【サモンナイト】四界の遺産 (69)
サモンナイトの世界を題材にオリジナルキャラでオリジナルストーリー
デッドエンド、カルマエンド、ハッピーエンドにノーマルエンド、選択肢によって分岐
主人公は女の子固定
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457885246
《0章 過去と今》
???(将来のこと、なんて考えてもみなかった)
???(家の教えに従って勉強して、学校へ行って遊んで――)
???(そうして私は、いつの間にか大人になっていた)
???(私は――)
↓1 召喚術、武術、どちらを重点的に学んだか
↓2 強さはどれほどか、コンマでの判定。高いほど強い
召喚師タイプ 強さ中程度
???(学んだ召喚術を活かす、私の道を探していた)
???(青の派閥……私の両親も所属していたそこに所属して、何らかの仕事を探すのが普通)
???(でも私は何故かそれが嫌だった)
???(それなりに私は強いし、召喚術の才能だって勿論ある)
???(自慢ではないけど、二つの世界の召喚術に適正だって)
???(そう――)
↓1 主人公が適正のある属性 獣、鬼、霊、機から二つ
>>5
蒼の派閥やで
獣、霊の二つ
>>7 うおっと、ごめんなさい。と、ありがとうございます
???(メイトルパ、サプレスの二つ)
???(実家がサプレスの召喚師の家系だったから、霊界の適正があるのはまぁ当然といえば当然)
???(でもそれに加えて幻獣界の召喚術……天才とも言えなくもない)
???(さて、そんな天才気味な、中途半端で地味だった私――)
???(成人して、蒼の派閥に所属して――なんて、曖昧な、ぽわっとした人生設計をしていたのだけど)
???(人生、そう思い通りにはいかないものだ)
『お屋敷 中庭』
???「はぁ……」
???(欠伸。だだっ広い芝生が広がる場所の隅にある木陰、私はそこで昔のことを思い出していた)
???(先の見えない未来。私が歩く先は誰にも見えない。それは分かっていたのに、まさかこうも変化するなんて)
???「本当、分からない……」
???「何が分からないんだ?」
???「っ!?」
???(飛び起きる。身体を起こして前を見れば、よく見知った顔が眉をひそめてこちらを見ていた)
???「まったく、仕事は終わっているのか? それと、メイドが地べたに寝転がるのはどうなんだ?」
???(私の仕事の先輩。可愛い声の男らしい口調で話す、小さい女の子にしか見えないメイドさん)
???(名前はキリカ。背中に槍を背負っているのと幼い容姿以外、普通のメイドさんだ)
???(いやまぁ、容姿が服装以外おかしなのは普通のメイドなのかは疑わしいのだけれど)
キリカ「こら、レイス。無視か」
レイス「……いえ。ちょっと考え事を」
レイス(立ち上がる。白黒のメイド服のスカートについた汚れを払い、目線がすっかり合わなくなった先輩を見つめる)
レイス「――先輩、何か用ですか?」
キリカ「お前な……。忘れてたのか? 仕事が終わってゆっくりするのはいいけど、鍛練もしないとだろ?」
レイス「鍛練、ですか」
キリカ「ああ。自衛できるだけの強さを身につける。ご主人様の指示だろ」
レイス(そう言って、先輩は私を見上げる。私の反応を注意深く見る、値踏みするような目)
レイス(本来なら威圧感のちょっとくらいある表情なのだろう。でも、そんなものちっともない)
レイス(……理由は語らず)
レイス「鍛練――毎日なんですか?」
レイス(それは初耳だ。誰にも説明されなかったはずだけれど)
キリカ「うむ。本来ならな。お前が入社から何日も来なかったから私が呼びに来たわけだ」
レイス(が、どうやらお決まりのルールらしい。社会の暗黙の了解というやつだろうか)
レイス(当然の常識であろうそれを、私が知らなかったのは――ひとえに私の人付き合いの悪さに原因があるだろう)
レイス「それは、まぁ……知りませんでした」
キリカ「だろうな。だから責めはしない。とりあえず、ついてきてくれ」
レイス「……ええ」
レイス(断るわけにもいかない。私は頷いて、ひょこひょこ歩く背中についていく)
個別エンドは勿論あり。
時代は2、4の辺り……と考えてますが、ゲームしたのかなり昔で、矛盾が出るかも。勉強頑張る
『お屋敷 鍛練場』
レイス(先輩に連れられてきたのは、お屋敷の裏側)
レイス(森と屋敷に挟まれた、物寂しい場所だ)
キリカ「よし、それじゃ始めるぞ」
レイス「……あの、他に人は?」
キリカ「いないぞ? 他の奴らは時間が合わないからな」
レイス(ということは私が行かなかった、イコール、先輩一人で鍛練ということになる。この微妙に薄暗い訓練場で)
レイス(同情してしまう)
キリカ「……? どうした? 召喚師のお前も、武器くらい使えるだろ?」
レイス「え、ええ。でもここで何を?」
キリカ「そうだな……基礎は習っているだろうし、とりあえず実戦か」
キリカ「さ、武器を構えろ」
レイス(とりあえず実戦……酒場でそれに近い言葉を聞いたことがあるけど、これは妙に恐ろしい響きだ)
レイス(私は口元だけの苦笑をすると、身につけていた武器を構えた)
↓1 主人公の使用武器 杖、短剣、剣のいずれか
レイス(杖。召喚師の力を強めてくれる武器)
レイス(召喚師が使う武器としては無難なものだ)
キリカ「杖か……。ま、武術とちょっと違うがなんとかなるだろ」
レイス「加減してくださいよ」
キリカ「ん。了解したから召喚術はやめろよ。屋敷が壊れる」
レイス(圧倒的に私が不利な条件である。けれどこれでも……)
キリカ「さぁ、やろうか」
レイス(あのちっちゃい子なら倒せるのでは、なんて思う私もいる)
レイス(思い切り油断している私である)
