どうした飛鳥。何かエクステめっちゃニュルニュルしてね?」



アナウンス『戦闘不能参加者の転送準備、開始……転送準備完了。転送します』



シュウゥン……!



龍騎S「え……消えた?」





◇観客席◇



巧「あいつ、真司さんにやられたと思ったら、消えちまったぞ?」

チェイス「あの音声の言っていた事からして、バトルと関係ない安全な場所に飛ばされたのだろう」

木場「最初に倒れたのは神代さんか……神代さん、消して弱くないと思うんだけど……」

湊「身体能力や剣の扱いは一級品よ。きっと多くの訓練を詰んだのね」

戒斗「だがそれ以上に……城戸真司が強い」

木場「凄かったなぁ、今の……炎の塊を打ち出して、怯んだ隙にはねるって……」

チェイス「あぁ……ドラゴンがバイクになった瞬間も驚いだぞ」

巧「神代が一瞬で真司さんを追いつめたと思ったら、そっからの逆転KO勝ちだからな……強いな。あの人」フッ

チェイス「……嬉しそうだな。巧」

巧「! 別に何でもねーよ! ……そんな顔してたか?」

木場「……んー、わりと」ハハ

巧「……ふん」




ビビビビビ……!




チェイス「む……!?」

巧「なんだ、光!?」

戒斗「落ち着け。それは恐らく……」



剣「……うぅ……?」

湊「! あなた!」

木場「転送する安全な場所って……」

巧「ここかよ!」

チェイス「確かに、安全ではあるな」

剣「……ここは……はっ!! しまった、俺は!?」

木場「お帰りなさい、神代さん」

戒斗「貴様は龍騎に敗北して、今ここに転送された。敗者は大人しく事の成り行きを見ていろ」

剣「……そうか、俺の負けか……最後に一矢報いたかったのだが……! くそぉ!」

戒斗「悔しいか」

剣「当たり前だ!! いくら敵が強いとはいえ、これだけの人数で一番最初に脱落してしまうなど……!! 爺やに合わせる顔が無い!」

剣「まだまだ俺も未熟という事だな……! もっと強くならねば……!!」グッ

戒斗「……フン、そうか」

巧「……まぁなんだ、お疲れさん」

湊「次を頑張りなさい」

剣「……あぁ!」

剣(……すまない、2人とも。後は任せた!)





◇風都タワー・第二展望室◇






ガキィン!! ドキャ!! ズザザザッ……!



パンチホッパー「……おい、聞いたか?」

エターナル「……ああ。下の階の爆音といい、今のアナウンスで確実だ……神代め、しくじったな……」

エターナル「龍騎の方も消耗してくれてるといいが……!」

イクサ「お前達は自分の心配をしろぉいッ!! うりゃああ!!」ドガギャン!!

ファム「心配したってもう遅いけどね! 真司が合流するまでもない……このまま押し切ってやる!!」ヒュンッ!ヒュンッ!

パンチホッパー「うわっ! くっそー……!! まだ駄目か大道!?」

エターナル「まだだ!! まだ待て……!!」スッ



カチッ!



【ヒート!!】



エターナル「次はこいつだ……!」



ガチャッ!!



【ヒート!! マキシマムドライブ!!】



エターナル「おおおぉぉぉ……!!」ボボボボオォ…!!




ファム「うわ、なんかちょっとヤバそうだなー……ちょっとアンタ! しばらくあたしから離れてて!」

イクサ「何を言う! こんな所で女を一時であろうとヒック! 1人になどできるものかウィ! 消して君の傍は離れな――」

ファム「そういうのいいから早く行け!! 巻き込んじゃうって言ってんの!!」ゲシッ!

イクサ「ぬあーー!?」ゴロゴロ

ファム「ったくこいつは……!」シュパッ!



ブゥン……ガシャン!



【ガードベント】



ファム「ハッ……!」ガチャン…!

パンチホッパー「盾か!」

エターナル「そんな盾如きで……!!」ゴオオォォ!!

エターナル「防げるかぁ!! らあああぁぁぁ!!」ギュゴォッッ!!



ズドドドドドドドッッ!!



ファム「うぅ!! ぐっ!! ううぅっ……!!」ガゴン!! ガゴガゴゴゴ…!!

ファム「炎を纏ったパンチの連撃か……!! 確かにただの盾じゃ防ぎきれないや……!」グググ!

ファム(……『ただの盾』ならね!!)

 清ヶ「ん~・・・挟美ちゃんの料理は美味しいし、気配りもできるし、きっといいお嫁さんになれると思うよ、俺は」


 挟美「!///」カァァァ


 エステル「だ、そうだ!よかったな、挟美」ニコリ


 挟美「あ、ぅぅ・・・///」モジモジ


 薬丸「てか恋人が居ないってとこに怒らないのね?」パクッ,モグモグ


 ナル「あ、そう言えば」モグモグ


 清ヶ「別に・・・気にしてることじゃねーしな。これから先出来るからどうかも考えたことないからな」パクッ,モグモグ


 薬丸「ふーん・・・そう」ズズッ



エターナル「うぉらあぁ!!」ゴォッ!!



バゴンッ!!



ファム「ッ!!」グラリ…


エターナル「そこだ……!!」グンッ!





ファム「なーんちゃって♥」





ブワアァ!


フワ……フワ……ヒラヒラ……



エターナル「!? 鳥の……羽根……?」



――――ピタリ



バヂヂヂヂッ!! バキバキバキッ!!!



エターナル「ぐおおぉ!?」バチバチ!!




ファム「あたしのガードベントはちょっと特殊でね、防御のためというより、この幻惑攻撃がメインなんだよねー」

エターナル「幻惑、だと……!!」ビリビリ…!!

ファム「範囲が少し広いから、今の状況だと味方も巻き込みかねないのが難点かな?」

エターナル(クソッ! 幻惑というからには今起こってる現象は幻、錯覚なのだろうが……!!)



ヒラヒラ……


バリバリバリ!!



エターナル「っづううぅ……!?」バチバチ…!

エターナル(宙に舞っている羽根に触れてダメージが発生しているように感じる! 幻惑……この痛みの事を言ってるのか!?)

エターナル(それともこの羽根自体が幻なのか……!?)

エターナル「おい……! 影山……!!」クルッ




バヂヂヂヂヂッ!!