レイス「……はい。いつでも」
レイス(……さて。杖を使った実は戦闘はそれほど得意ではない)
レイス(武術の心得は習ったけど、身体能力は中の上程度。召喚術を使えないとなると、私はどれだけの戦力なのか)
レイス(きっと、すぐ結論が出てしまう程度のものだろう)
レイス(ふむ……相手は槍使い。突きというものは剣を振られるより厄介なものでもある。どう戦うか)
・とにかく動き回る
・真正面から殴る
・屋敷が壊れない憑依召喚でも
↓1
今日はここで終わりま
憑依召喚 揚げ足取りで、若干カルマ値上昇
レイス(屋敷を壊さないなら召喚もいいのだろう。なら憑依だ。……バレないように唱えておこう)
キリカ「んじゃいくぞ。真面目にやれよ」
レイス「――はい。怪我はしたくないですし」
レイス(私の言葉を聞くよりも早く、先輩が走り出す。小さい背丈に似合ったちょこまかとした速さ。あっという間に私の前に先輩がやってくる)
レイス(流石の速さ。伊達に戦闘訓練をしている奇妙なお屋敷のメイド長と呼ばれてはいないということか)
レイス「……いなす」
キリカ「――っと!」バッ
レイス(反応も早い。彼女が突き出してきた槍を払い、反撃に先輩へと杖を大きく横で振るう。大袈裟な攻撃は勿論避けられる)
レイス「――」ボソボソッ
レイス(けどそれは布石。彼女が離れた隙に私は杖を自分へ引き戻すフリをして腕で口を隠す。そして小声で詠唱。果たしてこれで成立するのかと不安だったけれど、上手くいってくれたようだ)
レイス(私の力を増す召喚による憑依。元が元だから効果が薄いけど、それでも今は有り難い)
レイス「……!」ダッ
キリカ「うん、いいな。鋭さもあるし、ちゃんと見てる」
レイス(でも当たらないとまったく意味がないわけで。狙いをすまして最低限のモーションで杖を突き出したというのに、余裕の表情で回避してしまう先輩)
レイス(なんだこの人は。攻撃があらかじめ宣言されてるみたいに、気持ち悪いくらい綺麗に横に動いた)
レイス(これは……召喚術まともに使えないと、駄目かもし――)
レイス「えぐっ!?」
レイス(なんて思った直後に私のお腹に槍が叩きこまれた。刃でなく柄。余裕が容易にとれた)
レイス(どうやら先輩はかなり強いらしい。……痛い)
キリカ「ん、中々だな。召喚師にしては筋がいい」
レイス「ど、どうも……」
キリカ「けどあれだ。ズルしておいて、こんな楽に負けるなんて情けないというか」
レイス(バレてた)
キリカ「いいけどな。攻撃されるまで分からなかったし、実戦ではそれくらい強かな方がいい」
レイス「先輩、かなり余裕ですね」
キリカ「先輩だからな。まだまだメイドには負けん」
レイス(得意げな顔をする先輩。メイド……確かお屋敷には私と先輩の他に三人、四人しかいなかったような)
レイス(やっぱり先輩でも男には負けるのだろうか)
キリカ「昼飯にするか」
レイス「昼飯? そういえばもうそんな時間ですね」
キリカ「だろ? 食堂行って、腹いっぱい食べて、午後の仕事も頑張ろうぜ」
レイス「ですね。賛成です」
レイス(異論はない。私は頷くと、痛む脇腹をさすりながら杖をしまった)
レイス(食堂には私の怪我を無視するだけのメリットがある。他では食べられなそうな美味しいご飯。それをタダで食べられるのだから、行かない理由はない)
キリカ「うっし、今日のランチは何か。楽しみだなぁー」
レイス(うきうき雰囲気で槍を背負う先輩。私も真顔に近いだろうけど、内心わくわく気分で杖をしまった)
レイス(ご飯。この淡白なお屋敷生活で、唯一といってもいい楽しみだ)
レイス「寂しい人間ですね……」
『お屋敷 食堂』
レイス(辺りを山に囲まれ、ぽつんと建つお屋敷。敷地も広大だけれど、建物自体も異様に大きい)
レイス(これがどこかの王族の別宅だとか言われても納得できるくらい大きくて、立派な屋敷だ)
レイス(これを建てて、かつ維持して、使用人を雇うご主人様――)
レイス(さぞ、立派な勝ち組大人なのだろうと世間の人間は思うことだろう。私も思った)
???「あ、レイスにキリカ。ご飯?」
レイス(けれど現実は思う通りにならないもので。食堂へ入った私達を出迎えたのは、パフェを食べるご主人様)
レイス(いつもの光景だ。10代中間の女の子が、甘いものを食べて顔をゆるめている。どこにでもありそうな、普通の光景)
レイス(だがそれは、彼女が私達のご主人様だということを加えると、とてつもなく不思議なものとなる)
レイス(ウェーブのかかったロングの明るい色の茶髪。歳相応の身長に、華奢なスタイル。服からアクセサリ、身だしなみどれをとってもキラキラとした綺麗な人。初めて彼女を見た時、背伸びをした子供を見たような印象を受けたのをよく覚えている)
キリカ「おう、仕事も一段落ついたからな」
???「そっか。なら一緒の席にどうぞ」
キリカ「うむ、お邪魔する」
レイス(もっとも、今もその印象は拭えないのだが。ご主人様と呼ぶ以外は友人と接するのと大して変わらないし)
レイス(……で、ええと。ご主人様の名前は――確か、リア)
レイス(多分。いつもご主人様だからはっきり言えないけど)
リア「定食二つ! ――それで、どう? 仕事に慣れた?」
レイス「……ええ。ちょっとは」
リア「頼りない返事ね。レイスなら活躍できると思ったんだけど」
キリカ「活躍もなにもないような気が」
リア「そうだけど、もっとこう、新人が入ったんだからなにかイベントがあってもいんじゃない?」
リア「胸躍るような何かが、こうパッと!」
???「あはは……無茶言ってますね」
レイス(大きな身振りで何かを表現するご主人様。先輩と半ば呆れながら見ていると、横から苦笑が)
レイス(そしてテーブルにトレイに載った料理が一人前、先輩の前に置かれる)
キリカ「お、来たか。今日の料理も美味しそうだなぁ、コンル」
コンル「どうも。僕のお仕事ですからね。気合いいれました」
レイス(先輩に笑顔を向け、丁寧に頭を下げる青年。料理を運んできた、執事服姿のこの男性は私達の同僚である)
レイス(執事であり、ご主人様の身の回りの世話、料理を任されている万能人間だ)
レイス(すごいのだけどいかんせん見た目が地味で、性格もまた控え目。あまりその手腕が目立たない、損な人だ)
レイス(なんでも、私がここへ来る前にご主人様からスカウトされたらしい)
レイス(その前は召喚師関連の仕事を両親から引き継ごうと思っていたそうな)
レイス(もし私が男だったら、彼のような立場にいるのだろうか。なんて気がしてならない)
『今日はここまでで』
【戦闘がないから、ギャグ選択肢以外は気軽にカルマ値が上がりま。ご注意を】
コンル「そうそうイベントなんて起きませんよ。こんな場所ですしね」
リア「そうゆうものかなぁ」
キリカ「そういうものだ。この山の中じゃ、そんなトラブルとも無縁だろ」
レイス(山の中。そう、このお屋敷は山の中にある)
レイス(それほど高くはない、森と呼んでも差し支え無い程度の高度なのだけれど、人里離れた場所にあることには変わりない)
レイス(仕事上、それほど街から離れていても不便はない。でもこの場所でイベントなど、何が起こるというのだろうか。私には想像できない)
リア「そっかぁ、仕方ないのかな」
レイス(それはご主人様も分かっているはずなのだけど、彼女は渋々といった様子で納得した様子を見せ、私を見た)
リア「にしても、レイスはよくここで働く気になったわよね」
レイス(『それをスカウトしたお前が言うのか』といった旨の顔をみんながした)
リア「給料は良さ気だけど、周りに何もないし、召喚師として働いた方が良かったんじゃない?」
コンル「――確かに、それはそうですね」コトッ
レイス(いつの間にか私の分の料理を持ってきてくれたコンルが、ご主人様の言葉に同意。彼もまた、召喚師の道を捨ててこちらへ来た身。気になるようだ)
キリカ「確かに。召喚師といえば、みんなの憧れでもあるからな。どうしてここに来たんだ?」
レイス「うーん……特に理由はないですけど、召喚師にならなくて済むからですから、かもしれませんね」
リア「召喚師に?」
レイス「ええ。蒼の派閥は学問とか研究とか、面白くなさそうで。金も私に合わなそうな感じなので」
コンル「うんうん。まぁ二つともインテリといえばインテリだよね。社会的というか」
レイス「うん。あのまま進んだら、なんだかどこにも行けないような気がしまして」
レイス(根拠はない。でも、そんな気がした。それだけでも理由としては、大きかった)
レイス(私には将来を決める夢も目標もなかったから)
レイス(語り、私は料理を口にする。今日はロールキャベツとパンにサラダとスープ。彩り豊かな、栄養面も優秀なメニューだ。味は言わずもがな)
リア「だから、いきなり来た私のメイドさん勧誘にも即頷いたと」
レイス「ですね。それに、メイドとして働くのも興味はありましたし」
レイス(嘘は言っていない。過程はどれであれ、結論はそうだ)
リア「そっかそっか。どんな理由であれ、レイスが来てくれるのは嬉しいな」
コンル「ご主人様、かわいいもの好きですからね」
リア「それは世間の噂。こんな場所に来る物好きな人間が少ないから、嬉しいだけよ」
レイス(そう言って、ご主人様は先輩の頭を撫でる。……説得力がない)
???「相変わらず、賑やかだな」
レイス「あ……ギリンさん」
レイス(昼食時のお屋敷食堂。そこへ遅れて中年の男性が一人、やって来る)
レイス(コンルよりちょっとお洒落な執事服。それを着崩して身につけた、おひげの生えたおじさん。先輩より外見はよっぽど先輩らしい。けれど先輩より仕事歴は短いらしい。ややこしいものだ)
リア「お、ギリン。そっちは相変わらず仕事熱心ね」
ギリン「少し遅くなっただけだ。コンル。俺には甘いものを」
コンル「いいですけど、たまには普通のお昼ごはん――」
ギリン「ほら早く」
コンル「はいはい。分かりました」
レイス(私の隣に座るギリンさんに急かされ、苦笑しつつ厨房に向かうコンル)
ギリン「……ふぅ。今日も退屈だな」
リア「だよね! 私もそう言ってたところなの」
キリカ「平穏を楽しめ。っていうか、なにかあったら間違いなく面倒だろ」
リア「え-? そうかな?」
ギリン「だな」
リア「えー?」
レイス(どうやら刺激を求めているのはご主人様だけらしい)
レイス(仕事をはじめてから何日か。いつもの面子で、いつもの会話。みんなが話しているのを、私は食事をしながらのんびりと眺めていた)
レイス(決して中心には立たない、喧騒を近くから、参加せず眺めるこの距離感が、私は好きだった)
レイス(のんびりと仕事をこなして、ゆるやかな変化を受け止めて、そうして生きていけたら――)
レイス(私は、そんなことを思っていた)
・厨房
・中庭
・事務室
・門
↓1~2 会話イベント 上の場所から一つの安価で一つずつ選択
『お屋敷の門』
レイス(さて、食事を終えた私は門の掃除へやって来た)
レイス(お屋敷の周囲は柵で囲われている。その柵が途切れる唯一の場所が、この門である)
レイス(柵自体は登れることはない高さなのだけど、ご主人様いわく門と柵は異界の技術を流用しているらしい)
レイス(すごいことは分かる。でもいまいち効果は実感できない)
レイス「……こんなものですかね」
レイス「大きいから、掃除も一苦労です」
レイス(一人言をもらし、私は閉じている門を見上げた)
レイス(私の身長をゆうに越す、大きな門。ただの鉄製のものにも見えるけれど、これが――)
レイス「ん?」