パンチホッパー「痛い痛だだだだ!! あがばばばbbb!!」ファサァ…



エターナル「チッ……どいつもこいつも……!!」

ファム「観念しなさい! あたし達の完全勝利だよ!」フフン!

エターナル(まずい……手が痺れてうまくメモリが取れない……!!)グ…ググ…




<おーい、音也ー! 霧島さーん! そこに居るのかー!?



ファム「あっ! 真司が来た!」



<うわっ、音也!? 何でこんな所で転がってんだ!?
<女に蹴られた……まぁ、悪くはないが……!
<何言ってんのお前!?



エターナル(龍騎まで合流したか……万事休すか……!?)

ファム(あっまずい、こっちに来る前に、幻惑を解除しとかないと……)

ファム「もう十分だよね……後はしっかり3人がかりで止めっと。案外あっけなかったね!」



フッ……


エターナル「!!!」

エターナル(羽根が消えた……今しかない!!)スッ



カチッ!






【エターナル! マキシマムドライブ!!】



ファム「!! あんた、まだ動け――ッ!?」




シュウウウゥゥゥ……!



ファム(あたしのガードベントが……消えてく!? えっ、ウイングスラッシャーまで!?)



パキーーン……!!



龍騎「……ん? え? あ、あれ!? サバイブが解けた!? なんでぇ!?」





パンチホッパー「うぎぎ……何だったんだ今のは……!」

エターナル「今だ影山!!早くしろォ!!」

パンチホッパー「!! ク、クロックアップ!!」バッ!



ファム「!!? まず――――」

龍騎「……!?」

イクサ「あ……?」







【CLOCK UP !】







ギュゥゥーーーン……!!




ファム・龍騎・イクサ『』

エターナル「」


パンチホッパー「……ライダージャンプ……!!」ガチャッ!!



【RIDER JUMP !】




ピキュン……ピキュン……ドバヒュンッッ!!


パンチホッパー「残念だったな生意気女……! これで……終わりだ!! ライダーパンチッッ!!!」ガシャッ!!



【RIDER PUNCH !】



パンチホッパー「オラァッッ!!!」



ドゴンンッッ!!!


バヂヂヂヂ……!!



ファム「……、……」グラリ…




パンチホッパー「ついでにこいつにも軽く……!!」ダダッ…!

パンチホッパー「おらおらぁッ!!」バギッ!! ガンッ!!

イクサ「…………」ガクン…





【CLOCK OVER !】



ギュ―ーーン……





――――ドガギャッ!!



ファム「うあ、ああぁぁーー!!?」バゴォォン!!

イクサ「うげっ……!? は、へぇ……」ドサッ

龍騎「!! 音也!? 霧島さん!? 今のはクロックアップ……!!」

エターナル「そういう事だ……中々にベストなタイミングで使えたな」

パンチホッパー「ハハッ! やっと決まったなぁ……!!」ニヤリ




アナウンス『仮面ライダーファム・霧島美穂、戦闘でのダメージにより失神を確認。リタイアです』


龍騎「そ、そんな!?」




アナウンス『戦闘不能参加者の転送準備、開始……転送準備完了。転送します』


シュウゥン……




龍騎「あぁ……!?」

パンチホッパー「……イクサの方は転送されないって事は……」

イクサ「……う、お、おぉ……うぅ……」ズル…

パンチホッパー「チッ、さすがに今のだけじゃあ完全に倒しきれないか」

エターナル「何にせよ向こうも1人減った。畳みかけるぞ……!」

龍騎「っ……!」




◇観客席◇



美穂「……あ、れ……? ここは……」

剣「! キリ・シーマ!!」

湊「お帰りなさい、霧島さん。ちょっと惜しかったわね」

美穂「湊さん……? あっ!? あたしの勝負は!?」

巧「あんたの負け、だな」

美穂「……嘘ぉ……」ガクッ

チェイス「一瞬の隙を突かれたな。大道と影山も、中々強い……」

剣「流石はお兄ちゃんだ! キリ・シーマは決して弱いわけじゃないが、相手が悪かったな……」

美穂「……あたし、あいつに……地獄兄弟の兄の方に……?」

戒斗「いきなり吹き飛ばされていたからな。奴のクロックアップ中に猛攻を受けたのだろう」

美穂「う、うわああああぁ!? よりにもよって!! 一番負けたくない奴にぃぃ!?」

木場「ま、まだ君のチームの2人は残ってるから、負けが決まったわけじゃないし……」

美穂「あのバカに倒されたのが気にいらないって言ってんだよぉ!! あぁぁあぁぁ……あいつが戻ったら絶対バカにされるよぉ……」ズーン…

チェイス「そう気を落とすな。失敗を活かして次を頑張るのが、人間のルールだろう」b

美穂「っていうか男2人は何してたわけ!? 特にナイト気取りのバカは盾の役ぐらい果たせよ!? 散々『君を守る!』だの言っておいてー!!」ムキーー!!

巧(……あの2人、勝っても負けても……ヤバイな)



龍騎「お、お前ら、あんまり調子に乗るなよ! サバイブが無くたって俺はまだ……!」

エターナル「サバイブだけじゃない。お前は今全てのカードの能力を、使用することはできない」

龍騎「!?」

エターナル「俺が今使ったエターナルメモリの真の力だ……! 本来の効果は旧型のガイアメモリの力を永続的に使用不可にするというものだったが……」

エターナル「こっちの世界で使うのに調整されたようだ……一定時間、味方を除く全ての敵の特殊能力を封じる、といった物にな」

龍騎「!! そ、そんな馬鹿な……!」シュッ!



スカッ、スカッ



龍騎「!? あれ!? カードが……無い!! 消えてるぅ!?」

パンチホッパー「つまりお前ら……もう、負け確定ッ!!」ハハハハ!!

龍騎「ぐ、ぐ……!」

龍騎(どうしよう……!? 戦うにも文字通り手札がなんにも無い! 逃げるにも動けない音也を抱えてじゃ不利過ぎる!!)

龍騎(ただでさえ俺も剣とやって体力的に厳しいのに……音也を守りながらの撤退は無理だ……!)

龍騎(……かと言って音也を見捨てていくのもなぁ……!)