レイス(ふと、私は妙な気配に気づく。門の先。森の中に誰かがいるような気がしたのだ)
レイス(見た目的には、そんなことないのだけれど――どういうことか)
A・声をかける
B・スルー
↓1
レイス(声をかけてみるかな……)
レイス「誰かいるんですか?」
レイス(誰もいないはずの森の中へ声をかける。すごく恥ずかしいけど、妙に気になってしまい放っておくことはできなかった)
???『……!?』
レイス「へっ!?」
レイス(文字に起こせないほど小さな、息を呑む声。意表をつかれた私は、素っ頓狂な声を出す。まさか本当に誰かいるなんて)
レイス「へ、返事をしてください!」
『……』
レイス(再度声掛け。だが今度は無言。変わらず誰かいるような気もするけど……気のせいだったのだろうか)
リア「レイス? どしたの、一人で声出して」
レイス(じーっと目を凝らして森を見ていると、上から声がかかる。ご主人様だ。二階の窓からひょっこりと顔を出している)
レイス「何かいたような気がしまして。声もしたような……」
リア「え? ここ山の中だけど? なんの用があんの?」
レイス「そ、そうなんですけど……」
レイス(分かっていた正論で諭されると寂しくなるものだ)
リア「まぁ、仕事にしてもご主人様の私がそんな話聞いてないし、気のせいじゃない?」
レイス「ですかねぇ……」
レイス(顔を引っ込めたご主人様から、森へ。再び見ると、妙な気配は消えていた)
レイス「気のせい……なんですかね?」
レイス「……仕事しないと」
『お屋敷 中庭』
レイス(朝、私がのほほんとしていた中庭。道具を手に、私はあちこちをうろついて綺麗にして回る)
レイス(時には芝生、時には木、時にはお屋敷の窓や窓枠を)
レイス(掃除は毎日しているのだけど、やはり外。汚れがなくなることはない)
キリカ「レイス。そこ拭いといて」
レイス「了解です」
レイス(先輩と二人で掃除をしていても、それは変わらず)
キリカ「ふぅっ、やることがなくならないのはいいが、やっぱり大変だな」
レイス「ですね。大きいですから」
キリカ「こんなおっきな屋敷作ってなに考えてんだか。メイドも執事も5人以下しかいないし」
キリカ「明らかに労働力不足だ」
レイス「……はは」
レイス(否定できない。短い時間だけど働いていて、何度も思ったから)
A・他のメイドは?
B・でも楽しいですよ
C・のんびりやりましょう
↓1
レイス「他のメイドは?」
レイス(私と先輩以外にもメイドはいる。その人達が手伝ってくれるならば、苦労も少なくはなるはず)
キリカ「ん? 他のは他の仕事してるぜ」
レイス「他のですか?」
キリカ「おうとも。この屋敷は仕事場だから――って知らなかったのか?」
レイス「え、ええ。ちっとも」
キリカ「レイス、お前どうやって勧誘されたんだ」
レイス「え? 私のする仕事を話されて、場所を説明されて、給料の話をして――」
レイス「主に、私がするべき仕事のことだけ話されましたね」
キリカ「……存外、レイスも変わってるよな」
レイス(すごい真顔で言われた。確かに私も自分の選択をあまり常識的だとは思わない)
レイス(でもそれを選んだ理由はきちんとあるのだ。何を隠そう――)
レイス(堅苦しい召喚術関連のお仕事以外ならなんでも、なんてスタンスでいたから)
レイス(……いたからなのだ)
レイス「でも、そうですか。仕事してたんですね」
キリカ「そりゃそうだ。武器に防具、アクセサリー……幅広くやってるぞ」
レイス「ほ、ほぅ……さすが大きなお屋敷を持つご主人様です」
キリカ「ま、屋敷ではアクセサリーが主なんだけどな。あと木材の調達とか加工とか」
レイス「なるほど。それで、こうして雑用するメイドが少ないわけですか」
キリカ「ああ。ただの従業員もメイドとしてここにいるからな。実際はあの人数よりもっと少ない」
レイス「えぇー……」
レイス(ということは、私と先輩で頑張るしかないのだ)
レイス(これが専門知識がない人間の行き着く職ということか。でもこの仕事は好きだし、感謝しなければ)
レイス「じゃあ頑張らないとですね」
キリカ「おう。いい子ちゃんだなぁ、レイスは」
レイス(年寄りのように目を細めてしみじみ言う先輩。私たちは自然と会話を切り上げ、仕事を再開した)
『自室』
レイス(仕事を終え、夕食を食べた私は自室へと戻った)
レイス(ベッドと棚にテーブル、クローゼット。最低限の家具が配置された部屋は、まだまだ生活感というものがない)
レイス「今日も働きましたね……」
レイス(しみじみ呟く。程よい労働の疲労感に身を任せ、私はベッドに横になる)
レイス(過去と今。何の面白味のない過去から、私は思いもつかない道へと向かった)
レイス(まだまだ不安は尽きないけれど、とりあえず私は考えることから開放された――のだろう。職に就いたことだし)
レイス(今まで頑張ってきたのだ。だから、少しくらいゆるんでもいいはずだ)
レイス(だって……)
レイス「……」
レイス(あれこれと考えてしまい、すっかり目が冴えてしまった。身体を起こし、私は嘆息する)
レイス「……散歩しますか」
レイス(こういう時は夜風がいいと聞く。落ち着ける場所でも探してみようか)
↓1 序章、夜会話の相手 キリカ、リア、コンル、ギリン の中から一人
『バルコニー』
レイス(行き着いた先は、ここだった)
レイス(お屋敷の二階。門まで伸びる道、山、月明かりに照らされた美しい景色が広がるバルコニー)
レイス(一人で涼むのには中々良さ気な場所だ)
レイス「……」
レイス(一人、夜空を見上げてたそがれる。何も考えずにただ立ち尽くし、前を見る。ゆったりとした時間。仕事をしている人間には貴重な時だ)
キリカ「レイスか?」
レイス(……ね? 貴重でしょう?)
レイス「先輩、どうしてここへ?」
レイス(振り向き、首を傾げる。バルコニーの入り口、大きな窓が開かれ、そこに先輩がいた)
レイス(私と同じくメイド服姿ではなく、いかにも子供っぽい洋服。……あ、私は別に子供っぽい格好はしていない)
キリカ「なんとなく眠れなくて出歩いてたんだ。そしたら、お前を見つけて。先輩として何か悩んでたんじゃないかって、心配してな」
レイス「ただ涼んでいただけですよ。何もないです」
キリカ「そうか? ならいいけど」
レイス(窓を閉め、私の横へ並ぶ先輩。彼女はさっぱりとした顔で前を見つめる)
レイス「……先輩って、いつぐらいからここで働いているんですか?」
キリカ「私か? 三年くらい前だ。ご主人様のご両親に誘われて、この屋敷に来た」
レイス「そうなんですか。なんでここへ?」
キリカ「人が少なくて、仕事もほどほどで、時間と余裕ができるかと思った。それだけだ」
レイス(きっぱりと答えてしまう先輩。私に話すことに躊躇はせず、表情にも変化はない)
レイス(時間と余裕。私もここへ来る前はそれを望んでいた)
レイス(でも先輩は私と似ているようで、似ていない)
レイス(きっとそれは、他の人にも簡単に分かってしまうだろう)
レイス(私は迷いきっている顔をしているだろうから)
キリカ「レイス? どうした?」
レイス「……いえ。なんでもないですよ」
レイス「先輩は、先輩なんだと思いまして」
キリカ「……? 意味が分からん」
レイス(私も、彼女のようにいつかさっぱりとした顔をできるだろうか)
レイス(せめて私が先輩になる前に、そうなりたいものだ)
キリカの好感度が上昇
《一章 平和は突然に》
???『誰も悪くはない』
???『あなたも、あなたのご両親も、ご友人も……そして、この事件を引き起こした犯人も』
???『誰も悪くはないんです』
???『ただ運がなかっただけ。理不尽に襲われただけ』
???『ね? 誰も、悪くはありません』
???『だから誰かを恨むようなことはないんです』
???『誰かを憎むことも、恨むことも、殺すことも……』
???『何も、感じる必要はありません』
『自室』
レイス「……ん」
レイス「……すぅ。ふぅ」
レイス「くー……。……!?」ビクッ
レイス(うなされ、浅くなっていた睡眠。自分でも何か声をもらしているなぁ、なんて思っていた直後、私の耳に轟音が叩きつけられる)
レイス(飛び起きないわけがなかった)
レイス「な、なんですか!?」
レイス「……あれ?」
レイス(ベッドから勢いよく起き、よろけながら床に足をつく。ベッドの近くにあったテーブルに手をついて、私は周囲を見回した)
レイス(――が、何もない。さっきの大きな音が気のせいかと思ってしまうほど静かで、眠る前と同じ静寂と闇が広がるばかり)
レイス「気のせい……なわけがないですよね」
レイス(と思いたい。寝ていたら架空の爆音に起こされるなんて勘弁だ)
レイス(一応、様子を見に行くとしよう。私の今後の快眠のためにも)
レイス「……うん」
レイス(寝間着を脱いでメイド服に。一応杖も持っていく。簡単な支度を整えると私は部屋を出た)
レイス(でも音が聞こえたとして、何があったのだろう)
レイス(まったく意味の分からない状況。真っ暗な廊下をランプの光りだけを頼りに歩いて行く)
レイス(何故だろう。この時私は、いつになく胸騒ぎを覚えていた)
レイス(まるで死の危機がすぐそこまで迫っているような、そんな焦りを)
『お屋敷 廊下』
レイス(闇の中を目的地もなく進むことしばらく)
レイス「……誰もいないですね」
レイス(灯りは仕方ないとして、誰かの足音も、人の気配すらなかった)
レイス(もしかしてあれは本当に気のせいで、何も起こっていないのでは……)
レイス「いやいや。ないない」
レイス「……と思いたいです」
レイス「はぁ。誰かいてくれれば、私の気のせいじゃないって分かるのに」
レイス「誰か……」
レイス(物音一つない廊下。壁に手をついて歩いていた私は、微かに聞こえてきた音に身体を硬直させる)
レイス(待ち望んでいたそれ。けれど聞こえてきた音は、それまで一度も耳にしたことがないものだった)
レイス(一定のペースで音を鳴らし、徐々に近づいてくる。それが足音だとすぐ分かった。そして私の方へ向かっていることも)
レイス(……危ない気がする。私の本能が警鐘を鳴らしている)
レイス(なんであんな足音が。なんで私の位置を分かっているように向かってくる)
レイス「……ッ」
レイス(行動を、起こさないと)
A・声をかける
B・隠れる
↓1
[ちょくちょく落ちて申し訳ない。今日はここまでで寝ま]
[ところがどっこい、戦闘最中などはほぼ即死に近い選択肢もあったり。デッドエンドはすぐやり直しだけれど]
レイス「……誰ですか?」
レイス(音が近づいてくるのをただ待っているのは危ない)
レイス(私は意を決して、暗闇の中の人物へと声をかける)
レイス「……」
レイス(返答はない。足音はやまず、早まることも遅れることもなく一定のペースで近づいてくる)
レイス(高まる緊張感。距離がつまってきたからだろうか。その中に、鋭い殺気を感じるようになった)
レイス(……屋敷の誰でもない。今、はっきりと分かった)
レイス「返事をしてください」
レイス(もう、この後どうなるかは分かった。私は杖を取り出し、構える)
レイス(それとほぼ同時に、金属の擦れる小さな音がした)