エターナル「……勝負あったな」チャキッ

パンチホッパー「観念しろよぉ~?」パキポキ




龍騎「……っ!!」

龍騎(そうだ……そうだよ!! あの手があった!! いや、でも音也はどうなる……? 連れて行ったとして戻れるか!?)































































ああ
2017/07/12(水) 17:38:04.11ID: FO/WkdNt0 (4)
372: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]
乙です
2017/07/12(水) 17:46:27.91ID: HeBea9beo (1)
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エターナル「……ハァッ!!」ダッ!

パンチホッパー「ハッハアァーー!!」ダッ!

龍騎(くそ、迷ってる時間も無いか……!!)ジリ…



龍騎「音也ぁ!! しっかり掴まれよぉ!!」ガシッ!

イクサ「……ぅ、うぅ?」グラグラ

パンチホッパー「ハハッ! そんな足手まとい背負って、この距離から逃げ切れるわけ無いだろう!!」

龍騎「……逃げるって言っても……! 『こっち』にだよ!!」バッ!!

エターナル「――――!!」

パンチホッパー「……は!? 窓ガラスに……!?」

龍騎「忘れたかー!? 俺は鏡の中に入れるんだよー!!」








バリリィィンッ!!


フワァ……





龍騎「…………え?」

音也「……おぉ……空がぁ……青いなぁ……」フワァ

エターナル「…………お前こそ、『特殊能力』が封じられてるのを忘れたのか……?」

龍騎「…………」






龍騎「嘘おおおぉぉぉおおぉぉぉ!!!」ヒュルルルル…

イクサ「あーぁーはははぁぁ……ぁぁああああーーーっ!!?」ヒュルルルル…


エターナル「…………」

パンチホッパー「…………おい、これで終わりか……? 嘘だろ?」

エターナル「……! いや、そうでもなさそうだ」





ドラグレッダー『ギャグオォン……!!』


龍騎「あっ、ドラグレッダー!! いい所に来てくれたなぁ!!」ガシッ!

龍騎「ほら音也! ちゃんと手を掴めって……!」グイィ

イクサ「お、おぉ……あー……何か、今ので頭が冴えたみてぇだ……」ブラーン

龍騎「予定してた方法とは違うけど、これで逃げられた! カードが使えるようになるまで時間を稼ごう……!」




パンチホッパー「しぶといなぁあいつも! おい、特殊能力を封じる力って、どれくらい持つんだ?」

エターナル「1分もすれば効果が切れる……そうなる前に全員叩くつもりだったんだがな」

パンチホッパー「はぁ!? 1分なんてすぐじゃんか! どうすんだよ逃げられたぞ!」

エターナル「この高さから飛び降りるわけにはいかないか……下の階に降りて追うしかない、行くぞ!」

パンチホッパー「お、おう!」






◇休憩ロビー◇



北岡「……さすがは城戸真司……戦ってる最中も馬鹿っぷりが発揮されてるな……」

手塚「……まぁ、それだけ気負わずに挑めているという事だろう」

蓮「短時間とはいえ、特殊能力を完全に抑え込む技か……サバイブ状態も強制解除されるとあっては、厄介な力だ」

擬態天道「……サソードは負けちゃったけど、女の人の方も倒されたし、どうなるかな……?」

草加「状況的に不利なのは龍騎とイクサだろうね……強化状態も無くなった上に、酔っ払い1人抱えてだからな」

草加「せめて、その足手まといを庇おうだなんて考えなきゃ、まだ可能性は数パーセント上がったかもしれないけど?」

蓮「…………」

始「城戸の性格からしてそれは無いだろうな。今までずっと守るためだけに戦ってきた男だ。遊びとはいえ、味方を無視して戦う事などできないだろう」

北岡「ま、今回は流石に城戸の分が悪い。俺のルームメイト共が勝つんじゃないかねぇ?」




パンチホッパー「……結局、一番下まで降りるのにほとんど1分使ったな……」

エターナル「関係無い。2人がかかりで龍騎を潰して、最後に紅音也だ」

パンチホッパー「って言っても、どこを探すんだよ。このステージ割と広いから全部見てなんていられないぞ?」

エターナル「1分が経過している以上、龍騎も自分の力が戻った事は気付いてる筈だ。だとすればもう仕掛けてきてもおかしくはない」

エターナル「次は恐らく奇襲だ。周囲に注意しろ。特に鏡になるものには余り近づくな」

パンチホッパー「なるほど……鏡に注意か……! だったらあっちの道路中央とかにいればいいよな!」ダッ!

エターナル「……ここからは我慢比べだな。奴らが痺れを切らして動くかどうか……!」ダッ!










龍騎「……建物から離れていく……やっぱり鏡には近づかなくなるよなぁ」コソッ

龍騎「で、音也。もうそろそろ大丈夫か?」

イクサ「……ぐ、う……あー、少し冷めて来た……若干気持ち悪いが……動けなくはない……!」

龍騎「よーし……じゃあこっから俺の言う通りにしてくれよ?」






――――5分経過――――






エターナル「…………」

パンチホッパー「……来ないぞ!? 全然気配もしない! やる気あんのか!?」

エターナル「俺達が隙を見せるのを待っているんだ。焦るな。あの2人の性格上、そう長い間ジッとはしていない」

エターナル「ここでこっちが先に動けば相手の思うつぼだ」

パンチホッパー「でも……!」




【イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ】




パンチ・エターナル「「!!!」」バッ!!




ドガァアァン!!


ガラガラ……パラ……!




エターナル「やっとお出ましか……紅音也……!!」

パンチホッパー「上からかよ……!! ちょっと危なかった……!」

イクサ「よう! 調子はどうだ地獄野郎ども! 大好きな地獄を見せに来てやったぜ!!」シュッ! シュッ!

エターナル「……やっと酔いが冷めて来たか?」

イクサ「本調子とはまだ言えねぇけどな! それはそうとお前ら……いつまでたっても挑んで来ねぇのは何だ? ビビって動けなかったか?」

パンチホッパー「馬鹿言え! お前がこうしてわざわざ出向いてくれるのを待ってたんだよぉ!!」バッ!

イクサ「おっと! へっ、本当かぁ~? 男2人で背中くっつけてキョロキョロと……だっせーのー!!」ギャハハ!