レイス(背筋を凍らせる、冷たい音。私の持つランプの光の中に、誰かの脚が、刃が、そして全身がゆっくりと入る)
レイス「な……っ!?」
レイス(その人物は、異様な格好をしていた。暗い緑色の着物を身につけ、足には草履……みたいな靴。黒く長い髪――そして、顔を隠す狐の面)
レイス(背筋をピンと立たせて姿勢よく、けれど手にしている刀はだらんと刃先を床に向けている)
レイス「サムライ……?」
レイス(それは以前聞いたことのある、シルターンのサムライによく似ていた)
レイス「あなた、どうやってここに――」
???「……」
レイス(戸惑う私が疑問を口にする。けれど答えてくれるはずがなく。彼女はふらっと前に倒れるように身体を傾け、足を踏み込み一気に肉薄。刀が閃く)
レイス「っ!」
レイス(いきなりの攻撃だが、構えていたのが幸いした。下から大きく切り上げられた刀を、彼女とすれ違うようにして回避。素早く振り向き、彼女の背中へ杖を振り下ろす)
???「……」
レイス(が、防がれた。後ろにいる私の方を見ず、正確に刀で杖を弾く着物の女性。それと同時にこちらへと身体を向け、彼女は跳躍。弾いた杖を持つ腕、それをがっちりと掴み、全体重で私のことを乱暴に床へと押し倒す)
レイス「――うぁ!?」
レイス(為す術もない。あっさりと私は床に倒されてしまう。室内だからと召喚術を温存している場合ではなかった)
???「……」スッ
レイス「……くっ」
レイス(持ち上げられた刀。その先を私は見つめる)
レイス(この体勢では普通に抵抗しても無駄だ。なら、召喚術? いや、それでも間に合うか――)
???「っ!?」
レイス(刃先が振り下ろされる。その寸前、私の上にいた着物の女性が何かに飛ばされた)
???「……ここにいたか。勤務時間外だというのに、仕事熱心なメイドだ」
レイス(冗談を、淡々とした口調で口にする男性の声。天井を映す視界に、黒の服が入り込む)
レイス「……あなたも、随分仕事熱心みたいですね。ギリンさん」
ギリン「当然だ。後輩だけ仕事させるわけにもいくまい」
レイス(……あなたも戦えたんですね)
レイス(構えをとっているギリンさんを横目に立ち上がり、私は暢気にそんなことを思った)
ギリン「……で、だ」
レイス(構えをとり、警戒した様子のギリンさん。彼の視線の先、ぶっ飛ばされたにも係わらず息一つ乱れていない女性がそこに)
ギリン「なんだあれは」
レイス(私が聞きたい)
レイス「分かりませんけど、すごく強いです」
ギリン「召喚師の君が言っていても、よく分からないな。召喚術は使わなかったのだろう?」
レイス「ま、まぁそうですね」
レイス(使ってても勝てるかどうか……)
ギリン「ま、かなりの手練だということは分かる。……レイス。ここは俺に任せてもらおう」
レイス「え!? 一人だと危ないですよ」
ギリン「召喚術が使えない君が役に立つとは思えん。それと、向かってほしい場所もある。来い」
レイス「へ?」
レイス(そう言って手招き。近づいた私に、彼は耳打ちをする)
ギリン「エントランスの階段下。そこを調べろ」
レイス「は、はぁ……どういう意味です?」
ギリン「そのままの意味だ。後は自分で考えろ」
レイス(なんという言い草だろうか。乱暴に言い、彼は私の傍から離れる)
レイス「え、と――っ!」
レイス(その瞬間、着物の女性が私達へ迫る。不気味に加速し、あっという間に間合いを詰め刀が突き出された)
ギリン「――分かったか? 何もできないだろう。早く向かえ」
レイス(私がまったく対応できなかった速度の攻撃。けれどギリンさんは機敏に反応し、刀を横に弾いた)
レイス(――素手で)
[一旦落ち]
ギリン「というわけだ。相手してもらおう」
???「ぐっ……」
レイス(ギリンさんが動く。着物の女性は落ち着いた対応で刃を向け、弾かれた刀を乱暴に振りぬく)
レイス(しかしギリンさんの拳はそれよりも早く、着物の女性の横っ面を叩いた。鈍い音。呻きながら女性が後退)
レイス(おそらく女性であろう相手に容赦がない。当然といえば当然なのだけれど)
ギリン「俺は大丈夫だ。早く行け」
レイス「――は、はいっ」
レイス(確かにここで戦おうとしても力にはなれなそうだ。実力はおろか、実戦の経験も薄い私ではあのスピードに対応できる気がしない)
レイス(行こう。言われた場所に向かわなければ)
レイス「よし……」
レイス(静かな戦いの音を背中に、私は駆け出す)
レイス「何が……」
レイス(目指すはギリンさんに言われた場所)
レイス「何が起こってるんですか……!」
レイス(突然、戦いの場所となったお屋敷。いつもと変わらないのにいつもと違うそこを、私はただ走っていた)
レイス(あの日と同じように)
『お屋敷 地下』
レイス「うえええぇっ!?」
レイス(落ちていく。暗闇の中を真っ逆さまに。どんどんと。どこまで落ちて――)
レイス「げふっ」
レイス(――底はすぐだった。一回転気味に床に背中を打ち付け、口から無様な声をもらす)
レイス「いてて……な、なんですかここ」
レイス(私は今日何度床に頭をつけることになるのだろう)
レイス(ギリンさんに言われた通りエントランスの階段下を調べ、どこかへと落ちた私)
レイス(あれはびっくりした。壁と思って触れた木の板が回転して、バランスを崩してすってんころり)
レイス(無警戒というか、無防備というか。迂闊だからこうなるのだろう)