パンチホッパー「こ、の、言わせておけば……!!」




エターナル「……おい、龍騎はどうした?」

イクサ「置いてきた! お前らの相手なんて俺一人で十分だからなぁ!!」

パンチホッパー「はぁ~!? 誰が俺達相手に1人で勝てるって!? 自信過剰も程ほどにしろよ!」

イクサ「自信なんざ必要ないねぇ! そんな物なくたってお前みたいなビビり君程度はすぐ倒せるわ!!」

パンチホッパー「誰がビビりだ!!適当な事言ってんじゃ――――」

イクサ「ほうれビビりくーん! 怖がらないでかかっでおいで! 今ならサービスでこの天才紅音也の尻を攻撃させてあげるぞぉ~?」フリフリ

パンチホッパー「ッ~~……!!!」ビキビキ

イクサ「あ、それぺーんぺんと!」ペチペチ

パンチホッパー「ぶっ潰す!!!」ガバァッ!!

イクサ「ハハハハ! こっちだこっちぃ!」



エターナル(……どういうつもりだ……何故イクサだけ出てくる?)

エターナル(イクサを囮にして龍騎が仕留める気か? バカな……鏡に近づけようとしても無駄だ!)

エターナル(あからさまな挑発に乗るところはまだ頭が足りてないが、それでも敵に釣られて罠に飛び込む程影山も間抜けじゃないだろう)

エターナル(この周囲に鏡は無い。一番近くにある鏡になるものは、あのビルの窓ガラス位だ……だがそれでも距離がある)

エターナル(囮を使って不意を突くには遠い位置だ。しかも、5分が経過した事で影山は再びクロックアップを使える状態だぞ)

エターナル(どんなにうまく隙を突こうとしても、一撃で完全に倒せる程のダメージを与えられなければ、逆に影山にやられるだけ……)

エターナル(それがわからない奴らでもないだろうに……それとも本当にそんな浅知恵の作戦で来たのか?)





イクサ「ホラホラどうしたどうした! もっと上手く狙え!」

パンチホッパー「……チッ、そうやって鏡まで誘導する気だろうけど、流石にそれに引っかかるような馬鹿じゃないんだよ!」

パンチホッパー「戦いたいならお前から来いよ! それとも、実はお前の方が恐いんじゃないのかー!?」

イクサ「……いいや、もう十分だ。ここでいいんだよ」

パンチホッパー「あ?」





イクサ「この位置まで来てくれりゃあな……!!」

イクサ「今だ!! 真司ぃ!!」

パンチホッパー「!!」




キィーン……!


ギュイィーーン!!




龍騎サバイブ「だああぁーーっ!!」ダダダッ!!



エターナル(やはり不意打ちを狙っていたようだな……しかしどうやって仕掛けてくるのかと思えば、ただ走ってくるだけとは)

エターナル(というか、これは不意打ちと呼べるのか? 時間経過でサバイブの再発動ができたようだが……)

エターナル(それだけじゃな……少し買いかぶりすぎたか)

エターナル「これで終わりだ……影山! クロックアップだ!」ジャキッ!

パンチホッパー「へへ、あぁ! 何をしたかったのかは知らないけど……愚策ってヤツだったな! お二人さん!」スッ





龍騎S「……どうかな!」シュバッ!

イクサ「やってみないとわからねぇぞ?」ギャリィ!!



【イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ】



ピロロロロ……! ピロロロロ……!






パンチホッパー「そういうのを馬鹿の一つ覚えって言うんだよ!! クロック――――」







ガシャンッ!!



【コンファインベント】







パンチホッパー「――――アップ!!」パシンッ!





【ERROR】





エターナル「ッ!!?」

パンチホッパー「……なんっ!? えっ……!!?」

エターナル「チッ……!! 避けろ影山ァ!!」

パンチホッパー「ぁっ――」

イクサ「だああぁらああぁぁーーッ!!!」


ギュオッ!!




ゴッガアアァァンンッッ!!






パンチホッパー「うがぁッげエエェエェーーッッ!!!?」



バヒューーン……!



龍騎S「だあぁッ!!」ビュッ!!


バゴッ!!



パンチホッパー「が……!! ぶ……」



ドシャァ……!





龍騎S「っしゃあ!! やったな音也!!」

イクサ「おうよ! 作戦通りってーのは気持ちいもんだなぁ! はははは!!」

エターナル「……一体、何をした」

龍騎S「あんたがやったのと似たような事さ。さっき使ったカードは『コンファインベント』って言って、元々は相手のカードの効果を無効にするカードだったんだけどね」

エターナル「!! 無効……!」




龍騎S「エターナルメモリっていうヤツの能力が調整されてるんなら、俺のも当然、似たような調整がされてるはずだって思ったんだ。まぁ、一か八かだったけどな!」

イクサ「で、問題なく無効化に成功したんで、油断しまくってたこいつに全力の攻撃が当てられたってわけだぁ!」



アナウンス『仮面ライダーパンチホッパー・影山瞬、戦闘でのダメージにより失神を確認。リタイアです』

アナウンス『戦闘不能参加者の転送準備、開始……転送準備完了。転送します』



シュウゥン……




◇観客席◇





影山「…………ハッ!? あれ!?」

剣「お兄ちゃん!!」

影山「剣……? こ、ここどこ!?」

巧「観客席だよ。負けた参加者は、皆ここに飛ばされるんだ」

影山「……負けた? 俺が!?」

戒斗「事実だ。自分の力を過信した結果だな。お前達が使うクロックアップほど強力な能力、何度も使えば対策されるのは当然だろうに」

湊「切り札も使い過ぎれば、切り札じゃなくなるという事ね。もっと工夫して使わないと、これからは勝てないわよ」

影山「ぐ、ぐ……! くっそ……! あいつ、あの時何しやがった!?」

木場「どうやら、1人の敵に対してだけ使える、能力封じのカードだったみたいだね」

美穂「……あんな物あるなら何であたしが居る時に使ってくれなかったわけ!?」

美穂「……まぁ、もういいや。ここまで来たなら勝ってもらうからね真司!」

影山「あ、お前……」

美穂「! ……何さ?」

影山「…………」






影山「…………ふふっ」ドヤアァ

美穂「~~ッ!!」グギギ…!





◇休憩ロビー◇



擬態天道「クロックアップ持ちが二人とも……!」

始「上手く厄介な相手を沈める事ができたわけだな」

手塚「なかなかに読めない試合展開だな」

草加「…………」フキフキ

北岡「……おい、あいつあんなカード持ってたっけ?」

手塚「俺も気になっていた。あいつがコンファインベントなんて使った所は、見た事が無いが」

蓮「……『ストレンジベント』だ」

北岡「……あー、そういう事ね」

手塚「ストレンジベント?」

始「? 何だそれは」

蓮「龍騎はサバイブ形態になると、自動的に新たに追加されるカードが存在する。その内の一種類が『ストレンジベント』というカードだ」

北岡「でも、あれって使ってみるまで何が起こるか分からないカードじゃなかったっけ?」

手塚「どういう事だ?」

蓮「正確には、その時の状況に合ったカードに変化する、或いは、自分が欲しいと思ったカードに変化するのがストレンジベントだ」

蓮「前に俺と城戸が戦った時、あいつは俺の『トリックベント』……分身を複数生み出すカードだが、あいつはそれに対抗しようとこのカードを使った」

蓮「そして、城戸のデッキに元々入っていない、トリックベントに変化させて、俺と同じく分身を生み出して応戦したんだ」

始「…………つまり、そのカードは何にでもなれる、トランプのジョーカーのような物か」

蓮「そうだな。その例えが分かり易いだろう」

北岡「……あれってそんな便利カードだったのかよ」

手塚「……やはり、サバイブのカードは城戸に渡して正解だったな。ここまで強力な力を得るカードだ。もしも浅倉のような心無いライダーの手に渡っていたらと思うとゾッとする……」

蓮「……違いない」







龍騎S「さーて、後はあんた一人だぜ!」

イクサ「どーする? 降参するかぁ?」

エターナル「冗談だろう。まだ終わりじゃないさ……!! 本番はここからだ……!!」

エターナル「こうなるともう、出し惜しみもしてられん……本当の全力で……お前達2人を潰すッ!!」スッ!



カチッ!


【ゾーン!】




イクサ「!! それ、最初の……!!」




ガギュゥン!!



【ゾーン!! マキシマムドライブ!!】





エターナル「最初の時とは……メモリの数が違うがなッ!!」







ガギュウゥン!! ガキュガキュギュギュギュギュギュギュギギイィンッ!!



【アクセル!!】【バード!!】【サイクロン!!】【ダミー!!】【エターナル!!】
 【ファング!!】【ジーン!!】【ヒート!!】【アイス!!】【ジョーカー!!】
【キー!!】【ルナ!!】【メタル!!】【ナスカ!!】【オーシャン!!】【パペティアー!!】
 【クイーン!!】【ロケット!!】【スカル!!】【トリガー!!】【ユニコーン!!】
【バイオ!!】【ウェザー!!】【エクストリーム!!】【イエスタデイ!!】【ゾーン!!】



【マキマムドライブ!!!】






エターナル「うおぉおおぉぉぉ……!!!」ゴオオォォォ!!




龍騎S「な、ななっ……なんだこれ!?」

イクサ「やっべ……!! しかも今の、俺に使った時の倍はあったぞ……!!」

龍騎S「音也はこれ知ってんの!?」

イクサ「あぁ……!! こいつはかなりやばそうだ!!」





エターナル「……さぁ――――」



エターナル「――――地 獄 を 楽 し み な !!」グンッ!




ギュボオオォォォオォ!!!



イクサ「!?」

イクサ(最初の俺に放った斬撃の時と、構えが……違う!! 別の技か!?)




エターナル「うらああぁあぁーーーーっ!!!」



ゴオオオオォォォーー!!!



イクサ「なっ!?」

龍騎S「うわぁあぁ!? なんだぁーー!? 緑のでっかい丸いのが……!? 元気○的な!?」

イクサ「左に逃げろ!! 俺は右だ!!」

龍騎S「わ、わかった!」バッ!

イクサ「……ッ!? うお゛、っぐ……!?」ガクッ

龍騎「音也!?」

イクサ(くそっ、やっぱりそう簡単に酔いは抜けねーか! 気分がっ……)ウエッ

エターナル「終わりだあァ!!」ゴオォォ!!





ガシャン!!





【ガードベント】



イクサ「!?」




ドガガガガガッ!!

バガゴォオオォォォオォッッ!!



ゴオオオォ……ォォ……




エターナル(…………やったか?)



バヂッ……パラ……パラ……





ドラグランザー『……ギャグオォ……ギャオオォォン……!!』



エターナル「!! こいつ……!!」

エターナル(龍騎がとっさに命令を出したのか!! ならその龍騎は……!)





ガシャッ!!


【シュートベント】




エターナル「はッ!?」




龍騎S「行っ……けえぇーーー!!」カチッ!!

ドラグランザー『ギャゴオォォオッ!!』



バシュゥンッ!! バシュゥンッ!!

ドバァッ!!ゴォォォーーー!!




エターナル「っ……舐めるなぁーッ!!!」ギュンッ!!



ズッバアァァッ!!



龍騎S(斬撃エネルギー波!? くっそ……!!)

龍騎S「負けるもんかーー!!」カチカチカチカチ!!


バシュバシュバシュバシュッ!!


ドラグランザー『ギャオォ!! ギャグォ!! ギャアアオォ!!』ドガンドガン!! ボゴゴゴォッ!!


エターナル(連射だとっ……!? ならこっちもだ……!!)

エターナル「うおおおぉぉぉぉッッ!!!!」ズババババッ!!

龍騎「だああああぁーーーっ!!!!」バシュンバシュンバシュン!!



ドガガガガガガアァァァンッ……!!!



エターナル「ぐおあァーッ!?」ズサァッ! ガガッ!

龍騎S「うわあぁー!?」ドシャッ!! ズザザッ!



エターナル(ぐ、ぉお……!! 分かってはいたが、サバイブの力は侮れない……!!)

エターナル(俺の全メモリを使ったマキシマムドライブとここまで渡り合うとは!)

エターナル(衝撃で僅かだがダメージを受けてしまった……おまけに煙でヤツが見えない……!)

エターナル(だがさっきまで撃っていたレーザーの角度からして、大体の位置は分かる!!)チャキッ!

エターナル(これで仕留める!!)ガギュウゥン!!



【エターナル!! マキシマムドライブ!!】



エターナル「はああぁぁ……!!」ダダダッ!




龍騎S「う、ぐ……!!」フラフラ

龍騎S(今の爆発の衝撃で……力が……!)グラッ…




ドラグランザー『…………グ、オォ、ギャオォ……!』


ドシャアァ……!