レイス(自分に自分で呆れながら、私は暗いその場所を――)
レイス「あれ?」
レイス(仰向けのまま目をぱりくり。よく見ると暗闇なんかではない)
レイス(蝋燭……? 仄かな光に照らされて、一本の道があった)
レイス「誰かいるんですかね」
レイス(杖を拾い、立ち上がる。ギリンさんは私にここへ向かうよう言った)
レイス(おそらく、地下。それも隠された特別な場所)
レイス(ここに何があるというのだろうか)
レイス「……とにかく行ってみるしかないですよね」
『祭壇の間』
レイス「……ここは」
レイス(狭い道を歩くことしばらく。私はひらけた場所に辿り着いた)
レイス(たぶんここが終着点。他に道はない。道とは違い、強い灯りに照らされた四角形の部屋の奥、そこにはなにか祭壇のような物が)
レイス(あれは、何なのだろう。台の上に、透明な色をした水晶のような物が置いてある)
レイス「ここに来て、何があるんですかね……」
レイス(目につくのは、あのガラス球だけど)
リア「……レイス。あなたがここに来るなんて」
レイス「っ!? って、ご主人様?」
レイス(不意に聞こえた声に身体を跳ねさせる。道を出た位置、私の真横。ご主人様が立っていた)
レイス(いつもの服に、手には銃。私の顔を見て、少々驚いている様子)
リア「ギリンからここを聞いたんでしょ。ごめんなさい。多分この屋敷、襲撃されたんだと思う」
リア「継承者《サクセサー》の奴……相変わらず、手段を選ばないんだから」
レイス「継承者……?」
レイス(申し訳無さそうに謝るご主人様から、聞き慣れない単語が飛び出す)
リア「本当はレイスを巻き込むつもりはなかったんだけどね……。まだ日が浅いし、戦いだって経験ないでしょ?」
レイス「ま、まぁ……」
リア「って、状況すらわからないよね、レイスは」
レイス「ですね。……とりあえず、何をしたらいいか教えてくれますか?」
リア「うん。私達の使命は、あれを護ること」
レイス(頷いたご主人様が指差したのは、祭壇らしきものに置かれた水晶球)
レイス(職場である立派なお屋敷一つに従業員約10名。それを巻き込んでの戦いで、重要なのがアレ。……あれの大切さが分からない私としては、あまり納得できない)
レイス「あれはなんです?」
リア「あれは――」
???「『遺産』だ」
レイス(ご主人様の後を継ぐ、聞いたことのない少年の声。いつの間にか私達のいる部屋に一人、少年が佇んでいた)
レイス(戦いの場に似合わない細い身体。少年らしい元気な真っ直ぐな目。整った顔立ち。至って普通な冒険者風の格好をした彼)
レイス(でも、その異様さは一目で分かった。彼の背負っている大剣、そして彼自身。まるで渦のように、彼を中心に強大な魔力が放たれている)
レイス(彼が何者か。人間なのか。断定することはできなかった)
[今日はここまで]
リア「継承者……」
少年「知ってるってことか。まあそうだろうな。継承されてないとはいえ、遺産をこんな人目がつかない場所に置いてあるんだ」
少年「何かしらの訳があるんだろう」
リア「……」
レイス(ご主人様は何も答えない。無言で銃の弾を確認し、ふぅと小さくため息)
レイス(少年はそれを見て楽しげに笑う)
少年「山奥に屋敷を建てて、従業員は全員メイドか執事。そして地下、一直線の道に遺産。遺産をある程度の距離なら魔力で察知できる継承者に対しての構造だ」
少年「実際、探すのには骨が折れた。けど、ま……」
レイス(ちらり、と少年の視線が私を捉える。彼は私の顔を数秒眺めると、鼻で笑う)
少年「運が良かったってところか。たまたま見つけられて良かったぜ」
レイス「……?」
リア「……で? 苦労話をしに来たわけじゃないでしょ」
少年「ああ、勿論だ」
レイス(頷く少年。彼は気だるそうに伸びを一つ。首を左右に傾け、姿勢を若干正す)
レイス(直後、彼から放たれる魔力の量が爆発的に増した。……いや、あれは量というより質か。高純度で、とても無意識に流しているものとは思えない魔力。それに加えて、サムライの女性とは比較にならない殺気も)
レイス(全てが別格。これまで悪人と対峙することは何度かあったが、彼はそんな小物とは違う。まるでこれは、召喚獣のような……人間ではない、なにか)
レイス「……っ!」
リア「レイス。大丈夫、私がいるから」
少年「……。意外とやるみたいだな。遺産の魔力で怯まないか」
リア「おあいにくさま。これくらいじゃ、どうってこともないよ」
リア「……レイス。こうなったら、もう逃げられない。――悪いけど、あなたも一緒に」
レイス「……はい。ご主人様にはお世話になってますから」
レイス(頷く。どのみち逃げる気はなかった)
リア「ごめん。……もっと時間があれば良かったんだけど」
少年「……話はそれくらいでいいか? こっちは忙しいんだ。さっさと終わらせるぞ」
レイス(ほぼ無防備に立っていた少年の凄まじい殺気。それが暢気な調子で放たれた言葉と同時に鋭さを増す。何が起こった、なんて考える暇もなく彼は肉薄。私たちのすぐ目前まで迫る)
リア「ちっ……!」
レイス(反則じみた加速。だけれどご主人様は機敏に反応し、彼目掛けて射撃。耳をつんざくような銃声が響く)
少年「冷静だな。流石、遺産を護っているだけはある」
リア「ぁぐっ……」
レイス「ご主人様……っ!」
レイス(銃の攻撃を、まるであらかじめ分かっていたかのように回避する少年。彼はそのまま直進し、ご主人様の腹部を殴った)