シュウウウゥゥゥ……



龍騎S「!? ドラグレッダー!!」

龍騎S(しまった……!! こいつももうとっくに限界だった!! ただでさ剣の毒攻撃を受けてて、さっきは盾にも……!?)





シュウウゥ……ウゥゥ……




龍騎ブランク「……未契約状態に……戻っちゃったぁ!?」




エターナル「喰らええぇーーッ!!」ヒュバァッ!



龍騎ブランク「!!!」



ギュオオオォォ……!!



龍騎ブランク(足にエネルギーが集まっていく……! 飛び蹴りか……!!)



龍騎ブランク「……でも……! 最後まで諦めない!!」シュパッ!



ガチャッ! ガシャンッ!



【ソードベント】 【ガードベント】



龍騎ブランク「こいつで防御を――――!!」ガチッ!


エターナル「っはああぁぁぁーーっ!!!」ギュオン!!





バギャアアァン!!!


龍騎ブランク「割れたぁ!?」




ドゴオォッ!!



龍騎ブランク「うがああぁぁーーー!!?」ドガッ! ガッ! ズガガッ!



ドゴオオォォォン……!!!



龍騎ブランク「ぐ……く、そぉ……」


エターナル「ハァ……ハァ……!!」





アナウンス『仮面ライダー龍騎・城戸真司、戦闘でのダメージにより失神を確認。リタイアです』


エターナル「…………良し……」ハァ…


アナウンス『戦闘不能参加者の転送準備、開始……転送準備完了。転送します』


エターナル「後は……! 紅音也……!! お前1人だ!!」




◇観客席◇



美穂「真司!?」

巧「真司さん……!」

チェイス「真司が、倒れたか……!」

湊「どうやら、ここに来て契約モンスターに限界が来て、その結果スペックが弱体化してしまったようね」

戒斗「神代剣の毒のダメージが蓄積していたのも大きいだろう。それに、龍騎自身が受けたサソードに受けたダメージも決して小さくはない。寧ろよくここまで持ったものだ……」

影山「だってさ」

剣「あ、あぁ! 一番最初に脱落してしまったが、俺もちゃんと役に立てたのだな……! 良かった……」



シュウゥウン……!



真司「……! あれ? ここって……あ、皆! 霧島さんも!」

巧「……お疲れ、真司さん。ほら」グイ

真司「あ、あぁ、ありがと巧……そっか、俺やられちゃったかぁ……」

木場「でも、凄かったですよ! 俺があそこにいても、城戸さんほどうまく立ち回れたかどうか……」

真司「え? そう? あはは、やっぱ俺って強いかな~? へへへ!」

美穂「しーんーじーくーん……?」

巧(あっ……)

真司「霧島さんもお疲れ~! いやー中々大変な勝負だったよなぁ! って言ってもまだ音也が戦ってるけど、まぁだいじょ――」

美穂「ねぇ、真司君? あたし、チームの中で最初に脱落したんだけどぉ……あの時すぐ傍に居たよね?」

真司「え? まぁ、そうだね」

美穂「真司君さぁ……なんでこの勝負、参加しようと思ったんだっけ?」

真司「え? えーーっと、そういえば…………ぁ」

美穂「あたしの事全っ然守れてないじゃないのーーー!!!」ガシッ! グラグラグラ!

真司「ちょ、待って!! ごめん!! ごめんて!! あの時は反応しようにも突然すぎて!! 気が付いたらもう霧島さん吹っ飛んでてさ!?」ガクガク



美穂「それにしたって何でよりによってこの一番痛くて腹立つヤツに負けなきゃなんないんだよーーッ!!」グワングワン

真司「ちょちょちょ!? 首が、首がしまるぅぅ……!!」ギチギチ

影山「おいおい~、八つ当たりはやめろよ~、幾ら俺に、『負・け・た』のが悔しいからって味方に当たっちゃ駄目だろ~~」プークスクス

美穂「……あんた、はぁ~~……!!」ギュウゥウゥ…!

真司「ぐぇーー!? なんで強めるのー……!? や、やめて……許して……!」

美穂「これであいつまで負けたら……!! もう、あたしはっ……!!」

真司「だ、大丈夫だって……! 音也はちゃんと勝つよ! そのために俺が守ったんだから……!」ウググ…

湊「? そのために守った?」

美穂「……どういう事?」パッ

真司「ゲホゲホ……えっと、俺、大道が元○玉撃って来た時、何となくもう勝ち残れないな、って思ってたから、音也に確実に残ってもらって、決着は任せようと思ってたんだ」

剣「しかし、いくら大道も消耗しているとはいえ、同じく消耗している紅では、もうイクサとエターナルの性能差は埋められないように思うが……」

木場「確かに……武器もあのベルトの装備だけじゃあ……」

真司「大丈夫! ちゃーんと俺が残してきたから!」

巧「残した?」

真司「後は音也がそれをうまく使ってくれれば……!」



エターナル「……どこだ……どこにいる……!」サッ!

エターナル(また爆炎に紛れて姿を隠したか……! だがお前はもう逃げた所でどうにもならない! 味方が残ってない以上、お前自身が戦うしかない!)

エターナル(もっとも、飛び道具も無い今のお前では、遠距離からも攻撃できる俺との相性は最悪だ……!)

エターナル(煙が晴れる前に、俺に必殺の一撃を与えるしかないお前は、必然的に俺に近づこうとする)

エターナル(そのベルトのナックルを操作して、攻撃準備に入る……だがそれが駄目だ!)

エターナル(あの機械音声が鳴った瞬間、お前は位置を俺に教える事になる。その時点でお前の攻撃範囲内に居ない俺は、遠距離から一方的にお前を狙い撃てる!!)

エターナル(俺の方も中盤でのダメージが響いてきてるが……それでももうお前に負ける要素は無い!)




エターナル(お前が動いた瞬間……ブラッディヘルブレイドで止めを刺す!!)



ヒュウゥゥゥ……






エターナル「………………」





ヒュウゥゥゥ…………








【イ・ク・サ――――】




エターナル(来た!! 音が地上から宙に移動している! 飛び込んで叩き込む気か……!!)




【――――ナ・ッ・ク・ル――――】




エターナル(だが詰めが甘かったな……!! 紅音也!!)




エターナル「そこだあぁッッ!!!」ギャキィッ!!



ズバアァーーッッ!!!


ガガガガッ!! ドドオオォーーン……!!




エターナル「……取った……!!」










【――――ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ】




エターナル「!?」




エターナル(馬鹿な……何故まだ音声が流れて―――!?)




ブワアァァーー…………



カシャンッ! コロコロ……







イクサナックル【ピロロロロ、ピロロロロロ……】





エターナル「!!!! ナックル……だけが……!?」






ゴギャッ!! バキィィン!!




エターナル「があっは……!!?」




ドサァ……!!





イクサ「おいおい、一回殴っただけで折れやがったぞこの剣。なんだこりゃあ、脆過ぎだろう」ポイッ




エターナル「お……お、前……!! わざと、その武器の音を鳴らして……! 囮に、使ったのか……!!」

イクサ「おうよ。俺が技を使おうとすれば音に反応して迎撃されるのは解りきってた。だからそれを逆手に取って、イクサナックルを鳴らした直後に宙に放り投げたのさ!」

エターナル「……フ、クハハ……なんて、奴だ……」フラッ…ガクッ





◇観客席◇



真司「よっっっしゃああぁーー!! ナイス音也ぁ!!」

木場「す、凄い……! あのとんでもない強さのライダーを、追い詰めた……!!」

巧「マジかよ、あいつ……!!」

チェイス「なんという発想力だ……! 戦場の土壇場でそれを思いつくなど……!」

戒斗「……本当にこれがただの一般人か?」

湊「しっかり城戸君が残した武器も活用してるわね……ちゃんと常に状況を把握できる人間でないと、この一連の流れは不可能よ……大したものだわ……」

美穂「真司あんた、こうなる事が分かってて……!!」

真司「え、いや全然!! 何となーく俺のソードベントをうまく活用してくれればなーって程度で! いやでもホントよくやったよ音也ー!!」ウオー!!

剣「まさか……!! ここまで来て……!?」

影山「おおおーーい!! 大道しっかりしろ!? 立て大道おぉーー!!」

真司「行けーー音也ぁぁーー!!」ウヒャー!







イクサ「さぁて、そんじゃまぁ……」




ヒョイッ、パシンッ!


ピロロロロ……!!



イクサ「チェックメイト……と行きますか……!!」ググッ…!


エターナル「……ぐぅッ……! チィッ……」バタッ

エターナル(足が動かない……這う事すらできない……詰んだか……!)



イクサ「…………俺達の……勝ちだァ!!!」グンッ!!




ギュオォオォ……!!



エターナル(……まぁ、だが……悪くはない……いい……戦いだった……)




ピタッ……!!



イクサ「………………」

エターナル「……!?」

エターナル(止まった……?)




イクサ「…………ぉ……う、ぉ……!」

エターナル「……おい、何だ一体……!? 何のつもりだ!」

イクサ「……す、すまん……悪いが……っ……」











イクサ「ギブアップだっ……!!!」





エターナル「………………はぁ?」



イクサ「降参だ……!! 俺の負け……負けでいい……!!」

エターナル「お前、何を……!?」




アナウンス『仮面ライダーイクサ・紅音也、降参宣言により、リタイアです』

アナウンス『レッドチーム、全滅! 勝者、ブルーチーム! おめでとうございます!』

アナウンス『各参加者にライダーポイントが支払われます。ご確認ください』

アナウンス『バトルは終了です。お疲れ様でした』




シュウウゥゥン……!







手塚「何?」

擬態天道「え?」

北岡「あぁ?」

始「ギブ、アップ?」

蓮「……何でだ……?」

草加「……なんだこいつ……」





木野「…………これは……」

ザンキ「どういう事だ……?」

荘吉(……まさか……)




真司・美穂「「…………はああぁあぁぁぁ!!??」」

巧「おい、何が起きてんだ。これ……」

チェイス「……俺にも分からん……」



シュウゥゥン……!




音也「…………」

克己「……おい、紅……!!」

真司「音也ああぁぁ!!? おま、お前っ!! 何、何して、え!? なんでぇ!?」

音也「……あ、あぁ、駄目だ! もう、あ……い、急げぇ……!!」パタパタ!

美穂「ちょっと!? どこ行くんだよ!? 待てぇーー!!」ダダダッ!!

真司「音也ぁーー!!!」ダダッ!!

克己「…………」

巧「……どうするよ」

木場「一応、追いかけたほうがいいんじゃ……?」

影山「…………えっ、じゃあ俺達が勝ったのか?」

剣「……素直に喜べないな……」

チェイス「音也の様子がおかしい……何があったのだ?」






音也「……ハァ、ハァ……!! ど、どこだ……!? どこにある!?」アセアセ

真司「音也ぁ!!」ガシッ!!

音也「うげぇ!?」

美穂「あんた、何であそこで降参すんの!? 意味が分からないんだけどぉ!!?」

真司「そーだよあと一歩だったじゃんか!? 何でだよ何考えてんだよぉ!?」グラングラン!

音也「おまっ……!! 馬鹿、真司……やめっ……!!」




蓮「……城戸、何があった?」テクテク

北岡「おいおい城戸、どーいう事よ、これ。興ざめする決着だなぁ」

真司「俺が聞きたいよ!! 何の理由があってあのタイミングで……!!」グワングワン!

音也「や、やめて……本当に……もう……!」マッサオ

始「……そいつ、随分顔色が悪いようだが」

擬態天道「……病気……?」

手塚「この世界でそれは考えづらいが……」

草加「…………フン」






巧「おい、音也!」

チェイス「いったい何事だ」

戒斗「何を考えている貴様。確実に勝てた勝負を自ら放棄するなど、戦った相手への侮辱と同じだぞ!」

木場「……お腹でも痛くなったんじゃ……?」

湊「……ねぇ、ひょっとして彼……」

克己「……!」




荘吉「城戸真司……そいつから離れた方がいい」カツカツ

真司「えぇ?! でもこいつが何を考えてるのか――!」

荘吉「もしくはトイレに連れていけ……いや、間に合いそうにないか……いいから離れろ」

ザンキ「! こいつまさか……!」

木野「……もう限界のようだ……」




蓮「……!! 城戸、そいつを離せ!」

真司「さっきから何のことを……!」

音也「……お、うげ……もう、無……理……!!」

真司「え?」











音也「お゛お゛お゛ぉぉげえ゛え゛えお゛ぼろろろろろろ……!!!」



びちゃびちゃびちゃべちゃベちゃああぁ…………!!