レイス(武器は使っていないけれど、殴った時の音ですぐまずいと分かった。なんとかしなければ。私は即座に召喚術の詠唱をはじめる)
レイス「誓約に従い、敵を砕け――やってください、テテ!」
レイス(初歩中の初歩。メイトルパの召喚では低ランクの召喚術を行使。小さなヘルメットのような帽子をかぶった生き物が、ぽんと現れる。彼はその小さな身体で大きな岩を持ち、少年へと投げつける)
少年「ちっ……召喚師か。厄介だな」
レイス(召喚術は命中。低ランクながら威力には自信がある――はずだった。けれど少年にはあまり効果がなかったらしい。いかにも戦士な見た目をしているのに、召喚術にも強いのか)
レイス「ご主人様、一度退いて」
リア「これくらい、平気……!」
レイス(細かいことは後回し。今は少年にご主人様がやられないよう指示を出す。でもそれに素直に従う彼女ではなかった。立ち上がった彼女は発砲。少年がかわしたのを確認し、一歩下がると集中をはじめる。これは、まさか……)
リア「リア・リアラインが命ずる。機界の住人よ、あいつをぶっ倒せ!」
レイス「召喚術!?」
レイス(乱暴で早口な詠唱。ご主人様から放たれる魔力。それに呼応するように、彼女の頭上からドリルのような機械が現れ、少年へと突っ込んでいく)
レイス(ご主人様も召喚師。まったく知らなかった。年齢は……どうなのだろう。あの歳で派閥に認められるのだろうか)
少年「ぐ、ぅ……」
レイス(驚愕する私の前、ドリル型の機械の突撃を受け倒れる少年。私にひけをとらない魔力量、そして召喚獣の強そうな見た目。受ければただ事では済まないはずだ。まず、耐性の低い戦士は立てない)
レイス(……が、私のそんな予想は、あっさりと立ち上がった少年を目にし、打ち砕かれる)
少年「召喚師が二人か。同時に相手するわけにもいかないからな……はぁ、仕方ない。加減はやめよう」
リア「負け惜しみ? 加減だなんて」
少年「ハッ。お前も召喚師、遺産に係わる人間なら分かってるだろ。俺の言葉が嘘じゃないってことくらい」
少年「少なくとも、そこのメイドは分かってそうだぜ?」
リア「……っ」
レイス(ご主人様が息をのむ。そう、彼の実力がこんなものではないことは明白。もっと強力で、圧倒的な力が彼にはある。彼の途方もない魔力がそう語っていた)
少年「……さ、そろそろカタをつけるぞ」
レイス(少年が大剣を手にする。魔力を放つ剣を彼が持った時、彼自身の魔力と重なり、辺りに衝撃が走る)
リア「……もう人間じゃないよ、あんた」
少年「知るかよ。召喚師だっておんなじようなもんだろ」
レイス(少年が駆け出す。なんとか彼がご主人様の前へ来る前に、私は彼とご主人様の間へ。杖を構え迎撃の用意をする)
少年「接近戦じゃ、お前達召喚師は勝てないぜ」
レイス「がっ、あぁ!?」
レイス(文字通り、手も足もでない。接近した少年へ、杖を振ろうとする私。それよりも遅く動き出した少年。だが杖よりも早く脚払いが当たり、宙に浮いたところを蹴られ、地面を転がる。馬鹿みたいな連続攻撃。それをあっさりと成立させ、少年はほぼ足を止めずご主人様へと向かう)
少年「終わりだ」
リア「それは……どうかしら!」
レイス(私を退け、ご主人様へと肉薄する少年。けれどただご主人様はそれを待っているだけではなかった。既に召喚術の詠唱を終わらせ、先程のドリル型の機械を待機させていた彼女は、狙いをすまし少年へと放つ)
レイス(距離的にも何の対処はできない。その筈だった)
少年「いくぞ、本気だ」
レイス(静かな宣言。と共に初めて振り下ろされる剣。召喚獣にも、召喚師にも届かない場所で行われた攻撃。一瞬の静寂の後、驚くべき変化が起きた)
レイス(ドリルの機械は勢いを失い地面に落ち元の世界へ戻り、そして)
リア「な……なに、これ……」
レイス(ご主人様が倒れた)
レイス「ご主人様!?」
レイス(なにかされたのは明白。でもその何かが見ていても分からない。立ち上がった私は、未だ飲み込めない状況に、徐々に頭が白くなっていくのを感じた)
レイス(突然現れた何者かに襲撃され、残ったのは私一人。少年は召喚術ごと召喚師をいとも簡単に撃破。消耗した様子はあまりない)
レイス「……」
レイス(このまま、死ぬのか。自分も、ご主人様も)
少年「観念しな、メイド」
レイス(少年が剣を振るう。またもや私に届くはずもない間合いだけれど、私は床に倒れてしまう)
少年「……これで、遺産を」
レイス(少年の声が遠く聞こえる。身体に力が入らない。このままじゃみんなどうなるか分からない。私も、ご主人様も、みんな……)
レイス(私のことを、助けてくれたご主人様に何もできないで……全て終わって……)
レイス「そんなの、嫌です……!」
???『――――――』
レイス(悔しさに奥歯を噛みしめる。その時、何か、聞こえたような気がした)
レイス(囁くような微かな声。それはなにかを私に伝えようとしていた。その声は――)
1 男の人の声
2 女の人の声
↓1 いずれかを選択
性別:男
レイス(それは、男の人の声だった)
レイス(不思議な声。私がそれに導かれるように、顔を視線を動かす。これまで動かなかった身体が、何故かその時は動いてくれた)
レイス(視線の先、遺産のある場所。そこは――)
↓1 緑、赤、紫、灰色、無色から一つ選択
今日はここまでで
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