べちゃ……べちゃ……





真司「     」



美穂「…………」

湊「……やっぱり……」

戒斗「…………」

始「…………」

木場「う、わぁ……」

巧「…………」

チェイス「巧、音也が吐いたぞ」

巧「言うな……理解したくねぇ……!!」

克己(……俺は……こいつに、追い詰められ……いや、実質負けて……)

蓮「…………城戸……」

北岡「……っぶううっふうぅwww!!」




プ~~ン……



真司「…………」グチャア…

真司「……っ……ッ……」ネトォ…




真司「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーっっ!!!!」

真司「う゛、ううああぁあぁあ……!! お、おおぉ音也あああぁーー!!!!」

音也「…………うげえぇ……お、おうぅっぷ……!!」

真司「!!? ヒッ……!!」

音也「うう゛お゛ぉぉぉえええぇえぇ……!!」ベチャベチャボタボタ…!

真司「ん゛ん゛ん゛あああああ!!? やめろおおぉぉ!!!」グッチャアァ



巧「ハッ! お、おい! ぼけっと見てる場合じゃない! 音也を引きはがすぞ!」サッ

チェイス「分かった」サッ





木場「……吐き気で、気持ち悪かったのか……」

戒斗「…………何という男だ……」ハァ

湊「…………無いわね」

美穂「…………うん、無い」

影山「……くっせぇ」ハナツマミ

剣「……高貴さの……かけらも無い……」ハナツマミ




北岡「ああぁっはっはっははははっはっははwwwww!!」ゲラゲラ

手塚「……北岡、笑い過ぎだ……」

北岡「こっ、これが、笑わずにいられるかよ!! 城戸、お前サイコーだよwww!!」プギャー

真司「笑うなあぁ!! 何が、何が面白いんだッ!! こんな、こん゛な最悪な゛っ……ううぅうえぇ、えっぐ……ひっく……!!」ネチャネチャ

巧「マジ泣きだよ……気持ちはわかるけどさ……」ズルズル

音也「うーーーあーー……」ゴロン

巧「寝転がるな!! 床が汚れんだろ……!!」

チェイス「真司、大丈夫か?」ハナツマミ

真司「大丈夫じゃないよ!! くそぉ……!! 蓮、助けてぇ……!」スッ

蓮「寄るな! 付いたらどうする!」ササッ

真司「……くそぉ……」

巧「……俺たちはこいつを家に連れてくよ……」ヨッコラセ

木場「……大丈夫? 手伝おうか……?」

巧「いや、いいよ……気持ちだけ受け取っとくぜ……」ゲンナリ

音也「……あ゛~~、ちょっと楽になってきたぁ……」スッキリ

巧「だろうな……!」





チェイス「行こう真司。服も髪も何も洗わなければ……」ハナツマミ

真司「手を差し出しつつ鼻をつまんでいうなよ……! 失礼だろ! 俺何も悪くないのに!!」グスッ

チェイス「あぁ。お前は悪くない。分かっている」ハナツマミ

真司「…………」

チェイス「それはともかく、服の端をもって歩いてくれ。吐瀉物が落ちてしまう」

真司「………あ゛ん゛ま゛り゛だ……!!!」ポロ…ポロ…





<ほら、しっかり歩け!!

<……なんか、腹減ったな……

<うるさいよ馬鹿音也ぁ!!

<真司、静かに進め。吐瀉物が落ちる





蓮「…………」

草加「あの男がいる時点で、他の3人はかなり苦労するだろうなぁ」

始「お前、紅が催してるのを察してたな?」

草加「本当は乾にぶちまけてくれたら一番面白かったんだけどねぇ。ま、介抱役をしなきゃいけなくなっただけでも十分面白いけど」クク





克己「…………チッ……」

克己(こんな物は勝ちと思わないぞ……紅音也……!)





ここまでです。

というわけで、本当に、ながーく続いてしまった真司達の戦いは音也のゲロで幕を閉じました(白目)
なんでこうなったんだろう……最初に考えてたのと違う……


次回は少し時間が飛びます。

見てる人いるかわからないけど、>>1です。何の連絡もなく何カ月も放置してすみません。
前回の投下後に、出産をひかえたペットが突然亡くなって精神的に参ってしまいまして、とてもSSを書けるような状態じゃありませんでした。
生存報告をするのも億劫なくらい色々手につかなくなってたのですが、最近やっと少し吹っ切れてきたので今こうして報告に来たしだいです。

で、肝心の更新の方なんですが、ここまでチマチマとやってて今更ですが、自分には少量投下を定期的に続けるやり方が合ってないと自覚し
これからもリアルで何かある度に、待ってくれてる方々に報告すらもできなくなる位なら、いっそ全部書くきたいもの書き切れるまで投下は封印した方がいいのではと思い、非常に勝手な話なのですが、このSSは一旦ここで終了とさせてください。
あくまでも一旦終了なので、書き溜めが完結、あるいは終盤に入ったら新しくスレを建てます。いつまでに戻ってくる、などの具体的な事は言えませんが、このまま不完全燃焼なのは自分が嫌なので、必ず戻ってきます。一番描きたいと思った話がまだまだあるので。
過去作の件などで信用できない方もいるかもしれませんが、それならそれでもかまいません。次にスレを建てるのは本当に最後まで書いた時なので。
もしいつか見覚えがあるスレタイを見かけたらまた覗いてやってください。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月30日 (金) 22:07:03   ID: aFyA-xN1

ホッパーは安定の体育座り

2 :  SS好きの774さん   2018年10月18日 (木) 18:18:45   ID: 632IuLhe

そのうち再開してほしいなぁ…
克己ちゃんが来られるならクロニクルクリアに貢献したってことで黎斗も来れそうだなぁ
絶対一悶着じゃすまなそうだけど…

3 :  SS好きの774さん   2018年12月17日 (月) 08:53:45   ID: lHHtYJ4O

正直かなり面白い
数か月置き更新なんて他のSSで慣れてるから、また建ててチマチマでいいから書いてほしい

4 :  SS好きの774さん   2019年06月17日 (月) 19:31:25   ID: FLtDkgBx

すっごい面白かった
失踪じゃなくて報告してくれてるのもとても良い!

5 :  SS好きの774さん   2019年11月05日 (火) 23:36:43   ID: yqMyTl5X

もうジオウも終わったで。未だに待ってます

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